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特表2024-544424ラクトフェリン粉末を生成するための方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ラクトフェリン粉末を生成するための方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/79 20060101AFI20241122BHJP
   A61K 38/40 20060101ALI20241122BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241122BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20241122BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20241122BHJP
   C07K 1/34 20060101ALI20241122BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20241122BHJP
【FI】
C07K14/79
A61K38/40
A61P31/12
A61K35/20
C07K1/18
C07K1/34
A23L33/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024555255
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 AU2022051362
(87)【国際公開番号】W WO2023087052
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2021903675
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524184552
【氏名又は名称】ノウミ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOUMI LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】モーゼス、ティム
(72)【発明者】
【氏名】バルディ、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ククルジャン、ゾーニャ
(72)【発明者】
【氏名】ディキンズ、トム
(72)【発明者】
【氏名】エンジャプーリ、アシュワンタ
(72)【発明者】
【氏名】トラッツェラ、ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】バニング、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】バートレット、ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】エスノー、カミーユ アンヌ-ジュヌヴィエーヴ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD20
4B018ME09
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF14
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA38
4C084MA59
4C084NA14
4C084ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB39
4C087CA07
4C087MA59
4C087NA14
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA71
4H045GA10
4H045GA23
(57)【要約】
ラクトフェリン粉末を生成するためのプロセスが本明細書に開示される。プロセスは、天然ラクトフェリン含有物質からラクトフェリンを抽出し、抽出されたラクトフェリンを濃縮して、抽出されたラクトフェリンが改善された安定性を有する液体濃縮物を生成することを含む。液体濃縮物は、次いで、低温殺菌するのに有効な温度まで、低温殺菌するのに有効な時間にわたって加熱することによって低温殺菌され、その後、低温殺菌された液体濃縮物は、非変性条件下で乾燥されて、ラクトフェリンの実質的に全てが天然ラクトフェリンであるラクトフェリン粉末が生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリン粉末を生成するための方法であって、
天然ラクトフェリン含有物質からラクトフェリンを抽出し、抽出されたラクトフェリンを濃縮して、前記抽出されたラクトフェリンが改善された安定性を有する液体濃縮物を生成することと、
前記液体濃縮物を、前記液体濃縮物を低温殺菌するのに有効な温度まで、前記液体濃縮物を低温殺菌するのに有効な時間にわたって加熱することと、
低温殺菌された液体濃縮物を非変性条件下で乾燥させて、前記ラクトフェリンの実質的に全てが天然ラクトフェリンであるラクトフェリン粉末を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記抽出されたラクトフェリンが、前記ラクトフェリンを不安定化する種の前記液体濃縮物中での不在のために、改善された安定性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出されたラクトフェリンが、前記ラクトフェリンを不安定化する種の前記液体濃縮物中での存在のために、改善された安定性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体濃縮物が、以下:pH調整剤、安定化鉱物、及び溶解ガスのうちの1つ以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記天然ラクトフェリン含有物質が、乳である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記天然ラクトフェリン含有物質が、脱脂乳である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脱脂乳が、低温ボウル脂肪分離プロセスを使用して生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ラクトフェリンが、イオン交換クロマトグラフィーを使用して前記天然ラクトフェリン含有物質から抽出される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出されたラクトフェリンが、限外濾過を使用して濃縮される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出されたラクトフェリンが、約9~12wt%に濃縮される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記低温殺菌された液体濃縮物が、低温殺菌直後に冷却される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記低温殺菌された液体濃縮物が、噴霧乾燥によって乾燥される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記噴霧乾燥が、多段階噴霧乾燥を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ラクトフェリン粉末中の前記ラクトフェリンの90%超が、天然ラクトフェリンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ラクトフェリン粉末が、本質的にラクトフェリンからなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ラクトフェリン粉末が、約50μmのD50粒径を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成された、ラクトフェリン粉末。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末を含む、食品。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末を含む、鼻腔スプレー。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項21】
患者におけるウイルス感染症を予防又は治療するための方法であって、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末又は請求項20に記載の薬学的組成物を含む製剤を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項22】
投与が、前記患者の気道を介する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
患者におけるウイルス感染症を予防又は治療するための方法であって、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末又は請求項20に記載の薬学的組成物を含む製剤を前記患者に鼻腔投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記製剤が、前記ウイルス感染症を予防するために予防的に投与される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ラクトフェリン粉末を生成するための方法及びそのような粉末の使用が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリンは、畜乳を含む、多くの動物分泌液中に見られるタンパク質である。ラクトフェリンは、多くの健康効果又は利点を有すると考えられており、乳児用製剤などの多くの乳代替製剤中の成分である。
【0003】
ラクトフェリンは、組換え的に、又は乳若しくはチーズ乳清などの他の乳製品から抽出することによって生成することができる。乳又はチーズ乳清からラクトフェリンを生成するための典型的なプロセスは、微生物負荷を低減するための初期低温殺菌ステップ、続いて乳/乳清マトリックスからのラクトフェリンの濃縮及び抽出を伴う。次いで、ラクトフェリン濃縮物は、典型的には、凍結乾燥されて、主にラクトフェリンからなる粒子状物質が生成される。特定の粒径及び/又は粒径分布を有するラクトフェリンが必要とされる場合、凍結乾燥粒子を粉砕することができる。
【0004】
ラクトフェリンを生成するための代替方法を提供することは有利であろう。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、本発明は、ラクトフェリン粉末を生成するためのプロセスを提供する。プロセスは、
天然ラクトフェリン含有物質からラクトフェリンを抽出し、抽出されたラクトフェリンを濃縮して、抽出されたラクトフェリンが改善された安定性(すなわち、ラクトフェリン含有物質中にあったときと比較して)を有する液体濃縮物を生成することと、
液体濃縮物を、液体濃縮物を低温殺菌するのに有効な温度まで、液体濃縮物を低温殺菌するのに有効な時間にわたって加熱することと、
低温殺菌された液体濃縮物を非変性条件下で乾燥させて、ラクトフェリンの実質的に全てが天然ラクトフェリンであるラクトフェリン粉末を生成することと、を含む。
【0006】
本発明の本発明者ら本出願の対象は、乳又はチーズ乳清からラクトフェリンを生成するための従来のプロセスが、ラクトフェリンによって経験される状態がそのタンパク質構造のある程度の分解/変性をもたらすステップを含むことを認識している。これは、生成物中の天然ラクトフェリンの割合の観点から、回収されたラクトフェリンの量及び/又はラクトフェリン含有生成物の質の結果的な低下を引き起こす。理解されるように、変性ラクトフェリンは、天然ラクトフェリンと比較して、低減した機能性及び生物学的活性を有する可能性が高いであろう。ラクトフェリン含有生成物を特徴付けるために使用される技法は、必ずしもラクトフェリンの天然形態と非天然形態とを十分に区別しておらず、生成物は、いくらかのレベルの機能性を有するのに十分な天然ラクトフェリンを含有したため、そのような質の低下は、しばらくの間、当該技術分野で認識されなかった。本発明では、多くの従来のプロセスの場合よりも多くのラクトフェリンを回収することができ、回収されたラクトフェリンは、多くの場合よりも変性が少ない。事実上、本発明のラクトフェリン粉末中のラクトフェリンは、処理及び低温殺菌形態で提示されているにもかかわらず、その生物学的活性の大部分を保持する。
【0007】
ラクトフェリンは、多くのタンパク質と同様に、熱に敏感であり、乳、乳清などのような液体が加熱されるとき(特に低温殺菌温度以上で)発生することがあり得るように、高温でpH変化に曝露される場合特に分解しやすいことが見出されている。更に、ラクトフェリンが典型的に供給される液体の他の構成要素は、ラクトフェリンの不安定化に寄与し、加熱されたときにそれを更に分解されやすくすることが見出されている。本発明者らは、低温殺菌段階に提示されたラクトフェリンが(具体的には、熱がプロセスの他の段階で適用され得ることは理解されるが)、低温殺菌されていない乳マトリックスから、ラクトフェリンが改善された安定性(すなわち、乳などの、天然ラクトフェリン含有物質におけるその安定性と比較されるとき)を有する液体濃縮物に抽出された場合、ラクトフェリンの(以下に定義される)実質的に全てが天然(すなわち、変性されていない)ラクトフェリンであるラクトフェリン含有粉末を生成することができることを発見した。
【0008】
このようにして、ラクトフェリンは、(食品の多くの産業標準への規制準拠に不可欠である)低温殺菌中に乳などの液体が加熱されるときに発生し得るそのような不安定化効果に曝露されず、本発明のプロセスは、従来のプロセスの場合のように、ラクトフェリンタンパク質の構造に対する損傷が少ないことが見出されている。実際、本発明者らは、乳の低温殺菌が、約25%のラクトフェリン回収率の損失をもたらし、乳マトリックス中で低温殺菌されるときにラクトフェリンにいくらかの他のコンフォメーション変化があり得ることを観察する。更に、本発明において、ラクトフェリン含有粉末は、最小限のプロセスステップ数で生成され、蒸発などのようなラクトフェリン粉末を生成するために通常使用されるステップを含まない。本発明者らは、全ての追加のプロセスステップがラクトフェリンを損傷し、かつ/又はより低い全体的な回収率をもたらし得ることを認識する。
【0009】
いくつかの実施形態では、抽出されたラクトフェリンは、ラクトフェリンを不安定化する種の液体濃縮物中での不在のために、改善された安定性を有し得る。乳マトリックス中に典型的に見出される種としては、例えば、カゼイン及び乳清タンパク質などのタンパク質、リポ多糖、糖、並びにカルシウム及びマグネシウムイオンなどのイオン性種が挙げられ、これらのいくつか又は全ては、(例えば、pHシフトを引き起こすことによって)乳マトリックス中のラクトフェリンの安定性に有害な影響を及ぼし得る。そのような潜在的に有害な種を含有しないラクトフェリン含有液体濃縮物を低温殺菌することは、ラクトフェリンに対する不安定化効果を有し得る種の存在下でラクトフェリンが加熱されていないことを意味する。
【0010】
いくつかの実施形態では、抽出されたラクトフェリンは、ラクトフェリンを安定化する種の液体濃縮物中での存在のために、改善された安定性を有し得る。液体濃縮物は、例えば、以下:pH調整剤、安定化鉱物、及び溶解ガスのうちの1つ以上を含み得る。そのような種の具体例、及びそれらの保護機構の発明者らの理解は、以下に記載される。
【0011】
いくつかの実施形態では、天然ラクトフェリン含有物質は、乳、好ましくは脱脂乳であり得る。低温ボウル脂肪分離は、乳マトリックス内に依然として含有されている間にラクトフェリンを軽度の高温にさえ供することを伴わないため、脱脂乳を生成するために有利であることが見出されている。以下に更に詳細に記載されるように、ラクトフェリンは、この初期ステップで容易に変性され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、ラクトフェリンは、イオン交換クロマトグラフィーを使用して天然ラクトフェリン含有物質から抽出され得る。ラクトフェリンは、物質の他の構成要素(例えば、乳マトリックス)とは別々にイオン交換カラムから溶出され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、抽出されたラクトフェリンは、限外濾過を使用して濃縮され得、ラクトフェリンは、濾液中に、液体濃縮物中でのその後の再構成のために含有されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、低温殺菌された液体濃縮物は、低温殺菌直後に冷却され得、それによって、ラクトフェリンが高温で費やす時間の長さを絶対的最小限まで低減する(一方で、低温殺菌に関する規制要件に依然として準拠している)。
【0015】
いくつかの実施形態では、低温殺菌された液体濃縮物は、噴霧乾燥によってラクトフェリン含有生成物を生成するために非変性条件下で乾燥され得る。噴霧乾燥(特に多段階噴霧乾燥)は、最終粉末形成段階中の更なる熱適用及び/又は処理前に、潜在的に有害な量の熱の適用を必然的に伴う、蒸発などのステップの必要性を低減することが本発明者らによって有利に見出されている。特定の利点は、多段階噴霧乾燥が使用される場合に達成され得、ノズルサイズ、入口及び出口温度、並びに滞留時間などのパラメータが、累積適用温度を更に低減し、したがって、特定の所望の粒径及び/又は粒径分布などの、特定の特性を有する実質的に天然のラクトフェリン含有粉末を生成することに寄与するために有利になるように使用されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、ラクトフェリン粉末は、本質的にラクトフェリンからなり得る。代替の実施形態では、最大約10%w/w(好ましくは約5%w/w未満)の他の物質がラクトフェリン粉末中に存在し得、そのようなものは、本発明のプロセスの避けられない副生成物である。例えば、水分及び他の非特異的タンパク質は、それらの存在が生成物の有用性に有害な影響を与えないという条件で、最終生成物中に含有され得る。
【0017】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のプロセスによって生成された、ラクトフェリン粉末を提供する。
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末を含むか、又は本質的にそれからなる食品を提供する。
【0018】
本発明者らはまた、本発明の第1の態様のプロセスに従って生成されたラクトフェリン粉末中に含有される高度に機能的かつ生物学的に活性なラクトフェリンが、ラクトフェリン粉末の独自の特性のために、治療活性又は増強された治療活性を有し得ることを発見した。特に、(以下に記載される)本発明者らによって実施された実験は、本発明に従って生成された粉末化ラクトフェリンが、インビトロ及びインビボでウイルス複製に対する阻害効果を有することを実証した。本発明者らは、彼らの予備実験の結果が、本明細書に開示される治療用途の合理的な予測につながると考える。現在進行中及び計画されている両方の更なる実験は、本発明者らの予測を確認すると予想される。
【0019】
第4の態様では、したがって、本発明は、本発明の第1の態様のプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末を含む鼻腔スプレーを提供する。
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0020】
第6の態様では、本発明は、患者におけるウイルス感染症を予防又は治療するための方法であって、本発明の第1の態様のプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末又は本発明の第5の態様の薬学的組成物を含む製剤を患者に(例えば、患者の気道を介して)投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
第7の態様では、本発明は、患者におけるウイルス感染症を予防又は治療するための方法であって、本発明の第1の態様のプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末又は本発明の第5の態様の薬学的組成物を含む製剤を患者に経鼻投与することを含む、方法を提供する。
【0022】
第8の態様では、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の第1の態様のプロセスによって生成された、ラクトフェリン粉末を提供する。
第9の態様では、本発明は、患者におけるウイルス感染症を予防すること又は治療することにおける使用のための、本発明の第1の態様のプロセスによって生成された、ラクトフェリン粉末を提供する。
【0023】
第10の態様では、本発明は、患者におけるウイルス感染症を予防又は治療するための医薬品の製造のための、本発明の第1の態様のプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末の使用を提供する。
【0024】
本発明者らはまた、ラクトフェリンが免疫調節及び抗炎症活性を示したことに留意する。本発明者らは、本発明の第1の態様のプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末が、そのような活性に関連する状態の治療及び予防のためのラクトフェリンの改善された送達形態を提供し得ることに留意する。
【0025】
本発明の他の態様、特徴、及び利点は、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の実施形態は、以下の図面を参照して以下に更に詳細に記載される。
図1】本発明の第1の態様の実施形態のブロックフロー図である。
図2】n=1の喘息患者からの細胞を使用した予備BEC試験のウイルス負荷を示すグラフである。100ug/mL(LF100■)又は1000ug/mL(LF1000▲)のラクトフェリンで治療後のOC43ウイルス負荷を有する分化した初代ヒト気管支上皮細胞。
図3】n=2健康なドナー(n=4各々複製=8合計)、未治療(●)及び1000ug/mL(LF1000▲)を使用した別の予備試験のウイルス負荷を示すグラフである。
図4】2×健康なドナー(n=4各々複製=8合計)、未治療(●)、100ug/mL(LF100■)、及び1000ug/mL(LF1000▲)について経時的な感染性ウイルスの数を示すグラフである。
図5】n=1健康なドナー(n=3各々複製=6合計、ラクトフェリンは48時間で補充された)、未治療(●)、及び100ug/mL(LF1000■)について経時的な感染性ウイルスの数を示すグラフである。
図6】(A)インビボ試験1及び2、並びに(B)インビボ試験3の実験計画を示す。
図7図7Aは、48時間の時間経過にかけて1.5ugのラクトフェリンで鼻腔内治療されたマウスに対して、未治療(ビヒクル)マウスにおける鼻甲介中のOC43ウイルス負荷を示すグラフである。図7Bは、鼻腔洗浄試料におけるTCID50アッセイを使用してMRC-5細胞中の測定されたOC43感染性ウイルスを示すグラフである。
図8図8Aは、48時間の時間経過にかけて1.5ugのラクトフェリンで鼻腔内治療されたマウスに対して、未治療(ビヒクル)マウスにおける鼻甲介中のOC43ウイルス負荷を示すグラフである。図8Bは、鼻腔洗浄試料におけるTCID50アッセイを使用してMRC-5細胞中の測定されたOC43感染性ウイルスを示すグラフである。
図9】qPCRによって評価されるビヒクルとラクトフェリン治療マウスとの間のA)IFN-β及びB)IFN-λ2/3レベルを示すグラフである。
図10】150ugのラクトフェリンで感染時に及びその後1日2回並びにBALで治療されたマウスに対して、未治療(ビヒクル)マウスにおける鼻甲介中の(A)マクロファージ、(B)好中球、及び(C)リンパ球を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述されるように、本発明は、粉末組成物中のラクトフェリンが、低温殺菌され、粉末に処理されているにもかかわらず、その生物学的活性のほとんどを保持するという点で、本発明者らが独自の特性を有すると考えるもので、ラクトフェリン粉末を生成するためのプロセスを提供する。プロセスは、天然ラクトフェリン含有物質からラクトフェリンを抽出し、抽出されたラクトフェリンを濃縮して、抽出されたラクトフェリンがラクトフェリン含有物質中にあったときと比較して(以下に記載されるように、その生物学的及び機能的特性、並びにその回収率%を実質的に保持している粉末中のラクトフェリンによって証明されるように)改善された安定性を有する液体濃縮物を生成することを含む。液体濃縮物は、次いで、低温殺菌するのに有効な温度まで、低温殺菌するのに有効な時間にわたって加熱することによって低温殺菌され、その後、低温殺菌された液体濃縮物は、非変性条件下で乾燥されて、ラクトフェリンの実質的に全てが天然ラクトフェリンであるラクトフェリン粉末が生成される。
【0028】
そのように生成されたラクトフェリン粉末は、そのより高い割合の天然ラクトフェリンのために、多くの他のラクトフェリン含有粉末に対して改善された生物学的活性を有する。ラクトフェリン粉末の機能的特性はまた、(例えば、その溶解性、ブレンド性特異的粒径属性及び形態などのために)有利である。本発明のプロセスはまた、ラクトフェリン抽出が低温殺菌後に行われるプロセスと比較されるとき、天然ラクトフェリンの改善された収率をもたらすことができる。
【0029】
本発明は、ラクトフェリンの実質的に全てが天然ラクトフェリンである、ラクトフェリン粉末の生成をもたらす。天然ラクトフェリンは、変性されていないか、又は無視できるほどのみ変化しており、ラクトフェリンタンパク質がその構造を保持し、したがってその生物学的活性及び健康効果を保持している。理解されるように、本発明に従って処理されるラクトフェリンの全てが完全に変性されていないとは限らない可能性がある。少しの変性は避けられない場合がある。ラクトフェリン粉末は、例えば、90%超の天然ラクトフェリン、95%超の天然ラクトフェリン、又は98%超の天然ラクトフェリンを含有し得る。ラクトフェリン粉末は、例えば、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更には100%の天然ラクトフェリンを含有し得る。
【0030】
本発明によって生成されたラクトフェリン粉末は、本質的にラクトフェリンからなり得る(すなわち、少量の避けられない不純物、副生成物、分解生成物などを除き、生成物の実体はラクトフェリンである)。しかしながら、そのような高レベルの純度は、必要とされない場合があり、いくつかの実施形態(例えば、より安価な生成物が商業的に魅力的である場合)では、ラクトフェリン粉末中に最大約10%w/wの他の構成要素が存在するのに十分であり得る。そのような他の構成要素は、本発明のプロセスの避けられない副生成物を含み得るが、機能的理由のために提供される添加剤(例えば、固化防止剤、防腐剤など)も含み得る。
【0031】
本発明によって生成されたラクトフェリン粉末は、任意の適切な粒径、又は粒径の範囲を有し得、これは乾燥ステップの文脈において以下に更に詳細に記載される。例として、本発明に従って生成され、本発明者らによって微粉末として特徴付けられる1つのラクトフェリン含有粉末は、粒径分布D50=38.2ミクロン及びD90=72.3ミクロンを有する。本発明に従って生成され、本発明者らによって中間粉末として特徴付けられる別のラクトフェリン含有粉末は、粒径分布D50=46.2ミクロン及びD90=98.7ミクロンを有する。本発明に従って生成され、本発明者らによって粗粉末として特徴付けられるまた別のラクトフェリン含有粉末は、粒径分布D50=56ミクロン及びD90=130ミクロンを有する。
【0032】
ラクトフェリン含有粉末の任意の所与の試料中の天然ラクトフェリンの割合は、公開された技法と併せて、以下に記載されるように決定することができる。一般的に言えば、天然ラクトフェリンタンパク質は、約80kDaの分子量を有し、約10~20%の鉄飽和を有し、色はサーモンピンクである。天然ラクトフェリン粉末は、その供給源と同等の生物活性を有する一方で、損傷したラクトフェリンの生物学的活性は損なわれる。
【0033】
本発明者らがラクトフェリン粉末中のラクトフェリン純度(例えば、試料中の、ラクトフェリン対他のタンパク質の純度パーセンテージ)を決定するために使用したが、定量又はラクトフェリンの天然(すなわち、非変性)形態と変性形態とを区別するためには好適ではないと考えるアッセイは、Chinese GB RP-HPLC(GB 1903.17-2016)法である。中国に輸入されたウシラクトフェリン粉末を試験するためにStandards Administration of Chinaによって実施された、この方法は、高濃度のタンパク質(50μlの10mg/mlの試料(注射当たり0.5mg))の注射を伴い、それは、カラム結合能力の上限に近かった。このため、ウシラクトフェリン決定においていくつかの顕著な差が観察された。
【0034】
本発明者らが完成した粉末中のラクトフェリン量を(パーセンテージとして)決定するために使用されたアッセイは、Callaghan Innovation RP-HPLC法であり、天然ラクトフェリンのみがHPLCカラムに結合するため、天然ラクトフェリンは変性ラクトフェリンから区別可能である。Callaghan Innovation法は、J.Billakanti et.el.,International Dairy Journal 99(2019)104546に記載されており、Aeris(商標)3.6μm WIDEPORE XB-C8 200 Å分析用LCカラム(Part-OOG-4481-EO、250[1]4.6mm)、C8 Security Guard Ultra Holder(Part-AJO-9000)、及びSecurity Guard Ultra Cartridges(Part-AJO-8771)を使用して行われ、検出は、280nmの波長で行われる。方法は、他のプロトコルで使用されるv/vベースの試料調製ではなく、試料のw/w調製を使用し、これは時間の経過とともに再現可能で信頼性の高い結果をもたらし、そのようなものとして、より正確な分析をもたらす。
【0035】
本発明者らは、そのようなアッセイの組み合わせが、特定のラクトフェリン含有粉末のラクトフェリン量(すなわち、回収率パーセンテージ)及び質(すなわち、未変性ラクトフェリンの割合)の両方が決定されることを可能にすることを見出した。上記のように、本発明、本出願の主題は、少なくとも部分的に、天然ラクトフェリン含有粉末を適切に特徴付けるためにこれらのアッセイの両方が必要であるという認識に関する。
【0036】
本発明の重要な特徴の1つは、ラクトフェリンが天然ラクトフェリン含有物質から抽出され、濃縮された後にのみ、低温殺菌が行われることである。液体濃縮物中のラクトフェリンは、天然ラクトフェリン含有物質中にあったときと比較して改善された安定性を有し、したがって、生成物を低温殺菌するために適用しなければならない温度によって引き起こされる変性の影響を受けにくい。規制(及び安全性)要件を満たすために低温殺菌条件(最低温度、時間など)を満たさなければならないが、本発明では、適用された熱に対するラクトフェリンの安定性は、ラクトフェリンが天然ラクトフェリン含有物質中に含有されている間に低温殺菌が行われた場合よりも大きい。このようにして、液体濃縮物中のラクトフェリンの実質的に全ては、その天然形態に留まることができる。対照的に、乳の低温殺菌は、例えば、乳中の最大25%の天然ラクトフェリンを変性させ、開始時にラクトフェリン回収率の対応する低下をもたらす。
【0037】
本発明の文脈において、「改善された安定性を有するラクトフェリン」という特徴などは、液体濃縮物中のラクトフェリンの安定性が、天然ラクトフェリン含有物質中のラクトフェリンの安定性よりも大きいことを意味すると理解されるものである。(以下に記載されるものを含む)日常的な試験を使用して、異なる担体中のラクトフェリンの相対的安定性を評価することができる。
【0038】
ラクトフェリンは、本明細書に記載される方法で保護されない限り、熱及び化学(例えば、pHのシフトが変性を引き起こすため)分解のいずれか又は両方を受け得る。ラクトフェリンは、ラクトフェリンを不安定化する種の液体濃縮物中での不在のために、改善された熱安定性を有し得る。代替的に、又は加えて、ラクトフェリンは、ラクトフェリンを安定化する種の液体濃縮物中での存在のために、改善された熱安定性を有し得る。
【0039】
上述されるように、乳清及び乳などの乳製品に典型的に見られる種としては、カゼイン及び乳清タンパク質などのタンパク質、糖(例えば、ラクトース)、脂肪(例えば、リポ多糖)、並びにカルシウム及びマグネシウムイオンなどのイオン性種が挙げられる。これらの種のいずれか又は全ては、直接的(例えば、加熱時にラクトフェリンを変性させるか、若しくはそうでなければそれと反応することによって)又は間接的(例えば、より高い温度でラクトフェリンを不安定化するpHシフトを引き起こすことによって)のいずれかで、ラクトフェリンの熱安定性の相対的な欠如に寄与し得る。天然ラクトフェリン含有物質のマトリックスからラクトフェリンを単離することは、任意のそのような有害な相互作用の発生を防止する(又は少なくとも低減する)。
【0040】
ラクトフェリン含有液体濃縮物は、ラクトフェリンが加熱されるときにラクトフェリンを安定化するのを助けることができる追加の種を含み得る。そのような種は、ラクトフェリン粉末の最終用途に適合(例えば、GRAS、食品などに適合)しており、そうでなければ、本発明の性能に有害な影響を与えない必要がある。これらの種は、液体濃縮物に添加されるか、又は濃縮物中(例えば、溶出液中)に既に存在するかのいずれかであり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、液体濃縮物は、例えば、以下:pH調整剤、安定化鉱物、及び溶解ガスのうちの1つ以上などの加工助剤を含み得る。そのような種は、担体液体/ガスを介して、又は低温殺菌前のそれらの現在の形態で直接、液体濃縮物に添加され得る。
【0042】
液体濃縮物の伝導性(濃縮物の電流を通す又は運ぶ能力の尺度である)は、例えば、濃縮物において、塩化ナトリウムなどの鉱物、又は町の給水中に見られるものの量を操作することによって調整され得る。本発明は、低温殺菌の前にラクトフェリン濃縮物を更に安定化するために伝導性を制御することによって、ラクトフェリンの天然態様を維持することができる。液体濃縮物は、RO水であり得るが、小さな鉱物含有量を有する水(例えば、町の水)は、プロセスに悪影響を及ぼさない場合があり、プロセスの全体的なコストを低減するのに役立ち得る。実際、低レベルの鉱物を含有する水はまた、ラクトフェリンを更に安定化するように作用し得る。
【0043】
液体濃縮物のpHは、不要な汚染物質の生成を防止する方法で、又は輸入国の要件若しくは顧客仕様を満たすために制御され得る。一般的に言えば、例えば、ラクトフェリンのpHは、規制要件に従うために、5.2~7.2の範囲で準拠している必要がある。液体濃縮物のpH調整は、2つの事例において、第一に、低温殺菌のためにラクトフェリンを安定化するために、又は第二に、標準への最終的な適合を確実にするために使用され得る。
【0044】
本発明者らは、アポ-ラクトフェリン(非鉄結合)は、はるかにより安定している、ホロ-ラクトフェリン(鉄結合)よりも容易に損傷されることに留意する。よって、ホロ-ラクトフェリンの形成に有利な液体濃縮物中の条件は、ラクトフェリンの耐熱性を改善し得る。
【0045】
pHを低下するための特定の酸の使用は、そのようなものが変性の影響を低減するのに役立ち得るため、適切であり得る。しかしながら、そうすることは、濃縮物において汚染物質レベルを増加させるか、又は感覚特徴に悪影響を及ぼし得、これは望ましくなく、一部の市場ではラクトフェリン含有生成物では許容されない場合がある。
【0046】
重炭酸ナトリウム(又は他の重炭酸塩)の使用は、おそらく重炭酸イオンとラクトフェリン分子のC及びNローブの鉄結合部位との相互作用に起因して、低温殺菌中にラクトフェリンを安定化することも見出されている。そのようなものはまた、最終生成物のpHを管理するのに役立ち得るので、それは、食品/添加剤に必要とされるように、5.2~7.2(好ましくは、5.7)のpHに位置する。
【0047】
任意の特定の種を本発明の方法で使用することができるかを決定するために、単に本明細書に開示される情報並びに日常的な試験及び実験を使用することは、当業者の能力の範囲内である。
【0048】
上記のように、規制要件を満たす目的で、プロセス中に追加の構成要素を追加する必要があり得る。例えば、食品は、5.2を超えるpHを有することが必要であり、いくつかの実施形態では、本発明の最終生成物が準拠しているために、低温殺菌後にpH調整剤を添加することが必要であり得る。本明細書に含有される教示、並びに単に日常的な試験を使用して、そのような追加の構成要素の必要性を決定し、そのような追加の構成要素を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0049】
本発明者らはまた、同じ効果を達成するために、更なる構成要素を追加する代わりに、追加の処理ステップが使用され得ることに留意する。例えば、アニオン交換を使用して、試料のpHを調整することができ、試料のpHを調整するために更なる物質を添加する代わりにアニオン交換を行うことが有利な場合があり得る。
【0050】
ラクトフェリンは、任意の天然ラクトフェリン含有物質から抽出され得る。典型的には、天然ラクトフェリン含有物質は、乳であり、これは豊富に供給されており、(例えば、チーズ作製プロセスに由来する乳清でそうであるように)任意の加工助剤で汚染されていない。脂肪含有物質は、イオン交換プロセスのラクトフェリン結合能力に悪影響を及ぼし得るため、脱脂乳が好ましい。脂肪レベルは、理想的には0.1%未満に維持されるべきである。
【0051】
天然ラクトフェリン含有物質が脱脂乳である実施形態では、脱脂乳は、低温ボウル脂肪分離プロセスを使用して生成され得、そのようなプロセスは、高温ボウル脂肪分離の高温を回避する。そのような温度は、わずか約50℃(低温殺菌温度よりも顕著に低い)であるが、乳マトリックス中に残っている間のラクトフェリンの任意の加熱は、ラクトフェリンタンパク質の一部でさえも損傷しないように、回避されるのが最善であり得る。更に、細菌増殖は、低温でより低く、これは高温ボウル分離に対して改善された乳質を提供する。
【0052】
本発明では、ラクトフェリンは、天然ラクトフェリン含有物質から抽出される。任意の好適な抽出技法は、本発明の結果に適合することを条件として、このステップに使用され得る。1つの好適な技法は、カチオンイオン交換クロマトグラフィーを使用して、ラクトフェリンを天然ラクトフェリン含有物質から抽出するためのものである。
【0053】
一般的に言えば、イオン交換クロマトグラフィーは、天然ラクトフェリン含有物質(例えば、脱脂乳)をカラムに通すことを伴う。乳マトリックスの残りの構成要素がカラムを通過する間、ラクトフェリンは、カラムに結合し、カラム上に保持される。保持されたラクトフェリンは、その後、塩化ナトリウム溶出液などの、異なる溶媒を使用して溶出され得る。特定の実施形態では、そのようなプロセスは、スルホネート(SP)強カチオン交換基で修飾された大きな架橋アガロースビーズ(100~300μm)で構成されるSP Sepharose Big Bead樹脂を利用し得る。このプロセス中、正に荷電したラクトフェリンは、負に荷電した樹脂に結合する。
【0054】
本発明には、抽出されたラクトフェリンが濃縮されて、ラクトフェリンが改善された熱安定性を有する液体濃縮物が生成される。同様に、任意の好適な技法は、本発明の結果に適合することを条件として、このステップに使用され得る。ラクトフェリンを濃縮するための1つの好適な技法は、限外濾過である。
【0055】
一般的に言えば、限外濾過は、他の汚染物質(例えば、抽出ステップからの溶出液)を除去しながら、ラクトフェリンを選択された液体担体(例えば、RO水)中で濃縮することを伴う。特定の実施形態では、特定の分子量(10~50kDa超)を有するタンパク質を保持するように設計された限外濾過膜濾材が使用されて、ラクトフェリンが濃縮される。
【0056】
低温殺菌前の液体濃縮物中のラクトフェリンの量は、例えば、約9~12wt%(例えば、約11%固形分)であり得る。この量のラクトフェリンは、6~8wt%のラクトフェリンの範囲であり得る、従来のプロセスにおいてしばしば存在するものよりも高い。有利には、本発明のプロセスにおいてこれが行われるときに再濃縮することは、濃縮物中のラクトフェリンのより高い割合をもたらし、本発明者らはこれが濃縮物を(例えば、噴霧乾燥によって)乾燥させて、更なる濃縮プロセスを追加することなく、より良好な粒径柔軟性を有する粉末を生成することができることを見出した。
【0057】
本発明では、液体濃縮物は、低温殺菌するのに有効な温度に低温殺菌するのに有効な時間にわたって加熱することによって、低温殺菌される。低温殺菌は、十分に実践された技法であり、所与の試料についての適切な低温殺菌条件は、当業者によって容易に確認することができる。有効な低温殺菌は、ラクトフェリン含有液体濃縮物を72℃の最低温度に15秒の最低時間にわたって加熱することによって達成することができる。低温殺菌の他の形態は当該技術分野で既知であり、本発明の有利な効果はそのようなものにも適用され得ることが予想される。
【0058】
最後に、低温殺菌された液体濃縮物は、非変性条件下で乾燥されて、ラクトフェリンの実質的に全てが天然ラクトフェリンであるラクトフェリン粉末が生成される。従来の乾燥技法には、凍結乾燥及び噴霧乾燥が含まれ、噴霧乾燥は、比較的均一な粒径を有する粒子を生成するために一般的により良好であり、凍結乾燥の場合にしばしばそうであるような、生成物を粉砕する必要が通常ないため、本発明では好まれる。凍結乾燥粉末はまた、時には機能性を欠く場合があり、例えば、それらは、より粗い粒径を有し、容易に乳粉末にブレンドされない場合がある。
【0059】
任意の好適な噴霧乾燥技法及び装置が使用され得る。典型的には、噴霧乾燥装置は、ノズルサイズ、入口及び出口温度、並びに滞留時間を含むパラメータの操作を可能にし、これらの全ては、所望の物理的特性を有する粉末を生成するように調整することができる。本発明者らは、得られた粉末の物理的特性がまた、その機能的特性、例えば、水性液体とのその混合性及び流動性に直接影響を与えることに留意する。
【0060】
多段階噴霧乾燥は、他の利点の中でも、ラクトフェリン粉末の噴霧及び乾燥においてより低いノズル温度が適用されることを可能にするため、本発明において有利に使用され得る。上述されるように、ラクトフェリンが比較的より高い温度に曝露される時間が短いほど、より良い。
【0061】
例えば、単段階乾燥器を使用して、出口温度は、出口粉末温度を制御する。多段階乾燥器は、しかしながら、二次加熱/冷却を使用して、出口粉末温度を操作する能力を有する(二次温度操作は、流動床を介して達成される-流動床は、その独自の加熱及び冷却源を有する)。二次乾燥システムは、二次乾燥システムが乾燥をより低い温度で補完及び完了することができ、それによってラクトフェリンの構造を保存するため、出口におけるあまり高くない乾燥温度を可能にする。本発明者らは、そのような噴霧乾燥がまた、粉末中のラクトフェリンの改善された健康効果/機能的利益に寄与し得ること、及び本発明のプロセスにおけるステップの全ての累積的影響が、改善された機能的ラクトフェリンを有する粉末につながり得ることに留意する。
【0062】
ラクトフェリンを変性させず、所望の機能的特性を有する粉末を生成するために、噴霧乾燥器の様々なパラメータを調整することは、当業者の能力の範囲内である。この点に関して本発明者らによって実施される2つの試験の具体例は、以下に記載される。
【0063】
ノズルサイズ試験
本発明者らは、様々なノズルサイズ、目標とされるノズル圧力、及び多段階噴霧乾燥器の使用の組み合わせが、特定の及び独自の粒径分布を有するラクトフェリン粉末の生成を可能にすることを見出した。
【0064】
以下に記載されるように、2つの例示的な粒径分布が目標とされ、その各々は、完成品中の特定の機能的特性、すなわち、混合性(粉末及び/又は水性)及び粉末流動性に関連している。噴霧乾燥器操作の特定の要素は、様々であり、以下を含む:(1)噴霧ノズルスワールチャンバー及びオリフィスサイズ組み合わせ、(2)主要チャンバーの入口及び出口温度、(3)ノズル圧力、(4)プロセスにおける微粒子の再入点によって部分的に指示される、凝集の程度、(5)並びに供給ストリーム中の固形分の濃度。
【0065】
これらのノズルサイズ試験中に、粉末性能試験をリアルタイムで実施し、パラメータをリアルタイムで調整して、有利な粒径分布(すなわち、以下に記載されるようなより細かいバリアント及びより粗いバリアント)を達成した。これは、試験中の実行条件への修飾、よってプロセスを即座に検証することを可能にする。
【0066】
試験の結論は、2つの主要なバリアント、より細かい粉末及びより粗いバリアントをもたらした。より微細な粉末は、約35~40μmのD50値及び約50~55μmのd90値を特徴とし、より粗いバリアントは、約50~60μmのD50値及び125~130μmのD90値を特徴とする。粉末において必要な標的水性混合性及び粉末流動性特性が達成された。
【0067】
【表1】
【0068】
多段階噴霧乾燥器
多段階噴霧乾燥器(MSD)の使用は、(1)主要乾燥チャンバー、(2)静的流動床、及び(3)振動流動床の3つの段階を通して加熱空気を介して水を除去することによって、ラクトフェリン粉末の天然構造の保存に大いに役立つことができる。単段階乾燥器とは対照的に、MSDは、段階2及び3プロセスを介して、段階1後に更なる水除去を可能にする。これらのプロセスは、水活性が既に低減しており、ラクトフェリンがより高い温度からの損傷を受けやすい場合、水の更なる除去がより低い温度で行われることを可能にする。静的流動床(段階2)温度は、決して75℃を超えない。
【0069】
MSDとは対照的に、単段階乾燥器を使用するとき、乾燥の温度プロファイルを一致させることは可能ではない。単段階乾燥器は、同様の結果を達成するために、より高い乾燥温度、又はより長い滞留時間のいずれかの利用を必要とする。これは、単段階乾燥器を利用するとき熱への増加した曝露、及びラクトフェリン粉末の天然構造への増加した損傷をもたらす。
【0070】
ラクトフェリン濃縮物試験における固形分パーセンテージ
より低濃度の固形分を有する噴霧乾燥器への供給ストリームも試験した。上流限外濾過プラントは、ラクトフェリン濃縮物を、低温殺菌して噴霧乾燥器に供給する前に、10~12%の固形分まで濃縮した。
【0071】
修飾された加熱プロファイル及び噴霧パターンを供給ストリームに適用し、これは、ラクトフェリン定量を改善しながら、上記で定義された混合性及び流動性、並びに粒径分布が維持されることを可能にした。典型的には、供給ストリーム固形分パーセンテージを低下させることは、粉末の粒径分布に影響を与え、平均粒径を減少させ、粒径分布をサイズダウンさせる。より低い固形分パーセンテージ供給ストリームを噴霧乾燥するときに粒径分布を維持するための、(1)ノズルスワールチャンバー、(2)ノズルオリフィスサイズ、及び(3)ノズル圧力を含む、他のプロセスパラメータの操作は、増加したラクトフェリン回収率をもたらすことが見出された。
【0072】
低温殺菌及び噴霧乾燥は、固形分の同じ濃度、すなわち、10~12%で完了した。対照的に、本発明者らが認識している従来技術プロセスは、典型的には、より低い固形分(7~8%)で低温殺菌し、蒸発濃縮技法を適用し、次いで、より高い固形分パーセンテージで噴霧乾燥する。これは、発表された文献における教示に沿って、より高い回収率パーセンテージが達成されることを可能にするが、回収されたラクトフェリンの構造的及び生物学的機能性に対する上述された有害な結果を伴う。よって、他のプロセスは、より低い固体濃度で低温殺菌することによって本発明のプロセスよりも大きなラクトフェリンの回収率を達成し得るが、本発明は、濃縮物を乾燥する前により高い固形分パーセントを使用することによって同じ回収率パーセンテージを可能にすることができる。
【0073】
本発明10のプロセスの特定の実施形態はここで、図1に示されるフローチャートを参照して、詳細に記載される。
1)乳送達/取り扱い-施設へ
全乳は、ダブルスキンロードタンカーを使用して農場から収集される。ピックアップ時に、乳温度は、規制要件を確実に満たすことが検証される。乳は、施設に送達され、荷下ろしされ、<5℃の温度まで冷蔵サイロにおいて保存される。乳の劣化をモニタリングして、施設への受領の24~48時間以内に処理されることを確実にする。乳温度がモニタリングされ、乳質は、送達される各タンカー積み荷の酸性度レベルについての乳の試験を介して乳質が管理される
2)脂肪分離(低温ボウルスキミング)12
乳の分離は、乳処理プラントにおける重要なプロセスである。このステップでは、全乳は、更なる処理のためにクリーム部分とスキム部分とに分離される。従来の分離には、分離処理中に乳が50℃に加熱される必要がある高温ボウル密封分離器の使用が含まれ、これは細菌増殖を促進する。しかしながら、本発明のプロセスでは、24~26℃の温度でのスキム部分からのクリームの効果的な分離を可能にし、乳質が確実に維持され、処理中の細菌増殖を最小限に抑える、低温ボウル乳分離技術が好ましい。
【0074】
3)スキム前処理(清澄化/濾過)
<0.1%の脂肪含有量を有する脱脂乳は、ラクトフェリンプロセスに移され、そこで清澄化及び濾過を受ける。清澄化は、処理中の脱脂乳の細菌負荷を低減するように設計されたプロセスである、GEA Bacterial Removal System(BRS)を利用して実施される。懸念される細菌には、128℃までの耐熱性と同時に耐寒性がある、Bacillus cereusなどの胞子形成体が含まれ、これは上流プロセスについて乳の貯蔵寿命に悪影響を及ぼし得る。乳はまた、カラムにおけるイオン交換(すなわち、ラクトフェリン除去)プロセスの前に、過剰な脂肪及び他の不純物が除去されることを確実にするために濾過される。
【0075】
4)イオン交換プロセス14
脱脂乳からのラクトフェリンの抽出は、脱脂乳が特定のSP Sepharose Big Bead樹脂を含有するカラム(保持容器)に通されるイオン交換プロセスによって行われる。樹脂は、スルホネート(SP)カチオン交換基で修飾された大きな架橋アガロースビーズ(100~300μm)で構成される。それは、工業用途のために設計されており、ベースマトリックスの大きな粒径及び物理的安定性は、樹脂が高体積の商業的抽出プロセスにおいて利用されることを可能にする。樹脂のイオン交換能力は、溶出プロセスを通した収集のために脱脂乳からのラクトフェリンを結合させる。イオン交換プロセスは、装填効率が93%を下回るまでカラムにラクトフェリンを装填する必要があるバッチプロセスである。この段階では、ラクトフェリンを抽出するために共溶出プロセスが使用される。
【0076】
5)溶出液収集及び保存
カラム装填プロセスが完了すると、ラクトフェリンは、2ステップ溶出プロセスである、特に調製された緩衝溶液を使用して樹脂から洗浄される。溶出プロセスの第1の部分は、主にラクトペルオキシダーゼからなる、望ましくないタンパク質不純物を除去するように設計されるより低い緩衝液濃度を使用するが、乳清タンパク質及び鉱物などの他の不純物もこの時点で除去される。溶出プロセスのステップ2は、より高い緩衝液強度を使用して、セファロースビッグビーズからラクトフェリンを取り除き、更なる処理のために保存容器に収集する。緩衝液伝導性レベルは、不純物が確実に除去されるように制御され、これはラクトフェリン生成物の最終的な有効性レベル(すなわち、含有量及び純度)に影響を与える。
【0077】
6)限外濾過16
複数の溶出の蓄積は、限外濾過プロセスの前提条件である。プロセスにおけるこのステップは、ラクトフェリン溶液中で所望の伝導性レベルに達するまで、ラクトフェリンから緩衝試薬を除去するように特に設計される。それは、ナトリウム、塩化物、及び硝酸塩などの不純物を除去するように設計される。濾過プロセスは、次いで、低温殺菌のための生成物の最終濃度を達成するために継続する。このステップの完了時の濃縮物の合計固形分及びpHは、天然ラクトフェリン構造を維持するために慎重に管理される。合計固形分及びpHは、プロセス水を使用して調整され得、濃縮物が必要な忍容性レベル内にあることを確実にするために、この時点で他のpH調整添加剤が使用され得る。
【0078】
7)低温殺菌18
低温殺菌は、食品安全性要件がオーストラリアの規制(Food Standards Australia and New Zealand)に従って確実に達成されるように特に設計される。上述されるように、低温殺菌ステップは、ラクトフェリンタンパク質の天然水準を維持することにおける重要なステップであり、ラクトフェリン濃縮物への温度の曝露の有害な効果を最小限に抑えるように設計される。濃縮物は、最低15秒間72℃までの加熱を受けなければならず、プロセスは、加熱媒体と生成物温度との間の最小の温度差を維持しながら、最低限の規制要件が確実に達成されるように操作することができる。このステップ直後のラクトフェリン濃縮物の冷却は、ラクトフェリンの生体活性レベルを維持するのに役立つことができる。
【0079】
8)濃縮物保存
低温殺菌後、濃縮物は、5℃未満で保存されて、流動床噴霧乾燥器によって処理するのに十分な体積が蓄積される。濃縮物の継続的なモニタリングがこのプロセス中に行われ、合計固形分及びpHが、天然ラクトフェリン生成を最大化するために必要な厳しい制限に維持されることを確実にする。
【0080】
9)噴霧乾燥20
低温殺菌されたラクトフェリン濃縮物は、従来の噴霧乾燥プロセスよりも低い温度でラクトフェリンを穏やかに乾燥させる多段階噴霧乾燥プロセスによって処理される。乾燥プロセスの第1の段階は、粉末粒子を形成する濃縮物からの水分のほとんどを低減するように設計されている。乾燥プロセスのこの部分は、気流、気温、及び濃縮ノズル圧力を使用して特に制御され、顧客ニーズ及び仕様を満たすように特に設計された粉末粒子が達成される。乾燥の第2の段階は、より低い温度の空気及び空気流量を使用してラクトフェリン粉末を穏やかにコンディショニングし、水分含有量を所望のレベルに穏やかに調整しながらタンパク質マトリックスを冷却する、乾燥流動床からなる。次いで、生成物を振動ふるいに通して、パッケージング前により大きな粒子/異物を確実に除去する。
【0081】
10)パッケージング
プロセスの最終段階は、ラクトフェリン粉末を特に設計された重箔パウチに分注することを含む。パッケージング材料は、生成物の長期貯蔵寿命のためのラクトフェリン生成物完全性の維持を確保するために優れたバリア特性を有することを確実にするために慎重に選択されている。パッケージングフォーマットは、典型的には5kgである。しかしながら、これは顧客要件に応じて変動し得る。
【0082】
本発明はまた、上述されるプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末、及びプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末を含む食品を提供する。これらの製品の用途は、以下を含む:
●乳児、フォローオン、幼児栄養
●リストされ、評価され、登録された治療用品及び医薬品(例えば、カプセル、錠剤、鼻腔スプレー)
●栄養補助食品
●成人栄養
●スポーツ栄養
●乳製品(飲料、ヨーグルト、及び粉末)
●機能性食品
●ニュートリショナル及びニュートラシューティカル
上述されるプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末の物理的特徴は、以下を含む:
●より小さく、より均一なラクトフェリン粒子は、改善されたブレンド及び可溶性の結果を可能にする
●噴霧乾燥されたラクトフェリンは、より軽く、よりふわふわした粒子、及び低い光散乱効果を有する形状でより均一である
●流動性は、顧客ニーズ及び所望サイズに応じて様々であり得る
●ニュートラル/淡泊な味及び非固化
●熱に敏感
●噴霧乾燥されたラクトフェリンの色(すなわち、薄ピンク色)は、その色がベース粉末とより良好に「ブレンド」するため、凍結乾燥されたラクトフェリンに対して乾燥ブレンドにより良好に適している
上述されるように、本発明者らはまた、上述される高機能かつ生物学的に活性なラクトフェリン粉末が治療活性を有することを発見した。以下に記載される実験は、本発明に従って生成される粉末化ラクトフェリンが、ウイルス複製に対して阻害効果を有し、インビボで免疫応答を刺激することができることを実証し、本発明者らは、これらの実験の結果が、本明細書に開示される治療用途の合理的な予測を可能にすると考える。実際、ラクトフェリンは、SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる疾患である、COVID-19を含む、ウイルス感染症の治療又は予防における使用のための潜在的な治療剤として示されており、本発明者らは、上述される有利な生物学的及び機能的特性を考慮して、本発明に従って生成されたラクトフェリン粉末が使用された場合、そのような治療の有効性を向上するであろうと予想する。実際には、本発明は、粉末形態のラクトフェリンを提供するが、これは、天然ラクトフェリンの生物学的活性の実質的に全てを保持しており、これはまた、医薬用途において製剤化するための有益な機能的特性(例えば、混合特性、可溶性など)を有する。
【0083】
よって、本発明は、患者におけるウイルス感染症を予防又は治療するための方法を提供する。1つの方法では、上述されるように生成されたラクトフェリン粉末を含む製剤は、患者に(例えば、患者の気道を介して)投与され得る。別の方法では、上述されるように生成されたラクトフェリン粉末を含む製剤は、患者に鼻腔投与され得る。
【0084】
他の実施形態及び態様では、上述されるように生成されたラクトフェリン粉末を含む製剤は、患者に経口(例えば、カプセル内で)投与され得る。
上述されるプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末、並びにプロセスによって生成されたラクトフェリン粉末及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を含む鼻腔スプレーも提供される。
【0085】
本発明者らは、ラクトフェリンベースの鼻腔スプレーが、ウイルス感染症に対する予防的又は曝露後予防として1日4回まで使用され得ることを想定する。ラクトフェリンが、通常は粘膜分泌物中に存在する高度に保存された天然タンパク質であることを考えると、ウシラクトフェリンは、免疫原性である可能性は低く、(乳製品アレルギーを有する人々を除いて)忍容性が良好であるべきである。これは、ラクトフェリンを、高度に保存された天然に存在するタンパク質に基づいて、クラス初の鼻腔噴霧送達粘膜汎病原体阻害剤として独自に位置付ける。多くの合成ウイルス遮断鼻腔スプレーが開発されているが、そのようなものは、ラクトフェリンの多面的免疫増強機能を有さない。
【0086】
本発明者らによって想定される1つの特定の治療用途は、COVID-19、並びに風邪(ライノウイルス)及びインフルエンザを引き起こすものなどの他のウイルス株によって引き起こされる疾患のための潜在的な予防及び補助治療としてである。したがって、本発明に従って生成されたラクトフェリンが、ヒト気管支上皮細胞試験及びヒト臨床試験においてCOVID-19に対する応答を改善するかを調べることによって、COVID-19に対する治療剤として有効であり得るかを調査するための実験が行われた。これらの実験は、以下に記載される。
【実施例
【0087】
実施例1-ラクトフェリン粉末の生成
本発明の実施形態に従った、以下に(実施例2を参照されたい)PnF20224及びPnF21329として参照されるラクトフェリン粉末のバッチを介した方法がここで記載される。
【0088】
乳は、Victoria、AustraliaにおけるGoulburn Valleyから供給した。生全乳を分離し、脱脂乳を処理のためにラクトフェリンプラントに移した。脱脂乳は、生脱脂乳中の細菌負荷を低減するBacterial Removal Separator(Clarifier)を通して、その後、任意の残存する異物、脂肪、脂溶性化合物、及び不溶物を除去する一連のフィルターを通して処理され処理される前に、保存全体を通して冷蔵温度で維持された。これらのフィルターは、乳が各々を通して処理されるにつれてますます細かくなり、1μmのフィルターを到達点とする。
【0089】
脱脂乳からのラクトフェリンの抽出は、イオン交換プロセスを通して行われ、脱脂乳は、特殊化イオン交換樹脂を含有するラジアルフローカラムに通した。樹脂は、大きな架橋アガロースビーズ(100~300μm)で構成されており、工業用途のためにオーダーメイドされており、ベースマトリックスの大きな粒径及び物理的安定性は、樹脂が高体積の商業的抽出プロセスにおいて利用されることを可能にする。樹脂のイオン交換能力は、溶出プロセスを通した収集のために脱脂乳からのラクトフェリンを結合させる。
【0090】
結合したラクトフェリンは、一連のますます濃縮された塩化ナトリウム緩衝溶液を使用して樹脂から溶出され、そのうちの最も高いものは、約10%w/vの濃度を有する。ラクトフェリン溶出液を収集し、更なる処理のために保存する。
【0091】
ラクトフェリン溶出液の限外濾過及び透析濾過は、ラクトフェリン溶液から塩化ナトリウムイオンを除去し、溶液中の固形分を増加させる。
低温殺菌は、食品安全性要件がオーストラリアの規制(Food Standards Australia and New Zealand)に従って確実に達成されるように特に設計される。低温殺菌ステップは、ラクトフェリン濃縮物の熱プロファイルを最小限に抑えるように設計される。規制要件を満たすために、濃縮物は、最低15秒又は同等の時間にわたって72℃までの加熱を受けなければならない。低温殺菌器直後のラクトフェリン濃縮物の冷却は、ラクトフェリンの生体活性レベルを維持するのに役立つことができる。
【0092】
ラクトフェリン濃縮物は、次いで、従来の噴霧乾燥プロセスよりも低い温度でラクトフェリンを穏やかに乾燥させる多段階噴霧乾燥プロセスによって処理した。乾燥プロセスの第1の段階は、粉末粒子を形成する濃縮物からの水分のほとんどを除去するように設計される。乾燥プロセスのこの部分は、気流、気温、及び濃縮ノズル圧力を使用して特に制御され、顧客ニーズ及び仕様を満たすように特に設計された粉末粒子が達成される。乾燥の第2の段階は、より低い温度の空気及び空気流量を使用してラクトフェリン粉末を穏やかにコンディショニングし、水分含有量を所望のレベルに穏やかに調整しながらタンパク質マトリックスを冷却する、乾燥流動床からなる。生成物を次いで、パッキング前に振動ふるいに通過させる。
【0093】
プロセスの最終段階は、ラクトフェリンを特に設計された重箔パウチに分注することを含む。ラクトフェリン粉末は、金属検出器に通してパッケージング材料に入れ、これは優れたバリア特性を有し、生成物の長期貯蔵寿命のためのPUREnFERRIN生成物完全性を維持する。パッケージングフォーマットは、典型的には5kgであるが、これは、顧客要件に応じて変動し得る。
【0094】
上述されるプロセスで使用される装置のパラメータを表1に示す。
【0095】
【表2-1】
【0096】
【表2-2】
【0097】
実施例2-本発明のラクトフェリン粉末と市販のラクトフェリン粉末との比較
本発明に従って生成された粉末形態のラクトフェリンの鉄飽和レベル、特定、定量、及び質を測定し、他の市販のラクトフェリン粉末のものと比較した(表2を参照されたい)。本発明に従って生成された及び異なる製造業者からの市販のウシ完成ラクトフェリン粉末のカチオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、及び質量分析(MS)を用いた鉄飽和レベル、特定、及び定量が記載される。
【0098】
1.材料及び方法
1.1.化学物質
Fisher Chemicals、Australiaから購入されたアセトニトリル(FSBA955-4)、水(FSBW6-4)Optima(登録商標)LC-MSグレード、99%の純度を有するトリフルオロ酢酸(FSBT/3258/PB05-100mL)、及びトリス-塩酸塩(#BP153-500)を含む、HPLC又は分析グレードの全ての試薬及び化学物質を使用した。塩化ナトリウム(#71380-5kg)は、Sigma-Aldrich、Australiaから購入した。水酸化ナトリウム(#1.06469.1000)は、Merck Millipore、Australiaから購入した。ウシラクトフェリン標準(牛乳由来のラクトフェリン98.10%;製品番号:127-04122;ロット番号:CAG5602)は、Novachem、Australiaから購入した。
【0099】
1.2.鉄及び鉄飽和分析
この方法を使用して、465nmでの吸光度測定によるラクトフェリンの鉄飽和パーセンテージを決定する。100%飽和、10mg/mLラクトフェリン溶液の465nmでの吸光度=0.48。この事実に基づいて、Fe3+、未知の溶液の飽和を推定することができる。1.00~1.50の値を得るために、溶液はA280測定のために希釈されなければならない。溶液は、A465及びA280での測定前に0.45μm酢酸セルロースフィルターを通して濾過されなければならない。分析は、Bureau Veritas Asure Quality(BVAQ)実験室、North Melbourne、Victoria、Australiaによって、方法GB 5009.268.2-2016(鉄)及びLFST 01 06.03(鉄飽和)を使用して実施された。
【0100】
【表3】
【0101】
1.3.試料調製
1.3.1.ラクトフェリン標準並びに高速液体クロマトグラフィー(FPLC)及び超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)を使用した較正曲線の構築
標準を確立するためのラクトフェリン基準材料は、FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation(日本、大阪)から製品番号#127-04122及びロット番号#CAG5602で購入した。ストック溶液を、100mlのMQを含む120mlの容器において1グラムのラクトフェリンを溶解させて、10mg/mlの濃度を得ることによって調製した。試料を室温で3.5時間、Intelliミキサー(ELMI RM-2L)で穏やかに溶解した。作業ラクトフェリン較正標準を、ストック溶液から調製して、作業標準0.25、0.5、1、2、3、4、及び5mg/mlを得た。
【0102】
UHPLC較正のために、200mgのラクトフェリンを20mlのMQに溶解することによって、10mg/mlの濃度でストック溶液を調製した。作業標準を、MQ中でのストック溶液の希釈によって調製した。較正曲線に使用された濃度は、0.05、0.075、0.1、0.5、1、1.5、2、及び2.5mg/mlであった。
【0103】
各々そのそれぞれを標的とする相対応答を使用してラクトフェリンの較正曲線を構築した。
1.3.2.FPLCを使用したカチオン交換クロマトグラフィー分析のための市販ウシラクトフェリン粉末試料調製
ラクトフェリン粉末ストック溶液(10mg/ml)を、50mLのFalconチューブにおいて200mgの粉末を正確に秤量することによって調製した。MQ水を20mL又は20gの最終体積までチューブに加えた。各粉末を3通りに調製した。試料をIntelliミキサー(ELMI RM-2L)で室温で3.5時間穏やかに溶解し、0.45μmのフィルターに通した。ストック試料を、カチオン交換クロマトグラフィー(Capto HiResカチオン交換クロマトグラフィーカラム、Cytiva)を使用した定量のために2mg/mlに希釈した。
【0104】
1.3.3.MS及びCallaghan Innovation RP-HPLC分析のための市販ラクトフェリン粉末試料調製
ラクトフェリン粉末ストック溶液(10mg/ml)を、50mLのFalconチューブにおいて100mgの粉末を正確に秤量することによって調製した。MQ水を10mL又は10gの最終体積までチューブに加えた。各粉末を3通りに調製した。試料をIntelliミキサー(ELMI RM-2L)で室温で3.5時間穏やかに溶解し、0.45μmのフィルターに通した。
【0105】
質量分析及びCallaghan Innovation RP-HPLC分析の両方のために、ストック試料を1.5mg/mlまで希釈した。
1.4.カチオン交換クロマトグラフィー
カチオン交換クロマトグラフィー実験を、室温で、AKTA pure 25 M2 FPLCシステム(GE Healthcare、USA)を使用した天然ラクトフェリンタンパク質の高分解能分離のために分析用予備充填Capto HiRes S 5/50カラム(#29275877、Cytiva Lifesciences)で行った。勾配に続いて、GE Healthcareによって提供されるプロトコルを行った。カラムは、毎ラン後に製造業者の指示に従って再生成した。
【0106】
1.5.LC/Q-TOF
MS及びMS/分析されたMSは、ダイオードアレイ検出器(DAD)及びAdvanced Bio 6545XT LC/Q-TOF機器を備えたAgilent Technologies UHPLC 1290 Infinity Quaternary LCシステムを使用して実施した。Callaghan RP-HPLC分析を、PhenomenexからのAeris(商標)3.6mm WIDEPORE XB-C8 200 Å分析用LCカラム(Part-OOG-4481-EO、250x4.6mm)、C8 Security Guard Ultra Holder(Part-AJO-9000)、及びSecurity Guard Ultra Cartridges(Part-AJO-8771)で実施した。勾配溶出を、Billakanti et al.2019(14)に従って、2つの溶媒の混合物で行った。溶媒Aは、水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)からなり、溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1%TFAであった。検出を280nmの波長で行った。注入体積は、20-μlからなっていた。各試料について少なくとも3つの独立した分析を実施し、代表的な結果を示す。Agilent Mass Hunter Qualitative Analysis Software 10をデータ分析に使用した。
【0107】
試料からのラクトフェリンインタクトタンパク質の検索及び特定のための正のエレクトロスプレーイオン化モードのDual AJS ESIでのAgilent Technologies 6545XT Advanced Bio LC/Q-TOF機器への20-μl注射によるMS分析イオン化源条件は、次の通りに設定した:キャピラリー電圧、4.5kV;源温度、乾燥ガス温度250℃、乾燥ガス流8l/分、噴霧ガス圧力200KPa(2バール)。衝突ガスは、高純度の窒素であった。全てのLC-MS測定は、3通り行った。Agilent MassHunter BioConfirm 10ソフトウェア及びSequence Managerソフトウェアをデータ分析に使用した。
【0108】
2.結果及び考察
2.1.鉄含有量及び鉄飽和レベル
結果は、合計鉄濃度及び鉄飽和レベルが、ラクトフェリン粉末において様々であることを示す(表3)。ラクトフェリン粉末中の鉄含有量は、以下の通り:105mg/kg(Leprino Nutrition)、109mg/kg(PnF20224)、129mg/kg(PnF21329)、129mg/kg(Tatura)、147mg/kg(Nepean River Dairy)、及び180mg/kg(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation)であり、Nepean River Dairy鉄含有量を最も高くランク付けした。
【0109】
6つの異なるラクトフェリン粉末の鉄飽和のパーセンテージを、BVAQ実験室に従ってUV-Vis分光法によって測定される465nm及び280nmでの光吸収の比に基づいて計算した。鉄飽和レベルは、16%~23%の範囲であった(表3)。典型的には、その天然形態のラクトフェリンは、15~20%の鉄飽和を特徴とし、サーモンピンク色を有する。Noumi及びLeprinoラクトフェリン粉末は全て16%を含有し、Taturaは14%であり、Nepean River Dairyは23%であり(分析された全ての中で最も高い)、FUJIFILM Wako corporationからのラクトフェリン参照材料は19%であった。
【0110】
鉄飽和レベルは、完成したラクトフェリン粉末の物理化学特性に影響を与え、これは、ラクトフェリン機能がその正しい三次元構造に依存するため、ラクトフェリンの機能及び有効性に影響する。鉄結合は、その三次元構造におけるラクトフェリン変化を促進し、その熱安定性を増加させ、天然ラクトフェリンは、他の形態よりもわずかに高い熱安定性を示す。Noumiラクトフェリン粉末は、天然ラクトフェリンと呼ばれる16%の鉄飽和を有するサーモンピンク色の基準を満たすため、わずかにより高い熱安定性を示すことも予想され得る。
【0111】
【表4】
【0112】
2.2.カチオン交換クロマトグラフィーによるラクトフェリン粉末中のラクトフェリン定量
高分解能予備充填Capto HiRes S 5/50カラムを、優れたピーク分解能を提供するためにラクトフェリンの定量に選択した。結果は、ラクトフェリンが正確な定量のために十分に分離され、溶出されたことを示す。クロマトグラムを280nmで記録した。
【0113】
ラクトフェリン濃度を決定するために、較正曲線を、方法セクションに記載されるように生成した。参照ラクトフェリンは、0.9997のR2値で選択された濃度範囲(0.25~5mg/ml)について良好な線形較正曲線を生成した。これに続いて、4つの異なる製造業者からのウシラクトフェリン粉末を、Capto HiRes S 5/50カラム上でGE Healthcareによる最適化されたアッセイ条件を使用して、ラクトフェリン含有量及び純度の定量について分析した(表4)。
【0114】
タンパク質純度は、統合クロマトグラムの主なラクトフェリンピークパーセンテージに基づいて決定した。異なるラクトフェリン純度及び定量レベルがラクトフェリン粉末試料中で見出された(表3)。タンパク質純度は、それぞれ、PnF20224及びPnF21329では98.76%及び98.58%、ラクトフェリン(Nepean River Dairy)では98.36%、ラクトフェリン(Tatura)では94.84%であると計算された。ラクトフェリン回収率のパーセンテージは、それぞれ、PnF20224で82%、PnF21329で81%、Nepean River Dairyで62%、Taturaで74%であった。ラクトフェリン回収率の差は、様々なラクトフェリン商業的製造業者によって使用される様々な精製プロセスに起因し得る。
【0115】
【表5】
【0116】
2.3.市販ラクトフェリン粉末中のラクトフェリンの分子量
市販ラクトフェリン粉末中に存在するラクトフェリンの分子量を特定するために、Q-TOF質量分析計を使用した。インタクトなラクトフェリンの分子量を、PnF20224、PnF21329、Nepean River Dairy、及びTaturaについて測定した。結果は、これら全てがラクトフェリンの理論的分子量と一致したことを示した:PnF20224は、83,194Daであり、PnF21329は、82,853Daであり、Nepean River Dairyは、83,373Daであり、Taturaは、83,984Daであった。質量分析結果は、表5に提示される。
【0117】
以前の研究は、ラクトフェリンが、ウシ初乳及び成熟乳から複数の分子量形態で単離されており、これらが、ラクトフェリン-a(分子量約84,000)及びラクトフェリン-b(分子量約80,000)として指定されていることを示している。これらの複数の質量形態は、様々な乳試料中に自然に存在し、異なる形態は、少なくとも部分的に、グリコシル化の程度の差によるものである。Noumiのラクトフェリン試料(すなわち、本発明のもの)は、両方83,000Daの範囲内であり、これは、Noumiのラクトフェリンがその試料中の分子量形態について均質であることを示す。Nepean River Dairy(NRD)ラクトフェリン及びTaturaラクトフェリンの両方は、2つ以上の分子量ラクトフェリン形態(NRD:83,373Da~85,595Da及びTatura:83,984Da~88009Da)を含有し、ラクトフェリンのより低い質を示す。
【0118】
【表6】
【0119】
2.4.Callaghan Innovation RP-HPLC分析を使用したラクトフェリン定量
Callaghan Innovation RP-HPLC分析法は、市販ラクトフェリン製品中のラクトフェリン純度及び量の同時決定のために開発された。現在の実験について、較正曲線は、相関係数(R)値1で0.05~2.5mg/mlの範囲にかけて線形であった。試験されたラクトフェリン粉末中のラクトフェリン含有量を決定し、表6に要約した。ラクトフェリン回収率は、PnF20224で81.20%、PnF21329で83.00%、Nepean River Dairyで71.37%、Taturaで81.79%であった。ラクトフェリン粉末中の汚染されたタンパク質の調査は、本研究の範囲外であるが、Taturaラクトフェリン粉末は、2020年にLonnerdal et al.によって調査され、彼らは、約80,000Daの主要LFタンパク質とともに、約25,000Daの微量ラクトフェリン断片が特定され、これは、ラクトフェリンが生成プロセス中に断片化されたことを示す。
【0120】
【表7】
【0121】
現在の試験では、鉄含有量、鉄飽和レベル、タンパク質純度、及び定量(カチオン交換及びRP-HPLC)を、Noumi Limited及び他の2つのオーストラリアのラクトフェリン製造業者(Nepean River Dairy及びTatura)からのラクトフェリン粉末について評価した。全てのラクトフェリンは、鉄飽和、純度、及び定量においてかなりの差を示した。カチオン交換クロマトグラフィー及びRP-HPLC分析ラクトフェリン定量の両方は、両方の分析技法が、ラクトフェリン定量を特定する異なる生理化学的特性を試験する際に個々の利点を有することを明らかにする。FPLC、カチオン交換クロマトグラフィー、及びRP-HPLC結果は、ラクトフェリン回収率の差を示し、Noumiラクトフェリン(すなわち、本発明による)が高い回収率を有する。カチオン交換及びRP-HPLC技法を組み合わせることは、ウシラクトフェリン単離粉末の良好な理解を提供する:カチオン交換分析は、天然バッファー条件下でのラクトフェリンに対する熱誘導変化への洞察を提供するが、RP-HPLCは、そのような情報を提供しない(14、21)。両方のクロマトグラフィー定量分析は、Noumiラクトフェリン粉末(PnF20224及びPnF21329)が高い回収率を有し、ラクトフェリンタンパク質が製造条件中に安定しており、生物学的活性の損失を最小限に抑え、臨床研究、栄養補助食品、及び栄養剤に好適であることを実証した。
【0122】
実施例3-抗ウイルス活性のインビトロ調査
ヒト肺細胞試験、その後のインビボげっ歯類試験、及びヒト臨床試験を実施する多面的研究アプローチは、本明細書に記載される治療効果の証拠を提供することを目的とする。特に記載されない限り、実施例3及び4における「ラクトフェリン」への言及は、本発明の方法に従って生成されたラクトフェリン含有粉末の形態のラクトフェリンを指す。
【0123】
倫理声明、ドナー募集、及びpBEC収集。
書面によるインフォームドコンセントとともに、気管支鏡検査中に健康な非喫煙ドナーから得られた、初代気管支上皮細胞(pBEC)は、P.A.B.Wark(The University of Newcastle)によって提供された。全ての対象は、標準的なガイドラインに従った光ファイバー気管支鏡検査を受けた。pBECを、直視下で適用された単一被覆ナイロン細胞診ブラシを使用して得た。第2から第3世代気管支まで約4~8ブラッシングがかかった。
【0124】
pBEC及び条件付きリプログラミングされたpBECの空気-液体界面培養
空気-液体界面での培養及び分化を、前述の方法に従って行った(Loo SL,Wark PAB,Esneau C,Nichol KS,Hsu AC,Bartlett NW.Human coronaviruses 229E and OC43 replicate and induce distinct antiviral responses in differentiated primary human bronchial epithelial cells.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2020;319:L926-L931)。空気-液体界面での培養前に、1人の喘息ドナーから得られたpBECを増殖させ、コンフルエントまで分化させた。健康な患者から得られたpBECについて、細胞を、以前に公開されたプロトコルに従った照射された線維芽細胞との共培養によって条件付きリプログラミングした(Martinovich KM,Iosifidis T,Buckley AG,Looi K,Ling KM,Sutanto EN,Kicic-Starcevich E,Garratt LW,Shaw NC,Montgomery S,Lannigan FJ,Knight DA,Kicic A,Stick SM.Conditionally reprogrammed primary airway epithelial cells maintain morphology,lineage and disease specific functional characteristics.Sci Rep 2017;7:17971)。分化の25~30日後、培養は、偽重層構造、繊毛上皮の存在、及び粘液/粘液生成細胞の存在によって準備ができていることを確認した。
【0125】
ウイルスストック及び増殖
OC43ウイルスストックは、ATCC(VR-1558)から入手した。American Type Culture Collection(ATCC)は、OC43が多数の未知の継代でHCT-8細胞上で増殖されたことを示す。ATCC供給OC43力価は、1ミリリットル当たり2.8×105中央組織培養感染用量(TCID50/mL)であり、ATCCストックを受け取ったとき、ウイルスをMRC-5細胞中で3回継代させて作業ストックを生成した。OC43力価は、2×108TCID50/mLであり、WHOガイドラインに従って試験に使用した。ウイルス力価を、Spearman-Karber法を使用して、MRC-5におけるTCID50アッセイによって測定した。
【0126】
ラクトフェリン治療及び感染
ウシラクトフェリン(LF)粉末(Noumi Limited、オーストラリア)を、PBS中で10mg/mLのストック濃度まで希釈した。完全に分化させると、LFでの尖部治療を、BEBM最小培地(MM)中に希釈した100μg/mL(LF100)及び1000μg/mL(LF1000)の50μLの添加によって行った。分化pBECを、0.1のmoiでOC43に感染させた。ウイルス接種原を200μLのMM中で希釈し、対応する濃度のLFは、結合中にLFへの曝露を維持した。
【0127】
感染前に、細胞を、PBSで1回洗浄し、尖部表面上のみで対応する濃度のLF(又はMM対照)の50μLで3時間にわたって前治療した。3時間後、ウイルス接種原を、LF治療(合計感染体積250μL)を除去することなく、ウェルに直接添加した。35℃で2時間インキュベーション後、接種原を除去した。細胞を500ulのPBSで洗浄して、未結合ウイルスを除去した。最後に、時間経過の開始に対応して、50uLのLF治療を尖部で添加した。治療を時間経過の期間中に維持し、pBECを感染後0、24、48、及び96時間で採取した。該当する場合(図5)、50uLのLF治療(又はMM対照)を、治療をリフレッシュするために、感染後48時間で尖部表面に加えた。
【0128】
ALI培養からの試料収集及び分析
採取時に、尖部洗浄を、450uLのPBSの5分間の添加によって(又は感染後48時間でLF治療がリフレッシュされたとき400uLの添加によって)収集して、感染性ウイルスの放出を測定した。半膜を、分子分析のために1%2-メルカプトエタノール(2ME)を含有するRLT緩衝液(Qiagen)中、及びタンパク質分析のためにプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含有するRIPA緩衝液中に収集した。全ての試料を更なる使用まで-80℃で保存した。
【0129】
TCID50による放出感染性ウイルスの尺度
尖部洗浄中のOC43作業ストック力価及び放出感染性ウイルスを、TCIDエンドポイント希釈法を使用して測定した。MRC-5を、10%FCS EMEM培地(Hyclone)平底96ウェルプレートにおいて1.105細胞/ウェルの濃度で播種した。翌日、細胞が40%コンフルエンスに達したとき、細胞を試料で感染させ、これを1%EMEM培地中で段階希釈した。1行を対照として保持した。プレートを35℃で5日間インキュベートし、顕微鏡を使用して検査して、各カラムにおけるCPEの存在又は不在を決定した。これらの結果を用いて、Spearman-Karber法を用いて感染性ウイルスユニットを決定した。
【0130】
qPCRによるウイルス負荷の尺度
全RNAを、miRNAeasyミニキット(Qiagen)を使用して抽出した。精製RNAを分光測色法(Nanodrop)によって定量した。cDNAを、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(ABI)を使用して合成した。OC43ヌクレオカプシド遺伝子PCR検出のためのプラスミドを使用してqPCRのための標準を生成した。ウイルス負荷qPCR分析を、ABI 7500 Real Time PCR Systemを使用して、OC43 N遺伝子(Geneworks)を標的とするtaqmanアッセイを使用して実施した。全ての標的を、18S(Applied Biosystems、Thermofisher Scientific)を使用して正規化した。表7は、これら2つのアッセイのプライマー及びプローブを示す。
【0131】
【表8】
【0132】
統計分析
全てのデータを、GraphPad Prismバージョン8.2.1ソフトウェアを使用して分析した。qPCRデータ(図3)を、シダック多重比較検定を用いた二元配置分散分析によって比較した。TCID50(図4及び5)によって測定された対数転換された感染性ウイルスデータを、シダック多重比較検定での二元配置分散分析によって比較した。P値<0.05は、統計的に有意とみなした。
【0133】
結果
ヒト分化初代ヒト気管支上皮細胞試験
図2で見ることができるように、ラクトフェリンによる尖部治療は、空気液体界面で分化した喘息を有する1つのドナーから得られたpBECにおける96時間の時間経過にかけてOC43ウイルス負荷の低減を示した。細胞を、最小培地(MM)中で希釈されたラクトフェリン治療(LF100:100μg/mL;LF1000:1000μg/mL)の存在又は不在下、0.1のmoiでOC43で感染させた。OC43ウイルス負荷を、N遺伝子を標的とするOC43特異的アッセイを使用して測定した。データを、18s特異的アッセイを使用して18sハウスキーパー遺伝子に対して正規化した。N=1
図2によって示されるように、分化初代ヒト気管支上皮細胞の1000μg/mLのラクトフェリン(本発明に従って生成される)による単一治療は、感染後4日まで100%の阻害をもたらした。10倍低い、100μg/mLの用量も有効であり、2日後ウイルス複製の100%遮断を示し、感染後4日で約90%の低減を示した。
【0134】
図3で見ることができるように、1000μg/mLのラクトフェリンによる尖部治療はまた、感染後96時間でOC43ウイルス負荷の顕著な低減を示した。2人の健康なドナーから得られたpBECを、空気液体界面で分化させた。細胞を、最小培地(MM)中で希釈されたラクトフェリン治療の存在又は不在下、0.1のmoiでOC43で感染させた。OC43ウイルス負荷を、N遺伝子を標的とするOC43特異的アッセイを使用して測定した。データを、18s特異的アッセイを使用して18sハウスキーパー遺伝子に対して正規化した。統計分析は、シダック多重比較検定での二元配置分散分析を使用して実施し、エラーバーは、平均+/-SDを表し;N=8;p<0.05(グラフ上の*)
後続実験は、感染性ウイルスが気道上皮培養の尖部表面で流されていることを示した(図4及び5)。図4で見ることができるように、1000μg/mLのラクトフェリンによる尖部治療は、感染後48時間でOC43放出感染性ウイルスの顕著な低減を示した。2人の健康なドナーから得られたpBECを、空気液体界面で分化させた。放出感染性ウイルスを、Spearman-Karber計算を使用してTCID50アッセイによって測定し、データの対数変換を、シダック多重比較検定での二元配置分散分析によって分析した。細胞を、最小培地(MM)中で希釈されたラクトフェリン治療の存在又は不在下、0.1のmoiでOC43で感染させた。
【0135】
図5で見ることができるように、1000μg/mLのラクトフェリンによる尖部治療は、感染後48時間でOC43放出感染性ウイルスの顕著な低減を示した。1人の健康なドナーから得られたpBECを、空気液体界面で分化させた。細胞を、最小培地(MM)中で希釈されたラクトフェリン治療の存在又は不在下、0.1のmoiでOC43で感染させた。放出感染性ウイルスを、Spearman-Karber計算を使用してTCID50アッセイによって測定し、データの対数変換を、シダック多重比較検定での二元配置分散分析によって分析した。エラーバーは、平均+/-SDを表し;N=3;p<0.05(グラフ上の*)。これらのデータは、LF1000が96時間で未治療よりも統計的に低かったことを示した(ラクトフェリンは48時間で補充された)。
【0136】
感染時のラクトフェリン治療は、48時間で2logを超えて感染性ウイルスの生成を顕著に抑制した。ウイルスは、96時間までに治療された細胞においてキャッチアップし始めたが(図4)、ラクトフェリンが48時間で補充されたとき、未治療細胞(図5)においてよりも依然として統計的に低く(LF1000)、免疫系の助けはなかった。インビボでは、ラクトフェリンは、免疫性を刺激して継続的な抗ウイルスサポートを提供しながら、感染の最初の日々にかけて保護の窓を提供するであろうと予想される。インビボマウス試験(以下に記載)は、これを例証することが予想される。
【0137】
よって、本発明に従って生成されたラクトフェリンは、分化初代ヒト気管支上皮細胞を使用したインビトロモデルにおいてヒトコロナウイルス(CoV)OC43による感染を低減する(データは機密であるが、要望に応じて議論に利用可能である)。これらの肯定的な結果は、非常に印象的であり、インビトロ及びインビボ(すなわち、げっ歯類モデル)試験は、抗ウイルス薬(例えば、COVID-19のための)及び非処方箋市販薬としての適用のために、新規治療モダリティ(動物の鼻腔において局所的に適用されるラクトフェリン)でウイルス阻害を引き起こすCOVID-19の効果を調査することが計画されている。
【0138】
実施例4-げっ歯類における抗ウイルス活性のインビボ調査
多くのウイルス(OC43及びSARS-CoV-2などのβ-コロナウイルスを含む)は、プロテオグリカンを共受容体として使用して、細胞へ結合を促進し、感染を促進する。これらの細胞表面プロテオグリカンに結合することによって、天然ラクトフェリンは、ウイルス感染を妨げることが示されている。インビトロ(細胞株での)試験は、SARS-CoV-2を含む、一連の呼吸器ウイルスについてのラクトフェリンの抗ウイルス活性を報告している。以下に記載される実験は、本発明に従って調製されたラクトフェリン粉末中のラクトフェリンが天然ラクトフェリンの生物学的活性を保持したかを決定するために実施された。
【0139】
上述されるように、ラクトフェリンの抗ウイルス特性は、エピデミックヒトコロナウイルス(例えば、OC43及び229E)に感染した分化初代ヒト気管支上皮細胞において実証されている。ヒト気道上皮のこの生理学的に有益なインビトロモデルにおけるSARS-CoV2に対する有効性の概念の早期証明を得るために、後続の実験が行われた。
【0140】
以下に記載される実験は、当該技術分野で標準的であり、当業者に周知である手順を使用して実施された。
マウスにおけるOC43感染に対する鼻腔内治療有効性
論理的根拠
抗ウイルス剤は、COVID-19の封じ込め、並びに現在及び将来の呼吸器系ウイルス疾患の多くのための治療において重要な役割を果たす可能性がある。天然ラクトフェリンの抗微生物/抗ウイルス活性は、認識され、感染中に細胞結合のために多くのウイルスによって使用される細胞の表面上の糖構造(例えば、ヘパラン、シアル酸系分子)への結合によって媒介されることが提案されている。例えば、コロナウイルスなどのヒト呼吸器ウイルスは、細胞結合のために糖ベースの分子構造を利用する。SARS-CoV-2は、硫酸ヘパランに結合する。関連するヒトベータコロナウイルスOC43は、グリカンベースの受容体9-O-アセチル化シアル酸を利用する。
【0141】
これらの実験は、抗呼吸器系ウイルス鼻腔スプレーとしてのラクトフェリン製剤の開発を支持する概念実証の証拠を提供するためにインハウスで開発された独自のマウスコロナウイルス(OC43)感染モデルを使用して、OC43感染を遮断することに関する本発明に従って(例えば、実施例1に記載されるように)生成された鼻腔内送達ラクトフェリン粉末の有効性を試験することに焦点を当てる。前述のように、特に記載されない限り、本実施例における「ラクトフェリン」への言及は、本発明の方法に従って生成されたラクトフェリン含有粉末の形態のラクトフェリンである。
【0142】
目的
1.鼻腔内ラクトフェリン治療が、マウスにおけるヒトコロナウイルス(CoV)OC43による感染を低減するかを決定すること。
【0143】
2.ラクトフェリン及び免疫トランスクリプトームバイオマーカーの抗ウイルス効果を分析すること
試験設計
3つの別個のインビボ実験を実施して、抗呼吸器系ウイルス鼻腔スプレーとしてのラクトフェリン製剤の開発を支持する概念実証の証拠を提供した。各試験についての実験設計の要約は、表8及び図6において入手可能である。
【0144】
試験1:ラクトフェリンの概念実証
マウス(8匹/群)を、感染時及び感染後毎日ラクトフェリンで鼻腔内治療して(100μg/mL*15μLの鼻腔内、インビトロ試験に基づいて、マウス当たり1.5μgの合計用量に対応)、曝露後予防をモデル化した。初期ラクトフェリン治療後、マウスを1×10TCID50/mL OC43(又はUV不活性化ウイルス対照-UV-OC43)に感染させて、構築されたプロトコルに従って、OC43上気道感染の経過をモデル化した。実験的エンドポイントは、感染後2及び48時間で評価した。鼻甲介及び鼻腔洗浄を、それぞれ、qPCRによるOC43ウイルス負荷及びウイルス中央組織培養感染用量(TCID50)による感染性の評価のために収集した。
【0145】
試験2:反復実験
マウス(8匹/群)を、感染時及び感染後毎日ラクトフェリンで鼻腔内治療して(100μg/mL*15μLの鼻腔内、マウス当たり1.5μgの合計用量に対応)、曝露後予防をモデル化した。この反復実験では、ラクトフェリン治療を時間経過の各日に新鮮に作製した。初期ラクトフェリン治療後、マウスを1×10TCID50 OC43/mL(又はUV不活性化ウイルス対照-UV-OC43)に感染させて、構築されたプロトコルに従って、OC43上気道感染の経過をモデル化した。実験的エンドポイントは、感染後2及び48時間で評価した。鼻甲介を、qPCRによってOC43ウイルス負荷及び先天性抗ウイルス免疫応答(インターフェロンIFN-β及びIFN-λ2/3)の評価のために収集した。鼻腔洗浄を、それぞれ、ウイルス中央組織培養感染用量(TCID50)による感染性の評価のために収集した。
【0146】
試験3:免疫トランスクリプトームバイオマーカー
マウス(8匹/群)を、感染時及び感染後毎日2回ラクトフェリンで鼻腔内治療して(10mg/mL*15μLの鼻腔内、マウス当たり150ugの合計用量に対応)、曝露後予防をモデル化した。初期ラクトフェリン治療後、マウスを1×10TCID50/mL OC43(又はUV不活性化ウイルス対照-UV-OC43)に感染させて、構築されたプロトコルに従って、OC43上気道感染の経過をモデル化した。実験的エンドポイントは、感染後2及び48時間で評価した。鼻甲介を、qPCRによってOC43ウイルス負荷の評価のために収集した。気管支-肺胞洗浄を白血球列挙のために収集した。追加的に、鼻腔組織中の免疫トランスクリプトームバイオマーカーユニットを、n>500一般的マウス免疫学関連遺伝子の発現を評価する、Nanostring(Nanostring、Seattle、WA)からのnCounterマウス免疫学v2発現パネルを使用してNanostringによって分析した。
【0147】
【表9】
【0148】
結果
試験1:ラクトフェリン鼻腔内治療は、OC43ウイルス負荷及び感染性ウイルスの低減に向かう傾向を示した
図7Aは、48時間の時間経過にかけて1.5μgのラクトフェリンで鼻腔内治療されたマウスに対して、未治療(ビヒクル)マウスにおける鼻甲介中のOC43ウイルス負荷を示す。ウイルス接種後2時間で、OC43ウイルス負荷は、ビヒクルとラクトフェリン治療マウスとの間で同等であった。感染の48時間までに、OC43ウイルス負荷の2log増加が観察され、上気道におけるウイルス複製を示す。ラクトフェリン治療マウスについて、二元配置分散分析統計検定及びシダック多重比較検定(p=0.3368)を使用して分析されるとき、感染後48時間でウイルス負荷の低減に向かう傾向があった。
【0149】
図7Bは、鼻腔洗浄試料におけるTCID50アッセイを使用して、MRC-5細胞中の測定されたOC43感染性ウイルスを示す。ウイルス接種後2時間で、未治療(ビヒクル)とLF治療試料との間の感染性ウイルス用量の有意差は観察されなかったが、ラクトフェリン治療群では感染性ウイルスの低減に向かう傾向があった(p=0.6727)。感染性ウイルスTCID50アッセイについて、感染後48時間でのOC43生感染性ウイルスは、TCID50アッセイの検出限界(LOD)を下回った。
【0150】
図7において見ることができるように、OC43ウイルス負荷及び感染性ウイルスは、ラクトフェリン鼻腔内治療後に低減する傾向があった。マウスを、感染時及びその後毎日1.5μgのラクトフェリンで鼻腔内治療した。ビヒクルとラクトフェリン治療マウスとの間のA)ウイルス負荷、及びB)感染性OC43レベルを、それぞれ、qPCR及びTCID50アッセイによって評価した。結果は、シダック多重比較検定を使用した二元配置分散分析によって分析した。N=8、LOD=検出限界(63.2 TCID50/mL)。
【0151】
試験2:ラクトフェリン鼻腔内治療は、感染後48時間でのOC43ウイルス負荷の低減に向かう傾向を示し、これはIFN mRNAの低減と関連した。
初期予備試験はOC43ウイルスRNA及び感染性ウイルスの減少に向かう傾向を示したため、実験を繰り返した。ラクトフェリン治療がストックラクトフェリン濃度の予め凍結されたアリコートから行われた、初期実験とは対照的に、Noumi Limitedによって提供されるラクトフェリン粉末は、治療の各日に新鮮に希釈された。
【0152】
OC43ウイルス負荷及び感染性ウイルスは、ラクトフェリン鼻腔内治療後に低減する傾向があった。マウスを、感染時及びその後毎日1.5μgのラクトフェリンで鼻腔内治療した。ビヒクルとラクトフェリン治療マウスとの間のA)ウイルス負荷、及びB)感染性OC43レベルを、それぞれ、qPCR及びTCID50アッセイによって評価した。結果は、A)シダック多重比較検定を使用した二元配置分散分析及びB)対応のないT検定、n=8によって分析した。
【0153】
OC43ウイルス負荷について第1の試験と同様の結果が観察された。図8Aは、48時間の時間経過にかけて1.5μgのラクトフェリンで鼻腔内治療されたマウスに対して、未治療(ビヒクル)マウスにおける鼻甲介中のOC43ウイルス負荷を示す。ウイルス接種後2時間、OC43ウイルス負荷は、ビヒクルとLF治療マウスとの間で同等であった。ウイルス接種後48時間でのOC43ウイルス負荷の2log増加が観察され、上気道におけるウイルス複製を示す。LF治療マウスでは感染後48時間でウイルス負荷の低減に向かう傾向があった;二元配置分散分析統計検定及びシダック多重比較検定(p=0.2929)。
【0154】
試験1からの結果に基づいて、OC43力価は、48時間までにTCID50アッセイの検出限界を下回っていたため、生ウイルスは、感染後2時間でのみ測定された。図8Bは、ウイルス接種後2時間での鼻腔洗浄試料におけるTCID50アッセイを使用して、MRC-5細胞中の測定されたOC43感染性ウイルスを示す。LF治療群では、感染性ウイルスの低減に向かう傾向が観察された(p=0.3748)。
【0155】
次いで、鼻腔組織における先天性抗ウイルス免疫応答を、インハウスIFN-β及びIFN-λ2/3qPCRアッセイを使用して調査した。それぞれ、IFN-β及びIFN-λ2/3について、結果を図9A及び9Bに表す。図9では、OC43感染後の先天性免疫遺伝子発現の大きさは、ウイルス負荷に従った。マウスを、感染時及びその後毎日1.5μgのラクトフェリンで鼻腔内治療した。ビヒクルとラクトフェリン治療マウスとの間のA)IFN-β及びB)IFN-λ2/3レベルを、qPCRによって評価した。結果は、シダック多重比較検定を使用した二元配置分散分析によって分析した。N=8
両方のIFN分子について、48時間で観察されたウイルス負荷の低減に従った、感染後48時間でのmRNAレベルの低減に向かう傾向があった(図4A);二元配置分散分析統計検定及びシダック多重比較検定(それぞれ、IFN-β及びIFN-λ2/3についてp=0.25139及び0.5183)を使用して分析した。
【0156】
試験3:ラクトフェリン鼻腔内治療
最後の試験では、100倍高い投与量及びより頻繁な投与でのラクトフェリン鼻腔内治療の抗ウイルス有効性を調査した。この実験では、マウスは、150μgのラクトフェリンで鼻腔内治療され、感染後48時間時点までに合計5回の鼻腔内用量を受けた。2つの追加の対照群が実験設計において追加された:UV-OC43/未治療(模擬ビヒクル)及びUV-OC43/LF治療(模擬+LF)。
【0157】
ウイルスRNAは、UV-OC43に感染した群の鼻甲介における検出限界未満であり、鼻腔組織におけるウイルスRNAレベルが、初期接種原の持続的検出ではなく、生ウイルスによるものであることを示した。OC43感染群では、我々は、ビヒクル治療及びラクトフェリン治療群の両方について、感染の2時間と48時間との間にOC43ウイルス負荷の1log増加を観察した。最後に、2時間及び48時間時点の両方で、ビヒクルとLF治療群との間にウイルス負荷の差はなかった。
【0158】
この試験におけるラクトフェリン用量は、耐性及び有効性の上位レベルを確立するために、以前の試験のものよりも100倍高かった。これは、しかしながら、高すぎるようであり、ウイルス負荷への効果は観察されなかった。本発明者らは、例えば、鼻腔スプレーの増加した体積が単にマウスの鼻腔から落ちた場合があり得ることに留意する。今後の実験は、わずか2倍の高さ(又はそのくらい)になるであろう。
【0159】
次いで、気管支-肺胞洗浄(BAL)における白血球動員を調査して、上気道ラクトフェリン治療の、下気道において保護的免疫細胞動員を生成する能力を評価した。図10で見ることができるように、OC43感染及びラクトフェリン鼻腔内治療。マウスを、感染時及びその後1日2回150μgのラクトフェリンで鼻腔内治療し、BAL(A)マクロファージ、(B)好中球、及び(C)リンパ球を、ビヒクルとラクトフェリン治療群との間、並びに模擬感染及び感染群間で列挙した。結果を、テューキー多重比較検定を使用して「混合効果」統計検定において分析した。各群についてn=8。
【0160】
図10Aは、下気道におけるマクロファージを示す。感染後2時間で、群間の有意差が観察された。UV不活性化OC43を接種した両方の群を、OC43に感染した群と比較して有意により高いマクロファージ数を示した(p<0.01)。追加的に、OC43ラクトフェリン治療群は、その未治療対応物よりも低いマクロファージ数を有する傾向があった;テューキー多重比較を用いた混合効果統計学的検定(p=0.1337)。感染の48時間までに、全ての群内でマクロファージ数に差はなかった。図10Bは、OC43接種後2時間及び48時間でBAL好中球数を示す。両方の時点について好中球数に有意差はなかった。図10Cは、下気道におけるリンパ球数を示す。2時間後、模擬感染未治療群におけるリンパ球数は、OC43感染ビヒクル群よりも有意に低かった(p<0.05)。ラクトフェリン治療群については、模擬感染、ビヒクル治療群と比較して、リンパ球の増加に向かう傾向があった(それぞれ、OC43ビヒクル及びOC43ラクトフェリン治療群について、p=0.2006及びp=2101)。感染の48時間までに、リンパ球数に差はなかった。
【0161】
これらのデータは、ラクトフェリンのより定期的な投与が必要とされ得ることを示す。ヒトでは、ウイルス感染予防効果のために1日4回の鼻腔スプレーが必要である。今後の実験は、典型的なヒト治療レジメンで起こることに沿って、マウスをより頻繁に治療する。
【0162】
試験3続き:ラクトフェリン免疫トランスクリプトームバイオマーカー
ラクトフェリン免疫調節活性を調査するために、鼻腔組織免疫トランスクリプトームバイオマーカーユニットを、Nanostringマウス免疫学v2発現パネル(Nanostring、Seattle、WA)を使用して分析し、これは、n>500一般的マウス免疫学関連遺伝子の発現を評価する。未感染及び未治療群を、未感染ラクトフェリン群と比較し、2つの外れ値(ビヒクル治療群に1つ及びラクトフェリン治療群に1つ)をこの分析のために除去した。
【0163】
Nanostringは、T細胞シグナル伝達及び抗原提示、リンパ球動員(IL20 CXLC13及びアポトーシス(カスパーゼ8)、マクロファージ及びT細胞からの免疫系経路(CD2、CD22、ITG B2)、白血球移動経路(ITGB2、ICAM 2 ITGA4.CD2、SELL)、及びJAK-STATシグナル伝達経路(SHP1、STAT)、並びに造血細胞系列(CD127、HLA-DR、CD19、CD22、CD20)に関与するバイオマーカーの上方調節を明らかにした。
【0164】
データを、ラクトフェリン治療による経路濃縮について更に分析した。ラクトフェリンは、抗原提示及びシグナル伝達経路(TLR/NFkB/IFN/TNFシグナル伝達)で、リンパ球動員、結合、成熟を取り巻く複数の経路の濃縮を促進した。
【0165】
最後に、この分析は、鼻腔内ラクトフェリン治療が鼻腔免疫細胞動員を促進したことを明らかにした。ビヒクル治療群と比較して、LF治療群では、CD45(白血球マーカー)、B細胞、並びに低レベル好中球及びT細胞が濃縮された。1つの例外は、細胞傷害性T細胞であった。
【0166】
結論
この報告では、OC43感染に対する鼻腔内送達されたラクトフェリンの有効性を、抗呼吸器系ウイルス鼻腔スプレーとしてのラクトフェリン製剤の開発を支持する概念実証の証拠を提供するために開発されたマウスコロナウイルス(OC43)感染モデルを使用して調査した。
【0167】
これは、鼻腔内ラクトフェリン治療がマウスにおけるヒトコロナウイルス(CoV)OC43による感染を低減したかを決定し、ラクトフェリン免疫トランスクリプトームバイオマーカーの分析を行うために、3つのインビボ研究の範囲にかけて行った。
【0168】
試験1及び2は、ビヒクルと1.5μgのラクトフェリンで治療されたマウスとの間でウイルス負荷及び感染性ウイルスを調査することによって、ラクトフェリン治療の抗ウイルス効果に焦点を当てた。重要なことに、両方の試験において、感染後48時間でウイルス負荷の低減に向かう強い傾向があった。
【0169】
ラクトフェリン投与量が100倍(1.5μgから150μg)増加した、第3の試験では、ビヒクル治療とOC43治療群との間のウイルス負荷は、同様であり、1.5μgから150μgまで増加したラクトフェリン投与量は、高すぎる可能性があり、感染を効果的に予防することができなかったことを示す。例えば、15ug(すなわち、10倍高いのみ)などの、追加の治療用量を試験することは、鼻腔内ラクトフェリン治療によってOC43ウイルス負荷を防止するための最適用量を決定する次のステップである。
【0170】
鼻腔洗浄試料(試験1及び2)中の感染性OC43を見るとき、接種後2時間でのOC43結合は、ビヒクル治療群と比較して、ラクトフェリン治療群において低減に向かう傾向を示した。増加したマウス数での更なる試験は、(ヒトにおける治療のモデルと同様に、ラクトフェリンでより早く、より頻繁に治療することに加えて)統計的有意性に到達するために必要な検出力を提供するのに役立つであろう。感染後48時間で、感染性ウイルスユニットは、アッセイの検出限界を下回った。qPCRによって観察されたウイルスRNAの増加とは対照的な、感染後48時間までの感染性OC43の欠如は、更に最適化される必要がある実験モデルのアーチファクトである可能性が高い。
【0171】
試験3は更に、より高い用量(治療当たり150μg)での及びより頻繁な投与量(1日2回)でのラクトフェリン治療後の免疫バイオマーカーの評価に焦点を当てたが、1日2回は、ヒト鼻腔スプレー適用のように、依然として治療が少なすぎる可能性があり、1日4回は、適用頻度の点で典型的である。試験3の目的は、まず、上気道ラクトフェリン治療が、気管支-肺胞洗浄中の白血球を列挙することによって、下気道において保護的免疫細胞動員を生成することができるかを決定することであった。上気道におけるOC43による感染後2時間で、リンパ球の顕著な動員が誘導されたが、マクロファージ又は好中球は誘導されなかった(p<0.05)。ウイルスチャレンジ後48時間で、UV-OC43対照と比較して、OC43ビヒクル治療及びOC43ラクトフェリン治療群における白血球数に変化はなく、これは、白血球数の変化が一過性摂動にのみ関連し得ること、又はそのような効果が初期免疫系「プライミング」に関連し得ることを示し得る。
【0172】
最後に、鼻腔組織免疫トランスクリプトームバイオマーカーユニットを、ビヒクル治療とLF治療群との間で、Nanostringマウス免疫学v2発現パネル(Nanostring、Seattle、WA)を使用して分析した。ラクトフェリン治療は、MHC-II発現、T細胞及びB細胞マーカー、並びにB及びT細胞ホーミングにおいて重要な役割を果たすサイトカインである、CXCL13生成を促進した。この結果は、これらが鼻腔ブラッシングにおける好適なバイオマーカーであり得ることを示す。経路濃縮分析は、ラクトフェリン鼻腔内治療が、抗原提示及びシグナル伝達経路(TLR/NFkB/IFN/TNFシグナル伝達)で、リンパ球動員、結合、成熟を取り巻く複数の経路の濃縮を促進することを明らかにした。これは、B及びT細胞、好中球、並びに濃縮されたCD45(白血球マーカー)などの免疫細胞集団のための濃縮コアによって更に補完された。
【0173】
方法
OC43増殖、精製、及び定量
元のOC43(ATCC番号VR-1558)継代履歴は不明であり、HCT-8細胞上で増殖させる。ATCCからの初期ストックを、2.8×105TCID50/mlの濃度で受け、MRC-5細胞中で3回継代させて、前述されたような作業ストックを生成した(7)。MRC-5細胞株を、Spearman-Karber法を使用してTCID50アッセイに使用して、ウイルス負荷を定量した。
【0174】
ウイルスチャレンジ及び治療投与
6~8週齢雌BALB/cマウスを、Australian Bioresources(Moss Vale、Sydney、NSW)から入手した。治療薬の投与及びウイルスチャレンジを、イソフルランを使用した浅麻酔下で行った。マウスを、15μL(試験1及び2)又は10μLのPBS中の1.15×106TCID50の濃度のOC43で鼻腔内チャレンジして、上気道感染をモデル化した。試験3において使用されたUV-OC43を、呼吸器ウイルスについて前述されたように不活性化した。
【0175】
鼻腔洗浄、気管支肺胞洗浄、及び細胞分析
マウス気管にカニューレ挿入し、上気道をHBSS(HyClone、GE Life Sciences)で洗浄し、鼻腔洗浄液を鼻孔で収集した。鼻腔洗浄液を-80℃で保存した。気管支肺胞洗浄を、白血球及びサイトカインの列挙について前述のように処理した。
【0176】
RNA抽出及び逆転写
鼻甲介を切除し、1%ベータメルカプトエタノールを含有するRLT中で30秒間ボルテックスした。鼻甲介デブリを除去し、溶解物を-80℃で保存した。miRNAeasyキット(Qiagen)を供給業者のプロトコルに従って使用して、RNAを抽出した。RNAを分光測色法(Nanodrop)によって測定し、逆転写反応を、500ngのRNAを使用してHigh-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(ABI)で製造業者の推奨に従って行った。
【0177】
定量的PCR
定量的PCR(qPCR)は、QuantStudio 6上で、TaqMan遺伝子発現マスターミックス(Thermo Fisher Scientific)及びプライマープローブ組み合わせ(Thermo Fisher Scientific)を使用して概説されるように実施した(表9)。既知の濃度の標準を、目的の遺伝子の絶対定量に使用した。18sを参照遺伝子として使用して、目的の遺伝子のコピー数を正規化した。
【0178】
【表10】
【0179】
ウイルス中央組織培養感染用量(TCID50)ウイルス感染性アッセイ
OC43コロナウイルスについてのTCID50アッセイを、10%FCS EMEM増殖培地及び1%FCS EMEMアッセイ培地を使用して、MRC-5細胞において実施した。MRC-5細胞を増殖培地に再懸濁し、96ウェルプレートに播種した(ウェル当たり100μL当たり1×105細胞)。30~40%コンフルエンスで(通常、一晩インキュベーション後)、細胞を鼻腔洗浄試料で、2倍希釈で開始し、続いて1%FCSを含有するEMEM中の10倍希釈段階で感染させた。33℃/5%CO2で5日間のインキュベーション後、プレートを光学顕微鏡によって細胞病理学的効果について調べた。次いで、各試料のウイルス力価を、Spearman-Karber法を使用して決定した。
【0180】
免疫トランスクリプトーム発現分析
鼻甲介RNAを、nCounterマウス免疫学パネル(NanoString)にハイブリダイズし、高感度結合の設定で製造業者の指示に従ってNanostring Prep-stationで処理した。555視野を、nCounter Digital Analyzer上でカウントした。生データを、内容正規化QCのためのnSolver Analysisソフトウェア4.0において品質管理(QC)チェックし、陽性/陰性対照及びハウスキーパー遺伝子発現に対して正規化した。生カウントを、GENormソフトウェア及び経路/細胞濃縮分析を使用した自動正規化のためにnSolver Advanced Analysisソフトウェア(v2.0.134)にインポートした。高度分析プラットフォームは、線形回帰モデルを使用してDEGを特定した。DEGを、GraphPad Prism 9.1.2においてボルケーノプロットした。ヒートマッパーソフトウェアを使用して、試料及び遺伝子発現パターンの平均ユークリッドクラスタリング、並びに経路濃縮zスコア及び細胞濃縮プロファイルの視覚的表現を、Nanostring高度分析出力に基づいて生成した。
【0181】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修飾が行われ得ることは、本発明の当業者には理解されるであろう。
以下の特許請求の範囲及び本発明の先行する説明において、文脈が明示的言語又は必要な含意によって別段に必要とする場合を除き、「含む(comprise)」という語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、包括的な意味で、すなわち、本発明の様々な実施形態において記載された特徴の存在を特定するが、更なる特徴の存在又は追加を排除しないように使用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリン粉末を生成するための方法であって、
天然ラクトフェリン含有物質からラクトフェリンを抽出し、抽出されたラクトフェリンを濃縮して、前記抽出されたラクトフェリンが改善された安定性を有する液体濃縮物を生成することであって、前記液体濃縮物が、5.2~7.2のpH及び約9~12wt%のラクトフェリンの濃度を有する、生成することと、
前記液体濃縮物を、前記液体濃縮物を低温殺菌するのに有効な温度まで、前記液体濃縮物を低温殺菌するのに有効な時間にわたって加熱することと、
低温殺菌された液体濃縮物を非変性条件下で乾燥させて、前記ラクトフェリンの実質的に全てが天然ラクトフェリンであるラクトフェリン粉末を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記抽出されたラクトフェリンが、前記ラクトフェリンを不安定化する種の前記液体濃縮物中での不在のために、改善された安定性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出されたラクトフェリンが、前記ラクトフェリンを不安定化する種の前記液体濃縮物中での存在のために、改善された安定性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体濃縮物が、以下:pH調整剤、安定化鉱物、及び溶解ガスのうちの1つ以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記天然ラクトフェリン含有物質が、乳である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記天然ラクトフェリン含有物質が、脱脂乳である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脱脂乳が、低温ボウル脂肪分離プロセスを使用して生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ラクトフェリンが、イオン交換クロマトグラフィーを使用して前記天然ラクトフェリン含有物質から抽出される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2ステップ溶出が、前記イオン交換クロマトグラフィーで行われ、第1の溶出ステップが、相対的に低い濃度を有する緩衝溶液を使用して前記イオン交換カラム上に固定化された種を溶出することを含み、第2の溶出ステップが、相対的に高い濃度を有する緩衝溶液を使用して前記イオン交換カラム上に固定化されたラクトフェリンを溶出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出されたラクトフェリンが、限外濾過を使用して濃縮される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記低温殺菌された液体濃縮物が、低温殺菌直後に冷却される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記低温殺菌された液体濃縮物が、噴霧乾燥によって乾燥される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記噴霧乾燥が、多段階噴霧乾燥を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ラクトフェリン粉末中の前記ラクトフェリンの90%超が、天然ラクトフェリンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ラクトフェリン粉末が、本質的にラクトフェリンからなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ラクトフェリン粉末が、約50μmのD50粒径を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成された、ラクトフェリン粉末。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末を含む、食品。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末を含む、鼻腔スプレー。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項21】
患者におけるウイルス感染症を予防又は治療するための方法であって、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末又は請求項20に記載の薬学的組成物を含む製剤を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項22】
投与が、前記患者の気道を介する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
患者におけるウイルス感染症を予防又は治療するための方法であって、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって生成されたラクトフェリン粉末又は請求項20に記載の薬学的組成物を含む製剤を前記患者に鼻腔投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記製剤が、前記ウイルス感染症を予防するために予防的に投与される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】