(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】癌治療のためのTLR7アゴニストおよび組合せ
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20241126BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20241126BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241126BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20241126BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C07D471/04 105C
C07D471/04 CSP
A61P35/00
A61K31/437
A61P35/02
A61P11/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K31/282
A61K31/7048
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527367
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2022081274
(87)【国際公開番号】W WO2023083868
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/081164
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】ハッサン, ハリズ イスカンダル ビン
(72)【発明者】
【氏名】ストロブル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼマン, ローマン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
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4C085BB31
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
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4C086AA03
4C086CB05
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206JB16
4C206MA01
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4C206MA03
4C206MA04
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB09
4C206ZB26
4C206ZB27
(57)【要約】
本開示は、特異的TLR7アゴニストBNT411、例えばBNT411を含む組成物およびキット、ならびに腫瘍、特に固形腫瘍の進行を低減もしくは予防するための、または癌、特に固形癌を治療するための単剤療法および併用療法における免疫療法剤としてのBNT411の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、以下の式を有する化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩であって、前記方法が、適切な量の前記化合物を前記対象に投与することを含む、化合物またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩。
【請求項2】
前記化合物の前記適切な量が治療上有効かつ安全な量である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記化合物の前記適切な量が、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重、もしくは合計で約8μg~約4000μg、および/または約0.23x10
-9mol/kg体重~約114x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約18x10
-9mol~約9100x10
-9molである、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記化合物の前記適切な量が、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重、もしくは合計で約40μg~約1600μg、および/または約1.14x10
-9mol/kg体重~約45.5x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約91x10
-9mol~約3640x10
-9molである、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記化合物の前記適切な量が、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10
-9mol/kg体重~約22.8x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10
-9mol~約1820x10
-9molである、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物の前記適切な量が、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約192μg~約768μg、および/または約5.46x10
-9mol/kg体重~約21.8x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約437x10
-9mol~約1747x10
-9molである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記化合物の前記適切な量が、約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約384μg~約768μg、および/または約10.9x10
-9mol/kg体重~約21.8x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約873x10
-9mol~約1747x10
-9molである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記化合物の前記適切な量が、約4.8μg/kg体重、もしくは合計で約384μg、および/または約10.9x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約874x10
-9molである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
溶媒和物である、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記溶媒和物が、水和物およびジメチルスルホキシド溶媒和物からなる群より選択される、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記化合物が無水である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記化合物が全身的に、好ましくは静脈内に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記対象がヒト対象である、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記腫瘍または癌が固形の腫瘍もしくは癌である、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
前記腫瘍または癌が、黒色腫、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、膵癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、脳癌、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺癌、他の皮膚癌、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣癌、子宮内膜癌、尿管癌、陰茎癌、子宮頸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、悪性孤在性線維性腫瘍ならびに中皮腫からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
前記腫瘍または癌が、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、黒色腫、結腸癌、直腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、悪性孤在性線維性腫瘍、前立腺癌、尿管癌および膵癌からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
前記腫瘍または癌が、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)などの小細胞肺癌(SCLC)である、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
前記対象が化学療法ナイーブである、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
前記化合物が少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
前記化合物の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって週に1回(Q1W)投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項21】
前記化合物の1用量が、少なくとも4治療サイクルにわたってQ1W投与され、次いで3週間に1回(Q3W)投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
前記化合物の各用量が、最小10分間にわたって、例えば最小15分間、最小20分間、最小25分間または最小30分間にわたって注入される、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項23】
前記方法が、1つ以上のさらなる治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項24】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項23に記載の使用のための化合物。
【請求項25】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項23または24に記載の使用のための化合物。
【請求項26】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せである、請求項23~25のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項27】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項23~26のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項28】
前記1つ以上のさらなる治療剤の各々の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって少なくともQ3W投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項23~27のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項29】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せであり、アテゾリズマブの1用量が(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、カルボプラチンの1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、エトポシドの1用量が、4治療サイクルにわたって治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項23~28のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項30】
前記化合物の1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは、治療サイクルの2日目、8日目および15日目に)Q1W投与され、次いで(好ましくは、治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目に)Q3W投与される、請求項29に記載の使用のための化合物。
【請求項31】
以下の式を有する化合物
【化2】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩を含む組成物であって、前記組成物中の前記化合物の量が、約8μg~4000μg、または約18x10
-9mol~約9100x10
-9molである、組成物。
【請求項32】
約40μg~約1600μg、または約91x10
-9mol~約3640x10
-9molの前記化合物、好ましくは約160μg~約800μg、または約364x10
-9mol~約1820x10
-9molの前記化合物を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
約192μg~約768μg、または約437x10
-9mol~約1747x10
-9molの前記化合物を含む、請求項31または32に記載の組成物。
【請求項34】
約384μg~約768μg、または約873x10
-9mol~約1747x10
-9molの前記化合物を含む、請求項31または32に記載の組成物。
【請求項35】
約384μg、または約874x10
-9molの前記化合物を含む、請求項31または32に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物が全身投与のためのものである、請求項31~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、注射または注入、例えば静脈内注射または注入のためのものである、請求項31~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記化合物が、1~500ml、例えば5~250mlの体積の水溶液、例えば0.9%NaCl(生理食塩水)中にある、請求項31~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物が、投薬単位形態である、請求項31~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、請求項31~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物が、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約8μg~約4000μgの前記化合物、および/または約0.23x10
-9mol/kg体重~約114x10
-9mol/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約18x10
-9mol~約9100x10
-9molの前記化合物を提供するような量で前記対象に投与される、請求項40に記載の使用のための組成物。
【請求項42】
前記組成物が、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約40μg~約1600μgの前記化合物、および/または約1.14x10
-9mol/kg体重~約45.5x10
-9mol/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約91x10
-9mol~約3640x10
-9molの前記化合物を提供するような量で前記対象に投与される、請求項40または41に記載の使用のための化合物。
【請求項43】
前記組成物が、約2μg/kg~約10μg/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約160μg~約800μgの前記化合物、および/または約4.55x10
-9mol/kg体重~約22.8x10
-9mol/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約364x10
-9mol~約1820x10
-9molの前記化合物を提供するような量で前記対象に投与される、請求項40~42のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項44】
前記組成物が、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約192μg~約768μgの前記化合物、および/または約5.46x10
-9mol/kg体重~約21.8x10
-9mol/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約437x10
-9mol~約1747x10
-9molの前記化合物を提供するような量で前記対象に投与される、請求項40~43のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項45】
前記組成物が、約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約384μg~約768μgの前記化合物、および/または約10.9x10
-9mol/kg体重~約21.8x10
-9mol/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約873x10
-9mol~約1747x10
-9molの前記化合物を提供するような量で前記対象に投与される、請求項40~43のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項46】
前記組成物が、約4.8μg/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約384μgの前記化合物、および/または約10.9x10
-9mol/kg体重の前記化合物、もしくは合計で約874x10
-9molの前記化合物を提供するような量で前記対象に投与される、請求項40~43のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項47】
前記対象がヒト対象である、請求項40~46のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項48】
前記腫瘍または癌が固形の腫瘍もしくは癌である、請求項40~47のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項49】
前記腫瘍または癌が、黒色腫、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、膵癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、脳癌、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺癌、他の皮膚癌、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣癌、子宮内膜癌、尿管癌、陰茎癌、子宮頸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、悪性孤在性線維性腫瘍ならびに中皮腫からなる群より選択される、請求項40~48のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項50】
前記腫瘍または癌が、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、黒色腫、結腸癌、直腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、悪性孤在性線維性腫瘍、前立腺癌、尿管癌および膵癌からなる群より選択される、請求項40~49のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項51】
前記腫瘍または癌が、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)などの小細胞肺癌(SCLC)である、請求項40~50のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項52】
前記対象が化学療法ナイーブである、請求項40~51のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項53】
前記組成物が少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項40~52のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項54】
前記組成物の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって週に1回(Q1W)投与される、請求項40~53のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項55】
前記組成物の1用量が、少なくとも4治療サイクルにわたってQ1W投与され、次いで3週間に1回(Q3W)投与される、請求項40~54のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項56】
前記組成物が、最小10分間にわたって、例えば最小15分間、最小20分間、最小25分間または最小30分間にわたって注入される、請求項40~55のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項57】
前記方法が、1つ以上のさらなる治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項40~56のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項58】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項57に記載の使用のための組成物。
【請求項59】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項57または58に記載の使用のための組成物。
【請求項60】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せである、請求項57~59のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項61】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項57~60のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項62】
前記1つ以上のさらなる治療剤の各々の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって少なくともQ3W投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項57~61のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項63】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せであり、アテゾリズマブの1用量が(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、カルボプラチンの1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、エトポシドの1用量が、4治療サイクルにわたって治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項57~62のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項64】
前記組成物の1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは、治療サイクルの2日目、8日目および15日目に)Q1W投与され、次いで(好ましくは、治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目に)Q3W投与される、請求項63に記載の使用のための組成物。
【請求項65】
(i)以下の式を有する化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩と、(ii)チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のさらなる治療剤とを含むキット。
【請求項66】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
前記化合物および前記1つ以上のさらなる治療剤が、全身投与、特に注射または注入、例えば静脈内注射または注入のためのものである、請求項65または66に記載のキット。
【請求項68】
対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、請求項65~67のいずれか一項に記載のキット。
【請求項69】
前記化合物が、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重、もしくは合計で約8μg~約4000μg、および/または約0.23x10
-9mol/kg体重~約114x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約18x10
-9mol~約9100x10
-9molの量で前記対象に投与される、請求項68に記載の使用のためのキット。
【請求項70】
前記化合物が、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重、もしくは合計で約40μg~約1600μg、および/または約1.14x10
-9mol/kg体重~約45.5x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約91x10
-9mol~約3640x10
-9molの量で前記対象に投与される、請求項68または69に記載の使用のためのキット。
【請求項71】
前記化合物が、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10
-9mol/kg体重~約22.8x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10
-9mol~約1820x10
-9molの量で前記対象に投与される、請求項68~70のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項72】
前記化合物が、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約192μg~約768μg、および/または約5.46x10
-9mol/kg体重~約21.8x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約437x10
-9mol~約1747x10
-9molの量で前記対象に投与される、請求項68~71のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項73】
前記化合物が、約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約384μg~約768μg、および/または約10.9x10
-9mol/kg体重~約21.8x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約873x10
-9mol~約1747x10
-9molの量で前記対象に投与される、請求項68~71のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項74】
前記化合物が、約4.8μg/kg体重、もしくは合計で約384μg、および/または約10.9x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約874x10
-9molの量で前記対象に投与される、請求項68~71のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項75】
前記対象がヒト対象である、請求項68~74のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項76】
前記腫瘍または癌が固形の腫瘍もしくは癌である、請求項68~75のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項77】
前記腫瘍または癌が、黒色腫、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、膵癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、脳癌、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺癌、他の皮膚癌、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣癌、子宮内膜癌、尿管癌、陰茎癌、子宮頸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、悪性孤在性線維性腫瘍ならびに中皮腫からなる群より選択される、請求項68~76のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項78】
前記腫瘍または癌が、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、黒色腫、結腸癌、直腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、悪性孤在性線維性腫瘍、前立腺癌、尿管癌および膵癌からなる群より選択される、請求項68~77のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項79】
前記腫瘍または癌が、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)などの小細胞肺癌(SCLC)である、請求項68~78のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項80】
前記対象が化学療法ナイーブである、請求項68~79のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項81】
前記化合物が少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項68~80のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項82】
前記化合物の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって週に1回(Q1W)投与される、請求項68~81のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項83】
前記化合物の1用量が、少なくとも4治療サイクルにわたってQ1W投与され、次いで3週間に1回(Q3W)投与される、請求項68~82のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項84】
前記化合物の各用量が、最小10分間にわたって、例えば最小15分間、最小20分間、最小25分間または最小30分間にわたって注入される、請求項68~83のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項85】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項68~84のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項86】
前記1つ以上のさらなる治療剤の各々の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって少なくともQ3W投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項68~85のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項87】
前記1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せであり、アテゾリズマブの1用量が(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、カルボプラチンの1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、エトポシドの1用量が、4治療サイクルにわたって治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、請求項68~86のいずれか一項に記載の使用のためのキット。
【請求項88】
前記化合物の1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは、治療サイクルの2日目、8日目および15日目に)Q1W投与され、次いで(好ましくは、治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目に)Q3W投与される、請求項87に記載の使用のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特異的TLR7アゴニストBNT411、例えばBNT411を含む組成物およびキット、ならびに腫瘍、特に固形腫瘍の進行を低減もしくは予防するための、または癌、特に固形癌を治療するための単剤療法および併用療法における免疫療法剤としてのBNT411の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌免疫療法は、患者自身の免疫系を活性化し、T細胞記憶を誘導することによる長期疾患制御の選択肢を提供する。有望な手法には、自然免疫系に属する受容体の群であるToll様受容体(TLR)が含まれる。TLR7は、特に、強力な抗腫瘍応答に寄与することが知られている。TLR7の刺激は、I型インターフェロン(IFN)、炎症誘発性サイトカイン、ケモカインの誘導を特徴とする、適応免疫系および自然免疫系の活性化と、共刺激分子の上方制御とをもたらす細胞内経路を誘発する。これらのTLR7媒介効果は、多面的な機構を介して既存の免疫を増強することによって、およびデノボ抗腫瘍免疫応答を誘導することによって、強固な癌免疫に対するバランスを変えるのに寄与することができる。
【0003】
イミダゾキノリンであるイミキモド(R837)、レシキモド(R848)および852Aを含む様々な合成TLR7アゴニストが免疫療法薬として試験されている。
【化1】
【0004】
これまでのところ、ヒトへの使用が承認されているのはイミキモドのみであり、基底細胞癌については局所クリームのみが承認されている。これらの化合物の臨床適用は、全身投与時の用量制限有害反応のために部分的に厳しく制限されている。この安全性の懸念は、広範囲の炎症誘発性サイトカインの誘導をもたらすTLR8共活性化に関連すると考えられる。
【0005】
したがって、腫瘍の進行を予防するため、または癌を治療するために、改善された治療法、特に全身投与時の有害反応が少ない治療法が大いに必要とされている。
【0006】
さらに、疾患がもはや標準的な治療法に応答しない進行性悪性腫瘍を有する患者のためだけでなく、現在の標準治療が最低限度の長期無病生存期間しかもたらさない患者(例えば進展型小細胞肺(ES-SCLC))のための新たな有効な治療法を開発する満たされていない強い医学的必要性がある。化学療法、放射線療法、手術、および標的療法などの従来の治療法の改良ならびに免疫療法の最近の進歩により、進行性癌を有する患者の転帰が改善されている。しかしながら、多くの免疫療法治療は、選択された群の癌に対してのみ有効性を実証している(Ventola,Cancer Immunotherapy,Part 3:Challenges and Future Trends.2017;PT 42(8):514-21;Yang,J Clin Invest.2015;125(9):3335-7)。
【0007】
SCLCは、気管支原性癌の約15%を占める。診断時には、SCLC患者の約30%が、同側性半胸郭(ipsilateral hemithorax)に限局された腫瘍、したがって、限局型小細胞肺癌(LS-SCLC)を有する(Murray et al.,J.Clin Oncol.1993;11(2):336-44)。悪性の胸水もしくは心膜滲出液または血行性転移を含む、同側性半胸郭を超える腫瘍を有する患者は、ES-SCLCを有する。
【0008】
病期にかかわらず、SCLC患者の現在の予後は、過去25年間に行われた診断および治療法の改善にもかかわらず、満足のいくものではない。治療をしなければ、SCLCは、あらゆるタイプの肺腫瘍のうち最も侵攻性の臨床経過を有し、診断からの生存期間中央値はわずか2~4ヶ月である。ES-SCLC患者において、6~12ヶ月の生存期間中央値が現在利用可能な治療法では報告されているが、長期無病生存期間は滅多にない。
【0009】
現在、化学療法は、依然としてES-SCLCの治療の中心にある。化学療法は、一般的に、少なくとも中程度の毒性作用に関連する用量で白金とエトポシドとの2剤の組合せとして投与される(限局型小細胞肺癌(LS-SCLC)の場合のように)(Okamoto et al.,Br J Cancer.2007;97(2):162-9)。シスプラチンは、重大な毒性作用に関連し、体液の水和を必要とし、これは心血管疾患を有する患者では問題となり得る。カルボプラチンは、SCLCでは活性であり、腎機能に従って投与され、関連する非血液学的毒性作用が少ない。現在のプログラムで使用される用量およびスケジュールは、50%~80%の全奏効率、および0%~30%の完全奏効率をもたらす(Pujol et al.,Br J Cancer.2000;83(1):8-15;Roth et al.,J Clin Oncol.1992;10(2):282-91)。転移性疾患、特に脳転移、硬膜外転移および骨転移の部位への放射線療法は、化学療法が緩和する可能性が低いので、標準的な治療選択肢である。さらに、化学療法によって治療され、応答を達成したES-SCLC患者が、胸部放射線療法について考慮される。最近、化学療法と組み合わせたアテゾリズマブが、第一選択(1L)治療として承認された。この組合せは有効であることが証明されているが、転帰は、他の悪性疾患と比較して依然として満足のいくものではない(すなわち、2ヶ月の全延命効果、および0.9ヶ月の無増悪延命効果;NCT02763579.A Study of Carboplatin Plus Etoposide with or Without Atezolizumab in Participants with Untreated Extensive-Stage(ES)Small Cell Lung Cancer(SCLC)(IMpower133))。ほとんど全ての患者が再発時に最終的に診断に屈する。6~12ヶ月の生存期間中央値が現在利用可能な治療法では報告されているが、長期無病生存期間は滅多にない。したがって、ES-SCLCに対する新たな治療法、特に転帰を改善するための革新的な併用療法を開発する満たされていない大きな医学的必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ventola,Cancer Immunotherapy,Part 3:Challenges and Future Trends.2017;PT 42(8):514-21
【非特許文献2】Yang,J Clin Invest.2015;125(9):3335-7
【非特許文献3】Murray et al.,J.Clin Oncol.1993;11(2):336-44
【非特許文献4】Okamoto et al.,Br J Cancer.2007;97(2):162-9
【非特許文献5】Pujol et al.,Br J Cancer.2000;83(1):8-15
【非特許文献6】Roth et al.,J Clin Oncol.1992;10(2):282-91
【非特許文献7】NCT02763579.A Study of Carboplatin Plus Etoposide with or Without Atezolizumab in Participants with Untreated Extensive-Stage(ES)Small Cell Lung Cancer(SCLC)(IMpower133)
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、イミダゾキノリンファミリーの非常に強力なTLR7アゴニストであり、以下の式を有するBNT411を開発した:
【化2】
BNT411は、選択的TLR7アゴニストであり、最も活性なイミダゾキノリン比較対象レシキモド、主にIFNα放出と比較してインビトロで示された。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、BNT411曝露時に、匹敵するイミダゾキノリンであるイミキモド、レシキモドおよび852Aよりもはるかに低い濃度でさらに多くの量のIFNαが誘導されることを見出した。例えば
図1を参照。発熱性炎症誘発性サイトカイン(例えばTNFα)の分泌を誘導するためには、最大2桁高い濃度のBNT411が必要である。例えば
図7を参照。まとめると、このさらに強い活性および優れた選択性は、全身投与されたBNT411のさらに高い効力および広い治療域を示す。マウスモデルを対象としてBNT411を用いたインビトロ試験およびインビボ試験は、高レベルの治療的に重要なIFNαの放出を実証している;例えば
図2を参照。さらに、本開示は、マウス腫瘍モデルでは、BNT411が、単剤療法でも、標準的な治療法と組み合わせても(例えば白金系化学療法剤またはチェックポイント阻害剤と組み合わせても)抗腫瘍活性を示すことを実証する。例えば
図4~
図6を参照。さらに、本発明者らは、BNT411が、(i)ヒト患者に対して試験されたいくつかの用量で、許容可能な安全性プロファイルを有し、(ii)ヒト患者では、I型IFNが支配的な実質的なサイトカイン応答を誘導し、(iii)少なくともいくつかの治療的に重要な用量で、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)などの発熱性炎症誘発性サイトカインの実質的な増加をもたらさないことを初めて示す。例えば本出願の実施例6および7ならびに
図8を参照。
【0012】
したがって、第1の態様では、本開示は、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、以下の式を有する化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩(特に明記されない限り、または本明細書の文脈と矛盾しない限り、本明細書では「BNT411」とも総称される)を提供し、前記方法は、適切な量のBNT411を前記対象に投与することを含む。第1の態様のいくつかの実施形態では、BNT411の適切な量は、治療上有効かつ安全な量である。いくつかの実施形態では、BNT411の適切な量は、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重、もしくは合計で約8μg~約4000μg、および/または約0.23x10
-9mol/kg体重~約114x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約18x10
-9mol~約9100x10
-9molである。いくつかの実施形態では、BNT411の適切な量は、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重、もしくは合計で約40μg~約1600μg、および/または約1.14x10
-9mol/kg体重~約45.5x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約91x10
-9mol~約3640x10
-9molである。いくつかの実施形態では、BNT411の適切な量は、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10
-9mol/kg体重~約22.8x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10
-9mol~約1820x10
-9molである。いくつかの実施形態では、BNT411の適切な量は、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重(約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重など)、もしくは合計で約192μg~約768μg(約384μg~約768μgなど)、および/または約5.46x10
-9mol/kg体重~約21.8x10
-9mol/kg体重(約10.9x10
-9mol/kg体重~約21.8x10
-9mol/kg体重など)、もしくは合計で約437x10
-9mol~約1747x10
-9mol(約873x10
-9mol~約1747x10
-9molなど)である。いくつかの実施形態では、BNT411の適切な量は、約4.8μg/kg体重、もしくは合計で約384μg、および/または約10.9x10
-9mol/kg体重、もしくは合計で約874x10
-9molである。
【0013】
第2の態様では、本開示は、BNT411、すなわち、以下の式を有する化合物
【化4】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩を含む組成物を提供し、組成物中のBNT411の量は、約8μg~4000μg、または約18x10
-9mol~約9100x10
-9molである。第2の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約40μg~約1600μg、または約91x10
-9mol~約3640x10
-9molのBNT411を含む。第2の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約160μg~約800μg、または約364x10
-9mol~約1820x10
-9molのBNT411を含む。第2の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約192μg~約768μg(約384μg~約768μgなど)、または約437x10
-9mol~約1747x10
-9mol(約873x10
-9mol~約1747x10
-9molなど)のBNT411を含む。第2の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約384μg、または約874x10
-9molのBNT411を含む。
【0014】
第3の態様では、本開示は、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、第2の態様の組成物を提供する。第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重のBNT411、もしくは合計で約8μg~約4000μgのBNT411、および/または約0.23x10-9mol/kg体重~約114x10-9mol/kg体重のBNT411、もしくは合計で約18x10-9mol~約9100x10-9molのBNT411を提供するような量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重のBNT411、もしくは合計で約40μg~約1600μgのBNT411、および/または約1.14x10-9mol/kg体重~約45.5x10-9mol/kg体重のBNT411、もしくは合計で約91x10-9mol~約3640x10-9molのBNT411を提供するような量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、約2μg/kg~約10μg/kg体重のBNT411、もしくは合計で約160μg~約800μgのBNT411、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重のBNT411、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molのBNT411を提供するような量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重(約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重など)のBNT411、もしくは合計で約192μg~約768μg(約384μg~約768μgなど)のBNT411、および/または約5.46x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重(約10.9x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重など)のBNT411、もしくは合計で約437x10-9mol~約1747x10-9mol(約873x10-9mol~約1747x10-9molなど)のBNT411を提供するような量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、約4.8μg/kg体重のBNT411、もしくは合計で約384μgのBNT411、および/または約10.9x10-9mol/kg体重のBNT411、もしくは合計で約874x10-9molのBNT411を提供するような量で対象に投与される。
【0015】
第4の態様では、本開示は、(i)BNT411、すなわち、以下の式を有する化合物
【化5】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩と、(ii)チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のさらなる治療剤とを含むキットを提供する。
【0016】
第5の態様では、本開示は、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、第4の態様のキットを提供する。第5の態様のいくつかの実施形態では、BNT411は、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重、もしくは合計で約8μg~約4000μg、および/または約0.23x10-9mol/kg体重~約114x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約18x10-9mol~約9100x10-9molの量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重、もしくは合計で約40μg~約1600μg、および/または約1.14x10-9mol/kg体重~約45.5x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約91x10-9mol~約3640x10-9molの量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molの量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重(約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重など)、もしくは合計で約192μg~約768μg(約384μg~約768μgなど)、および/または約5.46x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重(約10.9x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重など)、もしくは合計で約437x10-9mol~約1747x10-9mol(約873x10-9mol~約1747x10-9molなど)の量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、約4.8μg/kg体重、もしくは合計で約384μg、および/または約10.9x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約874x10-9molの量で対象に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】インビトロヒトPBMC刺激アッセイ。BNT411(濃度範囲:0.1nM~10μM)または匹敵するイミダゾキノリン(レシキモド(R848;濃度範囲:0.6nM~50μM);852A(濃度範囲:0.6nM~50μM);またはイミキモド(R837;濃度範囲:0.6nM~50μM))による、健常ドナー由来のヒトPBMC調製物におけるIFNaの刺激。平均±標準偏差(SD)として示しているデータ、n=5。
【
図2】BNT411投与時のBALB/cマウスにおけるインビボサイトカイン放出。雌BALB/cマウスの後眼窩に、3、5、10および15mg/kgの用量のBNT411を投与した。化合物適用の1時間後に血液試料を採取し、マウスIFNa ELISAによって分析した。
【
図4】腫瘍マウスモデルにおけるBNT411単独の抗腫瘍有効性。5x10
5個のCT26結腸癌腫細胞を皮下接種したマウス(n=12または13/群)を腫瘍マウスモデルとして使用した。BNT411を4~5日間隔で8回、3mg/kgの用量レベルでi.v.投与した(14、19、23、28、33、37、42および47日目)。対照群(n=13)にはビヒクルのみを投与した。初回試験薬物投与の3および5週間後に、血液中および脾細胞内のgp70抗原特異的T細胞集団を分析することによって、適応免疫を評価した。(A)投与スケジュール。(B)接種後日数と対比した腫瘍体積を示すグラフ。全生存動物の群平均腫瘍体積を示す。さらに、腫瘍負荷のために安楽死させた動物の腫瘍体積を、それらが群の腫瘍体積中央値よりも大きい限り繰り越した(SEM:平均値の標準誤差;LOCF:最終観察繰越法値)。
【
図5】腫瘍マウスモデルにおけるBNT411単独、およびオキサリプラチンと組み合わせたBNT411の抗腫瘍有効性。2.5x10
5個のCT26結腸癌腫細胞を皮下接種したマウス(n=12または13/群)を腫瘍マウスモデルとして使用した。オキサリプラチンを腹腔内(i.p.)投与した(5mg/kg、注射間4~5日で4回)。BNT411を、注射間2~5日の間隔で、オキサリプラチン療法の少なくとも2日後に8回、3mg/kgの用量レベルでi.v.投与した。33および42日目の試験群対対照群(ビヒクルのみ)の群平均腫瘍体積によって、抗腫瘍有効性を評価した(生存している試験動物および対照動物の少なくとも50%)。最初のBNT411投与の1時間後に血漿中のIFNαレベルを分析し、血液中のgp70+T細胞集団を34および41日目に分析した。(A)投与スケジュール。(B)接種後日数と対比した腫瘍体積を示すグラフ。全生存動物の群平均腫瘍体積(±SEM(平均値の標準誤差))を示す。処置群には、マウス9~10匹を含めた。さらに、腫瘍負荷のために安楽死させた動物の腫瘍体積を、それらが群の腫瘍体積中央値よりも大きい限り繰り越した(最終観察繰越法(LOCF)値)。生存している動物が50%未満の群については曲線を中断した。(C)4つの群に関する最初の注射の60分後のIFNα血清レベルを示すグラフ(対照(ビヒクル);BNT411単独;オキサリプラチン単独;BNT411およびオキサリプラチン)。対照群および試験群におけるIFNαレベルを縦棒によって示し(+SEM)、群間の統計学的有意性を横線によって示す。P値要約:****=p≦0.0001;***=p≦0.001;**=p≦0.01、*=p≦0.1。
【
図6】腫瘍マウスモデルにおけるBNT411単独、および抗PD-L1抗体と組み合わせたBNT411の抗腫瘍有効性。5x10
5個のCT26結腸癌腫細胞を皮下接種したマウス(n=10/群)を腫瘍マウスモデルとして使用した。200μg/動物の用量レベルで、抗PD-L1抗体抗PD-L1-mIgG1e3を腹腔内(i.p.)投与した。3mg/kgの用量レベルで、BNT411をi.v.投与した。5日に1回、合計6回の投与で全処置を行った。各群において少なくとも9匹の動物が生存していた試験21日目に、体重変化および腫瘍増殖を評価した。(A)投与スケジュール。(B)試験日と対比した腫瘍体積を示すグラフ。平均腫瘍体積±SEM(mm
3)を各処置について示す。腫瘍が排除された動物のみが残った35日目まで最終観察を繰り越した。(C)腫瘍マウスモデルにおける腫瘍体積に対するBNT411および抗PD-L1併用処置の効果を示すグラフ(21日目のデータ)。個々の動物の値、および平均±SEMを各処置について示す(*p≦0.05、**p≦0.01-Tukeyの多重比較検定)。
【
図7】様々な濃度のBNT411によってヒトドナー由来の全血を処理した際の特定のサイトカインの放出。健常ヒトボランティアから採取した全血をインビトロでBNT411によって処理して、以下のサイトカイン/ケモカイン:IFNα、IP-10、IL-6、およびTNFαの誘導を調査した。0.1nM(1x)~7.5μM(75000x)の範囲のBNT411濃度。試験した各サイトカインおよびBNT411濃度について、ベースラインに対する増加倍率を示す。
【
図8】様々な用量レベルのBNT411によって治療したヒト患者の全血から得られた調製物からの特定のサイトカインの放出。ベースラインと比較した、治療サイクル1の1日目に観察された最高サイトカイン値から計算した平均最大倍率変化(+SD)。IFNaおよびIL-6は治療の4~8時間後にピークに達し、IP-10およびTNFaは治療の2.5~8時間後にピークに達した。DL1A、DL2AまたはDL3Aでは、有意なサイトカイン変化は観察されなかった。IP-10
+:DL6Aではアッセイの検出上限に達した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示を以下でより詳細にさらに説明するが、この開示は本明細書に記載される特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0019】
以下において、本開示の要素をより詳細に説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、さらなる実施形態を創出するために任意の方法および任意の数で組み合わせ得ることを理解されたい。様々に説明される例および好ましい実施形態は、本開示を明示的に記載される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を任意の数の開示される要素および/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願に記載されている全ての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、本出願の説明によって開示されていると見なされるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、BNT411の適切な量が、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molであり、いくつかの他の実施形態では、治療される腫瘍または癌が、小細胞肺癌(SCLC)、例えば進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)である場合、さらなる実施形態では、BNT411の適切な量は、小細胞肺癌(SCLC)、例えば進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)を治療するために、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molである。
【0020】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)”,H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0021】
本開示の実施は、特に指示されない限り、当分野の文献で説明されている従来の化学、生化学、細胞生物学、免疫学および組換えDNA技術を使用する(例えば、Organikum,Deutscher Verlag der Wissenschaften,Berlin 1990;Streitwieser/Heathcook,“Organische Chemie”,VCH,1990;Beyer/Walter,“Lehrbuch der Organischen Chemie”,S.Hirzel Verlag Stuttgart,1988;Carey/Sundberg,“Organische Chemie”,VCH,1995;March,“Advanced Organic Chemistry”,John Wiley&Sons,1985;Rompp Chemie Lexikon,Falbe/Regitz(Hrsg.),Georg Thieme Verlag Stuttgart,New York,1989;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989を参照。
【0022】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図しており、特許請求される本開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本開示の実施に不可欠な特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0023】
本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別個の値を個々に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。
【0024】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される各資料(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書などを含む)は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明によってそのような開示に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。
【0025】
定義
以下に、本開示の全ての態様に適用される定義を提供する。以下の用語は、特に指示されない限り、以下の意味を有する。定義されていない用語は、それらの技術分野で広く認められている意味を有する。
【0026】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上特に必要とされない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述されるメンバー、整数もしくは工程またはメンバー、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他のメンバー、整数もしくは工程またはメンバー、整数もしくは工程の群の除外も意味しないと理解される。「から本質的になる」という用語は、本質的に重要な他のメンバー、整数、または工程を除外することを意味する。「含む」という用語は、「から本質的になる」という用語を包含し、次に、「からなる」という用語を包含する。したがって、本出願における各存在ごとに、「含む」という用語は、「から本質的になる」または「からなる」という用語で置き換えられてもよい。同様に、本出願における各存在ごとに、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語で置き換えられてもよい。
【0027】
本開示を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0028】
本明細書で使用される場合、「および/または」は、他のものを含むまたは含まない、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「Xおよび/またはY」は、(i)X、(ii)Y、ならびに(iii)XおよびYの各々の具体的な開示として、あたかも各々が本明細書に個別に記載されているかのごとくに解釈されるべきである。
【0029】
本開示の文脈において、「約」という用語は、当業者が問題の特徴の技術的効果を依然として保証すると理解する精度の区間を示す。この用語は、典型的には、示された数値からの±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、±0.05%、例えば±0.01%の偏差を示す。当業者には理解されるように、所与の技術的効果の数値に対するそのような具体的な偏差は、技術的効果の性質に依存する。例えば、天然または生物学的な技術的効果は、一般に、人工的または工学的な技術的効果のものよりも大きいそのような偏差を有し得る。
【0030】
本開示の文脈における「結合剤」という用語は、所望の抗原に結合することができる任意の薬剤を指す。本開示の特定の実施形態では、結合剤は、抗体、抗体断片、またはその構築物である。結合剤はまた、合成部分、修飾部分または天然には存在しない部分、特に非ペプチド部分を含み得る。そのような部分は、例えば、抗体または抗体断片などの所望の抗原結合官能基または領域を連結し得る。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗原結合CDRまたは可変領域を含む合成構築物である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント」は、免疫系の調節因子、特に、T細胞活性の大きさおよび質、例えば、抗原のT細胞受容体認識の大きさおよび質を調節する共刺激シグナルおよび阻害シグナルを指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイントは阻害シグナルである。特定の実施形態では、阻害シグナルは、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との間の相互作用である。PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能不全を除去し、その結果、T細胞機能(例えば増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)を回復させるまたは増強するために、PD-1とその結合パートナーの1つ以上との間の相互作用を防止する分子は、本明細書では「PD-1軸結合アンタゴニスト」とも呼ばれる。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。
【0032】
本開示に従って標的とされ得るさらなる免疫チェックポイントタンパク質(受容体およびそれらのリガンドなど)は、本明細書において、Pardoll,D.,Nature.12:252-264,2012に記載され、概説されている。
【0033】
「チェックポイント阻害剤」(CPI)および「免疫チェックポイント(ICP)阻害剤」という用語は、本明細書では同義的に使用される。この用語は、免疫チェックポイントを阻害する、特に免疫チェックポイントの阻害シグナルを阻害する結合剤などの分子のような、1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的にもしくは部分的に低減する、阻害する、妨げるもしくは負に調節する、または1つ以上のチェックポイントタンパク質の発現を全体的にもしくは部分的に低減する、阻害する、妨げるもしくは負に調節する結合剤などの分子を指す。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、1つ以上のチェックポイントタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイントタンパク質を調節する1つ以上の分子に結合する。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えばDNAまたはRNAレベルで、1つ以上のチェックポイントタンパク質の前駆体に結合する。本開示によるチェックポイント阻害剤として機能する任意の薬剤を使用することができる。本明細書で使用される「部分的に」という用語は、レベル、例えばチェックポイントタンパク質の阻害レベルの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を意味する。
【0034】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントの阻害シグナルを阻害する任意の化合物、例えば任意の結合剤であり得る。いくつかの実施形態では、阻害シグナルは、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との間の相互作用である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤およびPD-L2阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1遮断抗体、PD-L1遮断抗体またはPD-L2遮断抗体などの遮断抗体であり得る。PD-1遮断抗体の例としては、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブおよびスパルタリズマブ(spartalizumab)が挙げられる。PD-L1遮断抗体の例としては、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブが挙げられる。
【0035】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質、好ましくは抗体またはB細胞受容体(BCR)などの抗原受容体に関する。免疫グロブリンは、特徴的な免疫グロブリン(Ig)フォールドを有する構造ドメイン、すなわち免疫グロブリンドメインを特徴とする。この用語は、膜結合免疫グロブリンおよび可溶性免疫グロブリンを包含する。膜結合免疫グロブリンは、一般にBCRの一部である、表面免疫グロブリンまたは膜免疫グロブリンとも呼ばれる。可溶性免疫グロブリンは、一般に抗体と呼ばれる。
【0036】
免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けられている。例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照。要約すると、免疫グロブリンは一般に、いくつかの鎖、典型的にはジスルフィド結合を介して連結された2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖を含む。これらの鎖は、主に、VLまたはVL(可変軽鎖)ドメイン/領域、CLまたはCL(定常軽鎖)ドメイン/領域、VHまたはVH(可変重鎖)ドメイン/領域、ならびにCHまたはCH(定常重鎖)ドメイン/領域CH1(CH1)、CH2(CH2)、CH3(CH3)およびCH4(CH4)などの免疫グロブリンドメインまたは領域で構成される。重鎖定常領域は、典型的にはCH1、CH2、およびCH3の3つのドメインから構成される。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、非常に柔軟である。ヒンジ領域内のジスルフィド結合は、IgG分子内の2つの重鎖間の相互作用の一部である。各軽鎖は、典型的にはVLおよびCLから構成される。軽鎖定常領域は、典型的には1つのドメイン、CLから構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(または配列および/もしくは構造的に定義されたループの形態が超可変であり得る超可変領域)にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、典型的には、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196,901-917(1987)も参照)。特に明記されない限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書のCDR配列は、DomainGapAlign(Lefranc MP.,Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F.,Kaas Q.and Lefranc M.-P.Nucleic Acids Res.,38,D301-307(2010)を使用してIMGTの規則に従って同定される;インターネットhttpアドレスwww.imgt.org.も参照。特に明記されない限り、または文脈と矛盾しない限り、本開示における定常領域のアミノ酸位置への言及は、EUナンバリングに従う(Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242)。
【0037】
哺乳動物免疫グロブリン重鎖には5つの種類、すなわちα、δ、ε、γおよびμが存在し、これらは抗体の異なるクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMを構成する。可溶性免疫グロブリンの重鎖とは対照的に、膜または表面免疫グロブリンの重鎖は、そのカルボキシ末端に膜貫通ドメインおよび短い細胞質ドメインを含む。哺乳動物には、2種類の軽鎖、すなわちラムダおよびカッパが存在する。免疫グロブリン鎖は、可変領域および定常領域を含む。定常領域は、免疫グロブリンの異なるアイソタイプ内で本質的に保存されており、可変部分は高度に多様であり、抗原認識を担う。
【0038】
「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は、本明細書では区別なく使用され得、限定的に理解されるべきではない。アミノ酸は、各アミノ酸に特異的な側鎖(R基)と共にアミン(-NH
2)官能基およびカルボキシル(-COOH)官能基を含む有機化合物である。本開示の文脈において、アミノ酸は、構造および化学的特徴に基づいて分類され得る。したがって、アミノ酸のクラスは、以下の表の一方または両方に反映され得る:
【表1】
【表2】
【0039】
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。「変異体」という用語は、全ての突然変異体、スプライス変異体、翻訳後修飾変異体、立体配座変異体、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体、および種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。「変異体」という用語は、特にアミノ酸配列の断片を含む。
【0040】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に単一または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、得られた産物の適切なスクリーニングを伴うランダムな挿入も可能である。
【0041】
アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。
【0042】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失は、タンパク質の任意の位置にあってよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。
【0043】
アミノ酸置換変異体は、配列中の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。あるアミノ酸の別のアミノ酸への置換は、保存的置換または非保存的置換として分類され得る。相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列中の位置にある修飾、および/またはアミノ酸を類似の特性を有する他のアミノ酸で置き換えることが好ましい。好ましくは、ペプチドおよびタンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖が関連するアミノ酸のファミリーのうちの1つの置換を含む。本開示の文脈において、「保存的置換」は、類似の構造的および/または化学的特徴を有する別のアミノ酸による1つのアミノ酸の置換であり、上記の2つの表のいずれかで定義されるのと同じクラスの別のアミノ酸残基に対する1つのアミノ酸残基のそのような置換である:例えば、ロイシンはイソロイシンで置換され得、これは、これらがいずれも脂肪族分岐疎水性であるためである。同様に、アスパラギン酸はグルタミン酸で置換され得、これは、これらがいずれも小さな負に荷電した残基であるためである。また、天然に存在するアミノ酸は、一般に4つのファミリー:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸に分けられ得る。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群内の置換を含む:
-グリシン、アラニン;
-バリン、イソロイシン、ロイシン;
-アスパラギン酸、グルタミン酸;
-アスパラギン、グルタミン;
-セリン、トレオニン;
-リジン、アルギニン;および
-フェニルアラニン、チロシン。
【0044】
本明細書で使用される「位置...に対応するアミノ酸」という用語、および同様の表現は、ヒトIgG1重鎖におけるアミノ酸位置番号を指す。他の免疫グロブリン中の対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアラインメントによって見出され得る。したがって、別の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」1つの配列中のアミノ酸またはセグメントは、典型的にはデフォルト設定で、ALIGN、ClustalWまたは同様の標準的な配列アラインメントプログラムを使用して他のアミノ酸またはセグメントと整列するものであり、ヒトIgG1重鎖と少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有する。配列または配列中のセグメントを整列させ、それによって本開示によるアミノ酸位置に対応する配列中の位置を決定する方法は、当技術分野で周知であると考えられる。
【0045】
本開示の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間以上など、または任意の他の関連する機能的に定義された期間(例えば抗原への抗体結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強および/もしくは調節するのに十分な時間ならびに/または抗体がエフェクタ活性を動員するのに十分な時間)などの、好ましくは有意な期間の半減期を有する典型的な生理学的条件下で、抗原(特に抗原上のエピトープ)に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそれらのいずれかの誘導体を指す。特に、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指す。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、および前記のいずれかの組合せを含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)とから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)とから構成される。可変領域および定常領域は、本明細書ではそれぞれ可変ドメインおよび定常ドメインとも呼ばれる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。VHのCDRは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3(またはCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)と呼ばれ、VLのCDRは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3(またはCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)と呼ばれる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)を含み、CHは、定常ドメインCH1、ヒンジ領域、ならびに定常ドメインCH2およびCH3(以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置されている:CH1、CH2、CH3)にさらに細分することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)、および補体系の成分、例えばC1qを含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。抗体は、天然源または組換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであり得、無傷の免疫グロブリンの免疫活性部分であり得る。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体およびヒト化抗体を含む様々な形態で存在し得る。
【0046】
免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。「結合領域」および「抗原結合領域」という用語は、本明細書では区別なく使用され、抗原と相互作用し、VH領域およびVL領域の両方を含む領域を指す。本明細書で使用される抗体は、単一特異性抗体だけでなく、複数、例えば2つ以上、例えば3つ以上の異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。
【0047】
上記のように、本明細書における抗体という用語は、特に明記されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実施され得ることが示されている。「抗体」という用語に包含される抗原結合断片の例としては、(i)Fab’もしくはFab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片、または国際公開第2007/059782号(Genmab)に記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインから本質的になるFv断片;(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれる(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;21(11):484-90)dAb断片(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科動物またはナノボディ分子(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5(1):111-24);ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて、VL領域とVH領域とが対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv)として公知であり、例えば、Bird et al.,Science 242,423-426(1988)およびHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照)としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る。そのような一本鎖抗体は、特に明記されない限り、または文脈によって明確に指示されない限り、抗体という用語に包含される。そのような断片は一般に抗体の意味の範囲内に含まれるが、それらは、集合的におよびそれぞれ独立して本開示の固有の特徴であり、異なる生物学的特性および有用性を示す。本開示の文脈におけるこれらおよび他の有用な抗体断片、ならびにそのような断片の二重特異性フォーマットを本明細書でさらに論じる。抗体という用語は、特に明記されない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技術などの任意の公知の技術によって提供される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解されるべきである。
【0048】
生成された抗体は、任意のアイソタイプを有することができる。本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4など)、IgD、IgA(IgA1、IgA2など)、IgE、IgMまたはIgY)を指す。特定のアイソタイプ、例えばIgG1が本明細書で言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば特定のIgG1配列に限定されないが、抗体が他のアイソタイプよりもそのアイソタイプ、例えばIgG1に配列が近いことを示すために使用される。したがって、例えば本明細書に開示されるIgG1抗体は、定常領域の変異を含む、天然に存在するIgG1抗体の配列変異体であり得る。
【0049】
IgG1抗体は、いずれも本明細書の実施形態の一部に使用するのに適している、アロタイプと呼ばれる複数の多型変異体に存在することができる(Jefferis and Lefranc 2009.mAbs Vol 1 Issue 4 1-7に概説されている)。ヒト集団における一般的なアロタイプ変異体は、文字a、f、n、zまたはそれらの組合せによって指定されるものである。本明細書の実施形態のいずれかでは、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含み得る。さらなる実施形態では、ヒトIgG Fc領域はヒトIgG1を含む。
【0050】
本開示の文脈における「多重特異性抗体」という用語は、異なる抗体配列によって定義される少なくとも2つの異なる抗原結合領域を有する抗体を指す。いくつかの実施形態では、前記異なる抗原結合領域は、同じ抗原上の異なるエピトープに結合する。しかしながら、いくつかの好ましい実施形態では、前記異なる抗原結合領域は、異なる標的抗原に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、「二重特異性抗体」または「bs」である。二重特異性抗体などの多重特異性抗体は、本明細書で以下に記載される二重特異性抗体フォーマットまたは多重特異性抗体フォーマットのいずれかを含む任意のフォーマットのものであり得る。
【0051】
抗体に関連して使用される場合の「完全長」という用語は、抗体が断片ではないが、自然界でそのアイソタイプについて通常見出される特定のアイソタイプのドメイン、例えばIgG1抗体のVH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VLおよびCLドメインの全てを含むことを示す。
【0052】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列およびヒト免疫グロブリン定常ドメインに由来する可変領域およびフレームワーク領域を有する抗体を含むことを意図している。本明細書に開示されるヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異、挿入または欠失)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスなどの別の非ヒト種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0053】
本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、可変領域が非ヒト種に由来し(例えばげっ歯動物に由来)、定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体を指す。キメラ抗体は、抗体工学によって生成され得る。「抗体工学」は、抗体の異なる種類の修飾に総称的に使用される用語であり、抗体工学のためのプロセスは当業者に周知である。特に、キメラ抗体は、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning:A laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,Ch.15に記載されているような標準的なDNA技術を使用することによって生成され得る。したがって、キメラ抗体は、遺伝子操作された、または酵素的に操作された組換え抗体であり得る。キメラ抗体を生成することは当業者の知識の範囲内であり、したがって、キメラ抗体の生成は、本明細書に記載される方法以外の方法によって実施され得る。ヒトに対する治療適用のためのキメラモノクローナル抗体は、非ヒト抗体、例えばげっ歯類抗体の予測される抗体免疫原性を低下させるために開発されている。それらは、典型的には、目的の抗原に特異的な非ヒト(例えばマウスまたはウサギ)可変領域、ならびにヒト定常抗体の重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインを含み得る。キメラ抗体の文脈で使用される「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、以下に記載されるように、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域を指す。
【0054】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように修飾された非ヒト可変ドメインとを含む、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同なヒトアクセプタフレームワーク領域(FR)に移植することによって達成され得る(国際公開第92/22653号および欧州特許第0629240号を参照)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち非ヒト抗体)からのフレームワーク残基のヒトフレームワーク領域への置換(復帰突然変異)が必要とされ得る。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を同定するのに役立ち得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、任意で非ヒトアミノ酸配列への1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を含むヒトフレームワーク領域と、完全ヒト定常領域とを含み得る。任意で、必ずしも復帰突然変異ではないさらなるアミノ酸修飾を適用して、親和性および生化学的特性などの好ましい特徴を有するヒト化抗体が得られ得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、別のタンパク質、例えば親タンパク質「に由来する」タンパク質とは、タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列が他のまたは親タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列と同一であるかまたは類似していることを意味する。例えば、別のまたは親抗体、結合アーム、抗原結合領域または定常領域に由来する抗体、結合アーム、抗原結合領域または定常領域などでは、1つ以上のアミノ酸配列が、他のまたは親抗体、結合アーム、抗原結合領域または定常領域のものと同一であるかまたは類似している。そのような1つ以上のアミノ酸配列の例としては、限定されないが、VHおよびVL CDR、ならびに/またはフレームワーク領域、VH、VL、CL、ヒンジもしくはCH領域の1つ以上もしくは全部のものが挙げられる。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト親抗体「に由来する」と本明細書に記載され得、これは、少なくともVLおよびVH CDR配列が前記非ヒト親抗体のVHおよびVL CDR配列と同一であるかまたは類似していることを意味する。キメラ抗体は、非ヒト親抗体「に由来する」と本明細書に記載され得、これは、典型的には、VHおよびVL配列が非ヒト親抗体のものと同一であるかまたは類似している可能性があることを意味する。別の例は、特定の親抗体「に由来する」と本明細書に記載され得る結合アームまたは抗原結合領域であり、これは、前記結合アームまたは抗原結合領域が、典型的には、前記親抗体の結合アームまたは抗原結合領域と同一または類似のVHおよび/もしくはVL CDR、またはVHおよび/もしくはVL配列を含むことを意味する。しかしながら、本明細書の他の箇所に記載されるように、所望の特徴を導入するために、CDR、定常領域、または抗体、結合アーム、抗原結合領域などの他の箇所に対して突然変異などのアミノ酸修飾を行うことができる。第1のまたは親タンパク質に由来する1つ以上の配列の文脈において使用される場合、「類似の」アミノ酸配列は、好ましくは、少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%、98%もしくは99%の配列同一性を有する。
【0056】
非ヒト抗体は、マウス、ウサギ、ニワトリ、モルモット、ラマおよびヤギなどの多くの異なる種において生成され得る。
【0057】
モノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む様々な技術によって産生することができる。モノクローナル抗体を産生するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルスもしくは発癌性形質転換、または抗体遺伝子のライブラリを用いるファージディスプレイ技術を使用することができ、そのような方法は当業者に周知である。
【0058】
そのような非ヒト種におけるハイブリドーマ産生は、非常によく確立された手順である。免疫化動物/非ヒト種の脾細胞を融合のために単離するための免疫化プロトコルおよび技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。
【0059】
本明細書で使用される場合、文脈と矛盾しない限り、「Fabアーム」または「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖対を指し、本明細書では「半分子」と区別なく使用される。
【0060】
「抗原結合領域を含む結合アーム」という用語は、抗原結合領域を含む抗体分子または断片を意味する。したがって、結合アームは、例えば、6つのVHおよびVL CDR配列、VHおよびVL配列、FabもしくはFab’断片、またはFabアームを含むことができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、文脈と矛盾しない限り、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の2つのFc配列からなる抗体領域を指し、前記Fc配列は、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、抗体のN末端からC末端に向かう方向に、少なくともヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含む領域を指す。抗体のFc領域は、免疫系の様々な細胞(エフェクタ細胞など)、および補体系の成分を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0062】
本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabatに記載のEUナンバリングによるアミノ酸216~230に対応する(Kabat,E.A.et al.,Sequences of proteins of immunological interest.5th Edition-US Department of Health and Human Services,NIH publication No.91-3242,pp 662,680,689(1991)。しかしながら、ヒンジ領域は、本明細書に記載の他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0063】
本明細書で使用される「CH1領域」または「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH1領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH1領域は、Kabat(前記)に記載のEUナンバリングによるアミノ酸118~215に対応する。しかしながら、CH1領域は、本明細書に記載の他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0064】
本明細書で使用される「CH2領域」または「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、Kabat(前記)に記載のEUナンバリングによるアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域は、本明細書に記載の他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0065】
本明細書で使用される「CH3領域」または「CH3ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、Kabat(前記)に記載のEUナンバリングによるアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域は、本明細書に記載の他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0066】
「一価抗体」という用語は、本開示の文脈において、抗体分子が抗原の単一分子に結合することができ、したがって抗原架橋ができないことを意味する。
【0067】
インターフェロンがそれを介してシグナル伝達する受容体の種類に基づいて、インターフェロンは、典型的には3つのクラス:I型インターフェロン、II型インターフェロン、およびIII型インターフェロンに分けられる。全てのI型インターフェロンは、IFNAR1鎖およびIFNAR2鎖からなるIFN-α/β受容体(IFNAR)として公知の特定の細胞表面受容体複合体に結合する。
【0068】
ヒトに存在するI型インターフェロンは、IFNα、IFNβ、IFNε、IFNκおよびIFNωである。一般に、I型インターフェロンは、身体が、体内に侵入したウイルスを認識したときに産生される。それらは線維芽細胞および単球によって産生される。放出されると、I型インターフェロンは標的細胞上の特異的受容体に結合し、ウイルスがそのRNAおよびDNAを産生および複製するのを妨げるタンパク質の発現をもたらす。IFNβタンパク質は、線維芽細胞によって大量に産生される。それらは、主に自然免疫応答に関与する抗ウイルス活性を有する。2種類のIFNβ、すなわちIFNβ1とIFNβ3が記述されている。IFNβ1の天然型および組換え型は、抗ウイルス、抗菌、および抗癌特性を有する。本開示によれば、I型インターフェロンは好ましくはIFNαである。「IFNa」または「IFNα」は、本明細書では区別なく使用され、インターフェロンアルファ(Uniprot#P01563)を意味する。樹状細胞はIFNaの主要な供給源であり、このタンパク質は、ウイルス感染に対する自然免疫応答だけでなく、細胞分化および抗腫瘍応答にも関与する。
【0069】
II型インターフェロン(ヒトにおけるIFNγ)は、免疫インターフェロンとしても公知であり、IL12によって活性化される。さらに、II型インターフェロンは、細胞傷害性T細胞およびTヘルパー細胞によって放出される。
【0070】
III型インターフェロンは、IL10R2(CRF2-4とも呼ばれる)およびIFNLR1(CRF2-12とも呼ばれる)からなる受容体複合体を介してシグナル伝達する。I型およびII型IFNよりも最近発見されたが、最近の情報は、いくつかの種類のウイルスまたは真菌感染におけるIII型IFNの重要性を実証している。
【0071】
本明細書で使用される「IP-10」は、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10(10kDaインターフェロン-ガンマ誘導タンパク質またはCXCL10としても公知)(Uniprot#P02778)を意味する。IP-10は、インターフェロンガンマに応答して様々な細胞内で誘導される。IP-10は、骨髄コロニー形成および血管新生を阻害し、NK細胞およびT細胞の遊走を刺激し、T細胞成熟を調節し、接着分子発現を調節する。
【0072】
本明細書で使用される「IFNガンマ」は、インターフェロンガンマ(Uniprot#P01579)を意味する。その主な機能は、マクロファージを活性化し、APC上のクラスII MHCの発現を増加させることである。IFNガンマ刺激マクロファージは、食作用性が高く、細胞内病原体をさらに死滅させることができ、抗原を提示する能力が増大している。
【0073】
「IL6」および「IL-6」は、本明細書では区別なく使用され、インターロイキン-6(Uniprot#P05231)を意味する。IL-6は、いくつかの誘発刺激に応答して白血球によって放出されるサイトカインである。IL-6は、急性期反応物質および内因性発熱物質としてのその役割に加えて、形質細胞へのB細胞分化にも関与する。IL-6は、通常、正常な血清、血漿、脳脊髄液(CSF)または関節液では検出されない。感染症(内毒血症)および膠原血管病を含む様々な炎症過程では、レベルの上昇が観察される。
【0074】
「TNFa」および「TNFα」は、本明細書では区別なく使用され、腫瘍壊死因子アルファ(Uniprot#P01375)を意味する。TNFaは、インターフェロン、IL-2、GM-CSF、ブラジキニン、免疫複合体、シクロオキシゲナーゼおよびPAF(血小板活性化因子)の阻害剤を含む多くの異なる刺激後に、マクロファージ、単球、好中球、T細胞およびNK細胞によって分泌される。
【0075】
本明細書で使用される場合、所定の抗原またはエピトープへの抗体の結合に関連して「結合する」または「結合することができる」という用語は、典型的には、バイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して決定した場合、または、例えば、抗原をリガンドとし、抗体を分析物として使用するBIAcore 3000装置での表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して決定した場合、約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11Mもしくはさらにそれ以下のKDに対応する親和性での結合である。抗体は、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)への結合に対するそのKDよりも少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより高い程度量は抗体のKDに依存するので、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が非常に特異的である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い程度は、少なくとも10,000倍であり得る。
【0076】
本明細書で使用される「kd」(秒-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
【0077】
本明細書で使用される「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0078】
2つの抗体は、同じ抗原および同じエピトープに結合する場合、「同じ特異性」を有する。試験される抗体が特定の抗原結合抗体と同じエピトープを認識するかどうか、すなわち、抗体が同じエピトープに結合するかどうかは、当業者に周知の様々な方法によって試験され得る。
【0079】
抗体間の競合は、クロスブロッキングアッセイによって検出することができる。例えば、競合ELISAアッセイをクロスブロッキングアッセイとして使用することができる。例えば、標的抗原をマイクロタイタープレートのウェルに被覆し、抗原結合抗体と候補競合試験抗体を添加し得る。ウェル中の抗原に結合した抗原結合抗体の量は、同じエピトープへの結合について競合する候補競合試験抗体の結合能力と間接的に相関する。具体的には、同じエピトープに対する候補競合試験抗体の親和性が大きいほど、抗原被覆ウェルに結合する抗原結合抗体の量は少なくなる。ウェルに結合した抗原結合抗体の量は、抗体を検出可能または測定可能な標識物質で標識することによって測定できる。
【0080】
抗原への結合について別の抗体、例えば本明細書に記載の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体と競合する抗体、または別の抗体、例えば本明細書に記載の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体の抗原に対する特異性を有する抗体は、本明細書に記載の前記重鎖および/または軽鎖可変領域の変異体、例えばCDRの修飾および/または本明細書に記載のある程度の同一性を含む抗体であり得る。
【0081】
本明細書で使用される「単離された多重特異性抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない多重特異性抗体を指すことを意図している(例えば、PD-1および異種タンパク質に特異的に結合する単離された二重特異性抗体は、PD-1または異種タンパク質に特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に含まない)。
【0082】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
【0083】
本開示はまた、本明細書に開示される二重特異性抗体のVL領域、VH領域または1つ以上のCDRの機能的変異体を含む多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体を記載する。二重特異性抗体の文脈において使用されるVL、VHまたはCDRの機能的変異体は、依然として、二重特異性抗体の各抗原結合領域が、親二重特異性抗体の親和性および/または特異性/選択性の少なくともかなりの割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)を保持することを可能にし、場合によっては、そのような二重特異性抗体は、親二重特異性抗体よりも高い親和性、選択性および/または特異性に関連し得る。
【0084】
そのような機能的変異体は、典型的には、親二重特異性抗体に対する有意な配列同一性を保持する。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数x100)。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、PAM120重み付け残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.Meyers and W.Miller,Comput.Appl.Biosci 4,11-17(1988)のアルゴリズムを使用して決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48,444-453(1970)アルゴリズムを使用して決定され得る。
【0085】
例示的な変異体には、主に保存的置換によって親配列のVHおよび/またはVLおよび/またはCDRとは異なるものが含まれる;例えば、変異体における置換のうちの12個、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個は保存的アミノ酸残基置換である。
【0086】
本開示の文脈において、保存的置換は、表1および表2に定義されるアミノ酸のクラス内の置換によって定義され得る。
【0087】
「プログラム死1(PD-1)」受容体は、CD28ファミリーに属する免疫抑制性受容体を指す。PD-1(CD279またはSLEB2としても公知)は、インビボで以前に活性化されたT細胞上に主に発現され、2つのリガンド、PD-L1(B7-H1、B7-4、CD274またはB7-Hとしても公知)およびPD-L2(B7-DC、BtdcまたはCD273としても公知)に結合する。本明細書で使用される「PD-1」という用語は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。ヒトPD-1の配列は公知である(例えば、Genbankアクセッション番号AAC51773.1を参照)。「プログラム死リガンド1(PD-L1)」は、PD-1に結合するとT細胞の活性化およびサイトカイン分泌を下方制御する、PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つ(他はPD-L2)である。本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1の変異体、アイソフォームおよび種ホモログ、例えばマカク(カニクイザル)、アフリカゾウ、イノシシおよびマウスPD-L1(例えば、Genbankアクセッション番号NP_054862.1、XP_005581836、XP_003413533、XP_005665023およびNP_068693をそれぞれ参照)、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。ヒトPD-L1の配列は公知である(例えば、Genbankアクセッション番号NP_054862を参照、ここで、アミノ酸1~18はシグナルペプチドであると予測される)。マカク(カニクイザル)PD-L1の配列は、Genbankアクセッション番号XP_005581836に示されており、ここで、アミノ酸1~18はシグナルペプチドであると予測される。本明細書で使用される「PD-L2」という用語は、ヒトPD-L2(hPD-L2)、hPD-L2の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-L2と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。PD-1のリガンド(PD-L1およびPD-L2)は、樹状細胞またはマクロファージなどの抗原提示細胞、および他の免疫細胞の表面に発現される。PD-1のPD-L1またはPD-L2への結合は、T細胞活性化の下方制御をもたらす。PD-L1および/またはPD-L2を発現する癌細胞は、抗癌免疫応答の抑制をもたらすPD-1を発現するT細胞をスイッチオフにすることができる。PD-1とそのリガンドとの間の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介増殖の減少、および癌性細胞による免疫回避をもたらす。免疫抑制は、PD-1とPD-L1との局所的相互作用を阻害することによって逆転させることができ、PD-1とPD-L2との相互作用も同様に遮断される場合、その効果は相加的である。
【0088】
免疫チェックポイントの多くは、上記のような特異的受容体とリガンドの対の間の相互作用によって調節される。したがって、免疫チェックポイントタンパク質は免疫チェックポイントシグナル伝達を媒介する。例えば、チェックポイントタンパク質は、T細胞活性化、T細胞増殖および/またはT細胞機能を直接的または間接的に調節する。癌細胞は、免疫系による攻撃から自身を保護するために、これらのチェックポイント経路を利用することが多い。したがって、いくつかの実施形態では、本開示に従って調節されるチェックポイントタンパク質の機能は、典型的には、T細胞活性化、T細胞増殖および/またはT細胞機能の調節である。したがって、免疫チェックポイントタンパク質は、自己寛容ならびに生理学的免疫応答の持続時間および大きさを調節し、維持する。免疫チェックポイントタンパク質の多くは、B7:CD28ファミリーまたは腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーに属し、特異的リガンドに結合することによって、細胞質ドメインに動員されるシグナル伝達分子を活性化する(Suzuki et al.,2016,Jap J Clin Onc,46:191-203)。
【0089】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイントモジュレータ」または「チェックポイントモジュレータ」という用語は、1つ以上のチェックポイントタンパク質の機能を調節する分子または化合物を指す。免疫チェックポイントモジュレータは、典型的には、自己寛容ならびに/または免疫応答の大きさおよび/もしくは持続時間を調節することができる。好ましくは、免疫チェックポイントモジュレータは、1つ以上のヒトチェックポイントタンパク質の機能を調節し、したがって「ヒトチェックポイントモジュレータ」である。具体的には、ヒトチェックポイントモジュレータは免疫チェックポイント阻害剤である。
【0090】
本明細書で使用される「機能不全」という用語は、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態にある免疫細胞を指す。機能不全には、抗原認識に対する不応答性、ならびに抗原認識を下流のT細胞エフェクタ機能、例えば増殖、サイトカイン産生(例えばIL-2)および/または標的細胞死滅に変換する能力の障害が含まれる。
【0091】
本明細書で使用される「アネルギー」という用語は、T細胞受容体(TCR)を介して送達される不完全または不十分なシグナルから生じる、抗原刺激に対する不応答性の状態を指す。T細胞アネルギーはまた、共刺激の非存在下での抗原による刺激時にも生じることがあり、その結果細胞は、共刺激の状況でさえも、抗原によるその後の活性化に対して抵抗性になる。不応答性状態は、多くの場合、IL-2の存在によって解除され得る。アネルギーT細胞は、クローン拡大を受けず、および/またはエフェクタ機能を獲得しない。
【0092】
本明細書で使用される「枯渇」という用語は、免疫細胞枯渇、例えば多くの慢性感染症および癌の間に起こる持続的なTCRシグナル伝達から生じるT細胞機能不全の状態としてのT細胞枯渇を指す。これは、不完全または不十分なシグナル伝達によってではなく、持続的なシグナル伝達によって生じるという点でアネルギーとは区別される。枯渇は、不十分なエフェクタ機能、阻害性受容体の持続的発現、および機能性エフェクタまたはメモリT細胞とは異なる転写状態によって定義される。枯渇は、疾患(例えば感染症および腫瘍)の最適な制御を妨げる。枯渇は、外因性負調節経路(例えば免疫調節性サイトカイン)ならびに細胞内因性負調節経路(本明細書に記載されるような阻害性免疫チェックポイント経路)の両方に起因し得る。
【0093】
「T細胞機能を増強する」とは、T細胞が持続的もしくは増幅された生物学的機能を有するように、または枯渇したもしくは不活性なT細胞を再生もしくは再活性化するように、T細胞を誘導する、導くもしくは刺激することを意味する。T細胞機能を増強する例としては、介入前のレベルと比較して、CD8+T細胞からのγ-インターフェロンの分泌増加、増殖増加、抗原応答性の増加(例えば腫瘍クリアランス)が挙げられる。いくつかの実施形態では、増強のレベルは、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%またはそれ以上である。この増強を測定する方法は当業者に公知である。
【0094】
本明細書で使用される「阻害性核酸」または「阻害性核酸分子」という用語は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的にまたは部分的に低減する、阻害する、妨げるまたは負に調節する核酸分子、例えばDNAまたはRNAを指す。阻害性核酸分子には、限定されないが、オリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、アンチセンスDNAまたはRNA分子、およびアプタマー(例えばDNAアプタマーまたはRNAアプタマー)が含まれる。
【0095】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、タンパク質発現、特に本明細書に記載のチェックポイントタンパク質などのチェックポイントタンパク質の発現を減少させることができる核酸分子を指す。オリゴヌクレオチドは、典型的には2~50ヌクレオチドを含む短いDNAまたはRNA分子である。オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得る。チェックポイント阻害剤オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。
【0096】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、所与の配列、特にチェックポイントタンパク質の核酸配列(またはその断片)の配列に相補的な一本鎖DNAまたはRNA分子である。アンチセンスRNAは、典型的には、mRNA、例えばチェックポイントタンパク質をコードするmRNAに結合することによって、前記mRNAのタンパク質翻訳を防止するために使用される。アンチセンスDNAは、典型的には、特定の相補的(コードまたは非コード)RNAを標的とするために使用される。結合が起こる場合、そのようなDNA/RNAハイブリッドは、酵素RNase Hによって分解され得る。さらに、モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドは、脊椎動物では遺伝子ノックダウンに使用され得る。例えば、Kryczek et al.,2006(J Exp Med,203:871-81)は、マクロファージにおけるB7-H4発現を特異的に遮断するB7-H4特異的モルホリノを設計し、腫瘍関連抗原(TAA)特異的T細胞を有するマウスにおいてT細胞増殖の増加および腫瘍体積の減少をもたらした。
【0097】
「siRNA」または「低分子干渉RNA」または「低分子阻害性RNA」という用語は、本明細書では区別なく使用され、相補的なヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子、例えばチェックポイントタンパク質をコードする遺伝子の発現を妨げる、典型的な長さが20~25塩基対の二本鎖RNA分子を指す。いくつかの実施形態では、siRNAはmRNAを妨げ、したがって翻訳、例えば免疫チェックポイントタンパク質の翻訳を遮断する。外因性siRNAのトランスフェクションは、遺伝子ノックダウンのために使用され得るが、その効果は、特に急速に分裂する細胞では、一過性にすぎない場合がある。安定なトランスフェクションは、例えばRNA修飾によって、または発現ベクターを使用することによって達成され得る。siRNAによる細胞の安定なトランスフェクションに有用な修飾およびベクターは、当技術分野で公知である。siRNA配列はまた、2本の鎖の間に短いループを導入して「低分子ヘアピンRNA」または「shRNA」をもたらすように修飾され得る。shRNAは、ダイサーによって機能的siRNAにプロセシングされ得る。shRNAは、比較的低い分解速度および代謝回転速度を有する。したがって、免疫チェックポイント阻害剤はshRNAであり得る。
【0098】
本明細書で使用される「アプタマー」という用語は、ポリペプチドなどの標的分子に結合することができる、典型的には25~70ヌクレオチドの長さのDNAまたはRNAなどの一本鎖核酸分子を指す。いくつかの実施形態では、アプタマーは、本明細書に記載の免疫チェックポイントタンパク質などの免疫チェックポイントタンパク質に結合する。例えば、本開示によるアプタマーは、免疫チェックポイントタンパク質もしくはポリペプチド、または免疫チェックポイントタンパク質もしくはポリペプチドの発現を調節するシグナル伝達経路中の分子に特異的に結合することができる。アプタマーの生成および治療的使用は当技術分野で周知である(例えば米国特許第5,475,096号を参照)。
【0099】
「低分子阻害剤」または「低分子」という用語は、本明細書では区別なく使用され、上記のように1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的にまたは部分的に低減する、阻害する、妨げる、または負に調節する、通常は最大1000ダルトンの低分子量有機化合物を指す。そのような低分子阻害剤は、通常、有機化学によって合成されるが、植物、真菌、および微生物などの天然源からも単離され得る。低分子量は、低分子阻害剤が細胞膜を横切って急速に拡散することを可能にする。例えば、当技術分野で公知の様々なA2ARアンタゴニストは、500ダルトン未満の分子量を有する有機化合物である。
【0100】
「細胞ベースの治療」という用語は、疾患または障害(例えば癌疾患)を治療する目的で、免疫チェックポイント阻害剤を発現する細胞(例えばTリンパ球、樹状細胞、または幹細胞)を対象に移植することを指す。
【0101】
本明細書で使用される「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれかで、正常細胞には全く影響を及ぼさないかまたは最小限の影響しか及ぼさずに、癌性または過剰増殖性細胞において選択的に複製し、その成長を遅らせるかまたはその死を誘導することができるウイルスを指す。免疫チェックポイント阻害剤の送達のための腫瘍溶解性ウイルスは、siRNA、shRNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAもしくはRNA、アプタマー、抗体もしくはその断片、または可溶性免疫チェックポイントタンパク質もしくは融合物などの阻害性核酸分子である免疫チェックポイント阻害剤をコードし得る発現カセットを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、好ましくは複製能を有し、発現カセットはウイルスプロモータ、例えば合成初期/後期ポックスウイルスプロモータの制御下にある。例示的な腫瘍溶解性ウイルスには、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ラブドウイルス(例えばセネカバレーウイルス;SVV-001などのピコルナウイルス)、コクサッキーウイルス、パルボウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、単純ヘルペスウイルス(HSV;OncoVEX GMCSF)、レトロウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、麻疹ウイルス、レオウイルス、シンドビスウイルス、国際公開第2017/209053号に例示的に記載されているワクシニアウイルス(Copenhagen、Western Reserve、Wyeth株を含む)、およびアデノウイルス(例えばDelta-24、Delta-24-RGD、ICOVIR-5、ICOVIR-7、Onyx-015、ColoAd1、H101、AD5/3-D24-GMCSF)が含まれる。可溶性形態の免疫チェックポイント阻害剤を含む組換え腫瘍溶解性ウイルスの生成およびそれらの使用方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/022831号に開示されている。腫瘍溶解性ウイルスは、弱毒化ウイルスとして使用することができる。
【0102】
「治療サイクル」は、本明細書では、その薬物動態に起因して化合物(BNT411および/または1つ以上のさらなる治療剤など)の別個の投与量の効果の範囲内の期間、または換言すれば、投与された結合剤から対象の身体が本質的に解放された後の期間として定義される。例えば、2~12時間または同日などの2~24時間以内の短い時間枠内の複数の少ない用量は、さらに多い単回用量に等しい場合がある。
【0103】
本文脈では、「治療」、「治療する」または「治療的介入」という用語は、疾患または障害などの状態と闘うことを目的とした対象の管理およびケアに関する。この用語は、対象が罹患している所与の状態に対するあらゆる範囲の治療、例えば、症状もしくは合併症を緩和するため、疾患、障害または状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和または軽減するため、および/または疾患、障害または状態を治癒または除去するため、ならびに状態を予防するための治療上有効な化合物の投与を含むことを意図しており、ここで、予防は、疾患、状態または障害と闘うことを目的とした個体の管理およびケアとして理解されるべきであり、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を含む。いくつかの実施形態では、「治療」は、症状または疾患状態を緩和、改善、停止または根絶(治癒)するために、有効量の治療活性化合物(本開示のBNT411および/または1つ以上のさらなる治療剤など)を投与することを指す。
【0104】
本開示の化合物(BNT411および/または1つ以上のさらなる治療剤など)による治療に対する抵抗性、それに対する応答不全、および/またはそれからの再発は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors;バージョン1.1(RECIST Criteria v1.1)に従って決定され得る。RECIST Criteriaを以下の表に記載する(LD:最長寸法)。
【表3】
【0105】
「最良総合効果」は、治療開始から疾患の進行/再発までに記録された最良効果である(治療開始後に記録された最小の測定値をPDの基準として使用する)。CRまたはPRを有する対象は、客観的応答であると考えられる。CR、PRまたはSDを有する対象は、疾患制御状態にあると考えられる。NEを有する対象は、非応答者として計数される。最良総合効果は、治療開始から疾患の進行/再発までに記録された最良効果である(治療開始後に記録された最小の測定値をPDの基準として使用する)。CR、PRまたはSDを有する対象は、疾患制御状態にあると考えられる。NEを有する対象は、非応答者として計数される。
【0106】
「奏効期間(DOR)」は、確認された最良総合効果がCRまたはPRである対象にのみ適用され、客観的腫瘍応答(CRまたはPR)の最初の記録から、最初のPD、または根底にある癌による死亡の日付までの時間として定義される。
【0107】
「無増悪生存期間(PFS)」は、サイクル1の1日目から、最初に記録された進行、または何らかの原因による死亡までの日数として定義される。
【0108】
「総生存期間(OS)」は、サイクル1の1日目から、何らかの原因による死亡までの日数として定義される。対象が死亡したことが分かっていない場合、OSは、対象が生存していることが分かっている最終日に(カットオフ日に、またはカットオフ日前に)打ち切られる。
【0109】
本開示の文脈において、「治療レジメン」という用語は、健康を改善および維持するように設計された構造化治療計画を指す。
【0110】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量で、および期間にわたって有効な量を指す。化合物(BNT411、抗体、または抗体の断片など)の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する化合物の能力などの因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、治療上有益な効果が、化合物の任意の毒性作用または有害作用を上回る量である。患者の反応が初期用量では不十分である場合、さらに高い用量(または異なる、さらに局所的な投与経路によって達成される実質的にさらに高い用量)が使用され得る。ある用量によって望ましくない副作用が患者に生じる場合、さらに低い用量(または異なる、さらに局所的な投与経路によって達成される実質的にさらに低い用量)が使用され得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、異常に制御された細胞成長、増殖、分化、接着、および/または遊走を特徴とする疾患を含む。「癌細胞」とは、急速で制御されない細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。
【0112】
本開示による「癌」という用語は、白血病、セミノーマ、黒色腫、肉腫、骨髄腫(多発性骨髄腫など)、奇形腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫など)、中皮腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、骨髄異形成症候群、直腸癌、子宮内膜癌、尿管癌、腎癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌、副腎癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌(メルケル細胞癌など)、脳の癌、子宮頸癌、悪性孤在性線維性腫瘍、腸癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、結腸癌、胃癌、腸管癌、頭頸部癌、胃癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、陰茎癌、子宮の癌、卵巣癌および肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))ならびにそれらの転移を含む。それらの例は、肺癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、または上記の癌型もしくは腫瘍の転移である。
【0113】
本開示による「癌」という用語は、癌転移も含む。「転移」とは、癌細胞がその元の部位から身体の別の部分に広がることを意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および脈管に進入するための内皮基底膜の貫通、次いで血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新たな腫瘍、すなわち二次性腫瘍または転移性腫瘍の成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移は、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発現し得るので、原発性腫瘍の除去後でさえも起こることが多い。いくつかの実施形態では、本開示による「転移」という用語は、原発性腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。
【0114】
本明細書で使用される「低減する」、「阻害する」、「妨げる」および「負に調節する」などの用語は、例えば、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、または約75%以上のレベルの全体的な減少を生じさせる能力を意味する。「阻害する」という用語または同様の語句は、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわちゼロまたは本質的にゼロへの低減を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、「増加する」または「増強する」などの用語は、例えば、レベルの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%の増加または増強に関する。
【0116】
本明細書で使用される「生理学的pH」は、約7.4のpHを指す。いくつかの実施形態では、生理学的pHは、7.3~7.5である。いくつかの実施形態では、生理学的pHは、7.35~7.45である。いくつかの実施形態では、生理学的pHは、7.3、7.35、7.4、7.45または7.5である。
【0117】
本開示で使用される場合、「%w/v」は重量/体積パーセントを指し、これは、ミリリットル(mL)単位の溶液の総体積のパーセントとして表されるグラム(g)単位の溶質の量を測定する、濃度の単位である。
【0118】
本開示で使用される場合、「重量%」は、グラム(g)での全組成物の総重量のパーセントとして表されるグラム(g)での物質の量を測定する濃度の単位である、重量パーセントを指す。
【0119】
「凍結する」という用語は、通常は熱の除去を伴う液体の凝固に関する。
【0120】
「凍結乾燥する」または「凍結乾燥」という用語は、物質を凍結し、次いで周囲の圧力を低下させて(例えば15Pa未満、例えば10Pa未満、5Pa未満、または1Pa以下)、物質中の凍結媒体を固相から気相に直接昇華させることによる物質の凍結乾燥を指す。したがって、「凍結乾燥する(lyophilizing)」および「凍結乾燥する(freeze-drying)」という用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0121】
「噴霧乾燥する」という用語は、(加熱された)気体を容器(噴霧乾燥機)内で霧化(噴霧)された流体と混合することによって物質を噴霧乾燥することを指し、そこで形成された液滴からの溶媒が蒸発し、乾燥粉末をもたらす。
【0122】
「再構成する」という用語は、乾燥した生成物に水などの溶媒を加えて、それを元の液体状態などの液体状態に戻すことに関する。
【0123】
本開示の文脈における「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。いくつかの実施形態では、本開示の文脈における「組換え物体」は、天然には存在しない。
【0124】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人間によって意図的に修飾されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。「自然界で見出される」という用語は、「自然界に存在する」ことを意味し、公知の物体ならびに自然からまだ発見および/または単離されていないが、天然源から将来発見および/または単離される可能性がある物体を含む。
【0125】
本明細書で使用される場合、「室温」および「周囲温度」という用語は、本明細書では区別なく使用され、少なくとも約15℃、例えば約15℃~約35℃、約15℃~約30℃、約15℃~約25℃、または約17℃~約22℃の温度を指す。そのような温度には、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃および22℃が含まれる。
【0126】
本開示によれば、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって互いに連結された約2個以上、約3個以上、約4個以上、約6個以上、約8個以上、約10個以上、約13個以上、約16個以上、約20個以上、および最大約50個、約100個または約150個の連続するアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、特に少なくとも約151個のアミノ酸を有するペプチドを指すが、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では通常同義語として使用される。
【0127】
「部分」という用語は画分を指す。アミノ酸配列またはタンパク質などの特定の構造に関して、その「部分」という用語は、前記構造の連続または不連続な画分を指し得る。
【0128】
「部分」および「断片」という用語は、本明細書では区別なく使用され、連続する要素を指す。例えば、アミノ酸配列またはタンパク質などの構造の一部は、前記構造の連続する要素を指す。組成物に関連して使用される場合、「部分」という用語は、組成物の一部を意味する。例えば、組成物の一部は、前記組成物の0.1%~99.9%(例えば0.1%、0.5%、1%、5%、10%、50%、90%、または99%)の任意の部分であり得る。
【0129】
アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)に関して、「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えば、オープンリーディングフレームの3’末端を欠く切断されたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、例えば、切断されたオープンリーディングフレームが翻訳を開始するように働く開始コドンを含む限り、オープンリーディングフレームの5’末端を欠く切断されたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、好ましくは、アミノ酸配列からの少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。
【0130】
本開示によれば、ペプチドまたはポリペプチドの一部または断片は、好ましくは、それが由来するペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1つの機能特性を有する。そのような機能特性は、薬理学的活性、他のペプチドまたはポリペプチドとの相互作用、酵素活性、抗体との相互作用、および核酸の選択的結合を含む。例えば、ペプチドまたはポリペプチドの薬理学的に活性な断片は、その断片が由来するペプチドまたはポリペプチドの薬理学的活性の少なくとも1つを有する。ペプチドまたはポリペプチドの一部または断片は、好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドの少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50個の連続するアミノ酸の配列を含む。ペプチドまたはポリペプチドの一部または断片は、好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドの最大8、特に最大10、最大12、最大15、最大20、最大30または最大55個の連続するアミノ酸の配列を含む。
【0131】
アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)に関して本明細書で使用される「変異体」は、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、異なるアミノ酸、または同じアミノ酸の修飾)によって親アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、天然もしくは野生型(WT)アミノ酸配列であり得るか、または野生型アミノ酸配列の修飾形態であり得る。好ましくは、変異体アミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば、親と比較して1~約20個のアミノ酸修飾、好ましくは1~約10個または1~約5個のアミノ酸修飾を有する。
【0132】
本明細書における「野生型」または「WT」または「天然」とは、対立遺伝子変異を含む、自然界で見出されるアミノ酸配列を意味する。野生型アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列を有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸、いくつかの実施形態では連続するアミノ酸について与えられる。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良の配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を使用して行うことができる。
【0134】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドの割合を示す。
【0135】
「%同一」および「同一性%」という用語または同様の用語は、特に、比較される配列間の最適なアラインメントにおいて同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸の割合を指すことを意図している。前記割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の差は、比較される配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしもそうではない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアラインメント後に、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手動で、またはSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444の類似性検索アルゴリズムを用いて、もしくは前記アルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)を援用して行われ得る。いくつかの実施形態では、2つの配列の同一性パーセントは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイト(例えばblast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)で入手可能なBLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して決定される。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトのBLASTNアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む:(i)10に設定された期待閾値;(ii)28に設定されたワードサイズ;(iii)0に設定されたクエリ範囲内の最大一致;(iv)1、-2に設定された一致/不一致スコア;(v)線形に設定されたギャップコスト;および(vi)使用されている低複雑度領域のフィルタ。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトのBLASTPアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む:(i)10に設定された期待閾値;(ii)3に設定されたワードサイズ;(iii)0に設定されたクエリ範囲内の最大一致;(iv)BLOSUM62に設定されたマトリックス;(v)存在:11、拡張:1に設定されたギャップコスト;および(vi)条件付き組成スコアマトリックス調整。
【0136】
同一性パーセントは、比較する配列が一致する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数(例えば参照配列中の位置の数)で除して、この結果に100を乗じることによって得られる。
【0137】
いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%である領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸残基からなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸残基、いくつかの実施形態では連続するアミノ酸残基について与えられる。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0138】
相同なアミノ酸配列は、本開示によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98または少なくとも99%の同一性を示す。
【0139】
本明細書に記載のアミノ酸配列変異体は、例えば組換えDNA操作により、当業者によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはポリペプチドを調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、例えば固相合成および類似の方法などによる公知のペプチド合成技術を用いて容易に調製され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)の断片または変異体は、好ましくは、「機能的断片」または「機能的変異体」である。アミノ酸配列の「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、それが由来するアミノ酸配列のものと同一または類似の1つ以上の機能特性を示す、すなわち機能的に等価である任意の断片または変異体に関する。抗原または抗原配列に関して、1つの特定の機能は、断片または変異体が由来するアミノ酸配列によって示される1つ以上の免疫原性活性である。本明細書で使用される「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、特に、親分子または配列のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸によって変化しており、それでも親分子または配列の機能の1つ以上を果たす、例えば免疫応答を誘導することができるアミノ酸配列を含む変異体分子または配列を指す。いくつかの実施形態では、親分子または配列のアミノ酸配列の修飾は、分子または配列の特徴に有意に影響を及ぼさないかまたは変化させない。異なる実施形態では、機能的断片または機能的変異体の機能は、低減され得るが、依然として有意に存在し得、例えば、機能的変異体の免疫原性は、親分子または配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり得る。しかしながら、他の実施形態では、機能的断片または機能的変異体の免疫原性は、親分子または配列と比較して増強され得る。
【0141】
指定されたアミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源を指す。いくつかの実施形態では、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列またはその断片と同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列の変異体またはその断片であり得る。例えば、本明細書での使用に適した抗原は、天然配列の望ましい活性を保持しながら、それらが由来する天然に存在する配列または天然配列とは配列が異なるように改変され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0142】
いくつかの実施形態では、「単離された」は、天然状態から改変されたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸、ペプチドまたはポリペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸、ペプチドまたはポリペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸、ペプチドまたはポリペプチドは、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0143】
「遺伝子修飾」または単に「修飾」という用語は、核酸による細胞のトランスフェクションを含む。
【0144】
「トランスフェクション」という用語は、細胞への核酸、特にRNAの導入に関する。本開示の目的のために、「トランスフェクション」という用語はまた、細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取り込みを含み、細胞は、対象、例えば患者に存在し得る。したがって、本開示によれば、本明細書に記載の核酸のトランスフェクションのための細胞は、インビトロまたはインビボで存在することができ、例えば、細胞は患者の器官、組織および/または生物の一部を形成することができる。本開示によれば、トランスフェクションは一過性または安定であり得る。トランスフェクションのいくつかの用途では、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現されれば十分である。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。トランスフェクションプロセスで導入された核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないので、外来核酸は有糸分裂によって希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノムに残ることが望ましい場合は、安定なトランスフェクションが起こらなければならない。そのような安定なトランスフェクションは、トランスフェクションのためにウイルスベースのシステムまたはトランスポゾンベースのシステムを使用することによって達成することができる。一般に、抗原をコードする核酸は、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたペプチドまたはポリペプチドを一過性に発現させることができる。
【0145】
本開示によれば、ペプチドまたはポリペプチドの類似体は、それが由来する前記ペプチドまたはポリペプチドの修飾形態であり、前記ペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1つの機能特性を有する。例えば、ペプチドまたはポリペプチドの薬理学的に活性な類似体は、その類似体が由来するペプチドまたはポリペプチドの薬理学的活性の少なくとも1つを有する。そのような修飾には、任意の化学修飾が含まれ、炭水化物、脂質および/またはペプチドもしくはポリペプチドなどのペプチドまたはポリペプチドに関連する任意の分子の単一または複数の置換、欠失および/または付加が含まれる。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドの「類似体」には、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護基/ブロッキング基の導入、タンパク質分解切断、または抗体もしくは別の細胞リガンドへの結合から生じる修飾形態が含まれる。「類似体」という用語はまた、前記ペプチドおよびポリペプチドの全ての機能的な化学的等価物に及ぶ。
【0146】
本明細書で使用される「活性化」または「刺激」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されたT細胞などの免疫エフェクタ細胞の状態を指す。活性化はまた、シグナル伝達経路の開始、サイトカイン産生の誘導、および検出可能なエフェクタ機能に関連し得る。「活性化免疫エフェクタ細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を受けている免疫エフェクタ細胞を指す。
【0147】
「プライミング」という用語は、T細胞などの免疫エフェクタ細胞がその特異的抗原と最初に接触し、エフェクタT細胞などのエフェクタ細胞への分化を引き起こすプロセスを指す。
【0148】
「クローン拡大」または「拡大」という用語は、特定の実体が増加するプロセスを指す。本開示の文脈において、この用語は、好ましくは、免疫エフェクタ細胞が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特異的免疫エフェクタ細胞が増幅される免疫学的応答に関連して使用される。好ましくは、クローン拡大は免疫エフェクタ細胞の分化をもたらす。
【0149】
本開示による「抗原」は、免疫応答を誘発する任意の物質ならびに/または免疫応答もしくは細胞性応答などの免疫機構が向けられる任意の物質を包含する。これはまた、抗原が抗原ペプチドにプロセシングされ、特にMHC分子に関連して提示される場合、免疫応答または免疫機構が1つ以上の抗原ペプチドに向けられる状況を含む。特に、「抗原」は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質、好ましくはペプチドまたはポリペプチドに関する。本開示によれば、「抗原」という用語は、T細胞エピトープなどの少なくとも1つのエピトープを含有する任意の分子を含む。好ましくは、本開示の文脈における抗原は、任意でプロセシング後に、好ましくは抗原(抗原を発現する細胞を含む)に特異的な免疫反応を誘導する分子である。いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、もしくは細菌抗原などの疾患関連抗原、またはそのような抗原に由来するエピトープである。
【0150】
本開示によれば、免疫応答の候補である任意の適切な抗原を使用することができ、免疫応答は体液性および細胞性免疫応答の両方であり得る。本開示のいくつかの実施形態の文脈において、抗原は、MHC分子に関連して、好ましくは細胞、好ましくは抗原提示細胞によって提示され、抗原に対する免疫応答をもたらす。抗原は、好ましくは、天然に存在する抗原に対応するまたは由来する生成物である。そのような天然に存在する抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫ならびに他の感染因子および病原体を含んでもよく、もしくはそれらに由来してもよく、または抗原は腫瘍抗原であってもよい。本開示によれば、抗原は、天然に存在する生成物、例えばウイルスタンパク質、またはその一部に対応し得る。
【0151】
「疾患関連抗原」という用語は、疾患に関連する任意の抗原を指すためにその最も広い意味で使用される。疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して疾患に対する細胞性抗原特異的免疫応答および/または体液性抗体応答を生じさせるエピトープを含む分子である。疾患関連抗原には、病原体関連抗原、すなわち微生物による感染に関連する抗原、典型的には微生物抗原(細菌抗原もしくはウイルス抗原など)、または癌、典型的には腫瘍に関連する抗原、例えば腫瘍抗原が含まれる。
【0152】
いくつかの好ましい実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、すなわち腫瘍細胞の一部、特に主に細胞内にまたは腫瘍細胞の表面抗原として存在するものである。別の実施形態では、抗原は、病原体関連抗原、すなわち病原体に由来する抗原、例えばウイルス、細菌、単細胞生物、または寄生虫に由来する抗原、例えばウイルスリボ核タンパク質またはコートタンパク質などのウイルス抗原である。特に、抗原は、特にT細胞受容体の活性の調節を介して、調節、特に免疫系の細胞、好ましくはCD4+およびCD8+リンパ球の活性化をもたらすMHC分子によって提示されるべきである。
【0153】
「腫瘍抗原」という用語は、細胞質、細胞表面または細胞核に由来し得る癌細胞の成分を指す。特に、この用語は、細胞内でまたは腫瘍細胞上の表面抗原として産生される抗原を指す。例えば、腫瘍抗原には、癌胎児性抗原、α1-フェトプロテイン、イソフェリチン、および胎児性スルホグリコプロテイン、α2-H-フェロプロテインおよびγ-フェトプロテイン、ならびに様々なウイルス腫瘍抗原が含まれる。本開示によれば、腫瘍抗原は、好ましくは、型および/または発現レベルに関して腫瘍または癌および腫瘍細胞または癌細胞に特徴的な任意の抗原を含む。
【0154】
「ウイルス抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち、個体に免疫応答を誘発することができる任意のウイルス成分を指す。ウイルス抗原は、ウイルスリボ核タンパク質またはエンベロープタンパク質であり得る。
【0155】
「細菌抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち、個体に免疫応答を誘発することができる任意の細菌成分を指す。細菌抗原は、細菌の細胞壁または細胞質膜に由来し得る。
【0156】
「エピトープ」という用語は、抗原などの分子中の抗原決定基、すなわち免疫系によって認識される、例えば、特にMHC分子に関連して提示された場合に抗体T細胞またはB細胞によって認識される分子の一部または断片を指す。いくつかの実施形態では、「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面基からなり、通常、特定の三次元構造特徴および特定の電荷特徴を有する。立体配座エピトープと非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われ、後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基と、結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば特異的抗原結合ペプチドによって効果的に遮断または被覆されるアミノ酸残基とを含み得る(換言すれば、アミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリントの範囲内である)。
【0157】
タンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続部分または不連続部分を含み、好ましくは約5~約100、好ましくは約5~約50、より好ましくは約8~約0、最も好ましくは約10~約25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。本開示の文脈におけるエピトープは、T細胞エピトープであることが特に好ましい。
【0158】
「エピトープ」、「抗原の断片」、「免疫原性ペプチド」および「抗原ペプチド」などの用語は、本明細書では区別なく使用され、好ましくは抗原に対する、または抗原を発現するかもしくは含み、好ましくは抗原を提示する細胞に対する免疫応答を誘発することができる抗原の不完全な形態に関する。好ましくは、これらの用語は、抗原の免疫原性部分に関する。好ましくは、抗原の免疫原性部分は、特にMHC分子に関連して提示された場合、T細胞受容体によって認識される(すなわち特異的に結合される)抗原の一部である。特定の好ましい免疫原性部分は、MHCクラスIまたはクラスII分子に結合する。「エピトープ」という用語は、免疫系によって認識される抗原などの分子の一部または断片を指す。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞または抗体によって認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続部分または不連続部分を含み得、約5~約100、例えば約5~約50、より好ましくは約8~約30、最も好ましくは約8~約25アミノ酸長であり得、例えば、エピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、約10~約25アミノ酸長である。「エピトープ」という用語は、T細胞エピトープを含む。
【0159】
「T細胞エピトープ」という用語は、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞によって認識されるタンパク質の一部または断片を指す。「主要組織適合遺伝子複合体」および略語「MHC」という用語は、MHCクラスI分子およびMHCクラスII分子を含み、あらゆる脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質またはMHC分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または疾患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質またはMHC分子は、ペプチドエピトープに結合し、T細胞上のT細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)および非自己抗原(例えば侵入微生物の断片)の両方をT細胞に提示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約8~約10アミノ酸長であるが、さらに長いまたはさらに短いペプチドが有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約10~約25アミノ酸長であり、特に約13~約18アミノ酸長であるが、さらに長いおよびさらに短いペプチドも有効であり得る。
【0160】
ペプチドまたはポリペプチド抗原は、例えば、5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、または50アミノ酸を含む、2~100アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、50個を超えるアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、100個を超えるアミノ酸であり得る。
【0161】
ペプチドまたはポリペプチド抗原は、ペプチドまたはポリペプチドに対する抗体およびT細胞応答を生じさせる免疫系の能力を誘導または増加させることができる任意のペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、ワクチン抗原、すなわち対象への接種が免疫応答を誘導する抗原は、免疫エフェクタ細胞によって認識される。好ましくは、ワクチン抗原は、免疫エフェクタ細胞によって認識される場合、適切な共刺激シグナルの存在下で、ワクチン抗原を認識する抗原受容体を担持する免疫エフェクタ細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大を誘導することができる。本開示の実施形態の文脈において、ワクチン抗原は、好ましくは、細胞の表面、好ましくは抗原提示細胞の表面に提示されるかまたは存在する。いくつかの実施形態では、抗原は、疾患細胞(腫瘍細胞または感染細胞など)によって提示される。いくつかの実施形態では、抗原受容体は、MHCに関連して提示される抗原のエピトープに結合するTCRである。いくつかの実施形態では、T細胞によって発現される場合および/またはT細胞上に存在する場合のTCRの、抗原提示細胞などの細胞によって提示される抗原への結合は、前記T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞によって発現された場合および/またはT細胞上に存在する場合のTCRの、疾患細胞上に提示される抗原への結合は、疾患細胞の細胞溶解および/またはアポトーシスをもたらし、前記T細胞は、好ましくは細胞傷害性因子、例えばパーフォリンおよびグランザイムを放出する。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗原受容体は、抗原中のエピトープに結合する抗体またはB細胞受容体である。いくつかの実施形態では、抗体またはB細胞受容体は、抗原の天然エピトープに結合する。
【0164】
「細胞表面に発現された」または「細胞表面と会合した」という用語は、抗原などの分子が細胞の原形質膜と会合して位置し、分子の少なくとも一部が前記細胞の細胞外空間に面しており、例えば細胞の外側に位置する抗体によって前記細胞の外側からアクセス可能であることを意味する。これに関連して、一部とは、好ましくは少なくとも4個、好ましくは少なくとも8個、好ましくは少なくとも12個、より好ましくは少なくとも20個のアミノ酸である。会合は、直接的であっても間接的であってもよい。例えば、会合は、1つ以上の膜貫通ドメイン、1つ以上の脂質アンカーによるものであってもよく、または他の任意のタンパク質、脂質、サッカリド、もしくは細胞の原形質膜の外葉に見出され得る他の構造との相互作用によるものであってもよい。例えば、細胞の表面と会合する分子は、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質であり得るか、または膜貫通タンパク質である別のタンパク質と相互作用することによって細胞の表面と会合するタンパク質であり得る。
【0165】
「細胞表面」または「細胞の表面」は、当技術分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがって、タンパク質および他の分子による結合にアクセス可能な細胞の外側を含む。抗原は、細胞の表面に位置し、例えば細胞に添加された抗原特異的抗体による結合にアクセス可能である場合、前記細胞の表面に発現される。
【0166】
本開示の文脈における「細胞外部分」または「エキソドメイン」という用語は、細胞の細胞外空間に面しており、好ましくは、例えば細胞の外側に位置する抗体などの分子に結合することによって、前記細胞の外側からアクセス可能であるタンパク質などの分子の一部を指す。好ましくは、この用語は、1つ以上の細胞外ループもしくはドメインまたはその断片を指す。
【0167】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では区別なく使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。「抗原特異的T細胞」という用語または同様の用語は、特にMHC分子に関連して抗原提示細胞または癌細胞などの疾患細胞の表面に提示された場合、T細胞が標的とする抗原を認識し、好ましくはT細胞のエフェクタ機能を発揮するT細胞に関する。T細胞が抗原を発現する標的細胞を死滅させる場合、T細胞は抗原に特異的であると見なされる。T細胞特異性は、例えば、クロム放出アッセイまたは増殖アッセイ内で、様々な標準的技術のいずれかを使用して評価され得る。あるいは、リンホカイン(インターフェロンγなど)の合成を測定することができる。
【0168】
「標的」という用語は、細胞性免疫応答などの免疫応答の標的である細胞または組織などの作用物質を意味する。標的には、抗原または抗原エピトープ、すなわち抗原に由来するペプチド断片を提示する細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、標的細胞は、抗原を発現し、好ましくは前記抗原をクラスI MHCと共に提示する細胞である。
【0169】
「抗原プロセシング」は、抗原の断片であるプロセシング産物への前記抗原の分解(例えばタンパク質のペプチドへの分解)、ならびに細胞による、好ましくは抗原提示細胞による特定のT細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
【0170】
「抗原応答性CTL」とは、抗原提示細胞の表面にクラスI MHCと共に提示される、抗原または前記抗原に由来するペプチドに応答性であるCD8+T細胞を意味する。
【0171】
本開示によれば、CTL応答性には、持続的なカルシウム流動、細胞分裂、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、CD44およびCD69などの活性化マーカーの上方制御、ならびに腫瘍抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解性死滅が含まれ得る。CTL応答性はまた、CTL応答性を正確に示す人工レポータを使用して決定され得る。
【0172】
「免疫応答」および「免疫反応」という用語は、本明細書ではそれらの従来の意味で区別なく使用され、抗原に対する統合された身体応答を指し、好ましくは細胞性免疫応答、体液性免疫応答、またはその両方を指す。本開示によれば、抗原、細胞または組織などの作用物質に関する「への免疫応答」または「に対する免疫応答」という用語は、作用物質に対する細胞性応答などの免疫応答に関する。免疫応答は、1つ以上の抗原に対する抗体の発現、およびインビトロでの様々な増殖またはサイトカイン産生試験で検出され得る、抗原特異的Tリンパ球、好ましくはCD4+およびCD8+Tリンパ球、より好ましくはCD8+Tリンパ球の拡大からなる群より選択される1つ以上の反応を含み得る。
【0173】
本開示の文脈における「免疫応答を誘導する」および「免疫応答を誘発する」という用語ならびに同様の用語は、免疫応答の誘導、好ましくは細胞性免疫応答、体液性免疫応答、またはその両方の誘導を指す。免疫応答は、保護的/防止的/予防的および/または治療的であり得る。免疫応答は、任意の免疫原または抗原または抗原ペプチド、好ましくは腫瘍関連抗原または病原体関連抗原(例えばウイルス(インフルエンザウイルス(A型、B型、もしくはC型)、CMVまたはRSVなど)の抗原)に対して向けられ得る。この文脈における「誘導する」は、誘導前に特定の抗原または病原体に対する免疫応答が存在しなかったことを意味し得るが、誘導前に特定の抗原または病原体に対するある程度の免疫応答が存在し、誘導後に前記免疫応答が増強されることも意味し得る。したがって、この文脈における「免疫応答を誘導する」には、「免疫応答を増強する」ことも含まれる。好ましくは、個体において免疫応答を誘導した後、前記個体は感染症もしくは癌性疾患などの疾患の発症から保護されるか、または免疫応答を誘導することによって疾患状態が改善される。
【0174】
「細胞性免疫応答」、「細胞性応答」、「細胞媒介免疫」または同様の用語は、抗原の発現および/またはクラスIもしくはクラスII MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞性応答を含むことを意味する。細胞性応答は、「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして働くT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも呼ばれる)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞またはCTLとも呼ばれる)は、疾患細胞などの細胞を死滅させる。
【0175】
「体液性免疫応答」という用語は、作用物質および生物に応答して抗体が産生され、最終的にそれらを中和および/または排除する、生きている生物におけるプロセスを指す。抗体応答の特異性は、単一特異性の抗原に結合する膜結合受容体を介してT細胞および/またはB細胞によって媒介される。適切な抗原の結合および様々な他の活性化シグナルの受け取り後、Bリンパ球が分裂し、メモリB細胞および抗体分泌形質細胞クローンを産生し、それぞれが、その抗原受容体によって認識された同一の抗原エピトープを認識する抗体を産生する。メモリBリンパ球は、その後それらの特異的抗原によって活性化されるまで休眠状態のままである。これらのリンパ球は、記憶の細胞基盤、および特異的抗原に再曝露されたときに生じる抗体応答の増大を提供する。
【0176】
「ワクチン接種」および「免疫化」という用語は、治療または予防上の理由で個体を治療する過程を表し、本明細書に記載されているように、1つ以上の免疫原または抗原またはその誘導体を、例えば、それをコードするRNAの形態で個体に投与し、前記1つ以上の免疫原もしくは抗原に対する、または前記1つ以上の免疫原もしくは抗原の提示を特徴とする細胞に対する免疫応答を刺激する手順に関する。
【0177】
「抗原の提示を特徴とする細胞」または「抗原を提示する細胞」または「抗原提示細胞の表面に抗原を提示するMHC分子」または同様の表現は、疾患細胞、特に腫瘍細胞もしくは感染細胞、またはMHC分子、好ましくはMHCクラスIおよび/もしくはMHCクラスII分子、最も好ましくはMHCクラスI分子に関連して、直接またはプロセシング後に、抗原もしくは抗原ペプチドを提示する抗原提示細胞などの細胞を意味する。
【0178】
本開示の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNA(特にmRNA)に転写されるプロセスに関する。その後、RNA(特にmRNA)はペプチドまたはポリペプチドに翻訳され得る。
【0179】
本明細書で使用される「発現」という用語は、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、mRNAの鎖が、ペプチドまたはポリペプチドを作製するようにアミノ酸の配列のアセンブリを指示する、細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。
【0180】
本明細書で使用される「任意の」または「任意で」という用語は、続いて記述される事象、状況または状態が発生してもよくまたは発生しなくてもよいこと、およびその記述が、前記事象、状況または状態が発生する場合と発生しない場合とを含むことを意味する。
【0181】
本明細書で使用される場合、「内因性」は、生物、細胞、組織または系からの、またはそれらの内部で産生される任意の物質を指す。
【0182】
本明細書で使用される場合、「連結された」、「融合された」、または「融合」という用語は、区別なく使用される。これらの用語は、2つ以上の要素または成分またはドメインの結合を指す。
【0183】
「疾患」(本明細書では「障害」とも呼ばれる)という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患は、多くの場合、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部由来の因子によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能不全によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」は、多くの場合、罹患した個体に疼痛、機能不全、苦痛、社会的な問題、もしくは死を引き起こすか、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす何らかの状態を指すためにさらに広く使用される。このさらに広い意味では、疾患は時に、損傷、無力、障害、症候群、感染、単発症状、逸脱した挙動、ならびに構造および機能の非定型の変化を含むが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリと考えられ得る。多くの疾患を患い、それとともに生活することは、人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的だけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。疾患の一例は、腫瘍または癌である。
【0184】
「治療的処置」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長(増加)させる任意の治療に関する。前記治療は、個体における疾患を排除し、個体における疾患の発症を停止もしくは遅延させ、個体における疾患の発症を阻害もしくは遅延させ、個体における症状の頻度もしくは重症度を低下させ、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体における再発を減少させ得る。
【0185】
「予防的処置」または「防止的処置」という用語は、個体に疾患が発生するのを防ぐことを目的とした任意の治療に関する。「予防的処置」または「防止的処置」という用語は、本明細書では区別なく使用される。同様に、腫瘍または癌の進行などの疾患の進行の文脈における「予防方法」という用語は、個体において疾患が進行するのを防ぐことを目的とした任意の方法に関する。
【0186】
「個体」および「対象」という用語は、本明細書では区別なく使用される。これらの用語は、疾患もしくは障害(例えば癌、感染症)に罹患し得るかもしくは罹患しやすいが、疾患もしくは障害を有していても有していなくてもよい、またはワクチン接種などの予防的介入を必要とし得る、またはタンパク質補充などによる介入の必要性を有し得る、ヒトもしくは別の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは霊長動物)、または鳥(ニワトリ)、魚もしくは他の任意の動物種を含む他の任意の非哺乳動物を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記されない限り、「個体」および「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって、成人、高齢者、小児および新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」または「対象」は「患者」である。
【0187】
「患者」という用語は、治療のための個体または対象、具体的には罹患した個体または対象、特に罹患したヒトを意味する。
【0188】
本明細書に記載される医療用調製物、特にキットは、説明資料または説明書を含み得る。本明細書で使用される場合、「説明資料」または「説明書」は、本開示の組成物および方法の有用性を伝えるために使用することができる刊行物、記録、図、または任意の他の表現媒体を含む。本開示のキットの説明資料は、例えば、本開示の組成物/製剤を含む容器に貼付されてもよく、または組成物/製剤を含む容器と共に出荷されてもよい。あるいは、説明資料と組成物が受領者によって協働して使用されることを意図して、説明資料は容器とは別に出荷されてもよい。
【0189】
本明細書に記載される特定の化合物のプロドラッグは、個体への投与時に生理学的条件下で化学変換を受けて特定の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、エクスビボ環境で化学的または生化学的方法によって特定の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、例えば、適切な酵素または化学試薬と共に経皮パッチリザーバに入れた場合、特定の化合物にゆっくり変換され得る。例示的なプロドラッグは、インビボで加水分解可能なエステル(特定の化合物に含まれるアルコールもしくはカルボキシ基を使用する)またはアミド(特定の化合物に含まれるアミノもしくはカルボキシ基を使用する)である。具体的には、特定の化合物に含まれ、少なくとも1つの水素原子を担持する任意のアミノ基をプロドラッグ形態に変換することができる。典型的なN-プロドラッグ形態には、カルバメート、マンニッヒ塩基、エナミン、およびエナミノンが含まれる。
【0190】
本明細書では、化合物の構造式は、前記化合物の特定の異性体を表し得る。しかしながら、本開示は、構造的に生じる幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体などの全ての異性体および異性体混合物を含み、式の記述に限定されないことを理解されたい。さらに、本明細書では、化合物の構造式は、前記化合物の特定の塩および/または溶媒和物を表し得る。しかしながら、本開示は、全ての塩(例えば薬学的に許容される塩)および溶媒和物(例えば水和物)を含み、特定の塩および/または溶媒和物の記述に限定されないことを理解されたい。
【0191】
「異性体」は、同じ分子式を有するが、構造が異なる化合物(「構造異性体」)、または官能基および/もしくは原子の幾何学的(空間的)配置が異なる化合物(「立体異性体」)である。「鏡像異性体」は、重ね合わせることができない互いの鏡像である一対の立体異性体である。「ラセミ混合物」または「ラセミ化合物」は、一対の等量の鏡像異性体を含み、接頭辞(±)によって示される。「ジアステレオマ」は、重ね合わせることができず、互いの鏡像ではない立体異性体である。「互変異性体」は、純粋であっても、個々の原子または原子群の移動のために、自発的かつ可逆的に相互変換する同じ化学物質の構造異性体である;すなわち、互変異性体は互いに動的化学平衡状態にある。互変異性体の一例は、ケト-エノール互変異性の異性体である。「コンフォーマ」は、形式上単結合の周りの回転だけで相互変換することができる立体異性体であり、特に、シクロヘキサンのいす形、半いす形、舟形、およびねじれ舟形などの異なる三次元形態の(複素)環式環をもたらすものを含む。
【0192】
本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、溶媒(例えば有機溶媒(例えば脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなど)、アセトン、アセトニトリル、エーテル、ジメチルスルホキシド(DMSO)など)、水、またはこれらの液体の2つ以上の混合物)中に溶解した材料の付加錯体を指し、付加錯体は結晶または混晶の形態で存在する。付加錯体に含まれる溶媒の量は、化学量論的であっても非化学量論的であってもよい。「水和物」は、溶媒が水である溶媒和物である。
【0193】
同位体標識化合物では、1つ以上の原子が、同じ数のプロトンを有するが中性子の数が異なる対応する原子によって置き換えられる。例えば、水素原子は重水素原子またはトリチウム原子によって置き換えられ得る。本開示で使用することができる例示的な同位体には、重水素、トリチウム、11C、13C、14C、15N、18F、32P、32S、35S、36Clおよび125Iが含まれる。
【0194】
本明細書で使用される「用量」という用語は、一般に、1投与当たり、すなわち1回あたりに服用される化合物(BNT411など)の量に関する「服用量」を指す。
【0195】
「有害事象」またはAEは、医学的治療または手技に関連すると考えられても考えられなくてもよい、医学的治療または手技の使用に時間的に関連する任意の好ましくない意図しない徴候(異常な検査所見を含む)、症状または疾患である。いくつかの実施形態では、AEは、「Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0(CTCAE)」(公開:2006年8月9日)を使用して分類される。
【0196】
本開示の態様および実施形態
第1の態様では、本開示は、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、BNT411(その薬学的に許容される溶媒和物または塩を含む)を提供し、前記方法は、適切な量のBNT411を前記対象に投与することを含む。
【0197】
本開示において実証されるように、BNT411曝露時に、匹敵するイミダゾキノリンであるイミキモド、レシキモドおよび852Aよりもはるかに低い濃度でさらに多くの量のIFNαが誘導された。例えば
図1を参照。発熱性炎症誘発性サイトカイン(例えばTNFα)の分泌を誘導するためには、最大2桁高い濃度のBNT411が必要である。例えば
図7を参照。まとめると、このさらに強い活性および優れた選択性は、全身投与されたBNT411のさらに高い効力および広い治療域を示す。マウスモデルを対象としてBNT411を用いたインビトロ試験およびインビボ試験は、高レベルの治療的に重要なIFNαの放出を実証している;例えば
図2を参照。さらに、本開示は、マウス腫瘍モデルでは、BNT411が、単剤療法でも、標準的な治療法と組み合わせても(例えば白金系化学療法剤またはチェックポイント阻害剤と組み合わせても)抗腫瘍活性を示すことを実証する。例えば
図4~
図6を参照。さらに、本発明者らは、BNT411が、(i)ヒト患者に対して試験されたいくつかの用量で、許容可能な安全性プロファイルを有し、(ii)ヒト患者では、I型IFNが支配的な実質的なサイトカイン応答を誘導し、(iii)少なくともいくつかの治療的に重要な用量で、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、任意でTNFαおよびIL-6などの炎症誘発性サイトカインの実質的な増加をもたらさないことを初めて示す。例えば本出願の実施例6および7ならびに
図8を参照。
【0198】
化合物BNT411
化合物BNT411は、以下の式を有するか:
【化6】
またはその薬学的に許容される溶媒和物および/もしくは塩である。
【0199】
いくつかの実施形態では、BNT411は溶媒和物である。いくつかの実施形態では、BNT411の溶媒和物は、水和物およびジメチルスルホキシド溶媒和物からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、BNT411の溶媒和物は水和物である。いくつかの実施形態では、BNT411の溶媒和物はジメチルスルホキシド溶媒和物である。
【0200】
いくつかの実施形態では、BNT411は無水である。
【0201】
BNT411は選択的TLR7アゴニストである。TLR7を介したシグナル伝達は、一連の自然免疫機構および適応免疫機構をもたらす効果のカスケードを開始させる。いくつかの実施形態では、形質細胞様樹状細胞(pDC)にTLR7が関与すると、MyD88、インターフェロン調節因子7およびNF-κBが動員され、これにより、IFNaおよび炎症誘発性サイトカインの分泌、抗原提示細胞の成熟、ならびに共刺激因子(CD80/CD86)の上方制御が誘導される(例えば本開示の
図3;Gilliet et al.Nat Rev Immunol.2008;8:594-606;Swiecki and Colonna.Nat Rev Immunol.2015;15(8):471-485を参照)。IFNaは、多面的な機構(腫瘍細胞死の直接的な媒介;抗血管新生;抑制性制御性T細胞の阻害;免疫細胞の活性化、Th1応答)を介して抗腫瘍効果を促進するTLR7活性化の重要なサイトカインであると考えられている(Smits et al.,Oncologist.2008;13(8):859-75)。さらに、抗原提示細胞へのpDCのTLR7誘導性成熟は、死につつある腫瘍細胞から放出される抗原のプロセシングおよび(交差)提示を上方制御する。まとめると、IFNa分泌と抗原(交差)提示とが同時に起こると、抗原特異的CD4およびCD8 T細胞の効率的なプライミングおよび活性化と、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の拡大とが促進される。これらのCTLは腫瘍組織内に遊走し、腫瘍特異的抗原を認識し、腫瘍細胞を溶解する(Markov et al.,Acta Naturae.2016;8(3):17-30)。さらに、TLR7シグナル伝達は、強い自然免疫応答を促進する。一例として、pDCによって分泌されたIFNaはナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、これにより、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)欠損標的に対する細胞傷害性の可能性が増強される(Wiedemann et al.,Oncoimmunology.2016;5(7):e1189051)。さらに、多形核骨髄由来サプレッサー細胞(PMN-MDSC)の頻度が低下し、腫瘍関連マクロファージの再分極が誘導されるので、腫瘍微小環境の抑制指標の低下が観察される(Williams et al.,NPJ Breast Cancer.2016;2.pii:15025)。
【0202】
イミキモド、レシキモドまたは852AなどのイミダゾキノリンファミリーのTLR7リガンドは、免疫療法薬として広く試験されている。動物モデルでは強い抗腫瘍効果が観察されているが、これまでヒトへの使用が承認されているのはイミキモドのみである。全身的に有効なIFNα誘導用量レベルでのイミキモドの反復i.v.投与は、用量制限有害反応に関連する(Witt et al.,Cancer Research.1993;53,5176-80;Holldack,Drug Discov Today.2014;Apr;19(4):379-82)。結果として、イミキモドは、基底細胞癌、性器疣贅および膀胱癌などの限局性疾患に局所使用するためのみに登録されている(Edwards,J Am Acad Dermatol.2000;Jul;43(1 Pt 2):S12-7;Spencer,Dermatol Surg.2006;Jan;32(1):63-9;Stanley,Clin Exp Dermatol.2002;Oct;27(7):571-7;Vacchelli et al.,Oncoimmunology.2012;1(6):894-907)。同様に、レシキモドおよび852Aの反復投与レジメンは忍容性が不良であり、これらの化合物の臨床使用も限局性疾患の治療に制限されている(Rook et al.,Blood.2015;17;126(12):1452-6;Sabado et al.,Cancer Immunol Res.2015;3(3):278-87;Geller et al.,Cancer Immunol.Immunother.2010;59:1877-84)。
【0203】
動物癌モデルに対するTLR7アゴニストの強力な抗腫瘍活性に関する広範囲なデータは、これまでに観察された全身性TLR7アゴニストの限られた臨床的有効性とは極めて対照的である。いかなる理論にも束縛されるものではないが、その理由は、i)広範囲の炎症誘発性サイトカインの放出に起因する用量制限毒性、ii)低いアゴニスト効力に起因する制限されたIFNa放出、iii)短い投与間隔に起因するpDCの枯渇、iv)基礎となる作用様式によって定義されるように、併用療法の方が大きな有効性が予測されるのに対して、単剤療法におけるTLR7アゴニストの使用、の組合せであり得る。
【0204】
他のTLR7アゴニストの好ましくない安全性プロファイルは、意図されたI型IFN誘導に加えて、さらに広範囲な一連の炎症誘発性サイトカインの放出に起因し得る(Gorden et al.,J Immunol.2005 Feb 1;174(3):1259-68;Hamm et al.,J Immunotoxicol.2009;Dec;6(4):257-65)。IFNaを超える広範囲の炎症誘発性サイトカインの誘導は、TLR7アゴニストの公知の課題であり、TLR8共活性化に関連すると仮定されている。安全性プロファイルを最適化し、治療域を増大するために、TLR7に選択的に結合するBNT411が開発された。
【0205】
本出願に示されるように、BNT411は、試験された用量でIFNa放出を主に誘導する。この改善されたサイトカインプロファイルに加えて、レシキモドなどの他のTLR7アゴニストよりも多量のIFNaが分泌される。この最適化されたサイトカインプロファイルおよび増大した効力は、広範囲な治療域を提供し、本明細書に提示される臨床的安全性データによって裏付けられるようなさらに良好なリスク便益プロファイルをもたらす。例えば実施例7を参照。
【0206】
いくつかの実施形態では、BNT411によるTLR7関与の効果は、現在の治療レジメンと相乗し、それを補完し得る免疫応答をもたらす。例えば、腫瘍抗原が放射線/化学療法誘導性細胞死を介して放出されると、TLR7によって誘発されるpDC活性化が、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のプライミングおよび拡大を増強し得る。しかしながら、チェックポイント遮断は、免疫抑制シグナルを打ち消し、TLR7活性化の下流効果によって誘導される、腫瘍微小環境(TME)の変化と一緒に働くCTLの枯渇を回避し得る。本出願に示されるように(実施例3~5を参照)、BNT411を同質遺伝子的皮下マウスCT-26腫瘍モデルにおいて試験した。単剤としてのBNT411は、腫瘍増殖遅延を引き起こし、CT-26腫瘍細胞上に存在するgp70抗原に特異的なT細胞の頻度を増加させることが示され、適応免疫が抗腫瘍効果に寄与することが示された。さらに、BNT411をオキサリプラチンと組み合わせることは、腫瘍増殖遅延に対してさらに大きな効果を有した。
【0207】
いくつかの実施形態では、化合物BNT411は、適切な量で投与され、すなわち、例えば、各用量および/または治療サイクルで投与される化合物BNT411の量は、細胞、特に形質細胞様樹状細胞(pDC)上に発現されるTLR7に結合すると細胞内シグナル伝達を誘導し得る。
【0208】
いくつかの実施形態では、適切な量は、以下の1つ以上を提供する:
・細胞(具体的には血球、特にpDC)からのIFNa、任意でIP-10の分泌を誘導すること;
・MyD88、インターフェロン調節因子7(IRF7)および/またはNF-κBを動員すること;
・I型IFNが支配的なサイトカインプロファイルを誘導すること;
・APCへのpDCの成熟を誘発し、好ましくはそれによって、死につつある腫瘍細胞から放出された抗原のプロセシングおよび(交差)提示を上方制御すること;
・ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化すること(具体的には、pDCなどの細胞から分泌されるIFNaによって)。
【0209】
いくつかの実施形態では、適切な量は、細胞(具体的には血球、特にpDC)からのIFNaの分泌を誘導する。いくつかの実施形態では、細胞(具体的には血球、特にpDC)から分泌されるIFNaの量は、対照細胞(具体的には、BNT411によって処理されていない細胞)と比較して増加する。いくつかの実施形態では、分泌されたIFNaの増加は、対照細胞と比較して少なくとも10倍(少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍など)である。
【0210】
いくつかの実施形態では、適切な量は、細胞(具体的には血球、特にpDC)からのIFNaおよびIP-10の分泌を誘導する。いくつかの実施形態では、細胞(具体的には血球、特にpDC)から分泌されるIFNaおよびIP-10の量は、対照細胞(具体的には、BNT411によって処理されていない細胞)と比較して増加する。いくつかの実施形態では、分泌されたIFNaの増加は、対照細胞と比較して少なくとも10倍(少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍など)であり、および/または分泌されたIP-10の増加は、対照細胞と比較して少なくとも10倍(少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍など)である。いくつかの実施形態では、分泌されたIFNaおよび分泌されたIP-10の増加はそれぞれ、対照細胞と比較して少なくとも10倍(少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍など)である。
【0211】
いくつかの実施形態では、適切な量は、I型IFNが支配的なサイトカインプロファイルを誘導する。本明細書で使用される「I型IFNが支配的なサイトカインプロファイル」という表現は、活性化時に(特に、TLR7アゴニストによる治療時に)、細胞(具体的には血球、特にpDC)から分泌されたサイトカインプロファイルが、IFNa(および任意でIP-10またはさらなるI型IFNサイトカイン)が存在し、好ましくはその量が増加する(少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍)という点で、対照細胞(すなわち、非活性化細胞、具体的にはTLR7アゴニストによって処理されていない細胞)から分泌されたサイトカインプロファイルとは主に異なることを意味する。特定の実施形態では、本明細書で使用される「I型IFNが支配的なサイトカインプロファイル」という表現は、活性化時に(特に、TLR7アゴニストによる治療時に)、細胞(具体的には血球、特にpDC)から分泌されたサイトカインプロファイルが、IFNa(および任意でIP-10またはさらなるI型IFNサイトカイン)が存在し、好ましくはその量が増加し(少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍)、TNFaの量が本質的に変化しないままである(具体的には、活性化時の分泌されたTNFaの量は、活性化を伴わず分泌されたTNFaの量の最大2倍(最大1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍または1.2倍など)である)か、または減少するという点で、対照細胞(すなわち、非活性化細胞、具体的にはTLR7アゴニストによって処理されていない細胞)から分泌されたサイトカインプロファイルとは主に異なることを意味する。
【0212】
いくつかの実施形態では、適切な量は、MyD88、インターフェロン調節因子7(IRF7)および/またはNF-κBを動員する。
【0213】
いくつかの実施形態では、適切な量は、APCへのpDCの成熟をもたらす。いくつかの実施形態では、この成熟は、死につつある腫瘍細胞から放出された抗原のプロセシングおよび(交差)提示を上方制御する。
【0214】
いくつかの実施形態では、IFNa分泌と抗原(交差)提示とが同時に起こることによって、適切な量は、抗原特異的CD4およびCD8 T細胞の効率的なプライミングおよび活性化と、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の拡大とを促進することができる。いくつかの実施形態では、これらのCTLは腫瘍組織内に遊走し、腫瘍特異的抗原を認識し、腫瘍細胞を溶解する。
【0215】
いくつかの実施形態では、適切な量は、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化をもたらす(具体的には、pDCなどの細胞から分泌されるIFNaによって)。特定の実施形態では、NK細胞の活性化は、例えば、MHC欠損標的に対するNK細胞の細胞傷害性の可能性を増強する自然免疫応答を促進する。
【0216】
いくつかの実施形態では、適切な量は安全である。いくつかの実施形態では、安全な量は、医学的治療または手技に関連する(特に、BNT411の投与に関連する)有害事象をもたらさない量である。いくつかの実施形態では、安全な量は、最大グレード3の有害事象をもたらす量である。いくつかの実施形態では、安全な量は、最大グレード2の有害事象をもたらす量である。いくつかの実施形態では、安全な量は、医学的治療または手技に関連する(特に、BNT411の投与に関連する)、最大グレード3の有害事象をもたらす量である。いくつかの実施形態では、安全な量は、医学的治療または手技に関連する(特に、BNT411の投与に関連する)、最大グレード2の有害事象をもたらす量である。
【0217】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルにおけるBNT411の適切な量は以下である
a)約0.1μg/kg~約50μg/kg体重、もしくは合計で約8μg~約4000μg、および/または
b)約0.23x10-9mol/kg体重~約114x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約18x10-9mol~約9100x10-9mol。
【0218】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルにおけるBNT411の適切な量は以下である
a)約0.5μg/kg~約20μg/kg体重、もしくは合計で約40μg~約1600μg、および/または
b)約1.14x10-9mol/kg体重~約45.5x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約91x10-9mol~約3640x10-9mol。
【0219】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルにおけるBNT411の適切な量は以下である
a)約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または
b)約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9mol。
【0220】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルにおけるBNT411の適切な量は以下である
a)約2μg/kg~約9μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約720μg、および/または
b)約4.55x10-9mol/kg体重~約20.5x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1638x10-9mol。
【0221】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルにおけるBNT411の適切な量は以下である
a)約2μg/kg~約5μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約400μg、および/または
b)約4.55x10-9mol/kg体重~約11.4x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約910x10-9mol。
【0222】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルにおけるBNT411の適切な量は以下である
a)約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約192μg~約768μg、および/または
b)約5.46x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約437x10-9mol~約1747x10-9mol。
【0223】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルにおけるBNT411の適切な量は以下である
a)約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約384μg~約768μg、および/または
b)約10.9x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約873x10-9mol~約1747x10-9mol。
【0224】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルにおけるBNT411の適切な量は以下である
a)約4.8μg/kg体重、もしくは合計で約384μg、および/または
b)約10.9x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約874x10-9mol。
【0225】
これらの実施形態によれば、μg/kg体重(またはmol/kg体重)で定義される用量は、BNT411が投与される対象の体重の中央値が80kgであることに基づいて、均一の用量に変換されてもよく、逆もまた同様である。さらに、mol(またはmol/kg体重)で定義される用量は、BNT411の分子量に基づいて(すなわち、無水BNT411については439.55g/mol)、μg(またはμg/kg体重)での用量に変換されてもよく、逆もまた同様である。
【0226】
BNT411は、当技術分野で公知の任意の方法および任意の経路によって投与され得る。いくつかの実施形態では、BNT411は、静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、節内または腫瘍内に投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、全身的に、例えば非経口的に、特に静脈内に投与される。
【0227】
BNT411は、本明細書に記載の任意の適切な医薬組成物の形態で投与され得る。いくつかの実施形態では、BNT411は注入の形態で投与される。
【0228】
いくつかの実施形態では、BNT411は少なくとも1治療サイクルで投与される。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは、約2週間(14日間)、3週間(21日間)または4週間(28日間)である。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは3週間(21日間)である。
【0229】
いくつかの実施形態では、BNT411の1用量は、少なくとも1治療サイクルにわたって週に1回(Q1W)投与される(例えば注入される)。いくつかの実施形態では、BNT411の1用量は、少なくとも4治療サイクルにわたってQ1W投与され(例えば注入され)、次いで、3週間に1回(Q3W)投与される。いくつかの実施形態では、BNT411の投与は、疾患の進行、許容できない有害作用の発生、または死亡まで継続される。
【0230】
いくつかの実施形態では、BNT411の各用量は、最小10分間にわたって、例えば最小15分間、最小20分間、最小25分間または最小30分間にわたって注入される。
【0231】
いくつかの実施形態では、BNT411の各用量は、低速ボーラス注射などのボーラス注射として投与される。いくつかの実施形態では、BNT411の各用量は、最小1分間にわたって、例えば最小2分間、最小3分間、最小4分間もしくは最小5分間にわたって、および/または最大9分間にわたって、例えば最大8分間、最大7分間、最大6分間もしくは最大5分間にわたって、ボーラス注射として投与される。いくつかの実施形態では、BNT411の各用量は、1~10分以内、例えば3~5分以内にボーラス注射として投与される。
【0232】
さらなる治療
特定の実施形態では、本明細書に記載のBNT411による単剤療法と組み合わせてさらなる治療が患者に投与され得る。そのようなさらなる治療には、古典的な癌治療、例えば放射線療法、手術、温熱療法および/または化学療法が含まれる。さらに、そのようなさらなる治療には、免疫チェックポイントモジュレータを含む治療が含まれる。
【0233】
化学療法は、通常、標準化された化学療法レジメンの一部として、1つ以上の抗癌剤(化学療法剤)を使用する癌治療の一種である。化学療法という用語は、有糸分裂を阻害するための細胞内毒の非特異的使用を含意するようになった。この含意は、細胞外シグナル(シグナル伝達)を遮断する、より選択的な薬剤を除外する。古典的な内分泌ホルモン(主に、乳癌のためのエストロゲンおよび前立腺癌のためのアンドロゲン)からの成長促進シグナルを阻害する特定の分子または遺伝子標的を用いた治療法の開発は、現在ホルモン療法と呼ばれている。対照的に、受容体チロシンキナーゼに関連するもののような成長シグナルの他の阻害は、標的療法と称される。
【0234】
重要なことに、薬物の使用(化学療法、ホルモン療法または標的療法にかかわらず)は、血流に導入され、したがって原則として体内の任意の解剖学的位置で癌に対処することができるという点で、癌の全身療法を構成する。全身療法は、放射線療法、手術または温熱療法などの癌の局所療法(すなわち、その有効性が適用される解剖学的領域に限定される治療)を構成する他のモダリティと組み合わせて使用されることが多い。
【0235】
伝統的な化学療法剤は、細胞分裂(有糸分裂)を妨げることによって細胞傷害性であるが、癌細胞はこれらの薬剤に対する感受性が大きく異なる。大部分において、化学療法は、細胞を損傷するまたは細胞にストレスを加える方法と考えることができ、アポトーシスが開始された場合、細胞死をもたらし得る。
【0236】
いくつかの実施形態では、BNT411によるTLR7関与の効果は、現在の治療レジメンと相乗し、それを補完し得る免疫応答をもたらす。例えば、腫瘍抗原が放射線/化学療法誘導性細胞死を介して放出されると、TLR7によって誘発されるpDC活性化が、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のプライミングおよび拡大を増強し得る。しかしながら、チェックポイント遮断は、免疫抑制シグナルを打ち消し、TLR7活性化の下流効果によって誘導される、腫瘍微小環境(TME)の変化と一緒に働くCTLの枯渇を回避し得る。したがって、いくつかの実施形態では、そのようなチェックポイント遮断を回避するために、BNT411療法は、チェックポイントモジュレータ、特にチェックポイント阻害剤を使用する治療法と組み合わされる。
【0237】
さらなる治療剤
単剤療法に加えて、いくつかの実施形態では、化合物BNT411は、1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤は、本明細書に記載の腫瘍または癌の治療に一般的に使用される治療剤、例えばチェックポイント阻害剤(CPI)、化学療法剤(例えば白金系化学療法剤および/またはトポイソメラーゼ阻害剤)およびそれらの組合せを含む。
【0238】
化学療法剤
いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤は、1つ以上の化学療法剤、特に、本明細書に記載の腫瘍または癌の治療に一般的に使用される化学療法剤を含む。
【0239】
化学療法剤には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、および細胞傷害性抗生物質が含まれる。
【0240】
アルキル化剤は、タンパク質、RNAおよびDNAを含む多くの分子をアルキル化する能力を有する。アルキル化剤のサブタイプは、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、テトラジン、アジリジン、白金系化学療法化合物および非古典的なアルキル化剤である。ナイトロジェンマスタードには、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミドおよびブスルファンが含まれる。ニトロソ尿素には、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)およびセムスチン(MeCCNU)、フォテムスチンおよびストレプトゾトシンが含まれる。テトラジンには、ダカルバジン、ミトゾロミドおよびテモゾロミドが含まれる。アジリジンには、チオテパ、マイトマイシンおよびジアジコン(AZQ)が含まれる。白金系化学療法化合物には、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンが含まれる。これらは、生物学的に重要な分子中のアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基およびリン酸基と共有結合を形成することによって細胞機能を損なう。非古典的なアルキル化剤には、プロカルバジンおよびヘキサメチルメラミンが含まれる。
【0241】
代謝拮抗剤は、DNAおよびRNAの合成を妨げる分子の群である。それらの多くは、DNAおよびRNAのビルディングブロックと類似の構造を有する。代謝拮抗剤は、核酸塩基またはヌクレオシドのいずれかに類似するが、変化した化学基を有する。これらの薬物は、DNA合成に必要な酵素を遮断するか、またはDNAもしくはRNAに組み込まれることによって効果を発揮する。代謝拮抗剤のサブタイプは、葉酸拮抗剤、フルオロピリミジン、デオキシヌクレオシド類似体およびチオプリンである。葉酸拮抗剤には、メトトレキサートおよびペメトレキセドが含まれる。フルオロピリミジンには、フルオロウラシルおよびカペシタビンが含まれる。デオキシヌクレオシド類似体には、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビン、アザシチジン、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビンおよびペントスタチンが含まれる。チオプリンには、チオグアニンおよびメルカプトプリンが含まれる。
【0242】
抗微小管剤は、微小管機能を妨げることによって細胞分裂を阻止する。ビンカアルカロイドは微小管の形成を妨げ、一方タキサンは微小管の分解を妨げる。ビンカアルカロイドには、ビノレルビン、ビンデシンおよびビンフルニンが含まれる。タキサンには、ドセタキセル(Taxotere)およびパクリタキセル(Taxol)が含まれる。
【0243】
トポイソメラーゼ阻害剤は、2つの酵素:トポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIIの活性に影響を及ぼす薬物であり、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロン、およびアクラルビシンを含む。
【0244】
細胞傷害性抗生物質は、様々な作用機序を有する薬物の多様な群である。それらが化学療法の指標において共有する共通の主題は、細胞分裂を中断することである。最も重要なサブグループは、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンピラルビシン、およびアクラルビシン)ならびにブレオマイシンである;他の顕著な例としては、マイトマイシンC、ミトキサントロン、およびアクチノマイシンが挙げられる。
【0245】
いくつかの実施形態では、例えば、免疫エフェクタ細胞の投与の前に、例えばシクロホスファミドおよびフルダラビンを投与することによって、リンパ球枯渇治療を適用し得る。そのような治療は、細胞の持続性ならびに臨床応答の発生率および持続時間を増加させ得る。
【0246】
いくつかの実施形態では、化学療法剤(または2つ以上の化学療法剤の組合せ)が適切な量で投与される。いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または治療サイクルで投与される化学療法剤の量(または2つ以上の化学療法剤の組合せの量)は、腫瘍または癌の進行を全体的にまたは部分的に低減または予防し得る。
【0247】
例えば、各用量および/または各治療サイクルで投与される化学療法剤の量は、とりわけ、投与される化学療法剤に依存する。
【0248】
いくつかの実施形態では、化学療法剤が白金系化学療法剤を含む場合、例えば、各用量および/または各治療サイクルで投与される白金系化学療法剤の量は以下である
a)合計で約100~1000mg、および/または
b)合計で約0.27x10-3~2.7x10-3mol。
【0249】
いくつかの実施形態では、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含む場合、例えば、各用量および/または各治療サイクルで投与されるトポイソメラーゼ阻害剤の量は以下である
a)合計で約150~400mg、および/または
b)合計で約0.17x10-3~0.68x10-3mol。
【0250】
化学療法剤は、当技術分野で公知の任意の方法および任意の経路によって投与され得る。投与の方法および経路は、使用される化学療法剤の種類に依存する。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤が白金系化学療法剤(カルボプラチンなど)を含む実施形態では、白金系化学療法剤は、全身的に、例えば、非経口的に、特に静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含む実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、全身的に、例えば、非経口的に、特に静脈内に投与されるか、または経口投与される。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含み、治療サイクル当たり2回以上投与される実施形態では、投与経路は同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含み、治療サイクル当たり2回以上投与される実施形態では、1治療サイクルにおけるトポイソメラーゼ阻害剤の第1の用量は、全身的に、例えば、非経口的に、特に静脈内に投与され、前記治療サイクルにおけるトポイソメラーゼ阻害剤の第2の(および各後続用量)は、経腸的に、特に経口的に投与される。
【0251】
化学療法剤は、本明細書に記載の任意の適切な医薬組成物の形態で投与され得る。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤が白金系化学療法剤(カルボプラチンなど)を含む実施形態では、白金系化学療法剤は注入の形態で投与される。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤が白金系化学療法剤(カルボプラチンなど)を含む実施形態では、白金系化学療法剤は、最小30分間にわたって、例えば最小40分間、最小45分間、最小50分間または最小60分間にわたって注入される。
【0252】
いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含む実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、注入および/またはカプセル(軟カプセルなど)の形態で投与される。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含み、治療サイクル当たり2回以上投与される実施形態では、投与形態は同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含み、治療サイクル当たり2回以上投与される実施形態では、1治療サイクルにおけるトポイソメラーゼ阻害剤の第1の用量は注入の形態で投与され、前記治療サイクルにおけるトポイソメラーゼ阻害剤の第2の(および各後続用量)はカプセル(軟カプセルなど)の形態で投与される。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含み、注入の形態で投与される実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、少なくとも5分間(例えば、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間、または少なくとも30分間)および/または最大120分間(最大100分間、最大90分間、最大80分間、最大70分間、最大60分間、最大50分間、または最大45分間など)などの任意の期間にわたって注入され得る。
【0253】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、1治療サイクルにわたって少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤が白金系化学療法剤(カルボプラチンなど)を含む実施形態では、白金系化学療法剤は、2以上(2~4など)の治療サイクルにわたって少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、治療サイクルは3週間(21日間)を有する。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤が白金系化学療法剤(カルボプラチンなど)を含む実施形態では、白金系化学療法剤は、少なくとも2治療サイクル(2~4治療サイクルなど)にわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与される。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤が白金系化学療法剤(カルボプラチンなど)を含む実施形態では、白金系化学療法剤は、少なくとも4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与される。
【0254】
いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含む実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、2以上(少なくとも3、または少なくとも4など)の治療サイクルにわたって少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、治療サイクルは3週間(21日間)を有する。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含む実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、2以上(少なくとも3、または少なくとも4など)の治療サイクルにわたって、治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与される。いくつかの実施形態では、特に、化学療法剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含む実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、4治療サイクルにわたって、治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与される。
【0255】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤は白金系化学療法剤を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤は、シスプラチン、オキサリプラチンまたはカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤は、オキサリプラチンまたはカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤はカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、白金系化学療法剤は、上で指定される量で(例えば合計で約100~1000mg、および/または合計で約0.27x10-3~2.7x10-3mol)、経路によって(例えば静脈内)、形態で(例えば注入)、期間内に(例えば最小30分間にわたって)、および/または用量レジメンで(例えば4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W)投与される。
【0256】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、例えばトポイソメラーゼIおよび/またはトポイソメラーゼIIの阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤は、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、エトポシド、シプロフロキサキシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロンおよびアクラルビシンからなる群より選択される化合物を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤は、エトポシド、シプロフロキサキシンおよびドキソルビシンからなる群より選択される化合物を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤はエトポシドを含む。いくつかの実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、上で指定される量で(例えば合計で約150~400mg、および/または合計で約0.17x10-3~0.68x10-3mol)、経路によって(例えば静脈内または経口)、形態で(例えば注入またはカプセル)、期間内に(例えば少なくとも5分間)、および/または用量レジメンで(例えば4治療サイクルにわたって治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に))投与される。
【0257】
チェックポイント阻害剤
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法で使用するのに適した免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナルのアンタゴニスト、例えばPD-1またはPD-L1を標的とする抗体である。これらのリガンドおよび受容体ならびに他のチェックポイントタンパク質(受容体およびそれらのリガンドなど)は、Pardoll,D.,Nature.12:252-264,2012に記載され、概説されている。本開示に従って標的とされ得るさらなる免疫チェックポイントタンパク質が本明細書に記載されている。
【0258】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナルを防止する。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナル伝達を妨害または阻害する抗体またはその断片である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナル伝達を妨害または阻害する低分子阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナル伝達を妨害または阻害するペプチドベースの阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナル伝達を妨害または阻害する阻害性核酸分子である。
【0259】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の阻害性免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害または遮断は、特に癌細胞に対する免疫抑制およびT細胞免疫の確立または増強の防止または逆転をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害は、免疫系の機能不全を低減または阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害は、機能不全の免疫細胞の機能不全の程度をより少なくする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害は、機能不全のT細胞の機能不全の程度をより少なくする。
【0260】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイント遮断薬タンパク質間の相互作用、例えばPD-1とPD-L1またはPD-L2との間の相互作用を防止する。
【0261】
免疫チェックポイント阻害剤は、必要な特異性の抗原結合断片を有する抗体部分を含む抗体、その抗原結合断片またはその構築物であり得る。抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される通りである。免疫チェックポイント阻害剤である抗体またはその抗原結合断片には、特に、免疫チェックポイントタンパク質、例えば免疫チェックポイント受容体または免疫チェックポイント受容体リガンドに結合する抗体またはその抗原結合断片が含まれる。抗体または抗原結合断片はまた、本明細書に記載されるように、さらなる部分にコンジュゲートされ得る。特に、抗体またはその抗原結合断片は、キメラ化抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片は、免疫チェックポイント受容体または免疫チェックポイント受容体リガンドのアンタゴニストである。
【0262】
いくつかの好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤である抗体は、単離された抗体である。
【0263】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイント遮断薬タンパク質間の相互作用を防止する抗体、断片、その構築物、または抗体模倣物、例えばPD-1とPD-L1またはPD-L2との間の相互作用を防止する抗体、断片、その構築物、または抗体模倣物である。
【0264】
免疫チェックポイント阻害剤は、オリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、アンチセンスDNAまたはRNA分子、およびアプタマー(例えばDNAアプタマーまたはRNAアプタマー)、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの阻害性核酸分子であり得る。いくつかの実施形態では、siRNAである免疫チェックポイント阻害剤はmRNAを妨げ、したがって翻訳、例えば免疫チェックポイントタンパク質の翻訳、例えばPD-1、PD-L1および/またはPD-L2の翻訳を遮断する。
【0265】
チェックポイント阻害剤はまた、分子(またはその変異体)自体の可溶性形態、例えば可溶性PD-L1またはPD-L1融合物の形態であり得る。
【0266】
本開示の文脈において、複数のチェックポイント阻害剤を使用することができ、複数のチェックポイント阻害剤は、異なるチェックポイント経路または同じチェックポイント経路を標的とする。好ましくは、複数のチェックポイント阻害剤は、異なるチェックポイント阻害剤である。好ましくは、複数の異なるチェックポイント阻害剤が使用される場合、特に少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なるチェックポイント阻害剤が使用され、好ましくは2、3、4または5個の異なるチェックポイント阻害剤が使用され、より好ましくは2、3または4個の異なるチェックポイント阻害剤が使用され、さらにより好ましくは2または3個の異なるチェックポイント阻害剤が使用され、最も好ましくは2個の異なるチェックポイント阻害剤が使用される。
【0267】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1軸結合アンタゴニストである。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。
【0268】
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1とその結合パートナー、例えばPD-L1、PD-L2の1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を低減するか、遮断するか、阻害するか、抑止するか、または妨げる分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1がその結合パートナーの1つ以上に結合するのを阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1がPD-L1および/またはPD-L2に結合するのを阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストには、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を低減するか、遮断するか、阻害するか、抑止するか、または妨げる他の分子が含まれる。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を介したシグナル伝達によって媒介されるTリンパ球上に発現された細胞表面タンパク質によって媒介されるかまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させて、機能不全のT細胞の機能不全の程度をより少なくする(例えば、抗原認識に対するエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体である。
【0269】
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1とその結合パートナー、例えばPD-1、B7-1の1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を低減するか、遮断するか、阻害するか、抑止するか、または妨げる分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1がその結合パートナーの1つ以上に結合するのを阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1がPD-1および/またはB7-1に結合するのを阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストには、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L1とその結合パートナー、例えばPD-1、B7-1の1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を低減するか、遮断するか、阻害するか、抑止するか、または妨げる他の分子が含まれる。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を介したシグナル伝達によって媒介されるTリンパ球上に発現された細胞表面タンパク質によって媒介されるかまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させて、機能不全のT細胞の機能不全の程度をより少なくする(例えば、抗原認識に対するエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。
【0270】
「PD-L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L2とその結合パートナー、例えばPD-1の1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を低減するか、遮断するか、阻害するか、抑止するか、または妨げる分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2がその結合パートナーの1つ以上に結合するのを阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2がPD-1に結合するのを阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2アンタゴニストには、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L2とその結合パートナー、例えばPD-1の1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を低減するか、遮断するか、阻害するか、抑止するか、または妨げる他の分子が含まれる。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2を介したシグナル伝達によって媒介されるTリンパ球上に発現された細胞表面タンパク質によって媒介されるかまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させて、機能不全のT細胞の機能不全の程度をより少なくする(例えば、抗原認識に対するエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストはイムノアドヘシンである。
【0271】
いくつかの実施形態では、阻害性免疫調節因子(免疫チェックポイント遮断薬)は、PD-1/PD-L1またはPD-1/PD-L2シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1シグナル伝達経路の阻害剤である。特定の実施形態では、PD-1シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤である。特定の実施形態では、PD-1シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、PD-L1阻害剤またはPD-L2阻害剤などのPD-1リガンド阻害剤である。いくつかの好ましい実施形態では、PD-1シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、PD-1受容体とそのリガンドであるPD-L1および/またはPD-L2の1つ以上との間の相互作用を妨害または阻害する抗体、その抗原結合部分、またはその構築物である。PD-1に結合し、PD-1とそのリガンドの1つ以上との間の相互作用を妨害または阻害する抗体は、当技術分野で公知である。特定の実施形態では、抗体、その抗原結合部分、またはその構築物は、PD-1に特異的に結合する。特定の実施形態では、抗体、その抗原結合部分、またはその構築物は、PD-L1に特異的に結合し、PD-1とのその相互作用を妨害または阻害し、それによって免疫活性を増加させる。特定の実施形態では、抗体、その抗原結合部分、またはその構築物は、PD-L2に特異的に結合し、PD-1とのその相互作用を妨害または阻害し、それによって免疫活性を増加させる。
【0272】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1がそのリガンド結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1および/またはPD-L2である。
【0273】
いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1がその結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。
【0274】
いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2がその結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合パートナーはPD-1である。
【0275】
アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質またはオリゴペプチドであり得る。
【0276】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えばヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体)である。
【0277】
いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。
【0278】
抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体などのPD-1軸結合アンタゴニストは、当技術分野で公知の任意の方法および任意の経路によって投与され得る。投与の方法および経路は、使用されるPD-1軸結合アンタゴニストの種類に依存する。
【0279】
PD-1軸結合アンタゴニストは、本明細書に記載の任意の適切な医薬組成物の形態で投与され得る。
【0280】
抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体などのPD-1軸結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1軸結合アンタゴニストをコードする核酸、例えばDNAまたはRNAの形態で投与され得る。例えば、抗体は、本明細書に記載されるように、発現核酸にコードされて送達され得る。核酸分子は、それ自体で、例えばプラスミドもしくはmRNA分子の形態で送達され得るか、または送達ビヒクル、例えばリポソーム、リポプレックス、もしくは核酸脂質粒子などの任意の他の核酸粒子と複合体化され得る。抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体などのPD-1軸結合アンタゴニストはまた、PD-1軸結合アンタゴニストをコードする発現カセットを含む腫瘍溶解性ウイルスを介して投与され得る。
【0281】
例示的なPD-1阻害剤には、限定されないが、抗PD-1抗体、例えばBGB-A317(BeiGene;米国特許第8,735,553号、国際公開第2015/35606号および米国特許出願公開第2015/0079109号を参照)、ラムブロリズマブ(例えば、国際公開第2008/156712号にhPD109Aならびにそのヒト化誘導体h409A1、h409A16およびh409A17として開示されている)、AB137132(Abcam)、EH12.2H7およびRMP1-14(#BE0146;Bioxcell Lifesciences Pvt.LTD.)、MIH4(Affymetrix eBioscience)、ニボルマブ(OPDIVO,BMS-936558;Bristol Myers Squibb;米国特許第8,008,449号;国際公開第2013/173223号;国際公開第2006/121168号を参照)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA;MK-3475;Merck;国際公開第2008/156712号を参照)、ピジリズマブ(CT-011;CureTech;Hardy et al.,1994,Cancer Res.,54(22):5793-6および国際公開第2009/101611号を参照)、PDR001(Novartis;国際公開第2015/112900号を参照)、MEDI0680(AMP-514;AstraZeneca;国際公開第2012/145493号を参照)、TSR-042(国際公開第2014/179664号を参照)、セミプリマブ(REGN-2810;Regeneron;H4H7798N;米国特許出願公開第2015/0203579号および国際公開第2015/112800号を参照)、JS001(TAIZHOU JUNSHI PHARMA;Si-Yang Liu et al.,2007,J.Hematol.Oncol.70:136)、AMP-224(GSK-2661380;Li et al.,2016,Int J Mol Sci,17(7):1151および国際公開第2010/027827号および国際公開第2011/066342号を参照)、PF-06801591(Pfizer)、チスレリズマブ(BGB-A317;BeiGene;国際公開第2015/35606号、米国特許第9,834,606号および米国特許出願公開第2015/0079109号を参照)、BI 754091、SHR-1210(国際公開第2015/085847号を参照)、ならびに国際公開第2006/121168号に記載されている抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4;INCSHR1210(Jiangsu Hengrui Medicine;SHR-1210としても公知;国際公開第2015/085847号を参照),TSR-042(Tesaro Biopharmaceutical;ANB011としても公知;国際公開第2014/179664号を参照),GLS-010(Wuxi/Harbin Gloria Pharmaceuticals;WBP3055としても公知;Si-Yang et al.,2017,J.Hematol.Oncol.70:136参照)、STI-1110(Sorrento Therapeutics;国際公開第2014/194302号を参照)、AGEN2034(Agenus;国際公開第2017/040790号を参照)、MGA012(Macrogenics;国際公開第2017/19846号を参照)、IBI308(Innovent;国際公開第2017/024465号、国際公開第2017/025016号、国際公開第2017/132825号および国際公開第2017/133540号を参照)、セトレリマブ(cetrelimab)(JNJ-63723283;JNJ-3283;Calvo et al.,J.Clin.Oncol.36,no.5_suppl(2018)58を参照)、ゲノリムズマブ(genolimzumab)(CBT-501;Patel et al.,J.ImmunoTher.Cancer,2017,5(Suppl 2):P242を参照)、ササンリマブ(PF-06801591;Youssef et al.,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.Ann.Meeting 2017;Cancer Res 2017;77(13 Suppl):Abstractを参照)、トリパリマブ(JS-001;米国特許出願公開第2016/0272708号を参照)、カムレリズマブ(SHR-1210;INCSHR-1210;米国特許出願公開第2016/376367号;Huang et al.,Clin.Cancer Res.2018;24(6):1296-1304を参照)、スパルタリズマブ(PDR001;国際公開第2017/106656号;Naing et al.,J.Clin.Oncol.34,no.15_suppl(2016)3060-3060を参照)、BCD-100(JSC BIOCAD,Russia;国際公開第2018/103017号を参照)、バルスチリマブ(AGEN2034;国際公開第2017/040790号を参照)、シンチリマブ(IBI-308;国際公開第2017/024465号および国際公開第2017/133540号を参照)、エザベンリマブ(BI-754091;米国特許出願公開第2017/334995号;Johnson et al.,J.Clin.Oncol.36,no.5_suppl(2018)212-212を参照)、ジンベレリマブ(GLS-010;国際公開第2017/025051号を参照)、LZM-009(米国特許出願公開第2017/210806号を参照)、AK-103(国際公開第2017/071625号、国際公開第2017/166804号および国際公開第2018/036472号を参照)、レチファンリマブ(MGA-012;国際公開第2017/019846号を参照)、Sym-021(国際公開第2017/055547号を参照)、CS1003(中国特許第107840887号を参照)、例えば米国特許第7,488,802号、米国特許第8,008,449号、米国特許第8,168,757号、国際公開第03/042402号、国際公開第2010/089411号(抗PD-L1抗体をさらに開示する)、国際公開第2010/036959号、国際公開第2011/159877号(TIM-3に対する抗体をさらに開示する)、国際公開第2011/082400号、国際公開第2011/161699号、国際公開第2009/014708号、国際公開第03/099196号、国際公開第2009/114335号、国際公開第2012/145493号(PD-L1に対する抗体をさらに開示する)、国際公開第2015/035606号、国際公開第2014/055648号(抗KIR抗体をさらに開示する)、米国特許出願公開第2018/0185482号(抗PD-L1抗体および抗TIGIT抗体をさらに開示する)、米国特許第8,008,449号、米国特許第8,779,105号、米国特許第6,808,710号、米国特許第8,168,757号、米国特許出願公開第2016/0272708号および米国特許第8,354,509号に記載されている抗PD-1抗体、例えばShaabani et al.,2018,Expert Op Ther Pat.,28(9):665-678およびSasikumar and Ramachandra,2018,BioDrugs,32(5):481-497に開示されているPD-1シグナル伝達経路に対する低分子アンタゴニスト、例えば国際公開第2019/000146号および国際公開第2018/103501号に開示されているPD-1に対するsiRNA、国際公開第2018/222711号に開示されている可溶性PD-1タンパク質、ならびに例えば国際公開第2018/022831号に記載されている可溶性形態のPD-1を含む腫瘍溶解性ウイルスが含まれる。
【0282】
特定の実施形態では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ(OPDIVO;BMS-936558)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA;MK-3475)、ピジリズマブ(CT-011)、PDR001、MEDI0680(AMP-514)、TSR-042、REGN2810、JS001、AMP-224(GSK-2661380)、PF-06801591、BGB-A317、BI 754091、またはSHR-1210である。
【0283】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、上記の抗PD-1抗体または抗原結合断片の1つの相補性決定領域(CDR)、例えばニボルマブ、Amp-514、チスレリズマブ、セミプリマブ、TSR-042、JNJ-63723283、CBT-501、PF-06801591、JS-001、カムレリズマブ、PDR001、BCD-100、AGEN2034、IBI-308、BI-754091、GLS-010、LZM-009、AK-103、MGA-012、Sym-021およびCS1003からなる群より選択される1つの抗PD-1抗体または抗原結合断片のCDRを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合断片である。
【0284】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体のCDRは、Kabatナンバリングスキーム(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NTH Publication No.91-3242)を使用して描写される。
【0285】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、上記の抗PD-1抗体または抗原結合断片の1つの重鎖可変領域および軽鎖可変領域、例えばニボルマブ、Amp-514、チスレリズマブ、セミプリマブ、TSR-042、JNJ-63723283、CBT-501、PF-06801591、JS-001、カムレリズマブ、PDR001、BCD-100、AGEN2034、IBI-308、BI-754091、GLS-010、LZM-009、AK-103、MGA-012、Sym-021およびCS1003からなる群より選択される1つの抗PD-1抗体または抗原結合断片の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗PD-1抗体またはその抗原結合断片である。
【0286】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、ニボルマブ、Amp-514、チスレリズマブ、セミプリマブ、TSR-042、JNJ-63723283、CBT-501、PF-06801591、JS-001、カムレリズマブ、PDR001、BCD-100、AGEN2034、IBI-308、BI-754091、GLS-010、LZM-009、AK-103、MGA-012、Sym-021およびCS1003からなる群より選択される抗PD-1抗体またはその抗原結合断片である。
【0287】
本開示の抗PD-1抗体は、好ましくはモノクローナルであり、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリによって産生される断片、および上記のいずれかのPD-1結合断片であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PD-1抗体は、PD-1(例えばヒトPD-1)に特異的に結合する。本開示の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のアイソタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであり得る。
【0288】
本開示の特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、本明細書に記載の抗原結合断片(例えばヒト抗原結合断片)であり、限定されないが、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、ならびにVLまたはVHドメインのいずれかを含む断片を含む。一本鎖抗体を含む抗原結合断片は、可変領域を単独で、またはヒンジ領域、CH1、CH2、CH3およびCLドメインの全体もしくは一部と組み合わせて含み得る。可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2、CH3およびCLドメインとの任意の組合せを含む抗原結合断片も本開示に含まれる。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、ヒト、マウス(例えばマウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ科動物、ウマまたはニワトリである。
【0289】
本明細書に開示される抗PD-1抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性またはより大きな多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、PD-1の異なるエピトープに特異的であり得るか、またはPD-1および異種タンパク質の両方に特異的であり得る。例えば、PCT公開国際公開第93/17715号;国際公開第92/08802号;国際公開第91/00360号;国際公開第92/05793号;Tutt,et al.,1991,J.Immunol.147:60 69;米国特許第4,474,893号;米国特許第4,714,681号;米国特許第4,925,648号;米国特許第5,573,920号;米国特許第5,601,819号;Kostelny et al.,1992,J.Immunol.148:1547 1553を参照。
【0290】
本明細書に開示される抗PD-1抗体は、それらが含む特定のCDRに関して記載または指定され得る。所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列境界は、Kabat et al.(1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」ナンバリングスキーム);Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996),“Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography,” J.Mol.Biol.262,732-745.”(「Contact」ナンバリングスキーム);Lefranc MP et al.,“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol,2003;27(1):55-77(「IMGT」ナンバリングスキーム);Honegger A and Pluckthun A,“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol,2001;309(3):657-70,(「Aho」ナンバリングスキーム);およびMartin et al.,“Modeling antibody hypervariable loops:a combined algorithm,” PNAS,1989,86(23):9268-9272,(「AbM」ナンバリングスキーム)に記載されているものを含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。所与のCDRの境界は、同定に使用されるスキームに応じて異なり得る。いくつかの実施形態では、所与の抗体またはその領域(例えばその可変領域)のCDRまたは個々の特定のCDR(例えばCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)は、前述のスキームのいずれかによって定義されるような(または特異的な)CDRを包含すると理解されるべきである。例えば、特定のCDR(例えばCDR-H3)が所与のVHまたはVL領域アミノ酸配列中の対応するCDRのアミノ酸配列を含むと述べられている場合、そのようなCDRは、前述のスキームのいずれかによって定義されるように、可変領域内の対応するCDR(例えばCDR-H3)の配列を有すると理解される。特定の単数または複数のCDR、例えば、Kabat、Chothia、AbMまたはIMGT法によって定義されるようなCDRを同定するためのスキームは指定されてもよい。
【0291】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗PD-1抗体またはその抗原結合断片のCDR配列中のアミノ酸残基のナンバリングは、Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,2003,27,55-77に記載されるようなIMGTナンバリングスキームによる。
【0292】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗PD-1抗体は、抗体ニボルマブのCDRを含む。国際公開第2006/121168号を参照。いくつかの実施形態では、抗体ニボルマブのCDRは、Kabatナンバリングスキーム(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NTH Publication No.91-3242)を使用して描写される。本開示は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインを含む抗PD-1抗体またはその誘導体を包含し、前記可変ドメインは、(a)3つのCDRのセットであって、CDRの前記セットがモノクローナル抗体ニボルマブに由来するセットと、(b)4つのフレームワーク領域のセットであって、フレームワーク領域の前記セットがモノクローナル抗体ニボルマブのフレームワーク領域のセットとは異なり、前記抗PD-1抗体またはその誘導体がPD-1に結合するセットとを含む。特定の実施形態では、抗PD-1抗体はニボルマブである。
【0293】
本明細書に開示される抗PD-1抗体はまた、PD-1(例えばヒトPD-1)に対するそれらの結合親和性に関して記載または指定され得る。好ましい結合親和性には、5x10-2M、10-2M、5x10-3M、10-3M、5x10-4M、10-4M、5x10-5M、10-5M、5x10-6M、10-6M、5x10-7M、10-7M、5x10-8M、10-8M,5x10-9M、10-9M、5x10-10M、10-10M、5x10-11M、10-11M、5x10-12M、10-12M、5x10-13M、10-13M、5x10-14M、10-14M、5x10-15Mまたは10-15M未満の解離定数またはKdを有するものが含まれる。
【0294】
抗PD-1抗体にはまた、すなわち、共有結合がPD-1への抗体の結合を妨げないように、抗体への任意の種類の分子の共有結合によって修飾された誘導体および構築物が含まれる。例えば、限定されないが、抗PD-1抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって修飾された抗体が含まれる。多くの化学修飾のいずれかが、限定されないが、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む公知の技術によって行われ得る。さらに、誘導体または構築物は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0295】
例示的なPD-1リガンド阻害剤はPD-L1阻害剤およびPD-L2阻害剤であり、限定されないが、MEDI4736(デュルバルマブ;AstraZeneca;国際公開第2011/066389号を参照)、MSB-0010718C(米国特許出願公開第2014/0341917号を参照)、YW243.55.S70(国際公開第2010/077634号の配列番号20および米国特許第8,217,149号を参照)、MIH1(Affymetrix eBioscience;欧州特許第3 230 319号を参照)、MDX-1105(Roche/Genentech;国際公開第2013019906号および米国特許第8,217,149号を参照)、STI-1014(Sorrento;国際公開第2013/181634号を参照)、CK-301(チェックポイント治療薬)、KN035(3D Med/Alphamab;Zhang et al.,2017,Cell Discov.3:17004を参照)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ;RG7446;MPDL3280A;R05541267;米国特許第9,724,413号を参照)、BMS-936559(Bristol Myers Squibb;米国特許第7,943,743号、国際公開第2013/173223号を参照)、アベルマブ(バベンチオ;米国特許出願公開第2014/0341917号を参照)、LY3300054(Eli Lilly Co.)、CX-072(Proclaim-CX-072;CytomXとも呼ばれる;国際公開第2016/149201号を参照)、FAZ053、KN035(国際公開第2017020801号および国際公開第2017020802号を参照)、MDX-1105(米国特許出願公開第2015/0320859号を参照)などの抗PD-L1抗体、3G10、12A4(BMS-936559とも称される)、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4を含む米国特許第7,943,743号に開示されている抗PD-L1抗体、国際公開第2010/077634号、米国特許第8,217,149号、国際公開第2010/036959号、国際公開第2010/077634号、国際公開第2011/066342号、米国特許第8,217,149号、米国特許第7,943,743号、国際公開第2010/089411号、米国特許第7,635,757号、米国特許第 8,217,149号、米国特許第2009/0317368号、国際公開第2011/066389号、国際公開第2017/034916号、国際公開第2017/020291号、国際公開第2017/020858号、国際公開第2017/020801号、国際公開第2016/111645号、国際公開第2016/197367号、国際公開第2016/061142号、国際公開第2016/149201号、国際公開第2016/000619号、国際公開第2016/160792号、国際公開第2016/022630号、国際公開第2016/007235号、国際公開第2015/179654号、国際公開第2015/173267号、国際公開第2015/181342号、国際公開第2015/109124号、国際公開第2018/222711号、国際公開第2015/112805号、国際公開第2015/061668号、国際公開第2014/159562号、国際公開第2014/165082号、国際公開第2014/100079号に記載されている抗PD-L1抗体が含まれる。
【0296】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤はアテゾリズマブを含む。
【0297】
本開示によれば、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性チェックポイントタンパク質の阻害剤であるが、好ましくは刺激性チェックポイントタンパク質の阻害剤ではない。
【0298】
いくつかの好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に記載の阻害性免疫チェックポイントシグナル伝達経路の1つを妨害または阻害する抗体、特に拮抗性抗体または遮断抗体である。いくつかの好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1経路(PD-1とそのリガンド(PD-L1および/またはPD-L2など)の1つ以上との相互作用)を妨害または阻害する抗体、特に拮抗性抗体または遮断抗体である。いくつかの好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を妨害または阻害する抗体、特に拮抗性抗体または遮断抗体である。
【0299】
チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば阻害性核酸分子または抗体もしくはその断片をコードする核酸、例えばDNAまたはRNA分子の形態で投与され得る。例えば、抗体は、本明細書に記載されるように、発現ベクターにコードされて送達され得る。核酸分子は、それ自体で、例えばプラスミドもしくはmRNA分子の形態で送達され得るか、または送達ビヒクル、例えばリポソーム、リポプレックスもしくは核酸脂質粒子と複合体化され得る。チェックポイント阻害剤はまた、チェックポイント阻害剤をコードする発現カセットを含む腫瘍溶解性ウイルスを介して投与され得る。チェックポイント阻害剤はまた、例えば細胞ベースの治療の形態で、チェックポイント阻害剤を発現することができる内因性または同種異系細胞の投与によって投与され得る。
【0300】
いくつかの実施形態では、細胞ベースの治療は、遺伝子操作された細胞を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、本明細書に記載されるような免疫チェックポイント阻害剤を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、siRNA、shRNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAもしくはRNA、アプタマー、抗体もしくはその断片、または可溶性免疫チェックポイントタンパク質もしくは融合物などの阻害性核酸分子である免疫チェックポイント阻害剤を発現する。遺伝子操作された細胞はまた、T細胞機能を増強するさらなる作用物質を発現し得る。そのような作用物質は当技術分野で公知である。免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害において使用するための細胞ベースの治療は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/222711号に開示されている。
【0301】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は適切な量で投与される。いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または治療サイクルで投与されるチェックポイント阻害剤の量は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的にもしくは部分的に低減し得る、阻害し得る、妨げ得る、もしくは負に調節し得るか、または1つ以上のチェックポイントタンパク質の発現を全体的にもしくは部分的に低減し得る、阻害し得る、妨げ得る、もしくは負に調節し得る。したがって、本開示による適切な量のチェックポイント阻害剤は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的にもしくは部分的に低減する、阻害する、妨げる、もしくは負に調節することができるか、または1つ以上のチェックポイントタンパク質の発現を全体的にもしくは部分的に低減する、阻害する、妨げる、もしくは負に調節することができる。したがって、いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、癌細胞に対する免疫抑制およびT細胞免疫の確立または増強の防止または逆転をもたらす、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナルを防止する。
【0302】
いくつかの実施形態では、各用量および/または治療サイクルで投与されるチェックポイント阻害剤の量は、特に、前記チェックポイント阻害剤の5%超、好ましくは10%超、より好ましくは15%超、さらにより好ましくは20%超、さらにより好ましくは25%超、さらにより好ましくは30%超、さらにより好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超、さらにより好ましくは45%超、最も好ましくは50%超がチェックポイントタンパク質に結合する範囲内であり得る。
【0303】
いくつかの実施形態では、例えば、各用量および/または各治療サイクルで投与されるチェックポイント阻害剤の量は以下である
a)合計で約100~2000mg、および/または
b)合計で約0.20x10-9~10x10-6mol。
【0304】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤が抗体(抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブなど)である場合、例えば、各用量および/または各治療サイクルで投与されるチェックポイント阻害剤の量は以下である
a)合計で約1000~1400mg、および/または
b)合計で約6.8x10-6~9.7x10-6mol。
【0305】
チェックポイント阻害剤は、当技術分野で公知の任意の方法および任意の経路によって投与され得る。投与の方法および経路は、使用されるチェックポイント阻害剤の種類に依存する。いくつかの実施形態では、特に、チェックポイント阻害剤が抗体(抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブなど)である実施形態では、チェックポイント阻害剤は、全身的に、例えば、非経口的に、特に静脈内に投与される。
【0306】
チェックポイント阻害剤は、本明細書に記載の任意の適切な医薬組成物の形態で投与され得る。いくつかの実施形態では、特に、チェックポイント阻害剤が抗体(抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブなど)である実施形態では、チェックポイント阻害剤は、注入の形態で投与される。
【0307】
いくつかの実施形態では、特に、チェックポイント阻害剤が抗体(抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブなど)である実施形態では、チェックポイント阻害剤は、最小30分間にわたって、例えば最小40分間、最小45分間、最小50分間または最小60分間にわたって注入される。
【0308】
いくつかの実施形態では、特に、チェックポイント阻害剤が抗体(抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブなど)である実施形態では、チェックポイント阻害剤は、治療サイクル当たり少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、治療サイクルは3週間(21日間)を有する。いくつかの実施形態では、特に、チェックポイント阻害剤が抗体(抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブなど)である実施形態では、チェックポイント阻害剤は、少なくとも2治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与される。いくつかの実施形態では、特に、チェックポイント阻害剤が抗体(アテゾリズマブなど)である実施形態では、チェックポイント阻害剤は、各治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与される。
【0309】
さらなる治療剤の組合せ
BNT411に加えて、本開示による(例えば、本開示の第1の態様、第3の態様および/または第5の態様による)治療レジメンは、2つ以上のさらなる治療剤を対象に投与することをさらに含み得る。
【0310】
いくつかの実施形態では、本開示の第1の態様による治療レジメンは、チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤およびトポイソメラーゼ阻害剤からなる群より選択される2つ以上のさらなる治療剤を対象に投与することをさらに含み得る。
【0311】
いくつかの実施形態では、本開示の第1の態様による治療レジメンは、(i)チェックポイント阻害剤および白金系化学療法剤、(ii)チェックポイント阻害剤およびトポイソメラーゼ阻害剤、または(iii)チェックポイント阻害剤、白金系化学療法剤およびトポイソメラーゼ阻害剤を対象に投与することをさらに含み得る。
【0312】
いくつかの実施形態では、本開示の第1の態様による治療レジメンは、抗PD-L1抗体、白金系化学療法剤(例えばカルボプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えばエトポシド)を対象に投与することをさらに含み得る。
【0313】
いくつかの実施形態では、本開示の第1の態様による治療レジメンは、アテゾリズマブ、カルボプラチンおよびエトポシドからなる群より選択される2つ以上のさらなる治療剤を対象に投与することをさらに含み得る。
【0314】
いくつかの実施形態では、本開示の第1の態様による治療レジメンは、アテゾリズマブ、カルボプラチンおよびエトポシドを対象に投与することをさらに含み得る。
【0315】
いくつかの実施形態では、2つ以上のさらなる治療剤は、上に開示されるように投与される(例えば、投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して)。例えば、BNT411と少なくとも1つのさらなる治療剤(チェックポイント阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、またはチェックポイント阻害剤とトポイソメラーゼII阻害剤との組合せなど)との併用療法の一部である白金系化学療法剤は、上で指定される量で(例えば合計で約100~1000mg、および/または合計で約0.27x10-3~2.7x10-3mol)、上で指定される経路によって(例えば静脈内)、上で指定される形態で(例えば注入)、上で指定される期間内に(例えば最小30分間にわたって)、および/または上で指定される用量レジメンで(例えば4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W)投与され得る。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、BNT411と少なくとも1つのさらなる治療剤(白金系化学療法剤、トポイソメラーゼII阻害剤、または白金系化学療法剤とトポイソメラーゼII阻害剤との組合せなど)との併用療法の一部であるチェックポイント阻害剤は、上で指定される量で(例えば合計で約150~400mg、および/または合計で約0.17x10-3~0.68x10-3mol)、上で指定される経路によって(例えば静脈内または経口)、上で指定される形態で(例えば注入またはカプセル)、上で指定される期間内に(例えば少なくとも5分間)、および/または上で指定される用量レジメンで(例えば4治療サイクルにわたって治療サイクルの1週目に(好ましくは、治療サイクルの1日目(例えばi.v.)、2日目(例えば経口)および3日目(例えば経口)に)3回)投与され得る。
【0316】
いくつかの実施形態では、BNT411が1つ、2つまたはそれ以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与される場合、BNT411は、上に開示されるように投与される(例えば、投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して)。したがって、いくつかの実施形態では、BNT411が1つ、2つまたはそれ以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与される場合、BNT411は、上で指定される量で(例えば約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9mol)、上で指定される経路によって(例えば静脈内)、上で指定される形態で(例えば注入)、上で指定される期間内に(例えば最小15分間にわたって)、および/または上で指定される用量レジメンで(例えば少なくとも4治療サイクルにわたってQ1W、次いで3週間に1回(Q3W))投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、4治療サイクルにわたって治療サイクルの2日目、8日目および15日目にQ1W投与され、次いで治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目にQ3W投与される。
【0317】
対象、および治療される腫瘍または癌
本開示に従って治療される対象は、好ましくはヒト対象である。
【0318】
治療される腫瘍または癌は、任意の腫瘍または癌であり得る。腫瘍/癌の例としては、限定されないが、白血病、セミノーマ、黒色腫、肉腫、骨髄腫(多発性骨髄腫など)、奇形腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫など)、中皮腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、骨髄異形成症候群、直腸癌、子宮内膜癌、尿管癌、腎癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌副腎癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌(メルケル細胞癌など)、脳の癌、子宮頸癌、悪性孤在性線維性腫瘍、腸癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、結腸癌、胃癌、腸管癌、頭頸部癌、胃癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、陰茎癌、子宮の癌、卵巣癌および肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))ならびにそれらの転移が挙げられる。
【0319】
いくつかの実施形態では、治療される腫瘍または癌は、固形の腫瘍もしくは癌である。
【0320】
いくつかの実施形態では、腫瘍または癌は、黒色腫、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、膵癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、脳癌、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺癌、他の皮膚癌、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣癌、子宮内膜癌、尿管癌、陰茎癌、子宮頸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、悪性孤在性線維性腫瘍ならびに中皮腫からなる群より選択される。
【0321】
いくつかの実施形態では、腫瘍または癌は、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、黒色腫、結腸癌、直腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、悪性孤在性線維性腫瘍、前立腺癌、尿管癌および膵癌からなる群より選択される。
【0322】
いくつかの実施形態では、対象は化学療法ナイーブである。したがって、いくつかの実施形態では、対象は事前の化学療法を受けたことがなく、すなわち、本開示による(特に、第1の態様、第3の態様および/または第5の態様による)治療の前に、対象にはいかなる化学療法剤も投与されたことがない。
【0323】
腫瘍または癌は、特に肺癌であり得る。肺癌は、扁平上皮NSCLCもしくは非扁平上皮NSCLCなどの非小細胞肺癌(NSCLC)であり得るか、またはES-SCLCなどの小細胞肺癌(SCLC)であり得る。肺癌は、推定年齢標準化発生率が22.4人/100,000人であり、男性および女性の両方の癌死の主な原因である、2番目に一般的な悪性腫瘍である(Kantar,2021,SEER,2018)。世界中では、2020年に約2,206,771人の新たな肺癌症例と、1,796,144人の死亡とが推定されている(GLOBOCAN,2020)。非小細胞肺癌(NSCLC)は全症例の85%~90%を占め、5年生存率は、この疾患の全段階にわたって約18%であり、転移性疾患ではわずか3.5%である(Jemal et al.,2011)(Kantar,2021)。1Lの状況では、治療は、典型的には、分子およびバイオマーカー分析、ならびに腫瘍の組織学的検査に応じて、免疫療法または標的療法と組み合わせた白金系化学療法からなる(NCCN,2021d)。より最近では、PD-1およびプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の出現により、ドライバー突然変異のない患者の転帰が改善されている(非扁平上皮集団の約62%、および扁平上皮集団の77%(Kantar,2021))。腫瘍が特定の発癌性突然変異を有しないか、またはチェックポイント阻害剤(CPI)選択肢のバイオマーカーを発現しない患者には、さらなる治療選択肢が必要である。応答を増強するための相補的手法との新規な組合せは、この集団における満たされていない必要性にさらに対処し得る。第2選択(2L)の状況にある患者では、標準治療化学療法(SOC)は、以前に受けた治療に応じて、白金系化学療法、CPI単剤療法、またはラムシルマブを伴うまたは伴わないドセタキセルに限定される。第3選択(3L)の状況にある患者では、化学療法単剤療法が標準である。この集団において毒性を制限し、潜在的に有効性を高めるために、新規の治療法が必要とされている(NCCN,2021d)。
【0324】
いくつかの実施形態では、腫瘍または癌は、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)などの小細胞肺癌(SCLC)である。
【0325】
治療レジメン
BNT411と、存在するかまたは使用される場合、1つ以上のさらなる治療剤とは、特に投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して上で指定されるように投与することができる。
【0326】
いくつかの実施形態では、BNT411は、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molの量で投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重(約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重など)、もしくは合計で約192μg~約768μg(約384μg~約768μgなど)、および/または約5.46x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重(約10.9x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重など)、もしくは合計で約437x10-9mol~約1747x10-9mol(約873x10-9mol~約1747x10-9molなど)の量で投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、約4.8μg/kg体重、もしくは合計で約384μg、および/または約10.9x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約874x10-9molの量で投与される。
【0327】
いくつかの実施形態では、BNT411は、任意の適切な方法によって、例えば静脈内に(例えば注入によって)投与される。
【0328】
いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤は、存在するかまたは使用される場合、任意の適切な方法によって、例えば静脈内(例えば注入によって)、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、節内、腫瘍内または経口的に(例えば軟カプセルなどのカプセルの形態で)投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤がチェックポイント阻害剤および白金系化学療法剤を含む場合、チェックポイント阻害剤および白金系化学療法剤は全身的に、特に静脈内に(例えば注入によって)投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤がトポイソメラーゼ阻害剤を含む場合、トポイソメラーゼ阻害剤は、全身的に、特に静脈内に(例えば注入によって)、または経腸的に、特に経口的に(例えばカプセルによって)投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤がトポイソメラーゼ阻害剤を含む場合、トポイソメラーゼ阻害剤は、少なくとも1治療サイクルにわたって(例えば少なくとも2、3または4治療サイクルにわたって)少なくとも2回(少なくとも3回など)投与される。特定の実施形態では、1治療サイクルのトポイソメラーゼ阻害剤の第1の用量は、全身的に、特に静脈内に(例えば注入によって)投与される。いくつかの実施形態では、前記治療サイクルのトポイソメラーゼ阻害剤の第2の用量(および存在するかまたは使用される場合、任意の後続用量)は、経口投与される(例えばカプセルによって)。
【0329】
いくつかの実施形態では、BNT411と、1つ以上のさらなる治療剤とは、特に投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して上で指定されるように、少なくとも1治療サイクルで対象に投与される。
【0330】
いくつかの実施形態では、治療サイクルは、約2週間(14日間)、3週間(21日間)または4週間(28日間)である。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは3週間(21日間)である。
【0331】
いくつかの実施形態では、BNT411と、存在するかまたは使用される場合、1つ以上のさらなる治療剤とは、同時に投与される。いくつかの実施形態では、BNT411と、存在するかまたは使用される場合、1つ以上のさらなる治療剤チェックポイント阻害剤とは別に投与される。
【0332】
いくつかの実施形態では、BNT411は、少なくとも2(例えば少なくとも3または少なくとも4)治療サイクルにわたってQ1W投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、治療サイクルの2日目、8日目および15日目にQ1W投与される。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは3週間(21日間)である。いくつかの実施形態では、BNT411は、少なくとも2(少なくとも3または少なくとも4など)治療サイクルにわたってQ1W投与され、次いで3週間に1回(Q3W)、特に2日目に投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、4治療サイクルにわたって治療サイクルの2日目、8日目および15日目にQ1W投与され、次いで治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目にQ3W投与される。
【0333】
いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤がチェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブなど)を含む場合、チェックポイント阻害剤は、治療サイクル当たり少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは3週間(21日間)である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、少なくとも2治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、各治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与される。
【0334】
いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤が白金系化学療法剤(カルボプラチンなど)を含む場合、白金系化学療法剤は、2以上(2~4など)の治療サイクルにわたって少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは3週間(21日間)である。いくつかの実施形態では、白金系化学療法剤は、少なくとも2治療サイクル(2~4治療サイクルなど)にわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与される。いくつかの実施形態では、白金系化学療法剤は、4治療サイクル(特に、治療サイクル1、2、3および4(または最初の4治療サイクル))にわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与される。
【0335】
いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤がトポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)を含む場合、トポイソメラーゼ阻害剤は、2以上(少なくとも3、または少なくとも4など)の治療サイクルにわたって少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは3週間(21日間)である。いくつかの実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、2以上(少なくとも3、または少なくとも4など)の治療サイクルにわたって、治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与される。いくつかの実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤は、4治療サイクル(特に、治療サイクル1、2、3および4(または最初の4治療サイクル))にわたって、治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与される。
【0336】
いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤がチェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブなど)と、白金系化学療法剤(カルボプラチンなど)と、トポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)とを含む場合、チェックポイント阻害剤は、各治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、白金系化学療法剤は、4治療サイクル(特に、治療サイクル1、2、3および4(または最初の4治療サイクル))にわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、トポイソメラーゼ阻害剤は、4治療サイクル(特に、治療サイクル1、2、3および4(または最初の4治療サイクル))にわたって、治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与される。いくつかの実施形態では、BNT411は、4治療サイクルにわたって治療サイクルの2日目、8日目および15日目にQ1W投与され、次いで治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目にQ3W投与される。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは3週間(21日間)である。
【0337】
BNT411と、存在するかまたは使用される場合、1つ以上のさらなる治療剤とは、任意の適切な形態(例えばそれ自体裸)で投与され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、BNT411と、存在するかまたは使用される場合、1つ以上のさらなる治療剤とは、本明細書に記載される任意の適切な医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、少なくともBNT411は、別個の医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤が使用される場合、BNT411と、1つ以上のさらなる治療剤の少なくとも1つ(少なくとも2つまたは少なくとも3つなど)とは、別個の医薬組成物の形態で投与される。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤が白金系化学療法剤を含む場合、白金系化学療法剤は、別個の医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤が使用される場合、BNT411と、1つ以上のさらなる治療剤のいずれかとは、別個の医薬組成物(すなわち、BNT411のための1つの医薬組成物、および1つ以上のさらなる治療剤の各々のための1つの医薬組成物)の形態で投与される。
【0338】
組成物
組成物または医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995に開示されるものなどの従来の技術に従って、公知のアジュバントを含む、担体、賦形剤および/または希釈剤、ならびに医薬組成物に適した任意の他の成分と共に製剤化され得る。薬学的に許容される担体または希釈剤、ならびに任意の公知のアジュバントおよび賦形剤は、BNT411、および/または存在するかもしくは使用される場合、1つ以上のさらなる治療剤、ならびに選択された投与方法に適しているべきである。いくつかの実施形態では、医薬組成物の担体および他の成分に対する適合性は、選択された化合物または医薬組成物の所望の生物学的特性に対する有意な悪影響の欠如(例えば実質的な影響未満[10%以下の相対阻害、5%以下の相対阻害など])に基づいて決定される。
【0339】
第2の態様では、本開示は、約8μg~4000μg、または約18x10-9mol~約9100x10-9molの量のBNT411を含む組成物、特に医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、BNT411を含む組成物、特に医薬組成物は、約40μg~約1600μg、または約91x10-9mol~約3640x10-9molの量のBNT411を含む。いくつかの実施形態では、BNT411を含む組成物、特に医薬組成物は、約160μg~約800μg、または約364x10-9mol~約1820x10-9molの量でBNT411を含む。いくつかの実施形態では、BNT411を含む組成物、特に医薬組成物は、約160μg~約720μg、または約364x10-9mol~約1638x10-9molの量でBNT411を含む。いくつかの実施形態では、BNT411を含む組成物、特に医薬組成物は、約192μg~約768μg(約384μg~約768μgなど)、または約437x10-9mol~約1747x10-9mol(約873x10-9mol~約1747x10-9molなど)の量でBNT411を含む。いくつかの実施形態では、BNT411を含む組成物、特に医薬組成物は、384μg、または約874x10-9molの量でBNT411を含む。
【0340】
いくつかの実施形態では、BNT411を含む組成物、特に医薬組成物は全身投与のためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、注射または注入、例えば静脈内注射または注入のためのものである。いくつかの実施形態では、BNT411は、1~500ml、例えば5~250mlの体積の水溶液、例えば0.9%NaCl(生理食塩水)中にある。いくつかの実施形態では、組成物は投薬単位形態である。
【0341】
いくつかの実施形態では、BNT411を含む組成物、特に医薬組成物は、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法、特に本明細書に記載される、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための任意の方法に使用するためのものである。したがって、第3の態様では、本開示は、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、第2の態様の組成物、特に医薬組成物を提供する。
【0342】
第1の態様に関して(特に、BNT411、その投与の方法(特に、投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して)、任意の1つ以上のさらなる治療剤(特に、投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して)、治療される腫瘍/癌、および/または治療される対象に関して)本明細書に開示される実施形態は、第2の態様の組成物、および/または第3の態様の使用のための組成物にも適用される。
【0343】
したがって、第2および/または第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約8μg~約4000μgの化合物、および/または約0.23x10-9mol/kg体重~約114x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約18x10-9mol~約9100x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される。
【0344】
第2および/または第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約40μg~約1600μgの化合物、および/または約1.14x10-9mol/kg体重~約45.5x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約91x10-9mol~約3640x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される。
【0345】
第2および/または第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約2μg/kg~約10μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約160μg~約800μgの化合物、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される。
【0346】
第2および/または第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約2μg/kg~約9μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約160μg~約720μgの化合物、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約20.5x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約364x10-9mol~約1638x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される。
【0347】
第2および/または第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約2μg/kg~約5μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約160μg~約400μgの化合物、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約11.4x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約364x10-9mol~約910x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される。
【0348】
第2および/または第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約192μg~約768μgの化合物、および/または約5.46x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約437x10-9mol~約1747x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される。
【0349】
第2および/または第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約384μg~約768μgの化合物、および/または約10.9x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約873x10-9mol~約1747x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される。
【0350】
第2および/または第3の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、約4.8μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約384μgの化合物、および/または約10.9x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約874x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される。
【0351】
組成物、特にBNT411の医薬組成物と、存在する場合、1つ以上のさらなる治療剤の少なくとも1つの医薬組成物とは、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、界面活性剤(例えばTween-20またはTween-80などの非イオン性界面活性剤)、安定剤(例えば糖、またはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、可溶化剤、および/または医薬組成物に含めるのに適した他の材料を含み得る。
【0352】
治療的使用のための薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。
【0353】
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準的な薬務に関して選択することができる。
【0354】
薬学的に許容される担体には、活性化合物、特にBNT411、および/または存在するかもしくは使用される場合、本明細書で使用される1つ以上のさらなる治療剤と生理学的に適合する任意のおよび全ての適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、抗酸化剤ならびに吸収遅延剤などが含まれる。
【0355】
(医薬)組成物に使用され得る適切な水性および非水性担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油およびゴマ油などの植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴム、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル、ならびに/または様々な緩衝剤が挙げられる。他の担体は製薬分野で周知である。
【0356】
薬学的に許容される担体には、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除き、(医薬)組成物におけるその使用が企図される。
【0357】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の(医薬)組成物中に存在し得るが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例としては、限定されないが、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤または着色剤が挙げられる。
【0358】
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする作用物質に関する。さらに、「希釈剤」という用語には、流体、液体または固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上が含まれる。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロールおよび水が挙げられる。
【0359】
(医薬)組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤、例えば、(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含み得る。
【0360】
(医薬)組成物はまた、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロールまたは塩化ナトリウムを組成物中に含み得る。
【0361】
(医薬)組成物はまた、選択された投与経路に適した1つ以上のアジュバント、例えば、組成物の貯蔵寿命または有効性を増強し得る防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝剤を含み得る。本明細書で使用される組成物は、化合物を急速放出から保護する担体、例えば、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤を用いて調製され得る。そのような担体は、単独でもしくはワックスと共にゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸、または当技術分野で周知の他の材料を含み得る。そのような製剤を調製するための方法は、一般に当業者に公知であり、例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0362】
「薬学的に許容される塩」は、例えば、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸などの薬学的に許容される酸を使用することによって形成され得る酸付加塩を含む。さらに、適切な薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩(例えばナトリウムまたはカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムまたはマグネシウム塩);アンモニウム(NH4
+);ならびに適切な有機配位子で形成される塩(例えばハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対アニオンを使用して形成される第四級アンモニウムおよびアミンカチオン)を含み得る。薬学的に許容される塩の例示的な例としては、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩(alginate)、アルギン酸塩(arginate)、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクチン酸塩、ガラクツロン酸塩、グルセプチン酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、フタル酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、スベレート、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる(例えば、S.M.Berge et al.,“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.,66,pp.1-19(1977)を参照)。薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩を調製するために使用されてもよく、本開示に含まれる。
【0363】
いくつかの実施形態では、BNT411と、使用される場合、1つ以上のさらなる治療剤とは、インビボでの適切な分布を確実にするために製剤化され得る。非経口投与のための薬学的に許容される担体には、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が企図される。他の活性化合物または治療化合物もまた、組成物に組み込まれ得る。
【0364】
注射用の医薬組成物は、典型的には、製造および保管の条件下で無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の規則的構造物として製剤化され得る。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む水性または非水性溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、例えば、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組合せと共に適切な溶媒に組み込み、続いて滅菌精密濾過することによって調製され得る。一般に、分散液は、基本的な分散媒と、例えば上記に列挙したものの中から必要な他の成分とを含む滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、あらかじめ滅菌濾過された活性成分の溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる、減圧乾燥および凍結乾燥(freeze-drying、lyophilization)である。
【0365】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組合せと共に適切な溶媒に組み込み、続いて滅菌精密濾過することによって調製され得る。一般に、分散液は、基本的な分散媒と、上記に列挙したものの中から必要な他の成分とを含む滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、あらかじめ滅菌濾過された活性成分の溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる、減圧乾燥および凍結乾燥(freeze-drying、lyophilization)である。
【0366】
キット
第4の態様では、本開示は、(i)BNT411と、(ii)チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のさらなる治療剤とを含むキットを提供する。
【0367】
いくつかの実施形態では、第4の態様のキット中の1つ以上のさらなる治療剤は、アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドおよびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0368】
いくつかの実施形態では、BNT411および1つ以上のさらなる治療剤は、全身投与、特に注射または注入、例えば静脈内注射または注入のためのものである。
【0369】
いくつかの実施形態では、第4の態様のキットは、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法、特に本明細書に記載される、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための任意の方法に使用するためのものである。したがって、第5の態様では、本開示は、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、第4の態様のキットを提供する。
【0370】
第1の態様に関して(特に、BNT411、その投与の方法(特に、投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して)、任意の1つ以上のさらなる治療剤(特に、投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して)、治療される腫瘍/癌、および/または治療される対象に関して)本明細書に開示される実施形態は、第4の態様のキット、および/または第5の態様の使用のためのキットにも適用される。
【0371】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも2つの容器を含み、そのうちの1つは、BNT411(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)を含み、第2の容器は、1つ以上のさらなる治療剤(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)を含む。キットが複数のさらなる治療剤を含む場合、キットは、1つがBNT411を含み(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)、1つが第1のさらなる治療剤を含み(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)、少なくとも第3の容器が第3のさらなる治療剤を含む(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)少なくとも3つの容器を含むことが好ましい。キットが少なくとも3つのさらなる治療剤を含む場合、キットは、1つがBNT411を含み(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)、1つが第1のさらなる治療剤を含み(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)、1つが第2のさらなる治療剤を含み(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)、少なくとも第4の容器が第3のさらなる治療剤を含む(それ自体、または(医薬)組成物の形態で)少なくとも4つの容器を含むことが好ましい。
【0372】
第1、第2および第3の態様のいずれか1つに関して(特に、BNT411、その投与の方法(特に、投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して)、1つ以上のさらなる治療剤(特に、投与量、経路、形態、期間および/または用量レジメンに関して)、治療される腫瘍/癌、および/または治療される対象に関して)本明細書に開示される実施形態は、第4の態様のキット、および/または第5の態様の使用のためのキットにも適用される。
【0373】
さらなる態様
さらなる態様では、本開示は、本明細書に記載の化合物BNT411を使用して、例えば本明細書に記載の組成物および/または本明細書に記載のキットを使用して、対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのようなさらなる態様は、(i)対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法であって、本開示の第1の態様に指定されるようなBNT411を前記対象に投与することを含む方法、(ii)対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法であって、本開示の第2または第3の態様に指定されるような組成物を前記対象に投与することを含む方法、および(iii)対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法であって、BNT411と、本開示の第4または第5の態様に指定されるようなキットに含まれる1つ以上のさらなる治療剤とを前記対象に投与することを含む方法を含む。
【0374】
本明細書で参照される文書および試験の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることの承認として意図されていない。これらの文書の内容に関する全ての記述は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
【0375】
説明(以下の実施例を含む)は、当業者が様々な実施形態を作成および使用することを可能にするために提示される。具体的な装置、技術、および用途の説明は、例としてのみ提供される。本明細書に記載される例に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、様々な実施形態の趣旨および範囲から逸脱することなく他の例および用途に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書で説明され、示される例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と一致する範囲を与えられるべきである。
【0376】
さらなる項目化された実施形態は以下の通りである:
1.対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、以下の式を有する化合物
【化7】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩であって、前記方法が、前記対象に適切な量の化合物を投与することを含む、化合物またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩。
【0377】
2.化合物の適切な量が治療上有効かつ安全な量である、項目1の使用のための化合物。
【0378】
3.化合物の適切な量が、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重、もしくは合計で約8μg~約4000μg、および/または約0.23x10-9mol/kg体重~約114x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約18x10-9mol~約9100x10-9molである、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0379】
4.化合物の適切な量が、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重、もしくは合計で約40μg~約1600μg、および/または約1.14x10-9mol/kg体重~約45.5x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約91x10-9mol~約3640x10-9molである、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0380】
5.化合物の適切な量が、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molである、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0381】
5a.化合物の適切な量が、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約192μg~約768μg、および/または約5.46x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約437x10-9mol~約1747x10-9molである、項目1~5のいずれか1つの使用のための化合物。
【0382】
5b.化合物の適切な量が、約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約384μg~約768μg、および/または約10.9x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約873x10-9mol~約1747x10-9molである、項目1~5のいずれか1つの使用のための化合物。
【0383】
5c.化合物の適切な量が、約4.8μg/kg体重、もしくは合計で約384μg、および/または約10.9x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約874x10-9molである、項目1~5のいずれか1つの使用のための化合物。
【0384】
6.溶媒和物である、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0385】
7.溶媒和物が、水和物およびジメチルスルホキシド溶媒和物からなる群より選択される、項目6の使用のための化合物。
【0386】
8.無水である、項目1~5cのいずれか1つの使用のための化合物。
【0387】
9.全身的に、好ましくは静脈内に投与される、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0388】
10.対象がヒト対象である、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0389】
11.腫瘍または癌が固形の腫瘍もしくは癌である、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0390】
12.腫瘍または癌が、黒色腫、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、膵癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、脳癌、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺癌、他の皮膚癌、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣癌、子宮内膜癌、尿管癌、陰茎癌、子宮頸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、悪性孤在性線維性腫瘍ならびに中皮腫からなる群より選択される、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0391】
13.腫瘍または癌が、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、黒色腫、結腸癌、直腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、悪性孤在性線維性腫瘍、前立腺癌、尿管癌および膵癌からなる群より選択される、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0392】
14.腫瘍または癌が、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)などの小細胞肺癌(SCLC)である、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0393】
15.対象が化学療法ナイーブである、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0394】
16.化合物が少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0395】
17.化合物の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって週に1回(Q1W)投与される、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0396】
18.化合物の1用量が、少なくとも4治療サイクルにわたってQ1W投与され、次いで3週間に1回(Q3W)投与される、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0397】
19.化合物の各用量が、最小10分間にわたって、例えば最小15分間、最小20分間、最小25分間または最小30分間にわたって注入される、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0398】
20.方法が、1つ以上のさらなる治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、先行する項目のいずれか1つの使用のための化合物。
【0399】
21.1つ以上のさらなる治療剤が、チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される、項目20の使用のための化合物。
【0400】
22.1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目20または21の使用のための化合物。
【0401】
23.1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せである、項目20~22のいずれか1つの使用のための化合物。
【0402】
24.1つ以上のさらなる治療剤が、少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目20~23のいずれか1つの使用のための化合物。
【0403】
25.1つ以上のさらなる治療剤の各々の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって少なくともQ3W投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目20~24のいずれか1つの使用のための化合物。
【0404】
26.1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せであり、アテゾリズマブの1用量が(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、カルボプラチンの1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、エトポシドの1用量が、4治療サイクルにわたって治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目20~25のいずれか1つの使用のための化合物。
【0405】
27.化合物の1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは、治療サイクルの2日目、8日目および15日目に)Q1W投与され、次いで(好ましくは、治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目に)Q3W投与される、項目26の使用のための化合物。
【0406】
28.以下の式を有する化合物
【化8】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩を含む組成物であって、組成物中の化合物の量が、約8μg~4000μg、または約18x10
-9mol~約9100x10
-9molである、組成物。
【0407】
29.約40μg~約1600μg、または約91x10-9mol~約3640x10-9molの前記化合物、好ましくは約160μg~約800μg、または約364x10-9mol~約1820x10-9molの前記化合物を含む、項目28の組成物。
【0408】
29a.約192μg~約768μg、または約437x10-9mol~約1747x10-9molの前記化合物を含む、項目28または29の組成物。
【0409】
29b.約384μg~約768μg、または約873x10-9mol~約1747x10-9molの前記化合物を含む、項目28または29の組成物。
【0410】
29c.約384μg、または約874x10-9molの前記化合物を含む、項目28または29の組成物。
【0411】
30.全身投与のためのものである、項目28~29cのいずれか1つの組成物。
【0412】
31.注射または注入、例えば静脈内注射または注入のためのものである、項目28~30のいずれか1つの組成物。
【0413】
32.化合物が、1~500ml、例えば5~250mlの体積の水溶液、例えば0.9%NaCl(生理食塩水)中にある、項目28~31のいずれか1つの組成物。
【0414】
33.投薬単位形態である、項目28~32のいずれか1つの組成物。
【0415】
34.対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、項目28~33のいずれか1つの組成物。
【0416】
35.約0.1μg/kg~約50μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約8μg~約4000μgの化合物、および/または約0.23x10-9mol/kg体重~約114x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約18x10-9mol~約9100x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される、項目34の使用のための組成物。
【0417】
36.組成物が、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約40μg~約1600μgの化合物、および/または約1.14x10-9mol/kg体重~約45.5x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約91x10-9mol~約3640x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される、項目34または35の使用のための化合物。
【0418】
37.組成物が、約2μg/kg~約10μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約160μg~約800μgの化合物、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される、項目34~36のいずれか1つの使用のための化合物。
【0419】
37a.組成物が、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約192μg~約768μgの化合物、および/または約5.46x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約437x10-9mol~約1747x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される、項目34~37のいずれか1つの使用のための化合物。
【0420】
37b.組成物が、約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約384μg~約768μgの化合物、および/または約10.9x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約873x10-9mol~約1747x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される、項目34~37のいずれか1つの使用のための化合物。
【0421】
37c.組成物が、約4.8μg/kg体重の化合物、もしくは合計で約384μgの化合物、および/または約10.9x10-9mol/kg体重の化合物、もしくは合計で約874x10-9molの化合物を提供するような量で対象に投与される、項目34~37のいずれか1つの使用のための化合物。
【0422】
38.対象がヒト対象である、項目34~37cのいずれか1つの使用のための組成物。
【0423】
39.腫瘍または癌が固形の腫瘍もしくは癌である、項目34~38のいずれか1つの使用のための組成物。
【0424】
40.腫瘍または癌が、黒色腫、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、膵癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、脳癌、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺癌、他の皮膚癌、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣癌、子宮内膜癌、尿管癌、陰茎癌、子宮頸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、悪性孤在性線維性腫瘍ならびに中皮腫からなる群より選択される、項目34~39のいずれか1つの使用のための組成物。
【0425】
41.腫瘍または癌が、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、黒色腫、結腸癌、直腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、悪性孤在性線維性腫瘍、前立腺癌、尿管癌および膵癌からなる群より選択される、項目34~40のいずれか1つの使用のための組成物。
【0426】
42.腫瘍または癌が、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)などの小細胞肺癌(SCLC)である、項目34~41のいずれか1つの使用のための組成物。
【0427】
43.対象が化学療法ナイーブである、項目34~42のいずれか1つの使用のための組成物。
【0428】
44.組成物が少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目34~43のいずれか1つの使用のための組成物。
【0429】
45.組成物の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって週に1回(Q1W)投与される、項目34~44のいずれか1つの使用のための組成物。
【0430】
46.組成物の1用量が、少なくとも4治療サイクルにわたってQ1W投与され、次いで3週間に1回(Q3W)投与される、項目34~45のいずれか1つの使用のための組成物。
【0431】
47.最小10分間にわたって、例えば最小15分間、最小20分間、最小25分間または最小30分間にわたって注入される、項目34~46のいずれか1つの使用のための組成物。
【0432】
48.方法が、1つ以上のさらなる治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、項目34~47のいずれか1つの使用のための組成物。
【0433】
49.1つ以上のさらなる治療剤が、チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される、項目48の使用のための組成物。
【0434】
50.1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目48または49の使用のための組成物。
【0435】
51.1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せである、項目48~50のいずれか1つの使用のための組成物。
【0436】
52.1つ以上のさらなる治療剤が、少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目48~51のいずれか1つの使用のための組成物。
【0437】
53.1つ以上のさらなる治療剤の各々の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって少なくともQ3W投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目48~52のいずれか1つの使用のための組成物。
【0438】
54.1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せであり、アテゾリズマブの1用量が(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、カルボプラチンの1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、エトポシドの1用量が、4治療サイクルにわたって治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目48~53のいずれか1つの使用のための組成物。
【0439】
55.組成物の1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは、治療サイクルの2日目、8日目および15日目に)Q1W投与され、次いで(好ましくは、治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目に)Q3W投与される、項目54の使用のための組成物。
【0440】
56.(i)以下の式を有する化合物
【化9】
またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは塩と、(ii)チェックポイント阻害剤(CPI)、白金系化学療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のさらなる治療剤とを含むキット。
【0441】
57.1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目56のキット。
【0442】
58.化合物および1つ以上のさらなる治療剤が、全身投与、特に注射または注入、例えば静脈内注射または注入のためのものである、項目56または57のキット。
【0443】
59.対象における、腫瘍の進行を低減もしくは予防するまたは癌を治療するための方法に使用するための、項目56~58のいずれか1つのキット。
【0444】
60.化合物が、約0.1μg/kg~約50μg/kg体重、もしくは合計で約8μg~約4000μg、および/または約0.23x10-9mol/kg体重~約114x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約18x10-9mol~約9100x10-9molの量で対象に投与される、項目59の使用のためのキット。
【0445】
61.化合物が、約0.5μg/kg~約20μg/kg体重、もしくは合計で約40μg~約1600μg、および/または約1.14x10-9mol/kg体重~約45.5x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約91x10-9mol~約3640x10-9molの量で対象に投与される、項目59または60の使用のためのキット。
【0446】
62.化合物が、約2μg/kg~約10μg/kg体重、もしくは合計で約160μg~約800μg、および/または約4.55x10-9mol/kg体重~約22.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約364x10-9mol~約1820x10-9molの量で対象に投与される、項目59~61のいずれか1つの使用のためのキット。
【0447】
62a.化合物が、約2.4μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約192μg~約768μg、および/または約5.46x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約437x10-9mol~約1747x10-9molの量で対象に投与される、項目59~62のいずれか1つの使用のためのキット。
【0448】
62b.化合物が、約4.8μg/kg~約9.6μg/kg体重、もしくは合計で約384μg~約768μg、および/または約10.9x10-9mol/kg体重~約21.8x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約873x10-9mol~約1747x10-9molの量で対象に投与される、項目59~62のいずれか1つの使用のためのキット。
【0449】
62c.化合物が、約4.8μg/kg体重、もしくは合計で約384μg、および/または約10.9x10-9mol/kg体重、もしくは合計で約874x10-9molの量で対象に投与される、項目59~62のいずれか1つの使用のためのキット。
【0450】
63.対象がヒト対象である、項目59~62cのいずれか1つの使用のためのキット。
【0451】
64.腫瘍または癌が固形の腫瘍もしくは癌である、項目59~63のいずれか1つの使用のためのキット。
【0452】
65.腫瘍または癌が、黒色腫、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、尿路上皮癌、膀胱癌、食道癌、前立腺癌、膵癌、肝癌、胸腺腫および胸腺癌、脳癌、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺癌、他の皮膚癌、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣癌、子宮内膜癌、尿管癌、陰茎癌、子宮頸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、悪性孤在性線維性腫瘍ならびに中皮腫からなる群より選択される、項目59~64のいずれか1つの使用のためのキット。
【0453】
66.腫瘍または癌が、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC))、黒色腫、結腸癌、直腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、悪性孤在性線維性腫瘍、前立腺癌、尿管癌および膵癌からなる群より選択される、項目59~65のいずれか1つの使用のためのキット。
【0454】
67.腫瘍または癌が、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)などの小細胞肺癌(SCLC)である、項目59~66のいずれか1つの使用のためのキット。
【0455】
68.対象が化学療法ナイーブである、項目59~67のいずれか1つの使用のためのキット。
【0456】
69.化合物が少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目59~68のいずれか1つの使用のためのキット。
【0457】
70.化合物の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって週に1回(Q1W)投与される、項目59~69のいずれか1つの使用のためのキット。
【0458】
71.化合物の1用量が、少なくとも4治療サイクルにわたってQ1W投与され、次いで3週間に1回(Q3W)投与される、項目59~70のいずれか1つの使用のためのキット。
【0459】
72.化合物の各用量が、最小10分間にわたって、例えば最小15分間、最小20分間、最小25分間または最小30分間にわたって注入される、項目59~71のいずれか1つの使用のためのキット。
【0460】
73.1つ以上のさらなる治療剤が、少なくとも1治療サイクルで投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目59~72のいずれか1つの使用のためのキット。
【0461】
74.1つ以上のさらなる治療剤の各々の1用量が、少なくとも1治療サイクルにわたって少なくともQ3W投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目59~73のいずれか1つの使用のためのキット。
【0462】
75.1つ以上のさらなる治療剤が、アテゾリズマブとカルボプラチンとエトポシドとの組合せであり、アテゾリズマブの1用量が(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、カルボプラチンの1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは治療サイクルの1日目に)Q3W投与され、エトポシドの1用量が、4治療サイクルにわたって治療サイクルの1週目に3回(好ましくは、治療サイクルの1日目、2日目および3日目に)投与され、各治療サイクルが3週間(21日間)である、項目59~74のいずれか1つの使用のためのキット。
【0463】
76.化合物の1用量が、4治療サイクルにわたって(好ましくは、治療サイクルの2日目、8日目および15日目に)Q1W投与され、次いで(好ましくは、治療サイクル5および各後続治療サイクルの2日目に)Q3W投与される、項目75の使用のためのキット。
【0464】
本開示のさらなる態様が本明細書に開示される。
【実施例】
【0465】
方法
サイトメトリビーズアレイ(CBA)
試験化合物(BNT411など)の段階希釈を実施した後、各試料5μLを96ウェルプレートの単一ウェルに移す/ピペットで移す。陰性対照として、各ドナーの全血から調製した血漿を使用する。その後、245μLのRPMI培地を各ウェルに添加し、スパイク溶液と呼ばれる、各試料の1:50希釈をもたらす。ヘパリン処理した全血をピペットで96ウェルプレートに分割する。全血を播種した後、調製したスパイク溶液を添加する:190μLの全血を各ウェルに播種し、10μLのスパイク溶液を添加して、200μL/ウェルの最終体積、および全試料のさらなる1:20希釈を得る。最後に、プレートを37℃および5%CO2でインキュベートする。24時間のインキュベーション後、プレートを500xgで5分間遠心分離する。全試料の血漿を採取し、新しい96ウェルプレートに移し、CBAを実施するまで-15°C~-25°Cで少なくとも3時間凍結する。
【0466】
CBAは、ProCartaマルチプレックスキットについての製造者の説明書に従って凍結/解凍した血漿試料を用いて実施する。サイトカイン濃度の評価のために、luminexシステムを使用して全試料のアッセイ複製を測定する。機器制御システム(Bio-Plex Manager 4.1.1)を用いて標準曲線を確認した後、生データをexcelに転送する。GraphPad Prism 6を用いてグラフ解析を実施する。
【0467】
IFNa ELISA
製造者の説明書に従ってサンドイッチELISA(Pbl Assay Systems)によってIFNαの血清レベルを測定した。
【0468】
CT26腫瘍モデル
BALB/cマウスの側腹部に2.5x105個~5x105個のCT26-WTをそれぞれs.c.接種した。腫瘍が触知可能なサイズに達した後、マウスを処置群と対照群とに無作為に分けた。腫瘍体積をノギスを用いて非盲検下で測定し、式(axb2)/2(aは腫瘍の最大直径であり、bは腫瘍の最小直径である)を使用して計算した。腫瘍増殖を平均腫瘍サイズとして記録し、標準誤差は単一の遠隔異常値を無視した。腫瘍が約10mm3の平均体積に達した7~10日後に処置を開始した。3mg/kg(75μg/マウス;BALB/cマウス)のBNT411を後眼窩静脈叢へのi.v.注射によって投与した。対照群には、等体積の100μl生理食塩水ビヒクル(0.1%1M HCl、0.1%1M NaOH、99.8%等張NaCl溶液pH5.63)を投与した。
【実施例1】
【0469】
ヒトPBMC(末梢血単核細胞)を健常ドナーから得、BNT411(濃度範囲:0.1nM~10μM)または匹敵するイミダゾキノリン(レシキモド(R848;濃度範囲:0.6nM~50μM);852A(濃度範囲:0.6nM~50μM);またはイミキモド(R837;濃度範囲:0.6nM~50μM))を用いてインビトロで処理した。刺激の24時間後、IFNaを含むいくつかのサイトカインの分泌を多重化CBAによって分析した。CBA測定の結果を
図1に示す(平均±標準偏差(SD)として示しているデータ、n=5)。
【0470】
図1から分かるように、BNT411曝露時に、イミダゾキノリンであるイミキモド(R837)、レシキモド(R848)および852Aと比較して、有意に多量のIFNαが低濃度(約10~30分の1の濃度)で誘導された。したがって、
図1は、BNT411が、IFNα誘導に関して、レシキモド(R848)のような競合化合物よりもヒトPBMCに対して強力であることを実証している。IFNaは、TLR7アゴニストによって提供される作用様式の重要なドライバー、およびTLR7活性化のための重要なバイオマーカーであるので、BNT411は、投与されると、選択的TLR7アゴニストとしてその効果を発揮し、特に形質細胞様樹状細胞(pDC)上のTLR7に結合し、抗原提示細胞(APC)に対するそれらの活性化および成熟、細胞傷害性CD8
+T細胞の下流の活性化および拡大、ならびに自然免疫系の広範囲な調節を誘発し、それによって、特に細胞傷害性療法および免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、既存の抗腫瘍応答を増強し、デノボ応答を誘導することが予測され得る。
【実施例2】
【0471】
この実施例は、さらなるインビボ実験について、特に腫瘍マウスモデルにおけるBNT411の適切な開始用量を決定するために行った。
【0472】
雌BALB/cマウスの後眼窩に、3、5、10および15mg/kgの用量のBNT411を投与した。化合物適用の1時間後に血液試料を採取し、マウスIFNa ELISAによって分析した。IFNa ELISAの結果を
図2に示す。
【0473】
図2から分かるように、3mg/kgのBNT411の用量は、より高いBNT411用量と比較してより強いIFNa分泌を誘導し、全血調製物を用いたヒトインビトロアッセイで観察されるようなベル形の濃度-反応曲線が裏付けられた。したがって、3mg/kgのBNT411の用量を、マウスにおけるさらなるインビボ実験のために使用した。
【実施例3】
【0474】
この実験は、BNT411単独の抗腫瘍有効性を評価するために実施した。この目的のために、CT26腫瘍モデルを利用した。
【0475】
8用量のBNT411を4~5日間隔で8回、3mg/kgの用量レベルでi.v.投与した(14、19、23、28、33、37、42および47日目)。
図4Aを参照。処置開始時、腫瘍は10mm
3の平均体積を有した。対照群(n=13)にはビヒクルのみを投与した。初回試験薬物投与の3および5週間後に、血液中および脾細胞内のgp70抗原特異的T細胞集団を分析することによって、適応免疫を評価した。Gp70は、CT26腫瘍モデルの免疫優性CD8
+T細胞認識抗原である。この実験の結果を
図4Bに示す。
【0476】
図4Bから分かるように、BNT411は強力な腫瘍増殖阻害を示し、実験の35日目に試験/対照値は43.3%であった。同日の個々の腫瘍体積のマン・ホイットニー検定は、統計学的有意性に向かう傾向を示した(p=0.0513)。実験の最終日である49日目に、BNT411処置動物13匹のうち8匹、およびビヒクル処置動物13匹のうち2匹が依然として生存していた。
【0477】
さらに、BNT411処置は、対照群と比較して、最初の投与の1時間後に測定された血中IFNαレベルの50倍の増加をもたらした。血液中のgp70+T細胞の頻度の増加が、35日目に対照群と比較してBNT411処置動物に観察され(8.72%対2.15%)、50日目に脾細胞に観察された(0.76%対0.44%)。
【0478】
血清中で19日目に測定された血液パラメータ(アラニントランスアミナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、クレアチンキナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼおよびビリルビン)は、BNT411群と対照群とで同等であった。
【0479】
したがって、この実施例は、BNT411が、マウス結腸直腸癌細胞株CT-26によって例示されるように、単剤療法では免疫原性マウス腫瘍モデルに対して抗腫瘍有効性を発揮することを実証している。これに関連して、BNT411は、IFNa分泌の誘導と、CT-26腫瘍細胞の表面上に存在するgp70抗原に特異的なgp70+T細胞の頻度の増加とによって示され得るように、自然免疫系および適応免疫系を刺激する。したがって、BNT411の抗腫瘍活性は、その仮定された作用様式と一致していると主張することができる。
【実施例4】
【0480】
この実験は、CT26腫瘍モデルにおける単剤療法およびオキサリプラチンとの併用療法におけるBNT411の抗腫瘍有効性を評価するために実施した。
【0481】
オキサリプラチンを腹腔内(i.p.)投与した(5mg/kg、注射間4~5日で4回)。BNT411をi.v.投与した(注射間2~5日で、オキサリプラチン療法の少なくとも2日後に8回、3mg/kgの単回用量レベル)。
図5Aを参照。試験33および42日目の試験群対対照群(ビヒクルのみ)の群平均腫瘍体積によって、抗腫瘍有効性を評価した(生存している試験動物および対照動物の少なくとも50%)。最初のBNT411投与の1時間後に血漿中のIFNαレベルを分析し、血液中のgp70+T細胞集団を試験34および41日目に分析した。この実験の結果を
図5Bおよび
図5Cに示す。
【0482】
図5Bから分かるように、BNT411/オキサリプラチン併用療法は、単剤療法におけるオキサリプラチンの50.7%、および単剤療法におけるBNT411の65.8%と比較して、34.3%のT/C値で最も強い抗腫瘍有効性を示した。
【0483】
IFNα血清レベルは、対照群と比較して、全BNT411処置群において統計学的に有意に増加した。
図5Cを参照。BNT411単剤療法群におけるIFNαレベルは、BNT411とオキサリプラチンとの組合せにおけるIFNαレベルよりも統計学的に有意に高かった(二元配置分散分析(ANOVA検定))。
【0484】
試験34日目~41日目に、全BNT411処置群で腫瘍特異的gp70+T細胞を誘導した(マン・ホイットニー検定)。
【0485】
結論として、BNT411は単剤療法において抗腫瘍活性を示し、BNT411とオキサリプラチンとの併用は腫瘍増殖遅延に対して相加的効果を有した。
【実施例5】
【0486】
この実験は、CT26腫瘍モデルにおける単剤療法および抗プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)抗体(抗PD-L1-mIgG1e3)との併用療法におけるBNT411の抗腫瘍有効性を評価するために実施した。
【0487】
動物10匹の4つの群の背側右側腹部に、1匹当たり1x10
6個のCT26細胞を接種した(0日目)。抗PD-L1抗体を腹腔内(i.p.;動物1匹当たり200μg)投与し、BNT411をi.v.投与した(3mg/kg)。5日に1回、合計6回の投与で全処置を行った。
図6Aを参照。各群において少なくとも9匹の動物が生存していた試験21日目に、体重変化および腫瘍増殖を評価した。抗PD-L1抗体およびBNT411の両方を用いて処置したマウス1匹では、初期腫瘍が排除された。この動物の対側側腹部に、試験77日目にCT26細胞を再接種し、さらなる処置を行わなかった。この実験の結果を
図6Bおよび
図6Cに示す。
【0488】
図6Bおよび
図6Cから分かるように、BNT411と抗PD-L1-mIgG1e3との組合せは、5用量の処置後の陰性対照処置(アイソタイプ対照抗体+0.9%生理食塩水)または抗PD-L1-mIgG1e3単独と比較して、腫瘍増殖の有意な(p≦0.05)阻害と、有意に(p≦0.05)少ない体重増加とをもたらした。陰性対照処置(アイソタイプ対照抗体+0.9%生理食塩水)と比較して、全試験物処置で有意な(p≦0.05)延命効果があったが、試験物処置間に有意差はなかった。
【0489】
最初の接種からの腫瘍増殖は、BNT411と抗PD-L1-mIgG1e3との組合せを用いて処置した群の動物1匹では首尾よく排除された。
図6Bを参照。同じ腫瘍実体を有するこの無腫瘍動物の二次接種は、初期CT26腫瘍増殖を誘導し、続いてCT26腫瘍を急速に排除したが、動物は再接種後も未処置のままであった。
【0490】
結論として、マウスPD-L1抗体と組み合わせたBNT411は、腫瘍増殖遅延および延命効果を示した。併用処置群(BNT411および抗PD-L1-mIgG1e3)の動物1匹における腫瘍クリアランス、および腫瘍再接種に対するその後の免疫は、処置中の抗腫瘍免疫記憶の形成を示唆している。処置を通して、BNT411および抗PD-L1-mIgG1e3の両方、ならびにこの両方の組合せは良好に忍容された。処置に関連する有害な臨床効果、より高い毒性、または体重減少はなかった。
【実施例6】
【0491】
この実験は、マウスに見られる有益な効果がヒトでも達成され得るかどうかを評価するために実施した。
【0492】
ヒト全血を健常ドナーから得、インビトロでBNT411(濃度範囲:0.1nM~10μM)を用いて処理した。刺激の24時間後、IFNα、IP-10、IL-6およびTNFαを含むいくつかのサイトカインの分泌を多重化CBAによって分析した。CBA測定の結果を
図7に示す。
【0493】
図7から分かるように、非常に低用量(120k=0.012μM)で、BNT411は有意なIFNα放出を誘導した。重要なことに、IL-6およびTNFαのような炎症誘発性サイトカイン、ならびにIL-10のような調節性サイトカインは、約0.06μMから出発してより高い濃度(IFNαを最大限に誘導する濃度をはるかに上回る)でのみ誘導された。
【0494】
結論として、IFNα分泌は、IL-6、TNFαおよびIL-10などの炎症誘発性サイトカインおよび調節性サイトカインの誘導に必要な濃度の5~25分の1の濃度で誘導された。さらに、IFNαの最大誘導のためのBNT411濃度は、IL-6、TNFαおよびIL-10の最大誘導のために必要な濃度の25~100分の1であった。これにより、IFNaの意図された分泌を炎症誘発性サイトカインの分泌から分離するための十分に広い治療域がさらに確認される。
【実施例7】
【0495】
この実験は、インビボでマウスに見られる有益な効果およびインビトロでヒトに見られる有益な効果がヒト患者でも達成され得るかどうかを評価するために実施した。
【0496】
この目的のために、単剤療法での、ならびにアテゾリズマブ、エトポシドおよびカルボプラチン(atezo/EC)と組み合わせたBNT411の安全性プロファイルを評価し、最大忍容用量/推奨第2相用量(MTD/RP2D)を決定するための試験をデザインした。この試験は、用量漸増を伴う2つのパート(1Aおよび1B)を含み、パート1Aの患者は、BNT411単剤療法を受け、パート1Bの患者は、アテゾリズマブ、エトポシドおよびカルボプラチンと共にBNT411を投与された。患者は、固形腫瘍(好ましくはパート1BではES-SCLC)を有し、以下の投与スケジュールに従って薬物を投与された(疾患の進行、許容できない毒性、または死亡まで):
・パート1A:3週間サイクル、BNT411 i.v.Q1Wを4サイクル、次いでQ3W
・パート1B:3週間サイクル、BNT411 i.v.Q1Wを4サイクル、次いでQ3W;atezo/EC Q3W
BNT411についての8つの漸増用量レベル(DL1~DL8)を表4に示す:
【表4】
【0497】
パート1AのDL1~DL3は単一患者コホートであり、他の用量レベルはいずれも3+3コホートであった。
【0498】
有効性は、RECIST 1.1およびiRECISTによるCT/MRIイメージングによって、48週間にわたって6週間に1回、およびその後12週間に1回評価した。安全性は、身体検査、バイタルサイン、心電図、臨床検査評価、眼検査、ECOG、妊娠検査、およびECHO/MUGAによって評価した。バイオマーカー評価には、サイトカイン分析、免疫表現型分析、腫瘍突然変異負荷およびTCRプロファイリングのための腫瘍生検および採血を含めた。
【0499】
2021年8月26日の時点で、患者は7つの試験センター(英国、米国、スペイン、ドイツ)にいた。患者25例をスクリーニングし(パート1A:22例;パート1B:3例)、7例のスクリーニングが失敗した(いずれもパート1A)。患者18例を登録し(パート1A:15例;パート1B:3例)、患者15例が評価可能であった(パート1A:12例;パート1B:3例)。パート1A患者2例を交換した(誤った投与に起因するDL1、およびDLT評価が完了する前のPDに起因するDL5)。パート1A患者1例は、治療を受ける前に試験から脱落した。これらの患者の背景因子および臨床的特徴を表5に示す。BNT411単剤療法および併用療法に関連する、治療下で発現した有害事象(TEAE)をそれぞれ表6および表7に示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【0500】
表6および表7から分かるように、BNT411は、2021年8月26日(DL6まで)の時点で試験した全ての用量で許容可能な安全性プロファイルを有する。BNT411単剤療法に関連する最も頻度の高い有害事象(AE)は、発熱(n=患者3例[20%]グレード1および2、パート1A用量レベル(DL)1*、2および6)、悪寒(n=患者2例、[13%]、グレード1、パート1A DL1およびDL6)、および貧血(n=患者2例、[13%]、グレード1および3、パート1A DL4およびDL5)であった。罹患患者(*で標識)をDL1に登録したが、22倍の用量(DL4に近い)を投与した。パート1Aまたはパート1Bのいずれにも用量制限毒性(DLT)または関連グレード4~5のAEはなかった。BNT411単剤療法と因果関係がある可能性のある2件の重篤な有害事象は、注入関連反応の2件の症例(グレード1および2、パート1A DL6において同じ患者に発現)であった。BNT411+atezo/ECと因果関係がある可能性のある1件の重篤な有害事象は、肺炎(グレード3、パート1B DL4)であった。この事象は抗生物質治療によって解消され、この事象の原因は多因子性と考えられ、基礎疾患、またはBNT411もしくはatezo/ECのいずれかによって引き起こされた免疫活性化のいずれかである可能性がある。
【0501】
BNT411単剤療法によって治療した患者のサイトカイン測定の結果を
図8に示し、ここでは、ベースラインと比較した、サイクル1の1日目に観察された最も高いサイトカイン値から計算された平均最大倍率変化(+SD)を示す。IFNaおよびIL-6は治療の4~8時間後にピークに達し、IP-10およびTNFaは治療の2.5~8時間後にピークに達した。DL1A、DL2AまたはDL3Aでは、有意なサイトカイン変化は観察されなかった。
【0502】
図8から分かるように、パート1Aの患者10例:DL4A(患者3例)、DL5A(患者4例)およびDL6A(患者3例)では、用量依存的なサイトカイン放出があった。IFNa、IP-10および他の作用様式関連サイトカインの実質的な誘導がDL6Aでは観察された。重要なことに、TNFa誘導レベルは変化しないままであり、DL6AではIL-6誘導のいくらかの増加が観察された。したがって、これらのデータは、ヒト患者へのBNT411の投与が、試験した全ての用量で良好に忍容され、選択的TLR7アゴニストとしてのBNT411の予測される作用様式と一致する、I型インターフェロンが支配的なサイトカインプロファイルをもたらすことを実証している。
【0503】
上記を考慮して、BNT411は、DL6までの全ての用量で許容可能な安全性プロファイルを有するとの結論を下すことができる。さらに、DL6Aでは、BNT411は、選択的TLR7アゴニストとしてのBNT411の予測される作用様式と一致して、I型インターフェロンが支配的な実質的なサイトカイン応答を誘導するが、IL-6およびTNFaのレベルは比較的低いままである。試験した用量レベルでのBNT411の投与から生じる薬力学的応答により、単剤療法として、ならびにatezo/ECおよび他の免疫療法に基づくレジメンと組み合わせて、様々な癌適応症におけるBNT411のさらなる評価が必要とされる。
【0504】
パート1Aのデータ更新-2022年10月
試験集団は、転移性もしくは切除不能疾患を有する組織学的に確認された固形腫瘍患者であって、臨床的便益を付与する可能性が高い利用可能な標準的な治療法がない固形腫瘍患者、またはそのような利用可能な治療法の候補ではない患者からなる。
【0505】
BNT411は、DL6までの許容可能な全体的な安全性プロファイルを有するように思われる。
【0506】
データカットオフ日(2022年10月13日)の時点で、患者1例についてDL4でBNT411を開始し、用量をC8D1でDL5に増加させ、さらにC12D1でDL6に増加させた。患者は、試験449日目まで安定疾患(RECIST 1.1による)を有した。第2の患者は、DL6とDL7との間の中間用量レベルでBNT411を服用している。試験86日目に、ベースラインと比較して標的病変直径の合計に-26.2%の変化があった。420日目の時点で、患者は安定疾患(RECIST 1.1による)を有しており、依然として治療中である。第3の患者は、DL7でBNT411を服用しており、この患者は、試験251日目に部分奏効(RECIST 1.1による)を有し、部分奏効を伴って依然として試験治療中である。BNT411治療後のこれらの持続的な腫瘍応答は、様々な固形腫瘍の治療におけるBNT411の可能性のある有効性の初期徴候を助長している。
【0507】
上記を考慮して、BNT411は、治療的に重要な用量レベルで許容可能な全体的な安全性プロファイルを潜在的に有し得ると思われる。様々な腫瘍型にわたって、有望な有効性の徴候が患者に観察された。腫瘍応答および疾患安定性は、IFN-aおよびIP-10の誘導によって定義される薬力学的活性によって裏付けられ、薬力学的活性は、DL5以降のBNT411投与後に増加し、DL6から実質的に観察される。さらに、DL6では、BNT411は、選択的TLR7アゴニストとしてのBNT411の予測される作用様式と一致して、I型IFNが支配的な実質的なサイトカイン応答を誘導するが、IL-6の許容可能なレベルと、低いレベルのTNFα誘導とが観察される。BNT411の投与から生じる予備的な安全性プロファイル、有効性の徴候、および薬力学的応答により、様々な癌適応症におけるBNT411のさらなる調査が必要とされる。
【国際調査報告】