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特表2024-544693耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒とその製造方法、及びこれを含む高分子電解質燃料電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒とその製造方法、及びこれを含む高分子電解質燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/96 20060101AFI20241126BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20241126BHJP
   H01M 4/94 20060101ALI20241126BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20241126BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20241126BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M4/96 M
H01M4/90 M
H01M4/94
H01M8/10 101
H01M4/88 K
H01M4/92
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534054
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2022017070
(87)【国際公開番号】W WO2023106637
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0172580
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517434736
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ セラミック エンジニアリング アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】シン・テホ
(72)【発明者】
【氏名】ロ・ドンキュ
(72)【発明者】
【氏名】リ・ソクヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン・イキョン
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS02
5H018AS03
5H018BB05
5H018BB06
5H018BB12
5H018BB13
5H018BB16
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE12
5H018HH03
5H018HH08
5H018HH10
5H126BB06
5H126FF05
5H126GG05
5H126GG12
5H126HH03
5H126HH08
5H126HH10
5H126JJ08
5H126JJ10
(57)【要約】
燃料電池の作動環境において、急激に腐食するカーボン系支持体を保護するために、耐食性の強いセラミック材質をコートして、一部が針状に突出したセラミックコート層を形成させた、耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒とその製造方法、及びこれを含む高分子電解質燃料電池について開示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン系支持体と、
前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層と、
前記カーボン系支持体を覆うセラミックコート層に担持した活性担持体と、
を含み、
前記セラミックコート層は、カーボン系支持体の表面から一部が針状に突出するように形成されたことを特徴とする、
耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒。
【請求項2】
前記カーボン系支持体は、
炭素ナノチューブ、グラフェン及び活性炭のうちから選択された1種以上を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒。
【請求項3】
前記セラミックコート層は、
TiO、Al、ZrO、及びCeOのうちから選択された1種以上の材質で形成されることを特徴とする、
請求項1に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒。
【請求項4】
前記セラミックコート層は、
10nm~10μmの厚さを有することを特徴とする、
請求項1に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒。
【請求項5】
前記セラミックコート層は、
前記カーボン系支持体の表面を覆う表面部と、
前記表面部から複数個が互いに離隔するように配置されて、前記表面部から外側方向に突出し、一部が針状に形成された突出部と、
を有することを特徴とする、
請求項1に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒。
【請求項6】
前記活性担持体は、
白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び金(Au)のうちから選択された1種以上を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒。
【請求項7】
カソードと、
前記カソードと離隔して配置されたアノードと、
前記カソードとアノードとの間に配置された電解質メンブレンと、
前記カソード及びアノードの外側にそれぞれ配置された気体拡散層と、
前記気体拡散層の外側にそれぞれ配置された分離板と、
を含み、
前記カソード及びアノードのうち少なくとも1つは、
カーボン系支持体と、前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層と、前記カーボン系支持体を覆うセラミックコート層に担持した活性担持体と、を有するカーボン系触媒を含み、
前記セラミックコート層は、カーボン系支持体の表面から一部が針状に突出するように形成されたことを特徴とする、
耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池。
【請求項8】
前記セラミックコート層は、
TiO、Al、ZrO、及びCeOのうちから選択された1種以上の材質で形成されたことを特徴とする、
請求項7に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池。
【請求項9】
前記セラミックコート層は、
10nm~10μmの厚さを有することを特徴とする、
請求項7に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池。
【請求項10】
前記セラミックコート層は、
前記カーボン系支持体の表面を覆う表面部と、
前記表面部から複数個が互いに離隔するように配置されて、前記表面部から外側方向に突出し、一部が針状に形成された突出部と、
を有することを特徴とする、
請求項7に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池。
【請求項11】
(a)カーボン系支持体を酸処理する段階と、
(b)前記酸処理したカーボン系支持体の表面にセラミックコート層を形成する段階と、
(c)前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層に活性担持体を担持する段階と、
を含み、
上記(b)段階において、前記セラミックコート層は、カーボン系支持体の表面から一部が針状に突出するように形成されることを特徴とする、
耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【請求項12】
上記(a)段階は、
(a-1)前記カーボン系支持体を酸性溶液と混合して、500~1,500rpmの速度で攪拌して酸処理する段階と、
(a-2)前記酸処理したカーボン系支持体をフィルタリングした後に洗浄する段階と、
を含むことを特徴とする、
請求項11に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【請求項13】
上記(a-1)段階において、
前記酸処理は、
100~140℃の温度で、1~10時間実施することを特徴とする、
請求項12に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【請求項14】
上記(b)段階は、
(b-1)前記酸処理したカーボン系支持体を溶媒に添加した後、超音波処理で混合する段階と、
(b-2)前記超音波処理した懸濁液にセラミック前駆体及び硬化剤を混合し、攪拌して水熱合成する段階と、
(b-3)前記水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後に乾燥し、前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層を形成する段階と、
を含むことを特徴とする、
請求項11に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【請求項15】
上記(b-2)段階において、
前記水熱合成は、
160~240℃で、10~30時間実施することを特徴とする、
請求項14に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【請求項16】
上記(b-3)段階において、
前記セラミックコート層は、
TiO、Al、ZrO、及びCeOのうちから選択された1種以上の材質からなることを特徴とする、
請求項14に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【請求項17】
上記(c)段階は、
(c-1)前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層を活性担持前駆体溶液に浸漬させた後、強塩基溶液を添加して水熱合成する段階と、
(c-2)前記水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後に乾燥し、前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層に活性担持体を担持する段階と、
を含むことを特徴とする、
請求項11に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【請求項18】
上記(c-1)段階において、
前記水熱合成は、
100~200℃で、1~6時間実施することを特徴とする、
請求項17に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【請求項19】
上記(c-2)段階において、
前記活性担持体は、
白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び金(Au)のうちから選択された1種以上を含むことを特徴とする、
請求項17に記載の耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒とその製造方法、及びこれを含む高分子電解質燃料電池に関し、より詳細は、燃料電池の作動環境において、急激に腐食するカーボン系支持体を保護するために、耐食性の強いセラミック材質をコートして、一部が針状に突出したセラミックコート層を形成させた、耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒とその製造方法、及びこれを含む高分子電解質燃料電池に関する。
【0002】
本発明の国家研究開発事業の情報は、次のとおりである。
[課題固有番号]1711120511
[課題番号]2020M3H4A3105824
[部署名]科学技術情報通信部
[課題管理(専門)機関名]韓国研究財団
[研究事業名]素材革新先導プロジェクト
[研究課題名]超高耐久性カーボン系担持体の基礎素材の核心源泉技術の開発
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]韓国セラミック技術院
[研究期間]2020年8月24日~2024年12月31日
【背景技術】
【0003】
燃料電池は、燃料である水素の酸化によって化学エネルギを電気エネルギーに変換させて発電する装置である。燃料電池は、再生エネルギーを利用して生産される水素を用いることができ、反応生成物で水が生成されて、大気汚染物質または温室ガスなどを生成しないため、環境に優しいエネルギー源として注目されている。
【0004】
これらの燃料電池は、用いられる電解質及び燃料の種類によって高分子電解質燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell,PEMFC)、直接メタノール燃料供給方式(Direct Methanol Fuel Cell,DMFC)、リン酸方式(PAFC)、溶融炭酸塩方式(MCFC)、及び固体酸化物方式(SOFC)などがある。
【0005】
これらのうち高分子電解質燃料電池は、作動温度が相対的に低く、高いエネルギー密度を有し、早い始動と応答特性に優れて、自動車、各種電子機器、輸送用及び発電用エネルギー源として使用するため技術研究が活発に行われている。
【0006】
燃料電池は、アノードに水素を供給し、カソードに酸素を供給し、アノードの触媒が水素を酸化してプロトン(proton)を形成する。このとき、プロトンがプロトン伝導膜を通過して、カソードの触媒によって酸素と還元反応し、電気を生産することになる。
【0007】
燃料電池は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された電解質メンブレンと、を含む。このとき、アノード及びカソードのそれぞれは、活性担持体と、活性担持体を支持するカーボン系支持体とを含む触媒を含む。
【0008】
燃料電池のアノードに注入された水素は、水素イオン及び電子に分離され、燃料電池のカソードには空気が注入されて、酸素イオン及び電子が分離される。分離された電子の移動で電気が発生して、水素と酸素とが接触し、水(HO)が生成されながら熱が発生することになる。
【0009】
一方、図1は、従来の燃料電池用触媒を説明するための模式図であって、これを参照して、より具体的に説明することとする。
【0010】
図1に示されたように、従来の燃料電池は、反応効率性を高めるために触媒が用いられる。従来の燃料電池用触媒は、酸素還元反応特性に優れる白金(Pt)を適用して、白金(Pt)を支持するための支持体としてカーボン系支持体を使用する。
【0011】
しかしながら、従来の燃料電池用触媒は、カーボン系支持体の酸化反応が発生(C+O→CO+4H++4e)して、白金(Pt)の脱離及び凝集が発生し、これによって、触媒の性能が低下する現象が発生する。
【0012】
また、燃料電池の作動環境において、カーボン系支持体が急激に酸化して腐食することによって、電極の性能が急激に減少する問題があった。
【0013】
関連する先行文献では、韓国登録特許公報第10-0708732号(2007年4月17日公告)があり、上記文献には燃料電池用アノードとその製造方法、及びこれを備えた燃料電池が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、燃料電池の作動環境において、急激に腐食するカーボン系支持体を保護するために、耐食性の強いセラミック材質をコートして、一部が針状に突出したセラミックコート層を形成させた、耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒とその製造方法、及びこれを含む高分子電解質燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するため本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒は、カーボン系支持体と、前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層と、前記カーボン系支持体を覆うセラミックコート層に担持した活性担持体と、を含み、前記セラミックコート層は、カーボン系支持体の表面から一部が針状に突出するように形成されたことを特徴とする。
【0016】
前記カーボン系支持体は、炭素ナノチューブ、グラフェン及び活性炭のうちから選択された1種以上を含む。
【0017】
前記セラミックコート層は、TiO、Al、ZrO、及びCeOのうちから選択された1種以上の材質で形成される。
【0018】
前記セラミックコート層は、10nm~10μmの厚さを有する。
【0019】
前記セラミックコート層は、前記カーボン系支持体の表面を覆う表面部と、前記表面部から複数個が互いに離隔するように配置されて、前記表面部から外側方向に突出し、一部が針状に形成された突出部と、を有する。
【0020】
前記活性担持体は、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び金(Au)のうちから選択された1種以上を含む。
【0021】
前記の目的を達成するため本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池は、カソードと、前記カソードと離隔して配置されたアノードと、前記カソードとアノードとの間に配置された電解質メンブレンと、前記カソード及びアノードの外側にそれぞれ配置された気体拡散層と、前記気体拡散層の外側にそれぞれ配置された分離板と、を含み、前記カソード及びアノードのうち少なくとも1つは、カーボン系支持体と、前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層と、前記カーボン系支持体を覆うセラミックコート層に担持した活性担持体を有するカーボン系触媒と、を含み、前記セラミックコート層は、カーボン系支持体の表面から一部が針状に突出するように形成されたことを特徴とする。
【0022】
前記セラミックコート層は、TiO、Al、ZrO、及びCeOのうちから選択された1種以上の材質で形成される。
【0023】
前記セラミックコート層は、10nm~10μmの厚さを有する。
【0024】
前記セラミックコート層は、前記カーボン系支持体の表面を覆う表面部と、前記表面部から複数個が互いに離隔するように配置されて、前記表面部から外側方向に突出し、一部が針状に形成された突出部と、を有する。
【0025】
前記の目的を達成するため本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法は、(a)カーボン系支持体を酸処理する段階と、(b)前記酸処理したカーボン系支持体の表面にセラミックコート層を形成する段階と、(c)前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層に活性担持体を担持する段階と、を含み、上記(b)段階において、前記セラミックコート層は、カーボン系支持体の表面から一部が針状に突出するように形成されることを特徴とする。
【0026】
上記(a)段階は、(a-1)前記カーボン系支持体を酸性溶液と混合し、500~1,500rpmの速度で攪拌して酸処理する段階と、(a-2)前記酸処理したカーボン系支持体をフィルタリングした後に洗浄する段階と、を含む。
【0027】
上記(a-1)段階において、前記酸処理は、100~140℃の温度で、1~10時間実施する。
【0028】
上記(b)段階は、(b-1)前記酸処理したカーボン系支持体を溶媒に添加した後、超音波処理で混合する段階と、(b-2)前記超音波処理した懸濁液にセラミック前駆体と硬化剤とを混合し、攪拌して水熱合成する段階と、(b-3)前記水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後に乾燥し、前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層を形成する段階と、を含む。
【0029】
上記(b-2)段階において、前記水熱合成は、160~240℃で、10~30時間実施する。
【0030】
上記(b-3)段階において、前記セラミックコート層は、TiO、Al、ZrO、及びCeOのうちから選択された1種以上の材質からなる。
【0031】
上記(c)段階は、(c-1)前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層を活性担持前駆体溶液に浸漬させた後、強塩基溶液を添加して水熱合成する段階と、(c-2)前記水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後に乾燥し、前記カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層に活性担持体を担持する段階と、を含む。
【0032】
上記(c-1)段階において、前記水熱合成は、100~200℃で、1~6時間実施する。
【0033】
上記(c-2)段階において、前記活性担持体は、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び金(Au)のうちから選択された1種以上を含む。
【発明の効果】
【0034】
本発明による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒、及びこれを含む高分子電解質燃料電池は、カーボン系支持体の表面を覆うようにセラミックコート層が形成されて、カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層に活性担持体が担持することによって、腐食抵抗性が改善して、燃料電池の作動環境において、カーボン系支持体が酸化して腐食することを未然に防止することができるため、電極の性能を向上させることができるようになる。
【0035】
さらに、本発明による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒、及びこれを含む高分子電解質燃料電池は、カーボン系支持体及びセラミックコート層からの電子伝達により、活性担持体(Pt)のDバンド欠陥(d-band vacancy)を減少させて、強い金属支持体の相互作用(SMSI)によって触媒の安定化が向上する効果を有する。
【0036】
また、本発明による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒、及びこれを含む高分子電解質燃料電池は、セラミックコート層がカーボン系支持体の表面から一部が外側に突出した針状に形成されているため、比表面積を向上させることができるだけでなく、OH、Hのようなラジカルの吸着を抑えて、耐久性を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】従来の燃料電池用触媒を説明するための模式図である。
図2】本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池を示した模式図である。
図3】本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を示した断面図である。
図4】本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の作動原理を説明するための模式図である。
図5】本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の作動原理を説明するための模式図である。
図6】本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法を示した工程模式図である。
図7】本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法を示した工程模式図である。
図8】本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法を示した工程模式図である。
図9】実施例1~2及び比較例1による触媒に対するXRD測定結果を示したグラフである。
図10】実施例1及び2による触媒を撮影して示した写真である。
図11】実施例1~2及び比較例1による触媒を用いて製造されたハーフセルに対する物性評価結果を示したグラフである。
図12】実施例1~2及び比較例1による触媒を用いて製造されたハーフセルに対する物性評価結果を示したグラフである。
図13】実施例1~2及び比較例1による触媒を用いて製造されたハーフセルに対する物性評価結果を示したグラフである。
図14】実施例1~2及び比較例1~2による触媒を用いて製造された燃料電池セルに対する物性評価結果を示したグラフである。
図15】実施例1~2及び比較例1~2による触媒を用いて製造された燃料電池セルに対する物性評価結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。しかしながら、本発明は、以下で開示の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現されるものである。但し、本実施例は、本発明の開示を完全なものにして、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。全明細書における同じ参照符号は、同じ構成要素を称する。
【0039】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒とその製造方法、及びこれを含む高分子電解質燃料電池について詳説すれば、次のとおりである。
【0040】
図2は、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池を示した模式図であり、図3は、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を示した断面図である。
【0041】
図2及び図3を参照すると、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池100は、カソード110と、カソード110と離隔して配置されたアノード120と、カソード110とアノード120との間に配置された電解質メンブレン130と、を含む。ここで、カソード110と、アノード120と、電解質メンブレン130とを含み、膜電極接合体150(Membrane-Electrode Assembly:MEA)を構成する。
【0042】
また、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒を含む高分子電解質燃料電池100は、カソード110及びアノード120の外側にそれぞれ配置された気体拡散層162,164と、気体拡散層162,164の外側にそれぞれ配置された分離板172,171と、を更に含んでいてもよい。
【0043】
ここで、気体拡散層162,164は、カソード110の外側に配置された第1の気体拡散層162と、アノード120の外側に配置された第2の気体拡散層164と、を含んでいてもよい。さらに、分離板172,174は、第1の気体拡散層162の外側に配置された第1分離板172と、第2の気体拡散層164の外側に配置された第2分離板174と、を含んでいてもよい。
【0044】
このとき、カソード110及びアノード120のうち少なくとも1つは、カーボン系支持体10と、カーボン系支持体10の表面を覆うセラミックコート層20と、カーボン系支持体10を覆うセラミックコート層20に担持した活性担持体30と、を有するカーボン系触媒50を含む。
【0045】
このように、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒50は、カーボン系支持体10と、セラミックコート層20と、活性担持体30と、を含む。
【0046】
カーボン系支持体10は、活性担持体30を支持するため支持体としての働きをする。これらのカーボン系支持体10は、炭素ナノチューブ、グラフェン及び活性炭のうちから選択された1種以上を含み、このうち炭素ナノチューブを用いるのがより好ましい。
【0047】
セラミックコート層20は、カーボン系支持体10の表面を覆うように形成される。このとき、セラミックコート層20は、燃料電池の作動環境において、急激に腐食するカーボン系支持体10を保護するためのものであって、耐食性の強いセラミック材質で形成されるのが好ましい。このため、セラミックコート層20は、TiO、Al、ZrO、及びCeOのうちから選択された1種以上の材質で形成されるのが好ましく、TiOで形成されるのがより好ましい。
【0048】
セラミックコート層20は、カーボン系支持体10の表面から一部が針状に突出するように形成される。より具体的に説明すると、セラミックコート層20は、カーボン系支持体10の表面を覆う表面部22と、表面部22から複数個が互いに離隔するように配置されて、表面部22から外側方向に突出し、一部が針状に形成された突出部24と、を有する。
【0049】
このように、セラミックコート層20の突出部24は、カーボン系支持体110の表面から複数個が離隔した状態で、外側方向に突出するように配置されることによって、比表面積を大きく拡張することができる構造的な利点を有するようになる。
【0050】
よって、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒100は、セラミックコート層20の突出部24がカーボン系支持体10の表面から外側に突出するように形成されるため、高比表面積の確保が可能であるだけでなく、OH、Hのようなラジカルの吸着を抑えて、耐久性を向上させることができるようになる。
【0051】
これらのセラミックコート層20は、10nm~10μmの厚さを有するのが好ましくて、より好ましい範囲では、100nm~1μmの厚さが挙げられる。セラミックコート層20の厚さが10nm未満である場合には、その厚さが薄過ぎることから、耐食性が向上する効果を良く発揮しにくいことがある。逆に、セラミックコート層20の厚さが10μmを超える場合には、過度な厚さの設計によって電気伝導度を低下させる恐れがあるため、好ましくない。
【0052】
活性担持体30は、カーボン系支持体10を覆うセラミックコート層20に担持する。ここで、活性担持体30は、酸素還元反応特性に優れる貴金属が用いられる。より具体的には、活性担持体30では、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び金(Au)のうちから選択された1種以上を用いることができ、このうち白金(Pt)を用いるのがより好ましい。
【0053】
一方、図4及び図5は、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の作動原理を説明するための模式図である。
【0054】
図4及び図5に示されたように、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒50は、燃料電池の作動環境において、急激に腐食するカーボン系支持体を保護するために、カーボン系支持体の表面に耐食性の強いセラミック材質をコートして、一部が針状に突出したセラミックコート層20が形成されている。
【0055】
さらに、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒50は、カーボン系支持体及びセラミックコート層20からの電子伝達により、活性担持体30(Pt)のDバンド欠陥(d-band vacancy)を減少させて、強い金属支持体の相互作用(SMSI)によって触媒の安定化が向上する効果を有する。
【0056】
また、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒50は、セラミックコート層20がカーボン系支持体の表面から一部が外側に突出した針状に形成されているため、比表面積を向上させることができるだけでなく、OH、Hのようなラジカルの吸着を抑えて、耐久性を向上させることができるようになる。
【0057】
前述した本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒、及びこれを含む高分子電解質燃料電池は、カーボン系支持体の表面を覆うようにセラミックコート層が形成されて、カーボン系支持体の表面を覆うセラミックコート層に活性担持体が担持することによって、腐食抵抗性が改善して、燃料電池の作動環境において、カーボン系支持体が酸化して腐食することを未然に防止することができるため、電極の性能を向上させることができるようになる。
【0058】
さらに、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒、及びこれを含む高分子電解質燃料電池は、カーボン系支持体及びセラミックコート層からの電子伝達により、活性担持体(Pt)のDバンド欠陥(d-band vacancy)を減少させて、強い金属支持体の相互作用(SMSI)によって触媒の安定化が向上する効果を有する。
【0059】
また、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒、及びこれを含む高分子電解質燃料電池は、セラミックコート層がカーボン系支持体の表面から一部が外側に突出した針状に形成されているため、比表面積を向上させることができるだけでなく、OH、Hのようなラジカルの吸着を抑えて、耐久性を向上させることができるようになる。
【0060】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法について説明することとする。
【0061】
図6図8は、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法を示した工程模式図である。
【0062】
図6に示されたように、カーボン系支持体10を酸処理する。これらの酸処理は、カーボン系支持体10を酸性溶液と混合し、500~1,500rpmの速度で攪拌して酸処理する過程と、酸処理したカーボン系支持体10をフィルタリングした後に洗浄する過程と、を含む。
【0063】
このとき、酸処理は、pH2以下の硫酸、窒酸及び塩酸のうちから選択された1種以上を含む酸性水溶液を用いるのが好ましいが、これは、pH2を超える酸性水溶液を用いると、カーボン系支持体10の表面を改質する側面からは有利であるものの、環境汚染を引き起こす恐れがあるからである。
【0064】
これらの酸処理は、100~140℃の温度で、1~10時間実施するのが好ましい。酸処理温度が100℃未満であるか、酸処理時間が1時間未満である場合には、十分な酸処理が行われず、比表面積が向上する効果を良く発揮しにくい。逆に、酸処理温度が140℃を超えるか、酸処理時間が10時間を超える場合には、それ以上の効果が上昇せず、製造コストのみを増加させる要因に作用し得るため、経済的でない。
【0065】
次に、図7に示されたように、酸処理したカーボン系支持体10の表面にセラミックコート層20を形成する。
【0066】
これらのセラミックコート層の形成段階は、酸処理したカーボン系支持体10を溶媒に添加した後、超音波処理で混合する過程と、超音波処理した懸濁液にセラミック前駆体と硬化剤とを混合し、攪拌して水熱合成する過程と、水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後に乾燥し、カーボン系支持体10の表面を覆うセラミックコート層20を形成する過程と、を含む。
【0067】
ここで、超音波処理は、25~35KHzの周波数及び5~10Wの出力電圧の条件で、30~180分間実施するのが好ましい。超音波処理の際、超音波出力電圧が5W未満であるか、超音波処理時間が30分未満で実施される場合には、分散性が向上する効果を良く発揮することができない恐れがある。逆に、超音波処理の際、超音波出力電圧が10Wを超えるか、超音波処理時間が180分を超える場合には、過度な超音波印加によって酸処理したカーボン系支持体が損傷する問題を引き起こし得るため、好ましくない。
【0068】
さらに、水熱合成は、160~240℃で、10~30時間実施するのが好ましい。水熱合成温度が160℃未満であるか、水熱合成時間が10時間未満である場合には、十分な水熱合成が行われないことに起因して、カーボン系支持体10の表面にセラミックコート層20が完璧にコートされない恐れがある。逆に、水熱合成温度が240℃を超えるか、水熱合成時間が30時間を超える場合には、それ以上の効果が上昇せず、製造コスト及び時間のみを増加させる恐れがあるため、経済性の側面から好ましくない。
【0069】
ここで、洗浄は、蒸留水を用いて少なくとも2回以上実施するのが好ましい。さらに、乾燥は、60~80℃で、10~20時間実施することができるものの、これに制限されるものではない。
【0070】
このとき、セラミックコート層20は、TiO、Al、ZrO、及びCeOのうちから選択された1種以上の材質で形成されるのが好ましく、TiOで形成されるのがより好ましい。このように、耐食性に優れるセラミック材質でカーボン系支持体10の表面をコートして乾燥させ、セラミックコート層20が形成されることにより、触媒の腐食抵抗性を改善させることができるようになる。
【0071】
これらのセラミックコート層20は、カーボン系支持体10の表面から一部が針状に突出するように形成される。より具体的に説明すると、セラミックコート層20は、カーボン系支持体10の表面を覆う表面部と、表面部から複数個が互いに離隔するように配置されて、表面部から外側方向に突出し、一部が針状に形成された突出部と、を有する。
【0072】
このように、セラミックコート層20の突出部は、カーボン系支持体10の表面から複数個が離隔した状態で、外側方向に突出するように配置されることによって、比表面積を大きく拡張することができる構造的な利点を有するようになる。
【0073】
よって、本発明の実施例による方法で製造される耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒は、セラミックコート層20の突出部がカーボン系支持体10の表面から外側に突出するように形成されるため、高比表面積の確保が可能であるだけなく、OH、Hのようなラジカルの吸着を抑えて、耐久性を向上させることができるようになる。
【0074】
これらのセラミックコート層20は、10nm~10μmの厚さを有するのが好ましく、より好ましい範囲では、100nm~1μmの厚さが挙げられる。セラミックコート層20の厚さが10nm未満である場合には、その厚さが薄過ぎることから、耐食性が向上する効果を良く発揮しにくいことがある。逆に、セラミックコート層20の厚さが10μmを超える場合には、過度な厚さの設計によって電気伝導度を低下させる恐れがあるため、好ましくない。
【0075】
次に、図8に示されたように、カーボン系支持体10の表面を覆うセラミックコート層20に活性担持体30を担持させる。
【0076】
このとき、担持の段階は、カーボン系支持体10の表面を覆うセラミックコート層20を活性担前駆体溶液に浸漬させた後、強塩基溶液を添加して水熱合成する過程と、水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後に乾燥し、カーボン系支持体10の表面を覆うセラミックコート層20に活性担持体30を担持する過程と、を含む。
【0077】
強塩基溶液は、0.5~1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0078】
ここで、水熱合成は、100~200℃で、1~6時間実施するのが好ましい。水熱合成温度が100℃未満であるか、水熱合成時間が1時間未満である場合には、カーボン系支持体10の表面を覆うセラミックコート層20に活性担持体30が均一に担持できない恐れがある。逆に、水熱合成温度が200℃を超えるか、水熱合成時間が6時間を超える場合には、それ以上の効果が上昇せず、製造コストのみを増加させる要因に作用し得るため、経済的でない。
【0079】
ここで、活性担持体30は、酸素還元反応特性に優れる貴金属が用いられる。より具体的には、活性担持体30では、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び金(Au)のうちから選択された1種以上を用いることができ、このうち白金(Pt)を用いるのがより好ましい。
【0080】
以上のように、本発明の実施例による耐久性に優れる燃料電池用のカーボン系触媒の製造方法を終了する。
【0081】
実施例
以下では、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳説することとする。但し、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであり、いずれの意味でも、これによって本発明が制限されるとは解釈されない。
【0082】
ここに記載していない内容は、この技術分野における熟練者であれば、技術的に十分類推することができるため、その説明を省略することとする。
【0083】
1.燃料電池用のカーボン系触媒の製造
実施例1
多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)1gを硫酸水溶液130ml及び窒酸水溶液70mlに混合して、120℃で、4時間、1,000rpmの速度で攪拌して酸処理した後、フィルタリングして洗浄した。
【0084】
次に、酸処理した多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)0.1gをIPA50mLに添加した後、20KHzの周波数及び8Wの出力電圧の条件で、1時間超音波処理して混合した。
【0085】
次に、超音波処理した懸濁液にチタンテトライソプロポキシド(TTIP)を0.3mL及びジエチレントリアミン(DETA)を0.26mL添加して、30分間、1,500rpmの速度で攪拌し、200℃の温度で、12時間水熱合成した。
【0086】
次に、水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後、70℃で、12時間乾燥して、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)の表面を覆うTiOコート層を製造した。
【0087】
次に、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)の表面を覆うTiOコート層をHPtCl・6HOに浸漬させた後、NaOH水溶液を添加して、160℃の温度で、2時間水熱合成した。
【0088】
次に、水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後、70℃で、12時間乾燥して、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)の表面を覆うTiOコート層にPtを担持し、燃料電池用のカーボン系触媒(TiO-CNT@30Pt)を製造した。
【0089】
実施例2
多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)の表面を覆うTiOコート層を製造するとき、200℃の温度で、24時間水熱合成したことを除いては、実施例1と同じ方法で燃料電池用のカーボン系触媒(TiO-CNT@30Pt)を製造した。
【0090】
比較例1
多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)1gを硫酸水溶液130ml及び窒酸水溶液70mlに混合して、120℃で、4時間、1,000rpmの速度で攪拌して酸処理した後、フィルタリングして洗浄した。
【0091】
次に、酸処理した多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)0.1gをIPA50mLに添加した後、20KHzの周波数及び8Wの出力電圧の条件で、1時間超音波処理して混合した。
【0092】
次に、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)をHPtCl・6HOに浸漬させた後、NaOH水溶液を添加して、160℃の温度で、2時間水熱合成した。
【0093】
次に、水熱合成した結果物をフィルタリングして洗浄した後、70℃で、12時間乾燥して、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNTs)にPtを担持し、燃料電池用のカーボン系触媒(CNT@30Pt)を製造した。
【0094】
比較例2
Premetek社の商用触媒(40wt%Pt/C)を入手した。
【0095】
2.微細組織の観察
図9は、実施例1~2及び比較例1による触媒に対するXRD測定結果を示したグラフであり、図10は、実施例1及び2による触媒を撮影して示した写真である。このとき、図10の(a)及び(b)は、実施例1による触媒を示したSEM及びTEM写真であり、図10の(c)及び(d)は、実施例2による触媒を示したSEM及びTEM写真である。
【0096】
図9に示されたように、実施例1~2による触媒は、CNTの表面にTiOがコートされて、Pt担持が行われることによって、Pt、C及びTiO(anatase)ピークが検出されたことを確認することができる。他方、比較例1による触媒は、CNTの表面にTiOをコートしておらず、TiO(anatase)ピークが検出されていない。
【0097】
図10に示されたように、実施例1~2による触媒は、CNTの表面にTiOコート層が形成されており、一部が外側に針状に突出して形成されていることが確認できる。
【0098】
3.物性の評価
表1は、実施例1~2及び比較例1による触媒を用いて製造されたハーフセルに対する物性評価結果を示したものである。また、図11図13は、実施例1~2及び比較例1による触媒を用いて製造されたハーフセルに対する物性評価結果を示したグラフである。
【0099】
【表1】
【0100】
表1及び図11図13に示されたように、実施例1~2によるハーフセルと、比較例1によるハーフセルに対する物性テスト結果が示されている。
【0101】
このとき、電解質は、0.1Mの過塩素酸溶液を使用しており、測定前の窒素雰囲気で十分飽和させた。同じ重量当たりより多くの活性部位の露出を意味する電気化学的活性表面積(Electrochemical surface area,ECSA)を測定した結果、比較例1と実施例1は、類似値が出ているが、セラミックコート層が厚く形成された実施例2の場合、セラミックコート層の絶縁性による電気伝導度の不足及び触媒内の固まり現象によって低い値が示された。
【0102】
触媒の反応速度を意味する開始電位(Onset Potential)及び半波電位(half potential)は、実施例1が最も高い値を示しているが、これは、一部が針状に突出した触媒内の活性サイトの増加により、酸素ガスと白金の反応速度が向上したことである。これは、 ターフェル勾配(Tafel slope)からも証明できるが、電気化学反応の速度を過電圧に関連して、反応速度のさらに他の指標とされるターフェル勾配は、勾配が緩いほど、触媒内反応が活発に起こることを意味する。比較例1と比較して、実施例1の勾配が低い値を示すことによって、触媒の内部反応が活発的に起こることが分かる。白金の質量に対する活性を示す質量活性(mass activity)は、実施例1が最も高い反面、単位面積に対する比活性を示す固有活性(Specific acticvity)は、比較例1と比較して、0.1Vほど落ちることが分かる。これは、ECSA値で示したように、セラミックコート層の絶縁性による電気伝導度の不足及び粒子塊が原因であると考えられる。触媒層の反応物の濃度が0に収束する限界電流密度(limit current)から分かるように、比較例1が実施例1より高い値を示しているが、これは、電気伝導度に優れるサンプルであればあるほど、高く示されるため、実施例1の触媒の内部にセラミックコート層が位置し、絶縁現象を示していることを意味する。
【0103】
一方、表2は、実施例1~2及び比較例1~2による触媒を用いて製造された燃料電池セルに対する組立て及びテスト条件をまとめて示したものであり、表3は、実施例1~2及び比較例1~2による触媒を用いて製造された燃料電池セルに対する物性評価結果を示したものである。また、図14及び図15は、実施例1~2及び比較例1~2による触媒を用いて製造された燃料電池セルに対する物性評価結果を示したグラフである。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表2及び表3、図14及び図15に示されたように、実施例1~2による燃料電池セルと、比較例1~2による燃料電池セルに対する物性テスト結果が示されている。
【0107】
燃料電池の実際の駆動環境における性能実験及び耐久性試験のため、高分子電解質燃料電池の膜電極接合体(MEA)を製作しており、用いられた構成部品及び試験条件は、表2に示したとおりである。
【0108】
本実験に用いられた電解質は、Nafion212(Dupont)であり、燃料極は、面積当たり0.5mgの白金が塗布された商用ガス拡散電極(Gas diffusion electrode,GDE)を使用した。空気極は、ガス拡散層(Gas diffusion layer,GDL)に面積当たり0.2mgの白金触媒をハンドスプレー方式で塗布しており、130℃近くで熱と圧力を加えて、膜電極接合体(MEA)を完成した。電極面積は、熱電極と空気極がいずれも0.5cmと同一であった。
【0109】
膜電極接合体の燃料極と空気極の流量をそれぞれ水素ガス105mL/min、酸素ガス330mL/minにして、70℃で、十分な加湿を経た後、I-Vカーブを得た。
【0110】
燃料電池触媒の長期耐久性を評価するため、米国のエネルギー部(Department of energy,DOE)発表の高分子電解質燃料電池の膜電極接合体(MEA)の加速耐久試験(Accelerated stability test,AST)プロトコルに基づいて、炭素の酸化が急激に起こる電位範囲である1.0~1.5Vで、500mV/sの速度で早く繰り返して、5,000回後の触媒の電気化学的活性面積(ECSA)とI-Vカーブでの最大電力密度(Max power density,MPD)の変化を測定して、触媒の劣化度合いを検討しようとした。
【0111】
図14及び表3に示されたように、初期性能は、実施例1~2よりも比較例1~2がさらに優れている。何ら電圧がかかっていないときの回路の抵抗を意味する開放回路電圧(Open circuit voltage,OCV)を比較したとき、実施例1~2が高いことが分かるが、これは、絶縁体としての働きをするセラミックコート層が低抗体としての働きをするからである。これによって、最大電力密度(MPD)も相違するが、セラミックコート層が最も厚く形成された実施例2が最も低く、触媒粒子サイズが最も小さく、白金粒子分散度に最も優れた比較例2が最も高かった。しかし、5,000サイクル後の電気化学的活性表面積の劣化率(ECSA)は、実施例1~2がさらに優れるため、カーボン系担持体の表面のセラミックコート層が苛酷な耐久試験後にも、膜電極接合体(MEA)のセル性能を維持していることが分かる。
【0112】
これにより、触媒の内部のセラミックコート層は、カーボン系支持体が酸化して腐食することを成功的に防止するだけでなく、カーボン系支持体及びセラミックコート層からの電子伝達による活性担持体(Pt)のDバンド欠陥(d-band vacancy)を減少させる、強い金属-支持体の相互作用(SMSI)効果を発揮していることが分かる。
【0113】
また、図15に示されたように、空気極の電気化学的活性表面積(ECSA)のみならず、全体的なセル性能を意味する最大電力密度(MPD)の劣化率が比較例1~2に比べて6~8倍低い。これは、OH、Hのようなラジカルの吸着を抑えて、空気極における劣化だけでなく、セルの全体的な耐久性が向上することを意味する。
【0114】
以上では、本発明の実施例を中心に説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する技術者の水準で様々な変更や変形を加えることができる。これらの変更と変形は、本発明が提供する技術思想の範囲を逸脱しない限り、本発明に属すると言える。よって、本発明の権利範囲は、以下に記載する請求の範囲によって判断すべきである。
【符号の説明】
【0115】
100 高分子電解質燃料電池
110 カソード
120 アノード
130 電解質メンブレン
150 膜電極接合体
162 第1の気体拡散層
164 第2の気体拡散層
172 第1分離板
174 第2分離板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】