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特表2024-544569天然組織および生体組織の保存、ならびに保存および輸送の方法
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  • 特表-天然組織および生体組織の保存、ならびに保存および輸送の方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】天然組織および生体組織の保存、ならびに保存および輸送の方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 1/02 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
A01N1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024528616
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 US2022049930
(87)【国際公開番号】W WO2023086664
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/279,237
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.テフロン
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519022908
【氏名又は名称】ティシュー テスティング テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TISSUE TESTING TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】リア エイチ キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】ケルヴィン ジー エム ブロックバンク
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011BB08
4H011CA01
4H011CB05
4H011CD02
(57)【要約】
本明細書には、従来の保存方法に関連する生存率の喪失を低減または防止しながら、ガラス化によって生体材料を保存する方法を記載する。また、本明細書には、生体材料(例えば、生物(バイオ)工学的に処理した構成物または天然組織サンプル)を凍結保存するためのカセットおよびこれらのカセットを使用する方法も記載する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを保存する方法であって、
(i)前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを、凍結保護剤の濃度が増加する一連の溶液に浸漬して、70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する最終溶液に浸漬された少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を形成するステップと、
(ii)前記70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する前記最終溶液中の前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を、前記70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する前記最終溶液のガラス転移温度以下の温度まで冷却するステップと、および
(iii)前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を、前記凍結保護剤の濃度が減少する一連の溶液に浸漬して、実質的に凍結保護剤を含まない溶液に浸漬された少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織を得るステップであって、前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織は、実質的に凍結保護剤を含まないものである、前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織を得るステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を形成する前に、本方法は、さらに、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織を、少なくとも1つの薬剤を含む前凍結保存液に少なくとも6時間浸漬するステップを備え、ここで前記薬剤は、抗酸化剤およびカスパーゼ阻害剤よりなる群から選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(i)において、
前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを1~6種の異なる溶液に浸漬する、または
前記凍結保護剤の濃度が減少する一連の溶液は、線形または非線形の濃度勾配を介して得られるものとする、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを1~6種の異なる溶液に浸漬し、また前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを各々の前記異なる溶液に5分以下浸漬する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(iii)において、
前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルを1~7種の異なる溶液に浸漬する、または
前記凍結保護剤の濃度が増加する一連の溶液は、線形または非線形の濃度勾配を介して得られるものとする、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルを1~7種の異なる溶液に浸漬し、また前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルを各々の前記異なる溶液に5分以下浸漬する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(ii)の前記凍結保護剤は、アセトアミド、シクロヘキサンジオール、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、二糖およびプロパンジオールよりなる群から選択される少なくとも1つの分子を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(i)において、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルが浸漬される前記一連の溶液の各溶液は、少なくとも1つの糖を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記少なくとも1つの糖はスクロースを含む、方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法であって、前記薬剤はα-トコフェロールを含む、方法。
【請求項11】
請求項2に記載の方法であって、前記薬剤はQ-VD-OPHを含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(i)は、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを保存するための方法全体において氷による損傷が生じないように、冷却中の氷の成長を回避する方法で実施する、方法。
【請求項13】
請求項14に記載の方法であって、ステップ(ii)の前記最終溶液の前記凍結保護剤濃度は8.0~11.0Mの範囲である、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルは、人工組織または臓器から得られる、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルは、哺乳動物臓器および哺乳動物組織よりなる群から選択される細胞材料から得られる、方法。
【請求項16】
請求項5に記載の方法であって、細胞材料はヒト臓器およびヒト組織よりなる群から選択される、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルは表皮構成物である、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(iii)の完了後の前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織サンプルの細胞生存率(%)が、少なくとも48時間、少なくとも60%のレベルに維持される、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(iii)の完了後の前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織サンプルの細胞生存率(%)が、少なくとも48時間、少なくとも70%のレベルに維持される、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(iii)の完了後の前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織サンプルの細胞生存率(%)が、少なくとも48時間、少なくとも80%のレベルに維持される、方法。
【請求項21】
請求項2に記載の方法であって、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルが、一度に6~384個の構成物を保持するカセットに含まれ、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルを含む前記カセットは、前記前凍結保存液に浸漬される、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(i)において、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルが、一度に6~384個の構成物を保持するカセットに含まれ、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを含む前記カセットが、ステップ(i)の前記一連の溶液の各溶液に浸漬される、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(iii)において、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルが、一度に6~384個の構成物を保持するカセットに含まれ、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルを含む前記カセットが、ステップ(iii)の前記一連の溶液の各溶液に浸漬される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[政府支援]
本発明は、その全部または一部が、米国国立衛生研究所からの助成金1R43TR003258-01によって支援された。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0002】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2021年11月15日に出願された米国仮出願第63/279,237号の優先権を主張する。先行出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、従来の保存方法に関連する生存能の損失を低減または防止しながら、天然組織および生物(バイオ)工学的(に処理した)構成物(bioengineered constructs)などの生物工学的組織を凍結保存するための方法に関する。本開示はさらに、特別に設計されたカセット、および複数の天然組織および生物工学的構成物などの生物工学的組織を一度に保存することができる高処理能力システムに関する{例えば、天然組織および生物工学的構成物などの生物工学的組織を含む所定の数(例えば、6~384個、例えば24個)のウェルインサートを一度に保持することができる特別に設計されたカセットを使用することによる}。
【背景技術】
【0004】
過去数十年にわたり、真核生物の組織および細胞を保存するための保存方法および技術が開発されてきた。これらの保存方法および技術は、患者への内植/インプランテーテョン(implantation)もしくは移植/トランスプランテーション(transplantation)のため、または薬物もしくは化学物質のスクリーニングバイオアッセイのためなど、後日これらの保存された組織を使用することを可能にする方法で、人工的に操作された(engineered)細胞外マトリックス(基質)、人工的に操作された組織、および天然組織中に種々の真核細胞を一定期間保存することに向けられている。
【0005】
このような保存方法および技術は、基礎研究およびトランスレーショナル・リサーチの両方の場において広く適用可能であるが、保存中の生体材料の特性(例えば、細胞生存性および細胞外マトリックスの完全性)の維持は、特に生物工学的構成物にとっては依然として課題である。例えば、現在の技術では、細胞外マトリックスの透過性および組織細胞の生存性が著しく低下していることが観察されており、このような低下は、保存から取り出した後の生体材料の機能の非効率性につながる可能性がある。
【0006】
様々なヒト組織に対するインビトロ(体外)アッセイの開発は、研究において使用される動物の数を減らし、新しい薬剤、化合物、または方法をスクリーニングするためのより費用効果の高い方法を見つけ、ヒトにおけるインビボ(生体内)応答をより予測できるインビトロ(体外)アッセイを見つけるという要求に応えられる。皮膚だけでなく、様々な組織から作製された組織工学的(に処理した)構成物(tissue engineered constructs)を毒性試験に使用することを支持する研究が増えつつある。この点で、3Dヒト組織モデルおよび組織等価構成物は、毒性予測スクリーニングおよび創薬モデルの動物モデルに取って代わりつつある。これらのモデルはコストが低く、同等の動物モデルよりも間違いなく人間の自然な反応に近い。
【0007】
例えば、化粧品、化学薬品、家庭用品、医薬品の製造に携わる企業は、動物実験に代わる組織等価構成物を使用し始めている(非特許文献1:Afaq氏ら、ヒト再構成皮膚におけるUVBを介したダメージに対するザクロ由来製品の保護効果、Exp Dermatol.、18(6):553-61(2009);非特許文献2:Felippi氏ら、アンチエイジング応用のための抗酸化物質含有ナノ粒子の安全性と有効性、J Biomed Nanotechnol、8(2):316-321(2012);非特許文献3:Jirova氏ら、ヒト皮膚刺激パッチテストデータとインビトロ皮膚刺激アッセイおよび動物データの比較、Contact Dermatitis、62(2):109-16(2010);非特許文献4:Kaluzhny氏ら、EU化粧品指令およびREACH法の要件に対応した、眼刺激性化学物質の危険性同定およびラベリングのためのEpiOcular(登録商標)眼刺激性試験の開発、Altern Lab Anim、39(4):339-64(2011);非特許文献5:Kolle氏ら、眼刺激性評価のためのEpiOcular(登録商標)眼刺激性試験とウシ角膜混濁・透過性試験との組み合わせの社内検証、Altern Lab Anim、39(4):365-87 (2011);非特許文献6:Ren氏ら、長期的な宿主-病原体相互作用の特徴付けのためのEpiAirwayの使用、J Vis Exp. 55: e3261 (2011);非特許文献7:Scheel氏ら、エビデンスの重み付けのアプローチによる皮膚および眼刺激性と腐食性の評価を行うためのインビトロ法を活用した、極端なpHを持つ工業製品の分類およびラベリング、Toxicol In Vitro、25(7):1435-47 (2011);非特許文献8:Sharma氏ら、ヒト気道上皮の3次元組織モデルにおけるエキナセアの有効性、Phytother Res.、24(6):900-4(2010))。これらの刊行物の開示の全体は、例えば、本開示が関連する技術の状態をより完全に記載するために、参照により本願に援用される。
【0008】
2009年以降、化粧品成分の毒性学的データ収集のために動物を使用することを禁止している欧州連合(EU)の規制により、MatTek社の表皮のようなインビトロ組織モデルは、化粧品成分の毒性試験で使用するために検証されている。医薬品のような他の種類の化合物についても、動物を用いた毒性試験の禁止がすぐに続くと予想されており、あらゆる組織タイプのインビトロモデルの需要が高まっている。組織構成物は一般的に、単一の細胞タイプから作られるが、複数の細胞層を持つ。場合によっては、複数の細胞タイプを持つ構成物も開発されている。そのため、ディッシュまたはプレート内の単層細胞よりは複雑ではあるが、静脈分節または軟骨片のような本来の組織とはまったく異なる。
【0009】
このような生物工学的ヒト組織は、現在、工業的供給業者によってカスタムバッチで製造されており、受領後すぐに使用しなければならない。すなわち、生物工学的構成物は一般に注文を受けてから作られるため、出荷前の製造には数週間のリードタイムが必要である。出荷は4℃で一晩かけて送られ、生物工学的構成物のような生物工学的組織は、最良の結果を得るために、有限の期間(1~2週間)内に使用されなければならない。このような細胞材料の使用期間が短いため、品質管理試験を出荷前に完了できず、事後的に行わなければならない場合がある。このような品質管理試験の結果が遅れた場合、顧客が研究プロジェクトで組織と同等のものを使用し、多大な資源、時間および労力を費やした後で、最終的にそのバッチが所定の品質管理基準を満たしていないことが明らかになる可能性がある。また、天候または適切な出発原料の不足による生産上の問題など、様々な理由で有効な構成物が入手できなくなった場合、入手可能性が問題になることもある。その場合、毒性試験のためのこのツールがなければ、医薬品およびその他の化合物の開発は保留となり、不活発のために時間および費用が浪費されることになる。したがって、生物工学的構成物のような生物工学的組織を、後の使用のために保存するための、改良された方法論が必要とされている。
【0010】
現在、これらの組織を後の使用のために保存するために、凍結保存法は使用されていない。凍結保存法は、生物工学的構成物のような生物工学的組織の利用可能性を劇的に増加させ、市場を拡大し、規模の経済により全体的な製造コストを低減し、その結果、より効率的な出荷および顧客への送達をもたらす。
【0011】
すなわち、生物工学的構成物などの生物工学的組織を凍結保存する方法は、注文に応じて生物工学的組織を製造するのに必要なリードタイムをなくし、出荷前の在庫の品質管理チェックを可能にし、規模の経済によりコストを削減する。エンドユーザーは、生物工学的組織の入手可能性または品質を心配することなく、実験のスケジューリングをより柔軟に行うことができる。顧客はまた、研究内の均一性をよりよく管理するために、同じバッチの製品を大量に注文することができる。検証された凍結保存組織構成物は、食品、医薬品、化粧品、化学工業のどの研究室にも出荷することができ、インビボ(生体内)試験の代替として便利に使用することができる。
【0012】
生物工学的構成物のような生物工学的組織の保存は一見簡単そうに見えるが、凍結による従来の凍結保存では、生物工学的構成物のような、生存可能な生物工学的組織は得られない(一般的に、<50%)。
【0013】
ガラス化戦略の有効性は、血管、心臓弁、カプセル化細胞、軟骨に至るまで、天然組織および生物工学的組織の構造、細胞外マトリックス、および生存能の保存に対して繰り返し実証されている(非特許文献9:Brockbank氏ら、ガラス化自己静脈動脈バイパス移植片の定量分析、細胞保存技術、5 (2) (2007);68-76;非特許文献10:Brockbank氏ら、豚関節軟骨のガラス化、Cryobiology 60、217-221、http://www.pubmedcentral.gov/articlerender.fcgi?artid=2834839 (2010);非特許文献11:Dahl氏ら、組織改変血管の保存法としてのガラス化の可能性、Tissue Eng.、12(2):291-300 (2006);非特許文献12:Schenke-Layland氏ら、心臓組織における細胞外マトリックスの最適な保存:移植片の長期耐久性への影響、Annals of Thoracic Surgery、83:1641-1650(2007);非特許文献13:Song氏ら、人工血管の機能を維持する硝子体凍結保存、Nature Biotechnology、8(3):296-9、Epub 2000/03/04、doi:10.1038/73737、PubMed PMID: 10700144 (2000); 非特許文献14:Song氏ら、組織工学的膵臓代替物のガラス化、Transplantation Proceedings、37 (1):253-255 (2005); 及び非特許文献15:Song氏ら、ウサギ関節軟骨の硝子体保存、Cell Preservation Technology、2 (1); 67-74 (2004))。これらの刊行物の開示の全体は、例えば、本開示が関連する技術状態をより完全に説明するために、参照により本願に援用される。ガラス化とは、結晶化を伴わない液体の固化である。冷却が進むにつれて、組織を透過する液体の分子運動は減少する。最終的には、ガラスとして知られる「停止した液体」状態が達成される。ガラス化(vitrification:ギリシャ語でガラスを意味する「vitri」に由来)と呼ばれるのは、この液体からガラスへの変換である。ガラス化は、氷の結晶の核生成と成長を防ぐように溶質の組成と冷却速度を調整することで達成できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Afaq et al., Protective effect of pomegranate-derived products on UVB-mediated damage in human reconstituted skin, Exp Dermatol., 18(6): 553-61 (2009)
【非特許文献2】Felippi et al., Safety and efficacy of antioxidants-loaded nanoparticles for an anti-aging application, J Biomed Nanotechnol, 8(2): 316- 321 (2012)
【非特許文献3】Jirova et al., Comparison of human skin irritation patch test data with in vitro skin irritation assays and animal data, Contact Dermatitis, 62(2): 109-16 (2010)
【非特許文献4】Kaluzhny et al., Development of the EpiOcular(TM)eye irritation test for hazard identification and labeling of eye irritating chemicals in response to the requirements of the EU cosmetics directive and REACH legislation, Altern Lab Anim, 39(4): 339-64 (2011)
【非特許文献5】Kolle et al., In-house validation of the EpiOcular(TM)eye irritation test and its combination with the bovine corneal opacity and permeability test for the assessment of ocular irritation, Altern Lab Anim, 39(4): 365-87 (2011)
【非特許文献6】Ren et al., Use of the EpiAirway model for characterizing long-term host-pathogen interactions. J Vis Exp. 55: e3261 (2011)
【非特許文献7】Scheel et al., Classification and labeling of industrial products with extreme pH by making use of in vitro methods for the assessment of skin and eye irritation and corrosion in a weight of evidence approach, Toxicol In Vitro, 25(7): 1435-47 (2011)
【非特許文献8】Sharma et al., The efficacy of Ehcinacea in a 3-D tissue model of human airway epithelium, Phytother Res., 24(6): 900-4 (2010)
【非特許文献9】Brockbank et al., Quantitative Analyses of Vitrified Autologous Venous Arterial Bypass Graft Explants, Cell Preservation Technology, 5 (2) (2007); 68-76
【非特許文献10】Brockbank et al., Vitrification of Porcine Articular Cartilage, Cryobiology 60, 217-221, http://www.pubmedcentral.gov/articlerender.fcgi?artid=2834839 (2010)
【非特許文献11】Dahl et al., Feasibility of vitrification as a storage method for tissue-engineered blood vessels, Tissue Eng., 12(2):291-300 (2006)
【非特許文献12】Schenke-Layland et al., Optimized preservation of extracellular matrix in cardiac tissues: implications for long-term graft durability, Annals of Thoracic Surgery, 83:1641-1650 (2007)
【非特許文献13】Song et al., Vitreous cryopreservation maintains the function of vascular grafts, Nature Biotechnology, 8(3):296-9, Epub 2000/03/04, doi:10.1038/73737, PubMed PMID: 10700144 (2000)
【非特許文献14】Song et al., Vitrification of tissue engineered pancreatic substitute, Transplantation Proceedings, 37 (1):253-255 (2005)
【非特許文献15】Song et al., Vitreous Preservation of Rabbit Articular Cartilage, Cell Preservation Technology, 2 (1); 67-74 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、ガラス化プロセスで一般的に使用される高濃度の凍結保護剤(CPA)を使用することの欠点は、細胞毒性である可能性がある。しかし、ガラス化の利点の1つは、硝子体マトリックス内に閉じ込められた生体物質には経時的な分解が起こらないため、凍結に伴う生物学的損傷の影響がないである。
【0016】
このように、個々の構成物の凍結保存は成功しているが、生存可能な組織構成物の収率を向上させる必要がある(すなわち、50%よりも大幅に高くする)。さらに、一度に複数の構成物を保存することは可能であるが(従来は、2人の技術者が一緒に作業する場合にのみ可能であった)、複数の構成物を一度に保存することができ、生存可能な組織構成物の収率が50%より大幅に高い、高処理能力システムがさらに必要とされている。
【0017】
本開示の発明者らは、これを達成することを可能にする方法論を開発した。(すなわち、生物工学的構成物のような、個々の天然組織または生物工学的組織の保存、または複数の天然組織および/または生物工学的に作製された組織、例えば生物工学的に作製された構成物であって、生存可能な組織構成物の収率が50%より大幅に高いもの)。いくつかの実施形態では、これは、例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的構成物を含む多数の(例えば、24個または最大384個などの)ウェルインサートを一度に保持し、首尾よく保存することができる、本開示のカセットを使用することを含む。カセットは、インサートを保持するために互いに嵌合する2つの部分を有する。上部には、ウェルプレートのウェル配列に適合した配置でインサートを保持するためのプレースホルダーがある。この構成により、生体材料(例えば、生物工学的構成物のような天然組織および/または生体工学的組織)を、必要に応じてカセットからプレートへ移動させることが容易になる。カセットの両方の部分に穴が存在し、溶液(ガラス化ステップ中に使用される溶液など)が、各インサートおよび生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)の中および周囲を容易に流れることを可能にする。いくつかの実施形態では、カセットは、凍結保護剤の注入/除去段階および実際のガラス化の間、ガラス化液に浸漬することができる。プレースホルダーは、同様に保存のためのネイティブ組織の断片を保持するように容易に改変することができる。このカセットは、ガラス化プロセス全体の自動化に容易に適合させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書には、従来の保存方法に関連する生存能の喪失を低減または防止しながら、生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を保存するための方法を記載する。また、本明細書には、生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を凍結保存するためのカセットおよびこれらのカセットを使用する方法も記載する。
【0019】
これに関して、本明細書に記載するのは、少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを保存するための方法であって、(i)前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを、凍結保護剤の濃度が増加する一連の溶液に浸漬して、70重量%未満または等しい(以下の)凍結保護剤濃度を有する最終溶液に浸漬される少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を形成するステップと、(ii)前記70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する前記最終溶液中の前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を、前記70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する前記最終溶液のガラス転移温度以下の温度まで冷却するステップと、および(iii)前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を、前記凍結保護剤の濃度が減少する一連の溶液に浸漬して、実質的に凍結保護剤を含まない溶液に浸漬された少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織を得るステップであって、前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織は、実質的に凍結保護剤を含まないものである、前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織を得るステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態によるカセットの概略図を示す。
図2A】実施形態によるカセットを一体として示す概略図であり、生体材料がどのようにカセットに嵌合するかを示す。
図2B】閉位置にある図2Aのカセットの側面図を示す。
図2C】蓋を外した状態の図2Bのカセットの側面図を示す。
図2D】生体物質サンプルが一方の側に配置されたカセットの2つの側面を有する、図2Bのカセットの側面図を示す。
図2E図2Dのカセットの両側の側面図を示す。
図3】実施形態によるカセットの写真である。
図4】開示された実施例によるプロトコル改変後の表皮構成物の生存率を示すチャートである。
図5図5は、開示された実施例による、トリトン-X100への曝露後の新鮮なおよびガラス化表皮の生存率を示すチャートである。
図6図6は、開示された実施例による、バイアルおよびディープウェルプレート中でのガラス化後のいくつかの構成物の生存率を例示するチャートである。
図7図7は、開示された実施例に従う、種々の構成物の保存後の生存率を例示するチャートである。
図8図8は、開示された実施例による、ディープウェルプレートおよびカセットにおける生存率を例示するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
開示されたカセットおよび方法は、特定の実施形態の以下の詳細な説明、本明細書に含まれる実施例および、図およびそれらの説明を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0022】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、以下の意味を有するように定義される多数の用語を参照する。
【0023】
本明細書で使用する場合、「室温(room temperature)」という用語は、標準圧力で約18℃~約25℃の温度を指す。様々な例において、室温は、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、または約25℃であってもよい。
【0024】
本明細書で使用する場合、「ガラス化(vitrification)」という用語は、氷晶の形成を伴わないか、または実質的な氷晶の形成を伴わない固化を指す。いくつかの実施形態では、保存するサンプル(例えば、組織または細胞材料など)は、ガラス化および/または硝子体凍結保存(最初の冷却から再加温の完了までの全体)が氷結晶形成なしに達成され得るように、ガラス化され得る。いくつかの実施形態では、保存するサンプル(例えば、組織または細胞材料など)は、保存するサンプル(例えば、組織または細胞材料など)の固化が実質的な氷結晶形成なしに起こり得るガラス化および/または硝子体凍結保存が達成され得るように、ガラス化され得る(すなわち、ガラス化および/または硝子体凍結保存(最初の冷却から再加温の完了までの全体)は、組織に損傷を与える量よりも少ない、少量の、または制限された量の氷の存在下でも達成されうる)。
【0025】
本明細書で使用するように、保存するサンプルまたは生体材料(例えば、天然組織、または生物工学的に処理された構成物などの生物工学的処理組織)は、ガラス転移温度(Tg)に達するとガラス化される。ガラス化の過程では、温度が下がるにつれて凍結保護剤溶液の粘度が著しく上昇し、氷の核形成と成長が阻害される。一般に、溶液が凍結せずに過冷却できる最低温度は均質核生成温度Tであり、この温度で氷結晶が核生成および成長し、溶液から結晶性固体が形成される。ガラス化溶液にはガラス転移温度Tがあり、この温度で溶質はガラス化する、つまり非結晶性固体になる。
【0026】
本明細書で使用する場合、「ガラス転移温度(glass transition temperature)」は、プロセスが実施される条件下での溶液または製剤のガラス転移温度を指す。一般に、本開示の方法論は生理的圧力で実施される。しかし、保存するサンプル(例えば、組織または細胞材料など)がそれによって著しく損傷されない限り、より高い圧力を使用することができる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「凍結保護剤(cryoprotectant)」という用語は、組織が氷点下まで冷却されたときに組織/器官内およびその周囲での氷結晶形成を最小限に抑え、凍結保護剤を使用しない冷却の効果と比較して、加温後に組織/器官への損傷が実質的に生じない化学物質を意味する。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「生体材料(biomaterial)」は、天然および/または生体工学的(に処理した)細胞もしくは組織、または非植物、哺乳類真核生物の生物工学的構成物(bioengineered constructs)を含む。本明細書で使用する場合、「組織(tissue)」、「複数の組織(tissues)」、「構成物(construct)」または「複数の構成物(constructs)」という用語は、あらゆる種類の細胞タイプおよびそれらの組み合わせからなる、および/またはそれらに由来し、例えば、卵巣組織、精巣組織、臍帯組織、胎盤組織、結合組織、心臓組織、筋肉・軟骨・骨組織、内分泌組織、皮膚、神経組織、体細胞(組織または器官内のあらゆる種類の細胞を含む)、線維芽細胞、ケラチノサイト、肝細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞、幹細胞、前駆細胞、卵母細胞、生殖細胞などである。
【0029】
「組織(tissue)」、「複数の組織(tissues)」、「構成物(construct)」または「複数の構成物(constructs)」という用語は、脂肪組織または歯髄組織を含むこともある。いくつかの実施形態では、「組織(tissue)」または「複数の組織(tissues)」は、ヒト肝臓、ヒト肺、ヒト腎臓、ヒト腸、ヒト心臓、ヒト膵臓、ヒト精巣、ヒト胎盤、ヒト胸腺、ヒト副腎、ヒト動脈、ヒト静脈、ヒト神経、ヒト皮膚、ヒトリンパ節、ヒト骨またはヒト骨格筋などのヒトから得られてもよい。いくつかの実施形態では、「構成物(construct)」または「複数の構成物(constructs)」は、ヒト肝臓、ヒト肺、ヒト腎臓、ヒト腸、ヒト心臓、ヒト膵臓、ヒト精巣、ヒト胎盤、ヒト胸腺、ヒト副腎、ヒト動脈、ヒト静脈、ヒト神経、ヒト皮膚、ヒトリンパ節、ヒト骨またはヒト骨格筋などのヒト組織または臓器から得られ、および/またはそれらに由来し得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、凍結保存生体材料に関連する「凍結保存後の機能的(functional after cryopreservation)」という用語は、天然および/または生物工学的に改変された細胞および組織、例えば生物工学的に改変された構成物のような凍結保存生体材料が、凍結保存後に許容可能なおよび/または意図された機能(例えば、予測毒性スクリーニングのためのモデルおよび創薬のためのモデルとして機能し得るような)を保持することを意味する。いくつかの実施形態において、凍結保存後の生体材料の細胞材料は、その意図された機能を全て保持する。いくつかの実施形態では、本開示の方法によって保存された細胞凍結保存生体材料は、意図された機能の少なくとも50%、例えば、意図された機能の少なくとも60%、例えば、意図された機能の少なくとも70%、例えば、意図された機能の少なくとも80%、例えば、意図された機能の少なくとも90%、例えば、意図された機能の少なくとも95%、例えば、意図された機能の100%などを保持する。例えば、細胞の生存能の維持とともに、予測毒性スクリーニングのためのモデルおよび創薬のためのモデル、および/または組織(例えば、移植されるもの)が周囲の組織と統合する能力として機能するような生体材料(例えば、天然組織および/または生物工学的構成物などの生体工学的組織)の生理学的機能(複数可)を維持/保存することも重要であろう。
【0031】
本明細書に記載するのは、生存可能な生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)、および本開示のカセット内など、そのような構成物を保存/保管するための方法である。
【0032】
特定の態様において、これらの生体材料は、真核細胞(これは、操作された組織または天然組織のいずれか、または両方の組み合わせであり得る)を含み、本明細書に記載する方法は、保存中または保存からの生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)の除去後のいずれかに生じる生体材料特性(例えば、組織/細胞生存率、細胞外マトリックスの完全性、またはそれらの組み合わせ)の損失を低減または防止するような方法で、これらの生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を保存/保管することを含む。実施形態において、これらの生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)は、凍結保護剤などの少なくとも1つの薬剤を含む、予冷された(複数の)ガラス化溶液などの溶液または一連の溶液(例えば、最終的な凍結保護剤濃度を達成するため)に入れられる。その後、少なくとも1つの薬剤を含む溶液に入れられた生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)は、これらの生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)がさらに必要とされるまで、特定の温度範囲で保存される。凍結保護剤などの少なくとも1つの薬剤の濃度は、生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)の生体材料特性(例えば、細胞生存率および/または細胞外マトリックスの完全性)が最大化されるように最適化される。
【0033】
本明細書に記載の生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を、本明細書に記載の組成物および方法とともに使用する場合、1つの目的は、細胞生存能の喪失を防止すること、および/または細胞外マトリックスの完全性の喪失を防止することである。
【0034】
例えば、特定の態様において、本開示の目的は、生体材料の細胞生存能の損失を低減または防止することである。特定の態様において、本明細書に記載する組成物、カセットおよび方法を使用して、ネクローシス細胞死、アポトーシス細胞死、オートファジー(II型)細胞死、アノイキス、およびネクロプトーシスを含むがこれらに限定されない様々なタイプの細胞死を低減または予防することができ、特定の態様において、これらのタイプの細胞死は、以下にさらに記載するような薬剤の使用によって制限することができる。代謝活性アッセイ(例えば、細胞内で起こる酸化/還元反応を測定することによって、細胞生存能を評価するために使用されるレサズリンアッセイ)、種々の細胞染色技術(例えば、トリパンブルー排除アッセイおよび生/死染色)、免疫組織化学、生化学および種々の遺伝子発現アッセイが、生存能を評価するために使用され得る。
【0035】
さらに、細胞外マトリックスの完全性は、透過性、水分含量、グリコサミノグリカン含量、またはそれらの組み合わせに基づいて決定することができる。特定の態様において、1つの目的は、細胞外マトリックスの完全性の損失を防止または低減するために、生体材料(複数可)を保存している間、透過性、含水量、グリコサミノグリカン含有量、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つを維持することである。生体材料(複数可)のマトリックスの完全性を決定する場合、当該技術分野で公知の多数の技術を使用することができる。これらの技術には、透過性、水分含有量、グリコサミノグリカン含有量を測定するマトリックス電気伝導度アッセイ、圧痕試験、応力/ひずみ試験、弾性、RAMAN分光法、種々の顕微鏡法(第二高調波発生を伴うレーザー走査顕微鏡法など)などが含まれる。
【0036】
ある側面において、組織マトリックスが生体材料として使用される場合、細胞生存能の喪失および細胞外マトリックスの完全性の喪失を予防または低減することは、生体材料の構造的完全性および正常な生物学的機能を維持するために重要である。
【0037】
例えば、軟骨(例えば、天然軟骨または生体工学的軟骨構成物のような生体工学的軟骨のいずれか)は、軟骨細胞(すなわち、細胞)および細胞外マトリックスを含み、細胞外マトリックスは主にコラーゲン線維、プロテオグリカン、およびエラスチン線維から構成される。軟骨細胞の生存能と軟骨細胞外マトリックスの完全性は、インビボ、エクスビボ、インビトロでの応用において、正常で生理的な生物学的機能を維持するために重要である。例えば、軟骨の細胞外マトリックスは、生体内で構造的完全性を提供し、一定レベルの剛性を維持し、骨の支持、適切な関節可動性などに機能する。ある側面では、軟骨の細胞外マトリックスの透過性が特に重要である。例えば、軟骨の透過性は、軟骨の細胞外マトリックスの構造的完全性を維持し、軟骨細胞の生存能力を維持するのに重要な役割を果たす。ある態様において、軟骨の細胞外マトリックスの透過性の低下は、軟骨細胞の生存率の増加および軟骨の細胞外マトリックスの構造的完全性の低下に関連し得る。
【0038】
本明細書に記載の生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)は、生体材料の特性(例えば、細胞生存能、細胞外マトリックスの完全性、またはそれらの組み合わせ)の喪失を防止または低減するように設計された溶液(例えば、ガラス化溶液など)に入れることができ、ある態様において、この溶液は、動物性産物を含まない(例えば、FBSを含まない)か、または動物性産物を含む(例えば、FBSを含む)ことができる。以下の説明および実施形態は、生体材料を含む動物産物を含む溶液にも適用されることに留意すべきである。ある態様において、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)は、溶液中に少なくとも部分的に浸漬され(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット内に含まれている間に)、他の態様において、生体材料は、溶液中に完全に浸漬される(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット内に含まれている間に)。
【0039】
1つの態様において、溶液は、生体材料の特性(例えば、細胞生存能、細胞外マトリックスの完全性、またはそれらの組み合わせ)の損失を防止または低減する少なくとも1つの薬剤を含む細胞外タイプの溶液であり得る。例えば、細胞外タイプの溶液は、生体材料(複数可)の細胞および組織(例えば、天然組織および/または生物工学的構成物などの生体工学的組織)の正常な細胞外環境を模倣するイオン補体を有する等張性、血漿様溶液を含み得る。これらの等張、血漿様溶液は、栄養支持のために生体材料(例えば、細胞および/または組織)に種々のアミノ酸および代謝産物を提供する細胞培養培地を含み得る。例えば、細胞外型溶液に使用される細胞培養培地としては、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、αMEM、グラスゴーMEM、ハムF10、ハムF-12、ライボビッツL-15、イスコーブ改変DMEM、DMEM/ハムF-12、およびこれらの誘導体を挙げることができるが、これらに限定されない。細胞外タイプの溶液は、生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を細胞溶液に入れる前に、細胞溶液が動物性産物を含まないように、動物性産物を含まないものとすることができる。例えば、細胞培養培地を使用する場合、細胞培養培地はウシ胎児血清(FBS)または動物由来の他のいかなる製品も含まない。
【0040】
特定の態様において、溶液(例えば、ガラス化溶液など)は細胞内タイプの溶液を含む。細胞内型溶液は、保存中に生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)中の細胞と細胞内型溶液との間の水およびイオンの受動的交換を制限するように処方された等張溶液を含むことができるが、これらに限定されない。例えば、細胞内タイプの溶液は、ラクトビオン酸塩またはグルコン酸塩のような非透過性陰イオンを含むことができ、細胞外空間の塩化物イオンを部分的に置換し、細胞質高分子および細胞内に閉じ込められたそれらの関連対イオンによって生成される細胞内オンコシス圧のバランスをとる浸透圧支持を提供する。細胞内タイプの溶液としては、VIASPAN(登録商標)(すなわち、Belzer’s Solution)およびUNISOL(登録商標)(例えば、SPS-1)が挙げられるが、これらに限定されない。上述の細胞外タイプの溶液と同様に、細胞内タイプの溶液は動物性産物を含まないものとすることができる。
【0041】
溶液をさらに補い、生体材料の生存性をさらに促進するために、追加の薬剤/成分を溶液(例えば、ガラス化溶液など)に添加することができる。例えば、これらの追加の薬剤/成分は、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)に追加の栄養支持を提供し得るもので、これにより、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)の生存能の喪失を低減または防止する。これらの追加的な薬剤/成分としては、非動物由来(すなわち、合成由来)の必須アミノ酸、合成由来の非必須アミノ酸、合成由来のビタミン、合成由来の脂質、合成由来の炭水化物、またはそれらの任意の組み合わせを有する栄養カクテルを挙げることができるが、これらに限定されない。栄養カクテルに含まれる炭水化物の例としては、サッカリドおよび/またはその誘導体(例えば、グルコース、グリセロール、スクロース、トレハロース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、ラクトースなど)、またはそれらの組み合わせをさらに挙げることができる。カクテル中に提供されるアミノ酸の例としては、グリシン、L-アルギニン、L-シスチン、L-グルタミン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、またはそれらの塩の任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。カクテル中に提供されるビタミンの例としては、コリン、D-カルシウム、葉酸、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、イノシトール、またはそれらの塩の任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、薬剤は、Q-VD-OPH(キノリン-Val-Asp-ジフルオロフェノキシメチルケトン)、α-トコフェロール、フェルラ酸、クルクミン、アレンオキシド合成酵素、およびSDF-1のうちの1つ以上を含み得る。
【0042】
特定の態様において、薬剤は、例えば、対照と比較して、生体材料の特性(例えば、細胞生存率および/または細胞外マトリックスの完全性)の損失を、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または99%以上減少させることができる。別の言い方をすると、本剤は、例えば、対照と比較して、生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)の特性の喪失を、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%、実質的にまたは完全に抑制することができる。
【0043】
特定の態様において、溶液は、1pM~2mM、10pM~1mM、1nM~1mM、100nM~0.5mM、100nM~0.25mM、1μM~1mM、250μM~1mM、1pM~1000μM、1pM~500μM、1pM~30μM、1pM~1000nM、1pM~500nM、1pM~250nM、100pM~750μM、100pM~500μM、100pM~20μM、100pM~1000nM、1pM~750nM、1pM~500nM、1pM~250nM、1pM~1nM、500pM~500μM、500pM~250μM、500pM~100μM、500pM~10μM、500pM~1000nM、500pM~750nM、500pM~500nM、500pM~250nM、500pM~100nM、500pM~1nM、1nM~1000μM、1nM~750μM、1nM~500μM、1nM~250μM、1nM~100μM、1pM~1μM、100nM~1000μM、100nM~750μM、100nM~500μM、100nM~250μM、100nM~100μM、100pM~1μM、250nM~1000μM、250nM~750μM、250nM~500μM、250nM~250μM、250nM~100μM、250nM~1μM、500nM~1000μM、500nM~750μM、500nM~500μM、500nM~250μM、100nM~100μM、500nM~1μM、750nM~1000μM、750nM~750μM、750nM~500μM、750nM~250μM、750nM~100μM、750nM~1μM、0.5μM~1000μM、10μM~950μM、20μM~900μM、30μM~850μM、40μM~800μM、50μM~750μM、60μM~700μM、70μM~650μM、80μM~600μM、90μM~550μM、100μM~500μM、110μM~450μM、120μM~400μM、130μM~350μM、140μM~300μM、150μM~250μM、160μM~200μM、0.5μM~100μM、1μM~90μM、5μM~90μM、10μM~85μM、10μM~75μM、20μM~85μM、20μM~65μM、30μM~70μM、30μM~50μM、40μM~80μM、または40μM~50μMの範囲の濃度(組み合わせて、または各薬剤を個別に)で、そのような薬剤の1つ以上を含み、ここで、上記の範囲内で発生する任意の濃度は、範囲の終点として機能することもできる。
【0044】
ガラス化は、様々な凍結保護剤混合物および冷却/加温条件を用いて達成することができる。重要な変数は、生体材料の各特定の細胞外組織マトリックスタイプ(例えば、生物工学的構成物のような天然および/または生体工学的組織)および個々の生体材料のサイズに対して最適化されるべきである。凍結保護剤混合物の選択、および過度の浸透圧ショックを伴わない凍結保護剤の添加および除去に必要な平衡化ステップは、生体材料サンプルにおける凍結保護剤浸透の測定された速度論に基づいて、または生存率および/もしくは機能の実証によって最適化されるべきである。凍結置換は、所定のプロトコルで氷を使わない保存が達成されたことを確認するためにも採用できる。
【0045】
実施形態は、段階的な冷却プロセスを含んでいてもよく、例えば、生体材料(複数可)を(例えば、天然組織および/または生物工学的構成物などの生体工学的組織)、凍結保護剤を含む第1の溶液中で、第1の溶液の温度(0~+4℃)~-20℃の第1の温度まで冷却し、次いで、第1の溶液の温度と-20℃との間の温度で、凍結保護剤を含む(前の溶液よりも高濃度で)第2の溶液中で、第2の温度までさらに冷却し、所望の凍結保護剤濃度と温度に達するまで、このプロセスは、第3回目、第4回目、第5回目、第6回目、第7回目などの回数で繰り返され得る。この点に関して、以下により詳細に論じるように、本開示のカセットの両方の部分に穴が存在し、それぞれの溶液が各インサートおよび生体材料の中および周囲を容易に流れる(そして前の溶液を置換する/置き換える)ことを可能にする。いくつかの実施形態では、それぞれの溶液の流れは、CPA注入/除去工程の間、および/または実際のガラス化もしくは保存の間、カセットをそれぞれの溶液に浸漬することができるように、所定時間停止することができる。
【0046】
ガラス化溶液の最終的な凍結保護剤濃度は、生体材料(複数可)(例えば、天然組織および/または生物工学的構成物などの生体工学的組織)が、第1の凍結保護剤濃度を含む第1の溶液に浸漬され(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット内に含まれている間に)、次いで、生体材料(複数可)が(例えば、生体材料が本開示のカセット内に含まれている間に)、第2の凍結保護剤濃度(これは、第1の凍結保護剤濃度よりも高い)を含む第2の溶液に浸漬され、所望の濃度が達成されるまで、このプロセスは、第3回目、第4回目、第5回目、第6回目、第7回目などの回数で繰り返され得る。
【0047】
溶液/ガラス化調合液は、任意の組み合わせの凍結保護剤を含んでもよい。適切な凍結保護剤としては、以下に列挙するものに加えて、例えば、ジメチルスルホキシド、1,2-プロパンジオール、エチレングリコール、n-ジメチルホルムアミドおよび1,3-プロパンジオールが挙げられ、アセトアミド、アガロース、アルギン酸、アラニン、アルブミン、酢酸アンモニウム、ブタンジオール、コンドロイチン硫酸、クロロホルム、コリン、シクロヘキサンジオール、デキストラン、ジエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エリスリトール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ホルムアミド、グルコース、グリセロール、グリセロリン酸、モノ酢酸グリセリル、グリシン、ヒドロキシエチルデンプン、イノシトール、ラクトース、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、マンニトール、マンノース、メタノール、メトキシプロパンジオール、メチルアセトアミド、メチルホルムアミド、メチル尿素、メチルグルコース、メチルグリセロール、フェノール、プルロニックポリオール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、プロリン、プロピレングリコール、プロパンジオール、ピリジンN-オキシド、リボース、セリン、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、スクロース、トレハロース、トリエチレングリコール、酢酸トリメチルアミン、尿素、バリン、キシロースを含む。
【0048】
使用され得る他の凍結保護剤は、Fahy氏らへの米国特許第6,395,467号、Wowk氏らへの米国特許第6,274,303号、Khirabadi氏らへの米国特許第6,194,137号、Fahy氏らへの米国特許第6,187,529号、Fahy氏らへの米国特許第5,962,214号、Calaco氏らへの米国特許第5,955,448号、Meryman氏への米国特許第5,629,145号、および/またはKhirabadi氏らへの米国特許第6,740,484号に対応する国際公開第02/32225号、に記載されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示の前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を形成する前に、本開示の方法は、さらに、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織を、所定の持続時間にわたり、前凍結保存液(例えば、前述の薬剤および/または凍結保護剤のうちの1つ以上を含む)に浸漬するステップを含み得るものであり、例えば、少なくとも4時間、または少なくとも6時間、または少なくとも12時間の所定の持続時間、または3時間~15時間の範囲の所定の持続時間、または6時間~12時間の範囲の所定の持続時間、または8時間~10時間の範囲の所定の持続時間、約9時間の所定の持続時間などである。いくつかの実施形態では、前記前凍結保存液は、抗酸化剤およびカスパーゼ阻害剤よりなる群から選択される薬剤を含むか、または薬剤を含むことができる。このような薬剤および/または前述の薬剤および/または凍結保護剤は、前記前凍結保存液内で、1pM~2000mM、10pM~1000mM、1nM~100mM、100nM~0.25mM、1μM~1mM、250μM~1mM、1pM~1000μM、1pM~500μM、1pM~30μM、1pM~1000nM、1pM~500nM、1pM~250nM、100pM~750μM、100pM~500μM、100pM~20μM、100pM~1000nM、1pM~750nM、1pM~500nM、1pM~250nM、1pM~1nM、500pM~500μM、500pM~250μM、500pM~100μM、500pM~10μM、500pM~1000nM、500pM~750nM、500pM~500nM、500pM~250nM、500pM~100nM、500pM~1nM、1nM~1000μM、1nM~750μM、1nM~500μM、1nM~250μM、1nM~100μM、1pM~1μM、100nM~1000μM、100nM~750μM、100nM~500μM、100nM~250μM、100nM~100μM、100pM~1μM、250nM~1000μM、250nM~750μM、250nM~500μM、250nM~250μM、250nM~100μM、250nM~1μM、500nM~1000μM、500nM~750μM、500nM~500μM、500nM~250μM、100nM~100μM、500nM~1μM、750nM~1000μM、750nM~750μM、750nM~500μM、750nM~250μM、750nM~100μM、750nM~1μM、0.5μM~1000μM、10μM~950μM、20μM~900μM、30μM~850μM、40μM~800μM、50μM~750μM、60μM~700μM、70μM~650μM、80μM~600μM、90μM~550μM、100μM~500μM、110μM~450μM、120μM~400μM、130μM~350μM、140μM~300μM、150μM~250μM、160μM~200μM、0.5μM~100μM、1μM~90μM、5μM~90μM、10μM~85μM、10μM~75μM、20μM~85μM、20μM~65μM、30μM~70μM、30μM~50μM、40μM~80μM、または40μM~50μMの範囲の濃度(組み合わせ、または各薬剤を個々に)で含まれ得るものであり、ここで、上記範囲内で生じる任意の濃度は、範囲の終点としても機能し得る。
【0050】
本開示の方法論において採用される溶液の体積は、生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)のサイズに基づいて、かなり変化し得る。
【0051】
実施形態において、溶液は、Euro-Collins溶液、滅菌水、塩溶液、培養培地、および任意の生理学的溶液などの水溶液中の凍結保護剤を含む。
【0052】
生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)の保存に使用される溶液中の凍結保護剤の最終濃度は、任意の所望の所定の値であってよいが、一般に、(保存溶液の総重量の)約70重量%以下の凍結保護剤、例えば、約65重量%以下の凍結保護剤、または約60重量%以下の凍結保護剤であろう。いくつかの実施形態において、保存に使用される溶液中の凍結保護剤の最終濃度は、(保存溶液の総重量の)約50~約80重量%の凍結保護剤、または約60~約75重量%の凍結保護剤、または約68~約72重量%の範囲内であってもよい。しかし、いくつかの実施形態(生物工学的に作製された軟骨など)では、保存に使用される溶液中の凍結保護剤の最終濃度は、上記の濃度よりも高くてもよい。
【0053】
実施形態において、保存される生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)は、以前に凍結保護剤に曝露されている場合もあれば、曝露されていない場合もある。
【0054】
実施形態において、保存される生体材料(複数可)(例えば、天然組織および/または生物工学的構成物などの生体工学的組織)は、溶液の凍結保護剤濃度が、所定の最終溶液凍結保護剤濃度、例えば(≦)70重量%以下の凍結保護剤濃度を達成するために、線形または非線形の濃度勾配を使用することなどによって(例えば、生体材料(複数可)と接触するために本開示のカセットの穴を通って流れる溶液に関して)、徐々に増加し得る溶液に浸漬され得る(または曝露され得る)。そのような実施形態において、濃度勾配は、凍結保護剤を含まない溶液(例えば、本開示のカセット中に最初に存在し、カセット中に構成される生体材料(複数可)に接触する凍結保護剤を含まない溶液)が、≦70重量%の凍結保護剤濃度を有する溶液などの所望の溶液で徐々に置換される、線形または非線形の濃度勾配である。
【0055】
例えば、凍結保護剤を含まない溶液(例えば、本開示のカセット内に最初に存在する)は、約30分の時間期間、例えば約10分の時間期間、または約5分の時間期間において、≦70重量%の凍結保護剤濃度を有する溶液などの所定の溶液で実質的に置換されてもよい。実施形態において、凍結保護剤を含まない溶液が、≦70重量%の凍結保護剤濃度を有する溶液などの所定の溶液と置換される速度は、存在する生細胞の大部分または存在する全ての生細胞を殺さない程度に低くあるべきであり、このような速度は、生体材料(複数可)の特定の組織/細胞(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)および個々の生体材料(複数可)のサイズに依存する。特定の実施形態において、ガラス化中における濃度変化は、近似的な浸透圧平衡化を達成するのに十分に遅い。他の実施形態において、ガラス化中における濃度変化は、最終濃度に達するまで近似浸透圧平衡化が達成されないように、より急速である。
【0056】
実施形態において、溶液の濃度は、70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する溶液などの所定の凍結保護剤濃度溶液を達成するために段階的に増加する。例えば、実施形態において、凍結保護剤の濃度は、特定のプラトー(例えば、本開示のカセット内で測定される)を達成するために段階的に添加してもよく、このプラトーは、所定時間、例えば、3分~10分の範囲の所定時間、または4分~6分の範囲の所定時間、または約5分の所定時間の間維持されてもよい。特定の実施形態において、凍結保護剤の濃度は、特定のプラトーを達成するために段階的に添加されてもよく、このプラトーは、5分以上、または約10分以上、または約15分以上など、おおよその浸透圧平衡化を達成するのに十分な時間維持されてもよい。次に、第1の凍結保護剤溶液にさらなる凍結保護剤を添加して凍結保護剤濃度を増加させるか、または凍結保護剤のより濃縮された第2の溶液を第1の凍結保護剤溶液に代えることができる。次いで、所定時間(例えば、上記のものに対応する)、または近似的な浸透圧平衡化を達成するのに十分な時間、濃度を維持した後、所望の濃度、例えば、≦70重量%の凍結保護剤濃度を達成するために、1つ以上のステップで、さらなる凍結保護剤を添加してもよく、またはより濃縮されたものを置換してもよい。
【0057】
実施形態において、≦70重量%の凍結保護剤濃度などの所望の濃度に到達する前に、2~10の間の任意の整数などの任意の数の凍結保護剤濃度プラトーおよび/またはステップが存在してもよい。例えば、実施形態では、≦70重量%の凍結保護剤濃度のような所望の濃度に到達する前に、4つの凍結保護剤濃度プラトーが使用され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、6つのステップがあってもよく、最初のステップでは凍結保護剤を含まない溶液を使用し、その後に4つの増加する凍結保護剤濃度のプラトーが続き、そして最終的な所定の凍結保護剤濃度、例えば≦70重量%の凍結保護剤濃度が続く。例えば、最終的な所定の凍結保護剤濃度が約70重量%の凍結保護剤であるこのような実施形態では、ステップ1では、凍結保護剤を使用しないことができ、ステップ2では、最終的な凍結保護剤濃度の約5~約20%、例えば約10~約15%を使用することができ、ステップ3では、最終的な凍結保護剤濃度の約15~約35%、例えば約20~約30%を使用することができ、ステップ4では、最終凍結保護剤濃度の約40~約60%、例えば約45~約55%を使用してもよく、ステップ5では、最終凍結保護剤濃度の約65~約85%、例えば約70~約80%を使用してもよく、そしてステップ6では、約70重量%の凍結保護剤である最終凍結保護剤濃度を使用してもよい。いくつかの実施形態において、各凍結保護剤濃縮ステップは、所定の持続時間、例えば、3分~10分の範囲の所定の持続時間、または4分~6分の範囲の所定の持続時間、または約5分の所定の持続時間であってよい。いくつかの実施形態において、各凍結保護剤濃度ステップは、おおよその浸透圧平衡化を達成するのに十分な時間維持され得る。
【0059】
例えば、いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルは、1~6種の異なる溶液に浸漬されるか、または前記凍結保護剤の濃度が減少する一連の溶液は、線形または非線形の濃度勾配を介して得られる。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを前記1~6種の異なる溶液に浸漬し、前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを各々の前記異なる溶液に5分以下浸漬する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、(i)前記少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを、凍結保護剤の濃度が増加する一連の溶液に浸漬して、70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する最終溶液に浸漬された少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を形成するステップと、(ii)前記70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する前記最終溶液中の前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を、前記70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する前記最終溶液のガラス転移温度以下の温度まで冷却するステップと、および、(iii)前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織を、前記凍結保護剤の濃度が減少する一連の溶液に浸漬して、実質的に凍結保護剤を含まない溶液に浸漬された少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織を得るステップであって、前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織は、実質的に凍結保護剤を含まない構成物である、前記少なくとも1つの第2の生物工学的構成物または天然組織を得るステップと、を備え、ステップ(iii)において、前記少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルを1~7種の異なる溶液に浸漬するか(そして、少なくとも1つの第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルを、各々の前記異なる溶液に5分以下浸漬する)、または前記凍結保護剤の濃度が増加する一連の溶液は、線形または非線形の濃度勾配を介して得る。
【0061】
生体材料(例えば、天然組織および/または生物工学的構成物などの生体工学的組織)が、所望の濃度、例えば、≦70重量%の凍結保護剤濃度に達するのに十分な濃度の凍結保護剤を含む溶液に浸漬された後、所定の濃度の凍結保護剤を含む溶液中に維持される生体材料(複数可)は、急速に冷却することができ(好ましくは、約35℃/分~約55℃/分の範囲の速度、または約45℃/分の速度で)、約-20℃とガラス転移温度との間の温度まで(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット中に含まれている間に)急速に冷却されてもよく、例えば、約-100℃の温度まで冷却されてもよい。いくつかの実施形態において、急速冷却速度は、毎分約-15~約-75℃であり得る。例えば、平均冷却速度は、毎分約-15~約-75℃、例えば毎分約-30~-60℃、または毎分約-35~-50℃、または毎分約-43~-47℃であってよい。この急速冷却プロセス中に生体材料(複数可)が冷却される温度は、約-20℃と、凍結保護剤が70重量%以下の凍結保護剤濃度である所定の最終凍結保護剤溶液のガラス転移温度との間、例えば、約-80℃~約-180℃、または約-90℃~約-120℃の間における、または約-100℃の温度である。
【0062】
生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)はまた、随意的に、急速冷却工程の後に、徐冷工程を受けてもよく(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット内に構成されている間)、この徐冷工程では、生体材料(複数可)は、毎分30℃未満の平均速度で、例えば、毎分10℃未満の平均速度で、ガラス転移温度を上回る所定の保存温度まで冷却されてもよい。冷却工程は、毎分5℃未満、または毎分約3℃未満の平均速度で実施されてもよい。実施形態において、この徐冷工程全体の間の冷却速度は、毎分30℃を超えて増加せず、例えば、毎分10℃を超えて増加しない冷却速度、または毎分5℃を超えて増加しない冷却速度である。実施形態において、冷却速度(単一または多段階冷却プロセスの場合)には、例えば、約0.5~約10℃/分、例えば約2~約8℃/分、または約4~約6℃/分の範囲の冷却速度が含まれる。実施形態では、氷の形成が回避される限り、プロセスは冷却速度に依存しない。この徐冷プロセス中に生体材料(複数可)が冷却される温度は、約-110℃~約-180℃、または約-125℃~約-145℃、または約-135℃の間である。
【0063】
実施形態では、溶液を含む容器が置かれる環境を変化させることにより、徐冷速度が達成される。
【0064】
いくつかの実施形態では、急速冷却速度は、随意的に予め冷却した2-メチルブタンなどの追加の液体の助けを借りて達成される。次いで、徐冷速度を達成するために、容器(例えば、本開示のカセット)を液体から取り出し、気体環境で最終保管温度までさらに冷却する。
【0065】
生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)は、-20℃未満であってガラス転移温度未満の温度で所定期間保存することができる(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット内に構成されている間)。例えば、上述の冷却工程の後、生体材料(複数可)は、約-110℃~約-180℃、または約-125℃~約-145℃の間における、または約-135℃の温度で保存され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、方法は、さらに、生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)が輸送される、輸送ステップを含み得る(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセットに含まれている間に)。実施形態では、生体材料(複数可)は、最終的な最高強度溶液のガラス転移温度と-20℃との間の温度、例えば、最高強度凍結保護剤溶液のガラス転移温度より約20℃~80℃高い温度で輸送され、例えば、≦70重量%の凍結保護剤濃度を有する溶液、または≦70重量%の凍結保護剤濃度を有する溶液などの所定の最高強度凍結保護剤溶液のガラス転移温度より40℃~60℃高い。例えば、生体材料(複数可)は、約-79.6℃のドライアイス上で輸送することができる。
【0067】
保存後、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)は、所定の最高強度凍結保護液から取り出すことができる。所定の最高強度凍結保護剤溶液から生体材料(複数可)を取り出すための方法は、所定の最高強度凍結保護剤溶液中で、生体材料(複数可)を、-20℃と凍結保護剤溶液のガラス転移温度との間の範囲の加温温度までゆっくりと加温することを含み得る(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット内に構成されている間)。所定の最高強度凍結保護剤溶液中の生体材料(複数可)を加温するために、毎分50℃未満の遅い加温速度を使用してもよい。実施形態において、この段階中の平均加温速度は、毎分約10~40℃、例えば毎分約25~35℃であってもよい。さらに、貯蔵された生体材料(複数可)がゆっくりと加温される温度は、約-30℃~-80℃、例えば約-45℃~-65℃であってもよい。
【0068】
生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)がこの任意のゆっくりした加温プロセスを経た後、生体材料(複数可)は、次いで、-20℃を超える温度まで急速に加温されてもよい(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット内に構成されている間)。実施形態において、温度は、生体材料(複数可)がそこから取り出され得るように溶液が十分に流動性であるように十分に高くあるべきである。急速加温プロセスは、毎分約80℃を超える速度、例えば毎分約100℃を超える速度で実施され得る。このステップの間の平均加温速度は、毎分約200~300℃、例えば毎分約215~250℃であってよい。実施形態において、生体材料(複数可)は、約-20℃を超える温度、例えば約-10℃を超える温度、または約-5℃を超える温度、例えば約-5℃~約5℃の間の温度に加温されてもよい。実施形態において、氷の形成が回避される限り、プロセスは加温速度に依存しない。
【0069】
実施形態において、急速加温速度は、溶液を含む容器が置かれる環境を変化させることによって達成され得る。実施形態において、ゆっくりした加温速度は、容器(例えば、本開示のカセット)を、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)が保存されている温度を超える温度の気体環境中に置くことによって達成され得る。次いで、急速な加温速度を達成するために、容器を誘導加熱システムのコイル内に、または-75℃を超える温度、例えば0℃を超える温度、または通常の大気温度で、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)の水溶液などの液体中に置くことができる。
【0070】
実施形態では、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)が-65℃を超える温度まで温められた後、溶液中の凍結保護剤の濃度は、例えば、凍結保護剤の濃度を増加させるために上述したステップを逆にすることによって(例えば、生体材料(複数可)が本開示のカセット内にある間)、勾配的または段階的に減少させることができる。例えば、実施形態において、凍結保護剤濃度が低減される生体材料(複数可)は、溶液の凍結保護剤濃度が、線形または非線形の濃度勾配を使用するなどして、ほぼ凍結保護剤を含まない溶液または凍結保護剤を含まない溶液を達成するために、徐々に低減され得る溶液に浸漬され得る(または曝露され得る)。実施形態において、濃度勾配は、所定の最高強度の凍結保護剤溶液の凍結保護剤濃度を有する溶液、例えば、≦70重量%の凍結保護剤濃度を有する溶液が、凍結保護剤を含まない溶液と徐々に置換される、線形または非線形の濃度勾配である。
【0071】
実施形態において、凍結保護剤濃度は、段階的に減少する(例えば、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)が本開示のカセットに含まれている間)。実施形態において、組織の凍結保護剤濃度の減少は、組織からの凍結保護剤の溶出を促進するために、一連の減少する凍結保護剤濃度の溶液に組織を浸漬することによって達成され得る。溶液は一般に、約-15℃以上、例えば約-15℃~約15℃、または約0℃~約10℃である。
【0072】
実施形態において、凍結保護剤濃度は、特定のプラトーを達成するために低減されてよく、このプラトーは、所定期間、例えば、3分~10分の範囲である所定期間、または4分~6分の範囲である所定期間、または約5分の所定期間、維持されてよい。いくつかの実施形態において、凍結保護剤濃度は、特定のプラトーを達成するために低減されてもよく、このプラトーは、おおよその浸透圧平衡化を達成するのに十分な時間維持されてもよい。
【0073】
次いで、凍結保護剤濃度をさらに低下させてもよく、これにより凍結保護剤を含まない溶液を提供してもしなくてもよい。そうでない場合、任意に、濃度を十分な時間維持しておおよその浸透圧平衡化を達成した後、凍結保護剤濃度を1つ以上のステップで再びさらに低下させて、最終的に凍結保護剤を含まない溶液を提供することができる。実施形態において、組織は、所定期間、例えば、3分~10分の範囲の所定期間、または4分~6分の範囲の所定期間、または約5分の所定期間、各溶液に浸漬され得る。
【0074】
凍結保護剤濃度を低下させるために、凍結保護剤溶液は、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)に凍結保護剤を添加する際に利用される凍結保護剤を含まない溶液と同様のタイプの溶液と混合してもよい。溶液はまた、少なくとも1つの浸透圧緩衝剤を含んでもよい。
【0075】
本明細書で使用する場合、「浸透圧緩衝剤(osmotic buffering agent)」とは、凍結保護剤の排出プロセス中に、細胞外濃度よりも高い細胞内濃度の凍結保護剤の浸透圧効果を打ち消す、低分子量または高分子量の非浸透性細胞外溶質を意味する。
【0076】
本明細書で使用する「非浸透性(non-penetrating)」とは、化学物質の分子の大部分が生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)の細胞内に浸透せず、代わりに生体材料の細胞外液中に留まることを意味する。
【0077】
本明細書で使用される「低分子量(low molecular weight)」とは、例えば、1,000ダルトン以下の相対分子量を指す。本明細書中で使用する場合、「低分子量浸透圧緩衝剤(low molecular weight osmotic buffering agents)」は、1,000ダルトン以下の相対分子量を有する。低分子量浸透圧緩衝剤としては、例えば、マルトース、フルクトース1,6二リン酸カリウムおよびナトリウム、ラクトビオン酸カリウムおよびナトリウム、グリセロリン酸カリウムおよびナトリウム、マルトペントース、スタキオース、マンニトール、スクロース、トレハロース、グルコース、マルトトリオース、グルコン酸ナトリウムおよびカリウム、グルコース6リン酸ナトリウムおよびカリウム、ならびにラフィノースが挙げられる。実施形態において、低分子量浸透圧緩衝剤は、マンニトール、スクロース、トレハロースおよびラフィノースのうちの少なくとも1つである。
【0078】
本明細書で使用される「高分子量(high molecular weight)」とは、例えば、1,000ダルトン超~500,000ダルトン以下の相対分子量を指す。本明細書で使用する「高分子量凍結保護剤および浸透圧緩衝剤(high molecular weight cryoprotectant and osmotic buffering agents)」は、一般に、1,000ダルトン超~500,000ダルトン以下の相対分子量を有する。高分子量浸透圧緩衝剤としては、例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ラフィノースウンデカアセテート(1,000ダルトン超)およびフィコール(1,000~100,000ダルトン超)が挙げられる。実施形態において、高分子量浸透圧緩衝剤は、約450,000の分子量を有するHESなどのHESである。
【0079】
凍結保護剤を含まない溶液は、約500mM未満の浸透圧緩衝剤、例えば約200~400mMの浸透圧緩衝剤を含んでもよい。浸透圧緩衝剤として、低分子量浸透圧緩衝剤を使用してもよい。実施形態において、低分子量浸透圧緩衝剤はマンニトールである。
【0080】
実施形態では、凍結保護剤は、3ステップ、4ステップ、5ステップ、6ステップ、7ステップなどの一連のステップで除去することができる。実施形態において、凍結保護剤は、一連の7つのステップで除去されてもよく、ステップ1において、生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)は、使用される最高凍結保護剤濃度の約40~約70%、例えば約45~約55%であり得る濃度の凍結保護剤溶液に曝露され得、ステップ2において、生体材料(複数可)は、使用される最高凍結保護剤濃度の約30~約45%、例えば約35~約40%であり得る凍結保護剤濃度に曝露され得、ステップ3において、生体材料(複数可)は、使用される最高凍結保護剤濃度の約15~約35%、例えば約20~約30%である凍結保護剤濃度に曝露され、ステップ4において、生体材料(複数可)は、使用される凍結保護剤濃度の約5~約20%、例えば約10~約15%である凍結保護剤濃度に曝露され、そしてステップ5において、生体材料(複数可)は、使用される凍結保護剤濃度の約2.5~約10%、例えば約5~約7.5%である濃度に曝露され得る。上記のステップにおいて、溶液の残りは浸透圧緩衝剤を含み、凍結保護剤を含まない溶液であってもよい。ステップ6において、実質的に全ての凍結保護剤を除去し、浸透圧緩衝剤を保持してもよい。ステップ7において、浸透圧緩衝剤を除去してもよい。実施形態において、ステップ6および7は、単一のステップにおいて組み合わされてもよい。例えば、浸透圧緩衝剤は、残りの凍結保護剤と同時に除去されてもよい。実施形態において、浸透圧緩衝剤が使用されないか、または除去されない場合、ステップ7は省略され得る。これらの濃度ステップの各々は、約10~30分、または15~25分など、おおよその浸透圧平衡化を達成するのに十分な時間維持され得る。いくつかの実施形態において、濃縮ステップの各々は、約4~6分間、または約5分間維持され得る。実施形態において、凍結保護剤は、凍結保護剤を含まない溶液を用いる1回以上の洗浄で除去される。
【0081】
生体材料(複数可)(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)から凍結保護剤を除去するために使用される一連の溶液の温度は、約-15℃以上、例えば約-15~約15℃、または約0℃~約37℃であってよい。実施形態において、ステップ1は、生体材料(複数可)が約-75℃を超える温度、例えば-65℃を超える温度にあるときに開始され得る。実施形態において、生体材料(複数可)の温度は、ステップ1において浸漬される溶液の温度未満であってもよく、生体材料(複数可)は、凍結保護剤除去のステップ1の間に約-15℃を超える温度までさらに温められてもよい。
【0082】
生体材料(複数可)(例えば、天然組織および/または生物工学的構成物などの生物工学的組織)の洗浄に採用される凍結保護剤を含まない溶液は、滅菌水、生理学的塩溶液(例えば、生理食塩水、Hank’s Balanced Salt Solution、Lactated Ringers SolutionまたはKrebs-Henseliet Solution)、または哺乳動物細胞などの組織に採用される組織培養培地(例えば、Roswell Park Memorial Institute培地、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)、Eagle’s MediumまたはMedium 199)であり得る。
【0083】
洗浄回数、各洗浄の量、および各洗浄の時間は、個々の生体材料の質量および所望の最終残留化学物質濃度に応じて変化し得る。実施形態において、最後の洗浄(すすぎ)は、生理食塩水またはリンゲル液などの、一般的に使用される医療用塩溶液中で行うことができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本開示の上記方法論は、バイアルまたはディープウェルプレート中で実施され得る。あるいは、本開示の上記方法論は、ガラス化プロセスでの使用に適するように作製された、本開示の特別に設計されたカセット中で実施され得る。本開示のカセットは、一度に複数の生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を保存することができる高処理能力システムの一部として使用することができる。
【0085】
複数の構成物を一度に保存する際の最大のハードルは、氷の形成が防止されるような適切な冷却および再加温速度を生成および維持する能力である。プレート上の細胞の凍結保存に関連した以前の研究で、システムの構成が、氷の形成なしに冷却および加温する能力に大きな影響を与えることが明らかになった。当初、構成物のガラス化はマルチウェル培養プレート(構成物が一般的にエンドユーザーに出荷されるものと同様)を用いて行うことができると考えられていた。
【0086】
しかし、このようなプレートの設計は、低温(すなわち極低温)保存に使用することを困難にしている。従来のマルチウェル培養プレートの設計では、冷却槽および加温槽の内容物がウェルに流れ込むことなく、冷却槽および加温槽に設置することが困難である。ディープウェルプレートは、より大きな体積を収容することができ、また、ウェルへのウィッキング(芯形成)の危険性が軽減されるように設計されている。
【0087】
本開示の上記の方法論は、ディープウェルプレートを用いて一度に6つの構成物のガラス化に成功するために使用した。しかしながら、一度に6個を超える構成物のガラス化では、細胞毒性を引き起こすCPAsへの長時間の曝露による生存率の低下が示された。
【0088】
実施形態において、本開示の方法論とともに使用するためのディープウェルプレートは、従来の組織培養プレートと比較して異なるプラスチック(すなわち、ポリスチレンに対してポリプロピレン)から作製されるべきである。ポリプロピレンは、生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を冷却および加温するためのより良好な伝導性をもたらすことによって、ガラス化および低温の影響を一層受けやすいことが証明された。より一貫した、より速い冷却および加温速度が達成された。
【0089】
いくつかの実施形態では、本開示の上記の方法論は、ガラス化プロセスでの使用に適するようにされた、本開示の特別に設計されたカセット内で実施され得る。本開示のカセットは、複数の生体材料(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を一度に保存することができる高処理能力システムの一部として使用することができる。
【0090】
例えば、本開示の上記方法論は、生体材料がガラス化溶液に曝露されるのに十分な空間およびアクセスを提供しながら、ウェルインサート内の24個の生体材料サンプル(例えば、生物工学的構成物などの天然組織および/または生物工学的組織)を所定の位置に保持するように設計されたカセット内で実施され得る。このカセットは、1つのユニットとして移動できるように構成されているため、ステップ間の時間が短くなり、注入/除去のステップがよりシームレスになる。さらに、カセット内のインサートの構成は、24ウェルプレート内のウェルの構成を模倣するように設定することができるため、インサートのカセットへの堆積および再加温後のプレートへの復帰もシームレスに行うことができ、個々の生体材料の取り扱いを必要としない(これは、各生体材料を個別に移動させる必要があり、一度にガラス化できる個々の生体材料の数が制限されるプロトコルに比べて特に有利である)。カセットの断片は、他の種類のネイティブ/天然組織および/または生物工学的構成物用に容易に変更することができ、また、複数の生体材料サンプル(本明細書では、生体材料(複数可)(biomaterial(s))および生体材料サンプル(複数可)(biomaterial sample(s))という用語は互換的に使用する)を1つのユニットとして処理、ガラス化および再加温することができる自動化設定において使用するのに非常に適している。
【0091】
このようなカセットは、所定量のウェルインサートを保持するために互いに嵌合する2つの部分(例えば、上部および下部)を有することができる(以下に描かれ、説明する例示的な実施形態は24個のウェルインサートを有するが、所定量のウェルインサートは、12~192個、または24~96個、または24~48個など、6~384個の範囲であってもよい)。上部には、24ウェルプレートのウェル配列のような所定のウェル配列に適合する構成でインサートを定位置に保持するためのプレースホルダーがある。この構成により、各生体材料サンプルを必要に応じてカセットからマルチウェルプレートに移動することが容易になる。ガラス化溶液が各インサートおよび生体材料の中および周囲を容易に流れることを可能にするために、カセットの両方の部分に穴が存在してもよく、そのため、カセットは、CPA注入/除去ステップおよび実際のガラス化中にガラス化溶液に浸漬され得る。実施形態では、プレースホルダーは、同様に保存のためにネイティブ組織の断片を保持するように容易に変更することができる。
【0092】
実施形態において、カセットは、ガラス化プロセス全体が自動化され得るように構成され得る。一度に多数の生体材料サンプル(例えば、生物工学的構成物のような天然および/または生体工学的組織)を保持し得る本開示のカセットは(例えば、一度に最大384の生体材料、または以下に描写されるように一度に24の生体材料など)、再現可能な方法で市販の複数のサンプルを処理することを可能にする。本開示のカセットの使用は、バンキング用の各検体について高レベルの生存性を保証しながら、より高いレベルの精度で構成物および/または組織のバッチを現実的に処理することができる一方で、取り扱いエラーを低減し、製品の品質を向上させることによって、ガラス化方法の改善を可能にする。
【0093】
本開示のこのような例示的なカセットを、以下の図1に示す。図1は、解除可能なロック手段を介して互いに嵌合するように構成された第1の部分(102)および第2の部分(104)を有する例示的なカセット(100)を示しており、第2の部分の側壁(118)における1つまたは複数の空間は、第2の部分(104)の1つまたは複数の突出構造(106)を受容するように構成されている。穴(108、116)は、カセット(100)の第1の部分(102)および第2の部分(104)の両方に存在し、流体(例えば、ガラス化溶液またはガラス化プロセス中に使用される溶液など)がカセット(100)を容易に流れることを可能にする。カセット(100)の上部であってもよい第2の部分(104)は、ウェルプレート(図示しない)のウェル配置に適合する構成でインサート(図2の(120)を参照)を所定の位置に保持するためのプレースホルダー(110)を有する。この構成により、必要に応じて生体サンプルをカセットからプレートへ移動することが容易になる。
【0094】
図2Aは、ワンピースとしての例示的なカセットを示し、インサート(124)内の生体材料(122)がカセットにどのように嵌合するかを示す。図2Bは、カセットを閉じた状態の側面図である。図2Cは、蓋を外した状態のカセットの側面図を示す。図2Dは、生体物質サンプルが一方の側に配置されたカセットの2つの側面を図示し、図2Eは、カセットの両側面の側面図を図示する。
【0095】
図2Aおよび図2Dに示されるように、カセット(100)の第1の部分(102)および第2の部分(104)の両方に穴(108、116)が存在し、流体(例えば、ガラス化溶液またはガラス化プロセス中に使用される溶液など)がカセットを通って各インサート(124)および生体材料(122)の周囲に容易に流れることを可能にする。
【0096】
図3は、例示的なカセットの部分の相対的な関係を示す、例示的なカセットの写真である。このカセットは2つの部分を有し、両方とも、溶液が生体材料に容易に到達できるようにするための穴を有する。蓋には、生体物質を含むウェルインサートをカセット内の所定の位置に保持するための丸いプレースホルダーが含まれている。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示のカセットは、研究および医療目的の実験器具の製造に従来から使用されているようなプラスチック、特に、極低温およびガラス化プロセスで使用される化学物質への曝露に耐えることができるプラスチック配合物から作製することができる。いくつかの実施形態において、プラスチックは、ポリプロピレンまたはテフロンであり得る。
【0098】
本開示のカセットは、再使用可能であっても使い捨てであってもよい。
【0099】
本開示のカセットは、例えば射出成形などの従来の方法を使用して製造され得る。
【0100】
本開示のカセットは、溶融ポリマー材料を使用する代わりにプレポリマーを金型内に射出する反応射出成形技術を使用して代替的に製造され得る。射出後、プレポリマーは重合して硬化し、本開示のカセットの完成部分を形成する。加えて、プレポリマーは一般に溶融ポリマーよりも粘性が低いため、金型内により容易に流れ込み、金型製作コストを削減することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示のカセットは、解除可能なロック機構を介して一緒に嵌合するように構成された第1の部分および第2の部分を含む再使用可能または使い捨てのマルチサンプルカセットであってよく、第2の部分は、1つまたは複数のインサートおよび複数のプレースホルダーを含み、複数のプレースホルダーの各プレースホルダーは、1つまたは複数のインサートのうちの1つを受容するように構成され、1つまたは複数のインサートの各々は、少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルを含み、第1の部分および第2の部分は、溶液が1つまたは複数のインサートおよび少なくとも1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルのそれぞれを通り、かつその周囲を流れるように構成された複数の開口部を備え、カセット内のプレースホルダーの構成は、所定数のウェルを有するプレート内のウェルの構成を模倣するように設定され、所定数のウェルは、6~384個の範囲内である。
【0102】
実施形態において、解除可能なロック機構は、上に描かれたもの、および/または解除可能なロック構成要素を係合することが、ロック構成要素の少なくとも1つの素子の最初の空間的な撓みに依存する機構であってもよい。これらは、例えば、他方のロック構成要素の結合素子に対して係合する戻り止めを有するバヨネットタブであってもよく、次いで、他方のロック構成要素の1つ以上の素子に引っかかるように、少なくとも1つの要素の空間的な再偏位が続く。回り止め及び結合構成要素は、回り止めを比較的小さくして結合形体から外すのに必要な力が小さくなるようにすることで、解除可能になるように適合される。結合構成要素はバーであっても、バヨネットタブが突出できる開口部の縁であってもよい。
【0103】
第1の部分と第2の部分とを解除可能に接続する代替方法には、例えば、ボールとソケットの使用が含まれ、ボール部品は、ボールの直径よりもわずかに小さいソケットと嵌合する。タブとディテントシステムと同様に、手動で力を加えてボールをソケットに押し込むと、一方または両方の部分が変形し、互いを越えて第1のロック位置まで通過できるようになる。ロック要素は、第1の部分および第2の部分の外縁に沿って配置することができる。大型の再使用可能または使い捨てマルチサンプルカセット(例えば、384ウェルを含む)の場合、複数の大型ロックが各側面に沿って配置され、第1の部分および第2の部分が確実に固定された状態を維持するのに役立つ。いくつかの実施形態では、第2および第3のロック要素が係合された状態で、解除可能ロックが最終的なロック位置まで移動されると、係合されたロック要素と蓋またはトレイとの間に空間が形成される。この空間は、ロック要素の適切なサイズ設定によって、および/または、再使用可能または使い捨てのマルチサンプルカセットの手動操作のためのハンドルを提供するために、大きさを変えることができる。
【0104】
実施形態において、第1の部分は、約0.5~約3mm、または約1~約2mm、または約1.3~約1.8mm、または約1.4~約1.6mmの厚さなど、所定の厚さを有するフレームを有してもよい。実施形態では、第2の部分は、約0.5~約3mm、または約1~約2mm、または約1.3~約1.8mm、または約1.4~約1.6mmの厚さなど、所定の厚さを有するフレームを有することができる。
【0105】
実施形態において、複数の開口部の各開口部(円形または六角形などの任意の所望の形状の形態であってよい)は、約3~約7mm、または約4~約6mm、または約4.5~約5.5mm、または約4.8~約5.2mmの範囲の直径を有してよい。加えて、複数の開口部の各開口部は、最も近い隣接する開口部から所定の距離、例えば、3~15mm、または約5~約12mm、または約7~約10mm、または約8~約9mmの範囲内の距離だけ間隔を置いてもよい。いくつかの実施形態では、複数の開口部の各開口部の直径は、第1の部分と第2の部分の両方で同じである。他の実施形態では、第1の部分上の複数の開口部の各開口部の直径は、第1の部分上の複数の開口部の各開口部の直径とは異なる。
【0106】
いくつかの実施形態では、カセット内部の面積(第1の部分と第2の部分が係合しているときの)は、約89cm~約101cm、または約92cm~約98cm、または約94cm~約96cm、または約94.5cm~約95.5cmの範囲の面積など、所定の面積に設定されてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、再使用可能または使い捨てのマルチサンプルカセットの内部チャンバ全体の容積(第1および第2の部分が係合したとき)は、約81cm~約98cm、または約86cm~約95cm、または約89cm~約92cmの範囲内であってよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、カセットに含まれる各1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルの体積は、約1cm~約1.5cm、または約1.1cm~約1.4cm、または約1.1cm~約1.3cmの範囲内であってもよい。このような1つの生物工学的構成物または天然組織サンプルは、当業者に公知の従来の方法により、1つまたは複数のインサートの表面に固定/静止することができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、第1の部分および/または第2の部分は、使い捨てまたは再利用可能であり得る。この点に関して、第1の部分および/または第2の部分、またはその一部は、ポリエチレンなどのポリオレフィンおよび/または低密度、高密度、直鎖状低密度、または超低密度ポリエチレンを含むそのコポリマー、ポリプロピレンおよび/またはアタクチックポリプロピレンを含むポリプロピレンコポリマー、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、および/またはそれらの組み合わせも使用することができる、またはポリブチレンなどのプラスチック材料から作ることができるが、これらに限定されない。他の実施形態では、使い捨てまたは再利用可能な第1の部分および/または第2の部分は、ガラス、またはセラミック材料などから作ることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、第1の部分および第2の部分は、医療グレードのポリプロピレン、ポリスチレン、またはテフロンなどの医療グレードのプラスチック材料から形成され得る。第1の部分と第2の部分は、透明または半透明のプラスチック材料から形成することができ、あるいは透明または半透明の部分を含むことができ(医療グレードのポリプロピレン、ポリスチレン、テフロンなどのプラスチック製)、これにより、使用者または操作者は、その中に含まれる1つまたは複数の生体材料を観察することができる。このような実施形態では、第1の部分および/または第2の部分の選択された部分のみが透明または半透明であってもよく、第1の部分および第2の部分の他の部分は不透明な反射材料から形成される。
【0111】
実施形態において、本開示は、本開示のカセットに上記の溶液を供給するための装置(灌流装置など)を提供する。灌流器具は、生体材料(例えば、天然組織および/または生物工学的構成物のような生体工学的組織)を含む本開示のカセットの内部チャンバと流体連通しており、生体材料(複数可)を含む1つのチャンバに新鮮培地に対するそれぞれの溶液の供給源を制御可能に提供する少なくとも1つの溶液供給源ウェルおよびカセットのチャンバと流体連通しており、カセットから流出する廃培地および/または流体を制御可能に受容する廃ウェルを含む。
【0112】
成分、原料、添加剤、寸法、条件、および同様の態様、ならびにそれらの範囲について開示される特定の値および好ましい値は、例示のためのものであり、他の定義された値または定義された範囲内の他の値を排除するものではない。本開示の装置および方法は、明示的または暗黙的な中間値および範囲を含め、本明細書に記載の値、特定の値、より特定の値、および好ましい値の任意の値または任意の組み合わせを含むことができる。
【実施例
【0113】
[方法]
<組織培養>
ヒト表皮モデルは市販のものを入手し、その仕様書に従って維持した。全ての構成物は、実験を開始する前に、生理学的組織培養条件下で適切な培地中で24時間インキュベートした。新鮮な対照を各実験で使用し、実験処置群を再加温後4~5日間にわたって評価した。
【0114】
<ガラス化法>
最終凍結保護剤濃度を達成するために、各製剤を0%、12.5%、25%、50%、75%および100%の6段階で、4℃で予冷したガラス化溶液を構成物に徐々に浸透した。再加温後、前述の通りガラス化溶液を4℃で7段階に分けて順次培養液中に除去した。(非特許文献15:Vitreous cryopreservation maintaining the function of vascular grafts, Nature Biotechnology, 8(3):296-9, Epub 2000/03/04, doi:10.1038/73737, PubMed PMID: 10700144 (2000);Songら、Vitreous Preservation of Rabbit Articular Cartilage, Cell Preservation Technology, 2 (1); 67-74 (2004)を参照)。
【0115】
一旦ガラス化溶液を充填した構成物は、いくつかの方法を用いて保存温度まで冷却し、再加温することができる。(1)構成物をガラスシンチレーションバイアル(直径×高さ、25mm×60mm)に入れ、1.5mLの予冷ガラス化溶液を入れ、ウェルインサート内に0.3mLの溶液を入れた。次に、2-メチルブタン(イソペンタン、凝固点:-160℃、密度:0.62)1mLをバイアル内のガラス化溶液の上に置き、ウェルインサート内に0.2mLを4℃で入れ、直接空気に触れないようにした。サンプルは、-135℃の機械式保存フリーザー内のイソペンタンを含む予冷浴に入れ、-100℃まで急速冷却(約45℃/分)した。-100℃に達したらサンプルを浴槽から取り出し、-135℃まで徐冷(3℃/分)する機械式保管冷凍庫で-135℃に保管した。サンプルは-135℃で最低24時間保持した。構成物の再加温は2段階で行った。まず、機械式保存フリーザーの上部で-100℃までゆっくり加温(約30℃/分)し、次に室温の30%MESO浴で0℃または±-10℃まで急速加温(約225℃/分)した。(2)構成物をディープウェルプレートのウェル内に挿入する。ウェルには0.6mLのガラス化溶液を、インサートには0.2mLの溶液を入れる。プレートを冷却するため、-135℃の機械式保管フリーザーにあるイソペンタンを含む浅い予冷浴に約5分間入れた後、プレートを浴から取り出し、-135℃の機械式保管フリーザーに放置し、-135℃までゆっくり冷却して保管する。再加温の場合は、プレートを冷凍庫から取り出し、室温に放置してサンプルを-100℃程度までゆっくり再加温し、その後、サンプルがガラス化しなくなるまで、ディープウェルプレートを室温の30%MESO浴に入れることで急速再加温を行った。(3)最後の方法は、構成物をインサートに入れ、特別に作られたカセットに入れることである。ローディングのステップが終わると、カセットを約150mLのガラス化溶液を入れたパウチに入れ、バッグシーラーで空気を抜いて密封する。その後、バッグは-135℃の機械式保存冷凍庫で一晩、イソペンタンを含む予冷浴に入れる。翌日、バッグを浴から取り出し、-135℃で保存する。再加温のため、カセットを入れたバッグを-80℃で15~25分間置いて徐冷し、その後、サンプルがガラス化しなくなるまでバッグを約40℃の水浴に浸して急速に加温する。
【0116】
<バイアビリティ(生存率)アッセイ>
(レサズリンアッセイ)
代謝活性を測定するために使用され、無毒性であるため、処理前および処理後数回にわたって構成物を評価できるという利点がある。レサズリン色素(alamarBlue)は、細胞内で起こる酸化/還元反応を測定することにより、細胞の生存率を評価するために使用した。色素を培養ウェルに直接添加し、プレートを37℃で3時間インキュベートした。還元されると色素は変色し、蛍光マイクロプレートリーダーを用いて、励起波長544nm、発光波長590nmで測定及び数値化した。
【0117】
(MTTアッセイ)
代謝活性の測定にも使用した。このアッセイを含めたのは、これが皮膚等価生存能の評価に使用される最も一般的なアッセイであるためである。MTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド]アッセイは、淡黄色のMTTのテトラゾリウム環を切断し、健康な細胞内に蓄積する濃青色のホルマザン結晶を形成する、生存細胞由来のミトコンドリアデヒドロゲナーゼ酵素の能力に基づく。細胞を洗剤で可溶化すると、可溶化した結晶が遊離する。生存している細胞の数は、生成されたホルマザン生成物のレベルに正比例し、吸光度リーダーで読み取る簡単な比色アッセイを用いて数値化することができる。
【0118】
(用量反応アッセイ)(品質保証のためにMatTekによって要求される機能的エンドポイントアッセイ)
用量反応アッセイは、製造業者の説明書に従って実施した。新鮮組織は、翌日にTriton Dose Responseアッセイに使用し、ガラス化群は翌日にガラス化した。試験は、100μlの1%TritonX-100を4、6、8および12.5時間の時間間隔で適用することから始まる。Triton曝露後、組織構成物は滅菌PBSで洗浄し、構成物の細胞生存率を評価するために使用されるMTTアッセイ(下記参照)に直ちに移す。アッセイは、ET-50または50%生存率が、表皮組織では4.77~8時間、EpiOcular組織では12.2<ET-50<37.5分で低下すれば、合格基準を満たす。
【0119】
(IL-1α放出)
IL-1αは免疫および炎症反応の重要な調節因子である。表皮モデルを用いて試験される物質の刺激性を測定し予測するために、MTTアッセイに加えてIL-1αが使用される。IL-1αは上清中に放出されるので、新鮮なおよび凍結保存された表皮構成物からのサンプルは保存され、IL-1αはEIAアッセイを用いて測定される。
【0120】
最初のガラス化プロトコルは、静脈セグメントおよびリングで使用するために開発されたものであった。このプロセスは、構成物に凍結保護剤(CPA)溶液を添加するために、6段階(15分間のインキュベーション)のプロトコルを使用する。その後、インサートをガラスシンチレーションバイアルに入れ、1.5mLのガラス化溶液と0.3mLの溶液をインサート内に入れる。バイアルは-100℃まで急速に冷却し、その後-135℃までゆっくりと冷却し、再加温まで保管する。再加温の間、サンプルは-100℃までゆっくりと加温し、その後室温まで急速に加温する。ガラス化溶液は、7回の連続的な除去ステップを15分ずつ用いて除去する(図4、オリジナルのプロトコル)。このプロトコルには、表皮構成物のより良好で持続可能な生着率を得るために、いくつかの変更が加えられた。これらの変更の一部を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
最も単純な調整は、同じ成分であるジメチルスルホキシド(DMSO)、プロパンジオール(PD)、ホルムアミド(FD)の含有量が異なる、容器用のVS55~VS70の異なるガラス化溶液への変更であった(図4、修正プロトコル)。
【0123】
構成物へのガラス化溶液の注入および除去の方法に一連の変更を加えた。これらの変更には、インキュベーションステップの短縮(15分ではなく5分)、最高強度ガラス化溶液を構成物に注入するための低濃度の凍結保護剤の使用、および1つの溶液から次の溶液への除去とは対照的に単純な希釈ステップによる最高強度ガラス化溶液の半分の濃度への希釈を含むより機械的な変更が含まれた。これにより、構成物が最高強度ガラス化溶液にさらされる時間が短縮され、ガラス化溶液にさらされることによる潜在的な細胞毒性が軽減された(修正プロトコル)。最後に、抗酸化剤α-トコフェロール(αT)およびカスパーゼ阻害剤Q-VD-OPH(QVD)をガラス化前後の構成物の培養液に添加することで、生存率が改善し、再加温後数日間の生存率の維持も改善した(図1、添加剤追加)。
【0124】
他の添加剤も試したが、QVDとαTのみが有意な改善を示した。
【0125】
到着したプロトコルは、αTおよびQVDを用いた一晩のインキュベーションから始まる。翌日、構成物に凍結保護剤(CPA)溶液を添加するために、各ステップ5分の6ステップ添加プロトコルを用いて構成物をガラス化する。その後、インサートを0.3mLの溶液をインサート内に含む最終ガラス化溶液中に放置する。バイアルは-100℃まで急速に冷却し、その後-135℃までゆっくりと冷却し、再加温まで保管する。再加温の間、サンプルは-100℃までゆっくりと加温し、その後室温まで急速に加温する。ガラス化溶液は、5分ずつ7回の連続除去ステップを経て除去する。最初の除去ステップでは、最終ガラス化溶液を最終濃度の50%に希釈する。構成物は、再加温後少なくとも2~3日間生存性を促進するため、再加温後少なくとも24時間培養液+添加剤中に放置する。
【0126】
これらの3D構成物により適したプロトコルを確立したため、最適なガラス化溶液のさらなる探索を行った。構成物の持続的な生存性に関連するいくつかの問題は克服されたが、再加温後の培養で数日間維持される生存性のさらなる改善が求められた。
【0127】
細胞毒性は、ガラス化溶液が高い凍結保護剤濃度を有し、構成物が、注入/除去ステップ中に長時間これらの化合物にさらされるため、主要な懸念事項であった。ガラス化溶液は高濃度である一方、注入/除去ステップではより低い凍結保護剤濃度を使用する(すなわち、VS55で注入/除去するが、構成物はVS70でガラス化する)戦略がさらに追求された。このようにして、構成物は全体的に低濃度の凍結保護剤に長時間曝露され、ガラス化時には全濃度の溶液に短時間曝露されるだけであった。注入/除去戦略をいくつか変化させた一連のガラス化溶液を評価した(表2参照)。
【0128】
【表2】
【0129】
この戦略は非常に効果的で、再加温直後から良好な生存率が得られたが、再加温後2日目まで生存率が持続した。最高の生存率を提供した溶液の組み合わせは、表2(上)に網掛けしている。
【0130】
表皮構成物のさらなる試験により、Triton-X100を用いた毒性試験に供した場合、ガラス化構成物が新鮮なコントロールと同様の反応を示すことが示された。結果を図5に示す。
【0131】
MTTアッセイを用いて測定した生存率は、ガラス化および新鮮な表皮構成物をTriton-X100に12.5時間まで曝露した場合、同様の生存率を示した。追加の試験を、新鮮な対照と比較してIL-1αの放出を評価するために行った。いくつかのガラス化溶液を試験し(表2の*印のサンプルを参照)、IL-1αの放出は、使用したガラス化溶液の注入/除去の組み合わせに多少依存しているようであった。全体として、放出は同様の期間培養した新鮮な構成物と同程度であった(表3の結果を参照)。
【0132】
【表3】
【0133】
最初の実験はガラスバイアルを用いて行ったが、さらなる実験は本開示のディープウェルプレートを用いて行った(表2)。これにより、一度に複数の構成物のガラス化が可能となった。最初の実験では、プレート1枚につき4~6個の構成物をガラス化した。その後、さらなる実験を行い(繰り返し、数回)、一度に24の構成物をガラス化することができ、プレート全体で一貫した生存性を示す良好な結果が得られた。
【0134】
さらに、いくつかの他の構成物もガラスバイアルおよびディープウェルプレート中でガラス化し、表皮だけでなく、EpiAirway、EpiOcular、およびEpiCorneal量他の構成物も含めた。これらの構成物は全てガラス化に良好に反応し、再加温後も数日間生存性が維持された。結果を図6に示す。
【0135】
構成物はガラスバイアルでうまくガラス化できたが、本開示のディープウェルプレートでガラス化した方が、生存率がより安定することが観察された。しかし、ディープウェルプレートを使用する場合、構成物が最高強度ガラス化溶液中に長く留まらないようにするタイミングが重要である。
【0136】
ディープウェルプレートを用いて、いくつかの構成物を-135℃以上で最大7ヶ月間ガラス化保存する能力を確認するために、追加の実験を行った。結果を図7に示す(表皮 6ヶ月、EpiAirway 7ヶ月、EpiOcular 2ヶ月)。
様々な構成物(表皮 6ヶ月、EpiAirway 7ヶ月、EpiOcular 2ヶ月)。
【0137】
各構成物は、再加温直後から良好な生存率(85%以上)を示し、数日間持続した(70%以上)。ガラスバイアルを用いた再加温直後の初期生存率は同様であったが、再加温数日後の持続生存率は約45%と、一貫性がなく良好ではなかった。
【0138】
構成物がガラス化溶液中に長く留まりすぎて生存率に影響を及ぼす心配をせずに、複数の構成物を一度にガラス化するために、複数の構成物に対してガラス化ステップを一度に実行できるように、一度に最大24個の構成物を保持するカセットを設計した。表皮構成物は、ディープウェルプレートまたはカセット内でガラス化した。再加温後、代謝活性を測定した。カセットを用いてガラス化した構成物は、ディープウェルプレートでガラス化した構成物と同等の生存性を示したことを観察した。結果を図8に示す。
【0139】
本開示を通して引用される全ての文献および特許文献は、参照によりその全体が組み込まれる。前述の説明は、特定の手段、材料、および実施形態を参照して本明細書に記載されているが、本明細書に開示された特定のものに限定されることを意図するものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるような、機能的に等価な全ての構造、方法、および用途に及ぶものである。さらに、上記ではいくつかの例示的な実施形態のみを詳細に説明したが、当業者であれば、「天然組織および生体組織の保存、ならびに保存および輸送の方法」の開示から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの改変が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、このような改変は全て、以下の特許請求の範囲において定義される本開示の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲において、手段プラス機能句は、本明細書に記載された構造を、引用された機能を実行するものとしてカバーすることを意図しており、構造的等価物だけでなく、等価構造もカバーすることを意図している。したがって、釘およびネジは、釘が木製部品を固定するために円筒状の表面を用いるのに対し、ネジはらせん状の表面を用いるという点で、構造的に等価ではないかもしれないが、木製部品を固定するという環境においては、釘とネジは等価な構造であるかもしれない。クレームが関連する機能とともに「手段(means for)」という語を明示的に使用しているものを除き、本明細書のクレームの限定について米国特許法112条(f)を援用しないことは、本出願人の明示的な意図である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物工学的構成物または天然組織サンプルを保存する方法であって、
(i)それぞれが生物工学的構成物または天然組織サンプルを保持するようにそれぞれ個別に構成された対応するインサートを有するカセット内に含まれた、複数の生物工学的構成物または天然組織サンプルを、凍結保護剤の濃度が増加する一連の溶液に浸漬して、70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する最終溶液に浸漬されたそれぞれ個別の第1の生物工学的構成物または天然組織を形成するステップと、
(ii)前記70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する前記最終溶液中の前記第1の生物工学的構成物または天然組織を、前記70重量%以下の凍結保護剤濃度を有する前記最終溶液のガラス転移温度以下の温度まで冷却するステップと、および
(iii)前記第1の生物工学的構成物または天然組織を、前記凍結保護剤の濃度が減少する一連の溶液に浸漬して、実質的に凍結保護剤を含まない溶液に浸漬されたそれぞれ個別の第2の生物工学的構成物または天然組織を得るステップであって、前記第2の生物工学的構成物または天然組織は、実質的に凍結保護剤を含まないものである、前記それぞれ個別の第2の生物工学的構成物または天然組織を得るステップと、
を備え
ステップ(iii)終了後の前記第2の生物工学的構成物または天然組織の細胞生存率(%)が、少なくとも48時間、少なくとも60%のレベルに維持される、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第1の生物工学的構成物または天然組織を形成する前に、本方法は、さらに、前記生物工学的構成物または天然組織サンプルを、少なくとも1つの薬剤を含む前凍結保存液に少なくとも6時間浸漬するステップを備え、前記薬剤は、抗酸化剤およびカスパーゼ阻害剤よりなる群から選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(i)において、
記生物工学的構成物または天然組織サンプルを1~6種の異なる溶液に浸漬する、または
前記凍結保護剤の濃度が減少する一連の溶液は、線形または非線形の濃度勾配を介して得られるものとする、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記生物工学的構成物または天然組織サンプルを1~6種の異なる溶液に浸漬し、また前記生物工学的構成物または天然組織を各々の前記異なる溶液の5分以下浸漬する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(iii)において、
記第1の生物工学的構成物または天然組織を1~7種の異なる溶液に浸漬する、または
前記凍結保護剤の濃度が増加する一連の溶液は、線形または非線形の濃度勾配を介して得られるものとする、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記第1の生物工学的構成物または天然組織を1~7種の異なる溶液に浸漬し、また前記第1の生物工学的構成物または天然組織を各々の前記異なる溶液に5分以下浸漬する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(ii)の前記凍結保護剤は、アセトアミド、シクロヘキサンジオール、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、二糖およびプロパンジオールよりなる群から選択される少なくとも1つの分子を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(i)において、前記生物工学的構成物または天然組織サンプルが浸漬される前記一連の溶液の各溶液は、少なくとも1つの糖を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記少なくとも1つの糖はスクロースを含む、方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法であって、前記薬剤はα-トコフェロールを含む、方法。
【請求項11】
請求項2に記載の方法であって、前記薬剤はQ-VD-OPHを含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(i)は、前記生物工学的構成物または天然組織サンプルを保存するための方法全体において氷による損傷が生じないように、冷却中の氷の成長を回避する方法で実施する、方法。
【請求項13】
請求項に記載の方法であって、ステップ(ii)の前記最終溶液の前記凍結保護剤濃度は8.0~11.0Mの範囲である、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記第1の生物工学的構成物または天然組織は、人工組織または臓器から得られる、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記第1の生物工学的構成物または天然組織は、哺乳動物臓器および哺乳動物組織よりなる群から選択される細胞材料から得られる、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記細胞材料はヒト臓器およびヒト組織よりなる群から選択される、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記第1の生物工学的構成物または天然組織は表皮構成物である、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(iii)の完了後の前記第2の生物工学的構成物または天然組織の細胞生存率(%)が、少なくとも48時間、少なくとも70%のレベルに維持される、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(iii)の完了後の前記第2の生物工学的構成物または天然組織の細胞生存率(%)が、少なくとも48時間、少なくとも80%のレベルに維持される、方法。
【請求項20】
請求項に記載の方法であって、前記カセットが、一度に6~384個の構成物またはサンプルを保持し、記第1の生物工学的構成物または天然組織を含む前記カセットは、前記前凍結保存液に浸漬される、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記カセットが一度に6~384個の構成物またはサンプルを保持し、記生物工学的構成物または天然組織サンプルを含む前記カセットが、ステップ(i)の前記一連の溶液の各溶液に浸漬される、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記カセットが一度に6~384個の構成物またはサンプルを保持し、記第1の生物工学的構成物または天然組織サンプルを含む前記カセットが、ステップ(iii)の前記一連の溶液の各溶液に浸漬される、方法。
【国際調査報告】