(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】RSVプレFタンパク質を認識する抗体とその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20241126BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241126BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241126BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241126BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241126BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241126BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241126BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20241126BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20241126BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C07K16/10 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P31/14
G01N33/536 C
G01N33/536 D
G01N33/536 B
G01N33/569 L
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533280
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2022112500
(87)【国際公開番号】W WO2023103440
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111477846.0
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512287595
【氏名又は名称】シアメン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.422 Siming Nan Road,Siming District Xiamen Fujian,361005 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】チョン ツーチョン
(72)【発明者】
【氏名】スン ヨンポン
(72)【発明者】
【氏名】レイ スーユイ
(72)【発明者】
【氏名】チアン ホンション
(72)【発明者】
【氏名】チェン リー
(72)【発明者】
【氏名】シア ニンシャオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA15
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA70
4H045BA71
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA29
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
要約
本発明は、免疫学及び分子ウイルス学の分野に関し、特にRSVの予防と処置の分野に関する。具体的には、プレFタンパク質上のφエピトープとVエピトープとの間の新しいエピトープ、又はIIエピトープとVエピトープとの間の新しいエピトープに特異的に結合できるモノクローナル抗体、並びにRSV感染症及び/又は該感染によって引き起こされる疾患の検出、予防及び/又は処置におけるその使用、を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プレFタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、該エピトープが、プレFタンパク質の、294~295位のアミノ酸残基、及び160~182位のアミノ酸残基内の少なくとも6つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含み;
好ましくは、該エピトープが、少なくとも161、165、166、169、180、182、294、及び295位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、該エピトープが、さらに196位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、該エピトープが、さらに162と184位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、該エピトープが、161~182位のアミノ酸残基(例えば、161~184位のアミノ酸残基)と294~295位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、該エピトープが、立体構造エピトープであり;
好ましくは、該アミノ酸残基の位置が、配列番号1に従って決定され;
好ましくは、該エピトープが、少なくともE161、N165、K166、S169、S180、S182、E294、及びE295を含み;好ましくは、該エピトープが、さらにK196を含み;好ましくは、該エピトープが、さらにG162及びG184を含む、
前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
以下の:
(a) 以下の3つのCDR:配列番号5に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号6に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号7に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(b) 以下の3つのCDR:配列番号8に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号9に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号10に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
を含み、
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する、抗体又はその抗原結合断片であって;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、RSVプレFタンパク質に特異的に結合することができ;
好ましくは、RSVプレFタンパク質への結合に関して、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片と競合し;
好ましくは、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する、
前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
(i) 以下の3つの重鎖CDR:配列番号5に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号6に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号7に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号8に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号9に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号10に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii) 配列番号3又は60に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号4又は61に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含み;好ましくは、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される、
請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
以下の:
配列番号3に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号4に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、配列番号3に規定されるVH、及び/又は配列番号4に規定されるVL、を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プレFタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、該エピトープが、プレFタンパク質の160~185位及び290~295位のアミノ酸残基内の少なくとも5つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含み;
好ましくは、該エピトープが、少なくとも161、162、184、293及び294位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、該エピトープが、161~182位のアミノ酸残基と293~294位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、該エピトープが、立体構造エピトープであり;
好ましくは、該アミノ酸残基の位置が、配列番号1に従って決定され;
好ましくは、該エピトープが、少なくともE161、G162、G184、K293及びE294を含む、
前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
以下の:
(a) 以下の3つのCDR:配列番号13に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号14に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号15に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(b) 以下の3つのCDR:配列番号16に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号17に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号18に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
を含み、
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する、抗体又はその抗原結合断片であって;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、RSVプレFタンパク質に特異的に結合することができ;
好ましくは、RSVプレFタンパク質への結合に対して、請求項5に記載の抗体又はその抗原結合断片と競合し;
好ましくは、請求項5に記載の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する、
前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
(i) 以下の3つの重鎖CDR:配列番号13に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号14に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号15に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号16に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号17に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号18に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii) 配列番号11に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号12に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含み;好ましくは、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される、
請求項5又は6に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
以下の:
配列番号11に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号12に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、配列番号11に規定されるVH、及び/又は配列番号12に規定されるVL、を含む、
請求項5~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プレFタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、該エピトープが、プレFタンパク質の160~185位のアミノ酸残基内の少なくとも3つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含み;
好ましくは、該エピトープが、少なくとも161、162、及び184位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、該エピトープが、161~182位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、該エピトープが、立体構造エピトープであり;
好ましくは、該アミノ酸残基の位置が、配列番号1に従って決定され;
好ましくは、該エピトープが、少なくともE161、G162、及びG184を含む、
前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
以下の:
(a) 以下の3つのCDR:配列番号21に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号22に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号23に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(b) 以下の3つのCDR:配列番号24に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号25に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号26に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
を含み、
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する、抗体又はその抗原結合断片であって;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、RSVプレFタンパク質に特異的に結合することができる。
好ましくは、RSVプレFタンパク質への結合に対して、請求項9に記載の抗体又はその抗原結合断片と競合し;
好ましくは、請求項9に記載の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する、
前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
(i) 抗体又はその抗原結合断片は:以下の3つの重鎖CDR:配列番号21に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号22に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号23に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号25に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号26に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii) 抗体又はその抗原結合断片は:配列番号19に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号20に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含み;好ましくは、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される、
請求項9又は10に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
以下の:
配列番号19に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号20に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、配列番号19に規定されるVH、及び/又は配列番号20に規定されるVL、を含む、
請求項9~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
ヒト化され;
好ましくは、ヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域配列を含み;
好ましくは、ヒト重鎖生殖系列配列由来の重鎖フレームワーク領域配列及びヒト軽鎖生殖系列配列由来の軽鎖フレームワーク領域配列を含み;
好ましくは、配列番号60に規定されるVH、及び/又は配列番号61に規定されるVLを含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
マウス又はヒト免疫グロブリン由来の定常領域をさらに含み;
好ましくは、その重鎖が、マウス又はヒト免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)由来の重鎖定常領域を含み、その軽鎖が、マウス又はヒト免疫グロブリン(例えば、κ又はλ鎖を含む免疫グロブリン)由来の軽鎖定常領域を含み;
好ましくは、その重鎖が、配列番号62に規定される重鎖定常領域を含み、及びその軽鎖が、配列番号63に規定される軽鎖定常領域を含む、
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、(Fab’)
2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、ダイアボディ及び単一ドメイン抗体(sdAb)から成る群から選択され;及び/又は、前記抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体若しくは多特異性抗体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
以下の特徴:
(a) インビトロ又は対象(例えば、ヒト)においてRSV (例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)を中和する;
(b) インビトロ又は対象(例えば、ヒト)におけるRSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)の、細胞との融合を妨害又は阻害する;
(c) RSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)感染症、又はRSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)感染症(例えば、小児肺炎などの肺炎)に関連する疾患を予防及び/又は処置する、
のうちの1若しくは複数を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いはその重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする、単離核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸分子を含むベクターであって;好ましくは、クローニングベクター又は発現ベクターである、前記ベクター。
【請求項19】
請求項17に記載の核酸分子又は請求項18に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を調製する方法であって、請求項19に記載の宿主細胞を、該抗体又はその抗原結合断片の発現を可能にする条件下で培養し、そして、培養した宿主細胞の培養物から該抗体又はその抗原結合断片を回収することを含む、前記方法。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、並びに医薬として許容される担体及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項22】
薬剤の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の使用であって、ここで、該薬剤が、RSVの病原力を中和するため、或いはRSVと細胞との融合を阻害又は妨害するため、或いは対象におけるRSウイルス感染症又はRSウイルス感染症に関連する疾患(例えば、小児肺炎などの肺炎)を予防及び/又は処置するために使用され;
好ましくは、該対象が、ヒトなどの哺乳動物であり;
好ましくは、該抗体又はその抗原結合断片が、単独で、又は追加の医薬として活性な剤と組み合わせて使用される、前記使用。
【請求項23】
対象(例えば、ヒト)におけるRSウイルス感染症又はRSウイルス感染症に関連する疾患(例えば、小児肺炎などの肺炎)を予防及び/又は処置する方法であって、以下の:それを必要としている対象に、有効量の、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は請求項21に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、及び該抗体又はその抗原結合断片に接続された検出可能な標識を含む、コンジュゲートであって;
好ましくは、該検出可能な標識が、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ若しくはアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、若しくはルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン若しくは蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチンから成る群から選択される、前記コンジュゲート。
【請求項25】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いは請求項24に記載のコンジュゲートを含む、キットであって;
好ましくは、請求項24に記載のコンジュゲートを含み;
好ましくは、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、及び任意選択で、該抗体又はその抗原結合断片を特異的に認識する二次抗体を含み;任意選択で、該二次抗体はまた、検出可能な標識、例えば、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ若しくはアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、若しくはルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン若しくは蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチンも含む、前記キット。
【請求項26】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いは請求項24に記載のコンジュゲートを使用することを含む、サンプル中のRSVの存在又はレベルを検出する方法であって、
好ましくは、該方法が、イムノブロッティングアッセイ、エンザイムイムノアッセイ(例えば、ELISA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、又は放射性免疫アッセイなどの免疫学的アッセイであり;
好ましくは、該方法が、請求項24に記載のコンジュゲートを使用することを含み;
好ましくは、該方法が、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を使用することを含み、そして、該方法が、さらに、該抗体又はその抗原結合断片を検出するための検出可能な標識(例えば、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、又はルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン又は蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチン)を担持する二次抗体を使用することを含み;
好ましくは、該方法が:(1) サンプルを、抗体又はその抗原結合断片若しくはコンジュゲートと接触させ;(2) 抗原-抗体免疫複合体の形成を検出するか、又は免疫複合体の量を検出すること、を含み;好ましくは、その免疫複合体の形成が、RSV又はRSV感染症細胞の存在を示す、前記方法。
【請求項27】
キットの製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いは請求項24に記載のコンジュゲートの使用であって、ここで、該キットが、サンプル中のRSVの存在又はレベルの検出のために使用され、及び/又は対象がRSVに感染しているか否かに関係なく、診断のために使用され;
好ましくは、該キットが、請求項26に記載の方法によってサンプル中のRSVの存在又はレベルを検出し;
好ましくは、該サンプルが、対象(例えば、哺乳動物、好ましくはヒト)からの体液サンプル(例えば、気道の分泌物)又は組織サンプル(例えば、気道組織のサンプル)である、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、免疫学及び分子ウイルス学の分野、特にRSVの予防と処置の分野に関する。具体的には、本願は、プレFタンパク質の抗原部位φと部位Vの間に位置する新しいエピトープ、又は抗原部位IIと部位Vの間に位置する新しいエピトープに特異的に結合できるモノクローナル抗体、並びにRSウイルス感染及び/又はその感染症によって引き起こされる疾患の検出、予防及び/又は処置のためのその使用、を提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、5歳未満の小児の急性下気道感染症を引き起こす最も一般的な病原菌であり、そしてまた、幼児や低年齢小児の下気道感染症の入院加療の主な原因でもある。ほとんどすべての幼児と2歳未満の小児は、RSVに感染しており、さらに、幼児と6カ月未満の幼児は、RSウイルス感染症のために入院する人々の主な群であり、約50%を占める。世界的に毎年RSウイルス感染によって引き起こされる下気道感染は、3000万件超の症例が存在し、300万件超の入院加療を含め、66,000~239,000人が亡くなっている(Ting Shi, David A McAllister, et al., Lancet, 390 (2017) 946-958; Geoghegan S, Erviti A, et al., Am J Respir Crit Care Med 195 (2017) 96-103)。他の呼吸器ウイルス感染症と比べて、RSVに感染している小児は、より高い疾患負担を有する;特に、幼児及び6カ月未満の小児は、より高いICU入院率、入院加療コスト、及びより長い入院を含め、6~24カ月齢の小児より高い疾患負担を有する。RSウイルス感染症は、重篤な小児科肺炎のリスクを14倍増強する(The Pneumonia Etiology Research for Child Health (PERCH) Study Group, Lancet, 394 (2019) 757-779)。気管支及び肺の発育不全、先天性心臓疾患、及び免疫不全を患っている未熟児におけるRSウイルス感染率は、50%~70%に達する(A.C. Cooper, N.C. Banasiak, et al., Pediatr Nurs, 29 (2003) 452 -456)。加えて、高齢者もまたRSVに感受しやすく、毎年RSウイルス感染症によって引き起こされる死亡が12,000件を超える。RSVはまた、中国人小児の下気道感染症の主たる病原菌でもある。中国では、毎年約215,000~500,000人の幼児及び小児が、RSウイルス感染症のため入院している(Li Y, Johnson EK, et al., Lancet Respir Med, 2021, 9 (2): 175-185)。
【0003】
現在、市販の安全かつ有効なRSVワクチンは存在しない。RSV融合糖タンパク質を認識する唯一の中和抗体(パリビズマブ、商品名:Synagis)が、未熟児や、慢性肺疾患、気管支及び肺の形成異常、及び先天性心臓疾患を患っているハイリスク幼児及び低年齢小児などの患者においてRSVによって引き起こされる重篤な下気道感染症の予防向けに米国のFDAによって承認された。しかしながら、Synagisは、不十分な中和能力、高い生産コスト、及び高価であるため、「感染症の高いリスクを有する幼児及び低年齢小児」にのみ使用され、広く使用されているわけではない。加えて、Sanofi PasteurとAstraZenecaは共同でヒト抗体D25に基づく新世代のRSV予防薬「ニルセビマブ(Nirsevimab)」を開発した。ニルセビマブは、延長された半減期を有する予防的モノクローナル抗体であり、そして、ニルセビマブの筋肉内注射の1回の単回投与は、幼児及び低年齢小児において最長5カ月の持続的な保護を提供し、幼児及び低年齢小児がRSV流行期全体を通じて安全に乗り切ることを可能にする。臨床試験の第IIb相の結果は、対照群と比べて、ニルセビマブが、診察及び入院加療の割合をそれぞれ70.1%及び78.4%低減したことを示した(M Pamela Griffin, Yuan Yuan, et al., N Engl J Med, 383(2020) 415-425)。現在のところ、ニルセビマブは、米国のFDAによって「画期的な処置法」に指定されている。2021年1月には、モノクローナル抗体ニルセビマブは、中国において「ブレイクスルー療法剤」として列挙された。現在、中国において市販のRSV特異的予防又は処置用薬物は存在しない。
【0004】
RSVは、アドヒージョンウイルス科(Adhesionviridae)の肺炎ウイルスファミリーに属する1本鎖マイナス鎖非セグメント化RNAウイルスである。それは、15,222個のヌクレオチドを有し、10個の遺伝子を含有し、そして、11個のタンパク質をコードする。それらの中で、I型膜貫通タンパク質である融合(F)タンパク質は、574アミノ酸の完全長を有し、現在、RSVワクチンや抗体開発の主要な標的タンパク質である。RSVのFタンパク質は、2種類の立体構造:プレ融合(プレF)とポスト融合(ポストF)、で存在する。プレFは、高エネルギーであり、ウイルスエンベロープと細胞膜との融合を媒介する準安定プレ融合立体構造であり;融合の後に、プレFは、非常に安定したポスト融合立体構造であるポストFにアロステリックに形質転換する。ポストFタンパク質と比べて、プレFタンパク質は、より高い活性を有するより多くの中和エピトープを有し、そしてそれは、高い中和活性を有する抗体の産生を誘発し得る。
【0005】
要約すれば、RSVは、世界中で子供に対する深刻な害、並びに重大な健康及び医療的負担を引き起こしている。中国では、RSVの予防及び/又は処置のために広域スペクトルかつ高い中和活性を有する独立した知的所有権を有する抗体を開発することが緊急に必要であり、そして、開発された抗体は、小児のRSV感染症の予防及び/又は処置に使用できる。
【発明の概要】
【0006】
本願の内容
現在、6つの中和エピトープ(部位φ、I、II、III、IV及びV)が、プレF及びポストFで発見されている。それらの中に、部位φとVは、高い活性を有するプレFに特異的に存在するエピトープであり、部位I、II、III及びIVは、プレFとポストFの両方に存在する。部位φは、具体的にはプレF三量体の膜遠位端に位置する。このエピトープは、F1サブユニットのα4ヘリックス(第196~209残基)とF2の部分領域(第62~69残基)を含み;そして、両領域は、融合前から融合後へのアロステリックなプロセス中に劇的な変化を受ける。このエピトープを認識する抗体としては、D25、5C4、及びAM22が挙げられる。その3つの抗体はすべて、強力な中和活性を有するFプレ特異的抗体であり、かつ、それらの中和能力は、パリビズマブのものよりほぼ100倍高い。部位Iは、プレFとポストFの両方に存在し、α8ヘリックスとβ14との間に位置する第387~392残基から成る直鎖エピトープであり;そして、このエピトープを認識する抗体は、131-2であるが、この抗体は弱い中和能力しかもたない。部位IIは、プレFとポストFの両方に存在し、かつ、α6ヘリックス、α7ヘリックス、及びそれらの間のループ(第255~276残基)から成る。このエピトープを認識する代表的な抗体としては、マウス抗体1129、ヒト化パリビズマブ、及びパリビズマブ由来の第二世代抗体モタビズマブが挙げられ;そして、これらの抗体は中程度の中和能力を示す。また、部位IIIは、プレFとポストFの両方に存在する。このエピトープを認識する代表的な抗体はMPE8であり、そしてそれは、プレF立体構造でタンパク質に結合することが好まれる。MPE8は、広域スペクトルの中和活性を有し、4種類のウイルス、hRSV、BRSV、hMPV、及びPVMを中和できる。部位IVもまた、プレFとポストFの両方に存在し、かつ、第422~438残基で構成される線形構造を有し;そして、このエピトープを認識する代表的な抗体は101Fであり、そしてそれは、中程度の中和能力を示す。部位Vは、具体的にはプレF立体構造タンパク質に存在し、かつ、タンパク質三量体の第146~194及び287~300残基で構成されたエピトープであり;そして、このエピトープを認識する抗体AM14は、プレFの2つのモノマー結合領域にしか結合できず、かつ、高い中和能力を有する。
【0007】
大規模な研究後に、本願の発明者らは、プレFタンパク質の抗原部位φと部位Vとの間に位置する新しいエピトープ、又は抗原部位IIと部位Vとの間に位置する新しいエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を思いがけなく開発した。本願の抗体は、プレF立体構造を特異的に認識でき、RSV効果的に中和でき、及びRSVと細胞との融合を妨害又は阻害できる。これにより、本願は、以下の態様を提供する。
【0008】
抗体又はその抗原結合断片
5B11
第一の態様において、本願は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プレFタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、該エピトープは、プレFタンパク質の160~182位のアミノ酸残基内の少なくとも6つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含み、かつ、プレFタンパク質の294~295位のアミノ酸残基を含む。
【0009】
特定の実施形態において、エピトープは、少なくとも161、165、166、169、180、182、294、及び295位のアミノ酸残基を含む。
特定の実施形態において、エピトープは、さらに196位のアミノ酸残基を含む。
特定の実施形態において、エピトープは、さらに162と184位のアミノ酸残基を含む。
特定の実施形態において、エピトープは、161~182位のアミノ酸残基(例えば、161~184位のアミノ酸残基)と294~295位のアミノ酸残基を含む。
【0010】
特定の実施形態において、エピトープは、立体構造エピトープである。
特定の実施形態において、アミノ酸残基の位置は、配列番号1に従って決定される。
特定の実施形態において、エピトープは、少なくともE161、N165、K166、S169、S180、S182、E294、及びE295を含み;特定の実施形態において、エピトープは、さらにK196を含み;特定の実施形態において、エピトープはまた、G162及びG184も含む。
【0011】
第二の態様において、本願は、以下の:
(a) 以下の3つのCDR:配列番号5に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号6に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号7に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(b) 以下の3つのCDR:配列番号8に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号9に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号10に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
を含み、
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する、抗体又はその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態において、置換は、保存的置換である。
【0012】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、RSVプレFタンパク質を特異的に結合することができる。
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、RSVプレFタンパク質への結合に関して、第一の態様の抗体又はその抗原結合断片と競合する。特定の実施形態において、競合結合とは、RSVプレFタンパク質への第一の態様の抗体又はその抗原結合断片の結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%又は好ましくは少なくとも99%を妨害することができることを指す。競合結合は、競合結合アッセイによって測定できる。
【0013】
競合結合アッセイは、当業者にとって周知である。競合結合アッセイは、それが特異的に結合する抗体への標識既知抗原の結合を阻害する未知物質の能力によって、未知物質が検出及び定量化される、免疫アッセイであり、そして、拮抗阻害アッセイとも呼ばれる。例示的な方法は:抗原をマイクロウェルプレート上にプレコートし、次に、連続希釈した試験される非標識抗体と、特定の濃度を有する標識既知モノクローナル抗体(すなわち、第一の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片)とをインキュベートのために前述のプレコートマイクロウェルプレートに加え、そして次に、洗浄後、異なった希釈での試験される抗体の存在下、プレートに結合した既知抗体の量を計測すること、を含む。抗原への結合に関して既知抗体と競合する試験される抗体の能力が高いほど、抗原に結合する既知抗体の能力が低いほど、より少ない既知抗体しかプレートに結合しない。通常、抗原は、96ウェルマイクロプレート上にプレコートされ、標識既知モノクローナル抗体を妨害するための、試験されるモノクローナル抗体の能力は、放射性免疫学的アッセイ、ELISAなどのエンザイムイムノアッセイ、又は蛍光免疫学的アッセイによって測定される。
【0014】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープは、該抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への第一の態様の抗体又はその抗原結合断片の結合を妨害するように、第一の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープと同一であるか、又はスペースが重複する。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、第一の態様の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する。
【0015】
特定の実施形態において:
(i) 抗体又はその抗原結合断片は:以下の3つの重鎖CDR:配列番号5に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号6に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号7に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号8に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号9に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号10に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii) 抗体又はその抗原結合断片は:配列番号3又は60に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号4又は61に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含む。特定の実施形態において、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される。
【0016】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、以下の:
配列番号3に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号4に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。特定の実施形態において、置換は、保存的置換である。
【0017】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は:配列番号3に規定されるVH、及び/又は配列番号4に規定されるVL、を含む。
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化され、そして、ヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク配列を含む。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は:ヒト重鎖生殖細胞系列配列由来の重鎖フレームワーク配列、及びヒト軽鎖生殖細胞系列配列由来の軽鎖フレームワーク配列、を含み、そして、該重鎖フレームワーク配列及び/又は該軽鎖フレームワーク配列は、任意選択でヒト残基からマウス残基への復帰突然変異を含む。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は:配列番号60に規定されるVH、及び/又は配列番号61に規定されるVL、を含む。
【0018】
第三の態様において、本願はまた、RSVプレFタンパク質への結合に対して、第二の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体5B11又はその抗原結合断片)と競合する、抗体又はその抗原結合断片も提供する。特定の実施形態において、競合結合とは、RSVプレFタンパク質への第二の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体5B11又はその抗原結合断片)の結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%又は好ましくは少なくとも99%を妨害することができることを指す。競合結合は、先に記載した競合結合アッセイによって測定できる。
【0019】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープは、該抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への第二の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体5B11又はその抗原結合断片)の結合を妨害するように、第二の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体5B11又はその抗原結合断片)によって認識されるエピトープと同一であるか、又はスペースが重複する。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、第二の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体5B11又はその抗原結合断片)と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する。
【0020】
6B2
第四の態様において、本願は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プレFタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、該エピトープは、プレFタンパク質の160~185位及び290~295位のアミノ酸残基内の少なくとも5つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含む。
【0021】
特定の実施形態において、エピトープは、少なくとも161、162、184、293及び294位のアミノ酸残基を含む。
特定の実施形態において、エピトープは、161~182位のアミノ酸残基と293~294位のアミノ酸残基を含む。
【0022】
特定の実施形態において、エピトープは、立体構造エピトープである。
特定の実施形態において、アミノ酸残基の位置は、配列番号1に従って決定される。
特定の実施形態において、エピトープは、少なくともE161、G162、G184、K293、及びE294を含む。
【0023】
第五の態様において、本願は、以下の:
(a) 以下の3つのCDR:配列番号13に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号14に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号15に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(b) 以下の3つのCDR:配列番号16に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号17に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号18に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
を含み、
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する、抗体又はその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態において、置換は、保存的置換である。
【0024】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、RSVプレFタンパク質に特異的に結合することができる。
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、RSVプレFタンパク質への結合に対して、第四の態様の抗体又はその抗原結合断片と競合する。特定の実施形態において、競合結合とは、RSVプレFタンパク質への第四の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片の結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%又は好ましくは少なくとも99%を妨害することができることを指す。競合結合は、競合結合アッセイによって測定できる。
【0025】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープは、該抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への第四の態様の抗体又はその抗原結合断片の結合を妨害するように、第四の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープと同一であるか、又はスペースが重複する。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、第四の態様の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する。
【0026】
特定の実施形態において:
(i) 抗体又はその抗原結合断片は:以下の3つの重鎖CDR:配列番号13に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号14に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号15に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号16に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号17に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号18に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii) 抗体又はその抗原結合断片は:配列番号11に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号12に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含む。特定の実施形態において、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される。
【0027】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、以下の:
配列番号11に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号12に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。特定の実施形態において、置換は、保存的置換である。
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は:配列番号11に規定されるVH、及び/又は配列番号12に規定されるVL、を含む。
【0028】
第六の態様において、本願はまた、RSVプレFタンパク質への結合に対して、第五の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体6B2又はその抗原結合断片)と競合する、抗体又はその抗原結合断片も提供する。特定の実施形態において、競合結合とは、RSVプレFタンパク質への第五の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体6B2又はその抗原結合断片)の結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%又は好ましくは少なくとも99%を妨害することができることを指す。競合結合は、先に記載した競合結合アッセイによって測定できる。
【0029】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープは、該抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への第五の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体6B2又はその抗原結合断片)の結合を妨害するように、第五の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体6B2又はその抗原結合断片)によって認識されるエピトープと同一であるか、又はスペースが重複する。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、第五の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体6B2又はその抗原結合断片)と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する。
【0030】
7G5
第七の態様において、本願は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プレFタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、該エピトープは、プレFタンパク質の160~185位のアミノ酸残基内の少なくとも3つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含む。
【0031】
特定の実施形態において、エピトープは、少なくとも161、162、及び184位のアミノ酸残基を含む。
特定の実施形態において、エピトープは、161~182位のアミノ酸残基を含む。
【0032】
特定の実施形態において、エピトープは、立体構造エピトープである。
特定の実施形態において、アミノ酸残基の位置は、配列番号1に従って決定される。
特定の実施形態において、エピトープは、少なくともE161、G162、及びG184を含む。
【0033】
第八の態様において、本願は、以下の:
(a) 以下の3つのCDR:配列番号21に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号22に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号23に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(b) 以下の3つのCDR:配列番号24に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号25に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号26に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
を含み、
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する、抗体又はその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態において、置換は、保存的置換である。
【0034】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、RSVプレFタンパク質に特異的に結合することができる。
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、RSVプレFタンパク質への結合に対して、第七の態様の抗体又はその抗原結合断片と競合する。特定の実施形態において、競合結合とは、RSVプレFタンパク質への第七の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片の結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%又は好ましくは少なくとも99%を妨害することができることを指す。競合結合は、競合結合アッセイによって測定できる。
【0035】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープは、該抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への第七の態様の抗体又はその抗原結合断片の結合を妨害するように、第七の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープと同一であるか、又はスペースが重複する。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、第七の態様の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する。
【0036】
特定の実施形態において:
(i) 抗体又はその抗原結合断片は:以下の3つの重鎖CDR:配列番号21に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号22に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号23に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号25に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号26に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii) 抗体又はその抗原結合断片は:配列番号19に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号20に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含む。特定の実施形態において、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される。
【0037】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、以下の:
配列番号19に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号20に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。特定の実施形態において、置換は、保存的置換である。
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は:配列番号19に規定されるVH、及び/又は配列番号20に規定されるVL、を含む。
【0038】
第九の態様において、本願はまた、RSVプレFタンパク質への結合に対して、第八の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体7G5又はその抗原結合断片)と競合する、抗体又はその抗原結合断片も提供する。特定の実施形態において、競合結合とは、RSVプレFタンパク質への第八の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体7G5又はその抗原結合断片)の結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%又は好ましくは少なくとも99%を妨害することができることを指す。競合結合は、先に記載した競合結合アッセイによって測定できる。
【0039】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片によって認識されるエピトープは、該抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への第八の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体7G5又はその抗原結合断片)の結合を妨害するように、第八の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体7G5又はその抗原結合断片)によって認識されるエピトープと同一であるか、又はスペースが重複する。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、第八の態様に記載の抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体7G5又はその抗原結合断片)と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する。
【0040】
上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、マウスに由来する。上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、マウス免疫グロブリン由来のフレームワーク領域配列を含む。
【0041】
上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化される。上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域配列を含む。上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は:ヒト重鎖生殖系列配列由来の重鎖フレームワーク領域配列及びヒト軽鎖生殖系列配列由来の軽鎖フレームワーク領域配列を含む。重鎖フレームワーク領域及び/又は軽鎖フレームワーク領域は、任意選択でヒト残基からマウス残基への復帰突然変異を含む。
【0042】
上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、マウス又はヒト免疫グロブリン由来の定常領域をさらに含む。
【0043】
上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片の重鎖はマウス又はヒト免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)由来の重鎖定常領域を含み、抗体又はその抗原結合断片の軽鎖はマウス又はヒト免疫グロブリン(例えば、λ又はκ鎖を含む免疫グロブリン)由来の軽鎖定常領域を含む。
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片の重鎖は、配列番号62に規定される重鎖定常領域を含み、及び抗体又はその抗原結合断片の軽鎖は、配列番号63に規定される軽鎖定常領域を含む。
【0044】
上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、ダイアボディ及び単一ドメイン抗体(sdAb)から成る群から選択される。
上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体若しくは多特異性抗体である。
【0045】
上記態様のいずれかの特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、以下の特徴:
(a) インビトロ又は対象(例えば、ヒト)においてRSV (例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)を中和する;
(b) インビトロ又は対象(例えば、ヒト)におけるRSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)の、細胞との融合を妨害又は阻害する;
(c) RSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)感染症、又はRSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)感染症(例えば、小児肺炎などの肺炎)に関連する疾患を予防及び/又は処置する、
のうちの1若しくは複数を有する。
【0046】
特定の実施形態において、RSVタイプAの例示的な菌株としては、GenBankに規定されるウイルス株:KT992094.1、GU591760.1、KJ627328.1、KJ723478.1、KU316139.1、KU316112.1、FJ614813.1、KJ627352.1、KJ627274.1、KU316092.1、及び/又はHQ317235.1が挙げられる。
特定の実施形態において、RSVタイプBの例示的な菌株としては、GenBankに規定されるウイルス株:JN032119.1、KX765905.1、KY249659.1、KJ627302.1、JQ736675.1、KX765900.1、JF714712.1、AF013254.1、AY353550.1、及び/又はRSV18537株が挙げられる。
単離核酸分子
第十の態様において、本願は、上記の態様のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、その重鎖可変領域、及び/又は軽鎖可変領域をコードする、単離核酸分子を提供する。
【0047】
特定の実施形態において、単離核酸分子は、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片の重鎖又は重鎖可変領域をコードする第一のヌクレオチド配列、及び抗体又はその抗原結合断片の軽鎖又は軽鎖可変領域をコードする第二のヌクレオチド配列、を含み、ここで、該第一のヌクレオチド配列と該第二のヌクレオチド配列は、同じ又は異なる単離核酸分子上に存在する。第一のヌクレオチド配列と第二のヌクレオチド配列が、異なる単離核酸分子上に存在するとき、本明細書に記載された単離核酸分子は、第一のヌクレオチド配列を含む第一の核酸分子と、第二のヌクレオチド配列を含む第二の核酸分子を含む。
【0048】
ベクター
第十一の態様において、本願は、先に記載した核酸分子を含んでいる、ベクターを提供する。特定の実施形態において、ベクターは、クローニングベクター又は発現ベクターである。
【0049】
特定の実施形態において、ベクターは、本願のいずれかの態様の抗体又はその抗原結合断片の重鎖又は重鎖可変領域をコードする第一のヌクレオチド配列、及び抗体又はその抗原結合断片の軽鎖又は軽鎖可変領域をコードする第二のヌクレオチド配列、を含み、ここで、該第一のヌクレオチド配列と該第二のヌクレオチド配列は、同じ又は異なるベクター上に存在する。第一のヌクレオチド配列と第二のヌクレオチド配列が、異なるベクター上に存在するとき、本明細書に記載されたベクターは、第一のヌクレオチド配列を含む第一のベクターと、第二のヌクレオチド配列を含む第二のベクターを含む。
【0050】
宿主細胞
第十二の態様において、本願は、先に記載した核酸分子又はベクターを含んでいる、宿主細胞を提供する。斯かる宿主としては、これだけに限定されるものではないが、細菌細胞(例えば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)細胞)などの原核細胞、及び真菌細胞(例えば、酵母細胞)などの真核細胞、昆虫細胞、及び動物細胞(例えば、マウス細胞、ヒト細胞などの哺乳動物細胞)が挙げられる。
【0051】
調製方法
本願の抗体は、遺伝子工学や組み換え技術などの当該技術分野で既知の様々な方法によって調製できる。例えば、本願の抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNA分子は、化学合成又はPCR増幅によって得られる。得られたDNA分子は、発現ベクター内に挿入され、次に、宿主細胞の中に形質移入される。次に、形質移入された宿主細胞は、特定の条件下で培養され、そして、本願の抗体を発現する。
【0052】
本発明の抗体は、その産生方法によって限定されない、例えばそれは、遺伝子操作法(組換え技術)によって、又は化学合成法によって産生され得る。本発明の抗原結合断片は、完全な抗体分子を加水分解することによって得ることができる(Morimoto et al., J. Biochem. Biophys. Methods 24:107-117 (1992)、及びBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照のこと)。加えて、これらの抗原結合断片は、組換え宿主細胞によって直接産生されてもよい(Hudson, Curr. Opin. Immunol. 11: 548-557 (1999); Little et al., Immunol. Today, 21: 364-370 (2000)に概説されている)。例えば、Fab’断片は宿主細胞から直接得ることができ;Fab’断片はF(ab’)2断片を形成するように化学的にカップリングされ得る(Carter et al., Bio/Technology, 10: 163-167 (1992))。加えて、Fv、Fab又はF(ab’)2断片は、組換え宿主細胞の培養培地から直接単離されてもよい。これらの抗原結合断片を調製するための他の技術は、当業者に十分に知られている。
【0053】
第十三の態様において、本願は、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片を調製する方法であって、先に記載の宿主細胞を、抗体又はその抗原結合断片の発現を可能にする条件下で培養し、そして、培養した宿主細胞の培養物から抗体又はその抗原結合断片を回収することを含む、前記方法を提供する。
【0054】
医薬組成物
第十四の態様において、本願は、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片、並びに医薬として許容される担体及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。特定の例示的実施形態において、医薬として許容される担体及び/又は賦形剤は、滅菌注射可能な液体(例えば、水性又は非水性懸濁液又は溶液)を含む。特定の例示的実施形態において、斯かる滅菌注射可能な液体は、注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)NaCl)、ブドウ糖溶液(例えば、5%ブドウ糖)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%ポリソルベート20)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝溶液)、リンゲル液及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0055】
薬剤を製造するための使用
第十五の態様において、本願は、薬剤の製造における、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片の使用を提供し、そしてここで、該薬剤は、RSVの病原力を中和するため、或いは細胞へのRSVの融合を阻害又は妨害するため、或いは対象におけるRSウイルス感染症又はRSウイルス感染症に関連する疾患(例えば、小児肺炎などの肺炎)を予防及び/又は処置するために使用される。
【0056】
特定の実施形態において、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、単独で、又は追加の医薬として活性な剤と組み合わせて使用される。
【0057】
疾患を予防及び/又は処置する方法
第十六の態様において、本願は、対象(例えば、ヒト)におけるRSウイルス感染症又はRSウイルス感染症に関連する疾患(例えば、小児肺炎などの肺炎)を予防及び/又は処置する方法であって、以下の:それを必要としている対象に、有効量の、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片、又は本願の医薬組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0058】
本発明の抗体若しくはその抗原結合断片又は本発明の医薬組成物は、医学分野において周知の任意の剤形、例えば、錠剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル、カプセル、粉剤、顆粒剤、エリキシル剤、トローチ剤、座薬、注射剤(注射用液、注射用滅菌粉末及び注射用濃縮液を含む)、吸入剤、スプレーなどに製剤化され得る。好ましい剤形は、目的の投与様式及び処置用使用に依存する。本発明の抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、滅菌されているべきであり、製造及び保存の条件下で安定であるべきである。好ましい剤形は注射剤である。斯かる注射剤は、注射用滅菌溶液であり得る。例えば、注射用滅菌溶液は、本発明の抗体又はその抗原結合断片の必要用量を適切な溶媒中に包含すること、及び任意選択で、他の望ましい成分(これだけに限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、等張剤、保存剤、希釈剤又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる)を同時に包含し、それに続く、濾過滅菌によって調製され得る。加えて、注射用滅菌溶液は、保存及び使用を容易にするために滅菌凍結乾燥粉剤(例えば、真空乾燥又は凍結乾燥による)として調製され得る。斯かる滅菌凍結乾燥粉剤は、好適な担体、例えば、注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)NaCl)、ブドウ糖溶液(例えば、5%グルコース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%ポリソルベート20)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝溶液)、リンゲル液及びこれらの任意の組み合わせ中に使用前に分散され得る。
【0059】
本発明の抗体若しくはその抗原結合断片又は本発明の医薬組成物は、これだけに限定されるものではないが、経口、頬側、舌下、点眼、局所、非経口、直腸内、くも膜下腔内、大槽内、鼠径部、膀胱内、局所(例えば、粉剤、軟膏若しくは液滴)又は経鼻経路が挙げられる、当技術分野において周知の任意の好適な方法によって投与され得る。しかし、多くの処置用使用のために投与の好ましい経路/様式は、非経口(例えば、静脈内若しくはボーラス注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射)である。当業者は、投与の経路及び/又は様式が、意図される目的に応じて変化することを理解する。特定の実施形態において、本発明の抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、静脈内注射又はボーラス注射によって投与される。
【0060】
コンジュゲート
第十七の態様において、本願は、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片、及び該抗体又はその抗原結合断片に連結された検出可能な標識を含む、コンジュゲートを提供する。
特定の実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ若しくはアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、若しくはルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン若しくは蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチンから成る群から選択される。
【0061】
キット
第十八の態様において、本願は、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片、或いは本願のコンジュゲートを含むキットを提供する。
特定の実施形態において、キットは、本願のコンジュゲートを含む。
特定の実施形態において、キットは、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片、及び任意選択で、該抗体又はその抗原結合断片を特異的に認識する二次抗体を含む。
任意選択で、該二次抗体はまた、検出可能な標識、例えば、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ若しくはアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、若しくはルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン若しくは蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチンも含む。
【0062】
検出方法
第十九の態様において、本願は、サンプル中のRSVの存在又はレベルを検出する方法であって、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片、或いは本願のコンジュゲートを使用することを含む、前記方法を提供する。
特定の実施形態において、方法は、処置目的、診断目的、又は非処置、非診断目的に使用される。
【0063】
特定の実施形態において、方法は、ウェスタンブロッティングアッセイ、エンザイムイムノアッセイ(例えば、ELISA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、又は放射性免疫アッセイなどの免疫学的アッセイである。
特定の実施形態において、方法は、本願のコンジュゲートを使用することを含む。
【0064】
特定の実施形態において、方法は、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片を使用することを含み、そして、方法は、さらに、抗体又はその抗原結合断片を検出するための検出可能な標識(例えば、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、又はルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン又は蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチン)を担持する二次抗体を使用することを含む。
【0065】
特定の実施形態において、方法は:(1) サンプルを、抗体又はその抗原結合断片若しくはコンジュゲートと接触させ;(2) 抗原-抗体免疫複合体の形成を検出するか、又は免疫複合体の量を検出すること、を含む。特定の実施形態において、免疫複合体の形成は、RSV又はRSV感染症細胞の存在を示す。
【0066】
キットを製造するための使用
第二十の態様において、本願は、キットの製造における、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片、或いは本願のコンジュゲートの使用を提供し、ここで、該キットは、サンプル中のRSVの存在又はレベルを検出するために使用され、及び/又は対象がRSVに感染しているか否かに関係なく、診断に使用される。
【0067】
特定の実施形態において、キットは、第十九の態様に記載の方法によってサンプル中のRSVの存在又はレベルを検出する。
特定の実施形態において、サンプルは、対象(例えば、哺乳動物、好ましくはヒト)からの体液サンプル(例えば、気道の分泌物)又は組織サンプル(例えば、気道組織のサンプル)である。
【0068】
用語の定義
本願では、別段に規定のない限り、本明細書に使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。加えて、本明細書に使用されるウイルス学、生化学及び免疫学の検査手技は、対応する分野において広く使用される日常的な手技である。一方で、本発明をより良好に理解するために、関連する用語の定義及び説明を下に提供する。
【0069】
用語、「例えば(for example)」、「など(such as)」、「例えば(e.g.)」、「含む(comprising)」、「包含する(including)」、又はその変化形が本明細書で使用されるとき、これらの用語は、用語を限定すると見なされることはなく、その代わりに、「しかし限定されない」又は「限定されるものではない」意味と解釈される。
【0070】
別段に示されないか又は文脈によって明確に否定されない限り、本願を説明するための関連における(特に以下の請求項との関連における)用語「a」及び「an」、並びに「the」、そして類似の指示対象は、単数形と複数形を網羅すると解釈される。
【0071】
本明細書に使用される場合、「RSV融合タンパク質」又は「Fタンパク質」という用語は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の融合タンパク質(Fタンパク質)を指し、そしてそれは、当業者にとって周知であり、例えば、その例示的なアミノ酸配列は、UniProtKB:P03420.1に見られる。本願では、Fタンパク質のアミノ酸配列を参照するとき、配列番号1に規定される配列が、説明に使用される。例えば、表現「Fタンパク質の160~182位のアミノ酸残基」は、配列番号1に記載のポリペプチドの341~362位のアミノ酸残基を指す。しかし、当業者は、gBのアミノ酸配列において、変異又は多様性(これだけに限定されるものではないが、置換、欠失及び/又は付加、例えば、異なる遺伝子型又は遺伝子サブタイプのFタンパク質などを含む)が、その生物学的機能に影響を与えることなく天然で産生され得るか、又は人工的に導入され得ることを理解する。したがって本願では、用語「Fタンパク質」は、例えば、配列番号1に記載の配列及びその天然又は人工バリアントが挙げられる、すべての斯かる配列を含む。Fタンパク質の配列断片を記載する場合、それは、配列番号1の配列断片だけでなく、その天然又は人工バリアント中の対応する配列断片も含む。例えば、表現「Fタンパク質の160~182位のアミノ酸残基」は、配列番号1の160~182位及び、その(天然又は人工)バリアント中の対応する断片のアミノ酸残基を含む。本発明により、表現「対応する配列断片」又は「対応する断片」は、配列が最適にアラインされる場合に、すなわち配列が最も高いパーセント同一性のためにアラインされる場合に、比較される配列中の同等の位置の断片を指す。
【0072】
本明細書に使用される場合、用語「プレFタンパク質」は、プレF立体構造で存在するFタンパク質を指す。本明細書に使用される場合、用語「ポストFタンパク質」は、ポストF立体構造で存在するFタンパク質を指す。プレFタンパク質、ポストFタンパク質、及びそれらの立体構造に関するより詳細な説明については、McLellan et al. (2010), J Vriol, 84: 12236-12244; McLellan et al. (2013), Science, 340: 1113-1117; McLellan et al. (2015), Curr Opin Virol, 11: 70-75;中国特許出願第201480013927.7号、及びPCT国際出願第PCT/CN2014/073505号(その内容全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に援用する)を参照のこと。
【0073】
本明細書に使用される場合、用語「エピトープ」は、特定の抗体によって認識され、特異的に結合され得る抗原の一部を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、連続的なアミノ酸によって、又はタンパク質の三次フォールディングによって集められた非連続的なアミノ酸によって形成され得、それぞれ直鎖状エピトープ又は立体構造エピトープと呼ばれる。連続的なアミノ酸から形成されるエピトープがタンパク質変性において典型的には保持される一方で、三次フォールディングによって形成されるエピトープはタンパク質変性において典型的には失われる。エピトープは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続的な又は非連続的なアミノ酸を固有の空間的コンホメーションで典型的には含む。
【0074】
本明細書に使用される場合、用語「同一性」は、2つのポリペプチド又は2つの核酸の間の配列の一致を指すために使用される。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列のパーセント同一性を測定するために、該配列は、最適な比較目的のためにアラインされる(例えば、ギャップが、第二のアミノ酸又は核酸配列との最良のアラインのために、第一のアミノ酸配列又は核酸配列内に導入されてもよい)。次に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第一の配列のある位置が第二の配列の対応位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占有されているとき、分子はその位置にて同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有された同一位置の数の関数である(すなわち、パーセント同一性=同一重複位置の数/位置の総数×100%)。特定の実施形態において、両配列は、同じ長さのものである。
【0075】
2つの配列間のパーセント同一性の測定はまた、数学アルゴリズムを使用することでも達成され得る。2つの配列の比較のための数学アルゴリズムの非限定的な一例が、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2264-2268のアルゴリズムであり、そしてそれは、Karlin and Altschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:5873-5877によって改善された。斯かるアルゴリズムは、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれた。
【0076】
本明細書に使用される場合、用語「抗体」は、2対のポリペプチド鎖から通常構成される免疫グロブリン分子を指し、各対は1本の軽鎖(LC)及び1本の重鎖(HC)を有する。抗体軽鎖は、κ(カッパ)及びλ(ラムダ)軽鎖として分類され得る。重鎖は、μ、δ、γ、α又はεとして分類でき、抗体のアイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義される。軽鎖及び重鎖内で可変及び定常領域は、約12個又はそれを超えるアミノ酸の「J」領域によって繋がれ、重鎖は約3個又はそれを超えるアミノ酸の「D」領域も含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は、3個のドメイン(CH1、CH2及びCH3)から成る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから成る。定常ドメインは、抗体-抗原結合に直接関与しないが、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の構成成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子との免疫グロブリン相互作用を媒介するなどの種々のエフェクター機能を示す。VH及びVL領域も、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるさらに保存された領域が散在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる高可変性の領域に細分され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ次の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3個のCDRと4個のFRから成る。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)は、抗原結合部位をそれぞれ形成する。各領域又はドメイン中のアミノ酸の配置は、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、又はChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196 :901-917; Chothia et al. (1989) Nature 342:878-883に記載の定義をたどることができる。
【0077】
本明細書に使用される場合、用語「相補性決定領域」又は「CDR」は、抗原結合に関与する抗体可変領域中のアミノ酸残基を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域は、CDR1、CDR2及びCDR3と名付けられた3個のCDRをそれぞれ含む。これらのCDRの正確な境界は、当技術分野において周知の種々のナンバリングシステムにより定義され得る、例えば、Kabatナンバリングシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991)、Chothiaナンバリングシステム(Chothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al. (1989) Nature 342:878-883)又はIMGTナンバリングシステム(Lefranc et al. al., Dev. Comparat. Immunol. 27:55-77, 2003)。所与の抗体について当業者は、各ナンバリングシステムによって定義されたCDRを容易に同定する。同様に、異なるナンバリングシステム間の対応関係は、当業者に十分周知である(例えば、Lefranc et al., Dev. Comparat. Immunol. 27:55-77, 2003を参照のこと)。
【0078】
本願では、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、当技術分野において周知の種々のナンバリングシステムにより決定され得る。特定の実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、Kabat、Chothia又はIMGTナンバリングシステムによって好ましくは決定される。特定の実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、IMGTナンバリングシステムによって好ましくは決定される。
【0079】
本明細書に使用される場合、用語「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、先に定義されるCDR残基以外の抗体可変領域中のアミノ酸残基を指す。
用語「抗体」は、抗体を産生するいかなる具体的な方法にも限定されない。例えば、それは、組換え抗体、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を含む。抗体は、さまざまなアイソタイプのもの、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4サブタイプ)、IgAl、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体であり得る。
【0080】
本明細書に使用される場合、用語、抗体の「抗原結合断片」は、全長抗体が結合する同じ抗原に特異的に結合する能力を保持している、及び/又は抗原への特異的結合について全長抗体と競合する、全長抗体の断片を含むポリペプチドを指し、これは「抗原結合成分」とも称される。一般的に、Fundamental Immunology, Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed., Raven Press, N.Y. (1989)(あらゆる目的のために、その全体を参照により本明細書に援用する)を参照のこと。抗体の抗原結合断片は、組換えDNA技術によって、又は完全な抗体の酵素的若しくは化学的切断によって得ることができる。抗原結合断片の非限定的例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、相補性決定領域(CDR)断片、scFv、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、線状抗体、ナノボディ(Domantisからの技術)、プロボディ、及び十分な抗原結合能力を有する、抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられる。操作された抗体バリアントは、Holliger et al., 2005; Nat Biotechnol, 23: 1126-1136によって概説されている。
【0081】
本明細書に使用される場合、用語「全長抗体」は、2本の「全長重鎖」及び2本の「全長軽鎖」から成る抗体を指す。これらの内「全長重鎖」は、重鎖可変領域(VH)、重鎖定常領域CH1ドメイン、ヒンジ領域(HR)、重鎖定常領域CH2ドメイン及び重鎖定常領域CH3ドメインから成るポリペプチド鎖を指し;全長抗体がIgEアイソタイプのものである場合、任意選択で重鎖定常領域CH4ドメインをさらに含む。好ましくは、「全長重鎖」は、N末端からC末端の方向でVH、CH1、HR、CH2及びCH3から成るポリペプチド鎖である。「全長軽鎖」は、N末端からC末端の方向で軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)から成るポリペプチド鎖である。2対の全長抗体鎖は、CLとCH1との間、及び2つの全長重鎖のHRの間のジスルフィド結合によって合わせて連結されている。本発明の全長抗体は、ヒトなどの単一の種由来であってよく;キメラ抗体又はヒト化抗体である場合もある。本発明の全長抗体は、VH及びVL対によってそれぞれ形成された2つの抗原結合部位を含み、これら2つの抗原結合部位は、同じ抗原を特異的に認識/結合する。
【0082】
本明細書に使用される場合、用語「Fd」はVH及びCH1ドメインから成る抗体断片を指し;用語「dAb断片」はVHドメインから成る抗体断片を指し(Ward et al., Nature 341:544 546 (1989));用語「Fab断片」はVL、VH、CL及びCH1ドメインから成る抗体断片を指し;用語「F(ab’)2断片」はヒンジ領域でジスルフィド架橋を介して連結された2つのFab断片を含む抗体断片を指し;用語「Fab’断片」はF(ab’)2断片中の2つの重鎖断片を連結しているジスルフィド結合の還元後に得られ、完全な軽鎖、及び重鎖のFd断片から成る(VH及びCH1ドメインから成る)断片を指す。
【0083】
本明細書に使用される場合、用語「Fv」は、抗体の単一のアームのVL及びVHドメインから成る抗体断片を指す。Fv断片は、完全な抗原結合部位を形成することができる最小の抗体断片であると一般に考えられている。6個のCDRが抗体に抗原結合特異性を付与すると一般に考えられている。しかし、完全な結合部位のものよりもおそらく低い親和性を有するが、1つの可変領域(例えば、Fd断片、抗原に対して特異的な3個だけのCDRを含む)でさえ、抗原を認識し、結合することができる。
【0084】
本明細書に使用される場合、用語「Fc」は、抗体の第1の重鎖の第2及び第3の定常領域を第2の重鎖の第2の及び第3の定常領域とジスルフィド結合を介して組み合わせることによって形成される抗体断片を指す。抗体のFc断片は、多種多様な異なる機能を有するが、抗原結合には関与しない。
【0085】
本明細書に使用される場合、用語「scFv」は、VL及びVHドメインを含む単一のポリペプチド鎖を指し、ここでVLとVHとは、リンカーを介して繋がれている(例えば、Bird et al., Science 242:423 -426 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988); and Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Roseburg and Moore, eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと)。斯かるscFv分子は、一般構造:NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHを有し得る。先行技術の好適なリンカーは、反復アミノ酸配列GGGGS又はそのバリアントからなり得る。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)4を有するリンカーは使用され得、そのバリアントも使用され得る(Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448)。Alfthan et al. (1995), Protein Eng. 8:725-731, Choi et al. (2001), Eur. J. Immunol. 31:94-106, Hu et al. (1996), Cancer Res. 56:3055-3061, Kipriyanov et al. (1999), J. Mol. Biol. 293:41-56 and Roovers et al. (2001), Cancer Immunolによって記載された他のリンカーも本発明において使用され得る。一部の場合では、scFvのVHとVLとの間にジスルフィド結合がある場合もある。本発明の特定の実施形態において、scFvは、2つ以上の単一のscFvが抗体を形成するように順に繋がれているジ-scFvを形成できる。本願の特定の実施形態において、scFvは、2つ以上の単一のscFvが抗体を形成するように並行して繋がれている(scFv)2を形成できる。
【0086】
本明細書に使用される場合、用語「ダイアボディ」は、そのVH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されているが、同じ鎖の2つのドメイン間を対合させるためには短すぎるリンカーが使用されており、そのためドメインが、別の鎖の相補性ドメインと対合するように、及び2つの抗原結合部位を産生するように仕向けられているものを意味する(例えば、Holliger P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)、及びPoljak R. J. et al., Structure 2:1121-1123 (1994)を参照のこと)。
【0087】
本明細書に使用される場合、用語「単一ドメイン抗体(sdAb)」は、当業者によって一般に理解される意味を有し、単一のモノマー可変抗体ドメイン(例えば、単一の重鎖可変領域)から成る抗体断片を指し、それは、全長抗体が結合する同じ抗原に特異的に結合する能力を保持している。単一ドメイン抗体はナノボディとも呼ばれる。
上記の各抗体断片は、全長抗体が結合する、及び/又は抗原に対する特異的結合について全長抗体と競合する同じ抗原に特異的に結合する能力を維持している。
【0088】
抗体の抗原結合断片(例えば、先に記載の抗体断片)は、当業者に周知の従来の技術(例えば、組換えDNA技術又は酵素的若しくは化学的切断法)を使用して所与の抗体(例えば、本明細書で提供する抗体)から得ることができ、抗体の抗原結合断片は完全な抗体と同じ様式で特異性についてスクリーニングされ得る。
本明細書において、文脈が他を明確に示さない限り、用語「抗体」を参照する場合、それは、完全な抗体だけでなく抗体の抗原結合断片も含む。
【0089】
本明細書に使用される場合、用語「キメラ抗体」は、その軽鎖及び/又は重鎖の一部が抗体(特定の種由来でよい、又は特定の具体的な抗体クラス若しくはサブクラスに属していてよい)由来であり、その軽鎖又は/及び重鎖の他の部分が別の抗体(同じ種若しくは異なる種由来であってよい、又は同じ若しくは異なる抗体クラス若しくはサブクラスに属していてよい)由来であるが、いずれの場合でも、標的抗原への結合活性を保持したままである抗体を指す(Cabillyらに対する米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851 6855 (1984))。特定の実施形態において、用語「キメラ抗体」は、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域が第1の抗体由来であり、抗体の重鎖及び軽鎖定常領域が第2の抗体由来であるような抗体を含み得る。
【0090】
本明細書に使用される場合、用語「バリアント」はまた、ポリペプチド(ポリペプチドを含む)との関連において、アミノ酸残基の置換、欠失、又は付加を導入することによって変更されたアミノ酸配列を含むポリペプチド又はペプチドも指す。場合によっては、用語「バリアント」はまた、(すなわち、ポリペプチド又はペプチドへの任意のタイプの分子の共有結合によって)修飾されたポリペプチド又はペプチドも指す。例えば、そして制限されることなく、ポリペプチドは、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への付加などによって修飾されてもよい。誘導体化ポリペプチド又はペプチドは、これだけに限定されるものではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含めた、当業者に既知の技術を使用した化学修飾によって製造され得る。さらに、バリアントは、由来となったポリペプチド又はペプチドに類似の、同一の又は改良された機能を有する。
【0091】
本明細書に使用される場合、用語「特異的結合」は、抗体とそれが標的にする抗原との間の反応などの、2つの分子間の非無作為結合反応を指す。特異的結合の相互作用の強度及び親和性は、その相互作用についての平衡解離定数(KD)の用語で表され得る。本願では、用語「KD」は、抗体と抗原との間の結合親和性を記載するために使用される、特異的抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。平衡解離定数が小さいほど、抗体-抗原結合は強く、抗体と抗原との間の親和性が高い。
【0092】
2分子間の特異的結合特性は、当技術分野において十分周知の方法を使用して決定され得る。1つのアプローチが、抗原結合部位/抗原複合体が形成される、及び解離する速度を計測することを伴う。「結合速度定数」(ka又はkon)と「解離速度定数」(kdis又はkoff)の両方が、濃度と、実際の結合及び解離速度から計算できる(Malmqvist M, Nature, 1993, 361 :186-187を参照のこと)。比kdis/konは、解離定数KDと等しい(Davies et al., Annual Rev Biochem, 1990; 59:439-473を参照のこと)。KD、kon、及びkdis値は、任意の有効な方法によって計測できる。特定の実施形態において、解離定数は、Biacore装置を用いた表面プラズモン共鳴法(SPR)によって計測できる。そのうえ、生物発光干渉法又はKinexaが、解離定数を計測するために使用できる。
【0093】
本明細書に使用される場合、本願による検出可能な標識は、蛍光、分光法的、光化学的、生化学的、免疫学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能な任意の物質であり得る。斯かる標識は、当技術分野において十分周知であり、その例として、これだけに限定されるものではないが、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性核種(例えば、3H、125I、35S、14C若しくは32P)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット又はシアニン色素誘導体(例えば、Cy7、Alexa 750))、発光物質(化学発光物質、例えば、アクリジニウムエステル化合物、ルミノール及びその誘導体化合物、ルテニウムテルピリジンなどのルテニウム誘導体)、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))、熱量測定マーカー、例えばコロイド金又は着色ガラス若しくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズ及び上記標識を用いて修飾されたアビジン(例えば、ストレプトアビジン)への結合のためのビオチンが挙げられる。
【0094】
本明細書に使用される場合、用語「ベクター」は、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸送達ビヒクルを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を発現するようにし得る場合、ベクターは発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、形質導入又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入されてよく、それによりそれが保有する遺伝子材料エレメントは、宿主細胞において発現され得る。ベクターは、当業者に十分周知であり、これだけに限らないが:プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌の人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC);ファージ、例えばλファージ又はM13ファージ及び動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして使用され得る動物ウイルスとして、これだけに限定されるものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。ベクターは、これだけに限定されるものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子が挙げられる発現を調節する種々のエレメントを含み得る。加えてベクターは、複製開始点も含み得る。
【0095】
本明細書に使用される場合、用語「宿主細胞」は、ベクターが導入され得る細胞を指し、これだけに限定されるものではないが、原核細胞、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)若しくはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、真菌細胞、例えば酵母細胞若しくはアスペルギルス属(Aspergillus)、昆虫細胞、例えばS2ショウジョウバエ細胞若しくはSf9、又は動物細胞、例えば線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞若しくはヒト細胞が挙げられる。
【0096】
本明細書に使用される場合、用語「保存的置換」は、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの予測される特性に悪影響を与えない、又は変更しないアミノ酸置換を指す。例えば、保存的置換は、部位特異的変異導入及びPCR媒介変異導入などの当技術分野において周知の標準的な技術によって導入され得る。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基でのアミノ酸残基の置換、例えば、物理的に又は機能的に同様である(例えば、共有結合又は水素結合を形成する能力などを含む、同様のサイズ、形状、電荷、化学的特性を有する)残基を用いたアミノ酸残基の置換を含む。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において明確にされている。これらのファミリーとして、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)並びに芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、対応するアミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基を用いて置き換えることは好ましい。アミノ酸保存的置換を同定するための方法は、当技術分野において十分周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32:1180-1187 (1993); Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10):879-884 (1999); and Burks et al. Proc. Natl Acad. Set USA 94:412-417 (1997)を参照のこと、そしてそれを参照により本明細書に援用する)。
【0097】
本明細書において参照する20個の従来のアミノ酸の記載は、従来の慣用法に従う。例えば、参照により本明細書に援用する、Immunology-A Synthesis(2nd Edition, E. S. Golub and D. R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照のこと。本願では、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、同じ意味を有し、互換的に用いられる。本願では、アミノ酸は、当技術分野において周知の1文字及び3文字の略号によって一般に表される。例えば、アラニンは、A又はAlaによって表され得る。
【0098】
本明細書に使用される場合、用語「医薬として許容される担体及び/又は賦形剤」は、当技術分野において十分周知である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照のこと)、対象及び活性成分に薬理学的に及び/又は生理学的に適合性である担体及び/又は賦形剤を指し、これだけに限定されるものではないが:pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、希釈剤、浸透圧を維持するための薬剤、吸収を遅らせるための薬剤、保存剤が挙げられる。例えば、pH調整剤として、これだけに限らないがリン酸緩衝液が挙げられる。界面活性剤として、これだけに限定されるものではないが、Tween(登録商標)-80などのカチオン性、アニオン性又は非イオン性界面活性剤が挙げられる。イオン強度増強剤として、これだけに限定されるものではないが、塩化ナトリウムが挙げられる。保存剤として、これだけに限定されるものではないが、種々の抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などが挙げられる。浸透圧を維持するための薬剤として、これだけに限定されるものではないが、糖類、NaClなどが挙げられる。吸収を遅らせるための薬剤として、これだけに限定されるものではないが、モノステアレート及びゼラチンが挙げられる。希釈剤として、これだけに限定されるものではないが、水、水性緩衝液(例えば、緩衝生理食塩水)、アルコール及びポリオール(例えば、グリセリン)などが挙げられる。保存剤として、これだけに限定されるものではないが、種々の抗菌及び抗真菌剤、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などが挙げられる。安定剤は、当業者によって一般に理解される意味を有し、医薬中の活性成分の望ましい活性を安定化することができ、これだけに限定されるものではないが、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ショ糖、乳糖、デキストラン若しくはグルコース)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥乳清、アルブミン若しくはカゼイン)又はこれらの分解産生物(例えば、ラクトアルブミン加水分解物)などが挙げられる。特定の例示的実施形態において、医薬として許容される担体又は賦形剤は、滅菌注射可能な液体(例えば、水性又は非水性懸濁液又は溶液)を含む。特定の例示的実施形態において、斯かる滅菌注射可能な液体は、注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)NaCl)、ブドウ糖溶液(例えば、5%ブドウ糖)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%ポリソルベート20を含有する溶液)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、リンゲル液及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0099】
本明細書に使用される場合、用語「予防」は、対象において疾患又は状態又は症状の発症を予防するか、又は遅らせるために実施される方法を指す。本明細書に使用される場合、用語「処置」は、有益な又は望ましい臨床転帰を得るために実施される方法を指す。本願の目的のために、有益な又は望ましい臨床転帰として、これだけに限定されるものではないが、検出可能又は検出不可能であるかに関わらず、症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行を遅らせる若しくはゆっくりにする、疾患状態の回復又は緩和、並びに症状の軽減(部分的又は全体的に関わらず)が挙げられる。加えて「処置」は、その処置を受けなかった場合に予測される生存期間と比較した生存期間の延長も指し得る。
【0100】
本明細書に使用される場合、用語「対象」は、ヒトなどの哺乳動物を指す。特定の実施形態において、対象(例えば、ヒト)は、RSV感染又はRSV感染に関連する疾患(例えば、小児肺炎などの肺炎)を有するか又はそのリスクがある。
【0101】
本明細書に使用される場合、用語「有効量」は、望ましい効果を達成するか、又は少なくとも部分的に達成するために十分な量を指す。例えば、疾患(例えば、RSV感染症又はRSV感染症に関連する疾患(例えば、小児肺炎などの肺炎))を予防するための有効量は、疾患の発症を予防する、抑止する又は遅らせるのに十分な量を指し;疾患を処置するための有効量は、疾患に罹患している患者の既にある疾患とその合併症を治癒させるか、又は少なくとも部分的に予防するのに十分な量を指す。斯かる有効量を決定することは、当業者の能力の十分範囲内である。例えば、治療用使用のための有効量は、処置される疾患の重症度、患者の自身の免疫系の全般的な状態、年齢、体重及び性別などの患者の全般的な状態、薬物投与の様式、並びに同時に投与される他の処置などに依存する。
【0102】
本願の有益な効果
本願のモノクローナル抗体及びその抗原結合断片は、広域スペクトルのRSV結合活性を有するので、タイプA及び/又はタイプBの複数のRSV菌株のFタンパク質に特異的に結合でき、そして、モノクローナル抗体及びその抗原結合断片は、プレFタンパク質上の抗原部位φと部位Vとの間に位置する新しいエピトープ又は抗原部位IIと部位Vとの間に位置する新しいエピトープに特異的に結合でき、これにより、高いRSV中和活性を有し、かつ、インビボにおいてRSV感染症を効果的に予防できる。
【0103】
本願のモノクローナル抗体及びその抗原結合断片は、RSV感染症、又はRSV感染症によって引き起こされた疾患を検出、予防、及び/又は処置するために使用できる。加えて、本願の抗体はまた、RSV又はそのFタンパク質を特異的に検出するために使用できるので、RSV感染症の診断における臨床的価値も有する。
【0104】
本願の実施形態は、添付の図面及び実施例を参照して以下に詳細に記載されるが、当業者は、以下の図面及び実施例が本願を例示するためだけにしようされ、本願の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。本願の種々の目的及び利点は、添付の図面及び好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】
図1は、RSVタイプAの代表的な菌株(RSV A2)(パネルA)とRSVタイプBの代表的な菌株(18537)(パネルB)を中和するモノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5の実験結果を示す。
【
図2】
図2は、RSVタイプAの代表的な菌株とRSVタイプBの代表的な菌株の融合前及び融合後タンパク質と、モノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5のELISA反応性を示し;ここで、パネルA及びBは、それぞれ、RSVタイプAの代表的な菌株の融合前及び融合後タンパク質と、それぞれの抗体のELISA反応性の結果を示し;パネルC及びDは、それぞれ、RSVタイプBの代表的な菌株の融合前及び融合後タンパク質と、それぞれの抗体のELISA反応性の結果を示す。
【
図3】
図3は、異なるタイプA及びタイプB RSV菌株のFタンパク質に対するモノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5の広域スペクトルの結合を示す。
【
図4】
図4は、融合前立体構造(DS-Cav1)のRSV Fタンパク質に結合したモノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5の三次元構造を示す。
【
図5】
図5は、融合前立体構造(DS-Cav1)のRSV Fタンパク質におけるモノクローナル抗体の5B11、6B2及び7G5の結合に関与する主要なアミノ酸残基を示す。
【
図6】
図6は、融合前立体構造(DS-Cav1)のRSV Fタンパク質に対するモノクローナル抗体5B11の結合の低温電子顕微鏡法の三次元再構築の結果を示す。
【
図7】
図7は、マウスにおけるインビボのRSV A2感染症を予防する際のモノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5の保護効果を示す。ここで、パネルAは、各群のマウスの体重モニタリングの結果を示し;パネルBは、各群のマウスの肺組織におけるプラークの結果を示し;パネルCは、各群のマウスの鼻組織におけるプラークの結果を示し;パネルDは、各群のマウスの肺組織の病理切片の染色結果を示す。
【
図8】
図8は、コットンラットモデルにおけるRSVタイプA及びタイプBウイルス(タイプA及びタイプBに使用される菌株は、それぞれ、RSV A2及び18537であった)に対するモノクローナル抗体5B11の予防効果の評価における鼻及び肺ウイルス力価を示す。ここで、パネルAは、RSVタイプAウイルスを予防するために5B11を使用した評価実験における各群のコットンラットの肺ウイルス力価検出結果を示し;パネルBは、RSVタイプAウイルスを予防するために5B11を使用した評価実験における各群のコットンラットの鼻ウイルス力価検出結果を示し;パネルCは、RSVタイプBウイルスを予防するために5B11を使用した評価実験における各群のコットンラットの肺ウイルス力価検出結果を示し;パネルDは、RSVタイプBウイルスを予防するために5B11を使用した評価実験における各群のコットンラットの鼻ウイルス力価検出結果を示す。
【
図9】
図9は、コットンラットモデルにおけるRSVタイプA及びタイプBウイルス(タイプA及びタイプBに使用される菌株は、それぞれ、RSV A2及び18537であった)に対する5B11の予防効果の評価における肺組織の病態スコアを示す。ここで、パネルA~Eは、RSVタイプAウイルスを予防するために5B11を使用した評価実験における各群のコットンラットの肺組織の病態スコアを示し;パネルF~Jは、RSVタイプBウイルスを予防するために5B11を使用した評価実験における各群のコットンラットの肺組織の病態スコアを示す。
【
図10】
図10は、5B11のヒト化のデザインスキームを示す。
【
図11】
図11は、ヒト化5B11抗体の中和及び反応性の検出を示し;ここで、パネルAは、RSVタイプAウイルス(RSV A2)の中和におけるヒト化抗体N5B11の検出結果を示し;パネルBは、RSVタイプBウイルス(18537)の中和におけるヒト化抗体N5B11の検出結果を示し;パネルCは、RSVタイプA(RSV A2)プレFに対するヒト化抗体N5B11の結合検出結果を示し;パネルDは、RSVタイプB(18537)プレFに対するヒト化抗体N5B11の結合検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
配列情報
以下の表は、本願にかかわる配列の説明を提供する。
【0107】
表1:配列情報
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0108】
本願を実施するための具体的なモデル
本願は、(本願を制限することなしに、例示することを意図した)以下の実施例を参照することでここに説明される。
【0109】
他に規定のない限り、本願において使用される分子生物学実験法及び免疫アッセイ法は、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, and F. M. Ausubel et al., Compiled Laboratory Guide to Molecular Biology, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1995によって記載された方法を基本的に参照し;制限酵素の使用は、製品の製造者によって推奨される条件に従って実施する。具体的な条件が実施例において指定されていなければ、従来の条件又は製造業者によって推薦される条件に従って実施されなければならない。使用される試薬又は装置の製造業者が示されていなければ、それらはすべて、商業的に購入できる従来品であった。当業者は、実施例が、本願の範囲を限定する意図なしに、例示として本願を説明することを理解する。
【実施例】
【0110】
実施例1:RSV-Fタンパク質に対するモノクローナル抗体(McAb)の調製
(1) 免疫原の調製:
プラスミドDNA-Fを、米国のNIH Vaccine Research Centerから快く寄贈いただいた。このプラスミド内には、RSV A2株のFタンパク質(GenBank:FJ614814.1、配列番号1)の完全長の遺伝子が、VRC8400ベクター内に挿入されていた。本願では、エンドトキシン不含プラスミド最大抽出キット(TianGenから購入、Cat No.: DP117)を使用して、マウス免疫化のための免疫原として2mg/mLの濃度にて低いエンドトキシンDNA-Fを得た。同時に、本願では、Fタンパク質の完全長遺伝子(配列番号1)を含む組み換えアデノウイルス(rAd-F)もまた、マウス免疫化のために調製した。この組み換えアデノウイルスを、我々の研究室で構築し、そして、低温保存したウイルスであった。マウス免疫化の必要に応じて、低温保存したウイルスを、急速解凍して、293β5細胞(我々の研究室によって構築及び保存した、ヒトβ5遺伝子を安定的に形質導入した239細胞)を感染させるのに使用した。ウイルスを、感染の48時間後に採取し、そして、後のマウス免疫化のために密度勾配遠心分離法によって1×1010PFU/mLまで濃縮した。
【0111】
(2) 実験用マウス:
6週齢のSPFグレード雌Balb/cマウスをShanghai Slaccas Laboratory Animal Co., Ltd.から購入した。
(3) ハイブリドーマの調製:
標準的なインビボ免疫法及びPEG融合法を、モノクローナル抗体ハイブリドーマ細胞を得るために使用したが、そこでは、詳細な方法はEd Harlow et al., "Antibodies A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory 1988を参照した。簡単なプロセスを、次のように説明した:
【0112】
(4) マウス免疫化:
上記のステップ(1)で調製した免疫原DNA-F(100μg/マウス)又はrAd-F(5×107PFU/マウス)を、高圧尾静脈注射によるマウスに注入した。DNA-Fの免疫化サイクルは4週間であり、及びrAd-Fの免疫化サイクルは2週間であった。免疫応答を強化するために、マウスに、DNA-F免疫原を用いた一次免疫中に、完全フロイントアジュバントを皮下注射し;及びrAd-Fを用いたブースター免疫化を、不完全フロイントアジュバントに皮下注射によって実施した。それに続いて、血液を、マウス眼窩から毎週採血し、次に、各群のマウスの血清の反応性及び血清中和力価を検出し、そして、より高い血清中和抗体価を有するマウスを、脾臓免疫化のために選択した。48時間にわたりRSV A2を感染させたHEp-2細胞を、細胞スクレーパで擦り取り、遠心分離してMEM培地を取り除き、細胞ペレットを500μLの1×PBSで再懸濁し、そして、50μLの懸濁液を脾臓免疫化のために採取した。3日後に、脾臓を、摘出し、破砕し、そして、脾臓細胞を単離した。脾臓細胞を、PEGを使用してマウスミエローマ細胞(SP2/0)と融合させた。
【0113】
(5) 細胞融合:
最初に、マウス脾臓を、摘出し、破砕して、脾臓細胞の懸濁液を得、次に、対数増殖期のマウス骨髄腫細胞SP2/0と混合した。細胞融合を、PEG1500の存在下で実施した。融合細胞を、400mLの融合培地で再懸濁し、アリコートに分け、20枚の96ウェル細胞培養プレートに添加し、そして、培養した。融合培地は、HAT及び20%のFBSを含有したRPMI1640完全選択培地であった。
【0114】
(6) ハイブリドーマのスクリーニング:
融合細胞を10日間にわたり96ウェル細胞培養プレートで培養した後に、細胞上清を、ウイルス中和実験及びELISA検出のためにピペット操作し、そして、検出に使用するウイルスはRSV A2 mKateであった。ウイルス中和の間、その中で抗体が分泌されたウェルを、呼吸器合胞体ウイルスによるHep2細胞の感染を阻害する場合がある、陽性ウェルと定義し;ELISA検出の間、分泌された抗体が、細胞プレート上に固定された呼吸器合胞体ウイルス感染Hep2細胞と特異的に反応し得るウェルを、陽性ウェルと定義した。陽性クローンを3回クローニングした後に、抗体を安定的に分泌できるモノクローナル抗体細胞株を得た。
【0115】
(7) ハイブリドーマモノクローナル抗体のスクリーニングの結果:
5B11、6B2及び7G5を含めた、融合前タンパク質に特異的な抗RSV中和モノクローナル抗体の9つの菌株を得た。
【0116】
(8) ハイブリドーマの培養:
9つの安定したハイブリドーマモノクローナル抗体細胞株を、二酸化炭素インキュベータ内に広げ、そして、培養し、次に、96ウェルから24ウェルに移し、そして次に、拡大と培養のために50mL細胞培養ボトルに移した。次に、細胞ボトル内の細胞を回収し、そして、マウスの腹腔内に注入した。7~10日後に、モノクローナル抗体腹水を、マウスの腹腔から得た。
【0117】
(9) モノクローナル抗体の精製:
モノクローナル抗体腹水を、50%の硫酸アンモニウム溶液を用いて沈殿させ、次に、沈降物を、PBSで溶解し、そして、AKTAシステム下でプロテインAカラムによって精製して精製モノクローナル抗体を得、そしてそれを、SDS-PAGEによって同定して、精製モノクローナル抗体の純度を測定した。
【0118】
実施例2:RSVのFタンパク質に対するモノクローナル抗体の中和活性
中和活性は、モノクローナル抗体が疾患を予防及び処置する可能性があるか否かを評価する重要な指標である。マイクロウェル細胞中和実験を、呼吸器合胞体ウイルスタイプA及びタイプB、RSV A2、並びに18537の代表的な菌株に対する、実施例1で得たモノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5の中和活性を検出するために使用した(該方法は、Yong-Peng Sun et al., Journal of Virological Methods. 2018, 260:34-40を参照する)。使用される対照抗体は、5C4(我々の研究室によってスクリーニングしたマウス由来の抗体PCT第PCT/CN2014/073505号)、D25(構築したプラスミドによって発現される、特許第US8,568,726B2号)及び1129(その配列はNIHによって寄贈され、そして、それを構築プラスミドによって発現させた)であった。
【0119】
表2:それぞれのRSV中和抗体のIC50の概要
【表2】
【0120】
結果を表2及び
図1に示した。結果は、モノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5のすべてが、1129に比べてRSV A2及び18537を中和するより良好な能力を示し、ここで、RSV A2の中和における5B11の力価は、対照抗体5C4のものと類似しており、及び1129の中和能力の50倍であり、そして、18537の中和における5B11の能力は、1129のものの約10倍である。
【0121】
実施例3:抗RSV Fタンパク質モノクローナル抗体の反応性のELISA検出
抗原-抗体結合の間接的ELISA検出の手順及び方法について、従来技術文書(Min Zhao et al., J Biol Chem. 2015, 290(32):19910-22)を参照のこと。検出結果を
図2に示したが、そこでは、3種類のモノクローナル抗体(5B11、6B2及び7G5)だけが、RSVタイプA及びタイプBウイルスのプレF立体構造(DS-Cav1)のFタンパク質に結合し、ポストF立体構造のFタンパク質に結合せず、これにより、それらは、RSVプレF上に特異的に存在するエピトープを特異的に認識する抗体であった。
【0122】
実施例4:抗RSV Fタンパク質モノクローナル抗体の軽鎖遺伝子及び重鎖遺伝子の配列分析
約107個のハイブリドーマ細胞を半接着培養に供した:接着細胞を、崩し、懸濁し、そして、懸濁液を、新しい4mL遠心分離チューブに移し、1500rpmにて3分間遠心分離した。細胞ペレットを、回収し、そして、100μLの滅菌PBS(pH=7.45)で再懸濁し、新しい1.5mL遠心分離チューブに移した。800μLのTrizol(Roche, Germanyから購入)を、加え、転倒撹拌によって緩やかに混合し、そして、10分間静置した。200μLのクロロホルムを加え、15秒間激しく振盪し、10分間静置し、そして、4℃、12000rpmにて15分間遠心分離した。上側の液体を、新しい1.5mL遠心分離チューブに移し、等量のイソプロパノールを加え、十分に混合し、10分間静置し、そして、4℃、12000rpmにて10分間遠心分離した。上清を捨て、洗浄のために600μLの75%エタノールを加え、遠心分離を4℃、12000rpmにて5分間実施し、そして、上清を捨てた。沈降物を、60℃にて5分間真空乾燥させた。透明なペレットを、70μLのDEPC H2Oで溶解し、2本のチューブに分割した。1μLの逆転写プライマーを各チューブに加えた。一方のチューブに加えた逆転写プライマーは、MVJkR(配列番号27)であり、そしてそれは、軽鎖可変領域遺伝子を増幅するために使用された。もう片方のチューブに加えた逆転写プライマーは、MVDJhR(配列番号28)であり、そしてそれは、重鎖可変領域遺伝子を増幅するために使用された。1μLのdNTP(Shanghai Sangonから購入)を各チューブに加え、そして、そのチューブを、72℃の水浴中に10分間入れ、次に、すぐに氷浴中に5分間入れた。10μLの5×逆転写バッファー、1μLのAMV(10U/μL、Pormegaから購入)、1μLのRnasin(40U/μL、Promegaから購入)を加え、十分に混合し、42℃にてRNAをcDNAに逆転写させた。
【0123】
抗体遺伝子の可変領域を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使用して単離したが、そこでは、NovagenのIg-Primeキットに基づいて合成したプライマーセット、並びに2つの追加で設計及び合成した下流プライマーMVJkR及びMVDJhR(Shanghai Sangonによって合成)を使用し、MVJkRは、軽鎖可変領域遺伝子増幅のための下流プライマーであり、及びMVDJhRは、重鎖可変領域遺伝子増幅のための下流プライマーであった。鋳型は、先に合成した2つのcDNAであった。PCR条件は:94℃にて5分間、94℃にて40秒間、53℃にて1分間、72℃にて50秒間を35サイクル、及び72℃にて15秒間、であった。PCR産物を、シークエンシングのためにShanghai Sangonにそのまま送付した。配列を、IMGTと比較して、抗体可変領域配列及び対応するアミノ酸配列を決定した。
【0124】
抗体可変領域遺伝子を、上記の方法に従って5B11、6B2及び7G5モノクローナル抗体ハイブリドーマ細胞株からのクローニングによって得、そして、そのモノクローナル抗体のCDR領域(相補性決定領域)のアミノ酸配列を、IMGT法(Marie-PaμLe Lefranc and Gerard Lefranc. ImmunoglobμLins or Antibodies: IMGTR Bridging Genes, Structures and Functions, Biomedicines 2020, 8, 319)を参照することによって決定した。(IMGTナンバリングシステムによって定義される)それぞれの抗体の可変領域及びCDR配列を、表1に示した。表3には、使用したプライマー配列を示した。
【0125】
表3:5B11、6B2及び7G5モノクローナル抗体の可変領域遺伝子を増幅するのに使用したプライマー配列を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0126】
実施例5:抗RSV Fタンパク質モノクローナル抗体の広域スペクトル結合活性の検出
RSV Fタンパク質の1,000超の核酸配列をNCBIからダウンロードし、RSV Fタンパク質の進化論ツリー解析をMEGAソフトウェアによって実施し、20個の代表的なRSV Fタンパク質配列を選択し、そして、これらの20個の配列をVRC8400ベクター(Shanghai Sangonによって合成)に組み立てた。次に、これらのプラスミドを、293細胞に形質移入し、そして、これらのタンパク質を細胞膜上で過剰発現させ、そして、3つの抗体5B11、6B2及び7G5の、Fタンパク質を過剰発現する293細胞への結合をフローサイトメトリーによって検出した。実験結果を
図3に示した。結果は、5B11、6B2及び7G5のすべてが強力な広域スペクトル結合活性を有し、かつ、RSVタイプA及びタイプB菌株のFタンパク質に良好に結合することができることを示し、つまり、それらは潜在的RSV広域スペクトル中和抗体であった。
【0127】
実施例6:抗RSV Fタンパク質モノクローナル抗体とRSV融合前タンパク質(DS-Cav1)との複合体の三次元構造の同定、並びに主要なアミノ酸残基の同定
RSV融合前タンパク質への3つの抗体5B11、6B2及び7G5の結合エピトープを明らかにするために、我々は、それぞれ、抗体5B11、6B2及び7G5とRSV融合前タンパク質(DS-Cav1)の抗原-抗体複合体を調製し、低温電子顕微鏡を使用した三次元再構築技術によってこれらの抗原-抗体複合体の構造を分析した。実験結果を
図4に示した。結果は、3つの抗体5B11、6B2及び7G5がRSV融合前タンパク質(DS-Cav1)上の新しいエピトープに結合したことを示し、そこでは、抗体5B11及び6B2は、呼吸器合胞体ウイルスのプレFタンパク質上の抗原部位φと部位Vとの間に位置する新しいエピトープに特異的に結合することができ、その一方で、抗体7G5は、呼吸器合胞体ウイルスのプレFタンパク質上の抗原部位IIと部位Vとの間に位置する新しいエピトープに特異的に結合することができた。
【0128】
3つの抗体の結合に関与する主要なアミノ酸残基をさらに明らかにするために、アラニンスキャニングを、3つの抗体に結合するFタンパク質の領域に対して実施した、すなわち、Fタンパク質の表面アミノ酸をアラニン(A)に突然変異させ、突然変異プラスミドライブラリを、DNA-Fプラスミドに基づく突然変異によって構築し、突然変異プラスミドを293細胞内に形質移入し、Fタンパク質を細胞表面に過剰発現させ、そして、これらの突然変異タンパク質への3つの抗体5B11、6B2及び7G5の結合をフローサイトメトリーによって検出した。実験結果を
図5に示したが、それは、5B11の結合に関与する主要なアミノ酸残基がE161、G162、N165、K166及びG184であり、6B2の結合に関与する主要なアミノ酸残基がE161、G162、G184、K293及びE294であり、並びに7G5の結合に関与する主要なアミノ酸残基がE161、G162及びG184であったことを示した。
【0129】
加えて、抗体5B11とRSV Fタンパク質との構造に基づく相互作用をさらに理解するために、我々は、5B11 Fab-DS-Cav1抗原-抗体複合体を調製し、そして、低温電子顕微鏡による三次元再構築技術(Cryo-EM)によって3.29オングストローム高解像度5B11 Fab-DS-Cav1抗原-抗体複合体の構造を得た。結果を
図6に示した。5B11がFタンパク質上のF1サブユニットに結合し、そして、主要な結合領域が、aa.160~182及びβ6とβ7との間のループ(aa.294~295)であることが、構造からわかった。5B11の重鎖が、CDR1及びCDR3を通してRSV Fタンパク質と主に相互作用した;具体的には、5B11の重鎖のCDR1上のD31がF1サブユニット上のE295と水素結合を形成し、Y32がE294及びE295と水素結合を形成し、S33がE161と水素結合を形成し、そしてさらに、FR2上のH35もまた、E161と相互作用して水素結合を形成した。5B11の重鎖CDR3上のY101が、F1サブユニット上のK196と水素結合を形成し、及びG102がN165と水素結合を形成した。5B11の軽鎖は、CDR2及びCDR3を通してRSV Fタンパク質と主に相互作用した;具体的には、5B11の重鎖CDR2上のN50が、F1サブユニット上のS169と相互作用して水素結合を形成し、並びに5B11の重鎖CDR3上のW92が、F1サブユニット上のK166、S180及びS182と相互作用して水素結合を形成した。
【0130】
実施例7:Balb/CモデルにおけるRSVウイルスに対する抗RSV Fタンパク質モノクローナル抗体の予防効果の評価
受動抗体療法は、感染症の処置のための潜在的に有効な抗ウイルス処置アプローチである。インビトロ細孔中和実験によって、本願のモノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5が、RSVタイプA及びタイプB菌株に対して強い中和活性を有し、かつ、呼吸器合胞体ウイルスタイプA及びタイプB菌株に対する、幅広い中和反応スペクトル及び高い中和力価を特徴とすることを確認した。呼吸器合胞体ウイルスA2株感染症の動物モデルに基づいて、本願において、インビボでのモノクローナル抗体5B11、6B2及び7G5の抗呼吸器合胞体ウイルス効果をさらに確かめるために、RSV A2株の予防におけるモノクローナル抗体のインビボ立証実験を、生物学的安全性研究室においてBalb/cマウスに対して実施したが、その詳細は、以下のとおりであった:
【0131】
(1) 材料と方法
動物:Balb/cマウス、SPFグレード、12週齢、雌、体重約20g。
モノクローナル抗体:5B11、6B2、7G5及び1129
ATCCから購入した呼吸器合胞体ウイルスA2株。
麻酔:イソフルラン(Isoflorane)(isofurane)
動物の群分け:マウスを、あらかじめ1週間、生物学的安全性研究室に送って環境に順応させた。各群10匹、かつ、各ケージ5匹の合計50匹のマウスがいた。マウスにはマークを付し、そして、それぞれのマウスの体重を記録した。詳細なスキームを表4に示した。
【0132】
ウイルス感染:呼吸器合胞体ウイルスA2株を、あらかじめ5×107PFU/mLに希釈し、そして、ウイルス植菌体積を100μL/マウスにした。植菌前に、マウスをイソフルランで麻酔し、次に、ウイルスを、鼻腔内に植菌してマウスを感染させた。
モノクローナル抗体介入:抗体予防群のマウスに、予防のために、ウイルス感染の24時間前に低用量の抗体を与えた。各マウスに、100μLの体積で1.5mg/kgの抗体の用量を腹腔内注射した。
【0133】
観察と記録:ウイルス感染後1日目~12日目に、マウスの体重及び対応する行動特徴の変化を毎日記録した。感染後5日目に、各群から5匹のマウスを選択して、鼻及び肺組織のウイルス力価、並びに肺組織の病理学的特徴を検出した。
【0134】
表4:動物における抗RSV Fタンパク質抗体の予防効果の評価のための実験スキーム
【表4】
【0135】
(2) 結果と分析
RSV A2に感染させた後、陽性対照群、5B11、6B2、7G5及び1129群を含めた5つの実験群の合計50匹のマウスを、体重及び逆毛事象の有無について毎日観察した。体重モニタリング結果を、
図7のパネルAに示した。陽性対照群のマウスの体重は、感染後4日目に減少し始め、7日目に最下点まで低下し、その後、徐々に回復した。1129対照群と比較して、5B11、6B2及び7G5群は明らかな重量減少は示さず、それらがある程度の体重減少からマウスを保護することができ、かつ、それらの保護効果が、1129対照群のそれより優れていることを示した。実験中、陽性対照群及び1129対照群のマウスには感染症後の5日目に明らかな逆毛事象があるのがわかったが、それに対して、他の群では明らかな逆毛事象は見られなかった。
【0136】
鼻及び肺組織内のウイルスプラークの結果を、それぞれ、
図7のパネルC及びBに示した。肺組織のプラーク検出結果から、陽性群及び1129対照群のマウスの肺組織におけるウイルス力価は、比較的高く、それぞれ、10
5.4PFU/g及び10
4.9PFU/gに達し;その一方で、5B11、6B2及び7G5群ではウイルスが検出されず、そして、陽性群及び1129対照群と統計的有意差があった(P<0.05)。加えて、3つの抗体株(5B11、6B2及び7G5)はまた、ある程度まで上気道及び鼻のウイルス感染を軽減することができ、そしてそれらの効果は、1129対照群のものより優れていた(
図7のパネルC)。要約すれば、3つの抗体株(5B11、6B2及び7G5)は、低用量にて上下気道感染を予防し得る。
【0137】
肺組織の病理学的な特徴によると(
図7のパネルD)、陽性群及び1129対照群において、多くの浸潤炎症細胞が、血管、細気管支、毛細気管支、並びにマウス肺組織の肺胞壁に出現し、腫脹が顕著であり、そして、一部の重篤な症例では、細胞腔が圧縮され、及び肺胞壁が壊れているのを見ることができた。肺組織が軽微な病理学的兆候を含み、血管壁、細気管支壁、及び毛細気管支壁が肥厚し、軽微な炎症性細胞浸潤がそれらの周囲で見られ得るが、肺胞構造は傷がなく、かつ、完全であり、そして、明らかな炎症性細胞浸潤と肥厚がなかったことを、6B2及び7G5抗体群の病理切片から見ることができた。5B11群のマウスでは、血管、細気管支、毛細気管支、並びに肺組織の肺胞壁において炎症性細胞浸潤は存在せず、かつ、それらの形態及び構造は正常であった。
【0138】
上記の実験結果は、低用量予防実験が、同じ用量にて、3つの抗体5B11、6B2及び7G5の予防効果が1129対照群のものより優れていたことを示すことを示し、そして、それらは、RSV感染を効果的に予防し、マウスの体重減少及び症状を軽減し、上下気道のウイルス複製を阻害し、及び炎症反応を軽減し得ることなどを示唆した。
【0139】
実施例8:コットンラットモデルにおけるRSVウイルスに対する5B11モノクローナル抗体の予防効果の評価
(1) コットンラットモデルにおけるRSVタイプAウイルスに対する5B11の予防効果の評価
5B11がRSVの予防薬になる可能性を有するか否かを調査するために、本願では、コットンラットモデルにおけるRSVタイプAウイルスに対する5B11の予防効果の評価をさらに実施した。実験のために設計した群分けを表5に示し、そして、合計5群、各群5匹のコットンラットがいた。抗体群に関して、抗体を、高用量(15mg/kg)及び低用量(1.5mg/kg)によるその後の使用のために、あらかじめ、15mg/mL及び1.5mg/mLにPBSで希釈し;抗原投与前日(-1日目)に、各ラットに、ラット体重に従って特定の体積で抗体を右後脚に筋肉内注射し;24時間後(0日目)に、2×107PFU/mLの力価を有する100μLのRSV A2ウイルスを鼻腔内に投与した。PBS群に関して、100μLのPBSを、抗原投与前日に、それぞれのコットンラットの右後脚に筋肉内注射し;24時間後に、2×107PFU/mLの力価を有する100μLのRSV A2ウイルスを鼻腔内に投与した。抗原投与後5日目に、各群のコットンラットを、CO2を用いて安楽死させ、そして、鼻及び肺組織のウイルス力価、並びに鼻及び肺の病態学炎症の評価のために、解剖によって鼻及び肺組織を採取した。
【0140】
表5:コットンラットに対するRSV Fタンパク質抗体の予防効果の評価実験のための群分け
【表5】
【0141】
肺のプラーク検出結果(
図8のパネルA)は、5B11の高用量群及び低用量群の肺においてウイルス力価が検出されなかったことを示し、そして、5B11が低用量にてRSV肺感染を完全に予防し得ることを示唆した;1129に関して、高用量群だけが、ウイルス力価が検出されなかったことを示し、RSV肺感染が完全に予防された;その一方で、より高いウイルス力価が1129の低用量群で検出され、PBS群と比較した場合、ウイルス感染が25倍(1.4Log)低減され、そして、それがウイルス肺感染をある程度予防するだけであり得ることを示した。
【0142】
鼻のウイルスプラーク検出結果(
図8のパネルB)は、5B11の高用量群及び低用量群、並びに1129の高用量群がすべて、PBS群と比較した場合に、統計的有意差を有することを示した。ここで、鼻のRSV感染は、5B11の高用量群において完全に予防され得ることが示され、そして、ウイルス感染は、PBS群と比べて500倍(2.7log)低減された。ウイルス感染は、1129の低用量群において、PBS群と比べて5倍(0.7log)低減され、かつ、ウイルス感染は、1129の高用量群において、PBS群と比べて50倍(1.7log)低減され、そして、それらのいずれもが、ラットにおいて鼻のウイルス感染を完全には予防することができなかったことを示した。
【0143】
各群の肺組織における病理学的炎症を、異なる部位にて炎症性細胞浸潤の程度に従って定量化及びスコア化し、そして、群間の炎症スコアの差を分散分析によって計算した。肺の病理学的スコア(
図9のパネルA~E)は、各群のコットンラットの血管周囲炎及び間質性肺炎が明らかでなかったが、その一方で、PBS群の肺炎症は、主に重篤な気管炎、気管支炎、及び肺胞隔炎を呈することを示した。明らかな血管炎、気管炎、気管支炎、肺胞隔炎、及び間質性肺炎は、5B11の高用量群及び低用量群において見られなかった。1129の高用量群及び低用量群は、気管炎及び気管支炎を示し、そしてそこでは、1129の高用量群において気管炎及び気管支炎が軽度であり、その一方で、1129の低用量群において気管炎及び気管支炎がより重篤であった。上記の結果は、5B11が肺炎症を阻害する高い可能性を有することを示唆しており、低用量の5B11は、高用量の1129が肺炎症を阻害する能力を達成し得るか、又は凌ぐことさえあり得る。
【0144】
(2) コットンラットモデルにおけるRSVタイプBウイルスに対する5B11の予防効果の評価
本願では、RSVタイプBウイルスに対する5B11の予防効果の評価を、コットンラットモデルにおいてさらに実施した。実験において設計した群分けを表6に示し、そして、合計5群、各群4~5匹のコットンラットがいた。抗体群に関して、抗体を、高用量(15mg/kg)及び低用量(1.5mg/kg)によるその後の使用のために、あらかじめ、15mg/mL及び1.5mg/mLにPBSで希釈した。抗原投与前日(-1日目)に、各ラットに、ラット体重に従って特定の体積で抗体を右後脚に筋肉内注射し;24時間後(0日目)に、3.8×106PFU/mLの力価を有する100μLのRSV B 18537ウイルスを鼻腔内に投与した。PBS群に関して、100μLのPBSを、抗原投与前日に、それぞれのコットンラットの右後脚に筋肉内注射し;24時間後に、3.8×106PFU/mLの力価を有する100μLのRSV B 18537ウイルスを鼻腔内に投与した。検出指標は、コットンラットモデルにおけるRSVタイプAウイルスに対する5B11の予防実験と同じであった。
【0145】
表6:コットンラットに対するRSV Fタンパク質抗体の保護効果の評価実験のための群分け
【表6】
【0146】
肺のウイルスプラーク検出結果(
図8のパネルC)は、より高いウイルス力価がPBS群において検出され得ることを示し、そして、5B11の高用量群及び低用量群、並びに1129の高用量群及び低用量群はすべて、PBS群と比べて、統計的有意差を有した。5B11の高用量群及び低用量群の肺においてウイルス力価が検出されず、そして、5B11が低用量にてRSV肺感染を完全に予防し得ることを示唆した;1129の高用量群だけが、ウイルス力価が検出されず、RSV肺感染が完全に予防された、その一方で、より高いウイルス力価が1129の低用量群で検出され、そして、PBS群と比較した場合、ウイルス感染が10倍(1Log)低減され、そして、それがウイルス肺感染をある程度阻害するだけであり得ることを示した。
【0147】
鼻のウイルスプラーク検出結果(
図8のパネルD)は、より高いウイルス力価がPBS群で検出され、そして、5B11の高用量群及び低用量群、並びに1129の高用量群がすべて、PBS群と比較した場合に、統計的有意差を有することを示した、そしてここで、鼻のRSV感染は、5B11の高用量群において完全に予防され、そして、ウイルス感染は、5B11の低用量群において、PBS群と比べて63倍(1.8log)低減された。ウイルス感染は、1129の低用量群において、PBS群と比べて4倍(0.6log)低減され、かつ、ウイルス感染は、1129の高用量群において、PBS群と比べて1995倍(3.3log)低減された。
【0148】
各群の肺組織における病理学的炎症を、異なる部位にて炎症性細胞浸潤の程度に従って定量化及びスコア化し、そして、群間の炎症スコアの差を分散分析によって計算した。肺の病理学的スコア(
図9のパネルF~J)は、各群のコットンラットの血管周囲炎、肺胞隔炎及び間質性肺炎が明らかでなかったが、その一方で、PBS群の肺炎症は、主に重篤な気管炎及び気管支炎を呈することを示した。5B11の高用量群に関して、明らかな血管周囲炎、気管炎、気管支炎、肺胞隔炎、及び間質性肺炎はなかった。PBS群及び1129の低用量群と比較して、5B11の低用量群において気管炎はある程度軽減されたが、統計的有意差はなかった。1129の高用量群は、5B11の高用量群と類似しており、明らかな気管炎も又は気管支炎も示さなかった。しかしながら、実験動物の個体差に起因する可能性もあるが、1129の高用量群及び低用量群のそれぞれのコットンラット1匹が、強い肺胞隔炎及び間質性肺炎を発症した。
【0149】
要約すれば、高用量及び低用量にて5B11は、下部気道においてRSV A/Bウイルス感染を完全に阻害することができ、そして、低用量にて5B11はまた、上気道においてRSV A/Bウイルス感染を効果的に軽減することができ、そしてここで、ウイルスは、それぞれ、500倍及び63倍低減された。加えて、明らかな肺炎症は5B11の高用量群及び低用量群において観察されず、そして、低用量にて5B11が、ウイルス感染によって引き起こされる炎症からコットンラットを効果的に保護し得ること、及び5B11が1129の用量の1/10で所望の保護効果を達成できることを示唆した。
【0150】
実施例9:ヒト化5B11モノクローナル抗体、及びその中和活性と反応性の評価
5B11はマウス由来の抗体であり、かつ、優れた免疫原性を有するので、5B11は、5B11の免疫原性を低減するためにヒト化する必要があった。ヒト化デザインの原理は、以下のとおりであった:1) 5B11抗体の軽鎖及び重鎖を、それぞれ、最高の相同性を用いてヒト生殖細胞系列遺伝子配列とアラインし;2) これらのアミノ酸が抗原と抗体との間の結合において重要な役割を果たし得るので、CDR接触面にあるか又はCDR付近に位置する、FRのアミノ酸は、通常保持されるが(赤色でマークしたアミノ酸)、それに対して、CDRから遠く、かつ、疎水性ではないアミノ酸は、通常、直ちに突然変異させ;3) VH-VKの境界にあるFRのアミノ酸は、通常、保持され(青色でマークしたアミノ酸);4) 抗体構造をシミュレートして、露出したアミノ酸及び内部に埋め込まれたアミノ酸を得、そして、内部に埋め込まれたアミノ酸を、(それらが抗原と抗体の結合に影響し得るので)選択的に保持し(緑色でマークしたアミノ酸);5) 抗体活性に対してほとんど影響しない、露出したアミノ酸及び残りのアミノ酸を、直ちに突然変異させた(黒色でマークしたアミノ酸)。ヒト化後に、ヒト化5B11を、N5B11と呼び、そして、そのヒト化度は90%であった(
図10)。ヒト化抗体N5B11の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号60及び61に規定した。
【0151】
N5B11の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の遺伝子を、研究室に保存されたヒト免疫グロブリン定常領域をコードするPTT5真核細胞発現ベクターに組み立て、それぞれ、プラスミドPTT5-N5B11-重鎖(配列番号62に規定される重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を含有)及びPTT5-N5B11-軽鎖(配列番号63に規定される軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を含有)を構築し、そのダブルプラスミドを、発現のためにexpi-293細胞内に一過性に移し、7日後に上清を採集し、その上清を精製するためにプロテインAを使用して、抗体N5B11を得た。次に、精製N5B11の中和活性と結合活性を検出した(中和活性及び結合活性を検出する方法は、それぞれ、実施例2及び実施例3を参照した)。実験結果は、ヒト化抗体N5B11の中和活性(
図11のパネルA~B)及び結合活性(
図11のパネルC~D)がマウス抗体5B11のものと一致することを示した。
【0152】
本願の具体的な実施形態を詳細に記載したが、当業者は、開示されたすべての教示に基づき、様々な修飾及び変更を詳細に理解し、これらの変更が本願の範囲内にあることを理解する。本願の完全な範囲は、添付した特許請求の範囲とあらゆるその同等物によって与えられる。
【配列表】
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-11-18
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0021
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0021】
特定の実施形態において、エピトープは、少なくとも161、162、184、293及び294位のアミノ酸残基を含む。
特定の実施形態において、エピトープは、161~184位のアミノ酸残基と293~294位のアミノ酸残基を含む。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0031
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0031】
特定の実施形態において、エピトープは、少なくとも161、162、及び184位のアミノ酸残基を含む。
特定の実施形態において、エピトープは、161~184位のアミノ酸残基を含む。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0066
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0066】
キットを製造するための使用
第二十の態様において、本願は、キットの製造における、本願の任意の態様の抗体又はその抗原結合断片、或いは本願のコンジュゲートの使用を提供し、ここで、該キットは、サンプル中のRSVの存在又はレベルを検出するために使用され、及び/又は対象がRSVに感染しているか否かを診断するために使用される。
【誤訳訂正4】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のFタンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
(1) 該抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
(1a) 以下の3つのCDR:配列番号5に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号6に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号7に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(1b) 以下の3つのCDR:配列番号8に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号9に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号10に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
(2) 該抗体又はその抗原結合断片は、RSV
プレFタンパク質のエピトープに特異的に結合
し、ここで、該エピトープが、プレFタンパク質の、294~295位のアミノ酸残基、及び160~182位のアミノ酸残基内の少なくとも6つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含み;
(3) 該抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
(3a) 以下の3つのCDR:配列番号13に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号14に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号15に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(3b) 以下の3つのCDR:配列番号16に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号17に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号18に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
(4) 該抗体又はその抗原結合断片は、RSVプレFタンパク質のエピトープに特異的に結合し、ここで、該エピトープが、プレFタンパク質の、160~185位のアミノ酸残基及び290~295位のアミノ酸残基内の少なくとも5つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含み;
(5) 該抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
(5a) 以下の3つのCDR:配列番号21に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR1、配列番号22に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR2、配列番号23に規定される配列又はそのバリアントを含むVH CDR3、を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は
(5b) 以下の3つのCDR:配列番号24に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR1、配列番号25に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR2、配列番号26に規定される配列又はそのバリアントを含むVL CDR3、を含む軽鎖可変領域(VL);
又は
(6) 該抗体又はその抗原結合断片は、RSVプレFタンパク質のエピトープに特異的に結合し、ここで該エピトープが、プレFタンパク質の160~185位のアミノ酸残基内の少なくとも3つのアミノ酸残基(例えば、非連続アミノ酸残基)を含み;
ここで(1)、(3)、又は(5)に記載のバリアントは、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、又は3個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し;好ましくは、該置換が、保存的置換である、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、
ここで、前記(2)に記載のエピトープが、少なくとも161、165、166、169、180、182、294、及び295位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、
前記(2)に記載のエピトープが、さらに196位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、
前記(2)に記載のエピトープが、さらに162と184位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、
前記(2)に記載のエピトープが、161~182位のアミノ酸残基(例えば、161~184位のアミノ酸残基)と294~295位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、
前記(2)に記載のエピトープが、立体構造エピトープであり;
好ましくは、該アミノ酸残基の位置が、配列番号1に従って決定され;
好ましくは、
前記(2)に記載のエピトープが、少なくともE161、N165、K166、S169、S180、S182、E294、及びE295を含み;好ましくは、該エピトープが、さらにK196を含み;好ましくは、該エピトープが、さらにG162及びG184を含む、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで
(i)
前記(1)又は(2)の抗体又はその抗原結合断片が、以下の3つの重鎖CDR:配列番号5に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号6に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号7に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号8に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号9に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号10に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii)
前記(1)又は(2)の抗体又はその抗原結合断片が、配列番号3又は60に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号4又は61に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含み;好ましくは、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで前記(1)又は(2)の抗体又はその抗原結合断片が、以下の:
配列番号3に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号4に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、
前記(1)又は(2)の抗体又はその抗原結合断片が、配列番号3に規定されるVH、及び/又は配列番号4に規定されるVL、を含む、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで;
前記(4)に記載のエピトープが、少なくとも161、162、184、293及び294位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、
前記(4)に記載のエピトープが、161~18
4位のアミノ酸残基と293~294位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、
前記(4)に記載のエピトープが、立体構造エピトープであり;
好ましくは、該アミノ酸残基の位置が、配列番号1に従って決定され;
好ましくは、
前記(4)に記載のエピトープが、少なくともE161、G162、G184、K293及びE294を含む、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで
(i)
前記(3)又は(4)の抗体又はその抗原結合断片が、以下の3つの重鎖CDR:配列番号13に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号14に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号15に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号16に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号17に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号18に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii)
前記(3)又は(4)の抗体又はその抗原結合断片が、配列番号11に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号12に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含み;好ましくは、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで
前記(3)又は(4)の抗体又はその抗原結合断片が、以下の:
配列番号11に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号12に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、
前記(3)又は(4)の抗体又はその抗原結合断片が、配列番号11に規定されるVH、及び/又は配列番号12に規定されるVL、を含む、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、
前記(6)に記載のエピトープが、少なくとも161、162、及び184位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、
前記(6)に記載のエピトープが、161~18
4位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、
前記(6)に記載のエピトープが、立体構造エピトープであり;
好ましくは、該アミノ酸残基の位置が、配列番号1に従って決定され;
好ましくは、
前記(6)に記載のエピトープが、少なくともE161、G162、及びG184を含む、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで
(i)
前記(5)又は(6)の抗体又はその抗原結合断片は:以下の3つの重鎖CDR:配列番号21に規定される配列を有するVH CDR1、配列番号22に規定される配列を有するVH CDR2、及び配列番号23に規定される配列を有するVH CDR3;及び/又は、以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に規定される配列を有するVL CDR1、配列番号25に規定される配列を有するVL CDR2、及び配列番号26に規定される配列を有するVL CDR3、を含み;及び/又は
(ii)
前記(5)又は(6)の抗体又はその抗原結合断片は:配列番号19に規定される重鎖可変領域(VH)に含有される3つのCDR;及び/又は配列番号20に規定される軽鎖可変領域(VL)に含有される3つのCDR、を含み;好ましくは、VHに含有される3つのCDR、及び/又はVLに含有される3つのCDRは、Kabat、IMGT又はChothiaナンバリングシステムによって定義される、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、ここで前記(5)又は(6)の抗体又はその抗原結合断片が、以下の:
配列番号19に規定される配列又はそのバリアントを含むVH、及び/又は配列番号20に規定される配列又はそのバリアントを含むVL、を含み;
ここで、該バリアントが、由来となった配列と比較して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するか、又は該バリアントが、由来となった配列と比較して、1若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失、又は付加(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し;好ましくは、該置換が、保存的置換であり;
好ましくは、
前記(5)又は(6)の抗体又はその抗原結合断片が、配列番号19に規定されるVH、及び/又は配列番号20に規定されるVL、を含む、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
ヒト化され
た、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、;
好ましくは、ヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域配列を含み;
好ましくは、ヒト重鎖生殖系列配列由来の重鎖フレームワーク領域配列及びヒト軽鎖生殖系列配列由来の軽鎖フレームワーク領域配列を含み;
好ましくは、配列番号60に規定されるVH、及び/又は配列番号61に規定されるVLを含む、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、以下の:
(i) (1)の抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質に特異的に結合することができ;
(ii) (1)の抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への結合に関して、(2)の抗体又はその抗原結合断片と競合し;
(iii) (1)の抗体又はその抗原結合断片が、(2)の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する、
(iv) (3)の抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質に特異的に結合することができ;
(v) (3)の抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への結合に関して、(4)の抗体又はその抗原結合断片と競合し;
(vi) (3)の抗体又はその抗原結合断片が、(4)の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する、
(vii) (5)の抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質に特異的に結合することができ;
(viii) (5)の抗体又はその抗原結合断片が、RSVプレFタンパク質への結合に関して、(6)の抗体又はその抗原結合断片と競合し;
(ix) (5)の抗体又はその抗原結合断片が、(6)の抗体又はその抗原結合断片と同じRSVプレFタンパク質のエピトープに結合する、
(x) 前記抗体又はその抗原結合断片が、マウス又はヒト免疫グロブリン由来の定常領域をさらに含み;好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片の前記重鎖が、ヒト免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)由来の重鎖定常領域を含み、前記抗体又はその抗原結合断片の前記軽鎖が、ヒト免疫グロブリン(例えば、κ又はλ鎖を含む免疫グロブリン)由来の軽鎖定常領域を含み; 好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片の前記重鎖が、配列番号62に規定される重鎖定常領域を含み、及び前記抗体又はその抗原結合断片の前記軽鎖が、配列番号63に規定される軽鎖定常領域を含む;
(xi) 前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、(Fab’)
2
、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、ダイアボディ及び単一ドメイン抗体(sdAb)から成る群から選択され;及び/又は、前記抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体若しくは多特異性抗体である;
(xii) 前記抗体又はその抗原結合断片が、以下の特徴: (a) インビトロ又は対象(例えば、ヒト)においてRSV (例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)を中和する;(b) インビトロ又は対象(例えば、ヒト)におけるRSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)の、細胞との融合を妨害又は阻害する;(c) RSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)感染症、又はRSV(例えば、RSVタイプA及び/又はタイプB)感染症(例えば、小児肺炎などの肺炎)に関連する疾患を予防及び/又は処置する、
から成る群から選択される一つまたは複数の特徴を有する、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いはその重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする、単離核酸分子。
【請求項14】
請求項
13に記載の核酸分子を含むベクターであって;好ましくは、クローニングベクター又は発現ベクターである、
ベクター。
【請求項15】
請求項
13に記載の核酸分子又は
該核酸分子を含むベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、並びに医薬として許容される担体及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
RSVの病原力を中和するため、或いはRSVと細胞との融合を阻害又は妨害するため、或いは対象におけるRSウイルス感染症又はRSウイルス感染症に関連する疾患(例えば、小児肺炎などの肺炎)を予防及び/又は処置するために使用され;
好ましくは、該対象が、ヒトなどの哺乳動物であり;
好ましくは、該抗体又はその抗原結合断片が、単独で、又は追加の医薬として活性な剤と組み合わせて
投与される、
(i) 請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、又は(ii) 該抗体又はその抗原結合断片及び医薬的として許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、及び該抗体又はその抗原結合断片に接続された検出可能な標識を含む、コンジュゲートであって;
好ましくは、該検出可能な標識が、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ若しくはアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、若しくはルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン若しくは蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチンから成る群から選択される、
コンジュゲート。
【請求項19】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いは
該抗体又はその抗原結合断片及びそれに接続された検出可能な標識を含むコンジュゲートを含む、キットであって;
好ましくは、
前記コンジュゲートを含み;
好ましくは、
前記抗体又はその抗原結合断片、及び任意選択で、該抗体又はその抗原結合断片を特異的に認識する二次抗体を含み;任意選択で、該二次抗体はまた、検出可能な標識、例えば、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ若しくはアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、若しくはルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン若しくは蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチンも含む、
キット。
【請求項20】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いは
該抗体又はその抗原結合断片及びそれに接続された検出可能な標識を含むコンジュゲートを使用することを含む、サンプル中のRSVの存在又はレベルを検出する方法であって、
好ましくは、該方法が、イムノブロッティングアッセイ、エンザイムイムノアッセイ(例えば、ELISA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、又は放射性免疫アッセイなどの免疫学的アッセイであり;
好ましくは、該方法が、
前記コンジュゲートを使用することを含み;
好ましくは、該方法が、
前記抗体又はその抗原結合断片を使用することを含み、そして、該方法が、さらに、該抗体又はその抗原結合断片を検出するための検出可能な標識(例えば、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール及びその誘導体、又はルテニウム誘導体)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン又は蛍光タンパク質)、放射性核種又はビオチン)を担持する二次抗体を使用することを含み;
好ましくは、該方法が:(1) サンプルを、抗体又はその抗原結合断片若しくはコンジュゲートと接触させ;(2) 抗原-抗体免疫複合体の形成を検出するか、又は免疫複合体の量を検出すること、を含み;好ましくは、その免疫複合体の形成が、RSV又はRSV感染症細胞の存在を示
し;
好ましくは、前記サンプルが、対象(例えば、哺乳動物、好ましくはヒト)からの体液サンプル(例えば、気道の分泌物)又は組織サンプル(例えば、気道組織のサンプル)である、方法。
【請求項21】
キットの製造における、
(i) 請求項1~
12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、或いは
(ii) 該抗体又はその抗原結合断片及びそれに接続された検出可能な標識を含むコンジュゲートの使用であって、ここで、該キットが、サンプル中のRSVの存在又はレベルの検出のために使用され、及び/又は対象がRSVに感染しているか否か
の診断のために使用され;
好ましくは、該サンプルが、対象(例えば、哺乳動物、好ましくはヒト)からの体液サンプル(例えば、気道の分泌物)又は組織サンプル(例えば、気道組織のサンプル)である、前記使用。
【国際調査報告】