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特表2024-544546優れたバリア特性を有する天然ワックスの酸化生成物からのエマルジョン
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  • 特表-優れたバリア特性を有する天然ワックスの酸化生成物からのエマルジョン 図1
  • 特表-優れたバリア特性を有する天然ワックスの酸化生成物からのエマルジョン 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】優れたバリア特性を有する天然ワックスの酸化生成物からのエマルジョン
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20241126BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20241126BHJP
   C09D 191/06 20060101ALI20241126BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20241126BHJP
   C08J 3/05 20060101ALI20241126BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B01J13/00 A
B65D65/42 C
C09D191/06
C09D5/02
C08L91/06
C08J3/05 CER
C08J3/05 CEZ
B32B9/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024527734
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2022081569
(87)【国際公開番号】W WO2023088794
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21209400.7
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100145333
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 弓子
(72)【発明者】
【氏名】ヴントレヒナ・ミリナ
(72)【発明者】
【氏名】カン・アラン・ハリル
(72)【発明者】
【氏名】ボーデンドルファー・ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】トリュー・ダニエラ
【テーマコード(参考)】
3E086
4F070
4F100
4G065
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD02
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA14
3E086BB02
3E086CA01
3E086DA08
4F070AA63
4F070AC12
4F070AC40
4F070AC84
4F070AE14
4F070AE28
4F070BA02
4F070CA03
4F070CB02
4F070CB12
4F100AA22A
4F100AJ03A
4F100AJ04B
4F100AJ11A
4F100BA02
4F100DG10B
4F100JC00
4F100JD04
4F100JM01A
4G065AB32X
4G065BA07
4G065BB06
4G065CA02
4G065DA01
4G065EA01
4G065EA07
4J002AE031
4J002ED026
4J002ED056
4J002EF056
4J002EG026
4J002EN106
4J002EN136
4J002EV236
4J002FD312
4J002FD316
4J002GC00
4J002GG00
4J002GH00
4J002GK00
4J002HA07
4J038BA211
4J038GA06
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA10
4J038NA08
4J038PB04
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
本発明は、優れたバリア特性を有する天然ワックスの酸化生成物からのエマルジョン、そのようなエマルジョンの製造方法、およびそのような天然ワックスの酸化生成物からのエマルジョンでコーティングされたセルロース繊維製品またはバイオポリマーに関する。本発明は、さらにそのようなエマルジョンのセルロース繊維またはバイオポリマーを含む基材のコーティングのための使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)OH価に対する酸価比が1以上である、少なくとも1種の天然ワックス酸化物、および
(b)少なくとも1種のアニオン性またはノニオン性の乳化剤、
を含む水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項2】
当該天然ワックス酸化物は、クロム酸酸化、クロム硫酸酸化(三酸化クロムおよび硫酸)、重クロム酸塩酸化、大気酸素による熱酸化および電気化学的酸化からなる群から選択される酸化方法により製造し得ることを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項3】
当該天然ワックス酸化物は、米糠ワックス酸化物、コーンワックス酸化物、サトウキビワックス酸化物、サンフラワーワックス酸化物およびカルナバワックス酸化物からなる群、好ましくは、米糠ワックス酸化物およびコーンワックス酸化物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項4】
当該天然ワックス酸化物は、ISO2114に従い測定して、1~140mgKOH/g、好ましくは15~140mgKOH/g、より好ましくは30~140mgKOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項5】
当該天然ワックス酸化物は、DGF M-IV6に従い測定して、8mgKOH/g未満、好ましくは5mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項6】
当該天然ワックス酸化物は、DIN6162に従い測定して、20未満、好ましくは15未満、より好ましくは10未満のヨウ素色価を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項7】
当該天然ワックス酸化物は、ISO2176に従い測定して、65~110℃の滴点を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項8】
当該天然ワックス酸化物は、当該エマルジョンの総重量に基づき、5~50重量%の範囲で、好ましくは10~45重量%の範囲で、より好ましくは15~40重量%の範囲で、最も好ましくは20~35重量%の範囲で当該エマルジョン中に存在することを特徴とする、請求項1~7のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項9】
当該ノニオン性乳化剤は、11~19、好ましくは13~18のHLB値を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項10】
少なくとも1種のノニオン性乳化剤は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルコールエトキシレートおよびトリブチルフェノールエトキシレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項11】
当該乳化剤は、アニオン性乳化剤系、好ましくはオレイン酸/アンモニア水酸化物/KOH乳化剤系および/またはジエチルアミノエタノール乳化剤系であることを特徴とする、請求項1~10のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項12】
当該乳化剤は、当該エマルジョンの総重量に基づき、1~20重量%の範囲で、好ましくは2~15重量%の範囲で当該エマルジョン中に存在することを特徴とする、請求項1~11のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項13】
(a)天然ワックス酸化物およびアニオン性またはノニオン性の乳化剤を供給する工程;
(b)当該天然ワックス酸化物を、当該天然ワックス酸化物の融点を超える温度で、水中にて、乳化剤で乳化する工程、を含む、
ここで、当該天然ワックス酸化物が有するOH価に対する酸価比は1以上である、
ことを特徴とする、請求項1~12のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョンの製造方法。
【請求項14】
当該天然ワックス酸化物は、クロム酸酸化、クロム硫酸酸化(三酸化クロムおよび硫酸)、重クロム酸塩酸化、大気酸素による酸化および電気化学的酸化からなる群から選択される酸化方法により製造し得ることを特徴とする、請求項13の水性天然ワックス酸化物エマルジョンの製造方法。
【請求項15】
多糖類含有基材、好ましくはセルロース系基材を水蒸気バリア層でコーティングするための、請求項1~12のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョンの使用。
【請求項16】
請求項1~12のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョンから形成された水蒸気バリア層を含む多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材。
【請求項17】
当該多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材は、セルロース系基材、好ましくは紙または板紙であることを特徴とする、請求項16の多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材。
【請求項18】
a)請求項1~12のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョンを多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材にコーティングする工程;
b)当該コーティングされた基材を乾燥させてバリア層を形成する工程、
を含む、請求項16または17の多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたバリア特性を有する水(蒸気)バリア層を形成するための天然ワックス酸化物エマルジョン、当該エマルジョンを製造する方法、および当該エマルジョンがコーティングされたセルロース繊維またはバイオポリマー製の物品に関する。本発明は、さらにセルロース繊維またはバイオポリマーを含む基材をコーティングするための当該エマルジョンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
食品および消費財の業界において、そして工業製品のためには、多種多様な包装資材が求められている。湿気に敏感な商品または水を含む商品の包装は、包装に水が浸み込まないように保護する必要がある。そのためには、水不透過性フィルムまたはコーティングされたセルロース系基材、例えばコーティングされた紙またはコーティングされた板紙が使用される。
【0003】
セルロース系基材に適したコーティング材料は、薄い不浸透性ポリマー層または撥水性ワックス状コーティングである。ここでの別の要因は、コーティングと包装される物体との相互作用である。したがって、食品および飲料の包装には、例えば鉱油留分からのMOSH/MOAH、フタル酸および他の可塑剤のような健康に懸念のある物質を含まない包装材料を使用することが好ましい。そのため、天然の再生可能なワックスの塗料が特に適しており、文献に既に何度も記載されている。
【0004】
例えば、特許文献1(EP3781485)は、植物ワックス、例えばサトウキビワックスおよび/または米糠ワックスを含有する紙および板紙の含浸のための組成物を記載している。当該組成物は、サトウキビワックスおよび/または米糠ワックスを含有するペレットに形成され、対応する機械でバリア層として塗布することができる。サトウキビワックスおよび米糠ワックスは、両方とも、単独で紙に塗布された場合、最初は接着するが、温水との長時間接触している間に紙基材から剥離してしまう。サトウキビワックスと米糠ワックスとの混合物からなる防水層は、熱水と接触しても、長時間接着し防水性を維持することが観察されている。
【0005】
非特許文献1(Heinrich et al.)は、蜜ろう、キャンデリラワックス、米ワックスおよびヒマワリワックスの水蒸気バリア特性を記載している。米ワックスは、試験した全てのワックスの中で最も高い水蒸気透過性を示し、バリア特性が最も低い。
【0006】
特許文献2(WO2006137274)は、生分解性薄層バリアの成形に適した米糠ワックスを含むポリマー組成物、およびそれを含む積層体を記載している。当該コーティング組成物は無水である。
【0007】
記載された天然ワックス含有バリアコーティングに共通することは、それらが溶融物から塗布され、したがってコーティング作業のための特別な装置を必要とすることである。さらに、コーティングは組成物を溶融物に変換するために熱エネルギーの投入を必要とし、これは、バリア層の塗布はエネルギーを大量に消費する。
【0008】
特許文献3(WO2007/061592)はとりわけ、水、アルファ化デンプンおよび天然スターチ、ならびにワックスエマルジョンを含む、食用の生分解性容器の製造に使用するための組成物を記載しており、この組成物は、食品品質の材料から本質的になる。
【0009】
好ましいワックスエマルジョンは、通常、カルナバワックス、カンデリラワックス、米糠ワックス、パラフィンワックスまたは別の食品用ワックスからなる安定的な水性エマルジョンである。使用されるワックスは、さらなる酸化を受けていない漂白ワックスであり、当該漂白ワックスの酸価は、原料ワックスの酸価にほぼ一致する。当該エマルジョンは、乳化剤を使って製造される。
【0010】
ワックスエマルジョンの好ましい例として特許文献3(WO2007/061592)により配合での使用に適したものとして知られたものは、乳化カルナバワックスおよび乳化カンデリラワックスである。言及される乳化剤は、食品用途に認可されている全ての乳化剤で、特にモノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、食品グレードのガム(例えば、アラビノガラクタン、カラギーナン、フラセラン、キサンタン)、クエン酸ステアリルモノグリセリジル、スクシステアリンおよびヒドロキシル化レシチンである。ワックスエマルジョンは組成物の耐水性を増加させると言われているが、バリア層を形成するのには役立たない。
【0011】
特許文献4(DE102014001709A)は、カチオン性乳化剤を有する水性天然ワックス酸化物エマルジョンを開示している。しかしながら、当該文献は、アニオン性またはノニオン性乳化剤を有する水性天然ワックス酸化物エマルジョンを開示していない。
【0012】
特許文献5(US2007068642A1)は、紙基材または果実をコーティングするためのワックス含有エマルジョンを開示している。記載されているワックスは「パームワックス」および「大豆ワックス」であり、これらは部分的におよび完全に水素化された油であって、大豆油およびパーム油を形成するトリグリセリドの水素化によって得られる。このようにして、パームまたは大豆ワックスが還元によって得られる。これは、不飽和脂肪酸の二重結合を低減する。したがって、「パームおよび大豆ワックス」は、天然ワックス酸化物とは化学的に完全に異なる物質であり、天然ワックス酸化物は純粋な天然ワックスから製造され、通常は長鎖脂肪酸の一価エステルから製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】EP3781485
【特許文献2】WO2006137274
【特許文献3】WO2007/061592
【特許文献4】DE102014001709A
【特許文献5】US2007068642A1
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Heinrich et al., Powder Technology 357, 2019, 223-231
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
入熱せずに多糖類基材に塗布でき、水および水蒸気に対するバリア層を形成することができる天然ワックス含有コーティングが必要とされている。さらに、そのような天然ワックス含有コーティングは、水(蒸気)透過性ポリマー基材にも適しており、水(蒸気)透過性プラスチックフィルム、例えばバイオポリマーフィルム、特にポリ乳酸(PLA)フィルムに使用できる可能性がある。バリア層は、バリア特性に悪影響を及ぼすため、可能な限りポリマーまたはフィルム形成剤の添加を必要とせず、基材上で良好な接着性を示し、薄層で適用でき、脆くなったり多孔質になったりしない十分な可撓性を備えている必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、この目的は、(a)OH価に対する酸価比が1以上である、少なくとも1種の天然ワックス酸化物、および(b)少なくとも1種のアニオン性またはノニオン性の乳化剤を含む水性天然ワックス酸化物エマルジョンによって達成されることが見出された。
【0017】
そのようなエマルジョンは安定であり、したがって、多糖またはバイオポリマー含有基材、好ましくはセルロース基材に困難なく適用することができ、基材に対応して接着する均一な層を形成する。
【0018】
乳化剤とは、油と水などの二つの相互に混和しない液体をブレンドして安定化させて、エマルジョンと呼ばれる微細に分割された混合物を得るのに役立つエマルジョンの製造および安定化のための助剤を指す。当該状態は、固体の不溶性物質を液体に混ぜて、いわゆる懸濁液を作るのに似ている。この特性は、界面活性剤など相媒介特性を有する分子が持つ。界面活性剤は疎水性および親水性分子部分を同時に含有し、したがって、微細に分割された液滴または粒子(例えば、ワックス粒子)の周りにミセルを形成し、凝集および沈降に対して分散媒(例えば、水)中でそれらを安定化することができる。ここでは、ノニオン性界面活性剤とイオン性界面活性剤とを区別する。前者は部分電荷を含む、一方、イオン性界面活性剤の場合、極性分子部分はイオンによって表される。したがって、アニオン性、カチオン性および両性イオン性界面活性剤が存在する。
【0019】
好適な天然ワックス酸化物は、当該ワックスの融点を超える温度で撹拌しながら、水および特異的に適合した乳化剤系で乳化することによって、水中で乳化することができ、次いで、このようにして形成されたエマルジョンを撹拌しながら冷却することができる。このようにして作製されたワックス懸濁液は、工業用語において「ワックスエマルジョン」と称される。
【0020】
ここでは、ノニオン性またはイオン性乳化剤系、あるいはこれら二つの組合せを使用できる。イオン性乳化剤は、例えばアルカリ性媒体またはアミンを用いてワックス酸または油酸を加水分解することで、反応混合物中において生成することもできる。
【0021】
天然ワックス酸化物エマルジョンにおいて適した乳化剤は、特にアニオン性およびノニオン性の乳化剤であって、例えばClariant International社の乳化剤Genapol(登録商標)またはHostapur(登録商標)がある。
【0022】
本発明はさらに、そのようなエマルジョンの製造方法およびコーティングされた多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材の製造方法における使用を提供する。
【0023】
水性エマルジョンを塗布できると、塗布のための加熱が必要なく、より薄く柔軟性のある層を塗布できる利点がある。当該方法は、従来技術のコーティング方法と比べて、エネルギー的に有利であって、資源利用に関する利益をもたらし、紙のリサイクルを容易にする。エマルジョンを塗布した層は、非常に水蒸気透過性が低く、親水性基材の吸水を明らかに低下させる。さらに、当該層は非常に均質で多孔質ではないため、優れたバリア効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は実施例におけるコーティング基材のアルグロ・フィネスおよびケーラーのCobb値を示す。
図2図2は実施例における各バリア層の水蒸気透過率Q100を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
天然ワックス酸化物含有エマルジョン中の天然ワックス酸化物の製造は、例えば既知の酸化方法を用いて行うことができる。当該既知の酸化方法は、天然ワックス自体を酸化させ、天然ワックス酸化物の酸価を、ISO3681に従って測定して、出発物質(一般に天然ワックスまたは漂白天然ワックス)と比較して、少なくとも5mgKOH/g、好ましくは少なくとも10mgKOH/g増加させ、当該ワックス中の不純物を酸化させてワックスを漂白するだけではない。これらは、クロム酸、クロム硫酸(三酸化クロムおよび硫酸)および重クロム酸塩による酸化、触媒を使って行うことができる酸素による熱酸化、あらゆる種類の電気化学的酸化などを含む。
【0026】
好適な天然ワックス酸化物は、特に、純粋な天然ワックスを酸化して製造されるものである。純粋な天然ワックスとは、原料としてすでにワックス形態にあり、ワックスとみなされるためにさらなる化学変換する必要がない天然ワックスを意味する。
【0027】
好ましくは、長鎖脂肪酸の一価エステルから形成される天然ワックスである。特に好ましくは、米糠ワックス酸化物、コーンワックス酸化物、サトウキビワックス酸化物、サンフラワーワックス酸化物およびカルナバワックス酸化物である。さらに好ましくは、米糠ワックス酸化物である。
【0028】
当該天然ワックス酸化物は、好ましくは、ISO2114に従い測定して、1~140mgKOH/g、好ましくは15~140mgKOH/g、より好ましくは30~140mgKOH/gの酸価を有する。さらに好ましくは、15~110mgKOH/g、または30~110mgKOH/gの酸価を有する。
【0029】
これらの酸価の範囲は、酸化のみによって達成され、さらなるエステル化工程を必要としない。そのような天然ワックス酸化物は、水中でより容易に乳化するのに十分な極性を有するものの、極性のせいでバリア層においてバリア効果に悪影響を及ぼすような微細構造中の欠陥を有するほどの極性ではない。
【0030】
好ましい実施態様では、本発明のエマルジョン中の少なくとも1種の天然ワックス酸化物は、ISO3681に従い測定して、30~200mgKOH/g、好ましくは50~180mgKOH/g、より好ましくは80~170mgKOH/gの鹸化価を有する。さらに好ましくは、80~140mgKOH/gの鹸化価を有する。
【0031】
本発明のエマルジョン中の少なくとも1種の天然ワックス酸化物は、好ましくは、DGF M-IV6に従い測定して、8mgKOH/g未満、好ましくは5mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有し、これはより均質な材料特性し、ひいては微細構造の欠陥がより少ない、より均質なバリア層を形成することを示す。
【0032】
好ましい実施態様では、当該天然ワックス酸化物は、DIN 6162に従い測定して、20未満、好ましくは15未満、およびより好ましくは10未満のヨウ素色価を有する。ヨウ素色価が低いことは、ワックスの色が特に明るいことを示し、したがってワックスが基材の色に悪影響を及ぼさない。
【0033】
本発明のエマルジョン中の少なくとも1種の天然ワックス酸化物は、好ましくは、ISO2176に従い測定して、65~110℃の滴点を有する。これは、天然ワックスエマルジョンの製造において天然ワックスを溶かすための大きなエネルギーを費やすことなく、熱安定性に優れたコーティングが得られることを意味する。
【0034】
水性天然ワックスエマルジョンの塗布を容易にし、バリア層をできるだけ薄く均一にするために、当該天然ワックス酸化物は、当該エマルジョンの総重量に基づき、5~50重量%の範囲で、好ましくは10~45重量%の範囲で、より好ましくは15~40重量%の範囲で、最も好ましくは20~35重量%の範囲で当該エマルジョン中に存在する。
【0035】
好ましい実施態様では、少なくとも1種の乳化剤は、アニオン性またはノニオン性の乳化剤である。疎水性ワックスは、アニオン性またはノニオン性の乳化剤を用いると特に容易に乳化することができる。
【0036】
アニオン性乳化剤はアンモニア臭を有し、ユーザーに不快感を与え得る。これは、ノニオン性乳化剤、好ましくは界面活性剤を使用することで回避することができる。アニオン性乳化剤は比較的pHが高く、用途によっては悪影響を及ぼす。したがって、用途によってはノニオン性乳化剤が好ましく、例えば、pH感受性生成物または化粧品用途で好ましい。
【0037】
ノニオン性乳化剤の性質は、界面活性剤の極性部分と非極性部分の質量比によって説明することができ、HLB値(「親水性-親油性バランス」、分子の親水性-親油性の比)によって定義される。この親水性と親油性の比のレベルは、グリフィンによって説明されているように、分子の異なる領域の値を計算することによって決定できる(例えば、Journal of Society of Cosmetic Chemists、5巻(4号)、249~256頁(1954)参照)。
【0038】
上記グリフィン法は、主にノニオン性界面活性剤のために開発された。HLB値は、次式で計算される:HLB=10×Mh/M(式中、Mhは分子の親水性部分の分子量であり、Mは分子全体の分子量であり、0~20のスケールとなる)。HLB値0は、完全に親油性分子であることを示し、HLB値20は、完全に親水性分子であることを示す。
【0039】
HLB値が低い界面活性剤は、優れた脂肪溶解特性を有し、HLB値が高いと、親水性表面の濡れが良好になる。異なるHLB値に基づいて、O/W~W/O系の安定なエマルジョンを形成することが可能である。
【0040】
水中油型乳化剤(O/W乳化剤)は、水中油型エマルジョンとするのに十分な高いHLB値を有する乳化剤を意味すると理解される。そのような乳化剤のHLB値は、通常8より大きく、多くの場合8~18の範囲である。当該ノニオン性乳化剤は、本発明の水中天然ワックス酸化物エマルジョンを安定化するものであって、好ましくは11~19のHLB値を有する。このようなノニオン性乳化剤を使用すると、天然ワックス酸化物エマルジョンを特に効果的に安定化することができる。当該HLB値は、より好ましくは13~18である。
【0041】
当該ノニオン性乳化剤は、好ましくは、10より大きく80までのEO値(官能基に結合したエチレンオキシド単位の数)を有する。
【0042】
当該ノニオン性乳化剤は、好ましくは、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルコールエトキシレート、例えば脂肪アルコールエトキシレート、およびトリブチルフェノールエトキシレートである。
【0043】
別の実施形態では、水性天然ワックス酸化物エマルジョンを安定化する乳化剤は、アニオン性乳化剤系である。なぜなら、そのような系は驚くべきことに、エマルジョンの安定化およびバリア層の形成、柔軟性および安定性において非常に優れており、バリア層は非常に良好な水安定性および水蒸気バリア作用を有するからである。このことは、これらの乳化剤が、ウッドケア製品など、高い水安定性が必要とされる用途に特に適していることを意味する。
【0044】
アニオン性乳化剤系のアニオンは、12~24個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ヒドロカルビル基を有する有機酸に、水溶性または水分散性のアルカリ金属水酸化物および/または塩基性アンモニウム化合物を添加することによって得ることができる。アニオンは、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウムおよび/もしくはカリウム塩、または同様の有機酸の同様のアンモニウムまたは置換アンモニウム塩として供給される。
【0045】
「アンモニウム塩」という用語は、水性媒体中の界面活性剤酸とアンモニアまたはアミンとの反応によって得られる中和生成物を指す。アミンは、例えば、モルホリン、メチルアミノプロパノール、ジエチルアミノエタノール(DEAE)などの揮発性塩基、または、例えば、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、エチレンジアミン、プロピレン-1,2-ジアミン、プロピレン-1,3-ジアミン、ブチレン-1,4-ジアミンなどのα,ω-およびα,γ-置換ジアミンなどの不揮発性塩基が挙げられる。DEAEは、その基本的な特性により、有機酸と同様の塩を形成しうる。
【0046】
当該塩または酸の極性有機基は、カルボン酸塩、硫酸塩またはスルホン酸イオンであってもよく、当該アニオン提供化合物は、二つ以上のそのような極性基を有しうる。
【0047】
アニオンを供給する適切な有機酸は、例えば、12~24個の炭素原子を有する天然および合成の脂肪族カルボン酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびベヘン酸であって、特に、主にパルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸からなる脂肪酸の混合物である獣脂脂肪酸などトリグリセリド油の開裂によって得られるそれらのセッケンである。アニオンは、好ましくは16~24個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基が存在するアニオンである。
【0048】
好ましくは、オレイン酸/水酸化アンモニウム/KOH乳化剤系を使用することである。
【0049】
使用される乳化剤の量は、懸濁液の安定性ならびにワックス粒子の分布およびサイズに影響を及ぼす。乳化剤がエマルジョン中に、当該エマルジョンの総重量に基づいて、1~20重量%、好ましくは2~15重量%の範囲で存在する場合、特に薄く均質なバリア層を形成できることが見出された。
【0050】
本発明は、さらに、水性天然ワックス酸化物エマルジョンの製造方法を提供する。当該製造方法は、(a)天然ワックス酸化物およびアニオン性またはノニオン性の乳化剤を供給する工程;(b)当該天然ワックス酸化物を、当該天然ワックス酸化物の融点を超える温度で、水中にて、乳化剤で乳化する工程、を含む、ここで、当該天然ワックス酸化物が有するOH価に対する酸価比は1以上であることを特徴とする。当該天然ワックス酸化物は、上記酸化方法によって製造できる。
【0051】
本発明はさらに、多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材、好ましくはセルロース系基材を水蒸気バリア層でコーティングするための、本発明の水性天然ワックス酸化物エマルジョンの使用を提供する。さらに、透水性ポリマー基材、例えばバイオポリマー基材、特にポリ乳酸(PLA)からなる基材の水蒸気バリア層が適している。
【0052】
したがって、本発明はさらに、本発明の水性天然ワックス酸化物エマルジョンから製造される水蒸気バリア層を含む多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材を提供する。
【0053】
当該多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材は、好ましくはセルロース系基材であり、より好ましくは紙または板紙である。これらコーティングされた多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材は、あらゆる種類のパッケージまたはシェルに使用することができ、例えば、タバコ製品、タバコ製品の外装、紙コップ、冷凍物品パッケージ、パン、ソーセージおよびチーズおよび植物のためのパッケージ、ならびに段ボール箱、電子物品のための外装などである。
【0054】
本発明は、さらに多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材の製造方法を提供する。当該製造方法は、a)本発明の水性天然ワックス酸化物エマルジョンを、多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材にコーティングする工程;b)当該コーティングされた基材を乾燥させてバリア層を形成する工程、を含む。
【実施例
【0055】
【表1】
【0056】
例の実施:
表2は、使用したワックスおよびワックス酸化物を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
コーンワックス酸化物1~3の製造
コーンワックス酸化物は市販されていないため、コーンワックス酸化物の製造の実験条件を以下に詳しく述べる。
【0059】
スターラー、温度センサー、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた3L反応容器に、まず、表4に示す量の硫酸中三酸化クロム(濃度:100gCrO/L)を充填し、100℃に加熱した。次に、未処理溶融天然ワックス(90℃)を少しずつ加えた。反応混合物の温度を110℃にして、精密ガラススターラで約200rpmにて4時間撹拌した。加熱および撹拌を止め、相が分離したらすぐに水相を分離した。表3に示す量を用いて、コーンワックス酸化物1および2を製造するのに、この操作を2回行い、コーンワックス酸化物3を製造するのには、この操作を5回行った。
【0060】
【表3】
【0061】
有機相を、シュウ酸および硫酸の水中溶液で洗浄し、次いで水中で洗浄することによってクロム残留物を除去し、温かい遠心管に排出し、遠心分離した。
【0062】
【表4】
【0063】
A)水ベースワックスエマルジョンの製造
A1)表5における配合F1、F2、F9、F10の製造および表6における配合F12、F13、F14、F15の製造は、次のとおりである。各ワックスおよび各乳化剤を125℃で十分に溶かし、均質になるよう撹拌した。沸騰した蒸留水を125℃ワックス溶融物に加えてさらに撹拌した。得られたエマルジョンをしっかりと撹拌しながら冷却した(約3K/分)。
【0064】
A2)表5における配合F4の製造は、次のとおりである。ワックスを125℃で十分に溶かしてから、DEAEを徐々に滴下した。当該溶融物を2分間撹拌した。沸騰した蒸留水を125℃のワックス溶融物に加えてさらに撹拌した。得られたエマルジョンをしっかりと撹拌しながら冷却した(約3K/分)。
【0065】
A3)表5における配合F3、F5およびF6、および表6におけるF16およびF17の製造は、次のとおりである。各ワックス、オレイン酸、アンモニア溶液およびKOHを、蒸留水の必要量の50%と混合した。当該混合物を加圧反応器で135℃に加熱し、残っている蒸留水を約125℃の混合物に加えた。当該混合物を135℃で15分撹拌した。得られたエマルジョンを撹拌しながら30℃に冷却した(約3K/分)。
【0066】
A4)F7の製造は、次の通りである。ワックスおよびE5乳化剤を125℃で十分に溶かしてから、均質になるよう撹拌した。撹拌しながら、KOH/エチレングリコール混合物を滴下し、さらに2分間混合した。高温のワックス混合物を沸騰した蒸留水に添加し撹拌した。得られたエマルジョンをしっかりと撹拌しながら冷却した(約3K/分)。
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
表5および表6において、本発明の配合F1~F6およびF12~17は全て安定性のあるエマルジョンを形成する。比較例F10では、ワックスを20%含有するが、安定したエマルジョンは形成されない。比較例F9は、10%ワックス含有し、安定したエマルジョンを形成するが、ワックス含有量が少ないことはコーティング品質および乾燥時間において不利である。
【0070】
B)ワックスエマルジョンでコーティングした紙基材の製造
表7に示すワックスエマルジョンを50μm塗工用バーでコーティングし、切り出した試験片12.5cmx12.5cmを恒温23℃かつ相対湿度30%で、24時間保管した。当該試験片を秤量し(Tara1)、Cobbアルミニウムカップに固定した。
【0071】
次に、100mlの蒸留水を60秒かけて試料に加え、除去した。残った水分を吸い取り紙と吸収ローラーで取り除き、再度重量を測定した(Tara2)。Cobb値を次式で求めた。
Cobb値60s=(Tara2―Tara1)×115.48658
【0072】
当該値を3回測定し、測定値の中央値を表7に示す。
【0073】
【表7】
【0074】
本発明に係る例F1~F6およびF12~F17全ては、コーティングなし紙、例F7およびF9と比較して、吸水率が大幅に低下し、Cobb値60の低下に表れた。
【0075】
c)水蒸気透過率を用いたワックスコーティングのバリア効果を測定するためのコーティングされたキャリアフィルムの製造
ワックスまたはワックス酸化物のエマルジョンまたは分散液をセロハン上に薄膜としてコーティングした。コーティングのために、半自動Sumet Messtechnik CUF5コーティングシステムを使用して、DIN A3フォーマット(420×297mm)の最大面積を備えたシート状の基材を処理した。湿式コーティングは50μmであった。コーティング速度は30mm/秒であった。乾燥温度は70℃と90℃の間で、乾燥時間は1~5分であった。
【0076】
基材の影響を排除するために、すべてのバリア層は、水蒸気透過性であると知られているセロハンにコーティングされた。セロハンフィルムの水蒸気透過率Qは、1084g/(m*d)である。当該水蒸気バリアについて、DIN53122-1に従った23℃における水蒸気透過率Q、および、バリア層の片側で相対湿度85%もう一方の側で0%としたときの湿度勾配を測定した。測定されたQ値(単位:g/(m*d))は、1日あたり何グラムの水が1平方メートルの面積を透過するかを表す。
【0077】
ただし、この値は、ワックス層の厚さに大きく依存する。ワックス層が厚くなるほど、値は低くなる。したがって、異なる厚さのさまざまな材料を比較できるようにするために、層の厚さ100μmに正規化した値(Q100[g*100μm/(m*d)])で表される。これは次式で求められる。
【0078】
【数1】
【0079】
このようにして、表8における測定値の各バリア層の当該水蒸気透過率を、次式で求めることができる。
【0080】
【数2】
【0081】
層の厚さに対して正規化された水蒸気透過性Q100を求めるために、コーティング基材のミクロトーム切片を用いて顕微鏡でバリア層の層の厚さを測定した。
【0082】
【数3】
【0083】
ルポレン(Lupolen)の水蒸気透過率を基準値として、そのQ100値を1とする。
【0084】
さらに、セロハン基材にコーティングされなかった粗RBW薄膜の水蒸気透性を測定した。
【0085】
表8における測定値は、4回測定した値の平均値である。
【0086】
【表8】
【0087】
本発明の実施例全てにおいて、コーティングなしセロハンフィルムに比べて、水蒸気透過性が大幅に向上しており、これは低いQ100値として表れている。本発明の実施例のQ100値は、標準的なポリエチレンベースのバリア材料を表すルポレン100参照フィルムのQ100値と同等の範囲内である。
【0088】
粗米糠ワックスはバリア特性に優れているが、乳化性ではない。溶融物からのコーティングには、より高いエネルギー入力が必要であり、水性エマルジョンと比較して層の厚さが厚くなるため、材料の消費量に悪影響を及ぼす。さらに、層が厚くなると、バリア層の接着性と柔軟性に悪影響が生じる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)OH価に対する酸価比が1以上である、少なくとも1種の天然ワックス酸化物、および
(b)少なくとも1種のアニオン性またはノニオン性の乳化剤、
を含む、多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材に水および/または水蒸気バリア層を形成するための水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項2】
当該天然ワックス酸化物は、クロム酸酸化、クロム硫酸酸化(三酸化クロムおよび硫酸)、重クロム酸塩酸化、大気酸素による熱酸化および電気化学的酸化からなる群から選択される酸化方法により製造し得ることを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項3】
当該天然ワックス酸化物は、米糠ワックス酸化物、コーンワックス酸化物、サトウキビワックス酸化物、サンフラワーワックス酸化物およびカルナバワックス酸化物からなる群、好ましくは、米糠ワックス酸化物およびコーンワックス酸化物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項4】
当該天然ワックス酸化物は、ISO2114に従い測定して、1~140mgKOH/g、好ましくは15~140mgKOH/g、より好ましくは30~140mgKOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項5】
当該天然ワックス酸化物は、DGF M-IV6に従い測定して、8mgKOH/g未満、好ましくは5mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項6】
当該天然ワックス酸化物は、DIN6162に従い測定して、20未満、好ましくは15未満、より好ましくは10未満のヨウ素色価を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項7】
当該天然ワックス酸化物は、ISO2176に従い測定して、65~110℃の滴点を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項8】
当該天然ワックス酸化物は、当該エマルジョンの総重量に基づき、5~50重量%の範囲で、好ましくは10~45重量%の範囲で、より好ましくは15~40重量%の範囲で、最も好ましくは20~35重量%の範囲で当該エマルジョン中に存在することを特徴とする、請求項1~7のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項9】
当該ノニオン性乳化剤は、11~19、好ましくは13~18のHLB値を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項10】
少なくとも1種のノニオン性乳化剤は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルコールエトキシレートおよびトリブチルフェノールエトキシレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項11】
当該乳化剤は、アニオン性乳化剤系、好ましくはオレイン酸/アンモニア水酸化物/KOH乳化剤系および/またはジエチルアミノエタノール乳化剤系であることを特徴とする、請求項1~10のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項12】
当該乳化剤は、当該エマルジョンの総重量に基づき、1~20重量%の範囲で、好ましくは2~15重量%の範囲で当該エマルジョン中に存在することを特徴とする、請求項1~11のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項13】
(a)天然ワックス酸化物およびアニオン性またはノニオン性の乳化剤を供給する工程;
(b)当該天然ワックス酸化物を、当該天然ワックス酸化物の融点を超える温度で、水中にて、乳化剤で乳化する工程、を含む、
ここで、当該天然ワックス酸化物が有するOH価に対する酸価比は1以上である、
ことを特徴とする、請求項1~12のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョンの製造方法。
【請求項14】
当該天然ワックス酸化物は、クロム酸酸化、クロム硫酸酸化(三酸化クロムおよび硫酸)、重クロム酸塩酸化、大気酸素による酸化および電気化学的酸化からなる群から選択される酸化方法により製造し得ることを特徴とする、請求項13の水性天然ワックス酸化物エマルジョンの製造方法。
【請求項15】
多糖類含有基材、好ましくはセルロース系基材を水および/または水蒸気バリア層でコーティングするための、請求項1~12のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョンの使用。
【請求項16】
請求項1~12のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョンから形成された水および/または水蒸気バリア層を含む多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材。
【請求項17】
当該多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材は、セルロース系基材、好ましくは紙または板紙であることを特徴とする、請求項16の多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材。
【請求項18】
a)請求項1~12のいずれかの水性天然ワックス酸化物エマルジョンを多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材にコーティングする工程;
b)当該コーティングされた基材を乾燥させてバリア層を形成する工程、
を含む、請求項16または17の多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)OH価に対する酸価比が1以上である、少なくとも1種の天然ワックス酸化物、および
(b)少なくとも1種のアニオン性またはノニオン性の乳化剤、
を含む、多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材に水および/または水蒸気バリア層を形成するための水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項2】
当該天然ワックス酸化物は、クロム酸酸化、クロム硫酸酸化(三酸化クロムおよび硫酸)、重クロム酸塩酸化、大気酸素による熱酸化および電気化学的酸化からなる群から選択される酸化方法により製造し得ることを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項3】
当該天然ワックス酸化物は、米糠ワックス酸化物、コーンワックス酸化物、サトウキビワックス酸化物、サンフラワーワックス酸化物およびカルナバワックス酸化物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項4】
当該天然ワックス酸化物は、ISO2114に従い測定して、1~140mgKOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項5】
当該天然ワックス酸化物は、DGF M-IV6に従い測定して、8mgKOH/g未満のヒドロキシル価を有することを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項6】
当該天然ワックス酸化物は、DIN6162に従い測定して、20未満のヨウ素色価を有することを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項7】
当該天然ワックス酸化物は、ISO2176に従い測定して、65~110℃の滴点を有することを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項8】
当該天然ワックス酸化物は、当該エマルジョンの総重量に基づき、5~50重量%の範囲で当該エマルジョン中に存在することを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項9】
当該ノニオン性乳化剤は、11~19のHLB値を有することを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項10】
少なくとも1種のノニオン性乳化剤は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルコールエトキシレートおよびトリブチルフェノールエトキシレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項11】
当該乳化剤は、アニオン性乳化剤系であることを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項12】
当該乳化剤は、当該エマルジョンの総重量に基づき、1~20重量%の範囲で当該エマルジョン中に存在することを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項13】
(a)天然ワックス酸化物およびアニオン性またはノニオン性の乳化剤を供給する工程;
(b)当該天然ワックス酸化物を、当該天然ワックス酸化物の融点を超える温度の水中にて、乳化剤で乳化する工程、を含む、
ここで、当該天然ワックス酸化物が有するOH価に対する酸価比は1以上である、
ことを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョンの製造方法。
【請求項14】
当該天然ワックス酸化物は、クロム酸酸化、クロム硫酸酸化(三酸化クロムおよび硫酸)、重クロム酸塩酸化、大気酸素による酸化および電気化学的酸化からなる群から選択される酸化方法により製造し得ることを特徴とする、請求項13の水性天然ワックス酸化物エマルジョンの製造方法。
【請求項15】
多糖類含有基材を水および/または水蒸気バリア層でコーティングするための、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョンの使用。
【請求項16】
請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョンから形成された水および/または水蒸気バリア層を含む多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材。
【請求項17】
当該多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材は、セルロース系基材であることを特徴とする、請求項16の多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材。
【請求項18】
a)請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョンを多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材にコーティングする工程;
b)当該コーティングされた基材を乾燥させてバリア層を形成する工程、
を含む、請求項16または17の多糖類含有基材またはバイオポリマー含有基材の製造方法。
【請求項19】
当該天然ワックス酸化物は、米糠ワックス酸化物およびコーンワックス酸化物から選択されることを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【請求項20】
当該乳化剤は、オレイン酸/アンモニア水酸化物/KOH乳化剤系および/またはジエチルアミノエタノール乳化剤系であることを特徴とする、請求項1の水性天然ワックス酸化物エマルジョン。
【国際調査報告】