(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】カルバミン酸エチルを効率的に分解するロドトルラ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/16 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
C12N1/16 G ZNA
C12N1/16 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531507
(86)(22)【出願日】2023-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2023102849
(87)【国際公開番号】W WO2024037192
(87)【国際公開日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】202210985886.4
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507198613
【氏名又は名称】大連工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張素芳
(72)【発明者】
【氏名】薛思宇
(72)【発明者】
【氏名】朱▲べ▼薇
(72)【発明者】
【氏名】陳映羲
(72)【発明者】
【氏名】梁会朋
(72)【発明者】
【氏名】林心萍
(72)【発明者】
【氏名】紀超凡
(72)【発明者】
【氏名】董亮
(72)【発明者】
【氏名】代藝偉
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA72X
4B065AC20
4B065BA22
4B065CA42
4B065CA56
(57)【要約】
本発明は、カルバミン酸エチルを効率的に分解するロドトルラ及びその使用を開示し、食品バイオテクノロジーの分野に属する。本発明は、カルバミン酸エチル(EC)を効率的に分解するロドトルラDL-XSY01を提供し、寄託番号はCGMCC No.23534である。前記ロドトルラDL-XSY01を、スクリーニング、同定、活性化、発酵、および埋め込みで処理することにより、EC分解製剤が得られる。本発明により得られた菌株DL-XSY01は、埋め込みを経た後に分解剤を調製し、発酵食品におけるECを除去するために用いられ、本発明は、更に菌株DL-XSY01の分解剤を用いて異なる食品システム中のECを除去し、ECを効果的に除去でき、調製コストが低く、使用しやすく、食品システムから除去しやすいという特徴を有し、酒類飲料、発酵乳製品、醤油、酢などの発酵食品に広く応用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01であって、既に中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号はCGMCC No.23534であり、寄託日は2021年10月08日であることを特徴とするロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01。
【請求項2】
請求項1に記載のロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01又はその発酵液の、カルバミン酸エチルを分解可能な製品の調製のための使用。
【請求項3】
前記製品は化学物質又は微生物菌剤である、ことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
製品中の前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の添加量が、少なくなくとも3×10
8CFU/mLである、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記化学物質はカルバミン酸エチル分解剤である、ことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
食品中のカルバミン酸エチルを分解する方法であって、食品の製造過程で、請求項1に記載のロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01又はその発酵液を添加してカルバミン酸エチルを分解し、分解後に殺菌し、食品を製造する、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記食品は、発酵食品、アルコール飲料である、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記食品は、白酒、黄酒、赤ワイン、ヨーグルト、酢、醤油である、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
カルバミン酸エチル分解剤であって、前記分解剤は、
(1)請求項1に記載のロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01をYPD液体培地に接種して活性化を行い、25~32℃で、150~250rpmで定温に発振して24~48h培養し、シード液を得ることと、
(2)前記シード液を10%~20%の接種量に応じて発酵培地に接種し、25~32℃で、通気量が0.6~1.0m
3/minであり、撹拌速度が150~250rpmであるという条件下で、菌体数が3×10
8~1.8×10
9CFU/mLになるまで発酵させ、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物を得ることと、
(3)ステップ(2)で調製した前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物に対する埋め込みを行い、カルバミン酸エチル分解剤を調製することと、
を含む方法に応じて調製する、ことを特徴とするカルバミン酸エチル分解剤。
【請求項10】
請求項1に記載のロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の、カルバミン酸エチル分解のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバミン酸エチルを効率的に分解するロドトルラ及びその使用に関し、食品バイオテクノロジーの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
カルバミン酸エチル(Ethyl carbamate、EC)は、遺伝毒性や高い発癌性がある代謝生成物であり、アルコール飲料や発酵食品(例えば、腐乳、醤油、チーズ、食酢、キムチなど)に広く含まれる。
【0003】
近年、世界中の学者たちは、相次いで蒸留酒、黄酒とワインにECが含まれていることを発見したが、そのうち、蒸留酒と黄酒中のECの含有量が高く、ワイン中のECの含有量が低い。ECには静菌作用と抗腫瘍作用があり、20世紀40年代初期には、ECは麻酔薬として使用され、1943年、ECに発癌性があることが判明したが、十分に注目されるには至らなかった。1974年、国際がん研究機関はECをグループ2Bの発癌性物質に分類し、2007年、グループ2Aの発癌性物質に格上げした。同時に、ECには多部位発癌性があり、肺癌、リンパ癌、肝臓癌と皮膚癌などを引き起こす可能性があることが示されている。動物モデルでの実験において、転写因子STAT3、NF-kBと細胞外シグナル伝達プロテインキナーゼERKが、ECにより誘導される腫瘍の発展に関与することが示されている。一方、ECは、酸化ストレス反応を誘導し、解毒能力を低減させ、エネルギーを消耗し、膜構造の完全性を破壊し、DNAとタンパク質などを破壊することにより、人体肝臓癌細胞HepG2の死亡を誘導することも示されている。現在、FAO/WHO合同食品添加物委員会のデータによれば、醸造酒による人体へのECの平均摂取量は65ng・kg-1・d-1であり、他の発酵食品より5倍も遥かに高くなっている。
【0004】
ECは、主に、尿素、シトルリン、カルバモイルリン酸などを前駆体として、エタノールとの反応によって生成される。ECの制限方法には主に、前駆体を制限する方法とECを抑制する方法の2つが含まれる。前駆体を制限するためにはしばしば、ウレアーゼを使用して尿素を除去するが、ウレアーゼの特異性が単一であり、前駆体の種類及び異なるシステムの適用性を考慮する必要があり、その有用性は限られている一方、ECの削減は、適用範囲が広く、より一般的に使用され、この方法は一般的に、EC加水分解酵素及び酵素産生微生物により機能し、ECをエタノール、アンモニアと二酸化炭素に加水分解することを実現する。
【0005】
しかし、現在は、従来のEC分解菌株の資源ライブラリは食品中のEC生分解の現実的なニーズを満たすことができず、ECを分解する菌株が分離され、公に報告されている例は少なく、報告されているEC分解菌株のほとんどが非食品由来であり、更に条件付き病原性菌株であるため、発酵食品中のECを直接除去する菌株の応用は、やや限られている。
【0006】
1991年、Kobashiら(Chem Pharm Bull,1991,39(12):3303-3306)は、マウスの胃腸管からバチルス・リケニフォルミスBacillus licheniformis sp.をスクリーニングしたが、そのEC加水分解酵素のECに対する親和性が弱いため、実用化には至らなかった。1994年、Kobashiら(Biol Pharm Bull,1994,17(6):773-778)は、またB.licheniformis spを分離し、そのEC分解酵素の酵素学的特徴が明らかにされただけで、今まで当該菌株の実用化は報道されていない。1997年、Mohapatra(Lett Appl Microbiol,1997,25(6):393-396.)は海洋生物の海綿からMicrococcus sp.を分離し、その中から分離した酸性EC加水分解酵素は高いエタノール耐性を有するが、今まで当該菌株の実用化は報道されていない。2006年、Yukieら(Appl Microbiol Biotechnol,.2006,70(4):422-429)は、土壌サンプルからRhodococcus equiを分離し、そのEC加水分解酵素の配列を解析したが、当該酵素のECに対する特異性は高くない。2014年、李京京ら(食品とバイオテクノロジー学報,2014,33(12):1239-1245.)は、マウスの胃からEC分解菌株Lysinibacillus fusiformisをスクリーニングし、それから精製されたEC加水分解酵素は、醤油中のECを除去する可能性がある。2014年、卜攀攀ら(バイオ工学学報,2014,30(3):404-411)は、マウスの胃からEC分解菌株クレブシエラ・ニューモニエKlebsiella pneumoniaを取得し、それから耐塩のEC加水分解酵素を分離したが、当該酵素は酸ストレスに耐えられないので、環境のpHが6未満である時、酵素活性が顕著に低下し、適用が制限される。2017年、劉らはProvidencia rettgeri JN-B815からカルバミン酸エチル加水分解酵素を取得し、pH4~7の範囲で酵素活性が80%残り、エタノール濃度が35%である時、酵素活性が40%残る。この酵素はエタノールと酸性環境にある程度耐えられるが、現在までその実用化された例はない。田亜平ら(Appl Biochem Biotechnol,2013:1-11)は、マウスの胃腸管からスクリーニング分離によりEC分解菌株ペニシリウム・バリアビレPenicillium variabileを取得し、その中からEC加水分解酵素を分離し、当該酵素は白酒中のECを有効に分解することができることが分かった。
【0007】
白酒の醸造過程から分離された菌株では、徐岩ら(J Agric Food Chem,2018,66(6):1583-1590.)により白酒発酵過程から分離されたLysinibacillus sphaericus MT3と、呉群ら(Appl Biochem Biotechnol,2013:1-13.)により中国白酒の醸造過程から分離されたロドトルラ・ムクラギノーサ菌株と、が報道されていた。発酵食品由来のEC分解菌株の資源ライブラリの拡張が強く求められる。
【0008】
そのため、本発明は、発酵食品中のECを分解することができる微生物に対するスクリーニング、分離、同定と特徴付けを行い、発酵食品由来のEC分解菌株の資源ライブラリを拡張し、発酵食品中のECを低減する効果的な手段を提供し、発酵食品の安全性を確保するための技術サポートを提供する。
【発明の概要】
【0009】
既存の分解菌株が少ない上、そのほとんどが非食品由来であり、EC分解菌剤がECの分解に有効でないという問題に対し、本発明の目的は、発酵食品から分離された酵母菌株DL-XSY01及び当該菌株で調製した分解剤を提供することである。
【0010】
前記ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01は、既に中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号はCGMCC No.23534であり、寄託日は2021年10月08日である。
【0011】
前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01は、山東粟酢の酢工場の酢醪から分離され、シークエンス結果に対するBlastn分析を行い、当該菌とRhodosporidium toruloidesとRhodotorula mucilaginosaの相同性が最も高く、いずれも99%に達することが分かった。モルフォロジーと26s rRNAによる同定によれば、当該菌株DL-XSY01はRhodosporidium toruloidesであり、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01と名付ける。
【0012】
前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01はYPD固体平板において良好に成長し、28℃で48h培養し、湿潤、円形、突出、滑らか、薄いピンク色のコロニーを形成し、顕微鏡検査により菌体が楕円形の長手棒状を呈し、4℃で静置した後オレンジ色を示すことが発見されている。最適な成長温度は28℃で、最適なpHは5~6である。
【0013】
本発明は、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01又はその発酵液の、カルバミン酸エチルを分解可能な製品の調製のための使用を提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記製品は化学物質又は微生物菌剤である。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記微生物菌剤の調製方法は、
(1)上記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01をYPD液体培地に接種して活性化を行い、25~32℃で、150~250rpmで定温に発振して24~48h培養し、シード液を得ることと、
(2)前記シード液を10%~20%の接種量に応じて発酵培地に接種し、25~32℃で、通気量が0.6~1.0m3/minであり、撹拌速度が150~250rpmであるという条件下で、菌体数が3×108~1.8×109CFU/mLになるまで発酵させ、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物を得ることと、
(3)ステップ(2)で調製した前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物に対する埋め込みを行い、微生物菌剤を調製することと、を含む。
【0016】
本発明の一実施形態において、製品中の前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の添加量は、少なくなくとも3×108CFU/mLである。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記化学物質は、カルバミン酸エチル分解剤、カルバミン酸エチル吸引剤、カルバミン酸エチル抑制剤、カルバミン酸エチル分解剤、カルバミン酸エチル分解生物菌株、カルバミン酸エチル分解微生物菌剤を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明は、食品中のカルバミン酸エチルを分解する方法を更に提供し、食品の製造過程で、前記ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01又はその発酵液を添加してカルバミン酸エチルを分解し、分解後に殺菌し、食品を製造する。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記食品は、発酵食品、アルコール飲料を含むが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記食品は、白酒、黄酒、赤ワイン、ヨーグルト、酢、醤油である。
【0021】
本発明は、カルバミン酸エチル分解剤を更に提供し、前記分解剤は、
(1)上記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01をYPD液体培地に接種して活性化を行い、25~32℃で、150~250rpmで定温に発振して24~48h培養し、シード液を得ることと、
(2)前記シード液を10%~20%の接種量に応じて発酵培地に接種し、25~32℃で、通気量が0.6~1.0m3/minであり、撹拌速度が150~250rpmであるという条件下で、菌体数が3×108~1.8×109CFU/mLになるまで発酵させ、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物を得ることと、
(3)ステップ(2)で調製した前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物に対する埋め込みを行い、カルバミン酸エチル分解剤を調製することと、を含む方法に応じて調製する。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記発酵培地は、YPD液体培地(ペプトン20.0g、酵母粉末10.0g、グルコース20.0g、蒸留水を1Lに補充し、pHを7.0に調節し、高圧で20min殺菌する)である。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記埋め込みの方法は以下の通りである。
【0024】
S1、アルギン酸ナトリウム(4%)を、菌含有発酵液、細胞分解液および菌体懸濁液と、それぞれ1:1の割合で混合する。
【0025】
S2、10mL注射器で吸引し、2~10滴/秒の速度でゆっくり硬化液(0.6%CaCl2の飽和ホウ酸溶液)に滴下し、硬化時間は約5hである。
【0026】
S3、固定化細胞を生理食塩水で3~4回、洗い流し、キトサン(2%)溶液に入れ、40minラミネートする。
【0027】
S4、再び0.8%生理食塩水で3~4回、洗い流し、水気を切り、4℃で保管して使用に備える。
【0028】
本発明の一実施形態において、当該ボールは湿潤状態で粒径が3~5mmである。
【0029】
本発明の一実施形態において、ステップ(2)における前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物は、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01菌含有発酵液、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01発酵液上澄液、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01菌体懸濁液、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01細胞分解液、を含む。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01菌含有発酵液は、前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物を乾燥させ、脱イオン水で元の体積の1/20となるように調製され、
前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01菌体懸濁液は、前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の発酵生成物を4000g回転速度で10min遠心分離させて菌体沈殿物を収集し、濃度を20 OD600に希釈することにより得られ、
前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01細胞分解液は、前記ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01菌体懸濁液を細胞破砕させることにより得られる。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記乾燥方法は凍結真空乾燥を含む。
【0032】
本発明の一実施形態において、ステップ(3)における前記の埋め込みを行った後に固定化ボールを調製する方法は、
S1、アルギン酸ナトリウム(4%)を、菌含有発酵液、細胞分解液、および菌体懸濁液と、それぞれ1:1の割合で混合することと、
S2、10mL注射器で吸引し、2~10滴/秒の速度でゆっくり硬化液(0.6%CaCl2の飽和ホウ酸溶液)に滴下し、硬化時間は約5hであることと、
S3、固定化細胞を生理食塩水で3~4回、洗い流し、キトサン(2%)溶液に入れ、40minラミネートすることと、
S4、再び0.8%生理食塩水で3~4回、洗い流し、水気を切り、4℃で保管して使用に備えることと、を含む。
【0033】
本発明の一実施形態において、当該ボールは湿潤状態で粒径が3~5mmである。
【0034】
本発明は、上記ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01の、カルバミン酸エチル分解のための使用を更に提供する。
【発明の効果】
【0035】
(1)本発明では、粟酢の酢醪からスクリーニングによりEC高効率な分解菌株DL-XSY01を取得し、当該菌株は、ECを唯一の炭素源として利用・増殖することができ、ECを効果的に分解することができ、分解剤によるECの分解率は最大76%に達し、高いEC生分解効果を有する。
【0036】
(2)本発明で得られた菌株DL-XSY01は発酵食品から分離されるため、当該菌株及びこれにより調製したEC分解剤は発酵食品におけるECを除去するために用いられ、白酒中のECの分解率は76%に達し、本発明により提供される方法は調製コストが低く、使用しやすく、発酵製品システムから除去しやすいなどの特徴を有し、アルコール飲料、ヨーグルト、醤油と酢などの発酵食品の品質と安全性を効果的に向上させることができる。
【0037】
(3)安全性評価によれば、菌株DL-XSY01は安全である。抗生物質感受性において、菌株が抗生物質セファレキシンに中程度の感受性を示し、10種類の抗生物質、例えば、セファゾリン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、アミカシンアンピシリン、ストレプトマイシン、バンコマイシン、ミノサイクリンとペニシリンGに対して感受性があり、溶血性試験において、DL-XSY01はヒツジの血液平板において28℃で培養する時に溶血を示さなかった(γ-溶血)。しかし、黄色ブドウ球菌ATCC 25923はβ-溶血作用を示し、陽性対照が成立する。更に大腸菌Nissle 1917はα-溶血を示す。そのため、DL-XSY01は人体健康に害がない安全な生体であると考えられる。
【0038】
(4)プロバイオティクス評価によれば、菌株DL-XSY01は人工胃液と人工腸液において良好な生存率を示し、DPPHとABTS遊離基に対して良好な消去能力を示し、消去率はそれぞれ、90.02%と93.67%に達することができる。
【0039】
生体材料の寄託
ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01は、分類によってロドスポリジウム・トルロイデスRhodosporidium toruloidesと名付け、既に2021年10月08日に中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号はCGMCC No.23534であり、寄託住所は北京市朝陽区北辰西路1番の敷地3番、中国科学院微生物研究所である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係るロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01の顕微鏡写真である。
【
図2】本発明に係るロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01がECを炭素源とする時のスクリーニング画像である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
下記実施例は、本発明の好ましい実施形態に過ぎないが、本発明の特許請求の範囲はこれに限定されず、本発明は、菌株及び前記菌株に基づく応用思想を主に説明して、実施形態における簡単なパラメータの変更については実施例において詳細な説明を省略し、その他のいかなる変更は、本発明の趣旨と原理を逸脱しない限りなされた変更、修正、代替、組み合わせ、簡略化は、等価な置換方式と見なされるべきであり、本発明に開示される技術範囲内において当業者により得られる他の実施例は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【0042】
以下、図面と具体的な実施例に合わせて本発明を更に説明する。特に断りのない限り、本発明の採用した試薬、方法と機器は、本技術分野における通常の試薬、方法と機器であり、特に断りのない限り、以下の実施例で使用される試薬と材料はいずれも市販品である。
【0043】
本発明に使用される様々な培地はいずれも通常方法を用いて調製し、実施例に係る分子生物学操作は、具体的な試験条件と方法が示されていない場合、いずれもSambrookJらにより編集された、科学出版社,2002,分子クローン実験ガイド(第3版)を、或いは、製品明細書を参照されたい。
【0044】
下記実施例に係る培地の調製は以下のとおりである。
【0045】
YPD液体培地:ペプトン20.0g、酵母粉末10.0g、グルコース20.0g、蒸留水を1Lに補充し、pHを7.0に調節し、高圧で20min殺菌する。
【0046】
YPD固体培地:ペプトン20.0g、酵母粉末10.0g、グルコース20.0g、寒天15g、蒸留水を1Lに補充し、pHを7.0に調節し、高圧で20min殺菌した後、平板に注ぐ。
【0047】
YNB液体培地:硫酸アンモニウム5000mg、イノシトール2mg、ナイアシン(ビタミンB3)0.4mg、チアミン塩酸塩(ビタミンB1)0.4mg、硫酸銅0.04mg、リン酸二水素カリウム1000mg、ホウ酸0.5mg、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)0.4mg、パントテン酸カルシウム(ビタミンB5)0.4mg、パラアミノフェニル蟻酸0.2mg、硫酸マグネシウム500mg、硫酸マンガン0.4mg、硫酸亜鉛0.4mg、塩化鉄0.2mg、リボフラビン(ビタミンB2)0.2mg、塩化カルシウム100mg、ヨウ化カリウム0.1mg、モリブデン酸ナトリウム0.2mg、ビオチン(ビタミンB7、H)0.002mg、葉酸(ビタミンB9)0.002mg、塩化ナトリウム100mg、蒸留水を1Lに補充し、フィルターヘッドを殺菌する。
【0048】
YNB固体培地:硫酸アンモニウム5000mg、イノシトール2mg、ナイアシン(ビタミンB3)0.4mg、チアミン塩酸塩(ビタミンB1)0.4mg、硫酸銅0.04mg、リン酸二水素カリウム1000mg、ホウ酸0.5mg、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)0.4mg、パントテン酸カルシウム(ビタミンB5)0.4mg、パラアミノフェニル蟻酸0.2mg、硫酸マグネシウム500mg、硫酸マンガン0.4mg、硫酸亜鉛0.4mg、塩化鉄0.2mg、リボフラビン(ビタミンB2)0.2mg、塩化カルシウム100mg、ヨウ化カリウム0.1mg、モリブデン酸ナトリウム0.2mg、ビオチン(ビタミンB7、H)0.002mg、葉酸(ビタミンB9)0.002mg、塩化ナトリウム100mg、寒天15g、蒸留水を1Lに補充し、フィルターヘッドを殺菌する。
【0049】
下記実施例に係るECの含有量の測定方法は以下のとおりである。
【0050】
国家標準方法GB5009.223-2014を用いて培養上澄液中のECの残存量を測定し、同時に無菌のYPD培地を対照として設置され、それぞれの処理で3回繰り返す。当該方法の具体的なステップは以下のとおりである。2mLサンプルをCleanertECカルバミン酸エチル専用カラムにロードし、10min静置し、10mLのn-ヘキサンでシャワー洗浄し、真空ポンプで乾燥し、10mLの5%酢酸エチル-ジエチルエーテル溶液を用いて1mL/minの流速で溶出させ、溶出液を収集する。得られた溶出液を室温で0.5mLになるまで窒素ブローし、メタノールで1mLに定容し、その中に0.8g無水硫酸ナトリウム(100℃、24h)を加え、10000rpmで遠心分離させ、上澄液を0.22μm有機濾過膜で濾過し、流出液は気体品質テストのために用いられ(約0.5mL)、GC/MS分析のために用いられる。
【0051】
GC-MS分析条件は以下のとおりである。
【0052】
毛細管クロマトグラフィーカラムは、DB-INNOWAX、30m×0.25mm(内径)×0.25μm(膜厚)であり、サンプル供給口温度は、220℃であり、カラム温度は、初温50℃で1min保持し、その後8℃/minで180℃まで昇温させ、プログラムの実行を終了した後、240℃となった後に5min実行し、キャリアガスは、ヘリウムガス、純度≧99.999%、流量1.0mL/minであり、イオン源は、EIであり、イオン化エネルギーは、70eVであり、イオン源温度は、230℃であり、四段ポール温度は、150℃であり、伝送線路温度は、250℃であり、溶媒遅延は、11minであり、サンプル供給方式は、スプリットレス注入であり、サンプルの供給量:1μLであり、検出方式は、イオン選択検出(SIM)であり、EC選択検出イオン(m/z)は、44、62、74、89、定量イオン62である。
【0053】
ピーク面積と検量線に基づいてカルバミン酸エチルの濃度を算出することができる。
【0054】
【0055】
実施例1:ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01の分離と調製
1、菌株の分離と精製
(1)サンプルは山東粟酢酢工場の酢醪から収集される。
(2)分離スクリーニング方法は、まず耐酸化濃縮を行い、次にEC分解機能を検証することを採用する。
【0056】
酢醪1gを、10mLの2mM過酸化水素を含むYPD液体培地に加え、上記サンプルをストマッカー袋に移し、30min叩き、無菌条件下で、ストマッカー袋中の部分液体を50mL遠心分離管に移し、30℃、200rpmという条件下で48h培養する。強い酸化環境において、菌体の成長は、阻害されるか、更に成長せず、一方でエルゴチオネインは強い耐酸化性を示すため、高濃度のエルゴチオネインを産生する菌株は培地において正常に成長することができ、エルゴチオネインを産生できない菌株又は産出量が低い菌株は、スクリーニング圧力によって排除される。培地が濁った後、希釈液をYPD固体培地に塗布し、液体を吸収した後に30℃で倒立に載置されて48h培養し、シングルコロニーを選別してYPD固体培地において平板スクライブラインを行い、連続に3世代に精製し、シングルコロニーを選別して顕微鏡検査を行い、汚染がないと判断した後、菌株の凍結保存を行い、菌株はDL-XSY01と名付ける。
【0057】
S2(EC分解機能検証):菌株DL-XSY01を、5g/LのECを含む10mLのYNB液体培地に添加し、30℃、200rpmという条件下で24h培養し、500rpmで5min遠心分離させ、酵母の沈殿を希釈した後、唯一の炭素源である10g/LのECを含むYNB固体平板に均一に塗布し、28℃で倒立に72h培養し、コロニーを形成する。菌株DL-XSY01はECを唯一の炭素源として良好に成長できることが分かり、菌株DL-XSY01がEC分解機能を持つことを示している。
【0058】
図1に示すように、本発明に係るロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01がECを唯一の炭素源とする時の成長画像である。
【0059】
2、菌株DL-XSY01の同定
(1)菌株DL-XSY01ゲノムを抽出して26s rRNA PCR同定を行い、ゲノム抽出方法は《精編分子生物学実験ガイド》ガラスビーズ法に応じて抽出を行う。
【0060】
PCR条件は以下のとおりである。
【0061】
増幅システムは、2×Taq Master Mix 25μL、プライマーD1 2μL、プライマーD2 2μL、殺菌水19μL、テンプレート2μLである。PCR反応条件は、95℃で3minプレ変性し、95℃で15S変性し、50℃で15Sアニーリングし、72℃で1min延伸し、72℃、15min、30回繰り返し、4℃無限大である。
【0062】
PCR終了後、アガロースゲル(1.0%)電気泳動を行って酵母菌サンプルPCR産物を検出し、バンドを切り出し、明るいバンドがPCR増幅に成功したゲノムであり、成功したゲノムはシークエンスに送ることができる。プライマー配列D1:GCATATCAATAAGCGGAGGAAAAG、D2:GGTCCGTGTTTCAAGACGG。
【0063】
前記菌株DL-XSY01の26s rRNA配列は、TTTACGGCATTCCCTAGTAGCGGCGAGCGAAGCGGGAAGAGCTCAAATTTATAATCTGGCACCTTCGGTGTCCGAGTTGTAATCTCTAGAAATGTTTTCCGCGCTGGACCGCACACAAGTCTGTTGGAATACAGCGGCATAGTGGTGAGACCCCCGTATATGGTGCGGACGCCCAGCGCTTTGTGATACATTTTCGAAGAGTCGAGTTGTTTGGGAATGCAGCTCAAATTGGGTGGTAAATTCCATCTAAAGCTAAATATTGGCGAGAGACCGATAGCGAACAAGTACCGTGAGGGAAAGATGAAAAGCACTTTGGAAAGAGAGTTAACAGTACGTGAAATTGTTGGAAGGGAAACGCTTGAAGTCAGACTTGCTTGCCGAGCAATCGGTTTGCAGGCCAGCATCAGTTTTCCGGGATGGATAATGGTAGAGAGAAGGTAGCAGTTTCGGCTGTGTTATAGCTCTCTGCTGGATACATCTTGGGGGACTGAGGAACGCAGTGTGCCTTTGGCGGGGGTTTCGACCTCTTCACACTTAGGATGCTGGTGGAATGGCTTTAAACGACCCGTCTTGAAACACGGACCCAAAである。
【0064】
上記シークエンス結果に対するBlastn分析を行い、当該菌とRhodosporidium toruloidesとRhodotorula mucilaginosaの相同性が最も高く、いずれも99%に達することが分かった。モルフォロジーと26s rRNAによる同定によれば、当該菌株DL-XSY01はRhodosporidium toruloidesであり、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01と名付ける。
【0065】
(2)菌株DL-XSY01はYPD固体平板において良好に成長し、28℃で24~48h培養し、
図2に示すように、湿潤、円形、突出、滑らか、薄いピンク色のコロニーを形成し、顕微鏡検査により菌体が楕円形の長手棒状を呈し、4℃で静置した後にオレンジ色を示すことが発見されている。最適な成長温度は28℃で、最適なpHは5~6である。
【0066】
モルフォロジーと26s rRNAによる同定によれば、当該EC分解菌株DL-XSY01はRhodosporidium toruloidesと仮称される。既に2021年10月08日に中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターCGMCCに寄託され、寄託番号はCGMCC No.23534である。寄託住所は中国北京市朝陽区北辰西路1番の敷地3番の中国科学院微生物研究所である。
【0067】
実施例2:ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01菌株EC分解製剤の調製
具体的なステップは以下のとおりである。
【0068】
(1)ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01菌株をYPD液体培地に接種して活性化を行い、25~30℃で、150~250rpmで定温に発振して24h培養し、シード液を得る。
【0069】
(2)シード液を10%の接種量に応じてYPD発酵培地を含む生産発酵槽(70%充填)に接種し、通気量は0.6~1.0m3/minであり、撹拌速度は300rpmであり、培養温度が28℃に制御され、培養時間は48~96hである。発酵終了後、菌体数が3×108~1.8×109CFU/mLであるDL-XSY01培養液を得る。
【0070】
発酵終了後、無菌条件下で発酵液を収集し、包装ボトルで液体剤形に直接、分注する。
【0071】
(3)発酵終了後、ステップ(2)で収集されたDL-XSY01培養液を凍結真空乾燥させ、脱イオン水で元の体積の1/20となるように調製され、DL-XSY01発酵液を得る。
【0072】
(4)発酵終了後、ステップ(2)で収集されたDL-XSY01培養液を4000g回転速度で10min遠心分離させ、DL-XSY01菌体沈殿物を収集する。
【0073】
(5)ステップ(4)で得られた菌体沈殿物を希釈剤であるPBS緩衝液で希釈した後、菌株DL-XSY01菌体懸濁液を取得し、ここで、菌濃度は、OD600=20である。
【0074】
(6)ステップ(5)で得られた菌株DL-XSY01菌体懸濁液から細胞破砕を経てDL-XSY01細胞分解液を得る。
【0075】
(7)それぞれステップ(3)で調製したDL-XSY01菌含有発酵液、ステップ(5)で調製したDL-XSY01菌体懸濁液とステップ(6)で調製したDL-XSY01細胞分解液に対して、アルギン酸ナトリウムで埋め込みを行い、対応する固定化ボールを調製し、具体的なステップは以下のとおりである。
【0076】
アルギン酸ナトリウム(4%)をそれぞれ、ステップ(3)で調製したDL-XSY01菌含有発酵液、ステップ(5)で調製したDL-XSY01菌体懸濁液およびステップ(6)で調製したDL-XSY01細胞分解液と、体積比1:1の割合で混合し、10mL注射器で吸引し、2~10滴/秒の速度でゆっくり硬化液(0.6%CaCl2の飽和ホウ酸溶液)に滴下し、硬化時間は約5hである。固定化細胞を調製する。
【0077】
固定化細胞を生理食塩水で3~4回、洗い流し、キトサン(2%)溶液に入れ、40minラミネートする。再び0.8%生理食塩水で3~4回、洗い流し、水気を切り、4℃で保管して使用に備え、EC分解剤を調製する。
【0078】
それぞれステップ(3)で調製したDL-XSY01菌含有発酵液、ステップ(5)で調製したDL-XSY01菌体懸濁液とステップ(6)で調製したDL-XSY01細胞分解液により調製した埋め込み製剤はそれぞれ、EC分解剤1、EC分解剤2、EC分解剤3である。
【0079】
(8)EC分解剤1、EC分解剤2、EC分解剤3におけるDL-XSY01の菌濃度をそれぞれ検出し、それぞれ、OD600=10、OD600=20、およびOD600=0である。
【0080】
実施例3:ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01で調製したEC分解剤の、白酒におけるEC分解への使用
具体的なステップは以下のとおりである。
【0081】
実施例2で調製したEC分解剤1、EC分解剤2、EC分解剤3(それぞれ20mL)で、ECを含む白酒サンプルをそれぞれ処理し、具体的には以下のとおりである。
【0082】
60mLの45度白酒にEC分解剤1、EC分解剤2とEC分解剤3をそれぞれ20mL添加し、それぞれ250mL発酵ボトルにおいて、28℃、100rpmで5d反応させる。
【0083】
対照群は、60mLの45度白酒に20mLのYPD培地を添加し、250mL発酵ボトルにおいて、28℃、100rpmで5d(日)反応させる。
【0084】
反応終了後、上澄液2mLをそれぞれ吸引し、0.2μm濾過膜で濾過し、培養上澄液中のECの残存量をそれぞれ測定し、それぞれの処理では3回繰り返し、結果は表1に示すとおりである。
【0085】
結果によれば、EC分解剤1、EC分解剤2とEC分解剤3はいずれも白酒中のEC濃度を低減させることができ、EC濃度は、230.3737μg/Lからそれぞれ、86.9693μg/L、100.0902μg/L、および55.3112μg/Lに低下させることができ、分解率はそれぞれ、62.24%、56.56%、および76.00%である。
【0086】
このように、EC分解剤3の白酒中のECに対する分解効果が最も良い。
【0087】
実施例4:ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01で調製したEC分解剤3による発酵食品に添加されるECの分解実験
下記実施例では、EC分解剤3を例として、本願の菌株は様々な発酵食品及びアルコール飲料中のECを分解できることが実証され、下記に用いたサンプルは、いずれも市販品である。
【0088】
下記実施例に係るEC分解剤3の処理方法では、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01菌株を、YPD液体培地に接種して活性化を行い、25~30℃で、150~250rpmで定温に発振して24h培養し、シード液を得る。シード液を10%の接種量に応じてYPD発酵培地を含む生産発酵槽(70%充填)に接種し、通気量は0.6~1.0m3/minであり、撹拌速度は300rpmであり、培養温度が28℃に制御され、培養時間は48~96hである。発酵終了後、菌体数が3×108~1.8×109CFU/mLであるDL-XSY01培養液を得る。発酵終了後、収集されたDL-XSY01培養液は4000g回転速度で10min遠心分離させ、DL-XSY01菌体沈殿物を収集する。希釈剤であるPBS緩衝液で希釈した後、菌株DL-XSY01菌体懸濁液を取得し、ここで、菌濃度は、OD600=20であり、菌体を破壁してDL-XSY01細胞分解液を取得した後、4%アルギン酸ナトリウムと体積比1:1の割合で混合し、10mL注射器で吸引し、2~10滴/秒の速度でゆっくり硬化液(0.6%CaCl2の飽和ホウ酸溶液)に滴下し、硬化時間は約5hである。固定化細胞を調製する。固定化細胞を生理食塩水で3~4回、洗い流し、キトサン(2%)溶液に入れ、40minラミネートする。再び0.8%生理食塩水で3~4回、洗い流し、水気を切り、4℃で保管して使用に備える。
【0089】
1、赤ワインEC反応液の調製
赤ワイン(12度)は60mLであり、ECは3.0ppmであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、5日間インキュベートする。
【0090】
2、ヨーグルトEC反応液の調製
ヨーグルトは60mLであり、ECは3.0ppmであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、5日間インキュベートする。
【0091】
3、酢EC反応液の調製
酢は60mLであり、ECは3.0ppmであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、5日間インキュベートする。
【0092】
4、醤油EC反応液の調製
醤油は60mLであり、ECは3.0ppmであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、5日間インキュベートする。
【0093】
5、味噌EC反応液の調製
味噌は30gであり、30mL脱イオン水を添加し、ECは3.0ppmであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、5日間インキュベートする。
【0094】
それぞれ上記内容で調製した発酵食品EC反応液について、反応後の上澄液2mLを吸引し、0.2μm濾過膜で濾過し、培養上澄液中のECの残存量を測定し、同時に無菌のYPD培地を対照として設置され、それぞれの処理では3回繰り返し、結果は表2に示すとおりである。
【0095】
結果によれば、DL-XSY01発酵製品及びそのEC分解剤は、ECを分解するのに非常に優れており、発酵食品中のエタノール含有量、塩などの成分はDL-XSY01のEC分解活性にほとんど影響を与えなかった。
【0096】
実施例5:ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01の使用
下記実施例では、EC分解剤3を例として、本願の菌株は実際アルコール飲料中のECを分解できることが実証され、下記に用いたサンプルは、いずれも市販品である。
【0097】
下記実施例に係るEC分解剤3の処理方法は実施例4と同様である。
【0098】
1、ゴマ香タイプ白酒EC反応液の調製
ゴマ香タイプ白酒(53度)は60mLであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、2日間インキュベートする。
【0099】
2、濃香タイプ白酒EC反応液の調製
濃香タイプ白酒(45度)は60mLであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、2日間インキュベートする。
【0100】
3、醤香タイプ白酒EC反応液の調製
醤香タイプ白酒(42度)は60mLであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、2日間インキュベートする。
【0101】
4、清香タイプ白酒EC反応液の調製
清香タイプ白酒(38度)は60mLであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、2日間インキュベートする。
【0102】
5、黄酒EC反応液の調製
黄酒(15度)は60mLであり、EC分解剤3は20mLであり、250mLの三角フラスコにおいて、28℃、100rpm、2日間インキュベートする。
【0103】
それぞれ上記内容で調製した発酵食品EC反応液について、反応後の上澄液2mLを吸引し、0.2μm濾過膜で濾過し、培養上澄液中のECの残存量を測定し、同時に無菌のYPD培地を対照として設置され、それぞれの処理では3回繰り返し、結果は表3に示すとおりである。
【0104】
結果によれば、DL-XSY01発酵製品及びそのEC分解剤は、実際の発酵サンプル中のECを分解するのに非常に優れており、アルコール飲料中のECに対する分解率は70%程度に達する。
【0105】
実施例6:ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01の、発酵過程におけるECの含有量を低減させるための使用
下記実施例では、DL-XSY01を用いて発酵過程における酢醪を処理し、本願の菌株の発酵過程にECの発生を低減可能なことが実証される。
【0106】
下記実施例に係るDL-XSY01の調製方法は、ロドスポリジウム・トルロイデスDL-XSY01菌株をYPD液体培地に接種して活性化を行い、25~30℃で、150~250rpmで定温に発振して24h培養し、シード液を取得し、シード液を10%の接種量に応じてYPD発酵培地を含む生産発酵槽(70%充填)に接種し、通気量は0.6~1.0m3/minであり、撹拌速度は300rpmであり、培養温度が28℃に制御され、培養時間は48~96hである。発酵終了後、菌体数が3×108~1.8×109CFU/mLであるDL-XSY01培養液を得る。発酵終了後、収集されたDL-XSY01培養液を凍結真空乾燥させ、乾燥菌体を得る。
【0107】
5gの凍結乾燥された菌体を取り、100g酢醪に加えて20日間発酵させ、有菌発酵の白酢を得る。また100gの酢醪を直接的に20日間発酵させ、無菌発酵の白酢を得る。
【0108】
上記白酢をそれぞれ2mL吸引し、EC残存量を得て、各組のサンプルには3つ繰り返しを設定し、結果は表4に示すとおりである。
【0109】
結果によれば、凍結乾燥後のDL-XSY01菌体を添加し、発酵過程におけるEC濃度を低減させることができる。
【0110】
実施例7:ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01菌株の性質
具体的なステップは以下のとおりである。
【0111】
1、DL-XSY01菌株安全性評価
(1)抗生物質感受性実験
板紙拡散法を用いてロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)DL-XSY01の抗生物質感受性スペクトルを示す。
【0112】
YPD-寒天固体平板においてDL-XSY01シングルコロニーを選別し、YPD液体培地に搬送して培養し、菌液(約1×10
8cfu/mL)を取得し、
200μLのDL-XSY01菌液を取ってYPD-寒天固体平板に塗布し、ゲンタマイシン(10μg)、ストレプトマイシン(10μg)、エリスロマイシン(15μg)、テトラサイクリン(30μg)、セファレキシン(30μg)、バンコマイシン(30μg)、セファゾリン(30μg)、アンピシリン(10μg)、ペニシリン(10μg)、ミノサイクリン(30μg)及びアミカシン(30μg)という11種類の抗生物質薬感板紙をそれぞれゆっくり載置し、各板紙の距離は24mm以上であり、
上記板紙入り培地を、28℃で静置して24h培養した後、静菌環の直径を測定して統計し、その耐薬品性を分析し、耐性R(≦14ミリメートル)、中程度I(14~20ミリメートル)又は感受性S(≧20ミリメートル)であり、各組で3つの繰り返しを設定し、DL-XSY01の抗生物質感受性は表5に示すとおりである。
【0113】
結果によれば、菌株が抗生物質セファレキシンに中程度の感受性を示し、10種類の抗生物質セファゾリン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、アミカシンアンピシリン、ストレプトマイシン、バンコマイシン、ミノサイクリン、およびペニシリンGに対して感受性がある。従って、CLSIガイドに基づき、これらの結果はDL-XSY01が安全であることが実証される。
【0114】
(2)溶血性試験
溶血性は3種類に分けられ、それぞれ、α溶血は、緑色溶血とも称され、コロニー周辺の培地には1~2mmの緑色環が現れ、メトヘモグロビンによる結果であり、α溶血環における赤血球が完全に溶解せず、α溶血環を形成することができる細菌は例えば、A群溶血性レンサ球菌、肺炎球菌であり、β溶血は、固体平板に培養する時、コロニー周辺に形成された、広く(2~4mm)、輪郭が鮮明で、完全に透明な溶血環、β溶血環における赤血球が完全に溶解し、菌体が産生する溶血素は赤血球を完全に溶解させる結果であり、完全溶血とも称され、β溶血環を形成することができるものは、B群溶血性レンサ球菌、黄色ブドウ球菌などを含み、γ溶血は、非溶血とも称され、コロニー周辺には溶血環がない。
【0115】
具体的なステップは以下のとおりである。
【0116】
培地構成は、コロンビア寒天+5%ヒツジの脱繊維血液である。
【0117】
YPD-寒天固体平板においてDL-XSY01シングルコロニーを選別し、YPD液体培地に搬送して培養し、菌液(約1×108cfu/mL)を取得し、
菌液を取り、5%ヒツジの脱繊維血液を含むコロンビア平板にスクライブラインし、28℃で24h培養した後、透明な環があるか否かを観察する。黄色ブドウ球菌ATCC 25923は陽性対照として、各組で3回繰り返す。
【0118】
結果によれば、この溶血試験において、黄色ブドウ球菌ATCC 25923は陽性対照として使用される。DL-XSY01はヒツジの血液平板において28℃で培養する時に溶血(γ-溶血)を示さない。しかし、黄色ブドウ球菌ATCC 25923はβ-溶血作用を示し、陽性対照が成立する。更に大腸菌Nissle 1917はα-溶血を示す。従って、DL-XSY01は人体健康に害がない安全な生体であると考えられる。
【0119】
2、DL-XSY01菌株プロバイオティクス評価
(1)人工胃液実験
プロバイオティクスは、プロバイオティクス効果を果たすために、胃腸管に定植し、まず消化管の環境に対して耐性を有しなければならず、胃液に対する耐性は重要なスクリーニング基準の一つである。
【0120】
人工胃液の調製においては、希塩酸16.4mLに水を約900mL入れ、ペプシンを10g入れ、均一に混合した後、水を入れて1000mLに定容する。それぞれpHを2.5に調節し、0.22μm濾過膜で濾過して殺菌し、4℃で保存する。
【0121】
人工胃液耐性実験
YPD-寒天固体平板にはDL-XSY01シングルコロニーを選別し、YPD液体培地に搬送して培養し、菌液(約1×108cfu/mL)を取得し、5mLの菌液を取り、10000rpm、4℃で5min遠心分離させ、菌体を収集し、pH7.4の無菌リン酸塩緩衝液で2回洗浄し、上記操作を繰り返す。
【0122】
菌体をあらためて5mLのpH2.5の人工胃液に懸濁させる。平板塗布法によりpH2.5の人工胃液において0h、および3hインキュベートした後の生菌数を算出し、各組で3回繰り返す。
【0123】
生存率(%)=logCFU(N1)/logCFU(N0)*100%。
【0124】
ここで、N0は人工胃液において0hインキュベートした後の生菌数を示し、N1は人工胃液において3hインキュベートした後の生菌数を示す。
【0125】
同時に、大腸菌Nissle 1917を陽性対照とする。
【0126】
結果によれば、人工胃液の条件(0.3%ペプシンを含み、pHが2.5である)で3h培養した後、DL-XSY01の生存率は86.73%であり、陽性対照群である大腸菌Nissle 1917の生存率は86.14%である。結果によれば、大腸菌Nissle 1917に比べて、DL-XSY01は人工胃液において良好な生存率を示した。
【0127】
(2)人工腸液実験
プロバイオティクスは、プロバイオティクス効果を果たすために、胃腸管に定植し、まず消化管の環境に対して耐性を有しなければならず、腸液に対する耐性は重要な基準の一つである。
【0128】
人工腸液の調製においては、殺菌後のリン酸塩緩衝液(pH7.4)でトリプシンを、濃度が1mg/mLの溶液に調製し、0.3%ウシの胆汁酸塩を添加し、1mol/L水酸化ナトリウムでpHを7.4に調節した後、0.22μmのマイクロポーラスフィルタで濾過して殺菌した後に使用に備える。
【0129】
人工腸液耐性実験
YPD-寒天固体平板においてDL-XSY01シングルコロニーを選別し、YPD液体培地に搬送して培養し、菌液(約1×108cfu/mL)を取得し、
5mLの菌液を取り、10000rpm、4℃で5min遠心分離させ、菌体を収集し、pH7.4の無菌リン酸塩緩衝液で2回洗浄し、上記操作を繰り返す。菌体を改めて5mLのpH7.4の人工腸液に懸濁させる。平板塗布法によりpH7.4人工腸液において0hと4hインキュベートした後の生菌数を算出し、各組で3回繰り返す。
【0130】
生存率(%)=logCFU(N1)/logCFU(N0)*100%。
【0131】
ここで、N0は人工胃液において0hインキュベートした後の生菌数を示し、N1は人工胃液において3hインキュベートした後の生菌数を示す。
【0132】
同時に、大腸菌Nissle 1917を陽性対照とする。
【0133】
結果によれば、人工腸液の条件(0.3%トリプシンと0.3%ウシの胆汁酸塩を含む)で4h培養した後、DL-XSY01の生存率は85.92%で、陽性対照群である大腸菌Nissle 1917の生存率は84.64%である。結果によれば、大腸菌Nissle 1917に比べて、DL-XSY01は人工胃液において良好な生存率を示した。
【0134】
(3)耐酸化実験
DPPH遊離基消去率試験
0.0078gのDPPHを無水エタノールで溶解させ、100mlに定容し、0.2mmol/LのDPPHを調製し、遮光して放置し、使用する直前に調製する。
【0135】
上記ステップ(1)に応じて菌濃度が108CFU/mLであるDL-XSY01菌液を調製する。
【0136】
上記108CFU/mLのDL-XSY01菌液を、体積比1:1の割合に応じて、100%エタノールDPPH溶液(0.2mM)と混合し、25℃下の暗闇中で30min培養する。
【0137】
DL-XSY01菌液と100%エタノールを単独に用いてブランクとし、DPPHエタノール溶液は対照とされる。2330×g(4120rpm)で10分間遠心分離した後に上澄液を収集する。517nmの箇所で、第1の吸光度を3回繰り返して測定する。
【0138】
ABTS遊離基消去率試験
ABTS(14mM)と過硫酸カリウム(5mM)を0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)に溶解させ、1:1の割合で混合し、25℃で12~16h反応させる。
【0139】
100μL菌株DL-BJ01(108CFU/mL)を900μLのABTS溶液に添加し、25℃で暗闇中で15min培養する。(14000g、1分間)遠心分離した後、734nmの箇所で、上澄液の吸光度を測定する。
【0140】
結果によれば、DL-XSY01のDPPH消去活性は90.02%であり、ABTS消去活性は93.67%であり、菌株DL-XSY01は良好な耐酸化活性を示すことが実証される。
【0141】
本発明は、既に好ましい実施例によって以上のように開示されているが、それらの実施例は本発明を限定するためのものではなく、当業者は、本発明の趣旨と範囲を逸脱しない限り、様々な変更と修飾を行うことができ、従って、本発明の保護範囲は特許請求の範囲に限定されるものに準ずるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】