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▶ ユニバーシティ オブ ロチェスターの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】筋緊張性障害の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241126BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 3/14 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/554 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K45/06
A61K9/02
A61P11/00
A61P21/04
A61P43/00 111
A61P3/14
A61K31/277
A61K31/4422
A61K31/554
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527370
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022079593
(87)【国際公開番号】W WO2023086854
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/277,816
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/374,378
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】523022295
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ロチェスター
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルエック,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シスコ,リリー
(72)【発明者】
【氏名】ソーントン,チャールズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA94
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB31
4C076CC09
4C076CC15
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA31
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA57
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC16
4C086BC92
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA31
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA57
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA94
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA13
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA51
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA77
4C206MA86
4C206NA12
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZA94
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、カルシウムチャネル遮断薬などのカルシウムチャネルを阻害することができる薬剤が、筋緊張性障害の症状を治療又は緩和するのに有効であるという予期しない発見に関する。その状態と診断された患者において、本開示の方法は、例えば、そのような状態に関連する症状の悪化を反転させるか又は阻害し、かつ/又は新しい症状の出現を防止することができる。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋緊張性障害の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、治療有効量の、前記対象の細胞内のカルシウムチャネルを阻害する薬剤を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記カルシウムチャネルが、Cav1.1カルシウムチャネルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤が、ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、それらの立体異性体、それらの誘導体、又はそれらの薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記筋緊張性障害が、筋緊張性ジストロフィー、常染色体優性又は劣性の先天性筋緊張症、又はナトリウムチャネル筋緊張症である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記筋緊張性ジストロフィーが、筋緊張性ジストロフィー1型(DM1)又は筋緊張性ジストロフィー2型(DM2)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記筋緊張性ジストロフィーが、CIC-1塩化物チャネル又はCav1.1カルシウムチャネルをコードするRNAの異常な選択的スプライシングに関連している、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記先天性筋緊張症が、ベッカー型又はトムセン型先天性筋緊張症である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記ナトリウムチャネル筋緊張症が、先天性パラミオトニー、高カリウム血性周期性四肢麻痺、又はカリウム惹起性筋緊張症である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、SCN4A、Clcn1、若しくはCac1nsにおける1つ以上の変異を有するか、又はClcn1若しくはCac1nsの選択的スプライスアイソフォームを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、哺乳動物である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、ヒトである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤が、約0.01~約100mg/前記対象の体重1kgの1回以上の用量で前記対象に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が、約1~約50mg/前記対象の体重1kgの1回以上の用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が、約8~約16mg/前記対象の体重1kgの1回以上の用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記1回以上の用量の前記薬剤が、少なくとも1日、3日、5日、1週間、2週間、3週間、又は4週間ごとに投与される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤が、腫瘍内、静脈内、皮下、骨内、経口、経皮、舌下に、持続放出で、制御放出で、遅延放出で、又は座薬として前記対象に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象に、追加の治療剤又は療法を投与することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記追加の治療剤が、ラノラジンメキシレチン、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリジン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記治療が、筋緊張の低減、体重減少の低減、生存の改善、筋機能の改善、正向反射時間の改善、呼吸機能の改善、及び横隔膜強度の改善からなる群から選択される治療効果をもたらす、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療が、未治療の対象と比較して、筋緊張、体重減少、生存、筋機能、正向反射時間、呼吸機能、又は横隔膜強度の少なくとも50%の改善をもたらす、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
筋緊張性障害の治療を必要とする対象においてそれを行うための医薬の製造における、カルシウムチャネルを阻害する薬剤(カルシウムチャネル遮断薬)の使用。
【請求項22】
前記薬剤が、ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、それらの立体異性体、それらの誘導体、又はそれらの薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記カルシウムチャネルが、Cav1.1カルシウムチャネルである、請求項21又は22に記載の使用。
【請求項24】
前記筋緊張性障害が、筋緊張性ジストロフィー、常染色体優性又は劣性の先天性筋緊張症、又はナトリウムチャネル筋緊張症である、請求項21~23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
薬学的組成物であって、(a)ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるカルシウムチャネル遮断薬、並びに(b)ラノラジンメキシレチン、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、カルバマゼピン、及びラモトリジンからなる群から選択される1つ以上の薬剤、を含む、薬学的組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の薬学的組成物を含む、キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2021年11月10日に出願された米国仮特許出願第63/277,816号及び2022年9月2日に出願された米国仮特許出願第63/374,378号に対する優先権を主張する。前述の出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援研究に関する声明
本発明は、National Institutes of Healthによって授与されたUL1TR002001のもとで政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、筋緊張性障害の治療のための方法及び薬剤に関する。
【背景技術】
【0004】
筋緊張性障害は、活性化後の筋弛緩不全として定義される筋緊張の存在を特徴とする、遺伝性疾患の群である。これらの障害の提示は、先天性筋緊張症(MC)のいくつかの形態で見られるような無症候性電気的筋緊張から、筋脱力、心伝導障害、及び筋緊張性ジストロフィーI型(DM1)のような他の全身特徴を伴う重度の障害に及ぶ場合がある。成人における最も一般的な形態の筋ジストロフィーであるDM1は、米国で10万人超に影響を及ぼすと推定されており、その多くは数十年にわたる進行性障害を経験しており、生存期間の中央値は55歳である。筋緊張性ジストロフィーを含むこれらの障害の衰弱性及び進行性の性質、患者の結果として生じる障害及び生活の質の喪失、支持療法の大幅なコスト、並びに根本的な治療法の欠如により、筋緊張性障害を治療するための新しい効果的な手段が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、いくつかの態様において上記の必要性に対処する。一態様では、本開示は、筋緊張性障害の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の、対象の細胞内のカルシウムチャネルを阻害する薬剤(例えば、使用依存性カルシウムチャネル遮断薬などのカルシウムチャネル遮断薬)を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、カルシウムチャネル遮断薬、その立体異性体、その誘導体、若しくはその薬学的に許容される塩、又はそれらの組み合わせを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、カルシウムチャネルは、Cav1.1カルシウムチャネルである。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0007】
いくつかの実施形態では、薬剤は、ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、立体異性体、その誘導体、又はそれらの薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、筋緊張性障害は、筋緊張性ジストロフィー、常染色体優性又は劣性の先天性筋緊張症、又はナトリウムチャネル筋緊張症である。いくつかの実施形態では、筋緊張性ジストロフィーは、筋緊張性ジストロフィー1型(DM1)又は筋緊張性ジストロフィー2型(DM2)である。いくつかの実施形態では、筋緊張性ジストロフィーは、CIC-1塩化物チャネル又はCav1.1カルシウムチャネルをコードするRNAの異常な選択的スプライシングに関連している。いくつかの実施形態では、先天性筋緊張症は、ベッカー型又はトムセン型先天性筋緊張症である。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル筋緊張症は、先天性パラミオトニー、高カリウム血性周期性四肢麻痺、又はカリウム惹起性筋緊張症である。いくつかの実施形態では、対象は、SCN4A、Clcn1、又はCac1nsに1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、Clcn1又はCac1nsの選択的スプライスアイソフォームを有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、薬剤は、約0.01~約100mg/対象の体重1kgの1回以上の用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤は、約1~約50mg/対象の体重1kgの1回以上の用量で投与される。いくつかの実施形態では、薬剤は、約8~約16mg/対象の体重1kgの1回以上の用量で投与される。
【0010】
いくつかの実施形態では、1回以上の用量の薬剤は、少なくとも1日、3日、5日、1週間、2週間、3週間、又は4週間ごとに投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、薬剤は、腫瘍内、静脈内、皮下、骨内、経口、経皮、舌下に、持続放出で、制御放出で、遅延放出で、又は座薬として対象に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、対象に、追加の治療剤又は療法を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、ラノラジンメキシレチン、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリジン、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤又は療法は、薬剤の前、薬剤の後、又は薬剤と同時に対象に投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、治療は、筋緊張の低減、体重減少の低減、生存の改善、筋機能の改善、正向反射時間の改善、呼吸機能の改善、及び横隔膜強度の改善から選択される治療効果をもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、未治療の対象と比較して、筋緊張、体重減少、生存、筋機能、正向反射時間、呼吸機能、又は横隔膜強度の少なくとも50%の改善をもたらす。
【0014】
別の態様では、本開示は、筋緊張性障害の治療を必要とする対象においてそれを行うための医薬の製造における、カルシウムチャネルを阻害する薬剤の使用も提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、それらの立体異性体、それらの誘導体、又はそれらの薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、カルシウムチャネルは、Cav1.1カルシウムチャネルである。いくつかの実施形態では、筋緊張性障害は、筋緊張性ジストロフィー、常染色体優性又は劣性の先天性筋緊張症、又はナトリウムチャネル筋緊張症である。
【0015】
更に別の態様では、本開示は、例えば、筋緊張性障害の治療を必要とする対象においてそれを行うための薬学的組成物を更に提供する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、(a)ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、及びそれらの組み合わせから選択されるカルシウムチャネル遮断薬、並びに(b)ラノラジンメキシレチン、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、カルバマゼピン、及びラモトリジンから選択される1つ以上の薬剤を含む。
【0016】
また、本明細書に記載の薬学的組成物を含むキットも本開示の範囲内である。
【0017】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0018】
以上の要約は、本開示の全ての態様を定義することを意図されたものではなく、追加的な態様が、以下の詳細な説明などの他の節において説明される。本明細書の全体は、統一された開示として関係することを意図されたものであり、特徴の組み合わせが本明細書の同じ文、段落、又は節において一緒に見出されない場合であっても、本明細書に説明された特徴の全ての組み合わせが企図されることは、理解されるべきである。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、本開示の趣旨及び範囲内での様々な変更及び修正が、この詳細な説明から当業者には明らかになるので、詳細な説明及び具体的な実施例は、本開示の具体的な実施形態を示しながらも、例示のためにのみ与えられるものであることは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A-1F】Ca1.1Δe29及びClC-1-/-の対立遺伝子が合成致死性を示し、マウスにおいて有意な体重の低減及び重度の筋脱力をもたらすことを示す一連のグラフである。図1Aは、WT(n=10)、Ca1.1Δe29/+(n=13)、Ca1.1Δe29(n=15)、ClC-1-/-(n=40)、Ca1.1Δe29/+/ClC-1-/-(n=16)、及びCa1.1Δe29/Δe29/ClC-1-/-(n=21)のカプランマイヤー生存分析の結果を示す。図1Bは、毎週の体重分析の結果を示す。図1Cは、10週での離乳からの体重変化率を示す。図1Dは、代表的な比力トレースを示し、図1Eは、10週のマウスからの単離されたEDL筋肉の150Hz(500ms)の強縮性刺激によって引き起こされた平均ピーク比力を示す。図1Fは、10週のマウスからの単離されたEDL筋肉から引き起こされた、比力の生成の平均頻度依存性を示す。記号、白丸、個々のマウス;バー及び黒丸、平均±SEM。
図2A-2F】ベラパミル処置が、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける生存、体重、及び筋機能を改善することを示す一連のグラフである。図2Aは、WT+ビヒクル(n=10)、WT+200mg/kg/日のベラパミル(n=10)、Ca1.1Δe29/ClC-/-(n=37)、及びCa1.1Δe29/Δe29/ClC-/-+ベラパミル(n=9)のカプランマイヤー生存分析の結果を示す。ベラパミルは、マウスの栄養/水分補給フードカップに投与される。図2Bは、体重分析の結果を示す。図2C及び2Eは、10週(図2C)及び20週(図2E)のマウスから単離されたEDL筋肉の単収縮(左)及び150Hz(500ms)強縮性(右)刺激によって引き起こされた代表的な比力トレースを示す。図2D及び2Fは、示された遺伝子型及び処置群における、10週齢(図2D)及び20週齢(図2F)での単離されたEDL筋肉からの比力の生成の平均刺激頻度依存性のプロットを示す。記号、黒丸、平均±SEM。
図3A-3C】ベラパミル処置が、ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける正向反射時間を顕著に改善することを示す一連のグラフである。図3Aは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-、ClC-1-/-、Ca1.1Δe29、WT、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-+ベラパミル、及びWT+ベラパミルのマウスの毎週の正向反射時間分析の結果を示し、図3Bは、10及び20週齢のビヒクル及びベラパミル処置マウスにおける平均正向反射時間を示す。未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週齢まで生存しないため、死亡前の最後の記録が文書化される。ボックスは、Q1、中央値、及びQ3を意味し、ひげは最小値及び最大値を示す。図3Cは、栄養/水分補給フードカップにおける100mg/kg/日(左)及び200mg/kg/日(右)投与量でのClC-1-/-マウスの2週間のベラパミル処置前(明るい丸)及び処置後(暗い丸)の対を示す。記号、黒丸、個々のマウス;白丸、平均±SEM。
図4A-4G】ベラパミル処置が、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける呼吸機能及び横隔膜強度を顕著に改善することを示す一連のグラフである。示された遺伝子型及び処置群における10週齢(図4A及び4C)及び20週齢(図4B及び4D)のマウスの全身プレチスモグラフィー。図4A及び4Bは呼吸の頻度(呼吸数/分)を示し、図4C及び4Dは呼吸の換気量(mL)を示す。図4Eは、示された遺伝子型及び処置群において、10週齢(左)及び20週齢(右)のマウスから単離された横隔膜片からの代表的な強縮性(150Hz、500ms)比力トレースを示す。図4F及び4Gは、示された遺伝子型及び処置群における、10週齢(図4F)及び20週齢(図4G)のマウスから単離された横隔膜片から生成された比力の平均刺激頻度依存性のプロットを示す。記号、白丸、個々のマウス;バー及び黒丸、平均±SEM。注記:未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週齢まで生存しない。
図5A-5D】Ca1.1Δe29/ClC-1-/-筋肉が、ベラパミルの添加によって顕著に改善される重度の一過性の脱力を示す一連のグラフである。図5A及び5Cは、ベラパミルの不在下(図5A)及び浴に添加された20μMのベラパミルの存在下(図5C)で、6週のClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力のトレースを示す。図5B及び5Dは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-、n=4)のEDLのベラパミルの不在下(図5B)及びClC-1-/-(n=4)及び浴に添加された20μMのベラパミルの存在下(図5D)で、6週のWT(n=4)、ClC-1-/-(n=4)、Ca1.1Δe29(n=4)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-、n=4)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図5Dの破線は、処置前の参照として図5Bに提示される平均データを表す。記号、黒丸、平均±SEM。
図6A-6H】ベラパミルがCa1.1Δe29/ClC-1-/-及びClC-1-/-のマウス筋肉の両方において筋緊張を有意に低減することを示す一連のグラフである。図6A及び6Cは、ベラパミルの不在下(図6A)及び浴に添加された20mMのベラパミルの存在下(図6C)で6週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからの第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の正規化された代表的な比力トレースを示す。破線は、累積された力を表す。図6B及び6Dは、ベラパミルの不在下(図6B)及び浴に添加された20mMのベラパミルの存在下(図6D)での、3回の強縮性刺激(150Hz、500ms)にわたるWT及びCa1.1Δe29EDLの力の平均正規化積分を示す。図6E及び6Gは、浴に添加された20mMのベラパミルの不在下(図6E)及び存在下(図6G)で6週のClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスから単離されたEDLからの第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の正規化された代表的な比力トレースを示す。破線は、累積された力を表す。図6F及び6Hは、ベラパミルの不在下(図6B)及び浴に添加された20mMのベラパミルの存在下(図6D)での、3回の強縮性刺激(150Hz、500ms)にわたるClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-EDLの力の平均積分を示す。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均±SEM。対側のEDLを、未処置及び処置の各実験に使用した。全てのトレースは、比較のために同じ時間尺度及び正規化された力でプロットされた。
図7A-7B】Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスへの長期間のベラパミル経口給餌が、EDL筋肉の力の生成を顕著に救済することを示す一連のグラフである。示される遺伝子型及び処置の10週(図7A)及び20週(図7B)のマウスから単離されたEDLの150Hz(500ms)の強縮刺激を使用して引き起こされた平均ピーク比力。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均±SEM。
図8A-8B】Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスへの長期間のベラパミル経口給餌が、横隔膜筋の力の生成を顕著に救済することを示す一連のグラフである。示される遺伝子型及び処置の10週(図8A)及び20週(図8B)のマウスから単離された横隔膜片の150Hz(500ms)の強縮刺激を使用して引き起こされた平均ピーク比力。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均±SEM。
図9A-9D】前脛骨筋の繊維型分布の定量化及び統計分析の結果を示す一連のグラフである。10週(左)及び20週(右)の前脛骨筋(n=5/群)のIIb型(図9A)、IIx型(図9B)、IIa型(図9C)、及びI型(図9D)の繊維の定量化を示す。
図10A-10D】横隔膜筋の繊維型分布の定量化及び統計分析の結果を示す一連のグラフである。10週(左)及び20週(右)の横隔膜筋(n=5/群)のIIb型(図10A)、IIx型(図10B)、IIa型(図10C)、及びI型(図10D)の繊維の定量化を示す。
図11A-11C】ヘテロ接合性及びホモ接合性Ca1.1Δe29マウスが、短趾屈筋において同様のCa1.1電圧依存性及びピーク電流密度を示す一連の図である。図11Aは、4週のWT、Ca1.1Δe29/+(破線)、及びCa1.1Δe29/Δe29(実線)のマウスから単離された、0mV(上)、+20mV(中央)、及び+40mV(下)での短趾屈筋繊維の全細胞パッチクランプからの代表的な電流密度トレースを示す。図11Bは、4週のマウスから単離されたWT、Ca1.1Δe29/+(丸、破線)、及びCa1.1Δe29/Δe29(丸、実線)短趾屈筋繊維で測定されたCa1.1活性の平均電流-電圧関係のプロットを示す。図11Cは、10週のマウスからの前脛骨筋から単離されたCa1.1 RNAのRT-PCR生成物を示す。PCR増幅は、Caca1ns cDNAのエクソン27~31からである。
図12A-12D】Ca1.1Δe29/ClC-1-/-筋肉が、ベラパミルの添加によって顕著に改善される重度の一過性の脱力を示す(第1のピーク力に正規化されていない)一連のグラフである。図12A及び12Cは、ベラパミルの不在下(図12A)及び浴に添加された20μMのベラパミルの存在下(図12C)で6週のClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力のトレースを示す。図12B及び12Dは、ClC-1-/-(n=4)及びCa1.1Δe29/ClC-1-/- n=4)のEDLのベラパミルの不在下(図12B)及び浴に添加された20μMのベラパミルの存在下(図12D)で6週のWT(n=4)、ClC-1-/-(n=4)、Ca1.1Δe29(n=4)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-、n=4)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、平均ピーク強縮性EDLのプロットを示す。図12Dの破線は、処置前の参照として図12Bに提示される平均データを表す。記号、黒丸、平均±SEM。
図13A-13H】ベラパミル処置が、WT、Ca1.1Δe29、ClC-1-/-、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウス筋肉のピーク収縮力を低下させないことを示す一連のグラフである。図13A、13C、13E、及び13Gは、ベラパミルの不在下及び20mMのベラパミルの存在下での、WT(図13A)、Ca1.1Δe29図13C)、ClC-1-/-図13E)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-図13G)のEDLにおける第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の代表的なトレースを示す。処置は凡例に示されている。図13B、13D、13F、及び13Hは、ベラパミルの不在下及び20mMのベラパミルの存在下での3回の強縮性刺激にわたるWT(図13B)、Ca1.1Δe29図13D)、ClC-1-/-図13F)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-図13H)のEDLの平均比力を示す。処置は凡例に示されている。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。
図14A-14B】ベラパミルがCa1.1Δe29/ClC-1-/-及びClC-1-/-のマウス筋肉の両方において筋緊張を有意に低減することを示す一連のグラフである。図14Aは、20μMのベラパミルの不在下でのClC -1-/-(実線)及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-(実線)のEDLにおける第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の正規化された比力の生成の代表的なトレースを示す。破線は、累積された力を表す。図14Bは、20μMのベラパミルの存在下でのClC -1-/-(実線)及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-(実線)のEDLにおける第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の代表的なトレースを示す。破線は、累積された力を表す。注記:図6に示されるトレースは、筋緊張をよりよく観察するために、拡張された時間尺度でここに再プロットされる。
図15A-15F】Ca1.1Δe29が筋緊張性筋における一過性の脱力を悪化させ、ベラパミルによって緩和されることを示す一連のグラフである。図15Aは、浴に添加された100mMの9-ACの存在下(処置前)で20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図15Bは、WT(n=5)、WT+9-AC(n=5)、Ca1.1Δe29(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC(n=5)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図15C及び15Eは、浴に添加された100mMの9-AC及び5mMのベラパミル(図15C)又は20mMのベラパミル(図15E)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図15Dは、WT+5mMのベラパミル(n=5)、WT+9-AC+5mMのベラパミル(n=5)、Ca1.1Δe29+5mMのベラパミル(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+5mMのベラパミル(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図15Fは、WT+20mMのベラパミル(n=5)、WT+9-AC+20mMのベラパミル(n=5)、Ca1.1Δe29+20mMのベラパミル(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+20mMのベラパミル(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図15D及び15Fの破線は、処置前の参照として図15Bに提示される平均データを表す。記号、黒丸、平均±SEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図16A-16B】一過性の脱力がWT及びCa1.1Δe29の筋肉に存在しないことを示す一連のグラフである。図16は、20週のWT及びCa1.1Δe29のEDL筋肉における4秒あけた最初の15回の強縮(150Hz、500ms)の代表的なトレースを示す。図16Bは、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。記号、黒丸、平均±SEM。
図17A-17F】Ca1.1Δe29が筋緊張を顕著に悪化させることを示す一連のグラフである。図17A、17B、及び17C(左)は、ベラパミルの不在下(処置前)(図17A、左)及び浴に添加された5mM(図17B、左)及び20mM(図17C、左)のベラパミルの存在下(処置前)で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図17A、17B、及び17C(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図17D、17E、及び17F(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、ベラパミルの不在下(処置前)(図17D、左)及び浴に添加された5mM(図17E、左)及び20mM(図17F、左)のベラパミルの存在下(処置前)で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離された、EDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図17D、17E、及び17F(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図18A-18F】ベラパミル処置が、非筋緊張性及び筋緊張性WT及びCa1.1Δe29のマウス筋肉のピーク収縮力を低下させないことを示す一連のグラフである。ベラパミルの不在下(処置前)(図18A、左)及び浴に添加された5mM(図18B、左)及び20mM(図18C、左)のベラパミルの存在下(処置前)で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の代表的な比力トレース。破線は累積された力の生成を表す。図18A、18B、及び18C(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力の平均積分のプロットを示す。図18D、18E、及び18F(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、ベラパミルの不在下(処置前)(図18D、左)及び浴に添加された5mM(図18E、左)及び20mM(図18F、左)のベラパミルの存在下(処置前)で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離された、EDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の代表的な比力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図18D、18E、及び18F(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力の平均積分のプロットを示す。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図19A-19B】Ca1.1De29及びClC-1-/-の対立遺伝子が合成致死性を示し、マウスにおいて有意な体重の低減及び重度の筋脱力をもたらすことを示す一連のグラフである。アムロジピン処置は、生存及び体重変化率を顕著に改善した。図19Aは、WT(n=10)、Ca1.1Δe29/+(n=13)、Ca1.1Δe29(n=15)、ClC-1-/-(n=40)、Ca1.1Δe29/+/ClC-1-/-(n=16)、Ca1.1Δe29/Δe29/ClC-1-/-(n=21)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/- + 5mg/kg/日のアムロジピン(n=6)のカプランマイヤー生存分析の結果を示す。図19Bは、10週での離乳からの体重変化率を示す。記号、白丸、個々のマウス;バー及び黒丸、平均±SEM。
図20A-20B】アムロジピン処置が、未処置と比較して、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける正向反射時間を顕著に改善することを示す一連のグラフである。図20Aは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-、ClC-1-/-、Ca1.1Δe29、WT、Ca1.1Δe29/ClC-1-/- +アムロジピン(紫色)マウスの毎週の正向反射時間分析を示す。図20Bは、10週齢及び20週齢のビヒクル及びアムロジピン処置のマウスにおける平均正向反射時間を示す。注記:未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週齢まで生存しないため、死亡前の最後の記録が文書化される。ボックスは、Q1、中央値、及びQ3を意味する;ひげは最小値及び最大値を示す。記号、黒丸、個々のマウス;白丸、平均±SEM。
図21A-21C】Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスが、WTと比較して呼吸が変化したことを示し、アムロジピンで処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスが、WTと比較して有意に異なる頻度又は分時換気量を有さないことを示す一連のグラフである。示された遺伝子型及び処置群における10週齢(左)及び20週齢(右)のマウスの全身プレチスモグラフィー。呼吸の頻度(呼吸数/分)(図21A)、呼吸の換気量(mL)(図21B)、及び分時換気量(図21C)を示す。記号、白丸、個々のマウス;バー及び黒丸、平均±SEM。注記:未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週齢まで生存しない
図22A-22B】アムロジピンで処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスから単離されたEDLが、未処置のClC-1-/-単独マウスと同様の筋機能を有することを示す一連のグラフである。図22Aは、20週のマウスから単離されたEDL筋肉の150Hz(500ms)強縮性(右)刺激によって引き起こされた代表的な比力トレースを示す。図22Bは、20週のマウスから単離されたEDL筋肉における500ms、150Hzの強縮性刺激中に生成された平均強縮力を示す。図22Cは、示された遺伝子型及び処置群における、20週齢での単離されたEDL筋肉からの比力の生成の平均刺激頻度依存性のプロットを示す。記号、黒丸、平均±SEM。
図23A-23C】アムロジピン処置が、WT横隔膜と比較して、アムロジピンで処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスから単離された横隔膜片における筋機能を改善し、力の生成が低減することを示す一連のグラフである。図23Aは、20週のマウスから単離された横隔膜片の150Hz(500ms)強縮性(右)刺激によって引き起こされた代表的な比力トレースを示す。図23Bは、20週のマウスから単離された横隔膜片における500ms、150Hzの強縮性刺激中に生成された平均強縮力を示す。図23Cは、示された遺伝子型及び処置群における、20週齢での単離された横隔膜片からの比力の生成の平均刺激頻度依存性のプロットを示す。記号、黒丸、平均±SEM。
図24A-24D】Ca1.1Δe29が筋緊張性筋における一過性の脱力を悪化させ、アムロジピンによって緩和されることを示す一連のグラフである。 図24Aは、浴に添加された100mMの9-ACの存在下(処置前)で20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図24Bは、WT(n=5)、WT+9-AC(n=5)、Ca1.1Δe29(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC(n=5)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図24Cは、浴に添加された100mMの9-AC及び10mMのアムロジピン(図24C)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図24Dは、WT+10mMのアムロジピン(n=5)、WT+9-AC+10mMのアムロジピン(n=5)、Ca1.1Δe29+10mMのアムロジピン(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+10mMのアムロジピン(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図24Dの破線は、処置前の参照として図24Bに提示される平均データを表す。記号、黒丸、平均±SEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図25A-25D】Ca1.1Δe29が筋緊張性筋における一過性の脱力を悪化させ、ジルチアゼムによって緩和されることを示す一連のグラフである。図25Aは、浴に添加された100mMの9-ACの存在下(処置前)で20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図25Bは、WT(n=5)、WT+9-AC(n=5)、Ca1.1Δe29(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC(n=5)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図25Cは、浴に添加された100mMの9-AC及び10mMのジルチアゼム(図25C)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図25Dは、WT+10mMのジルチアゼム(n=5)、WT+9-AC+10mMのジルチアゼム(n=5)、Ca1.1Δe29+10mMのジルチアゼム(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+10mMのジルチアゼム(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。(図25D)の破線は、処置前の参照として(図25B)に提示される平均データを表す。記号、黒丸、平均±SEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図26A-26D】Ca1.1Δe29が筋緊張性筋における一過性の脱力を悪化させ、ニフェジピンによって緩和されることを示す一連のグラフである。図26Aは、浴に添加された100mMの9-ACの存在下(処置前)で20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図26Bは、WT(n=5)、WT+9-AC(n=5)、Ca1.1Δe29(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC(n=5)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図26Cは、浴に添加された100mMの9-AC及び10mMのニフェジピン(図26C)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図26Dは、WT+10mMのニフェジピン(n=5)、WT+9-AC+10mMのニフェジピン(n=5)、Ca1.1Δe29+10mMのニフェジピン(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+10mMのニフェジピン(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図26Dの破線は、処置前の参照として図26Bに提示される平均データを表す。記号、黒丸、平均±SEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図27A-27B】一過性の脱力がWT及びCa1.1Δe29の筋肉に存在しないことを示す一連のグラフである。図27Aは、20週のWT及びCa1.1Δe29EDL筋肉における4秒あけた最初の15回の強縮(150Hz、500ms)の代表的なトレースを示す。図27Bは、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。記号、黒丸、平均±SEM。
図28A-28D】Ca1.1Δe29が筋緊張を顕著に悪化させ、アムロジピンが筋緊張性WT及びCa1.1Δe29のEDLにおいて筋緊張を低減したことを示す一連のグラフである。図28A及び28B(左)は、アムロジピンの不在下(処置前)(図28A、左)及び浴に添加された10mMのアムロジピン(図28B、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図28A及び28B(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図28C及び28D(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、アムロジピンの不在下(処置前)(図28C、左)及び浴に添加された10mMのアムロジピン(図28D、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図28C及び28D(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図29A-29D】Ca1.1Δe29が筋緊張を顕著に悪化させ、ジルチアゼムが筋緊張性WT及びCa1.1Δe29のEDLにおいて筋緊張を低減したことを示す一連のグラフである。図29A及び29B(左)は、ジルチアゼムの不在下(処置前)(図29A、左)及び浴に添加された10mMのジルチアゼム(図29B、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図29A及び29B(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図29C及び29D(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、ジルチアゼムの不在下(処置前)(図29C、左)及び浴に添加された10mMのジルチアゼム(図29D、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図29C及び29D、右は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図30A-30D】Ca1.1Δe29が筋緊張を顕著に悪化させ、ニフェジピンが筋緊張性WT及びCa1.1Δe29のEDLにおいて筋緊張を低減したことを示す一連のグラフである。図30A及び30B(左)ニフェジピンの不在下(処置前)(図30A、左)及び浴に添加された75nMのニフェジピン(図30B、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレース。破線は累積された力の生成を表す。図30A及び30B(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図30C及び30D(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、ニフェジピンの不在下(処置前)(図30C、左)及び浴に添加された75nMのニフェジピン(図30D、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図30C及び30D(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
図31A-31C】HSALRとMbnl1-/-との組み合わせが合成致死性を示し、生存及び体重の有意な低減、並びに正向時間の延長をもたらすことを示す一連のグラフである。図31Aは、HSALR/Mbnl1+/+ +ビヒクル、HSALR/Mbnl1+/+ +100mg/kg/日のベラパミル、HSALR/Mbnl-/- +ビヒクル、及びHSALR/Mbnl1-/-+100mg/kg/日のベラパミルのカプランマイヤー生存分析の結果を示す。図31Bは週ごとの体重変化の平均を示す。図31Cは、HSALR/Mbnl1+/+ +ビヒクル、HSALR/Mbnl1+/+ +100mg/kg/日のベラパミル、HSALR/Mbnl-/- +ビヒクル、及びHSALR/Mbnl1-/-+100mg/kg/日のベラパミルの毎週の正向反射時間分析を示す。記号、黒丸、及び誤差、平均±SEM。
図32A-32C】HSALRとMbnl1-/-との組み合わせが合成致死性を示し、生存及び体重の有意な低減、並びに正向時間の延長をもたらすことを示す一連のグラフである。アムロジピン処置は、生存及び正向時間を顕著に改善した。図32Aは、HSALR/Mbnl1+/+ +ビヒクル、HSALR/Mbnl1+/+ +100mg/kg/日のアムロジピン、HSALR/Mbnl-/- +ビヒクル、及びHSALR/Mbnl1-/-+100mg/kg/日のアムロジピンのカプランマイヤー生存分析の結果を示す。未処置のHSALR/Mbnl1-/-マウスは、寿命が著しく低下した。図32Bは週ごとの体重変化の平均を示す。図32Bは、HSALR/Mbnl1+/+ +ビヒクル、HSALR/Mbnl1+/+ +100mg/kg/日のアムロジピン、HSALR/Mbnl-/- +ビヒクル、及びHSALR/Mbnl1-/-+100mg/kg/日のアムロジピンの毎週の正向反射時間分析を示す。統計分析:複数の比較を伴う一元配置又は二元配置ANOVAを使用して、試験した群の各々間の有意差を試験した。生存については、各群を、互いの群のカプランマイヤーログランク検定と比較した。全ての図のアスタリスクについて、p値は次の通りであることに留意されたい:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、及び****P<0.0001を使用した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、カルシウムチャネル遮断薬などのカルシウムチャネルを阻害することができる薬剤が、筋緊張性障害の症状を治療又は緩和するのに有効であるという予期しない発見に関する。その状態と診断された患者において、本開示の方法は、例えば、そのような状態に関連する症状の悪化を反転させるか又は阻害し、かつ/又は新しい症状の出現を防止することができる。
【0021】
筋緊張性障害を治療するための方法
したがって、本開示は、筋緊張性障害の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、Cav1.1活性によって引き起こされる筋緊張後の麻痺の状態である、一過性麻痺を阻害することによって、又は/及び筋肉構造若しくは力の生成能力に対する筋緊張関連カルシウム流入の短期的及び/又は長期的な害を低減することによって、筋緊張性障害(例えば、筋緊張性ジストロフィー1型(DM1)又は筋緊張性ジストロフィー2型(DM2)を含む筋ジストロフィー)の症状を反転させるか又は予防するためにカルシウムチャネル遮断薬を使用する。いくつかの実施形態では、方法は、筋肉痛、硬直、脱力、又は遅延弛緩を低減し、長期的な筋肉の衰えから保護することによって、筋ジストロフィー患者を治療するのに効果的である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「筋緊張」という用語は、筋肉の強直性痙攣又は一時的な硬直、特に、持続的な収縮後の筋肉の弛緩の減少を特徴とする任意の障害又は状態を指す。筋緊張を示す障害の例としては、筋緊張性ジストロフィー、先天性筋緊張症、及び先天性パラミオトニーが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ジストロフィー」という用語は、任意の障害又は状態、特に、筋肉組織などの組織の変性を特徴とする遺伝的状態を指す。いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーの例としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、筋緊張型筋ジストロフィー、及び眼咽頭型筋ジストロフィーが挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「筋ジストロフィー」という用語は、骨格筋に影響を及ぼし、進行性筋脱力、筋タンパク質の欠損、及び最終的には筋細胞死を特徴とする任意の遺伝性状態又は障害を指す。この用語は、筋肉痛、筋脱力、筋肉硬直、歩行困難、筋緊張、倦怠感、脊柱側弯症、軸索末梢神経障害、心筋症、心不整脈、精神遅滞、過眠症、睡眠時無呼吸、虹彩性後嚢下白内障、インスリン非感受性、II型真性糖尿病、早期脱毛、精巣機能不全、乳児の筋緊張低下、及び呼吸不全を含む、少なくとも1つの、典型的にはより多くの症状を伴う任意の状態を広く包含する。全ての症状が存在する必要はない。例えば、筋ジストロフィーを有する者は、白内障又は軽度の筋緊張を示し得るが、筋脱力又は心不整脈を示さなくてもよい。同様に、筋ジストロフィーを有する者は、筋肉痛及び脱力を示し得るが、過眠症又は睡眠時無呼吸症を示さなくてもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「筋緊張性ジストロフィー1型」又は「DM1」という用語は、患者が患者のDMPK遺伝子に異常に多くのCTG反復を有する状態であるスタイナート病としても知られる。典型的には、症状は、50回以上のCTG反復を有する個体において認められる。DM1には、疾患の軽度、古典的、及び先天性形態(表現型)を有する患者が含まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「筋緊張性ジストロフィー2型」、「DM2」、「近位型筋強直性ミオパチー」、及び「PROMM」という用語は、患者がCNBP(ZNF9)遺伝子に異常に多くの数のCCTG反復を有する状態を指す。全身症状は、少なくとも75のCCTG反復を有する個体において認められる。
【0027】
典型的には、筋ジストロフィー症状の数及び重症度は、遺伝子欠損の種類及び重症度に依存する。例えば、DM1では、CTGコピー数が増加するにつれて、症状が現れる年齢が低下し、より高いコピー数を有する患者は、より低いコピー数を有する患者と比較して、特定の年齢でより重篤な症状を有する。疾患のより軽度の形態では、患者は、最初は無症状であり、青年期又は成人期に達すると、疾患の身体的症状を呈し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、筋緊張性障害は、筋緊張性ジストロフィー、常染色体優性又は劣性の先天性筋緊張症、又はナトリウムチャネル筋緊張症である。いくつかの実施形態では、筋緊張性ジストロフィーは、筋緊張性ジストロフィー1型(DM1)又は筋緊張性ジストロフィー2型(DM2)である。いくつかの実施形態では、筋緊張性ジストロフィーは、CIC-1塩化物チャネル又はCav1.1カルシウムチャネルをコードするRNAの異常な選択的スプライシングに関連している。Cav1.1、別名カルシウムチャネル、電圧依存性、L型、アルファ1Sサブユニット(CACNA1S、Uniprot受託コード:Q13698)は、ヒトにおいて、CACNA1S遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0029】
いくつかの実施形態では、先天性筋緊張症は、ベッカー型又はトムセン型先天性筋緊張症である。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル筋緊張症は、先天性パラミオトニー、高カリウム血性周期性四肢麻痺、又はカリウム惹起性筋緊張症である。いくつかの実施形態では、対象は、SCN4A、Clcn1、若しくはCac1nsにおける1つ以上の変異を有するか、又はClcn1若しくはCac1nsの選択的スプライスアイソフォームを有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の、対象の細胞内のカルシウムチャネル(例えば、Cav1.1カルシウムチャネル)を阻害する薬剤(例えば、カルシウムチャネル遮断薬)を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、カルシウムチャネル遮断薬、その立体異性体、その誘導体/類似体、そのプロドラッグ、その代謝産物、若しくはその薬学的に許容される塩、又はそれらの組み合わせを含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「カルシウムチャネル遮断薬」、「チャネルアンタゴニスト」、「カルシウムチャネル阻害剤」、又は「カルシウム流入遮断薬」という用語は、電圧依存性カルシウムチャネルを遮断する薬剤を指す。例示的なカルシウムチャネル遮断薬としては、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニバルジピン、リヨシジン、アニパミル、ジルチアゼム、フェンジリン、フルナリジン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、チアパミル、ベラパミル、ペルヘキシリンマレイン酸塩、フェンジリン、プレニルアミン、立体異性体、その誘導体、又はその薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
いくつかの実施形態では、薬剤は、ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、立体異性体、その誘導体、又はそれらの薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0033】
ベラパミルは、(RS)-2-(3,4-ジメトキシフェニル)-5-{[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エチル]-(メチル)アミノ}-2-プロプ-2-イルペンタンニトリルのIUPAC名、及び以下の化学式を有する。
【化1】
【0034】
アムロジピンは、(RS)-3-エチル5-メチル2-[(2-アミノエトキシ)メチル]-4-(2-クロロフェニル)-6-メチル-1,4-ジヒドロピリジン-3,5-ジカルボキシレートのIUPAC名、及び以下の化学式を有する。
【化2】
【0035】
ジルチアゼムは、シス-(+)-[2-(2-ジメチルアミノエチル)-5-(4-メトキシフェニル)-3-オキソ-6-チア-2-アザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7,9,11-トリエン-4-イル]エタノエートのIUPAC名、及び以下の化学式を有する。
【化3】
【0036】
ニフェジピンは、3,5-ジメチル2,6-ジメチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン-3,5-ジカルボキシレートのIUPAC名、及び以下の化学式を有する。
【化4】
【0037】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」、及び「治療」という用語は、(i)疾患、病理学的若しくは医学的状態の発生を防止すること(例えば、予防)、(ii)疾患、病理学的若しくは医学的状態を阻害すること、又はその出現を停止させること、(iii)疾患、病理学的若しくは医学的状態を緩和又は改善すること、及び/あるいは(iv)疾患、病理学的若しくは医学的状態に関連する症状を減少させることを含む。したがって、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、予防に拡張することができ、治療される状態又は症状の進行又は重症度の予防(preventing)、予防(prevention)、低下、停止、又は反転を含み得る。このように、「治療」という用語は、必要に応じて、医学的、治療的、及び/又は予防的投与を含むことができる。したがって、「治療すること」又は「治療」という用語は、対象の状態を改善又は安定させる方法で、症状、臨床徴候、及び状態の根底にある病理を反転させるか、低減するか、又は停止させることを含み得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「改善する」という用語は、状態に関連する1つ以上の症状の予防、低減、又は反転における任意の成功の指標をもたらす、患者(例えば、筋緊張性ジストロフィー患者)に薬剤を投与することの効果を指す。低減は、より低い重症度、症状の発症の遅延、又は疾患進行の減速で示され得る。症状の予防、低減、又は反転は、身体検査若しくは臨床検査(すなわち、血液検査)の結果、薬物の必要性の低減、支持手段(すなわち、人工呼吸器の使用の必要性の減少)、又は可動性の増加などの客観的パラメータに基づいて測定することができる。症状の予防、低減、又は反転は、痛み若しくは硬直の低減、又は患者の可動性及び幸福感の増加などの主観的パラメータに基づいて測定することもできる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「投与すること」という用語は、経口、鼻腔内、眼内、静脈内、骨内、腹腔内、脊髄内、筋肉内、関節内、心室内、頭蓋内、病巣内、気管内、髄腔内、皮下、皮内、経皮、又は経粘膜投与を含むが、これらに限定されない任意の経路による細胞の送達を指す。
【0040】
いくつかの実施形態では、薬剤は、腫瘍内、静脈内、皮下、骨内、経口、経皮、舌下に、持続放出で、制御放出で、遅延放出で、又は座薬として対象に投与される。
【0041】
「有効量」は、疾患、障害、及び/若しくは状態を治療するか、又は列挙された効果をもたらすのに有効な量を指す。例えば、有効量は、治療される状態又は症状の進行又は重症度を低減するのに有効な量であり得る。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。「有効量」という用語は、例えば、宿主における疾患若しくは障害を治療若しくは予防するか、又は疾患若しくは障害の症状を治療するのに有効である、本明細書に記載の化合物の量、又は本明細書に記載の化合物の組み合わせの量を含むことを意図している。したがって、「有効量」は、一般に、所望の効果を提供する量を意味する。主題の治療方法に関する化合物の「治療有効量」とは、調製物中の化合物の量であって、所望の投薬レジメンの一部として(哺乳動物、例えば、ヒトに)投与されるとき、例えば、いずれの医学的治療にも適用可能な合理的な利益/リスク比で、治療される障害又は状態の臨床的に許容される基準に従って、症状を緩和する、状態を改善する、又は疾患状態の発症を減速させる、化合物の量を指す。
【0042】
化合物は、単位剤形、例えば、単位剤形当たり5~1000mg/m、便利には10~750mg/m、最も便利には50~500mg/mの活性成分を含有する単位剤形で便利に投与することができる。いくつかの実施形態では、用量は、単回用量で、又は適切な間隔で投与される分割用量として、例えば、1日当たり2、3、4回以上のサブ用量として提示され得る。サブ用量自体は、例えば、いくつかの個別の大まかに間隔をあけた投与に更に分割され得る。
【0043】
患者に投与される本発明の組成物の実際の投薬量は、体重、状態の重症度、治療される疾患の種類、以前又は同時の治療的介入、患者の特発性疾患、及び投与経路などの身体的及び生理学的要因によって決定され得る。投与を担当する開業医は、いずれにせよ、組成物中の活性成分の濃度及び個々の対象に適切な用量を決定する。
【0044】
いくつかの実施形態では、方法は、対象に、0.1mg/kg/体重~約1000mg/kg/体重以上、例えば、約0.1mg/kg/体重、0.5mg/kg/体重、1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約20mg/kg/体重、約30mg/kg/体重、約40mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約75mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重、約750mg/kg/体重~約1000mg/kg/体重以上、又はその中に導き出される任意の範囲を含む、1つ以上の用量の薬剤を投与することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、薬剤は、約0.01~約100mg/対象の体重1kg(例えば、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、約20mg/kg、約21mg/kg、約22mg/kg、約23mg/kg、約24mg/kg、約25mg/kg、約26mg/kg、約27mg/kg、約28mg/kg、約29mg/kg、約30mg/kg、約31mg/kg、約32mg/kg、約33mg/kg、約34mg/kg、約35mg/kg、約36mg/kg、約37mg/kg、約38mg/kg、約39mg/kg、約40mg/kg、約41mg/kg、約42mg/kg、約43mg/kg、約44mg/kg、約45mg/kg、約46mg/kg、約47mg/kg、約48mg/kg、約49mg/kg、約50mg/kg、約51mg/kg、約52mg/kg、約53mg/kg、約54mg/kg、約55mg/kg、約56mg/kg、約57mg/kg、約58mg/kg、約59mg/kg、約60mg/kg、約61mg/kg、約62mg/kg、約63mg/kg、約64mg/kg、約65mg/kg、約66mg/kg、約67mg/kg、約68mg/kg、約69mg/kg、約70mg/kg、約71mg/kg、約72mg/kg、約73mg/kg、約74mg/kg、約75mg/kg、約76mg/kg、約77mg/kg、約78mg/kg、約79mg/kg、約80mg/kg、約81mg/kg、約82mg/kg、約83mg/kg、約84mg/kg、約85mg/kg、約86mg/kg、約87mg/kg、約88mg/kg、約89mg/kg、約90mg/kg、約91mg/kg、約92mg/kg、約93mg/kg、約94mg/kg、約95mg/kg、約96mg/kg、約97mg/kg、約98mg/kg、又は約99mg/kg)の1つ以上の用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤は、約1~約50mg/対象の体重1kgの1回以上の用量で投与される。いくつかの実施形態では、薬剤は、約8~約16mg/対象の体重1kgの1回以上の用量で投与される。
【0046】
いくつかの実施形態では、1つ以上の用量の薬剤は、少なくとも1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、11日ごと、12日ごと、13日ごと、14日ごと、15日ごと、16日ごと、17日ごと、18日ごと、19日ごと、20日ごと、21日ごと、22日ごと、23日ごと、24日ごと、25日ごと、26日ごと、27日ごと、28日ごと、29日ごと、30日ごと、31日ごと、32日ごと、33日ごと、34日ごと、35日ごと、36日ごと、37日ごと、38日ごと、39日ごと、40日ごと、41日ごと、42日ごと、43日ごと、44日ごと、45日ごと、46日ごと、47日ごと、48日ごと、49日ごと、50日ごと、51日ごと、52日ごと、53日、54日ごと、55日ごと、56日ごと、57日ごと、58日ごと、59日ごと、60日ごと、61日ごと、62日ごと、63日ごと、64日ごと、65日ごと、66日ごと、67日ごと、68日ごと、69日ごと、70日ごと、71日ごと、72日ごと、73日ごと、74日ごと、75日ごと、76日ごと、77日ごと、78日ごと、79日ごと、80日ごと、81日ごと、82日ごと、83日ごと、84日ごと、85日ごと、86日ごと、87日ごと、88日ごと、89日ごと、90日ごと、91日ごと、92日ごと、93日ごと、94日ごと、95日ごと、96日ごと、97日ごと、98日ごと、99日ごと、100日ごと、101日ごと、102日ごと、103日ごと、104日ごと、105日ごと、106日ごと、107日ごと、108日ごと、109日ごと、110日、111日ごと、112日ごと、113日ごと、114日ごと、115日ごと、116日ごと、117日ごと、118日ごと、119日ごと、又は120日ごとに投与される。
【0047】
いくつかの実施形態では、治療は、筋緊張の低減、体重減少の低減、生存の改善、筋機能の改善、正向反射時間の改善、呼吸機能の改善、及び横隔膜強度の改善から選択される治療効果をもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、未治療の対象と比較して、筋緊張、体重減少、生存、筋機能、正向反射時間、呼吸機能、又は横隔膜強度の少なくとも50%の改善をもたらす。
【0048】
「治療効果」という用語は、当技術分野で認識されており、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる動物、具体的には哺乳動物、より具体的にはヒトにおける局所又は全身効果を指す。「治療有効量」という語句は、いずれの治療にも適用可能な合理的な利益/リスク比である程度の所望の局所又は全身効果をもたらすそのような物質の量を意味する。そのような物質の治療有効量は、当業者によって容易に決定され得る、対象及び治療される疾患又は状態、対象の体重及び年齢、疾患又は状態の重症度、投与方法などに応じて異なる。例えば、本明細書に記載のある特定の組成物は、そのような治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で所望の効果をもたらすのに十分な量で投与され得る。
【0049】
別の態様では、本開示は、筋緊張性障害の治療を必要とする対象においてそれを行うための医薬の製造における、カルシウムチャネルを阻害する薬剤の使用も提供する。いくつかの実施形態では、筋緊張性障害は、筋緊張性ジストロフィー、常染色体優性又は劣性の先天性筋緊張症、又はナトリウムチャネル筋緊張症である。いくつかの実施形態では、カルシウムチャネルは、Cav1.1カルシウムチャネルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、薬剤は、ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、それらの立体異性体、それらの誘導体/類似体、それらのプロドラッグ、それらの代謝産物、若しくはそれらの薬学的に許容される塩、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0051】
薬学的組成物及びキット
また、本開示では、(i)上述の薬剤(例えば、カルシウムチャネル遮断薬)、その立体異性体、その誘導体/類似体、そのプロドラッグ、その代謝物、又はその薬学的に許容される塩、及び(ii)任意選択で、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0052】
いくつかの実施形態では、例えば、筋緊張性障害の治療を必要とする対象においてそれを行うための本明細書に記載の薬学的組成物は、ベラパミル、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、それらの立体異性体、それらの誘導体/類似体、それらのプロドラッグ、それらの代謝産物、若しくはそれらの薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせから選択されるカルシウムチャネル遮断薬を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の化合物を含み得る。他の実施形態では、活性化合物は、例えば、単位の重量の約2%~約75%、又は約25%~約60%、及びその中に導き出される任意の範囲を含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ラノラジンメキシレチン、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリジン、それらの立体異性体、それらの誘導体/類似体、それらのプロドラッグ、それらの代謝産物、又はそれらの薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の薬剤を更に含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「組成物」又は「薬学的組成物」という用語は、本発明内で有用な少なくとも1つの構成要素と、他の構成要素、例えば、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、及び/又は賦形剤との混合物を指す。薬学的組成物は、本発明の1つ以上の構成要素の生物への投与を容易にする。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される薬剤(例えば、カルシウムチャネル遮断薬)は、様々な立体異性体形態で存在し得る。立体異性体は、それらの空間配置においてのみ異なる化合物である。鏡像異性体は、鏡像が重ね合わせることができない立体異性体の対であり、最も一般的には、それらがキラル中心として機能する非対称に置換された炭素原子を含有するためである。「鏡像異性体」とは、互いに鏡像であり、重ね合わせることができない一対の分子のうちの1つを意味する。ジアステレオマーは、鏡像として関連しない立体異性体であり、最も一般的には、それらが2つ以上の非対称に置換された炭素原子を含有するためである。「R」及び「S」は、1つ以上のキラル炭素原子の周りの置換基の立体配置を表す。したがって、「R*」及び「S*」は、1つ以上のキラル炭素原子の周りの置換基の相対的な立体配置を示す。構造式中の記号「*」は、キラル炭素中心の存在を表す。
【0057】
「ラセミ体」又は「ラセミ混合物」は、等モル量の2つの鏡像異性体の化合物を意味し、そのような混合物は、光学活性を示さない。すなわち、それらは、偏光面を回転させない。
【0058】
「幾何異性体」とは、炭素-炭素二重結合、シクロアルキル環、又は架橋二環式系との関係で置換基原子の配向が異なる異性体を意味する。炭素-炭素二重結合の各側の原子(H以外)は、E(置換基は炭素-炭素二重結合の反対側にある)又はZ(置換基は同じ側に配向される)の立体配置であり得る。「R」、「S」、「St」、「R*」、「E」、「Z」、「シス」、及び「トランス」は、コア分子に対する立体配置を示す。
【0059】
本発明の化合物は、異性体特異的合成によって個々の異性体として調製され得るか、又は異性体混合物から分割され得るかのいずれかである。従来の分割技法は、光学活性の酸を使用して異性体対の各異性体の遊離塩基の塩を形成すること(続いて、遊離塩基の分別結晶化及び再生)、光学活性のアミンを使用して異性体対の各異性体の酸形態の塩を形成すること(続いて、遊離酸の分別結晶化及び再生)、光学的に純粋な酸、アミン、若しくはアルコールを使用して異性体対の各異性体のエステル若しくはアミドを形成すること(続いて、キラル補助剤のクロマトグラフィー分離及び除去)、又は様々な周知のクロマトグラフィーの方法を使用して出発材料若しくは最終生成物のいずれかの異性体混合物を分割することを含む。
【0060】
開示される化合物の立体化学が構造によって命名又は描写される場合、命名又は描写される立体異性体は、他の立体異性体に対して、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、又は99.9重量%純粋である。単一の鏡像異性体が構造によって命名又は描写される場合、描写又は命名される鏡像異性体は、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、又は99.9重量%光学的に純粋である。光学純度率は、鏡像異性体の重量と鏡像異性体の重量+その光学異性体の重量との比率である。
【0061】
開示される化合物が立体化学を示すことなく構造によって命名又は描写され、化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合、その名称又は構造は、対応する光学異性体を含まない化合物の1つの鏡像異性体、化合物のラセミ混合物、及び対応する光学異性体に対して1つの鏡像異性体が濃縮された混合物を包含することが理解されるべきである。
【0062】
開示される化合物が立体化学を示すことなく構造によって命名又は描写され、少なくとも2つのキラル中心を有する場合、その名称又は構造は、他のジアステレオマーを含まないジアステレオマー、他のジアステレオマー対を含まないジアステレオマーの対、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマー対の混合物、1つのジアステレオマーが他のジアステレオマーに対して濃縮されているジアステレオマーの混合物、及び1つのジアステレオマー対が他のジアステレオマー対に対して濃縮されているジアステレオマー対の混合物を包含することが理解されるべきである。
【0063】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、別のもの、すなわち、「親」化合物と称され得る「元の」物質に構造的に関連する化学物質を指す。「誘導体」は、1つ以上のステップにおいて、構造的に関連する親化合物から作製することができる。「密接に関連する誘導体」という語句は、その分子量が親化合物の重量を50%を上回って超えない誘導体を意味する。密接に関連する誘導体の一般的な物理的及び化学的特性も、親化合物と同様である。「薬学的に活性な誘導体」は、レシピエントへの投与時に、本明細書に開示される活性を直接的又は間接的に提供することができる任意の化合物を指す。
【0064】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、若しくは他の問題、又は合併症を伴わず、合理的な利益/リスク比に見合う、ヒト及び動物の組織との接触における使用に好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために用いられる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、無機酸、有機酸、溶媒和物、水和物、又はその包接化合物を含む、薬学的に許容される非毒性酸から調製された投与される化合物の塩を指す。
【0066】
化合物は塩を形成することができ、塩もまた本開示の範囲内である。別段の指示がない限り、本発明の化合物への言及は、その1つ以上の塩への言及を含むと理解される。「塩」という用語は、無機及び/又は有機の酸及び塩基で形成された酸性及び/又は塩基性の塩を示す。加えて、「塩」という用語は、例えば、化合物が、アミン又はピリジン又はイミダゾール環などの塩基性部分と、カルボン酸などの酸性部分との両方を含有する場合に、双性イオン(内塩)を含み得る。薬学的に許容される(すなわち、非毒性、生理学的に許容される)塩、例えば、カチオンが塩の毒性又は生物学的活性に顕著に寄与しない許容される金属塩及びアミン塩などが好ましい。しかしながら、他の塩は、例えば、調製中に用いられ得る単離又は精製ステップにおいて有用であり得、したがって、本開示の範囲内に企図される。化合物の塩は、例えば、化合物を、塩が沈殿する培地などの培地中で、又は水性培地中で(その後凍結乾燥が続く)、等量などの量の酸又は塩基と反応させることによって形成することができる。
【0067】
例示的な酸付加塩としては、酢酸塩(例えば、酢酸又はトリハロ酢酸で形成されたもの、例えば、トリフルオロ酢酸)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩(塩酸で形成された)、臭化水素酸塩(臭化水素で形成された)、ヨウ化水素酸塩、マレイン酸塩(マレイン酸で形成された)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸で形成された)、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸で形成されたものなど)、スルホン酸塩(本明細書で言及されているものなど)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、例えばトシル酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0068】
例示的な塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、バリウム、亜鉛、及びアルミニウム塩、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミン、N,N’-ジベンジルエチレン-ジアミン、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、又は類似の薬学的に許容されるアミンなどの有機塩基(例えば、有機アミン)を有する塩、並びにアルギニン、リジンなどのアミノ酸を有する塩が挙げられる。塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチル塩化物、臭化物、並びにヨウ化物)、ジアルキル硫酸塩(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミル硫酸塩)、長鎖ハロゲン化物(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステアリル塩化物、臭化物、並びにヨウ化物)、アラルキルハロゲン化物(例えば、ベンジル及びフェネチル臭化物)などの薬剤で四級化され得る。いくつかの実施形態では、塩の例は、一塩酸塩、硫酸水素塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩、又は硝酸塩を含む。
【0069】
様々な形態のプロドラッグが当技術分野で周知であり、(a)The Practice of Medicinal Chemistry,Camille G.Wermuth et al.,Ch 31,(Academic Press,1996)、(b)Design of Prodrugs,edited by H.Bundgaard,(Elsevier,1985)、(c)A Textbook of Drug Design and Development,P.Krogsgaard-Larson and H.Bundgaard,eds.Ch 5,pgs 113-191(Harwood Academic Publishers,1991)、及び(d)Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism,Bernard Testa and Joachim M.Mayer,(Wiley-VCH,2003)に記載されている。
【0070】
加えて、化合物は、それらの調製の後、単離及び精製されて、99重量%以上の量の化合物(「実質的に純粋な」)を含有する組成物を得ることができ、次いで、本明細書に記載されるように使用又は製剤化され得る。そのような「実質的に純粋な」化合物はまた、本明細書において本開示の一部として企図される。
【0071】
「安定した化合物」及び「安定した構造」とは、反応混合物から有用な程度の純度までの単離に耐え、効果的な治療剤への製剤化に耐えるのに十分に堅牢である化合物を示すことを意味する。本開示は、安定な化合物を具体化することを意図している。
【0072】
本開示の化合物は、本化合物に存在する原子の全ての同位体を含むことが意図される。同位体は、同じ原子数であるが、異なる質量数を有する原子を含む。一般的な例として、限定されないが、水素の同位体は、重水素(D)及びトリチウム(T)を含む。炭素の同位体は、13C及び14Cを含む。本開示の同位体標識化合物は、一般に、他の方法で用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、当業者に既知の従来の技法により、又は本明細書に記載されるものに類似のプロセスにより調製されてもよい。例えば、メチル(-CH)はまた、-CDなどの重水素化メチル基を含む。
【0073】
化合物及び/又はその薬学的に許容される塩は、治療される状態に好適な任意の手段によって投与され得、これは、部位特異的治療の必要性又は送達される化合物の量に依存し得る。また、化合物及び/又はその薬学的に許容される塩、並びに1つ以上の非毒性の薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤及び/又はアジュバント(本明細書では総称して「担体」材料と称される)、並びに所望される場合、他の活性成分を含む薬学的組成物のクラスが本開示内に含まれる。化合物は、任意の好適な経路により、例えば、そのような経路に適合された薬学的組成物の形態で、及び意図される治療に有効な用量で投与され得る。本開示の化合物及び組成物は、例えば、従来の薬学的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルを含有する投薬単位製剤において、血管内、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、及び胸骨内を含む、経口、粘膜、直腸、又は非経口的に投与され得る。例えば、薬学的担体は、マンニトール又はラクトースと微結晶性セルロースとの混合物を含有し得る。混合物は、潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、及びクロスポビドンなどの崩壊剤などの追加の構成要素を含有し得る。担体混合物は、ゼラチンカプセルに充填され得るか、又は錠剤として圧縮され得る。薬学的組成物は、例えば、経口剤形又は注入として投与され得る。
【0074】
技法及び製剤は、一般に、Remmington’s Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co.,Easton,PAに見出すことができる。全身投与の場合、筋肉内、静脈内、腹腔内、及び皮下を含む注射が好ましい。注射の場合、薬剤は、液体溶液、例えば、ハンクス溶液又はリンゲル溶液などの生理学的に適合する緩衝液中で製剤化することができる。加えて、薬剤は、固体形態で製剤化され、使用直前に再溶解又は懸濁され得る。凍結乾燥形態も含まれる。
【0075】
経口投与の場合、薬学的組成物は、例えば、錠剤、カプセル、液体カプセル、懸濁液、又は液体の形態であり得る。薬学的組成物は、例えば、特定の量の活性成分を含有する投薬単位の形態で作製される。例えば、医薬組成物は、約0.1~1000mg、例えば、約0.25~250mg、及び例えば、約0.5~100mgの範囲の活性成分の量を含む錠剤又はカプセル剤として提供され得る。ヒト又は他の哺乳動物に好適な1日用量は、患者の状態及び他の要因に応じて広く変動し得るが、日常的な方法を使用して決定することができる。
【0076】
本明細書で企図される任意の薬学的組成物は、例えば、任意の許容される好適な経口調製物を介して経口送達することができる。例示的な経口調製物には、限定されないが、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性及び油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、エマルジョン、硬質及び軟質カプセル、液体カプセル、シロップ、並びにエリキシル剤が含まれる。経口投与を意図する薬学的組成物を、経口投与を意図する薬学的組成物を製造するための当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができる。薬学的に口当たりの良い調製物を提供するために、本開示による薬学的組成物は、甘味剤、香味剤、着色剤、粘滑剤、抗酸化剤、及び保存剤から選択される少なくとも1つの薬剤を含有することができる。
【0077】
錠剤は、例えば、少なくとも1つの化合物及び/又はその少なくとも1つの薬学的に許容される塩を、錠剤の製造に好適な少なくとも1つの非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合することによって調製することができる。例示的な賦形剤としては、限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、及びリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤、例えば、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン、及びアルギン酸などの造粒剤及び崩壊剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、及びアカシアなどの結合剤、並びに例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びタルクなどの潤滑剤が挙げられる。追加で、錠剤は、コーティングされていないか、又は既知の技法によってコーティングされて、不快な味の薬物の嫌な味をマスクするか、又は胃腸管内での活性成分の崩壊及び吸収を遅らせ、それにより、活性成分の効果をより長期間持続させるかのいずれかを行うことができる。例示的な水溶性味覚マスキング材料には、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース及びヒドロキシプロピル-セルロースが含まれるが、これらに限定されない。例示的な時間遅延材料には、エチルセルロース及び酢酸酪酸セルロースが含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
硬質ゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの化合物及び/又はその少なくとも1つの塩を、少なくとも1つの不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、及びカオリンと混合することによって調製され得る。
【0079】
軟質ゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの化合物及び/又はその少なくとも1つの薬学的に許容される塩を、例えば、ポリエチレングリコールなどの少なくとも1つの水溶性担体、並びに例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、及びオリーブ油などの少なくとも1つの油媒体と混合することによって調製することができる。
【0080】
水性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの化合物及び/又はその少なくとも1つの薬学的に許容される塩を、水性懸濁液の製造に好適な少なくとも1つの賦形剤と混合することによって調製することができる。水性懸濁液の製造に好適な例示的な賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントガム、及びアカシアガムなどの懸濁剤、例えばレシチンなどの、例えば天然に存在するホスファチドなどの分散剤又は湿潤剤、例えば、ポリオキシエチレンステアレートなどの脂肪酸とのアルキレンオキシドの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレン-オキシセタノールなどの長鎖脂肪酸アルコールとのエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレートなどの脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物、並びに例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどの脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物が挙げられるが、これらに限定されない。水性懸濁液はまた、例えば、エチル及びn-プロピル p-ヒドロキシ安息香酸塩などの少なくとも1つの保存剤、少なくとも1つの着色剤、少なくとも1つの香味剤、並びに/又は例えば、スクロース、サッカリン、及びアスパルテームを含むが、これらに限定されない、少なくとも1つの甘味剤を含有することができる。
【0081】
油性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの化合物及び/又はその少なくとも1つの薬学的に許容される塩を、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、及びココナッツ油などの植物油、又は例えば、液体パラフィンなどの鉱物油中に懸濁させることによって調製することができる。油性懸濁液はまた、少なくとも1つの増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、及びセチルアルコールを含有することができる。口当たりの良い油性懸濁液を提供するために、上に既に記載されている甘味剤のうちの少なくとも1つ、及び/又は少なくとも1つの香味剤を油性懸濁液に添加することができる。油性懸濁液は、限定されないが、例えば、抗酸化剤、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール及びアルファ-トコフェロールなどを含む、少なくとも1つの保存剤を更に含有することができる。
【0082】
分散性粉末及び顆粒は、例えば、少なくとも1つの化合物及び/又はその少なくとも1つの薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの分散剤及び/若しくは湿潤剤、少なくとも1つの懸濁剤、並びに/又は少なくとも1つの保存剤と混合することによって調製することができる。好適な分散剤、湿潤剤、及び懸濁剤は、既に上述した通りである。例示的な保存剤としては、限定されないが、例えば、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸が挙げられる。加えて、分散性粉末及び顆粒はまた、限定されないが、例えば、甘味剤、香味剤、及び着色剤を含む、少なくとも1つの賦形剤を含有することができる。
【0083】
少なくとも1つの化合物及び/又はその少なくとも1つの薬学的に許容される塩のエマルジョンは、例えば、水中油型エマルジョンとして調製することができる。化合物を含むエマルジョンの油性相は、既知の方法で既知の成分から構成され得る。油相は、限定されないが、例えば、植物油、例えば、オリーブ油、ラッカセイ油、鉱油、例えば、液体パラフィン、及びそれらの混合物などによって提供することができる。相は、単なる乳化剤を含み得るが、脂肪若しくは油、又は脂肪及び油の両方との少なくとも1つの乳化剤の混合物を含み得る。好適な乳化剤には、例えば、天然に存在するホスファチド、例えば、大豆レシチン、例えばソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来するエステル又は部分エステル、並びに例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのエチレンオキシドとの部分エステルの縮合生成物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、親水性乳化剤は、安定剤として機能する親油性乳化剤と一緒に含まれる。油及び脂肪の両方を含むことも好ましい。一緒に、安定化剤の有無にかかわらず、乳化剤は、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは、油及び脂肪と一緒に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。エマルジョンはまた、甘味剤、香味剤、保存剤、及び/又は抗酸化剤を含有することができる。本開示の製剤での使用に好適な乳化剤及び乳化安定剤としては、単独で若しくはワックスを含む、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、ジステアリン酸グリセリル、又は当該技術分野で周知の他の材料が挙げられる。
【0084】
本明細書に記載の薬学的組成物は、一般に局所薬物投与に適し、当技術分野で知られている任意のそのような材料を含む局所用担体を含有する局所用製剤にも組み込むことができる。局所用担体は、所望の形態で、例えば、軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルジョン、ゲル、油、溶液などとして組成物を提供するように選択することができ、天然に存在するか又は合成由来のいずれかの材料で構成され得る。選択された担体が、活性剤又は局所用製剤の他の構成要素に悪影響を及ぼさないことが好ましい。本明細書で使用するための好適な局所用担体の例としては、水、アルコール、及び他の非毒性有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、ワックスなどが挙げられる。
【0085】
薬学的組成物は、一般に、小さな無機粒子(二相系)又は担体液体全体に実質的に均一に分布する大きな有機分子(単相ゲル)から構成される懸濁液のいずれかからなる半固体系であるゲル製剤に組み込まれ得る。単相ゲルは、例えば、活性剤、担体液体、及びトラガカント(2~5%)、アルギン酸ナトリウム(2~10%)、ゼラチン(2~15%)、メチルセルロース(3~5%)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(2~5%)、カルボマー(0.3~5%)、又はポリビニルアルコール(10~20%)などの好適なゲル化剤を一緒に組み合わせ、特徴的な半固体生成物が生成されるまで混合することによって作製することができる。他の好適なゲル化剤としては、メチルヒドロキシセルロース、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン、ヒドロキシエチルセルロース、及びゼラチンが挙げられる。ゲルは、一般的に、水性の担体液体を用いるが、アルコール及び油は、担体液体としても使用され得る。
【0086】
化合物及び/又はその少なくとも1つの薬学的に許容される塩はまた、例えば、任意の薬学的に許容される好適で注射可能な形態を介して、静脈内、皮下、及び/又は筋肉内に送達され得る。例示的な注射可能な形態としては、例えば、水、リンゲル液、及び等張性塩化ナトリウム溶液などの許容可能なビヒクル及び溶媒を含む滅菌水溶液、滅菌水中油型マイクロエマルジョン、並びに水性又は油性懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
非経口投与のための製剤は、水性又は非水性の等張性滅菌注射液又は懸濁液の形態であってもよい。これらの溶液及び懸濁液は、経口投与のための製剤で使用するために言及される担体又は希釈剤のうちの1つ以上を使用するか、又は他の好適な分散剤若しくは湿潤剤及び懸濁剤を使用することによって、滅菌粉末又は顆粒から調製され得る。化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガントガム、及び/又は様々な緩衝液に溶解され得る。他のアジュバント及び投与様式は、薬学的分野において周知であり、広く知られている。活性成分はまた、生理食塩水、デキストロース、若しくは水を含む好適な担体、又はシクロデキストリン(すなわち、カプチゾール)、共溶媒可溶化剤(すなわち、プロピレングリコール)、又はミセル可溶化剤(すなわち、Tween 80)を有する組成物として注射によって投与されてもよい。
【0088】
滅菌注射可能調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射可能溶液又は懸濁液であり得る。用いられ得る許容可能なビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、減菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来から用いられている。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の刺激の少ない固定油を用いることができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製において利用され得る。
【0089】
滅菌注射可能水中油型マイクロエマルジョンは、例えば、(1)少なくとも1つの化合物を、例えば、大豆油とレシチンとの混合物などの油性相に溶解させること、(2)含有油相を水とグリセロールとの混合物と組み合わせること、及び(3)組み合わせ物を処理してマイクロエマルジョンを形成することによって調製することができる。
【0090】
滅菌水性又は油性懸濁液は、当該技術分野において既に知られている方法に従って調製することができる。例えば、滅菌水溶液又は懸濁液は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒、例えば、1,3-ブタンジオールなどとともに調製することができ、滅菌油性懸濁液は、滅菌の非毒性の許容される溶媒又は懸濁媒体、例えば、滅菌固定油、例えば、合成モノグリセリド又はジグリセリド、並びに脂肪酸、例えば、オレイン酸などとともに調製することができる。
【0091】
本開示の薬学的組成物で使用され得る薬学的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルには、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、アルファ-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸塩などの自己乳化薬物送達系(SEDDS)、Tweensなどの薬学的投与形態で使用される界面活性剤、cremophor界面活性剤(BASF)などのポリエトキシル化ヒマシ油、又は他の同様の高分子送達マトリックス、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が含まれる。アルファ、ベータ、及びガンマ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、又は2-及び3-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学修飾誘導体、又は他の可溶化誘導体も、本明細書に記載の式の化合物の送達を増強するために有利に使用され得る。
【0092】
本開示の薬学的に活性な化合物は、従来の薬学の方法に従って処理して、ヒト及び他の哺乳動物を含む患者への投与のための薬剤を生成することができる。薬学的組成物は、滅菌などの従来の薬学的操作に供され得、かつ/又は添加剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などの従来のアジュバントを含有し得る。錠剤及び丸薬は、加えて、腸溶性コーティングを用いて調製することができる。そのような組成物はまた、湿潤剤、甘味剤、香味剤、及び芳香剤などのアジュバントを含み得る。
【0093】
当業者に既知の様々な添加剤は、製剤、例えば、局所用製剤に含まれ得る。添加剤の例としては、可溶化剤、皮膚透過促進剤、乳白剤、保存剤(例えば、抗酸化剤)、ゲル化剤、緩衝剤、界面活性剤(特に非イオン性及び両性界面活性剤)、乳化剤、軟化剤、増粘剤、安定剤、保湿剤、着色剤、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤、軟化剤、及び保存剤とともに、可溶化剤及び/又は皮膚透過促進剤を含むことが特に好ましい。最適な局所用製剤は、およそ2重量%~60重量%、例えば、2重量%~50重量%の可溶化剤及び/又は皮膚透過促進剤、2重量%~50重量%、例えば、2重量%~20重量%の乳化剤、2重量%~20重量%の軟化剤、及び0.01~0.2重量%の保存剤を含み、活性剤及び担体(例えば、水)が製剤の残りを構成する。皮膚透過促進剤は、治療レベルの活性剤の通過を容易にして、壊れていない皮膚の合理的なサイズの領域を通過させるのに役立つ。好適な促進剤は、当該技術分野で周知であり、例えば、メタノールエタノール、及び2-プロパノールなどの低級アルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシド(C.sub.lO MSO)、及びテトラデシルメチルスルホキシドなどのアルキルメチルスルホキシド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びN-(-ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのピロリドン、尿素、N,N-ジエチル-m-トルアミド、C.-Cアルカンジオール、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、及びテトラヒドロフルフリルアルコールなどの種々の溶媒、並びに1-置換アザシクロヘプタン-2-オン、特に1-n-ドデシルシクラザシクロヘプタン-2-オン(ラウロカプラム;Whitby Research Incorporated,Richmond,Vaから商標AzoneRTMで入手可能)を含む。
【0094】
可溶化剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール、Transcutol(商標)として市販されている)及びジエチレングリコールモノエチルエーテルオレエート(Softcutol(商標)として市販されている)などの親水性エーテル、ポリエチレンヒマシ油誘導体、例えば、ポリオキシ35ヒマシ油、ポリオキシ40水素化ヒマシ油など、ポリエチレングリコール、特に低分子量ポリエチレングリコール、例えば、PEG300及びPEG400、並びにポリエチレングリコール誘導体、例えば、PEG-8カプリル/カプリル酸グリセリド(Labrasol(商標)として市販されている)、アルキルメチルスルホキシド、例えば、DMSO、ピロリドン、例えば、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン、並びにDMA。多くの可溶化剤は、吸収促進剤としても機能し得る。単一の可溶化剤が製剤に組み込まれ得るか、又は可溶化剤の混合物がその中に組み込まれ得る。
【0095】
好適な乳化剤及び共乳化剤としては、マイクロエマルジョン製剤に関して記載される乳化剤及び共乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。軟化剤には、例えば、プロピレングリコール、グリセロール、ミリスチン酸イソプロピル、ポリプロピレングリコール-2(PPG-2)ミリスチルエーテルプロピオネートなどが含まれる。
【0096】
限定されないが、アントラニレート、ベンゾフェノン(特にベンゾフェノン-3)、樟脳誘導体、シナメート(例えば、オクチルメトキシシンナメート)、ジベンゾイルメタン(例えば、ブチルメトキシジベンゾイルメタン)、p-アミノ安息香酸(PABA)及びその誘導体、並びにサリチル酸(例えば、サリチル酸オクチルを含む、他の活性剤、例えば、抗炎症剤、鎮痛剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗生物質、ビタミン、抗酸化剤、及び一般的に日焼け止め製剤に見出される日焼け止め剤も製剤に含まれ得る。ある特定の局所用製剤では、活性剤は、製剤のおよそ0.25重量%~75重量%の範囲、例えば、製剤のおよそ0.25重量%~30重量%の範囲、例えば、製剤のおよそ0.5重量%~15重量%の範囲、及び例えば、製剤のおよそ1.0重量%~10重量%の範囲の量で存在する。局所用皮膚治療組成物は、その粘度及び消費者による意図された用途に適するように、好適な容器にパッケージングすることができる。例えば、ローション又はクリームは、ボトル若しくはロールボールアプリケータ、又は推進剤駆動のエアロゾルデバイス、又は指の操作に好適なポンプが取り付けられた容器にパッケージングされ得る。組成物がクリームである場合、チューブ又は蓋付き瓶などの変形不可能なボトル又は絞り容器に単純に保管することができる。組成物はまた、米国特許第5,063,507号に記載されているようなカプセルに含まれてもよい。したがって、また、化粧品として許容される組成物を含有する密閉容器が提供される。
【0097】
投与される化合物の量、及び本開示の化合物及び/又は組成物で疾患状態を治療するための投薬レジメンは、年齢、体重、性別、対象の医学的状態、疾患の種類、疾患の重症度、投与の経路及び頻度、並びに用いられる特定の化合物を含む、様々な要因に依存する。したがって、投薬レジメンは広く変化し得るが、標準的な方法を使用して日常的に決定することができる。約0.001~100mg/体重1kg、例えば、約0.0025~約50mg/体重1kg、及び例えば、約0.005~10mg/体重1kgの1日用量が適切であり得る。1日用量は、1日当たり1~4回の用量で投与することができる。他の投与スケジュールには、週に1回の投与及び2日間サイクルごとに1回の投与が含まれる。
【0098】
治療目的のために、本開示の活性化合物は、通常、示される投与経路に適切な1つ以上のアジュバントと組み合わされる。経口投与される場合、化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及び/又はポリビニルアルコールと混合され、次いで、便利な投与のために錠剤化又は封入されてもよい。そのようなカプセル又は錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中への活性化合物の分散液中に提供され得る制御放出製剤を含有してもよい。
【0099】
本開示の薬学的組成物は、少なくとも1つの化合物及び/又はその少なくとも1つの薬学的に許容される塩、並びに任意選択で、任意の薬学的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルから選択される追加の薬剤を含む。本開示の別の組成物は、本明細書に記載の化合物、又はそのプロドラッグ、及び薬学的に許容される担体、アジュバント、又はビヒクルを含む。
【0100】
本明細書に記載の化合物、組成物、又は薬学的組成物は、キットで提供され得る。一実施形態では、キットはまた、(a)組成物を含有する容器、及び任意選択で(b)情報材料を含む。情報材料は、本明細書に記載の方法及び/又は治療利益のための薬剤の使用に関連する記述的、教授的、マーケティング的、又は他の材料であり得る。例えば、キットは、製造のための説明書、使用される治療レジメンのための説明書、及び投与期間のための説明書を含み得る。一実施形態では、キットは、更なる治療剤も含む。キットは、各々が異なる試薬を有する1つ以上の容器を含み得る。例えば、キットは、組成物を含有する第1の容器、及び追加の治療剤のための第2の容器を含む。
【0101】
容器は、薬学的組成物の単位投薬量を含むことができる。組成物に加えて、キットは、溶媒若しくは緩衝液、アジュバント、安定剤、又は保存剤などの他の成分を含むことができる。キットは、任意選択で、組成物の投与に好適なデバイス、例えば、シリンジ又は他の好適な送達デバイスを含む。デバイスは、1つ又は両方の薬剤が予め装填されて提供され得るか、又は空であるが、装填に好適であり得る。
【0102】
組み合わせ療法
本明細書に記載の活性成分(例えば、ベラパミル、ラノラジンメキシレチン、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、カルバマゼピン、及びラモトリジン)も、他の活性成分と組み合わせて使用することができる。このような組み合わせは、治療される状態、成分の交差反応性、及び組み合わせの薬学的特性に基づいて選択することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、方法は、対象に、追加の治療剤又は療法を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、ラノラジンメキシレチン、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリジン、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤又は療法は、薬剤の前、薬剤の後、又は薬剤と同時に対象に投与される。
【0104】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」療法は、文脈から別途明確でない限り、2つ以上の治療剤を協調的に投与することを包含することを意味し、同時投与を含むが、これに限定されない。具体的には、組み合わせ療法は、共投与(例えば、共製剤の投与又は別個の治療組成物の同時投与)及び連続又は順次投与の両方を包含するが、ただし、1つの治療剤の投与が別の治療剤の投与に何らかの方法で条件付けられていることを条件とする。例えば、1つの治療剤は、異なる治療剤が投与され、所定の期間作用させた後にのみ投与され得る。例えば、Kohrt et al.(2011)Blood 117:2423を参照されたい。
【0105】
本明細書で使用される場合、「共投与」又は「共投与される」という用語は、対象への少なくとも2つの薬剤又は療法の投与を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤/療法の共投与は、同時である。他の実施形態では、第1の薬剤/療法は、第2の薬剤/療法の前に投与される。当業者は、使用される様々な薬剤/療法の製剤及び/又は投与経路が変化し得ることを理解する。
【0106】
患者への同時又は順次投与のための単一剤形で、本発明の化合物を1つ以上の他の活性成分と組み合わせることも可能である。組み合わせ療法は、同時又は順次レジメンとして投与され得る。順次投与される場合、組み合わせは、2回以上の投与で投与され得る。
【0107】
組み合わせ療法は、相乗効果を提供し得、相乗的であり得、すなわち、一緒に使用される活性成分が、化合物を別個に使用することから生じる効果の合計を上回るときに達成される効果である。相乗効果は、活性成分が、(1)組み合わせ製剤において共製剤化され、同時に投与されるか若しくは同時に送達される、(2)交互に、若しくは別個の製剤として並行して送達される、又は(3)いくつかの他のレジメンによる場合に達成され得る。交互療法で送達される場合、相乗効果は、化合物が、例えば、別個の錠剤、丸剤、若しくはカプセルで、又は別個のシリンジでの異なる注射によって、順次投与又は送達されるときに達成され得る。一般に、交互療法中、各活性成分の有効投薬量は、順次、すなわち、連続的に投与されるが、組み合わせ療法では、2つ以上の活性成分の有効投薬量は、一緒に投与される。相乗効果は、組み合わせの個々の化合物の予測される純粋な相加効果を超える効果を示す。
【0108】
組み合わせ療法は、本明細書に記載の化合物と組み合わせることができる追加の活性剤、及び本明細書に記載の化合物又は化合物の組み合わせで治療することができる追加の種類の病気及び他の状態を含む、米国特許第11103514号、第10702495号、第9382215号、及び第6833373号によって更に記載される。
【0109】
したがって、活性剤(例えば、ベラパミル、ラノラジンメキシレチン、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、カルバマゼピン、及びラモトリジン)が別の薬剤又は治療方法と組み合わせて使用され得ることは、本発明の一態様である。活性剤は、数分から数週間の範囲の間隔で他の薬剤の治療に先行するか又は治療後に続くことができる。他の薬剤及び発現構築物が細胞に別個に適用される実施形態では、一般に、薬剤及び発現構築物が依然として細胞に対して有利に組み合わされた効果を発揮することができるように、各送達の時間の間にかなりの期間が経過しないことを確実にする。例えば、そのような例では、開示された活性と実質的に同時に(すなわち、約1分未満以内に)2つ、3つ、4つ以上のモダリティを細胞、組織、又は生物に接触させてもよいことが企図される。
【0110】
いくつかの実施形態では、1つ以上の薬剤は、開示された活性剤の投与の前及び/又は後の約1分以内、約5分以内、約10分以内、約20分以内、約30分以内、約45分以内、約60分以内、約2時間以内、約3時間以内、約4時間以内、約6時間以内、約8時間以内、約9時間以内、約12時間以内、約15時間以内、約18時間以内、約21時間以内、約24時間以内、約28時間以内、約31時間以内、約35時間以内、約38時間以内、約42時間以内、約45時間以内、約48時間以上以内に投与され得る。ある特定の他の実施形態では、薬剤は、開示された活性剤を投与する前及び/又は後の約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約8日、約9日、約12日、約15日、約16日、約18日、約20日~約21日以内に投与され得る。いくつかの状況では、治療期間を大幅に延長することが望ましい場合があるが、それぞれの投与の間に数週間(例えば、約1、約2、約3、約4、約6、又は約8週間以上)が経過する。
【0111】
本発明の組成物の患者への投与は、毒性があればそれを考慮して、治療薬の投与のための一般的なプロトコルに従う。治療サイクルは必要に応じて繰り返されることが予想される。また、記載される活性剤と組み合わせて、様々な標準的な療法又は補助的な療法、並びに外科的介入が適用され得ることが企図される。これらの療法には、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法、及び手術が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
定義
本開示による組成物及び方法の詳細な説明の理解を助けるために、本開示の様々な態様の明確な開示を容易化するよう、いくつかの明示的な定義が提供される。別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0113】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「それを必要とする対象」は、ヒト及び非ヒト動物を指す。非ヒト動物の例としては、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト哺乳動物などの哺乳動物、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、イヌ、齧歯類(例えば、マウス又はラット)、モルモット、ネコ、及びウサギ、並びに鳥、両生類、爬虫類などの非哺乳動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対象は、実験用の動物又は疾患モデルとして好適な動物である。
【0114】
本明細書で使用される場合、「疾患」という用語は、いずれも、正常な機能を損ない、典型的には明瞭な徴候及び症状によって明らかとなり、ヒト又は動物の生命の継続時間又は質を低下させる、ヒト若しくは動物の身体又はその一部の異常な状態を反映するという点で、(医学的状態における)「障害」及び「状態」という用語と一般的に同義であることが意図され、相互に交換可能に使用される。
【0115】
限定されないが、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼内、肺内、及び局所投与を含む、化合物を投与する複数の技法が当該技術分野において存在する。組成物の「非経口」投与としては、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、若しくは胸骨内注射、又は注入技法が挙げられる。
【0116】
「薬剤」という用語は、本明細書において、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的巨大分子(核酸、抗体、タンパク質又はその一部、例えば、ペプチドなど)、又は細菌、植物、真菌、若しくは動物(特に哺乳類)細胞若しくは組織などの生物学的材料から作製される抽出物を示すために使用される。そのような薬剤の活性は、対象において局所的又は全身的に作用する生物学的、生理学的、又は薬理学的に活性な物質である「治療剤」として好適であり得る。
【0117】
「治療剤(therapeutic agent)」、「治療可能剤(therapeutic capable agent)」、又は「治療剤(treatment agent)」という用語は、相互に交換可能に使用され、対象に投与するといくつかの有益な効果を付与する分子又は化合物を指す。有益な効果には、診断的決定を可能にすること、疾患、症状、障害、又は病理学的状態を改善すること、疾患、症状、障害、又は状態の発症を低減又は予防すること、並びに一般に疾患、症状、障害、又は病理学的状態に対抗することが含まれる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、組成物の生物学的活性又は特性を無効化することなく、かつ比較的非毒性である担体又は希釈剤などの物質を指し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことがないか、又はそれが含まれる組成物の構成要素のいずれとも有害な形で相互作用することもなく、個体に投与することができる。
【0119】
「薬学的に許容される担体」という用語は、対象内又は対象への本発明の化合物の運搬又は輸送に関与する、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される材料、組成物、又は担体、例えば、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又は封入材料を含み、その結果、その意図される機能を果たし得る。典型的には、そのような化合物は、ある臓器又は身体の部分から別の臓器又は身体の部分に運搬されるか又は輸送される。各塩又は担体は、製剤の他の成分と適合性があり、対象に有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖類、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、セルロース、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのその誘導体、粉末化トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油などの油類、プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチル及びラルリル酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張生理食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、リン酸緩衝液、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤、抗酸化剤、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤、硬化剤、凝結剤、懸濁剤、界面活性剤、保湿剤、担体、安定剤、及び医薬製剤に用いられる非毒性で適合性のある物質、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」はまた、化合物の活性と適合性があり、かつ対象にとって生理学的に許容される、任意の及び全てのコーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、並びに吸収遅延剤などを含む。補助的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。
【0120】
「試料」、「試験試料」、及び「患者試料」は、本明細書では交互に交換可能に使用され得る。試料は、血清、尿血漿、羊水、脳脊髄液、細胞(例えば、抗体産生細胞)、又は組織の試料であり得る。そのような試料は、患者から得られたままの状態で直接使用され得るか、又は濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、干渉構成要素の不活性化、試薬の添加などによって前処理されて、本明細書で論じられるように、又はさもなければ当該技術分野で知られているように、何らかの方法で試料の特性を修正することができる。本明細書で使用される場合、「試料」及び「生物学的試料」という用語は、一般に、目的の分析物について試験される、及び/又はそれを含有する疑いのある生物学的材料を指す。試料は、対象からの任意の組織試料であり得る。試料は、対象からのタンパク質を含み得る。
【0121】
本明細書で使用される場合、「阻害する」及び「拮抗する」という用語は、分子、反応、相互作用、遺伝子、mRNA、及び/又はタンパク質の発現、安定性、機能又は活性を測定可能な量低減すること、又は完全に予防することを意味する。阻害剤は、例えば、タンパク質、遺伝子、及びmRNAに結合するか、刺激を部分的に若しくは完全に遮断するか、それらの安定性、発現、機能、及び活性を減少させるか、予防するか、活性化を遅延させるか、不活化するか、脱感作するか、又は下方調節する化合物、例えば、拮抗剤である。
【0122】
「減少する」、「低減された」、「低減」、「減少する」、又は「阻害する」という用語は全て、一般に、統計的に有意な量による減少を意味するために本明細書で使用される。しかしながら、疑いを避けるために、「低減された」、「低減」、「減少する」、又は「阻害する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは最大100%を含む減少(例えば、参照試料と比較して不在レベル)、又は10~100%の間の任意の減少を意味する。
【0123】
本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、生物学的状態の任意の変化、すなわち増加、減少などを指すことを意味する。
【0124】
「増加された」、「増加する」、「強化する」、又は「活性化する」という用語は全て、一般に、統計的に有意な量の増加を意味するために本明細書で使用される。いかなる疑いも避けるために、「増加された、「増加する」、「強化する」、又は「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは最大100%を含む増加、又は10~100%の間の任意の増加、あるいは参照レベルと比較して少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍、若しくは約10倍の増加、又は2倍~10倍以上の間の任意の増加を意味する。
【0125】
用量は、しばしば体重に関連して表される。したがって、[g、mg、又は他の単位]/kg(又はg、mgなど)として表される用量は、通常、「体重」という用語が明確に言及されていなくても、「体重1kg(又はg、mgなど)当たり」の[g、mg、又は他の単位]を指す。
【0126】
本明細書で使用される「インビトロ」という用語は、多細胞生物内ではなく、例えば試験管又は反応容器の中、細胞培養などのような、人工的な環境において起きる事象を指す。
【0127】
本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、非ヒト動物などの多細胞生物内で起きる事象を指す。
【0128】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。
【0129】
「含む(including)」、「備える(comprising)」、「含む(containing)」、又は「有する(having)」という用語及びそれらの語形変化は、別段の言及がない限り、その後に列挙されたアイテム及びその等価物並びに追加的な主題を包含することが意図されている。
【0130】
「いくつかの実施形態では」、「様々な実施形態では」、及び「いくつかの実施形態では」などの語句は、繰り返し使用される。かかる語句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないが、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、同じ実施形態を指してもよい。
【0131】
「及び/又は」又は「/」という用語は、この用語が関連するアイテムのいずれか1つ、アイテムのいずれかの組み合わせ、又はアイテムの全てを意味する。
【0132】
「実質的に」という語は、「完全に」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に」含まない組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、「実質的に」という語は、本発明の定義から省略されてもよい。
【0133】
本明細書で使用される場合、「およそ」又は「約」という用語は、1つ以上の目的の値に適用される場合、言及された基準値と同様の値を指す。いくつかの実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、別段の言及がない限り、又は文脈からそうでないことが明らかでない限り(かかる数がとり得る値の100%を超える場合を除く)、いずれかの方向(よりも大きい又はよりも小さい)において、言及された基準値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満に収まる値の範囲を指す。本明細書において別段の示唆がない限り、「約」という用語は、個々の成分、組成物、又は実施形態の機能性の観点から同等である、言及された範囲に近接した値、例えば重量パーセントを含むことが意図されている。
【0134】
本明細書において値及び範囲が提供される場合には、これらの値及び範囲に包含される全ての値及び範囲が、本発明の範囲内に包含されることを意図されていることが、理解されるべきである。更に、これらの範囲内に収まる全ての値、及び値の範囲の上限値又は下限値も、本出願によって企図されるものである。
【0135】
本明細書で使用される「各」という用語は、アイテムの集合に関連して使用される場合、集合の中の個々のアイテムを特定することを意図されているが、必ずしも集合の中の全てのアイテムを指すものではない。明示的な開示又は文脈が明確にそうでないことを示す場合には、例外が生じ得る。
【0136】
本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより良く示すことを意図しているに過ぎず、他の方法で特許請求されない限り本発明の範囲に限定をもたらさない。本明細書中のいかなる文言も、請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。本明細書において使用される場合、「例示的な」という用語は、「一例として」を意味することを意図されており、特定の例示的なアイテムが好ましい又は必要とされることを示すことを意図されていない。
【0137】
本明細書で記載される全ての方法は、本明細書で別段の示唆がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行される。提供される方法のいずれかに関して、方法のステップは、同時に起きてもよいし、又は順次起きてもよい。方法のステップが順次起きる場合、別段の言及がない限り、ステップはいずれの順序で起きてもよい。
【0138】
方法がステップの組み合わせを含む場合においては、本明細書で別段の言及がない限り、ステップの各々の及び全ての組み合わせ又はサブ組み合わせは、本開示の範囲内に包含される。
【0139】
本明細書で引用される各出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、本開示と矛盾しない程度に、参照によりその全体が組み込まれたものとする。本明細書で開示される出版物は、本発明の出願日前の開示についてのみ提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明によるかかる出版物に先行する権利を有しないことを認めるものとして、解釈されるべきではない。更に、提供された刊行物の公開日は、実際の公開日と異なり得るものであり、独立に確認する必要される必要があり得る。
【0140】
本明細書で記載された実施例及び実施形態は、単に例示の目的のためのものであり、当業者には、それを考慮した様々な修正又は変更が示唆され、本願の趣旨及び範囲、並びに添付される特許請求の範囲に含まれるべきものであることが理解される。
【実施例
【0141】
実施例1
この実施例は、以下の後続の実施例において使用される材料及び方法を記載する。
【0142】
Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウス株の生成
CRISPR/Cas9を使用して、Ca1.1Δe29/Δe29マウスを生成した。イントロン/エクソン境界のいずれかの側のイントロン配列に50ヌクレオチドを標的化することによって、エクソン29の配列を除去した。これは、エクソン及びスプライスドナー/アクセプター配列の両方が除去されたことを確実にした。この領域のsgRNAを対合させ、Cas9に完成させた。複合体をC57bl6/J接合体に注射した。胚盤胞期に達したら、代理マウスに胚を移植した。その後、この株を6世代超のC57bl6(Jackson)に逆交配して、オフターゲット変異がないことを確実にした。エクソン29の除去は、前脛骨筋のRNA単離、及びエクソン27(5’CCAGTCGGAACAGATGAACCAC(配列番号1))と31(5’CCGATGACCGCGTAGATGAAGA(配列番号2))との間のRT-PCR生成物のサンガー配列決定によって検証した。Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスを生成するために、我々のCa1.1Δe29/Δe29マウスを用いて、劣性全身性筋緊張を引き起こすClcn1筋肉特異的塩化物チャネルにフレームシフト変異を有するadr-mto2Jマウス(Jackson Labs)。追加で、adr-mto2Jマウスを実験全体を通して使用した(ClC-1-/-)。WT C57bl6対照をJackson Labsから得た。全てのマウスを、University of Rochester Committee on Animal Resourcesの承認により、収容し、飼育し、世話し、実験した。
【0143】
ベラパミルを用いてマウスに投薬する
Nutra-Gel Complete Nutrition(Bio-Serv)フードカップに薬物を入れて、最終用量200mg/kg/日のベラパミル(V4629、(±)-ベラパミル塩酸塩、Sigma-Aldrich)にして、WT処置対照マウス及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスを処置した。マウスは、離乳直後にフードカップを与えられ、食餌は毎日交換された。他の食餌源は与えられなかったが、ケージとともに水が与えられ、毎週交換された。
【0144】
体重測定
マウスの体重を、離乳後から最終実験の最後まで1日おきに測定した。統計分析のために、各週の測定値の平均について、二元配置ANOVAを実施した。10週での体重変化率は、離乳後に行われた最初の体重測定、及び10週で達成された体重で決定され。このデータについて、複数の比較を伴う一元配置ANOVAを実施した。
【0145】
収縮期血圧及び心拍数の測定:
収縮期血圧及び心拍数を、非侵襲性テールカフBP-2000血圧分析システム(Visitech Systems)を用いて測定した。各日の開始前に、マウスを試験室に1時間順応させた。ビヒクル、100mg/kg/日、又は200mg/kg/日で処置した10週のWTマウスを、システムに順応するように5日間訓練した。この後に、最終訓練日の直後に開始される試験が5日続いた。訓練及び試験を通して、各マウスについて10回の予備測定及び20回の実際の測定を行った。
【0146】
正向反射時間
Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおけるベラパミルの筋緊張及び筋強度への影響を測定するために、ベラパミル処置の開始後、毎週正向反射時間を追跡した。マウスを水平な表面上で仰臥位に保持した後、放した。2人が解放直後に計時を開始し、4本の足が全て表面についたら計時をやめた。これを、筋緊張ウォームアップを回避するために、各記録の間に最低5分挟んで、合計10回の正向応答に対して繰り返した。1秒未満の記録は「1」として記録され、正向に60秒超かかった場合、正向は失敗と見なされた。失敗に達した場合、その週のそのマウスについてそれ以上の記録は測定しなかった。各マウスの2回の最長及び2回の最短記録を除去し、中央6回の記録の平均を分析に使用した。週ごとの結果の二元配置ANOVA、及び時間点データ(10週及び20週)の複数の比較を伴う一元配置ANOAVを実施した。
【0147】
全身プレチスモグラフィー
全身プレチスモグラフィー(Buxco(登録商標)Small Animal Whole Body Plethysmography、Data Science Internation)を使用して、10週(全群)及び20週(未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-を除く)で呼吸機能を測定した。マウスを2日間システムに順応させ、3日目にデータを収集した。3日間全て、単一のマウスを意識的かつ無拘束にWBPチャンバ内に置き、15分間の順応期間、続いて10分間のデータ取得に供する(Yonekawa T,et al.Science advances.2022;8(21))。頻度(呼吸数/分)及び換気量(mL)に関する10分間の取得期間からの平均データを、複数の比較を伴う一元配置ANOVAによって統計について分析した。
【0148】
分離した成体FDB繊維からのカルシウム電流の全細胞パッチクランプ記録
出生後およそ4週間の成体マウスを、University Committee on Animal Resources at the University of Rochesterによって承認されたように、頸部脱臼及び斬首によって屠殺した。電気生理学実験のための単離された短趾屈筋(FDB)の筋線維を、前述の方法によって得た(Lueck et al.J Gen Physiol.2007 Jan;129(1):79-94)。FDB筋を直ちに顕微解剖し、標準的な電気生理学リンゲル溶液(146mMのNaCl、5のKCl、2mMのCaCl、1mMのMgCl、及び10mMのHEPES、pH7.4)中に浸漬した。次いで、切除した筋肉を、2mg/mlのコラゲナーゼA(Roche, Mannheim,Germany)を補充したリンゲル溶液中で、37℃の振動水浴中で1時間消化させた。
【0149】
酵素消化後に、筋肉を、孔径が減少している火炎研磨されたパスツールピペットを用いて粉砕することによって機械的に解離して、単離された単一のFDB繊維を得た。次いで、繊維を実験のために35mmのプラスチック細胞培養皿にプレーティングした。繊維を、実験に利用するまで、リンゲル溶液中で室温で保管した。全てのパッチクランプ実験は、マウスの屠殺から8時間以内に完了した。全細胞パッチクランプを用いてCav1.1カルシウム電流を記録するために、カルシウム電流を単離するように溶液を設計した(TTX(Cayman Chemical Company, Ann Arbor, MI)は、ナトリウム電流を遮断するために使用され、TEA、4-AP、及びセシウムはカリウム電流を遮断するために使用され、9-ACは塩化物電流を遮断するために使用された)。外部記録溶液は、145mMのTEA-メタンスルホン酸、10mMのCaCl、10mMのHEPES、2mMのMgSO、1mMの4-アミノピリジン、0.1mMのアントラセン-9-カルボン酸、及びTEA-OHを含む0.001mMのテトロドトキシン(pH7.4)を含有する。低抵抗ピペットを、Sutter P-97プラー(Sutter Instruments,Novato,CA)を用いて薄壁のホウケイ酸ガラスから形成し、抵抗<1MΩに火炎研磨した。ピペットに以下の内部溶液を充填した:140mMのCs-アスパラギン酸塩、10mMのCs2-EGTA、5mMのMgCl、及び10mMのCsOHを含むHEPES(pH7.4)。
【0150】
明確な条線を有する健康な筋線維を密封して、負圧でギガシールを達成し、次いで、データ収集を通して維持された追加の負圧を適用することによって全細胞構成を達成した。電流記録を収集する前に、繊維を-80mVの静止電位で維持し、内部溶液が繊維内で平衡化することを可能にするために15分間超透析した。電流は、Beqollari et al.(2015)に記載されるように、10mV間隔で-50~-80~80mVの500msの電圧ステップの標準的な電圧ステッププロトコルで記録された。Axopatch 200b増幅器(Axon Instruments,San Jose,CA)を使用してデータを収集し、Digidata 1550b(Axon Instruments)でデジタル化した。漏洩電流及び容量電流の線形構成要素を修正するために、A-P/4オンライン減算プロトコルを利用した。電圧誤差を制限するために、全細胞パラメータを調整し、直列抵抗を補正した(90%)。記録を10kHzでサンプリングし、2kHzでフィルタリングした。筋線維の細胞キャパシタンス及び他の受動特性は、Clampex 10(Molecular Devices)を介して得られるか、又は静止時からの10-mV電圧ステップの積分に基づいて計算されるかのいずれかであった。電流は、電流密度(pA/pF)を得るために、線維キャパシタンスに対して正規化された。全ての実験を室温で完了した。電圧ステップ群について得られたピーク電流密度をプロットし、以下の方程式に適合させて、I-V曲線を得た。
I=Gmax*(V-Vrev)/{1+exp[-(V-V1/2)/kG]}
【0151】
この式では、Iは細胞キャパシタンスに正規化された特定の試験電位のピーク電流に対応し、Gmaxは最大カルシウムコンダクタンスであり、V1/2は半最大活性化電位であり、Vrevは反転電位であり、kGは勾配係数である。
【0152】
組織学及び繊維分類
ヘマトキシリン及びエオシン(H及びE)染色、並びに免疫組織化学による繊維分類のために、前脛骨筋及び横隔膜を10週及び20週のマウス(n=5/群)から単離し、急速凍結した。各筋肉からの横断10ミクロンの凍結切片を、ガラススライド上に収集した。H及びEについては、スライドをヘマトキシリンに3.5分間浸漬し、続いてddHO、1% HCl、ddHO、アンモニア水、ddHOに1回浸漬し、エオシンに5分間浸漬する。95%エタノール中で30秒間のインキュベーションを2回、100%エタノール中で30秒間のインキュベーションを2回、及び30秒間のインキュベーションを1回、続いてHemo-De(キシレン代替物)中で5分間のインキュベーションを行うによって、スライドを脱水した。次いで、スライドにPermount(Fisher)を載せ、Olympus BX53で画像化した。繊維型を決定するための免疫組織化学は、以前に報告されたように実施された(Bachman JF,et al.Development.2018;145(20) Epub 20181025)。簡潔に述べると、スライドをPBST(0.2% Triton X-100を含むPBS)で1回10分間透過させ、次いで室温で10%正常ヤギ血清(後で添加)中で30分間遮断した。次に、スライドを、室温でPBS中2%NGSを含む3% AffiniPure Fab Fragment抗マウスIgG(H&L)(Jackson Immunoresearch)(0.1mg/ml)中で60分間遮断し、次いでPBS中で各々10分間3回洗浄した。スライドを一次抗体中で14~18時間、4℃でインキュベートした(表Bに記載)。次に、スライドをPBSで室温で10分間3回洗浄した後、二次抗体(表Bを参照)を添加し、60分間インキュベートした。室温で1倍のPBS中で10分間3回洗浄した別のセットの後、スライドにFluromount-G(Invitrogen)を載せた。Keyance BZ-X810 All-in-One Florescence Microscope(Leica)を使用してスライドを画像化した。
【0153】
インビトロ筋収縮
筋強度及び頻度依存性は、300C-LR力トランスデューサ及び701C刺激装置(Aurora Scientific)を有する809B筋肉試験システムを備えたAurora Scientific 1200Aインビトロシステムで実施したインビトロ筋収縮によって測定した。この実験では、10及び20週のWT、WT+ベラパミル、Ca1.1Δe29、ClC-1-/-、未処置Ca1.1Δe29/ClC-1-/-(10週でのみ)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/- +ベラパミルのマウスを使用した。マウスを2%吸入イソフルランで麻酔した。EDL筋肉については、EDLの近位及び遠位の腱を、前脛骨筋を除去した後に露出させ、縫合糸を使用して縛った。近位腱を固定支柱に固定し、遠位腱を力トランスデューサに留めた。横隔膜については、Hakim,C.et al.(2019)にあるように、右肋骨片側横隔膜から4mmの片を切り取った。縫合糸を使用して横隔膜片を肋骨から固定支柱に接続し、中央の腱を力トランスデューサに固定した(Hakim CH,et al.,Sci Rep.2019;9(1):19453)。両方の筋肉群について、筋肉を、温め(30℃)酸素化した(95%O及び5%CO)リンゲル緩衝液(1.2mMのNaHPO4、1mMのMgSO、4.83mMのKCl、137mMのNaCl、2mMのCaCl、10mMのグルコース、24mMのNaHCO、pH7.4)(Hakim CH,et al.Methods Mol Biol.2011;709:75-89)中で白金電極間に浸漬した。Wei-LaPierre,L.et al.(2013)にあるように、最適長(L)及び最大上出力(120%刺激電圧)を決定する前に、EDL及び横隔膜筋を10分間平衡化した。
【0154】
次いで、頻度依存性を決定する前に、筋肉を、単収縮ウォームアッププロトコル(20秒あけた3回の200ms 1Hz刺激)、及び強縮ウォームアッププロトコル(1分あけた3回の500ms、150Hz刺激)に供した。頻度依存性は、特記しない限り、1分あけた500ms刺激を増加させて決定した。EDLについては、刺激は以下の通りであった:1Hz(200ms)、25Hz、50Hz、75Hz、100Hz、125Hz、150Hz、175Hz、200Hz、及び250Hz。横隔膜については、刺激は、1Hz(200ms)、10Hz、20Hz、40Hz、60Hz、80Hz、100Hz、125Hz、150Hz、及び200Hzであった。筋肉の力は、610A Dynamic Muscle Control LabBookソフトウェア(Aurora Scientific)を使用して記録し、Clampfit 10.0ソフトウェアを使用して分析した。比力を、筋肉の湿重量、並びに近位筋腱及び遠位筋腱接合部間の最適化された長さを使用して計算した(Hakim CH,et al.Methods Mol Biol.2011;709:75-89、及びHakim CH,et al.J Vis Exp.2013(72))。二元配置ANOVA分析を使用して、頻度依存性についての群間の統計的な差を決定した。
【0155】
筋緊張
筋緊張は、インビトロ筋収縮を使用して測定した。EDLを、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離し、前節のように最適化した。筋緊張が存在しない筋肉のベースラインを得るために、リンゲル培地中で25分間筋肉を平衡化した。次いで、筋肉をプロトコルに供して、20秒あけた3回の連続した200msの1Hz単収縮、3分間の休息時間、次いで3分あけた3回の連続した500msの150Hz強縮により筋緊張を決定した。100uMの9-アクリジンカルボン酸(9-AC)を含むリンゲル培地を25分間浴中に流し、筋緊張プロトコルを繰り返した。この計時は、緩衝液交換及び新しい浴中で筋肉が平衡化するのに十分な時間を確保するためのものであった。WT及びCa1.1Δe29筋肉における筋緊張に対するベラパミルの影響を決定するために、筋緊張プロトコル(この節の前に記述)を、5μM又は20μMのベラパミルのいずれかを含有するリンゲル培地、次いで、その後100μMの9-AC及び5μM又は20μMのいずれかを含有するリンゲル培地の存在下で実施した。筋肉の力は、610A Dynamic Muscle Control LabBookソフトウェア(Aurora Scientific)を使用して記録し、トレースは、Clampfit 10.0ソフトウェアを使用して分析して、曲線下面積を計算した。次いで、曲線下面積を比力に正規化し(前節のように計算した)、統計分析に使用した。
【0156】
一過性の脱力
一過性の脱力は、インビトロ筋収縮によるEDL筋肉において測定された。EDLを、前節で言及したように、20週齢のWT又はCa1.1Δe29のマウスから単離し、最適化した。一方の側を正常なリンゲル培地中で平衡化し、もう一方の側を100μMの9-ACを含むリンゲル培地中で少なくとも25分間平衡化した実験を対側的に調節した。次いで、筋肉を、4秒あけた45回の連続した500msの100Hz強縮の一過性の脱力プロトコルに供した。一過性の脱力に対する異なるカルシウムチャネル遮断薬の影響を決定するために、薬物は、一方の側が薬物のみを受け、他方が薬物+9-ACである対側様式でリンゲル培地を介して送達された。試験したカルシウムチャネル遮断薬は、5μM及び20μMの両方の濃度のベラパミル、75nMのニフェジピン、10μMのアムロジピン、及び10μMのジルチアゼムであった。試験された全ての薬物について、筋肉は、一過性の脱力プロトコルを実施する前に、薬物を入れた培地中で25分間平衡化された。筋肉の力を記録し、前節と同様に分析した。比力を計算し、統計分析のために、生成された初期力の比率も調べた。
【0157】
統計分析
全てのデータ平均データは、誤差バーを伴うバー、又は誤差バンドを伴う黒丸のいずれかとして表される平均±S.E.Mを示す。単一のマウスについて収集されたデータ点は、白丸として表された(1匹のマウスはn=1である)。しかしながら、インビトロ筋収縮技法の場合、白丸は1つの筋肉を表す(1つの筋肉はn=1である)。統計を報告したサンプリングされた単位の数、nは、インビボ実験のための単一のマウスである(1匹のマウスはn=1である)。GraphPad Prism 9ソフトウェアを、統計分析に使用した。複数の比較を伴う一元配置又は二元配置ANOVAを使用して、試験した群の各々間の有意差を試験した。生存については、各群を、互いの群のカプランマイヤーログランク検定と比較した。全ての図について、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、及び****P<0.0001を使用した。
【0158】
実施例2
図1に示すように、Ca1.1Δe29及びClC-1-/-の対立遺伝子は合成致死性を示し、マウスにおいて有意な体重の低減及び重度の筋脱力をもたらす。図1Aは、WT(n=10)、Ca1.1Δe29/+(n=13)、Ca1.1Δe29(n=15)、ClC-1-/-(n=40)、Ca1.1Δe29/+/ClC-1-/-(n=16)、及びCa1.1Δe29/Δe29/ClC-1-/-(n=21)のカプランマイヤー生存分析の結果を示す。Ca1.1Δe29/+/ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/Δe29/ClC-1-/-マウスの両方の生存が、WTマウスと比較して有意に低下する。この生存の低下は、ClC-1-/-単独のマウスと比較しても有意に低下する。Ca1.1Δe29/+/ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/Δe29/ClC-1-/-マウスは、14週齢を超えて生存せず、両方とも、それぞれ9.8週間及び8.1週間の中央平均余命を有する。図1Bは、毎週の体重分析の結果を示す。図1Cは、10週での離乳からの体重変化率を示す。合わせて、図1B~Cは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスが、WTマウスと比較して発育できなかったことを示す。しかしながら、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスの1週間ごとの体重及び体重変化率は、ClC-1-/-単独マウスと同等である。図1Dは、代表的な比力トレースを示し、図1Eは、10週のマウスからの単離されたEDL筋肉の150Hz(500ms)の強縮性刺激によって引き起こされた平均ピーク比力を示す。図1Fは、10週のマウスからの単離されたEDL筋肉から引き起こされた、比力の生成の平均頻度依存性を示す。Ca1.1Δe29/ClC-1-/-であるEDL筋肉は、非常に弱い。記号、白丸、個々のマウス;バー及び黒丸、平均±SEM。図1D、1E、及び1Fからまとめると、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、WT筋肉と比較して顕著な力の生成の欠如を示す。
【0159】
次に、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける生存、体重、及び筋機能の増加におけるベラパミルの効果を調査した。図2に示すように、ベラパミル処置は、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける生存、体重、及び筋機能を改善する。図2Aは、WT+ビヒクル(n=10)、WT+200mg/kg/日のベラパミル(n=10)、Ca1.1Δe29/ClC-/-(n=37)、及びCa1.1Δe29/Δe29/ClC-/-+ベラパミル(n=9)のカプランマイヤー生存分析の結果を示す。ベラパミルは、マウスの栄養/水分補給フードカップに投与される。このパネルから、200mg/kg/日のベラパミルでの処置は、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスの寿命を顕著に改善する。生存研究の時間経過を通して生存したマウスについて、最終実験は、20週齢後に完了した。ベラパミル処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスの寿命は、未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-と比較して有意に延長され、堅牢なままであった。図2Bは、体重分析の結果を示す。200mg/kg/日のベラパミルで処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスと比較して、体重増加に顕著な改善を示した。WTマウスにおけるベラパミルによる処置は、体重に顕著な影響を及ぼさず、ベラパミル処置がWTマウスでの使用に安全であることを指し示した。図2C及び2Eは、10週(図2C)及び20週(図2E)のマウスから単離されたEDL筋肉の単収縮(左)及び150Hz(500ms)強縮性(右)刺激によって引き起こされた代表的な比力トレースを示す。図2D及び2Fは、示された遺伝子型及び処置群における、10週齢(図2D)及び20週齢(図2F)での単離されたEDL筋肉からの比力の生成の平均刺激頻度依存性のプロットを示す。図2C~Dに提示されたインビトロ筋収縮データから、未処置と比較して、ベラパミル処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/- EDL筋肉において10週での力の生成に顕著な改善がある。これは、これらの実験が浴中にベラパミルを用いずに行われるため、ベラパミル処置の筋保護効果に起因する。したがって、この年齢で見られる改善は、長期のベラパミル処置に起因する。未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスの早期死亡により、ベラパミル処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスについて、20週で行うことができる直接的な比較は存在しない。記号、黒丸、平均±SEM。
【0160】
ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける正向反射時間の改善におけるベラパミルの効果も調査した。図3に示すように、ベラパミル処置は、ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける正向反射時間を顕著に改善する。図3Aは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-、ClC-1-/-、Ca1.1Δe29、WT、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-+ベラパミル、及びWT+ベラパミルのマウスの毎週の正向反射時間分析の結果を示し、図3Bは、10及び20週齢のビヒクル及びベラパミル処置マウスにおける平均正向反射時間を示す。未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週齢まで生存しないため、死亡前の最後の記録が文書化される。ボックスは、Q1、中央値、及びQ3を意味する;ひげは最小値及び最大値を示す。図3A及び3Bから、未処置とベラパミル処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスとを比較した場合、正向弛緩時間が有意に低減している。未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、加齢とともにできなくなる(正向に60秒超かかる)。追加で、正向までの時間は、CLC-1-/-単独マウスよりも顕著に長い。ベラパミル処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスでは、正向時間が有意に低減されるだけでなく、加齢しても一貫した正向時間を維持する。Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスで見られる正向時間の改善は、1秒未満(「1」として記録される)で正向するWTマウスと比較して正向時間において有意な差がないほどである。図3Cは、栄養/水分補給フードカップにおける100mg/kg/日(左)及び200mg/kg/日(右)投与量でのClC-1-/-マウスの2週間のベラパミル処置前(明るい丸)及び処置後(暗い丸)の対を示す。ClC-1-/-単独マウスは、WT Ca1.1を有するが、ベラパミルは、これらの対の実験で試験された両方の投薬量について、正向時間を有意に低減することができた。これは、ベラパミルが先天性筋緊張症の潜在的な治療薬であることを指し示す。記号、黒丸、個々のマウス;白丸、平均±SEM。
【0161】
ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける呼吸機能及び横隔膜強度の改善におけるベラパミルの効果を調査した。図4に示すように、ベラパミル処置は、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおいて呼吸機能及び横隔膜強度を顕著に改善する。示された遺伝子型及び処置群における10週齢(図4A及び4C)及び20週齢(図4B及び4D)のマウスの全身プレチスモグラフィー。図4A及び4Bは呼吸の頻度(呼吸数/分)を示し、図4C及び4Dは呼吸の換気量(mL)を示す。全体として、ベラパミルで処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週での頻度又は換気量に有意な差を示さなかった。10週で、未処置と比較して、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおけるベラパミル処置により、換気量が顕著に改善される。処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスの換気量は、10週でWTマウスの換気量に戻る。図4Eは、示された遺伝子型及び処置群において、10週齢(左)及び20週齢(右)のマウスから単離された横隔膜片からの代表的な強縮性(150Hz、500ms)比力トレースを示す。図4F及び4Gは、示された遺伝子型及び処置群における、10週齢(図4F)及び20週齢(図4G)のマウスから単離された横隔膜片から生成された比力の平均刺激頻度依存性のプロットを示す。図4E、4F、及び4Gから、ベラパミル処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける横隔膜片の筋肉の力及び頻度依存性が顕著に改善する。ベラパミル処置では、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、10週及び20週の両方において、それらの横隔膜片においてWT強度を示す。更に、10週で頻度依存性に見られる改善は、未処置と処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-筋肉とを比較すると、堅牢である。構築データをこの図に示されるプレチスモグラフィーデータと関連付けると、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスの呼吸機能に全体的な欠如があり、これはベラパミル処置によって顕著に改善される。記号、白丸、個々のマウス;バー及び黒丸、平均±SEM。注記:未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週齢まで生存しない。
【0162】
ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける重度の一過性の筋脱力の改善におけるベラパミルの効果を調査した。図5に示すように、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-筋肉は、ベラパミルの添加によって顕著に改善される重度の一過性の脱力を示す。図5A及び5Cは、ベラパミルの不在下(図5A)及び浴に添加された20μMのベラパミルの存在下(図5C)で、6週のClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力のトレースを示す。図5B及び5Dは、ベラパミルの不在下(図5B)及びClC-1-/-(n=4)及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-、n=4)のEDLの浴に添加された20μMのベラパミルの存在下(図5D)で、6週のWT(n=4)、ClC-1-/-(n=4)、Ca1.1Δe29(n=4)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-、n=4)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図5Dの破線は、処置前の参照として図5Bに提示される平均データを表す。全体として、この図は、Ca1.1Δe29/ClC-1-/- EDL筋肉において切断された一過性の脱力があることを示す。見られる一過性の脱力は、ClC-1-/-単独のEDL筋肉よりも重度である。ベラパミル治療では、ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のEDL筋肉の両方における一過性の脱力において顕著な改善が見られる。浴中のベラパミルの存在は、ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のEDL筋肉の両方の力低下を減少させ、一過性の脱力からの回復において顕著な改善がある、記号、黒丸、平均±SEM。
【0163】
ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスにおける筋緊張の低減におけるベラパミルの効果を調査した。図6に示すように、ベラパミルは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-及びClC-1-/-のマウス筋肉の両方で筋緊張を有意に低減する。図6A及び6Cは、ベラパミルの不在下(図6A)及び浴に添加された20mMのベラパミルの存在下(図6C)で6週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからの第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の正規化された代表的な比力トレースを示す。破線は、累積された力を表す。図6B及び6Dは、ベラパミルの不在下(図6B)及び浴に添加された20mMのベラパミルの存在下(図6D)での、3回の強縮性刺激(150Hz、500ms)にわたるWT及びCa1.1Δe29EDLの力の平均正規化積分を示す。図6E及び6Gは、浴に添加された20mMのベラパミルの不在下(図6E)及び存在下(図6G)で6週のClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスから単離されたEDLからの第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の正規化された代表的な比力トレースを示す。破線は、累積された力を表す。図6F及び6Hは、ベラパミルの不在下(図6B)及び浴に添加された20mMのベラパミルの存在下(図6D)での、3回の強縮性刺激(150Hz、500ms)にわたるClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-EDLの力の平均積分を示す。全体として、この図は、Ca1.1Δe29の存在が、ClC-1-/-単独の筋肉に見られる筋緊張と比較して、インビトロで筋緊張を顕著に延長することを示す。浴中のベラパミルの存在は、ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のEDL筋肉の両方で見られる筋緊張を有意に低減する。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均±SEM。対側のEDLを、未処置及び処置の各実験に使用した。全てのトレースは、比較のために同じ時間尺度及び正規化された力でプロットされた。
【0164】
ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスにおけるEDL筋肉の力の生成の救済におけるベラパミルの効果を調査した。図7に示すように、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスへの長期間のベラパミル経口給餌は、EDL筋肉の力の生成を顕著に救済する。示される遺伝子型及び処置の10週(図7A)及び20週(図7B)のマウスから単離されたEDLの150Hz(500ms)の強縮刺激を使用して引き起こされた平均ピーク比力。10週で、未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-筋肉は、10週で顕著な力の生成の欠如を示す。未処置と比較して、処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-EDL筋肉における力の生成が顕著に改善する。見られた改善は、実験時にベラパミルが浴に存在しないため、ベラパミル処置の筋保護効果であると仮定される。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均±SEM。
【0165】
ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスにおける横隔膜筋の力の生成の救済におけるベラパミルの効果を調査した。図8に示すように、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスへの長期間のベラパミル経口給餌は、横隔膜筋の力の生成を顕著に救助する。示される遺伝子型及び処置の10週(図8A)及び20週(図8B)のマウスから単離された横隔膜片の150Hz(500ms)の強縮刺激を使用して引き起こされた平均ピーク比力。10週で、未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-横隔膜筋は、10週で顕著な力の生成の欠如を示した。未処置と比較して、処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-横隔膜片における力の生成が顕著に改善する。見られた改善は、実験時にベラパミルが浴に存在しないため、ベラパミル処置の筋保護効果に起因する。ベラパミルによる力産生のこの救済は、処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-横隔膜片とWTとの間で有意な差はない。この改善は、20週齢でも維持される。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均±SEM。
【0166】
図9A、9B、9C、及び9Dは、前脛骨筋の繊維型分布の定量化及び統計分析の結果を示す一連のグラフである。10週(左)及び20週(右)の前脛骨筋(n=5/群)のIIb型(図9A)、IIx型(図9B)、IIa型(図9C)、及びI型(図9D)の繊維の定量化を示す。未処置及び処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-前脛骨筋の繊維型分布は、10週齢及び20週齢の両方でClC-1-/-の存在によって見られる表現型の変化で占められている。
【0167】
図10A、10B、10C、及び10Dは、横隔膜筋の繊維型分布の定量化及び統計分析の結果を示す一連のグラフである。10週(左)及び20週(右)の横隔膜筋(n=5/群)のIIb型(図10A)、IIx型(図10B)、IIa型(図10C)、及びI型(図10D)の繊維の定量化を示す。未処置及び処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-横隔膜の繊維型分布は、10週齢及び20週齢の両方でClC-1-/-の存在によって見られる表現型の変化で占められている。
【0168】
図11A、11B、及び11Cは、ヘテロ接合性及びホモ接合性Ca1.1Δe29マウスが、短趾屈筋において同様のCa1.1電圧依存性及びピーク電流密度を示す一連の図である。図11Aは、4週のWT、Ca1.1Δe29/+(破線)、及びCa1.1Δe29/Δe29(実線)のマウスから単離された、0mV(上)、+20mV(中央)、及び+40mV(下)での短趾屈筋繊維の全細胞パッチクランプからの代表的な電流密度トレースを示す。図11Bは、4週のマウスから単離されたWT、Ca1.1Δe29/+(丸、破線)、及びCa1.1Δe29/Δe29(丸、実線)短趾屈筋繊維で測定されたCa1.1活性の平均電流-電圧関係のプロットを示す。合わせて、図11A~Bは、Ca1.1におけるエクソン29のヘテロ接合性喪失が、エクソン29のホモ接合性喪失とほぼ同じ電流密度及び電流-電圧関係を有することを示す。図11Cは、10週のマウスからの前脛骨筋から単離されたCa1.1 RNAのRT-PCR生成物を示す。PCR増幅は、Caca1ns cDNAのエクソン27~31からである。
【0169】
図12A、12B、12C、及び12Dは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-筋肉が、ベラパミルの添加によって顕著に改善される重度の一過性の脱力を示す(第1のピーク力に正規化されていない)一連のグラフである。図12A及び12Cは、ベラパミルの不在下(図12A)及び浴に添加された20μMのベラパミルの存在下(図12C)で6週のClC-1-/-及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力のトレースを示す。図12B及び12Dは、ClC-1-/-(n=4)及びCa1.1Δe29/ClC-1-/- n=4)のEDLのベラパミルの不在下(図12B)及び浴に添加された20μMのベラパミルの存在下(図12D)で6週のWT(n=4)、ClC-1-/-(n=4)、Ca1.1Δe29(n=4)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-、n=4)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、平均ピーク強縮性EDLのプロットを示す。図12Dの破線は、処置前の参照として図12Bに提示される平均データを表す。この図の知見は図5と類似している。この図は、ベラパミル処置によって顕著に改善されるCa1.1Δe29/ClC-1-/- EDL筋肉に見られる重度の一過性の脱力を更に進める。記号、黒丸、平均±SEM。
【0170】
図13A、13B、13C、13D、13E、13F、13G、及び13Hは、ベラパミル処置が、WT、Ca1.1Δe29 ClC-1-/- 及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-のマウス筋肉のピーク収縮力を低下させないことを示す一連のグラフである。図13A、13C、13E、及び13Gは、ベラパミルの不在下及び20mMのベラパミルの存在下での、WT(図13A)、Ca1.1Δe29図13C)、ClC-1-/-図13E)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-図13G)のEDLにおける第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の代表的なトレースを示す。処置は凡例に示されている。図13B、13D、13F、及び13Hは、ベラパミルの不在下及び20mMのベラパミルの存在下での3回の強縮性刺激にわたるWT(図13B)、Ca1.1Δe29図13D)、ClC-1-/-図13F)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-図13H)のEDLの平均比力を示す。処置は凡例に示されている。この実験は、浴中のベラパミルの存在が、試験された群のいずれについてもEDL筋肉の比力の生成に影響を及ぼさないことを示すために実施された。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。
【0171】
図14A及び14Bは、ベラパミルがCa1.1Δe29/ClC-1-/-及びClC-1-/-のマウス筋肉の両方において筋緊張を有意に低減することを示す一連のグラフである。図14Aは、20μMのベラパミルの不在下でのClC -1-/-(実線)及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-(実線)のEDLにおける第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の正規化された比力の生成の代表的なトレースを示す。破線は、累積された力を表す。図14Bは、20μMのベラパミルの存在下でのClC -1-/-(実線)及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-(実線)のEDLにおける第1(左)及び第3(右)の強縮(150Hz、500ms)の代表的なトレースを示す。破線は、累積された力を表す。注記:図6に示されるトレースは、筋緊張をよりよく観察するために、拡張された時間尺度でここに再プロットされる。図6の節に記述される知見は、この代替提示により更に実証される。
【0172】
図15A、15B、15C、15D、15E、及び15Fは、Ca1.1Δe29が筋緊張性筋における一過性の脱力を悪化させ、ベラパミルによって緩和されることを示す一連のグラフである。図15Aは、浴に添加された100mMの9-ACの存在下(処置前)で20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。これから、Ca1.1のエクソン29の不在により、筋緊張性EDLの一過性の脱力が悪化することがわかる。図15Bは、WT(n=5)、WT+9-AC(n=5)、Ca1.1Δe29(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC(n=5)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。右側の筋緊張性WT EDL筋肉は、軽度の一過性の脱力があったが、すぐに回復した。右側のCa1.1Δe29+9AC EDLに有意な初期力低下があり、この一過性の脱力からの回復には多くの刺激が必要である。図15C及び15Eは、浴に添加された100mMの9-AC及び5mMのベラパミル(図15C)又は20mMのベラパミル(図15E)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図15Dは、WT+5mMのベラパミル(n=5)、WT+9-AC+5mMのベラパミル(n=5)、Ca1.1Δe29+5mMのベラパミル(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+5mMのベラパミル(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図15Fは、WT+20mMのベラパミル(n=5)、WT+9-AC+20mMのベラパミル(n=5)、Ca1.1Δe29+20mMのベラパミル(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+20mMのベラパミル(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図15D及び15Fの破線は、処置前の参照として図15Bに提示される平均データを表す。全体として、5um及び20umの両方のベラパミルは、WT+9-AC及びCa1.1Δe29+9-AC EDL筋肉の一過性の脱力を改善する。この改善は、20um濃度でのCa1.1Δe29+9-ACに対して有意かつ堅牢である。記号、黒丸、平均±SEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0173】
図16A及び16Bは、一過性の脱力がWT及びCa1.1Δe29の筋肉に存在しないことを示す一連のグラフである。図16は、20週のWT及びCa1.1Δe29のEDL筋肉における4秒あけた最初の15回の強縮(150Hz、500ms)の代表的なトレースを示す。図16Bは、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。記号、黒丸、平均±SEM。
【0174】
図17A、17B、17C、17D、17E、及び17Fは、Ca1.1Δe29が筋緊張を顕著に悪化させることを示す一連のグラフである。図17A、17B、及び17C(左)は、ベラパミルの不在下(処置前)(図17A、左)及び浴に添加された5mM(図17B、左)及び20mM(図17C、左)のベラパミルの存在下(処置前)で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図17A、17B、及び17C(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図17D、17E、及び17F(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、ベラパミルの不在下(処置前)(図17D、左)及び浴に添加された5mM(図17E、左)及び20mM(図17F、左)のベラパミルの存在下(処置前)で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離された、EDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図17D、17E、及び17F(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0175】
図18A、18B、18C、18D、18E、及び18Fは、ベラパミル処置が、非筋緊張性及び筋緊張性WT及びCa1.1Δe29のマウス筋肉のピーク収縮力を低下させないことを示す一連のグラフである。ベラパミルの不在下(処置前)(図18A、左)及び浴に添加された5mM(図18B、左)及び20mM(図18C、左)のベラパミルの存在下(処置前)で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の代表的な比力トレース。破線は累積された力の生成を表す。図18A、18B、及び18C(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力の平均積分のプロットを示す。図18D、18E、及び18F(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、ベラパミルの不在下(処置前)(図18D、左)及び浴に添加された5mM(図18E、左)及び20mM(図18F、左)のベラパミルの存在下(処置前)で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離された、EDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の代表的な比力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図18D、18E、及び18F(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力の平均積分のプロットを示す。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0176】
この実施例はまた、マウスモデルにおけるアムロジピンの効果も提供する。図19に示すように、Ca1.1De29及びClC-1-/-の対立遺伝子は合成致死性を示し、マウスにおいて有意な体重の低減及び重度の筋脱力をもたらす。アムロジピン処置は、生存及び体重変化率を顕著に改善した。図19Aは、WT(n=10)、Ca1.1Δe29/+(n=13)、Ca1.1Δe29(n=15)、ClC-1-/-(n=40)、Ca1.1Δe29/+/ClC-1-/-(n=16)、Ca1.1Δe29/Δe29/ClC-1-/-(n=21)、及びCa1.1Δe29/ClC-1-/- + 5mg/kg/日のアムロジピン(n=6)のカプランマイヤー生存分析の結果を示す。未処置のCa1.1Δe29/+/ClC-1-/-及びCa1.1Δe29/Δe29/ClC-1-/-のマウスは、寿命が著しく低下しており、14週齢は、マウスが到達した最長生存期間であり、平均余命中央値はわずか8.9週間であった。5mg/kg/日のアムロジピンの処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、顕著に生存を改善した。図19Bは、10週での離乳からの体重変化率を示す。Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、発育できず、WTマウスの体重から有意に低減した体重を示すが、これは、ClC-1-/-単独マウスの体重変化率と有意な差はない。それにもかかわらず、5mg/kg/日のアムロジピンでの処置は、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける体重変化率を改善し、それは、未処置マウスと比較して顕著な改善であった。処置による体重増加の変化は、WTと有意な差はなかった。記号、白丸、個々のマウス;バー及び黒丸、平均±SEM。
【0177】
Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける正向反射時間の改善におけるアムロジピンの効果も調査した。図20に示すように、アムロジピン処置は、未処置と比較して、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける正向反射時間を顕著に改善する。図20Aは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-、ClC-1-/-、Ca1.1Δe29、WT、Ca1.1Δe29/ClC-1-/- +アムロジピン(紫色)マウスの毎週の正向反射時間分析を示す。Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、顕著により長い正向反射時間を有する。加齢するにつれて、正向までの時間は、正向に達することができなくなるまで増加する。これは、マウスが正向までに60秒超かかる場合である。Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける5mg/kg/日のアムロジピンによる処置は、正向時間を顕著に改善する。週ごとに、ClC-1-/-単独マウスと比較して、処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおいて、正向に有意な差はない。図20Bは、10週齢及び20週齢のビヒクル及びアムロジピン処置のマウスにおける平均正向反射時間を示す。このデータは、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスが、WTマウス及びClC-1-/-単独マウスと比較して、顕著に長い正向時間を有することを更に示す。5mg/kg/日のアムロジピンによる処置は、未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスと比較して、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける正向時間を顕著に改善する。平均正向時間におけるこの改善は、処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスとWTマウスとの間で正向時間に有意な差がないほどである。注記:未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週齢まで生存しないため、死亡前の最後の記録が文書化される。ボックスは、Q1、中央値、及びQ3を意味する;ひげは最小値及び最大値を示す。記号、黒丸、個々のマウス;白丸、平均±SEM。
【0178】
次に、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける呼吸改善におけるアムロジピンの効果を調査した。図21に示すように、Ca1.1Δe29/ClC-1-/- マウスは、WTと比較して呼吸が変化したことを示し、アムロジピンで処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、WTと比較して有意に異なる頻度又は分時換気量を有さない。示された遺伝子型及び処置群における10週齢(左)及び20週齢(右)のマウスの全身プレチスモグラフィー。呼吸の頻度(呼吸数/分)(図21A)、呼吸の換気量(mL)(図21B)、及び分時換気量(図21C)を示す。10週で、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、WTマウスと比較して、頻度が有意に増加した。この週齢で、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける5mg/kg/日のアムロジピン処置を行うと、頻度が低減するが、未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスと有意な差はなく、WT頻度と比較しても有意な差はない。これは、アムロジピン処置が頻度に及ぼしている影響が中程度であるためであろう。10週間処置されたマウスにおける換気量及び分時換気量は、未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスと比較して改善されない。20週齢で、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスの頻度は、WTマウスの頻度に有意な差はない。しかしながら、WTと比較して、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおいて、換気量及び分時換気量の有意な低減が見られる。最終的に、呼吸機能は、Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおけるアムロジピン処置によって中程度に影響を受ける。記号、白丸、個々のマウス;バー及び黒丸、平均±SEM。注記:未処置のCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスは、20週齢まで生存しない
【0179】
Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける筋機能改善におけるアムロジピンの効果を調査した。図22に示すように、アムロジピンで処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスから単離されたEDLは、未処置のClC-1-/-単独マウスと同様の筋機能を有する。図22Aは、20週のマウスから単離されたEDL筋肉の150Hz(500ms)強縮性(右)刺激によって引き起こされた代表的な比力トレースを示す。図22Bは、20週のマウスから単離されたEDL筋肉における500ms、150Hzの強縮性刺激中に生成された平均強縮力を示す。図22Cは、示された遺伝子型及び処置群における、20週齢での単離されたEDL筋肉からの比力の生成の平均刺激頻度依存性のプロットを示す。20週齢では、アムロジピン処置による可能性があるEDLの筋機能及び筋肉の力の生成に顕著な影響はない。150Hzでの力の生成及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける頻度依存性プロトコルの低減は、ClC-1-/-単独マウスにおいて見られる力の欠如に匹敵する。記号、黒丸、平均±SEM。
【0180】
Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスから単離された横隔膜片における筋機能の改善におけるアムロジピンの効果も調査した。図23に示すように、アムロジピン処置は、WT横隔膜と比較して、力の生成の低減を有する、アムロジピンで処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスから単離された横隔膜片における筋機能を改善する。図23Aは、20週のマウスから単離された横隔膜片の150Hz(500ms)強縮性(右)刺激によって引き起こされた代表的な比力トレースを示す。図23Bは、20週のマウスから単離された横隔膜片における500ms、150Hzの強縮性刺激中に生成された平均強縮力を示す。図23Cは、示された遺伝子型及び処置群における、20週齢での単離された横隔膜片からの比力の生成の平均刺激頻度依存性のプロットを示す。20週齢では、アムロジピン処置による可能性がある横隔膜の筋機能及び筋肉の力の生成に顕著な影響はない。150Hzでの力の生成及びCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける頻度依存性プロトコルの低減は、ClC-1-/-単独マウスにおいて見られる力の欠如に匹敵する。これを図3に戻って関連させると、ClC-1-/-単独マウスと比較して、処置されたCa1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける頻度、換気量、及び分時換気量は、有意な差を示さなかった。インビトロ収縮実験からの横隔膜筋機能に同様の値が見られることは理にかなっている。記号、黒丸、平均±SEM。
【0181】
Ca1.1Δe29/ClC-1-/-マウスにおける一過性の脱力の改善におけるアムロジピンの効果を調査した。図24Bに示すように、Ca1.1Δe29は、筋緊張性筋の一過性の脱力を悪化させ、アムロジピンによって緩和される。図24Aは、浴に添加された100mMの9-ACの存在下(処置前)で20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。筋緊張が薬理学的に誘発される場合、WTと比較して、Ca1.1Δe29 EDLにおける力の生成に大きな低下が見られる。これは、筋緊張性Ca1.1Δe29組織におけるより重度の一過性の脱力に起因する。図24Bは、WT(n=5)、WT+9-AC(n=5)、Ca1.1Δe29(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC(n=5)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。更に、代表的なトレースで捕捉された平均データから、筋緊張性Ca1.1Δe29 EDLにおける有意な一過性の脱力が見られる。筋緊張性WT EDLに見られる軽度の一過性の脱力のみがあり、筋緊張がない場合、WT又はCa1.1Δe29 EDLのいずれについても一過性の脱力は見られない。図24Cは、浴に添加された100mMの9-AC及び10mMのアムロジピン(図24C)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図24Dは、WT+10mMのアムロジピン(n=5)、WT+9-AC+10mMのアムロジピン(n=5)、Ca1.1Δe29+10mMのアムロジピン(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+10mMのアムロジピン(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図24Dの破線は、処置前の参照として図24Bに提示される平均データを表す。代表的なトレース及び平均データの両方から、筋緊張性Ca1.1Δe29 EDLにおける浴での10mmのアムロジピン処置による一過性の脱力に対しての改善がある。初期の力の生成低下が改善され、筋緊張性Ca1.1Δe29 EDLの一過性の脱力からの回復中に一過性の脱力が顕著に改善される。記号、黒丸、平均±SEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0182】
次に、筋緊張性筋の一過性の脱力の改善におけるアムロジピンの効果を調査した。図25に示すように、Ca1.1Δe29は、筋緊張性筋の一過性の脱力を悪化させ、ジルチアゼムによって緩和される。図25Aは、浴に添加された100mMの9-ACの存在下(処置前)で20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図25Bは、WT(n=5)、WT+9-AC(n=5)、Ca1.1Δe29(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC(n=5)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図25Cは、浴に添加された100mMの9-AC及び10mMのジルチアゼム(図25C)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図25Dは、WT+10mMのジルチアゼム(n=5)、WT+9-AC+10mMのジルチアゼム(n=5)、Ca1.1Δe29+10mMのジルチアゼム(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+10mMのジルチアゼム(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。(図25D)の破線は、処置前の参照として(図25B)に提示される平均データを表す。全体として、浴中にジルチアゼムが存在する筋緊張性Ca1.1Δe29 EDLの一過性の脱力において顕著な改善が見られる。ジルチアゼムでは、第1の強縮と第2の強縮との間の力の生成における最初の低下、及び一過性の脱力からの全体的な回復が改善される。記号、黒丸、平均±SEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0183】
この実施例は、筋機能におけるニフェジピンの効果の研究を更に提供する。図26に示すように、Ca1.1Δe29は、筋緊張性筋の一過性の脱力を悪化させ、ニフェジピンによって緩和される。図26Aは、浴に添加された100mMの9-ACの存在下(処置前)で20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図26Bは、WT(n=5)、WT+9-AC(n=5)、Ca1.1Δe29(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC(n=5)のマウスからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図26Cは、浴に添加された100mMの9-AC及び10mMのニフェジピン(図26C)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、4秒あけた最初の15回の強縮(100Hz、500ms)の正規化された代表的な力トレースを示す。図26Dは、WT+10mMのニフェジピン(n=5)、WT+9-AC+10mMのニフェジピン(n=5)、Ca1.1Δe29+10mMのニフェジピン(n=5)、及びCa1.1Δe29 + 9-AC+10mMのニフェジピン(n=5)のEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。図26Dの破線は、処置前の参照として図26Bに提示される平均データを表す。全体として、浴中にニフェジピンが存在する筋緊張性Ca1.1Δe29 EDLの一過性の脱力において顕著な改善が見られる。ニフェジピンでは、第1の強縮と第2の強縮との間の力の生成における最初の低下、及び一過性の脱力からの全体的な回復が改善される。記号、黒丸、平均±SEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0184】
図27A及び27Bは、一過性の脱力がWT及びCa1.1Δe29の筋肉に存在しないことを示す一連のグラフである。図27Aは、20週のWT及びCa1.1Δe29EDL筋肉における4秒あけた最初の15回の強縮(150Hz、500ms)の代表的なトレースを示す。図27Bは、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからの、4秒あけた44回の後続の100Hz、500msの強縮性刺激によって引き起こされた、初期刺激に正規化された平均ピーク強縮性EDL力のプロットを示す。これは、Ca1.1Δe29が、浴中に薬物が存在しない場合に、一過性の脱力に影響を及ぼしたかどうかを試験するための対照実験であった。9ACが浴に含まれない場合、WTとCa1.1Δe29のEDLとの間に差は観察されなかった。記号、黒丸、平均±SEM。
【0185】
図28A、28B、28C、及び28Dは、Ca1.1Δe29が筋緊張を顕著に悪化させ、アムロジピンが筋緊張性WT及びCa1.1Δe29のEDLにおいて筋緊張を低減したことを示す一連のグラフである。図28A及び28B(左)は、アムロジピンの不在下(処置前)(図28A、左)及び浴に添加された10mMのアムロジピン(図28B、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図28A及び28B(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。浴中に9ACが存在しない場合、WT及びCa1.1Δe29のEDLは、互いにほぼ同一であり、B)の浴中のアムロジピンの存在は、9ACによって誘導されていない筋緊張に影響を及ぼさない。図28C及び28D(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、アムロジピンの不在下(処置前)(図28C、左)及び浴に添加された10mMのアムロジピン(図28D、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図28C及び28D(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図28Cの未処置の実験から、WT EDLと比較して、Ca1.1Δe29において筋緊張が有意に延長された。代表的なトレースは、9ACが存在する場合、Ca1.1Δe29 EDLにおいて約10秒の筋緊張を示す。図28Cの右側の平均データは更にこれを示している。図28Dでは、アムロジピンが浴中に存在する場合、Ca1.1Δe29 EDLにおける筋緊張が低減する。図28Dの右側の平均データから、WTとCa1.1Δe29との間の最初の強縮の間に有意な差があるが、その後の強縮は、アムロジピン処置による筋緊張の差を示さない。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0186】
図29A、29B、29C、及び29Dは、Ca1.1Δe29が筋緊張を顕著に悪化させ、ジルチアゼムが筋緊張性WT及びCa1.1Δe29のEDLにおいて筋緊張を低減したことを示す一連のグラフである。図29A及び29B(左)は、ジルチアゼムの不在下(処置前)(図29A、左)及び浴に添加された10mMのジルチアゼム(図29B、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図29A及び29B(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図29C及び29D(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、ジルチアゼムの不在下(処置前)(図29C、左)及び浴に添加された10mMのジルチアゼム(図29D、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図29C及び29D、右は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図29Dでは、ジルチアゼムが浴中に存在する場合、WT及びCa1.1Δe29のEDLの両方における筋緊張が低減する。図29Dの右側の平均データから、ジルチアゼムが存在する場合、WTとCa1.1Δe29との間の強縮に有意な差があり、WT及びCa1.1Δe29の両方について、3回全ての強縮についての図29C(右)と比較して、ジルチアゼムが浴に存在する場合、筋緊張が有意に低減することがわかる。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0187】
図30A、30B、30C、及び30Dは、Ca1.1Δe29が筋緊張を顕著に悪化させ、ニフェジピンが筋緊張性WT及びCa1.1Δe29のEDLにおいて筋緊張を低減したことを示す一連のグラフである。図30A及び30B(左) ニフェジピンの不在下(処置前)(図30A、左)及び浴に添加された75nMのニフェジピン(図30B、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレース。破線は累積された力の生成を表す。図30A及び30B(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図30C及び30D(左)は、100mMの9-ACとともにインキュベートし、ニフェジピンの不在下(処置前)(図30C、左)及び浴に添加された75nMのニフェジピン(図30D、左)の存在下で、20週のWT及びCa1.1Δe29のマウスから単離されたEDLからエクスビボで記録された、3分あけた3回の強縮(100Hz、500ms)のうちの最初の正規化された代表的な力トレースを示す。破線は累積された力の生成を表す。図30C及び30D(右)は、それぞれの左のパネルに示される比力に対して正規化された平均積分のプロットを示す。図30Dでは、ニフェジピンが浴中に存在する場合、Ca1.1Δe29 EDLにおける筋緊張が低減する。図30Dの右側の平均データから、WT及びCa1.1Δe29を比較して、各強縮の筋緊張に有意な差があ。記号、白丸、個々のマウス;バー、平均、及びSEM。注記:可能であれば、対側のEDLを使用した。
【0188】
図31A、31B、及び31Cは、HSALRとMbnl1-/-との組み合わせが合成致死性を示し、生存及び体重の有意な低減、並びに正向時間の延長をもたらすことを示す一連のグラフである。ベラパミル処置は、生存及び正向時間を顕著に改善した。図31Aは、HSALR/Mbnl1+/+ +ビヒクル、HSALR/Mbnl1+/+ +100mg/kg/日のベラパミル、HSALR/Mbnl-/- +ビヒクル、及びHSALR/Mbnl1-/-+100mg/kg/日のベラパミルのカプランマイヤー生存分析の結果を示す。未処置のHSALR/Mbnl1-/-マウスは、寿命が著しく低下した。100mg/kg/日のベラパミルの処置は、生存を顕著に改善する。図31Bは週ごとの体重変化の平均を示す。未処置HSALR/Mbnl1-/-マウスは、未処置HSALR/Mbnl1+/+マウスの体重から有意に体重が減少したことを示す。ベラパミル処置では、HSALR/Mbnl1-/-マウスの体重は未処置と同様であるが、マウスの加齢とともに体重が増加する。図31Cは、HSALR/Mbnl1+/+ +ビヒクル、HSALR/Mbnl1+/+ +100mg/kg/日のベラパミル、HSALR/Mbnl-/- +ビヒクル、及びHSALR/Mbnl1-/-+100mg/kg/日のベラパミルの毎週の正向反射時間分析を示す。未処置のHSALR/Mbnl1 -/-マウスは、顕著に長い正向反射時間を有する。加齢するにつれて、正向までの時間は、正向に達することができなくなるまで増加する。これは、マウスが正向までに60秒超かかる場合である。HSALR/Mbnl1-/-マウスにおける100mg/kg/日のベラパミルによる処置は、正向時間を顕著に改善する。記号、黒丸、及び誤差、平均±SEM。
【0189】
図32A、32B、及び32Cは、HSALRとMbnl1-/-との組み合わせが合成致死性を示し、生存及び体重の有意な低減、並びに正向時間の延長をもたらすことを示す一連のグラフである。アムロジピン処置は、生存及び正向時間を顕著に改善した。図32Aは、HSALR/Mbnl1+/+ +ビヒクル、HSALR/Mbnl1+/+ +100mg/kg/日のアムロジピン、HSALR/Mbnl-/- +ビヒクル、及びHSALR/Mbnl1-/-+100mg/kg/日のアムロジピンのカプランマイヤー生存分析の結果を示す。未処置のHSALR/Mbnl1-/-マウスは、寿命が著しく低下した。100mg/kg/日のアムロジピンの処置は、生存を顕著に改善する。図32Bは週ごとの体重変化の平均を示す。未処置HSALR/Mbnl1-/-マウスは、未処置HSALR/Mbnl1+/+マウスの体重から有意に体重が減少したことを示す。アムロジピン処置では、HSALR/Mbnl1-/-マウスの体重は未処置と同様であるが、マウスの加齢とともに体重が増加する。図32Bは、HSALR/Mbnl1+/+ +ビヒクル、HSALR/Mbnl1+/+ +100mg/kg/日のアムロジピン、HSALR/Mbnl-/- +ビヒクル、及びHSALR/Mbnl1-/-+100mg/kg/日のアムロジピンの毎週の正向反射時間分析を示す。未処置のHSALR/Mbnl1 -/-マウスは、顕著に長い正向反射時間を有する。加齢するにつれて、正向までの時間は、正向に達することができなくなるまで増加する。これは、マウスが正向までに60秒超かかる場合である。HSALR/Mbnl1-/-マウスにおける100mg/kg/日のアムロジピンによる処置は、正向時間を顕著に改善する。記号、黒丸、及び誤差、平均±SEM。統計分析:複数の比較を伴う一元配置又は二元配置ANOVAを使用して、試験した群の各々間の有意差を試験した。生存については、各群を、互いの群のカプランマイヤーログランク検定と比較した。全ての図のアスタリスクについて、p値は次の通りであることに留意されたい:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、及び****P<0.0001を使用した。
【0190】
好ましい実施形態の前述の実施例及び説明は、特許請求の範囲によって定義される本開示を限定するものではなく、例示するものとして理解されるべきである。容易に理解されるように、上記の特徴の多数の変形及び組み合わせは、特許請求の範囲に記載される本開示から逸脱することなく利用され得る。そのような変形例は、本開示の範囲から逸脱したものとはみなされず、全てのそのような変形例は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。本明細書で引用される全ての参照は、それらの全体が、参照により組み込まれる。
図1A-1F】
図2A-2F】
図3A-3C】
図4A-4G】
図5A-5D】
図6A-6H】
図7A-7B】
図8A-8B】
図9A-9D】
図10A-10D】
図11A-11C】
図12A-12D】
図13A-13H】
図14A-14B】
図15A-15F】
図16A-16B】
図17A-17F】
図18A-18F】
図19A-19B】
図20A-20B】
図21A-21C】
図22A-22B】
図23A-23C】
図24A-24D】
図25A-25D】
図26A-26D】
図27A-27B】
図28A-28D】
図29A-29D】
図30A-30D】
図31A-31C】
図32A-32C】
【配列表】
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【国際調査報告】