(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】二重特異性BCMA/CD3抗体を含む安定な製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241126BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241126BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241126BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241126BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241126BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241126BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241126BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D ZNA
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/18
A61P35/00
C07K16/46
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527460
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022079535
(87)【国際公開番号】W WO2023086817
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ムザミル,サルマン
(72)【発明者】
【氏名】ミスティリス,マシュー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】チョウダリ,シャイアマル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD08
4C076DD41
4C076DD46
4C076DD49
4C076DD67
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントの製剤を含む安定な水性医薬組成物、及びそれを調製する方法が提供される。本明細書に開示される安定な水性医薬組成物を対象に投与することによって、がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法も本明細書で提供される。本明細書に開示される安定な水性医薬組成物を含むキット及び製造品も、本明細書において更に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な水性医薬組成物であって、
a)約7.5mg/mL~約12.5mg/mLの濃度の二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントと、
ここで、前記二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、前記VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、前記VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、前記VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、前記VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含む、
b)約10mM~約20mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、
c)約6%(w/v)~約10%(w/v)のスクロースと、
d)約16μg/mL~約24μg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、
e)約0.01%~約0.07%のポリソルベート20と、
f)約4.7~約5.7のpHと
を含む、安定な水性医薬組成物。
【請求項2】
安定な水性医薬組成物であって、
a)約76.5mg/mL~約103.5mg/mLの濃度の二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントと、
ここで、前記二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、前記VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、前記VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、前記VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、前記VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含む、
b)約10mM~約20mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、
c)約6%(w/v)~約10%(w/v)のスクロースと、
d)約16μg/mL~約24μg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、
e)約0.01%~約0.07%のポリソルベート20と、
h)約4.7~約5.7のpHと、
を含む、安定な水性医薬組成物。
【請求項3】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH1及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL1を含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項4】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を有するHC及び配列番号10のアミノ酸配列を有するLC1を含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項5】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を有するVH2及び配列番号18のアミノ酸配列を有するVL2を含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項6】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を有するHC2及び配列番号20のアミノ酸配列を有するLC2を含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項7】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、テクリスタマブである、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項8】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、約8mg/mL~約12mg/mLの濃度を有する、請求項1に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項9】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、約9mg/mL~約11mg/mLの濃度を有する、請求項8に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項10】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、約10mg/mLの濃度を有する、請求項9に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項11】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、約85mg/mL~約95mg/mLの濃度を有する、請求項2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項12】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、約87mg/mL~約93mg/mLの濃度を有する、請求項11に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項13】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、約90mg/mLの濃度を有する、請求項12に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項14】
約12mM~約18mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩を含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項15】
約14mM~約16mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩を含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項16】
約15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩を含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項17】
約7%(w/v)~約9%(w/v)のスクロースを含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項18】
約8%(w/v)のスクロースを含む、請求項17に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項19】
約18μg/mL~約22μg/mLのEDTAを含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項20】
約20μg/mLのEDTAを含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項21】
約0.02%~約0.06%のPS-20を含む、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項22】
約0.03~約0.05%のPS-20を含む、請求項21に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項23】
約0.04%のPS-20を含む、請求項22に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項24】
前記pHが約4.8~約5.6である、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項25】
前記pHが約4.9~約5.5である、請求項23に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項26】
前記pHが約5.2である、請求項25に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項27】
10mg/mLの前記二重特異性BCMA/CD3抗体、15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩、8%(w/v)のスクロース、20μg/mLのEDTA、0.04%のPS20、及びpH5.2を含む、請求項1に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項28】
約2~8℃の温度で少なくとも2年間安定である、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項29】
安定性が、溶液の色、pH、濁度、純度のパーセンテージ、新たなピークのパーセンテージ、主成分のパーセンテージ、高分子量種(HWMS)のパーセンテージ、低分子量種(LMWS)のパーセンテージ、酸性ピークの合計のパーセンテージ、塩基性ピークの合計のパーセンテージ、タンパク質濃度、T細胞活性化のパーセンテージ、PS20(w/v)のパーセンテージ、又はこれらの任意の組み合わせに基づいて定義される、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項30】
がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項31】
前記投与することが、皮下に投与することである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントの安定な水性医薬組成物を調製するための方法であって、
前記二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、前記VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、前記VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、前記VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、前記VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含み、
前記方法が、約10mg/mLの前記二重特異性BCMA/CD3抗体、約15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩、約8%(w/v)のスクロース、約20mg/mLのEDTA、及び約0.04%のポリソルベート(PS)20を含む組成物を合わせることを含み、前記安定な水性医薬組成物が約5.2のpHを有する、方法。
【請求項33】
二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントの安定な水性医薬組成物を調製するための方法であって、
前記二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、前記VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、前記VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、前記VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、前記VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含み、
前記方法が、約90mg/mLの前記二重特異性BCMA/CD3抗体、約15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩、約8%(w/v)のスクロース、約20mg/mLのEDTA、及び約0.04%のポリソルベート(PS)20を含む組成物を合わせることを含み、前記安定な水性医薬組成物が約5.2のpHを有する、方法。
【請求項34】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH1及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL1を含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を有するHC及び配列番号10のアミノ酸配列を有するLC1を含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項36】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を有するVH2及び配列番号18のアミノ酸配列を有するVL2を含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項37】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を有するHC2及び配列番号20のアミノ酸配列を有するLC2を含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項38】
前記二重特異性BCMA/CD3抗体がテクリスタマブである、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項39】
請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物及び使用説明書を含むキット。
【請求項40】
請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物を保持する容器を含む製造品。
【請求項41】
前記容器が、シリンジによって穿刺可能な栓を有するバイアルである、請求項40に記載の製造品。
【請求項42】
がんの処置において使用するための、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項43】
がんの処置のための医薬の調製において使用するための、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物。
【請求項44】
処置を必要とする対象において処置するための、請求項1又は2に記載の安定な水性医薬組成物の使用であって、前記安定な水性医薬組成物を処置を必要とする前記対象に投与することを含む、使用。
【請求項45】
前記投与が、皮下への投与である、請求項44に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年11月10日に出願の米国仮出願第63/277,885号の利益を主張するものである。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含み、当該配列表の全体を参照により本明細書に援用するものである。2022年11月8日に作成された上記XMLコピーは、「258199.061002_PRD4191WOPCT1_SL.xml」というファイル名で、サイズは22.6キロバイトである。
【0003】
(発明の分野)
二重特異性BCMA/CD3抗体を含む安定な医薬組成物を製剤化するための組成物及び方法が開示される。
【0004】
(発明の背景)
CD269及び腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)受容体スーパーファミリーメンバー17としても知られるB細胞成熟抗原(B-cell maturation antigen、BCMA)は、Bリンパ球(B細胞)の成熟及びその後の形質細胞への分化において重要な役割を果たす受容体である。BCMAは、2つのリガンド、すなわち増殖誘導リガンド(A proliferation-inducing ligand、APRIL、CD256)及びBAFFに結合する。APRIL及びBAFFは、フューリンによって容易に切断され、多くの細胞(B細胞[オートクリン]、単球、樹状細胞、T細胞、破骨細胞など)によって可溶性三量体として分泌されるII型膜貫通タンパク質であり、BCMA受容体に結合することができる。他の表面マーカーとは異なり、BCMAは、B系統細胞で排他的に発現され、形質細胞分化の間に選択的に誘導される。
【0005】
ヒトBCMA受容体は、分泌シグナル配列も有さず、N末端54アミノ酸の細胞外ドメインにある特定のプロテアーゼ切断部位も有さない、184アミノ酸のタンパク質である。しかしながら、N末端フラグメントは、膜貫通ドメインでBCMAタンパク質を切断するガンマセクレターゼ活性の結果として血清中の可溶性タンパク質として観察される。ガンマセクレターゼ処理の阻害は、ヒト初代B細胞におけるBCMA表面タンパク質の顕著な増加をもたらす。高レベルの可溶性BCMA(sBCMA)が、多発性骨髄腫の患者の血清試料(データは示さず)において測定され、血漿細胞数と相関した。
【0006】
BCMAのmRNA及びタンパク質は、出願人らによってMM細胞株及び多発性骨髄腫患者由来の全ての悪性形質細胞において普遍的に検出された(データは示さず)。同様に、多発性骨髄腫の細胞株及び患者試料において、BCMAは、通常の線維芽細胞及び上皮細胞にも発現される主要な形質細胞マーカー(CD138)と比較し、より安定的に発現する。BCMAの発現は、B細胞系統に対して選択的であり、免疫組織化学(immunohistochemistry、IHC)法によって判定したときに、浸潤形質細胞を除き、いずれの主要組織でも検出されなかった。まとめると、B細胞系統上のBCMAの選択的発現は、多発性骨髄腫のような血漿細胞障害を処置するためのT細胞媒介療法の魅力的な標的となる。
【0007】
T細胞リダイレクト殺傷は、多くの治療領域において望ましい作用様式である。一般的には、T細胞リダイレクト分子は、一方の部位が標的細胞上の表面抗原に結合し、他方の部位がT細胞表面抗原に結合する、少なくとも2つの抗原結合部位を有するよう操作される。T細胞表面抗原の中でも、TCRタンパク質複合体のヒトCD3イプシロンサブユニットは、T細胞殺傷をリダイレクトするように最も標的化されている。様々な二重特異性抗体形式が、前臨床研究及び臨床研究の両方において、T細胞リダイレクトを媒介することが示されている。
【0008】
がんにおけるBCMA及びCD3の両方の役割は十分に確立されており、これらの標的は併用療法にとって魅力的なものになっている。リンパ腫及び多発性骨髄腫の治療のための抗BCMA抗体の使用は、国際公開第2002066516号及び同第2010104949号に言及されている。BCMAに対する抗体は、例えば、Gras M-P.et al.Int Immunol.1997;7:1093-1106、国際公開第200124811号及び同第200124812号に記載されている。BCMA及びCD3に対する二重特異性抗体は、例えば、国際公開第2017/031104号に記載されている。
【0009】
抗BCMA/CD3抗体は有望な結果を示しているが、冷蔵温度(2~8℃)及び周囲温度で長期間安定であるそのような抗体を含む医薬組成物が当技術分野において依然として必要とされている。
【0010】
(発明の概要)
二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体の特定の製剤を含む安定な水性医薬組成物が本明細書に開示される。
【0011】
一態様では、本明細書では、安定な水性医薬組成物であって、
(a)約7.5mg/mL~約12.5mg/mLの濃度の二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントと、ここで、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含む、
(b)約10mM~約20mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、
(c)約6%(w/v)~約10%(w/v)のスクロースと、
(d)約16μg/mL~約24μg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、
(e)約0.01%~約0.07%のポリソルベート20と、
(f)約4.7~約5.7のpHと
を含む、安定な水性医薬組成物が提供される。
【0012】
一態様では、本明細書では、安定な水性医薬組成物であって、
(a)約76.5mg/mL~約103.5mg/mLの濃度の二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントと、ここで、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含む、
(b)約10mM~約20mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、
(c)約6%(w/v)~約10%(w/v)のスクロースと、
(d)約16μg/mL~約24μg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、
(e)約0.01%~約0.07%のポリソルベート20と、
(f)約4.7~約5.7のpHと
を含む、安定な水性医薬組成物が提供される。
【0013】
本明細書では、がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法もまた提供される。本方法は、本明細書に開示される安定な水性医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0014】
二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントの安定な水性医薬組成物を調製するための方法も提供される。二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含み得る。
【0015】
本方法は、例えば、約10mg/mL又は約90mg/mLの二重特異性BCMA/CD3抗体、約15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩、約8%(w/v)のスクロース、約20mg/mLのEDTA、並びに約0.04%のポリソルベート(PS)20を含む組成物を組み合わせることを含むことができ、ここで、安定な水性医薬組成物は、約5.2のpHを有する。
【0016】
また、本明細書では、本明細書に開示される安定な水性医薬組成物及びその使用説明書を含むキットも提供される。
【0017】
本明細書では、本明細書に開示される安定な水性医薬組成物を保持する容器を含む製造品も更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
【
図1】テクリスタマブアセテート及びヒスチジン緩衝液製剤についてのSE-HPLCによる純度を示すグラフを示す。
【0019】
(発明の詳細な記述)
本開示の組成物及び方法は、本開示の一部を形成する、添付の図面に関連して解釈される以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。開示される組成物及び方法は、本明細書に記載及び/又は示される特定の組成物及び方法に限定されないこと、及び、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を例によって説明することのみを目的とし、特許請求される組成物及び方法を限定することを意図しないことを理解されたい。
【0020】
特別な記述がない限り、動作に関する可能なメカニズム又は形態、あるいは改善の理由についてのあらゆる記載は、説明のみを意図したものであり、本開示の組成物及び方法は、そのようないかなる提案されている動作に関するメカニズム又は形態、あるいは改善の理由の是非によっても制限されない。
【0021】
数値の範囲が本明細書で列挙又は確立される場合、この範囲は、その端点、並びにその範囲内の全ての個々の整数及び有理数を含み、更に、これらの端点及び内部整数及び有理数の全ての種々の可能な組み合わせによって形成される、その中のより狭い範囲のそれぞれを含み、それらのより狭い範囲のそれぞれが明示的に列挙されたかのように、記載の範囲内の値のより大きい群の小群を形成する。数値の範囲が、記載される値よりも大きいと本明細書に記載される場合、その範囲はそれにもかかわらず有限であり、本明細書に記載される本発明の文脈内で動作可能である値によって、その上限が画定される。数値の範囲が、記載される値よりも小さいと本明細書に記載される場合、その範囲は、それにもかかわらず、ゼロでない値によって、その下限が画定される。本発明の範囲が、範囲を定義する際に列挙される特定の値に限定されることを意図しない。範囲はいずれも境界値を含み、組み合わせが可能である。
【0022】
値が、先行詞「約」を用いて近似値として表現される場合、その特定の値は、別の一実施形態を形成すると、理解されたい。特定の数値に関する言及は、文脈上その他に明記されない限り、少なくともその特定の値を含むものとする。
【0023】
また、明確さのために本明細書では別々の実施形態の文脈で説明される、本開示の組成物及び方法の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることも理解される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で説明される、本開示の組成物及び方法の種々の特徴が、別々に又は任意の部分的組み合わせで提供される場合もある。
【0024】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数を含むものとする。
【0025】
本明細書の態様に関する様々な用語が、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用される。別段の指示がない限り、このような用語には、当該技術分野におけるそれらの通常の意味が与えられるものとする。他の具体的に定義される用語は、本明細書で提供される定義と一致する様式で解釈されるものとする。
【0026】
本明細書で使用される「約」とは、数値範囲、カットオフ、又は特定の値に関連して使用される場合、列記された値が、列挙された値から最大10%変動し得ることを示すために使用される。本明細書で使用される数値の多くが実験的に決定されるため、当業者であれば、かかる決定が、異なる実験間で異なる場合があり、多くの場合、異なるであろうことを理解するはずである。本明細書で使用される値は、この固有の変動によって過度に制限されるとみなされるべきではない。したがって、用語「約」とは、規定値からの±10%以下の変動、±5%以下の変動、±1%以下の変動、±0.5%以下の変動、又は±0.1%以下の変動を包含するために使用される。
【0027】
同様に、用語「を含む(comprising)」とは、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び用語「からなる(consisting of)」によって包含される例を含むことを意図する。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語によって包含される例を含むことを意図する。文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、排他的又は排外的な意味とは対照的に、包括的な意味で、すなわち、「~を含むがこれらに限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【0028】
「抗体」という用語及び同様の用語は、広義に意図されており、モノクローナル抗体(マウス、ヒト、ヒト適合化、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体など)、抗体フラグメント、二重特異性又は多重特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、及び一本鎖抗体を含む、免疫グロブリン分子又はそのフラグメントを含む。
【0029】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4として更に細かく分類される。いずれの脊椎動物種の抗体軽鎖も、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、すなわちカッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てられ得る。
【0030】
「抗体フラグメント」とは、親完全長抗体の抗原結合特性を保持する免疫グロブリン分子の一部分を指す。例示的な抗体フラグメントは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2、及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2、及び3、重鎖可変領域(VH)、又は軽鎖可変領域(VL)である。抗体フラグメントには、VL、VH、定常軽鎖(CL)、及び定常重鎖1(CH1)ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメントと、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメントと、VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメントと、抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメントと、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)フラグメント(Ward et al.,Nature,341:544~546,1989)と、が含まれる。VHドメイン及びVLドメインは、操作され、合成リンカーを介して一緒に連結して様々な種類の一本鎖抗体設計を形成することができるが、VH/VLドメインは、分子内で対合するか、又はVHドメイン及びVLドメインが別々の一本鎖抗体構築物によって発現される場合には分子間で対合して、一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディなどの一価の抗原結合部位を形成する。例えば、国際公開第1998/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び同第1992/01047号に記載されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の技法を使用して得られ、これらのフラグメントは、完全長抗体の場合と同じ方法で、有用性についてスクリーニングされる。
【0031】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」によって中断された「フレームワーク」領域からなる。抗原結合部位は、様々な用語を用いて定義される:(i)VH内に3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL内に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)の相補性決定領域(CDR)は、配列多様性に基づいている(Wu and Kabat J Exp Med 132:211-50,1970;Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、及び(ii)VH内に3つ(H1、H2、H3)及びVL内に3つ(L1、L2、L3)の「超可変性領域」(「HVR」又は「HV」)は、Chothia及びLesk(Chothia and Lesk Mol Biol 196:901-17,1987)により定義される通り、構造において超可変性である、抗体可変ドメインの領域を指す。他の用語には、「IMGT-CDR」(Lefranc et al.,Dev Comparat Immunol 27:55-77,2003)及び「Specificity Determining Residue Usage」(SDRU)(Almagro Mol Recognit 17:132-43,2004)が含まれる。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(www_imgt_org)は、抗原結合部位についての標準的な番号付け及び定義を提供する。CDR、HV及びIMGTの概要説明の対応関係は、Lefranc et al.,Dev Comparat Immunol 27:55-77,2003に記載されている。
【0032】
「モノクローナル抗体」とは、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示し、又は二重特異性モノクローナル抗体の場合には、2つの別個のエピトープに対する二重結合特異性を示す。したがって、モノクローナル抗体とは、抗体重鎖からのC末端リシンの除去などの可能な周知の改変を除いて、各重鎖及び各軽鎖のアミノ酸組成が単一である抗体集団のことを指す。モノクローナル抗体は、抗体集団内で不均一なグリコシル化を有し得る。モノクローナル抗体は、単一特異性若しくは多重特異性、又は一価、二価、若しくは多価であり得る。二重特異性抗体は、モノクローナル抗体という用語に含まれる。
【0033】
「二重特異性」は、2つの異なる抗原、又は同じ抗原中の2つの異なるエピトープと特異的に結合する抗体を指す。二重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、カニクイザル(Macaca cynomolgus、cynomolgus、cyno)又はチンパンジー(Pan troglodytes)などの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有することができ、あるいは2つ以上の異なる抗原間で共有されるエピトープに結合することができる。
【0034】
「ヒト抗体」とは、ヒト被検体に投与される場合に、最小の免疫応答を有するように最適化された抗体を指す。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部を含む場合、その定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットである。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク若しくはCDRへの体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入、又はこれらの両方により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較したときにアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えばKnappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57-86に記載されるヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShi et al.,(2010)J Mol Biol 397:385-96及び国際公開第2009/085462号に記載される、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含むことができる。少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0035】
「ヒト化抗体」とは、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
【0036】
「単離された」とは、組み換え細胞などの分子が産生されるシステムに関係する他の成分から実質的に分離及び/又は精製されている、分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド又は抗体などのタンパク質)に加えて、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されたタンパク質を指す。「単離抗体」とは、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない抗体を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離された抗体を包含する。
【0037】
「BCMA/CD3二重特異性抗体」とは、BCMA及びCD3に特異的に結合する二重特異性抗体を指す。BCMA/CD3二重特異性抗体は、米国特許第10,072,088号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
「BCMA」は、ヒトB細胞成熟抗原を指し、これはCD269又はTNFRSF17としても公知である(UniProt Q02223)。BCMAの細胞外ドメインは、Q02223の残基1~54を包含する。ヒトBCMAは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
MLQMAGQCSQNEYFDSLLHACIPCQLRCSSNTPPLTCQRYCNASVTNSVKGTNAILWTCLGLSLIISLAVFVLMFLLRKINSEPLKDEFKNTGSGLLGMANIDLEKSRTGDEIILPRGLEYTVEECTCEDCIKSKPKVDSDHCFPLPAMEEGATILVTTKTNDYCKSLPAALSATEIEKSISAR(配列番号21)
【0039】
「CD3」とは、多分子T細胞受容体(T cell receptor、TCR)複合体の一部としてT細胞上で発現され、2つ又は4つの受容体鎖:CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ゼータ、及びCD3ガンマの会合から形成されたホモ二量体又はヘテロ二量体からなるヒトの抗原を指す。ヒトCD3イプシロンは、配列番号22のアミノ酸配列を含む。配列番号23は、CD3イプシロンの細胞外ドメインを示す。
MQSGTHWRVLGLCLLSVGVWGQDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMDVMSVATIVIVDICITGGLLLLVYYWSKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRI(配列番号22)
DGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMD(配列番号23)
【0040】
「エピトープ」とは、抗体が特異的に結合する抗原の一部分を指す。エピトープは、通常、アミノ酸又は多糖類側鎖などの部位の化学的に活性な(極性、非極性、又は疎水性など)表面基からなり、特定の三次元構造特性だけでなく、特定の電荷特性も有し得る。エピトープは、立体配座的な空間単位を形成する連続的な、かつ/又は不連続的なアミノ酸で構成され得る。不連続なエピトープでは、抗原の直鎖配列の異なる部分にあるアミノ酸が、タンパク質分子の折り畳みにより三次元空間でごく近接するようになる。
【0041】
「変異体」とは、例えば、置換、挿入、又は欠失などの1つ以上の改変により参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドとは異なるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0042】
「~と組み合わせて」とは、2つ以上の治療薬が、対象に、混合物で一緒に、単独の薬剤として同時に、又は単独の薬剤として任意の順序で順次に投与され得ることを意味する。
【0043】
「処置する」、「処置」、及び同様の用語は、治療処置、及び予防又は防止処置の両方を指し、症状の重症度及び/又は頻度を低減させること、症状及び/又は症状の根本原因を排除すること、症状の頻度若しくは可能性及び/又は症状の根本原因を低減させること、悪性腫瘍によって直接的に又は間接的に引き起こされた損傷を改善すること又は修復することを含む。処置は、処置を受けていない対象の予想生存期間と比較して、生存期間を延長させることも含む。処置される対象には、容態若しくは疾患に罹患している対象、並びに容態又は疾患に易罹患性の対象、又は容態若しくは疾患が防止される対象が含まれる。
【0044】
「治療有効量」とは、必要な投与量で必要な期間にわたって所望の処置を達成するのに有効な開示される組成物の量を指す。治療有効量は、対象の病状、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに対象に所望の応答を誘発する併用療法の能力によって異なり得る。治療有効量の例示的な指標としては、例えば、患者の健康状態の改善、腫瘍量の減少、腫瘍の成長の停止若しくは遅延、及び/又は体内の他の場所へのがん細胞の転移の不在が挙げられる。
【0045】
「医薬組成物」とは、有効成分と薬学的に許容される担体とを含む組成物を指す。
【0046】
「医薬的に許容される担体」又は「賦形剤」は、対象に対して毒性のない、活性成分以外の医薬組成物中の成分を指す。
【0047】
用語「がん」は、本明細書で使用される場合、異常細胞の急速かつ制御されない増殖を特徴とする疾患として定義される。がん細胞は、局所的に、又は血流及びリンパ系を介して身体の他の部分に拡散し得る。ある特定の実施形態では、がんは、血液悪性腫瘍又は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance、MGUS)、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia、ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma、BL)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)、マントル細胞リンパ腫(mantle-cell lymphoma、MCL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス(AL)、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、B細胞悪性腫瘍、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、毛状細胞白血病(hairy cell leukemia、HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(marginal zone B-cell lymphoma、MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(mucosa-associated lymphatic tissue、MALT)、形質細胞白血病、未分化大細胞リンパ腫(anaplastic large-cell lymphoma、ALCL)、白血病、又はリンパ腫である。
【0048】
「腫瘍細胞」又は「がん細胞」とは、インビボ、エクスビボ、又は組織培養のいずれかにおいて、自然発生的な又は誘発された表現型の変化を有するがん性、前がん性、又は形質転換細胞を指す。これらの変化は、必ずしも新たな遺伝物質の取り込みを伴うものではない。形質転換は、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の組み込み、外因性核酸の取り込みにより発生する場合があり、あるいは自然発生的に又は発がん物質に曝露した後に発生し、それによって内因性の遺伝子を変異させる場合もある。形質転換/がんは、インビトロ、インビボ、及びエクスビボにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣の形成、増殖、悪性病変、腫瘍特異的マーカーレベルの調節、浸潤性、ヌードマウスなどの好適な動物宿主における腫瘍の増殖などによって例示される。
【0049】
「T細胞リダイレクト治療薬」とは、2つ以上の結合領域を含有する分子を指し、ここで、結合領域のうちの1つは、標的細胞又は組織上の細胞表面抗原に特異的に結合し、及びここで、分子の第2の結合領域は、T細胞抗原に特異的に結合する。細胞表面抗原の例には、BCMAなどの腫瘍関連抗原が含まれる。T細胞抗原の例には、例えば、CD3が含まれる。この二重/多重標的結合能力は、T細胞を標的細胞又は組織に動員して、標的細胞又は組織の根絶をもたらす。
【0050】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」としては、あらゆる脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳類及び非哺乳類が挙げられる。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0051】
説明
本明細書全体を通して、抗体定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、本明細書に別途明示的に記載されない限り、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載のEUインデックスに従う。抗体定常鎖の番号付けは、例えば、ImMunoGeneTicsのウェブサイトで、IMGT ScientificチャートのIMGT Webリソースに見出すことができる。
【0052】
従来の1文字及び3文字のアミノ酸コードを、表1に示す通りに本明細書で使用する。
【0053】
【0054】
BCMA×CD3二重特異性抗体及びその使用
本発明は、少なくとも部分的に、二重特異性BCMA/CD3抗体である治療剤テクリスタマブが、以前の抗がん治療薬による処置に対して再発性又は難治性である対象における多発性骨髄腫を処置するために使用できるという発見に基づく。
【0055】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、B細胞の形質細胞への分化に関与する細胞膜結合腫瘍壊死因子受容体ファミリーメンバーである。BCMAの発現は、B細胞系列に制限され、その系統では、それは、主に胚中心の濾胞内領域内、及び分化した形質細胞及び形質芽球上で発現される。BCMAは、ナイーブ及びメモリーB細胞上には実質的に存在しない(Tai and Anderson,Immunotherapy 7:1187-99,2015)。
【0056】
よって、二重特異性BCMA/CD3抗体を含む安定な水性医薬組成物が本明細書に開示される。
【0057】
一態様では、本明細書では、安定な水性医薬組成物であって、
(a)約7.5mg/mL~約12.5mg/mLの濃度の二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントと、ここで、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含む、
(b)約10mM~約20mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、
(c)約6%(w/v)~約10%(w/v)のスクロースと、
(d)約16μg/mL~約24μg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、
(e)約0.01%~約0.07%のポリソルベート20と、
(f)約4.7~約5.7のpHと
を含む、安定な水性医薬組成物が提供される。
【0058】
別の一般的態様では、本明細書では、安定な水性医薬組成物であって、
(a)約76.5mg/mL~約103.5mg/mLの濃度の二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントと、ここで、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含む、
(b)約10mM~約20mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、
(c)約6%(w/v)~約10%(w/v)のスクロースと、
(d)約16μg/mL~約24μg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、
(e)約0.01%~約0.07%のポリソルベート20と、
(f)約4.7~約5.7のpHと
を含む、安定な水性医薬組成物が提供される。
【0059】
ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH1及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL1を含む。ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するHC1及び配列番号10のアミノ酸配列を有するLC1を含む。ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を有するVH2及び配列番号18のアミノ酸配列を有するVL2を含む。ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を有するHC2及び配列番号20のアミノ酸配列を有するLC2を含む。二重特異性BCMA/CD3抗体は、例えば、テクリスタマブであり得る。
【0060】
ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、約7mg/mL~約13mg/mL、約7.5mg/mL~約12.5mg/mL、約8mg/mL~約12mg/mL、又は約9mg/mL~約11mg/mLの濃度を有する。二重特異性BCMA/CD3抗体は、例えば、約7mg/mL、約7.5mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約12.5mg/mL、若しくは約13mg/mL、又はその間の任意の値の濃度を有し得る。好ましい実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、約10mg/mLの濃度を有する。
【0061】
ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、約76.5mg/mL~約103.5mg/mL、約81mg/mL~約99mg/mL、約85mg/mL~約95mg/mL、又は約87mg/mL~約93mg/mLの濃度を有する。二重特異性BCMA/CD3抗体は、例えば、約76.5mg/mL、約77mg/mL、約78mg/mL、約79mg/mL、約80mg/mL、約81mg/mL、約82mg/mL、約83mg/mL、約84mg/mL、約85mg/mL、約86mg/mL、約87mg/mL、約88mg/mL、約89mg/mL、約90mg/mL、約91mg/mL、約92mg/mL、約93mg/mL、約94mg/mL、約95mg/mL、約96mg/mL、約97mg/mL、約98mg/mL、約99mg/mL、約100mg/mL、約101mg/mL、約102mg/mL、約103mg/mL、若しくは約103.5mg/mL、又はその間の任意の値の濃度を有し得る。好ましい実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、約90mg/mLの濃度を有する。
【0062】
ある特定の実施形態では、組成物は、約10mM~約20mM、約12mM~約18mM、又は約14mM~約16mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩を含む。組成物は、例えば、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、若しくは約20mM、又はその間の任意の値のアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩を含み得る。好ましい実施形態では、組成物は、約15mMのアセテート又は薬学的に許容される酢酸塩を含む。
【0063】
ある特定の実施形態では、組成物は、約6%(w/v)~約10%(w/v)又は約7%(w/v)~約9%(w/v)のスクロースを含む。組成物は、例えば、約6%(w/v)、約7%(w/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、若しくは約10%(w/v)、又はこれらの間の任意の値のスクロースを含み得る。
【0064】
ある特定の実施形態では、組成物は、約16mg/mL~約24mg/mL又は約18mg/mL~約22mg/mLのEDTAを含む。組成物は、例えば、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、若しくは約24mg/mL、又はこれらの間の任意の値のEDTAを含み得る。好ましい実施形態では、組成物は、約20mg/mLのEDTAを含む。
【0065】
ある特定の実施形態では、組成物は、約0.01%~約0.07%、約0.02%~約0.06%、又は約0.03%~約0.05%のポリソルベート20(PS 20)を含む。組成物は、例えば、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、若しくは約0.07%、又はその間の任意の値のPS 20を含み得る。好ましい実施形態では、組成物は、約0.04%のPS 20を含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、組成物のpHは、約4.7~約5.7、約4.8~約5.6、約4.9~約5.5である。組成物のpHは、例えば、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、若しくは約5.7、又はその間の任意の値であり得る。好ましい実施形態では、組成物のpHは、約5.2である。
【0067】
医薬品(drug product、DP)とも呼ばれる本開示の水性医薬組成物の安定性は、経路長BCMA×CD3抗体及び本明細書で提供されるDPの他の構成成分(限定されるものではないが、アセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩、スクロース、PS20、及びEDTAなど)の特定の量又は割合、並びに様々な因子の評価に基づいて判定される。これらの因子としては、溶液の色、pH、濁度、純度のパーセンテージ、肉眼では見えない粒子の数、新たなピークのパーセンテージ、主成分のパーセンテージ、高分子量種(HMWS)のパーセンテージ、低分子量種(LMWS)のパーセンテージ、酸性ピークの合計のパーセンテージ、塩基性ピークの合計のパーセンテージ、タンパク質濃度、T細胞活性化のパーセンテージ、及び/又はPS20のパーセンテージが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書に開示される安定なDPは、本明細書に列挙される全ての因子を必要とすると解釈されるべきではなく、むしろそれらの因子のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ以上を必要とすると解釈されるべきである。いくつかの実施形態では、安定な開示されたDPは、本明細書において以下に詳細に列挙される因子のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又はそれ以上について以下の結果を示す。好ましい実施形態では、安定なDPは、本明細書において以下に詳細に列挙される因子のほとんどについて以下の結果を示す。最も好ましい実施形態では、安定なDPは、本明細書において以下に詳細に列挙される全ての因子について以下の結果を示す。
【0069】
溶液の色
DP溶液の色を監視し、溶液の外観が放出時及び保存寿命にわたって以前のバッチと一致していることを検証するための評価を行うことができる。DP溶液の色は、安定性を反映し得る。一実施形態では、DPの安定性は、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)2.2.2、Degree of Coloration of Liquids European Pharmacopoeia(Ph.Eur.)第10版モノグラフ番号20202、2019年7月に記載されているように、無色から約BY2以下、約BY4以下、約B2以下、約B4以下、約Y2以下、又は約Y4以下に及ぶ溶液の色を有する場合として定義される。
【0070】
一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、無色から約BY2以下、約B2以下、約Y2以下の溶液の色を有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、無色から約BY4以下、約B4以下、約Y4以下の溶液の色を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、無色から約BY5以下、約B5以下、約Y5以下の溶液の色を有することとして定義される。
【0071】
pH
DP溶液のpHを測定することにより、pHが放出時及び保存寿命にわたって以前のDPバッチと一致していることを確認することができる。一実施形態では、DPの安定性は、そのpHが約4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9又は7.0である場合として定義される。一実施形態では、DPのpHは、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約5.2である。一実施形態では、pHは、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約4.7~約5.7の範囲である。好ましい実施形態では、DPの安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、そのpHが約4.8~約5.6の範囲である場合として定義される。最も好ましい実施形態では、DPの安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、そのpHが約4.9~約5.5の範囲である場合として定義される。
【0072】
濁度
濁度は、以前のDPバッチとの一貫性を保証するためにDP溶液中の粒子の存在を測定することを可能にし、放出時及び保存寿命にわたって適用可能な公定書準拠ガイダンスを可能にする。一実施形態では、DPの安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、その濁度値が約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の比濁分析濁度単位(nephelometric turbidity unit、NTU)である場合として定義される。一実施形態では、DPの安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、その濁度値が約18NTU以下である場合として定義される。好ましい実施形態では、DPの安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、その濁度値が約13NTU以下である場合として定義される。最も好ましい実施形態では、DPの安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、その濁度値が約8NTU以下である場合として定義される。
【0073】
粒子分析
DPの安定性は、肉眼では見えない粒子の平均数に基づく粒子汚染の特定の閾値に設定される。一実施形態では、試験されるDP単位中に存在する粒子の平均数は、10μm以上の粒径について容器当たり100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、又は6000を超えるべきではない。一実施形態では、試験されるDP単位中に存在する粒子の平均数は、10μm以上の粒径について容器当たり6000を超えるべきではない。一実施形態では、試験されるDP単位中に存在する粒子の平均数は、25μm以上の粒径について容器当たり100、200、300、400、500、又は600を超えるべきではない。一実施形態では、試験されるDP単位中に存在する粒子の平均数は、25μm以上の粒径について容器当たり600を超えるべきではない。
【0074】
cSDS条件
キャピラリSDS-PAGE(cSDS)は、ゲルベースのSDS-PAGEと同様に、分子量に基づいて変性タンパク質を分離する方法である。このプロセスは、DP純度を定量化し、放出時及び保存寿命にわたってその安定性を監視することを可能にする。
【0075】
一実施形態では、DP安定性は、cSDSが、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、還元条件下又は非還元条件下で行われる場合のSDS変数(例えば、純度パーセント又は新たなピークの存在)の様々な結果に基づいて定義される。
【0076】
一実施形態では、DP安定性は、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%若しくは100%に等しい、あるいはこれらの間の任意の範囲の純度パーセントを有することとして定義される。
【0077】
一実施形態では、DP安定性は、未処理の参照材料と比較して、0.5%、0.8%、0.9%、1.0%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%を超える、又は2%を超える新たなピークをcSDS結果で示さないこととして定義される。
【0078】
一実施形態では、DP安定性は、参照材料と比較して、約90%以上の純度パーセントを有し、1.5%を超える新たなピークがないこととして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、参照材料と比較して、約95%以上の純度パーセントを有し、1.2%を超える新たなピークがないこととして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、参照材料と比較して、約97%以上の純度パーセントを有し、1.0%を超える新たなピークがないこととして定義される。
【0079】
安定性と一致するサイズ排除HPLC(SE-HPLC)結果
SE-HPLC手順は、DPの純度を評価し、放出時及び保存寿命にわたって非変性条件下でその安定性を監視することを可能にする。
【0080】
一実施形態では、DP安定性は、主成分(MC)、高分子量種(HMWS)、又は低分子量種(LMWS)などのSE-HPLC変数の様々な結果に基づいて、DPを約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に定義される。
【0081】
一実施形態では、DP安定性は、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは約100%に等しい、又はこれらの間の任意の範囲のMCを有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約90%以上のMCを有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約95%以上のMCを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約97%以上のMCを有することとして定義される。
【0082】
一実施形態では、DP安定性は、約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、又はそれらの間の任意の範囲のHMWSを有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約10%以下のHMWSを有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約5%以下のHMWSを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約3%以下のHMWSを有することとして定義される。
【0083】
一実施形態では、DP安定性は、約0.1%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%のLMWSを有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約5%以下のLMWSを有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約2%以下のLMWSを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約1%以下のLMWSを有することとして定義される。
【0084】
キャピラリ等電点電気泳動(cIEF)
cIEFは、等電ゲル電気泳動(IEF)法と同様に、全体の電荷又は等電点(pI)に基づいてタンパク質を分離する。この手順は、放出時及び保存寿命にわたって医薬品の電荷ベースのアイソフォームの分布を監視することを可能にする。一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の、主ピーク(Main Peak、MP)、酸性ピークの合計又は塩基性ピークの合計などのcIEF変数の様々な結果に基づいて定義される。
【0085】
一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%、又はこれらの間の任意の範囲のMPを有するcIEFを有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後に及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後にMP≧60%のcIEFを有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後に及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、MP≧65%のcIEFを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、MP≧70%のcIEFを有することとして定義される。
【0086】
一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、又はこれらの間の任意の範囲になる酸性ピークの合計を有するcIEFを有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に合計≦40%になる酸性ピークを有するcIEFを有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年保存した後に合計約≦30%になる酸性ピークを有するcIEFを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計約≦25%になる酸性ピークを有するcIEFを有することとして定義される。
【0087】
一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%若しくは20%又はそれらの間の任意の範囲になる塩基性ピークを有するcIEFを有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計約15%以下になる塩基性ピークを有するcIEFを有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に合計約10%以下になる塩基性ピークの合計を有するcIEFを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に合計約8%以下になる塩基性ピークの合計を有するcIEFを有することとして定義される。
【0088】
タンパク質濃度
DPのタンパク質濃度は、それが出荷時及び保存寿命にわたって以前のDPバッチと一致することを検証可能にする。タンパク質濃度は、280nm(A280)での医薬品溶液のUV光吸光度を測定することによって定量化することができる。
【0089】
10mg/mLのDP製剤
一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、又はそれらの間の任意の値のタンパク質濃度を有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約7mg/mL~約13mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約8mg/mL~約12mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約9mg/mL~11mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。
【0090】
90mg/mLのDP製剤
一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、75mg/mL、76mg/mL、77mg/mL、78mg/mL、79mg/mL、80mg/mL、81mg/mL、82mg/mL、83mg/mL、84mg/mL、85mg/mL、86mg/mL、87mg/mL、88mg/mL、89mg/mL、90mg/mL、91mg/mL、92mg/mL、93mg/mL、94mg/mL、95mg/mL、96mg/mL、97mg/mL、98mg/mL、99mg/mL、100mg/mL、101mg/mL、102mg/mL、103mg/mL、104mg/mL若しくは105mg/mL、又はその間の任意の値のタンパク質濃度を有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約81mg/mL~約99mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約85mg/mL~約95mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約87mg/mL~93mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。
【0091】
ペプチドマッピング
酸化、脱アミド化、及び異性化などの翻訳後修飾(post-translational modification、PTM)は、抗体の構造内で検出され得る酵素的修飾である。いくつかの実施形態では、PD安定性は、抗体中のPTMのレベルに基づいて評価される。試験品を酵素消化してペプチドセグメントを得る。次いで、これらのペプチドを、例えば質量分析(mass spectrometry、MS)、タンデム質量分析(tandem mass spectrometry、MS-MS)又は超高速液体クロマトグラフィー質量分析(Ultra High-Performance Liquid Chromatography Mass Spectroscopy、UPLC-MS)によって評価する。分析した各ペプチド配列を、抗体構造全体の中のその既知の位置に対して同定する。同定したペプチド配列の測定質量をその予想質量と比較することによって、翻訳後修飾を測定する。
【0092】
医薬品の効力
in vitroでのT細胞活性化アッセイは、DP安定性のレベルを評価することを可能にする。この活性化は、活性化T細胞応答エレメント(NFAT-RE)媒介性ルミネセンスアッセイの核因子を使用することによって評価することができるが、これに限定されない。
【0093】
BCMA×CD3によるT細胞活性化
一実施形態では、DP安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照と比較して、約40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、若しくは160%、又はこれらの間の任意の範囲のBMCA×CD3媒介性T細胞活性化活性を有することとして定義される。一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照と比較して、約50%~約150%の範囲のBMCA×CD3媒介性T細胞活性化活性を有することとして定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照と比較して、約60%~約140%の範囲のBMCA×CD3媒介性T細胞活性化活性を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照と比較して、約80%~約120%の範囲のBMCA×CD3媒介性T細胞活性化活性を有することとして定義される。
【0094】
ポリソルベート20(PS20)
一実施形態では、DP安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の約0.005%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、又はこれらの間の任意の範囲の重量対体積パーセンテージでのPS20濃度によって定義される。一実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の約0.02%~約0.1%のPS20濃度によって定義される。一実施形態では、DP安定性は、約0.01%~約0.07%のPS20濃度によって定義される。好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の約0.02%~約0.06%のPS20濃度によって定義される。最も好ましい実施形態では、DP安定性は、約25℃の温度で約12ヶ月以上DPを保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の約0.03%~約0.05%のPS20濃度によって定義される。
【0095】
安定な水性医薬組成物の総体積
10mg/mLの製剤
一実施形態では、安定な水性医薬組成物(又はDP)の総体積は、約5mL~約10mLの範囲である。一実施形態では、安定な水性医薬組成物(又はDP)の総体積は、約0.5mL~約20mL、約1mL~約15mL、約5mL~約10mL、又は約6mL~約8mLの範囲である。一実施形態では、安定な水性医薬組成物の総体積は、約0.5mL、0.6mL、0.7mL、0.8mL、0.9mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、18mL、19mL、20mL、25mL、若しくは30mL、又はその間の任意の範囲である。一実施形態では、安定な水性医薬組成物の総体積は2mLである。
【0096】
90mg/mLの製剤
一実施形態では、安定な水性医薬組成物(又はDP)の総体積は、約5mL~約10mLの範囲である。一実施形態では、安定な水性医薬組成物(又はDP)の総体積は、約0.5mL~約20mL、約1mL~約15mL、約5mL~約10mL、又は約6mL~約8mLの範囲である。一実施形態では、安定な水性医薬組成物の総体積は、約0.5mL、0.6mL、0.7mL、0.8mL、0.9mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、18mL、19mL、20mL、25mL、若しくは30mL、又はその間の任意の範囲である。一実施形態では、安定な水性医薬組成物の総体積は、3.5mLである。
【0097】
方法
本明細書では、がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法が提供される。本方法は、本明細書に開示の安定な水性医薬組成物を対象に投与することを含む。ある特定の実施形態では、投与は静脈内である。
【0098】
がん
いくつかの実施形態では、がんは、血液悪性腫瘍又は固形腫瘍である。
【0099】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance、MGUS)、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia、ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma、BL)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)、マントル細胞リンパ腫(mantle-cell lymphoma、MCL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス(AL)、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、B細胞悪性腫瘍、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、毛状細胞白血病(hairy cell leukemia、HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(marginal zone B-cell lymphoma、MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(mucosa-associated lymphatic tissue、MALT)、形質細胞白血病、未分化大細胞リンパ腫(anaplastic large-cell lymphoma、ALCL)、白血病、又はリンパ腫である。
【0100】
好ましい実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、対象は、新たに診断された多発性骨髄腫を有する。いくつかの実施形態では、対象は、多発性骨髄腫又は他の血液悪性腫瘍を治療するために使用される治療薬などの、以前の抗がん治療による治療に対して再発性又は難治性である。
【0101】
いくつかの実施形態では、対象は、THALOMID(登録商標)(サリドマイド)、REVLIMID(登録商標)(レナリドミド)、POMALYST(登録商標)(ポマリドミド)、VELCADE(登録商標)(ボルテゾミブ)、NINLARO(イキサゾミブ)、KYPROLIS(登録商標)(カルフィルゾミブ)、FARADYK(登録商標)(パンビノスタット)、AREDIA(登録商標)(パミドロネート)、ZOMETA(登録商標)(ゾレドロン酸)、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)、エロトズマブ又はメルファラン、Xpovio(登録商標)(セリネクソール)、Venclexta(登録商標)(ベネトクラックス)、GSK916、CAR-T療法、他のBCMAに対する療法、などの1つ又は2つ以上の治療又は療法による治療に対して難治性又は再発性である。
【0102】
様々な定性的及び/又は定量的方法が、疾患の再発性又は難治性を判定するために使用できる。関連し得る症状は、例えば、患者の健康状態の低下若しくはプラトー状態、固形腫瘍に関連する様々な症状の復元若しくは悪化、及び/又は1つの場所から他の臓器、組織、若しくは細胞への体内のがん性細胞の転移である。
【0103】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、セリネクソール、ベネトクラックス、抗CD38抗体、レナリノミド、ボルテゾミブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、エロトズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、若しくはサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせによる治療に対して再発性又は難治性である。
【0104】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、高リスク多発性骨髄腫である。高リスク多発性骨髄腫を有する対象は、早期に再発し、不良予後及び転帰を有することが知られている。高リスク多発性骨髄腫を有すると分類され得る対象は、以下の1つ又は2つ以上の細胞遺伝学的異常を有する:t(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、del17p、1qAmp、t(4;14)(p16;q32)及びt(14;16)(q32;q23)、t(4;14)(p16;q32)及びdel17p、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p、又はt(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、及びdel17p。いくつかの実施形態では、高リスク多発性骨髄腫を有する対象は、以下:t(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、del17p、1qAmp、t(4;14)(p16;q32)及びt(14;16)(q32;q23)、t(4;14)(p16;q32)及びdel17p、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p;若しくはt(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p、又はこれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の染色体異常を有し得る。
【0105】
細胞遺伝学的異常は、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(fluorescent in situ hybridization、FISH)によって検出され得る。染色体転座において、がん遺伝子は、染色体14q32上のIgH領域に転座され、これらの遺伝子の制御不全がもたらされる。t(4;14)(p16;q32)は、線維芽細胞成長因子受容体3(fibroblast growth factor receptor 3、FGFR3)及び多発性骨髄腫SETドメイン含有タンパク質(multiple myeloma SET、MMSET)(別名、WHSC1/NSD2)の転座を伴い、t(14;16)(q32;q23)は、MAF転写因子C-MAFの転座を伴う。17p欠失(del17p)は、p53遺伝子座の喪失を伴う。
【0106】
染色体再構成は、周知の方法、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、核型分析、パルスフィールドゲル電気泳動、又はシークエンシングを使用して特定することができる。
【0107】
二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントの安定な水性医薬組成物を調製するための方法であって、ここで、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含む、LC1可変領域2(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12、及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含む、並びにLC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15、及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、
を含み、方法が、約10mg/mL又は約90mg/mLの二重特異性BCMA/CD3抗体と、約15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、約8%(w/v)のスクロースと、約20mg/mLのEDTAと、約0.04%のポリソルベート(PS)20とを含む組成物を合わせることを含み、ここで、安定な水性医薬組成物が、約5.2のpHを有する、方法も本明細書で提供される。
【0108】
ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH1及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL1を含む。ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するHC1及び配列番号10のアミノ酸配列を有するLC1を含む。ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を有するVH2及び配列番号18のアミノ酸配列を有するVL2を含む。ある特定の実施形態では、二重特異性BCMA/CD3抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を有するHC2及び配列番号20のアミノ酸配列を有するLC2を含む。二重特異性BCMA/CD3抗体は、例えば、テクリスタマブであり得る。
【0109】
本明細書に開示される安定な水性医薬組成物は、キット、容器、パック、ディスペンサー、又はバイアルに包装されることができる。
【0110】
本開示の安定な水性医薬及びその使用説明書を含むキットも本明細書で提供される。
【0111】
本開示の安定な水性医薬組成物を保持する容器を含む製造品も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、容器は、シリンジによって穿刺可能な栓を有するバイアルである。
【0112】
実施形態
本開示の技術の例示的な実施形態が本明細書で提供される。これらの実施形態は、例示のみを目的としており、本開示又は本開示に添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0113】
実施形態1は、安定な水性医薬組成物であって、
a)約7.5mg/mL~約12.5mg/mLの濃度の二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントと、ここで、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含む、
b)約10mM~約20mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、
c)約6%(w/v)~約10%(w/v)のスクロースと、
d)約16μg/mL~約24μg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、
e)約0.01%~約0.07%のポリソルベート20と、
f)約4.7~約5.7のpHと
を含む、安定な水性医薬組成物である。
【0114】
実施形態1aは、安定な水性医薬組成物であって、
a)約76.5mg/mL~約103.5mg/mLの濃度の二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントと、ここで、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含む、
b)約10mM~約20mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、
c)約6%(w/v)~約10%(w/v)のスクロースと、
d)約16μg/mL~約24μg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、
e)約0.01%~約0.07%のポリソルベート20と、
f)約4.7~約5.7のpHと
を含む、安定な水性医薬組成物である。
【0115】
実施形態2は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH1と、配列番号8のアミノ酸配列を有するVL1とを含む、実施形態1又は実施形態1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0116】
実施形態3は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を有するHCと、配列番号10のアミノ酸配列を有するLC1とを含む、実施形態1又は実施形態1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0117】
実施形態4は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を有するVH2と、配列番号18のアミノ酸配列を有するVL2とを含む、実施形態1又は実施形態1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0118】
実施形態5は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を有するHC2と、配列番号20のアミノ酸配列を有するLC2とを含む、実施形態1又は実施形態1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0119】
実施形態6は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、テクリスタマブである、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0120】
実施形態7は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、約8mg/mL~約12mg/mLの濃度を有する、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0121】
実施形態8は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、約9mg/mL~約11mg/mLの濃度を有する、実施形態7に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0122】
実施形態9は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、約10mg/mLの濃度を有する、実施形態8に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0123】
実施形態10は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、約85mg/mL~約95mg/mLの濃度を有する、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0124】
実施形態11は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、約87mg/mL~約93mg/mLの濃度を有する、実施形態10に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0125】
実施形態12は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、約90mg/mLの濃度を有する、実施形態11に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0126】
実施形態13は、約12mM~約18mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩を含む、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0127】
実施形態14は、約14mM~約16mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩を含む、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0128】
実施形態15は、約15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩を含む、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0129】
実施形態16は、約7%(w/v)~約9%(w/v)のスクロースを含む、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0130】
実施形態17は、組成物が約8%(w/v)のスクロースを含む、実施形態16に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0131】
実施形態18は、約18μg/mL~約22μg/mLのEDTAを含む、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0132】
実施形態19は、約20μg/mLのEDTAを含む、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0133】
実施形態20は、約0.02%~約0.06%のPS-20を含む、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0134】
実施形態21は、約0.03~約0.05%のPS-20を含む、実施形態20に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0135】
実施形態22は、約0.04%のPS-20を含む、実施形態21に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0136】
実施形態23は、pHが約4.8~約5.6である、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0137】
実施形態24は、pHが約4.9~約5.5である、実施形態23に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0138】
実施形態25は、pHが約5.2である、実施形態24に記載の安定な水性医薬組成物である。
【0139】
実施形態26は、10mg/mLの二重特異性BCMA/CD3抗体、15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩、8%(w/v)のスクロース、20μg/mLのEDTA、0.04%のPS 20、及び5.2のpHを含む、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0140】
実施形態27は、約2~8℃の温度で少なくとも2年間安定である、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0141】
実施形態28は、安定性が、溶液の色、pH、濁度、純度のパーセンテージ、新たなピークのパーセンテージ、主成分のパーセンテージ、高分子量種(HWMS)のパーセンテージ、低分子量種(LMWS)のパーセンテージ、酸性ピークの合計のパーセンテージ、塩基性ピークの合計のパーセンテージ、タンパク質濃度、T細胞活性化のパーセンテージ、PS 20(w/v)のパーセンテージ、又はこれらの任意の組み合わせに基づいて定義される、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0142】
実施形態29は、がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物を対象に投与することを含む、方法である。
【0143】
実施形態30は、投与することが、皮下に投与することである、実施形態29に記載の方法である。
【0144】
実施形態31は、二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントの安定な水性医薬組成物を調製するための方法であって、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含み、
方法が、約10mg/mLの二重特異性BCMA/CD3抗体、約15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩、約8%(w/v)のスクロース、約20mg/mLのEDTA、及び約0.04%のポリソルベート(PS)20を含む組成物を合わせることを含み、安定な水性医薬組成物が約5.2のpHを有する、方法である。
【0145】
実施形態31aは、二重特異性B細胞成熟抗原(BCMA)/分化抗原群3(CD3)抗体又はその抗原結合フラグメントの安定な水性医薬組成物を調製するための方法であって、二重特異性BCMA/CD3抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(1)HC1可変領域1(VH1)を含む第1の重鎖(HC1)と、
ここで、VH1が、それぞれ配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(2)LC1可変領域(VL1)を含む第1の軽鎖(LC1)と、
ここで、VL1が、それぞれ配列番号4、5及び6のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
(3)HC2可変領域2(VH2)を含む第2の重鎖(HC2)と、
ここで、VH2が、それぞれ配列番号11、12及び13のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む、
(4)LC2可変領域2(VL2)を含む第2の軽鎖(LC2)と、
ここで、VL2が、それぞれ配列番号14、15及び16のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む、
を含み、
方法が、約90mg/mLの二重特異性BCMA/CD3抗体と、約15mMのアセテート及び/又は薬学的に許容される酢酸塩と、約8%(w/v)のスクロースと、約20mg/mLのEDTAと、約0.04%のポリソルベート(PS)20と、を含む組成物を合わせることを含み、安定な水性医薬組成物が、約5.2のpHを有する、方法である。
【0146】
実施形態32は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH1と、配列番号8のアミノ酸配列を有するVL1とを含む、実施形態31又は31aに記載の方法である。
【0147】
実施形態33は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を有するHCと、配列番号10のアミノ酸配列を有するLC1とを含む、実施形態31又は31aに記載の方法である。
【0148】
実施形態34は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を有するVH2と、配列番号18のアミノ酸配列を有するVL2とを含む、実施形態31又は31aに記載の方法である。
【0149】
実施形態35は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を有するHC2と、配列番号20のアミノ酸配列を有するLC2とを含む、実施形態31又は31aに記載の方法である。
【0150】
実施形態36は、二重特異性BCMA/CD3抗体が、テクリスタマブである、実施形態31又は31aに記載の方法である。
【0151】
実施形態37は、実施形態1に記載の安定な水性医薬組成物及び使用説明書を含むキットである。
【0152】
実施形態38は、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物を保持する容器を含む製造品である。
【0153】
実施形態39は、容器が、シリンジによって穿刺可能な栓を有するバイアルである、実施形態38に記載の製造品である。
【0154】
実施形態40は、がんの処置において使用するための、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0155】
実施形態41は、がんの処置のための医薬の調製において使用するための、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物である。
【0156】
実施形態42は、処置を必要とする対象において処置するための、実施形態1又は1aに記載の安定な水性医薬組成物の使用であって、安定な水性医薬組成物を処置を必要とする対象に投与することを含む、使用である。
【0157】
実施形態43は、投与が、皮下への投与である、実施形態42に記載の使用である。
【実施例】
【0158】
本明細書において開示した実施形態のいくつかを更に説明するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は、例示を目的とするものであって、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0159】
本明細書で使用される分析試験の説明
分析試験-一般特性評価
溶液の色
溶液の色を医薬品について監視して外観を評価し、放出時及び貯蔵寿命にわたって以前のバッチと確実に一致するようにする。溶液の色は、製品安定性の指標ともなり得る。溶液の色を判定するために、試験試料を規定の参照溶液のセットと視覚的に比較する。
【0160】
規定量の液体内容物を、参照溶液と同じ寸法の予め刻み目を入れたアンプルに移す。次に、アンプルの内容物を欧州薬局方の色度参照溶液と視覚的に比較する。色の度合いは、白色背景に対して観察される拡散昼光で判定される。
【0161】
溶液材料の色及び方法
材料及び方法は、欧州薬局方2.2.2、Degree of Coloration of Liquids European Pharmacopoeia(Ph.Eur.)第10版モノグラフ番号20202、2019年7月に記載されている。簡単に説明すると、試験品を、B(茶色)、BY(茶色がかった黄色)、及びY(黄色)色度参照溶液セットと比較する。
【0162】
溶液の色の結果は安定性と一致する。一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、無色から約BY2以下、約B2以下、約Y2以下の溶液の色を有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、無色から約BY4以下、約B4以下、約Y4以下の溶液の色を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、無色から約BY5以下、約B5以下、約Y5以下の溶液の色を有することとして定義される。
【0163】
pH
pH材料及び方法-標準化されたpH電極を有する毎日較正された電子pH計を使用して、試験品のpHを測定する。全ての較正溶液、参照緩衝液、及び試験品を、試験前に25℃に平衡化し、試験中25℃に維持する。
【0164】
pHの結果は安定性と一致する。一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、4.7~約5.7のpH範囲を有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の4.8~約5.6のpH範囲として定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、4.9~約5.5のpH範囲を有することとして定義される。
【0165】
濁度
濁度材料及び方法-材料及び方法は、欧州薬局方2.2.1、Clarity and Degree of Opalescence of Liquidsに基づく。
【0166】
濁度の結果は安定性と一致する。試験結果は、比濁分析濁度単位(NTU)で報告される。一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約18NTU以下の濁度値を有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約13NTU以下の濁度値を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約8NTU以下の濁度値を有することとして定義される。
【0167】
分析試験-粒子状物質
粒子状物質(肉眼では見えない)材料及び方法-全ての材料及び方法は、米国薬局方<788>Particulate Matterに準拠している。公定書収載の容量サンプラー装置を備えた公定書準拠の液体粒子計数器を使用する。試験品は、試験前に少なくとも60分間であるが10時間以下の間、室温に平衡化される。試験品バイアルを、米国薬局方<788>Particulate Matterに準拠した様式でプールする。米国薬局方<788>Particulate Matterによって指示されるように、プールされた試験品の各々適切な体積の4つの部分を取り出し、10μm及び25μm以上の粒子の数を部分ごとに計数する。第1の部分について得られた結果を無視し、残りの3つの結果を用いて、試験した調製物の平均粒子数を計算する。
【0168】
粒子分析(肉眼では見えない)公定書準拠結果-試験結果は、米国薬局方<788>Particulate Matter、欧州薬局方2.9.19、及び日本薬局方XVII/6.07粒子汚染:肉眼では見えない粒子に準拠する。したがって、試験した単位中に存在する粒子の平均数は、10μm以上の粒径については容器当たり6000粒子を超えるべきではなく、25μm以上の粒径については容器当たり600粒子を超えるべきではない。
【0169】
分析試験-純度
キャピラリ電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(cSDS)-還元型
還元型cSDS材料及び方法-分析は、温度制御されたカートリッジ内の裸の溶融シリカキャピラリ、内径50μm×長さ30.2cmを有する市販のキャピラリ電気泳動システムを用いる。キャピラリには、紫外光に対して透明な検出窓が設けられている。キャピラリを、各注入前に動電学的にすすぐ。各試料分析の前に、絡み合ったポリマー溶液からなるふるい分けマトリックスをキャピラリに充填する。この方法は、SDS-MWゲル泳動緩衝液及び約10~148kDaの範囲にわたるタンパク質分子量認証標準を利用する。装置の紫外吸収分光光度計検出器を波長220nmに設定し、キャピラリ温度を25℃に設定する。試料処理条件を低下させるために、試験品(2連)をSDS及び2-メルカプトエタノールと混合し、次いで規定の時間及び温度で加熱して、タンパク質を完全に変性及び還元させる。還元試料を、キャピラリに5kVの電圧を約20秒間印加することによって動電的に注入し、次いで、より大きな電場を約35分間印加することによって分析する。検出は、220nmのスペクトルの遠紫外領域における吸光度によって達成される。全シグナルデータのパーセントを、軽鎖、重鎖、及びアグリコシル化重鎖(AG HC)について収集する。
【0170】
還元型cSDSの結果は安定性と一致する。一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、テクリスタマブ参照材料の検証済みストックと比較して≧90.0%の純度パーセントを有し、>1.5%の新たなピークがないこととして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照材料と比較して約95.0%以上の純度パーセントを有し、1.2%を超える新たなピークがないこととして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照材料と比較して約97.0%以上の純度パーセントを有し、1.0%を超える新たなピークがないこととして定義される。
【0171】
キャピラリ電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(cSDS)-非還元型
非還元型cSDS材料及び方法-分析は、温度制御されたカートリッジ内の裸の溶融シリカキャピラリ、内径50μm×長さ30.2cmを有する市販のキャピラリ電気泳動システムを用いる。キャピラリには、紫外光に対して透明な検出窓が設けられている。キャピラリを、各注入前に動電学的にすすぐ。各試料分析の前に、絡み合ったポリマー溶液からなるふるい分けマトリックスをキャピラリに充填する。この方法は、SDS-MWゲル泳動緩衝液、およそ10~148kDaの範囲にわたるタンパク質分子量認証標準、及び検証済みのテクリスタマブ参照材料試料を利用する。装置の紫外吸収分光光度計検出器を波長220nmに設定し、キャピラリ温度を25℃に設定する。非還元試料処理条件については、試験品(2連)をSDS及びアルキル化試薬(N-エチルマレイミド、ジスルフィド結合のシャッフリング又は再形成を防止するため)と混合する。次いで、これを規定の時間及び温度で加熱して、タンパク質を完全に変性させ、フラグメント及びアーチファクトバンドの形成を最小限に抑える。非還元試料を、キャピラリに5kVの電圧を約20秒間印加することによって動電学的に注入し、次いで、より大きな電場を約35分間印加することによって分析する。検出は、220nmのスペクトルの遠紫外領域における吸光度によって達成される。全シグナルデータのパーセントを収集する。データを、テクリスタマブ参照材料と比較した新たなピークの存在についても分析する。純度パーセントは、パーセント重鎖+パーセント軽鎖として定義される。
【0172】
非還元型cSDSの結果は安定性と一致する。一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照材料と比較して約90.0%以上の純度パーセントを有し、1.5%を超える新たなピークがないこととして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照材料と比較して約95.0%以上の純度パーセントを有し、1.2%を超える新たなピークがないこととして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、参照材料と比較して約97.0%以上の純度パーセントを有し、1.0%を超える新たなピークがないこととして定義される。
【0173】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)
SE-HPLC材料及び方法-参照材料及び試験品を目標タンパク質濃度に希釈する。20μLの体積の分析物を、10~500kDaの分画範囲を有する、5μmの粒径のシリカベースを有する7.8mm×30cmサイズの排除カラムに注入する。水性リン酸緩衝液を流速0.7mL/分で移動相として使用し、溶出液の吸光度を280nmで連続的に監視する。モノマー(主成分又は主ピーク)、凝集体(高分子量種、又はHMWS)、及びフラグメント(低分子量種、又はLMWS)は、カラム上で分離され、異なる保持時間で溶出する。これらの種の量は、280nmでのピーク吸光度を監視することによって測定される。
【0174】
SE-HPLCの結果は安定性と一致する
主成分-一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に主成分が約90.0%以上であることとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約95.0%以上の主成分を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約97.0%の主成分を有することとして定義される。
【0175】
高分子量種(HMWS)-一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約10.0%以下のHMWSを有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約5.0%以下のHMWSを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約3.0%以下のHMWSを有することとして定義される。
【0176】
低分子量種(LMWS)-一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、約5.0%以下のLMWSを有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約2.0%以下のLMWSを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に約1.0%以下のLMWSを有することとして定義される。
【0177】
キャピラリ等電点電気泳動(cIEF)
cIEF材料及び方法-分析手順を、オートサンプラーを備えた市販のイメージングcIEF分析装置で行う。分析は、外壁ポリイミドコーティングを有する100μmの内壁コーティングシリカキャピラリを使用する。更に、希リン酸及びメチルセルロースの分析物溶液、水酸化ナトリウム及びメチルセルロースのカソード液溶液、並びに所定の種類及び量の両性電解質が使用される。試験品をカルボキシペプチダーゼB(CPB)で処理して、C末端リシンを除去し、各荷電種について複数のC末端変異体の存在によって導入される曖昧さを排除する。機器のオートサンプラーを、予備泳動及び泳動の両方について4℃に設定する。予備泳動の電圧及び時間は、それぞれ1500V及び1分である。泳動の電圧及び時間は、それぞれ3000V及び7分である。
【0178】
cIEFの結果は安定性と一致する
主ピーク-一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、≦60%の主ピークを有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、≦65%の主ピークを有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、≦70%の主ピークを有することとして定義される。
【0179】
酸性ピークの合計-一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計≦40%の酸性ピークの合計を有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計≦30%の酸性ピークの合計を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計≦25%の酸性ピークの合計を有することとして定義される。
【0180】
塩基性ピークの合計-一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計≦15%の塩基性ピークの合計を有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計≦10.0%の塩基性ピークの合計を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、合計≦8%の塩基性ピークの合計を有することとして定義される。
【0181】
分析試験-量
A280によるタンパク質濃度
医薬品のタンパク質濃度を、280nmでの吸光度の定量(A280)によって決定する。
【0182】
A280によるタンパク質濃度材料及び方法
タンパク質濃度の測定を、適格で較正されたダブルビームUV-Vis分光光度計を用いて行う。0.9%(w/v)NaClを用いて試験品を1:125に希釈する。試料を、1cmの経路長及び黒色面又は艶消し面を有する石英セミマイクロキュベット(1.4mL)を用いて測定する。分光光度計は、波長280nm、スリット幅1nm、1秒の応答に設定されている。0.9%(w/v)NaClをブランク対照として使用する。タンパク質濃度(mg/mL)は、試験品の吸光度と希釈係数との積を、抗体の吸光定数と機器の経路長(例えば、限定されるものではないが、テクリスタマブの吸光定数1.58(mg/mL)-1cm-1と機器の経路長1cm)との積で除算することによって計算される。
【0183】
10mg/mLの製剤タンパク質濃度の結果は安定性と一致する
一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、7.5~12.5mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、8~12mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、9mg/mL~11mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。
【0184】
90mg/mLの製剤タンパク質濃度の結果は安定性と一致する
一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、76.5~103.5mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、85~95mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、87mg/mL~93mg/mLのタンパク質濃度を有することとして定義される。
【0185】
分析試験-効力
効力(BCMA×CD3 T細胞活性化)
BCMA×CD3によるin vitroでのT細胞活性化は、活性化T細胞の核因子-応答エレメント(NFAT-RE)媒介性ルミネセンスアッセイを使用して実証される。
【0186】
このレポーターアッセイは、CD3を発現する操作されたエフェクター細胞におけるNFAT(活性化T細胞の核因子)経路の活性化によって誘導されるルミネセンスを、標的細胞/エフェクター細胞の共エンゲージメント(co-engagement)のための読み出しとして使用し、標的細胞死滅の代理尺度である。細胞表面上にBCMAを発現するDaudi Bリンパ芽球細胞を、標的細胞として使用する。抗BCMA Fab領域とBCMA発現標的細胞とのエンゲージメント、及び抗CD3 Fab領域と遺伝子操作されたCD3+T細胞とのエンゲージメントの両方が、T細胞活性化及びその後のNFAT-RE媒介性ルミネセンスに必要である。
【0187】
BCMA×CD3 T細胞活性化の材料及び方法。適格なテクリスタマブを参照材料及び対照として使用する。培養培地(RPMI中4%の熱不活性化ウシ胎仔血清)1mLあたり1.0×106個の生存細胞のJurkat TCR/CD3エフェクター細胞の溶液及び培養培地1mLあたり4×105個の生存細胞のDaudi Bリンパ芽球標的細胞の溶液を調製する。等量のエフェクター細胞及び標的細胞を、96ウェル細胞培養プレート上の個々のウェルにアリコートする。次いで、プレートを、5%(±2%)CO2を用いて37℃(±2℃)で16~24時間インキュベートする。インキュベーション後、Bio-GloTMルシフェラーゼ基質を各ウェルに添加し、プレートシェーカー上で少なくとも5分間穏やかに撹拌する。基質の添加から30分以内に、ルミネセンス(相対光単位(RLU)値)を、マイクロタイタールミネセンスプレートリーダーを使用して測定する。データは、参照材料に対する生物活性パーセントとして報告される。
【0188】
BCMA×CD3活性の結果は安定性と一致する。一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の、参照材料と比較して50%~150%の生物活性として定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の、参照材料と比較して60%~140%の生物活性として定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の、参照材料と比較して約80%~120%の範囲の生物活性として定義される。
【0189】
分析試験-界面活性剤
ポリソルベート20の定量
ポリソルベート20を、混合モードイオン交換/疎水性HPLCによって定量的に決定する。
【0190】
PS20材料及び方法。分析を、30μmの水湿潤性混合モードポリマー球状吸着剤粒子、ELSD、及び30℃の温度制御されたカラム区画を含有する2.1×20mmオンラインカラムを備えた勾配HPLCで行う。流速を1mL/分に設定し、ELSD蒸発器温度を50℃に設定する。移動相Aは、水中2%v/vギ酸であり、移動相Bは、イソプロピルアルコール中2%v/vギ酸である。未希釈のポリソルベート20を使用して、較正標準及びチェック標準を作成する。試験品試料を未希釈で注射する。
【0191】
ポリソルベート20の結果は安定性と一致する。一実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の0.01~0.07%のPS20濃度として定義される。好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の0.02~0.06%のPS20濃度として定義される。最も好ましい実施形態では、安定性は、約5℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、約25℃の温度で約12ヶ月以上保存した後、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後の0.03~0.05%のPS20濃度として定義される。
【0192】
分析試験-ルーチン特性評価
ペプチドマップ
この試験の目的は、抗体構造中に存在し得る酸化、脱アミド化、及び異性化などの翻訳後修飾のレベルを測定することである。試験品を酵素消化してペプチドセグメントを得る。次いで、これらのペプチドを、超高速液体クロマトグラフィー質量分析(UPLC-MS)によって評価する。分析した各ペプチド配列を、抗体構造全体の中のその既知の位置に対して同定する。同定したペプチド配列の測定質量をその予想質量と比較することによって、翻訳後修飾を測定する。
【0193】
ペプチドマッピング材料及び方法。試料を6Mグアニジン、50mM Tris pH8.0、5mM EDTAで変性させ、30kDa遠心フィルタ装置を使用して濾過する(フロースルー廃棄)。変性した試料を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元し、続いて1Mヨード酢酸ナトリウムでアルキル化し、更にDTTで処理して反応をクエンチする。反応混合物を、ブランク、参照材料、及び試験品に使用される別個のカラムを有するSephadex G-25カラムを介して消化緩衝液(1mM CaCl2を含む50mM Tris pH7.0)に交換する。1mg/mLトリプシンストック溶液のアリコートを消化緩衝液中の試料に添加して、20μL/mLトリプシン濃度を得る。溶液を37℃で2時間±30分間インキュベートする。トリプシン処理した溶液を室温に冷却し、酵素をトリフルオロ酢酸で不活性化する。処理した試料を、Waters Acquity BEH(エチレン架橋ハイブリッド)C18、2.1×100mm、1.7μm、130Åカラム及び付属のオートサンプラーを備えた超高速液体クロマトグラフィー質量分析(UPLC-MS)によって評価する。移動相Aは水中0.1%ギ酸であり、移動相Bはアセトニトリル中0.1%FA(移動相B)である。オートサンプラーを2~8℃に設定し、カラムを40℃に設定し、流速を500μL/分に設定する。溶出したペプチドをエレクトロスプレーイオン化に供し、較正オンライン質量分析を使用して検出する。
【0194】
実施例1:初期の製剤スクリーニング研究
初期の製剤スクリーニング研究を、テクリスタマブ溶液の化学的、物理的、及び生物学的安定性に対するpH、緩衝液の種類、表面活性剤、及び安定剤の影響を評価するために設計した。開発作業により、4.5~5.4のpH範囲内の酢酸緩衝液及び5.4~6.4のpH範囲内のヒスチジン緩衝液を含む製剤のためのより広い設計空間が特定された。製剤は、その後の確認安定性研究において十分な緩衝能を有するように、酢酸緩衝液中のpH 5.2及びヒスチジン緩衝液中のpH 6.0を目標とした。リードBCMA×CD3抗体の最初の開発可能性評価中に、過剰なレベルの鉄への曝露が、SECによって測定される凝集の増加と相関することが注目された。したがって、EDTAを製剤に添加した。
【0195】
製剤スクリーニング研究に基づいて、以下に列挙する2つの製剤について保存安定性を評価した。
1. 10mMのアセテート、8%(w/v)のスクロース、20mg/mLのEDTA、0.04%(w/v)のPS 20、pH 5.2中10mg/mLのテクリスタマブ
2. 10mMのヒスチジン、8%(w/v)のスクロース、20mg/mLのEDTA、0.04%(w/v)のPS20、pH 6.0中10mg/mLのテクリスタマブ
【0196】
これらの2つの製剤を2~8℃、25℃、及び37℃で保存安定性研究に供した。研究の結果は、cSDS(還元及び非還元)及びcIEFによるいずれの製剤についても安定性に有意な変化がないことを示した(データは示さず)。サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)の結果は、いずれの製剤においても2~8℃で6ヶ月間保存した後に主成分含量の損失がないことを示した。しかしながら、高い保存温度、特に3ヶ月を超えて37℃及び6ヶ月を超えて25℃では差が観察された。ヒスチジン緩衝液製剤は酢酸緩衝液製剤と比較して、25℃及び37℃で主成分のより大きな損失を示した(
図1)。これらの結果は、テクリスタマブがpH 5.2の酢酸緩衝液製剤中でより安定であることを示した。
【0197】
より高いテクリスタマブ濃度を有する製剤の安定性を調べるために、それぞれ30mg/mL及び90mg/mLのテクリスタマブを含有する2つの製剤を、最大2年間、2~8℃及び25℃で安定した場所に置いた。標的組成物は、30mg/mL及び90mg/mLの製剤の両方について、10mMのアセテート、8%(w/v)のスクロース、20μg/mLのEDTA二ナトリウム、0.04%(w/v)のPS 20、pH 5.2であった。データを、同じ標的組成物を含む10mg/mL製剤と比較した。製剤を、SE-HPLCによって主成分、凝集体及びフラグメント含量について、cSDS(還元及び非還元)によって純度について、cIEFによって電荷不均一性について、及び光遮蔽(LO)によって肉眼では見えない粒子状物質について分析した。
【0198】
cIEF及びcSDS(還元及び非還元)データ及び肉眼では見えない粒子のカウント(データは示さず)について、実質的な変化は観察されなかった。
【0199】
SE-HPLCデータ(表2)は、増加したタンパク質濃度及び減少した主成分のわずかではあるが存在する相関関係を示す。しかしながら、減少の大きさは狭い範囲にわたって生じ、全てのタンパク質濃度が最も好ましい実施形態と一致する主成分値を示した。
【0200】
【表2】
a 10mg/mLの製剤試料は、6ヶ月の時点で生じた。
NA=適用なし
【0201】
初期製剤スクリーニング研究の終わりに、アセテート濃度を10~15mMに変更した。
【0202】
実施例2:ポリソルベート濃度範囲の振盪
アセテート製剤中のポリソルベート20(PS 20)レベルを特定するために、2つの振盪ストレス研究を行った。第1のパイロット研究は、0、0.01、0.02、0.04、又は0.06%(w/v)のPS20のいずれかを補充した10mMのアセテート、8%(w/v)のスクロース、20μg/mLのEDTA(pH 5.2)中の1mg/mLのテクリスタマブを機械的ストレスに対して評価した。試験製剤をオービタルプラットフォームシェーカー上に置き、周囲温度下、250rpmで120時間振盪した。振盪した試料のSEC分析は、PS20を含まない試料が30%未満のモノマー及び70%を超える凝集体を示すことを示した。これは、使用した研究試験条件が、DP安定性の破局的損失を誘発するのに十分な機械的ストレスを生じたことを実証する。PS20の添加は、単量体を急激に増加させ、凝集体形成を低下させ、0.02%(w/v)のPS20は、DP安定性の好ましい実施形態と一致する単量体及び凝集体レベルを実証する。
【0203】
同じ振盪試験設計を、72時間の追加の時点、振盪せずに周囲条件で120時間保持した0.04%(w/v)のPS20の対照試料、及び分析アッセイのより広い直交するバッテリーで強化した第2の研究に使用した。第2の研究は、0.02、0.04、又は0.06%(w/v)のPS20のいずれかを補充した15mMのアセテート、8%(w/v)のスクロース、20μg/mLのEDTA(pH 5.2)中の10mg/mL及び90mg/mLのテクリスタマブを評価した。10mg/mLの製剤を6mLの1型ガラスバイアルに3.5mLの充填体積でアリコートし、90mg/mLの製剤を2mLの1型ガラスバイアルに2mLの充填体積でアリコートした。
【0204】
結果を表3及び表4に示す。IE-HPLC、cSDS還元及び非還元、並びに振盪後の試料は、10mg/mL及び90mg/mLの製剤の両方について、T=0値に対する値の本質的な変化を示さなかった。同様に、タンパク質濃度、溶液の色、pH、及び濁度も変化しないままであった。Sub-Visの結果は、その公定合格基準値の大きさ及び全体的な方法論との関連で見ると、所与の時点内でT=0に対して本質的に同じであると考えることができる。振盪後のSEC結果は、最も低い(0.02%w/v)PS20濃度の試料において凝集がわずかに増加する傾向を示した。しかしながら、これらの値は、DP安定性の好ましい実施形態と一致する。
【0205】
【0206】
【0207】
総合すると、これらの研究は、0、02~0、08%(w/v)のPS20がテクリスタマブを機械的ストレス誘導性不安定性から保護することを実証する。
【0208】
実施例3:凍結融解ストレス試験
反復凍結融解サイクルによって誘発される物理化学的ストレスに対する製剤の堅牢性を実証するために、研究を行った。
【0209】
この研究では、10mg/mL及び90mg/mLの製剤(15mMの、8%(w/v)のスクロース、20μg/mLのEDTA、0.04%(w/v)のPS20、pH 5.2)を5mLのポリカーボネート容器に等分し、-70℃の冷凍庫に直立して入れた。凍結が完了した後、バイアルを冷凍庫から取り出し、解凍のために周囲温度に置いた。完全に解凍したら、容器を穏やかに旋回させて溶液の均質性を確保し、次いで、合計5サイクルが完了するまで、追加の凍結解凍(F/T)サイクルを繰り返した。対照試料は凍結-融解サイクルを全く受けなかった。対照及びF/T試料の両方を分析した。
【0210】
表5に示されるように、5回のF/Tサイクルを経験した試料の品質属性は、2~8℃で保存された対照試料とほぼ同一であり、凍結融解条件に供されていない。更に、タンパク質濃度、溶液の色、pH、又は濁度の有意な変化は観察されなかった。
【0211】
【0212】
この研究の結果は、凍結融解誘導性ストレスに対する10mg/mL及び90mg/mLの製剤の堅牢性を実証する。
【0213】
実施例4:金属スパイキング研究
製造プロセス中に医薬品中に潜在的に存在するか又は導入される金属イオンの影響を評価するために研究を行った。
【0214】
試験製剤は、10mg/mL又は90mg/mLのテクリスタマブ、15mMのアセテート、8%のスクロース、20μg/mLのEDTA、及び0.04%のPS 20(pH 5.2)からなり、鉄(Fe3+)、クロム(Cr3+)、銅(Cu2+)、ニッケル(Ni2+)、及びモリブデン(Mo5+)を添加したもの又は添加していないものであった。金属の選択は、製造プロセスに潜在的に存在する金属合金成分の組成に基づく。堅牢性を実証するために、市販のGMP医薬品製造プロセスにおいて見られる最高値よりも2~4倍高い金属濃度を利用することによって、誇張されたストレス条件を作り出した。
【0215】
10mg/mLの試験製剤を3.5mLの充填体積で6Rバイアルにアリコートし、90mg/mLの試験製剤を2.0mLの充填体積で2mLのバイアルにアリコートした。全てのバイアルに栓をし、キャップをし、クリンプで密封した。バイアルを、推奨条件(5℃)及び加速条件(25℃)で最大6ヶ月間、安定に置いた。指定された時点で、試料を採取し、アッセイした。
【0216】
表6に示すように、2~8℃で6ヶ月間保存した後の金属イオンでストレスを与えた10mg/mL及び90mg/mLの製剤の品質属性は、それらのそれぞれの対照製剤とほぼ同一であった。更に、2~8℃で保存された全ての試験製剤について、T=0の値と比較して、T=6ヶ月で品質属性値の変化はほとんど又は全くなかった。タンパク質濃度、溶液の色、pH、又は濁度における有意な変化は、保存時間にわたって試験したいずれの製剤についても観察されなかった。最後に、2~8℃で6ヶ月間保存された全ての金属添加製剤の品質属性値は、安定性の最も好ましい実施形態と一致した。
【0217】
表7に示すように、25℃で6ヶ月間保存した後の金属イオンでストレスを加えた10mg/mL及び90mg/mLの製剤の品質属性は、それぞれの対照製剤とほぼ同一であった。全ての試験製剤について、T=0の値と比較して、いくつかの品質属性値のわずかから最小の変化がT=6ヶ月で見られた。変化の程度は、25℃で6ヶ月間保存した場合のこれらのモノクローナル抗体品質属性の予想される分解と一致した。タンパク質濃度、溶液の色、pH、又は濁度における有意な変化は、保存時間にわたって試験したいずれの製剤についても観察されなかった。最後に、25℃で6ヶ月間保存された全ての金属スパイク製剤の品質属性値は、安定性の好ましい実施形態と一致した。
【0218】
まとめると、データは、通常及び/又は誇張された医薬品製造プロセス及び保存条件の間に経験される潜在的な酸化ストレスに対する10mg/mL及び90mg/mLでの製剤の堅牢性を実証する。
【0219】
【0220】
【0221】
実施例5:製剤の堅牢性の発現
研究デザイン
安定なモノクローナル抗体製剤は、製剤の成分間の複雑な相互作用の正味の効果の結果である。これらの相互作用を評価するために、実験の設計(Design of Experiments、DOE)方法論を使用して、製剤成分のパラメータを同時に変化させる統計的に決定された数の実験的試験製剤が生成される多因子安定性研究を作成した。研究結果の統計分析は、製剤パラメータがどのように相互作用して安定性属性に影響を与えるかの定量的理解を提供し、ひいては製剤の堅牢性を実証する。BCMA×CD3医薬品の実験的試験製剤を、推奨条件(5℃)及び加速条件(25℃)で、それぞれ最大12ヶ月間及び最大6ヶ月間保持した。評価した製剤成分は、タンパク質濃度、アセテート濃度、スクロース濃度、ポリソルベート20濃度、EDTA濃度、及びpHであった。試験した因子の濃度範囲を表8に列挙する(目標製剤値は、状況を把握するために表に含まれる)。試験は、10mg/mL及び90mg/mLの両方のDP製剤を包含した。評価のための典型的なタンパク質濃度範囲は、目標値の+/-12%である。したがって、研究のために選択されたタンパク質濃度値は、10mg/mL製剤の88%及び90mg/mL製剤の111%に相当する。
【0222】
【0223】
この基準に基づき、JMP(登録商標)統計ソフトウェアを使用して、一部実施要因計画を作成した(表9)。
【0224】
【0225】
最悪の場合のヘッドスペースを反映するように、16個の製剤を、バイアルあたり2mLの充填体積で6Rバイアルに充填した(10mg/mL及び90mg/mLのDP提示の中で最も大きいバイアルサイズ及び最も小さい充填体積)。表10は、試験した製剤パラメータの全範囲を示す。試料調製中のUF/DF後に測定されたアセテート濃度は、Gibbs-Donnan効果限界のために、UF/DF前の公称レベルよりも高かった。
【0226】
【0227】
バイアルに栓をし、キャップをし、クリンプで密封した。バイアルを、推奨条件(5℃)及び加速条件(25℃)で安定に置いた。指定された時点で、試料を採取し、アッセイした。
【0228】
試験結果
試験開始時(時間0)、加速温度(25℃)で6ヶ月後、並びに推奨保存条件(5℃)で6ヶ月後及び12ヶ月後の16種の製剤の各属性についての試験結果を表11に示す。データは、各属性について8種の製剤の範囲、平均、及び標準偏差として報告される。
【0229】
5℃で6及び12ヶ月間保持した全ての製剤についての分析結果は、アッセイ試験値にほとんど変化がないことを実証し、安定性を示した。賦形剤濃度が多変量範囲である全ての製剤が狭い範囲のアッセイ試験結果値をもたらす能力は、試験した境界及び保存条件内での製剤の堅牢性を実証する。更に、この研究における1つを除く全てのアッセイについて観察された値の全範囲は、2~8℃で保持された場合と一致した。
【0230】
濁度に関して、5℃で12ヶ月間保持された全ての製剤について計算された平均濁度値(6.4NTU)は、本明細書で提供される安定な水性医薬組成物の定義と一致した。しかしながら、観察されたアッセイ値の範囲及び計算された標準偏差は、他のアッセイについて観察されたものよりも比較的大きかった。データの更なる分析は、16個の試験製剤のうちの3つが、全ての時点及び温度において、15NTUを超えるが20NTU以下の濁度値を一貫して報告したことを示した。これらの製剤は、高いpH値(5.8)及び高いタンパク質濃度(100mg/mL)で製剤化された研究における4つの試験製剤のうちの3つであった。4つの高pH値(5.8)及び高タンパク質濃度(100mg/mL)試験製剤についての濁度値が省略される場合、5℃で12ヶ月間保持された残りの12個の製剤についての濁度アッセイ値の計算された平均、標準偏差、及び範囲は、それぞれ3.5NTU、1.6NTU、及び1.4~6.3NTUであり、安定性の最も好ましい実施形態と一致した。
【0231】
加速保存条件(25℃)で6ヶ月間保持された全ての製剤についての分析結果は、結果値の範囲の大きさの増加によって実証されるように、長期加速保存条件に曝露されたBCMA×CD3抗体の安定性プロファイルと一致する分解効果を示した。しかしながら、9つのアッセイ結果のうちの7つについて計算された平均値は、加速保存条件(25℃)で6ヶ月間保持された場合の安定性の最も好ましい実施形態と一致した。
【0232】
【0233】
研究結果の統計的分析
一般線形モデルを使用して、12ヶ月2~8℃のデータを統計的に分析し、どの因子が所与の応答に対して統計的に有意な効果を有したかを判定した。分析は、UF/DF処理後の各試験製剤中の各因子についての実際の測定値を用いて行った。表12は、所与の応答に対する各因子について計算されたp値、及びモデルによって生成された対応する調整されたR二乗値を列挙する。0.05未満のp値は、統計的に有意であると考えられる。
【0234】
【0235】
API濃度
API濃度は、単量体%との統計的に有意な負の相関を示した一方で、凝集体%との対応する統計的に有意な正の相関も示した。これらの傾向は、API濃度の増加が、SECによって測定される安定性の低下と相関することを示す。しかしながら、この研究で評価した濃度範囲内では(8~100mg/mL)、観察された単量体%及び凝集体%アッセイ結果の範囲は、本明細書で提供される安定な水性医薬組成物の定義と一致した。
【0236】
API濃度はまた、%酸性ピークとの統計的に有意な負の相関を示した一方で、%塩基性ピークとの統計的に有意な正の相関も示した。しかし、表12に示されるように、%酸性ピーク及び%塩基性ピークについての結果値の範囲は、これらの2つの属性について非常に狭いと考えられる。したがって、統計的に有意であると計算されるが、8~100mg/mLのAPI濃度は、酸性ピーク%及び塩基性ピーク%に実際的な影響を及ぼすとは考えられない。
【0237】
製剤のpH
製剤pHは、単量体%との統計的に有意な負の相関を示した一方で、凝集体%との対応する統計的に有意な正の相関も示した。これらの傾向は、増加したpHが、SECによって測定された低下した安定性と相関することを示す。しかしながら、この研究で評価したpH範囲内(4.6~5.8)では、観察された単量体%及び凝集体%のアッセイ結果の範囲は、安定性の最も好ましい実施形態と一致した。
【0238】
製剤のpHは、濁度との統計的に有意な正の相関を示し、pHの増加が濁度によって測定された安定性の低下と相関することを示した。しかしながら、線形モデルのr二乗(調整)値は比較的低かった(54.28%)。これは、高いpH値(5.8)及び高いタンパク質濃度(100mg/mL)で製剤化された3つの試験製剤において15NTUを超える濁度値が一貫して観察された上記の観察に関連している可能性がある。次に、3つの濁度結果値は、この分析に使用される線形モデルを歪めている可能性がある。しかしながら、この研究において評価されたpH範囲内(4.6~5.8)では、観察された低タンパク質濃度試験製剤についての濁度結果の範囲は、安定性の最も好ましい実施形態と一致した。
【0239】
pHはまた、主ピーク%及びcSDS還元による純度%との統計的に有意な負の相関を示し、一方、塩基性ピーク%との統計的に有意な正の相関も示した。しかしまた、API濃度と同様に、表12に示されるように、酸ピーク%、主ピーク%及びcSDS還元による純度%の結果値の範囲は、これらの3つの属性について極めて狭いと考えられる。したがって、統計的に有意であると計算されるが、4.6~5.8のpHは、酸%、塩基性ピーク%、及びcSDS還元による純度%に実際的な影響を及ぼすとは考えられない。
【0240】
アセテート濃度
アセテート製剤は、モノマー%との統計的に有意な負の相関を示した一方で、凝集体%との対応する統計的に有意な正の相関も示した。これらの傾向は、アセテート濃度の増加が、SECによって測定される安定性の低下と相関することを示す。しかしながら、この研究で評価されたアセテート濃度範囲内では(10~20mM)、観察された単量体%及び凝集体%のアッセイ結果の範囲は、安定性の最も好ましい実施形態と一致した。
【0241】
実施例6:製剤化された薬物のバルク生成
プロセスの説明
処理溶液
【0242】
【0243】
限外濾過/透析濾過(UF/DF)
限外濾過/透析濾過(UF/DF)を行って、テクリスタマブプラノバ濾液中間体製造溶液を、を、90mg/mLのテクリスタマブ、10mMのアセテート、8%のスクロース、pH4.9からなる予め製剤化されたバルク(pre-formulated bulk、pFB)溶液に再製剤化した。
【0244】
テクリスタマブ製剤化バルク(FB)の調製
ポリソルベート20(4.0%w/v)及びEDTA(2mg/mL)ストック溶液を1:100希釈でpFBに添加して、0.04%(w/v)のポリソルベート20及び20μg/mLのEDTAの最終濃度を得て、15mMのアセテート、8%(w/v)のスクロース、0.04%のポリソルベート20、20μg/mLのEDTA、pH5.2での90mg/mLのテクリスタマブからなる製剤化バルク(FB)を得た。次いで、FB溶液を均一に混合した。製剤化されたバルクの最終濾過は、滅菌0.45/0.22μmフィルタ及びその直後にインライン0.22μmフィルタを使用して達成した。
【0245】
最終バルク充填
最終濾過後、FBをポリカーボネート製Biotainerに充填した。充填体積は、Biotainerの記載容積の20%~90%である。
【0246】
最終バルクの保存及び輸送
医薬品製造前の製剤化されたバルクの保存及び輸送条件は、FBが約1週間以内の間保存された場合、遮光した状態で5℃±3℃、又はFBが1週間を超えて保存された場合、遮光した状態で-40℃±10℃であった。
【0247】
実施例7:90mg/mLの医薬品製剤:一次包装の組成及び構成要素
本明細書では、90mg/mLのテクリスタマブ医薬品製剤の組成の表14の概要が提供される。
【0248】
【0249】
90mg/mLのテクリスタマブ医薬品(DP)の一次包装は、ガラスバイアル、ポリマーバイアル栓、及びアルミニウムシールからなる。表15は、90mg/mLのDP提示物の一次包装材料の特定の構成要素を提供する。
【0250】
【0251】
実施例8:10mg/mLのDP溶液の製造
テクリスタマブ製剤化バルク(FB)の希釈
テクリスタマブを製剤化したバルク中間体製造溶液を、10mg/mLのテクリスタマブ、15mMのアセテート、8%(w/v)のスクロース、20μg/mL、EDTA、pH5.2からなる医薬品溶液に再製剤化するように希釈を実施した
【0252】
希釈緩衝液
本明細書では、表16における希釈緩衝液の組成の表形式の概要が提供される。滅菌0.22μmフィルタを使用して、希釈緩衝液の最終濾過を達成した。
【0253】
【0254】
テクリスタマブ10mg/mLの医薬品溶液の調製
希釈緩衝液を90mg/mLのFBに添加して、15mMのアセテート、8%(w/v)のスクロース、0.04%のポリソルベート20、20μg/mLのEDTA、pH 5.2中の10mg/mLのテクリスタマブからなる10mg/mLの医薬品溶液を得た。
【0255】
実施例9:10mg/mL医薬品製剤:一次包装の組成及び構成要素
本明細書では、10mg/mLのテクリスタマブ医薬品製剤の組成の表17の概要が提供される。
【0256】
【0257】
10mg/mLのテクリスタマブ医薬品(DP)の一次包装は、ガラスバイアル、ポリマーバイアル栓、及びアルミニウムシールからなる。表18は、30mgのDP提示の一次包装材料の具体的な構成要素を列挙している。
【0258】
【0259】
実施例10:90mg/mLの安定性研究の説明
様々な環境条件及び時間長下での安定に置かれたテクリスタマブ90mg/mLの医薬品の特質を監視するためこの研究を行った。製剤化されたバルクを2mLのバイアルに2.0mLの充填体積で等分することによって、研究試験品を調製した。バイアルに栓をし、キャップをし、クリンプで密封した。
【0260】
全ての試験は、バイアルを逆向きにして実施した。
【0261】
【0262】
安定性試験結果
推奨、加速、及びストレス条件下で保持されたテクリスタマブDPについての安定性結果を以下に列挙する。推奨される保存条件で保持されたDPの全時点で、アッセイ研究ごとに観察された全ての試験パラメータ結果値は、約5℃の温度で約12ヶ月以上、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、保持された場合の安定性の最も好ましい実施形態と一致する基準を超えていた。同様に、ペプチドマップの結果は、翻訳後修飾の測定された割合の経時的な必然の変化をほとんど又は全く示さなかった。
【0263】
加速条件(25±2℃/60%RHで12ヶ月)及びストレス条件(40±2℃/75%RHで6ヶ月)で保持されたテクリスタマブDPの結果は、長期加速条件及びストレス保存条件に曝露された医薬品の予想される分解速度を示した。特に注目すべきことに、加速条件(25℃)で12ヶ月間保持されたDPについてのアッセイ研究ごとに観察された試験パラメータ結果値の大部分は、安定性の最も好ましい実施形態と一致するか、又はそれを超え、残りの結果のうちの1つを除く全ては、好ましい実施形態又は記載された実施形態と一致する結果を示した。
【0264】
5℃データ
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【表23】
*キャンセルされた時点についてのスケジューリングされた試験。
【0269】
25℃データ
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【表27】
*キャンセルされた時点についてのスケジューリングされた試験。
【0274】
40℃データ
【0275】
【0276】
【0277】
【0278】
実施例11:10mg/mLの安定性研究の説明
様々な環境条件及び時間長下での安定に置かれたテクリスタマブ10mg/mLの医薬品の特質を監視するためこの研究を行った。製剤化されたバルクを6Rバイアルに3.5mLの充填体積で等分することによって、研究試験品を調製した。バイアルに栓をし、キャップをし、クリンプで密封した。
【0279】
全ての試験は、バイアルを逆向きにして実施した。
【0280】
【0281】
安定性試験結果
推奨、加速、及びストレス条件下で保持されたテクリスタマブDPについての安定性結果を以下に列挙する。推奨される保存条件で保持されたDPの全時点で、アッセイ研究ごとに観察された全ての試験パラメータ結果値は、約5℃の温度で約12ヶ月以上、及び/又は約5℃の温度で約2年以上保存した後に、保持された場合の安定性の最も好ましい実施形態と一致する基準を超えていた。同様に、ペプチドマップの結果は、翻訳後修飾の測定された割合の経時的な必然の変化をほとんど又は全く示さなかった。
【0282】
加速条件(25±2℃/60%RH)及びストレス条件(40±2℃/75%RH)で保持されたテクリスタマブDPの結果は、長期加速条件及びストレス保存条件に曝露された医薬品の予想される分解速度を示した。特に注目すべきことに、加速条件(25℃)で12ヶ月間保持されたDPについてのアッセイ研究ごとに観察された試験パラメータ結果値の大部分は、安定性の最も好ましい実施形態と一致するか、又はそれを超え、残りの結果のうちの1つを除く全ては、好ましい実施形態又は記載された実施形態と一致する結果を示した。
【0283】
5℃データ
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
25℃データ
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
【表39】
*キャンセルされた時点についてのスケジューリングされた試験
【0293】
40℃データ
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
【配列表】
【国際調査報告】