(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】がん予防又は治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20241126BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20241126BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20241126BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241126BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241126BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K35/74 Z
A23L33/135 ZNA
C12N1/20 A
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532798
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2023002180
(87)【国際公開番号】W WO2023158204
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0019423
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0007838
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521022956
【氏名又は名称】エンテロバイオーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENTEROBIOME INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジョ-グ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジョ-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドキュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンミ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ソ ユル
(72)【発明者】
【氏名】ビョン,ヘ リム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドハク
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ムン-ギ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
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4B018LE01
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4B018LE05
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4C084AA19
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4C084ZC751
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4C085GG01
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC68
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium sp.)菌株に由来する細胞外小胞(EV)、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含むがん予防又は治療用薬学的組成物、及びがん予防又は改善用健康機能性食品に関する。本発明の薬学的組成物は、がんの予防又は治療に優れた効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞(EV)、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記フィーカリバクテリウム属菌株がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株であることを特徴とする、請求項1に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記フィーカリバクテリウム属菌株がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株(KCCM12619P)、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株(KCCM12620P)、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、又はF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株(KCCM12622P)であることを特徴とする、請求項1に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium sp.)菌株に由来する細胞外小胞(EV)が20~300nmの平均直径を有することを特徴とする、請求項1に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記がんが、大腸がん、肺がん、小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、血液がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頸部がん、皮膚又は眼球内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門周囲がん、結腸がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰部がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎骨盤がん、CNS腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、及び脳下垂体腺腫よりなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物が化学抗がん剤又は免疫抗がん剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記免疫抗がん剤が、anti-PD1、anti-PDL1、anti-CTLA、anti-Tim3、及びanti-LAG3よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium sp.)菌株に由来する細胞外小胞(EV)と化学抗がん剤又は免疫抗がん剤は、一つの剤形で同時に投与されるか、或いは別個の剤形で同時に又は順次投与されることを特徴とする、請求項6に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項9】
フィーカリバクテリウム属菌株、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項10】
前記フィーカリバクテリウム属菌株が生菌又は死菌である、請求項9に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項11】
前記フィーカリバクテリウム属菌株がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株であることを特徴とする、請求項9に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項12】
前記フィーカリバクテリウム属菌株がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株(KCCM12619P)、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株(KCCM12620P)、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、又はF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株(KCCM12622P)であることを特徴とする、請求項9に記載のがん予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項13】
フィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞(EV)又はフィーカリバクテリウム属菌株、及び生理学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は改善用健康機能性食品。
【請求項14】
フィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞(EV)又はフィーカリバクテリウム属菌株、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は治療用獣医学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん予防又は治療用薬学的組成物に関し、より詳細には、フィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞(EV)を含むがん予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、異常細胞の過剰により発生する非制御で無秩序な細胞増殖の産物であり、悪性腫瘍(malignant tumor)は、原発部から離れて他の組織に浸潤して急速に成長する特性を持つため、生命を脅かす。
【0003】
がんを治療するために、様々な抗がん剤を用いた化学療法、放射線療法、及びがんに関連する特定の生体内の分子を標的とする抗体療法などの様々な治療的接近法が試みられている。ところが、化学療法又は放射線療法の場合は、正常細胞にも影響するので副作用が激しく、がん細胞が抗がん剤に対する耐性を取得するため、治療に失敗するか或いは再発する場合が頻繁である。
【0004】
最近の研究報告によると、細胞外小胞が細胞間シグナル伝達及び廃棄管理などの過程において重要な役割を果たすことが報告されており、最近、臨床適用に対する関心が高まっている。特定の細胞外小胞と標的細胞の細胞膜との特性を利用すれば、他の正常細胞に対する副作用を予防し、がん細胞をはじめとする疾患細胞のみを特異的に治療することができる治療薬の開発が可能であると期待される。
【0005】
一方、免疫力強化などの体内有益な作用をするプロバイオティクス(probiotics)と、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法効果に関する研究がファーマバイオティクス(pharmabiotics)の次元でその重要性が強調されているが、これまで多様な癌腫におけるこれに関する研究は未だに微々たる実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した技術的課題を解決するためのもので、その目的は、ファーマバイオティクス由来の細胞外小胞を含むがん予防又は治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、がん予防又は改善用健康機能性食品を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、がん又は炎症性疾患予防又は治療用獣医学的組成物又は飼料添加剤を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、ファーマバイオティクス由来の細胞外小胞によって患者の免疫体系を活性化させることにより、患者のがんを治療する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium sp.)菌株に由来する細胞外小胞(EV)と、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【0011】
前記フィーカリバクテリウム属菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株であり、好ましくは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株(KCCM12619P)、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株(KCCM12620P)、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株(KCCM12622P)であってもよい。
【0012】
本発明のがん予防又は治療用薬学的組成物は、化学抗がん剤又は免疫抗がん剤などのがん治療剤をさらに含んでもよい。前記免疫抗がん剤は、anti-PD1、anti-PDL1、anti-CTLA、anti-Tim3及びanti-LAG3よりなる群から選ばれるものであり得る。フィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞(EV)と化学抗がん剤又は免疫抗がん剤は、一つの剤形で同時に投与されるか、又は別個の剤形で同時に又は順次投与されてもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、フィーカリバクテリウム属菌株と、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、フィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞(EV)と、生理学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は改善用健康機能性食品に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、対象体に治療有効量のフィーカリバクテリウム属菌株又はフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞(EV)を投与することを特徴とするがん治療方法に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、フィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞(EV)と、許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は治療用獣医学的組成物に関する。
【0017】
本発明は、新規なフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株(KCCM12619P)、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株(KCCM12620P)、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株(KCCM12622P)を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞(EV)を含むがん予防又は治療用薬学的組成物は、腫瘍サイズを減少させたり、腫瘍成長を減少させたり、転移を予防したり、血管新生を予防したりして、効果的な抗がん剤として開発できる。
【0019】
本発明のフィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞(EV)を含むがん予防又は治療用薬学的組成物は、単独で投与する場合には、優れた抗がん効果を示すだけでなく、化学抗がん剤又は免疫抗がん剤と併用して投与する場合には、抗がん剤の副作用は減らし、効能はさらに活性化されることにより、これらを単独で投与する場合に比べてさらに優れた抗がん効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株と標準菌株(type strain)であるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株の顕微鏡観察結果である。
【
図2】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株とフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株のPCR分析結果である。
【
図3】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11及びF.prausnitzii EB-FPYYK1株菌とフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株のゲノムDNAのRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)分析結果である。
【
図4】16S rRNA配列に基づくフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株の系統図である。
【
図5】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株とフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株の溶血活性保持有無を確認した結果を示す。
【
図6】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞の電子顕微鏡写真である。
【
図7a】
図7a及び
図7bは本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株単独又は菌株由来の細胞外小胞(EV)の抗がん活性を確認するための実施例4及び実施例5の動物実験過程を説明するための模式図である。
【
図7b】
図7a及び
図7bは本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株単独又は菌株由来の細胞外小胞(EV)の抗がん活性を確認するための実施例4及び実施例5の動物実験過程を説明するための模式図である。
【
図8】
図8及び
図9は腫瘍を同種移植したマウスにおける、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株とaPD-1の併用投与による腫瘍形成抑制効果を示す図である。
【
図9】
図8及び
図9は腫瘍を同種移植したマウスにおける、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株とaPD-1の併用投与による腫瘍形成抑制効果を示す図である。
【
図10】実施例4における、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1株とaPD-1抗体との併用投与によるがん発生抑制効果を測定するために同種移植抗がん動物モデルにおいて、20日間のそれぞれの実験群のマウスの腫瘍サイズを比較した写真である。
【
図11】実施例5において、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞のがん発生抑制効果を測定するために同種移植抗がん動物モデルにおける時間による腫瘍サイズの変化を示すグラフである。
【
図12】同種移植抗がん動物モデルにおけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞とanti-PD1を一緒に投与した場合、及びanti-PD1のみを投与した場合の、25日間の腫瘍の重量変化を示すグラフである。
【
図13】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞のがん発生抑制効果を測定するために同種移植抗がん動物モデルにおける、25日間の各実験群のマウスの腫瘍サイズを比較した写真である。
【
図14a】
図14a及び
図14bはHT29細胞における創傷治癒分析法を用いた本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞の抗がん活性評価結果を示す。
【
図14b】
図14a及び
図14bはHT29細胞における創傷治癒分析法を用いた本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞の抗がん活性評価結果を示す。
【
図15】黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9又はEB-FPDK9由来の細胞外小胞(EB-FPDK9 EVs)投与による抗がん効果を確認するための動物実験のスキームを示す模式図である。
【
図16】フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9菌株又はEB-FPDK9 EVs投与時の腫瘍成長曲線を示す。
【
図17】フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9菌株又はEB-FPDK9 EVs投与終了時点の腫瘍サイズを比較した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」、「備える」、又は「含有する」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0024】
本明細書で使用された用語「治療する」、「治療」などは、症状を一時的又は永続的に軽減すること、症状の原因を除去すること、又は疾病もしくは病態の症状の発症を防止又は遅延させることを意味する。
【0025】
本明細書で使用された用語「予防」は、本発明による薬学的組成物の投与によってがんを抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。
【0026】
本明細書で使用された用語「改善」は、異常状態に関連するパラメータ、例えば症状の程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0027】
本明細書で使用された用語「薬学的に許容される」は、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又はその他の問題点もしくは合併症を伴うことなく、利得/リスク比が合理的であって対象体(例えば、ヒト)の組織を接触して使用するのに適し、健全な医学的判断の範疇以内である組成物を意味する。
【0028】
本明細書で使用された用語「免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)」は、Tリンパ球などの特定類型の免疫系細胞及び一部のがん細胞によって生産された特定のタンパク質を遮断する類型の薬物を意味するが、これらのタンパク質は、免疫反応を抑制し、Tリンパ球ががん細胞を死滅させることを防止する。「免疫チェックポイント阻害剤」として現在までよく知られているものとしては、PD-1/PD-L1及びCTLA-4/B7-1/B7-2などが存在する。
【0029】
本発明の一態様は、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium sp.)菌株に由来する細胞外小胞(EV)と、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【0030】
ファーマバイオティクス(pharmabiotics)は、健康又は疾病に対して検証された薬学的役割(pharmacological role)を有するヒト由来の細菌又はその産物として定義される(“Probiotics and pharmabiotics”, Bioeng Bugs. 2010 Mar-Apr; 1(2): 79-84.)。本発明の薬学的組成物は、ファーマバイオティクス成分を主成分として、副作用なしに安全に使用できる。
【0031】
前記フィーカリバクテリウム属菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株であり得る。具体的には、前記フィーカリバクテリウム属菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株(KCCM12619P)、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株(KCCM12620P)、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、又はF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株(KCCM12622P)であり得る。
【0032】
細胞外小胞(extracellular vesicles、EV)は、細胞から分泌されるナノ小胞であって、免疫学的に重要なタンパク質である主組織適合体(main histocompatibility complex、MHC)と熱衝撃タンパク質(heat shock protein)を含んで強力な抗腫瘍免疫反応を誘導し、抗炎症性のマイクロRNA(microRNA)とコラーゲン(collagen)の蓄積を調節するマイクロRNA(microRNA)を含む。
【0033】
本発明のフィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium sp.)菌株に由来する細胞外小胞(EV)は、がん細胞増殖抑制、がん細胞移動性低下及び新血管生成抑制効果を同時に示して優れた抗がん剤として活用でき、既存の化学抗がん剤又は免疫抗がん剤と併用投与できる。
【0034】
本発明の別の態様は、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium sp.)菌株と、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、がん予防又は治療用薬学的組成物に関する。前記菌株は、生菌又は死菌であってもよい。
【0035】
本発明のフィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞(EV)は、前記化学抗がん剤又は免疫抗がん剤と一つの製剤として同時に投与されるか、或いは別個の製剤として同時に又は順次投与され得る。
【0036】
本発明において細胞外小胞を分離する方法には、制限がなく、例えば培養液において、遠心分離、超高速遠心分離、フィルターによる濾過、ゲルろ過クロマトグラフィー、プレフロー電気泳動、毛細管電気泳動、ポリマーを用いた分離などの方法及びこれらの組み合わせを用いて分離することができ、好ましくは、遠心分離/超遠心分離によって分離することができる。この際、遠心分離/超遠心分離は、100~300,000g、好ましくは150~150,000gで順次遠心分離を行って細胞残屑、非細胞外小胞画分、死細胞などを除去することができる。
【0037】
分画遠心分離:細胞外小胞の最も好ましい方法は、分画遠心分離である。この方法は、いくつかのステップで構成され、好ましくは約4℃で行われ、少なくとも以下の3ステップ、ステップ1)~ステップ3)を含む:
ステップ1)細胞及び細胞残屑を除去するための低速遠心分離、
ステップ2)100nm超過の大きい小胞を除去するための高速スピン、及び
ステップ3)細胞外小胞をペレット化する高速遠心分離。
【0038】
密度勾配遠心分離:この接近法は、超遠心分離とショ糖密度勾配とを組み合わせる。より具体的には、密度勾配遠心分離を用いて、非消泡性粒子、例えばタンパク質及びタンパク質/RNA凝集体から細胞外小胞を分離する。よって、この方法は、他の密度の粒子から小胞を分離する。
【0039】
サイズ排除クロマトグラフィー:サイズ排除クロマトグラフィーは、分子量ではなく、サイズに基づいて巨大分子を分離するために用いられる。この技術は、複数の細孔及びトンネルを含む多孔質ポリマービーズを充填したカラムを適用する。分子は、その直径に応じてビーズを通過する。小さい半径の分子がカラムの細孔を介して移動するには、より時間がかかる前記巨大分子は、カラムからさらに早く溶出する。サイズ排除クロマトグラフィーは、大分子と小分子の正確な分離を可能にする。
【0040】
濾過:限外濾過膜を細胞外小胞の単離に使用することもできる。微細小胞の大きさに依存して、この方法は、タンパク質及びその他の巨大分子からの細胞外小胞の単離を可能にする。
【0041】
ポリマーベースの沈殿:ポリマーベースの沈殿法は、一般に、生体液とポリマー含有沈殿液との混合、4℃でのインキュベーション及び低速での遠心分離を含む。ポリマーベースの沈殿に用いられる最も一般的なポリマーの一つは、ポリエチレングリコール(PEG)である。このポリマーによる沈殿は、単離細胞外小胞への温和な影響及び中性pHの使用を含めた多くの利点を有する。
【0042】
ふるい分けによる単離:この技術は、膜を介して生体液から細胞外小胞をふるい分けし、そして圧力又は電気泳動によって濾過を行うことにより、細胞外小胞を単離する。
【0043】
本発明の薬学的組成物は、がんの予防又は治療に優れた効果を有する。
【0044】
具体的に、フィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞は、がん細胞に吸入され、EMT作用を抑制し、免疫システムを活性化してがん細胞の浸透及び転移を抑制する。
【0045】
好ましくは、フィーカリバクテリウム属菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株、又はF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株であり得る。好ましくは、フィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9菌株、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK11菌株、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1菌株に由来する細胞外小胞であり得る。以下、これらの細胞外小胞は、それぞれEB-FPDK3 EV、EB-FPDK9 EV、EB-FPDK11 EV、及びEB-FPYYK1 EVと略記する。これらのEB-FPDK3 EV、EB-FPDK9 EV、EB-FPDK11 EV、及びEB-FPYYK1 EVは、T細胞を調節して先天的及び後天的免疫システムを活性化させるのに重要な役割を果たす。これに加えて、Foxp3の発現を特徴とする調節T細胞(Treg)は、抗がん免疫を抑制して腫瘍の保護免疫監視を妨害し、効果的な抗腫瘍免疫反応を反対することが知られているが、EB-FPDK3 EV、EB-FPDK9 EV、EB-FPDK11 EV、及びEB-FPYYK1 EVは、Tヘルパー細胞を活性化して細胞毒性T細胞(cytotoxic T cell)を活性化し、Treg細胞を抑制することにより抗がん効果を示すものと推定される。これにより、本発明の薬学的組成物は、がんの予防、治療及び転移抑制に優れた効果を有する。
【0046】
本発明で使用される場合、「がん」という用語は、腫瘍、ネオプラシアス(neoplasias)、及び悪性組織又は細胞を含む意味である。前記がんは、大腸がん、肺がん、小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、血液がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頸部がん、皮膚又は眼球内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門周囲がん、結腸がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰部がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎骨盤がん、CNS腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺腫などのがん、又は、これらのがんのうちの2つ以上の組み合わせを含む。
【0047】
本発明において、薬学的組成物に有効成分として含まれる本発明によるフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞(EV)は、20~300nmのサイズを有する。
【0048】
本発明による薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、及び体重によって異なり得る。一般には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは0.01~100mgを毎日又は1日おきに投与するか、或いは1日1回~3回に分けて投与することができる。
【0049】
本発明による薬学的組成物は、単独の抗がん療法に用いられることができる。また、本発明による薬学的組成物は、状況に応じて、必要であれば、放射線又は化学抗がん剤又は免疫抗がん剤と同時に、別個に又は順次使用できる。本発明の併用療法は、腫瘍サイズの減少、腫瘍成長の予想、転移の予防、血管新生の予防のうちの少なくとも1つに使用するためのものである。
【0050】
具体的には、本発明の薬学的組成物は、従来の放射線治療又は抗がん剤治療薬とは順次又は同時に投与されてもよい。また、単回又は複数回投与されてもよい。上記の要素を全て考慮して、副作用なしに最大効果が得られる最小限の量で投与することが重要である。
【0051】
幾つかの実施形態において、免疫療法剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。免疫チェックポイント阻害は、がん細胞が免疫反応を予防又は下向き調節するために生成することができるチェックポイントを阻害することを広範囲に指す。免疫チェックポイントタンパク質の例としては、CTLA4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、KIR、LAG3、TIM-3、又はVISTAが挙げられるが、これらに限定されない。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質に結合して免疫チェックポイントタンパク質を阻害する抗体又はその抗原結合グラフメントであり得る。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、AMP-224、AMP-514、STI-A1110、TSR-042、RG-7446、BMS-936559、MEDI-4736、MSB-0020718C、AUR-012、及びSTI-A1010が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitors)は、細胞を直接死滅させる従来の化学抗がん療法とは異なり、がん患者の生活の質を低下させる脱毛、貧血、骨髄機能抑制など、抗がん化学療法による副作用が少ない次世代抗がん剤として脚光されている。しかし、免疫チェックポイント阻害剤は、一部のがん(例えば、胃がん、大腸がん、卵巣がん、膵臓がんなど)に対して反応率が非常に低く、腸炎、肝炎、肺炎、甲状腺機能低下症、及び脳下垂体炎などの重度の免疫関連異常反応を引き起こすことも知られている。免疫チェックポイント阻害剤を使用する場合の副作用は、主に軽微な副作用として現れるが、稀には、神経系又は心臓系に発生する場合に深刻で致命的であることが報告されている。本発明のフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞を含む薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤の反応率限界点を克服し、副作用を最小限に抑え、抗がん効果を強化させることができる。
【0053】
本発明で使用されるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1は、健康な韓国人の糞便から単離されたものであり、サイズ0.5~1μmの楕円形細胞であって単球菌又は双球菌であり、嫌気性細菌であり、運動性がなく、グラム陰性であり、内生胞子を形成しない、粘液-分解性細菌(mucin-degrading bacteria)である。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株は、幾つかの粘液分解酵素を生成して粘液を炭素及び窒素供給源として使用することができ、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、及びラクトースを含めて様々な炭素源を代謝することができ、プロピオン酸及び酢酸などの短鎖脂肪酸を主要代謝産物質として生成する。
【0054】
本発明のがん予防又は治療用薬学的組成物は、フィーカリバクテリウム属菌株が、菌株の菌体、菌体の破砕物、菌株の培養物、菌株の培養物から菌体を除去した培養液、菌株の菌体抽出物、菌株の培養物の抽出物、又は菌株の培養物から菌体を除去した培養液の抽出物の中から選択できる。
【0055】
本発明のフィーカリバクテリウム属菌株は、生菌又は死菌であってもよい。本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株は、培養され、遠心分離などの分離過程によって回収され、乾燥、例えば凍結乾燥によって生菌剤として製造して用いられることができる。前記死菌は、熱処理による死菌、又は低温殺菌された不活性化菌株でもある。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株の低温殺菌は、50℃以上100℃未満の温度で10分間以上加熱することを意味する。例えば、70℃で30分間低温殺菌することができる。
【0056】
本発明において、「死菌体」という用語は、加熱、加圧、薬物処理などで殺菌処理された菌体を意味する。当業分野に知られている乳酸菌死菌化方法によるものであれば、死菌体の製造方法が特に限定されず、一例として、本発明の死菌体は、熱処理を含む(熱処理による)死菌化方式で製造されるものであり得る。前記熱処理は、培養液から分離して得た生菌体のみを対象に行われるものであってもよく、或いは前記生菌体を含んでいる培養液を対象に行われるものであってもよい。前記熱処理温度は、菌体の性状を維持し、他の一般細菌が滅菌される条件であれば、その温度条件が特に限定されないが、80℃~150℃で行われるものであってもよく、好ましくは80℃~110℃で行われるものであってもよい。
【0057】
本発明の一実施形態において、フィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞を含む薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ又はエアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤又は滅菌注射溶液の形態で製剤化して使用できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0058】
幾つかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、水性液体分散体、自己乳化分散液、固溶体、リポソーム分散液、エアロゾル、固形体形態、粉末、即時放出製剤、制御放出製剤、高速溶融製剤、錠剤、カプセル、丸剤、遅延放出製剤、徐放型製剤、拍動放出製剤、多粒子製剤、並びに混合即時放出製剤及び制御放出製剤を含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0059】
本発明の薬学的組成物は、静脈内投与、腫瘍内投与又は鼻腔内投与のために薬理学的に適合性分散剤及び/又は湿潤剤を含有する水性懸濁液、等張生理食塩水、又は滅菌の注射可能な溶液が使用できる。賦形剤としては、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等が使用できる。
【0060】
本発明の薬学的組成物は、経腸投与又は経口投与用製品として剤形化できる。また、本発明の薬学的組成物は、公知の方法を用いて、胃を通過し、小腸に到達して活性成分である細胞外小胞(EV)が速やかに腸内に放出されるように腸溶コーティングされて製品化され得る。
【0061】
本発明の薬学的組成物は、前記有効成分以外に、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含んでもよく、これに加えて、バインダー、分解剤、コーティング剤、潤滑剤などの、薬学的に通常使用される様々な添加剤と共に製剤化できる。
【0062】
薬学的に許容される担体は、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体をさらに含むことができる。経口投与用担体としては、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが挙げられる。加えて、経口投与用に使用される様々な薬物送達物質を含むことができる。また、非経口投与用担体は、水、好適な油、生理食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含むことができる。本発明の薬学的組成物は、安定化剤及び保存剤をさらに含んでもよい。好適な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの抗酸化剤が挙げられる。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル-又はプロピル-パラベン、及びクロロブタノールが挙げられる。本発明の薬学的組成物に含まれ得る、薬学的に許容される担体及び製剤は、次の文献に記載されていることを参考とすることができる(Remington’s pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995)。
【0063】
本発明で使用可能な賦形剤としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、グルコースなどの砂糖及びトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、米デンプン、部分アルファ化デンプンなどのデンプンが挙げられる。バインダーとしては、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、グアーガム、アカシア、寒天などの多糖類;トラガカント、ゼラチン、グルテン等の天然巨大分子物質;ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体;及びポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及び酢酸ビニル樹脂などの高分子を含む。
【0064】
本発明で使用可能な分解剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、及びカルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、米デンプン、及び部分アルファ化デンプンなどのデンブンを使用することができる。
【0065】
本発明で使用可能な潤滑剤の例としては、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、コロイダルシリカ、含水二酸化ケイ素、様々な種類のワックス及び水素化油などが挙げられる。
【0066】
コーティング剤としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、エチルアクリレート-メタクリル酸共重合体、エチルアクリレート-メチルメタクリレート-クロロトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート共重合体、エチルセルロースなどの水不溶性共重合体、メタクリル酸-エチルアクリレート共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどの腸性重合体、及びメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの水溶性重合体を含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0067】
本発明のがん予防又は治療用薬学的組成物中の有効成分としてのフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞の投与量は、様々な疾病の類型、患者の年齢、体重、性別、患者の医学的状態、状態の重症度、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野によく知られている要素によって決定できる。よって、用量療法は、広範囲に変わり得るが、これらの要素を全て考慮して、副作用なしに最大効果が得られる最小限の量で投与することが重要あり、これは、当業者によって標準方法を用いて容易に決定できる。
【0068】
本発明の別の態様は、フィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞(EV)を含む健康機能性食品に関する。フィーカリバクテリウム属菌株は、生菌又は死菌であってもよい。前記細胞外小胞は、好ましくはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞である。本発明の健康機能性食品は、がんの予防又は改善に使用できる。
【0069】
本発明の健康機能性食品は、機能性食品(nutraceutical food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康機能性食品(health food)、食品添加剤(food additives)、及び飼料などの全ての形態を含む。
【0070】
前記類型の健康機能性食品は、当技術分野で知られている通常の方法に従って様々な形態で製造することができる。一般食品としては、これらに限定されないが、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品、魚類、肉類及びその加工食品、パン類及び麺類、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、各種ソースなどにフィーカリバクテリウム属F.prausnitzii EB-FPDK3菌株、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞を添加して製造することができる。
【0071】
上記の他に、本発明の健康機能性食品は、種々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール又は炭酸化剤などを含有することができる。
【0072】
本発明の別の態様は、フィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞(EV)、及び生理学的に許容される担体又は賦形剤を含むがん予防又は治療用獣医学的組成物に関する。ここで、動物は、特に限定されないが、例えば、犬、猫、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、フェレット、ウサギ等のペットを指してもよい。前記獣医学的組成物は、飼料添加剤であってもよい。
【0073】
本発明の別の態様は、対象体におけるがんを治療する方法に関する。本発明の方法では、対象体に治療有効量の本明細書に記載のフィーカリバクテリウム属菌株、又はフィーカリバクテリウム属菌株由来の細胞外小胞を投与するステップを含む。
【0074】
本発明の別の態様は、新規なフィーカリバクテリウム属EB-FPDK3菌株(KCCM12619P)、EB-FPDK9菌株(KCCM12620P)、EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、及びEB-FPYYK1菌株1(KCCM12622P)を提供する。これらの菌株は、それぞれ2019年11月1日に韓国生命工学研究院生物資源センターに寄託された。
【0075】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、これらの実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0076】
実施例
実施例1:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株の単離及び同定
1.1.菌株の単離及び同定
健常な韓国人(女性、7歳、BMI19.9)の糞便からフィーカリバクテリウム属菌株を単離するために、Martinの方法によって嫌気性チャンバーを用いて厳格な無酸素条件(5%H2、5%CO2及び90%N2)下で、0.5%酵母抽出物、0.1%D-セロビオース、0.1%D-マルトースを添加したYBHI培地(brain heart infusion medium supplemented with 0.5% yeast extract)(Difco、米国デトロイト)を用いて培養した後、EOS(Extremely Oxygen Sensitivity)菌種を選別した後、単離した(Martin et al., 2017)。標準菌株であるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165は、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)から分譲を受けて試験に使用した。
【0077】
1.2.顕微鏡観察
単離された菌株がフィーカリバクテリウム属菌株であるか否かを確認するために、単離された菌株を顕微鏡で観察し、その結果を
図1に示した。
図1に示すように、標準菌株であるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株と、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11、EB-FPYYK1単離菌株を1,000倍の倍率で拡大して観察した結果、菌株が全て真っ直ぐ又は曲がった棒状の細胞と観察された。
【0078】
1.3.PCR分析
フィーカリバクテリウム属菌株であるか否かを確認するために、単離された菌株を下記表1のFP-特異性プライマー(配列番号1及び配列番号2)を用いてPCR分析を行い、その結果を
図2に示した。
図2において、レーンMはDNAサイズマーカーであり、レーン1は陽性対照群(A2-165)であり、レーン2~5は単離菌株であり、レーン6は陰性対照群(蒸留水)の結果である。
【0079】
図2に示すように、本発明の単離菌株は、すなわち、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株と同一のバンドパターンを示す結果値が出たことを確認することができる。
【0080】
【0081】
1.4.RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)分析
上記のように単離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株と、既に報告された同種のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株との類似性を検証するために、分子タイピングの一種であるRAPDを実施した。このために、菌体から抽出したゲノムDNAを対象として、下記表2のユニバーサルプライマーを用いてDNAを増幅した後、1%アガロースゲルで1時間30分電気泳動し、UV穿孔器上でDNA断片化パターンを比較し、その結果を
図3に示した。
【0082】
【0083】
図3から確認されるように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株と比較するとき、互いに異なるRAPDバンドパターンを示した。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイのRAPDバンドパターンは、種(species)が異なる場合にRAPDバンドパターンが異なることが知られており、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株と同じ種に属するが、互いに異なる菌株であることを確認した。
【0084】
1.5.全長16S rRNA遺伝子塩基配列を用いた系統樹(phylogenetic tree)の分析
上記のように単離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株の全長(full-length)16S rRNA遺伝子塩基配列を分析するために、下記表3の27F及び1492Rプライマーを用いて16S rRNA遺伝子を増幅した後、3730×1 DNA分析器を用いて塩基配列を決定した。このように得たフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11、及び既に公表されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株(A2-165、ATCC27766、ATCC27768)、さらにRuminococcaceae科に属するルミノコッカス・アルバスDSM20455菌株の総8個の菌株の16S rRNA遺伝子塩基配列を集めて完全なrRNA配列データベースを作った。そして、Nucleotide-Nucleotide BLAST 2.9.0+プログラムを用いて相同性及びクエリカバレッジを計算して表4に示した。また、総8個の菌株の16S rRNA遺伝子塩基配列に基づいて系統を分析した。系統(phylogenetic)分析は、MEGA-Xを用いて行った。1000個のブートストラップ(boot straps)を用いた隣接接合方法(neighbor-joining method)によって系統樹を構成して
図4(A)に示した。平均ヌクレオチド同一性(ANI)値は、-m ANIb設定を有するpyani v0.2.7プログラムを適用して進化距離を評価した。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165菌株(RefSeq assembly accession:GCF_000162015.1)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイATCC27766菌株(RefSeq assembly accession:GCF_003324115.1)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイATCC27768菌株(RefSeq assembly accession:GCF_003324185.1)、ルミノコッカス・アルバスDSM20455菌株(RefSeq assembly accession:GCF_000179635.2)全体又はドラフトゲノム配列は、NCBIゲノムデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/)からダウンロードして使用した。同種の他の菌株の16S rRNA遺伝子配列を用いて系統樹(phylogenetic tree)を作成して
図4(B)に示した。
【0085】
【0086】
【0087】
図4(A)及び
図4(B)及び表4に示すように、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1菌株の場合、16S rRNA遺伝子の塩基配列が、既に公表されているフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165菌株とは99.735%の同一性及び100%のクエリカバレッジを有し、ATCC27768菌株とは97.95%の同一性及び100%のクエリカバレッジを有し、Ruminococcaceae科(familly)に属するルミノコッカス・アルバスDSM20455菌株とは86.868%の同一性及び100%のクエリカバレッジを有することが確認された。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株の場合、A2-165菌株とは98.676%の同一性を有し、F.prausnitzii ATCC27768菌株とは98.082%の同一性を有し、R.albus DSM20455菌株とは86.623%の同一性を有することを確認した。EB-FPDK9菌株の場合、A2-165株とは97.95%の同一性を有し、ATCC27768菌株とは99.603%の同一性を有し、R.albus DSM20455菌株とは86.623%の同一性を有することが確認された。EB-FPDK11菌株の場合、F.prausnitzii A2-165標準菌株とは98.613%の同一性を有し、F.prausnitzii ATCC27768菌株とは97.82%の同一性を有し、DSM20455菌株とは86.82%の同一性を有することを確認した。すなわち、16S rRNA遺伝子塩基配列分析によって進化学的類縁関係を示す系統樹(phylogenetic tree)を分析した結果、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株は、遺伝学的にフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイに属する菌株であることを確認した。
【0088】
ヒトの糞便から単離した本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株を、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(A2-165)を対照群とした生化学的方法(API)及び分子生物学的方法(16S rRNA配列分析、16S rRNA BLAST分析、RAPD)を介して同定し、後述する抗生剤耐性検査を介してプロバイオティクスの機能を有することができる安全な菌株であることを確認した。これらの結果に基づいて単離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株をフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株と命名し、韓国生命工学研究院に寄託してそれぞれ受託番号KCCM12619P、KCCM12620P、KCCM12621P、及びKCCM12622Pが付与された。
【0089】
実施例2:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株の菌学的特性及び安全性の分析
2.1.単離された菌株の抗菌薬感受性の確認
上記のように単離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株の抗菌薬感受性を調べるために、CLSI(Clinical & Laboratory Standard Institute)ガイドラインのブロスマイクロ希釈(broth microdilution)方法によって嫌気性細菌用抗菌薬(ピペラシリン-タゾバクタム(PTZ)、セフチゾオキシム(CTZ)、クロラムフェニコール(CHL)、クリンダマイシン(CLI)、メロペネム(MEM)、モキシフロキサシン(MXF)、メトロニダゾール(MTZ)、シプロフロキサシン(CIP))に対する最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration、MIC)を決定し(CLSI、2017)、その結果を下記表5に示す。
【0090】
【0091】
表5から分かるように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株は、互いに異なる耐性パターンを示しており、メトロニダゾールには全ての菌株が感受性を示しており、フルオロキノロン系の抗生剤であるモキシフロキサシンとシプロフロキサシンには全ての菌株が耐性を示していた。フルオロキノロン系の抗生剤に対する耐性は、同じフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイに同一に存在する耐性であって、内在的な特徴(instrinsic resistance)と判断される。さらに、抗生剤耐性遺伝子データベースであるMEGARes(https://megares.meglab.org/)に基づいて抗生剤耐性遺伝子をコードする遺伝子を本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11菌株の全長ゲノム上で調べた。その結果を下記表6に示す。
【0092】
【0093】
表6から分かるように、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株の場合、アミノグリコシドO-ヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Aminoglycoside O-nucleotidyltransferases)遺伝子が検出された。また、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11菌株の場合には、それぞれアミノグリコシドO-ヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Aminoglycoside O-nucleotidyltransferases)、23S rRNAメチルトランスフェラーゼ(23S rRNA methyltransferases)、23S rRNAメチルトランスフェラーゼ(23S rRNA methyltranses)、テトラサイクリン耐性リボソーム保護タンパク質(Tetracycline resistance ribosomal protection proteins)遺伝子が検出された。MEGAResデータベースを介して検出された抗生剤耐性遺伝子は、生物情報学基盤の抗生剤耐性遺伝子検出プログラムであるResfinder
(https://cge.cbs.dtu.dk/services/ResFinder/)を介しても同一に現れることを確認した。これらの結果から、抗生剤耐性遺伝子の場合、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株で同一に現れるのではなく、菌株ごとに異なるように現れることが確認された。
【0094】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株で抗生剤耐性遺伝子が検出されるにつれて、PlasmidFinder(https://cgd.cbs.dtu.dk/services/PlasmidFinder/)及びMobile Element Finder(cge.cbs.dtu.dk/services/MobileElementFinder)プログラムを適用して追加の調査を実施した。PlasmidFinderプログラムを適用して、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11菌株の全長ゲノム上でプラスミドの存否を調べたところ、検出されないことを確認した。また、Mobile Element Finderプログラムを介して本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11菌株の全長ゲノム上でmobile genetic elementsを確認した結果、トランスポゾン(transposon)が検出されないことを確認した。当該結果から、検出された抗生剤耐性遺伝子が他の菌株に伝達されないことを確認した。したがって、本発明によるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ属F.prausnitzii EB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株は安全な菌株であることを確認することができる。
【0095】
2.3.単離された株の溶血活性(hemolytic activity)及び病毒性因子の分析
上記のように単離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株の安全性検証のために、溶血活性を保持するか否かを評価した。このために、トリプティックソイ寒天(17.0g/Lのカゼインの膵臓消化物、3.0g/Lの大豆の膵臓消化物、2.5g/Lのデキストロース、5.0g/Lの塩化ナトリウム、2.5g/Lのリン酸カリウム、15g/Lの寒天)に5%w/v defibrinated cryp bloodを添加して製造した血液寒天培地を用いて菌株を培養し、その結果は
図5に示した。
図5から分かるように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株は、病原性に関係するβ-溶血(コロニー周辺の完全に透明な部分)は現れなかった。
【0096】
病原性バクテリアデータベースであるVFDB(reference database for bacterial virulence factors、http://www.mgc.ac.cn/VFs)に基づいて、病毒性因子をコードする遺伝子を本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-YYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11菌株の全長ゲノム上で調査した。毒性因子データベース(VFDB)は、バクテリア病原体の毒性因子に対する情報を選別するための総合的なオンラインリソースであり、最もよく究明されたバクテリア病原体の主要毒性因子を深層的に提供する。分析に使用したVFDBデータベースは、毒性に関与したシーケンスデータを3,688個、32,772個含んでいる。分析の場合、タンパク質同一性が最小80%であり、カバレッジが最小80%であり、整列長さが最低50bpである分析条件で行った。分析の結果、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11菌株から毒性因子は検出されなかった。さらに、VirulenceFinder(https://cge.cbs.dtu.dk/services/VirulenceFinder/)に基づく病毒性因子遺伝子を調べた。VirulenceFinderは、4つの周知の病原体(E.coli、Enterococcus、Listeria及びStaphylococcus aureus)のゲノム配列からなるデータベースである。分析の結果、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11菌株の全長ゲノム上のE.coli shiga toxin gene、S.aureus exoenzyme genes及びhost immune alteration or evasion genones and toxin genesに関連する遺伝子は検出されなかった。総合的に、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPYYK1、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11菌株が人体内で無害であることが分かる。
【0097】
2.4.フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株の短鎖脂肪酸(SCFAs)生成能力の確認
酪酸(butyrate)、酢酸(acetate)、プロピオン酸(propionate)などの短鎖脂肪酸(short chain fatty acids、SCFAs)は、腸内細菌によって生成される代謝産物であって、宿主のエネルギー代謝において重要な役割を果たし、Gタンパク質連結受容体(G protein-coupled receptor、GPR41とGPR43)に作用するシグナル伝達媒介体であって、エネルギー均衡に関与する。
【0098】
短鎖脂肪酸(SCFAs)は、胃腸内分泌細胞(enteroendocrine cell)においてGPR41を介して腸運動性減少及び腸移動速度を増加させる。これにより、PYY(peptide YY)分泌を誘導してエネルギー摂取を減少させ、肥満を予防する。また、短鎖脂肪酸によるGPR43は、GPL-1(Glucagon-like peptide 1)を誘発してインスリン感受性の増加を介して飽満感を増加させ、GPR43の活性は脂肪組織からインスリンシグナル伝達を抑制して脂肪蓄積を予防する。短鎖脂肪酸(SCFAs)はブドウ糖代謝を向上させ、腸-脳神経回路を介して食品摂取を減らすことができるIGN(intestinal gluconeogenesis)を活性化させることができる。
【0099】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株の機能性代謝体の変化を確認するために、試験管で培養した後、培養液に含有された主要短鎖脂肪酸(酪酸と酢酸)の含有量の変化をガスクロマトグラフィー(GC、Gas Chromatography)で分析した。このために、培養液を12,000×gで5分間遠心分離して上澄み液を回収した。上澄み液は、0.2μmのシリンジフィルターを用いて濾過した後、分析に使用した。FFAP column(30m×0.320mm、0.25μm phase)が装着されたガスクロマトグラフィー(Agilent 7890N)を用いた。条件は表7のように設定した。分析結果を下記表8に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
前記表8の結果から分かるように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK菌株は、互いに異なる短鎖脂肪酸生成/消費能力を示した。詳細には、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株とEB-FPYYK1、EB-FPDK9及びEB-FPDK11菌株は、それぞれ酢酸(Acetate)の消費量と酪酸(Butyrate)の生成量とが類似していることが確認され、EB-FPDK3菌株の酪酸生成量は5種の菌株の中で最も低かったが、酢酸の消費量は最も高かった。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイは、代表的な酪酸生産バクテリアとして知られており、酪酸は、これらの代謝経路で酢酸から合成されるため、酢酸の消費が起こる。
【0103】
実施例3:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株の細胞外小胞の単離
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株の細胞外小胞(Extracellular vesicles、EVs)を得るために、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株の培養液を10,000×g、4℃の条件で20分間高速遠心分離した後、上澄み液を回収し、上澄み液は0.45μmのフィルターと0.22μmのフィルターで濾過した。濾過された上澄み液を150,000×g、4℃の条件で2時間超高速遠心分離してペレットを得、その後、滅菌生理食塩水(PBS)で溶かしてタンパク質定量した後、効能試験に使用した。
【0104】
単離された細胞外小胞を電子顕微鏡(Zeiss、Germany)で観察し(150,000×)、その結果を
図6に示した。
図6に示すように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株の細胞外小胞(Extracellular vesicles、EV)は球形であり、おおよそのサイズが20~300nmの範囲内であることを確認することができる(スケールバー500nM)。
【0105】
実施例4:黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおけるaPD-1免疫抗がん剤と、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11、EB-FPYYK1生菌との併用投与による抗がん効果
4.1.菌株試料
この実験で使用したフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165標準菌株(対照群)とフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株(KCCM12619P)、EB-FPDK9菌株(KCCM12620P)、EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、及びEB-FPYYK1菌株(KCCCM12622P)生菌は、1×108CFU/150μLのPBS(25%グリセロール、0.05%システイン/PBS)の濃度で製造した。
【0106】
4.2.動物実験
動物実験は、IACUC(Institutional Animal Care and Use Committee)のAnimal Use and Care Protocolに準拠して行った。がん誘導のために、8週齢の雌C57BL/6マウスを購入して1週間適応期間を有した後、5週間飼育した。飼育環境は、一定の温度(22℃)と相対湿度(40~60%)を維持し、12時間の周期で明暗を調節しながら飼育した。
【0107】
同種移植マウス(syngeneic mouse)抗がん動物モデルを製作するために、マウス由来黒色腫細胞(B16-F10)を用いた。
【0108】
同種移植モデルは、生体内(in vitro)で増殖させたマウスの細胞株を、実際のマウスに移植して成長させる技法であり、同一の宿主及び細胞株菌株は、腫瘍拒絶(tumor rejection)が発生しない。
【0109】
1週間の順化が終わったマウスに1週間、下記表9に示す抗生剤を用いて抗生剤前処理を行った。
【0110】
【0111】
次に、2×10
4個のB16-F10細胞を、100μLのマトリゲル(Matrigel)と共に、マウスの大腿部に皮下注射(SC、subcutaneous injection)した。本実施例における動物実験スキームは、
図7aに示した。
【0112】
4.3.試料投与及び実験群の設定
下記表10に示すそれぞれの薬物を2週間毎日マウスに経口投与した。陽性対照群として、anti-PD1抗体を250μg/600μL/headずつ経口投与した。
【0113】
がん細胞が6日目に出現し始め、この時点から、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株を108CFUで毎日経口投与した。6日目から、250μgのaPD-1抗体を4日間隔で腹腔内注射した。この場合、aPD-1抗体は、BioXCell会社のInVivoMab anti-mouse PD-1(RMP1-14)、catalog #BE0146)を使用した。InVivoPure pH7.0 Dilution Buffer、catalog #IP0070を用いて、250μg/100μLの濃度に希釈して使用した。
【0114】
腫瘍の成長中に、マウスの重量を週に2回測定し、毎日モニタリングしたとともに、がん細胞が出現した始めた6日目から、コンピュータ化されたキャリパーを用いて1日おきに腫瘍サイズをモニタリングした(
図8参照)。
【0115】
腫瘍体積(tumor volume)は、それぞれの腫瘍の2つの直径(長径と短径)を測定することにより、次の式に従って計算した。
【0116】
【0117】
【0118】
図8~
図10を参照すると、B16-F10細胞を同種移植した対照群と比較して、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11、EB-FPYYK1生菌を経口投与したグループにおいて、腫瘍サイズが著しく小さくなることを確認した。正常対照群の腫瘍サイズは、726.8±66.7mm
3と比較して、aPD-1投与群の腫瘍サイズは、419.5±80.43mm
3、(p<0.05)に42%減少することを確認した。aPD-1とEB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11、EB-FPYYK1併用投与群では、それぞれ400.6±67.45mm
3、(P<0.01)、455.7±67.67 mm
3、(P<0.05)、190.7±42.5mm
3、(P<0.001)、355.6±50.47mm
3、(P<0.01)の大きさに著しく減少することを示した。特に、aPD-1とEB-FPDK11の併用投与群では正常対照群に比べて約74%減少して最も優れた抗がん効果を示した。
【0119】
実施例5:黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおける、aPD-1免疫抗がん剤とフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11、EB-FPYYK1由来細胞外小胞(EV)の併用投与による抗がん効果
図7bを参照すると、がん細胞が出現し始める6日目から、aPD-1抗体250μgとフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞(EV)100μgを4日間隔で腹腔内注射した。このとき、aPD-1抗体は、BioXCell会社のInVivoMab anti-mouse PD-1(RMP1-14)、catalog#BE0146を使用した。InVivoPure pH7.0 Dilution Buffer、catalog#IP0070を用いて、250μg/100μLの濃度に希釈して使用した。
【0120】
腫瘍が測定される時点から2日に一回ずつ腫瘍サイズをモニタリングし、この際、腫瘍のサイズは前記数式1のように計算し、その結果を下記
図11にグラフで示した。細胞外小胞は、マウス腫瘍モデルにおいて単独で又はanti-PD1の存在又は不在下でこれらの効能に対して試験された。
【0121】
図11及び
図13を参照すると、B16-F10細胞を同種移植した対照群と比較して、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株由来の細胞外小胞(EV)を経口投与したグループにおいて腫瘍サイズが著しく小さくなることを確認した。正常対照群の腫瘍サイズ570.4±160.7mm
3と比較して、aPD-1投与群の腫瘍サイズは378.1±128mm
3に約34%減少することを確認した。aPD-1とEB-FPDK3 EV、EB-FPDK9 EV、EB-FPDK11 EV、EB-FPYYK1 EVの併用投与群では、それぞれ165.6±57.54mm
3、152.7±40.44mm
3、230.2±83.91mm
3、237.1±73.95mm
3のサイズに腫瘍サイズが著しく減少することを示した。特に、aPD-1とEB-FPDK9の併用投与群では、腫瘍サイズが正常対照群に比べて約73%減少して最高の抗がん効果を示した。
【0122】
図12を参照すると、マウスを犠牲させた後、腫瘍を摘出して重量を測定した結果、正常対照群の平均腫瘍重量2.8±0.6622gと比較して、aPD-1群は1.89±0.5806gであって、有意差はなかった。しかし、PD-1とEB-FP EVを併用投与したEB-FPDK3 EV、EB-FPDK9 EV、EB-FPDK11 EV群では、正常対照群と比較して有意に減少することを確認した。正常対照群の腫瘍重量2.8±0.6622gと比較して、それぞれの腫瘍重量はEB-FPDK3 EV;0.7696±0.2281g(P<0.01)、EB-FPDK9 EV;0.8688±0.2224g(P<0.05)、EB-FPDK11;0.7409±0.2423g(P<0.05)に有意に減少することを確認した。
【0123】
以上のように、本発明者らは、生体内(in vivo)でフィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium sp.)菌株由来の細胞外小胞(EV)とanti-PD1免疫チェックポイント阻害剤のがん細胞生長及び転移抑制効果を確認した結果、腫瘍を移植したマウスにフィーカリバクテリウム属菌株に由来する細胞外小胞(EV)とanti-PD1免疫チェックポイント阻害剤を注入したとき、腫瘍のサイズ及び重量が効果的に減少することを確認した(
図11及び
図12参照)。従って、本発明の薬学的組成物は、anti-PD1単独投与時と比較して相当優れた腫瘍成長抑制効能があるので、がんの予防又は治療用薬学的組成物として有用に使用できる。
【0124】
実施例6:HT29細胞とB16-F10を用いた創傷治癒分析(wound healing assay)
本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株由来の細胞外小胞の抗がん活性を調べるために、創傷治癒活性実験を実施した。
【0125】
HT29ヒト大腸がん細胞をそれぞれ10%FBS、1%ゲンタマイシンを含むMcCoy培地で5%CO2、37℃の条件で培養した。細胞培養用6ウェルプレートにHT29大腸がん細胞を分注し、Confluentに培養する。その後、ピペットチップを用いて6ウェルプレートに一定にスクラッチを与える。次いで、EB-FPDK3、EB-FPDK9、EB-FPDK11、EB-FPYYK1 EVを1又は10μg/mLで24時間処理して顕微鏡で観察した。Image Jプログラムを利用して細胞面積を計算した。
【0126】
図14a及び
図14bを参照すると、HT29細胞を用いた創傷治癒実験の結果、正常対照群を基準にしてEB-FPDK3 EV1μg/mL、10μg/mLそれぞれ25.97%、55.25%の転移性減少が観察された。また、10μg/mLを処理したグループでは、P<0.05に有意に減少することが確認された。EB-FPDK9 EV1μg/mL、10μg/mL処理した実験群では、正常対照群と比較してそれぞれ66.91%、58.95%の転移性減少が観察された。両濃度ともでP<0.05に有意に減少することが確認された。EB-FPDK11 EV1μg/mL、10μg/mLの濃度で処理した実験群で、正常対照群と比較して、それぞれ54.48%、49.45%の転移性減少が観察され、両濃度ともで有意に減少した(それぞれP<0.05、P<0.1)。最後に、EB-FPYYK1 EV1μg/mL、10μg/mLで処理した実験群で、正常対照群と比較してそれぞれ49.45%、59.4%の転移性減少が観察され、両濃度ともで有意に減少することを観察した(それぞれP<0.1、P<0.05)。
【0127】
実施例7:黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9菌株或いはEB-FPDK9由来の細胞外小胞(EB-FPDK9 EVs)投与による抗がん効果
7.1.実験方法
5週齢のC57BL/6雌のマウスを購入して、1週間の順化期間後にマウスに黒色腫細胞株B16F10を5×105細胞で皮下に注入して同種移植マウス(syngenic mouse)を製作した。全てのマウスに抗生剤アンピシリン15mg/mL、ネオマイシン15mg/mL、メトロニダゾール10mg/mL、バンコマイシン7.5mg/mL混合して250μLずつ2日間経口投与した。
【0128】
腫瘍移植7日目から陽性対照群として抗PD-1免疫抗がん剤(αPD-1)200μg/200μLを3日に1回腹腔投与し、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9菌株は1×10
8CFUずつ3日に2回経口投与し、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9 EVsは50μgずつ尾静脈投与した(
図15参照)。
【0129】
腫瘍のサイズは3日に1回ずつ定規を用いて測定し、腫瘍のサイズは長軸×短軸の二乗×0.5(mm3)で計算した。
【0130】
7.2.実験結果
B16F10細胞株を移植した7日目から腫瘍サイズを測定及び追跡した。19日目にマウスを犠牲させて腫瘍の重量を測定した。13日目から陽性対照群としてのαPD-1実験群を含めて、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9菌株とフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9 EVsを投与した実験群では、正常対照群に比べて腫瘍成長が抑制されることを確認した。
【0131】
図16を参照すると、マウスの犠牲日である19日目の正常対照群の腫瘍サイズが260.4±64.33mm
3であるのと比較して、EB-FPDK9投与群の腫瘍サイズは135.6±56.46mm
3であって約48%減少し、EB-FPDK9 EVs投与群の腫瘍サイズは53.26.51mm
3であって約80%程度統計的に有意に減少した。
【0132】
図17を参照すると、正常対照群の腫瘍重量と比較して、陽性対照群であるαPD-1を含めてフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9 EVs投与群で著しく減少することを確認した。特にフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9 EVs投与群では、統計的に有意に減少した。
【0133】
αPD-1投与群の腫瘍サイズ及び重量結果と比較したとき、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9菌株又はフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9 EVs投与群で同様のレベルと観察された(
図16及び
図17参照)。これは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9菌株とフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK9 EVsの単独投与がαPD-1と同程度の抗がん効能を有することを立証する。
【0134】
本明細書に開示されている具体的な実施形態は、本発明の好適な実施形態を説明するためのもので、本発明を限定するものと解釈されてはならない。本発明は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々に変形及び変化して実施でき、これらの事実は、当業者に自明であろう。本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定められるべきであり、それらの様々な修正及び変形は本発明の保護の範囲内に含まれることが意図される。
【0135】
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCCM12619P(EB-FPDK3)
受託日:2019年11月1日
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCCM12620P(EB-FPDK9)
受託日:2019年11月1日
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCCM12621P(EB-FPDK11)
受託日:2019年11月1日
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCCM12622P(EB-FPYYK1)
受託日:2019年11月1日
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
本発明の別の態様は、新規なフィーカリバクテリウム属EB-FPDK3菌株(KCCM12619P)、EB-FPDK9菌株(KCCM12620P)、EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、及びEB-FPYYK1菌株1(KCCM12622P)を提供する。これらの菌株は、それぞれ2019年11月1日に韓国微生物保存センターに寄託された。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
ヒトの糞便から単離した本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3、F.prausnitzii EB-FPDK9、F.prausnitzii EB-FPDK11、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株を、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(A2-165)を対照群とした生化学的方法(API)及び分子生物学的方法(16S rRNA配列分析、16S rRNA BLAST分析、RAPD)を介して同定し、後述する抗生剤耐性検査を介してプロバイオティクスの機能を有することができる安全な菌株であることを確認した。これらの結果に基づいて単離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ菌株をフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイEB-FPDK3菌株、F.prausnitzii EB-FPDK9菌株、F.prausnitzii EB-FPDK11菌株、及びF.prausnitzii EB-FPYYK1菌株と命名し、韓国微生物保存センターに寄託してそれぞれ受託番号KCCM12619P、KCCM12620P、KCCM12621P、及びKCCM12622Pが付与された。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
[受託番号]
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM12619P(EB-FPDK3)
受託日:2019年11月1日
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM12620P(EB-FPDK9)
受託日:2019年11月1日
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM12621P(EB-FPDK11)
受託日:2019年11月1日
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM12622P(EB-FPYYK1)
受託日:2019年11月1日
【国際調査報告】