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  • 特表-セリウム-ガドリニウム複合酸化物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】セリウム-ガドリニウム複合酸化物
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/241 20200101AFI20241126BHJP
   H01M 8/126 20160101ALI20241126BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20241126BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 13/07 20210101ALI20241126BHJP
   C25B 11/047 20210101ALI20241126BHJP
【FI】
C01F17/241
H01M8/126
H01M8/12 101
C25B9/23
C25B13/04 301
C25B13/07
C25B11/047
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526473
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022080567
(87)【国際公開番号】W WO2023078940
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21315238.2
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 栄作
(72)【発明者】
【氏名】岡本 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】大竹 直孝
(72)【発明者】
【氏名】庄水 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ジュルド,カミーユ
【テーマコード(参考)】
4G076
4K011
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA18
4G076AB07
4G076BA15
4G076BA43
4G076BA46
4G076BC02
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA12
4G076CA26
4G076CA27
4G076CA28
4G076CA33
4G076DA04
4K011AA15
4K021DB18
4K021DB53
5H126AA06
5H126BB06
5H126GG13
5H126HH01
5H126HH06
5H126HH10
5H126JJ02
5H126JJ03
5H126JJ04
5H126JJ05
5H126JJ08
5H126JJ09
5H126JJ10
(57)【要約】
本発明は、%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に相当するGdの割合が8~22mol%であるセリウムとガドリニウムとに基づく複合酸化物に関し、これは改善された相対密度を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gdの割合が8.0~22.0mol%であるセリウムとガドリニウムとに基づく複合酸化物であって、この割合が%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に相当する、複合酸化物。
【請求項2】
Gdの割合が8.0~22.0mol%であるCeOとGdとからなる複合酸化物であって、この割合が%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に相当する、複合酸化物。
【請求項3】
前記Gdの割合が、
・8.0~15.0mol%;又は
・8.0~12.0mol%;又は
・9.0~11.0mol%;又は
・9.5~10.5mol%;又は
・18.0~22.0mol%;又は
・19.0~21.0mol%;又は
・19.5~20.5mol%;
である、請求項1又は2に記載の複合酸化物。
【請求項4】
前記複合酸化物のX線ディフラクトグラム(CuKα1、λ=1.5406オングストローム)が固溶体のパターンを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項5】
前記複合酸化物のX線ディフラクトグラム(CuKα1、λ=1.5406オングストローム)が27.0°~30.0°の2θにピークPを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項6】
ピークPが前記ディフラクトグラム上で最も高い強度である、請求項5に記載の複合酸化物。
【請求項7】
圧縮サンプルを空気中で1000℃で5時間焼成した後、少なくとも95.0%、好ましくは少なくとも96.0%の相対密度RD1000℃/5hを示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項8】
圧縮サンプルを空気中で1000℃で5時間焼成した後、最大99.0%又は最大98.0%の相対密度RD1000℃/5hを示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項9】
RD1000℃/5hが96.0%~99.0%である、請求項7又は8に記載の複合酸化物。
【請求項10】
圧縮サンプルを空気中で950℃で5時間焼成した後、少なくとも94.0%、好ましくは少なくとも95.0%の相対密度RD950℃/5hを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項11】
圧縮サンプルを空気中で950℃で5時間焼成した後、最大98.0%又は最大97.0%の相対密度RD950℃/5hを示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項12】
圧縮サンプルを空気中で1100℃で5時間焼成した後、少なくとも99.0%、好ましくは少なくとも99.5%の相対密度RD1100℃/5hを示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項13】
圧縮サンプルを空気中で1100℃で5時間焼成した後、最大99.5%又は最大99.9%の相対密度RD1100℃/5hを示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項14】
圧縮サンプルを空気中で1200℃で5時間焼成した後、少なくとも99.5%の相対密度RD1200℃/5hを示す、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項15】
前記相対密度が式:%RD=密度/絶対密度×100で与えられ、式中の前記密度が、試験温度(950℃、1000℃、1100℃、又は1200℃)で空気中で前記圧縮サンプルを5時間焼成した後の前記複合酸化物の前記圧縮サンプルで測定され、前記絶対密度が、以下の表:
【表1】

に示されている、請求項7~14のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項16】
前記圧縮サンプルが、以下の方法:
i)前記複合酸化物の粉末を秤量し、成形型に入れる;
ii)前記粉末を加圧下で圧縮する;
iii)工程ii)の最後に得られた前記圧縮サンプルを成形型から取り出す;
iv)次いで、前記圧縮サンプルを、空気中で目標温度で5時間焼成する;
v)焼成された前記圧縮サンプルの密度を測定する;
vi)その後前記相対密度を計算する;
に従って作製される、請求項15に記載の複合酸化物。
【請求項17】
工程v)が、以下の方法:
v1)焼成された前記圧縮サンプルを秤量する(g単位の重量);
v2)前記圧縮サンプルの体積を測定する(cm単位の体積、前記圧縮サンプルは平行六面体形状であり、平行六面体の体積は次の式で与えられる:
体積=長さ(cm)×幅(cm)×高さ(cm));
を用いて行われる、請求項16に記載の複合酸化物。
【請求項18】
前記圧縮サンプルが、少なくとも95MPa、好ましくは少なくとも98MPaの圧力を加えることによって得られる、請求項7~17のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項19】
前記圧縮サンプルが、15.8kNの強度を加えることによって得られる、請求項7~18のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項20】
前記成形型が平行六面体の形状を有し、特に以下の寸法23×7mmを有する、請求項15~19のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項21】
200nm以下の直径を有する細孔の範囲において、その最大が30~100nm、より具体的には30~70nmの細孔径Dpに対応するピークを示し、Dpが水銀圧入法によって決定される、請求項1~20のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項22】
Dpに最大値を有する前記ピークが、
・80nm未満;又は
・70nm未満;又は
・60nm未満;又は
・50nm未満;又は
・40nm未満;又は
・30nm未満;又は
・20nm未満;
であるピーク半値幅を示す、請求項21に記載の複合酸化物。
【請求項23】
Hg空隙率によって得られるポログラムが、200nm以下の直径を有する細孔の範囲内に単一のピークを示す、請求項20又は21に記載の複合酸化物。
【請求項24】
0.40mL/g未満、より具体的には0.35mL/g未満、さらに具体的には0.30mL/g未満の、200nm以下の直径を有する細孔の細孔容積(Vp<200nm)を示し、この細孔容積が水銀圧入法によって測定される、請求項1~23のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項25】
0.10mL/gよりも大きい、200nm以下の直径を有する細孔の細孔容積(Vp<200nm)を示し、この細孔容積が水銀圧入法によって測定される、請求項1~24のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項26】
5~40m/gのBET比表面積を示す、請求項1~25のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項27】
BET比表面積が10~35m/g又は25~30m/g又は25~30m/gである、請求項1~26のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項28】
レーザー回折によって得られる前記粒子のサイズの体積分布が、以下の特徴:
・3.0μm未満のサイズD1を中心とする集団P1
及び/又は
・8.0μmを超えるサイズD2を中心とする集団P2
を有する2つの集団P1及びP2を示し、
「直径Dを中心とする集団」という表現が、分布曲線上でDに最大値が位置するピークが観察されることを意味する、
請求項1~27のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項29】
直径100μm未満の領域で、前記分布が、以下の特徴:
・3.0μm未満の直径D1を中心とする集団P1
及び/又は
・8.0μmを超える直径D2を中心とする集団P2
を有する2つの集団P1及びP2を示す、請求項28に記載の複合酸化物。
【請求項30】
前記分布が、集団P1の前記ピークに近いショルダーを含む、請求項28又は29に記載の複合酸化物。
【請求項31】
D1が0.1~3.0μmである、請求項28~30のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項32】
D1が0.1~1.0μmである、請求項28~30のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項33】
D2が8.0~100.0μmである、請求項28~32のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項34】
D2が10.0~100.0μmである、請求項28~32のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項35】
D2が10.0~50.0μmである、請求項28~32のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項36】
前記2つのピークP1及びP2のそれぞれの高さH1及びH2の比H2/H1が、
・0.1より大きい;又は
・0.3より大きい;又は
・1.0より大きい;又は
・1.5より大きい;
請求項28~35のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項37】
前記2つのピークP1及びP2のそれぞれの高さH1及びH2の比H2/H1が、
・7.0未満;又は
・5.5未満;又は
・1.0未満;又は
・0.8未満;又は
・0.5未満;
である、請求項28~36のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項38】
前記2つのピークP1及びP2のそれぞれの高さH1及びH2の比H2/H1が、
・0.1~7.0;又は
・0.1~5.5;又は
・0.1~1.0;又は
・0.1~0.8;又は
・0.1~0.5;又は
・0.4~0.5;
である、請求項28~37のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項39】
D50が0.1~15.0μmであり、D50がレーザー回折によって得られる粒子のサイズの体積分布の中央値に対応する、請求項1~38のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項40】
D16が0.1~4.0μmであり、D16が、粒子の16%がD16より小さい直径を有する、レーザー回折により得られる前記粒子のサイズの体積分布から決定される直径である、請求項1~39のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項41】
D84が10.0~50.0μmであり、D84が、粒子の84%がD84より小さい直径を有する、レーザー回折により得られるサイズの体積分布から決定される直径である、請求項1~40のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか一項に記載の複合酸化物と焼結助剤とを含む組成物C。
【請求項43】
前記焼結助剤が、Li、Zn、Cu、Co、Fe、Mn、Ni、及びそれらの組み合わせからなる群の中で選択される元素Eである、請求項42に記載の組成物C。
【請求項44】
前記焼結助剤が酸化物の形態の元素Eである、請求項42又は43に記載の組成物C。
【請求項45】
前記組成物中の前記焼結助剤の割合が0.1~5.0重量%である、請求項41~44のいずれか一項に記載の組成物C。
【請求項46】
請求項7~20のいずれか一項で規定されている相対密度を示す、請求項41~45のいずれか一項に記載の組成物C。
【請求項47】
SOEC又はSOFCの製造のための、請求項1~41のいずれか一項に記載の複合酸化物の使用。
【請求項48】
SOEC又はSOFCの製造のための、請求項42~46のいずれか一項に記載の組成物Cの使用。
【請求項49】
請求項1~41のいずれか一項に記載の複合酸化物の製造方法であって、
a)硝酸セリウム(CeIII)と硝酸ガドリニウムとを含む水溶液Sを炭酸水素アンモニウム(NHHCO)の塩基性水溶液に添加することによって沈殿を形成する工程;
b)工程a)の終わりに得られた前記沈殿を含む水性スラリーを50℃~95℃の温度で加熱する工程;
c)工程b)の最後に前記沈殿を回収し、水で洗浄する工程;
d)工程c)から回収された前記固体を空気中で600℃~1000℃の温度で焼成する工程;
e)前記焼成した固体を粉砕する工程;
を含む方法。
【請求項50】
前記モル比r=NHHCO3/Ce+Gdが3.00~3.48、より具体的には3.10~3.45である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1つの層(L)によって隔てられた1つの多孔質アノード(A)と1つの多孔質カソード(C)とを含むSOFCであって、構成要素(A)、(C)、又は(L)のうちの少なくとも1つが請求項1~41のいずれか一項に記載の複合酸化物から製造されるかそれを含む、又は請求項42~46のいずれか一項に記載の組成物Cから製造されるかそれを含む、SOFC。
【請求項52】
・アノード(A);
・請求項1~41のいずれか一項に記載の複合酸化物及び/又は前記複合酸化物とは異なるセリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含み、任意選択的に少なくとも1種の他の無機材料をさらに含む層(L);
・カソード(C);
を含む、請求項51に記載のSOFC。
【請求項53】
少なくとも1つの層(L)によって隔てられた1つの多孔質アノード(A*)と1つの多孔質カソード(C*)とを含むSOECであって、構成要素(A*)、(C*)、又は(L)のうちの少なくとも1つが請求項1~41のいずれか一項に記載の複合酸化物から製造されるかそれを含む、又は請求項42~46のいずれか一項に記載の組成物Cから製造されるかそれを含む、SOEC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウム-ガドリニウム複合酸化物、その調製方法及びその使用に関する。本発明は、本発明の複合酸化物を含むSOFC又はSOECにも関する。
【0002】
固体酸化物形燃料電池(又はSOFC)は、燃料の酸化から直接電気を生成する電気化学変換デバイスである。これは、燃料ガス(通常は水素ベース)を電気化学的に酸化することより電気エネルギーを生成する電気化学デバイスである。このデバイスはセラミックベースであり、酸素イオン伝導性の金属酸化物由来のセラミックを電解質として使用する。当該技術分野で知られているセラミック酸素イオン伝導体(最も典型的にはドープされた酸化ジルコニウム又はドープされた酸化セリウム)は、500℃(酸化セリウムベースの電解質の場合)又は600℃(酸化ジルコニウムベースのセラミックの場合)を超える温度でしか技術的に適切なイオン伝導性を示さないため、全てのSOFCは高温で動作する必要がある。
【0003】
電解質は電池の重要な部分であり、SOFCでは主に以下の機能を有する:
・カソード(正の空気極)とアノード(負の燃料極)と間の、移動性酸素イオンの形態での電流の通過を可能にすること;
・電池内で内部短絡を引き起こす可能性がある電子形態での電極間の電流の通過を阻止すること;
・燃料と空気の混合を防止すること、これは、電解質が理論密度の少なくとも94%を必要とするため、相互接続する多孔性がなく、したがって電解質層がガス不透過性であり、実質的に欠陥がないことを意味する。
【0004】
米国特許出願公開第2016/233534号明細書に開示されているように、SOFC分野における最近の進展により、ジルコニアベースの材料よりも本質的に高い酸素イオン伝導性を有する式Ce0.9Gd0.11.95のセリウム-ガドリニウム複合材料が酸素イオン伝導性電解質として使用されるようになった。
【背景技術】
【0005】
欧州特許第1484282B1号明細書には、高い処理温度で高い相対密度が得られるセリウム-ガドリニウム複合酸化物が開示されている。本発明と同じ複合酸化物については開示されていない。
【0006】
米国特許第6,709,628号明細書は、セリウムと、Lu、Yb、Tm、Er、Y、Ho、Dy、Gd、Eu、Sm、及びNdからなる群から選択される第1のドーピング元素と、Cu、Co、Fe、Ni、及びMnからなる群から選択される第2のドーピング元素とに基づく焼結酸化物セラミックの製造方法が開示されており、これは、理論上可能な密度の少なくとも約98%の密度に到達するように750℃~1200℃の温度で焼結する工程を含む。第2のドーパントがない場合、密度は1450℃でわずか90%である。Ce0.8Gd0.2Co2-aやCe0.8Gd0.2Cu2-aなどの特定の組成が開示されている。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0233535号明細書には、Ce0.9Gd0.11.95やCe0.9Sm0.11.95などのドープセリア電解質を焼結助剤と組み合わせる工程を含む、金属支持型固体酸化物形燃料電池(SOFC)用の電解質を形成する方法が開示されている。図9で見られるように、焼結助剤(例えばCoやCuO)を含まないドープセリア電解質の相対密度は、1100℃における焼成後に94%よりも低く、これはより低い温度ではさらに低くなることを意味する。
【0008】
米国特許第7,947,212B2号明細書には、二価又は三価のカチオンの使用によってセリアベースの電解質を緻密化することが開示されている。カチオンを使用しない場合には、相対密度は94%よりも低い(図2)。
【0009】
特開2000/007435号公報には、SOFCの製造に使用することができるセリアベースの複合酸化物が開示されている。この複合酸化物は、本発明の方法とは異なる方法によって調製される。さらに、高い密度が得られるものの、それは1500℃よりも高い温度においてである。
【0010】
Duranらの論文“Sintering and microstructural development of ceria-gadolinia dispersed powders”,J.Mat.Sci.1994,29(7)には、請求項1よりもGdの割合が低く且つ1300℃よりも高い温度で相対密度を示す、複合酸化物であるセリア-ガドリニアが開示されている。
【0011】
論文であるJournal of Physics:Conference Series 339(2012)012006(doi:10.1088/1742-6596/339/1/012006)には、10mol%のガドリニウムドープセリアの相対密度が開示されている。この相対密度は、本発明の組成物よりも低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
電解質の緻密化プロセスには、高温における焼結が必要である。また、燃料ガスと酸化ガスとの接触を避けるために、気密で堅牢な電解質の調製を確実にするように高い相対密度に到達させることも有利である(Journal of The Electrochemical Society 2002,149(7),A797-A803を参照)。
【0013】
当然、エネルギーを節約するためには、最低温度で高い相対密度に到達させることがより有利である。SOFCの製造に使用される他の成分の酸化や焼結などの劣化を避けるためには、最低温度で焼結することも望ましい。
【0014】
最後に、電解質は高温のガスと接触するため、遭遇する過酷な条件に耐えることも必要である。
【0015】
本発明の複合酸化物は、焼結剤を添加又は配合しなくても、950℃などの高温で高い相対密度に到達可能であることが見出された。これにより、複合酸化物を含む燃料電池の無機層の最終的な物理化学的特性に影響を与える可能性のある追加の元素の導入を回避することが可能になる。
【0016】
したがって、本発明は、焼結剤を添加しなくても950℃などの高温で高い相対密度で焼結することができる、SOFCの製造に適したセリアベースの電解質を調製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、Gdの割合が8.0~22.0mol%であるセリウムとガドリニウムとに基づく複合酸化物に関し、この割合は、%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に相当する。
【0018】
本発明の複合酸化物は、請求項1~41に開示されている。本発明は、請求項42~46に開示される組成物Cにも関する。
【0019】
本発明は、請求項49~50に開示される複合酸化物の調製方法、請求項47又は48のいずれか一項に開示される複合酸化物又は組成物Cの使用にも関する。本発明は、請求項51又は52に開示されるSOECにも関する。本発明は、請求項53に開示されるSOECにも関する。
【0020】
これら全ての目的は、以下でより詳細に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1-2】実施例に開示される、レーザー回折によって得られた複合酸化物のサイズ分布を示す。
図3】実施例1の複合酸化物の水銀圧入法によって得られたポログラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書の残りの部分において、別段の指示がない限り、与えられた値の範囲には上限及び/又は下限が含まれることが指摘される。
【0023】
本発明の複合酸化物は、酸化セリウムと酸化ガドリニウムとに基づく。これは、8.0mol%~22.0mol%のGdの割合によって特徴付けられ、この割合は、%単位で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に相当する。
【0024】
Ceの割合は100%までの残部に相当する。Ceの割合は78.0mol%~92.0mol%である。
【0025】
Gdの割合は、より具体的には8.0mol%~15.0mol%であってよい。その場合、Ceの割合は85.0mol%~92.0mol%である。
【0026】
Gdの割合は、より具体的には8.0mol%~12.0mol%であってよい。その場合、Ceの割合は88.0mol%~92.0mol%である。
【0027】
Gdの割合は、より具体的には9.0mol%~11.0mol%であってよい。その場合、Ceの割合は89.0mol%~91.0mol%である。
【0028】
Gdの割合は、より具体的には9.5mol%~10.5mol%であってよい。その場合、Ceの割合は89.5mol%~90.5mol%である。
【0029】
Gdの割合は、より具体的には18.0mol%~22.0mol%であってよい。その場合、Ceの割合は78.0mol%~82.0mol%である。
【0030】
Gdの割合は、より具体的には19.0mol%~21.0mol%であってよい。その場合、Ceの割合は79.0mol%~81.0mol%である。
【0031】
Gdの割合は、より具体的には19.5mol%~20.5mol%であってよい。その場合、Ceの割合は79.5mol%~80.5mol%である。
【0032】
本発明は、特に上で示した割合に従う、2種の酸化物であるCeOとGdとからなる複合酸化物にも関する。
【0033】
一実施形態によれば、複合酸化物のX線ディフラクトグラム(CuKα1、λ=1.5406オングストローム)は固溶体のパターンを示す。別の実施形態によれば、複合酸化物のX線ディフラクトグラムは、27.0°~30.0°の2θにピークPを示す。このピークPは、ディフラクトグラム上で最も高い強度である。
【0034】
本発明の複合材料は、上述した元素(Ce、Gd)を上述した割合で含むが、さらに不純物も含み得る。不純物は、複合酸化物の調製プロセスで使用される原料又は出発物質に由来し得る。不純物の合計の割合は、複合酸化物に対して0.20重量%未満、好ましくは0.10重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満である。本明細書に開示されている全てのことは、上で示した割合のCeO及びGdと、不純物とからなり、不純物の合計の割合が0.20重量%未満、好ましくは0.10重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満である複合酸化物に適用される。
【0035】
本発明の複合材料は、以下に示す特定の物理化学的特性を示す:
1)相対密度RD
複合酸化物は、1000℃で5時間焼成した後、少なくとも95.0%の相対密度RD1000℃/5hを示し得る。RD1000℃/5hは、好ましくは少なくとも96.0%である。RD1000℃/5hは、最大99.0%又は最大98.0%であってよい。RD1000℃/5hは、96.0%~99.0%、より具体的には96.0%~98.0%であってよい。
【0036】
複合酸化物は、950℃で5時間焼成した後、少なくとも94.0%の相対密度RD950℃/5hを示し得る。RD950℃/5hは、好ましくは少なくとも95.0%である。RD950℃/5hは、最大98.0%又は最大97.0%であってよい。RD950℃/5hは、94.0%~98.0%、より具体的には95.0%~97.0%であってよい。
【0037】
複合酸化物は、1100℃で5時間焼成した後、少なくとも99.0%、好ましくは少なくとも99.5%の相対密度RD1100℃/5hを示し得る。RD1100℃/5hは、最大99.0%又は最大99.5%であってよい。RD1100℃/5hは、99.0%~100.0%、より具体的には99.5%~99.9%であってよい。
【0038】
複合酸化物は、1200℃で5時間空気中で焼成した後、少なくとも99.5%の相対密度RD1200℃/5hを示し得る。
【0039】
複合酸化物は、例えば
・1000℃で5時間焼成した後、少なくとも95.0%のRD1000℃/5h;及び
・950℃で5時間焼成した後、少なくとも94.0%のRD950℃/5h
を示し得る。
【0040】
複合酸化物について示される相対密度は、焼結助剤などの他の材料を添加しないサンプルで決定される。
【0041】
相対密度RDは、セラミック分野の当業者に周知である。これは、複合酸化物の絶対密度に対する複合酸化物の密度を%で表したものに相当する(%RD=密度/絶対密度×100)。
【0042】
本発明との関係においては、複合酸化物の密度は、試験温度(950℃、1000℃、1100℃、又は1200℃)で空気中で5時間、複合酸化物の圧縮サンプルを焼成した後の圧縮サンプルで測定される。圧縮サンプルは、成形型に入れられた粉末形態の複合酸化物に圧力を加えることによって得られる。ダイを平行六面体形状にすると空気中で焼成した後の体積を容易に測定することができるため、ダイは平行六面体の形状を有していることが好都合である。
【0043】
より具体的には、圧縮サンプルは以下の方法によって作製することができる:
i)複合酸化物の粉末を秤量し、成形型に入れる;
ii)粉末を加圧下で圧縮する;
iii)工程ii)の最後に得られた圧縮サンプルを成形型から取り出す;
iv)次いで、圧縮サンプルを、空気中で目標温度で5時間焼成する;
v)焼成された圧縮サンプルの密度を測定する;
vi)その後相対密度を計算する。
【0044】
密度は、当業者に公知の実験技術に従って測定される。
【0045】
工程v)では、より具体的には以下の方法を使用することができる:
v1)焼成された圧縮サンプルを秤量する(g単位の重量);
v2)圧縮サンプルの体積を測定する(cm単位の体積)、圧縮サンプルは平行六面体形状であり、平行六面体の体積は次の式で与えられる:
体積=長さ(cm)×幅(cm)×高さ(cm)。
【0046】
平行六面体の長さ、幅、及び高さは、マイクロメーターで簡単に測定することができる。
【0047】
工程ii)において、圧縮サンプルを得るために加えられる圧力は、好ましくは少なくとも95MPa、さらには少なくとも98MPaである。
【0048】
実施例で示される試験条件を都合よく使用することができる。
【0049】
絶対密度(又は理論密度)は、最初にXRDパターンから複合酸化物の構造の格子定数を計算し、以下の式に従って絶対密度を計算することによって決定される:
絶対密度(g/cm)=SA/(a×b×c×N)
【0050】
SAは単位格子内の全ての原子のモル質量を表し、a、b、及びcはそれぞれ格子定数を表し、Nはアボガドロ定数を表す。
【0051】
計算に使用される絶対密度は下の表に示されている。
【0052】
【表1】
【0053】
2)空隙率及び細孔径Dp(Hg空隙率)
本発明の方法により、特定の細孔サイズ分布を有する複合酸化物を得ることができる。複合酸化物は、200nm以下の直径を有する細孔の範囲において、その最大が30~100nmの細孔径Dpに対応するピークを示すことができる。Dpは30~70nmであってもよい。細孔径は水銀圧入法によって得られる。
【0054】
前記ピークは、通常80nm未満、より具体的には70nm未満、さらに具体的には60nm未満、さらに具体的には50nm未満、さらに具体的には40nm未満、さらに具体的には30nm未満、さらに具体的には20nm未満のピーク半値幅を示す。
【0055】
200nm以下の直径を有する細孔の細孔容積(Vp<200nm)は、通常0.40mL/g未満、より具体的には0.35mL/g未満、さらに具体的には0.30mL/g未満である。Vp<200nmは通常少なくとも0.10mL/gである。
【0056】
通常、ポログラムは、直径200nm以下の細孔範囲に単一のピークを示す。
【0057】
3)BET比表面積
複合酸化物は、通常、5~40m/gのBET比表面積を示す。このBET比表面積は、10~35m/g、又は20~30m/g、又は25~30m/gであってよい。BET表面積は当業者には周知である。これは、周知のBrunauer-Emmett-Teller法を使用する窒素吸着によって測定される。BET法は、雑誌「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に具体的に記載されている。標準ASTM D3663-03の推奨事項に準拠することができる。
【0058】
4)粒子サイズ(レーザー回折による)
複合酸化物は、サイズ(体積)の分布についてレーザー回折分析装置によって決定されるサイズの特定の特徴も示し得る。
【0059】
D50は0.1~15.0μmであってよい。D50は、より具体的には0.2μm~15μm、さらには1.0μm~15.0μm、又は5.0μm~15.0μmであってよい。
【0060】
D16は0.1~4.0μmであってよい。D16は、より具体的には0.1μm~1.0μmであってよい。
【0061】
D84は10.0~50.0μmであってよい。D84は、より具体的には15.0μm~50.0μmであってよい。
【0062】
パラメータD16、D84、及びD50は、レーザー回折によって測定された体積分布から得られる。D16は、粒子の16%がD16より小さい直径を有する、レーザー回折により得られる分布から決定される直径である。D84は、粒子の84%がD84より小さい直径を有する、レーザー回折により得られる分布から決定される直径である。D50は、粒子の50%がD50より小さい直径を有する、レーザー回折により得られる分布から決定される直径である。D50は分布の中央値とも呼ばれる。
【0063】
分布は、少なくとも2つの集団を示し得る。より具体的には、分布は次の特徴を有する少なくとも2つの集団P1及びP2を示し得る:
・3.0μm未満の直径D1を中心とする集団P1
及び/又は
・8.0μmを超える直径D2を中心とする集団P2。
【0064】
特に、直径100μm未満の領域では、分布は次の特徴を有する2つの集団P1及びP2を示し得る:
・3.0μm未満の直径D1を中心とする集団P1
及び/又は
・8.0μmを超える直径D2を中心とする集団P2。
【0065】
「直径Dを中心とする集団」という表現は、分布曲線上でDに最大値が位置するピークが観察されることを意味する。
【0066】
D1は、より具体的には0.1μm~3.0μm、さらに具体的には0.1μm~1.0μmであってよい。
【0067】
D2は、より具体的には8.0~100μm、より具体的には10.0~100.0μm、さらに具体的には10.0~70.0μm、特に具体的には10.0~50.0μmであってよい。
【0068】
2つの集団P1及びP2は、それぞれP1及びP2の2つのピークの高さH1及びH2の比H2/H1が、
・0.1より大きく、より具体的には0.3より大きく、より具体的には1.0より大きく、さらに具体的には1.5より大きく;又は
・7.0より小さく、より具体的には5.5より小さく、さらに具体的には1.0より小さく、より具体的には0.8より小さく、さらに具体的には0.5より小さく、
なるようなものであってよい。
【0069】
比H2/H1は、通常0.1~7.0、より具体的には0.1~5.5、さらに具体的には0.1~1.0である。H2/H1は、0.1~0.8、さらには0.1~0.5、又は0.4~0.5であってもよい。
【0070】
比H2/H1は、プロセスの条件、特に溶液Sの濃度及び工程e)の条件に依存する。溶液Sの濃度が高いほど、比は小さくなる。粉砕工程e)の継続時間が長いほど且つ/又は強度が大きいほど、比は小さくなる。
【0071】
複合酸化物は、通常粉末形態である。
【0072】
複合酸化物の調製方法について
本発明の複合酸化物の調製方法は、
a)硝酸セリウム(CeIII)と硝酸ガドリニウムとを含む水溶液Sを炭酸水素アンモニウム(NHHCO)の塩基性水溶液に添加することによって沈殿を形成する工程;
b)工程a)の終わりに得られた沈殿を含む水性スラリーを50℃~95℃の温度で加熱する工程;
c)工程b)の最後に得られた固体を回収し、水で洗浄する工程;
d)工程c)から回収された固体を空気中で600℃~1000℃の温度で焼成する工程;
e)焼成した固体を粉砕する工程;
を含む。
【0073】
工程a)
工程a)では、2つの水溶液、すなわちNHHCOの塩基性水溶液、及び硝酸セリウム(CeIII)と目標とする割合のGdの硝酸ガドリニウムとを含む水溶液Sが使用される。溶液S中の硝酸セリウムの濃度は、通常0.15~0.50mol/Lである。水溶液Sは、CeIII、GdIII、NO 、及びHを含む。溶液S中の硝酸セリウムの濃度は、実施例1又は実施例2に開示されたものを都合よく使用することができる。
【0074】
溶液Sは、硝酸セリウムと硝酸ガドリニウムの2つの水溶液を混合し、得られた混合硝酸塩溶液を水で希釈することによって得られる。希釈に使用される水の量は、混合硝酸塩溶液の量の5~10倍であってよい。水の体積/混合硝酸塩溶液の体積の比率は、実施例1又は2に開示されている通りであってよい。
【0075】
混合硝酸塩溶液を調製するために使用される2つの溶液(硝酸Ce及び硝酸Gd)のそれぞれは、残留酸性度を示すことがある。残留酸性度は、メチルオレンジを指示薬として用いる酸/塩基滴定によって簡単に測定することができる。硝酸セリウム水溶液は、好ましくは0.1mol/L未満、さらには0.07mol/L未満の残留酸性度を示す。実施例で使用した硝酸セリウム水溶液を都合よく使用することができる。硝酸ガドリニウム水溶液は、好ましくは1.0mol/L未満の残留酸度を示す。実施例で使用される硝酸セリウムの水溶液を都合よく使用することができる。
【0076】
NHHCOの塩基性水溶液は、固体形態のNHHCOを水に溶解することによって調製される。NHHCOの塩基性水溶液の濃度は、好ましくは30~100g/Lである。実施例1又は実施例2で開示される濃度を都合よく使用することができる。
【0077】
硝酸セリウム(CeIII)と硝酸ガドリニウムとを含む水溶液Sを炭酸水素アンモニウム(NHHCO)の塩基性水溶液に添加することにより、沈殿が形成される(これは通常「逆沈殿」として開示される)。塩基性水溶液に添加される水溶液Sの添加流量は、通常50~200L/hである。典型的には、添加は20~120分間、より具体的には20~60分間行われる。実施例の1つで使用される流量及び/又は継続時間を都合よく使用することができる。
【0078】
工程a)を行う温度は、10℃~30℃であることが好都合である。
【0079】
工程a)で使用される炭酸水素塩の量は、モル比r=NHHCO/(Ce+Gd)が3.00~3.48、より具体的には3.10~3.45になるような量である。モル比rは、実施例1又は2で使用されたモル比の1つを都合よく使用することができる。
【0080】
炭酸水素塩は工程a)でのみ使用される。
【0081】
工程(b)
工程b)では、工程a)の終わりに得られた沈殿を含む水性スラリーが、50℃~95℃、より具体的には70℃~95℃の温度で加熱される。この温度は、70℃~85℃であってもよい。実施例1又は2で開示された温度(80℃)を都合よく使用することができる。処理時間は1時間~4時間であってよい。実施例1又は2に開示された時間(3時間)を都合よく使用することができる。
【0082】
工程b)中に加熱される水性スラリーは、2つの実施形態に従って得ることができる。第1の実施形態(好ましい)によれば、水性スラリーは、工程a)の終わりに直接得られる。これは、工程a)と工程b)が同じ容器内で都合よく行われ得ることを意味する。
【0083】
第2の実施形態によれば、工程b)の水性スラリーは、工程a)の最後に得られた水性スラリーを水で希釈することによって得られる。
【0084】
工程c)
工程c)では、工程b)の終わりに得られた固体が回収され、水、例えば脱イオン水で洗浄される。濾液の導電率を測定することが可能である。通常、洗浄は濾液の導電率が5mS/cm未満に到達するまで行われる。
【0085】
工程d)
工程d)では、工程c)から回収された固体が、空気中、600℃~1000℃の温度で焼成される。焼成温度は好ましくは750℃~850℃である。工程d)の継続時間は、1~25時間、より具体的には1~20時間であってよい。特定の条件下では、焼成温度は800℃であり、この温度での焼成時間は8時間である。実施例1の工程d)の条件を適用することができる。焼成工程は、セリウム及びガドリニウムを酸化物に変換し、組成物の結晶化度を高めることを目的とする。
【0086】
工程(e)
工程d)の終わりに得られた焼成固体は粉砕される。ハンマーミルが使用されてもよい。焼成された固体は乳鉢で粉砕することもできる。
【0087】
本発明による複合酸化物の調製のためには、特に請求項1に示される割合の範囲において、実施例1~3に示した実験の詳細に従うことができる。
【0088】
混合酸化物の使用について
本発明の複合酸化物は、SOFCの製造に使用することができる。SOFCでは、燃料と酸素源との反応によって電気が生成される。酸素源、典型的には空気は、カソードと接触して、カソードでの電子による還元により酸素イオンを形成する。SOFCが炭化水素燃料と電子で作動する場合、酸素イオンはアノードで燃料と接触し、水と二酸化炭素を形成する。
【0089】
SOFCは、少なくとも1つの電解質層(L)によって隔てられた2つの多孔質電極(A)及び(C)を含む。本発明の複合酸化物は、これら3つの構成要素、すなわちアノード、カソード、又は少なくとも1つの層のうちの1つ以上の作製において、酸素イオン伝導性材料として使用することができる。以降で、SOFCのこれら3つの構成要素のそれぞれについて詳細に説明する。したがって、本発明は、少なくとも1つの層(L)によって隔てられた1つの多孔質アノード(A)と1つの多孔質カソード(C)とを含むSOFCであって、構成要素(A)、(C)、又は(L)のうちの少なくとも1つが本発明の複合酸化物から製造されるか、又はそれを含むSOFCにも関する。
【0090】
層(L)の機能は、燃料と酸素源との直接接触を回避するバリアとして機能することである。バリアのもう1つの機能は、層を通して酸素イオンを拡散させることである。
【0091】
本発明との関係において、少なくとも1つの構成要素(A)、(C)、又は(L)は、本発明の複合酸化物から作製されるか、又は本発明の複合酸化物を含む。
【0092】
アノード(A)
本発明は、本発明の複合酸化物と、任意選択的な少なくとも1種の他の無機材料とを含むか、又はそれらから作製されるアノードにも関する。アノードでは燃料の酸化が生じる。アノードに使用される複合酸化物以外の無機材料は、Y、Sc、Ce、及びこれら3つの元素のうちの2つ以上の組み合わせの群の中で選択される少なくとも1つの元素でドープされたジルコニア;セリウムとガドリニウムとの混合酸化物;ニッケルなどの金属;チタン酸ランタン;及びランタンクロマイトからなる群の中で選択され得る。
【0093】
チタン酸ランタンの例は、例えば式La0.2Sr0.25Ca0.45TiOである。
【0094】
カソード(C)
本発明は、本発明の複合酸化物と、任意選択的な少なくとも1種の他の無機材料を含むか、又はそれから作製されるカソードにも関する。カソードでは酸素の還元が生じる。カソードに使用される複合酸化物以外の無機材料は、Y、Sc、Ce、及びこれら3つの元素のうちの2つ以上の組み合わせの群の中で選択される少なくとも1つの元素でドープされたジルコニア;セリウムとガドリニウムとの混合酸化物;セリウムとサマリウムとの混合酸化物;La、Sr、Co、及びFeを含有するペロブスカイト;並びにLa、Sr、Mnを含有するペロブスカイトからなる群の中で選択され得る。
【0095】
La、Sr、Co、及びFeを含有するペロブスカイトは、通常一般式LaSr1xCoFe1-y3{プラス又はマイナス}δによって表すことができ、式中のx及びyは、それぞれ0.5~0.9及び0.1~0.9の数である。例えば、х=0.8;y=0.8又はx=0.6且つу=0.2である。そのようなペロブスカイトの例は、“Synthesis and Study of LSCF Perovskites for IT SOFC Cathode Application”,ECS Transactions,2009,25(2)(DOI:10.1149/1.3205796)に開示されている。La、Sr、Mnを含有するペロブスカイトは、通常一般式La1-xSrMnOによって表すことができ、式中のxは0~1.0の数である。
【0096】
電解質層(L)
本発明は、本発明の複合酸化物と、任意選択的な少なくとも1種の他の無機材料を含むか、又はそれから作製される層にも関する。複合酸化物以外の無機材料は、Y、Sc、Ce、及びこれら3つの元素のうちの2つ以上の組み合わせの群の中で選択される少なくとも1つの元素でドープされたジルコニア、又はセリウムとガドリニウムとの混合酸化物からなる群の中で選択され得る。
【0097】
SOFCの製造は、本明細書の上で全ての詳細を開示した本発明の複合酸化物を含み得る。製造には、焼結助剤(下記参照)の添加及び/又は粉砕工程などの機械的処理によって改質された本発明の複合酸化物も含み得る。
【0098】
SOFCの例を以下に示す。SOFCの例Ex1は、次の構成に基づく:
・アノード(A);
・本発明の複合酸化物を含むか、又はそれから作製され、任意選択的には少なくとも1種の他の無機材料をさらに含む層(L);
・カソード(C)。
【0099】
Ex1のSOFCは、(L)と(C)との間に追加の層(L1)も含んでいてもよく、その機能は短絡を防止することである。この追加の層(L1)は、典型的には、Y、Sc、及びCeの群の中で選択される少なくとも1つの元素、並びにこれら3つの元素のうちの2つ以上の組み合わせでドープされたジルコニアを含む。Ex1のSOFCが追加の層(L1)を含む場合、(L1)と(C)との間に、本発明の複合酸化物及び/又は本発明の複合酸化物とは異なるセリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含む、又はそれらから作製された追加の層(L2)も含まれていてもよい。この追加の層(L2)は、ストロンチウムなどの元素がカソード(C)から追加の層(L1)に拡散するのを防止するのに有用である。
【0100】
Ex1では、アノード(A)及び/又はカソード(C)は、本発明の複合材料及び/又は本発明の複合酸化物とは異なるセリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含み得る。
【0101】
SOFCの別の例Ex2は、次の構成に基づく:
・アノード(A);
・層(L);
・本発明の複合酸化物を含むか、又はそれから作製され、任意選択的には少なくとも1種の他の無機材料をさらに含む追加の層(L2);
・カソード(C)。
【0102】
層(L)は、典型的には、Y、Sc、Ce、及びこれら3つの元素のうちの2つ以上の組み合わせの群の中で選択される少なくとも1つの元素でドープされたジルコニアを含む。
【0103】
Ex2において、アノード(A)及び/又はカソード(C)は、本発明の複合酸化物及び/又は本発明の複合酸化物とは異なるセリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含むか、又はそれらから作製され得る。
【0104】
本発明の複合酸化物は、以下の文献のうちの1つに開示されているセリウム-ガドリニウムを本発明の複合酸化物で置き換えることによって、それらの中に開示されている電池の製造において使用することができる:国際公開第02/35628号パンフレット;国際公開第03/075382号パンフレット;国際公開第2004/089848号パンフレット;国際公開第2005/078843号パンフレット;国際公開第2006/079800号パンフレット;国際公開第2006/106334号パンフレット;国際公開第2007/085863号パンフレット;国際公開第2007/110587号パンフレット;国際公開第2008/001119号パンフレット;国際公開第2008/003976号パンフレット;国際公開第2008/015461号パンフレット;国際公開第2008/053213号パンフレット;国際公開第2008/104760号パンフレット;国際公開第2008/132493号パンフレット;米国特許出願公開第2013/0052562号明細書;国際公開第2021/151692号パンフレット;国際公開第2016/124929号パンフレット;国際公開第2015/033104号パンフレット;国際公開第2017/153751号パンフレット;国際公開第2021/096828号パンフレット;米国特許第8,435,694B2号明細書;米国特許第10,749,188B2号明細書;米国特許出願公開第2008/254336号明細書;独国特許第102013007637号明細書;米国特許出願公開第2013/0095408号明細書。本発明の複合酸化物は、Clement Nicolletの博士論文(“Nouvelles electrodes a oxygene pour SOFC a base de nickelates LnNiO4+δ(Ln=La,Pr)preparees par infiltration”)に開示されているような電池の製造に使用することもできる。
【0105】
SOFC及びSOFCの層は、公知の方法によって作製される:
・支持層(電解質又はアノード)が100μmからmmスケール(典型的には<800μm及び<300μm)までの厚さについては、キャスティング法(例:テープ又はスリップキャスティング);
・薄層(典型的には<50μm)については、印刷法(例:スクリーン印刷、インクジェット印刷)、噴霧、ラミネート、スピンコーティング;
・超薄層L1及びL2(典型的には<5μm)については、印刷法に加えて、スパッタリング法(例:マグネトロン又はガスフロー)、物理蒸着、原子層堆積、パルスレーザー堆積;
・管状設計電池については、ディップコーティング又は射出成形を使用することができる。
【0106】
当業者は、上述した論文の中で、作製に関連する教示を見出すこともできる。
【0107】
上で開示された文献の1つに開示されている方法を使用することもできる。
【0108】
本発明の複合酸化物は、固体酸化物形電解セル(SOEC)の製造にも使用することができる。SOECは、高温電気分解(典型的には700~800℃)によるグリーン水素の生成を可能にする。SOECの例は、Renewable and Sustainable Energy Reviews Volume 149,October 2021,111322(“Alternative and innovative solid oxide electrolysis cell materials:A short review”)の中に、又はhttps://doi.org/10.1002/fuce.201900245(“Long-Term Behavior of a Solid Oxide Electrolyzer(SOEC)Stack”)によって参照されるPysikらの論文の中に示されている。
【0109】
SOECの構成はSOFCの構成と非常に似ている。したがって、SOECは、
・アノード(A*);
・本発明の複合酸化物及び/又は本発明の複合酸化物とは異なるセリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含むか、又はそれから作製され、任意選択的には少なくとも1種の他の無機材料をさらに含む追加の層(L);
・カソード(C*);
を含み得る。
【0110】
ただし、SOECはSOFCと比較して逆モードで機能するため、アノード(A*)とカソード(C*)について上で示した精度は、それぞれカソード(C)とアノード(A)の精度から取得する必要がある。明確にするために明記しておくと、SOFCについて上で開示した全ての内容は、アノード(A)⇒カソード(C*)及びカソード(C)⇒アノード(A*)の精度でSOECにも有効なままである。例えば、SOECの一例は次の構成に従う:
・カソード(C*);
・層(L);
・本発明の複合酸化物を含み、任意選択的には少なくとも1種の他の無機材料をさらに含む追加の層(L1);
・アノード(A*)。
【0111】
本発明の複合酸化物は、韓国特許第102305294B1号明細書;中国特許第113445061号明細書;欧州特許第3793012号明細書に開示されているセリウム-ガドリニウムを本発明の複合酸化物で置き換えることにより、これらの文献のうちの1つに開示されている電池の製造で使用することができる。
【0112】
本発明の複合酸化物を含む組成物C
本発明において、複合酸化物は950℃という「低い」温度で既に高い相対密度を示す。しかし、その焼結性をさらに改善する目的で、焼結助剤が複合酸化物に添加されてもよい。したがって、本発明は、本発明の複合酸化物を含み、さらに少なくとも1種の焼結助剤を含む組成物Cにも関する。
【0113】
焼結助剤は、例えばZn、遷移金属元素、希土類元素、又はアルカリ金属の群の中で選択される元素Eであってよい。Eは、より具体的には、遷移元素の群の中で選択することができる。Eは、例えば、Li、Zn、Cu、Co、Fe、Mn、Ni、及びそれらの組み合わせからなる群の中で選択することができる。元素Eは、酢酸塩や硝酸塩などの塩の形態で添加されてもよい。元素Eは、酸化物の形態で組成物中に存在し得る。
【0114】
組成物C中の焼結助剤の割合は、0.1~5.0重量%であってよい。この割合は0.5重量%より高くてもよい。これは3.0重量%未満であってもよい。
【0115】
組成物Cは、(i)本発明の複合酸化物と元素Eの塩又は元素Eの酸化物の前駆体とを接触させる工程、(ii)溶液を除去する工程、(iii)固体を乾燥する工程、(iv)任意選択的に空気中で焼成する工程、を含む方法によって調製することができる。工程(i)は、水やアルコールなどの液体媒体中で行うことができる。元素(E)の塩は、例えば硝酸塩又は酢酸塩であってよい。元素(E)の酸化物の前駆体は、例えばアセチルアセトネートであってよい。
【0116】
組成物Cは粉末の形態であってよい。1)~4)に開示された全ての特徴は、組成物Cにも依然として適用可能である。
【0117】
組成物Cは、SOFC又はSOECの製造に使用することができる。本発明の複合酸化物を、本発明の複合酸化物と焼結助剤とを含む組成物Cに置き換えても、SOFC又はSOECについて上で開示したことは全て有効である。
【実施例
【0118】
当業者であれば、下に示す実施例を活用して及びこれを踏まえて、上及び特許請求の範囲に開示した本発明を実施するであろう。
【0119】
以下の実施例では、硝酸セリウム(III)及び硝酸ガドリニウムが使用されており、これらは共に対応する酸化物を硝酸で直接攻撃することによって得られる。混合硝酸塩溶液の調製に使用した硝酸セリウム水溶液は、0.05mol/Lの残留酸性度を示す。混合硝酸塩溶液の調製に使用した硝酸ガドリニウム水溶液は、0.60mol/Lの残留酸性度を示す。残留酸性度は酸塩基滴定によって測定した。
【0120】
使用した塩基性溶液は、NHHCO(日産化学株式会社)を水に溶解することによって各実施例の前に調製した。以下の実施例1~3では、使用される反応器は、撹拌機を備えた200リットルの反応器である。
【0121】
D16、D50、及びD84の測定
粒子サイズ分布は株式会社堀場製作所のレーザー回折式粒度分布測定装置LA-920を用いて得た。粒子は、0.2重量%のヘキサメタリン酸塩を含む水中に分散される。1.20の屈折率を使用した。
【0122】
BET比表面積
BET比表面積は、吸着種を210℃で30分間脱離させた後、MOUNTECH Co.,Ltd.のMacsorb HMモデル-1220を用いて測定した。
【0123】
Hg空隙率
空隙率は、autopore IV 9500自動水銀ポロシメーターを用いて、製造業者のガイドラインに従い、210℃で30分間前処理した後に得た。サンプルサイズは約0.2gであり、水銀接触角は130°であり、水銀表面張力は485dyn/cmであった。
【0124】
X線回折
銅線源(CuKα1、λ=1.5406オングストローム)を備えたX線回折計Ultima IVを使用した。
【0125】
密度及び相対密度の測定
以下の方法を使用した。これを本発明との関係において使用することができる:
i)複合酸化物の粉末を秤量し、成形型に導入する;
ii)粉末を加圧下で圧縮する;
iii)工程ii)の最後に得られた圧縮サンプルを成形型から取り出す;
iv)次いで、圧縮サンプルを、空気中で目標温度で5時間焼成する;
v)焼成された圧縮サンプルの密度を、次の工程で測定する:
v1)焼成された圧縮サンプルを秤量する(g単位の重量);
v2)圧縮サンプルの体積を測定する(cm単位の体積)、圧縮サンプルは平行六面体形状であり、平行六面体の体積は次の式で与えられる:
体積=長さ(cm)×幅(cm)×高さ(cm);
vi)その後相対密度を計算する。
【0126】
使用した具体的な条件は以下の通りである:
・工程i)において、長方形の寸法:23×7mm;
・使用した粉末の量:約1g;
・工程ii)では、粉末を一軸プレスで圧縮して、圧縮サンプルを得る。
【0127】
加圧中に適用された強度は15.8kNである。これは98MPaの圧力に相当する。
【0128】
実施例1:10%のGd-セリウム硝酸塩0.27mol/Lと硝酸ガドリニウム0.03mol/Lとを含む複合酸化物の調製;総濃度0.3mol/L
工程a):硝酸セリウム(III)水溶液(約3mol/L)と硝酸ガドリニウム水溶液(約2mol/L)を、CeO:GdO1.5=90:10(モル比)に相当する比率で混合し、混合硝酸塩溶液を調製した。この混合硝酸塩溶液(複合酸化物2.6kgに相当)をイオン交換水で希釈し、出発溶液S(硝酸セリウム0.27mol/L、硝酸ガドリニウム0.03mol/L;合計濃度0.3mol/L)を調製した。
【0129】
25℃で撹拌されている炭酸水素アンモニウム水溶液(48.8g/L)80.0Lに、出発溶液Sを30分間かけて一定流量で添加し、セリウムとガドリニウムとを含有する沈殿を得た。スラリーのpHは6.9である。
【0130】
工程b):工程a)の終わりに得られたスラリーを、液面よりも上方にエアフラッシングを備えた反応器内で80℃で3時間熱処理した。スラリーを室温まで放冷する。スラリーのpHは8.1である。
【0131】
工程c):工程b)の終わりに得られたスラリーを濾過し、濾液の導電率が5mS/cm未満になるまで脱イオン水を使用して数回洗浄した。
【0132】
工程d):工程c)の終わりに得られたケーキを、800℃に達するまで1.6℃/分の昇温で空気中で炉内で加熱し、800℃で8時間保持した。その後、固体をオーブン内で放冷した。
【0133】
工程e):焼成した固体をハンマーミルで粉砕し、それによってD84<50μmの粉末形態の複合酸化物Ce0.9Gd0.12-δを得た。
【0134】
実施例2:10%のGd-セリウム硝酸塩0.36mol/Lと硝酸ガドリニウム0.04mol/Lとを含む複合酸化物の調製;総濃度0.4mol/L
工程a):硝酸セリウム(III)水溶液(約3mol/L)と硝酸ガドリニウム水溶液(約2mol/L)を、CeO:GdO1.5=90:10(モル比)に相当する比率で混合し、混合硝酸塩溶液を調製した。この混合溶液(複合酸化物5.2kgに相当)をイオン交換水で希釈し、出発溶液S(硝酸セリウム0.36mol/L、硝酸ガドリニウム0.04mol/L;合計濃度0.4mol/L)を調製した。
【0135】
25℃で撹拌されている炭酸水素アンモニウム水溶液(72.9g/L)107.0Lに、出発溶液Sを45分間かけて一定流量で添加し、それによってセリウムとガドリニウムとを含有する沈殿スラリーを得た。到達したpHは6.6である。
【0136】
工程b):工程a)の終わりに得られたスラリーを、液面よりも上方にエアフラッシングを備えた反応器内で80℃で3時間熱処理した。スラリーを室温まで放冷する。到達したpHは7.9である。
【0137】
工程c):工程b)の終わりに得られたスラリーを濾過し、濾液の導電率が5mS/cm未満になるまで脱イオン水を使用して数回洗浄した。
【0138】
工程d):得られた沈殿を、800℃に達するまで1.6℃/分の昇温で空気中で炉内で加熱し、800℃で8時間保持した。その後、固体をオーブン内で放冷した。
【0139】
工程e):焼成した固体をハンマーミルで粉砕し、それによってD84<50μmの粉末形態のCe0.9Gd0.12-δを得た。
【0140】
実施例3:20%のGdを含む複合酸化物の調製
20%のGdを含む複合酸化物を、実施例1と同じ方法に従って、3.30のモル比rで調製した。混合硝酸塩溶液:CeO:GdO1.5=80:20(モル比)。
【0141】
比較例1:欧州特許第1484282B1号明細書の実施例1に開示のレシピによる、10%のGdを含む複合酸化物の調製-硝酸セリウム0.27mol/L、硝酸ガドリニウム0.03mol/L;総濃度0.3mol/L
硝酸セリウム水溶液(約3mol/L)と硝酸ガドリニウム水溶液(約2mol/L)を、CeO:GdO1.5=90:10(モル比)の比率で混合し、混合溶液を調製した。この溶液(複合酸化物20gに相当)をイオン交換水で希釈し、0.3mol/Lの出発溶液を調製した。
【0142】
調製した75g/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液0.4Lを、撹拌しながら出発溶液に25℃で添加して沈殿を調製した。このスラリーに、100g/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液20mLをさらに添加した。スラリーのpHは7.9である。還流冷却器を備えたフラスコの中で、このスラリーを大気圧、100℃で3時間熱処理した。その後、脱イオン水を使用して濾過及び洗浄を10回繰り返したところ、濾液の導電率は0.67mS/cmであった。得られた沈殿を空気中700℃の炉で5時間焼成し、乳鉢で粉砕することで、粉末形態のCe0.9Gd0.12-δを20g得た。
【0143】
得られた粉末の組成は、ICP発光分光分析装置(株式会社日立ハイテク、誘導結合プラズマ発光分光分析装置、PS-3500DD)を使用して確認した。
【0144】
【表2】


図1
図2
図3
【国際調査報告】