(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】自己複製RNA分子の生成方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20241126BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241126BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20241126BHJP
C12N 15/48 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241126BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241126BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20241126BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20241126BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241126BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20241126BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241126BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241126BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20241126BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241126BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241126BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241126BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241126BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20241126BHJP
C07K 14/15 20060101ALN20241126BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20241126BHJP
C07K 14/72 20060101ALN20241126BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20241126BHJP
C07K 14/555 20060101ALN20241126BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20241126BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20241126BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/33
C12N15/48
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/00 G
A61K39/02
A61K39/00 K
A61K39/12
A61K39/00 Z
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/04
A61K9/127
A61K9/51
A61P29/00
A61P37/06
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/543 597
G01N33/543 575
G01N33/543 545A
C07K14/15
C07K14/005
C07K14/72
C07K14/705
C07K14/555
C07K14/47
C07K14/54
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531664
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022080515
(87)【国際公開番号】W WO2023097317
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523031024
【氏名又は名称】リプリケイト バイオサイエンス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル スティーブン ワン
(72)【発明者】
【氏名】シゲキ ジョーセフ ミヤケ-ストーナー
(72)【発明者】
【氏名】パリナズ アリアマド
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QS40
4B065AA01X
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4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
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4B065CA44
4C076AA19
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4C076FF68
4C085AA03
4C085BA07
4C085BA49
4C085BA51
4C085BB01
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA14
4H045DA15
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は概して、優れた発現特性を有する自己複製RNA(srRNA)系を生成するための新規プロセスに関する。本開示はまた、そのようなsrRNA構築物を発現する核酸及び組換え細胞、並びにそれらを含む医薬組成物を提供する。さらに、対象において薬力学的効果を誘導するための、並びに様々な健康状態の予防及び/又は治療のための、組成物及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己複製RNA(srRNA)構築物を同定及び/又は特徴付けするための方法であって、
a)複数のsrRNA発現構築物であって、それぞれが、アルファウイルスsrRNAベクターに作動可能に挿入された目的のポリペプチド構築物(PCI)のコード配列を含み、アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部が前記PCIのコード配列に置換されている構築物、を提供すること;
b)前記複数のsrRNA発現構築物から発現されるPCIのレベル及び/又は機能性を分析し、定義された特性を有する1つ以上の候補PCIを同定すること;
c)(b)で同定された候補PCIを発現可能なsrRNA発現構築物を少なくとも1つの送達ビヒクルに組み込んで、送達系のコンビナトリアルコレクションを作出すること;並びに、
d)対象において少なくとも1つの薬力学的効果を付与する能力に関して、前記送達系を分析し、所望の薬力学的効果を付与することができるsrRNA発現構築物を同定すること;
を含む、方法。
【請求項2】
前記PCIのコード配列が、単一のポリペプチドのコード配列又は複数のポリペプチドのコード配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のポリペプチドのコード配列が、単一のオープンリーディングフレーム内(すなわち、ポリシストロニックORF内)で互いに作動可能に連結されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のポリペプチドが、1つ以上のコネクター配列によって互いに作動可能に連結されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のコネクター配列のうちの1つのコネクター配列が、自己タンパク質分解性ペプチド配列を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記自己タンパク質分解性ペプチド配列が、カルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼ(furin)、ブタテシオウイルス-1 2A(P2A)、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス2A(T2A)、細胞質多角体病ウイルス2A(BmCPV2A)、軟化病ウイルス2A(BmIFV2A)、又はそれらの組み合わせ、に由来する1つ以上の自己タンパク質分解性切断配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のポリペプチドのコード配列が、1つ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)によって互いに作動可能に連結されている、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のIRESが、ウイルスIRES、細胞IRES、及び人工IRESから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上のIRESが、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)IRES、肝炎ウイルスIRES、ペスチウイルス(Pestivirus)IRES、クリパウイルス(Cripavirus)IRES、ロパロシプム・パディ(Rhopalosiphum padi)ウイルスIRES、線維芽細胞増殖因子IRES、血小板由来増殖因子IRES、血管内皮増殖因子IRES、インスリン様増殖因子IRES、ピコルナウイルスIRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、Pim-1 IRES、p53 IRES、Apaf-1 IRES、TDP2 IRES、L-myc IRES、及びc-myc IRESから選択される、請求項7~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記PCIが、微生物タンパク質、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、哺乳類タンパク質、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上のポリペプチドを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記PCIが、抗原分子、生物療法分子、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上のポリペプチドを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記PCIが、腫瘍関連抗原、腫瘍特異性抗原、新抗原、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の抗原ポリペプチドを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の抗原ポリペプチドが、エストロゲン受容体、細胞内シグナル伝達酵素、及びヒト上皮成長受容体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の抗原ポリペプチドが、ESR1、PI3K、HER2、HER3、それらの任意のバリアント、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記PCIが、免疫調節因子、血管新生の調節因子、細胞外マトリクスの調節因子、代謝の調節因子、神経調節因子、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の生物療法ポリペプチドを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記PCIが、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンフォカイン、及び腫瘍壊死因子から選択される1つ以上のサイトカインを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記PCIが、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-35、IFNγ、及びそれらのいずれかのサブユニットから選択される1つ以上のインターロイキンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の生物療法ポリペプチドが、IL-12A、IL-12B、IL-1RA、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項10~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
工程(a)が、それぞれが前記PCIのバリアントのコード配列を含む、複数のsrRNA発現構築物を提供することを含む、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
(a)における提供が、
i)アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部が目的のポリペプチド構築物(PCI)のコード配列で置換されている、アルファウイルスsrRNA発現ベクターを得ること;及び、
ii)それぞれが前記PCIのバリアントのコード配列を含む、複数のsrRNA発現構築物を生成すること;
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(a)における提供が、
i)目的のポリペプチド構築物(PCI)の複数のバリアントのコード配列を得ること;及び
ii)複数のsrRNA発現構築物であって、それぞれが、アルファウイルスsrRNAベクターに作動可能に挿入された、(a)由来の複数のPCIバリアントのうちの1つのPCIバリアントのコード配列を含み、アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部が前記PCIバリアントのコード配列に置換されている構築物、を生成すること;
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記複数のPCIバリアントのうちの1つのPCIバリアントが、1つ以上の分子改変を含む、請求項20~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記PCIバリアントにおける1つ以上の分子改変が、欠失、置換、挿入、重複、突然変異、フレームシフトバリアント、スプライスバリアント、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の分子改変が、抗原配列の長さに沿ってタンデムに配置された複数の改変カセットに対して設定される、請求項22~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の改変カセットのうちの1つの改変カセットが、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれよりも多い分子改変を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の改変カセットが、1つ以上のリンカーによって互いに作動可能に連結されている、請求項24~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上のリンカーのうちの1つのリンカーが、合成化合物リンカー又はペプチドリンカーを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドリンカーが、AAY、EAAAK(配列番号1)、RVRR(配列番号2)、GGGGS(配列番号3)、及びGPGPG(配列番号4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程(b)における前記PCIの前記レベル及び/又は機能性の分析が、in vitro、in vivo、又はex vivoで行われる、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記PCIの前記レベル及び/又は機能性の分析が、イムノブロット分析、蛍光フローサイトメトリー分析、酵素結合免疫測定分析、免疫原性分析、生物活性分析、及び/又は疾患モデルにおける有効性を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
工程(d)における、少なくとも1つの薬力学的効果を付与する能力に関する前記送達系の分析が、in vivo又はex vivoで行われる、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記の少なくとも1つの薬力学的効果が、免疫原性効果、バイオマーカー応答、治療効果、予防効果、望ましい効果、望ましくない効果、副作用、及び疾患モデルにおける効果のうちの1つ以上を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記の少なくとも1つの薬力学的効果が、免疫応答の誘導を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記送達系が、生理緩衝液、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドのコンジュゲート、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記LNP送達系が、カチオン性脂質、イオン化可能なカチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記LNP送達系が、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記LNPが、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、7C1、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオン性脂質を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記LNPが、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、SM、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される中性脂質を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記LNPが、C12-200、C14-PEG2000、DOPE、DMG-PEG2000、DSPC、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される脂質を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記LNP送達系中の脂質対核酸の質量比が、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である、請求項34~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記LNP送達系中の脂質対核酸の質量比が、約16:1~4:1である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記LNP送達系中の脂質対核酸の質量比が、約20:1である、請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記LNP送達系中の脂質対核酸の質量比が、約8:1である、請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記脂質ベースのナノ粒子(LNP)が、約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、又は約25nm未満の平均直径を有する、請求項34~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記LNPが、約70nm~100nmの範囲の平均直径を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記LNPが、約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲の平均直径を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記組換えアルファウイルスsrRNAが、トガウイルス科アルファウイルス属に属するウイルスのものである、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記組換えアルファウイルスsrRNAが、VEEV/EEEV群、又はSFV群、又はSINV群に属するアルファウイルスのものである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記アルファウイルスが、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、エバーグレーズ(Everglades)ウイルス(EVEV)、ムカンボ(Mucambo)ウイルス(MUCV)、ピクスナ(Pixuna)ウイルス(PIXV)、ミドルバーグ(Middleburg)ウイルス(MIDV)、チクングニア(Chikungunya)ウイルス(CHIKV)、オニョンニョン(O’Nyong-Nyong)ウイルス(ONNV)、ロスリバーウイルス(RRV)、バーマフォレスト(Barmah Forest)ウイルス(BF)、ゲタウイルス(GET)、サギヤマウイルス(SAGV)、ベバル(Bebaru)ウイルス(BEBV)、マヤロ(Mayaro)ウイルス(MAYV)、ウナ(Una)ウイルス(UNAV)、シンドビスウイルス(SINV)、アウラ(Aura)ウイルス(AURAV)、ワタロア(Whataroa)ウイルス(WHAV)、ババンキ(Babanki)ウイルス(BABV)、キジラガク(Kyzylagach)ウイルス(KYZV)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、ハイランドJウイルス(HJV)、フォートモーガンウイルス(FMV)、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス(NDUV)、マダリアガ(Madariaga)ウイルス(MADV)、又はバギークリーク(Buggy Creek)ウイルスである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記アルファウイルスが、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、チクングニアウイルス(CHIKV)、又はシンドビスウイルス(SINV)である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記srRNA発現ベクターが、予防用途及び/又は治療用途に適した免疫誘導活性を有するものとして同定される、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
請求項1~51に記載の方法に従って同定された自己複製RNA(srRNA)構築物。
【請求項53】
請求項52に記載のsrRNA構築物をコードする核酸。
【請求項54】
a)請求項52に記載の自己複製RNA構築物;及び/又は、
b)請求項53に記載の核酸;
を含む、組換え細胞。
【請求項55】
真核細胞である、請求項54に記載の組換え細胞。
【請求項56】
動物細胞である、請求項54~55のいずれか1項に記載の組換え細胞。
【請求項57】
前記動物細胞が脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である、請求項56に記載の組換え細胞。
【請求項58】
前記動物細胞が哺乳類細胞である、請求項56に記載の組換え細胞。
【請求項59】
前記動物細胞が昆虫細胞である、請求項56に記載の組換え細胞。
【請求項60】
前記昆虫細胞が蚊細胞である、請求項59に記載の組換え細胞。
【請求項61】
前記動物細胞が免疫細胞である、請求項56に記載の組換え細胞。
【請求項62】
前記免疫細胞が、B細胞、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞(DC)、マクロファージ、制御性T細胞、ヘルパーT細胞(T
H)、細胞傷害性T細胞(T
CTL)、メモリーT細胞、ガンマデルタ(γδ)T細胞、造血幹細胞、又は造血幹細胞前駆体である、請求項61に記載の組換え細胞。
【請求項63】
前記免疫細胞が、B細胞、T細胞、又は樹状細胞(DC)である、請求項62に記載の組換え細胞。
【請求項64】
請求項54~63のいずれか1項に記載の少なくとも1つの組換え細胞、及び細胞培養培地を含む、細胞培養物。
【請求項65】
治療的に許容される賦形剤、並びに、
a)請求項52に記載の自己複製RNA構築物;
b)請求項53に記載の核酸;及び/又は
b)請求項54~63のいずれか1項に記載の組換え細胞
を含む、組成物。
【請求項66】
前記組成物がワクチンとして処方される、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
前記ワクチンが治療ワクチンである、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
前記組成物が免疫原性組成物として処方される、請求項65~67のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項69】
前記組成物が生物療法薬(biotherapeutic)として処方される、請求項65~66のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
前記組成物が送達ビヒクルとともに送達系へと処方される、請求項65~69のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項71】
前記送達系が、生理緩衝液、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドのコンジュゲート、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記LNP送達系が、カチオン性脂質、イオン化可能なカチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記LNPが、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
前記LNPが、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、7C1、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオン性脂質を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項75】
前記LNPが、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、SM、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される中性脂質を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項76】
前記LNPが、C12-200、C14-PEG2000、DOPE、DMG-PEG2000、DSPC、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、GL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される脂質を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項77】
前記LNP送達系中の脂質対核酸の質量比が、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である、請求項71~76のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項78】
前記LNP送達系中の脂質対核酸の質量比が、約16:1~4:1である、請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
前記LNP送達系中の脂質対核酸の質量比が、約20:1である、請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
前記LNP送達系中の脂質対核酸の質量比が、約8:1である、請求項78に記載の組成物。
【請求項81】
前記脂質ベースのナノ粒子(LNP)が、約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、又は約25nm未満の平均直径を有する、請求項71~80のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項82】
前記LNPが、約70nm~100nmの範囲の平均直径を有する、請求項81に記載の組成物。
【請求項83】
前記LNPが、約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲の平均直径を有する、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
対象において薬力学的効果を誘導する方法であって、
a)請求項52に記載の自己複製RNA構築物;
b)請求項53に記載の核酸;
c)請求項54~63のいずれか1項に記載の組換え細胞;及び/又は、
d)請求項65~83のいずれか1項に記載の医薬組成物;
を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項85】
前記薬力学的効果が、前記対象において免疫応答を誘発することを含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
対象における健康状態を予防又は治療する方法であって、
a)請求項52に記載の自己複製RNA構築物;
b)請求項53に記載の核酸;
c)請求項54~63のいずれか1項に記載の組換え細胞;及び/又は、
d)請求項65~83のいずれか1項に記載の医薬組成物;
を含む組成物を、前記対象に予防的又は治療的に投与することを含む、方法。
【請求項87】
前記の投与された組成物が前記対象において免疫応答を誘発する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記の投与された組成物が、前記対象において1つ以上の炎症誘発性分子の産生を誘導する、請求項84~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記の1つ以上の炎症誘発性分子が、インターフェロンガンマ(IFNγ)、サイトカイン、TNF-α、GM-CSF、MIP1α、グランザイムB、グランザイムA、パーフォリン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記対象が、以前に1つ以上の治療法で治療され、前記1つ以上の治療法に対して少なくとも部分的な耐性を獲得している、請求項84~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記の1つ以上の治療法のうち少なくとも1つが小分子を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記健康状態が、増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、又は微生物感染である、請求項84~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記対象が、増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、又は微生物感染と関連した健康状態を有するか、又は有する疑いがある、請求項84~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記増殖性疾患が癌である、請求項92~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記癌が乳癌である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記組成物が、個別に単一療法(単剤療法)として、又は少なくとも1つの追加療法と組み合わせた第1療法として、前記対象に投与される、請求項84~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記の少なくとも1つの追加療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び手術からなる群から選択される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
薬力学的効果を誘導するための、免疫応答を誘発するための、並びに/又は、健康状態の予防及び/もしくは治療のための、キットであって、
a)請求項52に記載の自己増幅RNA構築物;
b)請求項53に記載の核酸;
c)請求項54~63のいずれか1項に記載の組換え細胞;及び、
d)請求項65~83のいずれか1項に記載の医薬組成物;
のうち1つ以上を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月29日に出願された米国仮出願第63/283660号の優先権の利益を主張するものである。上記出願の開示は、あらゆる図面を含め、参照によりその全体が本明細書に明示的に援用されるものとする。
【0002】
分野
本開示は、免疫学及び医学の分野に関連するものであり、特に、優れた発現特性を有する、自己複製RNA(srRNA)分子などのレプリコンを生成するための新規プロセスに関する。本開示はまた、そのようなsrRNA分子を発現する核酸及び組換え細胞、並びにそれらを含む医薬組成物を提供する。さらに、対象において薬力学的効果を誘導するための、並びに様々な健康状態の予防及び/又は治療のための、組成物及び方法を提供する。
【0003】
配列表の援用
添付の配列表内の資料は、参照により本願に援用されるものとする。添付の058462-506001WO_Sequence Listing_ST26.xmlという名前の配列表テキストファイルは、2022年11月22日に作成されたものであり、14KBである。
【背景技術】
【0004】
近年、いくつかの異なる動物ウイルス群が、相同組換えによって、又はゲノムを直接操作することによって、遺伝子操作の対象となってきた。DNA及びRNAウイルス両者に対するリバースジェネティクス系が利用できるようになったことで、組換えウイルスを、例えばワクチン、発現ベクター、抗腫瘍剤、in vivo遺伝子治療ベクター、及び薬物送達ビヒクルとして使用するという新たな展望が生まれた。
【0005】
この点に関する最近の進展として、自己複製RNA(srRNA)などの組換えレプリコンが挙げられる。これらはプラス鎖RNAウイルスのゲノムに由来し、安全かつ効果的な新規ワクチン及び薬物送達ビヒクルへとアプローチするための、強力なツールとなる。特に、srRNAは、RNAウイルスベクター由来の自己複製活性を保持しているため、宿主細胞内での複製によって所望の遺伝子産物をコードするRNAの量を増幅することができ、また、治療及び/又は予防用途のために、RNA送達及び/又はコードされた遺伝子産物の発現の効率を高めるために使用することができる。例えばワクチン用途では、srRNAを用いたワクチンは、迅速な開発、モジュールによる設計、及び無細胞合成といったmRNAワクチンの利点を保ちながらも、その自己複製特性によってRNAの投与量が少なくて済むため、非複製RNA(例えばmRNA)と比べて有益である。これにより、原薬及び製品の両者の製造の負担が軽減され、パンデミックへの対処という面からは、短期間でより多くの割合の人々にワクチン接種が可能になるため、有利になる可能性がある。
【0006】
近年、srRNA技術は著しい進歩を遂げたが、治療用ポリペプチドなどの遺伝子産物を、治療上及び/又は予防上の利点をもたらすのに充分な量と時間で、in vivo又はex vivoで発現させるための、srRNAベースの新規発現ツールを、速やかに作製するためのさらなる方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は概して、細胞培養物中又は生体内で抗原分子及び生物療法分子などの目的の組換えポリペプチドを発現させるのに適した優れた発現特性を有する、予防及び/又は治療用途の、レプリコンなどの自己複製RNA(srRNA)構築物を、同定及び/又は特徴付けするための新たな方法に関する。また、そのようなsrRNA構築物を発現する核酸及び組換え細胞、並びにそれらを含む医薬組成物も開示される。また、対象において薬力学的効果を誘導するための方法も本明細書に開示され、特に、免疫応答の誘発又は健康状態の予防及び/もしくは治療を必要とする対象において、免疫応答を誘発するための方法、並びに健康状態を予防及び/又は治療するための方法が開示される。これらの方法は、本開示のsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物のうちの1つ以上を予防的又は治療的に投与することを含む。
【0008】
本開示の一態様においては、レプリコンなどの自己複製(srRNA)RNA構築物を同定及び/又は特徴付けするための方法が本明細書に提供され、方法は、(a)複数のsrRNA発現構築物であって、それぞれが、アルファウイルスsrRNAベクターに作動可能に挿入された目的のポリペプチド構築物(PCI)のコード配列を含み、アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部がPCIのコード配列に置換されている構築物、を提供すること;(b)前記複数のsrRNA発現構築物から発現されるPCIのレベル及び/又は機能性を分析し、定義された特性を有する1つ以上の候補PCIを同定すること;(c)(b)で同定された候補PCIを発現可能なsrRNA発現構築物を少なくとも1つの送達ビヒクルに組み込んで、送達系のコンビナトリアルコレクションを作出すること;並びに、(d)対象において少なくとも1つの薬力学的効果を付与する能力に関して、送達系を分析し、所望の薬力学的効果を付与することができるsrRNA発現構築物を同定すること;
を含む。
【0009】
本開示の方法の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、PCIのコード配列は、単一のポリペプチド(例えば、単一遺伝子PCI)のコード配列、又は複数のポリペプチド(例えば、複遺伝子PCI)のコード配列を含む。いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドのコード配列は、単一のオープンリーディングフレーム内(すなわち、ポリシストロニックORF内)で互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドは、1つ以上のコネクター配列によって互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記複数のコネクター配列のうちの1個のコネクター配列は、自己タンパク質分解性ペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、自己タンパク質分解性ペプチド配列は、カルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼ(furin)、ブタテシオウイルス-1 2A(P2A)、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス2A(T2A)、細胞質多角体病ウイルス2A(BmCPV2A)、軟化病ウイルス2A(BmIFV2A)、又はそれらの組み合わせ、に由来する1つ以上の自己タンパク質分解性切断配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドのコード配列は、1つ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)によって互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記1つ以上のIRESは、ウイルスIRES、細胞IRES、及び人工IRESから選択される。いくつかの実施形態では、前記1つ以上のIRESは、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)IRES、肝炎ウイルスIRES、ペスチウイルス(Pestivirus)IRES、クリパウイルス(Cripavirus)IRES、ロパロシプム・パディ(Rhopalosiphum padi)ウイルスIRES、線維芽細胞増殖因子IRES、血小板由来増殖因子IRES、血管内皮増殖因子IRES、インスリン様増殖因子IRES、ピコルナウイルスIRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、Pim-1 IRES、p53 IRES、Apaf-1 IRES、TDP2 IRES、L-myc IRES、及びc-myc IRESから選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、PCIは、微生物タンパク質、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、哺乳類タンパク質、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、PCIは、抗原分子、生物療法分子、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、PCIは、腫瘍関連抗原、腫瘍特異性抗原、新抗原、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の抗原ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の抗原ポリペプチドは、エストロゲン受容体、細胞内シグナル伝達酵素、及びヒト上皮成長受容体を含む。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の抗原ポリペプチドは、ESR1、PI3K、HER2、HER3、それらの任意のバリアント、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、PCIは、免疫調節因子、血管新生の調節因子、細胞外マトリクスの調節因子、代謝の調節因子、神経調節因子、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の生物療法ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、PCIは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンフォカイン、及び腫瘍壊死因子から選択される1つ以上のサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、PCIは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-35、IFNγ、及びそれらのいずれかのサブユニットから選択される1つ以上のインターロイキンを含む。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の生物療法ポリペプチドは、IL-12A、IL-12B、IL-1RA、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法の工程(a)は、それぞれがPCIのバリアントのコード配列を含む、複数のsrRNA発現構築物を提供することを含む。いくつかの実施形態では、(a)における提供は、i)アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部が目的のポリペプチド構築物(PCI)のコード配列で置換されている、アルファウイルスsrRNA発現ベクターを得ること;及び、ii)それぞれがPCIのバリアントのコード配列を含む、複数のsrRNA発現構築物を生成すること;を含む。いくつかの実施形態では、(a)における提供は、i)目的のポリペプチド構築物(PCI)の複数のバリアントのコード配列を得ること;及び、ii)複数のsrRNA発現構築物であって、それぞれが、アルファウイルスsrRNAベクターに作動可能に挿入された、(a)由来の複数のPCIバリアントのうちの1つのPCIバリアントのコード配列を含み、アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部がPCIバリアントのコード配列に置換されている構築物、を生成すること;を含む。
【0013】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、前記複数のPCIバリアントのうちの1個のPCIバリアントは、1つ以上の分子改変を含む。いくつかの実施形態では、PCIバリアントにおける1つ以上の分子改変は、欠失、置換、挿入、重複、突然変異、フレームシフトバリアント、スプライスバリアント、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の分子改変は、抗原配列の長さに沿ってタンデムに配置された複数の改変カセットに対して設定される。いくつかの実施形態では、前記複数の改変カセットのうちの1個の改変カセットは、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれよりも多い分子改変を含む。いくつかの実施形態では、前記複数の改変カセットは、1つ以上のリンカーによって互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記1つ以上のリンカーのうちの1個のリンカーは、合成化合物リンカー又はペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、AAY、EAAAK(配列番号1)、RVRR(配列番号2)、GGGGS(配列番号3)、及びGPGPG(配列番号4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、工程(b)におけるPCIのレベル及び/又は機能性の分析は、in vitro、in vivo、又はex vivoで行われる。いくつかの実施形態では、PCIのレベル及び/又は機能性の分析は、イムノブロット分析、蛍光フローサイトメトリー分析、酵素結合免疫測定分析、免疫原性分析、生物活性分析、及び/又は疾患モデルにおける有効性を含む。いくつかの実施形態では、工程(d)における、少なくとも1つの薬力学的効果を付与する能力に関する送達系の分析は、in vivo又はex vivoで行われる。いくつかの実施形態では、前記の少なくとも1つの薬力学的効果は、免疫原性効果、バイオマーカー応答、治療効果、予防効果、望ましい効果、望ましくない効果、副作用、及び疾患モデルにおける効果のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、前記の少なくとも1つの薬力学的効果は、免疫応答の誘導を含む。
【0015】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、送達系は、生理緩衝液、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドのコンジュゲート、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、LNP送達系は、カチオン性脂質、イオン化可能なカチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNP送達系は、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、7C1、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、SM、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される中性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、C12-200、C14-PEG2000、DOPE、DMG-PEG2000、DSPC、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される脂質を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、脂質を任意の数字のモル比で組み合わせてLNPを製造することができる。さらに、ポリヌクレオチドを広範なモル比で脂質と結合させてLNPを製造することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の送達系はLNPを含み、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約20:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約8:1である。
【0017】
いくつかの実施形態では、脂質ベースのナノ粒子(LNP)は、約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、又は約25nm未満の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約70nm~100nmの範囲の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲の平均直径を有する。
【0018】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、組換えアルファウイルスsrRNAは、トガウイルス科アルファウイルス属に属するウイルスのものである。いくつかの実施形態では、組換えアルファウイルスsrRNAは、VEEV/EEEV群、又はSFV群、又はSINV群に属するアルファウイルスのものである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、エバーグレーズ(Everglades)ウイルス(EVEV)、ムカンボ(Mucambo)ウイルス(MUCV)、ピクスナ(Pixuna)ウイルス(PIXV)、ミドルバーグ(Middleburg)ウイルス(MIDV)、チクングニア(Chikungunya)ウイルス(CHIKV)、オニョンニョン(O’Nyong-Nyong)ウイルス(ONNV)、ロスリバーウイルス(RRV)、バーマフォレスト(Barmah Forest)ウイルス(BF)、ゲタウイルス(GET)、サギヤマウイルス(SAGV)、ベバル(Bebaru)ウイルス(BEBV)、マヤロ(Mayaro)ウイルス(MAYV)、ウナ(Una)ウイルス(UNAV)、シンドビスウイルス(SINV)、アウラ(Aura)ウイルス(AURAV)、ワタロア(Whataroa)ウイルス(WHAV)、ババンキ(Babanki)ウイルス(BABV)、キジラガク(Kyzylagach)ウイルス(KYZV)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、ハイランドJウイルス(HJV)、フォートモーガンウイルス(FMV)、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス(NDUV)、マダリアガ(Madariaga)ウイルス(MADV)、又はバギークリーク(Buggy Creek)ウイルスである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、VEEV、EEEV、CHIKV、又はSINVである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスはVEEVである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスはEEEVである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスはCHIKVである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスはSINVである。
【0019】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、srRNA発現ベクターは、予防用途及び/又は治療用途に適した免疫誘導活性を有するものとして同定される。いくつかの実施形態では、srRNA発現ベクターは、予防用途に適した免疫誘導活性を有するものとして同定される。いくつかの実施形態では、srRNA発現ベクターは、治療用途に適した免疫誘導活性を有するものとして同定される。
【0020】
一態様においては、本明細書に記載の方法に従って同定されたsrRNA構築物が本明細書に提供される。
【0021】
他の態様においては、本明細書に記載のsrRNA構築物をコードする核酸が本明細書に提供される。
【0022】
さらなる他の態様においては、(a)本明細書に記載のRNA構築物;及び/又は(b)本明細書に記載の核酸;を含む組換え細胞が本明細書に提供される。本開示の方法の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は昆虫細胞である。いくつかの実施形態では、昆虫細胞は蚊細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、B細胞、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞(DC)、マクロファージ、制御性T細胞、ヘルパーT細胞(TH)、細胞傷害性T細胞(TCTL)、メモリーT細胞、ガンマデルタ(γδ)T細胞、造血幹細胞、又は造血幹細胞前駆体である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、B細胞、T細胞、又は樹状細胞(DC)である。
【0023】
関連する一態様においては、本明細書に開示の少なくとも1つの組換え細胞、及び細胞培養培地を含む、細胞培養物が本明細書に提供される。
【0024】
さらなる他の態様においては、治療的に許容される賦形剤;並びに、(a)本明細書に記載のRNA構築物、及び/又は(b)本明細書に記載の核酸、及び(c)本明細書に記載の組換え細胞、のうちの1つ以上;を含む、医薬組成物などの組成物が本明細書に提供される。
【0025】
本明細書に記載の組成物の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物はワクチンとして製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は治療ワクチンとして製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は免疫原性組成物として製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は生物療法薬(biotherapeutic)として製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は送達ビヒクルとともに送達系へと製剤化される。いくつかの実施形態では、送達系は、生理緩衝液、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドのコンジュゲート、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、LNP送達系は、カチオン性脂質、イオン化可能なカチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、7C1、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、SM、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される中性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、C12-200、C14-PEG2000、DOPE、DMG-PEG2000、DSPC、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、GL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約20:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約8:1である。いくつかの実施形態では、脂質ベースのナノ粒子(LNP)は、約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、又は約25nm未満の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約70nm~100nmの範囲の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲の平均直径を有する。
【0026】
他の態様においては、対象において薬力学的効果を誘導する方法であって、(a)本明細書に記載のsrRNA構築物;(b)本明細書に記載の核酸;(c)本明細書に記載の組換え細胞;及び、(d)本明細書に記載の医薬組成物;のうちの1つ以上を含む組成物を対象に投与することを含む方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、薬力学的効果は、対象において免疫応答を誘発することを含む。他の態様においては、対象における健康状態を予防又は治療する方法であって、(a)本明細書に記載のsrRNA構築物;(b)本明細書に記載の核酸;(c)本明細書に記載の組換え細胞;及び、(d)本明細書に記載の医薬組成物;のうちの1つ以上を含む組成物を対象に予防的又は治療的に投与することを含む方法が、本明細書に提供される。
【0027】
本明細書に記載の、対象において薬力学的効果を誘導するための、並びに/又は健康状態を予防及び/もしくは治療するための、方法の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、対象において1つ以上の炎症誘発性分子の産生を誘導する。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の炎症誘発性分子は、インターフェロンガンマ(IFNγ)、サイトカイン、TNF-α、GM-CSF、MIP1α、グランザイムB、グランザイムA、パーフォリン、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、対象は、以前に1つ以上の治療法で治療され、前記1つ以上の治療法に対して少なくとも部分的な耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の治療法のうち少なくとも1つは小分子を含む。いくつかの実施形態では、健康状態は、増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、又は微生物感染である。いくつかの実施形態では、対象は、増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、又は微生物感染と関連した健康状態を有するか、又は有する疑いがある。いくつかの実施形態では、増殖性疾患は癌である。いくつかの実施形態では、癌は乳癌である。いくつかの実施形態では、組成物は、個別に単一療法(単剤療法)として、又は少なくとも1つの追加療法と組み合わせた第1療法として、対象に投与される。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの追加療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び手術からなる群から選択される。
【0028】
他の態様においては、例えば免疫応答を誘発するための、並びに/又は健康状態を予防及び/もしくは治療するための、本開示の方法を実施するためのキットであって、(a)本明細書に記載のsrRNA構築物;(b)本明細書に記載の核酸;(c)本明細書に記載の組換え細胞;及び、(d)本明細書に記載の医薬組成物;のうちの1つ以上を含むキットが、本明細書に提供される。
【0029】
上述の概要は単なる例証にすぎず、何らかの制限を意図したものではない。本明細書に記載の例証としての実施形態及び特徴以外にも、本開示のさらなる態様、実施形態、目的、及び特徴が、図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲から充分に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態に従って自己複製RNA(srRNA)構築物を同定及び/又は特徴づけするための方法の、非限定的な例を示すフローチャートである。
【0031】
【
図2】
図2は、変異ESR1抗原カセットの設計を最適化するために使用したマウスにおける免疫原性を図示したものである。X軸は、遺伝子カセット内のESR1変異K303R、E380Q、Y537C、Y537S、Y537N、及びD538Gの順序性(ordinality)、並びにこれらの変異をつなぐリンカーの使用を示す。Y軸は、ELISpotアッセイでESR1配列をコードするペプチドを用いた際の総T細胞応答を示す。
【0032】
【
図3AB】
図3は、様々な分子構成を有する構築物のパネルに由来するESR1、PI3K、HER2、及びHER3をコードする単一遺伝子、二遺伝子、又は四遺伝子srRNAをトランスフェクトしたBHK-21細胞からのタンパク質の発現、並びに、それらと単一遺伝子構築物との比較を示す図である。単一遺伝子構築物のタンパク質発現レベルに「1」の値を割り当て、二遺伝子又は四遺伝子構成内の各遺伝子の相対的な発現を、単一遺伝子構築物のタンパク質発現レベルと比較している。
図3Aは、ESR1タンパク質の発現のイムノブロットである。
図3Bは、イムノブロットバンドのシグナル強度に基づく、相対的なESR1発現を示すチャートである。
図3Cは、PI3Kタンパク質の発現のイムノブロットである。
図3Dは、イムノブロットバンドのシグナル強度に基づく、相対的なPI3K発現を示すチャートである。
図3Eは、Alexa Fluor(登録商標)488(AF488)で標識されたHER2特異的抗体で染色した後、蛍光フローサイトメトリー(FFC)で定量した平均蛍光強度(MFI)に基づく、HER2の相対的な発現を示すチャートである。
図2Eは、アロフィコシアニン(APC)で標識されたHER3特異的抗体で染色した後、FFCで定量したMFIに基づく、HER3の相対的な発現を示すチャートである。
図2Gは、構築物のパネルにおけるESR1、PI3K、HER2、及びHER3のタンパク質発現の読み出しを要約した、スパイダーチャートである。
【0033】
【
図4】
図4は、様々な分子構成を有する構築物を投与したマウスにおけるT細胞応答を、グラフで表したものである。X軸は、ESR1、PI3K、HER2、及びHER3を異なる順序性で有する、単一遺伝子形態、二遺伝子形態、又は四遺伝子形態のいずれかの構築物を示す。Y軸は、ESR1変異に由来する配列をコードするペプチド、HER2、及びHER3に対する、ELISpotアッセイにおける総T細胞応答を示す。PI3KはBALB/cマウスでは応答を形成しないため、この実験ではPI3K応答の測定を行わなかった。
【0034】
【
図5】
図5は、新抗原カセットの一例の概略図である。変異を含むペプチド同士がリンカーによって隔てられ、単一カセットを作る。
【0035】
【
図6】
図6は、異なるsrRNAベクターを有し、2種類の異なる脂質ナノ粒子中に製剤化された構築物を投与したマウスにおけるT細胞応答を、グラフで表したものである。これら脂質ナノ粒子は、組成物中のカチオン性脂質がLNP1(「L1」)かLNP2(「L2」))かという点で異なる。
【0036】
【
図7】
図7は、ヒト疾患モデルに対して行ったエストロゲン受容体陽性乳癌への有効性に関する2種類の研究(すなわち、治療的及び予防的研究)を、模式的に説明したものである。
【0037】
【
図8A】
図8A~8Bは、単一遺伝子及び複遺伝子VEEV srRNA構築物からのin vitroでのタンパク質発現を、グラフで表したものである。各srRNA構築物をトランスフェクトしたBHK-21細胞の上清を用いて、ELISAによりタンパク質発現を測定した。
図8Aは、IL-12 ELISAの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
図8Bは、IL-RA ELISAの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
【0038】
【
図9A】
図9A~9Bは、VEE中の単一遺伝子及び複遺伝子構築物からのタンパク質のin vitroでの生物活性を、グラフで表したものである。各srRNA構築物をトランスフェクトしたBHK-21細胞の上清を用いて、サイトカインのタンパク質生物活性を、関連受容体を発現するレポーター細胞で測定した。
図9Aは、IL-12バイオアッセイの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
図9Bは、IL-1RA生物活性アッセイの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
【0039】
【
図10】
図10は、srRNA構築物から得られたIL-12生物活性及びIL-1RA発現のデータを組み合わせて、グラフで表したものである。
【0040】
【
図11A】
図11A~11Bは、6つの異なるsrRNAベクターにクローニングされた、上位2つの複遺伝子構成からのタンパク質発現を、グラフで表したものである。
図11Aは、IL-12 ELISAの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
図11Bは、IL-RA ELISAの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
【0041】
【
図12A】
図12A~12Bは、6つの異なるsrRNAベクターにクローニングされた、上位2つの複遺伝子構成からのタンパク質の生物活性を、グラフで表したものである。
図12Aは、IL-12バイオアッセイの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
図12Bは、IL-RAバイオアッセイの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
【0042】
【
図13】
図13は、6つの異なるsrRNAベクターにおける、上位2つの複遺伝子構成の、L-12及びIL-1RA生物活性を要約したグラフである。
【0043】
【
図14】
図14A~14Bは、6つの異なるsrRNAベクターにおける、上位2つの二遺伝子構成による、マウス血清中のin vivoでのタンパク質発現を、グラフで表したものである。
図14Aは、IL-12 ELISAの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
図14Bは、IL-1RA ELISAの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物を示す。
【0044】
【
図15】
図15A~15Bは、最適なsrRNA構築物の各種製剤からのin vivoでのタンパク質発現を、グラフで表したものである。
図15Aは、IL-12 ELISAの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物及び製剤を示す。
図15Bは、IL-RA ELISAの結果を示す。X軸は、試験した各種構築物及び製剤を示す。
【0045】
【
図16A】
図16A~16Bは、ウイルス抗原の一例として狂犬病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(RABV-G)をコードするsrRNAのパネルの、in vivoでの免疫原性を示す棒グラフである。このパネルは、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83);チクングニアウイルス株であるS27(CHIK.S27)及びDRDE-06(CHIK.DRDE);シンドビスウイルス株であるGirdwood(SIN.GW)及びAR86-Girdwood Hybrid 1(SIN.AR86);並びに東部ウマ脳炎ウイルス(EEE.FL93);に由来するsrRNAを含むものであった。
図16Aは、2回の免疫後にELISpotで定量した、抗原特異的脾臓T細胞応答を示す。
図16Bは、2回の免疫後の血清における、抗狂犬病中和抗体価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示は概して、細胞培養物中又は生体内で抗原分子及び生物療法分子などの目的の組換えポリペプチドを発現させるのに適した優れた発現特性を有する、予防及び/又は治療用途の、レプリコンなどの自己複製RNA(srRNA)構築物を、同定及び/又は特徴付けするための新たな方法に関する。したがって、本明細書に開示された方法によって同定されたsrRNA構築物も本開示の範囲内である。本開示のいくつかの態様及び実施形態は、本明細書に開示されるsrRNA構築物を発現するように操作された組換え核酸及び組換え細胞、並びにそれらを含む医薬組成物に関する。本開示のいくつかの他の態様及び実施形態は、対象において薬力学的効果を誘導するための、並びに様々な健康状態の予防及び/又は治療のための、組成物及び方法に関する。
【0047】
上記のように、DNA及びRNAウイルス両者に対するリバースジェネティクス系が近年利用できるようになったことで、組換えウイルスを、例えばワクチン、発現ベクター、抗腫瘍剤、遺伝子治療ベクター、及び薬物送達ビヒクルとして使用するという新たな展望が生まれた。例えば、宿主細胞における遺伝子発現のための改変ウイルスベクターの利用が拡大し続けている。特に、培養組換え細胞で異種タンパク質を発現させるために、多くのウイルスベースの発現ベクターが展開されてきた。この点に関する近年の進展として、多サブユニットタンパク質複合体を生成するための技術及び系のさらなる開発、並びに異種タンパク質の産生を改善するためのタンパク質修飾酵素の共発現などが挙げられる。ウイルス発現ベクター技術に関する他の最近の進歩として、遺伝子発現の制御、ウイルスベクターの調製、in vivo遺伝子治療用途、及びワクチン送達ベクターの作成のための、高度なゲノム工学の多数の活用が挙げられる。
【0048】
本明細書に記載の自己増幅RNA(srRNA)構築物(Self-amplifying RNA (srRNA) constructs)は、例えば細胞(宿主細胞など)又は対象に送達されると、自身が増幅し、その宿主細胞又は対象において異種遺伝子産物の発現及び/又は過剰発現を開始することができる。本開示の自己複製RNA構築物(例えば、レプリコン)は、mRNAとは異なり、それ自体にコードされたウイルスポリメラーゼを利用して自身が増幅する。本開示の特定のsrRNA構築物、例えばアルファウイルスに基づく構築物などは、大量のサブゲノムmRNAを生成し、そこから大量の異種タンパク質を発現することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のsrRNAは、RNAウイルス(例えば、アルファウイルス)に基づくものであり、ロバストな発現系として使用することができる。例えば、チクングニアウイルス(CHIKV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、シンドビスウイルス(SINV)などのアルファウイルスをウイルス発現ベクターとして使用する利点の1つは、それらが組換え宿主細胞において大量の組換えタンパク質の合成を指示できることであると報告されている。特に大きな利点は、治療用一本鎖抗体などのポリペプチドは、in vivoで高レベルで発現させた場合、最も効果的であり得るということである。さらに、培養下(ex vivo)の細胞から精製した組換え抗体を生成する場合、srRNA(例えば、レプリコン)からタンパク質を高発現させることで、抗体産物の全収率を高めることができる。さらに、発現するタンパク質がワクチン抗原である場合、高レベルで発現させることにより、最もロバストな免疫応答をin vivoで誘導することができる。
【0050】
以下の詳細な説明においては添付の図面を参照する。これらは本明細書の一部を構成する。図面では、文脈上特に断りがない限り、同様の記号は一般に同様の構成要素を示す。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載された例示的な選択肢は、限定を意図したものではない。本明細書に提示された主題の趣旨又は範囲から逸脱しない限り、他の選択肢を使用してもよく、他の変更を加えてもよい。本明細書で一般的に説明され、図示される態様を、多種多様な異なる構成で配置、置換、組み合わせ、及び設計し得ることが容易に理解されるであろう。これらはすべて明示的に企図されるものであり、本願の一部を構成する。
【0051】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての術語、表記、及びその他の科学用語又は専門用語は、本出願が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語が、明確化のため、及び/又は容易に参照できるように、本明細書において定義されており、本明細書においてそのような定義を含めることは、必ずしも当該技術分野において一般的に理解されていることとの実質的な相違を表すと解釈されるべきではない。本明細書に記載又は参照されている技術及び手順の多くは、よく理解されているものであり、当業者が従来の方法を用いて一般的に採用するものである。
【0052】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形の言及を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語には、1つ以上の細胞、及びその混合物が含まれる。「A及び/又はB」は、本明細書において以下の選択肢のすべてを含む意味で使用される:「A」、「B」、「A又はB」、並びに「A及びB」。
【0053】
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態には、「~を含む(comprising)」、「~からなる(consisting)」、及び「~から本質的になる(consisting essentially of)」態様及び実施形態が含まれることが理解される。本明細書で使用される「~を含む(comprising)」は、「~を含む(including)」、「~を含む(containing)」、又は「~によって特徴付けられる(characterized by)」と同義であって、包括的又はオープンエンドであり、追加の、記載のない要素又は方法工程を除外するものではない。本明細書で使用される「~からなる(consisting)」は、特許請求の範囲に記載された組成物又は方法において規定されていない要素、工程、又は成分をいずれも除外するものである。本明細書で使用される「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲に記載された組成物又は方法の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない材料又は工程を除外するものではない。本明細書における「~を含む(comprising)」という用語のいかなる記載も、特に組成物の成分の説明において、又は方法の工程の説明においては、記載された成分又は工程から本質的になる、及び記載された成分又は工程からなる、それら組成物及び方法を包含すると理解される。
【0054】
本明細書で使用される「投与」という用語及びその文法的変形は、鼻腔内、経皮、静脈内、動脈内、筋肉内、節内(intranodal)、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、膣内、及び局所投与、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない投与経路による、生物活性組成物又は製剤の送達のことを指す。この用語には、医療専門家による投与及び自己投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
「細胞」、「細胞培養物」、及び「細胞株」という用語は、特定の対象細胞、細胞培養物、又は細胞株だけでなく、培養における移植や継代の回数に関係なく、そのような細胞、細胞培養物、又は細胞株の子孫又は将来的な子孫のことも指す。すべての子孫が親細胞と完全に同一であるわけではないことを理解すべきである。なぜなら、突然変異(例えば、意図した、もしくは意図しない突然変異)又は環境の影響(例えば、メチル化もしくは他のエピジェネティックな修飾)のいずれかに起因して、何らかの改変が後続の世代に起こり、その結果、子孫が実際には親細胞と同一でなくなる可能性があるためである。しかし、その子孫が元の細胞、細胞培養物、又は細胞株と同じ機能性を保持する限り、それらは本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
【0056】
「構築物」という用語は、異種供給源に由来する1つ以上の核酸配列又はアミノ酸配列などの組換え分子、例えば組換え核酸又はポリペプチドのことを指す。例えば、ポリペプチド構築物は、異なる起源を持つ2つ以上のアミノ酸配列が単一のポリペプチド構築物中で互いに作動可能に連結された、キメラポリペプチド分子であり得る。同様に、核酸構築物は、異なる起源を持つ2つ以上の核酸配列が単一の核酸分子に組み合わされた、キメラ核酸分子であり得る。代表的な核酸構築物には、直鎖状又は環状の、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA核酸分子で、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製ポリヌクレオチド分子、ファージなどの任意の供給源に由来し、ゲノムの組み込み又は自己複製可能で、1個以上の核酸配列が作動可能に連結された核酸分子を含む、任意の組換え核酸分子が含まれ得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の核酸構築物を、単一のベクターなどの単一の核酸分子内に組み込む(例えば、挿入する)ことができ、又は2つ以上の別個のベクターなどの、2つ以上の別個の核酸分子内に組み込む(例えば、挿入する)こともできる。本明細書において、「ベクター」という用語は、他の核酸分子を移動又は輸送することができる核酸分子又は配列のことを指すために使用される。したがって、「ベクター」という用語は、DNAベースのベクター及びRNAベースのベクターの両者を包含する。「ベクター」という用語には、クローニングベクター及び発現ベクター、並びにウイルスベクター及び組み込みベクターが含まれる。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターであり、それによって、in vitro、ex vivo、及び/又はin vivoでDNA配列及び断片を発現することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、例えばプラスミド(DNAベースのベクター)又は自己複製RNAベクターのような、細胞内での自律複製を指示する配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ベクターは、宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに充分な配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ベクターは、in vitro及び/又はin vivoでRNAへと転写可能なDNA配列を含んでいてよい。有用なベクターとして、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、及びウイルスベクターが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、一本鎖ベクター(例えば、ssDNA又はssRNA)であり得る。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、二本鎖ベクター(例えば、dsDNA又はdsRNA)であり得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、遺伝子送達ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、遺伝子を細胞に導入するための遺伝子送達ビヒクルとして使用される。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、自己複製RNA(srRNA)ベクターである。
【0057】
本開示の組成物、例えばsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物の、「有効量」、「治療的有効量」、又は「薬学的有効量」という用語は、通常、組成物が存在しない場合に比較して、組成物が記載された目的を達成する(例えば、投与の目的の効果を達成する、免疫応答を刺激する、疾患を予防もしくは治療する、又は疾患、障害、感染症、もしくは健康状態の1つ以上の症状を軽減する)のに充分な量のことを指す。「有効量」の例として、疾患の1つ又は複数の症状の治療、予防、又は軽減に寄与するのに充分な量が挙げられ、これは「治療的有効量」とも呼ばれ得る。症状の「軽減」とは、1つもしく複数の症状の重症度もしくは頻度の減少、又は、1つもしくは複数の症状の消失を意味する。「治療的有効量」を含む組成物の正確な量は治療の目的によって異なり、当業者であれば公知の技術を用いて確認可能である(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992);Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);Pickar, Dosage Calculations (1999);及び、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照)。
【0058】
本明細書で使用される「裸の」という用語は、脂質、ポリマー、及びタンパク質などの他の高分子を、実質的に含まない核酸のことを指す。自己複製RNA(例えばレプリコン)などの「裸の」核酸は、細胞への取り込みを改善する他の高分子とともに製剤化されていない。したがって、裸の核酸は、リポソーム、微粒子、ナノ粒子、カチオン性エマルション、及び同種のものに、封入、吸収、又は結合されてはいない。
【0059】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上のエレメント間、例えばポリペプチド配列間又はポリヌクレオチド配列間の、物理的又は機能的な連結を表し、その連結によって、エレメントが意図された様式で作動することが可能になる。例えば、「作動可能に連結された」という用語が、本明細書に記載の核酸分子及びsrRNA構築物、又は核酸構築物中のコード配列及びプロモーター配列との関連で使用される場合、コード配列及びプロモーター配列がインフレームであり、且つ適切に空間的及び距離的に離れており、それによって、転写因子又はRNAポリメラーゼの個々の結合が転写に対して影響を及ぼすことが可能になることを意味する。作動可能に連結されたエレメントは、連続的であっても不連続であってもよい(例えば、リンカーを介して互いに連結されていてもよい)ことが理解されるべきである。
【0060】
ポリペプチド構築物との関連において、「作動可能に連結された」とは、構築物の記載された活性を提供するための、アミノ酸配列間(例えば、異なるセグメント間、部分間、又はドメイン間)の物理的連結(例えば、直接的又は間接的な連結)のことを指す。本開示において、本開示の構築物の領域又はドメインは、細胞内での構築物の適切なフォールディング、プロセッシング、ターゲッティング、発現、結合、及び他の機能的特性を保持するように作動可能に連結されてよい。特に断りがない限り、本開示の構築物のセグメント、部分、及びドメインは、互いに作動可能に連結している。本明細書において開示される構築物の、作動可能に連結されたセグメント、部分、及びドメインは、連続的であっても不連続であってもよい(例えば、リンカーを介して互いに連結されていてもよい)。
【0061】
本明細書で使用される「部分(portion)」という用語は、部分(fraction)のことを意味する。ポリヌクレオチド配列、アミノ酸配列、又はポリペプチドなどの特定の構造に関して、その「一部」という用語は、前記構造の連続的又は不連続的な部分のことを示す場合がある。例えば、アミノ酸配列の一部は、当該アミノ酸配列のアミノ酸のうち少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、及び少なくとも90%を含む。それに加えて、又はその代わりに、前記一部が不連続部分である場合、当該不連続部分は、構造(例えば、タンパク質のドメイン)内の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又はそれよりも多い個数の部分から構成され、各部分は前記構造内の連続的なエレメントである。例えば、アミノ酸配列の不連続部分は、前記アミノ酸配列内の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又はそれよりも多い個数の部分、例えば4個以下の部分から構成されていてもよく、この場合に各部分は、前記アミノ酸配列内の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個の連続したアミノ酸、少なくとも10個の連続したアミノ酸、少なくとも20個の連続したアミノ酸、又は少なくとも30個の連続したアミノ酸を含む。
【0062】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、1つ又は複数の目的の化合物を対象に投与するための薬学的に許容される担体、添加剤、又は希釈剤を提供する、任意の適切な物質のことを指す。このように、「薬学的に許容される賦形剤」は、薬学的に許容される希釈剤、薬学的に許容される添加剤、及び薬学的に許容される担体と呼ばれる物質を包含し得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」としては、薬学的投与に適合する生理食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、吸収遅延剤、並びに同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。補助的な活性化合物(例えば、抗生物質及び追加の治療薬)を組成物に組み込むこともできる。
【0063】
「組換え」という用語は、それが細胞、核酸、タンパク質、又はベクターに関して使用される場合、その細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが人為的介入によって改変又は生成されたことを示し、それらが実験室的方法によって改変された場合、又はそれらが実験室的方法で生じた場合などが例として挙げられる。したがって、例えば、組換えタンパク質及び核酸には、実験室的方法によって生成されたタンパク質及び核酸が含まれる。組換えタンパク質は、タンパク質の天然の(非組換え型又は野生型の)形態内に見出されないアミノ酸残基を含むこともできるし、改変された、例えば標識された、アミノ酸残基を含むこともできる。この用語は、ペプチド、タンパク質、又は核酸配列に対する任意の改変を含み得る。このような改変には、以下のものが含まれる場合がある:ペプチド、タンパク質、又は核酸配列の、例えば1個以上のアミノ酸、デオキシリボヌクレオチド、又はリボヌクレオチドの任意の化学修飾;ペプチド又はタンパク質中の1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、及び/又は置換;融合タンパク質、例えば抗体断片を含む融合タンパク質の生成;並びに、核酸配列中の1個以上の核酸の付加、欠失、及び/又は置換。「組換え」という用語は、それが細胞と関連して使用される場合、天然に存在する細胞を含むことを意図するものではなく、細胞の操作/改変無しには細胞中に存在しないポリペプチド又は核酸を含むように、又は発現するように操作/改変された、細胞を包含するものである。
【0064】
本明細書で使用される「対象」又は「個体」には、ヒト(例えば、ヒト個体)及び非ヒト動物などの、動物が含まれる。いくつかの実施形態では、「対象」又は「個人」は、医師の治療を受けている患者である。したがって、対象は、ヒトの患者、又は、目的とする健康状態(例えば、癌もしくは感染症)及び/もしくは前記健康状態の1つ以上の症状を有する、有する危険性がある、又は有する疑いがある個人であり得る。対象はまた、診断時又はそれ以降に目的とする健康状態及び/又は疾患のリスクがあると診断された個人であり得る。「非ヒト動物」という用語はすべての脊椎動物を含み、例えば哺乳類、例えばげっ歯類、例えばマウス、家畜、家畜化された動物及びペット、非ヒト霊長類、並びに他の哺乳類、例えば、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、及びニワトリ;並びに、両生類及び爬虫類などの非哺乳類;が挙げられる。
【0065】
値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限の間の、文脈上明らかにそうでないと指示されない限り下限の単位の10分の1までの、それぞれの介在値(intervening value)、及び、その記載された範囲内の他のあらゆる記載された値又は介在値も、本開示内に包含されると理解される。これらの、より小さい範囲の上限と下限は、独立にそれらの小さい範囲内に含まれてもよく、記載された範囲内の具体的に除外された任意の限界値に従って本開示内に包含される。記載された範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0066】
本明細書では、数値の前に「約」という語を付して、特定の範囲を示している。本明細書では、「約」という語は、それに続く正確な数字を、及びそれに続く数字と近い又は近似的な数字を、文字どおり裏付けるために使用される。ある数字が具体的に示された数字と近い又は近似的かを判断する際、その近い又は近似的な数字は、数字が提示された文脈において、具体的に示された数字と実質的に等価な数字を提供する数字であってもよい。近似の程度が文脈から明らかでない場合、「約」とは、提供された値の上下10%以内、又は、最も近い有効数字に四捨五入した値のいずれかを意味し、いずれの場合も提供された値が含まれる。いくつかの実施形態では、「約」という語は、指定値±10%まで、±5%まで、又は±1%までのことを示す。
【0067】
(a)、(b)、(i)などの見出しは、明細書及び特許請求の範囲の読みやすさのために提示されているに過ぎない。明細書又は特許請求の範囲において見出しが使用された場合、それは、工程又は要素が、アルファベット順、数字順、又は提示順に実行されることを要求するものではない。
【0068】
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態には、「~を含む(comprising)」、「~からなる(consisting)」、及び「~から本質的になる(consisting essentially of)」態様及び実施形態が含まれることが理解される。本明細書で使用される「~を含む(comprising)」は、「~を含む(including)」、「~を含む(containing)」、又は「~によって特徴付けられる(characterized by)」と同義であって、包括的又はオープンエンドであり、追加の、記載のない要素又は方法工程を除外するものではない。本明細書で使用される「~からなる(consisting)」は、特許請求の範囲に記載された組成物又は方法において規定されていない要素、工程、又は成分をいずれも除外するものである。本明細書で使用される「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲に記載された組成物又は方法の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない材料又は工程を除外するものではない。本明細書における「~を含む(comprising)」という用語のいかなる記載も、特に組成物の成分の説明において、又は方法の工程の説明においては、記載された成分又は工程から本質的になる、及び記載された成分又は工程からなる、それら組成物及び方法を包含すると理解される。
【0069】
本明細書に開示されるすべての遺伝子、遺伝子名、及び遺伝子産物は、本明細書に開示される組成物及び方法が適用可能なあらゆる生物種由来のホモログに相当することが意図される。したがって、この用語には、ヒト及びマウス由来の遺伝子及び遺伝子産物が含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の種由来の遺伝子又は遺伝子産物が開示されている場合、その開示は単なる例示であること意図しており、それが現れる文脈が明確に示さない限り、限定的に解釈されるものではないと理解される。したがって、例えば、本明細書に開示される遺伝子又は遺伝子産物は、いくつかの実施形態では哺乳類の核酸及びアミノ酸配列と関連するが、他の哺乳類、魚類、両生類、爬虫類、及び鳥類などを含むがこれらに限定されない他の動物に由来する相同遺伝子及び/又はオルソログ遺伝子、並びに遺伝子産物を包含することが意図される。いくつかの実施形態では、遺伝子、核酸配列、アミノ酸配列、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は、ヒトのものである。「遺伝子」という用語は、そのバリアントも含むことが意図される。
【0070】
本開示の特定の特徴が、明確化のために別々の実施形態の文脈で記載されていても、それらは単一の実施形態で組み合わせて提供してもよいと理解される。逆に、簡略化のために単一の実施形態の文脈で記載されている本開示の様々な特徴を、別々に、又は任意の適切な副組み合わせ(sub-combination)で、提供してもよい。本開示に係る実施形態のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、一つ一つの組み合わせが個別かつ明示的に開示されるのと同等に本明細書に開示される。さらに、各種実施形態及び要素のすべての副組み合わせも、本開示によって具体的に包含され、一つ一つのこのような副組み合わせが個別かつ明示的に本明細書に開示されるのと同等に本明細書に開示される。
【0071】
アルファウイルス
アルファウイルスは、一本鎖プラス鎖RNAゲノムを持つ、エンベロープを有する小型のRNAウイルスである。アルファウイルス属には、特に、シンドビスウイルス(SINV)、セムリキフォレスト(Semliki Forest)ウイルス(SFV)、ロスリバーウイルス(RRV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、及び東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)などが含まれ、これらはいずれも近縁で、哺乳類、げっ歯類、魚類、鳥類、及びヒトやウマ等の大型哺乳類を含む、様々な脊椎動物;並びに昆虫などの無脊椎動物;に感染することができる。とりわけ、シンドビスウイルス及びセムリキフォレストウイルスは広く研究されており、これらのウイルスのライフサイクル及び複製様式などはよく特徴付けられている。本明細書に開示される組成物及び方法に適したアルファウイルス種の非限定的な例として、アウラウイルス(AURAV)、ババンキウイルス(BABV)、バーマフォレストウイルス(BFV)、ベバルウイルス(BEBV)、バギークリークウイルス、カアイングア(Caaingua)ウイルス、カバソウ(Cabassou)ウイルス、チクングニアウイルス(CHIKV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、エイラート(Eilat)ウイルス、エバーグレーズウイルス(EVEV)、フォートモーガンウイルス(FMV)、ゲタウイルス(GETV)、ハイランドJウイルス(HJV)、キジラガクウイルス(KYZV)、マダリアガウイルス(MADV)、マヤロウイルス(MAYV)、ミデルブルグ(Middelburg)ウイルス(MIDV)、モッソダスペドラス(Mosso das Pedras)ウイルス、ムカンボウイルス(MUCV)、ヌドゥムウイルス(NDUV)、オニョンニョンウイルス(ONNV)、ピクスナウイルス(PIXV)、リオネグロウイルス(RNV)、ロスリバーウイルス(RRV)、サケ膵臓病ウイルス(SPDV)、セムリキフォレストウイルス(SFV)、シンドビスウイルス(SINV)、睡眠病ウイルス(SDV)、ミナミゾウアザラシウイルス(SESV)、タイフォレスト(Tai Forest)ウイルス(TFV)、トナテ(Tonate)ウイルス、トロカラ(Trocara)ウイルス、ウナウイルス(UNAV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、及びワタロアウイルス(WHAV)が挙げられる。
【0072】
アルファウイルスゲノムは長さ約12kbであり、次の2つのオープンリーディングフレーム(ORF)からなる:非構造タンパク質(nsP)をコードする7kbのフレーム、及び構造ポリタンパク質をコードする4kbのフレーム。非構造ポリタンパク質(nsP)は、宿主細胞の細胞質内部で、ウイルスmRNAの転写と翻訳に必要な4種類の異なるタンパク質(nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4)へと切断される。
【0073】
nsP1タンパク質は、グアニン-7-メチルトランスフェラーゼ(MTase)とグアニリルトランスフェラーゼ(GTase)の両方の活性を持つmRNAキャッピング酵素であり、新しく合成されたウイルスゲノム及びサブゲノムRNAのメチル化とキャッピングを指示する。nsP1のN末端ドメインにあるMTaseモチーフは、S-アデノシルメチオニン(AdoMet)からGTP分子のN7位(m7Gppp)へのメチル基の転移を触媒する。次いで、GTaseはm7Gpppと結合し、触媒ヒスチジンと共有結合を形成して(m7Gp-GTase)、PPiを放出する。その後、GTaseはm7Gp分子を5’-二リン酸RNAに転移させ、m7GpppNp-RNAを生成する。その結果得られるキャップ構造はウイルスmRNAの翻訳に必須であり、mRNAが細胞の5’エキソヌクレアーゼによって分解されるのを防ぐ。N末端ドメインに続くのは、細胞膜へのnsP1タンパク質の結合を可能にする特徴である。α-ヘリカル両親媒性ループ及びパルミトイル化部位の存在により、nsP1タンパク質、及びnsP1を含む複製複合体は、おそらくnsP1と膜のアニオン性リン脂質との相互作用を介して、原形質膜上に固定される。
【0074】
nsP2タンパク質は、多くの酵素活性と機能的役割を持つ。N末端領域は、スーパーファミリー1(SF1)ヘリカーゼの7つのシグネチャーモチーフ(signature motif)を持つ、ヘリカーゼドメインを含む。これは、ウイルスRNAキャッピング反応の最初を担うRNAトリホスファターゼとして機能する。また、ヌクレオチドトリホスファターゼ(NTPase)としても機能し、RNAヘリカーゼ活性を促進する。nsP2のC末端領域は、パパイン様システインプロテアーゼを含み、これがウイルスの非構造ポリタンパク質のプロセッシングに関与する。このプロテアーゼは、ポリタンパク質内の保存されたモチーフを認識する。このタンパク質分解機能は高度に制御されており、nsP2の他のドメインによって調節されている。アルファウイルスnsP2タンパク質はまた、感染宿主細胞における転写及び翻訳を停止させ、インターフェロン(IFN)を介した抗ウイルス応答を阻害することに関与する、病原性因子としても記載されており、ウイルス因子による翻訳機構の制御に寄与する。
【0075】
複製複合体におけるアルファウイルスnsP3タンパク質の正確な役割は、あまり明らかになっていない。nsP3タンパク質には、ホスファターゼ活性と核酸結合能とを有するN末端マクロドメイン、アルファウイルス固有ドメイン(AUD)、及びC末端超可変ドメインという、3つのドメインが認められる。SFVのnsP3においてこのドメインが欠失したことにより、ウイルス病原性が低下したことが示されており、ウイルスRNAの転写制御におけるこのドメインの重要性が示唆されている。
【0076】
nsP4ポリメラーゼは、アルファウイルスにおいて最もよく保存されたタンパク質であり、他のアルファウイルスのnsP4と比較した際、最も異なる場合でもアミノ酸配列の同一性は50%超である。nsP4は、C末端にコアRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)ドメインを含み、これが単独でウイルス複製複合体のRNA合成特性に関与することが分かっている。RdRpは、マイナス鎖RNAを介したゲノムRNAの複製と、26SサブゲノムRNAの転写とに関与している。N末端ドメインはアルファウイルス特異的であり、部分的に不規則な構造となっている場合がある。
【0077】
アルファウイルスゲノムの5’側の3分の2は、ウイルスRNAの転写と複製に必要ないくつかの非構造タンパク質(nsP)をコードしている。これらのタンパク質はRNAから直接翻訳され、細胞タンパク質とともに、ウイルスゲノムの複製とサブゲノムRNAの転写に不可欠な、RNA依存性RNAポリメラーゼを形成する。4つの非構造タンパク質(nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4)は単一のポリタンパク質として産生され、ウイルスの複製機構を構成する。ポリタンパク質のプロセッシングは高度に制御された様式で起こり、P2/3接合部での切断が、ゲノム複製時のRNA鋳型の利用に影響を与える。この部位は狭い裂け目の底部に位置しており、容易にはアクセスできない。一旦切断されると、nsP3はnsP2を取り囲むリング構造を生成する。これら2つのタンパク質は、広い界面を持っている。非細胞変性性ウイルス又は温度感受性表現型を作り出すnsP2の変異は、P2/P3界面領域に集まっている。nsP2の非細胞変性性変異とは反対側に位置するP3変異は、P2/3の効率的な切断を妨げる。これが結果的にRNA感染性に影響を与え、ウイルスRNA産生レベルを変化させる可能性がある。
【0078】
ゲノムの3’側の3分の1は、ウイルス粒子の形成に必要なすべての構造タンパク質、すなわち、コアヌクレオカプシドタンパク質C、並びにヘテロ二量体として会合するエンベロープタンパク質P62及びE1、の翻訳の鋳型となる、サブゲノムRNAを含む。ウイルス膜に固定された表面糖タンパク質は、受容体の認識と、膜融合による標的細胞への侵入とに関与している。サブゲノムRNAは、nsP4タンパク質をコードするRNA配列の3’末端に存在するp26Sサブゲノムプロモーターから転写される。P62がE2及びE3へとタンパク質分解によって成熟すると、ウイルス表面の変化を引き起こされる。E1及びE2の、並びに場合によってはE3の、糖タンパク質「スパイク」は、ともに、E1/E2二量体又はE1/E2/E3三量体を形成し、そこではE2は中心から頂点にまで伸長し、E1は頂点間の空間を満たし、E3は、存在すればスパイクの遠位端に位置する。ウイルスがエンドソームの酸性にさらされると、E1がE2から解離してE1ホモ3量体が形成され、これが細胞膜とウイルス膜とを融合させるステップに必要となる。アルファウイルス糖タンパク質E1は、クラスIIのウイルス融合タンパク質であり、インフルエンザウイルス及びHIVに見られるクラスIの融合タンパク質とは構造的に異なる。E2糖タンパク質はその細胞質ドメインを介してヌクレオカプシドと相互作用する機能を持つ一方で、その細胞外ドメインは細胞受容体と結合する役割を担っている。ほとんどのアルファウイルスは周辺タンパク質E3を失っているが、セムリキウイルスではE3はウイルス表面に結合して残っている。
【0079】
アルファウイルスの複製は、宿主細胞内の膜表面で起こることが報告されている。感染サイクルの第1ステップにおいて、ゲノムRNAの5’末端が、RNAポリメラーゼ活性を持つポリタンパク質(nsP1~4)へと翻訳され、このポリタンパク質によってゲノムRNAと相補的なマイナス鎖が生成される。第2ステップでは、マイナス鎖を鋳型に用いて、2つのRNAがそれぞれ生成される:(1)翻訳によって他のnsPを産生し、かつウイルスにとってのゲノムとして働く、二次ウイルスのゲノムに相当するプラス鎖ゲノムRNA、及び(2)感染性粒子を形成するウイルスの構造タンパク質をコードする、サブゲノムRNA。プラス鎖ゲノムRNA/サブゲノムRNAの比率は、ポリタンパク質がタンパク質分解によって自己切断し、nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4となることによって制御されている。実際には、ウイルスの遺伝子発現は2つのフェーズで起こる。第1フェーズでは、プラスゲノム鎖とマイナス鎖の主要な合成が起こる。第2フェーズでは、サブゲノムRNAの合成が事実上排他的に行われ、その結果、大量の構造タンパク質が生産される。
【0080】
自己複製RNA
当業者に理解されるように、「自己複製RNA」という用語は、許容細胞内でそれ自身の増幅又は自己複製を指示するのに必要な遺伝情報のすべてを含む、RNA分子のことを指す。そのため、srRNAは「自己増幅RNA」(saRNA)とも呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、srRNAは「レプリコン」であり、これは、1個の単位として順次複製される、DNA又はRNAの直鎖状又は環状の部分であり得る。レプリコンの非限定的な例として、「レプリコンRNA」又は「RNAレプリコン」が挙げられる。自身の複製を指示するため、srRNAは通常、(1)ウイルス又は宿主細胞由来のタンパク質、核酸、又はリボ核タンパク質と相互作用してRNA増幅プロセスを触媒し得る、ポリメラーゼ、レプリカーゼ、又は他のタンパク質をコードし、(2)サブゲノムレプリコンにコードされたRNAの複製と転写に必要なシス作用性RNA配列を含む。これらの配列は複製の過程で、自身がコードするタンパク質に、あるいは、自身がコードしない細胞由来タンパク質、核酸、リボ核タンパク質、又はこれらのいずれかの成分間の複合体に、結合してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、レプリコン、例えばsrRNA(レプリコンなど)は、アルファウイルス由来である。本開示のいくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNA構築物(例えば、srRNA、saRNA、又はレプリコン分子)は、通常、以下の要素を含む:複製のためにシスで必要な5’ウイルスRNA配列又は欠陥干渉RNA配列(defective-interfering RNA sequence)、生物学的に活性なアルファウイルス非構造タンパク質をコードする配列(例えば、nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4)、サブゲノムRNA(sgRNA)のためのサブゲノムプロモーター(sg)、複製のためにシスで必要な3’ウイルス配列、並びに任意に、ポリアデニル酸トラクト(poly(A))。いくつかの例では、異種配列の発現を指示するサブゲノムプロモーター(sg)が、本開示のsrRNA構築物に含まれ得る。
【0081】
さらに、srRNA分子(例えば、srRNA、saRNA、又はレプリコン分子)という用語は、一般的にプラスの極性、すなわち「メッセージ」センスの分子のことを指し、srRNAは、公知のいずれの天然アルファウイルスとも異なる長さであってもよい。本開示のいくつかの実施形態では、srRNAは、1つ又は複数のアルファウイルス構造タンパク質の、コード配列の少なくとも一部を含まない;及び/又は、構造遺伝子をコードする配列を、異種配列によって置換することができる。これらの例においては、srRNAが組換えアルファウイルス粒子にパッケージングされる場合、srRNAは、アルファウイルス構造タンパク質との相互作用を開始させる役割を果たして粒子形成をもたらす配列、いわゆるパッケージングシグナルを、1つ以上含むことができる。
【0082】
本開示のsrRNA構築物は、通常少なくとも約2kbの長さを有する。例えば、srRNAは、少なくとも約2kb、少なくとも約3kb、少なくとも約4kb、少なくとも約5kb、少なくとも約6kb、少なくとも約7kb、少なくとも約8kb、少なくとも約9kb、少なくとも約10kb、少なくとも約11kb、少なくとも約12kb、又は12kb超の長さを有し得る。いくつかの実施形態では、srRNAは、約4kb~約20kb、約4kb~約18kb、約5kb~約16kb、約6kb~約14kb、約7kb~約12kb、約8kb~約16kb、約9kb~約14kb、約10kb~約18kb、約11kb~約16kb、約5kb~約18kb、約6kb~約20kb、約5kb~約10kb、約5kb~約8kb、約5kb~約7kb、約5kb~約6kb、約6kb~約12kb、約6kb~約11kb、約6kb~約10kb、約6kb~約9kb、約6kb~約8kb、約6kb~約7kb、約7kb~約11kb、約7kb~約10kb、約7kb~約9kb、約7kb~約8kb、約8kb~約11kb、約8kb~約10kb、約8kb~約9kb、約9kb~約11kb、約9kb~約10kb、又は約10kb~約11kbの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、srRNAは約6kb~約14kbの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、srRNAは約6kb~約16kbの長さを有し得る。
【0083】
srRNA構築物の同定及び/又は特徴づけのための方法
以下により詳細に記載するように、本開示の一態様はsrRNA構築物を同定及び/又は特徴付けるための方法に関するものであり、そのsrRNA構築物の例として、抗原分子及び生物療法分子などの目的の組換えポリペプチドを宿主細胞、細胞培養物、もしくは生体外無細胞発現系で発現させるのに適した、又は予防及び/もしくは治療用途において対象で発現させるに適した、所望の発現特性を有する、srRNA構築物が挙げられる。
【0084】
図1は、本明細書に開示される自己複製RNA(レプリコンなどのsrRNA)構築物を同定及び/又は特徴づけするための方法の、非限定的な例を示すフローチャートである。
図1に示されるように、いくつかの実施形態では、本開示の方法は次の操作を含み得る:(a)複数のsrRNA発現構築物であって、それぞれが、アルファウイルスsrRNAベクターに作動可能に挿入された目的のポリペプチド構築物(PCI)のコード配列を含み、アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部がPCIのコード配列に置換されている構築物、を提供すること;(b)前記複数のsrRNA発現構築物から発現されるPCIのレベル及び/又は機能性を分析し、定義された特性を有する1つ以上の候補PCIを同定すること;(c)(b)で同定された候補PCIを発現可能なsrRNA発現構築物を少なくとも1つの送達ビヒクルに組み込んで、送達系のコンビナトリアルコレクションを作出すること;並びに、d)対象において少なくとも1つの薬力学的効果を付与する能力に関して、送達系を分析し、所望の薬力学的効果を付与することができるsrRNA発現構築物を同定すること。
【0085】
本開示の方法の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、アルファウイルスsrRNAベクターのウイルス構造タンパク質CP、E1、E2、E3、及び6Kのうちの1つ以上をコードする核酸配列の少なくとも一部を欠いている。いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、CPをコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、E1をコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、E2をコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、E3をコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、6Kをコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、CP、E1、E2、E3、及び6Kの組み合わせをコードする配列の一部又は全体を欠いている。本開示のいくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターの非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4のコード配列は存在するが、アルファウイルスsrRNAベクターの1つ以上の構造タンパク質(例えば、CP、E1、E2、E3、及び6K)をコードする配列の少なくとも一部又は全体が存在しない。
【0086】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、1つ以上のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の実質的な部分を欠いている。当業者は、ウイルス構造ポリペプチドをコードする核酸配列の実質的な部分が、当業者の手作業による配列の評価によって、又はコンピュータで自動化された、BLAST(例えば、「Basic Local Alignment Search Tool」; Altschul SF et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1993」を参照)等のアルゴリズムを用いた配列の比較及び同定によって、そのポリペプチドの推定的な同定が可能となる、ウイルス構造ポリペプチドをコードする充分な核酸配列を含み得ることを理解するであろう。したがって、ヌクレオチド配列の実質的な部分は、その配列を含む核酸断片を特異的に同定及び/又は単離するのに充分な配列を含む。例えば、核酸配列の実質的な部分は、全長核酸配列の少なくとも約20%、例えば約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスsrRNAベクターは、ウイルス構造タンパク質をコードする配列全体を欠く。例えば、アルファウイルスsrRNAベクターは、ウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない。
【0088】
いくつかの実施形態では、PCIのコード配列は、単一のポリペプチド(例えば、単一遺伝子PCI)のコード配列を含む。いくつかの実施形態では、PCIのコード配列は、複数のポリペプチド(例えば、二遺伝子、三遺伝子、又は四遺伝子などの複遺伝子PCI)のコード配列を含む。いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドのコード配列は、それぞれ別々のプロモーター配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドのコード配列は、単一のオープンリーディングフレーム内(すなわち、ポリシストロニックORF内)で互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、ポリシストロニックORFのコード配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーター配列の少なくとも1つは、サブゲノム(sg)プロモーターである。いくつかの実施形態では、sgプロモーターは、26Sゲノムプロモーターである。
【0089】
いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドは、互いに直接、又は(例えば1つ以上のコネクター配列によって)間接的に、連結され得る。例えば、いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドは、互いに直接、例えば互いに隣接して、連結され得る。いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドのうち少なくとも2個(例えば2個、3個、4個、又は5個)は、1つ以上のコネクター配列によって互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、コネクター配列の長さ及びアミノ酸組成は、PCIの所望の活性又は特性を達成するために、ポリペプチドの互いに対する配向性、柔軟性、及び/又は近接性を変化させるように最適化され得る。いくつかの実施形態では、前記複数のコネクター配列のうちの1つのコネクター配列は、1つ以上の自己タンパク質分解性ペプチド配列を含む。本開示の方法及び組成物に適した自己タンパク質分解性ペプチド配列の非限定的な例としては、カルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼ(furin)、ブタテシオウイルス-1 2A(P2A)、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、トセア・アシグナウイルス2A(T2A)、細胞質多角体病ウイルス2A(BmCPV2A)、及び軟化病ウイルス2A(BmIFV2A)に由来する自己タンパク質分解性切断配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドのうち少なくとも2個は、P2A自己タンパク質分解性切断配列を介して互いに作動可能に連結されている。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記複数のポリペプチドのコード配列は、1つ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)によって互いに作動可能に連結されている。本開示の方法及び組成物に適したIRESの非限定的な例としては、ウイルスIRES配列、細胞IRES配列、及び人工IRES配列が挙げられる。好適なIRES配列の例としては、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)IRES、肝炎ウイルスIRES、ペスチウイルスIRES、クリパウイルスIRES、ロパロシプム・パディウイルスIRES、線維芽細胞増殖因子IRES、血小板由来増殖因子IRES、血管内皮増殖因子IRES、インスリン様増殖因子IRES、ピコルナウイルスIRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、Pim-1 IRES、p53 IRES、Apaf-1 IRES、TDP2 IRES、L-myc IRES、及びc-myc IRESが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
目的のポリペプチド構築物(PCI)
以下により詳細に記載するように、目的のポリペプチド構築物(PCI)は、1つ以上のポリペプチドのアミノ酸配列を含み得る。本開示のsrRNA構築物によって発現され得る好適なポリペプチドに関しては、原則として特に制限はない。本開示の組成物及び方法に適したポリペプチドの種類の例として、微生物タンパク質、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、哺乳類タンパク質、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、PCIは、サイトカイン、細胞毒素、ケモカイン、免疫調節因子、アポトーシス促進因子、抗アポトーシス因子、ホルモン、分化因子、脱分化因子、免疫細胞受容体もしくはレポーター、又はそれらの任意の組み合わせなどの、1つ以上の抗原分子及び/又は生物療法分子を含み得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、PCIは、G-CSF、GM-CSF、IL-1、IL-10、IL-10様、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-18BP、IL-1様、IL-1RA、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-20、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6様、IL-7、IL-9、IL-21、IL-22、IL-33、IL-37、IL-38、LIF、及びOSMなどの、1つ以上のインターロイキン及び相互作用タンパク質を含んでいてよい。さらなる好適なポリペプチドとしては、インターフェロン(例えばIFN-α、IFN-β、及びIFN-γ)、TNF(例えばCD154、LT-β、TNF-α、TNF-β、4-1BBL、APRIL、CD70、CD153、CD178、GITRL、LIGHT、OX40L、TALL-1、TRAIL、TWEAK、及びTRANCE)、TGF-β(例えばTGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3)、ヘマトポイエチン(例えばEpo、Tpo、Flt-3L、SCF、M-CSF、及びMSP)、ケモカイン及びそれらの受容体(例えばXCL1、XCL2、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、及びCX3CL1)、並びに免疫抑制遺伝子産物及び関連転写因子(例えばPECAM1、FCGR3A、FOS、NFKB1、JUN、HIF1A、PD-L1、mTOR、STAT5B、及びSTAT4)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本開示の組成物及び方法に適した、さらなるポリペプチドの例としては、免疫賦活遺伝子産物(例えばCD27/CD70、CD40、CD40L、B7.1、BTLA、MAVS、OX40、OX40L、RIG-I、及びSTING);並びに、ABCB1、ABCC1、ABCG2、AKT1、ALK、BAFF、BCR-ABL、BRAF、CCND1、cMET、EGFR、ERBB2、ERBB3、ERK2、ESR1、GRB2、KRAS、MDR1、MRP1、NTRK1、PDC4、P-gp、PI3K、PTEN、RET、ROS1、RSK1、RSK2、SHIP、及びSTK11などの遺伝子の薬剤耐性変異体又はバリアント;が挙げられるが、これらに限定されない。また、本開示の組成物及び方法に適した例として、ウイルスタンパク質、特にスパイクタンパク質、線維タンパク質、構造タンパク質、及び付着タンパク質をコードする配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、PCTは、1つ以上の表面露出ウイルス抗原、例えば、表面露出ウイルスタンパク質を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスタンパク質は糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、PCTは表面糖タンパク質を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ウイルス糖タンパク質は狂犬病ウイルス糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、ウイルス糖タンパク質は狂犬病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(RABV-G)である。
【0094】
いくつかの実施形態では、PCIは、1つ以上の抗体又は抗体バリアント(例えば、単鎖Fv、二重特異性、ラクダ科抗体(camelids)、Fab、及びHCAb)のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、癌に関連する分子もしくは癌でアップレギュレートされている分子、又は感染症に関連する分子を標的とする。いくつかの実施形態では、抗体は、免疫賦活機能を有する分子、又は免疫抑制機能を有する分子を標的とする。
【0095】
いくつかの実施形態では、PCIは、欠損又は変異が疾患又は健康状態と関連する酵素のアミノ酸配列を含んでもよく、その酵素の例として、アガルシダーゼベータ、アガルシダーゼアルファ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼアルファ、ベラグルセラーゼアルファ、アルグルセラーゼ、セベリパーゼアルファ、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、エロスルファーゼアルファ、ガルスルファーゼ、アルグルコシダーゼアルファ、及びCTFRが挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、PCIは、抗原分子、生物療法分子、又はそれらの任意の組み合わせから選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PCIは、腫瘍関連抗原、腫瘍特異性抗原、新抗原、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PCIは、エストロゲン受容体、細胞内シグナル伝達酵素、及びヒト上皮成長受容体から選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PCIは、免疫調節因子、血管新生の調節因子、細胞外マトリクスの調節因子、代謝の調節因子、神経調節因子、及びそれらの任意の組み合わせから選択される生物療法ポリペプチドのアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PCIは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンフォカイン、及び腫瘍壊死因子から選択されるサイトカインのアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PCIは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-35、IFNγ、及びそれらのいずれかのサブユニットから選択されるインターロイキンのアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PCIは、IL-12A、IL-12B、IL-1RA、及びそれらの任意の組み合わせから選択される生物療法ポリペプチドのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、PCIは、1つ以上の抗原ポリペプチドを含んでもよい。上述したように、本開示のsrRNA構築物によって発現され得る好適な抗原ポリペプチドに関しては、原則として特に制限はない。したがって、いくつかの実施形態では、PCIは、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異性抗原(TSA)、新抗原、及びそれらの任意の組み合わせであり得る、1つ以上の抗原ポリペプチドを含み得る。当業者に理解されるように、TAAは、腫瘍細胞上と、正常細胞上又は多くの正常細胞上とに存在するが、正常細胞上では腫瘍細胞上よりもはるかに濃度が低い、タンパク質などの分子を含む。対照的に、TSAは一般に、腫瘍細胞上には存在するが、正常細胞には存在しない、タンパク質などの分子を含む。腫瘍関連抗原は癌細胞に関連する抗原であってよく、その癌細胞の例として、乳癌細胞、B細胞リンパ腫、膵臓癌、ホジキンリンパ腫細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、中皮腫、肺癌細胞、非ホジキンB細胞リンパ腫(B-NHL)細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、中皮腫細胞、黒色腫細胞、慢性リンパ性白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、神経芽腫細胞、神経膠腫、膠芽腫、及び大腸癌細胞などが挙げられる。また、場合によっては、腫瘍関連抗原が非癌性細胞によっても発現されることがあると理解される。
【0098】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の抗原ポリペプチドの例として、エストロゲン受容体、細胞内シグナル伝達酵素、及びヒト上皮成長受容体が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の抗原ポリペプチドは、ESR1、PI3K、HER2、HER3、それらの任意のバリアント、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ESR1バリアントのコード配列は、リガンド非依存性受容体活性を促進する1つ以上の分子改変を含む。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の分子改変は、K303R、E380Q、Y537C、Y537S、Y537N、及びD538Gからなる群から選択される活性化変異を含む。いくつかの実施形態では、PI3Kバリアントのコード配列は、リガンド非依存性受容体活性を促進する1つ以上の分子改変を含む。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の分子改変は、E542K、E545K、H1047L、及びH1047Rからなる群から選択される活性化変異を含む。いくつかの実施形態では、HER2バリアントは、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインのコード配列を含む。いくつかの実施形態では、HER3バリアントは、キナーゼ不活性HER3のコード配列を含む。いくつかの実施形態では、PCIのコード配列は、5’-から3’-方向で、a)E542K、H1047L、E545K、及びH1047Rから選択される1つ以上の活性化分子改変を含むPI3Kのバリアントのコード配列;b)自己タンパク質分解性ペプチドP2Aのコード配列;c)自身の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを含むHER2のバリアントのコード配列;d)自己タンパク質分解性ペプチドP2Aのコード配列;e)HER3のキナーゼ不活性バリアントのコード配列;f)内部リボソーム進入部位(IRES)のコード配列;並びに、g)Y537C、E380Q、K303R、Y537S、D538G、及びY537Nから選択される1つ以上の活性化分子改変を含むESR1のバリアントのコード配列;を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、PCIは、1つ以上の生物療法ポリペプチドを含む。本開示のsrRNA構築物によって発現され得る好適な生物療法ポリペプチドに関しては、概して特に制限はない。本開示の組成物及び方法に適した生物療法ポリペプチドの例としては、免疫調節因子、血管新生の調節因子、細胞外マトリクスの調節因子、代謝の調節因子、神経調節因子、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、PCIは、1つ以上のサイトカインを含む。サイトカインの非限定的な例としては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンフォカイン、及び腫瘍壊死因子が挙げられる。いくつかの実施形態では、PCIは、1つ以上のインターロイキンを含む。好適なインターロイキンとして、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-35、IFNγ、及びそれらのいずれかのサブユニットが挙げられる。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の生物療法ポリペプチドは、インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)、インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、それらのいずれかのバリアント、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、目的のポリペプチド構築物は、N末端からC末端方向で、a)IL-12Aポリペプチド、IL-12Bポリペプチド、及びIL-1RAポリペプチド;又は、b)IL-1RAポリペプチド、IL-12Bポリペプチド、及びIL-12Aポリペプチド;を含み、上記IL-12A、IL-12B、及びIL-1RAポリペプチドは、1つ以上の自己タンパク質分解性切断配列又は内部リボソーム進入部位によって互いに作動可能に連結されている。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法の工程(a)は、それぞれがPCIのバリアントのコード配列を含む、複数のsrRNA発現構築物を提供することを含む。PCIの「バリアント」という用語は、元のPCTのアミノ酸配列と比較して、1つ以上の分子改変(例えば、アミノ酸の欠失、置換、挿入、重複、及び/又は変異)が存在するポリペプチド構築物のことを指す。バリアントという用語には、フレームシフトバリアント及びスプライスバリアントも含まれる。いくつかの実施形態では、(a)における提供は、i)アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部が目的のポリペプチド構築物(PCI)のコード配列で置換されている、アルファウイルスsrRNA発現ベクターを得ること;及び、ii)それぞれがPCIのバリアントのコード配列を含む、複数のsrRNA発現構築物を生成すること;を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法の工程(a)は、それぞれがPCIのバリアントのコード配列を含む、複数のsrRNA発現構築物を提供することを含み、(a)における提供は、(i)目的のポリペプチド構築物(PCI)の複数のバリアントのコード配列を得ること;及び、(ii)複数のsrRNA発現構築物であって、それぞれが、アルファウイルスsrRNAベクターに作動可能に挿入された、(a)由来の複数のPCIバリアントのうちの1つのPCIバリアントのコード配列を含み、アルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部がPCIバリアントのコード配列に置換されている構築物、を生成すること;を含む。
【0102】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、前記複数のPCIバリアントのうちの1つのPCIバリアントは、1つ以上の分子改変を含む。PCIバリアントの分子改変の種類は、例えば、欠失、置換、挿入、重複、突然変異、フレームシフトバリアント、スプライスバリアント、及びそれらの任意の組み合わせのうち1つ以上であり得る。
【0103】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、前記1つ以上の分子改変が複数の改変カセットへと構成される。いくつかの実施形態では、前記複数の改変カセットは、PCI配列の長さに沿ってタンデムに配置される。いくつかの実施形態では、PCI又はPCIバリアントの所望の活性又は特性を達成するために、改変カセットの長さ及びアミノ酸組成を最適化することができる。いくつかの実施形態では、前記複数の改変カセットのうちの1つの改変カセットは、約1個~約30個のアミノ酸残基(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個などのアミノ酸残基)を含む一本鎖ポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、前記複数の改変カセットのうちの1つの改変カセットは、約2個~約50個のアミノ酸残基、例えば約5個~約45個、約10個~約40個、約15個~約30個、約20個~約50個、約2個~約30個、約3個~約25個、約4個~約20個、約5個~約15個、約6個~約10個、約3個~約15個、約4個~約10個、約5個~約30個、約2個~約5個、約3個~約5、又は約4個~約8個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、前記複数の改変カセットのうちの1つの改変カセットは、31個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、前記複数の改変カセットのうちの1つの改変カセットは、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれよりも多い分子改変を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、PCIのコード配列は、安定性、有効性、及び発現(例えば、翻訳効率)の増加などの所望の特性のためにリファクタリング及び/又は最適化され、その結果、生物療法薬の製造、送達、及び投与の効果を最大化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、PCIのコード配列は、参照コード配列の発現レベルよりも高いレベル、例えば、参照コード配列よりも20%高い、30%高い、40%高い、50%高い、60%高い、70%高い、80%高い、90%高い、又は95%高いレベルで発現するように最適化される。いくつかの実施形態では、参照コード配列は野生型の、最適化されていない配列である。ヌクレオチド配列の配列最適化に関しては、遺伝暗号の縮重に基づき、遺伝子から産生されるポリペプチドのアミノ酸配列を変えることなく、遺伝子のタンパク質コード配列の少なくとも1塩基を異なる塩基に置換できる可能性がある。したがって、本開示の核酸構築物はまた、本明細書に開示される任意のポリヌクレオチド配列から遺伝暗号の縮重に従った置換によって変更された、任意の塩基配列を有し得る。コドン使用頻度を記述した文献が公開されており、容易に入手できる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列バリアントを、例えば特定の宿主での発現を最適化すること(例えば、アルファウイルスmRNAにおけるコドン使用頻度を、ヒト、非ヒト霊長類、ハムスター、マウス、又はサルなどの他の生物に合ったものに変更すること)など、様々な理由のために生成し得る。したがって、いくつかの実施形態では、PCIのコード配列は、例えば、発現に最適化されたコドンの使用を通じて、標的宿主細胞においてコドン最適化されていないコード配列などの参照コード配列の発現レベルよりも高いレベルで発現するように最適化される。いくつかの実施形態では、PCIのコドン最適化配列は、コドン最適化されていない参照コード配列と比較して、発現レベルを少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%増加させる結果となる。いくつかの実施形態では、PCIのコドン最適化配列は、コドン最適化されていない参照コード配列と比較して、発現レベルを少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、又は少なくとも5倍に増加させる結果となる。
【0105】
いくつかの実施形態では、PCIのコード配列は、RNAの安定性及び/又は発現を増強するために最適化される。RNAの安定性は、一般に、RNAの「半減期」に関係している。「半減期」とは、分子の活性、量、又は数の半分が除去されるのに必要な期間のことである。本開示との関連において、RNAの半減期は、RNAの安定性の指標となる。RNAの半減期は、RNAの「発現期間」に影響する場合がある。RNAの安定性を評価するのに有用ないくつかの方法及び技術が知られており、例えば、各種のin silicoでの方法及び/又は実験に基づくストレステストでは、PCIのコドン使用頻度が異なる自己複製RNAなどのレプリコンの保存、並びに、前記保存がsrRNAの有効性(例えば、トランスフェクション後の細胞におけるdsRNAの試験)と遺伝子発現に及ぼす影響が試験される。これに関するさらなる情報が、例えばWayment-Steele, H. et al. (2021). Cold Spring Harbor Laboratory (doi.org/10.1101/2020.08.22.262931)において入手可能である。RNAの安定性の強化に用いる原理、戦略、及び方法に関するさらなる情報が、例えば、Leppek K. et al., Combinatorial optimization of mRNA structure, stability, and translation for RNA-based therapeutics. bioRxiv. (Preprint). Mar 30, 2021. doi: 10.1101/2021.03.29.437587において入手可能である。
【0106】
いくつかの実施形態では、前記複数の改変カセットは、1つ以上のリンカーによって互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記1つ以上のリンカーのうちの1つのリンカーは、合成化合物リンカー又はペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、化学架橋剤などの合成化合物リンカーであり得る。市販の好適な架橋剤の非限定的な例として、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)(DSP)、ジチオビス(プロピオン酸スルホスクシンイミジル)(DTSSP)、エチレングリコールビス(コハク酸スクシンイミジル)(EGS)、エチレングリコールビス(コハク酸スルホスクシンイミジル)(スルホEGS)、酒石酸ジスクシンイミジル(DST)、酒石酸ジスルホスクシンイミジル(スルホ-DST)、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、及びビス[2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ-BSOCOES)が挙げられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、リンカーは、本明細書に記載されるように、2つの隣接する改変カセットを結合するペプチドリンカーであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカー配列の長さ及びアミノ酸組成は、PCI又はPCIバリアントの所望の活性又は特性を達成するために、改変カセットの互いに対する配向性、柔軟性、及び/又は近接性を変化させるように最適化され得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドリンカーは、約1個~約30個のアミノ酸残基(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個などのアミノ酸残基)を含む一本鎖ポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、約2個~30個、約3個~25個、約4個~20個、約5個~15個、約6個~10個、約3個~15個、約4個~10個、約5個~30個、約2個~5個、約3個~5個、又は約4個~8個のアミノ酸残基を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチド配列の長さ及びアミノ酸組成は、PCIの所望の活性又は特性を達成するために、改変カセットの互いに対する配向性、柔軟性、及び/又は近接性を変化させるように最適化され得る。いくつかの実施形態では、PCI又はPCIバリアントの活性を増強又は低減するような調整効果を達成するための「調整」ツールとして、改変カセットの互いに対する配向性、柔軟性、及び/又は近接性を変化させることができる。特定の実施形態では、リンカーは、グリシン及び/又はセリン残基のみを含む(例えば、グリシン-セリンリンカー)。このようなポリペプチドリンカーの例として、以下が挙げられる:Gly,Ser;GlySer;GlyGlySer;SerGlyGly;GlyGlyGlySer;SerGlyGlyGly;GlyGlyGlyGlySer;SerGlyGlyGlyGly;GlyGlyGlyGlyGlySer;SerGlyGlyGlyGlyGly;GlyGlyGlyGlyGlyGlySer;SerGlyGlyGlyGlyGlyGly;(GlyGlyGlyGlySer)n[配列中、nは1以上の整数];及び、(SerGlyGlyGlyGly)n[配列中、nは1以上の整数]。いくつかの実施形態では、ポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列GlySerGly(GSG)(従来のGly/Serリンカーポリペプチドリピートの接合部に生じる)が存在しないように改変される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、AAY、EAAAK(配列番号1)、RVRR(配列番号2)、GGGGS(配列番号3)、及びGPGPG(配列番号4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0110】
PCIのレベル及び/又は機能性の分析
上記のように、本開示の方法は、複数のsrRNA発現構築物から発現されるPCIのレベル及び/又は機能性を分析し、定義された特性を有する1つ以上の候補PCIを同定するプロセスを含む(例えば
図1を参照)。PCIのレベル及び/又は機能性の分析は、in vitro、in vivo、又はex vivoで行うことができる。いくつかの実施形態では、PCIのレベル及び/又は機能性の分析は、1つ以上の分析技術を含み得る。好適な分析技術の例として、イムノブロット分析、蛍光フローサイトメトリー分析、酵素結合免疫測定分析、免疫原性分析、生物活性分析、及び疾患モデルにおける有効性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
srRNA発現構築物を含む送達系のコンビナトリアルコレクションの生成
上記のように、本開示の方法は、(b)で同定された候補PCIを発現可能なsrRNA発現構築物を、少なくとも1つの送達ビヒクルに組み込んで、送達系のコンビナトリアルコレクションを作出するプロセスを含む。本開示の方法及び組成物に適した送達ビヒクルの例として、生理緩衝液、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、並びに、送達を促進及び/又は免疫応答を増強することができる生物活性リガンドのコンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は当業者が容易に入手可能である(例えば、Liposomes: A Practical Approach, RCP New Ed, IRL press (1990)を参照)。リポソーム及び同種のもの以外のアジュバントも使用され、当該分野において公知である。アジュバントは、抗原(例えばsrRNA構築物)を局所に封じ込めることで急速な分散から保護したり、あるいは宿主を刺激してマクロファージ及び他の免疫系の成分に対する走化性の因子を分泌させたりすることがある。以下の記述などにより、当業者は適切な選択を行うことができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、送達系は、生理緩衝液、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドのコンジュゲート、又はそれらの任意の組み合わせのうち、1つ以上を含み得る。
【0113】
本明細書に記載の送達系に適した脂質の種類の例としては、カチオン性脂質、イオン化可能なカチオン性脂質、アニオン性脂質、中性脂質、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、1つ以上のイオン化可能な脂質を含んでもよい。本開示の組成物及び方法に適したイオン化可能な脂質の例としては、国際公開第2020/252589(A1)号及び2021/000041(A1)号パンフレット、並びにLove K.T. et al., Proc Natl Acad Sci USA, Feb. 2, 2010 107 (5) 1864-1869に記載されるものが挙げられ、これらは参照によりその全体が本明細書に援用されるものとする。
【0115】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、C16-96、C14-110、及びC12-200などの、上掲のLove K.T. et al., 2010に記載の1つ以上の脂質化合物を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、本開示のLNPはC12-200を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、1つ以上のカチオン性脂質を含む。好適なカチオン性脂質としては、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、1つ以上の中性脂質を含む。上記のように、「構造脂質」又は「ヘルパー脂質」としても知られる神経脂質(neural lipid)も、いくつかの実施形態では、脂質製剤及び脂質粒子に組み込むことができる。脂質製剤及び脂質粒子は、組成物の約10~40モル%の1つ以上の構造脂質を含み得る。好適な構造脂質は、製造時の粒子の形成をサポートする。構造脂質とは、生理的pHにおいて陰イオン性、非電荷性、又は中性双性イオン性(neutral zwitterionic)のいずれかの形態で存在する多くの脂質種のいずれかを指す。代表的な構造脂質としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルグリセロール、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドなどが挙げられる。
【0118】
構造脂質の例としては、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、及び1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(トランスDOPE)などの双性イオン性脂質が挙げられる。
【0119】
他の実施形態では、構造脂質は生理的pHにおいて負に荷電する任意の脂質であり得る。これらの脂質としては、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、パルミトイルオレイルホスファチジルグリセロール(POPG)、及びカルジオリピンなどのホスファチジルグリセロール;ホスファチジルイノシトール;ジアシルホスファチジルセリン;ジアシルホスファチジン酸;及び中性脂質に結合した他のアニオン性修飾基;などが挙げられる。他の好適な構造脂質としては、糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)が挙げられる。
【0120】
本開示の組成物及び方法に適した非限定的な中性脂質の例としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、国際公開第2020/252589(A1)号及び2021/000041(A1)号パンフレットに記載される1つ以上のイオン化可能な脂質化合物を含み、これらは参照によりその全体が本明細書に援用されるものとする。
【0121】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、C12-200、C14-PEG2000、DOPE、DMG-PEG2000、DSPC、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される少なくとも1つの脂質を含む。
【0122】
本明細書に記載の送達系がLNPを含む、いくつかの実施形態では、含み、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約20:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約8:1である。いくつかの実施形態では、脂質ベースのナノ粒子(LNP)は、約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、又は約25nm未満の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約70nm~100nmの範囲の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲の平均直径を有する。
【0123】
混合物の完全性を確保するために、脂質製剤の実施形態に安定化剤を含めることができる。安定化剤は、分子間の疎水性-親水性相互作用を破壊したり、その形成を助けたりする分子の一種である。好適な安定化剤としては、ポリソルベート80(Tween 80としても知られる;lUPAC名2-[2-[3,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチルオクタデカ-9-エノエート)、Myrj52(ポリオキシエチレン(40)ステアレート)、及びBrij(商標)S10(ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコール結合脂質を使用してもよい。安定化剤は単独で使用してもよいし、互いに組み合わせて使用してもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、安定化剤は、脂質混合物全体の約0.1~3モル%を占める。いくつかの実施形態では、安定化剤は、脂質混合物全体の約0.5~2.5モル%を占める。いくつかの実施形態では、安定化剤は、2.5モル%超存在する。いくつかの実施形態では、安定化剤は、5モル%存在する。いくつかの実施形態では、安定化剤は、10モル%存在する。いくつかの実施形態では、安定化剤は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などである。他の実施形態では、安定化剤は、脂質混合物の約2.6~10モル%である。他の実施形態では、安定化剤は、脂質混合物中に10モル%超存在する。
【0125】
ステロイドも特定の用途のために脂質組成物中に含めることができ、そこから作られた脂質粒子にはコレステロール及びフィトステロールなどのステロールが含まれる。
【0126】
薬力学的効果のin vivo又はex vivo評価
上記のように、本開示の方法のいくつかの実施形態は、対象において少なくとも1つの薬力学的効果を付与する能力に関して、送達系を分析し、所望の薬力学的効果を付与することができるsrRNA発現構築物を同定するプロセスを含む。いくつかの実施形態では、工程(d)における、少なくとも1つの薬力学的効果を付与する能力に関する送達系の分析は、in vivo又はex vivoで行われる。分析可能な薬力学的効果の例としては、免疫原性効果(例えば、in vivoで免疫応答を誘発する効果)、バイオマーカー応答、治療効果、予防効果、望ましい効果、望ましくない効果、副作用、及び疾患モデルにおける効果が挙げられる。いくつかの実施形態では、薬力学的効果の評価は、in vivoでの免疫応答の誘導を評価することを含む(例えば、実施例1~4を参照)。いくつかの実施形態では、薬力学的効果の評価は、免疫応答を増強し、血管新生及び転移を予防し得るサイトカイン経路の誘導を評価することを含む(例えば、実施例5~7を参照)。
【0127】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、組換えアルファウイルスsrRNAは、トガウイルス科アルファウイルス属に属するウイルスのものである。いくつかの実施形態では、組換えアルファウイルスsrRNAは、VEEV/EEEV群、又はSFV群、又はSINV群に属するアルファウイルスのものである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、エバーグレーズウイルス(EVEV)、ムカンボウイルス(MUCV)、ピクスナウイルス(PIXV)、ミドルバーグウイルス(MIDV)、チクングニアウイルス(CHIKV)、オニョンニョンウイルス(ONNV)、ロスリバーウイルス(RRV)、バーマフォレストウイルス(BF)、ゲタウイルス(GET)、サギヤマウイルス(SAGV)、ベバルウイルス(BEBV)、マヤロウイルス(MAYV)、ウナウイルス(UNAV)、シンドビスウイルス(SINV)、アウラウイルス(AURAV)、ワタロアウイルス(WHAV)、ババンキウイルス(BABV)、キジラガクウイルス(KYZV)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、ハイランドJウイルス(HJV)、フォートモーガンウイルス(FMV)、ヌドゥムウイルス(NDUV)、マダリアガウイルス(MADV)、又はバギークリークウイルスである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、VEEV、EEEV、CHIKV、又はSINVである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスはVEEVである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスはEEEVである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスはCHIKVである。いくつかの実施形態では、アルファウイルスはSINVである。
【0128】
好適な野生型アルファウイルスの配列は周知であり、American Type Culture Collection(メリーランド州ロックビル)などの配列寄託機関から入手可能である。好適なアルファウイルスの代表例としては、アウラ(ATCC VR-368)、ベバルウイルス(ATCC VR-600、ATCC VR-1240)、カバソウ(ATCC VR-922)、チクングニアウイルス(ATCC VR-64、ATCC VR-1241)、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス(ATCC VR-65、ATCC VR-1242)、フォートモーガン(ATCC VR-924)、ゲタウイルス(ATCC VR-369、ATCC VR-1243)、キジラガク(ATCC VR-927)、マヤロ(ATCC VR-66)、マヤロウイルス(ATCC VR-1277)、ミドルバーグ(ATCC VR-370)、ムカンボウイルス(ATCC VR-580、ATCC VR-1244)、ヌドゥム(ATCC VR-371)、ピクスナウイルス(ATCC VR-372、ATCC VR-1245)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373、ATCC VR-1246)、セムリキフォレスト(ATCC VR-67、ATCC VR-1247)、シンドビスウイルス(ATCC VR-68、ATCC VR-1248)、トナテ(ATCC VR-925)、トリニティ(Triniti)(ATCC VR-469)、ウナ(ATCC VR-374)、ベネズエラウマ脳脊髄炎(ATCC VR-69、ATCC VR-923、ATCC VR-1250 ATCC VR-1249、ATCC VR-532)、西部ウマ脳脊髄炎(ATCC VR-70、ATCC VR-1251、ATCC VR-622、ATCC VR-1252)、ワタロア(ATCC VR-926)、及びY-62-33(ATCC VR-375)が挙げられる。
【0129】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスはチクングニアウイルス(CHIKV)である。本開示の組成物及び方法に適したCHIKV株の非限定的な例としては、CHIKV S27株、CHIKV LR2006-OPY-1株、CHIKV YO123223株、CHIKV DRDE株、CHIKV 37997株、CHIKV 99653株、CHIKV Ag41855株、及びNagpur(India)653496株が挙げられる。毒性株及び無毒株、いずれのCHIKV株も好適である。本開示の組成物及び方法に適したCHIKV株のさらなる例としては、Afreen et al. Microbiol. Immunol. 2014, 58:688-696、Lanciotti and Lambert ASTMH 2016, 94(4):800-803、及びLangsjoen et al. mBio. 2018, 9(2):e02449-17に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、改変CHIKVゲノム又はレプリコン、例えば自己複製RNAは、CHIKV株S27に由来する。いくつかの実施形態では、改変CHIKVゲノム又はsrRNAは、CHIKV株DRDEに由来する。いくつかの実施形態では、改変CHIKVゲノム又はsrRNAは、CHIKV株DRDE-06に由来する。いくつかの実施形態では、改変CHIKVゲノム又はsrRNAは、CHIKV株DRDE-07に由来する。
【0130】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)又はマダリアガウイルス(MADV)である。本開示の組成物及び方法に適したEEEV及びMADV株の非限定的な例としては、EEEV 792138、783372、BeAn5122、BeAr300851、BeAr436087、C-49、FL91-4679、FL93-939、GML903836、MP-9、PE6、及びV105-00210が挙げられる。毒性株及び無毒株、いずれのEEEV株も好適である。さらなる好適なEEEV株としては、Virus Pathogen Resourceウェブサイト(ViPR;www.viprbrc.org/brc/vipr_genome_search.spg?method=SubmitForm&blockId=868&decorator=togaで公開)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、改変EEEVゲノム又はレプリコン、例えば自己複製RNAは、EEEV株FL93-939に由来する。さらなる好適なMADV株としては、限定されるものではないが、Arrigo et al., J. Virology, Jan 2010, 1014-1025に記載のものが挙げられ、これらは参照によりその全体が本明細書に援用されるものとする。いくつかの実施形態では、改変MADVゲノム又はレプリコン、例えば自己複製RNAは、MADV株BeAr300851に由来する。
【0131】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスはシンドビスウイルス(SINV)である。いくつかの実施形態では、改変ゲノム又はレプリコン、例えば自己複製RNAは、SINV株のものである。本開示の組成物及び方法に適したSINV株の非限定的な例としては、SINV株AR339、AR86、及びGirdwoodが挙げられる。本開示の組成物及び方法に適したSINV株の例としては、Sammels et al. J. Gen. Virol. 1999, 80(3):739-748、Lundstrom and Pfeffer Vector Borne Zoonotic Dis. 2010, 10(9):889-907、Sigei et al. Arch. of Virol. 2018, 163:2465-2469、及びLing et al. J. Virol. 2019, 93:e00620-19に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる好適なSINV株としては、Virus Pathogen Resourceウェブサイト(ViPR)に記載の株が挙げられるが、これらに限定されない。毒性株及び無毒株、いずれのSINV株も好適である。いくつかの実施形態では、改変ゲノム又はsrRNAは、SINV株Girdwoodのものである。いくつかの実施形態では、改変ゲノム又はsrRNAは、SINV株AR86のものである。いくつかの実施形態では、改変SINVゲノム又はsrRNAは、SINV株Girdwoodに由来する。いくつかの実施形態では、改変SINVゲノム又はsrRNAは、SINV株AR86に由来する。いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はsrRNAの少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、SINV株AR86に由来する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、nsP1、nsP3、nsP4、又はそれらのいずれかの一部、又は前述のいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、改変ゲノム又はsrRNAは、SINV株AR86のものである。
【0132】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスは西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)である。本開示の組成物及び方法に適したWEEV株の非限定的な例としては、WEEV California、McMillan、IMP181、Imperial、Imperial181、IMPR441、71V-1658、AG80-646、BFS932、COA592、EP-6、E1416、BFS1703、BFS2005、BSF3060、BSF09997、CHLV53、KERN5547、85452NM、Montana-64、S8-122、及びTBT-235が挙げられる。本開示の組成物及び方法に適したWEEV株のさらなる例としては、5614、93A27、93A30、93A38、93A79、B628(Cl 15)、CBA87、CNTR34、CO921356、Fleming、Lake43、PV012357A、PV02808A、PV72102、R02PV001807A、R02PV002957B、R02PV003422B、R05PV003422B、R0PV003814A、及びR0PV00384Aが挙げられる。毒性株及び無毒株、いずれのWEEV株も好適である。さらなる好適なWEEV株としては、Bergren NA et al., J. Virol. 88(16): 9260-9267, Aug 2014、及びVirus Pathogen Resourceウェブサイト(ViPR)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、改変WEEVゲノム又はsrRNAは、WEEV株Imperiaに由来する。
【0133】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、srRNA発現ベクターは、予防用途及び/又は治療用途に適した免疫誘導活性を有するものとして同定される。いくつかの実施形態では、srRNA発現ベクターは、予防用途に適した免疫誘導活性を有するものとして同定される。いくつかの実施形態では、srRNA発現ベクターは、治療用途に適した免疫誘導活性を有するものとして同定される。
【0134】
本開示の組成物
核酸構築物
以下により詳細に記載するように、本開示の一態様は、本明細書に記載のsrRNA構築物をコードする核酸配列を含む核酸構築物に関する。いくつかの実施形態では、srRNA構築物をコードする配列は、発現に必要なエレメント(プロモーター配列など)の制御下に配置するなどして操作可能に連結することができ、それによって、宿主細胞内、対象内、又は生体外無細胞発現系内におけるsrRNA構築物の発現が可能となる。
【0135】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され、RNA分子及びDNA分子の両者のことを指し、cDNAを含んだ核酸分子;ゲノムDNA;合成DNA;及び核酸アナログを含んだDNA又はRNA分子;などが含まれる。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)であり得る。核酸分子は、特殊な、又は修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。本明細書で使用する「ポリヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、互換的に、ポリヌクレオチド分子の配列のことを指す。本明細書に開示されるポリヌクレオチド及びポリペプチドの配列は、WIPO標準ST.25(1998年)、付録2、表1~6を参照により援用した37CFR§1.82)に説明されるように、ヌクレオチド塩基及びアミノ酸の標準的な文字の略号を用いて示される。
【0136】
本開示の核酸分子は任意の長さの核酸分子であってよく、例えば核酸分子の長さは通常約2kbと50kbの間であり、例えば約5kbと約40kbの間、約5kbと約30kbの間、約5kbと約20kbの間、約10kbと約50kbの間、約15kbと30kbの間、約20kbと約50kbの間、約20kbと約40kbの間、約5kbと約25kbの間、又は約30kbと約50kbの間である。いくつかの実施形態では、核酸分子の長さは少なくとも6kbである。いくつかの実施形態では、核酸分子は約6kbと約20kbの間である。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物(例えばベクター又はsrRNA構築物)は、通常少なくとも約2kbの長さを有する。例えば、核酸構築物(例えばベクター又はsrRNA)は、少なくとも約2kb、少なくとも約3kb、少なくとも約4kb、少なくとも約5kb、少なくとも約6kb、少なくとも約7kb、少なくとも約8kb、少なくとも約9kb、少なくとも約10kb、少なくとも約11kb、少なくとも約12kb、又は12kb超の長さを有し得る。いくつかの実施形態では、核酸構築物(例えばベクター又はsrRNA)は、約4kb~約20kb、約4kb~約18kb、約5kb~約16kb、約6kb~約14kb、約7kb~約12kb、約8kb~約16kb、約9kb~約14kb、約10kb~約18kb、約11kb~約16kb、約5kb~約18kb、約6kb~約20kb、約5kb~約10kb、約5kb~約8kb、約5kb~約7kb、約5kb~約6kb、約6kb~約12kb、約6kb~約11kb、約6kb~約10kb、約6kb~約9kb、約6kb~約8kb、約6kb~約7kb、約7kb~約11kb、約7kb~約10kb、約7kb~約9kb、約7kb~約8kb、約8kb~約11kb、約8kb~約10kb、約8kb~約9kb、約9kb~約11kb、約9kb~約10kb、又は約10kb~約11kbの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、核酸構築物(例えばベクター又はsrRNA)は約6kb~約14kbの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、核酸構築物(例えばベクター又はsrRNA)は約6kb~約16kbの長さを有し得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、srRNA構築物をコードする核酸配列は、発現カセット又は発現ベクターに組み込まれる。発現カセットは通常、srRNAのコード配列と、in vivo及び/又はex vivoにおける受容細胞でのコード配列の適切な転写及び/又は翻訳を指示するのに充分な調節情報と、を含む遺伝物質の構築物を含むことが理解されよう。通常、発現カセットは、所望の宿主細胞及び/又は対象もしくは個体へのターゲティングのためのベクターに挿入してもよい。いくつかの実施形態では、発現カセットという用語は、「発現構築物」という用語と互換的に使用することができる。このように、いくつかの実施形態では、本開示の発現カセットは本明細書に開示されるsrRNAのコード配列を含み、その配列は、プロモーターなどの発現制御エレメントに対して、及び任意には、コード配列の転写又は翻訳に影響を及ぼす他の核酸配列のいずれか又は組み合わせに対して、作動可能に連結されている。
【0138】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は発現ベクターに組み込まれる。「ベクター」という用語は一般に、宿主細胞間の移動のために設計された組換えポリヌクレオチド構築物のことを指し、それを形質転換、例えば、宿主細胞への異種DNAの導入の目的で使用し得ることが当業者には理解されよう。このように、いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどのレプリコン(例えば、srRNA)とすることができ、その中に別のDNAセグメントを挿入して、挿入されたセグメントの複製をもたらすようにしてもよい。いくつかの実施形態では、発現ベクターは組み込みベクターであり得る。
【0139】
本開示の核酸構築物を組み立て、そして特徴付けることができる分子的な技術及び方法が、本出願の明細書中の実施例にさらに詳細に記載されている。
【0140】
いくつかの実施形態では、核酸分子は組換え核酸分子である。上記のように、組換え核酸分子という用語は、人為的に操作された、又は人為的操作の結果として間接的に生じた、核酸分子(例えばDNAもしくはRNA)を意味する。非限定的な例として、cDNAは組換えDNA分子であり、in vitroポリメラーゼ反応によって生成された任意の核酸分子、リンカーが結合した任意の核酸分子、クローニングベクター又は発現ベクターなどのベクターに組み込まれた任意の核酸分子も同様である。非限定的な例として、組換え核酸分子は:1)例えば、化学的又は酵素的技術を用いて(例えば、化学的核酸合成の使用によって、又は、核酸分子の複製、重合、エクソヌクレアーゼ分解による消化、エンドヌクレアーゼ分解による消化、ライゲーション、逆転写、転写、塩基修飾(メチル化など)、もしくは組換え(相同組換え及び部位特異的組換えなど)のための酵素の使用によって)in vitroで合成又は修飾されている;2)自然界では結合していない、結合ヌクレオチド配列を含む;3)天然のヌクレオチド配列に対して1つ以上のヌクレオチドを欠くように、分子クローニング技術を用いて操作されている;及び/又は、4)天然のヌクレオチド配列に対して1つ以上の配列変化又は再構成を有するように、分子クローニング技術を用いて操作されている。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸分子は、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅及びクローニングなど)又は化学合成を用いて生成される。本明細書で開示される核酸分子としては、天然核酸分子及びそれらのホモログが挙げられ、それらの限定されない例として、天然の対立遺伝子バリアント、及び、本明細書に記載される生物学的活性をもたらす上で望ましい特性を提供するような様式で1つ以上のヌクレオチド残基が挿入、欠失、及び/又は置換された改変核酸分子が挙げられる。
【0142】
当業者は、天然の核酸配列のバリアントなどの核酸分子が、当業者に公知の多くの方法を使用して生成され得ることを理解するであろう(例えば、Sambrook et al., In: Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照)。核酸分子の配列は、部位特異的突然変異誘発法、突然変異を誘発するための核酸分子の化学処理、核酸断片の制限酵素切断、核酸断片のライゲーション、核酸配列の選択された領域のPCR増幅及び/又は突然変異生成、並びに組換えクローニングなどではあるが限定されない、古典的な突然変異誘発技術及び組換えDNA技術;オリゴヌクレオチド混合物の化学合成、及び核酸分子の混合物を「構築(build)」するための混合物群(mixture group)のライゲーションなどの、化学合成;並びに、それらの組み合わせ;などを含むがこれらに限定されない様々な技術を用いて、由来となる天然配列に対して改変することができる。改変された核酸分子の混合物から核酸分子のホモログを選択することは、核酸分子にコードされるタンパク質又はレプリコン、例えば自己複製RNAの機能をスクリーニングすることによって、及び/又は野生型遺伝子もしくはその断片とハイブリダイゼーションを行うことによって、あるいは、標的又は野生型の核酸分子又は配列に対して相同性のあるプライマーを用いたPCRによって、可能である。
【0143】
組換え細胞
以下により詳細に記載するように、本開示の一態様は、本明細書に記載の核酸構築物を含むように、及び/又は本明細書に記載のsrRNA構築物を含む(例えば、発現する)ように操作された組換え細胞に関する。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物及び/又はsrRNA構築物を宿主細胞に導入して、核酸構築物及び/又はsrRNA構築物を含む組換え細胞を産生することができる。したがって、本明細書に記載のsrRNA構築物を含む、及び/又は本明細書に記載のsrRNA構築物をコードする核酸構築物を含む、原核細胞又は真核細胞も本開示の特徴である。本開示のsrRNA構築物及び核酸構築物の細胞への導入は、当業者に公知の方法によって達成することができ、その方法の例として、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達、及び同種のものが挙げられる。
【0144】
したがって、本開示のいくつかの実施形態は組換え細胞に関するものであり、組換え細胞の例として、本明細書に記載のsrRNA構築物及び/又は核酸構築物を含む、昆虫細胞又は動物細胞などの組換え真核細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、組換え細胞は核酸構築物を含み、核酸構築物は宿主ゲノムに安定に組み込まれ得るか、エピソームとして複製され得るか、又は安定発現もしくは一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞中に存在し得るものである。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、核酸構築物は、エピソーム単位として組換え宿主細胞内で維持及び複製される。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、組換え細胞のゲノム内に安定に組み込まれる。古典的なランダムゲノム組換え技術の使用により、あるいは、ガイドRNA誘導型CRISPR/Cas9又はTALENゲノム編集のような、より精密なゲノム編集技術の使用により、安定な組み込みを達成することできる。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、安定発現又は一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして、組換え宿主細胞中に存在する。
【0145】
宿主細胞は、形質転換されていない細胞であってもよく、少なくとも1つの核酸分子ですでにトランスフェクトされている細胞であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、宿主細胞は、少なくとも1つの核酸分子で遺伝子操作(例えば、形質導入、形質転換、又はトランスフェクション)され得る。
【0146】
本明細書に記載の目的のポリペプチドのクローニング又は発現に適した宿主細胞としては、本明細書に記載の原核細胞又は真核細胞が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の組換え細胞は、細菌であるE.coliなどの原核細胞、又は、昆虫細胞(例えば、蚊細胞もしくはSf21細胞)もしくは哺乳類細胞(例えば、COS細胞、NIH 3T3細胞、もしくはHeLa細胞)などの真核細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はin vivoにおける細胞であり、例えば、遺伝子導入された対象の細胞などの、生体内の組換え細胞である。いくつかの実施形態では、対象は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態では、対象は昆虫である。いくつかの実施形態では、対象は哺乳類対象である。いくつかの実施形態では、哺乳類対象はヒト対象である。いくつかの実施形態では、細胞はex vivoの細胞であり、例えば、治療又は処置のために、生体又は生物から個々の細胞として、又は臓器もしくは組織の一部として取り出され、その後、生体又は生物に戻されるものである。いくつかの実施形態では、細胞はin vitroの細胞であり、例えばレポジトリから得られる細胞である。
【0147】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施形態では、組換え動物細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、本開示の組換え細胞の非限定的な例として、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS-7など)、ヒト胎児腎臓細胞(HEK 293又はHEK 293細胞など)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(TM4細胞など)、サル腎細胞(CV1)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLaなど)、イヌ腎細胞(MDCKなど)、バッファローラット肝細胞(BRL 3Aなど)、ヒト肺細胞(W138など)、ヒト肝細胞(Hep G2など)、マウス乳癌(例えばMMT 060562など)、TRI細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎細胞(例えばVero細胞など)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、ヒト喉頭類表皮(epidermoid larynx)細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、ヒト内皮細胞、ヒトアストロサイト、ヒトマクロファージ細胞、ヒトRAW 264.7細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、及びウサギ腎細胞などが挙げられる。
【0148】
いくつかの実施形態では、組換え細胞は、アフリカミドリザル腎細胞(Vero細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、ヒトCHME5細胞、ヒト喉頭類表皮細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHEK-293細胞、ヒトHeLa細胞、ヒトHepG2細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、マウス3T3細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、及びウサギ腎細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、上記細胞に由来する細胞(すなわち、本明細書に記載される元の細胞の派生細胞)であり、このような細胞の例として、元の細胞のクローンから増やした細胞、元の細胞から操作されたバージョン、又は、多くの継代を経た後に、もしくは他の宿主を介して継代した後に、元の細胞を再分類(reclassification)したものが挙げられる。
【0149】
本開示のいくつかの実施形態では、組換え細胞は、昆虫細胞、例えば昆虫細胞株の細胞である。いくつかの実施形態では、昆虫細胞はSf21細胞である。さらなる好適な昆虫細胞株としては、限定されるものではないが、昆虫の目である双翅目、鱗翅目、及び半翅目から樹立された細胞株が挙げられ、これら細胞株は各種組織供給源由来のものであり得る。いくつかの実施形態では、本開示の組換え細胞は、鱗翅目昆虫細胞株の細胞である。過去数十年間にわたり、入手可能な鱗翅目昆虫細胞株は、10年当たり約50株ずつ増加してきた。入手可能な鱗翅目昆虫細胞株に関するさらなる情報を、例えば、Lynn D.E., Available lepidopteran insect cell lines. Methods Mol. Biol. 2007;388:117-38(参照により、本明細書に援用される)において見出すことができる。いくつかの実施形態では、組換え細胞は蚊細胞であり、蚊細胞の例として、Anopheles(An.)属、Culex(Cx.)属、及びAedes(Stegomyia)(Ae.)属内の蚊種の細胞が挙げられる。本明細書に記載の組成物及び方法に適した蚊細胞株の例としては、以下の蚊種由来の細胞株が挙げられる:Aedes aegypti、Aedes albopictus、Aedes pseudoscutellaris、Aedes triseriatus、Aedes vexans、Anopheles gambiae、Anopheles stephensi、Anopheles albimanus、Culex quinquefasciatus、Culex theileri、Culex tritaeniorhynchus、Culex bitaeniorhynchus、及びToxorhynchites amboinensis。好適な蚊細胞株としては、CCL-125、Aag-2、RML-12、C6/26、C6/36、C7-10、AP-61、A.t. GRIP-1、A.t. GRIP-2、UM-AVE1、Mos.55、Sua1B、4a-3B、Mos.43、MSQ43、及びLSB-AA695BBが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、蚊細胞は、C6/26細胞株の細胞である。
【0150】
細胞培養
他の態様において、本明細書に開示の少なくとも1つの組換え細胞、及び培地を含む、細胞培養物が本明細書に提供される。通常、培地は、本明細書に記載された細胞を培養するためのいずれの好適な培地であってもよい。上記の多種多様な宿主細胞及び種を形質転換する技術が当該分野で公知であり、技術文献及び科学文献に記載されている。したがって、本明細書に開示の少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物も、本出願の範囲内である。細胞培養物の生成及び維持に適した方法とシステムが、当該分野において公知である。
【0151】
トランスジェニック動物
また、他の態様では、本明細書に記載のsrRNA構築物をコードする核酸(例えば、ベクター又はsrRNA分子)を含む、トランスジェニック動物が提供される。いくつかの実施形態では、トランスジェニック動物は、脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態では、トランスジェニック動物は哺乳類である。いくつかの実施形態では、トランスジェニック動物は非ヒト哺乳類である。通常、本開示のトランスジェニック動物は、当該分野で公知のいずれの非ヒト動物であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の非ヒト動物は非ヒト霊長類である。本開示の組成物及び方法に適した他の動物種としては、(i)遺伝子導入に適しており、(ii)免疫グロブリン遺伝子セグメントを再編成して抗体応答を生成することができる、動物が挙げられる。このような種の例としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、及びウシなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本開示の組成物及び方法に適した非ヒト動物のさらなる例としては、実験動物(マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、及びモルモットなど)、家畜(ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、アヒル、ガチョウ、及びニワトリなど)、家畜化された動物及びペット(ネコ及びイヌなど)、非ヒト霊長類(類人猿、チンパンジー、オランウータン、及びサルなど)、魚類、両生類(カエル及びサンショウウオなど)、爬虫類(ヘビ及びトカゲなど)、並びにその他の動物(キツネ、イタチ、ウサギ、ミンク、ビーバー、オコジョ、カワウソ、クロテン、アザラシ、コヨーテ、チンチラ、シカ、マスクラット、及びポッサムなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
いくつかの実施形態では、トランスジェニック動物は昆虫である。いくつかの実施形態では、昆虫は蚊である。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物はキメラトランスジェニック動物である。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物は、本開示の核酸構築物を1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上など)含む、生殖細胞及び体細胞を有するトランスジェニック動物である。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の核酸構築物は、トランスジェニック動物のゲノム内に安定に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物のゲノムは、本開示の1つ以上の核酸構築物を、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、又はそれよりも多いコピー数含んでもよい。
【0153】
トランスジェニック非ヒト動物を作製するためのアプローチ及び方法が、当該分野で公知である。方法の例として、前核マイクロインジェクション、DNAマイクロインジェクション、レンチウイルスベクターを介した初期胚へのDNAの導入、精子を介した遺伝子導入、(ブタなどにおける)アデノウイルスを介した動物精子へのDNAの導入、(鳥類などにおける)レトロウイルスベクター、及び、(ヤギなどにおける)体細胞核移植などが挙げられる。トランスジェニック家畜の作製に関する先行技術の総説として、Niemann, H. et al. (2005) Rev. Sci. Tech. 24:285-298がある。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック非ヒト宿主動物は、非ヒト動物のゲノムに外来核酸を導入するための、当該分野で公知の標準的な方法を用いて作製される。いくつかの実施形態では、古典的なランダムゲノム組換え技術の使用により、あるいは、ガイドRNA誘導型CRISPR/Casゲノムエディティング、NgAgo(Natronobacterium gregoryiアルゴノート)を用いたDNA誘導型エンドヌクレアーゼゲノムエディティング、又はTALENゲノム編集(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)などの、より精密な技術の使用により、本開示のトランスジェニック動物を生成することができる。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物は、トランスジェニックマイクロインジェクション技術を用いて作製することができ、相同組換え技術の使用を必要としないため、相同組換えを用いるアプローチよりも調製及び選択が容易であると考えられる。いくつかの実施形態では、トランスジェニック動物は、本明細書に記載の目的のタンパク質を産生する。
【0154】
医薬組成物
本開示のsrRNA構築物、核酸構築物、及び組換え細胞は、医薬組成物などの組成物に組み込むことができる。このような組成物は通常、本明細書に記載及び提供されるsrRNA構築物、核酸構築物、及び組換え細胞のうち1つ以上と、担体などの薬学的に許容される賦形剤とを含む。したがって、本開示の一態様において、治療的に許容される賦形剤と、以下のうち1つ以上とを含む医薬組成物が、本明細書において提供される:(1)本明細書に開示されるsrRNA構築物、(2)本明細書に開示される核酸、(3)本明細書に開示される組換え細胞。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるsrRNA構築物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸構築物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換え細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物が、本明細書において提供される。
【0155】
本明細書に記載の医薬組成物の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。本開示のsrRNA構築物は、裸の形態で、又は送達ビヒクルとともに製剤化して、使用することができる。経路については、例えば遊離形態で使用してもよく、例えばベクターなどの核酸に挿入するなどしてもよい。例えば、より詳細に以下に述べるように、本明細書に記載のsrRNA構築物はワクチンとして使用することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、免疫疾患又は微生物感染症などの健康状態の、予防、治療、又は管理のために製剤化される。例えば、本開示の組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含んだ、予防用組成物、治療用組成物、もしくは医薬組成物、又はそれらの混合物として製剤化することができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、ワクチンとしての使用のために製剤化される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、アジュバントとしての使用のために製剤化される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、免疫原性組成物としての使用のために製剤化される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、生物療法薬としての使用のために製剤化される。
【0158】
本開示の医薬組成物における使用のため、本明細書に記載のsrRNA構築物、核酸、又は組換え細胞は、送達ビヒクル内に配合するか、又は送達ビヒクルとともに配合することができる。本開示の組成物及び方法に適した送達ビヒクルの例としては、リポソーム(例えば、中性又はアニオン性リポソーム)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOMS)、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、又は、送達を容易にし、及び/もしくは免疫応答を増強し得る生物活性リガンドとの結合が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は当業者にとって容易に入手可能である(例えば、Liposomes: A Practical Approach, RCP New Ed, IRL press (1990)を参照)。リポソーム及び同種のもの以外のアジュバントも使用され、当該分野において公知である。アジュバントは、抗原(例えばsrRNA構築物)を局所に封じ込めることで急速な分散から保護することもあり、あるいは、宿主を刺激してマクロファージ及び他の免疫系の成分に対する走化性の因子を分泌させる物質を含むこともある。当業者は以下の記述などから適切な選択を行うことができる。
【0159】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、生理緩衝液、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドのコンジュゲート、又はそれらの任意の組み合わせのうち、1つ以上を含み得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、本開示のsrRNA構築物及び核酸構築物は、脂質ベースのナノ粒子(LNP)によって細胞又は対象に送達され得る。LNPは一般に、ウイルス粒子よりも免疫原性が低い。多くのヒトはウイルス粒子に対する既存の免疫を持っているが、LNPに対する既存の免疫はない。さらに、LNPに対する適応免疫応答が起こりにくいため、LNPの反復投与が可能である。
【0161】
本明細書に記載の組成物及び方法に適した脂質は、カチオン性脂質、イオン化可能なカチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質であり得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、1つ以上のイオン化可能な脂質を含むことができる。本明細書において使用される「イオン化可能な脂質」という用語は、pHが脂質のイオン化可能な基のpKaより低くなるとカチオン性になるか、又はイオン化可能になる(プロトン化される)が、それよりも高いpH値では、より中性な脂質を指す。pKaを下回るpH値では、脂質は負に荷電した核酸(例えばオリゴヌクレオチド)と結合することができる。本明細書で使用する「イオン化可能な脂質」という用語には、生理的pHからpHが低下すると正電荷を帯びる脂質、及び、生理的pHなどの選択的pHで正味の正電荷を帯びる多くの脂質種のいずれもが含まれる。DOTMAなどのカチオン性のままの脂質は、臨床使用には毒性が強すぎることが示されている。イオン化可能な脂質は、他の実施形態による脂質製剤中に存在することができ、好ましくは、ある実施形態では約30~約70モル%、他の実施形態では約30モル%、他の実施形態では約40モル%、他の実施形態では約45モル%、他の実施形態では約47.5モル%、さらに他の実施形態では約50モル%、さらに他の実施形態では約60モル%の割合で存在することができる(「モル%」は、特定の成分の全モル数の百分率を意味する)。この段落における「約」とは、上下5モル%の範囲を意味する。DODMA、すなわち1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパンはイオン化可能な脂質であり、DLin-MC3-DMA、すなわち0-(Z,Z,Z,Z-ヘプタトリアコンタ-6,9,26,29-テトラエン-19-イル)-4-(N,N-ジメチルアミノ)(「MC3」)も同様である。
【0163】
本開示の組成物及び方法に適したイオン化可能な脂質の例としては、国際公開第2020/252589(A1)号及び2021/000041(A1)号パンフレット、米国特許第8450298号及び10844028号明細書、並びに、Love K.T. et al., Proc Natl Acad Sci USA, Feb. 2, 2010 107 (5) 1864-1869に記載されるものが挙げられ、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に援用される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、C16-96、C14-110、及びC12-200などの、Love K.T. et al.(2010、上掲)に記載の1つ以上の脂質化合物を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、本開示のLNPはC12-200脂質を含む。C12-200脂質の構造は当該分野で公知であり、例えば、米国特許第8450298号及び10844028号明細書に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、C12-200は、コレステロール、C14-PEG2000、及びDOPEと組み合わせられる。いくつかの実施形態では、C12-200は、DSPC及びDMG-PEG2000と組み合わせられる。
【0164】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、1つ以上のカチオン性脂質を含む。LNPにおいて使用するために、いくつかの異なるイオン化可能なカチオン性脂質が開発されている。好適なカチオン性脂質としては、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1が挙げられるが、これらに限定されない。あるタイプのLNPでは、GalNAc部分がLNPの外側に付加され、アシアロ糖タンパク質受容体を介した肝臓への取り込みのためのリガンドとして働く。これらのカチオン性脂質はいずれも、本開示のsrRNA構築物及び核酸構築物を送達するためのLNPを製剤化するために使用することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、1つ以上の中性脂質を含む。本開示の組成物及び方法に適した非限定的な中性脂質の例としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、国際公開第2020/252589(A1)号及び2021/000041(A1)号パンフレットに記載される1つ以上のイオン化可能な脂質化合物を含む。
【0166】
LNPを製造するために、当該分野で公知の他の多くの脂質、又は脂質の組み合わせを使用することができる。LNPを製造するのに適した脂質の非限定的な例としては、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。カチオン性脂質のさらなる非限定的な例としては、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、7C1、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。中性脂質のさらなる非限定的な例としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。PEG修飾脂質の非限定的な例としては、PEG-DMG、PEG-CerC14、及びPEG-CerC20が挙げられる。
【0167】
いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約20:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の脂質対核酸の質量比は、約8:1である。いくつかの実施形態では、脂質ベースのナノ粒子は、約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、又は約25nm未満の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約70nm~100nmの範囲の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲の平均直径を有する。
【0168】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、ポリマーナノ粒子に製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、免疫原性組成物、例えば、対象において免疫応答を刺激することができる組成物である。いくつかの実施形態では、免疫原性組成物はワクチンとして製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はアジュバントとして製剤化される。
【0169】
いくつかの実施形態では、免疫原性組成物は、対象に対して実質的に非免疫原性であり、例えば、対象における免疫応答を最小限しか刺激しない組成物である。いくつかの実施形態では、上記非免疫原性組成物又は低免疫原性組成物は、生物療法薬として製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、鼻腔内投与、経皮投与、腹腔内投与、筋肉内投与、気管内投与、節内投与、腫瘍内投与、関節内投与、静脈内投与、皮下投与、膣内投与、眼内投与、直腸内投与、及び経口投与のうちの1つ以上のために製剤される。
【0170】
注射用途に適した医薬組成物としては、無菌水溶液又は分散液、及び、無菌注射液又は分散液を即座に調製するための無菌粉末が挙げられる。静脈内投与に適した担体として、生理的食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。これらの場合、組成物は無菌であり、かつ良好な注入性(easy syringeability)が存在する程度に流動性を有するべきである。組成物を製造及び保存条件下で安定に保ち、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護することができる。担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、及び同種のもの)、ならびにそれらの適切な混合物などを含む、溶媒又は分散媒とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒径の維持、及び、ドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤の使用などによって維持することができる。微生物の作用の防止は、各種の抗細菌・抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、及び同種のものによって達成することができる。多くの場合、糖類;マンニトール及びソルビトールなどの多価アルコール;並びに/又は塩化ナトリウム;などの等張化剤を組成物に含めるのが一般的であろう。モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの、吸収を遅延させる薬剤を組成物に含有させることにより、注射組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0171】
無菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせとともに適切な溶媒に配合した後、濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を無菌ビヒクルに配合することによって調製され、このビヒクルは、塩基性分散媒と、上記に列挙した成分のうちの必要な他の成分とを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、エアロゾル、スプレー、ミスト、液体、又は粉末などとして、吸入用に製剤化される。吸入による投与には、乾燥粉末又はエアロゾル製剤のいずれの形態を用いてもよく、これらは、マイクロスプレー、加圧式定量吸入器、又はネブライザーなどの吸入装置の利用によって対象(患者など)に吸入される。
【0173】
いくつかの実施形態では、組成物は、鼻腔内投与、経皮投与、筋肉内投与、節内投与、腫瘍内投与、関節内投与、静脈内投与、腹腔内投与、気管内投与、経口投与、膣内投与、眼内投与、直腸内投与、又は頭蓋内投与のうち1つ以上のために製剤される。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、対象におけるインターフェロンの産生の増加をもたらす。
【0174】
キット
本明細書にはまた、本明細書に記載の方法を実施するための各種キットが提供される。特に、本開示のいくつかの実施形態は、対象において免疫応答を誘発するためのキットを提供する。他のいくつかの実施形態は、健康状態の予防が必要な対象において健康状態を予防するためのキットに関する。他のいくつかの実施形態は、健康状態の治療が必要な対象において健康状態を治療する方法のためのキットに関する。例えば、本明細書に提供及び記載されるsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物のうち1つ以上と、これらを作製及び使用するための説明書と、を含むキットが、本明細書のいくつかの実施形態で提供される。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示のキットは、提供されるsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物のいずれか1つを対象に投与するのに有用な1つ以上の手段をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のキットは、提供されるsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物のいずれか1つを対象に投与するのに使用される、1つ以上の注射器(充填済み注射器を含む)及び/又はカテーテル(充填済み注射器を含む)をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の追加の治療剤を有することができ、これらの治療剤は、所望の目的のための、例えば、免疫応答を誘発するための、又は状態の予防もしくは治療を必要とする対象において状態の予防もしくは治療を行うための、キットの他の構成要素と同時に、又は順次に、投与することができる。
【0176】
上記のキットのいずれも、1つ以上の追加の試薬をさらに含むことができ、そのような追加試薬は、希釈緩衝液;再構成溶液(reconstitution solution);洗浄緩衝液;対照試薬;対照発現ベクター;陰性対照;陽性対照;並びに、提供される本開示のsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物をin vitroで生成するのに適した試薬;から選択することができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、キットの構成要素は別々の容器内のものであり得る。いくつかの実施形態では、キットの構成要素は単一の容器内に組み合わせることができる。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、キットは、本明細書で提供及び記載される核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のうちの1つ以上を1つの容器内(例えば、滅菌ガラス又はプラスチックバイアル内)に含み、さらなる治療剤を別の容器内(例えば、滅菌ガラス又はプラスチックバイアル内)に含む。
【0178】
別の実施形態では、キットは、本開示の1つ以上の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを含む、本明細書に記載の組成物の組み合わせと、1つ以上のさらなる治療薬と、を組み合わせて1つの医薬組成物に製剤したものを、任意に単一の共通容器中に含む。
【0179】
キットが対象への非経口投与のための医薬組成物を含む場合、キットは、そのような投与を行うための装置(例えば、注射装置又はカテーテル)を含むことができる。例えば、キットは、本開示の1つ以上の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを含む、1つ以上の皮下注射針又は上記の他の注射装置を含み得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に開示される方法を実施するために、キットの構成要素の使用説明書をさらに含むことができる。例えば、キットには、キット内の医薬組成物及び剤形に関する情報を含んだ添付文書を含めることができる。一般に、このような情報は、患者及び医師が、同梱の医薬組成物及び剤形を効果的かつ安全に使用する際の助けとなる。例えば、添付文書内に、本開示の組み合わせに関する次の情報を提供してもよい:薬物動態、薬力学、臨床試験、有効性パラメータ、適応症及び用法、禁忌、警告、注意事項、副作用、過量投与、適切な用量及び投与、供給方法、適切な保管条件、参考文献、製造者/販売業者情報、及び知的財産情報。
【0181】
本方法を実施するための指示は、通常、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙又はプラスチックなどの基材に印刷することができる。説明書は、例えば、添付文書としてキット内に、又は、キットもしくはその構成要素の容器のラベル内に(例えば包装又は副包装などに対して)、存在させることができる。説明書は、CD-ROM、ディスケット、又はフラッシュドライブなど、適切なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する電子記憶データファイルとして、存在することができる。いくつかの例では、実際の説明書はキット内に存在しないが、遠隔の情報源から(例えば、インターネットを介して)説明書を入手する手段を提供することができる。この実施形態の一例は、説明書を閲覧することができる、及び/又は説明書をダウンロードすることができる、ウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様、この説明書の取得手段も、適切な基材に記録することができる。
【0182】
免疫応答の誘導、又は健康状態の予防もしくは治療のための方法
srRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物などの、本明細書に記載の組成物のいずれか1つの投与を用いて、増殖性疾患(癌など)、感染症(急性感染症、慢性感染症、もしくはウイルス感染症など)、希少疾患、自己免疫疾患、及び/又は炎症性疾患などの、関連する健康状態の治療を行うことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物は、対象において薬力学的効果を誘導するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物は、免疫応答の調節、例えば誘発又は抑制を、それを必要とする対象において行うのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物は、1つ以上の関連する健康状態又は疾患を有するか、有する疑いがあるか、又は発症するリスクが高いであろう対象を治療する方法において使用するための、治療剤に組み込むことができる。健康状態又は疾患の例としては、癌、免疫疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、遺伝子治療、遺伝子置換、心血管疾患、加齢による病態、希少疾患、急性感染症、及び慢性感染症などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象は医師の治療を受けている患者である。
【0183】
本開示の方法に適した自己免疫疾患の例としては、関節リウマチ、変形性関節炎、スティル病、家族性地中海熱、全身性硬化症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、橋本病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、糖尿病性網膜症、糖尿病性血管症、糖尿病性神経痛、膵島炎、乾癬、円形脱毛症、温式及び冷式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血、急性炎症性疾患、自己免疫性副腎炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、ランバート・イートン症候群、硬化性苔癬、ライム病、グレーブス病、ベーチェット病、メニエール病、反応性関節炎(ライター症候群)、チャーグ・ストラウス症候群、コーガン症候群、クレスト症候群、尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡、水疱性類天疱瘡、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、膵炎、腹膜炎、乾癬性関節炎、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェールゲンセン(Sjorgensen)症候群、強皮症、セリアック病、スティッフマン症候群、高安動脈炎、一過性グルテン不耐症、自己免疫性ぶどう膜炎、白斑、多発性軟骨炎、疱疹状皮膚炎(DH)又はデューリング病、線維筋痛症、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、免疫複合体病、糸球体腎炎、結節性多発動脈炎、抗リン脂質症候群、多腺性自己免疫症候群、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、蕁麻疹、自己免疫性不妊症、若年性関節リウマチ、サルコイドーシス、並びに自己免疫性心筋症などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
本開示の方法に適した感染症の非限定的な例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、B型肝炎ウイルス(HCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)、インフルエンザウイルス、及びエボラウイルスなどのウイルスによる、感染症が挙げられる。本開示の方法に適したさらなる感染症として、リーシュマニア(Leishmania)、リケッチア(Rickettsia)、クラミジア(Chlamydia)、コクシエラ(Coxiella)、プラスモディウム(Plasmodium)、ブルセラ(Brucella)、マイコバクテリア、リステリア(Listeria)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、及びトリパノソーマ(Trypanosoma)などの細胞内寄生体による感染症が挙げられる。いくつかの実施形態では、srRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物は、免疫疾患、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の治療及び/又は予防に有用であり得る。それら疾患の例として、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、腎炎、腹膜炎、乾癬性関節炎、変形性関節炎、スティル病、家族性地中海熱、全身性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性肺障害、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、多発性骨髄腫、糸球体腎炎、腎炎、喘息、動脈硬化症、白血球接着不全症、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年発症糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発神経炎、免疫介在性血小板減少症、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、エリテマトーデス、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、小血管炎、オーメン症候群、慢性腎不全、自己免疫性甲状腺疾患、急性伝染性単核球症、HIV、ヘルペスウイルス関連疾患、ヒトウイルス感染症、コロナウイルス、その他のエンテロウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、又はアデノウイルス感染症、細菌性肺炎、創傷、敗血症、脳卒中/脳浮腫、虚血再灌流障害、並びにC型肝炎などが挙げられる。
【0185】
本開示の方法に適した炎症の非限定的な例としては、喘息、炎症性腸疾患(IBD)、慢性大腸炎、脾腫、及び関節リウマチなどの炎症性疾患が挙げられる。
【0186】
一態様においては、対象において薬力学的効果を誘導するための方法が本明細書で提供され、この方法は、以下のうちの1つ以上を含む組成物を対象に投与することを含む:(a)本明細書に記載の自己複製RNA(srRNA)構築物などのレプリコン;(b)本明細書に記載の核酸;(c)本明細書に記載の組換え細胞;及び(d)本明細書に記載の医薬組成物。いくつかの実施形態では、薬力学的効果は、対象において免疫応答を誘発することを含む。
【0187】
他の態様においては、対象において健康状態を予防又は治療するための方法が本明細書で提供され、この方法は、以下のうちの1つ以上を含む組成物を、予防的又は治療的に対象に投与することを含む:(a)本明細書に記載の自己複製RNA(srRNA)構築物などのレプリコン;(b)本明細書に記載の核酸;(c)本明細書に記載の組換え細胞;及び(d)本明細書に記載の医薬組成物。
【0188】
対象において薬力学的効果を誘導するための、並びに/又は健康状態を予防及び/もしくは治療するための、本明細書に記載の方法の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、対象において1つ以上の炎症誘発性分子の産生を誘導する。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の炎症誘発性分子は、インターフェロンガンマ(IFNγ)、サイトカイン、TNF-α、GM-CSF、MIP1α、グランザイムB、グランザイムA、パーフォリン、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、対象は、以前に1つ以上の治療法で治療され、前記1つ以上の治療法に対して少なくとも部分的な耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、前記の1つ以上の治療法のうち少なくとも1つは小分子を含む。いくつかの実施形態では、健康状態は、増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、又は微生物感染である。いくつかの実施形態では、対象は、増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、又は微生物感染と関連した健康状態を有するか、又は有する疑いがある。いくつかの実施形態では、増殖性疾患は癌である。いくつかの実施形態では、癌は乳癌である。
【0189】
本開示の方法に適した乳癌の非限定的な例としては、乳管癌、乳小葉癌、乳腺未分化癌、乳小葉肉腫、乳血管肉腫、及び乳腺原発リンパ腫が挙げられる。乳癌は、ステージI、ステージII、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIIC、及びステージIVの乳癌を含み得る。乳管癌として、浸潤癌型、腺内(intraglandular)成分優位の浸潤性上皮内癌、炎症性乳癌、及び乳管の癌を挙げることができる。乳管癌として、上皮内成分が優勢な浸潤性小葉癌、浸潤性小葉癌、及び浸潤小葉癌を挙げることができる。乳癌として、パジェット病、乳房外パジェット病、腺内癌を伴うパジェット病、及び浸潤性乳管癌を伴うパジェット病を挙げることができる。乳癌として、組織学的及び超構造的異質性(例えば、混合細胞型)を有する乳房新生物を挙げることができる。乳癌は、基底様、ルミナルA、ルミナルB、ERBB2/Her2+、又は正常乳房様の分子サブタイプに分類することができる。
【0190】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤され得る。例えば、本開示のsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物は、経口で、吸入で、又は非経口経路で投与することができる。非経口投与経路の例としては、筋肉内投与、腫瘍内投与、眼内投与、静脈内投与、節内投与、皮内投与、皮下投与、経皮投与(局所投与)、経粘膜投与、膣内投与、及び直腸投与などが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、組成物は腫瘍内投与される。非経口適用に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又はその他の合成溶媒などの、無菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの、抗細菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの、酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの、キレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、トリス、ショ糖などの、緩衝剤;及び、塩化ナトリウム又はブドウ糖などの、張性を調節するための薬剤。pHは、一塩基性及び/もしくは二塩基性のリン酸ナトリウム、塩酸、又は水酸化ナトリウムなどの、酸又は塩基で、(例えば、約7.2~7.8、一例として7.5などのpHに)調整することができる。非経口製剤は、ガラス製又はプラスチック製の、アンプル、使い捨て注射器、又は複数回投与バイアルに封入することができる。
【0191】
本明細書に記載の、srRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物などの組成物は、1日に1回以上~1週間に1回以上、例えば隔日で1回ずつ、投与することができる。治療的有効量の本開示の対象srRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物による対象の治療は、単回の治療を含んでもよく、一連の治療を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、週単位の間隔で投与され、例えば1~2回、2~3回、又は3~4回の投与を、1~2週、2~3週、又は3~4週間隔で行う。その後、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、又は4ヵ月ごとに追加投与を行ってもよい。いくつかの実施形態では、3~4週間隔で3回筋肉内投与を行い、その後、3カ月ごとの筋肉内投与を行うことができる。あるいは、組成物をより短い間隔で、例えば、8時間ごとに5日間投与し、その後、2~14日間、例えば9日間の休薬期間を置き、その後、さらに8時間ごとに5日間投与することもできる。srRNA構築物及び核酸構築物に関しては、本開示のsrRNA構築物及び核酸構築物の治療的有効量(例えば、有効薬量)は、選択されるsrRNA構築物及び核酸構築物によって異なる。
【0192】
上記のように、治療的有効量としては、癌などの健康状態を有する、有する疑いがある、又はそのリスクがある対象などに投与した場合に、特定の効果を促進するのに充分な治療用組成物の量が挙げられる。いくつかの実施形態では、有効量としては、疾患の症状の出現を予防もしくは遅延させる、疾患の症状の経過を変化させる(例えば限定されるものではないが、疾患の症状の進行を遅らせる)、又は疾患の症状を逆転させるのに充分な量が挙げられる。
【0193】
治療は、疾患の徴候もしくは症状の少なくともいずれか1つ、又はすべてが改善又は軽減される場合に、有効な治療とみなされる。有効性はまた、個人において悪化が起こっていないこと(例えば、疾患の進行が停止しているか、又は少なくとも遅延していること)を、入院に基づき、又は医療介入の必要性に基づき評価することによって測定することもできる。これらの指標を測定する方法は当業者に公知であり、及び/又は本明細書に記載されている。治療には、対象又は動物(いくつかの非限定的な例はヒト又は哺乳類を含む)における疾患の任意の治療が含まれ、次のものが挙げられる:(1)疾患を抑制すること、例えば、症状の進行を停止させること、又は遅延させること;(2)疾患を緩和すること、例えば、症状を退縮させること;及び、(3)症状を予防すること、又は症状の出現の可能性を減少させること。
【0194】
いくつかの実施形態では、本開示のsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物は、薬学的に許容される担体を有する組成物中で、免疫応答を刺激するのに有効な量で、対象に投与され得る。通常、最初の一連の注射により(又は以下に記載の他の経路のいずれか1つを介した投与により)対象を免疫化し、その後、最初の一連の投与による防御を増強するために追加免疫を行う。最初の一連の注射とその後の追加免疫において、投与は対象の免疫応答を刺激するのに必要な量及び期間で行われる。開示される方法のいくつかの実施形態では、対象は哺乳類である。いくつかの実施形態では、哺乳類はヒト対象である。
【0195】
上記のように、注射用途に適した薬学的に許容される担体としては、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び、無菌注射液又は分散液を即座に調製するための無菌粉末が挙げられる。これらの場合、組成物は無菌であり、かつ良好な注入性が存在する程度に流動性を有する必要がある。さらに、組成物は、製造及び保存条件下で安定であり、かつ細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護される必要がある。担体は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油などを含む、溶媒又は分散媒とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒径の維持、及び、界面活性剤の使用などによって維持することができる。微生物の作用の防止は、各種の抗細菌・抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、及び同種のものによって達成することができる。
【0196】
無菌注射液は、必要な量のsrRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせとともに適切な溶媒に配合した後、濾過滅菌を行うことによって調製することができる。
【0197】
srRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物が上記のように適切に保護されれば、それらを、例えば、不活性希釈剤又は吸収可能な可食担体とともに経口投与してもよい。srRNA構築物、核酸構築物、組換え細胞、及び/又は医薬組成物、並びに他の成分を、ハード又はソフトシェルゼラチンカプセルに封入してもよく、錠剤に圧縮してもよく、個人の食事に直接取り入れてもよい。経口の治療的投与の場合、活性化合物を賦形剤と組み合わせて、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハース剤、及び同種のものの形態で使用してよい。
【0198】
追加療法
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、個別に単一療法(単剤療法)として、又は少なくとも1つの追加療法(例えば第2療法)と組み合わせた第1療法として、対象に投与される。いくつかの実施形態では、第2療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、又は手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1療法の投与と第2療法の投与を併用する。いくつかの実施形態では、第1療法の投与と第2療法の投与を同時に行う。いくつかの実施形態では、第1療法の投与と第2療法の投与を順次に行う。いくつかの実施形態では、第1療法の投与を第2療法の投与よりも前に行う。いくつかの実施形態では、第1療法の投与を第2療法の投与よりも後に行う。いくつかの実施形態では、第1療法の投与を第2療法の投与よりも前及び/又は後に行う。いくつかの実施形態では、第1療法の投与と第2療法の投与をローテーションで行う。いくつかの実施形態では、第1療法の投与と第2療法の投与を単一の製剤でともに行う。
【実施例】
【0199】
本発明の実施においては、特に断りのない限り、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学における、当業者に周知の、従来の技術が利用される。このような技術は,例えば、Sambrook, J., & Russell, D. W. (2012). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory及びSambrook, J., & Russel, D. W. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory(本明細書では、まとめて“Sambrook”と呼ぶ);Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology. New York, NY: Wiley(2014年までの増補を含む);Bollag, D. M. et al. (1996). Protein Methods. New York, NY: Wiley-Liss;Huang, L. et al. (2005). Nonviral Vectors for Gene Therapy. San Diego: Academic Press;Kaplitt, M. G. et al. (1995). Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego, CA: Academic Press;Lefkovits, I. (1997). The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques. San Diego, CA: Academic Press;Doyle, A. et al. (1998). Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology. New York, NY: Wiley;Mullis, K. B., Ferre, F. & Gibbs, R. (1994). PCR: The Polymerase Chain Reaction. Boston: Birkhauser Publisher;Greenfield, E. A. (2014). Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.). New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press;Beaucage, S. L. et al. (2000). Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry. New York, NY: Wiley(2014年までの増補を含む);並びに、Makrides, S. C. (2003). Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells. Amsterdam, NL: Elsevier Sciences B.V.;などの文献に充分に説明されており、これら文献の開示は参照により本明細書に援用される。
【0200】
以下の実施例に、さらなる実施形態をより詳細に開示する。これは説明の目的で提供されるものであり、本開示又は特許請求の範囲を限定することを何ら意図するものではない
【0201】
実施例1
ワクチン用途のためのsrRNA構築物をコードするEEEVベクターの構築
本実施例は、1つ又は複数の目的の遺伝子(例えば、ESR1又はそのバリアント、PI3K又はそのバリアント、HER2又はそのバリアント、及びHER3又はそのバリアント)を発現するEEEVベクターの構築に使用した、ベース(例えば異種遺伝子を含まない)EEEVベクターの構築のために行った実験について記載する。
【0202】
ベース(すなわち、目的の異種遺伝子を含まない)EEEVベクターを次のように構築した:ベースEEEVベクターを、いくつかの変更を加えた参照配列(Genbank EF151502)から、4個の約4kbの部分としてde novoで合成した(Twist Bioscience)。G301A、A3550C、G4516A、G5725A、及びG7399Aのサイレント変異を組み込むことで、制限酵素切断部位を排除した。ユニークな制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)(配列中、5’Aは構造ポリタンパク質のATG開始コドンの位置と一致し、3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTAAの位置と一致する)を、天然EEEV構造遺伝子のコード配列の代わりに組み込んだ。5’アダプター配列(5’-CTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT-3’;配列番号5)をSpeI部位の上流に挿入し、また、3’アダプター配列(5’-GACCGCTACGCCCCAATGACCCGACCAGC-3’;配列番号6)をSpeI部位の下流に挿入し、その後のGibson Assembly(登録商標)手順で使用した(Gibson et al., Nat. Methods 6, 343-345, 2009)。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号7)がEEEVゲノム配列の上流に含まれ、下流はポリ(A)配列と、それに続くSapI部位(これにより認識部位の上流が切断される)とを含んだ。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号8)があり、続いてユニークな制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)がある。上記部分を5断片Gibson Assembly(登録商標)反応で組み合わせ、直鎖化pYLバックボーン及び上記4個の合成断片から、EEEVベースベクターを生成した。
【0203】
異種遺伝子を含むEEEVベクターの構築は以下のように行った。ベースとなるEEEVベースベクターを、SpeI消化により直鎖化した。ESR1、PI3K、HER2、及びHER3バリアントをヒト発現用にin silicoでコドン最適化/リファクタリングし、EMCV IRESとともにde novoで合成を行った(GeneArt、IDT)。合成産物を、遺伝子末端に5’及び3’アダプター配列を付加するプライマーを用いて、あるいは、P2A配列及び/又は隣接する遺伝子インサートと相同な配列を付加するプライマーを用いて増幅した。消化産物とPCR産物をGibson Assembly(登録商標)手順で組み合わせ、最終的なベクターを得た。
【0204】
実施例2
ワクチンsrRNA構築物をコードするEEEVベクターのin vitro評価
本実施例は、上記実施例1に記載した合成EEEV srRNA構築物の発現レベルを評価するために、及び、その挙動(例えば複製及びタンパク質発現)の任意の差異を調べるために行った、in vitro実験の結果を記載する。
【0205】
In vitro転写: RNAを、SapIで直鎖化したプラスミド鋳型から、バクテリオファージT7ポリメラーゼを用いて、5’ARCAキャップ(HiScribe(商標) T7 ARCA mRNA Kit、NEB)ありで、又はキャップなしの転写(HiScribe(商標) T7 High Yield RNA Synthesis Kit、NEB)により、in vitro転写で調製し、その後、5’キャップ1の付加を行った(Vaccinia Capping System、mRNA Cap 2’-O-Methyltransferase、NEB)。次いで、フェノール/クロロホルム抽出、又はカラム精製(Monarch(登録商標) RNA Cleanup Kit、NEB)を用いてRNAを精製した。RNA濃度を、260nmの吸光度で測定した(Nanodrop、Thermo Fisher Scientific)。
【0206】
複製: RNAによる形質転換を、BHK-21又はVero細胞へのエレクトロポレーションによって行った(例えば、4D-Nucleofector(商標)、Lonza)。形質転換の15~22時間後、細胞を固定して透過処理し(eBioscience(商標) Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set、Invitrogen)、PE結合抗dsRNAマウスモノクローナル抗体(J2、Scicons)を用いて染色を行い、dsRNA+細胞の頻度と個々の細胞におけるdsRNAの平均蛍光強度(MFI)とを蛍光フローサイトメトリーで定量した。
【0207】
タンパク質の発現: RNAによる形質転換を、BHK-21又はVero細胞へのエレクトロポレーションによって行った(例えば、4D-Nucleofector(商標)、Lonza)。ESR1:形質転換の15~22時間後に細胞を回収し、RIPA緩衝液で溶解した。ライセートのタンパク濃度を標準化した後、抗ERαウサギ抗体(A300-497A、Bethyl)をプローブとしてイムノブロッティングを行い、AF800結合抗ウサギヤギ抗体(A32735、Thermo)を用いて画像化した(
図3A)。ESR1を発現する合成単一遺伝子EEEVレプリコンで形質転換した細胞試料からの蛍光シグナルを用いて発現レベルを標準化し、二遺伝子及び四遺伝子レプリコンのパネルからの相対的なESR1発現を評価した(
図3B)。PI3K:形質転換の15~22時間後に細胞を回収し、RIPA緩衝液で溶解した。ライセートのタンパク濃度を標準化した後、抗PI3KCAウサギ抗体(PA587398、Thermo)をプローブとしてイムノブロッティングを行い、AF800結合抗ウサギヤギ抗体(A32735、Thermo)を用いて画像化した(
図3C)。PI3Kを発現する合成単一遺伝子EEEVレプリコンで形質転換した細胞試料からの蛍光シグナルを用いて発現レベルを標準化し、二遺伝子及び四遺伝子レプリコンのパネルからの相対的なPI3K発現を評価した(
図3D)。HER2:形質転換の15~22時間後、細胞を固定して透過処理し(eBioscience(商標) Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set、Invitrogen)、AF488結合抗HER2マウスモノクローナル抗体(24D2、Biolegend)を用いて染色を行った。AF488の平均蛍光強度(MFI)を、HER2発現の読み出しとして用いた。HER2を発現する合成単一遺伝子EEEVレプリコンで形質転換した細胞のMFIを用いて発現レベルを標準化し、二遺伝子及び四遺伝子レプリコンのパネルからの相対的なHER2発現を評価した(
図3E)。HER3:形質転換の15~22時間後、細胞を固定して透過処理し(eBioscience(商標) Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set、Invitrogen)、APC結合抗HER3マウスモノクローナル抗体(IB4C3、Biolegend)を用いて染色を行った。APCの平均蛍光強度(MFI)を、HER3発現の読み出しとして用いた。HER3を発現する合成単一遺伝子EEEVレプリコンで形質転換した細胞のMFIを用いて発現レベルを標準化し、二遺伝子及び四遺伝子レプリコンのパネルからの相対的なHER3発現を評価した(
図3F)。四遺伝子レプリコンからの標準化ESR1、PI3K、HER2、及びHER3発現データを、スパイダーグラフ上で可視化した(
図3G)。
【0208】
実施例3
ワクチンsrRNA構築物をコードするEEEVベクターのin vivo評価
本実施例には、本明細書に記載の合成EEEVレプリコン構築物(例えば、非製剤化及びLNP製剤化ベクターの両者)によるワクチン接種後の免疫応答の任意の差異を評価するために実施した、in vivo実験の結果を記載する。
【0209】
これらの実験では、EEEV株FL93-939に由来する合成レプリコン構築物を設計し、その後評価を行った。
【0210】
マウス及び注射. BALB/cマウスを、Charles River Labs、Envigo、又はJackson Laboratoriesから購入した。投与当日、0.01~10μgの材料を、片方の大腿四頭筋に、又は分割して両方の大腿四頭筋に筋肉内注射した。ベクターを、製剤化せずに生理食塩水中に加えて、又はLNPで製剤化して投与した。研究期間全体にわたり、動物に対して体重の測定及びその他の一般的な観察を行った。免疫原性試験では、0日目のみ、又は0日目と21日目に、動物に投与を行った。
【0211】
LNP製剤. レプリコンRNAを、マイクロ流体ミキサーを用いて脂質ナノ粒子へと製剤化し、粒径、動的光散乱法に基づく多分散性、及びカプセル化効率の分析を行った。脂質はエタノールに懸濁した。C12-200については、RNAを10mMクエン酸緩衝液(pH5.0)に172μg/mlの濃度で懸濁し、3:1(水相:有機相)の流速で混合した。L2については、RNAを250mMのNaOAc(pH4.0)に82μg/mlの濃度で懸濁し、3:1(水相:有機相)の流速で混合した。
【0212】
ELISpot. ESR1、HER2、及びHER3特異的なT細胞応答の度合いを測定するため、IFNγ ELISpot分析を、Mouse IFNγ ELISpot PLUS Kit (HRP)(MabTech)を用いて使用説明書に従い実施した。簡単に説明すると、脾細胞を単離し、ESR1、HER2、及びHER3由来のペプチド、陽性対照としてのPMA/イオノマイシン、又は模擬刺激としてのDMSOを含む培地中で、5×106細胞/mLの濃度で再懸濁した。
【0213】
リンカーの評価
異なる順序性及び異なるリンカーで互いに連結されたESR1変異をコードする、単一遺伝子レプリコンRNAを筋肉内注射し、その14日後にマウスIFNγ検出ELISpotアッセイを行って、レスポンダー脾臓T細胞に対応するスポット形成単位の測定を行った結果を
図2に示す。AAY、EAAAK(配列番号1)、RVRR(配列番号2)、GGGGS(配列番号3)、及びGPGPG(配列番号4)リンカーを、様々な順序性で、K303R、E380Q、Y537C、Y537S、Y537N、及びD538G変異を含むESR1抗原カセットにおいて試験した。各カセットに対する列は、K303R、E380Q、Y537N、Y537S、Y537C、D538G、野生型ESR1、及び培地の順の、単一ペプチドを用いた刺激条件に対応する。総T細胞応答(100万細胞当たりのスポット形成単位のカウントとしてプロット)をY軸に示す。GGGGS(配列番号3)リンカーの順序性が、最もロバストなT細胞応答を生成した。
【0214】
遺伝子の数及び順序性の評価
ESR1、HER2、及びHER3をコードするレプリコンRNAを2回筋肉内注射し、その35日後にマウスIFNγ検出ELISpotアッセイを行って、レスポンダー脾臓T細胞に対応するスポット形成単位の測定を行った結果を
図4に示す。ESR1、PI3K、HER2、及びHER3を異なる順序性及び連結配列で有する、単一遺伝子形態、二遺伝子形態、又は四遺伝子形態の各種構築物を試験し、どの遺伝子構成の構築物が刺激時に最もロバストなT細胞応答をもたらしたかを決定した。Y軸は総T細胞応答を示す。PI3KはBALB/cマウスでは応答を形成しないため、この実験ではPI3K応答の測定を行わなかった。
【0215】
遺伝子の順序性及び脂質製剤の評価
ESR1、PI3K、HER2、及びHER3をコードするレプリコンRNAを、生理食塩水中に加えたもの、又は2種の異なるLNP組成物L1もしくはL2に製剤化したものを、2回筋肉内注射し、その35日後にマウスIFNγ検出ELISpotアッセイを行って、レスポンダー脾臓T細胞に対応するスポット形成単位の測定を行った結果を
図6に示す。異なるレプリコンベクターバックボーンを有する異なる四遺伝子構築物を試験して、どのRNAレプリコンベクター及び製剤が刺激時に最もロバストなT細胞応答をもたらしたかを決定した。
【0216】
実施例4
エストロゲン受容体陽性乳癌に対する有効性
図7は、2つの臨床シナリオを模した2つの有効性モデルを示す。治療モデルでは、まず、ワクチンの標的となる耐性変異を発現している腫瘍細胞株を移植する。次いで、ワクチンを投与する。これは、既存の変異を持つ患者を治療するシナリオをシミュレートするものである。予防モデルでは、ワクチンに含まれる耐性変異をコードする腫瘍細胞株を移植する前に、ワクチン接種を行う。このシナリオは、後天性の変異が出現する前に患者を治療することを模している。腫瘍細胞株によって発現される変異をコードするレプリコンRNAをマウスに投与すると、ロバストなT細胞応答が誘発され、それによって腫瘍増殖が遅延するはずである。腫瘍増殖が遅延しない場合、腫瘍細胞株が標的変異を失うように進化した可能性が高く、このことは、レプリコンRNAが免疫系による選択圧をもたらし、活性化変異を失わせることが可能であったことを示す。
【0217】
実施例5
生物療法用途のためのsrRNA構築物をコードするベースアルファウイルスベクターの構築
本実施例は、1つ又は複数の目的の遺伝子(例えば、IL-12 p35サブユニット又はその機能的バリアント、IL-12 p40サブユニット又はその機能的バリアント、及びIL-1RA又はその機能的バリアント)を発現するベクターの構築に使用した、ベース(例えば異種遺伝子を含まない)アルファウイルスベクターの構築のために行った実験について記載する。
【0218】
EEEVベースベクター
ベース(すなわち、目的の異種遺伝子を含まない)EEEVベクターを以下のように構築した:ベースEEEVベクターを、いくつかの変更を加えた参照配列(Genbank EF151502)から、4個の約4kbの部分としてde novoで合成した(Twist Bioscience)。G301A、A3550C、G4516A、G5725A、及びG7399Aのサイレント変異を組み込むことで、制限酵素切断部位を排除した。ユニークな制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)(配列中、5’Aは構造ポリタンパク質のATG開始コドンの位置と一致し、3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTAAの位置と一致する)を、天然EEEV構造遺伝子のコード配列の代わりに組み込んだ。5’アダプター配列(5’-CTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT-3’;配列番号5)をSpeI部位の上流に挿入し、また、3’アダプター配列(5’-GACCGCTACGCCCCAATGACCCGACCAGC-3’;配列番号6)をSpeI部位の下流に挿入し、その後のGibson Assembly(登録商標)手順で使用した(Gibson et al., Nat. Methods 6, 343-345, 2009)。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号7)がEEEVゲノム配列の上流に含まれ、下流はポリ(A)配列と、それに続くSapI部位(これにより認識部位の上流が切断される)とを含んだ。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号8)があり、続いてユニークな制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)がある。上記部分を5断片Gibson Assembly(登録商標)反応で組み合わせ、直鎖化pYLバックボーン及び上記4個の合成断片から、EEEVベースベクターを生成した。
【0219】
CHIKVベースベクター
サイレントA5366G変異を有し、CHIKV構造遺伝子のコード配列をユニークな制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)(配列中、5’Aは構造ポリタンパク質のATG開始コドンの位置と一致し、3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTAAの位置と一致する)で置き換えた参照配列(Genbank AF369024)から、ベースCHIKV S27ベクターを4個の約4kbの部分としてde novo合成した(Twist Bioscience、Thermo Fisher GeneArt)。5’アダプター配列(5’-CTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT-3’;配列番号5)をSpeI部位の上流に挿入し、また、3’アダプター配列(5’-GACCGCTACGCCCCAATGACCCGACCAGC-3’;配列番号6)をSpeI部位の下流に挿入し、その後のGibson Assembly(登録商標)手順で使用した。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号7)がCHIKVゲノム配列の上流に含まれ、下流はポリ(A)配列と、それに続くSapI部位(これにより認識部位の上流が切断される)とを含んだ。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号8)があり、続いてユニークな制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)がある。上記部分を5断片Gibson Assembly(登録商標)反応で組み合わせ、直鎖化pYLバックボーン及び上記4個の合成断片から、CHIKV S27ベースベクターを生成した。
【0220】
CHIKV DRDEベースベクターを、DRDE 3’UTRの代わりにS27 3’UTRを用いた以外は同様にして、参照配列(Genbank EF210157)から構築した。
【0221】
SINVベースベクター
SINV構造遺伝子のコード配列をユニークな制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)(配列中、5’Aは構造ポリタンパク質遺伝子のヌクレオチド93に続くP2A配列の次のヌクレオチドであり、3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTGAの位置と一致する)で置き換えたGirdwood株参照配列(Genbank MF459683)から、ベースSINV Girdwoodベクターを4個の約4kbの部分としてde novo合成した(Twist Bioscience、Thermo Fisher GeneArt)。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号7)がSINVゲノム配列の上流に含まれ、下流はポリ(A)配列と、それに続くSapI部位(これにより認識部位の上流が切断される)とを含んだ。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号8)があり、続いてユニークな制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)がある。上記部分を5断片Gibson Assembly(登録商標)反応(例えば、直鎖化pYLバックボーン及び上記4個の合成断片)で組み合わせ、SINV Girdwoodベースベクターを生成した。
【0222】
ベースSINV AR86ベクターを、nsP2コード配列をGirdwood参照配列から得た以外は同様にして、参照配列(Genbank U38305)から構築した。
【0223】
VEEベースベクター
サイレントA2087G変異を有し、VEE構造遺伝子のコード配列をユニークな制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)(配列中、5’Aは構造ポリタンパク質遺伝子のヌクレオチド93に続くP2A配列の次のヌクレオチドであり、3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTGAの位置と一致する)で置き換えたTC-83株参照配列(Genbank L01443)から、ベースVEEベクターを4個の約4kbの部分としてde novo合成した(Twist Bioscience、Thermo Fisher GeneArt)。5’アダプター配列(5’-CTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT-3’;配列番号5)をSpeI部位の上流に挿入し、また、3’アダプター配列(5’-GACCGCTACGCCCCAATGACCCGACCAGC-3’;配列番号6)をSpeI部位の下流に挿入し、その後のGibson Assembly(登録商標)手順で使用した。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号7)がVEEゲノム配列の上流に含まれ、下流はポリ(A)配列と、それに続くSapI部位(これにより認識部位の上流が切断される)とを含んだ。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号8)があり、続いてユニークな制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)がある。上記部分を5断片Gibson Assembly(登録商標)反応(例えば、直鎖化pYLバックボーン及び上記4個の合成断片)で組み合わせ、VEEベースベクターを生成した。
【0224】
最終的なベクター
異種遺伝子を含むベクターの構築を以下のように行った。空のベースベクターを、SpeI消化により直鎖化した。IL-12A、IL12-B、及びIL-1RN遺伝子をヒト発現用にin silicoでコドン最適化/リファクタリングし、EMCV IRESとともにde novoで合成を行った(IDT)。合成産物を、遺伝子末端に5’及び3’アダプター配列を付加するプライマーを用いて、あるいは、P2A配列及び/又は隣接する遺伝子インサートと相同な配列を付加するプライマーを用いて増幅した。消化産物とPCR産物をGibson Assembly(登録商標)手順で組み合わせ、最終的なベクターを得た。
【0225】
実施例6
生物療法srRNA構築物をコードするEEEVベクターのin vitro評価
本実施例は、上記実施例5に記載した合成srRNA構築物の発現レベルを評価するために、及び、その挙動(例えば複製及びタンパク質発現)の任意の差異を調べるために行った、in vitro実験の結果を記載する。
【0226】
In Vitro転写: RNAを、SapIで直鎖化したプラスミド鋳型から、バクテリオファージT7ポリメラーゼを用いて、5’ARCAキャップ(HiScribe(商標) T7 ARCA mRNA Kit、NEB)ありで、又はキャップなしの転写(HiScribe(商標) T7 High Yield RNA Synthesis Kit、NEB)により、in vitro転写で調製し、その後、5’キャップ1の付加を行った(Vaccinia Capping System、mRNA Cap 2’-O-メチルトランスフェラーゼ、NEB)。次いで、フェノール/クロロホルム抽出、又はカラム精製(Monarch(登録商標) RNA Cleanup Kit、NEB)を用いてRNAを精製した。RNA濃度を、260nmの吸光度で測定した(Nanodrop、Thermo Fisher Scientific)。
【0227】
複製: RNAによる形質転換を、BHK-21又はVero細胞へのエレクトロポレーションによって行った(例えば、4D-Nucleofector(商標)、Lonza)。形質転換の15~22時間後、細胞を固定して透過処理し(eBioscience(商標) Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set、Invitrogen)、PE結合抗dsRNAマウスモノクローナル抗体(J2、Scicons)を用いて染色を行い、dsRNA+細胞の頻度と個々の細胞におけるdsRNAの平均蛍光強度(MFI)とを蛍光フローサイトメトリーで定量した。
【0228】
ELISAによるタンパク質発現:
【0229】
500ngのsrRNA単一遺伝子構築物又は複遺伝子構築物でエレクトロポレーションしたBHK-21細胞から、ヒトIL-12p70及びIL-1RAを検出した。トランスフェクションの約24時間後及び48時間後に上清を採取し、RnD Systems社のHuman IL-12p70(カタログ番号DY1270)及びRnD Systems社のHuman IL-1ra/IL-1F3 DuoSet ELISA(カタログ番号DY280)を用いて分析した。
【0230】
生物活性アッセイ:
【0231】
500ngのsrRNA単一遺伝子構築物又は複遺伝子構築物でエレクトロポレーションしたBHK-21細胞から、ヒトIL-12p70及びIL-1RAを検出した。トランスフェクションの約24時間後及び48時間後に上清を採取し、Promega社のGloMax bioassayを用いてIL-12の分析を行った(カタログ番号JA2601)。IL-1RAの分析は、IL-1β Reporter HEK 293 Cells(Invivogen、hkb-il1bv2)を使用説明書に従って使用し、4ng/mLのIL1β(最終1ng/mL)及びトランスフェクション後のBHK細胞の上清とプレインキュベートして行った。
【0232】
遺伝子の数及び順序性の評価
マウスIL-12及びIL-1RAを検出するELISAアッセイにより、トランスフェクション後のBHK-21細胞から測定を行った結果を、
図8A、8B、11A、及び11Bに示す。IL-12サブユニットp35、IL-12サブユニットp40、及びIL-1RAを異なる順序性で有する、単一遺伝子形態又は複遺伝子形態の各種構築物を試験し、どの遺伝子構成の構築物がIL-12及びIL-1RAの最もロバストな発現をもたらしたかを決定した。Y軸は、IL-12又はIL-1RAの濃度をng/mLで示す。
図10は、試験した各構築物から測定された、対応するIL-12及びIL-1RA濃度を示す。
【0233】
異なるサイトカイン受容体を発現するレポーター細胞に対して、各種srRNA構築物をトランスフェクトしたBHK-21細胞を試験し、その上清のマウスIL-12及びIL-1RAを測定して生物活性を検出した。結果を
図9A、9B、12A、及び12Bに示す。
図13は、試験した各構築物から測定された、対応するIL-12及びIL-1RAの生物活性を示す。
【0234】
実施例7
生物療法srRNA構築物をコードするアルファウイルスベクターのin vivo評価
本実施例は、本明細書に記載のsrRNA構築物(例えば、非製剤化及びLNP製剤化ベクターの両者)を評価するために実施した、in vivo実験の結果を記載する。
【0235】
これらの実験では、様々なアルファウイルス株に由来する合成srRNA構築物を設計し、その後評価を行った。
【0236】
マウス及び注射. BALB/cマウスを、Charles River Labs、Envigo、又はJackson Laboratoriesから購入した。投与当日、0.01~40μgの材料を、片方の大腿四頭筋に、又は分割して両方の大腿四頭筋に筋肉内注射した。ベクターを、製剤化せずに生理食塩水中に加えて、又はLNPで製剤化して投与した。研究期間全体にわたり、動物に対して体重の測定及びその他の一般的な観察を行った。薬物動態試験では、0日目のみ動物への投与を行った。
【0237】
LNP製剤. レプリコンRNAを、マイクロ流体ミキサーを用いて脂質ナノ粒子へと製剤化し、粒径、動的光散乱法に基づく多分散性、及びカプセル化効率の分析を行った。脂質はエタノールに懸濁した。L1については、RNAを10mMクエン酸緩衝液(pH5.0)に172μg/mlの濃度で懸濁し、3:1(水相:有機相)の流速で混合した。L2については、RNAを250mMのNaOAc(pH4.0)に82μg/mlの濃度で懸濁し、3:1(水相:有機相)の流速で混合した。
【0238】
ELISA. IL-12及びIL-1RAの血清中濃度を測定するため、ヒトIL-12 p70 DuoSet ELISA(RnD Systems カタログ番号DY1270)及びヒトIL-1ra ELISA Kit(Abcam、ab211650)を使用説明書に従って用いてELISA分析を行った。
【0239】
遺伝子の順序性及び脂質製剤の評価
次に、in vitroアッセイで得られた上位2つの複遺伝子構成を、6つの異なるsrRNAベクターにおいて、in vivoで、マウス血清中でのタンパク質発現について試験した。結果を
図14A及び14Bに示す。観察の結果、いくつかのケースでは、タンパク質の半減期が短いためか、IL-1RAが検出されなかった。
【0240】
その後、複遺伝子構成を様々な製剤で試験し、ELISAによってin vivoでのタンパク質発現を分析した。結果を
図15A及び15Bに示す。
【0241】
実施例8
異種非構造タンパク質遺伝子を有する改変srRNAベクターのin vivo評価
本実施例は、複数のLNP製剤化srRNA発現構築物から発現された目的のポリペプチド構築物(PCI)が、ワクチン接種後に免疫応答を誘発し、免疫防御を確立する際の、機能性の相違を評価するために行った、in vivo実験の結果を記載する。
【0242】
これらの実験では、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83);チクングニアウイルス株であるS27(CHIK.S27)及びDRDE-06(CHIK.DRDE);シンドビスウイルス株であるGirdwood(SIN.GW)及びAR86-Girdwood Hybrid 1(SIN.AR86);並びに東部ウマ脳炎ウイルス(EEE.FL93);に由来する合成srRNA構築物を設計し、その後評価した。
【0243】
マウス及び注射. 雌のBALB/cマウスを、Charles River Labs又はJackson Laboratoriesから購入した。投与当日、0.15~1.5μgの材料を、分割して両方の大腿四頭筋に筋肉内注射した。ベクターはLNP製剤化した。研究期間全体にわたり、動物に対して体重の測定及びその他の一般的な観察を行った。免疫原性試験では、0日目と21日目に動物に投与を行った。脾臓を14日目及び/又は35日目に採取し、血清を14日目及び/又は35日目に単離した。
【0244】
LNP製剤. srRNAを、マイクロ流体ミキサーを用いて脂質ナノ粒子(LNP)へと製剤化し、粒径、動的光散乱法に基づく多分散性、及びカプセル化効率の分析を行った。LNPは、イオン化可能な脂質、コレステロール、PEG-2K、及びDOPEで構成されている。
【0245】
ELISpot. 抗原特異的なT細胞応答の度合いを測定するため、IFNγ ELISpot分析を、Mouse IFNγ ELISpot PLUS Kit(HRP)(MabTech)を用いて使用説明書に従い実施した。簡単に説明すると、脾細胞を単離し、狂犬病ウイルス糖タンパク質Gに対応するペプチドプール、陽性対照としてのPMA/イオノマイシン、又は模擬刺激としてのDMSOを含む培地中に、1~5×106細胞/mLの濃度で再懸濁した。
【0246】
抗体. 狂犬病ウイルスに対する中和抗体反応を、Rapid Fluorescent Focus Inhibition Testを用いて測定した。簡単に説明すると、血清希釈液を、標準的な量の狂犬病生ウイルスと混合し、インキュベートした。抗狂犬病中和抗体が存在すれば、抗体がウイルスを中和する。次に培養細胞を加え、血清/ウイルス/細胞を一緒にインキュベートした。被覆されていない(すなわち、抗体によって中和されていない)狂犬病ウイルスは細胞に感染し、この感染は顕微鏡検査によって可視化することができる。エンドポイント力価を、スライド上で観察されたウイルス感染細胞の割合から算出した。
【0247】
ウイルス抗原である狂犬病ウイルス糖タンパク質Gをコードする複数のsrRNAのin vivoでの免疫原性を、2回の免疫後に、抗原特異的脾臓T細胞応答(
図16A)をELISpotによって調べ、また、血清からの抗狂犬病中和抗体価(
図16B)を調べることによって評価した。すべてのsrRNA免疫化群が、生理食塩水対照と比較してロバストなT細胞応答を示したが(
図16A)、srRNAワクチン間で応答に差が見られた。同様に、すべてのsrRNA免疫化群が、srRNAワクチン間で多少の差はあるものの、防御的な中和抗体価を示した(
図16B)。
【0248】
本開示の特定の選択肢が開示されているが、様々な改変及び組み合わせが可能であり、それらは添付の特許請求の範囲の真の趣旨及び範囲内で企図されることを理解すべきである。したがって、本明細書に提示される要約及び開示への厳密な限定を意図するものではない。
【配列表】
【国際調査報告】