特表 2024-544435 風力推進ユニット及びそのようなユニットを備える船

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2024-12-02

(54)【発明の名称】風力推進ユニット及びそのようなユニットを備える船

(51)【国際特許分類】

   B63H 9/061 20200101AFI20241125BHJP

   B63H 9/067 20200101ALI20241125BHJP

   B63B 15/02 20060101ALI20241125BHJP

【ＦＩ】

B63H9/061

B63H9/06 A

B63B15/02 Z

【審査請求】未請求

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2024537182

(86)(22)【出願日】2022-12-23

(85)【翻訳文提出日】2024-06-19

(86)【国際出願番号】 IB2022062736

(87)【国際公開番号】W WO2023119245

(87)【国際公開日】2023-06-29

(31)【優先権主張番号】2114467

(32)【優先日】2021-12-23

(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】519162983

【氏名又は名称】オーシャンウイングズ

(71)【出願人】

【識別番号】524230480

【氏名又は名称】マーヴィン シリーズ

(74)【代理人】

【識別番号】110001656

【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】メルル，カティア

(72)【発明者】

【氏名】コナン，エルバン

(72)【発明者】

【氏名】バラル，ニコラス

(72)【発明者】

【氏名】スデズ，ニコラス

(72)【発明者】

【氏名】ジェラール，ルドヴィック

(57)【要約】

本発明は、推進要素（１１１、１１２）及びマスト（１２１）を備える、動作位置にあるときに垂直方向に細長い風力推進ユニット（１００）を備える船に関する。
本発明は、ユニットのマスト（１２１）の近位領域に堅固に取り付けられ、船のデッキに取り付けられた支持体（２２０）上の水平主軸（Ａ）を中心に回転する基部（２１０）と、基部を支持体に対して回転させる傾斜制御装置（２１６、２１７）であって、水平方向の直線力を生成することができる第１のアクチュエータ（２１７）と、主軸から離れて位置する第１の領域（２１８）において基部に力を加えるためにアクチュエータを基部（２１０）に接続する方向変更要素（２１６）と、を備える、傾斜制御装置と、基部（２１８）を支持要素（２２０）に係止するための係止装置（３００）であって、基部（２１０）の第２の領域（２１５）において垂直方向の保持力を加えることができる第２のアクチュエータ（３１０）を備える係止装置と、を備える、傾斜装置に関する。
風力推進ユニット（１００）は、１つ以上の第１のアクチュエータ（２１７）によって、船のデッキに沿って延在する非アクティブ位置と直立位置との間で移動させることができ、係止装置（３００）は、ユニットをアクティブ位置に保持することに寄与することができる。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

推進要素（１１１、１１２）及びマスト（１２１）を備え、動作位置にあるときに垂直方向に細長い少なくとも１つの風力推進ユニット（１００）を備える船（Ｎ）であって、少なくとも１つの風力推進ユニットと組み合わせて、前記マストの近位領域に堅固に取り付けられた基部（２１０）を備える傾斜装置を備え、前記傾斜装置は、前記船のデッキ（Ｐ）に取り付けられた支持要素（２２０）上の略水平な主軸（Ａ）を中心に回転し、前記傾斜制御装置（２１６、２１７）は、前記基部を前記支持体に対して回転させることができ、前記傾斜制御装置は、水平方向の直線力を生成することができる第１のアクチュエータ（２１７）と、前記主軸（Ａ）から離れて位置する前記第１の領域（２１８）において前記基部に力を加えるために、前記アクチュエータを前記基部（２１０）に接続する方向変更要素（２１６）と、前記基部（２１０）を前記支持要素（２２０）に係止するための係止装置（３００）と、を備え、前記係止装置は、前記第１の領域（２１８）から前記主軸（Ａ）を横断する方向に離れた前記基部の第２の領域（２１５）において、前記垂直方向の保持力を加えることができる少なくとも１つの第２のアクチュエータ（３１０）を備え、前記風力推進ユニット（１００）は、前記１つ以上の第１のアクチュエータ（２１７）によって、前記船のデッキ（Ｐ）に沿って延在する非アクティブ位置とアクティブ直立位置との間で移動可能であり、前記係止装置（３００）は、前記ユニットをそのアクティブ位置に保持することに寄与することができることを特徴とする、船（Ｎ）。

【請求項2】

前記第１のアクチュエータ又は各第１のアクチュエータ（２１７）は、略水平に配向され、前記主軸（Ａ）に略平行な２つの軸（Ｃ、Ｂ）に沿って前記アクチュエータの可動部分（２１７ｂ）及び前記基部の前記第１の領域（２１８）に関節接合されたそれぞれのリンク機構（２１６）によって前記第１の領域に接続されることを特徴とする、請求項１に記載の船（Ｎ）。

【請求項3】

２つの第１のアクチュエータ（２１７）と、前記主軸に平行な方向に概ね位置合わせされた２つの第１の領域（２１８）において前記基部に接続された２つの方向変更要素（２１６）と、を備えることを特徴とする、請求項１又は２に記載の船（Ｎ）。

【請求項4】

前記支持要素上への前記基部の前記回転取り付けは、一方で、軸が前記主軸と一致する回転シャフト（Ａ）と、他方で、中心が前記主軸（Ａ）上に位置し、回転中に前記溝内で移動することができるフィンガと協働する少なくとも１つの弓形溝（２１４ｂ）と、を備えることを特徴とする、請求項１から３のいずれか一項に記載の船（Ｎ）。

【請求項5】

前記第２のアクチュエータ又は各第２のアクチュエータ（３１０）は、前記支持要素（２２０）に堅固に固定されたシリンダを備え、前記シリンダの可動部分（３１０ａ）は、係止フィンガ（３２０）を担持することを特徴とする、請求項１から４のいずれか一項に記載の船（Ｎ）。

【請求項6】

前記係止フィンガ又は各係止フィンガ（３２０）は、前記第２の領域を構成する前記基部の延長部分（２１５）と協働することができることを特徴とする、請求項５に記載の船（Ｎ）。

【請求項7】

前記第２のアクチュエータ又は各第２のアクチュエータ（３１０）は、略水平方向（Ｅ）に直線力を生成することができることを特徴とする、請求項５又は６に記載の船（Ｎ）。

【請求項8】

前記フィンガ又は各フィンガ（３２０）及びその延長された対応部分（２１５）は、前記直線力を垂直成分を有する力に変換することができる傾斜面（３２２、２１５ａ）を介して協働することを特徴とする、請求項６及び７の組合せによる船（Ｎ）。

【請求項9】

船（Ｎ）用の風力推進ユニットであって、前記ユニットは、細長く、直立の向きをとることができ、１つ以上の推進要素（１１１、１１２）及びマスト（１２１）を備え、前記マスト（１２１）の近位領域は、前記船のデッキ（Ｐ）に取り付けられるように意図された支持要素（２２０）上の略水平な主軸（Ａ）を中心として回転可能に取り付けられた基部（２１０）に堅固に接続され、前記傾斜制御装置（２１６、２１７）は、前記基部（２１０）を前記支持要素（２２０）に対して回転させることができ、前記傾斜制御装置（２１６、２１７）は、水平方向の直線力を生成することができる第１のアクチュエータ（２１７）と、前記主軸（Ａ）から離れて位置する前記基部の第１の領域（２１８）において前記基部に力を加えるために、前記アクチュエータを前記基部に接続する方向変更要素（２１６）と、前記基部を前記支持要素に係止するための係止装置（３００）と、を備え、前記係止装置は、前記第１の領域から前記主軸（Ａ）を横断する方向に離れた前記基部の第２の領域（２１５）において、垂直方向の保持力を加えることができる少なくとも１つの第２のアクチュエータ（３１０）を備え、前記風力推進ユニットは、船に設置されたとき、前記１つ以上の第１のアクチュエータ（２１７）によって、前記船のデッキ（Ｐ）に実質的に平行に延在する非アクティブ位置とアクティブ直立位置との間で移動可能であり、前記ユニットをそのアクティブ位置に保持することに寄与することができることを特徴とする、風力推進ユニット。

【請求項10】

直立の向きをとるように意図され、１つ以上の推進要素及びマストを備える細長い風力推進ユニットのための傾斜取り付けアセンブリ（２００、３００）であって、マストの近位領域を受け入れるように構成され、船（Ｎ）のデッキ（Ｐ）に固定されるように意図された支持要素（２２０）上に略水平な主軸（Ａ）を中心として回転可能に取り付けられた基部（２１０）と、前記基部を前記支持要素に対して回転させることができる傾斜制御装置（２１６、２１７）であって、前記アセンブリが定位置にあるときに略水平方向の直線力を生成することができる少なくとも１つの第１のアクチュエータ（２１７）と、前記主軸（Ａ）から離れて位置する前記基部の第１の領域（２１８）において前記基部に力を加えるために前記アクチュエータを前記基部に接続する方向変更要素（２１６）と、を備える、傾斜制御装置（２１６、２１７）と、前記アセンブリが定位置にあるときに、前記第１の領域（２１８）から前記主軸を横断する方向に離れた前記基部の第２の領域（２１５）において垂直方向の保持力を加えることができる少なくとも１つの第２のアクチュエータ（３１０）を備える前記支持要素に前記基部を係止するための係止装置（３００）と、を備えることを特徴とする、傾斜取り付けアセンブリ（２００、３００）。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、概して、船の風力推進に関し、特に、商船のための推進支援に関する。

【0002】

先行技術
特に、国際公開第２０１８０８７６４９（Ａ１）号パンフレット及び国際公開第２０２０１１５７１７（Ａ１）号パンフレットには、条件に応じて略垂直軸を中心に角度制御される構造体に取り付けられた二重帆を備える風力推進ユニットが記載されており、二重帆は、前方フラップ及び後方フラップと、ブームを形成する要素及びガフを形成する要素によって接続された前方マスト及び後方マストと、を備え、前方フラップは、前方マストによって横断され、前方マストによって画定される軸を中心に回転し、後方フラップは、後方マストによって横断され、後方マストによって画定される軸を中心に回転する。

【0003】

構造体は、前方マストの回転軸と一致する回転軸を中心に回転することができる。

【0004】

ロータベースの推進ユニット（例えば、フレットナーロータ又は吸引ロータタイプ）もよく知られており、これらの推進ユニットは、商船に装備し始めている。

【0005】

風力推進ユニットのサイズ及び／又は風への露出を制限するために、風力推進ユニットを略水平位置に傾斜させることによって風力推進ユニットを格納するための解決策も知られている。

【0006】

したがって、国際公開第２０１８０３９７０５（Ａ１）号パンフレットは、そのような解決策、より具体的には、動作位置において略垂直方向に細長く、１つ以上の推進要素及びマストを備える風力推進ユニットを備え、風力推進ユニットに関連して、マストの近位領域に堅固に取り付けられ、船のデッキに固定された支持要素上の略水平な主軸を中心として回転可能に取り付けられた基部を備える傾斜装置と、基部を支持要素に対して回転させるように適合された傾斜制御装置と、を更に備える船を記載している。

【発明の概要】

【0007】

本発明の目的は、直立動作位置にあるときに推進ユニットを非常に堅牢にしながら、剛性帆又は他のタイプの風力推進ユニットのサイズ又は露出を低減するための単純で経済的かつ信頼性のある解決策を提供することである。

【0008】

この目的のために、推進要素及びマストを備え、動作位置にあるときに垂直方向に細長い少なくとも１つの風力推進ユニットを備える船が提案され、この船は、少なくとも１つの風力推進ユニットと組み合わせて、マストの近位領域に堅固に取り付けられた基部を備える傾斜装置を備え、傾斜装置は、船のデッキに取り付けられた支持体上の略水平な主軸を中心に回転し、傾斜制御装置は、基部を支持体に対して回転させることができ、傾斜制御装置は、水平方向の直線力を生成することができる第１のアクチュエータと、主軸から離れて位置する第１の領域において基部に力を加えるために、当該アクチュエータを基部に接続する方向変更要素と、基部を支持要素に係止するための係止装置と、を備え、係止装置は、第１の領域から当該主軸を横断する方向に離れた基部の第２の領域において、垂直方向の保持力を加えることができる第２のアクチュエータを備え、当該風力推進ユニットは、１つ以上の第１のアクチュエータによって、船のデッキに実質的に平行に延在する非アクティブ位置とアクティブ直立位置との間で移動可能であり、係止装置は、ユニットをそのアクティブ位置に保持することに寄与することができることを特徴とする。

【0009】

船は、個々に、又は当業者が互いに技術的に適合性があると理解する任意の組合せで得られる以下の追加の特徴を任意選択的に含む。
＊第１のアクチュエータ又は各第１のアクチュエータは、略水平に配向され、主軸（Ａ）に略平行な２つの軸に沿ってアクチュエータの可動部分及び基部の当該第１の領域に関節接合されたそれぞれのリンク機構によって当該第１の領域に接続される。
＊船は、２つの第１のアクチュエータと、主軸に対して平行な方向に概ね位置合わせされた２つの第１の領域において基部に接続された２つの方向変更要素と、を備える。
＊支持要素上への基部の回転取り付けは、一方では、軸が当該主軸と一致する回転シャフトと、他方では、中心が当該主軸上に位置し、回転中に当該溝内で移動することができるフィンガと協働する少なくとも１つの弓形溝と、を備える。
＊第２のアクチュエータ又は各第２のアクチュエータは、支持要素に堅固に固定されたシリンダを備え、シリンダの可動部分は係止フィンガを担持する。
＊係止フィンガ又は各係止フィンガは、第２の領域を構成する基部の延長部分と協働することができる。
＊第２のアクチュエータ又は各第２のアクチュエータは、略水平方向に直線力を生成することができる。
＊フィンガ又は各フィンガ及びその延長された対応部分は、当該直線力を垂直成分を有する力に変換することができる傾斜面を介して協働する。

【0010】

第２の態様によれば、船のための風力推進ユニットが提案され、当該ユニットは、細長く、直立の向きをとることができ、１つ以上の推進要素及びマストを備え、マストの近位領域は、船のデッキに取り付けられるように意図された支持要素上の略水平な主軸を中心として回転可能に取り付けられた基部に堅固に接続され、傾斜制御装置は、基部を支持体に対して回転させることができ、傾斜制御装置は、水平方向の直線力を生成することができる第１のアクチュエータと、主軸から離れて位置する第１の領域において基部に力を加えるために、当該アクチュエータを基部に接続する方向変更要素と、基部を支持要素に係止するための係止装置と、を備え、係止装置は、第１の領域から当該主軸を横断する方向に離れた基部の第２の領域において、垂直方向の保持力を加えることができる第２のアクチュエータを備え、当該風力推進ユニットは、船に設置されたとき、１つ以上の第１のアクチュエータによって、船のデッキに実質的に平行に延在する非アクティブ位置とアクティブ直立位置との間で移動可能であり、係止装置は、ユニットをそのアクティブ位置に保持することに寄与することができることを特徴とする。

【0011】

第３の態様によれば、直立の向きをとるように意図され、１つ以上の推進要素及びマストを備える細長い風力推進ユニットのための傾斜取り付けアセンブリが提案され、このアセンブリは、マストの近位領域を受け入れるように構成され、船のデッキに固定されるように意図された支持要素上の略水平な主軸を中心として回転可能に取り付けられた基部と、基部を支持要素に対して回転させることができる傾斜制御装置であって、アセンブリが定位置にあるときに略水平方向の直線力を生成することができる少なくとも第１のアクチュエータと、当該主軸から離れて位置する基部の第１の領域において基部に力を加えるために当該アクチュエータを基部に接続する方向変更要素と、を備える、傾斜制御装置と、アセンブリが定位置にあるときに、第１の領域から当該主軸を横断する方向に離れた基部の第２の領域において垂直方向の保持力を加えることができる少なくとも１つの第２のアクチュエータを備える支持要素上に基部を係止するための装置と、を備えることを特徴とする。

【図面の簡単な説明】

【0012】

本発明の他の態様、目的及び利点は、非限定的な例として添付図面を参照して与えられる、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、より明らかになるであろう。

【0013】

【図1】一連のマスト帆風力推進ユニットを装備した船の全体斜視図である。

【図2】直立位置にある風力推進ユニットの基部領域の全体斜視図である。

【図3】下降位置にある風力推進ユニットの基部領域の斜視図である。

【図4】図３と同じ位置における基部領域の部分図である。

【図5】直立位置にある風力推進ユニットの基部領域の側面図である。

【図6】直立位置にある風力推進ユニットの基部領域の、消失点及び切り欠きを伴う、斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

次に、風力推進ユニットのための傾斜装置について説明するが、この場合、２つのフラップを有する剛性マスト帆であり、このような推進ユニットを選択的に直立及び下降させることを可能にする。

【0015】

その直立位置において、各推進ユニットは、必要に応じてフラップの向きを調整することによって船の動きを支援するために使用される。

【0016】

各風力推進ユニットは、その下降位置において、通常、船の上部デッキに対して平行に、長手方向に、更には横方向又は斜めに延在し、商船の場合には積み込み／積み下ろし操作を、又はデッキの下の通路の場合には航行操作を妨げないようにする。

【0017】

図１は、デッキＰ上に、本発明による６つの傾斜ロータ推進ユニット１００が、各々３つの推進ユニットからなる２列で取り付けられている、例えばオイルタンカー又はばら積み船などの船Ｎを示す。

【0018】

各推進ユニットは、ここでは２つのフラップ１１１、１１２を備え、前方フラップは主マスト１２１によって横断され、後方フラップは副マスト１２２によって横断され、２つのマストは、ブーム要素１３０及びガフ要素１４０によって底部及び上部で接続される。

【0019】

主マスト１２１は、要素１３０の下に突出し、マスト帆の主支持体を形成する。マスト帆は、例えば、国際公開第２０１８０８７６４９（Ａ１）号パンフレット及び国際公開第２０２０１１５７１７（Ａ１）号パンフレットの教示に従って設計することができる。

【0020】

次に図２～図６を参照すると、主マスト１２１は、その基部に、回転機構２００及び係止機構３００を備える傾斜装置を有する。

【0021】

回転機構２００は、主マスト１２１の基部が堅固に取り付けられたマスト基部２１０を備える。

【0022】

この基部２１０は、マスト基部１２１を埋め込むためのブラインド開口部２１２ａを上面２１２に有する本体２１１によって形成されている。

【0023】

本体２１１の下面２１３は、略平坦であり、風力推進ユニットが直立位置にあるとき、船のデッキの対応領域上に支承面を形成する。本体の構造は、中実であってもよく、又は組み立てられた要素から形成されてもよく、例えば、溶接された金属要素は、主に、図示されるように、横方向フレーム要素によって互いに堅固に接続された２つの横方向フレーム要素を備え、本体の下側は、横方向フレーム要素の下側によって全体的又は部分的に構成される。

【0024】

ここで、本体２１１は、２つの横方向フレーム部分２１４を備え、その各々は、基部２１０の主水平回転軸Ａを画定する円筒形シャフト（図示せず）のための貫通孔２１４ａと、軸Ａを中心とする弓形溝２１４ｂと、を有する。

【0025】

基部はまた、この場合、部分２１４において、本体の下部支承面２１３に沿って、軸Ａに垂直な方向に略水平に延在する２つの突出延長部２１５を備え、各延長部は、その高さがその根元からその自由端に向かって減少するように傾斜又は斜角上面２１５ａを有し、当該自由端は丸みを帯びている。

【0026】

これらの延長部２１５は、以下に説明するように係止機構３００と協働するように設計されている。

【0027】

延長部２１５の反対側の基部２１０の側部において、本体２１１は、その下面の近傍に１つ以上の孔２１８を有し、これらの孔は、軸Ａに平行な軸Ｂを共に画定する。副シャフト（図示せず）は、２つのリンク機構２１６（本体の横方向フレーム要素にそれぞれ接続される）を本体２１１に接続し、これらのリンク機構が当該軸Ｂを中心に枢動することを可能にする。

【0028】

これらの反対側の端部では、基部２１０からから離れて、これらのリンク機構２１６は、軸Ａ及びＢに平行な軸Ｃを中心として関節接合するように２つの油圧シリンダ２１７に接続される。

【0029】

各シリンダ２１７は、シリンダがＣ軸に沿ってそれぞれのリンク機構に関節接合されるヘッド２１７ｂを担持するシリンダロッド２１７ａと、ロッド２１７ａと反対側の端部が軸Ａ、Ｂ及びＣに平行な軸Ｄに沿って、溶接又はボルト締めなどの任意の適切な手段によって船のデッキに堅固に取り付けられた固定支持フレーム２２０に関節接合されるシリンダ本体２１７ｃと、を備える。

【0030】

この支持フレーム２２０は、本質的に、特に、２つの補強された側壁２２２と、リンク機構／シリンダアセンブリ２１６、２１７の側部に位置する第１の上壁２２３と、係止機構３００の上方に位置する第２の上壁２２４と、を有するフレームワーク２２１を備える。図示されていないが、支持フレーム２２０の２つの側壁２２２は各々、それぞれの弓形溝２１４ｂに係合された内向きのフィンガを備える。

【0031】

支持フレーム２２０はまた、シリンダヘッド２１７ｂの移動を直線的に案内するための手段（図示せず）を備える。

【0032】

軸Ａに沿って延在する主シャフトと、フィンガ及び弓形溝の２つのアセンブリとの組合せは、限られた設置面積を有する特に堅牢なピボットをもたらす。円形溝２１４ｂはまた、マストをその直立位置に移動させ、必要に応じてその下降位置に移動させるための角度移動端ストッパとしても機能する。

【0033】

基部２１０及び支持フレーム２２０は、力、すなわち、一方では、以下で説明されるような風力推進ユニットの上昇及び下降動作によって引き起こされる力、他方では、航行中に推進ユニット上の風によって生成され、船に伝達される力の伝達を確実にするようにサイズ決定される。

【0034】

係止機構３００は、ここでは、水平に、かつシリンダ２１７に略平行に、したがって軸Ａ、Ｂ、Ｃ、及びＤに対して横方向に配向された２つの油圧シリンダ３１０を備える。

【0035】

各シリンダ３１０は、支持フレーム２２０の外側に堅固に取り付けられたシリンダ本体３１０ｃと、シリンダロッド３１０ａと、を備え、シリンダロッド３１０ａは、その自由端に、略水平な上面３２１と斜角下面３２２と、を有する係止フィンガ３２０を担持し、フィンガの厚さが基部２１０の方向に減少するようになっている。

【0036】

支持フレーム２２０、特にその上壁２２４は、図示されていない他の部品と協働して、それぞれの直線変位軸Ｅに沿って各フィンガ３２０を案内し、直線変位軸Ｅは、ここでは略水平であり、軸Ａ、Ｂ、Ｃ、及びＤに垂直である。

【0037】

各フィンガ３２０は、風力推進ユニットの直立位置において基部のそれぞれの延長部２１５と協働するように設計されており、その斜角下面３２２は、シリンダが作動されると、その下向き成分がこの直立位置においてフレーム２２０に対して基部２１０を安定させる傾向がある力を加えるように、それぞれの延長部の斜角上面２１５ａを支承する。

【0038】

本発明の装置は以下のように動作する。

【0039】

風力推進ユニットが下降され、船のデッキ（図３及び図４に示される位置）上に静置されると、２つのシリンダ２１７は、推力作動され、リンク機構２１６を介して基部２１０上の軸Ａを中心とするモーメントを及ぼし、推進ユニットを徐々に上昇させる。

【0040】

この移動のために必要とされる力は、本質的に船のデッキの平面内に向けられ、したがって、デッキ構造の補強を必要とする可能性がある著しい垂直力をデッキに課すことを回避することに留意されたい。

【0041】

上昇させるのに必要な力は、任意の他の適切な力の生成によって補うことができる。

【0042】

この移動の継続は、推進ユニット及びそのマスト１２１を、略垂直な直立位置にもたらす。

【0043】

前述の上昇移動の間、係止装置３００のシリンダ３１０は、基部２１０がフレーム２２０に対して静止しているその安定位置に到達することを可能にするように、格納位置（フィンガ３２０が図の右側）にある。

【0044】

この位置に達すると、アクチュエータ３１０が展開されてフィンガ３２０を左に移動させ、図５及び図６に示すように、その延長部２１５の上面２１５ａを支承することによってフィンガが基部２１０をこの位置に係止することを可能にする。シリンダ２１７が反対側の展開位置に係止された状態で、シリンダはリンク機構２１６を介してマスト２１２を反対側の所定位置に保持する。

【0045】

風力推進ユニットをその直立位置からその下降位置に移動させるために、逆の動きが実行される。

【0046】

本発明の装置は、多くの利点を有する。
第１に、水平寸法及び垂直寸法の両方においてコンパクトであり、船のデッキ上の限られた空間を占め、推進ユニットの所与の全高に対して、推進ユニット自体のための十分な空間を残す。
リンク機構２１６による方向変更のおかげで、シリンダ２１７は、適度に短いストロークを有することができる。
加えて、傾斜装置は、船に取り付けられる前に事前に組み立てられ、事前に較正されることができ、したがって、設置コストを低減し、信頼性を向上させる。
示されるように、力の本質的に水平方向は、デッキが、構造補強を必要とし得る垂直力などのいかなる有意な力にも耐える必要がないことを意味する。

【0047】

当然のことながら、本発明は、上述され、図面に示された実施形態に決して限定されず、むしろ、当業者は、多数の変形又は修正を行う方法を知っているであろう。

【0048】

特に、様々な軸の向き及びシリンダの移動方向は、当業者が変形が可能であることを理解するように、説明されたものと異なってもよい。特に、シリンダの作動方向は斜めであってもよい。

【0049】

代替的に、係止機構は、特に基部の孔に貫通するフィンガを設けることによって、示されたもの以外の任意の形態をとることができる。

【0050】

最後に重要なこととして、プロペラは、マグヌスロータ、吸引ロータ、剛性翼などの任意のプロペラとすることができる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【国際調査報告】