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特表2024-544394ポリエステル樹脂およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/199 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
C08G63/199
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535968
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2022018841
(87)【国際公開番号】W WO2023113288
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0181996
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホ ソブ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ヨン ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ノ ウ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,チュン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,キョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,キ ヒョン
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD07
4J029AE01
4J029AE03
4J029BA01
4J029BA03
4J029CD04
4J029HA01
4J029HB01
4J029JA253
4J029JC443
4J029JD05
4J029JF221
4J029JF321
4J029JF361
4J029JF371
4J029JF471
4J029KB04
4J029KC01
4J029KD02
4J029KD05
4J029KD06
4J029KD07
4J029KD09
4J029KE05
(57)【要約】
本発明は、ポリエステル樹脂およびその製造方法に関する。具体的には、本発明の一実施形態では、二酸残基およびジオール残基を含む共重合体;リン系熱安定剤;および補色剤を含み、前記二酸残基はフランジカルボン酸系化合物由来残基を含み、前記ジオール残基はアルキレングリコール系化合物由来残基を含み、前記リン系熱安定剤は末端にエステル基を含み、前記補色剤はブルー染料およびレッド染料を含む、ポリエステル樹脂を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸残基およびジオール残基を含む共重合体;
リン系熱安定剤;および
補色剤を含み、
前記二酸残基はフランジカルボン酸系化合物由来残基を含み、
前記ジオール残基はアルキレングリコール系化合物由来残基を含み、
前記リン系熱安定剤は末端にエステル基を含み、
前記補色剤はブルー染料およびレッド染料を含む、ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、下記化学式1で表される、請求項1に記載のポリエステル樹脂:
[化学式1]

前記化学式1中、
は同一または異なり、置換または非置換の炭素数1~10のアルキルであり;
は置換または非置換の炭素数1~10のアルキルである。
【請求項3】
前記末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、トリメチルホスホノアセテート(trimethyl phosphonoacetate)、トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)またはこれらの組み合わせである、請求項2に記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂は、
前記ポリエステル樹脂1gを液体窒素下で10分間冷凍させた後に粉砕し、前記粉砕されたポリエステル樹脂1g当たりn-ヘキサン100mlを入れて6時間ソックスレー抽出を行って、最終50~250mlに濃縮または希釈し、内部標準物質としてフルオランテン-d10(Fluoranthene-d10)10~50μgを添加した後、GC/MS分析を行い、前記内部標準物質に対する相対比率で計算して前記ポリエステル樹脂内の前記末端にエステル基を含む熱安定剤の残存量を確認するとき、
前記共重合体の重量を基準にして、前記末端にエステル基を含む熱安定剤を1~50ppm含む、請求項3に記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記ブルー染料は、アントラキノン系ブルー染料、フタロシアニン系ブルー染料またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂は、
前記ポリエステル樹脂1gを液体窒素下で10分間冷凍させた後粉砕し、前記粉砕されたポリエステル樹脂1g当たりn-ヘキサン100mlを入れて6時間ソックスレー抽出を行って、最終50~250mlに濃縮または希釈し、内部標準物質としてフルオランテン-d10(Fluoranthene-d10)10~50μgを添加した後、GC/MS分析を行い、前記内部標準物質に対する相対比率で計算して前記ポリエステル樹脂内の前記ブルー染料の残存量を確認するとき、
前記共重合体の重量を基準にして、前記ブルー染料を1~150ppm含む、請求項5に記載のポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記レッド染料はペリノン系レッド染料、アゾ系レッド染料またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂は、
前記ポリエステル樹脂1gを液体窒素下で10分間冷凍させた後に粉砕し、前記粉砕されたポリエステル樹脂1g当たりn-ヘキサン100mlを入れて6時間ソックスレー抽出を行って最終50~250mlに濃縮または希釈し、内部標準物質としてフルオランテン-d10(Fluoranthene-d10)10~50μgを添加した後、GC/MS分析を行い、前記内部標準物質に対する相対比率で計算して前記ポリエステル樹脂内の前記レッド染料の残存量を確認するとき、
前記共重合体の重量を基準にして、前記レッド染料を1~100ppm含む、請求項7に記載のポリエステル樹脂。
【請求項9】
前記補色剤は、
前記ブルー染料および前記レッド染料を1:9~9:1の重量比(ブルー:レッド)で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項10】
前記ポリエステル樹脂は、数平均分子量が20,000~30,000g/molである、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂は、分子量分布が2.5以下(ただし、0超)である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂は、
前記ポリエステル樹脂2gを0.1g/ml濃度のヘキサフルオロイソプロパノール(Hexafluoroisopropanol、HFIP)溶媒20mlに溶かした後、CIE1976 L*a*b*表色系による溶液色差計を用いて測定するとき、L*値が92以上~97以下であり、a*値が2以下であり、b*値が3以下である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂は、
下記数式1による固有粘度の変化量(△IV12)が0.4(ただし、0超)dl/gである、請求項1に記載のポリエステル樹脂:
[数式1]
△IV12=IV-IV
前記数式1中、
IVは25℃での固有粘度であり、IVは35℃での固有粘度である。
【請求項14】
前記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50~100℃である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項15】
二酸成分およびジオール成分を含む単量体混合物をエステル化反応させる段階;
前記エステル化反応生成物をリン系熱安定剤および補色剤の存在下で予備重合させる段階;および
前記予備重合された重合体を重縮合反応させる段階を含み、
前記二酸成分はフランジカルボン酸系化合物を含み、
前記ジオール成分はアルキレングリコール系化合物を含み、
前記リン系熱安定剤は末端にエステル基を含み、
前記補色剤はブルー染料およびレッド染料を含む、ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記単量体混合物は、前記フランジカルボン酸系化合物100モルを基準にして、前記アルキレングリコール系化合物を100~200モル含む、請求項15に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項17】
前記エステル化反応は、180~220℃の温度範囲で行われる、請求項15に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項18】
前記エステル化反応は、窒素(N)雰囲気下で行われる、請求項15に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項19】
前記エステル化反応は、1~5.5atmの圧力下で行われる、請求項15に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項20】
前記予備重合時、
前記エステル化反応生成物の重量を基準にして、前記末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は1~50ppmで使用し、前記ブルー染料は1~150ppmで使用し、前記レッド染料は1~100ppmで使用する、請求項15に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項21】
前記予備重合は、
220~280℃の温度範囲に到達するまで昇温させる段階;および
前記到達温度を維持し、前記エステル化反応生成物を予備重合させる段階を含む、請求項15に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項22】
前記昇温時の圧力が0~1atmに到達するまで減圧させ;
前記到達温度維持時、前記到達圧力も維持する、請求項21に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項23】
前記重縮合反応は、220~280℃の温度範囲で行われる、請求項15に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項24】
前記重縮合反応は2~8時間行われる、請求項15に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(polyester)樹脂は、主鎖(main chain)にエステル(ester、RO-C(=O)-R’)官能基を有する高分子樹脂をいい、様々な産業分野で、包装用、ディスプレイ用、絶縁材料用など多様な用途に使用されている。
【0003】
その代表的な例としては、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)とエチレングリコール(ethylene glycol、EG)との反応によって製造される、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate(PET))樹脂が挙げられる。
【0004】
ただし、テレフタル酸の主原料はパラキシレンであり、これは原油を精製して製造されるものである。したがって、テレフタル酸の製造および使用は原油資源の枯渇を誘発する。また、テレフタル酸の分解時、二酸化炭素排出量が増加して環境汚染を誘発し、温暖化などの気候変化を引き起こすことができる。
【0005】
これに関連して、ポリエステル樹脂の製造時、テレフタル酸を2,5-フランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic acid、FDCA)に代替しようとする試みが行われている。ここで、フランジカルボン酸は、バイオマス由来の素材として原油資源の枯渇を防止し、その生分解性に起因して環境汚染、気候変化などを最小化することができる。
【0006】
ただし、フランジカルボン酸は熱安定性が低く、ポリエステル樹脂の製造工程で黄変または褐変の熱変色を引き起こす。したがって、テレフタル酸をフランジカルボン酸に置き換える場合、黄変または褐変したポリエステル樹脂が得られることを避けられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱変色が抑制された生分解性ポリエステル樹脂およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態では、二酸残基およびジオール残基を含む共重合体;リン系熱安定剤;および補色剤を含み、前記二酸残基はフランジカルボン酸系化合物由来残基を含み、前記ジオール残基はアルキレングリコール系化合物由来残基を含み、前記リン系熱安定剤は末端にエステル基を含み、前記補色剤はブルー染料およびレッド染料を含む、ポリエステル樹脂を提供する。
【0009】
本発明の他の一実施形態では、二酸成分およびジオール成分を含む単量体混合物をエステル化反応させる段階;前記エステル化反応生成物を、リン系熱安定剤および補色剤の存在下で予備重合させる段階;および、前記予備重合された重合体を重縮合反応させる段階を含み、前記二酸成分はフランジカルボン酸系化合物を含み、前記ジオール成分はアルキレングリコール系化合物を含み、前記リン系熱安定剤は末端にエステル基を含み、前記補色剤はブルー染料およびレッド染料を含む、ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態では、生分解性を示しながらも、熱変色の抑制および補色によって高い明度を発現するポリエステル樹脂を提供することができる。
【0011】
本発明の他の一実施形態では、製造工程中の熱変色が抑制され、すでに変色した樹脂が補色され、高い明度を示すポリエステル樹脂を得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(用語の定義)
本明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0013】
本明細書全体で使用される程度の用語「~(する)段階」または「~の段階」は「~のための段階」を意味しない。
【0014】
本明細書において「残基(moiety)」は、特定の化合物が化学反応に参加してその化学反応の生成物に含まれるとき、前記特定の化合物由来の一定の部分または単位を意味する。
【0015】
具体的には、前記ポリエステル樹脂において、前記フラン系ジカルボン酸由来の「残基」およびアルキレングリコール由来「残基」は、それぞれ、フラン系ジカルボン酸に由来する部分およびアルキレングリコールに由来する部分を意味する。
【0016】
本明細書で使用された用語「アルキル」は、他の説明がない限り、特定数の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖をはじめとする飽和された1価の脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基は、典型的には、1~20個の炭素原子(「炭素数1~20のアルキル」)、好ましくは1~12個の炭素原子(「炭素数1~12のアルキル」)、より好ましくは1~8個の炭素原子(「炭素数1~8のアルキル」)、または1~6個の炭素原子(「炭素数1~6のアルキル」)、または1~4個の炭素原子(「炭素数1~4のアルキル」)を含む。アルキル基の例としてはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどを含む。アルキル基は、置換されたか、または非置換であり得る。別途の特定がされない限り、アルキル基は、1つ以上のハロゲンであって、アルキル残基上に存在する水素原子の総数まで置換され得る。したがって、炭素数1~4のアルキルは、ハロゲン化アルキル基、例えば、1~4個の炭素原子を有するフッ化アルキル基、例えば、トリフルオロメチル(-CF)またはジフルオロエチル(-CHCHF)を含む。
【0017】
本明細書で任意に置換されると記載されているアルキル基は、1つ以上の置換基で置換され、置換基は別途の記載がない限り、独立して選択される。置換基の総数は、このような置換が化学的な感覚を満たす程度までアルキル残基上の水素原子の総数と同じである。任意に置換されたアルキル基は、典型的には1~6個の任意の置換基、しばしば1~5個の任意の置換基、好ましくは1~4個の任意の置換基、より好ましくは1~3個の任意の置換基を含有することができる。
【0018】
前記アルキル基に適した任意の置換基は、非限定的に、炭素数1~8のアルキル、炭素数2~8のアルケニル、炭素数2~8のアルキニル、炭素数3~8のシクロアルキル、3~12員のヘテロサイクリル(ヘテロ環)、炭素数6~12のアリールおよび5~12員のヘテロアリール、ハロ、=O(オキソ)、=S(チオノ)、=N-CN、=N-OR、=NR、-CN、-C(O)R、-CO、-C(O)NR、-SR、-SOR、-SO、-SONR、-NO、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRSO、-NRSONR、-OR、-OC(O)Rおよび-OC(O)NRを含むのであって、それぞれのRおよびRは、独立して、水素(H)、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアシル、炭素数2~8のアルケニル、炭素数2~8のアルキニル、炭素数3~8のシクロアルキル、3~12員のヘテロサイクリル、炭素数6~12のアリールまたは5~12員のヘテロアリールであるか、RおよびRは、それらが結合しているN原子と共に3~12員のヘテロサイクリルまたは5~12員のヘテロアリール環を形成することができ、それぞれは任意にO、NおよびS(O)(このとき、qは0~2である)から選択される1個、2個または3個の追加のヘテロ原子を含有することができ;それぞれのRおよびRはハロ、=O、=S、=N-CN、=N-OR’、=NR’、-CN、-C(O)R’、-COR’、-C(O)NR’、-SOR’、-SOR’、-SONR’、-NO、-NR’、-NR’C(O)R’、-NR’C(O)NR’、-NR’C(O)OR’、-NR’SOR’、-NR’SONR’、-OR’、-OC(O)R’および-OC(O)NR’からなる群より独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換されるのであって、ここで、それぞれのR’は、独立して、水素(H)、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアシル、炭素数2~8のアルケニル、炭素数2~8のアルキニル、炭素数3~8のシクロアルキル、3~12員のヘテロサイクリル、炭素数6~12のアリールまたは炭素数5~12のヘテロアリールであり;それぞれの前記炭素数1~8のアルキル、炭素数2~8のアルケニル、炭素数2~8のアルキニル、炭素数3~8のシクロアルキル、3~12員のヘテロサイクリル、炭素数6~12のアリールおよび5~12員のヘテロアリールは、本明細書でさらに定義した通り、任意に置換され得る。
【0019】
本明細書で使用された用語「アルコキシ」は、他の説明がない限り、アルキル部分が特定数の炭素原子を有する1価-O-アルキル基を意味する。アルコキシ基は、典型的に1~8個の炭素原子(「炭素数1~8のアルコキシ」)、または1~6個の炭素原子(「炭素数1~6のアルコキシ」)、または1~4個の炭素原子(「炭素数1~4のアルコキシ」)を有する。例えば、炭素数1~4のアルコキシは、メトキシ(-OCH)、エトキシ(-OCHCH)、イソプロポキシ(-OCH(CH)、tert-ブチルオキシ(-OC(CH)などを含む。アルコキシ基は、アルキルに適したものであって、本明細書に記述されているのと同じ基によって、アルキル部分上にて置換されるか、または非置換でありうる。特に、アルコキシ基は、アルキル部分上に存在する水素原子の総数まで、1つ以上のハロ原子、特に1つ以上のフルオロ原子で任意に置換され得る。このような基は、特定数の炭素原子を有し、1つ以上のハロ置換基で置換された「ハロアルコキシ」、例えば、フッ化された場合、より具体的には「フルオロアルコキシ」基と称するのであって、典型的には、このような基は1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子、しばしば1または2個の炭素原子、および、1個、2個または3個のハロ原子を含有する(つまり、「炭素数1~6のハロアルコキシ」、「炭素数1~4のハロアルコキシ」または「炭素数1~2のハロアルコキシ」)。さらに具体的には、フッ化されたアルキル基は、典型的には、1個、2個または3個のフルオロ原子で置換されたフルオロアルコキシ基、例えば、炭素数1~6、炭素数1~4または炭素数1~2のフルオロアルコキシ基と具体的に称することができる。したがって、炭素数1~4のフルオロアルコキシは、トリフルオロメチルオキシ(-OCF)、ジフルオロメチルオキシ(-OCFH)、フルオロメチルオキシ(-OCFH)、ジフルオロエチルオキシ(-OCHCFH)などを含む。
【0020】
本明細書で使用された用語「2価の脂肪族炭化水素(つまり、アルキレン)」は、他の説明がない限り、2つの他の基を一緒に連結することができる特定数の炭素原子を有する2価ヒドロカルビル基を称する。しばしばアルキレンは-(CH-(ここで、nは1~8であり、好ましくはnは1~4である)を指称する。特定の場合、アルキレンはまた、他の基で置換され得るのであって、少なくとも1の非置換度(つまり、アルケニレンまたはアルキニレン残基)または環を含むことができる。アルキレンの開放原子価は、鎖の反対端部である必要はない。したがって、分枝状アルキレン基、例えば、-CH(Me)-、-CHCH(Me)-および-C(Me)-がまた、用語「アルキレン」の範疇に含まれるのであって、環状基、例えば、シクロプロパン-1,1-ジイル、および、不飽和基、例えば、エチレン(-CH=CH-)またはプロピレン(-CH-CH=CH-)も同様である。アルキレン基は、アルキルに適したものであって、本明細書に記述したような同じ基によって置換されるか、または非置換である。
【0021】
本明細書で使用された用語「任意に置換された」および「置換または非置換の」は、記述されている特定の基が、非水素置換基を全く持たない(つまり、非置換された)か、前記基が1つ以上の非水素置換基を持つ(つまり、置換された)可能性があることを示すために、相互交換的に使用される。特に明記しない限り、存在し得る置換基の総数は、記述された基の非置換形態に存在するH原子の数と同じである。任意の置換基が二重結合を介して結合する場合(例えば、オキソ(=O)置換基)、上記基は、利用可能な原子価を占めて含まれる他の置換基の総数は2だけ減少する。任意の置換基が代替物の目録から独立して選択される場合、選択された基は同一であるか、または異なる。本明細書全般にわたって、任意の置換基の数および性質は、このような置換が、化学的な感覚を満たす程度まで限定されることにつき理解されるであろう。
【0022】
本明細書において、CIE1976 L*a*b*表色系は、CIE(International Commission on Illumination、国際照明委員会)で規定され、現在世界的に標準化されている色空間に該当する。
【0023】
このようなCIE 1976 L*a*b*色空間で、L*値はCIEで明度を表し、範囲は0~100であり、その値が0であれば完全な黒色、100であれば完全な白色を意味する。a*は、赤色と緑色のうちのどちらに傾いているかを表し、この値が正の値、つまり「+」であれば赤色(red)であり;負の値、つまり「-」であれば緑色(green)である。b*は、黄色と青色のうちのどちらに傾いているかを表し、この値が正の値、つまり「+」であれば黄色(yellow)であり;負の値、つまり「-」であれば青色(blue)である。
【0024】
上記のような定義に基づいて、本発明の実現形態を詳しく説明する。ただし、これらは例示として提示されたものに過ぎず、これによって本発明が限定されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0025】
(ポリエステル樹脂)
本発明の一実施形態では、二酸残基およびジオール残基を含む共重合体;リン系熱安定剤;および補色剤を含む、前記二酸残基はフランジカルボン酸系化合物由来残基を含み、前記ジオール残基はアルキレングリコール系化合物由来残基を含み、前記リン系熱安定剤は末端にエステル基を含み、前記補色剤はブルー染料およびレッド染料を含む、ポリエステル樹脂を提供する。
【0026】
前記一実施形態のポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸を含む二酸成分、および、脂肪族ジオールを含むジオール成分について、エステル化反応、予備重合および重縮合反応をさせてポリエステル樹脂を製造する一連の工程により製造することができる。
【0027】
前記フランジカルボン酸系化合物は、木、とうもろこしなどのバイオマスから製造される、環境にやさしい原料に由来するのであって、一定の条件で微生物によって完全に分解(つまり、生分解)されうる。
【0028】
したがって、ポリエステル樹脂の原料として、テレフタル酸の代わりに前記フランジカルボン酸系化合物を使用すると、原油資源の枯渇を防止することができる。また、前記フランジカルボン酸系化合物を原料にして製造されたポリエステル樹脂は、生分解性を示し、環境汚染、気候変化などを防止することに寄与することができる。
【0029】
ただし、前記フランジカルボン酸系化合物は熱安定性が低く、これを使用して製造されたポリエステル樹脂は黄変または褐変して低い明度を示すことが一般的である。
【0030】
しかし、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、前記フランジカルボン酸系化合物を原料にして製造されたにもかかわらず、黄変または褐変が抑制されて比較的高い明度を示すことができる。
【0031】
前記一実施形態のポリエステル樹脂が示す色特性は、その製造過程中に供給された添加剤に起因するものであり得る。
【0032】
具体的には、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、末端にエステル基を含むリン系熱安定剤の存在下で製造されたものであり得る。熱安定剤の中でも、末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、ポリエステル樹脂の製造過程中の熱変色を最小化することができる。
【0033】
また、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、ブルー染料およびレッド染料を含む補色剤の存在下で製造されたものであり得る。補色剤の中でも、ブルー染料およびレッド染料を含む補色剤は、ポリエステル樹脂の製造過程ですでに変色が発生してしまっても、樹脂の色を補正することができる。前記ブルー染料およびレッド染料を含む補色剤は、ポリエステル樹脂の製造過程中の触媒の役割も果たして反応速度を改善し、ポリエステル樹脂の熱露出時間を短縮させることができる。
【0034】
一方、前記末端にエステル基を含むリン系熱安定剤;および前記ブルー染料およびレッド染料を含む補色剤は、前記一実施形態のポリエステル樹脂を製造する過程中の一部が消失する量を除いて、最初に投入された大部分が残存する。したがって、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、末端にエステル基を含むリン系熱安定剤;および前記ブルー染料およびレッド染料を含む。
【0035】
総合的に、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、生分解性を示しながらも、その製造過程中の熱変色の抑制および補色により高い明度を発現することができる。
【0036】
以下、前記一実施形態のポリエステル樹脂を詳しく説明する。
【0037】
<末端にエステル基を含むリン系熱安定剤>
非リン系熱安定剤はもちろんのこと、トリフェニルホスフェート(triphenylphosphate)、リン酸(phosphoric acid)などのように末端にエステル基を含まないリン系熱安定剤は、重合反応速度を遅くするという弱点を有している。
【0038】
それに対して、末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、重合反応速度を適切に制御することができ、かつ、前記一実施形態のポリエステル樹脂を製造する過程中の熱変色を最小化する利点がある。
【0039】
末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、下記化学式1で表される:
【0040】
[化学式1]
【0041】
前記化学式1中、Rは同一または異なり、置換または非置換の炭素数1~10のアルキルであり;Rは置換または非置換の炭素数1~10のアルキルである。
【0042】
具体的には、末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、トリメチルホスホノアセテート(trimethyl phosphonoacetate)、トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)またはこれらの組み合わせであり得る。
【0043】
例えば、末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、後述する実施例のように、トリエチルホスホノアセテートであり得る。
【0044】
前記一実施形態のポリエステル樹脂は、前記共重合体の重量を基準にして、前記末端にエステル基を含む熱安定剤を1~50ppm含むことができる。このような範囲内で、前記ポリエステル樹脂の熱変色を最小化することができる。
【0045】
具体的には、前記一実施形態のポリエステル樹脂1gを液体窒素下で10分間冷凍させた後に粉砕し、前記粉砕されたポリエステル樹脂1g当たりn-ヘキサン100mlを入れ6時間ソックスレー抽出を行うことで最終的に50~250mlに濃縮または希釈し、内部標準物質としてフルオランテン-d10(Fluoranthene-d10)を10~50μg添加した後、GC/MS分析を行ったのであり、前記内部標準物質に対する相対的比率で計算して前記一実施形態のポリエステル樹脂内の前記熱安定剤の残存量を確認することができる。
【0046】
例えば、前記末端にエステル基を含む熱安定剤は、前記一実施形態のポリエステル樹脂の重量を基準にして1ppm以上、5ppm以上、10ppm以上または15ppm以上でありながら、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、または25ppm以下である範囲内に存在することがある。
【0047】
<補色剤>
前記補色剤は、前記一実施形態のポリエステル樹脂を製造する過程中に熱変色した樹脂の色を補正すると同時に触媒の役割を果たす物質であり、ブルー染料およびレッド染料を含むことができる。
【0048】
前記ブルー染料の場合、ブルーの色相を示す染料であれば特に限定されないが、アントラキノン系ブルー染料、フタロシアニン系ブルー染料またはこれらの組み合わせであり得る。
【0049】
例えば、アントラキノン系ブルー染料として、下記化学式2-1で表される3,3’-[(9,10-dihydro-9,10-dioxo-1,4-anthrylene)diimino]bis[N-cyclohexyl-2,4,6-trimethylbenzenesulphonamide](製品名:Solvent Blue 45、CAS NO.23552-74-1)を使用することができる:
【0050】
[化学式2-1]
【0051】
前記レッド染料の場合、レッドの色相を示す染料であれば特に限定されないが、ペリノン系レッド染料、アゾ系レッド染料またはこれらの組み合わせであり得る。
【0052】
例えば、ペリノン系レッド染料として、下記化学式3-1で表される8,9,10,11-Tetrachloro-12H-isoindolo[2,1-a]perimidin-12-one(製品名:Solvent Red 135、CAS No.20749-68-2)を使用することができる:
【0053】
[化学式3-1]
【0054】
前記一実施形態のポリエステル樹脂は、前記共重合体の重量を基準にして、前記ブルー染料を1~150ppm含むことができ、前記レッド染料を1~100ppm含むことができる。
【0055】
ここで、前記ポリエステル樹脂1gを液体窒素下で10分間冷凍させた後に粉砕し、前記粉砕されたポリエステル樹脂1g当たりn-ヘキサン100mlを入れ6時間ソックスレー抽出を行うことで最終的に50~250mlに濃縮または希釈し、内部標準物質としてフルオランテン-d10(Fluoranthene-d10)を10~50μg添加した後、GC/MS分析を行い、前記内部標準物質に対する相対的比率で計算して前記ポリエステル樹脂内の前記ブルー染料および前記レッド染料の残存量をそれぞれ確認することができる。
【0056】
具体的には、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、前記共重合体の重量を基準にして、前記ブルー染料を1ppm以上、2ppm以上、5ppm以上または10ppm以上でありながら、150ppm以下、140ppm以下、130ppm以下、120ppm以下または100ppm以下に含むことができる。
【0057】
上記範囲で前記ブルー染料の含有量が増加するほど、前記一実施形態のポリエステル樹脂はCIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が減少し、a*値は大同小異で、b*値は増加する。
【0058】
また、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、前記共重合体の重量を基準にして、前記レッド染料を1ppm以上、10ppm以上、20ppm以上または30ppm以上でありながら、100ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、または50ppm以下に含むことができる。
【0059】
上記範囲で前記レッド染料の含有量が増加するほど、前記一実施形態のポリエステル樹脂はCIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が減少し、b*値は大同小異で、a*値は増加する。
【0060】
目的に応じて、前記一実施形態のポリエステル樹脂を製造する過程中に前記各染料の投入量を調節して、前記各染料の最終含有量(残存量)および樹脂の色特性を制御することができる。
【0061】
前記補色剤は、前記ブルー染料および前記レッド染料を1:9~9:1または1:4~4:1の重量比(ブルー:レッド)で含むことができる。
【0062】
このようにブルー染料およびレッド染料を混合使用するとき、黄変または褐変したポリエステル樹脂の色を効果的に補正し、その明度を高めることができる。
【0063】
<共重合体>
前記共重合体は、二酸残基の中でもフランジカルボン酸系化合物に由来する残基(以下、「フランジカルボン酸系化合物由来残基」)を含み、前記フランジカルボン酸系化合物に起因して優れた生分解性を示す。
【0064】
前記フランジカルボン酸系化合物は、下記化学式1Aで表される:
【0065】
[化学式1A]
【0066】
前記化学式1中、LおよびLはそれぞれ独立して、単結合、または置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0067】
例えば、前記フランジカルボン酸系化合物は2,5-フランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic acid)であり、この場合、前記化学式1中のLおよびLは、全て単結合であり得る。
【0068】
前記フランジカルボン酸系化合物由来残基は、下記化学式1-1で表される:
【0069】
[化学式1-1]
【0070】
前記化学式1-1中、LおよびLは、それぞれ独立して、単結合、または置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンであり;*は結合位置を示す。
【0071】
例えば、前記フランジカルボン酸系化合物が2,5-フランジカルボン酸であるとき、前記化学式1-1中のLおよびLは、全て単結合であり得る。
【0072】
前記共重合体は、二酸残基の中でもアルキレングリコール系化合物に由来する残基(以下、「アルキレングリコール系化合物由来残基」)を含み、前記アルキレングリコール系化合物由来残基に起因して優れた相溶性および延長特性(elongation)を示す。
【0073】
前記アルキレングリコール系化合物は、下記化学式2で表される:
【0074】
[化学式2]
【0075】
前記化学式2中、LおよびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0076】
例えば、前記アルキレングリコール系化合物は、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールであり得る。この場合、前記化学式2中のLはCアルキレン(つまり、メチレン)であり、RはCアルキレン(つまり、メチレン)またはCアルキレン(つまり、プロピレン)であり得る。
【0077】
前記アルキレングリコール系化合物由来残基は、下記化学式2-1Aで表される:
【0078】
[化学式2-1A]
【0079】
前記化学式2-1中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンであり;*は結合位置を示す。
【0080】
例えば、前記アルキレングリコール系化合物がエチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールであるとき、前記化学式2-1中のRはCアルキレン(つまり、メチレン)であり、RはCアルキレン(つまり、メチレン)またはCアルキレン(つまり、プロピレン)であり得る。
【0081】
前記共重合体内の前記フランジカルボン酸系化合物由来残基および前記アルキレングリコール系化合物由来残基のモル比は、9:1~1:9、8:2~2:8または1:1~1:2であり得る。この範囲で、前記フランジカルボン酸系化合物由来残基および前記アルキレングリコール系化合物由来残基の効果を調和的に実現することができる。
【0082】
前記共重合体は、前記フランジカルボン酸系化合物由来残基および前記アルキレングリコール系化合物由来残基以外にも、二酸残基および前記ジオール残基の中の一つ以上をさらに含むことができる。
【0083】
前記追加の残基としての二酸残基は、前記フランジカルボン酸系化合物を除いた芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、またはこれらの混合物に由来するものであり得る。
【0084】
また、前記追加の残基としてのジオール残基は、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、またはこれらの混合物に由来するものであり得る。
【0085】
前記追加の残基を含むポリエステル樹脂の全体100モル%中の前記追加の残基の含有量は1~20モル%に制御することができる。この範囲で追加の残基を含む場合、前記ポリエステル樹脂の機械的物性および耐熱性などをさらに向上させることができる。
【0086】
前記共重合体は、ランダム共重合体またはブロック共重合体であり得る。具体的には、前記共重合体は追加の残基を含まず、下記化学式4で表される:
【0087】
[化学式4]
【0088】
前記化学式4中、各置換基の定義は上述した通りである。
【0089】
例えば、前記共重合体は、下記化学式4-1で表される:
【0090】
[化学式4-1]
【0091】
具体的には、前記化学式4-1で表される共重合体は、前記フランジカルボン酸系化合物由来残基がフランジカルボン酸由来残基であり、前記エチレングリコール系化合物由来残基がエチレングリコール由来残基であり、前記エチレングリコール由来残基と前記エチレングリコール由来残基とのモル比が1:1であるポリ(エチレンフランジカルボキシレート)(poly(ethylene furandicarboxylate)、PEF)に該当する。
【0092】
<ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)および分子量分布(MWD)>
前記ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が20、000g/mol以上、21、000g/mol以上、22、000g/mol以上、23、000g/mol以上、24、000g/mol以上または25、000g/mol以上でありながら、30、000g/mol以下、29、000g/mol以下、または27、000g/mol以下であり得る。
【0093】
前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が20、000g/mol未満であれば包装材として使用するためのフィルム化加工が難しくなるだけでなく、所望のモジュラスを達成することができない。これとは異なり、30、000g/molを超える場合、粘度が高くなり、生産性および収率が低くなる。
【0094】
前記ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比、つまり、分子量分布(Molecular weight distribution、MWD)が1以上、1.2以上、1.4以上または1.5以上でありながら、2.5以下、2以下、1.9以下または1.8以下であり得る。
【0095】
前記ポリエステル樹脂が示す分子量分布が1未満であればプロセスコントロールが難しくなるので不良率が高くなり、工程費用が高くなる。それに対して、前記一実施形態のポリエステル樹脂の分子量分布が2.5を超える場合、不均一な分子量分布により製品の製造時に不良を誘発する可能性がある。
【0096】
<ポリエステル樹脂の色特性>
前記一実施形態のポリエステル樹脂は、CIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が92以上~97以下であり、a*値が2以下であり、b*値が3以下であり得る。
【0097】
前記CIE1976 L*a*b*表色系による色特性は、一般に知られているチップ(Chip)色差計ではなく、特定の溶媒に特定濃度でチップ(chip)を溶かして溶液(solution)状態で測定するものであり得る。具体的には、前記ポリエステル樹脂2gを0.1g/ml濃度のヘキサフルオロイソプロパノール(Hexafluoroisopropanol、HFIP)溶媒20mlに溶かした後、CIE1976 L*a*b*表色系による溶液色差計を用いて測定することができる。
【0098】
前記2以下のa*値および前記3以下のb*値は黄変または褐変の熱変性が抑制されたことを意味し、前記92以上~97以下のL*値は高い明度を意味する。
【0099】
具体的には、前記L*値は、92以上の範囲で高い値を有するほど、白色に近い色を表すことができる。ただし、前記一実施形態のポリエステル樹脂を適用した製品の用途、目的などに応じて、前記L*値は、92以上、92.5以上または93以上でありつつ、97以下または96以下である範囲内で、明度を制御することができる。
【0100】
前記a*値の場合、2以下の範囲でその値が小さくなるほど、赤色は薄くなり、緑色は濃くなり得る。ただし、前記一実施形態のポリエステル樹脂を適用した製品の用途、目的などに応じて、前記a*値は、2以下、1.6以下、1.2以下、または1以下でありつつ、-3以上、-2.5以上、-2以上、または-1以上である範囲内で、赤色と緑色の程度を制御することができる。
【0101】
前記b*値の場合、3以下の範囲でその値が小さくなるほど、黄色は薄くなり、青色は濃くなり得る。ただし、前記一実施形態のポリエステル樹脂を適用した製品の用途、目的などに応じて、前記b*値は、3以下、2.7以下、2.5以下、または2以下でありつつ、-5以上、-4以上、-3以上、-2以上または-1以上である範囲内で黄色と青色の程度を制御することができる。
【0102】
より詳細な説明は後述するが、前記一実施形態のポリエステル樹脂が有する色特性は、その製造過程中の前記末端にエステル基を含むリン系熱安定剤;および前記ブルー染料およびレッド染料を含む補色剤によって調節することができる。
【0103】
<ポリエステルの物理的特性>
前記一実施形態のポリエステル樹脂は、下記数式1による固有粘度の変化量(△IV12)が0.15(ただし、0超)dl/gであり得る。
【0104】
[数式1]
△IV12=IV-IV
【0105】
前記数式1中、IVは25℃での固有粘度であり、IVは35℃での固有粘度である。
【0106】
前記数式1による固有粘度の変化量(△IV12)が下限値未満であれば、包装材として使用するためのフィルム化加工が難しくなるだけでなく、所望のモジュラスを達成することができない。これとは異なり、上限を超える場合、粘度が高くなり、生産性および収率が低くなる。
【0107】
具体的には、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、前記数式1による固有粘度の変化量(△IV12)が0.05dl/g以上、0.1dl/g以上または0.14dl/g以上でありつつ、0.4dl/g以下、0.3dl/g以下、0.2dl/g以下または0.15dl/g以下であり得る。
【0108】
また、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、25℃での固有粘度が0.1~2dl/g、具体的には0.2~1.5dl/g、より具体的には0.4~1dl/g、例えば0.6~0.8dl/gであり得る。
【0109】
また、前記一実施形態のポリエステル樹脂は、35℃での固有粘度が0.1~2dl/g、具体的には0.2~1.5dl/g、より具体的には0.3~1dl/g、例えば0.4~0.6dl/gであり得る。
【0110】
前記各温度で測定された固有粘度が下限値未満であれば、包装材として使用するためのフィルム化加工が難しくなるだけでなく、所望のモジュラスを達成することができない。これとは異なり、上限を超える場合、粘度が高くなり、生産性および収率が低くなる。
【0111】
前記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50~100℃、具体的には70~95℃、例えば80~90℃であり得る。
【0112】
前記ガラス転移温度が50℃未満であれば、常温で物性や熱的安定性を有することができず、包装材として使用するためのポリエステル樹脂のフィルム化加工工程に限界がある。これとは異なり、前記ガラス転移温度が100℃を超えるためには分子構造の密度が高くなければならず、この場合、ポリエステル樹脂の結晶性も一緒に高くなるため、透明性が低下する。
【0113】
(ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明の他の一実施形態では、二酸成分およびジオール成分を含む単量体混合物をエステル化反応させる段階;前記エステル化反応生成物をリン系熱安定剤および補色剤の存在下で予備重合させる段階;および、前記予備重合された重合体を重縮合反応させる段階を含み、前記二酸成分はフランジカルボン酸系化合物を含み、前記ジオール成分はアルキレングリコール系化合物を含み、前記リン系熱安定剤は末端にエステル基を含み、前記補色剤はブルー染料およびレッド染料を含む、ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
【0114】
前記末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、ポリエステル樹脂を製造する過程中の熱変色を最小化し、すでに変色が発生してしまっても前記ブルー染料およびレッド染料を含む補色剤がポリエステル樹脂の色を補正することができる。また、前記ブルー染料およびレッド染料を含む補色剤は、ポリエステル樹脂の製造過程中の触媒の役割も果たして反応速度を改善し、ポリエステル樹脂が熱に露出する時間を短縮させることができる。
【0115】
したがって、前記一実施形態の製造方法により、上述した一実施形態のポリエステル樹脂が得られる。
【0116】
以下、上述した内容と重複する説明は省略し、前記製造方法の各段階を詳しく説明する。
【0117】
<エステル化反応>
まず、前記一実施形態の製造方法では、二酸成分およびジオール成分を含む単量体混合物をエステル化(esterification)反応させる。この段階で、重合度が低いオリゴマーが形成され得る。
【0118】
前記二酸成分および前記ジオール成分のそれぞれを構成する具体的な成分は上述した通りである。
【0119】
前記エステル化反応段階での単量体混合物は、前記フランジカルボン酸系化合物100モルを基準にして100~200モルの前記アルキレングリコール系化合物を含むことができる。
【0120】
前記フランジカルボン酸系化合物100モルを基準にして前記アルキレングリコール系化合物を200モル超で使用すると、重縮合反応での粘度上昇速度が遅くなり、ポリマーの色が悪くなる。それに対して、前記アルキレングリコール系化合物を100モル未満で使用すると、Clear pointを確認できず、エステル反応の終了時点を確認することができない。
【0121】
一方、前記エステル化反応中の消失または未反応の物質の量を考慮して、目的とする共重合体組成より120%程度過剰に使用することができる。したがって、上記範囲で反応物のモル比を調節すると、上述した範囲で各残基の含有量が制御された共重合体が形成されうる。
【0122】
具体的には、前記フランジカルボン酸系化合物100モルを基準にして、前記アルキレングリコール系化合物を、100モル以上、110モル以上、115モルまたは120モル以上であって、200モル以下、190モル以下、180モル以下、または150モル以下で含むことができる。
【0123】
前記エステル化反応は、窒素(N)雰囲気、180~220℃の温度範囲および1~5.5atmの圧力下で、1~5時間行われうる。
【0124】
前記エステル化反応条件は、原料配合比、目的とするポリエステル組成物の具体的な特性などにより適切に調節することができる。
【0125】
例えば、前記エステル化反応は、180℃以上、182℃以上、184℃以上または185℃以上であって、220℃以下、210℃以下、200℃以下、または195℃以下の温度範囲で行われうる。
【0126】
前記エステル化反応は、1atm以上であって、5.5atm以下、5atm以下、3atm以下、または1.5atm以下で行われうる。
【0127】
前記エステル化反応は、1時間以上、1.5時間以上または2時間以上であって、5時間以下、4時間以下、または3時間以下で行われうる。
【0128】
前記エステル化反応の温度、圧力、反応時間などが前記のそれぞれの範囲未満であれば、反応収率が低いか十分な反応が起こらず、最終的に製造されるポリエステルの物性が低下しうる。前記エステル化反応の温度、圧力、反応時間などが上記各範囲を超えると、製造されるポリエステルの外観が黄変(yellow)する可能性が高くなるか解重合反応が行われて、前記製造方法でポリエステル樹脂が合成されないのでありうる。
【0129】
前記エステル化交換反応はバッチ(batch)式または連続式で行うことができ、それぞれの原料は別途に投入することができるが、一例として前記アルキレングリコールにフラン系ジカルボン酸を混合したスラリー形態で投入することができる。
【0130】
前記エステル化反応は、チタン(Ti)系化合物、スズ(Sn)系化合物、アンチモン(Sb)系化合物などを含むエステル化反応触媒の存在下で行うこともできる。特に、前記エステル化反応触媒は、反応初期から反応速度を改善し、ポリエステル樹脂が熱に露出する時間を短縮させることができる。
【0131】
前記スズ(Sn)系化合物は、一例としてジブチル酸化スズ(Dibutyltin oxide)であり得る。
【0132】
前記エステル化反応触媒は、合成されるポリエステルのうちの中心原子を基準にして1ppm~100ppmで使用することができる。前記エステル化反応触媒の含有量が小さすぎると、前記エステル化反応の効率が大きく向上しにくくなりうるのであり、反応に参加しない反応物の量が大きく増加しうる。また、前記エステル化反応触媒の含有量が多すぎると、製造されるポリエステルの外観物性が低下しうる。
【0133】
一方、前記単量体混合物には、前記フラン系ジカルボン酸および前記アルキレングリコール以外にも、二酸成分および前記ジオール成分のうちの一つ以上をさらに含むことができる。
【0134】
前記単量体混合物に前記二酸成分がさらに含まれる場合、上述した二酸残基を含むポリエステル樹脂が形成されてもよい。また、前記単量体混合物に前記ジオール成分がさらに含まれる場合、上述したジオール残基を含むポリエステル樹脂が形成されてもよい。
【0135】
前記ジオール成分としては、芳香族ジオールおよび脂肪族ジオールが挙げられる。
【0136】
前記芳香族ジオールは、炭素数8~40、一例として炭素数8~33の芳香族ジオール化合物を含むことができる。このような芳香族ジオール化合物の例としては、ポリオキシエチレン-(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(2.2)-ポリオキシエチレン-(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-(2.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(2.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(2.4)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-(3.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加されたビスフェノールA誘導体(ポリオキシエチレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンまたはポリオキシプロピレン-(n)-ポリオキシエチレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。前記nは、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンのユニット(unit)の個数(number)を意味する。
【0137】
前記脂肪族ジオールは、炭素数2~20、一例として、炭素数2~12の脂肪族ジオール化合物を含むことができる。このような脂肪族ジオール化合物の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオ-ル(1,2-プロパンジオ-ル、1,3-プロパンジオ-ルなど)、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール(1,6-ヘキサンジオールなど)、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ-ル)、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオールなどの、線状、分枝状または環状脂肪族ジオール成分が挙げられる。
【0138】
前記芳香族ジカルボン酸成分は、炭素数8~20、好ましくは炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸またはこれらの混合物であり得る。前記芳香族ジカルボン酸は、一例として、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、4,4’-スチルベンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,5-チオフェンジカルボン酸などであり得る。
【0139】
<予備重合>
前記一実施形態の製造方法は、末端にエステル基を含むリン系熱安定剤;およびブルー染料およびレッド染料を含む補色剤の存在下で前記エステル化反応生成物を予備重合させ、前記エステル化反応生成物より重合度が高いオリゴマーを製造する。
【0140】
具体的には、前記二酸成分および前記ジオール成分の反応過程で水が生成され、前記二酸成分が全て溶けてClear pointに到達するとき、前記エステル化反応を終了する。末端にエステル基を含むリン系熱安定剤;およびブルー染料およびレッド染料を含む補色剤を、前記エステル化反応段階で投入すると、正確なClear pointを確認できないことから、前記一実施形態の製造方法では前記添加剤を予備重合段階で投入する。
【0141】
前記予備重合時、前記エステル化反応生成物の重量を基準にして、前記熱安定剤は1~50ppmで使用し、前記ブルー染料は1~150ppmで使用し、前記レッド染料は1~100ppmで使用することができる。
【0142】
前記熱安定剤を上記範囲で使用すると、前記予備重合および重縮合反応中の熱変色を最小化する。また、前記補色剤を上記範囲で使用すると、前記予備重合および重縮合反応中の変色した樹脂の色を補正することができるだけでなく、前記重縮合反応の触媒の役割も効果的に果たして熱露出を最小化する。
【0143】
しかも、前記各範囲を満たすと、上述した範囲で熱安定剤および補色剤が残存するポリエステル樹脂を得ることができる。
【0144】
例えば、前記末端にエステル基を含むリン系熱安定剤は、前記エステル化反応生成物の重量を基準にして1ppm以上、5ppm以上、10ppm以上または15ppm以上でありながら、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、または25ppm以下である範囲内で使用することができる。
【0145】
また、前記ブルー染料は、前記エステル化反応生成物の重量を基準にして、1ppm以上、2ppm以上、5ppm以上または10ppm以上でありながら、150ppm以下、140ppm以下、130ppm以下、120ppm以下、または100ppm以下である範囲内で使用することができる。
【0146】
また、前記レッド染料は、前記エステル化反応生成物の重量を基準にして、1ppm以上、10ppm以上、20ppm以上または30ppm以上でありながら、100ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下または50ppm以下である範囲内で使用することができる。
【0147】
前記予備重合は、温度制御条件下で行うことができる(Thermal pre-condensation)。
【0148】
具体的には、前記予備重合は、220~280℃または220~260℃の温度範囲に到達するまで昇温させる段階;および前記到達温度を維持し、前記エステル化反応生成物を予備重合させる段階を含んで行うことができる。
【0149】
また、前記昇温時の圧力が0~1atmまたは0~0.5atmに到達するまで減圧させた後、前記到達温度維持時、前記到達圧力を維持することもできる。
【0150】
前記予備重合条件は、原料配合比、熱安定剤および補色剤の各使用量、目的とするポリエステル組成物の具体的な特性などに応じて適切に調節することができる。
【0151】
前記予備重合時の到達温度、到達圧力、反応時間などが上記各範囲未満であれば、反応収率が低いかまたは十分な反応が起こらず、最終的に製造されるポリエステルの物性が低下しうる。前記予備重合時の到達温度、到達圧力、反応時間などが上記各範囲を超えると、製造されるポリエステルの外観が黄変(yellow)する可能性が高くなるか解重合反応が行われ、上記製造方法でポリエステル樹脂が合成されないのでありうる。
【0152】
<重縮合反応>
上記製造方法は、前記予備重合後、前記予備重合された重合体を重縮合反応させる。
【0153】
前記重縮合反応(poly-condensation)は、220~280℃または220~260℃の温度範囲;および1torr以下、または0.4~0.8torr以下の圧力下で、2~6時間行うことができる。
【0154】
前記重縮合時の温度、圧力、反応時間などが上記各範囲未満であれば、重縮合反応の副産物であるグリコールを効果的に系外に除去できず、最終反応生成物の固有粘度が低いことから、製造されるポリエステルの物性が低下する。それに対して、前記重縮合時の温度、圧力、反応時間などが上記各範囲を超えると、製造されるポリエステルの外観が黄変(yellow)する可能性が高くなるか解重合反応が行われ、ポリエステルが合成されないのでありうる。
【0155】
前記重縮合の際、重縮合反応触媒を使用することができる。
【0156】
前記重縮合触媒は、前記重縮合反応開始前に前記エステル化反応の生成物に添加することができ、前記エステル化反応前に前記ジオール成分およびジカルボン酸成分を含む混合物に添加することができ、前記エステル化反応段階の途中に添加することもできる。
【0157】
前記重縮合触媒としては、チタン系化合物、ゲルマニウム系化合物、アンチモン系化合物、アルミニウム系化合物、スズ系化合物またはこれらの混合物を使用することができる。
【0158】
前記チタン系化合物としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、乳酸チタン、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシド/シリコンジオキシド共重合体、チタニウムジオキシド/ジルコニウムジオキシド共重合体などが挙げられる。
【0159】
前記ゲルマニウム系化合物としては、ゲルマニウムジオキシド(germanium dioxide、GeO2)、ゲルマニウムテトラクロリド(germanium tetrachloride、GeCl)、ゲルマニウムエチレングリコキシド(germanium ethyleneglycoxide)、ゲルマニウムアセテート(germanium acetate)、これらを利用した共重合体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
<発明の実施のための形態>
【0160】
以下、本発明の実施例を参照して説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇がこれらにのみ限定されるものではない。
【0161】
<実施例1-1>
2L容量のオートクレーブ(Autoclave)反応器のホッパーに、5.5molの2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid、FDCA)、9.9molのエチレングリコール(Ethylene glycol、EG)を投入した。その後、スズ(Tin)系触媒の一種であるジブチル酸化スズ(Dibutyltin oxide)を、スズ(Tin)を基準にして50ppmの量で投入し、190℃の温度および窒素雰囲気下の常圧(1atm)で2~3時間、前記FDCA、EGのエステル化反応を行った。この反応により、FDCA由来残基、EG由来残基からなるオリゴマーが生成された。
【0162】
前記エステル化反応終了後、重縮合触媒として、チタンキレート(Titanium Chelate)系触媒の一種であるPC64触媒(Tyzor(登録商標)PC64)を、スズ(Tin)を基準にして100ppmの量で投入し、熱安定剤として、トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate、TEPA)20ppmを投入した。重縮合触媒および前記熱安定剤を投入した後、30分間攪拌し、ブルー染料としてSolvent Blue 45染料100ppm、およびレッド染料としてSolvent Red 135 30ppmを投入した。さらに15分間攪拌し、前記反応器内の温度を1時間にわたって昇温させて220~240℃の温度範囲に到達するようにした後、真空ポンプを用いて1時間の間、段階的に圧力を下げ、反応器内部の圧力が1atmから0atmに到達するようにすることで、予備重合を行った。
【0163】
その後、220~240℃の温度範囲で0.8torr以下の高真空下で2時間~6時間反応を行いながら、オートクレーブ(Autoclave)のトルクメータ(Torque meter)に伝達される負荷が所望の負荷に到達したときにドレイン(Drain)して、実施例1-1のポリエステル樹脂を得た。
【0164】
<実施例1-2、1-3および1-5>
Solvent Blue 45の投入量を変更したことを除いて、実施例1-1と同様の方法で実施例1-2、1-3および1-5の各ポリエステル樹脂を製造した。ここで、Solvent Blue 45の投入量は下記表1に従う。
【0165】
<実施例1-4および1-6>
Solvent Blue 45の投入量およびSolvent Red 135の投入量を変更したことを除いて、実施例1-1と同様の方法で実施例1-4および1-6の各ポリエステル樹脂を製造した。ここで、Solvent Blue 45の投入量およびSolvent Red 135の投入量は下記表1に従う。
【0166】
<実施例2-1>
2L容量のオートクレーブ(Autoclave)反応器のホッパーに、5.5molの2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid、FDCA)、9.9molのエチレングリコール(Ethylene glycol、EG)を投入した。その後、スズ(Tin)系触媒の一種であるジブチル酸化スズ(Dibutyltin oxide)を、Tinを基準にして50ppmの量で投入し、190℃の温度および窒素雰囲気下の常圧(1atm)で2~3時間の間前記FDCA、EGのエステル化反応を行った。この反応により、FDCA由来残基、EG由来残基からなるオリゴマーが生成された。
【0167】
前記エステル化反応終了後、重縮合触媒として、チタンキレート(Titanium Chelate)系触媒の一種であるPC64触媒(Tyzor(登録商標)PC64)を、スズ(Tin)を基準にして100ppmの量で投入し、熱安定剤として、トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate、TEPA)20ppmを投入した。重縮合触媒および前記熱安定剤を投入した後、30分間攪拌し、Global PRT Blue染料100ppmとGlobal PRT Red染料30ppmを投入した。さらに15分間攪拌し、前記反応器内の温度を1時間にわたって昇温させて220~240℃の温度範囲に到達するようにした後、真空ポンプを用いて1時間の間、段階的に圧力を下げ、反応器内部圧力が1atmから0atmに到達するようにすることで、予備重合を行った。
【0168】
その後、220~240℃の温度範囲で0.8torr以下の高真空下で2時間~6時間反応を行いながら、オートクレーブ(Autoclave)のトルクメータ(Torque meter)に伝達される負荷が所望の負荷に到達したときにドレイン(Drain)して、実施例2-1のポリエステル樹脂を得た。
【0169】
<実施例2-2、2-3および2-5>
Global PRT Blueの投入量を変更したことを除いて、実施例2-1と同様の方法で実施例2-2、2-3および2-5の各ポリエステル樹脂を製造した。ここで、Global PRT Blueの含有量は下記表1に従う。
【0170】
<実施例2-4および2-6>
Global PRT Blueの投入量およびGlobal PRT Redの投入量を変更したことを除いて、実施例1-1と同様の方法で、実施例2-4および2-6の各ポリエステル樹脂を製造した。ここで、Global PRT Blueの投入量およびGlobal PRT Redの投入量は下記表1に従う。
【0171】
<比較例1-1>
熱安定剤、ブルー染料およびレッド染料を全て投入しないことを除いて、実施例1-1と同様の方法で、比較例1-1のポリエステル樹脂を製造した。
【0172】
<比較例2-1>
ブルー染料およびレッド染料を投入せず、熱安定剤としてトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate、TEPA)の代わりにトリフェニルホスフェート(triphenyl phosphate、TPP)を投入した。トリフェニルホスフェートの投入量は下記表1に従う。
【0173】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例2-1のポリエステル樹脂を製造した。
【0174】
<比較例2-2>
ブルー染料およびレッド染料を投入せず、熱安定剤としてトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate、TEPA)の代わりにリン酸(phosphoric acid、PA)を投入した。リン酸の投入量は下記表1に従う。
【0175】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例2-2のポリエステル樹脂を製造した。
【0176】
<比較例2-3>
ブルー染料およびレッド染料を投入せず、熱安定剤としてトリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate、TEPA)を投入した。トリエチルホスホノアセテートの投入量は下記表1に従う。
【0177】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例2-3のポリエステル樹脂を製造した。
【0178】
<比較例3-1>
熱安定剤およびレッド染料は投入せず、ブルー染料であるSolvent Blue 45を投入した。Solvent Blue 45の投入量は下記表1に従う。
【0179】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例3-1のポリエステル樹脂を製造した。
【0180】
<比較例3-2>
熱安定剤およびレッド染料は投入せず、ブルー染料であるGlobal PRT Blueを投入した。Global PRT Blueの投入量は下記表1に従う。
【0181】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例3-2のポリエステル樹脂を製造した。
【0182】
<比較例3-3>
熱安定剤およびブルー染料は投入せず、レッド染料であるSolvent Red 135を投入した。Solvent Red 135の投入量は下記表1に従う。
【0183】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例3-3のポリエステル樹脂を製造した。
【0184】
<比較例3-4>
熱安定剤およびブルー染料は投入せず、レッド染料であるGlobal PRT Redを投入した。Global PRT Redの投入量は下記表1に従う。
【0185】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例3-4のポリエステル樹脂を製造した。
【0186】
<比較例4-1>
熱安定剤は投入せず、ブルー染料であるSolvent Blue 45およびレッド染料であるSolvent Red 135を投入した。Solvent Blue 45およびSolvent Red 135の投入量は下記表1に従う。
【0187】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例4-1のポリエステル樹脂を製造した。
【0188】
<比較例4-2>
熱安定剤は投入せず、ブルー染料であるGlobal PRT Blueおよびレッド染料であるGlobal PRT Redを投入した。Global PRT BlueおよびGlobal PRT Redの投入量は下記表1に従う。
【0189】
このことを除いて、実施例1-1と同様の方法で比較例4-2のポリエステル樹脂を製造した。
【0190】
【表1】
【0191】
<試験例1:共重合体残基組成>
実施例および比較例の各ポリエステル樹脂試料について、以下の方法で共重合体残基組成、およびこれを含むポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)および分子量分布(MWD)を評価し、その評価結果を下記表2に示す。
【0192】
(1)共重合体残基組成:ポリエステル樹脂試料に含まれている共重合体残基組成(モル%)は、試料をCDCl溶媒に3mg/mLの濃度で溶解した後、核磁気共鳴装置(JEOL、600MHz FT-NMR)を用いて25℃で得られた1H-NMRスペクトルにより確認した。
【0193】
(2)ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)および分子量分布(MWD):
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてMwおよびMnを測定し、分子量分布(「Mw/Mn」)を計算した。
【0194】
具体的には、TSKgel guardcolumn SuperAW-H+2×TSKgel SuperAWM-H(6.0×150mm)カラムを用いてTosoh社製のHLC-8420 GPC装置を用いて評価した。評価温度は40℃であり、HFIP+0.01 N NaTFA展開溶媒として使用し、流速は0.3mL/minの速度で測定した。
【0195】
ポリエステル樹脂試料を含むサンプルは3mg/10mLの濃度に調製した後、10μLの量で供給した。PMMA標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwおよびMnの値を誘導し、分子量分布(「Mw/Mn」)を求めた。
【0196】
【表2】
【0197】
上記表2によると、すべての実施例および比較例の最終共重合体残基組成およびこれを含むポリエステル樹脂の重量特性が同一であることを確認することができる。これは、すべての実施例および比較例で、共重合体の製造のための原料配合を同一にしたことに起因する。一方、すべての実施例および比較例でリン系熱安定剤を使用したが、特に、トリエチルホスホノアセテートを使用した場合(比較例2-3および2-4、実施例1-1~1-5および実施例2-1~2-6)の分子量分布が、2以下と低いことを確認することができる。
【0198】
<試験例2:ポリエステル樹脂内添加剤残存量>
実施例および比較例の各ポリエステル樹脂試料について、以下の方法で添加剤残存量を評価し、その評価結果を下記表3に示す。
【0199】
ポリエステル試料1gを液体窒素下で10min間冷凍させた。この試料を、粉砕機を活用して粉砕した後、試料1g当たりn-ヘキサン100mlを入れて6時間ソックスレー抽出を行って、最終50~250mlに濃縮または希釈し、内部標準物質(Fluoranthene-d10)を10~50μgを添加した後、GC/MS分析を行った。内部標準物質に対する、熱安定剤、ブルー染料およびレッド染料のそれぞれの含有量を相対比率で計算し、試料内の残存量を確認した。
【0200】
【表3】
【0201】
上記表3によると、すべての実施例および比較例において、ほとんどの熱安定剤および補色剤が残存することを確認することができる。投入量に対する残存量の一部が減少することは、反応中に失われたと推論される。
【0202】
<試験例3:ポリエステル樹脂の色特性>
実施例および比較例の各ポリエステル樹脂試料について、以下の方法で色特性を評価し、その評価結果を下記表4に示す。
【0203】
Konica Minolta社製のCM-3700A色差計を用いて、以下の条件でL*、a*およびb*値を測定した。具体的には、ポリエステル樹脂試料2gをヘキサフルオロイソプロパノ-ル(Hexafluoroisopropanol)(HFIP)20mlに溶かした(0.1g/ml in HFIP)。Konica Minolta社製のCM-3700A製品で、溶液色差計の測定専用の石英セル(Quartz cell)にて前記試料溶液の色差を測定した。
【0204】
【表4】
【0205】
上記表4によると、リン系熱安定剤として特にトリエチルホスホノアセテートを使用すると同時に、補色剤としてレッド染料およびブルー染料を使用した場合(実施例1-1~1-6および実施例2-1~2-6)、最終のポリエステル樹脂のCIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が92以上~97以下であり、a*値が2以下であり、b*値が3以下であることを確認することができる。一方、リン系熱安定剤として特にトリエチルホスホノアセテートを使用すると同時に、補色剤としてレッド染料およびブルー染料を使用しつつも、レッド染料およびブルー染料のそれぞれの種類、投入量などに応じて最終のポリエステル樹脂の色特性も調節できることが分かる。
【0206】
<試験例4:ポリエステル樹脂の物性>
実施例1および比較例の各ポリエステル樹脂試料について、以下の方法で固有粘度およびガラス転移温度を評価し、その評価結果を下記表5に示す。
【0207】
1)固有粘度(IV):ポリエステル樹脂試料0.5gと、溶媒フェノール:テトラクロロエタン(Phenol:Tetrachloroethane)1:1の溶液10mlに溶かし、オストワルド粘度計でもって25℃および35℃にてそれぞれIVを測定した。
【0208】
2)ガラス転移温度(Tg):TA Instrument社製のDSCを用いてN、20psi、常温~300℃まで20℃/minの条件でポリエステル樹脂試料のガラス転移温度を測定した。
【0209】
【表5】
【0210】
上記表5によると、補色剤としてレッド染料を使用した場合(比較例3-3および3-4、比較例4-1および4-2、実施例1-1~1-6および実施例2-1~2-6)、最終ポリエステル樹脂の25℃での固有粘度(IV)、35℃での固有粘度(IV)および固有粘度の変化量(IV-IV)がそれぞれ顕著に減少し、ガラス転移温度が顕著に上昇したことが分かる。一方、レッド染料を使用しつつも、その種類、投入量などに応じて最終ポリエステル樹脂の固有粘度およびガラス転移温度を調節することができることが分かる。
【0211】
<試験例5:ポリエステル樹脂を含むフィルム物性>
実施例1および比較例の各ポリエステル樹脂試料について、以下の方法でフィルム製造後の物性を評価し、その評価結果を下記表6に示す。
【0212】
1)透過率
まず、ポリエステル樹脂試料の二軸延伸フィルムを製造した。具体的には、ポリエステル樹脂試料を押出機で180~260℃の温度にて溶融した。
【0213】
ダイ(die)を通して前記溶融物を押出してシート状に成形および急冷した。これにより得られたシートを縦方向(MD)に3.0倍延伸した後、幅方向(TD)に3.7倍延伸した。前記延伸されたフィルムに対して、寸法安定性を付与するために、張力下で120~160℃にて熱固定して二軸延伸フィルムを得た。
【0214】
このように製造されたポリエステルフィルムを10cm×10cm(縦方向長さ×横方向長さ)の大きさで切断して試験片を準備した。前記試験片に対してMinolta社製のCM-3600A測定装置を用いてASTM D1003-97測定法により、前記試験片の平行透過率と拡散透過率を測定した。透過率は、平行透過率と拡散透過率を合わせた値で規定される。したがって、前記試験片の平行透過率と拡散透過率から透過率を求めた。
【0215】
2)引張強さ、伸び率および弾性係数
ポリエステル樹脂試料を、マイクロコンパウンダー(Microcompounder)押出機を活用して押出温度220~260℃でスクリュースピードを100~120rpmとしてASTM D638-V Type試験片を製作した。製造された機械的物性試験片を、万能試験機UTM 5566A(Instron社製)下でバイス(Vice)グリップを活用して装着した。常温で5mm/minの速度で伸びつつ破断が起こるまで、サンプルが破断した地点への強度を引張強さ(tensile Strength)とし、伸びた長さを伸び率(elongation)とし、初期変形に対する荷重の傾きを弾性係数(Tensile Modulus)とした。
【0216】
【表6】
【0217】
上記表6によると、補色剤を使用する場合(比較例2-1~2-4、比較例3-1~3-4、比較例4-1および4-2、実施例1-1~1-6および実施例2-1~2-6)、フィルムの透過率、引張強さ、伸び率および弾性係数は大同小異な水準であることが分かる。
【国際調査報告】