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特表2024-544487水からの水素生成のためのシステム、電極、および方法
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  • 特表-水からの水素生成のためのシステム、電極、および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】水からの水素生成のためのシステム、電極、および方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/081 20210101AFI20241126BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 11/085 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 11/069 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 11/065 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 11/057 20210101ALI20241126BHJP
【FI】
C25B11/081
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B11/052
C25B11/085
C25B11/069
C25B11/065
C25B11/057
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525802
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 SE2022000009
(87)【国際公開番号】W WO2023096543
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2100177-1
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524159572
【氏名又は名称】ハイエンゲン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ベルホ,オスカー
(72)【発明者】
【氏名】ビスワナス,ダス
(72)【発明者】
【氏名】アーケルマルク,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】デュッタ,ジョイディープ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA23
4K011AA25
4K011AA47
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB18
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、水の酸化およびプロトンの還元から電気化学的に水素を製造するための方法、電極およびシステムに関する。ルテニウム錯体を導電性材料に共有結合させることによって、水の酸化およびプロトンの還元から電気化学的に水素を製造するための方法として、カーボンクロス(FCC)にフッ素をドープし、これを電気化学セルにおける陽極および/または陰極として使用する方法が提供される。水の酸化からの電気化学的な水素の製造に使用するための前記電極は、-CH-CHスペーサー単位を有するピリジンリンカーを持つ導電性材料上に共有結合したルテニウム錯体を含む前記電極によって達成される。水の酸化およびプロトンの還元から電気化学的に水素を製造するための前記システムは、陽極および/または陰極の2つの電極を有する電気化学セルを少なくとも含み、前記電極は導電性材料上に共有結合したルテニウム錯体を含み、前記導電性材料がフッ素ドープカーボンクロス(FCC)によって作られることによって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンクロス(FCC)にフッ素をドープし、これを電気化学セルにおける陽極および/または陰極として使用することを特徴とする、ルテニウム錯体を導電性物質に共有結合させることによって水の酸化およびプロトンの還元から電気化学的に水素を製造するための方法。
【請求項2】
前記フッ素化カーボンクロス(FCC)をピリジンリンカーによって修飾することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素化カーボンクロス(FCC)を、-CH-CHスペーサー単位を有するピリジンリンカーによって修飾することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ジアゾ化反応戦略によって提供されるピリジンリンカーを含むフッ素ドープカーボンクロス(FCC)を使用して、ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス(PFCC)を得、次いで、前記ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス(PFCC)はルテニウム錯体を固定するために使用されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
電極は、-CH-CHスペーサー単位を有するピリジンリンカーを有する導電性材料に共有結合したルテニウム錯体を含むことを特徴とする、水の酸化からの電気化学的な水素の製造に使用するための電極。
【請求項6】
フッ素ドープカーボンクロス(FCC)は、ジアゾ化反応戦略によって提供されるピリジンリンカーを含み、ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス(PFCC)を得、次いで、前記ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス(PFCC)は、ルテニウム錯体を固定するための担体を構成することを特徴とする、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
導電性材料がフッ素ドープカーボンクロス(FCC)によって作られることを特徴とする、水の酸化およびプロトンの還元から電気化学的に水素を製造するためのシステムであって、陽極および/または陰極の2つの電極を有する電気化学セルを少なくとも含み、前記電極は前記導電性材料上に共有結合したルテニウム錯体を含む、システム。
【請求項8】
前記電極(1a,b)を還元によって再生するために、前記電極(1a,b)の極性を変更するスイッチ(7)が配置されていることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
スイッチ(8)は、前のO-生成電極区画(5a,b)からのHと、前のH-生成電極区画(5a,b)からのOとの収集を変更するように配置されていることを特徴とする、請求項7または8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、効率的な水の酸化のためのシステム、電極、および方法に関する。本発明は、水素の製造のための電気化学セルにおける1つ以上の電極として使用するためのフッ素化カーボンクロス上のルテニウム電極触媒のピリジルの固定に基づいている。
【0002】
〔発明の背景〕
ゼロカーボンかつ再生可能な燃料である水素ガス(H)は、近い将来、化石燃料不足および地球温暖化という、現代社会が直面する2つの大きな科学的課題を解決する上で重要な役割を果たすと期待されている。
【0003】
の製造のための現在利用可能な技術のうち、水からのHの電気化学的生成は、信頼性、商業的実行可能性、およびさらなる改良の余地という点で、最高の可能性を示している。その結果、最近の研究努力の多くは、電極触媒による水の酸化(WO)のための耐久性のある効率的なシステムの開発に向けられている。WO反応は現在、水から水素ガス(H)を製造するプロセス全体のボトルネックを構成しているからである。
【0004】
戦略的に設計された分子触媒および金属酸化物/水酸化物に基づく不均一系は、効率的なWOのために研究されてきた。分子触媒は、既知の金属酸化物および水酸化物に基づく電極に代わる魅力的な選択肢を提供する。
【0005】
〔先行技術〕
いくつかの論文における先行技術には、導電性基材上にルテニウム電極触媒を固定化(immobilizing)/固定(anchoring)することによって、水の酸化および水素の製造を行う電気化学セルが記載されている。
【0006】
第1の先行技術であるChemical Communications、2014年、50巻、13948-13951には、4-(ドデシルオキシ)ピリジンジカルボキシレートリンカーを用いた非フッ素化カーボンクロスへのルテニウム触媒の固定が記載されている。
【0007】
本発明では、フッ素化カーボンクロスおよび-CH-CH-ピリジンリンカーが、特定の電極の高性能化において重要な役割を果たす。本発明は、使用されるルテニウム電極触媒と、それをフッ素化カーボンクロス基材上にグラフト重合するためのプロセスという点で、この先行技術からさらに距離を置いている。
【0008】
別の先行技術であるProceedings of the National Academy of Sciences、2019年、116巻、11153-11158には、全く異なる担体材料、すなわちナノ構造化インジウムスズ酸化物へのルテニウム触媒の固定化が記載されている。
【0009】
この先行技術における固定プロセスも、オレフィンメタセシスプロセス(炭素-炭素二重結合が担体と触媒との間で共に連結される)を伴うため、本発明のものとは全く異なる。さらに、本発明の触媒は、それぞれの担体に付着しているが、先行技術に記載されている触媒と同一ではない。先行技術では、カルボン酸官能基を持たないビピリジン配位子およびベンズイミダゾール配位子が使用されているが、本発明では、中心配位子骨格としてベンズイミダゾールカルボン酸塩を使用し、リンカーとしてピリジンを使用する。
【0010】
また、いずれの記事も電極の電気化学的再生が可能なシステムについては述べていない。
【0011】
分子電極触媒の一般的な欠点は、均一な条件における酸化還元環境下での不安定性、ならびに強いπ-πスタッキング相互作用によって構造的に修飾されたフッ素ドープ酸化スズ、カーボンクロス、酸化グラフェンなどの導電性材料上に固定化された場合の不安定性である。
【0012】
多くの最先端の電極触媒および電極の別の欠点は、電極触媒活性を再生できないことである。このことは、電解セルの全体的なコストを増加させ、実用的な適用性を大幅に低下させる。
【0013】
〔本発明の主な目的〕
本発明の主な目的は、効率的な水の酸化のための分子電極触媒および導電性担体を使用する新しい効果的な電極を製造するための方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、陽極および/または陰極としても使用され得る、分子電極触媒を含む水の酸化のために有効な新しいタイプの電極を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、効率的な水の酸化のための新しい分子電極触媒を使用するシステムであって、電極の電気化学的再生を可能にするシステムを提供することである。
【0016】
上記目的および利点、ならびに、さらなる目的および利点は、本発明による請求項1~4に定義される方法、請求項5~6に記載の電極、および請求項7~9に記載のシステムによって達成される。
【0017】
〔発明の簡単な説明〕
本発明は、既知の先行技術の欠点を解消し、かつ、電極の再生を電気化学的に可能にすることを含め、ピリジンに基づくリンカーを用いて導電性フッ素ドープカーボンクロス材料上に高活性ルテニウム錯体を共有結合させることによる、効率的なハイブリッドシステム、電極、および電気化学的な水の酸化のための方法の設計に関する。
【0018】
ルテニウムはN-ドナー配位子と強い共有結合を形成するため、ピリジン修飾カーボンクロス(PCC)は電極アセンブリにおいて優れた導電性固体担体を構成する。
【0019】
本発明は、分子触媒および不均一系導電性担体材料の利点を兼ね備える可能性を有する新しいタイプの電極の調製によって説明される。
【0020】
本発明では、耐酸化性に優れたフッ素化カーボンクロス(FCC)を、ジアゾ化反応戦略を用いてピリジンリンカー(-CH-CH-ピリジン)によって修飾し、ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス(PFCC)を得、分子電極触媒を固定するための担体として使用される。
【0021】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の、本発明のより詳細な説明、ならびに添付の図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0022】
〔図面の簡単な説明〕
以下、本発明を1つ以上の好ましい実施形態の形態で、添付図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0023】
図1は、適切なサイズのピリジンリンカーによって、堅牢なフッ素ドープカーボンクロス材料上に固定された高活性ルテニウム電極触媒からなる新しいタイプの電極を構成する、ハイブリッドアセンブリの合成プロセスのステップを示す。
【0024】
図2は、不安定配位(HO)サイトを持つ前記分子触媒が、強いRu-N相互作用を通じて前記PFCC材料上に固定される様子を詳細に示す。
【0025】
図3は、システム、すなわち水の酸化のための電気化学セルを示しており、これは本発明による電極技術に基づいて設計されている。
【0026】
〔発明の詳細な説明およびその最も重要な実施形態〕
本発明は、水の酸化およびプロトンの還元から電気化学的に水素を製造するためのハイブリッド電極およびハイブリッドシステムのための効率的な方法の設計に関する。ここで、前記陰極および陽極の両方が、-CH-CHスペーサー単位を有するピリジンリンカーを用いて、導電性フッ素ドープカーボンクロス材料上に共有結合した高活性ルテニウム錯体である。
【0027】
これは、まずジアゾ化反応戦略を用いて前記フッ素化カーボンクロス(FCC)をピリジンリンカーによって修飾することによってPFCCを得、次いで前記分子電極触媒を固定するための担体としてそれを使用することによって行われる。
【0028】
図1は、高活性ルテニウム電極触媒[RuII(mcbp)(HO)]からなる新しいタイプの電極であり、適切なサイズのピリジンリンカーによって堅牢なフッ素ドープカーボンクロス材料上に固定されている、前記ハイブリッドアセンブリの合成方法を示す。
【0029】
ステップ1:カーボンクロス(CC)を、好ましくは20%のHFと約10Vの電位で処理し、前記フッ素ドープカーボンクロス(FCC)を調製する。
【0030】
ステップ2:FCCを、HBF、CHCOOH、4-(2-アミノエチル)ピリジン、および亜硝酸イソアミルを用いて、N下で処理し、前記-CH-CH-ピリジンをグラフト化し、ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス(PFCC)を得る。電極表面は、前記ルテニウム触媒を固定する前に、SEM、TEM、XPS、電気化学インピーダンス分光法、熱重量分析、およびラマン分光法によって特性評価する。
【0031】
ステップ3:[RuII(mcbp)(HO)]の脱気MeOH:HO溶液にPFCCを浸漬し、PFCCを、この溶液中に、連続撹拌およびN流の下、50℃で5時間放置する。得られた電極を冷水で洗浄し、緩く結合した触媒を除去した後、約65℃のオーブンで一晩乾燥させることによって、最終的なRuPFCC(ルテニウム含有ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス)電極を得た。電極表面は、SEM、TEM、XPS、電気化学インピーダンス分光法、熱重量分析、およびラマン分光法によって特性評価した。
【0032】
このRuPFCC電極は、分子触媒および不均一系導電性担体材料の利点を兼ね備えており、前記電極触媒活性の再生も可能である。このことは、水の酸化電極およびシステムでは非常に稀である。
【0033】
図2は、不安定配位(HO)サイトを持つ前記分子触媒[RuII(mcbp)(HO)]が、強いRu-N相互作用を通じてPFCC材料上に固定される様子を詳細に示す。前記分子電極触媒を固定することによって、導電率に明らかな違いが観察された。
【0034】
得られた電極(RuPFCC)は、水の酸化のための陽極として評価され、1.4V(対NHE)で48時間の連続電解にわたって高い反応性(TON>7×10)を示した。
【0035】
この電極は、本発明によるもので、電気化学的還元を通じて前記RuPFCCの前記電極触媒活性の約98%まで再生することが可能である。16日間の連続酸化および還元実験の後でさえ、前記RuPFCC電極の前記活性の約74%まで回復させることが可能であることが証明された。
【0036】
第一列の遷移金属を持つ触媒の例として、コバルト錯体[CoII(mcbp)(HO)]をRuPFCCと同様にピリジンリンカーを介して前記フッ素化カーボンクロスに固定し、CoPFCC(コバルト含有ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス電極)を得た。電極表面は、SEM、TEM、電気化学インピーダンス分光法、熱重量分析、およびラマン分光法によって特性評価した。この堅牢な電極は、20時間にわたる水の酸化で3×10超のTONを示し、72時間の連続酸素発生実験後、WO活性の85%近くを再生することができた。CoPFCCのWO反応性はRuPFCCよりも低かったが、第一列の遷移金属元素を用いた電気化学的WO活性の同様の再生は有望であり、本明細書に述べた方法の可能性を示している。
【0037】
図3は、本発明による前記電極アセンブリ1a,bを、電気化学セル2における水の酸化(陽極側)およびプロトンの還元(陰極側)の両方に利用することによって、水素ガス(H)をノンストップで製造するためのシステムを説明する。
【0038】
前記電気化学セル2は、陽極および陰極の間に絶縁膜4(プロトンのみが透過できる)を有する前記陽極および陰極として同じRu触媒を固定したPFCCを備える容器3からなる。前記絶縁膜4(例えば、ナフィオン117)は、前記陽極から前記陰極区画5a,bまでのプロトンのみの透過を可能にする。作用電極に正確な電位を印加するために、標準Ag-AgCl参照電極6を使用することができる。
【0039】
還元によって前記電極1a,bを再生するために、電極1a,bの極性を変えるスイッチ7が配置されている。前記スイッチ7は、3方向「電気タイプ」であってもよく、前記陰極および陽極区画5a,bの連続的な切り替え、すなわち、HおよびOを生成する2つの作用電極1a,bの切り替えを可能にし、還元された陽極を陰極として使用することを可能にし、再び陽極として使用できるように電気化学的に再生する。工業用途の場合には、切り替えは手動で行うことも、簡単な制御装置(図示せず)によって自動的に行うこともできる。
【0040】
これによって、前記電極1a,bの前記電極触媒活性の連続的なサイクルおよび再生、ならびにHの前記生成が可能になる。
【0041】
前記システムの接続パイプに配置された別のスイッチ8は、前のO-生成電極区画5a,bからのHと、前のH-生成電極区画5a,bからのOとの収集を変更するために使用することができる。このスイッチは、「機械式」であってもよく、電気触媒および再生の間、シリンダーなどの異なるガス貯蔵部9a,bへの前記ガスの流れの方向を調整する。これによって、HおよびOをそれぞれのシリンダーに連続的に収集することができる。工業使用のためには、前記ガス用の標準コンプレッサー(HおよびO)を設置するのがよい。
【0042】
本発明をさらに改良して、前記陰極区画5bにおいてHならびにCOを還元し、気体燃料(H、CHなど)および液体燃料(HCOOH、CHOHなど)の両方を製造するために使用することができる。
【0043】
本発明のいくつかの特別な特徴および利点は以下の通りである:
(i)フッ素ドープカーボンクロス(FCC)は、分子電極触媒を固定するための非常に堅牢な導電性担体である。
【0044】
(ii)2つの-CH単位を持つ共有結合C-Cを介してピリジンをカーボンクロスに固定することで、導電性表面と前記分子触媒との間の最適な距離を確保することができる。
【0045】
(iii)-CH-CH-ピリジンリンカーの前記ピリジン単位は、ルテニウム中心と強い共有結合相互作用を提供する。
【0046】
(iv)ピリジン修飾FCCに固定されたルテニウムに基づく分子触媒を含む前記ハイブリッド電極(RuPFCC)は、前記導電性担体だけでなく、分子に対応する部分からの利点も兼ね備えるように設計されている(すなわち、均一系および不均一系の両方の利点を兼ね備える)。
【0047】
(v)前記セルの特別な設計は、水素の連続的な生成によって前記電極の前記電極触媒活性を再生するように配置されている。
【0048】
(vi)同様の戦略を用いて、鉄、コバルト、ニッケル、銅、およびマンガンなどの安価な第一列遷移金属を使用して、電極を調製することができる。コバルト類似体(CoPFCC)はその一例である。
【0049】
〔実験の説明〕
FCCの調製:市販のACCを、Electrochimica Acta、2020年、358巻、article ID:136939のプロトコールを用いて、HF溶液中で電気化学的ルートによって修飾した。5cm×5cmのカーボンクロス(CC)を、まず超音波浴中、イソプロパノールおよび水で30分間波洗浄した。次に、洗浄したCCを、作用電極として300mlの20%HF溶液に、対向電極としてグラファイト箔に浸漬した。10Vの外部電位を15分間印加した。調製したクロスをpH6になるまで水で繰り返し洗浄した後、試料を60℃で一晩乾燥させた。
【0050】
ピリジン修飾フッ素ドープカーボンクロス(PFCC)の調製:1.5cm×3cmのFCCを60℃のオーブン中で4時間保持した後、窒素下で氷冷CHCOOH(5mL)に浸漬し、続いて脱気したHBF(0.5mL 48%、HO中)と4-(2-アミノエチル)ピリジン(0.5mL、95%)を段階的に添加した。無色の溶液は、4-(2-アミノエチル)ピリジンの添加により明るいオレンジ色に変化した。システムを連続撹拌および窒素の高流量下で5分間保持した後、Journal of American Chemical Society、2017年、139巻、11760-11765に報告されたプロトコールに従って、亜硝酸イソアミル0.5mLを滴下添加した。
【0051】
溶液の色は淡黄色に変化し、特にFCC付近で発泡が観察された。反応混合物を、発泡が止まるまで窒素の高流量下で保持した。得られた溶液をデカンテーションし、電極を5×10mLの水を用いて洗浄した後、60℃のオーブンで一晩乾燥させることによって、分子電気触媒のための新しい導電性担体であるPFCCを得た。IR、ラマン、TGA、SEMおよびXPSスペクトル分析を用いて、ルテニウム触媒を固定する前のPFCCの組成を説明した。
【0052】
[RuII(mcbp)(HO)](1)の調製:触媒[RuII(mcbp)(HO)](1)のためのHmcbp配位子を、ChemSusChem、2019年、12巻、2251-2262に報告された手順に従って調製した。Hmcbp(0.2g、0.47mmol)およびRu(DMSO)Cl(0.23g、0.47mmol、1equiv.)のEtOH/HO(4:1)溶液(25mL)を、5分間(Nによって)脱気した後、脱気したEt3N(1.41mmol、0.2mL、3equiv.)を添加した。得られた溶液を80℃で5時間還流した。加熱により黄色から暗褐色までに色が変化したことから、錯形成が認められた。溶液を濾過し、冷蔵庫で一晩静置して褐色の沈殿物を得た。沈殿物を集め、氷冷エタノールおよびジエチルエーテルを用いて洗浄し、褐色の粉末1を得た。これを真空下で一晩乾燥させ、PFCCに固定する前にHRMSおよびNMR分光法によって特性評価を行った。構造中の水分子の存在は、温度依存性のNMR、ESI-MSおよびUV-Vis分光分析によって裏付けられた。
【0053】
1H NMR(CDOD):δ8.54(d,J=8.2Hz,2H)、8.20(t,J=8.2Hz,1H)、8.03(dd,J=8.4Hzおよび0.7Hz,2H)、8.01(dd,J=7.4Hz,0.7Hz,2H)、7.71(dd,J=8.4Hz,7.4Hz,2H)、6.90(s,1H)、6.61(s,1H)、4.54(s,6H,-CHプロトン)。MeOH中のESI-HRMS:[RuII(mcbp)Na]m/z550.0066(C2315RuNa)、および実験m/z550.0039のために計算された。
【0054】
[RuII(mcbp)(HO)]を固定したPFCC(RuPFCC)の調製:
1.5cm×3cmのPFCCを、1の0.05Mの脱気した10mLのMeOH:HO(4:1)溶液に浸し、連続撹拌下、50℃で5時間溶液中に放置した後、冷水(2×5mL)を用いて洗浄し、PFCC表面上の緩く結合した触媒を除去した。得られた電極を65℃のオーブンで一晩乾燥させ、RuPFCCを得た。表面は、IR、ラマン、TEM、TGA、SEM、およびXPS分光法によって特性評価した。
【0055】
上記の説明は、主として本発明の理解を容易にすることを意図したものであり、本発明の他の変形例および実施形態は本発明の概念の範囲内および以下の特許請求の範囲の範囲内で十分に可能であり、考えられるので、保護範囲は本明細書に記載された実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、適切なサイズのピリジンリンカーによって、堅牢なフッ素ドープカーボンクロス材料上に固定された高活性ルテニウム電極触媒からなる新しいタイプの電極を構成する、ハイブリッドアセンブリの合成プロセスのステップを示す。
図2図2は、不安定配位(HO)サイトを持つ前記分子触媒が、強いRu-N相互作用を通じて前記PFCC材料上に固定される様子を詳細に示す。
図3図3は、システム、すなわち水の酸化のための電気化学セルを示しており、これは本発明による電極技術に基づいて設計されている。
図1
図2
図3
【国際調査報告】