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特表2024-544581化合物、該化合物を含有するゴムブレンド、該ゴムブレンドを少なくとも1つの構成要素に含む車両用タイヤ、該化合物の製造方法、並びに該化合物の老化保護剤及び/又は酸化防止剤としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】化合物、該化合物を含有するゴムブレンド、該ゴムブレンドを少なくとも1つの構成要素に含む車両用タイヤ、該化合物の製造方法、並びに該化合物の老化保護剤及び/又は酸化防止剤としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/88 20060101AFI20241126BHJP
   C10M 133/12 20060101ALI20241126BHJP
   C10L 1/222 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241126BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20241126BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241126BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241126BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20241126BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C07D209/88 CSP
C10M133/12
C10L1/222
C08L101/00
C08K5/3417
B60C1/00 Z
C07B61/00 300
C10N30:10
C10N40:25
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529490
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 DE2022200254
(87)【国際公開番号】W WO2023098954
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021213720.2
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1,30175 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ダウアー・ダーヴィット-ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトローマイアー・ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー・イェルク-アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・フローリアーン
【テーマコード(参考)】
3D131
4H039
4H104
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA12
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB06
3D131BB19
3D131BC47
4H039CA10
4H039CB20
4H104BE07C
4H104PA41
4J002AA001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BB181
4J002BB241
4J002EU026
4J002FD036
4J002GB00
4J002GJ02
4J002GM00
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、化合物、該化合物を含有するゴムブレンド、該ゴムブレンドを少なくとも1つの構成要素に含む車両用タイヤ、該化合物の製造方法、並びに老化保護剤及び/又は酸化防止剤としての該化合物の使用に関する。本発明による化合物は下記式(I):
を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I):
【化1】
の化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の式I)の化合物を含有するゴム混合物。
【請求項3】
少なくとも1種のジエンゴムを含有することを特徴とする、請求項2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種のジエンゴムを含有することを特徴とする、請求項3に記載のゴム混合物。
【請求項5】
少なくとも1つの構成要素中に、請求項2~4のいずれか一項に記載のゴム混合物を含む車両用タイヤ。
【請求項6】
少なくとも1つの外部構成要素中に請求項2~4のいずれか一項に記載の少なくとも1種のゴム混合物を含有し、前記外部構成要素が、好ましくは、トレッド、サイドウォール及び/又はフランジプロファイルであることを特徴とする、請求項5に記載の車両用タイヤ。
【請求項7】
請求項1に記載の式I)の化合物の製造方法であって、少なくとも以下の処理工程:
a1)式A1)又はA2)の物質:
【化2】
を準備する工程;
b1)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素又は還元剤を準備する工程;
c1)式A1)又は式A2)の化合物を前記工程b1)からの物質と反応させて、前記式I)の化合物
【化3】
を得る工程;
を含む方法。
【請求項8】
工程c1)における前記反応が水素化触媒を使用して、及び/若しくは80℃~150℃の温度で水素を用いて行われる、並びに/又は反応混合物が25~45barの圧力で水素で加圧される、並びに前記反応がオートクレーブ若しくは別の圧力反応器中で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は靴底若しくはその一部、並びに/又は油及び/若しくは潤滑剤などの、特に車両用タイヤ及び/又は他の技術的ゴム物品における、老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としての、請求項1に記載の式I)の化合物の使用。
【請求項10】
特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は靴底若しくはその一部といったゴム物品を製造するための、請求項1に記載の式I)の化合物の使用。
【請求項11】
特に燃料又はエンジン用流体などの油、潤滑剤における、請求項1に記載の式I)の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、該化合物を含有するゴム混合物、該ゴム混合物を少なくとも1つの構成要素に含む車両用タイヤ、該化合物の製造方法、並びに老化安定剤及び/又は酸化防止剤としての該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用タイヤ及び技術的ゴム物品は、特にゴムなどの高分子材料を採用していることが公知である。
【0003】
長期にわたる保管の場合、並びに特に高温であることが多い目的用途では、天然ゴム及び合成ポリマー(IR、BR、SBR、ESBR等など)のみならず、天然及び合成油、脂肪及び潤滑剤は、本来の所望の特性に悪影響を及ぼす酸化反応を受ける。ポリマーの種類に応じて、ポリマー鎖は、材料が液化するまで、又は材料のその後の硬化が生じるまで短くなってしまう。
【0004】
したがって、老化安定剤は、車両用タイヤ及び他の技術的ゴム物品の耐久性において決定的な役割を果たす。
【0005】
公知の老化安定剤は、芳香族アミン、例えば
6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)、
IPPD(N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)又は
SPPD(N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0006】
これらの分子は、酸素若しくはオゾン、又はアルキル、アルコキシ及びアルキルペルオキシラジカルなどの形成されるフリーラジカルと反応可能であり、これによりこれらを掃去し、したがって、ゴム等をさらなる酸化反応から保護するものである。
【0007】
しかしながら、この物質クラスの欠点は、それらが発癌性であると疑われることである。
【0008】
特にオゾンと反応してその掃去を達成する老化安定剤は、「オゾン分解防止剤」とも呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特に車両用タイヤ又は他の技術的ゴム物品の老化安定剤として使用することができ、特に、それぞれのマトリクス、例えば特にポリマーへの十分な溶解性と相まって、潜在的な危険がより低い新規化合物を提供することである。これは、酸素及びオゾンからの最適な保護を継続し、健康への有害性を低減しながらブルーミングの傾向を防止することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の本発明の化合物により、化合物を含有する本発明のゴム混合物により、また、少なくとも1つの構成要素中に本発明のゴム混合物を含む本発明の車両用タイヤにより達成される。この目的はさらに、化合物の製造方法により、並びに老化安定剤及び/又は酸化防止剤及び/又はオゾン分解防止剤としての化合物の使用により達成される。
【0011】
請求項1に記載の化合物は、一般式I):
【化1】
を有する。
【0012】
したがって、式I)の化合物は、N-(1,3-ジメチルブチル)-9H-カルバゾール-3-アミンであり、或いは別の呼称によれば3-(1,3-ジメチルブチルアミノ)-9H-カルバゾールである。
【0013】
本発明による化合物は、ゴム混合物中で6PPDに類似した老化安定化効果を示し、そのため、その分解生成物が銀鮭に極めて有毒であり、したがっておそらく他の水生生物にも極めて有毒であると考えられる6PPDの代替物として適している。
【0014】
本発明による化合物は、驚くべきことに、ゴム混合物、特に車両用タイヤ及び他の技術的ゴム物品に対して非常に良好な溶解性も示し、これは窒素原子上の1,3-ジメチルブチル基に起因すると考えられる。ただし、本発明は特定の作用機構又は特定の理論に拘束されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、とりわけ特許請求の範囲に反映されるすべての有利な実施形態を含む。本発明はまた、特に、本発明が「好ましい」として記載されるか、又は有利な実施形態の文脈で記載される第1の特徴と、例えば「特に好ましい」として記載されるさらなる特徴との組み合わせも含むように、これらの特徴に対する異なる優先度を有する異なる特徴の組み合わせから生じる実施形態を含む。
【0016】
本発明の式I)の化合物は、特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は靴底若しくはその一部、並びに/又は油及び/若しくは潤滑剤などの、車両用タイヤ及び/又は他の技術的ゴム物品における老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として特に好適である。
【0017】
本発明の式I)による化合物は、特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は靴底若しくはその一部といったゴム物品の製造に特に好適である。
【0018】
言及されている物品又は物質において式I)の化合物を使用するために、前記化合物は、組成物で用いられると共に、前記組成物に組み込まれて用いられる。
【0019】
車両用タイヤ又は他の技術的ゴム物品では、前記組成物は特にゴム混合物中にある。
【0020】
本発明はさらに、特に燃料又はエンジン用流体などの油、潤滑剤における式I)の本発明の化合物の使用を提供する。したがって、本発明による化合物は、特にエンジンにおいて採用され得る。
【0021】
上述のように、本発明はゴム混合物をさらに提供する。
【0022】
本発明によるゴム混合物は、式I)の化合物を含有する。本発明によるゴム混合物は、原則として、特に式I)の新規な本発明の化合物が低毒性で老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として作用する任意のゴム混合物であってよい。
【0023】
本発明のゴム混合物は、少なくとも1つのゴムを含有する。
【0024】
本発明によるゴム混合物が式I)の化合物を0.1~10phr、特に好ましくは0.1~6phr、非常に好ましくは1~5phr含有する場合が好ましい。
【0025】
本書面において用いられている単位「phr」(ゴム100重量部当りの部)は、ゴム産業における混合物処方に係る量の従来の表示である。個々の物質の重量部の投与量は、本文書では、混合物中に存在するすべての高分子量(Mが20000g/molを超える)ゴムの総質量の100重量部に基づく。
【0026】
本発明の有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は少なくとも1種のジエンゴムを含有する。
【0027】
したがって、ゴム混合物は、ジエンゴム、又は2つ以上の異なるジエンゴムの混合物を含有し得る。
【0028】
ジエンゴムとは、ジエン及び/又はシクロアルケンを重合又は共重合させることによって形成され、そのために、主鎖又は側基のいずれかにC=C二重結合を有しているゴムである。
【0029】
ジエンゴムは、好ましくは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、エポキシ化ポリイソプレン(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエン-イソプレンゴム、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、スチレン-イソプレンゴム、分子量Mが20000g/molを超える液状ゴム、ハロブチルゴム、ポリノルボルネン、イソプレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロルヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水添アクリロニトリルブタジエンゴム、及び水添スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される。
【0030】
ニトリルゴム、水添アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、及び/又はエチレン-プロピレン-ジエンゴムは、特に、ベルト、駆動ベルト、及びホースなどの技術的ゴム物品並びに/又は靴底の製造に使用されている。充填材、可塑剤、加硫系及び添加剤の観点において特異的であるこれらのゴムについて当業者に公知である混合組成物が採用されることが好ましい。
【0031】
すべての実施形態の天然及び/又は合成ポリイソプレンは、cis-1,4-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンであってよい。しかしながら、90重量%を超えるcis-1,4比率を有するcis-1,4-ポリイソプレンを使用することが好ましい。第1に、このようなポリイソプレンは、チーグラーナッタ触媒を伴うか、又は微細なリチウムアルキルを用いる溶液中における立体特異的重合により入手可能である。第2に、天然ゴム(NR)は、天然ゴム中のcis-1,4含有量が99重量%超である、このようなcis-1,4-ポリイソプレンである。
【0032】
1つ以上の天然ポリイソプレンと1つ以上の合成ポリイソプレンとの混合物もさらに考慮される。
【0033】
本発明の文脈において、「天然ゴム」という用語は、ヘベア(Hevea)ゴムの木から、及び「非ヘベア(non-Hevea)」供給源から入手され得る天然ゴムを意味すると理解されるべきである。非ヘベア(Hevea)供給源としては、例えば、グアユール低木、及び例えばTKS(Taraxacum kok-saghyz;ロシアタンポポ)などのタンポポが挙げられる。
【0034】
本発明のゴム混合物がブタジエンゴム(すなわちBR、ポリブタジエン)を含有する場合、これは、当業者に公知の任意のタイプであってよい。これらは高-cis及び低-cisタイプと呼ばれるものを含み、ここで、90重量%以上のcis含有量を有するポリブタジエンは高-cisタイプと称され、90重量%未満のcis含有量を有するポリブタジエンは低-cisタイプと称される。低-cisポリブタジエンの一例は、20%~50重量%のcis含有量を有するLi-BR(リチウム触媒ブタジエンゴム)である。高-cis BRでは、ゴム混合物において特に良好な特性及び低ヒステリシスが達成される。
【0035】
採用されるポリブタジエンは、変性及び官能化で末端基-変性されていてもよく、及び/又はポリマー鎖に沿って官能基化されていてもよい。変性は、ヒドロキシル基及び/又はエトキシ基及び/又はエポキシ基及び/又はシロキサン基及び/又はアミノ基及び/又はアミノシロキサン及び/又はカルボキシル基及び/又はフタロシアニン基及び/又はシラン-スルフィド基による変性から選択され得る。しかしながら、官能化とも呼ばれる、当業者に公知のさらなる改変も有用である。金属原子がこのような官能化の構成成分であってもよい。
【0036】
ゴム混合物中に少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)が存在する場合、これは、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)から選択され得、少なくとも1つのSSBRと少なくとも1つのESBRとの混合物を採用することも可能である。「スチレン-ブタジエンゴム」及び「スチレン-ブタジエンコポリマー」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0037】
用いられるスチレン-ブタジエンコポリマーは、ポリブタジエンについて上記に言及されている変性及び官能化により、ポリマー鎖に沿って末端基-変性及び/又は官能基化されていてもよい。
【0038】
少なくとも1種のジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR、天然ゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択されることが好ましい。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態において、少なくとも1つのジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択される。
【0040】
本発明の特に有利な実施形態では、ゴム混合物は、少なくとも1つの天然ポリイソプレン(NR)を、好ましくは50~100phrの量で含み、本発明の特に有利な一実施形態では、80~100phr、非常に特に好ましくは95~100phr、次いで好ましくは100phrの量で含む。このようなゴム混合物は、特に、良好な加工性及び復帰安定性と相まって、最適化された引裂特性及び摩耗特性を示す。
【0041】
ゴム混合物が100phr未満のNRを含有する場合、ゴム混合物は、好ましくは、さらなるゴムとして、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択される少なくとも1つのジエンゴムを含有する。
【0042】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種の天然ポリイソプレン(NR)を、好ましくは、5~55phrの量で、及び本発明の特定の有利な一実施形態においては、5~25phr、極めて特に好ましくは5~20phrの量で含む。このようなゴム混合物は、特に良好な加工性及び加硫戻り安定性及び最適化された引裂き特性及び最適な転がり抵抗特徴を示す。
【0043】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種のポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)を、好ましくは、10~80phr、特に好ましくは10~50phrの量、及び本発明の特定の有利な実施形態においては、15~40phrの量で含む。これにより、本発明に係るゴム混合物の特に良好な引裂き及び摩耗特性、並びに最適な制動特徴が達成される。
【0044】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)を、好ましくは、10~80phr、特に好ましくは30~80phrの量、及び本発明の特定の有利な一実施形態においては、50~70phrの量で含む。これにより、本発明に係るゴム混合物の特に良好な転がり抵抗特性が達成される。本発明の特に有利な実施形態において、SSBRは、最適で、且つ、バランスのとれた特性プロファイルを達成するために、少なくとも1種のさらなるゴムとの組み合わせで採用される。
【0045】
ゴム混合物が、少なくとも1種の充填材を、好ましくは、30~500phr、特に好ましくは50~400phrの量、次いで、好ましくは80~300phrの量で含有する場合が好ましい。
【0046】
本発明の有利な実施形態において、充填材は、カーボンブラック及び二酸化ケイ素からなる群から選択されることが好ましい補強用充填材である。
【0047】
好適なカーボンブラックは、当業者に知られているいずれかのカーボンブラックタイプを含む。カーボンブラックが工業用カーボンブラック及び熱分解カーボンブラックから選択される場合が好ましく、工業用カーボンブラックがより好ましい。
【0048】
カーボンブラックは、30~250g/kg、好ましくは30~180g/kg、特に好ましくは40~180g/kg、及びさらに特に好ましくは40~130g/kgのヨウ素吸着量としても知られているASTM D1510に準拠したヨウ素価、並びに30~200ml/100g、好ましくは70~200ml/100g、特に好ましくは90~200ml/100gのASTM D2414に準拠したDBP値を有する場合が好ましい。
【0049】
ASTM D2414に準拠したDBP値は、カーボンブラック又は淡色の充填材の、フタル酸ジブチルに係る特定の吸収体積を判定する。
【0050】
特に車両用タイヤのための、ゴム混合物中におけるこのような種類のカーボンブラックの使用により、耐摩耗性と蓄熱との間における最適な妥協が保証され、これは、次いで、生態学的に関連する転がり抵抗に影響する。
【0051】
特に適切で好ましいカーボンブラックは、80~110g/kgのヨウ素吸着数及び100~130ml/100gのDBP数を有するもの、例えば特にタイプN 339のカーボンブラックである。
【0052】
二酸化ケイ素は、好ましくは非晶質二酸化ケイ素、例えば沈降二酸化ケイ素とも呼ばれる沈降シリカである。しかしながら、例えば発熱性二酸化ケイ素を使用することも代替的に可能である。
【0053】
しかしながら、35~400m2/g、好ましくは35~350m2/g、より好ましくは85~320m2/g、最も好ましくは120~235m2/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132による)及び30~400m2/g、好ましくは30~330m2/g、より好ましくは80~300m2/g、最も好ましくは115~200m2/gのCTAB表面積(ASTM D 3765による)を有する微粉砕された沈降シリカを使用することが特に好ましい。このようなシリカは、例えばタイヤトレッド用のゴム混合物において、加硫ゴムの特に良好な物理特性をもたらす。混合時間の短縮による混合物の加工における利点もまた、同一の生成物特性を保持しながらもたらされることが可能であり、向上した生産性がもたらされる。用いられるシリカはそれ故、例えば、Evonik製のUltrasil(登録商標)VN3タイプ(商品名)、又はHDシリカとして知られる高分散シリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1165 MP)であってよい。
【0054】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、充填材として、少なくとも1種のシリカを、好ましくは、30~500phr、特に好ましくは50~400phrの量、次いで、好ましくは80~300phrの量で含有する。
【0055】
これらの量では、シリカは特に、単独又は主充填材(充填材総量に基づいて50重量%超)として存在する。
【0056】
本発明のさらなる有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種のシリカを、さらなる充填材として、好ましくは、5~100phr、特に好ましくは5~80phr、次いで、好ましくは10~60phrの量で含有する。
【0057】
これらの量では、シリカは特に、特にカーボンブラックなどの他の主充填材に追加して、さらなる充填材として存在する。
【0058】
「ケイ酸」及び「シリカ」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0059】
本発明の特に有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、0.1~60phr、好ましくは3~40phr、特に好ましくは5~30phr、極めて特に好ましくは5~15phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含有する。これらの量では、カーボンブラックは特に、特にシリカなどの主充填材に追加して、さらなる充填材として存在する。
【0060】
本発明のさらなる有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、30~300phr、好ましくは30~200phr、特に好ましくは40~100phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含有する。これらの量では、カーボンブラックは、単独で又は主充填材として存在しており、任意選択的には上記の下限側の量でシリカと組み合わせで存在している。
【0061】
本発明の特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、5~60phr、特に好ましくは5~40phrの少なくとも1種のカーボンブラック、及び50~300phr、好ましくは80~200phrの少なくとも1種のシリカを含有する。
【0062】
ゴム混合物は、補強性又は非補強性のさらなる充填材をさらに含有してもよい。
【0063】
本発明の文脈において、さらなる(非補強用)充填材としては、アルミノケイ酸塩、カオリン、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、又はゴムゲル及び繊維(例えばアラミド繊維、ガラスファイバー、炭素繊維、セルロース繊維)が挙げられる。
【0064】
さらに任意選択的に補強充填材は、例えば、離散CNT、いわゆる中空炭素繊維(HCF)並びにヒドロキシル、カルボキシル及びカルボニル基などの1つ以上の官能基を含有する改質CNTを含む、カーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛及びグラフェン、並びにいわゆる「カーボンシリカ二重相充填材」である。
【0065】
本発明に関連して、酸化亜鉛は、充填材中に含まれない。
【0066】
ゴム混合物はさらに、慣習的な添加剤を慣習的な重量部で含有可能であり、これらは、好ましくは、前記混合物の生成最中における少なくとも1つの一次混合段階において添加される。これらの添加剤としては以下を含む:
a)従来技術で知られている老化安定剤、
例えば、p-フェニレンジアミン、例えば、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(SPPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、
又はジヒドロキノリン、例えば2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、
b)例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えばステアリン酸)といった活性化剤、並びに/又は例えば亜鉛エチルヘキサノエートといった亜鉛錯体などの他の活性化剤、
c)充填材、特にカーボンブラック又はシリカを結合するための活性化剤及び/又は薬剤、例えばS-(3-アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はその金属塩(カーボンブラックの結合)及びシランカップリング剤(シリカの結合)、
d)オゾン分解防止剤ワックス、
e)樹脂、とりわけ粘着性付与樹脂、
f)例えば2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)といった素練り助剤、並びに
g)特に脂肪酸エステル及び金属セッケン、例えば亜鉛セッケン及び/又はカルシウムセッケンなどの加工助剤、
h)可塑剤、例えば特に芳香族、ナフテン系又はパラフィン系鉱油可塑剤、例えば方法IP 346に従って3重量%未満の多環式芳香族化合物の含有量を好ましくは有するMES(軽度抽出溶媒和物)、若しくはRAE(残留芳香族抽出物)、若しくはTDAE(処理留出物芳香族抽出物)又はゴム液化(RTL)油若しくはバイオマス液化(BTL)油、或いはトリグリセリド、例えばナタネ油又はファクチス又は炭化水素樹脂又は平均分子量(BS ISO 11344:2004に準拠してGPC=ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)が500~20000g/molである液体ポリマー。
【0067】
鉱油を使用する場合、これは、好ましくは、DAE(留出物芳香族抽出物)、RAE(残留芳香族抽出物)、TDAE(処理留出物芳香族抽出物)、MES(軽度抽出溶媒和物)、及びナフテン系油からなる群から選択される。
【0068】
特に有利な実施形態では、本発明によるゴム混合物は、式I)の本発明の化合物に加えて、p-フェニレンジアミンの群からの老化安定剤、特にa)で上に列挙したものを含有しない。特に好ましい実施形態では、本発明によるゴム混合物は、p-フェニレンジアミンに基づいて0~0.1phr、特には0phrのさらなる老化安定剤を含有し、これは、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(SPPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)を含む群から、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0069】
好ましくは非常に少量の0~0.1phr、特に好ましくは0phrの言及されたp-フェニレンジアミン、及び本発明に従って存在する式I)の化合物は、より低い毒性で同等の保護効果を達成することを可能にする。本発明の式I)の化合物は、従来技術において公知である言及されたp-フェニレンジアミンを置き換えるものである。
【0070】
本発明のさらなる有利な実施形態では、言及されたp-フェニレンジアミン老化安定剤の少なくとも1つのさらなる代表物が存在するため、本発明による化合物は、従来技術で知られているp-フェニレンジアミンを部分的にのみ置き換える。これはまた、最適な程度に至らないだけで、本発明に係る利点を達成する。
【0071】
有利な実施形態において、TMQなどのジヒドロキノリン系の老化安定剤が、本発明の式I)の化合物に追加してゴム混合物に存在する。特にTMQなどの、存在するジヒドロキノリンの量は、好ましくは0.1~3、特に0.5~1.5phrである。
【0072】
オゾン分解防止剤ワックス(上記の群d)は別々に考慮され、本発明の好ましい実施形態では、追加の老化安定剤a)が存在するかどうかにかかわらず、ゴム混合物中に存在する。
【0073】
シランカップリング剤は、当業者に公知である任意の種類のものである。
【0074】
さらに、1つ以上の異なるシランカップリング剤を互いに組み合わせて使用し得る。そのため、ゴム混合物は異なるシランの混合物を含有し得る。
【0075】
シランカップリング剤は、ゴムへの充填材の添加前であってもゴム/ゴム混合物の混合中(in situ)又は前処理(予備改質)の状況で、二酸化ケイ素、特にシリカの表面シラノール基又は他の極性基と反応する。
【0076】
従来技術から知られているカップリング剤は、ケイ素原子上の脱離基として少なくとも1つのアルコキシ、シクロアルコキシ又はフェノキシ基を有すると共に、おそらくは開裂後に、ポリマーの二重結合との化学反応に進行可能である他の官能基を有する二官能性オルガノシランである。後者における基は、例えば以下の化学基を含み得る:
-SCN、-SH、-NH2又は-Sx-(ここで、x=2~8である)。
【0077】
採用可能なシランカップリング剤としては、それ故、例えば、2~8個の硫黄原子を有する、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン又は3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、例えば3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、対応するジスルフィド(TESPD)、又は1~8個の硫黄原子を有するスルフィドと内容の異なる種々のスルフィドとの他の混合物が挙げられる。TESPTは、例えば工業用カーボンブラックとの混合物としても添加され得る(商品名X50S(登録商標)、Evonik製)。
【0078】
例えば、国際公開第99/09036号パンフレットから公知であるようなブロック化メルカプトシランもシランカップリング剤として使用され得る。国際公開第2008/083241 A1号パンフレット、国際公開第2008/083242 A1号パンフレット、国際公開第2008/083243 A1号パンフレット、及び国際公開第2008/083244 A1号パンフレットに記載のシランを用いることも可能である。使用可能なシランには、例えば、特に3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランなど、NXTの名称で多数のバリアントで米国Momentiveによって販売されているもの、又はVP Si 363(登録商標)の名称でEvonik Industriesによって販売されているものが含まれる。
【0079】
さらなる添加剤の合計割合は、好ましくは、3~150phr、より好ましくは3~100phr、最も好ましくは5~80phrである。
【0080】
酸化亜鉛(ZnO)は、上述の量でのさらなる添加剤の全体割合の中に含まれ得る。
【0081】
これは、当業者に公知であるいずれかの種類の酸化亜鉛、例えばZnO顆粒又は粉末であってよい。通常使用される酸化亜鉛は一般に、10m2/g未満のBET表面積を有する。しかしながら、10~100m2/gのBET表面積を有する酸化亜鉛、例えばいわゆる「ナノ酸化亜鉛」を使用することも可能である。
【0082】
本発明のゴム混合物は、好ましくは加硫形態で、特に車両用タイヤ又は他の加硫された技術的ゴム物品に使用される。
【0083】
「加硫」及び「架橋」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0084】
本発明のゴム混合物の加硫は、好ましくは、加硫促進剤の補助を伴って、硫黄及び/又は硫黄ドナーの存在下に実施され、いくつかの加硫促進剤は同時に硫黄ドナーとして作用することが可能である。加硫促進剤は、チアゾール加硫促進剤、メルカプト加硫促進、スルフェンアミド加硫促進剤、チオカルバメート加硫促進剤、チウラム加硫促進剤、チオホスフェート加硫促進剤、チオウレア加硫促進剤、キサントゲネート加硫促進剤並びにグアニジン加硫促進剤からなる群から選択される。
【0085】
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、
N,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)、ベンゾチアジル-2-スルフェンモルホリド(MBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、及びジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン促進剤から選択されるスルフェンアミド促進剤を使用することが好ましい。
【0086】
用いられる硫黄ドナー物質は、当業者に公知の任意の硫黄ドナー物質であってよい。
【0087】
加硫遅延剤がゴム混合物中に存在していてもよい。
【0088】
他の場合、本発明によるゴム混合物の製造は、好ましくは、加硫系(例えば、硫黄及び加硫影響物質)を除くすべての成分を含む一次混合物を1つ以上の混合段階で最初に製造することを含む、ゴム産業において通例のプロセスによって行われる。最終混合物は、最終混合段階において加硫系を添加することにより生成される。
【0089】
最終混合物は、例えばさらに加工され、及び押出し成形操作又はカレンダー加工によって適切な形状とされる。
【0090】
本発明によるゴム混合物は、車両用タイヤ、特に空気式車両用タイヤにおける使用に特に好適である。原則として、すべてのタイヤ構成要素、特に外側構成要素、特に好ましくはフランジプロファイル、トレッド及び/又はサイドウォールでの使用が考えられる。キャップ/ベース構造を有するトレッドの場合、本発明によるゴム混合物は、少なくともキャップ内で使用されることが好ましい。
【0091】
車両用タイヤに使用するために、加硫前の完成混合物としての混合物は、好ましくは外側構成要素の対応する形状にされ、グリーン車両用タイヤの製造中に既知の方法で適用される。
【0092】
車両用タイヤにおける任意の他の物体混合物として使用するための本発明によるゴム混合物の製造は、上述のように実施される。混合物の押出し成形操作/カレンダー加工後の成形に違いが存在する。このように得られた、1つ以上の異なる本体混合物用のまだ加硫されていないゴム混合物の形状が、次いで、グリーンタイヤの製造に供される。
【0093】
ここで、「本体混合物」とは、基本的にスキージ、内側ライナ(内側層)、コアプロファイル、ベルト、ショルダー、ベルトプロファイル、カーカス、ビード補強、ビードプロファイル、フランジプロファイル及びバンデージなどのタイヤの内側構成要素のためのゴム混合物を指す。
【0094】
まだ加硫されていないグリーンタイヤがその後加硫される。
【0095】
駆動ベルト及び他のベルト、特にコンベヤベルトにおける本発明のゴム混合物の使用のために、押し出しされた、まだ加硫されていない混合物が適切な形状とされ、度々、同時に、又はその後、補強部材、例えば合成繊維又はスチールコードが設けられる。これにより、通常、ゴム混合物の1つ及び/又はそれ以上のプライ、同等及び/又は異なる補強部材の1つ及び/又はそれ以上のプライ、並びに同一及び/又は他のゴム混合物の1つ及び/又はそれ以上のさらなるプライからなるマルチプライ構造が得られる。
【0096】
本発明はさらに、少なくとも1つの構成要素中に本発明に係る化合物を含有する本発明に係るゴム混合物を含む車両用タイヤを提供する。
【0097】
少なくとも1つの構成要素中の加硫車両用タイヤは、本発明の少なくとも1つのゴム混合物の加硫物を含む。存在する大部分の物質、例えばゴムは、混合後に既に存在するか、又は加硫後にのみ化学修飾形態で存在し得ることが当業者に知られている。
【0098】
本発明の文脈において、「車両用タイヤ」は、産業用タイヤ、並びに建設現場用車両、トラック、車及び二輪車両用タイヤを含む、空気式車両用タイヤ及び固体ゴムタイヤを意味するものとして理解されるべきである。
【0099】
本発明に係る車両用タイヤが少なくとも1つの外部構成要素中に本発明に係るゴム混合物を含み、ここで、外部構成要素は、好ましくは、トレッド、サイドウォール及び/又はフランジプロファイルである場合が好ましい。
【0100】
したがって、本発明による車両用タイヤは、式I)の本発明の化合物を含む本発明によるゴム混合物を、複数の構成要素中に、任意選択的に適合組成物中に含んでいてもよい。
【0101】
本発明はさらに、式I)の化合物の生成プロセスを提供し、ここで、プロセスは、少なくとも以下の処理工程を含む:
a1)式A1)又はA2)の物質:
【化2】
を準備する工程;
b1)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素又は還元剤を準備する工程;
c1)式A1)又は式A2)の化合物を工程b1)からの物質と反応させて、式I)の化合物
【化3】
を得る工程。
【0102】
式A2)の化合物は、M.Takagi,Org. Biomol. Chem.,2019,17(7),1791-1795に記載されている通りに及び式R1)に示されている通りに製造することができる:
【化4】
【0103】
或いは、式A2)の化合物は、式R2)及び式R3)に示されているように、9H-カルバゾールをニトロ化(M.Yu,Supramol. Chem.,2008,20(4),357-361)して式A1)の化合物を得てから、続いて還元(M.Takagi,Org. Biomol. Chem.,2019,17,1791-1795)を行うことによって製造することもできる:
【化5】
【0104】
式A1)の化合物はさらに、式R4)で示されるように、対応するヒドラジンとシクロヘキシルケトンとの縮合及びその後の環化/芳香族化によって製造することができる(B.A. Dalvi,Tet. Lett.,2018,59,2145-2149):
【化6】
【0105】
「還元剤」は、還元を可能にする化合物を意味すると理解されるべきである。当業者に知られているように、そのような試薬としては、水素化物、特に金属水素化物が挙げられる。
【0106】
適切な還元剤は、特に、水素化ナトリウム(NaH)、水素化カルシウム(CaH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、NaBHCN、NaBH(OAc)、2-メチルピリジンボラン錯体からなる群から選択される水素化物である。
【0107】
本発明の文脈において、水素は、代替物として明示的に言及されているため、「還元剤」としては追加的に列挙されない。しかしながら、「還元剤」という用語は、系内で水素を形成し、その結果水素化を行うあらゆる試薬を包含することが理解されるであろう。
【0108】
水素以外の還元剤の使用は、工程c1)の反応が式A2)の化合物から出発して行われる場合に特に考えられる。
【0109】
工程c1)の反応は、好ましくは水素を用いて行われる。
【0110】
水素を用いる反応では、好ましくは、本発明との関係において「水素化触媒」と呼ばれる適切な触媒が追加的に用いられる。
【0111】
水素化触媒は、好ましくは、特にパラジウム(Pd)又は白金(Pt)などの貴金属触媒である。貴金属は、好ましくは、パラジウム炭素(Pd/C)などのように炭素(C)上で採用される。
【0112】
さらに、ラネーニッケル又は銅クロマイトなどの、他の公知の触媒を用いることも可能である。
【0113】
したがって、工程c1)における反応は、特に好ましくは、水素化触媒を使用して水素を用いて行われる。
【0114】
工程c1)における反応は、好ましくは、80℃~150℃、特に例えば120℃の温度で実施される。
【0115】
反応混合物は、好ましくは35~45bar、特に例えば40barの圧力で水素で加圧され、次いで好ましくは1~20時間、好ましくは3~13時間、特に好ましくは5~13時間、特に例えば10時間撹拌される。
【0116】
工程c1)における水素との反応は、好ましくは、特にオートクレーブ又は別の圧力反応器中でなど、好ましくは比較的高い圧力に適した容器の中で実施される。
【0117】
工程c1)における反応は、特に好ましくは、水素化触媒を使用して、80℃~150℃の温度で、水素を用いて実施され、反応混合物は25~45barの圧力で水素で加圧され、反応はオートクレーブ又は別の圧力反応器の中で実施される。
【0118】
工程c1)における溶媒は、同時に反応物として機能するMIBKであっても、トルエンやキシレンなどの不活性溶媒であってもよい。後者の場合、MIBKは反応物として化学量論量でのみ使用される。しかしながら、MIBKは同時に溶媒としても使用されることが好ましい。これにより、トルエンやキシレンなどの追加の物質を回避することができる。さらに、反応後に未変換のMIBKを回収して再利用することもできる。
【0119】
好ましくは、工程c1)の後に、例えばシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによってなど、精製が行われる。
【0120】
示されているように、工程c1)における反応は、式A1)の化合物と式A2)の化合物のいずれかから出発して実施することができる。
【0121】
ただし、工程c1)では、式A1)の化合物を水素及びMIBKで直接変換することが好ましい。これにより比較的高い収率が達成される。
【0122】
以降で実施例を参照しながら本発明をより具体的に明確にする。
【実施例
【0123】
式I)の化合物は、スキームX1)で表される通り、第1の合成経路に従って以下の通りに製造した:
【化7】
【0124】
テフロン製インライナーを備えたステンレス鋼製オートクレーブに、0.35g(1.92mmol、1当量)の3-アミノ-9H-カルバゾール(式A2の化合物))、0.16gのパラジウム炭素(Pd/C)(5%)(4.67mmolの基質に対して0.4g)、及び20.0mlのメチルイソブチルケトン(MIBK)を入れた。続いて、反応混合物を40barの水素(H)で加圧し、120℃で10時間撹拌した。反応終了後、過剰の水素を飛ばし、懸濁液をCelite(登録商標)でろ過し、続いてエタノールで洗浄した。ろ液を乾燥するまで濃縮し、減圧下で乾燥した。この物質をシリカゲル(シクロヘキサン/酢酸エチル(EA)10:1)で精製した:灰色がかった固体;収量0.38g(理論値の75%)。
H-NMR(核磁気共鳴)(500MHz,DMSO-d6)δ=10.69(s,1H),7.94(dd,J=7.7,1.0Hz,1H),7.36(d,8.1Hz,1H),7.27(ddd,J=8.2,7.0,1.2Hz,1H),7.24-7.19(m,3H),7.03(ddd,J=7.9,7.0,1.0Hz,1H),6.78(dd,J=8.5,2.3Hz,1H),4.75(d,J =9.0Hz,1H),3.62-3.47(m,1H),1.80(dp,J=13.5,6.7Hz,1H),1.51(dt,J=13.8,7.1Hz,1H),1.25(dt,J=13.5,6.8Hz,2H),1.13(d,J=6.1Hz,3H),0.96(d,J=6.6Hz,3H),0.91(d,J=6.6Hz,3H).
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=142.3、140.6、132.9、125.2、123.6、122.8、120.3、117.9、115.4、111.9、111.2、102.1、47.0、46.7、25.1、23.4、23.1、21.3。
ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析法)[M+H]=267.
融点:107℃
【0125】
更なる合成ルートに従って、スキームX2)に示す通り、式I)の化合物を以下の通りに製造した:
【化8】
【0126】
テフロン製インライナーを備えたステンレス鋼製オートクレーブに、4.00g(18.9mmol、1当量)の3-ニトロ-9H-カルバゾール(式A1の化合物))、1.60gの白金炭素(Pt/C)(5%)(4.67mmolの基質に対して0.4g)、及び50.0mlのメチルイソブチルケトンを入れた。続いて、反応混合物を40barの水素で加圧し、120℃で10時間撹拌した。反応終了後、過剰の水素を飛ばし、懸濁液をCelite(登録商標)でろ過し、続いてエタノールで洗浄した。ろ液を乾燥するまで濃縮し、減圧下で乾燥した。この物質をシリカゲル(シクロヘキサン/EE10:1)で精製した:灰色がかった固体;収量4.40g(理論値の88%)。
<905H-NMR、13C-NMR、ESI-MS、及び融点を含む生成物の分析:スキームX1)に従った上記反応と同じ値。
【0127】
車両用タイヤ用のゴム混合物に使用するために、式I)の本発明の化合物は、例えば6PPD、7PPD又はIPPDなどの当業者に公知の老化安定剤の代わりに、当業者に公知の方法で、ゴム混合物の製造中の混合段階の1つで添加される。
【0128】
したがって、式I)の化合物を、表1に示すように、本発明による例示的なゴム混合物に異なる量で組み込んだ。得られた本発明の実施例は、E1及びE2とラベル付けされている。
【0129】
老化安定剤として式I)の化合物の代わりに6PPDを含み、残りの組成が同一であり、それぞれの場合でV1とE1及びV2とE2が等モル置換されているゴム混合物を比較とした。表1の量は、phrの単位で表される。老化安定剤を含まない参照(Ref.)も報告される。
【0130】
すべての混合物において、老化安定剤(6PPD又は式I))と可塑剤油MESの量の合計は10phrである。
【0131】
【表1】
【0132】
本発明の実施例は、6PPDを含むゴム混合物と比較して、老化安定化効果の大幅な低下を示さず、改善さえも示す。
【国際調査報告】