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特表2024-544481ギフォード-マクマホンエキスパンダ用のガス付勢シール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ギフォード-マクマホンエキスパンダ用のガス付勢シール
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/14 20060101AFI20241126BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F25B9/14 530Z
F16J15/18 A
F25B9/14 510C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525375
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022046697
(87)【国際公開番号】W WO2023076043
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/271,818
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】501356112
【氏名又は名称】スミトモ (エスエイチアイ) クライオジェニックス オブ アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sumitomo(SHI)Cryogenics of America,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】フィンレイソン,エリック エフ.
(72)【発明者】
【氏名】バオ,キャン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ミンギャオ
(72)【発明者】
【氏名】ロングスワース,ラルフ シー.
【テーマコード(参考)】
3J043
【Fターム(参考)】
3J043AA12
3J043CA05
3J043CA10
3J043CB13
3J043CB14
3J043DA20
(57)【要約】
本発明の目的は、ギフォード-マクマホン(GM)極低温エキスパンダの往復移動するディスプレーサのディスプレーサシール及びステムシールの寿命を増加することである。シールは、比較的長くて細いリングを有し、リングの後ろに作用するシールの両側の圧力差を、リングがシリンダ及びステムの壁に接触する為の主要な力として使用する。シールリングの両側の圧力差により、シールリングが溝の一端に押し込まれ、シールリングが移動している間、摩擦力がシールリングを同じ方向に押し込む。慣習的な裏当O型リングに比べてより大きな領域に亘ってシール力が分布されるので、摩耗率が減少し、シールの寿命が増加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善されたシール特性を有するGM(ギフォード-マクマホン)エキスパンダであって、前記GMエキスパンダは、
外周(Rd)上に溝を有するディスプレーサと、
内面(Rc)を有するシリンダと、
前記溝内に配置されたシールリングと、
前記ディスプレーサの下端のシリンダ内の冷間変位容積と、
前記ディスプレーサの上端のシリンダ内の温間変位容積と、
前記冷間変位容積及び前記温間変位容積の間の再生器と、
を含み、
前記溝は、上面、下面、並びに、前記上面及び前記下面を接続する側面により規定され、前記ディスプレーサは、前記シリンダ内で軸方向に往復移動し、前記シールリングは、前記ディスプレーサの軸方向に沿った軸長を有し、前記シールリングは、前記シリンダに隣接する外面(Rro)及び前記溝の前記側面に隣接する内面(Rri)を有し、そして、第1の径方向間隙(W1)が、前記シールリングの前記内面及び前記溝の前記側面の間に形成され、第2の軸方向間隙(W2)が、前記シールリングの軸長(Lr)及び前記溝の前記上面と前記下面間の距離(Lg)の間の差により形成されることを特徴とするGMエキスパンダ。
【請求項2】
前記第2の軸方向間隙(W2)が前記第1の径方向間隙(W1)よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項3】
前記ディスプレーサ及びステムが移動している間、前記シールリングに亘る圧力低下による力及び前記シリンダ及びステム内を前記シールリングが滑動する摩擦による力が同じ方向に作用するように、前記シールリングが構成されることを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項4】
前記シールリングが上面及び下面の間にカットを有することを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項5】
前記カットが、三日月カット、直線カット、斜線カット、及びステップカットの1つであることを特徴とする請求項4に記載のGMエキスパンダ。
【請求項6】
前記シールリングが、上面及び下面の間にカットを有するテフロン系外側リングと、上面及び下面の間にカットを有するより細い内側リングと、を含み、前記内側リングが前記外側リングよりも柔軟性があることを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項7】
前記シールリングが、前記上面及び前記下面の間にカットを有するテフロン系の2つの外側リングと、前記2つの外側リングを分離するリブ及び前記上面及び前記下面の間に単一のカットを有するより細い内側リングと、を含み、前記内側リングが前記外側リングよりも柔軟性があることを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項8】
第3の径方向間隙(W3)が、取り付け前に、前記シリンダの内面(Rc)及び前記シールリングの外側半径(Rro)の間に形成され、前記第3の径方向間隙(W3)が30μmよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項9】
前記第3の径方向間隙(W3)及び前記シールリングの厚さ(Tr)の積W3*Trは、前記第2の軸方向間隙(W2)及び前記シールリングの長さ(Lr)の積W2*Lrよりも小さいことを特徴とする請求項8に記載のGMエキスパンダ。
【請求項10】
取り付け前の前記シールリングの外側半径(Rro)は、前記シリンダの半径(Rc)よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項11】
間隔をあけて配置されたシールリングを有する2つの溝があることを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項12】
少なくとも1つの溝は前記ディスプレーサの外面上の周囲に彫り込まれていることを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項13】
前記シールリングの弾性は400MPaより小さいことを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項14】
前記溝は前記ディスプレーサの前記上端の近くに配置されることを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項15】
前記シールリングがテフロン系材料により形成されることを特徴とする請求項1に記載のGMエキスパンダ。
【請求項16】
圧縮機から高圧のガスを供給され、圧縮機に低圧のガスを戻す空圧作動GMエキスパンダであって、前記GMエキスパンダは、
ディスプレーサのウォームエンドに駆動ステムを有し、シリンダ内で前記シリンダのウォームエンド及びコールドエンドの間を往復移動して再生器により分離された温間変位容積及び冷間変位容積を形成する前記ディスプレーサと、
前記シリンダのウォームエンド上に延びていて駆動ステム容積を有し、前記駆動ステム容積の壁上に溝を有するハウジングと、
前記溝内に配置されたシールリングと、
を含み、
前記駆動ステムは、前記駆動ステム容積内を往復移動し、そして、前記溝及び前記シールリングは、前記溝の内側半径(Rg’)及び前記シールリングの外側半径(Rro’)の間の径方向間隙(W1’)と、前記溝の軸長及び前記シールリングの軸長の間の差により形成される軸方向間隙(W2’)と、を有するように構成されることを特徴とするGMエキスパンダ。
【請求項17】
前記軸方向間隙(W2’)が前記径方向間隙(W1’)よりも大きいことを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項18】
前記シールリングが上面及び下面の間にカットを有することを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項19】
第3の径方向間隙(W3’)が、取り付け前に、前記駆動ステムの半径(Rs)及び前記シールリングの内側半径(Rri’)の間に形成され、前記第3の径方向間隙(W3’)が30μmよりも小さいことを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項20】
前記第3の径方向間隙(W3’)及び前記シールリングの厚さ(Tr’)の積W3’*Tr’は、前記軸方向間隙(W2’)及び前記シールリングの長さ(Lr’)の積W2’*Lr’よりも小さいことを特徴とする請求項19に記載のGMエキスパンダ。
【請求項21】
取り付け前の前記シールリングの内側半径(Rri’)は、前記駆動ステムの半径(Rs)よりも小さいことを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項22】
間隔をあけて配置されたシールリングを有する2つの溝があることを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項23】
少なくとも1つの溝は前記ハウジングの内面上の周囲に彫り込まれていることを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項24】
前記シールリングの弾性は400MPaより小さいことを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項25】
前記シールリングがテフロン系材料により形成されることを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項26】
前記溝が前記ハウジングの下端の近くに配置されることを特徴とする請求項16に記載のGMエキスパンダ。
【請求項27】
GMエキスパンダのディスプレーサをシールする方法であって、圧縮機から高圧のガスを受け入れて圧縮機に低圧のガスを戻す前記GMエキスパンダは、
外周(Rd)上に溝を有するディスプレーサと、
シリンダ内で前記ディスプレーサが軸方向に往復移動する前記シリンダ(Rc)と、
前記溝内に配置されたシールリングと、
前記ディスプレーサの下端のシリンダ内の冷間変位容積と、
前記ディスプレーサの上端のシリンダ内の温間変位容積と、
前記冷間変位容積及び前記温間変位容積の間の再生器と、
を含み、
前記溝は、上面、下面、並びに、前記上面及び前記下面を接続する側面により規定され、前記シールリングは上面及び下面を有し、ガスが前記再生器を通して前記冷間変位容積及び前記温間変位容積の間を流れ、前記シールリングは、前記シリンダに隣接する外面(Rro)及び前記溝の前記側面に隣接する内面(Rri)を有し、そして、第1の径方向間隙(W1)が、前記シールリングの前記内面及び前記溝の前記側面の間に形成され、第2の軸方向間隙(W2)が、前記シールリングの軸長(Lr)及び前記溝の前記上面と前記下面間の距離(Lg)の間の差により形成され、
前記方法は、
(i)冷間変位容積が最小である時に、高圧のガスを温間変位容積に入れてW2を通してガスが流れてW1内の圧力を高圧に増加することにより、シールリングを溝の下側に変位させること、
(ii)ディスプレーサを移動させて温間変位容積を最小化し、温間変位容積が最小化する前に高圧のガスの流れを停止すること、
(iii)温間変位容積から低圧になるまでガスを放出し、第1の間隙(W1)から第2の間隙(W2)を通してガスが流れて第1の間隙(W1)内の圧力が低圧に減少することにより、シールリングを溝の上側に変位させること、そして、
(iv)ディスプレーサを移動させて冷間変位容積を最小化し、冷間変位容積が最小化する前に低圧のガスの放出を停止すること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
GMエキスパンダの駆動ステムをシールする方法であって、圧縮機から高圧のガスを受け入れて圧縮機に低圧のガスを戻す前記GMエキスパンダは、
ディスプレーサのウォームエンドに駆動ステムを有し、シリンダ内で前記シリンダのウォームエンド及びコールドエンドの間を往復移動して再生器により分離された温間変位容積及び冷間変位容積を形成する前記ディスプレーサと、
前記シリンダのウォームエンド上に延びていて駆動ステム容積を有し、前記駆動ステム容積の壁上に溝を有するハウジングと、
前記溝内に配置されたシールリングと、
を含み、
前記駆動ステムは、前記駆動ステム容積内を往復移動し、そして、前記溝及び前記シールリングは、前記溝の内側半径及び前記シールリングの外側半径の間の径方向間隙(W1’)と、前記溝の軸長及び前記シールリングの軸長の間の差により形成される軸方向間隙(W2’)と、を有するように構成され、
前記方法は、
(i)駆動ステム容積が最大である時に、高圧のガスを温間変位容積に入れて低圧のガスを駆動ステム容積から除去し、軸方向間隙(W2’)を通してガスが流れて径方向間隙(W1’)内の圧力を高圧に増加することにより、シールリングを溝の上側に変位させること、
(ii)駆動ステムを移動させて温間変位容積を最小化し、温間変位容積が最小化する前に高圧のガスの流れを停止すること、
(iii)温間変位容積から低圧になるまでガスを放出して高圧のガスを駆動ステム容積に入れ、径方向間隙(W1’)から軸方向間隙(W2’)を通してガスが流れて径方向間隙(W1’)内の圧力が低圧に減少することにより、シールリングを溝の下側に変位させるステップ、そして、
(iv)駆動ステムを移動させて駆動ステム容積を最大化し、駆動ステム容積が最大化する前に低圧のガスの放出を停止すること、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年10月26日に出願された米国仮特許出願番号63/271,818の優先権を主張し、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon)(GM)極低温エキスパンダの往復移動するディスプレーサ及び駆動ステム用のシールに関する。
【背景技術】
【0003】
W. E. Gifford及びH. O. McMahonによる米国特許第3045436号には、GMサイクルが記載されている。ここに記載のシステムは、GMサイクル上で動作し、一般的に、5~15kWの範囲の入力電力を有するが、より大きい及びより小さいシステムも本発明の範囲内に入ることができる。GMサイクル冷凍機は、往復式極低温エキスパンダにガス(ヘリウム)を供給する空気調節用途に設計された油潤滑圧縮機を使用する。GMエキスパンダは、室温で入口弁及び出口弁を通して低温膨張空間及び再生器にガスを循環する。エキスパンダ内のディスプレーサは、機械的又は空圧式のいずれかで駆動される。
【0004】
Giffordによる米国特許第3205668号には、回転弁により膨張空間の圧力とは非同調的に駆動ステム上部の圧力を循環させることにより、ディスプレーサを上下に駆動するディスプレーサのウォームエンドに取り付けられたステムを有するGMエキスパンダが記載されている。サイクルは、低圧Plでディスプレーサが下がっており(最小冷間変位容積)、ステム上部の圧力が高圧Phである状態で開始される。駆動ステムへの圧力が低圧に切り替えられた少し後に、ディスプレーサへの圧力が高圧に切り替えられる。このことは、ディスプレーサが上昇し、再生器を通して高圧ガスを冷間変位容積内に吸引することを引き起こす。ディスプレーサが上部に到達する前にディスプレーサへの高圧弁は閉じられ、上部に到達する時にガスが部分的に膨張する。その後、ディスプレーサへの低圧弁が開放され、膨張ガスが冷却される。その後、駆動ステム上部の圧力は高圧に切り替えられ、ディスプレーサを下方に押し下げ、低温低圧ガスをコールドエンド熱交換器を通して押し出し、再生器を通して外に排出し、サイクルが完了する。ディスプレーサがストロークの端部で実質的に静止している間、ディスプレーサシールの両側の圧力差は高圧及び低圧間で切り替えられ、その後、ディスプレーサがシリンダのウォームエンド及びコールドエンド間を移動すると、再生器を通した圧力低下によって、より小さい圧力差に低下する。
【0005】
極低温エキスパンダは通常、コールドエンドが下でウォームエンドが約10℃から40℃の室温で動作される。軸方向又は垂直方向において、上及び上部がウォームエンドに向かい、下及び下部がコールドエンドに向かっている。内部及び外部は半径方向又は水平方向である。
【0006】
機械的駆動ディスプレーサの例が、Asamiによる米国特許第5361588号に記載されている。このGMエキスパンダは、スコッチヨーク駆動ディスプレーサ及び回転弁を有する。スコッチヨーク駆動は、圧力に関係なくモータが回転すると、ディスプレーサの位置を固定する。ディスプレーサが往復移動する時にディスプレーサの内部及び外側を流れるガスのタイミングが上記と同じである時、冷凍が最適化される。ハウジング内の圧力は通常低圧であるが、高圧であってもよい。したがって、駆動ステム上のシールの両側の圧力差は、弁を通した圧力低下により一方向において小さく、他方向においては大きい(Ph-Pl)。GMエキスパンダ内のディスプレーサは、ディスプレーサの外側及びシリンダの内側の間の間隙を通ってガスが流れることを防止する手段を有する。このことは通常、ディスプレーサのウォームエンドの溝内のシールの形状をとる。日本国特許第3895552号の図1aには、上溝内のシール5及びその下の溝内の摩耗リング6が図示されている。摩耗リングの内面は、下溝の側面と接触し、摩耗リングとシリンダの間の隙間は小さいので、エキスパンダが横方向に方向付けされてもディスプレーサを中心に維持する。シール5を配置せずに、直径100mmのディスプレーサ及び垂直に切断された1.5mmの間隙を有する摩耗リングにより実験が実施された。80Kに近い冷凍においてカットを通した漏れによる損失は小さいことが分かったが、この摩耗リングはシール5よりも低い摩耗率を有することが認められた。なぜなら、摩耗リングは、シールリング5bの後側に圧力を加える裏当O型リング5aを有していないからである。摩耗リングをシールとして使用することの問題点は、摩耗リングが摩耗するにつれて、摩耗リングの外径(OD)及びシリンダの内径(ID)の間の間隙が増加し、漏れが増加することである。この漏れの増加が少なく維持される場合、メンテナンス間のより長い期間において冷却の損失が少ないという妥協点は価値がある。
【0007】
摩耗リングの後ろにシールを挟んでより高い圧力が閉じ込められている場合、摩耗リングはシリンダの壁に対して押し当てられ、移動することにより、小さなカットを除いて、シールとして作用すると認識される。このことは、摩耗リングの後ろ(摩耗リング及び溝の側部の間)に小さな間隙があり、その間隙内により高圧のガスを流入させる手段があることを必要とする。より高圧のガスは、摩耗リング内のカットを通して、及び/又は、摩耗リングの端部の間隙を通して流入することができる。この間隙は、摩耗リングの長さを溝の軸長よりも短くすることにより形成される。ディスプレーサ内の圧力が高圧及び低圧間で切り替わると、摩耗リングは溝のより低圧の端部へ押され、その後、ディスプレーサが上下動すると、シリンダに沿って滑動するシールの摩擦及び再生器を通した圧力低下により、そこに保持される。シールの両側の圧力差による力は、ディスプレーサが移動している間の滑動摩擦による力と同じ方向に作用する。このことは、ハウジング内に固定されると、空圧作動ディスプレーサの駆動ステム上の同様のシールにおいても事実であり、摩耗リングの内径が駆動ステムの外形に対してシールする。駆動シャフト上に2つのシールを有するが、ディスプレーサ上には1つのシールしかないことに利点がある。
【0008】
ガスを圧縮するピストンにおいては、圧力及び摩擦力が同じ方向に作用しているピストン上にシールを有することが好ましい。
【0009】
異なる用途において異なる問題を解決する異なる設計の多数のシール及び多数の特許が市場に存在する。Jepsenによる米国特許第3373999号は特に、この出願のいくつかの特徴を含んでいる。この特許には、0.1MPa~100MPaの範囲内の極低温用途に使用されるガス、例えば窒素(N)及びヘリウム(He)を圧縮する為に使用される圧縮機の為の、図3に図示されている2つのガス付勢シールが記載されている。この用途においては、ガスは清浄及び乾燥された状態に維持されなければならない。図1及び2には、ピストンがガスを圧縮する際の2つのリング間の正味圧力差及び径方向圧力分布が図示されている。(圧縮室に最も近い)トップリングは、下部リングよりもはるかに少ない差圧を有する。図4に図示されているトップリングは、上から下にリングを通して三日月状のカットを有し、少ない圧力差を有するシールを形成する為に径方向に膨張する。図5に図示されている下部リングは、カットされておらず、より高い圧力差で径方向に膨張する。両方のリングは、両者間に圧力差が無い場合、シリンダの内径よりも小さい外形を有し、そして、シリンダに沿って滑動するリングの摩擦力及び軸方向圧力差が同じ方向に作用する。図3には、リングの後ろの間隙内に高圧ガスが流れることを可能にするリング上の間隙が図示されている。日本国特開平2-236060号の図3には、水平面上約30度の角度にカットされていることを除いて、Jepsenの特許のトップリングと同様の圧縮機ピストンリングが図示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ギフォード-マクマホン(GM)極低温エキスパンダの往復移動するディスプレーサのディスプレーサシール及びステムシールの寿命を増加させることである。シールは、比較的長くて細いリングを有し、リングの後ろに作用するシールの両側の圧力差を、リングがシリンダ及びステムの壁に接触する為の主要な力として使用する。シールリングの両側の圧力差により、シールリングが溝の一端に押し込まれ、シールリングが移動している間、摩擦力がシールリングを同じ方向に押し込む。慣習的な裏当O型リングに比べてより大きな領域に亘ってシール力が分布されるので、摩耗率が減少し、シールの寿命が増加する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの利点及び他の利点は、改善されたシール特性を有するギフォード-マクマホン(GM)エキスパンダにより達成される。GMエキスパンダは、外周(Rd)上に溝を有するディスプレーサと、内面(Rc)を有するシリンダと、前記溝内に配置されたシールリングと、前記ディスプレーサの下端のシリンダ内の冷間変位容積と、前記ディスプレーサの上端のシリンダ内の温間変位容積と、前記冷間変位容積及び前記温間変位容積の間の再生器と、を含む。前記溝は、上面、下面、並びに、前記上面及び前記下面を接続する側面により規定される。前記ディスプレーサは、前記シリンダ内で軸方向に往復移動する。前記シールリングは、前記ディスプレーサの軸方向に沿った軸長を有する。前記シールリングは、前記シリンダに隣接する外面(Rro)及び前記溝の前記側面に隣接する内面(Rri)を有し、そして、第1の径方向間隙(W1)が、前記シールリングの前記内面及び前記溝の前記側面の間に形成され、第2の軸方向間隙(W2)が、前記シールリングの軸長(Lr)及び前記溝の前記上面と前記下面間の距離(Lg)の間の差により形成される。
【0012】
これらの利点及び他の利点は、圧縮機から高圧のガスを供給され、圧縮機に低圧のガスを戻す空圧作動GMエキスパンダにより達成される。GMエキスパンダは、ディスプレーサのウォームエンドに駆動ステムを有し、シリンダ内で前記シリンダのウォームエンド及びコールドエンドの間を往復移動して再生器により分離された温間変位容積及び冷間変位容積を形成する前記ディスプレーサと、シリンダのウォームエンド上に延びていて駆動ステム容積を有するハウジングと、溝内に配置されたシールリングと、を含み、前記溝及び前記シールリングは、前記溝の内側半径(Rg’)及び前記シールリングの外側半径(Rro’)の間の径方向間隙(W1’)と、前記溝の軸長及び前記シールリングの軸長の間の差により形成される軸方向間隙(W2’)と、を有するように構成される。前記駆動ステムは前記駆動ステム容積内を往復移動し、前記ハウジングは前記駆動ステム容積の壁上に溝を有する。
【0013】
図面は、限定の意図はなく、例示のみを目的として、本発明に基づく1つ以上の実施態様を描いている。図において、同様の参照符号は、同一又は類似の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ディスプレーサ及び駆動ステム上のシールを示すGM極低温冷凍機の基本コンポーネントの概略図である。
図2】ディスプレーサのウォームエンドにおける開示の発明のディスプレーサシールの領域の断面図である。
図3】ハウジングのウォームエンドの基部における開示の発明の駆動ステムシールの領域の断面図である。
図4】冷間変位容積の圧力容積(PV)線図である。
図5図4の圧力容積図の転移点の為のディスプレーサ及び回転弁の位置の概略図である。
図6A】ステップカットを示すシールリングの断面図である。
図6B】ステップカットを示すシールリングの断面図である。
図6C】ステップカットを示すシールリングの断面図である。
図7A】外側リングの内側に細いリングを有する複合リングを示す図である。両方のリングは内部にカットを有する。
図7B】外側リングの内側に細いリングを有する複合リングを示す図である。両方のリングは内部にカットを有する。
図7C】外側リングの内側に細いリングを有する複合リングを示す図である。両方のリングは内部にカットを有する。
図8A】外側リングの内側に細いリングを有する複合リングを示す図である。内側リングは外側にリブを有し、リブは2つの外側リングの中央に配置され、2つの外側リングを分離する。全てのリングは内部にカットを有する。
図8B】外側リングの内側に細いリングを有する複合リングを示す図である。内側リングは外側にリブを有し、リブは2つの外側リングの中央に配置され、2つの外側リングを分離する。全てのリングは内部にカットを有する。
図8C】外側リングの内側に細いリングを有する複合リングを示す図である。内側リングは外側にリブを有し、リブは2つの外側リングの中央に配置され、2つの外側リングを分離する。全てのリングは内部にカットを有する。
図9A】駆動ステムの外側をシールするハウジング内の固定溝内にフィットするように設計された複合リングを示す図である。リングシールが内側に配置され、細い裏当リングが外側に配置されていること以外は図8A図8Cに示すリングと同様のリングである。
図9B】駆動ステムの外側をシールするハウジング内の固定溝内にフィットするように設計された複合リングを示す図である。リングシールが内側に配置され、細い裏当リングが外側に配置されていること以外は図8A図8Cに示すリングと同様のリングである。
図9C】駆動ステムの外側をシールするハウジング内の固定溝内にフィットするように設計された複合リングを示す図である。リングシールが内側に配置され、細い裏当リングが外側に配置されていること以外は図8A図8Cに示すリングと同様のリングである。
図10】往復移動するディスプレーサを駆動するスコッチヨーク機構を有するGM極低温冷凍機の基本コンポーネントの概略図である。本発明のガス付勢シールは摩擦力が圧力と反対に作用する時に機能するように設計されることができることを示すために、駆動ステム上のシールは使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本節では、本発明の好ましい実施形態を示す添付図面を参照しながら、本発明の幾つかの実施形態についてより詳細に説明する。但し、本発明は、多くの異なる形態で具現化でき、本明細書に開示する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。すなわち、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全なものとなるように、当業者に本発明の範囲を伝えることを目的として提供する。図面において同一又は類似する部品には、同じ符号を付し、説明は通常繰り返さない。図面において同じ数字は同じコンポーネントに使用され、下付き文字は異なる構成を有する同等の部分を区別する為に使用される。
【0016】
図1には、GM極低温冷凍機100の基本コンポーネントの概略図が示されている。主なコンポーネントは、圧縮機1、ディスプレーサアセンブリ10、及びシリンダアセンブリ20である。ディスプレーサアセンブリ10は、駆動ステム7、溝12内のディスプレーサシール11、ディスプレーサ本体13,再生器14、及び温間変位容積24と冷間変位容積25を再生器14を通して接続するポート15及び16から成る。シリンダアセンブリ20は、ウォームエンド21、シリンダ22、コールドエンド23、及び弁2及び3から成り、ウォームエンド21は溝9内にステムシール8を含むハウジング26の一部であり、弁2及び3は、ライン6を通して温間変位容積24へのガス流を高圧及び低圧間で切り替える。高圧ライン4及び低圧ライン5は、圧縮機1へ及び圧縮機1からガスを運ぶ。ディスプレーサシール11の機能は、シリンダ22及びディスプレーサ本体13間の間隙を通ってガスが流れて再生器14を迂回してしまうことを防止することである。同様に、ステムシール8は、温間変位容積24とステムシール8上の空間からガスが漏れることを防止する。スコッチヨーク駆動を有するエキスパンダにおいて、ステムシールは隙間シールであることが多い。
【0017】
慣習的に、ディスプレーサシール11は、典型的に重複しない三日月カット又はステップカットであるカット11aを有する2つのリングを含むことができる。2つのリングは溝12の上下間に密に嵌合し、リングの後方にガスが漏れることを防止するO型リング11bにより、シリンダに接触するように押圧される。この設計は、比較的に大量の摩耗する材料を有するが、シールが摩耗してO型リングからのシール力が減少し、リングがカットされた間隙が増加し、結果的にシールからの漏れが始まる。ステムシール8は、両側にリップを有する比較的細いシールである市販のキャップシール8a、及び、キャップシール8aの後方に配置されてステム7とキャップシール8aを接触させるO型リング8bとして示されている。これらのシールは通常、低い摩擦係数を有するテフロン系材料から作成される。
【0018】
図2には、ディスプレーサ本体13のウォームエンドにおける開示の発明のディスプレーサシール11’を示す領域101の断面図が示されている。図2に図示されているディスプレーサシール11’は、ディスプレーサ本体13のシール特性を改善する為にGM極低温冷凍機100に使用することができる。シールリング17は、シリンダ22の内壁及び溝12’の側面の間に、溝12’内に形成される。シリンダ22の内壁は半径Rcを有し、溝12’の側面は半径Rg及び上面(上部)と下面(下部)の間の長さLgを有する。シールリング17は、外側半径Rro、内側半径Rri、長さLr、及び厚さTrを有する。溝12’の上下のディスプレーサの部分は、半径Rdを有する。シールリング17の内側と溝12’の側面の間の間隙は、幅W1を有し、間隙W1と呼ばれる。シールリング17の長さLrが溝12’の側面の長さLgよりも短いので、ディスプレーサ本体13の軸方向103においてシールリング17及び溝12’の間に間隙W2が形成される。間隙W2は、間隙W1よりも幅広いので、間隙W1内への流れはそれほど制限されない。間隙W2は、ガス圧が変化してディスプレーサが往復移動するにつれて溝12’の上部又は下部に交互に形成されることができる。間隙W2を通る流量はW2/Trに比例し、間隙W1内外への流量はW1/Lrにほぼ比例する。(W2/Tr)/(W1/Lr)の比は2より大きいことが好ましい。シールリング17の外側とシリンダ22の内側の間の間隙は、幅W3を有し、間隙W3と呼ばれる。間隙W3内外への流量は、W3/Lrにほぼ比例する。(W2/Tr)/(W3/Lr)の比は4より大きいことが好ましい。
【0019】
ディスプレーサシール11’はシールの外側のシールとして示され、ステムシール8’は、シールの内側のシールとして示されている。O型リングにより裏当てされる慣習的なシールは、内側シール又は外側シールのいずれにも利用可能である。しかしながら、開示の発明のガス付勢シールは、シールリングが溝の反対間隙W2側に対して押し付けられることを必要とし、それにより、シールを超えて作用するより高圧のガスがシールの後方に移動し、シールリングが移動している間、シールリング上の摩擦力がシールリングを溝の反対間隙W2側に保持する。ディスプレーサシールがディスプレーサ上に配置されると、ガス圧力及び摩擦力はGMエキスパンダの為に同じ方向に作用する。このことは、シールがハウジング内に配置されると、空圧作動エキスパンダの駆動ステム上のシールにも当てはまる。
【0020】
図3には、ハウジングのウォームエンドの基部における開示の発明の駆動ステムシールの領域102の断面図が示されている。図3に図示されているシール構造8’は、駆動ステム7のシール特性を改善する為にGM極低温冷凍機100に使用することができる。図3に図示されている開示の発明の駆動ステムシール8’は、ディスプレーサシールと同様のシールである。ガスシール圧力は、半径Rro’を有するシールリング18の外側とハウジング26内の半径Rg’を有する溝9’の内側の間の距離W1’に作用し、距離は間隙W1’と呼ばれる。間隙W2’は、シールリング18の長さLr’及び溝9’の上部と下部間の距離Lg’の間の差であり、間隙W2’と呼ばれる。シールリング18の内側及び駆動ステム7の外側の間の間隙は、幅W3’を有し、間隙W3’と呼ばれる。間隙W3’は、シールリングに亘って圧力差が無い場合、ここでいつも参照される。駆動ステム7は半径Rsを有し、ハウジング26内の穴は半径Rhを有する。
【0021】
図4には、冷間変位容積25の容積Vcの圧力容積(PV)線図が示されており、入口弁2及び出口弁3(図1参照)の開閉時の転移点が示されている。最大の冷間変位容積25から始まり、出口弁3が点Aで開き、点Cで閉じ、Plまでガスを放出する。点C及びD間では、両方の弁が閉じられる。点Dにおいて、冷間変位容積25は最小になる。入口弁2が点Dで開き、点Fで閉じ、Phでガスを供給する。点F及びA間では、両方の弁が閉じられる。この弁の連続動作は、図5に概略的に示されており、両方の弁が閉じている期間に、一方の側にPlのガスを有し、他方の側にPhのガスを有する回転ディスク19にライン6及び28が接触する点として弁が示されている。図5における弁転移点A~Fは、図4に図示されている点A~Fを示している。温間変位容積24は、ライン6及び弁2及び3を通して圧縮機1の高圧及び低圧側に接続される。弁2及び3は、ライン6が回転ディスク19に接触する点により示されている。図5は、空圧作動のGMエキスパンダを示している。駆動ステム容積27内の圧力がディスプレーサへの圧力と非同調的に循環すると、ディスプレーサアセンブリ10は往復移動する。駆動ステム変位容積27は、ライン28及び弁2’及び3’を通して圧縮機1の高圧及び低圧側に接続され、ライン28が回転ディスク19に接触する点として概略的に示されている。
【0022】
点A及びBの間の期間に、ディスプレーサアセンブリ10内のガス圧がPlに低下し、再生器を通した圧力低下がディスプレーサシール11’を溝12’の上部まで押し上げる。点BにおいてPhのガスが駆動ステム容積27に入り、ディスプレーサアセンブリ10を押し下げ、そして、ディスプレーサシール11’を溝の上部に留まらせる。点Cにおいて、ガスがライン6を通って流れるのを止めて、駆動ステム7上のPhのガスがディスプレーサアセンブリ10を押し下げるにつれて圧力が増加し、低温ガスが再生器からウォームエンドに移送されるにつれて低温ガスの圧力が増加して温かくなる。点D及びE間に、ディスプレーサアセンブリ10内の圧力がPhまで高まる間、駆動ステム容積27内に囚われているPhのガスがディスプレーサアセンブリ10を下方に保持することを補助する。再生器を通した圧力低下が、ディスプレーサシール11’を溝の下部に押し下げる。点Eにおいて、駆動ステム容積27内の圧力がPlになるまでガスが放出され、ディスプレーサアセンブリ10を引き上げ、そして、ディスプレーサシール11’を溝の下部に留まらせる。点Fにおいて、ライン6を通したガスの放出を止めて、駆動ステム容積27内のガスがPlに留まると圧力が低下し、ガスが再生器を通して温間変位容積24から冷間変位容積25に流れる間、ディスプレーサアセンブリ10を引き上げることを継続する。
【0023】
図5には、単一のディスプレーサシール11’及び2つのステムシール8’が図示されている。ディスプレーサシール11’は、ウォームエンド及びコールドエンド間で移動していない時に、圧力Ph及びPl間で大きな圧力変化を経験するが、ウォームエンド及びコールドエンド間で移動している時には、小さな圧力差しかない。駆動ステム上のシール又は複数のシールは、ほとんどの時間大きな圧力差を経験する。したがって、単一の長いシールよりも2つのシールを有する方が、2つのシール間に囚われる中間圧力Piのガスを含む利点を有する。ディスプレーサアセンブリ10内の圧力が点A及びB、並びにD及びE間で変化するにつれて、2つの駆動ステムシールの1つが、移動すると摩擦力によりシールが保持される側に溝内で変位する。他方のシールは、移動を始めると変位する。これにより、シールを超える漏れをさらに減少する。
【0024】
図6A図6Cには、ステップカットを示すシールリングの断面図が図示されている。図6Aは上から見たシールリングの断面図であり、図6BはM1-M1’に沿った断面図であり、図6CはN1-N1’に沿った断面図である。図7A図7Cには、外側リングの内側に細いリングを有する複合リングが図示されている。両方のリングは内部にカットを有する。図7Aは上から見たシールリングの断面図であり、図7Bは方向V1からの断面図であり、図7CはN2-N2’に沿った断面図である。カットされていないシールリングは、30μmより小さい間隙W3又はW3’を有するように形成されることができ、そして、約400MPaの弾性係数を有する充填剤入りのテフロン等の材料から形成されることができる。50mmの半径Rcを有するシリンダ内のディスプレーサシールの例は、49.99mm(W3=10μm)の外側半径Rro、48mmの内側半径Rri、及び11mmの長さLrを有する。シールが上下に移動している間、シールの両側の圧力差は0.05MPaであり、圧力勾配により平均0.025MPaである。圧力差がリングを膨張させ、シールリングの外側半径Rroが49.96mm(W3=40μm)に摩耗して圧力差が無くなるまで、シールリングはシリンダ壁に接触してシールする。摩擦による抵抗力は、シールリングが摩耗するにつれて低下する。
【0025】
図6A図6Cに図示されているシールリングは、ディスプレーサ用である。ステップカット31は、直線カットに比べてカットを通した漏れを減少する。シールリング30上の1以上の溝32は、シールを超える流動抵抗を増加することができる。シールリングの最初の半径Rroは、シリンダの半径Rcよりも20μm小さい範囲内であり、半径Rroよりも約2%大きい範囲内である。オーバーサイズのシールリングのステップカット31の幅は、ディスプレーサがシリンダ内に配置された時にフィットするように、少なくともπ*2*(Rro-Rc)である必要がある。テフロン系カットリングにおいて、未カットのリングと比較した弾性の有効係数は約10MPaである。50mmの半径Rcを有するシリンダ内の50.08mmの半径Rro、48.1mmの半径Rri、及び11mmの長さLrを有するディスプレーサシールリングにおいて、シールリングをシリンダ内に押し込む為に必要な力は、シールの両側の0.05MPaの圧力差による力に約10%の力を加える。シールリングがシリンダ内に配置される時に、シールリングがシリンダ内にフィットする為に、ステップカット31の幅は、0.5mmよりも大きい必要があり、摩耗により間隙W3が(圧力差無しで)約80μmまで増加することを可能にする為には、1.0mmよりも大きい必要がある。
【0026】
図7A図7Cに図示されているように、細い裏当リング33をシールリング30の後ろに配置することにより、シールリング30内のステップカット31を通した漏れを減少することができる。裏当リング33は、配置された時にステップカット31からずれているカット34を有する。裏当リング33は、金属又はプラスチック等の材料から作成されることができ、所与の圧力差においてシールリング30よりも膨張するのに十分な程の柔軟性を有する。裏当リング33の長さは、シールリングの長さLrよりも短い。この複合リングはディスプレーサリング40として特定されている。
【0027】
図8A図8Cには、外側リングの内側に細いリングを有する複合リング41が図示されている。内側リングは外側にリブを有し、リブは2つの外側リングの中央に配置され、2つの外側リングを分離する。全てのリングは内部にカットを有する。図8Aは上から見たシールリングの断面図であり、図8Bは方向V2からの断面図であり、図8CはN3-N3’に沿った断面図である。複合シールリング41は、リング周りでシールリング30内の水平カットを延長することにより、溝32’を有する2つのリング35が残される。細い裏当リング36は、外側リング35を分離するリブ37を有する。裏当リング36の長さは、シールリングの長さLrよりも短く、リブ37の目的は、複合シールリング41内で裏当リングを中央に配置することであり、それにより、裏当リングは溝12’の上部と下部には接触しない。リング35及び36内のカット31’及び38はそれぞれ、リングがシリンダ内で組み合わされるとずれるように配置される。
【0028】
図9A図9Cには、駆動ステムの外側をシールするハウジング内の固定溝内にフィットするように設計された複合ステムシールリング50が図示されている。シールリングが内側をシールし、細い裏当リングが外側に配置されること以外は、図8A図8Cに図示されているリングと同様である。図9Aは上から見たシールリングの断面図であり、図9BはM2-M2’に沿った断面図であり、図9CはN4-N4’に沿った断面図である。複合ステムシールリング50は、ハウジング内の固定溝内にフィットして駆動ステム7の外側をシールするように設計されている。シールリングが内側をシールし、細い裏当リングが外側に配置されること以外は、図8A図8Cに図示されている複合シールリング41と同様である。複合ステムシールリング50は、溝42及びカット44を有する2つのシールリング45と、リブ47及びカット49を有する裏当リング48と、を含む。2つの複合ステムシールリング50は、図5に図示されている空圧作動ディスプレーサの駆動ステム7の為のガス付勢シール8’として使用することができる。2つの複合ステムシールリング50は、ハウジング内に取り付けられ、シールに亘る圧力はディスプレーサが上下に駆動される時の圧力と同じ方向に作用する。
【0029】
図10には、スコッチヨーク機構60により駆動されるステム7’を有するディスプレーサアセンブリ10’が図示されている。スコッチヨーク機構60と弁2及び3の詳細は米国特許第5361588号に記載されている。ハウジング26’内の駆動機構及びステムの周りの空間61は通常、図示されているように、低圧であるが、高圧であってもよい。ステムシール上の圧力が一定であり、シールの下の圧力がPh及びPlの間で循環する事実は、一方向に移動するディスプレーサにおいてシールに亘る圧力及び摩擦力が同じ方向であるが、他方向においては同じ方向ではないことを意味する。このことは、ハウジング内又はステム上のシールに当てはまる。1つの解決策は、2つのシールの1つをハウジング内に配置し、他の1つをステム上に配置することである(不図示)。他の解決策は、図10に図示されているように、1つのシールをステム上に配置することであるが、このことは、図6、7、及び8に図示されているディスプレーサにおいて記載されているシールよりも多くの制限を設計が満たした場合にのみ作用する。シールリング17’及び溝12’は、図2に図示されているディスプレーサ上のシールにおける構造と同じ構造を有する。制限は、シールの両側の軸方向圧力差(dPa)*シールの断面領域(Ac)が、壁に対するシールの平均径方向圧力*壁に接触しているシールの領域(Ar)*摩擦係数よりも大きいことである。このことは、摩擦による力がシールを外そうとしている間、圧力差dPaが低圧でもシールと溝の端部の接触を維持するのに十分な程、図2のシールの厚さ(Tr)が大きい必要があることを意味する。
【0030】
開示の発明はさらに、GMエキスパンダ内のディスプレーサをシールする方法を提供する。方法は、(i)冷間変位容積が最小である時に、高圧のガスを温間変位容積に入れてW2を通してガスが流れてW1内の圧力を高圧に増加することにより、シールリングを溝の下側に変位させるステップ、(ii)ディスプレーサを移動させて温間変位容積を最小化し、温間変位容積が最小化する前に高圧のガスの流れを停止するステップ、(iii)温間変位容積から低圧になるまでガスを放出し、第1の間隙(W1)から第2の間隙(W2)を通してガスが流れて第1の間隙(W1)内の圧力が低圧に減少することにより、シールリングを溝の上側に変位させるステップ、そして、(iv)ディスプレーサを移動させて冷間変位容積を最小化し、冷間変位容積が最小化する前に低圧のガスの放出を停止するステップ、を含む。
【0031】
開示の発明はさらに、GMエキスパンダの駆動ステムをシールする方法を提供する。方法は、(i)駆動ステム容積が最大である時に、高圧のガスを温間変位容積に入れて低圧のガスを駆動ステム容積から除去し、軸方向間隙(W2’)を通してガスが流れて径方向間隙(W1’)内の圧力を高圧に増加することにより、シールリングを溝の上側に変位させるステップ、(ii)駆動ステムを移動させて温間変位容積を最小化し、温間変位容積が最小化する前に高圧のガスの流れを停止するステップ、(iii)温間変位容積から低圧になるまでガスを放出して高圧のガスを駆動ステム容積に入れ、径方向間隙(W1’)から軸方向間隙(W2’)を通してガスが流れて径方向間隙(W1’)内の圧力が低圧に減少することにより、シールリングを溝の下側に変位させるステップ、そして、(iv)駆動ステムを移動させて駆動ステム容積を最大化し、駆動ステム容積が最大化する前に低圧のガスの放出を停止するステップ、を含む。
【0032】
本明細書で使用する用語及び説明は、例示のみを目的とし、発明を限定する意図はない。本発明及び本明細書に記載された実施形態の思想及び範囲内で、多くの変形が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1 圧縮機
2 弁
3 弁
4 高圧ライン
5 低圧ライン
6 ライン
7 駆動ステム
8、8’ ステムシール
8a キャップシール
8b O型リング
9、9’ 溝
10 ディスプレーサアセンブリ
11、11’ ディスプレーサシール
11a カット
11b O型リング
12、12’ 溝
13 ディスプレーサ本体
14 再生器
15 ポート
16 ポート
17 シールリング
18 シールリング
19 回転ディスク
20 シリンダアセンブリ
21 ウォームエンド
22 シリンダ
23 コールドエンド
24 温間変位容積
25 冷間変位容積
26 ハウジング
27 駆動ステム容積
28 ライン
30 シールリング
31、31’ ステップカット
32、32’ 溝
33 裏当リング
34 カット
35 外側リング
36 裏当リング
37 リブ
38 カット
40 ディスプレーサリング
41 複合シールリング
42 溝
44 カット
45 シールリング
47 リブ
48 裏当リング
49 カット
50 複合ステムシールリング
60 スコッチヨーク機構
61 空間
103 軸方向
Lr 17の長さ
Lr’ 18の長さ
Lg 12’の側面の長さ
Lg 9’の上部と下部間の距離
Pl 低圧
Ph 高圧
Rc 22の半径
Rd 13の半径
Rh 26の穴の半径
Rg 13の12’の半径
Rg’ 9’の半径
Rri 17の内側半径
Rri’ 18の内側半径
Rro 17の外側半径
Rro’ 18の外側半径
Rs 7の半径
Tr 17の厚さ
Tr’ 18の厚さ
W1 第1の径方向間隙
W1’径方向間隙
W2 第2の軸方向間隙
W2’ 軸方向間隙
W3 第3の径方向間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6(A)】
図6(B)】
図6(C)】
図7(A)】
図7(B)】
図7(C)】
図8(A)】
図8(B)】
図8(C)】
図9(A)】
図9(B)】
図9(C)】
図10
【国際調査報告】