(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ジシクロペンタジエンから誘導した共重合体
(51)【国際特許分類】
C08G 65/38 20060101AFI20241126BHJP
C08G 61/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C08G65/38
C08G61/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525537
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2022060350
(87)【国際公開番号】W WO2023073614
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シスタ プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ターキン-タス アイレム
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル ムケシュ
(72)【発明者】
【氏名】チョウドリー ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ケンチャイア ローヒス
(72)【発明者】
【氏名】レイノフ ワイアット
(72)【発明者】
【氏名】ダヒル ヤセル
【テーマコード(参考)】
4J005
4J032
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB02
4J032CA04
4J032CA38
4J032CB04
4J032CB12
4J032CC03
4J032CD01
4J032CE03
4J032CE22
4J032CG07
(57)【要約】
ポリフェニレンエーテル成分と、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3:構造式D1、構造式D2、構造式D3-1、構造式D3-2、構造式D3-3で示される構造のものを含むジシクロペンタジエン共重合体成分とを含む共重合体である。
【化1】
構造式D1、
【化2】
構造式D2、
【化3】
構造式D3-1、
【化4】
構造式D3-2、
【化5】
構造式D3-3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体であって、前記共重合体が、ポリフェニレンエーテル成分と、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示される構造のものを含むジシクロペンタジエン共重合体成分とを含み、
【化1】
構造式D1、
【化2】
構造式D2、
【化3】
構造式D3-1、
【化4】
構造式D3-2、
【化5】
構造式D3-3、
式中、
出現毎のZ
1およびZ
3は独立して、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、
出現毎のZ
2およびZ
4は独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、
出現毎のR
1からR
4は独立して、水素、C
1~C
12ヒドロカルビル、またはC
1~C
12ヒドロカルビルオキシを含み、
xは少なくとも1(at least one 1)から50であり、
yは少なくとも1(at least one 1)から50であり、
nは少なくとも1(at least one 1)から100であり、
Q
1は、単結合、水素、または末端官能基を含む
ことを特徴とする共重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の共重合体組成物であって、構造式D1で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分が、構造式P1で示されるものから誘導され、構造式D2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分が、構造式P2で示されるものから誘導され、構造式D3-1で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分が、構造式P3-1で示されるものから誘導され、構造式D3-2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分が、構造式P3-2で示されるものから誘導され、構造式D3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分が、構造式P3-3で示されるものから誘導され、
【化6】
構造式P1、
【化7】
構造式P2、
【化8】
構造式P3-1、
【化9】
構造式P3-2、
【化10】
構造式P3-3
式中、nは1から100であることを特徴とする共重合体組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の共重合体組成物であって、前記ポリフェニレンエーテル成分が次の構造を持ち、
【化11】
式中、
Z
1およびZ
3はそれぞれ独立して、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、
Z
2およびZ
4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含む
ことを特徴とする共重合体組成物。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載の共重合体組成物であって、前記共重合体が、構造式D1またはD2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分から誘導されたブロック共重合体であることを特徴とする共重合体組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の共重合体組成物であって、前記共重合体組成物が、ジシクロペンタジエン共重合体成分を含む、少なくとも2つのAブロックを含み、望ましくは、前記共重合体が、A-B-Aトリブロック共重合体であることを特徴とする共重合体組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の共重合体組成物であって、前記共重合体組成物が、ポリフェニレンエーテル成分を含む、少なくとも2つのBブロックを含み、望ましくは、前記共重合体が、B-A-Bトリブロック共重合体であることを特徴とする共重合体組成物。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の共重合体であって、前記共重合体が、構造式D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン成分から誘導されたグラフト共重合体を含むことを特徴とする共重合体。
【請求項8】
前記請求項のいずれかに記載の共重合体組成物であって、前記ジシクロペンタジエン共重合体成分が、ビニルベンゼンエーテル末端官能基、メタクリラート末端官能基、アクリラート末端官能基、エポキシ末端官能基、ヒドロキシル末端官能基、シアナートエステル末端官能基、アミン末端官能基、マレイミド末端官能基、アリル末端官能基、スチレン(styrenic)末端官能基、活性化エステル末端官能基、または無水物末端官能基を含む、少なくとも1つの末端官能基を含むことを特徴とする共重合体組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のジシクロペンタジエン共重合体を製造する方法であって、前記製造法が、構造式P1、P2、P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質を、置換または非置換一価フェノールと共有結合させる工程を含み、前記ジシクロペンタジエン前駆物質および前記一価フェノールが相補的反応基を含むことを特徴とする製造法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の共重合体を製造する方法であって、
前記製造法が、
置換または非置換一価フェノールを酸化重合させて、ジシクロペンタジエン共重合体成分から前記共重合体を生成する工程、または
構造式P1、P2、P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質とポリフェニレンエーテルオリゴマとを共有結合させる工程
を含み、
前記ジシクロペンタジエン前駆物質および前記ポリフェニレンエーテルオリゴマが相補的反応基を含むことを特徴とする製造法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれかに記載の共重合体を含む、硬化可能な熱硬化性組成物(curable thermosetting composition)であって、前記熱硬化性組成物が、必要に応じて更に、
橋かけ剤、硬化剤、硬化触媒、硬化開始剤、またはこれらの組み合わせの1つ以上、
難燃剤、充填剤、カップリング剤、またはこれらの組み合わせの1つ以上、
あるいはこれらの組み合わせ
を含むことを特徴とする硬化可能な熱硬化性組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化可能な熱硬化性組成物の硬化生成物を含むことを特徴とする、硬化した熱硬化組成物(cured thermoset composition)。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化した熱硬化組成物を含む物品であって、
前記物品が、複合材料、発泡体、繊維、層、コーティング、封止材(encapsulant)、接着剤、シーラント、鋳造構成部品、プリプレグ、ケーシング、注型品(cast article)、積層品、またはこれらの組み合わせであり、あるいは、
前記物品が、メタルクラッド積層板、電子部品用複合材料、構造用複合材料、またはこれらの組み合わせである
ことを特徴とする物品。
【請求項14】
請求項11に記載の硬化可能な熱硬化性組成物と溶媒とを含むことを特徴とするワニス組成物。
【請求項15】
請求項14に記載のワニス組成物から製造した物品であって、望ましくは、前記物品が、繊維、層、コーティング、注型品、プリプレグ、複合材料、または積層品であり、あるいは、前記物品がメタルクラッド積層板であることを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、ジシクロペンタジエンから誘導した共重合体、その製造法、それを含む硬化可能な熱硬化性組成物、およびそれから誘導した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂は、硬化すると極めて硬いプラスチックとなる材料である。このような材料は、広く様々な消費財や工業製品に使用することができる。例えば、熱硬化性樹脂は、保護被膜、接着剤、電子積層品(コンピュータ回路板の製造に使われるものなど)、床張りおよび舗装材、ガラス繊維強化管、自動車部品(板バネ、ポンプ、電装品など)に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリ(フェニレンエーテル)オリゴマは、熱硬化した材料の誘電性能、耐熱性、耐燃性、および吸湿性を改善できるため、このような材料は様々な用途、特に電子的用途に、特に良く適したものとなる。ジシクロペンタジエンは、熱的性能に悪影響を及ぼすことなく、優れた耐湿性を与え、誘電率を劇的に低下させることが知られている。従って、硬化可能な熱硬化性組成物で使用するための、ポリ(フェニレンエーテル)オリゴマと誘電性能の低いジシクロペンタジエンとの組み合わせを含む組成物の提示は有益と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポリフェニレンエーテル成分と、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示される構造のものを含むジシクロペンタジエン共重合体成分とを含む共重合体であって、
【化1】
構造式D1、
【化2】
構造式D2、
【化3】
構造式D3-1、
【化4】
構造式D3-2、
【化5】
構造式D3-3、
式中、Z
1およびZ
3はそれぞれ独立して、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、このヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、Z
2およびZ
4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、このヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、R
1からR
4はそれぞれ独立して、水素、C
1~C
12ヒドロカルビル、またはC
1~C
12ヒドロカルビルオキシを含み、xは1から50であり、yは1から50であり、nは1から100であり、Q
1は、単結合、水素、または末端官能基を含む。
【0006】
前記共重合体を含む硬化可能な組成物(curable composition)である。
【0007】
前記の硬化可能な熱硬化性組成物(curable thermosetting composition)の硬化生成物を含む、硬化した熱硬化組成物(cured thermoset composition)である。
【0008】
前記の硬化した熱硬化組成物を含む物品である。
【0009】
前記の硬化可能な熱硬化性組成物と溶媒とを含むワニス組成物から製造した物品である。
【0010】
上記およびその他の特徴について、以下の図および詳細な記述で例を挙げて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の図は例示的な実施形態であり、同様の要素は類似した番号で示されている。
【0012】
【
図1】実施例1に従って調製した共重合体、ジシクロペンタジエン、および1,4-ジメトキシベンゼンのプロトンNMRスペクトルを並べて表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願の発明者は、フェニレンエーテルオリゴマとジシクロペンタジエン共重合体とから本共重合体を調製できることを発見した。本共重合体は、フェニレンエーテル成分と、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分との相溶性を保ちながら、誘電特性、耐燃性、および熱的性能の好ましい組み合わせを有利に生じさせることができる。
【0014】
本共重合体は、硬化可能な熱硬化性組成物において特に有用と考えられる。
【0015】
本共重合体は、ポリフェニレンエーテルブロックと、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示される構造のものを含むジシクロペンタジエン共重合体成分とを含み、
【化6】
構造式D1、
【化7】
構造式D2、
【化8】
構造式D3-1、
【化9】
構造式D3-2、
【化10】
構造式D3-3、
式中、Z
1およびZ
3は独立して、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、このヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、Z
2およびZ
4は独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、このヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、R
1からR
4は独立して、水素、C
1~C
12ヒドロカルビル、またはC
1~C
12ヒドロカルビルオキシを含み、xは1から50であり、yは1から50であり、nは1から100であり、Q
1は、単結合、水素、または末端官能基を含む。
【0016】
一部の態様において、Z1およびZ3は独立して、ハロゲン、非置換または置換アルキル、フェニル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、またはアルコキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、Z2およびZ4は独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換アルキル、フェニル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、またはアルコキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、R1からR4は独立して、水素、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを含み、xは1から50であり、yは1から50であり、nは1から100であり、Q1は、単結合、水素、または末端官能基を含む。
【0017】
一部の態様において、Z1およびZ3それぞれ独立して、ハロゲン、非置換または置換アルキル、フェニル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、またはアルコキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、Z2およびZ4はそれぞれ独立して水素を含み、R1からR4はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを含み、xは1から50であり、yは1から50であり、nは1から100であり、Q1は、単結合、水素、または末端官能基を含む。
【0018】
前述の態様のいずれにおいても、R2およびR3はそれぞれ水素である。一部の態様において、R1およびR4はそれぞれ独立して、メトキシ、イソプロピル、t-ブチル、ビニル、またはアリルであり、R2およびR3はそれぞれ水素である。
【0019】
一部の態様において、Z1およびZ3は独立してメチルを含み、Z2およびZ4は独立して水素を含み、R1からR4は独立して、水素、メチル、イソプロピル、ビニル、アリル、またはメトキシを含み、xは1から50であり、yは1から50であり、nは1から100であり、Q1は、単結合、水素、または末端官能基を含む。一部の態様において、Z1およびZ3は独立してメチルを含み、Z2およびZ4は独立して水素を含み、R1およびR4はそれぞれメトキシであり、R2およびR3はそれぞれ水素である。一部の態様において、Z1およびZ3は独立してメチルを含み、Z2およびZ4は独立して水素を含み、R1はメチルであり、R4はイソプロピルであり、R2およびR3はそれぞれ水素である。一部の態様において、Z1およびZ3は独立してメチルを含み、Z2およびZ4は独立して水素を含み、R1からR4はメチルである。
【0020】
構造式D1、D2、D3-1、D3-2、およびD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体はそれぞれ、構造式P1、P2、P3-1、P3-2、およびP3-3で示されるものから誘導することができ、式中、nは1から100である。
【化11】
構造式P1、
【化12】
構造式P2、
【化13】
構造式P3-1、
【化14】
構造式P3-2、
【化15】
構造式P3-3、
【0021】
末端ジシクロペンタジエン基の炭素-炭素結合は、後に示すように、酸触媒(例えば、ルイス酸触媒)の存在下、一価フェノールでアルキル化(例えば、フリーデル-クラフツアルキル化)することができる。
【0022】
ジシクロペンタジエン共重合体成分に加えて、本共重合体はポリフェニレンエーテル成分を含む。ポリフェニレンエーテルは、置換または非置換一価フェノールから誘導した繰り返し単位を含む。置換または非置換一価フェノールは、次のような構造を持つことができ、
【化16】
式中、Z
1およびZ
2はそれぞれ独立して、ハロゲン、非置換または置換C
1~12第一級または第二級ヒドロカルビル、C
1~12ヒドロカルビルチオ、C
1~12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、出現毎のZ
3およびZ
4は独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~12第一級または第二級ヒドロカルビル、C
1~12ヒドロカルビルチオ、C
1~12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)である。ある態様において、置換または非置換一価フェノールは、2,6-(ジ-C
1~6アルキル)フェノールを含む。ある態様において、Z
1およびZ
2はそれぞれメチルであり、Z
3およびZ
4はそれぞれ水素であって、この一価フェノールは2,6-キシレノール(2,6-ジメチルフェノールまたは“DMP”とも呼ばれる)である。
【0023】
従って、ポリフェニレンエーテルブロックは、次の構造式で示される繰り返し単位を含み、
【化17】
式中、Z
1からZ
4は先に述べたとおりである。ある態様において、ポリフェニレンエーテル成分は、2,6-ジメチルフェノールから誘導した繰り返し単位を含む。
【0024】
ポリフェニレンエーテル成分に相当するフェニレンエーテルオリゴマは、5,000g/モル未満、望ましくは600から4,500g/モルの数平均分子量を持つことができる。分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレン標準と比較して求めることができる。当業者には、ポリフェニレンエーテルの酸化重合を含む方法で、ジシクロペンタジエン共重合体成分から共重合体を調製する場合、GPCを用いたフェニレンエーテルオリゴマの分子量解析は不可能と考えられることが知られている。このような場合、核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて求めた重合度から数平均分子量を計算することができる。
【0025】
ポリフェニレンエーテル成分に相当するフェニレンエーテルブロックオリゴマは、0.15デシリットル/g以下、望ましくは0.02から0.15デシリットル/g、より望ましくは0.12から0.13デシリットル/gの固有粘度を持つことができる。固有粘度は、ウベローデ型粘度計により、クロロホルム中25℃で測定することができる。固有粘度は、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体とカップリングする前のフェニレンエーテルオリゴマの固有粘度を指している。分子量測定と同様に、当業者には、ポリフェニレンエーテルの酸化重合を含む方法で、ジシクロペンタジエン共重合体成分から共重合体を調製する場合、ポリフェニレンエーテルオリゴマの固有粘度解析が不可能な場合があることが知られている。
【0026】
ある態様において、本共重合体は、2,6-ジメチルフェノールから誘導した繰り返し単位を含むポリフェニレンエーテル成分を含む、少なくとも1つのブロックAと、構造式D1またはD2で示されるジシクロペンタジエン共重合体を含む、少なくとも1つのブロックBとを含むブロック共重合体である。ある態様において、本共重合体は、構造式D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分を含むグラフト共重合体である。一部の態様において、本共重合体はグラフト共重合体であって、ポリフェニレンエーテル成分は2,6-ジメチルフェノールから誘導した繰り返し単位を含む。
【0027】
ある態様において、本共重合体は、ポリフェニレンエーテル成分を含む、少なくとも2つのブロックAと、構造式D1またはD2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分を含む、1つのブロックBとを含む。ある態様において、本共重合体は、構造式D1、D2、またはこれらの組み合わせで示されるジシクロペンタジエン共重合体成分を含む、少なくとも2つのブロックBと、ポリフェニレンエーテル成分を含む、1つのブロックBとを含む。一部の態様において、本共重合体はA-B-Aトリブロック共重合体である。一部の態様において、本共重合体はB-A-Bトリブロック共重合体である。
【0028】
本共重合体は、少なくとも1つの末端官能基を含むことができる。共重合体の少なくとも1つの末端官能基として、ビニルベンゼンエーテル末端官能基、メタクリラート末端官能基、アクリラート末端官能基、エポキシ末端官能基、シアナートエステル末端官能基、アミン末端官能基、マレイミド末端官能基、アリル末端官能基、スチレン(styrenic)末端官能基、活性化エステル末端官能基、または無水物末端官能基を挙げることができる。
【0029】
ポリフェニレンエーテル成分が末端位置にある場合、少なくとも1つの末端官能基は、ポリフェニレンエーテル成分に共有結合することができる。構造式D1またはD2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分が末端位置にある場合、少なくとも1つの末端官能基は、構造式D1またはD2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分に共有結合することができる。構造式D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分を含むグラフト共重合体は末端官能基を含むことができる。ある態様において、本共重合体の少なくとも1つの末端官能基はメタクリラート基を含むことができる。
【0030】
ある態様において、本共重合体は、置換または非置換一価フェノールを酸化重合させる工程を含む方法で、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分から製造することができる。
【0031】
酸化重合は、有機溶媒の存在下で行うことができる。適当な有機溶媒として、酸化反応を妨害または介入しないものであれば、アルコール、ケトン、脂肪族および芳香族炭化水素、クロロ炭化水素、ニトロ炭化水素、エーテル、エステル、アミド、エーテル-エステル混合物、スルホキシドなどを挙げることができる。高分子量ポリ(フェニレンエーテル)は反応混合物の粘度を非常に高めることがある。このため、これらを沈殿させておく一方で、分子量の低いポリマが分子量の高いポリマとなるまで、低分子量ポリマを溶液中に残存させるような溶媒系の使用が望ましいことがある。有機溶媒は、例えば、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、またはこれらの組み合わせを含むことができる。好ましい溶媒として芳香族炭化水素が挙げられる。ある態様において、有機溶媒は、トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロホルム、クロロベンゼン、またはこれらの組み合わせ、望ましくはトルエンを含む。
【0032】
酸化重合反応混合物中の一価フェノールの存在量は、一価フェノール、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体、および溶媒の総質量に対して、5から90質量パーセント(質量%)、10から85質量%、または40から60質量%とすることができる。酸化重合反応混合物中の、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体の存在量は、一価フェノール、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体、および溶媒の総質量に対して、15から90質量%とすることができる。一価フェノールと、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体とのモル比は、フェニレンエーテルオリゴマに求められる分子量に応じて決めることができる。例えば、一価フェノールと、構造式D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体とのモル比は、1:1から50:1とすることができる。
【0033】
酸化重合は更に、銅-アミン触媒の存在下で行われる。銅-アミン触媒の銅源は、銅(II)または銅(I)イオンの塩(ハロゲン化物、酸化物、炭酸塩など)を含むことができる。あるいは、銅を、予めアルキレンジアミン配位子の塩としておいた形で加えても良い。好ましい銅塩として、ハロゲン化銅(I)、ハロゲン化銅(II)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。特に好ましいものは、臭化銅(I)、臭化銅(II)、およびこれらの組み合わせである。
【0034】
好ましい銅-アミン触媒は、第二級アルキレンジアミン配位子を含む。適した第二級アルキレンジアミン配位子は、Hayによる、米国特許第4,028,341号に記載されており、次の構造式で示されるものである。
【化18】
式中、R
aは、置換または非置換の二価残基であって、2または3個の脂肪族炭素原子が2つのジアミン窒素原子の間で、最も近い結合を形成しており、R
bおよびR
cはそれぞれ独立して、イソプロピルまたは置換または非置換C
4~8第三級アルキル基である。R
aの例として、エチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、1,2-ブチレン、1,3-ブチレン、2,3-ブチレン、様々なペンチレン異性体(2から3個の炭素原子を含み、残りの炭素原子が2つの部分となっている(having from two to three carbon atoms separating the two free valances)、フェニルエチレン、トリルエチレン、2-フェニル-1,2-プロピレン、シクロヘキシルエチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,2-シクロプロピレン、1,2-シクロブチレン、1,2-シクロペンチレンなどが挙げられる。望ましくは、R
aはエチレンである。R
bおよびR
cの例として、イソプロピル、t-ブチル、2-メチルブタン-2-イル、2-メチルペンタン-2-イル、3-メチルペンタン-3-イル、2,3-ジメチルブタン-2-イル、2,3-ジメチルペンタン-2-イル、2,4-ジメチルペンタン-2-イル、1-メチルシクロペンチル、1-メチルシクロヘキシルなどを挙げることができる。特に好ましいR
bおよびR
cの例はt-ブチルである。第二級アルキレンジアミン配位子の例は、N,N′-ジ-t-ブチルエチレンジアミン(DBEDA)である。銅と第二級アルキレンジアミンとの適切なモル比は、1:1から1:5、望ましくは1:1から1:3、より望ましくは1:1.5から1:2である。
【0035】
第二級アルキレンジアミン配位子を含む、好ましい銅-アミン触媒は、第二級モノアミンを更に含むことができる。適した第二級モノアミン配位子は、同一出願人による、Bennettほかによる米国特許第4,092,294号に記載されており、次の構造式で示される。
【化19】
式中、R
dおよびR
eはそれぞれ独立して、置換または非置換C
1~12アルキル基、望ましくは置換または非置換C
3~6アルキル基である。第二級モノアミンの例として、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、N-イソプロピル-t-ブチルアミン、N-sec-ブチル-t-ブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ビス(1,1-ジメチルプロピル)アミンなどが挙げられる。特に好ましい第二級モノアミンはジ-n-ブチルアミン(DBA)である。銅と第二級モノアミンとの適切なモル比は、1:1から1:10、望ましくは1:3から1:8、より望ましくは1:4から1:7である。
【0036】
第二級アルキレンジアミン配位子を含む、好ましい銅-アミン触媒は、第三級モノアミンを更に含むことができる。適した第三級モノアミン配位子は、前述の、Hayによる米国特許第4,028,341号およびBennettによる米国特許第4,092,294号に記載されているもので、複素環アミン、および、断面積の小さい少なくとも2つの基に結合したアミン窒素を持つことを特徴とする、ある種のトリアルキルアミンが挙げられる。トリアルキルアミンの場合、アルキル基の少なくとも2つがメチルで、3つめが第一級C1~8アルキル基または第二級C3~8アルキル基であるものが好ましい。3番目の置換基が4個以下の炭素原子を持つものが特に好ましい。非常に好ましい第三級アミンはジメチルブチルアミン(DMBA)である。銅と第三級アミンとの適切なモル比は、1:20未満、望ましくは1:15未満、望ましくは1:1から1:15未満、より望ましくは1:1から1:12である。
【0037】
銅-アミン触媒(金属のモル数で測定)とポリ(フェニレンエーテル)オリゴマ開始材料との適切なモル比は、1:50から1:400、望ましくは1:100から1:200、より望ましくは1:100から1:180である。
【0038】
銅-アミン触媒の存在下で行う反応は、必要に応じて、臭化物イオンの存在下で行うことができる。臭化物イオンを臭化銅(I)または臭化銅(II)塩として供給できることは既に述べた。臭化物イオンは、4-ブロモフェノール(2,6-ジメチル-4-ブロモフェノールなど)の添加によって供給することもできる。追加の臭化物イオンは、臭化水素酸、アルカリ金属臭化物、またはアルカリ土類金属臭化物の形で供給することができる。臭化ナトリウムおよび臭化水素酸は非常に好ましい臭化物源である。臭化物イオンと銅イオンとの適切な比は、2から20、望ましくは3から20、より望ましくは4から7である。
【0039】
ある態様において、銅-アミン触媒の上記の成分のそれぞれは、同時に酸化重合反応に加えられる。
【0040】
酸化重合は、必要に応じて更に、一つ以上の追加の成分(低級アルカノールまたはグリコール、少量の水、または相間移動試剤など)の存在下で行うことができる。通常、反応の際に、反応副生物である水を除く必要はない。
【0041】
ある態様では、相間移動試剤が存在する。適切な相間移動試剤として、例えば、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物、第三級スルホニウム化合物、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。望ましくは、相間移動試剤は、構造式 (R3)4Q+X (式中、それぞれのR3は同じまたは異なるもので、C1~10アルキルであり、Qは窒素またはリン原子であり、Xは、ハロゲン原子、C1~8アルコキシ、またはC6~18アリールオキシ)で示されるものとすることができる。相間移動触媒の例として、(CH3(CH2)3)4NX、(CH3(CH2)3)4PX、(CH3(CH2)5)4NX、(CH3(CH2)6)4NX、(CH3(CH2)4)4NX、CH3(CH3(CH2)3)3NX、およびCH3(CH3(CH2)2)3NX (式中、Xは、Cl-、Br-、C1~8アルコキシ、またはC6~18アリールオキシ)が挙げられる。相間移動試剤の効果的な量は、反応混合物の質量に対して、0.1から10質量%または0.5から2質量%とすることができる。ある態様において、相間移動試剤が存在し、N,N,N′,N′-ジデシルジメチルアンモニウム=クロリドを含む。
【0042】
酸化重合は、20から70℃、望ましくは30から60℃、より望ましくは45から55℃の温度で行うことができる。選択した正確な反応条件に応じて、合計重合反応時間、つまり、酸化重合の開始から酸化重合の終了までの経過時間は変化することがあるが、概ね100から250分間、より詳細には145から210分間である。
【0043】
この方法は、酸化重合を終了させて、反応終了後混合物(post-termination reaction mixture)を生成する工程を更に含む。反応槽への酸素の流れを止めると反応は終了する。酸素を含まない、窒素などの気体を流し入れて、反応槽のヘッドスペース中の残留酸素を除去する。
【0044】
重合反応の終了後、重合触媒の銅イオンを反応混合物から分離する。これは、反応終了後混合物にキレート剤を加えてキレート化混合物を生成することで行われる。キレート剤は、アミノポリカルボン酸のアルカリ金属塩、望ましくはアミノ酢酸のアルカリ金属塩、より望ましくは、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、またはこれらの組み合わせ、更に望ましくは、ニトリロ三酢酸のナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、またはこれらの組み合わせを含む。ある態様において、キレート剤は、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩を含む。ある態様において、キレート剤はニトリロ三酢酸のナトリウムまたはカリウム塩、具体的には、ニトリロ三酢酸三ナトリウムである。キレート化混合物を撹拌後、この混合物は、キレート化した銅イオンを含む水相と、溶解したポリ(フェニレンエーテル)を含む有機相とを含んでいる。二酸化硫黄、亜硫酸、重亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(sodium thionite)、塩化スズ(II)、硫酸鉄(II)、硫酸クロム(II)、塩化チタン(III)、ヒドロキシルアミンおよびその塩、リン酸塩、グルコース、およびこれらの混合物を含んでいるキレート化混合物から、二価フェノールを除外(Cooperほかによる米国特許第4,110.311号で必要)、芳香族アミンを除外(Cooperほかによる米国特許第4,116,939号で必要)、および穏やかな還元剤を除外(Cooperほかによる米国特許第4,110,311号)することができる。キレート化混合物は、40から55℃、より詳細には45から50℃の温度で、5から100分間、より詳細には10から60分間、更に詳細には15から30分間保つ。この温度と時間の組み合わせは、銅金属イオン封鎖に効果的であり、その一方で、ポリ(フェニレンエーテル)の分子量の低下を抑えることができる。キレート化ステップは、キレート化混合物の水相と有機相を分離する工程を含む(また、この工程で終了する)。この分離ステップは、40から55℃、より詳細には45から50℃の温度で行う。反応終了後混合物に最初にキレート剤を混合してから、水相と有機相との分離が完了するまでの時間は、キレート化混合物を40~55℃に保ちながら、5から100分間かかる。
【0045】
ある態様において、本共重合体は、構造式P1、P2、P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質と、フェニレンエーテルオリゴマとを共有結合させる工程を含む方法で製造することができ、構造式P1、P2、P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質とフェニレンエーテルオリゴマは、相補的な反応基を含んでいる。例えば、構造式P1、P2、P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質は、少なくとも1つの反応基(例えば、炭素-炭素二重結合)を含む。触媒(例えば、ルイス酸触媒などの酸触媒)の存在下、構造式P1、P2、P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質の炭素-炭素二重結合は、ポリフェニレンオリゴマと反応して共重合体を生成することができる。一部の態様において、構造式P1またはP2で示されるジシクロペンタジエン前駆物質の1つの炭素-炭素二重結合はポリフェニレンオリゴマと反応して、ジブロック共重合体を生成することができる。一部の態様において、構造式P1またはP2で示されるジシクロペンタジエン前駆物質の両方の末端炭素-炭素二重結合は、ポリフェニレンオリゴマと反応して、トリブロック共重合体を生成することができる。一部の態様において、構造式P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質の1つの炭素-炭素二重結合は、ポリフェニレンオリゴマと反応してグラフト共重合体を生成することができる。
【0046】
本共重合体は、例えば、この共重合体に対する適当な非溶媒、例えば、メタノール中で沈殿させて単離することができる。
【0047】
本共重合体の製造法は更に、共重合体の末端位置を占める少なくとも1つのAブロック(例えば、ヒドロキシル末端化フェニレンエーテルオリゴマ)を持つ共重合体を、共重合体の鎖端に所望の官能基(例えば、メタクリラート基)ができるように選んだ化合物と反応させる工程を含むことができる。所望の官能基と、ヒドロキシル末端化フェニレンエーテルオリゴマに対して反応性を持つ基とを含む適切な化合物は、当業者には容易に決定できる。この反応は溶媒中で行うことができる。ある態様では、共重合体を粉末として得て、次にこれを、所望の官能基を含む化合物および溶媒と合わせることができる。ある態様では、溶媒を除去せず、重合またはカップリング反応から溶液として共重合体を得て、反応を行う前に共重合体を単離しなくても良い。合成法の例については、後の実施例で更に述べる。
【0048】
本共重合体の様々な製造法については、後の実施例で更に述べる。
【0049】
本共重合体を含む、硬化可能な熱硬化性組成物も提示する。例えば、硬化可能な熱硬化性組成物中における本共重合体の存在量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、1から95質量%、5から95質量%、10から85質量%、20から80質量%、30から70質量%、5から30質量%、または5から15質量%とすることができる。
【0050】
硬化可能な熱硬化性組成物は、橋かけ剤、硬化剤、硬化触媒、硬化開始剤、またはこれらの組み合わせの1つ以上を更に含むことができる。ある態様において、硬化可能な熱硬化性組成物は、難燃剤、充填剤、カップリング剤、またはこれらの組み合わせの1つ以上を更に含むことができる。例えば、硬化可能な熱硬化性組成物は、橋かけ剤、硬化剤、硬化触媒、硬化開始剤、またはこれらの組み合わせの1つ以上を含むことができ、更に、難燃剤、充填剤、カップリング剤、またはこれらの組み合わせの1つ以上を含むことができる。
【0051】
熱硬化性樹脂と橋かけ剤とカップリング剤とはかなり重なりあっている。文中で使用する用語“橋かけ剤(crosslinking agent)”には、熱硬化性樹脂、橋かけ剤(crosslinkers)、カップリング剤、またはこれらの組み合わせとして使用可能な化合物が含まれる。例えば、一部の例では、熱硬化性樹脂である化合物も、橋かけ剤、カップリング剤、またはその両方として使用できると考えられる。
【0052】
熱硬化性樹脂は特に限定されず、熱硬化性樹脂は単独で、または2つ以上の熱硬化性樹脂を組み合わせて(例えば、1つ以上の補助的な熱硬化性樹脂を含む)使用できる。熱硬化性樹脂の例として、エポキシ樹脂、シアナートエステル樹脂、(ビス)マレイミド樹脂、(ポリ)ベンゾオキサジン樹脂、ビニル樹脂(例えば、ビニルベンジルエーテル樹脂)、フェノール樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリールシクロブテン樹脂、パーフルオロビニルエーテル樹脂、硬化可能な不飽和基(例えば、ビニル官能基)を持つモノマ、オリゴマ、またはポリマなど、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂は一般に、熱硬化性樹脂での使用に適していればどのようなエポキシ樹脂であっても良い。この文脈において、用語“エポキシ樹脂”は、例えば、C. A. May, Epoxy Resins, 2.sup.nd Edition, (New York & Basle: Marcel Dekker Inc.), 1988 に記載されているような、オキシラン環を含む化合物の硬化性組成物を指す。エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールAから得られたもの、また、ビスフェノールAの2位置、3位置、および5位置の少なくとも1つの位置をハロゲン原子、6個以下の炭素原子を含むアルキル基、またはフェニル基で置換して得られた樹脂など);ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノールFから得られたもの、また、ビスフェノールFの2位置、3位置、および5位置の少なくとも1つの位置をハロゲン原子、6個以下の炭素原子を含むアルキル基、またはフェニル基で置換して得られた樹脂など);グリシジルエーテル化合物(2価、3価、またはそれ以上のフェノール類(ヒドロキノン、レゾルシノール、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど)から誘導したもの);ノボラック型エポキシ樹脂(フェノール類(フェノール、o-クレゾールなど)とホルムアルデヒドとの反応生成物であるノボラック樹脂から誘導したもの)(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など);環状脂肪族エポキシ化合物(2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロピル)シクロヘキシル]プロパン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなど);ジシクロペンタジエンを含むポリエポキシド;アミン型エポキシ樹脂(アニリン、p-アミノフェノール、m-アミノフェノール、4-アミノ-m-クレゾール、6-アミノ-m-クレゾール、4,4′-ジアミノジフェニルエタン、3,3′-ジアミノジフェニルメタン、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、3,4′-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、5-アミノ-1-(4′-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4′-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダンなどから誘導したもの);複素環式エポキシ化合物、および、グリシジルエステル型エポキシ化合物(例えば、芳香族カルボン酸(p-オキシ安息香酸、m-オキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸など)のグリシジルエステルから誘導したもの)を挙げることができる。“エポキシ樹脂”はまた、2つ以上のエポキシ基を含む化合物と、芳香族ジヒドロキシ化合物(必要に応じてハロゲンで置換されていても良く、また、単独で、または2つ以上を組み合わせて使用しても良い)との反応生成物も含むことができる。
【0054】
シアナートエステルに制限はなく、重合して、複数のシアナートエステル(-OCN)官能基を含むポリマを生成する、シアナートエステルモノマから成るものであれば、どのような樹脂を使用しても良い。シアナートエステルモノマ、プレポリマ(即ち、部分的に重合したシアナートエステルモノマ、またはシアナートエステルモノマの混合物)、ホモポリマ、シアナートエステル前駆物質を使用して製造した共重合体、およびこれらの化合物の組み合わせが使用できる。例えば、シアナートエステルは、“Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins”, by Ian Hamerton, Blackie Academic and Professional;米国特許第3,553,244号、および特開平7-53497号に開示されている方法などに従って調製可能である。シアナートエステル樹脂の例として、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α′-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、ジシクロペンタジエン-フェノール共重合体から調製したシアナートエステル樹脂、および、これらのモノマから調製したプレポリマが挙げられる。プレポリマの一例は、PRIMASET BA-230S (Lonza)である。シアナートエステルプレポリマはホモポリマであっても良く、あるいは、他のモノマを組み入れた共重合体であっても良い。このような共重合体の例として、三菱ガス化学(株)より入手可能なBT樹脂(BT 2160、BT 2170など)が挙げられ、これらは、シアナートエステルモノマとビスマレイミドモノマとから製造したプレポリマである。その他のシアナートエステルポリマ、モノマ、プレポリマ、および、シアナートエステルモノマとシアナートエステルではない別のモノマとの混合物は、米国特許第7,393,904号、米国特許第7,388,057号、米国特許第7,276,563号、および米国特許第7,192,651号に開示されている。
【0055】
ビスマレイミド樹脂は、モノマ状ビスマレイミドと求核試薬(ジアミン、アミノフェノール、またはアミノベンズヒドラジドなど)との反応により、または、ビスマレイミドとジアリルビスフェノールAとの反応により製造することができる。例示的なビスマレイミド樹脂は、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,3-ビスマレイミドベンゼン、1,4-ビスマレイミドベンゼン、2,4-ビスマレイミドトルエン、4,4′-ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4′-ビスマレイミドジフェニルエーテル、3,3′-ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4′-ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4′-ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、3,5-ビス(4-マレイミドフェニル)ピリジン、2,6-ビスマレイミドピリジン、1,3-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,1-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ジクロロマレイミド)ベンゼン、4,4′-ビス(シトラコンイミド)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-マレイミドフェニル)プロパン、1-フェニル-1,1-ビス(4-マレイミドフェニル)エタン、N,N′-ビス(4-マレイミドフェニル)トルエン、3,5-ビスマレイミド-1,2,4-トリアゾール、N,N′-エチレンビスマレイミド、N,N′-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド、N,N′-p-フェニレンビスマレイミド、N,N′-4,4′-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4′-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N′-4,4′-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N′-4,4′-ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N′-α,α′-4,4′-ジメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’-m-メタキシレンビスマレイミド、N,N′-4,4′-ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、およびN,N′-メチレンビス(3-クロロ-p-フェニレン)ビスマレイミドを含み、更に、米国特許第3,562,223号、米国特許第4,211,860号、および米国特許第4,211,861号に開示されているもの、または、例えば、米国特許第3,018,290号に記載されている方法で調製したものも含まれる。
【0056】
ベンゾオキサジン化合物は、分子内にベンゾオキサジン環を持つ。代表的なベンゾオキサジンモノマは、アルデヒドとフェノール類と第一級アミンとの、溶媒を用いた、または用いない反応から調製することができる。ベンゾオキサジン類を生成するためのフェノール系化合物として、フェノール類およびポリフェノール類が挙げられる。ベンゾオキサジン類の生成において反応する、2つ以上のヒドロキシル基を持つポリフェノール類を使用すると、分枝生成物、架橋生成物、または、分枝および架橋生成物の組み合わせを生じることができる。フェノール性の基をフェノールに結合する基は、ポリベンゾオキサジン中の分枝点または結合基となることができる。
【0057】
ベンゾオキサジンモノマの調製に使用するフェノール類の例として、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2-アリルフェノール、3-アリルフェノール、4-アリルフェノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-(ジフェニルホスホリル)ヒドロキノン、2,2′-ビフェノール、4,4′-ビフェノール、4,4′-イソプロピリデンジフェノール、4,4′-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2-アリルフェノール)、4,4′-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4′-イソプロピリデンビス(3-フェニルフェノール)、4,4′-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4′-エチリデンジフェノール、4,4′-オキシジフェノール、4,4′-チオジフェノール、4,4′-スルホニルジフェノール、4,4′-スルフィニルジフェノール、4,4′-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4′-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4′-(シクロペンチリデン)ジフェノール、4,4′-(シクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′-(シクロドデシリデン)ジフェノール、4,4′-(ビシクロ[2.2.1]ヘプチリデン)ジフェノール、4,4′-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジフェノール、イソプロピリデンビス(2-アリルフェノール)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン、1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、3,3,3′,3′-テトラメチル-2,2′,3,3′-テトラヒドロ-1,1′-スピロビ[インデン]-5,6′-ジオール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ジシクロペンタジエニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビス(o-クレゾール)、ジシクロペンタジエニルビスフェノールなどが挙げられる。
【0058】
ベンゾオキサジンの生成に使用するアルデヒドは、1から10個の炭素原子を含むアルデヒドなど、どのようなアルデヒドであっても良い。例えば、アルデヒドは、ホルムアルデヒドであっても良い。ベンゾオキサジンの生成に使用するアミンは、芳香族アミン、脂肪族アミン、アルキル置換芳香族アミン、または芳香族置換アルキルアミンとすることができる。アミンは、例えば、架橋のための多官能性ベンゾオキサジンモノマを調製するため、ポリアミンであっても良い。
【0059】
ベンゾオキサジン類を生成するためのアミンは、芳香族環を含む場合(この場合、6から40個の炭素原子を含むことができる)を除いて、1から40個の炭素原子を含む。二官能性または多官能性のアミンは、1つのポリベンゾオキサジンを他のものと繋ぐ分枝点になることができる。
【0060】
一部の実施例において、ベンゾオキサジンモノマの重合には、150から300℃での熱重合が使用できる。重合は、バルクで、溶液中で、またはその他の方法で行うことができる。触媒(カルボン酸など)を用いて重合温度を下げ、または、同じ温度での重合速度を上げることができる。
【0061】
ビニルベンジルエーテル樹脂は、フェノールとハロゲン化ビニルベンジル(塩化ビニルベンジルなど)との縮合により調製できる。架橋した熱硬化性樹脂の製造に使用できるポリ(ビニルベンジルエーテル)を製造するには、ビスフェノールAとトリスフェノール類とポリフェノール類が一般的に使用される。ビニルベンジルエーテル類の例として、塩化ビニルベンジルと、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-(ジフェニルホスホリルヒドロキノン、ビス(2,6-ジメチルフェノール)、2,2′-ビフェノール、4,4′-ビフェノール、2,2′,6,6′-テトラメチルビフェノール、2,2′,3,3′,6,6′-ヘキサメチルビフェノール、3,3′,5,5′-テトラブロモ-2,2’6,6’-テトラメチルビフェノール、3,3′-ジブロモ-2,2′,6,6′-テトラメチルビフェノール、2,2′,6,6′-テトラメチル-3,3′,5-ジブロモビフェノール、4,4′-イソプロピリデンジフェノール、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジブロモフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジメチルフェノール)(テトラ(tera)メチルビスフェノールA)、4,4′-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2-アリルフェノール)、4,4′-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4′-イソプロピリデンビス(3-フェニルフェノール)、4,4′-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4′-エチリデンジフェノール、4,4′-オキシジフェノール、4,4′-チオジフェノール、4,4′-チオビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4′-スルホニルジフェノール、4,4′-スルホニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4′-スルフィニルジフェノール、4,4′-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4′-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4′-(シクロペンチリデン)ジフェノール、4,4′-(シクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′-(シクロドデシリデン)ジフェノール、4,4′-(ビシクロ [2.2.1]ヘプチリデン)ジフェノール、4,4′-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジフェノール、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン、1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1,3,3,4,6-ペンタメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、3,3,3′,3′-テトラメチル-2,2′,3,3′-テトラヒドロ-1,1′-スピロビ[インデン]-5,6′-ジオール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、テトラキス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ジシクロペンタジエニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビスフェノールなどとの反応から生成した、ビニルベンジルエーテル類を挙げることができる。
【0062】
アリールシクロブテン類として、次の構造式で示される化合物から誘導されたものが挙げられる。
【化20】
式中、Bは、原子価nの有機または無機ラジカル(カルボニル、スルホニル、スルフィニル、スルフィド、オキシ、アルキルホスホニル(alkyl phosphonyl)、アリールホスホニル、イソアルキリデン、シクロアルキリデン、アリールアルキリデン、ジアリールメチリデン、メチリデン、ジアルキルシラニル(silanyl)、アリールアルキルシラニル、ジアリールシラニル、C
6~20フェノール系化合物など)であり、出現毎のXは独立して、ヒドロキシまたはC
1~24ヒドロカルビル(線状および分枝アルキル、シクロアルキルなど)であり、出現毎のZは独立して、水素、ハロゲン、またはC
1~12ヒドロカルビルであり、nは1から1000または1から8であり、あるいは、nは、2、3、または4である。その他のアリールシクロブテン類およびアリールシクロブテン類の合成法の例は、米国特許第4,743,399号、米国特許第4,540,763号、米国特許第4,642,329号、米国特許第4,661,193号、米国特許第4,724,260号、および米国特許第5,391,650号に見ることができる。
【0063】
パーフルオロビニルエーテル類は、通常、フェノール類とブロモテトラフルオロエタンとから、亜鉛触媒を用いた還元脱離により、ZnFBrと所望のパーフルオロビニルエーテルを生成することで合成される。この反応経路では、ビス、トリス、およびその他のポリフェノール類からビス、トリス、およびポリ(パーフルオロビニルエーテル)類が製造できる。これらの合成に有用なフェノール類として、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-(ジフェニルホスホリル)ヒドロキノン、ビス(2,6-ジメチルフェノール)、2,2′-ビフェノール、4,4′-ビフェノール、2,2′,6,6′-テトラメチルビフェノール、2,2′,3,3′,6,6′-ヘキサメチルビフェノール、3,3′,5,5′-テトラブロモ-2,2′,6,6′-テトラメチルビフェノール、3,3′-ジブロモ-2,2′,6,6′-テトラメチルビフェノール、2,2′,6,6′-テトラメチル-3,3′,5-ジブロモビフェノール、4,4′-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジブロモフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2-アリルフェノール)、4,4′-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4’-イソプロピリデンビス(3-フェニルフェノール)、4,4′-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4′-エチリデンジフェノール、4,4′-オキシジフェノール、4,4′-チオジフェノール、4,4′-チオビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4′-スルホニルジフェノール、4,4′-スルホニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4′-スルフィニルジフェノール、4,4′-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4′-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4′-(シクロペンチリデン)ジフェノール、4,4′-(シクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′-(シクロドデシリデン)ジフェノール、4,4′-(ビシクロ[2.2.1]ヘプチリデン)ジフェノール、4,4′-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジフェノール、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン、1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1,3,3,4,6-ペンタメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、3,3,3′,3′-テトラメチル-2,2′,3,3′-テトラヒドロ-1,1′-スピロビ[インデン]-5,6′-ジオール(スピロビインダン)、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、テトラキス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ジシクロペンタジエニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビス(2-メチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビスフェノールなどが挙げられる。
【0064】
橋かけ剤(補助的な橋かけ剤も含む)は特に制限されない。橋かけ剤は単独で使用しても、2つ以上の異なる橋かけ剤を組み合わせて使用しても良い。橋かけ剤および補助的な橋かけ剤の例として、硬化可能なビニル官能基を備えたオリゴマまたはポリマが挙げられる。このような材料には、架橋可能な不飽和部分を持つオリゴマおよびポリマが含まれる。その例として、ブタジエンに由来する不飽和結合を持った、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、およびニトリル-ブタジエンゴム(NBR);イソプレンに由来する不飽和結合を持った、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、およびハロゲン化ブチルゴム;ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、または1,4-ジヘキサジエン(1,4-HD)に由来する不飽和結合を持ったエチレン-α-オレフィン共重合体エラストマ(例えば、エチレンとα-オレフィンとジエンとの共重合によって得られるエチレン-α-オレフィン共重合体で、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマ(EPDM)、エチレン-ブテン-ジエンターポリマ(EBDM)など)が挙げられる。例としてはまた、水素化ニトリルゴム、フルオロカーボンゴム(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロペン共重合体など)、エピクロロヒドリンホモポリマ(CO)、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドとから調製した共重合体ゴム(ECO)、エピクロロヒドリン-アリルグリシジル共重合体、プロピレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合体、プロピレンオキシド-エピクロロヒドリン-アリルグリシジルエーテルターポリマ、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、ポリスルフィドゴム(T)、およびエチレン-アクリルゴムが挙げられる。更なる例として、様々な液状ゴム、例えば、何種類かの液状ブタジエンゴム、液状アタクチックブタジエンゴム(即ち、アニオンリビング重合で調製した、1,2-ビニル結合を持つブタジエンポリマ)が挙げられる。液状スチレンブタジエンゴム、液状ニトリル-ブタジエンゴム(宇部興産(株)製、CTBN、VTBN、ATBNなど)、液状クロロプレンゴム、液状ポリイソプレン、ジシクロペンタジエン型炭化水素ポリマ、およびポリノルボルネン(例えば、Elf Atochemより市販のもの)も使用可能である。
【0065】
1,2-付加の割合の高いポリブタジエン樹脂は熱硬化性マトリクスとして望ましい。その例として、官能化ポリブタジエンおよびポリ(ブタジエン-スチレン)ランダム共重合体(Ricon Resins, Inc.より、RICON、RICACRYL、およびRICOBOND樹脂の商標名で市販)が挙げられる。このようなものとして、ビニル含量の低いポリブタジエン(RICON 130、131、134、142など)、ビニル含量の高いポリブタジエン(RICON 150、152、153、154、156、157、P30Dなど)、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体(RICON 100、181、184など)、および、無水マレイン酸グラフト化ポリブタジエンおよびそれから誘導したアルコール縮合物(RICON 130MA8、RICON MA13、RICON 130MA20、RICON 131MAS、RICON 131MA10、RICON MA17、RICON MA20、RICON 184MA6、RICON 156MA17など)が挙げられる。更に挙げられるものとして、接着性を改善するために使用するポリブタジエン(RICOBOND 1031、RICOBOND 1731、RICOBOND 2031、RICACRYL 3500、RICOBOND 1756、RICACRYL 3500);ポリブタジエン RICON 104(25%ポリブタジエン/ヘプタン)、RICON 257(35%ポリブタジエン/スチレン)、および、RICON 257(35%ポリブタジエン/スチレン);(メタ)アクリル官能化ポリブタジエン(ポリブタジエンジアクリラート、ポリブタジエンジメタクリラートなど)がある。これらの材料は、RICACRYL 3100、RICACRYL 3500、および RICACRYL 3801の商標名で市販されている。また、官能性ポリブタジエン誘導体の粉末分散物、例えば、RICON 150D、152D、153D、154D、P30D、RICOBOND 0 1731 HS、および RICOBOND 1756HS なども挙げられる。更にその他のブタジエン樹脂として、ポリ(ブタジエン-イソプレン)ブロックおよびランダム共重合体(分子量が3,000から50,000g/モルのものなど)、ポリブタジエンホモポリマ(分子量が3,000から50,000g/モル)が挙げられる。更に挙げられるものとして、無水マレイン酸官能基、2-ヒドロキシエチルマレイン酸官能基、またはヒドロキシル化官能基で官能化した、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびポリブタジエン-イソプレン共重合体がある。
【0066】
硬化可能なビニル官能基を備えたオリゴマおよびポリマの更にその他の例として、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびシトラコン酸を材料とする不飽和ポリエステル樹脂、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含む不飽和エポキシ(メタ)アクリラート樹脂、ビニルまたはアリル基を含む不飽和エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリラート樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリラート樹脂、ポリアルコール(メタ)アクリラート樹脂、アルキドアクリラート樹脂、ポリエステルアクリラート樹脂、スピロアセタールアクリラート樹脂、ジアリルフタラート樹脂、ジアリルテトラブロモフタラート樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカルボナート樹脂、およびポリエチレンポリチオール樹脂が挙げられる。例えば、橋かけ剤。その他の橋かけ剤の例としては更に、モノマ分子1個当たり2つ以上の(メタ)アクリラート基を持つ、(メタ)アクリラートモノマなどの多官能性架橋モノマが挙げられる。多官能性モノマの例として、ジ(メタ)アクリラート類(1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールプロポキシラートジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールエトキシラートジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールプロポキシラートジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールエトキシラートジ(メタ)アクリラート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラートなど);トリ(メタ)アクリラート類(トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、1,2,4- ブタントリオールトリ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンエトキシラートトリ(メタ)アクリラートなど);トリ(メタ)アリル類(シアヌル酸トリ(メタ)アリル、イソシアヌル酸トリ(メタ)アリル、クエン酸のトリ(メタ)アリルエステル、リン酸のトリ(メタ)アリルエステル、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリラート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリ(メタ)アクリラートなど);テトラ(メタ)アクリラート類(ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラートなど);ペンタ(メタ)アクリラート類(ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリラートなど);ヘキサ(メタ)アクリラート類(ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリラート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリラートなど);グリシジル化合物((メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸1-クロロ-2,3-エポキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ブロモ-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸2-(エポキシエチルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(3,4-エポキシブチルオキシ)エチルなど);ポリチオール化合物(トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオナート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)など);シラン類(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルオキシイミノ)シラン、ビニルトリス(アセトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルオキシイミノ)シラン、メチルトリス(アセトキシム)シラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジ-t-ブトキシジアセトキシシラン、メチルトリス(エチルラクタート)シラン、ビニルトリス(エチルラクタート)シランなど);カルボジイミド類(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミドヒドロクロリド、ジシクロヘキシルカルボジイミドなど);またはこれらの組み合わせが挙げられる。硬化可能な熱硬化性組成物は、必要に応じて、橋かけ触媒(カルボン酸塩など)を含むことができる。
【0067】
硬化可能な熱硬化性組成物が橋かけ剤を含む場合、橋かけ剤の含有量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、1から60質量%、5から45質量%、または10から30質量%とすることができる。
【0068】
硬化可能な熱硬化性組成物は、1つ以上の硬化剤を含むことができる。文中で使用する用語“硬化剤”には、硬化剤(curing agents、hardeners)などとして、またはその両方として、様々な表記をされている化合物が含まれる。
【0069】
硬化剤の例として、アミン、アルコール、フェノール類、カルボン酸、酸無水物などが挙げられる。例えば、フェノール系硬化剤として、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾール(resole)型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、ビスフェノール類、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、テトラフェニルオールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮合(co-condensed)ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮合ノボラック樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、またはこれらの組み合わせが挙げられる。無水物硬化剤の例として、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MHHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)、およびオレフィン-無水マレイン酸共重合体(無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン、またはこれらの組み合わせなど)が挙げられる。その他の硬化剤として、ジシアンジアミド、ポリアミド、アミドアミン、フェナルカミン(phenalkamines)、マンニッヒ塩基、無水物、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、アミン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、カルボン酸官能性ポリエステル、ポリスルフィド、ポリメルカプタン、イソシアナート、シアナートエステル化合物、またはこれらの任意の組み合わせなどの化合物が挙げられる。その他の硬化剤の例として、第三級アミン、ルイス酸、および不飽和基を持つオリゴマまたはポリマが挙げられる。
【0070】
硬化可能な熱硬化性組成物が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、0.01から50質量%、0.1から30質量%、または0.1から20質量%とすることができる。
【0071】
硬化可能な熱硬化性組成物は硬化触媒を含むことができる。文中で使用する用語“硬化触媒”には、硬化促進剤(curing accelerators、curing promoters)、硬化触媒、および硬化共触媒など、様々な表記をされている化合物が含まれる。
【0072】
硬化促進剤の例として、複素環促進剤(1から4個の環ヘテロ原子を含む、置換または非置換のC3~6複素環などであり、それぞれのヘテロ原子は独立して、同じまたは異なるもので、窒素、酸素、リン、ケイ素、または硫黄である)が挙げられる。複素環促進剤として、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ピペラジン類(アミノエチルピペラジン、N-(3-アミノプロピル)ピペラジンなど)、イミダゾール類(1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、3-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、3-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-ウンデシル-1H-イミダゾール、2-ヘプタデシル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、2-フェニル-1H-イミダゾール、4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾールなど)、環状アミジン(4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ジアザビシクロウンデセン、2-フェニルイミダゾリンなど)、N,N-ジメチルアミノピリジン、スルファミダート(sulfamidate)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
アミン硬化促進剤として、イソホロンジアミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、1,2- および 1,3-ジアミノプロパン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,12-ジアミノドデカン、4-アザヘプタメチレンジアミン、N,N′-ビス(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、ジシアンアミド(dicyanamide)、ジアミドジフェニルメタン、ジアミドジフェニルスルホン酸(アミン付加物)、4,4′-メチレンジアニリン、ジエチルトルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、テトラエチレンペンタミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、3,3′-イミノビスプロピルアミン、2,4-ビス(p-アミノベンジル)アニリン、テトラエチレンペンタミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、2,2,4- および 2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2- および 1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノ-4-エチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、1-シクロヘキシル-3,4-ジアミノ(dimino)シクロヘキサン、4,4′-ジアミノ(diaminon)ジシクロヘキシルメタン、4,4′-ジアミノジシクロヘキシルプロパン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、3,3′-ジメチル-4,4′-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3-アミノ-1-シクロヘキサンアミノプロパン、1,3- および 1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m- および p-キシリレンジアミン、またはジエチルトルエンジアミン類;または、第三級アミン硬化促進剤(トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、α-メチルベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノクレゾール、またはトリス(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノールなど);あるいは、これらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
硬化促進剤は潜在的なカチオン硬化触媒であっても良く、例えば、ジアリールヨードニウム塩、ホスホン酸エステル、スルホン酸エステル、カルボン酸エステル、ホスホン酸イリド(phosphonic ylides)、トリアリールスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、イソオキサゾリウム塩など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ジアリールヨードニウム塩は、式 [(R10)(R11)I]+X- (式中、R10およびR11はそれぞれ独立してC6~14一価芳香族炭化水素ラジカルであって、必要に応じて、C1~20アルキル、C1~20アルコキシ、ニトロ、およびクロロより選ばれる、1から4個の一価ラジカルで置換されており、X-はアニオンである)で表すことができる。追加の硬化促進剤は、式 [(R10)(R11)I]+SbF6
- (式中、R10およびR11はそれぞれ独立してC6~14一価芳香族炭化水素であって、必要に応じて、1から4個のC1~20アルキル、C1~20アルコキシ、ニトロ、またはクロロで置換されている)で表すことができ、例えば、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロアンチモナートである。
【0075】
硬化促進剤は、金属塩錯体(脂肪族または芳香族カルボン酸の銅(II)、アルミニウム(III)、亜鉛、コバルト、スズ塩など)であっても良く、酢酸、ステアリン酸、グルコン酸、クエン酸、安息香酸の銅(II)、スズ(II)、およびアルミニウム(III)塩、およびこれらの混合物から選ぶことができる。例えば、硬化促進剤は、β-ジケトナート(diketonates)の銅(II)またはアルミニウム(III)塩;アセチルアセトナート(acetylacetonates)の銅(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、コバルト(III)、またはアルミニウム(III)塩;オクトアート(octoates)の亜鉛(II)、クロム(II)、またはマンガン(II)塩;あるいはこれらの組み合わせとすることができる。
【0076】
硬化可能な熱硬化性組成物が硬化触媒を含む場合、硬化触媒の含有量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、0.01から5質量%、0.05から5質量%、または0.1から5質量%とすることができる。
【0077】
硬化可能な熱硬化性組成物は、必要に応じて、ペルオキシド化合物などの硬化開始剤を含むことができる。ペルオキシド硬化開始剤の例として、過酸化ベンゾイル、ジクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ラウリルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオクトアート(peroctoate)、ペルオキシ安息香酸t-ブチル、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカルボナート、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルジオキシ)バレラート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサ-3-イン、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、α,α′-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、ジ(t-ブチルペルオキシ)イソフタラート、ペルオキシ安息香酸t-ブチル、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ(トリメチルシリル)ペルオキシド、トリメチルシリルフェニルトリフェニルシリルペルオキシドなど、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0078】
硬化可能な熱硬化性組成物が硬化開始剤を含む場合、硬化開始剤の含有量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、0.1から5質量%、0.5から5質量%、または1から5質量%とすることができる。
【0079】
難燃剤として、例えば、リン、臭素、または塩素を含む有機化合物が挙げられる。特定の用途においては、規制があるために、例えば、有機リン酸エステルおよびリン-窒素結合を含む有機化合物といった、非臭素化および非塩素化リン含有難燃剤が推奨されることがある。
【0080】
リン含有難燃剤の例として、リン酸エステル、ホスファゼン、亜リン酸エステル、ホスフィン、ホスフィン酸塩またはエステル(phosphinates)、ポリリン酸塩またはエステル(polyphosphates)、およびホスホニウム塩が挙げられる。リン酸エステルとして、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、イソプロピル化リン酸トリフェニル、リン酸フェニルビス(ドデシル)、リン酸フェニルビス(ネオペンチル)、リン酸フェニルビス(3,5,5’-トリメチルヘキシル)、リン酸エチルジフェニル、リン酸2-エチルヘキシルジ(p-トリル)、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)-p-トリル、リン酸トリトリル、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)フェニル、リン酸トリス(ノニルフェニル)、リン酸ビス(ドデシル)-p-トリル、リン酸ジブチルフェニル、リン酸2-クロロエチルジフェニル、リン酸p-トリルビス(2,5,5’-トリメチルヘキシル)、リン酸2-エチルヘキシルジフェニル、リン酸キシレニルジフェニル、リン酸クレジルジフェニル、1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスファート)、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)、テトラフェニルジホスファート(RDP)、縮合リン酸塩化合物(芳香族縮合リン酸塩化合物など)、および、環状リン酸塩化合物、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)リン酸エステル、ビスフェノールAのビス(ジフェニル)リン酸エステルなど、または、これらのオリゴマ状またはポリマ状物、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
ホスファゼン化合物の例として、環状および鎖状ホスファゼン化合物が挙げられる。環状ホスファゼン化合物(シクロホスファゼン)は、分子内に、リン-窒素二重結合が存在する環状構造を持つ。ホスフィン酸化合物の例として、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、トリス(メチルエチルホスフィン酸)アルミニウム、トリス(ジフェニルホスフィン酸)アルミニウム、ビス(ジエチルホスフィン酸)亜鉛、ビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、ビス(ジフェニルホスフィン酸)亜鉛、ビス(ジエチルホスフィン酸)チタン、ビス(メチルエチルホスフィン酸)チタン、およびビス(ジフェニルホスフィン酸)チタンが挙げられる。ポリリン酸化合物の例として、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、およびポリリン酸メレムが挙げられる。ホスホニウム塩化合物の例として、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラートが挙げられる。亜リン酸エステル化合物の例として、亜リン酸トリメチルおよび亜リン酸トリエチルが挙げられる。リン-窒素結合を含む難燃剤化合物としては、塩化ホスホニトリル(phosphonitrilic chloride)、リンエステルアミド(phosphorus ester amides)、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、およびトリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
【0082】
ハロゲン化した材料も難燃剤として使用でき、例えば、2,2-ビス(3,5-ジクロロフェニル)プロパン、ビス(2-クロロフェニル)メタン、ビス(2,6-ジブロモフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヨードフェニル)エタン、1,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)エタン、1,1-ビス(2-クロロ-4-ヨードフェニル)エタン、1,1-ビス(2-クロロ-4-メチルフェニル)エタン、1,1-ビス(3,5-ジクロロフェニル)エタン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ブロモフェニル)エタン、2,6-ビス(4,6-ジクロロナフチル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール類が挙げられる。その他のハロゲン化材料としては、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジブロモベンゼン、1,3-ジクロロ-4-ヒドロキシベンゼン、およびビフェニル類(2,2′-ジクロロビフェニル、ポリブロモ化1,4-ジフェノキシベンゼン、2,4′-ジブロモビフェニル、2,4′-ジクロロビフェニルなど)、更に、デカブロモビフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、また更に、オリゴマ状およびポリマ状ハロゲン化芳香族化合物(臭素化スチレン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、または、ビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェノールAとカルボナート前駆物質(例えば、ホスゲン)とのコポリカルボナートなど)が挙げられる。金属相乗剤、例えば、酸化アンチモンを難燃剤と共に使用しても良い。
【0083】
無機難燃剤、例えば、C1~16アルキルスルホン酸の塩(パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar塩)、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなど)、塩類(Na2CO3、K2CO3、MgCO3、CaCO3、BaCO3など)、またはフッ素アニオン錯体(Li3AlF6、BaSiF6、KBF4、K3AlF6、KAlF4、K2SiF6、Na3AlF6など)も使用可能である。
【0084】
硬化可能な熱硬化性組成物が難燃剤を含む場合、難燃剤の含有量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、1質量%よりも多く、または1から20質量%、あるいは5から20質量%とすることができる。
【0085】
硬化可能な熱硬化性組成物は更に、無機または有機充填剤(粒子状充填剤、繊維状充填剤など、またはこれらの組み合わせ)を含むことができる。当業者に知られているものを含む、どのような無機および有機充填剤も限定されることなく使用できる。
【0086】
充填剤の例として、例えば、粘土、タルク、カオリン、珪灰石、雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、チオ尿素、ガラス粉末、BまたはSn含有充填剤(ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛など)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化スズなど)、アルミナ、シリカ(溶融シリカ、フュームドシリカ、球状シリカ、結晶シリカなど)、窒化ホウ素(球状窒化ホウ素など)、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、ケイ酸マグネシウム、三酸化アンチモン、ガラス繊維(チョップド、ミルド、または織物)、ガラスマット、泡状ガラス、中空ガラス微小球、アラミド繊維、石英など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。その他の無機充填剤の例としては、粉末化したチタンセラミック(バリウム、鉛、ストロンチウム、カルシウム、ビスマス、マグネシウムなどのチタン酸塩のいずれか)が挙げられる。無機充填剤としてはまた、水和物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ハイドロタルサイトなど)が挙げられる。ある態様では、充填剤を、文中に開示されているようなカップリング剤で処理することができる。
【0087】
ガラス繊維としては、E、A、C、ECR、R、S、D、およびNEガラスや、石英を材料とするものが挙げられる。ガラス繊維は、適当であればどのような直径(2から30マイクロメートル(μm)、5から25μm、5から15μmなど)のものでも良い。混ぜ合わせる前のガラス繊維の長さに制限はなく、2から7ミリメートル(mm)または1.5から5mmとすることができる。あるいは、より長いガラス繊維または連続的なガラス繊維を使用しても良い。適当なガラス繊維は、Owens Corning、日本電気硝子(株)、PPG、Johns Manvilleなどの供給者から市販されている。
【0088】
有機充填剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンスルフィド粉末、ポリ(エーテルスルホン)粉末、ポリ(フェニレンエーテル)粉末、ポリスチレン、ジビニルベンゼン樹脂など、またはこれらの組み合わせとすることができる。
【0089】
充填剤は、熱膨張係数(CTE)および熱伝導率の要件に基づいて選ぶことができる。例えば、熱伝導率の高い電子モジュールには、Al2O3、BN、AlN、またはこれらの組み合わせが使用できる。例えば、熱伝導率を高く、CTEを高くするには、MgOが使用できる。例えば、CTEが低く、誘電率の小さい軽量のモジュールには、SiO2(例えば、非晶質SiO2)が使用できる。
【0090】
硬化可能な熱硬化性組成物が充填剤を含む場合、充填剤の含有量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、1質量%よりも多く、または1から50質量%、1から30質量%、あるいは10から30質量%とすることができる。
【0091】
カップリング剤(接着促進剤とも呼ばれる)として、クロム錯体、シラン類、チタン酸塩、ジルコンアルミン酸塩、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、反応性セルロースエステルなどが挙げられる。オレフィン-無水マレイン酸共重合体の例として、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。シラン類の例としては、エポキシシラン化合物、アミノシラン化合物、メタクリルオキシシラン化合物、ビニルシラン化合物、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0092】
アミノシランカップリング剤の例は、γ -アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ -アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシランである。代表的なエポキシシランカップリング剤として、γ -グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。メタクリルオキシシランカップリング剤の例として、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルジエトキシシラン、およびγ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0093】
その他のシランカップリング剤の例として、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾイル(benzolyl)テトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリラートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリラートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなど、またはこれらの組み合わせが挙げられる。シランカップリング剤は、ポリスルフィド橋を形成している2から4個の硫黄原子を含む、ポリスルフィドシランカップリング剤であっても良い。例えば、カップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジ、トリ、またはテトラスルフィドとすることができる。
【0094】
硬化可能な熱硬化性組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の含有量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、0.01から5質量%、0.05から5質量%、または0.1から5質量%とすることができる。
【0095】
硬化可能な熱硬化性組成物は、必要に応じて、溶媒を含むことができる。溶媒は、例えば、C3~8ケトン、C3~8N,N-ジアルキルアミド、C4~16ジアルキルエーテル、C6~12芳香族炭化水素、C1~3塩素化炭化水素、C3~6アルカン酸アルキル、C2~6シアン化アルキル、またはこれらの組み合わせとすることができる。具体的なケトン溶媒として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。具体的なC4~8N,N-ジアルキルアミド溶媒として、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。具体的なジアルキルエーテル溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。具体的な芳香族炭化水素溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、ジビニルベンゼン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。芳香族炭化水素溶媒はハロゲン化されていなくても良い。具体的なC3~6アルカン酸アルキルとして、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。具体的なC2~6シアン化アルキルとして、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。具体的なC2~6シアン化アルキルとして、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシルピロリジノン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、ジメチルスルホキシド、ベンゾフェノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、N,N-ジメチルエチレン尿素、N,N-ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素、プロピレングリコールフェニルエーテル、アニソール、ベラトロール、o-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、ピコリン、乳酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸ブチルカルビトール、酢酸エチルセロソルブ、酢酸エチルカルビトール、炭酸プロピレン、スルホラン、イオン液体、またはこれらの組み合わせとすることができる。
【0096】
溶媒を使用する場合、硬化可能な熱硬化性組成物は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して2から99質量%の溶媒を含むことができる。例えば、溶媒量は、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、5から80質量%、10から60質量%、または20から50質量%とすることができる。溶媒は、一部において、硬化可能な熱硬化性組成物の粘度を調整するために選ぶことができる。つまり、溶媒量は、共重合体の種類、他の成分(硬化添加剤など)の種類と量、何らかの補助的熱硬化性樹脂の種類と量、および、硬化可能な熱硬化性組成物の、後の何らかの処理(例えば、複合材料を調製するための、硬化可能な熱硬化性組成物による補強構造物の含浸)で使用される処理温度などの変数に応じて変わることがある。溶媒は無水であっても良い。例えば、溶媒に含まれる水は、溶媒の総質量に対して、100百万分率(parts per million:ppm)未満、50ppm未満、または10ppm未満とすることができる。
【0097】
硬化可能な熱硬化性組成物は硬化性不飽和モノマ組成物を更に含むことができ、このようなものとして、例えば、単官能性スチレン系化合物(例えば、スチレン)、単官能性(メタ)アクリル化合物など、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、硬化性不飽和モノマ組成物は、アルケンを含むモノマまたはアルキンを含むモノマとすることができる。アルケンおよびアルキン含有モノマの例としては、Yeagerほかによる米国特許第6,627,704号に記載されているものが挙げられ、また、Heilmanほかによる米国特許第4,304,705号に開示されているような、(メタ)アクリラート類、(メタ)アクリルアミド類、N-ビニルピロリドン、およびビニルアザラクトン類が挙げられる。単官能性モノマの例として、モノ(メタ)アクリラート類((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル)、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルなど、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
硬化可能な熱硬化性組成物は、必要に応じて、1つ以上の追加的な添加剤を更に含むことができる。追加的添加剤として、例えば、染料、顔料、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、消泡剤、潤滑剤、分散剤、流動性調節剤、ドリップ遅延剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、流動促進剤、加工助剤、基材接着剤、離型剤、強化剤、ロープロファイル(low-profile)添加剤、応力緩和(stress-relief)添加剤など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。追加的添加剤が存在する場合、その含有量は、任意の効果的な量、例えば、硬化可能な熱硬化性組成物の総質量に対して、0.01から20質量%、0.01から10質量%、0.01から5質量%、または0.01から1質量%とすることができる。
【0099】
硬化可能な熱硬化性組成物は、本共重合体と、文中に開示されている他の必要に応じた成分とを、任意の適当な方法を用いて混ぜ合わせることで調製可能である。
【0100】
更に、この硬化可能な熱硬化性組成物の硬化生成物を含む、硬化した熱硬化組成物も提示する。硬化可能な熱硬化性組成物を硬化させる方法に特に制限はない。硬化性組成物は、例えば、熱によって、または照射技術(UV照射または電子線照射を含む)を用いて硬化させることができる。例えば、文中に定義されている硬化可能な熱硬化性組成物を、溶媒を蒸発させ、硬化させるのに十分な時間と温度で加熱することにより、硬化した生成物を得ることができる。熱硬化を用いる場合、温度は、30から400℃、50から250℃、または100から250℃とすることができる。加熱は、1分間から24時間、1分間から6時間、または3時間から5時間行うことができる。部分的に硬化した、しばしば粘着性のない樹脂(その後、これを前述の範囲内の、より長い時間または温度で加熱して完全に硬化させる)を製造するため、硬化を段階的に行っても良い。文中で使用する用語“硬化した(cured)”には、部分的に硬化した、または完全に硬化した生成物が含まれる。
【0101】
硬化した熱硬化組成物は、1つ以上の望ましい特性を備えることができる。例えば、本熱硬化組成物は、165℃以上、望ましくは170℃以上、より望ましくは165から180℃のガラス転移温度を持つことができる。本熱硬化組成物は、有利なことに、低い誘電率(Dk)、低い散逸率(Df)、およびより少ない吸湿性も示すことができる。例えば、本熱硬化組成物は、10GHzの周波数において、3.0未満、望ましくは2.75未満、より望ましくは2.6未満の誘電率を持つことができる。本熱硬化組成物は、10GHzの周波数において、0.01未満、または0.005未満の散逸率を持つことができる。このように、本願に開示の共重合体を含む熱硬化組成物は、エレクトロニクスの用途での使用に特に良く適していると言うことができる。
【0102】
硬化可能な熱硬化性組成物および硬化した熱硬化組成物は、従来の熱硬化性組成物が使われている全ての用途を含む、様々な用途および用法に使用することができる。例えば、硬化可能な熱硬化性組成物または硬化した熱硬化組成物を含む有用な物品は、複合材料、発泡体、繊維、層、コーティング、封止材(encapsulant)、接着剤、シーラント、鋳造構成部品(molded component)、プリプレグ、ケーシング、積層品、メタルクラッド積層板、電子部品用複合材料、構造用複合材料、またはこれらを組み合わせた形にすることができる。用法および用途の例として、コーティング(保護被膜、シーラント、耐候性被膜、傷防止被膜、電気絶縁性被膜など)、接着剤、結合剤、接着剤(glues)、複合材料(炭素繊維およびガラス繊維強化材を使用したものなど)が挙げられる。コーティングとして使用する場合、開示の化合物および組成物は、様々な下地基材の表面に堆積させることができる。例えば、本組成物は、金属、プラスチック、ガラス、ファイバサイジング(fiber sizings)、セラミックス、石材、木材、またはこれらを任意に組み合わせたものの表面に堆積させることができる。開示の組成物は、金属容器(例えば、アルミニウムまたはスチール製で、塗料および表面被覆産業で包装や収納に通常用いられているものなど)の表面のコーティングとして使用できる。硬化可能な熱硬化性組成物と、それから誘導した硬化した熱硬化組成物はまた、電子部品およびコンピュータ部品の製造での使用に、特に良く適していると言うことができる。
【0103】
複合材料の製造法は、補強構造体を硬化可能な熱硬化性組成物で含浸する工程と、硬化可能な熱硬化性組成物を部分的に硬化させてプリプレグを作る工程と、複数のプリプレグを積層する工程とを含むことができる。補強構造体は、多孔性基材(繊維プリフォームまたは基材など)、または、他の多孔性材料(セラミック、ポリマ、ガラス、炭素、またはこれらの組み合わせを含む)とすることができる。例えば、多孔性基材は、ガラス織物または不織布、ガラス繊維織物、または炭素繊維とすることができる。物品が繊維プリフォームを含む場合、物品の製造法は、プリフォームに硬化性組成物を塗布または含浸して、硬化可能な熱硬化性組成物から物品を形成する工程を含むことができる。含浸した繊維プリフォームは、必要に応じて、溶媒を除く前、または除いた後に造形することができる。一部の態様において、硬化可能な熱硬化性組成物の層は、ガラス織物または不織布を更に含むことができる。例えば、ガラス織物に硬化性組成物を含浸する工程と、含浸したガラス織物から溶媒を除去する工程とから、硬化性の層を調製することができる。補強構造体の例は、例えば、著者不明 (Hexcel Corporation), "Prepreg Technology", March 2005, Publication No. FGU 017b; 著者不明 (Hexcel Corporation), "Advanced Fibre Reinforced Matrix Products for Direct Processes", June 2005, Publication No. ITA 272;および Bob Griffiths, "Farnborough Airshow Report 2006", Composites World.com, September 2006 に記載されている。補強構造体の質量および厚さは、この複合材料の使用目的に従って、繊維強化樹脂複合材料の製造に詳しい当業者に良く知られている基準を用いて選択する。強化した構造体は、硬化可能な熱硬化性組成物の熱硬化性成分に適した、様々な仕上げ剤(finishes)を含むことができる。
【0104】
硬化可能な熱硬化性組成物から物品を製造する方法は、硬化可能な熱硬化性組成物を部分的に硬化させてプリプレグを作る工程、または、硬化可能な熱硬化性組成物を完全に硬化させて複合品を作る工程を含むことができる。“硬化した組成物”の特性に対する文中での言及は、ほぼ完全に硬化した組成物についてである。例えば、プリプレグから製造した積層品中の樹脂は、通常、ほぼ完全に硬化している。熱硬化技術に詳しい当業者であれば、ある試料が部分的に硬化したものか、ほぼ完全に硬化したものかを、必要以上の実験を行わずに判別できる。硬化は、硬化性組成物から溶媒を除去する前、または除去後に行うことができる。更に、溶媒の除去前または溶媒の除去後、硬化前、部分硬化後、あるいは完全硬化後に、例えば、熱成形によって、物品を更に造形することができる。ある態様では、物品を生成し、溶媒を除く;物品を部分硬化する(Bステージ(B-staged));必要に応じて造形する;その後、更に硬化する。
【0105】
複合材料の商業規模での製造法は当該技術で知られており、文中に述べられている硬化可能な熱硬化性組成物は、既存の製造工程および装置に容易に適応可能である。例えば、プリプレグは含浸乾燥装置(トリータ:treaters)で製造されることが多い。含浸乾燥装置の主な構成要素には、供給ローラ、樹脂含浸タンク、トリータオーブン、および巻き取りローラが含まれる。補強構造体(例えば、Eガラス)は通常、大型スプールに巻かれている。次に、このスプールを供給ローラに載せ、回転させて、ゆっくりと補強構造体を巻き出す。次に、硬化可能な熱硬化性組成物を入れた樹脂含浸タンクに補強構造体を通す。硬化性組成物が補強構造体に浸透する。タンクから取り出した後、被覆した補強構造体を上向きに、通常175から200℃の温度の垂直トリータオーブンに通して溶媒を蒸発させる。この時点で樹脂が重合し始める。塔から出てきた時には、ウェブが濡れておらず、または粘着しないように、複合材料は十分に硬化している。しかし、積層品を作る場合は、追加の硬化を行えるよう、硬化工程が完了する前に止める。次に、ウェブでプリプレグを巻き取りロールに巻く。
【0106】
硬化可能な熱硬化性組成物を含む、またはそれから誘導した電気および電子的物品も提示する。物品としては、医療または航空宇宙産業で使用されるような、プリント回路を含むものが挙げられる。その他の物品として、アンテナおよび同様の物品が挙げられる。プリント基板などの物品は、例えば、照明、ソーラーエネルギー、ディスプレイ、カメラ、オーディオおよびビデオ装置、パソコン、携帯電話、電子手帳などのデバイス、またはOA機器に使用される。例えば、積層品を含むプリント基板上に電気部品を載せることができる。硬化性組成物から調製した、様々な用途のための物品のその他の例として、銅張積層板(copper clad laminates:CCL)、例えば、メタルコア銅張積層板(metal core copper clad laminates:MCCCL)、複合品、および被覆品、例えば、多層品を挙げることができる。
【0107】
硬化可能な熱硬化性組成物から調製できる誘電体層は、回路アセンブリ、例えば、銅張積層板などのメタルクラッド積層板において有用と考えられる。例えば、積層板は、誘電体層、誘電体層の上に設けた伝導性金属回路層、および、必要に応じて、誘電体層の、伝導性金属層とは反対の側に設けた熱放散金属マトリクス層を含むことができる。誘電体層は必要に応じて、繊維プリフォーム(例えば、織物層)を含むことができる。例えば、誘電体層は、ガラス織物層を更に含むことができる。
【0108】
伝導性金属層は回路の形にすることができ、銅、亜鉛、スズ、黄銅、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、アルミニウム、ステンレススチール、鉄、金、銀、白金、チタンなど、またはこれらの組み合わせとすることができる。その他の金属として、銅-モリブデン合金、ニッケル-コバルト-鉄合金(Carpenter Technology Corporationから入手可能なKOVARなど)、ニッケル-鉄合金(National Electronic Alloys, Inc.から入手可能なINVARなど)、バイメタル、トリメタル、2層の銅と1層のINVARから作ったトリメタル、および、2層の銅と1層のモリブデンから作ったトリメタルが挙げられる。代表的な金属層は銅または銅合金を含む。あるいは、鍛造した(wrought)銅箔を使用しても良い。伝導性金属層の厚さは2から200μm、5から50μm、または5から40μmとすることができる。
【0109】
熱放散金属マトリクス層は、アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、銅、鉄、鋼など、またはこれらを組み合わせた熱伝導性金属とすることができる。その金属が金属回路層から電気的に絶縁しているならば、熱伝導性、電気伝導性金属が使用できる。好ましい支持金属マトリクス層の厚さは、0.1から20mm、0.5から10mm、または0.8から2mmとすることができる。
【0110】
伝導性金属層および支持金属マトリクス層は、誘電体層との接着性を高めるため、表面粗さが高くなるよう前処理を行っても良い。処理法としては、例えば、金属層の接着性を高めるための、洗浄、火炎処理、プラズマ放電、コロナ放電などが挙げられる。誘電体層は、接着剤を使わずに、伝導性金属層または熱放散層にしっかりと接着させることができ、あるいは接着剤を用いて、伝導性金属層または熱放散層への誘電体層の接着性を高めることができる。複合材シートを金属に付着させるために使用する接着剤の例として、ポリイミド接着剤、アクリル接着剤、エポキシ樹脂など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0111】
銅張積層板は、熱硬化性接着剤を使用せず、加圧下で、1つ以上の誘電体層と、1つ以上の伝導性金属層と、支持金属マトリクス層とを熱積層することによって製造できる。誘電体層は、硬化可能な熱硬化性組成物から調製でき、また、熱積層ステップの前に溶媒キャスト法で層を形成することによって調製できる。例えば、接着剤を使用しない方法で、加圧下、誘電体層と伝導性金属層と熱放散層とを共に熱積層して、積層板とすることができる。導電性金属層は、必要に応じて、積層の前に回路の形にしても良く、あるいは、伝導性金属層は、必要に応じて、エッチングによって電気回路の形とした後、積層を行っても良い。積層はホットプレスまたはロールカレンダー法、例えば、ロールツーロール法で行うことができる。銅張積層板の伝導性金属層に更にパターンを付け、プリント基板を作ることができる。更に、銅張積層板を造形して、シート、管、または棒状の回路板を作ることができる。
【0112】
あるいは、溶媒キャスト法で、硬化可能な熱硬化性組成物を導電性金属層上に直接流した(cast)後、熱放散金属マトリクス層に積層して、回路アセンブリ用の積層板を製造することができる。例えば、硬化可能な熱硬化性組成物を熱放散金属マトリクス層上に直接流した後、導電性金属層に積層しても良い。
【0113】
追加の層を含む多層積層板も、ホットプレスまたはロールカレンダー加工法などの熱積層法により、1ステップで、または連続する2つ以上のステップで製造することができる。例えば、積層板中に、7層以下または16層以下が存在することがある。ある態様において、積層板を、1ステップで製造し、あるいは、何らかの金属箔の層と何らかの織物の層の間に熱硬化性樹脂フィルムの層が含まれている積層板(織物-熱硬化性樹脂-金属-熱硬化性樹脂-織物-熱硬化性樹脂-金属箔、またはより少ない層の組み合わせから成る連続した層)となるように、2つ以上の連続的なステップで製造することができる。別の態様において、第1の積層板を、1ステップで製造し、あるいは、2層の熱硬化性樹脂の間に織物の層(2層の熱硬化性樹脂の間にあるガラス織物の層など)となるように、2つ以上の連続的なステップで製造することができる。次に、第1積層板の熱硬化性樹脂の側に金属箔を被せて、第2の積層板を製造することができる。
【0114】
硬化可能な熱硬化性組成物から製造したプリント回路板の全体の厚さは、0.1から20mm、より詳細には0.5から10mmとすることができる。このとき、全体の厚さとは、誘電体層、導電性金属層、および支持金属マトリクス層の各層を含むアセンブリを指す。回路アセンブリの全体的な厚さは、0.5から2mm、より詳細には0.5から1.5mmとすることができる。誘電体層の厚さには特に制限はなく、5から1500μm、5から750μm、10から150μm、または10から100μmとすることができる。例えば、このプリント回路板は、発光ダイオード(LED)の用途に使用される金属コアプリント回路板(MCPCB)とすることができる。
【0115】
硬化可能な熱硬化性組成物は、コーティングとして、例えば、多層品の製造に使用できる。コーティングの製造法は、硬化可能な熱硬化性組成物と、必要に応じてフルオロポリマとを混合する工程と、基材上にコーティングを形成する工程とを含むことができる。例えば、多層品は、硬化可能な熱硬化性組成物を含む層を形成する工程と、層から溶媒を除去し、必要に応じて、硬化してプライマ層を生成する工程と、セラミック(例えば、Al2O3、TiO2、ZrO2、Cr2O3、SiO2、MgO、BeO、Y2O3、Al2O3-SiO2、MgO-ZrO2、SiC、WC、B4C、TiC、Si3N4、TiN、BN、AlN、TiB、ZrB2など)、熱可塑性ポリマ、フルオロポリマ(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなど)、またはこれらの組み合わせを含む第2の層をプライマ層の上に形成して、多層品を生成する工程と、必要に応じて、多層品を熱処理して硬化可能な熱硬化性組成物を硬化する工程とによって製造することができる。一部の態様において、第2層は更に、硬化可能な熱硬化性組成物を含むことができる。
【0116】
硬化可能な熱硬化性組成物のその他の用途としては、例えば、酸浴槽;中和槽;航空機構成部品;橋桁;橋敷板;電解槽;排気筒;スクラバー;スポーツ用品;階段室;通路;自動車外装パネル(フード、トランクの蓋など);フロアパン;エアースクープ;パイプおよびダクト(ヒーターダクトなど);工業用送風機、ファンハウジング、およびブロワー;工業用ミキサ;ボートの船体およびデッキ;海上ターミナル防舷材;タイルおよびコーティング;建築用パネル;事務機器ハウジング;トレイ(ケーブルトレイなど);コンクリート調整剤;食洗機および冷蔵庫部品;電気封止材;電気パネル;タンク(電気精錬槽、軟水化タンク、燃料タンク、様々なフィラメント巻タンクおよびタンクライニングなど);家具;ガレージドア;格子;防具;旅行鞄;屋外自動車;圧力タンク;光導波路;レーダードーム;柵;鉄道部品(タンク車など);ホッパー車カバー;車ドア;トラック荷台ライナー;衛星放送受信用パラボラアンテナ;標識;太陽エネルギーパネル;電話開閉装置ハウジング;トラクター部品;変圧器カバー;トラック部品(フェンダー、フード、車体、運転台、ベッドなど);回転機械用絶縁材(接地絶縁、ターン絶縁、相分離絶縁(phase separation insulation)など);整流子;心線絶縁材およびコードおよび結紮テープ;ドライブシャフトカップリング;プロペラ羽根;ミサイル構成部品;ロケットモーターケース;翼セクション;吸引管;胴体セクション;翼外皮およびフレア;エンジンナセル;カーゴドア;テニスラケット;ゴルフクラブシャフト;釣り竿;スキーおよびスキーストック;自転車部品;横向リーフスプリング;ポンプ(自動車排ガスポンプなど);電気部品、埋設剤、および工具(電気ケーブルジョイントなど);巻線および高密度(densely packed)多素子アセンブリ;電気機械装置のシーリング;バッテリケース;抵抗器;ヒューズおよびサーマルカットオフ装置;プリント配線板用コーティング;注型品(casting items)(コンデンサ、変圧器、クランクケースヒータなど);小型成形電子部品(コイル、コンデンサ、抵抗器、半導体など);化学処理、パルプおよび紙、発電、および廃水処理における鋼の代替品;スクラブ塔;構造用の引抜成形品(構造部材、格子、安全柵など);スイミングプール、スイミングプール滑り台、温水浴槽、およびサウナ;ボンネット下で使用されるドライブシャフト;コピー機用ドライトナー樹脂;海で使用する工具および複合材料;遮熱材;潜水艦船体;プロトタイプ生成;実験モデルの作成;積層したトリム;ドリル加工用固定具;ボンディングジグ;検査用固定具;工業用メタルフォーミングダイ;航空機ストレッチブロックおよびハンマーフォーム;真空成形工具;床張り材(製造および組み立てエリア、クリーンルーム、機械工場、制御室、実験室、駐車場、冷凍室、冷却室、屋外荷積所などの床張り材);帯電防止用導電性組成物;装飾用床張り材;橋の伸縮ジョイント;構造用コンクリートのひびを塞ぎ、補修するための注入用モルタル;タイル用グラウト材;機械装置レール;金属ダボ;ボルトおよびポスト;油および燃料貯蔵タンクの修理、およびその他非常に多くの用途が挙げられる。
【0117】
これらの物品および材料の製造に有用な方法として、熱硬化性樹脂を加工処理するための技術において一般的に知られている方法が挙げられる。このような方法は、例えば、Engineered Materials Handbook, Volume 1, Composites, ASM International Metals Park, Ohio, copyright 1987 Cyril A. Dostal Senior Ed, pp. 105-168 and 497-533、および “Polyesters and Their Applications" by Bjorksten Research Laboratories, Johan Bjorksten (pres.) Henry Tovey (Ch. Lit. Ass.), Betty Harker (Ad. Ass.), James Henning (Ad. Ass.), Reinhold Publishing Corporation, New York, 1956 などの文献に記載されている。加工技術としては、樹脂トランスファー成形;シート成形;バルク成形;引抜成形;射出成形(反応射出成形(RIM)など);大気圧成形(APM);キャスティング(遠心および静動鋳造、オープンモールドキャスティングなど);積層法(湿式または乾式積層およびスプレー積層など);更に、接触圧成形(contact molding)(円筒状接触圧成形など);圧縮成形(吸引式(vacuum assisted)樹脂トランスファー成形および化学促進式(chemically assisted)樹脂トランスファー成形など);マッチドツール成形(matched tool molding);オートクレーブ硬化;空気中での熱硬化;バキュームバギング;引抜成形;Seeman複合材樹脂注入製造法(Seeman's Composite Resin Infusion Manufacturing Processing:SCRIMP);樹脂とガラスを連続的に組み合わせたオープンモールド成形;および、フィラメントワインディング(円筒状フィラメントワインディングなど)が挙げられる。例えば、樹脂トランスファー成形法で物品を製造することができる。
【0118】
硬化可能な熱硬化性組成物から誘導された物品も提示され、この物品は、複合材料、発泡体、繊維、層、コーティング、封止材、接着材、シーラント、鋳造構成部品、プリプレグ、ケーシング、注型品(cast article)、積層品、またはこれらの組み合わせであり、あるいは、この物品は、メタルクラッド積層板、電子部品用複合材料、構造用複合材料、またはこれらの組み合わせである。物品は、文中に開示されているように、例えば、流し込み(casting)、鋳造(molding)、押し出しなどを行い、成形した物品から溶媒を除くことで製造できる。ある態様では物品が1枚の層であって、硬化性組成物を基材上に流してキャスト層を作ることで成形できる。溶媒はどのような方法で除去しても良く、キャスト層を加熱して、加熱および加圧下でキャスト層を加熱して、例えば、キャスト層を別の基材に被覆することで、除去できる。ある態様において、上記の方法で製造される物品として、接着剤、包装材料、キャパシタフィルム、または回路基板層を挙げることができる。ある態様において、硬化性組成物から調製される物品は、誘電体層、または、基材上に配置したコーティング、例えば、ワイヤまたはケーブルコーティングであっても良い。例えば、物品は、例えば、照明または通信の用途に使用される、回路材料中の、例えば、プリント回路板中の誘電体層であっても良い。硬化性組成物から調製される物品のその他の例は、1つ以上の塗装層であっても良い。本硬化性組成物を用いて、他の硬化可能な熱硬化性組成物のための、文中に開示されているような物品を製造することができる。
【0119】
本願の開示内容について以下の実施例で更に詳しく説明するが、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0120】
[実施例1:交互コオリゴマの調製]
スキーム1に従って、ジシクロペンタジエン-ジメトキシベンゼン交互コオリゴマを調製した。
スキーム1
【化21】
【0121】
ジシクロペンタジエン(DCPD)-ジメトキシベンゼン共重合体(I)の合成:
撹拌機、凝縮器、および窒素流入装置を取り付けた100mLの3つ口丸底フラスコを窒素でパージした。6.28グラム(g)(0.045モル)の1,4-ジメトキシベンゼンと、20mLのo-ジクロロベンゼン(ODCB)と、1.33g(0.01モル)の塩化アルミニウムを反応フラスコに加えた。反応混合物である内容物を100℃に加熱した。反応フラスコの内容物が平衡に達したら、10mLのODCBに溶解した、6.6g(0.05モル)のジシクロペンタジエン(DCPD)を、添加漏斗からフラスコに滴下して加えた。全てのDCPD溶液を2~3時間で加えられるよう、DCPDの添加速度を保った。内容物を16時間反応させた後、試料を取り出し、GPCを用いて分子量を測定した。反応物の分子量を上げるため、AlCl
3触媒を周期的に加えた。フラスコの内容物に、100mLの5質量%NaOH溶液を加えてカチオンを止め、1時間撹拌した。次に、反応内容物をメタノール中で沈殿させた。オリゴマを、50:50(v/v)のメタノール/水で30分間洗浄し(実験室の震とう機で震とう)、濾過した。同様に、ポリマをメタノールで3回洗い、乾燥して、明灰色の粉末を得た。共重合体の
1H NMRを
図1に示す。交互共重合体の特性を表1に示す。
【0122】
【0123】
[予想的実施例2:ジシクロペンタジエン交互コオリゴマの調製]
ジシクロペンタジエン-テトラメチルベンゼンコオリゴマは、実施例1に記載の方法を用いて、スキーム2に示すように調製されると考えられる。
スキーム2
【化22】
【0124】
[実施例3:ポリフェニレンエーテル-ジシクロペンタジエンブロック共重合体の調製]
2,6-ジメチルフェノールキャップドDCPD-DMBコオリゴマ(II)の合成:
100℃で18時間反応させた後、1.83gの2,6-キシレノールを反応フラスコに加える以外は、上記の実施例1の方法を用いて、DCPDと1,4-ジメトキシベンゼンのオリゴマを合成した。更に16時間反応させて、エンドキャッピング反応を完了させた。反応混合物をメタノールに加えてスラリーとし、これを1時間撹拌して濾過した。濾過した固体をメタノールで2回洗った。濾過した固体を真空オーブン中で乾燥させた。
【0125】
エンドキャップド2,6-ジメチルフェノールキャップドDCPD-DMBコオリゴマ(官能化PPE-DCPD-コ-DMB-PPEトリブロック共重合体(IV)中のxおよびy=1)の合成:
25gの2,6-ジメチルフェノールキャップドジシクロペンタジエン-ジメトキシベンゼンコオリゴマ(II)と、64gのトルエンを反応器に入れて加熱し、共沸蒸留によって40mLを除去した。反応器を85℃まで冷やし、0.25g(0.002モル)の4-ジメチルアミノピリジンを反応器に加えた。0.2g(0.0017モル)の無水メタクリル酸(MAA)を添加漏斗から滴下して加えた。全てのMAAが消費されるまで、反応物を加熱還流した。フェノール性末端基の消費について反応をモニタし、NMR分析で化学構造を確認した。反応混合物を20mLのトルエンで希釈し、メタノール/反応混合物の体積比が約5:1となるよう、反応混合物をメタノールに加えてスラリーとした。このスラリーを1時間撹拌した。沈殿物を濾別し、1Lのメタノールで2回洗った。N
2を流し入れながら、生成物をオーブン中、周囲温度で乾燥させた。
スキーム3
【化23】
【0126】
[予想的実施例4:ジシクロペンタジエン-テトラメチルベンゼンコオリゴマを用いて、実施例3を繰り返すことを想定]
スキーム4
【化24】
【0127】
[実施例5:ポリシクロペンタジエン-ジメチルフェノール二付加物(PCPD-DMP二付加物)の合成]
ディールス-アルダー付加重合によってポリシクロペンタジエンオリゴマを合成し、下記の構造のものを生成した。次に、2,6-ジメチルフェノールで不飽和二重結合をアルキル化した後、酸化カップリング重合および官能化を行った。
スキーム5a:付加環化重合によるポリシクロペンタジエンの合成
【化25】
【0128】
手順:ポリシクロペンタジエン-ジメチルフェノール二付加物(PCPD-DMP二付加物)の合成
開いたParr反応器に、250g(2.02モル)のDCPDと、250g(2.71モル)のトルエンを入れた。雰囲気に対して開いているバルブを全て閉じ、反応器を密閉した。反応器を270℃で4時間加熱した。反応後、反応器を室温(RT)まで冷やし、50質量%のトルエン中の生成物を反応器から取り出して保存し、試験した。NMR分析で構造を確認した。GPC測定で分子量を求めた(Mw=2542、Mn=827、PD=3.1)。
【0129】
スキーム5b:ポリシクロペンタジエン-ジメチルフェノール二付加物(PCPD-DMP二付加物)の合成
【化26】
【0130】
手順:組み立てた反応器に、250gの2,6-ジメチルフェノール(2.04モル、融解物)と、11.5g(0.067モル)のp-トルエンスルホン酸(p-TSA)を入れた。反応器を170℃に加熱した。反応器を加熱している間、217gの50質量%のPCPD/トルエン(先のステップの粗生成物)を添加漏斗に入れ、80℃で滴下して加えた。1H NMRにより、アルケンプロトンの強度の減少を観測して、反応をモニタした。反応が遅い場合は、反応速度を上げるため、溶媒(約50g)を除去した。アルケンプロトン消費率(アルケンピークの強度を開始時のアルケンピークの強度で除して計算)が約99%になったら、撹拌しながら、6.65g(0.067モル)のKHCO3を反応器に加えて反応を止めた。反応混合物を2Lのメタノール(MeOH)に加えて反応生成物を沈殿させ、得られたスラリーを濾過した。取り出した沈殿物を50質量%のCHCl3に溶解させた後、1:1の比で、MeOH中で沈殿させた。濾過ケーキを脱イオン水で、次にMeOHで洗った後、真空オーブン中、60℃で乾燥させた。1H NMR分析で構造(即ち、PCPD上のビニル基、および、2,6-ジメチルフェノールと末端シクロペンタンおよびノルボルナン環との間の結合に相当するピークの消失)を確認した。
【0131】
スキーム5c:エンドキャップドポリシクロペンタジエン-ジメチルフェノール二付加物の合成
【化27】
【0132】
手順:40gのPCPD-DMP二付加物と、79g(0.85モル)のトルエンを反応器に入れて加熱し、共沸蒸留によって40mLを除いた。反応器を85℃まで冷やし、0.41g(0.0033モル)の4-ジメチルアミノピリジンを反応器に加えた。12.75g(0.08モル)の無水メタクリル酸(MAA)を、添加漏斗から滴下して加えた。全てのMAAが消費されるまで反応物を加熱還流した。フェノール性末端基の消費により反応をモニタし、NMR分析で化学構造を確認した。反応器に40mLのトルエンを加えて希釈し、メタノールと反応混合物の体積比が約5:1の比となるよう、反応混合物をメタノールに加えて、生成物を沈殿させた。得られたスラリーを1時間撹拌した。沈殿物を濾過し、濾過した固体をメタノールで2回(各回1L)で洗った。N2を流し入れながら、生成物をオーブン中、周囲温度で乾燥させた。
【0133】
スキーム5d:ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシクロペンタジエン-ポリ(フェニレンエーテル)トリブロック共重合体(PPE-PCPD-PPE)の合成
【化28】
【0134】
手順:160gのトルエンに加えた40gのPCPD-DMP二付加物を反応器に加えた。PCPD-DMP二付加物が完全に溶解したら、温度を30℃にセットし、0.9275gのDBAと、2.1642gのDMBAと、0.3937gのDBEDAを反応器に加えた。0.0817gのCu2Oと、1.0591gのHBrを反応器に加え、酸素を流し始めた。105.5gの、50質量%の2,6-ジメチルフェノール(DMP)/トルエンを、45分かけて滴下して加えた。反応終了時、23.0126gの水に加えた1.4686gのNTAを加え、温度を60℃に上げて、2時間撹拌した。キレート化後、トルエン相を分け、トルエンを除去して生成物を取り出した。この物質を更に、110℃で一晩、真空乾燥させた。NMRを用いてポリシクロペンタジエンとポリ(フェニレンエーテル)ブロックとの結合を確認した。GPCで分子量を求めた(Mw=21083、Mn=4644、PDI=4.5)。DSCでTgを求めた(Tg=202℃)。
【0135】
スキーム5e:エンドキャップドポリフェニレンエーテル-ポリシクロペンタジエン-ポリフェニレンエーテルトリブロック共重合体の合成
【化29】
【0136】
手順:109gのトルエンを反応器に加え、温度を50℃に上げて70gのPPE-PCPD-PPEを反応器に加えた。完全に溶解したら、共沸蒸留させるため、溶液を120℃に加熱した。反応混合物の溶液濃度が50/50(トルエン/PPE-PCPD-PPE)になったら、温度を85℃に下げた。0.3282g(0.002686モル)の4-ジメチルアミノピリジンを溶液に加えた。完全に溶解したら、MAAをゆっくりと加え、温度を120℃にセットした。フェノール性末端基の消費について、反応をモニタした。反応混合物を90℃に冷まして40mlのトルエンを加え、反応混合物をメタノールに加えた(このとき、反応混合物とメタノールの比は約5:1)。沈殿物が生成したら、ブフナー漏斗を用いて混合物を濾過し、メタノールで2回濯いだ。取り出した固体を真空オーブンに入れ、一晩乾燥させた。GPCで分子量を求めた(Mw=14187、Mn=3181、PDI=4.5)。DSCでTgを求めた(Tg=204℃)。
【0137】
[実施例6]
DCPDホモオリゴマ(スキーム6)は3つの異なる合成ルートから得ることができ、これを用いて、スキーム7に従って、2,6-ジメチルフェノール(DMP)で官能化したDCPDホモオリゴマ、ブロック共重合体、および、架橋基で官能化したブロック共重合体を製造することができる。
スキーム6
【化30】
スキーム7
【化31】
【0138】
スキーム6a:ポリジシクロペンタジエンの合成
【化32】
【0139】
手順:反応フラスコを-14.5℃まで冷却し、N2(気体)でパージした。DCPD モノマを30%のトルエンと混合し、混合物を反応器に移した。反応器をN2でパージし、温度が-14.5℃に達するまで30分間撹拌した。目標温度に達したら、3から4.5質量%のAlCl3を反応混合物に加え、15分間撹拌後、100mLのメタノールを加えて反応を止めた。粗生成物は、メタノール中の黄色粘稠物質であった。生成物を沈殿させるため、追加のメタノールを加えた。NMR分析で化学構造を確認した。GPCで分子量を求めた(Mw=3937、Mn=1584、PDI=2.5)。DSCでTgを求めた(Tg=170℃)。
【0140】
スキーム6b:ポリジシクロペンタジエン-ジメチルフェノール付加物(PDCPD-DMP付加物)の合成
【化33】
【0141】
手順:反応器をN2(気体)でパージした。トルエンに加えた2.49モルの2,6-DMPモノマと0.498モルのポリDCPD(カチオン重合生成物)を反応器に移してN2でパージし、60℃に達するまで30分間撹拌した。目標温度に達したら、0.011モルのp-トルエンスルホン酸を反応混合物に加え、60分間撹拌した。0.011モルのNaHCO3(脱イオン水中、5質量%)を加え、更に30分間撹拌した。ビニル基の減少について、反応をNMRでモニタした。反応混合物を水で3回、あるいはpHが脱イオン水のpHと同じになるまで洗った後、反応混合物をメタノールに加えて、メタノール中で沈殿させた。混合物を濾過し、茶色の粉末を得た。
【0142】
スキーム6c:エンドキャップドポリジシクロペンタジエン-ジメチルフェノール付加物の合成(予想)
【化34】
【0143】
手順:PDCPD-DMP付加物とトルエンを反応器に入れて加熱し、共沸蒸留によって40mLのトルエン/水共沸混合物を除く。反応器を85℃まで冷やし、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を反応器に加える。無水メタクリル酸(MAA)を添加漏斗から滴下して加える。全てのMAAが消費されるまで、反応物を加熱還流する。反応混合物をメタノールに加えて、生成物をメタノール中で沈殿させる。沈殿物を濾過し、乾燥させる。
【0144】
スキーム6d:ポリフェニレンエーテル-ポリシクロペンタジエングラフト共重合体(PDCPD-グラフト-PPE)の合成(予想)
【化35】
【0145】
手順:トルエン中のPDCPD-DMP付加物を反応器に加える。PDCPD-DMP付加物が完全に溶解したら、温度を30℃にセットする。DBA、DMBA、およびDBEDAを反応器に入れる。Cu2OとHBrを反応器に加え、酸素を流し始める。トルエンに加えたDMPを45分かけて滴下して加える。反応が終わったら、水に加えたNTAを加え、温度を60℃に上げて2時間撹拌する。トルエン相を分け、トルエンを除いて生成物を取り出す。この物質を更に真空乾燥させる。
【0146】
スキーム6e:エンドキャップドポリフェニレンエーテル-ポリシクロペンタジエングラフト共重合体の合成(予想)
【化36】
【0147】
手順:PDCPD-グラフト-PPEとトルエンを反応器に入れて加熱し、共沸蒸留によって40mLを除く。反応器を85℃まで冷やし、4-ジメチルアミノピリジン(pyradine)(DMAP)を反応器に加える。無水メタクリル酸(MAA)を添加漏斗から滴下して加える。全てのMAAが消費されるまで、反応物を加熱還流する。生成物をメタノール中で沈殿させる。沈殿物(particles)を濾過し、乾燥する。
【0148】
本願の開示内容は更に、以下の態様も包含する。
【0149】
態様1:ポリフェニレンエーテル成分と、構造式 D1、D2、D3-1、D3-2、またはD3-3で示される構造のものを含むジシクロペンタジエン共重合体成分とを含む共重合体であって、
【化37】
構造式D1、
【化38】
構造式D2、
【化39】
構造式D3-1、
【化40】
構造式D3-2、
【化41】
構造式D3-3、
式中、出現毎のZ
1およびZ
3は独立して、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、このヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、出現毎のZ
2およびZ
4は独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、このヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、出現毎のR
1からR
4は独立して、水素、C
1~C
12ヒドロカルビル、またはC
1~C
12ヒドロカルビルオキシを含み、xは少なくとも1(at least one 1)から50であり、yは少なくとも1(at least one 1)から50であり、nは少なくとも1(at least one 1)から100であり、Q
1は、単結合、水素、または末端官能基を含む。
【0150】
態様1a:態様1の共重合体組成物であって、Z1およびZ3はそれぞれ独立して、ハロゲン、非置換または置換アルキル、フェニル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、またはアルコキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、Z2およびZ4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換アルキル、フェニル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、またはアルコキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、R1からR4はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを含む。
【0151】
態様1b:態様1の共重合体組成物であって、Z1およびZ3はそれぞれ独立して、ハロゲン、非置換または置換アルキル、フェニル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、またはアルコキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、Z2およびZ4はそれぞれ独立して水素を含み、R1からR4はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを含む。
【0152】
態様1c:態様1の共重合体組成物であって、Z1およびZ3はそれぞれ独立してメチルを含み、Z2およびZ4はそれぞれ独立して水素を含み、R1からR4はそれぞれ独立して、水素、メチル、イソプロピル、ビニル、アリル、またはメトキシを含む。
【0153】
態様2:前記態様のいずれかの共重合体組成物であって、構造式D1で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分は構造式P1で示されるものから誘導され、構造式D2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分は構造式P2で示されるものから誘導され、構造式D3-1で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分は構造式P3-1で示されるものから誘導され、構造式D3-2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分は構造式P3-2で示されるものから誘導され、構造式D3-3で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分は構造式P3-3で示されるものから誘導され、式中、nは1から100である。
【化42】
構造式P1、
【化43】
構造式P2、
【化44】
構造式P3-1、
【化45】
構造式P3-2、
【化46】
構造式P3-3、
【0154】
態様3:前記態様のいずれかの共重合体組成物であって、ポリフェニレンエーテル成分は次に示すような構造を持ち、
【化47】
式中、Z
1およびZ
3はそれぞれ独立して、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、このヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含み、Z
2およびZ
4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、このヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(このとき、ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)を含む。
【0155】
態様4:前記態様のいずれかの共重合体組成物であって、共重合体は、構造式D1またはD2で示されるジシクロペンタジエン共重合体成分から誘導されたブロック共重合体である。
【0156】
態様5:前記態様のいずれかの共重合体組成物であって、ジシクロペンタジエン共重合体成分を含む、少なくとも2つのAブロックを含み、望ましくは、共重合体はA-B-Aトリブロック共重合体である。
【0157】
態様6:前記態様のいずれかの共重合体組成物であって、ポリフェニレンエーテル成分を含む、少なくとも2つのBブロックを含み、望ましくは、共重合体はB-A-Bトリブロック共重合体である。
【0158】
態様7:構造式D3-1、D3-2、またはD3-3で示されるジシクロペンタジエン成分から誘導されたグラフト共重合体を含む、前記態様のいずれかの共重合体。
【0159】
態様8:前記態様のいずれかの共重合体組成物であって、ジシクロペンタジエン共重合体成分は、ビニルベンゼンエーテル末端官能基、メタクリラート末端官能基、アクリラート末端官能基、エポキシ末端官能基、ヒドロキシル末端官能基、シアナートエステル末端官能基、アミン末端官能基、マレイミド末端官能基、アリル末端官能基、スチレン末端官能基、活性化エステル末端官能基、または無水物末端官能基を含む、少なくとも1つの末端官能基を含む。
【0160】
態様9:前記態様のいずれかのジシクロペンタジエン共重合体を製造する方法であって、前記製造法は、構造式P1、P2、P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質を、置換または非置換一価フェノールと共有結合させる工程を含み、ジシクロペンタジエン前駆物質および一価フェノールは相補的反応基を含む。
【0161】
態様10:前記態様のいずれかの共重合体を製造する方法であって、前記製造法は、置換または非置換一価フェノールを酸化重合させて、ジシクロペンタジエン共重合体成分から共重合体を生成する工程、または、構造式P1、P2、P3-1、P3-2、またはP3-3で示されるジシクロペンタジエン前駆物質とポリフェニレンエーテルオリゴマとを共有結合させる工程を含み、ジシクロペンタジエン前駆物質およびポリフェニレンエーテルオリゴマは相補的反応基を含む。
【0162】
態様11:態様1から8のいずれかの共重合体を含む硬化可能な熱硬化性組成物であって、前記熱硬化性組成物は、必要に応じて更に、橋かけ剤、硬化剤、硬化触媒、硬化開始剤、またはこれらの組み合わせの1つ以上;難燃剤、充填剤、カップリング剤、またはこれらの組み合わせの1つ以上;あるいは、これらの組み合わせを含む。
【0163】
態様12:態様11の硬化可能な熱硬化性組成物の硬化生成物を含む、硬化した熱硬化組成物。
【0164】
態様13:態様12の硬化した熱硬化組成物を含む物品であって、前記物品は、複合材料、発泡体、繊維、層、コーティング、封止材、接着剤、シーラント、鋳造構成部品、プリプレグ、ケーシング、注型品、積層品、またはこれらの組み合わせであり、あるいは、前記物品は、メタルクラッド積層板、電子部品用複合材料、構造用複合材料、またはこれらの組み合わせである。
【0165】
態様14:態様11の硬化可能な熱硬化性組成物と溶媒とを含むワニス組成物。
【0166】
態様15:態様14のワニス組成物から製造した物品であって、望ましくは、前記物品は、繊維、層、コーティング、注型品、プリプレグ、複合材料、または積層品であり、あるいは、前記物品はメタルクラッド積層板である。
【0167】
本組成物、方法、および物品は、選択的に、文中に開示されている任意の適当な材料、ステップ、または構成要素を含む(comprise)、から成る(consist of)、または本質的に~から成る(consist essentially of)ことができる。本組成物、方法、および物品は、付加的に、または選択的に、本組成物、方法、および物品の機能または目的の達成に必ずしも必要ではない任意の材料(または種)、ステップ、または構成要素を除いて、または実質的に含まないように構成することができる。
【0168】
文中に開示されている全ての範囲は終点を含んでおり、終点は独立して互いに組み合わせ可能である(例えば、“25質量%以下、またはより詳細には5質量%から20質量%”の範囲は、終点と、“5質量%から25質量%”など、この範囲内にある全ての値を含む)。“組み合わせ(combinations)”は、混合物(blends、mixtures)、合金、反応生成物などを含む。用語“第1(first)”、“第2(second)”などは、順番、数量、または重要度を何ら示すものではなく、ある要素と別の要素とを識別するために使用する。用語“a”、“an”、および“the”は、数量の限定を示すものではなく、別途指示のない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、単数形と複数形の両方を含むと解釈すべきである。“または(or)”は、別に明示されない限り、“および/または(and/or)”を意味する。明細書中における“一部の(some)実施形態”、“ある(an)実施形態”などでの言及は、その実施形態に関連して述べられているある要素が、文中に記載されている少なくとも1つの実施形態には含まれているが、他の実施形態中には存在してもしていなくても良いことを意味する。更に、記載されている要素は、様々な実施形態において、任意の適当な方法で組み合わせ可能であることは当然である。“これらの組み合わせ(combination thereof)”は非限定(open)であって、挙げられている構成要素または特性の少なくとも1つを含み、必要に応じて、挙げられていない類似または同等の構成要素または特性を共に含む、任意の組み合わせを含んでいる。
【0169】
文中にそうでないことが明記されていない限り、全ての試験基準は、本願の出願日、あるいは、優先権が主張されている場合、その試験基準が記載されている最も早い優先権出願の出願日時点で有効な、最も新しい基準である。
【0170】
別途定義のない限り、文中で使用する技術および科学用語は、本願の属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を持つ。引用されている全ての特許、特許出願、その他の参考文献は、その内容を全て本件に引用して援用する。しかし、本願中の用語が援用する参考文献の用語と矛盾する、または相反する場合は、援用する参考文献からの矛盾する用語よりも本願の用語を優先する。
【0171】
化合物は標準命名法を用いて記述する。例えば、指示された何らかの基で置換されていない位置は、指示された結合で、または水素原子で満たされたその原子価を持つものとする。2つの文字または記号に挟まれていないダッシュ(“-”)は、置換基が結合している位置を示すために使用する。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素で結合している。
【0172】
文中で使用する用語“ヒドロカルビル”は、“置換されたヒドロカルビル”であると特に明示されていなければ、単独で、あるいは、他の用語の接頭辞、接尾辞、または一部として使用される場合であっても、炭素と水素だけを含む残基を指す。ヒドロカルビル残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、または不飽和とすることができる。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、および不飽和炭化水素基の組み合わせも含むことができる。ヒドロカルビル残基が置換されていると述べられている場合、炭素および水素の他に、ヘテロ原子を含むことができる。
【0173】
用語“アルキル”は、分枝または直鎖、飽和(unsaturated)脂肪族炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、n-およびs-ヘキシルを意味する。“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、分枝または直鎖、一価炭化水素基(例えば、エテニル(-HC=CH2))を意味する。“アルコキシ”は、酸素を経て結合しているアルキル基(即ち、アルキル-O-)、例えば、メトキシ、エトキシ、sec-ブチルオキシ基を意味する。“アルキレン”は、分枝または直鎖、飽和二価脂肪族炭化水素基(例えば、メチレン(-CH2-)、プロピレン(-(CH2)3-))を意味する。“シクロアルキレン”は、二価の環式アルキレン基 -CnH2n-x (式中、xは、環化によって置き換わった水素の数)を意味する。“シクロアルケニル”は、1つ以上の環と、環内に1つ以上の炭素-炭素二重結合とを含み、全ての環員が炭素である一価基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)を意味する。“アリール”は、指定した数の炭素原子を含む芳香族炭化水素基(フェニル、トロポン、インダニル、ナフチルなど)を意味する。“アリーレン”は、二価のアリール基を意味する。“アルキルアリーレン”は、アルキル基で置換されたアリーレン基を意味する。“アリールアルキレン”は、アリール基で置換されたアルキレン基(例えば、ベンジル)を意味する。接頭辞“ハロ”は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード置換基の1つ以上を含む基または化合物を意味する。異なるハロ基の組み合わせ(例えば、ブロモとフルオロ)、またはクロロ基のみが存在していても良い。接頭辞“複素(ヘテロ:hetero)”は、ヘテロ原子である少なくとも1つの環員(例えば、1、2、または3個のヘテロ原子)を含む化合物または基を意味し、このときヘテロ原子は、それぞれ独立して、N、O、S、Si、またはPである。“置換された”は、その化合物または基が、置換されている原子の通常の原子価を超えないという条件で、水素の代わりに、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、または4個)の置換基(それぞれ独立して、C1~9アルコキシ、C1~9ハロアルコキシ、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)2-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)2-アリール)、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、トシル(CH3C6H4SO2-)、C3~12シクロアルキル、C2~12アルケニル、C5~12シクロアルケニル、C6~12アリール、C7~13アリールアルキレン、C4~12ヘテロシクロアルキル、およびC3~12ヘテロアリールとすることができる)で置換されていることを意味する。ある基について示されている炭素原子の数は置換基を含んでいない。例えば、-CH2CH2CN は、ニトリルで置換されたC2アルキル基である。
【0174】
特定の実施形態について述べてきたが、現時点で予想されていない、または予想されていないと考えられる、代替(alternatives)、変更(modifications)、変化(variations)、改善(improvements)、および実質的同等物が、出願者や他の当業者によって考案されることがある。従って、出願時の、および修正の可能性のある添付請求項は、これらの代替、変更、変化、改善、および実質的同等物を全て包含するものとする。
【国際調査報告】