(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】導電粒子、導電材料及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20241126BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20241126BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20241126BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20241126BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01B5/00 C
H01B1/00 C
H01B1/00 M
H01B5/00 M
H01B1/24 D
H01B5/16
H01B1/00 E
H01B5/00 E
H01R11/01 501E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562536
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 KR2021019086
(87)【国際公開番号】W WO2023090525
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0157911
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515127979
【氏名又は名称】ドク サン ネオルクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンヒュム
(72)【発明者】
【氏名】ペ、チャンワン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テグン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ヒュンハ
【テーマコード(参考)】
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA09
5G301DA11
5G301DA12
5G301DA14
5G301DA29
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD03
5G301DD08
5G301DE01
5G307AA02
5G307HA02
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
本発明は、導電粒子であって、絶縁コアと、前記絶縁コア上に少なくとも2種の元素を含む伝導層と、を含み、前記伝導層をXRDを用いて分析した回折パターンは、少なくとも2つの回折円が形成されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁コアと、
前記絶縁コア上に少なくとも2種の元素を含む伝導層と、を含み、
前記伝導層をXRDを用いて分析した回折パターンは、少なくとも2つの回折円が形成され、前記伝導層の結晶粒の長軸の平均長さは、8nm~13nmである、導電粒子。
【請求項2】
前記伝導層は、Niと、B、P、N、Pd、Pt、W、Au、Ag、Mo及びCoよりなる群から選択された少なくとも1種の元素と、を含む、請求項1に記載の導電粒子。
【請求項3】
前記回折円のうち最も内側の回折円の半径は4.93(l/nm)±0.2(l/nm)である、請求項1に記載の導電粒子。
【請求項4】
前記伝導層を前記絶縁コアに隣接する第1領域、前記第1領域に隣接する第2領域、前記第2領域に隣接して最も外側に位置する第3領域に分けるとき、前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域における前記領域間の境界がない単層である、請求項1に記載の導電粒子。
【請求項5】
前記伝導層は、前記領域によって元素の含有量が変化する、請求項1に記載の導電粒子。
【請求項6】
前記伝導層は、少なくともB、P、N、Pd、Pt、W、Au、Ag、Mo及びCoよりなる群から選択された少なくとも2種の元素を含む、請求項2に記載の導電粒子。
【請求項7】
前記伝導層の表面上に絶縁層又は絶縁粒子をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電粒子。
【請求項8】
前記伝導層上の最外郭に疎水性防錆剤を用いて防錆処理された、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の導電粒子を含む異方性導電材料。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の導電粒子を含む接続構造体。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の導電粒子を含む電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁コアの表面に金属導電層を有する導電粒子に係り、より詳細には、微細ピッチ回路を繋ぐ異方性導電接着材料の核心導電材料として用いる導電粒子に関する。また、本発明は、前記導電粒子を用いた導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電材料は、上/下電極間の電気的信号を伝達し、左/右電極間の電気的信号は伝達しない接合材料である。異方性導電材料は、特にディスプレイのように数多くの電極を駆動ICと連結させるために主に使用する接合材料である。
【0003】
導電粒子は、一般に、硬化剤、接着剤、樹脂バインダー、その他の添加剤と混合して分散した形態で使用される異方性導電材料、例えば、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film)、異方性導電接着剤(Anisotropic Conductive Adhesive)、異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)、異方性導電インク(Anisotropic Conductive Ink)、異方性導電シート(Anisotropic Conductive Sheet)などに用いられている。
【0004】
異方性導電材料は、FOG(Film on Glass;フレキシブル基板-ガラス基板)、COF(Chip on Film;半導体チップ-フレキシブル基板)、COG(Chip on Glass;半導体チップ-ガラス基板)、FOB(Film on Board;フレキシブル基板-ガラスエポキシ基板)などに用いられている。
【0005】
異方性導電材料は、例えば、半導体チップとフレキシブル基板とを接合すると仮定すると、フレキシブル基板上に異方性導電材料を配置し、半導体チップを積層して加圧/加熱状態で異方性導電材料を硬化させることにより、導電粒子が基板の電極と半導体チップの電極とを電気的に接続する接続構造体を実現することができる。
【0006】
導電粒子は、前記異方性導電材料に使用される場合、硬化剤、接着剤、樹脂バインダー、フィラー等の添加剤と一緒に混合して使用され、加圧/加熱後に接続構造体になる場合、異方性導電材料の硬化/接着によって上/下電極間の電気接続を維持する。
【0007】
ところが、従来の絶縁コアの表面に金属導電層を有する導電粒子は、伝導層の伝導性を向上させるために伝導層を多数の層で形成しているが、この場合、一部が非晶質に形成されるか、或いは伝導層の各層間に境界面(boundary)が存在したりして境界面で抵抗が上昇する効果が現れるため、導電粒子を使用する異方性導電材料の接続抵抗を増加させ、これにより信頼性抵抗を増加させる原因となるという問題点が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施例が解決しようとする技術的課題は、上述した従来技術の問題点を解決するために、単一の伝導層を有しながらも高い強度と低い初期接続抵抗及び抵抗増加率を有する導電粒子、これを含む異方性導電材料、並びに異方性接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、導電粒子であって、
絶縁コアと、
前記絶縁コア上に少なくとも2種の元素を含む伝導層と、を含み、
前記伝導層をXRDを用いて分析した回折パターンは、少なくとも2つの回折円が形成され、前記伝導層の結晶粒の長軸の平均長さは、8nm~13nmである。
【0010】
前記伝導層は、Niと、B、P、N、Pd、Pt、W、Au、Ag、Mo及びCoよりなる群から選択された少なくとも1種の元素と、を含み、前記回折円のうち最も内側の回折円の半径は、4.93(l/nm)±0.2(l/nm)であることが好ましい。
【0011】
前記伝導層を前記絶縁コアに隣接する第1領域、前記第1領域に隣接する第2領域、及び前記第2領域に隣接して最も外側に位置する第3領域に分けるとき、前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域における前記領域間の層間境界はない単層であることが好ましい。
【0012】
前記伝導層は、前記領域に応じて元素の含有量が変化することが好ましい。
【0013】
前記伝導層は、少なくともB、P、N、Pd、Pt、W、Au、Ag、Mo及びCoよりなる群から選択された少なくとも2種の元素を含むことが好ましい。
【0014】
このとき、前記導電粒子は、前記伝導層の表面に突起をさらに含むことがよく、前記伝導層の表面上に絶縁層又は絶縁粒子をさらに含むことがよく、前記伝導層上の最外郭に疎水性防錆剤を用いて防錆処理されたことが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様は、前記導電粒子を少なくとも1種含む異方性導電材料を提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、前記導電粒子を少なくとも1種含む接続構造体を提供する。
【0017】
本発明の別の態様は、前記導電粒子を少なくとも1種含む電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施例による導電粒子は、伝導層が多数の金属元素を含みながらも単層の構造を持つようにして伝導層から境界面がなくなりながらも、伝導層に結晶性を付与して結晶構造上の利点を介して優れた電気伝導度及び低抵抗効果を有し、硬度も増加する効果がある。
【0019】
したがって、本発明の実施例による導電粒子を用いて抵抗増加を低く維持して、初期接続抵抗値が低いだけでなく、高温/高湿信頼試験後にも抵抗上昇が低い効果を有する異方性導電材料及び異方性接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例による導電粒子の伝導層を電界放射型透過電子顕微鏡(FETEM(field emission transmission electron microscopy)-JEM-2100F、200kV)を用いて撮った500,000倍の画像である。
【
図2】本発明の実施例による導電粒子の伝導層をXRD(X-RAY DIFFRACTOMETER、製品名:SmartLab、製造社:株式会社リガク、ターゲット:Cu、使用電磁波:Kα)を用いて測定した回折パターンである。
【
図4】本発明の一実施例による導電粒子の伝導層を分析した位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用された用語は、特定の実施例を説明するためのものに過ぎず、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定しようとするものではないことを理解すべきである。本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、他に記載がない限り、技術的に通常の技術を有する者に一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。
【0022】
本明細書及び請求の範囲全般にわたって、別段の断りがない限り、包含(comprise、comprises、comprising)という用語は、言及された物、ステップ、一群の物、及び一群のステップを含むことを意味し、任意の他の物、ステップ、一群の物又は一群のステップを排除する意味で使用されたものではない。
【0023】
一方、本発明の様々な実施例は、明確な反対の指摘がない限り、それ以外の任意の他の実施例と組み合わせられることができる。特に好ましい又は有利であると指し示す如何なる特徴も、好ましい又は有利であると指し示したそれ以外の任意の特徴と組み合わせられることができる。
【0024】
本発明の実施例による導電粒子は、電極同士の間に含まれてそれらの電極を電気的に接続する導電粒子であって、前記電極は、ITO(indium tin oxide)、ZnO(zinc oxide)などの酸化物電極、金属からなる金属電極、金属の粉末を用いる。例えば、Ag又はCu粉末と樹脂とを混合してペーストを作り、該ペーストで電極を形成するペースト電極などとして具備できる。前記電極は、前記酸化物電極、金属電極、ペースト電極のうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0025】
本発明の実施例による導電性粒子は、絶縁コア粒子と、絶縁コア粒子の表面上に備えられる伝導層と、を含み、表面に伝導層とは同じ又は異なる導電物質の突起を有することができる。
【0026】
本発明の実施例による絶縁コア粒子は、特に限定されない。例えば、樹脂微粒子又は有機/無機ハイブリッド粒子を使用することができる。
【0027】
樹脂微粒子は、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系、イミド系等の単量体又はこれらの修飾単量体又はこれらの混合単量体を用いて、シード重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合などの方法で重合して得られる共重合体である。
【0028】
有機/無機ハイブリッド粒子がコアシェル構造を持つ場合、コアが有機であるときにシェルは無機であり、コアが無機であるときにシェルは有機である。使用される有機の場合は、上記の単量体又は修飾単量体又は混合単量体を用い、無機の場合は、酸化物-SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2等、窒化物-AlN、Si3N4、TiN、BaN等、炭化物-WC、TiC、SiCなどを用いることができる。シェルを形成する方法としては、化学的コーティング法、Sol-Gel法、Spray Coating法、CVD(化学蒸着法)、PVD(物理蒸着法)、メッキ法などを使用することができる。また、有機マトリックス(matrix)内に無機粒子が分散した形態も可能であり、無機マトリックスに有機粒子が分散した形態、及び有機/無機が50:50で互いに分散した形態も可能である。
【0029】
本発明の実施例による導電粒子の伝導層は、少なくとも2種の元素を含む伝導層である。このとき、伝導層は、B、P、N、Ni、Pd、Pt、W、Au、Ag、Mo及びCoよりなる群から選択される少なくとも2種の元素を含む。
【0030】
好ましくは、ニッケルと、B、P、N、Pd、Pt、W、Au、Ag、Mo及びCoよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む。
【0031】
例えば、ニッケル-リン、ニッケル-ホウ素、ニッケル-タングステン、ニッケル-窒素などの2種金属合金、ニッケル-リン-タングステン、ニッケル-ホウ素-タングステン、ニッケル-リン-コバルト、ニッケル-リン-パラジウム、ニッケル-ホウ素-パラジウムなどの3種金属合金でも構成できる。また、ニッケル-リン-ホウ素-タングステン、ニッケル-リン-パラジウム-タングステン、ニッケル-ホウ素-タングステン-白金などの4種金属合金で構成できる。その他に、5種以上の合金でも構成できる。
【0032】
例示したようにニッケルを必須的に含むのは、ニッケルの電気伝導度が良く、導電粒子に用いられる絶縁コアが主にポリマービーズを使用するため、プラスチックとの密着力に優れるからである。
【0033】
本実施例による伝導層は、内部に層間境界を有さない単層であって、伝導層内部の元素の含有量は、伝導層内部の領域に応じて変化することができるが、全領域にわたって多結晶質に形成されるように製造される。伝導層を、小さい大きさの結晶粒界を有する多結晶質に製造するのは、電気伝導度の面で有利であるからである。
【0034】
したがって、本発明の一実施例による導電粒子の伝導層は、2種以上の元素を含み、結晶粒の長軸平均長さが8~13nmの微細な結晶粒を有する層間境界を有さない単層の多結晶層である。
【0035】
このとき、XRDで伝導層の全領域の回折パターンを測定した結果、複数の回折円を形成し、形成された回折円のうち最も内側の回折円の半径が4.93±0.2(l/nm)であることが好ましい。一方、XRD回折パターンの測定時に、回折円の半径は逆格子で測定し、単位は、便宜上、l/nmを使用した。
【0036】
上述した結晶粒の大きさと最も内側の回折円の半径の長さは、使用された元素の種類、含有量、反応速度などによって決定される。したがって、本発明の伝導層は、領域に応じて、内部に含まれる元素及びその含有量が異なるため、結晶粒の大きさやXRDで伝導層の全領域の回折パターンを測定した結果、伝導層の各領域で最も内側の回折円の半径は変わる。
【0037】
このとき、本発明において、伝導層は、領域に応じた含有量の変化にもかかわらず、伝導層の全領域において長軸平均長さ8~13nmの結晶粒の大きさを有し、XRD分析回折パターンの回折円のうち最も内側の回折円の半径を4.93(l/nm)±0.2(l/nm)以内にする。これにより、絶縁コアとの接着力が高く、伝導層内で層間境界を形成しない単層の形成が可能であるからである。
【0038】
例えば、伝導層を、絶縁コアに隣接する第1領域、第1領域に隣接する第2領域、及び第2領域に隣接して最も外側に位置する第3領域に領域を基準に分けることができ、さらに、伝導層を、第1含有量で形成された第4領域、第2含有量で形成された第5領域、第3含有量で形成された第6領域に含有量を基準に分けることができる。
【0039】
このとき、本発明の実施例による伝導層は、第1領域、第2領域、及び第3領域や、第4領域、第5領域、及び第6領域の全てで、前述した長軸平均長さ及び最も内側の回折円の半径の範囲を満たす。
【0040】
本発明の実施例による伝導層が前述の結晶粒界を有する結晶質であるのは、
図1の本発明の一実施例による導電粒子の伝導層を500,000の倍率で撮影したFETEM画像と、
図2の伝導層をXRD分析で得た回折パターンから多結晶伝導層が確認された。
【0041】
図1に示すように、結晶の方向が互いに異なる結晶粒界が観察されるため、多結晶伝導層が確認される。また、導電粒子の結晶粒の大きさは長軸を基準に5.13~12.76nmであり、平均は約9.76nmであることが確認される。
【0042】
また、
図2は複数の回折円を示しており、結晶性を確認することができる。このとき、回折円のうち最も内側の回折円の半径は、前述の範囲内に含まれる。
【0043】
一方、本発明の実施例による2種以上の元素を含む層間境界面がない単層でありながら、結晶粒界の大きさが小さい多結晶質の伝導層はその方法に限定されないが、メッキ層内の元素含有量と反応速度が調節された無電解メッキによって達成される。
【0044】
例えば、無電解Niメッキは、還元剤の種類に応じて、次亜リン酸ナトリウムを用いてNi-Pメッキ、水素化ホウ素ナトリウム(SHB;Sodium borohydride)、ホウ化ジメチルアミン(DMAB;Dimethyl amine borane)、ホウ化ジエチルアミン(DEAB;Diethyl amine borane)などを用いてNi-Bメッキ、ヒドラジンを用いてNi-Nメッキによって伝導層を形成することができ、さらにPd、Pt、W、Au、Ag、Mo、Coなどを含有した金属塩を投入して、Ni-P-W、Ni-B-W、Ni-P-Co-W、Ni-B-Co-W、Ni-W、Ni-Co、Ni-Pd、Ni-P-Pdなどの合金無電解メッキが可能である。
【0045】
このとき、Ni-Pを主成分とする無電解メッキの場合、P含有量が高い場合、非晶質層として形成されて耐食性に優れるものの、強度が弱く、電気伝導度の面で抵抗が高くなるという問題点がある(Pの場合には10μΩcm@20℃、Niの場合には6.97μΩcm@20℃)。したがって、Pの含有量を3%未満とすることが結晶質の形成に有利である。
【0046】
また、Ni-Bを主成分とする無電解メッキの場合、Bの比抵抗(1.5×10^12μΩcm@20℃)が非常に高いため、Bが数%の含有量で含まれても非晶質メッキ層が形成されるので、Bの含有量を0.5%未満とすることが結晶質の形成に有利である。
【0047】
Ni-Nを主成分とした無電解メッキの場合には、Ni-P、Ni-Bよりも耐食性には劣るが、Nが2%以下で含有される場合には、伝導層を結晶質に形成することができる。
【0048】
一方、上述したNi-P、Ni-B、Ni-Nからなる伝導層を使用する場合もあるが、特に強度又は耐食性が要求されるか、或いは他の物性を確保するためにPd、Pt、W、Au、Ag、Mo、Coなどの元素をさらに含めて、合金無電解メッキ方法を用いて単一の結晶質メッキ層を形成することができる。
【0049】
このとき、層間境界がなく且つ結晶粒の大きさが小さい多結晶質に形成するためには、元素の含量制御と共に反応速度の調節が必要であるが、反応速度は、還元剤の量、メッキ液の温度、pHを用いて調節する。
【0050】
反応速度が遅い場合には、非晶質に伝導層が形成され、反応速度をあまり速くする場合には、メッキ液のバランスが崩れてメッキが不安であるか、或いは不良メッキになって製品化が不可能である。
【0051】
本発明の導電粒子の突起形状は特に限定されない。球状、針状、多角形の形状なども可能である。本発明の突起の大きさは、特に限定されない。好ましい突起は、大きさ50nm~500nmの凸形状であり、さらに好ましい突起の大きさは、100~300nmである。
【0052】
本発明の導電粒子の突起形成方法は、特に限定されない。例えば、絶縁コア粒子の表面に触媒物質を付与し、無電解メッキを介して伝導層と突起を形成することができる。小さい金属又は無機粒子を絶縁コア粒子に付着させ、無電解メッキを施して伝導層と突起を形成することもできる。
【0053】
本発明の導電粒子の最外郭には絶縁層があることが好ましい。電子製品の小型化と集積度が高くなるほど電極のピッチが小さくなって最外郭に絶縁粒子がない場合、隣接電極と電気的に通電する現象が発生する。絶縁層を形成する方法には、絶縁粒子を導電粒子の最外郭に官能基を用いて化学的に付着させる方法、絶縁溶液を溶媒に溶かした後、噴射或いは沈積などでコーティングする方法、絶縁粒子を導電粒子の最外郭に付着させ、熱風と衝撃を与えてコーティングする方法などがある。
【0054】
本発明の導電粒子伝導層には防錆処理を施すことが好ましい。なぜなら、防錆処理は水との接触角を大きくして高湿環境での信頼性を高め、不純物が水に溶けて接続部材の性能低下を少なくするという効果がある。したがって、防錆剤は、一般に疎水性を有するものを使用する。コーティングする方法は、防錆剤を溶媒に溶かした後、沈積、噴射などの方法などを使用することができる。
【0055】
本発明の導電粒子をバインダー樹脂に分散させて異方性導電材料を製造することができる。異方性導電材料としては、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電フィルム、異方性導電シートなどを挙げることができる。
【0056】
前記樹脂バインダーは、特に限定されない。例えば、スチレン系、アクリル系、酢酸ビニル系等のビニル系樹脂、ポリオレフィン系、ポリアミド系等の熱可塑性樹脂、ウレタン系、エポキシ系等の硬化性樹脂等を挙げることができる。上記の樹脂を単独で又は2種以上複合的に使用することもできる。前記樹脂に、重合又は硬化の目的でBPO(Benzoyl Peroxide)などのラジカル開始剤、又はTPO(Trimethylbenzoyl Phenylphosphinate)などの光開始剤、HX3941HPなどのエポキシ潜在性硬化剤などを単独で又は混合して使用することができる。また、異方性導電材料バインダー樹脂に、本発明の目的の達成を阻害しない範囲で他の物質を添加することができる。例えば、着色剤、軟化剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、無機粒子などである。
【0057】
上記の異方性導電材料の製造方法は、特に限定されない。例えば、樹脂バインダーに導電粒子を均一に分散させて異方性導電ペーストとして使用することができ、離型紙に薄く塗りつけて異方性フィルムとしても使用することができる。
【0058】
本発明の接続構造体は、本発明の絶縁コアを用いた導電粒子又は本発明の異方性導電材料を用いて回路基板間を接続させたものである。例えば、スマートフォンのディスプレイ半導体チップと回路構成をするガラス基板との接続、μ-LED、mini-LEDと回路基板との接続の方法としても使用することができる。
【実施例1】
【0059】
1)絶縁コア粒子の合成
3Lのガラスビーカーに単量体TMMT(Tetramethylol Methane Tetaacrylate)1100g、DVB400g、HDDA15g、Styrene30gを入れ、開始剤BPO5gを投入した後、40kHzの超音波浴で10分間処理して第1溶液を準備した。
5LのPPビーカーに脱イオン水3,000gを仕込み、これに分散安定剤PVP(Polyvinylpyrrolidone)-30K 500gと界面活性剤Solusol (Dioctyl sulfosuccinate sodium salt)200gを入れた後、溶かして第2溶液を準備した。
前記第1溶液と前記第2溶液を50Lの反応器に入れ、脱イオン水40,000gを投入し、超音波ホモジナイザー(Homogenizer)(20kHz、600W)90分処理し、120rpmで溶液を回転させながら35℃に昇温した後、3時間維持し、再び85℃に昇温して溶液が85℃に達した後、16時間を維持して重合工程処理を行った。
重合処理された微粒子に対して濾過、洗浄、分級、乾燥工程を経てコア樹脂微粒子を得た。前記製造されたコア樹脂微粒子の平均直径は、Particle Size Analyzer(BECKMAN MULTISIZER TM3)を用いて測定されたmode値を用いた。このとき、測定されたコア微粒子の数は75,000個である。平均直径は3.51μmであった。
【0060】
2)絶縁コア粒子外殻伝導層の形成
(1)触媒処理工程
前記製造された絶縁コア粒子30gを脱イオン水800g、0.5gの界面活性剤Triton X100、及び硫酸10gの溶液に入れ、超音波浴で1時間処理して、絶縁コア粒子に存在する余分の未反応単量体と油成分を除去する洗浄及び脱脂工程を行った。前記洗浄及び脱脂工程の最後は、45℃の脱イオン水を用いて3回水洗工程を行った。
前記脱脂及び水洗工程を済ませた絶縁コア粒子を、塩化第一錫150gと35~37%塩酸300gを脱イオン水600gに溶かした溶液に投入し、30℃の条件で30分間沈積及び攪拌して敏感化処理を施した後、水洗3回を行った。
敏感化処理された絶縁コアを塩化パラジウム1g、35~37%塩酸200g、脱イオン水600gに投入し、40℃で1時間活性化処理を施した。活性化処理の際に、超音波浴を用いて超音波を印加した。活性化処理の後、水洗工程を3回行った。
活性化処理された絶縁コアを35~37%塩酸100g、脱イオン水600gの溶液に入れ、常温で10分間撹拌して加速化処理を施した。加速化処理の後、水洗3回を行い、無電解メッキのための触媒処理された絶縁コアを得た。
(2)メッキ工程
5Lの反応器に脱イオン水3500gを入れ、これにNi塩として硫酸ニッケル70g、錯化剤として酢酸ナトリウム5g、乳酸2g、安定剤としてPb-アセテート0.001g、チオ硫酸ナトリウム0.001g、界面活性剤として1gのPEG-600を順次溶解させて溶液(a)を製造した。製造された(a)溶液に、前記触媒処理された絶縁コアを投入し、超音波ホモジナイザーを用いて10分間分散処理を施した。分散処理の後、アンモニア水を用いて溶液pHを8.0に合わせた-溶液(b)
1Lのビーカーに脱イオン水300g、還元剤としてのDMAB33g、安定剤としてのチオ硫酸ナトリウム0.002gを溶解させて溶液(c)を準備した。
1Lのビーカーに脱イオン水500g、硫酸ニッケル155g及び水酸化ナトリウム10gを溶解させて溶液(d)を準備した。
前記5Lの反応器の溶液(b)の温度を20℃に維持する状態で溶液(c)を定量ポンプで1分当たり5gの量で投入し、反応器の温度を0.33℃/minの昇温速度で35℃に到達するように加熱し、維持した。
前記5Lの反応器の溶液(b)のpHは、溶液温度35℃に達するまでpHを8.0に合わせるためにアンモニア水をさらに添加し、75℃以後にはアンモニア水を添加しなかった。
前記溶液(c)が投入され、5分後に、溶液(d)を定量ポンプで分あたり20gの量で前記5Lの反応器に投入した。
前記溶液(c)の投入が完了し、30分間維持して、Niメッキされた導電粒子を得た。
【実施例2】
【0061】
溶液(d)にシアン化金カリウム(potasium gold cyanide)3gを追加した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【実施例3】
【0062】
5Lの反応器に脱イオン水2500gを入れ、Ni塩として硫酸ニッケル70g、錯化剤として酢酸ナトリウム5g、乳酸2g、安定剤としてPb-アセテート0.001g、チオ硫酸ナトリウム0.001g、界面活性剤として1gのPEG-600を順次溶解させて溶液(a)を製造した。製造された(a)溶液に、前記触媒処理された絶縁コアを投入し、超音波ホモジナイザーを用いて10分間分散処理を施した。分散処理の後、アンモニア水を用いて溶液pHを5.5に合わせた-溶液(b)
1Lのビーカーに、脱イオン水500g、還元剤としての次亜リン酸ナトリウム280g、安定剤としてのチオ硫酸ナトリウム0.002gを溶解させて溶液(c)を準備した。
1Lのビーカーに、脱イオン水500g、硫酸ニッケル155g及び水酸化ナトリウム5gを溶解させて溶液(d)を準備した。
前記5Lの反応器の溶液(b)の温度を65℃に維持する状態で溶液(c)を定量ポンプで1分当たり5gの量で投入し、反応器の温度を0.33℃の昇温速度で75℃に到達するように加熱し、維持した。
前記5Lの反応器の溶液(b)のpHを溶液温度が75℃に到達するまで5.5に合わせるためにアンモニア水をさらに添加し、75℃以後にはアンモニア水を添加しなかった。
前記溶液(c)が投入され、5分後、溶液(d)を定量ポンプで分あたり20gの量で前記5Lの反応器に投入した。
前記溶液(c)の投入が完了し、30分間維持して、結晶質Ni-Pメッキ層が形成された導電粒子を得た。
【実施例4】
【0063】
脱イオン水500g、硫酸ニッケル155g、塩酸10g及び塩化パラジウム(PdCl2)0.5gを溶解させて溶液(d)を準備した以外は、実施例1と同様にして製造した。
<実験例>
【0064】
実施例1~4で得られた導電粒子に関する評価を行った。
1)絶縁コア粒子の大きさ測定
絶縁コア粒子の平均直径は、Particle Size Analyzer(BECKMAN MULTISIZER TM3)を用いて、測定されたモード値を用いる。このとき、測定された導電粒子の数は75,000個である。
2)XRD分析
導電粒子の伝導層にCuターゲットを用いたXRD(X-ray diffraction-SmatLab)分析で得られた回折パターンから測定した第1~第4(1st~4th)の回折円の半径を、表1にまとめた。このとき、回折円の半径は、Digital Micrograph(ver3.42.3048.0)を用いて、
図3に示すように1つの回折円に対して中心を通る4つの直径を求め、4つの直径の平均値を求めた後、2で割って半径(r)を求めた。また、測定された伝導層の測定部位は、絶縁コアに隣接する第1領域、第1領域に隣接する第2領域、第2領域に隣接して最も外側に位置する第3領域に対してそれぞれ測定した。
【表1】
3)結晶粒界分析によって、前述した実施例1~3の結晶粒界の長軸の長さを測定し、その結果を表2にまとめた。
【表2】
4)接続抵抗の測定
(1)異方性導電フィルムの製造
ナフタレン系エポキシ樹脂HP4032D(DIC製、商品名)2g、フェノキシ樹脂YP-50(東都化成製、商品名)20g、アクリルエポキシ樹脂VR-60(昭和電工製、商品名)25g、熱硬化剤HXA-3922HP(旭化学製、商品名)22g、及びエポキシシランカップリング剤A-187(モーメンティブ製、商品名)5gをよく掻き混ぜた後、溶媒であるトルエンを用いて固形分50%の配合物を作った。上記の導電粒子を配合物重量比で10%となるように添加した後、公自転ミキサーを用いて公転400rpm、自転150rpmの条件で5分間混合して異方性導電ペーストを製作した。前記異方性導電ペーストを用いて離型フィルム上に厚さ20μmのフィルムを作った後、75℃分間熱風乾燥炉を用いて大気中で乾燥させて最終厚さ12μmの異方性導電フィルムを製作した。
(2)抵抗測定用電極
抵抗測定のための電極は、ガラス基板上にITO(Indium Tin Oxide)を蒸着して、透明電極が形成されたガラス基板と電極幅が20μm、電極間隔が50μmであるFPCBを製作した。
(3)接合
前記異方性導電フィルムを幅3mmに切断し、幅1mm、長さ30mmの接合治具を用いて、ITOのあるガラス基板上に0.2MPa、120℃、10秒で圧着を施した後、FPCBを載置して45MPa、200℃、20秒間接合を行うことにより、接続構造体を製作した。
(4)初期接続抵抗の測定
前記接続構造体のFPCBの電極を活用して抵抗を測定した。抵抗は、ADCMT 6871E Digital Multimeter 2probeを用いて測定した。
(5)信頼性抵抗の測定
信頼性抵抗は、85℃の湿度条件で100時間放置した後、抵抗を測定した。
抵抗測定のために前記100時間放置された接続体を100℃のドライオーブンに24時間入れて残留水分を除去した後、抵抗をADCMT 6871E Digital Multimeter 2probeを用いて測定して表3にまとめた。
初期接続抵抗に対する判定基準は、以下の通りである。
OOO:2Ω以下
OO:2Ω超過3Ω以下
O:3Ω超過5Ω以下
X:5Ω超過
85℃、100時間信頼性以降の接続抵抗上昇に対する判定基準は、次の通りである。
OOO:2Ω以下上昇
OO:2Ω超過4Ω以下上昇
O:4Ω超過6Ω以下上昇
X:6Ω超過上昇
【表3】
【0065】
上述した各実施例で例示された特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって他の実施例に対しても組み合わせ又は変形させて実施可能である。したがって、それらの組み合わせ及び変形に関連する内容は、本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【国際調査報告】