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特表2024-544534CD20-PD1結合分子及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】CD20-PD1結合分子及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241126BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241126BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241126BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241126BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241126BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/705
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12Q1/02
C12Q1/66
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61P37/02
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527569
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022079530
(87)【国際公開番号】W WO2023086812
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/278,374
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/278,454
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ベイ
(72)【発明者】
【氏名】アヴァル、ナガ スハシニ
(72)【発明者】
【氏名】リン、チャ-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン、アイヌル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ エイチ.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ23
4B063QR57
4B063QR80
4B063QS28
4B063QX02
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA03
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、CD20及びPD1の両方に結合することができる分子、並びにそのような分子を含む薬学的組成物及びその使用方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質であって、
(a)少なくとも1つのCD20標的化部分と、
(b)少なくとも1つのPD1アゴニスト部分と、
(c)少なくとも1つの二量体化部分と、
(d)任意選択で、前記タンパク質中の1つ以上の部分を分離する1つ以上のリンカー部分と、を含み、
ここで、
(i)前記タンパク質の部分は、N末端からC末端に、CD20標的化部分-PD1アゴニスト部分-二量体化部分の順に配置されているか、
(ii)前記CD20標的化部分は、抗CD20Fabであり、前記PD1アゴニスト部分は、PDL1のエクトドメイン若しくはそのPD1結合部分であり、前記二量体化部分は、Fcドメインであり、前記Fabの軽鎖は、前記PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分に融合していないか、
(iii)前記CD20標的化部分は、抗CD20Fabであり、前記PD1アゴニスト部分は、前記PDL1のエクトドメイン若しくはそのPD1結合部分であり、前記二量体化部分は、Fcドメインであり、前記PD1アゴニスト部分は、前記抗CD20FabのVHのN末端にないか、
(iv)前記CD20標的化部分は、抗CD20Fabであり、前記PD1アゴニスト部分は、前記PDL1のエクトドメイン若しくはそのPD1結合部分であり、前記二量体化部分は、Fcドメインであり、前記PD1アゴニスト部分は、前記FcドメインのC末端にないか、
(v)前記CD20標的化部分は、抗CD20Fabであり、前記PD1アゴニスト部分は、前記PDL1のエクトドメイン若しくはそのPD1結合部分であり、前記二量体化部分は、Fcドメインであり、前記タンパク質は、前記CD20標的化部分及び/若しくは前記PD1アゴニスト部分に対して一価であるか、
(vi)又は前述の(i)~(v)のうちの2つ以上の任意の組み合わせである、タンパク質。
【請求項2】
前記少なくとも1つのCD20標的化部分が、抗CD20抗体の抗原結合断片である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記抗CD20抗体の前記抗原結合断片が、Fab、Fv、又はscFvの形態にある、請求項2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記抗CD20抗体が、
(a)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン(ibritumomab ituxetan)、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、及びベルツズマブから選択されるか、又は
(b)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、及びベルツズマブから選択される抗CD20抗体とCD20との結合に関して競合し、かつ/若しくは抗CD20抗体と同じエピトープに結合する、請求項2又は3に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記少なくとも1つのPD1アゴニスト部分が、PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記PD1アゴニスト部分が、前記PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分の前記アミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、請求項5に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記PDL1の細胞外ドメインの前記PD1結合部分が、ヒトPDL1のアミノ酸19~134又はマウスPDL1のアミノ酸19~134を含む、請求項5又は6に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記PDL1の細胞外ドメインの前記PD1結合部分が、PDL1エクトドメインを含むか、又はそれからなり、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、請求項5又は6に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記少なくとも1つのPD1アゴニスト部分が、PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記PD1アゴニスト部分が、前記PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分のアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、請求項9に記載のタンパク質。
【請求項11】
前記PDL2の細胞外ドメインの前記PD1結合部分が、ヒトPDL2のアミノ酸20~121又はマウスPDL2のアミノ酸20~121を含む、請求項9又は10に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記PDL2の細胞外ドメインの前記PD1結合部分が、前記PDL2エクトドメインを含むか、又はそれからなり、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、請求項9又は10に記載のタンパク質。
【請求項13】
1つ以上のリンカー部分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項14】
1)少なくとも1つのCD20標的化部分及び少なくとも1つのPD1アゴニスト部分が、リンカー部分によって分離され、2)少なくとも1つのCD20標的化部分及び少なくとも少なくとも1つの二量体化部分が、リンカー部分によって分離される、請求項13に記載のタンパク質。
【請求項15】
各リンカー部分が、(a)少なくとも5若しくは少なくとも10アミノ酸長であり、(b)最大20、最大25若しくは最大30アミノ酸長であり、かつ/又は(c)5~15アミノ酸若しくは5~20アミノ酸長である、請求項13又は14に記載のタンパク質。
【請求項16】
少なくとも1つのリンカー部分が、グリシン-セリンリンカーを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項17】
(1)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項18】
図1Aに示される構成を有する、請求項17に記載のタンパク質。
【請求項19】
(1)N末端からC末端の配向で、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分、任意選択的リンカー部分、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項20】
図1Bに示される構成を有する、請求項19に記載のタンパク質。
【請求項21】
(1)N末端からC末端の配向で、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、及びPD1アゴニスト部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項22】
図1Cに示される構成を有する、請求項21に記載のタンパク質。
【請求項23】
(1)N末端からC末端の配向で、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項24】
図1Dに示される構成を有する、請求項23に記載のタンパク質。
【請求項25】
(1)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分、任意選択的リンカー部分、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項26】
前記第2のモノマーが、単一のポリペプチド鎖又は2つのポリペプチド鎖で構成される、請求項25に記載のタンパク質。
【請求項27】
図1Eに示される構成を有する、請求項25又は26に記載のタンパク質。
【請求項28】
(1)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、及びPD1アゴニスト部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項29】
図1Fに示される構成を有する、請求項28に記載のタンパク質。
【請求項30】
(1)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項31】
図1Gに示される構成を有する、請求項30に記載のタンパク質。
【請求項32】
(1)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項33】
図1Hに示される構成を有する、請求項32に記載のタンパク質。
【請求項34】
各々が、N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分、任意選択的リンカー部分、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、2つのモノマーを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項35】
図1Iに示される構成を有する、請求項34に記載のタンパク質。
【請求項36】
各々が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、及びPD1アゴニスト部分を含むか、又はそれらからなる、2つのモノマーを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項37】
図1Jに示される構成を有する、請求項36に記載のタンパク質。
【請求項38】
(1)N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、任意選択的リンカー部分、及びCD20標的化部分を含むか又はそれらからなる第1のモノマーと、(2)N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分を含むか又はそれらからなる第2のモノマーと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項39】
図1Kに示される構成を有する、請求項38に記載のタンパク質。
【請求項40】
各々が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分を含むか、又はそれらからなる、2つのモノマーを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項41】
図1Lに示される構成を有する、請求項40に記載のタンパク質。
【請求項42】
前記CD20標的化部分が、ヒトCD20の細胞外ドメインに結合する、請求項1~41のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項43】
前記PD1アゴニスト部分が、ヒトPD1を刺激する、請求項1~42のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項44】
前記CD20標的化部分が、マウスCD20の細胞外ドメインに結合する、請求項1~41のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項45】
前記PD1アゴニスト部分が、マウスPD1を刺激する、請求項1~41及び44のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項46】
前記少なくとも1つの二量体化部分が、Fcドメインであるか、又はFcドメインを含む、請求項1~45のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項47】
請求項1~46のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする、核酸又は複数の核酸。
【請求項48】
請求項1~46のいずれか一項に記載のタンパク質又は請求項47に記載の核酸(複数可)を発現するように操作された、宿主細胞。
【請求項49】
請求項48に記載の宿主細胞を培養し、それによって発現された前記タンパク質を回収することを含む、請求項1~46のいずれか一項に記載のタンパク質を産生する、方法。
【請求項50】
請求項1~46のいずれか一項に記載のタンパク質及び賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項51】
T細胞調節不全に関連する免疫障害又は状態に罹患している対象を治療する方法であって、有効量の、請求項1~46のいずれか一項に記載のタンパク質又は請求項50に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項52】
前記免疫障害又は状態が、1型糖尿病である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
対象における細胞性自己免疫応答を抑制する方法であって、有効量の、請求項1~46のいずれか一項に記載のタンパク質又は請求項50に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項54】
前記方法が、前記対象におけるT細胞機能、B細胞機能、又はT細胞応答性を減少させる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
PD1を刺激する分子I型の能力を特徴付ける方法であって、
(a)CD3を安定的に発現し、AP1-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現し、かつPD1を安定的に発現する細胞I型を、CD22を安定的に発現しCD20を安定的に発現する細胞II型とともに培養することと、
(b)前記分子I型及び分子II型の存在下又は非存在下で、ステップa)の培養細胞をインキュベートすることと、
(c)ステップb)の後、前記培養細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定することと、を含み、
前記分子I型が、i)CD20のエクトドメインに結合する第1の結合特異性、及びii)PD1に結合する第2の結合特異性を含む、多重特異性抗原結合分子であり、
前記分子II型が、i)CD3のエクトドメインに結合する第1の結合特異性、及びii)CD22のエクトドメインに結合する第2の結合特異性、を含む、多重特異性抗原結合分子であり、
前記分子II型の前記存在は、ルシフェラーゼ活性の増加を引き起こし、前記分子I型の前記存在は、前記分子II型によって引き起こされた前記ルシフェラーゼ活性の低減を引き起こし、前記ルシフェラーゼ活性の低減の量は、前記分子I型のPD1を刺激する能力を示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月11日に出願された米国仮出願第63/278,454号及び2021年11月11日に出願された米国仮出願第63/278,374号の優先権の利益を主張し、それらの各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
2.配列表
本出願は、電子的に提出されている配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年11月8日に作成された当該コピーは、RGN-012WO_SL.xmlという名称であり、サイズは63,928バイトである。
【背景技術】
【0003】
3.背景
自己免疫疾患は、生物が自身の細胞及び組織に対して異常な免疫応答を有する場合に生じる。自己免疫を理解するための努力は、何十年にもわたって行われてきた。この間、免疫系が自己反応性を制御するための複数のメカニズムを進化させたことが明らかになった。これらのメカニズムの1つ以上の欠陥は、耐性の崩壊につながり得、自己免疫疾患をもたらし得る。
【0004】
全身性も臓器特異的自己免疫疾患も、最初の引き金は、先天性センサーによる自己又は外来分子の認識に関係している可能性が高い。この認識は、以前に静止していた自己反応性T細胞及びB細胞の炎症応答及び関与を引き起こす。Theofilopolous,Kono,and Baccala,2017,Nat Immunol,18(17):716-724。自己反応性は、リンパ球の選択及び免疫系の恒常性に不可欠な低い「生理学的」レベルの自己反応性から、臨床的帰結を伴わない循環自己抗体及び軽微な組織浸潤として現れる中間レベルの自己免疫性へ、免疫介在性臓器傷害に関連する病原性自己免疫へと多岐にわたる。Theofilopolous,Kono,and Baccala,2017,Nat Immunol,18(17):716-724。自己免疫疾患は、臓器特異的(例えば、I型糖尿病(T1D)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、重症筋無力症)及び全身性(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群)に分けられ、自己抗体又は細胞傷害性T細胞によって媒介され得るが、全ての例でヘルパーT細胞が必要である。Theofilopolous,Kono,and Baccala,2017,Nat Immunol,18(17):716-724。
【0005】
ほとんどの自己免疫疾患は、臨床的不均一性、多遺伝子性、並びにしばしば遺伝的及び環境的要因の両方を必要とする多要因の寄与を示す。自己反応性T細胞及びB細胞のエスケープの制御には以下の4つのメカニズムが寄与している:阻害分子、アネルギー、無視、及び能動的抑制。Kono and Theofilopolous,Kono,and Baccala,2017,Nat Immunol,18(17):716-724。いくつかの阻害分子(例えば、CTLA-4、PD-1、LAG-3、TIM3、VISTA、TIGIT、FcγRIIb、特定のシグレック(Siglec))をT細胞及びB細胞の表面上に発現させて、正常及び抗自己の両方の過剰な免疫応答を抑制する。これらの分子の一部の欠乏は、自己免疫をもたらし、自己反応性リンパ球が末梢レパートリーに存在するが、通常は制御下にあるという強力な証拠を提供する。Paterson and Sharpe,2010,Nat Ummunol,11:109-111、Okazaki et al.,2013,Nat Immunol,14:1212-1218、Pincetic et al.,2014,Nat Immunol,15:707-716、Macauley,Crocker,and Paulson,2914,Nat Rev Immunol,14:653-666、Ceeraz et al.,2016,Arthritis Rheumatol 69(4):814-825、及びSchmitt et al.,2016,J Exp Med,213:1627-1644を参照されたい。チェックされていない自己反応性に起因する広範囲にわたる免疫関連有害事象が頻繁に発生する。Michot et al.,2016,Eur J Cancer,54:139-148。
【0006】
自己免疫疾患のための既存の治療法は、限られた成果しか得られなかった。例えば、代謝制御を通じて臓器特異的自己免疫疾患を矯正することはしばしば可能である。機能が失われ、回復することができない場合、機械的代替物又は組織移植片が適切であり得る。このアプローチを使用して症状のいくつかを緩和できる場合があるが、最も障害を引き起こす自己免疫疾患のいくつかについては、効果的な長期根治的治療は存在しない。インスリン、コルチコステロイド及び改変型ベータインターフェロンを含む多くの化合物は、自己免疫疾患のいくつかの症状を改善することができるが、それらは重篤な副作用を有する可能性があり、かつ/又は長期使用を必要とする可能性がある。シクロスポリンA、FK506及びラパマイシンによる慢性治療などの一般的な免疫抑制薬物療法も、これらの疾患の治療を提供することができず、それらの使用は、多くの有害な副作用を伴う。当該作用には、腎毒性、感染症の素因の増加、及び新生物の発生率の増加が含まれる。
【0007】
したがって、自己免疫疾患を治療するために使用することができる新規の治療組成物及びプロトコルが求められる。
【発明の概要】
【0008】
4.概要
本開示は、新規のCD20-PD1結合分子を提供する。本開示のCD20-PD1結合分子は、典型的には、1つ以上のCD20標的化部分及び/又は1つ以上のPD1アゴニスト部分を含むCD20-PD1モノマーを含むか、又はそれからなる。本開示のCD20-PD1結合分子は、タンパク質を含み、タンパク質は、少なくとも1つのCD20標的化部分と、少なくとも1つのPD1アゴニスト部分と、少なくとも1つの二量体化部分と、任意選択で、タンパク質中の1つ以上の部分を分離する1つ以上のリンカー部分と、を含む。CD20標的化部分が、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分が、PDL1のエクトドメインであり、二量体化部分が、Fcドメインであるいくつかの実施形態では、任意選択で、i)Fabの軽鎖が、PDL1のエクトドメイン若しくはそのPD1結合部分に融合していないか、ii)PD1アゴニスト部分が抗CD20FabのVHのN末端にないか、iii)PD1アゴニスト部分がFcドメインのC末端にないか、iv)タンパク質がCD20標的化部分及び/若しくはPD1アゴニスト部分に対して一価であるか、iv)タンパク質が非対称であるか、v)タンパク質がFcヘテロ二量体を含むか、又は前述の(i)~(vi)のうちの2つ以上の任意の組み合わせである。
【0009】
例示的なCD20-PD1結合分子は、セクション6.2及び番号付けされた実施形態1~142に開示されている。例示的なCD20標的化部分は、セクション6.2.1及び番号付けされた実施形態2~6に開示されている。例示的なPD1アゴニスト部分は、セクション6.4及び番号付けされた実施形態7~22に開示されている。
【0010】
本開示は、CD20-PD1結合分子、CD20-PD1モノマー、及びCD20標的化部分及びPD1アゴニスト部分をコードする核酸を更に提供する。2つ以上のポリペプチド鎖から構成されるCD20-PD1結合分子及びCD20-PD1モノマーをコードする核酸は、単一の核酸(例えば、全てのポリペプチド鎖をコードするベクター)又は複数の核酸(例えば、異なるポリペプチド鎖をコードする2つ以上のベクター)であり得る。本開示は、本開示の核酸及びCD20-PD1結合分子、CD20-PD1モノマー、CD20標的化部分、及びPD1アゴニスト部分を発現するように操作された宿主細胞及び細胞株を更に提供する。本開示は、本開示のCD20-PD1結合分子、CD20-PD1モノマー、CD20標的化部分、及びPD1アゴニスト部分を産生する方法を更に提供する。例示的な核酸、宿主細胞、細胞株、及びCD20-PD1結合分子、CD20-PD1モノマー、CD20標的化部分、及びPD1アゴニスト部分を産生する方法は、以下のセクション6.8及び番号付けされた実施形態150~152に記載されている。
【0011】
本開示は、本開示のCD20-PD1結合分子、CD20-PD1モノマー、CD20標的化部分、及びPD1アゴニスト部分を含む薬学的組成物を更に提供する。例示的な薬学的組成物は、以下のセクション6.9及び番号付きの実施形態153に記載されている。
【0012】
本明細書では、例えば、自己免疫疾患の治療、細胞性自己免疫応答の抑制、又は対象の免疫系の抑制のために、本開示のCD20-PD1結合分子、CD20-PD1モノマー、CD20標的化部分、PD1アゴニスト部分、及び薬学的組成物を使用する方法が更に提供される。例示的な方法は、以下のセクション6.10及び番号付きの実施形態154~165に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
5.図面の簡単な説明
図1図1A図1Lは、ある特定の実施形態による、CD20-PD1結合分子の様々なフォーマットを表す一連の漫画である。CD20標的化部分の重鎖可変ドメインは、ストライプパターンで示され、軽鎖可変ドメインは、点線パターンで示され、PD1アゴニスト部分(例えば、PDL1又はPDL2のエクトドメイン又はそのPD1結合部分)は、破線を有する円として示される。
図2A】試験したマウスCD20-PD1結合分子PD1(抗mCD20×mPDL1)(分子A~L、図2A)及び対照(分子M~S、図2B)を表す一連の漫画を提示する。
図2B】試験したマウスCD20-PD1結合分子PD1(抗mCD20×mPDL1)(分子A~L、図2A)及び対照(分子M~S、図2B)を表す一連の漫画を提示する。
図3A】hPDL1(左)及びmPDL1(右)の3次元モデルを示し、mPDL1の表面における不対のシステイン残基(C113)を強調している。
図3B】mPDL1(上部配列)及びhPDL1(下部配列)の部分配列アラインメント(78~137aa)を示す。図は、配列番号54~55を出現順に、それぞれ開示する。
図4A】フロー結合研究からのトレースを示し、それぞれ、Jurkat/mPD1及びMC38/mCD20又はHEK293/mCD20細胞上での、示されたCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)による、mPDL1結合(上部パネル)又は抗mCD20結合(下部パネル)を表す。
図4B】フロー結合研究からのトレースを示し、それぞれ、Jurkat/mPD1及びMC38/mCD20又はHEK293/mCD20細胞上での、示されたCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)による、mPDL1結合(上部パネル)又は抗mCD20結合(下部パネル)を表す。
図5A】ルシフェラーゼアッセイプロトコルを示す。図5Aは、ルシフェラーゼレポーターアッセイの概略説明であり、図5Bは、図5Aに記載の主要なプレイヤー間の相互作用を示す漫画表現である。
図5B】ルシフェラーゼアッセイプロトコルを示す。図5Aは、ルシフェラーゼレポーターアッセイの概略説明であり、図5Bは、図5Aに記載の主要なプレイヤー間の相互作用を示す漫画表現である。
図6】試験分子(図6A)及びそれを使用した一連のトレースを示す(図6B~6E)。トレースは、図5に示されるバイオアッセイを利用して測定されるmPD1アゴニズムを示す。各個々のトレースに示されるように使用された、細胞及び分子。
図7】糖尿病前の非肥満糖尿病(NOD)マウスにおける用量漸増効力試験の実験計画を示す。
図8A】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図8B】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図8C】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図8D】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図8E】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図8F】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図8G】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図8H】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図8I】示された対照又はCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)の存在下での自然発生的な糖尿病の発症を実証する個々の動物データを示す一連のトレースを提示する。
図9A】NODマウスにおける糖尿病の発症を調節するCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)(上:図2Aの分子L、下:図2Bの分子G)の能力を実証するグラフを示す。
図9B】NODマウスにおける糖尿病の発症を調節するCD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)(上:図2Aの分子L、下:図2Bの分子G)の能力を実証するグラフを示す。
図10A】CD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)による処理後の、NODマウス膵臓への活性化された自己反応性膵島特異的CD8+T細胞浸潤の低減を示すボックスプロットである。*p<0.05。
図10B】CD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)による処理後の、NODマウス膵臓への活性化された自己反応性膵島特異的CD8+T細胞浸潤の低減を示すボックスプロットである。*p<0.05。
図10C】CD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)による処理後の、NODマウス膵臓への活性化された自己反応性膵島特異的CD8+T細胞浸潤の低減を示すボックスプロットである。*p<0.05。
図11A】CD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)処理による処理後のEAE-MSマウスの脊髄への活性化された自己反応性CD3+、CD4+、及びCD8+T細胞浸潤の低減を示すボックスプロットである。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図11B】CD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)処理による処理後のEAE-MSマウスの脊髄への活性化された自己反応性CD3+、CD4+、及びCD8+T細胞浸潤の低減を示すボックスプロットである。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図11C】CD20-PD1結合分子(抗mCD20×mPDL1エクトドメイン)処理による処理後のEAE-MSマウスの脊髄への活性化された自己反応性CD3+、CD4+、及びCD8+T細胞浸潤の低減を示すボックスプロットである。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0014】
6.詳細な説明
6.1.定義
約、およそ:「約」、「およそ」などの用語は、明細書全体を通して数値の前に使用され、(例えば、端数、測定精度及び/又は精度の変動、タイミングなどを考慮するために)数値が必ずしも正確ではないことを示す。Xがある数値である、「約X」又は「およそX」の開示は、「X」の開示でもあることを理解されたい。したがって、例えば、ある配列が別の配列に対して「約X%の配列同一性」を有する実施形態の開示は、その配列が他の配列に対して「X%の配列同一性」を有する実施形態の開示でもある。
【0015】
及び(And)及び又は(Or):別段に示されない限り、接続詞「又は」は、選択肢における特徴の選択(Aの選択はBから相互に排他的である、A又はB)と、結合した特徴の選択(A及びBの両方が選択される、A又はB)の両方を包含する、ブール論理演算子としてのその正しい意味で使用されることが意図される。本文のいくつかの箇所では、「及び/又は」という用語は同じ目的で使用され、「又は」が相互に排他的な選択肢を参照して使用されることを意味すると解釈されるべきではない。
【0016】
抗原結合ドメイン又はABD、及び抗原結合断片:本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」又は「ABD」、及び「抗原結合断片」という用語は、標的分子に特異的、非共有結合的、及び可逆的に結合することができる標的化部分の部分を指す。
【0017】
会合した:CD20-PD1結合分子又はその構成要素(例えば、CD20標的化部分、PD1アゴニスト部分、二量体化部分)に関連する「会合した」という用語は、2つ以上のポリペプチド鎖又はポリペプチド鎖の一部の間の機能的関係を指す。特に、「会合した」という用語は、2つ以上のポリペプチドが、機能的なCD20-PD1結合分子を生成するように、例えば、分子相互作用を通して非共有結合的に、又は1つ以上のジスルフィド架橋若しくは化学的架橋を通して共有結合的に、互いに会合していることを意味する。本開示のCD20-PD1結合分子に存在し得る会合の例としては、Fc領域内のホモ二量体又はヘテロ二量体Fcドメイン間の会合、Fab又はscFv内のVH領域とVL領域との会合、Fab内のCH1とCLとの会合、及びドメイン置換Fab内のCH3とCH3との会合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
二価:CD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分に関するCD20-PD1結合分子に関して本明細書で使用される「二価」という用語は、CD20-PD1結合分子が、それぞれ、2つのCD20標的化部分(例えば、抗CD20抗体の2つの抗原結合断片)及び/又は2つのPD1アゴニスト部分(例えば、2つのPDL1アゴニスト部分、2つのPDL2アゴニスト部分、若しくはそれらの組み合わせ)を有することを意味する。CD20-PD1結合分子は、あるタイプの部分(例えば、CD20標的化部分)については二価であり、別のタイプの部分(例えば、PD1アゴニスト部分)については一価であってもよい。
【0019】
CD20-PD1結合分子:「CD20-PD1結合分子」という用語は、少なくとも1つのCD20標的化部分及び少なくとも1つのPD1アゴニスト部分を含む分子を指す。概して、CD20-PD1結合分子は、少なくとも1つのCD20標的化部分及び少なくとも1つのPD1アゴニスト部分を一緒に含む1つ以上のポリペプチド鎖(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つのポリペプチド鎖)から構成される分子である。
【0020】
本開示のCD20-PD1結合分子との関連で、「CD20-PD1結合分子」という用語は、分子のコア構成要素、すなわち、CD20標的化部分及びPD1アゴニスト部分を指すこともあり、Fcドメイン及び任意の/又は関連するリンカー部分などの二量体化部分も指すこともある。「CD20-PD1結合分子」という用語は、文脈で別段指示されない限り、追加の特徴、例えば、1つ以上の安定化部分、1つ以上の二量体化部分、1つ以上のリンカー部分、及び前述のものの任意の組み合わせを含む分子にも及ぶことが理解されるべきである。
【0021】
CD20標的化部分:「CD20標的化部分」という用語は、CD20に結合することができる任意の分子又はその結合部分(例えば、免疫グロブリン又はその抗原結合断片)を指す。いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、抗CD20抗体の抗原結合断片を含む。抗CD20抗体のCD20結合断片は、Fab、Fv、又はscFvの形態にあり得る。「CD20標的化部分」という用語は、トポロジカルドメイン又は膜貫通ドメインを含む、CD20の任意のドメイン又は領域に結合することができる分子を含む。いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、細胞の表面(例えば、B細胞)上の細胞外に表示されたCD20の領域に結合することができる分子である。CD20標的化部分は、セクション6.2に更に記載される。
【0022】
相補性決定領域又はCDR:「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原特異性及び結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)があり、各軽鎖可変領域には3つのCDR(CDR1-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。CDRの境界を特定するために使用することができる例示的な規則には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、ABM定義、及びIMGT定義が含まれる。例えば、Kabat,1991,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(Kabat番号付けスキーム)、Al-Lazikani et al.,1997,J.Mol.Biol.273:927-948(Chothia番号付けスキーム)、Martin et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:9268-9272(ABM番号付けスキーム)、及びLefranc et al.,2003,Dev.Comp.Immunol.27:55-77(IMGT番号付けスキーム)。パブリックデータベースもまた、抗体内のCDR配列を特定するために利用可能である。
【0023】
二量体化部分:「二量体化部分」という用語は、2つのポリペプチド鎖間の会合を促進して二量体を形成することができるポリペプチド鎖又はアミノ酸配列を指す。第1の二量体化部分は、同一の第2の二量体化部分と会合することができ、又は第1の二量体化部分とは異なる第2の二量体化部分と会合することができる。いくつかの実施形態では、二量体化部分は、Fcドメインであり、2つのFcドメインの会合がFc領域を形成する。したがって、Fc領域は、ホモ二量体又はヘテロ二量体であり得る。
【0024】
EC50:「EC50」という用語は、指定された曝露時間後にベースラインと最大値との間の中間で応答を誘導する、CD20-PD1結合分子などの分子の半数効果濃度(half maximal effective concentration)を指す。EC50は基本的に、その最大効果の50%が観察される抗体又はCD20-PD1結合分子の濃度を表す。ある特定の実施形態では、EC50値は、セクション7.1.3.3に記載のアッセイにおいて最大半量の活性化を与えるCD20-PD1結合分子の濃度に等しい。
【0025】
エピトープ:エピトープ、又は抗原決定基は、本明細書に記載の抗体又は他の抗原結合部分によって認識される抗原(例えば、CD20)の一部である。エピトープは、線状又は立体構造的であり得る。
【0026】
Fab:本開示のCD20標的化部分との関連における「Fab」という用語は、一対のポリペプチド鎖を指し、第1のポリペプチド鎖は、抗体N末端の可変重鎖(VH)ドメインから第1の定常ドメイン(本明細書ではC1と称される)までを含み、第2のポリペプチド鎖は、抗体N末端の可変軽鎖(VL)ドメインから、第1の定常ドメインと対合することができる第2の定常ドメイン(本明細書ではC2と称される)までを含む。天然抗体では、VHは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)のN末端にあり、VLは、軽鎖の定常ドメイン(CL)のN末端にある。本開示のFabは、天然配向に従って配置することができるか、又は正しいVH及びVLの対合を促進するドメイン置換若しくはスワップを含むことができる。例えば、ヘテロ二量体分子における正しい改変Fab-鎖対合を促進するために、FabにおけるCH1及びCLドメイン対をCH3ドメイン対に置き換えることが可能である。CH1をVLに付着させ、CLをVHに付着させるように、CH1及びCLを逆にすることも可能であり、一般に、「ドメイン交換」の一種であるCrossmabとして知られる構成である。
【0027】
Fcドメイン及びFc領域:「Fcドメイン」という用語は、別の重鎖の対応する部分と対合する重鎖の部分を指す。「Fc領域」という用語は、2つの重鎖Fcドメインの会合によって形成された抗体ベースの結合分子の領域を指す。Fc領域内の2つのFcドメインは、互いに同一又は異なってもよい。天然抗体では、Fcドメインは典型的には同一であるが、一方又は両方のFcドメインは、有利には、ヘテロ二量体化を可能にするように、例えば、ノブ・イン・ホール相互作用を介して、かつ/又は精製を可能にするように、例えば、スター変異(star mutation)を介して改変され得る。
【0028】
宿主細胞又は組換え宿主細胞:「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、異種核酸の導入によって遺伝子操作された細胞を指す。かかる用語が、特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の子孫も指すよう意図されていることを理解されたい。変異又は環境の影響のいずれかにより特定の改変が後続世代で生じ得るため、かかる子孫は、実際には親細胞と同一ではない場合があるが、依然として本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。宿主細胞は異種核酸を、例えば、染色体外異種発現ベクター上に一時的に、又は、例えば、異種核酸を宿主細胞ゲノムに組み込むことによって安定的に、保有することができる。CD20-PD1結合分子を発現する目的で、宿主細胞は、哺乳類起源の又は哺乳類様特性の細胞株、例えば、サル腎臓細胞(COS、例えば、COS-1、COS-7)、HEK293、ベビーハムスター腎臓(BHK、例えば、BHK21)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、NSO、PerC6、BSC-1、ヒト肝細胞がん細胞(例えば、HepG2)、SP2/0、HeLa、Madin-Darbyウシ腎臓(MDBK)、骨髄腫及びリンパ腫細胞、又はそれらの誘導体及び/又は操作されたバリアントであり得る。操作されたバリアントには、例えば、グリカンプロファイル改変及び/又は部位特異的組み込み部位誘導体が含まれる。
【0029】
モノマー及びCD20-PD1モノマー:本明細書で使用される「モノマー」及び「CD20-PD1モノマー」という用語は、(a)少なくとも1つのCD20標的化部分を含み、第2のポリペプチド鎖と会合することができるか、(b)少なくとも1つのPD1アゴニスト部分を含み、第2のポリペプチド鎖と会合することができるか、(c)二量体化部分(例えば、Fcドメイン)を含み、第2のポリペプチド鎖上の対応する二量体化部分(例えば、別のFcドメイン)と会合することができるか、又は(d)上記(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせを含む、第1のポリペプチド鎖を含む分子を指す。モノマーは、二量体化部分(例えば、Fcドメイン)の対を介して他のモノマーと会合することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のモノマー間の会合が、ヒンジ配列又はFcドメインの他の部分を通して安定化される。したがって、本開示のモノマーは、別のモノマーと会合して、二量体を形成することができる。二量体は、各構成モノマーが同一であるホモ二量体、又は各構成モノマーが異なるヘテロ二量体であり得る。本明細書で使用される場合、「モノマー」への言及は便宜上のものであり、1つ以上の追加のポリペプチド鎖、例えば、1つ以上のFabドメインの1つ以上の軽鎖の存在を排除するものではない。したがって、2つのモノマーの「二量体」は、2つを超えるポリペプチド鎖を含み得、例えば、3つ、4つ又はそれ以上のポリペプチド鎖を含み得、モノマー又は二量体への言及は、ポリペプチド鎖間の会合の時間的順序を意味することを意図しない。
【0030】
一価:CD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分に関するCD20-PD1結合分子に関して本明細書で使用される「一価」という用語は、CD20-PD1結合分子が、それぞれ、1つのCD20標的化部分(例えば、抗CD20抗体の1つの抗原結合ドメイン)及び/又は1つのPD1アゴニスト部分(例えば、1つのPDL1アゴニスト部分又は1つのPDL2アゴニスト部分)を有することを意味する。CD20-PD1結合分子は、あるタイプの部分(例えば、PD1アゴニスト部分)に対して一価であってもよく、別のタイプの部分(例えば、CD20標的化部分)に対して二価であってもよい。
【0031】
多価:CD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分に関するCD20-PD1結合分子に関して本明細書で使用される「多価」という用語は、CD20-PD1結合分子が、それぞれ、2つ以上のCD20標的化部分(例えば、抗CD20抗体の2つの抗原結合断片)及び/又は2つ以上のPD1アゴニスト部分(例えば、2つのPDL1アゴニスト部分、2つのPDL2アゴニスト部分、若しくはそれらの組み合わせ)を有することを意味する。CD20-PD1結合分子は、あるタイプの部分(例えば、CD20標的化部分)に対して多価であってもよく、別のタイプの部分(例えば、PD1アゴニスト部分)に対して一価であってもよい。
【0032】
作動可能に連結:本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、ポリペプチド鎖の2つ以上の領域間の機能的関係を指し、機能的ポリペプチド又は2つ以上の核酸配列を産生するように、例えば、2つのポリペプチド構成要素のフレーム内融合を産生するように若しくは調節配列をコード配列に連結するように、その2つ以上の領域が連結されている。
【0033】
PD1アゴニスト部分:「PD1アゴニスト部分」という用語は、PD1に結合し、PD1を刺激することができる任意の分子又はその部分を指す。いくつかの実施形態では、PD1アゴニスト部分は、プログラム死リガンド1(PDL1)の細胞外ドメイン又はそのPD1結合部分、好ましくは哺乳類PDL1(例えば、ヒトPDL1又はマウスPDL1)と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、PD1アゴニスト部分は、プログラム死リガンド(PDL2)の細胞外ドメイン、又はそのPD1結合部分、好ましくは哺乳類PDL2(例えば、ヒト若しくはマウスPDL2)と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。PDL1及びPDL2の細胞外ドメインは、それぞれ、「PDL1エクトドメイン」及び「PDL2エクトドメイン」として知られることがある。用語「PDL1エクトドメイン」及び「PDL2エクトドメイン」は、PDL1及びPDL2エクトドメインだけでなく、追加的にPD1結合活性を有する断片及びバリアント配列も指すために本明細書において便宜的に使用される。したがって、本明細書における用語「PDL1エクトドメイン」及び「PDL2エクトドメイン」への言及は、PDL1及びPDL2エクトドメインのPD1結合部分、並びにPD1結合機能を有するそれらのバリアント、例えば、PD1又はPD2に対して少なくとも70%以上の配列同一性及びPDL1結合の保持を有するアミノ酸配列を包含することを意図している。
【0034】
CD20-PD1結合分子は、対応する野生型配列と比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有するPD1アゴニスト部分を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、PD1アゴニスト部分は、C113S置換を含むマウスPDL1エクトドメインである。
【0035】
PD1アゴニスト部分は、6.2.1節に更に記載されている。
一本鎖Fv又はscFv:本明細書で使用される「一本鎖Fv」又は「scFv」という用語は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含むポリペプチド鎖を指し、これらのドメインは、一本鎖ポリペプチドに存在する。
【0036】
対象:「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。非ヒト動物には、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類及び非哺乳類(非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類など)が含まれる。記載されている場合を除き、「患者」又は「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0037】
治療する、治療、治療すること:本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」及び「治療すること」という用語は、分子又は組成物(例えば、本開示の1つ以上のCD20-PD1結合分子)の投与から生じる、本明細書に記載される障害の進行、重症度及び/又は罹病期間の低減又は改善、本明細書に記載される状態又は障害の1つ以上の症状(好ましくは、1つ以上の識別可能な症状)の改善、又は本明細書に記載される状態又は障害、例えば自己免疫又は炎症性の状態又は障害の予防を指す。特定の実施形態では、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、患者によって必ずしも認識できるわけではない、障害(例えば自己免疫障害)の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。他の実施形態では、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化によって)、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化によって)、又はその両方によって、障害の進行又は発症を阻害することを指す。
【0038】
ユニバーサル軽鎖:標的化部分との関連で本明細書で使用される「ユニバーサル軽鎖」という用語は、標的化部分の重鎖領域と対合することができ、他の重鎖領域と対合することもできる軽鎖ポリペプチドを指す。ユニバーサル軽鎖は、「共通の軽鎖」としても知られている。
【0039】
VH:「VH」という用語は、scFv又はFabの重鎖を含む、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。
VL:「VL」という用語は、scFv又はFabの軽鎖を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0040】
6.2.CD20-PD1結合分子
本開示は、少なくとも1つのCD20標的化部分及び少なくとも1つのPD1アゴニスト部分を含むCD20-PD1結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、二量体化部分を更に含む。
【0041】
本開示のCD20-PD1結合分子は、典型的には、1つ以上のCD20標的化部分及び/又は1つ以上のPD1アゴニスト部分を含むCD20-PD1モノマーを含むか、又はそれからなる。本開示のCD20-PD1結合分子は、タンパク質を含み、タンパク質は、少なくとも1つのCD20標的化部分と、少なくとも1つのPD1アゴニスト部分と、少なくとも1つの二量体化部分と、任意選択で、タンパク質中の1つ以上の部分を分離する1つ以上のリンカー部分とを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、PD1アゴニスト部分は、CD20標的化部分と、CD20-PD1モノマーの二量体化部分との間に位置する。そのような実施形態では、CD20標的化部分及びPD1アゴニスト部分の両方が二量体化部分のN末端にある場合、CD20-PD1モノマーは、したがって、CD20標的化部分-PD1アゴニスト部分-二量体化部分のN末端からC末端への配向を有する。そのような実施形態では、CD20標的化部分及びPD1アゴニスト部分の両方が二量体化部分のC末端にある場合、CD20-PD1モノマーは、したがって、二量体化部分-PD1アゴニスト部分-CD20標的化部分のN末端からC末端への配向を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、例えば、CD20標的化部分が抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分がPDL1のエクトドメインであり、二量体化部分がFcドメインである実施形態では、CD20-PD1結合分子が、任意選択で、以下の特徴のうちの1つ以上を有する。i)Fabの軽鎖が、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分に融合されていないか、ii)PD1アゴニスト部分が、抗CD20FabのVHのN末端にないか、iii)PD1アゴニスト部分が、FcドメインのC末端にないか、iv)タンパク質が、CD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分に対して一価であるか、v)タンパク質が、非対称であるか、vi)タンパク質が、Fcヘテロ二量体を含むか、又は前述の(i)~(vi)の2つ以上の任意の組み合わせ。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、特徴を有するi)(すなわち、Fabの軽鎖は、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分に融合されていない)。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、特徴ii)を有する(すなわち、PD1アゴニスト部分は、抗CD20FabのVHのN末端にない)。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、特徴iii)を有する(すなわち、PD1アゴニスト部分は、FcドメインのC末端にない)。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、特徴iv)を有する(すなわち、タンパク質は、CD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分に対して一価である)。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、特徴v)を有する(すなわち、タンパク質は非対称である)。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、特徴vi)を有する(すなわち、タンパク質は、Fcヘテロ二量体を含む)。本開示のCD20-PD1結合分子は、前述の特徴の2つ、3つ、4つ、5つ、又は全ての任意の組み合わせを有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCD20-PD1結合分子は、特徴ii)(すなわち、PD1アゴニスト部分は、抗CD20FabのVHのN末端にない)及び特徴iii)(すなわち、PD1アゴニスト部分は、FcドメインのC末端にない)を有する。
【0044】
例示的な二量体化部分は、セクション6.5に記載され、CD20-PD1結合分子にホモ二量体化又はヘテロ二量体化能力を付与するFcドメインを含む。
CD20-PD1結合分子は、1つ以上のポリペプチドで構成され得る。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、少なくとも1つのCD20標的化部分及び/又は少なくとも1つのPD1アゴニスト部分を含む複数の(例えば、2つの)モノマーから構成され、いくつかの実施形態では、二量体化部分も含む。いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、任意選択で、1つ以上の追加のポリペプチド鎖(例えば、抗CD20Fab部分の軽鎖を含むポリペプチド鎖)と会合した2つのモノマーから構成される。モノマーは、同一であってもよく、それによってホモ二量体を形成するか、又は異なるものであってもよく、それによってヘテロ二量体を形成する。CD20-PD1結合分子の各モノマーの二量体化部分は、一緒に二量体化するように構成され得る。例示的な二量体化部分は、セクション6.5に記載される。
【0045】
1つ以上のCD20標的化部分及び1つ以上のPD1アゴニスト部分は、CD20-PD1結合分子の同じアームに含めることができ(例えば、CD20標的化部分は、抗CD20Fabを含み、PD1アゴニスト部分は、PDL1ベースのPD1アゴニスト部分を含む場合、抗CD20Fabの可変重鎖若しくは可変軽鎖及びPDL1ベースのPD1アゴニスト部分は、同じポリペプチド鎖上にある)、又は二重特異性CD20-PD1アゴニストの異なるアームに含めることができる(例えば、CD20標的化部分は、抗CD20Fabを含み、PD1アゴニスト部分は、PDL1ベースのPD1アゴニスト部分を含む場合、抗CD20Fabの可変重鎖若しくは可変軽鎖及びPDL1ベースのPD1アゴニスト部分は、異なるポリペプチド鎖上にある)。本開示のCD20-PD1結合分子の例示的な構成は、とりわけ、図1A~1L、及び番号付きの実施形態31~106に開示されている。
【0046】
CD20-PD1結合分子は、CD20標的化部分に関して一価であり得る(すなわち、単一のCD20標的化部分を有する)か、又はCD20標的化部分については多価であり得る(すなわち、複数のCD20標的化部分を有する)。同様に、CD20-PD1結合分子は、PD1アゴニスト部分に関して一価であり得る(すなわち、単一のPD1アゴニスト部分を有する)か、又はPD1アゴニスト部分に関して多価であり得る(すなわち、複数のPD1アゴニスト部分を有する)。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、CD20標的化部分に関して二価である(すなわち、2つのCD20標的化部分を有する)。CD20-PD1結合分子が、CD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分に関して多価である場合、複数のCD20標的化部分は、互いに同じか若しくは異なることができ、かつ/又は複数のPD1アゴニスト部分は、互いに同じか若しくは異なることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、その1つ以上のポリペプチド鎖の様々な構成要素、例えば、(1)同じポリペプチド鎖上に存在する場合のCD20標的化部分若しくはその一部(例えば、抗CD20Fabの重鎖若しくは軽鎖)及びPD1アゴニスト部分若しくはその一部(例えば、PDL1若しくはPDL2)、(2)CD20標的化部分及び二量体化ドメイン(例えば、Fcドメイン)、(3)PD1アゴニスト部分及び二量体化ドメイン(例えば、Fcドメイン)、又は(4)前述の任意の組み合わせ、を接続する1つ以上のリンカー配列を含むことができる。例示的なリンカーは、セクション6.7に記載されている。
【0048】
ほとんどのCD20-PD1結合分子は、互いに会合するように構成された二量体化部分(例えば、Fcドメイン)の会合によって多量体である。CD20-PD1結合分子は、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のポリペプチド鎖を含み得、そのいくつかは、二量体化部分を介して会合し、その他は、VH-VL相互作用を介して会合する。便宜上及び説明のみを目的として、本開示は、一般に、それぞれ「モノマー」として、CD20標的化部分、PD1アゴニスト部分及び/又は対応する二量体化部分(例えば、第2のFcドメイン)を含む別のポリペプチド鎖と会合することができるCD20標的化部分、PD1アゴニスト部分及び/又は二量体化部分(例えば、第1のFcドメイン)を含むポリペプチドを指す。モノマーは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上のポリペプチド鎖を含み得る。例えば、一実施形態では、モノマーは、(a)抗CD20VH、PD1アゴニスト部分、及びFcドメインを含有する第1のポリペプチド鎖と、(b)抗CD20VHと対合することができるVLを含有する第2のポリペプチド鎖と、から構成されてもよい。別の実施形態では、モノマーは、(a)第1の抗CD20VH、第2の抗CD20VH、及びFcドメインを含む第1のポリペプチド鎖と、(b)第1の抗CD20VHと対合することができる第1のVLを含む第2のポリペプチド鎖と、(c)第2の抗CD20VHと対合することができる第2のVLを含む第3のポリペプチド鎖と、から構成されてもよい。
【0049】
以下は、N末端からC末端配向で記載された、本開示のモノマーのいくつかの例示的な例である。各モノマーの個々の要素を、例えば、以下のサブセクション及び番号付けされた実施形態において、本明細書に詳細に記載する。
【0050】
(1)例示的なモノマー1:CD20標的化部分-任意選択的リンカー-二量体化部分(例えば、の図1A図1E図1F図1G、及び図1H、左側モノマーを参照されたい)。
【0051】
(2)例示的なモノマー2:PD1アゴニスト部分-任意選択的リンカー-二量体化部分(例えば、図1A、右側モノマーを参照されたい)。
(3)例示的なモノマー3:任意選択的リンカー-二量体化部分(例えば、図1B図1C、及び図1D、左側モノマーを参照されたい)。
【0052】
(4)例示的なモノマー4:PD1アゴニスト部分-任意選択的リンカー-CD20標的化部分-任意選択的リンカー-二量体化部分(例えば、図1B及び図1Eの右側モノマー、図1Iの両方のモノマーを参照されたい)。
【0053】
(5)例示的なモノマー5:CD20標的化部分-任意選択的リンカー-二量体化部分-PD1アゴニスト部分(例えば、図1C及び図1F、右側モノマー、図1J、両方のモノマーを参照されたい)。
【0054】
(6)例示的なモノマー6:CD20標的化部分-任意選択的リンカー-PD1アゴニスト部分-任意選択的リンカー-二量体化部分(例えば、図1D及び図1G、右側モノマー、図1L、両方のモノマーを参照されたい)。
【0055】
(7)例示的なモノマー7:PD1アゴニスト部分-任意選択的リンカー-PD1アゴニスト部分-任意選択的リンカー-二量体化部分(例えば、図1H、右側モノマーを参照されたい)。
【0056】
(8)例示的なモノマー8:CD20標的化部分-任意選択的リンカー-二量体化部分-任意選択的リンカー-CD20標的化部分(例えば、図1K、左側モノマーを参照されたい)。
【0057】
(9)例示的なモノマー9:PD1アゴニスト部分-任意選択的リンカー-二量体化部分-任意選択的リンカー-PD1アゴニスト部分(例えば、図1K、右側モノマーを参照されたい)。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー1及び例示的なモノマー2を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Aを参照されたい)。
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー3及び例示的なモノマー4を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Bを参照されたい)。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー3及び例示的なモノマー5を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Cを参照されたい)。
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー3及び例示的なモノマー6を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Dを参照されたい)。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー1及び例示的なモノマー4を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Eを参照されたい)。
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー1及び例示的なモノマー5を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Fを参照されたい)。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー1及び例示的なモノマー6を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Gを参照されたい)。
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー1及び例示的なモノマー7を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Hを参照されたい)。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー4による2つのモノマーを含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Iを参照されたい)。
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー5による2つのモノマーを含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Jを参照されたい)。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー8及び例示的なモノマー9を含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Kを参照されたい)。
いくつかの実施形態では、本開示は、例示的なモノマー6による2つのモノマーを含むCD20-PD1結合分子を提供する(例えば、図1Lを参照されたい)。
【0064】
本開示のCD20-PD1結合分子では、CD20標的化部分が抗体の抗原結合ドメイン(「ABD」)である場合、各モノマーは、2つ以上のポリペプチド鎖から構成され得、重鎖可変領域を有する1つのポリペプチド鎖、及び軽鎖可変領域を有する他のポリペプチド鎖(複数可)から構成され得る。CD20標的化部分は、別個のポリペプチド鎖上に重鎖及び軽鎖可変ドメインを含むことができる。例えば、モノマーは、ポリペプチドA及びポリペプチドBで構成することができる。ポリペプチドAは、例えば、N末端からC末端へ、CD20標的化部分の重鎖可変ドメイン-任意選択的リンカー-PD1アゴニスト部分-任意選択的リンカー-二量体化部分を含み得、ポリペプチドBは、CD20標的化部分の軽鎖可変ドメインを含み得る。モノマーがCD20標的化部分に対して二価である場合、モノマーは、CD20標的化部分の別の軽鎖可変ドメインを含む第3のポリペプチド鎖(ポリペプチドC)を含むことができる。
【0065】
あるいは、CD20標的化部分は、CD20標的化部分の重鎖及び軽鎖可変領域は、単一のポリペプチドにおいて互いに融合されている、scFvの形態にあり得る。
本開示のCD20-PD1結合分子の構成要素の更なる詳細を以下に示す。
【0066】
6.2.1.CD20-PD1結合分子の生化学的特性
インビボでは、抗体の大きな複合体は、食作用によって迅速に除去され、抗体の有効性の低下をもたらす可能性がある。大きな複合体はまた、治療用抗体の免疫原性を増加させる可能性もある。例えば、WO2020047067A1を参照されたい。製造中、凝集は、抗体の品質、安全性、及び有効性を損なう一般的な問題である。本開示のCD20-PD1結合分子は、例えば、CD20標的化部分が由来した親抗体と比較して、かつ/又はCD20標的化部分及びPD1アゴニスト部分を含む他の抗体フォーマットと比較して、インビボ又はエクスビボでの凝集しにくい可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、哺乳類細胞株における組換え産生中の凝集が、親抗体より少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも95%、又は少なくとも99%少ない。セクション7.1.4に記載されるように、CD20-PD1結合分子のオリゴマー化状態は、例えば、サイズ排除超高速液体クロマトグラフィーによって決定され得る。CD20-PD1結合分子の大部分は、追加のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)なしで85%を超えるモノマー種を示した(セクション7.2.2を参照されたい)。次いで、カラム精製を用いて、モノマー種を更に精製することができる。例えば、2+2m20_mPL_4(図2Aの分子L)のモノマーパーセンテージは、SECステップを含む2回のカラム精製後に99%に増加した(セクション7.2.2を参照されたい)。
【0067】
本開示のCD20-PD1結合分子はまた、良好な熱安定性を示す。高い熱安定性及び低い凝集傾向は、抗体の製造及び保存を容易にし、長い血清半減期を促進する。Carter and Merchant,1997,Curr Opin Biotechnol,8(4):449-454。熱安定性は、示差走査蛍光定量法(DSF)を含む、当該技術分野で知られている方法によって測定され得る(例えば、セクション7.1.5を参照されたい)。試験した全ての試験CD20-PD1分子は、DSFによって測定されるのと同様の熱安定性を有し、融解温度1(Tm1)(これは、タンパク質の最初のアンフォールディング中点を表す)は、約60℃であった(セクション7.2.2を参照されたい)。
【0068】
6.3.CD20標的化部分
本開示のCD20-PD1結合分子中のCD20標的化部分の組み込みは、いくつかの実施形態では、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、及びクローン病を含むがこれらに限定されない自己免疫障害の治療、並びに移植片対宿主病(GVHD)の治療のための高濃度の局所的PD1アゴニスト部分の送達を提供する。いくつかの実施形態では、PD1アゴニスト部分の局所的な送達を促進することに加えて、抗CD20部分は、そのような自己免疫疾患に対する追加の治療経路を提供する。
【0069】
本開示のある特定の実施形態では、CD20-PD1結合分子の各CD20標的化部分は、抗CD20抗体の抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、単一のCD20標的化部分(例えば、CD20-PD1結合分子がCD20標的化部分に対して一価である実施形態では、第1のモノマー上又は第2のモノマー上のCD20標的化部分)を含む。いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、2つのCD20標的化部分(例えば、CD20-PD1結合分子がCD20標的化部分に対して二価である実施形態では、第1のモノマー上に第1のCD20標的化部分及び第2のモノマー上に第2のCD20標的化部分、又は第1及び第2のCD20標的化部分の両方が第1のモノマー若しくは第2のモノマーのいずれかの上にあることができる)を含む。このような実施形態では、2つのCD20標的化部分は、同一であってもよく、異なるものであってもよい。異なる場合、2つのCD20標的化部分は、直交性であってもよく、CD20の別個のエピトープに結合してもよく、かつ/又は非競合であってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、公知の抗CD20抗体の抗原結合ドメインを含む。既知の抗CD20抗体の例には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン(ibritumomab ituxetan)、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、及びベルツズマブ(それぞれ「参照CD20抗体」)が含まれるが、これらに限定されない。更なる実施形態では、CD20標的化部分は、参照CD20抗体のCDR配列を有するCDRを含む。いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、参照CD20抗体の6つのCDR配列全てを含む。他の実施形態では、標的化部分は、少なくとも参照CD20抗体の重鎖CDR配列(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)と、ユニバーサル軽鎖の軽鎖CDR配列とを含む。更なる態様では、CD20標的化部分は、参照CD20抗体のVHのアミノ酸配列を含むVHを含む。いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、参照CD20抗体のVLのアミノ酸配列を含むVLを更に含む。他の実施形態では、標的化部分は、ユニバーサル軽鎖VL配列を更に含む。
【0071】
他の実施形態では、CD20標的化部分は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、若しくはベルツズマブと同じCD20エピトープに結合する、かつ/又はCD20との結合に関してこれらと競合する抗原結合ドメインを含む。抗体競合を測定するためのアッセイは、当技術分野で知られている。例えば、CD20の試料は、固体支持体に結合させることができる。次に、第1の抗体及び第2の抗体を添加する。2つの抗体のうちの1つは、標識される。標識抗体及び非標識抗体がCD20上の離れた別個の部位に結合する場合、非標識抗体が存在するかどうかにかかわらず、標識抗体は同じレベルで結合するであろう。しかしながら、相互作用部位が同一又は重複している場合、非標識抗体が競合し、抗原に結合する標識抗体の量が低下するであろう。非標識抗体が過剰に存在する場合、標識された抗体は結合したとしてもごく僅かしか結合しないことになる。いくつかの実施形態では、競合抗体は、CD20に対する別の抗体の結合を約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%減少させる抗体である。そのような競合アッセイを実施するための手順の詳細は、当技術分野で周知であり、例えば、Greenfield,Ed.,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2014に見出すことができる。そのようなアッセイは、精製された抗体を使用することによって定量的に行うことができる。1つの抗体をそれ自体に対して滴定することによって、すなわち、同じ抗体を標識及び競合物の両方に使用することによって、標準曲線を確立することができる。非標識競合抗体の、標識抗体のプレートへの結合を阻害する能力を滴定する。結果をプロットし、所望の程度の結合阻害を達成するために必要な濃度を比較することができる。いくつかの実施形態では、標的分子への結合に関する競合は、例えば、Octet HTXバイオセンサープラットフォーム(Pall ForteBio Corp.)でのリアルタイム、ラベルフリーバイオレイヤー干渉法アッセイを使用して決定することができる。
【0072】
好適なCD20標的化部分のフォーマットは、セクション6.3.1に記載されている。CD20標的化部分は、好ましくは、抗CD20抗体のCD20結合断片、例えば、セクション6.3.1.1に記載されるようなFab、Fv断片、又はセクション6.3.1.2に記載されるようなscFvである。
【0073】
CD20標的化部分は、本明細書に記載される構成のいずれかを有するCD20-PD1結合分子に組み込むことができる。CD20-PD1結合分子は、典型的には、例えば、セクション6.2に記載される例示的なモノマーによって表されるように、複数のポリペプチド鎖から構成される。セクション6.2に記載されるように、CD20標的化部分は、例示的なモノマー1、4、5、6、及び8のうちのいずれか1つに組み込むことができる。例示的なモノマー1、4、5、6、及び8のうちの1つ以上を組み込む例示的なCD20-PD1結合分子は、セクション6.2に詳述されている。
【0074】
6.3.1.CD20標的化部分のフォーマット
ある特定の態様では、CD20標的化部分は、CD20への特異的結合を保持する任意の種類の抗体又はその断片であり得る。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、免疫グロブリン分子、特にIgGクラスの免疫グロブリン分子、より具体的には、IgG又はIgGの免疫グロブリン分子である。抗体断片としては、VH(又はV)断片、VL(又はV)断片、Fab断片、F(ab’)断片、scFv断片、Fv断片、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
6.3.1.1.Fab
Fabドメインは、伝統的に、パパイン等の酵素を使用した免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって産生された。本開示のCD20-PD1結合分子では、Fabドメインは、典型的には、CD20-PD1結合分子の一部として組換えで発現される。
【0076】
Fabドメインは、任意の好適な種由来の定常ドメイン配列及び可変領域配列を含むことができ、したがって、マウス、キメラ、ヒト、又はヒト化されたものであってよい。いくつかの実施形態では、可変領域配列及び/又は定常ドメイン領域配列は、既知の抗CD20抗体に由来する。既知の抗CD20抗体の例には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、及びベルツズマブが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、若しくはベルツズマブ(それぞれ「参照CD20抗体」)のFabと同じCD20エピトープに結合する、かつ/又はCD20との結合に関してこれらのFabと競合するFabを含む。更なる実施形態では、CD20標的化部分は、参照CD20抗体のCDR配列を有するCDRを含む。いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、参照CD20抗体の6つのCDR配列全てを含む。他の実施形態では、標的化部分は、少なくとも参照CD20抗体の重鎖CDR配列(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)と、ユニバーサル軽鎖の軽鎖CDR配列とを含む。更なる態様では、CD20標的化部分は、参照CD20抗体のVHのアミノ酸配列を含むVHを含む。いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、参照CD20抗体のVLのアミノ酸配列を含むVLを更に含む。他の実施形態では、標的化部分は、ユニバーサル軽鎖VL配列を更に含む。
【0078】
Fabドメインは、典型的には、VHドメインに付着したCH1ドメインを含み、これは、VLドメインに付着したCLドメインと対合する。野生型免疫グロブリンにおいて、VHドメインは、VLドメインと対合してFv領域を構成し、CH1ドメインは、CLドメインと対合して結合モジュールを更に安定化する。2つの定常ドメイン間のジスルフィド結合は、Fabドメインを更に安定化することができる。
【0079】
本開示のCD20-PD1結合分子について、特に軽鎖が共通又はユニバーサル軽鎖ではない場合、同じABDに属するFabドメインの正確な会合を可能にし、異なるABDに属するFabドメインの異常な対合を最小限にするために、Fabヘテロ二量体化戦略を使用することが有利である。例えば、以下の表1に示されるFabヘテロ二量体化戦略を使用することができる:
【0080】
【表1】
【0081】
したがって、ある特定の実施形態では、Fabの2つのポリペプチド間の正しい会合は、例えば、WO2009/080251に記載されるように、FabのVLドメイン及びVHドメインを互いに交換するか、又はCH1ドメイン及びCLドメインを互いに交換することによって促進される。
【0082】
正しいFab対合はまた、FabのCH1ドメインに1つ以上のアミノ酸改変及びCLドメインに1つ以上のアミノ酸改変を導入することによって、並びに/又はVHドメインに1つ以上のアミノ酸改変及びVLドメインに1つ以上のアミノ酸改変を導入することによって促進することができる。改変されるアミノ酸は、典型的には、VH:VL及びCH1:CL界面の一部であり、Fab構成要素が、他のFabの成分よりもむしろ互いと優先的に対合するようになっている。
【0083】
一実施形態では、1つ以上のアミノ酸改変は、残基のKabat番号付けによって示されるように、可変(VH、VL)及び定常(CH1、CL)ドメインの保存されたフレームワーク残基に限定される。Almagro,2008,Frontiers In Bioscience 13:1619-1633は、Kabat、Chothia、及びIMGTの番号付けスキームに基づくフレームワーク残基の定義を提供する。
【0084】
一実施形態では、VHドメイン及びCH1ドメイン並びに/又はVLドメイン及びCLドメインにおいて導入される改変は、互いに相補的である。重鎖及び軽鎖界面における相補性は、立体接触及び疎水性接触、静電/電荷相互作用、又は様々な相互作用の組み合わせに基づいて達成され得る。タンパク質表面間の相補性は、ロック及びキー適合(lock and key fit)、ノブ・イントゥ・ホール(knob into hole)、突起及び空洞(protrusion and cavity)、ドナー及びアクセプターなどの観点から、文献において広く記載されており、これらは全て、2つの相互作用する表面間の構造的及び化学的一致の性質を示唆している。
【0085】
一実施形態では、1つ以上の導入された改変は、Fab構成要素の界面にわたって新しい水素結合を導入する。一実施形態では、1つ以上の導入された改変は、Fab構成要素の界面にわたって新しい塩橋を導入する。例示的な置換は、WO2014/150973及びWO2014/082179に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
いくつかの実施形態では、Fabドメインは、CH1ドメインに192E置換、及びCLドメインに114A及び137K置換を含み、これにより、CH1ドメインとCLドメインとの間に塩橋が導入される(例えば、Golay et al.,2016,J Immunol 196:3199-211を参照されたい)。
【0087】
いくつかの実施形態では、Fabドメインは、CH1ドメイン内の143Q及び188V置換、並びにCLドメイン内の113T及び176V置換を含み、これは、CH1ドメインとCLドメインとの間の疎水性及び極性接触領域を交換するのに役立つ(例えば、Golay et al.,2016,J Immunol 196:3199-211を参照されたい)。
【0088】
いくつかの実施形態では、Fabドメインは、Fabドメインの正しいアセンブリを促進する直交性Fab界面を導入するための、VH、CH1、VL、CLドメインの一部又は全部における改変を含むことができる(Lewis et al.,2014 Nature Biotechnology 32:191-198)。実施形態では、39K、62Eの改変がVHドメインに導入され、H172A、F174Gの改変がCH1ドメインに導入され、1R、38D、(36F)の改変がVLドメインに導入され、L135Y、S176Wの改変がCLドメインに導入される。別の実施形態では、39Y改変がVHドメインに導入され、38R改変がVLドメインに導入される。
【0089】
Fabドメインはまた、天然のCH1:CLジスルフィド結合を、操作されたジスルフィド結合で置き換えるように改変することができ、それによって、Fab構成要素の対合の効率を増加させる。例えば、操作されたジスルフィド結合は、CH1ドメインに126Cを導入し、CLドメインに121Cを導入することによって導入することができる(例えば、Mazor et al.,2015,MAbs 7:377-89を参照されたい)。
【0090】
Fabドメインは、CH1ドメイン及びCLドメインを、正しいアセンブリを促進する代替ドメインで置き換えることによっても改変され得る。例えば、Wu et al.,2015,MAbs 7:364-76では、CH1ドメインをT細胞受容体の定常ドメインで置換し、CLドメインをT細胞受容体のbドメインで置換し、これらのドメイン置換を、VLドメインに38D改変を導入し、VHドメインに39K改変を導入することによって、VLドメインとVHドメインとの間の追加の電荷-電荷相互作用と対合することについて説明している。
【0091】
正しいVH-VL対合を促進するためのFabヘテロ二量体化戦略の使用の代わりに、又はそれに加えて、共通の軽鎖(ユニバーサル軽鎖とも称される)のVLを、本開示のCD20-PD1結合分子の各FabVL領域に使用することができる。様々な実施形態では、本明細書に記載の共通軽鎖を用いることは、元の同族VLを用いることと比較して、CD20-PD1結合分子の不適切な種の数を減少させる。様々な実施形態では、CD20-PD1結合分子のVLドメインは、共通の軽鎖を含む単一特異性抗体から同定される。様々な実施形態では、CD20-PD1結合分子のVH領域は、限定されたヒト軽鎖レパートリー、又は単一のヒト軽鎖を発現するように事前に操作されたマウスB細胞内でインビボで再編成されているヒト重鎖可変遺伝子セグメントを含み、ヒト重鎖と同族であり、目的の抗原への曝露に応答して、2つの可能なヒトVLのうちの1つ又は1つと同族である複数のヒトVHを含む抗体レパートリーを生成し、この抗体レパートリーは、目的の抗原に特異的である。共通の軽鎖は、再構成されたヒトVκ1-39Jκ5配列又は再構成されたヒトVκ3-20Jκ1配列に由来するものであり、体細胞変異型(例えば、親和性成熟型)を含む。例えば、米国特許第10,412,940号を参照されたい。
【0092】
6.3.1.2.scFv
一本鎖Fv又は「scFv」抗体断片は、単一のポリペプチド鎖内の抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、一本鎖ポリペプチドとして発現することができ、それらが由来する無傷の抗体の特異性を保持する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、scFvが標的結合のために所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを更に含む。scFvのVH鎖及びVL鎖を連結するのに好適なリンカーの例は、セクション6.7で特定されるリンカーである。
【0093】
本明細書で使用される場合、指定されない限り、scFvは、例えば、ポリペプチドのN末端及びC末端に関して、いずれかの順序でVL可変領域及びVH可変領域を有してもよく、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでもよく、又はVH-リンカー-VLを含んでもよい。
【0094】
scFvは、マウス、ヒト、又はヒト化のVH配列及びVL配列などの任意の好適な種由来のVH配列及びVL配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、scFvは、既知の抗CD20抗体からのVH配列及びVL配列を含むことができる。既知の抗CD20抗体の例には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、及びベルツズマブが含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
いくつかの実施形態では、CD20標的化部分は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、若しくはベルトゥズマブに由来するscFvと同じCD20エピトープに結合する、かつ/又はCD20への結合に関して競合するscFvを含む。
【0096】
scFvをコードする核酸を作製するために、VH及びVLをコードするDNA断片を、リンカーをコードする別の断片、例えば、セクション6.7に記載されるリンカー(典型的には、アミノ酸配列(Gly4~Ser)(配列番号:1)などのアミノ酸グリシン及びセリンを含む配列の反復)のいずれかをコードする断片に作動可能に連結させ、VH配列及びVL配列を、柔軟なリンカーによって結合されたVL領域及びVH領域として発現させることができる(例えば、Bird et al.,1988,Science 242:423-426、Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883、McCafferty et al.,1990,Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0097】
6.4.PD1アゴニスト部分
本開示のある特定の実施形態では、CD20-PD1結合分子のPD1アゴニスト部分は、プログラム死リガンド1(PDL1)又はプログラム死リガンド2(PDL2)の野生型又はバリアントPD1結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、単一のPD1アゴニスト部分(例えば、CD20-PD1結合分子がPD1アゴニスト部分に対して一価である実施形態では、第1のモノマー上又は第2のモノマー上のPD1アゴニスト部分)を含む。いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、2つのPD1アゴニスト部分(例えば、第1のモノマー上の第1のPD1アゴニスト部分及び第2のモノマー上の第2のPD1アゴニスト部分、又は第1のモノマー若しくは第2のモノマーのいずれか上の第1のPD1アゴニスト部分及び第2のPD1アゴニスト部分の両方)を含む。このような実施形態では、2つのPD1アゴニスト部分は、同一であってもよく、異なるものであってもよい。異なる場合、2つのPD1アゴニスト部分は、PD1とは異なって(例えば、異なる親和性で)相互作用することができる。
【0098】
PD1アゴニスト部分は、本明細書に記載される構成のいずれかを有するCD20-PD1結合分子に組み込むことができる。CD20-PD1結合分子は、典型的には、例えば、セクション6.2に記載される例示的なモノマーによって表されるように、複数のポリペプチド鎖から構成される。セクション6.2に記載されるように、PD1アゴニスト部分は、例示的なモノマー2、4、5、6、7、及び9のいずれか1つに組み込むことができる。例示的なモノマー2、4、5、6、7、及び9のうちの1つ以上を組み込む例示的なCD20-PD1結合分子は、セクション6.2に詳細に記載されている。いくつかの実施形態では、PD1アゴニスト部分は、PDL1ベースのアゴニスト部分である。他の実施形態では、湿ったPD1アゴニストは、PDL2ベースのアゴニスト部分である。
【0099】
6.4.1.PDL1ベースのPD1アゴニスト部分
PDL1は、自己に対する免疫寛容の誘導及び維持において重要な役割を果たす。阻害剤受容体PD1のためのリガンドとして、PDL1は、T細胞の活性化閾値を調節し、T細胞エフェクター応答を制限する。本開示は、少なくとも1つのPD1アゴニスト部分が、本明細書に記載のPDL1アミノ酸配列を含むか、又はそれと相同であるアミノ酸配列を含む、CD20-PD1結合分子を提供する。このようなPD1アゴニスト部分は、本明細書において「PDL1ベースのPD1アゴニスト部分」又は同様の用語で呼ばれる。
【0100】
ヒトPDL1タンパク質は、290アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、そこから18アミノ酸が除去されて成熟hPDL1が生成され、アミノ酸19~238(前駆体タンパク質に基づく番号付け)がhPDL1細胞外ドメイン、又はエクトドメインを形成する。ヒトPDL1の配列は、Uniprot識別子Q9NZQ7(uniprot.org/uniprot/Q9NZQ7)を有する。マウスPDL1の配列は、Uniprot識別子Q9EP73(uniprot.org/uniprot/Q9EP73)を有する。
【0101】
前駆体ヒトPDL1ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列(シグナル配列=下線付き;細胞外ドメイン=太字)を有する:
【0102】
【化1】
【0103】
マウスPDL1ポリペプチドは、290アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、そこから18アミノ酸が除去され、成熟mPDL1が生成される。アミノ酸19~239(前駆体タンパク質に基づく番号付け)が、mPDL1細胞外ドメイン、又はエクトドメインを形成する。前駆体マウスPDL1ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列(シグナル配列=下線付き;細胞外ドメイン=太字)を有する:
【0104】
【化2】
【0105】
いくつかの実施形態では、PD1アゴニスト部分は、哺乳類(例えばヒト若しくはマウス)PDL1のPD1結合部分と、又は哺乳類(例えばヒト又はマウス)PDL1のエクトドメイン全体と、少なくとも70%の配列同一性、例えば少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性、又は100%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含むPDL1ベースのアゴニスト部分である。ある特定の態様では、PDL1のPD1結合部分は、ヒトPDL1又はマウスPDL1のIgVドメインを含む。ある特定の実施形態では、PDL1のPD1結合部分は、ヒトPDL1のアミノ酸19~134又はマウスPDL1のアミノ酸19~134を含む。
【0106】
ある特定の実施形態では、PDL1ベースのPD1アゴニスト部分は、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分と少なくとも70%(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列と、野生型PDL1と比較して1つ以上のアミノ酸置換とを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、PDL1ベースのPD1アゴニスト部分の安定性を増加させる。例えば、いくつかの実施形態では、mPDL1は、アミノ酸置換C113S(前駆体タンパク質に基づく番号付け)を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、PDL1ベースのPD1アゴニスト部分は、任意選択でリンカーを介して(例えば、セクション6.7に記載されるように)、直接的又は間接的に、CD20標的化部分に融合される。同じモノマー上に存在する場合、PDL1ベースのPD1アゴニスト部分は、CD20標的化部分のN末端又はC末端にあり得る。PDL1ベースのPD1アゴニスト部分がCD20標的化部分に「直接」融合される場合、PDL1ベースのPD1アゴニスト部分及びCD20標的化部分は、同じモノマー上に隣接して配置され、存在する場合、リンカーによってのみ分離される。PDL1ベースのPD1アゴニスト部分がCD20標的化部分に「間接的に」融合される場合、PDL1ベースのPD1アゴニスト部分及びCD20標的化部分は、同じモノマー上の1つ以上の他のドメイン(例えば、二量体化部分)によって分離されるか、又は別個のモノマー上に位置する。
【0108】
6.4.2.PDL2ベースのPD1アゴニスト部分
PDL2とPD1との相互作用は、細胞周期の進行及びサイトカイン産生をブロックすることによってT細胞増殖を阻害する。本開示は、少なくとも1つのPD1アゴニスト部分が、本明細書に記載のPDL2アミノ酸配列を含むか、又はそれと相同であるアミノ酸配列を含む、CD20-PD1結合分子を提供する。このようなPD1アゴニスト部分は、本明細書では「PDL2ベースのPD1アゴニスト部分」又は同様の用語で呼ばれる。
【0109】
ヒトPDL2タンパク質は、273アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、そこから19アミノ酸が除去されて成熟hPDL2が生成され、アミノ酸20~220(前駆体タンパク質に基づく番号付け)がhPDL2細胞外ドメイン、又はエクトドメインを形成する。ヒトPDL2の配列は、Uniprot識別子Q9BQ51(uniprot.org/uniprot/Q9BQ51)を有する。マウスPDL2の配列は、Uniprot識別子Q9WUL5(uniprot.org/uniprot/Q9WUL5)を有する。
【0110】
前駆体ヒトPDL2ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列(シグナル配列=下線付き;細胞外ドメイン=太字)を有する:
【0111】
【化3】
【0112】
マウスPDL2ポリペプチドは、247アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、そこから19アミノ酸が除去され、成熟mPDL2が生成される。アミノ酸20~221(前駆体タンパク質に基づく番号付け)が、mPDL2細胞外ドメイン、又はエクトドメインを形成する。前駆体マウスPDL2ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列(シグナル配列=下線付き;細胞外ドメイン=太字)を有する:
【0113】
【化4】
【0114】
いくつかの実施形態では、PD1アゴニスト部分は、哺乳類(例えばヒト若しくはマウス)PDL2のPD1結合部分と、又は哺乳類(例えばヒト又はマウス)PDL1のエクトドメイン全体と、少なくとも70%の配列同一性、例えば少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性、又は100%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含むPDL2ベースのアゴニスト部分である。ある特定の態様では、PDL2のPD1結合部分は、ヒトPDL2又はマウスPDL2のIgVドメインを含む。ある特定の実施形態では、PDL2のPD1結合部分は、ヒトPDL2のアミノ酸20~121又はマウスPDL2のアミノ酸20~121を含む。
【0115】
ある特定の実施形態では、PDL2ベースのPD1アゴニスト部分は、PDL2のエクトドメイン又はそのPD1結合部分と少なくとも70%(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列と、野生型PDL2と比較して1つ以上のアミノ酸置換とを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、PDL2ベースのPD1アゴニスト部分は、任意選択でリンカーを介して(例えば、セクション6.7に記載されるように)、直接的又は間接的に、CD20標的化部分に融合される。同じモノマー上に存在する場合、PDL2ベースのPD1アゴニスト部分は、CD20標的化部分のN末端又はC末端にあり得る。PDL2ベースのPD1アゴニスト部分がCD20標的化部分に「直接」融合される場合、PDL2ベースのPD1アゴニスト部分及びCD20標的化部分は、同じモノマー上に隣接して配置され、存在する場合、リンカーによってのみ分離される。PDL2ベースのPD1アゴニスト部分がCD20標的化部分に「間接的に」融合される場合、PDL2ベースのPD1アゴニスト部分及びCD20標的化部分は、同じモノマー上の1つ以上の他のドメイン(例えば、二量体化部分)によって分離されるか、又は別個のモノマー上に位置する。
【0117】
6.5.二量体化部分
6.5.1.Fcドメイン
いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子及びCD20-PD1モノマーは、1つ以上の二量体化部分、例えば、Fcドメインであるか、又はそれを含む1つ以上の二量体化部分を含む。ある特定の実施形態では、本開示のCD20-PD1モノマーは、単一の二量体化部分(例えば、単一のFcドメイン)を含む、及び/又は本開示のCD20-PD1結合分子は、2つの二量体化部分(例えば、会合してFc領域を形成することができる2つのFcドメイン)を含む。
【0118】
本開示のCD20-PD1結合分子及びCD20-PD1モノマーは、任意の好適な種に由来し、CD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分に作動可能に連結された、Fcドメイン、又は会合してFc領域を形成する一対のFcドメインを含むことができる。一実施形態では、Fcドメインは、ヒトFcドメインに由来する。好ましい実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgGFcドメインに由来する。
【0119】
CD20標的部位及び/又はPD1アゴニスト部位は、IgGFcドメインのN末端又はC末端に融合され得る。
本開示の一実施形態は、Fcドメインに、1つ以上のCD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分を融合させることによって、例えば、発現時にホモ二量体化することができるCD20-PD1モノマーを形成することができるFcドメインに、CD20標的化部分及びPD1アゴニスト部分の両方を融合させることによって、又は発現時にヘテロ二量体化することができる2つの異なるCD20-PD1モノマーを形成する、1つ以上のCD20標的化部分及び/若しくは1つ以上のPD1アゴニスト部分を第1のFcドメインに、1つ以上のCD20標的化部分及び/若しくは1つ以上のPD1アゴニスト部分を第2のFcドメインに融合させることによって、作成される2つのFc融合ポリペプチドを含む二量体を対象とする。二量体は、例えば、融合タンパク質(複数可)をコードする遺伝子融合物を適切な発現ベクターに挿入し、遺伝子融合物(複数可)を組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞内で発現させ、発現された融合タンパク質(複数可)を抗体分子と同様に集合させることによってすぐに、Fc部分間に鎖間結合が形成され、二量体を生成するように作製できる。
【0120】
CD20-PD1モノマーに組み込まれることができるFcドメインは、IgA(サブクラスIgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む)、及びIgMを含む、任意の好適なクラスの抗体に由来することができる。一実施形態では、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、IgG1に由来する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、IgG4に由来する。
【0121】
Fc領域内の2つのFcドメインは、互いに同一又は異なってもよい。天然抗体では、Fcドメインは典型的には同一であるが、多重特異性結合分子、例えば、本開示のCD20-PD1結合分子を産生する目的では、Fcドメインは、以下の6.5.1セクションに記載されるように、ヘテロ二量体化を可能にするために有利に異なっていてもよい。
【0122】
天然抗体では、IgA、IgD、及びIgGの重鎖Fcドメインは、2つの重鎖定常ドメイン(CH2及びCH3)から構成され、IgE及びIgMのドメインは、3つの重鎖定常ドメイン(CH2、CH3及びCH4)から構成される。これらは二量体化して、Fc領域を作成する。
【0123】
本開示のCD20-PD1結合分子では、Fc領域、及び/又はその中のFcドメインは、1つ以上の異なるクラスの抗体、例えば、1つ、2つ、又は3つの異なるクラスに由来する重鎖定常ドメインを含むことができる。
【0124】
一実施形態では、Fc領域は、IgG1に由来するCH2及びCH3ドメインを含む。
一実施形態では、Fc領域は、IgG2に由来するCH2及びCH3ドメインを含む。
一実施形態では、Fc領域は、IgG3に由来するCH2及びCH3ドメインを含む。
【0125】
一実施形態では、Fc領域は、IgG4に由来するCH2及びCH3ドメインを含む。
一実施形態では、Fc領域は、IgM由来のCH4ドメインを含む。IgM CH4ドメインは、典型的には、CH3ドメインのC末端に位置する。
【0126】
一実施形態では、Fc領域は、IgGに由来するCH2及びCH3ドメイン、並びにIgMに由来するCH4ドメインを含む。
本開示のCD20-PD1結合分子のFc領域の産生において使用するための重鎖定常ドメインは、上述の天然に存在する定常ドメインのバリアントが含まれ得ることが理解されるであろう。そのようなバリアントは、野生型定常ドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含み得る。一例では、本開示のFc領域は、野生型定常ドメインとは配列が異なる少なくとも1つの定常ドメインを含む。バリアント定常ドメインは、野生型定常ドメインよりも長くても短くてもよいことが理解されるであろう。好ましくは、バリアント定常ドメインは、野生型定常ドメインと少なくとも60%同一又は類似である。別の例では、バリアント定常ドメインは、少なくとも70%同一又は類似である。別の例では、バリアント定常ドメインは、少なくとも80%同一又は類似である。別の例では、バリアント定常ドメインは、少なくとも90%同一又は類似である。別の例では、バリアント定常ドメインは、少なくとも95%同一又は類似である。
【0127】
IgM及びIgAは、共通のH2L2抗体単位の共有結合性多量体としてヒトに天然に存在する。IgMは、J鎖が組み込まれている場合には五量体として存在し、J鎖を欠く場合には六量体として存在する。IgAは、モノマー及び二量体形態として存在する。IgM及びIgAの重鎖は、尾部として既知であるC末端定常ドメインへの18アミノ酸の延長部分を有する。尾部は、ポリマー内の重鎖間にジスルフィド結合を形成するシステイン残基を含み、重合において重要な役割を果たしていると考えられる。尾部はまた、グリコシル化部位を含む。ある特定の実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、尾部を含まない。
【0128】
本開示のCD20-PD1結合分子に組み込まれるFcドメインは、タンパク質の機能的特性を変化させる1つ以上の改変、例えば、FcRn又は白血球受容体などのFc受容体への結合、補体への結合、改変されたジスルフィド結合構造、又は変化したグリコシル化パターンを含んでもよい。エフェクター機能を変化させる例示的なFc改変は、セクション6.5.1.1に記載されている。
【0129】
Fcドメインはまた、例えば、同一のFcドメインよりも非同一のFcドメインの優先的な対合であるヘテロ二量体化を可能にすることによって、非対称のCD20-PD1結合分子の製造可能性を改善する改変を含むように変更することもできる。ヘテロ二量体化は、配列が異なるFcドメインを含有するFc領域によって異なるポリペプチド構成要素が互いに接続しているCD20-PD1結合分子の産生を可能にする。ヘテロ二量体化戦略の例は、セクション6.5.1.2に例示される。
【0130】
上記の改変のうちのいずれかが、任意の好適方法で組み合わせて所望の機能的特性を達成でき、かつ/又は他の改変と組み合わせてCD20-PD1結合分子の特性を変更できることが理解されるであろう。
【0131】
6.5.1.1.エフェクター機能が変化したFcドメイン
いくつかの実施形態では、Fcドメインは、Fc受容体及び/又はエフェクター機能への結合を低減する1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0132】
特定の実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一実施形態では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一実施形態では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体、より具体的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、最も具体的には、ヒトFcγRIIIaである。一実施形態では、エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及びサイトカイン分泌の群から選択される1つ以上である。特定の実施形態では、エフェクター機能は、ADCCである。
【0133】
一実施形態では、Fcドメイン(例えば、CD20-PD1モノマーのFcドメイン)又はFc領域(例えば、会合してFc領域を形成することができるCD20-PD1結合分子の一方又は両方のFcドメイン)は、E233、L234、L235、G237、N297、A330、P331、及びP329(Kabat EUインデックスによる番号付け)の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、Fcドメイン又はFc領域は、L234、L235及びP329(Kabat EUインデックスによる番号付け)の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFc領域は、アミノ酸置換L234A及びL235A(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。そのような一実施形態では、Fcドメイン又は領域は、Igd Fcドメイン又は領域、特に、ヒトIgd Fcドメイン又は領域である。一実施形態では、Fcドメイン又はFc領域は、P329位にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)である。一実施形態では、Fcドメイン又はFc領域は、P329位にアミノ酸置換、及びE233、L234、L235、N297及びP331(Kabat EUインデックスによる番号付け)から選択される位置に更なるアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、更なるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施形態では、Fcドメイン又はFc領域は、P329位、L234位、及びL235位にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より特定の実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」、「PGLALA」又は「LALAPG」)を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFc領域は、L234位、L235位、G237位、A330位、及びP331位(Kabat EUインデックスによる番号付け)にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、アミノ酸置換は、L234A、L235E、G237A、A330S、及びP331S(Kabat EUインデックスによる番号付け)である。
【0135】
典型的には、同じ1つ以上のアミノ酸置換が、Fc領域の2つのFcドメインのそれぞれに存在する。したがって、特定の実施形態では、Fc領域の各Fcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A、及びP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含み、すなわち、Fc領域の第1及び第2のFcドメインの各々において、234位のロイシン残基がアラニン残基で置換され(L234A)、235位のロイシン残基がアラニン残基で置換され(L235A)、329位のプロリン残基がグリシン残基で置換される(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の特定の実施形態では、Fc領域の各Fcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235E、G237A、A330S、及びP331S(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、すなわち、Fc領域の第1及び第2のFcドメインの各々において、234位のロイシン残基がアラニン残基で置換され(L234A)、235位のロイシン残基がアラニン残基で置換され(L235A)、237位のグリシン残基がアラニン残基で置換され(G237A)、330位のアラニン残基がセリン残基で置換され(A330S)、331位のプロリン残基がセリン残基で置換される(P331S)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0136】
一実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、例えば、ヒトIgG1 Fcドメインである。いくつかの実施形態では、IgG1 Fcドメインは、エフェクター機能を低減するためのD265A及びN297A変異(EU番号付け)を含むバリアントIgG1である。他の実施形態では、IgG1 Fcドメインは、L234A、L235E、G237A、A330S、及びP331S変異(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含むバリアントIgG1であり、エフェクターヌルIgG1(IgG1EN)を提供する。アミノ酸置換L234A、L235E、及びG237Aは、FcγRI、FcγRIIa、及びFcγRIIIへの結合を低減させるが、置換A330S及びP331Sは、C1q媒介性補体結合を低減させる。
【0137】
別の実施形態では、Fcドメインは、Fc受容体への結合が低減したIgG4 Fcドメインである。Fc受容体への結合が低減した例示的なIgG4 Fcドメインは、以下の表2から選択されるアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、以下に示される配列の太字部分のみを含む:
【0138】
【表2-1】
【0139】
【表2-2】
【0140】
【表2-3】
【0141】
特定の実施形態では、低減されたエフェクター機能を有するIgG4は、WO2014/121087の配列番号31のアミノ酸配列の太字部分を含み、本明細書ではIgG4s又はhIgG4sと呼ばれることもある。
【0142】
ヘテロ二量体Fc領域について、上述のバリアントIgG4 Fc配列の組み合わせ、例えば、WO2014/121087の配列番号30のアミノ酸配列(又はその太字部分)を含むFcドメイン及びWO2014/121087の配列番号37のアミノ酸配列(又はその太字部分)を含むFcドメインを含むFc領域、又はWO2014/121087の配列番号31のアミノ酸配列(又はその太字部分)を含むFcドメイン及びWO2014/121087の配列番号38のアミノ酸配列(又はその太字部分)を含むFcドメインを含むFc領域、を組み込むことが可能である。
【0143】
6.5.1.2.Fcヘテロ二量体化バリアント
特定のCD20-PD1結合分子は、天然免疫グロブリンとは異なり、非同一のN末端領域に作動可能に連結されている2つのFcドメイン(例えば、一方のFcドメインはFabに接続され、及び他方のFcドメインはPD1アゴニスト部分に接続されている)間の二量体化を伴う。Fc領域を形成するための2つのFcドメインの不十分なヘテロ二量体化は、所望のヘテロ二量体分子の収量を増加させるための障害となる可能性があり、精製の課題となる。例えば、EP1870459A1;米国特許第5,582,996号;米国特許第5,731,168号;米国特許第5,910,573号;米国特許第5,932,448号;米国特許第6,833,441号;米国特許第7,183,076号;米国特許出願公開第2006204493A1号;及びPCT公開第WO2009/089004A1号に開示されているように、本開示のCD20-PD1結合分子に存在し得るFcドメインの二量体化を増強するために当該技術分野で利用可能な様々なアプローチを使用することができる。
【0144】
本開示は、Fcヘテロ二量体、すなわち、異種の、非同一のFcドメインを含むFc領域を含むCD20-PD1結合分子を提供する。典型的には、Fcヘテロ二量体中の各Fcドメインは、抗体のCH3ドメインを含む。CH3ドメインは、前述のセクションに記載されるように、任意のアイソタイプ、クラス、又はサブクラス、好ましくはIgG(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)クラスの抗体の定常領域に由来する。
【0145】
CH3ドメインにおける2つの異なる重鎖のヘテロ二量体化は、所望のCD20-PD1結合分子を生じさせるが、同一の重鎖のホモ二量体化では、所望のCD20-PD1結合分子の収量を低下させるであろう。したがって、好ましい実施形態では、会合して本開示のCD20-PD1結合分子を形成するポリペプチドは、非改変のFcドメインと比較してヘテロ二量体会合を有利にする改変を有するCH3ドメインを含有するであろう。
【0146】
具体的な実施形態では、Fcヘテロ二量体の形成を促進する当該改変は、Fcドメインの一方に「ノブ」改変を含み、他方のFcドメインに「ホール」改変を含む、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール」又は「ノブ・イン・ホール」改変である。ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、US7,695,936、Ridgway et al.,1996,Prot Eng 9:617-621、及びCarter,2001,Immunol Meth 248:7-15に記載されている。一般に、この方法は、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるために、第1のポリペプチドの界面に突起(「ノブ」)及び第2のポリペプチドの界面に対応する空洞(「ホール」)を導入して、突起を空洞内に配置できるようにすることを含む。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えることによって構築される。突起と同じ又は類似のサイズの補償空洞は、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はスレオニン)に置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作製される。
【0147】
したがって、いくつかの実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸残基は、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内に配置可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に突起を生じさせ、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸残基は、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生じさせ、その中に第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が配置可能である。好ましくは、より大きな側鎖体積を有する当該アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)からなる群から選択される。好ましくは、より小さい側鎖体積を有する当該アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、及びバリン(V)からなる群から選択される。突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変化させることによって、例えば、部位特異的変異誘発によって、又はペプチド合成によって作製することができる。例示的な置換は、Y470Tである。
【0148】
具体的なそのような実施形態では、第1のFcドメインでは、366位のスレオニン残基がトリプトファン残基で置換され(T366W)、Fcドメインでは、407位のチロシン残基がバリン残基で置換され(Y407V)、任意選択で、366位のスレオニン残基がセリン残基で置換され(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置換される(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。更なる実施形態では、第1のFcドメインでは、追加的に、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられる(S354C)か、又は356位のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられる(E356C)(特に、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられる)。第2のFcドメインでは、追加的に、349位のチロシン残基がシステイン残基で置き換えられる(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。特定の実施形態では、第1のFcドメインはアミノ酸置換S354C及びT366Wを含み、第2のFcドメインはアミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、静電的ステアリング(electrostatic steering)(例えば、Gunasekaran et al.,2010,J Biol Chem 285(25):19637-46に記載)を使用して、Fc領域の第1及び第2のFcドメインの会合を促進することができる。
【0150】
ヘテロ二量体化を促進するように改変されたFcドメインの使用の代替として、又はそれに加えて、Fcドメインは、Fcヘテロ二量体の選択を可能にする精製戦略を可能にするように改変され得る。そのような一実施形態では、1つのポリペプチドは、プロテインAへのその結合を抑止する改変Fcドメインを含み、したがって、ヘテロ二量体タンパク質をもたらす精製方法を可能にする。例えば、米国特許第8,586,713号を参照されたい。そのような、CD20-PD1結合分子は、第1のCH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインを含み、第1及び第2のIgCH3ドメインが、少なくとも1つのアミノ酸により互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸の差異が、アミノ酸の差異を欠く対応するCD20-PD1結合分子と比較して、プロテインAへのCD20-PD1結合分子の結合を低減させる。一実施形態では、第1のCH3ドメインはプロテインAに結合し、第2のCH3ドメインは、プロテインA結合を減少又は消失させる変異/改変、例えばH95R改変(IMGT エクソン番号付けによる、EU番号付けではH435R)を含有する。第2のCH3は更に、Y96F改変(IMGTによる、EUによればY436F)を含んでいてもよい。このクラスの改変は、本明細書において「スター」変異と称される。
【0151】
いくつかの実施形態では、Fcは、ヘテロ二量体化を促進するための1つ以上の変異(例えば、ノブ及びホール変異)、並びに精製を促進するためのスター変異を含み得る。
6.6.安定化部分
本開示のCD20-PD1結合分子は、インビボでの分子の血清半減期を延長することができる安定化部分を含むことができる。血清半減期は、しばしばアルファ相とベータ相に分けられる。いずれか又は両方の相は、適切な安定化部分の追加によって大幅に改善する可能性がある。例えば、安定化部分は、CD20-PD1結合分子の血清半減期を、安定化部分を含有しない対応するCD20-PD1結合分子と比較して、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、200、400、600、800、1000%又はそれ以上増加させることができる。本開示の目的のために、血清半減期は、ヒト又は他の哺乳類(例えば、マウス又は非ヒト霊長類)における半減期を指すことができる。
【0152】
安定化部分としては、ポリオキシアルキレン部分(例えば、ポリエチレングリコール)、糖(例えば、シアル酸)、及び耐容性の高いタンパク質部分(例えば、Fc及びその断片及びバリアント、トランスフェリン、又は血清アルブミン)が挙げられる。
【0153】
本開示のCD20-PD1結合分子に使用され得る他の安定化部分としては、Kontermann et al.,2011,Current Opinion in Biotechnology 22:868-76に記載されるものが挙げられる。そのような安定化部分としては、ヒト血清アルブミン融合物、ヒト血清アルブミンコンジュゲート、ヒト血清アルブミンバインダー(例えば、アドネクチンPKE、AlbudAb、ABD)、XTEN融合物、PAS融合物(すなわち、3つのアミノ酸のプロリン、アラニン、及びセリンに基づく組換えPEG模倣物)、炭水化物コンジュゲート(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES))、グリコシル化、ポリシアル酸コンジュゲート、及び脂肪酸コンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、高分子糖である安定化部分を含むCD20-PD1結合分子を提供する。
血清アルブミンはまた、アルブミンと非共有結合的に相互作用する能力を有するモジュールを介して半減期延長に関与することができる。したがって、本開示のCD20-PD1結合分子は、安定化部分として、アルブミン結合タンパク質を含むことができる。アルブミン結合タンパク質は、本開示のCD20-PD1結合分子の1つ以上の他の構成要素にコンジュゲート又は遺伝的に融合してもよい。アルブミン結合活性を有するタンパク質は、特定の細菌から知られている。例えば、連鎖球菌プロテインGは、約50個のアミノ酸残基(6kDa)で構成されるいくつかの小さなアルブミン結合ドメインを含有する。米国公開第2007/0178082及び第2007/0269422号に記載されているようなものなどの、血清アルブミン結合タンパク質の追加の例。タンパク質へのアルブミン結合ドメインの融合は、大幅に延長された半減期をもたらす(Kontermann et al.,2011,Current Opinion in Biotechnology 22:868-76を参照されたい)。
【0155】
他の実施形態では、安定化部分は、ヒト血清アルブミンである。他の実施形態では、安定化部分は、トランスフェリンである。
いくつかの実施形態では、安定化部分は、Fcドメイン、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、セクション6.5.1及びそのサブセクションに記載されているFcドメインのいずれかである。セクション6.5.1に記載のFcドメインは一般に、二量体化することができる。しかしながら、安定化の目的のために、Fcドメインは、自己会合する能力が低下した可溶性モノマーFcドメインであり得る。例えば、Helm et al.,1996,J.Biol.Chem.271:7494-7500及びYing et al.,2012,J Biol Chem.287(23):19399-19408を参照されたい。可溶性モノマーFcドメインの例は、米国特許公開第2019/0367611号に記載されるように、CH3におけるT366及び/又はY407に対応する位置にアミノ酸置換を含む。モノマーFcドメインは、任意のIgサブタイプであってもよく、セクション6.5.1及びそのサブセクションに記載されるように、エフェクター機能を低減する追加の置換を含むことができる。
【0156】
更に他の実施形態では、安定化部分は、以下のセクション6.6.1に記載されるように、ポリエチレングリコール部分又は別のポリマーである。
安定化部分は、例えば、以下のセクション6.7に記載されるように、リンカーを介して、本開示のCD20-PD1結合分子の1つ以上の他の構成要素に接続することができる。
【0157】
6.6.1.ポリエチレングリコール
いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、安定化部分としてポリエチレングリコール(PEG)又は別の親水性ポリマー、例えば、エチレングリコール/プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、デキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物のコポリマーを含む。ポリマーは、任意の分子量であり得、分岐状又は非分枝状であり得る。
【0158】
PEGは、市販されているか、又は当該技術分野で周知の方法に従ってエチレングリコールの開環重合によって調製することができる周知の水溶性ポリマーである(Sandler and Karo,Polymer Synthesis,Academic Press,New York,Vol.3,pages 138-161)。「PEG」という用語は、サイズ又はPEGの末端での改変に関係なく、任意のポリエチレングリコール分子を包含するために広く使用され、以下の式で表すことができる:X--O(CHCHO)-1CHCHOH(式中、nは、20~2300であり、Xは、H又は末端改変、例えば、C1-4アルキルである)。PEGは、分子の化学合成から生じる結合反応に必要な、又は分子の部分の最適な距離のためのスペーサーとして機能する更なる化学基を含有することができる。加えて、そのようなPEGは、一緒に連結された1つ以上のPEG側鎖からなることができる。複数のPEG鎖を有するPEGは、マルチアーム型又は分岐型PEGと呼ばれる。分岐型PEGは、例えば、欧州出願第473084A号及び米国特許第5,932,462号に記載されている。
【0159】
1つ以上のPEG分子は、CD20-PD1結合分子上の異なる位置で付着され得、そのような付着は、アミン、チオール、又は他の適切な反応性基との反応によって達成され得る。アミン部分は、例えば、CD20-PD1結合分子(又はその構成要素)のN末端に見出される一級アミン、又はリジン若しくはアルギニンなどのアミノ酸中に存在するアミン基であり得る。
【0160】
PEG化は、部位特異的PEG化によって達成され得、好適な反応性基がタンパク質に導入され、PEG化が優先的に生じる部位が作成される。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、所望の位置にシステイン残基を導入するように改変され、システイン上の部位特異的PEG化を可能にする。本開示のCD20-PD1結合分子のコード配列に変異を導入して、システイン残基を生成することができる。これは、例えば、1つ以上のアミノ酸残基をシステインに変異させることによって達成され得る。システイン残基に変異するための好ましいアミノ酸としては、セリン、スレオニン、アラニン、及び他の親水性残基が挙げられる。好ましくは、システインに変異させる残基は、表面曝露された残基である。一次配列又は三次元構造に基づいて残基の表面アクセス可能性を予測するためのアルゴリズムは、当技術分野で周知である。システイン残基のPEG化は、例えば、PEG-マレイミド、PEG-ビニルスルホン、PEG-ヨードアセトアミド、又はPEG-オルトピリジルジスルフィドを使用して実施され得る。
【0161】
PEGは、典型的には、ポリペプチド上の所望の部位にカップリングするのに適切な好適な活性化基で活性化される。PEG化方法は、当該技術分野で周知であり、更に、Zalipsky et al.,“Use of Functionalized Poly(Ethylene Glycols) for Modification of Polypeptides” in Polyethylene Glycol Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications,J.M.Harris,Plenus Press,New York(1992)、及びZalipsky,1995,Advanced Drug Reviews 16:157-182に記載されている。
【0162】
PEG部分は、分子量が大きく異なり得、分岐状又は線状であり得る。典型的には、PEGの重量平均分子量は、約100ダルトン~約150,000ダルトンである。PEGの例示的な重量平均分子量には、約20,000ダルトン、約40,000ダルトン、約60,000ダルトン、及び約80,000ダルトンが含まれる。ある特定の実施形態では、PEGの分子量は40,000ダルトンである。前述のいずれかの総分子量を有する分岐型のPEGも使用することができる。いくつかの実施形態では、PEGは、2つの分岐を有する。他の実施形態では、PEGは、4つの分岐を有する。別の実施形態では、PEGは、ビス-PEG(NOF Corporation,DE-200MA)である。
【0163】
当技術分野で既知の従来の分離及び精製技術を使用して、サイズ排除(例えば、ゲル濾過)及びイオン交換クロマトグラフィーなどのPEG化CD20-PD1結合分子を精製することができる。生成物は、SDS-PAGEを使用して分離することもできる。分離することができる生成物としては、モノ、ジ、トリ、ポリ、及び非PEG化CD20-PD1結合分子、並びに遊離PEGが挙げられる。モノPEGコンジュゲートのパーセンテージは、溶出ピークの付近のより広い画分をプールして、組成物中のモノPEGのパーセンテージを増加させることによって制御することができる。約90%のモノPEGコンジュゲートは、収量及び活性の良好なバランスを表す。
【0164】
いくつかの実施形態では、PEG化CD20-PD1結合分子は、好ましくは、非改変CD20-PD1結合分子に関連する生物学的活性の少なくとも約25%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は100%を保持するであろう。いくつかの実施形態では、生物学的活性は、K、kon、又はkoffによって評価される、CD20、PD1、又はCD20及びPD1の両方に結合するその能力を指す。
【0165】
6.7.リンカー
ある特定の態様では、本開示は、CD20-PD1結合分子の2つ以上の構成要素がペプチドリンカーによって互いに接続されているCD20-PD1結合分子を提供する。限定ではなく例として、リンカーを使用して、(a)CD20標的化部分及び二量体化部分、(b)CD20標的化部分及びPD1アゴニスト部分、(c)PD1アゴニスト部分及び二量体化部分、又は(d)CD20標的化部分内の異なるドメイン(例えば、scFv内のVHドメイン及びVLドメイン)を接続することができる。
【0166】
ペプチドリンカーは、2アミノ酸~60アミノ酸以上の範囲とすることができ、ある特定の態様では、ペプチドリンカーは、3アミノ酸~50アミノ酸、4~30アミノ酸、5~25アミノ酸、10~25アミノ酸、10アミノ酸~60アミノ酸、12アミノ酸~20アミノ酸、20アミノ酸~50アミノ酸、又は25アミノ酸~35アミノ酸長の範囲とすることができる。
【0167】
特定の態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、又は少なくとも7アミノ酸長であり、任意選択で、最大30アミノ酸、最大40アミノ酸、最大50アミノ酸、又は最大60アミノ酸長である。
【0168】
前述のいくつかの実施形態では、リンカーは、5アミノ酸~50アミノ酸長の範囲、例えば、5~50、5~45、5~40、5~35、5~30、5~25、又は5~20アミノ酸長の範囲である。前述の他の実施形態では、リンカーは、6アミノ酸~50アミノ酸長の範囲、例えば、6~50、6~45、6~40、6~35、6~30、6~25、又は6~20アミノ酸長の範囲である。前述の更に他の実施形態では、リンカーは、7アミノ酸~50アミノ酸長の範囲、例えば、7~50、7~45、7~40、7~35、7~30、7~25、又は7~20アミノ酸長の範囲である。
【0169】
荷電(例えば、荷電親水性リンカー)及び/又は柔軟なリンカーが特に好ましい。
本開示のCD20-PD1結合分子に使用され得る柔軟なリンカーの例としては、Chen et al.,2013,Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369及びKlein et al.,2014,Protein Engineering, Design&Selection 27(10):325-330に開示されるものが挙げられる。特に有用な柔軟なリンカーは、グリシン及びセリンの反復、例えば、GS(配列番号12)又はSG(配列番号13)のモノマー又は多量体であるか、又はそれらを含み、式中、nは、1~10の整数、例えば、1 2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。一実施形態では、リンカーは、例えば、(GGGGS)(配列番号14)などのGSの反復のモノマー又は多量体であるか、又はそれを含む。
【0170】
ポリグリシンリンカーは、本開示のCD20-PD1結合分子に好適に使用することができる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、2つの連続したグリシン(2Gly)、3つの連続したグリシン(3Gly)、4つの連続したグリシン(4Gly)(配列番号15)、5つの連続したグリシン(5Gly)(配列番号16)、6つの連続したグリシン(6Gly)(配列番号17)、7つの連続したグリシン(7Gly)(配列番号18)、8つの連続したグリシン(8Gly)(配列番号19)又は9つの連続したグリシン(9Gly)(配列番号20)を含む。
【0171】
6.7.1.ヒンジ配列
いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、ヒンジ領域であるリンカーを含む。特に、ヒンジを使用して、CD20標的化部分、例えば、Fabドメインを二量体化ドメイン、例えば、Fcドメインに接続することができる。ヒンジ領域は、天然のヒンジ領域又は改変されたヒンジ領域であり得る。ヒンジ領域は、典型的には、Fc領域のN末端に見出される。「ヒンジ領域」という用語は、別段の文脈で指示されない限り、単一又はモノマーポリペプチド鎖に関してはモノマーヒンジドメインであり、二量体ポリペプチド(例えば、2つのFcドメインの会合によって形成されるホモ二量体又はヘテロ二量体CD20-PD1結合分子)に関しては、別個のポリペプチド鎖上の2つの会合したヒンジ配列を含むことができる天然又は非天然に存在するヒンジ配列を指す。
【0172】
天然のヒンジ領域は、通常、天然に存在する抗体におけるFabドメインとFcドメインとの間に見出されるヒンジ領域である。改変されたヒンジ領域は、天然のヒンジ領域とは、長さ及び/又は組成が異なる任意のヒンジである。そのようなヒンジは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、サメ、ブタ、ハムスター、ラクダ、ラマ、又はヤギのヒンジ領域などの他の種からのヒンジ領域を含むことができる。他の改変されたヒンジ領域は、重鎖Fcドメイン又はFc領域のものとは異なるクラス又はサブクラスの抗体に由来する完全なヒンジ領域を含み得る。あるいは、改変されたヒンジ領域は、天然ヒンジの一部又は繰り返しユニットを含み得、繰り返しの各ユニットは、天然ヒンジ領域に由来する。更なる別の方法では、天然ヒンジ領域は、1つ以上のシステイン又は他の残基をセリン又はアラニンなどの中性残基に変換することによって、又は好適に配置された残基をシステイン残基に変換することによって変更され得る。そのような手段によって、ヒンジ領域内のシステイン残基の数を増加又は減少させることができる。他の改変されたヒンジ領域は、完全に合成であってもよく、長さ、システイン組成、及び柔軟性などの所望の特性を有するように設計されてもよい。
【0173】
いくつかの改変されたヒンジ領域は、例えば、米国特許第5,677,425号、WO99/15549、WO2005/003170、WO2005/003169、WO2005/003170、WO98/25971、及びWO2005/003171に既に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
一実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、一方又は両方のFcドメインがそのN末端に無傷のヒンジ領域を有するFc領域を含む。
様々な実施形態では、ヒンジ領域内の位置233~236は、G、G、G、及び空き;G、G、空き、及び空き;G、空き、空き、及び空き;又は全てが空きであり得、位置はEU番号付けによって番号付けされている。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、同じアイソタイプ(例えば、ヒトIgG1又はヒトIgG4)の野生型ヒンジ領域と比較してFcγ受容体に対する結合親和性を低減する改変ヒンジ領域を含む。
【0176】
一実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、各Fcドメインが、そのN末端に無傷のヒンジ領域を有するFc領域を含み、各Fcドメイン及びヒンジ領域は、IgG4に由来し、各ヒンジ領域は、改変された配列CPPC(配列番号21)を含む。ヒトIgG4のコアヒンジ領域は、配列CPPC(配列番号29)を含有するIgG1と比較して、配列CPSC(配列番号22)を含有する。IgG4配列に存在するセリン残基は、この領域における柔軟性の増加をもたらし、したがって、ある割合の分子は、IgG分子内の他の重鎖に架橋して鎖間ジスルフィドを形成するのではなく、同じタンパク質鎖内にジスルフィド結合(鎖内ジスルフィド)を形成する。(Angel et al.,1993,Mol Immunol 30(1):105-108)。セリン残基をプロリンに変更して、IgG1と同じコア配列を得ることで、IgG4ヒンジ領域内に鎖間ジスルフィドが完全な形成が可能になり、したがって、精製生成物中の不均一性が低減する。この変化したアイソタイプは、IgG4Pと呼ばれる。
【0177】
6.7.1.1.キメラヒンジ配列
ヒンジ領域は、キメラヒンジ領域であり得る。
例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、又はヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列と組み合わせられたヒトIgG1、ヒトIgG2、又はヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」配列を含み得る。
【0178】
特定の実施形態では、キメラヒンジ領域は、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCPAPPVA(配列番号23)(WO2014/121087の配列番号8として以前に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)又はESKYGPPCPPCPAPPVA(配列番号24)(WO2014/121087の配列番号9として以前に開示されている)を含む。このようなキメラヒンジ配列は、IgG4CH2領域に好適に連結することができる(例えば、IgG4Fcドメイン、例えば、ヒトFcドメイン又はマウスFcドメインに組み込むことによって、例えば、セクション6.5.1.1に記載されるように、エフェクター機能を低減するためにCH2及び/又はCH3ドメインで更に改変することができる)。
【0179】
6.7.1.2.エフェクター機能が低減したヒンジ配列
更なる実施形態では、ヒンジ領域は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2016161010A2号に記載されるように、エフェクター機能を低減するように改変することができる。様々な実施形態では、改変されたヒンジ領域の位置233~236は、G、G、G、及び空き;G、G、空き、及び空き;G、空き、空き、及び空き;又は全てが空きであり得、位置はEU番号付けによって番号付けされている(WO2016161010A2の図1に示される)。これらのセグメントは、GGG-、GG--、G---、又は----として表すことができ、「-」は、空きの位置を表す。
【0180】
位置236は、カノニカルヒトIgG2では空きであるが、他のカノニカルヒトIgGアイソタイプでは占有されている。位置233~235は、(WO2016161010A2の図1に示されるように)4つのヒトアイソタイプ全てにおいて、G以外の残基によって占有される。
【0181】
位置233~236内のヒンジ改変は、Pによって占有される位置228と組み合わせることができる。位置228は、ヒトIgG1及びIgG2では本来Pによって占有されるが、ヒトIgG4ではSによって、ヒトIgG3ではRによって占有される。IgG4抗体におけるS228P変異は、IgG4抗体を安定化し、外因性抗体と内因性抗体との間の重鎖軽鎖対の交換を低減するのに有利である。好ましくは、位置226~229は、それぞれ、C、P、P、及びCによって占有される(「CPPC」は、配列番号21として開示される)。
【0182】
例示的なヒンジ領域は、中間(又はコア)及び下部ヒンジと称されることもある残基226-236を有し、GGG-(233~236)、GG--(233~236)、G---(233~236)及びGなし(233-236)、と呼ばれる改変されたヒンジ配列によって占有される。任意選択で、ヒンジドメインアミノ酸配列は、CPPCPAPGGG-GPSVF(配列番号25)(WO2016161010A2の配列番号1として以前に開示されている)、CPPCPAPGG--GPSVF(配列番号26)(WO2016161010A2の配列番号2として以前に開示されている)、CPPCPAPG---GPSVF(配列番号27)(WO2016161010A2の配列番号3として以前に開示されている)又はCPPCPAP----GPSVF(配列番号28)(WO2016161010A2の配列番号4として以前に開示されている)を含む。
【0183】
上記の改変されたヒンジ領域は、典型的にはCH2及びCH3ドメインを含み、指定された領域に隣接する追加のヒンジセグメント(例えば、上部ヒンジ)を有し得る、重鎖定常領域に組み込むことができる。存在するそのような追加の定常領域セグメントは、典型的には同じアイソタイプ、好ましくはヒトアイソタイプのものであるが、異なるアイソタイプのハイブリッドであってもよい。このような追加のヒト定常領域セグメントのアイソタイプは、好ましくはヒトIgG4であるが、ドメインが異なるアイソタイプであるヒトIgG1、IgG2、若しくはIgG3又はそのハイブリッドであってもよい。ヒトIgG1、IgG2、及びIgG4の例示的な配列は、WO2016161010A2の図2~4に示されている。
【0184】
特定の実施形態では、改変されたヒンジ配列は、IgG4CH2領域に連結され得る(例えば、IgG4Fcドメイン、例えば、ヒトFcドメイン又はマウスFcドメインに組み込むことによって、例えば、セクション6.5.1.1に記載されるように、エフェクター機能を低減するためにCH2及び/又はCH3ドメインで更に改変され得る)。
【0185】
6.8.核酸及び宿主細胞
別の態様では、本開示は、本開示のCD20-PD1結合分子をコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子は、単一の核酸によってコードされる。他の実施形態では、例えば、ヘテロ二量体分子又は2つ以上のポリペプチド鎖から構成されるCD20標的化部分を含む分子の場合、CD20-PD1結合分子は、複数の(例えば、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の)核酸によってコードすることができる。
【0186】
単一の核酸は、単一のポリペプチド鎖を含むCD20-PD1結合分子、2つ以上のポリペプチド鎖を含むCD20-PD1結合分子、又は3つ以上のポリペプチド鎖を含むCD20-PD1結合分子の一部を含むCD20-PD1結合分子をコードすることができる(例えば、単一の核酸は、3つ、4つ若しくはそれ以上のポリペプチド鎖を含むCD20-PD1結合分子の2つのポリペプチド鎖、又は4つ若しくはそれ以上のポリペプチド鎖を含むCD20-PD1結合分子の3つのポリペプチド鎖をコードすることができる)。発現を別々に制御するために、2つ以上のポリペプチド鎖をコードするオープンリーディングフレームは、別々の転写調節エレメント(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)の制御下におくことができる。2つ以上のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、同じ転写調節エレメントによって制御され、内部リボソーム進入部位(IRES)配列によって分離され、別々のポリペプチドへの翻訳を可能にすることもできる。
【0187】
いくつかの実施形態では、2つ以上のポリペプチド鎖を含むCD20-PD1結合分子は、2つ以上の核酸によってコードされる。CD20-PD1結合分子をコードする核酸の数は、CD20-PD1結合分子中のポリペプチド鎖の数以下であり得る(例えば、2つ以上のポリペプチド鎖が単一の核酸によってコードされる場合)。
【0188】
本開示の核酸は、DNA又はRNA(例えば、mRNA)であり得る。
別の態様では、本開示は、本開示の核酸を含有する宿主細胞及びベクターを提供する。核酸は、本明細書において以下により詳細に記載されるように、単一のベクター中に存在してもよいし、同じ宿主細胞又は別個の宿主細胞中に存在する別個のベクター中に存在してもよい。
【0189】
6.8.1.ベクター
本開示は、本明細書に記載されるCD20-PD1結合分子又はCD20-PD1結合分子構成要素、例えば、CD20-PD1モノマーのポリペプチド鎖のうちの1つ又は2つをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、ラムダファージ、又は酵母人工染色体(YAC)を含むが、これらに限定されない。
【0190】
多数のベクター系を使用することができる。例えば、ベクターの1つのクラスは、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(ラウス肉腫ウイルス、MMTV若しくはMOMLV)、又はSV40ウイルス等の動物ウイルスに由来するDNAエレメントを利用する。別のクラスのベクターは、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、及びフラビウイルスなどのRNAウイルスに由来するRNAエレメントを利用する。
【0191】
追加的に、DNAを染色体に安定的に組み込んだ細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択することができる。マーカーは、例えば、栄養要求性宿主に対するプロトトロピー(prototropy)、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)、又は銅などの重金属に対する耐性などを提供し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結されるか、又は共形質転換によって同じ細胞内に導入されるかのいずれかであり得る。mRNAの最適な合成のために、追加のエレメントも必要とされ得る。これらのエレメントは、スプライスシグナル、並びに転写プロモーター、エンハンサー、及び終結シグナルを含み得る。
【0192】
発現ベクター又は構築物を含有するDNA配列が発現のために調製されると、発現ベクターを適切な宿主細胞にトランスフェクトするか、又は導入することができる。これを達成するために、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、遺伝子銃、脂質ベースのトランスフェクション、又は他の従来の技法などの様々な技法が使用され得る。得られたトランスフェクトされた細胞を培養し、発現されたポリペプチドを回収するための方法及び条件は、当業者に既知であり、本明細書に基づいて、使用される特異的発現ベクター及び哺乳類宿主細胞に応じて変化又は最適化され得る。
【0193】
6.8.2.細胞
本開示はまた、本開示の核酸を含む宿主細胞を提供する。
一実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載の1つ以上の核酸を含むように遺伝子操作される。
【0194】
一実施形態では、宿主細胞は、発現カセットを使用することによって遺伝子操作される。「発現カセット」という語句は、そのような配列と互換性のある宿主における遺伝子の発現に影響を与えることができるヌクレオチド配列を指す。そのようなカセットには、プロモーター、イントロンを有する又は有しないオープンリーディングフレーム、及び終結シグナルが含まれ得る。発現にもたらすのに必要な、又は役立つ追加の因子、例えば、誘導性プロモーターも使用されてもよい。
【0195】
本開示はまた、本明細書に記載されるベクターを含む宿主細胞を提供する。
細胞は、限定されないが、真核細胞、細菌細胞、昆虫細胞、又はヒト細胞であり得る。好適な真核細胞としては、Vero細胞、HeLa細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞、及びMDCKII細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好適な昆虫細胞としては、限定されないが、Sf9細胞が挙げられる。
【0196】
6.9.薬学的組成物
6.9.1.CD20-PD1結合分子を含む薬学的組成物
本開示のCD20-PD1結合分子は、CD20-PD1結合分子と、1つ以上の担体、賦形剤及び/又は希釈剤とを含む組成物の形態にあり得る。組成物は、獣医学的使用又はヒトにおける薬学的使用などの特定の使用のために製剤化され得る。組成物の形態(例えば、乾燥粉末、液体製剤など)と、使用される賦形剤、希釈剤及び/又は担体は、CD20-PD1結合分子の意図される用途、及び治療的用途場合、投与様式に依存するであろう。
【0197】
治療用途の場合、組成物は、薬学的に許容される担体を含む滅菌の薬学的組成物の一部として供給され得る。この組成物は、(患者に投与する所望の方法に応じて)任意の好適な形態であり得る。薬学的組成物は、経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、髄腔内、局部、又は局所などの様々な経路によって患者に投与され得る。いずれかの所与の場合における投与のための最も好適な経路は、特定の抗体、対象、並びに疾患の性質及び重症度、並びに対象の身体状態に依存するであろう。典型的には、薬学的組成物は、静脈内又は皮下に投与されるであろう。
【0198】
薬学的組成物は、用量当たり所定量の本開示のCD20-PD1結合分子を含有する単位剤形で都合よく提示することができる。単位用量に含まれるCD20-PD1結合分子の量は、当該技術分野において周知である他の因子と同様に、治療される疾患に依存するであろう。そのような単位投薬量は、単回投与に適した量のCD20-PD1結合分子を含有する凍結乾燥された乾燥粉末の形態、又は液体の形態にあり得る。乾燥粉末単位剤形は、シリンジ、適切な量の希釈剤、及び/又は投与に有用な他の構成要素とともにキットに包装することができる。液体形態の単位投薬量は、単回投与に適した量のCD20-PD1結合分子を予め充填したシリンジの形態で都合よく供給してもよい。
【0199】
薬学的組成物はまた、複数回の投与に好適な量のCD20-PD1結合分子を含有することからバルクで供給されてもよい。
薬学的組成物は、所望の純度を有するCD20-PD1結合分子を、当技術分野で典型的に使用される任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤(これらの全てを本明細書では「担体」と称する)、すなわち、緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張化剤、非イオン性界面活性剤、抗酸化剤、及び他の様々な添加剤と混合することによって、凍結乾燥された製剤又は水溶液として保存するために調製され得る。Remington,The Science and Practice of Pharmacy,23rd edition(Adejare,ed.2020)を参照されたい。そのような添加剤は、用いられる投薬量及び濃度においてレシピエントに対して無毒であるべきである。
【0200】
緩衝剤は、生理学的条件に近い範囲でpHを維持するのに役立つ。それらは、多種多様な濃度で存在し得るが、典型的には、約2mM~約50mMの範囲の濃度で存在するであろう。本開示で使用するための好適な緩衝剤としては、有機酸及び無機酸の両方並びにその塩、例えば、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸-グリコン酸ナトリウム(sodium glyconate)混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グリコン酸カリウム(potassium glyconate)混合物など)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、及び酢酸緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)が挙げられる。追加的に、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、及びトリメチルアミン塩(例えば、Tris)が使用され得る。
【0201】
保存剤は、微生物の増殖を遅延させるために添加されてもよく、約0.2%~1%(w/v)の範囲の量で添加され得る。本開示で使用するのに好適な保存剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハライド(benzalconium halide)(例えば、塩化物、臭化物、及びヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、及びアルキルパラベン(例えば、メチル又はプロピルパラベン)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3-ペンタノールが挙げられる。時に「安定剤」として知られている等張化剤は、本開示の液体組成物の等張性を確保するために添加され得、多価糖アルコール、例えば、三価以上の糖アルコール(例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールなど)を含む。安定剤とは、機能において、増量剤から添加剤までの範囲であり得る幅広いカテゴリーの賦形剤を指し、治療薬を可溶化するか、変性若しくは容器壁への付着を防ぐのに役立つ。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上で列挙した)、アミノ酸(例えば、アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなど)、有機糖又は糖アルコール(例えば、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロールなど、イノシトールなどのシクリトールを含む)、ポリエチレングリコール、アミノ酸ポリマー、含硫還元剤(例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、a-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウムなど)、低分子量ポリペプチド(例えば、10残基以下のペプチド)、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンなど)、単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコースなど)、二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース及びトレハロースなど)、三糖類(例えば、ラフィノースなど)、及び多糖類(例えば、デキストランなど)であり得る。安定剤は、CD20-PD1結合分子の重量当たり0.5~10重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0202】
非イオン性界面活性剤又は洗剤(「湿潤剤」としても知られる)を添加して、糖タンパク質の可溶化を助けるとともに、撹拌誘導性凝集から糖タンパク質を保護することができ、これにより、タンパク質の変性を引き起こすことなく、製剤を負荷のかかる剪断面に曝露することも可能になる。好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、80等)、ポリオキサマー(polyoxamer)(184、188等)、及びプルロニックポリオールが挙げられる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mL~約1.0mg/mL(例えば、約0.07mg/mL~約0.2mg/mL)の範囲で存在し得る。
【0203】
追加の種々の賦形剤としては、増量剤(例えば、デンプン)、キレート剤(例えば、EDTA)、抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、及び共溶媒が挙げられる。
【0204】
6.9.2.CD20-PD1結合分子をコードする核酸送達のための薬学的組成物
本開示のCD20-PD1結合分子は、遺伝子治療に有用な任意の方法によって、例えば、mRNAとして、又は好適なプロモーターの制御下で、CD20-PD1結合分子をコードするウイルスベクターを介して送達され得る。
【0205】
例示的な遺伝子治療ベクターとしては、アデノウイルス又はAAVベースの治療薬が挙げられる。本明細書における方法、使用又は組成物において使用するためのアデノウイルスベース又はAAVベースの治療薬の非限定的な例としては、例えば、がんの治療における使用のための、野生型ヒト腫瘍抑制タンパク質p53をコードする組換えアデノウイルスベクターであるrAd-p53(Gendicine(登録商標)、Genkaxin(登録商標)としても知られている、Qi et al.,2006,Modern Oncology,14:1295-1297);宿主p53を不活性化するためのE1B遺伝子を欠くアデノウイルスであるAd5_d11520(H101又はONYX-015とも呼ばれる;例えば、Russell et al.,2012,Nature Biotechnology 30:658-670を参照されたい);例えば、がんの治療における使用のための、サイトカインGM-CSFを含有するアデノウイルスであるAD5-D24-GM-CSF(Cerullo et al,2010,Cancer Res.70:4297);例えば、がんの治療における使用のための、HSVチミジンキナーゼ遺伝子を有する複製欠損性アデノウイルスであるrAd-HSVtk(Cerepro(登録商標)、Ark Therapeuticsとして開発、例えば、米国特許第6,579,855号を参照;AdvantageneによりProstAtak(商標)として開発;国際PCT出願第WO2005/049094号);例えばがんの治療のために、化学放射線誘導性EGR-1プロモーターの制御下でヒト腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を発現する複製欠損性アデノウイルスベクターであるrAd-TNFα(TNFerade(商標)、GenVec;Rasmussen et al.,2002,Cancer Gene Ther.9:951-7;例えば、がんを治療するために、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーターの指示下でヒトインターフェロンベータ遺伝子を発現するE1及びE3遺伝子が欠失しているアデノウイルス血清型5ベクターである、Ad-IFNβ(BG00001及びH5.110CMVhIFN-β,Biogen;Sterman et al.,2010,Mol.Ther.18:852-860が挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
核酸分子(例えば、mRNA)又はウイルスは、薬学的組成物中の唯一の薬学的活性成分として製剤化され得るか、又は治療される特定の疾患のための他の活性剤と組み合わせられ得る。任意選択で、他の薬剤、医薬品、担体、アジュバント、希釈剤を、本明細書で提供される組成物中に含めることができる。例えば、湿潤剤、乳化剤及びラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、並びに着色剤、放出剤(release agent)、コーティング剤、甘味料、香味料及び芳香剤、保存剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスのうちのいずれか1つ以上もまた、組成物中に存在し得る。組成物に含まれ得る例示的な他の薬剤及び賦形剤としては、例えば、水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど、及び金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸及びリン酸等が挙げられる。
【0207】
養子細胞移植療法、例えば、セクション6.11.1に記載されるようなCAR発現細胞療法のための補助療法として使用される場合、細胞療法、例えば、CAR発現細胞を、本開示のCD20-PD1結合分子を発現するように操作され得る。CD20-PD1結合分子は、特定のゲノム遺伝子座、例えば、活性化リンパ球又は機能不全リンパ球において活性である遺伝子座、例えば、PD-1遺伝子座を標的とすることができ、又は非特異的ゲノム遺伝子座に挿入することができる。特定のゲノム遺伝子座を標的化することは、例えば、ジンクフィンガータンパク質、CRISPR/Cas9系などを使用する遺伝子編集によって達成することができる。
【0208】
6.10.治療指標及び治療方法
本開示のCD20-PD1結合分子は、宿主の免疫系の調節が有益である疾患状態、特に細胞免疫応答の抑制が望ましい状態を治療するのに有用である。したがって、本開示のCD20-PD1結合分子は、様々な用途で免疫応答を抑制するために使用することができる。
【0209】
細胞免疫応答の抑制が望ましい状態としては、自己免疫応答に起因する疾患状態が挙げられ得る。本開示のCD20-PD1結合分子を投与することができる疾患状態は、例えば、細胞性自己免疫応答の抑制が重要なメカニズムである自己免疫疾患を含む。本開示のCD20-PD1結合分子を使用することができる特定の疾患状態には、1型糖尿病(T1D)、全身性エリテマトーデス、クローン病、及び移植片対宿主病(GVHD)が含まれる。本開示のCD20-PD1結合分子は、それ自体又は任意の好適な薬学的組成物中で投与されてもよい。
【0210】
一態様では、医薬として使用するための本開示のCD20-PD1結合分子が提供される。更なる態様では、疾患の治療において使用するための、本開示のCD20-PD1結合分子が提供される。ある特定の実施形態では、治療方法において使用するための本開示のCD20-PD1結合分子が提供される。一実施形態では、本開示は、疾患の治療を必要とする対象における疾患の治療において使用するための、本明細書に記載のCD20-PD1結合分子を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、自己免疫疾患を有する対象を治療する方法において使用するためのCD20-PD1結合分子であって、個体に、治療有効量のCD20-PD1結合分子を投与することを含む、CD20-PD1結合分子を提供する。ある特定の実施形態では、治療される疾患は、自己免疫疾患である。特定の実施形態では、疾患は、T1Dである。他の実施形態では、疾患は、全身性エリテマトーデスである。他の実施形態では、疾患はクローン病である。更に他の実施形態では、疾患は、GVHDである。ある特定の実施形態では、方法は、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。更なる実施形態では、本開示は、免疫系の抑制において使用するためのCD20-PD1結合分子アゴニストを提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、対象における免疫系を抑制する方法において使用するためのCD20-PD1結合分子であって、免疫系を抑制するための有効量のCD20-PD1結合分子を個体に投与することを含む、CD20-PD1結合分子を提供する。上記の実施形態のうちのいずれかによる「個体」は、哺乳類、例えばヒトである。上記の実施形態のうちのいずれかによる「免疫系の抑制」は、免疫機能の全般的な減少、T細胞機能の減少、B細胞機能の減少、T細胞応答性の減少などのうちのいずれか1つ以上を含み得る。上記の実施形態のうちのいずれかによる「細胞性自己免疫応答の抑制」には、例えば、免疫シグナル(例えば、免疫活性化サイトカインの分泌)の減少、自己抗原を標的とする免疫細胞の機能の減少などが含まれ得る。
【0211】
本開示は、本明細書に記載されるCD20-PD1結合分子又は薬学的組成物を対象に投与することを含む、局所的PD1アゴニズムの方法を更に提供する。本明細書で使用される場合、「局所的送達される」という用語は、局所投与を必要とせず、むしろ、CD20-PD1結合分子が、免疫調節の意図された部位、例えば、自己免疫活性の部位、及び/又は意図された細胞型、例えば、B細胞で選択的又は優先的に局在することを示す。
【0212】
本開示は、低減された全身曝露及び/又は低減された全身毒性を伴う対象にPD1アゴニスト療法を施す方法であって、例えば、CD20が、PD1アゴニスト療法が望ましい、及び/又は意図される組織によって発現される場合、本明細書に記載のCD20-PD1結合分子又は薬学的組成物の形態で、PD1アゴニスト療法を対象に施すことを含む、方法を更に提供する。
【0213】
したがって、前述の方法は、PD1アゴニスト治療を意図した部位にCD20-PD1結合分子を優先的に送達することによって、オフターゲット副作用を低減したPD1アゴニスト治療を可能にする。
【0214】
本開示は、CD20-PD1結合分子又は本明細書に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、CD20を発現する標的組織における免疫応答を局所的に調節する(例えば、阻害する)方法を更に提供する。
【0215】
いくつかの実施形態では、投与は、組織に対して局所的ではない。
更なる態様では、本開示は、疾患の治療を必要とする対象における疾患の治療のための医薬の製造又は調製における本開示のCD20-PD1結合分子の使用を提供する。一実施形態では、医薬は、疾患を有する対象に、治療有効量の医薬を投与することを含む、疾患を治療する方法において使用するためのものである。ある特定の実施形態では、治療される疾患は、自己免疫疾患である。特定の実施形態では、疾患は、T1Dである。他の実施形態では、疾患は、全身性エリテマトーデスである。他の実施形態では、疾患はクローン病である。更に他の実施形態では、疾患は、GVHDである。ある特定の実施形態では、方法は、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。更なる実施形態では、医薬は、免疫系を抑制するためのものである。更なる実施形態では、医薬は、対象における免疫系を抑制する方法であって、免疫系を抑制するのに有効な量の薬剤を個体に投与することを含む、方法において使用するためのものである。上記の実施形態のうちのいずれかによる「個体」は、哺乳類、例えばヒトであってもよい。上記の実施形態のうちのいずれかによる「免疫系の抑制」は、免疫機能の全般的な減少、T細胞機能の減少、B細胞機能の減少、T細胞応答性の減少などのうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0216】
更なる態様では、本開示は、有効量の本開示のCD20-PD1結合分子を当該対象に投与することを含む、対象におけるPD1をクラスター化し、かつ/又はPD1活性を増強する方法を提供する。本開示のCD20-PD1結合分子は、CD20提示細胞及びT細胞の界面でのPD1クラスター化を誘導することができる。これにより、標的免疫抑制をもたらし、CD20を提示する細胞及び周囲の細胞及び組織は、T細胞死滅から保護される。高レベルのCD20は、流入領域リンパ節及び自己免疫組織(例えば、1型糖尿病(T1D)における膵臓)に豊富に存在するB細胞上に見られる。本開示のCD20-PD1結合分子は、細胞及び/又は組織特異的様式でPD1を刺激し、自己反応性T細胞活性化を阻害することができる。T1Dでは、豊富なCD20+B細胞によって、自己反応性T細胞上のPD1のクラスター化をもたらし、自己反応性細胞傷害性T細胞が膵島細胞を殺傷することを阻害する。一実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子を薬学的に許容可能な形態で含む組成物が、当該対象に投与される。
【0217】
更なる態様では、本開示は、対象における自己免疫疾患を治療するための方法であって、治療有効量の本開示のCD20-PD1結合分子を当該個体に投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、薬学的に許容可能な形態で本開示のCD20-PD1結合分子を含む組成物は、当該個体に投与される。ある特定の実施形態では、治療される疾患は、自己免疫疾患である。本開示のCD20-PD1結合分子によって治療可能な自己免疫疾患としては、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、グッドパスチャー症候群、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗糸球体基底膜腎炎、抗尿細管基底膜腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、移植片対宿主病(GVHD)、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、ベーチェット病、クローン病、デビック病、全身性エリテマトーデス(SLE)、ドレスラー症候群、線維化性肺胞炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、顕微鏡的多発性血管炎(MPA)、混合性結合組織病(MCTD)、多発性硬化症、多発ニューロパチー、臓器肥大症、内分泌障害、単クローン性症候群(POEMS)、結節性多発性動脈炎、関節リウマチ、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子又は精巣自己免疫、全身硬直症候群(SPS)、高安動脈炎、側頭動脈炎、巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ・ハント症候群(THS)、潰瘍性大腸炎、及び血管炎を挙げることができる。
【0218】
特定の実施形態では、疾患は、T1Dである。他の実施形態では、疾患は、全身性エリテマトーデスである。他の実施形態では、疾患はクローン病である。更に他の実施形態では、疾患は、GVHDである。ある特定の実施形態では、方法は、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。更なる態様では、本開示は、対象における免疫系を抑制するための方法であって、免疫系を抑制するための有効量のCD20-PD1結合分子を個体に投与することを含む、方法を提供する。上記の実施形態のうちのいずれかによる「個体」は、哺乳類、例えばヒトであってもよい。上記の実施形態のうちのいずれかによる「免疫系の抑制」は、免疫機能の全般的な減少、T細胞機能の減少、B細胞機能の減少、T細胞応答性の減少などのうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0219】
ある特定の実施形態では、治療される疾患は、自己免疫疾患である。CD20-PD1結合分子は、免疫細胞媒介性障害、自己免疫、移植拒絶反応、及び移植片対宿主病に関与する細胞の除去に使用され得る。当業者は、多くの場合、CD20-PD1結合分子が治癒を提供せず、部分的な利益のみを提供し得ることを容易に認識する。いくつかの実施形態では、何らかの利益を有する生理学的変化もまた、治療上有益であると考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、生理学的変化をもたらすCD20-PD1結合分子の量は、「有効量」又は「治療有効量」とみなされる。治療を必要とする対象、患者、又は個体は、典型的には哺乳類、より具体的にはヒトである。
【0220】
疾患の予防又は治療のために、本開示のCD20-PD1結合分子の適切な投薬量(単独で、又は1つ以上の他の追加の治療薬と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患のタイプ、投与経路、患者の体重、特定のCD20-PD1結合分子、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的又は治療目的で投与されるか、以前又は同時の治療介入、患者の臨床歴及びCD20-PD1結合分子に対する応答、並びに主治医の判断に依存するであろう。いずれにせよ、投与の責任を担う医療者は、組成物中の活性成分(複数可)の濃度、及び個々の対象に対する適切な用量(複数可)を決定するであろう。様々な時点にわたる単回又は複数回の投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投与スケジュールが本明細書で企図される。
【0221】
CD20-PD1結合分子は、一度に又は一連の治療にわたって患者に好適に投与される。例えば、疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続注入によるかを問わず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)のCD20-PD1結合分子が、患者に投与するための最初の候補投薬量であり得る。典型的な1日投薬量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲になる。数日間又はそれ以上にわたる反復投与の場合、病状に応じて、一般に、病徴の所望の抑制が生じるまで治療は継続されるであろう。CD20-PD1結合分子の1つの例示的な投薬量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。他の非限定的な例では、用量はまた、投与当たり約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重から、約1000mg/kg/体重又はそれ以上まで、及びそこから誘導可能な任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙される数値からの誘導可能な範囲の非限定的な例では、上記の数値に基づいて、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などの範囲を投与することができる。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg、若しくは10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1回以上の用量が患者に投与され得る。このような用量は、例えば、毎週又は3週間ごとに断続的に投与されてもよい(例えば、患者が約2回~約20回、又は例えば約6回の用量のCD20-PD1結合分子の投与を受けるように)。最初に高い負荷用量を投与し、続いて1回以上のより低い用量を投与してもよい。しかしながら、他の投薬量レジメンも有用であり得る。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0222】
本開示のCD20-PD1結合分子は、一般に、意図された目的を達成するのに有効な量で使用されるであろう。疾患状態を治療又は予防するために使用するために、本開示のCD20-PD1結合分子又はその薬学的組成物は、治療有効量で投与又は適用される。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0223】
全身投与のために、治療有効量は、細胞培養アッセイなどのインビトロアッセイから最初に推定され得る。次いで、細胞培養で決定されるEC50を含む循環濃度範囲を達成するために、用量が動物モデルで策定される。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用できる。
【0224】
初期用量はまた、当該技術分野で既知の技法を使用して、例えば、動物モデルなどのインビボデータから推定され得る。当業者であれば、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化できるであろう。
【0225】
投薬量及び間隔は、治療効果を維持するのに十分なCD20-PD1結合分子の血漿レベルを提供するため個別に調節され得る。注射による投与のための通常の患者投薬量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療上有効な血漿レベルは、毎日複数回投与することによって達成され得る。血漿中のレベルは、例えば、ELISA HPLCによって測定され得る。
【0226】
局所投与又は選択的取り込みの場合、CD20-PD1結合分子の有効な局所濃度は、血漿濃度に関連しない場合がある。当業者は、過度の実験を行わずに、治療上有効な局所的投薬量を最適化することが可能であろう。
【0227】
本明細書に記載されるCD20-PD1結合分子の治療有効用量は、一般に、実質的な毒性を引き起こすことなく治療的利益を提供するであろう。CD20-PD1結合分子の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。細胞培養アッセイ及び動物試験を使用して、LD50(集団の50%が致死する用量)及びED50(集団の50%における治療上有効な用量)を決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指標であり、それは、LD50/ED50の比として表すことができる。大きい治療指標を示すCD20-PD1結合分子が好ましい。一実施形態では、本開示によるCD20-PD1結合分子は、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するのに好適な投薬量の範囲を策定する際に使用できる。投薬量は、好ましくは、毒性をほとんど又は全く有しないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、様々な要因、例えば、用いられる剤形、利用される投与経路、対象の状態などに応じて、この範囲内で変動し得る。正確な処方、投与経路及び投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る。(例えば、Fingl et al.,1975,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1,p.1を参照されたい。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0228】
本開示のCD20-PD1結合分子で治療された患者の主治医は、毒性、臓器機能障害などのために投与を終了、中断、又は調整する方法及び時期を承知しているであろう。逆に、臨床応答が適切でない場合(毒性を除く)、主治医は、治療をより高いレベルに調整する方法も知っているだろう。目的の障害の管理における投与用量の大きさは、治療される状態の重症度及び投与経路などによって変化するであろう。状態の重症度は、例えば、部分的には、標準的な予後評価方法によって評価され得る。更に、用量及びおそらく投与頻度もまた、個々の患者の年齢、体重、及び応答に応じて変化するであろう。
【0229】
6.10.1.1型糖尿病
いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子は、1型糖尿病の発症又は進行を予防又は遅延させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のCD20-PD1結合分子、核酸、及び/又は薬学的組成物は、T1Dを有するか、又はT1Dを発症するリスクがある対象に投与することができる。T1Dを発症するための危険因子としては、遺伝的マーカー(例えば、ヒト白血球抗原(HLA)複合体;Flemming and Pociot,2016,Lancet,387(10035):2331-2339を参照)、ウイルス感染(例えば、風疹、コクサッキーウイルス、及びムンプス)、人種/民族性(例えば、米国では、白人は1型糖尿病によりかかりやすい)、家族歴、初期の食事、及びその他の自己免疫状態(例えば、グレーブス病、多発性硬化症、悪性貧血)の存在が挙げられるが、これらに限定されない。免疫チェックポイント阻害剤療法を受けているがん患者も、同様にT1Dを発症するリスクがある。de Filette et al.,2019,Eur J Endocrinol,181(3):363-374を参照されたい。T1Dを発症するリスクのあるそれらの個体を特定し及び選択することは、当業者の範囲内である。
【0230】
いくつかの実施形態では、T1Dを発症する危険性のある患者は、本開示の方法に従って、本開示のCD20-PD1結合分子、核酸、及び/又は薬学的組成物で治療される。
6.11.組み合わせ療法
本開示によるCD20-PD1結合分子は、治療において、1つ以上の他の薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本開示のCD20-PD1結合分子は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与され得る。用語「治療剤」は、そのような治療を必要とする対象における症状又は疾患を治療するために投与される任意の薬剤を包含する。そのような追加の治療剤は、治療される特定の適応症に好適な任意の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含み得る。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、免疫調節剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着阻害剤、細胞傷害性薬剤、細胞アポトーシスの活性化剤、又は細胞のアポトーシス誘導物質に対する感受性を増加させる薬剤である。
【0231】
このような活性成分は、好適には、意図する目的に有効な量で組み合わせて存在する。そのような他の薬剤の有効量は、使用されるCD20-PD1結合分子の量、障害又は治療のタイプ、及び上で論じた他の要因に依存する。CD20-PD1結合分子は、一般に、本明細書に記載される同じ投薬量及び投与経路で、又は本明細書に記載される投薬量の約1~99%で、又は経験的に/臨床的に適切であると判断される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0232】
上述のこのような組み合わせ療法は、併用投与(2つ以上の治療薬が、同じ又は別個の組成物に含まれる)、及び別個の投与を包含し、この場合、本開示のCD20-PD1結合分子の投与は、追加の治療薬及び/又はアジュバントの投与の前、同時、及び/又は後に行われ得る。
【0233】
6.11.1.CD20-PD1結合分子療法及び免疫療法を使用した組み合わせ療法
本開示のCD20-PD1結合分子は、自己免疫疾患の治療において、キメラ抗原受容体(「CAR」)発現細胞、例えば、CAR発現Treg(「CAR-Treg」)細胞、例えば、CAR-Tregと組み合わせて有利に使用することができる。いくつかの実施形態では、CAR-Treg細胞は、CD20-PD1結合分子中のCD20標的化部分によって認識される。CD20標的化部分は、CAR-Treg細胞上のTreg細胞受容体又は別の細胞表面分子を認識することができる。いくつかの実施形態では、CD20-PD1結合分子中のCD20標的化部分は、CARの細胞外ドメイン、例えば、抗原結合ドメインに結合することができる。CAR-Treg細胞は、Fritsche et al.,2020,Trends Biotechnol,38(10):1099-1112、Zhang et al.,2018,Front Immunol,9:2359、及びMohseni et al.Front Immunol,11:1608に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0234】
6.12.CD20-PD1結合分子の評価
本開示の態様は、HEK293細胞上に提示されるCD20の存在下で、本明細書に開示されるCD20-PD1結合分子が、Jurkat細胞上でPD1を刺激する能力を評価するためのルシフェラーゼベースのレポーターバイオアッセイに関する。いくつかの実施形態では、HEK293細胞は、CD22及びCD20で形質導入される。
【0235】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバイオアッセイは、レンチウイルスを使用したAP1(アクチベーター-タンパク質1)-ルシフェラーゼレポーター、CD3及びPD1で形質導入されたJurkat細胞株からの免疫応答を誘発するために、HEK293細胞の存在下で二重特異性抗体(CD3×CD22など)の使用することを含む。CD20-PD1結合分子は、Jurkat及びHEK293細胞並びに抗CD3×CD22二重特異性抗体の存在下でウェルに添加される。PD1を最適に刺激する分子は、AP1駆動ルシフェラーゼ活性によって測定した場合、抗CD3×CD22二重特異性抗体によって刺激される免疫応答の量を低減する能力を有している。
7.実施例
7.1.材料及び方法
7.1.1.CD20-PD1結合分子の設計及び産生
以下の表1及び2に示される二重特異性CD20-PD1アゴニスト及び対照をコードする構築物を生成した。二重特異性CD20-PD1アゴニストは、マウス抗CD20の異なる構成及び改変マウスPDL1エクトドメイン、IgG1エフェクターヌル(EN)(L234A、L235E、G237A、A330S及びP331S、EU番号付け)ドメイン、並びにGSの異なる反復からの異なる長さのリンカー(配列番号14)を含んでいた。マウス不活性チロシン-タンパク質キナーゼ膜貫通受容体ROR1(mROR1)からの29-アミノ酸シグナル配列を、構築物のN末端に付加した。全ての二重特異性CD20-PD1アゴニストを、シグナル配列を含有するプレタンパク質として発現させた。シグナル配列を細胞内プロセッシングによって切断して、成熟タンパク質を生成した。
【0236】
ノブ形成変異:T366W(EU番号付け)。
ホール形成変異:T366S、L368A、及びY407V(EU番号付け)。
スター変異:H435R及びY436F(EU番号付け)。
【0237】
【表3】
【0238】
構築物を、一過性トランスフェクションによってExpi293F(商標)細胞内で発現させた(Thermo Fisher Scientific)。Expi293F上清中のタンパク質を、HiTrap(商標)Protein G HP又はMabSelect SuRe pccカラム(Cytiva)のいずれかを備えた、ProteinMakerシステム(Protein BioSolutions、Gaithersburg,MD)を使用して精製した。単一ステップの溶出後、抗体を中和し、5%グリセロールを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の最終緩衝液に透析し、等分し、-80℃で保存した。一部の構築物については、HiPrep26/60 Sephacryl S-200カラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーの追加のステップを使用した。
【0239】
mPDL1におけるアラインメント及び選択された変異位置を図3Bに示す。mPDL1とhPDL1との間のアラインメントは、MacVectorを使用して生成した。図3Aは、収量及び安定性を改善するためにmPDL1において変更された残基を含む、mPDL1及びhPDL1の三次元構造を示す。
【0240】
【表4-1】
【0241】
【表4-2】
【0242】
【表4-3】
【0243】
【表4-4】
【0244】
【表4-5】
【0245】
【表4-6】
【0246】
【表4-7】
【0247】
7.1.2.フローサイトメトリー
細胞(HEK293、mCD20を過剰発現するMC38又はmPD1を過剰発現するJurkat)を、1×10細胞/mLでFACS洗浄液(1%FBSを含むPBS)中に再懸濁した。染色は、1ウェル当たり1×10細胞で行った。抗体を1.3×10-07Mの開始濃度から1:5の比で希釈した。次いで、希釈した抗体を細胞を含有するウェルに添加した。細胞を2~8℃で30分間染色し、FACS洗浄緩衝液で2回洗浄した。APCコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research、109-607-003、1:400)を添加し、2~8℃で30分間細胞を染色した。洗浄後、細胞を2%のパラホルムアルデヒド中で2~8℃で30分間固定した。2回洗浄した後、BD LSRFortessa(商標)FACS機器を使用して、染色細胞を分析した。結果をFlowJoによって分析した。FSC/SSCゲートを使用して、単核細胞を選択した。
【0248】
脊髄T細胞浸潤フローサイトメトリー分析では、最初にコラゲナーゼD(Roche,11088882001)消化及びPercoll(GE Healthcare、17-0891-02)勾配分離によって、脊髄の単一細胞懸濁液を調製した。細胞をFACS洗浄液に再懸濁し、上記のプロトコルに従って、LIVE/DEAD(商標)Fixable Blue Dead Cell Stain Kit(Thermofisher Scientific、L34962)、抗マウスCD45-BV750(BioLegend、103157、1:200希釈)、抗マウスCD4-BUV563(BD Bioscience,612923、1:200希釈)、及び抗マウスCD8a-BUV805(BD Bioscience,564920、1:100希釈)で染色した。細胞をBD FACSymphony Cell Analyzerによって分析した。結果をOMIQサイトメトリーソフトウェアによって分析した。
【0249】
7.1.3.ルシフェラーゼレポーターアッセイ: 抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子
ルシフェラーゼベースのレポーターアッセイを使用して、HEK293細胞上に提示されたマウスCD20(mCD20)の存在下で、Jurkat細胞上でマウスPD1(mPD1)を刺激する抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子の能力を評価した。レポーターアッセイの全体的な設計を図5A及びBに示した。AP1は、T細胞活性化中の遺伝子発現の制御に関与する転写因子である(Samelson 2002,PMID:11861607)。ヒトCD3及びCD22に結合する二重特異性抗体(bsAb)、CD3 bsAb(REGN10551)は、前述のCD3×CD20 bsAbと同様に、標的細胞上の抗原とT細胞上の受容体の結合を介してT細胞の活性化を刺激するために使用される(Smith et al.2015,PMID:26659273)。mCD20アンカ型mCD20×mPDL1を介したJurkat細胞上のmPD1の係合は、PD1アゴニズム駆動型のルシフェラーゼシグナルの阻害をもたらす。
【0250】
7.1.3.1.Jurkat/AP1-luc/mPD1細胞の操作
AP1(活性化タンパク質1)-ルシフェラーゼレポーターレンチウイルス(QIAGEN CLS-011L)、続いてmPD1ORF含有レンチウイルス(mPD1NM_008798)を、Jurkat E6-1細胞(ATCC番号TIB-152)に連続形質導入することによって、Jurkat/AP1-luc/mPD1細胞を生成した。
【0251】
7.1.3.2.HEK293/hCD22/mCD20細胞の操作
ヒトCD22ORFコードレンチウイルス(NP_001762.2)、続いてmCD20ORFコードレンチウイルス(NP_031667.1)を使用した連続レンチウイルス形質導入によってHEK293/hCD22/mCD20細胞を生成した。
【0252】
7.1.3.3.ルシフェラーゼアッセイのセットアップ
バイオアッセイのために、HEK293/CD22/mCD20標的細胞をアッセイ培地(10%ウシ胎児血清及びL-グルタミン-ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI1640)中の96ウェルプレートに10,000又は20,000細胞/ウェルで播種し、5%CO中37℃で一晩インキュベートした。翌日、Jurkat/AP1-luc/mPD1レポーター細胞を、培養した標的細胞を含有するウェルに、30,000又は50,000細胞/ウェルで添加した。次いで、本開示又は対照抗体の分子を、100nM~1pMの範囲の最終濃度までアッセイ培地1:3で段階希釈し(試験分子を含まない追加の条件あり)、1nM又は2.5nMのCD3bsAbとともに細胞に添加した。活性化の範囲を得るために、CD3bsAbを、100nM~1.69pMの範囲の最終濃度まで1:3で段階希釈し(二重特異性mAbを含まない追加の条件あり)、細胞に添加した。37℃/5%COで5時間のインキュベーション後、ONE-Glo(商標)(Promega)試薬の添加の後に、Envisionマルチラベルプレートリーダー(PerkinElmer)でルシフェラーゼ活性を検出した。全ての条件を、2連で試験した。
【0253】
非線形回帰(4パラメータロジスティック)を使用して、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアでEC50/IC50値を決定した。阻害のパーセンテージは、次式を使用して相対発光単位(RLU)値に基づいて計算した。
【0254】
【数1】
【0255】
この式では、「RLUベースライン」は、試験分子なしで一定量のCD3bsAbで処理された細胞からの発光値であり、「RLU阻害」は、一定量のCD3bsAbを有する試験分子の最高濃度での発光値であり、「RLUバックグラウンド」は、CD3bsAb又は試験分子のない細胞からの発光値である。
【0256】
7.1.4.サイズ排除クロマトグラフィーによる抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子のオリゴマー化状態の決定
サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UPLC)を使用して、抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子のサイズの不均一性を評価した。SE-UPLC分析をWaters Acquity UPLC H-Classシステムで行い、各タンパク質試料10μgをAcquity BEH SECカラム(200Å、1.7μm、4.6×300mm)に注入し、流量を0.3mL/分に設定した。移動相緩衝液は、10mMのリン酸ナトリウム、500mMのNaCl、pH7.0を含有した。溶出試料を、フォトダイオードアレイモジュールを使用して、280nmでのUV吸光度によって検出した。
【0257】
7.1.5.熱安定性
示差走査蛍光測定法(DSF)を用いて、抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子の熱安定性を評価した。DSF分析は、ThermoFisher QuantStudio5システムで実施した。各試料のストック溶液を、1×PBS-グリセロール、pH7.4で0.2mg/mLに希釈し、96ウェルプレートに移した。タンパク質がアンフォールディングするときに、埋め込まれた疎水性残基に優先的に結合する過剰な(8×)Sypro Orange(商標)蛍光色素を各ウェルに添加し、続いて、20分間にわたって25℃から95℃までの直線的な温度上昇で熱安定性プロファイルを決定した。
【0258】
7.1.6.アセンブリのパーセント
二官能性融合分子のアセンブリは、製造業者のプロトコルに従い、Cliper LabChip GX(Perkin Elmer、Waltham,MA)でのハイスループット分析によってアッセイした。簡潔に述べると、試料緩衝液は、7mlのHTタンパク質発現試料緩衝液を、240μlのBME(還元)又は25mMのヨードアセトアミド(IAM、非還元アッセイ用)のいずれかと混合することによって調製した。試料を、試料緩衝液を用いて0.5mg/mlに正規化し、次いで70℃で10分間加熱した。70μlの水を各試料に添加してから、機器に装填した。チップは、製造業者の指示に従って調製した。試料の電気泳動図は、LabChip GXソフトウェアを使用して分析した。非還元電気泳動図からのピークは、無傷な抗体の%を示す。
【0259】
7.1.7.前糖尿病NODマウスにおける抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子の活性
生後10週齢の前糖尿病非肥満糖尿病(NOD)マウス(The Jackson Laboratory)を、実験の期間中(例えば、マウス28週齢まで)、1、0.1、又は0.01mg/kgの選択された抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子で週に2回腹腔内処理した。血糖を隔週でモニタリングし、体重を毎週モニタリングした。全体の実験計画を図7に示す。
【0260】
7.1.8.実験的自己免疫性脳脊髄炎/多発性硬化症マウスモデルにおける抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子の活性
マウスへのミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG35-55)の免疫優性35-55エピトープの投与は、脱髄及び多発性硬化症(MS)の一般的に使用される動物モデルである慢性実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を引き起こす抗MOG抗体を産生する。
【0261】
EAEは、野生型C57BL/6マウス(10~12週、雄、Jackson Laboratory)において、1日目にCFA中の200mgのMOG35-55の皮下注射送達によって誘導された。百日咳毒素の投与が血液脳関門を弱めることによって中枢神経系へのT細胞の移動を促進することを考慮して、マウスにも、1日目及び2日目に200ngの百日咳毒素を腹腔内注射した。体重とEAEの発生を1日目、2日目、7日目、10日目、14日目、18日目、20日目にモニタリングした。EAEモニタリングスコアを次のように0~5のスケールで記録した:0:健康、1:尾の跛行、2:異常な歩行及び/又は正向反射欠陥、3:部分的な後肢麻痺、4:完全な後肢麻痺、5:完全な後肢及び部分的な前肢麻痺又は瀕死。
【0262】
2日目から開始して、マウスに、選択された抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子又は適切な対照分子の腹腔内注射を週に2回投与した。エンドポイント組織採取は、20日目の疾患のピーク時に実施された。脊髄浸潤物をフローサイトメトリーに使用し、脾臓MOG特異的T細胞応答をELISPOTで評価した。
【0263】
7.2.実施例1:二重特異性抗mCD20-mPDL1エクトドメインアゴニストの産生と安定性
7.2.1.概要
個々の重鎖及び軽鎖のための哺乳類発現ベクターは、Life Technologies(Carlsbad,CA)からのpcDNA3.4Topo発現系におけるすぐに使用可能な構築物でのDNA合成及びクローニングによって作製した。分子を発現させるために、重鎖及びユニバーサル軽鎖のDNAを製造業者のプロトコルに従ってExpi293細胞(ThermoFisher Scientific)に同時トランスフェクトした。50mlの細胞培養培地を採取し、HiTrapプロテインA FF又はMab Select SuReカラム(GE Healthcare)を介して精製のために処理した。機能確認のために、選択されたMBMを2Lまでスケールアップし、最終ステップとしてサイズ排除クロマトグラフィーを含む一連の精製手順にかけた。
【0264】
7.2.2.結果
様々な抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子(図2A)を発現させ、ワンステップMab-Select SuReカラムを介してExpi293 Freestyle細胞(表4)から精製し、総収量は2.7~7.7mgの範囲であった。一般に、1:1の原子価比(抗mCD20:mPDL1エクト)を有する分子は、2:1又は2:2のものよりも高い収量(4.1~7.7mg)を示した(表4)。
【0265】
【表5】
【0266】
1ステップの親和性精製後、高分子量(HMW)%及びモノマー%をSE-UPLCによって検査し、熱安定性を示差走査蛍光測定法(DSF)によってモニタリングした(表5)。抗mCD20×mPDL1エクトドメイン融合分子の大部分は、追加のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)なしで85%を超えるモノマー種を示した(表3、図1の分子A-L)。2+2 m20_mPL_4(L)では、SECステップを含む2つのカラム精製後、モノマーの割合は99%に増加した(表5)。全ての抗mCD20×mPDL1エクトドメイン融合物は、約60℃でTm1を用いたDSFによって測定された同様の熱安定性を有していた(表3)。更に、全ての二官能性融合物は、キャピラリー電気泳動SDS(CE-SDS)によって決定された重鎖間の優れたアセンブリを有した(表5)。
【0267】
【表6】
【0268】
7.3.実施例2:抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子の結合特性評価
細胞表面上の2つの標的に結合する抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子の能力を、フロー結合アッセイで評価した。
【0269】
7.3.1.結果
結合曲線を図4A及び図4Bに示す。mPD1及びmCD20結合の両方について、類似のフォーマットの一価分子と比較して、結合におけるより高い効力及び最大MFIが二価分子で観察された。特に、2+2 m20_mPL_4(L)は、HEK293/mCD20細胞に対して2+1 m20_mPL_3(G)(図4A及び4B、表6)と同様の結合を共有したが、2+2 m20_mPL_4(L)は、mPD1結合に対する価数の増加の結果として、2+1 m20_mPL_3(G)よりもJurkat/mPD1細胞に対する強い結合を示した。二価及び一価分子の両方にわたって、結合シグナルは配向依存的であるように見え、Fcドメインに対してN末端抗mCD20及びhPDL1エクトドメインの配向は、一般的により高い効力及び最大MFIを有する。抗mCD20又はmPDL1エクトドメインは、N末端部分とFcの前のヒンジ領域との間に配置された場合、低減された結合を示した(図4A及び4B、表6)。
【0270】
7.4.実施例3:抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子によるmPDL1アゴニズム
図5に示され、セクション7.1.3に記載したバイオアッセイを利用して、抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子によるmPD1アゴニズムを研究した。
【0271】
7.4.1.結果
ルシフェラーゼアッセイの結果を図6及び表6に示す。本開示の19個の分子を、CD3 bsAbを有するHEK293/CD22/mCD20及びJurkat/AP1-luc/mPD1レポーター細胞を使用して、PD1アゴニズム及びそのT細胞シグナル伝達の調節について試験した。表6に示すように、本開示の19個の分子のうち4つは、65~770pMの範囲のIC50値でT細胞シグナル伝達の阻害を示し、最大阻害は27~84%の範囲であった。分子2+2 m20_MPL_4及び2+1 m20_MPL_3(それぞれG及びL、表6)は、74%~84%の最大阻害で最も強いPD1アゴニズムを示した(図6C及び6E)。19個の分子のうち15個が弱い阻害を示したか、又は阻害を示さず、最大阻害は-10~40%の範囲であった。アイソフォーム対照抗体は、シグナル伝達の阻害を示さなかった。CD3 bsAbは、627pM及び1.15nMのEC50値でT細胞シグナル伝達の活性化を示した。
【0272】
7.5.実施例4:抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子を用いたインビトロアッセイのデータ概要
表6は、細胞ベースのフロー結合及びインビトロバイオアッセイ結果を含む様々な抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子で収集されたインビトロデータの概要を提供する。ルシフェラーゼアッセイからの結果を、図6A~6Eに示す。分子2+2 m20_mPL_4及び2+1 m20_mPL_3(表6中のそれぞれG及びL)は、最も強いPD1アゴニズムを示した。細胞ベースのフロー分析によって、2+2 m20_mPL_4は、mPD1及びmCD20への最強の結合を明らかにしたが、2+1 m20_mPL_3は、mPD1発現細胞への中程度の結合のみを明らかにし、これはAPC及びエフェクター細胞の両方の存在下でのmCD20の二価結合を介したmPD1のクラスター化が必要であることを示唆している。全体として、類似の細胞結合親和性(mPD1又はmCD20)は、類似のPD1アゴニズム、例えば、F対G及びK対L(図6A及び表6)、には変換されず、CD20及びmPDL1エクトドメインアームの原子価及び構造配置の両方が活性を付与するために重要であることを示した。
【0273】
【表7-1】
【0274】
【表7-2】
【0275】
7.6.実施例5:抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子のインビボ有効性
選択された2+2及び2+1 抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子の、1型糖尿病(T1D)の発症を予防する能力を、前糖尿病NODマウスにおいて評価した。実験計画を図7に示し、セクション7.1.7で説明する。
【0276】
7.6.1.結果
個々の動物のデータを図8A~8Iに示す。図9A及び図9Bは、示された各時点での糖尿病のないマウスのパーセントを示す。通常、NODマウスの80~90%が、25週齢前後に糖尿病を発症する。しかし、この実験では、27週までに約30%のマウスのみが糖尿病を発症した。対照NODマウスではより低い糖尿病発生率であったが、より高い用量の(2+2)抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子、2+2m 20_mPL_4(図2Aの分子L)では明確な保護する傾向があったが、(2+1 抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子、2+1 m20_mPL_3(図2Aの分子G)ではそうではなかった(図9A及び9B)。
【0277】
7.7.実施例6:抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子誘導による自己免疫T細胞浸潤の低減
T細胞の浸潤は、多発性硬化症(Kaskow and Baecher-Allan,2018.Cold Spring Harb Perspect Med.8(4):a029025)及び糖尿病の自己免疫モデル(Bettini and Vignali,2011.Curr Opinion in Immunology,23(6):754-760)などの自己免疫疾患の発症と関連している。T細胞浸潤に対する(2+2)抗mCD20×mPDL1エクトドメイン分子、2+2 m20_mPL_4の保護的役割を、セクション7.1.2に記載されるようにフローサイトメトリーによって評価した[マウスモデル由来の細胞を使用した実験に関連するフローサイトメトリー情報でセクション7.1.2を補足されたい]。
【0278】
7.7.1.結果
1つの評価では、0.1又は1mg/kgの2+2 m20_mPL_4又は対照分子を投与したセクション7.1.7に記載のNODマウスにおいて、増殖する(活性化された)及び活性化されていない膵島特異的CD8+T細胞の集団を分析した。1mg/kgの2+2 m20_mPL_4での処理は、活性化が低いCD8+T細胞クラスターの顕著なパーセントの増加と関連付けられた(図10A)。増殖している細胞のクラスターのパーセンテージは、条件全体で違いがなかったが(図10B)、活性化が低く及び増殖の少ない細胞のクラスターの割合は、1mg/kgの2+2 m20_mPL_4(図10C)で処理したNODマウスから単離された膵臓組織においてより高く、この処理が活性化された自己免疫T細胞の膵臓浸潤を低減することができたことを示した。
【0279】
別の評価では、T細胞の脊髄浸潤が、セクション7.1.8に記載されている多発性硬化症のマウスモデルで評価された。1mg/kgの2+2 m20_mPL_4で処理したマウスの脊髄では、同じ投薬量で対照処理を受けたマウスの脊髄と比較して、CD3+(図11A)、CD4+(図11B)、及びCD8+(図11C)T細胞はかなり少なかった。したがって、2+2 m20_mPL_4での処理は、多発性硬化症モデルにおいてT細胞の脊髄浸潤を低減することができた。
【0280】
8.具体的な実施形態、参考文献の引用
様々な具体的な実施形態を例示し、記載してきたが、本開示(複数可)の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。本開示は、以下に記載される番号付き実施形態によって例示される。
【0281】
1.タンパク質であって、
(a)少なくとも1つのCD20標的化部分と、
(b)少なくとも1つのPD1アゴニスト部分と、
(c)少なくとも1つの二量体化部分と、
(d)任意選択で、タンパク質中の1つ以上の部分を分離する1つ以上のリンカー部分と、を含み、
任意選択で、ここで、
(i)タンパク質の部分は、N末端からC末端に、CD20標的化部分-PD1アゴニスト部分-二量体化部分の順に配置されているか、
(ii)タンパク質の部分は、N末端からC末端に、二量体化部分-PD1アゴニスト部分-CD20標的化部分の順に配置されているか、
(iii)CD20標的化部分は、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分は、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分であり、二量体化部分は、Fcドメインであり、Fabの軽鎖は、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分に融合していないか、
(iv)CD20標的化部分は、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分は、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分であり、二量体化部分は、Fcドメインであり、PD1アゴニスト部分は、抗CD20FabのVHのN末端にないか、
(v)CD20標的化部分は、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分は、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分であり、二量体化部分は、Fcドメインであり、PD1アゴニスト部分は、FcドメインのC末端にないか、
(vi)CD20標的化部分は、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分は、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分であり、二量体化部分は、Fcドメインであり、タンパク質は、CD20標的化部分及び/若しくはPD1アゴニスト部分に対して一価であるか、
(vii)タンパク質が、非対称であるか、
(viii)タンパク質が、Fcヘテロ二量体を含むか、又は
(ix)前述の(i)~(viii)のうちの2つ以上の任意の組み合わせである、タンパク質。
【0282】
2.少なくとも1つのCD20標的化部分が、抗CD20抗体の抗原結合断片である、実施形態1に記載のタンパク質。
3.抗CD20抗体の抗原結合断片が、Fab、Fv、又はscFvの形態にある、実施形態2に記載のタンパク質。
【0283】
4.抗CD20抗体が、
(a)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、若しくはベルツズマブのCDR配列を有する相補性決定領域(「CDR」)、
(b)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、若しくはベルツズマブの6つ全てのCDR配列、
(c)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、若しくはベルツズマブの少なくとも重鎖CDR配列(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、及びユニバーサル軽鎖の軽鎖CDR配列、
(d)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、若しくはベルツズマブのVHのアミノ酸配列を含むVH、及び同じ抗体のアミノ酸配列を含むVL、又は
(e)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、若しくはベルツズマブのVHのアミノ酸配列を含むVH、及びユニバーサル軽鎖VL配列を含むVL、を含む、実施形態2又は実施形態3のタンパク質。
【0284】
5.抗CD20抗体が、
(a)CD20のトポロジカルドメイン、
(b)CD20の膜貫通ドメイン、又は
(c)細胞(例えば、B細胞)の表面上の細胞外に表示されたCD20の領域、に結合する、実施形態2又は実施形態3のタンパク質。
【0285】
6.抗CD20抗体が、
(a)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、及びベルツズマブから選択され
(b)リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブイツキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、TRU-015、及びベルツズマブから選択される抗CD20抗体とCD20との結合に関して競合し、かつ/若しくは抗CD20抗体と同じエピトープに結合する、実施形態2又は実施形態3のタンパク質。
【0286】
7.少なくとも1つのPD1アゴニスト部分が、PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0287】
8.PD1アゴニスト部分が、PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、実施形態7に記載のタンパク質。
【0288】
9.PD1アゴニスト部分が、PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、実施形態7に記載のタンパク質。
【0289】
10.PD1アゴニスト部分が、PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、実施形態7に記載のタンパク質。
【0290】
11.PD1アゴニスト部分が、PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、実施形態7に記載のタンパク質。
【0291】
12.PD1アゴニスト部分が、PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分のアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、実施形態7に記載のタンパク質。
【0292】
13.PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分が、ヒトPDL1のアミノ酸19~134又はマウスPDL1のアミノ酸19~134を含む、実施形態7~12のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0293】
14.PDL1の細胞外ドメインのPD1結合部分が、PDL1エクトドメインを含むか、又はそれからなり、任意選択で、PDL1が、ヒトPDL1又はマウスPDL1である、実施形態7~12のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0294】
15.少なくとも1つのPD1アゴニスト部分が、PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0295】
16.PD1アゴニスト部分が、PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、実施形態15に記載のタンパク質。
【0296】
17.PD1アゴニスト部分が、PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、実施形態15に記載のタンパク質。
【0297】
18.PD1アゴニスト部分が、PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL1がヒトPDL2又はマウスPDL2である、実施形態15に記載のタンパク質。
【0298】
19.PD1アゴニスト部分が、PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、実施形態15に記載のタンパク質。
【0299】
20.PD1アゴニスト部分が、PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分のアミノ酸配列を含み、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、実施形態15に記載のタンパク質。
【0300】
21.PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分が、ヒトPDL2のアミノ酸20~121又はマウスPDL2のアミノ酸20~121を含む、実施形態15~20のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0301】
22.PDL2の細胞外ドメインのPD1結合部分が、PDL2エクトドメインを含むか、又はそれからなり、任意選択で、PDL2が、ヒトPDL2又はマウスPDL2である、実施形態15~20のいずれか1つのタンパク質。
【0302】
23.1つ以上のリンカー部分を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載のタンパク質。
24.少なくとも1つのCD20標的化部分及び少なくとも1つのPD1アゴニスト部分が、リンカー部分によって分離される、実施形態23に記載のタンパク質。
【0303】
25.少なくとも1つのCD20標的化部分及び少なくとも少なくとも1つの二量体化部分が、リンカー部分によって分離される、実施形態23又は実施形態24に記載のタンパク質。
【0304】
26.少なくとも1つのPD1アゴニスト部分及び少なくとも少なくとも1つの二量体化部分が、リンカー部分によって分離される、実施形態23~25のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0305】
27.各リンカー部分が、(a)少なくとも5若しくは少なくとも10アミノ酸長であり、(b)最大20、最大25若しくは最大30アミノ酸長であり、かつ/又は(c)5~15アミノ酸若しくは5~20アミノ酸長である、実施形態21~26のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0306】
28.少なくとも1つのリンカー部分が、グリシン-セリンリンカーを含む、実施形態21~27のいずれか1つに記載のタンパク質。
29.グリシン-セリンリンカーが、配列GS(配列番号14)又はその多量体を含む、実施形態28のタンパク質。
【0307】
30.多量体が、アミノ酸配列GSの2、3、4、5、又はそれ以上の反復(配列番号56)を含む、実施形態29に記載のタンパク質。
31.例示的なモノマー1によるモノマー及び例示的なモノマー2によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0308】
32.例示的なモノマー1が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態31に記載のタンパク質。
【0309】
33.例示的なモノマー1が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態30に記載のタンパク質。
34.例示的なモノマー1が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態30に記載のタンパク質。
【0310】
35.例示的なモノマー2が、N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態29~34のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0311】
36.図1Aに示される構成を有する、実施形態31~35のいずれか1つに記載のタンパク質。
37.例示的なモノマー3によるモノマー及び例示的なモノマー4によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0312】
38.例示的なモノマー3が、N末端からC末端の配向で、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態37に記載のタンパク質。
39.例示的なモノマー4が、N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態37又は実施形態38に記載のタンパク質。
【0313】
40.例示的なモノマー4が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態39に記載のタンパク質。
41.例示的なモノマー4が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態39に記載のタンパク質。
【0314】
42.図1Bに示される構成を有する、実施形態37~39のいずれか1つに記載のタンパク質。
43.例示的なモノマー3によるモノマー及び例示的なモノマー5によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0315】
44.例示的なモノマー3が、N末端からC末端の配向で、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態43に記載のタンパク質。
45.例示的なモノマー5が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、及びPD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)を含むか、又はそれらからなる、実施形態43又は実施形態44に記載のタンパク質。
【0316】
46.例示的なモノマー5が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態45に記載のタンパク質。
47.例示的なモノマー5が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態45に記載のタンパク質。
【0317】
48.図1Cに示される構成を有する、実施形態43~47のいずれか1つに記載のタンパク質。
49.例示的なモノマー3によるモノマー及び例示的なモノマー6によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0318】
50.例示的なモノマー3が、N末端からC末端の配向で、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態49に記載のタンパク質。
51.例示的なモノマー6が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態49又は実施形態50に記載のタンパク質。
【0319】
52.例示的なモノマー6が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態49~51のいずれか1つに記載のタンパク質。
53.例示的なモノマー6が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態49~51のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0320】
54.図1Dに示される構成を有する、実施形態49~53のいずれか1つに記載のタンパク質。
55.例示的なモノマー1によるモノマー及び例示的なモノマー4によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0321】
56.例示的なモノマー1が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態55に記載のタンパク質。
【0322】
57.例示的なモノマー1が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態56に記載のタンパク質。
58.例示的なモノマー1が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態56に記載のタンパク質。
【0323】
59.例示的なモノマー4が、N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態55~58のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0324】
60.例示的なモノマー4が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態59に記載のタンパク質。
61.例示的なモノマー4が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態59に記載のタンパク質。
【0325】
62.図1Eに示される構成を有する、実施形態55~61のいずれか1つに記載のタンパク質。
63.例示的なモノマー1によるモノマー及び例示的なモノマー5によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0326】
64.例示的なモノマー1が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態63に記載のタンパク質。
【0327】
65.例示的なモノマー1が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態64に記載のタンパク質。
66.例示的なモノマー1が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態64に記載のタンパク質。
【0328】
67.例示的なモノマー5が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、及びPD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)を含むか、又はそれらからなる、実施形態63~66のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0329】
68.例示的なモノマー5が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態67に記載のタンパク質。
69.例示的なモノマー5が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態67に記載のタンパク質。
【0330】
70.図1Fに示される構成を有する、実施形態63~69のいずれか1つに記載のタンパク質。
71.例示的なモノマー1によるモノマー及び例示的なモノマー6によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0331】
72.例示的なモノマー1が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態71に記載のタンパク質。
【0332】
73.例示的なモノマー1が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態72に記載のタンパク質。
74.例示的なモノマー1が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態72に記載のタンパク質。
【0333】
75.例示的なモノマー6が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態71~74のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0334】
76.例示的なモノマー6が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態75に記載のタンパク質。
77.例示的なモノマー6が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態75に記載のタンパク質。
【0335】
78.図1Gに示される構成を有する、実施形態71~77のいずれか1つに記載のタンパク質。
79.例示的なモノマー1によるモノマー及び例示的なモノマー7によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0336】
80.例示的なモノマー1が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態79に記載のタンパク質。
【0337】
81.例示的なモノマー1が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態80に記載のタンパク質。
82.例示的なモノマー1が、2つのポリペプチド鎖から構成される、実施形態80に記載のタンパク質。
【0338】
83.例示的なモノマー7が、N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態79~82のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0339】
84.図1Hに示される構成を有する、実施形態79~83のいずれか1つに記載のタンパク質。
85.例示的なモノマー4による2つのモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0340】
86.各例示的なモノマー4が、N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態85に記載のタンパク質。
【0341】
87.各例示的なモノマー4が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態86に記載のタンパク質。
88.各例示的なモノマー4が、2つのポリペプチド鎖で構成される、実施形態86に記載のタンパク質。
【0342】
89.図1Iに示される構成を有する、実施形態85~88のいずれか1つに記載のタンパク質。
90.例示的なモノマー5による2つのモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0343】
91.各例示的なモノマー5が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、及びPD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)を含むか、又はそれらからなる、実施形態90に記載のタンパク質。
【0344】
92.各例示的なモノマー5が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態91に記載のタンパク質。
93.各例示的なモノマー5が、2つのポリペプチド鎖で構成される、実施形態91に記載のタンパク質。
【0345】
94.図1Jに示される構成を有する、実施形態90~93のいずれか1つに記載のタンパク質。
95.例示的なモノマー8によるモノマー及び例示的なモノマー9によるモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0346】
96.例示的なモノマー8が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、任意選択的リンカー部分、及びCD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)を含むか、又はそれらからなる、実施形態95に記載のタンパク質。
【0347】
97.各例示的なモノマー8が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態96に記載のタンパク質。
98.各例示的なモノマー8が、2つのポリペプチド鎖で構成される、実施形態96に記載のタンパク質。
【0348】
99.各例示的なモノマー8が、3つのポリペプチド鎖で構成される、実施形態96に記載のタンパク質。
100.例示的なモノマー9が、N末端からC末端の配向で、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、二量体化部分、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)を含むか、又はそれらからなる、実施形態95~99のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0349】
101.図1Kに示される構成を有する、実施形態95~100のいずれか1つに記載のタンパク質。
102.例示的なモノマー6による2つのモノマーを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0350】
103.例示的なモノマー6が、N末端からC末端の配向で、CD20標的化部分(例えば、抗CD20Fab、Fv又はscFV)、任意選択的リンカー部分、PD1アゴニスト部分(例えば、(i)PDL1若しくはPDL2の細胞外ドメインのアミノ酸配列、(ii)PD1に結合可能な(i)の断片、又は(iii)(i)若しくは(ii)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含む部分)、任意選択的リンカー部分、及び二量体化部分を含むか、又はそれらからなる、実施形態102に記載のタンパク質。
【0351】
104.各例示的なモノマー6が、単一のポリペプチド鎖から構成される、実施形態103に記載のタンパク質。
105.各例示的なモノマー6が、2つのポリペプチド鎖で構成される、実施形態103に記載のタンパク質。
【0352】
106.図1Lに示される構成を有する、実施形態102~104のいずれか1つに記載のタンパク質。
107.1つのCD20標的化部分を含む、実施形態1~54及び79~84のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0353】
108.1つのPD1アゴニスト部分を含む、実施形態107に記載のタンパク質。
109.図1Aに示される構成を有する、実施形態108に記載のタンパク質。
110.図1Bに示される構成を有する、実施形態108に記載のタンパク質。
【0354】
111.図1Cに示される構成を有する、実施形態108に記載のタンパク質。
112.図1Dに示される構成を有する、実施形態108に記載のタンパク質。
113.2つのPD1アゴニスト部分を含む、実施形態107に記載のタンパク質。
【0355】
114.2つのPD1アゴニスト部分が同一である、実施形態113に記載のタンパク質。
115.図1Hに示される構成を有する、実施形態113又は実施形態114に記載のタンパク質。
【0356】
116.2つのCD20標的化部分を含む、実施形態1~106のいずれか1つに記載のタンパク質。
117.2つのCD20標的化部分が同一である、実施形態116に記載のタンパク質。
【0357】
118.1つのPD1アゴニスト部分を含む、実施形態116又は実施形態117に記載のタンパク質。
119.図1Eに示される構成を有する、実施形態118に記載のタンパク質。
【0358】
120.図1Fに示される構成を有する、実施形態118に記載のタンパク質。
121.図1Gに示される構成を有する、実施形態118に記載のタンパク質。
122.2つのPD1アゴニスト部分を含む、実施形態116又は実施形態117に記載のタンパク質。
【0359】
123.2つのPD1アゴニスト部分が同一である、実施形態122に記載のタンパク質。
124.図1Iに示される構成を有する、実施形態122又は実施形態123に記載のタンパク質。
【0360】
125.図1Jに示される構成を有する、実施形態122又は実施形態123に記載のタンパク質。
126.図1Kに示される構成を有する、実施形態122又は実施形態123に記載のタンパク質。
【0361】
127.図1Lに示される構成を有する、実施形態122又は実施形態123に記載のタンパク質。
128.CD20標的化部分が、ヒトCD20の細胞外ドメインに結合する、実施形態1~127のいずれか1つに記載の分子。
【0362】
129.PD1アゴニスト部分が、ヒトPD1を刺激する、実施形態1~128のいずれか1つに記載の分子。
130.CD20標的化部分が、マウスCD20の細胞外ドメインに結合する、実施形態1~127のいずれか1つに記載の分子。
【0363】
131.PD1アゴニスト部分が、マウスPD1を刺激する、実施形態1~127及び130のいずれか1つに記載の分子。
132.少なくとも1つの二量体化部分が、Fcドメインであるか、又はそれを含む、実施形態1~131のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0364】
133.Fcドメインが、ヒトFcドメインである、実施形態132に記載のタンパク質。
134.Fcドメインが、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のFcドメインである、実施形態132又は実施形態133に記載のタンパク質。
【0365】
135.Fcドメインが、低減されたエフェクター機能を有する、実施形態132~134のいずれか1つに記載のタンパク質。
136.Fcドメインが、IgG4Fcドメインである、実施形態132~135のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0366】
137.Fcドメインが、アミノ酸配列ESKYGPPCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号32)又はその一部を含む、実施形態132~136のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0367】
138.Fc二量体を含む、実施形態132~137のいずれか1つに記載のタンパク質。
139.Fc二量体が、Fcホモ二量体である、実施形態138に記載のタンパク質。
【0368】
140.Fc二量体が、Fcヘテロ二量体である、実施形態138に記載のタンパク質。
141.Fcヘテロ二量体が、ノブ・イン・ホール変異を含む、実施形態140に記載のタンパク質。
【0369】
142.Fcヘテロ二量体が、スター変異を含む、実施形態140又は実施形態141に記載のタンパク質。
143.タンパク質の部分が、N末端からC末端に、CD20標的化部分-PD1アゴニスト部分-二量体化部分の順に配置されている、実施形態1に記載のタンパク質。
【0370】
144.タンパク質の部分が、N末端からC末端に、二量体化部分-PD1アゴニスト部分-CD20標的化部分の順に配置されている、実施形態1に記載のタンパク質。
145.CD20標的化部分が、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分が、PDL1のエクトドメインであり、二量体化部分が、Fcドメインであり、Fabの軽鎖が、PDL1のエクトドメイン又はそのPD1結合部分に融合されていない、実施形態1に記載のタンパク質。
【0371】
146.CD20標的化部分が、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分が、PDL1のエクトドメインであり、二量体化部分がFcドメインであり、PD1アゴニスト部分が抗CD20FabのVHのN末端にない、実施形態1に記載のタンパク質。
【0372】
147.CD20標的化部分が、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分が、PDL1のエクトドメインであり、二量体化部分が、Fcドメインであり、PD1アゴニスト部分が、FcドメインのC末端にない、実施形態1に記載のタンパク質。
【0373】
148.CD20標的化部分が、抗CD20Fabであり、PD1アゴニスト部分が、PDL1のエクトドメインであり、二量体化部分が、Fcドメインであり、タンパク質が、CD20標的化部分及び/又はPD1アゴニスト部分に対して一価である、実施形態1に記載のタンパク質。
【0374】
149.タンパク質が、非対称である、実施形態1に記載のタンパク質。
150.実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質をコードする、核酸又は複数の核酸。
【0375】
151.実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質又は実施形態150に記載の核酸(複数可)を発現するように操作された、宿主細胞。
152.実施形態151の宿主細胞を培養し、それによって発現されたタンパク質を回収することを含む、実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質を産生する、方法。
【0376】
153.実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質及び賦形剤を含む、薬学的組成物。
154.T細胞調節不全に関連する免疫障害又は状態に罹患している対象を治療する方法であって、対象に、有効量の実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質又は実施形態153に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【0377】
155.免疫障害又は状態が、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、グッドパスチャー症候群、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗糸球体基底膜腎炎、抗尿細管基底膜腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、移植片対宿主病(GVHD)、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、ベーチェット病、クローン病、デビック病、全身性エリテマトーデス(SLE)、ドレスラー症候群、線維化性肺胞炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、顕微鏡的多発性血管炎(MPA)、混合性結合組織病(MCTD)、多発性硬化症、多発ニューロパチー、臓器肥大症、内分泌障害、単クローン性症候群(POEMS)、結節性多発性動脈炎、関節リウマチ、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子又は精巣自己免疫、全身硬直症候群(SPS)、高安動脈炎、側頭動脈炎、巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ・ハント症候群(THS)、又は血管炎である、実施形態154に記載の方法。
【0378】
156.免疫障害又は状態が、1型糖尿病である、実施形態154に記載の方法。
157.1型糖尿病が、小児発症1型糖尿病である、実施形態156に記載の方法。
158.1型糖尿病が、成人発症1型糖尿病である、実施形態156に記載の方法。
【0379】
159.対象が、小児患者である、実施形態156に記載の方法。
160.対象が、成人患者である、実施形態156~158のいずれか一項に記載の方法。
【0380】
161.免疫障害又は状態が、全身性エリテマトーデスである、実施形態154に記載の方法。
162.免疫障害又は状態が、クローン病である、実施形態154に記載の方法。
【0381】
163.免疫障害又は状態が、移植片対宿主病(GVHD)である、実施形態154に記載の方法。
164.実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質又は実施形態153に記載の薬学的組成物が、単回用量として投与される、実施形態154~163のいずれか1つに記載の方法。
【0382】
165.実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質又は実施形態153に記載の薬学的組成物の投与が、繰り返されない、実施形態154~164のいずれか1つに記載の方法。
【0383】
166.方法が、対象における細胞免疫応答を抑制する、実施形態154~165のいずれか1つに記載の方法。
167.方法が、対象の免疫系を抑制する、実施形態166に記載の方法。
【0384】
168.方法が、対象におけるT細胞機能を減少させる、実施形態167に記載の方法。
169.方法が、対象におけるB細胞機能を減少させる、実施形態167に記載の方法。
【0385】
170.方法が、対象におけるT細胞応答性を減少させる、実施形態167に記載の方法。
171.対象における細胞性自己免疫応答を抑制する方法であって、有効量の、実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質又は実施形態153の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法。
【0386】
172.方法が、対象におけるT細胞機能を減少させる、実施形態171に記載の方法。
173.方法が、対象におけるB細胞機能を減少させる、実施形態171に記載の方法。
【0387】
174.方法が、対象におけるT細胞応答性を減少させる、実施形態171に記載の方法。
175.追加の治療剤を対象に投与することを更に含む、実施形態154~174のいずれか1つに記載の方法。
【0388】
176.追加の治療剤が、免疫調節剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着阻害剤、細胞傷害性剤、細胞アポトーシスの活性化剤、又は細胞のアポトーシス誘導剤に対する感受性を増加させる薬剤であるか、又はそれらを含む、実施形態175に記載の方法。
【0389】
177.追加の治療剤が、CAR発現細胞であるか、又はそれを含む、実施形態175に記載の方法。
178.CAR発現細胞が、CAR発現Treg細胞である、実施形態177に記載の方法。
【0390】
179.有効量の実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質又は実施形態153の薬学的組成物を対象に投与することを含む、局所的なPD1アゴニズムの方法。
180.タンパク質又は薬学的組成物を投与することが、対象のB細胞にPD1アゴニズムを局在させる、実施形態179に記載の方法。
【0391】
181.CD20を発現する標的組織又は細胞における免疫応答を局所的に調節する方法であって、有効量の実施形態1~149のいずれか1つに記載のタンパク質又は実施形態153に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法。
【0392】
182.タンパク質又は薬学的組成物を投与することが、対象のB細胞における免疫応答を調節する、実施形態181に記載の方法。
183.PD1を刺激する分子I型の能力を特徴付ける方法であって、
(a)CD3を安定的に発現し、AP1-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現し、かつPD1を安定的に発現する細胞I型を、CD22を安定的に発現し、CD20を安定的に発現する細胞II型とともに培養することと、
(b)分子I型及び分子II型の存在下又は非存在下で、ステップa)の培養細胞をインキュベートすることと、
(c)ステップb)の後、培養細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定することと、を含み、分子I型が、i)CD20のエクトドメインに結合する第1の結合特異性、及びii)PD1に結合する第2の結合特異性を含む、多重特異性抗原結合分子であり、分子II型が、i)CD3のエクトドメインに結合する第1の結合特異性、及びii)CD22のエクトドメインに結合する第2の結合特異性を含む、多重特異性抗原結合分子であり、分子II型の存在は、ルシフェラーゼ活性の増加を引き起こし、分子I型の存在は、分子II型によって引き起こされたルシフェラーゼ活性の低減を引き起こし、ルシフェラーゼ活性の低減の量は、分子I型が、PD1を刺激する能力を示す、方法。
【0393】
184.PD1が、mPD1である、実施形態183に記載の方法。
185.細胞I型が、Jurkat E6-1細胞である、実施形態183に記載の方法。
【0394】
186.細胞I型が、AP1-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するように形質導入される、実施形態183に記載の方法。
187.細胞I型が、PD1遺伝子を発現するように形質導入される、実施形態183に記載の方法。
【0395】
188.細胞I型が、レンチウイルスで形質導入される、実施形態186又は187に記載の方法。
189.CD20が、mCD20である、実施形態183に記載の方法。
【0396】
190.細胞II型が、HEK293細胞である、実施形態183に記載の方法。
191.細胞II型が、CD22を発現するように形質導入される、実施形態183に記載の方法。
【0397】
192.細胞II型が、CD20遺伝子を発現するように形質導入される、実施形態183に記載の方法。
193.細胞II型が、レンチウイルスで形質導入される、実施形態191又は192に記載の方法。
【0398】
194.細胞II型の細胞が、細胞I型の細胞の前に播種された、実施形態183に記載の方法。
195.培養細胞が、分子II型の存在下で、対照抗体分子の存在下で、及び分子I型の非存在下でインキュベートされる、実施形態183に記載の方法。
【0399】
196.培養細胞が、分子I型及び分子II型の存在下でインキュベートされる、実施形態183に記載の方法。
197.I型の分子が、PDL1のエクトドメインを含む、実施形態183に記載の方法。
【0400】
本出願で引用される全ての刊行物、特許、特許出願、及び他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願、又は他の文書が、全ての目的のために参照により組み込まれることが個別に示されているのと同じ程度に、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に組み込まれる参照のうちの1つ以上の教示と本開示との間に矛盾がある場合には、本明細書の教示が意図される。
図1-1】
図1-2】
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
【配列表】
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【国際調査報告】