(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-04
(54)【発明の名称】透析用吸着剤および再生透析の吸着システム
(51)【国際特許分類】
B01J 20/04 20060101AFI20241127BHJP
B01J 20/02 20060101ALI20241127BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20241127BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20241127BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20241127BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20241127BHJP
B01D 15/36 20060101ALI20241127BHJP
A61M 1/28 20060101ALI20241127BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B01J20/04 A
B01J20/02 A
B01J20/02 B
B01J20/04 B
B01J20/04 C
B01J20/10 D
B01J20/20 D
B01J20/20 E
B01J20/22 B
B01D15/00 101B
B01D15/36
A61M1/28 105
A61M1/16 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024531526
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 SG2022050867
(87)【国際公開番号】W WO2023101606
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10202113299U
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523385994
【氏名又は名称】アワック テクノロジーズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラーヤ,スレーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ゴリ,マンダール マノハール
(72)【発明者】
【氏名】シン,サンジェイ クマル
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,ジョエル ピータム
(72)【発明者】
【氏名】タン,ダニエル ウェイ タイ
(72)【発明者】
【氏名】パウラク,マルチン バルトゥオミ
(72)【発明者】
【氏名】チルマリー,シュリダール
(72)【発明者】
【氏名】ガディ,ヴィドゥ クマル
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジェイソン ツェ チャーン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ユエ(ヴィクトリア)
(72)【発明者】
【氏名】ヘイウッド,ピーター
【テーマコード(参考)】
4C077
4D017
4G066
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4D017AA11
4D017BA11
4D017BA20
4D017CA03
4D017CA05
4D017CA11
4D017CB01
4D017DA01
4D017EA05
4G066AA05B
4G066AA16B
4G066AA17B
4G066AA22B
4G066AA24B
4G066AA50B
4G066BA05
4G066BA36
4G066CA20
4G066CA27
4G066CA29
4G066DA11
4G066FA37
(57)【要約】
本明細書において、吸着に基づく透析に用いる材料であって、酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;アルカリ性陰イオン交換粒子;およびアルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を含む材料を開示する。また、該材料の用途およびその調製についても本明細書に開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着に基づく透析に用いる材料であって;
酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
アルカリ性陰イオン交換粒子;
および
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、
を含む材料。
【請求項2】
請求項1にしたがう材料であって、ここで該材料が、Ca(OH)
2およびMg(OH)
2のうちの一方または両方をさらに含む、材料。
【請求項3】
請求項1または2にしたがう材料であって、ここで該酸性および/または中性の陽イオン交換粒子が、酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩であり、任意選択的にここで該金属が、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから成る群から選択される1種類以上である、材料。
【請求項4】
請求項3にしたがう材料であって、ここで該金属がジルコニウムである、材料。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該アルカリ性陰イオン交換粒子が、その水酸化物-対イオン型;および/または炭酸-対イオン型;および/または酢酸-対イオン型;および/または乳酸-対イオン型において、部分的に水和した不定形水不溶性金属酸化物を含み、ここで該金属が、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから成る群から選択される1種類以上であり、任意選択的にここで該陰イオン交換粒子がアルカリ性含水性酸化ジルコニウムである、材料。
【請求項6】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで
(a)該水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩が、CaCO
3およびMgCO
3から成る群から選択される1種類以上であり;
および/または
(b)該アルカリ金属炭酸塩がK
2CO
3であり;
および/または
(c)該水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩が、炭酸セベラマー、ポリマー結合したテトラアルキルアンモニウムカルボナート、および3-(トリアルキルアンモニウム)アルキル(例えば、プロピル)官能化炭酸シリカゲルから成る群から選択される1種類以上である、
材料。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該材料が:
30~79wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
20~65wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.1~10wt%の総量で;
および
Ca(OH)
2およびMg(OH)
2のうちの一方または両方を0~5wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項8】
請求項7にしたがう材料であって、ここで該材料が:
31~75wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
23~63wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.1~5wt%の総量で;
および
Ca(OH)
2およびMg(OH)
2のうちの一方または両方を0~4wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項9】
請求項7または8にしたがう材料であって、ここで該材料が:
50~64wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
35~45wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.3~5wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項10】
請求項9にしたがう材料であって、ここで該材料が、
53~60wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
39~44wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.5~3wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項11】
請求項7または8にしたがう材料であって、ここで該材料が:
45~59wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
40~54wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.5~5wt%の総量で、
を含む、材料。
【請求項12】
請求項11にしたがう材料であって、ここで該材料が:
48~56wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
42~50wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を1~2wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項13】
請求項7または8にしたがう材料であって、ここで該材料が:
50~70wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
30~49wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
0.2~3wt%のアルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、
を含み;
さらに
Ca(OH)
2およびMg(OH)
2の一方または両方を0.2~2wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項14】
請求項13にしたがう材料であって、ここで該材料が:
53~67wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
33~46wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.2~2wt%の総量で;
および
Ca(OH)
2およびMg(OH)
2の一方または両方を0.2~1.5wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項15】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該材料において:
該陽イオン交換粒子が酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩であり;
陰イオン交換粒子がアルカリ性含水性酸化ジルコニウムであり;
および
該アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上が、CaCO
3および/またはMgCO
3であり、任意選択的にここで該材料がCa(OH)
2をさらに含む、
材料。
【請求項16】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該材料が有機化合物吸収剤をさらに含み、ここで該有機化合物吸収剤が、請求項1に列挙される成分の総重量に対して10~40wt%の量で存在し、任意選択的にここで該有機化合物吸収剤が、請求項1に列挙される成分の総重量に対して15~25wt%の量(18~23wt%など、19~21wt%などの量)で存在する、材料。
【請求項17】
請求項16にしたがう材料であって、ここで該有機化合物吸収剤が活性炭である、材料。
【請求項18】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、
ここで:
(a)該材料が中性含水性酸化ジルコニウムをさらに含み、ここで該中性含水性酸化ジルコニウムが、請求項1に列挙される成分の総重量に対して0.1~10wt%の量で存在し、任意選択的にここで該中性含水性酸化ジルコニウムが、項目1に列挙される成分の総重量に対して0.5~5wt%の量で存在し;
および/または
(b)
(i)該成分の全てを共に組み合わせて、単一層材料を提供し;
または
(ii)該アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、および存在する場合には、Ca(OH)
2およびMg(OH)
2の一方または両方を、該陽イオン交換粒子と組み合わせて、第1層を形成させ、それと共に該陰イオン交換粒子が第2層として提供される、
材料。
【請求項19】
請求項4および請求項4に従属する請求項5~18のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで酸性リン酸ジルコニウムおよび中性リン酸ジルコニウムの両方が存在し、該酸性リン酸ジルコニウムが該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の55~80wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在し、
任意選択的にここで:
(a)該酸性リン酸ジルコニウムが該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の59~70wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在し;
または
(b)該酸性リン酸ジルコニウムが存在する該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の75~78wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在する、
材料。
【請求項20】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩の一方または両方を含む、材料。
【請求項21】
吸着透析に用いるカートリッジであって、請求項1~20のいずれか1項に記載されるような材料を含むカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析用の吸着剤ならびに再生透析のための吸着システムに関するものであるが、再生透析としては、血液透析、腹膜透析、肝臓透析、肺透析、水の浄化、および生物学的流体の再生を挙げることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
以前に公開された文書に関する本明細書中のリストまたはそれに関する考察は、文書が最先端技術の一部または共通の一般的知見であることを承認するものと見なすべきではない。
【0003】
慢性腎疾患(CKD)では、血清中の重炭酸塩およびナトリウムの濃度が不均衡になることが多い。患者は共通して重炭酸塩が低濃度となり、また血清pHが低くなって代謝性アシドーシスに苦しむが、未治療のCKDでは食事で摂取するナトリウムの蓄積によって血清ナトリウムが危険な程度に高くなることがある。これらの不均衡は、中枢神経系および心臓血管の健康に対する重大リスクとなる。したがって、透析の基本的な目標は、血液恒常性を維持するための血清ナトリウムバランスおよび酸塩基バランスの補正である。
【0004】
CAPDまたはAPDなどの従来の腹膜透析においては、透析液(Na:132mmol/L)と患者の血清ナトリウム濃度(おおよそNa:138mmol/L)の間の負の濃度勾配を維持し、ナトリウムが血液から透析液へと拡散することによってナトリウムを除去して、ナトリウムの補正を行う。この濃度勾配は、限外濾過液の腹膜への輸送によってさらに高められる(すなわち、腹膜ではナトリウム濃度が低く透析液をさらに希釈するのである)。重炭酸塩は、透析液において高濃度の乳酸イオン(Lac:40mmol/L)を用いて正のアルカリバランス(アルカリの透析液から患者血清への正味の移動)を維持することによって補正されるのであるが、これは乳酸が患者の血流中に拡散して肝臓で重炭酸塩へと代謝されることによる。したがって、従来の腹膜透析においては、ナトリウムおよび重炭酸塩が幾分異なる機序で管理されるが、これらの機構は互いに直接的な影響を与えるわけではない。
【0005】
ウレアーゼ、リン酸ジルコニウム(ZP)、および含水性酸化ジルコニウム(HZO)から成る現在の吸着透析システムでは、重炭酸塩およびナトリウムの調節が直接的に関連するので、Na+およびHCO3
-バランスの同時最適化に関して制限がある。吸着透析においてナトリウムを調節する第1の方法は、水素負荷ZP(ZP-H)を用いたイオン交換による除去:
ZP-H + Na+ → ZP-Na + H+
である。
しかし、このイオン交換プロセスは塩基(例えば、重炭酸イオン)の存在下で非常に容易に起こる:
ZP-H + HCO3
- + Na+ → ZP-Na + H2O + CO2
【0006】
透析液全体のpHに応じて、CO
2が空気中へ散逸することがあるので、透析液におけるアルカリの正味の消失が起こる。専ら酸性H負荷ZPを利用することはナトリウムの調節およびその他の不要な陽イオン(アンモニウムなど)の除去にとって好適であり得るが、その後の重炭酸消失、およびその結果としてのpH低下は、全体の重炭酸バランスの悪化を引き起こすことがある。
図1に示される、pHに対する含水炭酸、重炭酸、および炭酸の溶液中のモル分率、ならびに
図2に示されるpHに対する含水アンモニウムおよびアンモニアの溶液中のモル分率によって、上記の事柄が具体的に示されるのである。
【0007】
典型的には、塩基性塩(重炭酸ナトリウムなど)を吸着剤に添加すること、および/またはアルカリ性陰イオン交換体(例えば、OH負荷HZO)の利用によって、低pHの影響および重炭酸塩が低濃度であることの影響に対して釣り合いをとらせるのである。
【0008】
重炭酸ナトリウムによるアプローチの限界は、この塩が水性透析液に容易に溶解するため、治療開始時点で透析液のナトリウムの急激な増加およびpHの急激な上昇が起こることである。この場合、可溶性ナトリウム塩の直接的添加では、ナトリウム調節にとって望む効果が得られない。これは、腹膜透析において患者からナトリウムを除去するためには、血液透析液濃度勾配が望ましいことによる。さらに、患者における重炭酸塩の観点からも望ましいと考えられる処置経過中に持続的なpH上昇が、このアプローチでは得られない;その理由は、上記のように、重炭酸塩の安定性はpHに依存するからである。
アルカリ性HZOの利用は、酸性透析液の中和を助け、ZP-Hから浸出したリン酸を除去することにおいて有利である:
HZO-OH + H+ + X- → HZO-X + H2O (pH << 7、X = Cl、PO4、F)
【0009】
しかし、緩衝剤としての作用に必要となるHZOの量は僅かな量ではないため、吸着カートリッジのサイズと重量にかなりの影響を与え得る。さらに、HZOとHとの間の反応速度は速いので、この緩衝能では容易に枯渇が起こる;すなわち、処置開始時にのみpHおよび重炭酸塩濃度が維持されことを意味している。
【0010】
ナトリウムを調節するこの方法は、HCO3
-除去の増強と同時にNa+の除去が起こることを意味する。過度のHCO3
-除去が代謝性アシドーシスを惹起させることがあり、それは患者に多くの非健康的症状を引き起こし有害となり得るのである。現在の医療では代謝性アシドーシスに対処する別の方法が存在し、そのような方法(重炭酸ナトリウムの錠剤の経口摂取など)を補助療法として用いることができるが、この解決法でも同一の問題に突き当たる;すなわち、Na+を加えることになるので、やはり血液系にNa+が戻ってくるのである。したがって、重炭酸塩管理についての改善された方法の必要性が存在するのである。具体的には、吸着透析について、重炭酸ナトリウムおよびアルカリ性HZOの代わりとなる好適な代替法の必要性が存在するのである。
【発明の概要】
【0011】
異なる割合(%)の中性ZP(NZP)、酸性ZP (AZP)、アルカリ性HZO(NaHZO)、ならびに実質的に不溶性の塩であるCaCO3およびCa(OH)2から成る吸着組成物を本明細書において開示する。意外なことに、これによって上記で特定した問題の一部または全部が解決するのである。
【0012】
本発明の局面および実施態様を以下の連番項目に示す。
【0013】
[連番項目1]
吸着に基づく透析に用いる材料であって;
酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
アルカリ性陰イオン交換粒子;
および
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、
を含む材料。
【0014】
[連番項目2]
連番項目1にしたがう材料であって、ここで該材料が、Ca(OH)2およびMg(OH)2のうちの一方または両方をさらに含む、材料。
【0015】
[連番項目3]
連番項目1または2にしたがう材料であって、ここで該酸性および/または中性の陽イオン交換粒子が、酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩であり、任意選択的にここで該金属が、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから成る群から選択される1種類以上である、材料。
【0016】
[連番項目4]
連番項目3にしたがう材料であって、ここで該金属がジルコニウムである、材料。
【0017】
[連番項目5]
前記連番項目のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該アルカリ性陰イオン交換粒子が、その水酸化物-対イオン型;および/または炭酸-対イオン型;および/または酢酸-対イオン型;および/または乳酸-対イオン型において、部分的に水和した不定形水不溶性金属酸化物を含み、ここで該金属が、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから成る群から選択される1種類以上であり、任意選択的にここで該陰イオン交換粒子がアルカリ性含水性酸化ジルコニウムである、材料。
【0018】
[連番項目6]
前記連番項目のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで:
(a)該水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩が、CaCO3およびMgCO3から成る群から選択される1種類以上であり;
および/または
(b)該アルカリ金属炭酸塩がK2CO3であり;
および/または
(c)該水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩が、炭酸セベラマー、ポリマー結合したテトラアルキルアンモニウムカルボナート、および3-(トリアルキルアンモニウム)アルキル(例えば、プロピル)官能化炭酸シリカゲルから成る群から選択される1種類以上である、
材料。
【0019】
[連番項目7]
前記連番項目のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該材料が:
30~79wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
20~65wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.1~10wt%の総量で;
および
Ca(OH)2およびMg(OH)2のうちの一方または両方を0~5wt%の総量で、
含む、材料。
【0020】
[連番項目8]
連番項目7にしたがう材料であって、ここで該材料が:
31~75wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
23~63wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.1~5wt%の総量で;
および
Ca(OH)2およびMg(OH)2のうちの一方または両方を0~4wt%の総量で、
含む、材料。
【0021】
[連番項目9]
連番項目7または8にしたがう材料であって、ここで該材料が:
50~64wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
35~45wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.3~5wt%の総量で、
含む、材料。
【0022】
[連番項目10]
連番項目9にしたがう材料であって、ここで該材料が:
53~60wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
39~44wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み、
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.5~3wt%の総量で、
含む、材料。
【0023】
[連番項目11]
連番項目7または8にしたがう材料であって、ここで該材料が:
45~59wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
40~54wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.5~5wt%の総量で、
を含む、材料。
【0024】
[連番項目12]
連番項目11にしたがう材料であって、ここで該材料が:
48~56wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
42~50wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
を含み、
さらに、
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を1~2wt%の総量で、
含む、材料。
【0025】
[連番項目13]
連番項目7または8にしたがう材料であって、ここで該材料が:
50~70wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
30~49wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
0.2~3wt%のアルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、
を含み、
さらに
Ca(OH)2およびMg(OH)2の一方または両方を0.2~2wt%の総量で、
含む、材料。
【0026】
[連番項目14]
連番項目13にしたがう材料であって、ここで該材料が:
53~67wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
33~46wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.2~2wt%の総量で;
Ca(OH)2およびMg(OH)2の一方または両方を0.2~1.5wt%の総量で、
含む、材料。
【0027】
[連番項目15]
前記連番項目のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該材料において:
該陽イオン交換粒子が酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩であり;
陰イオン交換粒子がアルカリ性含水性酸化ジルコニウムであり;
および
該アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上が、CaCO3および/またはMgCO3であり、任意選択的にここで該材料がCa(OH)2をさらに含む、
材料。
【0028】
[連番項目16]
前記連番項目のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該材料が有機化合物吸収剤をさらに含み、ここで該有機化合物吸収剤が、項目1に列挙される成分の総重量に対して10~40wt%の量で存在し、任意選択的にここで該有機化合物吸収剤が、項目1に列挙される成分の総重量に対して15~25wt%の量(18~23wt%など、19~21wt%などの量)で存在する、材料。
【0029】
[連番項目17]
連番項目16にしたがう材料であって、ここで該有機化合物吸収剤が活性炭である、材料。
【0030】
[連番項目18]
前記連番項目のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該材料が中性含水性酸化ジルコニウムをさらに含み、ここで該中性含水性酸化ジルコニウムが、連番項目1に列挙される成分の総重量に対して0.1~10wt%の量で存在し、任意選択的にここで該中性含水性酸化ジルコニウムが、連番項目1に列挙される成分の総重量に対して0.5~5wt%の量で存在する、材料。
【0031】
[連番項目19]
連番項目4および連番項目4に従属する連番項目5~18のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで酸性リン酸ジルコニウムおよび中性リン酸ジルコニウムの両方が存在し、該酸性リン酸ジルコニウムが該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の55~80wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在する、材料。
【0032】
[連番項目20]
連番項目19にしたがう材料であって、ここで:
(a)該酸性リン酸ジルコニウムが、該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の59~70wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在し;
(b)該酸性リン酸ジルコニウムが、該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の75~78wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在する、
材料。
【0033】
[連番項目21]
前記連番項目のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで:
(a)全成分を共に組み合わせて単一層の材料を提供し;
または
(b)該アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、および存在する場合には、該金属水酸化物を該陽イオン交換粒子と組み合わせて第1層を形成させ、それと共に該陰イオン交換粒子が第2層として提供される、
材料。
【0034】
[連番項目22]
前記項連番項目のいずれか1項にしたがう材料であって、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩の一方または両方を含む、材料。
【0035】
[連番項目23]
吸着透析に用いるカートリッジであって、連番項目1~22のいずれか1項に記載されるような材料を含むカートリッジ。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】溶液のpHに対する含水炭酸、重炭酸塩、および炭酸塩のモル分率である。
【
図2】溶液のpHに対する含水アンモニウムおよびアンモニアのモル分率である。
【
図3】本明細書に開示の実施例において用いた本発明の実施態様にしたがう吸着カートリッジの模式図である。
【
図5】Ca(OH)
2の異なる成分量および7時間の処置中の透析液pHプロファイルに対するその全体的寄与である。
【
図6】本発明の実施態様にしたがう吸着カートリッジを示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
意外なことに、特定の金属炭酸塩および/または特定の金属水酸化物塩の添加によって、吸着を基盤とする透析の透析液中の重炭酸塩濃度およびナトリウム濃度を変化させる得ることを発見したのである。
【0038】
したがって、本発明の第1の局面においては、吸着に基づく透析に用いる材料であって、以下を含む材料を提供する:
酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
アルカリ性陰イオン交換粒子;
および
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上。
【0039】
特定の実施態様においては、上記の材料は、Ca(OH)2およびMg(OH)2の一方または両方をさらに含むのであってもよい。
【0040】
本明細書の実施態様においては、「を含む(comprising)」という表現は、言及する特徴を必要とすると解釈することもできるが、その他の特徴の存在を制限するものではない。あるいは、「を含む(comprising)」という表現はまた、列挙される成分/特徴のみが存在することを意図する(例えば、「を含む(comprising)」という表現は、「~から成る」または「本質的に~から成る」という表現によって代替することもできる)状況に関するものであってもよい。本発明の全ての局面および実施態様に対して、より広義の解釈およびより限定的な解釈の両方が当てはまり得ることが明確に意図される。換言すれば、「を含む(comprising)」という表現およびその同義語は、「~から成る」という表現または「本質的に~から成る」という表現またはその同義語で代替することができ、またその逆も同様である。
【0041】
表現「本質的に~から成る」およびその異なる同等表現は、本明細書においては僅かな不純物が存在し得る材料を指すものと解釈することができる。例えば、該材料は90%以上純粋(95%超純粋であるなど、97%超純粋であるなど、99%超純粋であるなど、99.9%超純粋であるなど、99.99%超純粋であるなど、99.999%超純粋であるなど、100%純粋など)であってもよい。
【0042】
本明細書中の用語「吸着剤」は、(材料が)所望の目的物質を吸収する能力を特徴とする一群の材料を広く指す。
【0043】
本明細書中の用語「代謝老廃物」は、代謝によって産生され、透析液の解毒プロセスにおいて除去されることが望ましい透析液中のいずれかの構成成分、典型的には毒性成分を意味する。典型的な代謝老廃物としては、リン酸、尿素、クレアチニン、および尿酸が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0044】
本明細書中の用語「必須陽イオン」は、ナトリウムイオン以外の陽イオンであって、透析溶液に存在しその安全性および有効的利用に必須である陽イオンを指す。これらのイオンは一般的にカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであるが、カリウムイオンもまた存在し得る。カルシウム、マグネシウム、およびカリウムは吸着剤によって除去されるので、該透析液を再構成するために再生透析液に再導入することが必要となる。
【0045】
用語「陽イオン当量」または「総陽イオン当量」は、溶液中のプロトンを除く全正電荷当量の総計を指す。陽イオン当量は、mEq/Lとして測定される。
【0046】
当業者であればよく理解できることではあるが、本明細書中の用語「ナトリウム」またはその記号「Na」は、ナトリウム元素自体よりもナトリウムイオンを表すために用いられる。したがって、用語「ナトリウム」、「Na」、「ナトリウムイオン」および「Na+」は同義語として用いられる。同様に、用語「カルシウム」、「マグネシウム」 および「カリウム」またはその記号「Ca」、「Mg」および「K」はそれぞれ、本明細書においてカルシウムイオン、マグネシウムイオン、およびカリウムイオンを表すために用いられる。
【0047】
本明細書中の用語「透析液排液の供給源」は、透析液の供給源を指すが、その透析液は生成されるものである。該供給源は、生物学的流体の再生が膜を越える交換によって起こる排液の供給源であってもよい。例えば、該透析プロセスが血液透析である場合には、透析液排液の供給源は血液透析装置中の透析器であろう。そのような装置において、患者からの血液および透析液の流れは対向流であり、流れを区分する膜を越えた交換が起こるのである。あるいは、例えば、交換を起こさせるために透析液を患者腹腔に流入させる腹膜透析の場合のように、該供給源は患者であってもよい。
【0048】
本明細書中の用語「陽イオン交換粒子」は、典型的には陽イオンまたは正に荷電した分子種の溶液を、粒子表面を通過させることによって、陽イオンまたは正に荷電した分子種と接触させた場合に、そのような分子種を捕捉可能または固定化可能な粒子を指す。
【0049】
本明細書中の用語「陰イオン交換粒子」は、典型的には陰イオンまたは負に荷電した分子種の溶液を、粒子表面を通過させることによって、陰イオンまたは陰に荷電した分子種と接触させた場合に、そのような分子種を捕捉可能または固定化可能な粒子を指す。
【0050】
本明細書中の用語「尿毒症毒素処理酵素」は、基質としての尿毒症毒素と反応可能な酵素を指す。例えば、該尿毒症毒素処理酵素は、基質としての尿素、基質としての尿酸、または基質としてのクレアチニンと反応可能な酵素であってもよい。尿毒症酵素は、インビトロでその機能を有するか否かを、例えば、該酵素を溶液中の尿毒症毒素に反応させ、尿毒症毒素の濃度低下を測定することによって判定することができる。尿毒症毒素処理酵素の例としては、ウレアーゼ(尿素と反応する)、ウリカーゼ(尿酸と反応する)、またはクレアチニナーゼ(クレアチニンと反応する)が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0051】
本明細書中の用語「尿毒症毒素」は、当業者であればよく理解できることではあるが、例えば、蛋白質、核酸などの分解によって生成する1種類以上の老廃物を含む化合物を指す。尿毒症毒素の非限定的な例としては、尿素、尿酸、クレアチニン、およびベータ-2(β2)ミクログロブリンが挙げられる。健常個体においては、通常、尿毒症毒素は尿を通じて身体から排出される。しかし、特定個体においては、尿毒症毒素が充分速い速度で身体から除去されないので、尿毒症毒性を示す、すなわち、少なくとも1種類の尿毒症毒素に関して、尿毒症毒素の生理学的通常レベルと比較してレベルが上昇していることを特徴とする疾患または病態を引き起こす。尿毒症毒素に関連する障害の非限定的な例としては、腎疾患または腎機能不全、痛風、および化学療法を受けている対象における尿毒症毒性が挙げられる。
【0052】
本明細書中の用語「尿毒症毒素処理酵素粒子」は、粒子形態の尿毒症毒素処理酵素を指す。該酵素は、共有結合または物理的結合を介して生体適合性固体支持体に固定化されるのであってもよく、架橋、またはカプセル化、またはその他の任意の手段で固定化されるのであってもよい。
【0053】
本明細書中の用語「可溶性供給源」は、該吸着剤のその他の成分とは異なる化合物であって、該その他の成分に添加または混合されるのであってもよい化合物を指す、あるいは該吸着剤の該その他の成分とは異なる層として存在する、または該吸着剤の該その他の成分とは異なる区画に存在する化合物を指す。「可溶性供給源」は通常、該吸着剤中の他の固体粒子と組み合わせる固体粒子の形態で該吸着剤に加えられる。
【0054】
本明細書中の用語「生体適合性」は、ヒトまたは動物の身体に対して有害な生物学的反応を引き起こすことのない材料の特性を指す。
【0055】
本明細書中の用語「均質な」は、実質的に均質な混合物を指すが、これは所定の試料全体を通じて各種成分が同一の割合を有することで均一混合物となる混合物を意味する。該混合物の組成は全体的に実質的に同一であるが、固体粒子の混合において、試料中に混合が不完全な領域が存在し得ることは理解されるであろう。
【0056】
用語「粒子サイズ」は、粒子の直径または相当直径を指す。用語「平均粒子サイズ」は、一部の粒子は特定サイズよりも大きく、また一部の粒子は特定サイズよりも小さいが、大部分の粒子は特定の粒子サイズに近いことを意味している。粒子分布におけるピークは特定サイズを有する。したがって、例えば、平均粒子サイズが50ミクロンである場合には、50ミクロンよりも大きい粒子および50ミクロンよりも小さい粒子も存在する。
【0057】
本明細書中の用語「再生する」または「再生される」は、吸着剤が尿毒症毒素を分解することによる、および/または吸着剤が尿毒症毒素を吸収することによる透析液の解毒作用を指す。
【0058】
本明細書中の用語「再生透析液」は、吸着剤が尿毒症毒素を分解することによって、および/または吸着剤が尿毒症毒素を吸収することによって解毒された透析液を指す。
【0059】
本明細書中の用語「再構成する」または「再構成される」は、再生透析液を、透析前の新鮮透析液と本質的に同一の状態および化学組成に変換する作用を指す。
【0060】
本明細書中の用語「再構成透析液」は、透析前の新鮮透析液と本質的に同一の状態および化学組成に変換された透析液を指す。
【0061】
本明細書中の用語「主に」は、最小の程度で、別の状況または状態もまたいくらか発生する可能性を除外することなく、大部分において、または主要な割合において発生するある状況または状態を示すものである。例えば、それは、>80%または>90%または>95%または99%超であってもよい。疑念を避けるために、他のすべてを除いてその状況または状態のみが発生する可能性もこの用語に含まれるものとする。
【0062】
「実質的に(substantially)」という表現は「完全に(completely)」を除外するものではなく、例えば、「実質的にYを含まない」組成物は、Yを完全に含まないのであってもよい。必要に応じて、「実質的に(substantially)」という表現は本発明の定義から省略されるのであってもよい。
【0063】
製剤の成分濃度に関する本明細書中の用語「約」は、典型的には平均値±その言及される値の5%、より典型的にはその言及される値の+/-4%、より典型的にはその言及される値の±3%、より典型的にはその言及される値の+/-2%、さらにより典型的にはその言及される値の±1%、およびさらにより典型的にはその言及される値の+/-0.5%である。
【0064】
本開示全体を通して、特定の実施態様は範囲形態で開示されることがある。範囲形態の記載は単に便宜的および簡潔性のためであることを理解されたい。それを開示範囲についての柔軟性のない範囲限定と見なすべきではない。したがって、範囲の記載は具体的に開示される全ての可能な小範囲ならびにその範囲内の個々の数値を含むものと見なすべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示される小範囲ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を含むものと見なすべきである。範囲の広さにかかわらずこれが当てはまる。
【0065】
該酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩は、水に対して10mg/L以下の溶解度を有するいずれかの金属リン酸塩であり得る。好適な酸性および/または水に不溶性の中性金属リン酸塩の例としては、該金属がチタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせから成る群から選択されるものが挙げられる。本明細書中で言及する特定の実施態様においては、該酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩は、酸性および/または中性のリン酸ジルコニウムであってもよい。中性リン酸ジルコニウムおよび酸性リン酸ジルコニウムの調製プロセスは、緩衝液のpHおよび炭酸ジルコニウムナトリウムに関するその比が、所望のpH値に適合するように変更されることを除いて同一である。両者は、所望のpH値を有するリン酸緩衝液に炭酸ジルコニウムナトリウムを適切な比で混合することによって調製されるが、その比は当業者であれば容易に決定することができる。
【0066】
本明細書中の用語「および/または」は、「酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム」などの2種類の特定材料に関して用いられる場合に、上記の成分の組み合わせ、あるいは該成分の個々の使用が可能であることが意図される。すなわち、用語「酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム」は、以下の実施態様を含む:
・ 酸性リン酸ジルコニウムのみが存在する;
・ 中性リン酸ジルコニウムのみが存在する;
または
・ 酸性および中性のリン酸ジルコニウムの両方が 存在する。
酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩は、イオン交換材料として用いるのであってもよく、また再生腎臓透析における吸着材料として特に有用である。例えば、ナトリウム型または水素型のリン酸ジルコニウムは陽イオン交換体として働き、アンモニウム(NH4
+)、カルシウム(Ca2+)、カリウム(K+)、およびマグネシウム(Mg2+)などの陽イオンを吸収する。これら陽イオンの吸収についての交換では、リン酸ジルコニウムが、他の2種類の陽イオン、すなわちナトリウム(Na+)および水素(H+)を放出する。中性リン酸ジルコニウムは、それを酸性リン酸ジルコニウムと混合した場合に、適切なインサイチュpHの維持を助ける。理論による限定を意図するものではないが、中性リン酸ジルコニウムは、CaCO3およびCa(OH)2と共に透析液の重炭酸バランスの維持を助けると考えられる。
【0067】
一実施態様においては、酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩は、アンモニウムイオンを主に水素イオンに交換する、および合成中に低pHに設定することによって必須陽イオンをナトリウムイオンに交換するように構成される。この特性を最適化するには、該陽イオン交換粒子は典型的には、pHが低くなるように、および合成中のナトリウム負荷が低くなるように設定する。一実施態様においては、該陽イオン交換体は酸の存在下で合成される。塩基(水酸化ナトリウムなど)による滴定などで、所望の差別化交換挙動を提供するレベルにpHを上昇させることによって、そのpHを所望のレベルに調整して設定する。所望によりナトリウムをカルシウム、マグネシウム、およびカリウムに交換可能とするのに充分なナトリウム負荷を有する陽イオン交換粒子の提供にも該滴定が用いられる。一実施態様においては、陽イオン交換材料はリン酸ジルコニウムである。リン酸ジルコニウムは、例えば、リン酸との反応によって、塩基性硫酸ジルコニウム(BZS)から、または炭酸ジルコニウムからなどの従来のプロセスで合成するのであってもよい。他の酸を用いる場合には、リン酸基の供給源の提供が必須となる。典型的には、塩基を用いた反応産物の滴定により、そのpHを3.5~5.0の範囲に設定するが、有利なのは約4.5である。
【0068】
酸性リン酸ジルコニウムはまた、例えば、米国特許第6,818,196号に開示の方法にしたがって調製するのであってもよい;本参考文献は参照としてその内容全体が本明細書に組み入れられる。簡単に説明すると、ソーダ灰と共にオキシ塩化ジルコニウム(ZOC)を加熱して炭酸ジルコニウムナトリウムを形成させ、この炭酸ジルコニウムナトリウムを苛性ソーダで処理してアルカリ性含水性酸化ジルコニウムを形成させることにより、酸性リン酸ジルコニウムを調製することができる。次いで、リン酸を添加しながら、このアルカリ性含水性酸化ジルコニウムの水性スラリーを加熱することができる。該酸性リン酸ジルコニウムの水性スラリーはまた、所望のpH(例えば、約5~約7のpH)に達するまで塩基性物質(苛性ソーダなど)で滴定することができる。
【0069】
該酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム粒子の平均粒子サイズは、約10ミクロン~約1000ミクロン、約100ミクロン~約900ミクロン、約200ミクロン~約900ミクロン、約300ミクロン~約800ミクロン、約400ミクロン~約700ミクロン、500ミクロン~約600ミクロン、約25ミクロン~約200ミクロン、または約25ミクロン~約150ミクロン、または約25ミクロン~約80ミクロン、または約25ミクロン~約50ミクロン、または約50ミクロン~約100ミクロン、または約125ミクロン~約200ミクロン、または約150ミクロン~約200ミクロン、または約100ミクロン~約175ミクロン、または約100ミクロン~約150ミクロンまたは約150ミクロン~約500ミクロン、または約250ミクロン~約1000ミクロンの範囲であってもよい。該酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム粒子は、該リン酸ジルコニウム粒子に固定化を提供し得るいずれかの公知の支持体材料上に固定化するのであってもよい。一実施態様においては、該支持体材料は生体適合性基質であってもよい。一実施態様においては、該酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム粒子の固定化は、該粒子を所定の容積に物理的に凝縮するものである。一実施態様においては、該酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム粒子の固定化は、リン酸ジルコニウム、またはリン酸ジルコニウムと好適なセラミック材料との混合物を焼結することによって達成される。該生体適合性基質は、1種類の材料によって構成される均質基質であってもよく、あるいは少なくとも2種類の材料によって構成される複合基質であってもよい。
【0070】
該陰イオン交換粒子は、水酸化物-対イオン型、炭酸-対イオン型、酢酸-対イオン型、および/または乳酸-対イオン型である部分的に水和した不定形水不溶性金属酸化物によって構成されるのであってもよく、ここで該金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせから成る群から選択されるのであってもよい。一実施態様においては、該金属はジルコニウムである。該陰イオン交換粒子は酸化ジルコニウム粒子であってもよい。好ましくは、該陰イオン交換粒子は含水性酸化ジルコニウム粒子である。
【0071】
アルカリ性含水性酸化ジルコニウムまたはNaHZOは、酸化ジルコニウムが水酸化されている含水性酸化ジルコニウム(ZrO(OH)2)のアルカリ型を意味する。NaHZOは、以下の化学的および物理的特性を有するのであってもよい:
組成: Na+
x ZrO2 (OH-)y ・ nH2 O
イオン交換化学式: ZrO2 ・ OH-
【0072】
ここでNa+に関するxは1であり、OH-に関するyは2~4であってもよく、およびH2Oに関するnは4~6であってもよく、ならびにx、y、およびnはこれらの範囲の任意の少数であってもよく、任意選択的にこれらの範囲よりも大きくてもよく、あるいは小さくてもよい。該NaHZOは、例えば、約0.5:1.5~約1.5:0.5(約1:1など)の範囲のNa:ZrO2 (モル比)であるNa+含量を有することができ、および/または、例えば、約3~約12mEq OH- /10g NaHZO、約5~約10mEq OH- /10g NaHZO、または約6~約9mEq OH-/10g NaHZOの範囲のヒドロキシルイオン含量を有することができる。該NaHZOのpHは、水(1g/100mL)において、例えば、pH約7~約14、pH約9~約12、またはpH約10~約11であってもよい。上記の化学式から分かるように、該アルカリ性含水性酸化ジルコニウムの目的は水酸化物イオンを放出することである。
【0073】
該アルカリ性含水性酸化ジルコニウム粒子の平均粒子サイズは、約10ミクロン~約1000ミクロン、約100ミクロン~約900ミクロン、約200ミクロン~約900ミクロン、約300ミクロン~約800ミクロン、約400ミクロン~約700ミクロン、500ミクロン~約600ミクロン、約10ミクロン~約200ミクロン、または約10ミクロン~約100ミクロン、または約10ミクロン~約30ミクロン、または約10ミクロン~約20ミクロン、または約20ミクロン~約50ミクロン、または約25ミクロン~約50ミクロン、または約30ミクロン~約50ミクロン、または約40ミクロン~約150ミクロン、または約80ミクロン~約120ミクロン、または約160ミクロン~約180、または約25ミクロン~約250、または約250ミクロン~約500、または約250ミクロン~約1000の範囲であってもよい。該酸化ジルコニウム粒子は、該酸化ジルコニウム粒子の固定化を提供可能ないずれかの公知の支持体材料上に固定化されるのであってもよい。一実施態様においては、該酸化ジルコニウム粒子の固定化は、該粒子を所定の容積に物理的に凝縮するものであってもよい。一実施態様においては、該酸化ジルコニウム粒子の固定化は、酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムと好適なセラミック材料の混合物を焼結することによって達成される。一実施態様においては、該支持体材料は生体適合性基質である。該生体適合性材料は、炭水化物を基盤とするポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリオレフィン、または無機ポリマーまたはセラミック材料であってもよい。該生体適合性基質は、セルロース、Eupergit、二酸化ケイ素、ナイロン、ポリカプロラクトン、およびキトサンのうちの少なくとも1種類であってもよい。
【0074】
一実施態様においては、該アルカリ性含水性酸化ジルコニウム粒子は、リン酸イオンおよび他の陰イオンを吸収可能な任意の粒子で代替させるのであってもよい。好ましくは、該粒子は、リン酸、フッ化物、硝酸、および硫酸のイオンを含む群から選択される陰イオンを吸収可能である。該酸化ジルコニウム粒子はまた、吸収した陰イオンと交換して、酢酸、乳酸、重炭酸、および水酸化物などのイオンを放出するのであってもよい。
【0075】
アルカリ性含水性酸化ジルコニウムは、周囲温度でジルコニウム塩(例えば、BZSまたはその水溶液)をアルカリ金属(またはアルカリ金属化合物)と反応させることによって、アルカリ性含水性酸化ジルコニウムの沈殿を形成させて調製することができる。該アルカリ性含水性酸化ジルコニウム粒子は、濾過してジルコニウム塩の陰イオンが完全に除去されるまで洗浄し、次いで、水分レベルが、例えば、約30~40重量パーセントLOD以下となるように空気乾燥または温和な温度のオーブンで乾燥させ、流動性の良い粉末を形成させることができる。その他のLODも達成可能であるが、より低い水分レベル(すなわち、<20重量パーセントLOD)を達成するために、より高い温度および/または長い乾燥時間(例えば、24~48時間)を用いることにより、水酸化ジルコニウム結合が酸化ジルコニウム結合に変換され該陰イオン交換材料の吸着能ならびにアルカリ度が低下することがある。
【0076】
アルカリ性含水性酸化ジルコニウムはまた、例えば、米国特許出願公開第2006/0140844号に開示の方法にしたがって調製することができる;この参考文献は、本明細書において提供される教示内容と組み合わせてその内容全体が参照として本明細書に組み入れられる。簡単に説明すると、アルカリ性含水性酸化ジルコニウムを調製するこの方法は、濃塩酸で滴定されたZOCの水溶液を苛性ソーダ水溶液に加えることを含む。塩酸を加えることによって、沈殿プロセス中の過度のゲル化を防ぐことができると共に、粒子増大を促進することができる。中性含水性酸化ジルコニウムは、塩基性酸化ジルコニウムの製造に関する本明細書に記載の方法を修正することによって調製することができる。例えば、中性含水性酸化ジルコニウムとなるように炭酸ジルコニウムナトリウムおよび水酸化ナトリウムで処理して水性スラリーのpHを調節することによって、上記を達成するのであってもよい。
【0077】
上記から分かるように、本明細書に開示の吸着剤の必須要素は、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩、およびそれらの組み合わせの存在である。本明細書中で言及する特定の実施態様においては:
(a)該水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩は、CaCO3およびMgCO3から成る群のうちの1種類以上から選択されるのであってもよく;
(b)該アルカリ金属炭酸塩はK2CO3であってもよく;
および/または
(c)該水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩は、炭酸セベラマー、ポリマー結合したテトラアルキルアンモニウムカルボナート、および3-(トリアルキルアンモニウム)アルキル(例えば、プロピル)官能化炭酸シリカゲルから成る群のうちの1種類以上から選択されるのであってもよい。
【0078】
本明細書中の用語「アルキル」は、直鎖状または分岐C1~C6アルキル基を指すのであってもよく、またそのような「アルキル」としては、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチルおよびt-ブチル基を挙げることができる。
【0079】
理論による限定を意図するものではないが、吸着剤中の該水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩;アルカリ金属炭酸塩;水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩;およびそれらの組み合わせは、重炭酸塩の直接的供給源として働き、穏和なpHの緩衝剤として機能すると考えられる。同様に、該製剤にCa(OH)2およびCa(OH)2を含める場合には、それらは類似の様式で働くと考えられる。例えば、CaCO3(またはMgCO3)が存在する場合には、それは重炭酸塩の直接的供給源として働き、穏和なpHの緩衝剤として機能するが、他方、Ca(OH)2(またはMg(OH)2;存在する場合には)はより塩基性であり、透析液のさらなるpH上昇を助ける。高pHは、尿素加水分解中に生成する、またはZPとの反応によるCO2の重炭酸塩への転化を促進する。
【0080】
対応する全化学反応は、上記のカルシウム種に関して下に示すような式で表現することができる:
CaCO3(s) + H2O (l) + CO2 (g) < = > Ca2+ (aq) + 2HCO3
- (aq)
Ca(OH)2 (s) + H2O (l) + 2CO2 (g) < = > Ca2+ (aq) + 2HCO3
- (aq)
理解されることではあるが、これらのカルシウム種の代わりに上記の他の材料を使用する場合にも、類似の反応が起こる。重炭酸塩の転化は、平衡のpH、ならびにCaCO3およびCa(OH)2の解離定数および溶解速度に依存する。
【0081】
低血清尿素の患者の場合に、尿素加水分解によって産生するCO2がより少ない場合には、低尿素カートリッジ構造では、CaCO3(またはMgCO3)がHCO3
-バランスの調節により重要な役割を果たす。したがって、HCO3
-に転化されるCO2が少ないので、該患者におけるアシドーシス改善能はより低くなるのである。そのような場合には、付加的なCaCO3(またはMgCO3)が、pH調節を助け、溶液にすでに存在するHCO3またはCO2の安定性を維持しながらHCO3
-の直接的供給源として働く。本明細書中の用語「低尿素カートリッジ構造」は、尿素濃度を3mM~5.5mMに低下させるように設計したカートリッジを指す。
【0082】
高尿素カートリッジ構造においては、Ca(OH)2 がHCO3
-バランスの調節により重要な役割を果たす。高血清尿素患者を治療する場合においては、加水分解物される尿素が多くなるため透析液中により多くのCO2が存在する。
尿素 + H2O → ウレアーゼ → 2NH3 + CO2
【0083】
本明細書中の用語「高尿素カートリッジ構造」は、尿素濃度を5mM~8mMに低下させるように設計したカートリッジを指す。
【0084】
重炭酸バランスに対するCa(OH)2の効果は、おそらく実施例6および実施例7において最も明確に示されるであろう。実施例7では、2.5gのCa(OH)2を該吸着組成物に加えることによって、実施例6の組成物(Ca(OH)2が非存在)よりも高い重炭酸バランスが得られた。
【0085】
Ca(OH)2の添加は、透析溶液のpHレベルの改善を助け、それによってCO2からHCO3
-への転化を促進する。
【0086】
Ca(OH)2およびCaCO3は全体的なHCO3
-バランスに貢献するが、過剰に加えた場合にはNa+およびアンモニウムの除去が低下する。Ca(OH)2およびCaCO3が溶解すると、透析液にCa2
+が放出される。その場合には、Ca2
+がリン酸ジルコニウム(またはその他の水不溶性金属リン酸塩)によって選択的に結合されるが、それによってナトリウムおよびアンモニアの調節に用いたイオン交換能が幾分消費される。したがって、Ca(OH)2およびCaCO3を含む最適吸着組成物を設計する際には、Na+バランス、HCO3
-バランス、およびアンモニウム結合能に影響を与えるpHなどの因子をすべて考慮する必要がある。
【0087】
本明細書中で言及するような本発明のいくつかの実施態様においては、該吸着剤中に存在する炭酸塩は不溶性炭酸塩であってもよい。換言すれば、本明細書中で言及するような本発明のいくつかの実施態様においては、該材料は水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩の1種類以上を含むのであってもよい。これは、有利なことに、透析中の炭酸塩の急速溶解を防ぎ得るので、該吸着剤が、吸着処理の経過中全体を通じて重炭酸塩の安定供給源を提供すること可能にする。結果として、水不溶性炭酸塩の利用は、処置開始時にナトリウム濃度の急激な上昇もpHの急激な上昇も引き起こさずに、該吸着剤が透析処置経過中全体を通じて重炭酸イオンの安定供給を提供可能にすることを意味すると考えられる。
【0088】
粒子サイズは溶解速度に影響を与え得るので、重炭酸塩の転化速度、吸着剤のpH、および透析液のpHを調節する因子となり得る。これは考慮すべき設計因子である。本明細書においては、CaCO3に好適な任意の粒子サイズを用いることができる。例えば、約1μm~約100μmである。CaCO3粒子に好適な粒子のサイズ分布は、該D90が約38μmmであってもよく、該D50が約16μmであってもよく、および該D10が約5μmであってもよい分布であり得る。本明細書においては、Ca(OH)2に好適な任意の粒子サイズを用いることができる。例えば、約1μm~約80μmである。Ca(OH)2粒子に好適な粒子のサイズ分布は、該D90が約30μmmであってもよく、該D50が約11μmであってもよく、および該D10が約 3μmであってもよい分布であり得る。
【0089】
上記の成分の好適な量はいずれも、本明細書に開示の吸着剤に用いることができる。該材料は、例えば、該材料が:
30~79wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
20~65wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.1~10wt%の総量で;
および
Ca(OH)2およびMg(OH)2の一方または両方を0~5wt%の総量で、
含む材料であってもよい。より具体的な実施態様においては、これは:
30~79wt%の酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム;
20~65wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;
0.1~10wt%のCaCO3および/またはMgCO3;
および
0~5wt%のCa(OH)2、
を含む材料であってもよい。
【0090】
例えば、該材料は:
31~75wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
23~63wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.1~5wt%の総量で;
および
Ca(OH)2およびMg(OH)2の一方または両方を0~4wt%の総量で、
含む材料であってもよい。より具体的な実施態様においては、該吸着剤が:
31~75wt%の酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム;
23~63wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;
0.1~5wt%のCaCO3および/またはMgCO3
および
0~4wt%のCa(OH)2、
を含む材吸着剤であってもよい。
【0091】
本明細書に開示の材料の正確な設計は、治療する対象の透析液において予想される尿素濃度に応じて変更するのであってもよい。例えば、尿素が低濃度(例えば、3~5.5mM)であると予想され得る対象においては、該材料が:
50~64wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
35~45wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
および
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.3~5wt%の総量で、
を含む材料であってもよい。例えば、該吸着剤は:
50~64wt%の酸性または中性の水不溶性金属リン酸塩;
35~45wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;
および
0.3~5wt%のCaCO3および/またはMgCO3、
を含む吸着剤であってもよい。
【0092】
例えば、該材料は:
53~60wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
39~44wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.5~3wt%の総量で、
含む材料であってもよい。例えば、該吸着剤は:
53~60wt%の酸性または中性の水不溶性金属リン酸塩;
39~44wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;
および
0.5~3wt%のCaCO3および/またはMgCO3、
を含む吸着剤であってもよい。
【0093】
あるいは、低尿素濃度に用いる好適な材料は:
45~59wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
40~54wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.5~5wt%の総量で、
含む材料であってもよい。例えば、該吸着剤は:
【0094】
45~59wt%の酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩;
40~54wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;
および
0.5~5wt%のCaCO3および/またはMgCO3、
を含む吸着剤であってもよい。
【0095】
例えば、該材料は:
48~56wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
42~50wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を1~2wt%の総量で、
含む材料であってもよい。例えば、該吸着剤は:
48~56wt%の酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩;
42~50wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;
および
1~2wt%のCaCO3および/またはMgCO3、
を含む吸着剤であってもよい。
【0096】
尿素が高濃度(例えば、5~8mM)であると予想され得る対象においては、該材料は:
50~70wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
30~49wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.2~3wt%の総量で;
および
Ca(OH)2およびMg(OH)2の一方または両方を0.2~2wt%の総量で、
含む材料であってもよい。例えば、該吸着剤は:
50~70wt%の酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩;
30~49wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;
0.2~3wt%のCaCO3および/またはMgCO3;
および
0.2~2wt%のCa(OH)2、
を含む吸着剤であってもよい。
【0097】
例えば、該材料は:
53~67wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
33~46wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み、
さらに
アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.2~2wt%の総量で;
および
Ca(OH)2およびMg(OH)2の一方または両方を0.2~1.5wt%の総量で、
含む材料であってもよい。例えば、該吸着剤は:
53~67wt%の酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩;
33~46wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;
0.2~2wt%のCaCO3および/またはMgCO3;
および
0.2~1.5wt%のCa(OH)2、
を含む吸着剤であってもよい。
上記の特定の実施態様においては、該酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩は、酸性および/または中性のリン酸ジルコニウムであってもよい。
【0098】
本明細書中で言及するような特定の実施態様においては:
該陽イオン交換粒子は、酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩およびアルカリ性含水性酸化ジルコニウムであり;
陰イオン交換粒子;
および
該アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上は、CaCO3および/またはMgCO3であり、任意選択的にここで該材料はCa(OH)2をさらに含む。
【0099】
該吸着剤は好適な方法で調製され得る。例えば、全成分を共に組み合わせて材料を単一層として提供するのであってもよい。あるいは、該アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、および存在する場合には該金属水酸化物を、該陽イオン交換粒子と組み合わせて第1層を形成させ、それが第2層として提供される陰イオン交換粒子を伴うのであってもよい。
【0100】
上記の材料はまた有機化合物吸収剤をさらに含むのであってもよい。該有機化合物吸収剤を他の材料のうちの1種類以上と組み合わせて、混成層を形成させるのであってもよく、あるいは異なる層を形成させるのであってもよい。該有機化合物吸収剤は、特に、活性炭、モレキュラーシーブ、ゼオライト、および珪藻土から成る群から選択されるのであってもよい。該有機化合物吸収剤粒子は活性炭粒子であってもよい。一実施態様においては、第1層の該有機化合物吸収剤は活性炭フィルターパッドであってもよい。別の一実施態様においては、該有機化合物吸収剤は活性炭粒子を含む。
【0101】
該活性炭粒子の平均粒子サイズは、約10ミクロン~約1000ミクロン、約10ミクロン~約250ミクロン、約20ミクロン~約200ミクロン、約25ミクロン~約150ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約25ミクロン~約250ミクロン、または約100ミクロン~約200ミクロン、または約100ミクロン~約150ミクロン、または約150ミクロン~約300ミクロン、または約200ミクロン~約300ミクロン、または約400ミクロン~約900ミクロン、または約500ミクロン~約800ミクロン、または約600ミクロン~約700ミクロン、または約250ミクロン~約500ミクロン、または約250ミクロン~約1000ミクロンの範囲であってもよい。
【0102】
一実施態様においては、該活性炭粒子は、有機化合物を吸収可能な任意の粒子で代替するのであってもよい。好ましくは、該粒子は交換によって何らかのものを放出することなく、クレアチニン、尿酸およびその他の小型および中型の有機分子を含む群から選択される有機化合物および/または有機代謝産物を吸収可能である。該活性炭粒子はまた、空間的な節約を目的として所定の容積に物理的に凝縮されるのであってもよい。一実施態様においては、該活性炭粒子は活性炭フィルターパッドに物理的に凝縮される。
【0103】
該有機化合物吸収剤が該材料の一部として存在する場合には、それは上記の材料において最も多種類として列挙される成分(すなわち、30~79wt%の酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム;20~65wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;0.1~10wt%のCaCO3および/またはMgCO3;および0~5wt%のCa(OH)2を含む材料)の総重量に対して10~40wt%の量で存在するのであってもよい。例えば、該有機化合物吸収剤は、上記の材料において最も多種類として列挙される成分の総重量に対して15~25wt%(18~23wt%など、19~21wt%など)の量で存在するのであってもよい。
【0104】
本明細書に開示の材料はまた、アルカリ性含水性酸化ジルコニウムの作成に関する本明細書に記載のプロセスに類似の方法で取得することのできる中性含水性酸化ジルコニウムをさらに含むのであってもよい。本明細書に記載の組成物中に存在する場合には、該中性含水性酸化ジルコニウムは、上記の材料において最も多種類として列挙される成分(すなわち、30~79wt%の酸性および/または中性のリン酸ジルコニウム;20~65wt%のアルカリ性含水性酸化ジルコニウム;0.1~10wt%のCaCO3および/またはMgCO3;および0~5wt%のCa(OH)2を含む材料)の総重量に対して0.1~10wt%の量で存在するのであってもよい。例えば、該中性含水性酸化ジルコニウムは、上記の材料において最も多種類として列挙される成分の総重量に対して0.5~5wt%の量で存在するのであってもよい。
【0105】
該中性含水性酸化ジルコニウムは、その他の材料のうちの1種類以上と組み合わせて、混成層を形成させるのであってもよく、あるいは別の層を形成させるのであってもよい。例えば、それを該アルカリ性含水性酸化ジルコニウムと混合するのであってもよい。中性含水性酸化ジルコニウムは、アルカリ性含水性酸化ジルコニウムの代替として用いることも可能であり、それによって類似のバランス結果が得られる。しかし、中性含水性酸化ジルコニウムは患者に塩素イオンを与え得るので、中性含水性酸化ジルコニウムと比較してアルカリ性含水性酸化ジルコニウムの利用が好ましい。しかし、該吸着材料に適切な量の中性含水性酸化ジルコニウムを加えることができる。
【0106】
本発明の特定の実施態様においては、本明細書に記載の材料中の上記のCaCO3および/またはMgCO3については、CaCO3のみであってもよい。
【0107】
本明細書に記載するような特定の実施態様においては、該酸性および/または水不溶性金属リン酸塩は酸性リン酸ジルコニウムであってもよい。別の実施態様においては、該酸性および/または 水不溶性金属リン酸塩は酸性リン酸ジルコニウムおよび中性リン酸ジルコニウムであってもよい。本明細書に記載の用途においては、酸性および中性のリン酸ジルコニウムの好適な任意の比を用いることができる。好適な比の例としては、該酸性リン酸ジルコニウムが、該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の55~80wt%の量で存在し、中性リン酸ジルコニウムを足し合わせることによってその総量が100wt%となる場合が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。例えば、該酸性リン酸ジルコニウムは、該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の59~70wt%の量で存在し、中性リン酸ジルコニウムを足し合わせることによってその総量が100wt%となるのであってもよく;あるいは、該酸性リン酸ジルコニウムが該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の75~78wt%の量で存在し、中性リン酸ジルコニウムを足し合わせることによってその総量が100wt%となるのであってもよい。
【0108】
理解されることではあるが、本明細書に記載の吸着に基づく透析に用いる該材料の成分は、個々の層として提供するのであってもよく、あるいは好適な任意の方法で共に組み合わせるのであってもよい。本発明の特定の実施態様においては、全材料を共に組み合わせて材料の単一層を提供するのであってもよい。本発明の別の実施態様においては、CaCO3および/またはMgCO3、および存在する場合には、Ca(OH)2を、該酸性および/または中性のリン酸ジルコニウムと混合して第1層を形成させ、アルカリ性含水性酸化ジルコニウムを第2層とするのであってもよい。
【0109】
CaCO3および/またはMgCO3、および存在する場合にCa(OH)2(および本明細書において上記の同等の材料;すなわち:アルカリ金属炭酸塩、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩、および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩、およびMg(OH)2)は、それぞれが単一均質層として存在する場合には問題を引き起こし得ることに留意されたい。その理由は、均質層として存在する場合には、これらの材料が非常に高密度のスラッジを形成し得るからであり、それによって吸着カートリッジ内の流れが制限されるのである。したがって、これらの材料をアルカリ性リン酸ジルコニウムおよび含水性酸化ジルコニウムのうちの少なくとも1種類と混合することが好ましい(活性炭またはその他の有機化合物吸着材料が該吸着剤中に存在する場合には、それらを組み合わせるのであってもよい)。
【0110】
吸着カートリッジに本明細書に開示の材料を用いて、本明細書中で言及する所望の効果を得るために該カートリッジ内部を構成させるのであってもよいことは理解されるであろう。すなわち、該吸着剤の一部を構成する材料は、上記で考察されるように、単一均質混合層として、あるいは2つの異なる層として提供するのであってもよい。
【0111】
用いてもよい構成の例としては、
図3および6~8に示される構成が挙げられるが、それらのみに限定されるものではない。
【0112】
図3Aは、該吸着カートリッジ300は、ウレアーゼ層320と活性炭層330との間に挟まれる単一混成層310中に本明細書に記載の材料を含む構成を示している。各層は濾紙340によって他の層から分離されている。
【0113】
図3bは、該材料が吸着剤350に存在するウレアーゼの一部ならびに異なるウレアーゼ層340と組み合わされる異なる構成を示している。
【0114】
両構成において、該カートリッジのウレアーゼ360に最も近い末端において該透析液が流入し、ウレアーゼ370から最も遠い末端から外に出ることが意図されていることに留意されたい。
【0115】
本明細書中の用語「ウレアーゼ」は、用語「尿毒症毒素処理酵素」の同義語であり、両者は基質としての尿毒症毒素に反応可能な酵素を指す。例えば、該尿毒症毒素処理酵素は、基質としての尿素、基質としての尿酸、または基質としてのクレアチニンに反応可能な酵素であってもよい。尿毒症酵素は、例えば、溶液中で該酵素を尿毒症毒素に反応させ、該尿毒症毒素の濃度低下を測定することにより、インビトロでこの機能を有するか否かを判定することができる。尿毒症毒素処理酵素の例としては、ウレアーゼ(尿素と反応する)、ウリカーゼ(尿酸と反応する)、またはクレアチニナーゼ(クレアチニンと反応する)が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0116】
本明細書中の用語「尿毒症毒素」は、当業者であればよく理解できることではあるが、例えば、蛋白質、核酸などの分解による1種類以上の老廃物を含む化合物を指す。尿毒症毒素の非限定的な例としては、尿素、尿酸、クレアチニン、およびベータ-2(β2)ミクログロブリンが挙げられる。健常個体においては、尿毒症毒素は通常、尿を通じて身体から排出される。しかし、特定個体においては、尿毒症毒素が充分速い速度で身体から除去されないので、尿毒症毒性を示す、すなわち、少なくとも1種類の尿毒症毒素に関して、尿毒症毒素の生理学的通常レベルと比較してレベルが上昇していることを特徴とする疾患または病態を引き起こす。尿毒症毒素に関連する障害の非限定的な例としては、腎疾患または腎機能不全、痛風、および化学療法を受けている対象における尿毒症毒性が挙げられる。
【0117】
本明細書中の用語「尿毒症毒素処理酵素粒子」は、粒子形態の尿毒症毒素処理酵素を指す。該酵素は、共有結合または物理的結合を介して生体適合性固体支持体に固定化されるのであってもよく、架橋、またはカプセル化、またはその他の任意の手段で固定化されるのであってもよい。
【0118】
該尿毒症毒素処理酵素は、該尿毒症毒素処理酵素粒子に対して固定化を提供可能な公知のいずれかの支持体材料上に固定化されるのであってもよい。固定化は、アルミナ上の吸着によるなどの物理的手段によるのであってもよい。一実施態様においては、非固定化酵素を用いる。あるいは、他の方法を用いて尿素をアンモニアに転化する。
【0119】
一実施態様においては、該支持体材料は、酵素が共有結合されている生体適合性基質である。該生体適合性材料は、炭水化物を基盤とするポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、または無機ポリマー材料であってもよい。該生体適合性基質は、1種類の材料によって構成される均質基質、または少なくとも2種類の材料によって構成される複合基質であってもよい
【0120】
該生体適合性基質は、セルロース、Eupergit、二酸化ケイ素(例えば、シリカゲル)、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ナイロン、ポリカプロラクトン、およびキトサンのうちの少なくとも1種類であってもよい。
【0121】
一実施態様においては、該生体適合性基質上への尿毒症毒素処理酵素の固定化は、グルタルアルデヒド活性化、エポキシ基による活性化、エピクロルヒドリン活性化、ブロモ酢酸活性化、臭化シアン活性化、チオール活性化、およびN-ヒドロキシスクシンイミド、およびジイミド-アミド結合から成る群から選択される固定化技術によって実施する。用いる固定化技術はまた、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、または(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランなどのシランを基盤とするリンカーの利用を含むのであってもよい。該生体適合性基質の表面は、デキストランまたはポリエチレングリコールなどの反応性および/または安定化層でさらに官能基化されるのであってもよく、またエチレンジアミン、1,6-ジアミノヘキサン、チオグリセロール、メルカプトエタノール、およびトレハロースなどの好適なリンカーおよび安定化剤分子でさらに官能基化されるのであってもよい。該尿毒症毒素処理酵素は、精製形態、またはタチナタマメまたはその他の好適なウレアーゼ供給源からのウレアーゼ抽出物などの粗抽出物形態で用いることができる。
【0122】
該尿毒症毒素処理酵素粒子は、尿素を炭酸アンモニウムに転化可能なものであってもよい。一実施態様においては、該尿毒症毒素処理酵素は、ウレアーゼ、ウリカーゼ、およびクレアチニナーゼのうちの少なくとも1種類である。好ましい一実施態様においては、該尿毒症毒素処理酵素はウレアーゼである。
【0123】
一実施態様においては、該尿毒症毒素処理酵素粒子はウレアーゼ粒子である。
【0124】
一実施態様においては、該尿毒症毒素処理酵素粒子の平均粒子サイズは、約10ミクロン~約1000ミクロン、約100ミクロン~約900ミクロン、約200ミクロン~約900ミクロン、約300ミクロン~約800ミクロン、約400ミクロン~約700ミクロン、500ミクロン~約600ミクロン、約25ミクロン~約250ミクロン、約25ミクロン~約100ミクロン、約25ミクロン~約500ミクロン、約250ミクロン~約1000ミクロン、約125ミクロン~約200ミクロン、約150ミクロン~約200ミクロン、約100ミクロン~約175ミクロン、および約100ミクロン~約150ミクロンの範囲である。
【0125】
一実施態様においては、1000~10000単位のウレアーゼを該生体適合性基質上に固定化する。固定化ウレアーゼと基質の総重量は約0.5g~約30gの範囲である。
【0126】
図6は、本発明にしたがうさらなる吸着カートリッジ600を示すが、ここでCaCO
3およびCa(OH)
2は(存在する場合には)含水性酸化ジルコニウムと混合されて、活性炭620の層とリン酸ジルコニウム630の層に挟まれる(本発明にしたがうような)層610を形成する。ウレアーゼの別の層640もまた存在し、各層は濾紙650で分離される。該透析液は、カートリッジ600においてポート660を介して流入し、ポート670を介して流出することが意図される。
【0127】
図7は、本発明にしたがうさらなる吸着カートリッジ700を示すが、ここでCaCO
3はリン酸ジルコニウムと混合されて層710を形成し、Ca(OH)
2は(存在する場合には)含水性酸化ジルコニウムと組み合わされて、活性炭層730とCaCO
3およびリン酸ジルコニウムの層710とに挟まれた層720を形成する。別のウレアーゼ層740もまた存在し、各層は濾紙 750で分離される。該透析液は、カートリッジ700においてポート760を介して流入し、ポート770を介して流出することが意図される。
【0128】
図8は、本発明にしたがうさらなる吸着カートリッジ800を示すが、ここでCaCO
3およびCa(OH)
2は(存在する場合には)、(本発明にしたがうような)リン酸ジルコニウムと共に混合されて層810を形成する。この層は、活性炭層820と含水性酸化ジルコニウム層830とに挟まれる。別のウレアーゼ層840もまた存在し、各層は濾紙 50で分離される。該透析液は、カートリッジ800においてポート860を介して流入し、ポート870を介して流出することが意図される。
【0129】
本発明のさらなる局面および実施態様について、以下に非限定的例を参照しながら考察を進める。
【0130】
実施例
【0131】
材料と方法
【0132】
合成透析液調製剤の全化学物質(NaCl、NaHCO3、CaCl2・2H2O、MaCl2・6H2O、KCl、グルコース一水和物、尿素、クレアチニン、およびNaH2PO4・2H20)、ならびにCaCO3およびCa(OH)2は、Sigma-Aldrich(米国)から購入した。不定形酸性リン酸ジルコニウム(pH:3.8~4.3)、不定形中性リン酸ジルコニウム(pH:5.8~6.1)、不定形含水性酸化ジルコニウム(pH:11.0~11.5)、および固定化ウレアーゼは、後述の方法で調製した。活性炭粉末(NDS Centaur)はCalgon社から購入した。試薬および材料はいずれもさらになる精製を行うことなく用いた。全試料のpHを、Sartorius PB-10卓上pH計で記録した。全ての被検物質(ナトリウム、重炭酸塩、尿素、アンモニアなど)の濃度をVitros-250化学分析装置で測定した。
【0133】
調製1:リン酸ジルコニウムの調製
【0134】
リン酸ジルコニウムは、従来法、例えば、米国特許第3,850,835号に記載されるような塩基性硫酸ジルコニウムとリン酸の水性混合物の反応によって合成した。あるいは、米国特許第4,256,718号に記載されるような炭酸ジルコニウムナトリウムとリン酸の水性混合物からリン酸ジルコニウムを合成した。
【0135】
その産物を滴定して、溶液のpHを3.8~6.1とした。所望のpHに達するまで、リン酸ジルコニウムの水性スラリーに5M水酸化ナトリウム溶液を段階的に加えた。滴定後に、濾液が浸出物の許容可能限界内になるまでリン酸ジルコニウムを洗浄して、空気乾燥させた。
【0136】
調製2:含水性酸化ジルコニウムの調製
【0137】
含水性酸化ジルコニウムは、従来法、例えば、米国特許第4,256,718号に記載ように炭酸ジルコニウムナトリウムと水酸化ナトリウムの水性混合物の反応によって合成した。上記の合成の実施では、含水性炭酸ジルコニウムの水性スラリーを作成し、5M水酸化ナトリウムでスラリーのpHが11~12になるまで滴定した。一部の場合においては、次に、濾液の浸出物濃度が許容可能なレベル内に達するまで該含水性酸化ジルコニウムを洗浄してから、空気乾燥した。
【0138】
実施例1
【0139】
吸着カートリッジの調製
【0140】
該吸着カートリッジは、下記の表1~3に列挙される材料から成るものであった。リン酸ジルコニウム(ZP)は、調製1にしたがって調製した。含水性酸化ジルコニウム(HZO)は、調製2に記載のように調製した。固定化ウレアーゼ(IU)は、WO2011/102807の実施例1および2に記載の方法で調製した;本参考文献は参照としてその内容全体が本明細書に組み入れられる。粒子サイズが50~200ミクロンの活性炭(AC)を用いた。炭酸カルシウム(CaCO
3)および水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)は市販品を購入し、その粒子サイズは1~100μmの範囲であった。下に記載の実験結果を得るために用いた吸着カートリッジは、空のポリプロピレンフラッシュカラムを上記の吸着材料で充填したものであった(
図3)。
【表1】
【表2】
【表3】
【0141】
該固定化ウレアーゼは尿素の加水分解を触媒して、アンモニアと二酸化炭素に変える。リン酸ジルコニウムは陽イオン交換体として働き、Ca++、Mg++、およびNH4
+の交換においてNa+またはH+を放出する。含水性酸化ジルコニウムは、主にリン酸およびフッ化物などの負に荷電する分子種を結合する両性イオン交換体として働く。添加剤であるCaCO3およびCa(OH)2は、炭酸塩およびアルカリの供給源として機能し、pHおよび重炭酸バランスを所望範囲内に維持することを助ける。例外的に広い表面積を有する非常に微小な多孔性材料である活性炭は、重金属、クレアチニンなどの低分子水溶性尿毒症毒素および尿酸、B2-ミクログロブリンなどの中型の分子、および蛋白質結合尿毒症毒素を吸着する。該吸着カートリッジおよび吸着材料を、後述のように調製した。
【0142】
本明細書の実施例においては、以下をカラムに充填した:
(1)AC層、その後に濾紙セパレーター;
(2)ZP、HZOおよびCaCO3/Ca(OH)2の混合物、その後に濾紙セパレーター;
および
(3)固定化ウレアーゼ層。
【0143】
次いで、該カラムを反転させて、まず透析液排液がIU層に流れ込み、AC層を経由して外に流出する形式で実験構成中に組込みを行った。
【0144】
理解されることではあるが、該カートリッジについては、各層の組み合わせおよび順序の異なる構成を用いるであってもよい(
図3および7~9)。
【0145】
一般的方法1
【0146】
本明細書においてこれ以降「一般的方法1」とよぶ独自の方法を用いて組成A~Hを試験した。この独自の方法は、通常のインビボ使用中の透析液の組成変化をより正確に模倣するように算出した、2種類の異なる溶液を動的混合比で吸着剤中にポンプ送流することを含むものであった。
【0147】
上記において、それらの溶液は、独自の比で混合される糖類、塩、毒素(例えば、尿素、クレアチニン、リン酸およびその他の毒素)の混合物を含む。動的透析溶液の利用は、伝統的な模倣透析溶液よりも精密な結果を提供するので、吸着剤のより精密な試験を可能にすると考えられる。
【0148】
ナトリウムなどの主要電解質および重炭酸のバランスは、以下の式にしたがって算出した:
ナトリウムバランス = (CNa Drain ‐ CNa pre) * Vdrain
重炭酸バランス = CHCO3 Drain * Vdrain ‐ CHCO3 SD * VSD used
ここで
CNa Drain = 実験の終わりに回収した液体中のナトリウム濃度
CNa pre = 合成透析液中のナトリウムの平均濃度
Vdrain = 実験の終わりに回収した液体の容積
CHCO3 Drain = 実験の終わりに回収した液体中の重炭酸濃度
CHCO3 SD = 合成透析液中の重炭酸濃度
VSD used = 実験に用いた重炭酸を含む合成透析液の容積
【0149】
実施例2
【0150】
表4の結果を得るために、7.9~8.6mMの尿素流入を用いた一般的方法1において、実施例1の組成A、B、およびCを用いた。
【表4】
【0151】
負のバランスは、透析液からの除去を示している。
【0152】
組成BおよびCは「高尿素」カートリッジであり、酸性リン酸ジルコニウムと含水性酸化ジルコニウムを等しい割合で混合し、さらに様々な量の炭酸カルシウム(組成Aは比較例であり、CaCO3を含まない)と混合することにより調製した。所望のナトリウムバランスおよび重炭酸バランスは、表4から分かるように、炭酸カルシウムの量を調整することによって達成できる。ここでは、炭酸カルシウムの量を0gから3.1gに増加させることによってより良好な重炭酸バランスが得られた。
【0153】
表4のデータから分かるように、CaCO3はHCO3
-イオンの供給源およびナトリウムバランスとして働くので、CaCO3含量の逐次的増加に伴って重炭酸バランスが増加する。その理由は、好ましくはZPがカルシウムを結合するが、他の陽イオンに対する結合能は低いままであることによる。
【0154】
実施例3
【0155】
表5の結果を得るために、8.1mMの尿素流入を用いた一般的方法1において、実施例1の組成DおよびEを用いた。
【表5】
除去尿素量に17を乗算することによって、除去されたアンモニアの量を算出した。また、流入液尿素濃度(mmol/l)と流出液尿素濃度(mmol/l)の差を、カートリッジを通過した液体の量(14L)で乗算することによって、除去尿素量を算出した。上記のデータは、該吸着剤に加えたCaCO
3量が1g(おおよそ10ミリモル)増加することによって、アンモニア結合が10ミリモル低下することを示している。
【0156】
実施例4
【0157】
表6の結果を得るために、5.0~5.2mmol/Lの尿素流入を用いた一般的方法1において、実施例1の組成F、G、およびHを用いた。
【表6】
【0158】
・ 組成F~Hでは、3~5mmol/Lの尿素負荷の処理を意図する「低尿素」カートリッジが形成されると考えることができる。
・ CaCO3含量の逐次的増加は重炭酸バランスの増加を伴う。
・ しかし、この場合、実施例2で用いた組成と比較してナトリウムバランスに対する影響がより少なかった;その理由は、AZPの量がより少ないためである。AZPはH+イオンを含んでいるので、より多くのナトリウムイオンおよびアンモニウムイオンを吸着可能である。したがって、AZPの減少で上記の差を説明し得る。しかし、これらの組成においては、アンモニウムイオン放出がより少ないので、(実施例2および3で用いた量と比較して)AZP量の減少は、所望のナトリウムバランスおよび重炭酸バランスの維持には充分である。
【0159】
実施例5
【0160】
表7および8の結果を得るために、2.3~5.2mMの尿素流入を用いた一般的方法1において、実施例1の組成IおよびJを用いた。
【表7】
【表8】
【0161】
表から分かるように、これら「低尿素」カートリッジの尿素濃度では、ナトリウムバランスおよび重炭酸バランスは増加した。
実施例6
実施例7
【0162】
pHプロファイル
【0163】
上記のように、実施例2~5は独自条件下で実施した。腹膜環境の透析液化学を模倣して流入透析液組成を変化させた。この目的において、初期透析液はpH5.2の実質的に新鮮な透析液であったが、それ以降は流入透析液が漸進的にpH7.4の合成透析液排液に変化した。
【0164】
実験経過中に、最高pHの7.5に到達した。pHについての改善機構を組み込んだ後に、そのレベルに限度がなくなるわけではない。新規吸着構造を設計する場合には、生理学的に許容可能となるように、その流出液pHが5~8のpH範囲内でなければならないのである。代謝性アシドーシスを考慮することに加えて、低いpHレベルでは、該透析液が高pCO2(CO2分圧)レベルになり、それと同時にCO2溶解が起こり得る。患者を高pCO2透析液に曝露することによって、腹膜にガス生成(気腹)が起こり得るので、潜在的な腹部の疼痛および不快感の原因となる。
【0165】
本明細書に記載のCaCO3およびCa(OH)2の組成は、Na+バランスおよびHCO3
-バランスに関して、ならびにpCO2レベルに影響を与えるpHに関して、該吸着剤の最終バランス性能に直接的な影響を与えることとなる。
【0166】
以下のさらなる組成物を調製し、一般的方法1(独自の方法)にしたがってカートリッジに組み込んだ。
(1)酸性ZP(145.2g)/中性ZP(36.3g)/アルカリ性HZO(148.5)/AC(70g)Ca(OH)2(4g)
(2)酸性ZP(145.2g)/中性ZP(36.3g)/アルカリ性HZO(148.5)/AC(70g)4g CaCO3 1g Ca(OH)2
(3)酸性ZP(145.2g)/中性ZP(36.3g)/アルカリ性HZO(148.5)/AC(70 g)3g CaCO3 1.75g Ca(OH)2
【0167】
図5は、14Lの模倣治療処置経過中のpHプロファイルに対する異なるCa(OH)
2量の影響を示している。Ca(OH)
2量が増加すると(Exp311対Exp304/306)、pH上昇の影響はより長時間になる。尿素が血液から透析液に拡散するには時間がかかるので、尿素加水分解によって生成するCO
2は、透析処置後半において増加することが予想された。したがって、HCO
3
-バランスに対するCa(OH)
2の効果を最大化するために、pHプロファイルも処置後半で増加させることが望ましい。
【0168】
一般的方法2
【0169】
以下の方法を用いてさらなる実験を実施した。既知の電解質濃度および毒素濃度の合成透析液排液を、吸着材料を含むカートリッジに一定流速でポンプ流動させた(
図4)。
【0170】
合成透析液の調製
【0171】
表9に示される合成透析液中に各種の陽イオンおよび陰イオンの濃度を含み、
図4に示される設定を用いる単一パス実験において、14Lの合成透析液を用いた。所望の最終尿素濃度で尿素を添加した。その濃度は典型的には3mmol/L~8mmol/Lの濃度範囲である。
【表9】
【0172】
下記の表10に記載の量で塩を混合することによって、上記の濃度を有する合成透析液を調製した。5NのHClを添加することによって、該合成透析液のpHを7.4~7.6に調整した。
【表10】
【0173】
実施例7
【0174】
流入尿素濃度の影響ならびに重炭酸バランスおよびナトリウムバランスの管理における炭酸カルシウムの重要性を実証する目的で、低尿素カートリッジを用いる単一パス条件下で4種類の実験を実施した (一般的方法2) 。試験した吸着剤の組成を表11に示す。
【表11】
【0175】
炭酸カルシウムを含まない低尿素カートリッジ(LUC)の基本処方を用いて実験1を実施したところ、高い負の重炭酸バランス(-83mmol)が認められた;その理由は、炭酸カルシウム形態の付加的な重炭酸塩供給源が存在しなかったためであった。
【0176】
実験1~実験3では、吸着剤の基本処方および流入透析液組成を同一のまま、該吸着剤における炭酸カルシウム量のみを0g(実験1)から6g(実験3)に増加させた。平均重炭酸バランスが-83mmolから-10 mmol(カラム3)に増加することが観察され、このことは中性重炭酸バランスの維持にとって炭酸カルシウムが重要であることを示している。また、炭酸カルシウム量を増加させることによって、炭酸カルシウムの寄与によるカルシウムイオンとの交換でさらなるナトリウムイオンが放出されるためナトリウムバランスは上昇する。
【0177】
重炭酸バランスおよびナトリウムバランスに対する流入尿素濃度の影響を実証する目的で、実験4を実施した。同一吸着剤組成を有する類似の条件下で実験3および4を実施した。ただし、実験3と比較して、実験4では流入尿素濃度を減らした(5.61mmol/L対3mmol/L)。より高い流入尿素濃度では、ナトリウムと交換可能なアンモニウムイオン(尿素に由来する)の可用性が増大するので、より高いナトリウムバランスが観察される。より高尿素になるほど、その寄与によってより高い重炭酸バランスとなる。
【0178】
高尿素カートリッジを用いて4種類のさらなる実験 (実験5~実験8)を実施した。その結果を表12に示す。
【表12】
【0179】
これらの結果(実施例7の実験1~8)に示される傾向は、(より精密な)独自の方法を用いた実施例2~5の結果に対して一貫性を示すものであることが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着に基づく透析に用いる材料であって;
酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
アルカリ性陰イオン交換粒子;
および
水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、
を含む材料。
【請求項2】
請求項1にしたがう材料であって、ここで該材料が、Ca(OH)
2およびMg(OH)
2のうちの一方または両方をさらに含む、材料。
【請求項3】
請求項1または2にしたがう材料であって、ここで該酸性および/または中性の陽イオン交換粒子が、酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩であり、任意選択的にここで該金属が、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから成る群から選択される1種類以上である、材料。
【請求項4】
請求項3にしたがう材料であって、ここで該金属がジルコニウムである、材料。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該アルカリ性陰イオン交換粒子が、その水酸化物-対イオン型;および/または炭酸-対イオン型;および/または酢酸-対イオン型;および/または乳酸-対イオン型において、部分的に水和した不定形水不溶性金属酸化物を含み、ここで該金属が、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから成る群から選択される1種類以上であり、任意選択的にここで該陰イオン交換粒子がアルカリ性含水性酸化ジルコニウムである、材料。
【請求項6】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで
(a)該水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩が、CaCO
3およびMgCO
3から成る群から選択される1種類以上であり;
および/または
(b)該水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩が、炭酸セベラマー、ポリマー結合したテトラアルキルアンモニウムカルボナート、および3-(トリアルキルアンモニウム)アルキル(例えば、プロピル)官能化炭酸シリカゲルから成る群から選択される1種類以上である、
材料。
【請求項7】
請求項2にしたがう材料であって、ここで該材料が:
30~79wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
20~65wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.1~10wt%の総量で;
および
Ca(OH)
2およびMg(OH)
2のうちの一方または両方を0~5wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項8】
請求項7にしたがう材料であって、ここで該材料が:
31~75wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
23~63wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.1~5wt%の総量で;
および
Ca(OH)
2およびMg(OH)
2のうちの一方または両方を0~4wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項9】
請求項1にしたがう材料であって、ここで該材料が:
50~64wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
35~45wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
水不溶性アルカリ土類金属炭酸および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.3~5wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項10】
請求項9にしたがう材料であって、ここで該材料が、
53~60wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
39~44wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.5~3wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項11】
請求項1にしたがう材料であって、ここで該材料が:
45~59wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
40~54wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに
水不溶性アルカリ土類金属炭酸および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.5~5wt%の総量で、
を含む、材料。
【請求項12】
請求項11にしたがう材料であって、ここで該材料が:
48~56wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
42~50wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに、
水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を1~2wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項13】
請求項7または8にしたがう材料であって、ここで該材料が:
50~70wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
30~49wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子;
0.2~3wt%の水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、
を含み;
さらに
Ca(OH)
2およびMg(OH)
2の一方または両方を0.2~2wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項14】
請求項13にしたがう材料であって、ここで該材料が:
53~67wt%の酸性および/または中性の陽イオン交換粒子;
33~46wt%のアルカリ性陰イオン交換粒子、
を含み;
さらに
水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上を0.2~2wt%の総量で;
および
Ca(OH)
2およびMg(OH)
2の一方または両方を0.2~1.5wt%の総量で、
含む、材料。
【請求項15】
請求項1にしたがう材料であって、ここで該材料において:
該陽イオン交換粒子が酸性および/または中性の水不溶性金属リン酸塩であり;
陰イオン交換粒子がアルカリ性含水性酸化ジルコニウムであり;
および
水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上が、CaCO
3および/またはMgCO
3であり、任意選択的にここで該材料がCa(OH)
2をさらに含む、
材料。
【請求項16】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで該材料が有機化合物吸収剤をさらに含み、ここで該有機化合物吸収剤が、請求項1に列挙される成分の総重量に対して10~40wt%の量で存在し、任意選択的にここで該有機化合物吸収剤が、請求項1に列挙される成分の総重量に対して15~25wt%の量(18~23wt%など、19~21wt%などの量)で存在する、材料。
【請求項17】
請求項16にしたがう材料であって、ここで該有機化合物吸収剤が活性炭である、材料。
【請求項18】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、
ここで:
(a)該材料が中性含水性酸化ジルコニウムをさらに含み、ここで該中性含水性酸化ジルコニウムが、請求項1に列挙される成分の総重量に対して0.1~10wt%の量で存在し、任意選択的にここで該中性含水性酸化ジルコニウムが、項目1に列挙される成分の総重量に対して0.5~5wt%の量で存在し;
および/または
(b)
(i)該成分の全てを共に組み合わせて、単一層材料を提供し;
または
(ii)該水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩のうちの1種類以上、および存在する場合には、Ca(OH)
2およびMg(OH)
2の一方または両方を、該陽イオン交換粒子と組み合わせて、第1層を形成させ、それと共に該陰イオン交換粒子が第2層として提供される、
材料。
【請求項19】
請求項4および請求項4に従属する請求項5~18のいずれか1項にしたがう材料であって、ここで酸性リン酸ジルコニウムおよび中性リン酸ジルコニウムの両方が存在し、該酸性リン酸ジルコニウムが該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の55~80wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在し、
任意選択的にここで:
(a)該酸性リン酸ジルコニウムが該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の59~70wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在し;
または
(b)該酸性リン酸ジルコニウムが存在する該材料中のリン酸ジルコニウムの総量の75~78wt%の量で存在し、それに対して該中性リン酸ジルコニウムの量を足し合わせることによって100wt%リン酸ジルコニウムの量となるような量で該中性リン酸ジルコニウムが存在する、
材料。
【請求項20】
前記請求項のいずれか1項にしたがう材料であって、水不溶性アルカリ土類金属炭酸塩および水不溶性重合体アンモニウム炭酸塩の一方または両方を含む、材料。
【請求項21】
吸着透析に用いるカートリッジであって、請求項1~20のいずれか1項に記載されるような材料を含むカートリッジ。
【国際調査報告】