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特表2024-544662外科用メッシュの露出を処置するための組成物及び方法
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  • 特表-外科用メッシュの露出を処置するための組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】外科用メッシュの露出を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20241126BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K35/12
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532717
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022051424
(87)【国際公開番号】W WO2023102061
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,987
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】アッタ ベーファー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エー.オッチノ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル シー.トラブコ
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
対象における外科用メッシュの露出を処置するための方法は、一般に、PEPを、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量で、露出した外科用メッシュの領域に隣接する組織に投与することを含む。別の態様では、対象における外科用メッシュの露出を処置するための方法は、一般に、露出した外科用メッシュの領域を外科的に閉鎖することと、PEPを、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量で、外科的閉鎖に隣接する上皮に投与することと、を含む。いずれかの態様の1つ以上の実施形態では、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量は、上皮の増殖を増加させて、露出した外科用メッシュの領域を減少させるのに、外科用メッシュを覆う上皮の厚さを増加させるのに、又は外科用メッシュを覆う上皮の血管新生を増加させるのに有効な量であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における外科用メッシュの露出を処置するための方法であって、
PEPを、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量で、前記露出した外科用メッシュの領域に隣接する組織に投与することを含む、方法。
【請求項2】
対象における外科用メッシュの露出を処置するための方法であって、
露出した外科用メッシュの領域を外科的に閉鎖することと、
PEPを、前記露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量で、前記外科的閉鎖に隣接する上皮に投与することと、を含む、方法。
【請求項3】
前記露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な前記量が、上皮の増殖を増加させて前記露出した外科用メッシュの領域を減少させるのに、前記外科用メッシュを覆う上皮の厚さを増加させるのに、又は前記外科用メッシュを覆う上皮の血管新生を増加させるのに有効な量を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記PEPが、1回投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PEPが、2回以上投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記PEPが、2~4回の投与で提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PEPが、投与間に約7日の間隔で投与される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
PEPが、少なくとも1012個のPEPエキソソームを送達するのに有効な量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記外科用メッシュが、少なくとも1cm×1cmのサイズである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、未処置のメッシュ露出と比較して、細胞増殖の増加、上皮の厚さの増加、血管新生の増加、又は離開の欠如によって測定される、メッシュ露出の解消をもたらす、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、未処置のメッシュ露出と比較して、組織顕微鏡法によって測定される瘢痕形成の減少をもたらす、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
PEPを投与することが、前記処置された領域内の1つ以上の部位にPEPを注射することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記PEPが、細胞外マトリックス構成成分を更に含む組成物において投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞外マトリックス構成成分が、コラーゲンを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月01日に出願された米国仮特許出願第63/284,987号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府資金提供
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)傘下のNational Center for Advancing Translational Studiesによって授与されたTR002377の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明について一定の権利を有する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、一態様において、対象における外科用メッシュの露出を処置するための方法を記載する。一般に、本方法は、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量で、露出した外科用メッシュの領域に隣接する組織にPEPを投与することを含む。
【0004】
別の態様では、本開示は、対象における外科用メッシュの露出を処置するための方法を記載する。一般に、本方法は、露出した外科用メッシュの領域を外科的に閉鎖することと、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量で、外科的閉鎖に隣接する上皮にPEPを投与することと、を含む。
【0005】
いずれかの態様の1つ以上の実施形態では、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量は、上皮の増殖を増加させて、露出した外科用メッシュの領域を減少させるのに、外科用メッシュを覆う上皮の厚さを増加させるのに、又は外科用メッシュを覆う上皮の血管新生を増加させるのに有効な量であり得る。
【0006】
いずれかの態様の1つ以上の実施形態では、PEPは、1回投与される。他の実施形態では、PEPは2回以上投与される。
【0007】
いずれかの態様の1つ以上の実施形態では、PEPは、少なくとも1012個のPEPエキソソームを送達するのに有効な量で投与される。
【0008】
いずれかの態様の1つ以上の実施形態では、外科用メッシュは、少なくとも1cm×1cmのサイズである。
【0009】
いずれかの態様の1つ以上の実施形態では、本方法は、未処置のメッシュの露出と比較して、細胞増殖の増加、上皮の厚さの増加、血管新生の増加、又は離開の欠如によって測定される、メッシュ露出の解消をもたらす。
【0010】
いずれかの態様の1つ以上の実施形態では、本方法は、未処置のメッシュの露出と比較して、組織顕微鏡検査によって測定される瘢痕形成の低減をもたらす。
【0011】
上の概要は、本発明の開示される各実施形態又は全ての実装形態を説明することを意図するものではない。以下の説明で実例となる実施形態をより具体的に例示する。本出願全体のいくつかの箇所において、実施例のリストを通してガイダンスを提供し、これらの実施例は様々に組み合わせて使用することができる。各例において、列挙されたリストは代表的な群としてのみ示され、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実験方法:モデルの作製及び介入である。(A)メッシュ露出モデルの作製である。0日目:膣を剥皮させ、メッシュを移植する。全ての動物は、メッシュモデルを作製するために初回手術を受けた。計画されたメッシュインプラントサイズに従って膣を剥皮させた。メッシュを縫合糸で固定した。群1は、腹側膣及び吻側膣に移植された2つの3×3センチメートル(cm)メッシュを有していた。群2は、周方向に移植された異なるサイズの3つのメッシュ:1×2cm、2×2cm、及び3×3cmを有していた。EdUを投与されたこの群の1匹の動物は、異なるサイズのメッシュではなく2つの3×3cmインプラントを有していた。(B)7日目の介入:外科的閉鎖である。群1の4匹の動物は、2回目の手術を受けて、膣上皮を動員し、中断された様式で下にあるメッシュ上で膣組織を閉じた(左)。これらの動物の半分は、同時にPEP注射を受ける(群1B)。群2の3匹の動物は、PEPのみの注射を受けた(右;群2)。略語:PEP、精製エキソソーム生成物。EdU、2’-デオキシ-5-エチニルウリジン
【0013】
図2】肉眼病変及び透過型電子顕微鏡法(TEM)である。(A)最初の手術から4週間後の肉眼的膣-メッシュ複合体である。パネル1:野生型、器具を取り付けていないブタ膣。パネル2:群1A、外科的閉鎖のみの群。パネル3:群1B、外科的閉鎖を伴うPEP注射。パネル4:群2、PEP注射のみ。白い破線のボックスは、下にあるメッシュの領域を表す。描かれた全てのメッシュは3×3cmである。(B)透過電子顕微鏡法である:野生型は、上皮レベルでの健康なブタ膣を表し(上部;1500倍の倍率)、真皮のより深部に、基底膜のレベルに焦点を合わせた(中央及び下部;3,000倍及び12,000倍)。外科的閉鎖のみを受けた群1Aは、断続的に破壊された基底膜に隣接する細胞組織化の破壊を伴う扁平上皮細胞を有していた(中央パネル)。PEPのみによる処置を受けた群2は、正常な構造及び細胞接合部を有する上皮細胞を有しており、いくつかの炎症細胞が散在していた(右上部、3000倍)。基底膜及び隣接する細胞組織化は保存されている(右、中央及び下部)。
【0014】
図3】膣-メッシュ複合体の組織学的評価である。(A)殺処分時に得られた外植片の代表的なマッソン・トリクローム染色である。(B)上皮マーカーサイトケラチン及び間質コラーゲンIIIを示す代表的な免疫蛍光画像である。(C)上皮(サイトケラチン)及び下層の皮膚組織内の増殖している(Ki67)細胞を示す代表的な免疫蛍光画像である。
【0015】
図4】膣-メッシュ複合体の組織学的評価である。(A)マッソン・トリクローム染色から得られた上皮の厚さの定量化である。ANOVA p=0.03。(B)上皮の長さ当たりの全増殖、上皮増殖及び非上皮増殖(Ki67)細胞の定量化である。(A)及び(B)については、n=2(野生型、非手術膣組織)、n=2(外科的閉鎖のみ)、n=4(外科的閉鎖を伴うPEP)、Aについてはn=7及びEについてはn=5(PEP注射のみ)。(C)EdUは、上皮及び下層組織にわたる細胞中に存在し、4週間の治癒期間中のデノボ再生を確認している。値は平均±標準誤差として表した。
【0016】
図5】膣-メッシュ複合体の細胞分析である。(A)E-カドヘリン(E-Cad)上皮に隣接するCD3T細胞の代表的な免疫蛍光画像である。(B)血管新生(平滑筋アクチンに囲まれたCD31内皮細胞(SMA平滑筋細胞))、並びに筋線維芽細胞(血管外SMA領域)の存在を示す代表的な免疫蛍光画像である。
【0017】
図6】膣-メッシュ複合体の細胞分析である。(A)高倍率視野当たりの相対CD3の分率によるT細胞存在量の定量化である。(B)血管新生の定量化(mm当たりのCD31管腔)である。ANOVA p=0.03、*野生型に対してp<0.05。(C)膣メッシュ外植片内の平滑筋沈着の定量化(高倍率視野当たりのSMA面積分率)である。(D)強度相関指数によって測定されるCD31及びSMAの共分布の定量化である。野生型、非手術膣組織:n=2;外科的閉鎖のみ:n=2;外科的閉鎖を伴うPEP:n=4;PEP注射のみ:A、C、及びDについてn=5;Bについてn=7。
【0018】
図7】研究フロー図である。(A)メッシュ露出モデルを作製するために、3cm×3cmの面積の上皮及び線維筋性組織を剥皮させ、正方形のポリプロピレンメッシュを固定した。(B)動物は急性又は亜急性アームのいずれかに入り、そこで1週間(急性)又は8週間(慢性)の治癒を受けた。この期間に続いて、動物は、PEPの1回の注射を1回(急性-単回PEP、亜急性-単回PEP)又は週1回4週間(急性-週1回PEP)受けた。殺処分は、PEPの初回注射の4週間後に行った。略語:PEP、精製エキソソーム生成物。
【0019】
図8】メッシュ露出に対するPEP処置後の上皮再生である。(A)外植されたメッシュ-膣複合体の代表的なヘマトキシリン及びエオシン(H&E)画像である。#は、厚さ80μmのメッシュ繊維によって形成された孔を示す。急性単一群における断面画像は、2つの結合繊維、したがってより大きい直径の孔を示す。(B)外植メッシュ当たり4±1.4cmの上皮にわたって測定された、様々なPEP処置群にわたる再生膣上皮の平均厚さである。ANOVA p=0.2。(C)細胞再生のマーカーとしてEdU(赤色)で標識された膣上皮(サイトケラチン、緑色)の代表的な免疫蛍光画像である。(D)メッシュ当たり1.6±0.3cmの上皮にわたって測定された、全増殖、上皮増殖、及び非上皮増殖細胞密度(面積当たりのEdU+細胞)の定量化である。全増殖についてのANOVA(p=0.049)、上皮増殖についてのANOVA(p=0.046)、非上皮についてのANOVA(p=0.043)。B/Dについては、*p<0.05、n=2(急性-単回PEP)、n=4(急性-週1回PEP)、及びn=6(亜急性-単回PEP)。データは平均値±SEMとして報告した。
【0020】
図9】メッシュ露出に対する様々なPEP処置後の再生組織の血管新生である。(A)EdU(白色)が再生細胞をマーキングしている、上皮下血管(CD31、赤色)の代表的な免疫蛍光画像である。(B)上皮下の面積当たりのCD31管腔として報告される毛細血管密度の定量化(メッシュ当たり8.5±1.2mm)である。血管についてのANOVA(p=0.0069)、EdU血管についてのANOVA(p=0.022);*p<0.05、**p<0.01、n=2(急性-単回PEP)、n=4(急性-週1回PEP)、及びn=6(亜急性-単回PEP);データは平均値±SEMとして報告した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ポリプロピレンメッシュの外科的移植は、例えばストレス性尿失禁又は骨盤臓器脱を経験している女性に対して広く受け入れられており、耐久性のある処置である。これらの手技は、行動的/非外科的手段が症状の除去に成功しない場合に行われることが多い。メッシュの移植は有効な処置であるが、女性の中には、時間が経つにつれてメッシュが露出することを経験する者もいる。メッシュの露出は、縫合線又はインプラントを覆う任意の領域に沿って生じ得る。これは、切開中の術中血行遮断と術後の創傷治癒の不良との組み合わせに起因して起こることが疑われている。埋め込まれたメッシュの体積、栄養状態、閉経状態、並びに糖尿病、免疫抑制、及び喫煙などの医学的共存症を含む多くの要因が、女性のメッシュ露出のリスクに寄与し得る。メッシュの持続的な露出は、性交疼痛、心理的苦痛、分泌物異常を引き起こし、女性を膣感染症に罹りやすくする可能性がある。膣エストロゲンは、露出に対する非外科的治療としてしばしば使用されるが、有効性に関する高レベルのデータは存在せず、多くの患者は、上皮再閉鎖又はメッシュ切除のための再手術を必要とし続ける。再手術には多大な費用がかかり、切除は症状の再発につながる可能性がある。
【0022】
メッシュ露出を処置する文脈で本明細書に記載されるが、本明細書に記載される組成物及び方法は、例えば、外科用メッシュの初期埋め込み又は除去中などの他の文脈で適用可能であってもよい。メッシュ埋め込み手技の前、メッシュ埋め込み手技の間、メッシュ埋め込み手技の後であるが、いずれかの露出又は他の合併症の前に、メッシュ露出が生じた場合の処置として、メッシュ除去手技の間、メッシュ除去手技の直後、又はメッシュ除去手技の後のある時点で、本明細書に記載の組成物を投与してもよく、及び/又は本明細書に記載の方法を実施してもよい。加えて、膣メッシュ露出の例示的モデルの文脈で本明細書に記載されるが、本明細書に記載される組成物及び方法は、例えば、ヘルニア修復、ストレス性尿失禁の処置、子宮脱、又は他の損傷組織の補強などの外科用メッシュを伴う他の手技に適用され得ることを理解されたい。
【0023】
組織再生における研究は、幹細胞療法の調査にますます向けられてきている。しかし、治療の成功は、培養技術及び送達方法の費用及び不均一性によって制限されてきた。対照的に、エキソソーム送達プラットフォームは、治療用核酸(例えば、miRNA)、シグナル伝達タンパク質、及び他の再生基質を送達して、内分泌経路、パラクリン経路、及び/又は抗炎症経路を活性化することができる。エキソソームは、局所的な幹細胞活性化及び増殖を駆動することができ、細胞ベースの様式の必要性を排除する。
【0024】
本開示は、精製エキソソーム生成物(PEP)を含む治療用組成物を記載する。これらの組成物は、膣メッシュ露出を処置するための方法において使用され得る。PEPは、従来の方法を使用して調製されたエキソソームとは異なる構造及び組成を有する生成物を生成する凍結乾燥工程を使用して調製された精製エキソソーム生成物である。PEPは、室温で安定であり、以下により詳細に記載されるように、薬学的担体(例えば、pH中和コラーゲン-1)中で再構成されて、不十分な膣組織治癒の非外科的管理のための注射可能な組成物を作り出すことができる。
【0025】
精製エキソソーム生成物(PEP)の生成は、血液から血漿を分離することと、分離された血漿から濾過及び遠心分離によってエキソソームの溶液を単離することと、を含む。国際特許出願第PCT/US2018/065627号(国際公開第WO2019/118817号として公開されている)、米国特許公開第2021/0169812A1号、及び米国特許第10,596,123号に、PEPが完全に特徴付けられ、PEPの調製方法が記載されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、PEPは、従来の方法を使用して調製されたエキソソームとは異なる構造を有する生成物を生成する凍結乾燥工程を使用して調製された精製エキソソーム生成物である。例えば、PEPは、典型的には、従来のエキソソーム調製方法の間にエキソソームが破壊された後のエキソソーム脂質二重層の脂質の再凝集から生じる結晶構造ではなく、球状又はスフェロイド状の構造及びインタクトな脂質二重層を有する。球状又はスフェロイド状のエキソソーム構造は、一般に、300nm以下の直径を有する。典型的には、PEP調製物は、比較的狭いサイズ分布を有する球状又はスフェロイド状のエキソソーム構造を含有する。いくつかの調製物において、PEPは、約110nm±90nmの平均直径を有する球状又はスフェロイド状のエキソソーム構造を含み、エキソソーム構造の大部分は、110nm±50nm、例えば、110nm±30nmなどの平均直径を有する。
【0026】
未改変PEP調製物、すなわち、調製物中のエキソソームの集団の選別又は分離によってその特徴に変化のないPEP調製物は、CD63エキソソームとCD63エキソソームとの混合物を天然に含む。CD63エキソソームは無制限の細胞増殖を阻害することができることから、CD63及びCD63エキソソームを天然に含む未改変PEP調製物は、創傷の修復及び/又は組織再生のための細胞増殖を刺激することも、無制限の細胞増殖を制限することもできる。
【0027】
更に、CD63エキソソームを選別することによって、天然に単離されたPEP調製物からCD63エキソソームを取り出し、次いで所望の量のCD63エキソソームを添加し戻すことによって、PEP生成物中のCD63エキソソームに対するCD63エキソソームの比を制御することができる。1つ以上の実施形態において、PEP調製物は、CD63エキソソームのみを有し得る。
【0028】
1つ以上の実施形態において、PEP調製物は、CD63エキソソームとCD63エキソソームの両方を有し得る。CD63エキソソームのCD63エキソソームに対する比は、少なくとも部分的に、特定の用途において所望される細胞増殖の量に応じて変動し得る。例えば、CD63/CD63エキソソーム比は、CD63エキソソームによって誘導される所望の細胞増殖、及び細胞接触阻害を介して達成されるCD63エキソソームによって提供される細胞増殖の阻害を与える。非接着性細胞が存在する組織(例えば、血液由来構成成分)などの特定のシナリオでは、この比は、治療する組織に対して細胞増殖又は細胞阻害の適切なバランスを提供するように調整することができる。例えば、非接着性細胞を有する組織においては、細胞間接触はきっかけではないので、CD63エキソソームの比を減らして、無制限の細胞増殖を回避することができる。逆に、同種異系細胞をベースとする治療又は免疫療法などにおいて、細胞のクローン集団を拡大したい場合、非常に小さな供給源から大きな細胞集団を確実に得ることができるように、CD63エキソソームの比を増加させることができる。
【0029】
したがって、1つ以上の実施形態では、PEP調製物中のCD63エキソソームとCD63エキソソームとの比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも11:1、少なくとも12:1、少なくとも13:1、少なくとも14:1、少なくとも15:1、又は少なくとも16:1であり得る。1つ以上の実施形態では、PEP調製物中のCD63エキソソームとCD63エキソソームとの比は、最大15:1、最大16:1、最大17:1、最大18:1、最大19:1、最大20:1、最大25:1、又は最大30:1であり得る。例えば、CD63エキソソームとCD63エキソソームとの比は、1:1~30:1、2:1~20:1、4:1~15:1、又は8:1~10:1であり得る。1つ以上の特定の実施形態では、PEP生成物は、9:1の比のCD63エキソソーム対CD63エキソソームを含有するように製剤化される。1つ以上の特定の実施形態では、天然PEP、例えば、CD63エキソソームとCD63エキソソームとの比が改変されていないPEPを使用してもよい。
【0030】
本開示は、外科的介入の補助として、又は外科用メッシュ(例えば、膣メッシュ)の露出を処置するための独立型療法としてのPEPの使用を記載する。標準的な外科的再閉鎖へのPEPの添加は、ブタモデルにおけるメッシュ露出の改善された解消-例えば、組織の治癒及び再閉鎖-を生じる。記載されたブタモデルは、一般に、外科用メッシュ露出の種々の状況において、及びヒトを含む他の種の対象において使用するための臨床的有用性の有効な指標である。更に、PEPは、臨床的に意味のあるサイズ(例えば、1×1cmを超える)の露出において、更なる外科的介入なしにメッシュ露出の解消を独立して達成することができる。再生医療(機能的組織の再生)の教義と一致して、PEP処置組織は、非PEP処置露出部よりも優れた血管新生、上皮の厚さ、粘弾性及び炎症プロファイルを実証している。
【0031】
対象がブタである例示的なモデルの文脈において以下に例示されるが、本明細書中に記載される組成物及び方法は、任意の適切な対象を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「対象」とは、ヒト又は任意の非ヒト哺乳動物であり得る。例示的な非ヒト動物の対象としては、家畜動物又はコンパニオンアニマルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な非ヒト動物の対象としては、ヒト科(例えば、チンパンジー、ゴリラ、又はオランウータンを含む)、ウシ亜科(例えば、畜牛を含む)、ヤギ亜科(例えば、ヤギを含む)、ヒツジ属(例えば、ヒツジを含む)、ブタ(例えば、ブタを含む)、ウマ科(例えば、ウマを含む)、シカ科のメンバー(例えば、シカ、エルク、ムース、カリブー、トナカイなどを含む)、バイソン科のメンバー(例えば、バイソンを含む)、ネコ科(例えば、飼いネコ、虎、ライオンなどを含む)、イヌ科(例えば、飼いイヌ、オオカミなどを含む)、鳥類(例えば、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウなどを含む)、齧歯類(例えば、マウス、ラットなどを含む)、ウサギ科のメンバー(例えば、ウサギ又は野ウサギを含む)、イタチ科のメンバー(例えば、フェレットを含む)、又は翼手目のメンバー(例えば、コウモリを含む)が挙げられるが、これらに限定されない:
【0032】
また、メッシュ露出の結果として損傷した膣上皮を含む例示的な実施形態の文脈において以下に説明されるが、本明細書中に記載される組成物及び方法は、任意の組織-したがって、メッシュ露出の結果として損傷した任意の上皮組織-の処置を含み得る。
【0033】
外科用メッシュ露出モデル
全ての動物は、有害事象なしに研究を完了した。記載されたメッシュ露出モデルは、臨床的に意味のあるサイズのインプラントを研究するのに適切であることが証明された。体重70~80kgのブタは、複数のメッシュを埋め込むための適切な膣内径及び深さ、並びに標準的な外科用器具の使用を可能にした。全てのメッシュを、2-0ポリプロピレンで固定することによって保持した。PEPのみの群における1匹の動物は、メッシュインプラントの中心部分の「バルーニング(ballooning)」を経験したが、メッシュの下の再上皮化を依然として実証した(組織学的に確認された)。
【0034】
膣/メッシュ複合体の肉眼的分析
図2Aは、外植された膣-メッシュ複合体の肉眼的検査を示す。PEP及び付随する外科的閉鎖で処置された組織(群1B)は、メッシュ露出の最も顕著な解消を実証し、続いてPEPのみ(群2)、次いで外科的閉鎖のみの群(群1A)であった。
【0035】
外科的閉鎖で処置された群の中で、PEPの添加は、閉鎖のみと比較して、創傷離開(例えば、損傷の周りの組織の分離)の発生率を減少させた。閉鎖のみのメッシュ(群1A)の4つ全てが、メッシュの離開及び再露出を有していた。4つのPEP+閉鎖メッシュ露出(群1B)は、50~95%のメッシュ露出の解消を実証した。
【0036】
PEPのみで処置した動物(群2)は、外科的閉鎖の欠如にもかかわらず、強固な膣再生を実証した。1匹の動物は、先に記載したように、メッシュ複合体のバルーニングを有していた。したがって、全体的なメッシュ露出の解消については言及することができない。組織学上、バルーニングされたメッシュの下の組織試料は、以前に剥皮された領域の中心に再生された組織の存在を示した。PEPのみの群の残りの動物は、1センチメートル(cm)、2cm、及び3cmのインプラント上で膣組織の再生を示し、最大のインプラントは、露出のほぼ完全な解消を実証した(図2A)。
【0037】
再生組織の組織学的分析
外科的閉鎖を伴うか、又は伴わないPEP処置された膣-メッシュ複合体は、基底膜(図2B)及び損傷していない野生型膣組織(図2A)と同様のインタクトな上皮の再確立を示した。対照的に、閉鎖のみの組織は、上皮において頻繁な破壊及び細胞の乱れを示した(図2A図3A、B)。TEM分析は、閉鎖のみの群における不十分に再生された基底膜及び瘢痕形成とは対照的に、PEP+閉鎖群において、細胞接合を維持した基底膜及び円形細胞の存在を確認した(図2B)。組織学的標本は、独立した盲検の病理学者によって精査され、本明細書に提示される知見を確証した。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色切片は、対照と比較して、PEP+閉鎖(217μm)及びPEPのみ(208μm)の試料における上皮の厚さの増加を明らかにした(80μm、p=0.03;図3A図4A)。PEP処置組織の免疫組織化学的分析は、野生型組織と同様に、上皮マーカーである汎サイトケラチン(図3B、C)、粘膜下コラーゲンIII(図3B)、及びE-カドヘリン(図5A)の適切な発現を実証した。
【0038】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される方法及び組成物は、外科用メッシュにおける、又は外科用メッシュの周囲の瘢痕組織の形成を減少させ得る。瘢痕組織形成は、例えば、平坦化された無秩序な上皮細胞の顕微鏡的可視化によって測定され得る。PEP処置群における均一な組織構造及び完全な被覆(図2Aの「PEP+閉鎖」及び「PEPのみ」)と比較して、部分的なメッシュ形態が依然として存在する(図2Aの「閉鎖のみ」)不均一な瘢痕組織形成を、メッシュ移植部位において視覚的に観察することができる。組織学的に、上皮層の異常な形態は、野生型未処置対照群と比較して、「閉鎖のみ」群(図2B)において認識することができる。PEP処置は、野生型において観察された均一な組織構造及び細胞組織化を回復させた(図2B)。
【0039】
再生組織における増殖及び炎症の評価
膣における扁平上皮の基底細胞層は増殖の原因となる。したがって、増殖は、上皮の長さ当たりのKi67細胞の数を測定することによって測定した。損傷していない野生型膣組織と比べて、全ての実験動物は、より高い割合の全増殖及び上皮増殖の傾向を示し(図3C図4B)、高密度Ki67細胞が上皮の基底層を裏打ちしている。回復した上皮が新しい細胞に由来することを確実にするために、2’-デオキシ-5-エチニルウリジン(EdU)パターンを評価した。PEPのみの群では、EdUは上皮及び下層組織全体に存在し、研究期間中のデノボ再生が確認された(図4C)。閉鎖のみの膣/メッシュ複合体は、非上皮粘膜下区画においてより高い増殖を有する傾向があり(図4B)、急速に増殖する線維芽細胞及び/又は炎症細胞の浸潤を示唆した。CD3発現の分析は、閉鎖のみのサブグループにおいて、慢性炎症を示す、T細胞浸潤への最も高い傾向を示した(図5A図6A)。
【0040】
膣/メッシュ複合体における血管新生及び線維症
CD31発現を介した内皮細胞の存在の分析は、野生型組織と比較して、PEP+閉鎖群においてより高い毛細血管密度を実証した(185の血管/mm対85の血管/mm、p=0.03;図4B図6B)。興味深いことに、閉鎖のみの組織は、部分的に過剰な間質平滑筋沈着に起因して、平滑筋アクチン(SMA)の発現の増加を示した(図6C)。PEPで処置した組織は、損傷していない組織と比較してSMA発現の増加を示したが、閉鎖のみの組織と比べてSMA発現は減少した。SMA及びCD31の共分布の分析は、損傷していない野生型組織において最高の強度相関指数(ICQ)、閉鎖のみの群において最低であり、及びPEP処置組織において中間であることを実証しており(図6D)、閉鎖のみのコホートにおける間質平滑筋沈着を確認している。
【0041】
上記の研究は、メッシュ露出のブタモデルにおける急性(例えば、生後1週間)膣メッシュ露出を解消するためのPEP注射の有用性を確立している。以下に記載される研究において、メッシュ露出モデルにおける創傷治癒に対する再投薬(単回投与レジメン対複数回投与レジメン)の効果。具体的には、上皮の厚さ、再生細胞集団、及び血管新生を評価した。複数回投与レジメンは、最も高い再生プロファイルを示している。メッシュ露出の解消を、外科的介入、同時PEP注射を伴う外科的介入、及びPEP注射単独で比較した。手短に言えば、PEP単独では、最大3cm×3cmのサイズのメッシュ露出を可変的に処置した。PEP処置された組織は、外科的管理単独と比較して、より厚い再生上皮並びにより低い線維症及び炎症プロファイルを有していた。
【0042】
全てのオンプロトコル動物は、有害事象なしに研究を完了した。系統的な多臓器オン及びオフターゲット剖検評価を行ったが、関連する所見はなかった。安全性評価には、多臓器組織学的評価、定期的バイタルサイン、及び血液検査も含まれた。結果は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)と、それに続く事後テューキー検定(post-hoc Tukey’s test)を用いたペアワイズ比較を用いて、3つの群全てにわたって総計で分析した。結果は、(1)単回対複数回投与プロトコル、及び(2)急性対亜急性メッシュ露出を評価して提示される(例えば、図4図6図8、及び図9)。
【0043】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される方法及び組成物は、任意の好適な組織学的測定によって測定される外科用メッシュ露出の解消を改善し得る。例えば、本明細書に記載される方法及び組成物は、血管新生を増加させ、線維症を減少させ、炎症プロファイルを減少させ、上皮の厚さを増加させ、細胞増殖を増加させ、かつ/又はe-カドヘリン、サイトケラチン、及びコラーゲンなどの組織修復のマーカーの発現を増加させ得る。
【0044】
急性メッシュ露出における単回用量対複数回用量PEPレジメン
ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色切片の評価は、単回PEP群と比較して、週1回PEP群において増加した上皮の厚さ(単回PEP 175.4μm、週1回PEP 259μm、ANOVA p=0.2、統計的に有意ではない)及び質的により少ない上皮破壊を明らかにした(図8A、B)。メッシュ繊維は、両方の群において上皮下線維筋性組織に十分に一体化されていることが認められた。週1回のPEP群は、より少ない繊維周囲有核細胞を示した。
【0045】
動物が、初回のPEP注射後に週2回EdUを投与されてから、介入後の組織再生を追跡した。再生は、全(上皮及び非上皮)細胞集団、上皮細胞集団、及び非上皮細胞集団について報告された(密度として報告された)。全細胞増殖は、全ての群の間で有意差があった(ANOVA p=0.049、図8D)。急性-週1回PEP群を単回PEP注射を受けた群と比較すると、より高い全増殖への傾向があったが、これは事後分析において有意ではなかった(p=0.216)。上皮増殖は、急性単一PEP群に対して急性週1回PEP群においてほぼ2倍高かった(1011対556EdU細胞/mm、p=0.038)。これは、複数回投与レジメンが上皮増殖のより高い割合に寄与することを示し、これは、上皮の厚さの差が統計的有意性に達しなかったとしても、上皮の厚さを増加させることによって更に支持される。
【0046】
CD31発現を使用した内皮細胞存在の分析は、群間の毛細血管密度の有意差を示した(ANOVA p=0.007、図9B)。単回投与と複数回投与との間の毛細血管密度の事後分析は有意ではなかった(p=0.316)。EdU/CD31血管内腔/mmによって測定される再生毛細血管密度を評価すると、群間で再生毛細血管密度に有意差があり(ANOVA p=0.022)、週1回PEP群は、単回PEP投与群と比較してより高い再生毛細血管密度を有した(p=0.030)。
【0047】
単回PEP注射による急性対亜急性メッシュ露出の処置
亜急性露出群は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色切片における上皮においてより少ない破壊を示した(図8A)。留意すべきことに、メッシュ繊維は、亜急性群対急性群においてより少ない周囲有核細胞を伴って、上皮下空間において十分に一体化されており、おそらく、時間とともに急性期炎症細胞の減少を示している。急性及び亜急性のメッシュ露出群にわたって比較すると、上皮の厚さは類似していた(急性175μm対亜急性203μm、p=0.828;図8B)。
【0048】
急性群と亜急性群との間の総細胞増殖は統計的に差はなかった(p=0.943)。しかしながら、亜急性群は、急性群と比較してより高い上皮増殖を示し(亜急性914対急性556EdU細胞/mm、p=0.081、統計的に有意ではなかった;図8D)、非上皮増殖に対する上皮増殖の比率がより高かった(亜急性1.5対急性0.6)。この傾向は、EdUがサイトケラチン陽性上皮に濃縮されている図8Cに視覚的に示されている。
【0049】
毛細血管密度は、急性メッシュ露出群と亜急性メッシュ露出群との間で差はなかった(p=0.253;図9B)。単回投与急性群の再生毛細血管密度は、亜急性群と同様であった(p=0.526)。留意すべきことに、亜急性群の血管内腔は、より大きく見え(図9A)、治癒を伴う自然な血管癒着を示し、これは、毛細血管密度が減少する傾向を部分的に説明する。更に、密度ではなくEdU血管画分を比較すると、亜急性群は、急性群における19%と比較して25%のEdU血管を有していた。これは、血管内腔密度はより低いが、再生血管の絶対数及びサイズの両方が亜急性群においてより高いという事実を更に確証する。
【0050】
膣メッシュ露出モデルにおいて注射可能なエキソソーム再生プラットフォーム(PEP)を使用するこの前臨床大型動物研究において、複数回投与レジメンは、単回投与レジメンよりも優れていることが見出され、PEPエキソソームは、急性露出メッシュ及び亜急性露出メッシュの両方において有効であった。これらの知見は、膣メッシュ露出のための非外科的処置としてのPEPの有効性を確立したデータに追加される。具体的には、この研究は、EdUの使用によって再生された膣組織及び血管のパターンを確立した。エキソソームは、典型的には、増殖因子、抗酸化剤、マイクロRNA、及び内分泌/パラクリンシグナルの宿主を送達して、局在化した再生を刺激する。用量依存的なEdU血管新生及び上皮増殖を示す本明細書におけるデータは、この機構の更なる証拠を提供する。
【0051】
閉経状態、栄養状態、真性糖尿病及び免疫抑制などの医学的共存症、並びに喫煙を含む因子が、膣メッシュ露出に寄与する。これらの因子の間の共通点は、創傷治癒に対するそれらの効果である。PEPエキソソームの再生特性を、膣メッシュ露出に対処するために評価した。
【0052】
PEPは、メッシュ露出後の膣組織再生を、外科手術が必要でない可能性があることを示唆する程度まで改善するか、又はメッシュ露出のための第二選択処置として使用され得る(図1~6)。更に、PEP投与の再投薬及びタイミングの効果を評価した。再生上皮(厚さ及びEdU画分)並びに再生毛細血管密度を組織再生の指標として選択した。
【0053】
上皮再生は、上皮及び線維筋性組織がモデルの作製において剥皮されたことを考慮して、膣組織再生の測定可能なマーカーとして使用した。反復投与による上皮の厚さの顕著な増加があった。遅延スケジュールでの単回注射でさえも、上皮の有益な再増殖を生じた。上皮再生(EdU上皮細胞/mm)は、複数回投与レジメンを使用すると、統計的により高く、正の用量応答効果を示唆した。実際に、上皮再生は、急性群と比較して、単回投与亜急性群においてより高く、上皮下層内の増殖画分の相対的な減少を伴い、これは、以下に考察される毛細管合体パターンに起因し得る。
【0054】
再生毛細血管密度は、複数回投与プロトコルを使用すると高かったが、単回投与の急性メッシュ露出と亜急性メッシュ露出との間でなお類似していた。血管新生の成熟期は、損傷後2~4週間を超えて延長する。したがって、PEP注射の4週間後において良好に形成された管腔の数の増加は、改善された生理学的血管新生を示唆している。免疫組織化学上の血管のパターン及び分布を見ると(図9A)、急性群はより多数の小さな毛細血管を有し、亜急性群内のより少ないがより大きな血管とは対照的である。小さな毛細血管が合体して成熟した血管を形成するこのパターンは、創傷治癒の文献に十分に記載されている。観察された血管成熟は、この研究における上皮/非上皮増殖の割合で見られるように、オンターゲット増殖を駆動する。
【0055】
本開示は、外科用メッシュ(例えば、膣メッシュ)露出のための新規エキソソーム療法、PEPの使用を支持するブタメッシュインレイモデルからのデータを提示する。したがって、PEPは、メッシュ露出に対する非手術的でコスト削減的な解決策として役立つことができる。PEPは、貯蔵安定性であり、注射が容易であるため、都市及び地方の診療において、並びに世界的な健康の向上のために、臨床医が利用できるようになる。この療法は、幹細胞に関連する細胞培養及び細胞送達の不均一性に関する問題を回避する。本明細書に提示されるデータは、再投薬による利益を実証する。
【0056】
したがって、本開示は、メッシュ露出のための注射可能な無細胞再生プラットフォームを使用するモデル動物研究を記載する。外科的介入を伴うPEP注射は、それらの全てがメッシュの離開/再露出を経験した外科的介入単独と比較して、頑強な膣組織再生及びメッシュ露出の解消をもたらした。PEPのみで処置された露出(外科的介入なし)は、可変的なメッシュ露出解消を示し、解消は3×3cmのサイズまで達成された。再生された組織は、TEM及び光学顕微鏡で実証されるように、適切な微小解剖学的構造を確立した。更に、PEP処置された組織は、より低い線維芽細胞増殖及び炎症を示した。これらの知見は、PEPの再生、抗炎症性、及び血管形成能力を明らかにしている。全体として、PEPで処置された組織は、閉鎖のみの群と比較して、線維症及び炎症プロファイルが減少した、より厚い再生上皮を実証した。更に、複数回投与レジメンは、露出メッシュ解消に対するPEP投与の効果を更に増大させることが示されている。
【0057】
重要なことに、本明細書で報告されるデータは、慢性の治癒していない創傷、より具体的には、メッシュ移植に対する宿主応答及びメッシュ合併症の促進因子に関する既存のデータを補完する。メッシュ合併症のための手術を経験した女性におけるメッシュ/膣複合体は、誇張されたM2マクロファージ及びマトリックスメタロプロテイナーゼ-9(MMP)応答並びに線維症及び分解を示すT細胞集団における相対的増加を有する露出を伴う組織を含み得る。非ヒト霊長類モデルにおいて、より重く、より低い多孔度の、より硬いメッシュは、細胞外マトリックスに対して有害な影響を有し、MMP並びにコラーゲン及びエラスチン異化作用の増加をもたらした。不十分な宿主再生努力(例えば、慢性炎症、ECMリモデリング)は、メッシュ露出及びその後のメッシュ露出の外科的管理の失敗の一因となる。したがって、炎症を軽減し、制御された再生を促進するためにPEPを使用することは、メッシュ露出のリスクを減少させ、既存の露出の状況における治癒を促進することができる。
【0058】
本明細書に提示されるデータは、PEPなどのエキソソーム療法が、膣組織再生において有望であることを実証している。エキソソームで処置された膣メッシュ露出は、頑強な膣組織再生を実証し、部分的から完全な露出解消をもたらした。このプラットフォームの適用は、泌尿器科医がメッシュ合併症にどのようにアプローチするかのパラダイムシフトをもたらし得る。
【0059】
したがって、本開示は、メッシュ露出の修復を改善するための組成物及び方法を記載する。一般に、組成物は、PEPと薬学的に許容される担体を含む。外科的設定において、PEPは、外科的に修復された組織への適用に好適な担体(例えば、外科用接着剤又は組織接着剤)と組み合わせてもよい。
【0060】
したがって、この方法は、外科的に移植されたメッシュの露出後に、修復を必要とする組織に有効量の組成物を投与することを含む。本明細書で使用される場合、修復を必要とする組織は、例えば、変性した膣上皮及び/又は膣メッシュと直接接触している膣上皮組織などの外科用メッシュに隣接する組織を意味し得る。修復を必要とする組織への組成物の投与はまた、無傷又は健康な部位での投与が、例えば、組成物を送達するために使用される針で損傷組織を更に破壊することなく、近くの損傷組織の治癒を促進するように、損傷組織に十分に近接した無傷又は健康な組織に組成物を投与することを含み得る。例えば、PEP組成物は、損傷組織から最大25cm(例えば、1cm、2cm、3cm、4cm、5cm、10cm、20cmなど)である健康な組織への注射によって投与され得る。
【0061】
この態様では、「有効量」は、未処置の上皮組織又は担体単独(PEPなし)で処置された上皮組織と比較して、上皮の厚さ、上皮細胞の増殖、及び/又は血管新生(例えば、毛細血管密度)を増加させるのに有効な量である。
【0062】
PEPは、薬学的に許容される担体と共に製剤化して、医薬組成物を形成することができる。本明細書で使用される場合、「担体」には、任意の溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、抗菌剤、及び/又は抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、緩衝液、ヒドロゲル、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体及び/又は薬剤の使用は、当該分野で公知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が考えられる。補助的な活性成分もまた、その組成物内に組み込むことができる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、生物学的又は他の点で望ましくないものではない物質を指し、すなわち、その物質は、任意の望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又はそれが含まれる医薬組成物の他の構成成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、PEPとともに個体に投与することができる。上記のように、外科的設定において、例示的な好適な担体としては、外科用接着剤、組織接着剤、又は支持マトリックス(例えば、コラーゲン足場)が挙げられる。
【0063】
1つ以上の実施形態では、PEP組成物は、PEP小胞と混合されているか、又はPEP小胞の少なくとも一部に充填されているかのいずれかで、追加の構成成分を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、追加の構成成分は治癒を促進することができる。1つ以上の実施形態では、追加の構成成分は、例えば、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、又は他の生体適合性足場構成成分などの1つ以上の生体適合性足場構成成分を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、追加の構成成分は、1つ以上の薬学的に活性な成分を含み得る。1つ以上の実施形態では、薬学的に活性な成分は、例えば、治癒時間を減少させるように、疼痛緩和を提供するように、又は合併症(例えば、感染)の可能性若しくは重症度を低減するように選択され得る。薬学的に活性な成分としては、例えば、ステロイド(例えば、エストロゲン)、鎮痛剤、又は抗生物質が挙げられ得る。追加の構成成分のうちの1つ以上は、PEP小胞の少なくとも一部に充填され得る。PEP調製物中の特定の構成成分の存在は、例えば、PEPが由来するドナー細胞による構成成分(例えば、タンパク質)の発現の結果であり得る。追加的に又は代替的に、1つ以上の構成成分は、PEP小胞の少なくとも一部に、直接的に(構成成分それ自体の充填)又は間接的に(例えば、組換え発現タンパク質)のいずれかで充填されてもよい。
【0064】
組成物がコラーゲンを含む1つ以上の実施形態では、コラーゲンは、プロコラーゲン、I型コラーゲン、III型コラーゲンなどの線維性コラーゲン、又はそれらの組み合わせとして提供され得る。組成物がコラーゲンを含む実施形態では、コラーゲンはコラーゲン足場として提供され得る。1つ以上の他の実施形態では、細胞外マトリックス構成成分は、精製された組換えタンパク質などの任意の好適な形態で供給され得る。1つ以上の実施形態では、組成物は、PEPと1つ以上の支持マトリックス構成成分(例えば、コラーゲン)を1:20~1:5(5%v/v~20%v/v)の比で含み得る。1つ以上の代替実施形態では、PEP対支持マトリックス構成成分の比は、体積で1:100、1:500、1:1000、1:10、1:5、1:2、又は1:1であってもよい。任意の医学的に好適な形態のコラーゲン、例えば、例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、又はIII型コラーゲンが、組成物中に含まれてもよい。コラーゲンは、ウシ又はヒト供給源などの哺乳動物供給源に由来してもよい。コラーゲン原線維構造は、天然、アテロコラーゲン、加水分解されたもの、又はいくつかのタイプの組み合わせであり得る。典型的には、ゲル電気泳動を使用して、コラーゲン足場中のコラーゲンの10%以下が、アルファよりも速い移動の特徴を示す。
【0065】
PEPを含有する医薬組成物は、好ましい投与経路に適した様々な形態で製剤化することができる。したがって、医薬組成物は、例えば、経口、非経口(例えば、皮内、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、粘膜下など)、又は局所(例えば、手術中に曝された神経組織への適用、鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮、直腸など)を含む公知の経路を介して投与することができる。医薬組成物は、例えば、鼻又は呼吸器粘膜への投与などによって(例えば、スプレー又はエアロゾルによって)、粘膜表面に投与することができる。医薬組成物はまた、持続性又は遅延性の放出を介して投与してもよい。医薬組成物は、例えば、1回以上の注射、坐剤、局所ゲル、パッチ、又はリングなどの非外科的インプラントの形態で投与することができる。医薬組成物は、包帯、縫合糸、ステープル、添え木、又は外科用メッシュなどの物理的足場に埋め込まれて投与され得る。1つ以上の実施形態では、複数の投与方法が、単一の処置の間に利用されてもよい。
【0066】
したがって、医薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、スプレー、エアロゾル、又は任意の混合物の形態を含むがこれらに限定されない任意の適切な形態で提供され得る。医薬組成物は、任意の薬学的に許容される賦形剤、担体、又はビヒクルを含む製剤で供給され得る。例えば、製剤は、例えば、クリーム、軟膏、エアロゾル製剤、坐剤、非エアロゾルスプレー、ゲル、ローションなどの従来の局所剤形で供給されてもよい。製剤は、例えば、アジュバント、皮膚浸透促進剤、着色剤、芳香剤、香味剤、保湿剤、増粘剤などを含む1つ以上の添加剤を更に含んでもよい。
【0067】
製剤は、便利な単位剤形で提供されてもよく、薬学の分野で公知の方法によって調製することができる。薬学的に許容される担体を含む組成物を調製する方法は、PEPを、1つ以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、PEPを液体担体、細かく割られた固体担体、又はその両方と均一に及び/又は密接に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって調製することができる。
【0068】
投与されるPEPの量は、投与されるPEPの含有量(content)及び/又は供給源、対象の体重、健康状態、並びに/又は年齢、並びに/又は投与経路を含むがこれらに限定されない様々な因子に応じて変動し得る。したがって、所与の単位剤形に含まれるPEPの絶対重量は、広く変動する可能性があり、対象の種、年齢、体重、及び健康状態、及び/又は投与方法などの因子に依存する。したがって、全ての考えられる用途に有効なPEPの量を構成する量を一般的に記載することは現実的ではない。しかしながら、当業者は、そのような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0069】
1つ以上の実施形態では、PEPの用量は、送達されるPEPエキソソームの用量の観点で測定することができる。したがって、1つ以上の実施形態では、本方法は、例えば、約1×10PEPエキソソーム~約1×1015PEPエキソソームの用量を対象に提供するために十分なPEPを投与することを含み得るが、1つ以上の実施形態では、本方法は、この範囲外の用量でPEPを投与することによって行われてもよい。
【0070】
したがって、1つ以上の実施形態では、本方法は、少なくとも1×10PEPエキソソーム、少なくとも1×10PEPエキソソーム、少なくとも1×10PEPエキソソーム、少なくとも1×10PEPエキソソーム、少なくとも1×1010PEPエキソソーム、少なくとも1×1011PEPエキソソーム、少なくとも2×1011PEPエキソソーム、少なくとも3×1011PEPエキソソーム、少なくとも4×1011PEPエキソソーム、少なくとも5×1011PEPエキソソーム、少なくとも6×1011PEPエキソソーム、少なくとも7×1011PEPエキソソーム、少なくとも8×1011PEPエキソソーム、少なくとも9×1011PEPエキソソーム、少なくとも1×1012PEPエキソソーム、2×1012PEPエキソソーム、少なくとも3×1012PEPエキソソーム、少なくとも4×1012PEPエキソソーム、又は少なくとも5×1012PEPエキソソーム、少なくとも1×1013PEPエキソソーム、又は少なくとも1×1014PEPエキソソームの最小用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。
【0071】
1つ以上の実施形態において、本方法は、1×1015以下のPEPエクソソーム、1×1014以下のPEPエクソソーム、1×1013以下のPEPエクソソーム、1×1012以下のPEPエクソソーム、1×1011以下のPEPエクソソーム、又は1×1010以下のPEPエクソソームの最大用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。
【0072】
1つ以上の実施形態では、本方法は、上で特定された任意の最小用量と最小用量より大きい任意の最大用量によって定義されるエンドポイントを有する範囲によって特徴付けられる用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。例えば、1つ以上の実施形態では、本方法は、例えば、1×1011~5×1012PEPエキソソームの用量、1×1012~1×1013PEPエキソソームの用量、又は5×1012~1×1013PEPエキソソームの用量などの1×1011~1×1013PEPエキソソームの用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。1つ以上の特定の実施形態では、本方法は、上に列挙された任意の最小用量又は任意の最大用量に等しい用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。したがって、例えば、本方法は、1×1010PEPエキソソーム、1×1011PEPエキソソーム、5×1011PEPエキソソーム、1×1012PEPエキソソーム、5×1012PEPエキソソーム、1×1013PEPエキソソーム、又は1×1014PEPエキソソームの用量を投与することを伴い得る。
【0073】
あるいは、PEPの用量は、凍結乾燥状態からの再構成時のPEPの濃度に関して測定することができる。したがって、1つ以上の実施形態では、本方法は、例えば、対象に約0.01%溶液~100%溶液の用量でPEPを対象に投与することを含み得るが、1つ以上の実施形態では、本方法は、この範囲外の用量でPEPを投与することによって行われてもよい。本明細書で使用される場合、PEPの100%溶液とは、1mlの液体又はゲル担体(例えば、水、リン酸緩衝生理食塩水、無血清培養培地、外科用接着剤、組織接着剤など)中に可溶化されたPEP(約2×1011エキソソーム又は75mg)の1つのバイアルを指す。比較のために、0.01%PEPの用量は、標準的な細胞条件培地を使用したインビトロでの細胞からのエキソソーム単離などのエキソソームを得る従来の方法を使用して調製されたエキソソームの標準的な用量とほぼ等しい。
【0074】
したがって、1つ以上の実施形態では、本方法は、少なくとも0.01%、少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも1.0%、少なくとも2.0%、少なくとも3.0%、少なくとも4.0%、少なくとも5.0%、少なくとも6.0%、少なくとも7.0%、少なくとも8.0%、少なくとも9.0%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%の最小用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。
【0075】
1つ以上の実施形態では、本方法は、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、又は0.1%以下の最大用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。
【0076】
1つ以上の実施形態では、本方法は、上で特定された任意の最小用量と最小用量より大きい任意の最大用量によって定義されるエンドポイントを有する範囲によって特徴付けられる用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。例えば、1つ以上の実施形態では、本方法は、1%~50%の用量、例えば、5%~20%の用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。1つ以上の特定の実施形態では、本方法は、上に列挙された任意の最小用量又は任意の最大用量に等しい用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。したがって、例えば、本方法は、0.05%、0.25%、1.0%、2.0%、5.0%、20%、25%、50%、80%、又は100%の用量を投与することを含み得る。
【0077】
単回用量は、全て一度に、処方された時間にわたって連続的に、又は複数回の別個の投与で投与されてもよい。複数回投与を使用する場合、各回の投与量は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、処方された1日用量のものは、単回用量として、24時間にわたって連続的に、等しくても等しくなくてもよい2回の投与として投与されてもよい。単回用量を送達するために複数回投与を使用する場合、投与間の間隔は同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、PEPは、例えば、外科的手技中に、1回限りの投与として投与されてもよい。
【0078】
PEP組成物の複数回投与で対象に投与する特定の実施形態では、PEP組成物は、損傷した膣組織を所望の程度まで処置するために必要に応じて投与され得る。あるいは、PEP組成物は、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は少なくとも10回投与され得る。投与間の間隔は、最小で少なくとも1日、例えば、少なくとも3日、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも14日、又は少なくとも21日などであり得る。投与間の間隔は、最大で6ヶ月以下、例えば、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、21日以下、又は14日以下であり得る。
【0079】
1つ以上の実施形態では、本方法は、上で特定された任意の最小間隔と最小間隔よりも大きい任意の最大間隔によって定義されるエンドポイントを有する範囲によって特徴付けられる間隔(2回投与の場合)又は複数間隔(3回以上の投与の場合)でのPEPの対象への複数回投与を含み得る。例えば、1つ以上の実施形態において、本方法は、1日~6ヶ月、例えば3日~10日の間隔でのPEPの複数回投与を含み得る。特定の実施形態において、本方法は、上に列挙した任意の最小間隔又は任意の最大間隔に等しい間隔でのPEPの複数回投与を含むことができる。したがって、例えば、本方法は、3日、5日、7日、10日、14日、21日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月の間隔でのPEPの複数回投与を含むことができる。
【0080】
1つ以上の実施形態では、本方法は、様々な細胞型から調製されたPEPのカクテルを投与することを含んでもよく、ここで、各細胞型は、例えば、タンパク質組成及び/又は遺伝子発現などの固有の上皮増殖プロファイルを有する。このようにして、PEP組成物は、PEP組成物が単一の細胞型から調製される場合よりも広いスペクトルの上皮組織の増殖を促進する活性を提供することができる。
【0081】
前述の説明及び以下の特許請求の範囲において、用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味し、「含む」、「含んでいる」という用語及びそれらの変形は、無制限であると解釈されるべきであり、すなわち、追加の要素又は工程が任意であり、存在してもしなくてもよく、別段の指定がない限り、「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ」は互換的に使用されて、1つ又は2つ以上を意味し、また、エンドポイントによる数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0082】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「いくつかの実施形態」、又は「1つ以上の実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所でそのような語句が出現しても、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の実施形態は、明確にするために単独で説明される場合がある。したがって、特定の実施形態の特徴が別の実施形態の特徴と不適合であると明示的に指定されない限り、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。したがって、一実施形態の文脈で説明される特徴は、特徴が必然的に相互に排他的である場合を除いて、異なる実施形態の文脈で説明される特徴と組み合わせることができる。
【0083】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の利益をもたらすことができる本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものでもない。
【0084】
別々の工程を含む本明細書に開示される任意の方法において、工程は任意の実施可能な順序で行ってもよい。また、必要に応じて、2つ以上の工程の任意の組み合わせを同時に行ってもよい。
【0085】
例示的な実施形態
実施形態1は、対象における外科用メッシュの露出を処置するための方法であって、
PEPを、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量で、露出した外科用メッシュの領域に隣接する組織に投与することを含む、方法である。
【0086】
実施形態2は、対象における外科用メッシュの露出を処置するための方法であって、
露出した外科用メッシュの領域を外科的に閉鎖することと、
PEPを、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量で、外科的閉鎖に隣接する上皮に投与することと、を含む、方法である。
【0087】
実施形態3は、露出した外科用メッシュの領域を処置するのに有効な量が、上皮の増殖を増加させて露出した外科用メッシュの領域を減少させるのに、外科用メッシュを覆う上皮の厚さを増加させるのに、又は外科用メッシュを覆う上皮の血管新生を増加させるのに有効な量を含む、実施形態1又は実施形態2に記載の方法である。
【0088】
実施形態4は、PEPが1回投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0089】
実施形態5は、PEPが2回以上投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0090】
実施形態6は、PEPが2~4回の投与で提供される、実施形態5に記載の方法である。
【0091】
実施形態7は、PEPが、投与間に約7日の間隔で投与される、実施形態5又は実施形態6に記載の方法である。
【0092】
実施形態8は、PEPが、少なくとも1012個のPEPエキソソームを送達するのに有効な量で投与される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0093】
実施形態9は、外科用メッシュが少なくとも1cm×1cmのサイズである、実施形態1~8のいずれかに1つに記載の方法である。
【0094】
実施形態10は、方法が、未処置のメッシュ露出と比較して、細胞増殖の増加、上皮の厚さの増加、血管新生の増加、又は離開の欠如によって測定される、メッシュ露出の解消をもたらす、実施形態2~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0095】
実施形態11は、方法が、未処置のメッシュ露出と比較して、組織顕微鏡法によって測定される瘢痕形成の減少をもたらす、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0096】
実施形態12は、PEPを投与することが、処置された領域内の1つ以上の部位にPEPを注射することを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0097】
態様13は、PEPが、細胞外マトリックス構成成分を更に含む組成物において投与される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0098】
実施形態14は、細胞外マトリックス成分がコラーゲンを含む、実施形態13に記載の方法である。
【実施例
【0099】
本発明を以下の実施例で説明する。特定の実施例、材料、量、及び処置は、本明細書に記載される本発明の範囲及び趣旨に従って広く解釈されるべきであることが理解される。
【実施例1】
【0100】
ブタとヒトの解剖学的構造が類似しており、膣の内径及び長さが、動物1匹当たり複数の臨床的に意味のあるサイズのメッシュを移植することを可能にするため、ブタモデルを使用した。
【0101】
メッシュ露出モデル
16個のマクロ多孔性単繊維ポリプロピレンメッシュ(RestorelleM Flat Mesh;Coloplast Corp.,Minneapolis,MN)を、体重70~80kgの7匹の飼育ヨークシャー交配ブタの膣に外科的に移植した。動物を2つの群に分けた:(群1)PEP注射あり(N=2)又はPEP注射なし(N=2)の膣上皮再閉鎖、及び(群2)PEP注射のみ(N=3)。
【0102】
メッシュ露出モデルは、膣上皮及び下にある線維筋性組織を電気焼灼器で剥皮し、次いでメッシュの正方形を結節2-0ポリプロピレン縫合糸でこの領域に固定することによって作製した。グループ1については、3cm×3cmのメッシュを膣の腹側及び吻側に移植した。群2については、異なるサイズのメッシュ(1cm×1cm、2cm×2cm、3cm×3cm)を円周方向に移植した(図1)。7~10日後、動物を介入手技のために手術室に戻した。
【0103】
精製エキソソーム生成物(PEP)の調製
PEPは、以前に記載されたように調製した(国際公開第WO2019/118817号として公開された、国際特許出願第PCT/US2018/065627号)。
【0104】
PEPは、使用のために再構成するまで室温で保管した。
【0105】
精製エキソソーム生成物を用いた、又は用いない介入手技
群は、それらのメッシュ露出に対して、外科的処置、エキソソーム処置、又は併用処置を受けた。群1A及び1Bについては、メッシュに隣接する上皮及び下にある線維筋性組織を動員し、2-0ポリグラクチン910縫合糸を用いて結節様式で緊張をかけずに再接近させた。群1Bには、2.5mLの再構成PEPを、メッシュ及び閉鎖の深部に、メッシュによって取り囲まれた領域にわたって均一に、同時に注射した。群2は、PEP注射のみを受け、PEP(2.5mL)をメッシュの下、上記のように膣組織に注射した。
【0106】
20%PEPゲルを、1mLの滅菌水及び4mLの臨床グレードI型ウシコラーゲン(5mg/mL;Collagen Solutions,Glasgow,UK)中で5×1012個の凍結乾燥されたPEPエキソソーム(Rion LLC,Rochester,MN)を再構成することによって作製し、21ゲージ針を使用して注射した。
【0107】
2’-デオキシ-5-エチニルウリジン(EdU)は、DNA複製中にチミジン類似体としてDNAに組み込まれる。これは、組織再生を追跡するために使用することができる。PEPのみの群の1匹の動物に、週2回、経口サプリメント(5mg/kg)として与えた。
【0108】
野生型
膣生検及び「野生型」としての比較のために、同等のサイズ及び年齢の、装着されていない雌ブタを使用した。実験群と同様に、殺処分を行った。
【0109】
殺処分及び組織採取
介入の4週間後、動物をペントバルビタールで安楽死させた。泌尿生殖器を一括して取り出し、写真撮影した。各メッシュ複合体からの再生組織の最も中心の部分を、外科用メスを用いてサンプリングした。再生が認められなかった場合、メッシュ縁部に隣接して末梢生検を採取した。次いで、組織標本をカセットに入れ、ホルマリン又はトランプ固定液に浸した。
【0110】
組織学的処理及び定量化
切除したサンプルを、透過型電子顕微鏡法(TEM)、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)、マッソン・トリクローム染色、並びに免疫組織化学染色のために処理した。
【0111】
ホルマリン固定試料をパラフィンに包埋し、ミクロトーム上で10μm切片に切断した。切片を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)並びにマッソン・トリクローム染色を含む標準的な組織病理学的分析に供した(図3A)。H&E染色切片を、スライドスキャナー(AXIO SCAN.Z1,Carl Zeiss Microscopy GmbH,Jena,Germany)を用いて画像化した。免疫組織化学的分析のために、キシレン中での連続洗浄によって切片を脱パラフィン化し、減少する量のエタノール中で再水和した。切片をクエン酸ナトリウム緩衝液(10mMのクエン酸ナトリウム、0.05%Tween 20、pH6.0)に浸漬し、30分間煮沸することによって、抗原賦活化を行った。切片の輪郭を疎水性ペンで描き、ブロッキング緩衝液(5%正常ロバ血清、5%ウシ血清アルブミン、0.2%Triton-Xを含むPBS)で室温にて1時間ブロッキングし、ブロッキング緩衝液で希釈した一次抗体(表1)と共に4℃で一晩インキュベートした。Alexa Fluor(Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)二次抗体(ロバ)をブロッキング緩衝液で1:500に希釈し、室温で1時間インキュベートした。EdUを、製造業者の説明書に従って、画像化キット(Click-iT Plus EdU AF647,Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)を使用して標識した。十分に洗浄した後、DAPIを含むProLong Gold Antifade Mountantを各切片に添加し、カバーガラスで覆い、10倍対物レンズを備えた倒立蛍光顕微鏡(Axio Observer,Carl Zeiss Microscopy GmbH,Jena,Germany)で撮像した。
【表1】
【0112】
平均上皮の厚さをH&E染色切片から測定した。上皮の面積を、FIJI(v.2.0)において手動で輪郭を描くことによって計算し、次いで上皮の長さで割った。GDSCプラグイン及びカスタムマクロを備えたFIJIを使用して、閾値化、マスク作成、及び粒子分析を使用して、免疫蛍光を定量化した。増殖の程度は、上皮の長さ当たりの所与の10倍視野におけるKi67細胞の数を計数することによって評価した。上皮マーカー(汎サイトケラチン)を使用してマスクを作製して、上皮の長さ当たりの総Ki67細胞数及び上皮Ki67細胞数を定量化した。非上皮増殖を、総Ki67細胞と上皮Ki67細胞との間の差として計算した。上皮下面積1mm当たりのCD31血管内腔の数を定量化することによって血管新生を評価した。CD31及びSMA領域の共分布の程度を、血管の外側の平滑筋沈着の代用として使用し、強度相関指数(ICQ)として報告した。慢性炎症は、高倍率視野当たりのCD3細胞(Tリンパ球)によって覆われた面積パーセントを測定することによって評価した。組織学的処理及び定量化は、盲検化された治験担当医師によって行われた。
【0113】
超音波振動エラストグラフィ(Vibroelastography)
インビボでの組織生体力学を評価するために、殺処分前にエラストグラフィを行った。以前に記載されたように(Zhou et al.,2019.Radiology291(2):479-484)、手持ち式バイブレーター(Model FG-142,Labworks Inc.,Costa Mesa,CA)を使用して、0.1秒の調和振動(100ヘルツ)を会陰に発生させた。励起信号は、以前に記載されたように(Zhou et al.,2017.Ultrasonics 81(補足C):86-92)、音声増幅器(Model D150A,Crown Audio Inc.,Elkhart,IN)によって増幅された。膣における波伝播を、6.4MHzの中心周波数を有するリニアアレイ超音波プローブ(L11-5v,Verasonics,Inc.,Kirkland,WA)を用いて、超音波診断装置(Verasonics,Inc.,Kirkland,WA)上で測定した。
【0114】
速度マップを得て、代表的なせん断波速度を各メッシュについて報告した。収集後の計算を使用して組織粘度を得た。超音波エコーの無線周波数データを得て、超音波信号のIQデータを得るために復調させた。組織運動を、以前に記載されたように(Zhang et al.,2017.IEEE Trans Ultrason Ferroelectrolyte Frequency Control64(9):1298-1304)、超音波IQデータの自己相関分析を使用することによって得た。相互相関技法を用いて、水平方向及び垂直方向の両方における波速度を測定し、以前に記載されたように(Zhang et al.,2019.IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Frequency Control 66(5):1346-1352)、関心領域の速度マップを得た。
【0115】
複数の周波数での波速度の測定は、フォークトモデルを用いてせん断弾性及びせん断粘度を計算するために使用することができ、
【数1】
ここで、ωは角周波数であり、μはせん断弾性であり、μはせん断粘度である。
【0116】
せん断弾性及び粘度は、以前に記載されたように(Prim et al.,2016.J Mec Behav Biomed Mater54:93-105)、異なる振動周波数における測定されたせん断波速度と予測されたせん断波速度との差を最小限に抑えることによって、レーベンバーグ・マルカートの非線形最小二乗アルゴリズムを介して特定した。目的関数の残余誤差は、次のように計算した:
【数2】
ここで、上付き文字E及びTは、せん断波速度の実験的に測定された値及び理論的に予測された値を指し、下付き文字nは特定の実験状態を示す。
【0117】
平均波速度及び粘度は、群間で類似していた。これらの知見は、PEPが、好ましくない粘弾性変化をもたらす線維症優勢創傷治癒を引き起こさないことを示唆している。
【0118】
統計分析
この研究のパイロット的性質を考慮して、限定された統計分析を行った。定量化可能なデータを平均±標準偏差として報告した。適切な場合、データを、0.05のαに設定された有意水準を用いて、一元配置ANOVA及び事後テューキー検定で分析した。
【実施例2】
【0119】
実験設計
動物を、PEP注射のタイミング及び頻度に基づいて3つの群に分けた。群1:メッシュ移植の7日後の単回PEP注射(急性-単回、N=1、2メッシュ)。群2:毎週のPEP注射、メッシュ移植の7日後に開始し、合計4回の毎週の注射を毎週継続(急性-毎週、4回の注射、N=2、4メッシュ)。群3:メッシュ移植8週間後の遅延単回PEP注射(亜急性-単回、N=3、6メッシュ)。より長い期間にわたる可能な動物及び組織の損失を説明するために、亜急性群により多くの動物を割り当てた。実施例1からの均一なデータのために、より少ない動物を対照群(急性-単回)に入れた。全ての群を、最初のPEP注射の4週間後に殺処分した(図7)。メッシュ露出のための非外科的治療としてのPEPの有効性を示唆する以前のデータ(実施例1、図1~6)を考慮すると、いずれの群も同時外科的閉鎖を受けなかった。全ての動物に、複製DNAに組み込まれるチミジン類似体である2’-デオキシ-5-エチニルウリジン(EdU、Carbosynth LLC,San Diego,CA)を、5mg/kgの用量で投与して(10~20mLを経口で、PEP注射の当日に開始して週2回)、細胞増殖を追跡した。
【0120】
メッシュ露出モデル
メッシュ露出モデルは、前述の方法(実施例1)を使用して作製した。簡単に説明すると、6匹の飼育ヨークシャー交配ブタ(70~80kg)を麻酔し、無菌操作で準備した。ベタジンを、膣内、並びに会陰及び後肢にわたって適用した。膣上皮及び線維筋性組織を動員し、電気焼灼器を用いた通常の外科的手法によって、3cm×3cmの面積で切除した。マクロ孔質単繊維ポリプロピレンメッシュ(Restorelle M Flat Mesh;Coloplast Corp.,Minneapolis,MN)を3cm×3cmの切片に切断し、外側縁に沿って結節2-0ポリグラクチン910縫合糸を使用して、中央腹側及び中央吻側膣中の露出領域に固定した(ブタ1匹当たり2メッシュを移植)。
【0121】
精製エキソソーム生成物(PEP)の注射
20%PEPの作用液を、5×1012個の凍結乾燥PEPエキソソーム(Rion LLC,Rochester,MN)を1mLの滅菌水及び4mLの臨床グレードI型ウシコラーゲン(5mg/mL;Collagen Solutions,Glasgow,UK)中で再構成させることによって作製した。再構成後、PEP溶液はゲル様粘稠度を形成した。滅菌ベタジン調製後、合計2.5mLのPEPゲルを、21ゲージ針を使用して9つの部位(3×3格子パターン)にわたって均一に、各メッシュ露出下の線維筋性組織に注入した。
【0122】
組織採取及び組織学的処理
最初のPEP注射の4週間後、全ての動物をペントバルビタールを用いて安楽死させた。泌尿生殖器を一括して切除し、写真撮影した。その後、再生された膣-メッシュ複合体の最も中心の部分を、メスを使用してサンプリングし、カセットに入れ、ホルマリンに浸した。ホルマリン固定試料をパラフィンに包埋し、ミクロトーム上で10μmの切片に切断した。標準実験プロトコルに従って、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色並びに免疫組織化学染色用に切片を処理した。Motic EasyScanProデジタルスライドスキャナー(Motic Ltd.,Hong Kong)上で10倍の対物レンズを使用して、H&E染色切片を画像化した。
【0123】
免疫組織化学的分析のために、切片をキシレン中で連続的に洗浄して脱パラフィン化し、減少する量のエタノール中で再水和した。切片をクエン酸ナトリウム緩衝液(10mMのクエン酸ナトリウム、0.05%Tween 20、pH6.0)に浸漬し、30分間煮沸することによって、抗原賦活化を行った。切片の輪郭を疎水性ペンで描き、ブロッキング緩衝液(5%正常ロバ血清、5%ウシ血清アルブミン、0.2%Triton-Xを含むPBS)で室温にて1時間ブロッキングし、ブロッキング緩衝液で希釈した一次抗体(表1)と共に4℃で一晩インキュベートした。Alexa Fluor(Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)二次抗体(ロバで産生)をブロッキング緩衝液で1:500に希釈し、室温で1時間インキュベートした。二次抗体標識を完了した後、製造業者の説明書に従って、Click-iT Plus EdU AF647イメージングキット(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)を使用して、EdUを標識した。十分に洗浄した後、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)を含むProLong Gold(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)退色防止封入剤を各切片に添加し、カバーガラスで覆い、10倍の対物レンズを備えた倒立蛍光顕微鏡(Axio Observer,Carl Zeiss Microscopy GmbH,Jena,Germany)で撮像した。
【表2】
【0124】
定量化及び統計分析
スライドスキャナーによって得られた個々の画像から自動的にステッチされた切片全体から上皮の厚さを計算した。FIJI(v.3.0;Schindelin et al.,2012,Nature Methods 9(7):676-682)を使用して、全切片における上皮の面積及び長さの両方を手動でトレースし、平均厚さを上皮の面積対長さの比として報告した。細胞増殖を、FIJIで書かれた半自動カスタムマクロを用いて測定した。簡単に説明すると、上皮領域(サイトケラチンについて陽性)の輪郭を描くマスクを、サイトケラチン、EdU、及びDAPIを共染色する免疫蛍光画像に適用した。EdU核の数を、マスク内(上皮増殖)、マスクの外側(非上皮)、及び画像全体(全増殖)にわたって計数した。EdU細胞は上皮の厚さ全体にわたって存在するので、増殖を分析した上皮の面積に対して正規化した。最後に、手動デュアルカウンターを、サイトケラチン、CD31、EdU、及びDAPIを共染色する免疫蛍光画像に適用した。毛細血管密度は、上皮下の面積(サイトケラチン陰性面積)あたりのCD31血管内腔の数として報告し、増殖性毛細血管は、少なくとも1つのEdU核を示したCD31血管の数として報告した。データを、平均+/-標準誤差として報告した。必要に応じて、データをANOVA及び事後テューキー検定で分析した。有意水準を0.05のαに設定した。
【0125】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に入手可能な資料(例えば、GenBank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列の寄託、並びにSwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列の寄託、並びにGenBank及びRefSeqにおける注釈付きコード領域からの翻訳を含む)の完全な開示は、その全体が参照により組み込まれる。本出願の開示と、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書の開示との間に何らかの不一致が存在する場合、本出願の開示が優先するものとする。前述の詳細な説明及び実施例は、理解を明確にするためにのみ示されている。それらによって不必要に限定されると理解してはならない。本発明は、示され、説明された正確な詳細に限定されるものではなく、当業者にとって明らかな変形形態は、特許請求の範囲によって規定される本発明に含まれる。
【0126】
他に示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量などを表す全ての数は、用語「約」によって、全ての場合において修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうではないと示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、そして請求の範囲の均等論を制限するための試みとしてではなく、それぞれの数値的なパラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点において、及び一般的な丸め技術によって解釈すべきである。
【0127】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、全ての数値は、それらのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に由来する範囲を本質的に含む。
【0128】
全ての見出しは読者の便宜のためのものであり、そのように指定されない限り、見出しに続く本文の意味を限定するために使用されるべきではない。
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【国際調査報告】