特表 2024-544713 二次電池用パウチケースの製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2024-12-03

(54)【発明の名称】二次電池用パウチケースの製造方法

(51)【国際特許分類】

   H01M 50/129 20210101AFI20241126BHJP

   H01M 50/105 20210101ALI20241126BHJP

   H01M 50/193 20210101ALI20241126BHJP

   H01M 50/119 20210101ALI20241126BHJP

   H01M 50/121 20210101ALI20241126BHJP

【ＦＩ】

H01M50/129

H01M50/105

H01M50/193

H01M50/119

H01M50/121

【審査請求】有

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2024535527

(86)(22)【出願日】2022-12-22

(85)【翻訳文提出日】2024-06-13

(86)【国際出願番号】 KR2022021108

(87)【国際公開番号】W WO2023121361

(87)【国際公開日】2023-06-29

(31)【優先権主張番号】10-2021-0186151

(32)【優先日】2021-12-23

(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】521065355

【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド

(74)【代理人】

【識別番号】100188558

【弁理士】

【氏名又は名称】飯田 雅人

(74)【代理人】

【識別番号】100110364

【弁理士】

【氏名又は名称】実広 信哉

(72)【発明者】

【氏名】ジ・ヨン・ファン

(72)【発明者】

【氏名】デ・ウォン・ソン

(72)【発明者】

【氏名】サン・フン・キム

(72)【発明者】

【氏名】ヨン・ス・チェ

(72)【発明者】

【氏名】ヒョン・キョン・ユ

【テーマコード（参考）】

5H011

【Ｆターム（参考）】

5H011AA09

5H011CC02

5H011CC06

5H011CC10

5H011DD03

5H011HH02

5H011KK01

5H011KK04

(57)【要約】

本発明は、（Ｓ１）基材層、バリア層、およびシーラント層が順に積層された構造体を含む二次電池用パウチ外装材を準備するステップと、（Ｓ２）前記二次電池用パウチ外装材を成形してカップ部を形成するステップと、（Ｓ３）前記二次電池用パウチ外装材の前記シーラント層のクラックを低減させるステップとを含む、二次電池用パウチケースの製造方法に関する。

【特許請求の範囲】

【請求項1】

（Ｓ１）基材層、バリア層、およびシーラント層が順に積層された構造体を含む二次電池用パウチ外装材を準備するステップと、
（Ｓ２）前記二次電池用パウチ外装材を成形してカップ部を形成するステップと、
（Ｓ３）前記二次電池用パウチ外装材の前記シーラント層のクラックを低減させるステップとを含む、二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項2】

前記（Ｓ３）ステップにおいて、前記シーラント層に熱を加えて前記シーラント層のクラックを低減させる、請求項１に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項3】

前記（Ｓ３）ステップにおいて、前記シーラント層の表面温度は、４０℃～１１０℃である、請求項２に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項4】

前記（Ｓ３）ステップにおいて、前記シーラント層に赤外線を照射して熱を加える、請求項２に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項5】

前記赤外線の波長は、１～１００μｍであり、前記赤外線の照射時間は、１～６０秒である、請求項４に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項6】

前記（Ｓ３）ステップにおいて、熱が加えられる領域は、前記シーラント層において水平方向に長さが延びるカップ部の縁である、請求項２に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項7】

前記（Ｓ２）ステップにおいて、前記カップ部の深さは、４ｍｍ～１０ｍｍである、請求項１に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項8】

前記（Ｓ２）ステップにおいて、前記二次電池用パウチ外装材を成形する速度は、１～１００ｍｍ／ｓｅｃである、請求項１に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項9】

前記シーラント層は、ポリエチレン；ポリプロピレン；エチレンプロピレン共重合体；ポリプロピレン－ブチレン－エチレン三元共重合体；ポリエチレン－アクリル酸共重合体；およびポリプロピレン－アクリル酸共重合体；からなる群から選択される少なくとも１種を含む、請求項１に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項10】

前記シーラント層の厚さは、６０μｍ～１００μｍである、請求項１に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項11】

前記バリア層は、アルミニウム（Ａｌ）合金である、請求項１に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項12】

前記バリア層の厚さは、２０μｍ～８０μｍである、請求項１に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【請求項13】

前記基材層は、ポリエチレン；ポリプロピレン；ポリエチレンテレフタレート；およびナイロン；からなる群から選択される少なくとも１種を含む、請求項１に記載の二次電池用パウチケースの製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本出願は、２０２１年１２月２３日付けの韓国特許出願第１０－２０２１－０１８６１５１号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。

【0002】

本発明は、二次電池用パウチケースの製造方法に関し、より具体的には、成形された二次電池用パウチ外装材の前記シーラント層のクラックを低減させるステップを含む二次電池用パウチケースの製造方法に関する。

【背景技術】

【0003】

一般的に、二次電池用パウチケースを製造するために、二次電池用パウチ外装材をパンチを用いて特定の深さに押圧して成形する。二次電池用パウチ外装材は、パンチによる圧力によって形が変形し、カップ部が形成され、その過程で、成形された二次電池用パウチ外装材のバリア層にピンホールやクラックが生じるか、しわが発生し、シーラント層に白化現象が発生し得る。前記シーラント層の白化現象は、前記二次電池用パウチ外装材を成形する時に、引張ストレスによって発生した微細クラックとマイクロボイドによって表面が白く見える現象として知られている。

【0004】

最近、二次電池の性能の改善のために、成形深さが深く、成形屈曲が大きい二次電池用パウチケースが求められている。しかし、前記のように成形深さが深く、成形屈曲が大きい二次電池用パウチケースを製造すると、二次電池用パウチケースの内部側に配置されるシーラント層に過剰な引張ストレスが加えられて、シーラント層の白化現象がひどくなる。シーラント層の白化現象は、二次電池用パウチケースの耐久性および絶縁性に悪影響を与え、最終的には、製造されるパウチ型二次電池の安定性を低下させる。

【0005】

したがって、成形深さが深く、成形屈曲が大きい成形条件の下でも、シーラント層の白化程度を減少させることができる二次電池用パウチケースの製造方法が必要な状況である。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

上記のような問題を解決するために、本発明は、シーラント層の白化を減少させることができる二次電池用パウチケースの製造方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明の一実施形態では、（Ｓ１）基材層、バリア層、およびシーラント層が順に積層された構造体を含む二次電池用パウチ外装材を準備するステップと、（Ｓ２）前記二次電池用パウチ外装材を成形してカップ部を形成するステップと、（Ｓ３）前記二次電池用パウチ外装材の前記シーラント層のクラックを低減させるステップとを含む、二次電池用パウチケースの製造方法を提供する。

【発明の効果】

【0008】

本発明によると、成形された二次電池用パウチ外装材のシーラント層に熱を加えることで、シーラント層のクラックを低減させ、白化を減少させて、耐久性および安定性が改善した二次電池用パウチケースを製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

明細書に添付の以下の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、上述の発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は、そのような図面に記載の事項にのみ限定して解釈してはならない。

【0010】

【図1】二次電池用パウチ外装材の断面を概略的に示す図である。

【図2】成形された二次電池用パウチ外装材の断面を概略的に示す図である。

【図3】図２に示した成形された二次電池用パウチ外装材のカップ部の内側面を拡大して示した図である。

【図4】成形された二次電池用パウチ外装材の平面図である。

【図5】比較例のシーラント層の内部を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図6】比較例のシーラント層の表面を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図7】実施例１のシーラント層の内部を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図8】実施例１のシーラント層の表面を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図9】実施例２のシーラント層の内部を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図10】実施例２のシーラント層の表面を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図11】実施例３のシーラント層の内部を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図12】実施例３のシーラント層の表面を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図13】実施例４のシーラント層の内部を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図14】実施例４のシーラント層の表面を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図15】実施例５のシーラント層の内部を光学顕微鏡で観察した写真である。

【図16】実施例５のシーラント層の表面を光学顕微鏡で観察した写真である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、本明細書および特許請求の範囲において使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。

【0012】

二次電池用パウチケースの製造方法
本発明による二次電池用パウチケースの製造方法は、下記（Ｓ１）～（Ｓ３）ステップを含む。
（Ｓ１）基材層、バリア層、およびシーラント層が順に積層された構造体を含む二次電池用パウチ外装材を準備するステップ
（Ｓ２）前記二次電池用パウチ外装材を成形してカップ部を形成するステップ
（Ｓ３）前記二次電池用パウチ外装材の前記シーラント層のクラックを低減させるステップ

【0013】

本発明の発明者らは、二次電池用パウチ外装材を成形してカップ部を形成した後に、前記二次電池用パウチ外装材のシーラント層に熱を加えることで、前記シーラント層のクラックを低減し、白化現象を減少させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。

【0014】

具体的には、二次電池用パウチ外装材を成形してカップ部を形成した後に、前記二次電池用パウチ外装材のシーラント層に熱を加える場合、前記シーラント層に含まれた物質が膨張して、前記シーラント層の内部に存在するクラックや空き空間のような欠陥が埋め込まれることができる。これにより、前記シーラント層の耐久性を著しく改善することができ、前記シーラント層を含む二次電池用パウチケースの耐久性も著しく改善することができる。

【0015】

以下では、（Ｓ１）～（Ｓ３）ステップについて、図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、図面で図示されているものに限定されない。

【0016】

先ず、基材層、バリア層、およびシーラント層が順に積層された構造体を含む二次電池用パウチ外装材を準備する（Ｓ１）。

【0017】

図１は、二次電池用パウチ外装材の断面を概略的に示す図である。

【0018】

図１を参照すると、二次電池用パウチ外装材１００は、基材層１１０、バリア層１２０、およびシーラント層１３０が順に積層された構造体を含む。

【0019】

基材層１１０は、二次電池用パウチケースの最外側に配置されて、外部物質、空気、または水分などからバリア層１２０、シーラント層１３０および前記二次電池用パウチケースの内部に配置される電極組立体（図示せず）、電解質（図示せず）などを保護する役割をすることができる。

【0020】

基材層１１０は、ポリエチレン；ポリプロピレン；ポリエチレンテレフタレート；およびナイロン；からなる群から選択される少なくとも１種を含むことができる。基材層１１０が前記物質を含むことで、前記バリア層１２０、シーラント層１３０、電極組立体、および電解質などを、外部物質、空気、または水分などから効果的に保護することができる。

【0021】

図面には図示されていないが、前記基材層１１０は、２以上の層を含むことができ、具体的には、前記基材層１１０は、第１層（図示せず）および第２層（図示せず）を含むことができる。前記基材層１１０が２以上の層を含むことで、前記バリア層１２０、シーラント層１３０、電極組立体、および電解質などを、外部物質、空気、または水分などからより効果的に保護することができる。

【0022】

また、前記基材層１１０が前記第１層および前記第２層を含む場合、前記第１層は、ナイロンを含むことができ、前記第２層は、ポリエチレンテレフタレートを含むことができる。前記第１層がナイロンを含むことで、前記バリア層１２０と前記第２層との間に絶縁性をより確保することができ、前記第２層がポリエチレンテレフタレートを含むことで、前記二次電池用パウチケースの外部から流入する異物を効果的に遮断することができる。

【0023】

前記基材層１１０の厚さは、１０μｍ～５０μｍとすることができ、具体的には１５μｍ～４５μｍとすることができ、さらに具体的には１８μｍ～３５μｍとすることができる。前記基材層１１０の厚さが前記数値範囲を満たす場合、後述するように、（Ｓ３）ステップにおいて、シーラント層１３０に十分な熱を加える場合にも、前記基材層１１０が損傷し得ず、優れた絶縁性を有することができる。

【0024】

バリア層１２０は、外部物質、空気、または水分などが前記二次電池用パウチケースの内部に流入することを遮断する役割をすることができる。

【0025】

バリア層１２０は、金属物質を含むことができ、具体的には、バリア層１２０は、アルミニウム（Ａｌ）合金とすることができる。前記バリア層１２０がアルミニウム合金を含むことで、外部物質、空気、または水分などが前記二次電池用パウチケースの内部に流入することを効果的に遮断することができる。

【0026】

前記バリア層１２０の厚さは、２０μｍ～８０μｍとすることができ、具体的には２５μｍ～６５μｍとすることができ、さらに具体的には３０μｍ～６０μｍとすることができる。前記バリア層１２０の厚さが前記数値範囲を満たす場合、後述するように、（Ｓ３）ステップにおいて、シーラント層１３０に十分な熱を加える場合にも、前記バリア層１２０が損傷し得ず、優れた絶縁性を有することができる。

【0027】

シーラント層１３０は、二次電池用パウチケースの最内側に配置されて、電極組立体、電解質などを保護する役割をすることができる。また、シーラント層１３０は、熱によって互いに融着されて、前記二次電池用パウチケースの内部を密封する役割をすることができる。具体的な例示として、前記二次電池用パウチケースを両分して互いに当接するように折り畳むと、前記シーラント層１３０同士が内部で接触することができ、その状態で熱を加える場合、前記シーラント層１３０同士が熱によって融着されることができる。これにより、前記二次電池用パウチケースの内部は密封されることができる。

【0028】

シーラント層１３０は、ポリエチレン；ポリプロピレン；エチレンプロピレン共重合体；ポリプロピレン－ブチレン－エチレン三元共重合体；ポリエチレン－アクリル酸共重合体；およびポリプロピレン－アクリル酸共重合体；からなる群から選択される少なくとも１種を含むことができ、好ましくは、シーラント層１３０は、ポリプロピレンを含むことができる。シーラント層１３０が前記のような物質を含むことで、前記シーラント層１３０同士が熱によって効果的に融着されることができ、前記二次電池用パウチケースの内部に配置される電極組立体、電解質などを効果的に保護することができる。

【0029】

前記シーラント層１３０の厚さは、６０μｍ～１００μｍとすることができ、具体的には６５μｍ～９５μｍとすることができ、さらに具体的には７０μｍ～９０μｍとすることができる。前記シーラント層１３０の厚さが前記数値範囲を満たす場合、後述するように、（Ｓ３）ステップにおいて、前記シーラント層１３０に熱を加える場合にも、前記シーラント層１３０が簡単に溶融されず、十分な熱エネルギーの供給を受けて、前記シーラント層１３０に存在するクラックなどの欠陥が効果的に低減するか除去されることができる。

【0030】

一方、図面には図示されていないが、前記基材層１１０は、接着層（図示せず）を含むことができる。前記接着層は、各層の間に粘着されて結合力を向上させることができる。これにより、前記基材層１１０が前記二次電池用パウチ外装材１００から分離することを効果的に防止することができる。

【0031】

次に、前記二次電池用パウチ外装材１００を成形してカップ部２１０を形成する（Ｓ２）。

【0032】

前記二次電池用パウチ外装材１００が準備されると、ストリッパとダイを用いて、前記二次電池用パウチ外装材１００の両端部を固定する。前記二次電池用パウチ外装材の両端部が固定された状態で、前記両端部の間に配置された二次電池用パウチ外装材１００をパンチを介して加圧して成形する。

【0033】

前記二次電池用パウチ外装材１００を成形する速度は、１～１００ｍｍ／ｓｅｃとすることができ、具体的には５～５０ｍｍ／ｓｅｃとすることができ、さらに具体的には１０～３０ｍｍ／ｓｅｃとすることができる。成形速度が前記のような数値範囲を満たす場合、前記シーラント層１３０に時間当たり加えられる圧力が適切な水準に調節されて、成形によってシーラント層１３０に発生するクラックの量を減少させることができ、白化現象を低減させることができる。

【0034】

前記二次電池用パウチ外装材１００の成形が完了し、加圧されたパンチを除去すると、前記二次電池用パウチ外装材１００の両端部の間にカップ部２１０が形成されることができる。前記カップ部２１０は、内部に電極組立体などを収納することができる収容空間を含むことができる。

【0035】

図２は、成形された二次電池用パウチ外装材の断面を概略的に示す図である。

【0036】

図２を参照すると、前記成形された二次電池用パウチ外装材２００は、カップ部２１０と、前記カップ部２１０によって区画される収容空間２２０とを含むことができる。前記カップ部２１０は、上述のように、パンチによって加圧されて形成されることができる。

【0037】

前記カップ部２１０は、内部に収容空間を含む凹状の形態とすることができるが、必ずしもこれに制限されるものではなく、前記カップ部２１０は、必要に応じて、前記パンチの形態を変更することで、様々な形態に調節されることができる。

【0038】

前記カップ部２１０の深さｄは、４ｍｍ～１０ｍｍとすることができ、具体的には５ｍｍ～９ｍｍとすることができ、さらに具体的には５．５ｍｍ～８ｍｍとすることができる。前記カップ部２１０の深さｄは、収納される内容物に応じて適宜調節されることができ、カップ部２１０の深さｄが多少深く形成されても、後述するように、成形の後、前記カップ部２１０の内側面に配置されるシーラント層１３０に熱を加えることで、クラックを低減させて、製造される二次電池用パウチケースの耐久性を向上させることができる。

【0039】

次に、前記二次電池用パウチ外装材１００の前記シーラント層１３０のクラックを低減させる（Ｓ３）。

【0040】

具体的には、前記二次電池用パウチ外装材１００のシーラント層１３０に熱を加えて、前記シーラント層１３０のクラックを低減させることができる。このような場合、前記シーラント層１３０に含まれた物質が熱によって膨張し、前記シーラント層１３０に含まれたクラックや空き空間のような欠陥が埋め込まれることができる。これにより、製造される二次電池用パウチケースの耐久性が改善することができる。

【0041】

特に、前記二次電池用パウチ外装材１００がすでに成形された後でも、前記シーラント層１３０に熱を加えると、伝達された熱エネルギーによって前記シーラント層１３０に形成されたクラックなどが埋め込まれることができる。したがって、成形された二次電池用パウチ外装材１００がクラックなどの欠陥によってシーラント層１３０に白化現象が発生して機械的強度が低い状態で形成された場合にも、成形された二次電池用パウチ外装材１００を廃棄することなく、前記（Ｓ３）ステップにより、前記シーラント層１３０および／または前記二次電池用パウチ外装材１００の機械的強度を向上させて使用することができる。

【0042】

前記二次電池用パウチ外装材１００のシーラント層１３０に熱を加える場合、前記シーラント層１３０の表面温度は、４０℃～１１０℃とすることができ、好ましくは５０℃～１０５℃とすることができ、さらに好ましくは７０℃～１００℃とすることができる。前記シーラント層１３０の表面温度が前記数値範囲を満たすと、前記シーラント層１３０に形成されたクラックが低減するか、完全に除去されることができる。前記シーラント層１３０の表面温度が過剰に高いと、シーラント層１３０が溶融して変形する可能性があり、前記シーラント層１３０の表面温度が過剰に低いと、シーラント層１３０にエネルギーを十分に伝達することができず、シーラント層１３０に含まれる物質が膨張することができず、クラックを低減させることができなくなる。

【0043】

熱を加える方法は、例えば、前記シーラント層１３０に赤外線を照射すること、またはヒーティングブロックを使用して、前記シーラント層１３０に熱を伝導することであり得る。前記赤外線を照射する方法による場合、熱伝達が均一であるという利点がある。

【0044】

前記赤外線の波長は、１μｍ～１００μｍとすることができ、前記赤外線の照射時間は、１～６０秒とすることができる。好ましくは、前記赤外線の波長は、２．５μｍ～５０μｍとすることができ、前記赤外線の照射時間は、４～３２秒とすることができ、さらに好ましくは１６～３２秒とすることができる。赤外線の照射時間が前記数値範囲を満たす場合、前記シーラント層１３０が溶融せず、且つ前記シーラント層１３０の内部に存在するクラックを低減させ、完全に除去することができる。

【0045】

前記熱が加えられる領域は、前記カップ部２１０の内側面に配置される前記シーラント層１３０全領域とすることができ、このような場合、シーラント層１３０の内部に存在するクラックやマイクロボイドなどの欠陥を全般的に低減させるか、除去することができる。

【0046】

また、前記熱が加えられる領域は、前記カップ部２１０の内側面に配置される前記シーラント層１３０の一部領域とすることができ、具体的には、前記熱が加えられる領域が、前記（Ｓ２）ステップにおいて成形によって屈曲した前記シーラント層１３０の一部領域である場合、二次電池用パウチ外装材１００においてクラックやマイクロボイドなどの欠陥が集中して発生した領域から白化現象を低減させることができ、シーラント層１３０の機械的強度または耐久性を向上させることができる。

【0047】

前記熱が加えられる領域は、例えば、以下で説明する第１領域３００Ａ、第２領域３００Ｂ、および第３領域３００Ｃのうち少なくとも一つとすることができ、好ましくは第１領域３００Ａとすることができる。

【0048】

図３は、図２に示した成形された二次電池用パウチ外装材２００のカップ部２１０の内側面を拡大して示した図である。

【0049】

図１～図３を参照すると、前記カップ部２１０の内側面は、第１領域３００Ａと、第２領域３００Ｂと、第３領域３００Ｃとを含む。また、前記第１領域３００Ａ、第２領域３００Ｂ、および第３領域３００Ｃは、それぞれ前記シーラント層１３０の一部分であることができる。

【0050】

前記第１領域３００Ａは、前記カップ部２１０の内側面の上端部であり、前記第２領域３００Ｂは、前記カップ部２１０の内側面の中心部であり、前記第３領域３００Ｃは、前記カップ部２１０の内側面の下端部である。

【0051】

具体的には、前記第１領域３００Ａは、前記カップ部２１０の深さｄを基準に、前記カップ部２１０の最上端から０．２ｄ～０．３ｄまでの領域であり、前記第２領域３００Ｂは、前記第１領域３００Ａの端部から０．４ｄ～０．５ｄまでの領域であり、前記第３領域３００Ｃは、前記第２領域３００Ｂの端部から０．２ｄ～０．３ｄまでの領域であることができる。

【0052】

前記第１領域３００Ａは、カップ部２１０が形成され始める領域であり、前記（Ｓ２）ステップでパンチによって屈曲が発生する領域である。第１領域３００Ａは、クラックなどの欠陥が多数発生する領域であり、白化程度が大きくなる可能性があり、機械的強度が低くなる可能性がある。

【0053】

前記第２領域３００Ｂは、カップ部２１０の内側面の中心部であり、屈曲が発生しない領域であり、前記第３領域３００Ｃは、カップ部２１０の内側面の下端部であり、屈曲が発生しない領域である。前記第２領域３００Ｂおよび前記第３領域３００Ｃは、前記第１領域３００Ａに比べて成形によって変形した程度が小さいため、相対的にクラックなどの欠陥が発生しない。これにより、前記第２領域３００Ｂおよび前記第３領域３００Ｃの白化程度を低くすることができ、機械的強度を多少高くすることができる。

【0054】

一方、前記熱が加えられる領域は、前記カップ部２１０の内側面の上端部である第１領域３００Ａとすることができ、熱を加える方法に関する具体的な例示として、前記赤外線が加えられる領域は、前記カップ部２１０の内側面の上端部である第１領域３００Ａとすることができる。

【0055】

前記第１領域３００Ａは、上述のように、成形によって変形した程度が大きいため、クラックなどの欠陥が多数発生する領域であり、前記赤外線が前記第１領域３００Ａに照射されることで、前記シーラント層１３０に存在するクラックや空き空間のような欠陥を効果的に低減させるか、除去することができる。これにより、製造される二次電池用パウチケースにおいて相対的に脆弱な部分を補強することができ、前記二次電池用パウチケースの耐久性を向上させることができる。

【0056】

また、前記熱が加えられる領域は、シーラント層１３０において水平方向に長さが延びるカップ部２１０の縁とすることができる。前記シーラント層１３０において水平方向に長さが延びるカップ部２１０の縁は、成形時に垂直方向に延伸するため、他の部分に比べてクラックがより形成されやすい可能性があり、成形の後に熱を加えることで形成されたクラックを集中的に除去して、耐久性を向上させることができる。図４に熱が加えられる領域Ｈ１、Ｈ２を例示的に図示した。

【0057】

以下、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明が下記実施例によって限定されるものではない。

【0058】

実施例１
（Ｓ１）ステップ：基材層、バリア層、およびシーラント層が順に積層された構造体を含む二次電池用パウチ外装材を準備
基材層の第１層として厚さ１５μｍのナイロン層が、基材層の第２層として厚さ１２μｍのポリエチレンテレフタレート層が、バリア層として厚さ４０μｍのアルミニウム合金層が、シーラント層として厚さ８０μｍのポリプロピレン層が積層された構造体を含む二次電池用パウチ外装材が準備された。前記第１層と前記第２層との間と、前記バリア層と前記第１層との間には、接着層が配置された。

【0059】

（Ｓ２）ステップ：前記二次電池用パウチ外装材を成形してカップ部を形成
成形装置に基材層が下部に配置され、シーラント層が上部に配置されるように、前記二次電池用パウチ外装材を配置した後、前記二次電池用パウチ外装材の両端部をストリッパとダイを用いて固定し、パンチを用いて、前記二次電池用パウチ外装材を成形してカップ部を形成した。ここで、成形速度は１５ｍｍ／ｓｅｃであり、成形深さは５．７ｍｍであった。

【0060】

（Ｓ３）ステップ：前記二次電池用パウチ外装材の前記シーラント層のクラックを低減させて二次電池用パウチケースを製造
前記成形された二次電池用パウチ外装材のシーラント層に熱を加えて、シーラント層に存在するクラックを低減させた。実施例では、赤外線ランプを用いて、前記シーラント層に赤外線を照射する方法を使用した。

【0061】

成形された二次電池用パウチ外装材を配置し、これより５ｃｍ離隔した位置に赤外線ランプを配置した。赤外線ランプの波長を２．５～５０μｍに、赤外線ランプの出力を２００Ｗに設定した。

【0062】

前記赤外線ランプを用いて、シーラント層の水平方向に長さが延びるカップ部の縁の上端部および下端部（図４においてＨ１およびＨ２に表示されている領域）に赤外線を照射した。前記赤外線を照射した時間は４秒であり、前記シーラント層の表面温度が約４０℃に到逹するように赤外線を照射した。

【0063】

実施例２
前記（Ｓ３）ステップで赤外線ランプを用いて赤外線を照射した時間が１２秒であり、前記シーラント層の表面温度が約６０℃に到逹するように赤外線を照射した以外は、実施例１と同様に二次電池用パウチケースを製造した。

【0064】

実施例３
前記（Ｓ３）ステップで赤外線ランプを用いて赤外線を照射した時間が２０秒であり、前記シーラント層の表面温度が約８０℃に到逹するように赤外線を照射した以外は、実施例１と同様に二次電池用パウチケースを製造した。

【0065】

実施例４
前記（Ｓ３）ステップで赤外線ランプを用いて赤外線を照射した時間が２８秒であり、前記シーラント層の表面温度が約１００℃に到逹するように赤外線を照射した以外は、実施例１と同様に二次電池用パウチケースを製造した。

【0066】

実施例５
前記（Ｓ３）ステップで赤外線ランプを用いて赤外線を照射した時間が５０秒であり、前記シーラント層の表面温度が約１５０℃に到逹するように赤外線を照射した以外は、実施例１と同様に二次電池用パウチケースを製造した。

【0067】

比較例
前記（Ｓ３）ステップで赤外線ランプを用いて赤外線を照射しない以外は、実施例１と同様に二次電池用パウチケースを製造した。

【0068】

実験例－クラック水準の評価
前記実施例１～５および前記比較例の二次電池用パウチケースのシーラント層に対するクラック水準を評価した。図４にクラック水準が評価される位置を示した。

【0069】

図４は、成形された二次電池用パウチ外装材の平面図である。それぞれの二次電池用パウチ外装材４００のカップ部４１０の一頂点Ｐから水平方向に約２ｃｍ離隔し、前記カップ部４１０の内側面の上端部に相当する部位Ｍを３ｃｍ×２．５ｃｍに切断して試験片として製造した。前記試験片をスライドガラスの上に付着した後、光学顕微鏡を介してクラックを観察した。

【0070】

実施例１～５および比較例に対する光学顕微鏡写真を図５～図１６に示し、実験結果を下記の表１にまとめて示す。

【0071】

【表1】

【0072】

前記表１において、シーラント層の内部のクラック水準およびシーラント層の表面のクラック水準は、光学顕微鏡によって観察された写真により、クラックが存在する程度を目視で確認し、その程度を０～５に示したものである。０から５に行くほど、クラックが多いことを意味する。

【0073】

実験の結果、比較例の場合、二次電池用パウチ外装材を成形した後、赤外線を照射しておらず、実施例１および実施例２の場合、赤外線を照射した時間が多少短かったため、シーラント層の内部のクラックとシーラント層の表面のクラックが一部埋め込まれたが、完全に埋め込まれることができず、残存することが確認された。

【0074】

実施例３および実施例４の場合、二次電池用パウチ外装材を成形した後、赤外線を照射した時間が適切に設定されて、シーラント層に十分な水準の熱が伝達され、これにより、シーラント層の内部物質が膨張し、クラックが全て除去されたことが確認された。

【0075】

実施例５の場合、二次電池用パウチ外装材を成形した後、赤外線を照射してシーラント層に十分な水準の熱が伝達され、これにより、シーラント層の内部物質が膨張し、クラックが全て除去されたが、二次電池用パウチ外装材の基材層またはバリア層においてカールのような物理的変形が発生した。

【符号の説明】

【0076】

１００ 二次電池用パウチ外装材
１１０ 基材層
１２０ バリア層
１３０ シーラント層
２００ 二次電池用パウチ外装材
２１０ カップ部
２２０ 収容空間
３００Ａ 第１領域
３００Ｂ 第２領域
３００Ｃ 第３領域
４００ 二次電池用パウチ外装材
４１０ カップ部
４２０ 収容空間
Ｍ 測定部位
Ｐ 頂点

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【国際調査報告】