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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】発酵アセロラ飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/84 20060101AFI20241122BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241122BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241122BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20241122BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20241122BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALN20241122BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
A23L2/84 101
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23L2/02 A
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6895 Z
C12N1/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533308
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022085344
(87)【国際公開番号】W WO2023117528
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216398.4
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22151536.4
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジユアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, ジェローン アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】モッカンド, シリル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ, アクセル
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4B117
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA18
4B065AA77X
4B065AC20
4B065BB26
4B065CA41
4B065CA42
4B117LC03
4B117LC04
4B117LE01
4B117LE08
4B117LG05
4B117LK06
4B117LK23
4B117LP01
4B117LP02
4B117LP03
4B117LP05
4B117LP17
(57)【要約】
本発明は、発酵アセロラ又は発酵アセロラ抽出物を含む飲料組成物に関する。本発明の更なる態様は、飲料組成物の調製方法である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-メチルブチルアセテートと、2-メチルブチルアセテートと、酢酸イソブチルと、2-フェニルエチルアセテートと、2-フェニルエタノールとの合計の、2,3-ブタンジオンに対する重量比が150より大きい、発酵アセロラ又は発酵アセロラ抽出物を含む飲料組成物。
【請求項2】
2-フェニルエチルアセテートと2-フェニルエタノールとの合計の、2-フェニルアセトアルデヒドに対する重量比が3000より大きい、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項3】
1.2重量%未満のエタノール含量を有する、請求項1又は2に記載の飲料組成物。
【請求項4】
前記飲料組成物が、レディ・トゥ・ドリンク飲料、飲料液濃縮物、可溶性飲料粉末、乾燥させた芳香性植物材料及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料組成物。
【請求項5】
飲料調製装置で使用するための容器であって、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料組成物を収容する容器。
【請求項6】
アセロラ水性抽出物を発酵させることを含む、飲料組成物の調製方法であって、前記発酵がピキア酵母を含む酵母によって行われる、方法。
【請求項7】
前記ピキア酵母が、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ピキア酵母が、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ピキア酵母が、配列番号1~12の組み合わせに対して少なくとも98%の全体的なヌクレオチド同一性を有する遺伝子配列を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記発酵が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の非存在下で行われる、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
浸漬されたアセロラから前記アセロラ水性抽出物を発酵後に分離することを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アセロラ水性抽出物の前記発酵中に存在する浸漬されたアセロラが、発酵後に前記アセロラ水性抽出物と一緒に乾燥される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記飲料組成物が、請求項1~4のいずれか一項に記載のものである、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
飲料を製造するための、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)で発酵させたアセロラの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵アセロラ又は発酵アセロラ抽出物を含む飲料組成物に関する。本発明の更なる態様は、飲料組成物の調製方法である。
【0002】
[背景技術]
アセロラは、アスコルビン酸を豊富に含む天然の供給源であり、カロテノイド、フェノール、アントシアニン及びフラボノイドのような植物栄養素を多量に含有する。その風味プロファイルは、通常は酸っぱさ及び渋味であり、味は季節の移り変わりにより変化し得る。アセロラは、通常、その好ましさを向上させるために、パイナップルやマンゴーのような甘い果物の果汁及びピューレとブレンドすること、又は砂糖で甘みをつけることが必要とされる。
【0003】
多くの人々は、飲料に新しい風味と甘味を望むが、香料(flavouring)、特に合成香料が添加された飲料又は砂糖の入った果汁飲料を摂取することを好まないだろう。したがって、風味の複雑さが追加され、渋味及び酸っぱさが少ないアセロラ飲料の提供には、商業的価値がある。
【0004】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当該技術分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを意図している。
【0005】
[発明の概要]
本発明の課題は、現在の技術水準を高めること、及び上記の不便さを少なくともある程度克服する新規な製品を提供すること、あるいは少なくとも有効な代替案を提供することである。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開させるものである。
【0006】
したがって、本発明は、第1の態様において、3-メチルブチルアセテートと、2-メチルブチルアセテートと、酢酸イソブチルと、2-フェニルエチルアセテートと、2-フェニルエタノールとの合計の、2,3-ブタンジオンに対する重量比が150より大きい、発酵アセロラ又は発酵アセロラ抽出物を含む飲料組成物を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、飲料調製装置で使用するための容器であって、本発明の飲料組成物を収容する容器を提供する。
【0008】
第3の態様において、本発明は、アセロラ水性抽出物を発酵させることを含む、飲料組成物の調製方法であって、発酵がピキア酵母を含む酵母によって行われる、方法を提供する。
【0009】
本発明のさらなる態様は、飲料を製造するための、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)NYSC5485(CNCM I-5525)で発酵させたアセロラの使用を提供する。
【0010】
アセロラは、アセロラベリーから果汁を抽出するか、又はベリーをピューレにして「スムージー」を作製することによって飲料にすることができる。これらの飲料には酸っぱさ及び渋味がある。本発明者らは、驚くべきことに、ピキア酵母を用いた発酵を通して、アセロラ飲料のエタノールは低いままで、発酵が、アロマの知覚及び複雑さを増強し、顕著な酸っぱさ及び渋味は減じることを見出した。発酵飲料には、発酵においてオフフレーバーとして知覚され得るバター様及び脂肪様のノートがなかった。
【0011】
[発明を実施するための形態]
したがって、本発明は、一部には3-メチルブチルアセテートと、2-メチルブチルアセテートと、酢酸イソブチルと、2-フェニルエチルアセテートと、2-フェニルエタノールとの合計の、2,3-ブタンジオンに対する重量比が150より大きく、例えば200より大きく、例えば250より大きく、例えば500より大きく、例えば750より大きく、例えば1000より大きく、例えば1250より大きく、更には例えば1400より大きい、発酵アセロラ又は発酵アセロラ抽出物を含む(例えば、これらからなる)飲料組成物に関する。この比は、ppm単位での重量濃度から次のように計算できる。
【0012】
【数1】
【0013】
化合物2,3-ブタンジオンはジアセチルとしても知られている。2,3-ブタンジオンは、バター様又は脂肪様のノートを提供する。3-メチルブチルアセテートと、2-メチルブチルアセテートと、酢酸イソブチルと、2-フェニルエチルアセテートと、2-フェニルエタノールとの合計の、2,3-ブタンジオンに対する比が高いことは、発酵においてオフフレーバーとして知覚され得るバター様及び脂肪様のノートを伴わない、増強されたフルーティーノート及びフローラルノートに対応する。増強されたフルーティーノートは、苦味、酸っぱさ及び渋味をマスクするように作用する。
【0014】
アセロラ植物(Malpighia emarginata)は、トロピカルフルーツを結果するキントラノオ(Malpigsiaceae)科の低木又は小木である。一般名には、アセロラチェリー、グアラニチェリー(Guarani cherry)、バルバドスチェリー、西インドチェリー及びワイルド・クレープ・ミルトル(wild crepe myrtle)などがある。アセロラベリーは、ビタミンCが豊富であり、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、及びビタミンB、並びにカロテノイド及びバイオフラボノイドも含有する。
【0015】
本発明において、「アセロラ」という用語は、特に明記しない限り、アセロラ植物由来のベリー又は加工された状態のベリーを指す。
【0016】
本発明の文脈において、「発酵」という用語は、微生物の活性が食品又は飲料に変化(典型的には望ましい変化)をもたらすプロセスを指す。発酵は、酵母及び/又は細菌によるものであり得る。発酵は、嫌気性又は好気性であり得る。発酵は、食品の保存及び強化に最も古くから用いられている手法の1つである。
【0017】
「発酵アセロラ」という用語は、酵母などの微生物の活性によりアセロラの有機成分に化学的変化、典型的には望ましい変化がもたらされるプロセスに供された、アセロラを指す。発酵アセロラは、水性媒質において、例えば酵母により発酵され得る。発酵アセロラは、水性発酵培地に添加して発酵させた後、水性発酵培地から分離して乾燥させた、乾燥アセロラであり得る。発酵アセロラは、例えば、酵母のスターター培養物をアセロラ、例えば新鮮なアセロラベリー、又はアセロラベリーの果肉を含むパルプに添加する、「固体(solid-state)」発酵で発酵されていてもよい。
【0018】
「アセロラ抽出物」という用語は、アセロラから抽出された材料、例えばアセロラ果汁などのアセロラの水性抽出物、又は水で再構成されたアセロラ粉末を指す。「発酵アセロラ抽出物」という用語は、アセロラ抽出物を発酵させた後のアセロラ抽出物、例えば酵母などによってアセロラ水性抽出物を発酵させた後のアセロラ水性抽出物を指す。発酵アセロラ抽出物は、乾燥させた発酵アセロラ抽出物であってもよい。
【0019】
一実施形態では、飲料組成物(例えば飲料)は、2-フェニルエチルアセテートと2-フェニルエタノールとの合計の、2-フェニルアセトアルデヒドに対する重量比が、3000より大きく、例えば4000より大きく、例えば6000より大きく、例えば8000より大きく、更には例えば8500より大きい。
【0020】
比は、ppm単位での重量濃度から次のように計算できる。
【数2】
【0021】
ピキアによる糖の発酵中には、2-フェニルエチルアセテートなどの高級エステルが最初に産生されるが、発酵が進むにつれて、2-フェニルエタノールなどの高級アルコールが産生される。2-フェニルエチルアセテートと2-フェニルエタノールとの合計の、2-フェニルアセトアルデヒドに対する比が高いことは、発酵飲料における心地よいアロマバランスに対応する。
【0022】
一実施形態では、飲料組成物は、乾燥ベースで10g/kg未満の酢酸、例えば乾燥ベースで1g/kg未満の酢酸、更に例えば乾燥ベースで0.5g/kg未満の酢酸を含む。コンブチャ又はケフィアなどの飲料の風味プロファイルにおける酸による「刺激感」(“bite”)は、より穏やかな風味プロファイルを求める消費者からは必ずしも望まれるものではない。
【0023】
多くの消費者は、アルコール飲料の代替品として、複雑で清涼な味覚を有する飲料を求めている。一実施形態では、飲料組成物は、1.2重量%未満、例えば0.5重量%未満、例えば0.2重量%未満、更に例えば0.05重量%未満のエタノール含有量を有する。
【0024】
飲料組成物は、レディ・トゥ・ドリンク飲料、飲料液濃縮物、可溶性飲料粉末、乾燥させた芳香性植物材料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0025】
レディ・トゥ・ドリンク飲料は、発酵アセロラ浸出液又は発酵アセロラで風味付けされた水であり得る。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、香料又は安定剤などの他の成分を更に含んでもよい。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、炭酸飲料であり得る。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、イチゴ、オレンジ、レモン、ライム、モモ、ザクロ、スイカ、ブラックベリー又はクランベリーなどの果実又は果汁を更に含んでもよい。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、ミント又はバジルなどのハーブを更に含んでもよい。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、ハイビスカス又はバラなどの花抽出物を更に含んでもよい。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、添加されたビタミン及びミネラルを含んでもよい。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、複製性(replicating)又は非複製性(non-replicating)の有益な微生物を含んでもよい。有益な微生物は、例えばプロバイオティクスであってもよい。
【0026】
抽出可能な小分けされた原材料を収容する飲料調製装置(例えば、飲料調製マシン)は、飲料を調製する便利な方法を提供する。このような小分けされた原材料は、概して、例えばポッド、パッド、小袋、パウチ、又はカプセルなどとして構成された容器に詰められる。本発明の一態様は、飲料調製装置で使用するための容器であって、本発明の飲料組成物を収容する容器を提供する。容器は、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである。容器は、例えば様々な構成の中でも特に飲料カプセルであってもよい。一実施形態では、容器は、本発明の飲料組成物を収容する。例えば、容器は、乾燥させた発酵アセロラ又は乾燥させた発酵アセロラ抽出物を収容し得る。容器は、乾燥させた発酵アセロラ及び/又は乾燥させた発酵アセロラ抽出物を収容でき、これらは、茶、ハーブティー、ドライフルーツ、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーなどの他の乾燥原材料と組み合わせてもよい。
【0027】
本発明の一態様は、アセロラ水性抽出物を発酵させることを含む、飲料組成物の調製方法であって、発酵がピキア酵母を含む酵母によって行われる、方法を提供する。
【0028】
アセロラ水性抽出物は、例えばアセロラ果汁、アセロラパルプ又は水で再構成されたアセロラ粉末であってもよい。
【0029】
酵母は、主にピキア酵母であってもよく、例えば、発酵中に存在する微生物コロニー形成単位の50%超がピキアであってもよい。例えば、酵母コロニー形成単位の50%超がピキアであってもよく、例えば、酵母コロニー形成単位の60%、70%、80%、90%超がピキアであってもよい。例えば、発酵中に存在する本質的に全ての酵母コロニー形成単位は、ピキアであってもよく、更なる例として、発酵中に存在する本質的に全ての微生物コロニー形成単位は、ピキアであってもよい。
【0030】
本発明の方法によって調製される飲料組成物は、アセロラ飲料、例えば、発酵アセロラ又は発酵アセロラ抽出物を含む飲料であり得る。本発明の方法によって調製される飲料組成物は、1.2重量%未満、例えば0.5重量%未満、例えば0.2重量%未満、更に例えば0.05重量%未満のエタノール含量であり得る。一実施形態では、本発明の方法によって調製される飲料組成物は、本発明の飲料組成物である。
【0031】
アセロラ水性抽出物は、アセロラベリー、例えばアセロラパルプを水中に浸漬することによって得てもよい。アセロラは、浸漬前に乾燥及び/又は粉砕してもよい。浸漬という用語は、材料を液体に浸して漬けることを指す。アセロラは、少なくとも2分間、例えば少なくとも3分間、例えば少なくとも4分間、例えば少なくとも5分間、例えば少なくとも10分間、例えば少なくとも15分間、例えば少なくとも20分間、例えば少なくとも30分間、例えば少なくとも60分間、更に例えば少なくとも120分間、水中に浸漬されてもよい。アセロラの成分は、浸漬プロセス中に水に抽出される。浸漬は、4℃~98℃の間、例えば20℃~95℃の間、例えば60℃~95℃の間の温度で行ってよい。
【0032】
アセロラは、いくらかの発酵性糖質を含有するが、更なる発酵性糖質、例えばスクロース又はグルコースを、アセロラ水性抽出物に添加してもよい。発酵性糖質は、フルクトース又はグルコースであり得る。発酵性糖質は、ハチミツの形態であり得る。例えば、発酵性糖質を2~10重量%、例えば3~7重量%のレベルでアセロラ水性抽出物に添加してもよい。
【0033】
発酵中の乾燥ベースのアセロラ対水の比は、重量で1:1~1:100、例えば重量で1:2~1:95、例えば重量で1:10~1:90、例えば重量で1:30~1:70、更に例えば1.3~1:6であり得る。
【0034】
アセロラ水性抽出物の温度を、発酵前に、酵母の増殖に適する温度、例えば20℃~37℃、例えば25℃~35℃、例えば28℃~32℃に調整する。温度は、例えば、層流熱交換器を使用して調節することができる。酵母をアセロラ水性抽出物に添加して発酵を開始させる。アセロラ水性抽出物の発酵は、25℃~35℃、例えば28℃~32℃の温度で実施してもよい。アセロラ水性抽出物の発酵は、少なくとも2時間、例えば少なくとも6時間、例えば少なくとも12時間、例えば少なくとも24時間、更に例えば少なくとも48時間実施してもよい。
【0035】
発酵は、3~8、例えば4~6のpHで実施してもよい。
【0036】
発酵は、酵母エキスや酵母ペプトンなどの窒素源の存在下で実施してもよい。発酵は、例えばアセロラ水性抽出物の0.05重量%~0.1重量%のレベルで添加した、バリン、ロイシン、イソロイシン及び/又はフェニルアラニンなどのアミノ酸の存在下で実施してもよい。
【0037】
発酵は、嫌気性、微好気性又は好気性の条件で実施してもよい。例えば、発酵槽内の酸素分圧は、0~30%、例えば1~20%、更に例えば2~10%であり得る。
【0038】
発酵は、アセロラの非水溶性成分、例えばアセロラの果皮及び/又は種子の存在下又は非存在下で実施してもよい。
【0039】
好ましくはアセロラは、発酵前に加水分解などの化学的処理を受けていない。
【0040】
発酵は、少なくとも10CFU/g、例えば少なくとも10CFU/g、例えば少なくとも10CFU/g、例えば少なくとも10CFU/g、更に例えば少なくとも10CFU/gの初期混合酵母レベルで、1種類以上の酵母(例えば、ピキア酵母)を添加することによって実施され得る。
【0041】
発酵は、ケフィア又はコンブチャの発酵で得られ得るような、風味プロファイルにおける酸による「刺激感」の発生を回避するために、酢酸菌の非存在下で行われてもよい。一実施形態では、発酵は乳酸菌の非存在下で行われる。
【0042】
一実施形態では、発酵は、サッカロミセス亜種の非存在下で行われる。例えば、発酵は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の非存在下で実施され得る。S.セレビシエは、ワイン製造及びビール醸造に使用される。S.セレビシエは、望ましくない場合があるアルコールを生成することに加えて、新鮮なフルーティーなノートではなく、「発酵した」、ワインのような、酵母のような風味のノートを生成する。
【0043】
一実施形態では、発酵は、ザイゴサッカロミセス・バイリ(Zygosaccharomyces bailii)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、トルラスポラ・デルブルッキ(Torulaspora delbreukii)、ロードトルーラ・ムチラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)、ブレッタノマイセス・ブルキセレンシス(Brettanomyces bruxellensis)及びカンジダ・ステラテ(Candida stellate)からなる群から選択される酵母の非存在下で行われる。これらの酵母は、コンブチャ「茶-真菌」培養物中に一般的に存在する。
【0044】
本発明者らは、ピキア・クルイベリによるアセロラの発酵が、特に良好な結果を与えることを見出した。ピキア・クルイベリで発酵させたアセロラ又はアセロラ抽出物を含む飲料組成物は、アロマの知覚及び複雑さが増強され、酸っぱさ及び渋味がより目立たなかった。
【0045】
ピキア・クルイベリは、世界中で、例えば、オリーブ、ブドウ及びコーヒーに天然に存在する。一実施形態では、ピキア酵母は、主にピキア・クルイベリであり、例えば、発酵中に存在する微生物コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリであり得る。例えば、酵母コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリであってもよく、例えば、酵母コロニー形成単位の60%、70%、80%、90%超は、ピキア・クルイベリであってもよい。例えば、発酵中に存在する本質的に全ての酵母コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリであってもよく、更なる例として、発酵中に存在する本質的に全ての微生物コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリであってもよい。
【0046】
ピキア・クルイベリNCYC246(あるいはCBS188と表記される)は、ピキア・クルイベリの基準株である。基準株は、例えばNational Collection of Yeast Cultures、Quadram Institute Bioscience(Norwich、英国)から公的に入手可能である。
【0047】
一実施形態では、ピキア酵母は、ピキア・クルイベリNCYC246である。例えば、発酵中に存在する酵母コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNCYC246であり得る。例えば、発酵中に存在する微生物コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNCYC246であり得る。例えば、発酵中に存在する本質的に全ての酵母コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNCYC246であり得る。更なる例として、発酵中に存在する本質的に全ての微生物コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNCYC246であり得る。
【0048】
ピキア・クルイベリNCYC2781(あるいはMaize Silage Isolate 86と表記される)は、例えば、National Collection of Yeast Cultures、Quadram Institute Bioscience(Norwich、英国)から公的に入手可能である。
【0049】
一実施形態では、ピキア酵母は、ピキア・クルイベリNCYC2781である。例えば、発酵中に存在する酵母コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNCYC2781であり得る。例えば、発酵中に存在する微生物コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNCYC2781であり得る。例えば、発酵中に存在する本質的に全ての酵母コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNCYC2781であり得る。更なる例として、発酵中に存在する本質的に全ての微生物コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNCYC2781であり得る。
【0050】
ピキア・クルイベリは、自然界に広く分布しており、例えばコーヒーチェリー及びオリーブなどの果実に存在する。ニカラグアのコーヒー発酵場で採取・単離されたピキア・クルイベリNYSC5485は、2020年6月23日に、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM),Institut Pasteur,25rue du Docteur Roux,F-75724PARIS Cedex15,Franceに寄託され、寄託番号CNCM I-5525を得た。
【0051】
一実施形態では、酵母は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)である。例えば、発酵中に存在する酵母コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)であり得る。例えば、発酵中に存在する微生物コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)であり得る。例えば、発酵中に存在する本質的に全ての酵母コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)であり得る。更なる例として、発酵中に存在する実質的に全ての微生物コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)であり得る。
【0052】
本発明者らは、ピキア・クルイベリNYSC5485でアセロラを発酵させることによって、特に良好な結果が得られることを見出した。アセロラをピキア・クルイベリNYSC5485で発酵させた結果、3-メチルブチルアセテートと、2-メチルブチルアセテートと、酢酸イソブチルと、2-フェニルエチルアセテートと、2-フェニルエタノールとの合計の、2,3-ブタンジオンに対する重量比が高くなり、この比は、発酵においてオフフレーバーとして知覚され得るバター様及び脂肪様のノートを伴わない増強されたフルーティーノート及びフローラルノートに対応する。
【0053】
発酵は、少なくとも10CFU/g、例えば少なくとも10CFU/g、例えば少なくとも10CFU/g、例えば少なくとも10CFU/g、更に例えば少なくとも10CFU/gの初期酵母レベルで、ピキア・クルイベリ、例えばピキア・クルイベリ5485(CNCM I-5525)を添加することによって実施され得る。
【0054】
PacBioシークエンシング技術を使用して、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)の遺伝子配列を解析した。Qiagen Gentra Puregene Yeastキットを使用してDNA精製を行った。12個のDNA断片を同定した。これらの断片は個々の染色体、すなわち11個の染色体及び1個のミトコンドリアDNA(配列番号4)であり得る。遺伝子配列を、配列番号1~配列番号12として電子的形式で提出する。
【0055】
本発明の方法の一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号1に対して少なくとも98%(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号2に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号3に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号5に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号6に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号7に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号8に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号9に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号10に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号11に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、又は配列番号12に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列を含む。
【0056】
本発明の方法の一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号1に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号2に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号3に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号4に対して少なくとも99.5%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号5に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号6に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号7に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号8に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号9に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号10に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号11に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列、及び配列番号12に対して少なくとも98%の同一性(例えば少なくとも99%の同一性)を有する遺伝子配列を含む。
【0057】
本発明の方法の一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号1~12の組み合わせに対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の全体的なヌクレオチド同一性(global nucleotide identity)を有する遺伝子配列を含む。「配列番号1~12の組み合わせ」という用語は、単一の配列に連結されているかのように、全ての個々のDNA断片に対して配列同一性比較が行われることを意味する。
【0058】
一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号1に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号2に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号3に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号5に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号6に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号7に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号8に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号9に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号10に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号11に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、ピキア酵母は、配列番号12に対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。
【0059】
酵母を指す名称は、時が経つにつれて変わり得る。本発明の方法による酵母は、酵母に適用される名称にかかわらず、本発明のピキア酵母について先行段落に記載された遺伝子配列同一性を含み得ることが理解されるべきである。
【0060】
本発明の一態様は、アセロラ水性抽出物を発酵させることを含む飲料組成物を調製する方法であって、発酵が、配列番号1~12の組み合わせに対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の全体的なヌクレオチド同一性を有する遺伝子配列を含む酵母によって実施される、方法を提供する。
【0061】
一実施形態において、発酵は、アセロラの非水溶性成分の存在下で実施され、アセロラ水性抽出物は、非水溶性成分から発酵後に分離される。例えば、アセロラの非水溶性成分は、濾過システムを用いてアセロラ水性抽出物から分離されてもよい。アセロラ水性抽出物は、発酵後に発酵アセロラ抽出物となる。
【0062】
発酵アセロラ抽出物は、レディ・トゥ・ドリンク飲料としてパッケージングしてもよく、例えばボトル又は缶にパッケージングしてもよい。発酵アセロラ抽出物は、2~60重量%の総溶解固形分の濃度、例えば、2~25重量%の総溶解固形分の濃度を有し得る。レディ・トゥ・ドリンク飲料としてパッケージングする前に、香味料(flavours)及び保存料などの追加の原材料を発酵アセロラ抽出物に添加してもよい。発酵アセロラ抽出物は、パッケージング前に、酵母及び任意の腐敗性生物を不活性化又は死滅させるために熱処理してもよい。発酵アセロラ抽出物は、パッケージング前に、フィルターを通過させて酵母及び腐敗性生物を除去してもよい。
【0063】
一実施形態では、アセロラ水性抽出物は、発酵後に濃縮され、例えば、摂取前に消費者が希釈するのに適した液体濃縮物としてパッケージングされる。アセロラ水性抽出物は、例えば異なる場所でのレディ・トゥ・ドリンク製品の製造のための中間製品として濃縮されてもよい。発酵アセロラ抽出物は、25~60重量%の総溶解固形分の濃度、例えば、50~60重量%の総溶解固形分の濃度を有し得る。溶解固形分は、例えば、抽出物を微細フィルターに通して非溶解固形分を除去し、濾液を秤量して総重量を確定し、濾液を蒸発させ、次いで残留物を秤量して溶解固形分の重量を得ることによって測定することもできる。
【0064】
発酵後のアセロラ水性抽出物(例えば、発酵アセロラ抽出物)は、可溶性飲料粉末などの粉末を生成するために濃縮されてもよい。例えば、発酵後のアセロラ水性抽出物(発酵アセロラ抽出物)を噴霧乾燥又は凍結乾燥によって乾燥させて、可溶性飲料粉末を生成してもよい。例えば、発酵後のアセロラ水性抽出物をマルトデキストリンなどの担体と一緒に噴霧乾燥して可溶性飲料粉末を生成してもよい。可溶性飲料粉末は、パッケージングしてそのまま販売してもよく、又は、例えば異なる場所でのレディ・トゥ・ドリンク製品の製造のための中間製品として使用してもよい。可溶性飲料粉末は、飲料調製装置で使用するための容器に充填されてもよい。可溶性飲料粉末は、他の原材料、例えば、茶、ハーブティー、ドライフルーツ、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーなどの乾燥原材料と組み合わせてもよい。例えば、可溶性飲料粉末は、他の原材料と組み合わせて、飲料調製装置で使用するための容器に充填してもよい。可溶性飲料粉末は、飲料ミックスを生成するために、乳粉末又は飲料クリーマー粉末及び任意に糖と組み合わせてもよい。アセロラ水性抽出物をアセロラの非水溶性成分の存在下で発酵させた後、アセロラの非水溶性成分は発酵アセロラとなる。一実施形態では、アセロラ水性抽出物の発酵中に存在するアセロラの非水溶性成分は、アセロラ水性抽出物から発酵後に分離され、次いで、例えば回転乾燥機を使用して乾燥される。乾燥させたアセロラの非水溶性成分は、飲料調製装置で使用するための容器に充填されてもよく、又は「ティーバッグ」などの透液性バッグに充填されてもよい。乾燥させたアセロラの非水溶性成分は、茶、ハーブティー、ドライフルーツ、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーなどの他の乾燥原材料と組み合わせてもよい。本発明の文脈において、茶という用語は、植物カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)の乾燥葉、葉芽、小枝又は茎を指す。茶は例えばシネンシス系(var.sinensis)のC.シネンシス、又はアッサミカ系(var.assamica)のC.シネンシスであり得る。「ハーブティー」という用語は、カメリア・シネンシス以外の植物の乾燥した花、果物、葉、種子又は根から作られた浸出液を指す。
【0065】
一実施形態では、アセロラ水性抽出物の発酵中に存在するアセロラの非水溶性成分は、発酵後にアセロラ水性抽出物と一緒に、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥によって乾燥される。乾燥させたアセロラの非水溶性成分(例えば、乾燥させた発酵アセロラ)は、発酵後の乾燥させたアセロラ水性抽出物(例えば、乾燥させた発酵アセロラ抽出物)と共に、飲料調製装置で使用するための容器に充填されてもよく、又は「ティーバッグ」などの透液性(permeable)バッグに充填されてもよい。発酵後の乾燥させたアセロラの非水溶性成分及び乾燥させたアセロラ水性抽出物は、茶、ハーブティー、ドライフルーツ、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーなどの他の乾燥原材料と組み合わせてもよい。
【0066】
本発明の一態様は、飲料を製造するための、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)で発酵させたアセロラの使用を提供する。
【0067】
本発明による発酵アセロラは、例えば、ピキア酵母のスターター培養物をアセロラ、例えば、新鮮なアセロラベリー又は潰されてパルプになったベリーに添加する、「固体(solid-state)」発酵において得ることができる。「固体」発酵という用語は、固体材料に対して行われる発酵を指す。固体発酵には、液体の水が存在するが、この用語は、発酵容器中の水溶液中で生じ得るような液体発酵とは対照的に使用される。
【0068】
本発明の一態様は、飲料組成物を調製する方法を提供し、該方法は、
酵母のスターター培養物をアセロラに添加する工程であって、スターター培養物が、アセロラ1グラム当たり少なくとも10CFU(例えば、少なくとも10CFU、更に例えば少なくとも10CFU)の酵母を供給する、工程と、
アセロラを発酵させる工程と、
発酵させたアセロラを乾燥させて、発酵アセロラを生成する工程と、
発酵アセロラを水で抽出してレディ・トゥ・ドリンク飲料を生成する工程、又は、
発酵アセロラを容器、例えば飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するための容器に、充填する工程、のいずれかと、
を含む。
【0069】
酵母のスターター培養物は、液体又は粉末としてアセロラに添加されてもよい。アセロラ(例えば、アセロラパルプ)は、酵母のスターター培養物が添加されるとき、45~55重量%の水分含量を有してもよい。酵母を添加する前に環境微生物の量を低減させるために、発酵前にアセロラ(例えば、アセロラパルプ)を蒸気で処理してもよい。発酵は、40重量%を超える、例えば45重量%を超える、更に例えば50重量%を超える固形分含量で生じ得る。
【0070】
発酵をある程度継続させている間に、発酵アセロラの乾燥を開始してもよい。例えば、アセロラ(例えば、アセロラパルプ)をタンクなどの容器に入れ、スターター培養物を添加し、次いで発酵を1~4日間進行させた後、発酵アセロラを容器から取り出し、乾燥させてもよい。更なる例として、スターター培養物をアセロラ(例えば、アセロラパルプ)に添加した後、アセロラ(例えば、アセロラパルプ)を、例えば、ラック又は吊り下げトレイにおいて徐々に乾燥させてもよい。発酵を開始したら、発酵を継続しながらアセロラを徐々に乾燥させてもよい。例えば、発酵アセロラは、1~30日間、例えば4~20日間の期間にわたって、20重量%未満(例えば15重量%未満)の水分含量まで乾燥させてもよい。乾燥温度は、約40℃未満、例えば約25℃~35℃であり得る。ファンを使用して、アセロラ(例えば、アセロラパルプ)が乾燥するまで材料に乾燥空気を吹き付けてもよい。発酵アセロラ(例えば、アセロラパルプ)は、日光で乾燥させてもよい。アセロラパルプは、アセロラの果皮及び種子を含んでいてもよい。
【0071】
酵母は、ピキア、例えばピキア・クルイベリ、更には例えばピキア・クルイベリNYSC5485であってもよい。酵母は、配列番号1~12の組み合わせに対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の全体的なヌクレオチド同一性を有する遺伝子配列を含んでもよい。
【0072】
飲料調製装置に挿入される場合、飲料調製のための容器は、ポッド、パッド、小袋、パウチ、又はカプセルなどの形態であり得る。
【0073】
レディ・トゥ・ドリンク飲料は、ボトル又は缶に充填してもよい。発酵アセロラは、水で抽出してレディ・トゥ・ドリンク飲料を生成する前に、茶、ハーブティー、ドライフルーツ、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーなどの他の抽出可能な材料と組み合わせてもよい。
【0074】
発酵アセロラは、飲料調製装置に挿入したときに、飲料の調製のための容器内で茶、ハーブティー、ドライフルーツ、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーと組み合わせてもよい。
【0075】
当業者は、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の製品について記載された特徴を本発明の方法と組み合わせてもよく、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。既知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのごとく組み込まれる。
【0076】
本発明の更なる利点及び特徴は、図面及び非限定的な実施例から明らかである。
【0077】
[実施例]
実施例1:アセロラの発酵方法
有機アセロラ可溶性粉末(Raab Vitalfood、Germany)を出発原料として使用して、浸出液を調製した。まず、100℃の水1000mL中に20gの乾燥出発原料を添加し、10分間浸漬することによって、高温浸出液を作製した。その後、温度が30℃未満に低下するまで、浸出液を氷浴中に置いた。次いで、浸出液を篩に通して濾過して、更に小片を除去した。濾液(アセロラ水性抽出物)を、対照(Ref)として、又は様々な発酵試料に対して、等量分配した。
【0078】
発酵アセロラは、グルコース(2%m/m)と、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)、P.クルイベリNCYC246(ピキア・クルイベリの基準株)、P.クルイベリNCYC2781、市販の醸造酵母サッカロミセス・セレビシエ(SafAle S-33、LeSaffre、France)、並びにコンブチャ茶発酵由来の細菌及び酵母の共生培養(symbiotic culture of bacteria and yeasts、SCOBY)ペリクルを含む様々なスターター培養物と、を用いて浸出液を発酵させることによって作製した。全ての株(SCOBYを除く)は、グリセロールバイアルから、食用イースト-ペプトン液体培地で増殖させ、光学密度(OD600nm)0.5で参照アセロラ醸造液に接種した。接種した浸出液は全て、微好気条件下、30℃で24時間保存した。インキュベーション後、各発酵浸出液を濾過滅菌(0.2μm)した。
【0079】
実施例2:様々な酵母で発酵させたアセロラの官能分析
様々なバリエーションのアセロラ浸出液の官能プロファイルを試食した。対照は渋味及び苦味があった。サッカロミセス・セレビシエで発酵させたアセロラ浸出液は、フルーティーなビール様の特徴を有していた。SCOBYで発酵させたアセロラは、非常に強い酸味を有していた。2種類の異なるピキア酵母で発酵させたアセロラ浸出液は非常にフルーティーであり、対照と比較して知覚される苦味、酸っぱさ及び渋味が少なかった。ピキア酵母で発酵させたアセロラでは、バター様及び脂肪様のオフノートは識別されなかった。ピキア・クルイベリNYSC5485で発酵させたアセロラは、ピキア・クルイベリNCYC246で発酵させたアセロラと比較したときに、よりクリーンなアロマプロファイルを有することが確認された。
【0080】
実施例3:様々な酵母で発酵させたアセロラ中に存在する芳香化合物に着目した風味プロファイルの分析
ガスクロマトグラム及び質量分析と組み合わせたヘッドスペース/固相微量抽出(HS/SPME-GC-MS)によって、アセロラ浸出液の揮発性物質の定量的プロファイリングを行った。装置は、質量分析計(Agilent Technology 7010B TQ)と連結したガスクロマトグラフ(Agilent Technology 8890 GC System)を使用した。
【0081】
最初に1.0mLのアセロラ浸出液試料を、10mLスクリュートップヘッドスペースバイアル中、30℃で10分間インキュベートし、その後、SPME繊維(PDMS/DVB、Supelco)を使用して30℃で10分間抽出した。分析前に、全てのバイアルは6℃に冷却したトレイに入れた。揮発性物質を、250℃、スプリットレスモードでSPME繊維から熱的に脱着させ、キャピラリーカラム(DB-WAX、Agilent)で分離した。ガスクロマトグラフオーブン温度は、最初に35℃で5分間、次いで4℃/分で230℃に上昇、次いで230℃で10分間となるようにプログラムした。ヘリウムをキャリアガスとして1mL/分の流量で使用した。標的化合物を純粋な標準物質によって同定し、MSD ChemStationソフトウェア(Agilent)で定量した。全ての試料を2回測定した。
【0082】
24時間後の3-メチルブチルアセテート、2-メチルブチルアセテート、酢酸イソブチル、2-フェニルエチルアセテート、2-フェニルエタノール、2,3-ブタンジオン、2-フェニルアセトアルデヒド、エタノール及び酢酸のレベルをppm単位で以下の表に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
SCOBYで発酵させた試料は、乾燥ベースで222g/kgに相当する高レベルの酢酸を有していた。
【0085】
アロマ成分の重量比A及び重量比Bを以下の表に示す。
【0086】
【数3】
【0087】
【数4】
【0088】
【表2】
【0089】
ピキア酵母(NYSC5485、NCYC2781及びNCYC246)で発酵させた試料は、対照及びS.セレビシエ又はSCOBYで発酵させた試料よりも高い比A及び比Bを示す。P.クルイベリNYSC5485は、比A及び比Bについて、基準株P.クルイベリNCYC246又はP.クルイベリNCYC2781よりも高い値をもたらす。
【0090】
実施例4:P.クルイベリNYSC5485の遺伝子配列と基準株P.クルイベリNCYC246の遺伝子配列との比較
ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)及びP.クルイベリNCYC246の遺伝子配列を、PacBioシークエンシング技術を使用して解析した。Qiagen Gentra Puregene Yeastキットを使用してDNA精製を行った。P.クルイベリNYSC5485については12のDNA断片が同定され、基準株P.クルイベリNCYC246については15のDNA断片が同定された。P.クルイベリNYSC5485の遺伝子配列を、配列番号1~配列番号12として電子的形式で提出し、P.クルイベリNCYC246については、配列番号13~配列番号27として提出した。ミトコンドリアDNAは、P.クルイベリNYSC5485については配列番号4であり、P.クルイベリNCYC246については配列番号20である。
【0091】
ソフトウェアOrthoANIuを使用して、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)の遺伝子配列を、P.クルイベリNCYC246と比較した。全体的な平均ヌクレオチド同一性は、97.91%であることがわかった。
【0092】
様々な配列間の対応関係を以下の表に示す。ピキア・クルイベリNYSC5485の複数の配列は、P.クルイベリNCYC246の配列の組み合わせとの対応が最も近く、その逆もまた同様である。
【0093】
【表3】
【0094】
基準株P.クルイベリNCYC246は、配列番号1~12のそれぞれに対して、以下に示す最大の同一性で遺伝子配列を含んでいた:
配列番号1、97.85%;配列番号2、97.40%;配列番号3、97.86%;配列番号4、99.02%;配列番号5、98.05%;配列番号6、97.93%;配列番号7、98.12%;配列番号8、97.07%;配列番号9、97.20%;配列番号10、98.33%;配列番号11、97.526%;配列番号12、97.77%。
【配列表】
2024544375000001.xml
【国際調査報告】