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特表2024-544449電解液及びバナジウムレドックスフロー電池
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  • 特表-電解液及びバナジウムレドックスフロー電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電解液及びバナジウムレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20241126BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581058
(86)(22)【出願日】2023-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2023115989
(87)【国際公開番号】W WO2024103909
(87)【国際公開日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】202211446542.2
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524004146
【氏名又は名称】▲蘇▼州融科▲儲▼能技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】高 新▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】王 世宇
(72)【発明者】
【氏名】李 思▲藝▼
(72)【発明者】
【氏名】江 杉
(72)【発明者】
【氏名】宋 明明
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA10
5H126BB10
5H126GG11
5H126JJ05
5H126JJ08
(57)【要約】
本願は、電解液及びバナジウムレドックスフロー電池を開示し、電解液は、正極電解液と負極電解液とを含み、正極電解液及び負極電解液には塩素イオンと、硫酸根イオンと、バナジウムイオンとが含まれる。正極電解液及び負極電解液は、いずれも2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)≦3.6を満たす。ここで、c(Cl)は塩素イオンの濃度を表し、c(SO 2-)は硫酸根イオンの濃度を表し、c(Vn+)はバナジウムイオンの濃度を表す。電解液にいて、Cl、SO 2-、及びVn+が適切な濃度関係を満たす場合、Clの産出速度を大幅に低下させ、電池材料に対する腐食性を減少するとともに、少量で析出されたClは電池の電極カーボンフェルトの酸化を補償し、電極カーボンフェルトに対して保護作用を果たし、且つ塩素含有電解液の動作環境リスクレベルを低下させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電解液と負極電解液とを含み、前記正極電解液及び前記負極電解液には塩素イオンと、硫酸根イオンと、バナジウムイオンとが含まれ、前記正極電解液及び前記負極電解液は、いずれも2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)≦3.6を満たし、
ここで、c(Cl)は前記塩素イオンの濃度を表し、c(SO 2-)は前記硫酸根イオンの濃度を表し、c(Vn+)は前記バナジウムイオンの濃度を表す、
電解液。
【請求項2】
前記c(Cl)は、1.5mol/L≦c(Cl)≦6.5mol/Lを満たす、
請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記c(Cl)は、2.5mol/L≦c(Cl)≦5.5mol/Lを満たす、
請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
前記c(Cl)は、3.0mol/L≦c(Cl)≦5.0mol/Lを満たす、
請求項1に記載の電解液。
【請求項5】
前記c(Cl)は、3.5mol/L≦c(Cl)≦4.5mol/Lを満たす、
請求項1に記載の電解液。
【請求項6】
前記c(Cl)及び前記c(Vn+)は、0.5≦c(Cl)/c(Vn+)≦3.0をさらに満たす、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項7】
前記c(SO 2-)は、0.5mol/L≦c(SO 2-)≦5.5mol/Lを満たす、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項8】
前記c(Vn+)は、1.6mol/L≦c(Vn+)≦2.65mol/Lを満たす、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項9】
前記c(Cl)及び前記c(SO 2-)は、0.4≦c(Cl)/c(SO 2-)≦3.1をさらに満たす、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項10】
前記正極電解液にはリン酸根イオンがさらに含まれ、前記正極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、
ここで、c(PO 3-)はリン酸根イオンの濃度を表す、
請求項1~9のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項11】
前記c(PO 3-)は、以下の特徴のうち少なくとも1つをさらに満たし、
a)0.01mol/L≦c(PO 3-)≦0.15mol/L、
b)0.02≦c(PO 3-)/c(Vn+)≦0.06、
c)[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)-0.8×c(Vn+)]≧4.2mol/L、
ここで、0.8×c(Vn+)は、前記正極電解液においてバナジウムイオンに結合された酸根イオンの平均モル濃度を表す、
請求項10に記載の電解液。
【請求項12】
前記負極電解液には亜リン酸根イオンがさらに含まれ、前記負極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、
ここで、c(PO 3-)は、亜リン酸根イオンの濃度を表す、
請求項1~11のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項13】
前記c(PO 3-)は、以下の特徴のうち少なくとも1つをさらに満たし、
d)0.01mol/L≦c(PO 3-)≦0.15mol/L、
e)0.03≦c(PO 3-)/c(Vn+)≦0.1、
f)[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)-1.5×c(Vn+)]≦4.5mol/L、
ここで、1.5×c(Vn+)は、前記負極電解液においてバナジウムイオンに結合された酸根イオンの平均モル濃度を表す、
請求項12に記載の電解液。
【請求項14】
前記正極電解液及び前記負極電解液には添加剤がさらに含まれ、前記正極電解液と前記負極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(A)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、ここで、c(A)は前記添加剤の濃度を表す、
請求項1~13のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項15】
前記添加剤は、以下の特徴のうち少なくとも1つを満たし、
g)前記添加剤の濃度c(A)は、0.02mol/L≦c(A)≦0.2mol/Lを満たし、
h)前記添加剤は、官能基としての-OH、-COOH又は-NHを含有する添加剤の1種以上である、
請求項14に記載の電解液。
【請求項16】
前記電解質の温度の安定化区間は、-30~60℃である、
請求項1~15のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項17】
前記塩素イオンは、塩素イオンを含有する酸又は塩によって提供され、前記硫酸根イオンは、硫酸根イオンを含有する酸又は塩によって提供され、前記バナジウムイオンは、バナジン酸塩によって提供される、
請求項1~16のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の電解液を含む、
バナジウムレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年11月21日に中国専利局に出願された出願番号202211446542.2、発明の名称が「電解液及びバナジウムレドックスフロー電池」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願のすべての内容は引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は電解液製造技術分野に属し、具体的には電解液及びバナジウムレドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0003】
バナジウムレドックスフロー電池は、異なる価数のバナジウムイオンを正負極活物質とし、活性物質が支持電解質中に溶解し且つ液体循環流状態にある酸化還元フロー電池である。新型エネルギー貯蔵電池の一つとして、バナジウムレドックスフロー電池は、容量が大きく、安全性が高く、寿命が長く、資源が節約できる等の特徴を有し、再生可能エネルギーの発電、電力網のピーク調整、スマートマイクログリッド、予備電源等の分野に広く応用されることができる。電解液はバナジウムレドックスフロー電池システムにおける電気エネルギーの貯蔵キャリアであり、その性能はシステムの電極寿命、エネルギー密度及び効率、システムコスト等の指標に直接に影響し、電池システムの信頼性に関わる。
【0004】
バナジウムレドックスフロー電池システムが長期間で安定に動作する可能であることは、電池材料の安定性及び電解質の安定性、この2つの要素に依存している。電池が頻繁的に高SOCで動作(過充電)することは、システム電極材料の酸化と導電性を失うことを引き起こす可能性がある。高SOC電解液は、高温下で結晶又は沈殿しやすくなる。高濃度のHCl類を含有する電解液に対して、大量のClの析出は電池に関する材料の腐食を深刻化させ、システム環境の危険性を増加させ、そのため、電池動作中に塩素ガスの発生を合理的に制御することは解決すべき課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は電解液を提供し、電解液における塩素イオン濃度を調整することによって塩素ガスの析出量を制御して、過剰な塩素ガスの析出の課題を解決する。本願の他の目的は、上記電解液を含むバナジウムレドックスフロー電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1方面では、本願の実施例は電解液を提供し、前記電解液は、正極電解液と負極電解液とを含み、前記正極電解液及び前記負極電解液には塩素イオンと、硫酸根イオンと、バナジウムイオンとが含まれ、前記正極電解液及び前記負極電解液は、いずれも3.0≦[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)≦3.6を満たし、
ここで、c(Cl)は前記塩素イオンの濃度を表し、c(SO 2-)は前記硫酸根イオンの濃度を表し、c(Vn+)は前記バナジウムイオンの濃度を表す。
【0007】
一部の実施例では、
前記c(Cl)は、1.5mol/L≦c(Cl)≦6.5mol/Lを満たし、及び/又は、
前記c(SO 2-)は、0.5mol/L≦c(SO 2-)≦5.5mol/Lを満たし、及び/又は、
前記c(Vn+)は、1.6mol/L≦c(Vn+)≦2.65mol/Lを満たす。
【0008】
一部の実施例では、前記c(Cl)及び前記c(SO 2-)は、0.4≦c(Cl)/c(SO 2-)≦3.1をさらに満たす。
【0009】
一部の実施例では、前記c(Cl)及び前記c(Vn+)は、0.5≦c(Cl)/c(Vn+)≦3.0をさらに満たす。
【0010】
一部の実施例では、前記正極電解液にはリン酸根イオンがさらに含まれ、前記正極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、
ここで、c(PO 3-)はリン酸根イオンの濃度を表す。
【0011】
一部の実施例では、前記c(PO 3-)は、
0.01mol/L≦c(PO 3-)≦0.15mol/L、及び/又は、
0.02≦c(PO 3-)/c(Vn+)≦0.06、及び/又は、
[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)-0.8×c(Vn+)]≧4.2mol/Lをさらに満たし、
ここで、0.8×c(Vn+)は、前記正極電解液においてバナジウムイオンに結合された酸根イオンの平均モル濃度を表す。
【0012】
一部の実施例では、前記負極電解液には亜リン酸根イオンがさらに含まれ、前記負極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、
ここで、c(PO 3-)は、亜リン酸根イオンの濃度を表す。
【0013】
一部の実施例では、前記c(PO 3-)は、
0.01mol/L≦c(PO 3-)≦0.15mol/L、及び/又は、
0.03≦c(PO 3-)/c(Vn+)≦0.1、及び/又は、
[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)-1.5×c(Vn+)]≦4.5mol/Lをさらに満たし、
ここで、1.5×c(Vn+)は、前記負極電解液においてバナジウムイオンに結合された酸根イオンの平均モル濃度を表す。
【0014】
一部の実施例では、前記正極電解液及び前記負極電解液には添加剤がさらに含まれ、前記正極電解液と前記負極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(A)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、
ここで、c(A)は前記添加剤の濃度を表す。
【0015】
一部の実施例では、前記添加剤は、以下の特徴の少なくとも一方を満たす。
(a)前記添加剤の濃度c(A)は、0.02mol/L≦c(A)≦0.2mol/Lを満たす。
(b)前記添加剤は、官能基としての-OH、-COOH又は-NHを含有する添加剤の1種以上である。
【0016】
一部の実施例では、前記電解質の温度の安定化区間は、-30~60℃である。
【0017】
一部の実施例では、前記塩素イオンは、塩素イオンを含有する酸又は塩によって提供される。前記硫酸根イオンは、硫酸根イオンを含有する酸又は塩によって提供される。前記バナジウムイオンは、バナジン酸塩によって提供される。
【0018】
第2方面では、本願の実施例は、上記電解質を含むバナジウムレドックスフロー電池をさらに提供する。
【発明の効果】
【0019】
従来技術と比較すると、本願の電解液は、正極電解液と負極電解液とを含み、正極電解液及び負極電解液には塩素イオンと、硫酸根イオンと、バナジウムイオンとが含まれ、正極電解液及び負極電解液は、いずれも2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)≦3.6を満たし、ここで、c(Cl)は前記塩素イオンの濃度を表し、c(SO 2-)は前記硫酸根イオンの濃度を表し、c(Vn+)は前記バナジウムイオンの濃度を表す。電解液において、Cl、SO 2-、及びVn+が適切な濃度関係を満たす場合、Clの産出速度を大幅に低下させ、電池材料に対する腐食性を減少するとともに、少量で析出されたClは電池の電極カーボンフェルトの酸化を補償し、電極カーボンフェルトに対して保護作用を果たし、且つ塩素含有電解液の動作環境リスクレベルを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願の実施例に係るバナジウムレドックスフロー電池の電解液の製造工程フロー図である。
図2】実施例1に係る電解液が使用された後の電極腐食状況である。
図3】比較例1に係る電解液が使用された後の電極腐食状況である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願は、電解液及びバナジウムレドックスフロー電池を提供し、本願の目的、技術案及び効果をより明瞭且つ明確にするために、以下、図面を参照しながら実施例を挙げて本願をさらに詳細に説明する。本明細書に記載された具体的な実施例は、単に本願を説明するためのものであり、本願を限定することを意図するものではないことを理解されるべきである。
【0022】
出願者は、高温(熱帯地方のコンテナ内温が50℃を超える)のため、正極電解液が高温下でVの沈殿を析出しやすくなり、電解液を安定的に用いる温度区間が狭くなることを避けるように、電池システムに配置された冷却、加熱、換気等の補助機器が電力を消費して電池システムの全体的な効率を低下させることを発見した。そのため、電解液の安全使用温度区間を拡大することによって、補助機器の配備コスト及びその消費電力を効果的に低減し、電池システムのコストを低減するとともに、全体的な効率を向上させことができる。また、熱交換機器が故障する時、電解液自身の耐高低温能力は、電池システムの全体的な安定性に対して特に重要であり、電解液におけるバナジウムイオンの濃度が高いほど、対応するシステムのエネルギー密度が高くなり、コストパフォーマンスが高くなるが、安全温度範囲は狭くなり、高温時には5価のバナジウムが沈殿するリスクが高くなる。従来の純硫酸系の電解液の温度安定区間が狭く、一方、硫酸と塩酸の混酸系の電解液はエネルギー密度が大幅に向上し、電池の動作過程に有害な塩素ガスが生成する。また、高原地区の低気圧によって析出されたClは電解液に逆溶解しにくいため、溶液における強揮発性を有するHClは、絶えず磁気ポンプに循環されてエアバインディングを増大させ、ポンプが停止すると、電池における反応物質が失われて過充電で焼失する。高濃度ClによってClの析出速度が加速し、ポンプが圧力を受けるためClがシステムから漏れるリスクが増大する。従って、如何にClの析出量を低下させてその高温性能を維持することは、混酸電解液に対し解決すべき課題である。また、混酸電解液の過高なHCl濃度は、負極の3価溶液の低温で沈殿する問題を深刻化させ(VCl結晶が極めて生成しやすい)、パイプラインを詰まらせ、システムが動作できないことを招き、本技術の更なる産業化に影響する。従って、バナジウムレドックスフロー電池の電解液に対して、Clの析出を合理的に制御することは早急に解決すべき課題である。
【0023】
上記課題に基づいて、本願の実施例はバナジウムレドックスフロー電池用の電解液を提供し、この電解液は正極電解液と負極電解液とを含み、正極電解液及び負極電解液には塩素イオンと、硫酸根イオンと、バナジウムイオンとが含まれ、正極電解液及び負極電解液は、いずれも2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)≦3.6を満たし、
ここで、c(Cl)は前記塩素イオンの濃度を表し、c(SO 2-)は前記硫酸根イオンの濃度を表し、c(Vn+)は前記バナジウムイオンの濃度を表す。
【0024】
一部の実施例では、c(Cl)は、1.5mol/L≦c(Cl)≦6.5mol/Lを満たす。c(Cl)の数値を、1.5mol/L、2.0mol/L、2.5mol/L、3.0mol/L、3.5mol/L、4.0mol/L、4.5mol/L、5.5mol/L、6.0mol/L、及び6.5mol/Lのいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。なお、c(Cl)の具体的な数値は、単なる例示であり、1.5~6.5mol/Lの範囲内のいずれかの値、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲であれば、いずれも本願の保護範囲内にある。
【0025】
一部の実施例では、好ましくは、c(Cl)が、2.5mol/L≦c(Cl)≦5.5mol/Lを満たし、より好ましくは、c(Cl)が、3.0mol/L≦c(Cl)≦5.0mol/Lを満たし、最も好ましくは、c(Cl)が、3.5mol/L≦c(Cl)≦4.5mol/Lを満たす。
【0026】
一部の実施例では、c(SO 2-)は、0.5mol/L≦c(SO 2-)≦5.5mol/Lを満たし、c(SO 2-)の数値を、0.5mol/L、1.0mol/L、1.5mol/L、2.0mol/L、2.5mol/L、3.0mol/L、3.5mol/L、4.0mol/L、4.5mol/L、5.0mol/L、及び5.5mol/Lのいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。なお、c(SO 2-)の具体的な数値は、単なる例示であり、0.5~5.5mol/Lの範囲内のいずれかの値、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲であれば、いずれも本願の保護範囲内にある。
【0027】
一部の実施例では、好ましくは、c(SO 2-)が、1.5mol/L≦c(SO 2-)≦4.5mol/Lを満たし、より好ましくは、c(SO 2-)が、1.5mol/L≦c(SO 2-)≦3.5mol/Lを満たし、最も好ましくは、c(SO 2-)が、1.5mol/L≦c(SO 2-)≦2.5mol/Lを満たす。
【0028】
一部の実施例では、c(Vn+)は、1.6mol/L≦c(Vn+)≦2.65mol/Lを満たし、c(Vn+)は、1.6mol/L、1.7mol/L、1.8mol/L、1.9mol/L、2.0mol/L、2.1mol/L、2.2mol/L、2.3mol/L、2.4mol/L、2.5mol/L、2.6mol/Lのいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。なお、c(Vn+)の具体的な数値は、単なる例示であり、1.6~2.65mol/Lの範囲内のいずれかの値、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲であれば、いずれも本願の保護範囲内にある。
【0029】
一部の実施例では、高SOCの場合、VO の含有量は90%を超え、高濃度VO は、Clと特定の速度で反応してClを形成し、反応式は、2VO +2Cl+4H→Cl+2VO2++2HOである。よって、高SOC下で塩素ガスを発生し、ClはVO の高温下での安定性を高めることができるが、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)≦3.6の範囲によって制限された後、Clの生成量を特定の範囲に制御することができ、また、ある程度の量の塩素ガス析出は、電池の電極カーボンフェルトの酸化を補償して、過充電時の基質VO2+不足によるカーボンフェルト電極の酸化による導電性を失うこと回避することができる。以上の原理に基づいて、電池の充電開回路電圧OCVは1.50Vから1.54Vまで拡張し、システムの放電エネルギー密度は20%以上向上することができる。また、制御された1.5~6.5mol/LのCl濃度の下では、Clの高速析出による循環ポンプのエアバインディングや、システムにおける気圧の上昇による環境リスクを回避することができる。
【0030】
一部の実施例では、c(Cl)及びc(SO 2-)は、0.4≦c(Cl)/c(SO 2-)≦3.1をさらに満たす。なお、c(Cl)/c(SO 2-)の値は、0.4~3.1の範囲内のいずれかの値、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲であれば、いずれも本願の保護範囲内にある。電解液に対して、ClとSO 2-は混酸系の指標であり、両者の比例関係は電解液の安定性を表し、ClとSO 2-が共存し且つ上記比例関係に達すると、HClの飽和蒸気圧を低下させることができる。一方、SO 2-とClは、それぞれVnと結合して2つの異なる立体構造である塩を形成するため、高温下で単一酸根がバナジウムイオンと結合した後の構造が、溶解度上限に達する時の電解液の安定性が低下するという課題を緩和することができる。
【0031】
一部の実施例では、c(Cl)及びc(Vn)は、0.5≦c(Cl)/c(Vn)≦3.0をさらに満たす。なお、c(Cl)/c(Vn)の値は、0.5~3.0の範囲内のいずれかの値、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲であれば、いずれも本願の保護範囲内にある。電解液に対して、c(Cl)とc(Vn)との比例関係は、塩素析出の状況をさらに示し、その理由は、適切なClとVnとの比例関係の下で、溶液におけるVnに結合されたClを除去した後、溶液の導電率と溶解性を維持するための遊離のHが残って、電池の電池効率と高温安定性をさらに維持し、ClとVn+との比例関係が上記範囲にある場合、Clに強い錯形成能力を持たせるとともに、まだ残っているClがHを提供し且つある程度の量の塩素ガスを析出することを確保し、析出されたある程度の量の塩素ガスによって電極を保護する。
【0032】
一部の実施例では、正極電解液にはリン酸根イオンがさらに含まれ、正極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn)≦3.7をさらに満たす。ここで、c(PO 3-)はリン酸根イオンの濃度を表す。電解液におけるCl、SO 2-、PO 3-及びVnが上記範囲を満たす場合、電解液が電極の性能を保護するとともに、リン酸根イオンがVnに対する安定性をさらに高めて、塩素ガスの析出速度を大幅に低下させる。リン酸根イオンのVnに対する安定化作用は、それと[VO(HO)との結合がバナジウムイオンの高温下で起こる脱プロトン化過程を抑制するためである。錯化反応は以下の通りである。
【0033】
【化1】
【0034】
また、高温下で、HClを含有する電解液のClとVO は可溶性VOClを生成し、不溶性Vの生成を回避し、正極関係式2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn+)≦3.7の制御下で、低濃度の遊離HClはClの生成速度をさらに低減して、電池材料に対する耐腐食性要求を大幅に低減させるとともに、HClを含有する電解液の動作環境リスクレベルを低減し、HClを含有する電池の高原地域に対する耐性をさらに高めることができる。
【0035】
一部の実施例では、c(PO 3-)は、0.01mol/L≦c(PO 3-)≦0.15mol/Lをさらに満たす。c(PO 3-)の数値を、0.01mol/L、0.02mol/L、0.03mol/L、0.04mol/L、0.05mol/L、0.06mol/L、0.07mol/L、0.08mol/L、0.09mol/L、0.10mol/L/、0.11mol/L、0.12mol/L、0.13mol/L、0.14mol/L、及び0.15mol/Lのいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。なお、c(PO 3-)の具体的な数値は、単なる例示であり、0.01~0.15mol/Lの範囲内のいずれかの値、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲であれば、いずれも本願の保護範囲内にある。
【0036】
一部の実施例では、c(PO 3-)は、0.02≦c(PO 3-)/c(Vn)≦0.06をさらに満たす。PO 3-とVnとの比例関係を限定することによって、不溶性のVOPOの沈殿が過剰に生成することを回避でき、一方、低すぎるPO 3-は、有効な空間配置を形成することができず、保護作用を果たさない。
【0037】
一部の実施例では、c(PO 3-)は、[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)-0.8×c(Vn+)]≧4.2mol/Lをさらに満たす。ここで、0.8×c(Vn+)は、正極電解液におけるバナジウムイオンに結合された酸根イオンの平均モル濃度を表す。上記範囲を満たす場合、全酸基がバナジウムイオンに結合された後、まだ濃度が制御される可能である遊離酸がHを提供して、溶液の高温溶解性、安定性及び導電性を確保することができる。
【0038】
一部の実施例では、負極電解液には亜リン酸根イオンがさらに含まれ、負極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たす。ここで、c(PO 3-)は、前記亜リン酸根イオンの濃度を表す。溶液において高すぎるH濃度によってV3+が沈殿するリスクが高くなるため、負極溶液が上記関係式の数値範囲を満たす場合、溶液においてバナジウムイオンと結合したClとSO 2-を除去した後、その遊離酸根が提供するHは、上記範囲を満たす必要がある。また、亜リン酸根イオンは電解液の負極に3価バナジウムイオンを安定する低温作用を有し、且つ負極の還元環境において、亜リン酸は、酸化されずに安定に存在することができる。
【0039】
一部の実施例では、c(PO 3-)は、0.01mol/L≦c(PO 3-)≦0.15mol/Lをさらに満たす。c(PO 3-)の数値を、0.01mol/L、0.02mol/L、0.03mol/L、0.04mol/L、0.05mol/L、0.06mol/L、0.07mol/L、0.08mol/L、0.09mol/L、0.10mol/L/、0.11mol/L、0.12mol/L、0.13mol/L、0.14mol/L、及び0.15mol/Lのいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。なお、c(PO 3-)の具体的な数値は、単なる例示であり、0.01~0.15mol/Lの範囲内のいずれかの値、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲であれば、いずれも本願の保護範囲内にある。
【0040】
一部の実施例では、c(PO 3-)は、0.03≦c(PO 3-)/c(Vn+)≦0.1をさらに満たす。c(PO 3-)及びc(Vn+)が上記範囲を満たす場合、亜リン酸根イオンの低温安定化作用をさらに向上させ、高すぎるPO 3-濃度によって負極溶液の粘度を上昇させて溶液導電率を低下させ、電池の電気化学反応抵抗を増加させることを防止する。
【0041】
一部の実施例では、c(PO 3-)は、[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)-1.5×c(Vn+)]≦4.5mol/Lをさらに満たす。ここで、1.5×c(Vn+)は、負極電解液におけるバナジウムイオンに結合された酸根イオンの平均モル濃度を表す。上記範囲を満たす場合、溶液における全酸根がバナジウムイオンと結合した後、残りの遊離酸根が放出するHがバナジウムイオンの安定性に影響を与えることに足らないようにすることができる。
【0042】
一部の実施例では、正極電解液及び負極電解液には添加剤がさらに含まれ、正極電解液及び負極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(A)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、ここで、c(A)は添加剤の濃度を表す。
【0043】
一部の実施例では、Clを含有する電解液系に対して、系中のCl濃度が高すぎると大量のClが生成し、一方、高濃度Clの存在下では添加剤が添加できない場合もあり、その理由は、添加剤が酸化されて分解しやすい。しかしながら、本願において、Clの低速生成量のため、添加物の安全な添加と安定化を可能にさせる。また、Clを含有する電解液の正極Clの生成代償性は、正極カーボンフェルト電極が酸化されないように確保する。一方、高い充電量は、正極SOC上昇による高温沈殿のリスクをもたらすが、添加剤の添加により安定化され、開回路電圧を高めることによるリスクをさらに回避することができる。
【0044】
一部の実施例では、添加剤は以下を満たす。添加剤の濃度c(A)は、0.02mol/L≦c(A)≦0.2mol/Lを満たす。c(A)の数値を、0.02mol/L、0.05mol/L、0.1mol/L、0.15mol/L、及び0.2mol/Lのいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。なお、c(A)の具体的な数値は、単なる例示であり、0.02~0.2mol/Lの範囲内のいずれかの値、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲であれば、いずれも本願の保護範囲内にある。
【0045】
一部の実施例では、添加剤は、官能基としての-OH、-COOH、又は-NHを含有する1つ以上の添加剤である。Cl濃度が1.5~6.5mol/Lの範囲内にある場合、添加剤の添加は、高温安定性の維持に有効であり、且つ温度範囲がより広いため、電池の動作温度範囲は-15℃~60℃に達することができる。その理由は、-COOH又は-NH基がバナジウムイオン表面に吸着され、又はバナジウムイオンと結合する可能であり、立体効果を有する構造を形成し、バナジウムイオンの間の反発力を増強し、それらをより分散させて、バナジウムイオン間の衝突を防止し、沈殿の発生を抑制し、電解液の安定性を向上させることができる。その熱安定メカニズムは以下の通りである。
【0046】
【化2】
【0047】
有効なヒドロキシル官能基-OHの増加は、電子移動により多くの活性点を提供して、ヒドロキシル化合物が有効に電解液の電気化学活性を向上させることができる。さらに、添加剤はVO2+/VO 電極過程の可逆性を向上させることができ、-COOH又は-NHはVO2+/VO 電極過程における電子物質移動過程を向上させることができ、それにより、電気化学活性が改善され、電解液の利用率を増加し、電池効率と全体性能を向上させた。
【0048】
一部の実施例では、添加剤は、グリセリン、コハク酸、カルバミン酸、メタンスルホン酸、グルタミン酸、シュウ酸等のうちいずれか1種又は複数種の組み合わせを含んでもよい。
【0049】
一部の実施例では、電解質の温度安定化区間は、-30~60℃である。電解液の温度安定区間はCl濃度によって決定され、Cl濃度が1.5~6.5mol/Lの範囲にある場合、電解液の温度安定区間は-30~60℃まで広げられ、熱管理機器のコストを大幅に節約し、補助消費電力を低減し、電池システムのエネルギー効率を向上させることができる。好ましくは、電解液の温度安定区間は-15~60℃である。負極電解液(3価溶液)は-15℃の周囲温度下で、少なくとも7日間安定する。正極電解液(5価溶液)は60℃の周囲温度下で、少なくとも10日間安定する。
【0050】
一部の実施例では、塩素イオンは、塩素イオンを含有する酸又は塩によって提供される。硫酸根イオンは、硫酸根イオンを含有する酸又は塩によって提供される。バナジウムイオンは、バナジン酸塩によって提供される。
【0051】
一部の実施例では、塩素イオンは塩酸によって提供され、硫酸根イオンは硫酸によって提供され、バナジウムイオンは多段階精製のバナジン酸アンモニウムによって提供される。
【0052】
バナジウムレドックスフロー電池
【0053】
バナジウムレドックスフローのエネルギー貯蔵電池は、電池スタックと電解液貯蔵タンクとを含み、電池スタックと蓄液タンクは、入液管路と出液管路によって接続され、入液管路には循環ポンプが設けられる。
【0054】
電池スタックは、イオンセパレータ、導流板、カーボンフェルト電極、流路枠、及び締結端板が多節的に直列して構成される。
【0055】
電池のセパレータは、以下の通りである。
【0056】
理論的にはHのみの通過を許容し、正負極電解液における異なる価数のバナジウムイオンのクロスミキシングを抑制するため、良好な導電性と選択透過性を有する陽イオン交換膜が好ましく、全フッ化スルホン酸型イオン交換膜を用いてもよい。イオン交換膜の親水性、選択透過性、及び使用寿命を向上させることは、バナジウム電池の効率を高める手段の一つである。
【0057】
他の電池材料は、以下の通りである。
【0058】
バナジウムレドックスフロー電池は大容量のエネルギー蓄積に達するため、必ずいくつかの単電池の直列又は並列接続を実現しなければならない。そのため、端部電極を除いて、ほぼ全ての電極は二極電極として製造される必要がある。VO の強酸化性、及び硫酸、塩酸を含有する電解液の強酸性により、バナジウム電池の電極材料としては、耐強酸化と耐強酸性を備える必要があるとともに、低い抵抗、優れた導電性、高い機械的強度、よい電気化学活性等の特徴を有する必要がある。バナジウム電池の電極材料は主に炭素類であり、例えば、黒鉛、炭素布、カーボンフェルト等である。バイポーラプレートは主に複合材料類であり、例えば、導電性ポリマー、高分子複合材料等である。
【0059】
電池スタックの各部分の材料を順次に組み立てた後、それを対応する正、負極電解液の貯蔵タンクの入出口に接続して、バナジウムレドックスフロー電池を組み立てる。
【0060】
実施例1
【0061】
図1を参照すると、多段階精製のバナジン酸アンモニウム(NH)x(VO)yを例にとると、それを750℃で5時間焼成して、高純度の五酸化バナジウム(V)を得、引き続き還元性ガス(NH又はH)を導入し10時間焼成して、四酸化バナジウム(V)又は三酸化バナジウム(V)を得、この2つの酸化物を1:1(3価と4価の酸化物がそれぞれ50%占められている)の量で混合し、硫酸及び塩酸を添加し、バナジウムレドックスフロー電池の正負極に用いられる混合酸電解液を製造する。
【0062】
ここで、得られた混合酸電解液は正極電解液と負極電解液とを含み、正極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。負極電解液に1.9molのSO42、3.9molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0063】
実施例2
【0064】
実施例2の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、4.1molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、4.1molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0065】
実施例3
【0066】
実施例3の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、4.3molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、4.3molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0067】
実施例4
【0068】
実施例4の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、4.5molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、4.5molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0069】
実施例5
【0070】
実施例5の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、4.7molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、4.7molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0071】
実施例6
【0072】
実施例6の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、4.9molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、4.9molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0073】
実施例7
【0074】
実施例7の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、5.1molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、5.1molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0075】
実施例8
【0076】
実施例8の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、5.3molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に5.3molのSO 2-、4.7molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0077】
実施例9
【0078】
実施例9の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.3molのSO 2-、4.0molのCl及び1.8molのVn+が含まれ、負極電解液に1.3molのSO 2-、4.0molのCl、及び1.8molのVn+が含まれるように制御する。
【0079】
実施例10
【0080】
実施例10の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.8molのSO 2-、4.0molのCl及び1.8molのVn+が含まれ、負極電解液に1.8molのSO 2-、4.0molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0081】
実施例11
【0082】
実施例11の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.1molのSO 2-、4.0molのCl及び1.8molのVn+が含まれ、負極電解液に2.1molのSO 2-、4.0molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0083】
実施例12
【0084】
実施例12の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.4molのSO 2-、4.0molのCl及び1.8molのVn+が含まれ、負極電解液に2.4molのSO 2-、4.0molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0085】
実施例13
【0086】
実施例13の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl及び1.87molのVn+が含まれ、負極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl、及び1.87molのVn+が含まれるように制御する。
【0087】
実施例14
【0088】
実施例14の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl及び1.95molのVn+が含まれ、負極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl、及び1.95molのVn+が含まれるように制御する。
【0089】
実施例15
【0090】
実施例15の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl及び2.05molのVn+が含まれ、負極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl、及び2.05molのVn+が含まれるように制御する。
【0091】
実施例16
【0092】
実施例16の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl及び2.20molのVn+が含まれ、負極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl、及び2.20molのVn+が含まれるように制御する。
【0093】
実施例17
【0094】
実施例17の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl及び2.30molのVn+が含まれ、負極電解液に2.2molのSO 2-、4.5molのCl、及び2.30molのVn+が含まれるように制御する。
【0095】
実施例18
【0096】
実施例18の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に3.2molのSO 2-、1.5molのCl及び1.6molのVn+が含まれ、負極電解液に3.2molのSO 2-、1.5molのCl、及び1.6molのVn+が含まれるように制御する。
【0097】
実施例19
【0098】
実施例19の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.5molのSO 2-、6.5molのCl及び2.6molのVn+が含まれ、負極電解液に2.5molのSO 2-、6.5molのCl、及び2.6molのVn+が含まれるように制御する。
【0099】
実施例20
【0100】
実施例20の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.2molのSO 2-、2.5molのCl及び1.60molのVn+が含まれ、負極電解液に2.2molのSO 2-、2.5molのCl、及び2.20molのVn+が含まれるように制御する。
【0101】
実施例21
【0102】
実施例21の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に4.0molのSO 2-、4.5molのCl及び2.65molのVn+が含まれ、負極電解液に4.0molのSO 2-、4.5molのCl、及び2.65molのVn+が含まれるように制御する。
【0103】
実施例22
【0104】
実施例22の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なり、且つ正極電解液にPO 3-を添加することであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、0.04molのPO 3-、及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0105】
実施例23
【0106】
実施例23の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なり、且つ正極電解液にPO 3-を添加することであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、0.08molのPO 3-、及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0107】
実施例24
【0108】
実施例24の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なり、且つ正極電解液にPO 3-を添加することであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、5.3molのCl、0.12molのPO 3-、及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0109】
実施例25
【0110】
実施例25の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なり、且つ負極電解液にPO 3-を添加することであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、0.06molのPO 3-、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0111】
実施例26
【0112】
実施例26の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なり、且つ負極電解液にPO 3-を添加することであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、0.13molのPO 3-、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0113】
実施例27
【0114】
実施例27の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なり、且つ負極電解液にPO 3-を添加することであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、5.3molのCl、及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、5.3molのCl、0.2molのPO 3-、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0115】
実施例28
【0116】
実施例28の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なり、且つ正極電解液に添加剤としてのグリセロールを添加することであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、2.0molのVn+、及び0.02molのグリセロールが含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、3.9molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0117】
実施例29
【0118】
実施例29の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なり、且つ正極電解液及び負極電解液に添加剤としてのコハク酸を添加することであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、5.3molのCl、2.0molのVn+、及び0.2molのコハク酸が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、5.3molのCl、2.0molのVn+、及び0.02molのコハク酸が含まれるように制御する。
【0119】
実施例30
【0120】
実施例30の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に2.0molのSO 2-、4.6molのCl及び2.25molのVn+が含まれ、負極電解液に2.11molのSO 2-、4.33molのCl、及び1.8molのVn+が含まれるように制御する。
【0121】
比較例1
【0122】
比較例1の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、塩素を添加しないことであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0123】
比較例2
【0124】
比較例2の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、2.5molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、2.5molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0125】
比較例3
【0126】
比較例3の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に1.9molのSO 2-、6.5molのCl及び2.0molのVn+が含まれ、負極電解液に1.9molのSO 2-、6.5molのCl、及び2.0molのVn+が含まれるように制御する。
【0127】
比較例4
【0128】
比較例4の具体的な製造方法は実施例1と同じであり、相違点は、所定のオン濃度比が異なることであり、正極電解液に0.488molのSO 2-、6.898molのCl及び2.56molのVn+が含まれ、負極電解液に0.615molのSO 2-、7.655molのCl、及び1.941molのVn+が含まれるように制御する。
【0129】
実施例1~31及び比較例1~4の電解液に対して性能試験を行い、又は、電解液をバナジウムレドックスフロー電池に製造し、その電池の性能を試験し、具体的な試験データを表1~表3に示す。
【0130】
ここで、バナジウムレドックスフロー電池の試験は以下を含む。
【0131】
電池効率試験では、5W単電池を用い、定電流充電+定電圧充電+定電流放電モードを採用し、定電流充電の電流密度は110mA/cmであり、カットオフ電圧は1.6Vであり、次に1.6Vの電圧で電池の開回路電圧が1.54Vまで定電圧充電を行い、最後に110mA/cmの電流でカットオフ電圧1Vまで定電流放電する。
【0132】
EE=放電 Wh/充電 Wh×100%をとし、CE=放電 Ah/充電 Ah×100%をとする。
【0133】
Cl析出速度試験では、異なる活物質の比例関係の単電池に対して、NaOH溶液を用いて正極電解溶液の上層における2つの充放電サイクルを経た後のガスを収集し、その後、イオンクロマトグラフ法を採用してNaOH収集液におけるCl濃度を測定し、ひいては単位時間あたりのCl生成速度を得る。
【0134】
電極腐食加速試験では、5W単電池を用い、定電流充電+定電圧充電+定電流放電モードを採用し、定電流充電の電流密度は110mA/cmであり、カットオフ電圧は1.8Vであり、次に1.8Vの電圧で電池の開回路電圧が1.7Vまで定電圧充電を行い、最後に110mA/cmの電流でカットオフ電圧1Vまで定電流放電する。
【0135】
50サイクルの充放電を循環した後、放電の終わりに、交流インピーダンス計器を用いて電池の抵抗変化を測定し、電池を開けて電極の腐食状況を観察する。
【0136】
【表1-1】
【0137】
【表1-2】
【0138】
【表2-1】
【0139】
【表2-2】
【0140】
【表3】
【0141】
表1及び表2を参照すると、実施例1~8及び比較例1~3により、バナジウムイオン及び硫酸根イオンの濃度を一定にする場合、塩素イオンの濃度が高くなるにつれてCl生成量は漸増し、一方、電極に対して明らかな保護作用をもたらした。図2図3は、それぞれ比較例1及び実施例1の電極腐食状況であり、図2図3に示すように、電解液に塩素イオンを添加しない場合、電極の腐食がひどく、一方、塩素イオン濃度が3.9~5.3molであり、且つ[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)の範囲が2.9~3.6である場合、電極は少量の生成した塩素ガスの作用下で保護されることができる。しかし、電解液における塩素イオン濃度が高すぎて、[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)の範囲が2.9~3.6から外れると、比較例4のように、この時、塩素ガスの生成速度が高くなりすぎ、エアバインディングが発生して、電池系の塩素ガスの制御が困難となり、逆に電池の性能に影響を与える。
【0142】
実施例9~12に対して、バナジウムイオン及び塩素イオンの濃度を一定にする場合、硫酸根イオン濃度が高くなるにつれて電池のエネルギー密度は徐々に高くなり、エネルギー効率が向上する。硫酸根イオン濃度が2.1mol/Lまで高くなると、エネルギー密度はもう著しく上昇せず、エネルギー効率の変化もほぼ横ばいであった。
【0143】
実施例13~17に対して、硫酸根イオン及び塩素イオンの濃度を一定にする場合、バナジウムイオン濃度が高くなるにつれて電池のエネルギー密度は徐々に高くなるが、バナジウムイオン濃度が2.2mol/Lまで高くなると、その上昇傾向が緩やかになる。よって、バナジウムイオン濃度による粘度の上昇が溶液濃度の分極を増加させて、エネルギー密度をさらに向上させることが困難になる。また、エネルギー効率によると、バナジウムイオン濃度が2.1mol/Lに達した後、効率が変曲点を迎え、そして低下し始めた。
【0144】
表3を参照すると、実施例30及び比較例4に対して、混合酸溶液においてVn+濃度が高すぎ、即ち、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)≦3.6の範囲を満たさないと、粘度の上昇による溶液の物質移動抵抗は、溶液のエネルギー密度を上げ続けることができない。また、Clさらに増加すると、Clが大量に析出して、循環ポンプのエアバインディングがひどくなり、安定に動作することが困難になる。
【0145】
以上、本願の実施例が提供する電解液及びバナジウムレドックスフロー電池について詳述し、本願では具体的な例示を応用して本願の原理及び実施形態を説明し、以上の実施例に対する説明は、本願の技術案及びその核心思想の理解を助けるためのものである。当業者であれば、上記の実施例に記載された技術案を変形したり、又はその一部の技術的特徴を等価に置き換えたりすることができ、これらの変形又は置換は、対応する技術案の本質を本願の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではないことを理解されるべきである。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電解液と負極電解液とを含み、前記正極電解液及び前記負極電解液には塩素イオンと、硫酸根イオンと、バナジウムイオンとが含まれ、前記正極電解液及び前記負極電解液は、いずれも2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)]/c(Vn+)≦3.6を満たし、
ここで、c(Cl)は前記塩素イオンの濃度を表し、c(SO 2-)は前記硫酸根イオンの濃度を表し、c(Vn+)は前記バナジウムイオンの濃度を表す、
電解液。
【請求項2】
前記c(Cl)は、1.5mol/L≦c(Cl)≦6.5mol/Lを満たす、
請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記c(Cl)は、2.5mol/L≦c(Cl)≦5.5mol/Lを満たす、
請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
前記c(Cl)は、3.0mol/L≦c(Cl)≦5.0mol/Lを満たす、
請求項1に記載の電解液。
【請求項5】
前記c(Cl)は、3.5mol/L≦c(Cl)≦4.5mol/Lを満たす、
請求項1に記載の電解液。
【請求項6】
前記c(Cl)及び前記c(Vn+)は、0.5≦c(Cl)/c(Vn+)≦3.0をさらに満たす、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項7】
前記c(SO 2-)は、0.5mol/L≦c(SO 2-)≦5.5mol/Lを満たす、
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項8】
前記c(Vn+)は、1.6mol/L≦c(Vn+)≦2.65mol/Lを満たす、
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項9】
前記c(Cl)及び前記c(SO 2-)は、0.4≦c(Cl)/c(SO 2-)≦3.1をさらに満たす、
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項10】
前記正極電解液にはリン酸根イオンがさらに含まれ、前記正極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、
ここで、c(PO 3-)はリン酸根イオンの濃度を表す、
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項11】
前記c(PO 3-)は、以下の特徴のうち少なくとも1つをさらに満たし、
a)0.01mol/L≦c(PO 3-)≦0.15mol/L、
b)0.02≦c(PO 3-)/c(Vn+)≦0.06、
c)[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)-0.8×c(Vn+)]≧4.2mol/L、
ここで、0.8×c(Vn+)は、前記正極電解液においてバナジウムイオンに結合された酸根イオンの平均モル濃度を表す、
請求項10に記載の電解液。
【請求項12】
前記負極電解液には亜リン酸根イオンがさらに含まれ、前記負極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、
ここで、c(PO 3-)は、亜リン酸根イオンの濃度を表す、
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項13】
前記c(PO 3-)は、以下の特徴のうち少なくとも1つをさらに満たし、
d)0.01mol/L≦c(PO 3-)≦0.15mol/L、
e)0.03≦c(PO 3-)/c(Vn+)≦0.1、
f)[c(Cl)+c(SO 2-)+c(PO 3-)-1.5×c(Vn+)]≦4.5mol/L、
ここで、1.5×c(Vn+)は、前記負極電解液においてバナジウムイオンに結合された酸根イオンの平均モル濃度を表す、
請求項12に記載の電解液。
【請求項14】
前記正極電解液及び前記負極電解液には添加剤がさらに含まれ、前記正極電解液と前記負極電解液は、2.9≦[c(Cl)+c(SO 2-)+c(A)]/c(Vn+)≦3.7をさらに満たし、ここで、c(A)は前記添加剤の濃度を表す、
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項15】
前記添加剤は、以下の特徴のうち少なくとも1つを満たし、
g)前記添加剤の濃度c(A)は、0.02mol/L≦c(A)≦0.2mol/Lを満たし、
h)前記添加剤は、官能基としての-OH、-COOH又は-NHを含有する添加剤の1種以上である、
請求項14に記載の電解液。
【請求項16】
前記電解質の温度の安定化区間は、-30~60℃である、
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項17】
前記塩素イオンは、塩素イオンを含有する酸又は塩によって提供され、前記硫酸根イオンは、硫酸根イオンを含有する酸又は塩によって提供され、前記バナジウムイオンは、バナジン酸塩によって提供される、
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項18】
請求項1~のいずれか一項に記載の電解液を含む、
バナジウムレドックスフロー電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本願は、2022年11月18日に中国専利局に出願された出願番号202211446542.2、発明の名称が「電解液及びバナジウムレドックスフロー電池」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願のすべての内容は引用により本願に組み込まれる。
【国際調査報告】