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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ケイ素含有材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/029 20060101AFI20241127BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241127BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241127BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20241127BHJP
【FI】
C01B33/029
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/134
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024532795
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2021083993
(87)【国際公開番号】W WO2023099002
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドレーゲル,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ハウフェ,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA50
4G072BB09
4G072FF06
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH04
4G072JJ22
4G072LL02
4G072MM40
4G072NN27
4G072RR11
4G072RR20
4G072TT06
4G072UU30
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050FA13
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA12
5H050GA14
5H050GA28
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、エッチングされたケイ素含有材料の製造方法であって、第1のステップにおいて、多孔質粒子上のケイ素前駆体の熱分解によって多孔質粒子の孔内及び表面にケイ素を堆積して、ケイ素含有材料を形成し、第2のステップにおいて、ケイ素含有材料の堆積ケイ素の一部をエッチングによって除去する、エッチングされたケイ素含有材料の製造方法、この方法によって製造可能なエッチングされたケイ素含有材料、及びこの方法によって製造可能なエッチングされたケイ素含有材料を含むアノード材料、アノード、及びリチウムイオン電池を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングされたケイ素含有材料を製造する方法であって、
第1のステップにおいて、多孔質粒子上のケイ素前駆体の熱分解によって前記多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積して、ケイ素含有材料を形成し、
第2のステップにおいて、前記ケイ素含有材料の堆積ケイ素の一部をエッチングオフによって除去する、方法。
【請求項2】
液状又はガス状のエッチング媒体を前記第2のステップにおいて使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチングオフは、塩基性溶液を用いた湿式化学処理によって行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性溶液は、KOH、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、NaOH、LiOH、CsOH、NHOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)、エチレンジアミン(EDP)から選択される塩基を含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エッチングオフの前に、エッチングオフされる粗いケイ素を以下のように決定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法:
酸素に対する粉末の反応性を、5K/分の加熱速度を用いて、25~1000℃の温度領域における純酸素中でのTGA(熱重量分析)測定によって決定及び計算し、
(mres)は、TGAを実施した後の残留質量であり、
(mdiff)は、粗いケイ素の酸化から生じる質量差であり、
のモル質量(32g/mol)及びSiOのモル質量(60.08g/mol)を使用して、前記堆積ケイ素中の粗いケイ素の割合を、数1に示す式によって計算する。
【数1】
【請求項6】
粗いケイ素をエッチングオフする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
エッチング後の前記堆積ケイ素中の粗いケイ素の量は1重量%未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
エッチングの後、エッチングされたケイ素含有材料を洗浄媒体で洗浄し、洗浄媒体から分離し、乾燥する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
エッチングされたケイ素含有材料の表面積は、80m/g未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造可能な、エッチングされたケイ素含有材料。
【請求項11】
請求項10に記載の、エッチングされたケイ素含有材料を含むアノード材料。
【請求項12】
請求項11に記載のアノード材料でコーティングされた集電体を含むアノード。
【請求項13】
カソードと、請求項12に記載のアノードと、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、前記セパレータ及び2つの電極が含浸される電解質と、上記部品を収容するハウジングと、を備えるリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子表面から過剰のケイ素を除去することによってケイ素含有材料を利用する方法、及びこのようにして得られたケイ素含有材料のリチウムイオン電池のアノードのための活物質としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の貯蔵媒体として、リチウムイオン電池は、現在、最も高いエネルギー密度を有する最も実用的な電気化学エネルギー貯蔵器である。リチウムイオン電池は、主に、携帯用電子機器の分野において、ツールのために、また、自転車、スクータ、又は自動車等の電気駆動輸送手段のために使用される。黒鉛状炭素は、現在、対応する電池の負極(「アノード」)用の活物質として広く使用されている。しかし、欠点は、このような黒鉛状炭素の比較的低い電気化学容量であり、これは理論的には黒鉛1グラム当たり最大372mAhであり、したがって、リチウム金属で理論的に達成可能な電気化学容量のわずか約10分の1に相当する。アノードのための代替的な活物質は、例えばEP1730800B1号、US10,559,812B2号、US10,819,400B2号、又はEP3335262B1号に記載されるように、ケイ素の添加を使用する。ケイ素は、リチウムとの二元電気化学的活性合金を形成し、これは、ケイ素1グラム当たり3579mAhまでの非常に高い電気化学的に達成可能なリチウム含有量を可能にする[M.Obrovac、V.Chevrier Chem.Rev.2014、114、11444]。
【0003】
ケイ素中のリチウムイオンのインターカレーション(intercalation)及びデインターカレーション(deintercalation)は、付随する非常に著しい体積変化という欠点を伴い、これは完全なインターカレーションの場合300%まで達し得る。このような体積の変化は、ケイ素含有活物質に重大な機械的負荷をかけ、その結果、活物質は最終的に分解する可能性がある。電気化学的研磨とも呼ばれるこのプロセスは、活物質及び電極構造における電気的接触の喪失をもたらし、したがって、電極の容量の持続的な不可逆的な損失を招く。
【0004】
さらに、ケイ素含有活物質の表面は電解質の構成成分と反応し、不動態化保護層(固体電解質相間界面、SEI)が連続的に形成される。形成された成分はもはや電気化学的に活性ではない。そこに結合したリチウムは、もはや系に利用できず、電池の容量の顕著な連続的損失につながる。電池の充電/放電プロセス中のケイ素の体積の極端な変化に起因して、SEIは定期的に崩壊し、これは、ケイ素含有活物質のまだ占有されていない表面が露出され、次いで、さらなるSEI形成を受けることを意味する。使用可能な容量に対応する完全なセル中の移動性リチウムの量は、カソード材料によって制限されるため、それはますます消費され、セルの容量は、わずか数サイクル後に性能の観点から許容できない程度まで低下する。
【0005】
複数の充電及び放電サイクルの過程にわたる容量の低下はまた、フェージング(fading)又は容量の連続損失とも呼ばれ、一般に不可逆的である。
【0006】
リチウムイオン電池のアノード用の活物質として、一連のケイ素-炭素複合粒子が記載されたが、ケイ素は、気体又は液体前駆体から出発して多孔質炭素粒子に組み込まれる。
【0007】
例えば、US10,147,950B2号は、CVD(「化学蒸着」)又はPE-CVD(「プラズマ強化化学蒸着」)プロセスによる、好ましくは粒子の撹拌を伴う、管状炉又は同等の炉タイプにおける300℃~900℃の高温での多孔質炭素中のモノシランSiHからのケイ素の堆積を記載する。これは、2モル%のモノシランと不活性ガスとしての窒素との混合物を使用する。ガス混合物中のケイ素前駆体の低濃度は、非常に長い反応時間につながる。さらに、US10,147,950B2号は、多孔質出発材料上及び多孔質出発材料中でケイ素の堆積を実行するための、300℃~900℃の異なる温度範囲と0.01~100バールの異なる圧力範囲との複数の可能な組み合わせを開示している。
【0008】
US10,424,786B1号は、類似の手順を記載し、そこでケイ素前駆体は、1.013バールの全圧で不活性ガスとの混合物として導入される。WO2012/097969A1号は、ケイ素前駆体としてのシランを多孔質炭素担体上で200℃~950℃で加熱することによる1~20nmの範囲の超微細ケイ素粒子の堆積を記載し、シランは堆積ケイ素粒子の弱凝集又は厚い層の形成を防止するために不活性ガスで希釈され、堆積は0.1~5バールの圧力範囲で行われる。
【0009】
Motevalianら、Ind.Eng.Chem.Res.2017、56、14995は、高圧でのケイ素層の堆積を記載しているが、それは多孔質マトリックスの存在下ではない。やはり、使用されるケイ素前駆体、この場合モノシランSiHは、ガス体積全体において最大で5モル%という低い濃度でのみ存在する。
【0010】
上記の方法は、様々な重大な欠点を有する。ケイ素前駆体は通常、低い絶対圧及び分圧で、したがって低い濃度で使用され、これは、そうでなければ厚いSi層が粒子の外側に形成されるので、ケイ素含有材料において高いケイ素比率を達成するために長い反応時間を必要とする。これらの厚いケイ素層は、電解質と接触し、サイクルの過程で、SEIの持続的な再生と組み合わせて粒子表面の高度の構造化をもたらすという点で有害である。さらに、プロセスパラメータの最適な調整は、すべての反応パラメータの正確な知識を必要とし、これは、通常、経験的に決定されなければならない。加えて、使用される多孔質マトリックスは、それらの孔及び粒径分布に関してある特定の変動範囲を示し、その結果、厚いケイ素層をもたらすケイ素前駆体による過剰浸透を排除することができない。生産性の理由で、Si前駆体の比較的高い濃度及び/又は比較的高い温度で浸透が起こる場合、厚いSi層も形成される。これらの経験的研究の過程で、不利な製品特性を有する材料のバッチの製造は避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1730800号明細書
【特許文献2】米国特許第10,559,812号明細書
【特許文献3】米国特許第10,819,400号明細書
【特許文献4】欧州特許第3335262号明細書
【特許文献5】米国特許第10,147,950号明細書
【特許文献6】米国特許第10,424,786号明細書
【特許文献7】国際公開第2012/097969号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】M.Obrovac、V.Chevrier Chem.Rev.2014、114、11444
【非特許文献2】Motevalianら、Ind.Eng.Chem.Res.2017、56、14995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この背景に対して、目的は、高いサイクル安定性を有するリチウムイオン電池のアノードにおける活物質としてケイ素含有材料を使用することを可能にする、不利な製品特性を有する材料のバッチを利用するための方法を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、エッチングされたケイ素含有材料の製造方法であって、
第1のステップにおいて、多孔質粒子上のケイ素前駆体の熱分解によって多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積して、ケイ素含有材料を形成し、
第2のステップにおいて、ケイ素含有材料の堆積ケイ素の一部を、エッチングオフによって除去する、方法を提供する。
【0015】
驚くべきことに、この目的は、本質的に、粒子表面に過剰に適用されたケイ素が、過剰に浸透した粒子のエッチング処理を介して制御された様式で該表面から除去される方法によって達成された。
【0016】
サイクル中に厚いSi層によって引き起こされる粒子の構造化の不利な影響は、驚くべきことに、本発明による方法によって克服される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ケイ素含有材料は、好ましくはケイ素含有粒子からなる。これらは、例えば、1つ以上の多孔質粒子の存在下で1つ以上のケイ素前駆体を熱分解することによって得ることができ、それによりケイ素は、多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積される。
【0018】
ケイ素含有材料は、ケイ素前駆体からのケイ素の堆積に慣習的な任意の所望の反応器で製造することができる。流動床反応器、水平から垂直までの任意の所望の配置で配向され得る回転管状炉、及び開放又は閉鎖システムとして、例えば圧力反応器として操作され得る固定床反応器を含む群から選択される反応器が好ましい。多孔質粒子及び堆積中に形成されるケイ素含有材料をケイ素前駆体と均質に混合することを可能にする反応器が特に好ましい。これは、多孔質粒子の孔内及び表面上のケイ素の可能な限り均質な堆積にとって有利である。最も好ましい反応器は、流動床反応器、回転管状炉又は圧力反応器、特に流動床反応器又は圧力反応器である。
【0019】
使用されるケイ素前駆体は、選択された条件、例えば熱処理下で反応してケイ素を与えることができる少なくとも1つの反応性成分を含有する。反応性成分は、好ましくは、モノシランSiH、ジシランSi、及びより高い線状、分岐又は環状ホモログ、ネオペンタシランSi12、シクロヘキサシランSi12などのケイ素-水素化合物、トリクロロシランHSiCl、ジクロロシランHSiCl、クロロシランHSiCl、テトラクロロシランSiCl、ヘキサクロロジシランSiCl、及び1,1,2,2-テトラクロロジシランClHSi-SiHClなどのより高い線状、分岐又は環状ホモログ、トリクロロメチルシランMeSiCl、ジクロロジメチルシランMeSiCl、クロロトリメチルシランMeSiCl、テトラメチルシランMeSi、ジクロロメチルシランMeHSiCl、クロロメチルシランMeHSiCl、メチルシランMeHSi、クロロジメチルシランMeHSiCl、ジメチルシランMeSi、トリメチルシランMeSiHなどの塩素含有シランなどの塩素化及び部分塩素化オリゴシラン及びポリシラン、メチルクロロシラン、又は記載されたケイ素化合物の混合物を含む群から選択される。
【0020】
また、反応性成分は、例えばホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄又はニッケルを含有する化合物に基づくドーパントなどのさらなる反応性構成成分をさらに含有してもよい。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH、ジボランB、ホスファンPH、ゲルマンGeH、アルシンAsH、鉄ペンタカルボニルFe(CO)及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)を含む群から選択される。
【0021】
反応性成分中に存在し得るさらなる反応性構成成分としては、水素、炭化水素、例えば、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えばエテン、アセチレン、プロペン又はブテン、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えばシクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン又はノルボルナジエン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン又はナフタレン、さらなる芳香族炭化水素、例えばフェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン又はフェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン及び多数のそのような化合物を含有する混合画分、例えば天然ガス凝縮物、石油蒸留物又はコークス炉凝縮物からのもの、流動接触分解装置(FCC)、蒸気分解装置又はフィッシャー・トロプシュ合成プラントの生成物流からの混合画分、又はより一般的には木材、天然ガス、石油及び石炭処理からの炭化水素含有材料流が挙げられる。
【0022】
Si堆積のためのプロセスは、好ましくは、不活性ガス雰囲気、例えば、窒素又はアルゴン雰囲気中で行われる。
【0023】
このプロセスは、それ以外の点ではケイ素前駆体からのケイ素の堆積に慣例的であるように、当業者に通常である日常的な調整を必要とする従来の様式で実施することができる。
【0024】
本発明による方法のための多孔質粒子は、好ましくは、硬質炭素、軟質炭素、メソカーボンマイクロビーズ、天然黒鉛又は合成黒鉛、単層及び多層カーボンナノチューブ及びグラフェン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ケイ素-アルミニウム混合酸化物、酸化マグネシウム、酸化鉛及び酸化ジルコニウムなどの酸化物、炭化ケイ素及び炭化ホウ素などの炭化物、窒化ケイ素及び窒化ホウ素などの窒化物、また以下の成分式によって記載され得るような他のセラミック材料の形態の非晶質炭素を含む群から選択される。
AlMgSi、式中、0≦a、b、c、d、e、f、g≦1であり、少なくとも2つの係数a~g>0であり、a*3+b*3+c*4+d*2+g*4≧e*3+f*2である。
【0025】
セラミック材料は、例えば、二元化合物、三元化合物、四元化合物、五元化合物、六元化合物又は七元化合物であってもよい。以下の成分式を有するセラミック材料が好ましい。
非化学量論的窒化ホウ素BN(式中、z=0.2~1)
非化学量論的炭素窒化物CN(式中、z=0.1~4/3)
ホウ素炭窒化物BCN(式中、x=0.1~20及びz=0.1~20であって、x*3+4≧z*3)
ホウ素ニトリドオキシドBN(式中、z=0.1~1及びr=0.1~1であって、3≧r*2+z*3)
ホウ素カルボニトリドオキシドBCN(式中、x=0.1~2、z=0.1~1及びr=0.1~1であって、x*3+4≧r*2+z*3)
ケイ素カルボオキシドSiCO(式中、x=0.1~2及びz=0.1~2であって、x*4+4≧z*2)
ケイ素炭窒化物SiCN(式中、x=0.1~3及びz=0.1~4であって、x*4+4≧z*3)
ケイ素ホウ炭窒化物SiCN(式中、w=0.1~3、x=0.1~2及びz=0.1~4であって、w*4+x*3+4≧z*3)
ケイ素ボロカルボオキシドSiCO(式中、w=0.10~3、x=0.1~2及びz=0.1~4であって、w*4+x*3+4≧z*2)
ケイ素ボロカルボニトリドオキシドSiCN(式中、v=0.1~3、w=0.1~2、x=0.1~4及びz=0.1~3であって、v*4+w*3+4≧x*3+z*2)及び
アルミニウムボロシリコカルボニトリドオキシドAlSiCN(式中、u=0.1~2、v=0.1~2、w=0.1~4、x=0.1~2及びz=0.1~3であって、u*3+v*3+x*4+4≧w*3+z*2)。
【0026】
多孔質粒子は、ヘリウムピクノメトリーで測定される、0.1~7g/cm、特に好ましくは0.3~3g/cmの密度を有することが好ましい。これは、リチウムイオン電池の重量容量(mAh/cm)を増大させるのに有利である。
【0027】
好ましくは、多孔質粒子として、非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素、又はこれらの材料に基づく混合材料が使用され、特に好ましいのは、非晶質炭素、窒化ホウ素及び二酸化ケイ素の使用である。
【0028】
多孔質粒子は、好ましくは≧0.5μm、特に好ましくは≧1.5μm、最も好ましくは≧2μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd50は、好ましくは≦20μm、特に好ましくは≦12μm、最も好ましくは≦8μmである。
【0029】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μmの間、特に好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μmの間、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmの間である。
【0030】
多孔質粒子は、好ましくは≦10μm、特に好ましくは≦5μm、特に好ましくは≦3μm、最も好ましくは≦2μmの直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは≧0.2μm、特に好ましくは≧0.5、最も好ましくは≧1μmである。
【0031】
多孔質粒子は、好ましくは≧4μm、特に好ましくは≧8μmの直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは≦18μm、特に好ましくは≦15、最も好ましくは≦13μmである。
【0032】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは≦15.0μm、より好ましくは≦12.0μm、特に好ましくは≦10.0μm、特に好ましくは≦8.0μm、最も好ましくは≦4.0μmの幅d90-d10を有する。
【0033】
本発明による方法によって製造可能なケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは≧0.6μm、特に好ましくは≧0.8μm、最も好ましくは≧1.0μmの幅d90-d10を有する。
【0034】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、多孔質粒子の分散媒体としてエタノールを用いるHoriba LA 950測定装置によるMieモデルを用いた静的レーザー散乱によりISO 13320に従って決定することができる。
【0035】
粒子は、例えば、単離形態又は弱凝集形態であり得る。多孔質粒子は、好ましくは強凝集されておらず、好ましくは弱凝集されていない。強凝集とは、一般に、多孔質粒子の製造の過程で、一次粒子が最初に形成され、合体し、及び/又は一次粒子が、例えば共有結合を介して互いに連結され、このようにして強凝集体を形成することを意味する。一次粒子は、通常、単離粒子である。強凝集体(aggregates)又は単離粒子は、弱凝集体(agglomerates)を形成し得る。弱凝集体は、例えばファンデルワールス相互作用又は水素結合を介して互いに連結された強凝集体又は一次粒子の緩い蓄積である。弱凝集した強凝集体は、標準的な混練及び分散プロセスによって、再び強凝集体に容易に分割して戻すことができる。強凝集体は、仮にあったとしても、そのようなプロセスによって部分的にしか一次粒子に分解することができない。強凝集体、弱凝集体又は単離粒子の形態の多孔質粒子の存在は、例えば従来の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて可視化することができる。対照的に、マトリックス粒子の粒径分布又は粒径を決定するための静的光散乱法は、強凝集体と弱凝集体とを区別することができない。
【0036】
多孔質粒子は、任意の所望の形態を有してもよく、すなわち、例えば、破砕、フレーク状、球状、又は針状であってもよく、破砕又は球状粒子が好ましい。形態は、例えば、真球度ψ又は真球度Sによって特徴付けることができる。Wadellの定義によれば、真球度ψは、物体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψは値1を有する。この定義によれば、本発明による方法のための多孔質粒子は、好ましくは0.3~1.0、特に好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の真球度ψを有する。
【0037】
真球度Sは、表面に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影の測定された円周Uとの比
【数1】
である。理想的な円形粒子の場合、Sは値1を有するであろう。本発明による方法のための多孔質粒子について、真球度Sは、真球度数分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、特に好ましくは0.65~1.0の範囲である。真球度Sは、例えば、光学顕微鏡による、又は粒子<10μmの場合、好ましくは走査型電子顕微鏡による個々の粒子の顕微鏡写真に基づいて、ImageJなどの画像解析ソフトウェアを用いた図形評価によって測定される。
【0038】
多孔質粒子は、好ましくは、≧0.2cm/g、特に好ましくは≧0.6cm/g、最も好ましくは≧1.0cm/gのガスアクセス可能な細孔容積を有する。これにより、高容量のリチウムイオン電池を得ることができる。ガスアクセス可能な細孔容積は、DIN 66134に従って窒素を用いるガス収着測定によって決定した。
【0039】
多孔質粒子は、好ましくは開放孔を有する。開放孔とは、一般に、孔が、例えばチャネルを介して粒子の表面に接続しており、好ましくは環境と質量を交換することができ、特にガス状化合物を交換することができることを意味する。これは、ガス収着測定値(Brunauer, Emmett and Teller、「BET」による分析)、すなわち比表面積によって実証することができる。多孔質粒子は、好ましくは≧100m/g、特に好ましくは≧500m/g、特に好ましくは≧1000m/g、最も好ましくは≧1500m/gの比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素を用いる)に従って決定される。
【0040】
多孔質粒子の孔は、任意の所望の直径を有してもよく、すなわち、一般にマクロ孔(50nm超)、メソ孔(2~50nm)、及びミクロ孔(2nm未満)の範囲内であってもよい。多孔質粒子は、異なる孔タイプの任意の所望の混合物中で使用され得る。好ましくは、総細孔容積に基づいて30%未満のマクロ孔を有する多孔質粒子、特に好ましくはマクロ孔を有さない多孔質粒子、非常に特に好ましくは5nm未満の平均細孔直径を有する少なくとも50%の孔を有する多孔質粒子を使用する。非常に特に好ましくは、多孔質粒子は、2nm(決定方法:メソ孔範囲においてはDIN 66134に従ってBJH(ガス吸着)による細孔径分布及びミクロ孔範囲においてはDIN 66135に従ってHorvath-Kawazoe(ガス吸着)による細孔径分布、マクロ細孔範囲においては細孔サイズ分布は、DIN ISO15901-1に従って水銀ポロシメトリーによって評価される)未満の細孔直径を有する孔のみを有する。
【0041】
好ましくは、0.3cm/g未満、特に好ましくは0.15cm/g未満のガスアクセス不可能な細孔容積を有する多孔質粒子である。これはまた、リチウムイオン電池の容量を増大させることができる。ガスアクセス不可能な細孔容積は、以下の式を使用して決定することができる。
ガスアクセス不可能な細孔容積=1/純物質密度-1/骨格密度。
【0042】
純物質密度は、純物質の相組成又は密度(あたかも閉鎖孔を有していないかのような材料の密度)に基づく多孔質粒子の理論密度である。純物質密度データは、当業者によって、例えば、Ceramic Data Portal of the National Institute of Standards(NIST、https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)において見出すことができる。例えば、酸化ケイ素の純物質密度は2.20g/cm、窒化ホウ素の純物質密度は2.25g/cm、窒化ケイ素の純物質密度は3.44g/cm、炭化ケイ素の純物質密度は3.21g/cmである。骨格密度は、ヘリウムピクノメトリーによって決定される多孔質粒子(ガスアクセス可能)の実際の密度である。
【0043】
明確にするために、多孔質粒子はケイ素含有材料とは異なることに留意されたい。多孔質粒子は、ケイ素含有材料を製造するための出発材料として作用する。好ましくは、多孔質粒子の孔内及び多孔質粒子の表面上に位置するケイ素、より具体的にはケイ素前駆体の堆積によって得られるケイ素は一般に存在しない。
【0044】
本発明による方法によって多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させることによって得ることができるケイ素含有材料は、好ましくは0.5~20μmの範囲の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。d50値は少なくとも1.5μmが好ましく、少なくとも2.0μmが特に好ましい。直径パーセンタイルd50は最大13μmが好ましく、最大8μmが特に好ましい。
【0045】
ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μmの間、特に好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μmの間、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmの間である。
【0046】
ケイ素含有材料は、好ましくは≦10μm、特に好ましくは≦5μm、特に好ましくは≦3μm、最も好ましくは≦1μmの直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは≧0.2μm、特に好ましくは≧0.4μm、最も好ましくは≧0.6μmである。
【0047】
ケイ素含有材料は、好ましくは≧5μm、特に好ましくは≧10μmの直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは≦20μm、特に好ましくは≦15μm、最も好ましくは≦12μmである。
【0048】
ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは≦15.0μm、特に好ましくは≦12.0μm、より好ましくは≦10.0μm、特に好ましくは≦8.0μm、最も好ましくは≦4.0μmの幅d90-d10を有する。ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは≧0.6μm、特に好ましくは≧0.8μm、最も好ましくは≧1.0μmの幅d90-d10を有する。
【0049】
ケイ素含有材料は、好ましくは粒子の形態である。粒子は、単離形態又は弱凝集形態であり得る。ケイ素含有材料は、好ましくは強凝集されておらず、好ましくは弱凝集されていない。単離、弱凝集、及び非強凝集という用語は、多孔質粒子に関して既に上でさらに定義された。強凝集体又は弱凝集体の形態のケイ素含有材料の存在は、例えば、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて可視化することができる。
【0050】
ケイ素含有材料は、任意の所望の形態を有してもよく、すなわち、例えば、破砕、フレーク状、球状、又は針状であってもよく、破砕又は球状粒子が好ましい。
【0051】
Wadellの定義によると、真球度ψは、物体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψは値1を有する。この定義によれば、本発明による方法によって得られるケイ素含有材料は、好ましくは0.3~1.0、特に好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の真球度ψを有する。
【0052】
真球度Sは、表面に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影の測定された円周Uとの比
【数2】
である。理想的な円形粒子の場合、Sは値1を有するであろう。本発明による方法によって得ることができるケイ素含有材料について、真球度Sは、真球度数分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、特に好ましくは0.65~1.0の範囲である。真球度Sは、例えば、光学顕微鏡又は10μm未満の粒子の場合、好ましくは走査型電子顕微鏡による個々の粒子の顕微鏡写真に基づいて、ImageJなどの画像解析ソフトウェアを使用する図形評価によって測定される。
【0053】
リチウムイオン電池のサイクル安定性は、形態、材料組成、特にケイ素含有材料の比表面積又は内部気孔率によってさらに高めることができる。
【0054】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは20重量%~80重量%、特に好ましくは30重量%~60重量%、特に好ましくは40重量%~50重量%の多孔質粒子を含有する。
【0055】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量(好ましくはICP-OESなどの元素分析による決定)に基づいて、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは20重量%~80重量%、特に好ましくは30重量%~60重量%、特に好ましくは40重量%~50重量%の、ケイ素前駆体からの堆積によって得られるケイ素を含有する。
【0056】
多孔質粒子が、例えば二酸化ケイ素の形態でケイ素化合物を含む場合、上述の重量%数値は、元素分析によって決定されたケイ素含有材料のケイ素の質量から元素分析によって決定された多孔質粒子のケイ素の質量を差し引き、その結果をケイ素含有材料の質量で除することによって、ケイ素前駆体からの堆積によって得られたケイ素について決定することができる。
【0057】
ケイ素含有材料中に存在し、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の体積は、ケイ素の密度(2.336g/cm)で割ったケイ素含有材料の総質量におけるケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の質量分率から得られる。
【0058】
ケイ素含有材料の細孔容積Pは、ガスアクセス可能な細孔容積とガスアクセス不可能な細孔容積の合計から生じる。ケイ素含有材料のGurwitschガスアクセス可能な細孔容積は、DIN 66134による、窒素を用いるガス収着測定によって決定可能である。
【0059】
ケイ素含有材料のガスアクセス不可能な細孔容積は、以下の式を用いて決定可能である。
ガスアクセス不可能な細孔容積=1/純物質密度-1/骨格密度。
【0060】
ケイ素含有材料の純物質密度は、ケイ素含有材料中に存在する成分の理論的純物質密度の合計に全材料のそれぞれの重量関連パーセンテージを乗じたものから計算することができる理論的密度である。例として、ケイ素が多孔質粒子上に堆積されるケイ素含有材料の場合、これは以下をもたらす。
純物質密度=ケイ素の理論純物質密度*ケイ素の割合(重量%)+多孔質粒子の理論純物質密度*多孔質粒子の割合(重量%)。
【0061】
ケイ素含有材料の細孔容積Pは、ケイ素含有材料中に存在し、ケイ素前駆体からの堆積から得られるケイ素の体積に基づいて、0体積%~400体積%の範囲、好ましくは100体積%~350体積%の範囲、特に好ましくは200体積%~350体積%の範囲である。
【0062】
ケイ素含有材料に存在する孔は、ガスアクセス可能でもガスアクセス不可能でもよい。ケイ素含有材料のガスアクセス不可能な孔に対するガスアクセス可能な孔の体積の比は、一般に、0(ガスアクセス可能な孔なし)対1(全ての孔がガスアクセス可能である)の範囲であり得る。ケイ素含有材料のガスアクセス不可能な孔に対するガスアクセス可能な孔の体積比は、好ましくは0~0.8の範囲、特に好ましくは0~0.3の範囲、特に好ましくは0~0.1の範囲である。
【0063】
ケイ素含有材料の孔は、例えばマクロ孔(>50nm)、メソ孔(2~50nm)及びミクロ孔(<2nm)の範囲内の任意の所望の直径を有し得る。ケイ素含有材料はまた、異なる孔タイプの任意の所望の混合物を含有してもよい。好ましくは、ケイ素含有材料は、総細孔容積に基づいて、最大で30%のマクロ孔を含有し、マクロ孔のないケイ素含有材料が特に好ましく、5nm未満の平均細孔直径を有する、全細孔容積に基づいて少なくとも50%の孔を有するケイ素含有材料が非常に特に好ましい。特に好ましくは、ケイ素含有材料は、最大で2nmの直径を有する孔のみを有する。
【0064】
ケイ素含有材料は、少なくとも1つの寸法において、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm未満の構造サイズを有するケイ素構造を有する(決定方法:走査型電子顕微鏡法(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡法(HR-TEM))。
【0065】
ケイ素含有材料は、好ましくは1000nm未満、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))未満の層厚を有するケイ素層を含む。ケイ素含有材料はまた、粒子の形態のケイ素を含有してもよい。ケイ素粒子は、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))未満の直径を有する。ここで、ケイ素粒子に関するデータは、好ましくは、顕微鏡画像における粒子の円周の直径に関する。
【0066】
さらに、ケイ素含有材料中のケイ素前駆体からの堆積ケイ素は、例えばLi、Fe、Al、Cu、Ca、K、Na、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Mg、Ag、Co、Zn、B、P、Sb、Pb、Ge、Bi、希土類又はそれらの組み合わせを含む群から選択されるドーパントを含有してもよい。リチウム及び/又はスズが好ましい。ケイ素含有材料中のドーパントの含有率は、ICP-OESによって決定することができる、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは最大1重量%、特に好ましくは最大100ppmである。
【0067】
ケイ素含有材料は、一般に圧縮荷重及び/又は剪断応力下で驚くほど高い安定性を示す。ケイ素含有材料の圧縮荷重安定性及び剪断安定性は、例えば、ケイ素含有材料が、圧縮荷重下(例えば、電極圧縮中)及び剪断応力下(例えば、電極調製中)のSEMにおけるその多孔質構造に、あるとしてもわずかな変化しか有さないという事実から明らかである。
【0068】
ケイ素含有材料は、炭素などの追加の元素を任意選択で含有してもよい。炭素は、最大で1μm、好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm未満、非常に特に好ましくは1nm未満(SEM又はHR-TEMによって測定可能)の層厚を有する薄層の形態であることが好ましい。炭素層は、ここでは、ケイ素含有材料の孔内及び表面上の両方に存在し得る。ケイ素含有材料における異なる層の順序も任意である。したがって、第1に、多孔質粒子上に、炭素などの多孔質粒子とは異なるさらなる材料の層が存在してもよく、その上にケイ素層又はケイ素粒子の層が存在してもよい。同様に、多孔質粒子の材料とは異なる材料のさらなる層が多孔質粒子とケイ素層又はケイ素粒子からなる層との間に存在するかどうかにかかわらず、ケイ素層上又はケイ素粒子の層上に、多孔質粒子の材料とは異なり得るか又は該材料と同一であり得るさらなる材料の層が存在してもよい。
【0069】
ケイ素含有材料は、好ましくは≦50重量%、特に好ましくは≦40重量%、特に好ましくは≦20重量%の追加の元素を含有する。ケイ素含有材料は、好ましくは≧1重量%、特に好ましくは≧3重量%、特に好ましくは≧2重量%の追加の元素を含有する。重量%での数字は、ケイ素含有材料の総重量を指す。代替の実施形態では、ケイ素含有材料は、追加の元素を全く含有しない。
【0070】
第2のステップでは、ケイ素含有材料からの堆積ケイ素の一部がエッチングオフによって除去される。ここでは、過剰のケイ素とも呼ばれる粗いケイ素が除去される。微細なケイ素が望ましく、エッチングされたケイ素含有材料の上及び中に残る。
【0071】
好ましくは、エッチング後の堆積ケイ素中の過剰のケイ素の量は、3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満である。
【0072】
試料中の微細なケイ素及び粗いケイ素は、SiOを形成するためのケイ素と酸素との反応によるTGA測定によって決定することができる。異なるケイ素種の識別可能性は、薄いケイ素層が厚い層又はSi粒子よりも酸素に対する高い反応性を示すという事実によって説明することができる。これは、TGA測定において、薄いSi層は低温(400~650℃)でも反応し(質量が増加し)、厚い層/粗いケイ素構造は700℃を超える温度でのみ反応を示すという結果を有する。理想的には、アノード活物質として使用されるケイ素含有複合体は、800℃を超える温度での酸素含有雰囲気下でのTGA測定において質量の増加を示さない。この方法はさらに、元素ケイ素の含有量の決定を可能にする。空気との接触によって予め酸化され不動態化されたケイ素は、もはや反応に関与せず、したがってTGA測定において考慮されない。
【0073】
存在する粗いケイ素を計算するには、TGA法からの残留質量(mres)及び粗いケイ素の酸化に起因する質量差(mdiff)が必要である。Oのモル質量(32g/mol)及びSiOのモル質量(60.08g/mol)を使用して、堆積ケイ素中の粗いケイ素の割合は、以下の式によって計算することができる。
【数3】
【0074】
前記材料の過剰のケイ素を計算することが望ましい場合、粗いケイ素の割合に該材料の堆積ケイ素の割合を乗じなければならない。
【0075】
ケイ素は、工業的に多くの方法で表面から除去することができる。液状又はガス状のエッチング媒体は、このために特に適している。液体エッチング媒体については、一方では、酸化条件下(例えば、HNO及び酢酸-HNA、CP4との混合物として)においてHFに基づく湿式化学経路が確立されているが、他方では、塩基性溶液、例えば、KOH、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、NaOH、LiOH、CsOH、NHOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)、エチレンジアミン(EDP)を含有する溶液を用いた湿式化学処理も確立されている。これらの湿式化学エッチング手順は、室温(25℃)で実施することができるが、反応を加速するために溶液の沸点未満の高温でも実施することができる。温度を上昇させることに加えて、マイクロ波又は超音波処理を介してエネルギーを系に導入することもできる。室温未満(<25℃)のエッチングプロセスも同様に考えられる。
【0076】
湿式化学エッチングプロセスに加えて、気相を介したエッチングプロセスも知られている。ここでは、例えばXeF又はSFをガス状エッチング媒体として使用することができ、プラズマが誘起される。
【0077】
エッチングは、粗いケイ素の含有量を監視しながら反復的に(エッチング媒体が欠乏している)、又は粗いケイ素の量(計算されたエッチング媒体の量)に合わせて調整されたエッチングによってのいずれかで実行され得る。
【0078】
エッチング後、エッチングされたケイ素含有材料は、好ましくは、洗浄媒体、好ましくは水で洗浄される。
【0079】
洗浄後、エッチングされたケイ素含有材料は、好ましくは、洗浄媒体から分離され、乾燥される。
【0080】
エッチングされたケイ素含有材料は、好ましくは最大で80m/g、特に好ましくは30m/g未満、特に好ましくは10m/g未満の比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素を用いる)に従って決定される。したがって、ケイ素含有材料をリチウムイオン電池のアノードの活物質として使用する場合、SEI形成を低減することができ、初期クーロン効率を高めることができる。
【0081】
本発明はさらに、リチウムイオン電池のアノードのためのアノード材料における活物質としての、エッチングされたケイ素含有材料の使用、及びリチウムイオン電池を製造するためのそのようなアノードの使用を提供する。
【0082】
アノード材料は、好ましくは、本発明による方法によって得ることができるエッチングされたケイ素含有材料と、1つ又は複数の結合剤と、任意選択でさらなる活物質としての黒鉛と、任意選択で1つ又は複数のさらなる導電性成分と、任意選択で1つ又は複数の添加剤とを含む混合物をベースとする。
【0083】
アノード材料においてさらなる導電性成分を使用することにより、電極内及び電極と集電体との間の接触抵抗を低減することができ、それにより、本発明によるリチウムイオン電池の通電容量が向上する。好ましいさらなる導電性成分は、例えば導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ又は金属粒子、例えば銅である。
【0084】
アノード材料は、アノード材料の総重量に基づいて、好ましくは0重量%~95重量%、特に好ましくは0重量%~40重量%、最も好ましくは0重量%~25重量%の1つ以上のさらなる導電性成分を含有する。
【0085】
エッチングされたケイ素含有材料は、アノード材料中に存在する全ての活物質に基づいて、好ましくは5重量%~100重量%、特に好ましくは30重量%~100重量%、最も好ましくは60重量%~100重量%の程度でリチウムイオン電池用のアノード中に存在し得る。
【0086】
好ましい結合剤は、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩、ポリビニルアルコール、セルロース又はセルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリイミド、特にポリアミド-イミド、又は熱可塑性エラストマー、特にエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーである。前述の結合剤のアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩も特に好ましい。結合剤の酸基の全て又は好ましくは一部は、塩の形態であり得る。結合剤は、好ましくは100000~1000000g/molのモル質量を有する。2つ以上の結合剤の混合物を使用してもよい。
【0087】
使用される黒鉛は、通常、天然又は合成黒鉛であり得る。黒鉛粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10>0.2μm~d90<200μmの間の体積加重粒径分布を有する。
【0088】
添加剤の例は、孔形成剤、分散剤、レベリング剤又はドーパント、例えば元素リチウムである。
【0089】
アノード材料のための好ましい配合物は、好ましくは5重量%~95重量%のケイ素含有材料、0重量%~90重量%のさらなる導電性成分、0重量%~90重量%の黒鉛、0重量%~25重量%の結合剤及び0重量%~80重量%の添加剤を含有し、重量%での数字は、アノード材料の総重量を指し、アノード材料の全ての構成成分の割合は、合計で100重量%となる。
【0090】
アノード材料の構成成分は、好ましくはローターステーター機、高エネルギーミル、遊星混練機、撹拌ビーズミル、振動板又は超音波装置を用いて、好ましくは水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びエタノール及びこれらの溶媒の混合物を含む群から選択される溶媒中でアノードインク又はペーストに加工されることが好ましい。
【0091】
アノードインク又はペーストは、好ましくは2~8.5のpHを有する(20℃で、例えば、SenTix RJDプローブを備えたWTW pH340i pHメーターを用いて測定される)。
【0092】
アノードインク又はペーストは、例えば、ドクターブレードによって銅箔又は別の集電体に塗布することができる。他のコーティングプロセス、例えば回転コーティング(スピンコーティング)、ローラーコーティング、浸漬又はスロットダイコーティング、塗装又は噴霧もまた、本発明に従って使用され得る。
【0093】
銅箔を本発明によるアノード材料でコーティングする前に、銅箔は、例えばポリマー樹脂又はシランをベースとする市販のプライマーで処理することができる。プライマーは、銅への接着の改善をもたらすことができるが、それ自体は、一般に実質的に電気化学的活性を有さない。
【0094】
アノード材料は、通常、一定重量まで乾燥される。乾燥温度は、使用される成分及び使用される溶媒によって導かれる。乾燥温度は好ましくは20℃~300℃の間である。層厚、すなわちアノードコーティングの乾燥層厚は、好ましくは2~500μmである。
【0095】
最後に、電極コーティングは、規定された気孔率を設定するためにカレンダー加工されてもよい。このようにして製造された電極は、好ましくは15%~85%の気孔率を有し、これはDIN ISO 15901-1に従って水銀ポロシメトリーによって測定することができる。好ましくは、このようにして決定することができる細孔容積の25%~85%は、0.01~2μmの細孔直径を有する孔によって提供される。
【0096】
本発明はさらに、カソードと、エッチングされたケイ素含有材料を含有するアノードと、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、セパレータ及び2つの電極が含浸される電解質と、上記部品を収容するハウジングと、を備えるリチウムイオン電池を提供する。
【0097】
本発明の関連において、リチウムイオン電池という用語は、セルも包含する。セルは、概して、カソード、アノード、セパレータ、及び電解質を含む。1つ以上のセルに加えて、リチウムイオン電池は、好ましくは、電池管理システムをさらに含む。電池管理システムは、一般に、例えば電子回路を使用して、特に充電状態を検出するために、過放電保護又は過充電保護のために電池を制御するために使用される。
【0098】
本発明に従って使用される好ましいカソード材料は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物(ドープ又は非ドープ)、リチウムマンガン酸化物(スピネル)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸塩、リチウムコバルトリン酸塩、リチウムマンガンリン酸塩、リチウムバナジウムリン酸塩又はリチウムバナジウム酸化物であり得る。
【0099】
セパレータは、一般に電気絶縁性のイオン透過性膜であり、好ましくはポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)、又はポリエステル若しくは対応するラミネートから作製される。あるいは、電池製造において通例であるように、セパレータは、ガラス又はセラミック材料からなっていてもよく、又はガラス又はセラミック材料でコーティングされていてもよい。知られているように、セパレータは、第1の電極を第2の電極から分離し、したがって、電極間の導電性接続(短絡)を防止する。
【0100】
電解質は、非プロトン性溶媒中に1つ以上のリチウム塩(=導電性塩)を含む溶液であることが好ましい。導電性塩は、好ましくは、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムヘキサフルオロアルセネート、過塩素酸リチウム、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムイミド、リチウムメチド、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、LiCFSO、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)LiN(CFSO及びリチウムホウ酸塩を含む群から選択される。導電性塩の濃度は、溶媒に基づいて、好ましくは0.5mol/l~問題の塩の溶解限度の間である。特に好ましくは、該濃度は0.8~1.2mol/lである。
【0101】
使用される溶媒は、好ましくは環状カーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカルボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、有機炭酸エステル又はニトリルであり、個々に又はそれらの混合物として使用される。
【0102】
電解質は、好ましくは、ビニレンカーボネート又はフルオロエチレンカーボネートなどの膜形成剤を含有する。結果として、本発明による方法によって得られるエッチングされたケイ素含有材料を含むアノードのサイクル安定性の有意な改善を達成することが可能である。これは、主に、活性粒子の表面における固体電解質相関界面の形成に起因する。電解質中の膜形成剤の割合は、好ましくは0.1重量%~20.0重量%の間である。
【0103】
リチウムイオンセルの電極の実際の容量を可能な限り最適に互いに適合させるために、正及び負の電極の材料を、それらの絶対容量に関して均衡させることが有利である。この関連において特に重要なのは、二次リチウムイオンセルの最初の又は最初の充電/放電サイクル(活性化として知られる)において、被覆層がアノード中の電気化学的に活性な材料の表面上に形成されるという事実である。この被覆層は、「固体電解質相関界面」(SEI)と呼ばれ、一般に、主として電解質分解生成物とある特定の量のリチウムとからなり、したがって、さらなる充電/放電反応にはもはや利用できない。SEIの厚さ及び組成は、使用されるアノード材料及び使用される電解質溶液の種類及び品質に依存する。
【0104】
黒鉛の場合、SEIは特に薄い。黒鉛では、第1の充電ステップにおいて、典型的には移動性リチウムの5%~35%の損失がある。これに対応して、電池の可逆容量も減少する。
【0105】
本発明による方法によって得られたエッチングされたケイ素含有活物質を有するアノードの場合、第1の充電ステップにおいて、好ましくは最大30%、特に好ましくは最大20%、最も好ましくは最大10%の移動性リチウムの損失があり、これは、US10,147,950B1号などの先行技術に記載されている値をはるかに下回る。
【0106】
上記のようなそのようなリチウムイオン電池の製造に利用される全ての物質及び材料は知られている。そのような電池の部品の製造及び電池を形成するためのそれらの組み立ては、電池製造の分野において知られた方法に従って行われる。
【0107】
本発明による方法によって得られるエッチングされたケイ素含有材料は、著しく改善された電気化学的挙動を特徴とし、高い体積容量及び優れた性能特性を有するリチウムイオン電池をもたらす。本発明による方法によって得られるエッチングされたケイ素含有材料は、リチウムイオン及び電子に対して透過性であり、したがって電荷輸送を可能にする。リチウムイオン電池におけるSEIは、本発明による方法によって得られるエッチングされたケイ素含有材料によって大幅に低減することができる。加えて、本発明による方法によって得られるエッチングされたケイ素含有材料の設計により、SEIは、仮にあったとしても、少なくともはるかに少ない程度で活物質の表面から剥離する。この全ては、対応するリチウムイオン電池の高いサイクル安定性をもたらし、そのアノードは、本発明による方法によって得られるエッチングされたケイ素含有材料を含有する。
【0108】
以下の実施例は、本明細書に記載される本発明のさらなる解明に役立つ。
【0109】
以下の分析方法及び機器を特性決定のために使用した。
【0110】
<走査型電子顕微鏡法(SEM/EDX)>
Zeiss Ultra 55走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型Oxford X-Max 80N X線分光計を用いて顕微鏡分析を行った。分析前に、試料を、帯電現象を防止するために、Safematic Compact Coating Unit 010/HVを用いて炭素の蒸着に供した。ケイ素含有材料の断面は、Leica TIC 3Xイオンカッターを用いて6kVで作製した。
【0111】
<無機分析/元素分析>
実施例で報告したC含量は、Leco CS230分析器で決定した。O及び適切な場合にはN又はH含量の決定のために、Leco TCH-600分析器を使用した。他の報告された元素の定性的及び定量的決定は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析(Optima 7300 DV、Perikin Elmer)によって行った。この目的のために、試料をマイクロ波(マイクロ波3000、Anton Paar製)中で酸消化(HF/HNO)に供した。ICP-OES決定は、酸性水溶液(例えば、酸性化飲料水、廃水及び他の水試料並びに土壌及び沈殿物の王水抽出物である)の分析に使用されるISO 11885(「Water quality - Determination of selected elements by inductively coupled plasma optical emission spectrometry(ICP-OES)(ISO 11885:2007)、EN ISO 11885:2009の独語版」)によって導かれる。
【0112】
<粒径の決定>
本発明の関連において、粒径分布は、Horiba LA 950を用いた静的レーザー散乱によりISO 13320に従って決定した。試料の調製において、測定されるものが個々の粒子のサイズであり、弱凝集体のサイズではないことを確実にするために、測定溶液中に粒子を分散させることに特別な注意を払わなければならない。測定のために、粒子をエタノールに分散させた。この目的のために、測定前に、必要であれば分散体を、LS24d5ソノトロードを備えたHielscher UIS250v実験室超音波装置中で4分間250W超音波で処理した。
【0113】
<BET比表面積測定>
材料の比表面積を、Sorptomatic 199090装置(Porotec)又はSA-9603MP装置(Horiba)を用いた窒素によるガス吸着によってBET法(窒素を用いたDIN ISO 9277:2003-05による決定)によって測定した。
【0114】
<骨格密度>
骨格密度、すなわち、外部ガスアクセス可能な孔空間のみの体積に基づく多孔質固体の密度を、DIN 66137-2に従ってHeピクノメトリーによって決定した。
【0115】
<ガスアクセス可能な細孔容積>
Gurwitschガスアクセス可能な細孔容積は、DIN 66134に従って窒素によるガス収着測定によって決定した。
【0116】
<熱重量分析(TGA)及び粗いケイ素の決定>
酸素に対する粉末の反応性を、5K/分の加熱速度を用いて、25~1000℃の温度領域(temparature window)における純酸素中でのTGA測定によって決定した。
【0117】
以下の材料及び機器を、実験例を実施する際に使用した。
【0118】
使用した品質4.0のSiHは、Linde GmbHから入手した。
【0119】
<使用した多孔質粒子>
以下の特性を有する多孔質炭素粒子を使用した。
BET比表面積:2140m/g
Gurvich PV:1.01cm/g
【実施例
【0120】
[比較例1:過剰浸透Si/C複合体の製造]
【0121】
<ケイ素前駆体としてモノシランSiHを使用するケイ素含有材料の製造>
【0122】
段階1では、オートクレーブに10.04gの量の多孔質材料を仕込み、閉じた。段階2では、オートクレーブをまず排気した。その後、16.6gの量のSiHを15.5バールの圧力で適用した。段階3では、オートクレーブを2.5時間かけて420℃の温度まで加熱し、段階4では、その温度を60分間維持した。段階5では、オートクレーブを12時間かけて室温まで冷却した。冷却後、オートクレーブ内に37.6バールの圧力が残った。段階6では、オートクレーブの圧力を1バールまで低下させた後、窒素で5回、酸素含有率が5%の希薄な空気で5回、酸素含有率が10%の希薄な空気で5回、次いで空気で5回パージした。段階7では、22gの量のケイ素含有材料を、黒色の微細な固体の形態で単離した。ケイ素含有率は57.5重量%であった。
【0123】
[実施例2:(BeS06956)粗いケイ素含量に合わせた量の水酸化ナトリウム溶液を用いたエッチングによる過剰のケイ素の除去]
【0124】
最初に、99.8mlの脱塩水中の0.2gのNaOHを250mlの丸底フラスコに入れ、例1からの9gの材料を徐々に添加した。得られた懸濁液を水浴中40℃で10分間撹拌し、次いで紙フィルター(濾紙413、VWR)に通した。次いで、このようにして得られた粉末を200mlの水に懸濁し、再度濾過によって単離した。得られた濾液のpHが8.0になるまでこの手順を繰り返した。得られたフィルターケーキを乾燥キャビネット中で80℃で恒量まで乾燥させた。
【0125】
処理されたSi複合体の特性は、表1(過剰のケイ素0.0重量%、BET比表面積64m/g)に見出すことができる。ケイ素含有率は48.0重量%であった。
【0126】
[実施例3、4及び6:比較例1及び実施例2の電気化学、並びに比較例5]
【0127】
<リチウムイオン電池のアノードにおいて活物質として使用されるケイ素含有材料の電気化学的特性決定>
【0128】
29.71gのポリアクリル酸(85℃で恒量まで乾燥させた、Sigma-Aldrich、M約450000g/mol)及び756.6gの脱イオン水を、ポリアクリル酸が完全に溶解するまで、シェーカー(290L/分)を用いて2.5時間撹拌した。水酸化リチウム一水和物(Sigma-ALdrich)を、pHが7.0(WTW pH340i pHメーター及びSenTix RJDプローブを用いて測定した)になるまで少しずつ溶液に添加した。次いで、この溶液をシェーカーを用いてさらに4時間混合した。
【0129】
3.87gの中和されたポリアクリル酸溶液及び0.96gの黒鉛(Imerys、KS6L C)を最初に50ml容器に入れ、プラネタリーミキサー(SpeedMixer、DAC 150 SP)中で2000rpmで混合した。その後、3.40gの例1又は実施例2からのケイ素含有材料を2000rpmで1分間撹拌した。続いて、8%導電性カーボンブラック分散体1.21g及び脱イオン水0.8gを添加し、プラネタリーミキサーに2000rpmで投入した。これに続いて、溶解機中で3000rpmで30分間、一定の20℃で分散させた。インクをプラネタリーミキサー内で再び1500rpmで5分間脱気した。次いで、完成した分散体を、0.1mmのギャップクリアランスでフィルム延伸フレーム(Erichsen、モデル360)を使用して、0.03mmの厚さを有する銅箔(Schlenk Metallfolien、SE-Cu58)に塗布した。次いで、このようにして製造されたアノードコーティングを50℃及び1バールの空気圧で60分間乾燥させた。乾燥したアノードコーティングの平均坪量は1.9mg/cmであり、コーティング密度は0.9g/cmであった。
【0130】
電気化学的研究は、2電極配置のボタン電池(CR2032型、宝泉)で行った。電極コーティングを対電極又は負極として使用した(Dm=15mm)。94.0%の含有率及び15.9mg/cmの平均坪量を有するリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物6:2:2をベースとするコーティング(SEIから入手)を、作用電極又は正極として使用した(Dm=15mm)。60μlの電解質で飽和したガラス繊維濾紙(Whatman、GD Type D)をセパレータとして使用した(Dm=16mm)。使用した電解質は、フルオロエチレンカーボネート及びジエチルカルボネートの1:4(v/v)混合物中のリチウムヘキサフルオロホスフェートの1.0モル溶液からなった。セルをグローブボックス(<1ppmのHO、O)内で組み立てた。使用した全ての成分の乾燥物質中の含水量は20ppm未満であった。
【0131】
電気化学的試験を20℃で行った。セルをcc/cv(定電流/定電圧)法により、1サイクル目は12mA/g(C/10に相当)、それ以降のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流で充電し、電圧限界4.2Vに達したら、電流が1.2mA/g(C/100に対応する)又は15mA/g(C/8に対応する)未満に低下するまで定電圧で充電した。1サイクル目は12mA/g(C/10に相当)、それ以降のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流で2.5Vの電圧限界に達するまでcc(定電流)法で放電した。選択された特定の電流は、正極のコーティングの重量に基づいた。セルの放電容量に対する充電容量の比は、クーロン効率と呼ばれる。電極は、1:1.2のカソード:アノードキャパシタンス比が確立されるように選択した。
【0132】
[比較例5:粗いケイ素含量に合わせた量の水酸化ナトリウム溶液を用いたエッチングによる過剰なケイ素の過剰な除去]
【0133】
最初に、脱塩水99.8ml中のNaOH0.4gを250ml丸底フラスコに入れ、例1からの物質6.05gを徐々に添加した。得られた懸濁液を水浴中40℃で10分間撹拌し、次いで紙フィルター(濾紙413、VWR)に通した。次いで、このようにして得られた粉末を200mlの水に懸濁し、再度濾過によって単離した。得られた濾液のpHが8.0になるまでこの手順を繰り返した。得られたフィルターケーキを乾燥キャビネット中で80℃で恒量まで乾燥させた。
【0134】
処理されたSi複合体の特性は、表1(過剰のケイ素0.0重量%、BET比表面積170m/g)に見出すことができる。ケイ素含有率は41.6重量%であった。
【0135】
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングされたケイ素含有材料を製造する方法であって、
第1のステップにおいて、多孔質粒子上のケイ素前駆体の熱分解によって、DIN66131に従って決定された≧100m /g以上の比表面積を有する前記多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積して、ケイ素含有材料を形成し、
第2のステップにおいて、前記ケイ素含有材料の堆積ケイ素の一部をエッチングオフによって除去する、方法。
【請求項2】
液状又はガス状のエッチング媒体を前記第2のステップにおいて使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチングオフは、塩基性溶液を用いた湿式化学処理によって行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性溶液は、KOH、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、NaOH、LiOH、CsOH、NHOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)、エチレンジアミン(EDP)から選択される塩基を含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のステップにおいて、粗いケイ素と称する、前記ケイ素含有材料の前記堆積ケイ素の一部を、エッチングオフによって除去し、微細なケイ素と称するケイ素がエッチングされたケイ素含有材料の上に残り、
前記エッチングオフの前に、エッチングオフされる粗いケイ素を以下のように決定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法:
酸素に対する粉末の反応性を、5K/分の加熱速度を用いて、25~1000℃の温度領域における純酸素中でのTGA(熱重量分析)測定によって決定及び計算し、
(mres)は、TGAを実施した後の残留質量であり、
(mdiff)は、700℃よりも高い温度で粗いケイ素の酸化から生じる質量差であり、
のモル質量(32g/mol)及びSiOのモル質量(60.08g/mol)を使用して、前記堆積ケイ素中の粗いケイ素の割合を、数1に示す式によって計算し、
【数1】
「粗いケイ素」カテゴリーのケイ素は、TGAにおいて700℃よりも高い温度で反応を示す。
【請求項6】
エッチング後の前記堆積ケイ素中の粗いケイ素の量は1重量%未満である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
エッチングの後、エッチングされたケイ素含有材料を洗浄媒体で洗浄し、洗浄媒体から分離し、乾燥する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
エッチングされたケイ素含有材料の表面積は、80m/g未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
多孔質粒子として、非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素、又はこれらの材料に基づく混合材料が使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造された、エッチングされたケイ素含有材料。
【請求項11】
請求項10に記載の、エッチングされたケイ素含有材料を含むアノード材料。
【請求項12】
請求項11に記載のアノード材料でコーティングされた集電体を含むアノード。
【請求項13】
カソードと、請求項12に記載のアノードと、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、前記セパレータ及び2つの電極が含浸される電解質と、上記部品を収容するハウジングと、を備えるリチウムイオン電池。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
また、反応性成分は、例えばホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄又はニッケルを含有する化合物に基づくドーパントなどのさらなる反応性構成成分をさらに含有してもよい。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH、ジボランB、ホスファンPH、ゲルマンGeH、アルシンAsH、鉄ペンタカルボニルFe(CO) 及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)を含む群から選択される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
ケイ素は、工業的に多くの方法で表面から除去することができる。液体又はガス状のエッチング媒体は、このために特に適している。液体エッチング媒体については、一方では、酸化条件下(例えば、HNO及び酢酸-HNA、CP4との混合物として)においてHFに基づく湿式化学経路が確立されているが、他方では、塩基性溶液、例えば、KOH、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、NaOH、LiOH、CsOH、NHOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)、エチレンジアミン(ED)を含有する溶液を用いた湿式化学処理も確立されている。これらの湿式化学エッチング手順は、室温(25℃)で実施することができるが、反応を加速するために溶液の沸点未満の高温でも実施することができる。温度を上昇させることに加えて、マイクロ波又は超音波処理を介してエネルギーを系に導入することもできる。室温未満(<25℃)のエッチングプロセスも同様に考えられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングされたケイ素含有材料を製造する方法であって、
第1のステップにおいて、多孔質粒子上のケイ素前駆体の熱分解によって、DIN66131に従って決定された≧100m/g以上の比表面積を有する前記多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積して、ケイ素含有材料を形成し、
第2のステップにおいて、前記ケイ素含有材料の堆積ケイ素の一部をエッチングオフによって除去する、方法。
【請求項2】
液状又はガス状のエッチング媒体を前記第2のステップにおいて使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチングオフは、塩基性溶液を用いた湿式化学処理によって行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性溶液は、KOH、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、NaOH、LiOH、CsOH、NHOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)、エチレンジアミン(ED)から選択される塩基を含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のステップにおいて、粗いケイ素と称する、前記ケイ素含有材料の前記堆積ケイ素の一部を、エッチングオフによって除去し、微細なケイ素と称するケイ素がエッチングされたケイ素含有材料の上に残り、
前記エッチングオフの前に、エッチングオフされる粗いケイ素を以下のように決定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法:
酸素に対する粉末の反応性を、5K/分の加熱速度を用いて、25~1000℃の温度領域における純酸素中でのTGA(熱重量分析)測定によって決定及び計算し、
(mres)は、TGAを実施した後の残留質量であり、
(mdiff)は、700℃よりも高い温度で粗いケイ素の酸化から生じる質量差であり、
のモル質量(32g/mol)及びSiOのモル質量(60.08g/mol)を使用して、前記堆積ケイ素中の粗いケイ素の割合を、数1に示す式によって計算し、
【数1】
「粗いケイ素」カテゴリーのケイ素は、TGAにおいて700℃よりも高い温度で反応を示す。
【請求項6】
エッチング後の前記堆積ケイ素中の粗いケイ素の量は1重量%未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
エッチングの後、エッチングされたケイ素含有材料を洗浄媒体で洗浄し、洗浄媒体から分離し、乾燥する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
エッチングされたケイ素含有材料の表面積は、80m/g未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
多孔質粒子として、非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素、又はこれらの材料に基づく混合材料が使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造された、エッチングされたケイ素含有材料。
【請求項11】
請求項10に記載の、エッチングされたケイ素含有材料を含むアノード材料。
【請求項12】
請求項11に記載のアノード材料でコーティングされた集電体を含むアノード。
【請求項13】
カソードと、請求項12に記載のアノードと、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、前記セパレータ及び2つの電極が含浸される電解質と、上記部品を収容するハウジングと、を備えるリチウムイオン電池。
【国際調査報告】