(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】燃料電池用強化複合膜、その製造方法、及びそれを含む燃料電池用膜電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/106 20160101AFI20241126BHJP
H01M 8/1058 20160101ALI20241126BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241126BHJP
H01M 8/1069 20160101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M8/106
H01M8/1058
H01M8/10 101
H01M8/1069
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528524
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 KR2022018671
(87)【国際公開番号】W WO2023101310
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0169152
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0157972
(32)【優先日】2022-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンハ
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンフン
(72)【発明者】
【氏名】ソン クムサク
(72)【発明者】
【氏名】ユン ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨム スンジム
(72)【発明者】
【氏名】オ チャンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒェソン
(72)【発明者】
【氏名】イ ウンス
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA05
5H126BB06
5H126FF03
5H126GG18
5H126HH03
5H126HH04
5H126HH08
5H126JJ05
(57)【要約】
本発明は、多孔性支持体及び水素イオン伝導性高分子を含む強化複合膜であり、前記強化複合膜は、前記水素イオン伝導性高分子が前記多孔性支持体に含浸されるか、または前記多孔性支持体の少なくとも一面上に前記水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を含み、前記多孔性支持体は、金属イオンを捕集できる化合物をさらに含むものである、燃料電池用強化複合膜、その製造方法及びそれを含む膜電極アセンブリに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性支持体及び水素イオン伝導性高分子を含む強化複合膜であって、
前記強化複合膜は、前記水素イオン伝導性高分子が前記多孔性支持体に含浸されるか、または前記多孔性支持体の少なくとも一面上に前記水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を含み、
前記多孔性支持体は、金属イオンを捕集できる化合物をさらに含む、
燃料電池用強化複合膜。
【請求項2】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クラウンエーテル又はこれらの組み合わせを含む、
請求項1に記載の燃料電池用強化複合膜。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリエチレングリコールの重量平均分子量は60ないし6,000g/molである、
請求項2に記載の燃料電池用強化複合膜。
【請求項4】
前記クラウンエーテルは、12-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、18-クラウン-6-エーテル、ベンゾー15-クラウン-5-エーテル、N-フェニルアゾ-15-クラウン-5-エーテル、2-アミノメチル-18-クラウン-6、またはこれらの組み合わせを含む、
請求項2に記載の燃料電池用強化複合膜。
【請求項5】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、前記多孔性支持体の総重量に対して1ないし50重量%の量で含まれる、
請求項1に記載の燃料電池用強化複合膜。
【請求項6】
前記金属イオンは、セリウム(Ce)イオン、マンガン(Mn)イオン、タングステン(W)イオン、コバルト(Co)イオン、バナジウム(V)イオン、ニッケル(Ni)イオン、クロム(Cr)イオン、ジルコニウム(Zr)イオン、イットリウム(Y)イオン、イリジウム(Ir)イオン、鉄(Fe)イオン、チタン(Ti)イオン、モリブデン(Mo)イオン、ランタン(La)イオン、ネオジミューム(Nd)イオン又はこれらの組み合わせを含む、
請求項1に記載の燃料電池用強化複合膜。
【請求項7】
前記多孔性支持体の厚さは1ないし100μmである、
請求項1に記載の燃料電池用強化複合膜。
【請求項8】
多孔性支持体形成用高分子の前駆体及び金属イオンを捕集できる化合物を含む組成物で多孔性支持体を製造する段階;及び
前記多孔性支持体に水素イオン伝導性高分子を含浸させるか、または前記多孔性支持体の少なくとも一面に水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を形成させる段階;
を含む燃料電池用強化複合膜の製造方法。
【請求項9】
前記多孔性支持体形成用高分子は有機溶媒に不溶性の炭化水素系高分子である、
請求項8に記載の燃料電池用強化複合膜の製造方法。
【請求項10】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クラウンエーテル又はこれらの組み合わせを含む、
請求項8に記載の燃料電池用強化複合膜の製造方法。
【請求項11】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、前記組成物100重量部対比1ないし50重量部で含まれる、
請求項8に記載の燃料電池用強化複合膜の製造方法。
【請求項12】
前記多孔性支持体の製造段階は、前記組成物を電気放射することにより行われる、
請求項8に記載の燃料電池用強化複合膜の製造方法。
【請求項13】
前記水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を形成する段階は、
溶媒に前記水素イオン伝導性高分子を分散して混合溶液を製造する段階;
前記混合溶液をキャストした後に乾燥して電解質層を形成する段階;及び
前記電解質層を多孔質支持体と合紙する段階;
を含む、
請求項8に記載の燃料電池用強化複合膜の製造方法。
【請求項14】
互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極、そして
前記アノード電極とカソード電極との間に位置する請求項1による燃料電池用強化複合膜
を含む膜電極アセンブリ。
【請求項15】
請求項14による膜電極アセンブリを含む燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用強化複合膜、その製造方法及びそれを含む燃料電池用膜電極アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯用電子機器及び無線通信機器の急激な普及により、携帯用電源供給源であるバッテリとしての燃料電池の開発、無公害の自動車用燃料電池及び清浄エネルギー源として発電用燃料電池の開発に多くの関心と研究が行われている。
【0003】
水素を燃料とする高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)の場合、広い温度範囲で作動が可能であるため、冷却装置及び密封部品の簡素化、低加湿水素を燃料として使用することなどにより、加湿器使用最小化、そして速い駆動などの長所で車両用及び家庭用電源装置として脚光を浴びている。また、他の形態の燃料電池に比べて電流密度が大きい高出力燃料電池として広い範囲の温度で作動し、構造が簡単で、速い始動と応答特性がある。
【0004】
燃料電池の核心部品である電解質膜の長期性能向上のための努力が最近多く進行中である。価格競争力を備えると同時に、性能向上のためには低湿度での高いイオン伝導特性が非常に重要な要素である。
【0005】
様々なタイプの電解質膜のうち過フッ素化電解質膜は、機械的強度及び電気化学的特性の優秀性にもかかわらず、複雑な製造工程により膜の価格が非常に高価であり、フッ素化構造により低いガラス転移温度が短所として作用する
【0006】
このような過フッ素化電解質膜の代案として、炭化水素高分子の開発が活発に行われてきているが、炭化水素高分子電解質膜の場合、過フッ素化電解質膜水準の適切な機械的強度を確保することが重要な課題となる。
【0007】
また、炭化水素高分子電解質膜は、高分子電解質燃料電池を運転する過程で発生する過酸化水素またはヒドロキシラジカルにより電解質膜の酸化が加速化する可能性があり、単一膜を使用する場合、機械的耐久性が大きく減少して、これにより高分子電解質膜の化学的、機械的安定性が大きく低下する可能性があるという点が重大な問題点として指摘されている。高性能、長期安定性、高耐久性、低価格化を実現するためには電解質膜の高イオン伝導性、物理化学的安定性の確保、高い機械的強度、高寸法安定性などが要求される。これを満たすために強化複合膜の導入が代案になりうる。
【0008】
一方、強化複合膜の商用化過程で高耐久性側面の他にも、色々な性能を向上させるための技術に対して産業現場の多様な要求が存在した。その例として、強化複合膜のガス透過度を調節する技術及び電解質と支持体間の安定性を向上させることができる技術または電解質の含浸を容易にする技術などがあり、このような側面で強化複合膜の性能を向上させる方法に対する研究が必要な状況であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、多孔性支持体と水素イオン伝導性高分子を含む強化複合膜の多孔性支持体にラジカルスカベンジャーなどの金属イオン溶出を防止できる特定化合物を適用することにより、燃料電池の性能を長期間維持でき、その寿命を向上できる燃料電池用強化複合膜を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記強化複合膜の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記強化複合膜を含む膜電極アセンブリを提供することである。
【0012】
本発明のまた他の目的は、前記膜電極アセンブリを含む燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例は、多孔性支持体及び水素イオン伝導性高分子を含む強化複合膜であって、前記強化複合膜は、前記水素イオン伝導性高分子が前記多孔性支持体に含浸されるか、または前記多孔性支持体の少なくとも一面上に前記水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を含み、前記多孔性支持体、は金属イオンを捕集できる化合物をさらに含む、燃料電池用強化複合膜を提供する。
【0014】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クラウンエーテルまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0015】
前記ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールの重量平均分子量は60ないし6,000g/molであってもよい。
【0016】
前記クラウンエーテルは、12-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、18-クラウン-6-エーテル、ベンゾ-15-クラウン-5-エーテル、N-フェニルアゾ-15-クラウン-5-エーテル、2-アミノメチル-18-クラウン-6、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0017】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、前記多孔性支持体の総重量に対して1ないし50重量%の量で含まれてもよい。
【0018】
前記金属イオンは、セリウム(Ce)イオン、マンガン(Mn)イオン、タングステン(W)イオン、コバルト(Co)イオン、バナジウム(V)イオン、ニッケル(Ni)イオン、クロム(Cr)イオン、ジルコニウム(Zr)イオン、イットリウム(Y)イオン、イリジウム(Ir)イオン、鉄(Fe)イオン、チタン(Ti)イオン、モリブデン(Mo)イオン、ランタン(La)イオン、ネオジム(Nd)イオンまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0019】
前記多孔性支持体の厚さは1ないし100μmであってもよい。
【0020】
本発明の他の実施例は、多孔性支持体形成用高分子の前駆体及び金属イオンを捕集できる化合物を含む組成物で多孔性支持体を製造する段階及び前記多孔性支持体に水素イオン伝導性高分子を含浸させるか、または前記多孔性支持体の少なくとも一面上に水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を形成させる段階を含む燃料電池用強化複合膜の製造方法を提供する。
【0021】
前記多孔性支持体形成用高分子は有機溶媒に不溶性である炭化水素系高分子であってもよい。
【0022】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クラウンエーテルまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、前記組成物100重量部対比1ないし50重量部で含まれてもよい。
【0024】
前記多孔性支持体の製造段階は、前記組成物を電気放射することにより実行できる。一実施例によれば、前記電気放射は850V/cmないし3500V/cmの電場を印可して実施されてもよい。
【0025】
前記水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を形成させる段階は、溶媒に前記水素イオン伝導性高分子を分散して混合溶液を製造する段階、前記混合溶液をキャストした後に乾燥して電解質層を形成する段階及び前記電解質層を前記多孔性支持体と合紙する段階を含んでもよい。
【0026】
本発明のまた他の一実施例は、互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極、そして前記アノード電極とカソード電極の間に位置する前記燃料電池用強化複合膜を含む膜電極アセンブリを提供する。
【0027】
本発明のまた他の一実施例は、前記膜電極アセンブリを含む燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、強化複合膜の多孔性支持体の内部または外部にラジカルスカベンジャーなどの金属イオンを捕集できる特定の化合物を導入することにより、金属イオンの移動度(mobility)を減少させてその溶出を抑制できるだけでなく、ラジカルスカベンジャー自体の凝集を防止して分散性を向上させることができる。
【0029】
従って、燃料電池の運転中に生成されるラジカル、具体的には水酸化ラジカルによる電解質膜及び/又は電極の化学的劣化なしに燃料電池の性能を長期間維持させることができ、その耐久性を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施例による燃料電池用強化複合膜を概略的に示した模式図である。
【0031】
【
図2】本発明の一実施例による膜電極アセンブリを概略的に示した断面図である。
【0032】
【
図3】本発明の一実施例による燃料電池の全体的な構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な形態で実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0034】
図面において複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分に対しては同じ図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする時、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「真上に」あるという時は、中間に他の部分がないことを意味する。
【0035】
本明細書に記載された用語「ナノ」とはナノスケールを意味し、1μm以下のサイズを含む。
【0036】
【0037】
以下、一実施例による燃料電池用強化複合膜について説明する。
【0038】
本発明は、多孔性支持体と水素イオン伝導性高分子を含む強化複合膜の多孔性支持体にラジカルスカベンジャーなどの金属イオン溶出を防止できる特定化合物を適用することにより、燃料電池の性能を長期間維持させることができ、その寿命を向上できる燃料電池用強化複合膜に関する。
【0039】
図1は、一具現例による燃料電池用強化複合膜の概略的な構成を示した模式図である。
【0040】
図1を参照して説明すると、一具現例による燃料電池用強化複合膜10は、多孔性支持体5及び水素イオン伝導性高分子を含む強化複合膜であって、前記強化複合膜は、前記水素イオン伝導性高分子が前記多孔性支持体5に含浸されるか、または前記多孔性支持体5の少なくとも一面上に前記水素イオン伝導性高分子を含む電解質層(1及び/又は3)を含み、前記多孔性支持体は、金属イオンを収集できる化合物をさらに含んでもよい。
【0041】
燃料電池は、電解質の状態及び種類に応じてアルカリ電解質燃料電池、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)などに区分できるが、そのうち高分子電解質燃料電池は100℃未満の低い作動温度、速い始動と応答特性及び優れた耐久性などの長所により携帯用、車両用及び家庭用電源装置として脚光を浴びている。
【0042】
高分子電解質燃料電池の代表的な例としては、水素ガスを燃料として使用する水素イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell、PEMFC)、液状のメタノールを燃料として使用する直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell、DMFC)などが挙げられる。
【0043】
前記高分子電解質燃料電池において起きる反応を要約すると、まず、水素ガスのような燃料が酸化極に供給されると、酸化極においては水素の酸化反応により水素イオン(H+)と電子(e-)が生成される。生成された水素イオンはイオン交換膜を介して還元極に伝達され、生成された電子は外部回路を介して還元極に伝達される。還元極においては酸素が供給され、酸素が水素イオン及び電子と結合して酸素の還元反応により水が生成される。
【0044】
一方、高分子電解質燃料電池の商業化を実現するためには、まだ解決しなければならない多くの技術的障壁が存在し、必須的な改善要因は高性能、長寿命、低価格化の実現である。これに最も多くの影響を及ぼす構成要素が膜電極アセンブリであり、その中でもイオン交換膜はMEAの性能と価格に最も大きな影響を及ぼす核心要素の1つである。
【0045】
前記高分子電解質燃料電池の運転に必要なイオン交換膜の要求条件としては、高い水素イオン伝導度、化学的安定性、低い燃料透過性、高い機械的強度、低い含水率、優れた寸法安定性などがある。従来のイオン交換膜は特定の温度及び相対湿度環境、特に、高温/低加湿条件で正常に高性能を発現しにくい傾向がある。これにより、従来のイオン交換膜が適用された高分子電解質燃料電池は、その使用範囲が制限されることになる。
【0046】
現在、最も優れた性能を示すと知られているナフィオンのようなフッ素系イオン交換膜は、製造工程の複雑さ、製造技術の難しさ及び高い価格などによる限界点を有し、これに対する代案として開発された炭化水素系イオン交換膜は高温/低加湿の条件での低い水素イオン伝導度、不均一な界面特性及び相対的に脆弱な耐久性などの問題点によりまだ克服しなければならない技術的障壁が多く残っている。
【0047】
また、このようなイオン交換膜は、高いイオン伝導度と優れた耐久性を同時に必要とする。特に、燃料電池の長期駆動の時、イオン交換膜の脆弱な化学的耐久性により電解質膜の厚さ減少及びピンホール(pin-hole)生成により燃料電池の劣化が発生する。
【0048】
燃料電池が駆動する時に発生するラジカルが前記高分子電解質膜の劣化の主な原因として知られている。例えば、還元極における酸素の還元反応中に過酸化水素(H2O2)が生成され、この過酸化水素から過酸化水素ラジカル(hydroperoxyl radical)(HO2・)及び/又は水酸化ラジカル(hydroxyl radical)(・OH)が生成される。また、前記還元極に供給される空気中の酸素分子が高分子電解質膜を通過して酸化極に到達する場合、前記酸化極においても過酸化水素が生成されて過酸化水素ラジカル及び/又は水酸化ラジカルを引き起こす可能性がある。このようなラジカルは、高分子電解質膜に含まれているイオノマー(例えば、スルホン酸基を有するポリマー)の劣化を引き起こして前記電解質膜のイオン伝導度を低下させる。
【0049】
ラジカルによる高分子電解質膜(より具体的には、イオノマー)の劣化を防止するために、前記ラジカルを除去できるラジカルスカベンジャー(radical scavenger)の導入が提案された。
【0050】
しかしながら、粒子形態で電解質膜内に分散される前記ラジカルスカベンジャーは、燃料電池の運転中に溶出(migration)されるという問題がある。すなわち、ラジカルを除去できるラジカルスカベンジャーの量が減少するため、燃料電池の駆動時間が長くなるほどラジカル除去が適切に行われなくなり、燃料電池の性能が急激に低下する。
【0051】
また、ラジカルスカベンジャーのイオン化により生成される金属イオンが水により溶出される。この金属イオンは非常に高い還元電位を有するため、電極の構成成分(例えば、白金及び/又は炭素)を酸化させて燃料電池の性能低下を引き起こす。
【0052】
これに対して本発明による燃料電池用強化複合膜は、水素イオン伝導性高分子を含む電解質膜に多孔性支持体をさらに含めて電解質膜の物理的安定性と機械的特性を向上させると同時に、前記多孔性支持体に金属イオン、具体的には燃料電池駆動過程で発生するラジカルを除去できるラジカルスカベンジャーの溶出を防止して燃料電池の性能を長期間維持させることができ、その寿命を向上させることができる。
【0053】
多孔性支持体5は、強化複合膜の機械的強度を増進させ、水分による体積膨張を抑制することにより、寸法安定性を増進させる役割をするものであり、当業界で使用する一般的な多孔性支持体を使用してもよく、または多孔性支持体形成用高分子の前駆体を含む溶液を電気放射して製造した高分子前駆体のナノ繊維を化学的に硬化させて製造してもよい。
【0054】
多孔性支持体5は、通常の有機溶媒に不溶性であるため、優れた耐化学性を示すだけでなく、多孔性支持体の気孔内のイオン伝導体充填工程を容易にし、疎水性を有して高湿の環境で水分による形態変形の恐れがない炭化水素系高分子を含むことが好ましい。前記炭化水素系高分子としては、ナイロン、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF)、ポリフェニレンサルファイド(polyphenylene sulfide、PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone、PEEK)、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリベンズオキサゾール(polybenzoxazole、PBO)、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazole、PBI)、ポリアミドイミド(polyamideimide、PAI)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリテトラフルオロエチレン(pollytetrafluoroethilene、PTFE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、これらの共重合体またはこれらの混合物などを使用してもよく、そのうちでも耐熱性、耐化学性、及び形態安定性がより優れたポリイミドまたはポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0055】
一具現例において、前記多孔性支持体5の厚さは1ないし100μmであってもよく、例えば、1ないし75μm、好ましくは、1ないし50μm、より好ましくは、3ないし40μmであってもよい。前記多孔性支持体5の厚さが1μm未満である場合、強化複合膜の物理的、機械的物性が十分に確保されないため、耐久性及び寸法安定性が減少する恐れがあり、75μmを超える場合、水素イオン伝導性高分子の含浸効率が低くなって膜の収率が減少する問題があり、100μmを超える場合、イオン伝導性高分子の含浸が難しく、これによる水素イオン伝導度の減少及び膜性能の低下が現れる可能性がある。
【0056】
前記多孔性支持体5の空隙率は40ないし95%であってもよく、例えば、50ないし90%、好ましくは55ないし85%であってもよい。前記多孔性支持体5の空隙率が40%未満である場合、水素イオン伝導性高分子の含浸率が減少し、それによる膜性能減少が発生する可能性があり、95%を超える場合、強化複合膜の耐久性が十分に確保されない可能性がある。
【0057】
強化複合膜10は、前記水素イオン伝導性高分子が多孔性支持体5に含浸されるか、または多孔性支持体5の少なくとも一面上に前記水素イオン伝導性高分子を含む電解質層(1及び/又は3)が形成されたものであってもよい。
【0058】
前記水素イオン伝導性高分子が多孔性支持体5に含浸される形態の場合、溶媒に前記水素イオン伝導性高分子を分散させて混合溶液を製造した後、多孔性支持体5を前記混合溶液に浸漬させることにより、多孔性支持体5に水素イオン伝導性高分子が含浸された形態の強化複合膜を形成することができる。前記溶媒は、水、親水性溶媒、有機溶媒又はこれらのうち2つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0059】
多孔性支持体5の少なくとも一面上に前記水素イオン伝導性高分子を含む電解質層(1及び/又は3)が形成された強化複合膜10の場合、多孔性支持体5の少なくとも一面上に水素イオン伝導性高分子の混合溶液を塗布し、これを乾燥させるか、または前記混合溶液をキャストし、これを乾燥させて水素イオン伝導性高分子を含む電解質膜を形成し、これを多孔性支持体5の少なくとも一面と合紙させる過程により形成できる。また、電解質層(1及び/又は3)を多層構造で形成させる場合、水素イオン伝導性高分子の濃度及び種類を異にする混合溶液を多孔性支持体5に順次塗布及び乾燥するかまたは合紙する過程を経ることができる。この時、前記混合溶液の塗布またはキャストは、バーコーティング、コンマコーティング、スロットダイ、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレード、またはラミネーティングにより実行されてもよい。
【0060】
または、強化複合膜10は、前記水素イオン伝導性高分子が含浸された多孔性支持体5の少なくとも一面上に、水素イオン高分子を含む電解質膜を合紙して電解質層(1及び/又は3)が形成された形態を含んでもよい。
【0061】
前記乾燥は1分ないし30分程度60℃ないし100℃の熱を加えて行うか、好ましくは、5分ないし15分程度70℃ないし90℃の熱を加えて行ってもよい。この時、乾燥温度が60℃未満であると、水素イオン伝導性高分子溶液の保液性が低下する可能性があり、100℃を超過すると、強化複合膜及び/又は膜電極接合体製造時に電極との接合性が低下する可能性がある。
【0062】
一具現例による強化複合膜10は、多孔性支持体5に水素イオン伝導性高分子が含浸されるか、多孔性支持体5の少なくとも一面上に水素イオン伝導性高分子を含む電解質層(1及び/又は3)が供えられることにより、多孔性支持体5の表面から強化複合膜10の厚さ方向に水素イオン伝導性高分子が連続的に分布する構造を含むようになって、強化複合膜のイオン伝導性が向上する効果がある。
【0063】
前記水素イオン伝導性高分子は、通常、燃料電池の電解質膜において水素イオン伝導体として使われるものであれば、特別な制限なしに使用が可能であり、具体的に、水素イオン伝導機能に優れながらも価格面で有利で有機溶媒に対して溶解性であるフッ素系高分子、炭化水素系高分子またはこれらの混合物を使用することができる。
【0064】
具体的に、前記水素イオン伝導性高分子は0.8meq/g以上のイオン交換容量(ion exchange capacity、IEC)を有する高分子を使用することが良い。このように高いイオン交換容量を有する高分子を使用することにより、多孔性支持体形成用組成物内の水素イオン伝導性高分子の含量を低くすることができ、その結果、水素イオン伝導性高分子の使用による多孔性支持体の強度及び寸法安定性の低下を防止することができる。
【0065】
その具体的な例としては、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン又はこれらの混合物を含むフルオロ系高分子、スルホン化ポリイミド(sulfonated polyimide、S-PI)、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S-PAES)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone、SPEEK)、スルホン化ポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化ポリスルホン(sulfonated polysulfone、S-PSU)、スルホン化ポリスチレン(sulfonated polystyleene、S-PS)、スルホン化ポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化ポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化ポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化ポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化ポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化ポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化ポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子及びこれらの混合物からなる群から選択されるものを使用することができる。
【0066】
一具現例において、多孔性支持体5は金属イオンを捕集できる化合物をさらに含んでもよい。
【0067】
前記金属イオンは、燃料電池の駆動過程で電解質膜の劣化を誘発してそのイオン伝導度を低下させる過酸化物またはラジカルを除去できる粒子であって、遷移金属または貴金属のイオンを意味しうる。
【0068】
一具現例において、前記金属イオンはセリウム(Ce)イオン、マンガン(Mn)イオン、タングステン(W)イオン、コバルト(Co)イオン、バナジウム(V)イオン、ニッケル(Ni)イオン、クロム(Cr)イオン、ジルコニウム(Zr)イオン、イットリウム(Y)イオン、イリジウム(Ir)イオン、鉄(Fe)イオン、チタン(Ti)イオン、モリブデン(Mo)イオン、ランタン(La)イオン、ネオジミューム(Nd)イオン又はこれらの組み合わせであってもよく、具体的にセリウムと例に挙げると、セリウム3価イオン(Ce3+)またはセリウム4価イオン(Ce4+)であってもよい。
【0069】
一具現例において、前記金属イオンを捕集できる化合物は、前記多孔性支持体の総重量に対して、好ましくは1ないし50重量%、より好ましくは1ないし30重量%の量で含まれてもよい。前記含量が1重量%未満である場合、金属イオンの捕集効率が十分に発揮できない可能性があり、50重量%超過である場合、多孔性支持体の機械的強度が低下する可能性がある。
【0070】
一具現例において、前記金属イオンを捕集できる化合物はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クラウンエーテルまたはこれらの組み合わせを含んでもよく、好ましくは、ポリエチレングリコール、クラウンエーテルまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。本発明が特定理論に拘束されることではないが、前記ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、またはクラウンエーテルに含まれた酸素原子の非共有電子対が前記金属イオンを取り囲むことにより、強化複合膜から溶出されず捕集されると理解できる。
【0071】
一具現例において、前記ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコール、特にポリエチレングリコールの重量平均分子量は60ないし6,000g/molであり、例えば、100ないし4,000g/mol、好ましくは100ないし2,000g/molであってもよい。もし、前記重量平均分子量が60g/mol未満である場合、金属イオン捕集能力が減少する問題があり、6,000g/molを超過する場合、分散液に溶解が不可能で、高分子の流動性低下により高分子電解質膜形成後にイオン性を有しにくい問題があるので、前記範囲で適切に調節する。
【0072】
一具現例において、前記クラウンエーテルは、12-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、18-クラウン-6-エーテル、ベンゾー15-クラウン-5-エーテル、N-フェニルアーゾー15-クラウン-5-エーテル、2-アミノメチル-18-クラウン-6、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0073】
金属イオン(例えば、セリウム)に対して前記金属イオンを捕集きる化合物(例えば、ポリエチレングリコール、クラウンエーテルなど)は、1:0.5以上の重量比、具体的には1:0.8以上、より具体的には1:0.8ないし1:3.5、または1:0.8ないし1:3.3、または1:0.8ないし1:3の重量比とする量で含まれることができる。前記金属イオンを捕集できる化合物が1:0.5未満になる場合、捕集が効果的に現れず、その比率が上昇するほど捕集効果は改善されるが、1:3.5以上になる場合、改善効果が明確でないことがある。
【0074】
【0075】
本発明の他の一実施例は、多孔性支持体形成用高分子の前駆体及び金属イオンを捕集できる化合物を含む組成物で多孔性支持体を製造する段階;及び多孔性支持体に水素イオン伝導性高分子を含浸させるか、または多孔性支持体の少なくとも一面上に水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を形成させる段階;を含む燃料電池用強化複合膜の製造方法を提供する。
【0076】
以下、各段階別に説明すると、段階1は、多孔性支持体形成用高分子の前駆体及び金属イオンを捕集できる化合物を利用して多孔性支持体を製造する段階である。
【0077】
前記段階1の多孔性支持体の製造段階は、前記組成物を電気放射することにより行われる。
【0078】
前記多孔性支持体は、多孔性支持体形成用高分子として有機溶媒に対して不溶性の炭化水素系高分子を含むため、有機溶媒に溶解せずに製造するかまたは有機溶媒によく溶ける多孔性支持体形成用高分子の前駆体を利用してナノ繊維前駆体を形成した後、所定の反応により製造することができる。前記多孔性支持体形成用高分子の前駆体としては多孔性支持体形成用高分子の種類に応じて適切に選択して使用してもよく、前記多孔性支持体形成用高分子の具体的な種類は前述の通りである。
【0079】
例えば、PI(Polyimide)からなる多孔性支持体は、ポリアミック酸(polyamic acid、PAA)のイミド化反応により製造されることができる。また、前記ポリアミック酸は通常の製造方法によって製造され、具体的にはジアミン(diamine)を溶媒に混合し、ここにジアンハイドライド(dianhydride)を添加した後、重合して製造することができる。
【0080】
前記ジアンハイドライドとしては、ピロメリト酸 二無水物(pyromellyrtic dianhydride、PMDA)、3,3’,4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-benzophenonetetracarboxylic dianhydride、BTDA)、4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-oxydiphalic anhydride、ODPA)、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,4,3’,4’-biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、及びビス(3,4-ジカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(bis(3,4-dicarboxyphenyl)dimethylsilane dianhydride、SiDA)及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物を使用することができる。また、前記ジアミンとしては、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-oxydianiline、ODA)、p-フェニレンジアミン(p-phenylene diamine、p-PDA)、o-フェニレンジアミン(o-phenylene diamine、o-PDA)及びこれらの混合物からなる群から選択されるものを使用することができる。前記ポリアミック酸を溶解させる溶媒としては、m-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム,γ-ブチロラクトン及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を使用することができる。
【0081】
この時、前記多孔性支持体形成用高分子の前駆体は、電気放射用組成物の総重量に対して5ないし20重量%の濃度で含まれることが好ましい。もし、前記の電気放射用組成物の溶液の濃度が5重量%未満である場合、放射が円滑に行われないため、繊維が形成されないか均一な直径の繊維を製造することができず、一方、前記電気放射用組成物の濃度が20重量%を超過する場合、吐出圧力が急激に増加して放射が行われないか、工程性が低下する可能性がある。
【0082】
前記金属イオンを捕集できる化合物は前述の通りであり、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クラウンエーテルまたはこれらの組み合わせを含んでもよく、最終製造される多孔性支持体や金属イオンを捕集できる化合物の含量を考慮して電気放射用組成物中に含まれる金属イオンを捕集できる化合物の含量を適切に決定することが好ましい。
【0083】
前記金属イオンを捕集できる化合物は、前記組成物、具体的には電気放射用組成物100重量部対比1ないし50重量部で含まれてもよく、好ましくは1ないし20重量部、より好ましくは1ないし10重量部で含まれてもよい。もし、前記金属イオンを捕集できる化合物の含量が前記多孔性支持体100重量部対比1重量部未満で含まれる場合、金属イオン捕集効果が不十分であるため高分子電解質の耐久性維持に効果がない可能性があり、50重量部を超過する場合、支持体の物性低下により高分子電解質膜の物性低下の原因になる問題点がありうる。
【0084】
続いて、前記多孔性支持体形成用高分子前駆体と金属イオンを捕集できる化合物を混合して電気放射用組成物を製造し、これを電気放射することによりナノ繊維ウェブを製造するか、または多孔性支持体形成用高分子の前駆体を含む電気放射用組成物と金属イオンを捕集できる化合物を含む電気放射用組成物とをそれぞれ製造した後、それぞれの放射ノズルを介して同時に電気放射することにより高分子前駆体のナノ繊維と金属イオンが収集できる化合物のナノ繊維が一緒に絡み合ったナノ繊維のウェブが製造することができる。
【0085】
前記電気放射用組成物の製造の時、前記多孔性支持体形成用高分子の前駆体または金属イオンを捕集できる化合物をNMP(N-Methyl-2-Pyrrolidone)、DMF(dimethyl formamide)、DMAc(dimethyl acetamide)、DMSO(dimethyl sulfoxide)、THF(Tetrahydrofuran)などの通常の有機溶媒に溶解させて製造することができる。
【0086】
前記電気放射は、通常のナノ繊維製造のための電気放射工程に従って行うことができる。
【0087】
詳しくは、電気放射用組成物が保管された溶液タンクから定量ポンプを利用して放射部に電気放射用組成物を一定量供給し、前記放射部のノズルを介して前記電気放射用組成物を吐出した後、飛散と同時に凝固及び硬化された高分子のナノ繊維を形成し、追加的にこのような凝固されたナノ繊維を、離型フィルム(releasing film)を有するコレクター(collector)において集束させて繊維集合体を製造する。この時、高電圧発生部により印可された前記放射部とコレクターとの間の電場の強さは850ないし3,500V/cmであることが好ましい。もし、前記電場の強さが850V/cm未満である場合、連続的に前駆体溶液が吐出されないため、均一な厚さのナノ繊維を製造することが難しく、また放射された後に形成されたナノ繊維がコレクターに円滑に集束できないため、繊維集合体の製造が困難になる可能性がある。それに対して、前記電場の強さが3500V/cmを超過する場合、ナノ繊維がコレクターに正確に安着されないため、正常な形態の繊維集合体が得られない。
【0088】
前記放射工程により均一な繊維直径、好ましくは0.01ないし5μmの平均直径を有するナノ繊維が製造され、前記ナノ繊維はランダムに配列されて繊維集合体、すなわち、ウェブを形成する。
【0089】
追加的に、製造されたナノ繊維ウェブに対して化学的硬化工程を実施することができる。
【0090】
通常、炭化水素系高分子の前駆体に対する硬化は熱処理により行われるが、本発明ではナノ繊維ウェブがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クラウンエーテルなどの金属イオンを捕集できる化合物を含むため、過度な熱処理による硬化工程を実施する場合、金属イオンを捕集できる化合物が熱により変性、蒸発または分解される恐れがある。従って、本発明では、電気放射後に得たナノ繊維ウェブを硬化剤に含浸させることにより、高分子前駆体の硬化を誘導する。この時、硬化剤としては酢酸が無水物、ピリジン、トリエチルアミン、トルエンスルホン酸、ヒドロキシベンジルアルコール、アミノフェノール、ヒドロキシベンズアルデヒド、アミノベンゾ酸などの硬化剤を利用する。本発明で使用可能な硬化剤は、前述の化合物に限定されるものではなく、多孔性支持体の製造のために使用される多孔性支持体形成用高分子の前駆体の種類に応じて適切に選択することが好ましい。
【0091】
前記硬化剤の含量は、電気放射用組成物の中に含まれている高分子前駆体の含量に応じて適切に決定されることが好ましい。
【0092】
前記硬化工程において、前記高分子前駆体の多孔性支持体形成用高分子への転換のための硬化が起きる。例えば、前記電気放射中にナノ繊維または繊維集合体がポリイミド前駆体からなる場合、化学的硬化によるイミド化によりポリイミドに変換される。
【0093】
段階2は、前記段階1で製造された多孔性支持体に水素イオン伝導性高分子を含浸させるか、または前記多孔性支持体の少なくとも一面上に水素イオン伝導性高分子を含む電解質層を形成させる段階である。
【0094】
一具現例において、前記段階2は、溶媒に前記水素イオン伝導性高分子を分散させる混合溶液製造段階及び前記多孔性支持体を前記混合溶液に含浸させる段階を含んでもよく、これに限定されるものではなく、スプレー工程、スクリーンプリンティング工程、ドクターブレード工程など当業界において公知の多様な方法を利用することができる。前記含浸工程を利用する場合は常温で5ないし30分間1ないし5回含浸工程を行うことが好ましい。
【0095】
前記溶媒としては、前記水素イオン伝導性高分子をよく溶解させることができるもので、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidinone:NMP)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide:DMF)、または ジメチルアセトアミド(dimethyl acetamide:DMA)などを利用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
前記水素イオン伝導性高分子としては、前述のものと同一のものが使用できる。
【0097】
また、一具現例において、前記段階2は、溶媒に前記水素イオン伝導性高分子を分散して混合溶液を製造する段階、前記混合溶液をキャストした後に乾燥して電解質膜を形成する段階及び前記電解質膜を前記多孔性支持体と合紙する段階を含んでもよい。
【0098】
前記強化複合膜の具備段階で、水素イオン伝導性高分子を分散させる溶媒及び混合溶液の塗布及びキャストに関する説明は前述の通りであるので、反復的な説明は省略する。
【0099】
前記水素イオン伝導性高分子は、強化複合膜中に含まれる水素イオン伝導性高分子の含量を考慮して適切に決定されることが好ましい。具体的に、前記水素イオン伝導性高分子含有溶液中に5ないし40重量%で含まれてもよい。前記水素イオン伝導性高分子が水素イオン伝導性高分子含有溶液中に5重量%未満で含まれる場合は、水素イオン伝導性高分子が多孔性支持体の気孔内に十分に充填されなくて空き空間を形成する可能性があり、前記水素イオン伝導性高分子が40重量%を超過する場合は水素イオン伝導性高分子含有溶液の粘度が高すぎて多孔性支持体の気孔内に充填できない可能性がある。
【0100】
前記水素イオン伝導性高分子含有溶液を充填した後は、水素イオン伝導性高分子含有溶液中の有機溶媒を除去して、多孔性支持体の気孔内に水素イオン伝導性高分子が満たされるようにする。従って、本発明による燃料電池用強化複合膜の製造方法は、水素イオン伝導性高分子の充填後に有機溶媒を除去する工程をさらに含んでもよく、前記有機溶媒除去工程は、60ないし50℃の真空オーブンで2ないし15時間乾燥する工程で行われることができる。
【0101】
水素イオン伝導性高分子前記のような製造方法により製造された強化複合膜は水素イオン伝導性に優れているため、燃料電池用膜電極アセンブリでの高分子電解質膜として使用される時、改善された水素イオン伝導度を示すことができる。
【0102】
本発明のまた他の実施例によれば、前記強化複合膜を含む膜電極アセンブリ及び燃料電池を提供する。
【0103】
具体的に、前記膜電極アセンブリは、互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極、及び前記アノード電極とカソード電極との間に位置する前記の強化複合膜を含む。
【0104】
図2は、本発明の一実施例による膜電極アセンブリを概略的に示した断面図である。
図2を参照して説明すると、前記膜電極アセンブリ100は、前記強化複合膜50及び強化複合膜50の両面にそれぞれ配置される前記燃料電池用電極20、20’を含む。前記電極20、20’は、電極基材40、40’と前記電極基材40、40’の表面に形成された触媒層30、30’とを含み、前記電極基材40、40’と前記触媒層30、30’の間に前記電極基材40、40’における物質拡散を容易にするために炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0105】
前記膜電極アセンブリ100において、前記強化複合膜50の一面に配置されて前記電極基材40を経て前記触媒層30に伝達された燃料から水素イオンと電子を生成させる酸化反応を起こす電極20をアノード電極といい、前記強化複合膜50の他の一面に配置されて前記強化複合膜50を介して供給された水素イオンと電極基材40’を経て前記触媒層30'に伝達された酸化剤から水を生成させる還元反応を起こす電極20’をカソードという。
【0106】
前記アノード及びカソード電極20、20’の触媒層30、30’は触媒を含む。前記触媒としては、電池の反応に参加して、通常燃料電池の触媒として使用可能なものは全て使用できる。具体的には、好ましくは白金系金属を使用してもよい。
【0107】
前記白金系金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金-M合金(前記Mはパラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム (Os)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)及びロジウム(Rh)からなる群から選択されるいずれか1つ以上)、非白金合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つを含んでもよく、より好ましくは、前記白金系触媒金属群から選択された2種以上の金属を組み合わせたものが使用できるが、これに限定されるものではなく、本技術分野において使用可能な白金系触媒金属であれば制限なく使用できる。
【0108】
具体的に、前記白金合金は、Pt-Pd、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-Cr、Pt-W、Pt-Ru、Pt-Ru-W、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、Pt-Co、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe、Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr、Pt-Cr-Ir及びこれらの組み合わせからなる群から選択される単独または2重以上混合して使用してもよい。
【0109】
また、前記非白金合金は、Ir-Fe、Ir-Ru、Ir-Os、Co-Fe、Co-Ru、Co-Os、Rh-Fe、Rh-Ru、Rh-Os、Ir-Ru-Fe、Ir-Ru-Os、Rh-Ru-Fe、Rh-Ru-Os及びこれらの組み合わせからなる群から選択される単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0110】
このような触媒は触媒自体(black)で使用することもでき、担体に担持させて使用することもできる。
【0111】
前記担体は、炭素系担体、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアなどの多孔性無機酸化物、ゼオライトなどから選択できる。前記炭素系担体は、黒鉛、スーパーピー(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、カーボンブラック(carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、デンカブラック(Denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、カーボンナノチューブ(carbon nano tube、CNT)、炭素球体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素、カーボンナノファイバ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノボール、カーボンナノホーン、カーボンナノケージ、カーボンナノリング、規則性ナノ多孔性炭素(ordered nano-/meso-porous carbon)、カーボンエアロゲル、メソポーラスカーボン(mesoporous carbon)、グラフェン、安定化カーボン、活性化カーボン、及びこれらのうち1つ以上の組み合わせから選択できるが、これに限定されるものではなく、本技術分野において使用可能な担体は制限なく使用できる。
【0112】
前記触媒粒子は担体の表面の上に位置してもよく、担体の内部気孔(pore)を満たしながら担体内部に浸透してもよい。
【0113】
前記担体に担持された貴金属を触媒として使用する場合は、商用化された市販のものを使用してもよく、また、担体に貴金属を担持させて製造して使用してもよい。前記担体に貴金属を担持させる工程は当該分野で広く知られている内容であるので、本明細書において詳しい説明は省略しても、当該分野に従事する人々に簡単に理解できる内容である。
【0114】
前記触媒粒子は、前記触媒電極30、30’の全体重量対比20重量%ないし80重量%で含有されてもよく、20重量%未満で含有される場合は活性低下の問題があり、80重量%を超過する場合は前記触媒粒子の凝集により活性面積が減少して触媒活性が逆に低下する可能性がある。
【0115】
また、前記触媒電極30、30’は、前記触媒電極30、30’の接着力向上及び水素イオンの伝達のためにバインダーを含んでもよい。前記バインダーとしてはイオン伝導性を有するイオン伝導体を使用することが好ましく、前記イオン伝導体に関する説明は前述の通りであるため、反復的な説明は省略する。
【0116】
ただし、前記イオン伝導体は、単一物または混合物形態で使用可能であり、また選択的に強化複合膜50との接着力をより向上させる目的で非導電性化合物と共に使用されることもできる。その使用量は使用目的に適合するように調節して使用することが好ましい。
【0117】
前記非導電性化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、 テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフルオロ-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸及びソルビトール(sorbitol)からなる群から選択された1種以上のものが使用されてもよい。
【0118】
前記バインダーは、前記触媒電極30、30’の全体重量に対して20重量%ないし80重量%で含まれてもよい。前記バインダーの含量が20重量%未満である場合は生成されたイオンがうまく伝達されなく、80重量%を超過する場合は気孔が不足して水素または酸素(空気)の供給が難しく反応できる活性面積が減少する可能性がある。
【0119】
前記電極基材40、40’としては水素または酸素の供給が円滑に行われるように多孔性の導電性基材が使用されてもよい。その代表的な例として、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)または金属布(繊維状態の金属布で構成された多孔性のフィルムまたは高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう)が使用できるが、これに限定されるものではない。また、前記電極基材40、40’はフッ素系樹脂で撥水処理したものを使用することが燃料電池の駆動時に発生する水により反応物拡散効率が低下することを防止できるため好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオライドアルコキシビニルエーテル、フルオリネイテッドエチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレンまたはこれらのコポリマーを使用することができる。
【0120】
また、前記電極基材40、40’での反応物拡散効果を増進させるための微細気孔層(microporous layer)をさらに含むこともできる。この微細気孔層は、一般的に粒径の小さい導電性粉末、例えば、炭素粉末、カーボンブラック、アセチレンブラック、活性炭素、カーボンファイバ、フラーレン(fullerene)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤまたはカーボンナノホーン(carbon nano-horn)またはカーボンナノリング(carbon nano ring)を含んでもよい。
【0121】
前記微細気孔層は、導電性粉末、バインダー樹脂及び溶媒を含む組成物を前記電極基材40、40’にコートして製造される。前記バインダー樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオロイド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオロイド、アルコキシビニルエーテル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートまたはこれらのコポリマーなどが好ましく使用できる。前記溶媒としてはエタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール、水、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが好ましく使用できる。コーティング工程は、組成物の粘性に応じてスクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法またはドクターブレードを利用したコーティング法などが使用されてもよく、これに限定されるものではない。
【0122】
前記膜電極アセンブリ100は、前記強化複合膜50として本発明による強化複合膜50を使用することを除いては、通常の燃料電池用膜電極アセンブリの製造方法によって製造することができる。
【0123】
本発明のまた他の実施例による燃料電池は、前記膜電極アセンブリ100を含んでもよい。
【0124】
図3は、前記燃料電池の全体的な構成を示した模式図である。
【0125】
図3を参照すると、前記燃料電池200は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、及び酸化剤が前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を含む。
【0126】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備える。
【0127】
それぞれの単位セルは電気を発生させる単位のセルを意味し、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる膜電極接合体と、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜電極接合体に供給するための分離板(または、バイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下「分離板」という。)を含む。前記分離板は、前記膜電極接合体を中心に置き、その両側に配置される。この時、前記スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を特にエンドプレートとも称する。
【0128】
前記分離板のうち前記エンドプレートは、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2供給管232とを備え、他の1つのエンドプレートは、複数の単位セルにおいて最終的に未反応して残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出するための第1排出管233と、前記単位セルにおいて最終的に未反応して残った酸化剤を外部に排出するための第2排出管234とを備える。
【0129】
前記燃料電池において、本発明の一実施例による膜電極アセンブリ100が使用されることを除いては、前記電気発生部を構成するセパレータ、燃料供給部及び酸化剤供給部は通常の燃料電池で使用されるものであるため、本明細書で詳細な説明は省略する。
【0130】
以下では本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載された実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これにより本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されていない内容は当技術分野において熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであり、その説明を省略する。
【0131】
【0132】
製造例1
【0133】
(1)濃度が25重量%であり、放射溶液全体100重量部対比1重量部のポリエチレングリコール(Mw:2,000)を含むポリテトラフルオロエチレン/THF放射溶液を放射ノズルに適用して30kVの電圧が印加された状態で電気放射した後、ポリテトラフルオロエチレン多孔性支持体を形成する。
【0134】
(2)製造された多孔性支持体に水素イオン伝導性高分子としてナフィオン(Nafion)が20重量%で溶解され、Ce(NO3)3がナフィオンの2重量%で含まれたイオン伝導体溶液を、ドクターブレードを利用して2回にわたってコーティングした。最初のコーティング後に支持体を接合し、2回目のコーティングを実施して強化複合膜を形成する。その後、1時間80℃で乾燥し、真空オーブンで1時間乾燥して強化複合膜を製造した(支持体内PEG重量比4%)。
【0135】
【0136】
製造例2
【0137】
ポリエチレングリコールの含量が放射溶液全体100重量部対比0.2重量部で含まれることを除いて、前記製造例1と同様にして強化複合膜を製造した(支持体内PEG重量比0.8%)。
【0138】
【0139】
製造例3
【0140】
ポリエチレングリコールの含量が放射溶液全体100重量部対比2重量部で含まれることを除いて、前記製造例1と同様にして強化複合膜を製造した(支持体内PEG重量比8%)。
【0141】
【0142】
製造例4
【0143】
ポリエチレングリコールの含量が放射溶液全体100重量部対比5重量部で含まれることを除いて、前記製造例1と同様にして強化複合膜を製造した(支持体内PEG重量比20%)。
【0144】
【0145】
製造例5
【0146】
ポリエチレングリコールの含量が放射溶液全体100重量部対比30重量部で含まれることを除いて、前記製造例1と同様にして強化複合膜を製造した(支持体内PEG重量比54.5%)。
【0147】
【0148】
製造例6
【0149】
ポリテトラフルオロエチレン/THF放射溶液の代わりにポリフェニレンサルファイド/THF放射溶液を使用したことを除いて、前記製造例1と同様にして強化複合膜を製造した(支持体内PEG重量比4%)。
【0150】
【0151】
製造例7
【0152】
ポリエチレングリコールの含量が放射溶液全体100重量部対比2重量部で含まれることを除いて、前記製造例6と同様にして強化複合膜を製造した(支持体内PEG重量比8%)。
【0153】
【0154】
製造例8
【0155】
ポリエチレングリコールの含量が放射溶液全体100重量部対比5重量部で含まれることを除いて、前記製造例6と同様にして強化複合膜を製造した(支持体内PEG重量比20%)。
【0156】
【0157】
製造例9
【0158】
2,5-ジクロロベンゼン117g及び硫黄32.0gそして2,5-ジクロロベンゾ酸(2,5-dichlorobenzoic acid)47.5g(20mol%)の混合物を230℃から300℃まで加熱し、圧力は170torrから1torr以下まで段階的に減圧して計8時間重合反応させてカルボキシル基を反復単位として有するPPSコポリマーを製造した。このPPS高分子に2-Aminomethyl-18-crown-6を、1wt%を脱水縮合反応により導入する。このように製造された高分子を製造例6のポリフェニレンサルファイドの代わりに溶液に適用する。この溶液においてポリエチレングリコールを含まないことを除いて、製造例6と同様にして強化複合膜を製造した。
【0159】
【0160】
比較製造例1
【0161】
ポリエチレングリコールを含まない放射溶液を用いたことを除いて、前記製造例1と同様にして強化複合膜を製造した。
【0162】
【0163】
比較製造例2
【0164】
ポリエチレングリコールを含まない放射溶液を用いたことを除いて、前記製造例6と同様にして強化複合膜を製造した。
【0165】
【0166】
実施例1ないし9及び比較例1ないし2
【0167】
前記製造例1ないし9、比較製造例1ないし2で製造された強化複合膜にデカール転写法を利用して電極層を形成して膜電極アセンブリを製造した。この時、前記電極の触媒層はPt/炭素触媒を含む触媒層形成用組成物を離型フィルムに塗布した後に乾燥して触媒層を形成し、触媒層がコーティングされた離型フィルムを強化複合膜両面に触媒層と強化複合膜が対面するように位置させた後、5kg/cm2の圧力及び100℃の温度でホットプレッシングを実施して強化複合膜の両面に触媒層を転写させた。続いて、触媒層が接合された強化複合膜の両面に気体拡散層(gas fiddusion layer、GDL)を締結して膜電極アセンブリを製造した。
【0168】
【0169】
評価例1-電池性能評価
【0170】
前述の実施例及び比較例によりそれぞれ製造された膜電極アセンブリを評価した。膜電極アセンブリのI-V測定により出力性能を評価した。具体的に、実際の燃料電池運転条件で出力性能を確認するために、膜電極アセンブリを燃料電池単位セル評価装置に締結し、温度を65℃に維持させた。アノードとカソードに水素(100%RH)と空気(100%RH)をStoichiometry1.2/2.0に合う量でそれぞれ供給した。0.6Vの時の電流密度を測定し、その結果値が高いほど優れた出力性能を示す。評価結果を下記の表1に示す。
【0171】
【0172】
評価例2-寸法安定性評価
【0173】
前記製造例1ないし8、比較製造例1ないし2で製造された強化複合膜を80℃真空オーブンで12時間乾燥して寸法を測定し、常温の蒸留水に24時間浸漬した後、その寸法を測定して水分吸収前後の寸法比を比較した。寸法変化率が低いほど高い安定性を有する。評価結果を下記の表1に示す。
【0174】
【0175】
評価例3-化学的耐久性評価
【0176】
前述の実施例及び比較例によりそれぞれ製造された膜電極アセンブリを評価した。評価セルをOCV状態に置き、一定時間間隔ごとにセル電圧を測定して初期OCV対比減少率を計算する。測定装備としてScribner 850 fuel cell test systemを用いて測定した(90℃、30%RH、50kPaの条件で評価)。具体的に、24時間ごとに時間(hr)の経過によるOCV(V)/initial OCV(V)を測定した。この割合が0.8以下のときに評価を終了し、測定時間を耐久性の基準とした。評価結果を下記の表1に示す。
【0177】
【0178】
【0179】
前記表1から本発明の実施例による強化複合膜を使用した時、比較例に比べて化学的耐久性が改善できることが分かる。ただし、実施例2の場合、ポリエチレングリコールの含量が低くて支持体に十分にコーティングできないため、捕集効率が十分に発揮されず、実施例5の場合、ポリエチレングリコール含量が多いため、支持体の強度が多少低下した。
【0180】
【0181】
以上、本発明の好ましい実施例について詳しく説明したが、前記実施例は本発明の特定の一例として提示されるものであり、これにより本発明が制限されることはなく、本発明の権利範囲は請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【0182】
【0183】
【符号の説明】
【0184】
10、50:強化複合膜
【0185】
1,3:電解質層 5:多孔性支持体
【0186】
20、20':電極 30、30':触媒層 40、40':電極基材
【0187】
100:膜電極アセンブリ
【0188】
200:燃料電池
【0189】
210:燃料供給部 220:改質部
【0190】
230:スタック 231:第1供給管
【0191】
232:第2供給管 233:第1排出管
【0192】
234:第2排出管 240:酸化剤供給部
【国際調査報告】