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特表2024-544694イソオキサゾリンカルボン酸誘導体を生成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】イソオキサゾリンカルボン酸誘導体を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 261/04 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
C07D261/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534088
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2022083991
(87)【国際公開番号】W WO2023104616
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21212862.3
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デニーズ・チブ
(72)【発明者】
【氏名】ディアナ・イザベル・イエペス・テハダ
(72)【発明者】
【氏名】アントン・リスチンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・エドムント・ベック
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ジェームズ・フォード
(72)【発明者】
【氏名】フランク・メメル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・レムビアク
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ・ズュルツレ
(57)【要約】
本発明は、式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製するための新規な方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体
【化1】
(式中、
X2は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X3は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X4は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X5は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X6は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、CNであり、
R1は、H、C1~C12-アルキル、非置換ベンジルまたはモノ-もしくはジ-C1~C4アルキル置換ベンジルであり、
R2はC1~C4-アルキルである)
を調製する方法であって、
一般式(II)の化合物
【化2】
(式中、
X2~X6は上に示される定義を有し、
X7、X8、X10、X11は独立して、HまたはC1~C4-アルキルであり、
X9は、H、C1~C4-アルキルまたはN(C1~C4-アルキル)2である)
を、
追加の塩基、および一般式(II)の化合物に基づいて1~3.5当量の反応種「R3OMgHal」(IV)
(式中、R3はアルキル、非置換またはアルキル置換ベンジルであり、
Halはハロゲンである)
の形成を可能にする試薬の組み合わせを添加して、
式(III)の化合物
【化3】
(式中、
R1およびR2は上に示される定義を有する)
と反応させて、一般式(I)の化合物を得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記一般式(I)、(II)および(III)の化合物中の基の定義が以下の通りである:
X2が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X3が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X4が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X5が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X6が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X7、X8、X10、X11が独立して、H、メチル、エチルであり、
X9が、H、メチル、エチルまたはN(メチル)2であり、
R1がH、C1~C4-アルキルであり、
R2がメチル、エチルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一般式(I)、(II)および(III)の化合物中の基の定義が以下の通りである:
X2がHであり、
X3が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X4がフッ素、Hであり、
X5が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X6がHであり、
X7、X8、X11が独立して、H、メチル、エチルであり、
X9がH、N(メチル)2であり、
X10がHであり、
R1が、H、メチル、エチル、i-プロピル、i-ブチルであり、
R2がメチルである、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記一般式(I)、(II)および(III)の化合物中の基の定義が以下の通りである:
X2がHであり、
X3がH、フッ素であり、
X4がH、フッ素であり、
X5がH、フッ素であり、
X6がHであり、
X8がH、メチル、エチルであり、
X7、X11が独立して、H、メチルであり、
X9、X10がHであり、
R1が、H、メチル、i-プロピル、i-ブチルであり、
R2がメチルである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記一般式(I)、(II)および(III)の化合物中の基の定義が以下の通りである:
X2がHであり、
X3がフッ素であり、
X4がHであり、
X5がフッ素であり、
X6がHであり、
X7、X8、X11が独立して、H、メチルであり、
X9、X10がHであり、
R1が、H、メチル、i-ブチルであり、
R2がメチルである、
請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
前記一般式(IIa)の化合物中の基の定義が以下の通りである:
X7、X8、X10、X11が独立して、H、メチル、エチルであり、
X9が、H、メチル、エチルまたはN(メチル)2である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記一般式(IIa)の化合物中の基の定義が以下の通りである:
X7、X11がHであり、
X8、X10が独立して、H、メチル、エチルであり、
X9が、H、メチル、エチル、N(メチル)2である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ:
-R4MgHalとR3OHまたは
-MgHal2とR3OMまたは
-MgHal2とMg(OR32
(式中、R3は、C2~C12-アルキル、非置換またはC1~C4-アルキル置換ベンジルであり、
Halはハロゲンであり、
Mはアルカリ金属であり、
R4は、アルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ベンジル、置換ベンジル、アリル、ビニルである)
のうちの1つによって生成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ:
-R4MgHalとR3OHまたは
-MgHal2とR3OMまたは
-MgHal2とMg(OR32
(式中、R3はC2~C8-アルキルであり、
Halは臭素、塩素であり、
Mはアルカリ金属であり、
R4は、C1~C8-アルキル、フェニル、ベンジル、p-トリル、ビニルである)
のうちの1つによって生成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ:
-R4MgHalとR3OHまたは
-MgHal2とR3OMまたは
-MgHal2とMg(OR32
(式中、R3はi-プロピル、i-ブチル、2-ブチルであり、
Halは臭素、塩素であり、
Mはナトリウムであり、
R4は、メチル、エチル、n-ブチル、i-プロピルである)
のうちの1つによって生成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記一般式(II)の化合物に基づいて、1.5~3.0当量の前記反応種「R3OMgHal」(IV)が使用されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記一般式(II)の化合物に基づいて、0.05~3.0当量の追加の塩基が使用されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記一般式(II)の化合物に基づいて、0.1~1.5当量の追加の塩基が使用されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記一般式(II)の化合物に基づいて、0.2~1.0当量の追加の塩基が使用されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記追加の塩基がEt3NまたはCyN(メチル)2であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒が、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸イソプロピル(i-PrOAc)、アセトニトリル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチル-THF、酢酸エチル(EtOAc)またはそれらの任意の比の混合物であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応が-25℃~70℃で行われることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応が10℃~30℃で行われることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
使用される前記塩基が、第三級アミン塩基またはピリジン塩基とアミド塩基の組み合わせであることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(前記一般式(II)の化合物に基づいて)最大1.0当量の水が使用されることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ジアステレオマー比がさらなる結晶化ステップによって増加することを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記一般式(IV)の化合物が、グリニャール反応を介して、具体的には以下の試薬の組み合わせ:
-R5MgHalとR6R7CO
(式中、R5は、C1~C6-アルキル、アリール、ベンジルであり、
R6、R7は、H、C1~C6-アルキル、アリールである)
を用いて生成され、得られた基の定義
R3がR5R6R7Cに対応する、ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体は、活性農薬成分(例えば、国際公開第2014/048882号パンフレットおよび国際公開第2018/228985号パンフレットに記載されている除草剤)の重要な前駆体である。
【0003】
先行技術、例えばTetrahedron Letters、1991、6367~6370;Eur.J.Org.Chem.2008、5446~5460;Bull.Chem.Soc.Jpn.1993、2685は、イソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製するための多数の環化方法を記載している。環化付加の可能な遷移状態について考察する。反応条件に応じた収率および異性体比も開示される。
【0004】
本発明の化合物を文献から公知の方法のうちの1つによって得る場合、これは工業規模の合成には不十分な収率および異性体純度をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/048882号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2018/228985号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters、1991、6367~6370
【非特許文献2】Eur.J.Org.Chem.2008、5446~5460
【非特許文献3】Bull.Chem.Soc.Jpn.1993、2685
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、工業規模での合成に適し、高い収率および異性体純度を有し、結果として面倒な精製方法を省くことができる、一般式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製する方法を提供することであった。
【0008】
この目的は、一般式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体
【化1】
(式中、
X2は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X3は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X4は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X5は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X6は、H、C1~C4アルキル、C1~C4フルオロアルキル、C1~C4フルオロアルコキシ、C1~C4アルコキシ、フッ素、CNであり、
R1は、H、C1~C12-アルキル、非置換ベンジルまたはモノ-もしくはジ-C1~C4アルキル置換ベンジルであり、
R2はC1~C4-アルキルである)
を調製する方法であって、
一般式(II)の化合物
【化2】
(式中、
X2~X6は上に示される定義を有し、
X7、X8、X10、X11は独立して、HまたはC1~C4-アルキルであり、
X9は、H、C1~C4-アルキルまたはN(C1~C4-アルキル)2である)
を、
追加の塩基、および一般式(II)の化合物に基づいて1~3.5当量の反応種「R3OMgHal」(IV)
(式中、R3はアルキル、非置換またはアルキル置換ベンジルであり、
Halはハロゲンである)
の形成を可能にする試薬の組み合わせを添加して、
式(III)の化合物
【化3】
(式中、
R1およびR2は上に示される定義を有する)
と反応させて、一般式(I)の化合物を得ることを特徴とする方法によって達成された。
【0009】
一般式(I)、(II)および(III)の化合物中の基の好ましい定義は以下の通りである:
X2が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X3が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X4が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X5が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X6が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X7、X8、X10、X11が独立して、H、メチル、エチルであり、
X9が、H、メチル、エチルまたはN(メチル)2であり、
R1がH、C1~C4-アルキルであり、
R2がメチル、エチルである。
【0010】
好ましくは、一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ:
-R4MgHalとR3OHまたは
-MgHal2とR3OMまたは
-MgHal2とMg(OR32
(式中、R3は、C2~C12-アルキル、非置換またはC1~C4-アルキル置換ベンジルであり、
Halはハロゲンであり、
Mはアルカリ金属であり、
R4は、アルキル、非置換アリール、置換アリール、非置換ベンジル、置換ベンジル、アリル、ビニルである)
のうちの1つによって生成される。
【0011】
あるいは、一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ:
-R5MgHalとR6R7CO
(式中、R5は、C1~C6-アルキル、アリール、ベンジルであり、
R6、R7は、H、C1~C6-アルキル、アリールである)
によって生成され、得られた基の定義
R3がR5R6R7Cに対応する。
【0012】
代替として提示される一般式(IV)の化合物を調製するための試薬の好ましい基の定義は以下の通りである:
R5が、C1~C4-アルキル、フェニル、ベンジル、p-トリルであり、
R6、R7が、H、C1~C4-アルキル、フェニルである。
【0013】
一般式(I)、(II)および(III)の化合物中の基の特に好ましい定義は以下の通りである:
X2がHであり、
X3が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X4がフッ素、Hであり、
X5が、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X6がHであり、
X7、X8、X11が独立して、H、メチル、エチルであり、
X9がH、N(メチル)2であり、
X10がHであり、
R1が、H、メチル、エチル、i-プロピル、i-ブチルであり、
R2がメチルである。
【0014】
より好ましくは、一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ:
-R4MgHalとR3OHまたは
-MgHal2とR3OMまたは
-MgHal2とMg(OR32
(式中、R3はC2~C8-アルキルであり、
Halは臭素、塩素であり、
Mはアルカリ金属であり、
R4は、C1~C8-アルキル、フェニル、ベンジル、p-トリル、ビニルである)
のうちの1つによって生成される。
【0015】
一般式(I)、(II)および(III)の化合物中の基の極めて特に好ましい定義は以下の通りである:
X2がHであり、
X3がH、フッ素であり、
X4がH、フッ素であり、
X5がH、フッ素であり、
X6がHであり、
X8がH、メチル、エチルであり、
X7、X11が独立して、H、メチルであり、
X9、X10がHであり、
R1が、H、メチル、i-プロピル、i-ブチルであり、
R2がメチルである。
【0016】
さらにより好ましくは、一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ:
-R4MgHalとR3OHまたは
-MgHal2とR3OMまたは
-MgHal2とMg(OR32
(式中、R3はi-プロピル、i-ブチル、2-ブチルであり、
Halは臭素、塩素であり、
Mはナトリウムであり、
R4は、メチル、エチル、n-ブチル、i-プロピルである)
のうちの1つによって生成される。
【0017】
一般式(I)、(II)および(III)の化合物中の基の最も好ましい定義は以下の通りである:
X2がHであり、
X3がフッ素であり、
X4がHであり、
X5がフッ素であり、
X6がHであり、
X7、X8、X11が独立して、H、メチルであり、
X9、X10がHであり、
R1が、H、メチル、i-ブチルであり、
R2がメチルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
アルキルは、各場合で指定される炭素原子数を有する飽和直鎖または分岐ヒドロカルビル基、例えばメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピルおよび1-エチル-2-メチルプロピルなどのC1~C12-アルキルを意味する。
【0019】
Halはハロゲンを意味し、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。この用語が基に使用される場合、Halは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。
【0020】
アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムまたはカリウムを意味する。
【0021】
アリールはフェニルまたはナフチルを意味する。
【0022】
式(I)の化合物は異性体混合物の形態をとり得る。所望のジアステレオマー過剰率は、先行技術と比較して最適化された反応条件によって増加する。1.8~2.2当量の反応種「R3OMgHal」(IV)が特に有利である。
【0023】
(S)-アルコールを使用する場合、主生成物は(S,S)-ジアステレオマーであり、(R,S)-ジアステレオマーは第2のジアステレオマーである。(R)-アルコールを使用する場合、主生成物は(R,R)-ジアステレオマーであり、(S,R)-ジアステレオマーは第2のジアステレオマーである。(rac)-アルコールを使用する場合、主生成物は(S,S/R,R)-rac-ジアステレオマーであり、(S,R/R,S)-rac-ジアステレオマーは第2のジアステレオマーである。
【0024】
式(I)の化合物は、対応するエステルとして、または加水分解後処理後にカルボン酸として単離され得る。
【0025】
結晶化による濃縮を介して、式(I)の化合物において最大100:0のジアステレオマー比が達成され得る。
【化4】
【0026】
この目的は、式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製する方法であって、一般式(II)の化合物を、追加の塩基、および一般式(II)の化合物に基づいて1~3.5当量の反応種「R3OMgHal」(IV)の形成を可能にする試薬の組み合わせを添加して、式(III)の化合物と反応させて、一般式(I)の化合物を得ることを特徴とする方法(スキーム1)によって達成された。
【0027】
(一般式(II)の化合物に基づいて)1.5~3.0当量の反応種「R3OMgHal」(IV)の使用が好ましい。
【0028】
(一般式(II)の化合物に基づいて)0.05~3.0当量の追加の塩基の使用も好ましい。
【0029】
(一般式(II)の化合物に基づいて)0.1~1.5当量の追加の塩基の使用が特に好ましい。
【0030】
(一般式(II)の化合物に基づいて)0.2~1.0当量の追加の塩基の使用が極めて特に好ましい。
【0031】
追加の塩基は任意の塩基である;第三級アミン、ピリジンおよびアミド塩基が好ましい。特に好ましい塩基は、N(C1~C4-アルキル)3を有する第三級アミン(2つまたは3つの異なるアルキル置換基が好ましくは存在する):トリエチルアミン[Et3N]、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン[CyN(メチル)2]、2-および3-ピコリン、メチルピリジン、メチルエチルピリジン、エチルピリジンである。Et3NおよびCyN(メチル)2が極めて特に好ましい。
【0032】
他の特に好ましい塩基は、アミド塩基、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジブチルホルムアミド(DBF)またはN-メチルピロリドン(NMP)である。
【0033】
第三級アミン塩基またはピリジン塩基とアミド塩基の組み合わせも特に好ましい。
【0034】
第三級アミン塩基とアミド塩基の組み合わせが極めて特に好ましい。
【0035】
水の添加も有利であり得、ジアステレオマー比(d.r.)のさらなる改善につながり得る。(一般式(II)の化合物に基づいて)最大1.0当量の水の使用が好ましい。
【0036】
環化は、通常、-25℃~70℃、好ましくは10℃~30℃の温度範囲内で行われる。
【0037】
さらに、環化は、場合により溶媒もしくは希釈剤または溶媒混合物の存在下で行われる。溶媒は、好ましくはトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸イソプロピル(i-PrOAc)、アセトニトリル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチル-THF、酢酸エチル(EtOAc)またはそれらの任意の比の混合物である。
【0038】
一般式(III)の化合物は、2段階プロセスを介して調製され、文献から公知である。第1段階は、ベイリス・ヒルマン反応である。関連する文献参照は、Drewes,S.E.;Hoole,R.F.A.[Synthetic Communications、1985、第15巻、12、1067~1074頁]である。第2段階については、関連する文献参照は、Nascimentoら(2003、Tetrahedron Asymmetry 14、311~311)である。
【0039】
一般式(II)および(III)の化合物は、国際公開第2018/228985号パンフレットからも公知である。式(II)の化合物からの式(IIa)の化合物の調製は、Binenfeld,ZlatkoらGlasnik Hemijskog Drustva Beograd(1966)、31(4~6)、243-50およびDaroszewski,J.らPharmazie(1986)、41(10)、699~702から公知である。
【0040】
表1は、試薬の様々な可能な組み合わせを示すが、この選択は網羅的ではない。
【0041】
実施例
本発明は、以下の実施例によって詳細に解明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0042】
分析方法
生成物を、1H NMR分光法および/またはLC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)によって特徴付けた。
【0043】
NMRスペクトルを、フロープローブヘッド(容量60μl)を取り付けたBruker Avance 400を用いて測定した。個々の場合において、Bruker Avance II 600を用いてNMRスペクトルを測定した。定量的NMR(qNMR)測定では、メチル3,5-ジニトロベンゾエートを内部標準として使用した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
実施例3(反応手順タイプA)
アルゴン雰囲気下、2当量(eq)の2-プロピルマグネシウムクロリド(4.00ml、THF中2mol/l)を最初に20℃で装入する。2当量の2-プロパノール(0.61ml)を、冷却(氷浴)しながら10分間にわたって滴加する。プロパンが抜け(わずかに泡立ち)、白色固体が析出する。添加が終了した後、ガスの発生が終了したら、得られた懸濁液を20℃で20分間撹拌する。その後、1当量のメチル3-ヒドロキシ-2-メチレンブタノエート(0.49ml、99.8%重量)を室温で添加し、撹拌を15分間継続する。混合物はより流動性になる。その後、1当量のトリエチルアミン(0.56ml)を撹拌しながら室温で5分間にわたって滴加する。室温でさらに15分間撹拌した後、3,5-ジフルオロ-N-ヒドロキシベンゼンカルボキシイミドイルクロリドのトルエン/THFの溶媒混合物中溶液(4.14g、18.5重量%)を、追加の1.5当量のN,N-ジ-N-ブチルホルムアミド(DBF)(1.10ml)と共にシリンジポンプによって約15℃で滴加する。添加時間は1時間(h)である。その後、反応混合物を室温に加温し、さらに1時間撹拌する。次いで、HCl溶液を反応混合物に添加し、酢酸エチルで抽出する。水相を酢酸エチルでもう一度抽出する。合わせた有機相を減圧下で濃縮する。過剰の水酸化ナトリウム水溶液を残渣に添加し、65℃で撹拌する。加水分解が完了したら、反応混合物を室温に冷却し、酸性化し(pH 1~2)、酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機相を減圧下で濃縮する。含有量(qNMR)を決定した後、生成物0.90gが残渣に存在する(83%)。ジアステレオマー比=93:7(HPLC)。
【0047】
実施例15(反応手順タイプB)
アルゴン雰囲気下、2当量(eq)の2-プロピルマグネシウムクロリド(4.00ml、THF中2mol/l)を最初に20℃で装入する。2当量の2-プロパノール(0.61ml)を、冷却(氷浴)しながら10分間にわたって滴加する。プロパンが抜け(わずかに泡立ち)、白色固体が析出する。添加が終了した後、ガスの発生が終了したら、得られた懸濁液を20℃で20分間撹拌する。その後、1当量のメチル3-ヒドロキシ-2-メチレンブタノエート(0.49ml、99.8%重量)を室温で添加し、撹拌を15分間継続する。混合物はより流動性になる。その後、1当量のN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(0.60ml)を撹拌しながら室温で5分間にわたって滴加する。室温でさらに15分間撹拌した後、0.3当量のDMF(92μl)を添加し、懸濁液を室温でさらに10分間撹拌し、次いで、約15℃に冷却する。その後、3,5-ジフルオロ-N-ヒドロキシベンゼンカルボキシイミドイルクロリドのトルエン/THFの溶媒混合物中溶液(3.33g、23.00重量%)を、追加の0.3当量の水(32μl)と共にシリンジポンプによって約15℃で滴加する。添加時間は1時間(h)である。その後、反応混合物を室温に加温し、さらに1時間撹拌する。次いで、HCl溶液を反応混合物に添加し、酢酸エチルで抽出する。水相を酢酸エチルでもう一度抽出する。合わせた有機相を減圧下で濃縮する。過剰の水酸化ナトリウム水溶液を残渣に添加し、65℃で撹拌する。加水分解が完了したら、反応混合物を室温に冷却し、酸性化し(pH 1~2)、酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機相を減圧下で濃縮する。含有量(qNMR)を決定した後、生成物0.89gが残渣に存在する(82%)。ジアステレオマー比=94:6(HPLC)。
【0048】
実施例19(反応手順タイプC)
アルゴン雰囲気下、2当量(eq)のメチルマグネシウムクロリド(2.67ml、THF中3mol/l)を最初に0℃(氷浴冷却)で装入する。2.075当量のアセトアルデヒドの脱水THF中溶液(THF1.25ml中0.47ml)を、10分間(min)にわたって撹拌しながら0℃で滴加する。添加中に白色固体が析出する。懸濁液を0℃でさらに30分間撹拌し、次いで、約15分間にわたって室温(RT)に加温する。その後、1当量のメチル(3S)-3-ヒドロキシ-2-メチレンブタノエート(0.52ml、95.5%重量、98.8% e.e.)を室温で添加し、撹拌を15分間継続する。混合物はより流動性になる。その後、1当量のトリエチルアミン(0.56ml)を撹拌しながら室温で5分間にわたって滴加する。室温でさらに15分間撹拌した後、0.3当量のDMF(92μl)を添加し、懸濁液を室温でさらに10分間撹拌し、次いで、約15℃に冷却する。その後、3,5-ジフルオロ-N-ヒドロキシベンゼンカルボキシイミドイルクロリドのトルエン/THFの溶媒混合物中溶液(2.58g、29.6重量%)を、追加の0.3当量の水(22μl)と共にシリンジポンプによって約15℃で滴加する。添加時間は1時間(h)である。その後、反応混合物を室温に加温し、さらに1時間撹拌する。次いで、HCl溶液を反応混合物に添加し、酢酸エチルで抽出する。水相を酢酸エチルでもう一度抽出する。合わせた有機相を減圧下で濃縮する。過剰の水酸化ナトリウム水溶液を残渣に添加し、65℃で撹拌する。加水分解が完了したら、反応混合物を室温に冷却し、酸性化し(pH 1~2)、酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機相を減圧下で濃縮する。含有量(qNMR)を決定した後、生成物0.92gが残渣に存在する(84%)。ジアステレオマー比=93:7(HPLC)。
【0049】
実施例20
メチル(3S)-3-ヒドロキシ-2-メチレンブタノエート6.79g(51.2mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温でジクロロメタン650mlに溶解し、イソプロパノールを添加した。透明な溶液を0℃に冷却した。その後、THF中EtMgBr(1M)156ml(156mmol)をゆっくり滴加した(発熱性)。溶液は濁った。次いで、3,5-ジフルオロ-N-ヒドロキシベンズイミドイルクロリド10.00g(52.2mmol)のDCM 100ml中溶液を撹拌しながらゆっくり滴加し(15分)、混合物を徐々に室温に加温した。混合物は明確な黄色に変化した。EA/n-ヘプタン1:1中のTLCは、30分後に完全な変換を示した。
【0050】
後処理:
溶液を2N HClおよび飽和NaCl溶液の1:1混合物1lに添加し、塩化メチレン毎回400mlで2回抽出し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物のLCMS分析は、86%~14%の生成物のジアステレオマー比を示した。
シリカゲルクロマトグラフィー(n-hep/EA)
Fr.1m=親油性ジアステレオマー600mg(4.0%)
1H NMR(CDCl3):1.10(d,3H,CHCH3),2.3(s br.,1H,OH),3.53(d,1H,CHH isoxazoline),3.72(d,1H,CHH isoxazoline),3.84b(s,3H,OCH3),4,34(q,1H,CHCH3),6.88(tt,1H,arom.H),7.22(m,2H,arom.H).
Fr.2m=極性ジアステレオマー7700mg(51.7%)
1H NMR(CDCl3):1.29(d,3H,CHCH3),2.10(d,1H,OH),3.57(d,1H,CHH isoxazoline),3.69(d,1H,CHH isoxazoline),3.84b(s,3H,OCH3),4,24(q,1H,CHCH3),6.88(tt,1H,arom.H),7.18(m,2H,arom.H).
【国際調査報告】