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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】移動支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532685
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2022083799
(87)【国際公開番号】W WO2023099538
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211278.3
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.MATLAB
3.PYTHON
4.SIMULINK
5.STATEFLOW
6.LABVIEW
(71)【出願人】
【識別番号】524203613
【氏名又は名称】ルーウォーク モビリティ ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【弁理士】
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】パルドウィッツ,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046AA25
4C046AA45
4C046AA47
4C046BB01
4C046BB17
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD12
4C046DD26
4C046DD32
4C046DD38
4C046DD39
4C046DD41
4C046DD45
(57)【要約】
本発明は、移動支援装置であって、フレームによって互いに接続された車輪のセットと、遠位アームと、近位アームと、遠位アームと近位アームとの間の第1の軸とを備え、遠位アーム及び近位アームは、第1の軸の周りに枢動可能に配置され、フレームに動作可能に接続されており、ユーザーを受け入れるハーネスが、第1の軸から長さL2で近位アーム上に設けられ、カウンターウェイトが、第1の軸から長さL1で遠位アーム上に設けられ、カウンターウェイト並びに長さL1及び長さL2の両方は、ユーザーの重量を少なくとも部分的に補償するように構成されており、移動支援装置は、制御ユニットを更に備え、車輪のセットは、少なくとも2つの自己平衡車輪を含み、制御ユニットは、逆振り子の原理に従って自己平衡車輪を制御するように構成されていることを特徴とする、移動支援装置に関する。更なる態様において、本発明は、少なくとも部分的な体重支持を提供しながら、ユーザーを支援し、意図的な動きを伝達するそのような装置を使用する方法に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動支援装置(100)であって、
フレーム(26)によって互いに接続された車輪のセット(30)と、
遠位アーム(14)と、
近位アーム(12)と、
前記遠位アーム(14)と前記近位アーム(12)との間の第1の軸(10)と、
を備え、
前記遠位アーム及び前記近位アームは、前記第1の軸(10)の周りに枢動可能に配置され、前記フレーム(26)に動作可能に接続されており、
ユーザー(32)を受け入れるハーネス(16)が、前記第1の軸(10)から長さL2で前記近位アーム(12)上に設けられ、
カウンターウェイト(18)が、前記第1の軸(10)から長さL1で遠位アーム(14)上に設けられ、前記カウンターウェイト(18)並びに前記長さL1及び前記長さL2の両方は、前記ユーザー(32)の重量を少なくとも部分的に補償するように構成されており、
前記移動支援装置(100)は、制御ユニット(36)を更に備え、前記車輪のセットは、少なくとも2つの自己平衡車輪(22、24)を含み、
前記制御ユニット(36)は、逆振り子の原理に従って前記自己平衡車輪を制御するように構成されていることを特徴とする、
移動支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動支援装置(100)であって、前記第1の軸(10)は、地面から高さh0に配置され、前記少なくとも2つの自己平衡車輪(22、24)は、前記地面からh0未満の高さに配置された第2の軸(20)の周りを回転するように構成されており、h0は、好ましくは0.3 m~1.2 mであり、前記第1の軸と前記第2の軸との間の高さの差Δhは、好ましくは少なくとも0.25 mである、移動支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移動支援装置(100)であって、前記第1の軸(10)の位置は、好ましくは0.2cm~6 cmだけ、前記第2の軸(20)に対してユーザー(32)の方向に前方にシフトされており、好ましくは、前記軸間の前記シフトは、前記第1の軸(10)が収容されるスロット(28)によって調整可能である、移動支援装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記遠位アーム(14)と前記近位アーム(12)との間に形成される地面対向角αは、180度以下、好ましくは90度~180度、より好ましくは120度~140度である、移動支援装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記装置は、前記近位アーム(12)、前記遠位アーム(14)、又は前記フレーム(26)の下にばね荷重方式で接続され、使用中に前記ハーネスが制御されずに落下するのを防止するように構成された支持車輪(38)を更に備える、移動支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の移動支援装置(100)であって、前記支持車輪(38)は、前記ユーザー(32)が、つま先立ち、歩行、しゃがみ、及び/又は這うことに対応する範囲内で自身の高さを変えることを可能にするように位置決めされる、移動支援装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記カウンターウェイト(18)は、5 kg~30 kg、好ましくは8kg~12 kgの質量を有する、移動支援装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記遠位アーム(14)上の前記カウンターウェイト(18)の位置は、好ましくはL1が少なくとも+/-1 cmだけ変化することができるように、自動的に可変である、移動支援装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記フレーム(26)は、前記車輪(30)の外側に配置され、前記車輪の間に自由な間隙を残す、移動支援装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記ハーネス(16)は、前記近位アーム(12)に枢動可能に接続され、好ましくは、前記ハーネス(16)と前記近位アーム(12)との間に緩衝器が設けられる、移動支援装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記フレーム(26)は、ボールジョイント(42)によって前記第1の軸(10)を収容する横方向部材に結合された左側部材及び右側部材を備え、前記ボールジョイントは、好ましくは、前記左側部材と前記右側部材との間の距離の変化に対応するように構成されたスロットを備える、移動支援装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記制御ユニット(36)は、前記ユーザーによって加えられた力を解釈し、閾値力未満であると検出された場合、及び/又は閾値持続時間未満にわたって加えられた場合、前記力を抑制又は無視するようにモーター及び/又はアクチュエータに命令するように構成されており、前記閾値力及び/又は前記閾値持続時間は、非自発的な動きに対応する、移動支援装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)であって、前記制御ユニット(36)は、センサーからのデータに基づいて、垂直線に対する前記近位アーム(12)及び/又は前記遠位アーム(14)の位置を決定することと、前記検知されたデータに応答して、前記カウンターウェイト(18)の位置を調整し、前記近位アームと前記遠位アームとの間の角度αを調整し、1つ以上のフレームジョイントの剛性を調整し、前記自己平衡車輪(22,24)の速度及び/又は方向を調整し、及び/又は前記支持車輪と前記フレームとの間のコネクタ(40)の剛性を調整することによって、ユーザー(32)の動きを抑制又は伝達することとを行うように構成されている、移動支援装置。
【請求項14】
請求項13に記載の移動支援装置(100)であって、前記制御ユニット(36)は、検知されたデータを解釈して、ユーザーの動きが自発的であるかどうかを判定し、自発的な動きのみを伝達するように構成されており、前記ユーザーの動きの伝達及び/又は抑制の程度は、好ましくは調整可能である、移動支援装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の移動支援装置(100)を使用する方法であって、少なくとも部分的な体重支持を提供しながら、前記装置によってユーザーの意図的な動きを伝達するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームを介してシーソーアセンブリに接続された自己平衡車輪を備える移動支援装置に関する。シーソーアセンブリは、一方の端部でユーザーを受け入れるように構成されており、他方の端部にカウンターウェイトを備え、カウンターウェイトは、ユーザーの重量を少なくとも部分的に補償するように構成される。自己平衡車輪は、逆振り子の原理に従って制御ユニットを介して互いに自立して制御される。装置は、有利には、歩行、跳躍、及び這うことを含む広範囲のユーザーの姿勢及び動きを支持することができる。さらに、制御ユニットは、装置及びユーザーを安定させて、安全な移動を可能にする。更なる態様において、本発明は、少なくとも部分的な体重支持を提供しながら、ユーザーを支援し、意図的な動きを伝達するそのような装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動支援装置は、身体障害、怪我、年齢又は病気のために正常な姿勢、歩き方又は歩行速度を維持することができない人を支援するために一般に使用されている。従来の移動支援装置の例としては、歩行用の杖、松葉杖、車椅子、歩行器、又はZimmerフレーム等の歩行用フレーム等が挙げられる。これらは、典型的には、ユーザーの既存の運動機能、例えば、上半身、具体的には、腕及び手に大きく依存して駆動されている。一般的に、その使用は、装置を駆動するのに十分な筋力及び運動制御能力をすでに有している大人又は年長の子供に限定されている。さらに、正常な速度での正常な歩行パターンを促進するものではない。先天的又は後天的な神経筋疾患が筋力、運動制御能力、バランス又は姿勢に影響を及ぼし、自立して立ったり歩いたりすることができないような、一般的に運動機能が低下しているユーザー、また、脳性麻痺の子供等、移動支援装置の駆動を腕に頼ることができない低年齢の子供には、これらの装置は特に適さない。
【0003】
移動の支援を必要とするユーザーの大部分は、長期的又は遺伝的な疾患を有する子供である。他のユーザーとしては、高齢者、虚弱者、怪我をした者又は脳卒中に罹患した者が挙げられる。主にそのような大人のユーザー、又は怪我をする前に移動の経験があるユーザーを対象とした市場には、大きな不均衡が存在している。子供の場合には、成長するにつれて学び、探求し、社会化するという全ての子供の一般的なニーズに、筋力及びバランスを改善する訓練という特別な要件が加えられる。長期的に身体的及び認知的発達機会の両方を確保するために、理想的には、定期的かつ自立した動きが幼少期から行われる必要がある。さらに、子供のニーズ及びサイズは、急速に変化する傾向がある一方で、一般的に、子供は、年配のユーザーと比較して筋力が低い。特に、脳性麻痺の場合、疾患の重症度に応じて、子供は、運動能力及び筋力が低下しているが、その動きの意図が外部の人が読み取って解釈できるには十分な程度である場合がある。1000人に約1人~4人の子供が脳性麻痺を持って生まれている。
【0004】
そのような移動が制限された人が、広範囲の動きの可能性を有する筋力、運動制御能力、バランス及び姿勢を発達させるのを支援するために、親、療法士又はアシスタントは、転倒しないように子供を部分的に持ち上げ、腰又は臀部を保持することによって真っ直ぐに保持する場合がある。同時に、罹患した人が手足のより良好な制御及び筋力を発達させることができるように、腕及び足がほぼ自由に保たれる場合がある。アシスタントは、その人の動きを観察及び解釈して、転倒又は痙攣運動等の望ましくない動きを抑制しながら、意図的に地面に屈み込む等の意図的な動きを支持する場合がある。これにはアシスタントへの高度な依存が必要となり、そのような人が目線の高さで自立して仲間と対話することを可能にするものではない。
【0005】
特に子供及びティーンエイジャーの場合、これは、社会的スキル等の他の領域におけるユーザーの発達に著しく影響を及ぼす可能性がある。他人による支援が絶え間なく必要であることは、ユーザーの自信を低下させるだけでなく、屋外エリア、学校、レジャー施設等の様々な場所及び活動へのユーザーのアクセスを制限する。多くの場合、子供及び/又は支援装置は、段差又は障害物を越えて介護者が運搬する必要がある。多くの場合に家族の一員である介護者に依存することは、ユーザーの家族環境に過大な負担をもたらす可能性がある。したがって、他人に過度に依存することにより、ユーザーは、身体的に発達しないだけでなく、自身の個性、興味、及び社会的関係を発達させることも妨げられる。
【0006】
したがって、アシスタントの役割を果たし、全体的に筋力が低下し、運動機能が低下し、かつ急速に疲労する傾向があるユーザーの移動を改善することを可能にする装置が開発されている。
【0007】
そのような装置の一例として、特許文献1は、ユーザーを直立に保持する前部と、ユーザーに対して持ち上げ力を提供する後部とを有し、後部が前部よりも重い電動移動支援具を開示している。前部と後部との間には、少なくとも1つの電動車輪が設置されている。したがって、この装置は、上り坂での歩行及びスキー等の活動中の疲労を低減することができる。しかしながら、この装置は、実質的に、1つの連続した方向及び速度で移動するように構成されている。特許文献1は、親指で動かされるスライダー等の制御要素を使用して装置の速度を調整することを提案している。これは、車輪への電動運動の速度を低下させることができるが、システムの慣性を低下させるものではない。曲がったり、加速したり、減速したりするためには、ユーザーは、所望の動きの変化をもたらすために装置の慣性に打ち勝つ必要がある。
【0008】
したがって、特にユーザーの上半身及び手において、装置を制御するために高度の運動能力が必要であることが暗黙的に示されている。曲がる際にはユーザーが力を加える必要があるため、高い筋力も要求される。特許文献1の装置は、ひざをついたり、立ち上がったりする等の他の姿勢の変更に関してもユーザーを支援していない。したがって、この装置は、正常な歩行を経験しており、高度の筋力及び運動能力を保持しているユーザーにのみ好適である。小さな子供等、これまで自立して歩いたことがない人に対しては、より広い範囲の動きに対するより高度な支持が必要である。
【0009】
更なる例として、特許文献2は、負荷を備える車輪付き装置を開示しており、負荷自体は、車輪を駆動するバッテリであり得る。この装置は、負荷によって引き起こされる慣性が追加されるため、ユーザーの歩行速度を安定させることができる。使用中、装置がユーザーの正面に来るようにユーザーが装置を押している場合、装置は、ユーザーが減速するときに引張力を、ユーザーが加速し始めるときに押圧力を生成することができる。負荷の位置に応じて、ユーザーの実効重量を変更することができる。ここで強調すべき重要なことは、この装置は依然として、例えば虚弱な高齢者であるとされるユーザーによって主に駆動及び制御されているということである。
【0010】
図10に示す特許文献2の特定の実施形態において、装置は、車輪の近くで装置の遠位端から延在するヒンジを備える。ヒンジは、ユーザーの実効重量を減少させるカウンターウェイトとして機能する負荷を備える。ユーザーは、装置の近位端を手で保持することができるが、代替的に、装置をユーザーに取り付けるベルト等を使用して、手を自由にしたままにすることができる。したがって、装置は、虚弱なユーザーに或る程度の負担軽減及び支援を提供することができる。図4に示す更なる実施形態において、特許文献2は、ユーザーが所望の歩行速度を設定する速度コントローラーを開示している。ユーザーは、歩行中に注意を払い、自分で速度を安全に制御する必要がある。制御ユニットにおけるユーザー介入の必要性とは別に、装置は、依然として、ユーザー自身の平衡機能及び運動機能に大きく依存している。装置は、例えば、ユーザーが曲がることを支援することができない。これは、負荷によって生じる慣性を克服することによって行う必要がある。ユーザーが、例えば、床から物体を拾い上げるために、しゃがむことを選択した場合、負荷が上昇される角度によっては、装置がユーザーを支持しなくなる。また、この装置は、しゃがむことと転倒とを区別することができる制御システムを有していないため、適度なバランスと良好な運動機能とを有するユーザーにのみ適している。
【0011】
運動能力が低下した人のために、ユーザーの実効重量を減少させ、かつ転倒を防止する装置も開発されている。一例として、Made for Movement社による「Hibbot」歩行支援具は、A字形フレーム内に配置されたロッドのセットを備えた受動(非電動式)装置であり、ロッド間には、起立位置に対応する高さに臀部支持ベルトが設けられている。ベルトは、空気圧式又はばね式のアームによってフレームに接続される。ベルトはユーザーの臀部を支持し、子供の歩行を訓練する際にアシスタントの手の代わりとなる。ロッドは、装置全体が前方に傾くことを防止し、安定した基部を提供するとともに、ベルトがロッド上に直接クリップ留めされ得るため、落下が防止される。この装置はまた、後方からユーザーに追従するように配置された一対の平行な車輪と、この車輪の後方で、この車輪の軸から延在してこの軸の周りに枢動するアーム上に配置されたカウンターウェイトとを備えている。カウンターウェイトは、ユーザーの実効重量を減少させ、筋緊張が弱い人が直立して歩くことを可能にする。この装置は、フレーム配置により、バランス及び移動が制限された人に対してより高い安全性を提供する。この装置はまた、ユーザー、典型的には脳性麻痺を有する子供が、目線の高さで仲間と対話し、手及び足が自由に保たれることにより、食事及び遊び等の活動に参加することを可能にする。
【0012】
しかしながら、特許文献2と同様に、カウンターウェイトを担持するアームの角度及び地面からの高さが低いことも、この装置によって提供される支持を制限している。ユーザーが屈み込んだ場合、カウンターウェイトは、ユーザーを再び持ち上げるのに十分な支持を提供しない。これが生じた場合には、大人の支援が必要となる。ベルトがロッドにクリップ留めされると、ユーザーの臀部の高さが狭い範囲内に効果的に固定されるため、ユーザーはもはやしゃがむこともつま先立ちすることもできなくなる。この装置は、ユーザーが前方、後方に移動する、又は左若しくは右に曲がる能動的な支援を提供しないため、安全性が向上しているにもかかわらず、支持することができる移動範囲は限られている。
【0013】
さらに、「Hibbot」歩行支援具には電動式支持体がないため、ユーザーは、少なくとも部分的に自分自身の重量及び装置の重量を担持する必要がある。ユーザー自身の重量が装置によって部分的に支持されることにより、ユーザーの実効体重に対する地面の反力が低下する。これにより、地面に対する足の水平力が低下する。ユーザーによって引っ張られる重量が増加し、地面に対するグリップが低下すると、滑る危険が発生する。また、装置の重量を引っ張る必要があることは、平坦でない地面の上を移動するとき、又は小さな障害物を乗り越えようとするときに、特に障害となる可能性がある。上り坂を歩く場合、ユーザーは、歩行速度を維持して疲労を防ぐために、別の大人からの支援が必要となる。下り坂を歩く場合、ユーザーは、安全に停止するために大人の支援が必要となる。
【0014】
子供がそのような装置を使用する場合には、子供は、大人が頻繁に能動的に介入し、更に厳重に監督する必要がある。大人の助けなしで子供ができる移動範囲は限られているため、地面から物を持ち上げたり、上に手を伸ばしたりする等、子供が周囲を効果的に探索することができなくなる。したがって、他人に大きな負担がかかることになる。
【0015】
ユーザーにより大きな支援を提供するために、電動装置も開発されている。一例は、ユーザーを訓練する歩行支援ロボットを開示する特許文献3であり、ロボットは、ユーザーを背後から追従する4つの車輪のセットによって担持される本体を備える。アームは、ユーザーの臀部についての取り付けベルトとともにロボットの本体から延在している。ベルト及びロボットには、正常な歩き方を促進するためにユーザーの動きを支持又は支援するように構成された多数のセンサーが取り付けられている。これを行うために、ユーザーの実質的に全ての手足の位置及び動きが監視され、解釈されている。ロボットの車輪もモーター駆動され、センサーからのフィードバックを使用して制御されている。ロボットは、センサーが転倒と一致する動きを検出すると、アーム及びユーザーを上方に移動させるように構成されている。
【0016】
しかしながら、ロボットのサイズが大きいため、旋回半径(turning circle)が大きくなり、日常的な環境での使用には適していない。さらに、ロボットは、歩行のみを訓練するときにユーザーを支持するように構成されている。他の動きのタイプは想定されていない。ロボットのサイズ及び4つの車輪の配置により、ユーザーがロボットを用いて地面の小さな障害物、敷居又は階段のセットを乗り越えることは不可能である。したがって、病院又はリハビリテーションセンター等の制御された環境での使用にしか適していない。アシスタントの負担はいくらか軽減される可能性があるが、それでも十分な監督が必要となる。
【0017】
従来技術の教示を考慮して起立、跳躍、及び屈み込む等の様々な上下の動きを適切に支持することができるとともに、旋回の動きを支持することができる移動支援装置を提供することについて改善の余地がある。長期的に身体的及び認知的な発達機会の両方を確保するために、理想的には、定期的かつ自立した動きが幼少期から行われる必要がある。特に、従来技術の装置は、典型的には、地面に屈み込んだ場合にユーザーを持ち上げたり、ユーザーが方向を変えるのを助けたり、及び/又は障害物を乗り越えたりするアシスタントを依然として必要としている。これは、博物館、映画館、スポーツセンター等の建物に、1段又は2段の段差でさえも乗り越えてアクセスしなければならない場合、重い装置で段差を乗り越える負担のために、装置のユーザーが事実上排除されてしまうことを意味する。したがって、高度な自立性を提供することはできない。
【0018】
これらの困難に鑑みて、ユーザー、特に長期的な疾患を有する子供を、綿密な監督又は支援を必要とすることなく広範囲の活動において支持することができる、改善された移動支援装置が緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国実用新案第202008017221号
【特許文献2】国際公開第2010/139936号
【特許文献3】特開2011/115323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、広範囲の姿勢及び動きを支持し、好ましくは子供に使用するように適合された、改善された移動支援装置を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施の形態は、従属請求項によって提供される。
【0022】
本発明は、移動支援装置であって、
フレームによって互いに接続された車輪のセットと、
遠位アームと、
近位アームと、
遠位アームと近位アームとの間の第1の軸と、
を備え、
遠位アーム及び近位アームは、第1の軸の周りに枢動可能に配置され、フレームに動作可能に接続されており、
ユーザーを受け入れるハーネスが、第1の軸から長さL2で近位アーム上に設けられ、
カウンターウェイトが、第1の軸から長さL1で遠位アーム上に設けられ、カウンターウェイト並びに長さL1及び長さL2の両方は、ユーザーの重量を少なくとも部分的に補償するように構成されており、
移動支援装置は、制御ユニットを更に備え、車輪のセットは、少なくとも2つの自己平衡車輪を含み、
制御ユニットは、逆振り子の原理に従って自己平衡車輪を制御するように構成されている、
移動支援装置に関する。
【0023】
本発明の目的のために、「シーソー」は、好ましくは、互いに整列されていてもいなくてもよい2つのビーム部分の間に設けられた単一の支点で支持された第1種てこである。ビーム部分はそれぞれ、負荷を担持するように構成される。この場合、第1の軸は支点であり、近位アーム及び遠位アームはビーム部分である。負荷は、カウンターウェイトと、ユーザーを担持するハーネスとを含む。
【0024】
本発明の目的のために、「ハーネス」は、好ましくは、ユーザーを装置に固定及び/又は支持する任意の手段である。これは、シート、ベルト、ストラップのセット、リュックサックタイプの構成、着用可能な衣服、外骨格等を含むことができる。
【0025】
本発明の目的のために、「ユーザーの重量の補償」は、好ましくは、ユーザーの重量の力とは反対の方向にユーザーの重心に作用する上向きの力を提供することを意味する。この上向きの力は、多くの場合に持ち上げ力と称される。「ユーザーの重量の補償」という用語はまた、本発明に関連して、「部分的な体重支持」という用語と交換可能に使用される。
【0026】
本発明の目的のために、「車輪のセット」は、少なくとも2つの自己平衡車輪を含む任意の数の車輪を含むが、第2の軸の周りを回転してもしなくてもよい支持車輪、サスペンション車輪等の他の車輪を更に含むことができる。
【0027】
垂直軸zは、重力の方向として定義することができる。これは、本明細書において、上下方向又は垂直方向とも称される。x軸は、ユーザーが歩く方向として定義することができる。これは、本明細書において、前後方向とも称される。y軸は、2つの自己平衡車輪がその周りを回転する第2の軸の長手方向として定義することができる。これは、本明細書において、左右方向又は横方向とも称される。
【0028】
本発明の目的のために、「自己平衡車輪」は、好ましくは、車輪付き倒立振り子システムとして機能する。そのようなシステムの一例は、Segway社の米国特許第6302230号において知られている。
【0029】
本発明において、各自己平衡車輪は、好ましくは、それ自体のモーター及びそれ自体のセンサーのセットを備える。好ましくは、各自己平衡車輪は、センサーのセットからの検知されたデータに基づいてモーターを駆動するそれ自体のコントローラーを備える。各自己平衡車輪によって担持される重量の重心は、倒立振り子として理論的にモデル化することができる。車輪付き倒立振り子システムにおいて、電動車輪の速度、加速度及び回転方向は、好ましくは、車輪軸線から垂直方向上方に延在する振り子が傾斜し、下方に揺動し、落下するのを阻止するよう制御される。振り子が車輪軸の上の垂直位置にあるとき、車輪付き倒立振り子システムは平衡されている。この垂直位置は不安定平衡位置と称される。これは、振り子の向きがずれた場合にシステムが戻そうとする目標位置になる。
【0030】
振り子は、x平面において車輪の前方又は後方で傾斜及び落下を開始することができる。x平面は、好ましくは、x軸及びz軸に及ぶ平面として定義される。振り子と、車輪の中心と、x平面における垂直位置との間の角度は、好ましくは、センサーのセットによって検出される。車輪は、振り子が傾斜して落下する方向に駆動して、落下を防止し、振り子の向きを垂直位置に戻す。
【0031】
この場合、振り子の重量は、自己平衡車輪自体の重量、フレーム及びシーソーの重量、並びにユーザーの重量を少なくとも部分的に含むことができる。ユーザーは、通常、車輪とは別個に地面との接触を維持し、通常、ユーザーの足の少なくとも半分は、ユーザーが振り子の向きに意図的に影響を及ぼすことができるように、地面上にある。さらに、地面との接触に起因して、通常、ユーザーの重量の一部のみが、仮想的な倒立振り子の重量に寄与する。
【0032】
好ましくは、自己平衡車輪は、逆振り子の原理に従って互いに自立して制御することができる。本明細書で使用される場合、「逆振り子の原理による自己平衡車輪のそれぞれの自立した調節」という用語は、好ましくは、各自己平衡車輪が、好ましくは自立した車輪付き倒立振り子システムとして機能することを意味する。追加の包括的な制御方法及び車輪間の協調は、ここでは除外されない。したがって、x平面内の落下する振り子の角度位置は、好ましくは、各車輪についてのセンサーのセットによって検出され、各車輪は、上述のように振り子を垂直位置に戻すために必要な方向に必要な速度で駆動する。
【0033】
好ましくは、装置のフレームは、ユーザーが自身の重心を横方向に、すなわちy平面内で移動させると、各自己平衡車輪の上方のx平面内の振り子の角度位置が変化するように構成される。これを達成するために、シーソーを担持するフレームは、各自己平衡車輪の回転中心から実質的に上方に延在することができる。フレームの上方に延在する部材の垂直位置からの角度θは、好ましくは、x平面内で変化させることができる。好ましくは、フレームは、フレームの上向きに延在する部材の角度θが、装置の一方の側面と他方の側面との間で自立して変化することができるように構成されており、その結果、x平面における振り子の向きは、各自己平衡車輪に対して異なる場合がある。次いで、各自己平衡車輪は、振り子をその垂直位置に戻すように、他方から自立して作動させることができる。好ましくは、ユーザーが横方向に曲がる方向は、旋回の方向に位置決めされた車輪に接続されたフレーム部材の角度θのより小さいずれをもたらす。ユーザーの反対側の車輪は、好ましくは、より大きい角度θを有し、平衡を保つ。より小さい角度θを有する自己平衡車輪は、好ましくは、より大きい角度θを有する自己平衡車輪と比較して、前方方向により遅く回転するか、又は後方方向に移動する。
【0034】
2つのそのような自己平衡車輪が互いに関連して使用された場合、旋回動作は、好ましくは、2つの車輪間の速度又は方向の差によってもたらされる。2つの自己平衡車輪の回転軸の中心は、好ましくは、それらを一緒に接合するフレームによって等距離に保たれる。したがって、旋回の半径は、好ましくはほぼゼロとなる。
【0035】
有利には、本発明による移動装置に関して、各自己平衡車輪は、既製品として提供されていてもよい。典型的には、市販の自己平衡車輪の場合と同様に、各自己平衡車輪は、車輪内又は車輪ケーシング内に収容された、それ自体のセンサーのセット及びそれ自体のプロセッサを備えることが好ましい場合がある。各車輪はまた、モーターを備えることができる。各プロセッサは、他方の車輪から自立して、逆振り子の原理に従ってそれぞれの車輪のモーターを制御することができる。代替的に、自己平衡車輪は、カスタム設計で提供されてもよく、別個のプロセッサが各車輪に提供されるか、又は共通のプロセッサが、逆振り子の原理に従って自己平衡車輪のそれぞれの自立した調節を可能にする。追加の又は代替のプロセッサを使用して、自己平衡車輪に或る程度の依存度を与え、及び/又はそれらの間の動きを調整することができる。
【0036】
本発明の意味において、「制御ユニット」は、好ましくは、逆振り子の原理に従って当該車輪に設けられたセンサーからのデータに基づいて自己平衡車輪のそれぞれを調節する1つ以上のプロセッサを備える。好ましくは、制御ユニットは、第1の自己平衡車輪の第1のプロセッサと、第2の自己平衡車輪の第2のプロセッサとを備えてもよく、第1のプロセッサ及び第2のプロセッサのそれぞれは、好ましくは、それぞれの車輪に関するセンサーのセットからデータを受信し、検知されたデータを使用して、装置の安定性を維持するために要求される補正動作を決定し、1つ以上の車輪モーターに補正動作を行うように命令する。
【0037】
好ましくは、制御ユニットは、各自己平衡車輪のプロセッサを監視し、それらの間の補正動作を調整するように構成された第3のプロセッサを備えることができる。第3のプロセッサは、好ましくは、車輪の外側の更なるセンサーからデータを受信するように、及び/又は検知されたデータに基づいて選択されたコマンドを実行するように車輪モーターとは別の他のアクチュエータに命令するように構成することができる。好ましくは、第3のプロセッサは、第1のプロセッサ及び第2のプロセッサの一方又は両方の故障を検出し、故障が検出された場合に装置を安全に停止させるように構成することができる。第3のプロセッサは、追加的又は代替的に、各自己平衡車輪の速度を検出し、自己平衡車輪の速度を比較し、それらの間の速度差を制限するように構成することができる。これは、一方の車輪が十分なトラクションを得ることができない滑りやすい表面上での事故を防止するために、又は1つの車輪が動かなくなる事故を防止するために特に有用である。代替的に、制御ユニットは、逆振り子の原理に従って両方の自己平衡車輪を自立して制御し、必要に応じてそれらの間の補正動作を調整することができる単一のプロセッサのみを備えることができる。
【0038】
本発明の意味において、「アクチュエータ」は、好ましくは、制御ユニットからの信号に応答して及び/又はセンサー読み取り値に応答して移動を行う装置である。アクチュエータの移動は、好ましくは、電流、油圧、又は空気圧によって動力供給される。アクチュエータは、回転モーター又はリニアモーター等のモーターであることが好ましい場合がある。非限定的な例として、各自己平衡車輪は、回転モーター、特に電気駆動式回転モーターによって駆動することができる。更なる非限定的な例として、カウンターウェイトの位置の調整は、空気圧式又は油圧式アクチュエータ、特に伸縮シリンダーによって行われてもよい。
【0039】
本発明は、カウンターウェイトによってユーザーの上下の動きを支持する。第1の軸は、カウンターウェイトを担持する遠位アーム及びユーザーを担持する近位アームがシーソーとして機能することを可能にし、ユーザーを持ち上げるか、又はユーザーが直感的に自身を下げることを可能にする。カウンターウェイトによって部分的に持ち上げられたハーネスは、特に、ユーザーの手が自由なままであることを可能にし、熟練した腕及び手がある強い上半身を必要としない。特に、ユーザーは、既知の装置とは対照的に、装置を制御するために手を使用する必要がない。ユーザーの手を自由にすることによって、ユーザーは自由に日常活動に参加することができる。これは、遊びを通じて学び、社交する必要がある子供たちにとって特に重要である。
【0040】
ハーネスは、好ましくは、前向きであるように構成される。すなわち、ユーザーは、装置の残りの部分が実質的にその背後にある状態でハーネスに固定されてもよい。ハーネスを使用することの利点は、知覚される物理的な「障壁」なしにユーザーが仲間と向き合うことができるように、空間を節約し、コンパクトな方法でユーザーを機械に固定することができることである。これは、多数のセンサーが、ユーザーを受け入れる大きな柔軟性のない運搬アームの中及び周りに配置される既知の装置とは対照的である。さらに、ハーネスを使用することにより、ハーネスストラップを必要に応じて緩めたり締めたりすることができるため、装置を子供の成長に簡単に適合させることができる。ハーネスは、容易に交換されるか、又は変化する要件に適合され、その柔軟性及び多様性により、広範囲の無制限の動きを可能にすることができる。このことは、床の上に物を置いて遊んだり、しゃがむ及び/又は這ったりすることが多い子供にとって特に重要である。
【0041】
子供及び筋力が低下している人は、筋力、運動制御能力、バランス及び姿勢制御能力が低下しているため、ユーザーの実効重量を減少させることで、筋肉への負担が著しく低減される。これにより、ユーザーは、疲労が始まる前に、より長時間直立状態を維持することができる。したがって、ユーザーは、より長く活動に参加することができ、世界の経験を深め、生活の質を向上させることができる。カウンターウェイトは、受動的に動作する、すなわち、ユーザーが能動的にロボットにより持ち上げられる必要はない。これはまた、装置が充電される前に、例えば屋外で、より長くワイヤレスで使用され得るように、装置の電気的に電力供給される構成要素への負担を低減する。これにより、ユーザーが旅行して他の人と経験を共有する機会が更に広がることになる。
【0042】
カウンターウェイトと車輪との間の平衡機能を分離することにより、モジュール性が向上し、ユーザーのニーズの発展に応じて装置の様々な部品を交換できるようになる。好ましくは、ハーネス、カウンターウェイト、自己平衡車輪、及び支持車輪のうちの任意の1つ以上は、専用の工具を必要とすることなく、大人によって取り外し可能かつ交換可能であるように構成される。交換可能な部品は、好ましくは、例えばアレンキー(Allen key)によってフレーム又はシーソーに固定可能であってもよい。これにより、装置のモジュール性及び寿命が更に改善される。好ましくは、シーソー又はフレームに対するカウンターウェイト及び/又は支持車輪の位置もまた、専用の工具を必要とせずに大人によって手動で調整可能である。
【0043】
自己平衡車輪は、ハーネスを含むフレームを前後方向及び左右方向に担持する更にコンパクトな方法を提供する。したがって、装置は、ユーザーの実効重量を減少させることによってだけでなく、ユーザーが歩く方向にかかわらずユーザーのバランスを維持することによってユーザーを支援することができる。ユーザーが装置を移動させるには、不安定な平衡位置から振り子を移動させるだけでよいため、車輪、フレーム、アーム及びカウンターウェイトの重量を含む装置を移動させるのに必要な力は、最小限に抑えられる。装置の感度は、この動きが最小になるように設定することができる。したがって、前方及び後方に移動するため、並びに曲がるために必要とされる筋力は、装置によって低減され、安全に保たれる。したがって、特に旋回のために、他人の能動的な支援はもはや必要とされない。
【0044】
自己平衡車輪を制御するために使用される逆振り子の原理は、従来技術のより複雑な電動式解決策に対する単純な代替案を提供する。したがって、様々な手足に多数のセンサーを必要とすることなく、平衡を達成することができる。2つの自己平衡車輪を使用することによって、高度の安定性を維持し、同時に優れた操作性を維持しながら、装置のサイズを低減することができる。したがって、装置のサイズを4輪に大きくして旋回半径の増加につなげる必要はない。
【0045】
さらに、多くの場合に屋外で見られるような平坦でない地面の場合、2つの自己平衡車輪を使用することは、ユーザーの重心の突然のシフトに迅速かつ自動的に反応するため、従来技術に対する利点が得られる。したがって、この装置は困難な地形にも対応する。この装置は2つよりも多い自己平衡車輪を必要としないため、階段を上ること、並びに障害物及び敷居等を乗り越えることも容易になる。
【0046】
ハーネスは、ユーザーが装置から離れる方を向くように構成されることが好ましい。したがって、車輪及びカウンターウェイトは、後方からユーザーに追従するため、ユーザーはより自由に前方を確認したり、ユーザーの手及び足を用いて活動を行ったり、並びに物理的障壁を伴わずに他人と交流することができる。
【0047】
本発明の好ましい実施の形態において、第1の軸は、地面から高さh0に配置される。高さh0は、大人の場合、好ましくは0.6 m~1.2mである。高さh0は、子供の場合、好ましくは0.3 m~0.9 mである。第1の軸を地面から高さh0に配置することによって、地面及び/又はフレームの下部と衝突することなく、第1の軸の周りの遠位アームの回転のために十分な空間が提供される。高さは、近位アームと遠位アームとの間の角度が最適化されることを可能にするアーム配置の下の空間を更に提供する。
【0048】
少なくとも2つの自己平衡車輪は、好ましくは、地面からh0未満の高さに配置された第2の軸の周りに回転するように構成される。好ましくは、地面からの第2の軸の高さは、0.05 m~0.4 mである。地面からの第2の軸の高さは、エンドユーザーのサイズに依存し得る。好ましくは、この高さは、歩き始めの子供(toddler)又は2歳~5歳の幼い子供については0.05m~0.2 m、6歳~14歳の子供については0.1 m~0.3m、及び15歳以上のティーンエイジャー又は大人については0.2 m~0.4 mである。車輪軸のより低い位置は、より安定したベースを提供し、一方、第1の軸のより高い位置は、有利には、回転時に地面又は他の部分と衝突することなく、遠位アームをより長くすることを可能にする。遠位アームの長さL1を延長することによって、同じ重量によって加えられるモーメントをより大きくすることができる。したがって、装置の重量を全体として増加させることなく、ユーザーの実効重量を低減させるために、より多くの支持を提供することができる。
【0049】
好ましくは、長さL1及び長さL2は、シーソーの有効ビーム部分長さの近似値である。理論的には、遠位ビーム部分の長さは、カウンターウェイトの重心と支点(すなわち、第1の軸)との間の距離として定義することができる。近位ビーム部分の理論的長さは、それぞれ、ハーネス内のユーザーの重心と支点との間の距離として定義することができる。ハーネスの構成及びハーネスが近位アームに結合される方法に応じて、アームがユーザーの重心の手前で停止することができるため、近位アームの長さが理論的な近位ビームの長さに正確に対応するとは限らない場合がある。近位アーム及び/又は遠位アームは、第1の軸に対して直線状に延在しないことも可能である。それらは、例えば、非直線状又は関節状とすることができる。遠位アームの長さL1は、第1の軸と、アームがカウンターウェイトに結合される場所との間の距離であることが好ましい。近位アームの長さL2は、第1の軸と、第2のアームがハーネスに結合される場所との間の距離であることが好ましい。アームの長さL1及び長さL2を設定する場合、ユーザーの重心が年齢、生物学的性別及び発育とともに変化することを考慮するべきであることが好ましい。幼い子供(2歳~5歳)は、その臍の高さ付近に重心を有する傾向があるが、大人は、骨盤に重心を有する傾向がある。
【0050】
第1の軸と第2の軸との間の高さの差Δhは、理論的なてこの長さ、及び自己平衡車輪に作用する振り子モーメントに影響を及ぼす。Δhを増加させることは、前方方向における動きの支持のレベルを増加させる。すなわち、高さΔh及び前方シフトの距離が大きいほど、振り子によって形成される理論的なてこが長くなり、第2の軸の周りに作用するモーメントが大きくなる。各自己平衡車輪は、前方又は後方に移動して、センサーのセットによって検出される垂直線からの振り子の正又は負の角度θをそれぞれ平衡させる。したがって、装置全体を前方に移動させるのに必要な力が小さくなる。Δhは、0.25 m~1 mであることが好ましく、0.3 m~0.6 mであることがより好ましい。
【0051】
h0は、起立しているときのユーザーの重心の高さ以上であることが特に好ましい。これは、ユーザーのより直感的で自然な動きをもたらすことが分かっている。そのような配置はまた、よりコンパクトな装置をもたらす。
【0052】
本発明の更に好ましい実施の形態において、h0はL1の長さよりも大きい。これは、必要なモーメントを生成するために、第1の軸の周りの遠位アームの回転についての最大空間を提供する。したがって、遠位アームは、ユーザーの重心が最大高さにあるとき、例えば、つま先で立っているとき又は跳躍しているときに、カウンターウェイトがモーメントを全く加えない状態で、実質的に垂直であってもよい。遠位アームはまた、ユーザーの重心が可能な限り低いときに実質的に水平な位置に到達することができ、それにより、カウンターウェイトは、ユーザーが起き上がるのを支持するために最大のモーメントを加える。
【0053】
本発明の更に好ましい実施の形態において、h0はL2の長さよりも大きい。したがって、近位アームは、転倒を防止し、ユーザーの臀部が地面に着地するのを確実に保護しながら、広範囲の位置にわたって回転することができる。最も低い位置において、ユーザーは、立ち上がる際にカウンターウェイトによって支持されながら、屈み込むか又は這うことができる。加えて、以下で更に説明されるように、例えばサスペンション車輪内のばね荷重式要素は、ユーザーが低い位置から立ち上がるのを支援することができる。
【0054】
高さh0は、好ましくは調整可能である。これは、第1の軸とフレームとの間の伸縮式及び/又は空気圧式の接続を介して達成することができる。好ましくは、フレームは、h0を最小高さから少なくとも10 cm、より好ましくは少なくとも25 cm増加させるように構成される。高さは、好ましくは、第1の軸がユーザーの重心と同じ高さ又はそれよりも高いままであるように、ユーザーのサイズに応じて調整されてもよい。長さL1及び長さL2は、調整可能であってもよい。アームは、伸縮式及び/又は空気圧式に延長可能な部分を備えることができる。好ましくは、アームは、L1及びL2が少なくとも10 cm、より好ましくは少なくとも25 cmだけ延長可能であるように構成される。遠位アームに沿ったカウンターウェイトの位置はまた、支持のレベルを低減又は増加させるように、手動又は自動で調整することができる。遠位アームに沿ったカウンターウェイトの位置の自動調整は、アクチュエータによって達成されてもよく、好ましくは、ユーザーに提供される体重支持をリアルタイムで調整するように構成することができる。これは、例えば、所与の瞬間におけるユーザーの位置に関連して調整されてもよい。単なる例として、アクチュエータは、電気式、油圧式又は空気圧式の伸縮式アクチュエータであってもよい。
【0055】
ユーザーによって必要とされる支持はまた、例えば、疲労の開始により、1日の経過とともに変化する場合がある。好ましくは、これは、体重支持を増加させるために、アクチュエータに第1の軸から更に離れるようにカウンターウェイトを移動させる制御システムによって補償することができる。
【0056】
カウンターウェイトは、好ましくはバッテリを備えることができる。好ましくは、カウンターウェイトは、交換可能であるように構成されており、及び/又は遠位アームは、その上に設置された追加のカウンターウェイトを有するように構成される。したがって、同じ装置が、異なるサイズのユーザーによる使用に適合可能である。これは、サイズ、筋力、運動能力が発達する可能性がある数年間にわたって同じ装置を使用する可能性がある子供の場合に特に有利である。これは、事故又は病気の後、例えば切断後にリハビリテーションを受けているユーザーにとっても有利である。リハビリテーションの過程にわたって、ユーザーの支持の必要性を低減することができる。これは、装置から余分なカウンターウェイトを除去することによって対応することができる。
【0057】
本発明の更に好ましい実施の形態において、第1の軸の位置は、第2の軸に対してユーザーの方向に前方にシフトされる。好ましくは、前方シフトは、0.2 cm~6 cm、好ましくは0.5 cm~3 cmである。好ましくは、x方向における第1の軸の位置は、デフォルト位置から少なくとも1 cmだけ手動又は自動で増加させることができるように調整可能に構成される。好ましくは、デフォルトの前方シフトはx方向に2 cmである。第1の軸を第2の軸の真上ではなくユーザーのより近くに位置決めすることによって、装置の重心は前方にシフトされる。これは、自己平衡車輪の制御ユニットによって検出され、制御ユニットは、前方に移動して車輪を振り子の重心の真下に持ってくることによってシフトを補償しようとする。好ましくは、第2の軸に対する第1の軸の前方シフト位置は、理論上の振り子の実際の位置と平衡位置との間のデフォルト角度θをもたらす。自己平衡車輪は、前方に移動することによってこの角度θを相殺しようとする。したがって、装置は、一般的に、前方運動に向かって付勢され、自然な歩き方を模倣する。これは、前方に意図的に移動するときに一貫性のない動きをする傾向がある子供の場合に特に有利である。これには、軸のシフトされた位置に起因して増幅されない痙性的な後方への動きが含まれてもよい。軸間のシフトは、例えば、第1の軸が収容され、定義された位置に固定される偏心又はスロットによって調整可能であることが好ましい。
【0058】
好ましくは、近位アームと遠位アームとの間の角度は、使用中に固定される。この角度は、例えば、異なるサイズの異なるユーザーを支持するとともに、誘発される持ち上げ力の特性を変更するために、手動又は自動で調整可能であってもよい。本発明の好ましい実施の形態において、近位アーム及び遠位アームの一方又は両方の角度位置は、シーソー内の角度位置センサーによって、又はアームの一方若しくは両方に直接取り付けられた他のタイプのセンサーによって検出される。これは、制御ユニットにフィードバックすることができる。本発明の更に好ましい実施の形態において、シーソーは、遠位アームと近位アームとの間の角度が調整可能であるように、遠位アームと近位アームとを互いに接続する伸縮式の円弧部分を備えることができる。好ましくは、この伸縮部分は、例えば、自然で調和した歩き方パターンを可能にする急な動きを平衡に保つために、減衰要素を用いてばね付勢される。
【0059】
本発明の更に好ましい実施の形態において、遠位アームと近位アームとの間に形成される地面対向角αは、180度以下、好ましくは90度~180度、より好ましくは110度~140度である。したがって、好ましくはユーザーの起立位置又は歩行位置に対応するデフォルト位置では、遠位アームは、地面に向かって下向きになる傾向がある。すなわち、遠位アームと垂直線との間のデフォルトの地面対向角は鋭角である。これは、ユーザーのデフォルトの直立位置において遠位アームが地面から離れる方向になる傾向がある既知の装置とは対照的である。有利には、遠位アームと近位アームとの間の角度αを90度~180度の間に固定することによって、カウンターウェイトによって提供される支持は、必要に応じて、例えば、ユーザーが地面にしゃがんだときに最大化することができる。90度の最小角度αが選択される場合、最も低い位置は、ほぼ垂直な近位アーム及びほぼ水平な遠位アームをもたらす。水平位置では、カウンターウェイトの全重量が遠位アームに対して直角に作用し、最大可能モーメントをもたらす。これは、ユーザーに起き上がる際の最大の支援を提供する。ユーザーの直立位置では、第1の軸の高さがユーザーの腰とほぼ同じ高さであると仮定すると、遠位アームはほぼ垂直である。この場合、カウンターウェイトの重量の非常に小さな成分のみが遠位アームに対して直交して作用し、その結果、モーメントが非常に小さくなる。したがって、ユーザーがすでに直立しているとき、ユーザーに加えられる持ち上げ力は最小限に抑えられる。同時に、この配置は、装置をコンパクトに保つことができるため、高度な空間の節約が可能になる。
【0060】
180度の最大角度αが選択されると、装置の全長はより長くなり、少なくともL1及びL2の合計に及ぶ。ユーザーが直立位置にあり、近位アーム及び遠位アームがほぼ水平であるときに、最大の持ち上げ力が提供される。ユーザーの身長の変動がわずかでも、加えられる持ち上げ力に対する影響は小さくなる。
【0061】
様々なケーススタディを分析した結果、角度αは、110度~140度の間、特に好ましくは120度~130度の間に設定されると最も効果的であることが見出された。このことは、図面を参照して以下により詳細に説明される。この角度範囲では、ユーザーの小さな高さの変化に十分に敏感に反応する安定した持ち上げ力を提供しながら、装置のサイズを十分にコンパクトにできることが見出された。したがって、地面からユーザーを持ち上げることを含む全ての可能な姿勢及び動きのタイプに対して、ユーザーを全ての高さで支持することができる。これにより、従来技術の多くの場合のようにユーザーを持ち上げるために必要とされるアシスタントの役割が大幅に削減される。
【0062】
本発明の更に好ましい実施の形態において、装置は、ユーザーが起立位置にあるとき、遠位アームと垂直線との間の角度α1が45度~130度であり、近位アームと垂直線との間の角度α2が45度~130度であり、α1とα2の合計αが180度以下であるように構成される。第1の軸の高さh0は、第1の軸の周りのシーソーの両方のアームの回転が妨げられないように適宜設定されることが好ましい。これにより、シーソーからの適切な持ち上げ力を維持しながら、比較的小さい旋回半径を有するコンパクトな装置が提供される。また、そのような角度は、ユーザーの頭部及び腕の背後に自由空間を可能にし、制限されない自然な動きを可能にすることも有利である。
【0063】
本発明の更に好ましい実施の形態において、装置は、長さL2が長さL1よりも長く、好ましくはL1が0.2 m~0.6m、好ましくは0.3 m~0.5 m、より好ましくは0.35 m~0.45 mであり、L2が0.25 m~0.75 m、好ましくは0.3 m~0.6 m、より好ましくは0.45 m~0.5 mであるように構成される。これは、カウンターウェイトによって誘発されるモーメントがユーザーの重量によって誘発される反対のモーメントに対して増加するため、ユーザーの実効重量を減少させるのに特に有効であることが見出された。これらの寸法によって、コンパクトな装置も達成される。
【0064】
本発明の更に好ましい実施の形態において、装置は、近位アーム、遠位アーム又はフレームの下にばね荷重方式で接続され、使用中にハーネスが制御されずに落下するのを防止するように構成された支持車輪を更に備える。ばね荷重は、圧縮ばね、引っ張りばね、ねじりばね、油圧式又は空気圧式の要素を介して機械的に達成することができる。支持車輪は、本明細書において、サスペンションとも称される近位アームからの伸縮式ばね荷重ロッドによって懸架された車輪とすることができ、近位アームがその最も低い角度に達した場合に車輪がハーネスの前に地面に達するようになっている。車輪及びサスペンションは、従来技術に見られるロッドの場合のようにユーザーを急に停止させることはなく、着地を和らげる。サスペンションの長さ及び近位アームに沿ったその位置は、ユーザーにとって最も低い位置を設定するように構成することができる。サスペンションの長さは、好ましくは5 cm~40 cm、より好ましくは10 cm~20 cmである。
【0065】
代替的又は追加的に、ユーザーの最大上向き位置を定義するように、同様の方法で車輪を遠位アームから懸架することができる。これはまた、例えば、上方に跳躍している間、ユーザーが急に停止することを回避するように、ばね荷重式とすることができる。支持車輪の様々な他の例示的な構成が図に示され、後で説明される。
【0066】
本発明の更に好ましい実施の形態において、支持車輪は、ユーザーが、つま先立ち、歩行、しゃがみ、及び/又は這うことに対応する範囲内で自身の高さを変えることを可能にするように位置決めされる。有利には、これにより、特定のユーザーにとって安全でないと考えられる動きのみを制限する装置を使用する際に、ユーザーは最大の自由及び自立性を得ることができる。好ましくは、支持車輪の位置は調整可能である。当業者は、支持車輪の位置が調整可能であるように支持車輪を装置に取り付ける好適な手段を認識している。そのような手段は、多数のボアホール、スロット又はノッチを通して挿入され得る1つ以上のボルトによって互いに対して固定された伸縮バーを含むことができる。これにより、装置を交換するのではなく、ユーザーとともに成長させることができる。
【0067】
本発明の更に好ましい実施の形態において、カウンターウェイトは、5 kg~30 kg、好ましくは5kg~20 kg、より好ましくは8 kg~12 kg、更により好ましくは約10 kgの質量を有する。特に、長さL1が0.35 m~0.45 mである場合、この重量は、特に子供の場合に、ユーザーの実効重量の有利な減少をもたらした。
【0068】
本発明の更に好ましい実施の形態において、遠位アーム上のカウンターウェイトの位置は、L1が変化することができるように、自動的に可変である。この目的のために、装置は、遠位アーム上のカウンターウェイトの位置を変化させるアクチュエータを備えることができる。例えば、制御ユニットは、ユーザーの知覚された意図に従って、例えばアクチュエータ(電気式、空気圧式等)によって遠位アームに沿ってカウンターウェイトを摺動させることによって、カウンターウェイトの位置を調整することができる。例えば、装置内のセンサーが、ユーザーがしゃがみ位置から自身を持ち上げようとしていないことを検出した場合、制御ユニットは、ユーザーに対する持ち上げ力を低減するために第1の軸のより近くにカウンターウェイトを移動させるように構成されてもよく、しゃがみを維持するというユーザーの意図に従ってユーザーが移動し続けることを可能にする。ユーザーが、例えば、つま先立ちするか、又は腕を上げることによって、上方に手を伸ばしていることが検出された場合、カウンターウェイトは、第1の軸から更に移動され、ユーザーを持ち上げるために加えられるモーメントを増加させることができる。
【0069】
本発明の更に好ましい実施の形態において、少なくとも2つの自己平衡車輪は、5度~20度の角度で負に反っている。本発明の意味において、「負の反り」は、好ましくは、装置の車輪がy方向において底部よりも上部で互いに近づくように設定することである。「負の反り角」βは、好ましくは、y平面内で車輪の上部から底部まで通る中心線と地面との間の角度であり、この角度は、装置の中心に向いている。好ましくは、反り角βは約10度である。これにより、より広い基部を有するより安定した形状を有する装置が得られる。この反りによって、装置の側方への転倒が実質的に不可能となり、その結果、平坦でない地面状態及び/又は他の子供との乱雑な遊びの場合でも安全性が高まる。
【0070】
「実質的に」、「およそ」、「約」等の用語は、好ましくは±20%未満、好ましくは±10%未満、特に好ましくは±5%未満、特に±1%未満の許容範囲を表し、正確な値を含む。
【0071】
本発明の更に好ましい実施の形態において、フレームは、車輪の外側に配置され、車輪の間に自由な間隙を残す。例えば、車輪は、各車輪の中心から外側に延在し、第2の軸を定義するフレームによって互いに接続することができる。フレームはまた、第1の軸に向かって上方及び内側に延在することができる。そのようなフレームは、有利には、装置を担持するために使用することができる。車輪間の空間は、シーソーの、ひいては走ったり這ったりするとき等のユーザーの制限されない動きのために有利に自由に保たれる。
【0072】
フレームは、様々な構成を有することができる。特定の構成にかかわらず、フレームは、少なくとも2つの自己平衡車輪を、それらのy方向の距離が好ましくは等距離に保たれるように一緒に接続すること、及びフレームが第2の軸の周りで傾斜可能であることが好ましい。
【0073】
また、フレームは、好ましくはボールジョイントによって、車輪軸に対するシーソーの左右の旋回を支持することが好ましい。好ましくは、フレームは、フレームの左側部材及び右側部材のそれぞれと垂直線との間の角度θの異なる大きさ及び方向に対応するように構成される。フレームの左側部材及び右側部材は、好ましくは、それぞれの自己平衡車輪の回転中心から実質的に上方にそれぞれ延在している。フレームの左側部材及び右側部材は、好ましくは、第1の軸を収容するフレームの横部材に好適な関節によって結合される。フレームの左側部材及び右側部材は、ボールジョイントによって横部材に結合されることが特に好ましい。好ましくは、ボールジョイントは、角度θがゼロ又はデフォルトから逸脱するときに、左側部材の上端と右側部材の上端との間の距離の変化に対応するスロットを備える。すなわち、横部材は、左側部材及び右側部材が車輪の回転の中心から垂直に延在するフレームのデフォルト位置に対してわずかに大きい場合がある。したがって、横部材の大きな端部は、有利には、ボールジョイントのスロット内に保管されてもよい。ユーザーが、例えば、左に曲がり始めると、フレームの左側部材の上部は、後方に移動し、垂直線に対して負の角度を生成することができ、一方、フレームの右側部材の上部は、前方に移動し、垂直線に対して正の角度を生成することができる。したがって、横部材は、これらの2つの端部の間のより長い距離に及ぶ必要があり、スロット内に収容される横部材の長さは減少する。好ましくは、長さの差は非常にわずかであり、例えば3 mm以下である。
【0074】
好ましくは、フレーム内のジョイントは、左右の旋回をもたらす動きに対して所定の程度の抵抗を提供するように構成される。これは、空気圧式で、又は機械的に行うことができる。好ましくは、抵抗は、手動で又は制御ユニットによって調節されるアクチュエータによって自動で調整可能である。これにより、一部のユーザーの非自発的な動きが意図しない旋回につながらないように、装置の感度を有利に低減することができる。
【0075】
好ましくは、フレーム内のジョイントは、車輪の任意の負の反りに対応するように構成される。ボールジョイントは、この目的に特に好適であることが分かっている。
【0076】
本発明の更に好ましい実施の形態において、ハーネスは近位アームに対して枢動可能に配置され、好ましくは、ハーネスと近位アームとの間に緩衝器が設けられる。当業者は、近位アームに対して枢動可能にハーネスを配置する手段を認識している。そのような手段の例としては、ヒンジが挙げられる。ヒンジは、単一の軸、好ましくはy軸の周りの枢動を可能にすることができる。ハーネスと近位アームとの間の枢動可能な接続は、ユーザーの臀部又は腰部の角度が近位アームに対して一定に保たれなくてもよいため、ユーザーは、移動が制限されない範囲を増加させることができる。したがって、より自然な動きパターンを達成することができる。ハーネスと近位アームとの間に緩衝器、例えば、ゴム、圧縮可能な油圧構成要素、圧縮可能な空気圧構成要素、又は圧縮、引張、若しくはねじりばねを設けることにより、ユーザーの胴体の自発的又は非自発的な後方への動きは、近位アームによって急に停止されることはなくなる。
【0077】
本発明の更に好ましい実施の形態において、制御ユニットは、ユーザーによって加えられた力を解釈し、閾値力未満の力及び/又は閾値持続時間未満の間加えられた力を抑制するようにモーター及び/又はアクチュエータに命令するように構成されており、閾値力及び/又は閾値持続時間は、非自発的な動きに対応する。したがって、制御ユニットは、非自発的と見なされた動きをフィルタリングして除去し、これらを増幅しないように構成することができる。これは、様々なセンサーからのデータ、例えば、ユーザーの状態及び位置、シーソーの動き又はフレームの位置を参照するデータ、及び/又は自己平衡車輪のセンサーからのデータを制御ユニットに入力することによって達成することができる。検知されたデータを解釈するために、例えば、検知されたデータをフィルタリング及び分類するために、アルゴリズムを使用することができる。制御ユニットは、ユーザーの意図に従って移動するために、自己平衡車輪のモーター、カウンターウェイトの位置を制御するアクチュエータ、シーソーの遠位アームと近位アームとの間の角度、ボールジョイントの剛性、及び/又はサスペンションの剛性等の1つ以上のモーター及び/又はアクチュエータにコマンドを送信するように構成することができる。非自発的な動きは、急な停止を回避するために、装置の機械的構成要素によって吸収されてもよい。制御ユニットは、有利には、装置がユーザーをユーザーの意図に従って更に動かすように、特定の意図に対応すると見なされたユーザーの動きのみを支持することができる。ユーザーは、自身の筋緊張に依存することが少なくなり、疲労を低減することができる。
【0078】
加えて、制御ユニットは、第2の軸の周りで自己平衡車輪を傾斜させることに関連する剛性/抵抗に影響を及ぼし、意図的に変化させるように、電気機械要素を適合させることができる。制御ユニットは更に、センサーの感度と、自己平衡車輪を含むアクチュエータ要素の反応時間とを適合させることができる。
【0079】
本発明の更に好ましい実施の形態において、制御ユニットは、1つ以上のセンサーからのデータに基づいて、垂直線に対する近位アーム及び/又は遠位アームの位置を決定することと、検知されたデータに応答して、カウンターウェイトの位置を調整し、自己平衡車輪の速度及び/又は方向を調整し、及び/又は支持車輪とフレームとの間のコネクタの剛性を調整することによって、ユーザーの動きを抑制又は伝達することとを行うように構成される。有利には、制御ユニットは、非自発的な動きとして解釈される信号を無視又は相殺しながら、全ての方向におけるユーザーの動きを支持することができる。アルゴリズムを使用して、検知されたデータを解釈し、ユーザーの動きが自発的として分類されるか又は非自発的として分類されるかを判定することができる。制御ユニットは、好ましくは、ユーザーの動きパターンに対応するデータを記憶し、どの動きが特定のユーザーにとって意図的である傾向があるかを学習するようにプログラムすることができる。
【0080】
本発明の更に好ましい実施の形態において、制御ユニットは、検知されたデータを解釈して、ユーザーの動きが自発的であるかどうかを判定し、自発的な動きのみを伝達するように構成されており、ユーザーの動きの伝達及び/又は抑制の程度は、好ましくは調整可能である。介入の程度を調整することによって、特定の場合に必要なときだけユーザーを支持することができる。したがって、ユーザーが自身の筋力及び/又は運動制御能力を安全に実践することを可能にしながら、過度の疲労を回避することができる。
【0081】
本明細書において使用されるように、「制御ユニット」は、好ましくは、自己平衡車輪、及び/又はカウンターウェイトの位置を調整し、支持車輪とフレームとの間のコネクタの剛性を調整等する潜在的(potential)アクチュエータ等の装置の構成要素の自動制御を可能にするプロセッサ、プロセッサチップ、マイクロプロセッサ、又はマイクロコントローラーを有する任意のコンピューティング装置を指す。制御ユニットの構成要素は、従来の構成要素であってもよく、又は特定の実施態様のためにカスタム構成することができる。好ましくは、制御ユニットは、装置の構成要素を制御するプロセッサ、メモリ、及びコンピューターコード(ソフトウェア/ファームウェア)を含む。
【0082】
制御ユニットはまた、自己平衡車輪の位置に関するセンサー、又は近位アーム及び/又は遠位アームの角度位置に関する他の感覚情報等、装置の構成要素からのデータ信号を受信及び処理するプログラム可能プリント回路基板、マイクロコントローラー、又は他の装置を備えることができる。
【0083】
制御ユニットは、好ましくは、コンピューターソフトウェア又はコードがインストールされる、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等のコンピューター使用可能媒体又はコンピューター可読媒体を更に備える。装置の構成要素の制御を実行するコンピューターコード又はソフトウェアは、C/C++、C#、Objective-C、Java、Basic/VisualBasic、MATLAB、Python、Simulink、StateFlow、Lab View、又はアセンブラ等であるが、それらに限定されない、任意のプログラム言語又はモデルベースの開発環境で記述することができる。
【0084】
ソフトウェア、及び本明細書において説明される装置の特定の構成要素又は態様を制御することの説明によるソフトウェアの任意の機能的説明は、装置上の直接的な物理的出力による技術的特徴と見なされる。したがって、ソフトウェアの機能的記述は、好ましいものと見なし、本発明の実施の形態を定義するものと見なすことができる。使用される特定のコンピューターコードは、当業者に利用可能であり、標準的な知識を使用して適宜構築することができる。
【0085】
垂直線に対する近位アーム及び/又は遠位アームの位置を決定し、検知されたデータに応答して、カウンターウェイトの位置を調整すること、自己平衡車輪の速度及び/又は方向を調整すること、シーソーの近位アームと遠位アームとの間の角度αを調整すること、フレーム内のジョイントの剛性を調整すること、及び/又は支持車輪とフレームとの間のコネクタの剛性を調整することによって、ユーザーの動きを抑制又は伝達する等の特定の動作ステップを実行する「ように制御ユニットは構成される」という用語は、これらの動作ステップを開始及び調節する、当該制御ユニットにインストールされたカスタム設計又は標準ソフトウェアを含むことができる。
【0086】
本発明の好ましい実施の形態において、装置上のアクセス可能な点に緊急停止ボタンが設けられる。これにより、制御装置に任意の電動運動を停止させることができ、及び/又は支持車輪を地面に落下させることができる。緊急停止は、近くの大人が容易に目視でき、アクセスできるように、車輪の上部又は第1の軸の上部に配置されることが好ましい。
【0087】
緊急停止ボタンは、ユーザーの必要性及び能力に応じて、ハーネス上に、又はユーザー自身によって操作できる場所に設けることができる。
【0088】
本発明の装置はまた、好ましくは、いかなる特別な移動要件も必要としない大人、ティーンエイジャー、又は子供に使用するように構成することができる。装置は、好ましくは、レジャー活動、例えばハイキングでの使用に適合することができる。これにより、健康な大人であっても疲労を実質的に低減し、転倒のリスクを低減することができる。
【0089】
好ましい実施の形態において、装置は、非治療的使用のために構成される。特に、装置は、健康なユーザー、特に健康な大人が使用するために構成することができる。例えば、装置は、疲労に達する前にユーザーが歩く連続歩行の長さを延長するように構成することができる。
【0090】
更に好ましい実施の形態において、装置は、ユーザーが疲労する前に実行することができる反復的な動きの数を増加させるように構成することができる。そのような動きとして、跳躍、旋回、地面への接触等が挙げられる。この装置はまた、ユーザーの注意及び努力が、バスケットボールをシュートする腕の位置等の動きの側面を洗練することに向けられるように、そのような動きをする際にユーザーを支援するように構成することもできる。これは、ユーザーが通常、経験レベルに応じてトレーナー又は手すりから様々な程度のサポートを受けてトレーニングを受けるスポーツ及びダンスにおいて特に有利である。この装置は、特にトレーナーの負担を軽減し、ユーザーが完璧を実現するために長期間にわたって様々な動きを自主的に実践できるようにすることができる。
【0091】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載される移動支援装置を使用する方法であって、少なくとも部分的な体重支持を提供しながら、装置によってユーザーの意図的な動きを伝達するステップを含む、方法に関する。
【0092】
本発明の好ましい実施の形態において、移動支援装置を使用する方法は、非治療目的のためにユーザーの意図的な動きを伝達するステップを含む。
【0093】
一例として、ユーザーの意図的な動きは、歩行の動きであってもよく、ユーザーは、健康な大人であってもよい。このようにして、装置は、ユーザーが疲労せずに歩くことができる期間をユーザーが延長することを可能にすることができる。これは、長いハイキングの状況において、特に平坦でないか、又は上り坂の地形上で特に有用であり得る。
【0094】
更なる例として、ユーザーの意図的な動きは、跳躍の動きであってもよく、ユーザーは、健康な大人であってもよい。このようにして、装置は、より長い期間にわたって跳躍の動きを実行する際に、ユーザーが疲労することなく、練習して技術を改善することを可能にすることができる。これは、バスケットボール、バレーボール、ダンス又は体操訓練の状況においてフォームを改善するために特に有用であり得る。
【0095】
当業者は、本明細書に記載される移動支援装置に関して開示された技術的特徴及び利点が、ユーザーの動きを支援するそのような装置を使用する方法に等しく適用され、その逆も同様であることを理解する。
【0096】
本発明及び例の詳細な説明
本明細書に記載の本発明の実施形態の種々の代替物を本発明の実施に使用することができることが理解されるはずである。本発明の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、これによってこれらの特許請求の範囲及び均等物の範囲内の方法及び装置が包含されることを意図している。
【0097】
限定することを意図するものではないが、本発明は、例示的な実施形態及び以下の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】シーソー配置を強調した、従来技術のHibbot歩行支援具の側面図の概略図である。
図2】シーソー配置を強調した、本発明の移動支援装置の側面図の概略図である。
図3】第1の軸位置決めスロットを有し、支持車輪を有さない、本発明による移動支援装置の側面図の概略図である。
図4】従来技術のHibbot歩行支援具におけるユーザーの身長の変化に伴う持ち上げ力の変化を示すグラフである。
図5】角度αが130度である本発明による移動支援装置における、ユーザーの身長の変化に伴う持ち上げ力の変化を示すグラフである。
図6】本発明の第1の実施形態による移動支援装置の正面図である。
図7】本発明の第1の実施形態による移動支援装置の斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態による移動支援装置の側面図である。
図9】本発明の第2の実施形態による移動支援装置の斜視図である。
図10】本発明の第3の実施形態による移動支援装置の側面図である。
図11】本発明の第3の実施形態による移動支援装置の斜視図である。
図12】本発明の第4の実施形態による移動支援装置の斜視図である。
図13】本発明の第4の実施形態による移動支援装置の正面図である。
図14】本発明の第5の実施形態による移動支援装置の斜視図である。
図15】本発明による移動支援装置のシーソー機構によってユーザーに作用する上下方向の力の概略図である。
図16】自己平衡車輪及び前方軸線方向シフトに起因して、ユーザーに作用する前後方向の力の概略図である。
図17】前方軸線方向シフトが調整可能である第1の軸についてのハウジングスロットの概略図である。
図18】ユーザーが左に曲がるために装置に加えられる力を示す、自己平衡車輪及びユーザーの上面図の概略図である。
図19】前方軸線方向シフトに起因して装置に作用する軸線方向力の概略図である。
図20】第2の軸を定義するボールジョイントフレーム部材と、後方及び前方に傾斜されたときのそれらの位置との概略図である。
図21A】第2の軸を定義するボールジョイントフレーム部材と、左右に曲がるときのそれらの位置との概略図である。
図21B】左右の旋回に適応するスロット付きボールジョイントの概略図である。
図22】第6の実施形態による移動支援装置の側面図であり、低い姿勢、起立姿勢、及び高い姿勢のユーザーを示す。
図23】第7の実施形態による移動支援装置のアームを省略した3次元モデルの斜視図である。
図24】第7の実施形態による移動支援装置の後面図であり、自己駆動車輪の反り角が強調されている。
【発明を実施するための形態】
【0099】
様々な好ましい実施形態による装置の特徴及び寸法を説明する前に、シーソーとして作用する移動支援装置の部分を、まず、従来技術と比較して概念的に説明する。
【0100】
図3を参照して本発明の異なる構造的構成要素を説明する前に、本発明のシーソーの機能を既知の従来技術の装置と比較するために、図1図2図4及び図5を最初に説明する。
【0101】
図1及び図2は、それぞれ、従来技術のHibbot移動装置及び本発明の装置の簡略化された概略図である。両方の装置において、シーソー型アセンブリを識別することができる。両方の場合において、有効ビーム長は、カウンターウェイト及びユーザーの重心から支点まで延在する。シーソービームは、それらのデフォルト位置、すなわち、ユーザーが直立している位置において地面に面する下側角度を形成する。この下側角度(以下、α)は、比較のために図1及び図2のそれぞれにおいて曲線矢印によって強調されている。従来技術の角度αは、常に180度より大きいものとして示されている。これに対し、本発明の角度αは、180度以下であることが好ましい。
【0102】
カウンターウェイトの重心を支点に接続する理論上のビームの角度は、重量によって生成される有効モーメントに劇的に影響を及ぼす。これは、重力により重量の力が垂直下方に作用するためである。しかしながら、角度に応じて、この力のより大きい又はより小さい成分がてこに対して直角に作用する。極端な場合として、ビームが水平であるときにはカウンターウェイトの全重量はモーメントを生成することに寄与し、ビームが垂直であるときにはいかなる重量でもモーメントを生成しない。カウンターウェイトによって生成されるモーメントが大きいほど、ユーザーに作用して生成される持ち上げ力が大きくなる。本発明の角度αは、装置をよりコンパクトにするためだけでなく、異なる位置でユーザーに加えられる持ち上げ力を最適化するためにも選択される。
【0103】
このことは、図4及び図5にグラフで示されており、これらの図は、異なる角度について、持ち上げ力とユーザーの重心の高さとの間の関係を比較している。これらの図において、直線の破線は、ユーザー側の角度α2を表し、点線は、カウンターウェイト側の角度α1を表しており、両方とも右側のy軸上で読み取られる。α2は、ユーザーが下にしゃがむにつれて着実に小さくなり、α1は増加している。ユーザーが起き上がる場合には、その逆になる。破線の曲線は、カウンターウェイトによって引き起こされるモーメントに起因してユーザーに作用する力の合計を表し、実線の曲線は、ユーザーに作用する持ち上げ力成分を表しており、ニュートン単位の力が左側のy軸上で読み取られる。図4は、角度αが230度であるケーススタディを示している。図5は、αが130度であるケーススタディを示している。両方の場合において、支点からカウンターウェイトの重心までの長さL1は0.4 mであり、支点からユーザーの重心までの長さL2は0.6 mである。図4において、ユーザーに作用する有効な持ち上げ力は、ユーザーが直立しているときに最大であり、ユーザーが地面に最も近いときに著しく低いか、又は負になることさえある。このことは、そのような装置が、地面に到達した後に再び起き上がる際にユーザーを支持することができないことを意味する。典型的には、介護者の支援が必要となる。
【0104】
一方、図5に示すように、角度αが130度に選択された場合、ユーザーの重心が下がるにつれてユーザーに作用する持ち上げ力が増加し、それによってユーザーが直立位置に戻るのを支援する。この教示は、本発明のシーソー機構のために選択された角度及び寸法を最適化するために利用されている。
【0105】
ここで図3を参照すると、本発明による移動支援装置100の構造をより詳細に検討することができる。装置は、フレーム26を備え、該フレーム26は、好ましくは強度及び軽量化のために押出アルミニウムで作製することができる。フレーム26は、装置の主要部分を互いに接続し、有利には、装置の全体寸法を成長する子供の変化するニーズ又は異なるユーザーに適合させることを可能にする伸縮部分を備えることができる。フレームは、車輪のセット、この場合は2つの自己平衡車輪22及び24を、シーソーの支点として機能する第1の軸10に接合する。自己平衡車輪は、第1の軸の下方の第2の軸20の周りに回転するように構成される。第1の軸10は、2つのアーム、すなわち近位アーム12及び遠位アーム14を互いに接合する。これら2つのアームの間の地面対向角αは、180度以下の値に固定されることが好ましい。この角度は、2つのアームを互いに接続するフレームの円弧状の伸縮部分44によっても調整することができる。この実施形態において、円弧コネクタは追加的にばね付勢される。近位アーム12は、ユーザーを担持するように構成されたハーネス16に接続されている。継手52は、ハーネスをユーザーに接続する。好ましくは、この継手は緩衝器を含む。継手52はまた、好ましくは、限定された角度範囲内で連接されてもよい。遠位アーム14は、ユーザーの重量を少なくとも部分的に補償するように構成されたカウンターウェイト18に接続される。
【0106】
第1の軸10と、近位アームがハーネス16に結合される場所との間の近位アームの長さは、第1の軸と、ハーネス16内にあるときのユーザーの重心の位置との間の理論的なビームの長さの近似として使用することができる。近位アームの長さは、参照符号L2で表される。近位アームがユーザーの重心まで延在していない場合、L2は、アーム12の物理的な長さであり、シーソーに作用するモーメントを計算するときに考慮されるべき理論的な長さの単なる近似である。第1の軸10とカウンターウェイト18との間の遠位アームの長さは、好ましくは、より正確には、第1の軸からカウンターウェイト18の重心までの長さとして定義され、L1と称される。
【0107】
いくつかの実施形態において、第1の軸10が第2の軸20に対して前方にシフトされることが好ましい。すなわち、2つの軸は、垂直に整列される必要はない。前方シフトは、フレーム26のスロットスパン部分に第1の軸10を収容することによって調整することができる。このスロットは、28として図示され、第1の軸の水平位置の手動調整のために構成することができる。近位アーム及び/又は遠位アームの角度位置が角度センサーによって監視されることも好ましい。角度センサーからのデータは、制御ユニット36に供給されて、例えば、ユーザーの自発的な動きを伝達することを支援するか、又はユーザーをデフォルトの直立位置に戻すことができる。
【0108】
図6図14は、本発明の移動支援装置の様々な異なる構造配置を示しており、特に、フレーム26は、異なるユーザーのニーズに適合されている。
【0109】
図6及び図7は、本発明の第1の実施形態による移動支援装置の正面図及び斜視図を示している。特に、この実施形態において、支持車輪38が含まれておらず、この特定の実施形態を、転倒のリスクが低いユーザーに適したものにしている。装置は、主に、動きの範囲を最大限にしながら、そのようなユーザーにおける疲労を低減させるために使用することができる。追加の支持車輪及び他の任意の特徴は、様々な位置及び配置で、この実施形態及び本明細書に開示される更なる実施形態のいずれかに含まれてもよい。
【0110】
第1の実施形態のハーネス16は、バケット型シートと背もたれとを備える。ハーネスのタイプは、ユーザーのサイズ及び必要性に応じて選択することができる。好ましくは、ハーネスはパッド付きである。フレーム26の一部によって第2の軸20に沿って互いに接合された2つの自己駆動車輪が使用される。車輪を第1の軸に接合するフレームの上部は、第1の軸の位置を調整するためのスロットをそれぞれ備えるボールジョイントを備える。カウンターウェイト18、フレーム26、並びに車輪22及び車輪24を含む装置全体は、前方方向がハーネスの方向であるように、後方からユーザーに追従するように構成される。これは、より大きな自由度及び安定性をユーザーに提供する。
【0111】
図8及び図9は、本発明の第2の実施形態による移動支援装置の側面図及び斜視図をそれぞれ示している。この装置は、第1の実施形態の構造と同様の構造を有するが、支持車輪38が含まれ、ばね荷重式フレーム部材40によって近位アーム12に接続されている点が異なる。コネクタ40の長さは、この場合、ユーザーの重心が歩行又は起立に関して正常と見なされた範囲を下回るとすぐに床に接触するように設定されている。これは、ユーザーの降下が徐々に停止するように制御されるように、ばね荷重部材をゆっくりと圧縮させる。これにより、ユーザーへの衝撃及び不快感が低減され、怪我のリスクが防止される。そのような支持車輪の構成は、ユーザーの重心の任意の有意な降下が、転倒として解釈され、支持車輪によって防止されるように、安全なしゃがみ又は這うこと、続いて、起き上がることができない運動能力を有するユーザーにとって特に好適であり得る。コネクタ40の長さ及び位置は、好ましくは、ユーザーの必要に応じて調整可能であってもよい。40の長さを短くすることで、ユーザーが装置からの介入なしに地面に近づくことが可能になる。
【0112】
この特定の実施形態において、支持車輪38が地面に到達したときの衝撃を吸収するために、機械的圧縮ばね50が使用される。引っ張りばね又はねじりばねを使用する他の構成、又は、空気圧システム又は油圧システム等の更なる代替形態も使用することができる。
【0113】
図10及び図11は、それぞれ、本発明の第3の実施形態による移動支援装置の側面図及び斜視図を示している。この実施形態において、支持車輪38は実質的に2つの自己駆動車輪22及び24の間に配置され、ユーザーが装置と衝突することなく足を動かすことができるように、ハーネスのすぐ後ろの床空間を空けておく。図10はまた、自己駆動車輪のケーシング48内の車輪センサー46のセットの好ましい位置を概略的に示している。
【0114】
図12及び図13は、それぞれ、本発明の第4の実施形態による移動支援装置の斜視図及び正面図を示している。これは、フレーム26が第2の軸に沿って車輪を直接接合するのではなく、自己駆動車輪から外向きに延在し、フレームのハンドル部材を形成することを除いて、第1の実施形態、第2の実施形態、及び第3の実施形態と構造的に類似する。この配置は、車輪間の空間をユーザーに自由にしておくため、特に有利である。また、装置の下側の構成要素がより少ないことにより、より簡単になり、物体又は地面の欠陥が装置の邪魔になる可能性が低くなる。この実施形態において、任意の支持車輪38が含まれる。車輪は、ハーネスに近い近位アーム12の端部から懸架される。
【0115】
図14は、本発明の第5の実施形態による更なるフレーム構成の斜視図を示している。この実施形態は、2つの支持車輪38を備え、一方は遠位アーム14から懸架され、他方は2つの自己平衡車輪を接続するフレーム26の部材上に配置される。
【0116】
移動支援装置の構造配置にかかわらず、車輪センサー46のセットが自己駆動車輪のケーシング48内に収容されることが好ましい。各自己駆動車輪は、それ自体の自立したセンサーのセットを有することができる。これらは、ジャイロスコープ、加速度計、及び/又は磁力計を含むことができる。角度位置センサーは、遠位アームと近位アームとの間のフレーム26の円弧部分に設けられて、それらの角度位置を測定することができる。ハーネスは、後方に移動したいという要望として解釈され得るユーザーの傾斜姿勢を識別するために、例えば背もたれ内に、歪みゲージ及び/又は圧力センサーを更に備えることができる。ハーネスは、代替的又は追加的に、左又は右に曲がるというユーザーの意図を識別するために、側面に歪みゲージ又は圧力センサーを備えることができる。ハーネスの鼠径部分内の任意選択の歪みゲージ又は圧力センサーは、ユーザーの垂直姿勢を、例えば、つま先で立っているものとして識別することができる。
【0117】
センサーからのデータは、制御ユニット36に供給することができる。これは、装置の任意の場所に収容することができる。一例として、図3に示すように、センサーとともに車輪ケーシング内に収容することができる。全ての実施形態において、制御ユニット36は、検知されたデータがユーザーからの自発的又は非自発的な動きに対応するかどうかを解釈するように構成することができる。好ましくは、力及び/又は持続時間の閾値を使用して、検知された動きを分類することができる。より長時間持続するより強い動きは、自発的であると解釈することができる。制御ユニット36は、非自発的と見なされた動きを支持し、非自発的な動きを抑制又は無視するために、様々な装置パラメーターを調整するように構成することができる。例えば、遠位アームに沿ったカウンターウェイト18の位置は、制御ユニットによって制御されるモーターによって調整されて、持ち上げ力をユーザーの意図に適合させることができる。
【0118】
図15図18は、移動支援装置によってユーザーに作用する力を概念的に示している。
【0119】
図15は、シーソーアセンブリに起因してデフォルト位置にあるユーザーに作用する力の概念的解析を表す。これは、カウンターウェイト18と、遠位アーム14と、第1の軸10と、近位アーム12と、ハーネス16とを含む。第1の軸10は、地面等の支持面から高さh0に設けられる。アームは、それらの間に固定された地面対向角αを形成するように配置され、αは、第1の軸10を通過する垂直線によってα1及びα2に分割することができる。カウンターウェイトの重心は、図15にmとして示されている。カウンターウェイトmは、第1の軸から長さL1に配置され、その重量Fgは、真下に作用する。α1が90度未満であるとき、重量力Fgの成分Fは、遠位アームに対して直角に作用する。カウンターウェイトによって第1の軸10に作用するモーメントは、F×L1である。図15はまた、ユーザーをその重心によって表す。デフォルト位置では、ユーザーは直立しており、ユーザーの重心は地面から高さhにあり、hはh0よりも小さい。デフォルトでは、近位アームは、垂直線から角度α2にある。モーメントF×L1は、近位アームに対して直交して作用する力Findをもたらす。この力の成分Fupがユーザーに作用し、FupはFind×sin(α2)°として計算することができる。
【0120】
ユーザーの重心が取り得る高さの範囲は、支持車輪又は他のものによって制限することができる。この高さの範囲は、図15において強調されている。したがって、近位アームの角度位置は、この強調されたセクターに及ぶことができる。シーソーアセンブリに使用される寸法及び角度は、これを考慮に入れるように構成することができる。
【0121】
複数の症例研究が、脳性麻痺を有する子供であるユーザーについての移動支援装置の寸法を最適化するために使用されてきた。全角度αは、90度~180度、より好ましくは120度~140度、更により好ましくは120度~130度であるように最良に選択されることが見出された。
【0122】
第1のケース(高さの変動がほとんどない、高い持ち上げ)では、αを130度に、L1を0.6 mに、L2を0.2 mに設定することによって、シーソーをより敏感にすることができることが見出された。第1の軸の高さh0は、1 mであった。カウンターウェイトの質量は10 kgであった。これらの寸法では、子供の重心の高さをわずかに下げるだけで大きな持ち上げ力が子供を立ち上げるように、子供の重量を効果的に補償することができることが見出された。
【0123】
第2のケース(高さの変動が大きい、低い持ち上げ)では、カウンターウェイトの質量が10 kgであったときに、持ち上げ力を低減しながら子供の動きの範囲を増加させることができることが見出された。長さL1は0.4 mに、L2は0.6 mに、角度αは120度に設定した。この場合のユーザーの垂直位置による持ち上げ力の変化は、より穏やかであった。したがって、これらの寸法は、必要とされる機械的介入がより少ない、より大きな筋力を有する子供により好適であった。
【0124】
図16は、第1の軸と第2の軸との相対位置を示している。シーソーの残りの部分は示されていない。第1の軸は、第2の軸より上方の高さΔhに位置決めされる。好ましくは、第1の軸はまた、+/-Δs_fwdだけ第2の軸に対してx方向に前方にシフトされる。これは、シーソーの重心が第2の軸の前方にあることをもたらし、第2の軸の周りのモーメントをもたらす。モーメントの大きさは、シーソーの重量、高さの差Δh、及びx方向のシフトΔs_fwdに依存する。角度θは、例えば図17に示されるようなハウジングスロットによって、第1の軸の位置を水平に移動させることによって調整可能であってもよい。
【0125】
自己平衡車輪は、車輪付き倒立振り子システムとして動作する。各自己平衡車輪内のセンサー46のセットは、各車輪の回転中心を通る垂直線からの重心のシフトを検出する。車輪は、シフトにステアリングすることによって、すなわち前方に移動することによって、システムのバランスを維持する。したがって、装置は、前方に移動するように付勢される。
【0126】
図18は、装置の旋回中にユーザーに作用する力を概念的に示している。ユーザーは、ハーネスの左側に対して力を加えることによって左に回転し始める。これは、センサーによって検知され、制御ユニットによって自発的であると見なされた場合に伝達することができる。ユーザーによって加えられる力は、近位アームの長さL2を介して、好ましくはz軸と整列された装置の中心点に作用するモーメントMを生成する。旋回モーメントは、それぞれが上記で定義されたそれらのx平面内にある反対方向に自己平衡車輪を傾斜させ、反作用動作として車輪の回転を対応して誘発し、その結果、装置を全体として動き回らせる。
【0127】
図19は、自己平衡車輪を垂直位置から角度θだけ傾斜させるのに必要な力を示している。この力は高さの関数である。したがって、第2の軸に対する第1の軸の高さは、システムの感度に直接的な影響を及ぼすことが理解できる。
【0128】
自己平衡車輪は、フレーム26によって一緒に接合されてもよい。図20及び図21は、自己平衡車輪の第2の軸を第1の軸に接続するフレーム部材(本明細書においてフレーム部分とも称される)の好ましい実施形態を示している。図20において、フレームの傾斜機能が示されている。ここで、第1の軸を備えるフレーム26の上部部材は、第2の車輪軸に対して角度θだけ前後にシフトすることができる。傾斜するとき、フレームの左側部材及び右側部材によってそれぞれ形成される角度θ1及び角度θ2は等しく、両部材に対して同じ方向である。
【0129】
図21Aにおいて、フレームの旋回機能が示されている。この場合、角度θ1及び角度θ2は、左側部材及び右側部材の両方が装置の中心点に対して等距離である場合にのみ値が等しい。しかしながら、2つの角度の方向は互いに反対である。車輪が定位置に留まっている間にユーザーがそのような旋回を行うことを可能にするために、左側部材及び右側部材の上端にボールジョイントを使用することが好ましい。左側部材及び右側部材は、横方向フレーム部材を介して、それらの間の中間にある第1の軸に接続されてもよい。これは、ユーザーを含む装置の重心が装置の中心の周りにモーメントを生じさせるように、ユーザーが曲がるときにシーソーがユーザーに追従することを可能にする。次に、自己平衡車輪は、破線で示されるように、好ましくはz軸と整列された中心点の周りを旋回し、自己平衡車輪自体を再整列することによって追従することができる。車輪は一点の周りに旋回するため、装置の旋回半径は最小に保たれる。これにより、空間を節約し、装置を屋内及び屋外で容易に操作可能とすることができる。
【0130】
図21Bは、ユーザーが右に曲がり始めたときに左右のフレーム部材間の異なる距離を収容するためにスロットが設けられたボールジョイントの好ましい実施形態を示している。
【0131】
図22は、第6の好ましい実施形態による移動支援装置を示しており、この実施形態において、自己駆動車輪が収容され、好ましくは、車輪の小さな部分だけが露出されたままになっている。この実施形態において、フレーム、遠位アーム、及びカウンターウェイトもまた、ほぼ完全に収容される。近位アームは、ユーザーにより多くの空間を提供するために自由なままにされている。可能な場合に装置を収容することによって、特に子供同士が交流する場合に、安全性を向上させることができる。滑らかな外面は、任意の衣服、玩具又は他の物体が装置の狭い空間又は関節部分にひっかかる可能性を低減する。
【0132】
第6の実施形態において、近位アームはまた、ハーネスが取り付けられる場所で又はその近くで関節接合される。これにより、ハーネス、例えばシートの位置をユーザーのために調整することができる。それはまた、ユーザーが、近位アームに対して或る角度で自由に背中を位置決めすることを可能にすることができる。すなわち、下方に移動するとき、地面を向いていなくてもよく、自然な姿勢を保持することができる。また、ハーネスと近位アームとの間のリンク機構52は、緩衝器、例えばゴム緩衝器を備えることが特に好ましい。
【0133】
この図には示されていないが、装置上のアクセス可能なポイントに緊急停止ボタンが設けられる。緊急停止は、近くの大人が容易に目視でき、アクセスできるように、車輪の上部又は第1の軸の上部に配置されることが好ましい。
【0134】
制御ユニットは、緊急停止ボタンが押されたときに緊急停止シーケンスを起動するように構成することができる。好ましくは、これにより、制御装置は、任意の電動運動を直ちに又は徐々に停止させ、及び/又は支持車輪を地面に落下させることができる。
【0135】
最後に、図23及び図24は、本発明の第7の実施形態による移動支援装置の斜視図及び後面図を示している。見やすくするために、これらの図には全ての部品が示されているわけではない。この実施形態において、車輪は、地面と各車輪の中心線とにまたがる理論上の三角形によって成される上側角度が20度となるように、10度だけ負に傾斜している。したがって、各車輪の中心線と地面との間の内角βは、約10度である。この角度は、装置の安定性及びその安全性を有意に増加させることが見出された。
【符号の説明】
【0136】
100 移動支援装置
10 第1の軸
20 第2の軸
L1 第1の軸からカウンターウェイトまでの長さ
L2 第1の軸からハーネスまでの長さ
12 近位アーム
14 遠位アーム
16 ハーネス
18 カウンターウェイト
22 第1の自己平衡車輪
24 第2の自己平衡車輪
26 フレーム
28 前方シフト調整のスロット
30 車輪のセット
32 ユーザー
34 ユーザーの重心
36 制御ユニット
38 支持車輪
40 支持車輪フレームコネクタ
42 ボールジョイント
44 角度調整フレームコネクタ
46 センサーのセット
48 車輪のケーシング
50 ばね
52 ハーネス-アーム継手
【0137】
図面訳
図1
Prior Art 従来技術

図4
Uplift forces [N] 持ち上げ力[N]
alpha 1 & 2 [deg°] α1及びα2[度(°)]

図5
Uplift forces [N] 持ち上げ力[N]
alpha 1 & 2 [deg°] α1及びα2[度(°)]
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
【国際調査報告】