(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-04
(54)【発明の名称】細胞及びウイルス受容体相互作用の中断によってASFV感染症を遮断する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241127BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20241127BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241127BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20241127BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20241127BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241127BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241127BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20241127BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241127BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A61K39/395 S
A61P31/20
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/22
A61P37/04
A61K31/7105
A61K39/12
A61K45/00
A61K48/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529970
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 US2022049832
(87)【国際公開番号】W WO2023096766
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522091519
【氏名又は名称】チェン,ダル
(71)【出願人】
【識別番号】521483087
【氏名又は名称】マルコム,トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ダル
(72)【発明者】
【氏名】マルコム,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB33
4C084ZC61
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA51
4C085BB31
4C085BB42
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB33
4C086ZC61
(57)【要約】
動物における細胞侵入に直接的に(エンドサイトーシス及び/若しくはマクロピノサイトーシス)又は間接的に(ウイルス相互作用によって凝集されているRBCの貧食作用)に関与する重要な細胞受容体とのウイルスリガンド相互作用を阻害し、動物におけるウイルス感染症を防止及び治療することによって、動物(及び好ましくはブタにおけるASFV)におけるウイルス感染症を防止及び治療する方法。溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療する方法。溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療するための組成物。ウイルスの溶原相及び溶解相の両方のタンパク質の全ドメイン及び/又は部分ドメインを含む、ウイルス感染症を防止するためのワクチン。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物におけるウイルス感染症を防止及び治療する方法であって、
動物におけるウイルス侵入タンパク質-細胞受容体の相互作用を阻害するステップと、
前記動物における前記ウイルス感染症を防止及び治療するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記治療するステップが、操作された抗体治療薬によるウイルスリガンド-細胞受容体の相互作用の(非)又は競合阻害、操作された抗体治療薬によるウイルス中和、貪食及びマクロピノサイトーシスも防止する操作された抗体治療薬(前記抗体のFc領域に含まれるCD47ドメイン)によるウイルス中和、二重特異性重鎖及び軽鎖エピトープを有する操作された抗体治療薬によるウイルス中和、貪食及びマクロピノサイトーシスも防止する二重特異性重鎖及び軽鎖エピトープを有する操作された抗体治療薬(前記抗体の前記Fc領域に含まれるCD47ドメイン)によるウイルス中和、小分子による前記ウイルスリガンド-細胞受容体の相互作用の(非)又は競合阻害、前記ウイルス侵入タンパク質が天然/野生型受容体を認識しなくなるような遺伝子編集方法による細胞受容体改変、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるステップとして更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記防止するステップが、リガンド-細胞受容体の相互作用に関与するウイルスタンパク質又は前記タンパク質のドメインの注入による免疫刺激(B細胞)、ウイルスT細胞抗原の注入による免疫刺激(T細胞)、前記リガンド-細胞受容体の相互作用又はT細胞抗原に関与するウイルスタンパク質又は前記タンパク質のドメインの注入による免疫刺激(B細胞及びT細胞を同時に)、B細胞からの免疫応答を誘発して中和抗体を産生するためのリガンド-細胞受容体の相互作用に関与するウイルスタンパク質又は前記タンパク質のドメインをコードするmRNAの送達、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるステップとして更に定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルス感染症が、アフリカブタ熱ウイルス(ASFV)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルス感染症が、仮性狂犬病ウイルス、ブルータングウイルス、口蹄疫ウイルス(血清型A、O、C、SAT1、SAT2、SAT3、Asia1)、日本脳炎ウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、牛疫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス、BSEプリオン、ウシウイルス性下痢ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ウシヘルペスウイルス1、ランピースキン病ウイルス、ヤギ関節炎及び脳炎ウイルス(Caprine arthritis and encephalitis virus)、小反芻獣疫ウイルス、スクレイピープリオン、羊痘及びヤギ痘ウイルス(Sheeppox and goatpox viruses)、アフリカ馬疫ウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ウマインフルエンザウイルス、ウマヘルペスウイルス4、ウマ動脈炎ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、ブタ熱ウイルス(Classical swine fever virus)、ニパウイルス、ブタ生殖器及び呼吸器症候群ウイルス、ブタ水疱病ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス、アヒル肝炎ウイルス、高及び低病原性トリインフルエンザウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、並びにトリメタニューモウイルスからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記阻害するステップの前に、受容体スクリーニングを実行し、ウイルス付着及び侵入タンパク質と相互作用する細胞受容体を同定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
遺伝子編集方法による前記細胞受容体改変が、侵入タンパク質の機能不全又は破壊によりウイルス結合を防止するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子編集方法が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、ヒトWRN、C2c2、C2c1、C2c3、CRISPR Cas9、CRISPR/Cpf1.CRISPR/TevCas9、CasX、CasY、及び古細菌Cas9からなる群から選択されるヌクレアーゼを使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療する方法であって、
前記ウイルスの溶原相(lysogenic phase)の外膜上のタンパク質を標的とするウイルス抗原を投与するステップと、
前記ウイルスの溶解相のカプシド上のタンパク質を標的とするウイルス抗原を投与するステップと、
前記ウイルス感染症を治療するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
前記ウイルス感染症が、ASFVであり、前記個体が、ブタである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスの溶原相の外膜上のタンパク質を標的とするウイルス抗原を投与する前記ステップが、pE402Rを標的とすることとして更に定義される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスの溶解相のカプシド上のタンパク質を標的とするウイルス抗原を投与する前記ステップが、pE102R、p72、p49、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質を標的とすることとして更に定義される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記投与するステップの各々が、全タンパク質、ペプチド、ペプチドセグメント、及び標的タンパク質に由来するペプチドの混合物からなる群から選択される組成物を投与することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)、pE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記投与するステップが、単一の注入又は別個の注入で実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記治療するステップが、前記個体においてB細胞応答を誘導し、免疫刺激応答を生成するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療するための組成物であって、前記ウイルスの溶原相の外膜上のタンパク質を標的とするウイルス抗原と、前記ウイルスの溶解相のカプシド上のタンパク質を標的とするウイルス抗原と、を含む、組成物。
【請求項18】
前記ウイルス感染症が、ASFVであり、前記個体が、ブタである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ウイルスの溶原相の外膜上の前記タンパク質が、pE402Rとして更に定義される、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記ウイルスの溶解相のカプシド上の前記タンパク質が、pE102R、p72、p49、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質として更に定義される、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、全タンパク質、ペプチド、ペプチドセグメント、及び前記標的タンパク質に由来するペプチドの混合物からなる群から選択されるウイルス抗原を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記ウイルス抗原が、pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)、pE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、単一の注入において薬学的に許容される賦形剤と製剤化される、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、第1の注入において溶原相の外膜上のタンパク質を標的とする前記ウイルス抗原と、第2の注入において溶解相のカプシド上のタンパク質を標的とする前記ウイルス抗原と、を有する薬学的に許容される賦形剤と製剤化される、請求項17に記載の組成物。
【請求項25】
ウイルスの溶原相及び溶解相の両方のタンパク質の全ドメイン及び/又は部分ドメインを含む、ウイルス感染症を防止するためのワクチン。
【請求項26】
前記タンパク質が、pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)、pE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物(非ヒト)におけるウイルス感染症を防止するための方法及び/又は治療に関する。より具体的には、本発明は、ブタ及び他の動物におけるウイルス感染症を治療及び防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アフリカブタ熱ウイルス(ASFV)は、主に飼育ブタ、イノシシ、イボイノシシ、及びカワイノシシに感染する大きい二本鎖DNAウイルスである。ASFVはまた、ヒメダニにも存在し、それによって感染性ベクターとして作用する。ASFVは、主に単球及びマクロファージに感染するが、急性感染症では、多くの他の細胞型が感染し得る。ASFVは、これらの動物において高熱、出血性病変、チアノーゼ、食欲不振、及び死亡を引き起こす。このウイルスに対するワクチンも治療法もなく、現在、その拡散を防止する唯一の方式は、動物を殺処分することである。
【0003】
出願人らに対する米国仮特許出願第62/871,949号は、ASFVを運ぶヒメダニなどのウイルスキャリアを排除又は中和するための遺伝子ドライブを開示している。遺伝子ドライブでは、対立遺伝子が、常に全ての子孫(50%だけでなく)において優性対立遺伝子として現れるように改変される。
【0004】
以下のものの静脈内注入を含むいくつかにわたって、ASFV用のワクチンを開発するための多くの試みが行われている:1)弱毒化ウイルス(Barasona et al.2019,Gallardo et al 2018、O’Donnell et al 2017、Monteagudo et al 2017、Lopez et al 2020、Chen et al 2020、Borca et al 2020、Teklue et al 2020、Petrovan et al 2021)、2)DNA/RNAワクチン、3)ウイルスの外膜又はカプシドに由来するタンパク質を刺激する抗体(Ruiz-Gonzalvo et al 1996、Neilan et al 2004、Lopera-Madrid et al 2017、Netherton et al 2019、Zhang et al 2021)、4)外膜又はカプシド中和抗体、(Lopera-Madrid et al 2017、Tesfagaber et al 2021)、及び5)遺伝子編集(Huebner et al 2018、Borca et al 2018、Wozniakowski et al 2020)。
【0005】
天然に存在する生ウイルス及び/又は組換え弱毒化ウイルスアプローチは、ブタにおけるASFVに対する堅牢な保護を促進することが示されており(Borca et al 2019)、これまでのところ、ブタにおけるASFウイルス感染症に対する唯一の保護アプローチである。これらのアプローチは、ASFVのより毒性の強い株への逆戻りのリスクに起因するウイルス感染症に対する一時的な緩和のみを目的とする。したがって、これらの技術は、複数の研究所によって現在求められているより高度かつより安全なサブユニットベースのワクチン及び治療薬よりも望ましいものではない。
【0006】
DNA/RNAワクチンは非常に強力であり、SARS-CoV-2などのウイルスから宿主を保護するのに非常に効果的であることが示されている。しかしながら、ASFV感染症のためのDNA/RNAワクチンアプローチを使用する試みは、ウイルス構造及びゲノムの複雑さによって混同される標的化及び戦略の知識が欠如しているために、ほとんど開発されていない。ASFVは、少なくとも2つの感染症メカニズムを有する多層ウイルス粒子である。更に、ASFV多層ウイルス粒子は、150を超えるオープンリーディングフレームを有するウイルスゲノムを包含し(Alejo et al 2018、Liu et al 2019)、そのほとんどがまだ特徴付けられていない。
【0007】
免疫システムを刺激するように設計された現在のサブユニットタンパク質ワクチンのアプローチは、いくつかの理由でウイルスに対する長期的な保護には至っていない。第一に、(上記のように)タンパク質機能、ゲノム特性、及びウイルス感染サイクルの知識が欠如しているために、堅牢なワクチン及び/又は治療薬への意義のある変換が損なわれている。第二に、複数のウイルス抗原をエミュレートするサブユニットタンパク質注入の立て続けの組み合わせは、おそらく(タンパク質抗原ごとの)治療のタイミングが不的確であること、濃度が不正確であること、及び機能的かつ持続的な反撃を生み出すために免疫システムに過度な負担がかかること、及び最も重要なことに、(
図2に定義されるような)ウイルス複製方法を考慮していないことに起因して、最小限の持続的な保護効果しか有していない。
【0008】
中和抗体アプローチはまた、ウイルスの最小の構造、ゲノム、及び複製サイクルに関連する知識が限られているために、ブタにおけるASFVの一次感染に対する保護品質が限られている。追加の抗体ベースの治療的予防アプローチは、回復期の血清又は選択された/操作されたモノクローナル抗体の使用を含む。保護性ポリクローナル抗体プールからなる回復期血清は、ウイルス抗原を認識してブタにおける長期免疫応答を誘発するのに十分な強度も安定性もない可能性がある。更に、操作されたモノクローナル抗体はより良好である可能性があるが、最も強く、最も選択的で、正確な免疫増強特性を決定するスクリーニング方法は、最近まで存在していない。加えて、抗体治療アプローチは、溶原(ウイルスを含有する外膜)及び溶解(カプシドベースのウイルス)サイクル並びに治療のタイミングを考慮に入れなければならない。例えば、溶原性外膜を含有するビリオンが中和されず、サイクルの溶解段階への進行が許容される(抗体療法から隠されている)場合、免疫(及び治療上の利点)は、(
図1Bのように)ブタの身体にウイルスが充満することによって克服されてしまう。
【0009】
CRISPR遺伝子編集は、ウイルスを除去し、その培養における拡散を防止することが示されている(11.Huebner et al 2018)。この強力な技術は、ブタのASFVを治癒することが期待されているが、そのような療法はコストが高いため、特に一頭当たりのブタのコストが低いことを考慮すると市場に出ることはない。
【0010】
これらの課題により、新しく発見された構造(Wang et al 2019)、ゲノム、複製サイクル、及びウイルス抗原との免疫相互作用(
図3~5)に基づいて、ASFVの治療のための新規な戦略を開発するための必要性がある。
【0011】
構造上の発見及び対応する発明。
ASFVは、非常に安定した多層ウイルスである。ASFVは、5つの層を有する:1)核様体、2)コアシェル、3)内膜、4)カプシド、及び5)外膜(
図1A)。
【0012】
ASFVは、急速な溶原サイクルと、それに続く圧倒的な溶解サイクルという2つの感染サイクルを経る(
図2A~2E)。溶原サイクルは、2つの作用機序-1)赤血球-マクロファージ媒介破壊経路を介してマクロファージに感染する外膜を含む5層ウイルスとして(
図2A)、及び2)エンドサイトーシス又はマクロピノサイトーシスを介してマクロファージに直接感染するカプシドベースのビリオン(外膜なし)として(
図2B)を通じて始まる。ASFVが外膜を含む第1の溶原性MOAでは、ウイルス膜貫通タンパク質EP402R(CD2v)及びEP153R(並びに、潜在的にI177L)は、循環中の赤血球(RBC)に付着し、RBCを凝集させ(
図2C)、貧食作用を介したRBCのマクロファージ媒介破壊を誘発し、それによってウイルスをマクロファージに侵入させる(
図2D)。増え続ける証拠により、ASFビリオンがEP402R(CD2v)外膜タンパク質のコンフォメーション変化を介してファゴソームを出て、そのペプチド配列([KPCPPP]3が曝露され、コンパートメントから細胞質への脱出を促進することを明らかになりつつある(Yang et al 2021)。EP402Rはまた、T細胞応答も阻害するが、EP153RはMHCクラス1表面分子の発現を低下させ、それによって感染した細胞を免疫システムから隠す(
図2D)。E183L(p54)は、ウイルスの内膜に存在する内在性タンパク質(integral protein)であり、それに対して提起された抗体は、強力な中和効果を有することが示されている(Zhang et al 2021、Chen et al 2021)。E183L(p54)は、ダイニン相互作用を介して、内在性小胞体(ER)内の「ウイルス工場」領域にASFビリオンをシャトルする(ファゴソーム放出後に細胞質内に1回)のを助ける、感染サイクル(溶原)の初期タンパク質である(Hernaez et al 2004)(
図2D)。I177L遺伝子から発現されるタンパク質の機能及び位置はまだ完全には定義されていないが、その欠失はウイルスの複製能力を著しく低下させ、溶原サイクルにおける初期段階の役割を示唆している(
図1C)。
【0013】
ASFVがRBC貪食破壊経路のハイジャックを通じてマクロファージ侵入すると、ファゴソームから細胞質に放出され、ER内のウイルス工場(E183L(p54)ダイニン相互作用を介して)に輸送され、そこで複製が開始される(おそらくまだ定義されていない即時の初期プロモーターを介して)(
図2D)。次いで、細胞質中で新たに形成されたビリオンは、感染したマクロファージの細胞質膜に位置し、そこで成熟したビリオンとしてブタの血液中に出芽する(
図2D)。ウイルスが(宿主細胞から)その外膜を獲得するのは、この出芽プロセスを通してである。新たな外膜含有ビリオンが感染したマクロファージから放出されると、新たなRBCを標的とし、プロセスを再び開始する。溶原感染サイクル性感染サイクルがブタにおけるマクロファージの集団を急速に追い越すため、細胞アポトーシス経路を活性化させつつ、感染サイクルを溶原サイクル(アポトーシスが抑制される)から溶解サイクルに切り替えるトリガー(特異的でまだ定義されていないウイルスタンパク質の量の増加によって調節される後期プロモーターなど)が存在する可能性がある(
図2E)。
【0014】
溶解サイクルが始まると、カプシドベースのビリオンが細胞から爆発し、抑制されたT細胞(ウイルスタンパク質EP402R(CD2v)媒介抑制を介して)及びマクロファージ(感染症及びウイルスタンパク質EP153R媒介抑制に起因する)応答を現在有する生物(
図2E)を通して急速に拡散する(
図2D)。体内に放出されるウイルスの量は、任意の既存の抗体応答(B細胞から天然に生じるか、又はタンパク質抗原ワクチン若しくは抗体治療薬によって誘導されるかのいずれか)を圧倒する(
図2E)。このため、ワクチン接種又は治療レジメンのためにカプシド抗原(主に後期溶解サイクル)を単に標的とするだけでは機能せず、これが無数のグループからの多くの試みの根底にある問題である可能性がある(
図1B及び2E)。
【0015】
このモデルは、最近の構造及びウイルス複製データに基づいて、有意義で安全かつ長期持続するワクチン及び/又は治療薬の必要性を満たすために戦略計画を実施することを可能にする(
図3-「タンパク質サブユニット及び抗体凡例」、及び
図4、
図5)。
【0016】
ASFVの溶原及び溶解サイクルの時間特性に応じた3つの戦略:
(1)感染症の開始時にEP402R(CD2v)及びEP153Rタンパク質を中和する抗体を(サブユニットワクチン、又はmRNA/DNAワクチン、又は直接抗体治療アプローチのいずれかを通じて)作製することによって、これらのウイルスタンパク質によって(直接的に又は間接的に)促進されるRBCの凝集を防止することができ、したがって、マクロファージによって開始されるRBC ASFV媒介破壊経路も防止されるであろう(
図4、並びに
図5A及び5B)。これらのタンパク質がRBCと相互作用するのを阻害することによって、ASFVのマクロファージへの侵入の主要なMOAは、1)遮断され、2)T細胞応答はもはや阻害されず、3)マクロファージMHCクラス1複合体は発現され続け、それによって初期溶解サイクルの定着を抑制するのを助ける(
図5D1)。更に、2つの追加の溶原サイクル関連タンパク質であるE183L(p54)(ウイルス内在性内膜タンパク質)及びpI177Lを中和する抗体の作製(サブユニットワクチン、又はmRNA/DNAワクチン、又は直接抗体治療アプローチのいずれかを介して)は、より大きい保護が促進され得、ASFV複製サイクルの更なる廃止が生じ得る。E183L(p54)は、内在化及び細胞質(ファゴソーム放出後)のASFビリオンをER内のウイルス工場に輸送するように機能する。pI177Lの機能はまだ決定されていないが、この遺伝子由来のタンパク質がノックアウトされると、ウイルスはその複製能力を失う(
図5B1及び5C)。EP402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)、及びpI177Lの任意の組み合わせを使用して、ブタを治療し、ウイルス溶原サイクルの定着を遮断することができる(
図4)。サブユニットワクチン、mRNA/DNAワクチン、又は治療用抗体を作製/操作するために開発中の各タンパク質及びタンパク質サブユニットは、
図16に示す表に定義される。タンパク質又はタンパク質サブユニットはまた、
図16に示されるもの、又は他の方法で本明細書に記載されるものと、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%の配列同一性類似性を有することができる。
【0017】
(2)外膜を含まないビリオン上のカプシドタンパク質を中和する抗体を作製することにより、カプシド関連エンドサイトーシス及び/又はマクロピノサイトーシスによる初期感染を阻害することができる。カプシドタンパク質CP204L(p30)、B646L(p72)及びO61R(p12)は、ワクチン及び/又は治療レジメンアプローチの手ごわい標的を表す(
図1C)。B646L(p72)及びCP204L(p30)は、ASFVカプシドの主要な構造タンパク質であるが、これらのタンパク質を使用してワクチンを作製するための複数の試みは、最小限の保護を提供することのみでは成功していない。考えられる理由は、感染したブタで溶解サイクルが開始されると、ウイルス粒子の量が任意の抗体治療薬又はB細胞応答の中和効果をはるかに上回り(
図1B)、抗体中和ウイルスの破壊を誘発するマクロファージの数が大幅に減少するということである。したがって、標的抗体応答は、最初に溶原性ASFV型ビリオン(外膜を有するもの)、並びに溶解性ASFV型ビリオン(外膜を有さず、曝露されたカプシド抗原標的からなるもの)を中和するために必要である(
図4)。
【0018】
(3)追加の保護は、抗体のFc領域内に構築されたヒトCD47タグ(それぞれ、
図7及び
図8-RNA及び部分タンパク質配列)のブタ相当物を用いて、標的抗体の各々を操作することによって(EP402R(CD2v)、EP153R、B646L(p72)、E183L(p54)、CP204L(p30)及びO61R(p12)に向けて)実施することができる(
図6)。CD47は、細胞上に天然に存在する「私を食べないで(don’t eat me)」5膜貫通受容体タンパク質である(Russ et al 2018、USPN9,050,269、USPN8,377,448、USPN8,0064,306)。ヒトにおいて、CD47受容体はSIRPαに結合し、プログラムされた細胞除去PCRの防止を誘発するシグナル伝達軸を形成する(Oldenborg et al 2001)。これにより、マクロファージが生物に属する細胞を貪食するのを防ぐ。しかしながら、CD47は、マクロピノサイトーシスに関して反対の役割を果たすことが報告されている。エクソソームを含有するCD47は、単球及びマクロファージの表面上のTSP1との相互作用によってマクロピノサイトーシスを誘発することが示されている。この相互作用は、Nox1の上方調節を誘発し、膜の波打ち現象(membrane ruffling)とマクロピノサイトーシスの開始を誘発する(Csanyi et al 2017)。したがって、抗体のFc領域に融合したCD47アイソフォーム2細胞外ドメインは、中和されたウイルスの貪食作用を防止する可能性があるが、ウイルス(操作された抗体で覆われた)は、マクロピノサイトーシスを介してその取り込みを増強し得る。この課題を回避するために、CD47アイソフォーム細胞外ドメインを、SIRP-αとのその相互作用特性を保持しながら、TSP1とのその相互作用を防止するように操作/選択する。このシナリオでは、貪食作用及びマクロピノサイトーシスの両方が、変異体CD47(mCD47)アイソフォーム2細胞外ドメインによって阻害される(
図6)。mCD47(アイソフォーム2)の細胞外ドメインを標的抗体のFc領域に組み込むことによって、マクロファージによるウイルスの取り込みを、以下によって排除することができる:
【0019】
(a)ASFV媒介RBC凝集部位における貪食作用の防止。
【0020】
(b)カプシドベースのASFVで生じると予測されているマクロピノサイトーシスの防止(Sanchez et al 2012、Sanchez et al 2017)。
【0021】
(c)エンドサイトーシスの間接的な防止。CD47がエンドサイトーシスを調節するという証拠はないが、標的抗体/タンパク質ワクチン療法の組み合わせは、ASFV感染サイクルの能力を著しく低下させるであろう。溶解サイクルが引き継がれた後、ASFVのエンドサイトーシスが主要な感染形態となり、残りのマクロファージ(及び他の細胞)は、より高い濃度であるときにウイルスを取り込む可能性がある。この標的化戦略を実施し、CD47又はmCD47アイソフォーム2細胞外ドメインシグナルを各標的抗体のFc領域に組み込むことによって、溶解サイクルは定着しない可能性がある。
【0022】
(d)次いで、(抗体結合を介して)mCD47タグ付けされたASFウイルスは、好中球経路を介して除去される。好中球は、ASFVに感染することは報告されていない(
図6)。
【0023】
強い抗体応答は、いくつかの方式で誘発することができる。治療薬及びワクチン:
治療薬。抗体(所望の標的ごとに)は、Aridis Pharmaceuticals λPEX(登録商標)及び/又はMabIgXプラットフォーム(複数可)アプローチ(WO2021/126817A2)を使用して選択及び操作することができる。Aridis Pharmaceuticals λPEX(登録商標)及び/又はMabIgXプラットフォーム(複数可)アプローチを使用して、非常に強力で、堅牢で、高選択性で、正確で、特異的で、高親和性(high affinity)及び高親和性(high avidity)の抗体をB細胞スクリーニングプロセスから選択すると、これらの抗体(モノクローナル)を直接注入の治療薬として使用することができる。この治療薬を使用して、感染したブタを治療するか、又は感染からブタを保護するための抗体ワクチン-予防薬として使用することができる(抗体治療薬開発のための各タンパク質に関連するデータは、
図9A~
図15Cに描画されている)。
【0024】
治療薬。更に、エピトープ配列は、モノクローナル抗体選択プロセスから得ることができる。これらの配列を使用して、抗体のFc領域に融合した血清型-2 CD47(mCD47)細胞外ドメインを含有する抗体を操作することができる。これらの操作された抗体(任意の所望の標的に対する)は、ASFVを中和し、マクロファージへの感染を防止するための治療薬として使用することができる(抗体治療薬開発のための各タンパク質に関連するデータは、
図9A~15Cに描画される)。
【0025】
ワクチン。抗体は、各標的のタンパク質をブタモデルに注入することによって自然に刺激することができる。次いで、タンパク質抗原サブユニットワクチンは、B細胞を刺激して、それらに対する抗体、したがってウイルスを作製する。
図16は、ワクチン接種のためのタンパク質及びサブユニットの表を示すが、これらのバリアントに限定される。バリアントは、最大90%の差異を有するタンパク質標的からの任意のペプチド誘導を含んでもよい)。産生された抗体は、注入されるタンパク質の濃度及び長期効果のためのアジュバント放出に依存することになる(ワクチン開発のための各タンパク質に関連するデータは、
図9A~15Cに描画される)。
【0026】
ワクチン。タンパク質(任意の組み合わせ又は濃度/用量で、-EP402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)、CP204L(p30)、B646L(p72)、及びO61R(p12)であるが、これらのタンパク質に限定されないものは、溶原性/溶解性二重治療モデル内に収まる重要な標的であるはずであり、発見されている)は、標的リポナノ粒子、エクソソーム、ナノベシクル、生体模倣エクソソーム、AAV、アネロウイルス、又はClews中のRNA転写産物をB細胞に送達して、タンパク質抗原を産生し、より堅牢で持続的な抗体効果を誘発することによって発現することができる。このアプローチは、(CD47Fc領域タグなしで)天然に構造化されたものを誘導する。送達ビヒクルはまた、(例えば)B細胞上のCD19受容体を認識するリガンドを使用して、B細胞を標的とすることができるが、CD19標的に限定されない(ワクチン開発のための各タンパク質に関連するデータは、
図9~
図15に描画される)。
【0027】
マクロファージ上のASFVに対する受容体は不明である。ASFV媒介RBC凝集の貪食作用がウイルスの溶原段階の感染の主なMOAである場合、細胞の受容体媒介感染は、マクロピノサイトーシス及び/又はエンドサイトーシス中に発生する可能性があり、複製の溶解サイクル中に発生頻度がより高くなる。ツーハイブリッドシステムを使用して、ウイルスリガンド(餌)と細胞受容体(獲物)との相互作用を決定して、このMOAを定義することができる。ウイルスタンパク質O61R(p12)、E183L(p54)、B438L(p49)、EP153R、及びI177Lは各々、細胞受容体媒介感染の潜在的なウイルスリガンドとして予測されている。
【0028】
p12は、外膜(溶原性)内及び内膜とカプシド(溶解性)との間に存在することが示されている(Angulo et al 1993、Galindo et al 1997)。
【0029】
E183L(p54)は、主要なカプシドタンパク質成分である。E183Lに対して産生された抗体(p54)は、ASFVの感染を遅らせることが示されているが、感染を防止するには不十分なままである(Neilan et al 2004)。
【0030】
B438L(p49)は、内膜とカプシド(溶解性)との間に存在し、予測される受容体ドメインを有する(Wang et al 2019)。
【0031】
EP153Rは、MHCクラス1表面分子の発現を低下させ、細胞表面での直接マクロファージ接触及びウイルスが細胞に侵入するための可能性のあるMOAにおいて役割を有することを示唆している(Gallardo et al 2018、Hurtado et al 2011)。
【0032】
I177Lは、膜貫通ドメインを含有する外膜(溶原性)及び内膜(溶解性)タンパク質であると予測されている。その欠失は、感染を著しく減少させる(Borca et al 2021)。
【0033】
ウイルスリガンド及び細胞受容体の相互作用タンパク質及び相互作用MOAを定義することによって、受容体は、小分子、又は抗体、又はナノボディ、又は受容体と競合する変異型ウイルス、又は核酸競合体/結合剤で遮断することができる。
【0034】
更に、GMOブタ又は操作されたマクロファージ(置換/置換療法のための)は、ASFVの結合を防止するように改変されている受容体を有するように操作され得る。同様のアプローチは、ヒト細胞を、SARS-CoV-2(ACE受容体)及びHIV(CCR5デルタ変異)などのウイルスに対して耐性を有するように操作することが試みられている。
【0035】
ASFVが人畜共通感染症になる場合(可能性は非常に低いが、あり得ないわけではない)、ヒトにおいてウイルスを排除するために、CRISPR遺伝子編集及び/又はmRNAアプローチを利用することができる。
【0036】
しかしながら、ウイルス自体を治療する方法が依然として必要である。
【0037】
今日まで、ASFVの細胞受容体は同定されていないが、ウイルスが単球又はマクロファージ細胞においてダイナミン依存性及びクラトリン媒介性のマクロピノサイトーシスプロセスを介して侵入するという証拠がある(Jia,et al 2017)。ASFVのウイルス抗原に対する強力な抗体応答を生み出そうとする試みは、不十分な結果に終わっている。
【0038】
遺伝子編集は、ヌクレアーゼの使用によって、生物のゲノム中にDNA又はRNAを挿入するか、欠失させるか、又は置き換えることを可能にする。メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化された規則的な間隔の短い回文反復(CRISPR)-Casヌクレアーゼを含む、現在使用されるいくつかのタイプのヌクレアーゼがある。これらのヌクレアーゼは、DNAを編集するために、DNAの部位特異的な二本鎖(又は一本鎖)切断を生成することができる。受容体のゲノムを標的とすることには、ウイルスゲノムを正確に切断し、対象に有害であり得るオフターゲット効果がないことが必要である。
【0039】
Howellらに対する米国特許出願公開第2016/0040165号は、標的HIV-1DNA配列を保有する真核生物細胞を(a)1つ以上のガイドRNA、又は当該1つ以上のガイドRNAをコードする核酸、及び(b)クラスター化された規則的な間隔の短い回文反復関連(cas)タンパク質、又は当該casタンパク質をコードする核酸と接触させることによって、真核生物細胞における標的ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)DNA配列の機能又は存在を阻害する方法を開示し、当該ガイドRNAは、当該標的HIV-1DNA配列とハイブリダイズし、それによって、当該標的HIV-1DNA配列の機能又は存在を阻害する。
【0040】
Zhangらに対する米国特許出願公開第2014/0357530号は、細胞内の遺伝子機能に焦点を当て、ベクターシステム及びクラスター化された規則的な間隔の短い回文反復(CRISPR)-Casシステム及びその成分に関連する他の態様を使用する機能ゲノミクスで使用される組成物、方法用途及びスクリーンを開示している。Zhangらは、最大200塩基対、好ましくは最大100塩基対、又はより好ましくは最大50塩基対である5’オーバーハングを生成する、DNAの短い部分の修飾を開示している。
【0041】
Doudnaらに対する米国特許第10,266,850号は、標的化配列を含み、修飾ポリペプチドとともに、標的DNA及び/又は標的DNAに関連するポリペプチドの部位特異的修飾を提供するDNA標的化RNAを開示している。また、標的細胞内の標的核酸の転写を調節する方法であって、一般に、標的核酸を酵素的に不活性なCas9ポリペプチド及びDNA標的化RNAと接触させることを伴う方法も開示される。
【0042】
遺伝子編集は、点変異を作製するためにも使用されている。Reesら(Nat Rev Genet.2018 Dec;19(12):770-788)は、二本鎖DNA切断を行うことなく、CRISPRシステムからの成分を他の酵素とともに使用して、点変異を細胞DNA又はRNAに直接導入する新しいゲノム編集アプローチである塩基編集を教示している。DNA塩基エディターは、核酸塩基デアミナーゼ酵素に融合された触媒的に無効化されたヌクレアーゼ、及び場合によっては、DNAグリコシラーゼ阻害剤を含む。RNA塩基エディターは、RNAを標的とする成分を使用して類似の変化を達成する。塩基エディターは、1つの塩基又は塩基対を別の塩基又は塩基対に直接変換し、過剰な望ましくない編集副産物を生成することなく、非分裂細胞に点変異を効率的にインストールすることを可能にする。
【0043】
Cas/デアミナーゼ融合タンパク質もまた、点変異を作製するために使用されている。Zhengら(Communications Biology volume 1,Article number:32(2018)は、原核細胞内でシトシンのチミンへの変換を指示するためにニッカーゼCas9-シチジンデアミナーゼ融合タンパク質を使用し、Escherichia coli及びBrucella melitensisにおいて高い変異誘発頻度をもたらした。Liuらに対する米国特許出願公開第2016/0304846号もまた、細胞又は対象のゲノム内の単一部位を編集するための、Cas9の融合タンパク質及び核酸編集酵素又は酵素ドメイン、例えば、デアミナーゼドメインを開示している。
【0044】
初期の溶原性ウイルス複製、それに続く細胞受容体との相互作用及び細胞内在化経路(貪食作用、マクロピノサイトーシス及びエンドサイトーシスなど)を中断することによる後期の溶解性ウイルス複製の組み合わせを受けるウイルス感染症(ASFVなど)の治療及び防止するための必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0045】
本発明は、動物における細胞侵入に直接的に(エンドサイトーシス及び/若しくはマクロピノサイトーシス)又は間接的に(宿主成体分子とのウイルスの相互作用によって凝集されているRBCの貧食作用)に関与する重要な細胞受容体とのウイルスリガンド相互作用を阻害し、動物におけるウイルス感染症(及び好ましくはブタにおけるASFV)を防止及び治療することによって、動物におけるウイルス溶原性及び溶解性感染症を防止及び治療する方法を提供する。
【0046】
治療は、1)操作された抗体治療薬によるウイルスリガンド-細胞受容体の相互作用の(非)又は競合阻害、2)操作された抗体治療薬によるウイルス中和、3)貪食及びマクロピノサイトーシスも防止する操作された抗体治療薬(抗体のFc領域に含まれるCD47/mCD47ドメイン)によるウイルス中和、4)二重特異性重鎖及び軽鎖エピトープを有する操作された抗体治療薬によるウイルス中和、5)貪食及びマクロピノサイトーシスも防止する二重特異性重鎖及び軽鎖エピトープを有する操作された抗体治療薬(抗体のFc領域に含まれるCD47/mCD47ドメイン)によるウイルス中和、6)小分子によるウイルスリガンド-細胞受容体の相互作用の(非)又は競合阻害、又は7)ウイルス侵入タンパク質が天然/野生型受容体を認識しなくなるような遺伝子編集方法による細胞受容体改変のいずれかにより達成することができる。
【0047】
防止(ワクチン)は、1)リガンド-細胞受容体の相互作用に関与するウイルスタンパク質(又はタンパク質のドメイン)の注入による免疫刺激(B細胞)、2)ウイルスT細胞抗原(ref)の注入による免疫刺激(T細胞)、3)リガンド-細胞受容体の相互作用又はT細胞抗原それぞれに関与するウイルスタンパク質(又はタンパク質のドメイン)の注入による免疫刺激(B細胞及びT細胞を同時に)、4)B細胞からの免疫応答を誘発して、中和抗体又は感染前の/予防的な様式で使用することができる上記組み合わせのいずれか1つを生成するためのリガンド-細胞受容体の相互作用に関与するウイルスタンパク質又はタンパク質のドメインをコードするmRNAの(エクソソーム、生体模倣エクソソーム、ナノ粒子、AAV、アネロウイルス、クリュー(clew)、リポソームを介する)送達のいずれかにより達成することができる。
【0048】
本発明は、ウイルスの溶原相の外膜上のタンパク質を標的とするウイルス抗原を投与し、ウイルスの溶解相のカプシド上のタンパク質を標的とするウイルス抗原を投与することにより、溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療する方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療するための組成物であって、ウイルスの溶原相の外膜上のタンパク質を標的とするウイルス抗原と、ウイルスの溶解相のカプシド上のタンパク質を標的とするウイルス抗原と、を含む、組成物を提供する。
【0050】
本発明はまた、ウイルスの溶原相及び溶解相の両方のタンパク質の全ドメイン及び/又は部分ドメインを含む、ウイルス感染症を防止するためのワクチンを提供する。
【0051】
付属の図面に関連して考慮すると、以下の詳細な説明を参照することによって本発明の他の利点がよりよく理解されるようになるため、本発明の他の利点は容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1A】ASFVの溶原性及び溶解性構造を示し、ASFVの溶解性構造(左)対溶解性構造(右)を示す。
【
図1B】ASFVの溶原性及び溶解性構造を示し、カプシドタンパク質に向けられた抗体が、溶解性複製サイクルに由来する外膜を有するビリオンを透過せず、カプシドベースの中和抗体が、全てのウイルスを排除するのに十分ではないことを示す。
【
図1C】ASFVの溶原性及び溶解性構造を示し、外膜タンパク質標的(上)対カプシドタンパク質標的(下)を示す。
【
図2A】ASFV感染症及び複製サイクルを示す概略図であり、ブタの外膜含有ビリオン感染症を示し、外膜ビリオンが、ウイルスタンパク質EP402R、EP153R、及びp54を介して循環血液中でのRBCの凝集を引き起こすことを示す。
【
図2B】ASFV感染症及び複製サイクルを示す概略図であり、ブタのカプシド含有ビリオン(外膜なし)感染症を示し、カプシドベースのウイルスが、マイクロピノサイトーシス及び/又はエンドサイトーシスを介して循環マクロファージ及び/又は単球に感染すること、細胞内に侵入すると、ウイルスが、ウイルス工場領域にシャトルされ、溶原サイクルを開始すること、子孫ビリオンが(親カプシドベースのビリオンとは異なり)細胞の細胞質膜から出芽し、現在は外膜を含有すること、外膜含有ビリオンが細胞から出芽して血液に入ることを示す。
【
図2C】ASFV感染症及び複製サイクルを示す概略図であり、
図2Aと同様に、ビリオンが、ビリオン凝集RBCのマクロファージ活性化破壊につながるRBC凝集を引き起こすことを示す。
【
図2D】ASFV感染症及び複製サイクルを示す概略図であり、ビリオンが内在化し、RBCがファゴソーム内で分解され、ビリオンがEP402R細胞透過([KPCPPP]3ペプチドの活性化を通じて脱出した後のマクロファージの感染を示し、このペプチドはまた、EP402R及びEP153Rの濃度が(ビリオン産生により)増加するにつれ、マイクロピノサイトーシス及びエンドサイトーシス(Yang et al 2021)の間に活性化されることが示されており、それらはそれぞれ、T細胞及びマクロファージのMHC複合体と相互作用し、T細胞応答及びMHC複合体媒介免疫相互作用の下方調節をもたらすことを示す。
【
図2E】ASFV感染症及び複製サイクルを示す概略図であり、溶原サイクルがマクロファージを圧倒し、循環中のビリオンの数が増加するにつれて、ウイルスを複製の溶解段階に入らせる遺伝子スイッチが発生すること、ここで、細胞が破裂し、血液中での感染性カプシドベースのビリオンの量を指数関数的に増加させること、現在非常に高濃度であるカプシドベースのビリオンが、マクロピノサイトーシス及びエンドサイトーシス経路を介して複数の細胞型に感染する可能性があること、暴走感染が、既に緊張し抑制された免疫システムを圧倒し、動物の死につながることを示す。
【
図3】溶解及び溶原サイクルに関連する、各治療薬についての抗体の凡例及び作用方法(MOA)の説明を示す。
【
図4】代替の保護治療戦略(ワクチン対治療薬)を示す。
【
図5A】ASFVを治療するための提案されたワクチン及び治療アプローチを示す概略図であり、溶原性及び溶解性ウイルスサイクルを抗体(予防的に/治療的に注入されているか、又はタンパク質ワクチンサブユニットの注入によって内部的に刺激されているかのいずれか)で攻撃することによって、ASFVの複製サイクルを遮断することができること、及びウイルスが中和されることを示し、α-EP402Rが、ビリオンの外膜上のEP402Rを遮断することによってRBC凝集を防止することを示す。
【
図5B】ASFVを治療するための提案されたワクチン及び治療アプローチを示す概略図であり、溶原性及び溶解性ウイルスサイクルを抗体(予防的に/治療的に注入されているか、又はタンパク質ワクチンサブユニットの注入によって内部的に刺激されているかのいずれか)で攻撃することによって、ASFVの複製サイクルを遮断することができること、及びウイルスが中和されることを示し、α-EP153Rが、ビリオンの外膜上のEP153Rを中和することによって、RBC凝集及びビリオン媒介MHC遮断を防止することを示し、
図5A及び5Bの両方が、同じビリオン上で同時に発生し得、1は、複製能力のないウイルスを示す。
【
図5C】ASFVを治療するための提案されたワクチン及び治療アプローチを示す概略図であり、溶原性及び溶解性ウイルスサイクルを抗体(予防的に/治療的に注入されているか、又はタンパク質ワクチンサブユニットの注入によって内部的に刺激されているかのいずれか)で攻撃することによって、ASFVの複製サイクルを遮断することができること、及びウイルスが中和されることを示し、α-p54がER内のウイルス工場への内在化ビリオンのダイニン媒介輸送を遮断することによりウイルス複製を防止すること示す。
【
図5D】ASFVを治療するための提案されたワクチン及び治療アプローチを示す概略図であり、溶原性及び溶解性ウイルスサイクルを抗体(予防的に/治療的に注入されているか、又はタンパク質ワクチンサブユニットの注入によって内部的に刺激されているかのいずれか)で攻撃することによって、ASFVの複製サイクルを遮断することができること、及びウイルスが中和されることを示し、1及び2は、溶解サイクルが定着してシステムを圧倒する前に、α-p72(並びにp30及びp49のような他のカプシドタンパク質)が、初期感染症においてカプシドベースのビリオンを中和して溶解サイクルが引き継がれることを防ぐことを示す。
【
図6】上記の抗体のうちのいずれかのFc領域のCD47/mCD47タグ付けを示す概略図であり、貪食作用(EP402R細胞透過([KPCPPP]3ペプチド活性化を介して)及びマクロピノサイトーシス(mCD47)によるマクロファージ取り込み及び潜在的な意図しない感染症を防止しながら、ビリオン抗原を中和する役割を果たし、次いで中和されたビリオンは好中球媒介分解により分解される。
【
図7】ブタCD47アイソフォーム2mRNA配列を示す。
【
図8】ブタCD47アイソフォーム2部分タンパク質配列を示す。
【
図9A】抗体開発のためのEP153R外膜タンパク質標的、発現及び株の考慮事項を示し、タンパク質の事実を示す。
【
図9B】抗体開発のためのEP153R外膜タンパク質標的、発現及び株の考慮事項を示し、抗体産生のためのタンパク質配列及び発現プロファイルを示す。
【
図9C】抗体開発のためのEP153R外膜タンパク質標的、発現及び株の考慮事項を示し、EP153R株のクラスター化及び抗体開発のための考慮事項を示す。
【
図10A】抗体開発のためのEP402R外膜タンパク質標的を示す。
【
図10B】抗体開発のためのEP402R外膜タンパク質発現を示す。
【
図10C】抗体開発のためのEP402R外膜タンパク質株の考慮事項を示す。
【
図10D】1及び2は、RBCへのEP402R.V2の結合を示す(顕微鏡画像-ストレプトアビジン磁気ビーズに付着したEP402R.V2は、RBC(透明なスポット)に結合し、それらの凝集を引き起こし(1)、ストレプトアビジン磁気ビーズに付着したp54.V2は、RBCに結合せず(対照-2)、
【
図10E】1及び2は、RBCへのEP402R.V2の結合を示す(イムノブロット分析-1-精製されたRBC画分では、EP402R.V2が、より高い濃度で細胞ペレット画分(レーン1)に現れ、p54対照レーン(レーン4~6)は、ペレット化せず、レーン8~14は、RBCなしの対照細胞であり、これらのレーンではペレットは観察されておらず、2-Expi293細胞対照におけるローディング対照と比較して、上清画分にはEP402R.V2はほとんど見られない)。
【
図11A】抗体開発のためのp54外膜タンパク質標的を示す。
【
図11B】抗体開発のためのp54外膜タンパク質発現を示す。
【
図11C】抗体開発のためのp54外膜タンパク質株の考慮事項を示す。
【
図12A】抗体開発のためのI177L外膜タンパク質標的を示す。
【
図12B】抗体開発のためのI177L外膜タンパク質発現を示す。
【
図12C】抗体開発のためのI177L外膜タンパク質株の考慮事項を示す。
【
図13A】抗体開発に関するp72カプシド標的及びB602Lシャペロン共折り畳みタンパク質を示す。
【
図13B】抗体開発に関するp72カプシド標的及びB602Lシャペロン共折り畳み発現を示す。
【
図13C】抗体開発に関するp72カプシド標的及びB602Lシャペロン共折り畳み株の考慮事項を示す。
【
図14A】抗体開発のためのp12外膜及び内膜タンパク質標的を示す。
【
図14B】抗体開発のためのp12外膜及び内膜タンパク質発現を示す。
【
図14C】抗体開発のためのp12外膜及び内膜タンパク質株の考慮事項を示す。
【
図15A】抗体開発のためのp30カプシドタンパク質標的を示す。
【
図15B】抗体開発のためのp30カプシドタンパク質発現を示す。
【
図15C】抗体開発のためのp30カプシドタンパク質株の考慮事項を示す。
【
図16】ワクチン及び治療用抗体の開発のために現在探索されているASFVタンパク質構築物の表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、ウイルス侵入タンパク質-細胞受容体の相互作用を阻害することによって、ウイルス感染症(及び好ましくはブタにおけるASFV)を防止及び治療する方法を提供する。治療は、1)操作された抗体治療薬によるウイルスリガンド-細胞受容体の相互作用の(非)又は競合阻害、2)操作された抗体治療薬によるウイルス中和、3)貪食及びマクロピノサイトーシスも防止する操作された抗体治療薬(抗体のFc領域に含まれるCD47/mCD47ドメイン)によるウイルス中和、4)二重特異性重鎖及び軽鎖エピトープを有する操作された抗体治療薬によるウイルス中和、5)貪食及びマクロピノサイトーシスも防止する二重特異性重鎖及び軽鎖エピトープを有する操作された抗体治療薬(抗体のFc領域に含まれるCD47/mCD47ドメイン)によるウイルス中和、6)小分子によるウイルスリガンド-細胞受容体の相互作用の(非)又は競合阻害、又は7)ウイルス侵入タンパク質が天然/野生型受容体を認識しなくなるような遺伝子編集方法による細胞受容体改変のいずれかにより達成することができる。
【0054】
防止(ワクチン)は、1)リガンド-細胞受容体の相互作用に関与するウイルスタンパク質(又はタンパク質のドメイン)の注入による免疫刺激(B細胞)、2)ウイルスT細胞抗原(ref)の注入による免疫刺激(T細胞)、3)リガンド-細胞受容体の相互作用又はT細胞抗原それぞれに関与するウイルスタンパク質(又はタンパク質のドメイン)の注入による免疫刺激(B細胞及びT細胞を同時に)、4)B細胞からの免疫応答を誘発して、中和抗体又は感染前の/予防的な様式で使用することができる上記組み合わせのいずれか1つを生成するためのリガンド-細胞受容体の相互作用に関与するウイルスタンパク質又はタンパク質のドメインをコードするmRNAの(エクソソーム、生体模倣エクソソーム、ナノ粒子、AAV、アネロウイルス、クリュー、リポソーム、又は任意の他の好適な送達方法を介する)送達のいずれかにより達成することができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「動物」は、任意の非ヒト動物種を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ブタ(porcine)」又は「ブタ(swine)」は、飼育ブタ、イノシシ、イボイノシシ、又はカワイノシシであり得る。
【0057】
「ベクター」という用語は、クローニング及び発現ベクター、並びにウイルスベクター及び組み込みベクターを含む。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターである。ベクターはまた、以下に更に記載される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の抗原に応答し、それに対抗して産生される血液タンパク質を指す。抗体は、血液中の細菌、ウイルス、及び異物などの、身体が異物として認識する物質と化学的に結合する。
【0059】
「mRNA」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質を作製するのに必要な遺伝情報を運ぶ細胞内のRNAのタイプを指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「CD47及び/又はCD47ドメイン及び/又はCD47細胞外ドメイン」という用語は、全ての組織内の多くの異なる細胞型に存在する膜貫通タンパク質を指す。これは、アポトーシス、増殖、接着、及び遊走などの細胞プロセスに関与する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「mCD47及び/又はmCD47ドメイン及び/又はmCD47細胞外ドメイン」という用語は、全ての組織内の多くの異なる細胞型に存在する野生型CD47膜貫通タンパク質の修飾を指す。この修飾/変異体は、貪食作用を防ぐためにSIRP-α受容体との相互作用特性を保持するが、もはやTSP1には結合せず、それによってマイクロピノサイトーシス媒介ウイルス侵入を中断する。
【0062】
「gRNA」という用語は、本明細書で使用される場合、ガイドRNAを指す。本明細書のCRISPR Cas9システム及び他のCRISPRヌクレアーゼ中のgRNAは、受容体又は受容体をコードする遺伝子を改変又は編集するために使用される。gRNAは、コード配列又は非コード配列に相補的な配列であり得、標的とする特定の受容体又は遺伝子に合わせて調整することができる。gRNAは、タンパク質コード配列に相補的な配列、例えば、1つ以上のウイルス構造タンパク質をコードする配列であり得る(例えば、ASFVでは、CP2475遺伝子は、タンパク質p150、p37、p14、及びp34に切断されるポリペプチド220をコードする)。gRNA配列は、センス配列又はアンチセンス配列であり得る。遺伝子編集組成物が本明細書において投与されるとき、好ましくは、これは1つ以上のgRNAを含むことが理解されるべきである。
【0063】
本明細書で使用される場合、「核酸」は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、及び核酸類似体を含有するDNA(又はRNA)を含むRNA及びDNAの両方を指し、それらのいずれもが本発明のポリペプチドをコードし得、それらの全てが本発明によって包含される。ポリヌクレオチドは、本質的に任意の三次元構造を有することができる。核酸は、二本鎖又は一本鎖(すなわち、センス鎖又はアンチセンス鎖)であり得る。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)及びそれらの部分、トランスファーRNA、リボソームRNA、siRNA、マイクロRNA、ショートヘアピンRNA(shRNA)、干渉RNA(RNAi)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマー、並びに核酸類似体が挙げられる。本発明の文脈において、核酸は、天然に存在するCas9又はその生物学的に活性なバリアントの断片、及び受容体又は受容体をコードする遺伝子中の配列に相補的である少なくとも2つのgRNAをコードすることができる。
【0064】
「単離された」核酸は、例えば、天然に存在するDNA分子又はその断片であり得るが、天然に存在するゲノム中のそのDNA分子に直ちに隣接して通常見出される核酸配列のうちの少なくとも1つが除去されるか、又は不在であることを条件とする。したがって、単離された核酸は、限定されないが、他の配列(例えば、化学的に合成された核酸、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)若しくは制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生されたcDNA若しくはゲノムDNA断片)とは独立して、別個の分子として存在するDNA分子を含む。単離された核酸はまた、ベクター、自律複製プラスミド、ウイルス、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれるDNA分子を指す。加えて、単離された核酸は、ハイブリッド又は融合核酸の一部であるDNA分子などの操作された核酸を含むことができる。例えば、cDNAライブラリ若しくはゲノムライブラリ内の他の核酸の多く(例えば、数十個、又は数百~数百万個)の中に存在する核酸、又はゲノムDNA制限消化を含有するゲル切片は、単離された核酸ではない。
【0065】
単離された核酸分子は、標準的な技法によって産生され得る。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含有する単離された核酸を得ることができる。PCRは、DNA及びRNA(全ゲノムDNA又は全細胞RNA由来の配列を含む)からの特定の配列を増幅するために使用することができる。様々なPCR方法は、例えば、PCRプライマー:A Laboratory Manual,Dieffenbach and Dveksler,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995に記載されている。一般に、目的の領域の末端又はそれ以降の配列情報を用いて、増幅されるテンプレートの反対側の鎖と配列が同一であるか又は類似するオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。部位特異的ヌクレオチド配列修飾を鋳型核酸に導入することができる様々なPCR戦略も利用可能である。
【0066】
単離された核酸はまた、単一の核酸分子として(例えば、ホスホラミダイト技術を使用して3’から5’方向に自動DNA合成を使用して)、又は一連のオリゴヌクレオチドとして、化学的に合成することができる。例えば、所望の配列を含有する1つ以上の長オリゴヌクレオチド対(例えば、50~100ヌクレオチド超)を合成することができ、各対は、オリゴヌクレオチド対がアニーリングされるときに二本鎖が形成されるように、相補性の短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含有する。DNAポリメラーゼを使用してオリゴヌクレオチドを伸長し、オリゴヌクレオチド対当たり一本の二本鎖核酸分子をもたらし、次いでこれをベクターにライゲーションすることができる。本発明の単離された核酸はまた、例えば、Cas9をコードするDNAの天然に存在する部分の変異誘発によって得ることができる(例えば、上記の式に従って)。
【0067】
本発明の方法において、多くの異なるウイルスは、動物、特にブタにおいて治療又は防止することができる。最も好ましくは、ウイルスは、ASFVである。他の動物ウイルスとしては、仮性狂犬病ウイルス、ブルータングウイルス、口蹄疫ウイルス(血清型A、O、C、SAT1、SAT2、SAT3、Asia1)、日本脳炎ウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、牛疫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス、BSEプリオン、ウシウイルス性下痢ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ウシヘルペスウイルス1、ランピースキン病ウイルス、ヤギ関節炎及び脳炎ウイルス(Caprine arthritis and encephalitis virus)、小反芻獣疫ウイルス、スクレイピープリオン、羊痘及びヤギ痘ウイルス(sheeppox and goatpox viruses)、アフリカ馬疫ウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ウマインフルエンザウイルス、ウマヘルペスウイルス4、ウマ動脈炎ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、ブタ熱ウイルス(Classical swine fever virus)、ニパウイルス、ブタ生殖器及び呼吸器症候群ウイルス、ブタ水疱病ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス、アヒル肝炎ウイルス、高及び低病原性トリインフルエンザウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、又はトリメタニューモウイルスを挙げることができる。ウイルスは、一般に、パポーバウイルス、サルウイルス-40、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、トガウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、又はレオウイルスのタイプであってもよい。
【0068】
本発明の方法を実行する際に、第一に、受容体スクリーニングを実行する。発見プラットフォーム(酵母ツーハイブリッドベース又は生化学的相互作用アッセイ)は、p54(E183L遺伝子)侵入、p30(CP204L遺伝子)侵入、p12(O61R遺伝子)付着、p10(A78R遺伝子)付着、p11.5(A137R遺伝子)付着、又はp72(B646L遺伝子)侵入などのウイルス付着及び侵入タンパク質/リガンドのうちの1つ以上(又はそれらの任意の組み合わせ)と相互作用する細胞受容体を同定するために利用される。
【0069】
この目的のために使用され得る複数の酵母ツーハイブリッド、哺乳動物ツーハイブリッド、及びファージディスプレイアプローチがある。Luoら(Biotechniques,1997 Feb;22(2):350-2)は、哺乳動物ツーハイブリッドシステムを記載している。対象となる1つのタンパク質は、Gal4 DNA結合ドメインへの融合物として発現され、別のタンパク質は、単純ヘルペスウイルスのVP16タンパク質の活性化ドメインへの融合物として発現される。これらの融合タンパク質を発現するベクターを、レポータークロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベクターとともに哺乳動物細胞株に共トランスフェクトする。レポータープラスミドは、5つのコンセンサスGal4結合部位の制御下でCAT遺伝子を含有する。2つの融合タンパク質が相互作用すると、catレポーター遺伝子の発現が顕著に増加する。Fieldsら(Nature.1989 Jul 20;340(6230):245-6)は、タンパク質「X」に融合したGAL4 DNA結合ドメインと、タンパク質「Y」に融合したGAL4活性化領域とを有する酵母ツーハイブリッドシステムについて記載している。X及びYがタンパク質-タンパク質複合体を形成し、GAL4ドメインの近接性を再構成することができる場合、UASGによって調節される遺伝子の転写が生じる。Smith(Science.1985 Jun 14;228(4705):1315-7)は、外来DNA断片を糸状ファージ遺伝子IIIに挿入して、中央に外来配列を有する融合タンパク質を作製し得るファージツーハイブリッドシステムを記載している。融合タンパク質は、感染性を保持し、免疫学的にアクセス可能な形態で外来アミノ酸を表示するビリオンに組み込まれる。これらの「融合ファージ」は、外来配列に向けられた抗体に対する親和性によって、通常のファージの1000倍を超えて富化され得る。
【0070】
受容体のスクリーニングは、一般に以下のように実行することができる。ブタ(swine)/ブタ(porcine)遺伝子のライブラリは、酵母又はファージで発現される(ファージを使用して、はるかに多くのスクリーニングを行うことができる)。次いで、発現されたタンパク質は、酵母細胞/ファージの外側を飾る。HPLCカラムは、ASFVカプシド又はタンパク質若しくは他の潜在的なリガンドから作製することができる。酵母細胞又はファージを、選択した固定化されたASFV受容体リガンドとともにインキュベートする。細胞又はファージを洗浄し、収集し、繰り返して濃縮する。試料を収集し、各ハイブリッド/ファージシステムによって定義される典型的な生化学的/遺伝的方法を使用して受容体を同定する。
【0071】
受容体及びウイルスリガンド相互作用は、競合阻害又は非競合阻害のいずれかであり得る。競合阻害は、化学物質、小ペプチド、又は抗体が、結合のためにそれと競合することによって別のものの効果を阻害するとき、すなわち、それが受容体に結合する通常の基質に似ているときに生じる。非競合阻害は、阻害剤が受容体の活性を低下させ、基質を既に結合しているかどうかにかかわらず、受容体に等しく良好に結合するときに生じる。
【0072】
小分子阻害治療は、受容体の発見により導き出すことができる。ウイルスリガンドと細胞受容体との相互作用が定義されると、小分子破壊スクリーン(ツーハイブリッドシステム又は他のシステムを介したタンパク質-タンパク質の相互作用/破壊)を利用して、相互作用を阻害することができる小分子候補を定義する。ツーハイブリッドシステムの変形例、例えば、抑制型トランスアクチベータ(RTA)スクリーンを使用することができる。このスクリーンでは、ブタ受容体ペプチドとウイルス受容体/リガンドペプチドが相互作用においてロックされている場合に選択的培地上のみで成長する酵母に小分子ライブラリを追加する。小分子ライブラリを追加することで、相互作用を破壊するものを探すことができる。同定されると、どの小分子が最も堅牢で、安全で、かつ有効であるかを決定することができる。Hirstら(Proc Natl Acad Sci U S A.2001 Jul 17;98(15):8726-31Epub 2001 Jul 10.)は、酵母一般リプレッサーTUP1のN末端抑制ドメインを用いる抑制型トランスアクチベータ(RTA)システムを記載している。TUP1-GAL80融合タンパク質は、GAL4と共発現した場合、GAL4依存性レポーター遺伝子の転写を阻害することが示されている。Joshiら(Biotechniques.2007 May;42(5):635-44)は、このシステムを、小分子化合物ライブラリからのタンパク質相互作用の阻害剤のスクリーニングに使用している。本発明のスクリーニング及び試験に使用されるライブラリは、海、熱帯雨林に由来し得るか、又は合成であり得る。ペプチド及び抗体ライブラリも使用することができる。更なるスクリーン及び試験を実施して、小分子の数を絞り込み、細胞培養及び動物モデルにおける安全性及び有効性を試験することができる。
【0073】
遺伝子組換え細胞受容体は、侵入タンパク質の機能障害又は他の破壊によるウイルス結合の防止に使用することができる。細胞受容体、具体的には、ウイルスタンパク質リガンドの認識に重要である受容体内のアミノ酸が同定されると、遺伝子編集ツール(限定されないが、以下に更に記載されるCRISPR、ZFN、TALENなど)を使用して、ウイルス侵入を遮断する非破壊的(機能的に保持可能なタンパク質)アミノ酸配列(複数可)で遺伝子(複数可)をコードする受容体を(置換又は欠失によって)改変することができる。侵入タンパク質は、それ以外の場合、構造的又は機能的な膜タンパク質である。それらの改変は、遺伝子編集によって影響を受ける遺伝子レベルであり得るが、標的細胞を破壊又は他の方法で死滅させないように、それらの自然な機能を維持する必要があり得る。
【0074】
受容体にグリコシル化が必要な場合、ブタマクロファージ細胞抽出物を酵母/ファージ発現ライブラリに添加して、酵母/ファージ上の表面発現ペプチドのグリコシル化を強制することができる。
【0075】
上記の方法の代替として、ウイルスタンパク質を上記のようにカラム上で単離することができ、次いで、ブタ(swine)/ブタ(porcine)単離マクロファージ/単球細胞をカラム上に流し、インキュベートし、次いで、細胞を溶出によって濃縮することができる(相互作用をそのまま維持する)。単離されたマクロファージ/単球が単離されたウイルス受容体/リガンドと相互作用すると、ウイルスリガンドを認識する抗体を添加し、次いでシナプスを顕微鏡下で観察することができる。単一細胞を単離し、次いで細胞受容体を同定することができる。
【0076】
この遺伝子編集アプローチは、ブタ胚系統で実施して、ASFV感染症に耐性である遺伝子組換えブタ生物を作製することができる。
【0077】
本発明で使用される遺伝子エディターは、以下に列挙される遺伝子エディターのうちのいずれをも含むことができる。gRNAによって誘導される、DNA又はRNAのエンドヌクレアーゼ切断を含む、任意の作用方法を使用することができる。ヌクレアーゼは、塩基対レベルで内因性ブタ受容体配列を切り出すか、又は改変し、HITI(非分裂胚細胞)又は分裂中の胚細胞における従来のHDRのような方法でHDRを使用してそれらを1つ以上のgRNAで置換することによって作用する。遺伝子編集を使用して、所望の受容体をもたらす点変異又は複数の変異を生成することができる。Cas/デアミナーゼ融合タンパク質を使用して、点変異を作製することができる。
【0078】
遺伝子置換も実行することができ、これは、遺伝子の切除、それに続いて、ウイルス侵入を遮断する変異体(まだ機能的)受容体を発現する改変された配列を有する新しい遺伝子との遺伝子の置換を必要とする。遺伝子編集を使用して、置換受容体の発現を可能にする変異体配列を含む操作された遺伝子で野生型遺伝子を置換することができる。遺伝子が切除されると、分裂細胞又は非分裂細胞のいずれかにおいて、遺伝子置換アプローチ(ホモロジー指向性組換え)を使用して置換することができる。
【0079】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、特定のDNA位置で二本鎖切断を生成する。ZFNは、2つの機能ドメイン、6bpのDNA配列を認識するDNA結合ドメイン、及びヌクレアーゼFokIのDNA切断ドメインを有する。
【0080】
TALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)は、DNAにおいて二本鎖切断を生成するDNA切断ドメインに融合されたTALエフェクターDNA結合ドメインを含む。
【0081】
ヒトWRNは、ウェルナー症候群遺伝子によってコードされるRecQヘリカーゼである。これは、複製、組換え、切除修復、及びDNA損傷応答を含む、ゲノム維持に関与する。これらの遺伝的プロセス及びWRNの発現は、多くのタイプのがんにおいて同時に上方調節される。したがって、このヘリカーゼの標的破壊が、がん細胞の除去に有用であり得ることが提案されている。報告では、外部ガイド配列(EGS)アプローチを適用して、RNase P RNAに培養ヒト細胞株中のWRN mRNAを効率的に切断するよう指示し、したがって、この独特の3’-5’DNAヘリカーゼヌクレアーゼの翻訳及び活性を無効化している。
【0082】
クラス2型VI-A CRISPR/Casエフェクター「C2c2」は、RNA誘導型RNase機能を示す。細菌Leptotrichia shahii由来のC2c2は、RNAファージに対する干渉を提供する。インビトロ生化学分析は、C2c2が単一のcrRNAによって誘導され、相補的なプロトスペーサを担持するssRNA標的を切断するようにプログラムすることができることを示す。細菌において、C2c2は、特定のmRNAをノックダウンするようにプログラムすることができる。切断は、2つの保存されたHEPNドメイン内の触媒残基によって媒介され、その変異は、触媒不活性RNA結合タンパク質を生成する。C2c2のRNAに焦点を当てた作用は、細胞のアイデンティティ及び機能のためのゲノム設計図であるDNAを標的とするCRISPR-Cas9システムを補完する。ゲノムの指示を実施するのに役立つRNAのみを標的とする能力は、高スループットの様式でRNAを特異的に操作し、遺伝子機能をより広範に操作する能力を提供する。これらの結果は、新しいRNA標的化ツールとしてのC2c2の能力を示す。
【0083】
別のクラス2型V-B CRISPR/Casエフェクター「C2c1」も、DNAを編集するために本発明で使用することができる。C2c1は、Cpf1と遠い関係にあるRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有する(以下に記載する)。C2c1は、標的DNAの両方の鎖を部位特異的に標的として切断することができる。Yangら(PAM-Depenednt Target DNA Recognition and Cleavage by C2c1 CRISPR-Cas Endonuclease,Cell,2016 Dec 15;167(7):1814-1828))によれば、結晶構造は、Alicyclobacillus acidoterrestris C2c1(AacC2c1)が二元複合体としてsgRNAに結合し、三元複合体としてDNAを標的とすることを確認し、それによって、単一のRuvC触媒ポケット内に独立して位置決めされた標的及び非標的DNA鎖の両方を有するAacC2c1の触媒的に有能なコンフォメーションを捕捉する。Yangらは、C2c1媒介切断により、標的DNAが交互に7ヌクレオチド切断され、crRNAが、二元複合体における事前に順序付けられた5ヌクレオチドのA型シード配列を採用し、挿入されたトリプトファンの放出を伴って、三元複合体形成時の20bpのガイドRNA:標的DNAヘテロ二本鎖のジッパーアップを容易にすること、及び、PAM相互作用裂(cleft)が、三元複合体形成時に「ロックされた」コンフォメーションを採用することを確認している。
【0084】
C2c3は、C2c1と遠い関係にあるV-C型の遺伝子エディタエフェコー(effecor)であり、RuvC様ヌクレアーゼドメインも含有する。C2c3はまた、以下に記載のCasY.1-CasY.6基と同様である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「CRISPR Cas9」は、クラスター化された規則的な間隔の短い回文反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼCas9を指す。細菌において、CRISPR/Cas遺伝子座は、移動性遺伝子要素(ウイルス、転位因子及び接合性プラスミド)に対するRNA誘導型適応免疫システムをコードする。3つのタイプ(I~III)のCRISPRシステムが同定されている。CRISPRクラスターは、先行する可動要素に相補的な配列であるスペーサを含有する。CRISPRクラスターを転写し、成熟したCRISPR(クラスター化された規則的な間隔の短い回文反復)RNA(crRNA)にプロセシングされる。CRISPR関連エンドヌクレアーゼCas9は、II型CRISPR/Casシステムに属し、標的DNAを切断するための強力なエンドヌクレアーゼ活性を有する。Cas9は、約20塩基対(bp)の独自の標的配列(スペーサと呼ばれる)を含有する成熟crRNAと、pre-crRNAのリボヌクレアーゼIII補助プロセシングのためのガイドとして機能するトランス活性化小RNA(tracrRNA)によって誘導される。crRNA:tracrRNA二本鎖は、crRNA上のスペーサと標的DNA上の相補的配列(プロトスペーサと呼ばれる)との間の相補的塩基対合によりCas9を標的DNAに向ける。Cas9は、トリヌクレオチド(NGG)プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)を認識して、切断部位(PAM由来の第3のヌクレオチド)を特定する。crRNA及びtracrRNAは、天然のcrRNA/tracrRNA二本鎖を模倣するために、合成ステムループ(AGAAAU)を介して別々に発現させるか、又は人工的な融合小ガイドRNA(sgRNA)に操作することができる。そのようなsgRNAは、shRNAのように、直接RNAトランスフェクションのために合成又はインビトロ転写され得るか、又はU6若しくはH1促進型RNA発現ベクターから発現され得るが、人工sgRNAの切断効率は、crRNA及びtracrRNAが別々に発現したシステムの切断効率よりも低い。
【0086】
CRISPR/Cpf1は、2015年にBroad Institute及びMITのFeng Zhangのグループによって特徴付けられた、CRISPR/Cas9システムに類似したDNA編集技術である。Cpf1は、クラスII CRISPR/CasシステムのRNA誘導型エンドヌクレアーゼである。この後天性免疫メカニズムは、Prevotella及びFrancisella細菌に見られる。これは、ウイルスによる遺伝子損傷を防ぐ。Cpf1遺伝子は、CRISPR遺伝子座と関連しており、ウイルスDNAを見つけて、切断するためにガイドRNAを使用するエンドヌクレアーゼをコードする。Cpf1は、Cas9よりも小さく、より単純なエンドヌクレアーゼであり、CRISPR/Cas9システムの制限のいくつかを克服している。CRISPR/Cpf1は、遺伝性疾患及び変性状態の治療を含む、複数の用途を有することができる。
【0087】
CRISPR/TevCas9システムも使用することができる。いくつかの場合には、CRISPR/Cas9が1箇所でDNAを切断すると、生物の細胞内のDNA修復システムが切断部位を修復することが示されている。TevCas9酵素は、細胞のDNA修復システムが切断を修復することがより困難になるように、標的の2つの部位でDNAを切断するように開発された(Wolfs,et al.,Biasing genome-editing events toward precise length deletions with an RNA-guided TevCas9 dual nuclease,PNAS,doi:10.1073を参照されたい)。TevCas9ヌクレアーゼは、I-TeviヌクレアーゼドメインとCas9との融合物である。
【0088】
Cas9ヌクレアーゼは、野生型Streptococcus pyrogenes配列と同一のヌクレオチド配列を有することができる。いくつかの実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、他の種、例えば他のStreptococcus種(thermophilusなど)、Pseudomona aeruginosa、Escherichia coli、若しくは他の配列決定された細菌ゲノム及び古細菌、又は他の原核微生物由来の配列であり得る。代替的に、野生型Streptococcus pyrogenes Cas9配列を修飾することができる。核酸配列は、哺乳動物細胞における効率的な発現のためにコドン最適化する、すなわち「ヒト化」することができる。ヒト化Cas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、Genbank受託番号KM099231.1 GI:669193757、KM099232.1 GI:669193761、又はKM099233.1 GI:669193765に列挙される発現ベクターのうちのいずれかによってコードされるCas9ヌクレアーゼ配列であり得る。代替的に、Cas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、Addgene(Cambridge,MA)のPX330又はPX260などの市販のベクター内に含まれる配列であり得る。いくつかの実施形態において、Cas9エンドヌクレアーゼは、Genbank受託番号KM099231.1 GI:669193757、KM099232.1 GI:669193761、若しくはKM099233.1 GI:669193765のCas9エンドヌクレアーゼ配列のうちのいずれかのバリアント若しくは断片であるアミノ酸配列、又はPX330若しくはPX260(Addgene、Cambrige,MA)のCas9アミノ酸配列を有することができる。Cas9ヌクレオチド配列は、Cas9の生物学的に活性なバリアントをコードするように修飾することができ、これらのバリアントは、例えば、1つ以上の変異(例えば、付加、欠失、若しくは置換変異、又はそのような変異の組み合わせ)を含むことにより、野生型Cas9とは異なるアミノ酸配列を有するか、又は含むことができる。置換変異のうちの1つ以上は、置換(例えば、保存的アミノ酸置換)であり得る。例えば、Cas9ポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、野生型Cas9ポリペプチドに対して少なくとも又は約50%の配列同一性(例えば、少なくとも又は約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有することができる。保存的アミノ酸置換は、典型的には、以下の群内の置換を含む:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン、及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン及びトレオニン;リジン、ヒスチジン及びアルギニン;並びにフェニルアラニン及びチロシン。Cas9アミノ酸配列内のアミノ酸残基は、天然に存在しないアミノ酸残基であり得る。天然に存在するアミノ酸残基には、遺伝子コードによって天然にコードされるアミノ酸、並びに非標準アミノ酸(例えば、L配置の代わりにD配置を有するアミノ酸)が含まれる。本ペプチドはまた、標準残基の修飾バージョンであるアミノ酸残基を含むことができる(例えば、ピロリジンをリジンの代わりに使用することができ、セレノシステインをシステインの代わりに使用することができる)。天然に存在しないアミノ酸残基は、天然には見出されていないが、アミノ酸の基本式に適合し、ペプチドに組み込むことができるものである。これらとしては、D-アロイソロイシン(2R,3S)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸及びL-シクロペンチルグリシン(S)-2-アミノ-2-シクロペンチル酢酸が挙げられる。他の例については、教科書又はワールドワイドウェブ(サイトは現在、California Institute of Technologyによって維持され、機能性タンパク質に正常に組み込まれている天然に存在しないアミノ酸の構造を示している)を参考にすることができる。Cas-9はまた、以下の表1に示される任意のものであり得る。
【表1】
【0089】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼCas9は、汎用性の高いゲノム編集プラットフォームとして出現しているが、Streptococcus pyogenes(SpCas9)からの一般的に使用されるCas9のサイズが、非常に汎用性の高いアデノ随伴ウイルス(AAV)送達ビヒクルを使用する基礎研究及び治療用途のためのその有用性を制限することを報告しているものもある。したがって、6つのより小さいCas9オルソログが使用されており、報告は、Staphylococcus aureus(SaCas9)由来のCas9が、1キロベース超短いながらも、SpCas9と同様の効率でゲノムを編集することができることを示す。SaCas9は1053bpであり、SpCas9は1358bpである。
【0090】
Cas9ヌクレアーゼ配列、又は本明細書に記載される遺伝子エディターエフェクター配列のいずれも、変異配列であり得る。例えば、Cas9ヌクレアーゼは、鎖特異的切断に関与する保存されたHNHドメイン及びRuvCドメインにおいて変異させることができる。例えば、RuvC触媒ドメインにおけるアスパラギン酸-アラニン(D10A)変異は、Cas9ニッカーゼ変異体(Cas9n)がDNAを切断するのではなくニックを形成して一本鎖切断をもたらすことを可能にし、HDRによるその後の優先的修復は、オフターゲット二本鎖切断からの望ましくないインデル変異の頻度を潜在的に低下させることができる。一般に、遺伝子エディターエフェクター配列の変異は、オフターゲティングを最小化又は防止することができる。
【0091】
遺伝子エディターエフェクターは、CasX又はCasY又はCas Omegaであり得る。CasXは、5’末端にTTC PAMを有する(Cpf1と同様)。TTC PAMは、GCが豊富なウイルスゲノムでは制限がある可能性があるが、GCが少ないウイルスゲノムではそれほどの制限はない可能性がある。CasXのサイズ(986bp)は、他のV型タンパク質よりも小さく、送達プラスミド内に4つのgRNA+1つのsiRNAが含まれる可能性がある。CasXは、Deltaproteobacteria又はPlanctomycetesに由来し得る。
【0092】
遺伝子エディターエフェクターはまた、古細菌Cas9であり得る。古細菌Cas9のサイズは、950aaのARMAN 1及び967aaのARMAN 4である。古細菌Cas9は、ARMAN-1(Candidatus Micrarchaeum acidiphilum ARMAN-1)又はARMAN-4(Candidatus Parvarchaeum acidiphilum ARMAN-4)に由来し得る。ARMAN1及びARMAN4の配列を以下に示す。
【0093】
本発明において、組成物のうちのいずれかが発現ベクター内に含まれる場合、CRISPRエンドヌクレアーゼは、gRNA配列と同じ核酸又はベクターによってコードされ得る。代替的に、又は追加的に、CRISPRエンドヌクレアーゼは、gRNA配列から物理的に別個の核酸にコードされ得るか、又は別個のベクターにコードされ得る。
【0094】
本明細書に記載されるものなどの核酸を含有するベクターも提供される。「ベクター」は、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどのレプリコンであり、挿入されたセグメントの複製をもたらすように、別のDNAセグメントが挿入され得る。一般に、ベクターは、適切な制御要素に関連付けられると複製することができる。好適なベクター骨格としては、例えば、プラスミド、ウイルス、人工染色体、BAC、YAC、又はPACなどの当該技術分野で日常的に使用されるものが挙げられる。「ベクター」という用語は、クローニング及び発現ベクター、並びにウイルスベクター及び組み込みベクターを含む。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターである。多数のベクター及び発現は、Novagen(Madison,WI)、Clontech(Palo Alto,CA)、Stratagene(La Jolla,CA)、及びInvitrogen/Life Technologies(Carlsbad,CA)などの企業から市販されている。
【0095】
本明細書で提供されるベクターはまた、例えば、複製起点、足場付着領域(SAR)、及び/又はマーカーを含むことができる。マーカー遺伝子は、宿主細胞に選択可能な表現型を付与することができる。例えば、マーカーは、抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、又はヒグロマイシン)に対する耐性などの殺生物剤耐性を付与することができる。上述のように、発現ベクターは、発現されたポリペプチドの操作又は検出(例えば、精製若しくは局在化)を容易にするように設計されたタグ配列を含むことができる。緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、又はFlag(商標)タグ(Kodak、New Haven,CT)配列などのタグ配列は、典型的には、コードされたポリペプチドとの融合物として発現される。このようなタグは、カルボキシル末端又はアミノ末端のいずれかを含むポリペプチド内のどの場所にも挿入することができる。
【0096】
追加の発現ベクターはまた、例えば、染色体DNA配列、非染色体DNA配列、及び合成DNA配列のセグメントを含むことができる。好適なベクターとしては、SV40の誘導体及び既知の細菌プラスミド、例えば、E.coliプラスミドcol E1、pCR1、pBR322、pMal-C2、pET、pGEX、pMB9及びそれらの誘導体、RP4などのプラスミド;ファージDNA、例えば、ファージ1の多数の誘導体、例えば、NM989、及び他のファージDNA、例えば、M13及び糸状一本鎖ファージDNA;2μプラスミドなどの酵母プラスミド又はそれらの誘導体、真核細胞に有用なベクター、例えば、昆虫細胞又は哺乳動物細胞に有用なベクター;プラスミド及びファージDNAの組み合わせに由来するベクター、例えば、ファージDNA又は他の発現制御配列を用いるように修飾されているプラスミドなどの、プラスミド及びファージDNAの組み合わせに由来するベクターが挙げられる。
【0097】
酵母発現システムも使用することができる。例えば、2つだけ挙げると、非融合pYES2ベクター(XbaI、SphI、ShoI、NotI、GstXI、EcoRI、BstXI、BamH1、SacI、Kpn1、及びHindIIIクローニング部位;Invitrogen)又は融合pYESHisA、B、C(XbaI、SphI、ShoI、NotI、BstXI、EcoRI、BamH1、SacI、KpnI、及びHindIIIクローニング部位、ProBond樹脂で精製され、エンテロキナーゼで切断されたN末端ペプチド;Invitrogen)を、本発明に従って用いることができる。酵母ツーハイブリッド発現システムもまた、本発明に従って調製することができる。
【0098】
ベクターはまた、調節領域を含むことができる。「調節領域」という用語は、転写又は翻訳の開始及び速度、並びに転写又は翻訳産物の安定性及び/又は移動性に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節領域としては、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答要素、タンパク質認識部位、誘導性要素、タンパク質結合配列、5’及び3’非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、核局在化シグナル、並びにイントロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、調節領域と、そのような配列の転写又は翻訳に影響を与えるように核酸内で転写される配列との位置決めを指す。例えば、コード配列をプロモーターの制御下に置くために、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、典型的には、プロモーターの1~約50ヌクレオチド下流に位置決めされる。しかしながら、プロモーターは、翻訳開始部位の約5,000ヌクレオチド上流又は転写開始部位の約2,000ヌクレオチド上流に位置決めすることができる。プロモーターは、典型的には、少なくともコア(基底)プロモーターを含む。プロモーターはまた、エンハンサー配列、上流要素、又は上流活性化領域(UAR)などの少なくとも1つの制御要素を含み得る。含まれるプロモーターの選択は、効率、選択可能性、誘導性、所望の発現レベル、及び細胞又は組織選択発現を含むがこれらに限定されない、いくつかの要因に依存する。プロモーター及び他の調節領域をコード配列に対して適切に選択及び位置決めすることによってコード配列の発現を調節することは、当業者にとって日常的な事項である。
【0100】
ベクターとして、例えば、ウイルスベクター(アデノウイルス(「Ad」)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)並びにレトロウイルスなど)、リポソーム及び他の脂質含有複合体、並びに宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介することができる他の巨大分子複合体が挙げられる。ベクターはまた、遺伝子送達及び/又は遺伝子発現を更に調節するか、さもなければ標的細胞に有益な特性を提供する他の成分又は機能を含むことができる。以下でより詳細に説明及び例解されるように、そのような他の成分としては、例えば、細胞への結合又は標的化に影響を与える成分(細胞型又は組織特異的結合を媒介する成分を含む)、細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を与える成分、取り込み後の細胞内のポリヌクレオチドの局在化に影響を与える成分(核局在化を媒介する薬剤など)、及びポリヌクレオチドの発現に影響を与える成分が挙げられる。そのような成分はまた、ベクターによって送達された核酸を取り込んで発現している細胞を検出又は選択するために使用することができる検出可能及び/又は選択可能マーカーなどのマーカーを含み得る。かかる成分は、ベクターの自然な特徴として提供され得る(結合及び取り込みを媒介する成分又は機能を有する、ある特定のウイルスベクターの使用など)、又はベクターは、そのような機能を提供するように修飾され得る。他のベクターとしては、Chen et al;BioTechniques,34:167-171(2003)を参照されたい。多種多様なかかるベクターは、当該技術分野で既知であり、一般に利用可能である。
【0101】
「組換えウイルスベクター」は、1つ以上の異種遺伝子産物又は配列を含むウイルスベクターを指す。多くのウイルスベクターはパッケージングに関連するサイズ制約を示すため、異種遺伝子産物又は配列は、典型的にはウイルスゲノムの1つ以上の部分を置換することによって導入される。そのようなウイルスは、複製欠損になる可能性があり、ウイルス複製及びカプシド化中に、(例えば、ヘルパーウイルス、又は複製及び/若しくはカプシド化に必要な遺伝子産物を担持するパッケージング細胞株を使用することによって)欠失した機能(複数可)をトランスで提供することを必要とする。送達されるポリヌクレオチドがウイルス粒子の外側に担持される修飾ウイルスベクターもまた記載されている(例えば、Curiel,D T et al.PNAS 88:8850-8854,1991を参照されたい)。
【0102】
好適な核酸送達システムとしては、組換えウイルスベクター、典型的には、アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス、又はセンダイウイルス-リポソーム(HVJ)複合体の血球凝集ウイルスのうちの少なくとも1つに由来する配列が挙げられる。そのような場合、ウイルスベクターは、ポリヌクレオチドに作動可能に連結された強力な真核生物プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。組換えウイルスベクターは、その中にポリヌクレオチドのうちの1つ以上、好ましくは約1つのポリヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明の方法で使用されるウイルスベクターは、約108~約5×1010pfu(プラーク形成単位)のpfuを有する。ポリヌクレオチドが非ウイルスベクターとともに投与される実施形態では、約0.1ナノグラム~約4000マイクログラム、例えば、約1ナノグラム~約100マイクログラムの使用が、多くの場合に有用である。
【0103】
追加のベクターとして、ウイルスベクター、融合タンパク質、及び化学的コンジュゲートが挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルス及びHIVベースのウイルスが挙げられる。1つのHIVベースのウイルスベクターは、少なくとも2つのベクターを含み、gag及びpol遺伝子は、HIVゲノム由来であり、env遺伝子は、別のウイルス由来である。DNAウイルスベクターとしては、オルトポックス又はアビポックスベクターなどのポックスベクター、単純ヘルペスI型ウイルス(HSV)ベクターなどのヘルペスウイルスベクター[Geller,A.I.et al.,J.Neurochem,64:487(1995)、Lim,F.,et al.,in DNA Cloning:Mammalian Systems,D.Glover,Ed.(Oxford Univ.Press,Oxford England)(1995)、Geller,A.I.et al.,Proc Natl.Acad.Sci.:U.S.A.:90 7603(1993)、Geller,A.I.,et al.,Proc Natl.Acad.Sci USA:87:1149(1990)]、アデノウイルスベクター[LeGal LaSalle et al.,Science,259:988(1993)、Davidson,et al.,Nat.Genet.3:219(1993)、Yang,et al.,J.Virol.69:2004(1995)]、及びアデノ随伴ウイルスベクター[Kaplitt,M.G.,et al.,Nat.Genet.8:148(1994)]が挙げられる。
【0104】
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞質に導入する。アビポックスウイルスベクターは、核酸の短期間の発現のみをもたらす。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、いくつかの本発明の実施形態の適応症であり得る。アデノウイルスベクターは、いくつかの実施形態では、アデノ随伴ウイルスよりも短期的な発現(例えば、約1ヶ月未満)をもたらすが、はるかに長い発現を示す場合もある。選択される特定のベクターは、標的細胞及び治療されている状態に依存する。適切なプロモーターの選択は容易に達成することができる。好適なプロモーターの例は、763塩基対のサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。遺伝子発現に使用され得る他の好適なプロモーターとしては、限定するものではないが、ラウス肉腫ウイルス(RSV)(Davis,et al.,Hum Gene Ther 4:151(1993))、SV40初期プロモーター領域、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン(MMT)遺伝子の調節配列、β-ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物発現ベクター、tacプロモーター、酵母又は他の真菌由来のプロモーター要素、例えば、Gal4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター;並びに組織特異性を示し、トランスジェニック動物で利用されている動物転写制御領域:膵腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域、膵ベータ細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域、リンパ系細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域、精巣、乳房、リンパ系及び肥満細胞において活性であるマウス乳がんウイルス制御領域、肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域、肝臓において活性であるアルファ-フェトプロテイン遺伝子制御領域、肝臓において活性であるアルファ1-アンチトリプシン遺伝子制御領域、骨髄系細胞において活性であるベータ-グロブリン遺伝子制御領域、脳内の乏突起膠細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域、骨格筋において活性であるミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域、視床下部において活性である性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域が挙げられる。特定のタンパク質は、それらの天然プロモーターを使用して発現することができる。発現を増強することができる他の要素、例えば、エンハンサー、又はtat遺伝子及びtar要素などの高レベルの発現をもたらすシステムも含めることができる。次いで、このカセットを、ベクター、例えば、pUC19、pUC118、pBR322などのプラスミドベクター、又は例えば、E.coli複製起点を含む他の既知のプラスミドベクターに挿入することができる。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory press,(1989)を参照されたい。プラスミドベクターはまた、マーカーポリペプチドが治療されている生物の代謝に悪影響を及ぼさないことを条件として、アンピシリン耐性のためのβ-ラクタマーゼ遺伝子などの選択可能なマーカーを含んでもよい。カセットはまた、WO95/22618に開示されるシステムなどの合成送達システムにおいて核酸結合部分に結合することができる。
【0105】
必要に応じて、本発明のポリヌクレオチドは、カチオン性リポソーム及びアデノウイルスベクターなどのマイクロ送達ビヒクルとともに使用することもできる。内容物のリポソーム調製、標的化及び送達のための手順の概説については、Mannino and Gould-Fogerite,BioTechniques,6:682(1988)を参照されたい。また、Felgner and Holm,Bethesda Res.Lab.Focus,11(2):21(1989)、及びMaurer,R.A.,Bethesda Res.Lab.Focus,11(2):25(1989)を参照されたい。
【0106】
複製欠損組換えアデノウイルスベクターは、既知の技法に従って産生することができる。Quantin,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:2581-2584(1992)、Stratford-Perricadet,et al.,J.Clin.Invest.,90:626-630(1992)、及びRosenfeld,et al.,Cell,68:143-155(1992)を参照されたい。
【0107】
別の送達方法は、発現産物を細胞内で産生することができる一本鎖DNA産生ベクターを使用することである。例えば、Chen et al,BioTechniques,34:167-171(2003)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。代替的に、RNA及び/又はタンパク質治療的送達も使用することができる。
【0108】
上記のように、本発明の組成物は、当業者に既知の様々な方式で調製することができる。それらの元の供給源又はそれらが得られる様式にかかわらず、本発明の組成物は、それらの使用に従って製剤化することができる。例えば、上述の核酸及びベクターは、組織培養中の細胞に適用するため、又は患者若しくは対象に投与するために、組成物内で製剤化することができる。本発明の薬学的組成物のうちのいずれも、医薬品の調製に使用するために製剤化することができ、特定の用途は、治療の文脈において以下に示される。薬剤として用いられる場合、核酸及びベクターのいずれも、薬学的組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、薬学的分野で周知の様式で調製され得、局所又は全身治療が所望されるかどうか、及び治療される領域に応じて、様々な経路によって投与され得る。投与は、局所(点眼的、並びに鼻腔内、膣内及び直腸送達を含む粘膜を含む)、肺(例えば、噴霧器によることを含む粉末若しくはエアロゾルの吸入若しくは充填による、気管内、鼻腔内、表皮的及び経皮的)、眼、経口又は非経口であり得る。眼の送達のための方法は、局所投与(点眼剤)、結膜下、眼球周囲若しくは硝子体内注入、又は結膜嚢に外科的に配置されたバルーンカテーテル若しくは眼科用挿入物による導入を含むことができる。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射若しくは注入、あるいは頭蓋内、例えば、髄腔内又は脳室内投与を含む。非経口投与は、単回ボーラス用量の形態であり得るか、又は例えば、連続灌流ポンプによるものであってもよい。局所的投与のための薬学的組成物及び製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐剤、スプレー、液体、粉末などを含んでもよい。従来の薬学的担体、水性基剤、粉末基剤又は油性基剤、増粘剤などが、必要とされるか又は望ましい場合がある。
【0109】
本発明はまた、本明細書に記載の核酸及びベクターを活性成分として、1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する薬学的組成物を含む。「薬学的に許容される」(又は「薬理学的に許容される」)という用語は、必要に応じて、動物又はヒトに投与されたときに有害な、アレルギー性の、又は他の不都合な反応を生じさせない分子実体及び組成物を指すために使用される。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的に許容される物質のための媒体として使用され得る任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝駅、賦形剤、結合剤、潤滑剤、ゲル、界面活性剤などを含む。本発明の組成物を作製する際に、活性成分は、典型的に賦形剤と混合され、賦形剤によって希釈されるか、又は例えば、カプセル、錠剤、サシェ、紙、又は他の容器の形態でそのような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、それは、活性成分のためのビヒクル(例えば、生理食塩水)、担体、又は媒体として作用する固体、半固体、又は液体物質であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、粉末、舐剤、サシェ、カシェ剤、エリキシル、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ、エアロゾル(固体として又は液体媒質中)、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、軟質及び硬質ゼラチンカプセル、坐薬、無菌注入溶液、並びに無菌包装粉末の形態であり得る。当該技術分野で既知であるように、希釈剤のタイプは、意図される投与経路に応じて様々であり得る。得られた組成物は、保存剤などの追加の薬剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、担体は、脂質ベース若しくはポリマーベースのコロイドであり得るか、又はそれを含むことができる。いくつかの実施形態では、担体材料は、リポソーム、ヒドロゲル、微粒子、ナノ粒子、又はブロックコポリマーミセルとして製剤化されたコロイドであり得る。上述のように、担体材料は、カプセルを形成することができ、その材料は、ポリマーベースのコロイドであってもよい。
【0110】
本発明の核酸配列は、対象の適切な細胞に送達することができる。これは、例えば、マクロファージなどの貪食細胞による貪食作用を最適化するようにサイズ設定された、ポリマーの生分解性マイクロ粒子又はマイクロカプセル送達ビヒクルの使用によって達成され得る。例えば、直径約1~10μmのPLGA(ポリ-ラクト-コ-グリコリド)微粒子を使用することができる。ポリヌクレオチドは、これらの微粒子に封入され、マクロファージによって取り込まれ、細胞内で徐々に生分解され、それによってポリヌクレオチドを放出する。放出されると、DNAは細胞内で発現される。第2のタイプの微粒子は、細胞によって直接取り込まれるのではなく、むしろ主に、生分解による微粒子からの放出時にのみ細胞によって取り込まれる核酸の徐放性リザーバとして機能することが意図される。したがって、これらのポリマー粒子は、貪食作用を排除するのに十分な大きさであるべきである(すなわち、5μmより大きく、好ましくは20μmより大きい)。核酸の取り込みを達成する別の方式は、標準的な方法によって調製されたリポソームを使用することである。核酸は、これらの送達ビヒクルに単独で組み込まれるか、又は組織特異的抗体、例えば、ウイルス感染症の一般的に潜伏感染したリザーバである細胞型、例えば、脳マクロファージ、ミクログリア、アストロサイト、及び腸関連リンパ球を標的とする抗体とともに組み込まれることができる。代替的に、静電力又は共有結合力によってポリL-リジンに結合したプラスミド又は他のベクターで構成される分子複合体を調製することができる。ポリ-L-リジンは、標的細胞上の受容体に結合することができるリガンドに結合する。「裸のDNA」を(すなわち、送達ビヒクルなしで)筋肉内、皮内、又は皮下部位に送達することは、インビボ発現を達成するための別の手段である。関連するポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする配列と、ガイドRNAと、を含む単離された核酸配列をコードする核酸配列は、プロモーター又はエンハンサー-プロモーターの組み合わせに作動可能に連結されている。プロモーター及びエンハンサーは、上に記載されている。
【0111】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ナノ粒子、例えば、DNAと複合体化され、ポリエチレングリコール修飾された(PEG化された)低分子量LPEIのシェルによって囲まれた高分子量線形ポリエチレンイミン(LPEI)のコアからなるナノ粒子として製剤化され得る。
【0112】
核酸及びベクターはまた、デバイス(例えば、カテーテル)の表面に適用されてもよく、又はポンプ、パッチ、若しくは他の薬物送達デバイス内に含まれてもよい。本発明の核酸及びベクターは、単独で、又は薬学的に許容される賦形剤若しくは担体(例えば、生理食塩水)の存在下で混合物として投与することができる。賦形剤又は担体は、投与様式及び投与経路に基づいて選択される。好適な薬学的担体、並びに薬学的製剤で使用するための薬学的必需品は、この分野における周知の参照テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciences(E.W.Martin)、及びUSP/NF(United States Pharmacopeia and the National Formulary)に記載されている。
【0113】
本発明の方法は、薬剤の調製に関して表現することができる。したがって、本発明は、薬剤の調製における本明細書に記載の薬剤及び組成物の使用を包含する。本明細書に記載の化合物は、治療用組成物及びレジメンにおいて、又は本明細書に記載の疾患若しくは状態の治療に使用するための医薬品の製造に有用である。
【0114】
本明細書に記載される任意の組成物は、標的細胞への後続の送達のために、宿主の身体の任意の部分に投与することができる。組成物は、哺乳動物の脳、脳脊髄液、関節、鼻粘膜、血液、肺、腸、筋肉組織、皮膚、又は腹腔に送達することができるが、これらに限定されない。送達経路に関して、組成物は、静脈内、頭蓋内、腹腔内、筋肉内、皮下、筋肉内、直腸内、膣内、くも膜下腔内、気管内、皮内、又は経皮注入によって、経口若しくは鼻腔内投与によって、あるいは経時的な漸次灌流(gradual perfusion)によって投与することができる。更なる例では、組成物のエアロゾル調製物を、吸入によって宿主に与えることができる。
【0115】
必要な投与量は、投与経路、製剤の性質、動物の疾患の性質、動物のサイズ、体重、表面積、年齢、及び性別、投与されている他の薬物、並びに主治医の判断に依存するであろう。細胞標的の多様性及び様々な投与経路の異なる効率を考慮して、必要な投与量の広範な変動が予想される。これらの投与量レベルの変動は、当該技術分野でよく理解されるように、最適化のための標準的な経験的ルーチンを使用して調節することができる。投与は、単回又は複数回(例えば、2回、又は3回、4回、6回、8回、10回、20回、50回、100回、150回、又はそれより多く)であり得る。好適な送達ビヒクル(例えば、ポリマー微粒子又は移植可能なデバイス)中の化合物のカプセル化によって、送達の効率を上げることができる。ウイルス負荷を全て排除するために投与量を与えることができる。投与量は、ウイルス負荷の残りの部分の免疫破壊を可能にするために、動物内のウイルス負荷を低減するために与えることもできる。
【0116】
本明細書に提供される任意の組成物による治療の持続時間は、最短で1日から最長で宿主の寿命(例えば、何年も)までの任意の長さの時間であり得る。例えば、化合物は、週に1回(例えば、4週間~数ヶ月若しくは数年間)、月に1回(例えば、3~12ヶ月若しくは数年間)、又は5年、10年以上の期間にわたって年に1回投与することができる。また、治療の頻度は可変であり得ることに留意されたい。例えば、本発明の化合物は、毎日、毎週、毎月、又は毎年1回(又は2回、3回など)投与することができる。
【0117】
有効量の本明細書に提供される任意の組成物は、治療を必要とする個体に投与することができる。本明細書で使用される場合、「有効」という用語は、患者に著しい毒性を誘導しない一方で、所望の応答を誘導する任意の量を指す。そのような量は、特定の組成物を既知の量で投与した後の患者の応答を評価することによって決定することができる。加えて、毒性のレベルは、ある場合、特定の組成物を既知の量で投与する前後の個体の臨床症状を評価することによって決定することができる。患者に投与される特定の組成物の有効量は、所望の結果並びに個体の応答及び毒性レベルに従って調整され得ることに留意されたい。有意な毒性は、特定の個体ごとに変化し得、個体の疾患状態、年齢、及び副作用への耐性を含むがこれらに限定されない複数の要因に依存する。
【0118】
当業者に既知の任意の方法を使用して、特定の応答が誘発されるかどうかを決定することができる。特定の疾患状態の程度を評価することができる臨床的方法を使用して、応答が誘発されるかどうかを決定することができる。応答を評価するために使用される特定の方法は、個体の障害の性質、個体の年齢及び性別、投与されている他の薬物、並びに主治医の判断に依存する。個体のウイルス量を、例えば、血液1ミリリットル当たりのウイルスRNAを測定する血液検査と同様に、監視することができる。そのような試験の例としては、定量的分岐DNA(bDNA)、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、及び定性的転写媒介増幅が挙げられる。
【0119】
本発明は、ASFVを治療する具体的な方法を提供する。ASFVは、溶解性及び溶原性の両方であると仮定される(
図1A~1C及び
図2A~2E)。ウイルスの初期段階では、溶原性複製サイクルにロックされている可能性があり、そこで単球/マクロファージ細胞膜から出芽し、ウイルス及び宿主細胞タンパク質の両方を含む外膜脂質二重層に囲まれたASFV粒子をもたらす(
図2D)。ウイルスがブタの体内に広がるにつれて、何かが溶原サイクルを溶解サイクルにシフトさせると仮定されている(メカニズムは不明)(
図2E)。溶解サイクル中、感染した細胞は破裂し、
図2Eに示すように、ASFV(外膜なし、カプシドのみ)を感染したブタの体内に送り込む。両方のタイプのASFVビリオンが感染性であることが示されている(
図2A及び2B)。
【0120】
抗体及び抗原ベースのワクチンは機能しておらず、それらの開発戦略が両方のタイプの複製サイクル(溶原及び溶解)を考慮していないためである可能性がある。例えば、カプシドタンパク質を標的とする抗体(治療薬として直接注入される抗体、又はウイルスペプチドへの免疫応答からインビボで刺激される抗体のいずれか)は、カプシドが外膜によって保護されている(すなわち、アクセス不可能である)ため、ASFVビリオンを中和しない場合がある。ウイルス複製サイクルが溶解サイクルに移行するにつれて、抗体は実際にはそれらのそれぞれのカプシドエピトープと相互作用し得るが、この段階では、インビボウイルス力価は、効果的かつ持続的な中和応答を有するには高すぎる可能性がある。これは、急速なウイルス拡大(ウイルスに関連する24~72時間の100%の死亡率と相関する)と組み合わされて、身体がウイルスに圧倒されることに寄与する。抗原はほとんど常にカプシドベースであるため、防止策としての抗原刺激はこれまで機能していない。したがって、IgGを産生するB細胞応答は、外膜に囲まれた初期ASFVを認識しない(
図1B及び
図2Eに示される)。
【0121】
したがって、本発明は、ウイルスの溶原相の外膜上のタンパク質を標的とするウイルス抗原(B細胞応答を刺激するため)及び/又は抗体治療薬を投与し、ウイルスの溶解相のカプシド上のタンパク質を標的とするウイルス抗原(B細胞応答を刺激するため)及び/又は抗体治療薬を投与することにより、溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療する方法を提供する(
図4)。
【0122】
これらの課題を克服するには、新しい2つの戦略が必要である。
【0123】
1.ブタは、初期感染において出芽する(溶原性)ビリオンを中和するために、ASFVの外膜上に存在するウイルスタンパク質に由来するウイルス抗原で刺激される必要がある。これらのウイルス抗原には、ウイルス外膜タンパク質であるEP402R(CD2v)及びEP153Rが含まれる。更に、E183L(p54)は、上で詳細に述べられたように(
図3及び
図4)、ウイルス複製の初期溶原段階中に、ER内のウイルス工場へのウイルス輸送において重要な役割を果たす、内在性ウイルス内膜タンパク質である。
【0124】
2.ブタはまた、外膜(溶解性)晩期感染を有しないビリオンを中和するために、カプシド上に存在するウイルスタンパク質に由来するウイルス抗原で治療する必要がある。これらのウイルス抗原は、少なくとも1つのタイプのカプシドタンパク質、例えば、CP204L(p30)、B646L(p72)、B438L(p49)、及び抗体中和にアクセス可能であり、強い免疫応答を誘発する他のカプシドタンパク質を含むことができる(
図3及び
図4)。
【0125】
最近、赤血球との細胞外ウイルスドッキング(循環血液を通してウイルスを急速に分散させる可能性があるメカニズム)、T細胞抑制、及びMCHクラスI遮断に関与する2つのウイルス外膜タンパク質が同定された。これらのタンパク質は、pE402R(CD2v)及びEP153Rと呼ばれる。pE402Rはまた、リンパ球増殖を阻害することによって免疫抑制活性に関与することが示されている。pE153Rは、感染したマクロファージ上のMCHクラスI複合体を遮断することに関与することが示されている。したがって、ワクチン又は治療目的のためにpE402R(CD2v)及びEP153Rタンパク質を標的とすることによって、細胞外ウイルスは、生物全体に広がること、並びにリンパ球阻害を防止することが大幅に阻害される(
図5A~
図5D2に示される)。
【0126】
カプシドを構成するウイルス構造のための他の主要タンパク質としては、pE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、及びB438L(p49)が挙げられる。これらの3つのタンパク質は、(溶解サイクルの結果として)外膜を欠く細胞外ビリオンを中和するために、ワクチン及び/又は治療薬アプローチのために標的化され得る(
図5A~5D2に示される)。
【0127】
したがって、ブタは、全タンパク質、又はペプチド(表面曝露)、又は以下に由来するペプチドの混合物のいずれかで治療することができる:1)i)外膜タンパク質pE402R(CD2v)及びEP153R並びに/又はii)内在性ウイルス内膜タンパク質E183L(p54)などのASFV複製の初期溶原サイクルに関与するタンパク質、並びに2)i)pE102R、B646L(p72)、B438L(p49)及び/又はii)内膜及び外膜タンパク質o16R(p12)などのASFV複製の溶原サイクルに関与するタンパク質。治療は、ASFVの溶原及び溶解複製サイクルに対する防止措置として、ブタにおいてB細胞応答(即時及びメモリ)を生じる。これらのタンパク質のいずれかのペプチドセグメント(全タンパク質ではない)を使用して、免疫刺激応答を生成することができる。この戦略を
図5A~
図5D2に示す)
【0128】
本発明はまた、溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療するための組成物であって、ウイルスの溶原相の外膜上のタンパク質を標的とするウイルス抗原(B細胞応答を刺激する)及び/又は抗体治療薬と、ウイルスの溶解相のカプシド上のタンパク質を標的とするウイルス抗原と、を含む、組成物を提供する(
図4)。
【0129】
最適な抗体及びエピトープ配列は、Aridis pharmaceuticals λPEX(登録商標)及び/又はMabIgXプラットフォーム(複数可)(WO2021/1267A2)を使用してウイルスの溶原及び溶解段階を定義する各タンパク質について見出すことができる。抗体が定義されると、それらを製造し、健康な個体(すなわち、ブタ)に注入して、ASFV感染症からそれらを保護することができる。代替的に、抗体エピトープが定義されると、それらを使用して、以下のような新たな抗体を操作することができる、例えば、1)2つのウイルスエピトープを認識し、したがってウイルスの複数の点を中和する二重特異性抗体。2つのエピトープ(二重特異性であれば、それらを使用して、溶原サイクルのタンパク質と溶解サイクルのタンパク質を同時に標的にすることもできる、及び/又は2)抗体のFc領域へのCD47/mCD47の付加(
図6)。抗体開発に関する考慮事項を
図7~15Cに示す。
【0130】
治療は、以下のうちの少なくとも1つを使用する抗原刺激アプローチを含むことができる:
1.2回の別々の注入であって、各1回が、pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)のペプチド、続いて全タンパク質pE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)若しくはO61R(p12)、又は強力な免疫応答を誘発し得る任意の他のカプシドタンパク質を含む。
【0131】
2.pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)又はpE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)の各々に由来するペプチドセグメントの2回の別々の注入。ペプチド(複数可)は、外膜又はカプシドのいずれかの外面に曝露されるエピトープに由来し得る。
【0132】
3.pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)又はpE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)の各々に由来するペプチド(複数可)セグメントのプールの2回の別々の注入。ペプチドプールは、外膜又はカプシドのいずれかの外面上に曝露されるエピトープに由来する。
【0133】
4.1回の注入であって、各1回が、pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)のペプチド、続いて全タンパク質pE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)を含む。
【0134】
5.pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)及びpE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)の各々に由来するペプチドセグメントを含む1回の注入。ペプチドは、外膜又はカプシドのいずれかの外面に曝露されるエピトープに由来し得る。
【0135】
6.pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)又はpE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)の各々に由来するペプチドセグメントのプールを含む1回の注入。ペプチドプールは、外膜又はカプシドのいずれかの外面上に曝露されるエピトープに由来し得る。
【0136】
これらの戦略の各々は、pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)、pE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、又はO61R(p12)の追加の外膜に限定されず、カプシドタンパク質を同じ目的/結果のために利用することができる。
【0137】
pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)及び/又はpE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)の全タンパク質又はそれらのペプチド(複数可)の任意の組み合わせは、任意のタイプの抗体発見プラットフォームを使用して抗体を発見するための抗原として使用することができる。これらのプラットフォームのいくつかには、B細胞、ファージライブラリ、酵母発現システム、ナノウェルGFP標識システムなどの遺伝子編集駆動抗体過剰発現システムが含まれる。抗体が発見されると、それらは、親和性(affinity)、親和性(avidity)、特異性、選択性、安定性、精度、堅牢性について試験することができ、最良の候補(プラットフォームスクリーニングから得られる)は、ブタが感染した後にウイルスpE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)及び/若しくはpE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)(又は他の外膜及び/若しくはカプシドタンパク質)を中和するための治療処置として使用することができる。
【0138】
治療処置は、2回の別々の注入のうちの少なくとも1つを含むことができる:pE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)及び/若しくはpE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)に対して産生された抗体(若しくはいくつかの中和抗体)の各1回、又はpE402R(CD2v)、EP153R、E183L(p54)及び/若しくはpE102R、B646L(p72)、CP204L(p30)、B438L(p49)、O61R(p12)に対して産生された抗体のプールを含む1回の注入。この戦略は、ウイルスが種を飛び越える場合にも、ヒトの治療に使用することができる。
【0139】
したがって、本発明は、ウイルスの溶原相の外膜上の標的タンパク質及びウイルスの溶解相のカプシド上の標的タンパク質の全タンパク質又はペプチドを抗原として使用して、溶原性及び溶解性の両方であるウイルスを有する個体におけるウイルス感染症を治療するための抗体を見つけて、抗体発見プラットフォームを用いて抗体を発見し、発見された抗体の親和性(affinity)、親和性(avidity)、特異性、選択性、安定性、精度、及び堅牢性を試験し、ウイルス感染症の治療処置として最良の候補抗体を選択することによって、ウイルス感染症を治療するための抗体を発見する方法を提供する。本発明はまた、この方法によって見出される抗体を提供する。
【0140】
本発明はまた、ウイルスの溶原相及び溶解相の両方のタンパク質の全ドメイン及び/又は部分ドメインを含む、ウイルス感染症を防止するためのワクチンを提供する。ドメインは、
図16の表に列挙されるもののうちのいずれかであり得、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%の配列同一性類似性を含み得る。タンパク質は、個体におけるB細胞を刺激して、タンパク質及び対応する中和抗体を産生するために送達可能なmRNAを使用して発現させることができる。
【0141】
本出願を通して、米国特許を含む様々な刊行物は、著者及び年によって参照され、特許は番号によって参照される。刊行物の完全な引用を以下に列挙する。これらの刊行物及び特許の開示全体は、本発明が関連する技術分野をより完全に説明するために、本明細書によって参照により本出願に組み込まれる。
【0142】
本発明を、例解的に説明してきたが、使用されている用語は、限定ではなく、説明の言葉としての性質であることが意図されていると理解されるべきである。
【0143】
明らかに、上記の教示に照らして、本発明の多くの修正及び変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明は、具体的に記載された以外の方法でも実施され得ることを理解されたい。
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【0144】
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