(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ホットスタンピングダイおよびホットスタンピングプレスを使用するホットスタンピングプロセス
(51)【国際特許分類】
B21D 24/00 20060101AFI20241126BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20241126BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20241126BHJP
B21D 37/16 20060101ALI20241126BHJP
B22F 1/00 20220101ALN20241126BHJP
B23K 35/30 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
B21D24/00 H
B22F10/28
B21D22/20 H
B21D37/16
B22F1/00 T
B23K35/30 340A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529568
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 IB2022060739
(87)【国際公開番号】W WO2023089449
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/060686
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレーズ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】タロン,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4E050
4E137
4K018
【Fターム(参考)】
4E050GA04
4E137AA13
4E137AA17
4E137BB01
4E137CA09
4E137DA03
4E137EA36
4E137GA03
4E137HA08
4K018AA33
4K018BA17
4K018BB04
4K018CA44
4K018EA51
4K018KA18
4K018KA22
(57)【要約】
本発明は、ホットスタンピング動作中にブランクと接触する作業面(9)を有するダイ本体(11)と、対応する多孔質作業面部分(7)を有する少なくとも1つの多孔質ダイ部分(4)とを備えるホットスタンピングダイ(2、3)に関し、前記多孔質ダイ本体部分がリザーバ(6、40)と接触し、前記リザーバ(6、40)は冷却媒体(8)を収容し、前記多孔質ダイ本体部分が前記リザーバ(6、40)から前記多孔質作業面部分まで延在する複数の噴出チャネル(5)を備え、
前記噴出チャネル(5)は、冷却媒体の圧力が閾値噴出圧力を超えて上昇したときに前記冷却媒体(8)をリザーバ(6、40)から前記多孔質作業面部分(7)に向かって噴出するように構成され、前記ダイ(2、3)は、ホットスタンピング後に過剰に噴出された冷却剤をダイから排出するための排出チャネルを備えていない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットスタンピングダイ(2、3)であって、
ホットスタンピング動作中にブランクと接触する作業面(9)を有するダイ本体(11)と、対応する多孔質作業面部分(7)を有する少なくとも1つの多孔質ダイ部分(4)とを備え、前記多孔質ダイ本体部分はリザーバ(6、40)と接触しており、前記リザーバ(6、40)は冷却媒体(8)を収容し、前記リザーバ内の冷却媒体(8)の圧力を閾値噴出圧力を超えて上昇させるように作動可能であり、かつ冷却媒体(8)に対する追加圧力を解放するように停止可能である加圧装置を装備し、前記多孔質ダイ本体部分は、前記リザーバ(6、40)から前記多孔質作業面部分まで延在する複数の噴出チャネル(5)を備え、
冷却媒体の圧力が閾値噴出圧力を超えて上昇したときに、前記噴出チャネル(5)は前記冷却媒体(8)をリザーバ(6、40)から前記多孔質作業面部分(7)に向かって噴出するように構成されており、前記ダイ(2、3)が、ホットスタンピング後に過剰に噴出された冷却剤をダイから排出するための排出チャネルを備えていない、
ホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項2】
多孔質ダイ部分(4)の各噴出チャネル(5)は円筒形部分を備える、請求項1に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項3】
各噴出チャネル(5)の円筒形部分は、多孔質作業面部分(7)上の円錐台形部で終端し、その最大部分は前記多孔質作業面部分(7)上に位置する、請求項2に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項4】
噴出チャネル(5)の円筒形部分の直径は、0.1~0.5ミリメートルの間の範囲にある、請求項2または3に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項5】
多孔質ダイ部分(4)は鋼またはステンレス鋼でできている、請求項1~4のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項6】
多孔質ダイ部分(4)は、ホットスタンピング作業面(9)上に開口するダイ本体内に管理されたキャビティ内に位置する、請求項1~5のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項7】
ダイ(2、3)は、スタンピングプレス(1)で使用されるように設計され、前記スタンピングプレス(1)は、ホットスタンピング動作中にスタンピング方向(X)に従って閉じられ、その表面の各点において、ダイ作業面(9)に対する垂直方向(N)とスタンピング方向(X)との間の角度は、0°~90°の間の範囲にある角度αであり、ダイ(2、3)は、少なくともαが45°~90°の間の範囲にあるすべての領域において多孔質ダイ部分(4)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項8】
上部ダイおよび下部ダイの各々は、対応するホットスタンピングダイ作業面(9)上に開口するキャビティ内に位置する少なくとも1つの多孔質ダイ部分(4)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項9】
多孔質ダイ部分(4)はダイ本体全体を占める、請求項1~5のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項10】
多孔質ダイ部分(4)は加法製造によって製造される、請求項1~9のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項11】
上部ダイ(2)と下部ダイ(3)とを装着したホットスタンピングプレス(1)を使用するホットスタンピングプロセスであって、前記ダイのうちの少なくとも1つは、ホットスタンピング動作中にブランクと接触する作業面(9)と、リザーバ(6、40)と接触するダイ本体(11)とを備え、前記リザーバ(6、40)は冷却媒体(8)を収容し、前記作業面(9)が多孔質作業面部分(7)を備え、前記下部ダイ(3)は、前記リザーバ(6、40)から前記多孔質作業面(7)まで延在する複数の噴出チャネル(5)を備える多孔質ダイ本体部分を備え、前記噴出チャネル(5)は、ホットスタンピングプロセス中に前記冷却媒体をリザーバ(6、40)から前記多孔質作業面(7)に向かって噴出でき、リザーバ(6、40)は、前記リザーバ内の冷却媒体(8)の圧力を閾値噴出圧力を超えて上昇させるように作動可能であり、冷却媒体(8)上の追加圧力を解放するように停止可能である加圧装置を装備し、前記ダイ(2、3)は、ホットスタンピング後にダイから過剰に噴出された冷却剤を排出するための排出チャネルを備えておらず、前記ホットスタンピングプロセスは、
-(i)冷却媒体(8)が多孔質作業面部分(9)に到達するまで前記噴出チャネル(5)を完全に満たすために加圧装置を作動させるステップと、
-(ii)鋼ブランク(10)を加熱するステップと、
-(iii)前記鋼ブランク(10)をホットスタンピングプレス(1)に移送するステップと、
-(iv)加圧装置を停止するステップと、
-(v)ブランク(10)をホットスタンピングプレス(1)内に位置決めするステップと、
-(vi)上部ダイ(2)および下部ダイ(3)をクランプすることによって前記鋼ブランク(10)をホットスタンピングするステップであって、ステップiはステップiiおよびステップiiiと同時に行うことができ、ステップivはステップiの後でかつステップviの前に行う、ステップと、
を備える、ホットスタンピングプロセス。
【請求項12】
冷却媒体(8)は水溶液である、請求項11に記載の項に記載のプロセス。
【請求項13】
冷却媒体(8)は水である、請求項12に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金産業におけるホットスタンピングに関し、より詳細には、ホットスタンピングダイおよびホットスタンピングプレスに関する。本発明はまた、ホットスタンピングプレスを使用する鋼ブランクのような金属ブランクのホットスタンピングのためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
高温金属ブランク(摂氏約900度以上の温度の金属ブランクを意味する)のホットスタンピングプレスのプロセスは、高い引張強度および降伏強度を有する金属ブランクを、複雑な形状にホットプレス成形することを可能にすることが知られている。
【0003】
ホットスタンピングプロセス中の重要なステップは、成形されたばかりのブランクの急速冷却である。冷却方法は、例えば、複数のチャネルが管理されるダイ本体を備えるホットプレススタンピング装置を使用するホットプレススタンピング冷却方法を説明する欧州特許第3045236号明細書および欧州特許第1671715号明細書から既に知られており、前記チャネルは、冷媒タンクに接続され、ホットスタンピングプレス内に配置された成形されたブランクに冷媒を分配する噴出孔につながる。
【0004】
しかしながら、この冷却プロセスでは、金属ブランクの均一な冷却を確実にすることは依然として困難である。また、噴出される冷媒量が多く、ダイの作業面から冷媒を排出するための排出チャネルが必要となる。これは、プレスされた各ブランクを冷却するための時間および冷媒を要することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第3045236号明細書
【特許文献2】欧州特許第1671715号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、熱間成形された金属ブランクの冷却の効率および迅速性を高めるホットスタンピングダイおよびホットスタンピングプレスを提供することによって、従来技術の欠点を改善することである。
【0007】
本発明はまた、本発明のホットスタンピングダイおよびプレスを使用するホットスタンピングプロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明の第1の目的は、ホットスタンピングダイであって、ホットスタンピング動作中にブランクと接触する作業面を有するダイ本体と、対応する多孔質作業面部分を有する少なくとも1つの多孔質ダイ部分とを備え、前記多孔質ダイ本体部分はリザーバと接触し、前記リザーバは冷却媒体を収容し、前記多孔質ダイ本体部分は前記リザーバから前記多孔質作業面部分まで延在する複数の噴出チャネルを備え、前記噴出チャネルは、前記冷却媒体上の圧力が閾値噴出圧力を超えて上昇したときに、冷却媒体をリザーバから前記多孔質作業面部分に向かって排出するように構成され、前記ダイは、ホットスタンピング後にダイから過剰に噴出された冷却剤を排出するための排出チャネルを備えていない、ホットスタンピングダイである。
【0009】
本発明によるホットスタンピングダイはまた、個別にまたは組み合わせて考慮される、以下に列挙される任意選択の特徴を有してもよい。
-多孔質ダイ部分の各噴出チャネルは円筒形部分を備える。
-各噴出チャネルの円筒形部分は、多孔質作業面部分上に円錐台形部分で終端し、その最大部分は多孔質作業面部分上に位置する。
-噴出チャネルの円筒形部分の直径は、0.1~0.5ミリメートルの間で構成される。
-多孔質ダイ部分は、鋼またはステンレス鋼で作られている。
-多孔質ダイ部分は、ホットスタンピング作業面上に開口するダイ本体内に管理されたキャビティ内に配置される。
-ダイは、スタンピングプレスで使用されるように設計され、前記スタンピングプレスは、ホットスタンピング動作中にスタンピング方向に従って閉じられ、その表面の各点において、ダイ作業面に対する垂直方向とスタンピング方向との間の角度は、0°~90°の間で構成される角度αであり、ダイは、少なくともαが45°~90°の間で構成されるすべての領域において多孔質ダイ部分を備える。
-上部ダイおよび下部ダイの各々は、対応するホットスタンピングダイ作業面上に開口するキャビティ内に位置する少なくとも1つの多孔質ダイ部分を備える。
-多孔質ダイ部分はダイ本体全体を占める。
【0010】
本発明の第2の目的は、前述のようなダイから成り、ダイの多孔質部分は加法製造によって作られている。
【0011】
本発明の第3の目的は、上部ダイと下部ダイとを装着したホットスタンピングプレスを使用するホットスタンピングプロセスから成り、前記ダイのうちの少なくとも1つは、ホットスタンピング動作中にブランクと接触する作業面と、リザーバと接触するダイ本体とを備え、前記リザーバは冷却媒体を収容し、前記作業面は多孔質作業面部分を備え、
前記下部ダイは、前記リザーバから前記多孔質作業面まで延在する複数の噴出チャネルを備える多孔質ダイ本体部分を備え、前記噴出チャネルは、ホットスタンピングプロセス中にリザーバから前記多孔質作業面に向かって前記冷却媒体を噴出でき、リザーバが、前記リザーバ内の冷却媒体の圧力を閾値噴出圧力を超えて上昇するように作動可能であり、冷却媒体上の追加圧力を解放するように停止可能である加圧装置を装備し、前記ホットスタンピングプロセスは、
-(i)冷却媒体が多孔質作業面部分に到達するまで前記噴出チャネルを完全に満たすために加圧装置を作動させるステップと、
-(ii)鋼ブランクを加熱するステップと、
-(iii)前記鋼ブランクをホットスタンピングプレスへ移送するステップと、
-(iv)加圧装置を停止するステップと、
-(v)ブランクをホットスタンピングプレス内に位置決めするステップと、
-(vi)上部ダイおよび下部ダイをクランプすることによって前記鋼ブランクをホットスタンピングするステップと、を備え、ステップiはステップiiおよびステップiiiと同時に行うことができ、ステップivはステップiの後でかつステップviの前に行う。
【0012】
好ましくは、冷却媒体は水溶液である。
【0013】
最も好ましくは、冷却媒体は水である。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明においてより詳細に説明される。
【0015】
本発明は、以下の説明を読むことによって、よりよく理解されるであろう。以下の説明は、単に説明の目的で提供されており、決して限定的であることを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ホットスタンピング下部ダイとホットスタンピング上部ダイとを備える本発明のホットスタンピングプレスの断面図を表す図である。
【
図2】ダイ間にホットブランクを有する
図1のホットスタンピングプレスの断面図である。
【
図3】ダイ間に成形されたブランクを有する
図1のホットスタンピングプレスの断面図である。
【
図4】冷却剤リザーバに接続された噴出チャネルを備える多孔質ダイ部分を含むダイ本体の一部の断面図である。
【
図5】本発明のホットスタンピングダイの多孔質ダイ部分の斜視図である。
【
図5a】
図5の多孔質ダイ部分の作業面の詳細な斜視図である。
【
図5b】
図5の多孔質ダイ部分の噴出チャネルの第1の実施形態の
図5aの断面A-Aを表す図である。
【
図5c】
図5の多孔質ダイ部分の噴出チャネルの第2の実施形態の
図5aの断面A-Aを表す図である。
【
図6】多孔質ダイ部分の噴出チャネルが冷却剤を多孔質ダイ部分の作業面に噴出している間の
図4のダイ本体の一部の断面図である。
【
図7】ブランクが作業面に向かっている、
図4と同じ図である。
【
図8】
図6のスェッティングダイの多孔質部分の作業面上にあるブランクを表す図である。
【
図9】本発明のオメガ形ホットスタンピングダイの斜視図である。
【
図10】自動車産業用に設計された本発明のホットスタンピング下部ダイの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願で使用される用語「下部(lower)」、「上部(upper)」、「上方(above)」、「下方(below)」、「最も下(lowest)」、「最も高い(highest)」、「頂部(top)」、「底部(bottom)」、「左(left)」、「右(right)」は、補強キャリア装置、電池パック、および車両の異なる部分が地面に垂直に配置されているときの位置および向きを指すことに留意されたい。「垂直」という用語は、90°+/-15°の角度を定義し、「平行」という用語は、0°+/-15°の角度を定義する。ホットスタンピングは、鋼の微細構造が少なくとも部分的にオーステナイトに変態する温度(典型的には約900°C)までブランクを加熱することと、ブランクをスタンピングすることによって高温でブランクを成形することと、成形された部品を焼入れして非常に高い強度を有する微細構造を得ることと、を含む成形技術である。ホットスタンピングは、複雑な形状を有し、スプリングバックのない非常に高い強度の部品を得ることを可能にする。ホットスタンピングの上述の利点をもたらすために、使用される材料は、プレス硬化材料として知られており、これは、上述のホットスタンピングプロセスに供されたときに所望の硬化微細構造を形成することを可能にする化学組成を有する。
【0018】
加法製造は、コンピュータ支援設計(CAD)データを使用して、前記CADデータを再現する正確な幾何学的形状で、しばしば層ごとに材料を堆積させるようにハードウェアに指示する製造プロセスである。
【0019】
図1~
図5によれば、本発明は、少なくとも下部ダイ3と上部ダイ2とを備えるホットスタンピングプレス1を開示する。
図1~
図3に示すように、下部ダイ3および上部ダイ2は、高温金属ブランク10の、所望の体積形状を有する金属部品への変形を可能にするために相補的に形成される。有利には、下部ダイ3および上部ダイ2は、鋼またはステンレス鋼で作られている。
【0020】
以下の説明および添付の図面において、本発明は、簡略化のために、下部ダイ3の場合にのみ詳述される。しかしながら、これは、上部ダイ2にも適用されてもよく、同じホットスタンピングプレス1の上部ダイ2および下部ダイ3の両方に適用され得ることを理解されたい。
【0021】
下部ダイ3は、ホットスタンピング動作中にブランク10と接触するように設けられた作業面9を有するダイ本体11を備える。下部ダイ3はまた、下部ダイ本体11の内部で管理される複数の多孔質ダイ部分4を備える。各多孔質ダイ部分4は、多孔質作業面部分7を有し、考慮される多孔質ダイ部分4の多孔質作業面部分7に通じる複数の噴出チャネル5を備える。各多孔質ダイ部分4の噴出チャネル5は、「冷却剤」とも呼ばれる冷却媒体8のリザーバ6と流体接触している。前記リザーバ6は、下部ダイ本体11のキャビティ内で管理されるものとして
図4に示されている。しかしながら、これは1つの特定の実施形態にすぎない。一般的に言えば、リザーバ6はダイ本体11から離して配置されてもよく、冷却剤8をパイプを介して多孔質ダイ部分4に分配されることができる。また、複数の多孔質ダイ部分4が存在する場合には、各多孔質ダイ部分4に冷却剤8が十分に供給されれば、複数のリザーバ6が存在する構成であってもよい。言い換えれば、各多孔質ダイ部分4は、リザーバ6と流体的に接続されている。特定の実施形態では、
図1~
図3に示すように、冷却剤8は、ダイ自体の冷却回路40を使用して多孔質ダイ部分4に供給される。実際、ホットスタンピングプロセス中にダイ2、3を冷却するために、ダイ2、3には冷却回路40が装備され、これは通常、ダイの表面と接触せず、ダイ本体11の内部を循環するだけである。冷却剤8は、ダイ2、3の温度上昇を制限するためにホットスタンピングプロセス中に前記冷却回路40内で絶えず循環され、これは最終的に、前記ダイ2、3の焼入れ効率を低下させる可能性がある。
【0022】
冷却剤8は、塩水または無塩水のような水溶液、またはスタンピングされる高温金属ブランク10を冷却するように適合された任意の他の液体冷媒であってもよい。
【0023】
図5および
図5aに示されるように、噴出チャネル5は、マトリックス状パターンに従って、考慮される多孔質ダイ部分4内に規則的に配置される。
図5bに示す第1の変形例では、噴出チャネル5は円筒形である。各チャネル5の直径は、0、1~0、5ミリメートル、好ましくは0、2~0、4ミリメートルの範囲にある。
図5cに示す第2の変形例では、各噴出チャネル5は、円錐台形部20で終端する円筒形部分を備え、円錐台形部の最大部分は、考慮される多孔質ダイ部分4の多孔質作業面部分7に位置する。この第2の変形例に続いて、液体冷却剤8は、考慮される多孔質ダイ部分4の多孔質作業面部分7上でより良好に、下部ダイ3の作業面9上でより広範に広がる。各チャネル5の円筒形部の直径は、0、1~0、5ミリメートルの間、好ましくは0、2~0、4ミリメートルの間の範囲にある。
【0024】
両方の変形例において、噴出チャネル5は、冷却剤8の圧力が閾値噴出圧力を超えて上昇したときに、リザーバ6から多孔質作業面部分7に向かって冷却剤8を噴出するように構成される。これを可能にするために、リザーバ6に加圧装置(図示せず)が接続され、前記加圧装置は、冷却剤8の圧力を閾値噴出圧力を超えて上昇させるために制御手段によって制御される。前記閾値噴出圧力は、使用される冷却剤8、および使用されている噴出チャネル5の特定の構成に依存する。粘性の冷却剤8の場合、より高い閾値噴出圧力が必要となる。狭い噴出チャネル5の場合、より高い閾値噴出圧力が必要になる。
【0025】
加えて、放出される冷却剤8の量は、プレスされたブランク10の冷却中に下部ダイ3の作業面9上に冷却剤8を完全に気化するのに十分に少ないので、下部ダイ2および上部ダイ3は、ホットスタンピング後に過剰に噴出された冷却剤8をダイから排出するための排出チャネルを備える必要はない。
【0026】
噴出チャネル5の直径のおかげで、および完全に気化した一定量の冷却剤8を噴出するそれらの能力のおかげで、ホットスタンピングダイ2、3は、自然発汗現象に関して「スェッティング」ダイとして機能する。
【0027】
図1に示されるように、下部ダイ3は複数の多孔質ダイ部分4を備え、多孔質ダイ部分4は、ブランク10と作業面9との間の接触の精度が前記側壁に対して最も低く、これにより前記側壁においてより低い焼入れ速度をもたらすことができるため、ダイ本体11の底壁内に、好ましくは前記ダイ本体11の側壁内に位置されてもよい。より正確には、ホットスタンピングプレス1がスタンピング方向Xに従って閉じられることを考慮して、かつダイ作業面9に対する垂直方向とスタンピング方向Xとの間の角度αを考慮すると、前記角度αは0°~90°の間の範囲にあり、多孔質ダイ部分は、αが45°~90°の間の範囲にある下部ダイ3の領域に優先的に配置される。このような構成の利点は、ダイ2とダイ3との間でプレスされたブランク10が、αが45°~90°の間の範囲にある下部ダイ3の領域において、より低い接触圧力を受けることである。さらに、接触圧力が低いほど、ブランク10とダイ2、3との間の熱伝達は最も悪い。したがって、プレスされたブランク10のより急速かつより均一な冷却を確実にするために、ブランク10との熱伝達が最も悪い下部ダイ3の領域、すなわちαが45°~90°の間の範囲にある下部ダイ3の領域に、多孔質ダイ部分4を配置することが重要である。
【0028】
この構成に続いて、
図9は、前記ダイ37の反対側にある側面39上に配置された多孔質ダイ部分4を有するオメガ形状の下部ダイ37を示し、スタンピング方向Xと前記多孔質ダイ部分4の多孔質作業面部分7に対する垂直方向Nとの間の角度αは、45°~90°の間の範囲にある。
【0029】
図10は、自動車部材(
図10の場合はBピラー)を成形するために鋼ブランクをプレスするように管理された産業用下部ダイ38を示す。この
図10に示されるように、多孔質ダイ部分4は、αが45°~90°の間での範囲にある領域において産業用ダイ38の側面上で管理される。
【0030】
別の実施形態(図示せず)では、下部ダイ本体11全体が多孔質ダイ部分4で作られている。
【0031】
一方、特定の実施形態では、ダイ全体(下部ダイおよび上部ダイ)を多孔質部分4から作製することも可能であり、これは、例えば、ツール設計の単純さに関して産業上の利点を有することができる。
【0032】
特定の実施形態では、多孔質ダイ部分4は、加法製造を使用して製造される。有利には、加法製造は、非常に正確な寸法を有する複雑な金属形状、例えば多孔質ダイ部分4を製造することを可能にし、これは高密度の狭い噴出チャネルを有する。最終形状の金属鋳造物を直接製造するか、または噴出チャネル5が続いて穿孔される金属のブロックを鋳造する(「減法製造(サブトラクティブマニュファクチャリング)」プロセスとしても知られる)など、他のより伝統的な製造手段が、多孔質ダイ部分4を製造するために使用され得る。
【0033】
特定の実施形態では、多孔質ダイ部分4は、以下の特徴を有する加法製造によって製造される。
-加法製造プロセス:粉末床溶融結合法
-不活性ガス下の印刷、不活性ガスとしてアルゴンを使用
-50ミクロンの層厚
-使用レーザ:500W Ybレーザ4個
-使用粉末:以下の典型的な化学組成および粒度分布を有する316Lステンレス鋼粉末:
【0034】
【0035】
【0036】
図2~
図8によれば、本発明のホットスタンピングプレス1を用いたホットスタンピングプロセスがここで説明される。
【0037】
第1のステップにおいて、制御手段は、冷却剤8が考慮される多孔質ダイ部分4(
図6)の多孔質作業面部分7に到達するまで噴出チャネル5を完全に満たすために、閾値噴出圧力を超えて加圧装置を作動させる。
【0038】
第2のステップにおいて、ブランク10、好ましくは鋼ブランク10が、所望の温度、典型的には摂氏約900度または1000度に加熱される。
【0039】
第3のステップにおいて、前記高温鋼ブランク10は、
図7に示すように、ホットスタンピングプレス1に移送される。
【0040】
第4のステップにおいて、制御手段は加圧装置を停止させ、これはリザーバ6内の圧力が閾値噴出圧力を下回るまでゆっくりと減少することを意味する。より正確には、加圧装置が停止されると、各リザーバ6内の圧力は、第3のステップ中の高温鋼ブランク移送による冷却剤8の気化のために自然に減少する。噴出チャネル5の直径は、冷却剤8がリザーバ6に戻るのを回避するのに十分に小さい。加圧装置の停止は、プロセスの第1のステップの直後に、および常に上部ダイ2および下部ダイ3をクランプすることによって前記鋼ブランク10をホットスタンピングする前に実施されてもよい。
【0041】
第5のステップにおいて、
図8および
図2に示すように、ブランク10は、対応するホットスタンピング下部ダイ3の作業面9上に位置決めされる。
【0042】
最後の第6のステップにおいて、
図3に示すように、鋼ブランク10をホットスタンピングするために、ホットスタンピングプレス1が閉じられ、上部ダイ2および下部ダイ3がクランプされる。
【0043】
プロセスの迅速性を改善するために、第1のステップ、第2のステップ、および第3のステップは、同時に実施されてもよい。加えて、プロセスの第6のステップの前に常に発生する加圧装置の停止により、作業面9とブランク10との間の範囲にある冷却剤8の完全な気化を可能にする。多孔質作業面部分7上にある冷却剤8は、噴出チャネル5を通ってリザーバ6に戻ることはない。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットスタンピングダイ(2、3)であって、
ホットスタンピング動作中にブランクと接触する作業面(9)を有するダイ本体(11)と、対応する多孔質作業面部分(7)を有する少なくとも1つの多孔質ダイ部分(4)とを備え、前記多孔質ダイ本体部分はリザーバ(6、40)と接触しており、前記リザーバ(6、40)は冷却媒体(8)を収容し、前記リザーバ内の冷却媒体(8)の圧力を閾値噴出圧力を超えて上昇させるように作動可能であり、かつ冷却媒体(8)に対する追加圧力を解放するように停止可能である加圧装置を装備し、前記多孔質ダイ本体部分は、前記リザーバ(6、40)から前記多孔質作業面部分まで延在する複数の噴出チャネル(5)を備え、
冷却媒体の圧力が閾値噴出圧力を超えて上昇したときに、前記噴出チャネル(5)は前記冷却媒体(8)をリザーバ(6、40)から前記多孔質作業面部分(7)に向かって噴出するように構成されており、前記ダイ(2、3)は、ホットスタンピング後に過剰に噴出された冷却剤をダイから排出するための排出チャネルを備えていない、
ホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項2】
多孔質ダイ部分(4)の各噴出チャネル(5)は円筒形部分を備える、請求項1に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項3】
各噴出チャネル(5)の円筒形部分は、多孔質作業面部分(7)上の円錐台形部で終端し、その最大部分は前記多孔質作業面部分(7)上に位置する、請求項2に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項4】
噴出チャネル(5)の円筒形部分の直径は、0.1~0.5ミリメートルの間の範囲にある、請求項2または3に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項5】
多孔質ダイ部分(4)は鋼またはステンレス鋼でできている、請求項1~
3のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項6】
多孔質ダイ部分(4)は、ホットスタンピング作業面(9)上に開口するダイ本体内に管理されたキャビティ内に位置する、請求項1~
3のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項7】
ダイ(2、3)は、スタンピングプレス(1)で使用されるように設計され、前記スタンピングプレス(1)は、ホットスタンピング動作中にスタンピング方向(X)に従って閉じられ、その表面の各点において、ダイ作業面(9)に対する垂直方向(N)とスタンピング方向(X)との間の角度は、0°~90°の間の範囲にある角度αであり、ダイ(2、3)は、少なくともαが45°~90°の間の範囲にあるすべての領域において多孔質ダイ部分(4)を備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項8】
上部ダイおよび下部ダイの各々は、対応するホットスタンピングダイ作業面(9)上に開口するキャビティ内に位置する少なくとも1つの多孔質ダイ部分(4)を備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項9】
多孔質ダイ部分(4)はダイ本体全体を占める、請求項1~
3のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項10】
多孔質ダイ部分(4)は積層製造によって製造される、請求項1~
3のいずれか一項に記載のホットスタンピングダイ(2、3)。
【請求項11】
上部ダイ(2)と下部ダイ(3)とを装着したホットスタンピングプレス(1)を使用するホットスタンピングプロセスであって、前記ダイのうちの少なくとも1つは、ホットスタンピング動作中にブランクと接触する作業面(9)と、リザーバ(6、40)と接触するダイ本体(11)とを備え、前記リザーバ(6、40)は冷却媒体(8)を収容し、前記作業面(9)は多孔質作業面部分(7)を備え、前記下部ダイ(3)は、前記リザーバ(6、40)から前記多孔質作業面(7)まで延在する複数の噴出チャネル(5)を備える多孔質ダイ本体部分を備え、前記噴出チャネル(5)は、ホットスタンピングプロセス中に前記冷却媒体をリザーバ(6、40)から前記多孔質作業面(7)に向かって噴出でき、リザーバ(6、40)は、前記リザーバ内の冷却媒体(8)の圧力を閾値噴出圧力を超えて上昇させるように作動可能であり、冷却媒体(8)上の追加圧力を解放するように停止可能である加圧装置を装備し、前記ダイ(2、3)は、ホットスタンピング後にダイから過剰に噴出された冷却剤を排出するための排出チャネルを備えておらず、前記ホットスタンピングプロセスは、
-(i)冷却媒体(8)が多孔質作業面部分(9)に到達するまで前記噴出チャネル(5)を完全に満たすために加圧装置を作動させるステップと、
-(ii)鋼ブランク(10)を加熱するステップと、
-(iii)前記鋼ブランク(10)をホットスタンピングプレス(1)に移送するステップと、
-(iv)加圧装置を停止するステップと、
-(v)ブランク(10)をホットスタンピングプレス(1)内に位置決めするステップと、
-(vi)上部ダイ(2)および下部ダイ(3)をクランプすることによって前記鋼ブランク(10)をホットスタンピングするステップであって、ステップiはステップiiおよびステップiiiと同時に行うことができ、ステップivはステップiの後でかつステップviの前に行う、ステップと、
を備える、ホットスタンピングプロセス。
【請求項12】
冷却媒体(8)は水溶液である、請求項11に記載の項に記載のプロセス。
【請求項13】
冷却媒体(8)は水である、請求項12に記載のプロセス。
【国際調査報告】