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特表2024-544592共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法
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  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図1a
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図1b
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図2
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図3
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図4
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図5
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図6
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図7
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図8
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図9
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図10
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図11
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図12
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図13
  • 特表-共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】共振器のアレイまたはメタマテリアルを形成する互いに誘導結合した多周波電磁共振器の装置、およびその実装方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/00 20060101AFI20241126BHJP
   A61B 5/0507 20210101ALI20241126BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20241126BHJP
   G01N 22/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G01N22/00 S
A61B5/0507 100
A61B5/055 355
G01N22/02 C
G01N22/00 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529936
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022082443
(87)【国際公開番号】W WO2023089115
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2112292
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2200687
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】521074221
【氏名又は名称】シィ セルジー パリ ユニベルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュベール,ピエール‐イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ル ディレゾン, ヨアン
(72)【発明者】
【氏名】パスキエ,アレクジアヌ
(72)【発明者】
【氏名】セルファティ,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C096
4C127
【Fターム(参考)】
4C096AD10
4C096CC06
4C127AA10
4C127GG11
(57)【要約】
本発明は、電気的に接続されていない個々の多周波受動共振器(MR1)で構成されるアレイデバイス(RR1,RR2,RR3)に関する。これらの共振器は、互いに入れ子になった中断された自己閉回路である伝送線路(M11-M14)によって形成され、それぞれは2つ以上の平行なトラックのグループによって形成されており、基板の1つ以上の誘電体層(d1)の周りで非接触に互いにペアになっている。このようなアレイは、特に入射磁場または電磁場(Ci)を変調するため、および/または入射磁界(Ci)と処理または観察される体(9)または物体との間に配置されることによってインピーダンス整合を行うために使用される。また、前記アレイの1つ以上の共振器をリーダー(S0)に接続(102)されたプローブ(S1)に誘導結合することにより、調査対象媒体(91,928)を非接触で特性評価する方法を改善するためにも使用される。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の所定の共振周波数を各々が有する複数の受動多周波電磁共振器(MR1,MR2,MR3)を含むデバイス(RR1,RR2,RR3)であって、
前記共振器のそれぞれは、互いに異なる共振周波数を有し、それぞれが自己閉回し1つ以上の分割(G14)によって中断される経路を形成する、互いにガルバニック的に絶縁された複数の伝送線路(M11~M14)を含み、
前記伝送線路は、前記デバイスが入射磁界(Ci)と呼ばれるものにさらされたとき、前記入射磁界の前記磁束線が前記複数の伝送線路と相互作用する共通の相互作用領域をそれらの間で共有するように、空間的に互いに対して配置され、
前記共振器は、それらの間に電気的接触がなく、誘導結合を介して互いに相互作用できる共振器のアレイを形成するのに互いに十分近接するように配置される、デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、その全部または一部の前記共振器(MR1,MR2,MR3)がそれぞれ、少なくとも2つの中断されたトラック(C14a,C14b)のグループによって形成される1つ以上の伝送線路(M14)を含み、前記トラックは互いに平行に配置されるが、それらの間に電気的接触はなく、同じ共通の経路を描き、
前記グループの前記トラックのそれぞれの1つ以上の中断部(G14,G14′)は、前記グループの他のトラックの実体部、特に前記グループの他のすべてのトラックの実体部に対面するようにそれぞれ配置される、デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスであって、その複数の前記多周波共振器がそれぞれ、特に2次元表面内に互いに入れ子になった複数の伝送線路を含む、デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、その複数の前記多周波共振器がそれぞれ、特に同じ多周波共振器の全部または一部の前記伝送線路に共通の同じ基板上の2次元誘電体基板の2つの対向する面に配置された少なくとも2つのトラックによって形成された複数の伝送線路を含む、デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスであって、前記多周波共振器が、それらの間に電気的接触がないように、外部電磁場(入射磁界と呼ばれる)と相互作用できる電磁メタマテリアルを形成するように配置された空間的に周期的な構造内に配置される、デバイス。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記共振器が、前記共振器の前記共振周波数以外の全部または一部の前記周波数をフィルタリングまたは減衰させるように、入射電磁場と相互作用するように設計され配置される、デバイス。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記共振器が、前記共振器の前記共振周波数においてその前記強度を増幅するように、それを通過する電磁場と相互作用するように設計され配置される、デバイス。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記共振器が、1つ以上の周波数におけるその前記強度の全部または一部を偏向、屈折、または反射するように、入射電磁場と相互作用するように設計され配置される、デバイス。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記共振器が、前記電磁場によって運ばれる入射信号の前記インピーダンス、または前記電磁場によってもたらされ前記デバイスを通過する応答信号の前記インピーダンスを変調するように、それを通過する電磁場と相互作用するように設計され配置される、デバイス。
【請求項10】
請求項4~請求項9のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記デバイスの全部または一部の前記共振器を担持する柔軟または剛性のフィルムを含み、このフィルムは、特に前記対象物を保護するため、または前記電磁場によって前記対象物に行われる処置または調査を最適化するために、前記電磁場との前記相互作用を変調するために、対象物と呼ばれる生体または非生体を包囲するように配置される、デバイス。
【請求項11】
生体または物体の入射電磁場との前記相互作用を変調する方法であって、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のデバイスを、前記体または物体の周りに、または前記入射磁界の源と前記体または物体との間に配置、保持、または作動させることを含む方法。
【請求項12】
特性評価される媒体内の少なくとも1つの調査対象領域を特性評価する方法であって、少なくとも以下のステップ
- 請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のデバイスによって形成された共振器のアレイの一部分を構成する、プローブ共振器と呼ばれる1つ以上の多周波共振器に、プローブを同時に非接触で誘導結合する(102)ステップであって、
前記アレイは、前記調査対象領域の前記近傍に位置するが、前記調査対象領域との接触を必要とせず、前記アレイの前記共振器が調査対象領域と相互作用するようになっているステップと、
- 前記プローブと相互作用するリーダーを用いて、前記プローブ共振器のインピーダンスにおける前記変化を測定する(104)ステップと、
- 周波数に応じたスペクトル解析(103)を含むことにより、インピーダンス変化の前記測定値を処理し(103)、複数の測定周波数(それぞれfm1-fm8)に対して測定された複数の個々のインピーダンス(Zm1-Zm8)を決定するステップと、
- 前記個々のインピーダンスの1つ以上を処理して(104)、前記調査対象領域の1つ以上の電気的特性を抽出するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記アレイは、異なる周波数の組み合わせを有する異なるタイプの多周波共振器を含み、前記共振器は、特に異なる共振器または異なる共振器の異なる組み合わせによって、異なる領域(RR2a,RR2b)が異なる周波数の組み合わせを有するように、前記アレイ内に空間的に分布している、方法。
【請求項14】
特性評価される媒体(91,92,93,94)内の調査対象領域(R1,R2,R3,R7,R8)と呼ばれる少なくとも1つの領域を非接触で特性評価するためのシステムであって、
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の少なくとも1つのデバイスであって、誘導結合を介して互いに相互作用し、前記伝送線路が前記調査対象領域と相互作用する共振器のアレイ(RR1,RR2)を形成し、前記デバイスは、前記調査対象領域の前記近傍に配置されることを意図しているが、前記調査対象領域との接触を必要としないデバイスであり、
- 一方では、誘導ループ回路(S1,S7,S8)によって、前記共振器のアレイの1つ以上の共振器(典型的には前記アレイの前記共振器の一部のみ)と誘導結合され、および
他方では、少なくとも1つのリーダー(S0)と相互作用するように配置された少なくとも1つのプローブと、
前記リーダーであって、請求項12または13に記載の特性評価方法を実装するように、前記プローブと相互作用するように配置されるリーダーと、
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に接続されていない個々の多周波数受動共振器で構成されるアレイデバイスに関する。これらの共振器は、互いに入れ子になった中断された自己閉回路である伝送線路によって形成され、それぞれは2つ以上の平行なトラックのグループによって形成されており、基板の1つ以上の誘電体層の周りで非接触に互いにペアになっている。このようなアレイは、特に入射磁場または電磁場を変調するため、および/または入射磁界と処理または観察される体または物体との間に配置されることによってインピーダンス整合を行うために使用される。また、前記アレイの1つ以上の共振器をリーダーに接続されたプローブに誘導結合することにより、調査対象媒体を非接触で特性評価する方法を改善するためにも使用される。
【背景技術】
【0002】
この「メタマテリアル」を構成する1つ以上の材料によって得られる効果とは異なる、電磁場に対する全体的な効果を与える「メタマテリアル」効果を得るために、電磁共振器をアレイにグループ化することが知られている。
【0003】
このようなメタマテリアルは、多くの場合、規則的に間隔を置いた共振器を使用して作製され、これらの共振器は電気接続または電気的に結合された伝送線路によって互いに接続されており、主に電場と相互作用する。
【0004】
例えば、特許文献1は、アンテナとマイクロ波トモグラフィシステムに関するものであり、人体に対する検出と診断に使用される。この文献では、アンテナと皮膚との間にメタマテリアルを配置することを提案しており、このメタマテリアルは人体組織とのインピーダンス整合に使用され、浸透を容易にする。このメタマテリアルは、誘電体支持体上の単一周波数の銅素子のアレイによって形成される。共振周波数は静的であってもよいし、電圧によって制御されるMEMSもしくはメタマテリアルの誘電特性を変化させるマイクロ流体流れ等の手段で調整することも、または光照射によってその誘電特性が変化する感光性材料を使用して光学的に調整することもできる。
【0005】
以下の非特許文献では、マイクロ波モニタリングまたはイメージングシステムの性能を向上させるために、単一周波数共振器であるSRR(スプリットリング共振器/split-ring resonator)を規則的に繰り返すことによって形成されたメタマテリアルを提案している(非特許文献1、非特許文献2)。
【0006】
しかしながら、そのようなメタマテリアルは製造および調整が困難なままであり、特に堅牢性と適用の多様性の点で様々な方向での開発から恩恵を受けるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2019/0021626
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Razzicchia, E., Koutsoupidou, M., Cano Garcia, H., Sotiriou, I., Kallos, E., Palikaras, G., & Kosmas, P. (2019): "Metamaterial designs to enhance microwave imaging applications". In Proceedings of the 2019 21st International Conference on Electromagnetics in Advanced Applications, ICEAA 2019 (pp. 147-150).
【非特許文献2】Vincenza Portosi, Antonella Maria Loconsole and Francesco Prudenzano: "A Split Ring Resonator-Based Metamaterial for Microwave Impedance Matching with Biological Tissue". In Applied Sciences 2020, 10, 6740.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点の全部または一部を克服することである。特に、本発明は、より効果的で、柔軟性があり、用途が多様で、製造および使用が簡単で柔軟な電磁共振器に基づくデバイスおよび方法を提供することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[本発明の開示]
本発明は、複数の受動多周波電磁共振器(すなわち、各共振器が複数の所定の共振周波数を有する)を含むデバイスを提供する。特に、これらの共振器は共通の共振周波数と呼ばれる少なくとも1つの共振周波数を共有するが、必ずしもそうである必要はない。前記共振器のそれぞれは、互いに異なる共振周波数を有し、それぞれが自己閉回し1つ以上の分割によって中断される経路を形成する(互いに、および共振器の外部に対して)ガルバニック的に絶縁された複数の伝送線路を含む。前記伝送線路は、前記デバイスが入射磁界と呼ばれるものにさらされたとき、前記入射磁界の磁束線が前記複数の伝送線路と相互作用する共通の相互作用領域をそれらの間で互いに共有するように、空間的に互いに対して配置される。この入射磁界は、電場、磁場、または電磁場であり得ることが理解される。本発明によれば、これらの共振器自体が、前記アレイ内で、それらの間に電気的接触がなく、誘導結合を介して互いに相互作用できる共振器のアレイを形成するのに互いに十分近接するように配置される。
【0011】
このようにして、互いに(空間的および電気的に)分離され、ある領域、さらには一定の体積をカバーするように分布し、誘導的に相互作用して集合的な反応を生み出す共振器のアレイが得られる。
【0012】
これらの共振器は、例えば、同じ発明者による仏国特許出願FR2112292号に記載されているような多周波共振器である。この出願に記載されている具体的な特徴は、本発明にも適用可能である。
【0013】
本発明の一つの具体的な特徴によれば、このアレイの共振器(すべてまたは少なくとも複数)はそれぞれ、少なくとも2つの中断されたトラックのグループによって形成される1つ以上の伝送線路を含む。各グループにおいて、これらのトラックは互いに平行に配置されるが、それらの間に電気的接触はなく、同じ共通の経路を描く。このようなグループでは、前記グループの各トラックの1つ以上の中断部は、前記グループの他のトラックの実体部、特に前記グループの他のすべてのトラックの実体部に対面するようにそれぞれ配置される。
【0014】
このようにして、特に誘導および磁気的相互作用を促進する共振器のアレイが得られる。
【0015】
典型的には、全部または一部の多周波共振器は、それぞれ互いに入れ子になった複数の伝送線路を含み、特に2次元表面内に含まれる(平面状または非平面状、例えば円筒状または円錐状、調整されたもの、またはその他の形状とすることができる)。
【0016】
本発明のデバイスの複数の多周波共振器は、それぞれ、特に同じ多周波共振器の全部または一部の伝送線路に共通の同じ基板上の2次元誘電体基板の2つの対向する面に配置された少なくとも2つのトラックによって形成された複数の伝送線路を含むことができる。
【0017】
同じトラックグループの様々なトラックは、例えば、絶縁基板層の両面に堆積されるか、または絶縁基板層の間に位置する3つ以上のトラックである。
【0018】
必要に応じて、これらの1つ以上の基板は、それらの誘電特性を変更できるように配置され、それによって各グループのトラックの共振周波数が変更され、したがって各共振器の共振周波数が変更される。この変更は、例えば、電気的に制御されて厚さを変化させる圧電材料の層を使用することによって、またはこの基板内にマイクロ流体チャネルを組み込み、流体をこれらのチャネルに注入もしくはこれらのチャネルから除去することによって基板の全体的な誘電特性を変化させることによって、またはそのような誘電特性の変化を変えるおよび/または制御(または「活性化」)するための任意の既知の手段を使用することによって得られる。
【0019】
このようなアレイは、様々な方法で使用できる。実施形態の1つの群によれば、特に、前記アレイを取り囲むまたは通過する入射磁界内で使用することができる。
【0020】
[メタマテリアル]
したがって、一つの具体的な特徴によれば、多周波共振器は、それらの間に電気的接触がないように、外部電磁場(入射磁界と呼ばれる)と相互作用できる電磁メタマテリアルを形成するように配置された空間的に周期的な構造内に配置される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、生体または物体の入射電磁場との相互作用を変調する方法が提供される。この方法は、本明細書に開示されたデバイスを、前記生体もしくは物体の周りに、または前記入射磁界の源と前記生体もしくは物体との間に配置、保持、または作動させることを含む。
【0022】
このタイプのメタマテリアルの使用により、互いに排他的ではない様々な具体的特徴に従って、様々な用途が可能になる。
【0023】
一つの具体的な特徴によれば、共振器は、前記共振器の共振周波数以外の全部または一部の周波数をフィルタリングまたは減衰させるように、入射電磁場と相互作用するように設計され配置される。
【0024】
したがって、例えば、特に共振周波数を吸収し、再放出することによって、フィルタリング効果が得られる。例えば、入射磁界とターゲット物体との間にスクリーンを生成して、例えば共振周波数からそれを保護することができる。また、例えば、約100kHzの非常に小さな周波数帯域にわたって共振周波数のみを通過させることなどによって、スクリーニング効果を生成することもできる。このようにして、非常に高い品質係数が得られる。
【0025】
別の具体的な特徴によれば、共振器は、これらの周波数での磁気誘導によって、共振器の共振周波数においてその強度を増幅するように、デバイスを通過する電磁場と相互作用するように設計され配置される。
【0026】
このようにして、特定の周波数の効果を増幅し、それによって、例えば検出、イメージング、または処理に基づく方法を改善することが可能になる。
【0027】
さらに別の具体的な特徴によれば、共振器は、1つ以上の周波数におけるその強度の全部または一部を偏向または反射するように、入射電磁場と相互作用するように設計され配置される。
【0028】
アレイを入射磁界と体または物体との間に挿入することにより、強度の点でおよび/または前記入射磁界によってもたらされるシグネチャもしくは画像を変調する点で、またはそれが前記体または物体にもたらす応答の点で、この対象物を入射磁界から保護することが可能になる。
【0029】
[インピーダンス整合]
前記の群を排除しない実施形態の群によれば、共振器は、前記電磁場によって運ばれる入射信号のインピーダンス、または前記電磁場によってもたらされ前記デバイスを通過する応答信号のインピーダンスを変調/整合するように、それを通過する電磁場と相互作用するように設計され配置される。
【0030】
したがって、本発明は、マイクロ波トモグラフィまたはMRIなど、電磁波に基づく検出、イメージング、または処理方法の性能を変調、調整、または改善するインピーダンス整合デバイスを製造することを可能にする。そのような変調は、例えば、精度、浸透、調査深度、または観察もしくは処理される組織または材料の性質に適用でき、より広いまたはより柔軟な周波数範囲にわたって適用できる。また、そのような治療または観察による組織への副作用を最小限に抑えることもできる。
【0031】
一つの具体的な特徴によれば、本明細書に開示されたデバイスは、前記デバイスの全部または一部の共振器を担持する柔軟または剛性のフィルムを含み、このフィルムは、対象物と呼ばれる生体または非生体を包囲するように配置される。特に前記対象物を保護するため、または前記電磁場によって前記対象物に行われる処置または調査を最適化するために、前記電磁場との相互作用を変調するためである。
【0032】
このようにして、使用、輸送、または保管が容易で柔軟なインピーダンス整合デバイスが製造される。このデバイスは、例えばサバイバルブランケットに匹敵するものであり、または例えば局所的なマスキングを目的として、または衣服(「ウェアラブル」)もしくはドレッシングとして着用するために、柔軟な部分を製造することができる。
【0033】
[非接触特性評価]
前記の群を排除しないさらに別の群の実施形態によれば、本発明は、特性評価される媒体内の少なくとも1つの調査対象領域を非接触で特性評価する方法を提供し、この方法は以下のステップを含む。
- 本明細書に記載されたデバイスによって形成された共振器のアレイの一部分を構成する、プローブ共振器と呼ばれる1つ以上の多周波共振器に、プローブを同時に非接触で誘導結合するステップ。
前記アレイは、前記調査対象領域の近傍に位置するが、前記調査対象領域との接触を必要とせず、前記アレイの共振器が調査対象領域と相互作用するようになっている。
- 前記プローブと相互作用するリーダーを用いて、前記プローブ共振器のインピーダンス変化を測定するステップ。
- 複数の測定周波数について測定された複数の個々のインピーダンスを決定するように、周波数に応じたスペクトル解析を含むことにより、インピーダンス変化の前記測定値を処理するステップ。
- 前記個々のインピーダンスの1つ以上を処理して、前記調査対象領域の1つ以上の電気的特性を抽出するステップ。
【0034】
アレイの様々な共振器間の結合により、プローブでプローブされた1つ以上の共振器のインピーダンスは、未プローブ(unprobed)共振器と呼ばれる他の共振器のインピーダンスの変化に応じて変化する。未プローブ共振器と特性評価対象媒体との相互作用は、ある程度まで、1つ以上のプローブ共振器に伝播する。したがって、一部の共振器とのみ直接結合しているプローブから、リーダーは、プローブからさらに離れた他の共振器と相互作用する領域からも電気的特性を抽出できる。
【0035】
これにより、非接触調査における多くの既知の問題の改善が得られる。これらには、例えば、同じプローブに対してより多くの共振器が検査されるため、プローブの媒体に対する位置決めに関して測定のロバスト性が向上することなどが含まれる。
【0036】
この特性評価方法は、同じ発明者による仏国特許出願FR2112292号に記載されている単一の多周波共振器を使用する方法と同じ原理に基づいている。この出願で述べられている様々な変形例は、例えば共振器の性質や構造の点で、または調査対象領域の深さの管理の点で、またはその様々な用途の点で、本方法にも適用可能である。
【0037】
一つの具体的な特徴によれば、アレイは、異なる周波数の組み合わせを有する異なるタイプの多周波共振器を含み、共振器は、特に異なる共振器または異なる共振器の異なる組み合わせによって、異なる領域が異なる周波数の組み合わせを有するように、前記アレイ内に空間的に分布している。
【0038】
1つ以上のプローブ共振器のいずれかに結合することによって、リーダーは、プローブ共振器が含まれていない場合でも、複数の異なる領域を含むアレイの大部分の様々な周波数もしくは周波数の組み合わせのインピーダンスの変化を解析できる。したがって、第1の領域の媒体と相互作用する共振器に結合されたプローブを使用することによって、未プローブ共振器と相互作用する第2の領域の媒体から電気的特性を抽出することができる。
【0039】
様々な周波数の組み合わせの共振器の空間分布が既知である限り、この方法は、1つの領域のみをプローブしながら、複数の領域に空間的に割り当てられた特性評価情報を提供する。
【0040】
本発明のさらに別の態様によれば、特性評価される媒体内の調査対象領域と呼ばれる少なくとも1つの領域を非接触で特性評価するためのシステムが提供され、このシステムは以下を含む。
- 本明細書に記載されたデバイスの少なくとも1つであって、誘導結合を介して互いに相互作用し、その伝送線路が調査対象領域と相互作用する共振器のアレイを形成し、前記デバイスは、前記調査対象領域の近傍に配置されることを意図しているが、前記調査対象領域との接触を必要としないデバイス。
- 以下のように配置された少なくとも1つのプローブ:
一方では、誘導ループ回路によって、前記共振器のアレイの1つ以上の共振器(典型的にはアレイの共振器の一部のみ)と誘導結合される;および
他方では、少なくとも1つのリーダーと相互作用する;
前記リーダーは、本明細書に開示された特性評価方法を実装するように、前記プローブと相互作用するように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
他の特徴と利点は、完全に非限定的な実施形態の詳細な説明と、添付の図面から明らかになるであろう。
図1a図1aは、本発明の様々な実施形態で使用できる多周波共振器の例を示す縮尺上面図であり、4つの入れ子になった単一ターン円形メッシュを有する共振器を示す図である。
図1b図1bは、本発明の様々な実施形態で使用できる多周波共振器の例を示す縮尺上面図であり、8つの入れ子になった単一ターン円形メッシュを有する共振器を示す図である。
図2図2は、本発明の様々な実施形態で使用できる多周波共振器の一例を示す縮尺上面図であり、4つの入れ子になった円形メッシュを有し、そのうちの1つは単一ターンで、他は多重ターンである。
図3図3は、本発明の様々な実施形態で使用できる多周波共振器内で使用可能な単一ターン円形素子伝送線路(またはTLR)の例を示す部分的な模式的上面図、断面図および分解斜視図である。
図4図4は、様々な例示的実施例で使用できる多周波共振器内で使用可能な多分割素子伝送線路(またはTLR)の部分的な模式的上面図および断面図である。一例では、部分的に、半径が減少する6つの円形伝送線路を有し、、これらは互いに対して同心円状であり、60°オフセットがある。各々は、絶縁性の薄い基板の2つの面のそれぞれに配置された2つのトラックによって形成され、互いに向かい合って角度オフセットしている。
図5図5は、「N」個の共振周波数を有する共振器の等価回路図であり、プローブおよび特性評価される媒体との相互作用を示す。
図6図6は、無負荷の図1aの4共振器について、シミュレーションによって、測定されたインピーダンスZmesの実部を周波数とともに示す曲線である。
図7図7は、図1bの8共振器について、図6と同様にシミュレーションした曲線である。
図8図8は、本発明のいくつかの実施形態で使用される特性評価方法の動作を模式的に示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の例示的な実施形態による、全て互いに同一の4周波数共振器を有する多周波共振器アレイの一例を示す模式的平面図である。
図10図10は、単一チャンネルの誘導プローブを使用して媒体を特性評価するための非接触センサとしての、図9(または図11)と同じタイプの多周波共振器アレイの使用を示す図である。
図11図11は、本発明の例示的な実施形態による、空間的に異なる領域に分布した複数の異なるタイプの4周波数共振器を有する多周波共振器アレイの一例を示す模式的平面図である。
図12図12は、単一のプローブによってタンクの内面の状態を非接触で特性評価するために、図9または図11のようなアレイをタンクの壁面に埋め込んで使用する本発明の例示的な実施形態を示す断面図である。
図13図13は、入射電磁場と相互作用するためにメタマテリアルとして配置された多周波共振器アレイの使用を示す図である。
図14図14は、前記電磁場を使用して調査される体と入射電磁場との間に配置されることによってインピーダンス整合を行うためにメタマテリアルとして配置された多周波共振器アレイを担持する柔軟なフィルムの使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[図面を参照した説明]
[個々の多周波共振器]
図1a~図4は、本発明による共振器アレイを製造するために使用できる個々の多周波共振器の例を示している。
【0043】
図3および図4は、そのような共振器を製造するために使用できる伝送線路M14、M1の構成を示している。この伝送線路は、平面誘電体基板d1の両側に配置された2つの中断されたトラックのグループによって形成され、各グループの2つのトラックの分割の間に角度オフセットがある。
【0044】
これらの個々の共振器は、同じ発明者による仏国特許出願FR2112292号に詳細に記載されている。
【0045】
[多周波共振器による特性評価方法]
図5は、調査対象媒体を非接触で特性評価する方法の文脈で、N本の伝送線路Z1~ZNを含む「N」個の共振周波数を有する共振器MR1と、プローブS1の相互作用を示している。図6および図7は、それぞれ図1aおよび図1bの個々の多周波共振器の共振周波数に対応するピークを示すインピーダンス測定を示している。図8は、そのような特性評価方法のステップと応用を示している。
【0046】
この方法は、同じ発明者による仏国特許出願FR2112292号に詳細に記載されている。
【0047】
図9は、本発明の一実施形態による、互いに全て同一の4周波数共振器MR1を有する多周波共振器アレイRR1の例を示しており、これらの共振器は図1aの共振器と同様であり、平面誘電体基板の両面に製造されている。
【0048】
図10は、単一チャネル102を介してリーダーS0、例えばベクトルアナライザに接続された誘導プローブS1を使用して媒体を特性評価するための非接触センサとしての、図9(または図11)と同じタイプの多周波共振器アレイの使用を示している。
【0049】
図11は、本発明の例示的な実施形態による、複数の異なるタイプMR1a、MR1b、MR1c、MR1dの4周波数共振器を有する多周波共振器アレイRR2の一例を示しており、この例では、図1aの共振器と同様の共振器であるが、サイズが異なり、共振周波数の組み合わせが異なる。このアレイでは、異なるタイプの共振器が4つの空間的に異なる領域RR2a、RR2b、RR2c、RR2dに分布している。
【0050】
同じアレイRR2の共振器間に存在する誘導相互作用のため、ある領域RR2aの共振器の1つのMR1aに結合された誘導プローブS1は、「プローブされた」共振器の各共振周波数だけでなく、他のタイプの共振器およびアレイRR2の他の領域からの共振周波数のインピーダンスも測定する。
【0051】
図12は、単一のプローブS1によってタンク83の内面928の状態を非接触で特性評価するために、図9または図11のようなアレイをタンク83の壁面に埋め込んで使用する特性評価方法の例示的実施を示している。
【0052】
この場合も、アレイRR1の共振器間に存在する誘導相互作用のため、プローブS1は、誘導結合されている個々の多周波共振器MR7eを介して、タンクの壁面と燃料92との界面の領域を網羅する領域R7a~R7hに存在するインピーダンスの変化を間接的に検出する。
【0053】
[メタマテリアル]
図13は、入射電磁場Ci、特に磁場または電磁場の磁気成分と相互作用するためにメタマテリアルとして配置された多周波共振器アレイRR1の使用を示している。このメタマテリアルによってもたらされる変化に応じて、この入射磁界Ciは、その個々の共振器の特性によってこのメタマテリアルに付与される特性に応じて、例えば透過Cs1、屈折Cs2、または反射Cs3のように変化する。
【0054】
図14は、患者9の体と、治療デバイスのプローブS9によって放射された入射電磁場Ciとの間に配置されることによって、インピーダンス整合を行うために、メタマテリアルとして配置された多周波共振器アレイRR3を担持する柔軟なフィルムの使用を示している。
【0055】
もちろん、本発明は上述の例に限定されるものではなく、本発明の範囲を超えることなく、これらの実施例に対して多くの調整を行うことができる。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】