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特表2024-544622三次元多孔質構造体を製造するための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】三次元多孔質構造体を製造するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20241126BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20241126BHJP
   B01J 35/56 20240101ALI20241126BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241126BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20241126BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241126BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241126BHJP
   B28B 1/52 20060101ALI20241126BHJP
   B28B 3/20 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B28B1/30
B01J32/00
B01J35/56 A
B29C64/106
B29C64/205
B33Y10/00
B33Y80/00
B28B1/52
B28B3/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531656
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2022083886
(87)【国際公開番号】W WO2023099580
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211435.9
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160314
【氏名又は名称】バスフ・エス・エー
(71)【出願人】
【識別番号】517240724
【氏名又は名称】フィト エヌフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ルフェヴェレ、ヤスペル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒルセン、バルト
(72)【発明者】
【氏名】クレメル、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ボーニンコフ、フレド
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
4G054
4G169
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL74
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4G052GA10
4G054AA05
4G054AB08
4G054BD00
4G169AA01
4G169AA11
(57)【要約】
三次元多孔質構造体を製造するための方法及びシステムであって、相互接続されたフィラメントが、複数の積層層内に所定の配置で堆積されており、連続する層のフィラメントは、相互接続された細孔を有する多孔質構造体を得るように互いに接続されており、層内のフィラメントは、波状経路に沿って、波状経路に沿って堆積された、隣接するフィラメントの少なくとも1つのサブセットの間に幅狭領域及び幅広領域が形成されるように堆積されており、複数の積層層は、連続する相内に形成された幅広領域が少なくとも部分的に重なって構造体内チャネルを形成するように配置されている、方法及びシステム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互接続されたフィラメントを複数の積層層内に所定の配置で堆積するステップを含む、三次元多孔質構造体を製造する方法であって、連続する層の前記フィラメントは、相互接続された細孔を有する前記多孔質構造体を得るように互いに接続されており、前記連続する層のフィラメントは、層間細孔を形成するように互いに角度を成しており、前記層内のフィラメントは、波状経路に沿って、前記波状経路に沿って堆積された、隣接するフィラメントの少なくとも1つのサブセットの間に幅狭領域及び幅広領域が形成されるように堆積されており、前記複数の積層層は、連続する層内に形成された前記幅広領域が少なくとも部分的に重なって構造体内チャネルを形成するように配置されており、各層は、波状ラインに沿って堆積された複数の波状フィラメントを有し、前記波状ラインの第1のサブセットは、互いに対して非平行である、方法。
【請求項2】
幅広領域は、対向する非平行な波状ラインの間に形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記波状ラインの第2のサブセットは、互いに平行である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記幅狭領域は、堆積されたフィラメントが領域内で互いに隣接するような領域である、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記波状経路は、周期的経路であり、前記周期的経路は、0.1から100の範囲内の、より好ましくは1から50の範囲内の、さらにより好ましくは2から20の範囲内の、波の振幅対波の幅の比を有する、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの周期的経路が、周期的経路の比が周期的経路の長さに沿って変化する可変波形特性を有する、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記三次元多孔質構造体は、前記複数の積層層内で外側に堆積された波状フィラメントの部分によって形成された波状外側部を有する、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
層は、少なくとも1つの対称軸に関して対称である、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記三次元構造体は、第1の細孔のセットと第2の細孔のセットとを有し、前記第1の細孔のセットの細孔は、前記第2の細孔のセットの細孔よりも大きく、前記第1の細孔のセットは、前記幅広領域に形成されており、前記第2の細孔のセットは、前記幅狭領域に形成されている、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の細孔のセットの細孔の少なくとも1つのサブセットが、前記第2の細孔のセットの細孔の少なくとも1つのサブセットの開口表面積よりも少なくとも2倍大きい、より好ましくは少なくとも3倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも5倍大きい開口表面積を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記三次元多孔質構造体は、多孔質触媒、触媒担体、又は吸収材料として使用するために製造される、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数の積層層内に所定の配置で配置された、相互接続されたフィラメントを有する、材料押出によって得られる三次元多孔質構造体であって、連続する層の前記フィラメントは、相互接続された細孔を有する前記多孔質構造体を得るように互いに接続されており、前記連続する層のフィラメントは、層間細孔を形成するように互いに角度を成しており、前記層内のフィラメントは、波状経路に沿って、前記波状経路に沿って堆積された、隣接するフィラメントの少なくとも1つのサブセットの間に幅狭領域及び幅広領域が形成されるように堆積されており、前記複数の積層層は、連続する層内に形成された前記幅広領域が少なくとも部分的に重なって構造体内チャネルを形成するように配置されており、各層は、波状ラインに沿って堆積された複数の波状フィラメントを有し、前記波状ラインの第1のサブセットは、互いに非平行である、三次元多孔質構造体。
【請求項13】
請求項12に記載の三次元多孔質構造体を含む充填層。
【請求項14】
請求項1から11の何れか一項に記載の方法を実行するように適合された積層造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元多孔質構造体を製造するための方法及びシステムに関する。本発明はまた、三次元多孔質構造体、及び、複数の当該多孔質構造体を含む充填床に関する。さらに、本発明は、触媒、触媒担体、及び/又は、吸収剤としての三次元多孔質構造体(複数可)の使用に関する。さらに、本発明は、コンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形は現在広く使用されており、様々な技術が存在する。積層造形は、構造体を一層ずつ構築することを助け得、製造された構造体は、様々な用途で使用され得る。
【0003】
レイダウンパターンは、プリント経路によって決定され、プリントされた構造体の特性に大きな影響を及ぼす。いくつかの用途で必要とされ得る、完全に相互接続された細孔のネットワークを有する複雑な幾何学的形状及び多孔質構造体を得ることができる。プリントされた構造体の幾何学的形状は、多孔質構造体の意図された用途又は使用に大きく依存する。例えば、多孔質構造体は、触媒プロセス、吸収プロセス、熱伝達などにおいて必要とされ得、細孔の幾何学的形状及びサイズは、当該プロセスにおける多孔質構造体の性能にとって重要である。
【0004】
さらに、従来の積層造形技術を使用して多孔質構造体、特に細孔を高い精度及び再現性で高速な方法(例えば、開始-停止を伴わないペーストの連続的な押出)によって製造することは困難であり得る。しばしば、細孔が変形したり閉塞したりして、プロセスにおける性能が低下する。
【0005】
さらに、ハンドリングに起因する損傷(例えば、亀裂、破断など)を防ぐために、構造体が十分な機械的強度を有することが望ましい。積層造形によって得られる多孔質構造体の機械的特性及び多孔質特性は、予測又は保証することが難しい可能性がある。多孔質構造体は、非常に壊れやすい可能性があり(例えば、セラミック)、従って、衝撃を受けた場合の破損のリスクが比較的高い可能性がある。いくつかの用途、例えば触媒担体としての使用では、構造体が、もはや使用不能である可能性がある。従って、多孔質構造体が使用されるプロセス(例えば、触媒プロセス)の間だけでなく、多孔質構造体の製造から輸送、保管に至るまでの工程においても、非常に高いレベルの配慮及び注意が必要である。
【0006】
さらに、多孔質構造体を製造するための押出プロセスは、深刻な製作制限によって特徴付けられる可能性がある。押出プロセスは、幾何学的自由度を制限して、プリントされた構造体内に所望の幾何学的特性を有する細孔を組み込むことを困難にし得る。
【0007】
プリントプロセス中のプリントパターンを改善し、改善された特性を有する多孔質構造体を得ることが求められている。いくつかの場合において、改善された細孔を有し、例えばそれによって使用中の流体力学特性が向上された多孔質構造体を得たいという強い要望がある。さらに、プリント品質と、より広範囲の用途向けの多孔質構造体のプリンティングに対する適合性と、を向上させたいという要望がある。このような用途の例としては、触媒、触媒担体、収着剤、熱交換器、及びクロマトグラフィ材料としての多孔質構造体の使用が挙げられる。
【0008】
例えば、拡散制限反応などのための触媒の外部表面積を大きくするために、又は、固定床触媒反応器内において低空隙容積で高充填率を実現するために、より小さな触媒押出物が使用され得る。特に物質移動制限反応では、小さな触媒押出物の性能が大きな押出物の性能よりも優れている可能性がある。但し、押出物が小さいほど充填床内での圧力損失が大きくなるという欠点がある。さらに、これらの小さな押出物の機械的強度は、一般的に、充填床反応器を形成するには十分ではない。
【0009】
特許文献1には、多孔質ジャイロイド構造体であって、この多孔質ジャイロイド構造体を通って流体が流れ得る多孔質ジャイロイド構造体が記載されている。壁は、ガス分離膜又はガス吸収モノリスを有し得る。この構造は、流入口、流出口、及び、三次元に広がるセルを含む。セルは、構造体全体にわたってサイズを滑らかに変化させ得る。特許文献1には、構造体として三重周期最小表面(TPMS)構造体が記載されており、これは広く知られている幾何学的形状である。特許文献2には、積層造形クッションが記載されている。熱硬化性材料を含む発泡体が使用されている。ジャイロイド構造体(TPMS)を形成するように押出物が堆積される。TPMS構造体又はジャイロイド構造体は、一般的に、固体壁で囲まれた細孔を有する。
【0010】
特許文献3には、少なくとも1つの層状多孔質構造体を含む、機械的衝撃を吸収するための積層造形構造体が記載されている。各層状多孔質構造体は、上部プレートと、平行な下部プレートとを有する。複数の正弦波状板が平行に配置され、上部プレートと下部プレートとの間に間隔をおいて均等に分布されている。各正弦波状板は、上部プレート及び下部プレートの平面に対して垂直に配置されている。隣接する正弦波状板の間に一方向チャネルが形成される。各板における正弦波は、同じ周期を有するものの、異なる振幅を有する(図面を参照)。
【0011】
特許文献4には、多孔質構造体を形成する方法が記載されている。フィラメント(14)が、ノズル(12)を使用して堆積され、ノズルは、フィラメント(14)が基板上でとぐろを巻いて(輪になって参照)基板上に層を形成するように動かされる。以下に提供される図面を参照。複数のこのような層が積み重ねられ得、それによってマクロ多孔性を有する構造体が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/215480号明細書
【特許文献2】国際公開第2021/163161号
【特許文献3】中国特許出願公開第113459507号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/047404号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上述の欠点のうち少なくとも1つを取り除く方法及びシステムを提供することである。
【0014】
追加的に、又は代替的に、本発明の目的は、改善された設計を有する多孔質構造体を提供することである。
【0015】
追加的に、又は代替的に、本発明の目的は、流体の流れの中で使用された場合に改善された流体力学特性を有する多孔質構造体を提供することである。
【0016】
追加的に、又は代替的に、本発明の目的は、改善された構造的完全性を有する多孔質構造体を提供することである。
【0017】
追加的に、又は代替的に、本発明の目的は、所望の空隙率(porosity)を有しつつ、改善された細孔、及び/又は、構造体内チャネルを有する多孔質構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そのために、本発明は、三次元多孔質構造体を製造する方法を提供し、この方法は、相互接続されたフィラメントを複数の積層層内に所定の配置で堆積するステップを含み、連続する層のフィラメントは、相互接続された細孔を有する多孔質構造体を得るように互いに接続されており、連続する層のフィラメントは、層間細孔を形成するように互いに角度を成しており、層内のフィラメントは、波状経路に沿って、当該波状経路に沿って堆積された、隣接するフィラメントの少なくとも1つのサブセットの間に幅狭領域及び幅広領域が形成されるように堆積されており、複数の積層層は、連続する層内に形成された幅広領域が少なくとも部分的に重なって構造体内チャネルを形成するように配置されており、各層は、波状ラインに沿って堆積された複数の波状フィラメントを有し、波状ラインの第1のサブセットは、互いに対して非平行である。
【0019】
フィラメントの波状経路を使用することにより、細孔によって実現される構造体の空気力学的特性が改善され得る。例えば、構造体内チャネルの配置、構成、サイズ、及び空気力学的形状が改善され得る。構造体を通って流れる流体が受ける、構造体内チャネルの幾何学的形状に起因する抵抗が少なくなり、その結果、流体と多孔質構造体(の内側部分)との間の接触を維持するか、又は改善さえしつつ、空気力学的性能が向上し、ひいては、多孔質構造体、及び/又は、多孔質構造体の充填床を通る圧力損失が減少する。有利なことに、圧力損失を減少させることができるため、単一の押出物と比較してより小さなフィラメント/繊維直径を使用することが可能になる。
【0020】
有利には、多孔質構造体は、構造体内チャネルによって所望の空隙率を提供しつつ、非正方形の形状(例えば、丸い形状)を有し得る。波状経路を有するフィラメントを使用することにより、より大きな細孔/開口部を得ることができる。これにより、構造体内チャネルの設計が改善され得る。
【0021】
波状経路(例えば、湾曲した経路)に沿った1本以上のフィラメントを使用して、多孔質構造体の層内により大きな開口部/細孔を得ることができる。このような大きな開口部は、波状ではないプリント経路を有する、直線状のフィラメントを使用する場合には実現できない。結果として、直線状のフィラメントを使用するだけでは、同じ数のラインで大きな開口部を提供することはできない。例えば、直線状のフィラメントのみを使用する場合、大きな細孔/開口部を得るには、フィラメントを互いから比較的遠くに配置する必要がある。直線状のフィラメントの間のこのような隙間は、構造体の脆弱性を誘発する可能性があり、この構造体の脆弱性により、構造体が機械的に不安定になり、比較的小さな力によって壊れるようになる可能性がある。本開示に係る方法により、構造的完全性が改善された多孔質構造体が得られる。十分な機械的強度を有しつつ、比較的大きな細孔/開口部を有する多孔質構造体を作製できる。
【0022】
有利なことに、個々の各三次元多孔質構造体にわたる圧力損失が低いため、ガス流にアクセス可能な表面積が増加した多孔質構造体をプリントすることがより簡単になる。
【0023】
波状の経路、例えば(例えば、正弦波状経路に沿った)湾曲経路に沿って堆積されたフィラメントは、凸部(山部)と凹部(谷部)とを成す可能性がある。別の少なくとも部分的に非平行なフィラメントに対するそのような幾何学的変化は、有利な方法で開口部又は細孔を形成するために使用され得る。波状に堆積されたフィラメントと直線状のフィラメントとの間に開口部/細孔を得ることができる。但し、いくつかの有利な例では、開口部/細孔が、対向する、隣接して配置された2本の波状に堆積されたフィラメントの間に得られる。当該対向する2本の波状に堆積されたフィラメントの相対的な向き及び位置は、所望の形状、サイズ及び構成を有する開口部を形成するように慎重に選択され得る。例えば、対向する2本の波状に堆積されたフィラメントが互いに逆位相で配置されている場合、一方のフィラメントの凸部が他方のフィラメントの凹部に対向して配置され得、その結果、幅広領域及び幅狭領域が形成され得る。これにより、幅広な構造体内チャネルを得ることができる。
【0024】
構造体内チャネルは、より幅広な2つの開口部の間に比較的幅狭な部分を有し得、「くびれている」と表現される場合がある。幅広な領域で得られた開口部は、くびれていてもよく、その結果、幅広な領域における開口部に、開口部の端部に向かってより幅狭になる領域が続く。
【0025】
構造体内チャネルは、多孔質構造体内部の空洞、及び/又は、1つ以上の他の構造体内チャネルを形成するか、又はそれらと結合し得る。構造体内チャネルは、結合して多孔質構造体内部に空洞を形成し得る。任意選択で、構造体内チャネルは、多孔質構造体の主軸と実質的に位置合わせされる。
【0026】
幅広領域、及び/又は、幅狭領域は、1つの層内で同じ構成又は異なる構成(例えば、サイズ)を有し得る。追加的に、又は代替的に、幅広領域、及び/又は、幅狭領域は、多孔質構造体の異なる層において同じ構成又は異なる構成(例えば、サイズ)を有し得る。
【0027】
構造体内チャネルの表面開口部は、互いにオフセットしていてもよい。単一の構造体内チャネルの第1の開口部と第2の開口部とは、互いに異なっていてもよい。いくつかの例において、表面開口部は、面取りされた縁部又は角を丸めた縁部を有する。
【0028】
規則的な幾何学的パターンで延在する、得られた構造体内チャネルにより、圧力損失を大幅に減少させることができる。
【0029】
多孔質構造体は、波状(例えば、湾曲した)経路フィラメントを有し得、細孔が、隣接する非平行フィラメントの間に形成され、隣接する非平行フィラメントのうち少なくとも一方は、波状経路フィラメントである。いくつかの例において、隣接する非平行フィラメントは、両方とも波状経路フィラメントである。非平行フィラメントは、互いに対向して配置され得る。
【0030】
任意選択で、各層は、波状ラインに沿って堆積された複数の波状フィラメントを有し、波状ラインの第1のサブセットは、互いに非平行である。
【0031】
多孔質構造体は、層内の波状経路に沿ってフィラメントを配置することによって得られる一連の細孔、及び/又は、構造体内チャネルを有する。例えば、フィラメントは、一連の幅広領域及び幅狭領域が得られるように一定の周期性を有する曲線であり得、幅広領域は、より大きな構造体内チャネルを画定する。フィラメントは、所定のパターンで堆積され、互いに対して所定の方法で配置され得、対向するフィラメントは、一連の幅広領域を得るために波状経路に沿っており、この一連の幅広領域の間に幅狭領域がある。フィラメントを互いに対してこのように配置することにより、設計、流体力学特性(構造体を通じた圧力損失及び流体抵抗を参照)、及び構造的完全性(強度、安定性などを参照)に関する重要な利点がもたらされる。
【0032】
構造体内チャネルの幾何学的形状を改善することに加えて、本開示に係る方法は、多孔質構造体の非常に効率的且つ効果的な製造も可能にする。有利には、フィラメントによって形成された規則的な幾何学的パターンを有する多孔質構造体を得ることができる。設計の自由度も大幅に向上し、多孔質構造体が使用される特定のプロセスに合わせた、より複雑な設計が可能になる。例えば、球状又は楕円状の設計に加えて、多孔質構造体は、非球状又は非楕円状の設計、例えば、三葉形、四葉形、五葉形などの葉状の(lobed)設計も有し得る。多孔質構造体内に細孔及び構造体内チャネルを含める簡単な方法を可能にしつつ、複数の形状(例えば、異なる形状)の組み合わせの輪郭も使用し得る。
【0033】
任意選択で、幅広領域及び幅狭領域は、多孔質構造体の少なくとも1つの表面の上に規則的に分布されている。任意選択で、幅広領域及び幅狭領域は、多孔質構造体の表面の周囲に規則的に分布されている。幅広領域及び幅狭領域が不規則に分布されることも想定される。いくつかの例において、構造体内チャネル開口部は、多孔質構造体の円周の表面、及び/又は、周囲に、一定の径方向間隔で配置されている。
【0034】
本開示に係る方法は、破損の大きなリスクを冒すことなく多孔質構造体をハンドリングし使用することを可能にするために十分な多孔質構造体の強度を維持しつつ、改善された流体力学特性(例えば、圧力損失や、例えば触媒、吸収、熱交換などのための流体の内部混合)を有する構造体内チャネルを備える多孔質構造体を構築する効率的な方法を提供する。波状経路により、圧力損失が制限された硬い多孔質構造を得ることが可能になる。さらに、多孔質構造体を(充填)床で使用すると、チャネリングを軽減又は防止できる。
【0035】
任意選択で、対向する非平行な波状ラインの間に幅広領域が形成されている。
【0036】
任意選択で、非等距離で非平行なフィラメントのグループは、非平行な対向する2本以上のフィラメントから構成されている。
【0037】
任意選択で、波状ラインの第2のサブセットは、互いに平行である。
【0038】
隣接する平行な2本以上のフィラメントの組により、多孔質構造体の構造強度を向上させることができる。連続した平行な2本以上のラインをこのようにグループ化することにより、必要とされる表面積を比較的小さくしつつ、強度を大幅に向上させることができる。対向する非平行な少なくとも2本のフィラメントを使用することによって形成された層内の、より大きな細孔/開口部は、多孔質構造体の構造的完全性又は強度に悪影響を与えることなく得ることができる。いくつかの例において、多孔質構造体は、隣接する、及び/又は、対向する平行なフィラメントを有さなくてもよい。隣接する平行なフィラメントと、隣接する非平行なフィラメントとを含む、様々なプリンティングパターンも可能である。
【0039】
任意選択で、各層内のフィラメントの第2のサブセットは、離間した等距離な2本以上のフィラメントのグループで、短い距離だけ離れて、又は互いに隣接して配置され得る。
【0040】
任意選択で、平行なラインを有する波状ラインの第2のサブセットは、プリント/堆積されたフィラメントが互いに隣接するように構成され得る。これにより、例えば適応するノズル開口部面積を必要とすることなく、構造の強度が向上され得る。
【0041】
任意選択で、幅広領域における対向する波状経路間の距離は、幅狭領域における対向する波状経路間の距離よりも、少なくとも2倍大きく、より好ましくは少なくとも5倍大きく、さらにより好ましくは少なくとも10倍大きい。
【0042】
任意選択で、幅広領域は、非平行な波状経路に沿った、対向する、及び/又は、隣接する2本のフィラメントの間で得られる。任意選択で、非平行な波状経路に沿った、2本より多い数のフィラメントが細孔/開口部を形成するために使用される。これにより、より多くの幅広領域を得ることができる。さらに、これにより、異なる細孔サイズを、ひいては異なる構造体内チャネルサイズを簡単且つ効率的な方法で得ることができる。
【0043】
任意選択で、等距離で平行なフィラメントのグループは、2本、3本、又は4~6本の平行なフィラメントから構成されている。
【0044】
任意選択で、幅狭領域は、領域であって、堆積されたフィラメントが当該領域内で互いに隣接する領域である。
【0045】
任意選択で、波状経路は、正弦波状経路である。
【0046】
任意選択で、波状経路は、非正弦波状の周期的経路である。
【0047】
任意選択で、波状経路は、直線部を有する周期的経路である。
【0048】
任意選択で、波状経路は、鋸歯状波経路、三角波経路、方形波経路、ジグザグ波経路、又はパルス波経路のうち少なくとも1つである。
【0049】
任意選択で、構造体内チャネルの第1の開口部及び第2の開口部は、多孔質構造体の外面の周囲に規則的なパターンで分布されている。
【0050】
任意選択で、構造体内チャネルは、粒子内チャネルの長さに沿って実質的に一定の断面を有する。
【0051】
任意選択で、フィラメントは、10マイクロメートルから3センチメートルの間の厚さを、より好ましくは50マイクロメートルから1センチメートルの間の厚さを有する。
【0052】
任意選択で、多孔質構造体は、主軸に沿って、3mmから250mmの間の範囲内の、より好ましくは5mmから70mmの間の範囲内のサイズを有する。
【0053】
波であって、当該波に沿ってフィラメントが堆積される波の周期性パラメータは、所望のパターン設計に応じて調整され得る。これは、例えば、層内における相対的な位置決め、振幅、周波数、位相、経路の向きを変更することによって実行され得る。様々なパターン設計が可能であることが理解されるであろう。
【0054】
任意選択で、互いの上に積み重ねられたフィラメントの層の少なくとも1つのサブセットは、同じフィラメントのパターンを有し、互いに角度を成して配向されている。
【0055】
任意選択で、(n+1)個ごとの層が、同じ向きを有し、ここで、nは、1以上の自然数である。例えば、2個ごとの層(n=1)、3個ごとの層(n=2)が、同じ向きを有し得る。例えばnが異なる他のプリント構成も使用することができる。
【0056】
任意選択で、波状経路は、周期的経路であり、この周期的経路は、0.1から100の範囲内の、より好ましくは1から50の範囲内の、さらにより好ましくは2から20の範囲内の、波の振幅対波の幅の比を有する。
【0057】
有利なことに、この方法により、直線状のフィラメントのみが使用される場合と比較して、多孔質構造体の構造強度を維持するか、又は改善さえしつつ、より大きな構造体内チャネルを得ることができる。構造体内チャネルが大きくなると、そのような多孔質構造体を備えた充填床にわたる圧力損失が小さくなり得る。このように圧力損失が小さくなることは、充填床を通って流れを導くために必要なエネルギーが少なくて済むため、触媒作用にとって非常に重要である可能性がある。さらに、充填床を通る圧力損失が減少すると、構造体を通る流体の流れがより多くなり、その結果、例えば触媒作用又は吸収プロセスにおける転化が促進され得る。
【0058】
任意選択で、少なくとも1つの周期的経路は、この周期的経路の比がこの周期的経路の長さに沿って変化する可変波形特性を有する。
【0059】
波状経路に沿った波形特性は、各層内の波状フィラメントについて必ずしも同じではない。また、波形特性は、必ずしも一定ではない。いくつかの場合においては、波状経路に沿った非一定な波形特性を使用することにより、より複雑な幾何学的形状を得ることができる。例えば、1つの波状経路が、当該波状経路の長さにわたって変化する(例えば、周波数、及び/又は、振幅が変化する)波形特性を有していてもよい。フィラメントが、接続部、例えば2つの波状部を接続する直線部を有することも可能である。
【0060】
任意選択で、三次元多孔質構造体は、複数の積層層内で外側に堆積された波状フィラメントの部分によって形成された波状外側部を有する。
【0061】
任意選択で、構造体の外周面は、波状経路に沿ってプリントされたフィラメントによって実現され、湾曲している(例えば、葉状である)。多数のパターンのバリエーションが想定されており、これらは、フィラメントの相対的な位置決めと、波動関数であって、当該波動関数に沿って波状フィラメントがプリント/堆積される波動関数の振幅、周波数及び位相パラメータと、によって実現され得る。
【0062】
任意選択で、多孔質構造体は、葉状の断面を有する。例えば、多孔質構造体は、四葉状の断面を有し得る。このような幾何学的形状により、構造強度が向上すると同時に、構造体(例えば、モノリス構造体)にわたる圧力損失が制限される。追加的に、又は代替的に、(ランダムに)多孔質構造体を有する充填床における圧力損失が制限され得る。追加的に、又は代替的に、多孔質構造体が充填床において使用される場合のチャネリングの傾向を軽減又は防止することができる。
【0063】
任意選択で、多孔質構造体は、三次元楕円体形状を有する。
【0064】
有利には、楕円体状の多孔質構造体は、従来の形状を有する、球状又は円筒状の多孔質構造体よりも高い充填密度を実現し得る。充填密度が高いほど、流体の流れとの接触に利用可能な表面が大きい。但し、これにより流れに対する抵抗が増加する可能性があり、これは、一般に、(充填)床を通る圧力損失の増加として現れる。利用可能な表面が大きいことは、このような多孔質構造体の(充填)床の内部で起こる化学反応の重要な特性に影響を及ぼし、それにより、反応をより良好に制御することが可能になる。触媒多孔質構造体の利用可能な表面は、触媒床内の反応速度、接触時間、及び熱伝達を制御するために選択され得る。楕円体状の多孔質構造体の形状は、当該多孔質構造体の3つの主軸の相対的な長さによって制御される。主軸の相対的な長さによって充填密度が決まる。回転楕円体の軸の比は、アスペクト比と称されることがある。これらのパラメータは、多孔質構造体が使用される用途に基づいて選択され得る。いくつかの例では、四葉形状により、圧力損失を減少させつつ、同様の、又はさらに優れた結果をもたらし得る。
【0065】
任意選択で、多孔質構造体は、少なくとも3つの長軸を有する。3つの長軸は、同じ長さであってもよい。或いは、3つの長軸のうち少なくとも2つが、異なる長さであることも可能である。任意選択で、3つの長軸全てが、異なる長さである。
【0066】
任意選択で、多孔質構造体の表面は、1つ以上の溝、ブラインドチャネル、及び/又は、くぼみを含む。追加的に、又は代替的に、多孔質構造体の表面は、例えば、ボス、リッジ、ローブなどの突起を含み得る。このような表面トポグラフィーを使用して、構造体間チャネルの充填密度及び平均断面積を制御し得る。例えば、四葉状設計により、構造強度の向上も実現しつつ、充填密度の向上を実現し得る。
【0067】
任意選択で、多孔質構造体は、外面を有し、少なくとも2つの構造体内チャネルを備える。任意選択で、構造体内チャネルは、多孔質構造体の外面上の第1の位置にある第1の開口部から、多孔質構造体の内部を通って、多孔質構造体の外面上の第2の位置にある第2の開口部まで延在する。
【0068】
任意選択で、多孔質構造体は、側部、すなわち層の表面に対して垂直な側面に沿って開口部/細孔を有する。
【0069】
任意選択で、多孔質構造体は、軸方向構造体内チャネル及び径方向構造体内チャネルを有する。任意選択で、径方向構造体内チャネルは、軸方向構造体内チャネルを横切る。径方向チャネルは、層を互いの上に積み重ねる構成によって形成され得る。
【0070】
任意選択で、多孔質体構造は、ジグザグ状の流れパターンが構造体内チャネルを通って形成されるような三次元幾何学的形状を有する。このようなジグザグ状の流れパターンは、最先端技術で製造された多孔質構造体、例えば層状繊維添加によって調製された最先端の触媒と比較して構造体にわたる圧力損失を減少させつつ、三次元構造体内で、より高い乱流度(degree of turbulence)を提供することにより混合を(ひいては、例えば触媒活性を)高め得る。
【0071】
任意選択で、層は、少なくとも1つの対称軸に関して対称である。
【0072】
任意選択で、フィラメントは、各層内で単一の連続フィラメントの部分フィラメントとして連続的に堆積される。
【0073】
任意選択で、三次元構造体は、第1の細孔のセットと第2の細孔のセットとを有し、第1の細孔のセットの細孔は、第2の細孔のセットの細孔よりも大きく、第1の細孔のセットは、幅広領域に形成されており、第2の細孔のセットは、幅狭領域に形成されている。
【0074】
波状経路に沿ってプリント/堆積されたフィラメントは、より開いた領域とより密度の高い領域とが多孔質構造体の層内に形成され得るように配置され得る。これにより、多孔質構造体が機械的応力下にある場合の使用中の損傷を防ぐなどの優れた機械的特性を備えたセル構造を得ることができる。
【0075】
任意選択で、第1の細孔のセットの細孔の少なくとも1つのサブセットが、第2の細孔のセットの細孔の少なくとも1つのサブセットの開口表面積よりも少なくとも2倍大きい、より好ましくは少なくとも3倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも5倍大きい開口表面積を有する。
【0076】
任意選択で、フィラメントは、1つ以上の幅広領域において多孔質構造体の密度が減少した所定の配置で堆積され、フィラメントは、1つ以上の幅狭領域で多孔質構造体の空隙率が増加した所定の配置で堆積されている。有利には、本開示に係る方法を実行することにより、プリントされた多孔質構造体の所望の空隙率をより良好に制御することができる。
【0077】
有利なことに、波状(例えば、湾曲した)経路を有するフィラメントを使用することにより、同じ構造体において同じ数の直線状のフィラメントを使用した場合と比較して、より多くの材料を堆積させることができ、密度及び幾何学的表面積の増加につながる。
【0078】
任意選択で、フィラメントは、1つ以上の幅広領域でフィラメント間の距離が増加した所定の配置で堆積され、フィラメントは、1つ以上の幅広領域でフィラメント間距離が減少した所定の配置で堆積されている。
【0079】
任意選択で、1つ以上の幅広領域における同じ層のフィラメント間の距離は、フィラメントの直径の2倍より大きく、より好ましくはフィラメントの直径の5倍より大きく、さらにより好ましくはフィラメントの直径の8倍より大きい。
【0080】
任意選択で、多孔質構造体は、互いに隣接して配置された、非線形な離間したフィラメント又はストランドの交互層から構成される。任意選択で、非線形な離間したフィラメントは、互いに非平行である。
【0081】
任意選択で、交互層内のフィラメントは、互いにある角度を成して配向されている。
【0082】
任意選択で、各層は、少なくとも1対の対向する波状経路を有し、対向する波状経路間の相対的な位相差により、幅広領域及び幅狭領域が生じる。これにより、周期的に生じる幅広領域と幅狭領域とを得ることができる。対向する波状経路間の距離は、幅狭領域ではより小さくなり、幅広領域ではより大きくなり得る。この距離は、対向する波状経路の波形特性に応じて周期的に変化し得、この波形特性は、三次元構造体の特定の空隙率特性を得るために調整され得る。離間した非平行な対向する波状経路により、多孔質三次元構造体を通る、より大きな細孔をもたらし得る。これにより、多孔質三次元構造体の製造がより簡単になるだけでなく、設計の自由度も高まる。追加的に、又は代替的に、三次元多孔質構造体の構造安定性又は構造的強度を向上させることができる。
【0083】
任意選択で、波状経路は、連続する層内で、互いに直交しているか、又は斜めになっている。
【0084】
任意選択で、3次元多孔質構造体は、酸化反応プロセス、水素化反応プロセス、改質反応プロセス、及び/又は、脱水反応プロセスにおいて使用される。
【0085】
任意選択で、三次元多孔質構造体は、多孔質触媒、触媒担体、又は吸収材料として使用するために製造される。
【0086】
有利なことに、多孔質構造体は、充填床を、例えば反応器内に形成できる程度に十分に機械的に安定であり得る。多孔質構造体は、チャネリングの傾向を伴うことなく、構造化された、又は、ランダムに充填されたモノリス体の床における圧力損失を減少させることができる。例えば、本発明に係る積層造形方法を実行することにより、大きい外部表面積又は高い充填率を有する触媒活性金属を含む多孔質触媒構造体を得ることができる。
【0087】
例えば、無機触媒、触媒担体、又は吸収剤は、押出ストランド又は押出モノリスとして製造され得る。
【0088】
構造体内チャネルは、多孔質構造体を通って延在する導管を形成し得る。波状経路に沿ったフィラメントによって得られる構造体内チャネルの幾何学的形状により、構造体と構造体を通って流れる流体との間の接触を向上することができる。これは、例えば触媒作用又は吸収にとって非常に重要であり得る。
【0089】
有利なことに、より高い充填密度を得ることができ、多孔質構造体の充填床にわたる圧力損失を減少させることができる。
【0090】
任意選択で、多孔質構造体は、触媒活性組成物を有する材料からなる。
【0091】
任意選択で、多孔質構造体は、少なくとも1つの触媒活性組成物でコーティングされている。
【0092】
任意選択で、触媒活性組成物は、多孔質構造体の外面上、及び、多孔質構造体の構造体内チャネルの内面上に分布される。
【0093】
任意選択で、三次元多孔質構造体は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、混合金属酸化物、ハイドロタルサイト、スピネル、ペロブスカイト、金属リン酸塩、ケイ酸塩、ゼオライト、ステアタイト、コーディエライト、炭化物、窒化物、又はそれらの混合物若しくはブレンド物からなる。
【0094】
任意選択で、触媒活性金属は、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、La、Hf、W、Re、Ir、Pt、Au、Pb、Ce、及びそれらの混合物若しくは合金からなるグループから選択される。いくつかの例において、金属化合物の金属は、任意選択で1つ以上の遷移金属と混合された、例えばPt、Pd、Ir、Ru、Reのうち1つ以上を含む貴金属を含み得る。遷移金属化合物は、ランタニド金属化合物及びアクチニド金属化合物を含み得る。遷移金属化合物は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ヒドロキシ炭酸塩、又はそれらの混合物であってもよい。遷移金属酸化物は、スピネル、ペロブスカイトなどの単一金属酸化物若しくは混合金属酸化物、又は、2つ以上の遷移金属酸化物を含む組成物を含み得る。触媒活性組成物が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭素、及びそれらの混合物などの1つ以上の粉末状不活性材料をさらに含み得ることも想定される。セラミック(例えば、コーディエライト)、ゼオライトなどの他の材料も使用され得る。
【0095】
任意選択で、バインダ材料が使用され、このバインダ材料は、メチルセルロースなどの有機バインダである。
【0096】
任意選択で、粘土、アルミナ、シリカ、又はそれらの混合物などの無機バインダからなるグループから選択されたバインダ材料が使用される。
【0097】
任意選択で、三次元多孔質構造体は、ポリマー材料又はプラスチック材料からなる。このような材料は、例えばガス収着プロセスで使用され得る。
【0098】
任意選択で、三次元多孔質構造体は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)及びその誘導体、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)及びその誘導体、ポリエチレンテレフタレート(PETG)及びその誘導体、ナイロン及びその誘導体、ポリ乳酸(PLA)及びその誘導体からなる。
【0099】
任意選択で、積層造形プロセスは、熱溶融積層法(FDM)プロセス、熱溶融フィラメント製法(FEM)プロセス、ペースト押出プロセス、又はロボキャスティングプロセスである。他の様々な積層造形プロセスを使用してもよい。本開示に係る方法は、押出ベースの積層造形に大きな利点を提供するが、いくつかの例では、フィラメントの堆積の代わりにフィラメントのプリンティングを実行してもよい。
【0100】
ロボキャスティング製造プロセスでは、触媒材料粒子のペーストを押し出してストランドを形成し、このストランドを堆積させて積層層を形成し、所望の三次元構造体を形成する。続いて、この構造体を乾燥させ、焼結することができる。
【0101】
ラピッドプロトタイピングプロセスなどの他の積層造形プロセスも使用され得る。例えば、粉末ベースのラピッドプロトタイピングプロセス又はリソグラフィベースのラピッドプロトタイピングプロセスでは、バインダ材料が無機触媒粉末に選択的に導入されて三次元構造体が形成される。これによっても、フィラメント様の構造体が得られる。
【0102】
一態様によれば、本発明は、材料押出によって得られる三次元多孔質構造体を提供し、多孔質構造体は、複数の積層層内に所定の配置で配置された、相互接続されたフィラメントを有し、連続する層のフィラメントは、相互接続された細孔を有する多孔質構造体を得るように互いに接続されており、層内のフィラメントは、波状経路に沿って、当該波状経路に沿って堆積された、隣接するフィラメントの少なくとも1つのサブセットの間に幅狭領域及び幅広領域が形成されるように堆積されており、複数の積層層は、連続する層内に形成された幅広領域が少なくとも部分的に重なって構造体内チャネルを形成するように配置されている。
【0103】
本発明に係るプリンティング/堆積方法は、多孔質構造体であって、当該多孔質構造体内で、(例えば、充填床で使用される)当該多孔質構造体における圧力損失が、多孔質構造体が使用されるプロセスのためにより適切に調整され得る、多孔質構造体の設計及び製造を可能にする。これにより、多孔質構造体の設計を使用して、反応速度をより良好に制御し得るように充填床内部の流体の流れを改善し得る。
【0104】
有利なことに、充填床で使用される多孔質構造体は、例えば触媒反応器で使用される温度及び圧力の条件下で、より大きな力に耐えることができる可能性がある。
【0105】
通常、触媒床又は収着床が、流体がこの床を通過する際に最小限の圧力損失又は抵抗しかもたらさないことが有利である。多孔質構造体床を通る圧力損失が大きいと、所望の流量を実現するために高い流体圧力を使用する必要がある。このような高圧を使用すると、圧力損失が低い同様のプロセスステップと比較して、圧縮コスト及び圧送コストがかかり、プロセス装置の摩耗が増加する可能性がある。
【0106】
さらに、流体に高圧で多孔質構造体床を強制的に通過させると、多孔質構造体が損傷する可能性もある。このような圧力の下で多孔質構造体がより小さな多孔質構造体に破砕されると、床の圧縮が増大し、それによって床を通る圧力損失がさらに増加する。
【0107】
但し、いくつかのプロセスでは、触媒床を通る圧力損失を増加させることが望ましい。例えば、多孔質構造体床が流体の流れの方向に対して比較的薄い場合、高い圧力損失を利用して、流体と触媒との間の接触時間を増加させたり、流体流量を制御したりすることができる。
【0108】
構造体内チャネルは、真っ直ぐであってもよいし、傾斜していてもよいし、湾曲していてもよい。構造体内チャネルは、構造体を通る曲がりくねった経路を提供し得る。例えば、構造体内チャネルは、ジグザグ状経路に少なくとも沿い得る。各内部チャネルは、任意の形状の断面を有し得る。断面形状は、幅広領域を形成する波状経路に依存し得る。例えば、断面形状は、全体的に丸みを帯びていてもよく、例えば角を丸めた楕円形、多角形などであってもよい。例えば、鋸歯状波経路によって得られる、正方形/長方形チャネル又は三角形チャネルも可能である。
【0109】
一態様によれば、本発明は、本開示に係る三次元多孔質構造体を含む充填床を提供する。
【0110】
多孔質構造体の充填床は、構造化された形態で、又はランダムな形態で多孔質構造体が充填されたチューブなどの容器を備え得る。これにより、多孔質構造体を含むカラムを得ることができ、このカラムは、例えば触媒プロセス又は吸収プロセスで使用され得る。但し、多孔質構造体は、例えば触媒プロセス又は吸収プロセスにおいて、個々のモノリスとして使用することもできる。有利な多孔質構造体は、他のプロセス又は用途でも使用され得ることが理解されるであろう。
【0111】
構造体の密度がより高い場合(例えば、多孔質構造体内のフィラメントがより多い場合)、構造体の充填床を通る圧力損失が増加する。有利なことに、直線状のラインを有する構造体と同じ密度を有する、本開示に従ってプリントされた多孔質構造体は、依然として、充填床内でより低い圧力損失をもたらし得る。
【0112】
任意選択で、充填床を形成する多孔質構造体は、全て実質的に同じであってもよく、例えば製造公差内でのみ異なるものであってもよい。
【0113】
任意選択で、充填床は、異なる多孔質構造体から形成されてもよく、多孔質構造体のうち少なくとも1つは、本開示に係る多孔質構造体である。同じ充填床内の多孔質構造体間で、サイズ、形状、及び内部の空所(void space)が異なっていてもよい。同じ触媒床内の多孔質構造体間で、触媒活性物質の性質又は濃度が異なっていてもよい。いくつかの例では、異なる触媒多孔質構造体を一緒に混合して、床を形成する多孔質構造体の実質的に均質な混合物を形成してもよい。
【0114】
任意選択で、多孔質構造体内部の空所は、多孔質構造体が充填床(例えば、触媒床、吸収床、ヘッド交換床など)に充填されたときの多孔質構造体間の空所に比例するように選択され得る。いくつかの例において、多孔質構造体内部の空所の体積は、多孔質構造体が充填床に充填されたときの多孔質構造体間の空所の体積とほぼ同じになるように選択され得る。いくつかの例において、多孔質構造体内部の構造体内チャネルの平均幅、特性長さ、又は直径は、多孔質構造体が充填床に充填されたときの多孔質構造体間の構造体内チャネルの形態における空所の平均幅、特性長さ、又は直径とほぼ同じになるように選択され得る。いくつかの例において、多孔質構造体を通る構造体内チャネルの平均断面積は、多孔質構造体が充填床に充填されたときの多孔質構造体の間のチャネルの形態における平均構造体間空隙面積とほぼ同じになるように選択される。このような例において、「ほぼ同じ」とは、多孔質構造体間の空所の±50%以内、±40%以内、又は±20%以内であると理解され得る。例えば平均構造体間チャネル断面積、総空隙容積などの充填床内の構造体間チャネル特性は、物理的、数学的、数値的、計算的、若しくは実験的モデリング方法、又はそのような方法の組み合わせ(混合方法を参照)を使用して推定又は計算され得る。
【0115】
一態様によれば、本発明は、本開示に係る方法を実行するように適合された積層造形システムを提供する。
【0116】
有利なことに、層内の細孔のより複雑な形状を、ひいては構造体内チャネルのより複雑な形状を得ることができる。層内のフィラメント間の細孔/開口部は、少なくとも2本の非平行なラインによって得ることができ、この少なくとも2本の非平行なラインのうち少なくとも1本は、波状経路に沿って堆積/プリントされる。
【0117】
一態様によれば、本発明は、多孔質触媒、触媒担体、及び/又は、吸収材料としての三次元多孔質構造体の使用を提供する。例えば、多孔質構造体は、触媒プロセス用の触媒担体であってもよい。いくつかの例では、多孔質構造体が充填床で使用され、この充填床は、触媒プロセス又は吸収プロセスにおいて使用可能である。有利なことに、本開示に係る多孔質構造体により、充填床における圧力損失が制限され、これは、触媒プロセス及び吸収プロセスにとって有利であり得る。
【0118】
一態様によれば、本発明は、一組の命令を含むコンピュータプログラム製品を提供し、この一組の命令は、このコンピュータプログラム製品上に記憶されており、積層造形システムの制御システムによって実行されると、このシステムに、本開示に係る方法を実行させる。
【0119】
一態様によれば、本発明は、容器内部に収納された、本開示に係る方法を実行することによって製造された複数の触媒多孔質構造体、及び/又は、吸収剤多孔質構造体を含む触媒床を提供する。
【0120】
一態様によれば、本発明は、少なくとも1つの出発化合物を含む少なくとも1つの流体を、本開示に係る触媒床と接触させるステップを含む、化学反応を実施する方法を提供する。
【0121】
一態様によれば、本発明は、流体混合物を本開示に係る触媒床と接触させることにより流体混合物を処理して、混合物の1つ以上の標的成分を選択的に除去する方法を提供する。
【0122】
多孔質構造体は、外面にある細孔を介して周囲の空間と流体連通している空所をこの多孔質構造体内に含み得る。細孔は、各層内で波状経路に沿ってプリントされた1本以上のフィラメントの間の幅広領域に形成された構造体内チャネルによって有利に得ることができる。
【0123】
空所、細孔などといった用語は、多孔質構造体を形成する材料(例えば、触媒構造体を形成するペースト材料)の多孔質構造体の間のミクロ細孔又はミクロ空間/空隙などの微視的な空間を含むことを意図していないことが理解されるであろう。本明細書で使用される空所又は細孔は、構造体内部の巨視的な空間又は細孔を指すことが理解されるであろう。空所は、多孔質構造体の表面上の第1の位置から、多孔質構造体の内部を通って、多孔質構造体の表面上の第2の位置まで延在する、内部空洞、表面溝、くぼみ、構造体内チャネル、又は2種類以上の空所の組み合わせを含み得る。構造体内チャネルは、流体が多孔質構造体に出入りし得るように、多孔質構造体の表面に開口部を常に含む。このような構造体内チャネルは、(例えば、触媒作用、吸収、熱伝達などを含む)様々な用途にとって非常に重要であり得る。多孔質構造体は、1つを超える数の構造体内チャネルを含み得る。多孔質構造体は、例えば、(例えば、四葉状設計の構造体における)例えば4つの構造体内チャネルなどの、3つを超える数の構造体内チャネルを含み得る。より多数の構造体内チャネル、例えば12を超える数の構造体内チャネル、24を超える数の構造内チャネルなども想定される。構造体内チャネルの数は、多孔質構造体の幾何学的形状に依存し得る。いくつかの例において、多孔質構造体は、多孔質構造体の断面の1cmあたり1個から100個の構造体内チャネルを含む。
【0124】
任意選択で、構造体内チャネルは、その内面にリブ、溝、又は羽根を含む。各チャネルは、チャネルの長さに沿って変化する断面を有し得る。構造体内チャネルの内面は、例えばねじ付きチャネル、らせん状チャネル、ジグザグ状チャネルなどを設けることによって、流体がチャネルを通過する際の流体の混合を促進するような形状にすることができる。構造体内チャネルは、平行な壁を有していてもよいし、平行な壁を有していなくてもよい。構造体内チャネルは、チャネルの端部においてより幅広であるか、及び/又は、チャネルの中心に向かってより幅広となり得る。追加的に、又は代替的に、構造体内チャネルは、幅狭部分を、例えば表面開口部の何れかに隣接して、又は表面開口部の間に含み得る。構造体内チャネルのうち何れか一つの直径は、同じ多孔質構造体内部の任意の他の構造体内チャネルの直径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0125】
波状経路は、直線部分も含み得ることが理解されるであろう。例えば曲線、直線、又は曲線と直線との組み合わせを含む、様々な波状パターンが使用され得る。
【0126】
この方法を考慮して説明される態様、特徴、及びオプションの何れも、積層造形システム、説明される多孔質構造体、多孔質構造体の使用、及びコンピュータプログラム製品に等しく当てはまることが理解されるであろう。上述の態様、特徴、及びオプションのうち何れか1つ以上を組み合わせることができることも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0127】
図面に示される例示的な実施形態に基づいて本発明をさらに説明する。例示的な実施形態は、非限定的な例として与えられる。図面は、非限定的な例として与えられる、本発明の実施形態の概略図にすぎないことに留意されたい。
【0128】
図1A図1Aは、波状経路の概略図を示す。
図1B図1Bは、波状経路の概略図を示す。
図1C図1Cは、波状経路の概略図を示す。
図1D図1Dは、波状経路の概略図を示す。
図2図2は、連続する2つの層における堆積経路の概略図を示す。
図3図3は、連続する2つの層における堆積経路の概略図を示す。
図4図4は、層内の堆積経路の概略図を示す。
図5図5は、連続する2つの層における堆積経路の概略図を示す。
図6図6は、層内の堆積経路の概略図を示す。
図7図7は、層内の堆積経路の概略図を示す。
図8図8は、連続する2つの層における堆積経路の概略図を示す。
図9A図9Aは、多孔質構造体の性能に関するグラフを示す。
図9B図9Bは、多孔質構造体の性能に関するグラフを示す。
図10図10は、2つの連続する層における堆積経路の概略図を示す。
図11A図11Aは、多孔質構造体の実施形態の概略図の異なるビューを示す。
図11B図11Bは、多孔質構造体の実施形態の概略図の異なるビューを示す。
図11C図11Cは、多孔質構造体の実施形態の概略図の異なるビューを示す。
【発明を実施するための形態】
【0129】
図1A図1B図1C図1Dは、三次元多孔質構造体を製造するための例示的な波状経路の上面図の概略図を示す。異なる例示的な構成が提供される。簡潔にするために、対向する、隣接するフィラメント堆積経路のみが示されている。層内のフィラメントは、波状経路1a、1b、1c、1d、1eに沿って、当該波状経路1a、1b、1c、1d、1eに沿って堆積された、隣接するフィラメントの少なくとも1つのサブセットの間に幅狭領域3と幅広領域5とが形成されるように堆積されている。積層層は、連続する層内に形成された幅広領域5が少なくとも部分的に重なり、多孔質構造体内に構造体内チャネルを形成するように配置されている。
【0130】
図1Aにおいて、互いに対向する第1の波状経路1aと第2の波状経路1bとは、幅狭領域3と幅広領域5とが形成されるように構成されている。構造体の各層は、幅広領域5に開口部を形成するために、波状経路に沿った複数の対向するフィラメントを有し得る。
【0131】
図1Bにおいて、第1の波状経路1a及び第2の波状経路1bは、互いにシフト(位相シフトを参照)されており、これにより、幅広領域5の異なる形状及び寸法がもたらされる。幅狭領域3も、図1Aに示す構成と比較して異なる。
【0132】
図1Cにおいて、第1の波状経路1a及び第2の波状経路1bは、非平行な、対向する、隣接するプリンティング経路であり、第1の波状経路1aと第2の波状経路1bとの間に幅狭領域3と幅広領域5とが形成されている。これは、対向する2つの波状経路1a、1bの間の距離が、波状経路1a、1bの波動関数及び位置決めの結果として変化することによって実現される。さらに、第1の波状経路1a及び第2の波状経路1bの各々には、1つの平行な波状経路1c、1dがそれぞれ付随している。これは、構造体内でより高い局所強度を実現するために行われ得、これにより、多孔質構造体の構造的完全性において大きな利点を提供することができる。
【0133】
図1Dでは、3つの波状経路1a、1b、1eの間に幅狭領域3と幅広領域5とが形成されている。波状経路1a、1bの間には、追加の波状経路1eが設けられている。この追加の中間波状経路は、第1の波状経路1a、及び/又は、第2の波状経路1bの波動関数における周波数と比較して異なる周波数を有する波動関数を有し得る。
【0134】
多孔質構造体内の連続層において、幅広領域5は、構造体を通る構造体内チャネルを形成するように重ね合わされ得る。これにより、細孔を効率的に得ることができる。さらに、多孔質構造体は、好適な機械的強度を有しつつ、より大きな細孔を有し得る。得られた細孔により、用途に応じて、モノリスと充填床との両方について、構造体を通る良好な流体の流れが可能になる(圧力損失の減少、及び、流体と構造体との接触又は相互作用の向上を参照)ことが保証される。
【0135】
波状経路は、周期的経路であり、この周期的経路は、波の振幅対波の幅の比を有する。例えば、この比は、0.5から3の間の範囲内である。このような構成により、比較的広い細孔と十分な構造強度とを備えた構造体を提供し得る。
【0136】
任意選択で、多孔質構造体内部の1つ以上の空所は、構造体の表面上の第1の位置にある第1の開口部から構造体の表面上の第2の位置にある第2の開口部まで延在する、1つ以上の構造体内チャネルを含み得る。流体は、開口部を通って構造体の内部に出入りし得る。
【0137】
隣接する、対向する非平行なフィラメントであって、当該フィラメントの間に幅広領域5と幅狭領域3とを形成するフィラメントは、幅狭領域3において互いに離間していてもよい。但し、幅狭領域3においてフィラメントが互いに合流する(例えば、互いに接触するか、又は近接する)ことも可能である。例えば、2つの幅狭領域3の間の幅広領域5が、1つの細孔開口部を画定し得る。或いは、幅狭領域3におけるフィラメントが互いに離間していることも可能である。これにより、多孔質構造体を通る、より小さい構造体内チャネル及びより大きい構造体内チャネルのバリエーションを得ることができる。フィラメントは、それぞれ、波状経路に沿って同一の、又は異なる周期関数を有し得る。
【0138】
本開示に係る方法は、多孔質構造体内に構造体内チャネルを設ける簡単且つ効率的な方法を提供する。さらに、そのような多孔質構造体の床を通る流体の流れを改善することができる。得られた構造体内チャネルは、多孔質構造体の床内部の流れに対する背圧又は抵抗に影響を及ぼす。対向するフィラメントの波状経路は、所望の幾何学的特性を備えた所望の構造体内チャネルが得られるように調整され得る。これにより、迅速且つ簡単な製造プロセスを可能にしつつ、多孔質構造体の高度な幾何学的設計が可能になる。
【0139】
波状経路は、「くびれている」と表現され得る幅広領域を画定することができ、この幅広領域は、2つの幅狭領域の間に設けられる。
【0140】
いくつかの例において、隣接する層は、非平行なフィラメントの同じパターンを有し得、互いに角度を成して配向され得る。層は、波状経路に沿ってプリントされた非平行なフィラメントに加えて、平行なフィラメントも有し得ることが理解されるであろう。このような平行なフィラメントも、波状経路に沿っていてもよく、それによって(例えば、より太いフィラメントと同様に)多孔質構造体の剛性が局所的に増加する。いくつかの例では、平行なフィラメントが互いに隣接してプリントされて、多孔質構造体内にリブを形成する。
【0141】
ペースト押出によるロボキャスティング、レーザ焼結技術、ダイレクトライトプロセッシング、熱溶解フィラメント技術、ステレオリソグラフィ、溶融製造技術などの様々な3Dプリンティング技術を使用できることが理解されるであろう。
【0142】
層は、1本以上の直線状のフィラメントと、波状経路に沿った1本以上の非直線状のフィラメントと、を有し得ることが理解されるであろう。細孔(ひいては構造体内チャネル)は、多孔質構造体の層内のフィラメントの非平行な構成によって得られる。
【0143】
いくつかの例において、本開示の三次元多孔質構造体は、触媒、触媒担体、若しくは吸収性モノリス、又は、より小さな触媒、触媒担体、若しくは吸収性成形体として使用される。前者は、例えば反応器の構造化された充填物において使用され得る。後者は、通常、ランダムに充填された触媒床において使用される。何れの場合においても、三次元多孔質構造体の発明的な幾何学的形状は、構造特性(構造的完全性)と流体力学特性(使用中の構造体内部の圧力損失及び流体の混合)との両方に関する重要な利点を提供する。
【0144】
多孔質構造体は、例えば楕円体、四葉形、円筒形、球形などの様々な形状を有し得る。いくつかの例では、主軸が等しい長さを有する。いくつかの例では、その主軸のうち2つ以下が等しい長さを有する。様々な幾何学的形状、寸法、及び形態が可能である。
【0145】
図2は、連続する2つの層における堆積経路の上面図の概略図を示す。第1の層では、波状プリント経路1hが第1の方向Aに波打っており、第2層では、波状プリント経路1vが、第1の方向Aを横切る第2の方向Bに波打っている。この例では、第1の方向Aは水平であり、第2の方向Bは垂直である。但し、方向Aと方向Bとの間の角度が異なっていてもよい。
【0146】
この例では、多孔質構造体は、四葉状設計を有している。このような設計により、構造強度と空気力学的特性(圧力損失、及び、流体と構造体との間の接触を参照)とを向上することができる。積層層は、連続する層内に形成された幅広領域が少なくとも部分的に重なって構造体内チャネルを形成するように配置されている。
【0147】
見て分かるように、多孔質構造体の層において、第1のフィラメント1h’は、第2のフィラメント1h’’と鏡像関係にある。結果として、これらの対向する第1のフィラメント1h’及び第2のフィラメント1h’’は、互いに非平行である。これにより、幅広領域5において、より大きな細孔/開口部が得られる。フィラメントのプリント/堆積パターンは、少なくとも部分的に対称であってもよい(例えば、1つ以上の鏡面)。層は、平行なラインと非平行なラインとの組み合わせを有し得る。
【0148】
隣接する(対向する)フィラメント全てが非平行である必要はない。特定の隣接する(対向する)フィラメントが、多孔質構造体の強度を高めるために平行であってもよい。隣接する非平行なフィラメントは、鏡面対称であってもよい。但し、隣接する非平行なフィラメントが、これらのフィラメントの長手方向に沿って互いに対してシフトされていることも可能であり、波状経路間に位相差を参照。位相差は、例えば、150度から200度の間の範囲内であり得る。
【0149】
各層において、幅広領域5にはより大きな細孔が形成され得、各層内部の非平行なフィラメントは、離間した2本以上のフィラメントのグループとして配置されており、当該非平行なフィラメントは、波状経路に沿ってプリントされている。例えば、離間した2本のフィラメントのグループは、離間した2本のフィラメント間の距離がより大きい周期的な幅広領域と、当該離間した2本のフィラメント間の距離がより小さい周期的な幅狭領域と、を形成するように互いに対してシフトされ得る(例えば、周期波動関数における位相差)。様々な構成及びプリント経路が使用され得る。いくつかの例では、波が、正弦波状経路を有し得る。但し、鋸歯状経路などの他の形状も使用され得る。異なる種類の波状経路の組み合わせも使用され得る。波形特性がフィラメントの長手方向の長さに沿って変化することも想定される。
【0150】
様々な材料を使用して多孔質構造体を製造することができる。いくつかの例において、三次元多孔質構造体は、アルミナ、シリカ、金属アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、ジルコニア、チタニア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛、炭素、又はそれらの混合物若しくはブレンド物からなる。多孔質構造体は、例えば、三次元多孔質触媒、触媒担体、又は、触媒、触媒担体、若しくは吸収材料の積層ストランドの吸収性モノリスであり得る。
【0151】
対向するフィラメントの波状経路1h’、1h’’は、2つの幅狭領域の間に幅広領域が形成されるような波状経路である。結果として、くびれた開口部を得ることができ、これにより、例えば圧力損失が制限されるなど、多孔質構造体の流体力学特性が向上し、さらに、より高い圧潰壊強度も得られる可能性がある。さらに、この多孔質構造体の製造方法は効率的でもあり、その結果、製造効率が大幅に向上する可能性がある。
【0152】
任意選択で、フィラメントは、多孔質構造体の周面に1つ以上のサイドチャネルが形成されるように堆積/プリントされる。このようなサイドチャネルは、圧力損失及び幾何学的表面積に大きな影響を及ぼし得る。
【0153】
任意選択で、3つの多孔質構造体は、触媒、触媒担体、又は吸収材料の積層フィラメント(ストランドを参照)の吸収構造体を形成し得、各層は、ある数のフィラメントを有し、少なくともフィラメントの第1のサブセットが、近接して離間しており、当該フィラメントの第1のサブセットは、様々な距離だけ離間した非等距離なフィラメントである。この距離は、幅狭領域で小さくなり、幅広領域で大きくなり得、それにより、幅広領域に層内細孔が形成される。
【0154】
例えば、ロボットキャスティングによって調製された触媒は、比較的大きな表面積を有し得る。本開示の方法に従って多孔質構造体をプリントすることによって、個々のモノリス多孔質構造体/モノリス多孔質体にわたる高い圧力損失を防止することができる。これにより、モノリス構造体/モノリス体が配置される反応器(例えば、ランダムに充填された、又は構造化された充填床)にわたる高い圧力損失も防止することができる。
【0155】
追加的に、又は代替的に、個々のモノリス多孔質構造にわたる圧力損失によりモノリス多孔質構造体への進入が妨げられることを防止できるため、ランダムに充填されたモノリス多孔質構造体の床を有する反応器を通るガス流のチャネリングを減少又は防止することができ、その結果、ロボキャスティング技術によってもたらされる幾何学的表面積の改善を十分に活用することができる。多孔質構造体は、圧力又は力に対する十分な構造的完全性を提供しつつ、改善された細孔を有し得る。
【0156】
図3は、連続する2つの層における堆積経路の上面図の概略図を示す。図2に示した例と同様に、波状プリント経路は、連続する層において異なる方向に波打っている。この例では、横方向である。但し、他の構成も可能である。また、この例では、構造体の外周側が円筒状である。
【0157】
プリンティングパターンは、非平行なフィラメントを含み得、この非平行なフィラメントの間に比較的大きな開口部が形成され得、非平行なフィラメントのうち少なくとも1本は、非直線状又は波状の経路に沿ってプリント/堆積されている。形成された開口部は、設計要件に応じて様々な形状及び寸法を有し得る。いくつかの例において、少なくとも1本の非平行なフィラメントは、例えば正弦波状経路、鋸歯状経路などの周期的な波状経路に沿ってプリント/堆積され得る。いくつかの例において、非平行なフィラメントは、互いに対して鏡像関係にあり、この非平行なフィラメントの間に比較的大きな開口部が形成される。このような場合、波状経路の最大振幅は、開口部に位置合わせされる。
【0158】
有利なことに、多孔質構造体が充填床内に配置される場合、充填密度が改善され得る。追加的に、又は代替的に、充填床にわたる圧力損失を減少させることができる。
【0159】
任意選択で、多孔質構造体は、複数の触媒又は収着剤粒子を含む触媒床又は収着床で使用され、当該触媒又は収着剤粒子のそれぞれは、三次元形状粒子であって、当該三次元形状粒子内に、構造体内チャネルが、波状経路に沿ってプリント/堆積されたフィラメントを使用して形成されている三次元形状粒子の形態を有する。
【0160】
図4は、層内の堆積経路の概略図を示す。この例において、幅狭部分3は、構造体の縁部/角部7に配置されている。例えば2つの縁部7の間に幅狭領域が配置されている場合に、一部の幅狭部分3のみが縁部7に配置されることも可能である。そのような場合、2つの縁部7の間に2つの幅広領域が形成されてもよい。他の構成及び配置も想定される。有利なことに、十分な空隙率を有し、有利な空気力学的特性(例えば、流体が例えば充填床内で構造体を通過するときの流体-構造体相互作用、圧力損失など)を提供する、構造的に強い設計を得ることができる。
【0161】
従来技術の多孔質構造体では、通常、直線状の支柱が平行に積層されている。これらの3Dプリント構造体の構造の充填床では、圧力損失と構造体を通る流れとが制限要因である。圧力損失は、反応物を反応器に押し通すために必要なエネルギーと相関している。より反応性の高い表面積が多孔質構造体の内部にあるため、多孔質構造体を通る流れは、転化に関係している。
【0162】
開口部/細孔は、波状経路に沿ってプリントされた非平行なフィラメントを使用して作成されるため、平行なラインを使用した場合と比較してより大きな構造体内チャネルを形成することが可能である。いくつかの例では、フィラメントが曲線に沿ってプリントされており、いくつかの対向するフィラメントが、互いに鏡像関係となるように配置されている。これにより、構造強度と構造的完全性を向上しつつ、より大きな細孔、及び/又は、構造体内チャネルを形成することができる。有利なことに、より大きな構造体内チャネルによって、プリントされた構造体を通過する流れを増加させることができるため、これらの多孔質構造体の充填床にわたる圧力損失を減少させることができる。
【0163】
有利なことに、多孔質構造体は、様々な用途において向上した特性を有し得る。例えば、本開示に係る多孔質構造体は、大きい外部表面積又は高い充填率を有する触媒活性金属を含む触媒を提供し得る。触媒多孔質構造体は、反応器内で充填触媒床が形成され得るように、十分な機械的安定性を提供し得る。
【0164】
図5は、連続する2つの層における堆積経路の上面図の概略図を示す。この例では、波状経路の振幅及び周波数を調整することにより、より大きい細孔が四葉状設計で形成される。
【0165】
有利なことに、プリントされた多孔質構造体を通る流れを増加させることができ、構造体の充填床を通る圧力損失を減少させることができる。平行なフィラメントと非平行なフィラメントとの組み合わせがプリンティングパターンで使用され得る。
【0166】
有利なことに、多孔質構造体は、例えば構造化された、又はランダムに充填された床において、圧力損失を減少させることができる。さらに、充填床にわたる低い圧力損失は、チャネリングの傾向なしに実現され得る。これは、例えば触媒作用(例えば、触媒モノリス体)、吸収、熱伝達などの様々な用途にとって非常に重要であり得る。
【0167】
図6は、層内の堆積経路の概略図を示す。本開示に係る方法は、多孔質構造体の製造を改善する。フィラメント堆積法により多孔質構造体の製造効率を向上させることができる。例えば、この方法は、ノズルによりフィラメントを堆積するステップを含むロボキャスティング又はマイクロ押出にも使用され得る。多孔質構造体の各層内に、交互の波状パターンによって、より大きな穴が形成され得る。これにより、構造体内チャネルの形状を改善することができる。さらに、細孔及び構造体内チャネルの設計を改善することができ、多孔質構造体が流体の流れの中に配置されたときの多孔質構造体にわたる圧力損失を大幅に減少させることが可能になる。追加的に、又は代替的に、より高い強度を得ることができ、その結果、構造的完全性が向上する。追加的に、又は代替的に、標準的な3D多孔質構造体と比較して、より多くの幾何学的表面を得ることができる。
【0168】
図7は、層内の堆積経路の概略図を示す。本開示の多孔質構造体は、当該技術分野で周知の多孔質構造体と比較して、大幅な圧力損失の減少を実現できる幾何学的パターンを提供する。多孔質構造体は、反応物の気体又は液体の流れと多孔質構造体(例えば、触媒)との相互作用を促進及び制御する能力を向上させ得る。本開示に係る多孔質構造体は、3Dプリンティングによる製造が容易であり、多孔質構造体にわたる、且つ、多孔質構造体を通る反応物の流れの制御と組み合わせて、表面積対体積の比が高い多孔質構造体を提供できる新規な設計を有する。
【0169】
図8は、連続する2つの層における堆積経路の概略図を示す。本開示の三次元構造体の層パターン及び層組織により、十分な構造的完全性を提供しつつ、個々の三次元構造体にわたる圧力損失を大幅に減少させることができる。これにより、本開示の三次元構造体が充填された反応器にわたる圧力損失が減少し、個々の三次元構造体のランダムな充填物が充填された反応器床を通る流れがより均一になる。
【0170】
図9A図9Bは、例示的な多孔質構造体の性能に関するグラフを示す。図9Aは、等しい空隙率を有する2つの異なる多孔質構造体についての、すなわち、結果内で10aによって示されている第1の構造体と、結果内で10bによって示されている第2の構造体とについての、異なる性能指標(幾何学的表面積(GSA))、出力、強度、充填床密度、充填床内の圧力損失)を比較している。第1の構造体は、従来技術の多孔質構造体(小さく稠密な押出物)であり、第2の構造体は、例示的な四葉状設計を有する、本開示に係る多孔質構造体12である。図9Bは、充填床内の2つの異なる多孔質構造体についてのガス速度の関数における圧力損失のグラフを示す。
【0171】
結果から分かるように、本開示に係る多孔質構造体は、等しく多孔質である構造体と比較して圧力損失を減少させ得る。実験データから分かるように、本発明に係る例示的な多孔質構造体にわたる圧力損失は、大幅に低い。
【0172】
四葉状設計は、有利な幾何学的表面積を提供しつつ、(例えば、触媒作用又は収着のための)構造体の充填床にわたる比較的低い圧力損失をもたらし得る。さらに、構造設計などにより、良好な機械的強度及び利用可能な幾何学的表面積を提供できる。
【0173】
図10は、連続する2つの層における堆積経路の上面図の概略図を示す。この例では、波状経路が、直線部分を有する(例えば、鋸歯状関数)。異なる周期、及び/又は、振幅を有する、様々な鋸歯状波動関数が使用され得る。
【0174】
図11A図11B図11Cは、多孔質構造体の実施形態の概略図の異なるビューを示す。この例では、多孔質構造体が、四葉状設計を有している。但し、様々な他の設計が使用され得る。
【0175】
多孔質構造体は、より大規模なモノリシック構造体であってもよいことが理解されるであろう。多孔質構造体が、充填床内で使用される、より小規模なモノリシック構造体、例えば充填床内で使用可能な、より小さい触媒粒子であることも可能である。
【0176】
典型的な材料には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭素、及びそれらの混合物などの金属酸化物及びセラミックが含まれる。従来のセラミック触媒担体も使用され得る。触媒担体粉末も、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ヒドロキシ炭酸塩、又はそれらの混合物から選択される、ランタニド金属化合物及びアクチニド金属化合物を含む1つ以上の遷移金属化合物を含み得る。遷移金属化合物は、単一金属酸化物若しくは混合金属酸化物、又は2つ以上の遷移金属酸化物を含む組成物を含み得る。好ましくは、触媒担体粉末は、アルミナ、金属アルミン酸塩、シリカ、アルミノケイ酸塩、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、又はそれらの混合物を含む。
【0177】
任意選択で、多孔質構造体は、触媒不活性な多孔質構造体であり、例えば、流体の流れ、熱伝達、触媒活性などを管理する。いくつかの例では、多孔質構造体が化学反応を触媒するために使用されない可能性がある。いくつかの例において、多孔質構造体は、触媒床内部で触媒活性な多孔質構造体と混合される。触媒活性成分を含まない不活性多孔質構造体を有する別個の床を提供することも可能である。
【0178】
多孔質構造体は、任意の公知の製造方法により製造され得る。多孔質構造体の形状が複雑であるため、積層層造形法又は3Dプリンティング法による製造が特に有利となる。いくつかの例では、支持材料(例えば、粉末)の層が設けられ、層内の材料は、所定のパターンに従って結合又は融合される。これらのステップを層の上に繰り返して、本開示に係る多孔質構造体を形成することができる。結合していない、又は融合していない材料(例えば、粉末)は、例えば重力によって、又は誘起された流体の流れによって多孔質構造体から容易に分離される。
【0179】
いくつかの例において、多孔質構造体は、楕円体形状を有する。楕円体形状は、3つの主軸を有する幾何学的な3次元形状として理解され得る。全ての軸が等しい場合、楕円体は、球として知られる。楕円体の多孔質構造体が有する3つの主軸全てが等しくなくてもよい。楕円体の2つの長軸が等しい場合、その形状は、偏球又は回転楕円体として知られる。例えば、多孔質構造体は、3軸楕円体(すなわち、3つの長軸全てが異なる長さである)、又は長さが等しい2つの長軸を有する回転楕円体の形状を有し得る。
【0180】
多孔質構造体は、様々な寸法を有し得る。多孔質構造体の主軸の長さは、0.5mmから100mmの範囲内であり得る。典型的な多孔質構造体は、3mmから15mmの範囲を含む3mmから30mmの範囲内の最長寸法を有し得る。典型的な多孔質構造体は、0.5mmから100mmの範囲内の、より一般的には3mmから30mmの範囲内の、例えば3mmから15mmの範囲内の、より短い主軸を有し得る。多孔質構造体のサイズは、多孔質構造体が充填床構成内に充填されたときの構造体間空所に影響を及ぼす。従って、多孔質構造体のサイズを変更することによって、構造体間空所と構造体内空所との間のバランスを選択し、変更することができる。
【0181】
触媒多孔質構造体は、それ自体が触媒活性であってもよいし、又は、触媒活性材料を担持するのに適した触媒担体であってもよいことが理解されるであろう。いくつかの例において、触媒多孔質構造体は、触媒活性組成物(少なくとも1つの化学反応に対する触媒特性を有する組成物を参照)を含む。任意選択で、触媒多孔質構造体は、全体が1つ以上の触媒活性組成物から形成されている。或いは、触媒多孔質構造体は、部分的に少なくとも1つの触媒活性組成物から形成されてもよく、例えば触媒活性組成物が触媒多孔質構造体の1つ以上の表面に存在してもよい。触媒活性材料は、多孔質構造体の表面全体にわたって存在してもよいし、表面の一部のみにわたって存在してもよい。異なる触媒活性材料が、多孔質構造体の異なる表面に存在し得ることが理解されるであろう。例えば、ある触媒活性材料が、1つ以上の構造体内チャネルの表面に存在し得る一方、多孔質構造体の他の表面には、触媒活性材料が存在しなくてもよいし、別の触媒活性材料が存在してもよい。
【0182】
この方法は、構築材料の押出プリンティングを含み得ることが理解されるであろう。押出ベースの積層造形プロセスで使用され得る材料の例には、セラミック材料(例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素など)、複合材料(例えば、ポリマーセラミック複合材料)、金属(RVS、チタン、銅、アルミニウム、銀など)、ゼオライト、金属有機構造体、炭素、グラフェンなどが含まれる。例えばポリマーベースの材料などの、押出ベースの積層造形に適した他の材料も想定される。
【0183】
この方法は、コンピュータ実施ステップを含み得ることが理解されるであろう。上述した全てのステップは、コンピュータ実施ステップであり得る。実施形態は、コンピュータ装置を含み得、プロセスが、このコンピュータ装置で実行される。本発明は、コンピュータプログラム、特に、本発明を実施するために適合された、キャリア上の、又はキャリア内のコンピュータプログラムにも及ぶ。プログラムは、ソースコード又はオブジェクトコードの形態であってもよいし、本発明に係るプロセスの実装における使用に適した任意の他の形態であってもよい。キャリアは、プログラムを搬送することができる任意のエンティティ又はデバイスであり得る。例えば、キャリアは、ROM、例えば半導体ROM又はハードディスクなどの記憶媒体を含み得る。さらに、キャリアは、電気ケーブル若しくは光ケーブルを介して、又は、無線若しくは他の手段により、例えばインターネット若しくはクラウドを介して伝達され得る、電気信号又は光信号などの送信可能なキャリアであり得る。
【0184】
いくつかの実施形態は、例えば、機械又は有形のコンピュータ可読媒体若しくは物品を使用して実装され得、この機械又はコンピュータ可読媒体若しくは物品は、命令又は一組の命令を記憶し得、この命令又は一組の命令は、機械によって実行されると、実施形態に係る方法、及び/又は、動作を機械に実行させ得る。
【0185】
様々な実施形態が、ハードウェア要素、ソフトウェア要素、又は両方の組み合わせを使用して実装され得る。ハードウェア要素の例には、プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路、ASIC(application specific integrated cirtuits)、PLD(programmable logic devices)、DSP(digital signal processors)、FPGA(field programmable gate array)、論理ゲート、レジスタ、半導体デバイス、マイクロチップ、チップセットなどが含まれ得る。ソフトウェアの例には、ソフトウェアコンポーネント、プログラム、アプリケーション、コンピュータプログラム、アプリケーションプログラム、システムプログラム、機械プログラム、オペレーティングシステムソフトウェア、モバイルアプリ、ミドルウェア、ファームウェア、ソフトウェアモジュール、ルーチン、サブルーチン、関数、コンピュータ実装方法、プロシージャ、ソフトウェアインターフェイス、API(application program interfaces)メソッド、命令セット、コンピューティングコード、コンピュータコードなどが含まれ得る。
【0186】
本明細書では、本発明の実施形態の具体例を参照して本発明を説明した。しかし、本発明の本質から逸脱することなく、様々な修正、変形、代替、及び変更を行うことができることは明らかである。明確性及び簡潔な説明のために、本明細書では、特徴が、同一の、又は別個の実施形態の一部として説明されるが、これらの別個の実施形態で説明された特徴の全部又は一部の組み合わせを有する代替実施形態も想定され、特許請求の範囲によって示された本発明の枠組みに含まれるものと理解される。従って、明細書、図面、及び実施例は、限定的な意味ではなく、例示的な意味としてみなされるべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての代替、修正、及び変形を包含することを意図している。さらに、説明された要素の多くは、別個の、若しくは分散されたコンポーネントとして、又は、他のコンポーネントと連携して、任意の適切な組み合わせ及び位置で実装され得る機能エンティティである。
【0187】
特許請求の範囲において、括弧内に記載された参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「含む」という用語は、特許請求の範囲に記載されている特徴又はステップ以外の特徴又はステップの存在を排除するものではない。さらに、「a」及び「an」という用語は、「1つだけ」に限定されるものとして解釈されるべきではなく、「少なくとも1つ」を意味するために使用され、複数性を排除するものではない。特定の手段が互いに異なる請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0188】
(付記)
(付記1)
相互接続されたフィラメントを複数の積層層内に所定の配置で堆積するステップを含む、三次元多孔質構造体を製造する方法であって、連続する層の前記フィラメントは、相互接続された細孔を有する前記多孔質構造体を得るように互いに接続されており、前記連続する層のフィラメントは、層間細孔を形成するように互いに角度を成しており、前記層内のフィラメントは、波状経路に沿って、前記波状経路に沿って堆積された、隣接するフィラメントの少なくとも1つのサブセットの間に幅狭領域及び幅広領域が形成されるように堆積されており、前記複数の積層層は、連続する層内に形成された前記幅広領域が少なくとも部分的に重なって構造体内チャネルを形成するように配置されており、各層は、波状ラインに沿って堆積された複数の波状フィラメントを有し、前記波状ラインの第1のサブセットは、互いに対して非平行である、方法。
【0189】
(付記2)
幅広領域は、対向する非平行な波状ラインの間に形成されている、付記1に記載の方法。
【0190】
(付記3)
前記波状ラインの第2のサブセットは、互いに平行である、付記1又は2に記載の方法。
【0191】
(付記4)
前記幅狭領域は、堆積されたフィラメントが領域内で互いに隣接するような領域である、付記1から3の何れか一つに記載の方法。
【0192】
(付記5)
前記波状経路は、周期的経路であり、前記周期的経路は、0.1から100の範囲内の、より好ましくは1から50の範囲内の、さらにより好ましくは2から20の範囲内の、波の振幅対波の幅の比を有する、付記1から4の何れか一つに記載の方法。
【0193】
(付記6)
少なくとも1つの周期的経路が、周期的経路の比が周期的経路の長さに沿って変化する可変波形特性を有する、付記1から5の何れか一つに記載の方法。
【0194】
(付記7)
前記三次元多孔質構造体は、前記複数の積層層内で外側に堆積された波状フィラメントの部分によって形成された波状外側部を有する、付記1から6の何れか一つに記載の方法。
【0195】
(付記8)
層は、少なくとも1つの対称軸に関して対称である、付記1から7の何れか一つに記載の方法。
【0196】
(付記9)
前記三次元構造体は、第1の細孔のセットと第2の細孔のセットとを有し、前記第1の細孔のセットの細孔は、前記第2の細孔のセットの細孔よりも大きく、前記第1の細孔のセットは、前記幅広領域に形成されており、前記第2の細孔のセットは、前記幅狭領域に形成されている、付記1から8の何れか一つに記載の方法。
【0197】
(付記10)
前記第1の細孔のセットの細孔の少なくとも1つのサブセットが、前記第2の細孔のセットの細孔の少なくとも1つのサブセットの開口表面積よりも少なくとも2倍大きい、より好ましくは少なくとも3倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも5倍大きい開口表面積を有する、付記9に記載の方法。
【0198】
(付記11)
前記三次元多孔質構造体は、多孔質触媒、触媒担体、又は吸収材料として使用するために製造される、付記1から10の何れか一つに記載の方法。
【0199】
(付記12)
複数の積層層内に所定の配置で配置された、相互接続されたフィラメントを有する、材料押出によって得られる三次元多孔質構造体であって、連続する層の前記フィラメントは、相互接続された細孔を有する前記多孔質構造体を得るように互いに接続されており、前記連続する層のフィラメントは、層間細孔を形成するように互いに角度を成しており、前記層内のフィラメントは、波状経路に沿って、前記波状経路に沿って堆積された、隣接するフィラメントの少なくとも1つのサブセットの間に幅狭領域及び幅広領域が形成されるように堆積されており、前記複数の積層層は、連続する層内に形成された前記幅広領域が少なくとも部分的に重なって構造体内チャネルを形成するように配置されており、各層は、波状ラインに沿って堆積された複数の波状フィラメントを有し、前記波状ラインの第1のサブセットは、互いに非平行である、三次元多孔質構造体。
【0200】
(付記13)
付記12に記載の三次元多孔質構造体を含む充填層。
【0201】
(付記14)
付記1から11の何れか一つに記載の方法を実行するように適合された積層造形システム。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
【国際調査報告】