(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】V、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/06 20060101AFI20241126BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20241126BHJP
C23C 2/26 20060101ALI20241126BHJP
C23C 2/02 20060101ALI20241126BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C23C2/06
C23C2/40
C23C2/26
C23C2/02
C22C18/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532884
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2022109957
(87)【国際公開番号】W WO2023098126
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111440098.9
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520346815
【氏名又は名称】攀▲鋼▼集▲団▼攀枝花▲鋼▼▲鉄▼研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】董 学強
(72)【発明者】
【氏名】徐 接旺
(72)【発明者】
【氏名】郭 太雄
(72)【発明者】
【氏名】冉 長栄
(72)【発明者】
【氏名】宋 裕
(72)【発明者】
【氏名】▲ジン▼ 陽
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA22
4K027AB02
4K027AB05
4K027AB44
4K027AC12
4K027AC64
4K027AE02
4K027AE03
(57)【要約】
本発明はV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材及びその製造方法に関し、鉄鋼冶金生産の技術分野に属する。本発明のV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材は、化学成分が質量%で、Al:0.5~5%、Mg:0.5~3.0%、V:0.05~1%、Ce:0.01~0.50%、La:0.01%~0.30%、Mn:0.025%~1.0%、残部:Znと不可避的不純物であるめっき層を備え、その中、Al/Mgが1.0~1.5であり、V+Ce+Laの総量は0.03~1.0%である。本発明のZn-Al-Mg合金めっき鋼材は、ユーザーの鋼材に対する高耐食性の要求を満たすだけでなく、優れたスタンピング成形性能又は高強度鋼の要求も満たし、特に家電、自動車分野に適用し、良い応用及び普及が見込まれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分が質量%で、Al:0.5~5%、Mg:0.5~3.0%、V:0.05~1%、Ce:0.01~0.50%、La:0.01%~0.30%、Mn:0.025%~1.0%、その他の微量合金元素:≦0.3%、残部:Znと不可避的不純物であるめっき層を備え、その中、Al/Mgが1.0~1.5であり、V+Ce+Laの総量が0.3~1.0%である、
ことを特徴とするV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項2】
前記めっき層の化学成分は、
めっき層中に、Al:0.8~3.2%、Mg:0.8~2.5%、V:0.05~0.40%、Ce:0.03~0.30%、La:0.02%~0.20%、Mn:0.10%~1.0%を含有する、
Al/Mgが1.0~1.2である、及び
V+Ce+Laの総量が0.10~0.35%である、のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項3】
前記不可避的不純物の総量が0.010%以下であり、そのうち、Pb≦0.002%、Sb≦0.002%、Sn≦0.002%、As≦0.002%、Te≦0.002%、Cd≦0.002%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項4】
前記めっき層の重量が両面で30~400g/m
2であり、好ましくは、前記めっき層の重量が両面で150~320g/m
2である、
ことを特徴とする請求項1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項5】
前記鋼材の鋼基材が、IF鋼、低炭素アルミニウム鎮静鋼、焼付硬化鋼、QP鋼、DP鋼、TRIP鋼及びTWIP鋼から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項6】
鋼基材の脱脂洗浄工程、連続焼鈍工程、溶融めっき工程、エアナイフパージ工程を含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材の製造方法。
【請求項7】
前記連続焼鈍工程の過程で炉内のH
2含有量を体積%で3.5%以上に制御し、好ましくは、前記連続焼鈍工程の過程で炉内のH
2含有量を体積%で4.0~8.0%に制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
溶融亜鉛ポットに入る際の前記鋼基材の温度を420~520℃に制御し、前記溶融めっき工程の過程でめっき液の温度が410~520℃であり、溶融亜鉛ポットに入る際の前記鋼基材の温度とめっき液の温度との差温を±10℃に制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
めっき後、急速に冷却させて、頂部にある転向ロールに達するまで帯鋼の温度が260℃以下になるようにし、好ましくは、めっき後、急速に冷却させて、頂部にある転向ロールに達するまで帯鋼の温度が200~260℃になるようにする、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の製造方法により得られるZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材及びその製造方法に関し、鉄鋼冶金生産の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
Zn-Al-Mg合金めっきは、1980年代に海外で広く注目され、溶融亜鉛めっき及び亜鉛合金めっきの専門分野における重要な研究対象となっていた。国内外の同業者の研究結果によると、めっき層中のZn及びAlの含有量が同じである場合、Mgを添加した溶融Zn-Al-Mg合金めっき鋼板は、より優れた耐食性能及びより良好な材料の加工と適用性能(成形性、溶接性及び塗装性)を有することがわかり、従来の相応な溶融亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板の代わりになる可能性があり、幅広い市場需要が予測できる。
【0003】
溶融Zn-Al-Mg合金めっき鋼板は、2000年代ごろ新日鉄や日清製鉄やティッセンクルップ等の鉄鋼会社において工業化生産及び応用を実現しており、現在、建築業界で主に使用され、家電、自動車製造及びその他の産業に徐々に参入しつつある。中国ではZn-Al-Mg合金めっきに対する研究が比較的遅れており、現在、Baosteel、Shougang、Jiuquan iron and steel、Pangang等のメーカーのみが溶融Zn-Al-Mg合金めっき鋼板を発売している。
【0004】
従来の溶融Zn-Al-Mg合金めっき鋼板は、「低アルミニウム」(WAl<5%)、「中アルミニウム」(5%≦WAl<13%)及び「高アルミニウム」(47%≦WAl≦57%)の3種類に分けられることができる。異なる種類のZn-Al-Mg合金めっき鋼板は、めっき層中のAl及びMgの含有量が異なるので、めっき層の構造及び品質性能にも差があり、その応用分野も異なる。
【0005】
特許文献1は、一浴溶融めっき方法を利用して金属表面にZn-Al-Mg合金めっき層を形成する高耐食性一浴式Zn-Al-Mg希土類保護めっき層及びその製造方法を開示している。めっき層と金属基体は、それぞれ元の特性を保つが、99.9%以上の冶金結合界面を持つ上に、めっき層は、緻密な構造、安定した組成、ゼロの漏れめっき及び優れた耐食性を有し、塩水噴霧腐食に抵抗する時間が2060hに達する。合金めっき層の耐食性は、通常の溶融純亜鉛めっき層よりも優れており、耐用年数が向上する。当該一浴式めっき方法は循環利用と工業化が可能であるので、金属とZn-Al-Mg合金めっき液との間のめっきが難しく、両者間に優れた接合界面の形成が難しく、漏れめっきが発生し易いという不足を克服できるため、金属表面に5%~12%のAl及び1%~6%のMg含有量のZn-Al-Mg合金めっき液で共浸透性層を製造することに広く応用でき、共浸透性層は、それの高い耐食性の主な原因となるZn/Al/MgZn2の三元共晶及び様々な二元共晶を形成する。上記高耐食性一浴式Zn-Al-Mg希土類保護めっき層は、中アルミニウムの組成系を採用する。
【0006】
特許文献2は、高い耐食性を有する溶融めっき鋼板及びその製造方法を開示している。前記溶融めっき鋼板は、基材と、基材の表面に形成されたAl-Zn-Si-Mgめっき層とを備え、前記めっき層の化学成分は、質量%で、Al:45%~65%、Si:0.1%~3%、Mg:0.2%~5%、Mn:0.001%~0.15%、Cr:0.001%~0.5%、残部:Znと不可避的不純物であり、それの製造方法は、(1)鋼板の前処理を行うことと、(2)鋼板を560~595℃のめっき液槽に浸漬して溶融めっきを行うことと、(3)めっき液から鋼板を取り出し、段階的冷却を行うこととを含む。当該溶融めっき鋼板は、優れた耐食性を有し、白錆の発生及び赤錆の発展、並びに切開部に由来する塗層破壊の発散を大きく抑える。上記高い耐食性を有する溶融めっき鋼板は、高アルミニウムの組成系を採用する。
【0007】
高耐食性Zn-Al-Mg鋼板は、主に中、高アルミニウムの組成系で構成されるものである。Al及びMg含有量が増加するにつれて、めっき層の耐食性能が向上するが、成形性能と溶接性能は低下する。家電、自動車分野では、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板がユーザーのスタンピング成形性能の要求を満たすように、良好な成形性を有しなければならないが、現在の中、高アルミニウムの組成系を有するZn-Al-Mg合金めっき鋼板は、まだユーザーの要求を満たすことができない。自動車用鋼材において、高強度鋼の強度が高いほど、鋼基材の合金元素が多いため、めっき液と鋼基材の浸潤性が悪くなり、高強度鋼におけるZn、Al、Mgの応用に深刻な影響を及ぼす。従って、高成形性と高耐食性を有するZn-Al-Mg合金めっき鋼板を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開第105063532号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第109402547号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、高成形性と高耐食性を有する、V、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記技術的問題を解決するために、以下のような技術的手段を採用する。
本発明の一態様であるV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材は、化学成分が質量%で、Al:0.5~5%、Mg:0.5~3.0%、V:0.05~1%、Ce:0.01~0.50%、La:0.01%~0.30%、Mn:0.025%~1.0%、その他の微量合金元素:≦0.3%、残部:Znと不可避的不純物であるめっき層を備え、そのうち、Al/Mgが1.0~1.5であり、V+Ce+Laの総量が0.3~1.0%である。
【0011】
更に、めっき層の化学成分は、以下の条件(1)~(3)の少なくとも1つを満たす。(1)めっき層中にAl:0.8~3.2%、Mg:0.8~2.5%、V:0.05~0.40%、Ce:0.03~0.30%、La:0.02%~0.20%、Mn:0.10%~1.0%を含有する、(2)Al/Mgが1.0~1.2である、(3)V+Ce+Laの総量が0.10~0.35%である。
【0012】
更に、前記不可避的不純物の総量が0.010%以下であり、そのうち、Pb≦0.002%、Sb≦0.002%、Sn≦0.002%、As≦0.002%、Te≦0.002%、Cd≦0.002%である。
【0013】
更に、前記めっき層の重量が両面で30~400g/m2であり、好ましくは、前記めっき層の重量が両面で150~320g/m2である。
【0014】
更に、前記鋼材の鋼基材が、IF鋼、低炭素アルミニウム鎮静鋼、焼付硬化鋼、QP鋼、DP鋼、TRIP鋼及びTWIP鋼から選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
前記Zn-Al-Mg合金めっき鋼材の製造方法は鋼基材の脱脂洗浄工程、連続焼鈍工程、溶融めっき工程、エアナイフパージ工程を含む。
【0016】
更に、前記連続焼鈍工程の過程で炉内のH2含有量を体積%で3.5%以上に制御し、好ましくは、前記連続焼鈍工程の過程で炉内のH2含有量を体積%で4.0~8.0%に制御する。
【0017】
更に、溶融亜鉛ポットに入る際の鋼基材の温度を420~520℃に制御し、前記溶融めっき工程の過程でめっき液の温度が410~520℃であり、溶融亜鉛ポットに入る際の鋼基材の温度とめっき液の温度との差温を±10℃に制御する。
【0018】
更に、めっき後、急速に冷却させて、頂部にある転向ロールに達するまで帯鋼の温度が260℃以下になるようにし、好ましくは、めっき後、急速に冷却させて、頂部にある転向ロールに達するまで帯鋼の温度が200~260℃になるようにする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
本発明のZn-Al-Mg合金めっき鋼材は、低アルミニウムの組成系を採用し、めっき層の組成を制御することで、高耐食性と高成形性を有するZn-Al-Mg合金めっき鋼板が得られる。試験によると、本発明のZn-Al-Mg合金めっき鋼材は、中性塩水噴霧試験条件下で赤錆が現れるまでの時間が600時間、ひいては3200時間以上に達し、0T湾曲後に肉眼で明らかな亀裂が見えなく、中性塩水噴霧試験条件下で曲げ部に赤錆が現れるまでの時間が500時間以上、ひいては3000時間以上に達し、塗装後の塗層の密着性に優れる。当該Zn-Al-Mg合金めっき鋼材は、特に家電、自動車分野に適用し、良い応用及び普及が見込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、V、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材を提供し、該鋼材は、化学成分が質量%で、Al:0~5%、Mg:0.5~3.0%、V:0.05~1%、Ce:0.01~0.50%、La:0.01%~0.30%、Mn:0.025%~1.0%、その他の微量合金元素:≦0.3%、残部:Znと不可避的不純物、であるめっき層を備え、ここで、Al/Mgが1.0~1.5であり、V+Ce+Laの総量が0.3~1.0%であり、その他の微量合金元素は、B、Si、Ti、Ca、Mn、Mo、Cr、Nb、Yt及びBiから選ばれる少なくとも1種である。
【0021】
現在、本分野では、Zn-Al-Mg合金めっき鋼材の耐食性を確保するために、主に中、高アルミニウムの組成系を採用するが、Al及びMg含有量の増加に伴い、鋼材の成形性能と溶接性能が大幅に低下するので、家電、自動車及びその他の分野でのスタンピング成形性能の要求を満たし難いとの問題がある。本発明は、上記課題に鑑み、めっき層中のMg及びAl含有量(含有率)を最適化し、その他の合金元素を添加することで次の通りで様々な効果を達成する。Vは、めっき層の形成中に不均一核形成を引き起こしてめっき層の粒径を微細化することにより、めっき層の延性を改善する上にめっき層の耐食性を向上させる。CeとLaは、めっき液の流動性を増加させて、めっき液の表面張力を低下させ、鋼基材に対するめっき液の浸潤性を増加し、めっき層と鋼基材の結合効果を向上させる。Mnは、めっき層と鋼基材(特にMnを含む高強度鋼)の結合効果を強化してMnに富む金属間化合物を形成することができるため、めっき層が優れた塑性及び靭性を有してその後の加工を容易にするようにさせてユーザーの高耐食性及び高成形性の使用要求を満たす。ただし、V、Ce、La及びMnの含有量が多すぎると、合金めっき液の表面に酸化物膜が生じ、これにより亜鉛スラグが増加し、めっき層の表面品質に影響を与える。
【0022】
めっき層の製造過程では、めっき層が良好な表面品質及び性能を有することを保証するようにプロセスを制限する必要がある。エアーナイフの噴出流の強さとめっき液の流動性を考慮してめっき層の厚さを一定の範囲内に抑える必要がある。めっき層の重量が大きすぎて噴出流の圧力が小さい場合、めっき層の表面品質と厚さを制御し兼ねる上に、噴出流の流量が有限、並びにめっき液の流動性が一定の場合、めっき層の厚さが薄くなりすぎるようになる。めっき液は、異なる鋼板の表面に対する湿潤性が異なり、湿潤性の良い鋼板のみにおいて優れた接着力を有するめっき層を形成できる。焼きなまし雰囲気は鋼基材表面の良好な還元性を向上させるためであり、一般にH2含有量が高いほど適切になるが、H2含有量が高いほど爆発の危険性が高くなる。めっき液の温度は、めっき液が溶融状態にあって適切な流動性を有するようにする必要があり、V及びMnの添加がめっき液の温度範囲を広めるが、温度が高すぎると、酸化亜鉛のスラグが増えるようになる。めっき層の完全な凝固を確保するためには、第一番目の転向ロールに達する前に鋼板の温度を凝固点以下に下げる必要があり、且つ亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムが酸化し易く、急速冷却することで表面品質を向上させることができる。
【0023】
以下、実施例に関連して本発明の技術的手段を説明するが、以下の実施例が本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではないことは、当業者に理解されよう。実施例に特定の技術又は条件が示されていない場合は、当該分野の文献に記載された技術又は条件、又は製品の仕様書に準拠する。使用される試薬又は器具は、メーカーが示されていない場合は、市販されている通常のものである。
【0024】
実施例1 本発明のZn-Al-Mg合金めっき鋼材の製造
めっき層は、重量が50g/m2(両面)であり、主な成分が質量%で、Al:0.8%、Mg:0.6%、V:0.10%、La:0.05%、Ce:0.15%、Mn:0.20%、Pb:0.002%、Sb:0.001%、Cr:0.001%、Cd:0.001%、Sn:0.001%であり、残部がZnからなる。鋼基材はDP鋼である。
【0025】
製造方法は、脱脂洗浄工程、連続焼鈍工程、溶融めっき工程、エアナイフパージ工程及び冷却工程を含む。脱脂洗浄では脱脂処理後に鋼材を濯いて清潔にする。連続焼鈍工程の過程では、炉内のH2含有量を体積%で5.0%に抑える。溶融亜鉛ポットに入る際の鋼板の温度は450℃で、溶融めっき工程の過程ではめっき液の温度が440℃を保つ。めっき後、鋼板を急速に冷却させて、帯鋼が頂部にある転向ロールに達する時の帯鋼の温度が260℃になるようにする。
【0026】
(試験方法)
耐食性:腐食の加速に用いられる中性塩水噴霧試験を採用する。試験条件及び方法はGB/T10125‐2012「人工雰囲気腐食試験の塩水噴霧試験」に従って実施される。試験器具は塩水噴霧腐食試験箱を用い、濃度が50g/L、pH値が6.5であるNaCl脱イオン水溶液を腐食性媒質とし、試験温度を35±2℃に設定し、試験片のサイズを75mm×150mm×0.8mmにし、透明テープを用いて5mmの封辺をして端部の腐食が結果に影響を与えるのを防ぐ。試験片は垂直方向に対して15°~25°の角度をなして置かれる。試験片の表面に赤錆が発生するまでの時間を観察する。
【0027】
成形性:試験片を0T湾曲(180°湾曲、湾曲弧の半径は0)させ、亀裂が現れるかどうかを肉眼で観察する。また、中性塩水噴霧試験条件下で曲げ部に赤錆が発生するまでの時間を観察し、中性塩水噴霧試験条件及び方法はGB/T10125‐2012「人工雰囲気腐食試験の塩水噴霧試験」に従って実施される。
【0028】
塗装性:油を塗っためっき鋼板を、脱脂、洗浄、セラミックコーティング又はリン酸塩処理の後にスプレー塗装して乾燥させる。その後、塗層と鋼板との密着度をクロスカット試験で検査し、塗層が脱落しなければ密着性が良好であることを示す。
【0029】
試験結果:本実施例で製造されたZn-Al-Mg合金めっき鋼材の表面品質は良好であり、優れた耐食性、成形性及び塗装性を有する。当該めっき鋼材は、中性塩水噴霧試験条件下で赤錆が現れるまでの時間が70時間以上に達し、0T湾曲後に明らかな亀裂が肉眼で見えなく、中性塩水噴霧試験条件下で曲げ部に赤錆が現れるまでの時間が600時間以上に達し、塗装後の塗層の密着性に優れ、ユーザーの要求を満たす。
【0030】
実施例2 本発明のZn-Al-Mg合金めっき鋼材の製造
めっき層は、重量が150g/m2(両面)であり、主な成分が質量%で、Al:1.5%、Mg:1.5%、V:0.15%、Ce:0.10%、La:0.10%、Mn:0.15%、Pb:0.001%、Sb:0.002%、Cr:0.001%、Cd:0.001%、Sn:0.001%であり、残部はZnからなる。鋼基材はTWIP鋼である。
【0031】
製造方法は、脱脂洗浄工程、連続焼鈍工程、溶融めっき工程、エアナイフパージ工程及び冷却工程を含む。脱脂洗浄工程では脱脂処理後に鋼材を濯いて清潔にする。連続焼鈍工程の過程では、炉内のH2含有量を体積%で6.0%に抑える。溶融亜鉛ポットに入る際の鋼板の温度は470℃で、溶融めっき工程の過程ではめっき液の温度が460℃を保つ。めっき後、鋼板を急速に冷却させて、帯鋼が頂部にある転向ロールに達する時の帯鋼の温度が200℃になるようにする。
【0032】
試験方法は実施例1と同じである。
試験結果:本実施例で製造されたZn-Al-Mg合金めっき鋼材の表面品質は良好であり、優れた耐食性、成形性及び塗装性を有する。当該めっき鋼材は、中性塩水噴霧試験条件下で赤錆が現れるまでの時間が1800時間以上に達し、0T湾曲後に明らかな亀裂が肉眼で見えなく、中性塩水噴霧試験条件下で曲げ部に赤錆が現れるまでの時間が1700時間以上に達し、塗装後の塗層の密着性に優れ、ユーザーの要求を満たす。
【0033】
実施例3 本発明のZn-Al-Mg合金めっき鋼材の製造
めっき層は、重量が320g/m2(両面)であり、主な成分が質量%で、Al:3.2%、Mg:2.5%、V:0.10%、La:0.15%、Ce:0.20%、Mn:0.05%、Pb:0.002%、Sb:0.001%、Cr:0.001%、Cd:0.002%、Sn:0.002%であり、残部はZnからなる。鋼基材はQP鋼である。
【0034】
製造方法は、脱脂洗浄工程、連続焼鈍工程、溶融めっき工程、エアナイフパージ工程及び冷却工程を含む。脱脂洗浄工程では脱脂処理後に鋼材を濯いて清潔にする。連続焼鈍工程の過程では、炉内のH2含有量を体積%で4.5%に抑える。溶融亜鉛ポットに入る際の鋼板の温度は510℃で、溶融めっき工程の過程ではめっき液の温度が500℃を保つ。めっき後、鋼板を急速に冷却させて、帯鋼が頂部にある転向ロールに達する時の帯鋼の温度が200℃になるようにする。
【0035】
試験方法は実施例1と同じである。
試験結果:本実施例で製造されたZn-Al-Mg合金めっき鋼材の表面品質は良好であり、優れた耐食性、成形性及び塗装性を有する。当該めっき鋼材は、中性塩水噴霧試験条件下で赤錆が現れるまでの時間が3200時間以上に達し、0T湾曲後に明らかな亀裂が肉眼で見えなく、中性塩水噴霧試験条件下で曲げ部に赤錆が現れるまでの時間が3000時間以上に達し、塗装後の塗層の密着性に優れ、ユーザーの要求を満たす。
【0036】
比較例
めっき層は、重量が180g/m2(両面)であり、主な成分が質量%で、Al:1.6%、Mg:1.6%、Pb:0.001%、Sb:0.001%、Cr:0.001%、Cd:0.001%、Sn:0.001%であり、残部はZnからなる。鋼基材はQP鋼である。
【0037】
製造方法は、脱脂洗浄工程、連続焼鈍工程、溶融めっき工程、エアナイフパージ工程及び冷却工程を含む。脱脂洗浄工程では脱脂処理後に鋼材を濯いて清潔にする。連続焼鈍工程の過程では、炉内のH2含有量を体積%で3.5%に抑える。溶融亜鉛ポットに入る際の鋼板の温度は470℃で、溶融めっき工程の過程ではめっき液の温度が470℃を保つ。めっき後、鋼板を急速に冷却させて、帯鋼が頂部にある転向ロールに達する時の帯鋼の温度が300℃になるようにする。
【0038】
試験方法は実施例1と同じである。
試験結果:本比較例で製造されたZn-Al-Mg合金めっき鋼材の表面品質は本発明より劣り、輝点欠陥があり、耐食性、成形性及び塗装性もやや悪い。当該めっき鋼材は、中性塩水噴霧試験条件下で赤錆が現れるまでの時間が1400時間以上であり、0T湾曲後に僅かな亀裂が肉眼で見え、中性塩水噴霧試験条件下で曲げ部に赤錆が現れるまでの時間が1100時間以上である。
【0039】
説明に必要なことは、本明細書に記載の特定の特徴、構造、材料又は配置は、任意の1つまたは複数の実施例において適切な形態で組み合わせることが可能である。その上、当業者にとって、本明細書に記載の異なる実施例と実施例の様々な特徴は、互いな矛盾がない限り、それぞれ互いに組み合わせることも可能である。
【0040】
(付記)
(付記1)
化学成分が質量%で、Al:0.5~5%、Mg:0.5~3.0%、V:0.05~1%、Ce:0.01~0.50%、La:0.01%~0.30%、Mn:0.025%~1.0%、その他の微量合金元素:≦0.3%、残部:Znと不可避的不純物であるめっき層を備え、その中、Al/Mgが1.0~1.5であり、V+Ce+Laの総量が0.3~1.0%である、
ことを特徴とするV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【0041】
(付記2)
前記めっき層の化学成分は、
めっき層中に、Al:0.8~3.2%、Mg:0.8~2.5%、V:0.05~0.40%、Ce:0.03~0.30%、La:0.02%~0.20%、Mn:0.10%~1.0%を含有する、
Al/Mgが1.0~1.2である、及び
V+Ce+Laの総量が0.10~0.35%である、のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする付記1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【0042】
(付記3)
前記不可避的不純物の総量が0.010%以下であり、そのうち、Pb≦0.002%、Sb≦0.002%、Sn≦0.002%、As≦0.002%、Te≦0.002%、Cd≦0.002%である、
ことを特徴とする付記1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【0043】
(付記4)
前記めっき層の重量が両面で30~400g/m2であり、好ましくは、前記めっき層の重量が両面で150~320g/m2である、
ことを特徴とする付記1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【0044】
(付記5)
前記鋼材の鋼基材が、IF鋼、低炭素アルミニウム鎮静鋼、焼付硬化鋼、QP鋼、DP鋼、TRIP鋼及びTWIP鋼から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする付記1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【0045】
(付記6)
鋼基材の脱脂洗浄工程、連続焼鈍工程、溶融めっき工程、エアナイフパージ工程を含む、
ことを特徴とする付記1~5のいずれか一つに記載のV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材の製造方法。
【0046】
(付記7)
前記連続焼鈍工程の過程で炉内のH2含有量を体積%で3.5%以上に制御し、好ましくは、前記連続焼鈍工程の過程で炉内のH2含有量を体積%で4.0~8.0%に制御する、
ことを特徴とする付記6に記載の製造方法。
【0047】
(付記8)
溶融亜鉛ポットに入る際の前記鋼基材の温度を420~520℃に制御し、前記溶融めっき工程の過程でめっき液の温度が410~520℃であり、溶融亜鉛ポットに入る際の前記鋼基材の温度とめっき液の温度との差温を±10℃に制御する、
ことを特徴とする付記6に記載の製造方法。
【0048】
(付記9)
めっき後、急速に冷却させて、頂部にある転向ロールに達するまで帯鋼の温度が260℃以下になるようにし、好ましくは、めっき後、急速に冷却させて、頂部にある転向ロールに達するまで帯鋼の温度が200~260℃になるようにする、
ことを特徴とする付記6に記載の製造方法。
【0049】
(付記10)
付記6~9のいずれか1つに記載の製造方法により得られるZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分が質量%で、Al:0.5~5%、Mg:0.5~3.0%、V:0.05~1%、Ce:0.01~0.50%、La:0.01%~0.30%、Mn:0.025%~1.0%、その他の微量合金元素:≦0.3%、残部:Znと不可避的不純物であるめっき層を備え、その中、Al/Mgが1.0~1.5であり、V+Ce+Laの総量が0.3~1.0%である、
ことを特徴とするV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項2】
前記めっき層の化学成分は、
めっき層中に、Al:0.8~3.2%、Mg:0.8~2.5%、V:0.05~0.40%、Ce:0.03~0.30%、La:0.02%~0.20%、Mn:0.10%~1.0%を含有する、
Al/Mgが1.0~1.2である、及び
V+Ce+Laの総量が0.10~0.35%である、のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項3】
前記不可避的不純物の総量が0.010%以下であり、そのうち、Pb≦0.002%、Sb≦0.002%、Sn≦0.002%、As≦0.002%、Te≦0.002%、Cd≦0.002%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項4】
前記めっき層の重量が両面で30~400g/m
2であり、好ましくは、前記めっき層の重量が両面で150~320g/m
2である、
ことを特徴とする請求項1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項5】
前記鋼材の鋼基材が、IF鋼、低炭素アルミニウム鎮静鋼、焼付硬化鋼、QP鋼、DP鋼、TRIP鋼及びTWIP鋼から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項1に記載のZn-Al-Mg合金めっき鋼材。
【請求項6】
鋼基材の脱脂洗浄工程、連続焼鈍工程、溶融めっき工程、エアナイフパージ工程を含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のV、Ce、La、Mnを含有するZn-Al-Mg合金めっき鋼材の製造方法。
【請求項7】
前記連続焼鈍工程の過程で炉内のH
2含有量を体積%で3.5%以上に制御し、好ましくは、前記連続焼鈍工程の過程で炉内のH
2含有量を体積%で4.0~8.0%に制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
溶融亜鉛ポットに入る際の前記鋼基材の温度を420~520℃に制御し、前記溶融めっき工程の過程でめっき液の温度が410~520℃であり、溶融亜鉛ポットに入る際の前記鋼基材の温度とめっき液の温度との差温を±10℃に制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
めっき後、急速に冷却させて、頂部にある転向ロールに達するまで帯鋼の温度が260℃以下になるようにし、好ましくは、めっき後、急速に冷却させて、頂部にある転向ロールに達するまで帯鋼の温度が200~260℃になるようにする、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【国際調査報告】