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▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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  • 特表-電気モータのロータを製造する方法 図1
  • 特表-電気モータのロータを製造する方法 図2
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  • 特表-電気モータのロータを製造する方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電気モータのロータを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241126BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534210
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022081959
(87)【国際公開番号】W WO2023104446
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021213955.8
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティム マーレ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター セーヴァー
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA23
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA32
5H601GC12
5H601GC25
5H601KK21
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CB05
5H622PP19
(57)【要約】
本発明は、ロータ軸(3)に配置されている積層コア(4)を備える、電気モータ(2)のロータ(1)を製造する方法に関し、この方法において、・磁石ポケット(6)と、磁石ポケット(6)内に配置されている磁石(7)とを備える、周方向(5)において相対的に回動させられている少なくとも2つの積層コア(4)をロータ軸(3)に配置し、・軸線方向(8)において、2つの積層コア(4)の間に、少なくとも1つの開口(10)を備える少なくとも1つの有孔ディスク(9)を、開口(10)が、有孔ディスク(9)に接する2つの積層コア(4)の2つの磁石ポケット(6)に重畳し、2つの磁石ポケット(6)を連結するように配置し、・磁石ポケット(6)と磁石(7)との間の中間空間を、開口(10)を通って流れる、硬化する封止材料(11)で充填する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸(3)に配置されている積層コア(4)を備える、電気モータ(2)のロータ(1)を製造する方法であって、
周方向(5)において相対的に回動させられている少なくとも2つの積層コア(4)であって、磁石ポケット(6)と、前記磁石ポケット(6)内に配置されている磁石(7)とを備える積層コア(4)を、前記ロータ軸(3)に配置し、
軸線方向(8)において、2つの積層コア(4)の間に、少なくとも1つの開口(10)を備える少なくとも1つの有孔ディスク(9)を、前記開口(10)が、前記有孔ディスク(9)に接する2つの積層コア(4)の2つの磁石ポケット(6)に重畳し、前記2つの磁石ポケット(6)を結合するように配置し、
前記磁石ポケット(6)と前記磁石(7)との間の中間空間を、前記開口(10)を通って流れる、硬化する封止材料(11)で充填する、
方法。
【請求項2】
封止材料(11)としてエポキシ樹脂を使用する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有孔ディスク(9)を、個々の薄板ディスク(14)から作製する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
約0.2mmの厚さdを有する薄板ディスク(14)を使用する、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
隣接する2つの磁石(7)を軸線方向(8)において固定するウェブ(15)またはカンチレバーアーム(16)が少なくとも1つの開口(10)を通って延在する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの磁石(7)を、対応する磁石ポケット(6)内へ形状結合的に挿入する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法にしたがって製造されている、
電気モータ(2)用のロータ(1)。
【請求項8】
請求項7記載のロータ(1)を備える、
電気モータ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ軸に配置されている積層コアを備える、電気モータのロータを製造する方法に関する。本発明はさらに、この方法によって製造されたロータと、このようなロータを備える電気モータとに関する。
【0002】
独国特許出願公開第102017214309号明細書から、電気機械用のロータが公知であり、このロータは、ロータの軸線方向において相前後して配置されている複数の磁石ポケットを有する少なくとも1つの積層コアを備え、この磁石ポケット内には各磁石が収容されており、これらの磁石は、硬化した封止材料によって磁石ポケット内に固定されている。この文献では、磁石ポケットは、積層コア内に形成されている少なくとも1つの分配システムを介して互いに流体接続されており、この分配システムは、磁石ポケット毎に、各磁石ポケットに流体接続されている少なくとも1つの流体通路を有している。分配システムは、これらの充填通路に共通の、分配システムに流体接続されている少なくとも1つの分配通路を有しており、硬化した封止材料は、磁石ポケットから磁石ポケットへと連続的にこの分配システムを通って延在し、これによってロータを固定している。
【0003】
ロータの磁石ポケットにおける磁石の固定のために、ならびにロータの積層コアへの磁石の熱結合を改善するために、ロータの磁石ポケットへ注入される硬化可能な封止材料が使用されることが多い。この封止材料は、個々の積層コア(スタック)から成るロータ全体を通流する。これらの積層コアは、3つ組のトルクに基づいて、相対的に回動させられている。封止材料がロータ全体を通流することができるようにするために、いわゆるスキュー角(傾斜角)を考慮して、個々の磁石ポケットの相応する大きさの横断面重畳が必要になり、このことは、相応する大きさの磁石ポケットを生じさせることにもなり、これらの磁石ポケットも、電気モータ全体のトルク密度を低減させるので、望ましくない。
【0004】
したがって本発明の課題は、従来技術から公知の欠点を克服することができる、ロータを製造する方法を提供することである。
【0005】
上述の課題は、本発明に相応に、独立請求項1の対象によって解決される。有利な実施形態は従属請求項の対象である。
【0006】
本発明は、ロータ軸に配置されている積層コアにおいて、実質的に軸線方向において連続する貫通部を提供するという大まかな思想に基づいており、この貫通部を通じて、一方の端面から他方の端面まで封止材料、たとえばエポキシ樹脂を圧入し、これによってロータと、ロータの磁石ポケット内に位置する磁石とを固定することができる。ロータ軸に配置されている積層コアを備える、電気モータのロータを製造する、本発明による方法では、磁石ポケットと、磁石ポケット内に配置されている磁石とを備える、周方向において相対的に回動させられている少なくとも2つの積層コアをロータ軸に配置し、かつ軸線方向において、これら2つの積層コアの間に、少なくとも1つの開口を備える少なくとも1つの有孔ディスクを、この開口が、有孔ディスクに相対して接する2つの積層コアの2つの磁石ポケットを互いに連結するように配置する。これによって、第1の積層コアの磁石ポケットが有孔ディスク内の開口と重畳し、これが同様に、第2の積層コアの磁石ポケットと重畳する。次いで、磁石ポケットと磁石との間の中間空間が封止材料、たとえばエポキシ樹脂で充填され、このとき封止材料は開口を通って流れ、好ましくはロータの一方の端面から、複数の磁石ポケットもしくは有孔ディスクの開口を通って、ロータの他方の端面まで圧入される。これによって個々の磁石ポケットを十分に小さく形成することができ、これによって電気モータの比較的高いトルク密度を保証することができる。さらに、対応する積層コアに対する磁石の改善された熱結合が可能になる。
【0007】
好適には、封止材料としてエポキシ樹脂が使用される。このようなエポキシ樹脂は、一方では、各磁石を磁石ポケット内に保持することができ、かつ硬化した状態において、個々の積層コアが相対的にもしくは有孔ディスクに対して回動することを阻止することもできる。ここで、エポキシ樹脂は、良好な熱伝導体であると同時に電気絶縁性である。
【0008】
本発明による方法の有利な発展形態では、有孔ディスクを、個々の薄板ディスクから作製する。この際、有孔ディスクを製造するための薄板ディスクは、積層コア用の薄板ディスクと同じ材料から形成されていてもよい。ここで、特に、約0.2mmの軸線方向の厚さdを有する薄板ディスクを使用することができ、これによって、有孔ディスクの軸線方向の延在に関してとりわけ微細な調整が可能になる。積層コアに対してだけでなく、有孔ディスクに対しても電磁鋼板を使用することによっても、電気モータのトルク密度を高めることができる。
【0009】
本発明による方法のさらなる有利な実施形態では、有孔ディスクの少なくとも1つの開口を通って、隣接する2つの磁石を軸線方向において固定するウェブが延在している。有孔ディスクに設けられている開口は、実質的に、封止材料のための貫通開口として用いられ、開口を横切るウェブは、さらに、各有孔ディスクに接する2つの磁石の、それらの磁石ポケットにおける軸線方向固定も生じさせる。開口を横切るこのようなウェブもしくは横方向ウェブは、有孔ディスクの補強のためにも、ひいては有孔ディスクの剛性を高めるためにも役立ち、これによって有孔ディスクの取扱いが改善される。さらに、このようなウェブを介して、必要な封止材料の量を減らすこともできる。ここで、開口を横切るウェブが開口を完全に横断する必要はなく、単に、開口内に突入するカンチレバーアームとして形成されていてもよいことが自明である。このようなカンチレバーアームによっても既に、隣接する2つの磁石の軸線方向固定が得られる。
【0010】
好適には、少なくとも1つの磁石が、対応する磁石ポケット内へ形状結合的に挿入される。電気モータ全体の可能な限り高いトルク密度を達成できるようにするために、磁石ポケットを可能な限り完全に磁石で満たすことが望ましい。さらに、磁石と、対応する磁石ポケットとの間の形状結合的な結合によって、封止材料を用いなくても、磁石ポケット内での各磁石の固定が既に達成され得る。
【0011】
本発明は、さらに、先行する段落に記載された方法に相応して、電気モータ用のロータを製造するという大まかな思想に基づいている。このようなロータは、高いトルク密度、ひいては高い出力ならびに個々の積層コア同士の確実な固定という点において優れている。
【0012】
本発明はさらに、電気モータにこのようなロータを装備するという大まかな思想に基づいている。したがって、ロータに関して説明した利点を、電気モータにも転用することができる。
【0013】
本発明のさらなる重要な特徴および利点は、従属請求項、図面および図面に基づく対応する図説から明らかになる。
【0014】
上述した特徴および後述する特徴が、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ挙げられた組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせにおいても、または単独でも使用可能であることが自明である。
【0015】
本発明の好適な実施例を図面に示し、以降の明細書において詳しく説明する。なお、同じ参照符号は、同じ構成要素または類似の構成要素または同じ機能を有する構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による方法に相応に製造されたロータを示す概略断面図である。
図2】封止材料の流路を有する開口の領域における有孔ディスクの一部を示す概略図である。
図3】積層コアを、積層コアの磁石ポケット内に配置されている磁石と、有孔ディスクと共に示す概略端面図である。
図4】有孔ディスクの一部を示す概略図である。
【0017】
図1に相応に、電気モータ2の本発明によるロータ1は、ロータ軸3に配置されている積層コア4を有している。これらは、高いトルク密度を達成することができるようにするために、周方向において相対的に回動させられている。これらの積層コア4のそれぞれは、磁石ポケット6(図4も参照)を有しており、これらの磁石ポケット6内には、対応する磁石7が配置されている。軸線方向8において、隣接する2つの積層コア4の間には、本発明に相応に、少なくとも1つの開口10を備える有孔ディスク9(図2図4も参照)が配置されており、有孔ディスク9は、有孔ディスク9の開口10が隣接する2つの磁石ポケット6を互いに連結するように、2つの積層コア4の間に配置されている。これによって、開口10は、たとえば、図1に関して、各有孔ディスク9の右側に配置されている積層コア4の磁石ポケット6および各有孔ディスク9の左側に配置されている積層コア4の磁石ポケット6と重畳する。ここで、個々の積層コア4の磁石ポケット6が周方向において回動させられているにもかかわらず、個々の積層コア4の間の安定的な結合を達成することができるようにするために、個々の磁石ポケット6と、個々の磁石ポケット6内に配置されている磁石7との間の中間空間が、封止材料11、たとえばエポキシ樹脂で封止され、ここで封止材料11は、たとえば、ロータ1の反対側にある箇所13で再び流出するまで、箇所12(図1を参照)において中間空間内に圧入される。したがって、個々の開口10は、封止材料11用の貫通通路である。
【0018】
さらに、有孔ディスク9(図2を参照)が、個々の薄板ディスク14から作製されていてもよく、これらの薄板ディスク14は、好ましくは、積層コア4と同じ材料、たとえば電磁鋼板から形成されている。ここで、各薄板ディスク14の厚さdは、たとえば0.2mmであってもよい。
【0019】
さらに、これらの開口10のうちの少なくとも1つの開口10を通って、ウェブ15が延在していてもよく、ウェブ15は、各開口10を完全に横切って(図4を参照)、開口10の、相対している面を互いに結合しているか、または単にカンチレバーアーム16の様式で(図2を参照)開口10内に係合している。このようなウェブ15またはカンチレバーアーム16は、この場合、軸線方向において隣接する2つの磁石ポケット6内に配置されている磁石7に対する軸線方向固定部である。
【0020】
ここで、これらの磁石7のうちの少なくとも1つの磁石7を、対応する磁石ポケット6内に形状結合的に挿入することができ、これによって封止材料11で充填されるべき中間空間が減り、これによって電気モータ2のトルク密度もしくは出力密度を高めることができる。
【0021】
とりわけ、設けられている有孔ディスク9によって、個々の積層コア4同士の確実な固定を保証することができる。
【0022】
再度、図3を観察すると、図3において、中間空間の封止の際に、封止材料11がまず第1の磁石ポケット6aを通って有孔ディスク9内の開口10を介して第2の磁石ポケット6b内へ流入し、これによって、有孔ディスク9にそれぞれ隣接して配置されている積層コア4を有孔ディスク9に固定することが見てとれる。図3では、見易くするために、積層コア4は図示されていない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】