(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】皮膚の老化の予防又は治療のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/565 20060101AFI20241126BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241126BHJP
A61P 15/12 20060101ALI20241126BHJP
A61P 5/30 20060101ALI20241126BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20241126BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241126BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 31/57 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K31/565
A61P17/00
A61P15/12
A61P5/30
A61P17/16
A61P17/02
A61P43/00 121
A61K31/57
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024531577
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2022083611
(87)【国際公開番号】W WO2023094689
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520404207
【氏名又は名称】エステトラ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド,セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ディオン,ヴァレリー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA09
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC52
(57)【要約】
本発明は、皮膚の老化及び関連する影響の予防又は治療のための美容的又は療法治療、かかるものを行うための関連組成物、及び関連する製剤又は投与単位に関する。美容的及び/又は療法効果は、エステトロール成分の有効量によって得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持に使用される、約10 mg~約25 mgのエステトロール(E4)に相当する量のエステトロール成分を含む、経口投与単位。
【請求項2】
約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する1日量でのエステトロール組成物の経口投与(又は経口摂取)を含む、皮膚の質及び/又は皮膚の外観を改善又は維持する方法。
【請求項3】
皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持のための薬剤の製造のための、約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する経口1日量でのエステトロール成分の使用。
【請求項4】
皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、皮膚の老化の兆候の軽減、皮膚の老化の兆候の逆転、及び/又は皮膚の老化の兆候の低下を含む、請求項1に記載の使用のための経口投与単位、請求項2に記載の方法、又は請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記皮膚の老化が、ホルモンに関連する皮膚の老化、より好ましくはエストロゲン欠乏(低エストロゲン症)等の閉経期ホルモン異常に起因する皮膚の老化である、請求項4に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項6】
皮膚粗鬆症に罹患していると診断された、又は皮膚粗鬆症に罹患していると見なされる対象における、請求項1~5のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項7】
前記皮膚粗鬆症が、コラーゲンIの発現低下、コラーゲンIIIの発現低下、コラーゲンIVの発現低下、マトリクスメタロプロテイナーゼ1の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ2の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ3の発現増加、マトリクスメタロタンパク質Iの発現低下、弾性組織の減少、線維芽細胞によるコラーゲン合成の欠損、ヒアルロン酸の減少、又はこれらの任意の組合せによって特徴付けられる、請求項6に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項8】
前記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、インターロイキン-6の放出を低下させ、好ましくはエストラジオールが使用される対照条件と比較した場合にインターロイキン-6の放出を低下させる、請求項1~7のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項9】
前記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、皮膚、例えば表皮におけるケラチノサイト機能及び/又は成長の増加によって得られる、請求項1~8のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項10】
前記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、さらに、前記皮膚における線維芽細胞の機能、遊走、及び/又は線維芽細胞の成長、又は刺激された上皮間葉相互作用(EMI)を増加させる、請求項1~9のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項11】
前記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、例えば前記皮膚におけるグリコサミノグリカン(特にヒアルロン酸)の前記レベルの増加及びヒアルロン酸合成酵素活性の増加による皮膚の保湿の増加;皮脂レベルの増加;及び皮膚バリア機能の改善を含む群から選択されるいずれか1つ以上の効果によって特徴付けられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項12】
前記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、創傷治癒の改善及び/又は皮膚炎症の低下によって特徴付けられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項13】
前記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、例えば皮膚中のROSレベルの低下による酸化ストレスの低下、及び染みの出現等の不均一な皮膚色素沈着の緩和を含む群から選択されるいずれか1つ以上の効果によって特徴付けられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項14】
前記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、にきび(吹き出物)、皮疹及び掻痒を含む群から選択されるいずれか1つ以上の影響によって特徴付けられる、請求項1~13のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項15】
前記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、閉経期女性における乾癬の予防、影響の低下、又は治療によって特徴付けられる、請求項1~14のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項16】
約14 mg~約21 mgのエステトロール、好ましくは約14 mg~約16 mg又は約19 mg~約21 mgのエステトロールに相当する1日量が投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項17】
前記エステトロール成分がエステトロール又はそのエステルであり、好ましくは、前記エステトロール成分はエステトロール一水和物である、請求項1~16のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項18】
前記投与単位にプロゲストーゲンが含まれていない、又はプロゲストーゲンが使用されていない、又は同時投与されない、請求項1~17のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項19】
前記経口投与単位中にプロゲストーゲンが存在する、又は、プロゲストーゲンが使用されており、同時投与される、又はエステトロールでの治療後に投与され、好ましくは前記プロゲストーゲンが、プロゲステロン、ドロスピレノン、ノルエチステロン、ノルエチステロン-アセテート(NETA)、ジドロゲステロン、レボノルゲストレル(LNG)、エトノゲストレル、ノルゲストレル、ノメゲストロール、ノメゲストロール-アセテート(NOMAC)、トリメゲストン、ネストロン、ジドロゲステロン、ゲストデン、デソゲストレル、ノルゲスチメート、酢酸シプロテロン、ジエノゲスト、及びクロルマジノンを含む群から選択され、より好ましくは前記プロゲストーゲンがドロスピレノン、プロゲステロン、又はジドロゲステロンを含む群から選択される、請求項1~18のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項20】
前記プロゲストーゲンが、約0.25 mg~約4 mg、より好ましくは約1 mg~約4mg、例えば約1 mg~約3 mg、約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で前記経口投与単位中に存在する、又は前記プロゲストーゲンが約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で投与される、請求項19に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項21】
皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持に適した更なる活性成分が前記経口投与単位中に存在する、又は皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持に適した更なる活性成分が同時投与される又はエステトロールでの治療の前又は後に投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項22】
前記組成物が、経口、舌下、口腔、又は唇投与のための経口投与単位として製剤化されている、請求項1~21のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項23】
前記経口投与単位が、1日投与量単位に対応するように製剤化されている、又は、それぞれ1日投与量として投与される、請求項1~22のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚における低エストロゲン症の影響の予防又は治療のためのエステトロール成分を含む組成物、かかる組成物が使用される美容的又は療法治療、並びに関連する製剤及び投与単位に関する。
【0002】
本明細書中で更に詳細に記載するように、この治療は、皮膚における低エストロゲン症及び報告されている副作用の影響の予防又は治療のための現在利用可能な方法と比較した場合に、副作用に対する有利なプロファイルと両立する統計的に有意な有効性を示す。
【背景技術】
【0003】
皮膚は体の最もボリュームがあって最も目に見える器官であり、人が年齢を重ねるにつれて目に見える老化の兆候を示す。皮膚の老化を予防又は逆転させることを意図する化粧品及び調剤は、多くの人々の日常生活費のかなりの部分を占めており、このことは、皮膚の老化及びこの現象を制御する手段に対する研究への注目が維持され、更に奨励されていることを意味する。皮膚の老化は様々な形で顕在化されるが、通常、しわ、弾性の低下及び荒れ(但しこれらに限定されない)が挙げられる。これらの顕在化は、皮膚細胞レベルでの変化、並びにコラーゲン、エラスチン、及びプロテオグリカン等の細胞外マトリクス成分における構造的及び機能的変化を含む、多くの異なる要因によって引き起こされる。これらは各々、例えば、皮膚の十分な引張強度、弾性、適切な皮膚バリア機能の維持、及び保湿を維持するために必要である。内因性の皮膚の老化は、一般に、より薄くより乾燥した皮膚、しわ(すなわち、皮膚の割れ又はくぼみの形成の発生)、及び段階的な真皮萎縮を引き起こす、ホルモン変化、細胞増殖の低下、酸化ストレス、炎症等を含む生理学的な老化プロセスに関連している。外因性の皮膚の老化は、太陽からの紫外線への曝露、大気汚染、喫煙、栄養不足等の外的環境要因によって引き起こされる。現実には、これらは多くの場合相互に関連しており、及び/又は相乗的フィードバックループを形成する。例えば、紫外線は最終的に活性酸素種(ROS)を誘起する。逆もまた同様であり、皮膚が薄いほど紫外線に対してより敏感となる。本発明の焦点は、内因性の皮膚の老化、並びに、例えば紫外線曝露及び/又は大気汚染により引き起こされる外因性の皮膚の老化の影響の予防又は軽減に関する。
【0004】
これに関して留意すべき重要な1つの特定の態様は、閉経期移行の間又はその前後及び閉経後初期(閉経周辺期)等における女性のホルモンバランスの影響である。留意すべきことに、閉経周辺期間後にも、すなわち閉経女性と多くの場合呼ばれる閉経後の女性において、ホルモンバランスの影響が持続する場合がある。ホルモンバランスのこの変化は、皮膚の組成及びその適切な機能に影響する可能性がある。エストロゲン等の循環する性ホルモンの低下が、皮膚及び皮膚関連機能に悪影響を与えることが報告されている(非特許文献1)。それによって、創傷治癒、真皮細胞外マトリクスの組成及び構造の完全性、並びに摩擦及び圧力を受けた際の皮膚の弾力性及び脆弱性への影響が記載されている。したがって、若々しい皮膚を維持するという美容的観点を超えて、一定の対象においては、年齢に関連する皮膚の変化が、医学的治療を必要とする状態につながり、相当な医療コストがかかる。従来報告されているように、エストラジオール(E2)又はエステトロール(E4)等のエストロゲンを含む組成物の皮膚への局所適用が広く研究されてきた。例えば、特許文献1ではエステトロールを含む美容的組成物の局所適用が報告されている。同様に、非特許文献2及び非特許文献3では、皮膚へのエストロゲンの局所投与の効果が議論されている。
【0005】
さらに、MEP等の非ホルモン性受容体アゴニスト(NERA)について、閉経期に関連する皮膚の老化の治療への使用に関して研究がなされている。NERA類は、エストラジオール自体のような実際のホルモンの副作用がないため興味深い。
【0006】
エストロゲンを含むホルモン補充療法の経口(全身)投与は、通常、例えば皮膚の老化に対する美容的用途としては最良の選択肢とは見なされないが、これにより毎日皮膚にクリーム等を塗布する(これは一定の対象には煩わしい及び/又は不快な体験となる)必要がなくなるため、興味深い経路である。別の長所は、一定の用量でのエストロゲンの全身使用によって、閉経期に関連する症状が同時に緩和できることである。しかし、この投与形態に関する1つの長年の懸念事項は、対象におけるかかる全身投与又はエストロゲンの蓄積に関連する副作用を避ける必要があることである。例えば、特許文献1には、皮膚の治療にはエストロゲンの局所適用が好ましいことが記載されている。反対に、この文献には、閉経期の症状は経口又は皮下投与によって別途治療されるべきであると記載されている。また、提案された投与量は、低エストロゲン症の症状を抑制するためのものより低くすべきことが示唆されていた。
【0007】
そのため、これらの特定された問題のいくつかを克服する新たな組成物又は製剤を開発する必要が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】PCT出願国際公開第03/103685号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Stevenson andThornton, Clin Interv Aging, 2007
【非特許文献2】Creidi et al. "Effectof a conjugated estrogen cream on aging facial skin", Maturitas, (1994)19, p. 211
【非特許文献3】Shah et al. "Estrogenand skin. An overview", Am J Clin Dermatol (2001); 2 (3): 143-150
【発明の概要】
【0010】
この背景に対し、本発明者らは、ここで驚くべきことに、特定の投与量範囲でのエステトロールの経口投与が、閉経周辺期及び閉経期のホルモン不均衡に関連又は起因する皮膚の老化の予防又は治療に有益である可能性があることを見出した。
【0011】
予期しないことに、エステトロールが経口投与後に皮膚にて臨床的に関連する濃度に達することが示された。さらに、本発明者らはエステトロールが表皮ケラチノサイト及び真皮線維芽細胞の両方に作用することを示すことができた。これらの知見から、ケラチノサイトの遊走及び増殖、線維芽細胞の成長への影響から、抗酸化剤効果を超えて、抗炎症効果までにわたる、皮膚の老化の予防又は軽減に対する有益な多くの効果が生じる。これにより、皮膚の老化の予防、軽減、及び全体的な皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持のために使用可能な経口製剤又は投与単位を提供する機会が開かれる。さらに、この新たな知識は、乾癬及び皮膚粗鬆症(但しこれらに限定されない)等の皮膚関連疾患像に対する革新的な治療戦略を提供する。
【0012】
以下の番号が付けられた段落に、本発明のいくつかの特定の実施形態を記載する。
【0013】
1.皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持に使用される、好ましくは、皮膚の質及び/又は皮膚の外観を維持する、又は皮膚の老化の予防又は治療に使用される、約10 mg~約25 mgのエステトロール(E4)に相当する量のエステトロール成分を含む、経口投与単位。
【0014】
2.皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善若しくは維持のための、又は皮膚の老化の予防若しくは治療に使用するための、好ましくは皮膚の質及び皮膚の外観の維持のための薬剤の製造における約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する経口1日量でのエステトロール成分の使用。
【0015】
3.約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する1日量でのエステトロール成分の経口投与(又は経口摂取)を含む、皮膚の質及び/又は皮膚の外観を改善若しくは維持する、好ましくは皮膚の質及び/又は皮膚の外観を維持する、又は皮膚の老化の予防若しくは治療に使用される方法。
【0016】
4.約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する1日量でのエステトロール組成物の経口投与(又は経口摂取)を含む、皮膚の質及び/又は皮膚の外観を改善若しくは維持する、好ましくは皮膚の質及び/又は皮膚の外観を維持する、又は皮膚の老化の予防若しくは治療に使用される美容的方法。
【0017】
5.皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持により、不均一な色素沈着(すなわち、メラニンの変化)、赤み(すなわち、紅斑又は目に見えるヘモグロビン)、くすみ/血色の悪さ(sallowness)(すなわち、輝きの欠如;黄色又は灰色っぽいアンダートーン)、明るさ(すなわち、皮膚が「輝く」又は光を反射する能力)、脂っぽさ/艶(すなわち、皮膚表面の過剰な皮脂)、乾燥(すなわち、水分不足;脱水)、小じわ(fine lines)(すなわち、軽いしわ)、はっきりしたしわ(coarse lines)(すなわち、深いしわ)、毛穴(すなわち、毛包皮脂腺単位の表面ランドマーク)、クレーピネス(crepiness)(すなわち、皮膚の細かい煙草紙のようなしわ)、保湿(すなわち、水分含有量;湿潤)、緩み(すなわち、緩んだ皮膚)、弾性/柔軟性(すなわち、触診に対する反発力)、ハリ(すなわち、延伸に対する能力)、厚さ(すなわち、表皮及び真皮の密度)、及び荒れからなる群から選択される1つ以上の属性が改善又は維持される、態様1に記載の使用のための経口投与単位、態様2に記載の使用、態様3に記載の治療方法、又は態様4に記載の方法。
【0018】
6.皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、皮膚の老化の兆候の軽減、皮膚の老化の兆候の逆転、及び/又は皮膚の老化の兆候の低下を含む、態様1~5のいずれか1つに記載の、経口投与単位、使用、又は方法。
【0019】
7.上記皮膚の老化が、皮膚の保湿の低下、皮膚弾性の低下、水分減少の増加、皮膚の荒れの低下、表皮の厚さの低下、真皮の厚さの低下、及び皮脂含有量の低下によって特徴付けられる、態様6に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0020】
8.上記皮膚の老化を、以下のパラメーター:乾燥、締まり感、落屑、弛み、毛細血管拡張、膨圧、ハリ、弾性、水分含有量、皮脂産生(べたつき)、血管新生、及び色素沈着の1つ以上を使用して評価する、態様6又は7に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0021】
9.上記皮膚の老化がホルモン関連の皮膚の老化であり、より好ましくはエストロゲン欠乏(低エストロゲン症という用語と同義に示される)等の閉経期のホルモンの脱制御によって引き起こされる皮膚の老化である、態様5~8のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0022】
10.対象が少なくとも40歳、好ましくは少なくとも45歳、好ましくは少なくとも50歳、好ましくは少なくとも55歳、より好ましくは少なくとも60歳、最も好ましくは少なくとも65歳である、態様1~9のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0023】
11.皮膚粗鬆症に罹患していると診断された、又は皮膚粗鬆症に罹患していると見なされる対象における、態様1~10のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0024】
12.皮膚粗鬆症が、コラーゲンIの発現低下、コラーゲンIIIの発現低下、コラーゲンIVの発現低下、マトリクスメタロプロテイナーゼ1の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ2の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ3の発現増加、マトリクスメタロタンパク質Iの発現低下、弾性組織の減少、線維芽細胞によるコラーゲン合成の欠損、ヒアルロン酸の減少、又はこれらの任意の組合せによって特徴付けられる、態様11に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0025】
13.上記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、皮膚、例えば表皮におけるケラチノサイト機能及び/又は成長の増加によって得られる、態様1~12のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0026】
14.上記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、皮膚における線維芽細胞の機能、遊走、及び/又は線維芽細胞の成長、又は刺激された上皮間葉相互作用(EMI)を増加させる、態様1~13のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0027】
15.上記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、例えば皮膚におけるグリコサミノグリカン(特にヒアルロン酸)のレベルの増加及びヒアルロン酸合成酵素活性の増加による皮膚の保湿の増加;皮脂レベルの増加;及び皮膚バリア機能の改善を含む群から選択されるいずれか1つ以上の効果によって特徴付けられる、態様1~14のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0028】
16.上記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、創傷治癒の改善及び/又は皮膚炎症の低下によって特徴付けられる、態様1~15のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0029】
17.上記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、例えば皮膚中のROSレベルの低下による酸化ストレスの低下、及び染みの出現等の不均一な皮膚色素沈着の緩和を含む群から選択されるいずれか1つ以上の効果によって特徴付けられる、態様1~16のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0030】
18.上記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、にきび(吹き出物)、皮疹及び掻痒を含む群から選択されるいずれか1つ以上の影響の低下によって特徴付けられる、態様1~17のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0031】
19.上記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、炎症性マーカーの低下、好ましくはインターロイキン-6(IL-6)放出の低下によって特徴付けられる、態様1~18のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0032】
20.IL-6放出が、対象をエステトロールではないエストロゲンで治療した場合の対照条件におけるIL-6放出と比較した場合に低下する、態様19に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0033】
21.エステトロールではないエストロゲンがエストラジオールである、態様20に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0034】
22.IL-6放出の低下が、対象をエステトロールではないエストロゲンで治療した場合の対照条件と比較した場合に、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%低下し、好ましくはエステトロールではないエストロゲンがエストラジオールである、態様19~21のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0035】
23.上記皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持が、閉経期女性における乾癬の症状の予防又は低下によって特徴付けられる、態様1~22のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0036】
24.約14 mg~約21 mgのエステトロール、好ましくは約14 mg~約16 mg又は約19 mg~約21 mgのエステトロールに相当する1日量が投与される、態様1~23のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0037】
25.上記エステトロール成分が約14 mg~約16 mgのエステトロールに相当する量で上記経口投与単位中に存在する、又は上記エステトロール成分が約14 mg~約16 mgのエステトロールに相当する量で投与される、態様1~24のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0038】
26.上記エステトロール成分がエステトロール又はそのエステルである、態様1~25のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0039】
27.上記エステトロール成分がエステトロール一水和物である、態様1~26のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0040】
28.上記投与単位にプロゲストーゲンが含まれていない、又はプロゲストーゲンが使用されていない、又は同時投与されない、態様1~27のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0041】
29.プロゲストーゲンが経口投与単位中に存在する、使用される、又はプロゲストーゲンが同時投与される又はエステトロールでの治療後に投与される、態様1~28のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0042】
30.上記プロゲストーゲンが、プロゲステロン、ドロスピレノン、ノルエチステロン、ノルエチステロン-アセテート(NETA)、ジドロゲステロン、レボノルゲストレル(LNG)、エトノゲストレル、ノルゲストレル、ノメゲストロール、ノメゲストロール-アセテート(NOMAC)、トリメゲストン、ネストロン、ジドロゲステロン、ゲストデン、デソゲストレル、ノルゲスチメート、酢酸シプロテロン、ジエノゲスト、及びクロルマジノンを含む群から選択される、態様29に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。好ましい実施形態において、上記プロゲストーゲンは、ドロスピレノン、プロゲステロン、又はジドロゲステロンを含む群から選択される。
【0043】
31.上記プロゲストーゲンが約0.25 mg~約4 mg、例えば約1mg~約4 mg、より好ましくは約1 mg~約3 mg、約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で上記経口投与単位中に存在する、又は上記プロゲストーゲンが約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で投与される、態様29又は30に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。好ましい実施形態において、上記プロゲストーゲンはドロスピレノンである。
【0044】
32.上記プロゲストーゲンが約1 mg~20 mgのプロゲステロンに相当する量で上記経口投与単位中に存在する、又は上記プロゲストーゲンが約5 mg~10 mgのプロゲステロンに相当する量で投与される、態様29又は30に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。好ましい実施形態において、上記プロゲストーゲンはプロゲステロンである。
【0045】
33.上記プロゲストーゲンが約25 mg~300 mgのジドロゲステロンに相当する量で上記経口投与単位中に存在する、又は上記プロゲストーゲンが約100 mg~200 mgのジドロゲステロンに相当する量で投与される、態様29又は30に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。好ましい実施形態において、上記プロゲストーゲンはジドロゲステロンである。
【0046】
34.皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善若しくは維持、又は皮膚の老化の予防若しくは治療に適した、当該技術分野で既知の更なる活性成分が経口投与単位中に存在する、又は皮膚の老化の予防若しくは治療に適した更なる活性成分が同時投与される又はエステトロールでの治療の前若しくは後に投与される、態様1~33のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0047】
35.組成物が、経口投与単位として製剤化されている、態様1~34のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位又は方法。
【0048】
36. 組成物が、経口、舌下、口腔、又は唇投与のために製剤化されている、態様1~35のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位又は方法。
【0049】
37.経口投与単位が1日投与単位に対応するように製剤化される、又はそれぞれ1日投与単位として投与される、態様1~36のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位又は方法。
【0050】
38.本明細書中に定義したいずれか1つの態様では、上記投与単位を、エステトロール成分を含む1日経口投与単位を含有する包装ユニット(例えば、ブリスターパック)を含むパーツキット(kit-of-parts)として提示することができる。当業者はさらに、本発明の範囲内において、各包装ユニット(例えばブリスターパック)が番号付け可能であり、又は他の方法でマーキング可能であることを知っている。本発明の範囲内において、各包装ユニットは、カードボード、紙板、箔プラスチックの裏打ちを備えて、適切なカバーに収められた密封ブリスターパックとすることができる。
【0051】
本明細書中に定義されるいずれか1つの態様では、ボトル等の包装ユニットも想定される。ボトルの材料は特に限定されない。好ましい実施形態において、ボトルは、例えば紫外線によるボトルの内容物の劣化を低下又は防止することができる一方で、該ボトルの内容物の目視検査が可能な程度の透明性を維持できる色によって特徴付けられるガラスのボトルである。適切な色は、琥珀色、コバルト色、又はヴィンテージグリーンである(これらに限定されない)。
【0052】
39.態様38に記載のパーツキットの特定の実施形態において、包装ユニットは28個の容器、又は28の倍数個の容器(例えば28の2倍~12倍の個数の容器)を含む。
【0053】
上記の番号付けられた態様は、以下の部分及び添付の特許請求の範囲において更に記載されている。添付の特許請求の範囲の主題はこれにより詳細に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)存在下で、4つの濃度で適用したエステトロール(E4)と異なる時間接触させた後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%+MMCに対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL)+MMC;E4 10
-7 M+MMC;E4 10
-8M+MMC;E4 10
-9 M+MMC;E410
-10 M+MMC。
【
図2】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)非存在下で、4つの濃度で適用したエステトロール(E4)と異なる時間接触させた後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%に対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL);E4 10
-7M;E4 10
-8 M;E4 10
-9M;E4 10
-10 M。
【
図3】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)存在下で、4つの濃度で適用したβ-エストラジオール(E2)と異なる時間接触させた後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%+MMCに対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL)+MMC;E2 10
-7 M+MMC;E2 10
-8M+MMC;E2 10
-9 M+MMC;E210
-10 M+MMC。
【
図4】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)非存在下で、4つの濃度で適用したβ-エストラジオール(E2)と異なる時間接触させた後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%に対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL);E2 10
-7 M;E2 10
-8 M;E2 10
-9 M;E2 10
-10 M。
【
図5】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)存在下で、4つの濃度で適用したエステトロール(E4)と異なる時間接触させた後の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%+MMCに対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL)+MMC;E4 10
-7 M+MMC;E4 10
-8M+MMC;E4 10
-9 M+MMC;E410
-10 M+MMC。
【
図6】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)非存在下で、4つの濃度で適用したエステトロール(E4)と異なる時間接触させた後の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%に対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL);E4 10
-7M;E4 10
-8 M;E4 10
-9M;E4 10
-10 M。
【
図7】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)存在下で、4つの濃度で適用したβ-エストラジオール(E2)と異なる時間接触させた後の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%+MMCに対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL)+MMC;E2 10
-7 M+MMC;E2 10
-8M+MMC;E2 10
-9 M+MMC;E210
-10 M+MMC。
【
図8】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)非存在下で、4つの濃度で適用したβ-エストラジオール(E2)と異なる時間接触させた後の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%に対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL);E2 10
-7 M;E2 10
-8 M;E2 10
-9 M;E2 10
-10 M。
【
図9】スクラッチアッセイにおける線維芽細胞遊走に対するエストロゲンの影響を示す図である。パイロット実験では、E4がマウス(A)及びヒト(B)の線維芽細胞の両方において、E2と同程度に線維芽細胞の遊走を促進することが示唆される。上側の小図は、ビヒクル、E2(10
-7 M)又はE4(10
-7 M)存在下での創傷閉鎖の代表的な画像を示し、下側の小図は、ビヒクル、E2又はE4存在下での創傷閉鎖の百分率を示す。10
-7 MのE2及び10
-7 MのE4をマウス線維芽細胞(A)において試験し、E2及びE4の両方について5つの用量(10
-10 M(左)から10
-6 M(右)に徐々に増加)をヒト線維芽細胞(B)において試験した。データは異なるドナーから得た3つの独立した培養の平均±SEMとして表される。*:p<0.05。
【
図10】スクラッチアッセイにおけるケラチノサイト遊走に対するエストロゲンの影響を示す図である。15%ヒトケラチノサイト増殖サプリメント(HKGS)を補充した培養条件下において、ケラチノサイトに対するE4(10
-10 M及び10
-7 M)の影響はE2の影響より高いように思われる。X軸:異なる試験条件(全ての濃度はMで表される)。Y軸:創傷閉鎖の百分率。破線:対照条件(左端の条件;10
-7 Mエタノール)について観察された基礎ケラチノサイト遊走レベル。
【
図11】免疫細胞分極化に対するエストロゲンの影響を示す図である。(A)陰性対照(M1ビヒクル)、エストラジオール(M1 E2)又はエステトロール(M1 E4)で治療した活性化ヒト単球における、及び(B)陰性対照(M0ビヒクル)で治療した非活性化マウス骨髄由来単球(BMDM)、又は陰性対照(M1ビヒクル)、エストラジオール(M1 E2)又はエステトロール(M1 E4)で治療した活性化マウスBMDMにおける、サブタイプM1を表す炎症促進マーカーの相対的発現として結果を表す。E4の投与は、単球のサブタイプM1(炎症促進性)からサブタイプM2(治癒)への切り替えをもたらす。
【
図12】NHEKからのIL-6及びTNFAの分泌誘導、及びE2又はE4での治療に関する処理の動態を示す図である。細胞増幅後、NHEKを、完全培地の入った24ウェルプレートに播種した。24時間後、E2又はE4、及び基準(炎症促進性刺激との組合せ)を、ヒドロコルチゾン及びフェノールレッドが不足したEpilife培地中で24時間適用した。上清を回収し、-20℃で保存し、細胞生存率をMTSアッセイによって評価した。
【
図13】IL-6放出(生存率データに対して正規化)。NHEKからのPMA誘導IL-6放出に対するE2及びE4の影響を示す図である。細胞増幅後、NHEKを、完全培地を含む24ウェルプレートに播種した。24時間後、試験品及び基準を、ヒドロコルチゾン及びフェノールレッドが不足したEpilife培地中でPMA及びカルシウムイオノフォアA23187の存在下24時間適用した。IL-6放出をELISAにより評価し、結果を細胞生存率に対して正規化した。統計分析(スチューデントのt検定)を行い、EtOHで治療し、PMA/A23187で刺激した条件(*=刺激したEtOHとの比較)、又はPMA/A23187で刺激したが治療しなかった対照($=刺激した対照(ctrl)との比較)に対する治療の効果を比較した。Y軸:NHEKの培養培地中のIL-6放出(EtOH 0.1%に対する相対%、PMA及びCaイオノフォアで刺激)。
【
図14】実験タイムライン及びサンプル採取の概要を示す図である。A)E2、E4又はビヒクルを含有するミニ浸透圧ポンプを0日目に植え込む。非侵襲的(超音波画像撮影及び弾性測定)を0日目、5日目、10日目及び20日目に行う。マウスに14日目に創傷を与える。研究の終点は21日目とする。B)非侵襲的超音波画像撮影から皮膚張力測定までの、皮膚の老化の測定の概要。
【
図15】作用機序を探求するためのin vitroアッセイを示す図である。A)FEC刺激HDFによるコラーゲン1及びコラーゲン3の沈着を定量化するための免疫蛍光(共焦点画像撮影)。B)MMP標準と比較した3つのサンプル(A~C)におけるMMP2活性を定量化するためのザイモグラフィ。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確な指示のない限り、単数及び複数の両方の指示対象を含む。
【0056】
「含む」("comprising", "comprises")、及び「~で構成される(comprised of)」という用語は、本明細書中で使用される場合、「含む」("including","includes")、又は「含有する」("containing","contains")と同義であり、これらの用語は、包括的又は非制限的であり、追加の言及されていない構成要員、構成要素、又は方法工程を排除しない。これらの用語は、「~からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consistingessentially of)」も包含し、これらは、特許用語論において十分に確立された意味を享受する。
【0057】
端点による数値範囲の言及は、個々の範囲内に属する全ての数値及び端数、並びに言及される端点を含む。これは、数値範囲が「...から...まで」という表現、又は「...と...との間」という表現、又は別の表現のどれにより導入されているかに関わらず、数値範囲に当てはまる。
【0058】
「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、本明細書中で使用される場合、パラメーター、量、時間間隔等の測定可能な値にかかる場合、指定される値を基準にしたその値からの変動、例えば、指定される値を基準にしたその値からの±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、なおより好ましくは±0.1%以下の変動等を包含することを意味するが、そのような変動が、開示される本発明を実施するのに適切である場合に限る。当然のことながら、「約」又は「およそ」という修飾語がかかる値は、それ自身も具体的にかつ好ましく、開示されている。
【0059】
一方で、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」という用語、例えば、構成要員の群のうちの1つ以上の構成要員又は少なくとも1つの構成要員等は、それ自体が明らかであり、更なる例示として、この用語は、とりわけ、上記構成要員のうちのいずれか1つに対する言及、又は上記構成要員のうちのいずれか2つ以上、例えば、上記構成要員のうちのいずれか3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ以上等、及び上記構成要員全てに至る言及を包含する。別の例では、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7、又はそれ以上を指す場合がある。
【0060】
本明細書中の本発明に対する背景の検討は、本発明の状況を説明するために含まれている。これは、特許請求の範囲のいずれかの優先日の時点で、言及される資料のいずれかが、いずれかの国において公開された、既知であった、又は共通する一般知識であったことを認めるものではない。
【0061】
本開示全体を通じて、様々な刊行物、特許、及び公開特許明細書は、引用元を特定するようにして参照される。本明細書中に引用される全ての文献は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。特に、本明細書中で具体的に言及されるそのような文献の教示又はセクションが、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0062】
特に定義されない限り、本発明の開示において使用される全ての用語は、技術用語及び科学用語も含めて、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するとおりの意味を有する。更なる案内として、本発明の教示がより良く理解されるように、用語の定義を含める。特定の用語が、本発明の特定の態様又は本発明の特定の実施形態に関連して定義される場合、そのような関連性又は意味は、本明細書全体を通じて、すなわち、本発明の他の態様又は実施形態の文脈においても、特に定義されない限り、適用されることを意味する。例えば、生成物に関する実施形態は、方法及び使用の相当する特徴にも適用可能である。
【0063】
以下の各節において、本発明の異なる態様又は実施形態が、より詳細に定義される。そのようにして定義される各態様又は実施形態は、相反する記載が明白にない限り、任意の他の態様(複数の場合もある)又は実施形態(複数の場合もある)と組み合わせることが可能である。特に、好適である又は有利であるとして示される特徴はどれでも、好適である又は有利であるとして示される任意の他の単数又は複数の特徴と組み合わせることが可能である。
【0064】
本明細書全体を通じて「1つの実施形態」、「実施形態」に対する言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所で見られる「1つの実施形態において」、又は「実施形態において」という語句は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。そのうえさらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであると思われるとおりに、任意の適切な様式で組み合わせることが可能である。そのうえさらに、本明細書中に記載される一部の実施形態が、一部の特徴を含みながらも他の実施形態に含まれる他の特徴を含んでいないとしても、当業者に理解されると思われるとおり、異なる実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内にあることを意味し、異なる実施形態を形成するものである。例えば、添付の特許請求の範囲において、当業者に理解されると思われるとおり、特許請求される実施形態の代替的な組合せが包含される。
【0065】
本発明の全体的定義及び文脈
本明細書全体を通して使用される「エステトロール成分」という用語は、エステトロール、エステトロールのエステルであって、ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つの水素原子が1個~25個の炭素原子の炭化水素カルボン酸、スルホン酸、又はスルファミン酸のアシルラジカルによって置換されているエステトロールのエステル、エステトロール水和物、例えばエステトロール一水和物、及びこれらの組合せからなる群から選択される物質を包含する。本明細書の任意の部分全体を通してエステトロールが言及されている場合、任意のエステトロール含有成分(すなわち化合物)及び/又はエステトロール誘導体(例えばエステトロールエステル)も想定されていることが理解される。より好ましくは、本開示の文脈において、本明細書中に記載された投与単位又は美容的若しくは医療使用及び治療方法に適した特に好ましいエステトロール成分は、エステトロール(エステトロール水和物を含む)である。最も好ましくは、該エステトロール成分はエステトロール一水和物である。
【0066】
本明細書で使用される場合の「エステトロール」という用語は、1,3,5(10)-エストラトリエン-3,15α,16α,17β-テトロール又は15α-ヒドロキシエストリオール、並びにエステトロールの水和物、例えばエステトロール一水和物を指す。「エステトロール」又は略して「E4」は、胎児ヒト肝臓により産生されるエストロゲンステロイド(PubChemCID:27125)である。エステトロールは、15α及び16αの位置が2つの付加的な水酸基で置換された17β-エストラジオールに対応する3-ヒドロキシステロイドとして記載することができる。エステトロールはエストロゲン受容体アゴニストであることが知られている(Coelingh Bennink et al., Estetrol review: profile and potentialclinical applications, Climacteric, 2008)。本明細書に記載されるエステトロール成分がエステトロールを示す場合、該エステトロールは内生エステトロールとすることができる。代替で、エステトロールは、化学的に合成されてもよく、(変異体)組換え酵素の使用によって合成されてもよく、又はこれらの任意の組合せにより合成されてもよい。エステトロールは、代替で、当該技術分野では分子式:C18H24O4、又は構造式(I)によっても示されることができる:
【0067】
【0068】
好ましい実施形態において、エステトロールは一水和物として存在するか、又は本明細書で使用される。
【0069】
いくつかの実施形態において、エステトロール成分は単独の活性成分とすることができ、又は皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善若しくは維持のための、又は皮膚の老化の予防若しくは治療のために当該技術分野で既知の任意の他の美容的若しくは薬学的活性剤若しくは成分と組み合わせることができる。
【0070】
好ましい実施形態において、上記エステトロール成分はプロゲストーゲン成分なしで投与されるが、いくつかの実施形態において、例えば患者が依然として子宮を有している場合、任意選択のプロゲストーゲン成分を、エステトロール成分に加えて投与することができる。
【0071】
「プロゲストーゲン」、「プロゲストーゲン」、「ゲスターゲン」、又は「ゲストーゲン(gestogen)」という用語及びそれらの派生語である「プロゲストーゲン化合物」は、本明細書中及び当該技術分野のどちらで使用される場合でも、対象の体内で、天然の女性ホルモンであるプロゲステロンのものと同様な効果をもたらす任意の分子を指す。プロゲストーゲンは、プロゲステロン受容体のアゴニストであると見なされ、それらの機能は、当該技術分野で徹底的に調査されてきた(特にKuhl, Pharmacology of estrogens and progestogens: influence ofdifferent routes of administration, Climacteric, 2005において検討されている)。プロゲスチンは、プロゲストーゲンのサブグループであり、このサブグループは合成プロゲストーゲンを含む。上記用語は、当該技術分野において区別なく使用される場合があるものの、一般的な理解として、プロゲスチンが言及される場合、それは合成プロゲストーゲンを意味する。
【0072】
プロゲスチンの例としては、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、ジドロゲステロン、ドロスピレノン、3-β-ヒドロキシデソゲストレル、3-ケトデソゲストレル、17-デアセチルノルゲスチメート、19-ノルプロゲステロン、アセトキシプレグネノロン、アリルエストレノール、アムゲストン、クロルマジノン、シプロテロン、デメゲストン、デソゲストレル、ジエノゲスト、ジヒドロゲステロン、ジメチステロン、エチステロン、エチノジオールジアセテート、フルオロゲストンアセテート、ガストリノン、ゲストデン、ゲストリノン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、リネストレノール、メシロゲストン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メレンゲストロール、ノメゲストロール、ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル(d-ノルゲストレル及びdl-ノルゲストレルを含む)、ノルゲストリエノン、ノルメチステロン、プロゲステロン、キンゲスタノール、(17α)-17-ヒドロキシ-11-メチレン-19-ノルプレグナ-4,15-ジエン-20-イン-3-オン、チボロン、トリメゲストン、アルゲストン-アセトフェニド、ネストロン、プロメゲストン、17-ヒドロキシプロゲステロンエステル、19-ノル-17ヒドロキシプロゲステロン、17α-エチニルテストステロン、17α-エチニル-19-ノルテストステロン、d-17β-アセトキシ-13β-エチル-17α-エチニルゴン-4-エン-3-オンオキシム、6β,7β;15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-17-プレグナ-4,9(11)-ジエン-21,17β-カルボラクトン又はタナプロゲット、及びこれらのプロゲストーゲンをinvivoで遊離させることができるこれらの化合物の前駆体が含まれる。
【0073】
ドロスピレノン(DRSPと略す、PubChem CID:68873)は、プロゲスチンの一例であり、全体に低いオフターゲット活性と組み合わされた、その抗鉱質コルチコイド及び抗アンドロゲン作用により、複合経口避妊薬(COC)においてますます広く使用されるようになっている。一般に、ドロスピレノン含有COCは、第4世代COCと呼ばれる。ドロスピレノンを含む市販のCOCの非限定的な例は、「Yaz(商標)」及び「Yasmin(商標)」として知られている。プロゲストーゲンのみのドロスピレノンの経口避妊薬の一例は、「Slynd(商標)」である(これも市販されている)。さらに、エストラジオール及びドロスピレノン等のエストロゲンを含むHRT組成物として、「Angeliq(商標)」等が入手可能である。ドロスピレノンは、代替で、当該技術分野ではその分子式C24H30O3、又は構造式(II)によって示される場合がある:
【0074】
【0075】
当然のことながら、「ドロスピレノン」という用語が本明細書中で使用される場合、任意のドロスピレノン誘導体も企図される。
【0076】
限定ではなく例示として、COCに使用されてきた他のプロゲストーゲン又はプロゲスチンとして、ノルエチステロン、ノルエチンドロン、レボノルゲストレル(LNG)、ノルゲストレル、ゲストデン、デソゲストレル、ノルゲスチメート、酢酸シプロテロン、ジエノゲスト、及びクロルマジノンが挙げられる。
【0077】
本発明の文脈において、子宮を有する女性に投与するためのエステトロール成分と組み合わせて他の成分を使用することができる。選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)は、本発明の方法におけるエステトロール成分に有用な補完物として期待されるかかる化合物のカテゴリを規定する。本発明の文脈における使用のための好ましいSERMは、バゼドキシフェンである。
【0078】
本明細書に更に記載される方法及び組成物において、「プロゲストーゲン成分」について参照される場合、かかる参照にはSERM、特にバゼドキシフェンが含まれることが理解されるべきである。
【0079】
「有効量」という用語は、生理学的効果を得るために必要な量を指す。この生理学的効果は、1回の投与によって又は反復投与によって達成され得る。
【0080】
好ましい対象は、ヒト女性対象である。
【0081】
或る特定の実施形態において、対象は、閉経期、閉経周辺期、及び/又は閉経後の女性の対象である。或る特定の実施形態において、対象は、エストラジオールレベルが100 pg/ml未満、好ましくは50 pg/ml未満、好ましくは30 pg/ml未満、より好ましくは20 pg/ml未満、より好ましくは20 pg/ml未満、最も好ましくは10 pg/ml未満の、閉経期、閉経周辺期、又は閉経後の対象である。代替的な実施形態において、対象は、濾胞刺激ホルモン濃度が少なくとも20ミリ国際単位/ミリリットル(mIU/ml)、好ましくは少なくとも25 mIU/ml、より好ましくは少なくとも30 mIU/ml、より好ましくは少なくとも35 mIU/ml、最も好ましくは少なくとも40 mIU/mlであることによって特徴付けられる、閉経期、閉経周辺期、又は閉経後の対象である。
【0082】
「閉経期の対象」とは、当該技術分野で「閉経後の対象」又は「更年期の対象」と区別なく用いられるが、卵巣によるホルモン(例えばエストラジオール)産生の低下又は停止を伴って1年間月経出血がなかった女性の対象を指す。別の言い方をすれば、「閉経」は、卵巣の主要な機能の障害又は停止によって特徴付けられる生物学的状態と説明することができる。閉経には、血管機能障害、膣の乾燥、情緒の変化、睡眠障害、尿失禁、認知機能変化、身体的不調の訴え、及び性機能障害等(但しこれらに限定されない)、重症度が変化する広範な臨床症状が伴う場合がある。閉経の診断法は当該技術分野で文献記載されており、したがって当業者には知られている(Nelson, Menopause, Lancet, 2008)。
【0083】
「閉経周辺期」とは、閉経の約3年~4年前に始まり最終月経期の1年後に終了する人生の期間を指し、不規則な月経サイクルの持続、ホルモンレベルの極端な変動、頻繁な無排卵、及び血管運動症状の出現によって特徴付けられる(Harlow et al., Executive summary of the Stages of Reproductive AgingWorkshop+10: addressing the unfinished agenda of staging reproductive aging,Menopause, 2012)。「閉経後」又は「閉経後の」という用語は、月経期の恒久的な停止によって特徴付けられる女性の対象を表す。この恒久的な停止は、任意の他の明らかな病理学的又は生理学的原因のない12ヶ月の無月経の観察の後に、遡及的に決定される。「閉経後」という用語には、早期卵巣不全、手術(例えば卵巣摘出)、癌の化学療法又は放射線療法、及び特定の疾患(例えば感染症又は甲状腺機能低下症)の結果としての閉経も含まれる。
【0084】
好ましい対象は高齢の対象、より好ましくは高齢の女性の対象である。当業者は、高齢の対象とは、一般集団の平均及び/又は中央値年齢を上回る年齢の対象であることを認識している。例えば、本明細書で記載される高齢の対象とは、少なくとも40歳、少なくとも45歳、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、又は少なくとも65歳の対象とすることができる。
【0085】
当業者は、ヒトの皮膚が一般に、明確に区別できる3つの層、すなわち表皮、真皮、及び皮下組織を含むと見なすことができることを理解している。表皮は皮膚の最上層であり、これは主にケラチノサイト、すなわち、最終的に角質層(死んだ皮膚細胞の最外層)を生成するように増殖及び分化する上皮細胞から構成される。表皮は細菌等の環境病原体に対するバリアを形成し、体から放出される水分量を調節し、創傷治癒において主要な役割を果たす。第2の皮膚層、すなわち真皮(代替的に「真皮層」又は「皮膚結合組織」)は、皮下組織と表皮の間に位置し、主に(間葉系)線維芽細胞から構成される。真皮は、基底膜(すなわち細胞外マトリクスのシート状の一種)によって表皮と緊密に結合している。さらに真皮は表皮よりもはるかに厚く、真皮内の線維芽細胞は細胞外マトリクス(コラーゲン、ヒアルロン酸を含むグリコサミノグリカン、弾性繊維等)を産生する。真皮の主な役割は、皮膚の厚さ及び弾性を維持すること、(ヒアルロン酸を含むグリコサミノグリカンの保水能により)皮膚の保湿を維持すること、及び、創傷治癒、すなわち損傷した細胞外マトリクスを再形成及びリモデリングすることによる創傷治癒を行うことである。皮膚の最深層は一般に「皮下組織(層)」と呼ばれ、当該技術分野では「皮下組織(subcutaneous tissue)」及び「皮下」、「皮下組織(subcutis)」、「表在筋膜」等の用語と同義に注記される。
【0086】
本明細書で用いられる場合の「皮膚の老化」という用語は、皮膚に対する老化の全ての種類の影響、すなわち、全体的な低エストロゲン症又は閉経に起因する全ての皮膚科学的な変化、特にいわゆる閉経に伴う皮膚の老化(閉経皮膚)に対応している。該変化には、例えば、細胞レベル(ケラチノサイト、線維芽細胞、メラノサイト、脂腺細胞等)における、又は細胞外マトリクスの組成(エラスチン、フィブリリン、コラーゲン等)のレベルにおける変化が含まれ、これらはとりわけ、皮膚健康状態の悪化、皮膚厚さ(真皮及び/又は表皮)の低下により媒介される皮膚脆弱性の増加、皮膚コラーゲン含有量の低下、皮膚保湿の低下、皮膚弾性の低下、皮膚の水分減少(皮膚乾燥)の増加、ケラチノサイト機能の低下、皮膚線維芽細胞機能の低下、皮膚バリア機能の低下、酸化ストレスの増加、不均一な皮膚色素沈着、皮膚の伸長性の変化、ヒステリシスの変化、皮膚の明るさの低下、表皮バリア脂質の低下、皮脂分泌の低下、皮膚のハリの低下、顔面のシワ(眉間のシワ、眼角の側方のシワ、額のシワを含む(但しこれらに限定されない))の発生、創傷治癒の障害、皮膚の吹き出物(にきび)、炎症の増加及びこれに付随する皮膚の刺激又は掻痒の発生、並びに、特に、閉経に関連するエストロゲン欠乏(低エストロゲン症等)等の閉経期のホルモン脱制御に付随する又はこれによって悪化する乾癬の発症又は悪化をもたらす。
【0087】
「皮膚の健康」という用語は、皮膚の質感、皮膚の質及び皮膚の外観を含む、全体的な皮膚の健康状態を包含する。しかしながら、皮膚の質感及び皮膚の質及び皮膚の外観は、当業者によって、皮膚の区別可能な特徴(すなわち特性)であるように理解される。皮膚の質感は、皮膚表面の質感パターンのみに、すなわち、該皮膚に触れた際の感触(例えば滑らか、荒れた、凸凹)の指標に関している。これに対して、皮膚の質及び皮膚の外観は、本明細書において更に記載される属性に関している。詳細には、皮膚の外観は、皮膚の目に見える様相に関しており、これは触れた際の皮膚の感触とは独立して考慮されなければならない。
【0088】
本開示で用いられる場合の「皮膚の脆弱性」という用語、又は関連する「脆弱な皮膚」という表現は、正常な皮膚(例えば18歳~45歳の健康な成人の皮膚)と比較した場合の、刺激に対する抵抗性が低い任意の皮膚と解釈されるべきである。皮膚の脆弱性は典型的には、高齢の対象、並びに、閉経周辺期、閉経後、及び閉経期の女性で増す。皮膚の脆弱性の顕著な特性としては、萎縮性の皮膚の外観、老人性紫斑、白色偽瘢痕、及び正常な皮膚と比較して全体的な表皮及び真皮の厚さの低下が挙げられる(これらに限定されない)。老化によって媒介される皮膚の脆弱性の増加の発生は、当業者に知られており、当該技術分野で広く文献記載されている(例えば、Dyer and Miller, Chronic Skin Fragility of Aging, J Clin AesthetDermatol, 2018)。
【0089】
本明細書で用いられる「皮膚の炎症」又は「皮膚炎症」に関する表現は、当該技術分野で一般に受け入れられている意味に従って解釈されるべきであり、したがって任意の局所的な皮膚の免疫反応を示す。本発明の文脈において、皮膚炎症の原因は特に限定されず、これには例えば病原体、免疫システムの機能不全、アレルギー反応、及び創傷が含まれる。したがって、皮膚炎症は、免疫細胞が最も重要な細胞種を維持した状態での、対象の皮膚における細胞間相互作用の結果と見なすことができる。
【0090】
本明細書で用いる場合の「皮脂」とは、脂腺細胞により皮脂腺で産生される油状及び/又は蝋状の物質を指し、脂腺細胞は、ホロクリン分泌によって皮脂を分泌する高度に特化した上皮細胞である。皮脂は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクアレン、及び遊離脂肪酸を含む組成物であり、表皮のバリア及び皮膚の免疫システムの一体的構成要素を形成する。皮脂腺は表皮を生じる同じ組織から発達し、毛包に接続された皮脂腺と、独立に存在する皮脂腺とに分類できる。
【0091】
本発明者らは、予期しないことに、エステトロールがケラチノサイトの増殖及び機能に対して有利な効果を有することを見出した。
【0092】
「ケラチノサイト」という用語は、表皮にある1種の細胞を包含し、皮膚の最外層ではこれが細胞の約90%を占める。ケラチノサイトは増殖及び分化し、最終的に皮膚の最外層である角質層を生成する。ケラチノサイトの主な役割としては、皮膚バリアの形成、角質層の保水能を介した確実な保湿、及び表皮バリアを閉鎖することによる創傷治癒が挙げられる。「皮膚ケラチノサイト機能の増加」という用語は、表皮におけるケラチノサイトの増殖の増加、及び、皮膚におけるケラチノサイトの機能の増加、改善又は回復の両方を含むものと意図される。該機能により、皮膚の厚さ及び保湿が得られ(これらに限定されない)、これにより、十分な皮膚バリア、及び確実で適切な創傷治癒が提供される。
【0093】
ケラチノサイトは、酸化及び炎症にも役割を果たす。ROS産生(とりわけケラチノサイトにより産生)及び酸化ストレスの上昇は、DNA、タンパク質及び脂質の損傷の原因となり、早すぎる皮膚の老化につながる可能性がある。慢性的な低い程度の炎症は、とりわけケラチノサイトによる炎症促進性サイトカインの発現を増加させることによって皮膚を損傷させ、これは有害な変化及び早すぎる皮膚の老化及び毛の減少につながる。
【0094】
さらに、皮膚の色素沈着は、ケラチノサイト、及び、主な機能がメラニン色素の産生であるメラノサイトよって影響される。メラノサイトはケラチノサイトに囲まれており、メラノサイトがそのメラニン色素をケラチノサイトに伝達する。メラノサイトとケラチノサイトの緊密な相互作用及びコミュニケーションにより、単一のメラノサイトがケラチノサイトによって包囲可能であり、これにより例えばエステトロールによってケラチノサイトに影響を与え、メラノサイトに、したがって色素沈着にも影響を与える。本開示で使用される場合の「メラニン」という用語は、表皮に局在するメラノサイトにより産生される一群の天然色素を指す。様々な種類のメラニンが当該技術分野で文献記載されている(例えばWei et al., Unravelling the structure and function of Melaninthrough synthesis, J Am Chem Soc, 2021に)。「メラニン形成」は当該技術分野において一般に使用されており、メラニン産生のプロセスに関連している。メラニン形成は、例えば、皮膚が紫外線照射に曝されたときに上方調節され、皮膚の色調の暗色化をもたらす。
【0095】
ケラチノサイトは、創傷治癒を促進するための重要な細胞種でもあり、創傷の閉鎖及び再上皮化だけでなく、免疫細胞に隣接する創傷における炎症の調節をも担う。ケラチノサイトの機能の不均衡は、不均衡な炎症を引き起こす可能性がある。
【0096】
また、ケラチノサイトは、ケモカイン、サイトカイン、及び抗菌ペプチドを分泌することにより、乾癬皮膚炎症の開始及び維持にも積極的な役割を果たし、これは、皮膚における免疫細胞の更なる化学誘引及び活性化をもたらし、炎症プロセスを増幅する(Nestle et al., Psoriasis. N Engl J Med 2009; 361: 496-509)。ケラチノサイトはまた、過酸化水素をメラノサイトに伝達することにより、活性酸素種(ROS)の源としても機能する(Pelle et al., Journal ofInvestigative Dermatology; Volume 124, Issue 4, April 2005, Pages 793-797)。したがって、ケラチノサイトの機能不全は、乾癬を発生させるか、又は少なくとも悪化させると予想される。
【0097】
「活性酸素種」(一般に「ROS」と略される)という用語は、酸素(O2)から形成される分子に対する総称である。理解のための例としては、過酸化物、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、及びアルファ酸素である。活性酸素種は、とりわけ、線維芽細胞及びケラチノサイトにおいて産生される。真皮及び表皮の両方が皮膚を酸化から保護することができる一方で、表皮は最も高濃度の抗酸化物を含んでいる。
【0098】
さらに、本発明者らは、エステトロールが皮膚中の、より詳細には皮膚の真皮中の線維芽細胞の増殖及び機能にも有利に影響することを見出した。
【0099】
皮膚線維芽細胞又は真皮線維芽細胞は、皮膚結合組織(真皮)中に存在する主要な細胞種である。線維芽細胞は、コラーゲン、ヒアルロン酸を含むグリコサミノグリカン及び弾性繊維を含む細胞外マトリクスを産生する。線維芽細胞の機能は、皮膚の厚さ及び弾性、ヒアルロン酸を含むグリコサミノグリカンの保水能力を介した皮膚の保湿、損傷した細胞外マトリクスの再形成及びリモデリングを介した創傷治癒に影響する。線維芽細胞は、毛の発育中及び毛包間皮膚において表皮細胞と相互作用する。したがって、線維芽細胞は、皮膚の創傷治癒中に不可欠な役割を果たし、上記のように皮膚の良好な健康を維持するために極めて重要である。弾性に関して、線維芽細胞が、トロポエラスチン及びフィブリリン-1等の皮膚弾性繊維を産生すると考えられている。
【0100】
線維芽細胞は、ヒアルロン酸合成酵素(HAS)によるグリコサミノグリカン及びヒアルロン酸(HA)の産生を介して皮膚の保湿の役割を果たし、これにより皮膚の吸湿性の増加がもたらされる。線維芽細胞の機能が変化すると、細胞外マトリクス(ECM)の合成及び分解のバランスの変化に起因して、MMP発現、詳細にはMMP-2及びMMP-9の増加を伴った、マトリクス沈着の低下及び皮膚のリモデリングの障害につながる可能性がある。
【0101】
「マトリクスメタロプロテイナーゼ」、「マトリクスメタロペプチダーゼ」、「マトリキシン」又は略して「MMP」は、細胞外マトリクスタンパク質を分解できる酵素である。皮膚について、MMPは真皮中の細胞外マトリクス(コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン及びグリコサミノグリカンを含む)を分解する。MMPの発現は、紫外線に曝露された際に上方調節されると当該技術分野で報告されており、紫外線A(320 nm~400 nm)及び紫外線B(290 nm~320 nm)の両方の放射がこの効果を実現することができる(Pittayapruek et al., Role of Matrix Metalloproteinases in Photoagingand Photocarcinogenesis, Int J Mol Sci, 2016)。
【0102】
発疹性黄色腫は、過剰に多い血液中の脂質によって引き起こされる皮膚の状態である。これは、非常に高いトリグリセリド及び高いコレステロールを有する、糖尿病の管理が不十分な対象に発生する可能性がある。イソトレチノイン、エストロゲン及びシクロスポリン等のいくつかの薬は、トリグリセリドレベルを増加させることができる。他のエストロゲンとは異なり、E4はヒトにおいて脂質及びトリグリセリドのレベルにほとんど影響しないと文献記載されている。E4の使用は、脂質/トリグリセリドのレベルへの限定的な影響しか伴わず、したがって他の皮膚治療用のホルモン療法と比較した場合に脂質に依存した皮膚の状態に対する影響はより少ない可能性がある。
【0103】
皮膚の抗老化療法、皮膚の健康改善、皮膚脆弱性低下、皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持、皮膚粗鬆症の低下又は予防
本発明は、一態様において、本明細書の他の箇所で定義されたとおりの皮膚の老化の予防又は治療に使用される、エステトロール成分を含む組成物を提供する。別の言い方をすれば、本発明は、全体的な皮膚の健康の改善及び皮膚の脆弱性の低下を含む、皮膚の老化の予防又は治療のための、エステトロール成分を含む組成物の使用を想定している。更に別の言い方をすれば、本発明は、皮膚の老化の予防又は治療、全体的な皮膚の健康の改善、及び皮膚の脆弱性の低下のための薬剤の製造のための、エステトロール成分(又はエステトロール成分を含む組成物)の使用を想定している。最後に、本発明は、さらに、エステトロール成分の対象への全身投与を含む組成物の投与を含む、皮膚の老化の予防又は低下、全体的な皮膚の健康の改善、皮膚の脆弱性の低下のための治療方法を提供する。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、エステトロール成分の好ましい効果は、炎症の低下、老化した又は老化しつつある細胞による新たなマトリクスの産生、細胞外マトリクスの代謝回転の予防又は低下、老化した又は老化しつつある細胞における酸化ストレスの阻害、及び老化した又は老化しつつある表皮細胞の全体的な機能の改善により得られる可能性がある。
【0104】
1つの特定の態様は、任意選択で皮膚の老化の文脈において、及び任意選択で皮膚粗鬆症又は乾癬の文脈において、皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善及び/又は維持に関している。当業者は、「皮膚の質」が皮膚の目に見える、機械的で、及び局所解剖学的な特性の集合として評価されるべきであることを理解している(Humphrey et al., Dermatol Surg, 2021)。皮膚の局所解剖学的な欠陥を完全に除いて滑らかにした後であってさえ、目に見える属性とは純粋に目に見えるものであり、皮膚への光の反射により評価される。局所解剖学的属性は接触により知覚され、局所解剖学的画像により見られる。機械的属性は、皮膚の動きに関しており、皮膚の物理的操作又は変形により測定可能である。任意選択で、本明細書に記載される、使用のための投与単位、使用、又は方法は、上記の各特性の改善又は維持が可能である。代替で、本明細書に記載される、使用のための投与単位、使用、又は方法は、該特性の少なくとも1つ又は少なくとも2つを改善可能である。
【0105】
皮膚の質及び皮膚の外観の概念は、代替で、理想的な皮膚からの逸脱により当該技術分野で報告されている場合がある。したがって、本明細書に記載される、使用のための投与単位、使用、又は方法は、不均一な色素沈着(すなわち、メラニンの変化)、赤み(すなわち、紅斑又は目に見えるヘモグロビン)、くすみ/血色の悪さ(すなわち、輝きの欠如;黄色又は灰色っぽいアンダートーン)、明るさ(すなわち、皮膚が「輝く」又は光を反射する能力)、脂っぽさ/艶(すなわち、皮膚表面の過剰な皮脂)、乾燥(すなわち、水分不足;脱水)、小じわ(すなわち、軽いしわ)、はっきりしたしわ(すなわち、深いしわ)、毛穴(すなわち、毛包皮脂腺単位の表面ランドマーク)、クレーピネス(すなわち、皮膚の細かい煙草紙のようなしわ)、保湿(すなわち、水分含有量;湿潤)、緩み(すなわち、緩んだ皮膚)、弾性/柔軟性(すなわち、触診に対する反発力)、ハリ(すなわち、延伸に対する能力)、厚さ(すなわち、表皮及び真皮の密度)、及び荒れからなる群から選択される1つ以上の皮膚の質及び/又は皮膚の外観の属性を目的とする(すなわち改善する)ことができる。これらの各属性を測定及び定量化するための非限定的な方法及び技術は、当該技術分野全体で詳細に文献記載されており、したがって、当業者に知られている(例えば、Humphrey et al., Dermatol Surg, 2021)。
【0106】
上記に加えて、本明細書に記載される組成物は、コラーゲン密度、しわの外観、しわの深さ、又はこれらの任意の組合せを改善するために特に効果的である。
【0107】
本明細書で想定される特定の対象は、皮膚粗鬆症と診断される、皮膚粗鬆症があると見なされる、又は皮膚粗鬆症を発症すると予測される対象とすることができる。「皮膚粗鬆症」及びその臨床像は当該技術分野で文献記載されており、当業者に知られている(例えば、Wollina et al., Open Access Maced J Med Sci, 2019)。皮膚粗鬆症は、慢性的な皮膚脆弱性症候群の全ての状況を包含し、したがって、ヒト皮膚の保護メカニズムの崩壊をもたらす機能減少を包含し、主として高齢の対象が罹患する。
【0108】
皮膚粗鬆症は、コラーゲンIの発現低下、コラーゲンIIIの発現低下、コラーゲンIVの発現低下、マトリクスメタロプロテイナーゼ1の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ2の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ3の発現増加、マトリクスメタロタンパク質Iの発現低下、弾性組織の減少、線維芽細胞によるコラーゲン合成の欠損、ヒアルロン酸の減少、又はこれらの任意の組合せによって特徴付けられる。したがって、本発明の文脈において、皮膚粗鬆症と診断されていない対象、任意選択で高齢の対象であっても、コラーゲンIの発現低下、コラーゲンIIIの発現低下、コラーゲンIVの発現低下、マトリクスメタロプロテイナーゼ1の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ2の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ3の発現増加、マトリクスメタロタンパク質Iの発現低下、弾性組織の減少、線維芽細胞によるコラーゲン合成の欠陥、ヒアルロン酸の減少、又はこれらの任意の組合せを示す場合は、皮膚粗鬆症があると見なされる場合があり、又は皮膚粗鬆症を発症すると予測される場合がある。
【0109】
皮膚粗鬆症に罹患した対象は一般に、特定の臨床像をそれぞれ表す4つの明確に区別できるステージに分類される(Saurat et al., J EurAcad Dermatol Venereol, 2017)。
【0110】
【0111】
したがって、本明細書に記載される、使用のための投与単位、使用、及び方法は、皮膚粗鬆症の任意のステージ、好ましくは、ステージI、ステージIIa、ステージIIb、ステージIIIa、ステージIIIb、ステージIV、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される皮膚粗鬆症のステージの治療及び/又は予防を想定しており、したがってこれに関し得る。任意選択で、皮膚粗鬆症のステージは、ステージI、ステージIIa、及びステージIIbから選択することができる。代替で、皮膚粗鬆症のステージは、ステージIIIa、ステージIIIb、及びステージIVから選択することができる。
【0112】
炎症性マーカーの低下
本発明者らは、予期しないことに、対象へのエステトロール成分の投与により、正常に機能しない皮膚組織、老化しつつある皮膚組織、又は質及び/又は外観が最適でない皮膚において又はこれにより典型的には放出された及び/又は上昇した炎症性マーカーが低下することを見出した。別の言い方をすれば、炎症(の程度)の全体的な低下を観察することができた。例示であってこれらに限定するものではないが、有効量の本明細書に記載されるようなエステトロール成分により有意に低下する炎症性マーカーは、インターロイキン-6(IL-6)である。インターロイキン-6は詳細に研究されており、その炎症における役割は十分に文献記載されている(例えば、Kaur et al., Bioorg Med Chem, 2020を参照)。より詳細には、対象にエステトロール成分を投与すると、異なるエストロゲン(すなわちエステトロールではない)が該対象に投与される対照条件と比較した場合、インターロイキン-6の放出は低下する。例示であってこれらに限定するものではないが、対照条件を提供するために投与できる適切なエストロゲンとしては、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、及びエチニルエストラジオール(EE)がある。本明細書に記載される投与単位、使用、及び方法は、それぞれ、上記のように対照条件と比較するとき、インターロイキン-6の放出を少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、又は50%超も低下させる効果を有する。
【0113】
治療、療法、投与
「治療」又は「治療する」という用語は、既に発症し、(臨床的に)顕在化している症状、疾患又は状態の療法治療と、治療の目的が、望まれない苦痛が起こる可能性を予防、低下又は低減させる、例えば、皮膚の老化に関連する症状、臨床的(状態)又は疾患の発生、進行及び進展を予防することである、防止又は予防措置との両方を指すものと解釈される。したがって、本発明の更なる態様は、対象、好ましくは閉経期の対象における皮膚の老化の予防のために使用される有効量のエステトロール成分に関している。有益な又は望ましい臨床結果としては、1つ以上の症状の緩和、1つ以上の生物学的マーカーの改善、疾患の広がりの消失、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和等がある(但しこれらに限定されない)。
【0114】
本発明の文脈で使用される場合の「予防」又は「予防する」とは、対象における疾患状態像の顕在化の回避、すなわち予防措置又は防止措置の確立を指す。予防治療とは、対象の体又はその要素が望ましくない生理学的変化の症状(の悪化)を示さないようにすることを目的とする治療を指す。
【0115】
本明細書で使用される場合の「療法治療」又は「療法」等の用語は、対象の体又は対象の体の一部を、老化により引き起こされる望ましくない生理学的状態、疾患又は障害から、望ましい状態、例えば、より軽症の状態(例えば、改善又は緩和)に、若しくはその正常な健康状態にさえ変化させること(例えば、対象の健康、身体的完全性及び身体的健康の回復)、該望ましくない生理学的状態でそれを維持する(すなわち、悪化させない)こと(例えば、安定化)、又は該望ましくない生理学的変化若しくは障害と比較してより重度の若しくは悪化した状態への進行を減速させることを目的とする治療を指す。測定可能な軽減としては、測定可能なマーカー又は症状における任意の統計的に有意な低下が挙げられる。本明細書で使用される場合の統計的に有意とは、当業者が理解するように統計分析で一般に受け入れられているカットオフ値である0.05未満のp値を指す。「治療」には、治癒的治療と、症状を低下させ、及び/又は進行を遅らせ、及び/又は状態又は疾患を安定化させる治療との両方が包含される。
【0116】
当業者は、有効な療法治療を達成するために、上記対象に治療上有効な用量を投与する必要があることを認識している。したがって、本開示の文脈において、「有効量」とは、生理学的効果を得るために必要な量を指す。生理学的効果は、単回投与又は多回投与によって得られるものであってもよい。「治療上有効量」又は「治療上有効な用量」は、投与した場合に、皮膚の老化に苦しむ対象の治療に関して臨床上有利な反応をもたらすエステトロール成分の量を示す。同様に、「防止に有効な量」又は「防止に有効な用量」とは、皮膚の老化の(臨床的)顕在化の開始を阻害又は遅延するエステトロール成分の量を指す。当業者は、「分量」、「量」及び「レベル」等の用語が同義語であり、当該技術分野において十分に定義された意味を有していることを認識しており、これらが特に本明細書に記載される用途のための有効量と見なされるエステトロール成分の絶対的な定量化、又は例えば対象の体重を基準とするエステトロール成分の濃度等のエステトロール成分の相対的な定量化を指すことができることを理解している。適切な値又は値の範囲は、1人の対象又は対象の群(すなわち、少なくとも2人の対象)から得ることができる。
【0117】
本明細書に開示されているエステトロール成分の任意の値及び範囲が、異なる医学的適応又は目的に適していることが強調されるが、当業者は、特定の個人がエステトロール成分治療から、治療すべき状態又は疾患の性質及び程度、対象の性別、対象の年齢、体重、他の医学的適応、栄養状態、投与方法、代謝状態、他の薬学的活性成分の干渉又は影響又は効用等(但しこれらに限られない)を含む広範なパラメーターを考慮することによる該成分の最適投与量の更なる最適化によって、更に改善された効用を経験することができることを認識している。さらに、個々人は、使用されるエステトロール成分に対する特定の固有の反応性を有する場合がある。
【0118】
「対象」、「患者」、「個人」等の用語は、本明細書で区別なく使用される場合があり、ヒト対象、好ましくはその人生の閉経期又は閉経周辺期にある女性対象を指す。
【0119】
エステトロール成分を含む組成物の全身投与工程を含む、皮膚の老化を予防する又は低下させる美容的方法も同様に想定されている。別の言い方をすれば、本発明は、同様に、皮膚の老化の予防又は低下のためのエステトロール成分を含む組成物の美容的使用を想定している。当業者は、「美容的使用」が「非医療的、非治療的使用」、したがって、臨床的病理を緩和、予防、又は治療することを目的としない使用を意味していることを理解している。
【0120】
本発明の療法又は美容的療法は、通常、少なくとも10日、好ましくは少なくとも20日の期間でのエステトロール成分の連続投与を用いる。
【0121】
エステトロール成分は、約10 mg~約25 mgのエステトロール成分、好ましくはエステトロール、より好ましくはエステトロール一水和物の1日投与量で投与される。
【0122】
特定の実施形態において、エステトロール成分は約14mg~約21 mgの1日投与量で投与される。
【0123】
別の特定の実施形態において、エステトロール成分は約14mg~約16 mg、又は約19 mg~約21 mgの1日投与量で投与される。
【0124】
1つの実施形態において、本発明の治療的又は美容的療法は、子宮非摘出の患者に投与される。特定の実施形態において、本発明の治療的又は美容的療法は、約15 mg又は約20 mgのエステトロール成分の、好ましくは子宮非摘出の患者への毎日投与を含む。
【0125】
本発明の治療的又は美容的療法が子宮摘出術を受けた患者に投与される場合、エステトロール成分は、好ましくは、プロゲストーゲン成分なしで、又は更に唯一の活性成分として投与される。
【0126】
本発明の治療的又は美容的療法が子宮非摘出の患者に投与される場合、エステトロール成分は単独の活性成分として投与されるか、又は任意選択のプロゲストーゲン成分とともに投与することができる。該任意選択のプロゲストーゲン成分は、連続的に(すなわち、エステトロール成分に加えて毎日)、又は逐次的に(逐次的とは、例えば毎月10日間~14日間、又は3ヶ月毎に14日間のプロゲストーゲン成分の投与を意味する)投与することができる。
【0127】
本明細書で使用される場合の「連続的な」/「連続的に」という用語は、(治療上)顕著な中断なしに、比較的規則的な間隔で成分が投与することを意味する。当然、本発明の方法の全体的な有効性に影響しない軽微な中断が発生する可能性があり、実際、かかる逸脱も本発明に包含される。好ましい実施形態において、より数学的には、2回の連続した投与間の最長の間隔が平均間隔の3.5倍以下の場合、投与レジメンは連続的と見なされる。更により好ましくは、該最長の間隔は平均間隔の2.5倍以下、最も好ましくは1.5倍以下である。
【0128】
1つの実施形態において、任意選択のプロゲストーゲン成分は非経口経路、例えば子宮内デバイス(IUD)を使用して投与される。1つの実施形態において、該IUDによってプロゲストーゲン成分レボノルゲストレルが送達される。1つのかかる実施形態において、IUDはMirena(商標)IUD又はLevosert(商標)IUDである。
【0129】
したがって、当業者は、エステトロール成分が、当該技術分野で知られている皮膚の老化の軽減又は予防のための任意の他の美容的又は薬学的活性薬物とともに投与可能であることを理解している。
【0130】
1つの実施形態において、本発明の治療的又は美容的療法は、エステトロール成分の経口、舌下、口腔、又は唇投与を用いる。後者の3つの投与方法は、エステトロール成分が消化系を通過する必要がなく、ファーストパス肝臓曝露(first-pass liver exposure)を回避できるという利点を提供する。さらに、これらの投与方法では、作用の迅速な開始が得られる。
【0131】
本明細書で使用される場合の「舌下」という用語は、舌下組織を通ってエステトロール成分を血液中に拡散させる薬理学的投与経路を指す。
【0132】
本明細書で使用される場合の「口腔」という用語は、エステトロール成分を口腔前庭、すなわち頬の裏側(頬粘膜)と歯/歯肉との間の口の内部領域の組織を通って血液中に拡散させる薬理学的投与経路を指す。本明細書で使用される場合の「唇」という用語は、エステトロール成分を唇と歯肉との間に配置させる薬理学的投与経路を指す。本発明の治療的又は美容的方法において、エステトロール成分及びプロゲストーゲン成分は個別の投与単位で投与することができる。しかし、これら2つの成分を単一の投与単位に組み合わせることも可能であり、実際非常に便利である。
【0133】
本発明に係る治療的又は美容的方法において、プロゲストーゲン成分及びエステトロール成分の組合せが、少なくとも10日間連続的に適切に投与される。
【0134】
本発明は、当業者に知られている様々な投与方法の形態で実施するために適切に簡略化することができる。これらの方法の中でも、エステトロール成分及び任意選択のプロゲストーゲン成分の一定量を含む投与単位を含む単相調製物を使用する方法である。
【0135】
プロゲストーゲン成分の逐次的な投与が選択される本発明の実施形態において、2つの成分を、これらが投与される日に単一の投与単位に組み合わせることも可能であり便利である。
【0136】
本発明の別の実施形態において、対象は閉経後の対象である。
【0137】
或る特定の実施形態において、全身投与が意図される本明細書に記載される組成物は、エストロゲンを含まない、局所(すなわち、経皮)投与が意図される美容的組成物と併せて使用され、好ましくは、該美容的組成物はホルモンを含まない。
【0138】
組成物
本発明のエステトロール成分は、エステトロール、ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つの水素原子が、1個~25個の炭素原子の炭化水素カルボン酸、スルホン酸又はスルファミン酸のアシルラジカルによって置換されたエステトロールのエステル、及びこれらの組合せからなる群から選択される物質を包含する。より好ましくは、エステトロール成分はエステトロール(エステトロール水和物を含む)である。最も好ましくは、投与単位に含まれるエステトロール成分はエステトロール一水和物である。
【0139】
本発明のエステトロール成分は、約10 mg~約25 mgのエステトロール一水和物に相当する1日投与量で使用される。換言すれば、エステトロール成分がエステトロール一水和物自体でない場合、エステトロール成分の1日投与量は、約10 mg~約25 mgのエステトロール一水和物、例えば、約14 mg~16 mgのエステトロール、好ましくはエステトロール一水和物、又は約19 mg~21 mgのエステトロール、好ましくはエステトロール一水和物の1日投与量に相当する薬学的効果を得られるように調整される。
【0140】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明に係る医薬組成物は毎日投与用に設計されており、すなわちこれは1日投与単位を表す。
【0141】
経口投与の場合、本発明に係る経口投与単位(「投与形態」という用語と区別なく使用される)は、好ましくは、錠剤、カプセル、カシェ剤、ペレット、丸剤、粉末及び粒剤等の固形又は半固形の投与単位である。「固形又は半固形の投与単位」という用語は、本発明のエステトロール成分及び/又は任意選択のプロゲストーゲン成分が溶解又は分散されている液体、例えば油を収容するカプセルも包含する。錠剤及び同等の固形又は半固形の投与単位は、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のセルロース系材料及びデンプン)、希釈剤(例えば、乳糖及び他の糖類、デンプン、リン酸二カルシウム及びセルロース系材料)、崩壊剤(例えば、デンプン重合体及びセルロース系材料)、及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸塩及びタルク)等の材料を適切に含有することができる。これらの錠剤及び同等の固形投与単位は、例えば、水溶液又は有機溶液を使用する湿式造粒、及び直接圧縮によって製造できる。
【0142】
舌下、口腔又は唇投与の場合、本発明に係る医薬組成物は、好ましくは口内分散性投与単位である。
【0143】
本明細書中で用いられる場合の「口内分散性投与単位」という用語は、唾液と接触したときに口腔内で迅速に崩壊し、エステトロール成分を唾液中に分散させて、口腔内粘膜を介して吸収可能なように設計された投与単位を指す。
【0144】
投与単位が口内分散性投与単位である場合、投与単位からのエステトロール成分の放出速度は、Ph. Eur. 2.9.1 ("Disintegration of tablets and capsules")及びUSP<701>「("Disintegration")に従う、例えば水を崩壊媒体として用いる崩壊試験を用いて、適切に決定できる。本発明の口内分散性固形投与単位は、上記崩壊試験に供した場合、典型的には、5分未満、より好ましくは2分未満、更により好ましくは1.5分未満、更により好ましくは1分未満、更により好ましくは45秒未満、最も好ましくは30秒未満で崩壊する。
【0145】
1つの実施形態において、投与単位はエステトロール成分を含むが、プロゲストーゲン成分は含まない。
【0146】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分及びプロゲストーゲン成分を含む経口組合せ1日投与単位を提供する。
【0147】
好ましくは、プロゲストーゲン成分は、プロゲステロン、ドロスピレノン、ジドロゲステロン、これらのプロゲストーゲンの前駆体、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0148】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分をプロゲステロンとともに含む組合せ組成物を提供する。
【0149】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分をドロスピレノンとともに含む組合せ組成物を提供する。
【0150】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分をジドロゲステロンとともに含む組合せ組成物を提供する。
【0151】
エステトロール及びプロゲストーゲン成分は、個別の経口投与単位で存在することができ、又は同一の経口投与単位に組み合わせることができる。
【0152】
本発明のプロゲストーゲン成分がドロスピレノンである場合、これは、1日当たり、好ましくは0.25 mg~10mg、更により好ましくは約0.25 mg~約4 mg、例えば約1 mg~4 mg、約1 mg~3 mg、又は約2.5 mg~3.5mg、好ましくは約3 mgの1日投与量で使用される。
【0153】
本発明のプロゲストーゲン成分がジドロゲステロンである場合、これは、好ましくは約5 mg~約10 mgの1日投与量で、より好ましくは約5 mgの1日投与量で使用される。
【0154】
本発明のプロゲストーゲン成分がプロゲステロンである場合、これは、好ましくは50 mg~200 mgの1日投与量で使用される。1つの実施形態において、プロゲステロンは、これが連続的に使用される場合、50 mg~100 mgの1日投与量で使用される。別の実施形態において、プロゲステロンは、これが逐次的に使用される場合、例えばこれが毎月約14日間投与される場合、100 mg~200mgの1日投与量で使用される。
【0155】
異なるプロゲストーゲン成分を使用する場合、1日投与量は、50 mg~200 mgのプロゲステロンの投与量と同じ薬理学的効果を得られるように調整される。
【0156】
本発明の好ましい実施形態において、組成物はエステトロール成分及び任意選択のプロゲストーゲン成分を単一の投与単位、好ましくは1日投与単位に組み合わせる。本発明のより好ましい実施形態において、該組合せ1日投与単位は経口組合せ1日投与単位である。
【0157】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分及びプロゲステロンを含む経口組合せ1日投与単位を提供する。
【0158】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分及びドロスピレノンを含む経口組合せ1日投与単位を提供する。
【0159】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分及びジドロゲステロンを含む経口組合せ1日投与単位を提供する。
【0160】
本発明の好ましい実施形態において、約20 mgの1日投与量のエステトロールを約100 mgの1日投与量のプロゲステロンと組み合わせた、経口組合せ1日投与単位が提供される。
【0161】
好ましい実施形態において、14 mg~16 mgのエステトロール又は19 mg~21 mgの1日投与量のエステトロール、好ましくはエステトロール一水和物と、約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンと組み合わせた経口組合せ1日投与単位が提供される。
【0162】
本発明の別の実施形態において、エステトロール成分は、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、特にバゼドキシフェンと併せて、子宮を依然として有する患者に投与される。好ましくは、バゼドキシフェンは約10 mg~50 mgの1日投与量で投与される。より好ましくは、バゼドキシフェンは約20 mgの1日投与量で投与される。
【0163】
1つの実施形態において、本発明は、プロゲストーゲン成分を除いた療法を提供する。
【0164】
本明細書で使用される場合の「平均レベルを調節する」又は「レベルを調節する」又は「レベルを低下させる」又は「レベルを増加させる」という用語の意味は、それぞれ、特定の状態を有する対象における基準平均レベルと比較した場合に、言及される物質のタンパク質及び/又はmRNA発現レベルを調節する、低下させる、又は増加させることを包含するものとして見る必要がある。対象におけるタンパク質レベルは、例えば対象のサンプルについてのELISA等の標準的な技術を用いて分析可能である。対象におけるmRNA発現レベルは、例えば対象のサンプルについての定量的RT-PCR(Q-PCR)等の標準的な技術を用いて分析可能である。別の実施形態において、調節はタンパク質又は発現レベルを増加させることを含む。
【0165】
或る特定の好ましい実施形態において、エステトロール成分は固形投与単位に含まれ、好ましくは、各固形投与単位は約10 mg~25 mg、例えば約14mg~21 mg、又は約14 mg~16 mg、又は約19 mg~21 mg、又は約15 mg、又は約20 mgのエステトロール成分を含む。より好ましい実施形態において、エステトロール成分は錠剤、カプレット、又はカプセル、最も好ましくは錠剤に含まれる。更なる実施形態において、固形投与単位は1日固形投与単位に対応するよう製剤化されている。また更なる実施形態において、固形投与単位は経口投与単位(すなわち、対象が嚥下することが意図された投与単位)である。したがって、或る特定の実施形態において、医学的使用又は治療方法は、有効量のエステトロールを含む固形投与単位の毎日服用を含む。或る特定の実施形態において、有効量のエステトロール成分は、本明細書の他の部分で定義されたようなプロゲストーゲンとすることができる、又は皮膚の老化の予防又は治療のための追加的な美容的又は(薬学的)活性成分とすることができる、1種以上の薬学的活性成分を更に含む単回投与単位に含まれる。
【0166】
代替的な実施形態において、固形投与単位は舌下、口腔、及び/又は唇投与に適している。かかる実施形態において、固形投与単位は唾液等の水性溶媒と接触したときにエステトロール成分を迅速に放出することができる。したがって、これらの実施形態において、固形投与単位は、約5分以内、好ましくは約3分以内、より好ましくは約2.5分以内、より好ましくは約90秒以内、最も好ましくは約90秒以内に、エステトロール成分の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは約80%を放出する口内分散性投与単位である。本明細書中で用いられる場合の「口内分散性投与単位」という用語は、これが唾液と接触したときに口腔内で迅速に崩壊し、エステトロール成分を唾液中に分散させて、これが口腔内粘膜を介して吸収可能なよう設計された投与単位を指す。投与単位からのエステトロール成分の放出速度を決定する方法は、当業者に知られている。当該分野で一般に受け入れられている標準化された試験としては、Ph. Eur. 2.9.1 ("Disintegration of tablets and capsules")及びUSP<701>("Disintegration")に従う、例えば水を崩壊媒体として用いる崩壊試験がある(但しこれに限定されない)。
【0167】
或る特定の実施形態において、エステトロール成分は即時放出投与単位又は組成物に含まれている。代替的な実施形態において、エステトロール成分は遅延放出、持続放出、又は制御放出投与単位又は組成物に含まれている。「即時放出」、「遅延放出」、及び「持続放出」又は「制御放出」という用語は、当業者には明らかであり、医薬組成物の放出プロファイルを表している。即時放出では、医薬組成物はほぼ即時に投与単位から対象又は患者の体に放出される。遅延放出投与単位では、医薬組成物は投与後に遅延して体内に送達される。持続放出又は制御放出投与単位では、投与単位は、特定の期間にわたって一定の薬物濃度を維持できるように予め定められた速度で医薬組成物を放出するよう設計されている。投与単位の放出プロファイルは、主な薬局方において文献記載されたように評価できる。例えば、即時放出は欧州医薬品庁によって、活性物質の少なくとも75%が45分以内に溶解するものとして定義されている(European Pharmacopeia (Ph. Eur.) 9th edition)。しかし、加えて、医薬品物質の治療範囲、溶解性及び透過性因子に応じて、適切な試験及び時間窓が異なってもよいことは、当業者には自明である。
【0168】
代替的な実施形態において、本発明の文脈で考慮可能な投与方法は、これによって全身バイオアベイラビリティが得られる限り、特に限定されない。これには、経口、直腸、気管支、鼻腔、口腔、舌下、膣、経皮、皮下、子宮、若しくは非経口の投与、又は、粉末及び液体エアゾールの投与を含む吸入若しくは噴霧による投与に適した形態が含まれる(但しこれらに限定されない)。好ましい実施形態において、投与方法は経口投与である。経口投与には経口摂取による投与が含まれるが、付加的に、任意選択で口内分散性錠剤等(但しこれらに限定されない)の口内分散性投与単位による、口腔及び舌下投与等の投与方式も含まれることが理解される。全ての場合において、目標は、経口投与単位を用いた場合と同等の血漿中エステトロール有効投与量(例えば、同等のAUC及び/又はCmax値)を実現することである。
【0169】
或る特定の実施形態において、エステトロール成分は単位投与単位に製剤化され、これには、硬カプセル、軟カプセル、錠剤、被覆錠剤(塗布錠剤又は糖衣錠剤等)、顆粒剤、水性又は油状溶液、シロップ、乳濁液、懸濁液、吸入剤又は坐剤が含まれ(但しこれらに限定されない)、当該技術分野で知られている任意の適切な包装手段で提供可能であり、非限定的の例は、トローチ、小袋、小包、ボトル、フィルム、スプレー、ミクロカプセル、インプラント、ロッド又はブリスターパックである。有効量のエステトロール成分が経口投与により投与される実施形態において、本発明に係る経口投与単位は、好ましくは、錠剤、カプセル、カシェ剤、ペレット、丸薬、粉末及び顆粒等の固形又は半固形投与単位である。特に好ましい組成物は、本明細書に開示された用量のエステトロール一水和物と、固形又は半固形投与単位に適した賦形剤との組合せを含む。
【0170】
「固形又は半固形投与単位」という用語は、本発明のエステトロール成分及び/又は任意選択のプロゲストーゲン成分が溶解又は分散されている液体、例えば油を含むカプセルも包含する。錠剤並びに同等の固形及び半固形投与単位は、結合剤(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP)、他のセルロース系材料及びデンプン)、希釈剤(例えば乳糖(一水和物)及び他の糖類、デンプン(例えば、とうもろこしデンプン)、リン酸二カルシウム及びセルロース系材料)、崩壊剤(例えばデンプン重合体及びセルロース系材料(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム))、並びに滑沢剤(例えば、(マグネシウム)ステアリン酸塩及びタルク)等の材料を適切に含むことができる。これらの錠剤及び同等の固形投与単位は、当該技術分野で詳細に文献記載されている(例えば、Kaur, Processing technologies for pharmaceutical tablets: A review,Int Res J Pharm, 2012)任意の適切な手段によって調製可能である。投与単位を製造する場合にエステトロール成分を処理する非限定的な例としては、例えば水溶液又は有機溶液を使用する湿式造粒、直接圧縮、3Dプリンティング、又は有機若しくは無機溶媒を用いてエステトロール成分を担体粒子にコートする方法がある。
【0171】
本発明の更なる態様が、本明細書に開示された任意の医学的適応における使用のための有効量のエステトロール成分を含む医薬組成物に関することは明らかである。対象における痛み状態の治療又は予防。「製剤」又は「組成物」という用語は、本明細書において区別なく使用可能である。本明細書に記載の1種以上の薬学的又は美容的組成物の任意の実施形態において、該組成物が1種以上の薬学的に又は美容的に許容される担体(すなわち賦形剤)を含むことができることは明らかである。本明細書中で用いられる場合の「薬学的に許容される」又は「美容的に許容される」という用語は、当該技術分野と一致するものであり、薬学的又は美容的組成物の他の成分と相溶性があり、受容者に有害でないことを意味する。本発明の特に好ましい実施形態において、本発明に係る医薬組成物は毎日投与用に設計されており、すなわち、これは1日投与単位を表す。医薬組成物中で使用可能な賦形剤は、特に限定されず、したがって、薬学的活性成分賦形剤、結合剤賦形剤、担体賦形剤、共処理賦形剤、コートシステム賦形剤、制御放出賦形剤、希釈剤賦形剤、崩壊剤賦形剤、乾燥粉末吸入剤賦形剤、発泡システム賦形剤、乳化剤賦形剤、脂質賦形剤、滑沢剤賦形剤、徐放賦形剤、浸透促進剤賦形剤、透過促進剤賦形剤、pH調節剤賦形剤、可塑剤賦形剤、保存料賦形剤、保存料賦形剤、可溶化剤賦形剤、溶媒賦形剤、持続放出賦形剤、甘味剤賦形剤、味付け剤賦形剤、増粘剤賦形剤、粘度調節剤賦形剤、増量剤賦形剤、圧縮賦形剤、乾式造粒賦形剤、ホットメルト押出し賦形剤、湿式造粒賦形剤、速放化剤賦形剤、高バイオアベイラビリティ賦形剤、分散賦形剤、可溶化促進賦形剤、安定化剤賦形剤、カプセル増量賦形剤、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される1種以上の賦形剤とすることができる。かかる媒体及び薬物の薬学的活性物質に対する使用は一般的実務であることを当業者は知っており、したがって、これらの賦形剤の組み込みは当該技術分野で既知である。使用される全ての成分は、最終的な医薬組成物中に含有される濃度で無毒性でなければならず、エステトロール成分(該エステトロール成分は好ましくは医薬組成物中の主たる薬学的活性成分として存在する)の活性に不利に干渉するものであってはならないことは明らかである。或る特定の実施形態において、当業者が同じ群の賦形剤に属すると分類する2種以上の賦形剤が医薬組成物に添加される。更なる実施形態において、異なる群に属する異なる種類の2種以上の賦形剤が医薬組成物に添加される。或る特定の実施形態において、賦形剤は2つ以上の機能を果たすことができ、及び/又は当業者によって異なる群又は種類の賦形剤に属すると分類されることができる。
【0172】
本発明によって想定される組成物は、スキンケア効用をもたらすことが当該技術分野で知られている更なる皮膚活性成分を含むことができる。スキンケア効用としては、皮膚の美容的外観に関連する効用があり得る(但しこれに限定されない)。更なる皮膚活性成分が、即時で短期的(すなわち急性的)な効用、及び/又は長期の持続的(すなわち慢性的)な効用を提供することができる。
【0173】
本発明についてその詳細な実施形態と併せて記載したが、上記の記載から、多くの代替形態、変更形態及び変形形態が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内にある全てのかかる代替形態、変更形態及び、変形形態を包含することが意図される。本明細書に開示された本発明の態様及び実施形態は、以下の非限定的な実施例によって更に裏付けられる。
【0174】
以下の具体的な実験実施例は、特許請求される発明の裏付けとして提供されるが、本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきではない。
【実施例】
【0175】
実施例1:ラットモデルにおける経口投与後のエステトロールの組織分布
[14C]-エステトロールを用いて雌ラット(部分的に色素性及び非色素性)において組織分布を決定した。
【0176】
非色素性の雌ラットへの[14C]-エステトロールの単回経口投与後、放射能濃度は全体に0.5時間の最初の時点で最大となり、最も高い濃度は肝臓で測定された(12.5 μg当量/g)。放射能は迅速に排除されたため、投与24時間後までに、消化管及び膀胱の要素以外では、副腎、腎臓、肝臓、膵臓、唾液腺及び甲状腺のみが定量化可能であった。
【0177】
部分的に色素性の雌ラットへの[14C]-エステトロールの単回経口投与後、放射能濃度は全体で経口投与0.5時間後の最初の時点で最大となり、最も高い濃度は肝臓で測定された(13.7 μg当量/g)。放射能はまた速やかに排除され、投与24時間後までに大部分の組織でBLQ(0.076 μg当量/g未満)となった。投与7日後までに、肝臓(0.410 μg当量/g)を除く全ての分析した組織が、メラニン含有構造(脈絡膜、色素性皮膚)を含め、定量限界以下となった。
【0178】
プロトコル-非色素性ラットにおける組織分布研究
雌のスプラーグドーリーラット7匹の群にそれぞれ[14C]-エステトロールを単回経口投与した。選択した各時間(下記参照)で1匹の動物を(CO2過剰投与により)屠殺し、その後直ちにヘキサン/固体CO2中で瞬間凍結させた。量的全身オートラジオグラフィ(QWBA)の技術を用いて放射能の組織分布を検査するために死体を保持した。
【0179】
分析のための時間は0.5時間、1時間、2時間、5時間、8時間、24時間及び48時間であった。
【0180】
全身オートラジオグラフィの切片化の完了後、残った死体は廃棄物として処分した。
【0181】
Fuji FLA-5100蛍光イメージアナライザ及び関連するTina and SeeScanソフトウェアを使用して、組織中の放射能分布を決定及び定量化した。GE Healthcareが作成した較正済みオートラジオグラフィマイクロスケールを使用して、組織中の放射能濃度を決定した。マイクロスケールを用いて標準曲線を作成し、これから放射能の組織濃度(nCi/g)を決定した。次いで、これらの値を投与製剤の比活性を用いてμg当量/gに変換した。
【0182】
プロトコル-色素性ラットにおける組織分布研究
雌のリスターフーデッドラット6匹の群にそれぞれ[14C]-エステトロールを単回経口投与した。選択した各時間(下記参照)で1匹の動物を(CO2過剰投与により)屠殺し、その後直ちにヘキサン/固体CO2中で瞬間凍結させた。死体を定量的全身オートラジオグラフィ(QWBA)の技術を用いて放射能の組織分布を検査するために保持した。
【0183】
分析のための時間は(0.5時間、8時間、及び24時間、7日、14日及び35日)であった。
【0184】
凍結した死体を全身オートラジオグラフィに供した。
【0185】
非色素性ラットにおける結果(皮膚に焦点)
濃度を報告する際、放射能は[14C]-エステトロール又は[14C]-エステトロール由来の任意の代謝産物に関連していると仮定した。全ての場合において、投与した試験化合物の比活性を、濃度の計算に用いた。放射能の回収率は投与放射能の百分率(%投与量)として報告する。同様に、放射能濃度はμg当量/gとして報告する。
【0186】
[14C]-エステトロールの単回経口投与後の雌スプラーグドーリーラットから得た組織(ここでは皮膚のみ)中の放射能濃度及び組織:血液比をそれぞれ表1及び表2に示す。
【0187】
表1:非色素性雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後の組織中の放射能濃度(μg当量/gとして表す)
【表2】
【0188】
表2:非色素性雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後に決定した組織:血液比
【表3】
【0189】
色素性ラットにおける結果(皮膚に焦点)
[14C]-エステトロールの単回経口投与後の雌のリスターフーデッドラットから得られた組織中の放射能濃度及び組織:血液比をそれぞれ表3及び表4に示す。
【0190】
表3:部分的に色素性の雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後の組織中の放射能濃度(μg当量/gとして表す)
【表4】
【0191】
表4:部分的に色素性の雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後に決定した組織:血液比
【表5】
【0192】
選択した組織/器官中の放射能総量(Caster[2]から得た、%投与量/組織、組織%体重として表す)を表5に示す。
【0193】
表5:部分的に色素性の雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後の選択した組織における放射能総量
%投与量/組織で表した結果
【表6】
【0194】
結論:最初のサンプリング時間(0.5時間)では、総投与量/組織に基づいて、放射能は、色素性及び非色素性の皮膚中に投与した投与量の1%超で存在した(それぞれ1.7%及び1.1%)。結果から明らかなように、経口投与後の皮膚において顕著なE4濃度が達成されており、これはエステトロールが皮膚に十分に到達しており、治療上有効であろうことを示す。
【0195】
実施例2:皮膚中の2つの主要な細胞種としてのケラチノサイト及び線維芽細胞に対するin vitroでのエステトロール(E4)の影響
この研究の目的は、2D培養中のヒト表皮ケラチノサイト及びヒト真皮線維芽細胞の遊走及び増殖能力に対するエステトロールの影響を評価し、このエストロゲンの影響を別の基準エストロゲンとしてのエストラジオール(E2)と直接比較することである。
【0196】
この研究は、ケラチノサイト及び線維芽細胞のそれぞれに対する4つの濃度でのE4及びE2の特性を評価することを目的としたin vitroアッセイにある。このアッセイでは、専用の培養装置(IBIDIチャンバ)を使用して、コンフルエントな単層の細胞から生成された標準的な無細胞表面のコロニー形成の測定を行う。アッセイは、それぞれ細胞増殖及び遊走、又は遊走のみに焦点を当てるために、増殖阻害剤の存在下及び非存在下で行う。
【0197】
方法論
細胞モデル-正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)
正常ヒト包皮由来表皮ケラチノサイト(NHEK、Lonza)の培養を用いて研究を行った。細胞を、Human KeratinocyteGrowth Supplement(HKGS、ThermoFisher Scientific)及び抗生物質を添加した無血清Epilife培地(ThermoFisher Scientific)中で増殖させた。細胞を37℃、5%CO2雰囲気下の加湿インキュベーター内に維持した。
【0198】
細胞モデル-正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)
正常ヒト包皮由来真皮線維芽細胞(NHDF、ATCC)を10%ウシ胎児血清(FBS、ThermoFisher Scientific)、L-グルタミン及び抗生物質を添加したフェノールを含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、ThermoFisher Scientific)中で増殖させた。細胞を37℃、5%CO2雰囲気下で加湿インキュベーター内に維持した。
【0199】
アッセイ及び分析
細胞を、予め12ウェル培養プレートに挿入した、画定された無細胞ギャップを有する2ウェルシリコーンインサート(IBIDIチャンバ:IBIDI GmbH、80209)にプレーティングした。この培養デバイスにより、細胞コロニー形成を監視するための標準化された500 μm±100 μmの無細胞ギャップを作成することができる。播種24時間後、培養が高いコンフルエントに達したとき、インサート内の細胞を、マイトマイシンC(MMC)を用いて10 μg/mLで2時間処理するか、又はそうしなかった。この2時間の後、インサートを除去し、E2又はE4を用いてMMC存在下又は非存在下で細胞を更に2時間処理した。その後、必要な場合、培養培地を除去し、細胞をMMC非存在下でE2又はE4を用いて22時間処理した。
【0200】
アッセイに関して、ケラチノサイトはHKGSを含まないEpilife培地にプレーティングし、全ての処理をこの培地中で行った。線維芽細胞を2.5%のFBSのみを含有するDMEM培地にプレーティングし、処理はFBS非存在下で行った。
【0201】
E2及びE4をそれぞれ4つの濃度(10-7M、10-8 M、10-9M、10-10 M)で適用した。並行して、細胞を陽性対照(ヒトケラチノサイトについてはHKGS 1%、ヒト線維芽細胞については10ng/mlのPDGF-BB)を用いて処理した。
【0202】
細胞のコロニー形成を監視し、ギャップ閉鎖速度を評価するために、0時間(E2又はE4を用いた処理の開始時及び培養インサート除去に対応)、6時間及び24時間(E2又はE4を用いた処理終了時に対応)という異なる時点で、ギャップの写真を撮った。写真は、顕微鏡Zeiss(Axiover 25-10×対物レンズ)、及びカメラInvenio2EIII(DeltaPix - Lux-Optic)を用いて撮った。コロニー形成領域を、WimAsisプラットフォーム-WimScratchソフトウェアを使用して写真から定量化した。各インサートについて各時点で3枚の写真を撮った。各状態につき3回繰り返して行い、これは各条件及び各取得時点についての合計9枚の写真を意味する。
【0203】
結果
正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)
陽性基準として使用したHKGSを用いた処理は、MMC存在下及び非存在下でのコロニー形成領域の有意な増加を可能とし、これにより、試験が妥当であることが確認された。
【0204】
増殖阻害剤(MMC)存在下では、10
-7 M及び10
-10 MでのE4は、処理の24時間後においてエタノール対照と比較して無細胞領域のコロニー形成を有意に増加させ、これは細胞遊走の刺激を示す(
図1)。6時間でのMMC非存在下では、10
-7 M及び10
-10 Mの濃度でのE4は、無細胞領域のコロニー形成をエタノール対照と比較して有意に増加させた(
図2)。
【0205】
増殖阻害剤(MMC)の存在下及び非存在下のいずれにおいても、E2はエタノール対照と比較して無細胞領域のコロニー形成を有意に増加させることができなかった(
図3及び
図4)。10
-7 M~10
-9 Mの濃度範囲において、処理の24時間後には、ギャップ閉鎖に対する阻害効果を有するようにさえ思われる。この阻害は10
-8 Mの濃度についてのみ有意であった。
【0206】
正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)
陽性基準として使用した10 ng/mlでのPDGF-BBを用いた処理は、MMC存在下及び非存在下のいずれにおいてもコロニー形成領域を有意に増加させ、これにより、試験が妥当であることが確認された。
【0207】
増殖阻害剤(MMC)非存在下では、E4は無細胞領域のコロニー形成を有意に増加させることができなかった(
図6)。しかし、24時間でのMMC存在下では、10
-7 M及び10
-8 MでのE4は、エタノール対照と比較して無細胞領域のコロニー形成を有意に増加させることができた(
図5)。
【0208】
増殖阻害剤(MMC)存在下では、E2は無細胞ギャップのコロニー形成を有意に増加させることができなかった(
図7)。しかし、24時間でのMMC非存在下では、10
-7 M、10
-8 M及び10
-10 MでのE2は、エタノール対照と比較して無細胞領域のコロニー形成を増加させた(
図8)。
【0209】
結論
この研究において、本発明者らは、10-7 M及び10-10 MでのE4が、培養におけるケラチノサイトによって経時的にコロニー形成された表面を有意に増加させることに気付いた。この効果は、MMC非存在下及び存在下のそれぞれにおいて、処理の6時間及び24時間後に有意であった。したがって、E4は、処理の6時間後に観察されたような細胞増殖を刺激する効果を有する可能性があるが、増殖阻害剤存在下、24時間後のコロニー形成表面に違いが観察されたことを考えると、一定の遅延後にケラチノサイト遊走を誘導する可能性もある。E2の存在下では、ケラチノサイトの増殖又は遊走についての有意な効果は観察できなかった。
【0210】
E4及びE2は、処理の24時間後の線維芽細胞培養に対して有意な活性を示した。E4はむしろ細胞遊走に作用する一方(10-7 M及び10-8 Mで)、E2は線維芽細胞の増殖に特異的な効果を示すように思われた(10-7 M、10-8 M、及び10-10 Mで)。結果を以下の表6にまとめている。
【0211】
表6:エステトロール(E4)又はエストラジオール(E2)のケラチノサイト(NHEK)及び線維芽細胞(NHDF)に対する活性
【表7】
【0212】
実施例3:in vitroモデルでの創傷治癒におけるケラチノサイト、線維芽細胞、及び免疫細胞に対するE4の効果
急性創傷反応には、局所的に活性化しかつ末梢から集まる様々な細胞種が関与する。このパイロット研究では、E4の複数の創傷関連細胞種(ケラチノサイト、線維芽細胞、及び免疫細胞)に対する効果を、E2の効果と直接比較した。
【0213】
ケラチノサイト及び線維芽細胞の実験
プロトコル
ヒトの皮膚を、採取後30分以内に保持培地(4%ペニシリン-ストレプトマイシン及びアンホテリシンB溶液を含有するDMEM)中で研究室に搬送した。一回脱脂し、皮膚を、4%PSAを含むHBSSで濯ぎ、次いで抗生物質を含まないDPBSで濯ぎ、その後、薄いストリップに切断し、DPBS中の0.2%Dispase II上一晩4℃で浮かせ、その後、手作業で表皮を真皮から分離した。次いで、初代ヒト表皮ケラチノサイト及び初代ヒト真皮線維芽細胞を単離した。
【0214】
初代のケラチノサイト及び線維芽細胞の両方のコンフルエントウェルを、高度に確認されたスクラッチ創傷手順(1 mLの滅菌フィルタの先端を用いる)に供した。スクラッチ後、細胞をDPBSで濯ぎ、処理剤を含む細胞特異的培地を各ウェルに添加した。細胞を、タイコグラフィックライブセルイメージングプラットフォーム(Livecyte 2(商標)、Phasefocus)で24時間~48時間、イメージングした。個々の非標識化細胞の自動追跡を3D細胞測定と組み合わせて、スクラッチ閉鎖速度を含む様々な創傷関連細胞パラメーターを定量化する。
【0215】
E4(10-10 M~10-6 M)及びE2を用いて、マイトマイシンC(MMC、増殖を阻害するため)存在下及び非存在下で、ビヒクルを陰性対照として投与量範囲発見実験を行った。
【0216】
線維芽細胞-結果
広く確認されているin vitroの線維芽細胞単層スクラッチアッセイを用いて、本発明者らは、E4がE2と同程度に、マウス及びヒトの線維芽細胞の両方においてin vitro創傷閉鎖を促進することを実証した(それぞれ
図9A及び
図9B)。アッセイは、C57Bl/6雌マウスから単離した線維芽細胞及び20歳、49歳及び57歳の3人の女性ドナーから提供された余剰腹部皮膚から単離した線維芽細胞を用いて、活性炭処理ウシ胎児血清を含有するフェノールレッドを含まない細胞培養培地で行った。
【0217】
ケラチノサイト-結果
データは、ケラチノサイトの遊走に対するエストロゲン(E4及びE2)の効果が、培養培地中に用いたHKGS(Human Keratinocyte Growth Supplement)の%に依存したことを示している。しかし、15%HKGSを含む培養条件下では、ケラチノサイトに対するE4(10
-10 M及び10
-7 M)の影響はE2の効果より大きいように思われる(
図10)。
【0218】
免疫細胞実験
ヒト単球及びマウス単球(BMDM 骨髄由来単球)で、M1/TH-1(NOS2)及びM2/TH-2(ARG1)の表現型のマーカーを用いてin vitroで免疫細胞の極性化を評価した。
【0219】
プロトコル
国の倫理審査による承認規定の下、完全な患者の書面同意を得た上で、ヒト血液を採取した。新鮮に単離したヒト血液をEDTAバキュテイナ管中に採取し、PBSで1:1に希釈し、histopaque(Merck)上に穏やかに積層させた。直後に100×gで30分間遠心分離し、histopaque界面に形成された白っぽいバフィーコートを吸引し、滅菌PBSで2回洗浄した(100×g、10分間遠心分離)。Miltenyi Classical Monocyte Isolation Kit、LSカラム及びMidiMACsセパレータ(Miltenyi)を用いて、洗浄したバフィー層細胞から、非接触古典的単球(CD14++、CD16-)を単離した。単離した細胞を組織培養プレートに播種し、刺激してPMAを用いて分化させた。
【0220】
E4又はビヒクル(陰性対照)の抗炎症効果を評価するために実験を行った。qPCR方法論を用いて、炎症促進性(MI/TH-1表現型用のNOS2)及び抗炎症性(ME/TH-2表現型用のARG1)の十分に確認されたマーカーを用いて、E2及びE4の免疫細胞極性化への効果を評価した。
【0221】
結果
E4は抗炎症効果を示し、マウスBMDM(骨髄由来単球)又はヒト単球のサブタイプM1(炎症促進性)からサブタイプM2(治癒)への切り替えを促進した。結果をそれぞれ
図11A及び
図11Bに示す。
【0222】
実施例4:in vitroモデルでの創傷治癒におけるケラチノサイト及び線維芽細胞の遺伝子発現に対するE4の効果
RT-qPCRによる遺伝子発現変化を研究することにより、E4の治癒特性を転写レベルで調べた。創傷治癒プロセスに焦点を当てた84個の遺伝子qPCRアレイを用いた。これらのアレイには、細胞外マトリクス(ECM)リモデリング因子、炎症性サイトカイン及びケモカイン並びに増殖因子及び主要シグナリング分子を含む、創傷治癒プロセスの3つの期に重要な遺伝子が含まれている。創傷治癒に対するE4の潜在的効用を強調するために、遺伝子発現における変化は、デルモコスメティックの文脈で解釈した。
【0223】
細胞処理
25 cm2の培養フラスコ(T25)での24時間播種後、細胞をE4で15時間処理した。培養条件はスクラッチ試験に用いたもの(実施例2参照)と同一であり、細胞をFBS/HKGSの非存在下、E4で処理した。遺伝子発現アッセイについて使用した細胞密度は、スクラッチ試験に用いたものよりも低く、創傷閉鎖アッセイの培養インサート中で、ケラチノサイトについての113636 細胞/cm2、及び線維芽細胞についての100000 細胞/cm2に対して、遺伝子発現アッセイについては15800 細胞/cm2であった。実際のところ、遺伝子発現分析は、通常、コンフルエントに達していない(under-confluent)細胞(対数増殖期の間)について行われる。
【0224】
全RNAの抽出
10-7 MのE4又は対照として用いたエタノール0.1%を用いた15時間の処理の終了時に、Qiagen RNeasyキット(Qiagen)を用いて全RNAを抽出した。細胞を冷PBSで濯ぎ、キット付属の適当なバッファーに溶解させた。サプライヤーの推奨に従って抽出を行った。採取したRNAを-80℃で保存した。
【0225】
RNA整合性分析
RNA濃度を分光光度計による測定(QIAxpert、Qiagen)により求め、RNAの質をキャピラリー電気泳動(Agilent Bioanalyzer 2100-Agilent RNA 6000 Nano Kit)によって分析した。
【0226】
cDNA合成
全RNAからキット「RT2 First Strand Kit」(Qiagen)を用いて製造業者の指示に従って逆転写を行った。
【0227】
RT2 Profiler PCRアレイを用いた定量PCR
cDNA集団中の特定マーカーの発現変化を定量化するために、qPCR法を用いた。84個の標的遺伝子に対する特異的プライマーを含むアレイ「RT2 Profiler PCR Arrayヒト創傷治癒」。
【0228】
標的遺伝子の増幅を、「HotStart Taq DNA Polymerase」、及び、検出方法としてのSYBR Greenの使用によってサプライヤーの推奨に従って行った。SYBR Greenは核酸の塩基対の間に挿入されると蛍光を発するマーカーである。したがって、蛍光強度は産生された単位複製配列の量に正比例する。qPCRは、Quantstudio7 Real-Time PCR System(Applied Biosystems)及びそのソフトウェア(QuantStudioリアルタイムPCR Software v1.3、ソフトウェア、Applied Biosystems)を用いて行った。
【0229】
E4で処理した条件について得られたデータを両細胞種におけるエタノール対照と比較した。閾値サイクル(Ct)値を、アレイ上に存在するいくつかのハウスキーピング遺伝子のCt値の平均に対して正規化した(下表に示す)。最大のCtカットオフ値を36サイクルに固定したが、これは、36を超えるCt値は分析において考慮しなかったことを意味する。
【0230】
結果
ヒトケラチノサイト(表7)又は線維芽細胞(表8)を10-7 MのE4を用いて15時間処理すると、創傷治癒プロセスの異なる期に関与する特定の興味深い経路が誘導された。
【0231】
表7:培養中ヒト表皮ケラチノサイトのエステトロール(E4)での15時間の処理後の発現が変化した遺伝子のリスト-エタノール対照に対する倍数変化(FC)で表す:FC>1:増加-FC<1:低下
【表8】
【0232】
表8:培養中ヒト真皮線維芽細胞のエステトロール(E4)での15時間の処理後の発現が変化した遺伝子のリスト-エタノール対照に対する倍数変化(FC)で表す:FC>1:増加-FC<1:低下
【表9】
【0233】
数が少なく振幅も小さいものの、これらの遺伝子発現における変化(エタノール対照と比較)は、E4が炎症促進性因子の下方制御及び結合MMP/TIMPシステムの刺激を介して、炎症期と増殖/リモデリング期との間の切り替えを促進する可能性を示唆している。
【0234】
ヒト線維芽細胞又はケラチノサイトを10-7 MのE4で15時間処理すると、ケモカインCXCL5及びCXCL11、シクロオキシゲナーゼ2(PTGS2)及び線維芽細胞増殖因子2(FGF2)の発現が有意に低下し、増殖期への切り替えが強化された。
【0235】
実施例5:E4の抗酸化特性の証拠
本研究の目的は、マウスリンパ腫細胞株L5178Y TK+/-において、試験品であるエステトロール(E4)によって誘導される活性酸素種(ROS)の発生を調査することであった。
【0236】
プロトコル
対数増殖期のL5178Y TK+/-細胞を、ブラック96ウェル細胞培養プレートに、90 μLの細胞培養培地中1×104細胞でプレーティングした。対照及び試験品を、10 μLのPBS中10%エタノール溶液中の10x濃縮液として細胞に適用し(プレート上のエタノールの最終濃度は1%であった)、これを3回繰り返して行った。細胞を37℃、5%CO2で3時間インキュベートし、ROS試薬を用いて蛍光によりROSの発生を評価した:ROS試薬は、1アンプル(50 μg)の試薬を70 μL DMSOに溶解し、更にこれを2.1 mLの予熱したPBSで希釈して新鮮に調製した。10 μLのROS試薬を各ウェルに添加し、プレートを暗所で30秒間振盪した。プレートを約37℃、5%CO2で1時間30分インキュベートし、492 nmでの励起、520 nmでの発光でもってプレートスキャナーにて蛍光を読み取った。
【0237】
最大100 μMの濃度の陰性対照であるラクテート(ROSを誘導しないことが知られている)及び陽性対照である過酸化水素(細胞内でROSを増加させることが知られている)、並びに、1 μM、10 μM、50 μM、100 μM、1000 μM、及び3000 μMの濃度の試験品を用いて、3つの実験を行った。陰性対照、陽性対照及び試験品で処理した細胞についてのROS誘導の結果を、非処理のビヒクル対照で得られた結果と比較した。
【0238】
結果
陰性対照であるラクテートは、ビヒクル対照と比較した場合に、最大100 μMの濃度でいかなる実験においてもROSを誘導しなかった。陽性対照である過酸化水素は、ビヒクル対照と比較した場合に、3時間の曝露後にROSレベルの増加傾向を示した。
【0239】
最大3000 μMのE4は、L5178Y TK+/-細胞において検出された投与量に依存したROSの低下を引き起こしたが、最大100 μMのラクテートは3時間の曝露後にROSの誘導に影響を与えなかった。
【0240】
結論
E4は3回の実験全てにおいて、ROSレベルにおける投与量に依存した低下を引き起こし、試験した最高濃度(3000 μM)で最大の効果を示し、このことは、本研究においてE4は抗酸化剤として作用したことを示唆する。
【0241】
実施例6:in vitro研究試験の計画
この一連の実験により、表皮及びケラチノサイトの生物学(皮膚バリア、保湿、脂質合成、メラニン形成、増殖)、真皮及び線維芽細胞の生物学(細胞外マトリクス成分産生、グリコサミノグリカン合成、保湿)、抗酸化及び抗炎症特性、皮脂産生、並びに色素沈着等の、皮膚の老化の最も重要な側面のうちのいくつかに対するE4の効果を特定することができる。
【0242】
1)トランスクリプトーム解析
トランスクリプトーム解析は、TLDA(TaqMan Low Density Array)技術を用いた逆転写定量PCRに基づいている。特異的な標的遺伝子を同定し、複数の調査課題に分け、調査課題ごとに48個~96個の転写産物を同時に増幅する。これを、調査課題に応じてNHEK(正常ヒト表皮ケラチノサイト)又はNHDF(正常ヒト真皮線維芽細胞)のいずれかから抽出したRNAについて用いて行う。
【0243】
この方法により、処理が特定の生物学的機能に関わる遺伝子の発現を調節する能力を同定することができる。
【0244】
方法:
NHEK又はNHDFをビヒクル又は10-7 MのE4で24時間処理した後、RNAを単離して逆転写に供する。
以下の調査課題についてTLDAを行う。
【0245】
【0246】
E4存在下での遺伝子発現は、ビヒクルと比較し、倍数変化で表す。
【0247】
期待される結果:予備的結果から、E4がケラチノサイト及び線維芽細胞の活性を調節することが示されている。このトランスクリプトーム解析により、E4処理により発現が上方/下方制御される遺伝子の集合を解明することができる。
【0248】
2)機能試験その1-酸化ストレス及び炎症
日光紫外線及び環境汚染物質への曝露が皮膚の老化に重要な役割を果たすことが知られている。これにより、酸化分子の蓄積、活性酸素種(ROS)の過剰産生、及び炎症促進反応の誘導がもたらされる。皮膚の老化は、ECM(細胞外マトリクス)のリモデリング、及びコラーゲン又はヒアルロン酸等の重要な成分の産生低下によっても特徴付けられる。
【0249】
この機能試験により、処理がこれらの有害作用から皮膚を保護する能力を同定することができる。
【0250】
方法:
NHEK及びNHDFを、6つの異なる条件で処理する:(1)基礎条件-ビヒクル;(2)基礎条件-E4処理;(3)基礎条件-E2処理;(4)紫外線及び/又は都市塵への曝露-ビヒクル;(5)紫外線及び/又は都市塵への曝露-E4処理;(6)紫外線及び/又は都市塵への曝露-E2処理。
酸化ストレスの評価:ROSの産生の定量化。
炎症反応の評価:ELISAによるサイトカイン放出(例えばIL-1α、IL-6、IL-8、TNF-α、PGE2)の定量化。
ECMモデリングの評価(NHDFについてのみ):ELISA又は免疫染色による、ECM成分(例えばコラーゲンI型、コラーゲンIII型、ヒアルロン酸等)の検出及び定量化。
【0251】
期待される結果:
a)基礎条件により、E4処理のECM成分の産生に対する効果を評価できる。E4がこの組成物を調節し、コラーゲン及びヒアルロン酸の産生を促進することが期待されるが、これらの成分の産生は老化と共に自然に低下し、皮膚の厚みの増加及び保湿の低下をもたらすため、このことは皮膚の老化の文脈において興味深い。
b)予備的結果から、E4の抗酸化及び抗炎症特性がいくつかのモデルで明らかとなっている。この機能試験により、皮膚に対して同じ特性が観察されることが期待されるが、酸化ストレス及び炎症が皮膚の老化のプロセスに重要な役割を果たすため、このことは皮膚の老化の文脈で特に興味深い。
c)E2処理との比較により、E4が抗酸化及び/又は抗炎症特性においてより強力か否かを示すことができる。予備的結果に基づいて、これは事実であることが期待される。
【0252】
3)NHEK細胞からのIL-6放出に対するE4の効果の詳細な概要
材料及び方法
1.細胞モデル:正常ヒト表皮ケラチノサイト-NHEK
3人の白色人種ドナーの包皮から単離された正常ヒト包皮由来表皮ケラチノサイト(NHEK、Lonza、00192906)を、Human Keratinocyte Growth Supplement(HKGS、Fisher Scientific、S-001-5)及び抗生物質(ゲンタマイシン、Fisher Scientific、15710-049)を添加したEpilife培地(Fisher Scientific、M-EPI-500-A)中で増殖させた。細胞を37℃、5%CO2雰囲気の加湿インキュベーター内で維持した。
【0253】
2.細胞処理用試験品の調製
E4及びE2(粉末として準備)を100%エタノールに0.1 Mで溶解させた。次に、これをエタノール及び培地で更に希釈して、適切な濃度とした。E4及びE2の各調製物は、培養培地中での最終濃度として0.1%エタノールを超えなかった。実際的には、1000倍濃縮の原液を100%エタノールで調製し、分注して、細胞への適用まで-20℃で保存した。
【0254】
プラスチック製品はエストロゲン活性を有する可能性があることから(Miraldi et al., Arch Intern Med, 2006)、全ての溶液をガラス製の小瓶中で調製し、遮光保存した。
【0255】
3.NHEKにおける炎症の誘導
IL-6の放出を誘導するために、NHEKを、10 ng/mLのホルボールミリステートアセテート(PMA)を用いて、2 μMのカルシウムイオノフォアA23187(Sigma Aldrich、C5722)と組み合わせて、24時間曝露した。試験又は基準品を用いた処理を、炎症抗原投与と同時に行った。NHEKの処理は、ヒドロコルチゾンもフェノールレッドも含まないEpilife培地中で行った。E4を10
-4 M、10
-5 M、10
-6 M、10
-7 M、及び10
-8 Mで適用し、E2は10
-5 M、10
-6 M、10
-7 M、10
-8 M、及び10
-9 Mで適用した。0.1%のEtOHを溶媒対照として試験した。10 μMのデキサメタゾンを抗炎症の基準として用いた。24時間の処理の終了時に、上清を回収し、-20℃で保存し、細胞生存率アッセイをMTS(項目5参照)により評価した。処理の動態の概要を
図12に示す。全ての処理は3回繰り返して行った(n=3)。
【0256】
4.NHEKからの炎症メディエーターの放出の定量化
炎症性マーカーの放出の定量化を、特異的ELISAキットを用いて、サプライヤーの仕様書に従って、標準曲線に基づいて定量化した。その後、得られた結果を対応する細胞生存率(MTSアッセイにより得た)に対して正規化した。
【0257】
IL-6定量化に用いたキットのサプライヤーの整理番号を以下に示す:IL-6、BioTechne、D6050。
【0258】
5.MTSによる細胞生存率アッセイ
処理及び培養培地の回収の終了時に、MTS(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)アッセイを用いて細胞の生存率を評価した。処理の効果を、非処理対照条件及び溶媒対照(EtOH 0.1%)と比較した。生存率データを、放出された炎症性メディエーターの量を正規化するために用いた。
【0259】
結果
NHEKからのPMA/A23187誘導IL-6放出に対する試験品の効果
方法論の部分に記載したようにNHEKを処理した。キット提供者の指示に従い、回収した上清からELISAによりIL-6を定量化した。試験品の3つの濃度(生存率アッセイの結果に従ってスポンサーに従って選定)についてのみELISAにて評価した。
【0260】
PMA/A23187はNHEKからのIL-6の放出を有意に増加させ、デキサメタゾンはこの効果を阻害した(
図13)。これらの結果から、細胞が処理に正しく反応したことが確認された。
【0261】
試験した3つの投与量(10-5 M、10-6 M、及び10-7 M)のE4は、刺激した0.1% EtOH条件と比較してIL-6の放出を有意に強く低下させた。実際、PMA/A23187+E4で処理したNHEKからのIL-6の放出レベルは、PMA/A23187+デキサメタゾンで処理したNHEKのIL-6の放出レベルと同程度であった。一方で、IL-6の放出は、E2処理によって影響されなかった。
【0262】
結論
NHEKにおいて、試験した3つの濃度(10-5 M、10-6 M、及び10-7 M)のE4は、PMA/A23187に誘導されるIL-6の放出を強くかつ有意に低下させた。この効果はE2では観察されなかった。
【0263】
4)機能試験その2-乾癬
Th17及びTh22免疫細胞が重要な役割を果たす複雑な皮膚疾患にある乾癬。この病理学の主要な特性のうちの2つは、炎症促進性サイトカインの産生、並びに表皮ケラチノサイトの過形成及び分化の変化である。乾癬のいくつかの症状は閉経期において増す場合がある。
【0264】
この機能試験により、処理が炎症及びケラチノサイト機能障害に関連する症状を低下可能であることを特定できる。これは2つのモデルに分けられる:
モデル1-炎症:このモデルは乾癬の炎症状態を模倣する。
モデル2-ケラチノサイト:このモデルは、過形成及び表皮の異常肥厚を含む、乾癬におけるケラチノサイト機能障害を模倣する。
【0265】
方法
RHE(再構築ヒト表皮)を、ビヒクル又はE4処理の存在下で、Th17サイトカインカクテル(モデル1)又はTh22サイトカインカクテル(モデル2)のいずれかに提示した。
炎症反応の評価:ELISA、免疫染色、RT-qPCR、又はTLDA等のいくつかの技術を用いた炎症性バイオマーカーの発現の定量化。
ケラチノサイト機能の評価:組織学的分析(細胞及び組織形態、表皮厚、ケラチノサイト増殖等)。
【0266】
期待される結果:
a)予備的結果により、いくつかのモデルにおけるE4の抗炎症特性が明らかとなった。この機能試験により、乾癬特徴についても同じ特性が観察されることが期待される。
b)予備的結果により、ケラチノサイトの基礎増殖におけるE4の役割が明らかとなった。これが乾癬におけるような炎症状態においてもあてはまるのか調べることは興味深い。E4が、乾癬症状の低下に有利なように、ケラチノサイト機能を別に調節する可能性があることが期待される。
【0267】
5)機能試験その3-皮脂産生
皮脂は皮膚の皮脂腺で産生される。皮脂は保湿に重要な役割を果たし、その産生は閉経期において低下することが知られている。
【0268】
この機能試験により、処理が皮脂産生を促進する能力を特定することができる。
【0269】
方法:
脂腺細胞をビヒクル又はE4処理に供する。
脂質産生をオイルレッドO等の組織染色法によって評価する。
【0270】
期待される結果:
E4処理により、脂腺細胞による脂質産生が促進されることが期待される。
【0271】
6)機能試験その4-色素沈着
皮膚の色素沈着はメラノサイトの機能に依存する。閉経期には、皮膚には不均一な色素沈着が生じる可能性があり、染みが現れる可能性がある。
【0272】
この機能試験により、処理がメラノサイトによるメラニン産生を調節する能力を特定することができる。
【0273】
方法:
メラノサイトをビヒクル又はE4処理に供する。
メラニン含有量を、フォンタナ-マッソン染色又は比色定量等の組織学的手法により評価する。
【0274】
期待される結果:
メラノサイトに対するE4の潜在的効果について研究し、メラニン産生が増加又は低下するかを評価し、これは臨床的意味に関係している。
【0275】
実施例7:ヒト真皮線維芽細胞の内因性老化
皮膚の老化は、内因性要因(ゲノム、ホルモン等)及び外的悪化要因の両方から生じる多因子プロセスである。内因性老化は、Hayflickモデル(連続的な複製サイクルにより得られる複製老化/細胞老化のin vitroモデル)を用いてモデル化可能である。このモデルによれば、培養した線維芽細胞は一定数の分裂後「老化」したと見なされ、最終的に、細胞増殖の停止を伴う複製細胞老化の状態に入る。
【0276】
「老化」ヒト真皮線維芽細胞を、E4(10-6 M、10-7 M、又は10-8 M)又はビヒクルで24時間処理し、RNAを抽出し、逆転写に供し、皮膚の老化に関与する64個の遺伝子(ECMの組成及び産生、細胞-細胞又は細胞-ECM相互作用、ECM代謝回転、増殖因子、細胞骨格、細胞周期、アポトーシス、炎症、酸化ストレス等)の発現を定量PCRで定量する。
【0277】
E4処理により、老化の低下に有利となる遺伝子発現の調節が見られることが期待される。
【0278】
実施例8:in tuboでの抗酸化特性
E4の抗酸化能力を、酸化化合物と抗酸化化合物との間のバランスを評価可能とする電気化学センサであるSKIN-BIOSENSE(商標)技術を用いて評価する。
【0279】
E4溶液をH2O2溶液と接触させ、ベースラインで30分後のH2O2シグナルを測定する。E4の抗酸化指数を、H2O2シグナルの低下に基づいて評価する。
【0280】
E4について強い抗酸化特性が見られることが期待される。
【0281】
実施例9:in vivo研究計画
プロトコル
ヒト閉経期の最も一般に用いられる動物モデルは、両側卵巣摘出術の実行によるエストロゲン欠乏の誘導からなる。
【0282】
ヒト経口E4処理を、経口投与又は皮下徐放ペレットの使用のいずれかによって再現する。E4の濃度及び治療期間は、前臨床及び臨床データに基づき、測定されたパラメーターに応じて決定する。
【0283】
調査パラメーター
細胞外マトリクス組成(コラーゲン、弾性繊維、グリコサミノグリカン及びヒアルロン酸)(Voloshenyuk et al., Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2010 Aug;299(2):R683-93、Roeck et al., J Biol Chem. 2012 Jun 8;287(24):20056-69、Saville et al., preprint bioRxiv 728865)
保湿(グリコサミノグリカン及びヒアルロン酸、皮脂産生、皮膚バリア機能)(Roeck et al., J Biol Chem. 2012 Jun 8;287(24):20056-69、Chen et al., Exp Dermatol. 2017 May;26(5):394-401、Sorop et al., Rom J Morphol Embryol. 2020 Jul-Sep;61(3):879-88)
酸化ストレス(ROS産生、抗酸化酵素活性)(Kasimay et al., Ren Fail. 2009;31(8):711-25、Baeza et al., Biogerontology. 2010 Dec;11(6):687-701)
炎症(炎症促進性サイトカイン産生)(Yoon et al., J Invest Dermatol. 2014 Aug;134(8):2290-2293、Watanabe et al., Toxicol Appl Pharmacol. 2018 Sep 15;355:226-237)
乾癬(Wang et al., Int Immunopharmacol. 2019 Apr;69:270-278、Iwano et al., J Appl Toxicol. 2020 Oct;40(10):1353-1361)
皮脂産生(Mii et al., Am J Pathol. 2012 Oct;181(4):1180-9、Dahlhoff et al., Exp Dermatol. 2013 Oct;22(10):667-9、Ebel et al., Biochem J. 2014 Jul 1;461(1):147-58)
色素沈着(Kumar et al., Biofactors. 2013 May-Jun;39(3):259-70、Sorop et al., Rom J Morphol Embryol. 2020 Jul-Sep;61(3):879-88)
【0284】
実施例10.皮膚の老化のin vitro/マウス評価
この研究の全体の目的は、in vivo及びin vitroモデルの組合せを用いた、皮膚の老化に対するE4の効果を評価することである。詳細には、老化雌マウスにおいて、皮下ミニ浸透圧ポンプを用いて3週間にわたってE2又はE4を送達して、エストロゲン化合物の皮膚の老化及び創傷治癒に対する効果を評価する(目標1)。ミニ浸透圧ポンプはGallezらによって既に文献記載されており(Cancers (Basel), 2021)、同様の血漿濃度を実現可能であるため、ヒトにおける経口投与を模倣する受入れられたモデルを表す。3週間の終わりに、E4の補給の老化した皮膚に対する効果を詳細に評価する。補完的なin vitro実験(目標2)をin vivo研究と並行して行い、E4の、a)ヒト真皮線維芽細胞における細胞外マトリクス(ECM)の沈着、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)活性、及び抗酸化活性、並びに、b)ヒト表皮ケラチノサイトの老化及び分化に対する直接的効果を決定する。
【0285】
目標1:老化した皮膚及び創傷治癒に対するE4の効果のin vivo評価
化合物の投与
エステトロール(E4)、17β-エストラジオール(E2)又はビヒクルを、ミニ浸透圧ポンプを使用して送達する。
【0286】
動物実験
高齢の(18ヶ月齢)野生型雌マウス(C57BL/6J)に標準飼料及び水を自由に与える。マウスを定められた温度及び湿度、12時間の明暗サイクルに維持する。動物を麻酔(酸素、イソフルラン及び亜酸化窒素)し、ミニ浸透圧ポンプを背中に植え込む。動物を暖房キャビネットに回収し、アルファパッド、RO水、飼料、マッシュ及び床材が収容された未使用のキャビネットに戻す。術後に観察を行い、非侵襲的超音波画像診断及び皮膚弾性測定(dermalab、cortex technologies)を、移植後0日目、5日目、10日目、15日目及び20日目(研究の生存期全体にわたる)に実施し、皮膚厚及びECM特性の相対的変化をリアルタイム評価することができる。植え込み14日後に、マウスを麻酔し、2×6 mmの背部切除創傷を作製する(無菌生検)。切除した皮膚を組織学的評価(パラフィン包埋組織学及び凍結組織学、下記参照)のために採取する。マウスは継続評価のためにハウジングに戻す。植え込み21日後(創傷7日後)、マウスを安楽死させ、追加の背部及び腹部皮膚サンプルを組織学的評価及び生体力学試験それぞれのために採取する。
【0287】
マウスは以下の5つの治療群(各群当たり6匹のマウス)に分ける:
1)プラセボ
2)0.1 mg/kg/日のE2
3)0.1 mg/kg/日のE4
4)0.3 mg/kg/日のE4
5)1 mg/kg/日のE4
【0288】
組織処理及び分析
移植21日後に、マウスをCO
2濃度増加及び心臓穿刺により安楽死させ、背部及び腹部の皮膚サンプルを採取する。切除した皮膚(創傷から14日目)及び背部皮膚サンプル(21日目に採取)をパラフィン包埋組織学用に処理し、これにより、E2/E4の皮膚の老化に対する効果(表皮及び真皮の厚さ、基底膜、真皮ECM組成)の詳細な特徴付けが可能となる。ピクロシリウスレッド染色を用いてECM繊維の成熟度を決定し(Wilkinson et al., J Invest Dermatol, 2019, Nov;139(11):2368-2377.e7)、Van Giesonによって弾性繊維の分布を明らかにする。また、創傷及び背部皮膚サンプルを、凍結組織学(OCT)用に処理し、細胞老化の特徴付けを行う(SA-bGAL染色;Wilkinson et al., J Invest Dermatol, 2019, May;139(5):1171-1181.e6)。更なる背部皮膚を液体窒素で急速凍結し、RNAを単離して、皮膚の老化マーカー(例えばCdkn1a、Cdkn2a)を評価する。腹部皮膚を生体力学試験に供し、破断強度を決定し、かつ生体力学パラメーターを評価する。創傷治癒分析では、治療間の創傷閉鎖における違いも評価する(
図14)。
【0289】
目標2:作用機序を探求するための補完的なin vitro研究
in vivo実験に並行して、in vitro研究により皮膚生物学の特定の観点におけるE4の効果を評価する。
【0290】
a)ヒト真皮線維芽細胞
ECM沈着アッセイ
ECM沈着を、老化ヒト皮膚(Wilkinson et al., 2019, Nov;189(11):2196-2208)から単離したヒト真皮線維芽細胞(HDF)において評価する。HDFを3名の高齢の皮膚ドナー(女性、60+)から単離し、最適化したフェノールレッドを含まない細胞培養培地で継代及び増殖する。HDFを、ビヒクル、E2(10
-6 M~10-
9 M)、又はE4(10
-6 M~10
-9 M)を用いて、かつ、ECM沈着の刺激を伴って、またそれを伴わずに、処理する。細胞外ECM沈着アッセイを11日間行う一方で、細胞内ECM産生を3日目に評価する(
図15A)。ECM産生を評価するために、細胞及び沈着したECMを固定し、その後、免疫蛍光染色及び共焦点顕微鏡検査を用いてフィブロネクチン、コラーゲンI、及びコラーゲンIIIを独立に定量化する。これらの研究により、E4の、老化した細胞による新たなマトリクス産生を促進する能力を探求する。
【0291】
MMP活性
MMP(特にMMP1、MMP2、及びMMP9)は、老化した皮膚におけるマトリクス代謝回転の増加と関連している。HDFを3人の高齢の皮膚ドナー(女性、60+、上記と同様)から単離し、ビヒクル、E2(10
-6 M~10
-9 M)、又はE4(10
-6 M~10
-9 M)で24時間~72時間処理する。HDFにおけるMMP発現を、MMP特異的プライマーを用いたqPCRで評価する。MMP活性を、培養したHDFから採取した培地を用いたザイモグラフィにより決定する(Wilkinson et al., 2019b,cに記載のように)(
図15Bを参照)。これらの研究により、E4がECM代謝回転を抑制する能力を探求する。
【0292】
抗酸化活性
E2の皮膚の老化に対する有益な効果は、一部は、細胞の抗酸化活性により媒介される。E4(E2と比較した)の抗酸化効果を定量化するために、2つの独立したアプローチを用いる。1つ目は、定量的ハイスループット細胞抗酸化アッセイ(CAA、Wolfe & Liu, J agric Food Chem, 2007に記載のとおり)を用いて、E2(10-6 M~10-9 M)又はE4(10-6 M~10-9 M)の、培養した老化HDFにおける酸化ストレスをin vitroで阻害する能力を決定するものである。簡潔に述べると、HDFを96ウェルプレートで培養し、E2/E4又はビヒクル及び2',7'-ジクロロフルオレセインジアセテートで8時間処理し、洗浄し、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリドで処理し、1時間にわたり5分おきに蛍光を定量化する。2つ目は、最も有望なE4/E2濃度をCellROX-488(Thermo Fisher)及び共焦点顕微鏡検査を用いて評価し、E2又はE4の、培養した老化HDFにおける酸化ストレスをin vitroで阻害する能力を定量化及び可視化するものである(Wilkinson et al., 2019)に記載のとおり)。
【0293】
b)ヒト表皮ケラチノサイト
細胞老化への効果
集団レベルでは、老化した表皮ケラチノサイトは増殖能力の低下、高レベルの細胞老化、及び特定の表皮機能(組織再生、終末分化及び皮膚湿潤等)への寄与の低下を示す。この研究では、E4の表皮老化の特定の観点に対する効果を、3人のドナー(女性、60+)からの初代表皮ケラチノサイトにおいて評価する。細胞を、CnT-AG2 VitroAgeケラチノサイト老化培地(CellnTec)において、マトリクス被覆したプレート上で増殖及び継代する。全てのアッセイについて、細胞をE2(10-6 M~10-9 M)、E4(10-6 M~10-9 M)、又はビヒクルで処理し、最大2週間の間評価する。in vitroでのE2/E4の内因性ケラチノサイト老化に対する効果を、a)E2/E4処理を伴った、またそれを伴わない比較増殖曲線の決定、及びb)集団細胞老化を定量化するためのSA-bGAL染色の実行によって、評価する。E2/E4の効果を、皮膚保湿/湿潤に重要なタンパク質(AQP3、CD44、E-カドヘリン等)に関連する遺伝子発現についても評価する(Choi et al., Molecules, 2019)。これらの研究により、E4が老化ヒト表皮細胞における機能改善をもたらす可能性を探求する。
【0294】
期待される結果:
a.研究の生存期:
皮膚厚及びECM沈着のリアルタイム評価により、処理0日目と比較した経時的な改善が示される。
【0295】
b.詳細な組織学的、生化学的、及び生体力学的特性評価:
E4での処理の子宮肥大効果は、E2での処理に比べて制限され、又は完全になくなりさえある。パラフィン包埋組織学により、処理の皮膚の老化に対する有利な効果(表皮及び真皮厚、基底膜、真皮ECM組成)が示される。
【0296】
ECM繊維は成熟度がより低く、弾性繊維の分布は、処理を受けた群において改善を示す。
【0297】
細胞老化は処理群においてより顕著ではなく、皮膚の老化マーカー(例えばCdkn1a、Cdkn2a)の発現はより低いものとなる。
【0298】
生体力学試験により、処理群における破断強度の増加及び生体力学パラメーターの全体的改善が示される。
【0299】
c.in vitro評価:
老化HDFにおいては、処理によりECM産生が促進され、ECM代謝回転が予防され、酸化ストレスが阻害される。
【0300】
老化ケラチノサイトにおいては、処理により増殖能力が改善され、集団細胞老化が低下し、皮膚保湿/湿潤が促進される。
【0301】
上記の試験において、E4はE2より低濃度で効果を示し、又はE4はE2と同等の濃度で同様に有効である。
【0302】
実施例11:閉経期女性における皮膚パラメーターに対するエステトロール治療の効果を評価する臨床研究
エステトロールの閉経期女性への効果及び皮膚パラメーターへの効果を評価するための無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第II相研究(パイロット試験)を行う。
【0303】
この臨床試験の目的は、コラーゲン含有量、保湿、弾性、及び他の特性(例えば皮膚厚、しわ、荒れ、及びボリューム)並びに閉経期ホルモン補充療法(MHT)下での皮膚の組織学的変化に対する臨床的効果を更に評価することである。
【0304】
研究デザイン
この無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第II相研究は、産婦人科学的及び皮膚科学的調査からなり、これらはそれぞれの分野に特化した2つの異なる臨床施設で実施される。
【0305】
対象が適していると見られる場合、3日以内にCRCで皮膚科学的スクリーニングが即時に実施される。対象を2つの治療群の一方に無作為に割り当て、一水和物20 mgのE4又はプラセボを経口で与える。
【0306】
NHの女性には、更に以下のこの治療レジメンに従ってプロゲステロンを与えられなければならない:
1週目~10週目:E4
11週目~12週目:E4とP4の同時投与
13週目~22週目:E4
23週目~24週目:E4とP4の同時投与
【0307】
健康の改善を、Clinical Global Impressionスケール(CGI)を用いて医師により全体的に評価する。
【0308】
皮膚科学的試験には、様々な生物物理学的測定、皮膚状態の評価、及び皮膚生検の分析が含まれる。測定及び評価はベースラインで(スクリーニング)、3ヶ月目及び6ヶ月目の来訪時(皮膚科来訪時)に実施する。皮膚生検はベースライン及び6ヶ月目に採取する。
【0309】
さらに、閉経期特異的な生活の質[MENQoL]及び皮膚科学的QoL(Dermatology Life Quality Index [DLQI])について、対象が回答する(DLQIは皮膚科来訪時毎にCRCで回答)。
【0310】
対象の安全性を、研究期間全体を通して評価する。
【0311】
有効性変数
閉経期ホルモン補充(MHT)に関する有効性変数:
研究所の検査CGI評価による骨代謝回転についての効果の評価
【0312】
さらに、閉経期特異的な生活の質[MENQoL]及び皮膚科学的QoL(Dermatology Life Quality Index[DLQI])について、対象が回答する。
【0313】
皮膚科学的有効性変数:
皮膚科学的調査には、様々な生物物理学的測定、皮膚状態の評価、及び皮膚生検の分析が含まれる。測定及び評価はベースライン(スクリーニング)で、典型的には3ヶ月目及び6ヶ月目の来訪時に行う。皮膚生検は、典型的にはベースライン及び6ヶ月目に採取する。エステトロール(E4)の安全性を、全対象について研究期間全体を通して評価する。健康の改善を、Clinical Global Impressionスケール(CGI)を用いて医師が全般的に評価する。
【0314】
終点:
全体的な皮膚の質感、質及び外観、より詳細には皮膚厚及びコラーゲン含有量に対するE4の効果を分析する。
【0315】
皮膚の保湿、弾性、水分減少、表皮厚、真皮厚、及び皮脂含有量に対するE4の効果を分析する。
【0316】
最上位の皮膚科学的有効性変数は以下のとおりである:
皮膚の荒れの測定。
皮膚の弾性の測定。
【0317】
他は副次的変数と見なされる。
【0318】
副次的な皮膚科学的有効性変数は以下のとおりである:
皮膚の保湿の分析。
コラーゲン含有量の分析。
【0319】
皮膚パラメーターは、以下の非侵襲的皮膚測定を用いて評価する:
コルネオメトリ(Corneometer(商標)CM 825、Courage&Khazaka)による角質層(SC)の保湿
キュトメトリ(Cutometer(商標)MPA 580、Courage&Khazaka)による皮膚の弾性
音波検査(sonography)(DermaScan(商標)C、Cortex technology)による皮膚厚
PRIMOS CR-System内蔵のVISIAによる荒れ、しわ、及びボリュームの分析
【0320】
皮膚測定は、ベースライン及び3ヶ月後及び6ヶ月後に、異なる体の部位で行う:
皮膚生検:上腕(内側)(2)
コルネオメトリ:上腕(内側)(1)
キュトメトリ:上腕(内側)及び下顎骨の右枝部(1)
音波測定:上腕又は前腕(内側)(1)
VISIA皮膚分析:顔面
【0321】
上腕又は前腕(内側)(音波測定用のものと同部位)から、皮膚生検(4 mmパンチ円形生検)を以下の目的で採取する:
ベースライン及び6ヶ月後のコラーゲン含有量の分析、及び上腕内側の真皮厚の測定。分析はCRCで行う。
6ヶ月後のE4の分析
【0322】
皮膚状態の評価には、乾燥のパラメーターを含める(1)。
【0323】
(1)Sator PG, Sator MO, Schmidt JB, Nahavandi H, Radakovic S, Huber JC, Hoenigsmann H. A prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled study on the influence of a hormone replacement therapy on skin aging in postmenopausal women. Climacteric. 2007 Aug;10(4):320-34. doi: 10.1080/13697130701444073。
【0324】
(2)AV Sauerbronn 1, AM Fonseca, VR Bagnoli, PH Saldiva, JA Pinotti. The effects of systemic hormonal replacement therapy on the skin of postmenopausal women. Int J. Gynaecol Obstet. 2000 Jan;68(1):35-41. doi: 10.1016/s0020-7292(99)00166-6
【0325】
さらに、以下も評価可能である:突っ張り感、落屑、弛み、毛細血管拡張症、膨圧、ハリ、弾性、水分含有量、皮脂産生(べたつき)、血管新生、及び色素沈着。さらに、DLQIについて対象が回答する。
【0326】
対象集団:
適格な対象は、40歳~65歳の子宮摘出及び子宮非摘出の閉経期女性とする。
【0327】
安全性変数:
病歴及び産婦人科学的病歴
身体検査
産婦人科学的検査
乳房検査
CRCでの皮膚の皮膚科学的検査
バイタルサイン
ECG
PAPテスト
TVUS(子宮内膜厚について(筋腫又はポリープを除く))
研究所の検査:
下記を目的とする採血
血液学/化学
参加のための脂質/グルコースパラメーター
FSH及びE2(閉経期の未治療状態の確認のため)、及び参加のためのTSH
検査中のコンプライアンスを確認するためのE4
骨代謝回転
事前及び併用投薬について、研究期間全体を通して確認及び観察する。
有害事象(AE)について、研究期間全体を通して確認及び観察する。
【0328】
診断及び参加基準:
対象は、好ましくは、無作為化来訪時に、以下の参加基準を満たす。これらの基準は、スクリーニング期間中に評価される。
1.スクリーニング時に年齢が40歳以上65歳以下の女性;
2.子宮摘出の対象について:子宮摘出がスクリーニング開始の少なくとも6週間より前に行われたはずであることが文書化されている。子宮摘出は、全摘又は亜全摘(すなわち子宮頚部を除去しない)とすることができる;
3.子宮非摘出の対象について:経膣超音波検査(TVUS)で2層の子宮内膜の厚さが4 mm以下;
4.閉経期に伴うVMSの緩和を目的とする治療を求めている;
5.体格指数が18.5 kg/m2以上35.0 kg/m2以下;
6.スクリーニング中又はスクリーニング開始前の9ヶ月以内に行われたマンモグラムで、顕著な疾患の兆候が示されない1;
7.以下のいずれかで定義される閉経後の状態:
a.子宮非摘出の対象について:
自然閉経後少なくとも12ヶ月経過
又は、自然閉経後6ヶ月経過し、血清FSHレベルが40 mIU/ml超であり、かつE2レベルがLC-MSによる測定で20 pg/ml足らず(エストロゲン/プロゲスチン含有薬の休薬後に得た値)
又は、子宮摘出の有無にかかわらず、両側卵巣摘出術2の後6週経過;
b.子宮摘出の対象について:
血清FSHが40 mIU/mL超(エストロゲン/プロゲスチン含有薬の休薬後に得た値(該当する場合)、除外基準18及び20を参照);
又は、両側卵巣摘出術の後6週経過2;
8.来訪1の前の病歴、身体及び産婦人科学的検査、並びに臨床評価に基づいた、責任医師の判断での、良好な身体的及び精神的状態;
9.プロトコルの要件、指示、及びプロトコルに記載の制限事項を理解し遵守できる;
10.検査日誌及び質問票への記入が可能で、協力する。
11.少なくとも1年の非喫煙者(電子たばこを含む)。
【0329】
さらに、皮膚状態を考慮した参加基準は以下のとおりとすることができる:
1.測定用に十分な無毛領域を有する、測定及び生検領域における健康な皮膚。
2.フィッツパトリックの皮膚タイプI~IV。
3.研究中の同一の皮膚ケア製品の使用に協力する。
4.乾癬を有する
5.皮膚脆弱性を有する
【0330】
対象は、以下の除外基準のうちの1つを満たす場合、治療に割り当てられない:
1.スクリーニング来訪の1年より前に診断された場合の基底細胞癌又は非転移性の扁平上皮癌を除く、悪性腫瘍の病歴3;
2.責任医師が、乳房検査及び/又はマンモグラフィーで、乳癌の除去のために追加的臨床試験が必要であろう乳癌と疑われる、何らかの臨床的に顕著な知見を見出した場合(但し、超音波により単純嚢胞と確認された場合は許容される);
3.部分的に子宮摘出及び子宮非摘出の対象における、意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)又はそれ以上(低度扁平上皮内病変[LSIL]、異型扁平上皮細胞は、高度扁平上皮内病変[HSIL][ASC-H]、HSIL異形又は悪性細胞を除外することができない)を用いたPAPテスト5。注:リフレックスヒトパピローマウイルス(HPV)テストを行い、ハイリスク発癌性HPVサブタイプ16及び18について陰性の場合、ASC-USは許容される;
4.子宮非摘出対象について:
a.子宮癌、子宮内膜増殖症の病歴又は存在;不規則増殖期内膜
b.子宮内膜ポリープの存在
c.診断未確定の膣出血又は診断未確定の異常子宮出血
d.子宮内膜アブレーション;
e.責任医師の判断によるエストロゲン及び/又はプロゲスチン療法の使用に禁忌となる子宮/子宮内膜の異常。これには子宮腺筋症又は顕著な筋腫の存在又は病歴が含まれる
5.スクリーニング中の収縮期血圧(BP)が139 mmHg超、拡張期BPが89 mmHg超5;
6.静脈又は動脈血栓塞栓症(例えば表在性又は深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞、狭心症等)の病歴、又はVTEの一親等内の家族の病歴;
7.既知の後天性又は先天性の凝固障害又は異常凝固因子(血栓性素因を含む)の病歴;
8.研究所において、空腹時の糖の値が125 mg/dL超、及び/又は糖化ヘモグロビンの値が7%超6;
9.異常リポ蛋白血症(LDLが190 mg/dL超及び/又はトリグリセリドが300 mg/dL超)7;
10.胆嚢疾患の存在又は病歴(胆嚢摘出した場合は除く);
11.全身性エリテマトーデス;
12.胃バイパス手術を含むあらゆる吸収不良疾患;
13.スクリーニング開始前の12ヶ月間における急性肝疾患の病歴、又は慢性若しくは重度の肝疾患[アラニントランスアミナーゼ(ALT)又はアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)が基準上限値(ULN)の2倍超、ビリルビンがULNの1.5倍超]若しくは肝腫瘍の存在若しくは病歴;
14.慢性又は現在の急性腎機能障害(推定糸球体濾過量60ml/分未満);
15.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎又はC型肝炎血清学が陽性;
16.ポルフィリン症;
17.責任医師の判断での主要な精神疾患(例えば統合失調症、双極性障害等)の診断又は治療;
18.以下のエストロゲン/プロゲスチン含有薬(複数の場合もある)の使用:
a.膣及び顔面の非全身性ホルモン製品(リング、クリーム、ゲル)については、スクリーニング開始の1週間前;
b.全身的効果を有する膣又は経皮エストロゲン又はエストロゲン/プロゲスチン製品については、スクリーニング開始の8週間前;
c.経口エストロゲン及び/又はプロゲスチン製品、及び/又は選択的エストロゲン受容体調節剤療法については、スクリーニング開始の8週間前;
d.子宮内プロゲスチン療法については、スクリーニング開始の8週間前;
e.プロゲスチン植え込み又はエストロゲン単独注射可能な医薬品療法については、スクリーニング開始の3ヶ月前;
f.エストロゲンペレット療法又はプロゲスチン注射可能な医薬品療法については、スクリーニング開始の6ヶ月前;
19.アンドロゲン/DHEA含有薬の使用:
a.経口、外用、膣用又は経皮アンドロゲンについては、スクリーニング開始の8週間前;
b.植え込み可能又は注射可能アンドロゲン療法については、スクリーニング開始の6ヶ月前;
20.スクリーニング開始の2週間前までの、VMSの治療のためのフィトエストロゲン又はブラックコホシュの使用;
21.試験参加中、除外基準18、19及び20に記載の全てのホルモン製品の停止に協力しない;
22.治療が不十分な甲状腺機能障害。スクリーニング時の遊離T4が基準範囲内であれば、低い又は高いTSHの対象も許容される8。
23.調査対象の製品若しくはこの分類の医薬品若しくはその任意の成分に対するアレルギー/不耐の病歴若しくは存在、又は責任医師の見解において対象の参加が禁忌である医薬品若しくは他のアレルギーの病歴;
24.報告された観察に基づいた、責任医師の判断による、スクリーニング開始前の12ヶ月間におけるアルコール又は薬物の乱用(マリファナを含む(合法であっても))又は依存の病歴;
25.スポンサー、又はCROの被雇用者、又は責任医師の直接の監督下にある及び/又は試験に直接関与する被雇用者;
26.責任医師の見解で、対象に危険をもたらすであろう、慢性全身性疾患、不安定な医学的疾病、生命を脅かす疾患、又は現在の悪性腫瘍の既知の又は疑わしい病歴を有する対象;
27.1ヶ月(30日)以内に別の調査対象薬の臨床試験に参加した、又はスクリーニング開始前1ヶ月(30日)以内に調査対象薬を与えられた;
28.何らかの理由で責任医師により不適格と判断される;
29.法的又は規則上の指令により患者が施設に収容されている;
30.臨床試験中の外科手術が予定されている;
【0331】
皮膚状態及び皮膚生検を考慮した更なる除外基準:
31.測定及び生検を妨げるであろう任意の皮膚状態又は着色(例えば、にきび、日焼け、皮膚感染症、過剰色素沈着、入れ墨)の存在;
32.評価を妨げる又は責任医師の裁量で患者を許容できない危険に置く可能性のある、他の活動性皮膚疾患(例えば蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、乾癬)又は活動性皮膚感染症がある患者;
33.試験中に測定領域への強い紫外線曝露(日光又は人工)が予測される。対象は、測定領域を直射日光又は日焼け装置(例えばサンベッド)に曝すことは避けなければならず、試験の継続中、日焼け防止剤を使用すべきである;
34.測定のための来訪(ベースライン、3ヶ月及び6ヶ月の来訪)の前48時間以内の測定領域における皮膚ケア製品の使用;
35.ベースラインの4週間以内の、臨床評価又は生物物理学的測定に効果を及ぼす可能性のある腕又は顔面への任意の局所治療(局所ヒアルロナン、局所免疫調節薬、局所コルチコイド、レチノイドを含むが、これらに限定されない)の使用、又はベースラインの4週間以内の全身性免疫抑制剤又はコルチコステロイドの使用。
36.ケロイド又は肥厚性瘢痕形成に関する既知の素因。
37.リドカイン(又は任意のアミド系麻酔薬)に対するアナフィラキシー又はアレルギーの病歴;
38.スクリーニング時のPAPテスト手順後3日前までに至る前の10日間の、血液凝固及び止血に影響を及ぼし得る任意の治療(抗凝固薬、アセチルサリチル酸等)。低用量アセチルサリチル酸は許容される。
【0332】
3基底細胞癌又は非転移性の皮膚扁平上皮癌であって、対象のスクリーニングの1年より前にいずれかが診断されている場合のみ除外される。
4スクリーニング前の18ヶ月以内、又はスクリーニング時に試験が行われるまでに、書面にて示されるとおり。
5更に5分間~10分間座った後でも値が参加基準を外れる場合、スクリーニング時にBP測定を繰り返すことができる。適格性判断には最後の測定値を用いる。安定した降圧剤レジメンで管理されている軽度~中程度の高血圧がある対象は、全ての参加/除外基準を満たせば、責任医師の裁量で登録可能である。メチルドパ又はクロニジン含有降圧剤投薬を用いる対象は含まれることはない。
6過去6ヶ月間、並びに休薬及びスクリーニング中に評価された空腹時糖及び糖化ヘモグロビンの研究所での値が考慮されなければならない。
7脂質低下療法を用いている対象は、スクリーニングの前少なくとも1ヶ月にわたって安定した用量でなければならず、全ての参加/除外基準を満たす場合は、責任医師の裁量で登録可能である。
8スクリーニング時のTSHが正常範囲外の場合のみ、リフレックスT4試験をスクリーニング時に行うべきである。
【0333】
図面訳
図1
Acellular area covering (% relative to theacellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図2
Acellular area covering (% relative to theacellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図3
Acellular area covering (% relative to theacellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図4
Acellular area covering (% relative to theacellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図5
Acellular area covering (% relative to theacellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図6
Acellular area covering (% relative to theacellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図7
Acellular area covering (% relative to theacellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図8
Acellular area covering (% relative to theacellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図9A
Vehicle ビヒクル
Mouse Fibloblasts マウス線維芽細胞
%closure %閉鎖
Veh ビヒクル
図9B
Vehicle ビヒクル
Human Fibroblasts ヒト線維芽細胞
%closure %閉鎖
V ビヒクル
図10
Vehicle ビヒクル
図11A
Human monocytes ヒト単球
M1 Veh M1ビヒクル
図11B
Mouse BMDM マウスBMDM
M0 Veh M0ビヒクル
M1 Veh M1ビヒクル
図12
Cell seeding 細胞播種
Test item application 試験品適用
Test item or references 試験品又は基準
Quantification of IL-6 and TNFα release by ELISA assays ELISAアッセイによるIL-6及びTNFα放出の定量化
Cell viability assessment by MTS assay MTSアッセイによる細胞生存率評価
図13
Untreated control 非処理対照
no induction 誘導なし
Dexa デキサメタゾン
Induction PMMA and calcium ionophore PMA及びカルシウムイオノフォア誘導
図14A
Mini pump (E2/E4/Veh) ミニポンプ(E2/E4/ビヒクル)
Non-invasive evaluation (e.g. ultrasound) 非侵襲性評価(例えば超音波)
Wounding 創傷
End-point sample collection 終点サンプル回収
Day 日数
図14B
Epidermis 表皮
Dermis 真皮
Subcutis 皮下組織
Non-invasive ultrasound 非侵襲性超音波
Histology & immunohistochem 組織学及び免疫組織化学
Breaking strength & elasticity 破断強度及び弾性
図15A
Control 対照
COL III コラーゲンIII
COL I コラーゲンI
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚粗鬆症の治療または予防に使用される、約10 mg~約25 mgのエステトロール(E4)に相当する
1日量のエステトロール成分を含む、経口投与単位。
【請求項2】
約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する1日量でのエステトロール組成物の経口投与
を含む、
皮膚粗鬆症の治療または予防する方法。
【請求項3】
皮膚粗鬆症の治療または予防のための薬剤の製造のための、約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する経口1日量でのエステトロール成分の使用。
【請求項4】
皮膚粗鬆症の治療または予防が、皮膚の老化の兆候の軽減、皮膚の老化の兆候の逆転、及び/又は皮膚の老化の兆候の低下を含む、請求項1に記載の使用のための経口投与単位、請求項2に記載の方法、又は請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記皮膚の老化が、ホルモンに関連する皮膚の老化、より好ましくはエストロゲン欠乏
等の閉経期ホルモン異常に起因する皮膚の老化である、請求項4に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項6】
閉経期の女性対象における、請求項1~5のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項7】
前記皮膚粗鬆症が、コラーゲンIの発現低下、コラーゲンIIIの発現低下、コラーゲンIVの発現低下、マトリクスメタロプロテイナーゼ1の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ2の発現増加、マトリクスメタロプロテイナーゼ3の発現増加、マトリクスメタロタンパク質Iの発現低下、弾性組織の減少、線維芽細胞によるコラーゲン合成の欠損、ヒアルロン酸の減少、又はこれらの任意の組合せによって特徴付けられる、
請求項1~6
のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項8】
前記
皮膚粗鬆症の治療または予防が、インターロイキン-6の放出を低下させ、好ましくはエストラジオールが使用される対照条件と比較した場合にインターロイキン-6の放出を低下させる、請求項1~7のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項9】
前記
皮膚粗鬆症の治療または予防が、皮膚、例えば表皮におけるケラチノサイト機能及び/又は成長の増加によって得られる、請求項1~8のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項10】
前記
皮膚粗鬆症の治療または予防が、さらに、前記皮膚における線維芽細胞の機能、遊走、及び/又は線維芽細胞の成長、又は刺激された上皮間葉相互作用(EMI)を増加させる、請求項1~9のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項11】
前記
皮膚粗鬆症の治療または予防が、例えば前記皮膚におけるグリコサミノグリカン
の前記レベルの増加及びヒアルロン酸合成酵素活性の増加による皮膚の保湿の増加;皮脂レベルの増加;及び皮膚バリア機能の改善を含む群から選択されるいずれか1つ以上の効果によって特徴付けられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項12】
前記
皮膚粗鬆症の治療または予防が、創傷治癒の改善及び/又は皮膚炎症の低下によって特徴付けられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項13】
前記
皮膚粗鬆症の治療または予防が、例えば皮膚中のROSレベルの低下による酸化ストレスの低下、及び染みの出現等の不均一な皮膚色素沈着の緩和を含む群から選択されるいずれか1つ以上の効果によって特徴付けられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項14】
約14 mg~約21 mgのエステトロール、好ましくは約14 mg~約16 mg又は約19 mg~約21 mgのエステトロールに相当する1日量が投与される、請求項1~
13のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項15】
前記エステトロール成分がエステトロール又はそのエステルであり、好ましくは、前記エステトロール成分はエステトロール一水和物である、請求項1~
14のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項16】
前記投与単位にプロゲストーゲンが含まれていない、又はプロゲストーゲンが使用されていない、又は同時投与されない、請求項1~
15のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項17】
前記経口投与単位中にプロゲストーゲンが存在する、又は、プロゲストーゲンが使用されており、同時投与される、又はエステトロールでの治療後に投与され、好ましくは前記プロゲストーゲンが、プロゲステロン、ドロスピレノン、ノルエチステロン、ノルエチステロン-アセテート(NETA)、ジドロゲステロン、レボノルゲストレル(LNG)、エトノゲストレル、ノルゲストレル、ノメゲストロール、ノメゲストロール-アセテート(NOMAC)、トリメゲストン、ネストロン、ジドロゲステロン、ゲストデン、デソゲストレル、ノルゲスチメート、酢酸シプロテロン、ジエノゲスト、及びクロルマジノンを含む群から選択され、より好ましくは前記プロゲストーゲンがドロスピレノン、プロゲステロン、又はジドロゲステロンを含む群から選択される、請求項1~
16のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項18】
前記プロゲストーゲンが、約0.25 mg~約4 mg、より好ましくは約1 mg~約4mg、例えば約1 mg~約3 mg、約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で前記経口投与単位中に存在する、又は前記プロゲストーゲンが約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で投与される、請求項
17に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項19】
皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持に適した更なる活性成分が前記経口投与単位中に存在する、又は皮膚の質及び/又は皮膚の外観の改善又は維持に適した更なる活性成分が同時投与される又はエステトロールでの治療の前又は後に投与される、請求項
18に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項20】
前記組成物が、経口、舌下、口腔、又は唇投与のための経口投与単位として製剤化されている、請求項
19に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項21】
前記経口投与単位が、1日投与量単位に対応するように製剤化されている、又は、それぞれ1日投与量として投与される、請求項
20に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【国際調査報告】