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特表2024-544362重量低減空隙を有するインサート・ホルダ及び切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】重量低減空隙を有するインサート・ホルダ及び切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20241122BHJP
   B23C 5/28 20060101ALI20241122BHJP
   B23B 29/12 20060101ALI20241122BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20241122BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B23B51/00 P
B23C5/28
B23B29/12 Z
B23B27/16 B
B23B51/06 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527797
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 IL2022051221
(87)【国際公開番号】W WO2023112016
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】17/550,531
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼトラー,マルティン ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】プッシオス,ニコラオス
(72)【発明者】
【氏名】ジュバス,ヘンナー ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
3C037
3C046
【Fターム(参考)】
3C037DD05
3C037DD06
3C046BB07
3C046MM00
(57)【要約】
インサート・ホルダ(22)は、切削部分(38)とシャンク部分(46)とを含む。インサート・ホルダは、空洞(56)を更に含み、空洞(56)は、インサート・ホルダの重量を低減するように働く空洞チャンバ(58)と複数の空洞貫通凹部(66)とを含む。複数の空洞貫通凹部は、空洞チャンバ及びシャンク部分の外周部に開口する。インサート・ホルダに解放可能に取り付けられる切削インサート(24)を有する切削工具が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ長手方向軸(B)に沿って長細いインサート・ホルダ(22)であって、
前記ホルダ長手方向軸(B)は、反対の前方向(D)及び後方向(D)を画定し、
前記インサート・ホルダ(22)は、単一の一体構造を有するように一体に形成され、
ホルダ前端面(28)、ホルダ後端面(30)、及び前記ホルダ前端面(28)と前記ホルダ後端面(30)との間に延在し、前記ホルダ長手方向軸(B)回りに延在するホルダ外周面(36)と、
切削インサート(24)を解放可能に保持するインサート・ポケット(42)を備える切削部分(38)であって、前記インサート・ホルダ(22)の前端部(32)に位置する切削部分(38)と、
前記切削部分(38)から後方に延在するシャンク部分(46)であって、前記シャンク部分(46)における前記ホルダ外周面(36)は、シャンク径方向中心合わせ面(48)を備える、シャンク部分(46)と、
重量低減空洞(56)と、を備え、
前記重量低減空洞(56)は、
前記インサート・ホルダ(22)内に囲まれる空洞チャンバ(58)であって、チャンバ内壁面(60)を備える、空洞チャンバ(58)と、
複数の空洞貫通凹部(66)と、を有し、
複数の前記空洞貫通凹部(66)は、(i)前記チャンバ内壁面(60)及び(ii)前記シャンク径方向中心合わせ面(48)に開口し、前記チャンバ内壁面により複数の内側凹部開口(72)を形成し、前記シャンク径方向中心合わせ面(48)により複数の外側凹部開口(70)を形成する、インサート・ホルダ(22)。
【請求項2】
前記空洞チャンバ(58)は、前記シャンク部分(46)のみに囲まれる、請求項1に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項3】
前記空洞チャンバ(58)は、前記ホルダ後面(30)から離間する、請求項1又は2に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項4】
各前記空洞貫通凹部(66)は、
凹部中心軸(C)回りに延在する凹部内壁面(68)と、
前記凹部内壁面(68)に沿ってそれぞれの前記内側凹部開口(70)とそれぞれの外側凹部開口(72)との間に位置する2つの反対の貫通凹部端部(74)と、
細長い貫通凹部中間部分(76)と、を有し、
前記細長い貫通凹部中間部分(76)は、前記2つの反対の貫通凹部端部(74)の間に長さ方向に延在し、このため、各前記空洞貫通凹部(66)は、前記ホルダ長手方向軸(B)に沿った方向で細長い、請求項1~3の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項5】
複数の前記空洞貫通凹部(66)の所与の1つに関し、前記2つの貫通凹部端部(74)の一方は、前記2つの貫通凹部端部(74)のもう一方より前記切削部分(38)に近い、請求項4に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項6】
前記シャンク径方向中心合わせ面(48)は、前記ホルダ長手方向軸(B)回りに円筒形又は円錐形である、請求項1~5の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項7】
前記シャンク径方向中心合わせ面(48)は、前記ホルダ長手方向軸(B)回りに円筒形であり、
前記円筒形シャンク径方向中心合わせ面(48)は、シャンク直径(DS)を有する、請求項6に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項8】
前記チャンバ内壁面(60)は、2つの反対のチャンバ端面(62)と、チャンバ中心軸(F)回りに前記チャンバ端面(62)の間に延在するチャンバ外周面(64)と、を有し、
前記チャンバ外周面(64)は、前記チャンバ中心軸(F)回りに円筒形であり、前記円筒形チャンバ外周面(64)は、チャンバ直径(DC)を有し、
前記チャンバ直径(DC)は、前記シャンク直径(DS)の4分の1より大きく、前記シャンク直径(DS)の4分の3より小さい、請求項7に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項9】
前記チャンバ直径(DC)は、前記シャンク直径(DS)の半分に等しい、請求項8に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項10】
複数の前記空洞貫通凹部(66)は、N個の空洞貫通凹部(66)を備え、
Nは、条件5≦N≦9を満たす正の整数である、請求項1~9の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項11】
N=7である、請求項10に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項12】
複数の前記空洞貫通凹部(66)は、前記ホルダ長手方向軸(B)回りに角度を付けて離間する、請求項1~11の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項13】
複数の前記空洞貫通凹部(66)は、複数のシャンク支持部材(78)によって角度を付けて離間し、前記空洞貫通凹部(66)のそれぞれ円周方向に隣接する対は、それぞれの前記シャンク支持部材(78)によって離間する、請求項12に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項14】
各前記シャンク支持部材(78)における前記シャンク径方向中心合わせ面(48)は、円周方向で各前記外側凹部開口(72)より広い、請求項13に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項15】
前記ホルダ長手方向軸(B)に直交し、複数の前記シャンク支持部材(78)に交差する径方向平面で取られる断面において、複数の前記シャンク支持部材(78)のそれぞれは、環状区分基本形状を有する、請求項13又は14に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項16】
前記シャンク部分(46)における前記ホルダ外周面(36)は、シャンク平坦面(50)を備え、
前記シャンク平坦面(50)は、前記ホルダ長手方向軸(B)に平行に向けられ、前記シャンク径方向中心合わせ面(48)に交差する、請求項13~15の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項17】
前記シャンク平坦面(50)は、複数の前記空洞貫通凹部(66)が少なくとも1つの切頭空洞貫通凹部(66a)を備えるように、複数の前記空洞貫通凹部(66)の少なくとも1つの投射経路(P)に交差する、請求項16に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項18】
前記切頭空洞貫通凹部(66a)ではない各前記空洞貫通凹部(66)に関し、前記2つの貫通凹部端部(74)の一方は、前記ホルダ後端面(30)より前記切削部分(38)に近く、前記2つの貫通凹部端部(74)のもう一方は、前記切削部分(38)より前記ホルダ後端面(30)に近い、請求項17に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項19】
平坦支持部材(78b)を備え、
前記平坦支持部材(78b)は、前記2つの空洞貫通凹部(66)の間に角度を付けて位置し、前記シャンク平坦面(50)の一部分を組み込む、請求項17又は18に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項20】
複数の前記空洞貫通凹部(66)は、複数の切頭空洞貫通凹部(66a)を備え、
前記平坦支持部材(78b)は、2つの前記切頭空洞貫通凹部(66a)の間に位置する、請求項19に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項21】
前記インサート・ホルダ(22)は、冷却導管(80)を備え、
前記冷却導管(80)は、複数の冷却通路(82)を備え、
各前記冷却通路(82)は、互いに流体連通する通路入口(84)と通路出口(86)とを有し、
各前記冷却通路(82)は、それぞれの前記シャンク支持部材(78)を通過する、請求項12に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項22】
前記冷却導管(80)は、冷却槽(88)を備え、
前記冷却槽(88)は、槽内壁面(90)を備え、
前記冷却槽(88)は、前記空洞チャンバ(58)の前方で前記インサート・ホルダ(22)内に囲まれ、
各前記通路出口(86)は、前記槽内壁面(90)に位置する、請求項21に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項23】
複数の前記空洞貫通凹部(66)は、前記ホルダ長手方向軸(B)回りにらせん状に延在する、請求項1~22の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項24】
前記切削部分(38)は、複数の溝(44)を備え、
複数の前記溝(44)は、前記ホルダ外周面(36)内に凹み、らせん状に延在する複数の前記空洞貫通凹部(66)と同じ意味で前記ホルダ長手方向軸(B)回りにらせん状に延在する、請求項23に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項25】
らせん状に延在する各前記空洞貫通凹部(66)は、凹部ねじれ角(θ)を有し、
前記凹部ねじれ角(θ)は、20°以上、40°以下である、請求項23又は24に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項26】
前記ホルダ外周面(36)は、前記ホルダ長手方向軸(B)に横断的に向けられるホルダ中間面(52)を備え、
前記ホルダ中間面(52)は、境界画定平面(D)内に含まれ、
前記境界画定平面(D)は、前記ホルダ長手方向軸(B)に直交して向けられ、前記切削部分(38)及び前記シャンク部分(46)の境界を画定する、請求項1~25の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項27】
前記切削部分(38)は、切削部分長さ(LC)を有し、
前記シャンク部分(46)は、シャンク部分長さ(LS)を有し、
前記切削部分長さ(LC)及び前記シャンク部分長さ(LS)の両方は、前記ホルダ長手方向軸(B)の方向で測定され、
前記シャンク部分長さ(LS)は、前記切削部分長さ(LC)より大きい、請求項1~26の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項28】
前記空洞チャンバ(58)は、前記ホルダ長手方向軸(B)の方向で測定される空洞チャンバ長さ(L)を有し、
前記空洞チャンバ長さ(L)は、前記シャンク部分長さ(LS)の半分より大きい、請求項27に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項29】
前記チャンバ内壁面(60)は、2つの反対のチャンバ端面(62)と、チャンバ中心軸(F)回りに前記チャンバ端面(62)の間に延在するチャンバ外周面(64)と、を備え、
前記チャンバ外周面(64)は、前記チャンバ中心軸(F)回りに円筒形であり、
前記円筒形チャンバ外周面(64)は、チャンバ直径(DC)を有する、請求項1~28の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項30】
複数の前記内側凹部開口(70)は、前記円筒形チャンバ外周面(64)に位置する、請求項29に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項31】
前記ホルダ長手方向軸(B)に直交し、複数の前記空洞貫通凹部(66)に交差する径方向平面で取られる断面において、各前記空洞貫通凹部(66)は、凹部中心軸(C)に沿って線形に延在する、請求項1~30の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項32】
前記空洞チャンバ(58)は、空洞チャンバ長さ(L)を有し、
前記空洞チャンバ(58)の前記空洞チャンバ長さ(L)に沿って、複数の前記空洞貫通凹部(66)は、前記シャンク径方向中心合わせ面(48)の表面積の10%~40%の間を占める、請求項1~31の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項33】
請求項1~32の何れか一項に記載のインサート・ホルダ(22)と、
インサート・ポケット(42)内に解放可能に保持される少なくとも1つの切れ刃(26)を有する切削インサート(24)と、
を備える、切削工具(20)。
【請求項34】
前記切削工具(20)は、前記ホルダ長手方向軸(B)回りに回転可能な回転切削工具(20)である、請求項33に記載の切削工具(20)。
【請求項35】
ホルダ長手方向軸(B)に沿って長細いインサート・ホルダ(22)であって、
前記ホルダ長手方向軸(B)は、反対の前方向(D)及び後方向(D)を画定し、
前記インサート・ホルダ(22)は、単一の一体構造を有するように一体に形成され、
ホルダ前端面(28)、ホルダ後端面(30)、及び前記ホルダ前端面(28)と前記ホルダ後端面(30)との間に延在し、前記ホルダ長手方向軸(B)回りに延在するホルダ外周面(36)と、
切削インサート(24)を解放可能に保持するインサート・ポケット(42)を備える切削部分(38)であって、前記インサート・ホルダ(22)の前端部(32)に位置する切削部分(38)と、
前記切削部分(38)から後方に延在する中空シャンク部分(46)と、を備え、
前記中空シャンク部分(46)は、
前記ホルダ外周面(36)の一部であるシャンク径方向中心合わせ面(48)と、
やはり前記ホルダ外周面(36)の一部であり、前記ホルダ長手方向軸(B)に平行に向けられ、前記シャンク径方向中心合わせ面(48)に交差するシャンク平坦面(50)と、
前記中空シャンク部分(46)の内壁面(60)を前記シャンク径方向中心合わせ面(48)に接続する複数の空洞貫通凹部(66)と、
を有する、インサート・ホルダ(22)。
【請求項36】
複数の前記空洞貫通凹部(66)は、前記ホルダ長手方向軸(B)に沿った方向で細長く、前記ホルダ長手方向軸(B)回りにらせん状に延在し、
前記シャンク径方向中心合わせ面(48)の円周方向において、複数の前記空洞貫通凹部(66)は、シャンク支持部材(78)によって互いから隔てられ、前記シャンク支持部材(78)も、前記ホルダ長手方向軸(B)に沿った前記方向で細長く、前記ホルダ長手方向軸(B)回りにらせん状に延在する、請求項35に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項37】
前記中空シャンク部分(46)は、空洞チャンバ長さ(L)を有する空洞チャンバ(58)を備え、
複数の前記空洞貫通凹部(66)は、前記空洞チャンバ(58)を前記シャンク径方向中心合わせ面(48)に接続し、
前記空洞チャンバ(58)の前記空洞チャンバ長さ(L)に沿って、複数の前記空洞貫通凹部(66)は、前記シャンク径方向中心合わせ面(48)の表面積の10%~40%の間を占める、請求項36に記載のインサート・ホルダ(22)。
【請求項38】
前記インサート・ホルダ(22)は、冷却導管(80)を備え、
前記冷却導管(80)は、複数の冷却通路(82)を備え、
各前記冷却通路(82)は、互いに流体連通する通路入口(84)と通路出口(86)とを有し、
各前記冷却通路(82)は、それぞれの前記シャンク支持部材(78)を通過する、請求項36又は37に記載のインサート・ホルダ(22)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は、一般に、インサート・ホルダに関し、詳細には、インサート・ホルダの重量を低減させるために空洞も有する、そのようなインサート・ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
金属切削の分野で公知であるように、切削工具は、切削工具の重量を低減させるために空洞を備え得る。そのような切削工具の一例は、例えばUS7,226,254で開示されており、US7,226,254は、工作物を機械加工する焼結材料の棒形状工具を開示しており、この棒形状工具は、材料及び重量の節約を達成するように設計された閉鎖中心凹部を有する。別の例は、US7,374,374であり、US7,374,374は、工具内の超硬合金の質量を減少させるように構成される中心通路を備える工具を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の主題の一目的は、効果的なインサート・ホルダの剛性を維持しながら重量を低減させるインサート・ホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の主題の第1の態様によれば、ホルダ長手方向軸に沿って細長いインサート・ホルダを提供し、ホルダ長手方向軸は、反対の前方向及び後方向を画定し、インサート・ホルダは、単一の一体構造を有するように一体に形成され、
ホルダ前端面、ホルダ後端面、及びホルダ前端面と記ホルダ後端面との間に延在し、ホルダ長手方向軸回りに延在するホルダ外周面と、
切削インサートを解放可能に保持するインサート・ポケットを備える切削部分であって、インサート・ホルダの前端部に位置する切削部分と、
切削部分から後方に延在するシャンク部分であって、シャンク部分におけるホルダ外周面は、シャンク径方向中心合わせ面を備える、シャンク部分と、
重量低減空洞と、を備え、
重量低減空洞は、
インサート・ホルダ内に囲まれる空洞チャンバであって、チャンバ内壁面を備える空洞チャンバと、
複数の空洞貫通凹部と、を有し、
複数の空洞貫通凹部は、(i)チャンバ内壁面及び(ii)シャンク径方向中心合わせ面に開口し、チャンバ内壁面により複数の内側凹部開口を形成し、シャンク径方向中心合わせ面により複数の外側凹部開口を形成する。
【0005】
本願の主題の第2の態様によれば、切削工具が提供され、
切削工具は、
上記した種類のインサート・ホルダと、
インサート・ポケット内に解放可能に保持される少なくとも1つの切れ刃を有する切削インサートと、
を備える。
【0006】
本願の主題の第3の態様によれば、ホルダ長手方向軸に沿って細長いインサート・ホルダを提供し、
ホルダ長手方向軸は、反対の前方向及び後方向を画定し、
インサート・ホルダは、単一の一体構造を有するように一体に形成され、
ホルダ前端面、ホルダ後端面、及びホルダ前端面とホルダ後端面との間に延在し、ホルダ長手方向軸回りに延在するホルダ外周面と、
切削インサートを解放可能に保持するインサート・ポケットを備える切削部分であって、インサート・ホルダの前端部に位置する切削部分と、
切削部分から後方に延在する中空シャンク部分と、を備え、
中空シャンク部分は、
ホルダ外周面の一部であるシャンク径方向中心合わせ面と、
やはりホルダ外周面の一部であり、ホルダ長手方向軸に平行に向けられ、シャンク径方向中心合わせ面に交差するシャンク平坦面と、
中空シャンク部分の内壁面をシャンク径方向中心合わせ面に接続する複数の空洞貫通凹部)と、
を有する。
【0007】
上記は概要であり、以下で説明する特徴は、任意の組合せで本願の主題に適用可能とし得る、例えば、以下の特徴のいずれかは、切削工具又はインサート・ホルダに適用可能とし得ることを理解されたい。
【0008】
空洞チャンバは、シャンク部分内のみに囲まれ得る。
【0009】
空洞チャンバは、ホルダ後面から離間し得る。
【0010】
各空洞貫通凹部は、凹部中心軸回りに延在する凹部内壁面と、凹部内壁面に沿ってそれぞれの内側凹部開口とそれぞれの外側凹部開口との間に位置する2つの反対の貫通凹部端部と、2つの反対の貫通凹部端部の間に長さ方向に延在する細長い貫通凹部中間部分と、を備えることができ、各空洞貫通凹部は、ホルダ長手方向軸に沿った方向で細長くし得る。
【0011】
複数の空洞貫通凹部の所与の1つに関し、2つの貫通凹部端部の一方は、2つの貫通凹部端部のもう一方より切削部分に近くし得る。
【0012】
シャンク径方向中心合わせ面は、ホルダ長手方向軸回りに円筒形又は円錐形とし得る。
【0013】
シャンク径方向中心合わせ面は、ホルダ長手方向軸回りに円筒形とし得る。円筒形シャンク径方向中心合わせ面は、あるシャンク直径を有し得る。
【0014】
チャンバ内壁面は、2つの反対のチャンバ端面と、チャンバ中心軸回りにチャンバ端面の間に延在するチャンバ外周面と、を備え得る。チャンバ外周面は、チャンバ中心軸回りに円筒形とすることができ、円筒形チャンバ外周面は、あるチャンバ直径を有する。チャンバ直径は、シャンク直径の4分の1より大きく、シャンク直径の4分の3より小さくし得る。
【0015】
チャンバ直径は、シャンク直径の半分と等しくし得る。
【0016】
複数の空洞貫通凹部は、N個の空洞貫通凹部(66)を備えることができ、Nは、条件5≦N≦9を満たす正の整数である。
【0017】
Nは7と等しくし得る。
【0018】
複数の空洞貫通凹部は、ホルダ長手方向軸回りに角度を付けて離間し得る。
【0019】
複数の空洞貫通凹部は、複数のシャンク支持部材によって角度を付けて離間でき、空洞貫通凹部のそれぞれ円周方向に隣接する対は、それぞれのシャンク支持部材によって離間する。
【0020】
各シャンク支持部材におけるシャンク径方向中心合わせ面は、円周方向でそれぞれの外側凹部開口より広くし得る。
【0021】
ホルダ長手方向軸に直交し、複数のシャンク支持部材に交差する径方向平面で取られる断面において、複数のシャンク支持部材のそれぞれは、環状区分基本形状を有し得る。
【0022】
シャンク部分におけるホルダ外周面は、シャンク平坦面を備えることができ、シャンク平坦面は、ホルダ長手方向軸に平行に向けられ、シャンク径方向中心合わせ面に交差する。
【0023】
シャンク平坦面は、複数の空洞貫通凹部が少なくとも1つの切頭空洞貫通凹部を備えるように、複数の空洞貫通凹部の少なくとも1つの投射経路に交差する。
【0024】
切頭空洞貫通凹部ではない各空洞貫通凹部に関し、2つの貫通凹部端部の一方は、ホルダ後端面より切削部分に近くし得、2つの貫通凹部端部のもう一方は、切削部分よりホルダ後端面に近くし得る。
【0025】
インサート・ホルダは、平坦支持部材を備えることができ、平坦支持部材は、2つの空洞貫通凹部の間に角度を付けて位置し、シャンク平坦面の一部分を組み込む。
【0026】
複数の空洞貫通凹部は、複数の切頭空洞貫通凹部を備え得る。平坦支持部材は、2つの切頭空洞貫通凹部の間に位置し得る。
【0027】
インサート・ホルダは、冷却導管を備えることができ、冷却導管は、複数の冷却通路を備え、各冷却通路は、互いに流体連通する通路入口と通路出口とを有する。各冷却通路は、それぞれのシャンク支持部材を通過し得る。
【0028】
冷却導管は、冷却槽を備えることができ、冷却槽は、槽内壁面を備え、冷却槽は、空洞チャンバの前方でインサート・ホルダ内に囲まれる。各通路出口は、槽内壁面に位置し得る。
【0029】
複数の空洞貫通凹部は、ホルダ長手方向軸回りにらせん状に延在し得る。
【0030】
切削部分は、複数の溝を備えることができ、複数の溝は、ホルダ外周面内に凹み、らせん状に延在する複数の空洞貫通凹部と同じ意味でホルダ長手方向軸回りにらせん状に延在する。
【0031】
らせん状に延在する各空洞貫通凹部は、ある凹部ねじれ角を有することができ、凹部ねじれ角は、20°以上、40°以下である。
【0032】
ホルダ外周面は、ホルダ長手方向軸に横断的に向けられるホルダ中間面を備え得る。ホルダ中間面は、境界画定平面内に含めることができ、境界画定平面は、ホルダ長手方向軸に直交して向けられ、切削部分及びシャンク部分の境界を画定する。
【0033】
切削部分は、ある切削部分長さを有し、シャンク部分は、あるシャンク部分長さを有し、切削部分長さ及びシャンク部分長さの両方は、ホルダ長手方向軸の方向で測定され、
シャンク部分長さは、切削部分長さより大きくし得る。
【0034】
空洞チャンバは、ホルダ長手方向軸の方向で測定される、ある空洞チャンバ長さを有する。空洞チャンバ長さは、シャンク部分長さの半分より大きくし得る。
【0035】
チャンバ内壁面は、2つの反対のチャンバ端面と、チャンバ中心軸回りにチャンバ端面の間に延在するチャンバ外周面と、を備え得る。チャンバ外周面は、チャンバ中心軸回りに円筒形とすることができ、円筒形チャンバ外周面は、あるチャンバ直径を有する。
【0036】
複数の内側凹部開口は、円筒形チャンバ外周面に位置し得る。
【0037】
ホルダ長手方向軸に直交し、複数の空洞貫通凹部に交差する径方向平面で取られる断面において、各空洞貫通凹部は、凹部中心軸に沿って線形に延在し得る。
【0038】
空洞チャンバは、ある空洞チャンバ長さを有する。空洞チャンバの空洞チャンバ長さに沿って、複数の空洞貫通凹部は、シャンク径方向中心合わせ面の表面積の10%~40%の間を占め得る。
【0039】
切削工具は、ホルダ長手方向軸回りに回転可能な回転切削工具とし得る。
【0040】
複数の空洞貫通凹部は、ホルダ長手方向軸に沿った方向で細長く、ホルダ長手方向軸回りにらせん状に延在し得る。シャンク径方向中心合わせ面の円周方向において、複数の空洞貫通凹部は、シャンク支持部材によって互いから隔てることができ、シャンク支持部材も、ホルダ長手方向軸に沿った前記方向で細長く、ホルダ長手方向軸回りにらせん状に延在する。
【0041】
中空シャンク部分は、ある空洞チャンバ長さを有する空洞チャンバを備え得る。複数の空洞貫通凹部は、空洞チャンバをシャンク径方向中心合わせ面に接続し得る。空洞チャンバの空洞チャンバ長さに沿って、複数の空洞貫通凹部は、シャンク径方向中心合わせ面の表面積の10%~40%の間を占め得る。
【0042】
本願をより良好に理解し、本願をいかに実際に実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本願による切削工具の斜視図である。
図2図1の切削工具の分解図である。
図3図1のインサート・ホルダの後端面図である。
図4図3のインサート・ホルダの側面図である。
図5a図4の詳細図である。
図5b】インサート・ホルダをホルダ長手方向軸回りに90°回転させた、図5aと類似の図である。
図6a】重量低減空洞を示す、図3の線VIa-VIaに沿って取られたインサート・ホルダの長手方向断面図である。
図6b】別の重量低減空洞の長手方向断面を示す、図6aと類似の図である。
図7図4の線VII-VIIに沿って取られたインサート・ホルダの第1の径方向断面図である。
図8図4の線VIII-VIIIに沿って取られたインサート・ホルダの第2の径方向断面図である。
図9図4の線IX-IXに沿って取られたインサート・ホルダの第3の径方向断面図である。
図10】部分的に隠れている重量低減空洞及び隠れている冷却導管を破線で示す、図1のインサート・ホルダの斜視図である。
図11】隠れている冷却導管を示す、図10と類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
説明を簡単、明快にするため、図示の要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことは了解されよう。例えば、要素の一部の寸法は、明快のために他の要素に対して誇張される場合がある、又はいくつかの物理的構成要素は、1つの機能ブロック若しくは要素内に含まれる場合がある。更に、適切であるとみなされる場合、参照数字は、対応する又は類似の要素を示すように図面の間で繰り返される場合がある。
【0045】
以下の説明では、本願の主題の様々な態様を説明する。説明のために、特定の構成及び詳細は、本願の主題に対する完全な理解をもたらすように、十分詳細に示される。しかし、本願の主題を本明細書に提示される特定の構成及び詳細を伴わずに実行し得ることも、当業者には明らかであろう。
【0046】
まず、本願の一態様を示す、チップ除去のための切削工具20を示す図1に注意を向けられたい。切削工具20は、工具長手方向軸Aを有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削工具20は、回転切削工具とし得る。即ち、切削工具20は、回転軸回りに回転するように設計されている。図示される非限定的な例では、切削工具20は、穴あけ工具である。しかし、本願の主題は、穴あけ工具のみに制限されず、例えば、限定はしないが、フライス加工工具にも適用可能とし得る。
【0047】
切削工具20は、本明細書で更に詳細に説明するインサート・ホルダ22を含む。切削工具20は、切削インサート24も含む。切削インサート24は、金属切削作業を実施するように設計された少なくとも1つの切れ刃26を有する。切削インサート24は、典型的には超硬合金から作製される。切削インサート24は、インサート・ホルダ22に解放可能に取り付け得る。
【0048】
次に、本願の別の態様を示す、インサート・ホルダ22を示す図2を参照されたい。インサート・ホルダ22は、典型的には鉄鋼から作製される。インサート・ホルダ22は、反対の前方向D及び後方向Dを画定するホルダ長手方向軸Bを有する。インサート・ホルダ22は、ホルダ長手方向軸Bに沿って細長い。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削工具20及びインサート・ホルダ22は、互いに同軸とし得る。2つの要素(例えば、本ケースでは切削工具20及びインサート・ホルダ22)は、これらの長手方向軸が一致する(互いに位置合わせされる)場合、互いに同軸であることに留意されたい。
【0049】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたる用語「前方」及び「後方」の使用は、ホルダ長手方向軸Bの方向で、図4及び図6a~図6bでそれぞれ左及び右への相対的な位置を指すことに更に留意されたい。概して、前方向は、切削インサート24に向かう方向である。
【0050】
インサート・ホルダ22は、付加製造される。インサート・ホルダ22は、単一の一体構造を有するように一体に形成される。本明細書で使用する場合、物品は、付加製造工程から生じる場合、2つ以上の材料が当該物品の付加製造の間に使用される場合でさえ、「単一の一体構造」を有すると言う。
【0051】
明細書及び特許請求の範囲全体にわたる用語「付加製造」の使用は、1つの物体を生成するために複数の材料層が形成される三次元物体の生成に使用される工程を指すことに留意されたい。そのような工程の例は、限定はしないが、積層造形法(SLM)、粉末焼結積層造形(SLS)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、熱溶解積層(FDM)及び3D印刷を含む。
【0052】
図1図2を参照すると、インサート・ホルダ22は、ホルダ前端面28と、ホルダ前端面28の反対側のホルダ後端面30と、を含む。ホルダ前端面28は、インサート・ホルダ22の前端32に位置する。ホルダ後端面30は、インサート・ホルダ22の後端34に位置する。ホルダ後面30は、平坦とし得る。ホルダ前面28及びホルダ後面30には、ホルダ長手方向軸Bが交差し得る。インサート・ホルダ22は、ホルダ前端面28とホルダ後端面30との間に延在するホルダ外周面36を更に含む。ホルダ外周面36は、ホルダ長手方向軸B回りに延在する。
【0053】
図2に戻ると、インサート・ホルダ22は、切削部分38を含む。切削部分38は、インサート・ホルダ22の前端32に位置する。切削部分38は、切削インサート24を受け入れるインサート・ポケット42を含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート・ポケット42は、ホルダ外周面36とホルダ前端面28との間の交線に位置し得る。切削工具20の組立て位置において、切削インサート24は、インサート・ポケット42内に解放可能に保持し得る。
【0054】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削部分38は、ホルダ外周面36内に凹む複数の溝44を含み得る。複数の溝44は、ホルダ長手方向軸B回りにらせん状に延在し得る。切削部分38は、ホルダ長手方向軸Bの方向で測定される切削部分長さLCを有する。
【0055】
インサート・ホルダ22は、切削部分38から後方に延在するシャンク部分46を含む。シャンク部分46は、インサート・ホルダ22を工具ホルダ(図示せず)に取り付ける手段を含む。具体的には、シャンク部分46は、工具ホルダの工具受入れ凹部に位置し、工具受入れ凹部内に解放可能に締結されるように構成される。インサート・ホルダ22は、ホルダ長手方向軸Bに直交して向けられる境界画定平面Dを有する。境界画定平面Dは、切削部分38及びシャンク部分46の境界を画定する。シャンク部分46は、ホルダ長手方向軸Bの方向で測定されるシャンク部分長さLSを有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、シャンク部分長さLSは、切削部分長さLCより長くし得る。
【0056】
図4及び図5a~図5bを参照すると、シャンク部分46におけるホルダ外周面36は、シャンク径方向中心合わせ面48を含む。シャンク部分46は、工具ホルダ内の凹部に挿入されるように設計される。シャンク径方向中心合わせ面48は、工具ホルダ内でのインサート・ホルダ22の正確な径方向の位置合わせを保証するように働く。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、シャンク径方向中心合わせ面48は、ホルダ長手方向軸B回りに円筒形又は円錐形とし得る。好ましくは、シャンク径方向中心合わせ面48は、ホルダ長手方向軸B回りに円筒形とし得る。図7に示されるように、円筒形シャンク径方向中心合わせ面48は、シャンク直径DSを有する。シャンク径方向中心合わせ面48は、シャンク部分46の軸方向長さ全体を(即ち、ホルダ後端面30から切削部分38まで)延長し得る。
【0057】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、シャンク部分46におけるホルダ外周面36は、シャンク平坦面50を含み得る。シャンク平坦面50は、締結手段を提供し、工具ホルダからインサート・ホルダ22へトルクを伝達する。シャンク平坦面50は、平坦であり、ホルダ長手方向軸Bに平行に向け得る。シャンク平坦面50は、シャンク径方向中心合わせ面48に交差し得る。シャンク径方向中心合わせ面48とは異なり、シャンク平坦面50は、ホルダ後端面30及び切削部分38から離間し得る。シャンク平坦面50は、ホルダ長手方向軸Bの方向で細長とし得る。インサート・ポケット42及び複数の溝44は、境界画定平面Dの一方の側にあってよく、シャンク径方向中心合わせ面48及びシャンク平坦面50は、境界画定平面Dのもう一方の側にあってよいことに留意されたい。
【0058】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダ外周面36は、ホルダ長手方向軸Bに横断的に向けられるホルダ中間面52を含み得る。ホルダ中間面52は、シャンク部分46から切削部分38まで径方向外側に延在し得る。ホルダ中間面52は、ホルダ長手方向軸Bの全360°の角度の延在部の周囲に延在し得る。ホルダ中間面52は、境界画定平面D内に含め得る。ホルダ中間面52は、ホルダ長手方向軸Bに直交して向けられるシャンク軸方向当接面54を含み得る。詳細には、シャンク軸方向当接面54は、境界画定平面Dを画定し得る。
【0059】
シャンク部分46の壁は、インサート・ホルダ22の重量全体を低減する1つ又は複数の重量低減空隙66を備える(更に以下では「空洞貫通凹部66」と呼ぶ)。以下で更に説明するように、シャンク部分46は、中空であり、空隙66は、中空シャンク部分46の内壁面60をその外面に接続する。
【0060】
図6a及び図6bを参照すると、インサート・ホルダ22は、インサート・ホルダ22内に形成される重量低減空洞56を含む。別の言い方をすれば、重量低減空洞56は、インサート・ホルダ22内に囲まれる。したがって、インサート・ホルダ22は中空である。重量低減空洞56は、インサート・ホルダ22の重量を低減するように設計される。以下で更に説明するように、重量低減空洞56の重量の低減は、インサート・ホルダ22の長さ部に沿って1つ又は複数の空隙66を設けることによって実現され、これにより、インサート・ホルダ22の形成に使用される材料の量を低減する。
【0061】
重量低減空洞56は、空洞チャンバ58を含む。空洞チャンバ58は、インサート・ホルダ22内に囲まれる。空洞チャンバ58は、チャンバ中心軸Fを有する。空洞チャンバ58は、ホルダ長手方向軸Bの方向で測定される空洞チャンバ長さLを有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、空洞チャンバ長さLは、シャンク部分長さLSの半分より長くし得る。チャンバ中心軸Fは、ホルダ長手方向軸Bと一致し得る。
【0062】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、空洞チャンバ58は、シャンク部分46内に完全に囲み得る。言い方を変えれば、空洞チャンバ58は、シャンク部分46内に位置し、切削部分38内に位置することがない。空洞チャンバ58は、前方向Dで切削部分38(詳細には境界画定平面D)の前に終端し得る。重量低減空洞56全体は、シャンク部分46内に位置し、切削部分38内に位置することがないことに留意されたい。
【0063】
本願の主題のいくつかの他の実施形態によれば、空洞チャンバ58は、ホルダ後面30まで開口しない場合がある。即ち、空洞チャンバ58は、後方向Dでホルダ後端面30の前に終端し得る。言い方を変えれば、空洞チャンバ58は、ホルダ後面30から離間し得る。
【0064】
特に、図6aを参照されたい。空洞チャンバ58は、チャンバ内壁面60を含む。空洞チャンバ58は、チャンバ内壁面60によって画定し得る。概して、チャンバ内壁面60は、内側を向く(即ち、チャンバ中心軸Fの方を向く)。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、チャンバ内壁面60は、2つの反対のチャンバ端面62と、2つの反対のチャンバ端面62の間に延在するチャンバ外周面64と、を含み得る。2つのチャンバ端面62の一方又は両方は、印字方向(典型的には、印字方向は、ホルダ長手方向軸Bに平行である)に対して、チャンバ中心軸Fに向かって内側に傾斜し得る(例えば、円錐形状を有する)。このことにより、(支持構造を必要とする)チャンバ端面62が平坦で印字方向に直交する場合と比較して、印字をより容易にする。チャンバ外周面64は、チャンバ中心軸F回りに延在し得る。即ち、チャンバ外周面64は、径方向で(即ち、チャンバ中心軸Fに対して)空洞チャンバ58の境界を画定し得る。チャンバ外周面64は、チャンバ中心軸F回りに円筒形とし得る。円筒形チャンバ外周面64は、チャンバ直径DCを有する。図7を参照すると、チャンバ直径DCは、シャンク直径DSの4分の1より大きく、シャンク直径DSの4分の3より小さくし得る。チャンバ直径DCは、シャンク直径DSの半分と等しくし得る。
【0065】
重量低減空洞56は、複数の空洞貫通凹部66を含む。各空洞貫通凹部66は、凹部中心軸Cに沿って延在する。有利には、複数の空洞貫通凹部66は、インサート・ホルダ22の重量を更に低減する。更に、複数の空洞貫通凹部66は、印字されなかった紛体が空洞チャンバ58を出る経路をもたらす。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、空洞貫通凹部66のそれぞれは、凹部中心軸C回りに延在する凹部内壁面68を含み得る。
【0066】
図7を参照されたい。複数の空洞貫通凹部66は、複数の内側凹部開口70を形成するようにチャンバ内壁面60に開口する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の空洞貫通凹部66は、複数の内側凹部開口70を形成するように円筒形チャンバ外周面64に開口し得る。言い方を変えれば、複数の内側凹部開口70は、円筒形チャンバ外周面64に位置し得る。
【0067】
複数の空洞貫通凹部66は、複数の外側凹部開口72を形成するようにシャンク径方向中心合わせ面48に開口する。言い方を変えれば、複数の外側凹部開口72は、シャンク径方向中心合わせ面48に位置し得る。図5aに示されるように、複数の外側凹部開口72(好ましくは、複数の空洞貫通凹部66全体)は、シャンク平坦面50の軸方向寸法内に位置し得る。
【0068】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、凹部中心軸Cは、ホルダ長手方向軸B回りに直交して延在し得る。凹部中心軸Cは、径方向で(即ち、ホルダ長手方向軸Bに対して)延在し得る。更に、ホルダ長手方向軸Bに直交し、複数の空洞貫通凹部66に交差する径方向平面で取られる断面(即ち、図7)において、各空洞貫通凹部66は、凹部中心軸Cに沿って線形に延在し得る。
【0069】
次に、図5aに戻って参照されたい。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、各空洞貫通凹部66は非円筒形とし得る。各空洞貫通凹部66は、2つの反対の貫通凹部端部74を含み得る。2つの貫通凹部端部74は、凹部内壁面68に沿ってそれぞれの内側凹部開口70とそれぞれの外側凹部開口72との間に位置し得る。2つの貫通凹部端部74は、凹部中心軸Cに沿った図において互いに反対とし得る。各空洞貫通凹部66は、細長い貫通凹部中間部分76を含むことができ、細長い貫通凹部中間部分76は、ホルダ長手方向軸(B)に沿った方向で2つの反対の貫通凹部端部74の間で長さ方向に延在する。したがって、各空洞貫通凹部66は、細長く、貫通溝を形成し得る。貫通溝は、スリット状構成を有し得る。そのような細長い空洞貫通凹部66は、対応する細長い内側凹部開口70と外側凹部開口72とを有し得る。
【0070】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の空洞貫通凹部66の所与の1つに関し、2つの貫通凹部端部74の一方は、2つの貫通凹部端部74のもう一方より切削部分38に近くし得る。したがって、図5aに示されているように、2つの貫通凹部端部74は、ホルダ長手方向軸Bに沿って互いから軸方向に離間し、軸方向前方貫通凹部端部74fと軸方向後方凹部端部74rとを含み得る。更に、いくつかの実施形態では、対応する貫通凹部中間部分76は、らせん経路を辿り得るので、2つの貫通凹部端部74f、74rも、互いから円周方向に離間し得る。
【0071】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の空洞貫通凹部66は、ホルダ長手方向軸B回りに(好ましくは均等に)角度を付けて離間し得る。好ましくは、複数の空洞貫通凹部66は、N個の空洞貫通凹部66を含むことができ、Nは、条件5≦N≦9を満たす正の整数である。図示される非限定的な例では、Nは7に等しい。
【0072】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の空洞貫通凹部66は、ホルダ長手方向軸B回りにらせん状に延在し得る。らせん状に延在する各空洞貫通凹部66は、凹部ねじれ角θを有する。凹部ねじれ角θは、20°以上、40°以下とし得る。好ましくは、凹部ねじれ角θは、25°以上、35°以下とし得る。まだ好ましくは、凹部ねじれ角θは30°に等しくし得る。図4に戻ると、複数のらせん溝44は、らせん状に延在する複数の空洞貫通凹部66と同じ意味でらせん状に延在し得る。
【0073】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート・ホルダ22は、複数のシャンク支持部材78を含み得る。複数空洞貫通凹部66は、複数のシャンク支持部材78によって角度を付けて離間し得る。それぞれ円周方向に隣接する対の空洞貫通凹部66は、それぞれのシャンク支持部材78によって離間し得る。したがって、シャンク径方向中心合わせ面48の円周方向において、複数の空洞貫通凹部66は、シャンク支持部材78によって互いから隔て得る。概して、複数のシャンク支持部材78及び複数の空洞貫通凹部66は、ホルダ長手方向軸B回りにシャンク径方向中心合わせ面48に沿って互いに交互とし得る。支持部材78の数は、空洞貫通凹部66の数と一致し得る(又は以下で説明するシャンク平坦面が存在する場合、1つ少ない)。複数の支持部材78は、金属切削動作を実施するのに十分な強度及び剛性をインサート・ホルダ22にもたらす。複数のシャンク支持部材78は、シャンク径方向中心合わせ面48によって径方向外側に境界を画定されることに留意されたい。
【0074】
図5A及び図5Bを参照されたい。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数のシャンク支持部材78は、細長く、リブ状構成を有し得る。各シャンク支持部材78におけるシャンク径方向中心合わせ面48は、円周方向で(ホルダ長手方向軸B回りで)それぞれの外側凹部開口72より広くし得る。ホルダ長手方向軸Bに直交し、複数のシャンク支持部材78に交差する径方向平面で取られる断面(即ち、図7)において、複数のシャンク支持部材78のそれぞれは、環状区分基本形状を有し得る。即ち、基本形状は、1つの環の一区分の形状とし得る。基本形状は、2つの反対のくさび(即ち、収束する)周囲縁部及び2つの反対の湾曲周囲縁部から形成される。環の内側円及び外側円は、シャンク径方向中心合わせ面48及びチャンバ外周面64と同心であることがない。環の一区分の角は、湾曲し得る。また、そのような図において、シャンク支持部材78の円周方向に隣接する対は、一定の凹部距離dによって離間し得る。凹部距離dは、条件1mm≦d≦4mmを満たし得る。凹部距離dは、接線方向で測定される空洞貫通凹部66の幅に等しいことに留意されたい。また更にそのような図において、各シャンク支持部材78は、ホルダ長手方向軸B回りに(シャンク径方向中心合わせ面48において)シャンク支持部材角度αを画定する角度範囲を有し得る。シャンク支持部材角度αは、N個の空洞貫通凹部及び凹部距離dに依存し得る。図示のこの非限定的な例では、シャンク支持部材角度αは、30°を超え50°未満とし得る。らせん状に延在する空洞貫通凹部66を有する構成において、複数のシャンク支持部材78も、ホルダ長手方向軸B回りにらせん状に延在し得ることに留意されたい。
【0075】
図5bに最良に示されるように、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、シャンク平坦面50は、複数の空洞貫通凹部66の少なくとも1つが切頭される(即ち、他の空洞貫通凹部66に対して短縮した長さを有する)ように、複数の空洞貫通凹部66の少なくとも1つの投射経路Pに交差し得る。言い方を変えれば、複数の空洞貫通凹部66は、少なくとも1つの切頭空洞貫通凹部66aを含み得る。投射経路Pは、シャンク部分46回りにらせん形とし得る。いくつかの構成において、複数の空洞貫通凹部66は、複数の切頭空洞貫通凹部66aを含み得る。図示されるこの非限定的な例において、シャンク平坦面50は、4つの空洞貫通凹部66、即ちシャンク平坦面50の片側の2つに厳密に交差する(即ち、厳密に4つの切頭空洞貫通凹部66aがある)。
【0076】
短縮されない各空洞貫通凹部66’(即ち、切頭されない空洞貫通凹部66a)に関し、2つの貫通凹部端部74の一方は、ホルダ後端面30より切削部分38に近くし得る。2つの貫通凹部端部74のもう一方は、切削部分38よりホルダ後端面30に近くし得る。複数の外側凹部開口72は、シャンク平坦面50上に位置しなくてよいことに留意されたい。更に、シャンク平坦面50から径方向内側にあるシャンク部分46は、空洞貫通凹部66が一切なくてよいが、冷却流体を搬送する手段(例えば、冷却通路66)が存在し得る。有利には、このことにより、インサート・ホルダ22の強度及び剛性を改善する。空洞貫通凹部66が切頭であることにより、隣接するシャンク支持部材78も切頭し得ることにも留意されたい。
【0077】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート・ホルダ22は、平坦支持部材78bを含む。平坦支持部材78bは、リブ状構成を有さなくてよい。平坦支持部材78bは、2つの空洞貫通凹部66の間に(ホルダ長手方向軸B回りに)角度を付けて位置し、シャンク平坦面50の一部分を組み込む。複数のシャンク支持部材78は、シャンク平坦面50を組み込まなくてよいことに留意されたい。複数の空洞貫通凹部66は、複数の切頭空洞貫通凹部66aを含み得る。平坦支持部材78bは、2つの切頭空洞貫通凹部66aの間に位置し得る。
【0078】
空洞チャンバ58の空洞チャンバ長さLに沿って、複数の空洞貫通凹部66は、シャンク径方向中心合わせ面48の表面積の10%~40%の間を占める。したがって、空洞チャンバ58の空洞チャンバ長さLに沿って、シャンク支持部材78は、シャンク径方向中心合わせ面48の表面積の半分を十分に超えて占め、シャンク部分46の剛性の保証を助ける。この割合の材料を除去することは、インサート・ホルダの剛性を損なわずに、インサート・ホルダ22内で意味のある重量低減をもたらす(及び材料を節約する)。また、上記の割合範囲に対して、シャンク平坦面50は、存在する場合、シャンク径方向中心合わせ面48の一部とみなされないことを理解されたい。
【0079】
図11を参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート・ホルダ22は、冷却導管80を含み得る。冷却導管80は、冷却流体を切削領域に供給する役割を果たす。冷却導管80は、複数の冷却通路82を含み得る。各冷却通路82は、互いに流体連通する通路入口84と通路出口86とを有する。各通路入口84は、シャンク部分46におけるホルダ後端面30又はホルダ外周面36に位置し得る。好ましくは、各通路入口84は、ホルダ後端面30に位置し得る。図7に戻ると、各冷却通路82は、それぞれのシャンク支持部材78を通過し得る。即ち、各冷却通路82は、それぞれのシャンク支持部材78内に少なくとも部分的に囲まれ得る。(複数の冷却通路82を含む)冷却導管80全体は、重量低減空洞56から離間し得ることに留意されたい。
【0080】
冷却導管80は、冷却槽88を含み得る。図6aに示されるように、冷却槽88は、空洞チャンバ58の前方でインサート・ホルダ22内に囲まれ得る。冷却槽58は、槽内壁面90を含み得る。各通路出口86は、槽内壁面90に位置し得る。冷却剤は、冷却槽88から冷却出口通路92を介して切削領域に到達し得る。
【0081】
本発明の別の態様は、工具組立体に関する。工具組立体は、工具前面を有する工具ホルダを含む。工具ホルダは、工具前面に凹む工具受入れ凹部を含む。工具受入れ凹部は、凹部当接面を含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、シャンク部分46は、工具受入れ凹部内に位置し、工具受入れ凹部内に解放可能に締結し得る。シャンク径方向中心合わせ面48は、凹部当接面に当接し得る。シャンク軸方向当接面54は、工具前面に当接し得る。
【0082】
本願の主題をある程度詳細に説明してきたが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な改変形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。
【0083】
例えば、凹部ねじれ角θが十分に大きい場合、シャンク平坦面50は、複数の空洞貫通凹部の少なくとも1つの投射経路Pに交差でき、複数の空洞貫通凹部66の前記少なくとも1つが中断されるようにする。「中断される」空洞貫通凹部66は、2つの貫通凹部の端部74の間に非連続的に延在するものであることに留意されたい。即ち、そのような空洞貫通凹部66は、同じ投射経路P上にある2つ以上の副凹部から形成される。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】