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特表2024-544707FGFR4阻害剤酸性塩およびその製造方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】FGFR4阻害剤酸性塩およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20241126BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C07D471/04 116
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P1/16
A61P1/18
A61P1/14
A61P11/00
A61P13/08
A61P15/00
A61P17/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534767
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 CN2022138455
(87)【国際公開番号】W WO2023109776
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】202111522461.1
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519166372
【氏名又は名称】アビスコ セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ホウ キウェン
(72)【発明者】
【氏名】ユ ホンピン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB09
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA05
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、FGFR4阻害剤酸性塩およびその製造方法と使用に関する。前記FGFR4阻害剤は、式(I)で表される構造を有する化合物N-((3S,4S)-3-((6-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-8-(3-メトキシ-3-メチルアゼチジン-1-イル)ピリド[3,4-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アクリルアミドであり、前記酸性塩はp-トルエンスルホン酸塩であり、遊離態の式(I)で表される化合物の溶解性およびバイオアベイラビリティなどの物理的と化学的特性を大幅に改善し、臨床薬物製剤開発の需要を満たすことができる。本発明にかかるp-トルエンスルホン酸塩は、非常に重要な臨床使用価値を有し、新世帯FGFR4小分子阻害剤への開発の促進が期待されている。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【化1】
【請求項2】
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、結晶型化合物であることを特徴とする
請求項1に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項3】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.02±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、19.60±0.2°および22.90±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含み、好ましくは、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、10.60±0.2°、12.72±0.2°、18.56±0.2°、21.22±0.2°および24.90±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークをさらに含み、より好ましくは、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、15.32±0.2°、23.82±0.2°、24.12±0.2°、24.60±0.2°および25.58±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークをさらに含むことを特徴とする
請求項2に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターンは、9.02±0.2°、10.60±0.2°、12.04±0.2°、12.72±0.2°、15.32±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、18.56±0.2°、19.60±0.2°、20.60±0.2°、21.22±0.2°、22.90±0.2°、23.82±0.2°、24.12±0.2°、24.60±0.2°、24.90±0.2°、25.58±0.2°、27.78±0.2°、29.04±0.2°、31.48±0.2°、36.60±0.2°および38.16±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含むことを特徴とする
請求項2に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の単位胞は、P1であり、a=9.079(3)Å、b=10.561(3)Å、c=10.882(3)Åであり、単位胞の体積は、908.1(4)Åであることを特徴とする
請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項6】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、水和物であり、好ましくは、前記水和物の各分子に1~3個の水分子が含まれ、より好ましくは、前記水和物の各分子に1個、2個または3個の水分子が含まれることを特徴とする
請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項7】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造方法であって、
1)遊離態の式(I)で表される化合物を水系溶媒または適切な有機溶媒に溶解または分散させ、前記系にp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸溶液を加えて造塩反応を行うか、あるいは、遊離態の式(I)で表される化合物をp-トルエンスルホン酸溶液に加えて造塩反応を行う工程と、
2)前記造塩反応過程に析出した固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を収集するか、あるいは、造塩系に過飽和度を生じさせることによって固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を得る工程とを含むことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項8】
前記工程2)において、造塩系に過飽和度を生じさせる方法は、種結晶の添加、溶媒の揮発、貧溶媒の添加または降温の1つまたは複数から選ばれることを特徴とする
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程1)で使用される適切な有機溶媒は、アルコール類、クロロアルカン、ケトン類、エーテル類、環状エーテル類、エステル類、アルカン類、シクロアルカン類、ベンゼン類、アミド類、スルホキシド類の有機溶媒またはそれらの混合物から選ばれることを特徴とする
請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記適切な有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メトキシエチルエーテルまたはそれらの混合物から選ばれることを特徴とする
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
治療有効量の請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩と薬用可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
FGFR4阻害剤薬物の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の使用。
【請求項13】
肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する薬物の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の使用。
【請求項14】
肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する方法であって、
治療を必要とする患者に治療有効量の請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩、または請求項11に記載の医薬組成物を投与することを含むことを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の評細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は薬物開発分野に属し、具体的には、FGFR4阻害剤酸性塩およびその製造方法と使用に関する。
[背景技術]
【0002】
線維芽細胞成長因子(FGF)は、生物学的活性が異なる22種の構造関連ポリペプチドを有するファミリーであり、FGFの対応する受容体(FGFR)は受容体チロシンキナーゼのファミリーRPTKに属する。現在、FGFR1、FGFR2、FGFR3およびFGFR4の4つの受容体が見出されており、それらは、対応するリガンドFGFとの相互作用が受容体の二量体化および自己リン酸化を引き起こすため、MAPKおよびAKTを含む下流の複数のシグナル伝達カスケード反応を開始する。肝細胞癌(HCC)は、中国癌に関連する死亡の主な原因の1つであり、毎年発症率が最も急速に増加する癌の1つでもある。現在の第一選択の治療計画はソラフェニブであり、かつ承認された第二選択の薬物がなく、抗悪性腫瘍剤を有する標的薬物を依然として必要とする。5%~10%の肝細胞癌患者においてFGF19の過剰発現を有するが、FGFR4はヒト肝細胞に存在する優位性FGFRであり、肝細胞におけるその高発現は肝細胞腫瘍の侵襲性に相関すると考えられている。したがって、FGFR4は肝臓癌において非常に重要な役割を果たしている。また、FGF19とFGFR4との相互作用は、他のタイプの癌(例えば、胃癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌)の侵襲性に相関するとも考えられている。
【0003】
現在、高選択性FGFR4阻害剤は、FGFR4シグナル経路の異常によって引き起こされる癌疾患を効果的に治療することができ、FGFR1-3阻害によって引き起こされる高リン血症などの関連する副作用を回避することができ、高選択性FGFR4の小分子阻害剤は腫瘍標的治療分野において大きな使用の見通しを有し、FGFR4阻害剤は、良好な薬物候補薬として、中国国内と海外の肝臓癌およびその他の腫瘍標的薬物のニーズを満たすとともに、安全性に優れ、特異性がより高いという利点をもたらすことができる。
【0004】
長期にわたる研究過程において、アビスコ セラピューティクス カンパニー リミテッド(Abbisko Therapeutics Co.,Ltd)は、構造が新規な高選択性FGFR4阻害効果を有する小分子化合物を発明し、関連特許がWO2018113584A1(国際公開日:2018年6月28日)であり、その代表的な化合物は以下のとおりである:
【0005】
【化1】
【0006】
N-((3S,4S)-3-((6-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-8-(3-メトキシ-3-メチルアゼチジン-1-イル)ピリド[3,4-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アクリルアミドという化合物(式(I)で表される化合物)は、FGFR4標的の阻害作用および他のFGFR1-3キナーゼ受容体に対する選択性を顕著に向上させ、現在の中国国内と海外での肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫などの腫瘍標的治療のニーズを満たすことができる。
【0007】
しかし、当該特許出願の時点では、臨床および工業的使用に適した原料およびプロセスが開発されておらず、式(I)で表される化合物が薬物の開発に適しているかどうかについて、さらなる研究はなされていない。発明者らのその後の研究によって、WO2018113584A1に開示された遊離塩基化合物は水および生理溶媒に難溶であり、バイオアベイラビリティも比較的に低く、臨床要件を満たすことができず、臨床製剤の開発に適さないことが判明した。したがって、臨床研究および市販されている薬物製剤の需要を満たすために、薬物の凝集状態をさらに研究して化合物の物理的と化学的特性を改善し、薬学的または臨床的使用の需要を満たし、薬物の開発に適応できる塩型または結晶型を有する化合物を開発して従来技術に存在する欠陥を克服することが急務となっている。
[発明の概要]
【0008】
従来技術に存在する問題を解決するために、発明者らは、式(I)で表される化合物N-((3S,4S)-3-((6-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-8-(3-メトキシ-3-メチルアゼチジン-1-イル)ピリド[3,4-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アクリルアミドの凝集状態をさらに鋭意研究しており、長期にわたる研究において、発明者らは、p-トルエンスルホン酸塩が遊離態の式(I)で表される化合物の溶解性およびバイオアベイラビリティを大幅に改善することができ、吸湿性および化学的安定性などの物理的と化学的特性も工業生産の需要を満たすことができ、臨床薬物製剤開発の需要を満たすことができることを意外に見出した。本発明にかかるp-トルエンスルホン酸塩は、癌、特に肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する薬物の製造に広く使用されており、非常に重要な臨床使用価値を有し、新世帯FGFR4小分子阻害剤への開発の促進が期待されている。
【0009】
本発明の第1の態様では、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を提供する。
【0010】
【化2】
【0011】
好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、結晶型化合物である。
さらに好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.02±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、19.60±0.2°および22.90±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含む。
【0012】
またさらに好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.02±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、19.60±0.2°、22.90±0.2°、10.60±0.2°、12.72±0.2°、18.56±0.2°、21.22±0.2°および24.90±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含む。
【0013】
またさらに好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.02±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、19.60±0.2°および22.90±0.2°、10.60±0.2°、12.72±0.2°、18.56±0.2°、21.22±0.2°、24.90±0.2°、15.32±0.2°、23.82±0.2°、24.12±0.2°、24.60±0.2°および25.58±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含む。
【0014】
好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターンは、9.02±0.2°、10.60±0.2°、12.04±0.2°、12.72±0.2°、15.32±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、18.56±0.2°、19.60±0.2°、20.60±0.2°、21.22±0.2°、22.90±0.2°、23.82±0.2°、24.12±0.2°、24.60±0.2°、24.90±0.2°、25.58±0.2°、27.78±0.2°、29.04±0.2°、31.48±0.2°、36.60±0.2°および38.16±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含む。
【0015】
最も好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターンは、表1に示される回折角(2θ)におけるピークと基本的に同じであり、回折角(2θ)および関連する強度データ(±0.2°)は、以下のとおりである。
【0016】
【表1】
【0017】
好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の単位胞は、P1であり、a=9.079(3)Å、b=10.561(3)Å、c=10.882(3)Åであり、単位胞の体積は、908.1(4)Å3である。
【0018】
好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、水和物である。
【0019】
より好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の水和物の各分子に1~3個の水分子が含まれる。
【0020】
またさらに好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の水和物の各分子に1個、2個または3個の水分子が含まれる。
【0021】
本願の発明創造として、出願人は、前記のいずれか一項のX線粉末回折データを有する式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の結晶を結晶型A(Form A)として指定し、得られた結晶は、DSC、TGAおよびXRPDによって物理的に特徴付けられ、良好な結晶性固体であることが示され、そのDSCおよびTGA結果は、図1図2に示されるように、前記結晶型の式(I)で表される化合物酸性塩が一水和物であることが示されている。
【0022】
本発明の第2の態様では、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造方法を提供し、
1)遊離態の式(I)で表される化合物を水系溶媒または適切な有機溶媒に溶解または分散させ、前記系にp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸溶液を加えて造塩反応を行うか、あるいは、遊離態の式(I)で表される化合物をp-トルエンスルホン酸溶液に加えて造塩反応を行う工程と、
2)前記造塩反応過程に析出した固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を収集するか、あるいは、造塩系に過飽和度を生じさせることによって固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を得る工程とを含む。
【0023】
好ましい形態として、前記工程2)において、造塩系に過飽和度を生じさせる方法は、種結晶の添加、溶媒の揮発、貧溶媒の添加または降温の1つまたは複数を含む。
【0024】
好ましい形態として、前記で得られた固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、結晶型式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩である。
【0025】
好ましい形態として、前記工程1)において、造塩過程で使用される適切な有機溶媒は、アルコール類、クロロアルカン、ケトン類、エーテル類、環状エーテル類、エステル類、アルカン類、シクロアルカン類、ベンゼン類、アミド類、スルホキシド類の有機溶媒またはそれらの混合物から選ばれる。
【0026】
好ましい形態として、前記適切な有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メトキシエチルエーテルまたはそれらの混合物から選ばれる。
【0027】
本発明の第3の態様では、治療有効量の前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩と薬用可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0028】
本発明の第4の態様では、FGFR4阻害剤薬物の製造における、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の使用を提供する。
【0029】
本発明の第5の態様では、肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する薬物の製造における、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の使用を提供する。
【0030】
本発明の第6の態様では、治療を必要とする患者に治療有効量の前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩または前記医薬組成物を投与することを含む、肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する方法提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の示差走査熱量測定図であり、X軸は、温度(℃)、Y軸は、熱流(W/G)である。
図2】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の熱重量分析図であり、X軸は、温度(℃)、Y軸は、重量減少率(%)である。
図3】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)のX線粉末回折パターンであり、X軸は、回折ピーク角度2θ値(°)、Y軸は、ピーク強度である。
図4】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の単結晶のX線回折模擬粉末回折パターン(下)および式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の実測XRPDパターン(上)である。横座標は、2θ値(°)、縦座標は、ピーク強度を表す。
図5】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の単結晶の単位胞図である。
図6】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)のDVSパターンである。横座標は、相対湿度(%)、縦座標は、重量変化(%)を表す。
図7】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)および遊離態の式(I)で表される化合物の、25%のPEG300/5%のSolutol HS15/70%のwater溶媒における時間/溶解度曲線である。横座標は、時間(時間)、縦座標は、濃度(mg/mL)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[具体的な実施形態]
薬物は、結晶型によって、バイオアベイラビリティ、溶解度、融点、化学的と物理的安定性などが異なるため、さらに薬物の安全性、有効性に影響を与える。薬物の開発に適する塩型または結晶型を開発するために、発明者らは、式(I)で表される化合物N-((3S,4S)-3-((6-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-8-(3-メトキシ-3-メチルアゼチジン-1-イル)ピリド[3,4-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アクリルアミドを鋭意研究し、式(I)で表される化合物に対して塩型および結晶型を大量にスクリーニングしたところ、p-トルエンスルホン酸塩は、遊離態の式(I)で表される化合物の溶解性およびバイオアベイラビリティなどの物理的と化学的特性を大幅に改善することができ、吸湿性および化学的安定性などの物理的と化学的特性も工業生産の需要を満たすことができ、臨床薬物製剤開発の需要を満たすことができ、新世帯FGFR4小分子阻害剤への開発の促進が期待されている。
【0033】
詳述:相反する陳述がない限り、以下の明細書と特許請求の範囲で使用される用語は下記の意味となる。
【0034】
「医薬組成物」は、1つまたは複数の本明細書に記載された化合物あるいはその生理学的/薬学的に許容される塩またはプロドラッグとほかの化学成分の混合物と、ほかの成分、例えば、生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤とを含むものを表す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮するためのものである。
【0035】
「多結晶体」は、同じ化学組成を有するが、当該結晶を構成する分子、原子および/またはイオンの空間配置が異なる結晶型を指す。多結晶体は同じ化学組成を有するが、それらの充填および幾何学的配置は異なり、融点、形状、色、密度、硬度、変形性、安定性、溶解度、溶解速度と類似の特性などの異なる物理的特性を示すことがある。両方の多結晶体は、それらの温度-安定性の関係に応じて、単変性であっても、互変異性であってもよい。単変性系では、2つの固相間の相対安定性は、温度の変化に対して不変のままである。逆に、互変異性系では、遷移温度が存在し、この2つの相の安定性が切り替える。このような化合物が異なる結晶構造で存在する現象は、薬物多結晶現象と呼ばれている。
【0036】
本発明の様々な結晶構造は、当業者に公知の様々な分析技術を用いて互いに区別することができる。そのような技術は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)および/または熱重量分析(TGA)を含むが、これらに限定されない。
【0037】
方法と材料
1.1、X線粉末回折
当業者は、X線粉末回折パターンが、使用される測定条件に依存する測定誤差の下で得られてもよいことを認識するであろう。X線粉末回折パターンの強度は、使用される材料の条件によって変動することができる。相対強度は、実験条件によって変化する可能性もあり、対応的には、正確な強度は考慮に入れられない。また、従来のX線粉末回折角度の測定誤差は通常、5%以下程度であり、かつこのような測定誤差は、前記回折角度に該当すると考えられる。したがって、本発明の結晶構造は、本明細書に開示された図面に示されるX線粉末回折パターンと完全に同じであるX線粉末回折パターンを提供する結晶構造に限定されない。図面に開示されたものと基本的に同じであるX線粉末回折パターンを有する結晶構造はいずれも、本発明の範囲に含まれる。当業者は、X線粉末回折パターンと基本的に同じであることを決定する能力を有するべきである。当業者に既知の他の適切な標準較正である。しかし、相対強度は、結晶の大きさや形状によって変化する場合がある。
【0038】
本発明にかかる化合物の結晶型は、そのX線粉末回折パターンによって特徴付けられた。したがって、Cu Kα放射線(1.54Å)を使用して反射モードで操作するGADDS(一般面積回折検出器システム)CSを有するBruker D8 Discover X線粉末回折計において、前記塩のX線粉末回折パターンを取得した。管電圧を40 kV、電流量を40 mAに設定してスキャンを行った。3.0°~40°の2θの範囲内でサンプルを60秒間スキャンした。2θによって表されるピーク位置について、コランダム標準品を用いて回折計を較正した。すべての分析は通常、20℃~30℃で実施した。4.1.14TバージョンWNTソフトウェア用のGADDSを使用して、データを取得および積分した。2003年に発行された9.0.0.2バージョンEvaを有するDiffracPlusソフトウェアを使用して、回折パターンを分析した。
【0039】
XRPDサンプルの製造は通常、サンプルを単結晶シリコン上に置き、ガラス板または同等物でサンプル粉末をプレスして、サンプルの表面が平坦で適切な高さを有することを確保することによって行われた。次いで、サンプルホルダーをBruker XRPD装置に入れ、前記に説明した装置パラメータを用いてX線粉末回折パターンを取得した。このようなX線粉末回折分析の結果に関連する測定の差異は、(a)サンプル製造物(例えば、サンプルの高さ)における誤差、(b)装置誤差、(c)較正差異、(d)作業者の誤差(ピーク位置を測定する時に生じる誤差を含む)、および(e)物質の特性(例えば、好ましい配向誤差)を含む、複数の要因から生じた。較正誤差およびサンプルの高さ誤差は、多くの場合、すべてのピークが同じ方向にシフトすることをもたらす。一般的には、この較正係数は、測定されたピーク位置を予想されるピーク位置と一致させ、予想される2θ値±0.2°の範囲内にあり得る。
【0040】
1.2、示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)実験は、TA InstrumentsTMモデルQ2000において行われた。サンプル(約1~6 mg)をアルミニウムトレイで秤量し、1 mg%まで正確に記録し、DSCに移した。当該装置を窒素ガスで50 mL/minでパージした。室温から350℃の間に、10℃/minの加熱速度でデータを収集した。吸熱ピークを下に向けた場合にプロットした。しかし、当業者は、DSC測定において、加熱速度、結晶形状と純度および他の測定パラメータによって、実測された開始温度および最高温度がある程度の変動を有することに気付いた。
【0041】
1.3、熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)実験は、TA InstrumentsTMモデルQ500において行われた。サンプル(約10~30 mg)を、予め風袋質量が秤量された白金トレイに入れた。装置でサンプルの重量を正確に測定し、1 mg‰まで記録した。当該炉を窒素ガスで100 mL/minでパージした。室温から300℃の間に、10℃/minの加熱速度でデータを収集した。
【0042】
1.4、動的水蒸気吸着法(DVS)
動的水蒸気吸着法(DVS)を使用して結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を特徴付ける実験方法としては、少量の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩粉末を取り、装置とセットをする精密なサンプルパンに置き、サンプルを装填した後、装置に送り込んで測定する。本特許における動的水蒸気吸着法に使用されるすべての装置の型番はDVS Intrinsicであり、実験パラメータは、キャリアガスとして窒素ガスを採用するように設けられ、平衡到達の判定基準として一定温度は25℃、単位時間当たりの質量百分率変化率(dm/dt)=0.01%/minであるように設定し、プログラム湿度変化サイクルは、初期相対湿度が0%、終点時相対湿度が90%であるように設けられ、サイクルを2回設け、10%のR.H.毎に1つの階段に変化する。
【0043】
本発明の実施例における試薬は公知であり、市販の工業用または分析用試薬として市販されている。あるいは、本分野で公知の方法を用いて、またはそれに従って合成することができ、API原料は、特許WO2018113584A1に従って製造され得る。
【0044】
特別に説明しない限り、本発明のすべての反応はいずれも連続的な磁気撹拌で、乾燥窒素ガスまたはアルゴンガスの雰囲気において行われ、溶媒は乾燥溶媒で、温度の単位はセルシウス度(℃)である。本明細書で使用される「室温」または「RT」という用語は、20~25℃の環境温度(68~77F)を指す。
【0045】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細かつ完全に説明され、これらは本発明の特定の実施形態のみを説明するために使用され、いかなる形態で本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0046】
具体的な実施例の製造
実施例1 式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造
遊離態の式(I)で表される化合物5 mgを秤量し、0.5 mLの酢酸エチルに溶解し、p-トルエンスルホン酸1.67 mgを秤量し、0.1 mLのテトラヒドロフランに溶解し、撹拌しながらp-トルエンスルホン酸溶液を式(I)で表される化合物溶液に徐々に加え、一晩撹拌し、濾過し、濾過ケーキを40℃の真空乾燥箱で乾燥させ、DSC、TGAおよびXRPDによって特徴付けられた。得られた式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のDSCおよびTGAパターンは、それぞれ図1および図2に示され、XRPD回折パターンは図3に示される。
【0047】
実施例2 式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造
遊離態の式(I)で表される化合物2 gを秤量し、160 mLの酢酸エチルに溶解し、p-トルエンスルホン酸668 mgを秤量し、4 mLのテトラヒドロフランに溶解し、撹拌しながらp-トルエンスルホン酸溶液を式(I)で表される化合物溶液に徐々に加え、一晩撹拌し、濾過し、濾過ケーキを40℃の真空乾燥箱で乾燥させ、得られた式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のXRPD回折パターンは図3と一致する。
【0048】
実施例3 式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造
遊離態の式(I)で表される化合物5 gを秤量し、400 mLのアセトンに溶解/懸濁させ、p-トルエンスルホン酸1670 mgを秤量し、10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、撹拌しながらp-トルエンスルホン酸溶液を式(I)で表される化合物溶液に徐々に加え、一晩撹拌し、濾過し、濾過ケーキを40℃の真空乾燥箱で乾燥させ、得られた式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のXRPD回折パターンは図3と一致する。
【0049】
実施例4 単結晶の製造および特徴付け
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩150 mgを秤量し、1 mLの溶媒(組成:メタノール:エタノール=1:1、さらに2%の水)を加え、50℃で15 min撹拌し、懸濁液を0.45 μmのフィルターで濾過し、濾液を母液とした。母液340 μLを取り、さらに260 μLの溶媒を加え、均一に混合した後に室温で冷却、再結晶し、単結晶を得た。
【0050】
適切な単結晶を選択してBruker APEX-II CCD単結晶回折計で検出を行った。データ収集期間において、温度は220 Kに維持された。式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の単位胞パラメータは表2に示され、単結晶XRPD模擬結果は、図4に示されるように、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のXRPD結果と一致し、単結晶の単位胞の構造は図5に示される。表2:
【0051】
【表2】
【0052】
実施例5 吸湿挙動試験
【0053】
動的水蒸気吸着法に従い、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)の各相対湿度における吸湿重量増加結果(吸湿重量増加/吸湿前重量増加×100%)を測定し、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)の吸湿性を評価し、得られた結果は図6に示される。本発明の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)は、相対湿度(%)の増加に伴って、結晶重量の変化が基本的に2%以下であり、吸湿性が良好であり、工業生産の需要を満たし、臨床製剤開発の需要を満すことができることが実験結果によって判明した。
【0054】
実施例6 安定性試験
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)および遊離態の式(I)で表される化合物を高温および加速試験条件で安定性試験を行い、化学純度を評価指標として、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)および遊離態の式(I)で表される化合物の安定性を評価し、実験結果は、表3に示される:
【0055】
【表3】
【0056】
以上の実験結果から、本発明の化合物は14日間の高温および加速試験条件で安定しており、製品の化学的安定性は工業生産の需要を満たし、臨床薬物製剤開発の需要を満たすことが判明した。
【0057】
実施例7 溶解度測定
1) 水への溶解度
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)2 mgおよび遊離態の式(I)で表される化合物2 mgを2 mLのガラス瓶にそれぞれ秤量し、ガラス瓶に0.4 mLの水をそれぞれ加え、室温の条件でマグネチックスターラーで24時間撹拌し、遠心分離し、液相で含有量を測定し、実験結果は、表4に示される:
【0058】
【表4】
【0059】
前記の実験結果から、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)は、水への溶解度が遊離態の式(I)で表される化合物よりも顕著に高く、薬物臨床製剤開発の需要を満たすことができることが分かった。
2) 生理溶媒への溶解度
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)80 mgおよび遊離態の式(I)で表される化合物80 mgを4 mLのガラス瓶にそれぞれ秤量し、ガラス瓶に2 mLの溶媒(25%のPEG300/5%のSolutol HS15/70%のwater)(v/v/v)をそれぞれ加え、室温の条件でマグネチックスターラーで撹拌し、異なる時点でサンプリングし、遠心分離し、液相で含有量を測定し、結果は図7に示される。実験結果から、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の溶解度は、遊離態の式(I)で表される化合物よりも顕著に高く、薬物臨床製剤開発の需要を満たすことができることが分かった。
【0060】
実施例8 動物の体内薬物動態実験
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)および遊離態の式(I)で表される化合物を、サルの体内で200 mpk(遊離態化合物としての量)の投与量でそれぞれPK実験を行い、実験結果は、表5に示される:
【0061】
【表5】
【0062】
上記の試験結果は、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩が、サルの体内での遊離態の式(I)で表される化合物の暴露量を顕著に増加させることができるため、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)のバイオアベイラビリティが遊離態の式(I)で表される化合物よりも顕著に高いことを示す。
【0063】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明にかかるすべての文献は本出願で参考として引用される。また、本発明の内容を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変動や修正を行うことができ、これらの等価形態のものは同様に、本願に添付された特許請求の範囲に含まれると理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【化1】
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、結晶型化合物であることを特徴とする
請求項1に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項3】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.02±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、19.60±0.2°および22.90±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含むことを特徴とする
請求項2に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、10.60±0.2°、12.72±0.2°、18.56±0.2°、21.22±0.2°および24.90±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含むことを特徴とする
請求項2に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、15.32±0.2°、23.82±0.2°、24.12±0.2°、24.60±0.2°および25.58±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含むことを特徴とする
請求項2に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項6】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターンは、9.02±0.2°、10.60±0.2°、12.04±0.2°、12.72±0.2°、15.32±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、18.56±0.2°、19.60±0.2°、20.60±0.2°、21.22±0.2°、22.90±0.2°、23.82±0.2°、24.12±0.2°、24.60±0.2°、24.90±0.2°、25.58±0.2°、27.78±0.2°、29.04±0.2°、31.48±0.2°、36.60±0.2°および38.16±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含むことを特徴とする
請求項2に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項7】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の単位胞は、P1であり、a=9.079(3)Å、b=10.561(3)Å、c=10.882(3)Åであり、単位胞の体積は、908.1(4)Åであることを特徴とする
請求項1~のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項8】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、水和物であることを特徴とする
請求項1~のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項9】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、水和物であり、前記水和物の各分子に1~3個の水分子が含まれることを特徴とする
請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項10】
前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、水和物であり、前記水和物の各分子に1個、2個または3個の水分子が含まれることを特徴とする
請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項11】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造方法であって、
1)遊離態の式(I)で表される化合物を水系溶媒または適切な有機溶媒に溶解または分散させ、前記系にp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸溶液を加えて造塩反応を行うか、あるいは、遊離態の式(I)で表される化合物をp-トルエンスルホン酸溶液に加えて造塩反応を行う工程と、
2)前記造塩反応過程に析出した固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を収集するか、あるいは、造塩系に過飽和度を生じさせることによって固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を得る工程とを含むことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項12】
前記工程2)において、造塩系に過飽和度を生じさせる方法は、種結晶の添加、溶媒の揮発、貧溶媒の添加または降温の1つまたは複数から選ばれることを特徴とする
請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記工程1)で使用される適切な有機溶媒は、アルコール類、クロロアルカン、ケトン類、エーテル類、環状エーテル類、エステル類、アルカン類、シクロアルカン類、ベンゼン類、アミド類、スルホキシド類の有機溶媒またはそれらの混合物から選ばれることを特徴とする
請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記適切な有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メトキシエチルエーテルまたはそれらの混合物から選ばれることを特徴とする
請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
治療有効量の請求項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩と薬用可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
FGFR4阻害剤薬物の製造における、請求項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の使用。
【請求項17】
肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する薬物の製造における、請求項に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の使用。
【請求項18】
肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療するための請求項1に記載の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩であって、
治療を必要とする患者に治療有効量が投与される式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩。
【請求項19】
肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療するための請求項15に記載の医薬組成物であって、
治療を必要とする患者に治療有効量が投与される医薬組成物。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は薬物開発分野に属し、具体的には、FGFR4阻害剤酸性塩およびその製造方法と使用に関する。
[背景技術]
【0002】
線維芽細胞成長因子(FGF)は、生物学的活性が異なる22種の構造関連ポリペプチドを有するファミリーであり、FGFの対応する受容体(FGFR)は受容体チロシンキナーゼのファミリーRPTKに属する。現在、FGFR1、FGFR2、FGFR3およびFGFR4の4つの受容体が見出されており、それらは、対応するリガンドFGFとの相互作用が受容体の二量体化および自己リン酸化を引き起こすため、MAPKおよびAKTを含む下流の複数のシグナル伝達カスケード反応を開始する。肝細胞癌(HCC)は、中国癌に関連する死亡の主な原因の1つであり、毎年発症率が最も急速に増加する癌の1つでもある。現在の第一選択の治療計画はソラフェニブであり、かつ承認された第二選択の薬物がなく、抗悪性腫瘍剤を有する標的薬物を依然として必要とする。5%~10%の肝細胞癌患者においてFGF19の過剰発現を有するが、FGFR4はヒト肝細胞に存在する優位性FGFRであり、肝細胞におけるその高発現は肝細胞腫瘍の侵襲性に相関すると考えられている。したがって、FGFR4は肝臓癌において非常に重要な役割を果たしている。また、FGF19とFGFR4との相互作用は、他のタイプの癌(例えば、胃癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌)の侵襲性に相関するとも考えられている。
【0003】
現在、高選択性FGFR4阻害剤は、FGFR4シグナル経路の異常によって引き起こされる癌疾患を効果的に治療することができ、FGFR1-3阻害によって引き起こされる高リン血症などの関連する副作用を回避することができ、高選択性FGFR4の小分子阻害剤は腫瘍標的治療分野において大きな使用の見通しを有し、FGFR4阻害剤は、良好な薬物候補薬として、中国国内と海外の肝臓癌およびその他の腫瘍標的薬物のニーズを満たすとともに、安全性に優れ、特異性がより高いという利点をもたらすことができる。
【0004】
長期にわたる研究過程において、アビスコ セラピューティクス カンパニー リミテッド(Abbisko Therapeutics Co.,Ltd)は、構造が新規な高選択性FGFR4阻害効果を有する小分子化合物を発明し、関連特許がWO2018113584A1(国際公開日:2018年6月28日)であり、その代表的な化合物は以下のとおりである:
【0005】
【化1】
【0006】
N-((3S,4S)-3-((6-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-8-(3-メトキシ-3-メチルアゼチジン-1-イル)ピリド[3,4-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アクリルアミドという化合物(式(I)で表される化合物)は、FGFR4標的の阻害作用および他のFGFR1-3キナーゼ受容体に対する選択性を顕著に向上させ、現在の中国国内と海外での肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫などの腫瘍標的治療のニーズを満たすことができる。
【0007】
しかし、当該特許出願の時点では、臨床および工業的使用に適した原料およびプロセスが開発されておらず、式(I)で表される化合物が薬物の開発に適しているかどうかについて、さらなる研究はなされていない。発明者らのその後の研究によって、WO2018113584A1に開示された遊離塩基化合物は水および生理溶媒に難溶であり、バイオアベイラビリティも比較的に低く、臨床要件を満たすことができず、臨床製剤の開発に適さないことが判明した。したがって、臨床研究および市販されている薬物製剤の需要を満たすために、薬物の凝集状態をさらに研究して化合物の物理的と化学的特性を改善し、薬学的または臨床的使用の需要を満たし、薬物の開発に適応できる塩型または結晶型を有する化合物を開発して従来技術に存在する欠陥を克服することが急務となっている。
[発明の概要]
【0008】
従来技術に存在する問題を解決するために、発明者らは、式(I)で表される化合物N-((3S,4S)-3-((6-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-8-(3-メトキシ-3-メチルアゼチジン-1-イル)ピリド[3,4-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アクリルアミドの凝集状態をさらに鋭意研究しており、長期にわたる研究において、発明者らは、p-トルエンスルホン酸塩が遊離態の式(I)で表される化合物の溶解性およびバイオアベイラビリティを大幅に改善することができ、吸湿性および化学的安定性などの物理的と化学的特性も工業生産の需要を満たすことができ、臨床薬物製剤開発の需要を満たすことができることを意外に見出した。本発明にかかるp-トルエンスルホン酸塩は、癌、特に肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する薬物の製造に広く使用されており、非常に重要な臨床使用価値を有し、新世帯FGFR4小分子阻害剤への開発の促進が期待されている。
【0009】
本発明の第1の態様では、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を提供する。
【0010】
【化2】
【0011】
好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、結晶型化合物である。
さらに好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.02±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、19.60±0.2°および22.90±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含む。
【0012】
またさらに好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.02±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、19.60±0.2°、22.90±0.2°、10.60±0.2°、12.72±0.2°、18.56±0.2°、21.22±0.2°および24.90±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含む。
【0013】
またさらに好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターン(XRPD)は、9.02±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、19.60±0.2°および22.90±0.2°、10.60±0.2°、12.72±0.2°、18.56±0.2°、21.22±0.2°、24.90±0.2°、15.32±0.2°、23.82±0.2°、24.12±0.2°、24.60±0.2°および25.58±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含む。
【0014】
好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターンは、9.02±0.2°、10.60±0.2°、12.04±0.2°、12.72±0.2°、15.32±0.2°、17.18±0.2°、17.68±0.2°、18.56±0.2°、19.60±0.2°、20.60±0.2°、21.22±0.2°、22.90±0.2°、23.82±0.2°、24.12±0.2°、24.60±0.2°、24.90±0.2°、25.58±0.2°、27.78±0.2°、29.04±0.2°、31.48±0.2°、36.60±0.2°および38.16±0.2°の回折角(2θ)に位置するピークを含む。
【0015】
最も好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末回折パターンは、表1に示される回折角(2θ)におけるピークと基本的に同じであり、回折角(2θ)および関連する強度データ(±0.2°)は、以下のとおりである。
【0016】
【表1】
【0017】
好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の単位胞は、P1であり、a=9.079(3)Å、b=10.561(3)Å、c=10.882(3)Åであり、単位胞の体積は、908.1(4)Å3である。
【0018】
好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、水和物である。
【0019】
より好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の水和物の各分子に1~3個の水分子が含まれる。
【0020】
またさらに好ましい形態として、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の水和物の各分子に1個、2個または3個の水分子が含まれる。
【0021】
本願の発明創造として、出願人は、前記のいずれか一項のX線粉末回折データを有する式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の結晶を結晶型A(Form A)として指定し、得られた結晶は、DSC、TGAおよびXRPDによって物理的に特徴付けられ、良好な結晶性固体であることが示され、そのDSCおよびTGA結果は、図1図2に示されるように、前記結晶型の式(I)で表される化合物酸性塩が一水和物であることが示されている。
【0022】
本発明の第2の態様では、前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造方法を提供し、
1)遊離態の式(I)で表される化合物を水系溶媒または適切な有機溶媒に溶解または分散させ、前記系にp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸溶液を加えて造塩反応を行うか、あるいは、遊離態の式(I)で表される化合物をp-トルエンスルホン酸溶液に加えて造塩反応を行う工程と、
2)前記造塩反応過程に析出した固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を収集するか、あるいは、造塩系に過飽和度を生じさせることによって固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩を得る工程とを含む。
【0023】
好ましい形態として、前記工程2)において、造塩系に過飽和度を生じさせる方法は、種結晶の添加、溶媒の揮発、貧溶媒の添加または降温の1つまたは複数を含む。
【0024】
好ましい形態として、前記で得られた固体生成物である式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩は、結晶型式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩である。
【0025】
好ましい形態として、前記工程1)において、造塩過程で使用される適切な有機溶媒は、アルコール類、クロロアルカン、ケトン類、エーテル類、環状エーテル類、エステル類、アルカン類、シクロアルカン類、ベンゼン類、アミド類、スルホキシド類の有機溶媒またはそれらの混合物から選ばれる。
【0026】
好ましい形態として、前記適切な有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メトキシエチルエーテルまたはそれらの混合物から選ばれる。
【0027】
本発明の第3の態様では、治療有効量の前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩と薬用可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0028】
本発明の第4の態様では、FGFR4阻害剤薬物の製造における、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の使用を提供する。
【0029】
本発明の第5の態様では、肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する薬物の製造における、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の使用を提供する。
【0030】
本発明の第6の態様では、治療を必要とする患者に治療有効量の前記式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩または前記医薬組成物を投与することを含む、肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、皮膚癌、神経膠芽腫または横紋筋肉腫を治療する方法提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の示差走査熱量測定図であり、X軸は、温度(℃)、Y軸は、熱流(W/G)である。
図2】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の熱重量分析図であり、X軸は、温度(℃)、Y軸は、重量減少率(%)である。
図3】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)のX線粉末回折パターンであり、X軸は、回折ピーク角度2θ値(°)、Y軸は、ピーク強度である。
図4】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の単結晶のX線回折模擬粉末回折パターン(下)および式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の実測XRPDパターン(上)である。横座標は、2θ値(°)、縦座標は、ピーク強度を表す。
図5】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)の単結晶の単位胞図である。
図6】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)のDVSパターンである。横座標は、相対湿度(%)、縦座標は、重量変化(%)を表す。
図7】式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)および遊離態の式(I)で表される化合物の、25%のPEG300/5%のSolutol HS15/70%のwater溶媒における時間/溶解度曲線である。横座標は、時間(時間)、縦座標は、濃度(mg/mL)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[具体的な実施形態]
薬物は、結晶型によって、バイオアベイラビリティ、溶解度、融点、化学的と物理的安定性などが異なるため、さらに薬物の安全性、有効性に影響を与える。薬物の開発に適する塩型または結晶型を開発するために、発明者らは、式(I)で表される化合物N-((3S,4S)-3-((6-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-8-(3-メトキシ-3-メチルアゼチジン-1-イル)ピリド[3,4-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アクリルアミドを鋭意研究し、式(I)で表される化合物に対して塩型および結晶型を大量にスクリーニングしたところ、p-トルエンスルホン酸塩は、遊離態の式(I)で表される化合物の溶解性およびバイオアベイラビリティなどの物理的と化学的特性を大幅に改善することができ、吸湿性および化学的安定性などの物理的と化学的特性も工業生産の需要を満たすことができ、臨床薬物製剤開発の需要を満たすことができ、新世帯FGFR4小分子阻害剤への開発の促進が期待されている。
【0033】
詳述:相反する陳述がない限り、以下の明細書と特許請求の範囲で使用される用語は下記の意味となる。
【0034】
「医薬組成物」は、1つまたは複数の本明細書に記載された化合物あるいはその生理学的/薬学的に許容される塩またはプロドラッグとほかの化学成分の混合物と、ほかの成分、例えば、生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤とを含むものを表す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮するためのものである。
【0035】
「多結晶体」は、同じ化学組成を有するが、当該結晶を構成する分子、原子および/またはイオンの空間配置が異なる結晶型を指す。多結晶体は同じ化学組成を有するが、それらの充填および幾何学的配置は異なり、融点、形状、色、密度、硬度、変形性、安定性、溶解度、溶解速度と類似の特性などの異なる物理的特性を示すことがある。両方の多結晶体は、それらの温度-安定性の関係に応じて、単変性であっても、互変異性であってもよい。単変性系では、2つの固相間の相対安定性は、温度の変化に対して不変のままである。逆に、互変異性系では、遷移温度が存在し、この2つの相の安定性が切り替える。このような化合物が異なる結晶構造で存在する現象は、薬物多結晶現象と呼ばれている。
【0036】
本発明の様々な結晶構造は、当業者に公知の様々な分析技術を用いて互いに区別することができる。そのような技術は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)および/または熱重量分析(TGA)を含むが、これらに限定されない。
【0037】
方法と材料
1.1、X線粉末回折
当業者は、X線粉末回折パターンが、使用される測定条件に依存する測定誤差の下で得られてもよいことを認識するであろう。X線粉末回折パターンの強度は、使用される材料の条件によって変動することができる。相対強度は、実験条件によって変化する可能性もあり、対応的には、正確な強度は考慮に入れられない。また、従来のX線粉末回折角度の測定誤差は通常、5%以下程度であり、かつこのような測定誤差は、前記回折角度に該当すると考えられる。したがって、本発明の結晶構造は、本明細書に開示された図面に示されるX線粉末回折パターンと完全に同じであるX線粉末回折パターンを提供する結晶構造に限定されない。図面に開示されたものと基本的に同じであるX線粉末回折パターンを有する結晶構造はいずれも、本発明の範囲に含まれる。当業者は、X線粉末回折パターンと基本的に同じであることを決定する能力を有するべきである。当業者に既知の他の適切な標準較正である。しかし、相対強度は、結晶の大きさや形状によって変化する場合がある。
【0038】
本発明にかかる化合物の結晶型は、そのX線粉末回折パターンによって特徴付けられた。したがって、Cu Kα放射線(1.54Å)を使用して反射モードで操作するGADDS(一般面積回折検出器システム)CSを有するBruker D8 Discover X線粉末回折計において、前記塩のX線粉末回折パターンを取得した。管電圧を40 kV、電流量を40 mAに設定してスキャンを行った。3.0°~40°の2θの範囲内でサンプルを60秒間スキャンした。2θによって表されるピーク位置について、コランダム標準品を用いて回折計を較正した。すべての分析は通常、20℃~30℃で実施した。4.1.14TバージョンWNTソフトウェア用のGADDSを使用して、データを取得および積分した。2003年に発行された9.0.0.2バージョンEvaを有するDiffracPlusソフトウェアを使用して、回折パターンを分析した。
【0039】
XRPDサンプルの製造は通常、サンプルを単結晶シリコン上に置き、ガラス板または同等物でサンプル粉末をプレスして、サンプルの表面が平坦で適切な高さを有することを確保することによって行われた。次いで、サンプルホルダーをBruker XRPD装置に入れ、前記に説明した装置パラメータを用いてX線粉末回折パターンを取得した。このようなX線粉末回折分析の結果に関連する測定の差異は、(a)サンプル製造物(例えば、サンプルの高さ)における誤差、(b)装置誤差、(c)較正差異、(d)作業者の誤差(ピーク位置を測定する時に生じる誤差を含む)、および(e)物質の特性(例えば、好ましい配向誤差)を含む、複数の要因から生じた。較正誤差およびサンプルの高さ誤差は、多くの場合、すべてのピークが同じ方向にシフトすることをもたらす。一般的には、この較正係数は、測定されたピーク位置を予想されるピーク位置と一致させ、予想される2θ値±0.2°の範囲内にあり得る。
【0040】
1.2、示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)実験は、TA InstrumentsTMモデルQ2000において行われた。サンプル(約1~6 mg)をアルミニウムトレイで秤量し、1 mg%まで正確に記録し、DSCに移した。当該装置を窒素ガスで50 mL/minでパージした。室温から350℃の間に、10℃/minの加熱速度でデータを収集した。吸熱ピークを下に向けた場合にプロットした。しかし、当業者は、DSC測定において、加熱速度、結晶形状と純度および他の測定パラメータによって、実測された開始温度および最高温度がある程度の変動を有することに気付いた。
【0041】
1.3、熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)実験は、TA InstrumentsTMモデルQ500において行われた。サンプル(約10~30 mg)を、予め風袋質量が秤量された白金トレイに入れた。装置でサンプルの重量を正確に測定し、1 mg‰まで記録した。当該炉を窒素ガスで100 mL/minでパージした。室温から300℃の間に、10℃/minの加熱速度でデータを収集した。
【0042】
1.4、動的水蒸気吸着法(DVS)
動的水蒸気吸着法(DVS)を使用して結晶型式(I)で表される化合物酸性塩を特徴付ける実験方法としては、少量の結晶型式(I)で表される化合物酸性塩粉末を取り、装置とセットをする精密なサンプルパンに置き、サンプルを装填した後、装置に送り込んで測定する。本特許における動的水蒸気吸着法に使用されるすべての装置の型番はDVS Intrinsicであり、実験パラメータは、キャリアガスとして窒素ガスを採用するように設けられ、平衡到達の判定基準として一定温度は25℃、単位時間当たりの質量百分率変化率(dm/dt)=0.01%/minであるように設定し、プログラム湿度変化サイクルは、初期相対湿度が0%、終点時相対湿度が90%であるように設けられ、サイクルを2回設け、10%のR.H.毎に1つの階段に変化する。
【0043】
本発明の実施例における試薬は公知であり、市販の工業用または分析用試薬として市販されている。あるいは、本分野で公知の方法を用いて、またはそれに従って合成することができ、API原料は、特許WO2018113584A1に従って製造され得る。
【0044】
特別に説明しない限り、本発明のすべての反応はいずれも連続的な磁気撹拌で、乾燥窒素ガスまたはアルゴンガスの雰囲気において行われ、溶媒は乾燥溶媒で、温度の単位はセルシウス度(℃)である。本明細書で使用される「室温」または「RT」という用語は、20~25℃の環境温度(68~77F)を指す。
【0045】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細かつ完全に説明され、これらは本発明の特定の実施形態のみを説明するために使用され、いかなる形態で本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0046】
具体的な実施例の製造
実施例1 式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造
遊離態の式(I)で表される化合物5 mgを秤量し、0.5 mLの酢酸エチルに溶解し、p-トルエンスルホン酸1.67 mgを秤量し、0.1 mLのテトラヒドロフランに溶解し、撹拌しながらp-トルエンスルホン酸溶液を式(I)で表される化合物溶液に徐々に加え、一晩撹拌し、濾過し、濾過ケーキを40℃の真空乾燥箱で乾燥させ、DSC、TGAおよびXRPDによって特徴付けられた。得られた式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のDSCおよびTGAパターンは、それぞれ図1および図2に示され、XRPD回折パターンは図3に示される。
【0047】
実施例2 式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造
遊離態の式(I)で表される化合物2 gを秤量し、160 mLの酢酸エチルに溶解し、p-トルエンスルホン酸668 mgを秤量し、4 mLのテトラヒドロフランに溶解し、撹拌しながらp-トルエンスルホン酸溶液を式(I)で表される化合物溶液に徐々に加え、一晩撹拌し、濾過し、濾過ケーキを40℃の真空乾燥箱で乾燥させ、得られた式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のXRPD回折パターンは図3と一致する。
【0048】
実施例3 式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の製造
遊離態の式(I)で表される化合物5 gを秤量し、400 mLのアセトンに溶解/懸濁させ、p-トルエンスルホン酸1670 mgを秤量し、10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、撹拌しながらp-トルエンスルホン酸溶液を式(I)で表される化合物溶液に徐々に加え、一晩撹拌し、濾過し、濾過ケーキを40℃の真空乾燥箱で乾燥させ、得られた式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のXRPD回折パターンは図3と一致する。
【0049】
実施例4 単結晶の製造および特徴付け
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩150 mgを秤量し、1 mLの溶媒(組成:メタノール:エタノール=1:1、さらに2%の水)を加え、50℃で15 min撹拌し、懸濁液を0.45 μmのフィルターで濾過し、濾液を母液とした。母液340 μLを取り、さらに260 μLの溶媒を加え、均一に混合した後に室温で冷却、再結晶し、単結晶を得た。
【0050】
適切な単結晶を選択してBruker APEX-II CCD単結晶回折計で検出を行った。データ収集期間において、温度は220 Kに維持された。式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の単位胞パラメータは表2に示され、単結晶XRPD模擬結果は、図4に示されるように、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩のXRPD結果と一致し、単結晶の単位胞の構造は図5に示される。表2:
【0051】
【表2】
【0052】
実施例5 吸湿挙動試験
【0053】
動的水蒸気吸着法に従い、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)の各相対湿度における吸湿重量増加結果(吸湿重量増加/吸湿前重量増加×100%)を測定し、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)の吸湿性を評価し、得られた結果は図6に示される。本発明の式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)は、相対湿度(%)の増加に伴って、結晶重量の変化が基本的に2%以下であり、吸湿性が良好であり、工業生産の需要を満たし、臨床製剤開発の需要を満すことができることが実験結果によって判明した。
【0054】
実施例6 安定性試験
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)および遊離態の式(I)で表される化合物を高温および加速試験条件で安定性試験を行い、化学純度を評価指標として、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)および遊離態の式(I)で表される化合物の安定性を評価し、実験結果は、表3に示される:
【0055】
【表3】
【0056】
以上の実験結果から、本発明の化合物は14日間の高温および加速試験条件で安定しており、製品の化学的安定性は工業生産の需要を満たし、臨床薬物製剤開発の需要を満たすことが判明した。
【0057】
実施例7 溶解度測定
1) 水への溶解度
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)2 mgおよび遊離態の式(I)で表される化合物2 mgを2 mLのガラス瓶にそれぞれ秤量し、ガラス瓶に0.4 mLの水をそれぞれ加え、室温の条件でマグネチックスターラーで24時間撹拌し、遠心分離し、液相で含有量を測定し、実験結果は、表4に示される:
【0058】
【表4】
【0059】
前記の実験結果から、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)は、水への溶解度が遊離態の式(I)で表される化合物よりも顕著に高く、薬物臨床製剤開発の需要を満たすことができることが分かった。
2) 生理溶媒への溶解度
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(FormA)80 mgおよび遊離態の式(I)で表される化合物80 mgを4 mLのガラス瓶にそれぞれ秤量し、ガラス瓶に2 mLの溶媒(25%のPEG300/5%のSolutol HS15/70%のwater)(v/v/v)をそれぞれ加え、室温の条件でマグネチックスターラーで撹拌し、異なる時点でサンプリングし、遠心分離し、液相で含有量を測定し、結果は図7に示される。実験結果から、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩の溶解度は、遊離態の式(I)で表される化合物よりも顕著に高く、薬物臨床製剤開発の需要を満たすことができることが分かった。
【0060】
実施例8 動物の体内薬物動態実験
式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)および遊離態の式(I)で表される化合物を、サルの体内で200 mpk(遊離態化合物としての量)の投与量でそれぞれPK実験を行い、実験結果は、表5に示される:
【0061】
【表5】
【0062】
上記の試験結果は、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩が、サルの体内での遊離態の式(I)で表される化合物の暴露量を顕著に増加させることができるため、式(I)で表される化合物p-トルエンスルホン酸塩(Form A)のバイオアベイラビリティが遊離態の式(I)で表される化合物よりも顕著に高いことを示す。
【0063】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明にかかるすべての文献は本出願で参考として引用される。また、本発明の内容を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変動や修正を行うことができ、これらの等価形態のものは同様に、本願に添付された特許請求の範囲に含まれると理解すべきである。
【国際調査報告】