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特表2024-544550RAS変異に関連付けられたがんを治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】RAS変異に関連付けられたがんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20241126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K31/444
A61P35/00
A61P37/04
A61K45/00
A61P11/00
A61P1/00
A61P1/18
A61P7/00
A61P1/16
A61P25/00
A61P17/00
A61K39/395 U
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527788
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022079848
(87)【国際公開番号】W WO2023087012
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/279,236
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】513016884
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ イリノイ
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
(71)【出願人】
【識別番号】513171172
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ レプリゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サッチャー,グレゴリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラナ,アジャイ
(72)【発明者】
【氏名】ション,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】プリンチペ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヤンフェン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA51
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA75
4C084ZA89
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZB09
4C086ZB26
(57)【要約】
本開示の目的(複数可)に従い、本明細書に記載されるのは、治療を必要とする対象におけるRas変異に関連付けられたがんを治療するための方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載される式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法である。本明細書に記載される化合物は、ベンチマークBET阻害剤JQ-1と比較して改善された有効性を有し、PDACの治療に関して高用量JQ-1と同等の有効性を有する。一態様では、化合物は、有効量の、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、又はそれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【選択図】図2E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象におけるRas変異に関連付けられたがんを治療する方法であって、前記対象に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、
【化1】


式中、
12が、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、プロピレニル、-CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、又はCH(CO)CHClであり、
11が、窒素含有二環式又は三環式ヘテロアリール、アリール、又はビアリールであり、それらの各々が、任意選択的に、独立して、-N(R)S(O)、-S(O)NR、-C(O)NR-N(R)C(O)R-NR、-(C-Cアルキレニル)R、-(C-Cシクロアルキレニル)R、アリール、ヘテロアリール、-(C-Cアルキレニル)Rc’、-H、ハロゲン、-CN、プロピレニル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、 -CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、CH(CO)CHCl、及びR70から選択される、1、2、又は3つの置換基で置換され、
Xが、任意選択的に存在し、存在する場合、-O-、-C(O)-、-N(R77)-、及び-CH(R70)-から選択され、
77が、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、及びR70からなる群から選択され、
70が、出現ごとに、各々独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cハロアルキル、R、及びC-Cアルキルから選択され、前記C-Cアルキルが、任意選択的に、-OR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)2R、-S(O)NR、及びRから選択される1つの置換基で置換され、
及びRc’が、出現ごとに、独立して、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択され、各R基が、任意選択的に、1、2、3、4、又は5つのR基で置換され、
が、出現ごとに、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、-NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR、-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びC-Cハロアルキルから選択される、方法。
【請求項2】
前記化合物が、式IIであり、
【化2】


式中、
が、
【化3】


であり、
が、
【化4】


であり、
が、H又はC-Cアルキルであり、
80が、C-Cアルキルであり、
、X、及びXが、各々独立して、CH又はNからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
12が、C-Cアルキルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
12が、メチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
が、
【化5】


である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
が、Nであり、Xが、Nであり、Xが、CHである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
が、C-Cアルキルである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
が、メチルである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
が、以下である、請求項2に記載の方法。
【化6】

【請求項10】
80が、エチルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が、式IIIであり、
【化7】


式中、R31が、
【化8】


であり、
157が、Me、CHCH、又はCH(CHであり、
32が、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cシクロアルキル、-H、-D、C-C置換シクロアルキレニル、置換アリール、及び置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
33、R34、R35、R36、R37、R34’、R35’、R36’、R37’が、各々独立して、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルキルアミン、C-Cシクロアルキルアミン、C-Cアルキルエステル、及びC-Cアルキルアミドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
33、R34、R35、R36、R37、R34’、R35’、R36’、R37’が、各々水素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
32が、C-Cアルキルである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
32が、メチルである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
31が、
【化9】


であり、
式中、R157が、Me、CHCH、又はCH(CHである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、式IV又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【化10】

【請求項17】
前記対象に、有効量の免疫チェックポイント阻害剤を投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、又はそれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、前記化合物の投与の前に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、前記化合物の投与後に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、前記化合物の投与と同時に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
Ras変異に関連付けられた前記がんが、肺がん、消化管がん、胸部がん、膵臓がん、結腸がん、又は血液がんである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
Ras変異に関連付けられた前記がんが、小腸腺がん、直腸腺がん、胆管がん、胆嚢がん、神経芽細胞腫、黒色腫、又は頭頚部扁平細胞がんである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
Ras変異に関連付けられた前記がんが、膵管腺がんである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
薬学的組成物であって、
(a)式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩であって、
【化11】


式中、
12が、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、プロピレニル、-CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、又はCH(CO)CHClであり、
11が、窒素含有二環式又は三環式ヘテロアリール、アリール、又はビアリールであり、それらの各々が、任意選択的に、独立して、-N(R)S(O)、-S(O)NR、-C(O)NR-N(R)C(O)R-NR、-(C-Cアルキレニル)R、-(C-Cシクロアルキレニル)R、アリール、ヘテロアリール、-(C-Cアルキレニル)Rc’、-H、ハロゲン、-CN、プロピレニル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、 -CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、CH(CO)CHCl、及びR70から選択される、1、2、又は3つの置換基で置換され、
Xが、任意選択的に存在し、存在する場合、-O-、-C(O)-、-N(R77)-、及び-CH(R70)-から選択され、
77が、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、及びR70からなる群から選択され、
70が、出現ごとに、各々独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cハロアルキル、R、及びC-Cアルキルから選択され、前記C-Cアルキルが、任意選択的に、-OR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、及びRから選択される1つの置換基で置換され、
及びRc’が、出現ごとに、独立して、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択され、各R基が、任意選択的に、1、2、3、4、又は5つのR基で置換され、
が、出現ごとに、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、-NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR、-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びC-Cハロアルキルから選択される、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩と、
(b)免疫チェックポイント阻害剤と、
(c)薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項28】
キットであって、
(a)式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩であって、
【化12】


式中、
12が、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、プロピレニル、-CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、又はCH(CO)CHClであり、
11が、窒素含有二環式又は三環式ヘテロアリール、アリール、又はビアリールであり、それらの各々が、任意選択的に、独立して、-N(R)S(O)、-S(O)NR、-C(O)NR-N(R)C(O)R-NR、-(C-Cアルキレニル)R、-(C-Cシクロアルキレニル)R、アリール、ヘテロアリール、-(C-Cアルキレニル)Rc’、-H、ハロゲン、-CN、プロピレニル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、 -CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、CH(CO)CHCl、及びR70から選択される、1、2、又は3つの置換基で置換され、
Xが、任意選択的に存在し、存在する場合、-O-、-C(O)-、-N(R77)-、及び-CH(R70)-から選択され、
77が、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、及びR70からなる群から選択され、
70が、出現ごとに、各々独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cハロアルキル、R、及びC-Cアルキルから選択され、前記C-Cアルキルが、任意選択的に、-OR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、及びRから選択される1つの置換基で置換され、
及びRc’が、出現ごとに、独立して、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択され、各R基が、任意選択的に、1、2、3、4、又は5つのR基で置換され、
が、出現ごとに、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、-NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR、-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びC-Cハロアルキルから選択される、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩と、
(b)免疫チェックポイント阻害剤と、
(c)前記化合物及び前記免疫チェックポイント阻害剤を投与するための指示書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援の研究又は開発に関する声明
本発明は、米国退役軍人省によって授与された科研番号第I01BX004903号及び同第IK6BX004855号の下で政府の支持によって作成された。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年11月15日出願の同時係属中の米国仮特許出願第63/279,236号の利益及び優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
Ras遺伝子の変異は、がん患者において頻繁に観察されている。変異型RASは、腫瘍の開始及び維持の推進因子である。ヒトRAS遺伝子には、4つのRASタンパク質をコードする、カーステンラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、神経芽細胞腫RASウイルス(v-ras)がん遺伝子ホモログ(NRAS)、及びハーベイラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)]の3つが存在し、代替RNAスプライシングから生じる2つのKRASアイソフォーム(KRAS4A及びKRAS4B)を伴う。RASタンパク質(KRAS4A、KRAS4B、NRAS、及びHRAS)は、GDP-GTP調節バイナリオンオフスイッチとして機能し、多様な正常な細胞プロセスを制御する細胞質シグナル伝達ネットワークを調節する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Ras変異に関連付けられたがんの一例は、膵管腺がん(PDAC)である。現在、進行したPDACを有する患者に対する治癒療法は存在しない。広域スペクトル化学療法は、生存を緩やかに延長することができるが、ほぼ全ての患者は、最終的には治療が進められ、全体的な転帰は、依然として不良である(34)。加えて、PDACは、臨床試験において、免疫療法を含む新たに出現した治療に対して不十分な臨床応答を示している(35、36)。よって、PDAC及びRas変異に関連付けられた他のがんのための新しいアプローチ及び治療の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の目的(複数可)に従い、本明細書に記載されるのは、治療を必要とする対象におけるRas変異に関連付けられたがんを治療するための方法であって、対象に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、
【化1】


式中、
12が、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、プロピレニル、-CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、又はCH(CO)CHClであり、
11が、窒素含有二環式又は三環式ヘテロアリール、アリール、又はビアリールであり、それらの各々が、任意選択的に、独立して、-N(R)S(O)、-S(O)NR、-C(O)NR-N(R)C(O)R-NR、-(C-Cアルキレニル)R、-(C-Cシクロアルキレニル)R、アリール、ヘテロアリール、-(C-Cアルキレニル)Rc’、-H、ハロゲン、-CN、プロピレニル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、 -CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、CH(CO)CHCl、及びR70から選択される、1、2、又は3つの置換基で置換され、
Xが、任意選択的に存在し、存在する場合、-O-、-C(O)-、-N(R77)-、及び-CH(R70)-から選択され、
77が、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、及びR70からなる群から選択され、
70が、出現ごとに、各々独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cハロアルキル、R、及びC-Cアルキルから選択され、前記C-Cアルキルが、任意選択的に、-OR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)2R、-S(O)NR、及びRから選択される1つの置換基で置換され、
及びRc’が、出現ごとに、独立して、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択され、各R基が、任意選択的に、1、2、3、4、又は5つのR基で置換され、
が、出現ごとに、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、-NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR、-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びC-Cハロアルキルから選択される、方法である。
【0006】
本明細書に記載される化合物は、ベンチマークBET阻害剤JQ-1と比較して改善された有効性、及び高用量JQ-1と同等の有効性を有する。一態様では、化合物は、有効量の、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、又はそれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【0007】
本開示の他の系、方法、特徴、及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討することによって、当業者には明らかであるか、又は明らかになるであろう。全てのそのような追加の系、方法、特徴、及び利点は、この記載内に含まれ、本開示の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。加えて、記載されている実施形態の全ての任意選択的かつ好ましい特徴及び修正は、本明細書で教示される本開示の全ての態様で使用可能である。更に、従属特許請求の範囲の個々の特徴、並びに記載される実施形態の全ての任意選択的かつ好ましい特徴及び修正は、互いに組み合わせ可能であり、互換的である。
【0008】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照するとよりよく理解できる。図面における構成要素は、必ずしも定縮尺ではなく、代わりに、本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれている。更に、図面における同様の参照番号は、いくつかの図全体を通じて対応する部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】BRD4及びEP300/CBPが、PDACにおいて普遍的に発現していることを示す。(A、B)隣接する非悪性組織が一致する9人を含む14人のPDAC患者からの切除生検を切片化し、BRD4又はEP300/CBPのいずれかに対して染色した。40倍視野当たりの陽性核の数を、3人の盲検化された研究者によって定量化し、各視野の核の総数によって除算した。これらの値を平均し、個々の値プロットとして示した。BRD4又はEP300のmRNA発現について、Oncomineプラットフォームを使用して、(C、D)膵臓腫瘍組織(PDAC)及び隣接する非悪性(N)PDAC患者のBadea et al.及びPei et al.のコホートを評価した。全てのmRNA発現値を対数尺度でプロットする。(E)BRD4及びEP300/CBPの発現について、ヒトPDAC細胞株Panc1、ASPC1、MiaPaCa2、Capan1、及びマウスPDAC細胞株KPC-105をウェスタンブロットによって評価した。(F)免疫細胞化学によって、BRD4及びEP300/CBPに対してPanc1細胞を染色した。(G)非遺伝子野生型(WT)、PanIN疾患のPdx1-Cre×LSL-KrasG12D(KC)モデル、進行したPDACのPdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/-(KPC)モデル、非常に侵襲性のPDACのPdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/+(KPPC)モデルからの膵臓組織、又はG-68細胞由来異種移植片(CDX)モデルからの皮下腫瘍組織のいずれかを収集し、BRD4又はEP300/CBPのいずれかに対して染色した。(*p<0.05)
図2】XP-524は、BRD4及びEP300/CBPに関与する強力な多特異性BET阻害剤であることを示す。(A)EP300/CBPに対して活性を有する多特異性BET阻害剤として機能するように設計された、XP-524の化学構造。(B、C)BRD4の第1(BD1)又は第2(BD2)のブロモドメインのいずれかを使用し、第1世代のBET阻害剤JQ-1又はXP-524のいずれかの濃度を増加させた、TR-FRETアッセイ。(D)EP300又はその構造類似体CBPを使用し、XP-524の濃度を増加させた、BROMOscanアッセイ。(E)XP-524とBD1ブロモドメインのアセチル化リジンポケットとの間の広範な相互作用を示している、XP-524:BRD4の共結晶構造(PDB:6P05)。(F)XP-524とCBPブロモドメインのアセチル化リジンポケットとの間の広範な相互作用、並びにAsn-1168との二座水素結合、及びAsp-1116の骨格との水素結合を形成しているZAループへの硫酸塩部分の挿入を示している、EP300類似体CBPとのXP-524の共結晶構造(XP-524:CBP)(PDB:7JUO)。(G)同様の結合モードを示している、XP-524-CBP複合体及びXP-524-BRD4複合体の重ね合わせ。
図3】EP300/CBPの阻害が、発がん性KRASシグナル伝達のBETi媒介性サイレンシングを向上することを示す。(A)同数のPanc1細胞を24ウェルプレートに播種し、DMSOビヒクル、1μMのJQ-1、JQ-1及び1μMのSGC-CBP30、1μMのXP-524、又はXP-524及びSGC-CBP30のいずれかで処理した。対照群が100%コンフルエンスに達するまで、4時間ごとに細胞成長を評価した(N=4/群)。(B)各々一定用量の1μMのSGC-CBP30とともに又は伴わずに、濃度を増加させたJQ-1又はXP-524のいずれかとともにPanc1細胞をインキュベートした。48時間後、MTTアッセイによって細胞生存率を評価した。(C)DMSOビヒクル、1μMのJQ-1、JQ-1及び1μMのSGC-CBP30、又は1μMのXP-524のいずれかとともにPanc1細胞をインキュベートし、RNA配列決定を施した。(D)p値を<0.05に調整した偽発見率(FDR)を使用して、細胞周期経路が有意に変化した、選択された遺伝子を示すフォーカスヒートマップ。(E)p値を<0.05に調整したFDRを使用して、KRASシグナル伝達経路において有意に変化した、選択された遺伝子を示すフォーカスヒートマップ。(F~H)Panc1、MiaPaCa2(MP2)、及びASPC1細胞を1μMのXP-524で処理し、KRAS mRNAをqPCRによって評価した。DMSO対照(C)処理試料と比較した倍率変化として、値を提示する。(I)1μMのJQ-1、JQ-1及び1μMのSGC-CBP30、又は1μMのXP-524でPanc1細胞を再度処理し、免疫沈降(IP)、続いてウェスタンブロット(IB)によって、BRD4とEP300との間の相互作用を評価した。(J、K)記載されているように処理し、pRB、H3K27アセチル化、並びにKRAS発現、及びMEK/ERK経路の下流活性化について、ウェスタンブロットによってPanc1及びKPC-105細胞を評価した。(L)ウェスタンブロットによって評価した、MiaPaCa2(MP2)及びASPC1細胞、並びにKRAS発現及び下流MEK/ERK活性化。(I~K)生存切除を受けた3人のPDAC患者からの切除生検のコアを採取し、250μm間隔で切片化し、対照PBSビヒクル又は5μMのXP-524のいずれか中のエクスビボで培養した。72時間後、スライス培養物をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、H&Eで、又は免疫組織化学によって、pERK又はCK19及びPCNAに対して染色した。(*p<0.05)。
図4】XP-524は、インビボで変異型KRASによって誘導されたPanIN形成を低減することを示す。(A)早期膵臓上皮内新生物(PanIN)のモデルとして、Ptf1a-Cre×LSL-KrasG12D+/-(KPC)マウスを生成した。8週齢から開始して、PBSビヒクル又は5mg/kgのXP-524のいずれかの毎日の腹腔内注射をマウスに投与し、6か月の一定エンドポイントで屠殺した。(B)研究エンドポイントで、膵腺を秤量し、各動物の体重に対して正規化し、結果を個々の値プロットとして示した。(C、D)H&E、Masson’s Trichromeで、又は免疫組織化学を介してCK19及び膵臓アミラーゼに対して膵臓組織を染色し、記載されているように定量化し、結果を個々の値プロットとして示した。(E、F)また、免疫組織化学によって、変異型RASG12D、pERK、又はCK19、及びPCNAに対して組織を染色した。記載されているように結果を定量化し、個々の値プロットとして示した。(G)研究エンドポイントで膵臓組織を溶解させ、ウェスタンブロットによって、KRAS発現及びMEK/ERK経路の下流活性化について評価した。(*p<0.05)。
図5】XP-524が、マウスPDACにおける生存を延長し、病理学的KRAS活性化を低減することを示す。(A)進行したPDACのモデルとして、Pdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/-(KPC)マウスを生成した。15週齢から開始して、PBSビヒクル又は5mg/kgのXP-524のいずれかの毎日の腹腔内注射をマウスに投与した。動物が瀕死である場合、膵臓組織を収集した。(B)登録後の日数における両群にわたるマウス(N=7/群)の生存を示す、カプラン-マイヤー曲線。(C、D)腺重量を含む、膵腺構造における肉眼的変化を研究エンドポイントで評価し、また各動物の体重に対して正規化し、結果を個々の値プロットとして示した。H&Eで、又は免疫組織化学を介して、pERK、E-カドヘリン、及びPCNA、又は切断カスパーゼ3に対して組織を染色し、記載されるように定量化し、結果を個々の値プロットとして示した。(E)極度に侵襲性のPDACのモデルとして、Pdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/-(KPPC)マウスを生成した。2週齢で、又は0.5cmの腫瘍を発症した場合のいずれかに、マウスを登録した。(F)登録後の日数における両群にわたるマウス(N=6/群)の生存を示す、カプラン-マイヤー曲線。(G、H)腺重量を含む、膵腺構造における肉眼的変化を研究エンドポイントで評価し、また各動物の体重に対して正規化し、結果を個々の値プロットとして示した。また、H&Eで、又は免疫組織化学を介して、pERK、E-カドヘリン、及びPCNA、又は切断カスパーゼ3に対して組織を染色し、記載されるように定量化し、結果を個々の値プロットとして示した。(*p<0.05)
図6】XP-524は、T細胞の動員を増強するが、機能的抗腫瘍免疫応答を促進しないことを示す。(A、B)進行したPDACのモデルとして、Pdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/-(KPC)マウスを生成した。15週齢から開始して、PBSビヒクル又は5mg/kgのXP-524のいずれかの毎日の腹腔内注射をマウスに投与した。動物が瀕死である場合、膵臓組織を収集し、H&E、又は免疫組織化学を介して、E-カドヘリン及びT細胞サロゲートCD3に対して、又はCD3及びT細胞消耗マーカPD-1に対して染色した。記載されているように組織切片を定量化し、個々の値プロットとして示した。(C)記載されるようにKPCを登録し、PBSビヒクル又は5mg/kgのXP-524のいずれかで処理した。2か月の処理後、腫瘍組織を収集し、それぞれ、腫瘍浸潤CD4+及びCD8+T細胞についてフローサイトメトリーによって分析した(N=4/群)。(D)以前に示されたCD8染色に基づいて腫瘍浸潤細胞をゲーティングし、個々の値プロットとして、IFNγに陽性の細胞の総数を示した。(E)PBS及びXP-524治療マウスの腫瘍からのCD4又はCD8、並びにT細胞消耗マーカPD-1のいずれかに陽性の細胞の総数。(F)CD4染色に基づいて腫瘍浸潤T細胞をゲーティングし、CD25及びFoxP3について分析し、個々の値プロットとしてCD4+CD25+FoxP3制御性T細胞の総数を示した。(G、H)DMSOビヒクル又は1μMのXP-524のいずれかでPanc1細胞を処理し、RNA配列決定によって分析し、遺伝子セットエンリッチメント分析を施し、抗原プロセシング及び提示経路の有意な濃縮が明らかなった。(I)PBS又はXP-524のいずれかで処理したKPCマウスからの組織を、免疫組織化学を介してMHCクラス1に対して染色し、代表的な画像を示した。(J、K)TGFβシグナル伝達経路の有意な下方調節が明らかである、記載されているように処理したPanc1のRNA配列決定及び遺伝子セットエンリッチメント分析。(L)ELISAによって、TGFβ1のレベルについて、PBS又はXP-524のいずれかで処理したKPCマウスからの均質化した腫瘍組織又は血清を分析した。(*p<0.05)
図7】XP-524は、PD-1阻害と協働して、KPCマウスにおける生存を更に延長することを示す。(A)進行したPDACのモデルとして、Pdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/-(KPC)マウスを生成した。15週齢から開始して、200μgの抗PD-1の週2回の腹腔内注射(N=7)、又は抗PD-1の週2回の注射(N=11)とともに5mg/kgのXP-524の毎日の注射のいずれかをマウスに投与した。動物が疾患に関連付けられた病的状態の徴候を示した場合、研究を終了した。(B)登録後の日数における両群にわたるマウスの生存を示す、カプラン-マイヤー曲線。(C~E)研究エンドポイントで膵臓組織を収集し、H&Eで、又は免疫組織化学を介してのいずれかで、汎白血球マーカCD45又はE-カドヘリン、及びT細胞サロゲートCD3に対して染色した。記載されているように組織を定量化し、個々の値プロットとして計数を示した。(F)また、細胞傷害性T細胞マーカCD8、CK19、及びグランザイムB、又はアポトーシスサロゲート切断カスパーゼ3に対して、腫瘍組織を染色した。(G)記載されているようにKPCマウスを登録し、抗PD-1、又はXP-524及び抗PD-1のいずれかで処理した。2か月の処理後、腫瘍組織を収集し、それぞれ、腫瘍浸潤CD4+及びCD8+T細胞についてフローサイトメトリーによって分析した(N=4/群)。(H)以前に示されたCD8染色に基づいて腫瘍浸潤細胞をゲーティングし、個々の値プロットとして、IFNγに陽性の細胞の総数を示した。(I)抗PD-1及びXP-524+抗PD-1治療マウスの腫瘍からのCD4又はCD8、並びにT細胞消耗マーカPD-1のいずれかに陽性の細胞の総数。(J)CD4染色に基づいて腫瘍浸潤T細胞をゲーティングし、CD25及びFoxP3について分析し、個々の値プロットとしてCD4+CD25+FoxP3制御性T細胞の総数を示した。(K)上に示されるCD8及びCD4染色に基づいて、脾臓及び腫瘍浸潤細胞をゲーティングし、CD8+事象を単離し、細胞傷害性T細胞活性化マーカパーフォリンの発現について分析した。個々の値プロットとして、CD8及びパーフォリンの両方に陽性の細胞の総数を示す。(L)腫瘍浸潤CD8+細胞を以前のようにゲーティングし、パーフォリン及びIFNγを含む前述のT細胞活性化マーカの同時発現について分析した。個々の値プロットとして、各群からのCD8+パーフォリン+IFNγ+細胞の数を示す。(*p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前述の記載及び関連付けられる図面に提示されている教示の利益を有する、開示されている組成物及び方法に関連する当業者には、本明細書に開示されている多くの修正及び他の実施形態が思い浮かぶであろう。したがって、本開示が開示される特定の実施形態に限定されず、修正及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。当業者は、本明細書に記載される態様の多くの変形及び翻案を認識するであろう。これらの変形及び翻案は、本開示の教示に含まれ、本明細書の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0011】
特定の用語が本明細書で用いられているが、それらは、一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【0012】
本開示を閲読すると当業者には明らかとなるように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴から容易に分離され得るか、又はそれらと組み合わされ得る個別の構成要素及び特徴を有する。
【0013】
任意の列挙される方法は、列挙される事象の順序、又は論理的に可能である任意の他の順序で実行することができる。すなわち、別段明示的な記述がない限り、本明細書に記載される任意の方法又は態様が、そのステップが特定の順序で実施されることを必要とするものとして解釈されることを決して意図しない。したがって、方法請求項は、特許請求の範囲又は記載において、ステップが特定の順序に限定されるものであると具体的に記述されない場合、いかなる点においても、順序を暗示することを決して意図しない。これは、ステップ又は操作フローの配置、文法的な構成若しくは句読点に由来する明白な意味、又は明細書に記載される態様の数若しくはタイプに関する論理事項を含む、解釈のための任意の可能な非明示的根拠について保持される。
【0014】
本明細書で言及された全ての刊行物は、その刊行物が引用される方法及び/又は材料に関連して開示及び記載されるように、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前に専らそれらの開示のために提供されている。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような公開に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、本明細書で提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、独立して確認することができる。
【0015】
本開示の態様は、法定制クラスなどの特定の法定クラスで記載及び特許請求され得るが、これは、便宜上のみのものであり、当業者は、本開示の各態様が任意の法定クラスで記載及び特許請求され得ることを理解するであろう。
【0016】
また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。別段定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される組成物及び方法が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書において定義されるものなどの用語は、本明細書の文脈及び関連技術におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で別段明示的な定義がない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが更に理解されるであろう。
【0017】
本開示の様々な態様について記載する前に、以下の定義が提供され、別段指示がない限り、使用されるべきである。追加の用語は、本開示の他の箇所に定義され得る。
【0018】
定義
本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」は、言及されるように記述される特徴、整数、ステップ、又は構成要素の存在を特定するものとして解釈されるものであるが、1つ以上の特徴、整数、ステップ、若しくは構成要素、又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。更に、「によって(by)」、「含むこと(comprising)、「含む(comprises)」、「で構成される(comprised of)」、「含むこと(including)」、「含む(includes)」、「含んだ(included)」、「関与すること(involving)」、「関与する(involves)」、「関与した(involved)」、及び「など(such as)」、という用語の各々は、それらの開放的な非限定的な意味で使用され、互換的に使用することができる。更に、「含むこと(comprising)」という用語は、「本質的に~からなること(consisting essentially of)」及び「~からなること(consisting of)」という用語によって包含される例及び態様を含むことが意図される。同様に、「本質的に~からなること」という用語は、「~からなること」という用語によって包含される例を含むことが意図される。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別段明らかな指示がない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「賦形剤」への言及としては、これらに限定されないが、2つ以上のそのような賦形剤の混合物又は組み合わせなどが挙げられる。
【0020】
比、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では範囲形式で表され得ることが留意されるべきである。範囲の各々の終点は、他の終点との関係、及び他の終点から独立した関係の両方において、著しいことが更に理解されるであろう。また、本明細書では、いくつかの値が開示されており、各値は、本明細書では、その値自体に加えて、「約」その特定の値としても開示されることが理解される。例えば、「10」という値が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、かつ/又は「約」別の特定の値までとして表され得る。同様に、値が先行詞「約」の使用により近似値として表される場合、特定の値が更なる態様を形成することを理解されたい。例えば、「約10」という値が開示されている場合、「10」も開示されている。
【0021】
ある範囲が表される場合、更なる態様は、1つの特定の値から、かつ/又は他の特定の値までを含む。例えば、記述される範囲が、限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のうちのいずれか又は両方を除外する範囲も本開示に含まれ、例えば、「x~y」という語句は、「x」~「y」の範囲、並びに「x」超かつ「y」未満の範囲を含む。範囲はまた、上限、例えば、「約x、y、z、又はそれ以下」として表され得、「約x」、「約y」、及び「約z」の特定の範囲、並びに「x未満」、y未満」、及び「z未満」の範囲を含むと解釈されるべきである。同様に、「約x、y、z、又はそれ以上」という語句は、「約x」、「約y」、及び「約z」の特定の範囲、並びに「x超」、「y超」、及び「z超」の範囲を含むと解釈されるべきである。加えて、「x」及び「y」が数値である場合、「約「x」~「y」」という語句は、約「x」~約「y」を含む。
【0022】
そのような範囲形式は、利便性及び簡潔性のために使用され、よって、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。説明するために、「約0.1%~5%」の数値範囲は、約0.1%~約5%の明示的に列挙された値だけを含むのではなく、指示された範囲内の個々の値(例えば、約1%、約2%、約3%、及び約4%)及び部分範囲(例えば、約0.5%~約1.1%、約5%~約2.4%、約0.5%~約3.2%、及び約0.5%~約4.4%、並びに他の可能な部分範囲)も含むように解釈されるべきである。よって、例えば、構成要素が、約1%、2%、3%、4%、又は5%の量であり、任意の値が、範囲の下限終点及び上限終点であり得る場合、任意の範囲は、1%~5%(例えば、1%~3%、2%~4%など)で企図される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約」、「およそ」、「ほぼ」、及び「実質的に」という用語は、問題の量又は値が、正確な値であり得るか、又は特許請求の範囲に列挙されているか、若しくは本明細書で教示されている同等の結果若しくは効果を提供する値であり得ることを意味する。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、並びに他の量及び特徴は、正確ではなく、かつ正確である必要はないが、所望に応じて、同等の結果又は効果が得られるような、公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に既知の他の要因を反映する、近似値であり得、かつ/又はより大きい若しくはより小さい場合があることが理解される。いくつかの状況では、同等の結果又は効果を提供する値は、合理的に決定することができない。そのような場合、「約」及び「ほぼ」は、別段指示又は暗示がない限り、±10%の変動を示す公称値を意味することが一般に理解される。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又は他の量若しくは特徴は、そのようなものであると明示的に記述されているか否かにかかわらず、「約」、「およそ」、又は「ほぼ」である。定量的な値の前に「約」「およそ」、又は「ほぼ」が使用される場合、パラメータはまた、別段具体的な記述がない限り、特定の定量的な値自体を含むことが理解される。
【0024】
本明細書で使用される場合、「IC50」は、生物学的プロセス、又はプロセスの構成要素の50%阻害に必要とされる物質(例えば、化合物又は薬物)の濃度を指すことが意図される。例えば、IC50は、好適なアッセイで決定した、物質の最大半量(50%)阻害濃度(IC)を指す。
【0025】
化学種の残基は、本明細書及び結びの請求項で使用される場合、その部分が実際に化学種から得られるかどうかにかかわらず、特定の反応スキームにおける化学種の結果として得られる生成物、又はその後の製剤若しくは化学製品である部分を指す。よって、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、ポリエステルを調製するためにエチレングリコールが使用されるか否かにかかわらず、ポリエステル中の1つ以上の-OCHCHO-単位を指す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、その残基が、ポリエステルを得るためにセバシン酸又はそのエステルを反応させることによって得られるか否かにかかわらず、ポリエステル中の1つ以上の-CO(CHCO-部分を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図される。広い態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環状及び環状、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、後述するものが挙げられる。許容される置換基は、1つ以上であり得、適切な有機化合物と同じか又は異なり得る。本開示の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有することができる。本開示は、いかなる方法によっても、有機化合物の許容される置換基によって制限されることを意図しない。また、「置換」又は「で置換された」という用語は、そのような置換が、置換された原子及び置換基の許容される原子価に従い、置換が、安定な化合物、例えば、再配列、環化、排除などによる形質変換を自発的に受けない化合物を生じるという暗示的な条件を含む。また、ある特定の態様では、別段明示的な反対の指示がない限り、個々の置換基は、更に任意選択的に置換され得る(すなわち、更に置換又は非置換であり得る)ことが企図される。
【0027】
置換基の位置は、芳香環内の他の置換基の位置に対して定義することができる。例えば、「R」基との関係で以下に示されるように、第2の置換基は、R基に対する「オルト」、「パラ」、又は「メタ」であり得、これは、第2の置換基が、以下に示されるようにオルト、パラ、又はメタと標識された炭素に結合されることを意味する。所与の基又は置換基に対するオルト、パラ、及びメタ置換基の組み合わせも想定され、開示されているとみなされるべきである。
【化2】

【0028】
様々な用語の定義において、「A」、「A」、「A」、及び「A」は、本明細書では、様々な特定の置換基を表すための一般的な記号として使用される。これらの記号は、本明細書に開示されるものに限定されず、任意の置換基であり得、それらが、1つの例において、ある特定の置換基であると定義される場合、別の例において、いくつかの他の置換基として定義され得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「脂肪族」又は「脂肪族基」という用語は、直鎖(すなわち、非分岐)、分岐鎖、又は環式(縮合、架橋、及びスピロ融合多環式を含む)であり得、完全に飽和していてもよいか、又は1つ以上の不飽和単位を含有していてもよいが、芳香族ではない、炭化水素部分を示す。別段指示がない限り、脂肪族基は、1~20個の炭素原子を含有する。脂肪族基としては、これらに限定されないが、線状又は分岐状の、アルキル、アルケニル、及びアルキニル基、並びに(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、又は(シクロアルキル)アルケニルなどのそれらのハイブリッドが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどの、1~24個の炭素原子の分岐状又は非分岐状の飽和炭化水素基である。アルキル基は、環式又は非環式であり得る。アルキル基は、分岐状又は非分岐状であり得る。アルキル基はまた、置換又は非置換であり得る。例えば、アルキル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオールを含む、1つ以上の基で置換され得る。「低級アルキル」基は、1~6つ(例えば、1~4つ)の炭素原子を含有するアルキル基である。アルキル基という用語はまた、C1アルキル、C1-C2アルキル、C1-C3アルキル、C1-C4アルキル、C1-C5アルキル、C1-C6アルキル、C1-C7アルキル、C1-C8アルキル、C1-C9アルキル、C1-C10アルキルなどであり得、最大C1-C24アルキルを含む。
【0031】
本明細書全体を通じて、「アルキル」は、一般に、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指すために使用されるが、しかしながら、置換アルキル基はまた、本明細書では、アルキル基上の特定の置換基(複数可)を同定することによって具体的に言及される。例えば、「ハロゲン化アルキル」又は「ハロアルキル」という用語は、具体的には、1つ以上のハロゲン化物、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素で置換されているアルキル基を指す。代替的に、「モノハロアルキル」という用語は、具体的には、単一のハロゲン化物、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素で置換されているアルキル基を指す。「ポリハロアルキル」という用語は、具体的には、独立して、2つ以上のハロゲン化物で置換されているアルキル基を指す、すなわち、各ハロゲン化物置換基は、別のハロゲン化物置換基と同じハロゲン化物である必要はなく、ハロゲン化物置換基の複数の例は、同じ炭素上にある必要もない。「アルコキシアルキル」という用語は、具体的には、以下に記載される1つ以上のアルコキシ基で置換されているアルキル基を指す。「アミノアルキル」という用語は、具体的には、1つ以上のアミノ基で置換されているアルキル基を指す。「ヒドロキシアルキル」という用語は、具体的には、1つ以上のヒドロキシ基で置換されているアルキル基を指す。「アルキル」がある例で使用され、「ヒドロキシアルキル」などの特定の用語が別の例で使用される場合、「アルキル」という用語は、また、「ヒドロキシアルキル」などの特定の用語を暗示することを意味するものではない。
【0032】
この慣例は、本明細書に記載される他の基にも使用される。すなわち、「シクロアルキル」などの用語は、非置換及び置換シクロアルキル部分の両方を指すが、置換部分は、加えて、本明細書で具体的に特定され得、例えば、特定の置換シクロアルキルは、例えば、「アルキルシクロアルキル」と称され得る。同様に、置換アルコキシは、具体的には、例えば、「ハロゲン化アルコキシ」と称され得、特定の置換アルケニルは、例えば、「アルケニルアルコール」であり得るなどである。繰り返しになるが、「シクロアルキル」などの一般用語、及び「アルキルシクロアルキル」などの特定の用語を使用する慣例は、また、一般用語が特定の用語を含まないことを暗示することを意味しない。
【0033】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3つの炭素原子で構成される非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニルなどが挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、上に定義されるタイプのシクロアルキル基であり、「シクロアルキル」という用語の意味内に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1つが、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、又はリンなどのヘテロ原子で置き換えられている。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオールを含む、1つ以上の基で置換され得る。
【0034】
本明細書で使用される「アルカンジイル」という用語は、1つ又は2つの飽和炭素原子(複数可)を付着点(複数可)として有し、線状又は分岐状のシクロ、環式、又は非環式構造の、炭素-炭素二重結合又は三重結合を有せず、炭素及び水素以外の原子を有しない、二価飽和脂肪族基を指す。-CH-(メチレン)、-CHCH-、-CHC(CHCH-、及び-CHCHCH-基は、アルカンジイル基の非限定的な例である。
【0035】
エーテル結合を通じて結合したアルキル又はシクロアルキル基を指すために本明細書で使用される「アルコキシ」及び「アルコキシル」という用語、すなわち、「アルコキシ」基は、-OAとして定義され得、式中、Aが、上に定義されるアルキル又はシクロアルキルである。「アルコキシ」はまた、まさに記載されているアルコキシ基のポリマーを含み、すなわち、アルコキシは、-OA-OA又は-OA-(OA-OAなどのポリエーテルであり得、式中、「a」が、1~200の整数であり、A、A、及びAが、アルキル及び/又はシクロアルキル基である。
【0036】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する構造式を有する、2~24個の炭素原子の炭化水素基である。(A)C=C(A)などの非対称構造は、E及びZ異性体の両方を含むことが意図される。これは、非対称アルケンが存在するか、又はそれを結合記号C=Cによって明示的に示され得る、本明細書の構造式で推定することができる。アルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジ化物、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオールを含む、1つ以上の基で置換され得る。
【0037】
本明細書で使用される「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも3つの炭素原子で構成され、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、すなわちC=Cを含有する非芳香族炭素系環である。シクロアルケニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニルなどが挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、上に定義されるタイプのシクロアルケニル基であり、「シクロアルケニル」という用語の意味内に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1つが、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、又はリンなどのヘテロ原子で置き換えられている。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジ化物、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオールを含む、1つ以上の基で置換され得る。
【0038】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する構造式を有する、2~24個の炭素原子の炭化水素基である。アルキニル基は、非置換であり得るか、又はこれらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジ化物、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、若しくはチオールを含む、1つ以上の基で置換され得る。
【0039】
本明細書で使用される「シクロアルキニル」という用語は、少なくとも7つの炭素原子で構成され、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含有する、非芳香族炭素系環である。シクロアルキニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロオクチニル、シクロノニニルなどが挙げられる。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、上に定義されるタイプのシクロアルケニル基であり、「シクロアルキニル」という用語の意味内に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1つが、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、又はリンなどのヘテロ原子で置き換えられている。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジ化物、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオールを含む、1つ以上の基で置換され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「芳香族基」という用語は、分子の平面の上下に非局在化π電子の環式雲を有する環構造を指し、π雲は、(4n+2)π電子を含有する。芳香族性の更なる考察は、参照により本明細書に組み込まれる、Morrison and Boyd,Organic Chemistry,(5th Ed.,1987),Chapter 13,entitled“Aromaticity,”pages 477-497に見出される。「芳香族基」という用語は、アリール基及びヘテロアリール基の両方を含む。
【0041】
本明細書で使用される、「アリール」という用語は、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、アントラセンなどを含むが、これらに限定されない、任意の炭素系芳香族基を含有する基である。アリール基は、置換又は非置換であり得る。アリール基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、-NH、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジ化物、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオールを含む、1つ以上の基で置換され得る。「ビアリール」という用語は、特定のタイプのアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。加えて、アリール基は、単一の環構造であり得るか、又は縮合環構造であるか、若しくは炭素-炭素結合などの1つ以上の架橋基を介して結合しているかのいずれかである複数の環構造を含むことができる。例えば、ビアリールは、ナフタレンにあるような縮合環構造を介して一緒に結合している2つのアリール基であり得るか、又はビフェニルにあるような1つ以上の炭素-炭素結合を介して結合している。これらに限定されないが、インデン及びナフタレン基を含む縮合アリール基もまた、企図される。
【0042】
本明細書で使用される「アルデヒド」という用語は、式-C(O)Hによって表される。本明細書全体を通じて、「C(O)」は、カルボニル基、すなわち、C=Oの短縮表記である。
【0043】
本明細書で使用される「アミン」又は「アミノ」という用語は、式-NAによって表され、式中、A及びAが、独立して、水素、又は本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、若しくはヘテロアリール基であり得る。アミノの具体例は、-NHである。
【0044】
本明細書で使用される「アルキルアミノ」という用語は、式-NH(-アルキル)及び-N(-アルキル)によって表され、アルキルが、本明細書に記載されるものである。代表例としては、これらに限定されないが、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、(sec-ブチル)アミノ基、(tert-ブチル)アミノ基、ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、(tert-ペンチル)アミノ基、ヘキシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(tert-ブチル)アミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジ(tert-ペンチル)アミノ基、ジヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-プロピルアミノ基、N-エチル-N-プロピルアミノ基などが挙げられる。
【0045】
本明細書で使用される「カルボン酸」という用語は、式-C(O)OHによって表される。
【0046】
本明細書で使用される「エステル」という用語は、式-OC(O)A又は-C(O)OAによって表され、式中、Aが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得る。
【0047】
本明細書で使用される「エーテル」という用語は、式AOAによって表され、式中、A及びAが、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得る。
【0048】
本明細書で使用される「ハロ」、「ハロゲン」、又は「ハロゲン化物」という用語は、互換的に使用され得、F、Cl、Br、又はIを指す。
【0049】
本明細書で使用される「擬ハロゲン化物」、「擬ハロゲン」、又は「擬ハロ」という用語は、互換的に使用され得、ハロゲン化物と実質的に同様に挙動する官能基を指す。そのような官能基としては、例として、シアノ、チオシアナト、アジド、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ペルフルオロアルキル、及びペルフルオロアルコキシ基が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される「ヘテロアルキル」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を含有するアルキル基を指す。好適なヘテロ原子としては、これらに限定されないが、O、N、Si、P、及びSが挙げられ、窒素、リン、及び硫黄原子が、任意選択的に酸化され、窒素ヘテロ原子が、任意選択的に四級化される。ヘテロアルキルは、アルキル基について上に定義されるように置換され得る。
【0051】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、芳香族基の環内に組み込まれた少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基を指す。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄、及びリンが挙げられるが、これらに限定されず、N-酸化物、硫黄酸化物、及び二酸化物は、許容されるヘテロ原子置換である。ヘテロアリール基は、置換又は非置換であり得る。ヘテロアリール基は、本明細書に記載されるように、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオールを含むが、これらに限定されない1つ以上の基で置換することができる。ヘテロアリール基は、単環式、又は代替的に縮合環系であり得る。ヘテロアリール基としては、フリル、イミダゾリル、ピリミジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリジニル、ピロリル、N-メチルピロリル、キノリニル、イソキノリニル、ピラゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾチオフェニル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピラゾロピリジニル、及びピラゾロピリミジニルが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基の更なる非限定的な例としては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、キノリニル、キナゾリニル、インダゾリル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、イミダゾ[1,2-a]ピラジニル、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾリル、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾリル、及びピリド[2,3-b]ピラジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される場合、「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、互換的に使用され得、環員のうちの少なくとも1つが、炭素以外である、単環式及び多環式芳香族又は非芳香環系を指す。よって、この用語は、これらに限定されないが、「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロアリール」、「二環式複素環」、及び「多環式複素環」を含む。複素環としては、ピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェン、ピロール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、及び1,3,4-オキサジアゾールを含むオキサゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、及び1,3,4-チアジアゾールを含むチアジアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,3,4-トリアゾールを含むトリアゾール、1,2,3,4-テトラゾール及び1,2,4,5-テトラゾールを含むテトラゾール、ピリダジン、ピラジン、1,2,4-トリアジン及び1,3,5-トリアジンを含むトリアジン、1,2,4,5-テトラジンを含むテトラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼチジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。ヘテロシクリル基という用語はまた、C2ヘテロシクリル、C2-C3ヘテロシクリル、C2-C4ヘテロシクリル、C2-C5ヘテロシクリル、C2-C6ヘテロシクリル、C2-C7ヘテロシクリル、C2-C8ヘテロシクリル、C2-C9ヘテロシクリル、C2-C10ヘテロシクリル、C2-C11ヘテロシクリルなどであり得、最大C2-C18ヘテロシクリルを含む。例えば、C2ヘテロシクリルは、これらに限定されないが、アジリジニル、ジアゼチジニル、ジヒドロジアゼチル、オキシラニル、チイイラニル(thiiranyl)などを含む、2つの炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を有する基を含む。代替的に、例えば、C5ヘテロシクリルは、これらに限定されないが、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ジアゼパニル、ピリジニルなどを含む、5つの炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を有する基を含む。ヘテロシクリル基は、化学的に可能な場合、環内のヘテロ原子、又はヘテロシクリル環を含む炭素のうちの1つを通じてのいずれかで結合され得ることが理解される。
【0053】
本明細書で使用される「二環式複素環」又は「二環式ヘテロシクリル」という用語は、環員のうちの少なくとも1つが炭素以外である環系を指す。二環式ヘテロシクリルは、芳香環が、別の芳香環と縮合されているか、又は芳香環が、非芳香環と縮合されている環系を包含する。二環式ヘテロシクリルは、ベンゼン環が、1、2、若しくは3つの環ヘテロ原子を含有する5若しくは6員環に縮合されているか、又はピリジン環が、1、2、若しくは3つの環ヘテロ原子を含有する5若しくは6員環に縮合されている環系を包含する。二環式複素環式基としては、これらに限定されないが、インドリル、インダゾリル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジニル、ベンゾフラニル、キノリニル、キノキサリニル、1,3-ベンゾジオキソリル、2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシニル、3,4-ジヒドロ-2H-クロメニル、1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-3-イル;1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル;及び1H-ピラゾロ[3,2-b]ピリジン-3-イルが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、3~8つの原子の単環、並びに二環式及び三環式環系を含む、脂肪族の、部分的不飽和又は完全飽和の3~14員環系を指す。ヘテロシクロアルキル環系は、酸素、窒素、及び硫黄から独立して選択される1~4つのヘテロ原子を含み、窒素及び硫黄ヘテロ原子が、任意選択的に酸化され得、窒素ヘテロ原子が、任意選択的に置換され得る。代表的なヘテロシクロアルキル基としては、これらに限定されないが、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、及びテトラヒドロフリルが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される「ヒドロキシル」又は「ヒドロキシ」という用語は、式-OHによって表される。
【0056】
本明細書で使用される「ケトン」という用語は、式AC(O)Aによって表され、式中、A及びAが、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得る。
【0057】
本明細書で使用される「アジ化物」又は「アジド」という用語は、式-Nによって表される。
【0058】
本明細書で使用される「ニトロ」という用語は、式-NOによって表される。
【0059】
本明細書で使用される「ニトリル」又は「シアノ」という用語は、式-CNによって表される。
【0060】
本明細書で使用される「シリル」という用語は、式-SiAによって表され、式中、A、A、及びAが、独立して、水素、又は本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、若しくはヘテロアリール基であり得る。
【0061】
本明細書で使用される「スルホ-オキソ」という用語は、式-S(O)A、-S(O)、-OS(O)、又は-OS(O)OAによって表され、式中、Aが、水素、又は本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、若しくはヘテロアリール基であり得る。本明細書全体を通じて、「S(O)」は、S=Oの短縮表記である。「スルホニル」という用語は、本明細書では、式-S(O)によって表されるスルホ-オキソ基を指すために使用され、式中、が、水素、又は本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、若しくはヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用される「スルホン」という用語は、式AS(O)によって表され、式中、A及びAが、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用される「スルホキシド」という用語は、式AS(O)Aによって表され、式中、A及びAが、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得る。
【0062】
本明細書で使用される「チオール」という用語は、式-SHによって表される。
【0063】
「R」、「R」、「R」…式中、nが、整数である「R」は、本明細書で使用される場合、独立して、上に列挙される基のうちの1つ以上を有し得る。例えば、Rが、直鎖アルキル基である場合、アルキル基の水素原子のうちの1つは、任意選択的に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン化物などで置換され得る。選択される基に応じて、第1の基が第2の基内に組み込まれ得るか、又は代替的に、第1の基が第2の基に対するペンダントであり得る(すなわち、結合され得る)。例えば、「アミノ基を含むアルキル基」という句では、アミノ基は、アルキル基の骨格内に組み込むことができる。代替的に、アミノ基をアルキル基の骨格に結合させることができる。選択される基(複数可)の性質が、第1の基が第2の基に埋め込まれるか又は結合されるかを決定する。
【0064】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、「任意選択的に置換された」部分を含有し得る。一般に、「置換された」という用語は、「任意選択的に」という用語が前に付されるか否かにかかわらず、指定された部分の1つ以上の水素が好適な置換基で置き換えられることを意味する。別段の指示がない限り、「任意選択的に置換された」基は、基の各々の置換可能な位置に好適な置換基を有してもよく、任意の所与の構造内の2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、全ての位置で同じであっても異なってもよい。本発明によって想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定な又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。ある特定の態様において、別段明示的な反対の指示がない限り、個々の置換基は、更に任意選択的に置換され得る(すなわち、更に置換されるか、又は置換されない)こともまた企図される。
【0065】
「安定な」という用語は、本明細書で使用される場合、それらの生成、検出、並びにある特定の態様では、それらの回収、精製、及び本明細書に開示される目的のうちの1つ以上のための使用を可能にする条件を施されても、実質的に変化しない化合物を指す。
【0066】
「任意選択的に置換された」基の置換可能な炭素原子上の好適な一価置換基は、独立して、ハロゲン;-(CH0-4R°;-(CH0-4OR°;-O(CH0-4R°、-O-(CH0-4C(O)OR°;-(CH0-4CH(OR°);-(CH0-4SR°;R°で置換され得る-(CH0-4Ph;R°で置換され得る-(CH0-4O(CH0-1Ph;R°で置換され得る-CH=CHPh;R°で置換され得る-(CH0-4O(CH0-1-ピリジル;-NO;-CN;-N;-(CH0-4N(R°);-(CH0-4N(R°)C(O)R°;-N(R°)C(S)R°;-(CH0-4N(R°)C(O)NR°;-N(R°)C(S)NR°;-(CH0-4N(R°)C(O)OR°;-N(R°)N(R°)C(O)R°;-N(R°)N(R°)C(O)NR°;-N(R°)N(R°)C(O)OR°;-(CH0-4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH0-4C(O)OR°;-(CH0-4C(O)SR°;-(CH0-4C(O)OSiR°;-(CH0-4OC(O)R°;-OC(O)(CH0-4SR-、SC(S)SR°;-(CH0-4SC(O)R°;-(CH0-4C(O)NR°;-C(S)NR°;-C(S)SR°;-(CH0-4OC(O)NR°;-C(O)N(OR°)R°;-C(O)C(O)R°;-C(O)CHC(O)R°;-C(NOR°)R°;-(CH0-4SSR°;-(CH0-4S(O)R°;-(CH0-4S(O)OR°;-(CH0-4OS(O)R°;-S(O)NR°;-(CH0-4S(O)R°;-N(R°)S(O)NR°;-N(R°)S(O)R°;-N(OR°)R°;-C(NH)NR°;-P(O)R°;-P(O)R°;-OP(O)R°;-OP(O)(OR°);SiR°;-(C1-4直鎖又は分岐状アルキレン)O-N(R°);又は-(C1-4直鎖又は分岐状アルキレン)C(O)O-N(R°)であり、式中、各R°が、以下に定義されるように置換され得、独立して、水素、C1-6脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、-CH-(5~6員ヘテロアリール環)、若しくは窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール環であるか、又は上の定義にかかわらず、R°の2つの独立した出現が、それらの介在する原子(複数可)と一緒になって、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する3~12員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール単環式若しくは二環式環を形成する。
【0067】
R°上の好適な一価置換基(又はそれらの介在する原子と一緒になって、R°の2つの独立した出現によって形成される環)は、独立して、ハロゲン、-(CH0-2、-(ハロR)、-(CH0-2OH、-(CH0-2OR、-(CH0-2CH(OR;-O(ハロR)、-CN、-N、-(CH0-2C(O)R、-(CH0-2C(O)OH、-(CH0-2C(O)OR、-(CH0-2SR、-(CH0-2SH、-(CH0-2NH、-(CH0-2NHR、-(CH0-2NR 、-NO、-SiR 、-OSiR 、-C(O)SR、-(C1-4直鎖又は分岐状アルキレン)C(O)OR、又は-SSRであり、式中、各Rが、非置換であるか、又は「ハロ」が先行する場合、1つ以上のハロゲンでのみ置換され、かつ独立して、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール環である。R°の飽和炭素原子上の好適な二価置換基としては、=O及び=Sが挙げられる。
【0068】
「任意選択的に置換された」基の飽和炭素原子上の好適な二価置換基としては、以下の:=O、=S、=NNR 、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、-O(C(R ))2-3O-、又は-S(C(R ))2-3S-が挙げられ、式中、Rの独立した各出現が、水素、以下に定義されるように置換され得るC1-6脂肪族、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール環から選択される。「任意選択的に置換された」基の近傍の置換可能な炭素に結合している好適な二価置換基としては、-O(CR 2-3O-が挙げられ、式中、Rの独立した各出現が、水素、以下に定義されるように置換され得るC1-6脂肪族、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール環から選択される。
【0069】
の脂肪族基上の好適な置換基としては、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、又は-NOが挙げられ、式中、各Rが、非置換であるか、又は「ハロ」が先行する場合、1つ以上のハロゲンでのみ置換され、かつ独立して、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール環である。
【0070】
「任意選択的に置換された」基の置換可能な窒素上の好適な置換基としては、-R、-NR 、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)C(O)R、-C(O)CHC(O)R、-S(O)、-S(O)NR 、-C(S)NR 、-C(NH)NR 、又は-N(R)S(O)が挙げられ、式中、各Rが、独立して、水素、以下に定義されるように置換され得るC1-6脂肪族、非置換-OPh、若しくは窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール環であるか、又は上の定義にかかわらず、Rの2つの独立した出現が、それらの介在する原子(複数可)と一緒になって、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する非置換の3~12員の飽和、部分的飽和、若しくはアリール単環式若しくは二環式環を形成する。
【0071】
の脂肪族基上の好適な置換基は、独立して、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、又は-NOであり、式中、各Rが、非置換であるか、又は「ハロ」が先行する場合、1つ以上のハロゲンでのみ置換され、かつ独立して、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4つのヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的不飽和、若しくはアリール環である。
【0072】
「離脱基」という用語は、結合電子を伴って、安定な種として置き換えることができる電子求引能力を有する原子(又は原子群)を指す。好適な脱離基の例としては、ハロゲン化物、並びにこれらに限定されないが、トリフレート、メシレート、トシレート、及びブロシレートを含む、スルホン酸エステルが挙げられる。
【0073】
本明細書に記載される化合物は、1つ以上の二重結合を含有し、よって、潜在的には、シス/トランス(E/Z)異性体、及び他の立体構造異性体を生じ得る。反対の記述がない限り、本発明は、全てのそのような可能な異性体、及びそのような異性体の混合物を含む。
【0074】
反対の記述がない限り、実線としてのみ示され、くさび又は破線として示されない化学結合を有する式は、各々の可能な異性体、例えば、各エナンチオマー及びジアステレオマー、並びに異性体の混合物、例えば、ラセミ又はスケールミック(scalemic)混合物を企図する。本明細書に記載される化合物は、1つ以上の非対称中心を含有することができ、よって、潜在的にジアステレオマー及び光学異性体を生じさせる。反対の記述がない限り、本発明は、全てのそのような可能なジアステレオマー、並びにそれらのラセミ混合物、それらの実質的に純粋な分解されたエナンチオマー、全ての可能な幾何異性体、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。立体異性体の混合物、及び単離された特定の立体異性体も含まれる。そのような化合物を調製するために使用される合成手順の経過中、又は当業者に既知のラセミ化若しくはエピマー化手順を使用する際に、そのような手順の生成物は、立体異性体の混合物であり得る。
【0075】
多くの有機化合物は、平面偏光の平面を回転させる能力を有する光学的に活性な形態で存在する。光学的に活性な化合物を説明する際、接頭辞D及びL又はR及びSは、そのキラル中心(複数可)についての分子の絶対構成を示すために使用される。接頭辞d及びl、又は(+)及び(-)は、化合物による平面偏光の回転の記号を示すために用いられ、(-)又はlは、化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdを接頭辞とする化合物は、右旋性である。所与の化学構造について、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、それらが互いの重ね合わせ不可能な鏡像であることを除いて、同一である。特定の立体異性体は、エナンチオマーとも称され得、そのような異性体の混合物は、しばしばエナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50の混合物は、ラセミ混合物と称される。本明細書に記載される化合物の多くは、1つ以上のキラル中心を有することができ、したがって、異なる鏡像異性体形態で存在することができる。所望であれば、キラル炭素は、アスタリスク(*)で示すことができる。キラル炭素への結合が、開示される式中で直線として示されるとき、キラル炭素の(R)及び(S)構成の両方、したがって、エナンチオマー及びそれらの混合物の両方が、式内に包含されることが理解される。当該技術分野で使用されるように、キラル炭素についての絶対構成を特定することが望ましいとき、キラル炭素への結合の一方は、くさび(平面よりの上の原子への結合)として示すことができ、他方は、短い平行線の列又はくさび(平面より下の原子への結合)として示すことができる。カーン-インゴールド-プレローグシステムは、(R)又は(S)構成をキラル炭素に割り当てるために使用することができる。
【0076】
本明細書に記載される化合物は、それらの天然同位体存在量及び非天然存在量の両方で原子を含むことができる。開示される化合物は、記載されるものと同一に同位体標識されたか又は同位体置換された化合物であり得るが、1つ以上の原子が、典型的には自然界において見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられるという事実のためである。本発明の化合物に組み込まれ得る例示的な同位体としては、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、及び36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素、及び塩素の同位体が挙げられる。化合物は、そのプロドラッグを更に含み、当該化合物の、又は前述の同位体及び/若しくは他の原子の他の同位体を含有する当該プロドラッグの薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内である。本発明のある特定の同位体標識された化合物、例えば、H及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれたものは、薬物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化された、すなわち、H、及び炭素-14、すなわち、14C同位体は、それらの調製の容易さ及び検出可能性のために特に好ましい。更に、重水素、すなわち、Hなどのより重い同位体での置換は、より高い代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加又は投与量要件の低減を生じるある特定の治療上の利点をもたらすことができ、したがって、いくつかの状況において好ましい場合がある。本発明の同位体標識された化合物及びそのプロドラッグは、一般に、同位体標識されていない試薬を、容易に入手可能な同位体標識された試薬に置換することによって、以下の手順を実行することによって調製することができる。
【0077】
本発明に記載される化合物は、溶媒和物として存在する場合がある。いくつかの場合では、溶媒和物を調製するために使用される溶媒は、水溶液であり、溶媒和物は、しばしば水和物と呼ばれる。化合物は、水和物として存在することができ、これは、例えば、溶媒から又は水溶液からの結晶化によって得ることができる。この関連で、1つ、2つ、3つ、又はいずれかの任意の数の溶媒又は水分子は、本発明による化合物と組み合わせて、溶媒和物及び水和物を形成することができる。反対の記述がない限り、本発明は、全てのそのような可能な溶媒和物を含む。
【0078】
本明細書に記載されるある特定の化合物は、互変異性体の平衡状態として存在することができることも理解される。例えば、α-水素を有するケトンは、ケト形態及びエノール形態の平衡状態で存在することができる。
【化3】


同様に、N-水素を有するアミドは、アミド形態及びイミド酸形態の平衡状態で存在することができる。反対の記述がない限り、本発明は、全てのそのような可能な互変異性体を含む。
【0079】
化学物質は、多形形態又は修飾と称される異なる秩序状態で存在する固体を形成することが知られている。多形物質の異なる修飾は、それらの物理的特性において大きく異なり得る。本発明による化合物は、異なる多形形態で存在することができ、特定の修飾が準安定であることが可能である。反対の記述がない限り、本発明は、全てのそのような可能な多形形態を含む。
【0080】
いくつかの態様では、化合物の構造は、以下の式によって表され得、
【化4】

【0081】
以下の式と同等であると理解され、
【化5】

【0082】
式中、nが、典型的には、整数である。すなわち、Rは、5つの独立した置換基、Rn(a)、Rn(b)、Rn(c)、Rn(d)、及びRn(e)を表すと理解される。「独立した置換基」とは、各R置換基が、独立して定義され得ることを意味する。例えば、一例では、Rn(a)が、ハロゲンである場合、その場合Rn(b)は、必ずしもハロゲンである必要はない。
【0083】
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮、経真皮、筋肉内、関節内、非経口、動脈内、真皮内、脳室内、骨内、眼内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、心臓内、関節内、海綿体内、髄腔内、硝子体内、脳内、及び脳室内、鼓膜内、蝸牛内、直腸、膣内、吸入による、カテーテル、ステントによる、又は埋め込みリザーバ若しくは血管周囲空間及び外膜を能動的若しくは受動的のいずれかで(例えば、拡散によって)組成物を投与する他のデバイスを介する投与を指すことができる。例えば、ステントなどの医療デバイスは、その表面に配置された組成物又は製剤を含有することができ、次いで、その組成物又は製剤は、周囲の組織及び細胞に溶解又は分散することができる。「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病変内、及び頭蓋内への注射又は注入技法を含み得る。投与は、連続的又は断続的であり得る。様々な態様において、調製物は、治療的に投与することができる、すなわち、既存の疾患又は状態を治療するために投与される。更なる様々な態様では、調製物は、予防的に投与され得る、すなわち、疾患又は状態の予防のために投与される。
【0084】
本明細書で互換的に使用される場合、「対象」、「個体」、又は「患者」は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの脊椎動物生物を指すことができる。また、「対象」は、細胞、細胞の集団、組織、臓器、又は生物、好ましくはヒト及びその構成要素を指すことができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「治療すること」及び「治療」という用語は、一般に、望ましい薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを指すことができる。効果は、血液学的悪性腫瘍、乳がん、及び/又は別の固形悪性腫瘍などの疾患、その症状、又は状態の予防又は部分的予防という点で予防的であり得るが、必ずしもそうである必要はない。効果は、疾患、障害、又は状態に起因する疾患、状態、症状、又は有害作用の部分的又は完全な治癒という点で治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」という用語は、対象、特にヒトにおける血液学的悪性腫瘍、乳がん、及び/又は別の固形腫瘍の任意の治療を含むことができ、以下の:(a)疾患の素因を有し得るが、まだ疾患を有すると診断されていない対象において、疾患が発生するのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、疾患の発症を阻止すること、並びに(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患及び/又はその症状若しくは状態を緩和又は改善すること、のうちの任意の1つ以上を含むことができる。本明細書で使用される「治療」という用語は、治療的治療単独、予防的治療単独の両方、又は治療的治療と予防的治療との両方を指すことができる。治療を必要とするもの(治療を必要とする対象)としては、既に障害を有するもの、及び/又は障害を予防するべきものを含み得る。本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、疾患、障害、又は状態を阻害すること、例えば、その進行を妨げること、並びに疾患、障害、又は状態を緩和すること、例えば、疾患、障害、及び/又は状態の退行を引き起こすことを含み得る。疾患、障害、又は状態を治療することは、基礎となる病態生理学が影響を受けない場合であっても、特定の疾患、障害、又は状態の少なくとも1つの症状を改善すること、例えば、そのような薬剤が疼痛の原因を治療しないにもかかわらず、鎮痛剤の投与によって対象の疼痛を治療することなどを含み得る。
【0086】
本明細書で使用される場合、「治療薬」は、疾患、障害、状態、若しくは副作用の治療、治癒、及び/若しくは改善、又は疾患、障害、状態、若しくは副作用の進行速度の減少を指すことができる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、細胞、組織、系、動物、又はヒトの有益な又は望ましい生物学的、感情的、医学的、又は臨床的応答をもたらすのに十分である、本明細書に提供される開示される化合物又は薬学的組成物の量を指すことができる。有効量は、1回以上の投与、適用、又は投与量で投与され得る。この用語はまた、その範囲内に、実質的に正常な生理学的機能を増強又は回復するのに有効な量を含み得る。
【0088】
例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。所望であれば、有効な1日用量は、投与のために複数の用量に分割することができる。結果的に、単回用量組成物は、1日用量を構成するためにそのような量又はその約数を含有することができる。任意の禁忌の事象では、個々の医師によって投与量が調整され得る。一般に、本発明の薬理学的薬剤の(単独で又は他の治療剤と組み合わせた)最大用量、すなわち、健全な医学的判断による最高安全用量が使用されることが好ましい。しかしながら、患者は、医学的理由、心理的理由、又は事実上の任意の他の理由から、より低い用量又は寛容可能な用量を要求し得ることが、当業者によって理解されるであろう。
【0089】
開示される化合物及び/又は薬学的組成物の治療有効用量に対する応答は、例えば、治療又は薬理学的薬剤の投与後の疾患症状の減少又は欠如などの、治療又は医薬品の生理学的効果を決定することによって測定することができる。応答のレベルを測定するための他のアッセイが、当業者に既知であり、用いられ得る。治療の量は、例えば、開示される化合物及び/又は薬学的組成物の量を増加又は減少させることによって、開示される化合物及び/又は投与される薬学的組成物を変更することによって、投与経路を変更することによって、投与タイミングを変更することによってなどによって変動し得る。投与量は、変動し得、1日又は数日間、1日1回以上の用量投与で投与され得る。ガイダンスは、所与のクラスの薬学的製品の適切な投与量についての文献に見出すことができる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「予防有効量」という用語は、疾患又は状態の発症又は開始を予防するのに有効な量を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」又は「予防すること(preventing)」という用語は、特に事前の行為によって、何かが起こるのを妨げる、回避する、排除する、未然に防ぐ、阻止する、又は妨害することを指す。低減させる、阻害する、又は予防するが本明細書で使用される場合、別段具体的な指示がない限り、他の2つの語の使用も明示的に開示されることが理解される。
【0092】
「薬学的に許容される」という用語は、生物学的に又は他の方法で望ましくないものではない、すなわち、許容できないレベルの望ましくない生物学的効果を引き起こすか、又は有害な方法で相互作用することのない、材料を記載する。
【0093】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、治療有効量で投与されると、生物学的系によって許容されるか、又は対象によって寛容されるか、又は生物学的系によって寛容され、かつ対象によって寛容される、酸又は塩基とともに調製される活性主剤の塩を意味する。本開示の化合物が、比較的酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性の形態を、未希釈で又は好適な不活性溶媒中でのいずれかで、十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、又は同様の塩が挙げられる。本開示の化合物が、比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性の形態を、未希釈で又は好適な不活性溶媒中のいずれかで、十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容され得る酸付加塩の例としては、これらに限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸から誘導されるもの、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的非毒性の有機酸から誘導される塩が挙げられる。アルギネートなどのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などの有機酸の塩も挙げられる。
【0094】
「薬学的に許容されるプロドラッグ」又は「プロドラッグ」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わず、ヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、妥当な利益/リスク比に見合い、それらの意図された使用に有効である、本開示の化合物のプロドラッグを表す。本開示のプロドラッグは、例えば、血液中での加水分解によって、開示される化合物の構造を有する親化合物へと、インビボで迅速に変換され得る。徹底的な考察は、T.Higuchi and V.Stella,Pro-drugs as Novel Delivery Systems,V.14 of the A.C.S.Symposium Series、及びEdward B.Roche,ed.,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press(1987)に提供されている。
【0095】
「薬学的に許容されるビヒクル」という用語は、本開示の化合物とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は担体を指す。「有効量」又は「薬学的有効量」という用語は、非毒性であるが、望ましい生物学的結果を提供するのに十分な、薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、若しくは原因の低減及び/若しくは緩和、又は生物学的系の任意の他の望ましい変化であり得る。任意の個別の症例における適切な「有効」量は、通常の実験を使用して当業者によって決定され得る。
【0096】
治療的使用のための「薬学的に許容される担体」は、薬学分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990)に記載されている。例えば、生理学的pHでの滅菌生理食塩水及びリン酸緩衝生理食塩水が使用され得る。防腐剤、安定剤、色素、及び香味剤でさえも、薬学的組成物中に提供され得る。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが、防腐剤として添加され得る。Id.at1449.加えて、抗酸化剤及び懸濁剤が使用され得る。Id.
【0097】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、親化合物(例えば、本明細書に開示される化合物)の構造に由来する構造を有し、その構造が本明細書に開示されるものと十分に類似しており、その類似性に基づいて、当業者によって特許請求される化合物と同じ若しくは類似の活性及び有用性を示すか、又は前駆体として特許請求される化合物と同じ若しくは類似の活性及び有用性を誘導することが期待される化合物を指す。例示的な誘導体としては、親化合物の塩、エステル、アミド、エステル若しくはアミドの塩、及びN-酸化物が挙げられる。
【0098】
「調節すること」又は「調節する」という用語は、機能、状態、又は障害の治療、予防、抑制、増強、又は誘導を指す。例えば、本開示の化合物は、BETタンパク質BRD4及びヒストンアセチルトランスフェラーゼEP300/CBPを阻害することによってPDACを調節することができると思われ、これらの両方は、PDAC組織中に遍在して発現され、協働して腫瘍発生を増強する。
【0099】
本明細書で使用される「接触させる」という用語は、開示される化合物又は薬学的組成物が、細胞、標的タンパク質、若しくは他の生物学的実体の活性に直接的に、すなわち、細胞、標的タンパク質、若しくは他の生物学的実体自体と相互作用することによって、又は間接的に、すなわち、細胞、標的タンパク質、若しくは他の生物学的実体自体の活性が依存する別の分子、補因子、因子、若しくはタンパク質と相互作用することによってのいずれかで影響を及ぼすことができる様式で、開示される化合物又は薬学的組成物を細胞、標的タンパク質、又は他の生物学的実体と一緒に近接させることを指す。
【0100】
本明細書で使用される場合、「用量」、「単位用量」、又は「投与量」は、対象での使用に好適な物理的に別個の単位を指すことができ、各単位が、望ましい応答又はその投与に関連付けられる応答を生じるように計算された、既定量の開示される化合物及び/又はその薬学的組成物を含有する。
【0101】
本明細書に開示されるある特定の材料、化合物、組成物、及び構成要素は、商業的に得ることができるか、又は当業者に一般に既知の技法を使用して容易に合成することができる。例えば、開示される化合物及び組成物の調製に使用される出発物質及び試薬は、Aldrich Chemical Co.,(Milwaukee,Wis.)、Acros Organics(Morris Plains,N.J.)、Fisher Scientific(Pittsburgh,Pa.)、若しくはSigma(St.Louis,Mo.)等の商業的供給業者から入手可能であるか、又はFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes 1-17(John Wiley and Sons,1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1-5 and Supplementals(Elsevier Science Publishers,1989);Organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley and Sons,1991);March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley and Sons,4th Edition);及びLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)等の参考文献に記載の手順に従って、当業者に既知の方法により調製されるかのいずれかである。
【0102】
別段明示的な記述がない限り、本明細書に示される任意の方法が、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するものとして解釈されることは決して意図されない。したがって、方法請求項がそのステップが従う順序を実際に列挙しないか、又は特許請求の範囲若しくは説明において、ステップが特定の順序に限定されるべきであると具体的に記述されない場合、いかなる点においても、順序を暗示することを決して意図しない。これは、ステップ又は操作フローの配置、文法的な構成又は句読点に由来する明白な意味、及び明細書に記載される実施形態の数又はタイプに関する論理事項を含む、解釈のための任意の可能な非明示的根拠について保持される。
【0103】
開示されるのは、本発明の組成物を調製するために使用される構成要素、並びに本明細書に開示される方法内で使用される組成物自体である。これら及び他の材料は、本明細書で開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示されるとき、これらの化合物の各々の様々な個別及び集合的組み合わせ及び順列の具体的な参照は、明示的に開示することができないが、各々は本明細書で具体的に企図及び記載されることが理解される。例えば、特定の化合物が開示され、考察され、その化合物を含むいくつかの分子に対して行われ得るいくつかの修飾について考察される場合、別段具体的な反対の指示がない限り、その化合物及び可能である修飾の各々の及び全ての組み合わせ及び順列が、具体的に企図される。よって、分子A、B、及びCのクラス、並びにD、E、及びFのクラスが開示され、組み合わせ分子の一例A-Dが開示されている場合、各々が個々に列挙されていない場合でさえ、各々が、個々にかつ集合的に企図される意味である、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fが開示されているとみなされる。同様に、これらの任意のサブセット又は組み合わせも開示される。よって、例えば、A-E、B-F、及びC-Eのサブグループが、開示されているとみなされる。この概念は、本発明の組成物を製造及び使用する方法におけるステップを限定されることなく含む、本出願のあらゆる態様に適用される。よって、実施することができる多様な追加ステップが存在する場合、これらの追加ステップの各々は、本発明の方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組み合わせを用いて実施することができることが理解される。
【0104】
本明細書に開示される組成物は、ある特定の機能を有することが理解される。本明細書に開示されるのは、開示される機能を実施するためのある特定の構造要件であり、開示される構造に関連する同じ機能を実施することができる多様な構造が存在し、これらの構造が、典型的には同じ結果を達成するであろうことが理解される。
【0105】
本明細書で使用される場合、「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、その後に記載される事象又は状況が、発生する場合又は発生しない場合があること、及び当該事象又は状況が、発生する例と発生しない例が記載に含まれることを意味する。
【0106】
別段指示のない限り、本明細書で言及される温度は、大気圧(すなわち、1大気圧)に基づく。
【0107】
Ras変異に関連付けられたがんを治療する方法
本明細書に記載されるのは、治療を必要とする対象におけるRas変異に関連付けられたがんを治療するための方法である。変異型RASは、腫瘍の開始及び維持の推進因子である。ヒトRAS遺伝子には、4つのRASタンパク質をコードする、カーステンラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、神経芽細胞腫RASウイルス(v-ras)がん遺伝子ホモログ(NRAS)、及びハーベイラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)]の3つが存在し、代替RNAスプライシングから生じる2つのKRASアイソフォーム(KRAS4A及びKRAS4B)を伴う。RASタンパク質(KRAS4A、KRAS4B、NRAS、及びHRAS)は、GDP-GTP調節バイナリオンオフスイッチとして機能し、多様な正常な細胞プロセスを制御する細胞質シグナル伝達ネットワークを調節する。
【0108】
一態様では、Ras遺伝子は、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも30%変異している。Ras遺伝子変異に関連付けられたがんとしては、肺がん、消化管がん、胸部がん、膵臓がん、結腸がん、又は血液がんが挙げられる。別の態様では、Ras変異に関連付けられたがんは、小腸腺がん、直腸腺がん、胆管がん、胆嚢がん、神経芽細胞腫、膵管腺がん(PDAC)、又は黒色腫である。
【0109】
膵管腺がん(PDAC)では、ブロモドメイン及び末端外モチーフ(BET)タンパク質は、主に、c-MYC及びFOSL1を含むいくつかのがん遺伝子の転写活性化を通じて、疾患発症に寄与する。加えて、EP300ブロモドメインは、発がん性cMYC発現及び細胞増殖に不可欠である。
【0110】
したがって、本明細書に記載されるのは、PDACの治療のためのブロモドメイン及びブロモドメインタンパク質のブロモドメイン及び末端外(BET)ファミリーの活性を調節することができる化合物及びその製剤である。一態様では、本明細書に記載される化合物は、ブロモドメイン4(BRD4)でEP300及びCBP(EP300の構造的類似体)タンパク質を阻害する。別の態様では、本明細書に記載される化合物は、EP300の既知の作用であるH3K27のアセチル化を抑制する。
【0111】
別の態様では、本明細書に記載される化合物は、発がん性KRASシグナル伝達を抑制することができる。KRAS変異は、PDAC患者の90%超で観察され、増殖、形質転換、浸潤、及び生存を含むいくつかのがんに関連付けられた細胞プロセスを駆動する、KRASタンパク質の恒久的な活性化を生じる(41~44)。発がん性KRAS変異は、PDAC病因の早期事象であると長い間みなされており、持続的なKRAS活性は、新生物表現型の開始及び維持の両方に必要である(45)。PDACにおける発がん性KRASの役割が十分に確立されているにもかかわらず、KRASは、診療所ではほとんど薬剤到達不可能であることが証明されている(46)。KRASに対して向けられるほとんどの療法は、KRASタンパク質を直接的に直接干渉しようと試みてきたが(46)、本明細書に記載される化合物は、BRD4及びEP300を阻害し、これによって、KRAS転写を妨げ、その下流シグナル伝達を抑制する。
【0112】
本明細書に記載される化合物は、ベンチマークBET阻害剤JQ-1と比較して改善された有効性、及び高用量JQ-1と同等の有効性を有する。一態様では、化合物は、有効量の、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、又はそれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【0113】
ピリジノン系化合物
一態様では、本明細書に記載される化合物は、式I又はその薬学的に許容される塩を有し
【化6】


式中、
12が、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、プロピレニル、-CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、又はCH(CO)CHClであり、
11が、窒素含有二環式又は三環式ヘテロアリール、アリール、又はビアリールであり、それらの各々が、任意選択的に、独立して、-N(R)S(O)、-S(O)NR、-C(O)NR-N(R)C(O)R-NR、-(C-Cアルキレニル)R、-(C-Cシクロアルキレニル)R、アリール、ヘテロアリール、-(C-Cアルキレニル)Rc’、-H、ハロゲン、-CN、プロピレニル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、 -CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、CH(CO)CHCl、及びR70から選択される、1、2、又は3つの置換基で置換され、
Xが、任意選択的に存在し、存在する場合、-O-、-C(O)-、-N(R77)-、及び-CH(R70)-から選択され、
77が、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、及びR70からなる群から選択され、
70が、出現ごとに、各々独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cハロアルキル、R、及びC-Cアルキルから選択され、前記C-Cアルキルが、任意選択的に、-OR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)2R、-S(O)NR、及びRから選択される1つの置換基で置換され、
及びRc’が、出現ごとに、独立して、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択され、各R基が、任意選択的に、1、2、3、4、又は5つのR基で置換され、
が、出現ごとに、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、-NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR、-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びC-Cハロアルキルから選択される。
【0114】
一態様では、化合物は、式IIであり、
【化7】


式中、
が、
【化8】


であり、
が、
【化9】


であり、
が、H又はC-Cアルキルであり、
80が、C-Cアルキルであり、
、X、及びXが、各々独立して、CH又はNからなる群から選択される。
【0115】
一態様では、式IIのR12は、例えば、メチルなどのC-Cアルキルである。別の態様では、式IIのRは、
【化10】


であり、式中、Xが、Nであり、Xが、Nであり、Xが、CHである。別の態様では、式IIのRは、例えば、メチルなどのC-Cアルキルである。別の態様では、式IIのRは、
【化11】


であり、式中、式IIのR80が、例えば、エチルなどのC-Cアルキルである。
【0116】
別の態様では、化合物は、式IIIであり、
【化12】


式中、R31が、
【化13】


であり、
157が、Me、CHCH、又はCH(CHであり、
32が、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cシクロアルキル、-H、-D、C-C置換シクロアルキレニル、置換アリール、及び置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
33、R34、R35、R36、R37、R34’、R35’、R36’、R37’が、各々独立して、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルキルアミン、C-Cシクロアルキルアミン、C-Cアルキルエステル、及びC-Cアルキルアミドからなる群から選択される。
【0117】
一態様では、式IIIのR33、R34、R35、R36、R37、R34’、R35’、R36’、R37’は、各々水素である。別の態様では、式IIIのR32は、例えば、メチルなどのC-Cアルキルである。別の態様では、式IIIのR31は、
【化14】


であり、式中、R157が、Me、CHCH、又はCH(CHである。
【0118】
別の態様では、化合物は、式IV
【化15】


又はその薬学的に許容される塩である。この化合物は、本明細書では、XP-524とも称される。
【0119】
本明細書に記載される化合物を生成するための例示的な方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2019/109057に開示される。
【0120】
免疫チェックポイント阻害剤
ある特定の態様では、本明細書に記載されるピリジン系化合物は、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤と同時投与され得る。免疫チェックポイント阻害剤療法は、刺激されると、免疫学的刺激に対する免疫応答を弱めることができる免疫系の重要な調節因子である免疫チェックポイントを標的とする。一部のがんは、免疫チェックポイント標的を刺激することによって、攻撃から自らを保護する場合がある。チェックポイント療法は、阻害性チェックポイントをブロックし、免疫系の機能を回復させることができる。
【0121】
一態様では、免疫チェックポイント阻害剤としては、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA-4阻害剤が挙げられる。一態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体である。一態様では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、及びセミプリマブ(Libtayo(登録商標))である。別の態様では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、及びデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))である。別の態様では、CTLA-4阻害剤は、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))である。
【0122】
一態様では、本発明は、PDACを治療する方法であって、(a)治療を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載されるピリジン系化合物を投与することと、(b)対象に、有効量の免疫チェックポイント阻害剤を投与することと、を含む、方法を提供する。別の態様では、ステップ(a)の投与は、ステップ(b)の投与の前である。別の実施形態では、ステップ(a)の投与は、ステップ(b)の投与の後である。なお別の実施形態では、ステップ(a)の投与は、ステップ(b)の投与と同時である。
【0123】
「同時(Concurrent)投与」、「併用投与」、「同時(simultaneous)投与」、及び同様のフレーズは、2つ以上の薬剤が、治療される対象に同時に投与されることを意味する。「同時に」とは、各薬剤が、同時に、又は異なる時点で任意の順序で順次投与されることのいずれかを意味する。例えば、式Iの化合物は、免疫チェックポイント阻害剤と同時に、又は異なる時点で任意の順序で順次投与され得る。式I免疫チェックポイント阻害剤の化合物は、任意の適切な形態で、任意の好適な経路によって、別々に投与され得る。しかしながら、同時に投与されない場合、それらは、望ましい治療効果を提供し、協調して作用することができるように、連続して、かつ十分に近い時間で個体に投与されることを意味する。式Iの化合物及び免疫チェックポイント阻害剤が、同時に投与されない場合、それらは、式Iの化合物及び免疫チェックポイント阻害剤を必要とする対象に任意の順序で投与され得ることが理解される。例えば、式Iの化合物は、式Iの化合物を必要とする個体に、免疫チェックポイント阻害剤の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)に、投与と同時に、又は投与の後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与され得る。様々な実施形態では、式Iの化合物及び免疫チェックポイント阻害剤は、1分離れて、10分離れて、30分離れて、1時間未満離れて、1時間離れて、1時間~2時間離れて、2時間~3時間離れて、3時間~4時間離れて、4時間~5時間離れて、5時間~6時間離れて、6時間~7時間離れて、7時間~8時間離れて、8時間~9時間離れて、9時間~10時間離れて、10時間~11時間離れて、11時間~12時間離れて、24時間以内離れて、又は48時間以内離れて投与される。一実施形態では、併用療法の構成要素は、1分~24時間離れて投与される。
【0124】
一態様では、ピリジン系化合物及び免疫チェックポイント阻害剤は、別々の単位用量として投与される。別の態様では、ピリジン系化合物及び免疫チェックポイント阻害剤は、薬学的に許容される担体とともに単一の薬学的製剤中に製剤化される。
【0125】
薬学的組成物
様々な態様では、本開示は、治療有効量の少なくとも1つの開示される化合物、開示される方法のうちの少なくとも1つの生成物、又はその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物に関する。本明細書で使用される場合、「薬剤的に許容される担体」とは、薬剤的に許容される希釈剤、防腐剤、抗酸化剤、可溶化剤、乳化剤、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、及び芳香剤、並びにアジュバントのうちの1つ以上を意味する。開示される薬学的組成物は、単位投与形態で簡便に提示され得、薬学及び薬学的科学の分野で周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。
【0126】
更なる態様では、開示される薬学的組成物は、治療有効量の少なくとも1つの開示される化合物、開示される方法のうちの少なくとも1つの生成物、又は活性成分としてのその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される担体、任意選択的に1つ以上の他の治療剤、及び任意選択的に1つ以上のアジュバントを含む。開示される薬学的組成物は、経口、直腸、局所、肺、鼻、及び非経口投与に好適なものが含まれるが、任意の所与の場合において最も好適な経路は、特定の宿主、並びに活性成分が投与されている状態の性質及び重症度に依存するであろう。更なる態様では、開示される薬学的組成物は、経口、鼻、吸入を介して、非経口、がんの傍、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、及び腫瘍内投与を可能にするように製剤化され得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、ボーラス注射又は注入による投与、並びに静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内注射及び注入による投与を含む。
【0128】
様々な態様では、本開示はまた、薬学的に許容される担体又は希釈剤と、活性成分として、治療有効量の開示される化合物、開示される作製する方法の生成物、薬学的に許容される塩、その水和物、その溶媒和物、その多形体、又はその立体化学的異性体形態と、を含む、薬学的組成物に関する。更なる態様では、開示される化合物、開示される作製する方法の生成物、薬学的に許容される塩、その水和物、その溶媒和物、その多形体、若しくはその立体化学的異性体形態、又はそれらの任意のサブグループ若しくは組み合わせは、投与目的で様々な薬学的形態へと製剤化され得る。
【0129】
実際には、本開示の化合物、又は本開示のその薬学的に許容される塩は、従来の薬学的配合技法による、薬学的担体との密接な混和物中の活性成分として組み合わせられ得る。担体は、例えば、経口又は非経口(静脈内を含む)投与に望ましい調製物の形態に応じて、多種多様な形態をとり得る。よって、本開示の薬学的組成物は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェ(cachet)、又は錠剤などの経口投与に好適な別個の単位として提示され得る。更に、組成物は、粉末として、顆粒として、溶液として、水性液体中の懸濁液として、非水性液体として、水中油型エマルションとして、又は油中水型液体エマルションとして提示され得る。上に記載される一般的な剤形に加えて、本開示の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩(複数可)はまた、制御放出手段及び/又は送達デバイスによって投与され得る。組成物は、薬学の方法のうちのいずれかによって調製され得る。一般に、そのような方法は、1つ以上の必要な成分を構成する担体と活性成分を会合させるステップを含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体又は微細に分割された固体担体、又は両方と均一かつ密接に混和することによって調製される。次いで、生成物は、望ましい提示物へと簡便に成形され得る。
【0130】
投与の容易さ及び投与量の均一性のために、前述の薬学的組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される場合、「単位剤形」という用語は、統一された投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位が、必要とされる薬学的担体と会合して望ましい治療効果を生じるように計算された所定量の活性成分を含有する。すなわち、「単位剤形」とは、患者、又は患者に薬物を投与する人が、その中に含有される用量全体を含む単一の容器又はパッケージを開くことができ、2つ以上の容器又はパッケージから任意の構成要素を一緒に混合する必要がないように、全ての活性成分及び不活性成分が好適な系で組み合わせられている単回用量を意味すると解釈される。単位剤形の典型的な例は、経口投与のための錠剤(刻み目付き又はコーティングされた錠剤を含む)、カプセル又はピル、注射可能な溶液又は懸濁液のための単回用量のバイアル、直腸投与のための坐剤、粉末パケット、ウエハース、及びそれらの別々のかけ合わせ(segregated multiple)である。単位剤形のこの列挙は、いかなる方式においても限定することを意図するものではなく、単に単位剤形の典型的な例を表すことを意図している。
【0131】
本明細書に開示される薬学的組成物は、活性成分として本開示の化合物(又はその薬学的に許容される塩)、薬学的に許容される担体、及び任意選択的に、1つ以上の追加の治療剤を含む。様々な態様では、開示される薬学的組成物は、薬学的に許容される担体と、開示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、を含み得る。更なる態様では、開示される化合物又はその薬学的に許容される塩はまた、1つ以上の他の治療活性化合物と組み合わせて薬学的組成物中に含まれ得る。本組成物は、経口、直腸、局所、及び非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)投与に好適な組成物を含むが、任意の所与の場合において最も好適な経路は、特定の宿主、並びに活性成分が投与されている状態の性質及び重症度に依存するであろう。薬学的組成物は、単位投与形態で簡便に提示され得、薬学の分野で周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。
【0132】
本明細書に記載される材料及び方法に有用な剤形を作製するための技法及び組成物は、例えば、以下の参考文献に記載されている:Modern Pharmaceutics,Chapters 9 and 10(Banker&Rhodes,Editors,1979)、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(Lieberman et al.,1981)、Ansel,Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 2nd Edition(1976)、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985)、Advances in Pharmaceutical Sciences(David Ganderton,Trevor Jones,Eds.,1992)、Advances in Pharmaceutical Sciences Vol 7.(David Ganderton,Trevor Jones,James McGinity,Eds.,1995)、Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms(Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Series 36(James McGinity,Ed.,1989)、Pharmaceutical Particulate Carriers:Therapeutic Applications:Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Vol 61(Alain Rolland,Ed.,1993)、Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract(Ellis Horwood Books in the Biological Sciences.Series in Pharmaceutical Technology;J.G.Hardy,S.S.Davis,Clive G.Wilson,Eds.)、Modern Pharmaceutics Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Vol 40(Gilbert S.Banker,Christopher T.Rhodes,Eds.)。
【0133】
本明細書に記載される化合物は、典型的には、投与の意図される形態に関して、かつ従来の薬学的慣例と一致して好適に選択される好適な薬学的希釈剤、賦形剤、増量剤、又は担体(本明細書では、薬学的に許容される担体、又は担体と称される)と混和して投与されるものである。送達可能な化合物は、経口、直腸、局所、静脈内注射、又は非経口投与に好適な形態であろう。担体としては、固体又は液体が挙げられ、担体のタイプは、使用される投与のタイプに基づいて選択される。化合物は、既知の量の化合物を有する投与量として投与され得る。
【0134】
投与の容易さを理由として、経口投与が好ましい剤形であり得、錠剤及びカプセルは、最も有利な経口投与単位形態を表し、その場合、固体薬学的担体が明らかに用いられる。しかしながら、臨床集団(例えば、年齢及び臨床状態の重症度)、使用される特定の開示される化合物の可溶性特性などに応じて、他の剤形が好適であり得る。したがって、開示される化合物は、ピル、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁液、シロップ、及びエマルションなどの経口剤形で使用され得る。経口剤形のための組成物の調製において、任意の便利な薬学的媒体を用いることができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤等は、懸濁液、エリキシル剤及び溶液等の経口液体調製物を形成するために使用することができ、一方、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等の担体は、粉末、カプセル及び錠剤等の経口固体調製物を形成するために使用することができる。投与が容易であるため、錠剤及びカプセルが好ましい経口投与単位であり、それによって固体の薬学的担体が用いられる。任意選択的に、錠剤は、標準的な水性又は非水性技法によってコーティングされ得る。
【0135】
経口剤形の開示される薬学的組成物は、1つ以上の薬学的賦形剤及び/又は添加剤を含み得る。好適な賦形剤及び添加剤の非限定的な例としては、ゼラチン、粗糖又はラクトースなどの天然糖、レシチン、ペクチン、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン又はアミロース)、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、アラビアガム、アルギン酸、チロース、滑石、ヒカゲノカズラ、シリカゲル(例えば、コロイド状)、セルロース、セルロース誘導体(例えば、セルロースヒドロキシ基が、低飽和脂肪族アルコール及び/又は低飽和脂肪族オキシアルコール(oxyalcohol)と部分的にエーテル化されている、セルロースエーテル、例えば、メチルオキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、脂肪酸、並びに特に飽和した12~22個の炭素原子を有する脂肪酸のマグネシウム、カルシウム、又はアルミニウム塩(例えば、ステアリン酸塩)、乳化剤、油及び脂肪、特に植物(例えば、ピーナッツ油、ヒマシ油、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、小麦胚芽油、ヒマワリ種子油、タラ肝油、各場合、また任意選択的に水和されている);飽和脂肪酸のグリセロールエステル及びポリグリセロールエステルC12H24O2~C18H36O2、並びにそれらの混合物、グリセロールヒドロキシ基が全体的に又はまた部分的にのみエステル化されている可能性があるもの(例えば、モノ、ジ、及びトリグリセリド);薬学的に許容される一価又は多価アルコール及びポリエチレングリコールなどのポリグリコール及びその誘導体、一価脂肪族アルコール(1~20個の炭素原子)又はグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ペンタクリスリトール(pentacrythritol)、ソルビトール、マンニトールなどの多価アルコールとの脂肪族飽和又は不飽和脂肪酸(2~22個の炭素原子、特に10~18個の炭素原子)のエステル(また、これらは、任意選択的にエーテル化され得る)、一級アルコールとクエン酸のエステル、酢酸、尿素、安息香酸ベンジル、ジオキソラン、グリセロホルマール(glyceroformal)、テトラヒドロフルフリルアルコール、C1-C12アルコールとのポリグリコールエーテル、ジメチルアセトアミド、ラクタミド、ラクテート、炭酸エチル、シリコーン(特に、中粘性ポリジメチルシロキサン)、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0136】
経口剤形の調製に有用な他の補助物質は、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は微結晶性セルロースなどの崩壊を引き起こす物質(いわゆる崩壊剤)である。経口剤形を生成するために、従来のコーティング物質も使用され得る。例えば、考慮され得るものは、アクリル酸及び/若しくはメタクリル酸の重合体(polymerizate)並びに共重合体並びに/又はそれらのエステル;より低いアンモニウム基含有量を有するアクリル酸及びメタクリル酸エステルの共重合体(例えば、EudragitR RS)、アクリル酸及びメタクリル酸エステルの共重合体、並びにメタクリル酸トリメチルアンモニウム(例えば、EudragitR RL);ポリ酢酸ビニル;脂肪、油、ワックス、脂肪アルコール;フタル酸又は酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸デンプン、並びにポリ酢酸フタル酸ビニル、カルボキシメチルセルロース;フタル酸メチルセルロース、コハク酸メチルセルロース、フタル酸コハク酸メチルセルロース、並びにメチルセルロースフタル酸ハーフエステル;ゼイン;エチルセルロース並びにコハク酸エチルセルロース;シェラック、グルテン;エチルカルボキシルセルロース;エタクリレート-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸-ビニルメチルエーテルコポリマー;スチロール-マレイン酸共重合体;2-エチル-ヘキシル-アクリレート無水マレイン酸;クロトン酸-酢酸ビニルコポリマー;グルタミン酸/グルタミン酸エステルコポリマー;カルボキシメチルエチルセルロースグリセロールモノオクタノエート;酢酸コハク酸セルロース;ポリアルギニンである。
【0137】
開示される経口剤形中のコーティング物質として考慮され得る可塑化剤は、クエン酸及び酒石酸エステル(クエン酸アセチル-トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル);グリセロール及びグリセロールエステル(二酢酸グリセロール、三酢酸グリセロール、アセチル化モノグリセリド、ヒマシ油);フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、ジアミル、ジエチル、ジメチル、ジプロピル)、ジ-(2-メトキシ-又は2-エトキシエチル)-フタレート、グリコール酸エチルフタリル、ブチルフタリルエチル、及びブチル;アルコール(プロピレングリコール、様々な鎖長のポリエチレングリコール)、アジペート(アジピン酸ジエチル、ジ-(2-メトキシ-又は2-エトキシエチル)-アジペート;ベンゾフェノン;セバシン酸ジエチル及びジブチル、コハク酸ジブチル、酒石酸ジブチル、二プロピオン酸ジエチレングリコール;二酢酸エチレングリコール、二酪酸エチレングリコール、二プロピオン酸エチレングリコール;リン酸トリブチル、トリブチリン;モノオレイン酸ポリエチレングリコールソルビタン(Polysorbar50などのポリソルベート);モノオレイン酸ソルビタンである。
【0138】
更に、担体として、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、流動誘導剤、及び融解剤が含まれ得る。使用される薬学的担体は、例えば、固体、液体、又は気体であり得る。固体担体の例としては、これらに限定されないが、ラクトース、白土、スクロース、グルコース、メチルセルロース、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールタルク、デンプン、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸が挙げられる。液体担体の例は、シュガーシロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、及び水である。気体担体の例としては、二酸化炭素及び窒素が挙げられる。
【0139】
様々な態様では、結合剤としては、例えば、デンプン、ゼラチン、グルコース又はベータ-ラクトースなどの天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを挙げることができる。これらの剤形で使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。更なる態様では、崩壊剤としては、例えば、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを挙げることができる。
【0140】
様々な態様では、固体剤形などの経口剤形は、標的可能な薬物担体として又はプロドラッグとしてのポリマーに結合された、開示される化合物を含み得る。薬物の制御放出を達成するのに有用な好適な生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー、カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、アシル酸ポリシアノ、及びヒドロゲル、好ましくは共有結合架橋ヒドロゲルが挙げられる。
【0141】
錠剤は、錠剤の製造に好適である非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混和物中に活性成分を含有し得る。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、又はアカシア、並びに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクであり得る。錠剤は、コーティングされていなくてもよいか、又は消化管での崩壊及び吸収を遅延させ、それによって、より長い期間にわたって持続的な作用を提供するための既知の技法によってコーティングされていてもよい。
【0142】
開示される化合物を含有する錠剤は、任意選択的に、1つ以上の副成分又はアジュバントとともに、圧縮又は成形することによって調製され得る。圧縮錠剤は、任意選択的に、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤、又は分散剤と混合された、粉末又は顆粒などの自由流動性の形態の活性成分を好適な機械で圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製され得る。
【0143】
様々な態様では、錠剤などの固体経口剤形は、胃内での速やかな分解を防止するために、腸溶性コーティングでコーティングされ得る。様々な態様では、腸溶性コーティング剤としては、これらに限定されないが、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマー、ポリ酢酸-フタル酸ビニル、及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。Akihiko Hasegawa“Application of solid dispersions of Nifedipine with enteric coating agent to prepare a sustained-release dosage form”Chem.Pharm.Bull.33:1615-1619(1985).様々な腸溶性コーティング材料は、溶解時間、コーティング厚さ、及び直径方向の破砕強度の好ましい組み合わせを有するように最初から設計された腸溶性コーティング剤形を達成するために、試験に基づいて選択され得る(例えば、S.C.Porter et al.“The Properties of Enteric Tablet Coatings Made From Polyvinyl Acetate-phthalate and Cellulose acetate Phthalate”,J.Pharm.Pharmacol.22:42p(1970)を参照されたい)。更なる態様では、腸溶性コーティングは、ヒドロキシプロピル-フタル酸メチルセルロース、メタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマー、ポリ酢酸-フタル酸ビニル、及び酢酸フタル酸セルロースを含み得る。
【0144】
様々な態様では、経口剤形は、水溶性又は水不溶性担体を有する固体分散体であり得る。水溶性又は水不溶性担体の例としては、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、又はステアリン酸が挙げられる。
【0145】
様々な態様では、経口剤形は、摂取されるもの、又は代替的に、口腔洗浄剤又はうがい剤として投与されるものを含む、液体剤形であり得る。例えば、液体剤形は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混和させた活性物質を含有する水性懸濁液を挙げることができる。加えて、油性懸濁液は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはココナッツ油、又は流動パラフィンなどの鉱物油中に活性成分を懸濁させることによって製剤化され得る。油性懸濁液はまた、様々な賦形剤を含有し得る。本開示の薬学的組成物はまた、水中油型エマルションの形態であってもよく、水中油型エマルションは、甘味剤及び香味剤などの賦形剤も含有し得る。
【0146】
溶液又は懸濁液の調製には、例えば、水、特に滅菌水、又はアルコール(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1,2-プロピレングリコール、ポリグリコール、及びそれらの誘導体、脂肪族アルコール、グリセロールの部分エステル)、油(例えば、ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、アーモンド油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ウシ蹄油)、パラフィン、ジメチルスルホキシド、トリグリセリドなどの生理学的に許容される有機溶媒を使用することが可能である。
【0147】
飲用に適した溶液などの液体剤形の場合、以下の物質:エタノール、n-プロパノール、グリセロールなどの2~4つの炭素原子を有する低級脂肪族一価及び多価アルコール、200~600の分子量を有するポリエチレングリコール(例えば、1~40%の水溶液)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,2-プロピレングリコール、有機アミド、例えば、アンモニアとの脂肪族C1-C6-カルボン酸のアミド、又は一級、二級、若しくは三級C1-C4-アミン、又は尿素、ウレタン、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのC1-C4-ヒドロキシアミン、エチレンジアミンなどの2~6個の炭素原子を有する低級脂肪族アミン及びジアミン、ヒドキシエチルテオフィリン、トロメタミン(例えば、0.1~20%の水溶液として)、脂肪族アミノ酸が、安定剤又は可溶化剤として使用され得る。
【0148】
調製において、開示される液体剤形は、以下の非限定的な例:ポリビニルピロリドン、トリオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、レシチンなどのホスファチド、アカシア、トラガカント、ポリオキシエチル化モノオレイン酸ソルビタン、及びソルビタンの他のエトキシル化脂肪酸エステル、ポリオキシエチル化脂肪、ポリオキシエチル化オレオトリグリセリド、リノール化オレオトリグリセリド、脂肪アルコール、アルキルフェノール、若しくは脂肪酸のポリエチレンオキシド縮合生成物、又はまた1-メチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリドン-(2)などの可溶化剤及び乳化剤を含み得、これらが使用され得る。この文脈では、ポリオキシエチル化されるとは、問題の物質が、ポリオキシエチレン鎖を含有し、その重合度が、一般に、2~40、特に10~20にあることを意味する。この種類のポリオキシエチル化物質は、例えば、ヒドロキシル基含有化合物(例えば、モノ若しくはジグリセリド、又はオレイン酸ラジカルを含有するものなどの不飽和化合物)とエチレンオキシド(例えば、1モルのグリセリド当たり40モルのエチレンオキシド)との反応によって得ることができる。オレオトリグリセリドの例は、オリーブ油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油である。また、Dr.H.P.Fiedler“Lexikon der Hillsstoffe fuer Pharmazie,Kostnetik und angrenzende Gebiete”1971,pages 191-195を参照されたい。
【0149】
様々な態様では、液体剤形は、防腐剤、安定剤、緩衝物質、香味補正剤、甘味料、着色剤、抗酸化剤、及び複合体形成剤などを更に含み得る。例えば、考慮され得る複合体形成剤は、エチレンジアミンレトラスセン酸(retrascetic acid)、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、及びそれらの塩などのキレート形成剤である。
【0150】
任意選択的に、生理学的に許容される塩基又は緩衝液を含む液体剤形を、およそ6~9のpH範囲まで安定化させることが必要であり得る。可能な限り、中性又は弱塩基性のpH値(最大pH8)が好ましいであろう。
【0151】
開示される液体剤形、非経口注射形態、又は静脈内注射形態での開示される化合物の可溶性及び/又は安定性を増強するために、α-、β-、若しくはγ-シクロデキストリン又はそれらの誘導体、特にヒドロキシアルキル置換シクロデキストリン、例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン又はスルホブチル-β-シクロデキストリンを用いることが有利であり得る。また、アルコールなどの共溶媒は、薬学的組成物中の本開示による化合物の可溶性及び/又は安定性を改善し得る。
【0152】
様々な態様では、開示される液体剤形、非経口注射形態、又は静脈内注射形態は、小単層ベシクル、大単層ベシクル、及び多層ベシクルなどのリポソーム送達系を更に含み得る。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、又はホスファチジルコリンなどの多様なリン脂質から形成され得る。
【0153】
本開示の薬学的組成物は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与などの非経口投与などの好適な注射剤である。注射用の薬学的組成物は、水中の活性化合物の溶液又は懸濁液として調製することができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの好適な界面活性剤が含まれ得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール中で、及び油中のそれらの混合物中で調製され得る。更に、微生物の有害な成長を防止するために、防腐剤が含まれ得る。
【0154】
非経口投与に好適な本開示の薬学的組成物は、滅菌された水性又は油性の溶液、懸濁液、又は分散液を含み得る。更に、組成物は、そのような滅菌された注射可能な溶液又は分散液の即時調製のために、滅菌粉末の形態であり得る。いくつかの態様では、最終的な注射可能な形態は、滅菌されており、シリンジでの使用のために効果的に流体である必要がある。薬学的組成物は、製造及び保存の条件下で安定であるべきであり、よって、好ましくは、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、植物油、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒又は分散媒体であり得る。
【0155】
例えば、担体が生理食塩水、グルコース溶液、又は生理食塩水とグルコース溶液との混合物を含む、注射可能な溶液が調製され得る。また、注射可能な懸濁液が調製され得、その場合、適切な液体担体、懸濁剤などが用いられ得る。いくつかの態様では、開示される非経口製剤は、約0.01~0.1M、例えば約0.05Mのリン酸緩衝液を含み得る。更なる態様では、開示される非経口製剤は、約0.9%の生理食塩水を含み得る。
【0156】
様々な態様では、開示される非経口薬学的組成物は、水性又は非水性の溶液、懸濁液、及びエマルションなどの薬学的に許容される担体を含み得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体としては、これらに限定されないが、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルション、又は懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルは、マンニトール、正常血清アルブミン、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル液、並びに不揮発性油を含み得る。静脈内ビヒクルは、流体及び栄養補充剤、リンゲルデキストロースに基づくものなどの電解質補充剤などを含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、照合剤(collating agent)、不活性ガスなどの防腐剤及び他の添加剤も存在し得る。更なる態様では、開示される非経口薬学的組成物は、等張性及び化学的安定性を増強する物質、例えば、緩衝剤及び防腐剤などの少量の添加剤を含み得る含有し得る。また注射可能な薬学的組成物として企図されるのは、固体形態調製物であり、これは、使用の直前に液体形態調製物に変換されることが意図される。更に、対象又は患者の血液と製剤を等張にするために、他のアジュバントが含まれ得る。
【0157】
上に本明細書に記載される薬学的組成物に加えて、開示される化合物はまた、デポ調製物として製剤化され得る。そのような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)によって、又は筋肉内注射によって投与され得る。よって、例えば、化合物は、好適な高分子若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)若しくはイオン交換樹脂とともに、又は難溶性の誘導体、例えば、難溶性の塩として製剤化され得る。
【0158】
本開示の薬学的組成物は、局所投与に好適な形態であり得る。本明細書で使用される場合、「局所適用」という語句は、生物学的表面上の投与を意味し、それによる生物学的表面が、例えば、皮膚領域(例えば、手、前腕、肘、脚、顔、爪、肛門、及び性器領域)又は粘膜を含む。以下に本明細書に記載されるように、組成物中に含まれ得る適切な担体及び任意選択的に他の成分を選択することによって、本発明の組成物は、典型的には局所適用に用いられる任意の形態へと製剤化され得る。局所薬学的組成物は、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、ローション、ミルク、懸濁液、エアロゾル、スプレー、泡、ダスティングパウダー、パッド、及びパッチの形態であり得る。更に、組成物は、経皮デバイスにおける使用に好適な形態であり得る。本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩を利用するこれらの製剤は、従来の処理方法を介して調製され得る。一例として、クリーム又は軟膏は、親水性材料及び水を、約5重量%~約10重量%の化合物と一緒に混合して、望ましい一定性を有するクリーム又は軟膏を生成することによって調製される。
【0159】
経皮投与に好適な組成物において、担体は、任意選択的に、浸透性増強剤、及び/又は任意選択的に、任意の性質の好適な添加剤と微小な割合で組み合わせられた好適な湿潤剤を含み、添加剤は、皮膚に著しい有害作用を導入しない。当該添加剤は、皮膚への投与を容易にし得、かつ/又は所望の組成物を調製するのに役立ち得る。これらの組成物は、様々な方式で、例えば、経皮パッチとして、スポットオンとして、軟膏として投与され得る。
【0160】
軟膏は、典型的にはワセリン又は石油誘導体に基づく半固体調製物である。使用される特定の軟膏基剤は、所与の製剤に対して選択される活性剤の最適な送達を提供するものであり、好ましくは、他の望ましい特徴(例えば、軟化性)も同様に提供する。他の担体又はビヒクルと同様に、軟膏基剤は、不活性、安定性、非刺激性、及び非感作性であるべきである。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Ed.,Easton,Pa.:Mack Publishing Co.(1995),pp.1399-1404に説明されているように、軟膏基剤は、4つのクラス:油性基剤、乳化性基剤、エマルション基剤、及び水溶性基剤に分類され得る。油性軟膏の基剤としては、例えば、植物油、動物から得られる脂肪、及び石油から得られる半固体炭化水素が挙げられる。吸収性軟膏基剤としても知られる乳化性軟膏基剤は、水をほとんど又は全く含有せず、例えば、硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリン、及び親水性ワセリンが挙げられる。エマルション軟膏基剤は、油中水型(W/O)エマルション又は水中油型(O/W)エマルションのいずれかであり、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラノリン、及びステアリン酸が挙げられる。好ましい水溶性軟膏基剤は、変動する分子量のポリエチレングリコールから調製される。
【0161】
ローションは、摩擦を伴わずに皮膚表面に適用される調製物である。ローションは、典型的には、活性剤を含む固体粒子が水又はアルコール基剤中に存在する、液体又は半液体調製物である。より流動的な組成物を適用することの容易性に起因して、ローションは、典型的には、大きな身体領域を治療するために好ましい。ローションは、典型的には、固体の懸濁液であり、多くの場合、水中油型の液体油性エマルションを含む。一般に、ローション中の不溶性物質を微細に分割することが必要である。ローションは、典型的には、より良好な分散体を生成するための懸濁剤、並びに活性剤を皮膚と接触した状態に配置し、保持するのに有用な、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど化合物を含有する。
【0162】
クリームは、水中油型又は油中水型のいずれかの粘性液体又は半固体エマルションである。クリーム基剤は、典型的には、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤、及び水相を含有する。「内部」相とも呼ばれる油相は、一般に、ワセリン及び/又はセチル若しくはステアリルアルコールなどの脂肪アルコールで構成される。水相は、典型的には、必ずしも必要ではないが、体積において油相を超え、一般に、保湿剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、一般に、非イオン性、アニオン性、カチオン性、又は両性界面活性剤である。更なる情報については、上記のRemington:The Science and Practice of Pharmacyを参照することができる。
【0163】
ペーストは、生体活性剤が好適な基剤中に懸濁された半固体剤形である。基剤の性質に応じて、ペーストは、脂肪ペースト又は単相水性ゲルから作製されたペーストに分割される。脂肪ペースト中の基剤は、一般に、ワセリン、親水性ワセリンなどである。単相水性ゲルから作製されるペーストは、一般に、基剤としてカルボキシメチルセルロースなどを組み込んでいる。追加の更なる情報については、Remington:The Science and Practice of Pharmacyを参照することができる。
【0164】
ゲル製剤は、半固体の懸濁型の系である。単相ゲルは、典型的には水性であるが、好ましくはアルコール及び任意選択的に油も含有する担体液体全体を通じて実質的に均一に分布する、有機巨大分子を含有する。好ましい有機巨大分子、すなわち、ゲル化剤は、例えば、商標Carbopol(商標)として商業的に得ることができるカルボマーポリマーのファミリーなどの架橋アクリル酸ポリマー、例えば、カルボキシポリアルキレンである。この文脈における好ましいポリマーの他のタイプは、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、及びポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロースなどの修飾セルロース;トラガカント及びキサンタンガムなどのガム;アルギン酸ナトリウム;並びにゼラチンである。均一なゲルを調製するために、アルコール若しくはグリセリンなどの分散剤が添加され得るか、又は研和、機械的混合若しくは撹拌、又はそれらの組み合わせによって、ゲル化剤が分散され得る。
【0165】
スプレーは、一般に、送達のために皮膚上で霧状にすることができる水性及び/又はアルコール性の溶液中で活性剤を提供する。そのようなスプレーは、送達後の投与部位で活性剤溶液の濃縮物を提供するように製剤化されたものが挙げられ、例えば、スプレー溶液は、主に、アルコール、又は活性剤を溶解させることができる他の同様の揮発性液体で構成され得る。皮膚に送達されると、担体は、蒸発し、投与部位に濃縮された活性剤が残る。
【0166】
泡組成物は、典型的には、単相又は多相の液体形態で製剤化され、任意選択的に、容器からの組成物の排出を容易にする、よって、適用時に組成物を泡へと変換する推進剤と一緒に好適な容器内に収容される。他の泡形成技法としては、例えば、「缶中バッグ(Bag-in-a-can)」製剤化技法が挙げられる。このように製剤化された組成物は、典型的には、低沸点炭化水素、例えば、イソプロパンを含有する。体温でのそのような組成物の適用及び撹拌は、加圧されたエアロゾル発泡系と同様の様式でのイソプロパンの気化を引き起こし、泡を生成する。泡は、水系又は水性アルカノールであり得るが、典型的には、高アルコール含有量で製剤化され、使用者の皮膚への適用時に、迅速に蒸発し、上部皮膚層を通って治療部位まで活性成分を駆動する。
【0167】
皮膚パッチは、典型的には、裏材を含み、裏材に活性剤を含有するリザーバが付着している。リザーバは、例えば、活性剤又は組成物が分散若しくは浸漬されているパッド、又は液体リザーバであり得る。パッチは、典型的には、前面水透過性接着剤を更に含み、これは、治療領域にデバイスを接着及び固定する。自己接着性を有するシリコーンゴムが代替的に使用され得る。いずれの場合も、使用前にパッチの接着剤側を保護するために、保護透過性層が使用され得る。皮膚パッチは、取り外し可能なカバーを更に含み得、カバーは、保管時に皮膚パッチを保護するために機能する。
【0168】
本発明とともに利用することができるパッチ構成の例としては、皮膚に接触する接着剤内に直接薬物を含むことを特徴とする、単層又は多層の接着剤中薬物系が挙げられる。そのような経皮パッチ設計では、接着剤は、パッチを皮膚に添付するように機能するだけでなく、単一の裏材フィルムの下に薬物及び全ての賦形剤を含有する製剤基盤としても機能する。多層の接着剤中薬物パッチでは、2つの別個の接着剤中薬物層の間に膜が配置されるか、又は単一の裏材フィルムの下に複数の接着剤中薬物層が組み込まれる。
【0169】
局所適用の薬学的組成物に好適である薬学的に許容される担体の例としては、組成物の最終形態に応じて、例えば、エマルション、クリーム、水溶液、油、軟膏、ペースト、ゲル、ローション、ミルク、泡、懸濁液、エアロゾルなどの基剤として美容及び医療分野での使用が周知である担体材料が挙げられる。したがって、本発明による好適な担体の代表的な例としては、限定されないが、水、液体アルコール、液体グリコール、液体ポリアルキレングリコール、液体エステル、液体アミド、液体タンパク質加水分解物、液体アルキル化タンパク質加水分解物、液体ラノリン及びラノリン誘導体、並びに美容及び薬用組成物中で一般的に用いられる同様の材料が挙げられる。本発明による他の好適な担体としては、限定されないが、例えば、一価及び多価アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、ソルビトール、2-メトキシエタノール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、マンニトール、及びプロピレングリコールなどのアルコール;ジエチル又はジプロピルエーテルなどのエーテル;ポリエチレングリコール及びメトキシポリオキシエチレン(200~20,000の範囲の分子量を有するカルボワックス);ポリオキシエチレングリセロール、ポリオキシエチレンソルビトール、ステアロイルジアセチンなどが挙げられる。
【0170】
本開示の局所組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得る、FDAによって承認されたキットなどのパック又はディスペンサーデバイス内で提示され得る。ディスペンサーデバイスは、例えば、チューブを備え得る。パック又はディスペンサーデバイスは、投与についての指示書を伴い得る。パック又はディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって定められた形態での通知を伴い得、この通知は、ヒト又は獣医学的投与のための組成物の形態についての機関による承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方薬に対する、又は承認された製品添付文書の、米国食品医薬品局によって承認されたラベルを含み得る。また、薬学的に許容される担体中に製剤化された本発明の局所組成物を含む組成物は、調製され、適切な容器内に入れられ、示される症状の治療についてのラベルが添付され得る。
【0171】
本発明によって使用され得る別のパッチ系構成は、半透過性膜及び接着剤によって剥離ライナーから分離される薬物溶液又は懸濁液を含有する液体コンパートメントを含むことを特徴とする、リザーバ経皮系設計である。このパッチ系の接着剤構成要素は、膜と剥離ライナーとの間の連続層として、又は膜の周りで同心円状の構成のいずれかで組み込まれ得る。本発明によって利用され得る更に別のパッチ系構成は、剥離ライナーと直接接触する薬物溶液又は懸濁液を含有する半固体マトリックスを含むことを特徴とする、マトリックス系設計である。皮膚接着を担う構成要素は、重ね合わせて組み込まれ、半固体マトリックスの周りで同心円状の構成を形成する。
【0172】
本開示の薬学的組成物は、担体が固体である、直腸投与に好適な形態であり得る。混合物が単位用量坐剤を形成することが、好ましい。好適な担体としては、カカオバター及び当該技術分野で一般的に使用される他の材料が挙げられる。坐剤は、まず、組成物を軟化されたか又は融解された担体(複数可)と混合し、続いて冷却し、型内で成形することによって簡便に形成することができる。
【0173】
本開示の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物は、粉末又は液体濃縮物の形態でも調製され得る。
【0174】
薬学的組成物(又は製剤)は、多様な方式で包装され得る。一般に、流通のために、物品は、薬学的組成物を適切な形態で含有する容器を含む。好適な容器は、当業者に周知であり、ボトル(プラスチック及びガラス)、サシェ、ホイルブリスターパックなどの材料が挙げられる。容器はまた、パッケージの内容物への不注意なアクセスを防止するための不正開封防止アセンブリを含み得る。加えて、容器は、典型的には、容器の内容物について、及び任意の適切な警告文又は指示を記載したラベルが配置されている。
【0175】
開示される薬学的組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得るパック又はディスペンサーデバイス内で提示され得る。ブリスターパックなどのパックは、例えば、金属ホイル又はプラスチックホイルを含み得る。パック又はディスペンサーデバイスは、投与についての指示書を伴い得る。パック又はディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の容器に関連する通知を添付してもよく、通知は、ヒト又は獣医学的投与のための薬剤の形態の機関による承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方薬の米国食品医薬品局によって承認されたラベル、又は承認された製品インサートであり得る。また、適合する薬学的担体中に製剤化された開示される化合物を含む薬学的組成物は、調製され、適切な容器に入れられ、示される症状の治療についてのラベルが添付され得る。
【0176】
投与の正確な投与量及び頻度は、当業者には周知であるように、特定の開示される化合物、開示される作製する方法の生成物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、又はその多形体、その水和物、その溶媒和物、その多形体、又はその立体化学的異性体形態、治療される特定の状態、及び治療される状態の重症度;年齢などの、投与量を投与される対象の病歴に特異的な様々な要因;体重、性別、障害の程度、及び特定の対象の一般的な健康状態、並びに個人が服用し得る他の医薬品に依存する。更に、当該1日有効量が、治療される対象の応答に応じて、かつ/又は本開示の化合物を処方する医師の評価に応じて、低下又は増加され得ることは明らかである。
【0177】
開示される薬学的組成物は、通常、上述の病理学的又は臨床的状態の治療に適用される、他の治療活性化合物を更に含み得る。
【0178】
開示される組成物が、開示される化合物から調製され得ることが理解される。開示される組成物が、開示される使用する方法で用いられ得ることも理解される。
【0179】
既に言及したように、本開示は、治療有効量の開示される化合物、開示される作製する方法の生成物、薬学的に許容される塩、その水和物、その溶媒和物、その多形体、及び薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物に関する。加えて、本開示は、薬学的に許容される担体が、治療有効量の本開示による化合物と密接に混合されることを特徴とする、そのような薬学的組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0180】
ピリジノン系化合物及びその製剤を使用する方法
本明細書に記載される任意の量のピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤は、ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤を必要とする対象に、1日、1週間、1か月、又は1年当たり1回以上投与され得る。いくつかの態様では、投与される量は、ピリジノン系化合物(複数可)及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤の有効量である。例えば、ピリジノン系化合物は、1日総用量で投与され得る。1日総用量は、1日当たり単回用量で与えられ得る。他の態様では、1日総用量は、1日当たり複数用量にわたって投与され得、各用量が、投与される1日総用量(部分用量)の一部を含有し得る。いくつかの態様では、1日当たりに送達される用量の量は、2、3、4、5、6、又はそれ以上であり得る。更なる態様では、ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤は、対象に、1週間当たり1、2、3、4、5、又は6回などの、1週間当たり1回以上投与され得る。他の態様では、ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤は、対象に、1か月当たり1、2、3、4~5回、又はそれ以上などの、1か月当たり1回以上投与され得る。なお更なる態様では、ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤は、対象に、1年当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10~11回、又はそれ以上などの、1年当たり1回以上投与され得る。
【0181】
いくつかの態様では、ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤は、1つ以上の他の補助活性剤又は治療モダリティとの同時療法又は併用療法として使用され得る。いくつかの態様では、ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤は、従来の化学療法剤又はその薬学的製剤、放射線、及び/又は他のがん治療モダリティと同時に、同期間に、及び/又は順次投与され得る。
【0182】
本明細書に記載されるピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤の量は、遊離化合物又は非塩化化合物として計算して、1日当たり約0.001mg~約1000mgの範囲の量で投与され得る。いくつかの態様では、ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤の量は、0.001mg/体重kg~1000mg/体重kgの範囲であり得る。いくつかの態様では、ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤の量は、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50~約100mg/体重kgであり得る。いくつかの態様では、投与される量は、単回用量とみなされるか、又は部分用量の合計とみなされる場合の有効量である。
【0183】
ピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書の他の箇所に考察されるように、1つ以上の他の補助剤又は治療化合物と組み合わせて投与され得るか、又はそれらを含み得る。好適な補助剤としては、これらに限定されないが、アンチセンス又はRNA干渉分子、化学療法剤、抗新生物剤、ホルモン剤、抗生物質、抗ウイルス剤、免疫調節剤、抗吐き気剤、疼痛調節化合物(アヘンなど)、抗炎症剤、解熱剤、抗生物質、及び/又は抗体若しくはそれらの断片が挙げられる。化合物(複数可)、及び/又は製剤(複数可)、及び/又は追加の治療薬(複数可)は、任意の簡便な経路によって、別個の又は組み合わせられた薬学的製剤中で同時に又は順次投与され得る。追加の治療剤は、それらの光学的に純粋な形態で、又はそれらの薬学的に許容される塩で提供され得る。
【0184】
キット
本明細書に記載されるピリジノン系化合物及び任意選択的な免疫チェックポイント阻害剤は、組み合わせキットとして提示され得る。本明細書で使用される場合、「組み合わせキット」又は「部品のキット」という用語は、本明細書に記載される化合物、その誘導体、又は薬学的製剤のうちのいずれか、並びにその中に含有される要素の組み合わせ又は一次活性成分などの単一の要素を包装、販売(sell)、販売(market)、送達、及び/又は投与するために使用される任意の追加の構成要素を指す。そのような追加の構成要素としては、これらに限定されないが、包装材、シリンジ、ブリスターパッケージ、ボトルなどが挙げられる。キット内に含有される構成要素(例えば、活性剤)のうちの1つ以上が同時に投与される場合、組み合わせキットは、単一の薬学的製剤(例えば、錠剤)又は別個の薬学的製剤中に活性剤を含有し得る。
【0185】
薬剤が同時に投与されない場合、組み合わせキットは、別個の薬学的製剤中に各薬剤を含有し得る。別個の薬学的製剤は、単一のパッケージ内に、又はキット内の別個のパッケージ内に含有され得る。
【0186】
いくつかの態様では、組み合わせキットはまた、有形の表現媒体上に印刷されたか、又は表現媒体に含有された指示書を含む。指示書は、その中に含有される化合物又は薬学的製剤の含有量に関する情報、その中に含有される化合物(複数可)又は薬学的製剤(複数可)の含有量に関する安全性に関する情報、その中に含有される化合物(複数可)及び/又は薬学的製剤の投与量、使用のための表示、及び/又は推奨される治療レジメン(複数可)に関する情報を提供することができる。いくつかの態様では、指示書は、化合物、薬学的製剤、又はそれらの塩の投与を必要とする対象に、それらを投与するための指示を提供する。投与を必要とする対象は、がん又は他の疾患を有し得るか、又は有することが疑われ得、これらに限定されないが、関節炎、ループス、肺動脈性高血圧、心臓リモデリング、及び/又は神経変性疾患を含み得る疾患及び/又はその症状を治療及び/又は予防するために、ヒストン修飾が調節され得る。
【0187】
いくつかの態様では、キットは、ピリジノン系化合物、その誘導体、又はその薬学的製剤に加えて、1つ以上の補助活性剤を含み得る。いくつかの態様では、補助活性剤は、従来の化学療法剤又はその薬学的製剤である。化学療法剤としては、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾデパ、カルボクオン、メツレデパ、ウレデパ、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリメチロールメラミン、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、アクラシノマイシン、アクチノマイシンF(1)、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、6-ジアゾ-5-オキソ-1-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン(ancitabine)、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロラシル(fluororacil)、テガフール、L-アスパラギナーゼ、プルモザイム、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン、カルボプラチン、シスプラチン、デフォファミド(defofamide)、デメコルシン、ジアジクオン、エルフォルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、エトポシド、フルタミド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、インターロイキン-2、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン(nitracrine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、パクリタキセル、タモキシフェン、テニポシド、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0188】
ここで、本開示の態様を説明してきたが、一般に、以下の実施例は、本開示のいくつかの追加の態様について記載している。本開示の態様は、以下の実施例及び対応する本文及び図と関連して記載されているが、本開示の態様をこの記載に限定する意図はない。反対に、意図は、本開示の趣旨及び範囲内に含まれる全ての代替物、修飾物、及び同等物を網羅することである。
【0189】
態様
態様1.治療を必要とする対象におけるRas変異に関連付けられたがんを治療する方法であって、対象に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、
【化16】


式中、
12が、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、プロピレニル、-CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、又はCH(CO)CHClであり、
11が、窒素含有二環式又は三環式ヘテロアリール、アリール、又はビアリールであり、それらの各々が、任意選択的に、独立して、-N(R)S(O)、-S(O)NR、-C(O)NR-N(R)C(O)R-NR、-(C-Cアルキレニル)R、-(C-Cシクロアルキレニル)R、アリール、ヘテロアリール、-(C-Cアルキレニル)Rc’、-H、ハロゲン、-CN、プロピレニル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、 -CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、CH(CO)CHCl、及びR70から選択される、1、2、又は3つの置換基で置換され、
Xが、任意選択的に存在し、存在する場合、-O-、-C(O)-、-N(R77)-、及び-CH(R70)-から選択され、
77が、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、及びR70からなる群から選択され、
70が、出現ごとに、各々独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cハロアルキル、R、及びC-Cアルキルから選択され、前記C-Cアルキルが、任意選択的に、-OR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)2R、-S(O)NR、及びRから選択される1つの置換基で置換され、
及びRc’が、出現ごとに、独立して、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択され、各R基が、任意選択的に、1、2、3、4、又は5つのR基で置換され、
が、出現ごとに、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、-NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR、-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びC-Cハロアルキルから選択される、方法。
態様2.化合物が、式IIであり、
【化17】


式中、
が、
【化18】


であり、
が、
【化19】


であり、
が、H又はC-Cアルキルであり、
80が、C-Cアルキルであり、
、X、及びXが、各々独立して、CH又はNからなる群から選択される、態様1に記載の方法。
態様3.R12が、C-Cアルキルである、態様1又は2に記載の方法。
態様4.R12が、メチルである、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
態様5.Rが、以下である、態様2~4のいずれか1つに記載の方法
【化20】


態様6.Xが、Nであり、Xが、Nであり、Xが、CHである、態様5に記載の方法。
態様7.Rが、C-Cアルキルである、態様2~6のいずれか1つに記載の方法。
態様8.Rが、メチルである、態様2~6のいずれか1つに記載の方法。
態様9.Rが、以下である、態様2~8のいずれか1つに記載の方法
【化21】


態様10.R80が、エチルである、態様9に記載の方法。
態様11.化合物が、式IIIであり、
【化22】


式中、R31が、
【化23】


であり、
157が、Me、CHCH、又はCH(CHであり、
32が、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cシクロアルキル、-H、-D、C-C置換シクロアルキレニル、置換アリール、及び置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
33、R34、R35、R36、R37、R34’、R35’、R36’、R37’が、各々独立して、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルキルアミン、C-Cシクロアルキルアミン、C-Cアルキルエステル、及びC-Cアルキルアミドからなる群から選択される、態様1に記載の方法。
態様12.R33、R34、R35、R36、R37、R34’、R35’、R36’、R37’が、各々水素である、態様11に記載の方法。
態様13.R32が、C-Cアルキルである、態様11又は12に記載の方法。
態様14.R32が、メチルである、態様11又は12に記載の方法。
態様15.R31が、
【化24】


であり、式中、R157が、Me、CHCH、又はCH(CHである、態様11~14のいずれか1つに記載の方法。
態様16.化合物が、式IV又はその薬学的に許容される塩である、態様1に記載の方法。
【化25】


態様17.対象に、有効量の免疫チェックポイント阻害剤を投与することを更に含む、態様1~16のいずれか1つに記載の方法。
態様18.免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、又はそれらの組み合わせを含む、態様17に記載の方法。
態様19.免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体である、態様17又は18に記載の方法。
態様20.免疫チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、態様17に記載の方法。
態様21.免疫チェックポイント阻害剤が、化合物の投与の前に投与される、態様17~20のいずれか1つに記載の方法。
態様22.免疫チェックポイント阻害剤が、化合物の投与後に投与される、態様17~20のいずれか1つに記載の方法。
態様23.免疫チェックポイント阻害剤が、化合物の投与と同時に投与される、態様17~20のいずれか1つに記載の方法。
態様24.Ras変異に関連付けられたがんが、肺がん、消化管がん、胸部がん、膵臓がん、結腸がん、又は血液がんである、態様1~23のいずれか1つに記載の方法。
態様25.Ras変異に関連付けられたがんが、小腸腺がん、直腸腺がん、胆管がん、胆嚢がん、神経芽細胞腫、又は黒色腫である、態様1~23のいずれか1つに記載の方法。
態様26.Ras変異に関連付けられたがんが、膵管腺がんである、態様1~23のいずれか1つに記載の方法。
態様27.薬学的組成物であって、
(a)式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩であって、
【化26】


式中、
12が、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、プロピレニル、-CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、又はCH(CO)CHClであり、
11が、窒素含有二環式又は三環式ヘテロアリール、アリール、又はビアリールであり、それらの各々が、任意選択的に、独立して、-N(R)S(O)、-S(O)NR、-C(O)NR-N(R)C(O)R-NR、-(C-Cアルキレニル)R、-(C-Cシクロアルキレニル)R、アリール、ヘテロアリール、-(C-Cアルキレニル)Rc’、-H、ハロゲン、-CN、プロピレニル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、 -CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、CH(CO)CHCl、及びR70から選択される、1、2、又は3つの置換基で置換され、
Xが、任意選択的に存在し、存在する場合、-O-、-C(O)-、-N(R77)-、及び-CH(R70)-から選択され、
77が、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、及びR70からなる群から選択され、
70が、出現ごとに、各々独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cハロアルキル、R、及びC-Cアルキルから選択され、前記C-Cアルキルが、任意選択的に、-OR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、及びRから選択される1つの置換基で置換され、
及びRc’が、出現ごとに、独立して、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択され、各R基が、任意選択的に、1、2、3、4、又は5つのR基で置換され、
が、出現ごとに、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、-NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR、-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びC-Cハロアルキルから選択される、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩と、
(b)免疫チェックポイント阻害剤と、
(c)薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
態様28.キットであって、
(a)式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩であって
【化27】


式中、
12が、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、プロピレニル、-CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、又はCH(CO)CHClであり、
11が、窒素含有二環式又は三環式ヘテロアリール、アリール、又はビアリールであり、それらの各々が、任意選択的に、独立して、-N(R)S(O)、-S(O)NR、-C(O)NR-N(R)C(O)R-NR、-(C-Cアルキレニル)R、-(C-Cシクロアルキレニル)R、アリール、ヘテロアリール、-(C-Cアルキレニル)Rc’、-H、ハロゲン、-CN、プロピレニル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、 -CH(CO)CH=CH、オキシラン-2-イルメチル、CH(CO)CHCl、及びR70から選択される、1、2、又は3つの置換基で置換され、
Xが、任意選択的に存在し、存在する場合、-O-、-C(O)-、-N(R77)-、及び-CH(R70)-から選択され、
77が、-H、ハロゲン、-CN、C-Cハロアルキル、-OR70、-NR7070、-C(O)OR70、-C(O)NR7070、-S(O)70、-S(O)NR7070、及びR70からなる群から選択され、
70が、出現ごとに、各々独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cハロアルキル、R、及びC-Cアルキルから選択され、前記C-Cアルキルが、任意選択的に、-OR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、及びRから選択される1つの置換基で置換され、
及びRc’が、出現ごとに、独立して、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択され、各R基が、任意選択的に、1、2、3、4、又は5つのR基で置換され、
が、出現ごとに、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、-CN、-NO、-OR、-S(O)NR、-C(O)R、-C(O)NR、-NR、-N(R)C(O)R、-(C-Cアルキレニル)-OR、-(C-Cアルキレニル)-C(O)NR、-(C-Cアルキレニル)-NR、及び-(C-Cアルキレニル)-N(R)C(O)Rから選択され、
及びRが、出現ごとに、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びC-Cハロアルキルから選択される、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩と、
(b)免疫チェックポイント阻害剤と、
(c)化合物及び免疫チェックポイント阻害剤を投与するための指示書と、を含む、キット。
【実施例
【0190】
以下の実施例は、本明細書に特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法が、どのように作製され評価されるかの完全な開示及び記載を当業者に提供するために記載されており、純粋に本開示の例示であることを意図しており、発明者らが発明者らの開示とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段指示がない限り、部は、重量部であり、温度は、℃であるか、又は周囲温度であり、圧力。
【0191】
材料及び方法
細胞培養及び生存率アッセイ
ヒト膵臓がん細胞(Panc1及びMiaPaCa2)及びマウス膵臓がん細胞(KPC105)を、10%の熱不活化させたFBS、ペニシリン(100U/mL)、及びストレプトマイシン(100mg/mL)を補充したDMEM中で培養した。ASPC1細胞を、10%の熱不活化させたFBS、ペニシリン(100U/mL)、及びストレプトマイシン(100mg/mL)を補充したRPMI1640中で成長させた。Capan1細胞を、10%の熱不活化させたFBS、ペニシリン(100U/mL)、及びストレプトマイシン(100mg/mL)を補充したIMDM1中で成長させた。ヒトがん細胞株をATCCから購入し、6か月以内に使用し、10継代以下で維持した。KPC105細胞を、以前の研究(25)に記載されているように使用した。実験室内の全ての細胞株を、LookOutマイコプラズマPCR検出キット(Sigma Aldrich)を介して6か月ごとにマイコプラズマについて試験し、陰性の場合にのみ使用した。
【0192】
細胞成長アッセイでは、一定数の血清飢餓腫瘍細胞を、10%コンフルエンスに達するように24ウェルプレートの各ウェルに播種し、その後のコンフルエンスパーセントを、対照群が100%コンフルエンスに達するまで4時間ごとに評価した。細胞生存率アッセイでは、無血清DMEM中の2,000~4,000個の細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに播種した。16時間後、培地/薬物を添加し、細胞を72時間培養した。この時点で、20ulの5mg/mlの3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-臭化テトラゾリウム(MTT)溶液を各ウェルに添加した(1:100)。2時間後、培地を吸引し、結晶をDMSO中に溶解させ、プレートリーダによって570nmの吸光度を決定した。
【0193】
化学物質及び試薬
XP-524を、前述のように設計及び合成した(23)。JQ-1及びSGC-CBP30をSigma Aldrich(St.Louis,MO)から購入し、使用直前に10μMのストック濃度で滅菌PBS中で再構成した。
【0194】
BROMOscanブロモドメインプロファイリング
DNAタグ付きブロモドメインを有する試験化合物のDiscoverX Corp.(Fremont,CA)KdによるBROMOscanブロモドメインプロファイリングを提供し、独自の参照固定化リガンドに対する結合を通じて決定した。
【0195】
タンパク質結晶化
XP-524と複合体化したBRD4及びCBPブロモドメインの結晶を、4℃でハンギングドロップ蒸気拡散によって成長させた。結晶化の前に、16mg/mLのBRD4又はCBPブロモドメインを2mMのXP-524とともに氷上で60分間インキュベートし、次いで遠心分離して沈殿物を除去した。2μLのBRD4:XP-524又はCBP:XP-524を17~19%のPEG3350及び0.2Mのクエン酸リチウム三塩基性四水和物(pH8.4)を含有する1~2μLのリザーバ溶液と混合することによって、複合体の結晶を成長させた。
【0196】
データ収集及び構造精密化
BRD4:XP-524結晶を生成し、前述のように分析した(23)。CBPでは、10~15%のグリセロール及び200uMのXP-524を含有する母液に浸すことによって結晶を冷凍保存し、その後瞬間冷凍した。データは、Advanced Photon Source,Argonne National LaboratoryのLife Sciences Collaborative Access Team 21-ID-Fビームラインで収集した。XDS(74)を使用して、データのインデックス作成、統合、及び拡大縮小を実施し、最初にPhaser(75)、及び検索モデルとしてCBPブロモドメイン構造(PDBエントリー:5KTU)を使用する分子置き換えによって、位相を決定した。次いで、Molrep(76)による検索モデルとして、Phaserによって見出された4つのCBP:XP-524モノマーのアセンブリを使用して、2つのCBP:XP-524「四量体」の非対称単位を生成した。CCP4i(77)モジュールRefmac5(78)及びCoot(79)を用いて、剛体精密化、続いて拘束精密化(restrained refinement)の反復ラウンド及びモデル構築を実施した。座標及び構造因子は、PDB受託コード7JUOで登録されている。
【0197】
抗体
全ての抗体は、確立された販売者から購入し、この記録において使用した特定の種及び用途については製造業者が検証した。
【0198】
RNA配列決定及び遺伝子セットエンリッチメント分析(GSEA)
DMSOビヒクル、1μMのJQ-1、JQ-1及びSGC-CBP30、又はXP-524のいずれかでPanc1細胞を処理した。24時間後、製造業者の指示に従ってRNeasy Plus Mini Kit(Qiagen、Hilden,Germany)を使用して、RNAを抽出した。品質管理、配列決定、及びデータ分析は、Novogeneが実施した。
【0199】
qPCR
Applied Biosystems(Foster City,CA)からの遺伝子特異的TaqManプローブ、TaqMan Universal PCR Master Mix、及び7500 Fast Real-time PCR Systemを用いて、定量的遺伝子発現を実施した。以前の研究(70)に記載されているように比較CT方法を用いて、相対的な遺伝子発現についてこれらのデータを定量化した。
【0200】
ウェスタンブロット及び免疫沈降
細胞又は組織溶解物をRIPA緩衝液(Cell Signaling)中に溶解させ、続いて超音波処理した。等量のタンパク質(15~50μg)をローディングダイと混合し、8分間煮沸し、4~20%の変性SDS-PAGEゲル上で分離させ、PVDF膜に移した。膜を5%のミルク/TBS/0.1%のTween中で1時間ブロックし、pRB、pMEK1、MEK1、pERK1/2、ERK1/2、(Cell Signaling、Danvers,MA)、H3K27ac(Active Motif、Carlsbad,CA)、KRAS(Novus Bio、Saint Charles,MO)、BRD4、EP300(abcam、Cambridge,MA)、又はGAPDH(Santa Cruz Biotech、Santa Cruz,CA)に対する抗体とともにインキュベートした。膜をTBS-0.1%のTweenで洗浄し、次いでHRPコンジュゲート二次抗体(Cell Signaling)とともに室温で1時間インキュベートし、再洗浄した。増強化学発光法(Thermo Fischer、Waltham,MA)によって、タンパク質バンドを視覚化し、製造業者の仕様に従ってデジタル解析した。
【0201】
免疫沈降では、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害カクテル(Cell Signaling)を含むIP緩衝液(25mMのTris-HCl pH7.5、150mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のNP-40、及び5%のグリセロール)を使用して細胞溶解物を収集し、細胞抽出物をそれぞれの抗体とともに一晩インキュベートし、続いてプロテインA又はGアガロースビーズとともに4℃で4時間インキュベートした。溶解緩衝液で5~7回洗浄した後、SDS-PAGEを使用して免疫複合体を解析し、ウェスタンブロットによって可視化した。全ての抗体をアイソタイプ特異的IgG対照と比較して、特異性を確認した。全ての実験は、別段指示がない限り、3回実施した。
【0202】
トランスジェニックマウス
Nongenic B6(野生型)、P48-Cre×LSL-KrasG12D(KC)、Pdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/-(KPC)、及びPdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/+(KPPC)マウスを、前述のように生成した(24)。8週齢のKCマウスに、PBSビヒクル又は毎日のXP-524(5mg/kg)のいずれかの腹腔内注射(IP)を投与した。マウスを6か月齢で安楽死させ、分析のために組織を収集した。KPCマウスに関与する研究では、15週齢の動物を登録し、その時点で、本文に記載されるように、PBSビヒクル、XP-524(5mg/kg)、抗PD-1、又はXP-524及び抗PD-1のIP注射を動物に与えた。瀕死の場合、又は健康低下の明確な兆候、例えば、脱毛、体重減少、若しくは無気力を示す場合、又は非生存研究では登録後の日数で示される一定エンドポイントで、KPCマウスを屠殺した。KPPCマウスに関与する研究では、0.5cmの触知可能な腫瘍を発症した場合、又は4週齢のいずれかで動物を登録した。この時点で、マウスにPBSビヒクル又は毎日のXP-524(5mg/kg)のいずれかの腹腔内注射(IP)を投与し、上記のように瀕死の場合又は健康低下の明確な兆候を示す場合に屠殺した。安楽死については、動物が足先を叩いても応答せず、かつ/又は死戦期呼吸が観察されるまで、イソフルランでしっかりと麻酔をかけた。安楽死の主要な方法として開胸術を行い、二次的な方法として放血を行った。全てのマウス研究では、マウスを2週間以内に適合させ、雄及び雌を50:50の比で無作為化した。
【0203】
一次細胞株由来異種移植片
G-68一次細胞株由来異種移植片を、前述のように生成した(25)。また、記載されているように(25)、デジタルキャリパを使用して、腫瘍サイズを週2回測定した。瀕死の場合、施設の方針によって許容される最大腫瘍サイズ(2cm)の場合、又は腫瘍が潰瘍化した場合に、マウスを安楽死させた。安楽死については、CO2窒息、続いて頸部脱臼によって動物を屠殺し、その後、腫瘍を採取し、上記のように処理した。
【0204】
PDACスライス培養
以前に公開されたプロトコル(29、30)に従って、Leica VT1000S振動ブレードミクロトームを使用して、ヒトPDAC腫瘍からの直径約6mmのパンチ生検を250μmの厚さのスライスへと切片化した。次いで、コラーゲンコーティングされた0.4μmの孔膜インサートの上にスライスを配置し、6ウェルプレートに配置した。翌日、示された用量の異なる薬物でスライス培養物を処理した。2~3日ごとに、新鮮な処理培地を交換した。実験終了時に、スライスを4%のPFAで固定し、Northwestern UniversityのPathology Coreによって処理した。その後、埋め込み組織を埋め込み、上記のプロトコルに従って染色のために切片化した。
【0205】
組織学、免疫組織化学、及び免疫蛍光
マウスを安楽死させ、膵臓、結腸、肺、小腸、肝臓、及び脾臓に病理学的検査を施した。組織を10%のホルマリンに固定し、パラフィン包埋し、各組織から4mm間隔で切片を切断し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)、トリクロム(Sigma Aldrich)で、又は免疫組織化学(IHC)若しくは免疫蛍光(IF)を介して染色した。免疫組織化学では、スライドをキシレンによって脱パラフィン化し、エタノール勾配によって再水和させ、次いでDAKO回収緩衝液(DAKO、Santa Clara,CA)を使用して圧力鍋内で加熱した。メタノール中3%の過酸化水素中で、内因性ペルオキシダーゼを30分間クエンチした。組織を、PBS中0.5%のBSAで30分間ブロックし、4℃で一晩、1:50~1:200でBRD4、EP300/CBP、CD45、CD8(abcam)、RASG12D(Genetex、Irvine,CA)、pERK、又は切断カスパーゼ3(Cell Signaling,Danvers,MA)に対する一次抗体とともにインキュベートした。HRPコンジュゲート二次抗体、続いてDAB基質/緩衝液(DAKO)を使用して、スライドを構築した。
【0206】
免疫蛍光では、圧力鍋を介してDAKO回収緩衝液中でスライドを加熱し、1時間室温で、PBS中0.5%のBSA中で組織をブロックした。4℃で一晩、1:50~1:200でCK19(University of Iowa Hybridoma Bank)、E-カドヘリン(Cell Signaling)、PCNA、CD3、(Santa Cruz Biotechnology、Dallas,TX)、又はグランザイムB(abcam、Cambridge,MA)に対する一次抗体に切片を曝露させた。AlexaFluor488又は594コンジュゲート二次抗体(1:200~1:1,000、Abcam)を使用してスライドを構築し、DAPI含有媒体(Santa Cruz Biotechnology)に取り付け、DAPI、FITC、及びTexas Redフィルタに曝露させた。
【0207】
顕微鏡法
全ての画像は、Phase Contrast Kit及びNikon明視野カメラアタッチメントを備えたNikon 40x-400x Epi-Fluorescent Inverted Microscopeを使用して取得した。ホワイトバランスとして陰性スライドを使用し、全ての画像にアナログゲイン又はデジタルゲインを使用しなかった。蛍光画像撮影では、各実験に陽性対照スライドを使用し、ゼロのゲイン設定を使用してNikon NISエレメントソフトウェアを使用してスライドを自動曝露させた。同様にゲインをゼロに設定し、LUTを使用して、陰性対照スライドに基づいて背景を縮小した。これらのLUT値及び曝露時間を標準化し、全ての他の同様に染色されたスライドに使用した。また、Nikon NIS エレメントソフトウェアを使用して、画像を重ね合わせた。
【0208】
組織スライド計数及び測定値
最低でも3人の盲検化された研究者によって、全ての計数を実施し、各値の表示は、以前の出版物(24、25、67、80~82)に記載されているように、標本ごとに少なくとも3つの高倍率視野の平均を含む。Minitab expressソフトウェアを介してスコア分布を可視化し、中央値を実線として示し、統計的外れ値を除く全ての個々の値を示した。
【0209】
フローサイトメトリー
脾臓を単離し、破裂させ、冷たいPBSで洗浄し、内容物を濾過した。腫瘍標本として、試料をCollagenase IV/DNaseを用いて37℃で1時間消化させ、機械的に解離させ、100μmで濾過した。200万個の細胞を丸底96ウェルプレートに播種し、PBSで洗浄し、ゴルジプラグ/タンパク質輸送阻害剤(BD biosciences、San Jose,CA)とともにインキュベートし、PBS中1:200~1:1500の抗CD45-FITC、抗CD11b-APC、抗CD206-PerCP/Cy5.5、抗GR-1-APC/Cy7(BioLegend、San Diego,CA)、抗CD4-APC/Cy7、抗CD25-PE、Ant-CD8A-PerCP/Cy5.5(BD biosciences)、抗CD69-APC、抗FoxP3-FITC(eBiosciences、San Diego,CA)、抗CD4-APC-Cy7、CD25-PE(BD biosciences)、並びにAlive/Deadキット(Invitrogen、Grand Island,NY)で、30分間氷上で染色した。次いで、PBS中1%のPFAで細胞を10分間室温で固定し、細胞傷害性T細胞を評価するパネルとして、perm/染色緩衝液(BD biosciences)中1:500~150の抗パーフォリン-APC(Thermo Fischer)及び抗インターフェロン-γ-PE(BioLegend)で、30分間氷上で染色し、perm/洗浄緩衝液(BD biosciences)で3回洗浄した。分析は、同じゲーティングパラメータ及び計装を使用して同様に行い、分析の各アームには最低でも3匹のマウスを含めた。BD Fortessa Cytometerで細胞を分析し、許容可能なFSC/SSCパラメータ内の細胞に対して排他的にゲーティングした。別段記述がない限り、全てのその後のフロープロットは、Live/Deadアッセイ及びSSC-Wゲーティングに基づく生単一細胞に対応し、100,000の事象を表す。各抗体の非染色対照及びアイソタイプ対照に基づく対照群の幾何平均に基づいて、高集団及び低集団を同定した。他の全ての実験を、非染色単一細胞及びアイソタイプ対照の両方と比較した。
【0210】
ゲノムデータベース分析
PDAC患者のBadea et al.及びPei et al.コホートをダウンロードし、Oncomineプラットフォームを使用してを使用して可視化した。これらのデータセット及びDNA/RNA配列決定分析及びプロトコルに関する詳細情報は、上に列挙されるデータポータルウェブページに見出すことができる。別段記載がない限り、全てのmRNA発現値を対数尺度でプロットする。
【0211】
重要なリソースの認証
尾生検、続いて全ての関連する導入遺伝子(Pdx1-Cre、P48-Cre、LSL-KrasG12D、LSL-TP53R172H)についてのPCRによって、全てのマウス遺伝子型を検証した。精製されたマウスPD-1を認識する能力について、製造業者(BioXcell)によって抗PD-1抗体RMP1-14をウェスタンブロットによって検証したところ、マウス膵管腺がんにおいてPD-1シグナル伝達を中和するために首尾よく使用されている(24、83)。化合物XP-524の検証は、原稿本文、並びにその合成について記載している元の著作物に記載されている(23)。
【0212】
統計分析
ステューデントT検定、単純線形回帰分析、ハザード比、又はMinitab expressにおける一般線形モデルへのANOVA適合のいずれかによってデータを分析し、正規性前提条件及び残差の適合プロットの遵守によって、その妥当性を試験した。Tukey法によって結果を調整し、別段記載がない限り、p<0.05で有意であるとみなした。中央値及び四分位数に配置された全ての他の値を示すボックスプロットとして、又は平均+標準偏差としてのいずれかで、結果を提示する。RNA配列決定データでは、P値を調整した偽発見率(FDR)を使用して有意性を決定し、データは、p<0.05で有意であるとみなした。
【0213】
結果
BRD4及びEP300/CBPは、PDACにおいて普遍的に発現される。
PDACにおける多特異性BRD4/EP300阻害剤の潜在性を決定するために、まず、ヒトPDAC切除生検(N=14)及び隣接する非悪性組織(N=9)のコホートにおける両方のタンパク質の発現を評価した。染色強度の増加に加えて、隣接する非悪性標本と比較すると、PDAC組織は、BRD4及びEP300/CBPの両方に陽性の核のパーセントが比較的増加した(図1A、B)。同様に、2つの公的に利用可能なゲノムデータセットにおける隣接する非悪性組織と比較すると、BRD4及びEP300の両方のmRNA発現は、PDAC腫瘍標本において増加した(図1C、D)。BRD4及びEP300/CBPは、PDAC細胞株において遍在的に発現され(図1E)、BRD4の核発現を除いて、Panc1細胞において同様の核局在化パターン、並びにEP300/CBPの核及び細胞質発現の組み合わせを示した(図1F)。
【0214】
免疫組織化学によって、PDACのますます侵襲的なマウスモデルの膵臓におけるBRD4及びEP300/CBPの発現を評価した。早期疾患のPdx1-Cre×LSL-KrasG12D/+(KC)モデルにおいて、BRD4及びEP300/CBPの核蓄積に緩やかな増加が観察され、これは、主に発展中の膵臓上皮新生物(PanIN)に局在した。浸潤性PDACのPdx1-Cre×LSL-KrasG12D/+×LSL-TP53R172H+/-(KPC)モデル、並びに極度に侵襲性のPDACのPdx1-Cre×LSL-KrasG12D/+×LSL-TP53R172H+/+(KPPC)モデル、及びG-68一次細胞株由来異種移植片(CDX)モデルからの腫瘍組織における両方のタンパク質のより強力かつ均一な核発現が見出された(図1G)。
【0215】
XP-524は、BRD4及びEP300/CBPに関与する強力な多特異性BET阻害剤である。
PDAC組織におけるBRD4及びEP300/CBPの保存された発現パターンを考慮して、次に、BRD4及びEP300/CBPのブロモドメインを標的とする二重特異性阻害剤としての新規化合物XP-524(23)の潜在性を探究した(図2A)。プロトタイプのベンチマークBET阻害剤JQ-1と比較して、この化合物は、TR-FRETアッセイ:XP-524 IC50=5.8nM(BRD4-BD1)1.5nM(BRD4-BD2)、JQ-1 IC50=200nM(BRD4-BD1)114nM(BRD4-BD2)によって、優れた効力を示した。(図2B、C)代替的なBROMOscanアッセイを介した更なる分析によって、それぞれ28nM及び116nMのIC50で、XP-524が、EP300及びCBPタンパク質に強く結合し、阻害することが確認された(図2D)。
【0216】
XP-524のその標的タンパク質への結合を検証し、観察された多重特異性を説明するために、BRD4及びEP300ホモログCBP(CBPは、共結晶化についてEP300を上回る好ましい可溶性特徴を提供する)のブロモドメインとの複合体における、XP-524の共結晶構造を取得した。同様に、XP-524が、BRD4-BD1及びCBPブロモドメインの両方でそれ自体を配向させ、アセチル化リジンポケットで広範に接触することが見出された(図2E)。XP-524のピロロピリドン基は、CBPブロモドメイン内のAsn-1168と二座水素結合相互作用を形成し、硫酸塩部分は、ZAループにそれ自体を挿入し、Asp1116の骨格と水素結合を形成する。インドール足場は、疎水性相互作用を通じてLPF棚にぴったりと適合する(図2F)。
【0217】
XP-524-CBP複合体とXP-524-BRD4複合体との重ね合わせは、同様の結合モードを示した。CBPがLPFポケット内のpi-pi相互作用のためのTrpを欠いているので、CBP複合体の底部ピリジン環は、90°回転する。しかしながら、XP-524は、強力なEP300/CBP阻害剤の設計における重要な相互作用である、Arg1173とのカチオン-pi相互作用を形成する(26~28)。対照的に、JQ-1のクロロフェニル環は、Arg-1173と衝突するので、JQ-1は、この重要なカチオン-pi相互作用を捕捉することができず、それによってJQ-1のCBPへの結合及びEP300/CBP阻害剤として機能するJQ-1の能力をブロックする(図2G)。
【0218】
XP-524は、インビトロ及びエクスビボでの発がん性KRASシグナル伝達を混乱させる
膵臓がん細胞におけるXP-524化合物の潜在的な有用性を探究するために、まず、DMSOビヒクル、1μMのJQ-1、1μMのEP300/CBP阻害剤SGC-CBP30、JQ-1及びSGC-CBP30、1μMのXP-524、又はXP-524及びSGC-CBP30のいずれかとともに同数のPanc1腫瘍細胞をインキュベートし、DMSO処理細胞が100%コンフルエンスに達するまで細胞成長動態を監視した。JQ-1は、緩やかな成長抑制をもたらし、SGC-CBP30の添加によって顕著に増強されたが、SGC-CBP30は、JQ-1なしでは細胞成長に僅かな影響しか及ぼさなかった(図3A及びS2A)。対照的に、XP-524は、腫瘍細胞成長の抑制に非常に有効であり、JQ-1とSGC-CBP30との併用効果に非常に似ていた。EP300/CBP阻害剤としてのその役割と一致して、XP-524の効果は、SGC-CBP30の添加によって更に増強されなかった(図2A)。
【0219】
MiaPaCa2及びASPC1細胞を使用してこの実験(図S2B、C)を繰り返した後、次に、一定用量の1μMのSGC-CBP30とともに又は伴わずに、濃度を増加させたJQ-1又はXP-524のいずれかとともにPanc1細胞をインキュベートした。48時間後、MTTアッセイを介して細胞生存率の変化を調べた。細胞成長に対して観察された効果と同様に、JQ-1による細胞生存率の低減は、SGC-CBP30の添加によって増強され、観察されたIC50を有意に低減させた。JQ-1とSGC-CBP30との併用は、XP-524と最大有効性が同様であったが、XP-524は、より低濃度でより有効であり、また、SGC-CBP30の添加によっても影響を受けなかった(図3B及びS2D)。
【0220】
これらの変化の根底にある細胞機序を同定するために、次に、Panc1腫瘍細胞を、DMSOビヒクル、JQ-1、JQ-1及びSGC-CBP30、又はXP-524のいずれかとともにインキュベートした。24時間後、細胞にRNA配列決定を施した(図3C)。Post hoc遺伝子セットエンリッチメント分析は、XP-524が、MAPK経路及び細胞周期進行を含む、発がん性KRASシグナル伝達、並びにいくつかの関連付けられた細胞プロセスを最も有意に抑制することを示唆した(図3D、E)。JQ-1は、KRAS及び細胞周期経路の緩やかな抑制をもたらしたが、これは、XP-524を使用して観察された効果よりも少ないが、SGC-CBP30の添加によって向上した(図3D、E)。RNA配列決定によるKRAS mRNAにおけるXP-524の示唆された効果を考慮して、次に、記載されるようにPanc1細胞を処理し、6時間後にqPCRによってKRAS発現を評価した。これによって、XP-524による処理後のKRAS転写の非常に有意な低減が確認され(図3F)、これは、MiaPaCa2及びASPC1細胞を使用しても観察された(図3G、H)。
【0221】
次いで、Panc1細胞をJQ-1、JQ-1及びSGC-CBP30、又はXP-524で再処理し、ウェスタンブロットによってタンパク質発現の変化を評価した。JQ-1及びJQ-1/SGC-CBP30は、対照と比較して、BRD4及びEP300/CBPの共沈殿を緩やかに低減させたが、これは、XP-524とともにインキュベートした細胞ではほとんど存在しなかった(図3I)。これは、XP-524処理後のKRAS発現の有意な低減、並びにMEK/ERK活性化に関連付けられ、リン酸化RBの低減と並行していた。興味深いことに、JQ-1処理は、H3K27acをサロゲートマーカとして使用したヒストンアセチル化の代償的増加を引き起こしたように思われ、SGC-CBP30の添加によって改善され、XP-524処理細胞では観察されなかった(図3J)。これらの同じ溶解物を使用して、免疫沈降によってBRD4とEP300/CBPとの間の関連性も評価した。次に、有意なXP-524によって誘導されたKRAS発現の抑制及び下流MEK/ERK活性化の阻害も示した一次KPC-105マウスPDAC細胞株を使用して、この実験を繰り返し、RBリン酸化及びH3K27アセチル化に関して同様の結果が観察された(図3K)。より短縮された実験では、XP-524は、MiaPaCa2及びASPC1細胞におけるKRASタンパク質発現及び下流MEK/ERK活性化の同様の低減をもたらした(図3L)。
【0222】
次に、2D細胞培養物の固有の限界を考慮して、3人の患者からの切除標本から6mmのコアを抽出し、250μm間隔でコアを切片化し、記載されているように(29、30)エクスビボで培養することによって、一次PDACスライス培養物(図3M)を確立した。スライス培養物をDMSOビヒクル又はXP-524(5μM)のいずれかとともにインキュベートし、免疫組織化学によって72時間後に評価した。インビトロデータ(図3J)と一致して、XP-524は、ヒトPDACスライス培養物におけるERK活性化、並びにCK19+腫瘍上皮細胞における細胞増殖を有意に低減させた(図3N~P)。
【0223】
XP-524は、インビボで変異型KRASによって誘導されたPanIN形成を低減する
インビトロでの発がん性KRASシグナル伝達の混乱に対するXP-524の効果を考慮し、次に、XP-524がインビボでのKRAS媒介性発がんを同様に抑制するか否かを決定しようと試みた。したがって、新生物性疾患の十分に確立されたPtf1a-Cre×LSL-KrasG12D(KC)モデルを使用した。このモデルは、8週間で膵臓上皮内新生物(PanIN)を発症する早期がん発生の信頼性の高い代表として機能し、典型的には、浸潤性がんへと進行しない(31、32)。これは、KCマウスがC57/B6バックグラウンドで完全に維持され、100%の浸透率で限局性領域のPanIN疾患を8週間で発症し、1歳で限局性PDACを発症しているマウスの5%未満で膵臓全体を通じてPanIN疾患を発症し続ける、コロニーで十分に表されている。
【0224】
これらのマウスを使用して、8週齢のKC動物を50:50の雄対雌の比で2つの治療群のうちの1つに無作為化した化学予防研究をまず行った。マウスに、PBSビヒクル又は5mg/kgのXP-524のいずれかの毎日のIP注射を投与し、6か月の一定時点で屠殺した(図4A)。組織を研究エンドポイントで収集し、XP-524で処理したマウスは、特に総体重に対して正規化すると、膵臓の重量の一貫した低減を示した(図4B)。組織学的評価では、XP-524処理マウスは、病変量及び線維化の有意な低減、並びに正常な腺房組織の保存の増加を示した(図4C、D)。細胞培養系における結果と同様に、XP-524処理マウスは、IHCによる変異型RASタンパク質の発現が実質的に低減し、ERK活性化及び細胞増殖の低減と並行していた(図4E、F)。これはまた、ウェスタンブロッティングによって観察され、XP-524処理マウスは、KRAS発現、並びにMEK/ERKシグナルの下流活性化の一貫した低減を有した(図4G)。
【0225】
XP-524は、マウスPDACにおける生存を延長させ、KRASシグナル伝達を阻害する
進行した疾患におけるXP-524の有効性を探究するために、次に、膵臓がん発生の2つのトランスジェニックモデルを利用し、第1のモデルは、浸潤性PDACのPdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/-(KPC)モデルである。このモデルは、ヒトPDAC組織型を忠実に再現しており、不良な免疫原性及び高密度の反応性腫瘍間質を含むいくつかの重要な特徴を有する。KPC動物は、当初、6週間で前駆膵臓上皮内新生物(PanIN)、15週間で限局性PDAC病変、及び18週間で進行したPDACを発症することが報告されている(33)が、これは、個々のコロニー及びバックグラウンド株によって変動し得る。コロニーのKPCマウスは、C57/B6バックグラウンドで完全に維持され、平均生存は124日(N=30)であり、平均13週齢で限局性領域のPDACを発症する(25)。
【0226】
これらのマウスを使用して、最初に、早期介入研究を行い、最低でも15週間の間、マウスに顕著なPDACを発症させ、その時点で、コロニーのマウスの100%が、限局性PDACを発症した。次いで、この時点で、マウスを50:50の雄対雌の比で2つの処理群のうちの1つへと無作為化した(N=7/群)。マウスに、PBSビヒクル又は5mg/kgのXP-524のいずれかの毎日のIP注射を投与し、健康低下、例えば、体重減少、腹水、又は無気力の明確な兆候を示す場合、屠殺した(図5A)。興味深いことに、XP-524は、KPCマウスにおける死亡を有意に遅延させ、中央値生存を登録後43日から108日まで延長させた(図5B)。組織を研究エンドポイントで収集し、切片化し、H&E、トリクロム、又は免疫組織化学のいずれかでpERKに対して染色した。インビトロの結果と一致して、XP-524処理マウスは、細胞増殖の低減及びアポトーシスの均一な増加と並行して、ERK活性化を実質的に低減させた(図5C、D)。
【0227】
次に、極度に侵襲性のPDACのPdx1-Cre×LSL-KrasG12D×LSL-TP53R172H+/+(KPPC)モデルを使用して、後期介入研究を行った。コロニーのKPPCマウスは、43日(N=12)の中央値生存を有し、早ければ2週齢で広範囲のPDACを発症する。したがって、0.5cmの腫瘍を発症した場合、又は4週齢のときのいずれかに記載のマウスを登録し、それらを2つの処理群(N=6/群)のうちの1つに配置した。前述のように、マウスに、PBSビヒクル又は5mg/kgのXP-524のいずれかの毎日のIP注射を投与し、健康低下、例えば、体重減少、腹水、又は無気力の明確な兆候を示す場合、屠殺した(図5E)。KPCマウスにおけるように、XP-524は、KPPCマウスにおける死亡を遅延させ、中央値生存を登録後23日から50日まで延長させた(図5F)。研究エンドポイントで、H&Eで、又は免疫組織化学によってのいずれかで組織を染色し、これによって、腫瘍間質の緩やかな低減及びERK活性化の有意な減少、並びにその後のアポトーシスの増加が明らかになった(図5G、H)。
【0228】
XP-524は、T細胞の動員を増強するが、機能的抗腫瘍免疫応答を促進しない
有糸分裂及びERK活性化について記載された変化を超えて、XP-524による処理後の腫瘍アーキテクチャの実質的な変化も観察された。KPC対照群と比較すると、XP-524処理腫瘍は、リンパ球浸潤の一貫した増加を特徴とする、高い細胞間質を有し、その大部分は、T細胞マーカCD3に陽性に染色され、腫瘍縁部に限定された(図6A)。しかしながら、これらのT細胞は、T細胞消耗マーカPD-1にほとんど陽性であり、XP-524処理腫瘍は、細胞傷害性グランザイムBのサロゲートマーカに陰性に染色された(図6B及びS3A)。免疫浸潤をより良好に評価するために、インビボ研究を繰り返し、記載されるようにKPCマウスを登録し、それらを一定の2か月の期間の間処理した。研究エンドポイントで、PBS及びXP-524処理マウス(N=4/群)から膵臓及び脾臓を採取し、フローサイトメトリーを施した。
【0229】
以前の組織病理学と一致して、XP-524処理マウスからの腫瘍は、CD4+及びCD8+T細胞の両方の浸潤において有意な増加を示した(図6C)が、脾臓では有意差は観察されなかった(図S3B)。しかしながら、陽性対照と比較すると、これらの腫瘍内CD8+T細胞は、活性化サロゲートIFNγに陰性であり(図6D)、CD4+及びCD8+T細胞の両方が、PD-1にほとんど陽性であった(図6E)。興味深いことに、XP-524処理マウスは、腫瘍内CD4+CD25+FoxP3+調節性T細胞(Treg)の相対的な存在量が有意に低減したが(図6F)、これは脾臓では観察されなかった(図S3B)。XP-524で処理したマウスは、CD45+CD11b+GR-1+マクロファージ浸潤の一貫した増加を有しなかったが、M2サロゲートCD206の発現に緩やかな減少が観察された(図S3C)。
【0230】
腫瘍免疫原性におけるXP-524に関連付けられた変化の機序を更に探究するために、Panc1細胞における以前のRNA配列決定データを再検討し、免疫細胞プロセスに関連する細胞プロセスを探究した。このアプローチを使用して、XP-524が、抗原プロセシング/提示経路の上方調節をもたらし(図6G)、多様なヒト白血球抗原(HLA)分子のmRNA発現を有意に増加させることが見出された(図6H)。これは、インビボでも観察され、XP-524処理マウスは、MHCクラス1について増加した表面染色を示した(図6I)。また、RNA配列決定データによって、形質転換成長因子β(TGFβ)経路の顕著な抑制が同定された(図6J、K)。したがって、ELISAによってTGFβ1の濃度を評価し、XP-524で処理したKPCマウスが、腫瘍内及びTGFβ1の血清レベルの低減を示したことが見出され(図6L)、末梢性免疫寛容の減少とも一致する。
【0231】
XP-524は、PD-1阻害と協働して、KPCマウスにおける生存を更に延長する
XP-524で処理したKPCマウスにおける機能的に消耗したT細胞の浸潤の増強、並びにXP-524が抗原提示を増加させ、免疫抑制性TGFβシグナル伝達を減少させるという観察を考慮して、次に、インビボでのXP-524と抗PD-1との併用を探究した。再び、最低でも14週間の間、KPCマウスに顕著なPDACを発症させ、50:50の雄対雌の比で2つの処理群のうちの1つへと無作為化した(N=7/群)。1日おきに一定用量の200μgの抗PD-1及び/又は5mg/kgのXP-524の毎日のIP注射のいずれかをマウスに投与した(図7A)。抗PD-1は、生存に有意な効果を有しなかったが、XP-524及び抗PD-1の併用は、生存を有意に改善し、XP-524単独で観察されたものを上回った。抗PD-1単独で観察された51日の中央生存とは対照的に、XP-524及び抗PD-1の両方で処理したマウスは、登録後161日の中央値生存を有した(図7B)。研究エンドポイントで組織を再び採取し、増加したCD3+T細胞と並行して、堅牢なCD45+浸潤が明らかになった(図7C~E)。加えて、CD8+T細胞の非常に有意な増加、及び疾患の残存領域にグランザイムBの沈着が観察され、アポトーシスの増加を伴った(図7F)。
【0232】
次に、この実験を繰り返し、記載されているようにKPCマウスを登録し、抗PD-1又はXP-524及び抗PD-1のいずれかで2か月間処理した。研究エンドポイントで、抗PD-1又はXP-524処理マウス(N=4/群)からの膵臓及び脾臓に、前述のようにフローサイトメトリーを施した。抗PD-1は、腫瘍浸潤T細胞の存在を緩やかに増加させたが、両方の薬物で処理したマウスは、CD4+及びCD8+T細胞の浸潤が増強し、XP-524単独で誘導されたものを十分に上回った(図7G)。しかしながら、XP-524のみで処理したマウスからのT細胞とは異なり、CD8+T細胞は、IFNγに対してほとんど陽性であり、CD4+及びCD8+集団の両方が、低レベルの消耗マーカPD-1を有した(図7H、I)。XP-524単剤療法のように、XP-524及び抗PD-1で処理したKPCマウスは、腫瘍内Treg、CD4+CD25+FoxP3+制御性Tregの頻度が低減し、脾臓Tregに変化はなかった(図7J及びS4A)。XP-524及び抗PD-1の併用は、CD45+CD11b+GR-1+マクロファージの腫瘍浸潤の実質的な増加をもたらしたが、M2マーカCD206に陽性であるマクロファージの割合が低減した(図S4B)。
【0233】
細胞媒介性細胞傷害性の増加及びT細胞消耗の低減と一致して、XP-524及び抗PD-1の併用は、腫瘍浸潤CD8+T細胞における細胞傷害性パーフォリン-1のサロゲートマーカの発現を増強させたが、脾臓CD8+T細胞において有意な変化は観察されなかった(図7K)。また、これらのパーフォリン-1発現CD8+T細胞は、活性化マーカIFNγに非常に陽性であり、XP-524及び抗PD-1による処理後の末梢性免疫寛容の低減及び抗腫瘍免疫機能の増加が確認された(図7L)。
【0234】
本開示の上記の実施形態は、本開示の原理の明確な理解のために記載された実装の単なる可能な例であることが強調されるべきである。本開示の趣旨及び原理から実質的に逸脱することなく、上記の実施形態(複数可)に対して多くの変形及び修正を行うことができる。全てのそのような修正及び変形は、本明細書の本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
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図1
図2
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【国際調査報告】