(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】心臓の僧帽弁の圧力関連値の決定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/021 20060101AFI20241126BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61B5/021
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532379
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022082539
(87)【国際公開番号】W WO2023099250
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー フランク ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ラーギ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド セバスチャン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C601
【Fターム(参考)】
4C017AA01
4C017AB04
4C017AC23
4C017BC11
4C601DD15
4C601EE30
4C601FE01
4C601JC09
4C601JC37
(57)【要約】
本発明は、僧帽弁の状態を評価することに関する。僧帽弁の圧力関連状態を評価する容易な方法を提供するために、データ入力部12、データプロセッサ14、及び出力インタフェース16を有する、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する装置10が提供される。データ入力部は、第1の状態にある心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第1の超音波画像20を提供し、第2の状態にある心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第2の超音波画像22を提供するように構成される。第1の状態は、心臓の左心房の第1の圧力状態に関連し、第2の状態は、心臓の左心房の第2の圧力状態に関連し、第2の圧力状態は、第1の圧力状態とは異なる。データプロセッサは、左心耳の少なくとも一部の第1のセグメンテーションを生成するように第1の超音波画像をセグメント化し、左心耳の少なくとも一部の第2のセグメンテーションを生成するように第2の超音波画像をセグメント化し、第1のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第1の解剖学的測定値を決定し、第2のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第2の解剖学的測定値を決定し、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係を導出するように構成される。出力インタフェースは、導出された少なくとも1つの関係を僧帽弁の圧力関連パラメータの指標として提供するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する装置であって、
データ入力部と、
データプロセッサと、
出力インタフェースと、を有し、
前記データ入力部は、第1の状態における心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第1の超音波画像を提供し、及び第2の状態における前記心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む前記心臓の第2の超音波画像を提供するように構成され、前記左心耳の近位部分は、左心房に近い部分をさし、前記第1の状態は、前記心臓の左心房の第1の圧力状態に関連し、前記第2の状態は、前記第1の圧力状態とは異なる心臓の左心房の第2の圧力状態に関連し、
前記データプロセッサは、前記第1の超音波画像をセグメント化して、前記左心耳の少なくとも部分の第1のセグメンテーションを生成するステップと、前記第2の超音波画像をセグメント化して、前記左心耳の少なくとも部分の第2のセグメンテーションを生成するステップと、
前記第1のセグメンテーションから、前記左心耳に関連する少なくとも1つの第1の解剖学的測定値を決定するステップと、
前記第2のセグメンテーションから、前記左心耳に関連する少なくとも1つの第2の解剖学的測定値を決定するステップと、
前記少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と前記少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係を導出するステップと、
を実行するように構成され、前記出力インタフェースは、導出された少なくとも1つの関係を、前記僧帽弁の圧力関連パラメータの指標として提供するように構成される、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの関係は、前記少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と前記少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との間の相対的な差を含み、前記導出された少なくとも1つの関係は、僧帽弁逆流の指標として提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の圧力状態及び前記第2の圧力状態は、
i)心周期の1つの圧力曲線上の第1の点及び該第1の点と異なる第2の点;及び
ii)心臓治療の第1段階における圧力状態及び前記心臓治療の第2段階における圧力状態であって、前記第2段階は、前記心臓治療の進行に関して前記第1段階と異なり、前記第1の圧力状態及び前記第2の圧力状態は、それぞれの心周期の同じ部分に関するものである、前記第1段階及び前記第2段階の前記圧力状態と、
のグループのうちの1つに関連する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記i)の場合、
前記第1の圧力状態は、心房圧曲線上の第1の点に関連し、前記第2の圧力状態は、前記心房圧曲線上の第2の点に関連し、
前記第1の点は、心房圧曲線のa波部分の第1のピークであり、前記第2の点は、心房圧曲線のv波部分の第2のピークであり、及び
前記少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と前記少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との前記少なくとも1つの関係は、前記心房圧曲線の振幅にかかる前記第1のピークと前記第2のピークとの間の相対的な差の決定を含む。請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ii)の場合、
前記第1及び前記第2の段階における圧力状態は、前記心房圧曲線のv波部分のピークに関連し、
前記少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と前記少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係は、治療前の心房圧曲線のv波部分のピークと、治療後の心房圧曲線のv波部分のピークとの決定を含み、及び
前記決定のために、第1の幾何学的測定値が、治療前の心房圧曲線のv波部分のピークに関して提供され、第2の幾何学的測定値が、治療後の心房圧曲線のv波部分のピークに関して提供される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記データ入力部は、前記心房圧曲線上の前記第1の点及び前記第2の点を決定するために心電図を提供するように構成される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の超音波画像及び前記第2の超音波画像が、前記心臓の僧帽弁領域を更に有し、
前記第1及び前記第2の超音波画像は、
i)僧帽弁プロシージャによって提供されるとともに、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するために使用され、及び/又は
ii)僧帽弁プロシージャのために提供される、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記データプロセッサは、
モデルベースのセグメンテーション、
ディープラーニングセグメンテーション、及び
ユーザインターフェースを介したユーザ入力に基づく手動セグメンテーション、
のうちの少なくとも1つとして、前記セグメンテーションを提供するように構成される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記データプロセッサは、僧帽弁画像をセグメント化し、当該セグメンテーションをモデルとレジストレーションするように構成され、
前記データプロセッサは、前記モデルの左心耳の位置指標に基づいて、僧帽弁画像における左心耳の位置を推定するように構成される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記ディスプレイを更に有し、
前記ディスプレイは、前記導出された少なくとも1つの関係を表示するように構成される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するシステムであって、
被検体の心臓の僧帽弁の画像データを提供するように構成された超音波撮像装置と、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置と、
を有し、前記超音波撮像装置が、心臓の前記第1及び前記第2の超音波画像を提供する、システム。
【請求項12】
前記超音波撮像装置は、前記第1及び第2の超音波画像を取得するための経食道撮像プローブを有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する方法であって、
第1の状態における心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第1の超音波画像を提供するステップであって、左心耳の近位部分は、左心房に近い部分をさす、ステップと、
第2の状態における心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第2の超音波画像を提供するステップであって、
前記第1の状態は、心臓の左心房の第1の圧力状態に関連し、前記第2の状態は、心臓の左心房の第2の圧力状態に関連し、前記第2の圧力状態は、前記第1の圧力状態とは異なる、ステップと、
前記第1の超音波画像をセグメント化して、左心耳の少なくとも部分の第1のセグメンテーションを生成し、第2の超音波画像をセグメント化して、左心耳の少なくとも一部の第2のセグメンテーションを生成するステップと、
前記第1のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第1の解剖学的測定値を決定し、第2のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第2の解剖学的測定値を決定するステップと、
前記少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と前記少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係を導出するステップと、
前記導出された少なくとも1つの関係を、僧帽弁の圧力関連パラメータの指標として提供するステップと、
を有する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法をプロセッサに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、僧帽弁の状態を評価することに関する。本発明は、特に、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する装置、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するシステム、及び心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
僧帽弁閉鎖不全症は広くみられる心臓病である。僧帽弁が適切に閉じないため、心室収縮時に心房へ逆流する非生理的な血流が生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この逆流血流により、心室収縮中に心房内の圧力が更に一時的に上昇することがある。これは、心房収縮期の心房内の生理的な圧力上昇の上乗せとなる。心臓の状態を評価するために、カテーテル又は圧力ワイヤを使用して、心房圧を侵襲的に測定することができる。しかしながら、侵襲的アプリケーションは、測定を困難にすることがある。代替として、圧力は、解剖学的入力データ及び外部血圧測定からのデータの両方を必要とする複雑なシミュレーションから導出されることができる。これは時間がかかり、カテーテル検査室ではすぐに利用できないことが分かっている。
【0004】
従って、僧帽弁の圧力関連状態を評価する容易な方法を提供する必要がありうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決され、更なる実施形態は、従属請求項に組み込まれる。
【0006】
以下に説明する本発明の態様は、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する装置、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するシステム、及び心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する方法に適用されることに留意されたい。
【0007】
本発明によれば、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する装置が提供される。装置は、データ入力部、データプロセッサ、及び出力インタフェースを有する。データ入力部は、第1の状態にある心臓の左心耳(LAA)の少なくとも近位部分を含む心臓の第1の超音波画像を提供するように構成される。データ入力部はまた、第2の状態にある心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第2の超音波画像を提供するように構成される。第1の状態は、心臓の左心房の第1の圧力状態に関連し、第2の状態は、心臓の左心房の第2の圧力状態に関連し、第2の圧力状態が第1の圧力状態とは異なる。データプロセッサは、第1の超音波画像をセグメント化して、左心耳の少なくとも一部の第1のセグメンテーションを生成するよう構成される。データプロセッサは更に、第2の超音波画像をセグメント化して、左心耳の少なくとも一部の第2のセグメンテーションを生成するように構成される。データプロセッサはまた、第1のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第1の解剖学的測定値を決定するように構成される。データプロセッサは更に、第2のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第2の解剖学的測定値を決定するように構成される。データプロセッサは更に、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係を導出するように構成される。出力インタフェースは、導出された少なくとも1つの関係を僧帽弁の圧力関連パラメータのインジケータとして提供するように構成される。
【0008】
左心耳の近位部分という用語は、左心房に近い部分を指す。
【0009】
一例として、用語「~に近い」は、左心房に隣接することに関する。例えば、左心耳の近位部分は、左心房壁がある種の開口部又は凹部を有し、したがって左心耳を形成する遷移ゾーンに関連する。左心耳の近位部分は、左心房のボリュームから見たときの左心耳の形成の始まりの部分に関連する。
【0010】
近位部分の反対側は、遠位部分、すなわち、左心耳によって形成された凹部の端壁部分である。従って、「近位」及び「遠位」という用語は、左心房の視点に関して、例えば、左心房の中央領域との関連で提供される。
【0011】
効果として、僧帽弁の圧力関連状態に関する情報が画像データに基づいて提供されるため、貴重な情報を取得するためのデータ取得と処理がそれほど複雑でなく、容易になる。
【0012】
一例によれば、前記少なくとも1つの関係は、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との間の相対的な差を有する。一実施例において、導出された少なくとも1つの関係は、僧帽弁逆流のインジケータとして提供される。
【0013】
一例によれば、第1の実施例では、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、心周期の1つの圧力曲線上の第1の点及び第2の点に関連し、第2の点は、第1の点とは異なる。
【0014】
一例によれば、第2の実施例では、代替的に又は追加的に、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、心臓治療の第1段階における圧力状態及び心臓治療の第2の段階における圧力状態に関連し、第2の段階は、第1段階とは心臓治療の進行に関して異なる。一実施例として、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、それぞれの心周期の同じ部分に関する。
【0015】
別の例では、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、第1の時点における圧力状態及び第2の時点における圧力状態に関連し、第2の時点は、被検体、すなわち患者の状況に関して異なる。一例では、そのような異なる状況は、例えば、患者の寿命における異なる状態によって引き起こされる、経時的な変化を監視することに関する。
【0016】
一例によれば、第1の実施例について、第1の圧力状態は、心房圧曲線上の第1の点に関連し、第2の圧力状態は、心房圧曲線上の第2の点に関連する。第1の点は、心房圧曲線のa波部分の第1のピークであり、第2の点は、心房圧曲線のv波部分の第2のピークである。更に、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係は、第1のピークと第2のピークとの間の相対的な差の決定を含む。一実施例として、第1のピークと第2のピークとの間の相対的な差の決定は、心房圧曲線の振幅に関連して提供される。
【0017】
一例によれば、第2の実施例について、第1及び第2の段階における圧力状態、例えば、治療の前後の圧力状態は、心房圧曲線のv波部分のピークに関連する。少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係は、治療前の心房圧曲線のv波部分のピークと、治療後の心房圧曲線のv波部分のピークとの決定を含む。決定のために、第1の幾何学的測定値が、第1段階、例えば治療前の心房圧曲線のv波部分のピークについて提供され、第2の幾何学的測定値が、第2の段階、例えば治療後の心房圧曲線のv波部分のピークについて提供される。
【0018】
一例によれば、第1の超音波画像及び第2の超音波画像は、心臓の僧帽弁領域を更に含む。1つの実施例として、第1及び第2の超音波画像は、僧帽弁プロシージャによって提供され、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するために使用されることが提供される。別の実施例として、代替的に又は追加的に、第1及び第2の超音波画像が、僧帽弁プロシージャのために提供されることが提供される。
【0019】
一例では、僧帽弁プロシージャと、僧帽弁の圧力関連パラメータのインジケータの決定とのために、同じ2つの画像が提供される。
【0020】
一例によれば、装置は、ディスプレイを有する。ディスプレイは、導出された少なくとも1つの関係を表示するように構成される。
【0021】
本発明によれば、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するシステムが提供される。システムは、被検体の心臓の僧帽弁の画像データを提供するように構成された超音波撮像装置を有する。システムは更に、前述の実施例のうちの1つによる装置の一例を含む。超音波撮像装置は、心臓の第1及び第2の超音波画像を提供する。
【0022】
一例によれば、超音波撮像装置は、第1及び第2の超音波画像を取得するための経食道撮像プローブを有する。
【0023】
本発明によれば、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する方法が更に提供される。この方法は、第1の状態にある心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第1の超音波画像を提供し、第2の状態にある心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第2の超音波画像を提供するステップであって、第1の状態は、心臓の左心房の第1の圧力状態に関連し、第2の状態は、心臓の左心房の第2の圧力状態に関連し、第2の圧力状態が第1の圧力状態とは異なる、ステップと、第1の超音波画像をセグメント化して、左心耳の少なくとも一部の第1のセグメンテーションを生成するステップと、第2の超音波画像をセグメント化して、左心耳の少なくとも一部の第2のセグメンテーションを生成するステップと、第1のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第1の解剖学的測定値を決定するステップと、第2のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第2の解剖学的測定値を決定するステップと、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係を導出するステップと、導出された少なくとも1つの関係を、僧帽弁の圧力関連パラメータのインジケータとして提供するステップと、を有する。
【0024】
一態様によれば、心臓の左心耳の超音波画像などの画像データは、心臓の僧帽弁の優勢な状態に関する知識を導出するために、2つの異なる圧力状態に対して提供される。実際に圧力を測定することなく、心臓の僧帽弁の圧力関連パラメータを導出することが提供される。画像は、少なくとも左心耳の近位部分の解剖学的詳細を示す。2つの異なる所定の圧力状態に関する画像を提供することによって、2つの状態の関係を形成することができ、これにより、僧帽弁の圧力関連パラメータ、例えば、逆流血流が存在するかどうか、及びどの程度存在するかについての結論を導出することができる。
【0025】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それを参照して説明される。
【0026】
図面の簡単な説明
【0027】
以下、添付図面を参照して、例示的な発明の例示的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する装置の一例を概略的に示す図。
【
図2】心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するシステムの一例を概略的に示す図。
【
図3】心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する方法の一例の基本ステップを示す図。
【
図4】図示された解剖学的測定値を有するセグメンテーションモデルにおける左心耳の表現の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、特定の実施形態が、添付の図面を参照して、詳細に説明される。以下の説明では、同様の図面参照番号が、異なる図面においても、同様の要素に対して使用される。詳細な構成及び構成要素のような、本明細書で規定される事項は、例示的な実施形態の包括的な理解を助けるために提供される。また、周知の機能又は構成は、不必要な詳細で実施形態を不明瞭にするので、詳細には説明されない。更に、「~のうちの少なくとも1つ」などの表現は、それが構成要素のリストに先行する場合、構成要素のリスト全体を修飾し、リストの個々の構成要素を修飾しない。
【0030】
図1は、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する装置10の一例を概略的に示す。装置10は、データ入力部12、データプロセッサ14、及び出力インタフェース16を有する。フレーム18は、データ入力部12、データプロセッサ14、及び出力インタフェース16を、統合された方法で、例えば、共通のハウジング内に提供する実施例を示す。しかしながら、データ入力部12、データプロセッサ14、及び出力インタフェース16は、別個のコンポーネントとして提供されることもできる。データ入力部12は、第1の状態における心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第1の超音波画像20を提供するように構成される。データ入力部12は更に、第2の状態における心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第2の超音波画像22を提供するように構成される。第1の状態は、心臓の左心房の第1の圧力状態に関連し、第2の状態は、心臓の左心房の第2の圧力状態に関連し、第2の圧力状態は、第1の圧力状態とは異なる。データプロセッサ14は、第1の超音波画像をセグメント化して、左心耳の少なくとも一部の第1のセグメンテーションを生成するように構成される。データプロセッサ14は更に、第2の超音波画像をセグメント化して、左心耳の少なくとも一部の第2のセグメンテーションを生成するように構成される。データプロセッサ14は更に、第1のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第1の解剖学的測定値を決定するように更に構成される。データプロセッサ14は更に、第2のセグメンテーションから、左心耳に関する少なくとも1つの第2の解剖学的測定値を決定するように構成される。データプロセッサ14は更に、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係を導出するように構成される。出力インタフェース16は、導出された少なくとも1つの関係を僧帽弁の圧力関連パラメータのインジケータとして提供するように構成される。データ入力部12は、データ入力モジュールと称されることもできる。データプロセッサ14は、データ処理モジュールと称されることもできる。出力16インタフェースは、出力インタフェースモジュールよ少佐得ることもできる。
【0031】
データ入力部12は、データ供給、画像供給、画像データ供給、入力ユニット、又は単に入力と称されることもできる。一例では、データ入力部12は、セグメンテーションに使用される心臓の超音波画像データを提供する超音波撮像装置のような画像ソース装置にデータ接続可能である。一例では、(画像)データ入力部12は、超音波画像データを記憶したデータ記憶装置にデータ接続可能である。一例では、(画像)データ入力部12は、超音波画像データのセグメンテーションを記憶したデータ記憶装置にデータ接続可能である。
【0032】
データプロセッサ14は、データ処理装置、プロセッサユニット又はプロセッサと称されることもできる。一例では、データプロセッサ14は、画像データ入力部12及び出力インタフェース16にデータ接続される。
【0033】
出力インタフェース16は、出力部又は出力ユニットとも称されることができる。一例では、出力インタフェース16が、ディスプレイ構成又はディスプレイ装置にデータ接続可能である。別の例では、出力インタフェース16は、ディスプレイにデータ接続される。
【0034】
「左心耳の近位部分」という用語は、左心房に近い部分を指す。
【0035】
一例では、心臓の第1及び/又は第2の超音波画像20、22は、心臓の左心耳の近位部分のみを含む。別の例では、心臓の第1及び/又は第2の超音波画像20、22は、心臓の完全な左心耳を含む。
【0036】
詳細には示されていない一例では、少なくとも1つの関係は、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との間の相対的な差を含む。導出された少なくとも1つの関係は、僧帽弁逆流のインジケータとして提供される。
【0037】
一例では、詳細には示されていないが、第1の実施例では、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、i)心周期の1つの圧力曲線上の第1の点及び第2の点に関連し、第2の点は、第1の点とは異なる。第2の実施例では、追加又は代替として、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、ii)心臓治療の第1段階における圧力状態及び心臓治療の第2の段階における圧力状態に関連し、第2の段階は、第1段階とは心臓治療の進行に関して異なる。一実施例として、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、それぞれの心周期の同じ部分に関する。
【0038】
一例として、曲線上の第1及び第2の点における圧力に関連する場合、所定の閾値を上回る左心耳のサイズの超過は、所定の臨界値を上回る増加した心房圧力を示す。例えば、a波とv波との間の相対的な差が、幾何学的測定値に基づいて決定される。
【0039】
一例では、心臓治療の第1段階は、心臓治療の前の段階に関し、心臓治療の第2段階は、心臓治療の後の段階に関する。
【0040】
別の例では、心臓治療の第1段階は、心臓治療の前の段階に関し、心臓治療の第2の段階は、心臓治療中の段階に関する。
【0041】
他の例では、心臓治療の第1段階は、心臓治療中の段階に関し、心臓治療の第2の段階は、心臓治療後の段階に関する。
【0042】
他の例では、心臓治療の第1段階は、心臓治療中の第1段階に関し、心臓治療の第2段階は、心臓治療中の第2段階に関する。
【0043】
一例として、治療の前後の圧力に関連する場合、左心耳のサイズの減少は、心房圧力の減少を示す。
【0044】
心臓の左心耳の測定は、血圧測定の代用となる。
【0045】
一例では、超音波画像のみが提供され、測定された圧力データは提供されない。例えば、画像は、いわば画像内で幾何学的測定を受ける。幾何学的測定値は、更なる処理ステップのために、例えばインジケータを生成又は導出するための計算のために、取得される。圧力関連パラメータ、すなわち圧力のインジケータは、画像に基づいて定性的に決定される。
【0046】
一例では、詳細には示されていないが、i)について、第1の圧力状態は、心房圧力曲線上の第1の点に関連し、第2の圧力状態は、心房圧力曲線上の第2の点に関連する。第1の点は、心房圧曲線のa波部分の第1のピークであり、第2の点は、心房圧曲線のv波部分の第2のピークである。少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係は、第1のピークと第2のピークとの間の相対的な差の決定を含む。一実施例では、第1のピークと第2のピークとの間の相対的な差の決定が、心房圧曲線の振幅に関連して提供される。
【0047】
心房圧曲線のa波部分は、拡張期の心房収縮に関連する。心房圧は、a波に続いて、心房が収縮期に弛緩するにつれて、減少する。心房圧曲線のv波の部分は、収縮後期に心房が血液で満たされ始めるときの心房圧の上昇に関係する。v波は、拡張期の開始時に減少し、その後、更にa波が続き、収縮が再び始まるときに増加する。
【0048】
一例では、v波のピークと曲線のベースラインとの間に差が与えられる。
【0049】
一例では、詳細には示されていないが、ii)について、第1及び第2の段階における圧力状態は、心房圧曲線のv波部分のピークに関連する。少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係は、治療前の心房圧曲線のv波部分のピークと、治療後の心房圧曲線のv波部分のピークとの決定を含む。決定のために、治療前の心房圧曲線のv波部分のピークについて第1の幾何学的測定値が提供され、治療後の心房圧曲線のv波部分のピークについて第2の幾何学的測定値が提供される。
【0050】
一例では、i)及びii)の組み合わせを使用すること、例えば、単一の測定値が、ベースライン又はa波に対するv波のピークであること、及び介入の異なる段階におけるこれの比較を提供することが提供される。
【0051】
一例では、
図1に一実施例として示されるように、データ入力部12は、心房圧曲線上の第1の点及び第2の点を決定するために心電
図24を提供するように構成される。一例では、心電
図24を生成する心電図デバイス(図示せず)が提供される。
【0052】
詳細には示されていない一例では、第1の超音波画像20及び第2の超音波画像22は、心臓の僧帽弁領域を更に含む。第1の実施例として、第1及び第2の超音波画像が僧帽弁プロシージャによって提供され、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するために使用されることが提供される。第2の実施例として、加えて、又は代替として、第1及び第2の超音波画像は、僧帽弁プロシージャのために提供される。
【0053】
これは、画像視野が、まったく修正されないか、又は、最初に左心耳が含まれない場合にのみ、わずかに拡張され得るという効果を提供する。
【0054】
一例では、標準的な超音波僧帽弁画像は、左心耳、又は少なくとも左心耳の近位部分も示すように、その視野内で部分的に拡大される。一例では、視点は、僧帽弁画像のためにも提供される経食道画像のために使用される。
【0055】
画像は、両方の目的に使用される。従って、二重目的の画像が提供される。
【0056】
代替として、同じ位置について、同じプローブによって、しかし異なる撮像設定で、画像データを取得することが提供される。
【0057】
一実施例では、僧帽弁治療をターゲットとする標準的な僧帽弁画像が使用される。更に、左心耳をターゲットとする保存画像が使用される。
【0058】
左心耳の少なくとも近位部分を示すために必要な画像は、僧帽弁画像よりも少し広いものである必要がある。
【0059】
効果として、僧帽弁又は他の心臓インターベンションの文脈においていずれにせよ利用可能である画像データから情報を使用及び収集することが可能である。それは、僧帽弁プロシージャのターゲット構造に対する左心耳の近傍を使用する。
【0060】
一例では、余分な画像が回避される。更に、余分なプローブも回避される。
【0061】
詳細には示されていない例では、データプロセッサ14は、ユーザインターフェースを介したユーザ入力に基づいて、モデルベースのセグメンテーション、ディープラーニングセグメンテーション、及び手動セグメンテーションのグループのうちの少なくとも1つとして、セグメンテーションを提供するように構成される。
【0062】
一例では、圧力関連のフィーチャ導出がリアルタイムに又はライブモードで提供されない場合に、手動セグメンテーションが適用される。
【0063】
ディープラーニングセグメンテーションアプローチは、いわゆる解剖学的知能に焦点を当てており、トレーニングに基づいて、畳み込みニューラルネットワークがセグメンテーションを、例えばオンザフライで、すなわちリアルタイムで提供する。
【0064】
詳細には示されていない一例では、データプロセッサ14は、僧帽弁画像をセグメント化するように構成される。一実施例として、データプロセッサ14は、セグメンテーションをモデルにレジストレーションするように構成される。データプロセッサ14は、モデルの左心耳の位置指標に基づいて、僧帽弁画像における左心耳の位置を推定するように構成される。
【0065】
一例では、モデルベースのセグメンテーションが提供され、セグメンテーションはモデルであるので、モデルに対するレジストレーションは必要とされない。
【0066】
従って、モデルによる位置指標は、左心耳がどの場所で予想されうるかを推定するために使用される。一例では、この情報は、必要とされる画像内の領域を含むように視野を調整するために使用される。
【0067】
効果として、左心耳形状解析は、心房圧を推定するために提供される。
【0068】
左心耳幾何学的形状解析は、圧力関連値の圧力なしの決定によって提供される。
【0069】
図1に実施例として示される一例では、導出された少なくとも1つの関係を表示するように構成されたディスプレイ26が提供される。
【0070】
図2は、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するシステム100の一例を概略的に示す。システム100は、被検体の心臓の僧帽弁の画像データを提供するように構成された超音波撮像装置102を有する。システム100は、前述の例のうちの1つによる装置10の例を更に有する。超音波撮像装置102は、心臓の第1及び第2の超音波画像20、22を提供する。例えば、超音波撮像装置102は、超音波トランスデューサ104を有する。
【0071】
一例では、超音波撮像装置102は、第1及び第2の超音波画像を取得するための経食道撮像プローブを有する。例えば、超音波トランスデューサ104が、経食道撮像プローブとして提供される。経食道撮像プローブは、TEEプローブとも呼ばれる。
【0072】
別の例では、詳細には示されていないが、超音波撮像装置102は、第1及び第2の超音波画像を取得するための外部超音波撮像プローブを有する。
【0073】
一例では、いわゆる「v波」は、漸進的な充填から生じ、僧帽弁逆流は、より高いv波をもたらし得る。従って、一例では、v波は、僧帽弁逆流の重症度を推定するための臨床パラメータとして、及び療法による改善を推定するための臨床パラメータとして、提供される。
【0074】
一例では、左心耳サイズに対する圧力の効果は、例えば、心房スチフネス/コンプライアンスに応じて、被検体間で変化する。しかしながら、同じ被検体については、相対的変化を評価することが提供される。
【0075】
一実施例では、セグメンテーションユニットは、左心耳が超音波視野内に適切にあるかどうかを検出する。これは、例えば、モデルベースのセグメンテーションアプローチの場合、以下のように達成されることができる:メッシュのどの頂点/三角形が左心耳に属するか(又はそれぞれの測定に必要であるか)は、知られている。これらの頂点のうちどの割合pがFOVの内側(又はFOV境界からのある安全マージンの内側)にあるかを決定することができる。pが特定の閾値(例えば、80%)を下回る場合、警告がディスプレイ上に表示されることができる。
【0076】
一例によれば、全体的なベースライン負荷条件は、逆流に対するサイズ変化に影響を及ぼし得る。そのような効果は、心周期の他の点における左心耳の直径/幾何学的形状から推測され得る。一例では、処置前/処置後のv波高を比較する場合、最小サイズ(v波の前)が、ベースライン圧力のインジケータとして使用される。また、他の例では、心房収縮中のa波の高さは、異なる負荷条件のインジケータとして提供される。
【0077】
更に、全体的な負荷条件の変化が、心周期の他の点、例えば心房収縮中のa波の高さにおける左心耳直径から推測され得ることに留意されたい。
【0078】
図3は、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定する法200の一例の基本ステップを示す。方法200は、以下のステップを有する:第1のステップ202において、第1の状態にある心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第1の超音波画像が提供される。第2のステップ204において、第2の状態にある心臓の左心耳の少なくとも近位部分を含む心臓の第2の超音波画像が提供される。第1の状態は、心臓の左心房の第1の圧力状態に関連し、第2の状態は、心臓の左心房の第2の圧力状態に関連し、第2の圧力状態は、第1の圧力状態とは異なる。第3のステップ206において、第1の超音波画像がセグメント化され、左心耳の少なくとも一部の第1のセグメンテーションが生成される。更に、第2の超音波画像もセグメント化され、左心耳の少なくとも一部の第2のセグメンテーションを生成する。第4のステップ208では、第1のセグメンテーションから、左心耳に関連する少なくとも1つの第1の解剖学的測定値が決定され、第2のセグメンテーションから、左心耳に関連する少なくとも1つの第2の解剖学的測定値が決定される。第5のステップ210において、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係が導出される。第6のステップ212において、導出された少なくとも1つの関係は、僧帽弁の圧力関連パラメータのインジケータとして提供される。
【0079】
第1のステップ202及び第2のステップ204は、共通のステップとして、又は共通のステップの2つのサブステップとして提供されることができる。2つのセグメンテーションを有する第4のステップ208は、2つのセグメンテーションサブステップとして提供されることもできる。
【0080】
方法200の一例では、少なくとも1つの関係は、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との間の相対的な差を含む。
【0081】
一実施例において、導出された少なくとも1つの関係は、僧帽弁逆流のインジケータとして提供される。
【0082】
方法200の一例では、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、1つの圧力曲線上の第1の点及び第2の点に関連する。第2の点は、第1の点とは異なる。
【0083】
方法200の一例では、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、心臓治療の第1段階における圧力状態及び心臓治療の第2の段階における圧力状態に関連する。第2段階は、第1段階よりも心臓治療の進行に関して異なる。任意には、第1の圧力状態及び第2の圧力状態は、心周期の同じ部分に関連する。
【0084】
方法200の一例では、心臓治療の第1段階は、心臓治療の前の段階に関し、心臓治療の第2の段階は、心臓治療の後の段階に関する。方法200の別の例では、心臓治療の第1段階は、心臓治療の前の段階に関し、心臓治療の第2の段階は、心臓治療中の段階に関する。方法200の他の例では、心臓治療の第1段階は、心臓治療中の段階に関し、心臓治療の第2の段階は、心臓治療後の段階に関する。方法200の他の例では、心臓治療の第1段階は、心臓治療中の第1段階に関し、心臓治療の第2の段階は、心臓治療中の第2の段階に関する。
【0085】
方法200の一例では、i)について、第1の圧力状態は、心房圧力曲線上の第1の点に関連し、第2の圧力状態は、心房圧力曲線上の第2の点に関連する。第1の点は、心房圧曲線のa波部分の第1のピークであり、第2の点は、心房圧曲線のv波部分の第2のピークである。更に、少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係は、第1のピークと第2のピークとの間の相対的な差の決定を含む。これは、任意には、心房圧曲線の振幅に関連して提供することができる。
【0086】
方法200の一例では、心房圧曲線上の第1の点及び第2の点を決定するために心電図が提供される。
【0087】
一例では、心電図(ECG)は、点の大まかな位置を提供するが、曲線上の実際の点又は位置、例えば、ピークは、その点からわずかに、例えば、点から少しずれていることがある。従って、ECGは、ほとんど又はすべての解剖学的測定値が考慮されるサーチ領域を提供し、それらから、例として、最大値が選択される。領域内では、(近傍値間の平均化によって)曲線を平滑化してピークを決定し、又は解剖学的測定値に(ガウスのような)曲線をフィッティングし、それからピークの高さを決定したりするような、拡張計算を提供することも可能である。方法200の一例では、ii)について、治療の前後の圧力状態は、心房圧曲線のv波部分のピークに関連する。少なくとも1つの第1の解剖学的測定値と少なくとも1つの第2の解剖学的測定値との少なくとも1つの関係は、治療前の心房圧曲線のv波部分のピークと、治療後の心房圧曲線のv波部分のピークとの決定を含む。決定のために、治療前の心房圧曲線のv波部分のピークについて第1の幾何学的測定値が提供され、治療後の心房圧曲線のv波部分のピークについて第2の幾何学的測定値が提供される。
【0088】
方法200の一例では、第1の超音波画像及び第2の超音波画像は、心臓の僧帽弁領域を更に有する。
【0089】
一実施例では、第1及び第2の超音波画像は、i)僧帽弁プロシージャによって提供され、心臓の僧帽弁の圧力関連値を決定するために使用される。他の実施例では、第1及び第2の超音波画像は、ii)僧帽弁プロシージャのために提供される。
【0090】
方法200の一例では、セグメンテーションは、モデルベースのセグメンテーション、深層学習セグメンテーション、及び手動セグメンテーションのグループのうちの少なくとも1つとして提供される。
【0091】
方法200の一例では、僧帽弁画像がセグメント化される。方法200の実施例として、僧帽弁画像セグメンテーションをモデルとレジストレーションすることが提供される。僧帽弁画像における左心耳の位置は、モデルの左心耳の位置指標に基づいて推定される。
【0092】
効果として、上記の解決策は、心臓超音波画像から直接、v波高及びv波高の変化のサロゲートを定量的に推定することを可能にする。これは、主に受動的構造である、すなわち、無視できる自己収縮を伴う、左心耳からの情報を活用し、その空間的広がりを記述する適切な幾何学的パラメータが、心房圧のインジケータとして役立ち得るようにする。そのようなパラメータの可能な例は、左心耳内の様々な位置における直径及び断面積、左心耳ボリューム、又は、v波の追跡に最も関連する心周期全体にわたる左心耳の変化をキャプチャするように特に設計された(及び潜在的に訓練された)より複雑な量である。
【0093】
図4は、示された解剖学的測定値44を有するセグメンテーションモデル42における左心耳40の表現の一例を示す。例えば、第1の解剖学的測定値44iは第1の直径「0」として示され、第2の解剖学的測定値44iiは第2の直径「1」として示され、第3の解剖学的測定値44iiiは第3の直径「2」として示される。他の直径は、解剖学的測定値44iv、44v、及び44viとして示される。セグメンテーションモデル42は、メッシュモデルに基づいて提供されることができる。メッシュは、他の解剖学的情報、例えば、解剖学的測定のための適切な位置(番号付けされたリングとして示される)を担持することができる。
【0094】
急性僧帽弁逆流の圧力曲線の例を
図5に示す。圧力は縦軸52に示され、横軸54は時間を示す。第1の曲線56は、収縮中の心室圧(収縮期)を示す。第2の曲線58は、僧帽弁逆流による顕著なv波を有する心房圧を表す。第1のピークは「a波」で示され、第2のピークは「v波」で示される。
図5から分かるように、僧帽弁の圧力関連状態を結論付けるために、a波とv波との関係をとることができる。心房圧に顕著なV波が検出された場合、導出された指標は、僧帽弁逆流の状況であるというそれぞれの情報を提供する。そのような圧力変化は、解剖学的画像によって可視化され、すなわち検出される。
【0095】
図6は、心周期中の近位左心耳のサイズ曲線を有する図として60を示す。心周期にわたるサイズ変化が可視であり、サイズの局所的最大値は、心房圧の予想される局所的最大値と一致する。縦軸62は面積値を示し、横軸64は時間を示す。曲線66は、経時的なサイズ変化の結果を示す。変動が生じたとしても、それぞれの関係が検出されることができ、僧帽弁の圧力関連パラメータのそれぞれの指標が生成され、有用な情報としてユーザに提供されることができる。
【0096】
一例では、画像セグメンテーション方法が(モデルベースのセグメンテーションのように)適用され、心周期にわたる近位左心耳の直径の変化が測定される。v波の高さの推定値は、収縮期の最中のサイズ変化、例えば最小対最大直径によって与えられる。1つの測定が装置の配置の前に行われ、別の測定が配置の後に行われる場合、その差は、逆流がどの程度減少するかの指標として機能することができる。
【0097】
更に、別の例では、左心耳が僧帽弁の近くに位置するので、僧帽弁(MV)解剖学的構造及び左心耳の両方の共通のTEE取得が提供される。このように、一例では、1つの単一視野は、例えば、僧帽弁クリップの配置と、結果として生じる心房圧の変化との両方をキャプチャすることができる。
【0098】
一例では、取得ユニットを有するシステムが提供される。取得ユニットは、一連の超音波画像を取得し、又はそのような一連の超音波画像を別の装置から受信する。取得ユニットは、したがって、超音波システムとして提供されることができ、又は超音波システムに接続されることができる。
【0099】
一例では、セグメンテーションユニットを有するシステムが提供される。セグメンテーションユニットは、画像内の心臓構造を検出し、解析するように構成される。一例では、モデルベースセグメンテーション(MBS)が提供され、平均モデルが画像に漸進的に適応される。このアプリケーションのために、モデルベースのセグメンテーションモデルは、近位左心耳の表現を含む。メッシュトポロジは固定されることができ、すなわち、特定の頂点及び三角形が固定されることができるので、メッシュは、他の解剖学的情報、例えば、解剖学的測定のための適切な位置に沿って運ぶことができる。
【0100】
代替の実装形態は、畳み込みニューラルネットワーク又は深層学習のようなアプローチに基づくことができる。
【0101】
一例では、測定ユニットを有するシステムが提供される。測定ユニットは、セグメンテーション結果から関連する解剖学的尺度を導出するために提供される。例えば、近位左心耳の局所的な直径又は断面積などの幾何学的パラメータを抽出するために、メッシュは、符号化された位置で解析されることができる。適応モデルから抽出された左心耳断面積の時間経過が使用されることができる。一例では、心周期にわたるサイズ変化が可視であり、サイズの局所的最大値は、心房圧の予想される局所的最大値と一致する。加えて、より複雑な量が導出されることもできる。例えば、一例において、左心耳の異なる位置/深さにおけるサイズ測定値を組み合わせることで、実際の圧力曲線との対応関係を更に高めることができる。
【0102】
別の例において、機械学習アルゴリズムが提供され、機械学習アルゴリズムは、セグメンテーション出力の幾何学的パラメータと実際の圧力測定値を用いて、メッシュからの幾何学的測定値(例えば、導出された直径又は頂点座標のセット自体)を組み合わせて、V波の高さと良好に相関するように特別に設計された、より複雑な量を導出するように訓練される。
【0103】
別の例では、例えば、画像を入力とし及び圧力関連量を出力とするエンドツーエンド学習アプローチを使用して、セグメンテーションユニットと測定ユニットとを組み合わせることが提供される。
【0104】
一例では、出力ユニットを有するシステムが提供される。出力ユニットは、導出されたサイズ曲線が表示されるディスプレイとして、又は、被検体モニタのような接続されたシステムに値を転送することができるインタフェースとして、又は、それらが表示されるカテラボテーブルの上部のディスプレイとして機能するように構成される。
【0105】
用語「被検体」は、個人として称されることができる。「被検体」はまた、患者とも称されることができるが、この用語は任意の疾患又は病気が対象に実際に存在するかどうかを示していないことに留意されたい。
【0106】
一例では、使用時に、超音波装置のオペレータは、左心耳を含むように指示される必要がある。別の例では、システムはまた、測定されたサイズ曲線を表示し、医師が結果をダブルチェックすることを可能にする。
【0107】
例えば、本ソリューション及びその例は、Philips EchoNavigator又はTomtec Arenaのような製品などの診断及び介入超音波用途に適しているが、他の製造業者及びベンダからの他の製品にも適している。
【0108】
本発明の別の例示的な実施形態において、適切なシステム上で、前述の実施形態のうちの1つによる方法の方法ステップを実行するように適応されることを特徴とするコンピュータプログラムが提供される。
【0109】
従って、コンピュータプログラムは、コンピュータユニットに記憶されることができ、又は2以上のコンピュータユニットにわたって分散されてもよく、後者の形態もまた本発明の実施形態の一部である。この計算ユニットは、上述の方法のステップを実行する又はその実行を誘導するように構成されることができる。更に、それは、上述の装置のコンポーネントを動作させるように構成されてもよい。計算ユニットは、自動的に動作するように、及び/又はユーザのオーダを実行するように、構成されることができる。コンピュータプログラムは、データプロセッサの作業メモリにロードされることができる。従って、データプロセッサは、本発明の方法を実行するように装備されることができる。
【0110】
本発明の態様は、コンピュータ可読記憶装置上に記憶されたコンピュータによって実行可能なコンピュータプログラム命令の集合でありうるコンピュータプログラム製品において実現されることができる。本発明の命令は、スクリプト、解釈可能プログラム、ダイナミックリンクライブラリ(DLL)又はJavaクラスを含むが、これらに限定されない、任意の解釈可能又は実行可能コードメカニズムあってもよい。命令は、完全な実行可能プログラム、部分的な実行可能プログラム、既存のプログラムに対する修正(例えば、更新)又は既存のプログラムに対する拡張(例えば、プラグイン)として提供されることができる。更に、本発明の処理の一部は、複数のコンピュータ又はプロセッサに分散させることができる。
【0111】
上述のように、処理ユニット、例えばコントローラは、制御方法を実現する。このコントロールは、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、様々な方法で実現されることができる。プロセッサは、必要とされる機能を行うために、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされる1又は複数のマイクロプロセッサを用いるコントローラの一例である。しかしながら、コントローラは、プロセッサを用いて又は用いずに実現されることができ、また、幾つかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(1つ以上のプログラムされるマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組み合わせとして実現されることができる。
【0112】
本開示の様々な実施形態に用いられるコントローラの構成要素の例は、これらに限定されないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0113】
本発明のこの例示的な実施形態は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラムと、最新の手段によって現存するプログラムを本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムとの両方を包含する。
【0114】
更に、コンピュータプログラムは、上述の方法の例示的な実施形態のプロシージャを実行するために必要なすべてのステップを提供することができる。
【0115】
本発明の更なる例示的な実施形態によれば、CD-ROMのようなコンピュータ可読媒体が提示され、そのコンピュータ可読媒体は、その上に記憶されたコンピュータプログラムを有し、そのコンピュータプログラムは、上野セクションで説明される。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの部分として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶され及び/又は配布されることができるが、インターネット又は他の有線もしくは無線通信システムを介してなど、他の形態で配布されてもよい。
【0116】
しかしながら、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワークを通じて提示されることもでき、そのようなネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードされることもできる。本発明の更なる例示的な実施形態によれば、コンピュータプログラムをダウンロード可能にする媒体が提供され、このコンピュータプログラムは、先に説明した本発明の実施形態の1つによる方法を実行するように構成される。
【0117】
本発明の実施形態は、それぞれ異なる主題を参照して説明されていることに留意されたい。特に、いくつかの実施形態は、方法タイプの請求項に関して説明され、他の実施形態は、装置タイプの請求項に関して説明される。しかしながら、当業者であれば、上記及び下記の説明から、特に断りのない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関する特徴間の任意の組み合わせも、本出願で開示されることを理解するであろう。しかしながら、すべての特徴が、組み合わされて、特徴の単純な合計よりも高い相乗効果を提供することができる。
【0118】
本発明は、図面及び前述の説明において図示され、詳細に説明されているが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示及び従属請求項の検討から、請求項に記載の発明を実施する際に当業者によって理解され達成されることができる。
【0119】
請求項において、単語「有する、含む(comprising)」は、他の構成要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項において言及されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】