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特表2024-544380抗IgE抗体を使用したアレルギー反応の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】抗IgE抗体を使用したアレルギー反応の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241122BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241122BHJP
   C07K 16/42 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P37/08
A61K39/395 D
A61K39/395 Y
C07K16/42 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534457
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 IB2022062066
(87)【国際公開番号】W WO2023111811
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/289,373
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ボットリ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】カバンスキ,マシエ
(72)【発明者】
【氏名】エッガー,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ガウティア,オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】カワカミ,フェルナンド タケシ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB35
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、IgEが関わる疾患又は障害、詳細には1つ以上のアレルゲンに対するIgE介在性アレルギー反応を有する対象のかかる疾患又は病態の経過を修正する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のアレルゲンに対するIgE介在性アレルギー反応の治療、予防又は軽減を、それを必要としている対象において行う方法であって、治療有効量の抗IgE抗体又は抗原結合断片を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記IgE介在性アレルギー反応が1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食物アレルギーがピーナッツアレルギー、ミルクアレルギー、卵アレルギー又はヘーゼルナッツアレルギーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上のアレルゲンに対するIgE媒介性食物アレルギーの確定診断を有する対象における食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアレルギー反応を予防する方法であって、治療有効量の抗IgE抗体又は抗原結合断片を投与することを含む方法。
【請求項5】
前記アレルギー反応がアナフィラキシーである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
IgE媒介性アレルギー反応の治療、予防又は軽減を、それを必要としている対象において行う方法であって、治療有効量の抗IgE抗体又は抗原結合断片を投与することを含み、前記IgE媒介性アレルギー反応がアナフィラキシーである、方法。
【請求項7】
前記IgE媒介性アレルギー反応が食品の摂取又は食品への曝露によって誘発される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記IgE媒介性アレルギー反応が非食物アレルゲンへの曝露によって誘発される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記アナフィラキシーが特発性アナフィラキシーである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記抗IgE抗体がリゲリズマブである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
リゲリズマブが約120mg~約600mgの用量、例えば600mgの最大用量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リゲリズマブが約240mgの用量で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
リゲリズマブが約360mgの用量で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
リゲリズマブが約480mgの用量で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
リゲリズマブが2~4週間毎に投与される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗IgE抗体、例えばリゲリズマブを使用して、治療を必要としている対象の疾患又は障害を予防又は治療する、例えば1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギー(例えば、食物アレルギー、ピーナッツアレルギー、ミルクアレルギー若しくは卵アレルギー)又はアナフィラキシーを予防又は治療する治療及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンE(IgE)は、過敏反応及びアレルギー反応に関連する抗体である。IgEは、マスト細胞、好塩基球及び樹状細胞上の高親和性IgE受容体(FcεRI)に主に結合し、従って制御性T細胞の誘導を低下させる。
【0003】
食物アレルギーは、あらゆる国のあらゆる年代層に何百万人もの罹患者がおり、有病率の急速な上昇は、それが公衆衛生上の新たな優先事項であることを示唆している(Warren et al 2020)。食物アレルギーの根底にある発病機序には、アレルゲン曝露に応答してアレルゲン特異的IgEが合成され、それがマスト細胞及び好塩基球の表面膜上にあるIgEの高親和性受容体(FcεRI受容体)にそのFc領域を介して結合するという免疫機構が関わる(Sampson et al 2006)。世界人口のほぼ10%が食物アレルギーに罹患しており、これと一致した疫学傾向が北米、欧州、アジア及びオーストラリア全域で観察されている;最も多く見られるアレルゲンは、ピーナッツ、木の実、魚介類、卵、ミルク、小麦、大豆及び種子である(Warren et al 2020、Sicherer and Sampson 2017)。ピーナッツ、木の実及び魚介類に対するアレルギーは、通常、生涯にわたって続く(Jones and Burks 2017、Sicherer and Sampson 2017)。加えて、成人を含め、食物アレルギー患者の3分の1~2分の1は、2つ以上の食物にアレルギーを起こし易い(Gupta et al 2011、Gupta et al 2019)。
【0004】
食物アレルギーは、食物アレルゲン、例えば食物タンパク質に対する有害な免疫応答である。多く見られる食物アレルゲンは、貝類、ピーナッツ、木の実、魚、ミルク、卵、大豆並びにイチゴ、マンゴー、バナナ及びリンゴなどの生果実に見られる。免疫グロブリンE(IgE)介在性食物アレルギーは、I型即時型過敏反応に分類されている。こうしたアレルギー反応は急性発症(数秒~1時間)を呈し、随伴症状には、血管性浮腫(眼瞼、顔面、唇、舌、喉頭及び気管の軟部組織の腫脹);蕁麻疹;口、咽頭、眼、皮膚の痒み;悪心、嘔吐、下痢、胃痙攣又は腹痛などの胃腸症状;鼻漏又は鼻閉;喘鳴、息切れ又は嚥下困難;及び更には、死に至ることもある重度の全身性アレルギー反応であるアナフィラキシーまでもが含まれ得る。その上、アナフィラキシーは、生命を脅かす恐れのある病態である。
【0005】
現在、食物アレルギーに対する標準治療は、誘発食物の厳格な回避、不慮の曝露が起こった場合の救急薬並びに地域社会全体での学校(即ちピーナッツ不使用の学級)及びレストラン(即ち食材の警告)への介入に限られている。最近になって、ピーナッツへの偶発的曝露時におけるアレルギー反応を緩和するためのピーナッツ経口免疫療法が承認された。しかし、この治療は、1つのアレルゲンのみを標的とするに過ぎないため、この領域における満たされていない医療ニーズを抜本的に変えるものではなく;適応は一部の年齢層に限られ、あらゆるピーナッツアレルギー患者に好適というわけではない可能性がある。
【0006】
アレルゲン特異的経口免疫療法(OIT)は、少量のアレルゲンを徐々に増量しながら連日投与することによりアレルゲン減感作を誘導することからなる。
【0007】
IgEがアレルギー性疾患で主要な役割を果たしていると同定され、1970年代にはモノクローナル抗体技術が登場したことに伴い、IgEに対するモノクローナル抗体の開発は、FcεRI受容体と結合したIgE上の部位に至るまでに進んだ(Baniyash et al 1988)。TNX-901によるモノクローナル抗IgE治療は、食物経口負荷試験によって評価したとき、ピーナッツ抗原に対する感受性閾値が用量依存的に有意に増加し、ピーナッツの不慮の摂取例のほとんどに対する少なくとも部分的な保護につながるはずのレベルにまで至らせる能力があることが示された(Leung et al 2003)。
【0008】
Xolair(登録商標)(オマリズマブ)は、組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体であり、遊離循環ヒト免疫グロブリンE(IgE)に選択的に結合するものであり、従ってIgEがマスト細胞及び好塩基球の表面上のIgE受容体に結合するのを阻害する結果、アレルギー性メディエーターの放出が低下することになる。オマリズマブは、遊離循環IgEに結合することによって血清遊離IgEレベルも下げ、マスト細胞及び好塩基球の表面上にあるIgE受容体の数も下方制御する。オマリズマブは、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎及び慢性特発性蕁麻疹(CSU)の治療に広く使用されている。オマリズマブは、高度のアレルギーがある患者で急速ピーナッツ減感作を容易にした。別の治験では、2~5種類の食物にアレルギーがある48例の患者を組み入れて、複数食物アレルギー患者でオマリズマブが減感作を容易にするかどうかが判定され、8週間のオマリズマブ単剤療法の完了後、治療された患者は、プラセボ群の55mgと比較して、中央値2380mgの負荷量(最大負荷量2380mg)の混合食物を耐容した。オマリズマブ投与は、良好に忍容されるものの、皮膚炎(注射部位における)から全身性アナフィラキシー(0.1~0.2%の患者)にまで及ぶ範囲の副作用を引き起こし得る。
【0009】
有病率が上昇していること(複数の食物アレルゲンに対するアレルギーを含む)、現在の治療選択肢が限られていること、生命を脅かす恐れのある帰結となり得ること、食物回避のみでは保護を提供できないこと及び多くの場合に疾患の重荷が一生続くことを踏まえると、アレルギー患者に適した安全且つ有効な食物アレルギー治療法の開発に向けた医療ニーズは大きい。アレルゲンへの偶発的曝露時の標準治療は、アレルゲンの回避及びエピネフリン投与からなる。満たされていないニーズ、詳細には定期的なアレルゲン投与が不要な治療的解決法のニーズは、小児及び青年で更に一層大きくなる。
【0010】
更に、アナフィラキシーは、急性全身性アレルギー反応の最も重篤な臨床像である。発現症状には、皮膚、呼吸器、心血管又は胃腸の徴候及び症状が含まれる。アナフィラキシーは、感受性の高い個体における特定の食品、薬物及び昆虫毒への曝露が原因とされることが多いが、再発性アナフィラキシーエピソードを有する患者の30%~50%では、原因因子は、特定されない(特発性アナフィラキシー)。アナフィラキシー、例えば特発性アナフィラキシーの治療について、現在の治療選択肢は、限られており、有効性にはばらつきがある。アナフィラキシーは、全世界で見ると、10万人年当たり50~112エピソードの発生率である。近年、アナフィラキシーの発生は、増加しており、引き続きそれを必要としている対象に好適な治療的解決法を提供することが求められている。
【0011】
リゲリズマブは、オマリズマブよりも高い親和性でヒト免疫グロブリンE(IgE)に結合するヒト化モノクローナル抗体である。結合時、リゲリズマブは、高親和性及び低親和性の両方のIgE受容体(FcεRI及びFcεRII)とのIgEの相互作用を遮断することが可能である。対象がリゲリズマブの投与を受けると、循環IgEにこの抗IgE抗体が急速に結合し、マスト細胞及び好塩基球上のIgE受容体との接触が不可能になる。アトピー対象に見られるFcεRIの発現の亢進にはIgEが必要であり、リゲリズマブ治療に伴って循環好塩基球上のFcεRI発現の低下が起こる。リゲリズマブを使用した抗IgE療法による他の潜在的に有益な効果には、IgE産生の低下、B細胞数の減少及びT細胞によるサイトカイン産生の減少が含まれる。この機構は、慢性特発性蕁麻疹(CSU)を有する対象に対し、マスト細胞及び好塩基球の脱顆粒(ヒスタミン遊離)に関連する掻痒感を伴う蕁麻疹及び血管性浮腫を予防することによって既に利益を付与している。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、遊離IgEの高度な抑制、好塩基球FcεRI発現、従って好塩基球表面IgEの減少がリゲリズマブなどの抗IgE抗体によって誘発されると、アレルゲンに対する減感作が一層効率的となり;従って、誘発因子を問わず、治療的解決法としてアレルゲンに対するアレルゲン感受性を低下させることにより、アレルギー反応、例えば食物アレルギー反応又はアナフィラキシーからの保護が確実となることを突き止めた。リゲリズマブは、遊離IgE、好塩基球FcεRI、好塩基球表面IgE及びアレルゲンに対する皮膚プリックテスト反応の用量依存的及び時間依存的抑制を実証しており、程度及び持続時間の点においてオマリズマブで観察されるものよりも優れていた。リゲリズマブは、オマリズマブよりも高い親和性でヒトIgEに結合する。更に、オマリズマブと比較して優れているリゲリズマブの親和性及び薬力学的(PD)アウトカムは、Ig-E媒介性アレルギー反応の予防又は治療、例えばアナフィラキシーの予防又は治療における優れた薬量学及び優れた臨床的有効性につながり得る。
【0013】
従って、本明細書には、1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギー、例えばIgE介在性食物アレルギー(例えば、食物アレルギー、ピーナッツアレルギー、ミルクアレルギー又は卵アレルギー)を予防又は治療する方法であって、治療有効量の抗IgE抗体、例えば遊離循環ヒトIgEに選択的に結合する抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)を、それを必要としている対象に投与することを含む方法が開示される。
【0014】
従って、本明細書には、アナフィラキシー、例えばIgE媒介性アナフィラキシーを治療、予防又は軽減する方法であって、治療有効量の抗IgE抗体、例えば遊離循環ヒトIgEに選択的に結合する抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)を、それを必要としている対象に投与することを含む方法が開示される。
【0015】
一実施形態では、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを有する抗IgE抗体が提供され、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなり、この抗体は、IgEに特異的に結合し、及び前記抗体は、それを必要としている対象に約240mg~約600mgの用量として投与されることになる。
【0016】
好ましい実施形態では、QGE031(リゲリズマブ)と称される抗IgE抗体が提供される。具体的には、QGE031(リゲリズマブ)は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなる。抗IgE抗体リゲリズマブは、配列番号2と示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号1と示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む。前記抗体は、それを必要としている対象に約300mg~約360mgの用量として投与されることになる。
【0017】
一実施形態では、投与経路は、本明細書に記載される実施形態に係る抗体の皮下又は静脈内であるか、又は皮下若しくは静脈内の組み合わせである。
【0018】
一部の患者は、負荷レジメン(例えば、数週間にわたって週1回[例えば、1~5週間、例えば、0、1、2、3及び/又は4週目に投与する]又は数週間にわたって隔週(例えば、2~8週間、例えば、0、2、4及び/又は6週目に投与する)と、それに続く維持レジメン、例えば月1回維持レジメンから利益を受け得る。例えば、抗IgE抗体に適切なレジメンは、数週間にわたって週1回又は隔週[例えば、1~5週間、例えば、0、1、2、3及び/又は4週目に投与する]と、それに続く月1回維持レジメンであり得る。
【0019】
別の例では、リゲリズマブに適切なレジメンは、月1回レジメンである。
【0020】
一部の実施形態では、リゲリズマブなどの抗IgE抗体は、s.c.送達される240mgの初回用量で対象に投与され得、次に、この用量は、必要に応じて、医師によって決定されるとおり、対象のIgEレベル及び体重に基づいて調整され得る。
【0021】
一部の実施形態では、リゲリズマブなどの抗IgE抗体は、s.c.送達される300mgの初回用量で対象に投与され得、次に、この用量は、必要に応じて、医師によって決定されるとおり、対象のIgEレベル及び体重に基づいて調整され得る。
【0022】
更に別の具体的な実施形態では、120mgリゲリズマブを3単位用量含む用量が、4週間毎に(q4w)s.c.投与される。
【0023】
リゲリズマブは、年4回、月1回、週1回又は隔週で、例えば皮下に、約240mg~600mg、例えば約280mg~約360mg、例えば約300mg~約360mg又は例えば約300mgが投与される用量設定で、皮下注射により、約120mg、約150mg、約240mg又は約300mgの単位用量で投与され得る。
【0024】
リゲリズマブは、皮下(s.c.)注射により、隔週で又は月1回、約120mg~約240mg、好ましくは約240mgの用量で投与され得る。
【0025】
リゲリズマブは、皮下(s.c.)注射により、隔週で又は月1回、約300mg~約360mg、好ましくは約300mg又は約360mgの用量で投与され得る。
【0026】
本明細書で定義されるとき、リゲリズマブの「単位用量」とは、約24mg~600mg、例えば約72mg~約30mg、例えば約100mg~約300mg又は例えば約120mg~約240mgに含まれ得るs.c.用量を指す。例えば、単位s.c.用量は、約24mg、約72mg、約120mg、約150mg、約240mg又は約360mgである。
【0027】
一実施形態では、本発明は、食物アレルギーを有する対象にリゲリズマブを1回の治療当たり約24mg~約600mgの範囲、好ましくは約72mg~約360mgの範囲、好ましくは1回の治療当たり100mg~360mg、好ましくは約240mg~約360mgの範囲で投与することを含む。一実施形態では、患者は、1回の治療当たり約120mg~約240mgを受ける。一実施形態では、患者は、1回の治療当たり約120mgを受ける。一実施形態では、患者は、1回の治療当たり約240mgを受ける。一実施形態では、患者は、1回の治療当たり約300mgを受ける。一実施形態では、患者は、1回の治療当たり約360mgを受ける。一実施形態では、患者は、1回の治療当たり約20mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、約150mg、約180mg、約200mg、約210mg、240mg、約275mg又は約360mgを受ける。一実施形態では、食物アレルギーを有する患者は各治療を2週間毎、3週間毎、月1回(4週間毎)、6週間毎、隔月(2ヵ月毎)、9週間毎又は年4回(3ヵ月毎)受ける。一実施形態では、患者は各治療を3週間毎に受ける。一実施形態では、患者は各治療を4週間毎に受ける。
【0028】
一実施形態では、本発明は、食物アレルギーを有する対象にリゲリズマブを1回の治療当たり約24mg~約600mgの範囲、好ましくは約72mg~約360mgの範囲、好ましくは1回の治療当たり120mg~360mg、好ましくは約240mg~約360mgの範囲で投与することにより、食物経口負荷試験時にアナフィラキシーの徴候及び症状を予防することを含む。一実施形態では、対象は、1回の治療当たり約120mg~約360mgを受ける。一実施形態では、対象は、1回の治療当たり約120mgを受ける。一実施形態では、対象は、1回の治療当たり約240mgを受ける。一実施形態では、対象は、1回の治療当たり約300mgを受ける。一実施形態では、対象は、1回の治療当たり約360mgを受ける。一実施形態では、対象は、1回の治療当たり約20mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、約150mg、約180mg、約200mg、約210mg、240mg、約280mg、約300mg、約320mg又は約360mgを受ける。一実施形態では、例えば、食物経口負荷試験時のアナフィラキシー、アナフィラキシー治療、予防又は軽減を必要としている対象は、各治療を2週間毎、3週間毎、月1回(4週間毎)、6週間毎、隔月(2ヵ月毎)、9週間毎又は年4回(3ヵ月毎)受ける。一実施形態では、対象は、各治療を3週間毎に受ける。一実施形態では、対象は、各治療を4週間毎に受ける。
【0029】
一実施形態では、本発明は、IgE媒介性アナフィラキシー、例えばIgE媒介性特発性アナフィラキシーの治療、予防又は軽減のため、対象にリゲリズマブを約24mg~約600mgの範囲、好ましくは約72mg~約360mgの範囲、好ましくは120mg~360mg、好ましくは約240mg~約360mgの範囲で投与することを含む。一実施形態では、対象は、投与1回当たり約120mg~約360mgを受ける。一実施形態では、対象は、約120mgを受ける。一実施形態では、対象は、約240mgを受ける。一実施形態では、対象は、約300mgを受ける。一実施形態では、対象は、約360mgを受ける。一実施形態では、対象は、約300mgを受ける。一実施形態では、対象は、約480mgを受ける。一実施形態では、対象は、1回の治療又は予防的介入当たり約20mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、約150mg、約180mg、約200mg、約210mg、240mg、約280mg、約300mg、約320mg又は約360mgを受ける。一実施形態では、アナフィラキシー治療又は予防を必要としている対象は、各治療又は予防的介入を2週間毎、3週間毎、月1回(4週間毎)、6週間毎、隔月(2ヵ月毎)、9週間毎又は年4回(3ヵ月毎)受ける。一実施形態では、対象は、各治療又は予防的介入を3週間毎に受ける。一実施形態では、対象は、各治療又は予防的介入を4週間毎に受ける。
【0030】
安全性への懸念が生じたとき、好ましくは投与間隔を増加させることにより、好ましくは投与間隔を2倍又は3倍にすることにより、用量を減量調節することができる。例えば月1回又は3週間毎に240mgのレジメンは、それぞれ2ヵ月毎又は6週間毎に2倍にすることができるか、又はそれぞれ3ヵ月毎又は9週間毎に3倍にすることができる。
【0031】
一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその結合断片は、1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて投与されることになる。一部の実施形態では、1つ以上の追加の薬剤は、食物アレルギーの治療のための薬剤、例えばOITである。
【0032】
一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその結合断片、例えば、リゲリズマブは、食物アレルギーの治療用の1つ以上の薬剤、例えばOITの補助剤として投与されることになる。リゲリズマブは、任意の食物アレルゲンに対する食物アレルギー反応、例えば任意の食物アレルゲンに対する重度食物アレルギーの予防方法でOITの補助剤として投与することができる。
【0033】
一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその結合断片、例えばリゲリズマブは、OITの補助剤として投与されることになり、抗IgE抗体又はその結合断片、例えばリゲリズマブを投与すると、OITに関連する有害事象の頻度及び/又は重症度が低下することによってOITが促進される。
【0034】
一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその結合断片、例えばリゲリズマブは、OITの補助剤として投与されることになり、抗IgE抗体又はその結合断片、例えばリゲリズマブを投与すると、OITの増量調節段階が短縮されるか又はなくなることによってOITが促進される。
【0035】
一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその結合断片、例えばリゲリズマブは、OITの補助剤として投与されることになり、抗IgE抗体又はその結合断片、例えばリゲリズマブを投与すると、OIT単剤療法投与と比較してリゲリズマブをOITの補助剤として投与したとき、より多くの対象がOIT維持用量に到達することが可能となる。
【0036】
一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその結合断片、例えばリゲリズマブは、OITと組み合わせて投与されることになり、抗IgE抗体又はその結合断片、例えばリゲリズマブを投与すると、IgE媒介性食物アレルギーを有する対象で食物アレルゲンに対する持続的無反応又は免疫寛容が誘導される。例えば、リゲリズマブは、OITの開始8週間前に投与され、続いてOITの増量調節段階中及びOIT維持段階中にリゲリズマブがOITと同時に使用される。
【0037】
別の態様では、本開示は、食物アレルギーを治療又は予防する方法で使用することのできる抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)及びその結合断片についての新規投薬レジメンを提供する。
【0038】
別の態様では、本開示は、食物アレルギーを治療又は予防する方法で使用することのできるリゲリズマブについての新規投薬レジメンを提供する。
【0039】
別の態様では、本開示は、対象がアレルギーを示す食物を回避する食事と併せた、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応を治療又は予防する方法で使用することのできるリゲリズマブについての新規投薬レジメンを提供する。
【0040】
リゲリズマブは、例えば、食物アレルギー反応を治療又は予防する方法で使用されるとき、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを予防する方法で使用される場合に単剤療法として投与され得る。
【0041】
別の態様では、本開示は、対象における1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露によるアナフィラキシーを治療又は予防する方法で使用することのできるリゲリズマブについての新規投薬レジメンを提供する。
【0042】
別の態様では、本開示は、アナフィラキシーを治療、予防又は軽減する方法で使用することのできるリゲリズマブについての新規投薬レジメンを提供する。
【0043】
別の態様では、本開示は、不明の及び/又は不可避の誘因による再発性特発性アナフィラキシーを有する対象のIgE媒介性アレルギー反応を治療、予防又は軽減する方法で使用することのできる抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)及びその結合断片についての新規投薬レジメンを提供する。
【0044】
別の態様では、本開示は、少なくとも1つのアレルゲン(例えば、昆虫刺咬症、毒液、薬剤、例えばβラクタム系抗生物質、NSAIDS、生物学的製剤;空気アレルゲン、職業性アレルゲン、放射線造影剤、天然ゴムラテックス、精液)が誘因となる重度の又は重篤なアレルギー性IgE媒介性反応を治療、予防又は軽減する方法で使用することのできる抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)及びその結合断片についての新規投薬レジメンを提供する。
【0045】
別の態様では、本開示は、未同定の誘因の重度の又は重篤なアレルギー性IgE媒介性反応(例えば、特発性アナフィラキシー)を治療、予防又は軽減する方法で使用することのできる抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)及びその結合断片についての新規投薬レジメンを提供する。
【0046】
一部の実施形態では、リゲリズマブなど、抗IgE抗体は、s.c.送達される300mgの初回用量で対象に投与され得、次に、この用量は、必要に応じて、医師によって決定されるとおり、対象のIgEレベル及び体重に基づいて、例えば総IgEレベル<350IU/mL;又は総IgEレベル≧350IU/mLであり得る対象のIgEレベルに基づいて調整され得る。
【0047】
更に別の具体的な実施形態では、150mgリゲリズマブの単位用量を2つ含む用量が4週間毎に(q4w)s.c.投与される。
【0048】
リゲリズマブは、皮下注射により、隔週で又は月1回、約120mg~約480mg、好ましくは約360mg又は約480mgの用量で投与され得る。
【0049】
一部の実施形態では、リゲリズマブなど、抗IgE抗体は、リゲリズマブのバイオシミラーであるか又はそれと互換性があることが実証されている抗体を指し得る。こうした抗体は、本明細書に開示されるとおりの、リゲリズマブ投与について言及する実施形態に従って投与され得る。
【発明を実施するための形態】
【0050】
実施形態:
A1.それを必要としている対象の1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギーの治療又は予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0051】
A2.それを必要としている対象の1つ以上のアレルゲンに対するIgE介在性食物アレルギーの治療又は予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0052】
A3.1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギーがIgE駆動性食物アレルギーである、実施形態A1に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0053】
A4.1つ以上のアレルゲンが、対象の食物アレルギー又は食物不耐性を誘発するアレルゲンである、実施形態A1~A3のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0054】
A5.食物アレルギー又は食物不耐性を誘発する1つ以上のアレルゲンが、ミルク、ピーナッツ、木の実、アブラナ科花蕾類(cauliforate)、グルテン含有穀類、チーズ、卵、貝類、魚;及び果物からなる群から選択される食物に存在する、実施形態A4に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0055】
A6.食物アレルギーが、ナッツアレルギー、魚アレルギー、小麦アレルギー、ミルクアレルギー、ピーナッツアレルギー、木の実アレルギー、貝類アレルギー、大豆アレルギー、種子アレルギー、ゴマ種子アレルギー及び卵アレルギーからなる群から選択される、実施形態A3に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0056】
A7.食物アレルギーがピーナッツアレルギーである、実施形態A6に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0057】
A8.食物アレルギーがミルクアレルギーである、実施形態A6に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0058】
A9.食物アレルギーが卵アレルギーである、実施形態A6に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0059】
A10.アレルゲンアグノスティック療法アプローチで食物アレルギー、例えば重度食物アレルギーを治療又は予防するための、実施形態A1~A9のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0060】
A11.食物アレルゲンに対する非特異的耐性を誘導することによるか又は減感作プロトコルにおいてのいずれかで食物アレルゲンと組み合わせて食物アレルギーを治療するための、実施形態A1~A10のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0061】
A12.食物アレルギーがIgE介在性食物アレルギーである、実施形態A1~A10のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0062】
A13.IgE介在性食物アレルギーが重度食物アレルギーである、実施形態A12に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0063】
A14.IgE介在性食物アレルギーがピーナッツアレルゲンである、実施形態A12又はA13に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0064】
A15.対象で1つ以上のアレルゲンによって誘発されるアレルギー反応が減少又は消失する、実施形態A1~A14のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0065】
A16.対象における1つ以上のアレルゲンへの偶発的曝露後のアレルギー反応、例えばアナフィラキシーを含むアレルギー反応の予防における使用のための、実施形態A1~A14のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0066】
A17.1つ以上のアレルゲンへの偶発的曝露後の対象の急性アレルギー及びアナフィラキシーショックの治療における使用のための、実施形態A1~A15のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0067】
A18.対象における1つ以上の食物アレルゲンへの曝露によるアナフィラキシー反応の管理における使用のための、実施形態A1~A14のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0068】
A19.食品に対する重度アレルギー反応の治療における使用のための、実施形態A1~A14のいずれか1つに記載の、抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ。
【0069】
A20.食品に対する重度アレルギー反応の予防、例えば食物アレルゲンへの偶発的曝露によるアナフィラキシー反応に対する予防における使用のための、米国実施形態A1~A14のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ。
【0070】
A21.実施形態A1~A20のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片が、例えば約1ヵ月~約1年続く周期的期間中に反復投与されることになり、この周期的期間が2年毎又は3年毎に繰り返され得、それにより対象が1つ以上の食物アレルゲンに耐性となる。
【0071】
A22.アレルギー反応又は発作のリスク又は重症度の低減における使用のための、実施形態A1~A21のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0072】
A23.食物アレルギーがピーナッツアレルギー、ミルクアレルギー又は卵アレルギーである、実施形態A1~A22のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0073】
A24.対象に1つ以上のアレルギー症状が現れてから4時間未満で抗IgE抗体又はその抗原結合断片が対象に投与される、実施形態A1~A23のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0074】
A25.1つ以上のアレルギー症状が、蕁麻疹、血管性浮腫、鼻炎、喘息、嘔吐、呼吸困難、唇の腫脹、舌の腫脹及び血圧低下からなる群から選択される、実施形態A24に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0075】
A26.アレルギー反応の治療、予防又は軽減を必要としている対象のアレルギー反応の治療、予防又は軽減における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片であって、アレルギー反応がアナフィラキシーである、抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0076】
A27.アレルギー反応が食品の摂取又は食品への曝露によって誘発される、実施形態26に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0077】
A28.アレルギー反応が非食物アレルゲンへの曝露によって誘発される、実施形態26に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0078】
A29.アレルギー反応の治療、予防又はその重症度の軽減を必要としている対象のアレルギー反応の治療、予防又はその重症度の軽減における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0079】
A30.1つ以上のアレルゲンに対するIgE駆動型食物アレルギーの確定診断を有する対象における食物アレルゲンに対する偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0080】
A31.食物アレルギーを有する対象の食物経口負荷試験時のアナフィラキシーの徴候及び症状の予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0081】
A32.抗IgE抗体がリゲリズマブである、実施形態A1~A31のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0082】
A33.リゲリズマブが約24mg~約600mgの用量、例えば600mgの最大用量で投与される、実施形態A32に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0083】
A34.リゲリズマブが約120mgの用量で投与される、実施形態A32又はA33に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0084】
A35.リゲリズマブが約240mgの用量で投与される、実施形態A32又はA33に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0085】
A36.リゲリズマブが約300mgの用量で投与される、実施形態A33に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0086】
A37.リゲリズマブが約360mgの用量で投与される、実施形態A33に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0087】
A38.リゲリズマブが約480mgの用量で投与される、実施形態A33に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0088】
A39.リゲリズマブが2~4週間毎に投与される、実施形態32~A38のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0089】
A40.リゲリズマブが最長16週間、例えば12~16週間にわたって投与される、実施形態A32~A39のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0090】
A41.リゲリズマブが単剤療法として前記対象に投与される、実施形態A32~A40のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0091】
A42.抗IgE抗体がOITと共投与される、実施形態A1~A41のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0092】
A43.抗IgE抗体がOITの補助薬として投与される、実施形態A1~A42のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0093】
A44.それを必要としている対象における1つ以上のアレルゲンに対する重度食物アレルギーなどの食物アレルギーの治療、予防又は軽減における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブであって、単剤療法として前記対象に投与されるリゲリズマブ。
【0094】
A45.それを必要としている対象における1つ以上のアレルゲンに対するアナフィラキシーなどのアレルギー反応の予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブであって、単剤療法として前記対象に投与されるリゲリズマブ。
【0095】
A46.それを必要としている対象における1つ以上のアレルゲンに対する重度食物アレルギーなどの食物アレルギーの治療又は予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブであって、前記対象にOIT治療と組み合わせて又はOITの補助薬として投与されるリゲリズマブ。
【0096】
A47.それを必要としている対象における1つ以上のアレルゲンに対するアナフィラキシーなどのアレルギー反応の予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブであって、前記対象にOIT治療と組み合わせて又はOITの補助薬として投与されるリゲリズマブ。
【0097】
A48.抗IgE抗体又はその抗原結合断片が、食物アレルギーに関連する1つ以上の症状の予防又は治療方法で使用される、実施形態A1~A47のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0098】
A49.実施形態A1~A48のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物。
【0099】
定義
本明細書で使用されるとき、IgEは、免疫グロブリンEを指す。
【0100】
用語「含む」は、「包含する」及び「からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなることもあるか、又は何らかの追加的なもの、例えばX+Yが含まれることもある。
【0101】
数値xに関連して用語「約」は、例えば±10%を意味する。数値範囲又は列挙された数の前に用いられるとき、用語「約」は、その連続中の各々の数に適用され、例えば、語句「約1~5」は、「約1~約5」と解釈されるべきであるか、又は例えば語句「約1、2、3、4」は、「約1、約2、約3、約4」と解釈されるべきである等である。
【0102】
単語「実質的に」は、「完全に」を除外せず、例えば、Yから「実質的に遊離している」組成物は、Yから完全に遊離し得る。必要に応じて、単語「実質的に」は、本開示の定義から省略され得る。
【0103】
用語「抗体」には、本明細書で参照されるとき、天然に存在する抗体及び全ての抗体が含まれる。天然に存在する「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではVと省略する)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLを含む。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と称される一層高度に保存された領域が散在した超可変領域又は相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細かく分けることができる。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んだ3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含め、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0104】
抗体の「抗原結合断片」という用語は、本明細書で使用されるとき、IgEに特異的に結合する能力を保持している抗体の断片を指す。完全長抗体の断片によって抗体の抗原結合機能が果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に含まれる結合断片の例としては、V、V、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;V及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一のアームのV及びVドメインからなるFv断片;VドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546);及び単離CDRが挙げられる。更に、Fv断片の2つのドメイン、V及びVは別個の遺伝子によりコードされるが、組換え方法を用いて合成リンカーによってつなぎ合わせて、それらが単一のタンパク質鎖として作られることを可能にすることができ、ここではV及びV領域が対を成して一価分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;及びHuston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照されたい)。かかる一本鎖抗体も用語「抗体」の範囲内に含まれることが意図される。一本鎖抗体及び抗原結合部分は、当業者に公知の従来技術を用いて入手される。
【0105】
例示的抗体には、リゲリズマブ抗体(米国特許第7,531,169号明細書)が含まれ、この開示は全体として参照により本明細書に援用される。
【0106】
抗体の「抗原結合断片」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原(例えば、IgE)に特異的に結合する能力を保持している抗体の断片を指す。完全長抗体の断片によっても抗体の抗原結合機能が果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に含まれる結合断片の例としては、V、V、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab)2断片;V及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一のアームのV及びVドメインからなるFv断片;VドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546);及び単離されたCDRが挙げられる。例示的抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを有するリゲリズマブのCDRを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなり、この抗体は、IgEに特異的に結合する。
【0107】
更に、Fv断片の2つのドメイン、V及びVは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは組換え方法を用いると、合成リンカーによってつなぎ合わせることができ、V及びV領域が対合して一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖にすることが可能となる(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;及びHuston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照されたい)。かかる単鎖抗体も用語「抗体」の範囲内に包含されることが意図される。単鎖抗体及び抗原結合部分は、当業者に公知の従来技術を用いて入手される。
【0108】
「単離抗体」は、本明細書で使用されるとき、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、IgEに特異的に結合する単離抗体は、IgE以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書で使用されるとき、単一の分子組成の抗体分子の製剤を指す。用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用されるとき、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。「ヒト抗体」は、ヒト、ヒト組織又はヒト細胞によって産生されなくてもよい。本開示のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム又は部位特異的突然変異誘発によるか、インビボで抗体遺伝子の組換え時のジャンクションにおけるN-ヌクレオチド付加によるか、又はインビボで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。開示される方法及び組成物の一部の実施形態では、抗IgE抗体は、ヒト抗体、単離抗体及び/又はモノクローナル抗体である。
【0109】
本明細書で使用されるとき、「抗ヒトIgE抗体」は、IgEが高親和性受容体FcεRIに結合するのを阻害するか、又は実質的に低減するような形でかかるヒトIgEに結合する抗体を意味する。
【0110】
用語「K」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。用語「K」は、本明細書で使用されるとき、K対Kの比(即ちK/K)から求められる、且つモル濃度(M)として表される解離定数を指すことが意図される。抗体のK値は、当技術分野で十分に確立されている方法を用いて決定することができる。抗体のKの好ましい決定方法は、表面プラズモン共鳴を用いるか、又はBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いることによるものである。一部の実施形態では、本発明に係る抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばオマリズマブは、約0.02~7.7nM、例えば100~250pMのKでヒトIgEに結合する。
【0111】
用語「親和性」は、単一の抗原部位における抗体と抗原との間の相互作用強度を指す。各抗原部位の範囲内で、抗体「アーム」の可変領域は弱い非共有結合性の力によって多数の部位で抗原と相互作用する;相互作用が多いほど親和性が強くなる。様々な種のIgEに対する抗体の結合親和性を判定する標準アッセイは当技術分野で公知であり、例えばELISA、ウエスタンブロット及びRIAが挙げられる。抗体の結合反応速度(例えば、結合親和性)は、Biacore解析によるなど、当技術分野で公知の標準アッセイによっても評価され得る。
【0112】
当技術分野で公知の及び本明細書に記載される方法論に従って決定したとき、1つ以上のIgE機能特性(例えば、生化学的、免疫化学的、細胞的、生理学的又は他の生物学的活性など)を「阻害」する抗体とは、特定の活性についての、抗体の非存在下で(又は関連性のない特異性の対照抗体が存在するときに)見られるものと比べた統計的に有意な低下に関係するものと理解されるであろう。IgE活性を阻害する抗体は、例えば、測定されるパラメータの少なくとも約10%、少なくとも50%、80%又は90%の統計的に有意な低下に影響を及ぼし、開示される方法及び組成物の特定の実施形態では、使用されるIgE抗体は、IgE機能活性の95%、98%又は99%超を阻害し得る。
【0113】
用語「誘導体」は、特に指示されない限り、例えば指定される配列(例えば、可変ドメイン)の本開示に係る、例えばリゲリズマブ等、IgE抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列変異体及び共有結合修飾(例えば、ペグ化、脱アミド、ヒドロキシル化、リン酸化、メチル化等)を定義して使用される。「機能的誘導体」は、本開示の抗IgE抗体と共通する定性的生物学的活性を有する分子を含む。機能的誘導体には、本明細書に開示されるとおりの抗IgE抗体の断片及びペプチド類似体が含まれる。断片は、例えば指定される配列の本開示に係るポリペプチドの配列内にある領域を含む。
【0114】
語句「実質的に同一」は、関連性のあるアミノ酸又はヌクレオチド配列(例えば、V又はVドメイン)が特定の参照配列と比較して同一である又は(例えば、保存されたアミノ酸置換による)実質的でない差異のみを有するであろうことを意味する。実質的でない差異には、指定される領域(例えば、V又はVドメイン)の5アミノ酸配列中1又は2個の置換など、軽微なアミノ酸変化が含まれる。抗体の場合、第2の抗体は同じ特異性を有し、且つその親和性の少なくとも50%を有する。本明細書に開示される配列と実質的に同一な(例えば、少なくとも約85%の配列同一性の)配列も本出願の一部である。一部の実施形態では、誘導体抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブの誘導体、例えばリゲリズマブバイオシミラー抗体)の配列同一性は、本開示の配列を基準として約90%以上、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれを超え得る。
【0115】
天然ポリペプチド及びその機能的誘導体に関して「同一性」とは、本明細書では、最大のパーセント同一性が達成されるように、且ついかなる保存的置換も配列同一性の一部としては考慮せずに配列をアラインメントし、必要であればギャップを導入した後の、対応する天然ポリペプチドの残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。N末端又はC末端の伸長も挿入も、同一性を減じるとは解釈されないものとする。アラインメントの方法及びコンピュータプログラムは周知である。パーセント同一性は、標準的なアラインメントアルゴリズム、例えばAltshul et al.((1990)J.Mol.Biol.,215:403 410)によって記載されるベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール(BLAST:Basic Local Alignment Search Tool);Needleman et al.((1970)J.Mol.Biol.,48:444 453)のアルゴリズム;又はMeyers et al.((1988)Comput.Appl.Biosci.,4:11 17)のアルゴリズムによって決定することができる。パラメータ一式は、Blosum 62スコアリング行列で、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4及びフレームシフトギャップペナルティ5であり得る。2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Miller((1989)CABIOS,4:11-17)のアルゴリズムを用いて、PAM120重み付け残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して決定することもできる。
【0116】
「アミノ酸」は、例えば、あらゆる天然に存在するL-α-アミノ酸を指し、且つD-アミノ酸を含む。語句「アミノ酸配列変異体」は、本開示に係る配列と比較したとき、そのアミノ酸配列に何らかの違いがある分子を指す。例えば、指定される配列の本開示に係る抗体のアミノ酸配列変異体は、なおもIgEへの結合能力を有する。アミノ酸配列変異体には、置換変異体(本開示に係るポリペプチドで少なくとも1つのアミノ酸残基が取り除かれ、それに代えて同じ位置に別のアミノ酸が挿入されているもの)、挿入変異体(本開示に係るポリペプチドにおける特定の位置にあるアミノ酸に直接隣接して1つ以上のアミノ酸が挿入されているもの)及び欠失変異体(本開示に係るポリペプチドで1つ以上のアミノ酸が取り除かれているもの)が含まれる。
【0117】
用語「薬学的に許容可能」は、1つ又は複数の活性成分の生物学的活性の有効性に干渉しない非毒性物質を意味する。
【0118】
化合物、例えば抗IgE抗体に関して用語「投与する」は、その化合物を任意の経路によって対象に送達することを指して使用される。
【0119】
本明細書で使用されるとき、「治療有効量」は、対象(ヒトなど)への単回又は複数回用量投与時に、障害又は再発性障害を治療し、予防し、その発症を予防し、治癒し、(該当する場合)、遅延させ、その重症度を低減し、その少なくとも1つの症状を改善するのに有効であるか、又はかかる治療がない場合に予想される生存を超えて対象の生存を延長させるのに有効な抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ又はその抗原結合断片)の量を指す。単独で投与される個別の活性成分(例えば、抗IgE抗体、例えばリゲリズマブ)に適用される場合、この用語は、その成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、この用語は、組み合わせた投与、逐次投与又は同時投与にかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の総量を指す。
【0120】
用語「治療」又は「治療する」は、本明細書では、対象への又は対象から単離された組織若しくは細胞株への、本開示に係る抗IgE抗体、例えばリゲリズマブ又は前記抗IgE抗体を含む医薬組成物の適用又は投与として定義され、対象は、特定の疾患、その疾患に関連する症状又はその疾患を発症し易い素因を有し、その目的は、疾患を治癒すること(該当する場合)、その発症を遅らせること、その重症度を低減すること、それを緩和すること、その1つ以上の症状を改善すること、疾患を好転させること、疾患の任意の関連する症状又は疾患を発症し易い素因を低減し又は好転させることである。用語「治療」又は「治療する」には、疾患を有する疑いがある対象並びに病気である又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された対象を治療することが含まれ、及び臨床的再発の抑制が含まれる。
【0121】
更に、用語「治療」又は「治療する」は、本明細書では、対象への又は対象からの単離組織若しくは細胞株への、本開示に係るIgE抗体、例えばリゲリズマブ又は前記抗IgE抗体を含む医薬組成物の適用又は投与として定義され、対象は、特定の疾患(例えば、アナフィラキシー)、疾患(例えば、アナフィラキシー)に関連する症状又は疾患(例えば、アナフィラキシー)を発症し易い素因(適用可能な場合)を有し、その目的は、疾患を治癒し(適用可能な場合)、その発生を遅延させ、その重症度を低減し、それを軽減し、その1つ以上の症状を緩和し、疾患を改善し、疾患の任意の随伴症状又は疾患を発症し易い素因を低減し又は改善することである。用語「治療」又は「治療する」には、疾患を有する疑いがある対象並びに病気であるか、又は疾患若しくは病態に罹患していると診断された対象を治療することが含まれ、及び臨床的再発の抑制が含まれる。
【0122】
「有効な治療」は、本明細書では、リゲリズマブの投与時に対象が総IgE<20IU/mLを実現したような、本開示に係るIgE抗体、例えばリゲリズマブ又は前記抗IgE抗体を含む医薬組成物の対象への適用又は投与として定義される。
【0123】
「有効な治療」は、本明細書では、リゲリズマブの投与時に対象がDBPCFCで3000mgの単回用量(5044mg累積耐容用量)のピーナッツタンパク質を用量制限症状なしに忍容し得るか、又はDBPCFCで1000mg以上の単回用量(2044mg累積耐容用量)のピーナッツタンパク質を用量制限症状なしに忍容し得るか、又はDBPCFCで3000mgの単回用量(5044mg累積耐容用量)のピーナッツタンパク質を用量制限症状なしに忍容し得るような、本開示に係るIgE抗体、例えばリゲリズマブ又は前記抗IgE抗体を含む医薬組成物の対象への適用又は投与としても定義される。
【0124】
本明細書で使用されるとき、患者に関して「選択すること」及び「選択された」は、より大きい一群の患者から、特定の患者が予め決められた判定基準を達成していることに基づいて(それに起因して)その特定の患者が特別に選ばれることを意味して使用される。同様に、「選択的に治療すること」は、特定の疾患を有する患者に治療を提供することを指し、その患者は、より大きい一群の患者から、その特定の患者が予め決められた判定基準を達成していることに基づいて特別に選ばれる。同様に、「選択的に投与すること」は、より大きい一群の患者から、特定の患者が予め決められた判定基準を達成していることに基づいて(それに起因して)特別に選ばれた患者に薬物を投与することを指す。選択すること、選択的に治療すること及び選択的に投与することは、患者に対し、その患者のより大きい一群への帰属性のみに基づいて標準治療レジメンが送達されるのでなく、むしろ患者の個人歴(例えば、過去の治療介入、例えば、過去の生物製剤による治療)、生物学(例えば、特定の遺伝マーカー)及び/又は症状発現(例えば、特定の診断基準に満たない)に基づいてテーラーメイドの治療法が送達されることを意味する。本明細書で使用されるとおりの治療方法に関して、選択することとは、特定の判定基準を達成している患者の偶発的な治療を指すのでなく、むしろ患者が特定の判定基準を達成していることに基づいて患者に治療を投与するという慎重な選択を指す。従って、選択的な治療/投与は、特定の疾患を有するあらゆる患者にその個人歴、疾患の症状発現及び/又は生物学にかかわらず特定の薬物を送達する標準治療/投与とは異なる。一部の実施形態では、患者は、食物アレルギーを有することに基づいて治療に選択された。
【0125】
本明細書で使用されるとき、語句「対象集団」は、一群の対象を意味して使用される。本開示の方法の一部の実施形態では、IgE拮抗薬(例えば、リゲリズマブなどの抗IgE抗体)は、1つ以上のアレルゲンに対するIgE介在性アレルギー反応を有する対象集団の治療に使用される。
【0126】
本明細書で定義されるとき、用語「アレルギー反応」は、立証済みの又は強く疑われる免疫機構によって惹起される過敏反応として定義される。
【0127】
本明細書で定義されるとき、用語「食物アレルギー」は、因果関係(理想的には、具体的な免疫学的機構との因果関係)が定義されている場合に使用される。
【0128】
免疫反応は、広義には3種類ある:IgE介在性、非IgE介在性及び混合型。IgE介在性反応は、通常、即発型反応(原因となる誘因、例えば食物の摂取、それへの曝露又はそれとの接触から2時間以内に起こる)と、即発型+遅発型(即発型症状の後に遷延性の又は継続する症状が続く)とに分けられる。非IgE介在性反応は、臨床的にも科学的にもはっきりとは定義されていないが、概してT細胞介在性であると考えられている。これは典型的には遅れて発症し、原因となる誘因、例えば食物の摂取、それへの曝露又はそれとの接触から4~28時間後に起こる。混合型IgE・非IgE介在性反応は、例えば、IgE介在性及び非IgE介在性の両方の機構が関わる食物アレルギーに関連する病態である。
【0129】
本明細書で定義されるとき、用語「重度食物アレルギー」は、以下の症状:アナフィラキシー、低血圧、呼吸困難又は喘鳴;又は組み合わせでの嘔吐、血管性浮腫及び/又は咳嗽を含め、複数器官の症状の組み合わせのいずれか1つを含めた、1つ以上の食物アレルゲンに対する重度の反応を指す。一部の例では、「重度食物アレルギー」は、以下の器官系:皮膚又は口腔粘膜、胃腸管、心血管及び気道の少なくとも2つに影響を及ぼす少なくとも1つの逼迫した症状が対象に見られるような食物アレルギーを指す。
【0130】
本明細書で定義されるとき、用語「食物アレルゲン」は、例えば、ミルク、ピーナッツ、木の実、アブラナ科花蕾類、穀類、チーズ、卵、貝類、魚及び果物など、ある種の食物に存在するアレルゲンを指す。
【0131】
本明細書で定義されるとき、用語「1つ以上のアレルゲンに対するIgE介在性(駆動型)食物アレルギー」は、例えば食物アレルギーを指す。一部の実施形態では、食物アレルギーとは、1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギーを指し、食物アレルギー又は食物不耐性を誘発する1つ以上のアレルゲンは、ミルク、ピーナッツ、木の実、アブラナ科花蕾類、グルテン含有穀類、チーズ、卵、貝類、魚;及び果物からなる群から選択される食物に存在する。一部の実施形態では、食物アレルギーは、例えば、ピーナッツ、ミルク又は卵アレルギーを指す。一部の実施形態では、食物アレルギーは、1つ以上のアレルゲンに対するIgE介在性食物アレルギーの確定診断を有する対象、例えば成人及び小児患者6歳以上における食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防の適応症も指す。
【0132】
本明細書で定義されるとき、用語「食物アレルギーに関連する症状」とは、以下の器官系:胃腸管、皮膚系、呼吸器系又は心血管系のいずれかに関係する症状を指す。かかる症状は、限定はされないが、例えば、嘔吐、疼痛又は下痢;蕁麻疹、血管性浮腫又は掻痒症;急性鼻結膜炎、喘鳴、咳嗽又はストライダー;低血圧の結果としての虚脱であり得る。
【0133】
本明細書で定義されるとき、用語「アレルゲンアグノスティックな」治療又は療法アプローチとは、アレルゲンに依存しないアレルギー治療又はアレルギー療法アプローチを指す。
【0134】
二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)は、食物アレルギーの診断に好ましい試験である。
【0135】
経口免疫療法(OIT)は、特定の食物に対してアレルギーを有する個体が、その食物に対するアレルギー反応のリスクを低減することを目標に漸増量のアレルゲンを摂取するという医学的治療である。経口免疫療法は、一般に複数のアレルゲンタンパク質(アレルゲン)で構成される。OITの例は、商品名Palforziaで知られる経口ピーナッツ(ラッカセイ(Arachis hypogaea))アレルゲン粉末である。多アレルゲンOITには、2つ以上のアレルゲンタンパク質(食品タンパク質粉)、例えば以下の食品タンパク質粉:ピーナッツ、乳、卵、コムギ、カシュー、ヘーゼルナッツ及びクルミ(全て食品タンパク質粉)の2つ以上が含まれ得る。
【0136】
世界アレルギー機構(World Allergy Organization)アナフィラキシーガイダンス2020によれば、アナフィラキシーは、生命を脅かす恐れのある気道、呼吸又は循環の問題を伴って急激に発症することを特徴とする重度の生命を脅かす全身性過敏反応として定義され、必ずというわけではないが、通常、皮膚及び粘膜の変化に関連する。多様な分子がアナフィラキシーを引き起こし得る。そうした分子は、最も高頻度には、アナフィラキシーをIgE依存的に引き起こすタンパク質であるか、又はマスト細胞を直接活性化させる分子である。IgE媒介性アナフィラキシーは、エフェクター細胞、主にマスト細胞及び好塩基球に発現するアレルゲン特異的IgE/高親和性受容体(FcεRI)複合体と相互作用するアレルゲン(通常、タンパク質)の相互作用が誘因となる。アナフィラキシーは、誘因を特定できない場合には特発性に分類される。
【0137】
抗IgE抗体又はその抗原結合断片を使用した治療法の非奏効例は、そのベースラインの90%の改善を実現できなかったか、又はその症状の増悪があった対象として定義される。抗IgE抗体又はその抗原結合断片を使用した治療法の奏効例は、ベースラインの90%の改善が実現した対象として定義される。
【0138】
抗IgE抗体
開示される使用、方法及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、IgGサブタイプのヒト抗体である。他の実施形態では、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、リゲリズマブである。
【0139】
例示的抗IgE抗体としては、限定はされないが、オマリズマブ、キリズマブ、リゲリズマブ及びエトロリズマブが挙げられる。
【0140】
代わりに、本開示の方法で使用される抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に示される参照抗IgE抗体のアミノ酸配列変異体であり得る。
【0141】
本開示は、リゲリズマブのV又はVドメインのアミノ酸残基の1個以上、典型的にはわずかに数個(例えば、1~10個)が、例えば、対応するDNA配列の突然変異、例えば部位特異的突然変異誘発によって変化している抗IgE抗体又はその抗原結合断片(例えば、リゲリズマブ)も含む。
【0142】
一実施形態では、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2と示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号1配列番号1と示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む。
【0143】
一実施形態では、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなり、この抗体は、IgEに特異的に結合する。
【0144】
代わりに、本開示の方法で使用されるとおりの抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に配列によって示される抗IgE抗体の誘導体(例えば、ペグ化変異体、グリコシル化変異体、親和性成熟変異体等)を含み得る。代わりに、本開示の方法で使用される抗IgE抗体又はその抗原結合断片のV又はVドメインは、本明細書に示されるV又はVドメイン(例えば、配列番号2及び61に示されるもの)と実質的に同一のV又はVドメインを有し得る。本明細書に開示されるヒト抗IgE抗体は、配列番号2と示されるものと実質的に同一の重鎖及び/又は配列番号1と示されるものと実質的に同一の軽鎖を含み得る。本明細書に開示されるヒト抗IgE抗体は、配列番号2を含む重鎖と、配列番号1を含む軽鎖とを含み得る。
【0145】
本開示の方法で使用される好ましい抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、米国特許第7,531,169号明細書(これは、参照により全体として本明細書に援用される)の実施例10の表2に記載されるとおりのヒト抗体、特にリゲリズマブである。
【0146】
抗IgE抗体の治療及び使用方法
アレルギー、例えば食物アレルギーの症状及び重症度は、関与する1つ又は複数の免疫応答の種類、1つ又は複数の免疫応答の持続時間及び大きさ、アレルゲンの量並びにアレルゲンとの接触/曝露部位などの要因に依存し得る。アレルギー症状の例としては、限定なしに、皮膚発疹、皮膚発赤、蕁麻疹、皮膚隆起/斑/膨疹、眼の痒み/流涙、頭痛、くしゃみ、喘鳴、息切れ、胸部絞扼感、咳、鼻水、咽頭痛、腫脹、悪心、嘔吐、下痢及びアナフィラキシーが挙げられる。
【0147】
対象は、アレルギー反応を誘発するアレルゲンと、当技術分野で公知の任意の経路により、例えば、摂取、吸入、注射又は直接的な接触を通じて接触し得るか又はそれに曝露し得る。アレルギー反応に関連する症状は、アレルゲンとの接触又は曝露部位、例えば皮膚の一領域、気道又は胃腸管、遠位部位に限局されるか、又はアナフィラキシーの場合のように全身的になることもある。
【0148】
一般に、アレルギー反応は、アレルゲンとの接触若しくは曝露があった直後又は接触若しくは曝露後約30分以内若しくはそれ以上のうちに起こり得る。
【0149】
多様な既知の食物アレルゲンがあるにもかかわらず、90パーセントを超える有害な食物反応が、以下の食物:ミルク、卵、ピーナッツ、木の実、小麦、大豆、魚及び貝類の食物成分によって引き起こされる。食物アレルギーの他の例は、豆類(大豆、エンドウ豆、豆)、コーン、トウモロコシ、果物、野菜、香辛料、合成及び天然着色料、鶏肉及び化学添加物の食物成分によって引き起こされるアレルギーである。
【0150】
最も一般的な食物アレルギーの1つは、ピーナッツアレルギーである。ピーナッツは、マメ科(Fabaceae)に属する。ペカン、アーモンド、カシュー、ピスタチオ、松の実及びクルミを含めた木の実のタンパク質は、もう1つの広く見られるアレルゲンである。木の実アレルギーに罹患している対象は、1つ又は多数の木の実に過敏性を有し得る。更に、ゴマ種子及びケシ種子を含めた種子は、アレルゲンとして働き得るタンパク質を含む油を含有し得る。詳細な実施形態では、従って食物アレルギーは、ピーナッツアレルギー、ミルクアレルギー、ナッツアレルギー、コーンアレルギー、果物アレルギー、ニンニクアレルギー、オート麦アレルギー、貝類アレルギー、大豆アレルギー、小麦アレルギー(詳細にはグルテンアレルギー)、卵アレルギー、ゴマアレルギー、オリーブ油アレルギー、チーズアレルギー、甲殻類アレルギー、魚アレルギーからなる群から選択され得る。ミルクアレルギーは、ミルクの起源である動物別に(ウシ、ヤギ等)更に区別され得る。
【0151】
食物アレルギーには、即発型(IgE介在性)食物アレルギーと、(IgE/非IgE及び非IgE介在性)遅発型食物アレルギーとが含まれる。即発型(IgE介在性食物)アレルギーは、身体の多くの系(皮膚、腸、気道及び循環)に影響が現れ、食物を摂ってから症状が急速に(1時間以内に)進展する。対照的に、遅発型の食物アレルギーは主に腸及び皮膚に影響が現れ、食物を摂ってから数時間後に症状が進展する。遅発型食物アレルギーを引き起こす免疫機構については、IgE介在性食物アレルギーと比べると、あまり理解が進んでいない。遅発型食物アレルギーの最も一般的な原因食物は、牛乳及び大豆である。IgE介在性食物アレルギーと異なり、遅発型食物アレルギーが生命を脅かすことは極めてまれである。本発明は、食物アレルギー又は食物不耐性;例えば即発型食物アレルギーを治療又は予防することを包含する。
【0152】
本明細書に提供される抗IgE抗体及び方法により治療し得るアレルギーの例としては、限定なしに、食物アレルギー、例えばIgE介在性食物アレルギーが挙げられる。一部の実施形態では、アレルギーは、ピーナッツアレルギー、ミルクアレルギー、ナッツアレルギー、コーンアレルギー、果物アレルギー、ニンニクアレルギー、オート麦アレルギー、貝類アレルギー、大豆アレルギー、小麦アレルギー(詳細にはグルテンアレルギー)、卵アレルギー、ゴマアレルギー、オリーブ油アレルギー、チーズアレルギー、甲殻類アレルギー、魚アレルギーからなる群から選択される食物アレルギーである。
【0153】
幾つかの多く見られるアレルギー誘発食物(ミルク、卵及び小麦)は、一般にIgE介在性反応及び非IgE介在性反応又は混合型IgE介在性・非IgE介在性反応を引き起こすが、他の食物(ピーナッツ、ゴマ及び貝類)は、ほぼ常にIgE介在性反応のみを引き起こす。
【0154】
ここで、病態生理に基づく一部の具体的な食物誘発性アレルギー病態について、以下に記載する:
(i)IgE介在性(急性発症):
-急性蕁麻疹/血管性浮腫(食物は一般的には急性蕁麻疹を引き起こすが(20%)、まれに慢性蕁麻疹を引き起こすこともある)、最も一般的な原因食物:主に「主要アレルゲン」;
-接触蕁麻疹(皮膚が直接接触することにより病変が生じる。まれには、これは直接的なヒスタミン遊離に起因することもある(非免疫性))。最も一般的な原因食物:多数;
-アナフィラキシー(急速進行性の多臓器系反応には、心血管虚脱が含まれ得る)。最も一般的な原因食物:何でもあるが、多く見られるのは、ピーナッツ、木の実、貝類、魚、ミルク及び卵;
-食物に関連する運動誘発性アナフィラキシー(時間的に摂取の後に運動が続く場合に限り、食物がアナフィラキシーを惹起する)。最も一般的な原因食物:小麦、貝類及びセロリがほとんどの場合に報告されている;
-経口アレルギー症候群(花粉に関連する食物アレルギー症候群)(掻痒及び軽度浮腫は口腔に限られており、めったに見られないが口腔外に進行し(7%)、まれにアナフィラキシー(1%~2%)に進行する)。花粉の季節の後に増加し得る。最も一般的な原因食物:生の果物/野菜;加熱調理した形態は耐容される;関係の例:カバノキ(リンゴ、モモ、セイヨウナシ、ニンジン)、ブタクサ(メロン);
-即発型胃腸過敏症(即発型嘔吐、疼痛)最も一般的な原因食物:主要アレルゲン;
(ii)IgE介在性及び細胞介在性の組み合わせ(遅延発症型/慢性)
-アトピー性皮膚炎(以下の者では食物アレルギーに関連する;中等度から重度の発疹を有する小児の35%)最も一般的な原因食物:主要アレルゲン、特に、卵、ミルク
-好酸球性食道炎(症状には、摂食障害、逆流症状、嘔吐、嚥下障害及び食片圧入が含まれる可能性がある)。最も一般的な原因食物:多数。
-好酸球性胃腸炎(好酸球性炎症の1つ又は複数の部位/程度は様々である;腹水、体重減少、浮腫、閉塞が含まれる可能性がある)最も一般的な原因食物:多数。
【0155】
本明細書で使用されるとき、表現「経口免疫療法」、「OIT」又は「OITレジメン」などは、アレルギー及びアレルギー反応を治療又は予防する手段又はアレルギー反応を軽減又は消失させる手段として対象に時間をかけてアレルゲンを反復投与することを指す。典型的なOITレジメンでは、アレルギーを有する対象に初めに少量のアレルゲンが投与され、続いて増量したアレルゲンが投与される。特定の例では、OITレジメンは、少なくとも2つの連続した段階:(1)用量増量段階、及び(2)維持段階を含む。用量増量段階では、有効且つ安全な用量が実現するまで、アレルゲンが用量を増量しつつ投与される。次に、用量増量段階の終了時に確立される用量が維持段階の全経過にわたって対象に投与される。用量増量段階の継続期間は、数週間又は数ヵ月であり得る。しかしながら、特定の実施形態では、用量増量段階は、実質的にそれより短い継続期間(例えば、1週間未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満又は2日未満)である。OITレジメンの維持段階は、数週間、数ヵ月、数年又は無期限に続き得る。
【0156】
本発明の方法によれば、対象にリゲリズマブがOITレジメンの経過全体にわたって投与され得るか、又はOITレジメンの一部分のみで投与され得る。例えば、本発明の方法には、用量増量段階の前又はその間に、リゲリズマブを含む医薬組成物の治療有効量を対象におよそ週1回、2週間に1回、3週間に1回、月1回、2ヵ月に1回、4ヵ月に1回、6ヵ月に1回の頻度又はそれより低い頻度で投与することが含まれる。特定の実施形態では、リゲリズマブを含む医薬組成物は、維持段階中又はその後に対象におよそ週1回、2週間に1回、3週間に1回、月1回、2ヵ月に1回、4ヵ月に1回、6ヵ月に1回の頻度又はそれより低い頻度で投与される。
【0157】
本発明によれば、OITレジメンの有効性及び/又は安全性は、対象で以下のアウトカム又は現象の1つ以上が観察されるか又は実現した場合、「強化」される:(1)有効性又は安全性を損なうことなく用量増量段階の継続期間が減る;(2)有効性又は安全性を損なうことなく維持段階の継続期間が減る;(3)有効性又は安全性を損なうことなく用量増量段階又は維持段階中に投与されるアレルゲンの用量数が減少する;(4)有効性又は安全性を損なうことなく用量増量段階又は維持段階中のアレルゲン投与頻度が減少する;(5)有効性又は安全性を損なうことなく用量増量段階又は維持段階中に投与されるアレルゲンの用量が増加する;(6)OITレジメンが誘因となるアレルギー反応又は有害な副作用の頻度が減少する又は消失する;(7)用量増量段階及び/又は維持段階中における従来のアレルギー薬物療法(例えば、ステロイド、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、抗IgE剤等)の使用又は必要性が減少する又は消失する;(8)アレルゲン誘発性のIgE発現レベルが減少する;及び/又は(9)アナフィラキシー反応の頻度が減少する又は消失する。OITレジメンの有効性は、本発明によれば、OIT療法単独によるのと比べて抗IgE抗体と組み合わせたOIT療法後に対象に起こるアレルギー反応の回数が減る及び/又は重症度が減る場合にも「強化」されたと見なされる。
【0158】
抗IgE抗体
IgEに対する抗体(「抗IgE抗体」)は、例えば米国特許第7,531,169号明細書ではMab 2(CL-2C)として知られ、配列番号61及び62によって定義されている(これは、参照により全体として本明細書に援用される)。この抗体は、以下でQGE031と称するか、又はその国際一般名リゲリズマブに基づいて称するものとする。
【0159】
開示される抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片は、1つ以上のIgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギー、例えば食物アレルギー、ピーナッツアレルギーを患っている対象(例えば、ヒト対象)を治療するために、インビトロ、エキソビボで使用され得るか、又は医薬組成物中に組み込まれ、インビボで投与され得る。
【0160】
抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせたとき、医薬組成物として使用され得る。かかる組成物は、抗IgE抗体又はその抗原結合断片に加えて、担体、様々な希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤及び当技術分野で周知の他の材料を含有し得る。担体の特徴は、投与経路に依存することになる。
【0161】
本開示の方法に用いられる医薬組成物は、従来の方式で製造され得る。一実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥形態で提供される。即時投与には、医薬組成物は好適な水性担体、例えば滅菌注射用水又は滅菌緩衝生理食塩水中に溶解される。他の製剤は、液体又は凍結乾燥製剤を含む。
【0162】
抗体、例えばIgE又はその抗原結合断片に対する抗体は、典型的には、即時非経口投与可能な水性形態で製剤化されるか、又は投与前に好適な希釈剤で再構成する凍結乾燥物として製剤化されるかのいずれかである。本開示の方法及び使用の一部の実施形態では、抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブは、凍結乾燥物として製剤化される。好適な凍結乾燥製剤は、少量の液体容積(例えば、2ml以下、例えば1ml)で再構成して皮下投与を可能にすることができ、且つ抗体凝集レベルが低い溶液を提供することができる。抗体を医薬品グレードに精製する技法は、当技術分野で周知である。
【0163】
本明細書において含む、それを必要としている対象におけるIgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギー、例えば食物アレルギー、ピーナッツアレルギーを予防するか、それを治療するか又はその経過を修正する、開示される方法及びそれにおける使用のための抗IgE抗体は、対象に治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を投与することである。
【0164】
例えば、IgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギーは、食物アレルギー、例えばピーナッツアレルギーである。
【0165】
更に別の例では、IgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギー疾患又は障害とは、ピーナッツアレルギー、ミルクアレルギー又は卵アレルギーを指す。
【0166】
本明細書には、それを必要としている対象におけるIgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対するアレルギー反応が関わる疾患又は障害を予防するか、それを治療するか又はその経過を修正する方法及びそれにおける使用のための抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)であって、対象に治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む方法が開示される。
【0167】
別の実施形態では、対象は、食物アレルギー、例えばピーナッツアレルギーを患っている。
【0168】
リゲリズマブは、遊離IgE、好塩基球FcεRI、好塩基球表面IgE及びアレルゲンに対する皮膚プリックテスト反応の用量依存的及び時間依存的抑制を実証しており、程度及び持続時間の点においてオマリズマブで観察されるものよりも優れていた。オマリズマブと比較して優れたリゲリズマブの親和性及び薬力学的(PD)アウトカムは、対象における優れた薬量学及び優れた臨床的有効性につながり得る。リゲリズマブはオマリズマブと比べて150倍高い親和性でIgEに結合する(A.Eggel,Molecular,Structural And Mechanistic Insight Into Ligelizumab Mediated Suppression Of IgE Dependent Allergic Responses,EAACI 2019)。
【0169】
更に、本明細書には、対象に治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、それを必要としている対象の、IgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギー、例えば食物アレルギー、ピーナッツアレルギーである疾患又は障害を予防し、それを治療し又はその経過を修正することにおける使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブが開示され、対象は、アレルギー、喘息、蕁麻疹又は鼻炎を患っていない。
【0170】
適切な投薬量は、例えば、利用されることになる詳細な抗IgE抗体、宿主、投与様式並びに治療下の病態の性質及び重症度に応じて且つ対象が受けた前治療の性質に応じて変わることになる。投薬量は、抗IgE抗体による治療を開始する前の対象の血中IgEレベルにも依存し得る。
【0171】
最終的には、担当の医療提供者が、各個別の対象の治療に用いる抗IgE抗体の量を決めることになる。一部の実施形態では、担当の医療提供者は低用量の抗IgE抗体を投与して、対象の反応、詳細には血中IgEレベルを観察し得る。
【0172】
本開示の一実施形態では、リゲリズマブは、約24mg~約600mgの用量、約24mg~約240mgの用量、例えば、約24mg、約72mg、約120mg、約240mg、約300mg、約360mg又は約480mgの用量、例えば約600mgの最大用量で皮下投与される。
【0173】
一部の実施形態では、対象の血中IgEレベルは、抗IgE抗体、例えばリゲリズマブの投与を開始する前に測定され、対象の体重及び/又はその血清中総IgEレベルに基づいて抗体の用量が調整される。
【0174】
本開示の医薬組成物を使用した療法の継続期間は、治療しようとする疾患又は障害の重症度並びに各個別の対象の状態及び個人的反応に応じて変わることになる。一部の実施形態では、対象は、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)を長期間、例えば、少なくとも12週間にわたり、例えば最長16週間まで、例えば12~16週間まで投与される。
【0175】
一部の実施形態では、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)は、対象に2週間毎、例えば2又は4週間毎、例えば毎月投与される。
【0176】
本開示に係る抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブは、好都合には、非経口的に、例えば静脈内、筋肉内又は皮下、例えば皮下に投与される。
【0177】
抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブは、例えば、約24mg~約600mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg、約240mg又は約600mg)、例えば約120mgで対象に皮下(SC)投与され得る。
【0178】
抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブは、対象に例えば約300mg~約360mg、例えば約360mgで皮下(SC)投与され得る。
【0179】
抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブは、対象に例えば約400mg~約600mg、例えば約480mgで皮下(SC)投与され得る。
【0180】
本開示の治療方法又は使用の一部の実施では、治療有効量の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片は、対象、例えば哺乳類(例えば、ヒト)に投与される。本開示の方法は、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片を使用した、IgEを伴う疾患又は障害の治療を提供することが理解されるが、これは、対象が最終的に抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片で治療されることになる場合、療法が必然的に単剤療法となることを除外するものではない。
【0181】
実際には、ある対象が抗IgE抗体又はその抗原結合断片による治療に選択された場合、次に、本開示の方法に従って抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片が、単独又はIgEを伴う疾患又は障害を患っている対象を治療するための他の薬剤及び療法との組み合わせ、例えば、少なくとも1つの追加の治療用薬剤、例えば、コルチコステロイド又は免疫抑制薬、例えば全身性コルチコステロイド又は免疫抑制薬などとの組み合わせのいずれかで投与され得る。
【0182】
例えば、治療しようとする対象がアレルギーであるとき、又は対象が、喘息、蕁麻疹及び鼻炎から選択される、例えばアレルギー性喘息、CSU及びアレルギー性鼻炎から選択される別の疾患又は障害も患っているときがそのような場合であり得る。
【0183】
1つ以上の追加の食物アレルギー薬剤と共投与されるとき、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、その他の薬剤と同時投与されるか又は逐次投与されるかのいずれでもあり得る。逐次投与される場合、主治医が、抗IgE抗体又はその抗原結合断片を他の薬剤と組み合わせて投与する適切な順序及び共送達に適切な投薬量を決めることになる。
【0184】
本明細書に開示されるIgEを伴う疾患又は障害の治療に際しては、有利には、リゲリズマブなどの開示される抗IgE抗体と様々な療法を組み合わせ得る。かかる療法としては、例えば、コルチコステロイド(例えば、全身性コルチコステロイド)又は免疫抑制薬が挙げられる。
【0185】
本明細書には、対象に約24mg~約600mgの用量の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片を皮下注射によって投与することを含む、それを必要としている対象の、本明細書に開示される疾患又は障害、例えば、IgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギー、食物アレルギー、例えばピーナッツアレルギーの経過を修正する方法及びそれにおける使用のための抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片が開示される。
【0186】
本明細書には、対象に約24mg~約600mgの用量の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片を皮下注射によって投与することを含む、それを必要としている対象の、本明細書に開示される疾患又は障害、例えばIgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対するアレルギー反応、例えばアナフィラキシーの経過を修正する方法及びそれにおける使用のための抗IgE抗体(又は例えばリゲリズマブ)又はその抗原結合断片が開示される。
【0187】
現在、製品HERCEPTIN(商標)(トラスツズマブ)、RITUXAN(商標)(リツキシマブ)、SYNAGIS(商標)(パリビズマブ)等を含め、医薬品の活性成分としての抗体の使用が広がっている。抗体を医薬品グレードにまで精製する技法は、当技術分野で公知である。治療有効量のIgE拮抗薬、例えば、IgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えば、リゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片)が静脈内、皮膚又は皮下注射によって投与されるとき、IgE拮抗薬は、パイロジェンフリーの非経口的に許容可能な溶液の形態であることになる。静脈内、皮膚又は皮下注射用の医薬組成物は、IgE拮抗薬に加えて、等張性媒体、例えば、塩化ナトリウム、リンゲル溶液、デキストロース、デキストロース・塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル溶液又は当技術分野で公知のとおりの他の媒体を含有し得る。
【0188】
本開示の治療又は使用方法の一部の実施では、治療有効量のIgE拮抗薬、例えば、IgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えば、リゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片)は、対象、例えば、哺乳類(例えば、ヒト)に投与される。本開示の方法は、IgE拮抗薬(例えば、リゲリズマブ)を使用した食物アレルギー対象の治療を提供すると理解されるが、これは、対象が最終的にIgE拮抗薬で治療されることになる場合、かかるIgE拮抗薬療法が必ず単剤療法であることを除外しない。実際、対象がIgE拮抗薬による治療に選択される場合、IgE拮抗薬(例えば、リゲリズマブ)は、本開示の方法に従って単独で投与されるか、又は食物アレルギー対象の治療用の他の薬剤及び治療法との組み合わせ、例えば少なくとも1つの追加の食物アレルギー薬剤との組み合わせで投与されるかのいずれでもあり得る。1つ又は複数の追加の食物アレルギー薬剤と共投与されるとき、IgE拮抗薬は、他の薬剤と同時に投与されるか又は逐次的に投与されるかのいずれでもあり得る。逐次的に投与される場合、主治医は、IgE拮抗薬を他の薬剤と組み合わせて投与する適切な順番及び共送達に適切な投薬量を判断することになる。
【0189】
本明細書には、対象に約24mg~約600mgの用量の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片を皮下注射によって投与することを含む、それを必要としている対象のIgEが関わる疾患又は障害の経過を修正する方法及びそれにおける使用のための抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片が開示される。
【0190】
抗IgE抗体又はその抗原結合断片(例えば、リゲリズマブ)は、患者に0及び4週目から開始して4週間毎に静脈内(SC)投与され得、その後、患者に4週目中に開始して、例えば約24mg~約360mg(例えば、約24mg、約240mg)で4週間毎にSC投与される。この方法では、患者は、0、4、8、12、16週目等の間にSC用量を受ける。
【0191】
代わりに、抗IgE抗体又はその抗原結合断片(例えば、リゲリズマブ)は、患者に0週目から開始して4週間毎に皮下(s.c.)投与され、その後、患者に4週目中に開始して、例えば約24mg、約72mg、約120mg、約240mg、約300mg~約360mg(例えば、約24mg、約240mg)で4週間毎にs.c.投与され得る。この方法では、患者は、0、4、8、12週目等の間に約24mg、約72mg、約120mg~約360mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg、約240mg、約300mg~約360mg)の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)をs.c.投与される。
【0192】
好ましくは、抗IgE抗体又はその抗原結合断片(例えば、リゲリズマブ)は、患者に0週目から開始して4週間毎に皮下(s.c.)投与され、その後、患者に4週目中に開始して、例えば約24mg、約72mg、約120mg~約360mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg、約240mg、約300mg~約360mg)で4週間毎にs.c.投与され得る。この方法では、患者は、0、4、8、12、16、20週目等の間に約24mg、約72mg、約120mg~約360mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg、約240mg、約300mg~約360mg)の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)をs.c.投与される。
【0193】
より好ましくは、リゲリズマブは、患者に負荷レジメンなしで投与され得、例えば、リゲリズマブは、患者に約24mg、約72mg、約120mg~約360mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg、約240mg、約300mg~約360mg)で4週間毎にs.c.投与され得る。この方法では、患者は0、4、8、12週目等の間に約24mg、約72mg、約120mg、約240mg、約300mg~約360mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg、約240mg、約300mg~約360mg)のリゲリズマブをs.c.投与される。
【0194】
より好ましくは、抗IgE抗体又はその抗原結合断片(例えば、リゲリズマブ)は、患者に0週目から開始して4週間毎に皮下(s.c.)投与され得、その後、患者に4週目のうちに開始して、例えば約240mg~約480mg(例えば、約240mg、約360mg~約480mg)で4週間毎にs.c.投与され得る。このようにして、患者は、0、4、8、12、16、20週目等の間に約240mg~約480mg(例えば、約240mg、約360mg又は約480mg)の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)をs.c.投与される。
【0195】
開示される使用、方法及びキットの一部の実施形態では、対象は、IgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギーを有し、それは食物アレルギー、例えばピーナッツアレルギーである。一部の実施形態では、対象は、喘息及び/又は蕁麻疹も有し、例えば喘息、アレルギー性喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹及びCSUから選択される疾患又は障害を有する。開示される使用、方法及びキットの一部の実施形態では、対象は、IgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギーを有し、それは、食物アレルギー、例えばピーナッツアレルギーであるミルクアレルギー又は卵アレルギーである。開示される使用、方法及びキットの他の実施形態では、対象は、IgEによって駆動される1つ以上のアレルゲンに対する食物アレルギーを有し、それは食物アレルギー、例えばピーナッツアレルギーである。
【0196】
開示される使用、方法及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片は、第一選択治療として処方され得るか又は標準治療投薬法のいずれかに追加され得る。
【0197】
投与タイミングは、概して、抗IgE抗体、例えばリゲリズマブの初回用量の当日から測られる(これは、「ベースライン」としても知られる)。しかしながら、医療提供者は、表1に示されるとおり、投薬スケジュールを特定するのに別の命名慣習を用いることも多い。
【0198】
【表1】
【0199】
注目すべきことに、0週目は、一部の医療提供者によっては1週目と称されることもあり、他方、0日目は、一部の医療提供者によっては1日目と称されることもある。従って、異なる医師が、同じ投薬スケジュールを指しながらも、例えば、ある用量を4週目中/28日目に、4週目中/29日目に、4週目中/28日目に、4週目中/29日目に与えると指定することになる可能性がある。一貫性を保つため、投薬の第1週目は、本明細書では0週目と称するものとし、一方、投与初日は1日目と称するものとする。しかしながら、当業者によれば、この命名慣習が単に一貫性を保つために用いられ、限定するものと解釈されてはならず、即ち、週1回投薬とは、医師が特定の週を「0週目」と称するか又は「1週目」と称するかにかかわらず、週1回用量の抗IgE抗体の提供であることは理解されるであろう。
【0200】
1つの投薬レジメンでは、抗体は、0、4、8、12、16、20週目等の間に投与される。一部の提供者は、このレジメンを月1回投薬(又は4週間毎の投薬)と称し得る。当業者によれば、患者に注射を0週目に投与し、続いて4週目に開始して毎月1回投薬することが、1)患者に注射を0及び4週目に投与し、続いて8週目に開始して毎月1回投薬すること;2)患者に注射を0及び4週目に投与し、続いて4週間毎に投薬すること;及び3)患者に注射を0及び4週目に投与し、続いて毎月投与することと同じであることが理解されるであろう。
【0201】
本明細書で使用されるとき、語句「[指定される用量]の[投与経路]送達を許容する投薬量で製剤化される」は、所望の用量の抗IgE抗体、例えばリゲリズマブを指定される投与経路(例えば、s.c.又はIV)によって提供するために所与の医薬組成物を使用し得ることを意味して使用される。例として、所望のs.c.用量が240mgである場合、臨床医は、120mg/mlの濃度を有する2mlのIgE抗体製剤、240mg/mlの濃度を有する1mlの抗IgE抗体製剤、480mg/mlの濃度を有する0.5mlの抗IgE抗体製剤等を使用し得る。かかる場合のいずれでも、そうした抗IgE抗体製剤は、抗IgE抗体の皮下送達を可能にするのに十分に高い濃度である。皮下送達は、典型的には、約2ml以下の容積、好ましくは約1ml又はそれより少ない容積の送達を必要とする。好ましい製剤は、緩衝剤としてのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、安定剤/等張性調整剤としてのトレハロース脱水物及び界面活性剤としてのポリソルベート20を含有する水溶液中にある、約24mg/mL~約120mg/mLのリゲリズマブを含む即時使用可能な液体医薬組成物である。
【0202】
本明細書で使用されるとき、語句「[指定される用量]の送達を可能にするのに十分な量の抗IgE抗体を有する容器」とは、所与の容器(例えば、バイアル、ペン、シリンジ)について、そこに所望の用量を提供するために使用し得る容積の抗IgE抗体が(例えば、医薬組成物の一部として)配分されていることを意味して使用される。例として、所望の用量が240mgである場合、臨床医は、120mg/mLの濃度の抗IgE抗体製剤が入っている容器から2mLを使用し、240mg/mLの濃度の抗IgE抗体製剤が入っている容器から1mLを使用し、480mg/mlの濃度の抗IgE抗体製剤が入っている容器から0.5mLを使用し得る等となる。かかる場合のいずれでも、そうした容器は、所望の240mg用量の送達を可能にするのに十分な量の抗IgE抗体を有する。
【0203】
開示される使用、方法及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片の用量は約240mgであり、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片は、液体医薬製剤中に120mg/mlの濃度で含まれ、2つのプレフィルドシリンジ(PFS)、注射ペン又は自己注射器の中に2mlの医薬製剤が、各々1mlの医薬製剤を有するように配分される。この場合、患者は、投与毎に、240mgの総用量について各1mlの注射を2回受ける。一部の実施形態では、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)の用量は約240mgであり、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)は、液体医薬製剤中に120mg/mlの濃度で含まれ、自己注射器又はPFSの中に2mlの医薬製剤が配分される。この場合、患者は、投与毎に、240mgの総用量について2mlの注射を1回受ける。1回の2ml注射を用いる(例えば、1本のPFS又は自己注射器による)方法(即ち「単回用量製剤」)では、薬物曝露量(AUC)及び最高濃度(Cmax)は、2回の1mlの注射を用いる(例えば、2本のPFS又は2本のAIによる)方法(即ち「複数回用量製剤」)と均等である(それと同様である、即ち米国FDA規格に従う許容可能な変動の範囲内にある)。
【0204】
本明細書には、食物アレルギー(例えば、重度食物アレルギーを治療する方法であって、それを必要としている対象に約24mg~約240mgの用量の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)を0週目中に週1回、その後約24mg~約240mgのs.c.用量で:a)月1回(4週間毎)、4週目中に開始して皮下(s.c.)投与することを含む方法が開示される。本明細書には、それを必要としている対象に0週目中に約24mg~約240mgの用量の抗IgE抗体を週1回、その後、4週目中に開始して約24mg~約240mgの用量でs.c.で月1回(4週間毎)、皮下(s.c.)投与することを含む、食物アレルギー、例えば重度食物アレルギーの治療における使用のための抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)も開示される。代わりに、本明細書には、それを必要としている対象に0週目中に約24mg~約240mgの用量の抗IgE抗体を週1回、その後4週目中に開始して、約24mg~約240mgの用量でs.c.で月1回(4週間毎)、皮下(s.c.)投与することを含む、食物アレルギーの治療用医薬の製造における使用のための抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)が開示される。
【0205】
本明細書には、食物アレルギーを治療する方法であって、それを必要としている患者に0週目中に約24mg~約240mgの用量の抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)を週1回、その後4週目中に開始して、約24mg~約240mgの用量でs.c.で:a)月1回(4週間毎に)、皮下(s.c.)投与することを含む方法が開示され、抗IgE抗体は、配列番号2と示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVドメインと、配列番号1と示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVドメインとを含む。
【0206】
本明細書には、それを必要としている患者に0週目中に約24mg~約240mgの用量の抗IgE抗体を週1回、その後、4週目中に開始して、約24mg~約240mgの用量でs.c.で月1回(4週間毎に)、皮下(s.c.)投与することを含む、食物アレルギー、例えば重度食物アレルギーの治療における使用のための抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)も開示され、抗IgE抗体は、配列番号2と示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号1と示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む。
【0207】
本明細書には、それを必要としている患者に約24mg~約240mgの用量の抗IgE抗体、4週目中に開始して、約24mg~約240mgの用量でs.c.で月1回(4週間毎に)、皮下(s.c.)投与することを含む、食物アレルギー、例えば重度食物アレルギーの治療における使用のための抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)も開示され、抗IgE抗体は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなり、この抗体は、IgEに特異的に結合する。
【0208】
本明細書には、それを必要としている患者に約360mgの用量の抗IgE抗体、s.c.を約360mg月1回(4週間毎)の用量で4週目中に開始して皮下(s.c.)投与することを含む、食物アレルギー、例えば重度の食物アレルギーの治療における使用のための抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)も開示され、抗IgE抗体は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域とCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなり、この抗体は、IgEに特異的に結合する。
【0209】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体リゲリズマブの用量は約120mg又は約240mg、約360mg又は約480mgである。
【0210】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体リゲリズマブは、約24mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0211】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体リゲリズマブは、約72mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0212】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体リゲリズマブは、約120mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0213】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体リゲリズマブは、約240mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0214】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体リゲリズマブは、約360mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0215】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体リゲリズマブは、約480mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0216】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体オマリズマブは、最大で12mg/kg体重/q4wの用量でs.c.投与される。
【0217】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、IgE媒介性アレルギー反応の予防又は軽減における使用のための抗IgE抗体リゲリズマブである。
【0218】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、食物アレルギーの予防又は治療における使用のための抗IgE抗体リゲリズマブである。
【0219】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、重度の食物アレルギーの予防又は治療における使用のための抗IgE抗体リゲリズマブである。
【0220】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象における1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約120mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0221】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象における1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約240mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0222】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象の1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約360mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0223】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象の1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約480mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0224】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、対象がアレルギーを有する食品を含む食事を回避することと併せた、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約120mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0225】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、対象がアレルギーを示す食物を回避する食事と併せた、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約240mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0226】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、対象がアレルギーを示す食物を回避する食事と併せた、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーの予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約240mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0227】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、対象がアレルギーを示す食物を回避する食事と併せた、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーの予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約360mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0228】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、対象がアレルギーを有する食品を含む食事を回避することと併せた、1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーの予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約120mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0229】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象における1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーの予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約240mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0230】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象の1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーの予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約360mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0231】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象の1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーの予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約480mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0232】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象における1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーの予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約120mgの用量で4週間毎にs.c.投与される。
【0233】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、それを必要としている対象における1つ以上の食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーの予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、前記対象の血清総IgEレベル及び体重(治療開始前に測定される)によって決まる用量及び投与間隔でs.c.投与される。
【0234】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、対象がアレルギーを示す食物を回避する食事と併せた、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、前記対象の血清総IgEレベル及び体重(治療開始前に測定される)によって決まる用量及び投与間隔でs.c.投与される。
【0235】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、対象がアレルギーを示す食物を回避する食事と併せた、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約240mgの用量で4週間毎にs.c.投与され、及び前記対象は、抗IgE抗体治療中は、食物アレルゲンへの偶発的曝露に対するアナフィラキシー又は他のアレルギー反応を有しない。
【0236】
本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、対象がアレルギーを示す食物を回避する食事と併せた、食物アレルゲンへの偶発的曝露後のアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の予防に向けた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブ、ここで、リゲリズマブは、約120mgの用量で4週間毎にs.c.投与され、及び前記対象は、抗IgE抗体治療中は、食物アレルゲンへの偶発的曝露に対するアナフィラキシー又は他のアレルギー反応を有しない。
【0237】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、対象は、抗IgE抗体又は抗原結合断片による治療の前に、OITによる治療を既に受けたことがある。
【0238】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、1つ以上のアレルゲンに対するアレルゲン特異的経口免疫療法(経口免疫療法OIT);例えば単一アレルゲンOIT又は多アレルゲンOITと組み合わせた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブである。
【0239】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、OITの初期用量漸増(IDE)相及び維持相間における、1つ以上のアレルゲンに対するアレルゲン特異的経口免疫療法(経口免疫療法OIT);例えば単一アレルゲンOIT又は多アレルゲンOITと組み合わせた使用のための抗IgE抗体リゲリズマブである。
【0240】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITの補助剤として使用される。
【0241】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITに関連する有害事象の頻度及び/又は重症度を低減する。
【0242】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITの補助剤として投与されるとき、抗IgE抗体は、対象におけるIDE相を短縮するか又はなくす。
【0243】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITの補助剤として投与され、OITは、例えば、初期用量漸増(IDE)なしに、OIT維持用量中に投与される。
【0244】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITの補助剤として投与され、OITは、その維持用量で投与される。
【0245】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITの補助剤として投与され、OITはその維持用量で投与され、抗IgE抗体は、最長6ヵ月、例えば約4~約6ヵ月、約4ヵ月、約3ヵ月又は約2ヵ月の治療継続期間にわたって投与される。
【0246】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、対象の食物アレルゲンに対する持続的な無反応/免疫寛容を誘導する。
【0247】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITと組み合わせて投与される。
【0248】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITと組み合わせて投与され、抗IgE抗体は、対象の食物アレルゲンに対する持続的な無反応/免疫寛容を誘導する。
【0249】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、抗IgE抗体は、OITと組み合わせて投与され、抗IgE抗体は、最長3年、例えば約2~約3年、約3年又は約2年の治療継続期間にわたって投与される。
【0250】
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、患者は、抗IgE抗体による治療の前に、OITによる治療を過去に受けたことがない。
【0251】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は約24mgである。本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は約72mgである。本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は約120mgである。本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は約240mgである。本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は、約300mgである。本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は、約360mgである。本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は、約480mgである。
【0252】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、対象は、食物アレルギー、例えば重度食物アレルギーを有する。
【0253】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、対象は成人である。本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、対象は青年である。本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、対象は小児対象である。
【0254】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体は、医薬製剤中に配分され、前記医薬製剤は、緩衝液と安定剤とを更に含む。本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、医薬製剤は、液体形態(即時使用可能)である。本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、医薬製剤は、凍結乾燥形態である。本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態では、医薬製剤は、プレフィルドシリンジ、バイアル、注射ペン又は自己注射器の中に配分される。
【0255】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、この医薬製剤中の抗IgE抗体の用量約24mg、72mg、120mg、240mg、300mg、360mg又は480mgは、プレフィルドシリンジ、注射ペン及び自己注射器からなる群から選択される投与手段の中に配分され、前記手段はキットの中に配分され、キットは使用説明書を更に含む。
【0256】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は約120mgであり、この医薬製剤は自己注射器又はプレフィルドシリンジの中に配分され、自己注射器又はプレフィルドシリンジはキットの中に配分され、キットは使用説明書を更に含む。
【0257】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体の用量は約240mgであり、この医薬製剤は自己注射器又はプレフィルドシリンジの中に配分され、自己注射器又はプレフィルドシリンジはキットの中に配分され、キットは使用説明書を更に含む。
【0258】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、用量は240mgであり、これは、120mg/mlの抗IgE抗体又は抗原結合断片を含む製剤からの総容積が2mlの単回皮下投与として投与され、抗IgE抗体への患者の薬理学的曝露量は、総容積が各1mlの同じ製剤の2回の別個の皮下投与を用いた抗IgE抗体への患者の薬理学的曝露量と均等である。
【0259】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、用量は240mgであり、これは、120mg/mlの抗IgE抗体、例えばリゲリズマブを含む製剤からの総容積が各1mlの2回の別個の皮下投与として投与される。
【0260】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、用量は300mgであり、これは、150mg/mlの抗IgE抗体、例えばリゲリズマブを含む製剤からの総容積が各1mlの2回の別個の皮下投与として投与される。
【0261】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、用量は360mgであり、これは、120mg/mlの抗IgE抗体、例えばリゲリズマブを含む製剤からの各1mlの容積の3回の別個の皮下投与として投与される。
【0262】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、用量は480mgであり、これは、120mg/mlの抗IgE抗体、例えばリゲリズマブを含む製剤からの各1mlの容積の4回の別個の皮下投与として投与される。
【0263】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体の医薬製剤は自己注射器又はプレフィルドシリンジの中に配分され、自己注射器又はプレフィルドシリンジは、それを必要としている対象による自宅投与に好適である。
【0264】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、対象は、抗IgE抗体による治療後に、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)で関連性のある1つ又は複数のアレルゲンからの少なくとも600mgのタンパク質の最も高い負荷量をせいぜい軽度でしかない症状で許容する。
【0265】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、対象は、抗IgE抗体による治療後に、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)で関連性のある1つ又は複数のアレルゲンからの少なくとも1000mgのタンパク質の最も高い負荷量をせいぜい軽度でしかない症状で許容する。
【0266】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、対象は、抗IgE抗体による治療後に、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)で関連性のある1つ又は複数のアレルゲンからの少なくとも3000mgのタンパク質の最も高い負荷量をせいぜい軽度でしかない症状で許容する。
【0267】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、対象は、本明細書に開示されるとおりのリゲリズマブ、例えば4週間毎に投与される120mg、又は240mg、又は360mg、又は480mg s.c.で12週間治療した後に、600mg(累積1044mg)、1,000mg(累積2044mg)又は3,000mg(累積5044mg)のピーナッツタンパク質レベルでの二重盲検プラセボ対照食物経口負荷試験(DBPCFC)に対していかなる他覚的アレルギー反応も有しないことを達成する。
【0268】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、例えば、上記の序節に記載されるとおりの、アレルギーに関連する1つ以上の症状の少なくとも改善をもたらし得る。改善し得るアレルギー症状、限定はされないが:湿疹、喘息、アトピー性皮膚炎、気管支攣縮、咳、鼻漏、血管性浮腫、胃の運動亢進、蕁麻疹(urticaria)(蕁麻疹(hives))、掻痒、疲労、徐脈及び/又は低血圧症。症状低減の大きさは、様々であり得、一部の例では、その大きさは、例えば、好適な対照と比較したとき、2倍以上、例えば5倍以上、10倍以上を含めたものである。一部の例では、アレルギーの治療により、対象は、アレルギーが治癒することになり、従って、対象は、もはやアレルギーに罹患していないことになる。アレルギー治療方法の一部の実施形態では、本方法は、上記に記載されるなどの抗IgE抗体を対象に投与することを含む。
【0269】
本開示の好ましい実施形態では、抗IgE抗体は、モノクローナル抗体である。
【0270】
本開示の好ましい実施形態では、抗IgE抗体は、ヒト又はヒト化抗体である。
【0271】
本開示の好ましい実施形態では、抗IgE抗体は、ヒト抗体である。
【0272】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。
【0273】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体は、約2~14日のTmaxを有する。
【0274】
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、抗IgE抗体は、約47~100%の絶対バイオアベイラビリティを有する。
【0275】
一部の実施形態では、リゲリズマブなど、抗IgE抗体は、リゲリズマブのいずれかのバイオシミラーであるか又はそれと互換性があることが実証されている抗体を指し得る。こうした抗体は、本明細書に開示されるとおりの、リゲリズマブのいずれかの投与について言及する実施形態に従って投与され得る。
【0276】
キット
本開示は、IgEを伴う疾患又は障害を有する特定の対象の治療用キットも包含する。かかるキットは、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)若しくはその抗原結合断片(例えば、液体又は凍結乾燥形態)又は抗IgE抗体(前述)を含む医薬組成物を含む。加えて、かかるキットは、抗IgE抗体又はその抗原結合断片の投与手段(例えば、自己注射器、シリンジ及びバイアル、プレフィルドシリンジ、プレフィルドペン)及び使用説明書を含み得る。こうしたキットには、IgEを伴う疾患又は障害を治療するための、例えば同梱されている抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブと組み合わせて送達するための追加の治療用薬剤(前述)が入っていてもよい。かかるキットは、対象を治療するための抗IgE抗体又はその抗原結合断片(例えば、リゲリズマブ)の投与に関する説明書も含み得る。かかる説明書は、同梱されている抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブで用いるための用量(例えば、24mg、72mg、75mg、120mg、240mg、360mg又は480mg)、投与経路(例えば、IV、s.c.)及び投与レジメン(例えば、2又は4週間毎に、例えば12~16週間中)を提供し得る。
【0277】
語句「投与手段」は、限定はされないが、プレフィルドシリンジ、バイアル及びシリンジ、ペン型注射器、自己注射器、点滴静注及びバッグ、ポンプ等を含め、薬物を対象に全身投与するための任意の利用可能な器具を指して使用される。かかるアイテムで、対象が薬物を自己投与し得る(即ち医師の補助なしに薬物を投与し得る)か、又は医療従事者が薬物を投与し得る。
【0278】
本明細書には、抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片を含む、IgEを伴う疾患又は障害を有する対象の疾患経過の修正における使用のためのキットが開示される。一部の実施形態では、本キットは、対象への抗IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片の投与手段を更に含む。
【0279】
概要
上記の添付の説明に、本開示の1つ以上の実施形態の詳細を示している。本開示の実施又は試験で本明細書に記載されるものと同様の又は均等な任意の方法及び材料を使用し得るが、ここでは好ましい方法及び材料を記載する。本開示の他の特徴、目的及び利点は、この説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に引用される全ての特許及び刊行物は、参照によって援用される。以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を更に詳しく例示するために提供される。
【0280】
これらの例は、決して添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの開示される主題の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例
【0281】
実施例1.食物アレルギーを有する小児及び成人における単剤療法及び多アレルゲン経口免疫療法(OIT)の補助療法としてのオマリズマブによる臨床試験
これは、ピーナッツ及び他に少なくとも2品目の食物(ミルク、卵、小麦、カシュー、ヘーゼルナッツ又はクルミを含む)にアレルギーがある2歳以上56歳未満の参加者における多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。
【0282】
オマリズマブは、プレフィルドシリンジ(PFS)に入れて供給される。オマリズマブのPFSは、臨床研究ユニットに75mg及び150mg剤形として提供されることになる。
【0283】
適格な参加者は、皮下注射によるオマリズマブを2週間毎又は4週間毎のいずれかで16~20週間にわたって受けるように無作為化される。投与される用量及び投与間隔は、血清総IgEレベル及び体重(治療開始前に測定される)によって決定される。
【0284】
8週間の非盲検オマリズマブの完了後、参加者は、以下のいずれかに1:1で無作為化されることになる:
・オマリズマブ促進経口免疫療法(OIT):非盲検オマリズマブ+多アレルゲンOIT8週間、続いてオマリズマブのプラセボ+多アレルゲンOIT44週間又は
・オマリズマブ+プラセボOIT:非盲検オマリズマブ+多アレルゲンOITのプラセボ8週間、続いてオマリズマブ+多アレルゲンOITのプラセボ44週間。
【0285】
多アレルゲンOITは、以下の薬物製品のいずれかであることになる:ピーナッツ、ミルク、卵、小麦、カシュー、ヘーゼルナッツ及びクルミ(全て食物タンパク質粉)。アレルゲンの各々の適切な用量についての各参加者の処方が調製されることになる。
【0286】
本試験は、225名の参加者を無作為化することになる。最も長い個々の試験参加は、最長84週間の治療となる。
【0287】
実施例2.リゲリズマブの用量
本臨床プログラムでは、以下のリゲリズマブ用量を試験した:12mg、24mg、36mg、72mg、180mg及び240mg SC q4w、280mg SC q2w及び120mg SC単回用量。現在まで、全体的に見て、明らかな用量依存的安全性シグナルは(臨床的に容易に管理することのできる注射部位反応の傾向を除いては)認められていない。
【0288】
リゲリズマブを使用した食物アレルギーの治療を支持する好適な用量を同定するため、FcεRIの活性(皮膚プリックテストの膨疹径及びPC15=15%のFEV1急性低下を引き起こすのに必要なアレルゲン負荷量)及びその活性化に必要な選択された決定的バイオマーカー(好塩基球結合FcεRIの密度及びそのIgEによる占有率)を記述するモデルによるシミュレーションを実施した。このシミュレーションは、好塩基球反応性のPDバイオマーカー(FcεRI密度及びそのIgE占有率)が食物アレルギーの病態生理で決定的に重要であり、より遠位の臨床PDアウトカムを越えて用量間を区別し得ることを実証した。4週間の投与間隔全体を通じたIgE/FcεRI経路の完全なレベルの抑制が、食物アレルギー患者で生命を脅かす恐れのあるアレルギー反応からの最大限の保護を確実にするための基本的な治療目標である。これらのシミュレーションは、120mg/q4w及びレジメン240mg/q4wが臨床アウトカムを最大化可能であることを示した。
【0289】
実施例3.臨床試験ミルク及び卵アレルギー
ミルク又は卵アレルギーが実証されている6~55歳の患者でリゲリズマブs.c.の2つのレジメン(120mg及び240mgを月1回投与)を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照12週間バスケット試験。年齢サブ群による予め定義されたベースライン層別化は一切なしに、約240例の患者を無作為化する。患者の半分は、ミルクサブ試験に、及び残りの半分は、卵サブ試験に無作為化されることになる。
【0290】
ミルク及び卵アレルゲンを評価するこのバスケット試験は、12週目に1,000mg(非累積)及び3,000mg(非累積)の複数レベルのミルク/卵タンパク質でのDBPCFCに対して他覚的アレルギー反応を呈しない患者集団でプラセボと比較した、リゲリズマブ240mg及び120mg(SCq4w、即ち皮下注射4週間毎)の有効性を判定するものである。
【0291】
実施例4.臨床試験ピーナッツアレルギー
IgE介在性ピーナッツアレルギーの医学的確定診断を有する参加者におけるリゲリズマブの2つの投薬レジメン(240mg及び120mg)SCq4w(皮下注射4週間毎)の安全性及び臨床的有効性を評価する多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験
【0292】
この「ピーナッツ試験」は、12週目に600mg(1044mg累積)、1,000mg(2044mg累積)及び3,000mg(5044mg累積)のレベルのピーナッツタンパク質での二重盲検プラセボ対照食物経口負荷試験(DBPCFC)に対して他覚的アレルギー反応を呈しない患者集団において、プラセボと比較した、リゲリズマブ240mg及び120mg(SCq4w)の有効性を判定するものである。
【0293】
これは、IgE介在性ピーナッツアレルギーの医学的確定診断を有する参加者でリゲリズマブの2つの投薬レジメン(240mg及び120mg)SCq4w(皮下注射4週間毎)の安全性及び臨床的有効性を評価する52週間第3相多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。約486名の参加者が、二重盲検プラセボ対照治療期間(最長12週間)にわたるリゲリズマブ240mg、リゲリズマブ120mg又はプラセボ(5治療群、2:2:2:2:1の無作為化比)に無作為化される。最初に8週間プラセボ群に割り付けられた参加者は、8週目来院時に初回用量の盲検化されたリゲリズマブ治療を受けることになる。最初に16週間プラセボ群に割り付けられた参加者は、12週目時にDBPCFC前の最終回用量のプラセボを受け、16週目来院時に初回用量の盲検化されたリゲリズマブ治療を受ける。
【0294】
参加者は、地域、ベースライン時の総IgE(<350IU/mL;≧350IU/mL)及び年齢(6~11歳、12~17歳及び18~55歳)に基づいて層別化されることになる。各年齢群にほぼ同数の参加者が無作為化されることになる。
【0295】
年齢群は、以下のとおり定義される:
6~11歳は、6歳以上12歳未満に対応する
12~17歳は、12歳以上18歳未満に対応する
18~55歳は、18歳以上55歳以下に対応する
【0296】
本試験で主要食物アレルゲンとしてピーナッツを選択するのは、以下の主要因に関係する:
・このアレルゲンではほとんどの場合に食物アレルギー反応が重篤であることに伴い、ピーナッツは、依然として満たされていない重要な医療ニーズに相当し、米国では致命的な及び致命的となり得るアナフィラキシーの主因である
・ほとんどの患者(80%超)がその表現型を成人期まで保持しているため、複数の年齢群にわたる試験が可能となる
【0297】
選択された2つの投薬レジメン(120mg SCq4w及び240mg SCq4W)は、食物アレルゲンへの偶発的曝露によって引き起こされる生命を脅かす恐れのあるアレルギー反応からの保護を最大限に高めるという臨床的目標を反映している。実際、本格的なアナフィラキシーにつながるイベントのカスケードは、炎症性メディエーターの放出を引き起こすエフェクター細胞(好塩基球及びマスト細胞)上の高親和性IgE受容体(FcεRI)の架橋結合によって媒介される。データが示唆するところによれば、好塩基球は1細胞当たり僅か5000個の抗原特異的IgE分子による刺激にも最大限に反応し得るため、この病態生理学的コンテクストでは、IgEがFcεRI受容体に結合するのを徹底的に遮断し、結果としてそれらのFcεRIが最大限に下方制御される必要がある。最大限の抑制はまた、IgE系が感染のような外部因子に曝露され、その反応性が更に増加し得ることを考えると望ましい。
【0298】
提案される2つの用量は、アトピー健常ボランティア及び喘息参加者を基に構築され、次に感受性分析用のCSUデータを含む別のバージョンに適合されたモデルでのシミュレーション(QGE031シミュレーション食物アレルギー、Novartis)に基づいて選択されている。FcεRIの活性(皮膚プリックテストの膨疹径及びPC15=15%のFEV1急性低下を引き起こすのに必要なアレルゲン用量)及びその活性化に必要な選択された決定的バイオマーカーが、このモデルからの出力を提供する。これらのシミュレーションが示すところによれば、ほとんどの参加者について、臨床アウトカムを最大限に高めるのに120mg SCq4wレジメンが十分である可能性がある。好塩基球反応性のより近位のバイオマーカーは、240mg SCq4w投薬レジメンではより多くの参加者について最大限の抑制が達成され得ることを示すことにより、これらの2つの用量を区別する。用量が240mg SCq4wを上回っても、これらのバイオマーカーのそれ以上の抑制は得られない。
【0299】
240mgレジメンに加えて120mgを含めるという判断は、2つの主な考慮事項に基づく:
・本試験集団は、ある範囲のベースライン総IgEレベル及び体重によって特徴付けられることになる。これらのパラメータは、リゲリズマブの曝露量に影響を与えることが周知であり、IgE及び体重が低い一部の参加者であれば、120mg SC4qWレジメンの利益を十分に受ける可能性がある。
【0300】
120mg SCq4wの低投薬レジメンは、登録目的の最終的な薬量学を裏付けるため第3相プログラムの終了時にロバストなモデル化を裏付ける広範囲にわたるデータ(曝露量/反応)を生成するためにも重要である。
【0301】
主要な組入れ基準
・インフォームドコンセント/同意書に署名した時点で6歳以上55歳以下の男性又は女性の参加者。
・ピーナッツ又はピーナッツ含有食品に対するアレルギー病歴の文書記録。
・スクリーニング来院1(スクリーニング1)の時点におけるピーナッツ特異的免疫グロブリンE(ピーナッツsIgE)陽性、≧6kUA/L。
・生理食塩水対照と比較した、平均膨疹径(最も長い直径及び直交する直径の中点値)≧4mmとして定義される、スクリーニング1の時点におけるピーナッツアレルゲンについての皮膚プリックテスト(SPT)陽性。
・単回用量≦100mgのピーナッツタンパク質での用量制限症状の発生、且つプラセボでは発生無しとして定義される、ベースライン時(スクリーニング来院2、パート1及びパート2 DBPCFC)におけるピーナッツDBPCFC陽性。DBPCFCに進むための適格性は、他の全ての適格性判定基準を満たす必要がある。
・参加者はスクリーニング1の時点で体重が20kg以上でなければならない。
【0302】
主要な除外基準
・スクリーニング1の時点で総IgE>2000IU/mL。
・ベースラインDBPCFC(スクリーニング来院2)の前60日以内のICUへの入院又は挿管を必要とする重度の又は生命を脅かす過敏症イベント歴。
・以下の判定基準のいずれかを満たしている、コントロール不良の喘息を有する参加者(GINAガイドライン、GINA 2020による):
・スクリーニング来院1の時点でFEV1<対象の予測正常値の80%
・スクリーニング来院1の前12ヵ月以内の喘息での1回の入院
【0303】
救急薬:アレルギー反応を含め、有害事象は、治験責任医師によって必要と見なされる任意の治療を用いて治療し得る。典型的には、これには、エピネフリン、SABA、抗ヒスタミン薬及び生理食塩水ボーラスが含まれる。
【0304】
本試験で主要な食物アレルゲンとしてピーナッツを選択することは、以下の主要因に関係する:
・ピーナッツは、このアレルゲンでほとんどの場合に食物アレルギー反応が重篤であることに伴い、依然として満たされていない重要な医療ニーズに相当し、米国では致命的な及び致命的となり得るアナフィラキシーの主因である
・ほとんどの患者(80%超)がその表現型を成人期まで保持しているため、複数の年齢群にわたる試験が可能となる。
【0305】
実施例5.食物アレルギー小児試験(生後6ヵ月~6歳の小児)
本試験は、以下の食品:ピーナッツ、乳又は卵の少なくとも1つに対するIgE駆動型食物アレルギーが臨床的に実証されている生後6ヵ月以上6歳以下の年齢の小児における52週二重盲検プラセボ対照試験である。リゲリズマブの少なくとも1つのレジメンの有効性及び安全性を1年にわたって評価する:リゲリズマブ(240mg及び120mg)SCq4w(4週間毎の皮下注射)。
【0306】
実施例6.ヘーゼルナッツアレルギー試験
これは、ヘーゼルナッツアレルギーを有する6歳以上55歳以下の参加者におけるリゲリズマブの有効性及び安全性を評価するための24週間二重盲検プラセボ対照試験である。本試験は、あらゆる食物アレルギーにおけるリゲリズマブの利益を更に実証することになる(「アレルギーアグノスティック」)。
【0307】
この第3b相試験の目的は、プラセボと比較した、ヘーゼルナッツアレルギーを有する6歳以上~55歳以下の年齢の参加者における経口ヘーゼルナッツアレルゲンに対する感受性を低下させることによって食物アレルギー反応からの保護を確実にするための、リゲリズマブ120mg及び240mg SCq4wの安全性及び臨床的有効性を判定することである。これは、DBPCFC中、DLSなしに単回用量のヘーゼルナッツタンパク質を24週目に様々に異なる閾値で忍容することのできる参加者の比率によって測定されるとおりの、プラセボと比較した、リゲリズマブの安全性及び忍容性を判定する;主要目的は600mg以上の単回用量(1044mg累積耐容用量)のヘーゼルナッツタンパク質と定義される。
【0308】
主要な母集団特徴:
対象は、スクリーニング時点で年齢が6~55歳でなければならない
対象は、ヘーゼルナッツ又はヘーゼルナッツ含有食品に対するアレルギーの臨床歴が医療文書に記録されていなければならない
対象は、スクリーニング1において、6kUA/L以上の、ヘーゼルナッツ免疫グロブリンE(sIgE)に対する特異的免疫応答を有しなければならない
対象は、ベースライン時に生理食塩水対照と比較してヘーゼルナッツ抽出物に対して平均直径4mm膨疹として定義される皮膚プリック試験(SPT)陽性を示さなければならない
対象は、ベースライン時(スクリーニング2、パート1及び2 OCF)に100mg以下の単回用量のヘーゼルナッツタンパク質でプラセボでは発生しないDLSの発生として定義されるヘーゼルナッツDBPCFC陽性を示さなければならない。DBPCFCの続行が適格であるには、他の全ての適格性基準を満たす必要がある。
【0309】
実施例7.高用量リゲリズマブ試験
この試験は、食物アレルギーの確定診断を有する参加者におけるリゲリズマブ120mg、240mg及び360mg SCq4wの長期有効性及び安全性を判定する第3相多施設非盲検延長試験である。
【0310】
レスポンダー状態について、OFCのアウトカムに基づいて3段階の反応レベルが定義される。
【0311】
【表2】
【0312】
ノンレスポンダー(NR)状態は、表現型の存在及び所与のレジメンに基づいた治験薬の不十分な効果の両方を反映する。増量調節(成人で最大360mg)又は曝露延長(増量調節が実現可能でない場合、同じレベルで更にもう1年)は、推奨される戦略である。
【0313】
レスポンダー(R)状態は、表現型の存在及び患者にとって臨床的に有意味な治療利益を反映している。この場合、プロトコルによれば、増量調節(実現可能な場合)又は同じレジメンでの治療延長のいずれかが推奨される。
【0314】
最大レスポンダー(MR)状態は、治験薬の最適な効果又は根底にある表現型の変化(自然歴後又は治験治療の潜在的な疾患修飾を通じたもののいずれかの疾患の喪失)のいずれかを反映している可能性がある。この場合、プロトコルによれば、更なる治療がなおも必要かどうかを評価するため休薬が推奨される可能性がある。持続的無反応(1年を超える)の場合、患者は治療なしにこの試験に残り(「休薬の延長」)、選択されたバイオマーカーを通じたその状態のモニタリングが続けられることになる。表現型が復活した場合、患者は、MRにつながった治療レジメンに戻されることになる。
【0315】
実施例8.不明の及び/又は不可避の誘因による再発性特発性アナフィラキシーを有する患者でリゲリズマブを評価する試験(IgE媒介性アナフィラキシーの予防)
この無作為化プラセボ対照試験は、240mg~360mgのリゲリズマブ SC q4wを評価するものであって、試験には、食物以外にも追加的なアレルゲン(例えば、虫刺され、毒液及び薬物)が誘因となる重度の/重篤なアレルギー(IgE媒介性)反応に罹患している患者が含まれる。この患者群では、本発明者らは、未同定の誘因のイベント(特発性)に罹患している者も組み入れることになる。来院1回目前の12ヵ月間に少なくとも3つ(又は少なくとも2つ又は少なくとも1つ)の事象があった不明の及び/又は不可避の誘因による再発性特発性アナフィラキシーを有する患者が募集される。
・主要エンドポイント:年換算アナフィラキシー事象率(判定者により確認されたもの)
・他の選択されたエンドポイント:
〇全体的な過敏性反応率(重症度を含む)
〇保健医療利用
〇QoL
〇安全性及び忍容性
【0316】
本明細書に記載される臨床試験のデータは、リゲリズマブによるIgE抑制がアレルゲンアグノスティックな療法アプローチであるという知見を裏付けている。
【配列表】
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【国際調査報告】