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特表2024-544418グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログを合成するためのプロセス
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  • 特表-グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログを合成するためのプロセス 図1
  • 特表-グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログを合成するためのプロセス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログを合成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/04 20060101AFI20241122BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C07K1/04
C07K14/605 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537904
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2022087440
(87)【国際公開番号】W WO2023118416
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21217600.2
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519445576
【氏名又は名称】ジーランド・ファルマ・アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】メランデル,セラエス
(72)【発明者】
【氏名】マリク,レイラ
(72)【発明者】
【氏名】パウラス,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA33
4H045FA40
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログ、例えばグレパグルチドを得るためのプロセスに関する。特に、本明細書に記載のプロセスは、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログのマルチステップ精製方法を使用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを生成する方法であって、GLP-2アナログは、以下の式:
-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えば、メチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
は、存在しないか、またはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)、
によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体であり、
方法は、以下のステップ:
i)粗GLP-2アナログをカラムに負荷するステップと、
ii)第1の緩衝系でカラムのpHを調整するステップとを含み、
ステップii)は、カラムのpHを酸性pHから中性またはわずかに塩基性pHに上昇させることにより、ペプチドがカラム上にある間にペプチドの等電点を通過させることを含む、方法。
【請求項2】
第1の緩衝系はリン酸緩衝系である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
は、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
カラムの酸性pHを上昇させるステップは、pHを中性pH(pH7)に上昇させるステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
カラムの酸性pHを上昇させるステップは、pHをpH≧7.2、例えば約7.5のpHに上昇させるステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(1)i)GLP-2アナログをカラムに負荷するステップ、
ii)リン酸塩緩衝液/リン酸を含む第1の緩衝系でカラムのpHを調整するステップ、次いで、
iii)GLP-2アナログを含有するプールを溶出するステップ、次いで
(2)i)ステップ(1)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
ii)トリフルオロ酢酸を含む第2の緩衝系でカラムを洗浄し、GLP-2アナログを含有するプールを溶出するステップ、次いで
(3)i)ステップ(2)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
ii)酢酸/酢酸アンモニウムを含む第3の緩衝系でカラムを洗浄し、GLP-2アナログを含有するプールを溶出するステップ、次いで、
(4)i)ステップ(3)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
ii)酢酸/酢酸アンモニウムを含む第4の緩衝系でカラムを洗浄し、GLP-2アナログを含有するプールを溶出するステップ
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
中の少なくとも1つのLys単位は、合成中にトリチル保護基で保護される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
は、Lysの2~6個のアミノ酸単位のペプチド配列であり、方法は、
i)リンカーを用いて、第1のP-Lys(Trt)-OHを固体ペプチドレジンに結合させるステップと、
ii)Lys(Trt)アミノ酸単位からP基を除去するステップと、
iii)リンカーを用いて、第2のP-Lys(Trt)-OHを固体ペプチドレジンに結合したLys(Trt)アミノ酸単位に結合させるステップと、
iv)第2のLys(Trt)アミノ酸単位からP基を除去するステップと、
v)GLP-2アナログが合成されるまで、後続のアミノ酸単位を結合させるステップと、
vi)固体ペプチドレジンからGLP-2アナログを切断するステップと、
vii)GLP-2アナログを精製するステップを含み、
各Pは、保護基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
X5はThrであり、および/またはX11はAlaである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
GLP-2アナログは以下:
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)
ZP2949 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKK-OH(配列番号2);
ZP2711 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH(配列番号3);
ZP2469 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号4);
ZP1857 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号5);および
ZP2530 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-OH(配列番号6)
から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
GLP-2アナログは以下:
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)
ZP2949 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKK-OH(配列番号2);
ZP2711 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH(配列番号3);および
ZP2469 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号4)
から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
GLP-2アナログは:
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
X5はSerであり、および/またはX11はSerである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
GLP-2アナログは以下:
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7);
ZP1855 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号8);および
ZP2242 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号9)
から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
GLP-2アナログは:
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7)である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)アナログを得るためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトGLP-2は、33アミノ酸のペプチドであり、以下の配列:Hy-His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-OH(配列番号10)(ここで、Hyは水素である)を有する。これは、腸の腸内分泌L細胞および脳幹の特定領域における、プログルカゴンの特異的な翻訳後プロセシングに由来する。GLP-2は、クラスIIグルカゴン・セクレチン・ファミリーに属する単一のGタンパク質共役型受容体に結合する。
【0003】
GLP-2は、陰窩における幹細胞増殖の刺激、および絨毛におけるアポトーシスの抑制を介して、小腸粘膜上皮の著しい増殖を誘導することが報告されている(Druckerら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:7911~7916)。GLP-2はまた、結腸を成長させる効果もある。さらに、GLP-2は胃内容排出および胃酸分泌を抑制し(Wojdemannら、1999、J.Clin.Endocrinol.Metab.84:2513~2517)、腸管バリア機能を増強し(Benjaminら、2000、Gut 47:112~119)、グルコーストランスポーターのアップレギュレーションを介して腸管ヘキソース輸送を刺激し(Cheeseman、1997、Am.J.Physiol.R1965~71)、腸管血流を増加させる(Guanら、2003、Gastroenterology、125:136~147)。
【0004】
グルカゴン様ペプチド-2受容体アナログが腸疾患の処置の治療可能性を有することは、当技術分野において認識されている。しかしながら、33アミノ酸の消化管ペプチドである天然のhGLP-2は、ヒトでの半減期が全長GLP-2で約7分[1-33]、切断型GLP-2で約27分[3-33]と非常に短いため、臨床現場ではあまり有用でない。大部分では、半減期の短さは、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)という酵素による分解によるものである。したがって、当技術分野では、より優れた薬物動態学的特性を有するGLP-2受容体アゴニストを開発すること、特にGLP-2分子の半減期を改善することが試みられてきた。例として、置換を有するGLP-2アナログは、例えば、半減期を7分(天然のGLP-2)から約2時間に延長する2位にGly置換を含むGLP-2アナログ([hGly2]GLP-2、テデュグルチド)などが示唆されている。脂肪酸鎖によるペプチド薬物のアシル化は、生物学的効力を破壊することなく、全身循環を延長するために、ならびに酵素的安定性を高めるために有益であることも証明されている。しかしながら、これらの試みはGLP-2アナログの薬物動態を改善し、当技術分野では「長時間作用性」と記述されることもあるが、これは半減期が数分ではなく数時間のオーダーである天然のhGLP-2との比較であることを念頭に置く必要がある。このことは、GLP-2アナログを依然として患者に1日あたり1回または複数回投与する必要があることを意味する。
【0005】
WO2006/117565には、[hGly]GLP-2と比較して1つまたは複数の置換を含み、インビボでの生物学的活性を改善し、および/または例えばインビトロ安定性アッセイで評価される化学的安定性を改善したGLP-2アナログが記載されている。特に、野生型GLP-2配列の8位、16位、24位および/または28位の1つまたは複数に置換を有し、場合により、2位ならびに3位、5位、7位、10位および11位の1つまたは複数にさらなる置換を組み合わせ、ならびに/またはアミノ酸31~33の1つまたは複数の欠失を有するGLP-2アナログが記載されている。これらの置換はまた、N末端またはC末端の安定化ペプチド配列の付加と組み合わせることもできる。
【0006】
WO2006/117565に開示されている分子の中には、化学的安定性および/または生物学的活性を改善するように設計されたZP1848(グレパグルチドとも呼ばれる)がある。ZP1848およびその代謝産物(すなわち、グレパグルチド)を含むGLP-2アナログの投与レジメは、WO2018/229252に記載されている。
【発明の概要】
【0007】
広義には、本発明は、ZP1848などのグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)アナログを合成および精製するための改良された方法に関する。
したがって、本発明は、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログを生成する方法であって、GLP-2アナログは、以下の式:
-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R(配列番号11)
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えば、メチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
は、存在しないか、またはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体である、方法に関する。
【0008】
第1の態様では、本発明は、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを生成する方法であって、
i)粗GLP-2アナログをカラムに負荷するステップと、
ii)第1の緩衝系でカラムのpHを調整するステップとを含み、
ステップii)は、ペプチドがカラム上にある間にペプチドの等電点を通過させることを含む、方法を提供する。
【0009】
本明細書の文脈では、図1に示すように、カラムのpHを調整するステップを「Pre-RPC1」と呼ぶ。このPre-RPC1中に、O→Nアシル基転位が生じる。アシル基転位は、ペプチドがカラム上にある間に生じることが理解される。換言すれば、ステップii)は、ペプチドがカラム上にある間にペプチドの等電点を通過し、O→Nアシル基転位を行うことを含む。
【0010】
より詳細には、公表されている方法ではGLP-2アナログのペプチド切断時にN→Oアシル基転位が生じる。このようなアシル基転位は当技術分野で認識されており、その後の精製ステップの前に溶液中のペプチドのpHを中性に調整し、酸性に戻すことでこれらの不純物が減少し、実質的にO→Nアシル基転位が行われることが知られている。
【0011】
本発明以前は、このpH調整は溶液中で行われていた。しかしながら、本発明のGLP-2アナログでは、望ましくない沈殿物が観察される。驚くべきことに、本発明者らは、このO→Nアシル基転位をカラム上で行うことで、沈殿物に起因する材料の損失および処理の煩雑さを回避できることを見出した。
【0012】
カラム上でのペプチドの等電点通過は、本発明者らの知る限り、新しい一般的な方法論を構成し、事実上、溶液中ではなくカラム上でこの「変換」または「精製」ステップを実行する。
【0013】
換言すれば、本発明は、GLP-2アナログがカラム上にある間(Pre-RPC1)、GLP-2アナログに対して、O→Nアシル基転位を行う方法を提供する。
この種のペプチド合成にリン酸緩衝液を使用することは、不要なオリゴマーおよびC末端の脱アミド化生成物を効率よく除去できることが知られているため、望ましい。しかしながら、特許請求された構造のGLP-2アナログはリン酸緩衝液中で沈殿することが知られており、リン酸緩衝液の使用はO→Nアシル基転位にとって問題となる。したがって、本発明者らがリン酸緩衝液を使用することで、材料の損失を回避できることは、さらに驚くべきことである。pH調整ステップを使用したカラム上でのアシル基転位のこの性能は、プロセスステップ(溶液中での別個のpH調整)を省くというさらなる利点をもたらす。
【0014】
好適には、第1の緩衝系はリン酸緩衝系である。換言すれば、第1の緩衝系は、リン酸緩衝液/リン酸に基づく。
ペプチドの等電点pH(I)は、当技術分野で公知の方法を使用して計算することができ、または実験的に測定することもできる。分子全体の電荷がゼロ(中性電荷)であるか、または統計的平均で電気的に中性であるpHである。
【0015】
本発明では、等電点の通過は、カラムのpHを酸性pHから上昇させることを意味することが理解される。すなわち、ペプチドがカラム上にある間にペプチドの等電点を通過させることは、カラムの酸性pHを中性pH(pH7)に、好適にはわずかに塩基性(アルカリ性)pH、例えば≧7.2、例えば約7.5に調整することを含むことができる。
【0016】
したがって、いくつかの実施形態では、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを精製するプロセスは、
i)粗GLP-2アナログをカラムに負荷するステップ、
ii)第1の緩衝系でカラムのpHを調整するステップを含み、
ステップii)は、カラムのpHを7.5より高くし、次いでカラムのpHを酸性pHに下げるための緩衝液の連続使用を含む。[Pre-RPC1]
酸性pHとは、pH7未満、例えばpH5未満、例えばpH3未満のことである。
【0017】
好適には、カラムのpHを≦2.5、すなわちpH2.5以下に下げる。
好適には、ステップii)は、カラム上でO→Nアシル基転位を引き起こし、アセチル化およびトリフルオロアセチル化不純物を加水分解する。カラム上でこれを行うことで、所望の化学変換を達成しながら、望ましくない沈殿を防ぐことができる。
【0018】
本明細書に記載の実施例では、カラムはC18カラムであるが、本発明はそれほど限定されるものではない。好適なカラムは、当業者には明らかである。いくつかの実施形態では、カラムは、C18カラムである。いくつかの実施形態では、カラムは、C8カラムである。
【0019】
有利なことに、カラム上でのこのO→Nアシル基転位は、その後の精製ステップと同じカラム上で達成することができる。
本発明はさらに、SPPSにより合成されるGLP-2アナログを4ステップのクロマトグラフィー精製プロセス(本明細書ではRPC1~4と呼ぶ)を介して精製する方法を提供する。上述したように、カラム上でのO→Nアシル基転位(Pre-RPC1)は、第1の「精製」ステップ(RPC1)と同じカラム上で行うことができる。あるいは、4ステップのクロマトグラフィー精製プロセスは、O→Nアシル基転位を行うために溶液中で既にpH調整プロセスを行ったSPPSにより合成されるGLP-2アナログに対して行うこともできる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は、SPPSにより合成されるGLP-2アナログを精製するための5ステップのクロマトグラフィー精製プロセスを提供することができ、本方法は、
(1)Pre-RPC1
i)GLP-2アナログをカラムに負荷するステップと、
ii)第1の緩衝系でカラムのpHを調整するステップ、
ステップii)は、カラムのpHを7.5より高くし、次いでカラムのpHを酸性pHに下げるための緩衝液の連続使用を含む、次いで
(2)RPC1
i)第1の緩衝系を使用してGLP-2アナログを含有するプールを溶出するステップ、次いで
(3)RPC2
i)ステップ(2)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
ii)トリフルオロ酢酸を含む第2の緩衝系でカラムを洗浄し、GLP-2アナログを含有するプールを溶出するステップ、次いで
(4)RPC3
i)ステップ(3)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
ii)酢酸/酢酸アンモニウムを含む第3の緩衝系でカラムを洗浄し、GLP-2アナログを含有するプールを溶出するステップ、次いで
(5)RPC4
i)ステップ(4)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
ii)酢酸/酢酸アンモニウムを含む第4の緩衝系でカラムを洗浄し、GLP-2アナログを含有するプールを溶出するステップを含む。
【0021】
任意のステップで得られたGLP-2アナログを含むプールは、次のステップのためにカラム上に直接負荷してもよいし、蒸発により濃縮してもよいことが理解される。
いくつかの実施形態では、本方法は、ステップ(5)で得られたGLP-2アナログをカラムに負荷し、10mM AcOHおよびアセトニトリルを含む緩衝系で洗浄する脱塩ステップをさらに含む。
【0022】
さらなる一態様では、本発明は、固相ペプチド合成(SPPS)によりGLP-2アナログを合成する方法に関し、Zは、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列であり、Z中のLys単位の少なくとも1つは、合成中にトリチル保護基で保護される。
【0023】
トリチル基は、
【0024】
【化1】
【0025】
である。
好適には、ZはLysの2~6個のアミノ酸単位のペプチド配列であり、本方法は、以下のステップ:
i)リンカーを用いて、第1のP-Lys(Trt)-OHを固体ペプチドレジンに結合させるステップと、
ii)Lys(Trt)アミノ酸単位からP基を除去するステップと、
iii)リンカーを用いて、第2のP-Lys(Trt)-OHを固体ペプチドレジンに結合したLys(Trt)アミノ酸単位に結合させるステップと、
iv)第2のLys(Trt)アミノ酸単位からP基を除去するステップと、
v)GLP-2アナログが合成されるまで、後続のアミノ酸単位を結合させるステップと、
vi)固体ペプチドレジンからGLP-2アナログを切断するステップと、
vii)GLP-2アナログを精製するステップとを含み、
各Pは、保護基、例えばFmocである。
【0026】
SPPS中にこのLys(Trt)戦略を用いると、相対保持時間1.1に存在する最も問題のあるピークを含め、Lys(Boc)粗生成物に存在する全てのLys(Boc)→Lys(t-Bu)付加t-Buピークの消失をもたらす。
【0027】
いくつかの実施形態では、Zは、Lysの6個のアミノ酸単位のペプチド配列であり、Lys39およびLys38は、P-Lys(Trt)-OHとして結合している。いくつかの実施形態では、Zの残りのLysアミノ酸単位は、P-Lys(Boc)-OHとして結合している。すなわち、合成中のリジンテールは[K(Boc)][K(Trt)]である。
【0028】
驚くべきことに、本発明者らは、Lysの6個のアミノ酸単位のうち2個をトリチル保護すること、例えばLys39およびLys38を保護することで、粗生成物からt-Bu不純物の形成を防ぐのに十分であることを見出した。理論に束縛されることを望まないが、Lys39およびLys38にLys(Trt)を使用する根拠は、i)Fmoc/t-Bu SPPSにおいてLys(Boc)を使用すると、Lys-t-Bu付加物が形成すること(Pawlasら、Peptides、2014、108)、およびii)C末端に最も近いLys(Boc)側鎖(すなわち、本明細書に記載のペプチドではLys39およびLys38)が、メインピークに最も近くから溶出する付加的なt-Bu不純物が形成すること関与することが、PolyPeptide Groupによる未発表の研究で明らかになったことである。本発明者らは、C末端からさらに離れたLys(Boc)残基は、さらに溶出する+56Da付加物の形成を引き起こし、その意味で下流の処理中に問題が少ないことを観察した。したがって、これらの理由から、重要なLys-t-Bu付加物の形成に関係すると理解されているこれらのLysの位置、すなわちLys38とLys39とにのみLys(Trt)を使用するのは合理的である。
【0029】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図を参照しながら、限定ではなく例として以下で説明する。しかしながら、本発明の様々なさらなる態様および実施形態は、本開示の観点から当業者には明らかである。
【0030】
本明細書において使用される「および/または」は、2つの指定された特徴または構成要素の各々について、他方の特徴または構成要素を有するかまたは有さない具体的な開示とみなされる。例えば、「Aおよび/またはB」は、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBのそれぞれの具体的な開示とみなされ、あたかもそれぞれが本明細書に個別に記載されているかのように解釈される。
【0031】
文脈上そうでない場合を除いて、上記に記載された特徴の説明および定義は、本発明のいかなる特定の態様または実施形態に限定されるものではなく、記載された全ての態様および実施形態に等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】SPPSにより合成されるGLP-2アナログを精製するためのO→Nアシル基転位(Pre-RPC1)および4ステップ(RPC1~4)クロマトグラフィー精製プロセスの概要を示す図である。
図2】+56Da EIC MSによるZP1848の3つの合成を示すグラフである。約28分にメインピーク。上部パネル:[K(Boc)]を用いた合成からの精製ZP1848。残存する+56Daの不純物に注意。中段パネル:[K(Boc)]を用いた合成の粗生成物。底部パネル:[K(Trt)]を用いた合成の粗生成物。
図3】+56Da EIC MSによる2つのFmoc-K-NH粗生成物を示すグラフである。上部パネル:[K(Boc)]レジンからの粗生成物。底部パネル[K(Boc)][K(Trt)]レジンからの粗生成物。
図4】ZP1848の切断後を示すグラフである。上部グラフ:切断溶液中で1時間半後(実施例1.11と同じ手順)。底部グラフ:RPC1でpH処理後(実施例1.12と同様の手順)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、GLP-2アナログの精製のための方法を提供する。本明細書に記載されるように、精製ステップ(別段の記載がある場合を除く)はカラムで行われる。好適には、カラムは、C18カラムである。
【0034】
クロマトグラフィーによる精製方法は当技術分野で周知である。一態様では、本発明は、化学修飾(すなわち、アシル基転位)を含む精製ステップを、溶液中ではなくカラム上で行うことができるという驚くべき洞察に関する。本発明は、GLP-2アナログの4ステップのクロマトグラフィー精製プロセスをさらに提供する。本明細書に記載されるように、この4ステップのクロマトグラフィー精製プロセスにより、不純物のレベルが低いGLP-2が高収率で生成される。
【0035】
したがって、GLP-2アナログを精製するための本発明のプロセスは、好適には、一連のカラムベースのプロセスを含む。これらのプロセスは、GLP-2アナログを含有する溶液をカラムに負荷した後、洗浄し、緩衝系で溶出するステップを含み、いずれの場合もGLP-2アナログを含むプールを得る。各洗浄プロセスは、2つ以上のステップを含む。クロマトグラフィー精製では通常、溶離液(緩衝液)の変更はグラジエントを適用することによって達成されることが理解される。
【0036】
いくつかの実施形態では、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを精製するためのプロセスは、以下のステップ:
i)GLP-2アナログをカラムに負荷するステップ、
ii)第1の緩衝系で洗浄することにより、カラムのpHを調整するステップを含み、
第1の緩衝系は、
緩衝液A:0.1% HPOと、
緩衝液B:MeCNと、
緩衝液C:45mM HPO、pH2.2+100mM NaClと、
緩衝液D:45mM HPO、pH7.5~8.0+100mM NaClとを含み、
カラムは、95%緩衝液Cおよび5%緩衝液Bの混合物で予め平衡化されており、
洗浄は、以下の順序である:
ステップ1:95%緩衝液Cおよび5%緩衝液Bの混合物、
ステップ2:pHが7.5より高くなるまで、95%緩衝液Dおよび5%緩衝液Bの混合物、
ステップ3:pHが2.5未満になるまで、95%緩衝液Cおよび5%緩衝液Bの混合物。
【0037】
ステップ1では、カラムベースの精製で一般的なように、カラムを均質化、または平衡化する。
ステップ2および3は、本明細書では「Pre-RPC1」と呼ぶことがある。本明細書に記載されるように、有利なことに、Pre-RPC1におけるpH調整は、合成中の不要なN→Oアシル基転位から生じる不純物を除去するために、溶液中で従来行われてきたO→Nアシル基転位を引き起こす。
【0038】
ステップ3の後、カラムを93% Aおよび7% Bを含有する溶液で洗浄してもよい。好適には、洗浄はさらに、
ステップ4:緩衝液Bの含有量を7%から22%まで(緩衝液Aは93%から78%まで)、好適には12カラム容量にわたって直線的に増加させること、および
ステップ5:好適には溶出が完了するまで、22%緩衝液Bおよび78%緩衝液Aの混合物であり、GLP-2アナログを含有するプールを得ることを含む。
【0039】
ステップ4および5はGLP-2アナログの溶出であり、本明細書では「RPC1」またはペプチドの「一次元」クロマトグラフィー精製と呼ばれる。この精製は、ペプチドおよび不純物と、カラム媒体および溶出媒体との間の相互作用の違いの結果である。
【0040】
いくつかの実施形態では、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを精製するプロセスは、以下のステップ:
iii)ステップii)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
iv)カラムを第2の緩衝系で洗浄するステップとをさらに含み、
第2の緩衝系は、
緩衝液A:0.1% TFAと、
緩衝液B:MeCNとを含み、
カラムは、90%緩衝液Aおよび10%緩衝液Bの混合物で予め平衡化されており、
洗浄は、以下の順序である:
ステップ1:90%緩衝液Aおよび10%緩衝液Bの混合物、
ステップ2:緩衝液Bの含有量を10%から19%まで(緩衝液Aは90%から81%まで)、好適には1カラム容量にわたって直線的に増加させること、および
ステップ3:緩衝液Bの含有量を19%から30%まで(緩衝液Aは81%から70%まで)、好適には12カラム容量にわたって直線的に増加させ、次いで、カラムの洗浄を継続してGLP-2アナログを含有するプールを溶出すること。
【0041】
ステップiii)およびiv)は、本明細書では「RPC2」または「二次元」と呼ばれることがある。
いくつかの実施形態では、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを精製するためのプロセスは、以下のステップ:
v)ステップiv)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
iv)カラムを第3の緩衝系で洗浄するステップとをさらに含み、
カラムは、85%緩衝液Aおよび15%緩衝液Bの混合物で予め平衡化されており、
第3の緩衝系は、
緩衝液A:100mM NHOAc+0.5%AcOHと、
緩衝液B:MeCNとを含み、
洗浄は、以下の順序である:
ステップ1:85%緩衝液Aおよび15%緩衝液Bの混合物、
ステップ2:緩衝液Bの含有量を15%から29%まで(緩衝液Aは85%から71%まで)、好適には1カラム容量にわたって直線的に増加させること、
ステップ3:緩衝液Bの含有量を29%から37%まで(緩衝液Aは71%から63%まで)、好適には10カラム容量にわたって直線的に増加させること、および
ステップ4:30%緩衝液Aおよび70%緩衝液Bの混合物で、GLP-2アナログを含有するプールを溶出すること。
【0042】
ステップv)およびvi)は、本明細書では「RPC3」または「三次元」と呼ばれることがある。
いくつかの実施形態では、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを精製するためのプロセスは、以下のステップ:
vii)ステップvi)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
viii)カラムを第4の緩衝系で洗浄するステップとをさらに含み、
第4の緩衝系は、
緩衝液A:5mM NHOAc+0.1%AcOHと、
緩衝液B:MeCNと、
緩衝液C:100mM NHOAc+0.5%AcOHとを含み、
カラムは、90%緩衝液Cおよび10%緩衝液Bの混合物で予め平衡化されており、
洗浄は、以下の順序である:
ステップ1:好適には1カラム容量で、90%緩衝液Cおよび10%緩衝液Bの混合物、
ステップ2:好適には1カラム容量で、90%緩衝液Aおよび10%緩衝液Bの混合物、
ステップ3:緩衝液Bの含有量を10%から13%まで(緩衝液Aは90%から87%まで)、好適には1カラム容量にわたって直線的に増加させること、および
ステップ4:緩衝液Bの含有量を13%から25%まで(緩衝液Aは87%から75%まで)、好適には12カラム容量にわたって直線的に増加させ、GLP-2アナログを含有するプールを溶出すること。
【0043】
ステップvii)およびviii)は、本明細書では「RPC4」または「四次元」と呼ばれることがある。
いくつかの実施形態では、固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを精製するためのプロセスは、以下のステップ:
ix)ステップviii)で得られたGLP-2アナログを含有するプールをカラムに負荷するステップと、
x)カラムを脱塩緩衝系で洗浄するステップとをさらに含み、
脱塩緩衝系は、
緩衝液A:10mM AcOHと、
緩衝液B:MeCNとを含み、
カラムは、95% Aおよび5% Bの混合物で予め平衡化されており、
洗浄は、以下の順序である:
ステップ1:95% Aおよび5% Bの混合物、および
ステップ2:緩衝液Bの含有量を5%から50%まで(緩衝液Aは95%から50%まで)、好適には1カラム容量にわたって直線的に増加させること。
【0044】
ステップix)およびx)は、「脱塩」または「SPE」と呼ばれることがある。
固相ペプチド合成(SPPS)により合成されるGLP-2アナログを精製するためのプロセスは、凍結乾燥ステップをさらに含むことができる。
【0045】
好適には、カラムはC18カラムであるが、本発明はそれほど限定されるものではない。任意の好適なカラムを使用することができる。
さらなる一態様では、本発明は、固相ペプチド合成(SPPS)によりGLP-2アナログを合成する方法に関し、Zは、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列であり、Z中のLys単位の少なくとも1つは、合成中にトリチル保護基で保護される。
【0046】
がLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列であるいくつかの実施形態では、固相ペプチド合成(SPPS)によりGLP-2アナログを合成する方法は、以下のステップ:
i)リンカーを用いて、Fmoc-Lys(Trt)-OHを固体ペプチドレジンに結合させるステップと、
ii)Lys(Trt)アミノ酸単位からFmoc基を除去するステップと、
iii)GLP-2アナログが合成されるまで、後続のアミノ酸単位を結合させるステップと、
iv)固体ペプチドレジンからGLP-2アナログを切断するステップと、
v)GLP-2アナログを精製するステップとを含む。
【0047】
がLysの2~6個のアミノ酸単位のペプチド配列であるいくつかの実施形態では、GLP-2アナログを合成する方法は、以下のステップ:
i)リンカーを用いて、第1のFmoc-Lys(Trt)-OHを固体ペプチドレジンに結合させるステップと、
ii)Lys(Trt)アミノ酸単位からFmoc基を除去するステップと、
iii)リンカーを用いて、第2のFmoc-Lys(Trt)-OHを固体ペプチドレジンに結合したLys(Trt)アミノ酸単位を結合させるステップと、
iv)第2のLys(Trt)アミノ酸単位からFmoc基を除去するステップと、
v)GLP-2アナログが合成されるまで、後続のアミノ酸単位を結合させるステップと、
vi)固体ペプチドレジンからGLP-2アナログを切断するステップと、
vii)GLP-2アナログを精製するステップとを含む。
【0048】
したがって、ZがLysの6個のアミノ酸単位のペプチド配列である場合、モチーフは[K(Boc)][K(Trt)]であってもよい。他の実施形態では、モチーフは、[K(Boc)][K(Trt)]、[K(Boc)][K(Trt)]、[K(Boc)][K(Trt)]、[K(Boc)][K(Trt)]、または[K(Trt)]であってもよい。すなわち、(v)で結合したLysアミノ酸単位の後続ステップは、TrtまたはBocで保護されていてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、モチーフは、[K(Boc)][K(Trt)]または[K(Trt)]である。いくつかの実施形態では、モチーフは、[K(Boc)][K(Trt)]である。
定義
別段の定めがない限り、以下の定義は、上記の記述で使用されている特定の用語について示されている。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲を通して、天然アミノ酸の従来の1文字コードおよび3文字コードが使用される。本発明のペプチド中の全てのアミノ酸残基は、好ましくはL-配置のものである。
GLP-2アナログ
本発明のグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログは、以下の式:
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えば、メチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
およびZは、独立して、存在しないか、またはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)、
またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体によって表される。
【0051】
およびZは、独立して、存在する、および/もしくは存在しないか、またはLysの1~6個のアミノ酸単位、すなわち1、2、3、4、5または6個のLys残基のペプチド配列である。Lys残基は、D-配置またはL-配置のいずれを有してもよいが、好ましくはL-配置を有する。特に好ましい配列Zは、4、5または6個の連続したリジン残基、特に6個の連続したリジン残基の配列である。例示的な配列ZはWO01/04156に示されている。
【0052】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、X5はThrである。いくつかの実施形態では、X11はAlaである。いくつかの実施形態では、RはNHである。
【0053】
いくつかの実施形態では、Zは存在しない。
いくつかの実施形態では、Zは、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。いくつかの実施形態では、Zは、Lysの2~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。いくつかの実施形態では、Zは、Lysの3~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。いくつかの実施形態では、Zは、Lysの4~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。いくつかの実施形態では、Zは、Lysの5~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。いくつかの実施形態では、Zは、Lysの6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。いくつかの実施形態では、Zは、Lysの1~2個のアミノ酸単位のペプチド配列である。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明のグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログは、以下の式:
-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えば、メチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
は、存在しないか、またはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体によって表される。
【0055】
いくつかの実施形態では、Zは、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。
本発明のいくつかの実施形態では、上記の式において、X5はThrであり、および/またはX11はAlaである。これらのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログの例は、
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)
ZP2949 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKK-OH(配列番号2);
ZP2711 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH(配列番号3);
ZP2469 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号4);
ZP1857 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号5);または
ZP2530 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-OH(配列番号6)
を含む。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログは、
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)である。
【0057】
すなわち、GLP-2アナログは、以下の式:
H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu10-Ala11-Thr12-Ile13-Leu14-Asp15-Ala16-Leu17-Ala18-Ala19-Arg20-Asp21-Phe22-Ile23-Ala24-Trp25-Leu26-Ile27-Ala28-Thr29-Lys30-Ile31-Thr32-Asp33-Lys34-Lys35-Lys36-Lys37-Lys38-Lys39-NH
で表される。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の式において、X5はSerであり、および/またはX11はSerである。これらのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログの例は、
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7);
ZP1855 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号8);または
ZP2242 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号9)
を含む。
【0059】
本発明の一実施形態では、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログは、ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7)である。
【0060】
すなわち、GLP-2アナログは、以下の式:
H-His-Gly-Glu-Gly-Ser-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu10-Ser11-Thr12-Ile13-Leu14-Asp15-Ala16-Leu17-Ala18-Ala19-Arg20-Asp21-Phe22-Ile23-Ala24-Trp25-Leu26-Ile27-Ala28-Thr29-Lys30-Ile31-Thr32-Asp33-Lys34-Lys35-Lys36-Lys37-Lys38-Lys39-NH
で表される。
【0061】
いくつかの実施形態では、GLP-アナログは、以下:
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)
ZP2949 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKK-OH(配列番号2);
ZP2711 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH(配列番号3);
ZP2469 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号4);
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7);
ZP1855 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号8);または
ZP2242 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号9)
から選択される。
【0062】
本発明は、GLP2アナログを作製および精製する方法に関する。これらのペプチドは原薬として使用されることを意図している。本発明は、本発明の方法により得られるGLPアナログを含む。
【0063】
本発明のペプチド(原薬)は、塩または他の誘導体の形態で提供され得ることが理解されるべきである。したがって、精製および任意のさらなるステップの後、ペプチドは最終的に塩または他の誘導体として得ることができることが理解される。塩には、酸付加塩および塩基性塩などの薬学的に許容される塩が含まれる。酸付加塩の例としては、塩酸塩、クエン酸塩、塩化物塩および酢酸塩が挙げられる。好ましくは、塩は、酢酸塩である。一般に、塩は塩化物塩でないことが好ましい。塩基性塩の例としては、カチオンがナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにアンモニウムイオンN(R(R)(ここで、RおよびRがそれぞれ独立して、任意に置換されたC1~6-アルキル、任意に置換されたC2~6-アルケニル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールを指定する)から選択される塩が挙げられる。薬学的に許容される塩の他の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、PA、U.S.A.、1985およびより最新の版、ならびにthe Encyclopaedia of Pharmaceutical Technologyに記載される。
【0064】
好ましくは、塩は酢酸塩であり、これは、本明細書に記載されているように、ステップRPC1~RPC4およびその後の脱塩の後に得ることができる。
好ましい実施形態では、本発明のGLP-2アナログの酢酸塩は、ZP1848-酢酸塩、ZP2949-酢酸塩、ZP2711-酢酸塩、ZP2469-酢酸塩、ZP1857-酢酸塩、ZP2530-酢酸塩、ZP1846-酢酸塩、ZP1855-酢酸塩およびZP2242-酢酸塩からなる群から選択される。本明細書の文脈では、「ZP1848-酢酸塩」という用語は、酢酸塩の形態でのZP1848分子を指す。GLP-2アナログの酢酸塩は、式(GLP-2アナログ),x(CH3COOH)(式中、xは、1.0~8.0、すなわち、xは、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0または8.0である)で表すことができる。GLP-2アナログの酢酸塩の任意の組成では、酢酸分子の数が異なる分子が存在してもよく、したがって、xは必ずしも整数ではない。場合によっては、xは4.0~8.0であるか、xは6.0~8.0であるか、またはxは4.0~6.5である。場合によっては、xは4.0~6.0であるか、xは2.0~7.0であるか、xは3.0~6.0であるか、xは4.0~6.0であるか、またはxは4.0~8.0である。本発明で定義されるGLP-2アナログの酢酸塩に関するさらなる考察は、WO2020/265064に見出され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
好ましい一実施形態では、GLP-2アナログは、最終的に、ZP1848-酢酸塩またはH-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH酢酸塩(配列番号1)もしくは(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH),x(CH3COOH)(式中、xは1.0~8.0である)として得られる。
【0066】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログの酢酸塩を含む固形組成物は、例えば凍結乾燥により得ることができる。固形組成物は、液体製剤の作製に使用される賦形剤との製剤化に有用である。例えば、以下の式:
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CH3COOH)(式中、xは1.0~8.0)
を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログの酢酸塩を含む固形組成物を得ることができる。
【0067】
GLP-2アナログあたり8.0個の酢酸分子を上限とすると、酢酸含量は酢酸11%未満に相当し、25℃で測定した粘度が0.8~2.0mPa/秒の間となるように製剤化することができる。
【0068】
GLP-2アナログの各分子に関連する酢酸分子の数の範囲は、製剤のこの成分の分子量範囲を規定する。例えば、ZP1848の酢酸塩の場合、GLP-2アナログの各分子に関連する酢酸分子の数の範囲は、ZP1848-酢酸塩の分子量範囲を規定する。例として、ZP1848の各分子に酢酸1当量で分子量=4316+60=4376Daが得られる。したがって、ZP1848で酢酸当量を増加させた場合の分子量は、以下:酢酸1当量=4376Da;酢酸2当量=4436Da;酢酸3当量=4496Da;酢酸4当量=4556Da;酢酸5当量=4616Da;酢酸6当量=4676Da;酢酸7当量=4736Daおよび酢酸8当量=4796Daである。その結果、分子量範囲は、以下:酢酸1~8当量=4376Da~4796Da、酢酸4~8当量=4556Da~4796Da、および酢酸6~8当量=4676Da~4796Daと規定される。本発明で定義されるGLP-2アナログの酢酸塩に関するさらなる考察は、WO2020/265064に見出され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
本発明のGLP-2アナログの他の誘導体としては、Mn2+およびZn2+などの金属イオンとの配位錯体、インビボで加水分解可能なエステルなどのエステル、遊離酸もしくは遊離塩基、水和物、または脂質が挙げられる。エステルは、化合物中に存在するヒドロキシル基またはカルボン酸基と、適切なカルボン酸またはアルコールの反応相手との間で、当技術分野で周知の技術を使用して形成することができる。
医学的状態
本発明のGLP-2アナログ製剤は、例えば、WO2020/065064の26ページ(「医学的状態」)に記載されているように医薬品として有用であり、この内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【実施例
【0070】
材料および方法
当技術分野で知られている治療用ペプチドの医薬品を製造する、製造および品質管理に関する基準(GMP)を満たすための標準的な装置および原料は、全体を通して使用されている。
【0071】
実施例1
一般的なペプチド合成
1.1 Ramageリンカーの付加および準化学量論的ダウンロードを介した第1段階のダウンロード
DEGAM-レジン(6.18kg、4.20モル、1.0当量、0.68mmol/g)を反応器に添加した。次いで、DMF(25L、50~58℃)を添加した。20分以上撹拌した後、レジンを排出し、追加のDMF(25L、50~58℃)を反応器に添加し、混合物を撹拌した。レジンの脱プロトン化のために、ピペリジン(2.5L)を添加し、混合物を15分間撹拌した。追加のDMFを添加し、反応器を排水した。レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。次いで、洗浄液がクロラニル試験陰性(洗浄液中にピペリジンがないことを示す)を示すまでDMFで連続的に洗浄した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
【0072】
Fmoc-Ramage-OHリンカーおよびOxyma(各0.9当量、3.78モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解した。この溶液を、脱プロトン化レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加した。次いで、温度を50~58℃に維持しながら、DIC(2.25当量)を5分間隔で4回に分けて反応器に添加し、合計添加時間は15分とした。最初の3回には、添加する全DICの各13%が含まれ、最後の回には61%が含まれた。最初の回のDICの添加後、混合物を合計45分間撹拌した。次いで、余分のDMFを添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に2回洗浄した。
【0073】
AcOHおよびOxyma(各2当量、8.40モル)を8LのDMFに50~58℃で溶解し、反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加し、次いで、DIC(5.0当量)を撹拌下、3分間隔で4回に分けて合計9分間添加し、その他の条件は、リンカーのカップリングについて前述したとおりである。最後の回のDICの添加後、反応混合物を6分間撹拌した。余分のDMFを添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
1.2 Fmoc-Lys39(Trt)-OHの付加および競合的共キャッピングを介した第2段階のダウンロード
前のステップで得られたレジンに、DMF(25L、50~58℃)を撹拌しながら添加した。次いで、ピペリジン(2.5L)を反応器に添加し、混合物を20分間撹拌した。反応器を排水した。同量のDMFを添加し、ピペリジンでの処理を繰り返した。次いで、余分のDMFを添加し、反応器を排水した。レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。次いで、クロラニル試験陰性が得られるまでDMFで連続的に洗浄した。次いで、DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0074】
Fmoc-Lys39(Trt)-OHおよびOxyma(各1.5当量、6.30モル)を8LのDMFに50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)およびAcOH(2.70当量、11.34モル)を反応器に添加した。次いで、温度を50~58℃に維持しながら、撹拌下、DIC(3.75当量)を5分間隔で4回に分けて添加した。最初の3回には、全DICの各13%が含まれ、最後の回には61%が含まれた。最後の回のDICの添加後、混合物を30分間撹拌した(合計撹拌時間45分)。カイザーテストでカップリングを確認し(陰性試験はレジンに遊離アミノ基がないことを示す)、追加のDMFを反応器に添加した。次いで、反応器を排水し、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄し、排水した。
1.3 Fmoc-Lys38(Trt)-OH、Fmoc-Lys37(Boc)-OH、Fmoc-Lys36(Boc)-OH、Fmoc-Lys35(Boc)-OH、Fmoc-Lys34(Boc)-OHの付加
前のステップで得られたレジンに、DMF(25L、53℃)を撹拌しながら添加した。次いで、ピペリジン(625ml)を反応器に添加し、混合物を10分間撹拌した。その後、ピペリジン(1875ml)を添加し、混合物を10分間撹拌した。次いで、反応器を排水した。ピペリジンによる脱保護を含むステップを2回繰り返した。最後の脱保護ステップの後、混合物をDMFで希釈した。次いで、反応器を排水し、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。クロラニル試験陰性が得られるまでレジンをDMFで連続的に洗浄した。次いで、DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0075】
Fmoc保護アミノ酸およびOxyma(各2.0当量、4.20モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加し、次いで、DIC(5.0当量)をRamageリンカー(実施例1.1)の付加について記載したように少しずつ添加した。最初の部分のDICの添加後、50~58℃で合計35~40分間撹拌しながらカップリングさせた。カイザーテストでカップリングを確認した。次いで、反応物にAcOH(2当量、5モル)を添加し、2分間撹拌することにより、レジンをキャッピングに供した。余分のDMFを添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
1.4 Fmoc-Asp33(OtBu)-OHの付加
前のステップで得られたレジンに、DMF(25L、53℃)を撹拌しながら添加した。次いで、ピペリジン(625ml)を反応器に添加し、混合物を5分間撹拌した。その後、ピペリジン(1875ml)を反応器に添加し、混合物を5分間撹拌した。次いで、反応器を排水した。2段階の脱保護を繰り返したが、各ピペリジン添加後に10分間撹拌した。ピペリジンによる最後の脱保護ステップの後、混合物をDMFで希釈した。次いで、反応器を排水し、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。クロラニル試験陰性が得られるまでレジンをDMFで連続的に洗浄した。次いで、DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0076】
Fmoc保護アミノ酸およびOxyma(各2.0当量、4.20モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加した。次いで、DIC(5.0当量)を実施例1.1に記載したように反応器に少しずつ添加した。最初の部分のDICの添加後、50~58℃で35~40分間撹拌しながらカップリングさせた。カイザーテストでカップリングを確認し、実施例1.3に記載したように、レジンをAcOH(2当量)で2分間キャッピングに供し、DMFで洗浄した。
1.5 Fmoc-Thr32(tBu)-OH、Fmoc-Thr29(tBu)-OH、Fmoc-Ala28-OH、Fmoc-Leu26-OH、Fmoc-Ile23-OH、Fmoc-Arg20(Pbf)-OHの付加
Oxyma(711g)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、レジンを含む反応器に添加し、続いてDMF(17L)を添加した。Fmoc脱保護は、Oxyma/DMFおよびレジンを含む反応器にピペリジン(625ml)を添加し、混合物を5分間撹拌することにより行った。次いで、ピペリジン(1875ml)を反応器に添加し、混合物を5分間撹拌した。反応器を排水した。2段階の脱保護を繰り返した。ピペリジンによる最後の脱保護ステップの後、混合物をDMFで希釈した。次いで、反応器を排水し、レジンをバッチ式に1回洗浄した。クロラニル試験陰性が得られるまでレジンをDMFで連続的に洗浄した。次いで、DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0077】
Fmoc保護アミノ酸およびOxyma(各2.0当量、4.20モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加し、DIC(5.0当量)を実施例1.1に記載したように反応器に少しずつ添加した。最初の部分のDICの添加後、混合物を50~58℃で30分間撹拌しながら反応させた。追加のDMFを添加し、次いで、反応器を排水した。DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0078】
カップリングステップを上記のように繰り返した。ただし、最初の部分のDICの添加から35~40分間反応させた。Fmoc-Arg20(Pbf)-OHを、各1当量のアミノ酸、OxymaおよびDICを使用して3回目のカップリングを行った。カイザーテストでカップリングを確認し、実施例1.3に記載したように、レジンをAcOH(2当量)で2分間キャッピングに供した。余分のDMFを添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
1.6 Fmoc-Lys30(Boc)-OHの付加
ピペリジンの1回目の添加後10分間、およびピペリジンの2回目の添加後19分間撹拌しながら2段階の脱保護を行ったことを除いて、ペプチドレジンを実施例1.4に記載したようにOxymaおよびピペリジンで処理した。
【0079】
Oxymaの添加を繰り返し、ピペリジンを添加するたびにレジンを10分間撹拌することにより、ピペリジンによる2段階の脱保護を行った。追加のDMFを添加し、次いで、反応器を排水した。DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。クロラニル試験陰性が得られるまでレジンをDMFで連続的に洗浄した。次いで、DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0080】
Fmoc保護アミノ酸およびOxyma(各2.0当量、4.2モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加した。次いで、DIC(5.0当量)を実施例1.1に記載したように反応器に少しずつ添加した。最初の部分のDICの添加後、50~58℃で35~40分間撹拌しながらカップリングさせた。次いで、カイザーテストでカップリングを確認し、レジンをAcOH(2当量)で2分間キャッピングに供した。余分のDMFを添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
1.7 Fmoc-Ser(tBu)-OHおよびFmoc-Thr(tBu)-OHの付加
Oxymaを実施例1.5に記載したように反応器に添加した。Fmoc脱保護は、Oxyma/DMFおよびレジンを含む反応器にピペリジン(625ml)を添加し、混合物を10分間撹拌することにより行った。次いで、ピペリジン(1875ml)を反応器に添加し、混合物を10分間撹拌した。反応器を排水した。2段階の脱保護を2回繰り返した。脱保護の後、混合物をDMFで希釈した。次いで、反応器を排水し、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。クロラニル試験陰性が得られるまでレジンをDMFで連続的に洗浄した。次いで、DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0081】
Fmoc保護アミノ酸およびOxyma(各2.0当量、4.20モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加し、DIC(5.0当量)を実施例1.1に記載したように反応器に少しずつ添加した。最初の部分のDICの添加後、50~58℃で35~40分間撹拌しながらカップリングさせた。カイザーテストでカップリングを確認し、レジンをAcOH(2当量)で2分間キャッピングに供した。余分のDMFを添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
1.8 Fmoc-Gly4-OHの付加
Oxymaを反応器に添加し、ピペリジン処理によるFmoc基の脱保護を、クロラニル試験の適用を含め、実施例1.7に記載したように行った。
【0082】
Fmoc保護アミノ酸およびOxyma(各2.0当量、4.20モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加し、DIC(5.0当量)を実施例1.1に記載したように反応器に少しずつ添加した。最初の部分のDICの添加後、30分間撹拌しながらカップリングを行った。追加のDMFを添加し、次いで、反応器を排水した。DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0083】
上記のカップリングステップを繰り返し、最初の部分のDICの添加後、35~40分間行った。次いで、カイザーテストでカップリングを確認し、レジンをAcOH(2当量)で2分間キャッピングに供した。余分のDMFを添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
1.9 Boc-His(Trt)-Gly-OHの付加
Oxyma(711g)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加した。Fmoc脱保護は、Oxyma/DMFおよびレジンを含む反応器にピペリジン(625ml)を添加し、混合物を5分間撹拌することにより行った。次いで、ピペリジン(1875ml)を反応器に添加し、混合物を5分間撹拌した。反応器を排水した。
【0084】
Oxymaの添加を繰り返し、ピペリジンを添加するたびにレジンを10分間撹拌し、ピペリジンによる2段階の脱保護を行った。追加のDMFを添加し、次いで、反応器を排水した。DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。クロラニル試験陰性が得られるまでレジンをDMFで連続的に洗浄した。次いで、DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0085】
Boc-His(Trt)-Gly-OHおよびOxyma(各1.5当量、3.15モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を添加した。次いで、DIC(3.75当量)を実施例1.1に記載したように反応器に少しずつ添加した。最初の部分のDICの添加後、50~58℃で60分間撹拌しながらカップリングさせた。次いで、カイザーテストでカップリングを確認した。余分のDMFを反応器に添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
1.10 残りのアミノ酸:Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Leu10-OH、Fmoc-Ala11-OH、Fmoc-Thr12(tBu)-OH、Fmoc-Ile13-OH、Fmoc-Leu14-OH、Fmoc-Asp15(OtBu)-OH、Fmoc-Ala16-OH、Fmoc-Leu17-OH、Fmoc-Ala18-OH、Fmoc-Ala19-OH、Fmoc-Asp21(OtBu)-OH、Fmoc-Phe22-OH、Fmoc-Ala24-OH、Fmoc-Trp25(Boc)-OH、Fmoc-Ile27-OH、Fmoc-Ile31-OHの付加
ピペリジンによるOxyma処理および脱保護は、実施例1.9に記載したように行った。脱保護後、追加のDMFを添加した。次いで、反応器を排水した。DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。クロラニル試験陰性が得られるまでレジンをDMFで連続的に洗浄した。次いで、DMFによるレジンのバッチ式洗浄を1回行った。
【0086】
Fmocアミノ酸およびOxyma(各2.0当量、4.20モル)をDMF(8L)に50~58℃で溶解し、脱保護レジンを含む反応器に添加した。追加のDMF(17L)を反応器に添加し、実施例1.1に記載したようにDIC(5.0当量)を添加した。最初の部分のDICの添加後、50~58℃で35~40分間撹拌しながらカップリングさせた。次いで、カイザーテストでカップリングを確認し、レジンをAcOH(2当量)で2分間キャッピングに供した。余分のDMFを添加し、反応器を排水した。最後に、レジンをDMFでバッチ式に1回洗浄した。
1.11 ペプチドの脱保護およびレジンからの切断
合成が完了した後、保護ペプチドレジンをDMFでバッチ式に3回、50~58℃のDMFで2回、室温のDMFで1回洗浄した。次いで、ペプチドレジンをイソプロパノールで5回洗浄した。ペプチドレジンを最終的に25~35℃で乾燥させ、2~8℃で保存した。
【0087】
TFA(68.1kg)、DTT(1.75L)、TIS(1.25L)および水(1.25L)を反応器に添加した。実施例1.1~1.10に記載したように調製したペプチドレジン(0.8モルに相当する10kg)を溶液に添加した。得られた混合物を25℃で135分間撹拌しながら放置した。次いで、温度を0℃未満に下げ、冷(0℃未満)のMTBE(150L)をゆっくりと反応器に添加した。MTBEの添加中、レジンから切断されたペプチドが沈殿する間、温度は10℃以下に維持された。完全に沈殿した後、混合物を10℃未満で45±15分間撹拌下に放置した。次いで、混合物を濾過し、MTBEで2回、MTBE(3容量)およびアセトニトリル(1容量)の混合物を含む溶液で1回洗浄した。濾過後、得られた濾過ケークを真空下で1~3時間乾燥させた。
1.12 PreRPC1(O→Nアシル基転位)
従来、O→Nアシル基転位は、以下の手順を使用して溶液中で行われる。乾燥したレジンに、AcOH/MeCN/HO+1%NHOAc(w/w)(10%/50%/40%)を含む溶液を添加した。混合物を一晩撹拌しながら放置した。次いで、混合物を濾過し、濾過ケークを同じ溶液で洗浄した。2回の切断からの粗ペプチドを含む組み合わせた濾液(最大3600g、約0.8モルのペプチドに相当)を5℃で保存した。
【0088】
本発明の方法によれば、O→Nアシル基転位は、本明細書、特に実施例3に記載されるように、カラム上で行われる。
1.13 精製RPC1(一次元)
RPC1で使用した緩衝液:
・緩衝液A:0.1%HPO
・緩衝液B:MeCN
・緩衝液C:45mM HPO、pH2.2+100mM NaCl
・緩衝液D:45mM HPO、pH7.7~8.0+100mM NaCl
脱保護および切断ステップからの溶液を、0.2M酢酸アンモニウム水溶液で5倍の容量に希釈した。溶液を濾過し、C18シリカゲルを充填したカラム(カラム寸法45x(50-45cm))に最大15g/Lのカラム容量を適用し、95% Cおよび5% Bを含む溶液で予め平衡化した。ペプチド溶液の適用後、カラムを平衡化溶液で洗浄し、次いで、95% Dおよび5% Bを含む溶液で、溶出液のpHが7.5を超えるまで洗浄した。溶出の前に、pHが2.5未満になるまで、95% Cおよび5% Bを含む溶液でカラムを洗浄した。(Pre-RPC1)
次いで、93% Aおよび7% Bを含む溶液でカラムを洗浄した。吸着したペプチドは、12カラム容量で移動相を7% B(93% A)から22% B(78% A)に変更するグラジエントを適用して溶出した。グラジエントは22% B(78% A)に保った。その後、溶出したピークのUVが40~45%に達するまで、22% Bで定組成溶出を行った。溶出を280nmでモニタリングし、回収した画分をRP-HPLCで分析した。脱保護および切断のステップから残りのプールを精製するためにこのプロセスを繰り返し、85%以上のペプチド純度を示す画分をプールした。純度55%以上85%以下の画分は、合わせた画分を水で2倍容量に希釈した後、C18カラムに最大15g/Lのカラム容量を適用することによって再クロマトグラフィーを行った。メインピークの前に回収されたプライマリーランからの画分は、1カラム容量中に移動相を10% B(90% A)から14% B(86% A)に変更し、次いで9カラム容量で14% B(86% A)から23% B(77% A)に変更するグラジエントを適用し、その後、溶出したピークのUVが95%に達するまで23% B(77% A)で均一濃度の溶出により溶出した。
【0089】
メインピークの後に回収されたプライマリーランからの画分は、1カラム容量中に移動相を10% B(90% A)から14% B(86% A)に変更し、次いで9カラム容量で14% B(86% A)から22% B(78% A)に変更するグラジエントを適用し、その後、溶出したピークのUVが90%に達するまで22% B(78% A)で均一濃度の溶出により溶出した。純度85%以上の再クロマトグラフィー後の画分をメインプールと混合し、RPC1の最終プールを得た。したがって、3.6kgの粗ペプチドを精製するために、3回のプライマリーランならびに1回のフロント・リランおよび1回のバック・リランを含むプロセスが記載され、最終的なRPC1プールを得た。
1.14 精製RPC2(二次元)
RPC2で使用した緩衝液:
・緩衝液A:0.1% TFA
・緩衝液B:MeCN
RPC1からの最終プールを水で2倍容量に希釈し、C18シリカゲルを充填したRPCカラム(カラム寸法:45x(50-45cm))に最大13g/Lのカラム容量を適用し、90% Aおよび10% Bを含む溶液で予め平衡化した。ペプチドの適用後、5カラム容量の平衡化溶液でカラムを洗浄した。吸着したペプチドは、1カラム容量中に移動相を10% B(90% A)から19% B(81% A)に変更し、次いで、12カラム容量中に19% B(81% A)から30% B(70% A)に変更するグラジエントで溶出した。その後、溶出したピークのUVが最大値の40~45%に達するまで均一濃度の溶出を行った。次いで、グラジエントを60% B(40% A)に変更し、全てのペプチドが溶出するまでこの値を保持した。溶出を280nmでモニタリングし、回収した画分をRP-HPLCで分析した。RPC1からの残りのプールを精製するためにこのプロセスを繰り返し、純度92以上、不純物des-Ile27-Ala28が0.5%未満を示す画分をプールした。水で希釈した後、純度50%超で92%未満および/または不純物des-Ile27-Ala28が0.5%超で1.5%未満を示すメインピークの前に回収した画分ならびに純度50%超で92%未満を示すメインピークの後に回収した画分を、C18カラムに最大20g/Lのカラム容量の適用によって再クロマトグラフィーし、1カラム容量中に移動相を10% B(90% A)から20% B(80% A)に変更し、次いで、9カラム容量で20% B(80% A)から30% B(70% A)に変更するグラジエントの適用によって溶出し、その後、溶出したピークのUVが45%に達するまで30% B(70% A)で均一濃度の溶出を行った。
【0090】
再クロマトグラフィー後に得られた純度92%以上、および不純物des-Ile27-Ala28が0.5%未満の画分をメインプールと混合し、RPC2の最終プールを得た。
1.15 精製RPC3(三次元)
RPC3で使用した緩衝液:
・緩衝液A:100mM NHOAc+0.5% AcOH
・緩衝液B:MeCN
RPC2からの最終プールを水で2倍の容量に希釈し、C18シリカゲルを充填したRPCカラム(カラム寸法:45x(50-45cm))に最大13g/Lのカラム容量を適用し、85% Aおよび15% Bを含む溶液で予め平衡化した。ペプチドの適用後、平衡化溶液でカラムを洗浄した。吸着したペプチドは、1カラム容量中に移動相を15% B(85% A)から29%B(71%A)に変更し、次いで、10カラム容量中に29% B(71% A)から37% B(63% A)に変更するグラジエントで溶出した。その後、UVシグナルが最大値の30%に達するまで均一濃度の溶出を行った。次いで、グラジエントを70% B(30% A)に変更し、UVシグナルがベースラインに達するまでこの値を保持した。溶出を280nmでモニタリングし、回収した画分のpHをアンモニア水で5.8~6.0に調整した。回収した画分をRP-HPLCで分析し、ペプチド純度が96.5%以上で、メインピークの前に0.5%を超える不純物が1つもない画分をプールし、RPC3の最終メインプールを得た。RPC2からの残りのプールを精製するために、このプロセスを繰り返した。
1.16 精製RPC4(四次元)
RPC4で使用した緩衝液:
・緩衝液A:5mM NHOAc+0.1% AcOH
・緩衝液B:MeCN
・緩衝液C:100mM NHOAc+0.5% AcOH
RPC3からの最終プールを水で2倍の容量に希釈し、得られた溶液に酢酸アンモニウムを添加し、プール中の最終濃度、約100mMの酢酸アンモニウムを得た。Amberchrom XT20を充填したRPCカラム(カラム寸法:45x(40-35cm))に最大15g/Lのカラム容量を適用し、90% Cおよび10% Bで予め平衡化した。ペプチドの適用後、1カラム容量の平衡化溶液ならびに1カラム容量の90% Aおよび10% Bでカラムを洗浄した。吸着したペプチドは、1カラム容量中に移動相を10% B(90% A)から13% B(87% A)に変更し、次いで、12カラム容量中に13% B(87% A)から25% B(75% A)に変更するグラジエントで溶出した。UVシグナルが最大値の40%に達した時点で、グラジエントを60% B(40% A)に変更し、全てのペプチドが溶出するまでこの値を保持した。溶出を280nmでモニタリングし、回収した画分のpHをアンモニア水で5.8~6.0に調整した。RPC3からの残りのプールを精製するために、プロセスを繰り返した。回収した画分をRP-HPLCで分析し、ペプチド純度が98.0%以上で、0.5%を超える不純物が1つもない画分をプールした。水で希釈した後、純度80.0%以上で98.0%未満および/または不純物Des-Ser7/8/アスパルチミドが0.5%超を示すメインピークの前に回収した画分ならびに純度80.0%超で98.0%未満および/または不純物Des-Ser7/8/アスパルチミドが0.5%超を示すメインピークの後に回収した画分を、Amberchrom XT20カラムに最大15g/Lのカラム容量を適用して再クロマトグラフィーした。生成物は、1カラム容量中に移動相を10% B(90% A)から13% B(87% A)に変更し、次いで9カラム容量で13% B(87% A)から25% B(75% A)に変更するグラジエントの適用によって溶出し、その後、溶出したピークのUVが30%に達するまで25% B(75% A)で均一濃度の溶出を行った。画分をアンモニア水でpH5.8~6.0に調整し、RP-HPLCで分析した。再クロマトグラフィー後に得られた純度98.0%以上、0.5%を超える不純物が1つもないプールをメインプールと混合し、RPC4の最終プールを得た。
1.17 脱塩(SPE)
脱塩に使用した緩衝液:
・緩衝液A:10mM AcOH
・緩衝液B:MeCN
RPC4からの最終プールを、水を添加して2倍の容量に希釈し、次いで、酢酸アンモニウムを添加してプール中の最終濃度、約100mMを得た。Amberchrom XT20(カラム寸法:45x40cm)を充填したカラムにプールを適用し、95% Aおよび5% Bで予め平衡化した。ペプチドの適用後、平衡化溶液でカラムを洗浄した。吸着したペプチドは、1カラム容量中に移動相を5% B(95% A)から50% Bに変更するグラジエントで溶出した。全てのペプチドが溶出されるまで、グラジエントをこの値に保持した。溶出を280nmでモニタリングし、回収した画分をRP-HPLCで分析した。
1.18 精製したペプチドの単離
脱塩ステップからの生成物を減圧下、40℃以下での蒸発に供した。この処理で、MeCNを蒸発させ、ペプチド溶液を最初の容量のおよそ30%まで減少させ、次いで、水で希釈して最終ペプチド濃度を約25g/Lを得た。濃縮したペプチドを0.45/0.22μmのフィルターで濾過し、次いで、凍結乾燥により単離し、RP-HPLCによる純度97.75%以上で、0.5%を超える不純物が1つもないことを示す約1.3kgの精製ペプチド(総精製収率35%以上)を得た。
【0091】
実施例2
Fmoc-Lys(Trt)-OHを使用することによる粗ペプチドの最適化
ZP1848合成の開発中、Lys(Boc)の存在により、予想されるように、いくつかのtert-ブチル化副生成物(+56Da)がもたらされることに留意されたい。特にこれらのいくつかはメインピークの近くに溶出したため、精製した溶液中にも見出すことができた(図2、上部パネル)。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、この+56不純物はtert-ブチル基の切断に関連しており、したがって+56部分はリジンテールのどこか、最も可能性の高い37または38に位置していると考えている。
【0092】
[Lys(Trt)]を用いてZP1848の合成を行うと、tert-ブチル化副生成物は高度に除去されたが(図2、底部パネル)、それにもかかわらず、合成の他の場所で保護基から移行した結果として、いくつかのブチル化副生成物が観察されることがある。
【0093】
テールの各リジン残基にLys(Trt)を使用する必要はないが、使用することもできる。Fmoc-Lys(Trt)-OHは、特にモルベースで、Fmoc-Lys(Boc)-OHよりも高価なビルディングブロックであるため、コスト効率の高いプロセスでは、このビルディングブロックを一部のみのアミノ酸カップリングにのみ適用することができる。
【0094】
さらに、本発明者らは、Lys39(Boc)およびLys38(Boc)残基を使用することから生じるtert-ブチル化副生成物Lys39-t-BuおよびLys38-t-Buが、所望のペプチドを得るために粗ペプチドから除去するのが最も困難な不純物であることを観察した。これら2つの残基の保護基をBocからTrtに変えると、Lys39-t-BuおよびLys38-t-Buのtert-ブチル化副生成物の形成を防ぐ。したがって、本発明者らは、最初の2つのカップリング(すなわち、Lys39およびLys38残基)のみにLys(Trt)を使用し、[K(Boc)][K(Trt)]モチーフを得ることにより、メインピーク(図3、9.487のピーク)に最も近い位置から溶出するtert-ブチル化副生成物の除去が容易になり、したがって、より純粋な粗生成物を得ることができると判定した。この結果として、よりクリーンな精製プロセスが可能となり、高い収率およびより純粋な最終生成物が得られる。
【0095】
実施例3
Pre-RPC1のカラムにおけるOからNへのアシル基転位
ZP1848の切断の際(実施例1.11)、N→Oアシル基転位が生じる。粗沈殿生成物をAcOH/MeCN/1%水性NHOAcの1:5:4混合物に溶解し、Trp(Boc)の脱炭酸のために一晩放置すると、アセチル化(すなわち、ペプチド鎖のトランケーション)およびトリフルオロアセチル化不純物(すなわち、ペプチド鎖のトリフルオロアセチルエステル)も見出される。
【0096】
精製ステップの前にpHを中性に調整し、酸性条件に戻すことでこれらの不純物が減少し、O→Nアシル基転位が行われることが知られている。例えば、(a)Bergmann M、Brand E、Weimann F.Z Physiol Chem.1923;131:1~17、(b)Phillips AP、Baltzly R、J Am Chem Soc.1947;69:200~204を参照されたい。
【0097】
O→Nアシル基転位は通常、ペプチド生成物をカラムに添加する前に溶液中で行われる。転位を行うために、通常はリン酸緩衝液/リン酸を使用してpHを低下させる。
しかしながら、ペプチド生成物溶液にリン酸緩衝液/リン酸を使用すると、ZP1848は中性pHで沈殿することが見出された(リン酸緩衝液の不相溶性に関するさらなる詳細については、その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2020/065064の実施例4を参照されたい)。さらに、精製前のペプチド生成物溶液中の酢酸含量が高いため、沈殿を起こさずにpHを中性pHまで上昇させることは、非常に大量のNaOHを必要とし、現実的ではなく、実行可能ではないことが見出された。
【0098】
さらに、ZP1848はNaCl、リン酸、NaOHおよび高イオン強度を含む溶液中では中性pHで沈殿する。
この実施例の目的は、溶液中およびカラム上でO→Nアシル基転位を行った場合の結果を比較することである。
【0099】
以下の表4.1では、RPC1下のカラムに存在する条件と同じ条件を溶液中に反映させるために、100mM NaClおよび45mMリン酸(緩衝液は実施例1.12に記載されている)中で、異なるpHおよび/または濃度でZP1848の様々な製剤を調製した。
【0100】
【表1】
【0101】
表4.1のデータは、RPC1の際にカラムで使用した条件と同じ条件を溶液中で使用すると、ZP1848が沈殿することを明確に示している。沈殿は試料調製後、数分以内に生じる。さらに、ZP1848はpH7.5の低濃度(0.2および0.5mg/mL)でも沈殿することが示された。
【0102】
驚くべきことに、最初の精製ステップの前に、精製に使用するC18カラムでこのpH処理を行うことが可能であることが見出された。特に、リン酸緩衝液を材料の損失なしに使用できることは驚きである。実際には、Pre-RPC1およびRPC1は同じカラムで実施されるため、精製順序から処理ステップが除去される。
【0103】
切断において、図4のデータは、TFAおよびアシル不純物、ならびにアシル基転位がカラム上でpH処理後に低下していることを示している。さらに、ペプチドが中性pHのリン酸緩衝液と不相溶である(沈殿の可能性がある)ためにカラムで失われる可能性のある収量も評価した。図4の実験では、100mgをpH処理前およびpH処理後に使用し、ZP1848の量は89mgと定量された(約10mgの損失は、切断/沈殿中の生成物の取り扱いによって説明できる)。したがって、カラムでの損失は無視できると考えられ、カラムでのpH処理による収量の損失は観察されなかった。結論として、カラム上でO→Nアシル基転位を行うことで、所望の化学変換を達成しながら、望ましくない沈殿を防ぐ。さらに、pHを中性に上昇させることで、O→Nアシル基転位と、アセチル化およびトリフルオロアセチル化不純物の加水分解により、収率が約5%増加する。すなわち、RPC1ステップから溶出する生成物の定量した量は、負荷量中の定量した量より約5%高い。
【0104】
実施例4
粗ペプチドの精製および不要な成分の除去
実施例1で概説したように、Fmoc-SPPSの5段階(「前」段階と4つの「次元」)クロマトグラフィー精製プロセス(Pre RPC1+RPC1~RPC4)を使用すると、純度98.2%のZP1848生成物が得られた。UVまたはMS検出器付き分析HPLCで評価した際に、ZP1848生成物には0.5%以下の不純物が含まれることが見出された。精製プロセスの各ステップは、ペプチドの不純物(すなわち高分子量(HMW)トランケーション、欠失、またはその他の望ましくない誘導体)などの特定の不要な成分を除去するため、または最終物質の純度を向上させるために開発された。これらの不要な成分は、共有結合または非共有結合の不純物で構成されている可能性があり、生理活性が変化したり、不活性化されたり、または未知の副作用があったりするため、可能な限り低減する必要がある。ZP1848生成物では、少なくとも1つの種のC末端脱アミド化、HMW化合物、およびアスパラギン酸からのアスパラギン酸関連不純物(Iso-Asp/Beta-Aspおよびアスパルチミドの形成など)の形成が、特に望ましくない不純物である。
特定の不純物の除去-C末端脱アミド化生成物、Lys39-OH不純物およびアスパラギン酸関連不純物
RPCステップの順序は、RPC1がRPC2および3よりも先に実行される必要があるという点で、極めて重要であり、なぜなら、RPC1は不純物を除去するため、そうでなければ、この2つのステップで見られる不可欠な詳細が不明瞭になるためである。
【0105】
一次元(RPC-1)ではリン酸緩衝液を使用し、二次元ではTFAを使用し、三次元および四次元では酢酸アンモニウムを使用した。全ての精製ステップでアセトニトリル(MeCN)を有機修飾剤として使用した。精製の有効性を評価するため、各ステップ後の主成分の画分をHPLCまたはLC-MSで分析した。得られた純度、主な望ましくない不純物、特に除去しにくい不純物の結果を以下の表4.1に示す。連続的な精製ステップを経て、アスパラギン酸関連不純物(Iso-Asp/Beta-Aspおよびアスパルチミドの形成)が減少し、純度98%以上の最終生成物を達成することを見出すことができる。
【0106】
【表2】
【0107】
第1のRPCは、主成分の単離と、特定の不純物、すなわちアスパラギン酸関連不純物およびC末端脱アミド化不純物との除去に使用される。ほとんどの切断型末端アミノ酸部分もこのステップで除去される。RPC1前の粗生成物では、C末端の脱アミド化生成物であるLys39-OH不純物のレベルが2.9%と比較的高く、RPC1を実行した後では最後の画分にのみ溶出するため、この不純物の除去にはこの精製ステップが非常に効率的である。C末端の脱アミド化生成物の代わりにRPC2を使用した場合、Lys39-OH不純物も同様に、50%超のZP1848を含む5つの画分にわたり溶出する。これは、RPC1と、リン酸緩衝液の使用とが、この不純物を非常に効率的に減少させることができ、一方、RPC2は失敗し、全体の収率および純度を損なうことを示す。
【0108】
TFAおよび酢酸アンモニウムは、C末端の脱アミド化生成物と主生成物との分離に失敗するのに対し、リン酸緩衝液の使用はこの目的に使用するのに特に適していた。第2、第3、第4のステップは純度を向上させるが、アスパラギン酸関連不純物の除去にも使用される。
オリゴマーの除去
オリゴマーは主に精製前に生成され、粗溶液(切断酸性条件)で観察される。表4.2は、ZP1848の精製を通してのオリゴマーの含有量を示している。共有結合したオリゴマー生成物のレベルは、粗溶液中では1.8%であるが、O→Nアシル基転位後は2.4%にわずかに増加する。オリゴマーは主にRPC1で、一部はRPC2で除去され、最終生成物中のレベルは0.1%未満である。データはまた、精製プロセスを通して、オリゴマーのさらなる生成がないことを示している。
【0109】
【表3】
【0110】
表4.2からわかるように、RPC1後ではオリゴマーは強く減少し、RPC2後では微量(すなわち少量)しか存在しない。オリゴマーの量は、カラムでのpH処理中に増加しないと予想される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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【国際調査報告】