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特表2024-544372車両の電気駆動ユニットのための循環サンプ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】車両の電気駆動ユニットのための循環サンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20241122BHJP
【FI】
F16H57/04 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533270
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022082895
(87)【国際公開番号】W WO2023117268
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021133902.2
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クランク・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ・ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイディンガー・フェルディナント
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AC01
3J063BA11
3J063BB39
3J063XD03
3J063XD15
3J063XD16
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD43
3J063XD47
3J063XD54
3J063XD62
3J063XE18
3J063XE22
3J063XF14
(57)【要約】
本発明は、潤滑剤により潤滑および/または調温することができる自動車の電気駆動ユニットのための循環サンプ装置であって、第一の軸方向領域および第二の軸方向領域を有する潤滑剤溜めと、下側に延在するとともに潤滑剤流出口を介して潤滑剤溜めに接続されている潤滑剤リザーバと、潤滑剤溜めの第二の軸方向領域から潤滑剤リザーバに潤滑剤を圧送するように構成された潤滑剤溜めポンプ導管とを備えた循環サンプ装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤(S)により潤滑および/または調温することができる自動車の電気的な駆動ユニット(1)のための循環サンプ装置(10)であって、
- 第一の軸方向領域(A1)および第二の軸方向領域(A2)を有する潤滑剤溜め(12;12.1,12.2)と、
- 前記第一の軸方向領域において前記潤滑剤溜め(12)の下側に延在するとともに、潤滑剤流出口(16)を介して前記潤滑剤溜めに接続されている潤滑剤リザーバ(14)と、
- 前記潤滑剤溜めの前記第二の軸方向領域から前記潤滑剤リザーバに潤滑剤を圧送するように構成された潤滑剤溜めポンプ導管(18)と、
を備えた循環サンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の循環サンプ装置において、
前記第一の軸方向領域には、前記駆動ユニットのステータコアの第一の側にあるステータコイルエンド(20.1)が位置し、前記第二の軸方向領域には、第二の側にあるステータコイルエンド(20.2)が位置していることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の循環サンプ装置において、
前記潤滑剤溜めポンプ導管内にリザーバポンプ(22)が配置されていることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の循環サンプ装置において、
前記潤滑剤溜めポンプ導管は、前記第二の軸方向領域において、機械ハウジング(4)および/または前記潤滑剤溜めの、ステータコアから離れている方の軸方向端部から延出するように配置されていることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の循環サンプ装置において、
前記潤滑剤流出口は、前記第一の軸方向領域において、機械ハウジングおよび/または前記潤滑剤リザーバおよび/または前記潤滑剤溜めの、ステータコアから離れている方の軸方向端部に配置されていることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の循環サンプ装置において、
前記潤滑剤リザーバからの送給出口(24)が、前記潤滑剤流出口の軸方向位置に或いはその近傍に配置されていることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の循環サンプ装置において、
前記潤滑剤リザーバは、前記第二の軸方向領域にも延在していることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の循環サンプ装置において、
前記潤滑剤リザーバには、隔壁(26)、特にバッフルプレートまたはその他の、流れを妨げるものが配置され、前記潤滑剤溜めポンプ導管の圧縮オイル入口(28)と、前記潤滑剤リザーバからの前記送給出口とが、前記隔壁の同じ側に配置されていることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の循環サンプ装置において、
前記隔壁は、前記第一の軸方向領域、特に前記送給出口から前記第二の軸方向領域に向かう潤滑剤の流れを妨げるように構成されていることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の循環サンプ装置において、
前記潤滑剤リザーバと、前記潤滑剤溜めの前記第二の軸方向領域との間には、潤滑剤液位の均等化および/または前記潤滑剤リザーバのエア抜きのために設けられた接続導管(30)が備えられていることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の循環サンプ装置において、
前記送給出口から延出する送給導管(34)内に配置された送給ポンプ(32)と、前記リザーバポンプとは、特にニ段式の潤滑剤ポンプとして、共通のポンプ駆動部を備えて形成されていることを特徴とする循環サンプ装置。
【請求項12】
自動車のための電気的な駆動ユニット(1)であって、機械ハウジング(4)内に電気的な駆動機械(2)を備えるとともに、トランスミッションケース(8)内にトランスミッション(6)を備える駆動ユニットにおいて、
請求項1から11のいずれかに記載の循環サンプ装置(10)を特徴とする駆動ユニット。
【請求項13】
請求項12に記載の電気的な駆動ユニットにおいて、
前記機械ハウジング内の前記循環サンプ装置の前記潤滑剤溜めは、前記駆動機械のステータコアの両側に形成されているか、或いは、前記トランスミッションケースのトランスミッション潤滑剤溜めが、前記機械ハウジング内の前記循環サンプ装置の前記潤滑剤溜めへの溢出により空になり得るかの少なくともいずれかであることを特徴とする電気的な駆動ユニット。
【請求項14】
請求項12または13に記載の電気的な駆動ユニットにおいて、
前記潤滑剤リザーバは、前記機械ハウジングの下側に配置され、前記送給出口と、前記潤滑剤溜めポンプ導管の始端との間において、当該駆動ユニットの横方向に延在していることを特徴とする電気的な駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の電気駆動ユニットのための循環サンプ装置並びに電気駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両設計思想において、電気的な駆動機械は、車両後部において、トランクルームの下に(場合により、トランスミッション用でもある共通のハウジング構造体内に)ある。それにもかかわらず、できるだけ大きなトランクルームの容量および/または3列目のシートを可能にしなければならない。同時に、電気的な駆動部を備えた自動車では、効率上の理由から、閉じたアンダーボディとディフューザが必要である。
【0003】
そのため、例えば特許文献1から公知となっているような循環サンプ装置は、z方向の直列寸法(Masskette)に対する要求が高い自動車には適してないか或いは適していても限定的でしかない。
【0004】
逆に言えば、このとき電気駆動ユニットは、極めて小さなz方向の直列寸法の中に組み込まれなければならない。このz方向の直列寸法が制限されていることに起因して、潤滑剤溜め(オイル溜めでもある。というのも、駆動機械またはトランスミッション付きの駆動ユニット全体に対する潤滑剤および/または調温剤としてオイルが用いられることが多いからである。)は、電気機械の下に配置すること(こうすれば、オイルを流出させることができるようにもなる。)ができず、側方に置かざるを得ない。このように側方に置くと、或る条件下で、横方向の加速度がかかるときに確実なオイル吸引に支障が生じかねない。というのも、一のカーブ方向におけるコーナリング時には、伝動装置内にオイルが滞留し、他のカーブ方向におけるコーナリング時には、電気機械内にオイルが滞留し、オイルを吸引する領域に流出して行かないからである。オイルが吸引されないままだと、駆動部品が、少なくとも潤滑不足やオーバーヒートのいずれかに陥ることになる。
【0005】
特に、スポーティに走る傾向のドライバにとっては、高い横方向の動的性能はかなり重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016215423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景のもとに、本発明の課題は、自動車の電気駆動ユニットのための循環サンプ装置を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いずれの独立請求項も、その特徴部によって、この課題を解決する主題を特定する。従属請求項は、本発明の有利な発展態様に関する。
【0009】
一態様により、潤滑剤、特にオイルにより潤滑および/または調温することができる自動車の電気駆動ユニットのための循環サンプ装置が開示される。循環サンプ装置は、少なくとも以下を備えている:
(a)第一の軸方向領域および第二の軸方向領域を有する潤滑剤溜め。これは、駆動ユニットの、或いは、例えば駆動機械またはトランスミッションなどの駆動ユニットの構成要素の、トランスミッション室内に配置することができる。
(b)第一の軸方向領域において潤滑剤溜めの(重力の作用方向および/または車高方向を基準としたときの)下側に延在するとともに、潤滑剤流出口を介して潤滑剤溜めに接続されている潤滑剤リザーバ、つまり、特に潤滑剤溜めの第一の軸方向部位と潤滑剤リザーバの第一の軸方向部位との間に配置されている潤滑剤流出口を介して接続されている潤滑剤リザーバ。
(c)潤滑剤溜めの第二の軸方向領域から潤滑剤リザーバに、特に、第一の軸方向領域における潤滑剤リザーバが配置されている場所に潤滑剤を圧送する、特にリザーバポンプにより圧送するように構成された潤滑剤溜めポンプ導管。
【0010】
一実施形態によれば、駆動機械の駆動軸は、車両横手方向に延びているので、潤滑剤溜めの第一および第二の軸方向領域は、特に、その車両横手方向位置に違いがある。
【0011】
このような循環サンプ装置を用いることで、どのカーブ方向であれ、大きな横方向の加速度を伴うダイナミックなコーナリングのときでも、駆動ユニットの動作のための潤滑剤および/または冷却剤の確実な送給が保証されている。このことは、まさにダイナミックな走法のときには、高い潤滑性能および/または冷却性能が必要となるため一層重要である。
【0012】
加えて、本発想は、電気駆動ユニットにおいて、それも特にz寸法に制限がある場合に、必要なオイル量の大幅な削減につながるが、これはコストと重量のメリットを意味する。
【0013】
さらに他の態様によれば、自動車のための電気的な駆動ユニットであって、機械ハウジング内に電気的な駆動機械を備えるとともに、トランスミッションケース内にトランスミッションを備える駆動ユニットにおいて、機械ハウジングとトランスミッションケースとは、例えば、潤滑剤の溢出部により互いに接続された複数のトランスミッション室を備えることができ、それらに、駆動ユニットのそれぞれの構成要素が収容されている駆動ユニットが開示される。こうして、例えば、トランスミッション潤滑剤溜めに集積した潤滑剤は、十分に集積したときおよび/またはさらに適切な車両の傾きがあるときに、本発明の一実施例により、循環サンプ装置の潤滑剤溜めに流出することができる。
【0014】
電気駆動ユニットは、駆動ユニットに潤滑剤を確実に供給することを保証するために、本発明の一実施形態による循環サンプ装置を備えている。
【0015】
一実施形態によれば、機械ハウジング内の循環サンプ装置の潤滑剤溜めは、駆動機械のステータコアの両側に形成されているか、或いは、トランスミッションケースのトランスミッション潤滑剤溜めが、機械ハウジング内の循環サンプ装置の潤滑剤溜めへの溢出により空になり得るかの少なくともいずれかである。
【0016】
これにより、本発明は、機械-トランスミッションが組み合わされたものに対する循環サンプ装置にも適用することができる。
【0017】
一実施形態によれば、潤滑剤リザーバは、機械ハウジングの下側に配置され、送給出口と、潤滑剤溜めポンプ導管の始端との間において、駆動ユニットの横方向に、特に自動車に組み込まれた後は車両横方向に延在している。
【0018】
本発明は、とりわけ、循環サンプ装置により、電気機械の横方向の第一の側から、横方向の他方の側へ、潤滑剤溜めの下側の潤滑剤リザーバ内に潤滑剤を循環させるという考えに基づいている。左コーナリングのときも、右コーナリングのときも、そこから必ず吸引を行うことができる。
【0019】
電気的な駆動機械は、ここでは、一実施形態により、車両の横方向に延びるロータ回転軸とともに組み込まれ、これにより、潤滑剤溜めの第一の軸方向部位が、ステータコアの一方の側の領域を含み、潤滑剤溜めの第二の軸方向部位が、ステータコアの他方の側の領域を含むようになっている。
【0020】
機械ハウジング内には、一実施形態により、ステータコアの両側に二つの部分に分けて配置されている潤滑剤溜めがある。潤滑剤溜めの第一の軸方向部位の下側には、重力により潤滑剤が流れ込むことのできる潤滑剤リザーバがある。この潤滑剤リザーバから、送給出口から延出する送給導管内に配置された送給ポンプが、冷却および/または潤滑のために、必要箇所に向けて潤滑剤を送給する。潤滑剤溜めの第二の軸方向部位には、一切リザーバが(或いは極めて小さいものしか)ない。ここから潤滑剤が吸い出され、潤滑剤溜めの第一の軸方向部位の下側の潤滑剤リザーバに循環される。断面の小さな接続導管を備えていてもよく、潤滑剤ポンプを停止したときの潤滑剤溜めのエア抜きと潤滑剤液位の均等化が可能になる。
【0021】
一実施形態によれば、本発想は、コスト上の理由から、リザーバポンプの機能も送給ポンプの機能も満たすことのできるニ段式の潤滑剤ポンプを使用する。ここで、一実施形態により、モータは一つだけ使用され、その軸に二つの潤滑剤送給装置が取り付けられている。
【0022】
一実施形態によれば、バッフルプレートが、コーナリング時、特に、ダイナミックな方向転換時に、潤滑剤の循環路の加圧域(Druckstufe)に空気が吸い込まれるのを防ぐ。
【0023】
一実施形態によれば、第一の軸方向領域には、駆動ユニットのステータのステータコアの第一の側にあるステータコイルエンドが位置し、第二の軸方向領域には、第二の側にあるステータコイルエンドが位置する。機械ハウジング内のこれらの軸方向位置には、カーブ方向においてその都度、特に大量の潤滑剤が集まるため、そこから、特に良好に、この潤滑剤をさらなる潤滑および/または冷却動作のための送給部に供給することができる。
【0024】
一実施形態によれば、潤滑剤溜めポンプ導管内には、リザーバポンプが配置されている。
【0025】
一実施形態によれば、潤滑剤溜めポンプ導管は、第二の軸方向領域において、駆動ユニットの機械ハウジングおよび/または潤滑剤溜めの、ステータコアから離れている方の軸方向端部から延出するように配置され、つまりそこから、潤滑剤溜めの第二の軸方向領域からの潤滑剤を汲み出すことがきる。これにより、潤滑剤が第二の軸方向領域に集積しても、送給ポンプにより、第一の軸方向領域から潤滑剤を十分に送給部に供給することができる。
【0026】
一実施形態によれば、潤滑剤流出口は、第一の軸方向領域において、駆動ユニットの機械ハウジングおよび/または潤滑剤リザーバおよび/または潤滑剤溜めのステータコアから離れている方の軸方向端部に配置されている。これにより、潤滑剤が第一の軸方向領域に集積しても、送給ポンプにより、第一の軸方向領域から潤滑剤を十分に送給部に供給することができる。
【0027】
一実施形態によれば、潤滑剤リザーバからの送給出口、特に、潤滑剤リザーバから送給ポンプ(これは、潤滑および/または冷却対象の駆動ユニットの構成要素に、送給導管を介して潤滑剤を供給するように構成されている)への潤滑剤の導出のための送給出口は、潤滑剤流出口の軸方向位置に或いはその近傍に配置されている。これにより、形状、潤滑剤流量などといったその他の仕様に応じて、送給区間の始まりにおける潤滑剤の送給ポンプへの最適な供給を実現できる。
【0028】
一実施形態によれば、潤滑剤リザーバは、第二の軸方向部位にも延在している。これにより、潤滑剤リザーバの容量を大きくすることができる。
【0029】
一実施形態によれば、潤滑剤リザーバには、隔壁、特にバッフルプレートまたはその他の、流れを妨げるものが配置され、潤滑剤溜めポンプ導管の圧縮オイル入口と、潤滑剤リザーバからの送給出口とが、この隔壁の同じ側に配置されている。これにより、多くの動作状態において、送給区間の側において、隔壁の他方の側におけるよりも、潤滑剤による液位をより高いものにすることができる。これは、潤滑剤リザーバへの全ての取入口が送給側に配置されており、しかも、隔壁により、隔壁の他方の側にある潤滑剤リザーバの部分に向かう流れを妨げるものが配置されていることによる。
【0030】
一実施形態によれば、隔壁は、第一の軸方向領域、特に送給出口から第二の軸方向領域に向かう潤滑剤の流れを妨げるように構成されている。
【0031】
一実施形態によれば、潤滑剤リザーバと、潤滑剤溜めの第二の軸方向領域との間、特に、潤滑剤溜めポンプ導管から離れた側には、潤滑剤液位の均等化および/または潤滑剤リザーバのエア抜きのために設けられた接続導管が備えられている。
【0032】
一実施形態によれば、送給出口から延出する送給導管内に配置された送給ポンプと、リザーバポンプとは、特にニ段式の潤滑剤ポンプとして、共通のポンプ駆動部を備えて形成されている。これにより、設置スペース、駆動出力、重量を節約し、堅牢性を得ることができる。
【0033】
本発明のさらなる長所および応用の可能性は、図面に関する以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】横方向加速度がないときの本発明の例示的な構成による循環サンプ装置を備えた電気駆動ユニットを概略的に示す図である。
図2図1の循環サンプ装置の潤滑剤リザーバの上面図である
図3】第一のカーブ方向に大きな横方向加速度がかかっているときの潤滑剤の分布を図1の視点で示す図である。
図4】第一のカーブ方向とは逆に作用する第二のカーブ方向に大きな横方向加速度がかかっているときの潤滑剤の分布を図1の視点で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、機械ハウジング4内の電気的な駆動機械2と、トランスミッションケース8内の駆動機械2のトランスミッション6とを備えた、自動車用の電気的な駆動ユニット(電気駆動ユニット)1を示す。電気駆動ユニットは、潤滑剤Sにより潤滑可能および調温可能とされており、そのために循環サンプ装置10を備えている。
【0036】
循環サンプ装置10は、潤滑剤溜め12を備えており、この潤滑剤溜めが、第一の軸方向領域A1(そこに配置された潤滑剤溜めの部分の符号:12.1)に形成されているとともに、第二の軸方向領域A2(そこに配置された潤滑剤溜めの部分の符号:12.2)に形成されている。
【0037】
循環サンプ装置10の潤滑剤溜め12は、機械ハウジング4内において、駆動機械2のステータコアの両側に形成されている。
【0038】
トランスミッションケース8のミッション潤滑剤溜めは、機械ハウジング4内の循環サンプ装置10の潤滑剤溜め12.1への溢出により空になり得る。
【0039】
潤滑剤リザーバ14は、機械ハウジング4の下側に配置され、送給出口24と潤滑剤溜めポンプ導管18の始点との間において、駆動ユニット1の横方向に延在している。
【0040】
第一の軸方向領域A1には、ステータコアの第一の側にあるステータコイルエンド20.1が位置している。第二の軸方向領域A2には、駆動ユニット1の第二の側にあるステータコイルエンド20.2が位置している。
【0041】
さらに、循環サンプ装置10は、潤滑剤リザーバ14を備えているが、この潤滑剤リザーバは、第一の軸方向領域A1において潤滑剤溜め12の下側に延在しており、潤滑剤流出口16を介して潤滑剤溜めに接続されている。
【0042】
循環サンプ装置10はまた、潤滑剤溜め12.2の第二の軸方向領域A2から延出する潤滑剤溜めポンプ導管18を備え、この潤滑剤溜めポンプ導管が、潤滑剤溜め12.2の第二の軸方向領域A2から潤滑剤リザーバ14に潤滑剤Sを圧送するように構成されている。そのために、潤滑剤溜めポンプ導管18には、リザーバポンプ22が配置されている。
【0043】
潤滑剤溜めポンプ導管18は、第二の軸方向領域A2において、ステータコアから離れている方の機械ハウジング4の軸方向端部から延出するように、つまり、特に、高さ方向に延びる機械ハウジングのハウジング壁部(特にB壁)近くに配置されている。
【0044】
潤滑剤流出口16は、第一の軸方向領域A1において、ステータコアから離れている方の機械ハウジング4の軸方向端部に、つまり、特に、高さ方向に延びる機械ハウジングのハウジング壁部(特に、同時にトランスミッションケース8に対する潤滑剤溢出部としても機能するA壁)近くに配置されている。
【0045】
潤滑剤リザーバ14からの送給出口24が、潤滑剤流出口16の軸方向位置に配置されている。潤滑剤リザーバ14は、第二の軸方向部位A2内にも延在している。
【0046】
潤滑剤リザーバ14内には、本実施例ではバッフルプレートとして形成されている隔壁26が配置されている。潤滑剤溜めポンプ導管18の圧縮オイル入口28と、潤滑剤リザーバ14からの送給出口24とは、隔壁26の同じ側に配置され、ここでは、いずれも図における隔壁の左側に配置されている。
【0047】
特に図2の詳細図から分かるように、送給出口24に潤滑剤Sがより一層好適に位置するように、隔壁26は、本例では、圧縮オイル入口28の周りに湾曲するように実現されている。これにより、隔壁26はまた、第一の軸方向領域A1、特に送給出口24から第二の軸方向領域A2に向かう潤滑剤Sの流れを妨げるように構成されている。
【0048】
こうして、重要な動作場面において、変更される潤滑剤Sが基本的に十分に送給出口24に提供され、その結果、駆動ユニット1が常に潤滑および冷却され得るようになる。
【0049】
目立った横方向の加速度がないときの動作状態では、既存の量の潤滑剤Sと重力の作用で問題なく送給装置24において十分な潤滑剤Sの利用が可能になり、それにより、潤滑剤は、出口フィルタ25を通して連続的に送給することができる。この動作状態が図1に示されている。
【0050】
図3には、急な右カーブのときの(つまり、第一のカーブ方向にかなりの横方向加速度がかかって)寄せ集められた潤滑剤Sの配置が示されており、潤滑剤溜め12.1の下方の、機械ハウジング4の左横の端に送給出口24が配置されていることで、第一の軸方向領域A1には、送給ポンプ32により送給する潤滑剤が十分に送給出口24に用意されていることが分かる。
【0051】
図4には、急な左カーブのときの(つまり、第二のカーブ方向にかなりの横方向加速度がかかって)寄せ集められた潤滑剤Sの配置が示されており、リザーバポンプ22により潤滑剤Sを送給出口24に供給することが、いかなる横方向加速度のときにも、潤滑剤Sが基本的に十分に送給出口24に用意される程度に改善されることが分かる。
【0052】
潤滑剤リザーバ14と、潤滑剤溜め12.2の第二の軸方向領域A2との間には、潤滑剤液位の均等化および潤滑剤リザーバ14のエア抜きのために設けられた接続導管30が備えられている。
【0053】
送給出口24から延出する送給導管34内に配置された送給ポンプ32と、リザーバポンプ22とは、ここではニ段式の潤滑剤ポンプとして、共通のポンプ駆動部を備えて形成されている。
【0054】
こうして、送給ポンプ32は、自動車の横方向加速度に関係なく、潤滑対象および/または冷却対象の駆動ユニット1の構成部品に確実に潤滑剤Sを供給する。
【符号の説明】
【0055】
1 電気駆動ユニット
2 電気的な駆動機械
4 機械ハウジング
6 トランスミッション
8 トランスミッションケース
10 循環サンプ装置
12;12.1,12.2 潤滑剤溜め
14 潤滑剤リザーバ
16 潤滑剤流出口
18 潤滑剤溜めポンプ導管
20.1,20.2 ステータコイルエンド
22 リザーバポンプ
24 送給出口
25 出口フィルタ
26 隔壁
28 圧縮オイル入口
30 接続導管
32 送給ポンプ
34 送給導管

S 潤滑剤
A1 第一の軸方向領域
A2 第二の軸方向領域

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】