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特表2024-544398臓器機能をシミュレートするためのマイクロ流体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】臓器機能をシミュレートするためのマイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536172
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2022086039
(87)【国際公開番号】W WO2023111127
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21215336.5
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524227262
【氏名又は名称】インスティチュート オブ ソリッド ステイト フィジックス,ユニバーシティ オブ ラトビア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ガティス モゾレブスキス
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥルス アボルス
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ リムシャ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
(57)【要約】
臓器機能をシミュレートするためのマイクロ流体デバイスが開示される。マイクロ流体デバイスは、トッププレートと、ボトムプレートと、メンブレンとを備える。トッププレートは、トッププレートの第1の面に配置されるトップチャネルを備える。ボトムプレートは、ボトムプレートの第1の面に配置されるボトムチャネルを備え、トップチャネルは、トップチャネルの全長にわたってボトムチャネルと重なっている。トッププレートの第1の面及びボトムプレートの第1の面は、対向している。メンブレンは、トップチャネル及びボトムチャネルはメンブレンによって分離されるように、トッププレートとボトムプレートとの間に配置される。トッププレートは、トップチャネルと流体連通するトップチャネル入口ポートを備える。トッププレートは、第1のボトムチャネル入口ポート及び第2のボトムチャネル入口ポートを備え、いずれも、ボトムチャネルと流体連通しており、第2のボトムチャネル入口ポートは、第1のボトムチャネル入口ポートよりもボトムチャネルの長手中心から離れた位置に配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器機能をシミュレートするためのマイクロ流体デバイス(1)であって、トッププレート(2)と、ボトムプレート(3)と、メンブレン(4)とを備え、
前記トッププレート(2)は、前記トッププレート(2)の第1の面(22)に配置されるトップチャネル(21)を備え、
前記ボトムプレート(3)は、前記ボトムプレート(3)の第1の面(32)に配置されるボトムチャネル(31)を備え、前記トップチャネル(21)は、前記トップチャネル(21)の全長にわたって前記ボトムチャネル(31)に重なっており、
前記トッププレート(2)の第1の面(22)及び前記ボトムプレート(3)の第1の面(32)は、互いに対向しており、
前記メンブレン(4)は、前記トップチャネル(21)及び前記ボトムチャネル(31)が前記メンブレン(4)によって分離されるように、前記トッププレート(2)と前記ボトムプレート(3)との間に配置され、
前記トッププレート(2)は、前記トップチャネル(21)と流体連通するトップチャネル入口ポート(23)を備え、
前記トッププレート(2)は、いずれも前記ボトムチャネル(31)と流体連通する第1のボトムチャネル入口ポート(24A)及び第2のボトムチャネル入口ポート(24B)を備え、前記第2のボトムチャネル入口ポート(24B)は、前記第1のボトムチャネル入口ポート(24A)よりも前記ボトムチャネル(31)の長手中心から離れた位置に配置される、マイクロ流体デバイス(1)。
【請求項2】
前記トッププレート(2)は、前記トップチャネル(21)と流体連通するトップチャネル出口ポート(25)を備える、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項3】
前記トッププレート(2)は、前記ボトムチャネル(31)と流体連通する第1のボトムチャネル出口ポート(26A)を備える、請求項1又は2に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項4】
前記トッププレート(2)は、前記ボトムチャネル(31)と流体連通する第2のボトムチャネル出口ポート(26A)を備え、前記第2のボトムチャネル出口ポート(26B)は、前記第1のボトムチャネル出口ポート(26A)よりも前記ボトムチャネル(31)の長手中心から離れた位置に配置される、請求項3に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項5】
前記トップチャネル入口ポート(23)、前記第1のボトムチャネル入口ポート(24A)、前記第2のボトムチャネル入口ポート(24B)、前記トップチャネル出口ポート(25)、前記第1のボトムチャネル出口ポート(26A)及び/又は前記第2のボトムチャネル出口ポート(26B)は、前記トッププレート(2)の第2の面(28)に対して垂直に配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項6】
前記トッププレート(2)は、前記ボトムチャネル(31)をモニタリングするセンサを受け入れるボトムチャネルセンサポート(27A)を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記トッププレート(2)は、前記トップチャネル(21)をモニタリングするセンサを受け入れるトップチャネルセンサポート(27B)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項8】
前記トップチャネルセンサポート(27B)及び/又は前記ボトムセンサポート(27A)は、前記トッププレート(2)の第2の面(28)から突出する隆起部(24)を備え、、前記トップセンサポートは、前記第2の面から前記ボトムセンサポートよりも突出する、請求項6及び7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記トップチャネル(21)及び前記ボトムチャネル(31)は、それぞれ前記トッププレート(2)及び前記ボトムプレート(3)の長手方向に延在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項10】
前記トッププレート(2)及び/又は前記ボトムプレート(3)は、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン(PS)及びポリカーボネート(PC)のうちの1つ又は複数から作られている、請求項1~9のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項11】
前記トッププレート(2)及び/又は前記ボトムプレート(3)は、射出成形される、請求項1~10のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項12】
前記メンブレン(4)は、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)のうちの1つ又は複数から作られている、請求項1~11のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項13】
前記トッププレート(2)及び/又は前記ボトムプレート(3)及び/又は前記メンブレン(4)は、超音波溶接を用いて共に接合されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項14】
前記トップチャネル(21)は、0.2~2mmの範囲の高さを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項15】
前記ボトムチャネル(31)は、0.1~0.5mmの範囲の高さを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項16】
前記トップチャネル(21)及び/又は前記ボトムチャネル(31)は、0.25~2mmの範囲の幅を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項17】
前記トップチャネル(21)及び/又は前記ボトムチャネル(31)は、4.5mmの倍数である長さを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項18】
前記第1のボトムチャネル入口ポート(24A)、前記第2のボトムチャネル入口ポート(24B)及び/又は前記トップチャネル入口ポート(23)は、互いに4.5mmの倍数である間隔をあけて配置される、請求項1~17のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項19】
前記トッププレート(2)は、複数のトップチャネル(21)を備え、前記ボトムプレート(3)は、複数のボトムチャネル(31)を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項20】
前記複数のトップチャネル(21)及び前記複数のボトムチャネル(31)は、互いに平行に配置されている、請求項19に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項21】
前記マイクロ流体デバイス(1)は、前記複数のトップチャネル(21)及び/又は前記複数のボトムチャネル(31)を相互接続するコネクタ(6)を備える、請求項19又は20に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項22】
前記コネクタ(6)は、前記コネクタ(6)を通る流れを測定するセンサを受け入れるセンサポート(64)を備える、請求項21に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項23】
前記複数のトップチャネル(21)及び/又は前記複数のボトムチャネル(31)は、異なる高さ、長さ及び/又は幅を有する、請求項19~22のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項24】
前記複数のトップチャネル(21)及び/又は前記複数のボトムチャネル(31)は、同一の高さ、長さ及び/又は幅を有する、請求項19~22のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項25】
前記トッププレート(2)及び/又は前記ボトムプレート(3)は、前記マイクロ流体デバイス(1)の組立中に前記メンブレン(4)に張力付与するための第1の張力付与要素(51)を備える、請求項1~24のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項26】
前記トッププレート(2)及び/又は前記ボトムプレート(3)は、第2の張力付与要素(52)を備え、前記第1の張力付与要素(51)及び前記第2の張力付与要素(52)は、前記トップチャネル(31)及び/又は前記ボトムチャネル(31)の両側に配置される、請求項25に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項27】
前記ボトムプレート(3)は、前記ボトムチャネル(31)を、前記第1のボトム入口ポート(24A)及び前記第2のボトム出口ポート(26A)の1つ又は複数と接続するバイパスチャネル(33)を備える、請求項1~25のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項28】
前記バイパスチャネル(33)は、前記ボトムプレート(3)の第2の面(34)に配置される長手溝(33A)を備える、請求項27に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項29】
前記長手溝(33A)は、前記ボトムチャネル(31)と平行に配置されている、請求項28に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項30】
前記バイパスチャネル(33)は、前記長手溝(33A)を前記ボトムチャネル(31)に接続する接続チャネル(33B)を備える、請求項28又は29に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項31】
前記バイパスチャネル(33)は、前記長手溝(33A)及び/又は前記ボトムチャネル(31)に対して垂直に配置される、請求項30に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項32】
前記バイパスチャネル(33)は、細胞付着防止層(36)を備える、請求項27~31のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、マイクロ流体デバイスの分野に関する。本開示は、一般に、臓器チップ(Organ-on-Chip、OOC)デバイス又は腸チップ(Gut-on-Chip、GUC)デバイスなどの、臓器機能をシミュレートするためのマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの病気や治療法の研究には、動物モデルがよく使用される。しかしながら、これらのモデルは、特に分子レベル及び/又は細胞レベルにおいて、ヒトの状態を模倣する能力に限界があることが多い。科学的な目的での動物の使用に関する2019年の欧州連合(EU)の報告書によると、EUだけで2017年には958万匹の動物が研究や試験に使用された。アメリカ合衆国(U.S.)の場合、この数字は潜在的にほぼ一桁高い。EUは今後30年以内に動物実験を禁止するよう求めている。
【0003】
臓器チップ(OOC)デバイスは、ヒトの組織、さらには臓器の機能をも再現でき、例えば、経口薬物摂取のための、さらには微生物叢の研究のための腸などを再現することができるため、EU及び米国食品医薬品局(FDA)によって、動物実験の現実的な代替として、すでに研究が行われている。動物モデルは、宿主-微生物叢間の相互作用と、それらの病態生理に対する貢献を分析するために使用されてきたが、嫌気性状態における複雑なヒトの微生物叢と共に培養されたヒトの細胞における、これらの相互作用を検証するために利用可能なインビトロ(in vitro)のシステムは存在しない。したがって、動的で生理学的に適切なヒト宿主-微生物叢相互作用を解析するために、ヒトの好気性、通性嫌気性、嫌気性微生物叢の複雑集団を、生きたヒトの組織と接触させたまま維持できる実験モデルが非常に必要とされている。
【0004】
現在のOOCデバイスは、完全に代表的なモデルシステムを形成しない。材料選択の結果、現在のデバイスは、低分子の吸収、高い酸素拡散、及び/又は材料を介した水蒸気拡散に悩まされる場合があり、その結果、生理学的に代表的でない溶存ガス濃度になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、既存の欠点を緩和、軽減、又は対処し、ヒト臓器のより代表的なモデルを提供するマイクロ流体デバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
臓器機能をシミュレートするためのマイクロ流体デバイスが開示されている。このマイクロ流体デバイスは、トッププレートと、ボトムプレートと、メンブレンとを備える。トッププレートは、トッププレートの第1の面に配置されるトップチャネルを備える。ボトムプレートは、ボトムプレートの第1の面に配置されるボトムチャネルを備え、トップチャネルは、トップチャネル及び/又はボトムチャネルの全長に沿って前記ボトムチャネルと平行であるなど、トップチャネルの全長にわたってボトムチャネルと重なっている。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップチャネル及びボトムチャネルは、互いに平行に延在する直線チャネルであってもよい。
【0007】
トッププレートの第1の面及びボトムプレートの第1の面は、互いに対向している。メンブレンは、トップチャネルとボトムチャネルがメンブレンによって分離されるように、トッププレートとボトムプレートとの間に配置される。トッププレートは、トップチャネルと流体連通するトップチャネル入口ポートを備える。トッププレートは、ボトムチャネルと流体連通する第1のボトムチャネル入口ポートと第2のボトムチャネル入口ポートとを備え、第2のボトムチャネル入口ポートは、第1のボトムチャネル入口ポートよりもボトムチャネルの長手中心から離れた位置に配置される。
【0008】
ボトムチャネルの細胞播種用に専用のボトムチャネル入口ポートを設けることによって、マイクロ流体デバイスにおいてトップチャネルとボトムチャネルとの間で重ならない領域を減少させることは、本開示の利点である。細胞播種ポートなどの細胞播種専用のボトムチャネル入口ポートをボトムチャネルに設け、専用のボトムチャネル入口ポートをトップチャネル入口ポートの近く、例えば隣接して配置することにより、ボトムチャネル入口の長さを短くすることができる。それによって、細胞バリアが主にトップチャネルとボトムチャネルとの間のメンブレン上に形成され、そこで細胞が増殖し、臓器組織を模倣することができるメンブレンの両側に、絨毛層などのコンフルエントな組織細胞層を形成することができる。ボトムチャネル入口ポートをボトムチャネルに接続するチャネルの長さを短くすることで、従来のマイクロ流体デバイスではボトムチャネルのトップチャネルと重ならない部分で無駄になる細胞の数を減らすことができる。従来のマイクロ流体デバイスでは、細胞播種と流体流の両方に共通の入口ポートがボトムチャネルの長手軸に対して斜め(垂直ではないなど)に配置されているため、過剰に長い入口チャネルが形成され、その入口チャネルでは一部の細胞がメンブレンに到達する前に詰まってしまう。トップチャネル及びボトムチャネルが重なる領域を増やすことによって、例えば様々な研究されたタンパク質発現レベルなどの、研究されたシグナルのより多くが、メンブレンを介して接触する上皮及び内皮細胞を有するマイクロ流体デバイスの領域などの適切な条件において播種され、続いて生物学的バリア特性を経験する細胞からのものとなる。生物学的バリア特性には、内皮環境と上皮環境のような2つの生物学的コンパートメント間のイオン、溶質、他の細胞、分子、細胞外小胞のような細胞粒子の通過を調節することが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの生物学的バリア機能は、臓器や多細胞生物全体の組織の発達と維持に不可欠である。
【0009】
本開示の上記及び他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、その例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明によって、当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示による例示的なマイクロ流体デバイスの分解図である。
図2図2は、本開示によるマイクロ流体デバイスのトッププレートの第1の面の透視図である。
図3図3は、本開示による組み立てられた例示的なマイクロ流体デバイスを示す透視図である。
図4図4は、本開示による例示的なマイクロ流体デバイスの断面の透視図である、
図5図5は、本開示による組み立てられた例示的なマイクロ流体デバイスの断面の透視図である。
図6図6は、本開示による複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルを相互接続するための例示的なコネクタを示す図である。
図7図7は、本開示による複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルを相互接続するための例示的なコネクタを示す図である。
図8図8は、図7に示された例示的なコネクタの断面図である。
図9図9は、本開示によるバイパスチャネルを備える例示的なマイクロ流体デバイスの断面の透視図である。
図10図10は、本開示によるバイパスチャネルを備える例示的なマイクロ流体デバイスの断面の透視底面図である。
図11図11は、本開示によるバイパスチャネルを備える例示的なマイクロ流体デバイスの断面の近接図である。
図12図12は、バイパスチャネルを備える例示的なボトムプレートの近接図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
トランスウェル(Transwell)(商標登録)インサートなどの既存のインビトロモデルが、ヒトの宿主と微生物の相互作用の研究に用いられてきた。しかしながら、そのような研究は、細菌の過剰増殖が細胞傷害や細胞死につながるまでの数時間にわたってしか実施できない。オルガノイド培養などの、より高度なモデルは、宿主-微生物間の相互作用の研究に大きな可能性を示しているが、特定の偏性嫌気性菌の共培養に必要と思われる、血管インターフェイスと5%以下の内腔酸素濃度の酸素勾配を提供するには限界がある。
【0012】
ヒト腸上皮細胞は、平行チャネルで嫌気的条件下で培養された単一の通性嫌気性細菌(ラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)など)及び偏性嫌気性細菌(バクテロイデス・カカエ(Bacteroides caccae)など)をナノポーラスメンブレンで分離したマイクロ流体培養デバイスで培養することができる。これにより、可溶性のメディエータの影響は解析できるが、宿主細胞と常在微生物の複雑な群との直接接触による影響は解析できない。2チャネルのマイクロ流体ヒト腸管OOCデバイスは、動的な流体流と蠕動様機械的変形下でヒトCaco-2腸上皮細胞培養により裏打ちされることが以前に報告されており、これにより、酸素添加条件下でインビトロで数週間にわたっての、ヒト絨毛構造の腸上皮とヒト常在腸内微生物の最大8つの異なる株との直接接触での安定した共培養を確立することができた。しかし、生きた腸内微生物叢には、嫌気性菌や通性好気性菌など、何百種類もの細菌が含まれている。絨毛構造は、腸の内部空間などの管腔内に伸びる、細胞から形成された小さな指のような突起として見ることができる。
【0013】
OOCデバイスは、関連するヒト臓器細胞(例えば、消化管機能などの腸の機能をシミュレートするための消化管上皮細胞や内皮細胞)を、多孔性メンブレンで分離された水平マイクロチャネルで培養することにより、ヒト臓器の特定の機能を再現することが可能であるというコンセプトに基づいている。培養液はメンブレンの両側から流すことができ、それによって細胞への培養液の供給と、絨毛構造などの正しい組織構造の発達に重要な代謝廃棄物の除去を確実にすることができる。3-5
【0014】
細胞が増殖し、メンブレンの両側にコンフルエントな細胞層が形成されると、外部刺激に対する臓器組織の反応を模倣できるOOCシステムが形成される。しかしながら、細胞機能を忠実に模倣するためには、生体システムで細胞に作用するような、適切なせん断応力や引張応力を細胞に加える必要がある。流体流によるせん断応力や、蠕動的なメンブレンの伸張の形で機械的応力を加えることで、現在のインビトロモデルシステム、例えばペトリ皿、トランスウェルプレート、オルガノイド、エキソビボ(ex-vivo)などと比較して、OOCシステムではより正確な細胞機能の再現が可能となる。
【0015】
さらに、健康的な腸の機能は、腸内に存在するさまざまな種類の細菌が関与する障害や病気などを含む、ヒトの状態によって損なわれることが多い。腸の機能に関連する細菌に関連する治療化合物を試験するための、より優れたプラットフォームが必要とされている。
【0016】
ヒトの腸はシステム全体が好気性の状態にある。酸素含有量はヒトの腸内全域で変化する。通常、酸素濃度は0~10%の範囲にある。しかし、ヒトの腸の一定領域は酸素濃度が1%以下であり、これは現在の技術デバイスでは実現不可能である。文献によると、最もよく知られたOOCデバイスの酸素含有量は、チャネル入口で約2%、チャネル出口で1%未満であり、酸素含有量の差は細胞によって消費される。これは、ヒトの腸の一部で2%の酸素濃度が生理学的に適切なレベルを超えているという事実と同時に、系全体に酸素勾配を作り出すため、不利になり得る。さらに、上皮チャネルに嫌気的条件を作り出すには、液体だけでなくチップアセンブリ全体を嫌気培養チャンバに入れる必要がある。このため、実験のセットアップが複雑になり、コストが高くなり、処理量も少なくなる。さらに、現在のソリューションでは、生体内におけるように、腸管腔や血管を表す各チャネルで異なるガス濃度を提供することができないため、上皮チャネルと内皮チャネル間のガス交換など、いくつかの重要な特性を欠いている。
【0017】
さらに、現在の最新式のOOCデバイスは、通常、固定された設計の単一のチャネルしか有しない。しかしながら、ヒトの腸は複雑で、10の異なる部分(十二指腸、空腸、回腸、虫垂、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸)があり、そのすべてで表面積、酸素濃度、微生物叢の組成や濃度が異なる。したがって、現存するチップを直列につないでも、生理学的に適切なヒト腸内モデルは得られない。単一のチップ設計を利用することで臓器チップ製造業者への部品単価は下がるが、各チップがヒトの腸の別々の領域に対応し得る、ヒトの腸モデルをより正確に研究するための複数連結チップの利用は制限される。
【0018】
さらに、現在の最新式のOOCデバイスでは、トップチャネル及びボトムチャネルが重なっていないチャネル領域が広いため、多数の細胞がバリア様特性を経験することがなく、したがって、生体内のように上皮細胞と内皮細胞との間で適切なガス、栄養、分子シグナルの交換が行われない。バリア様特性には、内皮環境及び上皮環境間のようなトップチャネル及びボトムチャネル間のイオン、溶質、細胞外小胞のような分子や細胞粒子の通過調整が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの生物学的バリア機能は、臓器や多細胞生物の組織の発生と維持に不可欠である。さらに、ヒトの腸は1種類の細胞だけで構成されているわけではない。ヒトの腸は、十二指腸、空腸、虫垂、盲腸、結腸、直腸など、互いに連結した複数の部分から構成されている。しかしながら、現在のチップ設計では、臓器のこれらすべての部分に単一のデバイスで対応することはできない。
【0019】
本開示は、既存の欠点を緩和、軽減又は対処し、ヒト臓器のより代表的なモデルを提供するマイクロ流体デバイスを提供する、OOCデバイスなどの臓器機能をシミュレートするためのマイクロ流体デバイスを提供する。本開示によるマイクロ流体デバイスは、多孔質メンブレンなどのメンブレンによって分離された2つのマイクロ流体チャネルを組み合わせた垂直積層型マイクロ流体デバイスである。メンブレンは、細胞外マトリックス(ECM)と細胞層がその上に画定され得る基板を形成する。ECMは、細胞が増殖するためのベース層として機能するタンパク質環境である。したがって、メンブレンは、メンブレンの両側で画定される内皮細胞層及び上皮細胞層の細胞クロストークのための界面を形成する。
【0020】
マイクロ流体デバイスは、トッププレートと、ボトムプレートと、メンブレンとを備える。トッププレートは、トッププレートの第1の面に配置されるトップチャネルを備える。
【0021】
ボトムプレートは、ボトムプレートの第1の面に配置されるボトムチャネルを備える。トップチャネルは、トップチャネル及び/又はボトムチャネルの全長にわたってボトムチャネルと平行であるなど、トップチャネルの全長にわたってボトムチャネルと重なっている。換言すれば、トップチャネル及びボトムチャネルは、互いに平行に延びる直線チャネルであってもよい。
【0022】
トッププレートの第1の面及びボトムプレートの第1の面は、トップチャネルとボトムチャネルとが互いに対向するように、互いに対向している。メンブレンは、トップチャネルとボトムチャネルとがメンブレンによって分離されるように、トッププレートとボトムプレートとの間に配置される。トップチャネル及びボトムチャネルは、それぞれの流体流を受け入れるように構成されている。トップチャネル及びボトムチャネルがそれぞれの流体流を受け入れると、トップチャネル及びボトムチャネルのそれぞれの流体流は、メンブレンによって分離される。換言すれば、トップチャネルを通る流体流とボトムチャネルを通る流体流は、互いにメンブレンの逆側を流れる。このように、メンブレンは、トップチャネルとボトムチャネルの間のバリアとして機能する。
【0023】
トッププレートは、トップチャネルと流体連通するトップチャネル入口ポートを備える。
【0024】
トッププレートは、第1のボトムチャネル入口ポート及び第2のボトムチャネル入口ポートを備える。。第1のボトムチャネル入口ポート及び第2のボトムチャネル入口ポートは、いずれもボトムチャネルと流体連通する。第2のボトムチャネル入口ポートは、第1のボトムチャネル入口ポートよりもボトムチャネルの長手中心から離れた位置、例えばボトムプレートの縁に近い位置、例えばボトムプレートの中心から離れた位置、例えばトップチャネル入口ポートから離れた位置に配置される。
【0025】
第1のボトムチャネル入口ポートは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、ボトムチャネルにおける細胞播種用の専用入口ポートとして構成され得る。第1のボトムチャネル入口ポートは、本明細書では細胞播種ポートとも呼ばれ得る。第2のボトムチャネル入口ポートは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、マイクロ流体デバイスを通る流体流のための流れ入口ポートとして構成され得る。この流体流は培養液流であってもよく、この培養液流はメンブレンの両側に流され、これによりメンブレンの両面に播種された細胞に培養液が供給され、代謝廃棄物が細胞から除去される。細胞がメンブレンに付着し、増殖し、メンブレンの両側にコンフルエントな細胞層などのコンフルエントな層を形成すると、トップチャネル及びボトムチャネルを通る流体流などの媒体流と組み合わせて、外部刺激に対する器官組織の反応を模倣できるOOCシステムが形成される。細胞機能を忠実に模倣するために、適切なせん断応力や引張応力を細胞に加えることができ、それによってヒトの腸システムなどの生体システムで細胞に作用するせん断応力や引張応力をシミュレートすることができる。チャネルを通る流体の流れが細胞にせん断応力を与え、その結果、より正確な細胞機能の再現が可能になる。3-5第1のボトムチャネル入口ポートをトップチャネル入口ポートの近傍に設けることで、細胞によって形成される組織バリアは、トップチャネルと重なる割合の少ない第2のボトムチャネル入口ポートを介して細胞を播種した場合、不必要に長いボトムチャネルに形成されるのではなく、大部分がトップチャネルとボトムチャネルとの間に形成される。
【0026】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレートは、トップチャネルと流体連通するトップチャネル出口ポートを備える。
【0027】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレートは、ボトムチャネルと流体連通する第1のボトムチャネル出口ポートを備える。
【0028】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレートは、ボトムチャネルと流体連通する第2のボトムチャネル出口ポートを備える。第2のボトムチャネル出口ポートは、第1のボトムチャネル出口ポートよりもボトムチャネルの長手中心から離れた位置、例えばボトムプレートの端部に近い位置、例えばボトムプレートの中心から離れた位置、例えばトップチャネル入口ポートから離れた位置に配置され得る。
【0029】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップチャネル入口ポート、第1のボトムチャネル入口ポート、第2のボトムチャネル入口ポート、トップチャネル出口ポート、第1のボトムチャネル出口ポート及び/又は第2のボトムチャネル出口ポートは、トッププレートの第2の面に対して垂直に配置される。本明細書において、ポートがトッププレートの第2の面に対して垂直に配置されるとは、ポートの中心軸がトッププレートの第2の面に対して垂直に延びることを意味する。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスでは、入口ポート及び/又は出口ポートの1つ又は複数が、トッププレートの第2の面に対して斜めに配置されてもよい。例えば、第2のボトム入口ポート及び/又は第2のボトム出口ポートは、ボトムチャネルの長手軸に対して斜めに、例えば45~90°の範囲の角度で配置されてもよい。第2のボトム入口ポート及び/又は第2のボトム出口ポートを長手軸に対して斜めに配置することにより流路の急激な方向転換を抑えることができ、そうでなければこのような箇所では層流にならない可能性があるため、チャネルを通る流体の流れが改善される可能性がある。
【0030】
細胞播種に使用される入口ポート及び出口ポート、例えばトップチャネル入口ポート及びトップチャネル出口ポート、第1のボトムチャネル入口ポート及び第1のボトムチャネル出口ポートは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスでは、入口ポートの長さを短くするために、トップチャネル及び/又はボトムチャネルの長手軸に対して垂直に配置することができる。入口ポートの長さを短くすることで、細胞がメンブレン上にコンフルエントな細胞層を形成できずに付着する可能性のあるマイクロ流体デバイスの領域の長さを短くすることができる。それにより、細胞はメンブレンに集中し、より高い割合の播種細胞が、マイクロ流体デバイス内の臓器の細胞機能の再現に使用され得る。
【0031】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレートは、ボトムチャネルをモニタリングするセンサを受け入れる、1つ又は複数のボトムチャネルセンサポートなどの、ボトムチャネルセンサポートを備える。ボトムチャネルセンサポートはボトムチャネルと流体連通している。
【0032】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレートは、トップチャネルをモニタリングするセンサを受け入れる、1つ又は複数のボトムチャネルセンサポートなどの、トップチャネルセンサポートを備える。
【0033】
トップチャネル入口ポート、第1のボトムチャネル入口ポート、第2のボトムチャネル入口ポート、トップチャネル出口ポート、第1のボトムチャネル出口ポート、第2のボトムチャネル出口ポート、ボトムチャネルセンサポート及び/又はトップチャネルセンサポートなどのポートは、ミニルアーポートなどのルアーポートであってもよい。ルアーポートは、雌型ルアー継手及び/又は雄型ルアー継手であってもよい。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、第1のポート及び第2のポートの中心軸間の距離は、4.5mmの倍数であってもよい。他のタイプのポートも同様に使用することができ、特定のタイプのポートは限定されない。
【0034】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップチャネルセンサポート及び/又はボトムチャネルポートは、トッププレートの第2の面から突出する隆起部分を備え、トップセンサポートは、第2の面からボトムセンサポートよりも突出する。隆起部分の高さは、トップチャネルとボトムチャネルとの間のトッププレートからの距離の差に対応し得る。これにより、同じ種類のセンサを、ボトムチャネルよりもトッププレートに近い位置にあるトップチャネルを越えて突出させることなく、トップチャネルとボトムチャネルの両方に取り付けることができる。
【0035】
腸細胞は3次元(3D)構造(絨毛とも呼ばれる)を形成し、その高さはヒトの場合1.5mmにもなるが、OOCデバイスでは腸細胞は通常それよりも短い。したがって、チャネルの高さの上限は、絨毛の高さに加え、これらの絨毛構造の上に流体が流れるスペースを加えたものによって規定され得る。
【0036】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップチャネルは、0.2~2mmの範囲の高さを有する。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、ボトムチャネルは、0.05~1.5mmの範囲、例えば0.1~0.5mmの範囲の高さを有する。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップチャネル及び/又はボトムチャネルは、0.25~2mmの範囲の幅を有する。
【0037】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップチャネル及び/又はボトムチャネルは、4.5mmの倍数である長さを有する。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、第1のボトムチャネル入口ポート、第2のボトムチャネル入口ポート及び/又はトップチャネル入口ポートは、互いに4.5mmの倍数である間隔をあけて配置される。長さは、標準的なピペッティングロボットのピッチで注入口の間隔を保つために、4.5mmの倍数であってもよい。これにより、マイクロ流体デバイスは、4.5mmの倍数のピッチを中心に構築された、例えば96ウェルプレートを受け入れるように構成された標準的なピペッティングロボットと互換性を有することができる。
【0038】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、チャネルは直線状に配置されるのではなく、蛇行するように配置されるなど、曲線状に配置される。この場合、チャネルの長さは4.5mmの倍数ではなく、ポートが4.5mmの倍数で互いに間隔をあけて配置される。
【0039】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップ部分、ボトム部分及びメンブレンの1つ又は複数がポリジメチルシロキサン(PDMS)から作られてもよい。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップ部分、ボトム部分及びメンブレンはすべてPDMSで作られている。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、メンブレンはPDMSで作られている。PDMSは、低コストで、可視領域において高い透明性を有し、ラピッドプロトタイピング能力を有するという利点を有する。ここで、ラピッドプロトタイピング能力を有するとは、例えば3次元コンピュータ支援設計(CAD)を用いて、1つ又は複数の物理的な部品、モデル又はアセンブリを迅速に作製できることを意味する。部品、モデル又はアセンブリの作成は、より一般的に3Dプリントとして知られている付加製造法を用いて支援することができる。
【0040】
しかしながら、PDMSは親油性の低分子(ピルフェニドン、ローダミンBなど)や細胞外小胞特異的インターカレート色素を吸収する可能性がある。PDMSは、チャネルの断面積が7.1mmの場合、その質量の0.4%もの薬物様分子を吸収する可能性があり、チャネル内の濃度は2μMから20nMへと著しく低下する。マイクロ流体デバイスの材料としてPDMSを使用する場合、マイクロ流体デバイスを使用して実験を行う際に、材料による吸収と放出をシミュレートして吸収を補正することができる。4,9
【0041】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレート及び/又はボトムプレートは、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン(PS)、及びポリカーボネート(PC)のうちの1つ又は複数のような熱可塑性材料から作られている。これらの材料は、PDMSよりも低いガス透過性、例えば酸素及び/又は水の透過性を有することができる。例えば、PDMSの酸素バリア性は約
【数1】
であるのに対し、COCの酸素バリア性は
【数2】
であり、PSの酸素バリア性は
【数3】
であり、PCの酸素バリア性は
【数4】
である。マイクロ流体デバイスをCOC、PS、PCのうち1つ又は複数から構成することで、トッププレート及び/又はボトムプレートの低分子吸収性及び/又はガス透過性を低減することができる。このことは、現代の薬剤の多くが親油性の低分子であり、吸収性の高いチャネルに導入するとチャネル側壁に吸収され、チャネル内の実際の分子濃度が低下するため、有益である。さらに、低分子の吸収性及び/又はガス透過性が低下するため、吸収性及び/又はガス透過性の補正が不要になる可能性がある。それにより、実施された実験のより正確な状態が提供され、その結果、実施された実験の結果が改善される可能性がある。熱可塑性材料を使用することにより、入口ポート及び/又は出口ポートをトッププレートに一体的に形成することもできる。
【0042】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、他のポリマーなど他の材料も使用することができ、本開示はそのように限定されるものではない。
【0043】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレート及び/又はボトムプレートは、射出成形される。トッププレート及び/又はボトムプレートを射出成形する利点は、各部品の製造のサイクルタイムを短縮できることである。それにより、マイクロ流体デバイスの生産速度を向上させることができる。
【0044】
さらに、トッププレート及び/又はボトムプレートの製造に射出成形を使用することにより、デバイスの製造工程が射出プレスなどの射出成形機などの単一のツールに限定されるため、クリーンルームの製造設備要件が緩やかになる可能性がある。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスでは、他の製造方法も使用することができる。
【0045】
マイクロ流体デバイスのトッププレート及び/又はボトムプレートなどの部品を射出成形で製造することにより、臓器機能をシミュレートするのに適した薄型(例えば0.6~1mmの範囲)でありながら剛性の高い(例えば少なくとも1MPaのヤング率を有する)部品を製造することができる。このような薄い部品は、高倍率対物レンズでの使用に適している。熱可塑性材料は、例えばPDMSよりもガス透過性が低いため、部品を薄くすることができ、材料内の透過損失が少なくなるため顕微鏡観察が改善し、作動距離の小さい対物レンズなどの使用が可能になる。顕微鏡検査に使用される高倍率対物レンズは、一般的に作動距離が短く、例えばレンズの最も外側にある点から最初の被写界面深度までの物理的距離が短い。一般的に、この距離は0.1~1mmである。そのため、最初の被写界面深度がメンブレンに位置するように部品の厚みを薄くすることは有益である。
【0046】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、ボトムプレート及び/又はトッププレートの厚さは、0.6~1mmの範囲、例えば0.8mmなど、確実に製造できる限り薄くてもよい。ボトムチャネルの高さは、0.1~0.5mmの範囲とすることができ、チャネルの高さが高くなるとボトムプレートの厚さが増加する。ボトムチャネルの幅及び長さは、トップチャネルに対応することができる。ボトムプレート及び/又はトッププレートの厚さを薄くすることで、チャネル内に播種された細胞の研究に、より高倍率の対物レンズを使用することができる。PDMSで作られたOOCデバイスは通常、構造的な剛性を高めるために少なくとも1mmの底厚が必要であり、このことは、高倍率の対物レンズ(例えば40倍以上の倍率、場合によっては20倍の倍率)が使えないことを意味し、PDMSのOOCデバイスで実施できる細胞研究が制限される。
【0047】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、メンブレンは、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)のうちの1つ又は複数のような熱可塑性プラスチックから作られている。メンブレンは、トラックエッチド(track-etched)メンブレンなどのエッチドメンブレンであってもよい。メンブレンをエッチングすることにより、製造時にメンブレン表面の孔寸法を制御することができる。
【0048】
トッププレート、ボトムプレート及び/又はメンブレンに、COC、PS、PET及び/又はPCなどの熱可塑性プラスチックを使用することにより、マイクロ流体デバイスを超音波溶接で接合することができる。
【0049】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレート及び/又はボトムプレート及び/又はメンブレンは、超音波溶接を用いて共に接合される。超音波溶接は、トッププレート、ボトムプレート及び/又はメンブレンを共に接合してソリッドのマイクロ流体デバイスにするために使用することができる。マイクロ流体デバイスの部分を共に接合するために超音波溶接を使用することにより、部分を接合するためのサイクルタイムを、PDMSベースの製造プロセスのような他の接合ソリューションと比較して短縮することができる。PDMSを熱可塑性メンブレンに接合するための典型的な製造工程は、エポキシ-アミン結合を介して行われ得る。エポキシ-アミン結合は、PDMS部品と熱可塑性プラスチック部品をそれぞれエポキシ官能基とアミン官能基で表面改質することで達成できる。この場合、超音波溶接法よりも製造工程数が多くなるため、製造工程のサイクルタイムが長くなる。
【0050】
部品を接合するために超音波溶接を使用することで、トッププレート、ボトムプレート、及び/又はメンブレンを接合するためのサイクルタイムは、従来の方法では数分から数時間かかっていたのに比べ、10秒未満に短縮され得る。超音波溶接のもう一つの利点は、PDMS製造工程のような他の製造工程とは対照的に、表面機能性分子をメンブレンに接合する必要がないため、接合する部品の位置合せを簡略化できることである。超音波溶接を用いてトッププレート及びボトムプレートをメンブレンに接合することにより、一体構造の(monolithic)ブロックを形成することができ、それにより、組み立て後のマイクロ流体デバイスは、依然として複数の別個の部品から構成される他の製造プロセスを用いたマイクロ流体デバイスと比較して、トッププレートとボトムプレートとの間のマイクロ流体デバイスにおけるガス侵入を防止するなど、マイクロ流体デバイスにおけるガス侵入を低減することができる。
【0051】
現在の接合技術には、OOCデバイスの組立及び接合中にメンブレンに皺が寄ったり、座屈するという問題がある。メンブレンの座屈及び/又は皺は、メンブレン上の細胞増殖や細胞及び/又はメンブレンの顕微鏡検査に問題を引き起こす可能性がある。メンブレンが確実に所定位置に保持されるように、かつ/又は超音波溶接による高周波振動の間に伸張されるように、トッププレート及び/又はボトムプレートは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、メンブレンに張力付与するための張力付与要素を備える。メンブレンを伸張させることにより、メンブレン上に播種された細胞に、蠕動的なメンブレンの伸張の形で機械的応力が作用し、より正確な細胞機能の再現が得られる。
【0052】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレート及び/又はボトムプレートは、マイクロ流体デバイスの組立中にメンブレンに張力付与するための第1の張力付与要素を備える。
【0053】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレート及び/又はボトムプレートは、第2の張力付与要素を備え、第1の張力付与要素及び第2の張力付与要素は、トップチャネル及び/又はボトムチャネルの両側に配置され、マイクロ流体デバイスの組立中にメンブレンがトップチャネル及びボトムチャネル上に張られるように、張力付与要素間でメンブレンが張られるようになっている。
【0054】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、張力付与要素は、トッププレート及び/又はボトムプレートのメンブレン対向面、例えばトッププレートの第1の面及び/又はボトムプレートの第1の面に形成された1つ又は複数の突起を備えてもよい。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、張力付与要素は、突起を受け入れるための1つ又は複数のくぼみを備えてもよく、くぼみは、突起を有する面とは反対側のボトムプレート及び/又はトッププレートのメンブレン対向面上に配置される。
【0055】
換言すれば、トッププレートの第1の面が突起を備える場合、ボトムプレートの第1の面は、トッププレートの第1の面上に配置された突起を受け入れるためのくぼみを備え得る。これに対応して、ボトムプレートの第1の面が突起を備える場合、トッププレートの第1の面は、ボトムプレートの第1の面上に配置された突起を受け入れるためのくぼみを備え得る。突起及び/又はくぼみは、チャネルの長さに沿って延在してもよい。組立工程でトッププレートがボトムプレートに押し付けられると、突起がメンブレンをくぼみに押し込む。チャネルの各側における突起と対応するくぼみのように、チャネルの両側に張力要素を配置することにより、くぼみのそれぞれに、それぞれの突起によってメンブレンを押し込むことで、メンブレンがチャネル上に伸張する。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、張力付与要素は、メンブレンの撓みが最大20mmに制限されるように、メンブレンに張力付与するように構成され得る。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、張力付与要素は、メンブレンの撓みが最大15mmに制限されるように、メンブレンに張力付与するように構成され得る。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、張力付与要素は、メンブレンの撓みが最大10mmに制限されるように、メンブレンに張力付与するように構成され得る。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、突起は、超音波溶接プロセス中に溶融し、メンブレンをトッププレート及び/又はボトムプレートに溶着するエネルギーダイレクタ(energy directors)として機能することができる。
【0056】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、ボトムプレートは1つ又は複数のバイパスチャネルを備える。第1のバイパスチャネルは、第1のボトムチャネル入口ポート及び/又は第2のボトムチャネル入口ポートとボトムチャネルとを接続することができる。第2のバイパスチャネルは、第1のボトムチャネル出口ポート26A及び/又は第2のボトムチャネル出口ポートとボトムチャネルとを接続することができる。1つ又は複数のバイパスチャネルは、ボトムチャネルの一部であってもよい。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、バイパスチャネルは、長手溝を備える。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、バイパスチャネルは、接続チャネルを備える。長手溝は、メンブレンから離れる方向に面する第2のボトムプレート面に設けられてもよい。換言すれば、ボトムプレートの第2の面は、ボトムプレートのメンブレンに面する第1の面とは反対側にある。長手溝は、ボトムチャネル及びトップチャネルと平行な主延長線を有することができる。このように、バイパスチャネルとボトムチャネルは、互いにボトムプレートの逆側に配置され得る。バイパスチャネルの長手溝のようなバイパスチャネルは、接続チャネルを介してボトムチャネルに接続されてもよい。接続チャネルは、第1のボトムプレート面に配置されるボトムチャネルから、第2のボトムプレート面に配置されるバイパスチャネルまで延在してもよい。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、バイパスチャネルは、ボトムチャネル及び/又はトップチャネルと平行に延在する。接続チャネルは、ボトムチャネル及びバイパスチャネルに対して斜めに配置される。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、接続チャネルは、ボトムチャネル及び/又はバイパスチャネルの長手溝に対して垂直に延在するように配置される。1つ又は複数のバイパスチャネルは、第1のボトムチャネル入口ポート及び/又は第2のボトムチャネル入口ポートとトップチャネル入口ポートとの間、及び/又は第1のボトムチャネル出口ポート及び/又は第2のボトムチャネル出口ポートとトップチャネル出口ポートとの間に配置され得る。換言すれば、1つ又は複数のバイパスチャネルは、トップチャネルと重ならないボトムプレートの領域に配置することができる。第2のボトムプレート面の、ボトムチャネルがトップチャネルと重ならない領域にバイパスチャネルを設けることにより、第1のボトムプレート面の面積を増加させることができ、これにより、ボトムプレートをメンブレン及び/又はトッププレートに接合するために使用できる面積を増加させることができる。換言すれば、ボトムプレートの材料のより多くを、ボトムプレートをトッププレート及び/又はメンブレンに接合するために使用することができる。これにより、ボトムプレート、トッププレート、及びメンブレン間の密閉性を高めることができる。さらに、この改良された接合により、メンブレンに皺が寄るリスクを低減することができる。
【0057】
バイパスチャネルの長手溝などのバイパスチャネルは、ボトムチャネルと等しいか、又はボトムチャネルよりも大きい高さを有することができる。1つ又は複数の例示的な方法において、バイパスチャネルの長手溝などのバイパスチャネルは、ボトムチャネルよりも大きい高さを有する。バイパスチャネルの高さをボトムチャネルより大きくすることで、ボトムチャネルでの細胞播種時にバイパスチャネルでの細胞付着を減少させることができる。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスでは、細胞はバイパスチャネルを通してボトムチャネルに導入される。バイパスチャネルにおける細胞付着を減少させることで、バイパスチャネルに組織バリアが形成されるのを防ぐか、少なくとも減少させることができ、導入された細胞の大部分は、トップチャネルとボトムチャネルが重なり合い、メンブレンのみによって分離された領域など、バリア様特性を有するマイクロ流体デバイスの領域に到達する。
【0058】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、バイパスチャネルは表面処理が施されていてもよい。バイパスチャネルの表面処理は、ボトムチャネルの表面処理とは異なっていてもよい。バイパスチャネルの長手方向チャネルのようなバイパスチャネルは、バイパスチャネルの表面に設けられた細胞付着防止層を備えてもよい。バイパスチャネルは、例えば細胞付着阻害剤で処理されて細胞付着防止層を形成してもよい。細胞付着阻害剤などの細胞付着防止層は、細胞付着防止層が付与された場所で細胞が成長するのを防ぐ性質を有する。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、 細胞付着阻害剤などの細胞付着防止層は、細胞のための非粘着性コーティングであってもよい。それによって、バイパスチャネルのチャネル特性を細胞付着の観点から変化させ、バイパスチャネルにおける細胞の付着を減少させることができる。バイパスチャネルにおける細胞の付着を減少させることで、バイパスチャネルにおける組織バリアの形成を防ぐか、少なくとも減少させることができ、ボトムチャネル入口ポートから導入された細胞の大部分は、トップチャネルとボトムチャネルが重なり合い、メンブレンのみによって分離された領域などのバリア様特性を有するマイクロ流体デバイスの領域に到達する。それによって、バリア様状態を経験する細胞の数を増加させることができる。バイパスチャネルに細胞付着防止層を設けることは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、バイパスチャネルの高さを増加させることと組み合わせて、バイパスチャネルにおける細胞付着をさらに減少させることができる。
【0059】
説明したように、バイパスチャネルの長手溝などのバイパスチャネルは、第2のボトムプレート面に成形され、ボトムチャネルは、第1のボトムプレート面に成形されてもよい。バイパスチャネル及びボトムチャネルは互いにボトムプレートの逆側の面に成形され得るため、ボトムチャネル及びバイパスチャネル面は、異なる金型ツールなど、異なる金型を用いて成形されてもよい。1つ又は複数の例では、第2のボトムプレート面とバイパスチャネルの成形に使用される金型は、事前に細胞付着阻害剤でコーティングされていてもよい。ボトムプレートを成形する前に、金型を細胞付着阻害剤でコーティングしてもよい。ボトムプレートの成形中に、細胞付着阻害剤が金型からバイパスチャネル及び/又は第2のボトムプレート面に転写され、細胞付着防止層がバイパスチャネル、例えばバイパスチャネルの長手チャネルに付与されるようにしてもよい。
【0060】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、マイクロ流体デバイスはボトムカバーシートを備える。ボトムカバーシートはボトムプレートの第2の面に配置されてもよい。ボトムカバーシートは、接着剤による接着、及び接合のうちの1つ又は複数によってボトムプレートの第2の面に配置されてもよい。ボトムカバーシートは、長手溝がボトムプレートとボトムカバーシートとによって囲まれるように、バイパスチャネルの長手溝を覆う。
【0061】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トッププレートは、複数のトップチャネルを備え、ボトムプレートは、複数のボトムチャネルを備える。
【0062】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、トップチャネル及びボトムチャネルは、それぞれトッププレート及びボトムプレートの長手方向に延在する。トッププレート及び/又はボトムプレートの長手方向は、トッププレート及び/又はボトムプレートの最も長い外縁に平行な方向である。
【0063】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルは、同じ高さ、長さ、及び/又は幅を有する。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルは、同じ寸法を有する。これにより、単一のマイクロ流体デバイスは、複数の実質的に同一のOOCデバイス(ここで、トップチャネル及びボトムチャネルのそれぞれの組み合わせは、単一の臓器をシミュレートする単一のOOCデバイスを構成する)を備え得る。単一のマイクロ流体デバイス上に複数の実質的に同一のOOCデバイスを有することにより、各マイクロ流体デバイス上で、臓器に関するシミュレーションのより多くの再現を実行することができ、シミュレーションの出力を増加させることができる。
【0064】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルは、すべてが同じ長さ、高さ、又は幅であるとは限らない腸などの器官の異なる部分をシミュレートするために、異なる寸法(異なる高さ、長さ、及び/又は幅など)を有する。複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルの高さ、長さ、及び/又は幅を変化させることにより、腸の様々な部分のような器官部分の体積及び/又は表面積の違いをマイクロ流体デバイス内で表現することができる。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルの各々は、十二指腸、空腸、虫垂、盲腸、結腸、及び直腸などの腸のそれぞれの部分をシミュレートするように構成される。臓器の各部分は実質的に異なる表面積を有するため、OOCデバイスなどのマイクロ流体装置において臓器を最も正確に表現するのは、異なる寸法を有する相互接続されたチャネルを有するマイクロ流体デバイスである。
【0065】
複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルのそれぞれに対する入口ポート及び出口ポートの位置は、チャネルの各々を通る流れ方向に基づいて決定されてもよい。例えば、第1のトップチャネル及び第1のボトムチャネルを通る流れ方向は、第1のトップチャネル及び第1のボトムチャネルに隣接して配置される第2のトップチャネル及び第2のボトムチャネルを通る流れ方向と反対であってもよい。トップチャネルと重なり合うボトムチャネルは、本明細書では、一対のチャネル又はチャネル対と呼ばれることがある。換言すれば、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、マイクロ流体デバイスは、複数のチャネル対を備えてもよい。各チャネル対は、トップチャネル及び/又はボトムチャネルに沿って対称に配置された複数のボトムチャネルポート及びトップチャネルポートを備えてもよい。例えば、各チャネル対は、トップチャネルの両端部に配置された一対のトップチャネルポートと、一対の第1のボトムチャネルポートと、一対の第2のボトムチャネルポートとを備えてもよく、一対の第2のボトムチャネルポートは、ボトムチャネルの両端部に配置され、一対の第1のボトムチャネルポートは、それぞれのトップチャネルポートとそれぞれの第2のボトムチャネルポートとの間に配置される。トップチャネルポート、第1のボトムチャネルポート、及び第2のボトムチャネルポートのいずれが入口であり出口であるかは、チャネルを通る流れ方向に基づいて決定することができ、入口ポートは各チャネルの出口ポートの上流に配置され、出口ポートは入口ポートの下流に配置される。
【0066】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、マイクロ流体デバイスは、複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルを相互接続するコネクタを備える。コネクタは、第1のトップチャネルと第2のトップチャネルとを接続するように、及び/又は第1のボトムチャネルと第2のボトムチャネルとを接続するように構成されてもよい。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、コネクタは、第1のチャネル対のトップチャネルと第2のチャネル対のボトムチャネルとのように、第1のトップチャネルと第2のボトムチャネルとを接続するように構成されてもよい。複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルを相互接続することにより、腸などの異なる部分を有するより複雑な器官をシミュレートすることができる。コネクタは、第1のトップチャネル及び/又は第1のボトムチャネルからの出口ポートを、第2のトップチャネル及び/又は第2のボトムチャネルの入口ポートに接続するように、例えば流体接続するように、構成されてもよい。複数のコネクタを用いて複数のトップチャネル及び/又はボトムチャネルを接続することにより、複数のトップチャネル及び/又はボトムチャネルを通して連続的な流体の流れを生成することができる。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、コネクタは、COC、PS、PET及び/又はPCのうちの1つ又は複数のような熱可塑性プラスチックから作られ、コネクタを通して生理学的ガス濃度を保持することができる。
【0067】
1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、コネクタは、トップコネクタ部とボトムコネクタ部などの2つの部分から構成され得る。コネクタの2つの部分は、1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、共に接合され1つの一体型コネクタを形成することができる。1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、コネクタの2つの部品は、1つの一体型部品として形成されてもよい。
【0068】
ボトムコネクタ部は、マイクロ流体デバイスの入口及び/又は出口と連通するための、第1及び第2のルアー継手などの、第1の継手及び第2の継手を備えてもよい。第1の継手及び第2の継手は、雄型及び/又は雌型ルアー継手であってもよい。第1の継手及び第2の継手は、第1の継手及び第2の継手にマイクロ流体チャネルが設けられるように、中空であってもよい。
【0069】
ボトムコネクタ部は、第1の継手と第2の継手とを接続するマイクロ流体チャネルを備えることができ、このマイクロ流体チャネルを通じて、流体が第1の継手と第2の継手との間を流れることができる。1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、トップコネクタ部は、コネクタを通る流れを視覚検査できるように、透明である。1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、トップコネクタ部は、マイクロ流体チャネルを備えることができ、そのマイクロ流体チャネルを通して、流体が第1の継手と第2の継手との間を流れることができる。
【0070】
1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、トップコネクタ部は、コネクタ内に構成されたマイクロ流体チャネルを覆うカバーである。
【0071】
1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、コネクタは一体型センサを備えることができる。1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、コネクタは、流体流などの流れを測定するためのセンサをコネクタを通して受け入れるための、センサポートなどのポートを備える。センサを受け入れるポートは、ミニルアーポートなどのルアーポートであってもよい。コネクタを通る流れを測定するためのセンサは、コネクタを通る流れの特性を測定するセンサであってもよい。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、センサはガス及び/又は分析物検知用のセンサであってもよい。コネクタを通る流れを測定するセンサは、ミニルアーベースのようなルアーベースのセンサであってもよい。センサは、酸素センサ、及び経上皮電気抵抗(Transepithelial Electrical Resistance、TEER)センサのうちの1つ又は複数であってよい。酸素センサは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、チャネル内の細胞培養の細胞代謝のモニタリング、例えばリアルタイムモニタリング、及び/又はチャネル内の培養培地組成のフィードバックループ、例えばリアルタイムフィードバックループのために使用することができる。TEERセンサは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、チャネル内の細胞バリアの完全性のリアルタイムモニタリングなどのモニタリング、チャネル内のバリア形成のフィードバックループ、及び/又はチャネルからのインピーダンス分光法の読み出しに使用することができる。
【0072】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、コネクタの第1の継手及び/又は第2の継手の中心軸間の距離は、4.5mmの倍数である。
【0073】
1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、複数のトップチャネル及び複数のボトムチャネルは、互いに平行に配置される。複数のトップチャネル及び複数のボトムチャネルは、互いに所定の距離をおいて配置されてよい。所定の距離は、コネクタの第1の継手と第2の継手との間の距離に対応し得る。
【0074】
以下、様々な例示的な実施形態及び詳細について、関連する場合には図を参照しながら説明する。図が縮尺通りに描かれている場合とそうでない場合があること、及び、同様の構造又は機能を有する要素は、図全体を通して同様の参照符号によって表されていることに留意されたい。また、図は、実施形態の説明を容易にすることのみを意図していることに留意すべきである。これらは、本開示の網羅的な説明として、又は本開示の範囲の限定として意図されるものではない。加えて、図示された実施形態は、図示された全ての態様又は利点を有する必要はない。特定の実施形態に関連して記載された態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、そのように図示されていなくても、又はそのように明示的に記載されていなくても、他の実施形態において実施することができる。
【0075】
図は、明瞭にするために概略的かつ簡略化されており、単に本開示の理解を助ける詳細を示すだけであり、他の詳細は省略されている。全体を通して、同一又は対応する部分には同一の参照符号が使用される。
【0076】
図1は、本開示による臓器機能をシミュレートするための例示的なマイクロ流体デバイス1の分解図である。マイクロ流体デバイス1は、トッププレート2と、ボトムプレート3と、メンブレン4とを備える。トッププレート2は、トッププレート2の第1の面22に配置されるトップチャネル(図1には図示せず)を備える。
【0077】
ボトムプレート3は、ボトムプレート3の第1の面32に配置されるボトムチャネル31を備える。トップチャネル21は、トップチャネル21の全長にわたってボトムチャネル31と重なっている。本明細書では、トップチャネル21の全長にわたってボトムチャネル31に重なるトップチャネル21は、ボトムチャネル31に対して平行、例えばトップチャネル21及び/又はボトムチャネル31の全長に沿って平行である、トップチャネル21と見なすことができる。
【0078】
図1に示す例示的なマイクロ流体デバイス1は、マイクロ流体デバイス1上に、メンブレン4によって分離された、重なり合うトップチャネル(図1には示されていない)及びボトムチャネル31の6つのチャネル対5などの、6つのチャネル対5を備える。6つのチャネル対5は、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、チャネルの各対が別個の器官を表すように、個別に使用されてもよい。6つのチャネル対5は、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、臓器の領域ごとに別々のマイクロ流体デバイスを有するのではなく同一のマイクロ流体デバイス上で臓器の様々な領域、例えば腸の様々な領域をモデル化するために、例えばコネクタによって相互接続されてもよい。これにより、単一チャネルのシステムで可能であるチップ上への容易な搭載及び細胞播種を、その容易さを損なうことなく行うことができる。
【0079】
トッププレート2の第1の面22及びボトムプレートの第1の面32は、トップチャネル(図1には示されず)とボトムチャネル31とが互いに面するように、互いに面している。メンブレン4は、トップチャネルとボトムチャネル31とがメンブレン4によって分離されるように、トッププレート2とボトムプレート3との間に配置される。トップチャネル及びボトムチャネル31は、液体流及び/又は気体流などのそれぞれの流体流を受け入れるように構成されている。トップチャネル及びボトムチャネル31がそれぞれの流体流を受け入れると、トップチャネル及びボトムチャネル31のそれぞれの流体流は、メンブレン4によって分離される。換言すれば、トップチャネルを通る流体流とボトムチャネル31を通る流体流とは、互いにメンブレン4の逆側を流れる。
【0080】
トッププレート2は、トップチャネルと流体連通するトップチャネル入口ポート23を備える。
【0081】
トッププレート2は、第1のボトムチャネル入口ポート24Aと、第2のボトムチャネル入口ポート24Bとを備える。第1のボトムチャネル入口ポート24A及び第2のボトムチャネル入口ポート24Bは、いずれもボトムチャネル31と流体連通するように構成されている。第2のボトムチャネル入口ポート24Bは、第1のボトムチャネル入口ポート24Aよりもボトムチャネル31の長手中心から離れた位置に配置される。図1に示す例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、第1のボトムチャネル入口ポート24Aは、第2のボトムチャネル入口ポート24Bとトップチャネル入口ポート23との間に配置される。
【0082】
第1のボトムチャネル入口ポート24Aは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、例えば細胞播種ポートなどの、ボトムチャネルにおける細胞播種用の専用入口ポートとして構成され得る。第2のボトムチャネル入口ポート24Bは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイス1において、マイクロ流体デバイス1のボトムチャネルを通る流体流のための流れ入口ポートとして構成されてもよく、この流体流は、ボトムチャネルに播種された細胞にせん断応力を与え、細胞に新鮮な培地を供給し、代謝廃棄物を除去しながら、細胞の循環又は分子及び細胞シグナルのための環境を提供する。第1のボトムチャネル入口ポートをトップチャネル入口ポートの近傍に設けることで、細胞によって形成される組織バリアは、トップチャネル21と重なる割合が小さい第2のボトムチャネル入口ポート24Bを介して細胞を播種した場合に不必要に長いボトムチャネル31に形成されるのではなく、大部分がトップチャネル21とボトムチャネル31との間に形成される。
【0083】
図1に示す例示的なマイクロ流体デバイス1では、トッププレート2は、トップチャネル21と流体連通するトップチャネル出口ポート25を備える。トッププレート2は、ボトムチャネル31と流体連通する第1のボトムチャネル出口ポート26A及び第2のボトム出口ポート26Bを備える。入口ポート及び出口ポートの位置は、チャネル対5のそれぞれを通る流れ方向に基づいて決定することができる。図1に示す例示的なマイクロ流体デバイス1では、最上部のチャネル対5を通る流れ方向は、流れが入口ポート23、24A、24Bから出口ポート25、26A、26Bに向かうように、図の左から右に向かう方向である。しかしながら、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイス1では、ポート25、26A、26Bが入口ポートとして機能し、ポート23、24A、24Bが出口ポートとして機能するように、流れは反対方向であってもよい。チャネル対5を通る流れ方向は、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、1対おきのチャネル対を通る流れ方向がチャネルの前の対を通る流れ方向と反対であるように、交互であってもよい。各チャネル対を通る流れ方向、例えば各チャネル対のボトムチャネルとトップチャネルとを通る流れ方向は、同じであってもよい。
【0084】
図1の例示的なマイクロ流体デバイス1において、トッププレート2は、ボトムチャネル31と流体連通する第2のボトムチャネル出口ポート26Bを備える。第2のボトムチャネル出口ポート26Bは、第1のボトムチャネル出口ポート26Aよりもボトムチャネル31の長手中心から離れた位置に配置される。
【0085】
図1の例示的なマイクロ流体デバイス1において、トップチャネル入口ポート23、第1のボトムチャネル入口ポート24A、第2のボトムチャネル入口ポート24B、トップチャネル出口ポート25、第1のボトムチャネル出口ポート26A及び/又は第2のボトムチャネル出口ポート26Bは、トッププレート2の第2の面28に対して垂直に配置される。本明細書において、ポートがトッププレート2の第2の面28に対して垂直に配置されるとは、ポートの中心軸Xc,portsがトッププレート2の第2の面28に対して垂直に延在することを意味する。
【0086】
図1の例示的なマイクロ流体デバイス1では、トッププレート2は、ボトムチャネル31をモニタリングするセンサを受け入れるための、1つ又は複数のボトムチャネルセンサポート27Aなどのボトムチャネルセンサポート27Aを備える。
【0087】
図1の例示的なマイクロ流体デバイス1では、トッププレート2は、トップチャネル21をモニタリングするセンサを受け入れるための、1つ又は複数のボトムチャネルセンサポート27Bなどのトップチャネルセンサポート27Bを備える。
【0088】
トップチャネル入口ポート23、第1のボトムチャネル入口ポート24A、第2のボトムチャネル入口ポート24B、トップチャネル出口ポート25、第1のボトムチャネル出口ポート26A、第2のボトムチャネル出口ポート26B、ボトムチャネルセンサポート27A及び/又はトップチャネルセンサポート27Bなどのポートは、ミニルアーポートなどのルアーポートであってよい。
【0089】
図1の例示的なマイクロ流体デバイス1において、メンブレン4は、流体が、ボトムチャネルと、第1のボトムチャネル入口ポート24A、第2のボトムチャネル入口ポート24B、第1のボトムチャネル出口ポート26A及び第2のボトムチャネル出口ポート26Bと、の間のメンブレン4を通ってボトムプレート3のボトムチャネル31に流れることを可能にするための、第1のボトム入口開口部44A、第2のボトム入口開口部44B、第1のボトム出口開口部46A及び第2のボトム出口開口部46Bを備える。メンブレン4はまた、ボトムセンサポート27Aに配置されたセンサがメンブレン4を通ってボトムチャネル31内に突出することを可能にするための、複数のセンサ開口部47Aを備える。
【0090】
図1の例示的なマイクロ流体デバイス1において、トップチャネルセンサポート27Bは、トッププレート2の第2の面28から突出する隆起部分29を備え、トップセンサポート27Bは、ボトムセンサポート27Aよりも第2の面から突出している。
【0091】
図1の例示的なマイクロ流体デバイス1において、トップチャネル21及びボトムチャネル31は、それぞれトッププレート2及びボトムプレート3の長手方向に延在する。
【0092】
図1の例示的なマイクロ流体デバイス1において、複数のトップチャネル21は、同じ高さ、長さ及び/又は幅を有する。図1の例示的なマイクロ流体デバイス1において、複数のボトムチャネル31もまた、同じ高さ、長さ及び/又は幅を有してよい。
【0093】
トッププレート2及び/又はボトムプレート3は、COC、PS、PCのうちの1つ又は複数で作ることができる。メンブレン4は、COC、PET、PCのうちの1つ又は複数で作ることができる。
【0094】
図2は、図1に示すマイクロ流体デバイス1のトッププレート2のメンブレンに対向する第1の面22の透視図である。図2に見られるように、トッププレートは、トッププレートの第1の面22上に配置された複数のトップチャネル21を備える。図2に示す例示的なトッププレートでは、トッププレートは、互いに平行に配置された6つのトップチャネル21を備える。トップチャネル21のそれぞれは、それぞれのトップチャネル入口ポート23とそれぞれのトップチャネル出口ポート25との間に延在する。各ボトムチャネルに関連するボトムチャネル入口ポート24A、24B及びボトムチャネル出口ポート26A、26Bは、それぞれのトップチャネル21の長手軸Xtcの延長線に沿って配置されている。
【0095】
第1のボトムチャネル入口ポート24A、第2のボトムチャネル入口ポート24B、トップチャネル入口ポート23、トップチャネル出口ポート25、第1のボトムチャネル出口ポート26A、及び/又は第2のボトムチャネルは、互いに4.5mmの倍数である間隔をあけて配置されてもよい。
【0096】
図3は、本開示による組み立てられた例示的なマイクロ流体デバイス1を示す透視図である。トッププレート2、ボトムプレート3、及びメンブレン(図3には図示せず)は、例えば超音波溶接を使用して、ソリッド構造を形成するために共に接合されてもよい。超音波溶接を用いてトッププレート及びボトムプレートとメンブレンとを接合することにより、一体構造のブロックを形成することができ、これにより、トッププレート2、ボトムプレート3及び/又はメンブレン4の間のマイクロ流体デバイスへのガスの侵入を防止することができる。トッププレート2及びボトムプレート3は、マイクロ流体デバイス1の全周を囲む溶接部7によって接合されてもよく、溶接部は超音波溶接中に形成されてもよい。マイクロ流体デバイス1の全周に溶接部7を設けることにより、マイクロ流体デバイス1のチャネルのいずれか、例えばトップチャネル21及び/又はボトムチャネル31のいずれかに漏れが生じたとしても、流体がマイクロ流体デバイス1から流出することはない。
【0097】
図4は、本開示による例示的なマイクロ流体デバイス1の断面の透視図であり、トップチャネル21及びボトムチャネル31の長手方向に見た図である。トップチャネル21及びボトムチャネル31は、トップチャネル21の全長にわたって重なり、メンブレン4によって分離されるように配置される。
【0098】
メンブレン4が確実に所定位置に保持されるように、かつ/又は超音波溶接時などの組み立て時に伸張されるように、トッププレート2及びボトムプレート3は、メンブレン4に張力付与するための張力付与要素51、52を備える。
【0099】
図4に示す例示的なマイクロ流体デバイス1では、トッププレート2は複数の第1の張力付与要素51を備え、ボトムプレート3は複数の第2の張力付与要素52を備える。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、第1の張力付与要素51は、トッププレート2のメンブレン対向面22に形成された隆起部などの突起であってもよい。第1の張力付与要素51が突起である場合、第1の張力付与要素51は、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、第1の張力付与要素51の断面のように、第1の張力付与要素51の近位端が遠位端よりも広くなるように、くさび形状であってもよく、ここで、近位端はメンブレンに対向面22に最も近い端であり、遠位端はメンブレン対向面22から最も遠い端である。換言すれば、第1の張力付与要素51の幅は、第2の張力付与要素52において、メンブレン対向面から接合面に向かって減少し得る。第2の張力付与要素52は、第1の張力付与要素51の突起を受け入れるためにボトムプレート3のメンブレンに対向する第1の面32に配置されたくぼみであってよい。1つ又は複数の例示的な方法において、張力付与要素は、トップチャネル及び/又はボトムチャネルの両側に配置されてもよい。それにより、メンブレンは、マイクロ流体デバイスの組立中にメンブレンがトップチャネル及びボトムチャネル上に伸張されるように、トップチャネル及び/又はボトムチャネルの両側に配置された張力付与要素の間に伸張され得る。
【0100】
突起51及び/又はくぼみ52は、それぞれトップチャネル21及びボトムチャネル31の長さに沿って延在し得る。組立工程中にトッププレート2がボトムプレート3に押し付けられると、突起51はメンブレン4をくぼみ52に押し付ける。図4に示す例示的なマイクロ流体デバイス1では、トップチャネル21及びボトムチャネルの両側に張力要素が配置されている。図4の例示的なマイクロ流体デバイスでは、突起51がトップチャネルの両側に配置され、対応するくぼみ52がボトムチャネルの両側に配置され、メンブレン4がそれぞれの突起51によってくぼみ52のそれぞれに押し込まれ、メンブレンがトップチャネル21及びボトムチャネル31上に伸張されるようになっている。突起はさらに、超音波溶接プロセス中に溶融し、メンブレン4をトッププレート2及び/又はボトムプレート3に溶接するエネルギーダイレクタとして機能することができる。さらなる突起51a及び対応するくぼみ52aは、それぞれトッププレート2及びボトムプレート3の外縁に沿って配置されてもよい。
【0101】
トップチャネル21は、0.2~2mmの範囲の高さHTCを有し得る。ボトムチャネル31は、0.1~0.5mmの範囲の高さHBCを有し得る。トップチャネル21は、0.15~2.5mmの範囲、例えば0.25~2mmの範囲の幅WTCを有し得る。ボトムチャネル31は、0.15~2.5mmの範囲、例えば0.25~2mmの範囲など、トップチャネルの幅WTCに等しい幅WBCを有し得る。
【0102】
図5は、トップチャネル21及びボトムチャネル31の長手方向に垂直な方向から見た、本開示による組み立てられた例示的なマイクロ流体デバイス1の断面の透視図である。図5では、トッププレート1上の例示的なトップ入口ポート23、例示的なトップ出口ポート25、例示的なボトム入口ポート24A及び例示的なボトム出口ポート26Aの配置が示されている。トップ入口ポート23、トップ出口ポート25、ボトム入口ポート24A及びボトム出口ポート26Aは、トップチャネル21及び/又はボトムチャネル31の長手方向の延長線に対して垂直に配置されるように、それぞれのチャネル21、31の真上に配置される。入口及び/又は出口をトップチャネル21及び/又はボトムチャネル31の両側に配置する代わりに、トップ入口ポート23、トップ出口ポート25、ボトム入口ポート24A及びボトム出口ポート26Aをトップチャネル21及び/又はボトムチャネル31の真上に配置することにより、トップ入口ポート23及びボトム入口ポート24A、並びにトップ出口ポート25及びボトム出口ポート26Aを互いに近づけることができるので、トップチャネル21とボトムチャネル31との間でより高い重複領域を達成することができる。トップチャネル21及び/又はボトムチャネル31は、トップチャネル21及び/又はボトムチャネル31のそれぞれの入口と出口との間の距離などの長さが、4.5mmの倍数であってもよい。図5に見られるように、第1のボトム入口開口部44A及び第1のボトム出口開口部46Aは、それぞれボトム入口ポート24A及びボトム出口ポート26Aと重なるようにメンブレン4に配置されている。対照的に、トップ入口ポート23及びトップ出口ポート25の位置にはメンブレンに開口部は存在しない。したがって、メンブレンは、第1のボトム入口ポート24A及び/又は第1のボトム出口ポート26Aを通ってボトムチャネル31に入る流体流を許容する一方で、トップ入口ポート23及び/又はトップ出口ポート25を通ってボトムチャネル31に入る流体流を阻止することができる。メンブレンは多孔性であってもよく、従って、コンフルエントな組織細胞層がメンブレン上に形成される前に、トップチャネルとボトムチャネルとの間のいくらかの流体流がメンブレンを通して生じてもよい。それゆえ、トップ入口ポート23及び/又はトップ出口ポート25を通ってボトムチャネル31に入る流体流を防止することは、本明細書では、トップ入口ポート23及び/又はトップ出口ポート25を通ってボトムチャネル31に入る流体流の大部分を防止することと理解することができる。細胞層がメンブレン上に形成されている場合、細胞はトップチャネルとボトムチャネルとの間の流体の交換を制御することができる。
【0103】
図6は、本開示の1つ又は複数の実施例によるマイクロ流体デバイス1の、複数のトップチャネル21及び/又は複数のボトムチャネル31を相互接続するコネクタ6を示す。コネクタ6は、第1のトップチャネル及び/又は第1のボトムチャネルからの出口ポートを、第2のトップチャネル及び/又は第2のボトムチャネルの入口ポートに接続するように構成される。複数のコネクタ6を用いて複数のトップチャネル及び/又は複数のボトムチャネルを接続することにより、複数のトップチャネル及び/又はボトムチャネルを通して連続的な流体流を生成することができる。1つ又は複数の例示的なコネクタにおいて、コネクタ6は、COC、PS、PET及び/又はPCのうちの1つ又は複数などの熱可塑性プラスチックから作られる。それにより、流れの生理学的ガス濃度をコネクタ6を通して保持することができる。図6に示す例示的なコネクタ6は、ボトムコネクタ部61及びトップコネクタ部62などの2つの部分を備える。ボトムコネクタ部61及びトップコネクタ部62は、一体化された1つのコネクタ6を形成するように共に接合されてもよい。図6に示す例示的なボトムコネクタ部62は、マイクロ流体デバイスの入口及び/又は出口と連通するための第1の継手63A及び第2の継手63Bを備える。第1の継手63A及び第2の継手63Bは、第1の継手63A及び第2の継手63Bにマイクロ流体チャネルが設けられるように、中空であってもよい。第1の継手63A及び第2の継手63Bは、第1のミニルアー継手及び第2のミニルアー継手などの、第1のルアー継手及び第2のルアー継手であってもよい。図6の例示のコネクタ6では、第1の継手63A及び第2の継手63Bは、雄型ルアー継手である。ボトムコネクタ部61は、第1の継手63Aと第2の継手63Bとを接続するマイクロチャネルを備える。図6に示す例示的なコネクタ6において、トップコネクタ部62は、コネクタ6に構成されるマイクロチャネルを覆う平坦なカバーである。トップコネクタ部62は、コネクタ6を通る流れを視覚検査できるように透明であってもよい。コネクタ6の第1の継手63Aと第2の継手63Bの中心軸間の距離Dは、マイクロ流体デバイス1の2つの平行なチャネル、例えば2つの平行なトップチャネル及び/又は2つの平行なボトムチャネルの間の距離に対応する。距離Dは、4.5mmの倍数であってもよい。
【0104】
図7は、本開示の1つ又は複数の実施例によるマイクロ流体デバイス1の複数のトップチャネル21及び/又は複数のボトムチャネルを相互接続するためのコネクタ6を示す。図7に示される例示的なコネクタのボトムコネクタ部62は、図6に示される例示的なコネクタ6のボトムコネクタ部62に対応し、マイクロ流体デバイス1の入口及び/又は出口と相互接続するための第1の継手63A及び第2の継手63Bを備える。図7に示す例示的なコネクタ6において、トップコネクタ部62は、流れの特性など、流れを測定するためのセンサをコネクタ6を通して受け入れるための、センサポートなどのポート64を備える。ポート64は、ボトムコネクタ部61のマイクロ流体チャネルと流体連通している。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイス1において、ポート64は、酸素センサ及び/又はTEERセンサなどの、ガス及び/又は分析物検知用のセンサを受け入れるように構成されてもよい。ポート64は、ミニルアーポートなどのルアーポートであってもよい。トップコネクタ部62は、コネクタ6を通る流れを視覚検査できるように透明であってもよい。
【0105】
図8は、図7に示す例示的なコネクタの断面図である。ボトムコネクタ部61は、第1の継手63Aと第2の継手63Bとを接続するマイクロチャネル65を備える。したがって、流体は、流路66に沿って、第1の継手63Aと第2の継手63Bとの間のマイクロチャネル64を流れることができる。トップコネクタ部分62は、コネクタ6を通る流れを視覚検査できるように、透明であってもよい。
【0106】
図9は、本開示による例示的なマイクロ流体デバイス1の断面の透視図であり、断面は、トップチャネル21及びボトムチャネル31の長手方向に切断されたものである。図9の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、ボトムプレート3は、1つ又は複数のバイパスチャネル33を備える。第1のバイパスチャネル33は、第1のボトムチャネル入口ポート24Aとボトムチャネル31とを接続することができる。第2のバイパスチャネル33は、第1のボトムチャネル出口ポート26Aとボトムチャネル31とを接続することができる。1つ又は複数のバイパスチャネル33は、ボトムチャネル31の一部であってもよい。バイパスチャネル33は、メンブレン4から離れる方向に面する第2のボトムプレート面34に設けられる長手溝33Aと、接続チャネル33Bとを備えてもよい。接続チャネル33Bは、第1のボトムプレート面32に配置されるボトムチャネル31から、第2のボトムプレート面34に配置されるバイパスチャネル33の長手溝33Aまで延在することができる。接続チャネル33Bは、ボトムチャネル31及びバイパスチャネル33の長手溝33Aに対して斜めに配置される。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、接続チャネル33Bは、ボトムチャネル31及び/又はバイパスチャネル33の長手溝33Aに対して垂直に延在するように配置される。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、接続チャネル33Bは、第1のボトムプレート面32から第2のボトムプレート面34まで延在する貫通孔などの貫通チャネルであってもよい。1つ又は複数のバイパスチャネル33は、第1のボトムチャネル入口ポート24Aとトップチャネル入口ポート23との間、及び/又は第1のボトムチャネル出口ポート26Aとトップチャネル出口ポート25との間に配置されてもよい。換言すれば、1つ又は複数のバイパスチャネル33は、トップチャネル21と重ならないボトムプレート3の領域に配置されてもよい。バイパスチャネル33の長手溝33Aのようなバイパスチャネル33を、ボトムチャネル31がトップチャネル21と重ならない領域において第2のボトムプレート面34に設けることによって、第1のボトムプレート面32の面積を増加させることができ、これは、ボトムプレート3をメンブレン4及び/又はトッププレート2に接合するために使用できる面積を増加させる。換言すれば、より多くのボトムプレート3の材料を、ボトムプレート3をトッププレート及び/又はメンブレンに接合するために使用することができる。これによって、ボトムプレート3、トッププレート3、及び/又はメンブレン4のより良好な密閉性を形成することができる。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、マイクロ流体デバイスはボトムカバーシート(図9には示されず)を備える。ボトムカバーシートは、ボトムプレート3の第2の面34に配置されてもよい。ボトムカバーシートは、接着剤による接着、及び接合のうちの1つ又は複数によってボトムプレートの第2の面34に配置されてもよい。ボトムカバーシートは、長手溝33Aがボトムプレート3とボトムカバーシートとによって囲まれるように、バイパスチャネル33の長手溝33Aなどのバイパスチャネル33を覆う。図10は、本開示による例示的なマイクロ流体デバイス1の断面の透視底面図である。バイパスチャネル33は、メンブレン4から離れる方向に面する第2のボトムプレート面34に設けられた長手溝33Aを備える。換言すれば、ボトムプレート3の第2の面34は、ボトムプレート3のメンブレンに面する第1の面32の反対側である。長手溝33Bは、ボトムチャネル31及びトップチャネル21と平行な主延長線を有することができる。バイパスチャネル33及びボトムチャネル31は、このように、ボトムプレート3の互いに逆側、例えば第1のボトムプレート面32及び第2のボトムプレート面34に配置されてもよい。マイクロ流体デバイスはボトムカバーシート(図10には示されず)を備える。ボトムカバーシートはボトムプレート3の第2の面34に配置されてもよい。ボトムカバーシートは、接着剤による接着、及び接合のうちの1つ又は複数によってボトムプレートの第2の面34に配置されてもよい。ボトムカバーシートは、長手溝33Aがボトムプレート3とボトムカバーシートとによって囲まれるように、バイパスチャネル33の長手溝33Aなどのバイパスチャネル33を覆う。1つ又は複数のバイパスチャネル33は、第1のボトムチャネル入口ポート24Aとトップチャネル入口ポート23との間に配置されてもよい。
【0107】
図11は、本開示によるバイパスチャネル33を含む例示的なマイクロ流体デバイス1の断面の近接図である。図9及び図10に関連して説明されたように、バイパスチャネル33は、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、第1のボトムチャネル入口ポート24Aとトップチャネル入口ポート23との間に配置されてもよい。換言すれば、1つ又は複数のバイパスチャネル33は、トップチャネル21と重ならないボトムプレート3の領域に配置されてもよい。バイパスチャネル33の長手溝33Aのようなバイパスチャネル33を、第1のボトムチャネル入口ポート24Aとトップチャネル入口ポート23との間、及び/又は第1のボトム出口ポート26Aとボトムチャネル出口ポートとの間、例えばボトムチャネル31がトップチャネル21と重ならない領域に、第2のボトムプレート面34に設けることによって、第1のボトムプレート面32の面積を増大させることができる。それにより、ボトムプレート3をメンブレン4及び/又はトッププレート2に接合するために使用できる追加領域35が形成される。ボトムチャネルが第1のボトムチャネル入口ポート24A及び/又は第1のボトムチャネル出口ポート26Aまで延在する場合には利用できないこの追加領域35は、張力付与要素51C、52C、51D、52Dのような追加の張力付与要素51、52を追加するための空間を提供することができる。したがって、より多くのボトムプレート3の材料を、ボトムプレート3をトッププレート及び/又はメンブレンに接合するために使用することができる。これにより、ボトムプレート3、トッププレート3、及び/又はメンブレン4の間の密閉性を高めることができる。バイパスチャネル33の長手溝33Aのようなバイパスチャネル33は、ボトムチャネル31の高さHBC図11には示されず)と等しいか、又はそれよりも大きい高さHBPCを有することができる。バイパスチャネル33の高さHBPCは、本明細書では、長手溝33Aの底面から第2のボトムプレート面34までの距離として見ることができる。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、バイパスチャネル33の高さHBPCは、ボトムチャネル31の高さHBCよりも大きい。バイパスチャネルの高さHBPCをボトムチャネルの高さHBCよりも大きくすることで、ボトムチャネル31での細胞播種時にバイパスチャネル33での細胞付着を減少させることができる。バイパスチャネルにおける細胞付着を減少させることで、バイパスチャネルにおける組織バリアの形成を防ぐか、少なくとも減少させることができ、導入された細胞の大部分は、トップチャネル21とボトムチャネル31が重なり、メンブレン4のみによって分離されている領域などの、バリア様特性を有するマイクロ流体デバイス1の領域に到達する。
【0108】
図12は、バイパスチャネル33を備える例示的なボトムプレート3の近接図を開示する。バイパスチャネル33は、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、表面処理が施されていてもよい。当該表面処理は、ボトムチャネル31の表面処理とは異なっていてもよい。バイパスチャネル33、例えばバイパスチャネル33の長手チャネル33Aは、細胞付着防止層36を含んでいてもよい。細胞付着防止層36は、バイパスチャネル33の面、例えば内面に配置されてもよい。バイパスチャネル33は、例えば細胞付着阻害剤で処理され、細胞付着防止層36を形成していてもよい。細胞付着阻害剤などの細胞付着防止層36は、細胞付着防止層36及び/又は細胞付着阻害剤が適用された場所での細胞の成長を防止する特性を有し得る。1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、細胞付着阻害剤などの細胞付着防止層36は、細胞のための非粘着性コーティングであってもよい。それによって、バイパスチャネルのチャネル特性を細胞付着の観点から変化させ、バイパスチャネルにおける細胞の付着を減少させることができる。バイパスチャネルにおける細胞の付着を減少させることで、バイパスチャネルにおける組織バリアの形成を防止するか、少なくとも減少させることができ、導入された細胞の大部分は、トップチャネル21とボトムチャネル31とが重なり、メンブレン4のみによって分離されている領域などのバリア様特性を有するマイクロ流体デバイス1の領域に到達する。それにより、バリア様状態を経験する細胞数を増加させることができる。バイパスチャネル33に細胞付着防止層を設けることは、1つ又は複数の例示的なマイクロ流体デバイスにおいて、バイパスチャネルの高さHBPCを増加させることと組み合わせ、バイパスチャネル33における細胞付着をさらに減少させることができる。
【0109】
上述したように、バイパスチャネル33の長手溝のようなバイパスチャネル33Aは、第2のボトムプレート面34に成形され、ボトムチャネル31は、第1のボトムプレート面32に成形されてもよい。バリア様特性を有する部分の一部である、バイパスチャネル33及びボトムチャネル31は、互いにボトムプレート3の逆側の面に成形され得るため、ボトムチャネル31及びバイパスチャネル33の表面は、異なる金型ツールなど、異なる金型を用いて成形されてもよい。1つ又は複数の例では、第2のボトムプレート面34及びバイパスチャネル33の成形に使用される金型は、細胞付着阻害剤でコーティングされていてもよい。ボトムプレート3の成形中に、細胞付着防止層36がバイパスチャネル33、例えばバイパスチャネル33の長手チャネル33Aに付与されるように、細胞付着阻害剤が金型からバイパスチャネル33及び/又は第2のボトムプレート面34に転写されてもよい。
【0110】
ボトムカバーシート37は、バイパスチャネル33を囲むようにボトムプレート第2の面34にさらに設けられてもよい。ボトムカバーシート37は、ボトムプレート第2の面34に接着、例えば接着剤による接着、及び接合のうちの1つ又は複数による接着によって配置されてもよい。ボトムカバーシート37は、長手溝33Aが囲まれるように、バイパスチャネル33の長手溝33Aを覆う。
【0111】
図1図12に記載された実施形態で言及された特徴は、これらの特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。マイクロ流体デバイス及びその中に構成される構成要素に関連し、図4図5のマイクロ流体デバイスに関連して言及される任意の特徴、例えば、マイクロ流体デバイスの寸法、及びマイクロ流体デバイス中に構成されるチャネル、例えば、トップチャネル、ボトムチャネル、及び/又はバイパスチャネルは、図1図3及び/又は図9図12に関連して説明されるマイクロ流体デバイスにも適用可能であり、その逆もまた同様である。
【0112】
「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、「主」、「二次」、「三次」などの用語の使用は、特定の順序を意味するものではなく、個々の要素を特定するために含まれている。さらに、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、「主」、「二次」、「三次」などの用語の使用は、いかなる順序又は重要性を示すものではなく、むしろ、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、「主」、「二次」、「三次」等の用語は、ある要素を別の要素から区別するために使用される。「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、「主」、「二次」、「三次」などの語は、ここ又は他の場所においても、ラベル付けのみを目的として使用されており、特定の空間的又は時間的順序を示すことを意図していないことに留意されたい。さらに、第1の要素のラベル付けは、第2の要素の存在を意味するものではなく、その逆もまた同様である。
【0113】
「備える」という語は、列挙された要素以外の要素やステップの存在を必ずしも排除するものではないことに留意されたい。
【0114】
要素に先行する「1つの」という語は、そのような要素が複数存在することを排除するものではないことに留意されたい。
【0115】
特徴を示し説明してきたが、これらは特許請求の範囲に開示された発明を限定することを意図したものではなく、特許請求される開示の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正がなされ得ることが当業者には明らかであることが理解されるであろう。したがって、本明細書及び図面は、制限的な意味ではなく例示的な意味で認識されるべきである。特許請求の範囲に開示された発明は、全ての代替物、修正物、及び等価物を包含することを意図している。
【0116】
参考文献
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図1
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【図
【国際調査報告】