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特表2024-544650ベータ-グルコシダーゼとその補因子を利用した二糖類の産生方法および産生された二糖類を含むトリコデルマ属菌株の酵素産生の誘導のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ベータ-グルコシダーゼとその補因子を利用した二糖類の産生方法および産生された二糖類を含むトリコデルマ属菌株の酵素産生の誘導のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/42 20060101AFI20241126BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20241126BHJP
   C12P 19/12 20060101ALI20241126BHJP
   C12P 19/14 20060101ALI20241126BHJP
   C13K 13/00 20060101ALI20241126BHJP
   C07H 3/04 20060101ALI20241126BHJP
   C12N 15/56 20060101ALN20241126BHJP
   C13K 7/00 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C12N9/42
C12N9/16 Z
C12N1/14 C
C12P19/12
C12P19/14 Z
C13K13/00
C07H3/04
C12N15/56 ZNA
C13K7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532555
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2022019160
(87)【国際公開番号】W WO2023101389
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168329
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168330
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンキュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ヒョンピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム,テクボム
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C057
【Fターム(参考)】
4B064AF03
4B064CA21
4B064CB07
4B064CD09
4B064CD10
4B064CE11
4B064DA20
4B065AA70X
4B065AC14
4B065AC15
4B065BB06
4B065BB16
4B065BC12
4B065BC13
4B065BC15
4B065CA31
4C057AA03
4C057BB03
(57)【要約】
本発明は、ベータ-グルコシダーゼとその補因子を利用した二糖類の産生方法、および産生された二糖類を含むトリコデルマ属菌株の酵素産生の誘導のための組成物に関し、具体的に、グルコース基質にベータ-グルコシダーゼとその補因子として二価金属イオンであるマンガンイオン(Mn2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、亜鉛イオン(Zn2+)または銅イオン(Cu2+)を添加する場合、二糖類の生成速度を高め、二糖類を高濃度で得ることができる。また、本発明の産生方法で製造された二糖類を高含有する組成物は、トリコデルマ属菌株の酵素産生を優秀に誘導する効果があるため、産生された二糖類を高濃度で活用した発酵工程を適用することでトリコデルマの酵素産生性向上を図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドまたはその異性体を含む、組成物。
【請求項2】
前記1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドまたはその異性体は、(1S)-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドまたは1-エピ-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、トレハロース、イソマルトースゲンチオビオース、セロビオース、ソホロースおよびマルトースからなる群より選択されるいずれか一つ以上をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、微生物の酵素産生を誘導し、および/または微生物が産生する酵素の活性を増加させるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記微生物は、トリコデルマ属菌株である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記微生物は、トリコデルマ・リーセイである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記酵素は、酸性セルラーゼ、キシラナーゼまたはフィターゼである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、単糖類含有量より二糖類含有量が高いものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物に含まれた二糖類含有量は、総組成物重量に対して30重量%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物に含まれた単糖類含有量は、総組成物重量に対して30重量%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
1)グルコースをベータ-グルコシダーゼと接触させるステップ;および
2)前記グルコースまたは前記ステップ1)の反応物に二価金属イオンを接触させるステップ;を含む、
微生物の酵素産生誘導用または微生物の酵素活性増加用組成物を産生する方法。
【請求項12】
前記ベータ-グルコシダーゼは、トリコデルマ属由来である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベータ-グルコシダーゼは、トリコデルマ・リーセイ由来である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記二価金属イオンは、マンガンイオン(Mn2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、亜鉛イオン(Zn2+)および銅イオン(Cu2+)からなる群より選択された1種以上である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物は、トレハロース、イソマルトース、セロビオース、マルトース、ゲンチオビオース、ソホロース、1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド、およびこれらの異性体、からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むものである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物は、トリコデルマ属菌株である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、二価カチオンが含まれたクロマトグラフィーを実施するステップをさらに含むものである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記クロマトグラフィーは、擬似移動床クロマトグラフィーである、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互引用]
本出願は、2021年11月30日付の韓国特許出願第10-2021-0168329号と2021年11月30日付の韓国特許出願第10-2021-0168330号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ベータ-グルコシダーゼとその補因子を利用した二糖類の産生方法および産生された二糖類を含むトリコデルマ属菌株の酵素産生の誘導のための組成物に関し、具体的には、ベータ-グルコシダーゼとその補因子として二価金属イオンを添加するステップにより、グルコース(glucose)からゲンチオビオース(gentiobiose)またはソホロース(sophorose)の二糖類の生成速度を高め、これにより、二糖類を高濃度で得ることができる方法に関する。また、産生された二糖類を高含有するトリコデルマ属菌株の酵素産生の促進のための組成物および前記組成物を利用した酵素産生方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ソホロース(sophorose)は、2分子のD-glucopyranosyl2-О-β結合をしている二糖類で、マルトース型二糖類の一種である。
【0004】
ゲンチオビオース(gentiobiose)は、β結合で連結されたD-グルコース2分子からなる二糖類で、アミグダロース(amygdalose)ともいう。白色の結晶性固体であって水やメタノールに溶け、酸またはβ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)を利用して加水分解すると、2分子のD-グルコースが生成される。
【0005】
ソホロースとゲンチオビオースのような二糖類は、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)の酵素産生誘導剤(inducer)として知られている。
【0006】
二糖類を産生するための有用な方法の一つとして、酵素による逆加水分解反応を利用する方法がある。オリゴ糖合成のための方法に使用される代表的な酵素としてベータ-グルコシダーゼがある。ベータ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)は、二つのグルコース(glucose)あるいはグルコースと他の置換された分子との間のベータ-1,4-グルコシド結合(beta-1,4-glycosidic bond)を加水分解してグルコースを放出する酵素で、様々なベータD-グルコシド(beta D-glucoside)系の基質に対する特異性が存在する一種のエキソセルラーゼ(exocellulase)である。しかし、酵素による逆加水分解反応は、平衡が加水分解方向に偏っているため、単糖類から二糖類への低い転換効率を有し、大規模産生が制限される問題点がある。
【0007】
多くの微生物が産生するセルラーゼは、誘導性酵素であり、セルロース、セロビオース、ラクトースまたはソホロースなどが良い誘導因子として報告されている(Antonov et al.Microb Cell Fact(2016)15:164)。
【0008】
繊維素分解酵素が生合成される過程は、誘導(induction)過程、および分解代謝産物抑制(catabolite repression)によって調節されることが知られている。具体的に、ソホロース、ゲンチオビオースまたはラミナリビオースは、Penicillium purpurogenum P-26菌株でセルラーゼ合成を誘導することが知られており(APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,Jan.1992,p.106-110)、トレハロースは、Clostridium papyrosolvens CFR-703菌株でセルラーゼ合成を誘導することが知られている(Process Biochemistry 37(2001)241-245)。これと共に、繊維素分解酵素の活性は、最終産物阻害(end product inhibition)によっても調節されるセルラーゼはセロビオースによって、そしてThermonospora fusca菌株とTrichoderma reesei菌株の場合にはβ-glucosidaseは、ブドウ糖によってそれぞれ阻害される。このような複雑な調節作用の結果、合成される繊維素分解酵素は、微生物の種類と培養条件によってその合成程度と構成成分が非常に多様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願第10-2021-0168329号
【特許文献2】韓国特許出願第10-2021-0168330号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Antonov et al.Microb Cell Fact(2016)15:164
【非特許文献2】APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,Jan.1992,p.106-110
【非特許文献3】Process Biochemistry 37(2001)241-245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド(1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)またはその異性体を含む組成物を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、
1)グルコース(glucose)をベータ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)と接触させるステップ;および
2)ステップ1の反応物に二価金属イオンを接触させるステップ;を含む微生物の酵素産生誘導用または微生物の酵素活性増加用組成物を産生する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、トレハロース(trehalose)、イソマルトース(isomaltose)、ゲンチオビオース(gentiobiose)、セロビオース(cellobiose)、ソホロース(sophorose)およびマルトース(maltose)の二糖類を含むトリコデルマ属菌株の酵素産生の誘導のための組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記二糖類を含むトリコデルマ属菌株の酵素産生の誘導のための組成物を利用して、トリコデルマ属菌株から酵素を産生する方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、酵素産生を誘導するための、トレハロース(trehalose)、イソマルトース(isomaltose)、ゲンチオビオース(gentiobiose)、セロビオース(cellobiose)、ソホロース(sophorose)およびマルトース(maltose)の二糖類を高含有する組成物の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明で開示されるそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの他の説明および実施形態にも適用される。すなわち、本発明で開示された様々な要素のすべての組み合わせが本発明の範囲内にある。また、下記記述された具体的な叙述によって本発明の範囲が制限されると見なされない。また、当該技術分野において通常の知識を有する者は、通常の実験だけを使用して、本発明に記載された本発明の特定様態に対する多数の等価物を認知したり確認することができる。また、これらの等価物は、本発明に含まれることが意図される。
【0017】
本発明は、一様態として、
1)グルコース(glucose)をベータ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)と接触させるステップ;および
2)グルコースまたはステップ1)の反応物に二価金属イオンを接触させるステップ;を含む微生物の酵素産生誘導用または微生物の酵素活性増加用組成物を産生する方法を提供する。
【0018】
ステップ1)の「グルコース(glucose)」は、液状グルコースまたはグルコース水溶液形態であってもよいが、これに限定されない。本発明のグルコースは、65~77%w/w、67~75%w/w、または69~73%w/wの濃度であってもよい。
【0019】
ベータ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)は、トリコデルマ属由来であってもよい。具体的に、本発明のベータ-グルコシダーゼは、トリコデルマ・リーセイ由来であってもよい。より具体的に、本発明のベータ-グルコシダーゼは、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
【0020】
微生物は、酵素を産生する微生物を意味し、微生物は、セルラーゼ、キシラナーゼまたはフィターゼ酵素を産生する微生物であってもよく、セルラーゼ、キシラナーゼおよびフィターゼ酵素を全て産生可能な微生物であってもよいが、これに制限されない。一具体例では、微生物は、トリコデルマ属菌株であり、より具体的にはトリコデルマ・リーセイ菌株であってもよい。
【0021】
ベータ-グルコシダーゼは、1,300~2、000U/ml、1,400~1,900U/ml、1,500~1,800U/ml、または1,550~1,740U/mlであるが、これに限定されない。
【0022】
二価金属イオンは、マンガンイオン(Mn2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、亜鉛イオン(Zn2+)および銅イオン(Cu2+)からなる群より選択された1種以上であってもよく、亜鉛イオン(Zn2+)および銅イオン(Cu2+)からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0023】
ステップ2)の「接触させるステップ」は、本明細書で用語「静置させるステップ」または「反応させるステップ」と同様の意味で使用され得る。
【0024】
ステップ2)の「接触」は、20~50rpm、25~45rpm、または28~42rpmで行うものであってもよいが、これに限定されない。
【0025】
ステップ2)の「接触」は、pH3.0~7.0、pH3.5~6.5、pH4.0~6.0、またはpH4.5~5.5で行うものあってもよいが、これに限定されない。
【0026】
ステップ2)の「接触」は、50℃~70℃、55℃~65℃、または57℃~63℃で行うものであってもよいが、これに限定されない。
【0027】
ステップ2)の「接触」は、5日以上行うものであってもよく、6日以上行うものであってもよく、7日以上行うものであってもよく、5日~22日間行うものであってもよく、または6日~21日間行うものであってもよいが、これに限定されない。
【0028】
産生された組成物は、トレハロース(trehalose)、イソマルトース(isomaltose)、セロビオース(cellobiose)、マルトース(maltose)、ゲンチオビオース(gentiobiose)、ソホロース(sophorose)、1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド(1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)、およびこれらの異性体、からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0029】
産生された組成物は、ゲンチオビオース(gentiobiose)およびソホロース(sophorose)を含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0030】
産生された組成物は、トリコデルマ属菌株の酵素産生または産生された酵素の発酵活性を優秀に誘導する効果がある。
【0031】
また、本発明の組成物を産生する方法は、二価カチオンを含むクロマトグラフィーを実施するステップをさらに含むことができる。
【0032】
本発明のクロマトグラフィーは、擬似移動床(Simulated Moving Bed;SMB)クロマトグラフィーであってもよい。
【0033】
本発明のクロマトグラフィーで二価カチオンは、カチオン交換樹脂が充填されたカラム形態で含むものであってもよい。
【0034】
本発明のクロマトグラフィーで二価カチオンは、カルシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオンのいずれか一つ以上であってもよい。
【0035】
本発明の擬似移動床クロマトグラフィーは、8個以上のカラムを含むものであってもよい。
【0036】
本発明の擬似移動床クロマトグラフィーは、50℃~70℃の水で溶離を実施するものであってもよい。具体的に、本発明の溶離は、55℃~65℃または58℃~62℃の水で実施することができる。
【0037】
他の様態として、本発明は、下記化学式1の構造を有する(1S)-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド((1S)-1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)を提供する。
【0038】
【化1】
【0039】
本発明は他の様態として、下記化学式2の構造を有する1-エピ-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド(1-epi-1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)を提供する。
【0040】
【化2】
【0041】
本発明はさらに他の様態として、1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド(1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)またはその異性体を含む組成物を提供する。
【0042】
組成物は、微生物の酵素産生を誘導し、および/または微生物が産生する酵素活性を増加させるものであってもよい。
【0043】
具体的に、1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドまたはその異性体は、(1S)-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドまたは1-エピ-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドであってもよい。
【0044】
本発明は一様態として、二糖類を高含有する酵素産生の誘導のための組成物を提供する。
【0045】
二糖類は、トレハロース(trehalose)、イソマルトース(isomaltose)、ゲンチオビオース(gentiobiose)、セロビオース(cellobiose)、ソホロース(sophorose)、マルトース(maltose)、1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド(1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)およびその異性体からなる群より選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0046】
本発明は、一様態として、トレハロース(trehalose)、イソマルトース(isomaltose)、ゲンチオビオース(gentiobiose)、セロビオース(cellobiose)、ソホロース(sophorose)およびマルトース(maltose)を含む微生物の酵素産生の誘導のための組成物を提供する。
【0047】
本明細書において、「酵素産生の誘導」は、微生物から産生される酵素の量を誘導することを意味し、「酵素産生の誘導」は、産生された酵素の発酵活性を測定して確認することができる。
【0048】
微生物は、トリコデルマ属菌株であってもよく、トリコデルマ・リーセイ菌株であってもよく、より具体的に、トリコデルマ・リーセイQM6a菌株であってもよいが、これに制限されない。
【0049】
酵素は、トリコデルマ属菌株が産生する酵素であってもよく、トリコデルマ・リーセイ菌株が産生する酵素であってもよく、より具体的に、トリコデルマ・リーセイQM6a菌株が産生する酵素であってもよいが、これに制限されない。
【0050】
酵素は、セルラーゼ(cellulase)、キシラナーゼ(xylanase)またはフィターゼ(phytase)であってもよく、好ましくはキシラナーゼであってもよい。
【0051】
トリコデルマ属菌株の酵素産生の誘導のための組成物は、1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド(1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)またはその異性体をさらに含むことができる。
【0052】
1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドまたはその異性体は、(1S)-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドまたは1-エピ-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシドであってもよい。
【0053】
1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド(1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)またはその異性体は、
1)グルコース(glucose)をベータ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)と接触させるステップ、および
2)グルコースまたはステップ1の反応物と二価金属イオンと接触させるステップ;を含む二糖類を産生する方法で製造されたものであってもよい。
【0054】
組成物は、単糖類含有量が低く、二糖類含有量が高いものであってもよい。
【0055】
組成物は、組成物に含まれた単糖類含有量よりも二糖類含有量が高いものであってもよく、二糖類含有量の増加は、擬似移動床(Simulated Moving Bed;SMB)クロマトグラフィーによって達成されるものであってもよい。
【0056】
組成物に含まれた単糖類含有量は、総組成物重量に対して、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、20重量%~45重量%、25重量%~45重量%、20重量%~40重量%、25重量%~40重量%、20重量%~35重量%、25重量%~35重量%、20重量%~30重量%、または25重量%~30重量%であってもよい。
【0057】
組成物に含まれた二糖類含有量は、総組成物重量に対して、27重量%以上、30重量%以上、33重量%以上、36重量%以上、39重量%以上、27重量%~50重量%、30重量%~50重量%、33重量%~50重量%、36重量%~50重量%、39重量%~50重量%、27重量%~45重量%、30重量%~45重量%、33重量%~45重量%、36重量%~45重量%、39重量%~45重量%、27重量%~42重量%、30重量%~42重量%、33重量%~42重量%、36重量%~42重量%、39重量%~42重量%、27重量%~40重量%、30重量%~40重量%、33重量%~40重量%、36重量%~40重量%、または39重量%~40重量%であってもよい。
【0058】
組成物に含まれたトレハロース(trehalose)の含有量は、総組成物重量に対して、2.5重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、2.5重量%~6重量%、3重量%~6重量%、4重量%~6重量%、2.5重量%~5重量%、3重量%~5重量%、または4重量%~5重量%であってもよい。
【0059】
組成物に含まれたイソマルトース(isomaltose)の含有量は、総組成物重量に対して、4.5重量%以上、5重量%以上、4.5重量%~7重量%、5重量%~7重量%、4.5重量%~6重量%、または5重量%~6重量%であってもよい。
【0060】
組成物に含まれたゲンチオビオース(gentiobiose)の含有量は、総組成物重量に対して、15重量%以上、17重量%以上、19重量%以上、21重量%以上、15重量%~28重量%、17重量%~28重量%、19重量%~28重量%、21重量%~28重量%、15重量%~25重量%、17重量%~25重量%、19重量%~25重量%、21重量%~25重量%、15重量%~23重量%、17重量%~23重量%、19重量%~23重量%、または21重量%~23重量%であってもよい。
【0061】
組成物に含まれたセロビオース(cellobiose)の含有量は、総組成物重量に対して、1.9重量%以上、2.0重量%以上、2.1重量%以上、2.2重量%以上、1.9重量%~3.0重量%、2.0重量%~3.0重量%、2.1重量%~3.0重量%、2.2重量%~3.0重量%、1.9重量%~2.7重量%、2.0重量%~2.7重量%、2.1重量%~2.7重量%、2.2重量%~2.7重量%、1.9重量%~2.5重量%、2.0重量%~2.5重量%、2.1重量%~2.5重量%、または2.2重量%~2.5重量%であってもよい。
【0062】
組成物に含まれたソホロース(sophorose)の含有量は、総組成物重量に対して、1.4重量%以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.4重量%~3.0重量%、1.5重量%~3.0重量%、1.6重量%~3.0重量%、1.7重量%~3.0重量%、1.4重量%~2.5重量%、1.5重量%~2.5重量%、1.6重量%~2.5重量%、1.7重量%~2.5重量%、1.4重量%~2.0重量%、1.5重量%~2.0重量%、1.6重量%~2.0重量%、または1.7重量%~2.0重量%であってもよい。
【0063】
組成物に含まれているマルトース(maltose)の含有量は、総組成物重量に対して、2.6重量%以上、3.0重量%以上、3.4重量%以上、3.7重量%以上、2.6重量%~5.0重量%、3.0重量%~5.0重量%、3.4重量%~5.0重量%、3.7重量%~5.0重量%、2.6重量%~4.6重量%、3.0重量%~4.6重量%、3.4重量%~4.6重量%、3.7重量%~4.6重量%、2.6重量%~4.2重量%、3.0重量%~4.2重量%、3.4重量%~4.2重量%、3.7重量%~4.2重量%、2.6重量%~3.9重量%、3.0重量%~3.9重量%、3.4重量%~3.9重量%、または3.7重量%~3.9重量%であってもよい。
【0064】
組成物はオリゴマー(oligomer)をさらに含むことができる。
【0065】
組成物に含まれたオリゴマー含有量は、総組成物含有量に対して、29重量%~35重量%、29重量%~34重量%、29重量%~33重量%、30重量%~35重量%、30重量%~34重量%、30重量%~33重量%、31重量%~35重量%、31重量%~34重量%、32重量%~35重量%、または32重量%~34重量%であってもよいが、これに制限されない。
【0066】
本明細書の一実施例では、高い単糖類含有量と低い二糖類含有量を有する組成物(TGS)に比べて低い単糖類含有量と高い二糖類含有量を有する組成物(SMB分離液)が、優れた酵素発酵活性を示すことを確認した。したがって、トレハロース(trehalose)、イソマルトース(isomaltose)、ゲンチオビオース(gentiobiose)、セロビオース(cellobiose)、ソホロース(sophorose)およびマルトース(maltose)を高含有する組成物は、微生物の酵素産生の誘導用途に活用できる。
【発明の効果】
【0067】
本発明は、ベータ-グルコシダーゼとその補因子とを利用した二糖類の産生方法、および産生された二糖類を含む、トリコデルマ属菌株の酵素産生の誘導のための組成物に関し、具体的にグルコース基質にベータ-グルコシダーゼとその補因子、例えば二価金属イオンのマンガンイオン(Mn2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、亜鉛イオン(Zn2+)または銅イオン(Cu2+)等、を添加する場合、二糖類の生成速度を高め、二糖類を高濃度で得ることができる。また、本発明の産生方法で産生された二糖類を高含有する組成物は、トリコデルマ属菌株の酵素産生を誘導する優秀な効果があるため、産生された二糖類を高濃度で活用した発酵工程を適用することで、トリコデルマの酵素産生性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、本発明を実施例を通してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、一つ以上の具体的な例を例示的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるのではない。
【0069】
実施例1.二糖類組成物の製造
純度95%以上のグルコース粉末(含水結晶ブドウ糖、DAEJUNG CHEMICAL&METALS)をスチーム(steam)を利用して溶解し、71%w/w濃度のグルコース溶液40kgを製造した。製造されたグルコース溶液にβ-グルコシダーゼ(配列番号1)を1,650U/ml濃度で0.3kgを添加し、60℃、7日~21日間静置させて二糖類が含まれている組成物(Treated Glucose Syrup、TGS)を製造した。
【0070】
実施例2.二価金属カチオン添加を利用した二糖類組成物の製造
実施例1のグルコース溶液にβ-グルコシダーゼ(実施例1と同じ)を1,650U/ml濃度で0.3kgを添加し、さらに2価イオン[マンガンイオン(Mn2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、亜鉛イオン(Zn2+)および銅イオン(Cu2+)それぞれ]を1mM添加し、60℃、7日~21日間静置させて二糖類が含まれている組成物を製造した。
【0071】
実施例3.二糖類組成物に含まれた二糖類濃度および二価金属カチオン添加による二糖類増減率の増加確認
実施例1および2で製造された組成物において、二糖類であるトレハロース(trehalose)、イソマルトース(isomaltose)、マルトース(maltose)、セロビオース(cellobiose)、ゲンチオビオース(gentiobiose)およびソホロース(sophorose)の生成濃度(g/L)および増減率(%)を測定し、下記の表1および表2に示した。生成濃度は、電気化学検出器およびCarbo Pac PAIカラムが装着されたBio-LCシステム(Dionex ICS-3000,Sunnyvale,CA,United States)を使用して分析した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
実施例4.SMBクロマトグラフィーを活用した高純度多糖類の分離
実施例2で製造した組成物から単糖類を除去するために、擬似移動床(SMB:Simulated Moving Bed)クロマトグラフィーを利用した。SMBクロマトグラフィーは、Sequential Simulated Moving-bed System(Novasep、France)装備を使用し、装備は、連続的に接続された8個のカラム(各カラムの高さは95cm、直径は2.5cm)、供給物(feed)ポンプ、再循環ポンプ、溶離液ポンプ、熱交換器、流量制御のためのバルブを含む。SMBクロマトグラフィー運転条件は、下記表3に示し、SMBクロマトグラフィーによる分離実験結果を表4に示した。回収率測定方法は、混合物(TGS)に注入される二糖類および三糖類の量と、ラフィネートの二糖類および三糖類の量とをSMBクロマトグラフィーを用いて比較して、下記計算式を利用して回収率を計算した。
【0075】
回収率(%)=ラフィネート(糖含有量)/供給物(糖含有量)×100
*糖含有量=二糖類および多糖類の総量
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
SMBクロマトグラフィーによる分離実験結果、表4に示したように、カルシウムイオンを使用したラフィネート分画物中の二糖類および三糖類の純度は81~89%、回収率は89%レベルであることを確認した。
【0079】
実施例5.製造された二糖類成分のNMR分析
実施例2で製造された組成物に対するNMR分析のために、アセチル化(Acetylation)を行った。試薬(Reagents)は、酢酸無水物(Acetic anhydride)(extra pure、Junsei Chemical Co.)、塩化亜鉛(Zinc chloride)(Kanto Chemical Co.)を使用し、アセチル化試料の分離および分析のための設備条件は下記表5に示した。
【0080】
【表5】
【0081】
その結果、分析試料内で、従来知られた糖であるトレハロース(trehalose)、イソマルトース(isomaltose)、ゲンチオビオース(gentiobiose)、セロビオース(cellobiose)、マルトース(maltose)、ソホロース(sophorose)およびマルトース(maltose)を確認した。また、分析試料内に新規な糖である(1S)-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド((1S)-1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)または1-エピ-1-ヒドロキシグルシトール-D-グルコピラノシド(1-epi-1-hydroxyglucitol-D-glucopyranoside)が存在することを確認した。
【0082】
実施例6.グルコース溶液とグルコース溶液で二糖類が濃縮されたSMB分離液の糖含有量分析
実施例2で製造したTGSとそのSMB分離液の糖含有量を分析するために、下記のような実験を行った。SMB分離液は、実施例2で製造した二糖類組成物をSMBクロマトグラフィーを行って収得した実施例4のラフィネート分画物を収得したものである。
【0083】
具体的に、単糖類および二糖類濃度は、電気化学検出器およびCarbo Pac PAIカラムが装着されたBio-LCシステム(Dionex ICS-3000,Sunnyvale,CA,United States)を使用して糖含有量を分析し、下記表6に示した。カラムを30℃で0.1M NaOH(0~5分)で溶出した後、酢酸ナトリウム(0~0.2M)の直線勾配を1mL/分で5~35分間溶出した。
【0084】
【表6】
【0085】
その結果、表6に示されたように、TGSの単糖類含有量は45.08%、SMB分離液の単糖類含有量は28.04%であり、TGSに比べてSMB分離液の単糖類含有量が低いことが確認された。また、二糖類含有量の場合、TGSは26.36%、SMB分離液は39.37%であり、TGSに比べてSMB分離液の二糖類含有量が高いことを確認した。
【0086】
実施例7.組成物に含まれた二糖類含有量による酵素産生の誘導効果の確認
SMB分離液がトリコデルマ属菌株の酵素産生を誘導する効果が優れているか否かを確認するために、TGSとSMB分離液とを利用して酵素の発酵活性を下記のように測定した。
【0087】
具体的に、TGSまたはSMB分離液をそれぞれ培地に添加し、トリコデルマ属菌株を菌体濃度190または200g/Lになるように希釈した。pH4で28℃の条件下で168時間培養した後、酸性セルラーゼ酵素活性を測定して下記表7に示した。
【0088】
より具体的な酵素の発酵活性測定は、下記実施例7-1~7-3に示した。
【0089】
実施例7-1.酵素産生菌株の準備
酵素産生菌株としてそれぞれ酸性セルラーゼ活性(acid cellulase;4-β-D-glucan 4-glucanohydrolase EC 3.2.1.4)、キシラナーゼ(xylanase;1,4-β-D-xylan xylanohydrolase、EC3.2.1.8)、およびフィターゼ(phytase;3-phytases、EC3.1.3.8、6-phytases、EC3.1.3.26、and5-phytases、EC3.1.3.72)産生可能なトリコデルマ・リーセイQM6a菌株(ATCC13631)を準備した。各菌株をジャガイモデクストロース寒天プレートで30℃、5日間成長させて胞子を形成させた。胞子形成後、各菌株の胞子を滅菌NaCl溶液(9g/L)に再懸濁させ、30%の滅菌グリセロールを添加した。この混合物を-80℃で1.8mlチューブに保管した。
【0090】
実施例7-2.酵素産生菌株の流加培養
流加培養を利用した実施例7-1の各酵素を産生するトリコデルマ・リーセイQM6a菌株の培養は、DOを指標としてDOが上昇する時点に供給培地内の炭素源の供給速度を一時間当り5.0g/Lと一定に供給した。供給培地の供給は、ペリスタティックポンプ(peristatic pump)を利用して行った。この時、発酵培地成分は、炭水化物20.0g/L、硫酸アンモニウム5.0g/L、硫酸マグネシウム1.5g/L、塩化カルシウム0.5g/L、リン酸二カリウム5.0g/L、酵母抽出物10.0g/L、硫酸第二鉄10.0mg/L、塩化コバルト4.0mg/L、モリブデン酸ソーダ2.0mg/L、ホウ酸0.4mg/L、Tween 80 1.0g/Lで組成された。供給培地は、炭素源と酵母抽出物の重量比が1:0.01である炭水化物600.0g/L、酵母抽出物6.0g/L、塩化ナトリウム1.0g/Lで組成された。培地に含まれた炭水化物は、各酵素の活性実験でそれぞれTGSとSMB分離液を添加した。一方、発酵条件は、培養温度28℃で維持しながらアンモニア水を利用してpHを4.0に維持した。攪拌速度は、DO(溶存酸素量)制限が発生しないように600rpmに調節した。この時、種菌培養は、500ml三角フラスコにある150ml培地に1mlの凍結した胞子混合物を接種し、振とう機で28℃および200rpmで72時間前培養し、培養額の10%(v/v)を接種した。
【0091】
実施例7-3.酸性セルラーゼ活性分析
実施例7-2で収得した発酵液を遠心分離して、T.reesei細胞およびその他固体物質を除去した。培養上澄み液は酵素分析のために適切に希釈した。すべての酵素活性は、上澄み液mL当たり国際単位(IU)を使用して特定活性として表示した。1IUは、標準分析条件下(5mg/mL CMC、pH4.8、50℃)で1分間1μmolのD-glucoseを遊離させるのに必要な酵素の量として定義した。
【0092】
セルラーゼは、セルロースを加水分解して、特定温度およびpH条件で単糖類およびオリゴ糖を生成する。還元末端を有するオリゴ糖および還元基を有する単糖類は、高温の条件下でDNS試薬との色反応を経て、反応液の色の強度は、酵素加水分解によって生成された還元糖の量、および砂糖生成を減少させる量および反応に比例する。液体中のセルラーゼ活性は比例しており、セルラーゼ活性は、分光光度法により反応溶液の吸光度を測定することで計算することができる。
【0093】
【表7】
【0094】
その結果、表7に示されたように、TGSを添加した場合、酸性セルラーゼの平均活性は2822.5IU/mL、SMB分離液を添加した場合、酸性セルラーゼの平均活性は3890IU/mLであり、SMB分離液を添加した場合、酸性セルラーゼの平均活性がさらに37.8%増加することを確認した。
【0095】
実施例8.SMB分離液の酵素種類別の酵素産生誘導効果確認
SMB分離液がトリコデルマ属菌株の酵素産生を誘導する効果が、酵素の種類によって差があるかを確認するために、TGSとSMB分離液を利用して、キシラナーゼ(xylanase)とフィターゼ(phytase)の発酵活性を下記のように測定した。
【0096】
具体的に、TGSまたはSMB分離液をそれぞれ培地に添加し、トリコデルマ属菌株を菌体濃度240または250g/Lになるように希釈した。pH4で28℃の条件で168時間培養した後、キシラナーゼ(xylanase)とフィターゼ(phytase)の酵素活性を測定して下記表8に示した。
【0097】
より具体的に、実施例7-1および7-2に記載された菌株準備過程と培養過程と同様の方法で測定し、各酵素活性の分析は、下記の実施例8-1および8-2に示した。
【0098】
実施例8-1.中性キシラナーゼ活性の分析
実施例7-2で収得した発酵液を遠心分離してT.reesei細胞およびその他固体物質を除去した。培養上澄み液は、酵素分析のために適切に希釈した。すべての酵素活性は、上澄み液mL当たり国際単位(IU)を使用して特定活性として表示した。1IUは、標準分析条件(1% xylan、pH6.5、50℃)で1分間1μmolのD-xyloseを遊離させるのに必要な酵素の量として定義した。
【0099】
特定の温度とpH条件下でキシラナーゼは、キシランをオリゴ糖と単糖に分解する。末端が還元されたオリゴ糖と還元基を有する単糖類はDNS試薬と発色反応をする。反応溶液の色強度は、酵素加水分解によって生成された還元糖の量に比例し、生成された還元糖の量は、反応溶液内キシラナーゼの活性に比例するため、分光光度法でキシラナーゼの活性を計算することができる。
【0100】
実施例8-2.フィターゼ活性の分析
実施例7-2で収得した発酵液を遠心分離してT.reesei細胞およびその他固体物質を除去した。培養上澄み液は、酵素分析のために適切に希釈した。すべての酵素活性は、上澄み液mL当り国際単位(IU)を使用して特定活性として表示した。1IUは、37℃、pH=5.5条件下でのフィターゼ活性単位である、1分間5.0mmol/Lの濃度でフィチン酸ナトリウム溶液で1分間1μmolの無機リンを遊離させるのに必要な酵素の量として定義した。
【0101】
特定温度およびpH条件下でフィターゼは、基質であるフィチン酸ナトリウムを完全に加水分解して、オルトリン酸およびイノシトール誘導体を生成する。酸性溶液では、アンモニウムバナジウムモリブデートと黄色の化合物を形成することができ、これは415nmの波長で比色で測定することができる。
【0102】
【表8】
【0103】
その結果、表8に示されたように、TGSを添加した場合、中性キシラナーゼの平均活性は105,376IU/mL、SMB分離液を添加した場合、中性キシラナーゼの平均活性は144,716IU/mLであり、SMB分離液を添加した場合、中性キシラナーゼ発酵活性がさらに37.3%増加することを確認した。また、TGSを添加した場合、フィターゼの平均活性は25,312IU/mL、SMB分離液を添加した場合、フィターゼの平均活性は26,668IU/mLであり、SMB分離液を添加した場合、フィターゼ発酵活性がさらに5.4%増加したことを確認した。
【国際調査報告】