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特表2024-544439乳化安定性に優れた水中油型D相乳化組成物
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  • 特表-乳化安定性に優れた水中油型D相乳化組成物 図1
  • 特表-乳化安定性に優れた水中油型D相乳化組成物 図2
  • 特表-乳化安定性に優れた水中油型D相乳化組成物 図3
  • 特表-乳化安定性に優れた水中油型D相乳化組成物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-02
(54)【発明の名称】乳化安定性に優れた水中油型D相乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20241125BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20241125BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/04
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538214
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022021063
(87)【国際公開番号】W WO2023121343
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185858
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【弁理士】
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ナ・ウン・ユク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ミン・ファン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC422
4C083AD022
4C083AD092
4C083BB11
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE07
(57)【要約】
本発明は、N-アシルプロリンまたはその塩;およびオイルを含む水中油型D相乳化組成物およびその製造方法に関し、本発明による組成物は、高含有量のオイルを含みながらも、低粘度を示すことができ、優れた乳化安定性を提供することができ、また、高い保湿性およびしっとり柔らかな使用感を具現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-アシルプロリンまたはその塩;およびオイルを含む水中油型D相乳化組成物。
【請求項2】
前記N-アシルプロリンまたはその塩は、パルミトイルプロリンナトリウムである、請求項1に記載の水中油型D相乳化組成物。
【請求項3】
前記オイルは、シリコーンオイル、エステル系オイル、ハイドロカーボン系オイル、トリグリセリド系オイルおよびこれらの混合物から成る群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の水中油型D相乳化組成物。
【請求項4】
前記オイルの含有量は、組成物全重量に対して5~40重量%である、請求項1に記載の水中油型D相乳化組成物。
【請求項5】
前記組成物の粘度は、4000cps以下である、請求項1に記載の水中油型D相乳化組成物。
【請求項6】
前記組成物は、固形の乳化剤または固形の乳化補助剤を組成物全重量に対して5重量%以下で含む、請求項1に記載の水中油型D相乳化組成物。
【請求項7】
前記組成物は、ポリオールまたはポリオール誘導体をさらに含む、請求項1に記載の水中油型D相乳化組成物。
【請求項8】
前記ポリオールまたはポリオール誘導体の含有量は、組成物全重量に対して2~30重量%である、請求項7に記載の水中油型D相乳化組成物。
【請求項9】
N-アシルプロリンまたはその塩を含むD相を準備する段階と;前記D相にオイルを含む油相を混合する段階と;前記混合物に水相を混合する段階と;を含む水中油型D相乳化組成物の製造方法。
【請求項10】
前記オイルの含有量は、組成物全重量に対して5~40重量%である、請求項9に記載の水中油型D相乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含有量のオイルを含みながらも、乳化安定性に優れた組成物に関し、具体的には、N-アシルプロリンまたはその塩とオイルを含む水中油型D相乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な皮膚を維持するためには、皮膚に適当な水分と油分を付与することが必要である。化粧品は、皮膚を外部の環境から保護し、回復および健康を維持するための手段として用いられる。また、外部環境の変化などから失われる皮膚の水分および油分を補充し、皮膚老化を遅延させる機能を有する。
【0003】
化粧品のうち化粧水(スキン、トナー)は、乳液(ローション)やクリームに比べて皮膚に塗布しやすく、さわやかな使用感を付与し、皮膚に即刻水分供給が可能であるが、長時間皮膚保湿を維持しにくい。皮膚が適切な油・水分バランスを維持できるように脂溶性油相成分を化粧水に配合する場合には、分離などの安定性の問題によって多量に配合することができない。したがって、脂溶性成分を多量に配合するためには、オイル乳化粒子の安定性を維持するための乳化剤を使用することが一般的である。しかしながら、ほとんどの乳化剤の性状が固相(solid)なので、高含有量のオイルを乳化する場合、使用される乳化剤自体によって組成物の粘度または硬度が増加し、粘性の高い乳液やクリームなどの剤形にのみ限定して作ることができることとなる。
【0004】
また、固状の乳化剤を使用することなく、両親媒性高分子を使用する水中油型剤形が開発されたが、このような方式は、乳化力が相対的に低い高分子の特性上、オイル含有量が高くなると、安定性のために高分子の含有量も一緒に高くなり、結果として、高粘度の剤形が形成されるしかなく、その結果、化粧水のようなさわやかな使用感を具現しにくい。
【0005】
また、高圧乳化器などの特殊設備を用いて高含有量のオイルを低粘度剤形に安定化させる技術が知られているが、このような乳化方式は、工程が複雑であり、多くの費用がかかる限界点がある。
【0006】
したがって、高含有量のオイルを含みながらも、特殊な設備を使用せずに、簡単に製造が可能な低粘度の安定した水中油型剤形の必要性が依然として存在した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、両親媒性構造を有するリポアミノ酸のうち親水部に該当するアミノ酸がプロリンである場合、強い親水部を形成することによってD相乳化に有利であり、高含有量のオイルを低粘度で安定に乳化させることができることを確認した。
【0008】
これより、本発明は、オイルを高含有量で含みながら、高い乳化安定度を有し、低粘度の特性を示す水中油型D相乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、N-アシルプロリンまたはその塩;およびオイルを含む水中油型D相乳化組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、N-アシルプロリンまたはその塩を含むD相を準備する段階と;前記D相にオイルを含む油相を混合する段階と;前記混合物に水相を混合する段階と;を含む水中油型D相乳化組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、N-アシルプロリンまたはその塩をD相乳化の乳化剤として使用して、多量のオイルを含みながらも、低粘性であり、乳化安定性に優れた水中油型組成物を提供することができる。また、このような組成物は、保湿性に優れ、しっとり柔らかな使用感を提供することができ、乳化安定性を高めると同時に、皮膚改善効果を有する化粧料として高い価値を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明による水中油型D相乳化組成物を製造する方法を示す模式図である。
図2図2は、実験例2により皮膚の明るさの変化を示すグラフである。
図3図3は、実験例2により皮膚の赤みの変化を示すグラフである。
図4図4は、実験例4により経時的な剤形安定度を確認したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、N-アシルプロリンまたはその塩;およびオイルを含む水中油型D相乳化組成物に関する。
【0014】
両親媒性構造を有するリポアミノ酸(Lipo-amino acid)は、アミノ酸に該当する親水部と、炭化水素残基に該当する親油部と、を含む。リポアミノ酸は、N-アシルアミノ酸で表現され得、アミノ酸に該当する親水部のうちプロリンは、相対的に極性を有し、強い親水部を形成できるので、油相と水相の界面エネルギーを低減するのに非常に有利であった。また、N-アシルプロリンまたはその塩は、他の固状(solid)やペースト(paste)の乳化剤および乳化補助剤を使用することなく、油相を安定化させることができるので、組成物の粘度を低く維持することができる。
【0015】
これより、水中油型D相乳化組成物において、N-アシルプロリンまたはその塩を含む場合、多量のオイルを含みながらも、低粘度であり、優れた乳化安定性を示すことができる。
【0016】
本明細書において「D相乳化(D-phase emulsion)」は、D相乳化法によって製造されたことを意味する。具体的には、乳化剤が添加されたD相にオイルをゆっくり添加しながら混合してO/D(Oil in D phase)エマルジョンを形成し、そこへさらに水相を加えることによって、水中油型のO/W(oil in water)エマルジョンを製造することを意味する。
【0017】
本明細書において「安定」は、製造後に温度別の条件で長期間相分離や外観上の変化がないことを意味する。例えば、20℃~60℃、例えば、25℃または50℃で4週間以上、または4~12週間、例えば、4週間、8週間、または12週間保管したり、F/T(Freeze-thaw cycle、凍結融解サイクル)3回保管時にも、組成物の相が実質的に分離しないか、外観および粘度の変化が実質的にないことを意味する。
【0018】
本明細書の「F/T(凍結融解サイクル)」において「凍結」は、-15℃で完全に凍るまで保管することであり、「融解」は、常温で完全融解するまで保管することを意味する。すなわち、「F/T(凍結融解サイクル)」は、前記凍結および融解を繰り返し行うことであり、例えば、「F/T3回」は、凍結および融解を3回繰り返し行うことを意味する。
【0019】
「N-アシルプロリン」は、プロリンのアミン基にアシル基が置換された構造である。前記アシル基は、-C(=O)-Rであり、Rは、飽和または不飽和の分枝状または分岐状の炭化水素系鎖でありうる。前記Rは、具体的には、C12-24アルキルであってもよく、好ましくは、C12-22アルキルまたはC14-22アルキル、より好ましくは、C16-20アルキルであってもよい。
【0020】
また、前記「N-アシル」は、ラウロイル、ミリストイル、べヘノイル、パルミトイル、ステアロイル、イソステアロイル、オリボイル、ココイルおよびオレオイルから成る群から選択される1種以上であってもよい。
【0021】
N-アシルプロリンの具体的な構造を示すと、下記の通りである:
【0022】
【化1】
【0023】
化学式1で、Rは、上記で定義したものと同じである。
【0024】
また、本発明のN-アシルプロリンは、塩の形態で存在することができる。ここで、N-アシルプロリン塩は、プロリンの-COOH基が-COOにイオン化した形態を示す。N-アシルプロリン塩のカチオンとしては、ナトリウム、リチウム、またはカリウムなどのアルカリ金属カチオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属カチオン、またはアンモニウムカチオンであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0025】
N-アシルプロリンまたはその塩の好ましい例は、パルミトイルプロリン、パルミトイルプロリンナトリウム、またはこれらの混合物である。
【0026】
本発明によるN-アシルプロリンまたはその塩の含有量は、組成物全重量に対して0.5~5重量%、好ましくは、0.5~3重量%であってもよい。本発明においてN-アシルプロリンまたはその塩は、乳化剤として前記範囲内の含有量を有すると、乳化が最も有利に起こることができ、これより低い含有量では、高含有量のオイルを乳化するのに乳化力が十分でないため、乳化安定度が低下することがある。
【0027】
本発明において安定化可能なオイルの種類は、水中油型乳化組成物において通常使用されるものであれば、具体的な種類が特に限定されない。例えば、シリコーンオイル、エステル系オイル、ハイドロカーボン系オイル、トリグリセリド系オイルおよびこれらの混合物から成る群から選択された1種以上を含んでもよい。
【0028】
シリコーンオイルは、ジメチコン、シクロメチコン、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンから成る群から選択された1つ以上であってもよいが、これらに制限されない。
【0029】
エステル系オイルは、トリエチルヘキサノイン、ココ-カプリレート/カプレート、エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、カプリリック/カプリックトリグリセリド、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート、酢酸トコフェロールおよび炭酸ジカプリリルから成る群から選択された1つ以上であってもよいが、これらに制限されない。
【0030】
ハイドロカーボン系オイルは、パラフィン、セレシンおよびマイクロクリスタリンワックス、C18-21アルカン、イソヘキサデカン、イソドデカン、ウンデカン、スクワラン、スクアレン、水添ポリデセン、および水添ポリイソブテンから成る群から選択された1つ以上であってもよいが、これらに制限されない。
【0031】
トリグリセリド系オイルとしては、C8-12アッシドトリグリセリド、C12-18アッシドトリグリセリド、カプリリック/カプリックトリグリセリド、カプリリック/カプリック/ラウリックトリグリセリド、C10-40イソアルキルアッシドトリグリセリド、C10-18トリグリセリド、グリセリルトリアセチルハイドロステアレート、ソイビーングリセリド、トリベヘニン、トリカプリン、トリエチルヘキサノイン、トリヘプタノイン、トリイソステアリン、トリパルミチンおよびトリステアリンから成る群から選択された1つ以上であってもよいが、これらに制限されない。
【0032】
前記オイルは、好ましくは、カプリリック/カプリックトリグリセリド、ココ-カプリレート/カプレート(Coco-Caprylate/Caprate)、トリエチルヘキサノインおよび水添ポリデセン(Hydrogenated Polydecene)から成る群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0033】
前記オイルの含有量は、組成物全重量に対して5~40重量%、好ましくは、5~35重量%、より好ましくは、10~35重量%であってもよい。前記オイルの含有量が5重量%未満なら、保湿感およびエモリエント(emollient)使用感が低下し、40重量%を超えると、D相および水相との配合比が適切でないため、乳化安定度が低下することがある。
【0034】
N-アシルプロリンまたはその塩を組成物内に配合するに際して、D相乳化は、水相の分散エネルギーを活用できるので、本発明による高い乳化安定度および低い粘度の効果をさらに向上させることができる。
【0035】
本発明の組成物は、低い粘度特性を示すことができる。具体的には、4000cps以下の粘度、さらに具体的には、3500cps以下、3000cps以下、または2500cps以下の粘度を有することができる。
【0036】
ここで、前記粘度は、流動する流体の抵抗性であり、25℃でブルックフィールド粘度計でLV#3(63)スピンドルを用いて12rpmで測定して、1分間安定化した後の値である。粘度は、当該技術に公知となった任意の他の方法を用いて任意の他の単位で測定することができる。
【0037】
一般的に、粘度は、オイルなどの油相成分を乳化させるための固形の乳化剤または乳化補助剤によって増加することができるが、本発明の組成物は、N-アシルプロリンまたはその塩でD相乳化して高含有量のオイルを乳化させることができるので、結果的に、低い粘度を示すことができる。本発明の組成物は、固形の乳化剤またはワックスやペーストのように固形の乳化補助剤を微量で含んでもよいし、実質的に含まなくてもよい。
【0038】
具体的には、本発明の組成物は、固形の乳化剤または固形の乳化補助剤を組成物全重量に対して5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、または0.01重量%以下で含んでもよいし、ほとんど含まなくてもよい。
【0039】
本発明の組成物は、20~60℃、具体的には、20~30℃または40~60℃で8週間以上保管しても安定している。より具体的には、本発明の組成物は、25℃で8週間以上保管しても安定している。
【0040】
特に、本発明の組成物は、組成物内オイルの含有量が5~40重量%のように高含有量のオイルを含むか、または固形の乳化剤や乳化補助剤を含まなくても、前記温度で8週間以上保管しても安定している。
【0041】
本発明の組成物は、ポリオールまたはポリオール誘導体をさらに含んでもよい。
【0042】
本発明の組成物において、ポリオールまたはポリオール誘導体は、N-アシルプロリンまたはその塩と混合されてD相を形成することができる。
【0043】
前記ポリオールは、グリセリン、2価以上の多価アルコールおよびこれらの混合物から成る群から選択された1つ以上を含んでもよい。好ましくは、ポリオールは、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオールおよび1,2-ヘキサンジオールから成る群から選択される1種以上を含んでもよいが、これらに制限されない。
【0044】
前記ポリオールの含有量は、組成物全重量に対して2~30重量%、好ましくは、3~25重量%、または5~25重量%、より好ましくは、10~25重量%であってもよい。
【0045】
本発明の組成物は、常温で液状またはクリーム形態であってもよい。
【0046】
本発明の組成物に含まれる成分は、有効成分として前記有効成分以外に化粧料組成物に通常用いられる成分を含んでもよく、例えば、防腐剤、抗酸化剤、増粘剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料および香料などの通常の補助剤、または担体を含んでもよい。
【0047】
本発明の組成物は、皮膚外用剤に適切に用いられ得、また、化粧料、医薬部外品、医薬品に適用することが可能であり、それぞれの用途によって必要な成分を含有させることができる。これらのうち、化粧料、特にスキンケア化粧料に適用させることが好ましい。
【0048】
本発明の化粧料組成物は、当業界において通常製造される任意のいかなる剤形で製造することができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、界面活性剤含有クレンジング、オイル、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パック、マッサージクリームおよびスプレーなどで剤形化することができるが、これらに限定されるものではない。より詳細には、化粧水、ジェル、ミルク、ローション、クレンジングローション、クレンジングミルク、メイクアップベース、ファンデーションの剤形で製造することができる。
【0049】
また、本発明は、N-アシルプロリンまたはその塩を含む水中油型D相乳化組成物の製造方法を提供する。
【0050】
具体的には、本発明の水中油型D相乳化組成物の製造方法は、N-アシルプロリンまたはその塩を含むD相を準備する段階と;前記D相にオイルを含む油相を混合する段階と;前記混合物に水相を混合する段階と;を含んでもよい。
【0051】
前記オイルの含有量は、組成物全重量に対して5~40重量%であってもよい。
【0052】
前記D相は、N-アシルプロリンまたはその塩の他にポリオールまたはポリオール誘導体を含んでもよい。
【0053】
前記油相をD相に混合する段階は、40~60℃の温度で行われ得る。
【0054】
また、前記油相をD相に混合する段階は、1~20分間、好ましくは、3~10分間撹拌する段階を含んでもよい。
【0055】
前記製造方法で言及された成分は、前記組成物に関する内容と同じ内容を適用することができる。
【0056】
本発明による化粧料組成物に含まれる前記言及された成分それぞれは、好ましくは、各国の政府によって規定された《化粧品使用・許可》と関連した規定に明示された最大使用量を超えない範囲内で本発明の化粧料組成物に含まれ得る。
【0057】
以下、本発明を下記実験例によって詳細に説明する。ただし、下記実験例は、本発明を例示するに過ぎず、本発明の内容が下記実験例によって制限されるものではない。また、これらの実験例は、本発明の理解を助けるための目的に過ぎず、いかなる意味でも本発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【0058】
実施例
製造例1:リポアミノ酸(LAA)の種類による水中油型乳化組成物の製造
下記表1のAパート(D相)の原料、Bパート(油相)の原料をそれぞれ混合し、50℃で撹拌して均質に混合した。Cパート(水相)の原料を混合して常温で30分間撹拌し、均質に混合されたAパート、BパートおよびCパートをそれぞれ製造した。
【0059】
Aパートを撹拌しながらBパートを添加し、ホモミキサーで5分間撹拌した。AパートおよびBパートの混合物を5分間撹拌しながらCパートをゆっくり添加し、ホモミキサーで5分間撹拌して、下記表1に記載された組成で実施例1および比較例1~4の水中油型組成物をそれぞれ製造した。
【0060】
【表1】
【0061】
実験例1:乳化安定度および粘度の評価
製造例1により製造された実施例1および比較例1~4の組成物に対して経時的な剤形安定度を観察した。具体的には、組成物を50℃および25℃チャンバーで8週間保管しつつ組成物の分離の有無を観察し、凍結安定度の確認のために凍結融解する過程(凍結融解サイクル、F/T)を3回繰り返し、その結果を下記表2に示した。
【0062】
また、製造例1により製造された組成物に対して粘度を測定した。具体的には、25℃でブルックフィールド粘度計でLV#3(63)スピンドルを用いて12rpmで測定して1分間安定化した後に測定した。
【0063】
【表2】
【0064】
前記表2に示されたように、本発明による実施例1の組成物は、すべての条件において経時的な剤形安定度に優れていたが、比較例1~4の組成物は、乳化安定度が低下し、組成物の製造直後に水相と油相が分離または析出されたり、経時的に分離または析出され、乳化安定度が良くないことを確認することができる。
【0065】
また、実施例1の粘度を測定した結果、1000cps程度の低粘度を有することを確認することができる。
【0066】
実験例2:肌の色合いの改善の評価
製造例1により製造された実施例1の組成物の肌の色合いの改善効果を確認するために、次のように評価を進めた。8人の被験者を対象に、毎朝夕方で実施例1の組成物を顔の皮膚に使用するようにし、評価は、製品の使用前と使用2、4週後の時点で実施した。
【0067】
この際、皮膚の明るさは、洗顔後20分間安静をとった後に顔の頬部位を色差計(Chromameter)CR-400(ミノルタ社、日本国)でL*(lightness)、a*(redness)を3回繰り返し測定し、測定結果は、図2および図3に示した。
【0068】
図2および図3に示されたように、本発明の実施例1の組成物を塗る前と4週間塗った後に皮膚の明るさが明るくなり(65.64→67.24)、赤みが減少(9.97->8.59)したことが分かる。すなわち美白および鎮静効能を有するパルミトイルプロリンナトリウムを乳化剤として使用して製造した組成物は、低粘度で高い乳化安定度を有するだけでなく、皮膚改善効果にも優れていることが分かる。
【0069】
製造例2:オイルの種類による水中油型乳化組成物の製造
下記表3のAパート(D相)の原料、Bパート(油相)の原料をそれぞれ混合し、50℃で撹拌して均質に混合し、Cパート(水相)の原料を混合して常温で30分間撹拌して、均質に混合されたAパート、BパートおよびCパートをそれぞれ製造した。
【0070】
Aパートを撹拌しながらBパートを添加し、ホモミキサーで5分間撹拌した。AパートおよびBパートの混合物を5分間撹拌しながらCパートをゆっくり添加し、ホモミキサーで5分間撹拌して、下記表3に記載された組成で実施例1~5の水中油型組成物をそれぞれ製造した。
【0071】
【表3】
【0072】
実験例3:乳化安定度および粘度の評価
製造例2により製造された実施例1~5の組成物に対して実験例1と同じ方式で経時的な剤形安定度および粘度を確認し、その結果を下記表4に示した。
【0073】
【表4】
【0074】
前記表4に示されたように、本発明による組成物は、オイルの種類とは関係なく、すべての条件において経時的な剤形安定度に優れ、低い粘度を示すことを確認することができる。
【0075】
製造例3:アミノ酸系乳化剤および乳化方法による水中油型乳化組成物の製造
下記表5に記載された組成で下記の製造方法により水中油型組成物をそれぞれ製造した。
【0076】
<D相乳化の製造方法および準備:実施例1、比較例6>
下記表5のAパート(D相)およびBパート(油相)の原料をそれぞれ混合し、50℃で撹拌して均質に混合し、Cパート(水相)の原料を常温で30分間撹拌しながら混合して、均質に混合されたAパート、BパートおよびCパートをそれぞれ製造した。
【0077】
Aパートを撹拌しながらBパートを添加し、ホモミキサーで5分間撹拌した。AパートおよびBパートの混合物を5分間撹拌しながらCパートをゆっくり添加し、ホモミキサーで5分間撹拌して、下記表5に記載された組成で実施例1および比較例6の水中油型組成物をそれぞれ製造した。
【0078】
<一般乳化の製造方法および準備:比較例5、7>
下記表5のAパート(D相)およびCパート(水相)の原料を共に混合し、70℃で撹拌して均質に混合し、Bパート(油相)の原料を混合して70℃で撹拌して、均質に混合されたAパートおよびCパートの混合物とBパートをそれぞれ製造した。
【0079】
AパートおよびCパートの混合物を撹拌しながらBパートを添加し、ホモミキサーで5分間撹拌して、下記表5に記載された組成で比較例5、7の水中油型組成物を製造した。
【0080】
【表5】
【0081】
実験例4:乳化安定度および粘度の評価
製造例3により製造された実施例1および比較例5~7の組成物に対して実験例1と同じ方式で経時的な剤形安定度および粘度を確認し、その結果を下記表6に示した。また、組成物の安定度の差異による相分離の有無を比較するために、50℃で8週間保管した結果を図4に示した。
【0082】
【表6】
【0083】
前記表6および図4に示されたように、パルミトイルプロリンナトリウムを含み、D相乳化法で製造された実施例1の組成物は、すべての条件において経時的な剤形安定度に優れると同時に、低い粘度を示すことを確認することができる。しかしながら、パルミトイルプロリンナトリウムを含むが、一般乳化法で製造された比較例5、D相乳化法で製造されたがパルミトイルプロリンナトリウムを含まない比較例6およびパルミトイルプロリンナトリウムを含まずに一般乳化法で製造された比較例7は、いずれも、経時的に分離または析出され、乳化安定度が良くないことを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】