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特表2024-5445641つ又は複数のしるしを示す公然のセキュリティー機能を作製する方法
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  • 特表-1つ又は複数のしるしを示す公然のセキュリティー機能を作製する方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】1つ又は複数のしるしを示す公然のセキュリティー機能を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20241126BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20241126BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20241126BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20241126BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241126BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20241126BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20241126BHJP
【FI】
B41M3/14
C09D11/30
C09D11/02
C09D11/00
B41M5/00 120
B41M1/30 D
B41M1/30 B
B42D25/378
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528583
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022081647
(87)【国際公開番号】W WO2023088805
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21209104.5
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ピットット, エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヤ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ベルシエ, メリッサ
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB10
2C005JB11
2H113AA01
2H113AA03
2H113BA00
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA34
2H113CA35
2H113CA37
2H113CA39
2H113DA04
2H113DA47
2H113DA49
2H113DA53
2H113DA57
2H113DA63
2H113EA07
2H113EA08
2H113EA10
2H113FA43
2H186FA08
2H186FA18
2H186FB04
2H186FB29
2H186FB36
2H186FB37
2H186FB38
2H186FB40
2H186FB41
2H186FB44
2H186FB45
2H186FB46
4J039AD10
4J039AE05
4J039BA06
4J039BD04
4J039BE12
4J039BE27
4J039BE28
4J039EA06
4J039EA46
4J039GA03
4J039GA09
4J039GA10
4J039GA24
(57)【要約】
本発明は有価文書又は物品の偽造防止の手段として並びに装飾目的で、1つ又は複数のしるしを示す注意を引く公然のセキュリティー機能を作製する方法の分野に関する。特に、本発明は外部の装置又は道具なしに人が容易に直接且つ一義的に認証することができるセキュリティー機能を作製する方法を提供し、前記セキュリティー機能は硬化したインク及び1つ又は複数の硬化したしるしを含み、前記インクは硬化したカチオン硬化性化合物又は硬化したハイブリッド硬化性化合物及び銀ナノプレートレットを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(x20)上に1つ又は複数のしるし(x30)を示すセキュリティー機能を作製する方法であって、
基材(x20)表面にUV-Vis放射線硬化性インクを適用してコーティング層(x10)を形成するステップa)であり、前記UV-Vis放射線硬化性インクは第1の液体状態であり、前記UV-Vis放射線硬化性インクは:
i)約7.5wt-%~約20wt-%の、一般式(V)
【化1】

[式中、残基Rはヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり;
残基RはC-Cアルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基から選択され;Catは一般式NHのアンモニウムカチオンであり、
ここで残基Rはヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり;
残基RはC-Cアルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC-C4アルキル基から選択される]の表面安定剤を有する銀ナノプレートレット;
ii)約45wt-%~約80wt-%の脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシド及び1種又は複数のUV-Vis放射線硬化性化合物の混合物;
iii)1種又は複数のカチオン性光開始剤;
iv)ヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート、及びトリアルコキシシリルからなる群から選択される1個又は複数の官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤;
v)約3wt-%~約12wt-%の、少なくとも60wt-%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー;及び任意選択で
vi)約25wt-%以下の1種又は複数の有機溶剤
を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性インクの総重量に基づく、ステップa)、
ステップa)の後に、コーティング層(x10)の上に非接触流体微細分配技術によりトップコーティング組成物を少なくとも部分的に適用するステップb)であり、前記トップコーティング組成物は1つ又は複数のしるし(x30)の形態で適用され、前記1つ又は複数のしるし(x30)は約0.8g/mより多い、好ましくは1.0g/mと等しいか又はそれより多いインク付着量を有する、ステップb);
ステップb)の後に、コーティング層(x10)及び1つ又は複数のしるし(x30)を1つ又は複数の硬化ユニット(x50)で硬化するステップc)を含み、
ステップb)とc)との間の時間は5秒未満、好ましくは約4秒未満、より好ましくは約3.5秒と等しいか又は約3.5秒未満である、
方法。
【請求項2】
前記1種又は複数のUV-Vis放射線硬化性の化合物がビニルエーテル、プロペニルエーテル、脂環式エポキシド以外の環状エーテル、ラクトン、環状チオエーテル、ビニルチオエーテル、プロペニルチオエーテル、ヒドロキシル含有化合物、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数のカチオン硬化性のモノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種又は複数のUV-Vis放射線硬化性化合物がビニルエーテル、脂環式エポキシド以外の環状エーテル及びこれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数のカチオン硬化性モノマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種又は複数のUV-Vis放射線硬化性の化合物が1種又は複数のラジカル硬化性のモノマー及び/又はオリゴマーを含み、前記UV-Vis放射線硬化性のインクが、vii)1種又は複数のフリーラジカル光開始剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記UV-Vis放射線硬化性のインクが約0.025wt-%~約5wt-%の量のペルフルオロポリエーテル界面活性剤を含み、重量パーセントは前記UV-Vis放射線硬化性のインクの総重量に基づく、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記トップコーティング組成物が1種若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1種若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1種若しくは複数の溶剤、1種若しくは複数のラジカル硬化性化合物又はこれらの混合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カチオン硬化性化合物がビニルエーテル、グリシジルエーテル、オキセタン及びこれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は1種又は複数のハイブリッド硬化性化合物がヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性ビニルエーテルである;及び/又は1種又は複数の溶剤がアルコール、ケトン、グリコール、グリコールエーテル、エーテルエステル、グリコールエーテルエステル、アルキレンカーボネート及びこれらの混合物からなる群から選択される、及び/又は1種又は複数のラジカル硬化性化合物がモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記銀ナノプレートレットが標準偏差60%未満で50~150nmの範囲の数平均直径、標準偏差50%未満で5~30nmの範囲の数平均厚さ、及び2.0より高い平均アスペクト比を有し、前記数平均直径は透過電子顕微鏡法により決定され、前記平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定され、好ましくは前記銀ナノプレートレットの前記数平均直径が標準偏差50%未満で70~120nmの範囲であり、前記銀ナノプレートレットの前記数平均厚さが標準偏差30%未満で8~25nmの範囲であり、前記銀ナノプレートレットの前記平均アスペクト比が2.5より高い、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
一般式(V)の前記表面安定剤がi)の前記銀ナノプレートレットの重量パーセント(wt-%)の約0.5%~約5%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング層(x10)及び前記1つ又は複数のしるし(x30)を硬化する前記ステップc)が水銀ランプ、UV-LEDランプ及びこれらのシーケンスからなる群から選択される1つ又は複数の硬化ユニット(x50)で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップc)が1つ又は複数のUV-LEDランプで行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数のしるし(x30)がコード、記号、英数字記号、モチーフ、幾何学模様、文字、単語、数、ロゴ、図、肖像画及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップa)が輪転グラビア印刷プロセス、フレキソ印刷プロセス及びスクリーン印刷プロセスからなる群から選択され、好ましくはスクリーン印刷プロセスからなる群から選択されるプロセスにより行われる、及び/又は前記ステップb)がインクジェット印刷プロセスにより、好ましくはドロップオンデマンドインクジェット印刷プロセスにより行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記UV-Vis放射線硬化性インクが前記基材(x20)の透明又は部分的に透明な領域に適用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法により作製されるセキュリティー機能。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[001]本発明は基材、特に有価文書(value document)又は物品上にセキュリティー機能(security feature)を作製する方法の分野に関する。特に、本発明は、透過光で見ると第1の色を、入射光で見ると第1の色と異なる第2の色を示し、有価文書又は物品上で偽造防止手段として、また装飾目的で1つ又は複数のしるし(indicia)を示す、注意を引く公然の(overt)セキュリティー機能を作製する方法を提供する。
【0002】
[発明の背景]
[002]カラーコピー及び印刷の常に向上する質と共に、偽造(counterfeiting)、変造(falsifying)又は違法複製に対して再現性のある結果をもたない銀行券、有価文書又はカード、輸送券又はカード、タックスバンデロール、及び製品ラベルのような有価文書を保護しようとして、各種のセキュリティー手段機能を組み込むことが従来の慣例であった。
【0003】
[003]例えば有価文書のためのセキュリティー機能は一般に一方で「秘密の」セキュリティー機能に、他方で「公然の」セキュリティー機能に分類することができる。秘密のセキュリティー機能により提供される保護はかかる機能が検出するのが困難であり、通例検出のための特化した設備及び知識を必要とするという概念に依拠しているのに対して、「公然の」セキュリティー機能は助けのない人の感覚で容易に検出可能であり、例えばかかる機能が触覚によって目に見えるか及び/又は検出できるがそれでも作製する及び/又はコピーするのが困難であるという概念に依拠している。しかしながら、公然のセキュリティー機能の有効性はセキュリティー機能としての容易な認識に大いに依存している。その理由は、殆どのユーザー、特にある文書又はそれにより保証されるアイテムのセキュリティー機能の知識を予め持っていないユーザーは、その存在及び性質を実際に知得して初めて、前記セキュリティー機能に基づくセキュリティーチェックを実際に行うからである。
【0004】
[004]有価文書を保証する際における特別な役割は透過光で見ると第1の色を、入射光で見ると第1の色と異なる第2の色を示す二色性のセキュリティー機能により果たされる。目立った効果を提供し、一般人の注意を引くために、第1の色及び第2の色は青、メタリックイエロー、マゼンタ、及び緑のような人を引き付ける視覚的外観、及び著しい色のコントラスト(青/メタリックイエロー、緑/メタリックイエロー、バイオレット/メタリックイエロー)をもたなければならない。
【0005】
[005]透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示す二色性のセキュリティー機能は銀プレートレット(platelet)を含有するインクから得られる。
【0006】
[006]国際公開第2020/224982号は、銀ナノプレートレットを含む組成物、並びに前記ナノプレートレットを含み、透過で青色を、反射でメタリックイエロー色を示すコーティングを開示している。
【0007】
[007]国際公開第2020/083794号は、銀ナノプレートレットを含む組成物、並びに前記ナノプレートレットを含み、透過で赤又はマゼンタ色を、反射で緑色がかったメタリックカラーを示すコーティングを開示している。
【0008】
[008]国際公開第2021/213942号は、小板形状の遷移金属粒子を含む組成物、並びに前記粒子を含み、透過で青緑若しくは青色を、反射で黄色がかったメタリックカラーを示すか、又は透過で赤若しくはマゼンタ色を、反射で緑色がかったメタリックカラーを示すコーティングを開示している。
【0009】
[009]国際公開第2021/214244号は、有価文書を保証するためのセキュリティー機能であって、透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示す、セキュリティー機能を製造する方法を開示している。開示されている方法は、a)有価文書の基材の透明又は部分的に透明な領域に特定のUV-Vis放射線硬化性インクを印刷するステップ;b)ステップa)で得られたインク層を、インク層が入射光で見るとメタリックイエロー色を示すように、約55℃~約100℃の温度で少なくとも1秒間加熱するステップ;及びc)ステップb)で得られたインク層をUV-Vis硬化させてセキュリティー機能を形成するステップを含む。
【0010】
[010]同時係属中の欧州特許出願第20206794.8号は透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示すセキュリティー機能を作製するためのUV-Vis放射線硬化性セキュリティーインクを開示しており、前記インクは銀ナノプレートレット、UV-Vis放射線硬化性化合物、1種又は複数のカチオン性光開始剤、ペルフルオロポリエーテル界面活性剤及びポリ塩化ビニルコポリマーを含む。
【0011】
[011]国際公開第2021/175907号はインクビヒクル並びに1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層、及びペルフルオロポリエーテルをベースとする1種又は複数の表面改質剤でできた少なくとも部分的な表面処理層を含むフレーク形状の非金属又は金属基材を含む顔料を含むUV-Vis放射線カチオン硬化性セキュリティーインク及びUV-Vis放射線硬化性ハイブリッドセキュリティーインクを開示している。
【0012】
[012]従って、銀ナノプレートレットを含み、透過光で見ると青色を、入射光で見るとメタリックイエロー色を示す、注意を引くカスタマイズされた公然のセキュリティー機能で、特に高い偽造レジリエンス(resilience)及び優れた光学的性質を必要とする要求の厳しい用途のためのセキュリティー機能を作製する方法に対するニーズが残されており、ここで前記方法は信頼でき、実施が容易で、高い生産速度で稼働することができるべきである。特に、カチオン硬化性インク又はハイブリッド硬化性インクである無溶媒又は低VOC含有のUV-Vis放射線硬化性インクを用いて、銀ナノプレートレットに基づき、1つ又は複数のよく解像された(well resolved)しるしを示す、カスタマイズされた公然のセキュリティー機能を作製する方法に対するニーズがあり、ここで前記セキュリティー機能は容易に認識できる光学的性質を示し、特に彩度のコントラストを示し、従っていかなる外部の装置又は道具もなしで人による容易な直接で一義的な認証を可能にする。
【0013】
[発明の概要]
[013]従って、本発明の目的は従来技術の欠点を克服することである。これは基材(x20)上でセキュリティー機能を作製する方法の提供により達成され、前記セキュリティー機能は1つ又は複数のしるし(x30)を示し、この方法は以下のステップ:
基材(x20)表面にUV-Vis放射線硬化性インクを適用してコーティング層(x10)を形成するステップa)であって、前記UV-Vis放射線硬化性インクは第1の液体状態であり、前記UV-Vis放射線硬化性インクは:
i)約7.5wt-%~約20wt-%の、一般式(V)
【化1】

[式中、残基Rはヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり;
残基RはC-Cアルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基から選択され;
Catは一般式NHのアンモニウムカチオンであり、ここで残基Rはヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり、
残基RはC-Cアルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基から選択される]
の表面安定剤を有する銀ナノプレートレット;
ii)約45wt-%~約80wt-%の脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシド及び1種又は複数のUV-Vis放射線硬化性化合物の混合物;
iii)1種又は複数のカチオン性光開始剤;
iv)ヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート、及びトリアルコキシシリルからなる群から選択される1つ又は複数の官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤;
v)約3wt-%~約12wt-%の、少なくとも60wt-%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー;及び任意選択で
vi)約25wt-%以下の1種又は複数の有機溶剤
を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性インクの総重量に基づく、ステップa)、
ステップa)の後に、コーティング層(x10)の上に非接触流体微細分配(microdispensing)技術によりトップコーティング組成物を少なくとも部分的に適用するステップb)であり、前記トップコーティング組成物は1つ又は複数のしるし(x30)の形態で適用され、前記1つ又は複数のしるし(x30)は約0.8g/mより多い、好ましくは1.0g/mと等しいか又はそれより多いインク付着量を有する、ステップb);
ステップb)の後に、コーティング層(x10)及び1つ又は複数のしるし(x30)を1つ又は複数の硬化ユニット(x50)で硬化するステップc)を含み、
ステップb)とc)との間の時間は5秒未満、好ましくは約4秒未満、より好ましくは約3.5秒と等しいか又は約3.5秒未満である。
【0014】
[014]1つの好ましい実施形態において、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクを適用するステップa)はグラビア印刷プロセス、フレキソ印刷プロセス及びスクリーン印刷プロセスからなる群から選択され、好ましくはスクリーン印刷プロセスからなる群から選択される印刷プロセスにより行われる。
【0015】
[015]1つの好ましい実施形態において、トップコーティング組成物を適用するステップb)はインクジェット印刷プロセスにより、好ましくはドロップオンデマンドインクジェット印刷プロセスにより行われる。
【0016】
[016]また、本明細書に記載されている方法により作製されたセキュリティー機能、並びに本明細書に記載されている1つ又は複数のセキュリティー機能を含む有価文書及び有価物品(value article)並びに装飾要素及び物体も本明細書に記載されている。
【0017】
[017]また本明細書には、有価文書、有価物品又は装飾要素若しくは物体を製造する方法であって、a)有価文書、有価物品又は装飾要素若しくは物体を準備するステップと、b)本明細書に記載されているもののような、特に本明細書に記載されている方法により得られるもののような1つ又は複数のセキュリティー機能を、有価文書、有価物品又は装飾要素若しくは物体の上又はそれらによって含まれるように設けるステップとを含む、方法も記載されている。
【0018】
[018]本明細書に記載されている方法は2つの組成物を使用するのが有利であり、ここで前記2つの組成物はお互いにウェットオンウェット状態で適用され、即ち本明細書に記載されているトップコーティング組成物は適用されている本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性インク上に少なくとも部分的に適用されるが、前記組成物は未だに少なくとも部分的に未重合の状態である。特に、本発明による方法は万能的に1つ又は複数のしるしを示す注意を引く公然のセキュリティー機能の作製を可能にし、工業規模で高い生産速度で容易に実施することができる。本明細書に記載されている方法で使用される2つの組成物は、本明細書に記載されている銀ナノプレートレットを含む、本明細書に記載されている基材(x20)に適用されるUV-Vis放射線硬化性インクを第1の組成物として含み、第2の組成物として本明細書に記載されているトップコーティング組成物を含んでおり、この第2の組成物は少なくとも部分的にUV-Vis放射線硬化性インクの上に適用され、前記組成物と少なくとも部分的に重なり(即ち少なくとも1つの領域で重なり)、前記UV-Vis放射線硬化性インクがまだ湿っていて、少なくとも部分的に未重合の状態であるときに、本明細書に記載されている1つ又は複数のしるしの形態で適用される。UV-Vis放射線硬化性インク及び1つ又は複数のしるし(x30)の形状のトップコーティング組成物が硬化すると、そうして得られた公然のセキュリティー機能は硬化した1つ又は複数のインクジェット印刷したしるし(x30)を欠く硬化した被覆層(x10)でできた第1の領域及び硬化した被覆層(x10)と1つ又は複数の硬化したインクジェット印刷したしるし(x30)との組合せでできた第2のよく解像された領域を含み、前記第1及び第2の領域は彩度の点で異なる光学的性質を示し、従っていかなる外部の装置又は道具もなしで人による公然のセキュリティー機能の容易な直接及び一義的な認証を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1Aは、セキュリティー機能を含む基材(120)の写真を示し、前記機能は徐々に小さくなるフォントサイズの名称「SICPA」の形状の硬化したインクジェット印刷したしるし(130)を含み、前記セキュリティー機能は本発明による方法で調製される。セキュリティー機能は硬化したインクジェット印刷したしるし(130)を欠く硬化した被覆層(110)でできた第1の領域及び硬化した被覆層(110)と硬化したインクジェット印刷したしるし(130)との組合せでできた第2の領域を含み、拡散照明下約0°の角度で観察される。図1Bは、図1Aについて記載したのと同じしるし(130)を刷り重ねた硬化した被覆層(110)でできた第1の領域を含む基材(120)の写真を比較目的で示し、ここで前記しるしはインクジェット印刷の代わりに600dpiの解像度のレーザープリンターで印刷される。
図2図2は、セキュリティー機能を含む基材(220)の写真を示し、ここで前記機能はQRコードの形状の硬化したインクジェット印刷したしるし(230)を含み、前記セキュリティー機能は本発明による方法で調製される。セキュリティー機能は硬化したインクジェット印刷したしるし(230)を欠く硬化した被覆層(210)でできた第1の領域及び硬化した被覆層(210)と硬化したインクジェット印刷したしるし(230)との組合せでできた第2の領域を含み、拡散照明下約0°の角度で観察される。
図3A図3Aは、実験的に決定された、及び計算されたトップコーティングインクジェットインク付着量を含む表を示し、図3Bは、dpd(ドット当たりのドロップ数)のトップコーティングインク付着量に対するg/mのインクジェットインク付着量(重量で測定)から得られた直線状の回帰線並びに線形関数及びR-値を示す。
図3B図3Aは、実験的に決定された、及び計算されたトップコーティングインクジェットインク付着量を含む表を示し、図3Bは、dpd(ドット当たりのドロップ数)のトップコーティングインク付着量に対するg/mのインクジェットインク付着量(重量で測定)から得られた直線状の回帰線並びに線形関数及びR-値を示す。
【0020】
[詳細な説明]
定義
[019]以下の定義が明細書で論じられ、特許請求の範囲で記載される用語の意味を解釈するために使用される。
【0021】
[020]本明細書で使用されるとき、冠詞「a」は1つ並びに1つより多いことを示し、必ずしも指示対象の名詞を単数に限定するものではない。
【0022】
[021]本明細書で使用されるとき、用語「少なくとも1つ」は1つ又は1つより多く、例えば1つ又は2つ又は3つを規定して意味する。
【0023】
[022]本明細書で使用されるとき、用語「約」は、問題になっている量又は値が指定されている具体的な値又はその近くの他の値であり得ることを意味する。一般に、ある値を表示する用語「約」はその値の±5%以内の範囲を示すことが意図されている。1つの例として、句「約100」は100±5の範囲、即ち95~105の範囲を示す。好ましくは、用語「約」により示される範囲はその値の±3%、より好ましくは±1%以内の範囲を示す。一般に、用語「約」が使用されるとき、本発明に従う類似の結果又は効果は示された値の±5%の範囲内で得ることができると期待することができる。
【0024】
[023]本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」は述べられた群の要素のうちの全て又は1つのみが存在し得ることを意味する。例えば、「A及び/又はB」は「Aのみ、又はBのみ、又はA及びBの両方」を意味する。「Aのみ」の場合、この用語はBが存在しない、即ち「Aのみであって、Bでない」可能性も包含する。
【0025】
[024]本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は非排他的でありオープンエンドであることが意図されている。従って、例えば化合物Aを含む溶液はAに加えて他の化合物を含んでいてもよい。しかし、用語「含む(comprising)」は、その特定の態様として、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」のより限定的な意味も包含し、結果として、例えば「A、B、及び任意選択でCを含む溶液」は(本質的に)A、及びBからなってもよいし、又は(本質的に)A、B、及びCからなってもよい。
【0026】
[025]用語「UV-Vis硬化性」及び「UV-Vis硬化」は電磁スペクトルのUV又はUV及び可視部の波長成分(通例100nm~800nm、好ましくは150nm~600nm、より好ましくは200nm~400nm)を有する照射の影響下での光重合による放射線硬化を意味する。
【0027】
[026]本発明との関連で用語「(メタ)アクリレート」はアクリレート並びに対応するメタクリレートを意味する。同様に、「ジ(メタ)アクリレート」はジアクリレート並びに対応するジメタクリレートを意味し、トリ(メタ)アクリレート」はトリアクリレート並びに対応するトリメタクリレートを意味する。
【0028】
[027]用語「有価文書」及び「有価物品」は通常少なくとも1つのセキュリティー機能により偽造又は不正に対して保護される文書/物品を意味する。
【0029】
[028]用語「セキュリティー機能」は認証目的に使用することができる画像、パターン又は図形要素を示すために使用される。
【0030】
[029]本明細書で「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、「好ましい」実施形態/特徴の特定の組合せが技術的に意味がある限りにおいてこれらの「好ましい」実施形態/特徴の組合せも開示されているものとする。
【0031】
[030]本明細書に記載されている方法は、1つ又は複数のしるし(x30)を示し、本明細書に記載されている方法により本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インク及び本明細書に記載されているトップコーティング組成物で作製されるセキュリティー機能の作製を可能にする。上述したように、本明細書に記載されている方法により作製されるセキュリティー機能は1つ又は複数の硬化したインクジェット印刷したしるし(x30)を欠く硬化した被覆層(x10)でできた第1の領域及び硬化した被覆層(x10)と1つ又は複数の硬化したインクジェット印刷したしるし(x30)との組合せでできた第2の領域を含んでおり、前記領域間の十分~優れたコントラストが得られ、第1の領域は透過光即ち透過で見ると青色を示し、入射光即ち反射で見るとメタリックイエロー色又は金色を示すが、1つ又は複数のしるし(x30)は褐色を示す。
【0032】
[031]本発明の目的から、透過光で見るとは、そのセキュリティー機能を、例えば前記セキュリティー機能を日光に向けて、又は光源の前に保持することにより一方の面から照らし、反対側から見ることを意味する。セキュリティー機能を透過光で見る面とは関係なく青色が観察される。この発明の目的から、青色を示す領域とは、20より大きい彩度値(chroma value)C(色強度(color intensity)又は彩度(色飽和度(color saturation))の測定値に対応する)により特徴付けられる青色を示す領域を指す。強烈~非常に強烈な青色は30より大きい彩度値Cにより特徴付けられる。彩度値CはCIELAB(1976)色空間に従ってa及びb値から計算され、ここで
【数1】

である。
【0033】
[032]透過光における前記a及びb値はDatacolor 650分光光度計(パラメーター:積分球、拡散照明(パルスキセノンD65)及び8°視野、アナライザーSP2000、デュアル256ダイオードアレイ、波長範囲360~700nm、透過光サンプリング開口サイズ22mm)を用いて測定される。
【0034】
[033]本特許出願において、用語「メタリックイエロー色」及び「金色」は同義で使用されている。本発明の目的から、「入射光で見る」とは、本明細書に記載されているコーティング層(x10)及び1つ又は複数のしるし(x30)を含む面からセキュリティー機能を照らし、同じ側から見ることを意味する。本発明の目的から、メタリックイエロー色又は金色を示す領域は、CIELAB(1976)色空間に従ってa及びb値から計算して20より大きい彩度値C(色強度又は彩度(色飽和度)の測定値に対応する)により特徴付けられる黄色を示す領域を指し、ここで
【数2】

であり、前記a及びb値はゴニオメーター(Goniospektrometer Codec WI-10 5&5、Phyma GmbH Austria)を用いて22.5°の照明角で、垂線に対して0°で測定された。
【0035】
[034]本明細書に記載されている方法は本明細書に記載されている基材(x20)表面に、本明細書に記載されている銀ナノプレートレットを含むUV-Vis放射線硬化性インクを、本明細書に記載されているコーティング層(x10)を形成するように適用するステップa)を含み、前記組成物はその層としての適用を可能にし、且つまだ硬化してない(即ち湿った)状態にある第1の液体状態である。本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは基材(x20)表面上に供給されることになるので、UV-Vis放射線硬化性インクは1種又は複数の硬化性化合物及び本明細書に記載されている銀ナノプレートレットを含み、ここで前記組成物は所望の印刷又は塗布設備でのその加工処理を可能にする形態にある。好ましくは、前記ステップa)は印刷プロセスにより、より好ましくはスクリーン印刷プロセス、グラビア印刷プロセス及びフレキソ印刷プロセスからなる群から選択される印刷プロセスにより、更により好ましくはスクリーン印刷プロセスにより行われる。従って、UV-Vis放射線硬化性インクは好ましくはスクリーン印刷インク、グラビア印刷インク及びフレキソ印刷インクからなる群から選択され、より好ましくはスクリーン印刷インクであり、その理由は、前記インクが、約2μm~約12μm、好ましくは約3μm~約11、より好ましくは約3.5μm~約10μmの厚さを有するセキュリティー機能の非常に高速での印刷を可能にするので、有価文書上でのセキュリティー機能の工業的製造に特に有用であるからである。
【0036】
[035]好ましくは、UV-Vis放射線硬化性インクは500mPas以下の粘度を測定するための100rpmのスピンドルS21を備えたBrookfield粘度計(モデル“DV-I Prime)を用いて測定して25℃で約100mPas~約500mPas、好ましくは25℃で約150mPas~約350mPasの粘度により特徴付けられる。本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性コーティングスクリーン印刷組成物は25℃で約100mPas~約500mPas、好ましくは25℃で約150mPas~約350mPasの粘度により特徴付けられる。
【0037】
[036]当業者には知られているように、用語輪転グラビア印刷は例えばHandbook of Print Media,Helmut Kipphan,Springer Edition,page 48に記載されている印刷プロセスを意味する。輪転グラビア印刷は、画像要素がシリンダーの表面に刻印される印刷プロセスである。非画像領域は一定の元のレベルである。印刷の前に、印刷板全体(非印刷及び印刷要素)にインクを付け、インクであふれさせる。インクは印刷の前に非画像からワイパー又はブレードで除去されて、結果としてインクはセルのみに残る。画像は通例2~4バールの範囲の圧力及び基材とインクとの接着力によりセルから基材に移される。用語輪転グラビア印刷は、例えば異なる種類のインクに依拠する沈み彫り印刷プロセス(当技術分野では刻印スチールダイ又は銅板印刷プロセスともいわれる)を含まない。
【0038】
[037]フレキソ印刷法は好ましくはチャンバードクターブレード、アニロックスローラー及びプレートシリンダーを備えたユニットを使用する。アニロックスローラーは小さいセルを有するのが有利であり、その容積及び/又は密度はインク又はワニス塗布速度を決定する。チャンバードクターブレードはアニロックスローラーに対向しており、セルを満たし、同時に余分なインク又はワニスを掻き落とす。アニロックスローラーはインクをプレートシリンダーに移し、このプレートシリンダーが最終的にインクを基材に移す。プレートシリンダーはポリマー又はエラストマー材料から作製することができる。ポリマーは主として板状のフォトポリマーとして、時にはスリーブ上のシームレスコーティングとして使用される。フォトポリマープレートは紫外(UV)光により硬化する感光性ポリマーから作製される。フォトポリマープレートは所要の大きさに切断され、UV光曝露ユニットに入れられる。プレートの一方の面は、プレートの土台を硬化する(harden)か又は硬化する(cure)ために完全にUV光に曝露される。次いでプレートを反転させ、ジョブのネガを未硬化の面の上に載せ、プレートを更にUV光に曝露する。これにより、プレートの画像領域が硬化する。次いでプレートを加工処理して未硬化のフォトポリマーを非画像領域から除くと、これらの非画像領域のプレート表面が下がる。加工処理後、プレートを乾燥し、後露光線量のUV光で全プレートを硬化させる。フレキソ印刷のためのプレートシリンダーの調製はPrinting Technology,J.M.Adams and P.A.Dolin,Delmar Thomson Learning,5th Edition,pages 359-360に記載されている。
【0039】
[038]スクリーン印刷(当技術分野でシルクスクリーン印刷ともいわれる)は、通例インクブロッキングステンシルを支えるために織ったメッシュ製のスクリーンを使用する印刷技術である。付属のステンシルがメッシュのオープンな領域を形成し、これらの領域はインクを鋭い縁の画像として基材上に移す。スキージーがインクブロッキングステンシルと共にスクリーンを横切って移動し、オープンな領域の織ったメッシュの糸を越してインクを通させる。スクリーン印刷の重要な特徴は他の印刷技術より大きい厚さのインクを基材に塗布することができるということである。従ってスクリーン印刷は、他の印刷技術では(容易に)達成することができない約10~50μm又はそれ以上の値を有する厚さのインク付着量が必要とされるときにも好ましい。一般に、スクリーンは、例えばアルミニウム又は木材の枠を覆って広げられたメッシュと呼ばれる1枚の多孔性で目の細かい織物から作られる。現在殆どのメッシュは合成又はスチール糸のような人工の材料で作製される。好ましい合成材料はナイロン又はポリエステル糸である。
【0040】
[039]合成又は金属糸に基づく織物メッシュに基づいて作製されたスクリーンに加えて、穴の格子を有する固体の金属シートからスクリーンが開発された。かかるスクリーンは第1の電解槽で分離剤を含む母材上にスクリーン骨格を形成し、形成されたスクリーン骨格を母材から剥ぎ取り、スクリーン骨格を第2の電解槽で電気分解に付して前記骨格に金属を付着させることにより金属スクリーンを電解で形成することを含むプロセスにより調製される。
【0041】
[040]3つの種類のスクリーン印刷機、即ち平床式、シリンダー及びロータリースクリーン印刷機がある。平床式及びシリンダースクリーン印刷機は、双方とも平坦なスクリーン及び3ステップの回帰プロセスを使用して印刷作業を行う点で類似である。スクリーンは最初に基材の上方の所定位置に移動され、次いでスキージーがメッシュに押し付けられ、画像領域を越えて引き出され、次にスクリーンが基材から持ち上げられてプロセスが完了する。平床式のプレス機では印刷される基材は通例スクリーンと平行である水平なプリントベッド上に配置される。シリンダープレス機の場合基材はシリンダーに載せられる。平床式及びシリンダースクリーン印刷プロセスは不連続なプロセスであり、その結果として一般にウェブにおいて最大で45m/min又はシート供給プロセスにおいて3’000枚/時に限定される。
【0042】
[041]逆に、ロータリースクリーンプレス機は連続した高速印刷用に設計されている。ロータリースクリーンプレス機に使用されるスクリーンは例えば通常上に記載した電鋳法を用いて得られるか又は織ったスチール糸で作製される薄い金属シリンダーである。開口シリンダーは両端がキャッピングされ、プレス機の側でブロックに嵌め込まれる。印刷中、インクはシリンダーの一端にポンプで送り込まれ、従って新鮮な供給が絶えず維持される。スキージーは回転するスクリーンの内側に固定され、スキージー圧力は良好で一定の印刷品質を可能にするように維持され調節される。ロータリースクリーンプレス機の利点はウェブにおいて150m/min又はシート供給プロセスにおいてシート供給プロセスにおいて10’000枚/時を容易に達成することができる速度である。
【0043】
[042]スクリーン印刷は更に例えばThe Printing Ink Manual,R.H.Leach and R.J.Pierce,Springer Edition,5th Edition,pages 58-62、Printing Technology,J.M.Adams and P.A.Dolin,Delmar Thomson Learning,5th Edition,pages 293-328及びHandbook of Print Media,H.Kipphan,Springer,pages 409-422 and pages 498-499に記載されている。
【0044】
[043]一実施形態に従って、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクはUV-Vis放射線カチオン硬化性インクである。別の実施形態に従って、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクはUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性インク、即ち1種又は複数のカチオン硬化性化合物及び1種又は複数のフリーラジカル硬化性化合物を含むインクである。
【0045】
[044]本明細書に記載されている方法はコーティング層(x10)及び1つ又は複数のしるし(x30)を硬化するステップc)を含み;言い換えると、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インク及びトップコーティング組成物はUV-Vis硬化に供されて本明細書に記載されているセキュリティー機能を形成する。本明細書で使用されるとき、用語「UV-Vis硬化」は、電磁スペクトルのUV又はUV及び可視部の波長成分(通例100nm~800nm、好ましくは150nm~600nm、より好ましくは200nm~400nm)を有する照射の影響下での光重合によるインク層の放射線硬化を意味する。カチオン硬化性モノマーは1種又は複数の光開始剤のUV-Vis光による活性化からなるカチオン機構により硬化するが、この光開始剤は酸のようなカチオン種を遊離させ、このカチオン種が今度は、硬化した層を形成するように化合物の重合を開始する。ラジカル硬化性のモノマー及びオリゴマーは、1種又は複数の光開始剤のUV-Vis光による活性化からなるフリーラジカル機構により硬化するが、この光開始剤がフリーラジカルを遊離させ、このラジカルが次に重合プロセスを開始する。任意選択で、1種又は複数の光増感剤も存在し得る。光増感剤はUV-Vis光源により放出された波長のうちの1又は複数により活性化され、励起状態に達する。励起した光増感剤は1種又は複数の光開始剤(ラジカル重合の場合)又は電子(カチオン重合の場合)にエネルギーを移す。いずれのプロセスもその後重合プロセスを開始する。
【0046】
[045]適切なUV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性インクは同時係属中の欧州特許出願第20206794.8号に記載されている。
【0047】
[046]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは約45wt-%~約80wt-%の脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシドと1種若しくは複数のUV-Vis放射線硬化性化合物との混合物を含む。1種又は複数のUV-Vis放射線硬化性化合物は1種又は複数のカチオン硬化性モノマーを含み得る(カチオン硬化性インク)か、又は1種若しくは複数のカチオン硬化性及び1種も複数のラジカル硬化性モノマー及び/又はオリゴマーを含む(ハイブリッドインク)。本明細書に記載されているUV-Vis放射線カチオン硬化性インクが約45wt-%~約80wt-%の脂環式エポキシドと1種又は複数のカチオン硬化性モノマーとの混合物を含むならば、1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの全体の重量パーセント(wt-%)と脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)との比は1.4:1より低い、好ましくは1:1より低い、より好ましくは0.9:1より低いのが好ましい。
【0048】
[047]1種又は複数のUV-Vis放射線硬化性化合物が1種又は複数のラジカル硬化性化合物を含む(即ちハイブリッドインクからなる)ならば、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは1種又は複数のフリーラジカル光開始剤を更に含む。
【0049】
[048]代わりの好ましい実施形態は本明細書に記載されているセキュリティー機能を作製するためのUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性インク(即ちカチオン硬化性モノマー及びラジカル硬化性モノマー/オリゴマーの両方を含むインク)に関し、前記インクは約45wt-%~約80wt-%の脂環式エポキシド及び1種又は複数のラジカル硬化性モノマー及び/又はオリゴマーの混合物;又は約45wt-%~約80wt-%、好ましくは約45wt-%~約65wt-%の脂環式エポキシド、1種又は複数のカチオン硬化性モノマー及び1種又は複数のラジカル硬化性モノマー及び/又はオリゴマーの混合物を含む。本明細書に記載されているハイブリッドインクが約45wt-%~約80wt-%の脂環式エポキシド及び1種又は複数のラジカル硬化性モノマー及び/又はオリゴマーの混合物を含むならば、1種又は複数のラジカル硬化性モノマー及び/又はオリゴマーの全体の重量パーセント(wt-%)と脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)との比は好ましくは1.6:1より低く、より好ましくは1:1より低く、更により好ましくは0.5:1より低い。本明細書に記載されているハイブリッドインクが約45wt-%~約80wt-%の脂環式エポキシド、1種又は複数のカチオン硬化性モノマー及び1種又は複数のラジカル硬化性モノマー及び/又はオリゴマーの混合物を含むならば、1種又は複数のラジカル硬化性モノマー及び/又はオリゴマーの全体の重量パーセント(wt-%)と脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)及び1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの全体の重量パーセント(wt-%)の合計との比は好ましくは1.6:1より低く、より好ましくは1:1より低く、更により好ましくは0.5:1より低く、1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの重量パーセント(wt-%)と脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)との比は好ましくは1.4:1より低く、より好ましくは1:1より低く、更により好ましくは0.9:1より低い。
【0050】
[049]当業者に公知のように、脂環式エポキシドは少なくとも置換又は非置換のエポキシシクロヘキシル残基:
【化2】

を含有するカチオン硬化性モノマーである。
【0051】
[050]本明細書に記載されている1種又は複数の脂環式エポキシドは二官能性又は多官能性であり得る。好ましくは、本明細書に記載されている1種又は複数の脂環式エポキシドは少なくとも1個のシクロヘキサン環、及び少なくとも2個のエポキシド基を含む。より好ましくは、脂環式エポキシドは一般式(I):
【化3】

の化合物である[式中、-L-は単結合又は1個若しくは複数の原子を含む二価の基を表す]。一般式(I)の脂環式エポキシドは任意選択で1~10個の炭素原子を含有する1個又は複数の線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有するアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)により置換されてもよい。
【0052】
[051]一般式(I)で、二価の基-L-は1~18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり得る。前記直鎖又は分岐鎖のアルキレン基の例には制限なしにメチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びトリメチレン基がある。
【0053】
[052]一般式(I)で、二価の基-L-は二価の脂環式炭化水素基又はシクロアルキリデン(cycloalkydene)基、例えば1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基であり得る。
【0054】
[053]一般式(I)で、-L-は1個又は複数の酸素含有結合基を含む二価の基であり得、前記酸素含有結合基は-C(-O)-、-OC(=O)O-、-C(=O)O-、及び-O-からなる群から選択される。好ましくは、脂環式エポキシドは一般式(II)の脂環式エポキシドであり[式中、-L-は1個又は複数の酸素含有結合基を含む二価の基であり、前記酸素含有結合基は-C(=O)-、-OC(=O)O-、-C(=O)O-、及び-O-からなる群から選択される]、より好ましくは以下に定義される一般式(II-a)、(II-b)、又は(II-c)の脂環式エポキシドである
【化4】

[式中、
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)であり、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)であり、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
l1及びl2は互いに独立して0~9、好ましくは0~3の整数である];
【化5】

[式中、
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
l1及びl2は互いに独立して0~9、好ましくは0~3の整数であり;
-L-は単結合、又は1~10個の炭素原子を含有し、好ましくは3~8個の炭素原子を含有する線状又は分岐した二価の炭化水素基、例えばアルキレン基、例えばトリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、及び2-エチルヘキシレン、及びシクロアルキレン基、例えば1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、及び1,4-シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基である];
【化6】

[式中、
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~3個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピルであり;
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~3個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピルであり;
l1及びl2は互いに独立して0~9、好ましくは0~3の整数である]。
【0055】
[054]一般式(II-a)の好ましい脂環式エポキシドには、限定されることはないが:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-2-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチル-シクロヘキサンカルボキシレート、及び3,4-エポキシ-4-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-4-メチルシクロヘキサンカルボキシレートがある。
【0056】
[055]一般式(II-b)の好ましい脂環式エポキシドには、限定されることはないが:ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート、及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)セバケートがある。
【0057】
[056]一般式(II-c)の好ましい脂環式エポキシドは2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサンである。
【0058】
[057]更なる脂環式エポキシドには一般式(III-a)の脂環式エポキシド及び一般式(III-b)の脂環式エポキシドがあり、これらは任意選択で1~10個の炭素原子を含有する1個又は複数の線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する前記アルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)により置換されてもよい。
【化7】
【0059】
[058]本明細書に記載されている脂環式エポキシドはヒドロキシで変性され得るか又は(メタ)アクリレートで変性され得る。例はDaicel Corp.によりCyclomer A400(CAS:64630-63-3)及びCyclomer M100(CAS番号:82428-30-6)という名称で、又はTetraChem/JiangsuによりTTA 15及びTTA16 46という名称で市販されている。
【0060】
[059]本明細書に記載されているカチオン硬化性モノマーである1種又は複数のUV-Vis放射線硬化性化合物は好ましくはビニルエーテル、プロペニルエーテル、脂環式エポキシド以外の環状エーテル、ラクトン、環状チオエーテル、ビニルチオエーテル、プロペニルチオエーテル、ヒドロキシル含有化合物、及びこれらの混合物からなる群から、好ましくはビニルエーテル、脂環式エポキシド以外の環状エーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。脂環式エポキシド以外の環状エーテルには脂環式エポキシド以外のエポキシド、オキセタン及びテトラヒドロフランがある。好ましくは、1又は複数のカチオン硬化性のモノマーの合計重量パーセント(wt-%)と脂環式エポキシドの重量パーセント(wt-%)との比は1.4:1より低く、より好ましくは1:1より低く、最も好ましくは0.9:1より低く、殊に好ましくは0.8:1より低い。
【0061】
[060]ビニルエーテルは当技術分野で、硬化を加速し、粘着性を低減するので、印刷されたシートを印刷及び硬化直後に積み重ねたときブロッキング(blocking)及びセットオフ(set-off)のリスクを制限することが知られている。また、印刷されたセキュリティー機能の物理的及び化学的抵抗を改良し、印刷され硬化したインク層の柔軟性及びその基材への粘着を高め、これはプラスチック及びポリマー基材の印刷に特に有利である。ビニルエーテルはまたインクの粘度を低減するのに役立つ一方で前記インクと共に強固に共重合する。本明細書に記載のセキュリティーインクに使用される好ましいビニルエーテルの例にはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル ベンゾエート、フェニルビニルエーテル、メチルフェニルビニルエーテル、メトキシフェニルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、4-(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]アジペート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート、4-(ビニルオキシ)ブチルステアレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンカーボネートのプロペニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)ジビニルエーテル、ポリエチレングリコール-520メチルビニルエーテル、プロリオール-E200ジビニルエーテル、トリス[4-(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート、1,4-ビス(2-ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ビニルオキシエトキシフェニル)プロパン、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレートがある。適切なビニルエーテルはBASFによりEVE、IBVE、DDVE、ODVE、BDDVE、DVE-2、DVE-3、CHVE、CHDM-di、HBVEという名称で市販されている。本明細書に記載されている1又は複数のビニルエーテルはヒドロキシ変性されても、又は(メタ)アクリレート変性されてもよい(例えば:Nippon ShokubaiのVEEA、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(CAS:86273-46-3))。
【0062】
[061]オキセタンは当技術分野で、硬化を加速し、粘着性を低減するので、印刷されたシートを印刷及び硬化直後に積み重ねたときブロッキング(blocking)及びセットオフ(set-off)のリスクを制限することが知られている。また、インクの粘度を低減する一方で前記インクと共に強固に共重合するのにも役立つ。オキセタンの好ましい例にはトリメチレンオキシド、3,3-ジメチルオキセタン、トリメチロールプロパンオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3,3-ジシクロメチルオキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、ビス([1-エチル(3-オキセタニル)]メチル)エーテル、1,4-ビス[3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3,3-ジメチル-2(4-メトキシ-フェニル)-オキセタン、3-エチル-[(トリ-エトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン、4,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル及び3,3-ジメチル-2(p-メトキシ-フェニル)オキセタンがある。本明細書に記載されている1又は複数のオキセタンはヒドロキシ変性されても又は(メタ)アクリレート変性されてもよい(例えば:Arkema(旧Lambson)のUVi-Cure S170(CAS:37674-57-0))。
【0063】
[062]本明細書に記載されている1種又は複数のビニルエーテルと本明細書に記載されている1種又は複数のオキセタンとの特定の範囲内での適切なバランスは、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクでできたセキュリティー機能の所望の特性、特に容易な加工性(最適な粘度、速い硬化、セットオフ(set-off)なし、ブロッキング(blocking)なし)並びに強い化学的及び物理的耐性を最適化するのを助ける。尚、ビニルエーテル及びオキセタンは通常脂環式エポキシド化合物より安価であるので費用有効性を高める役にも立つ。
【0064】
[063]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクにおけるエポキシドの使用は硬化を促進し、粘着性を低減し、またインクの粘度を低減する一方で前記インクと共に強く共重合するのに役立つ。本明細書に記載されている脂環式エポキシド以外のエポキシドの好ましい例には、限定されることはないが、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、2-エチル-ヘキシルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、C12/C14-アルキルグリシジルエーテル、C13/C15-アルキルグリシジルエーテル及びこれらの混合物がある。脂環式エポキシド以外の適切なエポキシドはEMS GriltechによりGrilonit(登録商標)(例えばGrilonit(登録商標)V51-63又はRV 1806)という商標で市販されている。
【0065】
[064]本明細書に記載されているラジカル硬化性のモノマーは、好ましくはモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物からなる群から、好ましくはトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。本発明との関連で用語「(メタ)アクリレート」はアクリレート並びに対応するメタクリレートを意味する。
【0066】
[065]モノ(メタ)アクリレートの好ましい例には、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、C12/C14アルキル(メタ)アクリレート、C16/C18アルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ジ(メタ)アクリレート、エステルジオールジ(メタ)アクリレート並びにこれらの混合物がある。
【0067】
[066]ジ(メタ)アクリレートの好ましい例には、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物がある。
【0068】
[067]トリ(メタ)アクリレートの好ましい例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物がある。
【0069】
[068]テトラ(メタ)アクリレートの好ましい例はジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物を包含し、好ましくはジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0070】
[069]本明細書で使用されるとき、用語「ラジカル硬化性のオリゴマー」は、分岐しても又は本質的に線状でもよく、末端及び/又はペンダント(メタ)アクリレート官能基(複数可)を有していてもよいラジカル硬化性の(メタ)アクリレートオリゴマーを意味する。好ましくは、ラジカル硬化性のオリゴマーは(メタ)アクリルオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテルベースの(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0071】
[070]エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの適切な例としては、制限なしに、脂肪族のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、特にモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレート、並びに芳香族のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーがある。芳香族のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの適切な例にはビスフェノール-A(メタ)アクリレートオリゴマー、例えばビスフェノール-Aモノ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート及びビスフェノール-Aトリ(メタ)アクリレート並びにアルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化)ビスフェノール-A(メタ)アクリレートオリゴマー、例えばアルコキシル化ビスフェノール-Aモノ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート及びアルコキシル化ビスフェノール-Aトリ(メタ)アクリレート、好ましくはアルコキシル化ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレートがある。
【0072】
[071]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクがカチオン硬化性インク(即ちラジカル硬化性化合物を含まない完全にカチオン硬化性のインク)である実施形態の場合、本明細書に記載されている前記組成物は好ましくは約1wt-%~約10wt-%、より好ましくは約1.1wt-%~約8wt-%、更により好ましくは約1.1wt-%~約6wt-%の1種又は複数のカチオン性光開始剤(当技術分野では光酸発生剤ともいわれる)を含み、重量パーセントはUV-Vis放射線カチオン硬化性インクの総重量に基づく。本明細書に記載されている1種又は複数のカチオン光開始剤はオニウム塩であり、好ましくはアゾニウム塩、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはオキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、及びこれらの混合物からなる群から選択され、更により好ましくはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0073】
[072]本明細書に記載されている1種又は複数のヨードニウム塩はカチオン部分及びアニオン部分を有し、ここでアニオン部分は好ましくはBF 、B(C 、PF 、AsF 、SbF 又はCFSO 、より好ましくはSbF 又はPF であり、更により好ましくはPF であり、カチオン部分は好ましくは芳香族ヨードニウムイオン、より好ましくは2個のアリール基を含むヨードニウムイオンであり、2個のアリール基は独立して1個又は複数のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tertブチル、等)、1個又は複数のアルコキシ基、1個又は複数のニトロ基、1個又は複数のハロゲン含有基、1個又は複数のヒドロキシ基又はこれらの組合せにより置換されてもよい。
【0074】
[073]本発明に特に適したヨードニウム塩はDEUTERON UV 1240、DEUTERON UV 1242、DEUTERON UV 2257、DEUTERON UV 1250、及びDEUTERON UV 3100(全てDEUTERONから入手可能)、OMNICAT 250、OMNICAT 440、及びOMNICAT 445(全てIGM Resinsから入手可能)、SpeedCure 937、SpeedCure 938及びSpeedCure 939(全てArkema(旧Lambson)から入手可能)という名称で市販され公知である。
【0075】
[074]本明細書に記載されている1種又は複数のスルホニウム塩はカチオン部分及びアニオン部分を有し、ここでアニオン部分は好ましくはBF 、B(C 、PF 、(PF6-h(C2j-1(ここでhは1~5の整数であり、jは1~4の整数である)、AsF 、SbF 、CFSO 、ペルフルオロアルキルスルホネート又はペンタフルオロ-ヒドロキシアンチモネート、より好ましくはSbF であり、カチオン部分は好ましくは芳香族スルホニウムイオン、より好ましくは2個又はそれ以上のアリール基を含むスルホニウムイオンであり、2個又はそれ以上のアリール基は独立して、1個又は複数のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tertブチル、等) 1個又は複数のアルコキシ基、1個又は複数のアリールオキシ基、1個又は複数のハロゲン含有基、1個又は複数のヒドロキシ基又はこれらの組合せにより置換されてもよい。2個又はそれ以上のアリール基を含むスルホニウムイオンの適切な例には、制限なしにトリアリールスルホニウムイオン、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、及びトリス[4-(4-アセチルフェニル)スルファニルフェニル]スルホニウムイオンがある。本発明のためのスルホニウム塩の特に適切な例は全てArkema(旧Lambson)から入手可能なSpeedCure 976、SpeedCure 976D、SpeedCure 976S及びSpeedCure 992、全てIGM Resinsから入手可能なESACURE 1187、OMNICAT 270、OMNICAT 320、OMNICAT 432及びOMNICAT 550、全てDoubleBondから入手可能なDoubleCure 1176、DoubleCure 1190及びDoubleCure 1172という名称で市販されている。
【0076】
[075]有用なカチオン光開始剤の他の例は標準的な教科書、例えば”Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints”,Volume III,”Photoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Polymerization”,2nd edition,by J.V.Crivello & K.Dietliker,edited by G.Bradley and published in 1998 by John Wiley & Sons in association with SITA Technology Limitedに見ることができる。
【0077】
[076]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクがハイブリッド硬化性インク(即ちカチオン硬化性化合物及びラジカル性化合物の両方を含むインク)である実施形態の場合、本明細書に記載されている前記組成物は1種又は複数のフリーラジカル光開始剤を含む。好ましくは、本明細書に記載されているUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性のインク中の1又は複数のフリーラジカル光開始剤の量は約1wt-%~約6wt-%であり、パーセントはUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性のインクの総重量に基づく。
【0078】
[077]1又は複数のフリーラジカル光開始剤は好ましくはヒドロキシケトン(例えばアルファ-ヒドロキシケトン)、アルコキシケトン(例えばアルファ-アルコキシケトン)、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ケトスルホン、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート(phenylglyoxylate)、チオキサントン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはホスフィンオキシド、ヒドロキシケトン、チオキサントン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
[078]適切なアルファ-ヒドロキシケトンには、制限なしに、(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-tert-ブチル)フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]メチル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェノキシ]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、及びオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]がある。
【0080】
[079]適切なアセトフェノンには制限なしに2,2-ジエトキシアセトフェノン、及び2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノンがある。
【0081】
[080]適切なベンゾフェノンには制限なしにベンゾフェノン、ポリマー性のベンゾフェノン誘導体、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、メチル-2-ベンゾイルベンゾエート、4-(4-メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノンラウレート、及び50%のベンゾフェノンと50%の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの混合物がある。
【0082】
[081]適切なケトスルホンには制限なしに1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オンがある。
【0083】
[082]適切なベンジルケタールには制限なしに2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンがある。
【0084】
[083]適切なベンゾインエーテルには制限なしに2-エトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-イソプロポキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-イソブトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-ブトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、及び2,2-ジエトキシアセトフェノンがある。
【0085】
[084]適切なホスフィンオキシドには制限なしに2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、置換されたアシル-ホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチプロピオフェノンの混合物、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物、並びにフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及びエチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートの混合物がある。
【0086】
[085]適切なチオキサントンには制限なしに2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、及びポリマー性チオキサントン誘導体がある。
【0087】
[086]適切なフェニルグリオキシレートには制限なしにメチルベンゾイルホルメート、2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]エチル2-オキソ-2-フェニルアセテート、並びに2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]エチル2-オキソ-2-フェニルアセテート及びオキシ-フェニル-酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルの混合物がある。
【0088】
[087]好ましくは、1又は複数のフリーラジカル光開始剤は本明細書に記載されているホスフィンオキシド、より好ましくはフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及びエチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートの混合物である。
【0089】
[088](例えば固体の光開始剤を液体ブレンドで置き換えることにより)反応性を高めるか及び/又は取扱いを改良するために、本明細書に記載されているフリーラジカル光開始剤のあらゆるブレンドを使用し得、ここで前記ブレンドとしては、例えば:例えばIGM Resinsにより商品名Omnirad 4265で販売されている2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンのブレンド;例えばIGM Resinsにより商品名Omnirad 2022で販売されているフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンのブレンド;例えばIGM Resinsにより商品名Omnirad 2100で販売されているエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドのブレンド;例えばIGM Resinsにより商品名Omnirad 1000で販売されている2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンのブレンド;例えばIGM Resinsにより商品名Esacure KIP100Fで販売されているオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンのブレンド;IGM Resinsにより商品名Omnirad BL 723で販売されている2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート及びオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]のブレンド;及びIGM Resinsにより商品名Omnirad BL 724で販売されている2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンのブレンドがある。
【0090】
[089]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクはd)ヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート、及びトリアルコキシシリルからなる群から選択される1又は複数の官能基、好ましくはヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート、及びトリアルコキシシリルからなる群から選択される2又はそれ以上の官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤を含有する。ヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート、及びトリアルコキシシリルからなる群から選択される1個又は複数の官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤はペルフルオロポリエーテル主鎖並びにヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート及びトリアルコキシシリルからなる群から選択される1個又は複数、好ましくは2個又はそれ以上の末端官能基を含み、約2000[g/mol]未満の平均分子量(Mn)により特徴付けられる。本明細書で使用されるとき、ペルフルオロポリエーテル主鎖はペルフルオロメチレンオキシ(-CFO-)及びペルフルオロエチレンオキシ(-CF-CFO-)から選択されるランダムに分布した繰返し単位を含むペルフルオロポリエーテルポリマーの残基を示す。ペルフルオロポリエーテル残基は直接又はメチレン(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-(オキシエチレン)、メチレン-ジ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-ジ(オキシエチレン)、メチレン-トリ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-トリ(オキシエチレン)、メチレン-テトラ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-テトラ(オキシエチレン)、メチレン-ペンタ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-ペンタ(オキシエチレン)、及び任意選択でスペーサーをペルフルオロポリエーテル残基に連結する炭素原子でフッ素化されてもよく、1又は複数のウレタン基、又は1若しくは複数のアミド基、及び任意選択で1又は複数の環状部分、例えば飽和した環状部分(例えばシクロヘキシレン)及び芳香族環式部分(例えばフェニレン)を含有する線状又は分岐した炭化水素基から選択されるスペーサーを介して末端の官能基に連結される。好ましくは、ペルフルオロポリエーテル界面活性剤は1又は複数のヒドロキシル官能基で官能化される。
【0091】
[090]更なる好ましい実施形態において、ヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート、及びトリアルコキシシリルからなる群から選択される1又は複数の官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤は約1200[g/mol]~約2000[g/mol]の平均分子量を有する一般式(IV)の化合物である
【化8】

[式中、
f及びeは互いに独立して1、2及び3から選択される整数であり;
FG及びFGは互いに独立して-OH、-OC(O)CH=CH、-OC(O)C(CH)=CH、及び-Si(OR20からなる群から選択される末端官能基であり;
20はC-Cアルキル基であり;
-S-は単結合又は
【化9】

から選択されるスペーサーを表し、
ここで、
-J-は
【化10】

から選択され、
ここで、jは1~12、好ましくは4~10の整数であり;
はそれぞれ同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)線状又は分岐したアルキル基であり;
はそれぞれ同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)線状又は分岐したアルキル基であり;
及びlは互いに独立して0~4、好ましくは0~1の整数であり;
-J-は-O-、-CH-、-CH(CH)-、及び-C(CH-から選択され;
-J-は
【化11】

から選択され、
aは1~6、好ましくは1~3の整数であり;
bは1~6、好ましくは2~4の整数であり;
-S-は単結合又は
【化12】

から選択されるスペーサーを表し、
ここで
-J-は
【化13】

から選択され、
ここで
は1~12、好ましくは4~10の整数であり;
はそれぞれ同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)線状又は分岐したアルキル基であり;
はそれぞれ同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)線状又は分岐したアルキル基であり;
及びlは互いに独立して0~4、好ましくは0~1の整数であり;
-J-は-O-、-CH-、-CH(CH)-、及び-C(CH-から選択され;
-J-は
【化14】

から選択され、
rは1~6、好ましくは1~3の整数であり;
wは1~6、好ましくは2~4の整数であり;
s及びtは一般式(IV)の化合物の平均分子量が約1200[g/mol]~約2000[g/mol]であるような整数である]。
【0092】
[091]好ましくは、一般式(IV)で、FG及びFGは互いに独立して-OC(O)CH=CH、又は-OC(O)C(CH)=CHを表し;
-S-は
【化15】

を表し、ここでbは本明細書で定義されている意味を有し;
-S-は
【化16】

を表し、ここでwは本明細書で定義されている意味を有する。
また好ましくは、一般式(IV)で、FG及びFGは-OHを表し;
-S-は単結合又は
【化17】

を表し、ここでaは本明細書で定義されている意味を有し;
-S-は単結合又は
【化18】

を表し、ここでrは本明細書で定義されている意味を有し;
o及びrの総和は3~9である。
【0093】
[092]また好ましくは、一般式(IV)で、FG及びFGは-Si(OR20を表し;
20はC-Cアルキル基、好ましくはエチル基であり;
-S-は
【化19】

を表し、ここでbは本明細書で定義されている意味を有し;
-S-は
【化20】

を表し、ここでwは本明細書で定義されている意味を有する。従って、好ましいペルフルオロポリエーテル界面活性剤は一般式(IV-a)の化合物である
【化21】

[式中、
b及びwは1~6、好ましくは2~4の整数であり;
sは2~6の整数であり;
qは2~4の整数である]。
【0094】
[093]本発明のためのヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート及びトリアルコキシシリルからなる群から選択される1又は複数の官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤の特に適切な例はSolvayからFluorolink(登録商標)E10H、Fluorolink(登録商標)MD700、Fluorolink(登録商標)AD1700、Fluorolink(登録商標)E-シリーズ、及びFluorolink(登録商標)S10という名称で市販されている。
【0095】
[094]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは少なくとも60wt-%の塩化ビニル、好ましくは少なくとも63wt-%の塩化ビニルを含有する約3wt-%~約12wt-%のポリ塩化ビニルコポリマーを含む。ポリ塩化ビニルコポリマーは最大で90wt-%の塩化ビニルを含有するのが好ましい。好ましくは、少なくとも60wt-%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマーは本明細書に記載のインク中に約4.9wt-%~約11.6wt-%、最も好ましくは約6wt-%~約8.6wt-%の量で存在し、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のインクの総重量に基づく。
【0096】
[095]好ましくは、ポリ塩化ビニルコポリマーは塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル-ヒドロキシアルキルアクリレートコポリマー、例えば塩化ビニル-2-ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマー、及び塩化ビニル-ヒドロキシアルキルアクリレート-Z-アルキレン二酸、ジアルキルエステルコポリマー、例えば塩化ビニル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート-2-ブテン二酸(Z)-、ジブチルエステルコポリマーからなる群から選択される。ポリ塩化ビニルコポリマーは好ましくは、ポリスチレンを標準として、テトラヒドロフランを溶媒として用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより決定して310g/mol~約810g/molの平均分子量を有する。本発明のためのポリ塩化ビニルコポリマーの特に適切な例はWackerからVinnol(登録商標)H14/36、Vinnol(登録商標)E22/48A、Vinnol(登録商標)E15/40A及びVinnol(登録商標)H40/50という名称で市販されている。
【0097】
[096]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは約25wt-%以下の1種又は複数の有機溶剤を含有し得、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性インクの総重量に基づく。1種又は複数の溶剤は100℃より高い沸点を有する。本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクに使用される適切な有機溶剤には制限なしに:エチル-3-エトキシプロピオネート、2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、n-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、及びこれらの混合物がある。
【0098】
[097]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは効率的な硬化を達成するために本明細書に記載されている1種又は複数の光開始剤と共に1種又は複数の光増感剤を更に含み得る。光増感剤の適切な例は当業者に公知である(例えば、Industrial Photoinitiators,W.A.Green,CRC Press,2010,Table 8.1 p.170)。好ましい光増感剤はUV-LED光源での効率的で速い硬化を達成することができるもの、例えばチオキサントン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタレン誘導体及びチタノセン誘導体(例えばIGM Resinsにより販売されているOmnirad 784)である。制限なしにイソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-2-プロポキシ-チオキサントン(CPTX)、2-クロロ-チオキサントン(CTX)、2,4-ジエチル-チオキサントン(DETX)、9,10-ジエトキシアントラセン(例えばKawasaki Kasei Chemicals Ltdにより販売されているAnthracure UVS-1101として販売されている)及び9,10-ジブチルオキシアントラセン(例えばKawasaki Kasei Chemicals Ltdにより販売されているAnthracure UVS-1331として販売されている)を始めとするチオキサントン誘導体及びアントラセン誘導体並びにこれらの混合物が特に好ましい。或いは、チオキサントン光増感剤はオリゴマー又はポリマー形態で使用され得る(例えば、IGM Resinsにより販売されているOmnipol TX、Rahnにより販売されているGenopol TX-2、又はArkema(旧Lambson)により販売されているSpeedcure 7010)。存在するとき、1種又は複数の光増感剤は好ましくは約0.1wt-%~約2wt-%、より好ましくは約0.2wt-%~約1wt-%の量で存在し、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性のインクの総重量に基づく。
【0099】
[098]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは1種又は複数の消泡剤を約2wt-%未満、好ましくは約1wt-%未満の量で更に含み得、重量パーセントはUV-Vis放射線硬化性インクの総重量に基づく。
【0100】
[099]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは約7.5wt-%~約20wt-%、好ましくは約7.5wt-%~約15wt-%、より好ましくは約10wt-%~約13wt-%の銀ナノプレートレットを含み、ここで前記銀ナノプレートレットは一般式(V)
【化22】

[式中
残基Rはヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり;
残基RはC-Cアルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基から選択され;
Catは一般式NHのアンモニウムカチオンであり、
ここで残基Rはヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり;
残基RはC-Cアルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基から選択される]
の表面安定剤を有する。
【0101】
[0100]一般式(V)の表面安定剤を有する本明細書に記載されている銀ナノプレートレットはUV-Vis放射線硬化性インクに容易に分散可能である。印刷に際して、本明細書に記載されている銀ナノプレートレットは本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクで得られたインク層の塊からインク層と空気の界面及びインク層と基材の界面に移動し、自身で整列して前記界面で銀ナノプレートレットの薄い層を形成し、これにより入射光で観察されるメタリックイエロー色の好都合な発現を導く。この本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクの特性は、一面でメタリックイエロー色の発現に必要とされる時間が有価文書の産業印刷の高速要件と相性が良く、他の面で7.5wt-%程度の少ない量の銀ナノプレートレットを含有するインクを用いた二色性のセキュリティー機能の生産を可能にし、これが殊に少なくとも約4μmという大きな厚さを有する二色性のセキュリティー機能に対して生産コストを劇的に低減するので特に有利である。作製されるセキュリティー機能の厚さ及びインクの組成に応じて、UV-Vis放射線硬化性インク中の銀ナノプレートレットの量は、透過光での青色の色相及び彩度に影響を及ぼすことなく反射光でのメタリックイエロー色が迅速に発現するように調節することができる。
【0102】
[0101]UV-Vis放射線硬化性インクに含まれる銀ナノプレートレットは円盤、正六角形、三角形、殊に正三角形、及び切頭三角形、殊に切頭正三角形、又はこれらの混合物の形態であり得る。好ましくは円盤、切頭三角形、六角形、又はこれらの混合物の形態である。
【0103】
[0102]銀ナノプレートレットの数平均直径は好ましくは50~150nm、より好ましくは60~140nm、更により好ましくは70~120nmの範囲で、標準偏差が60%未満、好ましくは50%未満であり、ここで数平均直径は透過電子顕微鏡法により決定される。銀ナノプレートレットの直径は前記銀ナノプレートレットの最長の寸法であり、透過電子顕微鏡法(TEM)画像の平面に対して平行に配向されたときの前記銀ナノプレートレットの最大の寸法に対応する。本明細書で使用されるとき、用語「銀ナノプレートレットの数平均直径」は、透過電子顕微鏡法(TEM)により、画像解析ソフトウェア(Thorsten Wagner ij-particlesizer v.1.0.9;DOI:10.5281/zenodo.820296)を用いて、透過電子顕微鏡法画像(TEM)の平面に対して平行に配向した少なくとも300、殊に少なくとも500のランダムに選択された銀ナノプレートレットの測定値に基づいて決定された数平均直径を指し、ここで銀ナノプレートレットの直径は透過電子顕微鏡法画像(TEM)の平面に対して平行に配向した前記銀ナノプレートレットの最大の寸法(最大Feret直径)である。TEM分析はZEISSのEM 910機器(INST.109)を明視野モードで100kVのe-ビーム加速電圧で用いて行った。TEM分析を実施するのに、好ましくは24.1wt-%より低い適切な濃度の銀ナノプレートレットのイソプロパノール中分散液を使用した。
【0104】
[0103]銀ナノプレートレットの数平均厚さは好ましくは約5nm~約30nm、より好ましくは約7nm~約25nm、更により好ましくは約8nm~約25nmの範囲で、標準偏差が50%未満、好ましくは30%未満であり、ここで数平均厚さは透過電子顕微鏡法により決定される。銀ナノプレートレットの厚さは前記ナノプレートレットの最も短い寸法であり、前記銀ナノプレートレットの最大の厚さに対応する。本明細書で使用されるとき、用語「銀ナノプレートレットの数平均厚さ」は、透過電子顕微鏡法(TEM)により、TEM画像の平面に対して垂直に配向した少なくとも50、殊に少なくとも300のランダムに選択された銀ナノプレートレットの手動の測定に基づいて決定される数平均厚さを指し、ここで銀ナノプレートレットの厚さは前記銀ナノプレートレットの最大の厚さである。TEM分析はZEISSのEM 910機器(INST.109)を明視野モードで用いて100kVのe-ビーム加速電圧で行った。TEM分析を実施するのに、好ましくは24.1wt-%より低い適切な濃度の銀ナノプレートレットのイソプロパノール中分散液を使用した。少なくとも300のランダムに選択された銀ナノプレートレットの厚さはソフトウェア(ParticleSizer)により楕円を粒子断面にフィットさせることにより断面TEM画像から決定し得る。フィットした楕円の短軸(最も短い直径)が粒子厚さと考えられる。
【0105】
[0104]銀ナノプレートレットの平均アスペクト比(数平均直径と数平均厚さの比と定義される)は好ましくは約2.0より大きく、より好ましくは約2.2より大きく、更により好ましくは約2.5より大きい。
【0106】
[0105]好ましくは銀ナノプレートレットの数平均直径は約50nm~約150nmの範囲で標準偏差が60%未満であり、数平均厚さは約5nm~約30nmの範囲で標準偏差が約50%未満であり、平均アスペクト比は約2.0より大きい。より好ましくは、銀ナノプレートレットの数平均直径は約70nm~約120nmの範囲で標準偏差が50%未満であり、前記銀ナノプレートレットの数平均厚さは約8nm~約25nmの範囲で標準偏差が30%未満であり、前記銀ナノプレートレットの平均アスペクト比は2.5より大きい。
【0107】
[0106]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクに使用される銀ナノプレートレットは560nm~800nm、好ましくは580nm~800nm、最も好ましくは600nm~800nmの最高波長吸収極大により特徴付けられる。最高波長吸収極大は水中、銀の約510-5M(mol/l)濃度でVarian Cary 50UV-可視分光光度計を用いて測定した。吸収極大は50~500nm、好ましくは70~450nm、より好ましくは80~450nmの範囲の半値全幅(FWHM)値を有する。最高波長吸収極大で測定される銀ナノプレートレットのモル吸光係数は4000L/(cmmolAg)より大きく、殊に5000L/(cmmolAg)より大きく、特に6000L/(cmmolAg)より大きい。
【0108】
[0107]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性のインクにより含有される銀ナノプレートレットは一般式(V)の表面安定剤を有する
【化23】

[式中、
残基Rはヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり;残基RはC-Cアルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基から選択され;Catは一般式NHのアンモニウムカチオンであり、ここで残基Rはヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり;残基RはC-Cアルキル基、及びヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基から選択される]。理論に縛られることはないが、一般式(V)の表面安定剤は、本明細書に記載されているインク内の銀ナノプレートレットの凝集及び沈殿を防ぐことに加えて、銀ナノプレートレットの、本明細書に記載されているインクで得られたインク層の塊からインク層と空気の界面及びインク層と基材の界面への移動を促進するのに役立つと信じられる。
【0109】
[0108]一般式(V)の表面安定剤は銀ナノプレートレットの重量パーセント(wt-%)の約0.5%~約5%、好ましくは約0.5%~約4%の量で、より好ましくは約3%の量で存在し得る。
【0110】
[0109]用語「C-Cアルキル基」は本明細書で使用されるとき1~4個の炭素原子(C-C)の飽和した線状又は分岐鎖で一価の炭化水素基を意味する。C-Cアルキル基の例にはメチル(Me、-CH)、エチル(Et、-CHCH)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CHCHCH)、2-プロピル(i-Pr、iso-プロピル、-CH(CH)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CHCHCHCH)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CHCH(CH)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH)CHCH)及び2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH)がある。
【0111】
[0110]用語「ヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基」は、ヒドロキシ基(-OH)により置換されている、2~4個の炭素原子を有する線状又は分岐したアルキル基を意味する。C-Cアルキル基は1又は2個のヒドロキシ基により置換され得る。
【0112】
[0111]一般式(V)において、残基Rは2個のヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基でよく、残基RはC-Cアルキル基でよい。
【0113】
[0112]好ましい実施形態において、残基R及びRは互いに独立してヒドロキシ基、好ましくは1個のヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基である。従って、ある実施形態において残基R及びRは互いに独立して-CHCHOH、-CHCH(OH)CH、-CHCHCHOH、-CH(CH)(CHOH)、-CHCH(OH)CHCH、-CHCHCH(OH)CH -CHCHCHCHOH、-CH(CH)CH(OH)CH、-CH(CHOH)CHCH、-CH(CH)CHCHOH、-CHCH(CHOH)CH、-CHC(CH)(OH)CH、-CHCH(CH)CH(OH)、-CHC(OH)(CH、-CHC(CH)(CHOH)からなる群から選択され、より好ましくは-CHCHOH、-CHCH(OH)CH、及び-CHCHCHOHからなる群から選択される。残基R及びRは同一であってもよいし、又は異なってもよい。
【0114】
[0113]一般式(V)において、残基Rは2個のヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基であり得、残基RはC-Cアルキル基であり得る。
【0115】
[0114]好ましい実施形態において、残基R及びRは互いに独立してヒドロキシ基、好ましくは1個のヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基である。従って、ある実施形態において残基R及びRは互いに独立して-CHCHOH、-CHCH(OH)CH、-CHCHCHOH、-CH(CH)(CHOH)、-CHCH(OH)CHCH、-CHCHCH(OH)CH、-CHCHCHCHOH、-CH(CH)CH(OH)CH、-CH(CHOH)CHCH、-CH(CH)CHCHOH、-CHCH(CHOH)CH、-CHC(CH)(OH)CH、-CHCH(CH)CH(OH)、-CHC(OH)(CH、-CHC(CH)(CHOH)からなる群から選択され、より好ましくは-CHCHOH、-CHCH(OH)CH、及び-CHCHCHOHからなる群から選択される。残基R及びRは同一であってもよいし、又は異なってもよい。
【0116】
[0115]好ましくは、一般式(V)で残基R、R、R及びRは互いに独立して1個のヒドロキシ基で置換されたC-Cアルキル基である。より好ましくは、一般式(I)で残基R、R、R及びRは互いに独立して-CHCHOH、-CHCH(OH)CH、及び-CHCHCHOHからなる群から選択される。更により好ましくは、一般式(V)で残基R、R、R及びRは-CHCHOHを表す。
【0117】
[0116]保存の際の銀ナノプレートレットの凝集及び沈殿を防ぐために、銀ナノプレートレットはその表面に更なる表面安定剤を有してもよい。
【0118】
[0117]好ましい実施形態において、銀ナノプレートレットはその表面に一般式(VI)の更なる表面安定剤を有する
【化24】

[式中、
はH、C-C18アルキル、フェニル、C-Cアルキルフェニル、又はCHCOOHであり;
、R、R、R、R及びRは互いに独立してH、C-Cアルキル、又はフェニルであり;
YはO、又はNRであり;
はH、又はC-Cアルキルであり;
k1は1~500の範囲の整数であり;
k2及びk3は互いに独立して0、又は1~250の範囲の整数であり;
k4は0、又は1であり;
k5は1~5の範囲の整数である]。好ましくは、一般式(II)においてYはOを表す。また好ましくは、一般式(II)においてk4は0である。
【0119】
[0118]一般式(II)の表面安定剤は好ましくは1000~20000[g/mol]、より好ましくは1000~10000[g/mol]、最も好ましくは1000~6000[g/mol]の平均分子量(Mn)を有する。
【0120】
[0119]式(I)の表面安定剤が、例えばエチレンオキシド単位(EO)及びプロピレンオキシド単位(PO)を含むのであれば、(EO)及び(PO)の順序は固定されていてもよいし(ブロックコポリマー)、又は固定されていなくてもよい(ランダムコポリマー)。
【0121】
[0120]好ましくは、一般式(VI)において、RはH、又はC-C18アルキルであり、R、R、R、R、R及びRは互いに独立してH、CH、又はCであり、k1は22~450の範囲の整数であり、k2及びk3は互いに独立して0、又は1~250の範囲の整数であり、k4は0、又は1であり、k5は1~5の範囲の整数である。より好ましくは、一般式(II)においてRはH、又はC-Cアルキルであり、R、R、R、R、R及びRは互いに独立してH、又はCHであり、k1は22~450の範囲の整数であり、k2及びk3は互いに独立して0、又は1~100の範囲の整数であり、k4は0であり、k5は1~4の範囲の整数である。
【0122】
[0121]一般式(VI)の最も好ましい表面安定剤は一般式(VI-a)を有する
【化25】

[式中、
はH、又はC-Cアルキル基、殊にH、又はCHであり、
k1は22~450、殊に22~150の範囲の整数である]。
【0123】
[0122]一般式(VI)の好ましい表面安定剤は、例えば、MPEG2000チオール、MPEG3000チオール、MPEG4000チオール、MPEG5000チオール、MPEG6000チオールのような2000~6000の平均分子量(M)を有するMPEGチオール(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール)、例えば、PEG2000チオール、PEG3000チオール、PEG4000チオール、PEG5000チオール、PEG6000チオールのような2000~6000の平均Mを有するPEGチオール(O-(2-メルカプトエチル)-ポリ(エチレングリコール))から誘導される。
【0124】
[0123]セキュリティーインクに含有される銀ナノプレートレットは更に国際公開第200674969号に記載されたポリマー、又はコポリマーである表面安定剤を有していてもよく、これは以下のステップを含むプロセスにより得ることができる:
i-1)第1のステップにおいて次の構造要素を有する少なくとも1種のニトロキシルエーテルの存在下で1種又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合する
【化26】

ここで、Xは少なくとも1個の炭素原子を有する基を表し、Xに由来するフリーラジカルX・が重合を開始することができるようになっている;又は
i-2)第1のステップにおいて少なくとも1種の安定な遊離ニトロキシルラジカル
【化27】

及びフリーラジカル開始剤の存在下で1種又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合する;
ここで、ステップi-1)又はi-2)で使用される少なくとも1種のモノマーはアクリル又はメタクリル酸のC-Cアルキル又はヒドロキシC-Cアルキルエステルである;及び任意選択で
ii)i-1)又はi-2)で調製されたポリマー又はコポリマーのエステル交換反応、アミド化、加水分解若しくは無水物修飾又はこれらの組合せによる修飾を含む第2のステップ。
【0125】
[0124]ステップi-1)又はi-2)のモノマーは好ましくは4-ビニル-ピリジン若しくはピリジニウム-イオン、2-ビニル-ピリジン若しくはピリジニウム-イオン、1-ビニル-イミダゾール若しくはイミダゾリニウム-イオン、又は式CH=C(R)-(C=Z)-Rの化合物から選択され、ここで
は水素又はメチルであり;
はNH、O(Me)、非置換のC-C18アルコキシ、少なくとも1個のN及び/又はO原子により中断されたC-C100アルコキシ、又はヒドロキシ置換されたC-C18アルコキシ、非置換のC-C18アルキルアミノ、非置換のジ(C-C18アルキル)アミノ、ヒドロキシ置換されたC-C18アルキルアミノ又はヒドロキシ置換されたジ(C-C18アルキル)アミノ、-O(CHNR1516、又は-O(CHHR1516An、-N(CHNR1516、又は-N(CHHR1516Anであり、
ここで
Anは一価の有機、又は無機酸のアニオンであり;
yは2~10の整数であり;
15は飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり;
16は飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり;
Meは一価の金属原子又はアンモニウムイオンであり;
Zは酸素又はイオウである。
【0126】
[0125]第2のステップii)は好ましくはエステル交換反応である。ステップii)においてアルコールは好ましくは式R-[O-CH-CH-]-OHのエトキシレートである[式中、Rは飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキル、又は24個以下の炭素原子のアルキルアリール若しくはジアルキルアリールであり、cは1~150である]。
【0127】
[0126]好ましくは、ステップi-1)又はi-2)は二回行われ、ブロックコポリマーが得られ、その際第1又は第2のラジカル重合ステップにおいてモノマー又はモノマー混合物は全モノマーに対して50%~100重量%のアクリル又はメタクリル酸のC-Cアルキルエステルを含有し、第2又は第1のラジカル重合ステップにおいてそれぞれ、エチレン性不飽和モノマー又はモノマー混合物は第一又は第二エステル結合のない少なくとも1つのモノマーを含有する。
【0128】
[0127]第1の重合ステップにおいて、モノマー又はモノマー混合物は全モノマーに対して50~100重量%のアクリル又はメタクリル酸のC-Cアルキルエステル(第1のモノマー)を含有し、第2の重合ステップにおいてエチレン性不飽和モノマー又はモノマー混合物は4-ビニル-ピリジン又はピリジニウム-イオン、2-ビニル-ピリジン又はピリジニウム-イオン、ビニル-イミダゾール又はイミダゾリニウム-イオン、3-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、3-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、又は対応するアンモニウムイオン、3-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、又は対応するアンモニウムイオン、又は3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、又は対応するアンモニウムイオン(第2のモノマー)を含む。
【0129】
[0128]好ましくは、ニトロキシルエーテルは次の構造
【化28】

を有する。
【0130】
[0129]表面安定化剤は好ましくは、以下のステップを含むプロセスにより得ることができるコポリマーである:
i-2)第1のステップにおいて次の構造要素
【化29】

を有する少なくとも1種のニトロキシルエーテルの存在下で、アクリル又はメタクリル酸のC-Cアルキル又はヒドロキシC-Cアルキルエステルである第1のモノマー、及び4-ビニル-ピリジン又はピリジニウム-イオン、2-ビニル-ピリジン又はピリジニウム-イオン、1-ビニル-イミダゾール又はイミダゾリニウム-イオン、3-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、3-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、3-ジメチルアミノ-プロピルアクリルアミド、及び3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから選択される第2のモノマーを重合する;及び
ii)i-1)で調製されたポリマー又はコポリマーのエステル交換反応による修飾を含む第2のステップ、ここでステップii)のアルコールは式R-[O-CH-CH-]-OHのエトキシレートである[式中、Rは飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキル、又は24個以下の炭素原子のアルキルアリール若しくはジアルキルアリールであり、cは1~150である]。
【0131】
[0130]好ましくは本明細書に記載されているプロセスによって得られる表面安定剤は次式(VII)のコポリマーである
【化30】

[式中、
17a、R17b及びR17cは互いに独立してH、又はメチルであり;
18a及びR18bはH、又はメチルであり;
19aは飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり;
19bはR-[O-CH-CH-]-O-であり;
19c
【化31】

、-C(=O)-NH-(CHNR1516、又は-C(=O)-NH-(CHHR1516Anであり;
ここで
Anは一価の有機、又は無機酸のアニオンであり;
yは2~10の整数であり;
15は飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり、
16は飽和又は不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキルであり、
は飽和若しくは不飽和の、線状又は分岐した鎖の1~22個の炭素原子のアルキル、又は24個以下の炭素原子のアルキルアリール若しくはジアルキルアリールであり、cは1~150であり、
y1、y2及びy3は互いに独立して1~200の整数である]。一般式(VII)で添え字y1及びy2付きのモノマーの順序は固定されていても(ブロックコポリマー)又は固定されていなくてもよい(ランダムコポリマー)。
【0132】
[0131]一般式(VII)の表面安定剤は国際公開第200674969号に記載されている。
【0133】
[0132]一般式(VII)の好ましい表面安定剤は一般式(VII-a)の化合物である
【化32】

[式中、
18a及びR18bはH、又はメチルであり;
y1、y2及びy3は互いに独立して1~200の整数であり;
cは1~150の整数である]。添え字y1及びy2付きのモノマーの順序は固定されていても(ブロックコポリマー)又は固定されていなくてもよい(ランダムコポリマー)。
【0134】
[0133]表面安定剤として使用される好ましいコポリマーの例は国際公開第200674969号の実施例A3及び実施例A6に記載されているコポリマーである。
【0135】
[0134]保存又は熱への曝露の際の銀ナノプレートレットの光学的性質の安定性を改良するために、前記銀ナノプレートレットは一般式(VIII)の更なる表面安定剤を有し得る
【化33】

[式中、
は水素原子、又は式-CHR11-N(R12)(R13)の基であり;
10は水素原子、ハロゲン原子、C-Cアルコキシ基、又はC-Cアルキル基であり;
11はH、又はC-Cアルキルであり;
12及びR13は互いに独立してC-Cアルキル、ヒドロキシC-Cアルキル基、又は式-[(CHCH)-O]n1-CHCH-OHの基であり、n1は1~5である]。
【0136】
[0135]式(VIII)の化合物の例には、限定されることはないが:
【化34】

がある。
【0137】
[0136]本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクを調製するのに使用される銀ナノプレートレットの分散液は以下のステップを含む方法を用いることにより得る:
1)銀前駆体、式(VI)の化合物
【化35】

[式中、
はH、C-C18アルキル、フェニル、C-Cアルキルフェニル、又はCHCOOHであり;
、R、R、R、R及びRは互いに独立してH、C-Cアルキル、又はフェニルであり;
YはO、又はNRであり;
はH、又はC-Cアルキルであり;
k1は1~500の範囲の整数であり;
k2及びk3は互いに独立して0、又は1~250の範囲の整数であり;
k4は0、又は1であり;
k5は1~5の範囲の整数である]、
次のステップを含むプロセスにより得ることができるポリマー、又はコポリマー:
i-1)第1のステップにおいて構造要素
【化36】

(ここでXは少なくとも1個の炭素原子を有する基を表し、Xから誘導されるフリーラジカルX・が重合を開始することができるようになっている)
を有する少なくとも1種のニトロキシルエーテルの存在下で1種又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合するか;又は
i-2)第1のステップにおいて少なくとも1個の安定な遊離のニトロキシルラジカル
【化37】

及びフリーラジカル開始剤の存在下で1種又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合する;ここでステップi-1)又はi-2)で使用される少なくとも1種のモノマーはアクリル又はメタクリル酸のC-Cアルキル又はヒドロキシC-Cアルキルエステルである;及び任意選択で
ii)i-1)又はi-2)で調製されたポリマー又はコポリマーのエステル交換反応、アミド化、加水分解若しくは無水物修飾又はこれらの組合せによる修飾を含む第2のステップ]、
水、及び任意選択で消泡剤を含む溶液を調製する;
2)分子内に少なくとも1個のホウ素原子を含む還元剤、及び水を含む溶液を調製する;
3)ステップ1)で得られた溶液をステップ2)で得られた溶液に加え、1種又は複数の錯化剤を加える;
4)水中の過酸化水素溶液を加える;及び
5)ステップ4)で得られた混合物に1種又は複数の表面安定剤を加える。
【0138】
[0137]銀前駆体はAgNO;AgClO;AgSO;AgCl;AgF;AgOH;AgO;AgBF;AgIO;AgPF;R200COAg、R200SOAg(ここでR200は非置換又は置換されたC-C18アルキル、非置換又は置換されたC-Cシクロアルキル、非置換又は置換されたC-C18アラルキル、非置換又は置換されたC-C18アリール又は非置換又は置換されたC-C18ヘテロアリールである);ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、P含有酸のAg塩及びこれらの混合物からなる群から、好ましくは硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、メタンスルホン酸銀、ベンゼンスルホン酸銀、トルエンスルホン酸銀 トリフルオロメタンスルホン酸銀、硫酸銀、フッ化銀及びこれらの混合物からなる群から選択される銀(I)化合物であり、より好ましくは硝酸銀である。
【0139】
[0138]還元剤はアルカリ、又はアルカリ土類金属水素化ホウ素、例えば水素化ホウ素ナトリウム、アルカリ、又はアルカリ土類金属アシルオキシ水素化ホウ素、例えばトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、アルカリ、又はアルカリ土類金属アルコキシ又はアリールオキシ水素化ホウ素、例えばトリメトキシ水素化ホウ素ナトリウム、アリールオキシボラン、例えばカテコールボラン、及びアミン-ボラン錯体、例えばジエチルアニリンボラン、tert-ブチルアミンボラン、モルホリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン、ピリジンボラン、アンモニアボラン及びこれらの混合物からなる群から選択される。水素化ホウ素ナトリウムが最も好ましい。
【0140】
[0139]1種又は複数の錯化剤は反応条件下で塩素イオンを遊離させることができるクロル含有化合物、例えば金属塩化物、アルキル又はアリールアンモニウム塩化物、ホスホニウム塩化物;第一又は第二アミン及び対応するアンモニウム塩、例えばメチルアミン又はジメチルアミン;アンモニア及び対応するアンモニウム塩;並びにアミノカルボン酸及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸の群から選択される。
【0141】
[0140]錯化剤の非限定例にはアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレン-ジアミン-四酢酸(EDTA);エチレンジアミンN,N’-二コハク酸(EDDS);メチルグリシン二酢酸(MGDA);ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);プロピレンジアミン四酢酸(PDTA);グルタミン酸N,N-二酢酸(N,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸四ナトリウム塩(GLDA);ニトリロ三酢酸(NTA)、及びそれらのあらゆる塩;N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミン四プロピオン酸(EDTP)及びそれらの誘導体、例えば、メチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩(NaMGDA)及びEDTAの四ナトリウム塩がある。
【0142】
[0141]消泡剤は、例えば、市販のTEGO(登録商標)Foamex 1488、1495、3062、7447、800、8030、805、8050、810、815N、822、825、830、835、840、842、843、845、855、860、883、K 3、K 7、K 8、N、SigmaのAntifoam SE-15、Struktol SB-2080などのような、反応混合物中で泡の形成を抑えることができる化合物又は組成物である。消泡剤の量は過酸化水素添加前の反応混合物の総重量に対して0.00001%~5重量%、好ましくは0.0001%~3%、より好ましくは0.001%~2重量%の範囲である。
【0143】
[0142]消泡剤はステップ1)で調製された溶液及び/又はステップ2)で調製された溶液に加えることができる。
【0144】
[0143]銀ナノプレートレット生成反応は銀前駆体溶液を還元剤溶液に徐々に加えることにより行われ、一方両方の溶液の温度は-3℃~40℃の範囲であり、徐々の添加は15分~24hの時間以内に完了する。
【0145】
[0144]ステップ4)及び/又は5)で得られた銀ナノプレートレットはデカンテーション、(限外)ろ過、(超)遠心分離、可逆又は不可逆凝集、有機溶媒による相間移動、及びこれらの組合せのような更なる精製及び/又は単離方法に供することができる。銀ナノプレートレットの分散液は約99wt-%以下の銀ナノプレートレット、好ましくは5wt-%~99wt-%の銀ナノプレートレット、より好ましくは5wt-%~90wt-%の銀ナノプレートレットを含有し得、wt-%は分散液の総重量に基づく。
【0146】
[0145]精製及び/又は単離により得られた銀ナノプレートレットから出発して、一般式(V)の表面安定剤を有する銀ナノプレートレットは:
i)銀ナノプレートレットの存在下でCSを式RNHのアミンと反応させ、その後RNHでの処理、
又は
ii)CSを式RNHのアミンと反応させ、その後のRNHでの処理により一般式(I)のジチオカルバミン酸塩を得、次いでこれを銀ナノプレートレットと反応させる
ことにより調製することができる。
【0147】
[0146]RがRと同一であり、RがRと同じである一般式(V)のジチオカルバミン酸塩を有する銀ナノプレートレットは、精製及び/又は単離方法に供した銀ナノプレートレットから出発して
iii)銀ナノプレートレットの存在下でCSを式RNHのアミンと反応させるか;又は
iv)CSを式RNHのアミンと反応させて一般式
【0148】
[0147]
【化38】

のジチオカルバミン酸塩を得、次いでこれを銀ナノプレートレットと反応させる
ことにより、得ることができる。
【0149】
[0148]本明細書に記載されている銀ナノプレートレットは、BASF SEにより2020年11月10日に出願された「銀ナノプレートレットを含む組成物」と題する欧州特許出願第20206698.1号により開示されている。
【0150】
[0149]一実施形態に従って、UV-Vis放射線硬化性インクは、本明細書に記載されている銀ナノプレートレット;本明細書に記載されている1種又は複数の脂環式エポキシド(好ましくは本明細書に記載されている式(I)又は(II)に従う);本明細書に記載されている1種又は複数のカチオン性光開始剤(好ましくは本明細書に記載されているヨードニウム塩、スルホニウム塩及びこれらの混合物からなる群から選択される);1種又は複数のビニルエーテル、本明細書に記載されている1種又は複数のオキセタン又は本明細書に記載されている脂環式エポキシド以外のエポキシド;本明細書に記載されているペルフルオロポリエーテル界面活性剤(好ましくは本明細書に記載されている1個又は複数のヒドロキシル官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤);本明細書に記載されているポリ塩化ビニルコポリマー、任意選択で本明細書に記載されている1種又は複数の光増感剤(好ましくは本明細書に記載されているチオキサントン);及び任意選択で好ましくは本明細書に記載されている量の本明細書に記載されている1種又は複数の有機溶剤を含むカチオン硬化性の組成物である。一実施形態に従って、UV-Vis放射線硬化性インクは、本明細書に記載されている銀ナノプレートレット;本明細書に記載されている1種又は複数の脂環式エポキシド(好ましくは本明細書に記載されている式(I)又は(II)に従う);本明細書に記載されている1種又は複数のカチオン性光開始剤(好ましくは本明細書に記載されているヨードニウム塩、スルホニウム塩及びこれらの混合物からなる群から選択される);本明細書に記載されているペルフルオロポリエーテル界面活性剤(好ましくは本明細書に記載されている1個又は複数のヒドロキシル官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤);本明細書に記載されているポリ塩化ビニルコポリマー、任意選択で本明細書に記載されている1種又は複数の光増感剤(好ましくは本明細書に記載されているチオキサントン);及び好ましくは本明細書に記載されている量の本明細書に記載されている1種又は複数の有機溶剤を含むカチオン硬化性の組成物である。
【0151】
[0150]一実施形態に従って、UV-Vis放射線硬化性インクは、本明細書に記載されている銀ナノプレートレット;本明細書に記載されている1種又は複数の脂環式エポキシド(好ましくは本明細書に記載されている式(I)又は(II)に従う);本明細書に記載されている1種又は複数のカチオン性光開始剤(好ましくは本明細書に記載されているヨードニウム塩、スルホニウム塩及びこれらの混合物からなる群から選択される);1種又は複数のビニルエーテル、本明細書に記載されている1種若しくは複数のオキセタン又は本明細書に記載されている脂環式エポキシド以外のエポキシド;本明細書に記載されている1種又は複数のラジカル硬化性化合物(特に本明細書に記載されているアクリレートオリゴマー及びアクリレートモノマー、好ましくは本明細書に記載されている(メタ)アクリレート)、本明細書に記載されている1種又は複数のフリーラジカル光開始剤(本明細書に記載されているホスフィンオキシド);本明細書に記載されているペルフルオロポリエーテル界面活性剤(好ましくは本明細書に記載されている1個又は複数のヒドロキシル官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤);本明細書に記載されているポリ塩化ビニルコポリマー;任意選択で本明細書に記載されている1種又は複数の光増感剤(好ましくは本明細書に記載されているアントラセン);及び任意選択で好ましくは本明細書に記載されている量の本明細書に記載されている1種又は複数の有機溶剤を含むハイブリッド硬化性の組成物である。一実施形態に従って、UV-Vis放射線硬化性インクは、本明細書に記載されている銀ナノプレートレット;本明細書に記載されている1種又は複数の脂環式エポキシド(好ましくは本明細書に記載されている式(I)又は(II)に従う);本明細書に記載されている1種又は複数のカチオン性光開始剤(好ましくは本明細書に記載されているヨードニウム塩、スルホニウム塩及びこれらの混合物からなる群から選択される);本明細書に記載されている1種又は複数のラジカル硬化性化合物(特に本明細書に記載されているアクリレートオリゴマー及びアクリレートモノマー、好ましくは本明細書に記載されている(メタ)アクリレート)、本明細書に記載されている1種又は複数のフリーラジカル光開始剤(本明細書に記載されているホスフィンオキシド);本明細書に記載されているペルフルオロポリエーテル界面活性剤(好ましくは本明細書に記載されている1個又は複数のヒドロキシル官能基で官能化されたペルフルオロポリエーテル界面活性剤);本明細書に記載されているポリ塩化ビニルコポリマー;任意選択で本明細書に記載されている1種又は複数の光増感剤(好ましくは本明細書に記載されているアントラセン);及び好ましくは本明細書に記載されている量の本明細書に記載されている1種又は複数の有機溶剤を含むハイブリッド硬化性の組成物である。
【0152】
[0151]本明細書に記載されている方法は、本明細書に記載されているステップa)の後に、本明細書に記載されているトップコーティング組成物を本明細書に記載されているコーティング層(x10)の上に少なくとも部分的に適用するステップb)を更に含む。本明細書に記載されているトップコーティング組成物は本明細書に記載されている1つ又は複数のしるし(x30)の形態で適用され、本明細書に記載されているコーティング層(x10)と一部重なり(即ち少なくとも1つの領域で重なり)、ここでコーティング層(x10)に含まれるUV-Vis放射線硬化性インクは未だ湿った未重合の状態である。
【0153】
[0152]本明細書で使用されるとき、用語「しるし(indicium)」/「しるし(indicia)」は特徴的な1つ/複数のマーク又は1つ/複数の標識又は1つ/複数のパターンからなる連続及び不連続な1つ/複数の層を意味する。好ましくは、本明細書に記載されている1つ又は複数のしるし(x30)はコード、記号、英数字記号、モチーフ、幾何学模様(例えば円、三角形及び正又は非正多角形)、文字、単語、名前、数、ロゴ、図、肖像画及びこれらの組合せからなる群から選択される。コードの例には、コード化されたマーク、例えばコード化された英数字データ、一次元バーコード、二次元バーコード、QRコード、データ行列及びIR読み出しコードがある。本明細書に記載されている1つ又は複数のしるし(x30)は固体しるし及び/又はラスターしるしであり得る。
【0154】
[0153]本明細書に記載されているトップコーティング組成物は本明細書に記載されている1つ又は複数のしるし(x30)の形態で適用プロセス、好ましくは非接触流体微細分配プロセス、より好ましくはスプレーコーティング、エアロゾルジェット印刷、電気流体力学的印刷、スロットダイコーティング及びインクジェット印刷からなる群から選択されるプロセスにより、更により好ましくはインクジェット印刷プロセスにより適用され、ここで前記非接触流体微細分配印刷プロセスは本明細書に記載されているセキュリティー機能の上又は中の1つ又は複数のしるし(x30)の独特な作製を可能にする可変情報印刷方法である。適用プロセスは作製される1つ又は複数のしるしのデザイン及び解像度に応じて選ばれる。
【0155】
[0154]本明細書に記載されているトップコーティング組成物は本明細書に記載されているように約0.8g/mより多い、好ましくは1.0g/mと等しいか又はそれより多いインク付着量(an ink deposit)で適用され、前記インク付着量は後に実験の部[0209]及び[0210]に記載されるようにして測定される。
【0156】
[0155]スプレーコーティングは、組成物をノズルに通すことにより微細なエアロゾルを形成することを含む技術である。エアロゾルを印刷されるべき表面に向けるのに役立つようにキャリヤーガス及び静電帯電が含まれ得る。スプレー印刷は点及び線を印刷することを可能にする。スプレー印刷に適した組成物は通例約10mPa.s~約1Pa.s(25℃、1000s-1、上記の通り)の粘度を有する。スプレーコーティング印刷の解像度はミリメートル範囲である。スプレー印刷は例えばF.C.Krebs、Solar Energy Materials & Solar Cells(2009),93,page 407に記載されている。
【0157】
[0156]エアロゾルジェット印刷(AJP)は広範囲の基材での細かい特徴の生成を目的とした新たな非接触の直接書き込み手法である。AJPは広い材料範囲及び自由造形付着と適合し、配向の独立に加えて比較的大きいスタンドオフ間隔(例えば1~5mm)と相まって高い解像度(約10マイクロメートルの程度)を可能にする。この技術は、通例約1mPa.s~約1Pa.s(25℃、1000s-1、上記の通り)の粘度を有する組成物からエアロゾルを発生させるために超音波又は空気圧噴霧器を用いるエアロゾル発生を含む。エアロゾルジェット印刷は例えばN.J.Wilkinson et al.,The International Journal of Advanced Manufacturing Technology(2019)105:4599-4619に記載されている。
【0158】
[0157]電気流体力学的インクジェット印刷は高解像度のインクジェット印刷技術である。電気流体力学的インクジェット印刷技術は高い生成速度を保ちつつ慣用のインクジェット印刷より高い解像度を得るために外部から印加した電場を使用して小滴サイズ、放出頻度及び基材上の配置を操作する。電気流体力学的インクジェット印刷の解像度は慣用のインクジェット印刷技術より約2桁高く;従って、ナノ及びマイクロスケールのパターンの配向に使用することができる。電気流体力学的インクジェット印刷はDOD又は連続モードの両方で使用できる。電気流体力学的インクジェット印刷のための組成物は通例1mPa.s~約1Pa.sの粘度を有する(25℃、1000s-1、上記の通り)。電気流体力学的インクジェット印刷技術は例えばP.V.Raje and N.C.Murmu, International Journal of Emerging Technology and Advanced Engineering,(2014),4(5),pages 174-183に記載されている。
【0159】
[0158]スロットダイコーティングは1次元コーティング技術である。スロットダイコーティングは、互いの上に層状に重なった異なる材料の縞のある多層コーティングを作製するのによく適した材料の縞のコーティングを可能にする。パターンの整列はウェブの移動の方向と垂直な方向に沿って移動するコーティングヘッドにより生成される。スロットダイコーティングヘッドは、スロットダイコーティングインクが分散させられるのに通過するコーティングヘッドのスロットを規定するマスクを含む。スロットダイコーティングヘッドの一例はF.C.Krebs,Solar Energy Materials & Solar Cells(2009),93,page 405-406に示されている。スロットダイコーティングに適切な組成物は通例1mPa.s~約20mPa.sの粘度を有する(25℃、1000s-1、上記の通り)。
【0160】
[0159]一実施形態に従って、本明細書に記載されているトップコーティング組成物はインクジェット印刷プロセス、好ましくは連続インクジェット(CI)印刷プロセス又はドロップオンデマンド(DOD)インクジェット印刷プロセス、より好ましくはドロップオンデマンド(DOD)インクジェット印刷プロセスにより本明細書に記載されている1つ又は複数のしるし(x30)の形態で印刷される。ドロップオンデマンド(DOD)印刷は非接触印刷プロセスであり、ここで小滴は印刷に必要とされるときに、一般にジェットを不安定化するよりはむしろ放出機構によって生成されるだけである。小滴を作製するのにプリントヘッドで使用される機構に応じて、DOD印刷はピエゾインパルス、サーマルジェット、バルブジェット(粘度1mPa.s~約50mPa.s(25℃、1000s-1、上記の通り)及び静電プロセスに分類される。
【0161】
[0160]好ましい実施形態に従って、本明細書に記載されているトップコーティング組成物は、円錐平面形状及び直径40mmを有する回転式粘度計DHR-2(TA Instruments)を用いて、25℃及び1000s-1で、好ましくは約40mPa.s未満の粘度、より好ましくは約0.5mPa.s~約30mPa.sの粘度、更により好ましくは約0.5mPa.s~約20mPa.sの粘度を有するDODトップコーティング組成物である。
【0162】
[0161]本明細書に記載されているUV-Vis放射線カチオン硬化性インクに対する一実施形態に従って、本明細書に記載されているトップコーティング組成物は1種又は複数のカチオン硬化性化合物、1種又は複数のハイブリッド硬化性化合物、1種又は複数の溶剤、1種又は複数のラジカル硬化性化合物及び1種又は複数のラジカル光開始剤又はこれらの混合物のブレンドを含み得;
ここで1種又は複数のカチオン硬化性化合物は本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクに対して本明細書に記載されているものであり得、好ましくはビニルエーテル、プロペニルエーテル、環状エーテル、例えばエポキシド、グリシジルエーテル、オキセタン、及びテトラヒドロフラン、及びこれらの混合物、例えば本明細書に記載されているものからなる群から選択され得、より好ましくはビニルエーテル、環状エーテル、例えばエポキシド、グリシジルエーテル、オキセタン及びこれらの混合物、例えば本明細書に記載されているものからなる群から選択され得、より好ましくはビニルエーテル、グリシジルエーテル、オキセタン及びこれらの混合物、例えば本明細書に記載されているものからなる群から選択され得;
ここでグリシジルエーテルはモノグリシジルエーテル(例えばアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tertブチル、2-エチルヘキシル及びC8-C18(単独又はこれらの混合物として使用される))モノグリシジルエーテル、シクロアルキル(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)モノグリシジルエーテル、アルケニル(例えばアリル及びクロチル等)モノグリシジルエーテル、アルキニル(例えばプロパルギル等)モノグリシジルエーテル、フェニル(例えばフェニル、クレシル、tertブチルフェニル及びノニルフェニル等)モノグリシジルエーテルを含む)及びフルフリルモノグリシジルエーテル)、ジグリシジルエーテル(例えばジグリシジルエーテル、1,2-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、4,4’-ジヒドロキシフェニル-2,2-プロパンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリグリコールジグリシジルエーテルを含む)、トリグリシジルエーテル(例えばグリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリフェニロールメタントリグリシジル、エーテルヒマシ油トリグリシジルエーテル、プロポキシ化グリセリントリグリシジルエーテルを含む)、テトラグリシジルエーテル(例えばペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル及び1,1,2,2-テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテルを含む)、ポリグリシジルエーテル(例えばソルビトールポリグリシジルエーテル及びポリフェノールポリグリシジルエーテルを含む)及びこれらの混合物からなる群から選択され;
1種又は複数のグリシジルエーテルがインクジェット印刷に適していない粘度を有するならば、本明細書に記載されているトップコーティング組成物は粘度を低減するために1種又は複数のモノグリシジルエーテル及び/又は1種又は複数のジグリシジルエーテル及び/又は1種又は複数の溶剤と組み合わせて前記1種又は複数のグリシジルエーテルを含み;
1種又は複数のハイブリッド硬化性化合物はヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性ビニルエーテル、特にNippon ShokubaiのVEEA、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート及びNippon Shokubaiのメチル2-((アリルオキシ)メチル)アクリレート(AOMA(商標))であり;
1種又は複数の溶剤はアルコール(特にエタノール)、ケトン(特に環状ケトン、例えばシクロペンタノン及びシクロヘキサノン)、グリコール、グリコールエーテル(特にジプロピレングリコールメチルエーテル)、エーテルエステル(特にエチル3-エトキシプロピオネート)、グリコールエーテルエステル(特にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート)、アルキレンカーボネート(特にプロピレンカーボネート)及びこれらの混合物からなる群から選択され;
1種又は複数のラジカル硬化性化合物はモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、例えば本明細書に記載されているもの、テトラ(メタ)アクリレート、例えば本明細書に記載されているもの及びこれらの混合物及び1種又は複数のフリーラジカル光開始剤、例えば本明細書に記載されているもの(特にアルファ-ヒドロキシケトン、例えば本明細書に記載されているものからなる群から選択され、適切なモノ(メタ)アクリレートはアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート及びイソボルニルアクリレート等)、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート(フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばフェノキシエチルアクリレートを含む)、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート及びこれらのアルコキシル化された(特にエトキシル化又はプロポキシル化された)化合物からなる群から選択され、適切なジ(メタ)アクリレートはエチレングリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化された(特にエトキシル化された及びプロポキシル化された)1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシル化されたネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化された2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール200/400/600ジ(メタ)アクリレートを含み、より多くのフリーラジカル光開始剤はヒドロキシケトン(例えばアルファ-ヒドロキシケトン)、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはホスフィンオキシド、ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート及びこれらの混合物、更により好ましくはヒドロキシケトン(例えばアルファ-ヒドロキシケトン)からなる群から選択される。
【0163】
[0162]任意選択で、本明細書に記載されているUV-Vis放射線カチオン硬化性インクの硬化効率を改良するために、本明細書に記載されているトップコーティング組成物は1種又は複数のカチオン性光開始剤を更に含み得る。
【0164】
[0163]本明細書に記載されているUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性インクに対する一実施形態に従って、本明細書に記載されているトップコーティング組成物は1種又は複数のカチオン硬化性化合物、1種又は複数のハイブリッド硬化性化合物、1種又は複数の溶剤、1種又は複数のラジカル硬化性化合物又はその混合物を含み得;
ここで1種又は複数のカチオン硬化性化合物は本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクに対して本明細書に記載されているものであり得、好ましくはビニルエーテル、プロペニルエーテル、環状エーテル、例えばエポキシド、グリシジルエーテル、オキセタン、及びテトラヒドロフラン、及びこれらの混合物、例えば本明細書に記載されているものからなる群から選択され得、より好ましくはビニルエーテル、グリシジルエーテル、オキセタン及びこれらの混合物、例えば本明細書に記載されているものからなる群から選択され得;
1種又は複数のハイブリッド硬化性化合物はヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性ビニルエーテル、特にNippon ShokubaiのVEEA、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート及びNippon Shokubaiのメチル2-((アリルオキシ)メチル)アクリレート(AOMA(商標))であり;
1種又は複数の溶剤はアルコール(特にエタノール)、ケトン(特に環状ケトン、例えばシクロペンタノン及びシクロヘキサノン)、グリコール、グリコールエーテル(特にジプロピレングリコールメチルエーテル)、エーテルエステル(特にエチル3-エトキシプロピオネート)、グリコールエーテルエステル(特にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート)、アルキレンカーボネート(特にプロピレンカーボネート)及びこれらの混合物からなる群から選択され;
1種又は複数のラジカル硬化性化合物はモノ(メタ)アクリレート、例えば本明細書に記載されているもの、ジ(メタ)アクリレート、例えば本明細書に記載されているもの、トリ(メタ)アクリレート、例えば本明細書に記載されているもの、テトラ(メタ)アクリレート、例えば本明細書に記載されているもの及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0165】
[0164]任意選択で、本明細書に記載されているUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性インクの硬化効率を改良するために、本明細書に記載されているトップコーティング組成物は1種若しくは複数のカチオン性光開始剤及び/又は1種若しくは複数のフリーラジカル光開始剤、例えば本明細書に記載されているものを更に含み得る。
【0166】
[0165]トップコーティング組成物がインクジェット印刷プロセスにより適用される実施形態の場合、前記トップコーティング組成物は、放射線硬化性インクジェットの分野で使用される、例えば反応性希釈剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤及びこれらの混合物のような慣用の添加剤及び成分を更に含み得る。
【0167】
[0166]本明細書に記載されている方法は、ステップb)の後に、本明細書に記載されているコーティング層(x10)及び1つ又は複数のしるし(x30)を本明細書に記載されている1つ又は複数の硬化ユニット(x50)で硬化するステップc)を更に含む。好ましくは、本明細書に記載されている硬化ステップc)は水銀ランプ(好ましくは中圧水銀ランプ)、UV-LEDランプ及びこれらのシーケンスからなる群から選択される1つ又は複数の硬化ユニット(x50)(当技術分野では光源ともいわれる)で行われる。典型的なシーケンスは第1のステップでUV-Vis放射線インク及び1つ又は複数のしるし(x30)を少なくとも部分的に硬化するための1つ又は複数のUV-LEDランプ及び第2のステップでの1つ又は複数の中圧水銀ランプの使用を含む。水銀ランプはUV-A、UV-B及びUV-C範囲の波長の広い範囲で発光するので有利である。従って、水銀ランプの発光帯の少なくとも1つに一致する吸収スペクトルを有する光開始剤又は光開始剤/光増感剤の組合せの広範な選択肢がある。UV-LEDはより限られた波長範囲を有しているので、光開始剤又は光開始剤/光増感剤の組合せの限られた選択のみが産業印刷速度で十分効率的である。一方で、UV-LEDはコストがより低く、より少ないエネルギーを必要とし(特に、熱放散システムの必要性がずっと少ない)、オゾン形成をし易くなく、寿命がずっと長い。
【0168】
[0167]本明細書に記載されているステップb)と本明細書に記載されているステップc)との間の時間は5秒未満、好ましくは約4秒未満であり、より好ましくは約3.5秒と等しいか又は約3.5秒未満である。
【0169】
[0168]本発明は、本明細書に記載されている基材(x20)上に1つ又は複数のしるし(x30)を示すセキュリティー機能を作製するための本明細書に記載されている方法及びそれから得られる1つ又は複数のセキュリティー機能を含む基材(x20)及び本明細書に記載されている1つ又は複数のしるし(x30)を示す、本明細書に記載されている方法により作製されるセキュリティー機能を提供する。本明細書に記載されているセキュリティー機能の形状は連続又は不連続であり得る。一実施形態に従って、コーティング層(x10)の形状は1つ又は複数のしるし、ドット及び/又は線を表し、ここで前記しるしは本明細書に記載されているトップコーティング組成物でできた1つ又は複数のしるし(x30)と同じ形状を有し得るか、又は異なる形状を有し得る。
【0170】
[0169]好ましくは、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクは本明細書に記載されている方法により基材の透明又は部分的に透明な領域に適用される。本明細書で使用されるとき、「基材の透明又は部分的に透明な領域」は基材のある領域を指し、ここで前記領域は少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%の可視範囲の平均透過率により特徴付けられる。基材の透明又は部分的に透明な領域及び基材の残りの領域は同一の材料又は異なる材料で作製され得る。多層構造中の1つ若しくは複数の層の削除、又はある透明若しくは部分的に透明な材料の、その透明若しくは部分的に透明な材料と異なる材料製の基材の開口への適用は、基材の透明又は部分的に透明な領域及び基材の残りの領域が異なる材料製である有価文書基材を提供する。
【0171】
[0170]有価文書又は有価物品基材の材料としては、制限なしに、紙又は他の繊維質材料、例えばセルロース、紙含有材料、プラスチック及びポリマー、複合材料、及びこれらの混合物又は組合せがある。典型的な紙、紙様又は他の繊維質材料は制限なしにマニラ麻、綿、リネン、木材パルプ、及びこれらのブレンドを始めとする様々な繊維から作製される。当業者には周知のように、綿及び綿/リネンブレンドは銀行券に好ましく、一方木材パルプは通常非銀行券セキュリティー文書に使用される。プラスチック及びポリマーの典型的な例にはポリスチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、例えば二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール-変性(PETG)、例えばポリ(エチレングリコール-コ-1,4-シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、及びポリ(エチレン 2,6-ナフトエート)(PEN)、及びポリ塩化ビニル(PVC)がある。複合材料の典型的な例には制限なしに紙及び少なくとも1つのプラスチック又はポリマー材料、例えば上に記載したものの多層構造体又は積層体がある。基材の透明又は部分的に透明な領域に適切な材料としては、限定されることはないが、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、例えば二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール-変性(PETG)、例えばポリ(エチレングリコール-コ-1,4-シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、及びポリ(エチレン 2,6-ナフトエート)(PEN)、及びポリ塩化ビニル(PVC)がある。有価文書の基材の透明又は部分的に透明な領域は、上にUV-Vis放射線硬化性のインクが印刷されるプライマー層をもっていてもよい。プライマー層は、本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性のインクの銀ナノプレートレットを除いた全ての成分を含有するワニスをUV-Vis硬化することにより得ることができる。
【0172】
[0171]また本明細書には、有価文書、有価物品又は装飾要素若しくは物体を製造する方法であって、a)有価文書、有価物品又は装飾要素若しくは物体を準備するステップと、b)特に本明細書に記載されている方法により得られるもののような1つ又は複数の本明細書に記載されているセキュリティー機能を、有価文書、有価物品又は装飾要素若しくは物体によって含まれるように設けるステップと、を含む、方法も記載されている。
【0173】
[0172]本発明は、本明細書に記載されているセキュリティー機能を含む有価文書及び有価物品又は1つより多くの本明細書に記載されているセキュリティー機能を含む有価文書及び有価物品を更に提供する。本発明は本明細書に記載されている基材及び本明細書に記載されているセキュリティー機能を含む有価文書及び有価物品又は1つより多くの本明細書に記載されているセキュリティー機能を含む有価文書及び有価物品を更に提供する。
【0174】
[0173]好ましくは、有価文書は銀行券、証書、チケット、小切手、領収書、収入印紙、契約書、身分証明書、例えばパスポート、身分証明カード、ビザ、運転免許証、バンクカード、クレジットカード、トランザクションカード、アクセス文書(access document)、及びカード、入場券、公共交通券、学位記(academic diploma)、及び学位(academic title)から選択される。より好ましくは有価文書は銀行券である。本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクはまた有価商品を含む有価物品上にセキュリティー機能を直接作製するのにも使用し得る。用語「有価商品」は例えば本物の薬剤のような包装の中身を保証するために偽造及び/又は違法複製に対して保護され得る包装材料、特に医薬品、化粧品、電子工学又は食品産業に関する。或いは、本明細書に記載されているセキュリティー機能は例えばセキュリティースレッド、セキュリティーストライプ、ホイル、デカール、ウィンドウ又はラベルのような補助基材上に作製されてもよく、その結果別のステップで有価文書又は有価物品に移されてもよい。
【0175】
[0174]有価文書及び有価物品のセキュリティーレベル並びに偽造及び違法複製に対する抵抗性を更に増大するために、本明細書に記載されている基材は印刷されたか、被覆されたか、又はレーザー刻印若しくはレーザー穿孔されたしるし、透かし、セキュリティースレッド、繊維、プランシェット、発光性化合物、ウィンドウ、ホイル、デカール、プライマー及びこれらの2又はそれ以上の組合せを含有し得る。
【0176】
[0175]耐汚染性又は耐薬品性による耐久性及び清潔さ、従って有価文書及び有価物品の循環寿命を増大することを目的として、又はその美的外観(例えば光学的光沢)を変更することを目的として、1つ又は複数の保護層が本明細書に記載されているセキュリティー機能又は有価文書若しくは有価物品の上に適用され得る。存在するとき、1つ又は複数の保護層は通例、透明であり得るか又は多少着色しているか若しくは染められており、多かれ少なかれ光沢があり得る保護ワニスでできている。保護ワニスは放射線硬化性組成物、熱乾燥組成物又はこれらのあらゆる組合せであり得る。好ましくは、1つ又は複数の保護層は放射線硬化性、より好ましくはUV-Vis放射線硬化性の組成物でできている。1つ又は複数の保護層として適切な組成物は国際公開第2020/234211号、国際公開第2013/127715号及び国際公開第2014/067715号に記載されている。
【0177】
[0176]本明細書に記載されている1つ又は複数のしるし(x30)を示すセキュリティー機能は、直接基材上に設けられ得、この基材上で(銀行券用途のように)永久に残る。或いは、セキュリティー機能はまた作製目的用の仮の基材上に設けられてもよく、セキュリティー機能は後にそこから除去される。その後、セキュリティー機能の作製のために本明細書に記載されているUV-Vis放射線硬化性インクを硬化(hardening)/硬化(curing)した後、仮の基材はセキュリティー機能から除去され得る。
【0178】
[0177]或いは、別の実施形態において接着層がセキュリティー機能上に存在してもよく、又は前記セキュリティー機能を含む基材上に存在してもよく、前記接着層は基材のセキュリティー機能が設けられる面と反対の面上又はセキュリティー機能と同じ側でセキュリティー機能の上にある。従って、接着層はセキュリティー機能又は基材に適用され得、前記接着層は硬化ステップが完了した後に適用される。かかる物品は全ての種類の文書又は他の物品若しくはアイテムに印刷することなく、又はその他機械及び幾分高い努力を要するプロセスなしに付けられる。或いは、本明細書に記載されているセキュリティー機能を含む本明細書に記載されている基材は転写箔の形態であり得、これは別の移動ステップで文書又は物品に適用することができる。この目的で、基材は剥離コーティングを備えており、セキュリティー機能はその上に本明細書に記載されているようにして作製される。1つ又は複数の接着層がそのように作製されたセキュリティー機能を覆って適用され得る。
【0179】
[0178]また1つより多く、即ち2つ、3つ、4つ、等の本明細書に記載されているセキュリティー機能を含む基材、有価文書、有価商品を始めとする有価物品、装飾要素及び物体も本明細書に記載されている。また本明細書には本明細書に記載されているセキュリティー機能を含む物品、特に有価文書、有価商品を始めとする有価物品、装飾要素又は物体も記載されている。
【0180】
[0179]上に述べたように、本明細書に記載されているセキュリティー機能は有価文書及び有価商品を始めとする有価物品を保護し認証するのに使用し得る。
【0181】
[0180]当業者は上に記載された具体的な実施形態に対して本発明の思想から逸脱することなく幾つかの変更を予測することができる。かかる変更は本発明に包含される。
【0182】
[0181]更に、この明細書を通じて参照した全ての文書はその全体が全部本明細書に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0183】
[0182]以下、非限定的な実施例を参照して本発明をより詳細に記載する。以下の実施例は、銀ナノプレートレット(SP1~SP10)を含むUV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のスクリーンインクでできたコーティング層(x10)に1つ又は複数のしるし(x30)の形状でトップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ14)を適用し、前記1つ又は複数のしるし(x30)及び前記コーティング層(x10)を硬化ユニット(x50)で硬化することにより得られるセキュリティー機能の調製に関するより多くの詳細を提供する。
【0184】
[0183]表1A及び1Bは使用したUV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のスクリーン印刷インクの説明を提供する。
【0185】
[0184]表2A及び2Bはスクリーン印刷インクでできたコーティング層(x10)に1つ又は複数のしるし(x30)の形状で適用されるトップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ14)の説明を提供する。
【0186】
[0185]表3A~Hは本発明の方法(実施例E1~E48)及び比較の方法(C1~C8)により得られたセキュリティー機能の光学的性質を提供するが、ここでトップコーティングインクジェットインクは異なるインク付着量値(g/m)で適用した。
【0187】
[0186]表4A~Bは本発明の方法(実施例E49~E68)により得られたセキュリティー機能の光学的性質を提供するが、ここでUV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のスクリーン印刷インクの組成は変更した。
【0188】
[0187]表5A~Bは本発明の方法(実施例E69~E83)により得られたセキュリティー機能の光学的性質を提供するが、ここでトップコーティングインクジェットインクの組成は変更した。
【0189】
[0188]表6A~Bは本発明の方法(実施例E84~E91)及び比較の方法(C9~C28)により得られたセキュリティー機能の光学的性質を提供するが、ここでコーティング層(x10)の上へのトップコーティングインクジェットインクの1つ又は複数のしるし(x30)の形状での部分的適用と、前記1つ又は複数のしるし(x30)及び前記コーティング層(x10)の硬化との間の時間は変更した。
【0190】
分析方法
A-1.UV-Vis分光法
[0189]分散液のUV-Visスペクトルを、Varian Cary 50UV-可視分光光度計で、1cmの光路で0.3~1.5の光学密度を達成するような濃度の分散液で記録した。
【0191】
A-2.TEM分析
[0190]TEM分析は、イソプロパノール中に銀ナノプレートレットを含有する分散液に対して、ZEISS,INST.109のEM 910機器を用いて明視野モード、e-ビーム加速電圧100kVで行った。少なくとも2つの代表的な画像を異なる倍率のスケール(5,000x、10,000X、20,000X)で記録して各試料の優勢な粒子形態を特徴付けた。粒子の数平均直径は、TEM画像から、画像解析ソフトウェア(Thorsten Wagner ij-particlesizer v.1.0.9;DOI:10.5281/zenodo.820296)を用いて、少なくとも500のランダムに選択された粒子の測定に基づいて、画像の平面と平行に配向したナノプレートレットの最大の寸法として決定した。粒子の数平均厚さは、TEM画像から、少なくとも300のランダムに選択された粒子の測定に基づいて、画像の平面に対して垂直に配向したナノプレートレットの最大の寸法として手動で測定した。
【0192】
[0191]特に、分散液の一部を滑らかなホイルに移した。乾燥後、試料をアラルダイト(Araldit)(登録商標)に埋め込み、これを60℃未満で架橋した。埋め込まれた試料の極薄の断面をホイル表面に対して垂直に調製した。少なくとも300のランダムに選択された銀ナノプレートレットの厚さをソフトウェア(ParticleSizer)により楕円を粒子断面にフィットさせることにより断面TEM画像(倍率25.000Xで記録)から決定した。フィットした楕円の短軸(最も短い直径)を粒子厚さとした。
【0193】
銀ナノプレートレット分散液D1及びD2の調製及び特性決定
B-1.原料の合成
[0192]アンカー型スターラーを備えた1Lの二重壁ガラス反応器で、365gの脱イオン水を+2℃に冷却した。13.62gの水素化ホウ素ナトリウムを加え、混合物を250回/分(RPM、溶液A)で撹拌しながら-1℃に冷却した。
【0194】
[0193]アンカー型スターラーを備えた0.5Lの二重壁ガラス反応器で、132gの脱イオン水及び4.8gのMPEG-5000-チオールを合わせ、混合物を10分室温で撹拌した。72gの国際公開第2006074969号の実施例A3の生成物を加え、得られた混合物を均質化のため更に10分室温で撹拌した。30.6gの硝酸銀の30gの脱イオン水中の溶液を一度に加え、混合物を10分撹拌して、橙褐色の粘稠な溶液が得た。この溶液に96gの脱イオン水を加え、続いて予め36gの脱イオン水に分散させた3gのStruktol SB 2080消泡剤を加えた。得られた混合物を250RPMで撹拌しながら0℃に冷却した(溶液B)。
【0195】
[0194]その後、蠕動ポンプにより一定の速度で2hにわたり、冷却した(0℃)添加管を介して溶液Bを溶液Aの液面下に添加し、球状の銀ナノプレートレットの分散液を得た。ポンプで送り込む間、溶液Aは250RPMで撹拌した。
【0196】
[0195]添加が完了した後、反応混合物を15分以内で+5℃まで温め、862mgのKClの10gの脱イオン水中の溶液を一度に加え、続いて9.6gのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を4つの等しい部分として10分の時間間隔で添加した。
【0197】
[0196]最後のEDTA部分の添加後、反応混合物を15分+5℃で撹拌し、次いで30分かけて35℃まで温め、1hこの温度で撹拌した。この時点で、水素の発生が完了する。
【0198】
[0197]3.0mLのアンモニアの水中30%w/w溶液を加え、続いて5.76gの固体のNaOHを添加し、混合物を15min35℃で撹拌した。次いで180mLの50%w/w過酸化水素水溶液を蠕動ポンプにより一定の速度で4hかけて250RPMで撹拌しながら反応混合物中の液面下に添加し、その間温度を35℃に維持した。これにより、銀ナノプレートレットの濃い青色の分散液が得られ、これを室温に冷却した。1.23gの式
【化39】

の化合物(CAS 80584-88-9及び80584-89-0の混合物)を加え、混合物を1h室温で撹拌した。
【0199】
B-2.Agナノプレートレットの単離及び精製
B-2a.第1のデカンテーション
[0198]9.6gのドデシル硫酸ナトリウムを反応混合物に加え、次いで約25gの無水硫酸ナトリウム粉末を、分散液の透過光の色が青からピンクに変化するまで少しずつ撹拌しながら加えた。次いで混合物を撹拌することなく室温に24h保ち、凝固したナノプレートレットを反応器の底に沈殿させた。
【0200】
[0199]890gの上清を反応器から蠕動ポンプで送り込み、890gの脱イオン水を反応器に加えた。反応器中の混合物を1h室温で撹拌し、凝固した粒子を再分散させた。
【0201】
B-2b.第2のデカンテーション
[0200]約64gの無水硫酸ナトリウム粉末を、分散液の透過光の色が青から黄色味がかったピンクに変化するまで少しずつ撹拌しながら加えた。次いで混合物を撹拌することなく室温で12h保ち、凝固したナノプレートレットを反応器の底に沈殿させた。990gの上清を反応器から蠕動ポンプで送り込み、90gの脱イオン水を反応器に加えた。得られた混合物を30分室温で撹拌し、凝固した粒子を再分散させた。
【0202】
B-2c.水中限外ろ過
[0201]得られたAgナノプレートレットの分散液をMillipore Amicon 8400撹拌限外ろ過セルを用いた限外ろ過に付した。分散液を脱イオン水で希釈し、300kDaカットオフ値のポリエーテルスルホン(PES)膜を用いて約50mLの最終容積に限外ろ過した。手順を合計4回繰り返して60gのAgナノプレートレットの水中分散液を得た。限外ろ過が完了した後、0.17gの式
【化40】

の化合物(CAS 80584-88-9及び80584-89-0の混合物)を分散液に加えた。
Ag含有率28.9%w/w;合計銀量に基づく収率約89%;固形分(250℃)33.5%w/w;250℃での固形分に基づく銀の純度86%w/w。
【0203】
B-2d.イソプロパノール中限外ろ過
[0202]分散液をイソプロパノール中で更に限外ろ過した。水中の限外ろ過後に得られた60gのAgナノプレートレット分散液をMillipore Amicon 8400撹拌限外ろ過セルに入れ、イソプロパノールで300gの重量に希釈した。500kDaのカットオフ値のポリエーテルスルホン(PES)膜を用いて分散液を約50mLの容積に限外ろ過した。この手順を合計4回繰り返して72gのAgナノプレートレットのイソプロパノール中分散液を得た。
Ag含有率24.1%w/w;固形分(250℃)25.7%w/w;250℃での固形分に基づく銀の純度93.5%w/w。
UV-Vis-NIRスペクトルを水中、9.810-5MのAg濃度で記録した。λmax=700nm;最大消光係数ε=10200L/(cmmol Ag)、FWHM=340nm。
数平均粒子直径93±40nm、数平均粒子厚さ16±2.5nm。
【0204】
B-3.分散液D1の調製
a)Agナノプレートレットの表面改質
[0203]アイテムB-2dに記載した通り得られた50g(12.85g固形分)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。2.05gの二硫化炭素の無水エタノール中5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて2.77gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を加えた。混合物を1h23℃で撹拌し、次いで2.77gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を加え、撹拌を30min続けた。
UV-Vis-NIRスペクトルを水中Ag濃度9.810-5Mで記録した。λmax=704nm。
【0205】
b)溶媒交換
[0204]ステップa)で得られた分散液に、15.0gの3-エトキシプロピオン酸エチルを加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で、更に溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を3-エトキシプロピオン酸エチルの添加により32.1gに調節した(41.2%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0206】
B-4 分散液D2の調製
a)Agナノプレートレットの表面改質
[0205]アイテムB-2dで記載したようにして得られた50g(12.85g固体)のAgナノプレートレット分散液をアルゴン雰囲気下23℃で250mLの丸底フラスコに入れた。二硫化炭素の無水エタノール中の2.05gの5%w/w溶液を加え、混合物を5min撹拌し、続いて2.77gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を添加した。混合物を1h23℃で撹拌した後、2.77gのジエタノールアミンの無水エタノール中5%w/w溶液を加え、撹拌を30min続けた。
UV-Vis-NIRスペクトルを水中Ag濃度9.810-5Mで記録した。λmax=704nm。
【0207】
b)溶媒交換
[0206]ステップa)で得られた分散液に、15.0gの7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート(CAS番号:2386-87-0)を加えた。得られた混合物をロータリーエバポレーターにより40mbarの圧力及び40℃の浴温で更なる溶媒が留出しなくなるまで濃縮した。得られた分散液の重量を7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート(CAS:2386-87-0)の添加により32.1gに調節した(41.2%w/wの計算された合計固形分に対応する)。
【0208】
C.UV-Vis放射線硬化性スクリーン印刷インク(SP1~SP10)及びトップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ14)の調製
C1.UV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のスクリーン印刷インク(SP1~SP10)
【表1】


【表2】
【0209】
[0207]表1Bに記載した分散液D1/D2を除く全ての成分を混合し、室温でDispermat(モデルCV-3)を10分間2000rpmで用いて分散させて20gの各々の組成物を得た。
【0210】
[0208]20wt-%の分散液(D1/D2)を独立して80wt-%のそれぞれの組成物に加え、室温でDispermat(モデルCV-3)を5分間800~1000rpmで用いて分散させて5gの各UV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のスクリーン印刷インク(SP1~SP10)を得た。
【0211】
C2.トップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ14)
【表3】

【表4】
【0212】
[0209]1つより多くの成分(IJ5、IJ7、IJ9及びIJ10)を含むトップコーティングインクジェットインクを、Dispermat CV-3を用いて10分間室温、1000rpmで成分を混合することにより独立して調製した。トップコーティングインクジェットインクの粘度は円錐平面形状及び直径40mmを有する回転式粘度計DHR-2(TA Instruments)を用いて1000s-1、25℃で決定した。
【0213】
セキュリティー機能の調製及び評価
D1.セキュリティー機能(E1~E91及びC1~C28)の調製
[0210]ステップa):表1Bに記載されたUV-Vis放射線硬化性スクリーン印刷インクSP1~SP10を、160糸/cmスクリーンを用いて一片の透明なウィンドウのポリマー基材(x20)(Guardian、厚さ75μm、CCL Secureにより供給、寸法60mm×60mm)に独立して手で適用して、厚さ7~10μmを有し、50mm×50mmの寸法の正方形を形成するコーティング層(x10)を得た。
【0214】
[0211]ステップa)の後に、ステップb):表2Bに記載されたトップコーティングインクジェットインクIJ1~IJ14を、DOD(ドロップオンデマンド)インクジェット印刷プロセスにより、KM1024iインクジェットヘッド(Konica Minolta、360dpi)を用いて、ステップa)で得られたコーティング層(x10)に独立して適用して、30mm×30mmの寸法の正方形の形状を有する1つ又は複数のしるし(x30)を得た。前記しるし(x30)はステップa)で得られたコーティング層(x10)により形成された正方形の中央にあった。
【0215】
[0212]ステップb)の後に、ステップc):ステップa)の後に得られたコーティング層(x10)及びステップb)の後に得られたインクジェット印刷したしるし(x30)を、オムニキュア(OmniCure)(登録商標)のUV-LEDランプ(Type AC4 50×25mm、385nm、8W/cm)である硬化ユニット(x50)に約0.5秒間曝露することにより同時に硬化した。
【0216】
[0213]この方法により、比較の方法によるセキュリティー機能(C1~C28)及び本発明の方法によるセキュリティー機能(E1~E91)の作製が可能になった。ここで各々のセキュリティー機能は1つ又は複数の硬化したインクジェット印刷したしるし(x30)を欠く硬化した被覆層(x10)でできた第1の領域及び硬化したコーティング層(x10)と1つ又は複数の硬化したインクジェット印刷したしるし(x30)との組合せでできた第2の領域を含んでいた。即ち第1の領域はセキュリティー機能の約10mmの幅を有する周囲ゾーンに対応し、一方第2の領域は30mm×30mmの寸法の中央ゾーンに対応する。
【0217】
[0214]コーティング層(x10)に適用されたトップコーティングインクジェットインクでできた1つ又は複数のしるし(x30)のインク付着量の決定は線形回帰法を用いて行った。4つのインクジェットインク付着量を実験的に測定し(図3B中ポイント1~4)、これらの実験的に得られたインクジェットインク付着量を基にして0-切片をもつ線形回帰線を確立した。全ての実施例及び比較例に対するインクジェットインク付着量(g/m)をこの線形関数から計算した。手順は以下の通り:
i)次のパラメーターを上に記載したKonica Minoltaインクジェットプリントヘッドヘッドを駆動するソフトウェアに導入した:解像度360dpi;dpd(ドット当たりのドロップ数):ポイント1に対して1、ポイント2に対して3、ポイント3に対して5及びポイント4に対して7;グレーレベル:100%;印刷形状:30mm×30mmの漆黒の正方形;
ii)UV-Vis放射線カチオン硬化性のスクリーン印刷インクSP1(表1B)をステップa)で上記した基材(x20)(サイズ=70mm×70mm)に独立して適用してコーティング層(x10)(サイズ=30mm×30mm)を作製し、次いでコーティング層(x10)を含む各々の基材(x20)を分析天秤(Mettler Toledo XS64)を用いて独立して秤量した。4つのセット(即ち各々のポイント1~4に対して1つのセット)の3つの試料を調製し、平均値を各々のセット(x10+x20)に対して計算した。平均値を図3Aに示す;
iii)トップコーティングインクジェットインクIJ11(表2B)を35℃において上に記載した1つ又は複数のしるし(x30)の形状(寸法30mm×30mmの正方形)で、4つの異なるdpd値1、3、5及び7(それぞれポイント1、2、3及び4を生成し、図3Bに示す)でii)で得られたコーティング層(x10)の上に画像グレーレベル100%で適用した;次いで、前記コーティング層(x10)及び前記1つ又は複数のしるし(x30)を含む各々の基材(x20)を、上に記載したのと同じ分析天秤を用いて秤量した。3つの試料の平均値を各々のセット(x10+x20+x30)に対して計算し、図3Aに示す;
iv)トップコーティングインクジェットインク付着量(x30)の平均値を、iii)の平均重量(即ち平均重量(x10+x20+x30)からii)で得られた平均重量(x10+x20)を差し引くことにより計算した;
v)ポイント1、2、3及び4(図3A)の試料に対応する各々のセットに対して、インクジェットインク付着量[g/m]を、iv)で得られた平均のインクジェットインク付着量を既知の印刷面積(30×30mm、又は0.000900m)で割ることにより得た。
vi)0-切片をもつ線状の回帰線(図3B)を、x-軸のdpd値及びy-軸のv)で得られたインクジェットインク付着量で確立した。そうして得られた線形関数の傾きは3.8464で、R-値は0.9996であった。図3Bに示したグラフは重量の測定値(1~7dpd)から得られた値を散布図として開示し、線状の回帰線は:
秤量したインク付着量[g/m]=f(dpd値)
に対応し、そうして得られた線形関数及びR-値を図3Bに示す。即ち秤量したインク付着量[g/m]=3.8464dpd値であり、Rは0.9996である。図3Aに示した表は数値(重量測定値)及び線形関数から計算した値(最後の欄)を開示する。
【0218】
[0215]全ての実施例及び比較例に対するインク付着量(g/m)を提供された線形関数から計算した。1未満の(理論的な)dpd値に対応するインク付着量について、i)で述べたインクジェット印刷した画像のグレーレベル(%)は低減した。dpd値、印刷した画像の画像グレーレベル(%)及び計算したインク付着量(g/m)を表に報告する。
【0219】
[0216]上のステップa)~c)で記載した方法を使用して以下を調製した。
比較の方法による実施例C1~C4及び本発明の方法による実施例E1~E28、ここではUV-Visカチオン硬化性スクリーン印刷インクSP4(表1B)をステップa)で使用し、インクジェットインクIJ11、IJ1、IJ12及びIJ7(表2B)をステップb)で使用し、ステップb)とステップc)との間の時間は約0.5秒に固定し、インクジェットインク付着量は約0.4g/m~約26.9g/mで変化させ、得られたセキュリティー機能の光学的結果を表3A~Dに報告する;
比較の方法による実施例C5~C8及び本発明の方法による実施例E29~E48、ここではUV-Visハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクSP9(表1B)をステップa)で使用し、インクジェットインクIJ11、IJ1、IJ12及びIJ6(表2B)をステップb)で使用し、ステップb)とステップc)との間の時間は約0.5秒に固定し、インクジェットインク付着量を約0.4g/m~約11.5g/mで変化させ、得られたセキュリティー機能の光学的結果を表3E~3Hに報告する;
本発明の方法による実施例E49~E58、ここではUV-Visカチオン硬化性スクリーン印刷インクSP1~SP5(表1B)をステップa)で使用し、インクジェットインクIJ11(表2B)をステップb)で使用し、ステップb)とステップc)との間の時間は約0.5秒に固定し、インクジェットインク付着量は約1.0g/m又は約11.5g/mとし、得られたセキュリティー機能の光学的結果を表4Aに報告する;
本発明の方法による実施例E59~E68、ここではUV-Visハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクSP6~SP10(表1B)をステップa)で使用し、インクジェットインクIJ11(表2B)をステップb)で使用し、ステップb)とステップc)との間の時間は約0.5秒に固定し、インクジェットインク付着量は約1.0g/m又は約11.5g/mとし、得られたセキュリティー機能の光学的結果を表4Bに報告する;
本発明の方法による実施例E69~E74、ここではUV-Visカチオン硬化性スクリーン印刷インクSP4(表1B)をステップa)で使用し、インクジェットインクIJ2~IJ5及びIJ13~IJ14(表2B)をステップb)で使用し、ステップb)とステップc)との間の時間は約0.5秒に固定し、インクジェットインク付着量は約1.0g/mに固定し、得られたセキュリティー機能の光学的結果を表5Aに報告する;
本発明の方法による実施例E75~E83、ここではUV-Visハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクSP9(表1B)をステップa)で使用し、インクジェットインクIJ2~IJ5、IJ8~IJ10及びIJ13~IJ14(表2B)をステップb)に使用し、ステップb)とステップc)との間の時間は約0.5秒に固定し、インクジェットインク付着量を約1.0g/mに固定し、得られたセキュリティー機能の光学的結果を表5Bに報告する;
比較の方法による実施例C9~C18及び本発明の方法による実施例E84~E87、ここではUV-Visカチオン硬化性スクリーン印刷インクSP4(表1B)をステップa)で使用し、インクジェットインクIJ11(表2B)をステップb)で使用し、インクジェットインク付着量は約1.0g/m又は約11.5g/mとし、ステップb)とステップc)との間の時間は約0.5秒~約100秒で変化させ、得られたセキュリティー機能の光学的結果を表6Aに報告する;及び
本発明の方法による実施例E88~E91及び比較の方法による実施例C19~C28、ここではUV-Visハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクSP9(表1B)をステップa)で使用し、インクジェットインクIJ11(表2B)をステップb)で使用し、インクジェットインク付着量は約1.0g/m又は約11.5g/mとし、ステップb)とステップc)との間の時間を約0.5秒~約100秒で変化させた。得られたセキュリティー機能の光学的結果を表6Bに報告する。
【0220】
D-2.光学的性質の評価
[0217]比較の方法(C1~C28)又は本発明による方法(E1~E91)に従って得られたセキュリティー機能の光学的性質を、以下に記載する手法を用いて反射、透過及び目視で独立に評価した。目視評価(反射及び透過の両方)は平均的な人が街頭でセキュリティー機能を観察する手段を再現することを目的とし、一方特定の装置を用いた評価は例えばATM又は高速選別機で日常的に行われる機械検出を極めて密接にまねたものである。
【0221】
[0218]反射での評価はゴニオ分光計(goniospectrometer)(Goniospektrometer Codec WI-10 5&5、Phyma GmbH Austria)を用いて以下の手順に従って行った:
i)UV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のスクリーン印刷インク(SP1~SP10)の各々に対して、ステップa)及びc)で上に記載したのと同じ方法を用いて(即ちインクジェット印刷のステップb)を省いて)基準試料を得た。言い換えると、各々の基準試料は1つ又は複数のインクジェット印刷したしるし(x30)を欠く硬化したコーティング層(x10)を含む基材(x20)からなっていた;
ii)基準試料のL値を22.5°の照明により垂線に対して0°で決定した。C(彩度又は色飽和度)値をa及びb値からCIELAB(1976)色空間に従って計算した:
【数3】

硬化したコーティング層(x10)でできた第1の領域の彩度に対応する基準試料の提供されたC値は表中でC(22.5°/0°)第1の領域として報告されており、ここで第1の領域に対する少なくとも20のC値は反射でのメタリックの金色に対応する。
iii)比較の方法に従って調製された実施例(C1~C28)及び本発明に従って調製された実施例(E1~E91)の各々に対して、ステップb)で印刷された1つ又は複数のしるし(x30)のC値を決定した。これは被覆層(x10)及び1つ又は複数の硬化したインクジェット印刷したしるし(x30)の組合せでできた第2の領域の彩度に対応する(表中でC(22.5°/0°)第2の領域とされている);
iv)第1及び第2の両方の領域のC値から、コントラスト値(%)(表中でコントラスト[%]とされている)を次の式に従って誘導した:
【数4】

ここで約10%コントラストは専用の装置で検出可能であることが知られており、従ってセキュリティー用途に対する閾値に対応する。
【0222】
[0219]透過光測定は、Datacolor 650分光光度計を用いて行った(パラメーター:積分球、拡散照明(パルスキセノンD65)及び8°視野、アナライザーSP2000、デュアル256ダイオードアレイ、波長範囲360~700nm、透過光サンプリング開口サイズ22mm)。C-値は反射測定について上に記載したのと同じようにして得た。C値を表中にCとして示す。
【0223】
[0220]反射での目視評価は以下のように行った:
コントラストは拡散照明(例えば直射日光なしで窓を通ってくる光)下で観察し、セキュリティー機能を有する基材(x20)を拡散光源に対して垂直に保持し、画角は拡散光が観察者の頭により遮られないように選ばれる(約70°~約20°の鉛直角を意味する)。観察者は第1の領域(x10)と第2の領域(x10+x30)との間で観察されるコントラストを報告した。次のスケールを使用した:優秀、良好、十分、不十分。ここで不十分なコントラストは観察者により容易に評価できない、セキュリティー機能として適さないセキュリティー機能を意味する。反射での目視評価を表に目視コントラストとして報告する。
【0224】
[0221]目視による評価ではまた、各セキュリティー機能を肉眼により透過光でも観察した。次の色が観察され、以下の表に目視の色として報告する:
鈍い青色:青色着色が辛うじて目に見える~目に見える;
青色:青色着色が強烈である;及び
濃い青色:青色着色が非常に強烈である。
【0225】
E.結果
E1.インクジェットインク付着量の変動(C1~C8及びE1~E48)(表3A~3H)
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】
【0226】
[0222]表3A~Hに示されているように、本発明による方法は、反射及び透過においてコントラスト及び色特性の点で高い品質のセキュリティー機能の作製を可能にし、従って容易な認識を可能にし、約0.8g/mという最少量のインクジェットインク付着量を必要とする。提供された値及び特性により示されているように、前記付着量により、UV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性のスクリーン印刷インク(E1~E48)に対して第1と第2の領域の間の十分なコントラストを得ることが可能になる(前記コントラストは目視で、及び/又はゴニオ分光計を用いて評価される)。表3A~Hに示されているように、少なくとも約1.0g/mの量(E1、E8、E15、E22、E29、E34、E39、E44)が目視で、及びゴニオ分光計を用いて十分~良好なコントラストを示すセキュリティー機能の作製を可能にし、少なくとも約1.9g/mの量(E2、E9、E16、E23、E30、E35、E40、E45)が良好~優秀なコントラストを示すセキュリティー機能の作製を可能にした。
【0227】
[0223]本発明による方法により得られるセキュリティー機能は、反射で金色、透過で青色~濃い青色であり、1つ又は複数のしるし(x30)はインク付着量の量に応じて反射で淡褐色~暗褐色に見える。可視範囲での透過は1つ又は複数のしるしによって大部分影響を受けず、前記1つ又は複数のしるしを反射で観察するのが容易~極めて容易になるが透過では殆ど目に見えなくなる。
【0228】
E2.UV-Vis硬化性スクリーン印刷インクの組成の変動(E49~E68)
【表13】

【表14】
【0229】
[0224]表4A~Bに示されているように、脂環式エポキシド又は脂環式エポキシドと1種若しくは複数のUV-Vis放射線硬化性化合物の混合物を含むUV-Vis硬化性カチオンスクリーン印刷インク(SP1~SP5)並びに脂環式エポキシド又は脂環式エポキシド及び1種若しくは複数のUV-Vis放射線硬化性化合物及びラジカル硬化性化合物の混合物を含むUV-Vis硬化性ハイブリッドスクリーン印刷インク(SP6~SP10)は、本発明による方法で高い品質のセキュリティー機能を作製するのに適している。前記UV-Vis硬化性スクリーン印刷インクは溶剤を含み得るか又は欠き得る。本発明による方法により得られるセキュリティー機能は反射で金色、透過で青色~濃い青色であるが、しるし(x30)はインク付着量の量に応じて淡褐色~暗褐色に見える。可視範囲での透過は1つ又は複数のしるしにより大部分影響を受けず、前記1つ又は複数のしるしを反射で観察することを容易~極めて容易にするが透過では殆ど目に見えない。
【0230】
E3.トップコーティングインクジェットインクの組成の変動(E69~E83)
【表15】

【表16】

【0231】
[0225]表5Aに示されているように、1種又は複数のカチオン硬化性モノマー(IJ1-5);又は1種若しくは複数のラジカル硬化性モノマー及び1つのフリーラジカル光開始剤(IJ7);又は1種若しくは複数のハイブリッドモノマー(IJ11);又は1種若しくは複数の溶剤(IJ12~IJ14)を含むトップコーティングインクジェットインクと組み合わせて使用したUV-Vis硬化性カチオンスクリーン印刷インクは、本発明による方法で高い品質のセキュリティー機能を作製するのに適している。表5Bに示されているように、1種又は複数のカチオン硬化性モノマー(IJ1-5);又は1種若しくは複数のラジカル硬化性モノマー(IJ6~IJ10);又は1種若しくは複数のハイブリッドモノマー(IJ11);又は1種若しくは複数の溶剤(IJ12~IJ14)を含むトップコーティングインクジェットインクと組み合わせて使用したUV-Vis硬化性ハイブリッドスクリーン印刷インクは、本発明による方法で高い品質のセキュリティー機能を作製するのに適している。
【0232】
[0226]本発明による方法により得られるセキュリティー機能は反射で金色、透過で青色~濃い青色であるが、しるし(x30)はインク付着量の量に応じて淡褐色~暗褐色に見える。可視範囲での透過は1つ又は複数のしるしにより大部分影響を受けず、前記1つ又は複数のしるしを反射で観察することを容易~極めて容易にするが、透過では殆ど目に見えない。
【0233】
E4.ステップb)とステップc)との間の時間の変動(C9~C28及びE84~E89)
[0227]表6A~6Bに示すように、トップコーティングインクジェットインクをコーティング層(x10)の上に少なくとも部分的に適用するステップb)と、UV-Vis硬化性スクリーン印刷インク及びしるし(x30)でできたコーティング層(x10)を硬化するステップc)との間の時間を約0.5秒~約100秒で変化させた。
【0234】
[0228]アイテムD-2に記載したように測定したか又は目視で評価した光学的性質に加えて、得られた解像度の視覚評価を比較の方法による実施例(C9~C28)及び本発明の方法による実施例(E84~E89)について行った。ここで前記実施例は1つ又は複数のしるし(x30)が正方形の代わりに徐々に小さくなるフォントサイズの「SICPA」という名称の形状であることを除いて上に記載したようにして調製した。図1Aに示されるように、異なるサイズの名称「SICPA」(arialフォント)の形状の1つ又は複数のしるし(130)、特に1つのしるしを有するセキュリティー機能を調製した。このしるしは30mm×20mmの全体の大きさを有し、「SICPA」の第1のラインはArialサイズ8(名称高さ:2.1mm)で印刷し、第2のラインはサイズ6(名称高さ:1.7mm)で印刷し、第3のラインはサイズ5(名称高さ:1.3mm)で印刷し、第4のラインはサイズ4(名称高さ:1.1mm)で印刷し、第5のラインはサイズ3(名称高さ:0.8mm)で印刷した。解像度の目視評価は次の通り:
優秀:最も小さい文字(Arial3)で印刷したラインが容易に判読可能であり、解像度は同じフォント及び同じフォントサイズで慣用のレーザープリンター(解像度:600dpi)で得られた解像度に近い(図1B
良好:文字の僅かな拡大は観察可能であり、最も小さい文字(Arial3)で印刷したラインが未だ判読可能である
十分:文字の拡大は明らかに観察可能であり;最も小さい文字(Arial3)で印刷したラインは辛うじて判読可能であるが、それより少し大きい文字(Arial4)で印刷したラインは容易に判読可能である
不十分:文字は拡散して見えるように拡大されている;最も小さい文字(Arial3)で印刷したライン判読不可能であるが、それより少し大きい文字(Arial4)で印刷したラインは辛うじて判読可能である。
【0235】
[0229]良好~優秀な解像度は1つ又は複数の複雑なしるしを含むセキュリティー機能(例えば肖像画、グレーのレベルの写真又は入り組んだ線のパターンを含む幾何学図形)並びに小さいサイズのコード(例えば、1-Dコード又はQRコードを含む)の調製に必要とされることが知られており、十分な解像度はより簡単な1つ又は複数のしるし(例えば平坦な領域、数、文字又はロゴでできた幾何学模様)並びにより大きいサイズのコードを印刷するのに十分である。本発明の方法(実施例E84~E91)及び比較の方法(C9~C28)により得られたセキュリティー機能に対して観察された上に記載した方法に従って評価された解像度を表6A~6Bに示す。
【表17】

【表18】
【0236】
[0230]表6A~Bに示されているように、本発明による方法は反射及び透過においてコントラスト及び色特性の点で高い品質のセキュリティー機能の作製を可能にし、従って、容易な認識を可能にし、約11.5g/mのインクジェットインク付着量で十分な解像度を得るのに5秒より短く、特に4秒未満又は約3.5秒と等しいステップb)とステップc)との間の時間を必要とする。
【0237】
[0231]更なる実施例を調製したが、これを図2に示す。ここで前記セキュリティー機能を調製するには、UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクSP3を、ポリマー基材(220)の一枚の透明なウィンドウ(Guardian、厚さ75μm、CCL Secureにより供給、寸法60mm×60mm)に、160糸/cmスクリーンを用いて手で適用して、7~10μmの厚さを有し、50mm×50mmの寸法の正方形を形成するコーティング層(210)を得、スクリーン印刷された層(210)の上に、トップコーティングインクジェットインクIJ11を、DOD(ドロップオンデマンド)インクジェット印刷プロセスによりKM1024iインクジェットヘッド(Konica Minolta、360dpi))を用いて1dpd(3.8g/m)のインクジェットインク付着量でコーティング層(210)に適用して、QRコードの形状(大きさ:24mm×24mm)を有する1つ又は複数のしるし(230)、特に1つのしるしを得た。前記インクジェット印刷ステップの後に、スクリーン印刷された層(210)及びインクジェット印刷されたしるし(230)を、オムニキュア(登録商標)のUV-LEDランプ(タイプAC4 50×25mm、385nm、8W/cm)に約0.075秒曝露により硬化したが、インクジェット印刷ステップと硬化ステップとの間の時間は0.5秒に固定した。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】