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特表2024-544620MDM2/MDMXに対抗するC-末端伸長P53活性化因子架橋ペプチド模倣大員環
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  • 特表-MDM2/MDMXに対抗するC-末端伸長P53活性化因子架橋ペプチド模倣大員環 図1
  • 特表-MDM2/MDMXに対抗するC-末端伸長P53活性化因子架橋ペプチド模倣大員環 図2
  • 特表-MDM2/MDMXに対抗するC-末端伸長P53活性化因子架橋ペプチド模倣大員環 図3
  • 特表-MDM2/MDMXに対抗するC-末端伸長P53活性化因子架橋ペプチド模倣大員環 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】MDM2/MDMXに対抗するC-末端伸長P53活性化因子架橋ペプチド模倣大員環
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/00 20060101AFI20241126BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241126BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20241126BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241126BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20241126BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20241126BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20241126BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20241126BHJP
   C07H 19/04 20060101ALN20241126BHJP
   C07D 473/38 20060101ALN20241126BHJP
   C07D 239/553 20060101ALN20241126BHJP
   C07D 233/90 20060101ALN20241126BHJP
   C07D 305/14 20060101ALN20241126BHJP
   C07D 401/04 20060101ALN20241126BHJP
   C07D 491/22 20060101ALN20241126BHJP
   C07D 475/08 20060101ALN20241126BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C07K7/00 ZNA
A61K38/12
A61P43/00 107
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/12
A61K39/395 N
A61K31/203
A61K31/706
A61K31/52
A61K31/192
A61K31/513
A61K31/4164
A61K31/337
A61K31/506
A61K31/4745
A61K31/519
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/85 Z
C07H19/04
C07D473/38
C07D239/553 A
C07D233/90
C07D305/14
C07D401/04
C07D491/22
C07D475/08
C07D487/04 140
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531589
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 US2022050821
(87)【国際公開番号】W WO2023096947
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/283,614
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】524199707
【氏名又は名称】エムエスディー・インターナショナル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】322003499
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス、テクノロジー アンド リサーチ
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ジョシン,フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラモハン,アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス,チャールズ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クリストファー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】カンナン,スリニヴァサラガヴァン
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ,アンソニー・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルマ,チャンドラ・シェカール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,ツ・イン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057DD01
4C057LL25
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA18
4C084BA25
4C084MA01
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB22
4C084ZB26
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA14
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC38
4C086BC43
4C086BC50
4C086CB05
4C086CB07
4C086CB09
4C086CB22
4C086EA11
4C086EA16
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA07
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB22
4C086ZB26
4C086ZC41
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA01
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB22
4C087ZB26
4C087ZC41
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA11
4C206DA17
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA10
4C206NA05
4C206ZB22
4C206ZB26
4C206ZC41
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA31
4H045EA28
4H045FA20
4H045FA50
4H045GA25
(57)【要約】
本明細書中に開示される架橋ペプチド模倣大員環は、アルケンまたはアルキンステープルおよびポリアミノ酸C末端尾部を含む。これらの架橋ペプチド模倣大員環は、MDM2およびMDMX(別名MDM4)への結合が改善されており、プロテアーゼ耐性であり、膜破壊を誘導することなく細胞透過可能であり、MDM2およびMDMXを結合し、それによってMDM2およびMDMXのp53への結合に拮抗することによってp53を細胞内で活性化する。これらのペプチド模倣大員環は、特に化学療法または放射線療法と組み合わせて、抗癌療法において有用であり得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ペプチド模倣大員環であって、
-R-ベータAla-L-T-F-X-E-Y-W-A-Q-R-X-Z-Z-Z-Z-Z-Z-R(配列番号18)(I)、
を含み、式中、
が、アシルおよびC1-12アルキルから選択され、
が、天然または非天然L-アミノ酸残基であり、
が、脂肪族天然または非天然アミノ酸残基であり、
が、-OH、-NH、および1~3個のL-またはD-アミノ酸残基から選択され、前記C末端尾部が酸またはアミド基であり、
およびXの各々が独立して、α-一置換またはα,α-二置換の非天然L-またはD-アミノ酸残基であり、XおよびXが、それらのそれぞれのアルファ炭素から炭化水素結合を介して架橋され、
、Z、Z、Z、ZおよびZの各々が、独立して天然または非天然アミノ酸残基である、架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項2】
がアセチルである、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項3】
がリジン残基およびアジドリジン残基から選択される、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項4】
がシクロブチルアラニン残基である、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項5】
が、-NHおよびL-またはD-アミノ酸残基から選択され、C末端尾部がアミドである、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項6】
およびXの各々が独立して、α-一置換またはα,α-二置換の非天然L-またはD-アミノ酸残基であり、XおよびXが、アルケン炭化水素結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されている、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項7】
およびXの各々が独立して、α-一置換またはα,α-二置換の非天然L-またはD-アミノ酸残基であり、XおよびXが、ジアルキン炭化水素結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されている、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項8】
およびXの各々が、独立して(R)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸残基および(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸残基から選択され、XおよびXが、アルケン結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されている、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項9】
およびXの各々が、独立して(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸残基および(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸残基から選択され、XおよびXが、ジアルキン結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されている、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項10】
前記Z-Z-Z-Z-Z-Z配列が、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、AAEAA(D-Ala)(配列番号20)、EAFAAF(配列番号21)、AAAAAA(配列番号28)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項11】
前記Z-Z-Z-Z-Z-Z配列が、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、EAFAAF(配列番号21)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される、
請求項10に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項12】
が、アセチルであり、
が、リジン残基およびアジドリジン残基から選択され、
が、シクロブチルアラニン残基であり、
が、-NHであり、
およびXの各々が独立して、α-一置換またはα,α-二置換の非天然L-またはD-アミノ酸残基であり、XおよびXが、アルケンまたはジアルキン炭化水素結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されており、
前記Z-Z-Z-Z-Z-Z配列が、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、AAEAA(D-Ala)(配列番号20)、EAFAAF(配列番号21)、AAAAAA(配列番号28)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される、
請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項13】
が、アセチルであり、
が、リジン残基およびアジドリジン残基から選択され、
が、シクロブチルアラニン残基であり、
が、-NHであり、
およびXの各々が、独立して(R)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸残基および(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸残基から選択され、XおよびXが、アルケン結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されており、
前記Z-Z-Z-Z-Z-Z配列が、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、EAFAAF(配列番号21)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される、
請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項14】
が、アセチルであり、
が、リジン残基およびアジドリジン残基から選択され、
が、シクロブチルアラニン残基であり、
が、-NHであり、
およびXの各々が、独立して(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸残基および(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸残基から選択され、XおよびXが、ジアルキン結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されており、
前記Z-Z-Z-Z-Z-Z配列が、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、EAFAAF(配列番号21)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される、
請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項15】
式(IV)を有する、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【化1】
【請求項16】
式(IX)を有する、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【化2】
【請求項17】

式(X)を有する、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【化3】
【請求項18】
式(XIII)を有する、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【化10】
【請求項19】
前記ペプチド模倣大員環が、MDM2およびMDMXの両方を結合し、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイによる測定で検出可能な細胞膜破壊を伴わずに細胞透過可能であり、p53を細胞内で活性化する、請求項1に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項21】
対象における癌を治療する方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項22】
前記癌が、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、および血液組織の癌から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
対象におけるp53および/またはMDM2および/またはMDMXの活性を調節する方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環または請求項20に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項24】
対象におけるp53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗する方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環または請求項20に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項25】
癌を治療するための医薬を調製するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環の使用。
【請求項26】
前記癌が、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、および血液組織の癌から選択される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
癌を治療するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項28】
前記癌が、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、および血液組織の癌から選択される、請求項27に記載の架橋ペプチド模倣大員環。
【請求項29】
癌を治療するための併用療法であって、治療有効量の請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環と、治療有効用量の化学療法剤または放射線とを対象に投与することを含む、併用療法。
【請求項30】
前記化学療法剤もしくは放射線が対象に投与された後に前記架橋ペプチド模倣大員環が投与されるか、前記ペプチド模倣大員環が前記対象に投与された後に前記化学療法剤もしくは放射線が投与されるか、または前記化学療法剤もしくは放射線が、前記ペプチド模倣大員環の投与と同時に前記対象に投与される、請求項29に記載の併用療法。
【請求項31】
癌の治療の併用療法であって、治療有効量の請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環と、治療用量の化学療法剤または放射線とを含む、併用療法。
【請求項32】
前記化学療法剤が、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アリトレチノイン、アザシチジン、アザチオプリン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルモフル、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イキサベピロン、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ロミドプシン、テガフール、テモゾロミド(経口ダカルバジン)、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、ウチデロン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびボリノスタットから選択される、請求項29、30または31に記載の併用療法。
【請求項33】
癌を治療するための併用療法であって、治療有効量の請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環、および治療有効用量のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを含む、併用療法。
【請求項34】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である、請求項33に記載の併用療法。
【請求項35】
前記療法が、治療有効用量の化学療法剤または放射線を前記対象に投与することをさらに含む、請求項34に記載の併用療法。
【請求項36】
癌の治療であって、前記癌を有する対象へ、転写活性化活性を有する野生型p53タンパク質またはp53バリアントをコードする核酸分子を含むベクターを投与すること、続いて治療有効量の請求項1~19のいずれか一項に記載の架橋ペプチド模倣大員環を1回以上投与することを含む、癌の治療。
【請求項37】
前記ベクターがプラスミド、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスである、請求項36に記載の治療。
【請求項38】
前記対象に前記ベクターを投与する前に、または前記対象に前記ベクターを投与した後に、前記対象に化学療法または放射線治療を投与する、請求項37に記載の治療。
【請求項39】
前記療法が、チェックポイント阻害剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項36、37、および38のいずれか一項に記載の治療。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表への言及
本出願は、XML形式で電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。XMLファイルは2022年10月3日に作成され、25345-WO-PCT-SEQLIST-03OCT2022.XMLと名付けられ、ディスク上のサイズは71,000バイトである。
【0002】
結合および/または物理化学的特性が改善された架橋ペプチド模倣大員環が本明細書に開示される。マウス二重微小染色体2(MDM2、別名E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ)およびMDMX(別名MDM4)を結合することができるこれらのペプチド模倣大員環は、膜破壊を誘導することなく細胞を透過することができ、MDM2およびMDMXを結合し、それによってMDM2およびMDMXのp53への結合に拮抗することによってp53を細胞内で活性化することができる。これらの大員環は、特に化学療法および/または放射線療法と組み合わせた抗癌療法として潜在的に有用である。
【背景技術】
【0003】
腫瘍抑制タンパク質p53は、主にDNA転写因子として機能する。それは、癌において一般に抑止され、様々なストレス信号に応答して、細胞周期停止、アポトーシスまたは老化の誘導によって細胞を保護するのに重要な役割を果たす(Lane DP p53,guardian of the genome Nature.1992 Jul 2;358(6381):15-6)。p53の不活性化および腫瘍形成を頻繁にもたらす機構には、p53の負の調節因子である、MDM2およびMDMX(別名MDM4)の発現増加が含まれる。MDM2およびMDMXは両方とも、p53と直接相互作用し、転写に必要な関連する活性化因子、例えばdTAFIIおよびhTAFIIとのその相互作用を妨げることによって、p53の機能を減弱させる。さらに、それらは両方ともE3リガーゼ成分であり、プロテオソーム媒介分解のためにp53を標的化する。MDMXは、MDM2とは異なり、内在性のE3ユビキチンリガーゼ活性を有さない。代わりに、MDMXはMDM2とヘテロ二量体複合体を形成し、それによってMDM2のユビキチン活性を刺激する。その結果、p53活性およびタンパク質レベルは、MDM2およびMDMX過剰発現によって急激に抑制される。したがって、p53とMDM2またはMDMXのいずれか、または両方との相互作用を破壊する阻害剤の開発は、それらがp53分解を防止し、p53依存性転写抗腫瘍応答を回復させ得るので望ましい(Arni-Schmidt、O、M.Lokshin、およびC.Prives.2016.The roles of MDM2 and MDMX in cancer.Annu.Rev.Pathol.11:617-644;Dongsheng Pei,1,2 Yanping Zhang,1,2およびJunnian Zheng1 Regulation of p53:a collaboration between MDM2 and MDMX.Oncotarget.2012 Mar;3(3):228-235)。
【0004】
p53-MDM2/MDMX複合体の構造界面は、MDM2およびMDMXの両方のN末端ドメインの表面の疎水性溝に結合する、p53のN末端トランス活性化ドメイン由来のαヘリックスによって特徴づけられる。p53の3つの疎水性残基、Phe19、Trp23およびLeu26は、この相互作用の重要な決定基であり、MDM2/MDMX相互作用溝中に深く突出している[図1参照]。単離されたp53ペプチドは大部分が無秩序であり、結合するとαヘリックスの高次構造に変形する。これらの相互作用を模倣し、p53の放出と結合するMDM2/MDMXに競合する小分子、ペプチドおよび生物製剤のいくつかの例がある(Tisato V1、Voltan R2、Gonelli A2、Secchiero P2、Zauli G2.MDM2/X inhibitors under clinical evaluation:perspectives for the management of hematological malignancies and pediatric cancer.J Hematol Oncol.2017 Jul 3;10(1):133)。しかしながら、開発された小分子の大部分は、MDM2と比較してp53ペプチド結合溝にいくつかの明確な構造的差異を有するMDMXに対して、ほとんど親和性および活性を示さない。いくつかのMDM2特異的分子が最初の臨床試験に入っているが、それらは患者において用量制限毒性をほとんど満たしている(Tisato V1、Voltan R2、Gonelli A2、Secchiero P2、Zauli G2.MDM2/X inhibitors under clinical evaluation:perspectives for the management of hematological malignancies and pediatric cancer.J Hematol Oncol.2017 Jul 3;10(1):133)。腫瘍におけるMDMXの過剰発現は、おそらくプロテオソーム分解のためにp53を阻害および標的化するMDM2およびMDMXのヘテロ二量体複合体の維持によって、MDM2特異的化合物の有効性を減弱させることが実証されている。MDM2選択的阻害剤はまた、より高いレベルのMDMXを誘導し得る。これは、両方のタンパク質を同時に標的化して、最適な治療応答を達成するためのp53の効率的な活性化を達成することの重要性を強調している。
【0005】
タンパク質間相互作用(PPI)は、ほとんどの生物学的プロセスの中心であり、疾患においてしばしば調節不全になる(Petta I.,Lievens S.,Libert C.,Tavernier J.,De Bosscher K.Modulation of Protein-Protein Interactions for the Development of Novel Therapeutics.Mol.Ther.2015;24:707-718;Macalino S.J.Y.,Basith S.,Clavio N.A.B.,Chang H.,Kang S.,Choi S.Evolution of In Silico Strategies for Protein-Protein Interaction Drug Discovery.Molecules.2018;23:1963)。したがって、PPIは新規創薬の魅力的な治療目標である。しかしながら、典型的には小分子を収容する深いタンパク質空洞とは対照的に、PPI表面は一般に大きく平らであり、これによって、PPIを標的とする小分子阻害剤の開発における成功が制限される(Scott,D.E.,Bayly,A.R.,Abell,C.およびSkidmore,J.(2016)Small molecules,big targets:drug discovery faces the protein-protein interaction challenge.Nat.Rev.Drug Discov.15,533-550)。全PPIの40%が比較的短いペプチドモチーフによって媒介されるという認識から、リガンド-標的同族パートナー間の界面についてオルソステリックが競合するペプチドベースの阻害剤を開発する可能性が生じた(Nevola L,Giralt E.Modulating protein-protein interactions:the potential of peptides.Chem Commun.2015;51:3302-15)。タンパク質リガンドとの関連から取り出される場合、そのようなペプチドは、多くの場合で構造化されておらず、本質的に無秩序であるが、タンパク質標的結合時にそれらの生物学的に妥当な高次構造を達成することができる(Nevola L,Giralt E.Modulating protein-protein interactions:the potential of peptides.Chem Commun.2015;51:3302-15)。しかしながら、細胞内標的の場合、タンパク質分解感受性、(弱い親和性およびオフターゲット効果をもたらす)低い高次構造安定性、および貧弱な細胞透過性によってペプチドモダリティは困難であり得、細胞内標的および/または経口バイオアベイラビリティの実行をさらに制限する(Lau,J.L.;Dunn,M.K.Therapeutic peptides:Historical perspectives,current development trends,and future directions Bioorg.Med.Chem.2017,26,2700-2707;Fosgerau,K.;Hoffmann,T.Peptide therapeutics:current status and future directions Drug Discovery Today 2015,20,122-128;Bakail M.,Ochsenbein F.Targeting protein-protein interactions,a wide open field for drug design.Comptes Rendus Chimie.2016,19,19-27;A.Henninot,J.C.Collins,J.M.Nuss.The current state of peptide drug discovery:back to the future J.Med.Chem.,61(2018),pp.1382-1414;Morrison C.,Constrained peptides’ time to shine?.Nature Reviews Drug Discovery volume 17,531-533頁(2018);Valeur E.,et al.New Modalities for Challenging Targets in Drug Discovery.Angew.Chem.Int.Ed.2017,56,10294-10323;Cary,D.R.;Ohuchi,M.;Reid,P.C.;Masuya,K.Constrained Peptides in Drug Discovery and Development.Yuki Gosei Kagaku Kyokaishi 2017,75,1171-1178)。
【0006】
これらの問題に対処するために、大員環化し、ペプチド骨格を修飾して改善された活性および薬物動態特性を有する分子を得ること、ならびにペプチドをその生物学的に妥当な高次構造に拘束してその標的に結合させることを含む、いくつかの戦略が追求されてきた(Lau,J.L.;Dunn,M.K.Therapeutic peptides:Historical perspectives,current development trends,and future directions Bioorg.Med.Chem.2017,26,2700-2707;Fosgerau,K.;Hoffmann,T.Peptide therapeutics:current status and future directions Drug Discovery Today 2015,20,122-128;Bakail M.,Ochsenbein F.Targeting protein-protein interactions,a wide open field for drug design.Comptes Rendus Chimie.2016,19,19-27;A.Henninot,J.C.Collins,J.M.Nuss.The current state of peptide drug discovery:back to the future J.Med.Chem.,61(2018),pp.1382-1414;Morrison C.,Constrained peptides’ time to shine?Nature Reviews Drug Discovery volume 17,531-533頁(2018);Valeur E.,et al.New Modalities for Challenging Targets in Drug Discovery.Angew.Chem.Int.Ed.2017,56,10294-10323;Cary,D.R.;Ohuchi,M.;Reid,P.C.;Masuya,K.Constrained Peptides in Drug Discovery and Development.Yuki Gosei Kagaku Kyokaishi 2017,75,1171-1178;Vinogradov A.,Macrocyclic Peptides as Drug Candidates:Recent Progress and Remaining Challenges.J.Am.Chem.Soc.,2019,141(10),pp 4167-4181;Sawyer,T.K.Macrocyclic α helical peptide therapeutic modality:A perspective of learnings and challenges.Bioorg.Med.Chem.2018,26,2807-2815)。第1に、ペプチドをそれらの結合した高次構造に向かって偏らせることによって、結合時のエントロピーペナルティが減少し、したがって、結合定数が改善されるだけでなく、望ましくないオフターゲット効果の機会がおそらく減少する。第2に、大員環化は、ペプチド中の重要な骨格および/または側鎖構造部分を修飾することによって、様々な程度のタンパク質分解耐性を付与し得る。第3に、大員環化は、例えば、分子内水素結合の安定性を高めて、別途無極性細胞膜を横切るペプチドの輸送で生じる脱溶媒和ペナルティを低減することによって、細胞透過性を高め得る。記載されているいくつかの環化技術の中で、特にペプチド大員環の望ましい二次構造がヘリカルである場合、アルファメチルアルケニル側鎖など、非タンパク質構成アミノ酸を使用するメタセシスによるステープリングが有効であることが証明されている(Sawyer,T.K.Macrocyclic α helical peptide therapeutic modality:A perspective of learnings and challenges.Bioorg.Med.Chem.2018,26,2807-2815;L.D.Walensky,G.H.Bird Hydrocarbon-stapled peptides:principles,practice,and progress J Med Chem,57(2014),pp.6275-6288;Y.S.Tan,D.P.Lane,C.S.Verma Stapled peptide design:principles and roles of computation Drug Discov Today,21(2016),pp.1642-1653;Ali AM.,et al.Stapled Peptides Inhibitors:A New Window for Target Drug Discovery.Computational and Structural Biotechnology Journal,2019,17,263-281;Klein M.,Stabilized helical peptides:overview of the technologies and its impact on drug discovery.Expert Opinion on Drug Discovery.2017,12,1117-1125;Lerge J et al.Stapled peptides as a new technology to investigate protein-protein interactions in human platelets.Chem Sci,2108,9,4638-4643)。ステープリングは、ヘリックスの結合面に干渉しないように、ペプチド配列に沿った適切な位置に配置される適切な非天然アミノ酸前駆体の組み込みを必要とする。リンカーは、異なるタイプであってもよく、異なる長さに及んでもよく、i,i+3、i,i+4またはi,i+7ステープルをもたらす。それらは主にヘリカル高次構造を安定化するために使用されてきたが、最近の研究はまた、閉環メタセシス(RCM)戦略を非ヘリカルペプチドに適用した(Xu W.,Macrocyclized Extended Peptides:Inhibiting the Substrate-Recognition Domain of Tankyrase.J.Am.Chem.Soc.,2017,139(6),pp 2245-2256;Wiedmann,MM.,et al.Development of Cell-Permeable,Non-Helical Constrained Peptides to Target a Key Protein-Protein Interaction in Ovarian Cancer.Angew.Chem.Int.Ed.2017,56,524-529)。
【0007】
ステープルペプチド戦略を利用して、BCL-2ファミリー-BH3ドメイン(L.D.Walensky,A.L.Kung,I.Escher,T.J.Malia,S.Barbuto,R.D.Wright,G.Wagner,G.L.VerdineおよびS.J.Korsmeyer.Activation of apoptosis in vivo by a hydrocarbon-stapled BH3 helix.Science,2004,305,1466-1470;S.A.Kawamoto,A.Coleska,X.Ran,H.Yi,C.Y.Yang and S.Wang.Design of triazole-stapled BCL9 α-helical peptides to target the β-catenin/B-cell CLL/lymphoma 9(BCL9)protein-protein interaction,J.Med.Chem.,2012,55,1137-1146;K.Takada,Di Zhu,G.H.Bird,K.Sukhdeo,J.-J.Zhao,M.Mani,M.Lemieux,D.E.Carrasco,J.Ryan;D.Horst,M.Fulciniti,N.C.Munshi,W.Xu,A.L.Kung,R.A.Shivdasani,L.D.WalenskyおよびD.R.Carrasco.Targeted disruption of the BCL9/β-catenin complex inhibits oncogenic Wnt signaling.Sci.Transl.Med.,2012,4,148ra117)、β-カテニン-TCF(L Dietrich,B Rathmer,K Ewan,T Bange,S Heinrichs,TC Dale,D Schade,TN Grossmann.Cell permeable stapled peptide inhibitor of Wnt signaling that targets β-catenin protein-protein interactions.Cell Chem.Biol.,24,958-968(2017))、Rab-GTPアーゼ-エフェクター(Spiegel J,Cromm PM,Itzen A,Goody RS,Grossmann TN,Waldmann H.Direct targeting of Rab-GTPase-effector interactions.Angew Chem Int Ed Engl.2014 Feb 24;53(9):2498-503)、ERα-活性化補助因子タンパク質(Xie M.,et al.Structural Basis of Inhibition of ERα-Coactivator Interaction by High-Affinity N-Terminus Isoaspartic Acid Tethered Helical Peptides.J.Med.Chem.,2017,60(21),pp 8731-8740)、キュリン3-BTB(Paola de.,et al.Cullin3-BTB interface:a novel target for stapled peptides.PLoS One.2015 Apr 7;10(4):e0121149)、VDR-活性化補助因子タンパク質(Misawa T.,et al.Structural development of stapled short helical peptides as vitamin D receptor(VDR)-coactivator interaction inhibitors.Bioorg Med Chem.2015 Mar 1;23(5):1055-61)、eIf4E(Lama D.,et al,Structural insights reveal a recognition feature for tailoring hydrocarbon stapled-peptides against the eukaryotic translation initiation factor 4E protein.Chemical Science.2019,10,2489-2500)、ATSP-7041[国際公開第2013123266号を参照、SAH-p53-8[Bernal et al.,Cancer Cell 18:411-422(2010)]、およびp53-MDM2/MDMX(F.Bernal,A.F.Tyler,S.J.Korsmeyer,L.D.WalenskyおよびG.L.Verdine.Reactivation of the p53 tumor suppressor pathway by a stapled p53 peptide.J.Am.Chem.Soc.,2007,129,2456-2457;L.K.Henchey,J.R.Porter,I.GhoshおよびP.S.Arora.High specificity in protein recognition by hydrogen-bond-surrogate a-helices:selective inhibition of the p53/MDM2 complex.Chembiochem.,2010,11,2104-2107;C.J.Brown,S.T.,Quah,J.Jong,A.M.Goh,P.C.,Chiam,K.H.Khoo,M.L.Choong,M.A.Lee,L.Yurlova,K.Zolghadr,T.L.Joseph,C.S.VermaおよびD.P.Lane.Stapled peptides with improved potency and specificity that activate p53.ACS Chem.Biol.,2013,8,506-512;Y.S.Chang,B.Graves,V.Guerlavais,C.Tovar,K.Packman,T.To,K.Olson,K.Kesavan,P.Gangurde,A.Mukherjee,T.Baker,K.Darlak,C.Elkin,Z.Filipovic,F.Z Qureshi,H.Cai,P.Berry,E.Feyfant,X.E.Shi,J.Horstick,A.Annis,N.Fotouhi,T.Manning,H.Nash,L.T.VassilevおよびT.K.Sawyer.Stapled a-helical peptide drug development:a potent dual inhibitor of MDM2 and MDMX for p53-dependent cancer therapy.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,2013,110,E3445-E3455)を含む、治療能力があるいくつかのPPIを阻害してきた。
【0008】
p53-MDM2/MDMXの場合、二重選択的ステープルペプチドであるALRN-6924(Aileron Therapeutics,Inc.)が、第II相臨床試験へ進んでいる(A.Burgess,K.M.Chia,S.Haupt,D.Thomas,Y.HauptおよびE.Lim.Clinical overview of MDM2/Xtargeted therapies.Front.Oncol.,2016,6,1-7;K.Kojima,J.IshizawaおよびM.Andreeff.Pharmacological activation of wild-type p53 in the therapy of leukemia.Exp.Hematol.,2016,44,791-798;V.Tisato,R.Voltan,A.Gonelli,P.SecchieroおよびG.Zauli.MDM2/X inhibitors under clinical evaluation:Perspectives for the management of hematological malignancies and pediatric cancer.J.Hematol.Oncol.,2017,10,133)。プロテアーゼ媒介分解に対するさらなる耐性を提供するための、全D体α-アミノ酸ステープルペプチドも報告されている(Aronia,Pietro et al.P53 activator peptidomimetic macrocycles,国際公開第2020/257153号)。
【0009】
ALRN-6924の例は、ステープルペプチドのクリニックへの前進を促しているが、課題は依然として残っている。これらの中でも、分子中の結合元素および物理化学的特性の正しいセットを操作して最適な安定性、溶解性および細胞活性を提供することは、患者への投与に必要な用量を最小化するために望ましい。さらに、この結合元素および物理化学的特性のセットを操作してオフターゲット活性を最小限に抑えることも、患者に対するオフターゲット関連有害事象のリスクを低減するために望ましい。本明細書に開示されるペプチド模倣大員環は、これらの課題に対処し、予想外の特性を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2013123266号明細書
【特許文献2】国際公開第2020/257153号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Lane DP p53,guardian of the genome Nature.1992 Jul 2;358(6381):15-6 Arni-Schmidt、O、M.Lokshin、およびC.Prives.2016.The roles of MDM2 and MDMX in cancer.Annu.Rev.Pathol.11:617-644
【非特許文献2】Dongsheng Pei、1、2 Yanping Zhang、1、2およびJunnian Zheng1 Regulation of p53:a collaboration between MDM2 and MDMX.Oncotarget.2012 Mar;3(3):228-235
【非特許文献3】Tisato V1、Voltan R2、Gonelli A2、Secchiero P2、Zauli G2.MDM2/X inhibitors under clinical evaluation:perspectives for the management of hematological malignancies and pediatric cancer.J Hematol Oncol.2017 Jul 3;10(1):133
【非特許文献4】Petta I.、Lievens S.、Libert C.、Tavernier J.、De Bosscher K.Modulation of Protein-Protein Interactions for the Development of Novel Therapeutics.Mol.Ther.2015;24:707-718;Macalino S.J.Y.,Basith S.,Clavio N.A.B.,Chang H.,Kang S.,Choi S.Evolution of In Silico Strategies for Protein-Protein Interaction Drug Discovery.Molecules.2018;23:1963
【非特許文献5】Scott,D.E.、Bayly、A.R.、Abell、C.およびSkidmore、J.(2016)Small molecules,big targets:drug discovery faces the protein-protein interaction challenge.Nat.Rev.Drug Discov.15,533-550
【非特許文献6】Nevola L,Giralt E.Modulating protein-protein interactions:the potential of peptides.Chem Commun.2015;51:3302-15
【非特許文献7】Lau、J.L.;Dunn、M.K.Therapeutic peptides:Historical perspectives,current development trends,and future directions Bioorg.Med.Chem.2017,26,2700-2707
【非特許文献8】Fosgerau,K.;Hoffmann,T.Peptide therapeutics:current status and future directions Drug Discovery Today 2015,20,122-128
【非特許文献9】Bakail M.、Ochsenbein F.Targeting protein-protein interactions,a wide open field for drug design.Comptes Rendus Chimie.2016,19,19-27
【非特許文献10】A.Henninot、J.C.Collins、J.M.Nuss.The current state of peptide drug discovery:back to the future J.Med.Chem.,61(2018),pp.1382-1414
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【非特許文献12】Valeur E.,et al.New Modalities for Challenging Targets in Drug Discovery.Angew.Chem.Int.Ed.2017,56,10294-10323
【非特許文献13】Cary,D.R.;Ohuchi,M.;Reid,P.C.;Masuya,K.Constrained Peptides in Drug Discovery and Development.Yuki Gosei Kagaku Kyokaishi 2017,75,1171-1178
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【非特許文献15】Sawyer,T.K.Macrocyclic α helical peptide therapeutic modality:A perspective of learnings and challenges.Bioorg.Med.Chem.2018,26,2807-2815
【非特許文献16】L.D.Walensky,G.H.Bird Hydrocarbon-stapled peptides:principles,practice,and progress J Med Chem,57(2014),pp.6275-6288
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【非特許文献18】Ali AM.,et al.Stapled Peptides Inhibitors:A New Window for Target Drug Discovery.Computational and Structural Biotechnology Journal,2019,17,263-281
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【非特許文献23】L.D.Walensky、A.L.Kung、I.Escher、T.J.Malia、S.Barbuto、R.D.Wright、G.Wagner、G.L.VerdineおよびS.J.Korsmeyer.Activation of apoptosis in vivo by a hydrocarbon-stapled BH3 helix.Science,2004,305,1466-1470
【非特許文献24】S.A.Kawamoto、A.Coleska、X.Ran、H.Yi、C.Y.YangおよびS.Wang.Design of triazole-stapled BCL9 α-helical peptides to target the β-catenin/B-cell CLL/lymphoma 9(BCL9)protein-protein interaction,J.Med.Chem.,2012,55,1137-1146
【非特許文献25】K.Takada、Di Zhu、G.H.Bird、K.Sukhdeo、J.-J.Zhao、M.Mani、M.Lemieux、D.E.Carrasco、J.Ryan;D.Horst、M.Fulciniti、N.C.Munshi、W.Xu、A.L.Kung、R.A.Shivdasani、L.D.WalenskyおよびD.R.Carrasco.Targeted disruption of the BCL9/β-catenin complex inhibits oncogenic Wnt signaling.Sci.Transl.Med.,2012,4,148ra117
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【発明の概要】
【0012】
本明細書中に開示される架橋ペプチド模倣大員環は、アルケンまたはアルキンステープルおよびポリアミノ酸C末端尾部を含む。これらの架橋ペプチド模倣大員環は、MDM2およびMDMX(別名MDM4)への結合が改善されており、プロテアーゼ耐性であり、膜破壊を誘導することなく細胞透過可能であり、MDM2およびMDMXを結合し、それによってMDM2およびMDMXのp53への結合に拮抗することによってp53を細胞内で活性化する。これらのペプチド模倣大員環は、特に化学療法および/または放射線療法と組み合わせて、抗癌療法において有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】p53-MDM2(蛋白質構造データバンク(PDB)ID:1YCR)複合体の結晶構造である(Baek et al.、JACS 134:103-106 92012)。MDM2は表面として示され、結合ペプチドは、棒で強調された相互作用残基L-Phe19、L-Trp23およびL-Leu26を含む漫画として示されている。水素結合相互作用を点線で示す。
図2】https://www.biorxiv.org/content/10.1101/416347v1に従って描かれた、6xA尾部(配列番号28)を有するアジド-ATSP-7041を表すヘリカルホイールである。図は、出現順に配列番号27~28をそれぞれ開示している。
図3】分子動力学シミュレーション中にサンプリングされた、AAFAAF尾部(配列番号16)-MDM2複合体を有するATSP-7041の高次構造のスナップショットである。MDM2は表面/漫画として示されており、結合ペプチドは漫画で示され、強調されたC末端残基Phe14およびPhe17ならびに炭化水素ステープルリンカーがヘリックスの上に連結された棒として示されている。
図4】分子動力学シミュレーション中にサンプリングされた、AAEAAa尾部(配列番号17)-MDM2複合体を有するATSP-7041の高次構造のスナップショットである。MDM2は表面/漫画として示され、結合ペプチドは漫画で示され、Glu14(サーモン)側鎖とMdm2 Arg97(青色)側鎖との間の相互作用が強調されている。炭化水素ステープルリンカーは、ヘリックスの上に接続された棒として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中に開示される架橋ペプチド模倣大員環は、ヒトp53タンパク質の一部分のペプチド模倣類似体に由来し、式(I):
-R-ベータAla-L-T-F-X-E-Y-W-A-Q-R-X-Z-Z-Z-Z-Z-Z-R(配列番号18)(I)、
によって表され、式中、
は、アシルおよびC1-12アルキルから選択され、
は、天然または非天然L-アミノ酸残基であり、
は、脂肪族天然または非天然アミノ酸残基であり、
は、-OH、-NH、および1~3個のL-またはD-アミノ酸残基から選択され、ここでC末端尾部は酸またはアミド基であり、
およびXの各々は独立して、α-一置換またはα,α-二置換の非天然L-またはD-アミノ酸残基であり、XおよびXは、それらのそれぞれのアルファ炭素から炭化水素結合を介して架橋され、
、Z、Z、Z、ZおよびZの各々は、独立して天然または非天然アミノ酸残基である。
【0015】
一実施形態では、Rはアシルである。一実施形態では、Rはアセチルである。
【0016】
一実施形態では、RはC1-12アルキルである。一実施形態では、RはC1-4アルキルである。
【0017】
一実施形態では、Rは、リジン残基、アジドリジン残基およびスレオニン残基から選択される。
【0018】
一実施形態において、Rは、ロイシン残基およびシクロブチルアラニン残基から選択される。
【0019】
一実施形態において、Rは、-OHおよび-NHから選択される。
【0020】
一実施形態では、Rは、C末端尾部がアミドである1~3個のL-またはD-アミノ酸残基から選択される。
【0021】
一実施形態では、Rは、-NH、およびC末端尾部がアミドであるL-またはD-アミノ酸残基から選択される。
【0022】
一実施形態では、Rは-NHである。
【0023】
一実施形態において、XおよびXの各々は独立して、α-一置換またはα,α-二置換の非天然L-またはD-アミノ酸残基である。XおよびXは、アルケンおよびジアルキンから選択される炭化水素結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されている。一実施形態において、結合はアルケン結合である。一実施形態において、結合はジアルキン結合である。
【0024】
一実施形態において、XおよびXの各々は、独立して(R)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸残基および(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸残基から選択される。XおよびXは、アルケン結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されている。
【0025】
一実施形態において、XおよびXの各々は、独立して(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸残基および(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸残基から選択される。XおよびXは、ジアルキン結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されている。
【0026】
一実施形態では、Z、Z、Z、およびZの各々は、独立して天然または非天然アミノ酸残基である。ZおよびZの各々は、独立してアルキルまたは芳香族アミノ酸残基である。一実施形態では、ZおよびZの各々は、フェニルアラニン残基である。
【0027】
一実施形態では、Z、Z、Z、Z、ZおよびZの1つ以上は、独立して天然または非天然のL-またはD-負荷電アミノ酸残基である。
【0028】
一実施形態において、Zは、グルタミン酸残基およびガンマ-カルボキシグルタミン酸(Gla)残基から選択される。
【0029】
一実施形態では、Zはグルタミン酸残基である。
【0030】
一実施形態では、Zはアルファ-メチルグルタミン酸残基である。
【0031】
一実施形態では、Z-Z-Z-Z-Z-Z配列は、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、AAEAA(D-Ala)(配列番号20)、EAFAAF(配列番号21)、AAAAAA(配列番号28)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される。
【0032】
一実施形態では、Z-Z-Z-Z-Z-Z配列は、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、EAFAAF(配列番号21)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される。
【0033】
式(I)の架橋ペプチド模倣大員環の一実施形態において:
は、アセチルであり、
は、リジン残基およびアジドリジン残基から選択され、
は、シクロブチルアラニン残基であり、
は、-NHであり、
およびXの各々は独立して、α-一置換またはα,α-二置換の非天然L-またはD-アミノ酸残基であり、XおよびXは、アルケンまたはジアルキン炭化水素結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されており、
-Z-Z-Z-Z-Z配列は、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、AAEAA(D-Ala)(配列番号20)、EAFAAF(配列番号21)、AAAAAA(配列番号28)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される。
【0034】
式(I)の架橋ペプチド模倣大員環の一実施形態において:
は、アセチルであり、
は、リジン残基およびアジドリジン残基から選択され、
は、シクロブチルアラニン残基であり、
は、-NHであり、
およびXの各々は、独立して(R)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸残基および(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸残基から選択され、XおよびXは、アルケン結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されており、
-Z-Z-Z-Z-Z配列は、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、EAFAAF(配列番号21)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される。
【0035】
式(I)の架橋ペプチド模倣大員環の一実施形態において:
は、アセチルであり、
は、リジン残基およびアジドリジン残基から選択され、
は、シクロブチルアラニン残基であり、
は、-NHであり、
およびXの各々は、独立して(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸残基および(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸残基から選択され、XおよびXは、ジアルキン結合を介してそれらのそれぞれのアルファ炭素から架橋されており、
-Z-Z-Z-Z-Z配列は、AAFAAF(配列番号16)、AAFA(アルファ-Me-Glu)F(配列番号19)、EAFAAF(配列番号21)およびAAAAA(D-Ala)(配列番号22)から選択される。
【0036】
本明細書に開示されるZ-Z-Z-Z-Z-Z配列は、MDM2および/またはMDMXへの結合を改善することができる。一実施形態では、Z-Z-Z-Z-Z-Z配列は、p53細胞レポーター遺伝子アッセイにおける細胞活性をさらに改善するように修飾される。
【0037】
本明細書に開示される架橋ペプチド模倣大員環は、MDM2およびMDMXを結合し、細胞膜への検出可能な破壊を誘導することなく細胞透過可能であり、p53を細胞内で活性化する。それらは、p53のMDM2への結合および/またはp53のMDMXへの結合を妨害し、それによって機能性p53を開放し、その破壊を阻害する。
【0038】
本明細書中に記載の架橋ペプチド模倣大員環は、p53の望ましくない低レベルもしくは低活性を特徴とする癌および他の障害を治療するために、ならびに/またはMDM2もしくはMDMXの望ましくない高レベルの活性を特徴とする癌および他の障害を治療するために有用であり得る。それらはまた、不適切な細胞周期停止およびアポトーシスの状態、例えば神経変性および免疫不全に加えて、癌および自己免疫など、過剰な細胞の生存および増殖の状態につながるp53転写経路の調節妨害に関連する障害を治療するために有用であり得る。
【0039】
これらの架橋ペプチド模倣大員環は、p53のMDM2および/またはMDMXへの結合に拮抗するペプチドの一部分のアルファヘリカル二次構造を安定化する分子内架橋を一緒に形成する、2つの修飾アミノ酸を含む。架橋は「ステープル」と呼ばれ、架橋ペプチドは「ステープルペプチド」と呼ばれる。
【0040】
架橋ペプチド模倣大員環の一実施形態では、XまたはXの位置の各α-一置換またはα,α-二置換アミノ酸残基は、1つまたは2つのα-炭素結合反応性基を含み、第1のα-一置換またはα,α-二置換アミノ酸残基の反応性基は、第2のα-一置換またはα,α-二置換アミノ酸残基の反応性基と反応して架橋剤を形成することができる。一実施形態では、反応性基は末端オレフィン基を含む。別の実施形態では、反応性基は末端アルキン基を含む。
【0041】
架橋ペプチド模倣大員環の一実施形態では、非天然アミノ酸残基は、位置Xでは(R)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸残基であり、位置Xでは(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸残基であり、ステープルは、閉環メタセシスによって得られるオレフィンである。
【0042】
架橋ペプチド模倣大員環の一実施形態では、非天然アミノ酸は、位置Xでは(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸残基であり、位置Xでは(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸残基であり、ステープルは、グレーサーカップリングによって得られるオレフィンである。
【0043】
一実施形態では、架橋ペプチド模倣大員環は、式(IV):
【化1】
で表される配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0044】
一実施形態では、架橋ペプチド模倣大員環は、式(IX):
【化2】
で表される配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
【0045】
一実施形態では、架橋ペプチド模倣大員環は、式(X):
【化3】
で表される配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。
【0046】
一実施形態では、架橋ペプチド模倣大員環は、式(XIII):
【化4】
で表される配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む。
【0047】
一実施形態において、架橋ペプチド模倣大員環は、MDM2およびMDMXの両方を結合し、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイによる測定で検出可能な細胞膜破壊を伴わずに細胞透過可能であり、p53を細胞内で活性化する。
【0048】
一実施形態では、架橋ペプチド模倣大員環は、MDM2およびMDMXの両方を結合し、p53を細胞内で活性化し、カウンタースクリーニングアッセイにおいて選択的である。
【0049】
一実施形態において、架橋ペプチド模倣大員環は、MDM2およびMDMXの両方を結合し、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイによる測定で検出可能な細胞膜破壊を伴わずに細胞透過可能であり、p53を細胞内で活性化し、カウンタースクリーニングアッセイにおいて選択的である。
【0050】
基準大員環1(配列番号1)および大員環2~13(配列番号2~13)のアミノ酸配列を表1に列挙する。
【表1】
前述のペプチド模倣大員環のいずれか1つを含む、構造式(I)の架橋ペプチド模倣大員環を対象に投与することを含む、対象におけるp53および/またはMDM2および/またはMDMXの活性を調節する方法も本明細書中に開示される。
【0051】
さらに、前述のペプチド模倣大員環のいずれか1つを含む、構造式(I)の架橋ペプチド模倣大員環を対象に投与することを含む、対象におけるp53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗する方法が本明細書中に開示される。
【0052】
さらに、癌の治療のための前述のペプチド模倣大員環のいずれか1つを含む、構造式(I)の架橋ペプチド模倣大員環を本明細書中に開示する。例えば、癌を有する対象において癌を治療するための方法は、前述の架橋ペプチド模倣大員環のいずれか1つを対象に投与することを含む。
【0053】
一実施形態では、癌は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、および血液組織の癌から選択される。
【0054】
癌を治療するための併用療法であって、前述のペプチド模倣大員環のいずれか1つを含む、治療有効量の構造式(I)の架橋ペプチド模倣大員環と、治療有効量の化学療法剤または放射線とを対象に投与することを含む、併用療法を本明細書中にさらに開示する。一実施形態において、化学療法剤もしくは放射線が対象に投与された後にペプチド模倣大員環が投与されるか、ペプチド模倣大員環が対象に投与された後に化学療法剤もしくは放射線が投与されるか、または化学療法剤もしくは放射線が、ペプチド模倣大員環の投与と同時に対象に投与される。したがって、一実施形態では、癌を治療するための併用療法は、前述のペプチド模倣大員環のいずれか1つの治療有効量の架橋ペプチド模倣大員環と、治療用量の化学療法剤または放射線とを含む。
【0055】
一実施形態では、癌を治療するための併用療法は、前述のペプチド模倣大員環のいずれか1つを含む、治療有効量の構造式(I)の架橋ペプチド模倣大員環と、治療有効量のチェックポイント阻害剤とを対象に投与することを含む。特定の態様では、チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である。さらなる態様では、治療は、治療有効用量の化学療法剤または放射線を対象に投与することをさらに含む。
【0056】
一実施形態では、癌の治療は、癌を有する対象への、転写活性化活性を有する野生型p53タンパク質またはp53バリアントをコードする核酸分子を含むベクターの投与、続いて前述のペプチド模倣大員環のいずれか1つを含む、治療有効量の構造式(I)の架橋ペプチド模倣大員環の1回以上の投与を含む。一実施形態では、ベクターは、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアデノ随伴ウイルスである。一実施形態では、対象にベクターを投与する前に、または対象にベクターを投与した後に、対象に化学療法または放射線治療を投与する。一実施形態では、療法は、対象にベクターを投与する前に、または対象にベクターを投与した後に、対象にチェックポイント阻害剤を投与することを含む。チェックポイント阻害剤は、化学療法もしくは放射線治療を対象に投与する前に、または化学療法もしくは放射線治療を対象に投与した後に投与され得る。
【0057】
一実施形態では、化学療法剤は、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アリトレチノイン、アザシチジン、アザチオプリン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルモフル、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イキサベピロン、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ロミドプシン、テガフール、テモゾロミド(経口ダカルバジン)、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、ウチデロン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびボリノスタットから選択される。
【0058】
一実施形態では、前述のペプチド模倣大員環のいずれか1つと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物が本明細書に開示される。一実施形態では、ペプチド模倣大員環は、配列番号4、配列番号9、配列番号10および配列番号13から選択される。
【0059】
定義
「アシル」は、カルボン酸からヒドロキシル基を除去することによって形成される有機ラジカルのクラス、RCO-を指す。一実施形態では、RはC1-12アルキルである。一実施形態では、RはC1-4アルキルである。一実施形態では、アシルはアセチルである(すなわち、Rはメチルである)。
【0060】
「投与する」および「投与すること」は、少なくとも1つのペプチド模倣大員環、または少なくとも1つのペプチド模倣大員環を含む医薬組成物を対象に導入することを意味するために使用される。投与が治療を目的とする場合、物質は、腫瘍などの異常な細胞増殖の診断時または診断後に提供される。この物質の治療的投与は、腫瘍の細胞成長または異常な細胞成長を阻害するのに役立つ。
【0061】
「アルキル」は、1~18個の炭素原子(C1-18アルキル)、より具体的には、1~12個の炭素原子(C1-12アルキル)、またはさらにより具体的には、1~4個の炭素原子(C1-4アルキル)の分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基および直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を指す。一実施形態では、アルキルはメチルである。
【0062】
「α-アミノ酸」または単に「アミノ酸」という用語は、側鎖(R基)および水素原子に結合したアミノ基、およびα-炭素と呼ばれる炭素に結合したカルボキシル基の両方を含む分子を指し、(R)および(S)α-アミノ酸について示される式:
【化5】
によって表され得る。
【0063】
一般に、L-アミノ酸は、(R)配置を有するシステイン、およびアキラルであるグリシンを除いて、(S)配置を有する。本明細書に開示される全D体ペプチドに適したα-アミノ酸には、天然アミノ酸およびその類似体、ならびに有機合成または他の代謝経路によって調製された非天然アミノ酸(L、Dまたはアキラルであり得るα,α-二置換アミノ酸を除く)のD異性体のみが含まれる。文脈がそうでないことを具体的に示さない限り、アミノ酸という用語は、本明細書で使用される場合、アミノ酸類似体を含むことが意図される。本明細書で使用される場合、Dアミノ酸は上付き文字「D」(例えば、Leu)で示され、Lアミノ酸は「L」(例えば、L-Leu)で示されるか、またはL識別子なし(例えば、Leu)で示される。
【0064】
「α、α-二置換アミノ酸」という用語は、2つの天然もしくは非天然アミノ酸側鎖、またはそれらの組み合わせに結合しているα-炭素に結合したアミノ基およびカルボキシル基の両方を含む分子または部分を指す。例示的なα,α-二置換アミノ酸を以下に示す。これらのα,α-二置換アミノ酸は、末端オレフィン反応性基を有する側鎖を含む。
【化6】
「アミノ酸類似体」または「非天然アミノ酸」は、アミノ酸と構造的に類似しており、ペプチド模倣大員環の形成においてアミノ酸を置換することができる分子を指す。アミノ酸類似体には、アミノ基とカルボキシル基(例えば、α-アミノ、β-カルボキシ酸)との間の1つ以上の追加のメチレン基の含有、またはアミノ基もしくはカルボキシ基の同様の反応性基による置換(例えば、第一級アミンの第二級もしくは第三級アミンによる置換、またはカルボキシ基のエステルによる置換)を除いて、限定されないが、本明細書で定義されるアミノ酸と構造的に同一である化合物が含まれる。
【0065】
「アミノ酸側鎖」は、アミノ酸中のα-炭素に結合した部分を指す。例えば、アラニンのアミノ酸側鎖はメチルであり、フェニルアラニンのアミノ酸側鎖はフェニルメチルであり、システインのアミノ酸側鎖はチオメチルであり、アスパラギン酸のアミノ酸側鎖はカルボキシメチルであり、チロシンのアミノ酸側鎖は4-ヒドロキシフェニルメチル、などである。他の非天然アミノ酸側鎖は、例えば、自然に発生するもの(例えば、アミノ酸代謝産物)または合成的に作られたもの(例えば、α,α-二置換アミノ酸)も含む。
【0066】
「封鎖基」は、主題のペプチド模倣大員環のポリペプチド鎖のカルボキシ末端またはアミノ末端のいずれかに存在する化学的部分を指す。カルボキシ末端の封鎖基には、未修飾カルボン酸(すなわち、-COOH)または置換基を有するカルボン酸が含まれる。例えば、カルボキシ末端をアミノ基で置換して、C末端にカルボキサミドを得ることができる(すなわち、-CONH)。様々な置換基には、これらに限定されないが、ペグ化二級アミンを含む一級および二級アミンが含まれる。アミノ末端の封鎖基には、未修飾アミン(すなわち-NH)、または置換基を有するアミンが含まれる。例えば、アミノ末端をアシル基で置換して、N末端にカルボキサミドを得ることができる。様々な置換基には、限定されないが、C-Cカルボニル、C-C30カルボニル、およびペグ化カルバメートを含む置換アシル基が含まれる。
【0067】
「共投与」は、少なくとも2つの異なる生物学的に活性な化合物の各々が、生物学的活性のそれぞれの期間が重複する時間枠の間に対象に投与されることを意味する。したがって、この用語は、連続的であると同時に共通広範の(co-extensive)投与を含む。共投与が使用される場合、投与経路は同じである必要はない。生物学的に活性な化合物には、ペプチド模倣大員環、ならびに癌の治療に有用な他の化合物、例えば、これらに限定されないが、ビンカアルカロイド、核酸阻害剤、白金剤、インターロイキン-2、インターフェロン、アルキル化剤、代謝拮抗物質、コルチコステロイド、DNA挿入剤、アントラサイクリンおよび尿素などの薬剤を含む。本明細書中に例示されるものに加えて、具体的な薬剤の例としては、ヒドロキシ尿素、5-フルオロウラシル、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダカバジン、シタラビン、ブスルファン、チオテパ、ロムスチン、メクロレハミン、シクロホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、クロラムブシル、カルムスチン、6-チオグアニン、メトトレキサートなどが挙げられる。当業者は、2つの異なるペプチド模倣大員環が対象に共投与され得ること、またはペプチド模倣大員環および薬剤、例えば上記に提示される薬剤の1つが対象に共投与され得ることを理解するであろう。
【0068】
本明細書で使用される「併用療法」は、第1の治療剤および第2の治療剤を個体に連続的にまたは同時に投与することを含む、ヒトまたは動物個体の治療を指す。一般に、第1および第2の治療剤は、混合物としてではなく、個別に個体に投与される。しかしながら、第1および第2の治療剤が投与前に混合される実施形態が存在し得る。
【0069】
本明細書で使用される「保存的置換」は、アミノ酸を類似の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格高次構造および剛性など)を有する他のアミノ酸で置換することを指し、それにより、タンパク質の生物学的活性を変化させることなく頻繁に変更を行うことができる。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(第4版)(1987)を参照のこと)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。例示的な保存的置換を表2に示す。
【表2】
「用量」、「投与量」、「単位用量」、「単位投与量」、「有効量」および関連する用語は、所望の治療効果(例えば、癌細胞の死)をもたらすように計算された所定量の有効成分(例えば、ペプチド模倣大員環)を含有する物理的に別個の単位を指す。これらの用語は、治療有効量、および本明細書に開示される方法の記載された目的を達成するのに十分な量と同義である。
【0070】
「ヘリカル安定性」は、円偏光二色性またはNMRによって測定される、ペプチド模倣大員環のステープルまたはステッチによるα-ヘリカル構造の維持を指す。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書中に開示されるペプチド模倣大員環は、円偏光二色性によって測定すると、対応する非架橋大員環と比較して少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍または2倍のα-ヘリシティの増加を示す。
【0071】
「大員環」は、少なくとも9個の共有結合した原子によって形成された輪または環を含む化学構造を有する分子を指す。
【0072】
本明細書で使用される「大員環化試薬」または「大員環形成試薬」は、2つの反応性基間の反応を媒介することによって本発明のペプチド模倣大員環を調製するために使用され得る、任意の試薬を指す。反応性基は、例えばアジドおよびアルキンであってもよく、この場合、大員環化試薬としては、限定されないが、Cu試薬、例えばCuBr、CuIまたはCuOTfなどの反応性Cu(I)種を提供する試薬、ならびにアスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムなどの還元剤の添加によってその場で活性Cu(I)試薬に変換され得るCu(II)塩、例えばCu(COCH、CuSOおよびCuClが挙げられる。
【0073】
大員環化試薬は、例えば、Cp*RuCl((PPh、[Cp*RuCl]などの当技術分野で公知のRu試薬、または反応性Ru(II)種を提供し得る他のRu試薬をさらに含み得る。他の場合、反応性基は末端オレフィンである。そのような実施形態では、大員環化試薬または大員環形成試薬はメタセシス触媒であり、限定されないが、安定化された後期遷移金属カルベン錯体触媒、例えば第VIII族遷移金属カルベン触媒を含む。例えば、このような触媒は、+2の酸化状態、16の電子数および五配位を有するRuおよびOs金属中心である。さらなる触媒は、Grubbs et al.、「Ring Closing Metathesis and Related Processes in Organic Synthesis」Acc.Chem.Res.1995,28,446-452、および米国特許第5,811,515号に開示されている。さらに他の場合では、反応性基はチオール基である。そのような実施形態では、大員環化試薬は、例えば、ハロゲン基などの2つのチオール反応性基で官能化されたリンカーである。
【0074】
「MDM2」は、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼとしても知られるマウス二重微小染色体2タンパク質を指す。MDM2は、ヒトにおいてMDM2遺伝子によってコードされるタンパク質である。MDM2タンパク質は、p53腫瘍抑制因子の重要な負の調節因子である。MDM2タンパク質は、p53腫瘍抑制因子のN末端トランス活性化ドメイン(TAD)を認識するE3ユビキチンリガーゼとしても、p53転写活性化の阻害剤としても機能する。本明細書中で使用される場合、用語MDM2は、ヒトホモログを指す。GenBankアクセッション番号228952;GI:228952を参照のこと。
【0075】
「MDMX」または「MDM4」は、MDM2と有意な構造類似性を示すタンパク質である、マウス二重微小染色体Xまたは4を指す。MDMXまたはMDM4は、MDMXまたはMDM4タンパク質のN末端領域に位置する結合ドメインを介してp53と相互作用する。本明細書中で使用される場合、用語MDMXまたはMDM4は、同じヒトホモログを指す。GenBankアクセッション番号88702791;GI:88702791を参照のこと。
【0076】
大員環または大員環形成リンカーと組み合わせて本明細書で使用される「メンバー」は、大員環を形成するかまたは形成することができる原子を指し、置換基または側鎖原子を除外する。類推して、シクロデカン、1,2-ジフルオロ-デカンおよび1,3-ジメチルシクロデカンはすべて、水素またはフルオロ置換基またはメチル側鎖が大員環の形成に関与しないので、10員大員環とみなされる。
【0077】
「天然アミノ酸」は、自然に合成されたペプチドに一般的に見られ、一文字略記号A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVで知られている20個のアミノ酸のいずれか1つを指す。
【0078】
「非必須」アミノ酸残基は、ポリペプチドの必須の生物学的または生化学的活性(例えば、受容体結合または活性化)を消失または実質的に変化させることなく、ポリペプチドの野生型配列から変更され得る残基である。「必須」アミノ酸残基は、ポリペプチドの野生型配列から変更されると、ポリペプチドの必須の生物学的または生化学的活性の消失または実質的な消失をもたらす残基である。
【0079】
「ペプチド模倣大員環」または「架橋ポリペプチド」は、複数のペプチド結合によって連結された複数のアミノ酸残基、および同じ分子内の第1の天然または非天然アミノ酸残基(または類似体)と第2の天然または非天然アミノ酸残基(または類似体)との間に大員環を形成する、少なくとも1つの大員環形成リンカーを含む化合物を指す。ペプチド模倣大員環は、大員環形成リンカーが第1のアミノ酸残基(または類似体)のα-炭素を第2のアミノ酸残基(または類似体)のα-炭素に連結する実施形態を含む。ペプチド模倣大員環は、1つ以上のアミノ酸残基および/またはアミノ酸類似体残基間に1つ以上の非ペプチド結合を含んでもよく、大員環を形成する何らかに加えて、1つ以上の非天然アミノ酸残基またはアミノ酸類似体残基を含んでもよい。「対応する非架橋ポリペプチド」は、ペプチド模倣大員環との関連で言及される場合、ステープルまたはステッチの架橋に関与するアミノ酸を除いて、ペプチド模倣大員環と同じアミノ酸配列のポリペプチドに関すると理解される。
【0080】
特に明記しない限り、本明細書で言及されるペプチド模倣大員環および構造は、1つ以上の同位体濃縮原子の存在のみで異なるペプチド模倣大員環を含むことも意味する。例えば、水素がデューテリウムもしくはトリチウムで置換されている、または炭素原子が13Cもしくは14C濃縮炭素で置換されている、または炭素原子がケイ素で置換されている本発明の構造を有するペプチド模倣大員環は、本開示の範囲内である。本明細書中に開示されるペプチド模倣大員環はまた、そのようなペプチド模倣大員環を構成する原子の1つ以上において非天然比率の原子同位体を含有し得る。例えば、ペプチド模倣大員環は、例えばトリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射性標識され得る。本発明のペプチド模倣大員環のすべての同位体変種は、放射性であろうとなかろうと、本開示の範囲内に包含される。
【0081】
「薬学的に許容される誘導体」は、本明細書に開示されるペプチド模倣大員環の任意の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、プロドラッグまたは他の誘導体を意味し、それらを個体に投与すると、本明細書に開示されるペプチド模倣大員環を(直接的または間接的に)提供することができる。特に好ましい薬学的に許容される誘導体は、個体に投与した場合に(例えば、経口投与された本明細書中に開示されるペプチド模倣大員環の血液中への吸収を増大させることによって)本明細書に開示されるペプチド模倣大員環のバイオアベイラビリティを高めるか、または親種と比較して生体コンパートメント(例えば、脳またはリンパ系)への活性化合物の送達を増加させる誘導体である。いくつかの薬学的に許容される誘導体は、胃腸粘膜を越える水溶性または能動輸送を増加させる化学基を含む。
【0082】
「ポリペプチド」は、共有結合(例えば、アミド結合)によって連結された2つ以上の天然または非天然アミノ酸を包含する。本明細書に記載のポリペプチドは、全長タンパク質(例えば、完全にプロセシングされたタンパク質)ならびにより短いアミノ酸配列(例えば、天然タンパク質のフラグメントまたは合成ポリペプチドフラグメント)を含む。
【0083】
「安定性」は、円偏光二色性、NMRもしくは別の生物物理学的計測によって測定される、本発明のペプチド模倣大員環による溶液中の定義された二次構造の維持、またはインビトロもしくはインビボでのタンパク質分解に対する耐性を指す。本発明において企図される二次構造の非限定的な例は、αヘリックス、βターン、およびβプリーツシートである。
【0084】
本明細書で使用される「治療有効量」または「治療有効用量」は、治療される対象において所望の効果を達成するのに十分な特定の物質の量を指す。例えば、これは、p53を、MDM2およびMDMXへのその結合を阻害することによって活性化するのに必要な本発明のペプチド模倣大員環の量であり得る。それはまた、癌を治療するために対象に一般的に投与される、癌を有する対象に投与される化学療法剤または放射線の量または線量を指し得る。
【0085】
本明細書で使用される「治療する」または「治療すること」は、治療剤、例えば本発明のペプチド模倣大員環のいずれかを含有する組成物を、薬剤が治療活性または予防活性を有する1つ以上の疾患症状を有するか、または疾患を有すると疑われる対象または患者に、内部的または外部的に投与することを意味する。典型的には、薬剤は、治療された対象または集団における1つ以上の疾患症状を、任意の臨床的に測定可能な程度でそのような症状の退縮を誘導することによって、またはそのような症状の進行を阻害することによって緩和するのに有効な量で投与される。任意の特定の疾患症状を緩和するのに有効な治療剤の量は、要因、例えば患者の疾患状態、年齢および体重、ならびに対象において所望の応答を誘発する薬物の能力に応じて変化し得る。疾患症状が緩和されたかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価するために医師または他の熟練したヘルスケア提供者によって通常使用される、任意の臨床測定によって評価することができる。この用語はさらに、障害に関連する症状の発症の延期および/またはそのような障害の症状の重症度の低下を含む。この用語はさらに、既存の無制御または望ましくない症状を改善すること、さらなる症状を予防すること、およびそのような症状の根本的な原因を改善または予防することを含む。したがって、これらの用語は、有益な結果が、障害、疾患もしくは症状を有するか、またはそのような障害、疾患もしくは症状を発症する可能性を有するヒトまたは動物の対象に与えられたことを意味する。
【0086】
本明細書で使用される場合、ヒトまたは獣医学的個体に適用される「治療」は、治療的処置を指し、本発明のペプチド模倣大員環による治療を必要とするヒトまたは動物個体と本発明のペプチド模倣大員環との接触を包含する。
【0087】
P53活性化ペプチド模倣大員環
本発明の架橋ペプチド模倣大員環は、公知のペプチド模倣大員環、例えば国際公開第2020112868号に開示されているものと比較して改善された特性を有する。本発明のペプチド模倣大員環はまた、以下の参考文献においてより詳細に開示される大員環よりも改善された特性を有する:A.Burgess,K.M.Chia,S.Haupt,D.Thomas,Y.HauptおよびE.Lim.Clinical overview of MDM2/Xtargeted therapies.Front.Oncol.,2016,6,1-7;K.Kojima,J.IshizawaおよびM.Andreeff.Pharmacological activation of wild-type p53 in the therapy of leukemia.Exp.Hematol.,2016,44,791-798;V.Tisato,R.Voltan,A.Gonelli,P.SecchieroおよびG.Zauli.MDM2/X inhibitors under clinical evaluation:Perspectives for the management of hematological malignancies and pediatric cancer.J.Hematol.Oncol.,2017,10,133。一実施形態において、本発明の大員環は、優れた結合能力を有する。別の実施形態では、本発明の大員環は、改善された物理化学的特性を有する。
【0088】
本発明の架橋ペプチド模倣大員環は、C末端尾部で結合する追加のMDM2および/またはMDMX(4)を有することができる。特に、大部分がヘリカルC末端尾部に関連する親油性アミノ酸残基による位置14および17の修飾は、親和性および/または細胞活性をさらに高めることができる。例えば、大員環3(配列番号3)の位置14および17においてアラニンをフェニルアラニンで置換すると、大員環4(配列番号4)が生じる。この置換により、0%血清での細胞活性が大員環3と比較してさらに改善される。大員環4は、円偏光二色性(CD)において、大員環3と比較して同様の全体的なヘリカル性向を示す。
【0089】
一実施形態において、大員環3の位置14におけるアラニンをグルタミン酸で置換すると、大員環3よりも改善された細胞活性を示す大員環11(配列番号11)が生じる。この改善は、MDM2アルギニン97との相互作用によるものであると考えられる。
【0090】
尾部でのさらなる結合を分子中の物理化学的特性の正しいセットで操作して、安定性、溶解性、および/または細胞活性を改善することができる。一実施形態では、負に荷電したアルファアミノ酸残基を位置12および16に導入することにより、ペプチドの両親媒性および全体的な特性を改善することができる。例えば、大員環4(配列番号4)の位置16におけるアラニンをアルファ-メチルグルタミン酸で置換すると、大員環4と比較して10%血清においてさらに改善された細胞活性を有する大員環9(配列番号9)が生じる。大員環9はまた、大員環5および7の近い類似体と比較して、153uMの良好な溶解性を示す。
【0091】
大員環12(配列番号12)において位置14および17のフェニルアラニンを位置12のグルタミン酸と組み合わせると、大員環13(配列番号13)が得られ、これは大員環12および大員環2と比較して、さらに改善した結合および細胞活性(0%および10%血清の両方)を示す。さらに、大員環13は、167uMの改善された溶解性およびCDにおいて優れた全体的なヘリカル性向を示す。
【0092】
結合特徴および物理化学的特性の正しいセットを操作することにより、効力および選択性が改善された化合物のような「より清浄な」薬物を得ることができる。大員環4と比較して改善された両親媒性プロファイルを特徴とする大員環9は、カウンタースクリーニングアッセイにおいて選択性プロファイルを示す。
【0093】
大員環3と比較して改善された両親媒性および細胞活性を特徴とする大員環11はまた、p53依存性HTC116細胞増殖アッセイにおいて少なくとも2倍の改善を示し、p53-nul Ca Skiカウンタースクリーニング増殖アッセイにおいてより清浄なプロファイルを示す。
【0094】
さらに、10%血清で改善された細胞活性プロファイルを示す大員環13は、大員環2と比較して、HTC116細胞増殖アッセイにおいて7倍を超える改善をもたらす。
【0095】
ステープルにおける追加の修飾によって、全体的な特性をさらに改善することができる。例えば、大員環13でのジアルキンステープルの使用は、細胞増殖アッセイの効力の改善においてさらなる利点を提供する。
【0096】
ここではXとXとの間のステープルのみが記載されているが、L-T-F-X-E(配列番号23)内のLとEとを連結する、またはZ-Z-Z-Z-Z内のZとZとを連結する(ラクタムまたは炭素系iとして、例えばi+ステープル)追加のステープルも考えられる。
【0097】
したがって、本明細書に開示される代替尾部は、改善された結合および物理化学的特性を提供する。予想外の特性はまた、それらのオンターゲット対オフターゲットプロファイルのために清浄なペプチドをもたらすアルキンステープルで得られる。ステープルタイプ、ステープル位置およびC末端修飾の組み合わせは、予想外の生物学的特異性および活性をもたらし得る。全体として、本明細書に開示されるペプチド模倣大員環は、改善された生物学的プロファイルを提供する。
【0098】
医薬組成物
本開示のペプチド模倣大員環を含む医薬組成物も本明細書に開示される。ペプチド模倣大員環は、任意の適切な医薬担体または賦形剤と組み合わせて使用され得る。そのような医薬組成物は、治療有効量の1つ以上のペプチド模倣大員環、ならびに薬学的に許容される(1または複数の)賦形剤および/または(1または複数の)担体を含む。特定の製剤が、投与様式に適するであろう。特定の態様では、薬学的に許容される担体は、水または緩衝液であり得る。
【0099】
医薬組成物に含まれる賦形剤は、例えば薬物の性質および投与様式に応じて異なる目的を有する。一般的に使用される賦形剤の例としては、限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、感染用水(water-for-infection)、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせ、安定剤、可溶化剤および界面活性剤、緩衝剤および防腐剤、等張剤、増量剤、潤滑剤(タルクまたはシリカ、および脂肪、例えば植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸など)、乳化剤、懸濁化剤または粘性剤、不活性希釈剤、充填剤(セルロース、二塩基性リン酸カルシウム、植物油脂、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウムなど)、崩壊剤(架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、結合剤(デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、または微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの修飾セルロース、スクロースおよびラクトースなどの糖、またはキシリトール、ソルビトールもしくはマルチトールなどの糖アルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコール)、湿潤剤、抗菌剤、キレート剤、コーティング(セルロースフィルムコーティング、合成ポリマー、シェラック、トウモロコシタンパク質ゼインまたは他の多糖類、およびゼラチンなど)、防腐剤(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニルおよびセレン、システイン、メチオニン、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、ならびにメチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む合成防腐剤を含む)、甘味料、芳香剤、香味剤、着色剤、投与助剤およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
担体は、医薬組成物の状況において、対象への有効成分の送達を改善および/または延長する化合物および物質である。担体は、制御放出技術を使用して、対象における薬物のインビボ活性を延長するか、または薬物の放出を遅延させるのに役立ち得る。担体はまた、対象における薬物代謝を減少させ、かつ/または薬物の毒性を低下させることができる。担体を使用して、対象における特定の細胞または組織への薬物の送達を標的化することもできる。一般的な担体(親水性および疎水性担体の両方)には、脂肪エマルジョン、脂質、PEG化リン脂質、PEG化リポソーム、環状RGDペプチドc(RGDDYK(配列番号24))でPEGスペーサーを介してコーティングされたPEG化リポソーム、リポソームおよびリポスフィア(liposphere)、ミクロスフェア(生分解性ポリマーまたはアルブミンで作製されたものを含む)、ポリマーマトリックス、生体適合性ポリマー、タンパク質-DNA複合体、タンパク質コンジュゲート、赤血球、小胞、ナノ粒子、および炭化水素ステープル用の側鎖が含まれる。前述の担体を使用して、本発明のペプチド模倣大員環の細胞膜透過性を高めることもできる。
【0101】
経口投与に適合された医薬組成物は、カプセルまたは錠剤などの個別の単位として;粉末または顆粒として;溶液、シロップまたは懸濁液として(水性もしくは非水性の液体中で;または食用フォームもしくはホイップとして;またはエマルジョンとして)提供されてもよい。錠剤または硬ゼラチンカプセル剤に適した賦形剤には、ラクトース、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、ステアリン酸またはその塩が含まれる。軟ゼラチンカプセルとの使用に適した賦形剤には、例えば植物油、ワックス、脂肪、半固体または液体ポリオールなどが含まれる。溶液およびシロップの調製のために、使用され得る賦形剤には、例えば水、ポリオールおよび糖が含まれる。懸濁液の調製のために、油、例えば植物油を使用して、水中油型または油水中型懸濁液を提供することができる。特定の状況では、遅延放出調製物が有利であり得、ペプチド模倣大員環を遅延放出様式または制御放出様式で送達することができる組成物も調製され得る。長期の胃中滞留は、胃中に存在する酵素による分解の問題をもたらし、そのため、腸溶コーティングされたカプセルはまた、放出のための活性物質が胃腸管内で低下する、当技術分野における標準的な技術によって調製され得る。
【0102】
経皮投与に適合した医薬組成物は、レシピエントの表皮と長時間の密接な接触を維持することを意図した、個別のパッチとして提供され得る。例えば、有効成分は、Pharmaceutical Research,3(6):318(1986)に一般的に記載されているように、イオントフォレシスによってパッチから送達され得る。
【0103】
局所投与に適合した医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたは油として製剤化され得る。軟膏に製剤化される場合、有効成分は、パラフィン系軟膏基剤または水混和性軟膏基剤のいずれかと共に使用され得る。あるいは、有効成分は、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤を用いてクリームに製剤化されてもよい。眼への局所投与に適合した医薬組成物には、有効成分が適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁されている点眼剤が含まれる。口内への局所投与に適合した医薬組成物には、ロゼンジ、トローチおよびマウスウォッシュが含まれる。
【0104】
直腸投与に適合した医薬組成物は、坐剤または浣腸剤として提供され得る。
【0105】
経鼻投与に適合され、担体が固体である医薬組成物は、嗅剤を吸い込む様式で、すなわち、保持し、鼻に近づけた粉末の容器から鼻腔流路を通じて迅速に吸入することによって投与される、例えば20~500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末を含む。担体が液体であり、鼻スプレーとしてまたは点鼻薬としての投与に適した組成物には、有効成分の水溶液または油溶液が含まれる。
【0106】
吸入による投与に適合した医薬組成物には、様々なタイプの定量加圧エアロゾル、ネブライザーまたは吸入器によって生成され得る微粒子ダストまたはミストが含まれる。
【0107】
膣投与に適合した医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として提供され得る。
【0108】
非経口投与に適合した医薬組成物には、製剤を予定されるレシピエントの血液と実質的に等張にする、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含有し得る水性および非水性滅菌注射溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。注射用溶液に使用され得る賦形剤としては、例えば、注射用水、アルコール、ポリオール、グリセリンおよび植物油が挙げられる。組成物は、単位用量または複数用量の容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで提供されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば水または生理食塩水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。医薬組成物は、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、付臭剤、塩(本発明の物質自体は、薬学的に許容される塩の形態で提供され得る)、緩衝剤、コーティング剤または酸化防止剤を含有し得る。それらはまた、本発明の物質に加えて治療活性剤を含有し得る。
【0109】
医薬組成物は、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮下、鼻腔内または皮内経路などの便利な方法で投与され得る。医薬組成物は、特定の適応症の治療および/または予防に有効な量で投与される。一般に、医薬組成物は、少なくとも約0.1mg/kg~約100mg/kg体重の量で投与される。ほとんどの場合、投与量は、投与経路、症状などを考慮して、毎日約10mg/kg~約1mg/kg体重である。
【0110】
本開示のペプチド模倣大員環の投与量は、癌の場所、起源、同一性、程度および重症度、治療される個体の年齢および状態などに応じて、広い範囲の間で変動し得る。最終的に、医師が使用される適切な投与量を決定するであろう。
【0111】
ペプチド模倣大員環はまた、インビボでのアンタゴニストの発現によって、すなわち遺伝子療法によって、本開示に従って使用され得る。遺伝子療法の設定におけるペプチドまたは組成物の使用は、本発明の目的のためのペプチドの「投与」の一種であるとも考えられる。
【0112】
したがって、本発明はまた、癌を有する対象を治療する方法であって、薬学的有効量の本発明の1つ以上のペプチド模倣大員環、または1つ以上のアンタゴニストを含む医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含む方法に関する。「癌」という用語は、広く解釈されることを意図しており、異常な細胞増殖および/または細胞分裂のすべての状況を包含する。例として、以下を含む:癌腫、これらに限定されないが、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌を含む癌腫、および皮膚、乳房、前立腺、膀胱、膣、子宮頸部、子宮、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、肺、気管、気管支、結腸、小腸、胃、食道、胆嚢の癌を含む;肉腫、これらに限定されないが、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性血管内皮腫、悪性シュワン細胞腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、ならびに骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管および造血組織の癌を含む;リンパ腫および白血病、これらに限定されないが、成熟B細胞腫瘍、例えば、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ腫および形質細胞腫瘍、成熟T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞腫瘍、例えば、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、アグレッシブNK細胞白血病および成人T細胞白血病/リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ならびに免疫不全関連リンパ増殖性障害を含む;胚細胞腫瘍、これらに限定されないが、精巣癌および卵巣癌を含む;芽細胞腫、これらに限定されないが、肝芽腫、髄芽腫、腎芽腫、神経芽腫、膵臓芽腫、胸膜肺芽腫および網膜芽細胞腫を含む。この用語は、良性腫瘍も包含する。
【0113】
各実施形態において、治療を受ける個体または対象は、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、非ヒト霊長類、鳥類、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、コンパニオンアニマル、例えばイヌ、ネコもしくはげっ歯類、または別の哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0114】
本開示の医薬組成物の1つ以上の成分が充填された1つ以上の容器、例えば、本開示のペプチド模倣大員環および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物が充填された容器を含むキットも提供される。そのような(1または複数の)容器には、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知を組み合わせることができ、その通知は、機関によるヒト投与のための製造、使用または販売の承認を反映する。さらに、医薬組成物は、他の治療化合物と組み合わせて使用されてもよい。
【0115】
化学療法を含む併用療法
本明細書に開示されるペプチド模倣大員環は、化学療法と組み合わせて、癌を有する個体に投与され得る。個体は、個体へのペプチド模倣大員環の投与と同時に化学療法を受けることができる。個体は、個体がペプチド模倣大員環による治療の過程を完了した後に化学療法を受けてもよい。個体は、個体が化学療法剤による治療の過程を完了した後にペプチド模倣大員環を投与されてもよい。本発明の併用療法はまた、疾患進行または再発癌を伴う再発性または転移性癌を有し、化学療法を受けているかまたは化学療法を完了している個体に投与され得る。
【0116】
化学療法は、以下からなる群から選択される化学療法剤を含み得る:
(i)アルキル化剤、限定されないが、二官能性アルキル化剤、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、およびメルファランを含む;
(ii)単官能性アルキル化剤、限定されないが、ダカルバジン、ニトロソ尿素、およびテモゾロミド(経口ダカルバジン)を含む;
(iii)アントラサイクリン、限定されないが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロンおよびバルルビシンを含む;
(iv)細胞骨格破壊剤(タキサン)、限定されないが、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、およびタキソテールを含む;
(v)エポチロン、限定されないが、イキサベピロンおよびウチデロンを含む;
(vi)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、限定されないが、ボリノスタットおよびロミデプシンを含む;
(vii)トポイソメラーゼiの阻害剤、限定されないが、イリノテカンおよびトポテカンを含む;
(viii)トポイソメラーゼiiの阻害剤、限定されないが、エトポシド、テニポシドおよびタフルポシドを含む;
(ix)キナーゼ阻害剤、限定されないが、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、およびビスモデギブを含む;
(x)ヌクレオチド類似体および前駆体類似体、限定されないが、アザシチジン、アザチオプリン、フルオロピリミジン(例えば、カペシタビン、カルモフル、ドキシフルリジン、フルオロウラシルおよびテガフールなど)、シタラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキサート、およびチオグアニン(tioguanine、以前はthioguanine)を含む;
(xi)ペプチド抗生物質、限定されないが、ブレオマイシンおよびアクチノマイシンを含む;白金系薬剤、限定されないが、カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチンを含む;
(xii)レチノイド、限定されないが、トレチノイン、アリトレチノイン、およびベキサロテンを含む;ならびに
(xiii)ビンカアルカロイドおよび誘導体、限定されないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンを含む。
【0117】
化学療法のための化学療法剤の用量の選択は、実体の血清または組織代謝回転率、症状のレベル、実体の免疫原性、および治療される個体における標的細胞、組織または器官のアクセス可能性を含むいくつかの因子に依存する。追加の治療剤の用量は、許容可能なレベルの副作用をもたらす量でなければならない。したがって、各追加の治療剤の用量および投与頻度は、具体的な治療剤、治療されている癌の重症度、および患者の特徴に部分的に依存する。抗体、サイトカインおよび小分子の適切な用量を選択する際の指針が利用可能である。例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baert et al.(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgrom et al.(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamon et al.(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitz et al.(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghosh et al.(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipsky et al.(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602;Physicians’ Desk Reference 2003(Physicians’ Desk Reference,57th Ed);Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57th edition(November 2002)を参照されたい。適切な用量レジメンの決定は、例えば、当技術分野において治療に影響を及ぼすことが公知であるかもしくは疑われる、または治療に影響を及ぼすことが予測されるパラメータまたは因子を使用して臨床医によって行われてもよく、例えば、個体の病歴(例えば、以前の療法)、治療される癌のタイプおよびステージならびに併用療法における治療剤の1つ以上に対する応答のバイオマーカーに依存する。
【0118】
白金含有化学療法、ペメトレキセドおよび白金化学療法またはカルボプラチン、およびパクリタキセルまたはnab-パクリタキセルのいずれかを含む化学療法工程を含む併用療法の実施形態が企図される。特定の実施形態において、化学療法工程との併用療法は、少なくともNSCLCおよびHNSCCを治療するために使用され得る。
【0119】
併用療法は、任意の増殖性疾患の治療、特に癌の治療に使用され得る。特定の実施形態では、併用療法は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、または唾液腺癌を治療するために使用され得る。
【0120】
別の実施形態では、併用療法は、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳もしくは中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮もしくは子宮内膜癌、口腔もしくは咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸もしくは虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、または血液組織の癌を治療するために使用され得る。
【0121】
特定の実施形態では、併用療法は、黒色腫(転移性または切除不能)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌、MSIHC、胃癌、子宮頸癌、肝細胞癌(HCC)、メルケル細胞癌(MCC)、腎細胞癌(進行癌を含む)、および皮膚扁平上皮癌から選択される1つまたは複数の癌を治療するために使用され得る。
【0122】
追加の併用療法
本明細書に開示されるペプチド模倣大員環は、他の療法と組み合わせて使用され得る。例えば、併用療法は、1つ以上のさらなる治療剤、例えばホルモン治療、ワクチンおよび/または他の免疫療法と共に製剤化され、かつ/またはそれらと共投与されるペプチド模倣大員環を含む組成物を含み得る。他の実施形態では、ペプチド模倣大員環は、手術、放射線、凍結手術、および/または温熱療法を含む他の治療的処置モダリティと組み合わせて投与される。そのような併用療法は、有利には、より低い量の投与される治療剤を利用することができ、したがって可能性のある毒性、または様々な単剤療法に関連する合併症を回避する。
【0123】
「と組み合わせて」によって、療法または治療剤が同時に投与され、かつ/または送達のために一緒に製剤化されなければならないことを暗示することは、これらの送達方法が本明細書に記載の範囲内にあるにもかかわらず、意図されていない。ペプチド模倣大員環は、1つ以上の他のさらなる療法または治療剤と同時に、その前に、またはその後に投与され得る。ペプチド模倣大員環および他の薬剤または治療プロトコルは、任意の順序で投与され得る。一般に、薬剤は、その薬剤について決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。この組み合わせで利用されるさらなる治療剤は、単一の組成物で一緒に投与されてもよく、または異なる組成物で別々に投与されてもよいことがさらに理解されるであろう。一般に、組み合わせて利用されるさらなる治療剤は、それらが個別に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが予想される。いくつかの実施形態では、組み合わせて利用されるレベルは、個別に利用されるレベルよりも低くなる。
【0124】
特定の実施形態において、本明細書中に記載されるペプチド模倣大員環は、プログラム死受容体1(PD-1)またはそのリガンドPD-L1および/もしくはPD-L2の、1つ以上のチェックポイント阻害剤またはアンタゴニストと組み合わせて投与される。阻害剤またはアンタゴニストは、抗体、抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質またはオリゴペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(OPDIVO、Bristol Myers Squibb、New York、New York)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA、Merck Sharp&Dohme Corp、Kenilworth、NJ USA)、セチプリマブ(Regeneron、Tarrytown、NY)またはピジリズマブ(CT-011)から選択される。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤はAMP-224である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体、例えばデュルバルマブ(IMFINZI、AstraZeneca、Wilmington、DE)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ、Roche、Zurich、CH)、またはアベルマブ(BAVENCIO、EMD Serono、Billerica、MA)である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718CまたはMDX-1105から選択される。
【0125】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を促進することを意図している。
【0126】
一般的な方法
MDM4と共結晶化されたATSP-7041の利用可能な結晶構造を使用して、C末端伸長を有するステープルペプチドをモデル化した。これらのモデルをすべて、さらなる改良のためにMD(分子動力学)シミュレーションに供した。遊離ペプチドおよびペプチド-MDM2複合体についてMDシミュレーションを行った。AMBER16のXleapモジュールを使用して、MDシミュレーション用のシステムを準備した。水素原子を加え、ペプチドのN末端、C末端を残基ACE(アセチル)およびNHE(一級アミド)で封鎖した。ステープルリンカー用のパラメータは、以前の研究(Tan,Y.S.et al.Benzene Probes in Molecular Dynamics Simulations Reveal Novel Binding Sites for Ligand Design.J Phys Chem Lett 7,3452-3457)から取った。すべてのシミュレーションシステムを適切な数の対イオンで中和した。中和されたシステムを、TIP3P水分子を含む八面体ボックス中で溶媒和し、溶質原子とボックスの境界との間に少なくとも10Åを残した。MDシミュレーションは、ff14SB力場と組み合わせたAMBER 16パッケージを用いて行った。すべてのMDシミュレーションは、陽溶媒中、300Kで行った。すべてのシミュレーション中、長距離静電相互作用は、9Åの実空間カットオフ距離を使用して粒子メッシュEwald法で処理した。沈降アルゴリズム(settle algorithm)を使用して、水素原子を含む結合振動を抑制し、シミュレーション中に2 fsの時間ステップを可能にした。
【0127】
溶媒分子および対イオンは、最初に、タンパク質およびペプチド原子での拘束によるエネルギー最小化を使用して緩和された。この後、無制御にエネルギー最小化を行って、あらゆる立体衝突を除去した。続いて、0.25nsの期間にわたるタンパク質およびペプチドでの位置拘束を用いたMDシミュレーション(力定数:50kcal mol-1-2)を使用してシステムを0から300°Kまで徐々に加熱し、水分子およびイオンを自由に移動させ、続いて位置拘束を徐々に取り除き、300°Kで2nsの無拘束平衡化を行った。得られたシステムは、MDシミュレーションのそれぞれの生成段階のための出発構造として使用された。各ケースについて、(異なる初期ランダム速度を使用する)3つの独立したMDシミュレーションを、十分に平衡化された構造から開始して実行した。各MDシミュレーションを250ns間実施し、高次構造を4psごとに記録した。
【0128】
高次構造のサンプリングを向上させるために、これらのペプチドのそれぞれを、バイアス電位レプリカ交換分子動力学(Biasing Potential Replica Exchange Molecular Dynamics:BP-REMD)シミュレーションに供した。BP-REMD技術は、レプリカに沿った二面角遷移を促進するバイアス電位を含む、ハミルトニアン-REMD法の一種である(Kannan S,Zacharias M(2007)Enhanced sampling of peptide and protein conformations using replica exchange simulations with a peptide backbone biasing-potential.Proteins.66:697-706;Ostermeir K,Zacharias M.Hamiltonian replica-exchange simulations with adaptive biasing of peptide backbone and side chain dihedral angles.J.Comput.Chem.,35(2014))。各システムについて、BP-REMDは、バイアス無しの基準レプリカを含む8つのレプリカで行われた。BP-REMDを50ns間実施し、隣接するレプリカ間の交換を2psごとに試み、メトロポリス基準に従って受け入れるかまたは拒否した。基準レプリカ(バイアス無し)でサンプリングした高次構造をさらなる分析に使用した。VMDを使用してシミュレーション軌跡を可視化し、Pymolを使用して図を生成した。
【0129】
結合エネルギー計算およびエネルギー分解分析:
分子機構ポアソン-ボルツマン表面積(MMPBSA)法をペプチドとそれらのパートナータンパク質との間の結合自由エネルギーの計算に使用し、シミュレーションの最後の50nsから抽出した250の高次構造を結合エネルギーの計算に使用した。エントロピー計算は計算処理的に集約されており、容易に収束することはなく、したがって無視される。MMGBSAエネルギー分解スキームを使用して、有効結合エネルギーを個々の残基の寄与に分解した。MMGBSAの計算は、MMPBSAの計算と同じ方法で行った。溶媒和自由エネルギーへの極性寄与は、generalized born(GB)法(igb=2)を適用して、mbondi2半径を用いて決定した。非極性寄与は、0.0072kcal/molÅ2の表面張力比例定数を使用して、溶媒露出表面積(solvent accessible surface area:SASA)依存項によってICOSA法を使用して推定した。ペプチド残基の各々をMDシミュレーションの各高次構造においてD-アラニンに変異させ、野生型ペプチドの結合エネルギーに関する変化をMMPBSAを用いて計算するインシリコアラニンスキャニングを行うことによって、ペプチド残基の寄与をさらに調査した。
【0130】
ペプチド合成
ジイソプロピルカルボジイミド/1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(DIC/HOBT)活性化剤と順次カップリングさせたRINK樹脂およびFmoc保護アミノ酸を使用してペプチドを合成した。二重カップリング反応を第1のアミノ酸に対して行い、ステープル位置でも行った。これらの後者の位置では、より良好なカップリング効率のために、活性化試薬をN,N-ジイソプロピルエチルアミン/ヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(DIEA/HATU)に切り替えた。
【0131】
最初に樹脂をジクロロメタン(DCM)で3回洗浄し、引き続いて第1世代グラブス触媒(35mgを5mLのDCMに溶解)を添加することによって閉環メタセシス反応を行い、2時間反応させた(グラブス触媒を用いるすべての工程は暗所で行った)。閉環メタセシス(RCM)反応を繰り返して完全な反応を確実にした。RCMが完了した後、十分な収率を確保するために試験切断を行った。ペプチドを切断し、次いで、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によってシス-トランス異性体の混合物として精製した。最初に樹脂をDCMで3回洗浄し、引き続いてテトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、Pd(PPhCl、次いでCuIを添加し、次いで超音波処理し、次いで30℃で16時間加熱することによって、樹脂に対してグレーザーアルキンクロスカップリング反応を行った。混合物を濾過し、ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した。
【0132】
MDM2タンパク質の作製
ペプチド結合アッセイで使用するために、ヒトMDM2 1~125配列をpNIC-GSTベクターにクローニングした。TV切断部位をENLYFQS(配列番号25)からENLYFQG(配列番号26)に変更して、以下の配列(配列番号14)を有する融合タンパク質を得た:
[配列表]
対応するプラスミドをBL21(DE3)Rosetta T1R大腸菌細胞に形質転換し、カナマイシン選択下で増殖させた。適切な抗生物質を補充した750mLのTerrific Broth(TB)および100μLのantifoam 204(Sigma-Aldrich)の瓶に、一晩増殖させた20mLの種培養物を接種した。培養物を、LEXシステム(Harbinger Biotech)において37℃で、培養物の中に濾過空気をバブリングすることによって通気および撹拌しながらインキュベートした。培養物OD600が2に達したら、LEXシステムの温度を18℃に下げ、培養物を60分後に0.5mM IPTGで誘導した。タンパク質発現を一晩継続させた。細胞を15℃で10分間の4000g遠心分離によって回収した。上清を廃棄し、細胞ペレットを溶解緩衝液(細胞ペレット1グラム当たり1.5mL)に再懸濁した。精製作業の前に細胞懸濁液を-80℃で保存した。
【0133】
再懸濁した細胞ペレット懸濁液を解凍し、氷上、70%振幅、3秒間オン/オフで3分間超音波処理(Sonics Vibra-cell)した。溶解物を、4℃で25分間の47000g遠心分離によって清澄化した。上清を1.2umシリンジフィルターで濾過し、AKTA Xpressシステム(GE Healthcare)にロードした。精製レジームを以下に簡単に説明する。
【0134】
溶解物を、10カラム体積の洗浄1緩衝液で平衡化した1mLのNi-NTA Superflowカラム(Qiagen)にロードした。全体的な緩衝液条件は以下の通りであった:固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)洗浄1緩衝液:20mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、500mM NaCl、10mMイミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、pH7.5;IMAC洗浄2緩衝液:20mM HEPES、500mM NaCl、25mMイミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5;IMAC溶出緩衝液:20mM HEPES、500mM NaCl、500mMイミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5。
【0135】
空気が空気センサによって0.8mL/分で検出されるまで試料をロードした。次いで、カラムを20カラム体積の洗浄1緩衝液で洗浄し、続いて20カラム体積の洗浄2緩衝液で洗浄した。タンパク質を5カラム体積の溶出緩衝液で溶出した。溶出したタンパク質を回収し、システム上の試料ループに保存し、次いでゲル濾過(GF)カラムに注入した。溶出ピークを2mLの画分に収集し、SDS-PAGEゲルで分析した。精製全体を4℃で行った。関連するピークをプールし、TCEPを総濃度2mMまで添加した。タンパク質試料をVivaspin 20フィルターコンセントレーター(VivaScience)において、15℃で約15mg/mLまで濃縮した(<18kDa-5K MWCO、19~49kDa-10K MWCO、>50kDa-30K MWCO)。最終タンパク質濃度を、Nanodrop ND-1000(Nano-Drop Technologies)で280nmでの吸光度を測定することによって評価した。最終タンパク質純度をSDS-PAGEゲルで評価した。次いで、最終タンパク質バッチをより小さな画分に分注し、液体窒素で凍結し、-80℃で保存した。
【0136】
MDM4タンパク質の作製
MDM4タンパク質をpNIC-GSTベクターにクローニングし、NTU(Nanyang Technological University)School of Biological SciencesのProtein Production Platform(PPP)のLEXシステム(Harbinger Biotech)で発現させた。グリセロールストックを使用して、カナマイシンを補充した8g/Lグリセロールを含む20mLのTerrific Brothで接種培養を開始した。培養物を37℃、200rpmで一晩インキュベートした。翌朝、カナマイシンを補充した8g/Lのグリセロールおよび100μLのantifoam 204(Sigma-Aldrich)を含む750mLのTerrific Brothの瓶に、種培養物を接種した。
【0137】
培養物を、LEXシステムにおいて37℃で、培養物の中に濾過空気をバブリングすることによって通気および撹拌しながらインキュベートした。OD600が約2に達したら、温度を18℃に下げ、培養物を30~60分後に0.5mM IPTGで誘導した。タンパク質発現を一晩継続させた。翌朝、15℃で10分間の4200rpm遠心分離によって細胞を回収した。上清を廃棄し、細胞を溶解緩衝液(100mM HEPES、500mM NaCl、10mMイミダゾール、10%グリセロール、0.5mM TCEP、pH8.0、およびBenzonase(培養750mLあたり4uL)および250U/μLのMerck Protease Inhibitor Cocktail Set III、Calbiochem製EDTA free(溶解緩衝液中1000倍希釈))に200rpm、4℃で約30分間再懸濁し、-80℃で保存した。
【0138】
再懸濁した細胞ペレット懸濁液を解凍し、氷上、70%振幅、3秒間オン/オフで3分間超音波処理(Sonics Vibra-cell)した。溶解物を、4℃で25分間の47000g遠心分離によって清澄化した。上清を1.2μmシリンジフィルターで濾過し、1mL Ni-NTA Superflow(Qiagen)IMACカラムを備えたAKTA Xpressシステム(GE Healthcare)にロードした。カラムを20カラム容量(CV)の洗浄緩衝液1(20mM HEPES、500mM NaCl、10mMイミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5)および20CVの洗浄緩衝液2(20mM HEPES、500mM NaCl、25mMイミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5)で、または3分間の安定なベースラインおよびデルタベース5mAU(0.8mL/分)がそれぞれ得られるまで洗浄した。
【0139】
MDM4タンパク質を溶出緩衝液(20mM HEPES、500mM NaCl、500mMイミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5)で溶出し、溶出ピーク(収集開始:>50mAU、勾配>200mAU/分、収集停止:<50mAU、安定プラトー 0.5分、デルタプラトー 5mAU)を収集し、システム上の試料ループに保存し、次いで平衡化ゲル濾過(GF)カラム(HiLoad 16/60 Superdex 200 prepグレード(GE Healthcare))に注入し、20mM HEPES、300mM NaCl、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5で1.2mL/分の流速で溶出した。溶出ピーク(収集開始:>20mAU、勾配>10mAU/分、収集停止:<20mAU、勾配>10mAU/分、最小ピーク幅0.5分)を2mL画分に収集した。全体的な精製を4℃で行った。関連するピークをプールし、TCEPを2mMの最終濃度まで添加した。タンパク質試料をVivaspin 20フィルターコンセントレーター(VivaScience)において、15℃で約15mg/mLまで濃縮した。最終タンパク質濃度を、Nanodrop ND-1000(Nano-Drop Technologies)で280nmでの吸光度を測定することによって評価した。最終タンパク質純度をSDS-PAGEによって評価し、精製MDM4タンパク質を液体窒素中で凍結し、-80℃で保存した。
【0140】
円偏光二色性(CD)
実験の前に、5μlの10mMストックペプチドを45μlの100%メタノールと混合し、SpeedVacコンセントレーター(Thermo Scientific)で2時間乾燥させた。乾燥ペプチドを、1mM HEPES pH7.4および5%メタノールを含有する緩衝液中で1mMの濃度に再構成した。ペプチド試料を0.2cmの経路長を有する石英キュベットに入れ、Chirascan-plus qCD装置(Applied Photophysics)を用いて25℃で300~190nmのCDスペクトルを記録した。ペプチドの実際の濃度は、280nMでのペプチドの吸光度によって決定した。ペプチドの二次構造成分の推定は、CDNNソフトウェア(Applied Photophysicsによって配布)を使用して、デコンボリューション前にCDスペクトルを残基楕円率の平均値に変換することによって行った。すべての実験を2回行った。
【0141】
等温滴定熱量測定(ITC)
MicroCal PEAQ-ITC Automatedシステムを使用して、すべての実験を2回行った。100~200μMのペプチドを、1μLごとの40回の注入にわたって、20μMの精製組換えヒトMDM2タンパク質(アミノ酸1~125;配列番号14)に滴定した。高濃度で不溶性のペプチドについては、200μMのMDM2タンパク質を20μMのペプチドに滴定することによって逆ITCを行った。すべてのタンパク質およびペプチドを、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.2、3% DMSOおよび0.001% Tween-20を含有する緩衝液中で一晩透析した。MicroCal PEAQ-ITC分析ソフトウェアを使用してデータ分析を行った。
【0142】
MDM2結合アッセイ
精製MDM2(1~125;配列番号14)タンパク質を、50nMカルボキシフルオレセイン(FAM)標識12/1ペプチド(FAM-RFMDYWEGL-NH;配列番号15)に対して滴定した。実験データを以下に示す1:1結合モデル式に当てはめることによって、FAM標識12/1ペプチドに対するMDM2の滴定のための解離定数を決定した。
【0143】
式1:
【数1】
[P]はタンパク質濃度(MDM2)であり、[L]は標識ペプチド濃度であり、rは測定された異方性であり、rは遊離ペプチドの異方性であり、rはMDM2-FAM標識ペプチド複合体の異方性であり、Kは解離定数であり、[L]は総FAM標識ペプチド濃度であり、[P]は総MDM2濃度である。FAM標識12/1ペプチド(13.0nM)の決定された見かけのK値を使用して、蛍光異方性実験においてその後の競合アッセイにおけるそれぞれの競合リガンドの見かけのK値を決定した。滴定は、MDM2の濃度を250nMで、標識ペプチドの濃度を50nMで一定に保ち行った。次いで、競合分子を、FAM標識ペプチドとタンパク質との複合体に対して滴定した。見かけのK値は、実験データを以下に示す式に当てはめることによって決定した:
【数2】
[L]stおよび[L]tは、それぞれ、標識リガンド投入濃度および総非標識リガンド投入濃度を示す。Kd2は、非標識リガンドとタンパク質との間の相互作用の解離定数である。すべての競合実験において、[P]>[L]stであり、そうでない場合、かなりの量の遊離標識リガンドが常に存在し、測定を妨害するであろうと想定される。Kd1は、使用した標識ペプチドの見かけのKであり、前の段落で記載したように実験的に決定されている。FAM標識ペプチドを1mMのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、実験用緩衝液に希釈した。読み取りは、Envisionマルチラベルリーダー(PerkinElmer)を用いて行った。実験は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(2.7mM KCl、137mM NaCl、10mM Na2HPO4および2mM KH2PO4(pH7.4))および0.1% Tween 20緩衝液中で行った。すべての滴定を3回行った。Prism 4.0(GraphPad)を用いて曲線当てはめを行った。1:1結合モデルの当てはめを検証するために、MDM2とFAM標識ペプチドとの間の直接滴定の開始時の異方性値が、遊離蛍光標識ペプチドについて観察された異方性値と有意に相違しないことを慎重に確保した。調査中のリガンドの陰性対照滴定も、(MDM2の非存在下)蛍光標識ペプチドを用いて行って、リガンドとFAM標識ペプチドとの間に相互作用が発生していないことを確保した。さらに、本発明者らは、競合滴定の最終ベースラインが遊離FAM標識ペプチドの異方性値を下回らないことを確保したが、これは、そうでなければリガンドとFAM標識ペプチドとの間の意図しない相互作用がMDM2結合部位から変位されなければならないことを示す。
【0144】
p53ベータ-ラクタマーゼレポーター遺伝子細胞機能アッセイ
HCT116細胞をp53応答性β-ラクタマーゼレポーターで安定にトランスフェクトし、384ウェルプレートに8,000細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、10%ウシ胎児血清(染色緩衝液またはFBS)、ブラストサイジンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むマッコイ5A培地で維持した。細胞を一晩インキュベートし、続いて細胞増殖培地を除去し、0% FBSまたは10% FBSのいずれかを含有するOpti-MEMと交換した。次いで、液体ハンドラー、ECHO 555を使用してペプチドを各ウェルに分注し、4/16時間インキュベートした。ジメチルスルホキシド(DMSO)の最終作業濃度は0.5%であった。β-ラクタマーゼ活性を、ToxBLAzer Dual Screen(Invitrogen)をメーカーの説明書に従って使用して検出した。測定は、Envisionマルチプレートリーダー(Perkin-Elmer)を使用して行った。最大p53活性を、50μMアジド-ATSP-7041(ステープルp53ペプチド;Aileron Therapeutics,Inc.)によって誘導されたβ-ラクタマーゼ活性の量と定義した。これを、HCT116細胞に対する滴定によって、アジド-ATSP-7041によって誘導されたp53活性の最大量として決定した。
【0145】
乳酸デヒドロゲナーゼ放出アッセイ(LDH)
HCT116細胞を384ウェルプレートに8000細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、ブラストサイジンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むマッコイ5A培地で維持した。細胞を一晩インキュベートした後、細胞培地を除去し、FBSを含まないOpti-MEM培地を添加した。次いで、細胞を10% FBSまたは無血清のいずれかのOpti-MEM中で4/16時間ペプチドで処理した。DMSOの最終濃度は0.5%であった。乳酸デヒドロゲナーゼ放出を、CytoTox-ONE Homogenous Membrane Integrity Assay Kit(Promega)をメーカーの説明書に従って使用して検出した。Tecanプレートリーダーを使用して測定を行った。最大LDH放出を、溶解性ペプチド(iDNA79)によって誘導された放出されたLDHの量と定義し、結果を正規化するために使用した。
【0146】
テトラサイクリンβ-ラクタマーゼレポーター遺伝子アッセイ(カウンタースクリーニング)
Jump-In(商標)T-REx(商標)CHO-K1 BLA細胞に基づき、誘導可能なCMVプロモーターの制御下で安定に組み込まれたβ-ラクタマーゼを含有する。細胞を384ウェルプレートに4000細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、ブラストサイジンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ最小イーグル培地(DMEM)で維持した。細胞を24時間インキュベートした後、細胞培地を除去し、10% FBSまたは0% FBSのいずれかを含有するOpti-MEMと交換した。次いで、液体ハンドラー、ECHO 555を使用してペプチドを各ウェルに分注し、4/16時間インキュベートした。DMSOの最終作業濃度は0.5%であった。β-ラクタマーゼ活性を、ToxBLAzer Dual Screen(Invitrogen)をメーカーの説明書に従って使用して検出した。測定は、Envisionマルチプレートリーダー(Perkin-Elmer)を使用して実行した。カウンタースクリーニング活性を、テトラサイクリンによって誘導されたβ-ラクタマーゼ活性の量と定義した。
【0147】
HCT-116ウエスタンブロット分析
化合物ストックおよび作業溶液の調製:化合物の10mMまたは1mMストック溶液を100% DMSO中で調製した。次いで、各化合物を100% DMSOで段階希釈し、HPLCグレードの滅菌水でさらに10倍希釈して、各化合物の10% DMSO/水中の10倍作動溶液を調製した。関連するアッセイで使用される必要な体積に応じて、化合物を添加して、関連する図に示すような最終濃度を1% v/vの残留DMSO濃度で得た。
【0148】
HCT116細胞(Thermo Fisher Scientific)を、10%ウシ胎児血清(FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM細胞培地中で培養した。すべての細胞株を、5% CO2雰囲気の37℃加湿インキュベータ内で維持した。HCT116細胞を96ウェルプレートに60,000細胞/ウェルの細胞密度で播種し、一晩インキュベートした。さらに細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM細胞培地で維持した。次いで、細胞培地を除去し、2% FCSを含むDMEM細胞培地中に示される濃度で様々な化合物/ビヒクル対照を含有する細胞培地と交換した。記載されたインキュベーション時間(4または24時間)の後、細胞をPBSですすぎ、次いで、Invitrogenによって供給された100μlの1×NuPAGE LDS試料緩衝液(NP0008)中で回収した。次いで、試料を超音波処理し、90℃に5分間加熱し、10秒間2回超音波処理し、13,000rpmで5分間遠心分離した。タンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce)によって測定した。試料を、メーカーのプロトコルに従ってトリス-グリシン4~20%勾配ゲル(BIORAD)で分離した。Trans-Blot Turboシステム(BIORAD)を使用して、Immuno-blot PVDFメンブレン(Bio-Rad)でウエスタンブロット転写を行った。次いで、アクチン(AC-15、Sigma)に対する抗体をローディングコントロールとして、p21(118マウスモノクローナル)、MDM2(2A9マウスモノクローナル抗体)およびp53(DO-1マウスモノクローナル抗体)を用いて、ウエスタンブロット染色を行った。
【0149】
[実施例]
[実施例1]
C末端伸長を有するアジドATSP-7041大員環の調製
国際公開第2020112868A号は、C末端尾部にいくつかのアラニン残基(本明細書ではポリアラニン尾部として記載される)が付加された一連のATSP-7041ペプチド類似体を記載している。先に、S12A置換を有するアジド-ATSP-7041ペプチドが作製され、S5ステープル位置までの三重Ala配列(3xA)C末端をもたらした。このペプチド(基準大員環1)は、p53細胞アッセイにおいて339nM(0%血清、4時間)および847nM(10%血清、16時間)の活性を有していた(表3)。C末端を3つのさらなるAla残基で伸長させて6×A尾部大員環2を得ると、細胞活性は、0%血清で4時間、および10%血清で16時間の両方において約3.5倍改善された。5×A-dA尾部を含有する大員環3も作製され、それは細胞アッセイにおいて大員環2と同様に挙動し、溶解性は基準大員環1と比較して改善された(表3および4)。
【0150】
[実施例2]
C末端尾部の修飾は0%血清における細胞取り込みを改善する
C末端尾部は、C末端尾部配列を最適化することによって細胞効力をさらに増強する機会を提供する。ヘリカルホイール(図2)を調べると、位置14および/または17における無極性残基の配置がMDM2結合を増強し得ることが明らかになった。分子モデリングは、これらの位置に1つ以上のフェニルアラニンを配置すると、MDM2の結合および他の特性が改善され得ることを示唆した(図3)。
【0151】
アルファメチル化の使用を含む、1つ以上のPhe残基が位置14および/または17に配置された一連のペプチド(大員環4~8)を作製した(アミノ酸配列については表1を参照)。これらの位置における無極性残基の配置は、MDM2結合をさらに増強した。そのような大員環はまた、0%FBS(血清)、4時間アッセイにおいて、大員環2および3と比較して増強された、または同等の細胞活性を示した(例えば、大員環2の143nMに対して大員環4の36nM)。
【0152】
[実施例3]
位置16に荷電残基を配置すると特性が改善される
一般に、大員環4~8は、それらのより高いAlogP98および/またはHPLC LogDによって示されるように、疎水性の増加を示した(表3および4)。ここで、荷電残基を位置16に配置すると、MDM2結合を維持しながら溶解性および細胞効力がさらに改善されることが見出された。例えば、この位置にアルファメチルグルタミン酸を有する大員環9を作製し、それは、16時間、10%条件での細胞効力が大員環4と比較して改善されたことを示した(表3)。それはまた、大員環4の近い類似体である大員環5および7と比較して、153uMの改善された溶解性を示した。大員環9はまた、大員環2と比較して、16時間、10%条件で改善された細胞効力を示した。したがって、架橋ペプチド模倣大員環の細胞活性および溶解性は、本明細書中に開示されるようなC末端尾部における修飾によって改善され得ることが示されている。
【0153】
[実施例4]
尾部への両親媒性残基の導入は物理化学的特性を改善する
C末端尾部における両親媒性の導入は、溶解性および他の特性が改善された清浄な「薬物」様化合物をもたらし得ることが見出されている。例えば、グルタミン酸またはガンマ-カルボキシグルタミン酸を大員環2または3の尾部に離散的に導入して、大員環10および11を得た。位置14にグルタミン酸を有する大員環10は、16時間、10%血清において、大員環3と比較して改善された細胞活性を示した。分子モデリングは、位置14のグルタミン酸がMDM2アルギニン、Arg97と係合し得ることを示唆している(図4)。位置12にカルボキシグルタミン酸(Gla)を有する大員環11は、大員環2と比較して改善された結合、および527nMで約2倍の細胞活性を10%血清、16時間で示した(表3)。大員環10および11は、どちらも優れた溶解性を示す(表4)。
【0154】
大員環10および11はまた、大員環2と組み合わせて細胞増殖アッセイにおいてプロファイリングされた(表5)。大員環10は、HTC116 p53陽性対照細胞株において、420nMの大員環3と比較して、187nMの約2倍の細胞効力の改善を示した。大員環11は、大員環3の約2倍までの細胞活性を示した。
【0155】
さらに、大員環10および11の両方は、p53 null陰性対照細胞株において、最高アッセイ濃度でいくらかの残存活性(50uMで29%阻害)を示した大員環2と比較して、負担なく清浄であった(最大濃度で50uMを超えるEC50、-18%阻害)。したがって、大員環10および11は、細胞アッセイおよび/またはカウンタースクリーニングアッセイにおいて改善された細胞活性を有する化合物を得るための、C末端尾部における様々な修飾の適用性を強調している。
【0156】
[実施例5]
アルケンステープルの代わりにビスアルキンを使用すると、細胞増殖アッセイにおける効力が改善した
ビス-アルキン置換およびポリアラニンC末端尾部を含む大員環12を作製した。この大員環は、0%および10%血清の両方において、大員環3と比較して同等の細胞活性(2倍以内)を示した(表3)。同等の溶解性も示した(表4)。最も著しくは、それは、細胞増殖HTC116 p53陽性対照細胞株において、420nMの大員環3と比較して、約3倍を超える124nMまで細胞効力を改善した(表4)。それはまた、p53 nul陰性対照細胞株では全く負担なく清浄であった(最大濃度で50uMを超えるEC50および3%阻害)。
【0157】
大員環4のC末端尾部に導入されたジアルキンモチーフは、0%血清、4時間で優れた細胞活性を示した。カウンタースクリーニングにおいて疎水性のバランスをとり、両親媒性および細胞活性プロファイルを改善するために、グルタミン酸も位置12に導入した。得られた大員環13は、0%血清、4時間で大員環4と同等の効力(36nMに対して51nM)、ならびに10%血清、16時間で大員環4および2と比較して有意に改善された効力(237nMおよび749nMに対して153nM)を示した。大員環13はまた、167uMで優れた溶解性を示した。最も重要なことに、それは、細胞増殖HTC116 p53陽性対照細胞株における細胞効力を、大員環4と比較して15倍超(それぞれ73nM対1215nM)、大員環2と比較して7倍超(それぞれ73nM対570nM)改善した(表5)。
【0158】
したがって、本明細書に開示される大員環は、強力な細胞活性かつ清浄な化合物を提供するための様々な修飾の適用性を実証する。
【表3】
【表4】
【表5】
本発明は、例示された実施形態を参照して本明細書に記載されているが、本発明はこれに限定されないことを理解されたい。当業者および本明細書の教示へのアクセスは、その範囲内の追加の修正および実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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【国際調査報告】