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特表2024-544416磁性粒子を用いたアッセイ方法およびアッセイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】磁性粒子を用いたアッセイ方法およびアッセイ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/543 581A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537441
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 FR2022052334
(87)【国際公開番号】W WO2023118692
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114135
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313015649
【氏名又は名称】ホリバ アベイクス エス アー エス
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【住所又は居所原語表記】Parc Euromedecine, Rue du Caducee, BP 7290, F-34184 MONTPELLIER cedex 4, France
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】デーヌ・オーレリアン
(72)【発明者】
【氏名】テムリュク・ネヴザト
(57)【要約】
【課題】液状媒体中の生体試料内の標的分析物をアッセイする方法を提供する。
【解決手段】本発明は:第1の受容体101を有する第1の磁性粒子10に生体試料を接触させ、第1の磁性粒子と標的分析物との非特異的な結合により妨害複合体を形成する過程と;全ての複合体を局所的に集合させ、妨害凝集体を形成させる過程と;第1の磁場を消去し、液状媒体に、第2の受容体111を有する第2の磁性粒子11を添加する過程と;液状媒体中の妨害凝集体の量を表す第1の量を測定し、害凝集体の有無を特定する過程と;第2の磁場を印加することによって、第2の磁性粒子と第1の複合体を結合させ、第2の複合体61を形成させる過程と;液状媒体中の妨害凝集体と第2の複合体と総量を表す第2の量を測定し、第2の複合体の量を第1の量の関数として求め、生体試料内に存在する標的分析物の量、妨害分析物30の量を推測する過程とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状媒体中の生体試料内の標的分析物(20)をアッセイする方法であって、
a.前記標的分析物(20)の第1の付着部位に特異的な第1の受容体(101)を有する第1の磁性粒子(10)に前記生体試料を接触させることで、前記第1の磁性粒子(10)と前記標的分析物(20)との結合によって第1の複合体を形成させる過程であって、妨害分析物が(30)前記試料内にが存在する場合には、その接触に伴って、前記第1の磁性粒子(10)と前記妨害分析物(30)との非特異的な結合によって妨害複合体が形成される、過程と、
b.第1の磁場を印加及び維持することによって、過程a.で形成された全ての複合体を局所的に集合させるとともに、妨害複合体が存在する場合には妨害複合体同士を凝集させて妨害凝集体を形成させる過程と、
c.過程b.で印加された前記第1の磁場を消去し、前記液状媒体に、前記標的分析物(20)の第2の付着部位に特異的な第2の受容体(111)を有する第2の磁性粒子(11)を添加する過程と、
d.前記液状媒体中の前記妨害凝集体の量を表す第1の量を測定し、前記妨害凝集体の有無を特定する過程と、
e.第2の磁場を印加することによって、前記第2の磁性粒子(11)と前記第1の複合体とを結合させて第2の複合体(61)を形成させる過程と、
f.前記液状媒体中の前記妨害凝集体および前記第2の複合体(61)の総量を表す第2の量を測定することにより、過程e.で形成された前記第2の複合体(61)の量を前記第1の量の関数として決定し、そこから、前記生体試料中に存在する標的分析物(20)の量、および妨害分析物(30)が存在する場合には妨害分析物(30)の量を推測する過程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアッセイ方法において、過程f.が、該過程f.で測定された前記第2の量と過程d.で測定された前記第1の量との差を算出する副過程を含む、アッセイ方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、過程c.および過程d.が、略同時に行われる、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法において、過程d.が、前記第1の磁場を消去した後、前記液状媒体中に第2の磁性粒子を添加する前に行われる、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、過程b.で印加された前記磁場が5分未満、好ましくは3分未満保持される、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法において、前記第2の磁場の印加が、8mTで1秒間磁化を行った後、磁化と中断のシーケンス:15mTで60秒間、0mTで28秒間、8mTで1秒間、0mTで1秒間;を3回連続して行うことを含む、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法において、前記第1および/または第2の量の測定が、透過比濁法による測定、散乱比濁法による測定、および計数法による測定からなる群から選択される、方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法において、過程a.が、希釈液を添加して前記生体試料を希釈することにより、試料と希釈液との比を1:10(体積)以上にする副過程を含む、方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、過程b.が、前記液状媒体から前記第1の複合体を抽出する副過程を含む、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法において、過程b.が、前記液状媒体を除去した後に反応緩衝液を添加すること、好ましくは、さらに、前記液状媒体の除去と前記反応緩衝液の添加との間の少なくとも1回の洗浄を有する、副過程b1.を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記反応緩衝液が、少なくとも1種の凝集防止剤および/または細胞溶解剤を含有する、方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法において、前記試料が、全血試料である、方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法において、前記妨害凝集体は、前記第1の量が所定の閾値の量を超えた場合に特定される、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実行するように設けられた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料内の標的分析物をアッセイする方法、およびこの方法を実施するように意図されたアッセイ装置に関する。
【0002】
本発明は、概して、液状媒体中に可溶な目的分子をアッセイする分野に関する。具体的には、本発明は、例えば全血試料内のタンパク質のイムノアッセイの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術では、磁性粒子を用いて液体試料中に存在する分析物を捕捉および/または抽出するアッセイ方法が提案されている。この目的のために、磁性粒子は、標的分析物に特異的な1つ以上の受容体を有し、それによって受容体が分析物と結合して複合体を形成することができる。そして、磁場を印加することで該複合体を捕捉することができる。
【0004】
磁性粒子に基づくアッセイの用途は広範に及ぶ。腫瘍学への応用を目的としたものがある(例えば、Xu, Hengyi, et al. “Antibody conjugated magnetic iron oxide nanoparticles for cancer cell separation in fresh whole blood”, Biomaterials 32.36 (2011): 9758-9765(非特許文献1)等を参照)。他にも、特にUS9976136(特許文献1)やTan, Siun Chee, and Beow Chin Yiap. “DNA, RNA, and protein extraction: the past and the present” BioMed Research International, 2009(非特許文献2)に記載されているように、核酸の抽出への適用を目的としたものもある。
【0005】
核酸の抽出に関する用途は、一般的に、細胞を溶解して核酸を放出させる過程、溶解液を磁性粒子と接触させて核酸を捕捉する過程、磁場の印加(「磁化」とも称される)過程および洗浄過程を含む、一連の複数の過程を含む。この後に、核酸の溶出(一般的には、pHの変化によって)と磁性粒子の除去が行われる。その後、単離した核酸を処理し、アッセイされることが可能となる。
【0006】
しかしながら、細胞の溶解後に洗浄を行うと、試料が希釈される結果、捕捉性能が低下する。しかも、捕捉された核酸は、処理のために磁性粒子から分離せねばならず、工程数が増加する。
【0007】
診断や腫瘍学のようなその他の用途では、血液中の分析物を直接アッセイすることが目的となっている。つまり、先行技術では、全血試料内のタンパク質をアッセイしようとするイムノアッセイ方法が提案されている。特に、US6030845(特許文献2)、 US6855562(特許文献3)およびUS7326579(特許文献4)や、本願の出願人によるEP2810042(特許文献5)が知られている。しかし、これらの方法も、細胞を破壊するために血液を溶解するという最初の過程に依存している。溶解後に、溶解された試料をイムノ凝集(免疫凝集)でアッセイする過程が行われる。この溶解過程により、良好な条件で凝集測定を行うことが可能になるが、比較的大規模な試料を希釈するため、検出限界に悪影響が生じる。
【0008】
磁性粒子を用いた他のイムノアッセイ方法がある。具体的には、いわゆるホモジニアス法(homogeneous methods)およびいわゆるヘテロジニアス法(heterogeneous methods)がある。
【0009】
ホモジニアス法には、洗浄過程を省略できるという利点がある。Baudry, Jean, et al. “Acceleration of the recognition rate between grafted ligands and receptors with magnetic forces”, Proceedings of the National Academy of Sciences 103.44 (2006): 16076-16078(非特許文献3)、Ranzoni, Andrea, et al. “One-step homogeneous magnetic nanoparticle immunoassay for biomarker detection directly in blood plasma” Acs Nano 6.4 (2012): 3134-3141(非特許文献4)およびAurich, Konstanze, et al. “Determination of the magneto-optical relaxation of magnetic nanoparticles as a homogeneous immunoassay”, Analytical chemistry 79.2 (2007): 580-586(非特許文献5)には、ホモジニアス試験法が記載されている。しかしながら、洗浄過程がないため、これらのアッセイ方法は、血液のような複雑な媒体には適用し難い。実際に、特に血液中などの細胞の存在は、測定を大幅に妨げる。
【0010】
ヘテロジニアス法は、より多くの数の過程が必要となるため、実施時間が一般的に長期化する。しかも、ヘテロジニアス法は、実施自体も複雑である。Kourilov, Vitaly, and Michael Steinitz, “Magnetic-bead enzyme-linked immunosorbent assay verifies adsorption of ligand and epitope accessibility” Analytical biochemistry 311.2 (2002): 166-170(非特許文献6)には、ヘテロジニアス法が記載されている。
【0011】
アッセイ方法にかかわらず、非特異的シグナルが計測されてしまうというリスクが存在する。具体的に言うと、少なくとも1種の妨害分析物が標的分析物と競合し、磁性粒子や標的分析物に特異的な受容体に結合した場合に、非特異的シグナルが、計測される。
【0012】
妨害分析物には、様々な性質のものがある。例えば、標的分析物の立体構造に似た立体構造のタンパク質や、電荷を呈した分子などが挙げられる。より一般的には、妨害分析物とは、磁性粒子又は磁性粒子の表面にグラフト結合した受容体に対して無視できない親和性を示す任意の分子のことであり得る。そのため、アッセイ試験中に計測されるシグナルは、決してゼロにならない。よって、既存の方法では、非特異的シグナルの確率の低減が試みられている。とはいっても、既存の方法では、全般的に、特異的シグナルと非特異的シグナルとを識別することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第9976136号明細書
【特許文献2】米国特許第6030845号明細書
【特許文献3】米国特許第6855562号明細書
【特許文献4】米国特許第7326579号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2810042号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Xu, Hengyi, et al. “Antibody conjugated magnetic iron oxide nanoparticles for cancer cell separation in fresh whole blood”, Biomaterials 32.36 (2011): 9758-9765
【非特許文献2】Tan, Siun Chee, and Beow Chin Yiap. “DNA, RNA, and protein extraction: the past and the present” BioMed Research International, 2009
【非特許文献3】Baudry, Jean, et al. “Acceleration of the recognition rate between grafted ligands and receptors with magnetic forces”, Proceedings of the National Academy of Sciences 103.44 (2006): 16076-16078
【非特許文献4】Ranzoni, Andrea, et al. “One-step homogeneous magnetic nanoparticle immunoassay for biomarker detection directly in blood plasma” Acs Nano 6.4 (2012): 3134-3141
【非特許文献5】Aurich, Konstanze, et al. “Determination of the magneto-optical relaxation of magnetic nanoparticles as a homogeneous immunoassay”, Analytical chemistry 79.2 (2007): 580-586
【非特許文献6】Kourilov, Vitaly, and Michael Steinitz, “Magnetic-bead enzyme-linked immunosorbent assay verifies adsorption of ligand and epitope accessibility” Analytical biochemistry 311.2 (2002): 166-170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のことから、複雑な試料のアッセイ方法、特に、全血試料のアッセイは、満足のいくものでない。試料内での細胞の存在、細胞を溶解する必要性とそれに伴う少なくとも1回の洗浄過程、および非特異的シグナルのリスクから、方法の性能が悪化する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、この状況を改善するものである。
つまり、本発明は、
液状媒体中の生体試料内の標的分析物をアッセイする方法であって、
a.前記標的分析物の第1の付着部位に特異的な第1の受容体を有する第1の磁性粒子に前記生体試料を接触させることで、前記第1の磁性粒子と前記標的分析物との結合によって第1の複合体を形成させる過程であって、妨害分析物が前記試料内に存在する場合には、その接触に伴って、前記第1の磁性粒子と前記妨害分析物との非特異的な結合によって妨害複合体が形成される、過程と、
b.第1の磁場を印加及び維持することによって、過程a.で形成された全ての複合体を局所的に集合させるとともに、妨害複合体が存在する場合には、妨害複合体同士を凝集させて妨害凝集体を形成させる過程と、
c.過程b.で印加された前記第1の磁場を消去し、前記液状媒体に、前記標的分析物の第2の付着部位に特異的な第2の受容体を有する第2の磁性粒子を添加する過程と、
d.前記液状媒体中の前記妨害凝集体の量を表す第1の量を測定し、前記妨害凝集体の有無を特定する過程と、
e.第2の磁場を印加することによって、前記第2の磁性粒子と前記第1の複合体とを結合させて第2の複合体を形成させる過程と、
f.前記液状媒体中の前記妨害凝集体および前記第2の複合体の総量を表す第2の量を測定することにより、過程e.で形成された前記第2の複合体の量を前記第1の量の関数として決定し、そこから、前記生体試料中に存在する標的分析物の量、および前記妨害分析物が存在する場合には妨害分析物の量を推測する過程と、
を備える、方法に関する。
【0017】
このように、本発明によれば、前記生体試料中の妨害分析物の有無を検証することができる。つまり、前記生体試料が標的分析物と妨害分析物の両方を含む場合、過程a.では、前記第1の磁性粒子と前記妨害分析物との結合によって妨害複合体が形成される。よって、過程b.では、前記妨害複合体同士の凝集体が形成される。そして、過程d.では、形成された前記妨害凝集体の定量的な測定量の予測が得られる。過程f.では、前記生体試料中に存在する標的分析物の量および前記妨害分析物の量を決定するための計算が行われる。
【0018】
さらに、本発明の方法では、過度の希釈を行わないので、その結果、良好な分析感度を確保することができる。しかも、本発明によれば、工程数が減るので試験全体が簡素化される。具体的には、この結果、時間が大幅に短縮され、最長でも15分程度以下に収まる。
【0019】
当然ながら、前記生体試料中に妨害分析物が存在しない場合、前記妨害複合体、およびそれによって、前記妨害凝集体は形成されない。それに伴って、過程d.で測定される量はゼロになるか、あるいは、所定の閾値を超えない。
【0020】
このように、本発明の方法は、前記生体試料中の妨害分析物の存在を特定するだけにとどまらず、それを定量化することもできる。これと併せて、本方法は、前記生体試料中の標的分析物の量の推測も可能である。
【0021】
過程f.は、該過程f.で測定された前記第2の量と過程c.で測定された前記第1の量との差を算出して標的分析物の量を決定する副過程を含み得る。
主な実施形態では、過程c.にて、前記第1の磁場を消去した後又は消去するのに伴って、第2の磁性粒子を添加する。その後、過程d.にて、妨害凝集体の量を表す前記第1の量を測定する。他の実施形態では、この測定は、磁場の消去後にそのまま、すなわち、前記液状媒体(つまり、反応媒体)中に前記第2の磁性粒子を投入するまでに、その測定が行われ得る。
【0022】
過程f.の測定のために、すなわち、前記妨害凝集体と前記第2の複合体との総量を表す前記第2の量の測定のために、前記第2の磁場は、好ましくは、事前に該測定から消去される。これにより、測定感度が向上する。
【0023】
本発明の方法の特異性を確実なものにするため、第1の受容体はいずれも前記標的分析物の第1の付着部位に特異的なものとされ、第2の受容体はいずれも前記標的分析物の前記第1の付着部位とは異なる第2の付着部位に特異的なものとされる。2種類の異なる付着部位によりもたらされる柔軟性から、実施用途の性質に応じた様々な要件に、本発明の方法を迅速に適用することができる。
【0024】
前記液状媒体から磁性粒子を抽出することが意図されている本発明の特定の一実施態様では、過程b.で印加される磁場が100mT以上であり、該磁場の保持が5分未満、好ましくは3分未満持続される。別の特定の態様では、過程b.での前記第1の磁場の印加および過程e.での前記第2の磁場の印加が、8mTで1秒間の磁化と、それに続く3つの連続した磁化およびカットオフシーケンス:15mTで60秒間、0mTで28秒間、8mTで1秒間、0mTで1秒間を含む。
【0025】
これにより、本発明の方法は、迅速に、具体的には、15分未満の時間で実施することが可能となる。さらに、選択された磁化および中断のシーケンスにより、一方では、前記分析物と前記磁性粒子との間の複合体の形成を促進し、他方では、より正確な読取が可能となるので、本発明の方法の精度を高めることができる。
【0026】
好ましい一実施形態において、過程d.および過程f.で行われる測定は、透過比濁法による測定、散乱比濁法による測定、ならびに計数法(特に解析および/または画像処理、流束)による測定を含む群から選択される。これにより、信頼性の高い結果を素早く得ることができる。
【0027】
別の実施形態において、過程a.は、希釈液を添加して前記生体試料を希釈することにより、前記試料と前記希釈液との比を1:10以上にする副過程を含む。
【0028】
具体的には、この希釈により、前記媒体の粘度が低下することで、アッセイ対象の分子が捕捉されやすくなり、すなわち、前記第1の複合体の形成を促すことができる。また、前記希釈液は、前記磁性粒子同士の凝集確率を低下させることが可能な薬剤を含有していてもよい。この目的には、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、タンパク質(アルブミン、カゼイン、ゼラチン、抗体など)またはポリマー(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなど)を使用することができる。
【0029】
特定の一実施形態では、過程b.での前記第1の磁場の印加により、前記液状媒体から前記第1の複合体を抽出することが可能となる。特に、これにより、複雑な媒体(例えば、全血等)作業が可能になる。つまり、特定の一実施形態では、前記生体試料が全血であることが具体的に規定されている。本発明の利点の一つは、洗浄及び/又は希釈を必要とせずに、本方法の各過程を血液試料に直接適用できるという点である。
【0030】
別の実施形態において、過程b.は、前記液状媒体の除去および反応緩衝液の添加を含む。前記反応緩衝液は、凝集防止剤(ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、タンパク質もしくはポリマー)および/または細胞溶解剤(サポニン類、第4級アンモニウム類、ドデシル硫酸ナトリウムなど)を含有し得る。前記液状媒体の除去と前記反応緩衝液の添加との間に少なくとも1回の洗浄を行うことも可能である。この洗浄により、本発明の方法の特異性をさらに高めることができる。
【0031】
前記凝集防止剤は、磁性粒子同士が形成した任意の凝集体を解離させることができるのに対し、前記細胞溶解剤は、前記液状媒体からの細胞溶解剤の除去で排出されなかった潜在細胞を溶解させることができる。前記溶解剤により、従来技術の方法と違って、前記試料を追加で希釈する必要がなくなるという点に留意されたい。本実施形態では、多かれ少なかれ長めのインキュベーションを行うことで、前記反応緩衝液中に存在する薬剤類の十分な作用を可能にすることができる。
【0032】
本発明のその他の利点および特徴については、以下の詳細な説明を参酌し、かつ、添付の図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の概要図である。
図2】本発明における第1の磁性粒子と生体試料との第1のインキュベーション工程の原理図である。
図3】本発明の方法の第1の磁化工程の原理図である。
図4】本発明における第2の磁性粒子と生体試料との第2のインキュベーション工程の原理図である。
図5】本発明の方法の第2の磁化工程の原理図である。
図6】本発明における第1の磁性粒子と妨害分子を含む生体試料との第1のインキュベーション工程の原理図である。
図7】妨害分子を含む生体試料に適用される、本発明の方法における第1の磁化工程の原理図である。
図8】本発明における第2の磁性粒子と妨害分子を含む生体試料との第2のインキュベーション工程の原理図である。
図9】第1の実施例における、前立腺特異抗原(PSA)の濃度の関数としての光学密度のグラフである。
図10】第2の実施例における、抗体(Ac)濃度の関数としての光学密度のグラフである。
図11】第2の実施例における、抗体(Ac)濃度の関数としての光学密度のグラフである。
図12】第3の実施例における、抗PCT(プロカルシトニン)抗体の濃度の関数としての光学密度のグラフである。
図13】(本発明ではない)第6の実施例における、前立腺特異抗原(PSA)の濃度の関数としての光学密度のグラフである。
図14】は、(本発明に係る)第7の実施例における、前立腺特異抗原(PSA)の濃度の関数としての光学密度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面、表および以降の説明には、本質的に、特定の性質の構成/構成要素が含められている。図面および表は、本明細書にとって不可欠な一部であり、したがって、本発明をより良く理解するために用いられるだけでなく、適宜、本発明の定義にも貢献する。
【0035】
本発明は、概して、液状の生体試料中の分析物の特定に関する。前記試料は、例えば骨髄試料、脳脊髄液、リンパ液、尿、または好ましくは全血試料等といった、任意の適切な種類のものであり得る。例えば、前記標的分析物は、タンパク質、核酸または前記試料中に存在するその他の目的の分子であり得る。前記標的分析物は、前記試料中に極めて大量に存在する。つまり、試料は、極めて大量のコピー数で存在している標的分子を含み得る。すなわち、標的分析物の濃度は前記試料中で極めて高い場合がある。このことは、前記試料中に存在し得る任意のその他の非標的分析物にも当てはまる。
【0036】
本発明は、各標的分析物に特異的なリガンドで表面を官能基化した磁性粒子によって標的分析物を捕捉するという技術を用いる。これらは、前述の種類の粒子からなり得る。使用する磁性粒子の粒径は、一般的に5nm~10,000nm、好ましくは100nm~500nmである。
【0037】
本発明のアッセイ方法のにおいて、第1の過程a.では、第1の磁性粒子に前記生体試料を接触させることを含む。
【0038】
図1は、本発明の概要図である。
【0039】
つまり、同図は、本発明の方法の実施の一形態を概略的に示すものである。第1の過程a.にて、第1の磁性粒子は、緩衝液の存在下で、アッセイ対象となる標的分析物が存在するか又は存在していない液状の生体試料と混合される。前記生体試料は、さらに、必ずとは限らないが、妨害分析物を含み得る。
【0040】
初めに、第1の磁性粒子に前記生体試料を接触させる。各磁性粒子は、前記標的分析物の第1の付着部位に特異的な受容体を有しているので、前記標的分析物が前記生体試料内に存在している場合、第1の磁性粒子と前記標的分析物との結合によって第1の複合体が形成される。前記試料中に妨害分析物が存在する場合には、その接触とともに、前記第1の磁性粒子と前記妨害分析物との非特異的な結合によって妨害複合体が形成される。論理的に言って、前記生体試料内に妨害分析物が存在しない場合、妨害複合体は形成されない。
【0041】
図2に、分子を含む液状媒体含む生体試料を示す。図2には、特定の受容体(本明細書では、いわゆる第1の受容体101)を有する第1の磁性粒子10(PM1)が描かれている。これらの第1の磁性粒子10が、前記生体試料中に存在するアッセイ対象の分子と接触する。アッセイ対象の分子は、標的分析物20と呼ぶことにする。前記生体試料は、さらに、例えば可溶性の分子、細胞又は粒子であり得るその他の化学種又は分子40,50(あるいは、後で説明する妨害分子30)を含んでいる。
【0042】
過程a.のこのような接触の結果として、分子20が第1の受容体101に捕捉される。この目的のために、第1の受容体101は標的分析物20に特異的なものとされる。特異性を良好なものにするため、モノクローナル抗体または抗体の一部が受容体として使用される。各受容体と各標的分析物とが結合することで、複合体が形成される。本明細書では、これを第1の複合体C1と称する。つまり、第1の磁性粒子10と標的分析物20とが会合することによって、複合体が形成される。これらの複合体は、液状媒体内に分散する。
【0043】
過程a.の接触は、一般的に約10分間、好ましくは5分間未満で行われ得る。任意で、インキュベーション工程中に前記液状媒体を混合又は撹拌することによって捕捉効率を高めることも可能である。
【0044】
過程a.は、希釈液を添加して前記生体試料、より詳細には、前記液状媒体を希釈する副過程を含み得る。一般的には、初期濃度を10で割った値(すなわち、10倍)を超えないような希釈が選択される。
【0045】
そして、本発明の方法は、第1の磁場を印加する過程b.を行う。これにより、過程a.で形成された全ての複合体を局所的に集合させるとともに妨害複合体が存在する場合には妨害複合体同士を凝集させて妨害凝集体を形成させることができる。複合体を局所的に集合させるとは、前記液状媒体中で複合体同士を組織化させることであると理解されたい。印加する磁場により、その場所は変わり得る。
【0046】
実際、この過程b.による主な効果、より詳細には、磁場の印加による主な効果は、前記第1の磁性粒子に前記生体試料を接触させる過程a.で妨害複合体が形成された場合に、妨害複合体同士が凝集して生じる妨害凝集体の形成であることに留意されたい。
【0047】
本発明の特定の一実施形態では、同過程にて、前記第1の磁性粒子が磁石に引き付けられる。つまり、過程a.で形成された、前記第1の磁性粒子と前記標的分析物との会合から本質的になる前記第1の複合体が、前記磁石に引き付けられる。その結果、過程a.で形成された全ての複合体が、前記磁石に対して又は前記磁石付近の環境に対して局所的に集合する。これにより、前記第1の複合体を単離して前記液状媒体から分離させることが可能となる。すなわち、この特定の実施形態では、前記生体試料の前記液状媒体から前記第1の複合体が抽出される。論理的に言って、前記液状媒体からの前記第1の複合体の分離は、同過程の後半で前記液状媒体を排出する場合にのみ遂行される。本実施形態では、過程b.にて、前記磁場が所定の時間、例えば5~10分、好ましくは5分未満維持され得る。これにより、前記液状媒体から、過程a.で形成された全ての前記第1の複合体が良好に抽出され易くなる。
【0048】
図3には、磁石が生じさせる磁場Bに従って吸引又は組織化される磁性粒子10が描かれている。第1の複合体C1は、局所的に組み合わさっている。
【0049】
特定の一実施形態では、前記生体試料から前記液状媒体が除去された後、反応緩衝液が添加される。すなわち、前記液状媒体は、同じく液体である反応緩衝液に置き換えられる。この目的のために、まず反応容器から前記液状媒体が排出された後、前記反応緩衝液が同容器に注がれる。本実施形態では、一般的に、標的分析物20を含む前記第1の複合体C1を自身に対して局所的に集合させることが可能な永久磁石が用意される。受容体101に結合した標的分析物分子20は、前記生体試料から前記液状媒体が排出されている間、単離および保持される。前記反応緩衝液が、前記液状媒体と入れ替わって、添加される。
【0050】
本実施態様では、少なくとも1回の洗浄が、前記液状媒体の除去と前記反応緩衝液の添加との間に行われてもよい。この洗浄により、本発明の方法の特異性を高めることができる。洗浄工程のあいだ、前記磁場は維持されても中断されてもよい。後者の場合には、各回の洗浄後、浮遊した磁性粒子を再捕捉するために前記磁場を所定時間再び印加させる必要がある。
【0051】
一実施形態では、前記反応緩衝液が、少なくとも1種の凝集防止剤および/または少なくとも1種の細胞溶解剤を含有し得る。前記凝集防止剤は、過程a.及び/又は過程b.で形成された磁性粒子同士の凝集体や塊を解離させることができる。これにより、本発明の方法の精度が上がる。前記細胞溶解剤は、上述の液状媒体の除去で排出されなかった細胞を溶解することができる。従来技術の方法とは違って、前記溶解剤により、試料を追加で希釈する必要がなくなるという点に留意されたい。
【0052】
本発明の方法の過程c.では、磁場Bが消去される。同磁場が中断される場合、粒子、複合体および任意の形成された凝集体が、前記液状媒体内に分散する。
【0053】
図4には、複合体C1が再び浮遊するようになった状態が描かれている。過程c.では、さらに、標的分析物20に特異的な第2の受容体111を有する第2の磁性粒子11(PM2)が前記液状媒体に添加される。この段階では、第2の磁性粒子11の第2の受容体111が、標的分析物20に結合しないか又はほぼ結合していない。必要に応じて、前記反応媒体の攪拌を行うことも可能である。
【0054】
一般的に、標的分析物20は、その立体形状から、多種多様な特異的受容体101,111の選択が可能であるという点に留意されたい。つまり、第1の受容体101はいずれも標的分析物20の第1の付着部位に特異的とされ、第2の受容体111はいずれも前記標的分析物の前記第1の付着部位とは異なる第2の付着部位に特異的とされる。これにより、本発明の方法の特異性を高めることができる。また、本発明の方法は、2種類の付着部位によりもたらされるこのような柔軟性から、様々な要件、具体的には、実施用途の性質に応じた様々な要件に迅速に対応することができる。つまり、アッセイ対象の標的分析物に応じて様々な受容体を用いることが可能である。
【0055】
そして、本発明の方法では、前記液状媒体中の妨害凝集体の量を表す第1の量を測定して前記妨害凝集体の有無を特定する過程d.が行われる。測定量がゼロであるか又は所定の閾値未満である場合、前記液状媒体中に妨害凝集体は存在しない(あるいは、極めて少ない)。この場合、前記生体試料内に妨害分析物が存在していない(あるいは、極めて少ない)という原理を検討することができる。測定量がゼロでないか又は前記所定の閾値を超える場合、前記液状媒体中に妨害凝集体が存在し、つまり、前記生体試料内に妨害分析物が存在することになる。
【0056】
具体的には、同測定は、透過比濁法、散乱比濁法、あるいは、計数法(解析および/または画像処理、流束など)で行われ得る。
【0057】
そして、本発明の方法では、第2の磁場を印加することによって第2の磁性粒子11、より詳細には、該第2の磁性粒子が有する受容体111と第1の複合体C1とを結合させて第2の複合体を形成させる過程e.が行われる。検出性に関しては、この第2複合体は妨害凝集体と同等の検出性を有し、すなわち、光学濃度測定などで比較的容易に検出される。
【0058】
図5には、第2の磁場B1の印加によって生じた第2の複合体61が描かれている。標的分析物20は、第1の磁性粒子10が有する前記第1の受容体と第2の磁性粒子11が有する前記第2の受容体とによって挟まれている。一般的に、この過程e.は、磁性粒子同士の鎖または塊を生じさせることを目的としている。標的分析物20を境にした第1の磁性粒子10と第2の磁性粒子11とで形成される「サンドイッチ」型の複合体又は分子は、光学濃度測定などの様々な手法で検出が可能である。
【0059】
WO 2009/034271、FR2919390およびFR2959820には、磁性粒子と標的分析物との反応時に、磁場の印加と中断とからなる一連のサイクルを液状反応媒体に適用することで、磁性粒子の鎖または塊を形成させるアッセイ方法が記載されている。磁場を印加するたびに、分析物と磁性粒子との結合数が増加し、磁場を中断するたびに、未結合の磁性粒子が液状媒体内に分散する。この過程で、結合粒子の鎖または塊の数および/または大きさが増加していく。これに比例して、反応媒体の透過濁度が増加する。よって、磁場の各中断後の媒体の光学濃度の測定により、試料中の標的分析物の濃度の計算が可能になる。
【0060】
磁気パルスのシーケンスとして、これ以外の種類のものも可能である。一例が、Fast Magnetic Field-Enhanced Linear Colloidal Agglutination Immunoassay, Daynes et al. Anal. Chem. 2015, 87, 7583-7587に記載されている。
【0061】
本発明において、過程b.で印加される前記第1の磁場Bは、過程e.で印加される前記第2の磁場B1と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
これら2つの過程の間に、別の特性を有する磁場を印加するのが有利となり得る。これは、前記液状媒体からの前記第1の複合体の抽出が行われる実施形態に当てはまる。上記のような条件下では、第1の磁性粒子10の最適な捕捉を可能にするため、過程b.の磁場Bが、著しい強度(典型的には、100mT超)と磁化方向の著しい勾配を兼ね備えている必要がある。反対に、過程e.では、控えめの強度(典型的には、50mT未満)と緩やかな勾配を持った磁場B1を印加するのが好適である。また、過程e.の磁場B1は、複数のパルス同士を緩和期間で分断しながら印加するものであってもよい。これらのパルスの期間及び強度は、可変であり得る。
【0063】
一般的に、前記第2の磁場B1の印加は、休止時間によって分断された複数の磁気パルスを含むのが好適である。一実施形態において、この過程e.は、8mTで1秒間磁化を行った後、磁化と中断のシーケンス:15mTで60秒間、0mTで28秒間、8mTで1秒間、0mTで1秒間(8mT:1秒間+3×(15mT:60秒間+0mT:28秒間+8mT:1秒間+0mT:1秒間))を3回連続して行う。
【0064】
8mT:1秒間の各パルスにより、妨害分析物が存在する場合の粒子(PM1)の凝集状態をより正確に読み取ることが実質的に可能となる。15mT:60秒間→休止(0mT):28秒間→8mT:1秒間→休止(0mT):1秒間という一連のパルス/休止により、複合体の形成が実質的に可能となる。
【0065】
第2の複合体61は、例えば光学濃度測定、計数等で検出可能な凝集体を形成している。一般的に、磁性粒子と標的分析物分子との大きさ(および/または屈折率および/または磁気モーメント)の差からみて、第1の複合体の信号が遊離磁性粒子の信号と有意に異なることがないのに対し、第2の複合体は、前記標的分析物が2種類の受容体に結合して(挟まれて)磁性粒子同士が互いに凝集してなるものであるため、検出が可能となる。
【0066】
つまり、本発明の方法の過程f.は、形成された第2の複合体の量を求めて、そこから、前記生体試料内に存在する標的分析物の量を推測することを目的としている。この目的のために、過程f.では、全ての凝集体、すなわち、全ての第2複合体、そして、妨害凝集体が存在する場合には妨害凝集体も測定する。最終的に、この測定により、過程e.で形成された第2複合体61の量を、具体的には、事前に過程d.で行った妨害凝集体単独の測定量の関数として求めることが可能となる。そして、その求めた結果から、前記生体試料内に存在する標的分析物20の量を計算することが可能となる。
【0067】
本発明には、前記標的分析物だけでなく1種以上の妨害分析物も特定できるという利点がある。
【0068】
以下では、図6図7及び図8を参照しながら、妨害分析物が存在する場合の本方法の各過程について詳細に説明する。
【0069】
この場合の過程a.(図6を参照のこと)では、第1の複合体C1が形成されるだけでなく、第1の磁性粒子10と妨害分析物30との結合によって妨害複合体Cintも形成される。そして、妨害複合体Cintは、前記生体試料の前記液状媒体中に分散する。
【0070】
一般的に、過程aでは、特異的な受容体101を有する磁性粒子10に、可溶性の分子、細胞、粒子などであり得るその他の化学種30,40の存在下で、アッセイ対象の分子20が接触する。これらのうちの特定の化学種(図6の分子30)が、第1の磁性粒子10に非特異的に結合する。それでもなお、分子20は受容体101によって捕捉される。
【0071】
過程b.(図7を参照のこと)では、第1の磁性粒子10同士が、前記磁石により生じる磁場Bに従って、前記液状媒体中で局所的に吸引又は組織化される。磁性粒子の抽出を参考に前述した本発明の特定の実施形態では、前記液状媒体が前記反応緩衝液に置き換えられる。この特定の場合、前記磁性粒子を引き付ける永久磁石(図示せず)を使用するのが望ましい。
【0072】
一般的に、受容体101に結合した分子20(標的分析物)、および磁性粒子10に非特異的に結合した分子30が、前記液状媒体中で局所的に集合させられる。このような前記液状媒体中での所定の場所への第1の複合体C1及び妨害複合体Cintの局所的な集合により、第1の複合体C1と妨害複合体Cintとが非特異的凝集体60(すなわち、妨害凝集体60)を形成する。このような非特異的凝集体は、妨害複合体Cint同士の凝集によっても形成され得る。一般的に、前記非特異的凝集体は、目的の複合体(すなわち、複合体Cintと磁性粒子とが隣り合ってなる複合体)と本質的に同じようにして形成される。前記磁性粒子は、分析物分子(C1)や妨害分子(Cint)に結合していることもあれば、遊離粒子(PM1)となっている場合もある。このような非特異的凝集体60は、液状媒体中で、例えば透過濁度の測定等によって検出が可能である(図8を参照のこと)。
【0073】
前記凝集体が形成されることで、過程d.にて、前記液状媒体中での該凝集体の定量的測定が可能となる。
【0074】
前述のように、過程f.では、過程d.で得られた測定量を利用して、前記第2の複合体によって形成された前記特異的凝集体の量を計算する。この目的のために、該計算では、過程d.で得られた測定量と過程f.で得られる測定量の両方を考慮する。このようにして、そこから前記生体試料内に存在する標的分析物の量を推測することが可能となる。
【0075】
過程d.で凝集状態を測定することにより、妨害により偽陽性の結果になるというリスクを抑えることができる。このような妨害を起こし得る分子が存在していると、過程b.にて、第1の磁性粒子10(PM1)が、非特異的凝集体を形成する可能性がある。過程d.を省くと、このような凝集体は過程f.でしか検出されず、アッセイ対象の分子(標的分析物)の存在により生じる前記特異的凝集体と、別の分子(妨害分析物)の存在により生じる前記非特異的凝集体とを区別することができなくなる。過程d.を適用することで、例えば、干渉が原因となって結果が出なくなる初期の凝集閾値を決めることが可能となり、これにより、誤った結果になることが回避される。本発明の利点の一つとして、過程d.での凝集計測量と過程f.での凝集計測量を併用することにより、非特異的凝集を除いた特異的凝集の推定量を計算できるという点が挙げられる。
【0076】
任意で、過程d.の後に本発明の方法を停止することも可能である。非特異的凝集体の測定量が高過ぎる場合および/または同測定量が所定の感度閾値を上回った場合には、過程d.の測定後に本発明の方法を中断するようにしてもよい。そして、前記標的分析物に特異的な別の受容体を選択することによって、本発明の方法を再開することが可能である。
【0077】
つまり、本発明の特定の一実施形態では、上記の方法が、過程d.の後、すなわち、前記液状媒体中の妨害凝集体の量を表す前記第1の量を測定した後に停止させられる。この目的のために、結果の感度が不十分なものとなる量の閾値を設定することが可能である。これにより、それ以降の過程の実行が無駄になったり少なくとも有用でなくなったりするのが避けられる。よって、不要なコストや時間のロスを回避することができる。
【実施例
【0078】
(実施例)
【0079】
本発明の実現可能性や感度を立証するために、第1の一連の実験(実施例1~3)を実施する。
【0080】
(実施例1)
【0081】
PSA(前立腺特異抗原)アッセイ試験を実施する。磁性粒子(200nmカルボキシルアデムビーズ;Ademtech社製)を、抗PSA抗体で官能化する。粒子のバッチを、第1のクローン(P4:参照番号7820-0370;Bio-Rad社製)で官能化する。一般的な説明を参照すると、これらが第1の磁性粒子(PM1)となる。第2のバッチを、別のエピトープを認識する第2のクローン(214:参照番号7820-0217;Bio-Rad社製)で官能化する。一般的な説明を参照すると、これらが第2の磁性粒子(PM2)となる。精製PSA(参照番号P3338:Sigma-Aldrich社製)(10nM)を、様々な濃度のウマ血清(参照番号H1270:Sigma-Aldrich社製)で希釈して試料とする。つまり、試料中の標的PSAの濃度は判明している。
【0082】
試料のアッセイを、下記のようにして行う。
【0083】
71.5μLの試料を、1.5μLの官能化粒子PM1(P4)(1%)に2分間接触させる。
【0084】
永久磁石による媒体の磁化を3分間行い、上澄みを除去する。
【0085】
前記粒子に対し、73.5μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)、NaCl(800mM)、NaN3(0.09%)、および1.5μLの官能化粒子PM2(214)(1%)を添加する。
【0086】
このようにして形成された反応媒体を、下記の磁場シーケンスに供する。
【0087】
8mT:1秒間+3×(15mT:60秒間+0mT:28秒間+8mT:1秒間+0mT:1秒間)
【0088】
前記反応媒体をRC-LED(650nm)で照射した際の光強度を測定し、強度8mTの最後のパルスを印加する前と後での光学濃度差(Dodiff)を、計測対象のシグナルとして使用する。
【0089】
上記と同じ試料および粒子を用いるが、抽出過程(一般的な説明を参照すると、、過程c.)は実施せずに行う計測を、対照の計測とする。57μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)、NaCl(800mM)、NaN3(0.09%)、15μLの前記試料、および1.5μLの各バッチの官能化粒子からなる反応媒体を、上記と同じ磁場サイクルに供する。
【0090】
次の表1に示す結果が、試験対象の試料中のPSA濃度の関数として得られる。
【0091】
【表1】
【0092】
図9に、Dodiff3の結果および対応する曲線を、PSA濃度の関数として示す。
【0093】
本発明に係る方法により、前記試料中のPSA濃度と共に増加するシグナルが、対照の試験よりも高い活性で得られることが分かる。
【0094】
(実施例2)
【0095】
目的の試料中に妨害分子が存在する場合のシミュレーションが可能な試験を実施する。磁性粒子(200nmカルボキシルアデムビーズ;Ademtech社製)を、抗PSA抗体で官能化する。粒子(PM1)のバッチを、第1のクローン(P4:参照番号7820-0370;Bio-Rad社製)で官能化し、第2のバッチ(PM2)を、別のエピトープを認識する第2のクローン(214:参照番号7820-0217;Bio-Rad社製)で官能化する。前記粒子にグラフト結合させた抗PSA抗体に非特異的に結合可能な抗マウスIgG抗体(Ac)(M8642;Sigma-Aldrich社製)を添加したNaCl溶液(9g/l)を、試料とする。
【0096】
試料のアッセイを、下記のようにして行う。
【0097】
71.5μLの試料を、1.5μLの官能化粒子PM1(P4)(1%)に2分間接触させる。
【0098】
永久磁石による媒体の磁化を3分間行い、上澄みを除去する。
【0099】
前記粒子に対し、73.5μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)、NaCl(800mM)、NaN3(0.09%)、および1.5μLの官能化粒子PM2(214)(1%)を添加する。
【0100】
このようにして形成された反応媒体を、下記の磁場シーケンスに供する。
【0101】
8mT:1秒間+3×(15mT:60秒間+0mT:28秒間+8mT:1秒間+0mT:1秒間)
【0102】
前記反応媒体をRC-LED(650nm)で照射した際の光強度を測定し、強度8mTの最後のパルスを印加する前と後での光学濃度差(Dodiff3)を、計測対象のシグナルとして使用する。強度8mTの最初のパルス印加時にも、同様のシグナル(Dodiff0)を計測することによって、磁場印加前の媒体の凝集を測定するようにし得る。
【0103】
上記と同じ試料および粒子を用いるが、抽出過程は実施せずに行う計測を、対照の計測とする。57μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)、NaCl(800mM)、NaN3(0.09%)、15μLの前記試料、および1.5μLの各バッチの官能化粒子からなる反応媒体を、上記と同じ磁場サイクルに供する。
【0104】
凝集前の計測に関して、次の表2に示す結果が、前記反応媒体内の抗体濃度の関数として得られる。
【0105】
【表2】
図10に、Dodiff3の結果および対応する曲線を、凝集前のAc濃度の関数として示す。
【0106】
対照の計測では、磁場印加前のシグナルが、妨害抗体の濃度に依存していない。一方、磁化過程を設けると、同抗体の添加に起因して磁場印加前の凝集シグナルが増加するため、このような計測への警告の検討が可能になることが分かる。
【0107】
凝集後の計測に関して、次の表3に示す以下の結果が、前記反応媒体内の抗体濃度の関数として得られる。
【0108】
【表3】
図11に、Dodiff3の結果および対応する曲線を、凝集後のAc濃度をの関数として示す。
【0109】
いずれの場合も、妨害抗体の存在下で凝集シグナルが増加する。そのため、抽出時に行う最初の計測がなければ、前記試料がPSAを含んでいるのか妨害分子を含んでいるのかを判定することは不可能である。
【0110】
(実施例3)
【0111】
全血試料への本発明の方法の適用可能性の検証が可能な試験を実施する。
【0112】
磁性粒子(200nmカルボキシルアデムビーズ;Ademtech社製)を、抗PCT(プロカルシトニン)抗体で官能化する。粒子(PM1)のバッチを、第1のクローン(E86813M;Meridian Life Sciences社製)で官能化し、第2のバッチ(PM2)を、別のエピトープを認識する第2のクローン(E01342M;Meridian Life Sciences社製)で官能化する。組換えPCT(400nM)を、様々な濃度のヒト血液で希釈して試料とする。つまり、試料中の標的PCTの濃度は判明している。
【0113】
試料のアッセイを、下記のようにして行う。
【0114】
71.5μLの試料を、1.5μLの官能化粒子(E86813M)(1%)、71.5μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)、NaCl(800mM)、DTT(10mM)、およびNaN3(0.09%)に2分間接触させる。
【0115】
永久磁石による媒体の磁化を3分間行い、上澄みを除去する。
【0116】
前記粒子に対し、73.5μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)、NaCl(800mM)、DTT(10mM)、NaN3(0.09%)、および1.5μLの官能化粒子(E01342M)(1%)を添加する。
【0117】
このようにして形成された反応媒体を、下記の磁場シーケンスに供する。
【0118】
8mT:1秒間+3×(15mT:60秒間+0mT:28秒間+8mT:1秒間+0mT:1秒間)
【0119】
前記反応媒体をRC-LED(650nm)で照射した際の光強度を測定し、強度8mTの最後のパルスを印加する前と後での光学濃度差(Dodiff3)を、計測対象のシグナルとして使用する。
【0120】
前記血液試料から得た血漿試料についても、同じ試験を行う。1,500gの前記血液試料を10分間遠心分離して、該血液試料からその血漿を抽出する。血液試料のヘマトクリットは40.4%なので、血漿の予想PCT濃度は、血液の予想PCT濃度の関数として計算することが可能である。
【0121】
次の表4(血液)および表5(血漿)に示す結果が得られる。
【0122】
【表4】
【表5】
【0123】
図12は、これらの結果をグラフにしたものである。
【0124】
前記試料内のPCT濃度の関数として測定されるシグナルは、血液か血漿かといった後者の性質に依存しないという点に留意されたい。このことから、本記載の方法は全血試料に適用できるということが分かる。
【0125】
磁性粒子の凝集への妨害抗体の影響を実証するために、第2の一連の実験(実施例4~7)を実施する。
【0126】
この目的のために、様々な濃度の抗マウス抗体の存在下で凝集計測を行う。これは、妨害抗体の影響をシミュレーション又は模擬するためである。
【0127】
この一連の実験では、抗体P4(参照番号7820-0370:Bio-Rad社製)または抗体214(参照番号7820-0217:Bio-Rad社製)で官能化した粒子(200nmアデムビーズ)を使用する。
【0128】
(実施例4:PSAを含まない計測)
【0129】
本実施例では、第1および第2の磁性粒子(PM1,PM2)を同時に液状媒体に投入する。したがって、本実施例は、本発明に係る実施例ではない。
【0130】
第一の工程において、標準的なサイクルの工程を実施する。調製後の試料は、次のようなものを含む:
-57μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)およびNaCl(800mM);
-所望の濃度の抗マウス抗体(M8642;Sigma-Aldrich社製)を含む15μLのNaCl溶液(9g/l);
-3μLの粒子(P4)(1w/v%(質量対容量比濃度またはp/v(単位容量質量)));ならびに
-3μLの粒子(214)(1w/v%)。
【0131】
そして、下記のサイクル(Cagg)を前記試料に適用する。
【0132】
8mT:1秒間+3×(15mT:60秒間+0mT:28秒間+8mT:1秒間+0mT:1秒間)
【0133】
強度8mTの最初のパルスの前後での各試料の光学濃度差(Dodiff0)を、初期の粒子凝集レベルの指標として計測することが可能である。強度8mTの最後のパルスの前後での光学濃度差(Dodiff3)またはCaggサイクルの終了と開始との光学濃度差(ΔDO)を、最終的な凝集レベルとして計測することが可能である。
【0134】
表6に示す結果が、反応媒体中の抗体(Ac)濃度の関数として得られる。
【0135】
【表6】
DodiffやΔDOが導入された抗体の濃度に応じて増加していることから、選択された抗体が干渉を引き起こすことが分かる。一方で、Dodiff0の計測値は、抗体の濃度で大きく変化しないことから、妨害の警告にならない。
【0136】
(実施例5:PSAを含まない計測)
【0137】
調製後の試料は、次のようなものを含む:
-57μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)およびNaCl(800mM);
-所望の濃度の抗マウス抗体(M8642;Sigma-Aldrich社製)を含む15μLのNaCl溶液(9g/l);ならびに
-3μLの粒子(P4)(1w/v%)
【0138】
前記Caggサイクル(詳細は上記のとおり)を前記試料に適用した後、3μLの粒子(214)(1w/v%)を媒体に添加し、前記Caggサイクルを再び適用する。
【0139】
1回目のサイクルでは、前述と同じ指標(Dodiff 、Dodiff 、ΔDO)を粒子(P4)単独に関して計測し、2回目のサイクルでは、前述と同じ指標(Dodiff 、Dodiff 、ΔDO)を全粒子に関して計測することが可能である。次の表7に示す結果が得られる。
【0140】
【表7】
ΔDOやDodiff の指標は、抗体の投入濃度とともに増加する。しかし、本手順では、前記試料中の妨害に関係する、2回目のサイクルの適用前での凝集体の存在を、ΔDOやDodiff の値を用いて検出することができる。つまり、本実施例では、閾値を5mDOとすれば、妨害抗体を含んだ試料を検知することが可能となる。
【0141】
(実施例6:PSAの用量応答曲線)
【0142】
本実施例では、第1および第2の磁性粒子(PM1,PM2)を同時に液状媒体に投入する。したがって、本実施例は、本発明に係る実施例ではない。
【0143】
初めに、妨害抗体を含まない場合の用量応答曲線をプロットする。
【0144】
試料は、次のようなものからなる:
-57μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)およびNaCl(800mM);
-所望の濃度のPSA(P3338;Sigma-Aldrich社製)を含む15μLのNaCl溶液(9g/l);
-3μLの粒子(P4)(1w/v%);ならびに
-3μLの粒子(214)(1w/v%)。
【0145】
Caggサイクルの適用後、次の表8に示す結果が得られる。
【0146】
【表8】
そして、抗マウス抗体を添加した場合の用量応答曲線をプロットする。
【0147】
この目的のための前記試料は、次のようなものからなる:
-57μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)およびNaCl(800mM);
-所望の濃度のPSA(P3338;Sigma-Aldrich社製)を含む15μLのNaCl溶液(9g/l)および抗マウス抗体(5nM);
-3μLの粒子(P4)(1w/v%);ならびに
-3μLの粒子(214)(1w/v%)。
【0148】
よって、前記反応媒体中の抗体濃度は1nMとなる。Caggサイクルの適用後、次の表9に示す結果が得られる。
【0149】
【表9】
【0150】
図13は、これらの結果をグラフで示す。
【0151】
抗マウス抗体の有無にかかわらず、Dodiffの値は大きく変化しないため、妨害分子の存在を予測できないことが分かる。それどころか、この分子は、DodiffやΔDOの値の過大推定を招く。つまり、標準曲線として使用する抗体の不在下での用量応答曲線上にて、同抗体の存在下で測定されるΔDO値を報告した場合、PSAの力価の過大推定に繋がってしまう。例えば、PSAを含まない試料のアッセイ結果が約5nM、PSA(1nM)を含む試料の力価が8nM超となってしまう。
【0152】
(実施例7:PSAの用量応答曲線)
【0153】
初めに、妨害抗体を含まない場合の用量応答曲線をプロットする。
【0154】
試料は、次のようなものからなる:
-57μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)およびNaCl(800mM);
-所望の濃度のPSA(M8642;Sigma-Aldrich社製)を含む15μLのNaCl溶液(9g/l);ならびに
-3μLの粒子(P4)(1w/v%)。
【0155】
前記Caggサイクルを前記試料に適用した後、3μLの粒子(214)(1w/v%)を媒体に添加し、前記Caggサイクルを再び適用する。
【0156】
次の表10に示す結果が、前記反応媒体中に存在するPSAの量の関数として得られる。
【0157】
【表10】
2回目の凝集サイクル後のDodiffやΔDOの値は、予想どおり、PSAの量とともに増加するが、1回目の凝集サイクル後のDodiffやΔDOの値は、特異的凝集体が抗体P4を有する粒子と抗体214を有する粒子との間でのみ形成されるため、大きく変化しないということが分かる。よって、上記のように閾値が5mDOのままであるとすれば、これらの試料に対して警告は生じない。
【0158】
そして、抗マウス抗体を添加した場合の用量応答曲線をプロットする。
【0159】
試料は、次のようなものからなる:
-57μLのHEPES緩衝液(50mM、pH7.5)、F108(0.8%)およびNaCl(800mM);
-所望の濃度のPSA(M8642;Sigma-Aldrich社製)を含む15μLのNaCl溶液(9g/l)および抗マウス抗体(5nM);ならびに
-3μLの粒子(P4)(1w/v%)。
【0160】
前記Caggサイクルを前記試料に適用した後、3μLの粒子(214)(1w/v%)を媒体に添加し、前記Caggサイクルを再び適用する。
【0161】
次の表11に示す結果が、前記反応媒体中に存在するPSAの量の関数として得られる。
【0162】
【表11】
同じPSA濃度では、Dodiff やΔDOの値が、妨害抗体のない場合よりも高くなる。しかし、この場合は、Dodiff やΔDOの測定により、一般的な計測とは違って妨害分子の存在を検知することができる。したがって、誤った結果を報告しないように警告を適用することが可能である。
【0163】
図14に、妨害抗体の存在する場合と存在しない場合の光学濃度差Dodiff1(mDO)をそれぞれ示す。
【0164】
本発明の方法は、既知の種類の装置を当業者が自身の知識で変更してなる装置で適宜実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】