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特表2024-544524燃料電池用触媒、その製造方法、それを含む触媒層、膜-電極アセンブリ、及び燃料電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】燃料電池用触媒、その製造方法、それを含む触媒層、膜-電極アセンブリ、及び燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20241126BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20241126BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/88 Z
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527468
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2022018650
(87)【国際公開番号】W WO2023101309
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0169401
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン カヨン
(72)【発明者】
【氏名】コン ナコン
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンス
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュソン
(72)【発明者】
【氏名】ナム キョンシク
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンミ
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS02
5H018AS03
5H018BB01
5H018BB12
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE06
5H018EE07
5H018EE08
5H018EE10
5H018EE12
5H018EE16
5H018HH03
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH10
5H126BB06
5H126FF05
(57)【要約】
耐久性が改善された燃料電池用触媒が提供される。本発明に係る燃料電池用触媒は、担体及び前記担体に担持された金属触媒粒子を含む複数の第1の複合体が凝集された第2の複合体及び前記第2の複合体の表面上にコーティングされた窒素含有保護層を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体及び前記担体に担持された金属触媒粒子を含む複数の第1の複合体が凝集された第2の複合体と、
前記第2の複合体の表面上にコーティングされた窒素含有保護層と、
を備える燃料電池用触媒。
【請求項2】
前記窒素含有保護層は、窒素前駆体から由来するものである請求項1に記載の燃料電池用触媒。
【請求項3】
前記窒素前駆体は、
シアナミド(cyanamide)、尿素(urea)、メラミン(melamine)、2-シアノグアニジン(2-cyanoguanidine)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含む請求項2に記載の燃料電池用触媒。
【請求項4】
前記窒素含有保護層の厚みは、5~70nmである請求項1に記載の燃料電池用触媒。
【請求項5】
前記窒素含有保護層は、
グラフィティックカーボンナイトライド(graphitic carbonnitride)を含む請求項1に記載の燃料電池用触媒。
【請求項6】
前記窒素含有保護層は、
ボールミル(ball mill)、パウダーミキサー(powder mixer)、共鳴音響混合機(Resonant Acoustic Mixer;RAM)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを用いて製造されたものである請求項1に記載の燃料電池用触媒。
【請求項7】
(S1)反応容器に第1の複合体及び窒素前駆体を添加した後、これらを攪拌して第1の混合物を製造するステップと、
(S2)攪拌された前記第1の混合物を熱処理するステップと、
を含み、
前記第1の複合体は、
担体及び前記担体に担持された金属触媒粒子を含む燃料電池用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記(S1)ステップは、
ボールミル(ball mill)、パウダーミキサー(powder mixer)、共鳴音響混合機(Resonant Acoustic Mixer;RAM)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを用いるステップである請求項7に記載の燃料電池用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記(S2)ステップは、
第1の熱処理ステップと、
前記第1の熱処理ステップと相違した第2の熱処理ステップと、
を含む請求項7に記載の燃料電池用触媒の製造方法。
【請求項10】
前記第1の熱処理ステップは、
第1の非反応性気体雰囲気下に、150~250℃で0.5~3時間の間熱処理するステップであり、
前記第2の熱処理ステップは、
第2の非反応性気体雰囲気下に、500~600℃で1~5時間の間熱処理するステップである請求項9に記載の燃料電池用触媒の製造方法。
【請求項11】
前記第1の非反応性気体及び前記第2の非反応性気体は、
各々独立的に窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つである請求項10に記載の燃料電池用触媒の製造方法。
【請求項12】
前記窒素前駆体の含量は、
前記担体100重量部を基準に80~200重量部である請求項7に記載の燃料電池用触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の燃料電池用触媒と、
アイオノマと、
を含む触媒層。
【請求項14】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の少なくとも一面上に配置された請求項13に記載の触媒層と、
を含む膜-電極アセンブリ。
【請求項15】
請求項14に記載の膜-電極アセンブリを備える燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明(disclosure)は、燃料電池用触媒、その製造方法、それを含む触媒層、膜-電極アセンブリ、及び燃料電池に関し、より具体的に、その表面に形成された窒素含有保護層を介して耐久性が改善された燃料電池用触媒、その製造方法、それを含む触媒層、膜-電極アセンブリ、及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、メタノール、エタノール、天然気体のような炭化水素系の燃料物質内に含有されている水素と酸素の酸化/還元反応のような化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる発電システムを備えた電池であって、高いエネルギー効率性と汚染物排出が少ない環境にやさしい特徴により、化石エネルギーに代えることができる次世代清浄エネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
このような燃料電池は、単位電池の積層によるスタック構成で様々な範囲の出力を出すことができるという長所を有しており、小型リチウム電池に比べて4~10倍のエネルギー密度を表すので、小型及び移動用携帯電源として注目されている。
【0004】
燃料電池で電気を実質的に発生させるスタックは、膜-電極アセンブリ(Membrane-Electrode Assembly、MEA)とセパレータ(Separator)(または、バイポーラプレート(Bipolar plate)ともいう)とからなる単位セルが数個ないし数十個に積層された構造を有し、膜-電極アセンブリは、一般に、電解質膜を挟んでその両方にアノード電極(Anode、または、燃料極)とカソード電極(Cathode、または、空気極)とが各々形成された構造をなす。
【0005】
燃料電池は、電解質の状態及び種類によってアルカリ電解質膜燃料電池、高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)などに区分されることができるが、そのうち、高分子電解質膜燃料電池は、100℃未満の低い作動温度、速い始動と応答特性、及び優れた耐久性などの長所により、携帯用、車両用、及び家庭用電源装置として脚光を浴びている。
【0006】
高分子電解質膜燃料電池の代表的な例では、水素ガスを燃料として使用する水素イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell、PEMFC)、液状のメタノールを燃料として使用する直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell、DMFC)などを挙げることができる。
【0007】
高分子電解質膜燃料電池で起こる反応を要約すれば、まず、水素ガスのような燃料がアノード電極に供給されれば、前記アノード電極では、水素ガスの酸化反応により水素イオン(H)と電子(e)とが生成される。生成された水素イオンは、高分子電解質を介してカソード電極に伝達され、生成された電子は、外部回路を介して前記カソード電極に伝達される。カソード電極では、酸素ガスが供給され、酸素が水素イオン及び電子と結合して酸素の還元反応により水が生成される。
【0008】
特に、上記のような燃料電池反応過程で、触媒層に使用される金属触媒粒子が金属触媒粒子イオンになり、水素イオンの移動を妨害するだけでなく、他の金属触媒粒子に蒸着されて、粒子サイズを成長させるオストワルド熟成(Ostwald ripening)現象を導いた。このため、金属触媒粒子が担体から離れる現象が発生し、電極の劣化を促進するという問題点を引き起こした。それだけでなく、前記金属触媒粒子が担持される担体が腐食されるなど、触媒層の耐久性が低下するという追加的な問題点も存在した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決するために、金属触媒粒子の離脱、溶解、凝集、及び成長を防止して、耐久性が改善された燃料電池用触媒を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記燃料電池用触媒を実現できる燃料電池用触媒の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記燃料電池用触媒を含む触媒層を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記触媒層を備える膜-電極アセンブリを提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記膜-電極アセンブリを備える燃料電池を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及されていない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明により理解されることができ、本発明の実施形態により、さらに明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、請求の範囲に表した手段及びその組み合わせにより実現され得ることが容易に分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の一実施形態は、担体及び前記担体に担持された金属触媒粒子を含む複数の第1の複合体が凝集された第2の複合体、及び前記第2の複合体の表面上にコーティングされた窒素含有保護層を備える燃料電池用触媒を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面(aspect)によれば、耐久性が改善された触媒層を提供し、これにより、金属触媒粒子の離脱、溶解、凝集、及び成長現象と担体が腐食される問題点を一挙に解決することができる。これにより、燃料電池の寿命を延長させることができる。
【0017】
上述した効果とともに、本発明の具体的な効果は、以下において、発明を実施するための具体的な内容を説明しつつ、共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池用触媒を示したものである。
【0019】
図2】本発明の一実施形態に係る燃料電池用触媒の製造方法を示した模式図である。
【0020】
図3】本発明の一実施形態に係る膜-電極アセンブリを示した断面図である。
【0021】
図4】本発明の一実施形態に係る燃料電池を説明するための模式図である。
【0022】
図5】実施例1と参照例1とによる触媒層表面のSEM(scanning electron microscope)写真である。
【0023】
図6】実施例1及び参照例1による燃料電池用触媒のTEM(transmission electron microscope)写真である。
【0024】
図7】比較例1、参照例1、及び実施例1による膜-電極アセンブリの性能評価を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の各構成をより具体的に説明するが、これは、1つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容により制限されない。
【0026】
本発明の一実施形態は、担体及び前記担体に担持された金属触媒粒子を含む複数の第1の複合体が凝集された第2の複合体、及び前記第2の複合体の表面上にコーティングされた窒素含有保護層を備える燃料電池用触媒を提供する。
【0027】
以下では、本発明の構成をより具体的に説明する。
【0028】
1.燃料電池用触媒及びその製造方法
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池用触媒を示したものである。
【0030】
図1に示すように、本発明に係る燃料電池用触媒10は、複数の第1の複合体12(1次粒子)を備えることができる。また、前記第1の複合体は、いくつずつ凝集されて第2の複合体(2次粒子)を形成できる。前記燃料電池用触媒10は、水素気体の酸化反応及び/又は酸素気体の還元反応に触媒として使用され得るものであれば、いずれのものを使用しても関係ない。
【0031】
本発明に係る第1の複合体12は、担体13及び前記担体13に担持された金属触媒粒子11を含むことができる。
【0032】
前記担体13は、触媒との電子交換をより容易にし、構造から金属触媒粒子の分散性を高めて活性面積を増加させ、物質伝達を容易にするものであって、炭素系担体、多孔性無機酸化物、ゼオライト、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つに該当することができる。
【0033】
前記炭素系担体は、黒鉛、スーパーピ(Super P)、炭素繊維(Carbon fiber)、炭素シート(Carbon sheet)、カーボンブラック(Carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen black)、デンカブラック(Denka black)、アセチレンブラック(Acetylene black)、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube;CNT)、炭素球体(Carbon sphere)、炭素リボン(Carbon ribbon)、フラーレン(Fullerene)、活性炭素、カーボンナノファイバー、カーボンナノワイヤー、カーボンナノボール、カーボンナノホーン、カーボンナノケージ、カーボンナノリング、規則性ナノ多孔性炭素(Ordered nano/mesoporous carbon)、カーボンエアロゲル、メソポーラスカーボン(Mesoporous carbon)、グラフェン、安定化カーボン、活性化カーボン、及びこれらの少なくとも1つ以上の組み合わせから選ばれることができるが、これに限定されるものではなく、本技術分野において使用可能な担体は、制限なしに使用することができる。
【0034】
前記多孔性無機酸化物は、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアからなる群より少なくとも選ばれる1つ以上に該当することができる。
【0035】
前記担体の表面積は、50m/g以上に該当することが好ましく、平均粒径は、10~300nmに該当することが好ましい。前記担体の表面積が前記数値範囲未満である場合、金属触媒粒子の均一な分布を得ることができない。
【0036】
本発明に係る金属触媒粒子11は、白金系金属または非白金系金属に該当することができる。前記金属触媒粒子11は、前記担体13の表面上に配置されることができ、前記担体13の内部気孔(Pore)を満たしながら前記担体13の内部に浸透されたものに該当することができる。
【0037】
前記白金系金属(Platinum-based metal)では、白金(Pt)及び/又は白金系合金(Pt-M)が使用され得る。前記Mは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、及びロジウム(Rh)からなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。
【0038】
具体的に、前記白金系合金(Pt-M)では、Pt-Pd、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-Cr、Pt-W、Pt-Ru、Pt-Ni、Pt-Co、Pt-Y、Pt-Ru-W、Pt-Ru-Ni、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、Pt-Ru-Ir-Ni、Pt-Co-Mn、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe、Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr、Pt-Cr-Ir、またはこれらのうち、2以上の混合物が使用され得る。
【0039】
前記非白金系金属(Non-platinum based metal)では、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び非白金系合金(Non-platinum based alloy)からなる群より選ばれる1つ以上が使用され得る。
【0040】
前記非白金系合金では、Ir-Fe、Ir-Ru、Ir-Os、Co-Fe、Co-Ru、Co-Os、Rh-Fe、Rh-Ru、Rh-Os、Ir-Ru-Fe、Ir-Ru-Os、Rh-Ru-Fe、Rh-Ru-Os、Fe-N、Fe-P、Co-N、またはこれらのうち、2以上の混合物が使用され得る。
【0041】
本発明に係る窒素含有保護層15は、前記第1の複合体12が凝集された第2の複合体(2次粒子)の表面上にコーティングされたものでありうる。具体的に、前記窒素含有保護層15は、窒素前駆体から由来するものでありうる。
【0042】
従来では、燃料電池用触媒が前記第2の複合体だけで構成されており、燃料電池駆動の際、金属触媒粒子が金属触媒粒子イオンになって溶解され、他の金属触媒粒子に蒸着されて、粒子サイズを成長させるオストワルド熟成(Ostwald ripening)現象と金属触媒粒子同士に凝集される現象を導いた。このため、金属触媒粒子が担体から離れる現象が発生して電極の劣化が促進され、担体が腐食されるという問題点も生じた。本発明によれば、前記窒素含有保護層を前記第2の複合体の表面上にコーティングすることで、担体が腐食されることを防止できるだけでなく、金属触媒粒子が溶解または焼結される現象を防止して、燃料電池用触媒の耐久性を顕著に改善することができる。
【0043】
前記窒素前駆体は、シアナミド(cyanamide)、尿素(urea)、メラミン(melamine)、2-シアノグアニジン(2-cyanoguanidine)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含むことができる。
【0044】
前記第2の複合体の平均サイズは、90~500nmであることができ、好ましくは、100~450nm、より好ましくは、110~400nmであることができる。
【0045】
本発明に係る窒素含有保護層の厚みは、5~70nm、好ましくは、8~60nm、より好ましくは、10~50nmであることができる。前記窒素含有保護層の厚みが前記数値範囲未満である場合、燃料電池用触媒の耐久性が十分に改善されないことがあり、前記数値範囲を超過する場合、窒素含有保護層が厚くなり、触媒の性能が落ちることがある。
【0046】
本発明に係る窒素含有保護層15は、グラフィティックカーボンナイトライド(graphitic carbon nitride)を含むことができる。具体的に、前記グラフィティックカーボンナイトライドは、ほとんどの溶媒に対して化学的に安定しており、前記燃料電池用触媒とアイオノマーとを混合して電極スラリーを製造する過程を容易にすることができる。また、グラフィティックカーボンナイトライドは、炭素と窒素のみからなっており、環境的に問題を引き起こすことができる金属元素を含んでいない。したがって、本発明によれば、材料の経済性、工程の容易性、及び環境にやさしい製造工程を全て実現することができる。
【0047】
本発明に係る窒素含有保護層15は、ボールミル(ball mill)、パウダーミキサー(powder mixer)、共鳴音響混合機(Resonant Acoustic Mixer;RAM)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを用いて製造されたものであることができ、好ましくは、共鳴音響混合機(Resonant Acoustic Mixer;RAM)を用いて製造されたものであることができる。
【0048】
窒素含有保護層を形成するとき、共鳴音響混合機を用いる場合、低周波数と高い強さの音響エネルギーで、第1の複合体と窒素前駆体とを短い時間に均等に混合できるという利点がある。これにより、製造工程の時間が短縮されて、工程の経済性が確保され得る。
【0049】
図2は、本発明の一実施形態に係る燃料電池用触媒の製造方法を示した模式図である。
【0050】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る燃料電池用触媒の製造方法は、(S1)反応容器に第1の複合体及び窒素前駆体を添加した後、これらを攪拌して第1の混合物を製造するステップ、(S2)攪拌された前記第1の混合物を熱処理するステップを含む。前記第1の複合体は、担体及び前記担体に担持された金属触媒粒子を含むことができる。前述した部分と繰り返された説明は、簡略に説明するか、省略する。
【0051】
前記(S1)ステップは、ボールミル(ball mill)、パウダーミキサー(powder mixer)、共鳴音響混合機(Resonant Acoustic Mixer;RAM)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを用いるステップであることができる。
【0052】
前記(S2)ステップは、第1の熱処理ステップ及び前記第1の熱処理ステップと相違した第2の熱処理ステップを含むことができる。具体的に、前記第1の熱処理ステップは、第1の非反応性気体雰囲気下に、150~250℃で0.5~3時間の間熱処理するステップであることができる。前記第2の熱処理ステップは、第2の非反応性気体雰囲気下に、500~600℃で1~5時間の間熱処理するステップであることができる。ただし、本発明の技術思想が2ステップに区分された熱処理ステップに制限されるものではなく、3ステップ以上の熱処理ステップを含むことができる。
【0053】
上記のように熱処理ステップを区分して使用することにより、金属触媒粒子の急な成長を防止できる。一般に、熱処理ステップを区分せずに使用する場合、金属触媒粒子が成長し過ぎ、担体に対する担持量が低くなるという問題点が生じ得る。本発明の一側面によれば、上記のような理由により、熱処理ステップを区分することが好ましい。ただし、熱処理ステップを区分しなかった場合にも、窒素含有保護層が形成され得るので、本発明の技術思想もこれに該当する。本発明の他の側面によれば、前記(S2)ステップで熱処理ステップが区分されることにより、窒素含有保護層の形態が規則的かつ均一な窒素含有保護層が形成され得る。例えば、本発明の一実施形態に係る窒素含有保護層の厚み分布は、TEM(transmission electron microscope)を用いて窒素含有保護層の種々の地点での平均厚みと各々の該当地点で測定された厚みとの差を測定して標準偏差(Standard deviation;SD)を算出することによって分析されることができる。例えば、前記(S2)ステップで熱処理ステップを区分したときに製造された窒素含有保護層の厚みに対する標準偏差は、5~25であることができ、より具体的に、8~20であることができる。それに対し、前記(S2)ステップで熱処理ステップを区分しなかったときに製造された窒素含有保護層の厚みに対する標準偏差は、30~50であることができる。
【0054】
前記第1の非反応性気体及び前記第2の非反応性気体は、各々独立的に窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。本明細書において「非反応性気体」は、反応性が低いか、不活性気体を包括する意味と定義される。
【0055】
前記(S1)ステップにおいて、前記窒素前駆体の含量は、前記担体100重量部を基準に80~200重量部であることができ、好ましくは、90~180重量部、より好ましくは、100~160重量部であることができる。前記窒素前駆体の含量が前記数値範囲未満である場合、窒素含有保護層の厚みが薄くなり過ぎ、耐久性が改善される効果がわずかであることがあり、前記数値範囲を超過する場合、窒素含有保護層が厚くなり、触媒の性能が落ちることがある。
【0056】
2.触媒層及びその製造方法
【0057】
本発明のさらに他の実施形態に係る触媒層は、前記燃料電池用触媒及びアイオノマーを含むことができる。前述した部分と繰り返された説明は、簡略に説明するか、省略する。
【0058】
本発明に係るアイオノマの含量は、前記燃料電池用触媒(固形分)100重量部を基準に20~60重量部であることができ、好ましくは、25~55重量部、より好ましくは、30~50重量部であることができる。前記アイオノマの含量が前記数値範囲未満である場合、燃料電池の性能が低下することがあり、前記数値範囲を超過する場合、物質伝達が阻害されて、燃料電池の性能が低下するという問題が生じ得る。
【0059】
本発明に係るアイオノマは、バインダー(binder)として使用されるものであって、フッ素系アイオノマ、部分フッ素系アイオノマ、炭化水素系アイオノマ、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか1つを含むことができる。
【0060】
前記フッ素系アイオノマは、例えば、主鎖にフッ素を含むフッ素系高分子であって、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルとの共重合体、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。
【0061】
前記部分フッ素系アイオノマは、例えば、ポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、またはポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体であることができる。
【0062】
前記炭化水素系アイオノマは、例えば、スルホン化されたポリイミド(Sulfonated polyimide、S-PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(Sulfonated polyarylethersulfone、S-PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(Sulfonated polyetheretherketone、S-PEEK)、スルホン化されたポリベンズイミダゾール(Sulfonated polybenzimidazole、S-PBI)、スルホン化されたポリスルホン(Sulfonated polysulfone、S-PSU)、スルホン化されたポリスチレン(Sulfonated polystyrene、S-PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(Sulfonated polyphosphazene)、スルホン化されたポリキノキサリン(Sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化されたポリケトン(Sulfonated polyketone)、スルホン化されたポリフェニレンオキサイド(Sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化されたポリエーテルスルホン(Sulfonated polyether sulfone)、スルホン化されたポリエーテルケトン(Sulfonated polyether ketone)、スルホン化されたポリフェニレンスルホン(Sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィド(Sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホン(Sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(Sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテル(Sulfonated polyarylene ether)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルニトリル(Sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(Sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルスルホンケトン(Sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。
【0063】
本発明のさらに他の実施形態に係る触媒層の製造方法は、基材上に電極スラリーをコーティングするステップ及びコーティングされた前記電極スラリーを乾燥するステップを含むことができる。前記電極スラリーは、前述したように、前記燃料電池用触媒及びアイオノマを含むことができる。前記基材は、高分子電解質膜またはガス拡散層であることができる。
【0064】
3.膜-電極アセンブリ
【0065】
本発明のさらに他の実施形態は、高分子電解質膜及び前記高分子電解質膜の少なくとも一面上に配置された前記触媒層を備える膜-電極アセンブリである。
【0066】
以下、図3を参考して本発明の構成を詳細に説明する。
【0067】
図3は、本発明の一実施形態に係る膜-電極アセンブリを示した断面図である。
【0068】
図3に示すように、本発明に係る膜-電極アセンブリ100は、前記高分子電解質膜50を備える膜-電極アセンブリ100であって、互いに対向して位置するアノード電極20とカソード電極20’及び前記アノード電極20と前記カソード電極20’との間に位置する前記高分子電解質膜50を備える。
【0069】
前記アノード及びカソード電極20、20’は、電極基材40、40’と、前記電極基材40、40’表面に形成された触媒層30、30’とを備え、前記電極基材40、40’と前記触媒層30、30’との間に前記電極基材40、40’での物質拡散を容易にするために、炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに備えることもできる。
【0070】
本発明に係る燃料電池用触媒は、前記アノード電極及びカソード電極20、20’のうち、少なくともいずれか1つに適用されることができ、具体的に、前記電極基材40、40’表面に形成された触媒層30、30’に適用されることができる。
【0071】
前記高分子電解質膜50は、イオン伝導体を含むことができる。前記イオン伝導体は、前述した触媒層に適用されるアイオノマと同一であるか、異なることができる。
【0072】
本発明のさらに他の実施形態によれば、高分子電解質膜50は、前記イオン伝導体が含浸された多孔性支持体を含む強化複合膜であることができる。前記強化複合膜は、前記多孔性支持体の第1の面上に第1の樹脂層を備えることができ、前記多孔性支持体の第1の面と対向する第2の面上に第2の樹脂層を備えることができる。前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層は、前述したイオン伝導体を含むことができる。
【0073】
前記多孔性支持体は、フッ素系支持体またはナノウェブ支持体であることができる。具体的に、前記フッ素系支持体は、例えば、高分子フィブリルの微細構造、またはフィブリルによって節が互いに連結された微細構造を有する拡張されたポリテトラフルオロエチレン(Expanded Polytetrafluoroethylene;e-PTFE)に該当することができる。また、前記多孔性支持体として、前記節が存在しない高分子フィブリルの微細構造を有するフィルムも用いられることができる。
【0074】
前記フッ素系支持体は、過フッ素化重合体を含むことができる。前記多孔性支持体は、分散重合PTFEを潤滑剤の存在下でテープに押出成形し、これによって得られた材料を延伸して、より多孔質であり、より強い多孔性支持体に該当することができる。
【0075】
また、前記PTFEの融点(約342℃)を超過する温度で前記e-PTFEを熱処理することにより、PTFEの非晶質含有率を増加させることもできる。上記方法にて製造されたe-PTFEフィルムは、様々な直径を有する微細気孔及び空隙率を有することができる。上記方法にて製造されたe-PTFEフィルムは、少なくとも35%の空隙を有することができ、前記微細気孔の直径は、約0.01~1μmであることができる。
【0076】
本発明の一実施形態に係るナノウェブ支持体は、ランダムに配向された複数個の繊維からなる不織布繊維質ウェブ(non-woven fibrous web)であることができる。前記不織布繊維質ウェブは、インターレイド(interlaid)されるが、織布と同様の方式でない、個々の繊維またはフィラメントの構造を有するシートを意味する。前記不織布繊維質ウェブは、カーディング(carding)、ガーネティング(garneting)、エアレイング(air-laying)、ウェットレイング(wet-laying)、メルトブローイング(melt blowing)、スパンボンディング(spun bonding)、及びスティッチボンディング(stitch bonding)からなる群より選ばれるいずれか1つの方法によって製造されることができる。
【0077】
前記繊維は、1つ以上の重合体材料を含むことができ、一般に、繊維形成重合体材料として使用されるものであれば、いずれのものでも使用可能であり、具体的に、炭化水素系繊維形成重合体材料を使用することができる。例えば、前記繊維形成重合体材料は、ポリオレフィン、例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレン、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン-6及びナイロン-6,6)、ポリウレタン、ポリブテン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、流体結晶質重合体、ポリエチレン-コ-酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、サイクリックポリオレフィン、ポリオキシメチレン、ポリオレフィン系熱可塑性弾性重合体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含むことができる。ただし、本発明の技術思想がこれに制限されるものではない。
【0078】
本発明の一実施形態に係るナノウェブ支持体は、ナノ繊維が複数の気孔を含む不織布形態で集積された支持体であることができる。
【0079】
前記ナノ繊維は、優れた耐化学性を表し、疏水性を有し、高湿の環境で水分による形態変形の恐れがない炭化水素系高分子を好ましく使用することができる。具体的に、前記炭化水素系高分子では、ナイロン、ポリイミド、ポリアラミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルブチレン、ポリウレタン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものを使用することができ、この中でも、耐熱性、耐化学性、及び形態安定性により優れたポリイミドを好ましく使用することができる。
【0080】
前記ナノウェブ支持体は、電気放射により製造されたナノ繊維がランダムに配列されたナノ繊維の集合体である。このとき、前記ナノ繊維は、前記ナノウェブの多孔度及び厚みを考慮して、電子走査顕微鏡(Scanning Electron Microscope、JSM6700F、JEOL)を用いて50個の繊維直径を測定し、その平均から計算したとき、40~5000nmの平均直径を有することが好ましい。
【0081】
仮に、前記ナノ繊維の平均直径が前記数値範囲未満である場合、前記多孔性支持体の機械的強度が低下することがあり、前記ナノ繊維の平均直径が前記数値範囲を超過する場合、多孔度が顕著に落ち、厚みが厚くなることがある。
【0082】
前記不織布繊維質ウェブの厚みは、10~50μmであることができ、具体的に、15~43μmであることができる。前記不織布繊維質ウェブの厚みが前記数値範囲未満である場合、機械的強度が落ちることがあり、前記数値範囲を超過する場合、抵抗損失が増加し、軽量化及び集積化が落ちることがある。
【0083】
前記不織布繊維質ウェブは、坪量(basic weight)が5~30mg/cmでありうる。前記不織布繊維質ウェブの坪量が前記数値範囲未満である場合、目に見える気孔が形成されて、多孔性支持体として機能し難いことがあり、前記数値範囲を超過する場合には、ポアがほとんど形成されない紙または織物の形態のように製造されることができる。
【0084】
本発明に係る多孔性支持体の多孔度は、30~90%に該当することができ、好ましくは、60~85%に該当することが好ましい。前記多孔性支持体の多孔度が前記数値範囲未満である場合、イオン伝導体の含浸性低下の問題が生じることがあり、前記数値範囲を超過する場合、形態安定性が低下することにより、後工程が円滑に進行されないことがある。
【0085】
前記多孔度は、下記の数学式1により、前記多孔性支持体の全体体積に対する多孔性支持体内の空気体積の割合によって計算することができる。このとき、前記全体体積は、長方形形態のサンプルを製造して、横、縦、厚みを測定して計算し、空気体積は、サンプルの質量を測定後、密度から逆算した高分子体積を全体体積から引いて得ることができる。
【0086】
[数1]
【0087】
多孔度(%)=(多孔性支持体内の空気体積/多孔性支持体の全体体積)×100
【0088】
4.燃料電池
【0089】
本発明のさらに他の実施形態は、前記膜-電極アセンブリを備える燃料電池である。
【0090】
図4は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を説明するための模式図である。
【0091】
図4に示すように、本発明に係る燃料電池200は、燃料と水とが混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的な反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、及び酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を備えることができる。
【0092】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤との酸化/還元反応を導いて電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備えることができる。
【0093】
それぞれの単位セルは、電気を発生させる単位のセルを意味するものであって、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる前記膜-電極接合体と、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤とを膜-電極接合体に供給するための分離板(またはバイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下、「分離板」と称する)とを備えることができる。前記分離板は、前記膜-電極接合体を中心に、その両側に配置される。このとき、前記スタックの最外側に各々位置する分離板を特にエンドプレートとも称する。
【0094】
前記分離板のうち、前記エンドプレートには、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ状の第1の供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2の供給管232とが備えられ、他の1つのエンドプレートには、複数の単位セルで最終的に未反応されて残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出させるための第1の排出管233と、前記した単位セルで最終的に未反応されて残った酸化剤を外部に排出させるための第2の排出管234とが備えられ得る。
【0095】
前記燃料電池において、前記電気発生部を構成するセパレータ、燃料供給部、及び酸化剤供給部は、通常の燃料電池で使用されるものであるから、本明細書において詳細な説明を省略する。
【0096】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明するが、これは、1つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容により制限されない。
【0097】
[製造例1:触媒層の製造]
【0098】
下記の比較例及び実施例による触媒層を製造した。
【0099】
<実施例1>
【0100】
田中(Tanaka)社の常用Pt/C触媒(複数の第1の複合体)10gを反応容器に入れた後、シアナミド12gを添加した。その後、共鳴音響混合機(Resonant Acoustic Mixer;RAM)を用いて攪拌し、第1の混合物を製造した。前記第1の混合物は、共鳴音響混合機(Resonant Acoustic Mixer;RAM)を用いて60Hzの周波数雰囲気で15分間80gの重力加速度が加えられながら攪拌された。前記攪拌された第1の混合物をチューブ熱処理装置(Tube furnace)を用いて、窒素雰囲気下で250℃で3時間の間1次熱処理し、前記1次熱処理された混合物を窒素雰囲気下に600℃で3時間の間2次熱処理し、最終的に第2の複合体(Pt/C)の表面上に窒素含有保護層(g-C、厚み30nm)が形成された触媒を製造した。その後、前記触媒(固形分)を前記固形分100重量部を基準に、イオン伝導体分散液(Nafion D-521)45重量部と溶媒を添加して電極スラリーを製造した。前記電極スラリーを異形フィルムにコーティングした後、6時間の間60℃で乾燥して実施例1による触媒層を製造した。
【0101】
<比較例1>
【0102】
田中(Tanaka)社の常用Pt/C触媒(第1の複合体)10gを反応容器に入れ、溶媒と混合して触媒混合溶液を製造した。前記触媒(固形分)を前記固形分100重量部を基準にバインダーであるイオン伝導体分散液(Nafion D-521)45重量部に添加して電極スラリーを製造した。前記電極スラリーを異形フィルムにコーティングした後、6時間の間60℃で乾燥して比較例1による触媒層を製造した。
【0103】
<参照例1>
【0104】
実施例1と同様に触媒層を製造するものの、1次熱処理を省略し、2次熱処理のみを行った。
【0105】
[実験例1:実施例1及び参照例1による触媒層の表面SEM分析]
【0106】
図5は、実施例1と参照例1とによる触媒層表面のSEM(scanning electron microscope)写真である。
【0107】
図5において実施例1を参考すれば、第1の複合体の表面上に規則的かつ均一な窒素含有保護層(g-C layer)が形成されて、第1の複合体の形状に変化が無いことを確認できる。それに対し、参照例1を参考すれば、第1の複合体の表面上に無秩序であり、バルク(bulk)な形態の窒素含有保護層(g-C layer)が形成されたことを確認できる。
【0108】
[実験例2:実施例1及び参照例1による燃料電池用触媒のTEM分析]
【0109】
図6は、実施例1及び参照例1による燃料電池用触媒のTEM(transmission electron microscope)写真である。
【0110】
図6に示すように、実施例1による燃料電池用触媒は、第1の複合体の表面上に均一なサイズの金属触媒粒子を示していることに対し、参照例1による燃料電池用触媒は、様々なサイズの金属触媒粒子を示しているだけでなく、無秩序であり、バルク(bulk)な形態で窒素含有保護層(g-C layer)が形成されたことを示している。燃料電池用触媒において、同一倍率で分析した複数のTEMイメージを用いて、50ヶ所以上の窒素含有保護層の厚みを測定し、窒素含有保護層の平均厚みの差を算出することにより、標準偏差を求めることができる。すなわち、実施例1の標準偏差は、12.8であり、参照例1の標準偏差は、40.2であるので、実施例1の標準偏差は、参照例1の標準偏差より低いことを確認できる。
【0111】
前記実験例1及び2を総合的に解釈すれば、熱処理ステップを区分せずに、1つの熱処理ステップで燃料電池用触媒を製造する場合、窒素含有保護層の形態が無秩序になり、バルク(bulk)になるだけでなく、金属触媒粒子のサイズが多様化されることを確認できる。したがって、熱処理ステップを少なくとも2個以上のステップに区分して触媒を製造することにより、規則的かつ均一な窒素含有保護層が形成され得るし、金属触媒粒子のサイズが均一になることを類推できる。
【0112】
[製造例2:膜-電極アセンブリの製造]
【0113】
前記製造例1による触媒層を高分子電解質膜(Nafion D-521)に直接コーティングして膜-電極アセンブリを製造した。膜-電極アセンブリは、通常の方法により製造された。
【0114】
[実験例3:膜-電極アセンブリ(MEA)の性能評価]
【0115】
図7は、比較例1、参照例1、及び実施例1による膜-電極アセンブリの性能評価を示したものである。
【0116】
具体的に、80℃、50%RH条件で膜-電極アセンブリの電流密度(mA/cm)-電圧(V)測定を介して出力性能を評価した。具体的に、実際、燃料電池運転条件で出力性能を確認するために、膜-電極アセンブリは、燃料電池単位セル評価装置(Scribner 850 fuel cell test system)を利用した。
【0117】
図7に示すように、第1の複合体の表面上に窒素含有保護層が形成されなかった比較例1及び無秩序であり、バルク(bulk)な形態で窒素含有保護層(g-C layer)が形成された参照例1と対照的に、実施例1は、窒素含有保護層が均一にコーティングされ、金属触媒粒子のサイズが均一になることにより、膜-電極アセンブリの性能が最も優れたことを確認できる。
【0118】
[実験例4:膜-電極アセンブリの触媒耐久性評価]
【0119】
前記製造例2による膜-電極アセンブリに対して触媒耐久性を米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)の耐久性評価プロトコルに基づいて評価した。具体的に、80℃、H/N条件で膜-電極アセンブリの触媒耐久性評価のために、0.6~1.0V区間を50mV/sスキャン速度でvoltage cycling(50mV/s10,000cycle)を行った後、電圧損失(Voltage loss)を各々測定し、その測定値を下記の表1に示した。
【0120】

【表1】
【0121】
前記表1を参考すれば、比較例1及び参照例1に対して実施例1は、電圧損失が最も少ないことを確認できる。これを通じて、実施例1による触媒層耐久性が顕著に改善されたことを類推できる。
【0122】
以上において本発明の望ましい実施形態等について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、次の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の種々の変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】